ヒル「どうして俺たちって人間から嫌われてるんだろう……」 (28)

ヒルA「……」モゾモゾ



男「うげっ、ヒルだぜ! なんでこんなとこにいやがるんだ!」

女「きもちわるーい! シッシッ!」

少女「怖いよぉぉぉぉぉ!」



ヒルA「……」モゾモゾ

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ヒルA「うーん……」

ヒルB「どうしたんだよ?」

ヒルC「なんで落ち込んでるの?」

ヒルA「さっき町を散歩してたんだけど、そしたら人間たちから避けられまくったんだ」

ヒルA「俺があいつらに何かしたってわけでもないのに……」

ヒルA「どうして俺たちって人間から嫌われてるんだろう……」

ヒルB「うーん、そうだなぁ……」

ヒルB「まず、やっぱり見た目がキモイからじゃないか?」

ヒルA「見た目が?」

ヒルB「オレらってこのとおり、グニュグニュしてんじゃん?」

ヒルB「いかにもナメクジのパワーアップバージョンって感じだからな」

ヒルA「あいつらは貝だから、俺たちとは全然違うだろ」

ヒルB「細けぇことはいいんだよ」

ヒルB「オレ、自分の姿を水面で見て“うわ、キモ!”ってビックリすることあるもん!」

ヒルC「あるある! 夜中とか特に!」

アハハハ… ハハハ…

ヒルA「……」

ヒルC「それと……やっぱり血を吸うからじゃない?」

ヒルA「なんで血を吸うと嫌がられるの?」

ヒルC「そりゃ、自分の体液を吸われていい気分になる生き物はいないでしょ」

ヒルC「現に、同じく血を吸う蚊なんか、ボクらより人間の身近にいるせいか」

ヒルC「ボクらより遥かに嫌われてるしさ。病気も媒介するし」

ヒルB「見た目が気持ち悪くて、性質も害をなすなら、こりゃもうどうしようもないだろ!」

ヒルC「うん、ボクらが嫌われるのは必然だよね」

ヒルB「だから気にすることじゃねえんだよ! 今まで通りやってこうぜ!」

ヒルA「……」

ヒルA「でも俺……」

ヒルA「俺、やっぱり人間に嫌われたままじゃやだ! 人間に好かれたい!」

ヒルA「ヒルのイメージアップをしたい!」

ヒルB「つっても、オレらにできることなんて……」

ヒルC「吸血くらいしか……」

ヒルA「そう、それだよ!」

ヒルBC「へ?」

ヒルA「俺たちの特技、吸血を上手く生かせばいいんだよ!」

ヒルB「なにか考えがあるみたいだな」

ヒルC「ボクらも人間と友好関係を築くのは反対じゃないし、話に乗るよ」

ヒルA「ありがとう!」

ヒルA「さぁ、いらっしゃい! いらっしゃい!」

ヒルB「悪い血を吸ってやるぜ!」

ヒルC「そうすれば、体から悪い物質が出て、健康になりますよ~!」



ヒルA(俺たちにできることはせいぜい吸血ぐらい……)

ヒルA(だが、吸血は決して人に害をなすだけじゃない。やり方によっては人を健康にもできる!)

ヒルA(これを上手く生かせば……!)

青年「あのー……」

ヒルA「はい、いらっしゃい!」

青年「内出血したところが、痛んできて……吸ってもらえませんかね?」

ヒルA「分かりました! 吸い出します!」

ヒルA「……」チューチュー…

青年「おっ、おっ、おっ!」ビクビクッ

青年「おお……内出血がすっかりなくなって、痛みも消えた!」

青年「すごいや! どうもありがとう!」

ヒルA「いえいえ」

ヒルA「その代わりといってはなんですが、俺たちのことをもっと宣伝してもらえませんか?」

青年「分かった! 宣伝させてもらうよ!」

老人「ワシの膝に変な血が溜まってしまって……診てもらいたいんじゃが」

ヒルA「お任せを!」



子供「えぇ~ん! トゲを吸い出して~! 痛いよ~!」

ヒルB「すぐ済むから泣くんじゃねえ!」



サラリーマン「肩こりがひどくて……悪い血を吸って血行をよくしてもらえない?」

ヒルC「はいは~い!」

ヒルA「……」チューチュー…



ヒルB「……」チュウチュウ…



ヒルC「……」チュパッチュパッ

ワイワイ… ガヤガヤ…



ヒルC「ひえぇ~、お客さんがいっぱい!」

ヒルB「大盛況だな!」

ヒルA「でもどうして、ここまでうまくいったんだろう?」

ヒルA「いくら健康のためとはいえ、俺たちの見た目が気にならないのかな?」

ヒルB「きっと、この見た目がかえって“良薬口に苦し”のような効果をもたらしてるんだろ」

ヒルB「“ヒルに血を吸わせるのは気持ち悪いけど、でもその方が効きそう”的な」

ヒルC「なんとなく小汚い店の方が、キレイな店よりおいしい料理を出しそう理論だね!」

美女「あのぅ……」

美女「血を吸って欲しいんだけどぉ……」

ヒルA「吸います吸います!」

ヒルB「ぜひオレに!」

ヒルC「ボクにやらせて下さい!」

ヒルA「俺だ!」

ヒルB「いやオレだ!」

ヒルC「ボクだ!」

美女「あのぅ、早くぅ……」

ヒルABC「……」

ヒルABC「じゃ、全員で!」デヘッ

美女「えええええ!?」

ヒルA「……」チューチュー…

ヒルB「……」チュウチュウ…

ヒルC「……」チュパッチュパッ

美女「あぁぁぁんっ!」ビクビクッ

しかし――

ヒルA「あのさー、やっぱり吸い方はチューチュー吸った方がいいと思うんだけど」

ヒルB「いいや! チュウチュウだぜ! 大人気のピカチュウっぽいしな!」

ヒルC「チュパッチュパッが一番いいに決まってるさ!」

ヒルB「いやチュパッチュパッとかキモイから」

ヒルC「なんだって!? そっちこそなにがピカチュウだよ! 無理があるよ!」

ヒルB「無理じゃねえよ!」

ヒルA「二匹とも、落ち着けよ」

ヒルB「うるせえ!」

ヒルC「チューチュートレインのくせに!」

ヒルA「なんだとぉ~!?」

ギャーギャーッ!

ドタンバタン! ドタンバタン!

ヒルA「待て待て……喧嘩はやめよう。せっかくうまくいってるとこなのに」

ヒルB「そうだな……吸血性の違いで解散してる場合じゃねえな」

ヒルC「人間たちに認められるために、今が一番大事な時期だしね」

ヒルA「三匹力を合わせて、もっともっと人気者になろう! ヒルのイメージアップをしよう!」

ヒルBC「おう!!!」

やがて――

紳士「こんにちは」ニコニコ

ヒルA「はい、いらっしゃいませ」

紳士「わたくし、大手芸能プロダクションの者なのですが……」

ヒルA「げ、芸能プロダクション?」

紳士「吸血による治療を始め、さまざまな功績で、今やあなたがたの人気は絶大です」

紳士「ぜひ、お三方でグループを組んで、アイドルとしてデビューしてみませんか?」

ヒルA「はいっ! 喜んで!」

ヒルA「やったぁ! ついに俺たちもメジャーデビューだ!」

ヒルB「となればグループ名決めようぜ!」

ヒルC「かっこいいやつにしようね!」

ヒルA「やっぱりグループだから……『~ズ』って形にはしたいな。ビートルズみたいに」

ヒルB「それと、人気アイドルグループみたいにどこかに地名を入れたいところだ」

ヒルC「どうせ入れるなら、お洒落な地名がいいよね」

アーデモナイ… コーデモナイ…

……

……

―日本武道館―

ヒルA「イェーイ! みんなノッてるかーい! 吸われてるかーい!」

ワアァァァ……!

ヒルB「みんなのおかげでオレたち、ついに歌手デビューだ!」

ワアァァァ……!

ヒルC「精一杯頑張るから、みんな聴いてねー!」

ワアァァァ……!

ヒルA「盛り上がりすぎて、貧血になるなよーっ!!!」



ワアァァァァァ……!

ヒルA「それじゃ、聴いてくれ!」

ヒルA「俺たち≪六本木ヒルズ≫のデビュー曲――」

ヒルA「『ヒルなんです』!!!」


ワアァッ!!!



その後、≪六本木ヒルズ≫は、『ヒルご飯』『ニヒルな3ヒル』『静かなるヒル』と次々新曲を発表し、
いすれも大ヒットしたという――





おわり

以上で終わりです
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