いろは(先輩とデート♪) 結衣(ヒッキーとデート!) (72)

12巻出て嬉しいので書いたけど原作はガン無視
ややいろはす寄り

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ガララ

結衣「やっはろー!」

八幡「おう」

結衣「遅れてごめんね。ちょっと優美子とー…って、ゆきのんは?」

八幡「なんか急に実家の用件が何だとかで帰ったぞ。連絡来てないのか?」

結衣「えっ? ……わ、ホントだ。ちょっと前にライン来てた」

八幡「そういうわけで今日は活動休止だ」

結衣「そっかぁ」

結衣「あれ? ってことはヒッキー、もしかしてあたしのこと待っててくれたの?」

八幡「まあ、念のためな。携帯を不携帯ってこともあるだろうし」

結衣「そ、そっか。ありがと」





結衣「なんかごめんね、わざわざ」

八幡「別にいい。丁度本の続きが気になってたところだったし」ペラ

結衣「もすこし読んでくの?」

八幡「せっかくだからキリの良い所までな」

結衣「そっか」ストッ

八幡「……」

結衣「……」スイスイ

八幡「いや、何してんの?」

結衣「えっ? ゆきのんにライン返してるだけだけど」

八幡「そうじゃなくて、部活無いんだから帰ればいいだろ」

結衣「あ、そーゆー…」

結衣「んーでもどうせ帰ってもヒマだし。あたしもちょっと時間つぶそうかなって」

結衣(それに今ならヒッキーと2人でいれるし…)

八幡「はあ。まぁそれなら良いけどよ」

結衣「なにヒッキー、あたしがいたら困るの?」

八幡「別に。ただ、俺がいるから残ってるのかと思っただけだ」

結衣「……」

結衣「……へっ!?」ガタッ




結衣「ち、違うよ? あたしは別にヒッキーがいるからじゃなくて、ホントにヒマなだけで…」

八幡「いや疑っちゃねぇけど…」

結衣(実際ヒッキー目当てだったりするけど!)

結衣「あ、そだ、あと依頼来るかもじゃん!」

結衣「活動日じゃなくなったけどもし来たらやっぱり対応してあげたいってゆーか、その時ヒッキー1人じゃ大変ってゆーか…」

八幡「っておい、やっぱ俺がいるからじゃねぇか」

結衣「はあっ!? だから違うし! 勘違いだからぁバカヒッキー!」

八幡「……お前こそ妙な勘違いしてそうだから一応言うけど」

八幡「俺がいるからってのは、俺だけ残すことに後ろ髪を引かれて帰りづらいんじゃないかって意味だぞ」

結衣「えっ」

八幡「……」

結衣「あ……そっち……?」カァァ

八幡(やっぱ別の意味で取ってたのか…)





結衣(うわー恥ずかし……勘違いしてたのあたしじゃん…)

八幡「まぁでも、そうそう依頼なんか来ないだろうが、万が一ってこともあるし。そういう時にコミュ力の高い奴がいるのは助かる」

結衣「え、ホント? あたし役に立てるかな?」

八幡「割りとお前が頼りだな」

結衣(あたしがヒッキーの頼りに…!?)ドキ

八幡「そんなわけで依頼者が来たら、上手いこと話を逸らして速やかに追い返してくれ」

結衣「って、そーゆー役割なんだ!?」

八幡「そりゃ誰かに来られちゃ落ち着いて読書が出来ないからなぁ」

結衣「えー……そこは依頼を優先しようよ。わざわざ来たのにがっかりされちゃうし」

八幡「だからそうならないように上手く躱すんだよ。追い返すだけなら俺でも出来るけど、悪評が立ったら何かと面倒だろ」

結衣「う、うーん…?」




八幡「つーかどうせ来訪者なんか無いだろ。そもそもそんな長居する気もないし」

結衣「……そうかもだけど」

結衣(けどあたしも、誰も来ないほうがいいや。せっかくヒッキーと2人きりだし)チラ

八幡「.……」ペラ

結衣(本読んでるヒッキーってちょっとかっこいいかも…)

結衣(もっと距離縮めたいなぁ。学校もいいけど、やっぱぐっと近づけるのはデートだよね)

結衣(デート…)

八幡「……」

結衣(……よし!)

結衣「あ、あのさヒッキー、明日…」

コンコン

結衣(って、こんなタイミングで誰か来たし!!)

いろは「こんにちはでーす」ガララ

八幡「うわ…」





結衣(いろはちゃん…)

いろは「うわとはご挨拶ですね先輩。せっかくかわいい後輩が訪ねて来たっていうのに」

八幡「お前の場合は用件が毎度可愛くないんだよ」

いろは「えっ、なんですかそれ用件がってことは暗にわたしはかわいいってことでつまり開口一番いきなり口説いてるんですか?」

八幡「違うから…」

いろは「結衣せんぱぁーい、先輩に告ハラされましたぁー!」

結衣「へ、へー…そーなんだ」

いろは(あ、あれ? なんか結衣先輩がつめたい?)

八幡「つーかコクハラってなんだよ。コクのあるハラミ?」

いろは「告白ハラスメントですよー。学校とかで先輩が立場を利用して後輩に無理やり告白してくるハラスメントです。知らないんですか?」

八幡「やけに限定的だな……初耳だわ」

いろは「まぁわたしがいま考えたんですけどね」

八幡「……」




いろは「最近多い気がするんでそろそろ社会通念として提起してもいいかなーって」

八幡「お前な、そういうのハラハラって言うの知ってる? ねぇ知ってる?」

いろは「はい? なんですかそれ」

八幡(豆しばには触れない方針、と)

いろは「も、もしかして! わたしと距離が近くていつ理性が効かなくなるかハラハラドキドキ的な…!?」

八幡「脆弱すぎんだろ俺の理性……そうじゃなくて、ハラスメントハラスメントの略だよ」

八幡「何でもかんでもハラスメントを付ければ良いっていう腐った風潮を正す、今最も世の中に必要な概念だ。そんなことも知らないのか?」

いろは「そ、そうなんですね……知りませんでした」

八幡「まぁ今俺が考えたしな」

いろは「おこりますよ」

結衣「えと、それでいろはちゃんはどうしたの?」

いろは「はっ! そうでした。えっとですね…」チラ

八幡「…?」





いろは「結衣先輩、一瞬だけ先輩借りてもいいですか?」

結衣「えっ? 全然いいけど、ここじゃダメなの?」

八幡「ちょっと? 本人の許可は?」

いろは「それが極秘任務っていうかー、まだナイショ的な内容なんですよね」

結衣「ふーん…?」

結衣(生徒会絡みかな? ならいっか)

結衣「わかった。けどなるべく早めにね?」

いろは「はぁーい。すぐ返しますね」

八幡(完全に取り扱いがCDとかのそれなんだけど…まさかポストに返却されたりしないよね?)

いろは「じゃあ先輩、廊下に来てください」グイ

八幡「はぁ…」ガタ






八幡「で、何の用だ」

いろは「前に一緒にデートコース考えたの覚えてますよね?」

八幡「覚えてないな。話は終わりか?」

いろは「ちょちょちょっとぉー!! 勝手に終わらせないでくださいっ!」

八幡(うっわぁ面倒くせぇやつだよこれ…)

いろは「ってか覚えてないって本気ですか…?」

八幡「いやまぁ、流石に覚えてるけどよ」

いろは「で、ですよねー」

いろは「それで実は、あれがけっこう参考になったっていうか、友達に教えたら好評でして」

八幡(え? どれだろう。ひょっとしてなりたけ? 総武高女子になりたけブーム来ちゃうの?)

いろは「ちなみにラーメン屋さんは誰にも話してません。あくまでコース全般の話なので」

八幡「ああそう…」




八幡「で、あれか。俺にその第二弾を手伝えと」

いろは「はいっ! さすが先輩、ご明察です」

八幡「はぁ……いつだ?」

いろは「え、いいんですか? もっと渋ると思ってたのに」

八幡「渋ったところで何だかんだ行く羽目になるんだろ。余計なエネルギーは使わん」

いろは「なるほどー。先輩もわたしのことが分かってきましたね」

八幡「伊達に半年以上振り回されてないからな」

いろは「ふっふっふ、そろそろ好きになっちゃったんじゃないですか?」

八幡「……」

いろは「……あれ? 先輩?」

八幡「いや。んで結局、俺はどうすりゃいいの?」

いろは「あ、えと、明日土曜の14時に駅前のカフェで待ち合わせがいいんですけど」

八幡「随分と急だな。まぁ了解した」

八幡(昼飯後なだけマシだ。せっかくの休日、せめてゆっくり寝るくらいはしたい)

八幡「じゃあそういうことで、また明日」

いろは「はい…お願いします」




いろは(先輩、なんで黙っちゃったんだろ)

いろは(ひょっとして図星? いやいやー先輩に限ってそんなことないよね)

いろは「……」

いろは(でも、もしそうなら…)

いろは「……っ!」カァァ


八幡(あーくそ、一瞬くしゃみ出そうで出なかった。スーパーたけしになりそう)ガララ

結衣「あ、ヒッキー。もういいの?」

八幡「まぁ、今日のところはって感じだ」

結衣「ふーん。なんか大変だね」

八幡「本当にな」

結衣「……」

結衣(どーしよ、一度タイミング逃しちゃったら言いづらいなぁ)

八幡「そういやさっきなんか言いかけてなかったか?」

結衣「えっ!? そ、そーだっけ?」

八幡「いや、違うならいいんだけど」

結衣「あっ…待って待って! 思い出したから!」





結衣「えと、駅前のとこにカフェあるじゃん?」

八幡「あるな」

結衣「土日限定でね、季節限定のスムージーが数量限定で出たんだけど、それがめっちゃ美味しいってウワサでさ」

八幡(限定多いなおい)

八幡「スムージーねぇ。まだ春先とはいえ昼間は暑い日もあるから丁度良いのかもな」

結衣「そうそう! さっき優美子たちとも話してて、もーずっと気になってるの」

結衣「だからね、その、明日行きたいなぁーって…」チラ

八幡「ほーん……まぁ、いいんじゃねぇの」

結衣「ホント!?」

八幡「数量限定なら期間内でも無くなりかねないし、早いに越したことはないだろ」

結衣(やった! すんなりオッケーしてくれた)

八幡「んじゃ、もし行ったら感想聞かせてくれ」

結衣「オッケー、写メ撮って送るね!」

八幡「俺そろそろ帰るけどどうする? まだいるんなら鍵任せるけど」

結衣「あっ、ならあたしも……」


結衣「って、ちがーーーう!!」ダンッ!

八幡「!?」




八幡「ど、どうした急に。違うって? 土日じゃなくて平日限定だったとか?」

結衣「それも違うし! そうじゃなくて…」

八幡(ちーがーうーだーろー!このハゲーー!ってこと? マジで? 俺ハゲてるの?)

結衣「い、一緒に行きたいの!」

八幡「はっ?」

八幡(一緒にって、周囲には誰も居ないはず…)キョロ

八幡「……え? 俺?」

結衣「……」コク

八幡「……なんで?」

結衣「なんでっ!? って、えー? だ、だって…」

結衣(デートしたいからなんて、そんなん言えないし…)

結衣「……だめ?」ジッ

八幡「っ……! 別に、駄目とは言ってねぇけど」

結衣「えっ、じゃあ行ってくれるんだ!?」

八幡「あ、ああ」

八幡(天然でやってくるあたり反則なんだよなぁ…)





結衣(やったやった、今度こそオッケーもらえちゃった!)グッ

八幡(ガッツポーズて。どんだけ行きたかったんだよ)

八幡(まぁ女子はいち早く話題の品を食べてますアピールしたがるしな。あれだ、インなんとか……とうまとうま、ごはんがまだなんだよ! 違うなこれ)

結衣(やば、もー緊張してきた。急いで帰って服とか決めなきゃっ)ガタッ

結衣「じゃあヒッキー、明日、販売は2時からだからそのくらいに!」

八幡「お、おう」

結衣「また後でメールするね! それじゃっ」ガララ

八幡(やけに慌てて帰ったな。つーか結局鍵は俺が閉めるんですね…)


八幡(2時ってことは昼飯後か。まぁそれならゆっくり寝られるし、朝っぱらからよりはマシだ)

八幡「ん?」

八幡(なんかついさっき似たようなことを思ったような……)


八幡「あ」





翌日 カフェ


八幡(結構混んでるな。これも新作スムージーとやらの効果なのか、元々なのか)

八幡(しかしそこは俺のルーン発動。見ろ、混み合った店内にも関わらず両サイドは誰も寄り付かないぜ!………なんでかなぁ)

八幡(窓際でコンセントもある良席なのになぁ……まぁおかげで席は確保出来てるわけだしね。これ八幡的にポイント高い)

八幡(もうそろ14時か。来るの見えたり……ん?)

いろは「……」クシクシ

いろは「えへっ☆」パチーン

八幡「……」

八幡(一色のやつ、身だしなみの最終チェックか…)

八幡(いや前髪とかはともかくキメ顔までする必要あんの…? ウィンドウ越しにおじさん戸惑ってるよ?)

八幡(と思ったら、俺の目の前にも同じような人が)

結衣「……」クシクシ

結衣「……ふー」

八幡(知ってる人だった……何これこっちが恥ずかしい)

八幡(つーかアングルがね、うん。悪くない。下から見る山景ってすごく良いと思います。もちろん横から見てもすごく良い)

結衣「……え?」

八幡「……あ」

結衣「……っ!?」カァァ




結衣(ヒッキーそこにいたの!? うわーうわー、めっちゃ恥ずかしいとこ見られた…)

いろは(うん、分け目はこのくらいでよしと)

結衣(うー、最悪。早速バカにされそう。でも今さらどうしようもないし……中入ろ)クル

いろは(トップスもいい感じの露出だし、先輩の目が泳ぐの楽しみだなぁー。あ、でもそれなら結び目もうちょっとあげたほうが…)

トンッ

結衣「あっ、ご、ごめんなさい!」

いろは「いえだいじょうぶ……って、結衣先輩?」

結衣「あれ? いろはちゃん?」

いろは「奇遇ですね。お出かけですか?」

結衣「あー、うん。そんな感じかな…?」

いろは「ふーん。結衣先輩がひとりってちょっと意外です」

結衣「ううん。ここで待ち合わせってゆーか、ここのスムージーが気になってて」

いろは「あ、CMでやってるやつですか。もう発売してるんでしたっけ?」

結衣「そうそう先週から。あたしも昨日知ったんだけどね」




いろは「なるほどー。わたしも気になってはいたんですよね。頼んでみようかな…」

結衣「えっ、ひょっとしていろはちゃんもここ入るの?」

結衣(どーしよ……別にバレてもいいけど、視線気になっちゃうかも)

いろは「はい。ちょっとデートの待ち合わせ的な感じで」

結衣「デート!? うそっ? いろはちゃんカレシいたんだ!?」

いろは「へっ? ち、ちがいます! まだそういうんじゃ…」

いろは(そっか、結衣先輩も入るんだよね。見られてもいいけど……ふたりきりがいいなぁ)

結衣「とりあえず、お店入ろっか?」

いろは「そ、そうですね」

ウィーン

店員「いらっしゃいませー」




八幡(お、一緒に入ってきたな)


結衣(ヒッキーは確か窓際に……いた!)

いろは(先輩、もう来てるかな)キョロ

結衣「いろはちゃんの相手はもう来てるの?」

いろは「たぶんいると思います。結衣先輩は?」

結衣「うん。あ、あっちのほう…」

結衣(うー、やっぱ知ってる人に見られるのって恥ずいかも…)

いろは「へー………あっ! わたしも見つけました」

結衣「えっ? ど、どこどこ!?」

いろは「っていうか、実は結衣先輩もよく知ってる人なんですけどー…」

結衣「うそっ!? 誰!?」

結衣(あ、もしや隼人くんとか? いろはちゃんまだ諦めてないって言ってたし)

いろは「……えと、あそこにいる、いまこっち見てる人です」

結衣「あそこ……って……えっ?」


八幡(……あいつら何話してんだ?)




結衣「……待って、いろはちゃん?」

いろは「はい?」

結衣「まさかそれって、ヒッキーじゃないよね?」

いろは「ま、まさかぁー」

結衣「あっ、ち、違うよね? そうだよね? あははー」

いろは「……あってますけど」カァァ

結衣「……へぇ?」

いろは「結衣先輩? どうかしました?」

結衣「あのね、いろはちゃん」


八幡(にしても妙な偶然もあったもんだな)

八幡(一色の手伝いと由比ヶ浜との付き合いが同時に出来て実に効率的。おかげで休日の自由時間が増える)

八幡(まさにWin-Win-Win。皆が笑って暮らせるような、そんなハッピーエンドを上条さんに代わって手に入れてやったぜ)

八幡(……と思ってたんだけど)


八幡「よ、よう」

結衣「ヒッキー?」ニッコリ…

いろは「どういうことですかぁー?」ニコォ…

八幡(なんか明らかに笑顔の種類が違うんですがそれは…)





八幡「……」

結衣「……」ムスッ

八幡「……」

いろは「……」プクー

八幡(わ、わーい。両手に華だー)

八幡「……」

八幡(何これ、どうすりゃいいんだよ…)

八幡(効率優先至上主義の現代的に素晴らしい論を展開したってのに一蹴されたし、そこから完全に無言だし)

八幡「な、なぁ。何か注文したほうが…」

結衣「ヒッキー、マジない」

いろは「ありえないです」

八幡(帰りてぇ……)





八幡「いや、悪かったって。とにかく何か頼まないとほら、店員さん多分チェックしてるからね?」

結衣「……昨日言ったやつ」

八幡「え? あ、ああ。あれか」

いろは「わたしもそれで」

八幡「おお」

八幡(やっぱ女子人気高いんだな。話題性ってすげぇわ)

結衣「……」ジッ

いろは「……」ジッ

八幡「……」

八幡(ですよねー、俺が買ってくる流れですよね…)ガタッ

結衣(……ヒッキーのばか)

いろは(……先輩のばーか)




八幡「ほいよ、お待ち遠さん」コト

結衣「……ん」

いろは「…どうもです」

八幡(どうせ奢りなんだろうな…)

八幡(つーか高くね? なんで飲み物一杯で600円近くすんだよ。英世さん1人じゃ勝てなかったよ…)

結衣「っ、うまっ…!」

いろは「たしかに…びっくりするくらいおいしいです」

結衣「桃のなんだろ、ジュレ?っぽいの。これやばい!」

いろは「わかります! あと乗ってるクリームがスムージーと相性いいっていうか」

八幡(へぇ、中々に好感触っぽいな)

結衣「それに下のヨーグルトも超おいしくない?」

いろは「あえて不均一なのがポイント高いですねー。変化があって楽しいです」

八幡(そんな細かいとこまで見てんのか。ただパシャパシャ撮ってキラキラ編集でアップアップしてるもんだとばかり)




結衣「あーっ! 最初に写メ撮るのすっかり忘れてた……ヒッキーのせいだし…」

八幡「なんでだよ…」

いろは「わたし撮りましたけど、これでよければ送りましょうか?」

結衣「ホント? わ、キレー。ありがとーいろはちゃん!」

いろは「いえいえー」

八幡「……俺挟んでやり取りしないでくんない?」

八幡(右から果物みたいな匂いするし、左から花みたいな匂いするし……やだ、変な気分になっちゃう)

結衣「ヒッキーがジャマなだけだし」

いろは「ってか、まだいたんですね」

八幡「えぇ……」

八幡(流石に理不尽すぎるだろ……あ、でもそれなら先に帰っていいんじゃね?)

八幡「じゃあ、お邪魔っぽいんで俺はそろそろ…」スクッ

ガッ ガッ

結衣「は? なにしてんのヒッキー?」

いろは「勝手に帰っていいとでも思ってるんですか?」

八幡(ダレカタスケテーーー!!)





八幡(チョットマッテテーは聞こえませんでしたね、ええ)

いろは「おいしかったですねー」

結衣「ね! また来週来ようかなぁー」

八幡(やっと解放される。なんで君たちあんな何十分もペラペラ喋れるの?)

八幡(つーか嫌われてる男子の特徴とかそういう話やめない? だいぶ思い当たる節があったんですけど…)

いろは「ではでは結衣先輩、また学校で!」

結衣「あ、うん。またね」

結衣(なんだ、いろはちゃん退いてくれるんだ。ちょっと申し訳ない気も…)

いろは「それじゃ先輩、次どこ行きます?」グイ

結衣「えっ」

八幡「まだ行くのかよ…」

いろは「まだって、まだなにも始まってないじゃないですか。ちゃんとコース開拓しなきゃ第二弾の意味ないですし」

八幡「そりゃそうだけど」

結衣「ちょ、ちょっと待って! ストーップ!」




いろは「どうかしました?」

結衣「いやー、なんでいろはちゃんがヒッキーと行動することになってるのかなぁー?」

いろは「はあ。なんでと言われましても、もともとそういう予定だったんでー」

結衣「ヒッキー? それホント…?」

八幡「……まぁ一応」

結衣「あたしとの約束は!?」

八幡「え? 新商品が気になるって話だったし、もう達成しただろ?」

結衣「……」

結衣(た、確かにーーーー!!)ガーン

結衣(そっか、あたしはデートのつもりだったけど…よく考えたらヒッキーと約束したのこれだけじゃん!)

いろは「ふっふっふ。わたしにはデートコース探しという名目がありますからね。先輩はこっちに来てもらいますよ」

八幡「……名目?」

いろは「あっ、まちがえました、目的! 目的です!」

結衣「ふーん……?」




いろは「ささ、先輩っ。次なる冒険をはじめましょう!」グイ

八幡「何のRPGだ……分かったから引っ張んな」

結衣「待ったぁー!」グイッ

八幡「ぐえっ!?」

八幡(言ったそばから逆サイド引っ張られた…)

結衣「あたしも行く!」

いろは「っ!? 結衣先輩? なにを言って…」

結衣「だってあくまでデートコース探しなんでしょ? なら別によくない?」

いろは「いやいやー、そこはふたりってとこに意味があるっていうかー」グイー

結衣「なんで? ホントにデートでもなかったら2人な必要なくない?」グイー

八幡(ちょっ、何このヒロインズに取り合われてる的な展開!? 俺ってばラノベ主人公になっちゃったの?)

いろは「っ……そ、そうですよ! これはデートです! なので、わたしと先輩のふたりだけでいいんです!」

結衣「へー、そーなのヒッキー?」

八幡「いや…そんな話じゃ無かったような」

いろは「がーん!!」

結衣「だよねー! なら問題ないよねっ」

いろは「くうぅ……!」





八幡(……で、結局そのまま連行と)

いろは「この辺でショッピングならここですよねー」

結衣「あたし結構久々だー」

いろは「わたしもです。コスパのいい海外ブランドがこの前入ったみたいですよ」

八幡(英会話じゃないほうのイオン。相変わらず馬鹿みたいにでかいなここは)

結衣「あーそれ聞いたかも! えっと確か……ナントカ&ナントカ?」

八幡「何も思い出せてねぇじゃん」

結衣「う、うっさい! アンドは合ってるし! たぶん」

八幡(んなもんいっぱいあるだろ……俺はS&Bくらいしか知らんけど。あ、違うわこれ調味料だ)

いろは「とりあえずテキトーに回ってみましょう」

結衣「そだね」





いろは「先輩はどんなとこがいいですか?」

八幡「別に、どこでもいい」

八幡(どうせ服とか見るんだろうし、どこ行っても店の前で荷物番だな。本屋行きたいって言ったら怒られるかな…)

いろは「結衣先輩、なんか先輩がランジェリーショップでもいいっぽいんですけど」

結衣「へっ!? なにそれ、ヒッキーヘンタイ!」

八幡「いや、そういう意味のどこでもじゃないから…」

いろは「でも気になるんじゃないですかぁー? わたしがどんなの着けてるのかって」

八幡「気になんねぇし」

八幡(なぜかってそりゃ、外から見て気にするほど主張してないからね。どことは言わないけどね)

いろは「なーんだ、つまんないですね」

結衣「へ、へー。ヒッキー気になんないんだ…」

八幡「……」

八幡「き、気になんねぇし。全然。マジで全く」

いろは「なんですかいまの間? ってか、わたしのときと反応違くないですか!?」





スタスタ

結衣「あっ、こことか?」

いろは「いいんじゃないですか? ここ小物とかもよさげなの多いですよね」

結衣「分かる分かる! ちょっと見てみよっか」

八幡(知らない店だ。そもそもこのフロアが全体的に女物だから、うろついたこともないんだよな)

いろは「先輩なにしてるんですか?」

八幡「は?」

いろは「ぼーっとしてると置いてっちゃいますよ?」

八幡「いや、俺が入ってどうすんだ」

いろは「決まってるじゃないですかー、審査です審査。ですよね結衣先輩?」

結衣「えっ? 審査って?」

いろは「そりゃもちろんあれですよ」

結衣「あ、あー。ひょっとして…これ?」クイ

いろは「そうそうそれですっ」

八幡(どれだよ)

いろは「ずばり先輩。先輩には、わたしと結衣先輩のコーデバトルの審査をお願いします!」

八幡「断る」

いろは「はやっ!?」





いろは「ちょっと先輩、そこは『えっ?』くらいのワンクッションがないとなんやかんややる方向に誘導ができないんですけど…」

八幡「正直だなお前…」

いろは「どうしてもイヤですか?」

八幡「嫌とか以前に女子の服なんて俺に分かるわけねぇだろ。男子のも分からんけど」

いろは「いやいや、先輩にファッションセンス求めてるわけないじゃないですかー」

八幡「……でも結局どっちがって優劣付けるんなら、根拠がなきゃ判断できないぞ」

いろは「そんなのやってみないとわかりませんよ。ってことでほらほら、入っちゃってください」グイグイ

八幡「わ、分かった、分かったから」

八幡(店員さんの目がなぁ……まあこの2人のお供ってことなら不審には映らないか)





八幡「……」ボー

八幡(一色が言ってた通り、結構品揃え良さそうだ)

八幡(ただでさえ女物の店は多いってのに余計に買うもん迷うんじゃね? 自由すぎる不自由の一例だな)

八幡(縁遠い話ですわ。俺は服なんてチ◯コ隠せればいいくらいにしか思ってないもんな。いや流石にそれはねぇな)

いろは「せーんぱいっ。ちょっといいですか?」

八幡「あ? 言っとくけど服は買ってやれないぞ」

いろは「知ってますよ……とりあえず試着見てもらうんでこっち来てください」

八幡「由比ヶ浜は? 一斉に披露ってわけじゃねぇの?」

いろは「最後はそうしますけど、その前に各自3回まで先輩に見てもらえることになってるんです」

八幡「なにそのポーカーで手札変えられる的なルール……要らんでしょ絶対」




いろは「どんな反応するかで好みつかめるかもじゃないですかー。勝負は一回きりなんで情報収集です」

八幡「はあ」

八幡(意外と真面目にやるのな。つーか極力奥行きたくないんだけどなぁ……試着なら仕方ないか)

いろは「……」ジー

八幡「どうした」

いろは「……途中でカーテンあけないでくださいね?」

八幡「開けないから……さっさと着てこい」

いろは「ちぃ、動揺しませんねー。それじゃちょっと待っててください」シャッ

八幡(鶴の恩返しかよ。中を開けたら一色が自分の皮膚で機織りをいやいやグロいグロい)

八幡(しかしこの店広いわりに試着室2つしかないのか? 別のとこにもあるんだろうか)

結衣「いたいたヒッキー」

八幡「ん、おう」




結衣「ちょっと探しちゃった。見てもらおうと思ったんだけど……もしかしていろはちゃんも?」

八幡「まあな」

結衣「あーやっぱり。えと、どーしよ…」

八幡「別にこっちが終わるの待つ必要ないだろ。今のうちに着替えとけばいいんじゃねぇの」

結衣「そっか。じゃああたしこっち使ってるね」

八幡「分かった」

結衣「……」

結衣「の、のぞいちゃダメだかんね?」

八幡「覗かないから……はよ行け」

結衣「絶対だからっ!」シャッ

八幡(どんだけ俺警戒されてんだよ。紳士的に振舞ってきたはずなんだけどなぁ…)

八幡(考えてもみろ。ここまでラッキースケベを起こさない系男子が今までいただろうか? いやいない)

八幡(テニス? ……な、何のことだか分かるませんね!)

いろは「せんぱーい、着おわりましたぁー」

八幡「おお」




いろは「あけていいですよ?」

八幡「いや自分で開けろよ…」

いろは「あけさせてあげるって言ってるんですよー」

八幡(なんでご褒美みたいな言い方なんだよ。わざわざカーテン開けるのに喜びを感じるわけが……)

八幡(あれでもこれって女子更衣室のドアを開けるのと同じ行為なわけで、そう考えると妙に背徳的なアレがアレなような? あれれ~?)

いろは「ぷっ。先輩もしかして緊張しちゃってます? もし下着だったらどうしよう的な?」

八幡「んなわけあるか。開けりゃいいんだろ開けりゃ」シャッ

いろは「きゃー、先輩のえっちー」

八幡「うぜぇ…」

八幡(が、それはともかく……おお、これは中々)

いろは「どうですか? けっこうかわいくないですかー?」

八幡(春らしい桜色のセーターに、フリルスカート…は元々着てたやつか。そのほかも微妙に違う気がするけどよく覚えてないな)





八幡「あー、なに。良いんじゃねぇの」

いろは「雑すぎなんでやりなおし」

八幡「だからそんくらいの感想しか出ないっつったろ…」

いろは「だとしてももうちょっとあるじゃないですかー、ココがいいとかココは狙いすぎとか」

八幡「んなこと言われても分からんもんは分からん。ただまあ、そのセーターの色はお前らしいとは思う」

いろは「……ふむふむ、先輩的にはそういうイメージがあるんですね」

八幡(ん? そんなんでいいのか)

いろは「ちなみにこういうアクセとかはイヤですか?」

八幡「いや別に。あんまジャラジャラしてると鬱陶しいかもしれんけど」

八幡(例えば秋葉前後のキチキチ電車内にいるジャラライバーとかね。2人分場所取ってんだよ……リュック下ろせよ)

いろは「わかりました。じゃあいったん戻すんで、絶対あけないでくださいね?」

八幡「だから開けねぇっつの……なに、フリ? フリなの?」

いろは「んー、そこはお任せですけどー。責任は取ってもらいますんで後先考えて行動してくださいねっ」シャッ

八幡(責任て……おいくら請求されるんですかねぇ。絶対開けないようにしよう。いや普通に開けんけど)




結衣「ヒッキー、そこいる?」

八幡(っと、こっちもか)

八幡「着替え終わったのか?」

結衣「うんっ。今終わったとこー」

八幡(そういや持ち込んでる服見てなかったな。どんなのだ?)シャッ

結衣「えっ……ちょっ、なんで開けるし!?」

八幡「はっ? わ、悪い!」シャッ

結衣「し、信じらんない! ヒッキーそーゆーことするんだ」

八幡「終わったっつーからてっきり……まだだった?」

結衣「そうじゃないけど……勝手に開けるとか…」

八幡(あ、そうか。何気なく一色と同じ要領でやっちまったけど普通そうだよな……馬鹿だろ俺)

八幡「本当すまん、以後気をつける」

結衣「う、ううん。いいの。ちょっとびっくりしただけ」

結衣(まだ髪整えてなかったのに……でもすぐ閉めたから大丈夫だよね?)




結衣「えと、じゃあ…いいよ。開けて」

八幡「あ、ああ」

八幡(結局開けるのは俺の役割なのか…いやいいんだけどね)シャッ

結衣「……」

八幡(おお、こいつはこいつで)

結衣「どう…かな?」

八幡「いい、と思う…」

結衣「そ、そっか」

八幡(ロング丈のスカートは髪色と似てるからか統一感がある)

八幡(上も違うな、肩周りの袖がなんか……分からんけどなんかふわっとしてる系のなんか)

八幡(なにより肩掛けのカバンが素晴らしい。何が素晴らしいってほら、パイ的なアレをスラッシュしてる紐が最高に仕事してて賞与爆上げ待った無しなところね?)

結衣「ヒッキー、どこ見てんの?」

八幡「ばっ、み、見てねぇし! 全然どこも見てねぇから、いやマジで」

結衣「なんで慌ててるし……ってゆーかちゃんと見てよ。どの辺がいいか教えてほしいから」

八幡「ああ、そういうこと…」





八幡「そうだな……なんつーか、背が高く見える気がする。良いのかどうかはともかく」

結衣「あ、やっぱり? 腰の位置高くするとそうっぽいんだよね」

八幡「へぇ」

結衣「あとね、こんな感じに足首をうまく出すと脚細く見えるんだって! どうどう!?」

八幡「それは……いまいち分からん」

結衣「あー、そっかぁ…」

八幡「まぁ元々が細いわけだし、あんま違いが出ないんじゃね、知らんけど」

結衣「へっ? そ、そう?…………ありがと」ボソ

八幡「あ?」

八幡(なんで礼言われたんです? でもってなんでちょっと照れてる感じです? にんげんさんは不思議です?)

いろは「はぁー、タラシてますねー」ドスッ

八幡「うおおっ!?」




八幡「びっくりした……なんだよお前かよ」

いろは「む、なんですかその不満そうなセリフと世にもかわいいものを見つけてしまったような目は」

八幡「俺の目はそんな椎茸じゃねぇだろ…」

いろは「あっ。へー、結衣先輩ってそういうのも着るんですね」

結衣「あ、うん。あんましたことないけど、エレガント?な感じ目指そうかなって」

八幡「確かに実年齢より高い印象じゃあるな」

八幡(そういや以前、川なんとかさんのバイト先に行った時も高校生とは思えない感じになってたっけ)

いろは「ちょっと意外っていうか、ちゃんと大人っぽく見えます」

八幡「お前それ地味に失礼だぞ……いくら由比ヶ浜だってそれなりの服着て喋りさえしなければ気品くらいあるように見える」

結衣「いや、ヒッキーのほうが断然失礼だかんね!?」





八幡(……で、そんな具合のやり取りを数度繰り返し、本番とやらがやってきた)

八幡(なお、一色が『おっとっとー☆』とかほざきながら背後から突き飛ばしてきたせいで由比ヶ浜が着替えてる部屋に半歩踏み込んだのはまぁどうでもいい話だ)

八幡(ついでにその際カーテン越しに妙に柔らかいものを掴んだ記憶があるが二の腕だろう。そう、あれは二の腕だ)

八幡(出てきた後に若干涙目で頬をひっぱたかれたことから考えても二の腕だったに違いない。女子って二の腕気にするもんな。柔らかかったなぁ…由比ヶ浜の二の腕…)

いろは「結衣せんぱーい、準備できましたー?」

結衣「うん、いいよー!」

いろは「じゃあ、せーのであけましょう。せーのっ…」

八幡(そういや同時に見せるって言ってたな。しかし試着室が向かいにあるとどっち向いてればいいんですかね…)

シャ シャッ

いろは「じゃーん!」

結衣「じゃ、じゃーんっ」

八幡「おお……」




八幡(由比ヶ浜…と、一色。二人とも全身揃えてるっぽいな)

いろは「先輩先輩っ、どうですかー?」

結衣「ヒッキー、あ、あたしも!」

八幡(ちょっ、草食動物じゃないんでそんな両サイド同時に見れないんですけど!)

八幡「……一旦降りてきてくんね? 見比べにくい」

いろは「それもそうですね。結衣先輩、そこ並びましょうか」スト

結衣「あ、うん。ちょっと待ってて……んしょ」

八幡(履きづらそうだな。丈が長いの穿いてるからか)

結衣「ん、っと……わっ!?」グラッ

八幡「お、おい」ガシ

結衣「っぶなぁー。ごめんねヒッキー」

八幡「いや、そっちこそ大丈夫か?」

八幡(ん? この感触どこかで……)ムニュ

結衣「ひゃ……!!?」

八幡「っ!!」パッ

結衣「……ひ、ヒッキー?」

八幡「違っ、わざとじゃ……いや、すまん、マジで。ごめんなさい」

結衣「うー………いーけど」カァァ

いろは(えー、なんかあっちのほうでラブがコメってるんですけど)




いろは「むぅ、ではでは仕切りなおして、審査タイムといきましょうか」

結衣(2回も触られた……ヒッキーのばか)

八幡(マジでやるんだな……まぁあれだ、両者適当に褒めてりゃイーブンで濁せるだろ)

いろは「あ、ちなみにどっちも同じくらいとかそういう無難な判定はNGカットで」

八幡「なに、これなんかの収録なの? つーか早速逃げ道塞がれたんですけど…」

いろは「乙女にもプライドがあるんですよ。わたしたちこう見えてわりとガチで選んでるんで」

八幡「なら尚更俺にやらせるのやめてほしいんだよなぁ……服の知識なんてねぇし」

八幡(ファッションのファの字も知らないトーシロに判断委ねてどうすんだって話ね。昔読んだ雑誌でトラッドだのプレッピーだのの用語見てファッ!?てなったことはあるけどね)

いろは「だから、そういうことじゃないんですけどねー…これだから先輩は」

結衣「あはは、ほんとそれ」

八幡「は? なに? なんで審査前にもうディスられてんの?」




いろは「で、先輩。どうですか?」

八幡「どうと言われても……どっちも悪いとは思わねぇけど」

八幡(一色はニット生地の白いワンピースにピンクっぽいコート。カバンとネックレスも店のか? 大人びているようで幼さを感じる二面性がある印象だ)

いろは「パッとしませんねー。ほら、結衣先輩のガウンとか超かわいくないですか?」

八幡「それガウンなのか」

八幡(花柄マントかと思った。中は細身のジーンズにシンプルなグレーのシャツ。そこにサングラス的なのがかけて……いや乗ってるわ。やだ、つい目が行っちゃう!)

結衣「なんか恥ずかしいし…」

いろは「ちなみにわたしのポイントはニットとチェスターコートの丈のバランスですかねー。先輩、後ろから見てみてくださいっ」クル

八幡(……バランスもなにも、コートの方が長くて見えないんですが)

いろは「こうするとセクシーじゃないですか?」

八幡「あー、穿いてないように見えるってことね」

いろは「うっわ、変態発言されました」

結衣「ヒッキーきもっ!」

八幡「お前ら…」





八幡(しかし、一色はやっぱりこれ系の色が合うな。コートのピンクはやや濃いめだが、桜や梅を連想させて季節的にもぴったりだ)

八幡(大きめのネックレスとベルトでなんとなくお姉さん感が出てる。でもニットは案の定萌え袖……あざとい)

いろは「ふふふ、見とれちゃいました?」

八幡(一方で由比ヶ浜は春らしさこそないものの、自分のスタイルを存分に活かしたチョイスだな)

八幡(他がシンプルだからこそガウンの柄の強調と全体的な調和が取れてる印象がある)

結衣「に、似合ってるかな?」

八幡(と、それっぽいことを考えてはみたけど、だからどっちが良いかってのはなぁ…)

八幡「これやっぱどっちか選ばなきゃ駄目なんですかね」

いろは「そうですねー。もし選べなかったらわたしたち2人ぶんの晩ごはん代を支払うことになりますね」

八幡「はっ? おいなんだそれ聞いてねぇぞ」

いろは「まぁまぁ。その代わり選べればその人のぶんだけで済むんですから」

八幡「どの道奢るのは確定なのかよ…」

いろは「てか、あれです。この勝負に勝ったほうが続けて先輩とデートするってルールなんで、つまりそういうことになるみたいな?」

八幡「えぇ…」チラ

結衣「あはは、なんかそうみたい」

八幡(マジかよ…既に結構出費しちゃってるのに…)





八幡(勝ったほうが俺と、ねぇ。むしろ負けたほうにするべきでは? 普通に罰ゲームでしょ)

八幡(まぁ二人ともわざわざ予定空けてたっぽいしな。それに晩飯付いてくるならプラマイプラスか)

いろは「なので、先輩はデートするならどっちがいいかで選んでくれればいいです」

結衣「それもうコーデ関係なくない!?」

いろは「もちろん服装ありきの話ですよ。隣歩くならこっちって感じなら少しは決めやすいかなーって」

結衣「あ、なるほどー」

八幡「いや、俺一人で出歩きたいタイプなんだけど」

いろは「元も子もないこと言わないでくれますかねー…」

八幡(つーかそういう基準で考えるなら、俺に合わせてより駄目なほう選ぶってことになるんだよなぁ。その肝心な優劣が付けらんないから困ってるわけで)

八幡(……でも、そうか。何も好みやセンスで差別化する必要もないってことだよな)

八幡「……」

八幡「あー、じゃあ、決めたわ」

いろは・結衣「「!!」」




結衣「き、決めたんだ」

八幡「ああ」

いろは「意外と早かったですね。わたしとしてはもう少し誘ど…ヒントをあげるつもりでいたんですけど」

八幡(こいつ本当小賢しいな…)

八幡「とりあえず元の服に着替えてきたらどうだ?」

いろは「へ? なんでですか?」

八幡「いや、あんまり占領してると他の客に迷惑だろ。それに結果出した後で時間かかるのも……若干気まずい」

いろは「あー、それもそうですね。じゃあ、先に着替えてきます」

結衣「あ、あたしも」

八幡「……」ガシ

結衣「えっ?」

八幡「しっ」

結衣「……な、なに? どしたの?」ヒソ

八幡「ちょっと耳貸せ」ヒソ

結衣「……?」





いろは「さて、準備は整いましたね」

八幡「だな」

結衣「……」

いろは「さぁ先輩、ズバリ答えてもらいましょう! デートするならどっちのコーデだったんですか?」

八幡「あー、それはだな」

いろは「わたしですか? わたしですね? わたしですよねっ?」グイグイ

八幡(ちょっ、なにこの子急に! 押しが強いよ!? 手は引いてるけど!)

いろは「わたしなんですよね? ねっ…?」ウル

八幡「泣き落としみたいになってんぞ……いやまあ、そうだけど。とりあえず落ち着け」

いろは「だってー……えっ?」

八幡「……」

いろは「そう、って、ほんとにわたしですか?」

八幡「まあ…」

いろは「えっ、えっ? あの、結衣先輩は?」

結衣「あははー。負けちゃった?」

いろは「……っ!」




いろは(うそ……先輩に選ばれちゃった。なんで…?)

八幡「おい、聞いてたか?」

いろは「はっ!」

いろは「も、もちろんですよ。いやー思ったとおりわたしの勝ちですね。知ってましたけど!」

八幡「そうかい…」

結衣「よかったね、いろはちゃん」

いろは「……なんか妙に余裕ですね、結衣先輩」

結衣「えっ!? そ、そうかな? 悔しいよ? でも……あっほら、あたし一個先輩だし? 大人のヨユー的な?」

いろは「はあ」

八幡(怪しすぎる…)

いろは「ちなみに先輩、決め手はなんだったんですか?」

八幡「あー、まあ本当大したことじゃないんだけどな……気温だ、気温」

いろは「はい?」

結衣「気温?」




八幡「外の気温だよ。日中は暖かくても夜にかけて冷え込んでくるって予報だからな」

いろは「あの、それがなんの関係が?」

八幡「出歩くって話だったろ? 由比ヶ浜はガウンがあるとはいえもう少し夏よりの装いだった」

八幡「一方で一色はニットの上にコートを羽織ってた。脚はやや肌寒いかもだが、女子なら慣れてるだろ」

八幡「つーことで、一緒に外を歩くなら一色の服装のほうが良いと思ったんだよ。風邪でも引かれちゃかなわんし」

いろは「あー……そういうことですか」

結衣(ヒッキー、優しいなぁ)

八幡(まぁぶっちゃけ元の服になるわけだし関係ないんですけどね)

八幡「釈然としない理由だろうけど勘弁してくれ。似合う似合わないじゃ一生決めかねる」

いろは「一応わたしが出したテーマにのっとってるんで文句はないですけど…」

八幡(はぁ……苦しいかと思ったがどうにかお許しは出たか)





結衣「それじゃあたし帰るね」

八幡「ん。気をつけてな」


八幡「……じゃ、こっちも行くか」

いろは「はい…」

八幡「どうした?」

いろは「いえ、やっぱり結衣先輩に申し訳ないことしたかなと」

八幡「合意の上でなんだから仕方ないだろ。あいつも結果は素直に受け止めてるし」

いろは「なーんか、不思議なくらい素直でしたけどねー。なんでですかねー先輩?」ジト

八幡「なんででしょうね…」

八幡(うわぁ、ものっそい怪しまれてるゥ…)

いろは「まぁいいですけど。勝ちは勝ちですし」

八幡「そうそう。何事も勝てるうちに勝っといたほうがいいぞ」

いろは「む、なんですかそのカチンとくる言い方。しかも上から目線」

八幡「そりゃ先輩だからなぁ。学年も人生も」

いろは「……そうですね。人生レベルの先輩となると晩ごはんは焼肉くらい余裕ですよね?」

八幡「すんません調子こきました本当すんません」




いろは「でも、ウソでも勝ててよかったですかねー」

八幡「嘘ってなんだ。基準はアレかもだが嘘は言ってないぞ」

いろは「そうじゃなくて、わたし普通に負けたと思ってましたから」

八幡「……由比ヶ浜を見てってことか?」

八幡(確かに洒落てる感じは俺でも分かったが、そこまで差があったんだろうか)

いろは「いえ。先輩を見て、です」

八幡「はっ? お、俺?」

八幡(なに、どゆこと? お前普通に人生の負け組だろってこと?)

いろは「お披露目のときですよ。同時にカーテンあけましたよね。あのとき先輩、どっち向いてたか覚えてますか?」

八幡「…? いや全く」

いろは「……」

いろは「結衣先輩のほうなんです。先輩が見てたの」

八幡「はあ」

いろは「その瞬間に察しちゃいました。あー、わたし負けたんだなーって」




八幡「いや、そりゃたまたま向いてたってだけだろ」

いろは「たまたまっていうより無意識のほうが正しいと思います。で、無意識だからこそ偽れないんです」

いろは「先輩の無意識は結衣先輩に向いてました。それだけで、もう答えは出ちゃってるんですよねー…」

八幡「…?」

八幡(一色の言わんとすることは分かる。無意識はある意味で意識の究極系とも呼べるからだ)

八幡(でもそれとこれとは関係ない。あくまで今回の答えはどちらの服装を選ぶかで、それは結果として一色だった)

八幡(つまり、こいつが気に掛けているのはコーディネートの勝負とはまた別の……?)

いろは「とまあ、そんな感じでなかば無理やりテンションあげてたんですけど。終わってみれば大勝利! 逆転サヨナラ満塁ソロホームランってわけですっ!」

八幡「ああそう…」

八幡(杞憂でしたね。つーか満塁でソロってどういうことなの……)








いろは「ふはぁ、おいしかったですー」

八幡「ああ。自分の金じゃないと尚更な」

いろは「ちゃんとごちそうさまって言ったじゃないですかー。あとからネチネチ文句言う男はモテませんよ?」

八幡「文句なら最初から言ってたんだよなぁ…」

いろは「タイミングの問題じゃないですから…」

八幡(まぁ、経緯はどうあれ勝者は勝者だもんな。俺完全にとばっちりだけど)

いろは「……『まぁ、かわいい後輩の笑顔が見れたし俺も満足かな』?」

八幡「勝手なモノローグを入れないように…」

いろは「だいたい当たってました?」

八幡「まるで違うわ。ひっそりと不平不満をぶちまけてたとこだよ」

いろは「ぜんぜんひっそりじゃなくなったんですけど……もー、しょうがないですねー」グイ

八幡「えっ、ちょっ、なに」





八幡「……」

いろは「さ、行きましょう先輩っ」

八幡「いや、何これ? どういう状況?」

八幡(なんか腕にまとわり付かれたんですけど……ナマケモノ? ナマケモノなの?)

いろは「なにってお礼ですよー。先輩が文句ばっかり言うので奮発してあげました。嬉しいですか?」ギュ

八幡「それよか恥ずかしいのほうが圧倒的優位なんでやめてもらえませんかね…」

いろは(あ、嬉しいのは否定しないんだ。えへへ)

いろは「まぁまぁ駅までですからー。男の子ならガマンしてくださいっ」

八幡「男女差別はいけないんだぞ。つーか我慢しなくちゃいけないお礼……お礼とは…」

いろは「ふっふっふ。先輩顔あかーい」

八幡「う、うっせぇな。こういうのは県の条例のもと健全に育成された千葉の青少年には刺激が強いんだよ」

いろは「いやいやー、いくら千葉でも先輩よりはもうちょい進んで…………くしゅっ!」

八幡「あ?」




いろは「し、失礼しましたー」スンッ

八幡「いいけど、お前こそ少し顔赤くね? まさか風邪気味だったとか?」

いろは「いえそういうわけじゃ……ただ、先輩が言ってたとおり夜はちょっと冷え込みますね」

八幡(確かに、対流もあるし思った以上に寒いかもしれれん)

いろは「くしゅっ!」

いろは(あ、やばっ鼻水……ティッシュティッシュ)ゴソ

八幡(こいつ思いっきり肩出しちゃってるしなぁ。とは言え、俺も元の服装のこと考えてやれてなかったな)

いろは「……ふー」

いろは「み、見てないですよね? 先ぱ……」フワ

いろは(……えっ)

八幡「見てない見てない。鼻水タラタラな後輩なんてちっとも見てない」

いろは「見たんですか!? さ、最低っ! 忘れてくださいー!」

八幡(さながらボーちゃんのよう。いやまぁ、流石にそこまでじゃなかったけど)




いろは「うー……ていうかあの、これ、先輩のコート…?」

八幡「お前は装備が甘すぎなんだよ。千葉の夜の冷え込みナメんなボケ。しばくぞワレ」

いろは「ひぇっ!? す、すみません」ビクッ

八幡「あ、いや、悪い。今のはそういうネタ的なアレだから…」

いろは「な、なんだぁ……もー、おどかさないでくださいよ」

八幡(やだなにこの子涙目!可愛い!じゃなくて気をつけよう…)

いろは「それより! これじゃ先輩が寒いじゃないですか」

八幡「コートなくてもお前よかマシだ。素材的にも風通さないし」

いろは「でも…」

八幡「それに駅までなら我慢出来る。男の子だからな」

いろは「……ぷっ。なんですかそれ、男女差別じゃないですか」

八幡「ばっかお前性差の範疇だっつの。熱量とか色々違うだろ、多分」

いろは「屁理屈ですねー」






八幡「屁でも何でも、理屈が通ってりゃそれでいいんだよ」

いろは「はぁ……わかりました。駅まで着させてもらいます」

八幡「ありがたく着ろよ。なんなら崇め奉って貰って構わない。でもって今日の飯代分くらい奉納してくれりゃ皆がハッピーって寸法な」

いろは「うっわ、恩の押し売りじゃないですかー。下心くらいちゃんと隠しましょうよ」

八幡「社会のニーズに応えて透明性を高めてんだよ」

いろは「いや、そこで高めるメリットないですし。こういうのはさりげなくしてあげるのがポイントですよ?」

八幡(……男は黙って、とかむしろ恥ずかしいんだっつの)

いろは「……」

いろは「わたしは、先輩のそういうとこ……いいと思いますけどね」

八幡「はっ?」





八幡「え、ちょっ、なんだ急に気持ち悪い」

いろは「えー、男の人に気持ちわるいとかはじめて言われたんですけど。ていうかその反応は超ひどくないですか?」

八幡「いや、だってねぇ? なんかの罠かと思うだろ…」

いろは「むぅ、けっこう本気なのに」

八幡「やめろやめろ。んなこと言われてうっかり惚れたらどうする」

いろは「先輩でも惚れたりするんですか?」

八幡「当たり前だ。なんならすぐ惚れちゃうからそうならないように日々気張ってるまである」

いろは「……わたしでも?」

八幡「でもどころか要注意人物だからねキミ……つーか分かってやってるでしょ」

いろは「まぁ、それはそうなんですけどー」

いろは(まだ……可能性はあるのかな?)






八幡「……ここまでだな」

いろは「はい。送ってくれてありがとうございました! ではではー」

八幡「っておい上着返せ、上着」

いろは「ちぇー、バレちゃいましたか。案外気に入ってたんですけどねーこのコート」スッ

八幡「そりゃ結構で。んじゃまたな」

いろは「あっ、先輩」

八幡「ん?」

いろは「えと、ですね。今日は思ったよりもリサーチが進まなかったっていうか、もうすこし行ってみたいとこがあるっていうかで…」

八幡(あー、まぁ確かに、結局カフェとイオンしか行ってないもんな)

いろは「なので、また明日10時に駅集合でお願いしますねっ」

八幡「はっ?」

いろは「約束ですよー!」ピッ

八幡「ちょっ、おい…」

いろは「おやすみなさい、せーんぱいっ♪」フリフリ

八幡(嘘だろ………)





翌日


八幡「くあ…」スタスタ

八幡(眠い……なんだか昨日は落ち着かなかった)

八幡(由比ヶ浜には悪いことしたな。プライド高そうな一色が負けると後々面倒そうだからあの場は退いてもらったわけだけど)

八幡(だとしても、事実ファッションで負けるってのは女子としちゃ地味に傷つくのでは?)

八幡(まぁ、だからこその埋め合わせか。マジで俺とばっちりしかねぇな……)


八幡「えーと、駅に10時でよかったよな」

八幡(完璧な5分前行動。あゆみなら基本的生活習慣に◯が付くに違いない)

八幡(にしても一色のほうも困ったな。一方的に約束されたら断るもんも断れん。連絡先知らねぇし)

八幡(いつって言ったっけ。確か明日の……あれ? 明日……?)



結衣(今日こそちゃんとヒッキーとデート! がんばって距離縮めるし!)テクテク

いろは(先輩とデート♪ ちょっとオトナなとこ行っちゃおうかなー。えへへ)トテトテ



八幡「……」


八幡「あ」



オワタ


じゃなくてオワリ


読んでくれた方いたらありがとござます
これ書いてて出雲駅伝見逃したのマジで悔やまれる

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