○○志願の女子を止めようとしたら、勝手に△△にされた(113)


男(くっそー、友のやつ飼育当番を忘れてたからって)


男(イキナリ電話してきて僕に押し付けるとか、ヒドイだろ)




男(でも家から中学まで歩いて5分だし、)


男(そんな大変なことでもないし、まぁいいや)


男(それにしても綺麗な夕焼け空だなぁ)


男(茜色の光線が、無機質なコンクリートの校舎を淡く照らす)


男(哀愁漂う、誰も居ない学校って、なんかいいよね)


男(あの街も、今はどうなってるかなぁ)


男(……ん?)


男(屋上に、女子生徒がいる)


男(あれ、何してるんだろ?)


女「……」


男(フェンス越しに、遠くをぼんやり見ている?)


男(……そういう気分になることも、あるか)


男(よし、じゃぁ用事もないし帰ろう)


男(連休だから宿題もたくさん!)



男(あっ、途中コンビニに寄ってジャンプを買おう)


男(今日発売日だったよね。どんな展開になってるか……)


男(……)







男(……気になるな)

男(いや屋上の方)


男(何もないとは、思うけど。やっぱり気になる!)


男(もう一回、様子を見てみよう)



男(……)


男(あああああああああああああ!?)


男(ちょ、あの子! フェンスを乗り越えて、屋上から地面を覗きこんでる!)


男(えっ、どうしよ……どうしよう…………!)


男(これって、飛び降り自殺ってやつ!?)


男(違うかもだけど、何にせよ危ない!)


男(と、とにかく止めなくちゃ!)


男(屋上に、急ごう! ダッシュで!!!)


はぁはぁ

ダッダッダッダッ!




はぁはぁはぁはぁ!

ダッダッダッダッ!!


男(くっそ、とりあえず屋上に行く扉まで来たけれど)


男(カギが外側から掛かってて、開かない!)


男(どうしよ、どうしよう!)


ドンドンドン!


おーい!


ドンドンドン!


男(…………駄目だ、扉を叩いても、反応がない!)


男(えっと、じゃぁどうしよう!?)


男(屋上に上がるのが無理なら、無理なら、)


男(飛び降りてくる女の子を、下で受け止めよう!)


男(確か体育館脇に、陸上部の高飛び用マットとかがあったはず)


男(あれを使おう!)


はぁはぁ

ダッダッダッダッ!




はぁはぁはぁはぁ!

ダッダッダッダッ!!


男「うおおおおおおおおおお!」


ズズズズ!



男「このマット重ッ!」


男「いやでも、引きずってでも持っていかなくちゃ!」



男「うおおおおおおおおおお!」


ズズズズズズ……


男「ゼヒュー……ゼヒュー…………」

男(し、心臓が破裂しそう)


男「ゼヒュー……ゼヒュー…………」

男(で、でも飛び降りそうな所までマット持ってきたぞ!)


男「ゼヒュー……ゼヒュー…………」

男(とりあえず、これで大丈夫なはず……)


男「ゼヒュー……ゼヒュー…………」

男(けど、さっきの子は!?)


男「ゼヒュー……ゼヒュー…………」

男(あれ、もう屋上にいない!?)


女「あの」

男「うぁわ!」


女「君、何してんの?」

男「あ、ちょっと飛び降りそうな女子を見つけて!」

男「助けなきゃと思って、マットを体育館脇から……!」


女「……ふーん」


男「」


男「あ、本人だ」


男(この人、確か僕と同じ1年の女子だったはず)



男(すごい美人さん。人形みたいに長い髪はツヤツヤしててサラサラで)


男(でも血の気が感じられないくらい、冷たく白く透き通った肌)


男(僕を睨んでるが如く見つめてる目は、ドス黒く濁ってる)


男(近づけば、吸い込まれそうなほど、黒く、深く……)



男(この目が、自殺志願者の……)

ゴクリ


男(あれ? でもこんな影のある人だったっけ?)

男(入学式の時からチラホラ見るけど、もっと朗らかな感じの……)


女「ねぇ」

男「あっ、ハイ!」


女「君、1年1組の人だよね」

男「うん、キミは1年10組だっけ?」

女「そうだよ」

男「あー、やっぱり! どっかで見たことあると思ったんだ!」


男「あの、ところでさ」

女「なによ」


男「もしかして、飛び降りようと、してた?」

女「……まぁね」


女「どっかの誰かさんが屋上に上がろうとして、でもできなくて」


女「その後、必死にマット引きずってる姿を見て、」


女「何か悪いかなって思ったから、止めたけど」


男「おお、とにかく結果オーライ!」

女「……」


男「死ぬなんて良くないよ!」

女「……どーだか」


男「キミの、ご両親が悲しむよ!」

女「悲しんでくれたら、むしろ良いかな」

男「うええええええええ」


男「その、死ぬとか凄く苦しくて、痛いらしいよ!」

女「いいジャン、苦しくて痛いのを感じたくて、だから死にたいの」

男「うええええええええ」


男「……」

女「叩き潰された蚊みたいに、ボロボロになりたい」

男「あああああああああ!」


男「いやいや、死ぬなんてダメだって!」

男「楽しいこと何もできなくなっちゃうよ!」

女「私のジンセイ、この後何も楽しいことなんて起きないよ」

男「そんなコトないって!」


女「じゃ、例えば何があるの? 君の楽しいことって何??」

男「ぼ、僕!? 僕はえーと……」


男「…………あれ? 何があるかな?」

女「……ほら、見てよ」


男「いやいやいや、急に聞かれたから思いつかないだけで!」


男「あっ、じゃぁアレ!」

女「アレ?」


男「ワンピとかハンターの続きを、楽しみにしてる!

女「…………」

男「どんな最終回になるとか、ワクワクで楽しみじゃない?!」

女「……それ、両方とも最終回来るの?」

男「来る、きっと来る!」


女「どーだか、バカみたい」

男「えー」

女「とにかく、私は漫画に興味ないから」

男「そんなー」


男「じゃぁキミは何に興味があるの!?

女「……死ぬこと」

男「んんんん~」


女「……そんなに邪魔したい? 私が死ぬの」

女「君にとって、私なんて赤の他人なのに」


男「うん。人は誰でも、生きなきゃ!」


女「どんなに辛くて、楽しいことが無くても?」

男「辛いことも長くは続かないし、楽しいこともきっとある!」


女「ほんと?」

男「うん、きっと!」


女「……だったら、証明してみなさいよ」

男「証明?」


女「私が、幸せになれるって、その証明」

男「……むずかしいな」


女「ほら!」


男「いやいやいや!」


女「じゃぁ、こうしようよ」

男「?」


女「君さ、私の彼氏になってよ」

男「……はぇ?」


女「彼氏になってさ、私を幸せにしてくれたら、死ぬのは止めとく」

男「ええっ!?」


女「そんで幸せにできないんなら、やっぱり死ぬよ」

男「えええっ」


女「あ、今日のこと他人に話しても、死ぬからね」

男「ええええっ!?」


女「じゃぁ今日からよろしくね、彼氏くん!」

男「えええええっ!!???」


男(こ、これはえらいことになって来たぞ……)


男(自殺志願の女子を止めようとしたら、勝手に彼氏にされた)



男(……でもまぁ、今死ぬのは止めてくれたみたいだから)


男(とりあえず、よかったよ)



男(でも、この後はどうしよう……)


【1年後】


キーンコーンカーンコ~ン♪


男「昼休みだね~」

友「さー、飯だメシだ!」


女「やっほー♪」

男「やぁ!」


女「今日はお弁当? それとも食堂??」

男「おべんと。父さんが作ってくれたんだ」

女「じゃぁさ、一緒に教室で食べようよ!」

男「うん、いーよ~」


女「えへへへ~」

男「うふふふ~」



友「リア充め、爆発しろ!」


女「あ、その玉子焼きおいしそー」

男「父さんの得意料理、おいしいよ!」

女「ねぇ、ひとつちょーだい! 私の焼き鮭あげるから!」

男「いーよ~」

友「……」


女「そーそー、こんどワンピとハンターの新刊出るじゃん」

男「あっ、もうそんな時期だっけ?」

女「そっ、だからお互い1冊ずつ買って、交換しよ」

男「うん、おっけー」

友「……」


男「あぁ、ところで昨日のLINeだけどさ」

女「昨日? あぁ」

男「なんか、あwせdrftgyふjjjjjj~みたいなの打ってたけど、大丈夫?」

男「そのまま返事がなかったから、ちょっと心配だった」

女「いや~、あれね~」

女「寝落ちしちゃってさ、ゴメンゴメン」

男「あぁ、そうかなとは思ったけど、眠けりゃ言ってくれれば良かったのに」

女「いやー、君とお話するの楽しくてさ」

男「そうなの?」


女「えへへへ~」

男「うふふふ~」

友「」イライライライライライライライラ


女「あと悪いんだけどさ、来月のテストも厳しそうなんだ」

男「あらら、また?」

女「そんで、次もまた勉強教えてくれないかな?」

男「いいよ、一緒に頑張ろう」

女「頭いい人って、ほんと凄いよね~」



女「あっ、もうこんな時間!」

男「? 何かあった?」

女「25分から部活のミーティング、時間がない」

男「ほんとだ、急がなきゃ」


女「じゃぁ私は行くね~」

男「あぁ、気を付けて」


女「……ねぇ、今度さ、どっか行かない?」

男「……どっか、と言われましても??」

女「まぁ、どこでもいいんだけど」

男「おっけー、じゃぁ今回は僕が考えとくよ」


女「よろしく! じゃぁまたね~」

男「またね~」


男「……」


ゲシッ!


男「痛っ、なんで蹴るのさ!」

友「蹴ってません~、当たっただけです~」


男「いや。蹴ったでしょ。どう考えても!」

友「はいはい、どうもスミマセンデシタ~」


男「くっそー、次やったら怒るからな!」

友「う~す、反省してまーす」


友「……ったく、どうしたらコイツが」

友「あんな美少女と付き合える様になるってんだ」

男「……いろいろあるのさ、僕らにも」


バキィ!!!


男「友が、殴られた!?」


友「イテェェェ! オイ、なんてことしてくれてんだ!」

友「これ、ゼッタイ頭蓋骨にヒビ入って割れてるわ!」


委員長「もともと割れてるわよ。おバカさん」

男「委員長!」


友「お前、どうして殴ってくるかな~。幼稚園の時からずっとこう!」

委員長「バカがバカなりにバカなことしてるのが見捨てておけなかったのよ」

友「はぁ? バカって言う方がバカなんですけど!」

男「……」


委員長「いいから、大人しくしてなさい!」

友「ふん、お前にモテない男子の気持ちが分かるかってんだ」

委員長「……なによモテないって、気づいてないだけなのに」

友「えっ、何だって?!

委員長「何でもないですよ~だ」


友「はぁ、もういいわ。今週のジャンプ読も」

男「……」


友「おっ、新連載だってよ」

男「へぇ、どんなどんな」


男「…………」

友「おおおお!」


友「な、なんてエロい巻頭カラーだ♪」

男「だ、だいぶ女の子の肌色成分が多いよね///」

友「くっ、この布が邪魔だ! 本を斜めにしたら見えないかな!?」

男「や、ムリです」


友「よっしゃ、とりまアンケ入れよ。単行本もたぶん買う」

男「最近、こういう作品が増えてきたね~」


委員長「……はぁ、男子ってほんと、どうしようもないわね」


友「いやー、それにしてもいいよなぁ」

男「何が?」

友「女キャラの表情とか」

男「表情?」

友「裸体で顔を赤ラメて、嫌がりながら涙目とか、よくね?」

男「えぇ、よくは、ない」

友「そうか? 本心??」

男「んー、まぁ人が嫌がることをするのとか、ダメだと思うから」

友「えー、マジかよ。まじめか!」


委員長「……」ハァ


友「ところでさ、お前の彼女とかはどんなんなん?」

男「どんなんなん?」


友「セクロスの時とか、どんな表情するの??」


男「ぶほっ!」

委員長「ぶほっ!!」


男「いや、いやいやいやいや!」

友「んだよ、ヤるだろ、ヤってんだろ!」

男「してない、してない、してないよ!!」


友「おいおい、付き合うってのは、普通そういうことするって意味だぞ!」

男「い、色んな交際の形があると思うし、それを普通としていいか……」

男「そもそも、僕ら付き合ってるって言えるのか疑問で」


男「てか、僕らまだ中学生だし!」


友「中学なら、3割くらいのヤツは既にしてるだろ」

男「えええええええええええ!?」


友「なぁ、委員長!」

委員長「な、なんで私に聞くのよ!」


友「お前って凄い情報収集が得意じゃん」


友「誰が誰を好きだとか、誰々が付き合ってるとか」


友「どこまでやったとか、全校生徒のゴシップについて詳しいだろ?!」

委員長「ど、どうしてソレを、こんなトコで言うかなぁ!???」

男(詳しいこと、否定はしないんだ!)


友「で、コイツと彼女ってどこまでシテんの?」

友「教えてくれよ、なっ!」


委員長「あああああああああああ!」


委員長「死んどけこのクズ野郎ぉぉぉぉぉ!!」


バキィィィィィィイィ!!


友「ぎゃああああああああああ!」



ガクッ

友「」チーン


男「わ、死んだ(気絶した的な意味で)」


委員長「あー、もうサイテー……」

友「」ピヨピヨ

男「……」



委員長「どうして、どうしてこんなヤツを好きになっちゃたんだろう……?」


男「……委員長、キミも苦労してんだね」


委員長「……ぐすっ」



男「……」

男「ねぇ委員長?」

委員長「?」


男「その、情報収集が得意って、ホントなの?」

委員長「ウン。それは本当」


男「なら、僕や彼女についても、知ってたりするの?」


委員長「ええ。2人が付き合いだした切っ掛けとか、」

男「!」

委員長「彼女が自s……屋上にいた、その理由とか」

委員長「貴方の家族構成とか、生まれ故郷の話とか、だいたい知ってる」


男「……あぁ、そうなんだ」

委員長「けど安心して、先生はともかく、生徒の殆どは知らないから」

男「本当?」

委員長「ウン、これもほんと」


委員長「アナタたち2人の邪魔はしたくないから、黙っているよ」

男「……そうして貰えると、助かるな」


委員長「お互いのこと、マダ深くは話してないんでしょ?」

男「……出会ってもう1年経つけど、受け入れられるのか、怖くって」


委員長「うまく行くと、いいね」

男「ありがとう。委員長の方こそ、ね」

委員長「ウン」


男「……まったく、バカなの治って欲しいなぁ」

友「」チーン


【1週間後・公園】


男「おーい」

浴衣女「ごめーん、待ったー?」


男「いや、今来たところ」

浴衣女「浴衣って久しぶりに着たんだけど、歩きにくいよ~」

男「でも、キミにすごく似合ってるよ。鮮やかで、艶やかで!」

浴衣女「ホント!? コレお姉ちゃんの御下がりでさ、そう言ってくれて良かった♪」


男「じゃ、とりあえず屋台でも廻ろうか」

浴衣女「おっけーぃ! お姉ちゃん直伝の屋台遊び術も披露してあげよう!」


ここだぁ!

風船ヨーヨーがこんなにも!?



おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ!!

金魚たちが、あっという間に掬い取られていく!!



……また、つまらぬものを撃ってしまった

あんな大きなヌイグルミを、一撃で落とすなんて!??



よっと! これで完全攻略!!!

ピンボールの穴が全部埋まるの初めて見た!!!


男「……思ってた以上に、景品で荷物がたくさん」

浴衣女「あはは、ちょっと、やりすぎちゃったかな?」


男「キミに、こんな特技があるとは……!!」

浴衣女「えへへ、すごいっしょ!」


男「それにしても、すごく楽しそうだったね」

浴衣女「まーねー」


男「キミが幸せそうに笑ってるの見ると、僕も幸せな気持ちになる」

浴衣女「……うん///」


男「……変わったよね。変わってくれて、本当によかった」

浴衣女「……アリガト///」


ポツ……ポツ…………


男「ん?」

浴衣女「わ」


ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ


男「うわ、スコールだ」

浴衣女「ああっ、お姉ちゃんの浴衣が濡れちゃう」


男「とりあえず、木の下にでも」

浴衣女「うんっ。避難しよう」


ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ


男「止まないね、雨」

浴衣女「予報はずれの雨に打たれて、泣きそう」

男「生きてりゃこんなこともあるさ、めげずにいこう」

浴衣女「ん、そだね」


男「あー、お祭り中止になるっぽい」

浴衣女「あちゃー、楽しみにしてたのに」

男「ん~、この後どうしよう」

浴衣女「…………」


浴衣女「ねぇ、」


浴衣女「ここから君の家って、近いよね」


男「……」


【男の家】

男「ただいまー……」

男「っても、父さんは祭りの後片付けと打ち上げで、居ないのだけれど」


浴衣女「お、おじゃましまーす」

男「ま、どうぞどうぞ。上がって」

浴衣女「いやぁ、いつもスミマセン……」


男「お互い濡れネズミだから、着替えとかあった方がいいよね」

浴衣女「あぁ、そだね」

男「母さんの服とかまだあったから、それ着とく?」

浴衣女「うん。ありがとう」


【5分後・男の部屋】


女「おまたせー」

男「……って、わぁ!」

女「やー、お母さんの服だからちょっと大きいけれど」

男「……」

女「とりあえずは、問題なさそう。ちょっと借りとくね」

男「……」

女「?」


男「……」ホロリ

女「な、泣いた!?」


女「ど、どうしたの、ダイジョウブ!?」

男「あっ、あっ……これは、ちがうくて」


ゴシゴシゴシ

男「ふぅ」


男「ご、ごめん、もう大丈夫」

女「そ、そう? ならいいケド……」


女「そ、それにしても」


女「こ、これが君のお部屋かぁ」

男「いやぁ、お恥ずかしい」


女「本棚には漫画とかが沢山だけど」

女「それと同じくらい、建築とか建物とか、都市の本?があるね」

男「まぁね」

女「……こういうの、好きなんだ?」

男「うん」

女「へぇ、なんだか、かっこいいね~」



女「……私たちって、思ったよりもお互いのこと知らないよね」

男「……まぁ、そうだね」


女「ねぇ、明後日って何の日か分かる?」

男「僕たちが付き合って、1周年?」


女「そう、せいかーい!」

男「……感慨深いなぁ」


女「あの日から、こんなに長く生きてるなんて、思ってもみなかった」

男「良いことだよ。寿命で死ぬまで、ちゃんと生きててね」

女「うん。もう死のうなんてないよ!」


女「あのさ、今だから本当のこと言うとね……」

男「ん?」


女「君を彼氏にして、1か月くらいで、死のうと思ってたんだ」

男「……なんとなく、そんな気もしてた」

女「あー、そうなんだ」


女「『幸せになれる、そう証明してって約束だよね』とか、そんな遺書を残して」

女「目の前で手首を掻っ切って、屋上から飛び降りる。そんな自爆テロを計画してた」

男「……でも、今まだ生きている」


女「君が必死になってくれてたからね。死んじゃうのが、惜しくなった」


男「……別に。君の為じゃなく、ただ僕は、生きるのにいつだって必死なだけさ」

女「……うん。知ってる」


女「とにかく私にとって君は、命の恩人。人生に意味を与えてくれた人!」

男「僕も、君に出会えて良かったよ……」


女「他にもお世話になって、なりっぱなしだから、ここらでお礼をしたいんだ」

男「お礼?」

女「……カラダで」

男「……!」



女「メンヘラみたいな、ヤンデレっぽいこと言っちゃうけれど……」

男「やー、君は真性のメンヘラで、完全なヤンデレでしょ~」

女「ふ、ふふふ~w 分かってるねぇ~www」


女「誰にも渡したくないの!!」


女「君が欲しい! 君と、君との赤ちゃんも!」

男「!」

女「……モチロン、今すぐは駄目だけどさ」


女「けど壊されちゃった私の人生が、きちんと元通りになるって、安心したくて……」


男「??」


女「だからお願い、ねっ」

男「あ」


チュッ

男「……!」

女「」




クチュッ チュパッ



男「~~~!」

女「」


男「ぷはっ!」

女「…………ふぅ」



男「ふ、不意打ちは卑怯でしょ!」

女「いや~ えへへ」


女「チューしたことは何回かあるけれど、」

女「こ、こういうコトの前にしちゃうのは、一味違いますなぁ……」

女「て、てへへへ」

男「…………」


男「ところで、ほんとに平気なの?」

女「……」ギクッ


女「な、なにが?」


男「ん、口ぶりとは裏腹に、ギコチナクて、だいぶ恐がってるように見えるので」

女「……あー、まぁ初体験ですので、そんなもんですよ」

男「えー」


女「勢いでさ、わーっとヤっちゃってよ」

男「……そう言われても、僕にもよく分からないのだけど」


男「……とりあえず、じゃぁ」


ぽふっ♪


女「ヒィッ!」ビクッ!!


男(……)

男(肩に手を置いただけで、『ヒィッ!』と怯える……)


女「い、いや~。変な声出ちゃったな~」

男「えええええ」

女「すみません、なにぶん初めてなもので」

男「……」


女「ほ、ほら! 君の好きにしちゃって! ねっ♪」

男「……だったら、それなら」


サスッ

女「はぅ……!」


男(首筋に手を持ってっただけで、顔が真っ青に!?)

女「あぅ、あぅぅぅ……」

男(……もう泣きそうじゃん)


ツン

女「あわ、わわわわわわ……」ポロポロ

男(そして、鼻っ柱を触っただけで、泣いちゃうと……)

女「ぅぅ……」グスッ


男「ごめん、とりあえずもう止めよう」

女「うん。わたしも、ギブ……」

男「流石に、これ以上はトラウマになる」


女「……ごめんね、迷惑かけて、カラ回ってばっかで」

男「……何を今さら。気にしなくていいよ!」

女「うぅ」


女「君のことはメチャクチャ好きで、結ばれたくて!」

女「何だってできるハズなのに……」

男「……うん」


女「えっちぃことが、どうしてもどうしても、恐くってたまらない……!」

男「……何かを好きか嫌いかってのと、得意か不得意かは別問題だよ」


女「けど、これを克服しないと、きっと私は、私の人生を取り戻せない」

男「……取り戻せないたって、」

男「無茶して、君が壊れちゃうのがイチバン駄目さ」


女「……だけど、それでも」

男「……ねぇ」


男「キミの過去に、一体なにがあったの?」

女「……」


男「自分で死を選ばざる得ない、ツライ事件があったんでしょ?」

女「……うん」


男「そろそろ、僕に教えてくれないか」

男「キミのことを、もっと知りたいから」

女「……また、甘えちゃうけど、いいのかな?」


男「あぁ! どんとこい!!」


女「ふふ、ふふふふ……」


女「じゃぁね、話すけど」

女「……どこから話せばいいかなぁ」

男「……」

女「……」


女「ねぇ、君は将来の夢とかって、ある?」

男「僕の将来の夢?」


男「ん~、そーだなー」


男「やっぱり、建築関係の仕事に就きたいかな」

女「おー」

男「建物の設計士さんか大工さんか、現場監督か測量士か、」

男「はたまた役所の土木課だとか、詳しくは決めてないけど」

女「いいよね。それでも方向性がある人って!」

男「う~ん? ……ところで、君は??」


女「私はね、“かわいいお嫁さん”だった」


男「……へぇ、いいじゃないか!」

女「えー、ほんとにそう思ってる?!」

男「思う思う!」

女「えー、ほんとぉ~??」


女「まぁともかくね、尊敬しあえるいい人と出会って、」

女「子どもが3人くらいいる、温かい家庭を築けたらいいなって、思ってた」

男「……うんうん!」


女「……ビビっちゃって、エロいこととか、子作りとか、できそうにもないんだけれど」


男「……そこら辺に、何かあったの?」


女「……直接、私じゃないんだけどね」


女「私ね、大好きなお姉ちゃんがいたんだ」

男「お姉ちゃん?」

女「そう、お姉ちゃん!」




女「今から1年前の、さらに2ヶ月前に、死んじゃったけど」

男「!」

女「自分の部屋で、首を吊って……」

男「……どうして?!」


女「赤ちゃんができたから」


女「女子高生なのに赤ちゃんできたから、退学することになって」

男「……」

女「お姉ちゃんを孕ませたヤツも、妻子ある人で、認知してくれなくて」

男「……」

女「中絶を決意して、堕ろちゃったんだけどさ、」

女「その後に、お姉ちゃん凄く後悔して」

男「……」

女「『みんなに迷惑かけて、ごめんなさい』って遺書を残して、死んじゃった」

男「……」



女「あー、でもお姉ちゃんは悪いことしてないからね!」


女「私と違って頭良くて、美人で、バイタリティ溢れる人で!」

男「へー」

女「模試ではA欄大に入れるみたいだったし、マスコミ志望で」

女「高校生なのに、色んなコンクールに出て、賞を獲ったり」

女「テレビやラジオ局の人と積極的に交流したり、凄い人だった!」

男「それは、確かに」

女「でしょー、さっきみたくお祭りの屋台とか、色々教えてくれたしさ」

女「オールマイティな、才女の中の才女、って人だった。私のお姉ちゃん」

女「もしかしたらさ、女子アナとかになって、お茶の間に出てたかも」

男「……あぁ」


女「でも、そうはならなかった」


女「お人よし、過ぎたんだろうね」


女「悪徳プロデューサーに目を点けられてさ」

女「親睦会みたいなのに参加したら、飲み物に一服盛られちゃって」

女「意識朦朧としたところで、会場から連れ出されて……」


女「それで……」

男「……」


女「そりゃ、お姉ちゃんも隙があったかもだけど、」


女「……ううん。そんなことない」

女「悪いのは全部アイツ。それにお姉ちゃんにも非があったって言う奴ら!」

男「……僕も、そう思うよ」


女「……こんなことが、実際に、私の身近で起こるなんて想像もしなかった」

女「……今でも、ちょっと、これは悪い夢なんじゃないかって、思ってる」


女「目が覚めれば、お姉ちゃんが優しく『おはよー』って声掛けて」

女「悪いことのない、時間の巻戻った、正常な毎日が始まるって」


女「そうなって欲しいって、ずっとずっと、願ってる。イマでさえ」

女「……君には、悪いけど」

男「……ううん。当然だよ」


女「でもこれはヤッパリ現実で、地獄よりも汚い世界で、」

女「お姉ちゃんを傷物にした本人は、隠れて、さっぱり私たちに謝りにもこない!」

男「……」

女「テレビ局の、そこそこ偉い人と弁護士が、口止めと慰謝料片手にきたけれど」

女「でも、それで終わりになっちゃって……」


女「お姉ちゃんは悪くないのに、妊娠が校則に引っかかったから即退学……」

女「周りからも、『将来に響くから』って説明されて、堕ろしたの」

男「……」


女「傷ついて、赤ちゃんも失ったお姉ちゃん、抜け殻になって」

女「前触れもなく、ううん。前触れはあったけど、気づけなくて、自殺しちゃった」

男「……」


女「なんだろうね、こんな世界って」


女「少子化だー、たいへんだー、って皆言ってるのに、」

女「お姉ちゃんと、授かった命には、居場所がなかった」

女「運とタイミングが悪ければ、あんな目に遭わされて、一方的にズタボロに」

女「怖すぎるよ、ほんとにもう……」

男「……」



女「他人のせいばかりだけど、私も凄く、悪くて駄目なヤツでさぁ」


女「お姉ちゃんが親睦会に行くとき、注意してって声かけてれば」

女「もしくは、中絶に反対していたらとか、もっともっと励ましてあげてればとか、」

女「もっともっと前の些細な、行動でも違っていれば」

女「ほんのチョットの、もう少し何かしていれば、死なずに済んだのかもって思うと」


女「悔やんでも悔やんでも、悔やんでも悔やんでも悔やんでも、」

女「とめどなく、後悔が終わらないんだ」


男「……つらい、よね」

女「……うん」


女「もう、全部が信じられないよ」


女「私たちがこんな目に遭ってるのに、誰も助けてくれなかった世界」


女「大切な人がツラい時に何もしてあげられず、死なせてしまったクズな自分」


女「暴力で汚された男女の営みに、臭い物に蓋をする学校やら」


女「殺したいほど憎い仇が、大した罰も受けずに生きてることとか」


女「テレビやネットから流れる、明るい未来だの、自由な社会だのって薄っぺらい言葉」


女「そういうのを全部恨んで、絶望して憎しみを込めて、」


女「学校の屋上から、呪いながら飛び降りて死んでしまえば」


女「いろんなことが、マシになるんじゃないかって、思ったの……」



男「でも、死ぬのは駄目だ。何も変わらないから」


女「そう。喚くだけのクソ雑魚女が1匹、消えてなくなるだけ」

男「……」

女「悔しいよ。私には何もできやしない!」


女「あー、お姉ちゃんに会いたいなぁ」


女「またさ、一緒に笑って、一緒に泣いて、同じ時間を過ごしたい」

男「……」

女「それか、私の命と引き換えに、お姉ちゃんが生き返って欲しい!」

男「……」

女「私ごときより、社会に必要とされる人だし、私よりも、君を幸せにできそう!」

男「……」


女「……せめて、せめてお姉ちゃんが生きてる日々が、突然終わってしまうって意識して」

女「二度と戻らない一日一日を、大切に生きればよかった」


男「……わかるよ。そんな気持ち」


男「大切な人が奪われる、世界の理不尽とか」

男「誰も助けてくれない、孤独感とか」

男「自分が死んでもいいから、大切な人が生き返って欲しいとか」

男「いつまでも、変わらない日常が続くって錯覚だとか」


男「君の気持ちは、たぶん全部分かる」

女「……ほんと?」

男「……似てるから」



男「僕の話を、してもいい?」


女「お願い。私も君のこと知りたいよ……」

女「これまで、なにがあったのか」


男「ありがとう」


男「……僕もね、大切な家族を亡くしてるんだ」

男「……母さん」


女「……あぁ、やっぱり」


男「それに、じいちゃんにばあちゃんも、いっぺんに」


女「……事故、とかで?」

男「……震災」

女「!」


男「都市直下大震災って覚えてる。僕はあれに被災した、生き残り避難者なんだ」


女「都市直下大震災って、私たちが小学校低学年の時起きた、大地震だよね」

女「沢山の人が地震で亡くなって、未だに帰れない避難者が大勢いるって、大きな災害」

男「そう、それ」


男「生まれ故郷が、正に地震被害の中心地で」

男「しかも、災害対策とか軽視してた地区だから、見るも無残な姿になった」


男「僕も、自分の身にこんなことが起こるなんて、思ってもいなかった」


男「地震なんて、どこか遠くで起こるものって気がしてたけど」

男「だけど、違った。この国のどこでも起きるんだ」


男「突然の大地震。中心地のオフィスビルや高級マンションは、平気だったのに」


男「古びた民家やアパートは、あっさりと、次々と崩れ落ちた」

女「……」

男「到着すれば助かる人も居るのに、立ち往生で動けない救助隊」

女「……」

男「瓦礫に生き埋めになって、そこに火事も起きて、断末魔を上げる人々」

女「!」

>>89

男「突然の大地震。栄えてるオフィスビルや高級マンションは、平気だったのに」


男「古びた民家やアパート、町工場なんかは、あっさりと、次々と崩れ落ちた」

女「……」

男「到着すれば助かる人も居るのに、立ち往生で動けない救助隊」

女「……」

男「瓦礫で生き埋めになって、そこに火事も起きて、断末魔を上げる人々」

女「!」


男「一夜明けて、両親の遺体の前で立ちすくむ幼稚園児や」

男「家の下敷きになった家族を、手がボロボロになってまで探す、お爺さん」

男「残り少ない生活物資を家族に届けようと起きる、奪い合い、罵り合いだとか」


男「僕も父さんにギリギリのところで助けられたけど、」

男「僕があの時見た光景は、忘れられない。地獄そのものだった」


女「あぁ……」


男「けど、そんなのは、まだ序の口」


男「崩れ落ちた故郷を離れ、こっちの方に引っ越してきてからが、本当に酷かった」

女「…………イジメ、とか?」

男「…………うん」


男「小学校のクラスメイトから、『避難は卑怯』とか『補助金泥棒』とか」

男「『不幸が移る』だとか『死んどけばよかったのに』とか、罵声と暴力を振るわれる日々」

女「……」


男「殴られ蹴られ、石を投げられ、吊し上げられ、ネットで陰口を叩かれる」

男「先生たちも、注意はするけど、その度にイジメが、陰湿に巧妙になっていく」

女「……あぁ、君もだったんだ」


男「辛かったな、只でさえ、母さんたちが死んで悲しいのに、」

男「僕は、あの街から“逃げてきた”ってことで、責められた」


男「僕も命と引き換えに、世界の終わりを願ったよ」

女「……うん」


男「この世界には、僕らを助けてくれる、神も仏もいないから……」


男「それでもどうにか生き延びて、小学校は卒業」


男「また引っ越して、誰も僕を知らなくて、比較的落ち着いた、この中学に入学してみた」

女「あー、そういう経緯が」

男「ここでは目立たず、なるべく認識されない様に、生きてこうとしてた」


男「弱い人間や異端者は切り捨てられる世界。歪んだ弱肉強食のルールじゃ、」


男「自分は隠れて耐えることしかできない、無力な人間だと、思ってたから」


女「……そんなことないよ。私は知ってる」


男「うん。君との出会いで、僕も変わっていけたんだ」


男「無茶苦茶だったけどさ、ラッキーにも恵まれて」


男「死に際の淵に立たされた女の子を、救うことができた!」

女「……」

男「生きる屍だった女の子を、ちょっとずつでも元気にさせられた!!」

女「……」

男「1年経ったら、僕の隣で、幸せそうに笑ってくれている!!!」

女「ふふ、ふふふふ~」


男「辛い人生だったけど、今日まで生きいて良かった。そう思えたんだ」

女「……わかるよ」


男「ぼくも同じく、ザコな人間だけれど、」

男「それでも無力じゃないって、誰かの為にできることがあるんだって、分かったから」


女「……うん」


男「ありがとう。キミのおかげで、僕もまた生きてける」


女「どーだか。私は君に甘えて、頼って、迷惑かけてばっかり」

女「君にお礼を言われる筋合いは、全然ないよ」

男「……」


女「……大好きだって気持ちも、届けられてる気がしない」


男「……ねぇ、だったら、ちょっといい?」

女「なぁに?」



男「あのさ、実は前々から、思ってたんだけど」

女「ふむふむ」


男「……一旦、彼氏彼女の関係を、解消できないかな?」


女「……あー、やっぱこんなヤバいぶっ壊れ女は、重いよね」


男「……そういう訳でもなくて。たぶん壊れてるのは、僕もだし」


男「責任をね、キチンとつけたいんだ」

女「せきにん……」


男「その、僕らの『私を幸せにしてくれないなら、死ぬ』って」

男「始まり方が、まずいかなって。あの時は、まぁ仕方なかったかもだけど」


男「色恋沙汰に命が掛かっちゃうとか、絶対いいことじゃないでしょ?」

女「まーねー。バカなことしちゃったと、自分でも思う」



男「けど、もう死ぬこととかも、ない」

女「うん。死ぬまで生きてやる!」

男「だから、あの時のお話は、これでおしまい!」


男「君の、男性不信みたいなのもあるから、」

女「……ん」

男「だから一旦、お友達の関係から、再出発できないかな?」

女「……うん。私も無様を晒したしね。その方がありがたいかも」



女「でもさ、私まだ諦めてないからね」

男「ん?」

女「き、君のお嫁さんになって、3人くらい子供を産む……こと///」

男「あー」

女「カッコ悪いけど、精神科に通ってでも、できるようにしてみたい……」

男「や、そこまでは…………ううん、してもいいかもね」

男「傷がキチン癒えることが、先決だから」


女「あ、1つだけ、絶対に約束してね!」

男「?」


女「この先、もしかしたら離れ離れになるかもだけど、それでも、」

女「急に居なくなるのだけは、どんなことあっても、やめてよね!」

男「……」

女「お姉ちゃんに次いで君まで失ったら、私はやっぱり耐えられない!」


男「……いかないよ、どこにもいかない」

女「ホント!?」


男「僕からもお願いしたい。キミが、急に消えたりしないって」

男「僕も大切な人がいなくなるのは、もう、嫌だ」

女「……うん。約束」


男「うわ、気づけばこんな時間だね」

女「門限とかが、ヤバいかも」

男「君の家まで、送っていくよ」

女「ん~、でも、ギリギリまでここに居たいなぁ」



女「ねぇ、もう彼女じゃないけど、手を繋いでもいいかな?」

男「そんなの全然。はい、どうぞ!」

女「えへへへ~」


ぎゅぅぅぅ


女「……あ~。私、セクシャルなおさわりは駄目だけど」

女「えへへ。手を繋ぐってのは、いいものですなぁ~」

男「ですなぁ~」




女「こうしてるとさ、温かくて、なんだか勇気と」

女「生きているって実感が湧いてくるよ。心の底から!」


男「うん、僕も……!」



女「……この先さ、私たちの関係は、たぶん変わってくんだろうけど」

女「それでも私は、君との時間が愛おしい」


女「今日さ、お互いのこれまでを、話せてよかった」


男「僕も。もっと早く言えば良かった。君の機嫌を損ねるのが恐くて……」

女「そりゃ、メンヘラ&ヤンデレ相手じゃ、分が悪いでしょ!」

男「わー、確かに」


女「ふふふ~。でも、なし崩し的に始まった、上っ面だけの関係に」

女「トドメを指してくれてありがとう。ここからまた、リスタートできる!」


男「……」


男「思いを声にしてみるって、大切だね」



男「お互いの事を、深く知れる」

女「そーだねぇ。そこでまた、ケンカなんかも起きるかもだけど……」

女「苦しい感情でも聞いてくれる、真正面から受け入れてくれる誰かがいるのは、いいことだね」


女「……」


女「ねぇ、私さ」

女「君に出会えて、君みたいな強くて優しい人に出会えて、本当に良かった」

男「……強くて優しい、かな、僕って? 自分では全然そんな気しないけど」


女「強いよ、そんで優しい。少なくとも、私が出会ってきた中で、だんぜん一番!」

男「そう、かな。そうならいいな……」


女「私もさ、君みたいになりたい」

男「?」


女「傷ついて前を向けない誰かに、寄り添ってあげられる人に!」


女「そんでこんな世界を、ちょっとでもマシに変えやるんだ!」


女「死なずに、生きて!!」


男「……うん!」


女「……と、ぶち上げたところで、」


女「やっぱ私みたいな弱い人間1人じゃ、大したことはできない」

女「……かもだけど」





男「いいじゃん」


男「たとえ1人じゃ弱くったって、手を取り合えば」

男「どんな困難でも乗り越えられる」


男「……ような気が、してくる」


男「とりあえず僕らは、」


男「出会ってから、そうして2人で寄り添いあって」


男「ここまで、生き延びてこれたんだから」



女「……ふふふ~♪」






ぎゅぅぅぅぅ


あとがき&補足


女さんのお姉ちゃん、男くんの震災の話とかは

直球だったり、比喩だったり

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