駅内放送『滝のおトイレです』 男「!?」ビクッ (13)


駅内放送『手前にあるのは、滝のおトイレです』





男「!?」ビクッ


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男「な、なんだ今の!?」

友人「どうした?」

男「今、何気なく放送聞いてたら、“滝のおトイレ”って……! なんだよ“滝のおトイレ”って!?」

友人「滝のおトイレ?」

友人「ああ、お前この駅あんまり使わないもんな。だからはじめて聞いたのか」

友人「あれはな……“多機能トイレ”って言ってるんだよ」

男「多機能トイレ?」


友人「多機能トイレってのは、広いスペースの中に便器があるから」

友人「車椅子の人も入りやすいし、あと赤ちゃんのオムツを替える台もあったりする」

男「へぇ~」

友人「ようするに、どんな人でも利用しやすいバリアフリーのトイレ……ってとこだな」

男「そういうことか。ビックリしちゃったよ」


男「今、駅に多機能トイレ必要としてそうな人いないよな?」

友人「んー……特にいないな」キョロキョロ

男「じゃ、せっかくだから多機能トイレで用足してくるわ」

友人「お前もヒマだねぇ~」

男「行ってきまーす」



男「このドアを横に開いて、と」ガラガラ…


ドドドドドドドドドドドドド……!





男「え……」


扉を開けると、そこにはまさに滝があった。



そびえ立つ険しい天然の崖からは、けたたましい音を上げながら、絶えず流水が落下している。

幅は5メートル、落差は30メートルほど、といったところだろうか。

時折、水飛沫が体じゅうにふりかかる。

しかし、それは決して不快なものではなかった。むしろ心地よかった。



俺は滝壺の前で立ち尽くした。

駅の中にある滝という幻想的なこの光景に、しばし心を奪われていた――


ドドドドドドドドドドドドド……!



男「え、と……」

男「ここですればいいのかな?」

チョロチョロ…

男「ふぅ~……スッキリした」


ドドドドドドドドドドドドド……!



男「せっかくなので……滝で手を洗わせてもらおう」

バシャバシャ

男「おほっ、つめたっ!」

男「いつもよりキレイになった気分だ!」


友人「ずいぶん長かったな! どうだった?」

男「うん……いい滝のおトイレだった」







おわり

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