奈緒「晶葉から借りたゲームでもやるかー」 (82)

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奈緒「さーて、晶葉から借りたゲームでもやるか……」
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【安価】奈緒「そろそろ今日も晶葉から借りたゲームやるかぁ」
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奈緒「よし、今日も晶葉から借りたゲームでもやるか」
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奈緒「もうこんな時間か……晶葉から借りたゲームでもやるか」
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――夜、奈緒の部屋

奈緒「22時かぁ、そろそろやるか」

奈緒「セーブデータをロードして、と……」カチッ

奈緒「ん、ロード画面が変わったような? おお、SDサイズのダイオウカーと通信中の文字が……」

奈緒「晶葉も妙なところで手が込んでるな……昨日は芳乃が出てきてあやめとか翠とかと致してなんやかんやになったんだったっけ」

奈緒「ロード終わったか。よし、それじゃやるかぁ……」


――――
――

――???


『世界の守護者……どすか?』

『そう、世界の守護者……力を受け継ぐ者。あなたには、その力があるのよ』

『それも……私たちとは比べ物にならない程の、途方も無い大きな力が』

『……なして、うちなんやろうか』

『どうして、とは?』

『そないなこと言われても、いきなりやし……でも――』



『昨夜、オランダ西海岸に出現した地球外生命体ですね。ヨーロッパ連合による迎撃作戦が成功して、現地では本日明け方から被害者の救助活動に取り掛かっているようで――』



『ヨーロッパのほうでは、また出たのね。日本はそこまでの被害は出ていないけれど、先月は久しぶりにこっちでも地球外生命体が出現したわね』

『……痛い思いも、怖い思いも……そんなんしたらあかん……うちだけやなくて、だぁれも』

『貴方は、それでいいのかしら?』

『声、聞こえるんどす。たまにやけど』

『声?』

『世界の為に……できることをやりなさい、うちやないと、できひんことがある、言うて……』

『うちやないとできひんことなら、やりたいなぁって……それで、みんなが幸せになるなら……』

……
…………
………………
……………………

――早朝、ブラックパールガーデン、屋敷(紗枝の部屋)

紗枝「……」

紗枝(……6時半……珠美はんの声、聞こえへんし、今日は寝とるんやろなぁ)

紗枝「……もう、起きないと――」

バサッ……


P『動くな!』


紗枝「……ほんまに、すかん人やわ」


……
…………

――屋敷(居間)

ガラッ!

紗枝「……だぁれも起きてへん……はて?」

紗枝「机の上に朝ご飯……」



ガラガラガラッ!


紗枝(玄関の閉まる音……)カサッ


『今日は全員朝早いから飯作っておいたからな。俺は別件で城のほうに戻ってるから、時間までに飯食って準備して来てくれよ』


紗枝「あの人の書置き……」ピクッ!

ガラッ!

歌鈴「ふわぁ……あふぁぁ……んぁ、紗枝ちゃん、おはよう……」

紗枝「……おはようさんどす、歌鈴はん」

歌鈴「今日はみんな学校休み……ふぁ、あれ? 朝ごはん……」

紗枝「それなら、あの人が……」

タタタタッ!

歌鈴「あぁー! この朝ご飯、Pさんのごはんっ♪ いつものお味噌汁の横に冷奴が並べてあってー」

歌鈴「あっ、鰤の西京焼きも、美味しそう……紗枝ちゃん、珠美ちゃんたちまだ寝てますけど、朝ご飯食べちゃいますか?」

紗枝「うちは……」

歌鈴「あっ、私ご飯よそってきますね! 大丈夫ですよ! 朝から転んだりしませんからっ!」タタタタッ!

紗枝「……」ハァ……



歌鈴「ああああああああ!?」ズザザザザザザッ!!



……
…………

――ブラックパールガーデン、ブラックパール城(指令室)

翠「あの……大丈夫ですか?」

P「うん……うん……」

楓「目、しょぼしょぼしてませんか?」

P「昨日、一晩中偉そうな奴に付き合わされた……」

パシュンッ!

千秋「誰が偉そう奴、かしら?」

P「いまここに来た奴」ゴシゴシ

美優「そ、そんなに大変だったんですか……?」

千秋「まったく……貴方、あれだけ気持ちよさそうにしておいて……」

楓「監視カメラの映像記録を見た感じですと……千秋ちゃんからおねだりしてばかりですね」カタカタカタッ!

千秋「なっ……!?」

翠「あの、今日は朝からスケジュールが詰まっているので、この時間に集合だったはずなんですけど……」

P「そうだぞー……そして俺はどっかのタイミングで寝たい」

千秋「コホンッ、それじゃあ夜の報告から聞くわ。開発室との連携はどうなったのかしら?」

P「んー……とりあえずブロッサムディーヴァは全機体、データの同期取ってる最中。フレームの調整作業もあるし、ツクヨミヒメはやっぱり一番時間が掛かるらしい」

千秋「完了予定は?」

P「晶葉は、ブロッサムディーヴァはそんな掛からないとは言ってたな。メインフレームはそこまで大きく変更してないって言ってたし」

P「ただ同期取った後のテストはそれなりに掛かりそうとも言ってた。作業の見通しは同期取り終わってから出すらしい」

千秋「そう。それなら午後にはもう一度、開発室の進捗確認をしましょうか。翠さんのほうは?」

翠「桜霞ですね。8時過ぎには城を出て赤坂に向かいます。テレビ局につきましたらそのまま現場入りしますので、CM用の撮影が一通り済んだ後は、代々木の撮影現場に向かいますので」

P「桜霞じゃないぞー、春霞だぞー」ゴシゴシ

翠「今日のお仕事はまだ4人じゃありませんか?」

美優「春霞?」

P「皆の新しいユニット名です……ふわぁ」

翠「芳乃ちゃんをユニットメンバーに入れたいっていうお話になっていまして、5人ユニットになってからはそちらの名前になる予定なんです」

P「いやー、ずっと桜霞って名前がしっくり来てなかったけど、ユニット名切り替えるタイミングも丁度良いしよかったよかった」

楓「どうしてしっくりこなかったんですか? いつもはしっぽりとしてますけど」

P「んー……まあ、色々ですよ。色々」

千秋「それじゃあ、今日の桜霞の付き添いは翠さんのほうでお願い。彼は開発室に引っ張られて徹夜明けだし、少し休ませておかないと」

P「眠いまま車走らせたらホントあの世まで走りそうになるからな……」

翠「わかりました。何かあった時の為に、電話に出られるようにして頂けると助かります」

P「ああ、そこは気を付けておくよ」

千秋「それじゃ解散しましょう。楓さんと美優さんは彼から作業の引継ぎを、翠さんは今日1日桜霞のことをお願いね」

楓「はーい」

……
…………

――午後、東京、赤坂、テレビ局(撮影スタジオ)

「セットの入れ替え終わりましたー! 桜霞の準備お願いしまーす!」

珠美「次の撮影で最後ですね」

歌鈴「これ終わったら、次の撮影場所かぁ……」

紗枝「よいしょっ……お仕事やし、うちらもきばってやらへんと後で翠はんも――」グラッ……

ガシッ!

紗枝「……」

あやめ「……大丈夫でありますか、紗枝殿」

歌鈴「さ、紗枝ちゃん大丈夫ですか!? ちゃんと足元見ないと転んじゃいますよ!」

珠美「いえそんな、歌鈴殿じゃありませんし……」

紗枝「……なんもあらへんよ。あやめはんが支えてくれはったもん」

あやめ「何事も無いようあれば、早く撮影に入りましょうか」

紗枝「せやせや、お仕事終わらせて、はよお屋敷に帰りまひょ。あやめはん、おおきに」

タタタタッ

あやめ「……」


……
…………

――ブラックパールガーデン、ブラックパール城(開発室)

晶葉「同期作業については、ブロッサムディーヴァは予定通り終わる。問題はツクヨミヒメだな」

千秋「ヤタノカガミを停止させる必要があるのが一番の問題ね。あとは、地球に降ろして、再度打ち上げるのも」

晶葉「これまでのデータからツクヨミヒメを継続して稼働させる手もある。とはいえ、運用効率が大幅に落ちる可能性も高いが」

麗奈「いっそ宇宙でやれば?」

晶葉「それじゃ地上がガラ空きだろう。ヨーロッパにでも声をかけるか?」

麗奈「……無理ね。今のあっちの装備じゃそこらへん飛んでる蜂1匹すら倒せないわよ」

晶葉「破壊者の行動にも徐々に変化が見えている現状、やはり地上を手薄にするのは得策ではない。奴らに辿り着かれたら終わりだろう?」

千秋「そうね……とりあえず現状は分かったわ。開発室はこのまま作業を続けて頂戴」

千秋「ツクヨミヒメについては、最悪……代替案として用意していた手段に移ることも、視野に入れましょう」

晶葉「……分かった。それについては、私からは何も言うことはない」

麗奈「……」


……
…………

――午後、ブラックパール城(食堂)

P「寝すぎた……いや、それでも寝足りないか……腹減ってるのに飯があんまり食えないなぁ……」ズルズルッ

周子「じゃそれもらっていーい?」

P「これ油揚げじゃないぞ。芋天だぞ」

周子「あたし芋天好きやし?」

P「油揚げじゃないのか……ていうか芋天取られたら俺の天ぷら蕎麦がただの蕎麦になるんだけど」

周子「なんで油揚げなん?」

P「いや、狐って油揚げ好きだろ?」

周子「え、別に……」

P「あ、そう……で、何か用か?」

周子「んー? いやね、何か暇そうにしてたからさー」モグモグ

P「暇っていうか疲れてるんだよ……ここ最近休みも少ないし」

周子「暇なら面白い話してあげよっかー?」

P「疲れたって言ったはずなんですが……」

周子「いいじゃんいいじゃん。あたしも退屈だしさー、それにそれに、聞いておいて損はない話かもしれないよー?」

P「ふーん……じゃあ話してみてくれ」

周子「おー、それじゃあねー……」



『昔むかし、ずーっと昔。1つの世界がありました』

『その世界は、いつからか世界を壊そうとする不届き者の大魔王が現れて、本当に世界を壊し尽くす寸前まで暴れていました』

『だけど世界は、13人の英雄と5人の協力者によって救われました。めでたしめでたし』



P「……終わり?」

周子「ん? まだあるよ」

『と、思いきや……英雄たちは不届き者の大魔王を倒すことができませんでした』

『どうしたものかと、英雄たちは3人の神様に相談をしました』

『何処でもない場所にいる神様を探すのは一苦労で、呑気に欠伸をしていた神様は英雄たちに言いました。手伝ってやるから今の世界をコピーして新しい世界を作って逃げてしまえ、と』

『ところがどっこい、英雄たちの力は神様の想像を遥かに上回り、新しい世界を1つだけ作るつもりが、自分たちでも数えきれないほどの世界が生まれてしまいました』

『とはいえ新しい世界が出来たことに変わりはなかったから、とりあえず良しとした英雄たちは、生き残ったヒトたち全てを抱えて新しい世界へと移住しました』

『その後もなんだかんだ、しっちゃかめっちゃかありましたが、新しい世界に移ったヒトたちはようやく平和な世界に生きることができるようになりました。めでたしめでたし』


P「……終わり?」

周子「終わり。どーだった?」


P「どうって……何の昔話かは知らんけど、元の世界はどうなったんだよ」

周子「元の世界かー。元の世界はね、新しい世界に行かなかった、残ったお気楽者たちで楽しくやってるんだよ」

P「じゃあ、大魔王は?」

周子「どっか行ったよ。うん、どっか行った」

P「あ、そう……随分適当だな……」

周子「だって仕方ないよね。大魔王も頑張って逃げたヒトたちを追いかけて、ようやく見つけたと思ったらめちゃくちゃ大勢の新しい英雄たちにボコボコにされちゃったんだから」

P「新しいって、話続いてるのか」

周子「そだよ。新しい英雄もね、えーっと……ボインボインしたのとか、元魔王とか、普通を極めたのとか、1000年も粘った頑張り屋とか、希望の光とか、魔法少女とか、いろいろいるんだよ」

P「バラエティ豊かだな。番組作れるぞそれ」

周子「でしょでしょ? 面白かった?」

P「イマイチかな」

周子「あちゃー、ウケなかったかー」

P「ちょっとスケールがデカすぎるからな。さてと……それじゃ開発室行くか。それじゃあな」ガタッ!



周子「……ふーん」


……
…………

――ブラックパール城(開発室)

パシュンッ!

P「悪い、遅くなった」

晶葉「おお、Pか。別に問題ないぞ、昨日は同期作業の準備に付き合わせて色々無理させたからな」

千秋「気にしなくていいわよ、晶葉さん。ここでは貴重な男手だもの。好きに使って頂戴」

P「……」

千秋「な、なによ貴方、その目は」

P「どこかの誰かさんが邪魔しなければもっと早く終わったはずなんだが」

千秋「い、いいでしょ別に、少しくらいは!」

晶葉「そういう話は他所でやってくれ。とりあえず、今は同期作業が完了するまで待ち状態だ。他の仕事があるならそっちに手付けていいぞ」

麗奈「暇なら桜霞のとこに行ってくればいいじゃないの。どうせ暇でしょ」

P「暇じゃないんですよ……まあそっちも仕事だし、翠に任せたままにするのは悪いな……」

千秋「……」クイッ、クイッ

P「……それじゃ桜霞の現場行ってこよ」

麗奈「しっかり働きなさいよ」

……
…………

――東京、代々木、某施設(撮影現場)

「場所移動しまーす!」


歌鈴「ふー……ここのカット難しかったぁ」

珠美「歌鈴殿、噛み過ぎでは……」

あやめ「それでもここまでの撮影の中では、一番NGが少なかったですね」

翠「さて、みなさん場所移動なので荷物を……」


P「おーい」


歌鈴「あ、Pしゃん!」

珠美「ほら噛んだ」

あやめ「お疲れ様です、P殿」

P「おう、皆もお疲れ様」

翠「お疲れ様です。Pさん、開発室のほうは?」

P「待ち状態になったからこっち来たよ。楓さんも美優さんも手空いたから自分の仕事戻ったし」

翠「そうですか。後の時間はこちらに?」

P「まあそこは……今は何やってたんだ?」

翠「はい、次の撮影が外の広場なので、出る準備をしてますが……」

P「順調か……そういえば、紗枝は」

歌鈴「紗枝ちゃんですか? えーっと……あ、いた、紗枝ちゃーん」

紗枝「……はぁい?」

P「おう、頑張ってるか?」

紗枝「……」フイッ

P「すみません、お仕事なのでせめて返事して頂けると私も助かるんですけど……」

紗枝「……なんもあらへんし、あんさんに見られとると逆に怖いわぁ」

P「そんなことないよー、怖くないよー……」

紗枝「おんなじとこにおると、いつうちも手ぇ出されるかわからへん」

P「そうですか……」

翠(まるで信用されてない……)


紗枝「はぁ……ほんまに、撮影も移動やし時間もかかってえらいのに……」ハァ……

P「よーし翠、ちょっとみんな集めて待機しといてくれ。ちょっとディレクターさんのところに挨拶しに行くから」

翠「……ああ、分かりました。それならこちらは声が掛かるまで待機していますね」

紗枝「……」ムッ

P「悪いな。少し待っててくれ」タタタタッ!


紗枝「あん人、自分から声掛けきて……」

あやめ「さて……となれば少し休憩しておきましょう。撮影中は休憩もありませんでしたし」

歌鈴「会議室の椅子って借りていいのかなぁ?」

珠美「元の場所に戻しておけば大丈夫じゃありませんか?」ガタッ!

紗枝「……せやね、少し休憩しまひょか」

あやめ「ええ、無理せずに行きましょう」

……
…………

――数時間後、夜、ブラックパールガーデン、ブラックパール城(指令室)

千秋「それで、どうだったのかしら?」

P「やっぱり、そろそろ限界って感じはしてたな。無理もないとは思うけど」

ポコポコポコポコッ

翠「紗枝ちゃんのバイタルデータ……そうですね。ダイオウカーの初回戦闘からこれまで、一人だけ刻印の回復もしないままですから」ピッ、ピッ

千秋「彼女は他の3人とは比べ物にならない程の刻印の力を持っているわ。とはいえ、ここまで刻印を消耗し続けるだけになると……」

P「前回の戦闘はあやめにキャリアーの負荷分散を受け持ってもらったからな……紗枝にはバレなかったみたいだけど」

ポコポコポコポコッ

P「……」

翠「とはいえ、何度も負荷分散をしてもらうわけにはいきません。珠美ちゃんもあやめちゃんも、高負荷には耐えられませんし」

翠「モーショントレースで刻印の消耗が激しい歌鈴さんも、キャリアーの稼働率が下がればそれだけ負荷が上がります」

P「せめて何かの手段で、刻印を回復させてあげられればいいんだけど」

ポコポコポコポコッ

翠「そうですね……紗枝ちゃんはPさんのことを、あまり好ましく思っていないようですし……刻印の譲渡も難しいですね」

千秋「勿体ないわね」

P「俺はツッコミは入れないからな」

ポコポコポコポコバスッ!

P「ぶっ……で、芳乃ちゃんは何でその丸めた新聞紙で俺を叩き続けてるんだ?」

芳乃「ほほー?」

P「いやほほーでなくてね……人を叩いちゃダメって教わってるでしょ」

芳乃「ですがー、周子殿がそなたは叩かれると力を発揮できると言っておりましたのでー」

P「叩かれてパワーが出るって俺はマゾか何かかよ」

芳乃「ですがー、わたくしもー、そなたをこうして叩きたいと思う気持ちがあるのでしてー……」

P「え、やだ俺この子にまで嫌われてるの……」

翠「何かしたんですか?」

P「いや特に何も……というかお菓子取られたり叩かれたりで俺は被害を受けている側なんだけど」

千秋「何はともあれ、ダイオウカーの起動にはブロッサムディーヴァ全機の起動が必要不可欠。開発室には……頑張ってもらうしかないわね」

P「そうだな……俺も、手が空いているときはそっちの仕事に張り付いておくよ」


……
…………

――ブラックパールガーデン、屋敷(居間)

歌鈴「お腹いっぱい……ごはん、食べすぎちゃったかも……」ケプッ

紗枝「たくさん食べへんと、大事なときにお仕事もできひんし、月読命姫も動かせへんよ?」カチャカチャッ!

歌鈴「うー……でも食べ過ぎて太っちゃうと、衣装着れなくなるし……あ、わ、私もお皿洗うの……」

紗枝「休んでええよ。あとちょっとやし」

歌鈴「う、うん……」


『それでは、次のニュースです。東京都渋谷区に出現した地球外生命体、政府軍の大型起動兵器による迎撃作戦が――』


歌鈴「……私たちの活躍、政府軍のやったことにされちゃってるんだよね」

紗枝「せやなぁ」

歌鈴「……」

紗枝「……」カチャカチャッ……

歌鈴「……紗枝ちゃん、嫌じゃないんですか?」

紗枝「なして?」

歌鈴「だって、頑張ったのは私たちなのに、全然知らない人たちの手柄になっちゃって……」

歌鈴「私たちだけじゃなくて、千秋さんや、翠さん、楓さん、美優さん、晶葉ちゃん……それに、Pさんだって頑張って……」

紗枝「あの人なら、別にええんとちゃう?」

ジャーッ……

歌鈴「……紗枝ちゃん、前からそうなのかなーって思ってたけど……Pさんのこと、あんまり好きじゃない……よね?」

紗枝「……」

キュッ!

紗枝「……すかん人や」

歌鈴「ど、どうして……? Pさん、とっても良い人で……私たちにも、優しくして……」

紗枝「そんなことあらへん」

歌鈴「え……?」

紗枝「いい加減で、適当なことも言いはる。うちらが体張って戦っとるのに、うちらのことを食い物にしとる」

歌鈴「そ、そんなことないですよっ! Pさん、忙しい時でも私たちのアイドルのお仕事も見てくれて、どんなに危なくても、私たちと一緒に戦ってくれて……そ、それに、私たちが苦しい時は……」

紗枝「おかしいやろ! うちら、命がけで戦って……それなのに、あの人はうちらのこと食い物にして……」

紗枝「あの人だけやない、歌鈴はんも、珠美はんも、あやめはんも……あの人に食い物にされて、へらへらして……!」

歌鈴「ち、違います! わ、わたしゅい……私は……戦って、辛くて、苦しくて……」

歌鈴「でも、Pさんが傍にいてくれて、私のことを、助けてくれて……温かくて……Pさんだから、いいなって、思ったから……」

歌鈴「紗枝ちゃんは、Pさんのこと……優しい人、私たちを守ってくれる人って、思ったことないんですか?」

紗枝「……」

シュッ!

あやめ「お二人とも、そこまでです」

歌鈴「はわっ!?」ビクッ!

紗枝「あやめはん……」

あやめ「夜分に騒ぐと、床に就いている珠美殿が起きてしまいます。あまり騒がぬよう」

歌鈴「ご、ごめんなしゃい……」

あやめ「歌鈴殿、思うことはわかりますが、わたくしたちとて、P殿に手を差し伸べられて悦びを覚えているのも事実です。それは否定できないかと」

あやめ「そして紗枝殿、確かにP殿に対して良い印象を持たれていない理由も分かります。傍から見ると、P殿とわたくしたちの関係は少々歪でしょう」

あやめ「ですが、P殿がわたくしたちに尽くしてくださっているのは、決して己の為ではないかと」

あやめ「常にわたくしたちのことを考え、自身の危険を顧みず行動してくれています。少なくとも、わたくしはそう思っていますが」

紗枝「……それが、すかんって言うとるんや」

あやめ「……」ピクッ


……
…………

――ブラックパールガーデン、ブラックパール城(指令室)

翠「後は、今後春霞として芳乃ちゃんをユニットに加えてからで……」

P「こればっかりはやってみないとな」


芳乃「……」



千秋「……芳乃ちゃん?」

P「ん、どうした?」

翠「何かありますか?」

芳乃「……」

千秋「芳乃ちゃん、どうしたの? 芳乃ちゃん」

芳乃「……ほほー」


ビビビビビッ! ビビビビビッ!



P「警報!?」

千秋「このタイミングで……翠さん!」

翠「はい! 宙域……ヤタノカガミが起動しています! スクリーンに表示……破壊者です!」

千秋「城内警報を! オペレーターの2人にも連絡をして!」

翠「わかりました!」カタカタカタッ!

P「晶葉、麗奈! 破壊者が出たぞ、ブロッサムディーヴァはどうなっている!?」ピピピッ!

晶葉『まだストライカーとキャリアーの同期作業が完了していない。この状態で出撃させると作業のやり直しだぞ』

P「んなこと言ってる場合じゃないだろ! 麗奈はどこ行った? 出れるのか?」

晶葉『レイナならもう格納庫に走っていったよ。桜霞の出撃準備もあるだろうが、お前も急げよ』

P「黒川千秋!」ガタッ!

千秋「観測結果は転送するわ! 貴方と芳乃ちゃんは先行して出撃を!」

P「行くぞ芳乃ちゃ……ってもういないのか」


……
…………

――ブラックパールガーデン、屋敷(居間)

翠『Pさんは麗奈さんと先行して破壊者の迎撃に出ています。桜霞のみなさんもお願いします!』

あやめ「承知」ピッ!

歌鈴「こ、こんな時間に破壊者が……い、急がないと!」

あやめ「歌鈴殿」

歌鈴「ふぁっ!? ふぁい!」ビクッ!

あやめ「珠美殿がまだ寝ています。起こして連れて行かなければ」

歌鈴「あっ、そ、そうだった……た、珠美ちゃーん!」タタタタッ!


歌鈴「ああああああああっ!?」ズザザザザザザッ!!


あやめ(また転んで……)チラッ

紗枝「……」

あやめ「……紗枝殿、次の出陣、問題はないのでしょうか?」

紗枝「っ!?」ピクッ!

あやめ「わたくしたちは、一人でも窮地に陥れば全員が危険な状況になります。それに、わたくしだけではありません。P殿も以前から気付いて――」

紗枝「……はよ行かへんと」

あやめ「……では、いざ!」シュッ!

……
…………

――ブラックパール城、カタパルト(機体内)

P「麗奈、最初に行っておくけど俺は夜戦なんて初めてだぞ」ピッ、ピッ!

麗奈『あっそ』

P「はい……いや、何かアドバイスが欲しいんです」

麗奈『んなこと言われてもね……アンタ、自分のやることは分かってるんでしょう?』

P「……ああ、そりゃあ分かってるさ」

麗奈『レイナサマは面倒見てやんないわよ。ガキのお守りなんて、アンタの仕事なんだから』

P「もうちょっとこう、協力してくれてもいいのでは……身内が危ないってのに」

麗奈『うっさいわね。ちょっと晶葉、破壊者はどうなってんの!』

ピピピッ!

晶葉『ヤタノカガミの初期解析が出た。映像データ出すぞ』

ピピッ!

P「ん、なんだこれ? 触手? タコ?」

麗奈『イカじゃないの?』

晶葉『暫定コードはクラーケンだ。お前たちはコイツの下半身を見てタコだのイカだの言ったと思うが』

P「パスタって感じもするな」

晶葉『何でもいい。下半身から無数に伸びている配線のような物が見えるが、太さも様々だが恐らく情報収集用の端末の一種であると考えらえる』

P「情報収集……」

晶葉『前回の破壊者、トールの行動と合わせると何かしらの手段でこちらとの戦いを学習しているのは間違いない。こいつの配線は恐らくそれの一端だろう』

P「下半身のほとんどは配線……法術の力も下半身全体に集中しているだろうな……」

麗奈『んじゃこっちのデータ抜かれる前に全部切り落とすわよ』

P「無茶苦茶な……」

麗奈『無茶でも何でもやる! ほら、行くわよ!』

P「……まあ、そうだな。出撃するぞ!」


……
…………

――ブラックパール城(指令室)

美優「タケミカヅチ、2機とも出撃しました。ブロッサムウイングも出撃済です」カタカタカタッ!

楓「タコみたいな破壊者ですね」

周子「イカじゃない?」

ピピピッ!

晶葉『その会話はさっきPと麗奈でやったからもういいぞ』

楓「あ、はい」

千秋「法術の力はやはり下半身全体に広がっているのかしら?」

晶葉『そうだな。前回のトールが胴体……上半身、今回のクラーケンが下半身全体だ。やはり敵の特性は変化しつつ、より強力になっている』

周子「次に来るヤツは全身がすごい奴とかありそうだねー」

楓「今のうちに国外避難の準備を……」

千秋「冗談を言っている場合じゃないわ。翠さん、桜霞の準備は?」

翠「全員、ツクヨミヒメとブロッサムディーヴァに搭乗中です。順次出撃させます」

千秋「……頼むわよ、みんな」


……
…………

――東京、千代田区(戦闘区域)

クラーケン「……」シュルッ……シュルルル……


P「やばいわアイツ、こんなところに落ちてくるなんて、確かに日本の情報収集しにきてるわ……」

麗奈『東京なんてどこもビジネス街みたいなもんでしょ……まあ、地面に配線を張り巡らせてるわね』

ギュンッ!

P「ていうかいつも東京のどっかで戦ってたな……地面に根張ってるなら動きも鈍くなっているはず……やるか!」

麗奈『よっし行くわよ!』ガションッ!

P「ミサイルで頭部を狙う……いけっ!」ボシュシュシュッ!

クラーケン「……!」ビシュルルルッ!!

ドガガガガガガガァンッ!

麗奈『チッ、デカい足がミサイルを叩き落したわね』カタカタカタッ!

P「器用なことしやがるな……」

麗奈『P、データ送ったわよ。いまヤツが出してきた足、下半身に8本あるわ。まるでタコ足ね……』

P「細い配線でデータ抜き取ってる間は、太い足は守りに移ってるわけか。どうしたもんか……ん?」

麗奈『何よ』

P「いや、そういえばアイツ、情報収集っていうけど実際何のデータ探してるんだろうなって。俺たちのデータってわけじゃなさそうだし……」

麗奈『……』

P「いやでも、トールのときはまっすぐ城に向かってきてたし……」

麗奈『……』

ピピッ!

芳乃『でしてー』ズドォンッ!

ドガァンッ!!

クラーケン「!」

P「おお芳乃ちゃん。また先に来てもらって悪いな」

芳乃『それが使命でしてー』ギュンッ!!

麗奈『そうね。ほら、さっさとやるわよ。ここでアタシたちが仕事した分、あのバカたちが楽できるのよ』

P「そうだな……!」ギュオオオオッ!

……
…………

――ブラックパール城(指令室)

楓「タケミカヅチ2機、ブロッサムウイング、戦闘中ですね。桜霞のみんなもそろそろ戦闘区域に到着します」ピピッ!

周子「……」ピクッ、ピクッ

翠「開発室、解析状況はどうなっていますか?」

晶葉『まだ何も分からん、が他所から情報が来た。政府側の防衛機関で稼働させているシステムが軒並みダウンしているらしい』

美優「ということは……政府軍側も戦闘機が出せないですね……」

千秋「いてもいなくても、変わらないけれどね」

晶葉『恐らくは破壊者の介入による物だろうが……しかし政府軍のデータベースを狙っているのか? あそこに重要な情報なんてあるか……?』

翠「こちらが保持していない情報、または兵器……ですがこちらも政府軍の情報はほとんど掴んでいますし……」

周子「……さーてと」

楓「周子ちゃん? どうしたんですか?」

周子「ちょーっと遊びに行ってこよっかなーって。それじゃ頑張ってね」

パシュンッ!


……
…………

――東京、戦闘区域

P「くっ、上半身だろうが下半身だろうが、狙っても足に攻撃は防がれるわ……!」ドシュゥン! ドシュゥン!

麗奈『どう見ても上半身がひょろくて貧弱だから、そっち狙いたいケド!』ガションッ!

ズドドドドドドドッ!!

ドガアアアアンッ!

クラーケン「……」

麗奈『上半身は上半身で、当たってもこっちの装備じゃ大したダメージは入らないわね……』

芳乃『そなたー』

P「はい?」

クラーケン「……!」ビシュルルルルルッ!!

芳乃『破壊者の足がー』

P「もっと早く言ってほしいわ! 避けれないっての!」ギュオオオオオオッ!!

ピピピピピッ!

珠美『P殿!!』ギュルルルルルルッ!!

ズガガガガガガッ!!

クラーケン「!?」

P「ドリル……珠美か! 助かった!」

珠美『いえ、ご無事なら何よりです!』

歌鈴『お、お待たせしましたぁ!』

紗枝『なんや気味の悪い破壊者やなぁ……』

あやめ『P殿、奴の対処はどうしましょうか』

P「太い足が硬くて厄介だな。タケミカヅチじゃどうしようもない状態だし、ブロッサムウイングの砲撃でもダメージが少ない」カタカタカタッ

芳乃「むー……」

晶葉『お前たち、こちらの解析はまだ終わってないが、どうやら政府側のデータベースがやられているらしい。まずは破壊者が根を張っているのを何とかしてくれ』

歌鈴『そ、それじゃあ……足が邪魔ならブロッサムソードで全部斬っちゃいましょう!』

P「そうなるか……よし了解、指令室!」


千秋『そうね……まずは、奴の動きを止めることが優先ね。桜霞、月下転身よ!』

歌鈴『はいっ! フィールドジェネレーター、起動!』バッ!

パアアアアアアアッ!!!!

芳乃『でしてー』

クラーケン「……!」シュルッ……

P「合体中はやらせん! 麗奈、弾幕だ!」ボシュシュシュッ!

麗奈『レイナサマに命令するんじゃないわよ!』ボシュシュシュッ!

ドガガガガガァンッ!

歌鈴「Pさんたちが隙を作ってくれている間に……いきますっ! 月下転身!!」

ブッピガンッ!

パシュウウウウウンッ!!

「「「「降臨! ダイオウカー!!」」」」

芳乃「でしてー」

……
…………

――戦闘区域

歌鈴「Pさん! 珠美ちゃん!」

P『よし、行くぞ珠美!』カタカタカタッ!

ブッピガン!

珠美『はい! ブロッサムソード!!』ガションッ!

P『フィールドジェネレーターをリンク、ビーム粒子を再形成……よし、行け!』カタカタカタッ

歌鈴「ええええいっ!」

珠美『ブロッサムスラッシュ!』ヒュカッ!!

クラーケン「!!」ビシュルルルッ!

ガキィィィンッ!!

珠美『ぐうっ……!』

歌鈴「や、やっぱりタコ足が邪魔をして……!」グググッ!

P『振り回されてゲロ吐きそう……あやめ、紗枝、破壊者の隙を作ってくれ!』

紗枝『ぶろっさむびーむや!』ズドォォォンッ!!

あやめ『こちらもミサイルで……!』ボボボボボッ!

ドガアアアアンッ!!

クラーケン「……!?」


珠美『足の勢いが落ちた……せぇぇぇいっ!』ヒュカカカッ!

シュパアアアアンッ!

歌鈴「一本目!」

珠美『歌鈴殿、もう一歩踏み込んでください!』

歌鈴「はいっ!」ガションッ!

クラーケン「……!」ビシュルルルッ!

珠美『2本、3本!!』シュパアアアンッ!

P『おぼぼぼぼぼ……』

晶葉『いいぞ、このまま奴の配線を――』

あやめ『むっ……歌鈴殿! 紗枝殿!』

歌鈴「えっ?」

紗枝「な――」

クラーケン「……」シュルルルルルルルルッ!

ギシッ!!

珠美『なっ……!』

P『なんだ……情報収集用の細い配線も、戦闘に使うのか!?』

歌鈴「う、くっ……ダ、ダイオウカーの足に絡みついて……さ、紗枝ちゃん……!」

紗枝『ふ、振りほどけまへん……ぱわーが足りなくて……』

クラーケン「……」シュルルルルルルルルッ!

ギシッ! ギシッ!!

P『両足まとめて縛ってくるのかよ……キャリアー……紗枝!』

紗枝『ぱわーが、足りひんなら……ぶろっさむきゃりあーとの刻印同調率を上げて……!』ググググッ!

あやめ『それは……いけません紗枝殿!』

P『おい紗枝、やめろ!!』

……
…………

――ブラックパール城(指令室)

ビビビビビッ! ビビビビビッ!

翠「アラート!?」

楓「ブロッサムキャリアーの稼働率が低下しています! 紗枝ちゃんのバイタル値に異常が……」カタカタカタッ!

千秋「くっ、刻印の回復も満足にしていないツケが回ってきたわね……ダイオウカーのフィールドジェネレーターは!」

楓「フィールドジェネレーター、形成率低下してきています。このまま下がり続けてると、ダイオウカーを維持できないかもしれません……」

美優「……あ、あれは……破壊者の動きが……!」

楓「……これは、キャリアーを縛っている配線が……紗枝ちゃん、Pさん!」

……
…………

――戦闘区域(ブロッサムキャリアー機体内)

ドクンッ!

紗枝「うぐっ!?」

ドクンッ、ドクンッ……

紗枝「な、なんや……か、体が、思ったとおりに動かん……」ハァ、ハァ……

ビビビビビッ! ビビビビビッ!

紗枝「警報……」ハァ……ハァ……

ピピピッ!

楓『紗枝ちゃん、キャリアーのコックピットブロックを切り離してください!』

紗枝「なんやて……?」

ピキッ!

シュルルルルルッ!!

紗枝「線が――」

ビシィッ!

紗枝「んぁあああっ!? ん……あ……か、体に……配線が……」ギシッ! ギシッ!

シュルッ、シュルルル……

紗枝「んっ、はぁんっ!?」ビクンッ!

紗枝「あ、あ……す、すーつん中にも……う、うちの体……あひぃっ!」ビクンッ! ビクンッ!

紗枝「う……く、苦しい……」ハァ、ハァ……

紗枝「あ、あかん……このままやと……だいおうかー、が……」


……
…………

[5-6]

――戦闘区域

P「おい紗枝、刻印同調率は上げるな! いまのお前じゃ体がもたないし、ダイオウカーの維持が……」

ピピピッ!

楓『Pさん大変です! 破壊者の配線がブロッサムキャリアーの中に……紗枝ちゃんが触手プレイされてます!』

P「はぁっ!? おい紗枝、応答しろ! 紗枝……楓さん、そっちからの通信は!」

楓『途中で途切れて……早く紗枝ちゃんを救出しませんと!』

P「中のパイロットまで……まさか、奴はパイロットのデータも直接……くそっ!」ガションッ!

パシュンッ!!

歌鈴『Pさん!? どうしてタケミカヅチのハッチを……』

P「ここからキャリアーまで降りるのは……緊急用のワイヤーを使えば何とかいけるか。麗奈、晶葉!!」

麗奈『コイツの気は逸らしておいてやるわよ! 珠美、上手いこと取っ組み合いは続けてなさい!』

珠美『は、はい!』

晶葉『P、端末を持っていけ! キャリアーのコックピットハッチの解除コードを送る!』

晶葉『あとコックピットのツールボックスに高周波振動カッターも入ってるから配線の切断用に一緒に持っていけ』

P「くそっ、紗枝……待ってろよ!」バッ!

……
…………

今日はこれで終わります。

触手!よし!
大魔王云々は設定の深いとこにかんけいしてるんだろか
読んでないんだよな

――ブロッサムキャリアー(機体内)

紗枝「ぁ……ぁ、ぁ……」ピクッ、ピクッ……

ピチャッ……

紗枝(うち……もう、あたま、おかしくなって……しんで、まう……)

シュルッ、シュルルルルッ……

紗枝「んくぅぅぅ……!?」ビクンッ!!


パシュンッ!!


P「紗枝!!」

紗枝「ぁ……」

P「うっ……コイツ! 待ってろ、いま配線を……!」ザシュッ!

ブツッ……ブチッ!!

ビチャッ!

P「くそっ……おい、紗枝、紗枝!」

紗枝「……」ピクッ、ピクッ……

P「スーツは破けてるけど刻印同調はされたままか……おい指令室、晶葉! そっちでキャリアーと紗枝を切り離せないのか!」

晶葉『ダメだ。こちらから切り離しは出来るが、いまそれをやるとダイオウカーのフィールドジェネレーターが維持できん』

晶葉『紗枝を切り離した途端に他のパイロットの保護としてセーフティが働いてブロッサムディーヴァは分離される。この状態では無理だぞ』

楓『せめて戦闘区域から離脱するか、破壊者を追い払いませんと……』

P「全員まとめてやられるってわけか……紗枝だけ連れて脱出しても歌鈴たちが戦えなくなる……」チラッ

紗枝「ぅ……」ピクッ、ピクッ……

P「紗枝……待ってろ、それなら!」ギュッ!

カタカタカタッ!

晶葉『おいP! キャリアーのコンソールを出して何をやっている!』

P「ちょっと待ってくれ! 同期作業を手伝うのにメンテ用のマニュアルを見たときに……」

麗奈『くっ、コイツ!! ちょっと晶葉、いまのタケミカヅチの兵装じゃポンコツ過ぎて役に立たないわよ!』

歌鈴『くぅぅぅ……ク、クラーケンの足のパワーのほうが強くて……』グググッ……

珠美『い、いけません……踏ん張りが効かなくてブロッサムソードが……!』


――キィィィィィンッ!!


P「なんだ!?」ピクッ!

あやめ『なっ!?』

芳乃『……ほほー』

歌鈴『い、今の音……?』

麗奈『……まさか、あの狐!』


……
…………

――戦闘区域

パアアアアアッ!!

周子「まっ、そーゆーズルもありかりもしれないけど?」

クラーケン「……!?」

周子「まーあたしもね、アンタたちがあそこに来られたら困るからね? 来ないうちならこの世界で好き勝手暴れてもええよ?」

クラーケン「!!!!」ブチブチッ!!

周子「せやけど、せっかくここまで来たのにそれじゃ不満なのも分かるからねー、だから、仕切り直し。またおいでー」

パアアアアアッ!!

バシュンッ!!


周子「……いやー、あたしでも出来るもんだねー」

周子「あたしでこれくらい出来るなら、あたしはどれだけ凄いこと出来るんやろ? ま、帰ることが出来たら聞いてみよっかな」


……
…………

――ブラックパール城(指令室)

楓「……破壊者の反応、戦闘区域から消えちゃいました」

千秋「……」

美優「ど、どこに行ったんでしょうか……?」

翠「……ヤタノカガミをこちらから起動してください。宇宙側の観測を再開、稼働から24時間後に待機状態に戻してください」

楓「自動起動じゃないと、法術の力も足りなくなっちゃいますからね。それにしても……」

ピピッ!

楓「戦闘区域の……破壊者がいた場所で計測された凄い法術の力、どこから出てきたんでしょうか?」

翠「調査は開発室に任せましょう。ダイオウカーの回収を急ぎます。キャリアーは最優先で」

美優「は、はい、格納庫にアナウンスします……」

……
…………

――戦闘区域跡

歌鈴『破壊者が……消えた……』

あやめ『一体何が……いえ、それよりも』

珠美『P殿、紗枝殿は!』

P「歌鈴、ダイオウカーを分離してくれ。キャリアーのシステムを落とす。回収が来るまでは全員待機だ」

歌鈴『は、はい……』

ガコンッ!!

P「……」

『System Convert――』

紗枝「……」

P「……紗枝」



紗枝「……」



……
…………

――深夜、ブラックパールガーデン、ブラックパール城(医務室)

ピッ、ピッ、ピッ……

紗枝「……」

P「……」


歌鈴「紗枝……ちゃん」

あやめ「面目ありません……わたくしたちも、共に戦っていましたが……」

P「……皆は、刻印の消耗は大丈夫か?」

珠美「は、はい……もう1、2度ほどの戦闘までなら何とか……」

P「そうか、よかったよ。安心した」


ピピピッ!

P「……」

あやめ「P殿、端末が」

ピピピッ!

P「……なんだ」ピッ!

晶葉『開発室に来い』

P「分かった。皆、後で戻ってくるから休んでいてくれ」

……
…………

――ブラックパール城(開発室)

晶葉「馬鹿者。ログを見たが、キャリアーのシステム変更をしたところで刻印同調の対象をお前に変えることは出来んぞ」

P「どうしてなんだよ」

晶葉「P、お前の役目はダイオウカーのパイロットたちが消耗した際の刻印の譲渡だ。言ってしまえばタンクなんだよ」

晶葉「どうしてその立場なのか、どうしてお前はダメなのか、説明は受けただろう?」

P「……俺には法術が使えない。自力で刻印を燃やすことができない」

晶葉「そうだ。出来るならとっくに、お前を適当なブロッサムディーヴァのパイロットにしている。私たちだって……彼女たちを戦わせたいとは思っていない」


麗奈「バカね。自分の身の程を弁えないで」

晶葉「麗奈か……紗枝はどうなった?」

麗奈「集中治療室に入ったわ。これまでの分もあって、刻印の消耗具合も深刻だし体も衰弱している。今の状態じゃ刻印の譲渡も無理ね」

P「助かるのか?」

麗奈「死にはしないでしょ。ヒトって思ったよりも頑丈に出来てるもんよ」

P「そうか……よかった」

麗奈「ただ、戦闘はしばらく無理でしょうね。次にあの破壊者がいつ来るか知らないけど、そこまでのんびり出来るとは思えないし」

晶葉「クラーケンについてはこちらで場所を特定できた。ヤタノカガミの観測結果から出てきたが、宇宙に戻っていた」

麗奈「へぇ」

P「宇宙……」

晶葉「かなり遠いところにいたが……そうだな、大まかに計算しても次に地球に来るのは遅くても24時間後……1日猶予があるくらいか」

P「そんなに早いのか……」

晶葉「とりあえずはキャリアーの修理を最優先、他のブロッサムディーヴァとツクヨミヒメの整備は並行してやるとして、タケミカヅチはその後だ」

麗奈「そりゃあ、ダイオウカーがないと話にならないものね」

晶葉「そういうことだ。だからP、お前は少し休め。今日は出ずっぱりだったろう」

麗奈「……ま、あのバカたちの面倒なら、朝まではレイナサマが見てアゲル。だから寝なさい」

P「しかし……」

麗奈「寝なさい。燃やすわよ」

P「……わかった」


……
…………

――ブラックパール城(廊下)

周子「おっ、元気ー? 元気じゃなさそうだけどさー」

P「……」

周子「え、無視? ちょっとー」

P「……なんだ」

周子「どうしたのさ、そんなに暗い顔しちゃって」

P「どうしたもないだろ」

周子「はー、冷たいわぁ。せっかくシューコちゃんが頑張ってイカ? タコ? 追い払ったんやけどー?」

P「……あれは、お前だったのか?」

周子「内緒だよ、内緒。あたしだって何度も出来るわけじゃないんだから。今回はたまたま出来たってだけ」

P「……そうか。ありがとう」

周子「んー、苦しゅうない。で? 紗枝ちゃんヤられちゃって落ち込んでるってわけね」

P「……」

周子「それじゃあ、そうだなー……また面白い話してあげよっか」

P「いらん」

周子「がくっ……こういうときはさー、実は役に立つ話なのかも!? って思うとこじゃない?」

P「……なんだよ」

周子「えーっとね、あたしもここからはあんまり詳しく知らないんだけどねー」

周子「新しい英雄の話、協力者が1人いたんだよ。1人、とっても大事な役目を持った1人」

周子「その人はね、大勢の英雄を育てたとんでもない人間なんだ。しかも、本人もメチャクチャでねー、英雄が戦うよりも強い人間だったんだよね」

P「……なんで自分で戦わなかったんだよ」

周子「戦ったんだよ」

P「ん?」

周子「戦った、戦って、戦って……それでも、その人間は大魔王には絶対に勝てなかったんだよ」

周子「だから、大魔王を倒せる英雄を育てたんだよ」

周子「だけどね、たぶん、その人間は悔しかったんだろうね。結局、自分も戦ったんだよ。勝てないってわかっても」

周子「自分が育てた英雄のことが大事になって、守ってあげたいって思いと、命を捨てたとしても大魔王を倒したいっていう思いがまぜこぜになって」

周子「目も見えなくなって、足も動かなくなって、最後は自分が死ぬことになっても……どうしても、やりたかったことだったのかなって、さ。だから……」


周子「おにーさんだったら、どうする?」


……
…………

――翌日、夕方、ブラックパール城(指令室)

歌鈴「Pさんが……ブロッサムキャリアーに?」

晶葉「そうだ。厳密にいえば、パイロットとして搭乗するわけではないがな」

珠美「それでは、どうしてP殿が?」

千秋「楓さん、スクリーンを表示させて頂戴」

楓「はいどうぞ」

ピピッ!

あやめ「ダイオウカーの見取り図、ですか」

晶葉「ツクヨミヒメ、ドリラー、ストライカー、ウイングはこれまで通り、パイロットとの刻印同調により機体を稼働させる。だがキャリアーについては」

ピッ!

晶葉「オートパイロット機能を戦闘用に改修したシステムを別途積み込む。そして実装予定だった刻印同調機能の負荷軽減装置を設置する」

歌鈴「けいげんそうち?」

晶葉「細かい話は別の機会にするが、Pによる刻印の譲渡を別システムを経由して戦闘中でもリアルタイムに各パイロットに行う為の装置になっている」

晶葉「これにより通常時であれば従来よりも各パイロットの刻印の消耗を抑えることができ、より長期の戦闘を行うことが可能となる」

晶葉「だが今回は紗枝が不在の為、キャリアー側の刻印同調機能が働かない。キャリアー側の制御を歌鈴に、刻印の負荷分散を珠美とあやめ、芳乃にやってもらう」

晶葉「Pによる負荷軽減装置も込みで、これでダイオウカーは通常稼働時と比較して90パーセント程度の稼働率を維持することが出来る」


珠美「なるほど……よくわかりませんが、これでいつも通り戦えるということですね」

楓「90パーセントっていつも通りじゃないですよね?」


ピピピピピッ!


美優「は、破壊者……クラーケン、ヤタノカガミの通常監視圏内に入りました。降下までは、もう時間はないと思います……」

翠「来ましたね……千秋さん」

千秋「ええ、そうね……みんな、苦しい戦いになるのは分かっているわ。だけど……」

歌鈴「……はい、大丈夫です!」

珠美「世界を守るための剣として、珠美はここに立っています!」

あやめ「皆、覚悟はできています。千秋殿、号令を」

紗枝「……桜霞、出撃!」

……
…………

――ブラックパール城(医務室)

P「……」

紗枝「……」

P「……」

ピピピッ!

P「……俺だ」

翠『Pさん、破壊者が間もなく地球に向けて降下を開始します。今朝の打合せの予定通り……キャリアーでの出撃をお願いします』

P「ああ」

翠『……あの、お体のことですが』

P「大丈夫だ。晶葉が作った装置だし、上手くやってくれる。今、紗枝を戦わせるわけにはいかない。俺が……守る」

翠『わかりました。桜霞のメンバーは出撃準備に向かっています。Pさんも急いでください』

P「わかった」ピッ!


P「……紗枝」

紗枝「……」

P「ゴメンな。本当は、大人の俺たちが……皆の代わりに戦わなきゃならないんだ。それでも、皆に頼ることしかできない……」

P「だけど、皆のことを助けるのが俺たちの役目だ。俺だけじゃない、翠や、千秋……城の皆は、その為にいるんだ」


『たぶん、その人間は悔しかったんだろうね』


P「……そうだな。俺も、悔しい」


パシュンッ!!

……
…………

――ブラックパール城、カタパルト、ブロッサムキャリアー(機体内)

晶葉『P、事前に説明した通り、オートパイロットの機能にバイタルデータ管理機能を入れている』

P「わかっている。自分の体くらいは自分で管理するよ」カタカタカタッ!

晶葉『頼むぞ。何度も言うが、キャリアーに乗ったとしても、お前は負荷軽減装置を使用する為のタンクだ。刻印同調が出来ない以上、キャリアーを動かすことが出来ん』

P「俺自身はどれくらい持つんだ?」

晶葉『そこは気にしなくてもいい。1、2回の戦闘でダメになるタンクなんてあるはずがないだろう?』

P「タンクなだけはあるってことか……分かった。皆、出撃した後は頼むぞ」

歌鈴『は、はぃぃぃ……!』

珠美『P殿もお気をつけて』

あやめ『今回の戦、長引く前に終わらせましょう』

P「ああ、俺のことは気にしないでやってくれ」

芳乃『……そなたー』

P「ん、どうした?」

芳乃『そなたは……またしてもー……』

P「俺が?」

ピピピッ!

美優『は、破壊者……降下終わりました。場所は前回と同じ……東京の千代田区です』

P「来たか……よし、皆いくぞ!」

歌鈴『は、はぃっ! 出撃しましゅ!』

……
…………

――ブラックパール城(医務室)

紗枝「……」

周子「ばぁっ!」

紗枝「……」フイッ

周子「ほら、やっぱり起きてるやーん」

紗枝「……」

周子「もうみんな行っちゃったよ。ま、何とかなるやろ?」

紗枝「……」

周子「……愚痴くらいなら聞いてあげる。どうせ、あたしなんてフラフラしてるだけなんだから」




紗枝「……何しとるんやろ、うち」

周子「戦ってるんだよ。この世界を守るために」


紗枝「……何度も、何度も夢に見た……うちにしかできひんこと。それが、みなはんをお守りすることやって、ずうっとそう思って」

紗枝「せやけど、あの人が来て、思ってたんと違うくて、みなはんもやらしいことばかりで……」

周子「そうだねー。たしかに、ちょっとやらしいかもねー」

紗枝「そんなん、おかしいやろって思って……せやけど、うちが守らなって思ってた、みなはんが……うちのこと、守るって……」

周子「悔しい? 守りたいって思ってたものに、逆に守ってもらって……ずっと、守られていたことに気づいちゃって」

紗枝「……」

周子「いいじゃん。なんであのおにーさんがそこまでするのか、もう分かってるんでしょ?」



P『すみません、もしかしてそれは私が作った朝ご飯は食べる価値すらないということでしょうか……』

P『キャリアーは動くな!』

歌鈴『あっ、鰤の西京焼きも、美味しそう……』

P『よーし翠、ちょっとみんな集めて待機しといてくれ。ちょっとディレクターさんのところに挨拶しに行くから』



紗枝「……うちは」

周子「それに応えるのも、寄り添うのも、突き放すのも……紗枝ちゃんの自由だけどね。だけど、1つだけ」

周子「紗枝ちゃんの、自分にしかできないこと、それだけは……うん、間違ってないってあたしが保証してあげる」

紗枝「……」ギュッ!


……
…………

――戦闘区域

ブッピガンッ!

パシュウウウウウンッ!!

「「「「降臨! ダイオウカー!!」」」」

芳乃「でしてー」

クラーケン「!!」ビシュルルルルッ!!

あやめ『先手は取らせません! ブロッサムミサイル!』ボシュシュシュシュッ!!

ドガガガガガガァンッ!!

クラーケン「……」シュルッ、シュルルル……

珠美『ま、また地面に線を……!』

P『根を張らせるか! 芳乃ちゃん!』

芳乃『ブロッサムストーム、でしてー』

ビュオオオオオオオオオッ!!!!

クラーケン「!?」グッ、グググググッ!!

歌鈴『えっ、そ、それ、そのまま使えたんですか?』

珠美『歌鈴殿! 奴の残りの足を破壊します、ドリルを!』

歌鈴『はい!』ガションッ!

珠美『P殿、お力をお借りしますよ!』

P「ああ、珠美とドリラーの刻印同調率、上昇……俺からの負荷軽減を……!」

珠美『いける……いけます! 普段よりも力が……いきますよ、歌鈴殿!』

歌鈴『えええええいっ!!』

珠美『ブロッサムドリル……ストライク!!』ギュルルルルルルッ!!

ドガガガガガガガガッ!!!!

クラーケン「!?」ガガガガガガッ!!

P「3本やったか! 残りの足は2つ……配線はまだメチャクチャ残ってるが、これでやっと互角か……!」

歌鈴『は、配線も壊しましゅ! ブロッシャムビーミュ!!』ズドォォンッ!!

ピピピッ!

楓『全然言えてない……』

ドガァンッ!!

P「キャリアー側の動作も問題ないか……歌鈴が上手く使えてるなら……」

ピピピピピッ!!

クラーケン「……!!」ビシュルルルルルッ!!

歌鈴『し、しまっ――』

ギシッ!!

珠美『くっ……』

あやめ『ふ、不覚……!』

P「珠美、あやめ! くそっ! 奴め、取っ組み合いをする足が足りなくなったから今度は配線でドリラーとストライカーを縛りやがって……!」

クラーケン「!!」ブォン!!

ドゴォッッ!!

歌鈴『きゃあっ!? クラーケンの、あ、足が……』

P「奴の足がダイオウカーの胴体に……ブロッサムウイング、芳乃ちゃんは!」

芳乃『ほほー?』

P「全然平気そうでしたね……っていうか腕を縛られたままだと……!」

歌鈴『ブロッサムビーム! い、言えました!』ズドォォンッ!!

ドガァァンッ!

クラーケン「……!」

歌鈴『ま、まだまだ、ダイオウカーの腕を離すまで打ち続けて……!』ズドォォンッ! ズドォォンッ!

珠美『またしても根比べですか……しかしこのままでは……!』

P「くそっ……麗奈、援護を頼む! コイツの配線をぶった切って――」

ピピピッ!

麗奈『何か言った?』

周子『そのポテチ取って―』

P「っていうかお前なんで指令室にいるんだよ! 出撃しろよ!」

麗奈『昨日仕事したでしょ……アンタたちの仕事なんだから、少しくらい自分たちで頑張りなさい』

P「状況見ろよ! こっちは1人足りない状態で戦ってるんだぞ!」

麗奈『へぇ、1人足りないってワケ?』

P「そうだよ!」

麗奈『だってさ、紗枝』

P「は?」

ピピピッ!



紗枝『……ほんま、いけずな人やわ』ブォンッ!

シュパアアアンッ!!


ドガアアアンッ!

歌鈴『きゃっ!?』

珠美『腕の配線を……紗枝殿!』

あやめ『実体剣を装備したタケミカヅチ……P殿の機体ですか』

紗枝『遅くなって申し訳おまへん……みなはんにえらいことさせて……』

P「えちょ、俺のタケミカヅチ……操縦……」

紗枝『……あんさん、うちらが武御雷動かせへんって思ってるんどすか?』

珠美『た、珠美たちも一応訓練は受けていますので……』

P「あ、そう……じゃなくて! おい黒川千秋、晶葉! なんで紗枝を出撃させたんだよ!」

千秋『本人の要望よ』

P「お前……!」

晶葉『怒るなよ、千秋も私も、全員一度は止めたさ。だが、どうしても出たいと言うからな。いいか紗枝、2分だぞ』

紗枝『それだけあれば十分……珠美はん、ぶろっさむそーどや!』ガションッ!

珠美『は、はい! ブロッサムソード!』ブッピガンッ!

紗枝『あんさん、きゃりあーのはっち開けてといて。わいやーで降ります』

P「あ、はい……」ピッ!

パシュンッ!


バサッ!

紗枝「……」

P「おい紗枝、体は……」

紗枝「……うちが、うちにしかできひん、みなはんを守ること……せやけどうちのこと、守ってくれはるのは」

P「……起きてたのか」

紗枝「ぶろっさむきゃりあー……おーとぱいろっとからしすてむ変更、各機でーたしんくろ確認……刻印同調」

P「無視ですか」

パアアアアアッ!

紗枝「んっ……!」ビクンッ!

P「……負荷軽減対象にブロッサムキャリアーを追加、ツクヨミヒメからの一部制御を解除」カタカタカタッ!

P「歌鈴、いけるか!」

歌鈴『はい! 紗枝ちゃんが来てくれたから、思いっきり踏ん張れます! 珠美ちゃん!』

珠美『覚悟! ブロッサムスラッシュ!』ヒュカッ!!

シュパアアアアンッ!

クラーケン「!?」ドガアアアアンッ!!

あやめ『奴の足はすべて落とした……今です!』

紗枝「歌鈴はん!」

歌鈴「はい! 草薙剣!!」

パアアアアアアッ!!!!


ヒュカッ!!

クラーケン「……!」

ズドォォォォンッ!!!!

歌鈴「私たちの、刻印……最後まで燃やして……!」

歌鈴「ブロッサムストーム!!」

芳乃『でしてー』

ビュオオオオオオオオッ!!!!

クラーケン「!?」ググググッ!!

歌鈴「やあああああっ!!」ギュンッ!

歌鈴「桜! 花! 斬!」ヒュカッ!!

ズバアアアアアアアッ!!


クラーケン「……」

ドガアアアアアアアンッ!!!!


歌鈴「悪鬼、滅殺……!」



……
…………

楓『……破壊者の反応、消滅しました。戦闘終了ですね』

美優『おわり……ですね』

歌鈴『お、終わったぁぁぁぁ……』ハァ……

翠『お疲れ様です。今回の戦闘、こちらも厳しい状態でしたが』

千秋『そうね……でも、ダイオウカーならやれると信じていたわ。お疲れ様』

晶葉『よくやった。すぐ回収班を向かわせるから待機していてくれ』

麗奈『ま、頑張ったんじゃない?』

周子『おうおう、シューコちゃんの頑張りも無駄じゃなかったねー』

珠美『これにて一件落着……今回は色々とありましたね』

あやめ『歌鈴殿、ダイオウカーは分離させましょう。紗枝殿やP殿の負担になります』

歌鈴『あ、はいっ、それじゃあフィールドジェネレーターを解除して……』

バコンッ!!

P「ふぅ……終わったかぁ」

P「それにしても、思ったよりも負荷軽減やって何ともないもんだな……何も無いに越したことはないけど」

P「ってそうだ、紗枝……」

紗枝「……」ハァ……ハァ……

P「もう少しで回収が来るから、苦しいだろうけど少しだけ我慢してくれ」

紗枝「……大丈夫、どす」ハァ、ハァ……

P「そうかそうか。じゃあ横になっておけよ。ほら、少し寝なさい」

紗枝「ぅ……ん……」

紗枝「……」

ピピピッ!

晶葉『大儀だったな。お前も疲れただろう』

P「そうだなぁ……なんか、疲れた」

晶葉『回収するまで少し休んでてくれ。あと、戻ったら紗枝のことは頼むぞ』

P「はぁ……戻ったらな」

……
…………

――夜、ブラックパール城(集中治療室)

ピッ、ピッ、ピッ……

紗枝「……ん」ピクッ

P「紗枝……!」ガタッ!

紗枝「なんや……あんさん、おもろい顔して」

P「人の顔を面白い顔なんて言わないでくれよ……いやそれはいいとして、大丈夫か? 刻印の消耗も相当酷い状態だぞ」

紗枝「大丈夫……やおまへん。もう、苦しくて……」ハァ、ハァ……

P「そうか。それじゃあスタッフを呼んで――」

紗枝「……あんさん」

P「な、なんだ?」

紗枝「あんさん……なんでうちのこと、構うんどすか?」

P「それは……そりゃ構うさ。俺は、言い方は悪いが、紗枝の面倒を見るのが仕事だ。俺のやらなきゃならないことで……」

紗枝「……」

P「だけどな、俺は……誰かの為に命を掛けることが出来る子を、見捨てたくない。俺だって……できるなら、同じようになりたい」


『貴方の意思で……誰かを、守りなさい……』


P「俺に色んなことを教えてくれた人がいる。俺の意思で、誰かを守れって……だけど、紗枝みたいに皆を守ることは出来ない」

P「だから、せめて俺に出来るなら……皆を守ろうとする紗枝を、守りたい」

紗枝「……うち、うち、いつもあんさんに好き勝手言うて……ほんでもあんさん、ずっと、うちのこと……」グッ……

P「お、おい動くなよ。少なくても今日は大人しくここのベッドで寝て――」

ギュッ!!

紗枝「うち、偉そうなことばかり言うて……あんさんや、みなはんがしてくれはったこと、何も気にせんで……」グスッ

P「……そうか。まあ、いいんじゃないか?」ポンポンッ

ピッ、ピッ、ピッ……

紗枝「……あんさん」ハァ、ハァ、ハァ……

P「なんだ?」

紗枝「うちの……刻印、もう、ほとんど燃えて……体も、熱い……」ハァ……ハァ……ハァ……

P「いいのか? 紗枝は――」

紗枝「んっ……!」

P「ん……」

紗枝「んっ、はぁっ……ちゅっ、んん……ん……」

ピピッ、ピピッ……

紗枝「はっ……はぁっ、はぁ……」

P「ん……紗枝……」

P(もう刻印の状態が……昨日よりは、紗枝の体も落ち着ているから、刻印を回復させるなら今のうち、か)

紗枝「あんさんになら……せやから、うちのこと……どうにか、して……」ギュッ!

P「ああ、分かった」

紗枝「んっ……!」ギュッ……

……
…………


[5-7]

――翌日、早朝、ブラックパールガーデン、ブラックパール城(中庭)

P「ふわぁ……昨日はしんどかった……ん、翠、おはよう」

翠「おはようございます。今日もお早いですね。昨日は戦闘もありましたが……」

P「いやまあ、昨日は……」

翠「あ……そうでしたね。紗枝ちゃんが……」

P「まあ少しは俺も寝たけど、結構長かったな……」

翠「その分刻印の回復も早く済めばいいのですが、どうでしょうね」

P「そこら辺は俺も詳しくないからなぁ。とりあえず、皆起こして学校に行かせてから紗枝の様子は見に行くよ」

翠「そうですか。私も後で医務室に行きますので」

P「ああ、それじゃあ後でな」

翠「はい」


……
…………

――ブラックパールガーデン、屋敷(玄関)

珠美「……あ、P殿、おはようございます」シャッ、シャッ

P「おはよう。今日は朝練……じゃないな、玄関掃いてるのか? 珍しいな……」

珠美「ああいえ、その、いつも通り中庭で素振りをしようと思っていたのですが、その、少し居づらくて……」

P「ん?」

珠美「何と言いますか……」

P「まあいいや、とりあえず朝飯作るから屋敷戻るぞ。歌鈴も起こしてやらないと」

珠美「は、はぁ……」

……
…………

――屋敷(居間)

P「……」

歌鈴「……」

あやめ「……」


紗枝「♪」


P「……なんであの子ここにいるの」

珠美「た、珠美が起きて居間に降りたときには既に……」

紗枝「珠美はーん? 朝練終わったんなら、お皿出して……あ」クルッ

P「あいやすみません、私も早々に仕事に戻りますので……」

紗枝「あらぁPはん、おはようさんどす」

歌鈴「えぇっ!?」

珠美「P殿に挨拶……」

あやめ「なんと」

P「え? あ、うん、おはようございます。じゃあ俺仕事あるから……」

紗枝「こないな朝早くからお仕事せんでも、朝ごはん食べまひょ?」

P「え?」

紗枝「今日はうちが朝ご飯作ったから、ほらほらPはん、こっち座りまひょ」

P「……」

珠美「P殿を上座に座らせてますよ……」

歌鈴「Pさん引いてる……昨日何があったんだろ」

あやめ「昨日の紗枝殿の様子は監視しておりましたが、P殿に刻印の譲渡をしてもらってただけですが」

珠美「珠美たちと同じことをしてもらっただけのはずですが……」


紗枝「みなはん? どないしたんや? 学校ありますし、朝ご飯食べまひょ?」

歌鈴「えっ? あ、う、ううん……その、紗枝ちゃん、昨日どうしたのかなーって思って……」

紗枝「昨日……」

P「……」

紗枝「昨日……うち、Pはんの益荒男に……ああ、おかしくされてしもうて……」

P「ぶほっ!?」

珠美「やっぱり珠美たちと同じですね」

あやめ「別の病を患ってますね、これは……」

P「いや、ていうかキミ、医務室に戻って……」

紗枝「はぁ……あんな色めいたこと、歌鈴はんたちもやっとったなんて……はぁ、うち、なして今までしてもらわなかったんやろ」ハァ……

P「いや、普通に刻印を譲渡しただけなんですが」

紗枝「今日もPはんにやってもらわへんと……はぁ、待ちきれへんなぁ……」

P「……仕事行っていい?」

紗枝「あきまへん」ギュウウウウウッ!!

P「いててててっ!」

……
…………


――ブラックパールガーデン、ブラックパール城(屋上)

麗奈「ふぅん、結局こっちには1人で来たワケ?」

??『彼女たちには、任務があるわ……いずれ、機会があればこちらに来ることになるけれど』

麗奈「機会があれば、ね。そっちに出てる奴らは大したことないとはいえ、特務の奴らがいないとキッツイかしらね」

??『ええ……とはいえ、何れは対応していく必要があるもの……魂を燃やすのは、彼女たちだけであってはいけない……』

麗奈「しかしまぁ、こっちでも奴らが出てくるなんてねぇ……連合の用事終わったらこっち来るんでしょ? どっかで会う?」

??『必要ないわ。日本の政府に……前回の戦闘の件を伝えるだけ……終わり次第、城に向かうわ』




麗奈「あっそ。それじゃ千秋たちには話しておくかしらね……ま、さっさと来なさいよ、のあ」

のあ「分かっているわ。その為に……私は戻ってきたもの」



――――
――

――早朝、奈緒の部屋

奈緒「……もう5時か。今日はこれでやめておくか」カチカチッ

奈緒「……」

奈緒「うーん……今回は結構苦戦したなぁ。これ、敵が強くなってきてそろそろ太刀打ちできなくなるとか、あるんじゃないか?」

奈緒「でも最後にのあさん来たし……何かパワーアップするイベントとか……いや、でもなんかそういう雰囲気じゃないし」

奈緒「……というか、周子は今回よく画面に出てたな。なんの話してたのかは、よくわかんなかったけど」


奈緒「まぁ、5時だしそろそろ寝るか……続きは夜にしよ」

……
…………

終わり。HTML化依頼出して終了。

おつおつ、さえはんのエロエロ期待

敵が強くなってるって話は出てるしどこかでパワーアップか新機体かはあるだろうな
イベントで気力130から始まる感じで

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