シンジ 「 倒壊した建物の隙間に閉じ込められた、アスカと二人で 」 (71)


シンジ「アスカ、そんな格好で寝てたらお行儀悪いよ...」

アスカ「うるさいわね、バカシンジ!あんたはあたしの保護者かっての!」

シンジ「で、でも、ミサトさんにも注意されて」

アスカ「今日はミサトは帰ってこないからいーの!さっさとお風呂沸かす!」

シンジ「わ、分かったよ、ちょっと待ってね...ん?」カタカタッ



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アスカ「ちょ、ちょっと、え、なにこれ」カタカタ

シンジ「地震、かな、でもそこまで、っうわぁ!」ドンッ

アスカ「きゃあああああああ!」ガタガタ

シンジ「か、かなり大きいよ!アスカ!倒れてくる物に注意して!」ガタガタ


アスカ「なによこれ、なんなのよ!」

シンジ「っ、ヒビが!アスカ!こっちに!」

アスカ「で、でも!こういう時は机の下って!」

シンジ「いいから早く!早くこっちに!」


アスカ「揺れて、て!動けないのよ!」ガラッ

シンジ「っ、危ないアスカ!」ダッ

アスカ「え」グイッ

アスカ「きゃああああぁぁぁぁ......」ガラガラガラガラ...


アスカ「...っ...ンジ...起きなさいよ!バカシンジ!」

シンジ「...アス、カ?」

アスカ「シンジ!大丈夫!?意識はちゃんとある!?」

シンジ「う、ん...意識は、ある...っ痛!」


アスカ「ちょっと!どっかケガしてんの!?」

シンジ「み、右足が、何かに挟まって...っ」

シンジ「ごめんアスカ、挟まってるもの、退かせれ、る...?」

アスカ「く、暗くてよく見えないけどやってみるわ!」

シンジ「う、ん、ごめんね...」


アスカ「ふ、ん...!っ、うぅぅ...!」グイィ

シンジ「...アスカ、厳しそう?」

アスカ「こ、このアスカ様に無理なことなんてっ!」

シンジ「アスカ、アスカが怪我したら、元も子もないから...」

シンジ「大丈夫、圧迫されてるけど、もう、大丈夫、だよ...」


アスカ「...バカね、あんたのどこが大丈夫そうなのよ」

シンジ「救助が来るまで待っとくよ、すぐ、来るはずだから」

シンジ「大丈夫、アスカは悪くないし、僕は死なないから、だから」

シンジ「そんな泣きそうな顔しないでよ、アスカ」

アスカ「...っ、ごめんね、シンジ」グスッ


シンジ「ねえ、アスカ、暗くてよく見えない、けどさ」

シンジ「アスカが分かる範囲で良いから、どういう状況か、説明してもらえる?」

アスカ「う、ん、あの時、シンジがあたしの手を引っ張って、部屋の隅に移動させられて」

アスカ「その瞬間に、建物が崩れて、瓦礫に埋もれて」


アスカ「ここだけ、家財道具とかの隙間が出来てたから私は助かった、けど」

アスカ「あんたは全然動かなくて、あたし、どうしたらいいか、わか、らなく、てっ...」グスッ

シンジ「...そっか」

アスカ「ごめんね...シンジ...あたしがあの時、もっと早く移動してたら...っ」


シンジ「ううん、気にしなくていいよ、アスカ」

シンジ「ヨーロッパでは地震は少ないっていうし、二人とも助かったんだから」

アスカ「バカシンジ、あんたは無事じゃ済んでないじゃない...」

シンジ「足だけなんだから、大丈夫だよ、アスカ、心配しないで」


シンジ「ところで、救助は呼んだ...?」

アスカ「電波、繋がらなくて...」

シンジ「そっか、それじゃあ、ちょっと待たないとね」

アスカ「...うん」シュン


シンジ「こんなにしおらしいアスカを見る日がくるなんてね...」タハハ

アスカ「茶化すな、バカシンジ...」

シンジ「いつもだったら、こんな近くにアスカの脚があったら、怒鳴られてるのに...」

アスカ「え、あっ、ちょ、ちょっと!変態シンジ!何見てんの!」アセアセ


シンジ「だ、だって、動けないんだから、しょうがないじゃないか!」

アスカ「そ、それでもそんなことフツー口に出して言う!?あんたバカァ!?」

シンジ「...あはは、やっぱりアスカはそうじゃなきゃ」

アスカ「な、なに言ってんのよ!このバカシンジ!変態!サイテー!」ゲシゲシ

シンジ「ちょ、ちょっと、蹴らないで!痛い痛い!」


アスカ「ところで、あんたどうして部屋の隅に逃げたのよ」

アスカ「学校の防災訓練じゃ机の下でしょ?何か理由があるの?」

シンジ「うん、何かで見たんだけど、結局机の下だと小さくて、足とか挟みやすいんだって」

シンジ「だからこうして、壁際に、壁際って固いし、普通は脱出しやすいらしいよ」

アスカ「脱出、かぁ...」


アスカ「ここから出れるのかな、あたしたち...」

シンジ「GPSもあるから、場所は分かると思うよ」

シンジ「それに、自分で言うのもなんだけど、僕達の救出優先度って低くないと思うし」

シンジ「2時間くらいで、救出されると思うよ、だから、心配しないで、アスカ」ニコッ

アスカ「...うん」

アスカ(あんたが気絶してる時間だけでも2時間は経ってるのよ、バカシンジ...)

また昼辺りに

プルル プルル

アスカ「っ、ミサトから!電波繋がったんだ!」ピッ

アスカ「もしもしミサト!今どこにいるの!」

ミサト『...カ...こで...てる......ぶ...く......から』


アスカ「なに!?全然聞こえない!ミサト!?」

ミサト『...だか...こ...ンジ......いま...か...ら...』

アスカ「ああもう!聞こえないからこっちの伝えたいことだけ伝えるわよ!」

アスカ「今ミサトの部屋なの!でもミサトの部屋崩れて、なんとか隙間に逃げ込んだわ!」

アスカ「シンジの足が挟まってるけど、今の私じゃどうにもできない!早くきて!」


ミサト『...は...るの...ぜった......しちゃ...だ...  』プツッ

アスカ「あっ、きれた...」

シンジ「でも、場所とかは伝えれたから、すぐにでも助かるよ」

アスカ「ええ、後は待つだけ、頑張って耐えなさいよバカシンジ」

シンジ「うん、頑張り、たいな」ツゥ


アスカ「遅いわね、ミサト、全然来る気配ないじゃないの」

シンジ「そう、だね、でも、来てくれる、よ...」ウツラウツラ

アスカ「ちょっとあんた、顔色悪いわよ、ホントに大丈夫?」

シンジ「う、ん、なんか、意識が少し、あと、足もなんだか...」


アスカ「ちょ、ちょっと、それ大丈夫なの!?足は圧迫されてるだけって...っ」ハッ

アスカ「足から血が出てるじゃない!なんで言わないの!」

シンジ「え、血...?」

アスカ「...あんた、もしかして、足の感覚が」


シンジ「ごめん、ね、痛みがもう...感じなくて...」

アスカ「このままじゃ足が使い物にならなくなるわよ!」

シンジ「う、ん...」

アスカ「ちょっとバカシンジ!しっかりして!バカシンジ!シンジ!」


アスカ(シンジは見たところ頭に傷はない、だから、原因は圧迫されてる足に)

アスカ(イヤ、また、目の前で大切な人が亡くなるのは、イヤ、イヤ!)

アスカ「くそっ、動いて、動いてよ、動かすのよあたし!」グググッ

アスカ「動いて、動いて、動けえええええええ!」ググッ ガラッ

アスカ「っ!やった!シンジ、足引っこ抜いて!」


シンジ「わか、った...」

アスカ「っうあぁ!はぁ、はぁ、はぁ、や、った...」

シンジ「ぅぁ、っう...」

アスカ「はっ、シンジ!もう大丈夫よ!もう大丈夫だからね!」

シンジ「...そ、っか、アス、カ」

シンジ「ありがとう、ね...」


アスカ「っ、べ、別にこんなのあたしにとっては余裕よ!」

シンジ「ふふっ、照れ隠しが、下手くそなん、だから...」アハハ

アスカ「だれが照れ隠しよ!だれが!」ゲシッ

シンジ「蹴らない蹴らない、でも、これで後は、待つだけ、だね」


アスカ「ええ、そうね、ちょっと疲れたから、あたし寝るわね」グイッ ボフッ

シンジ「わかった、って、ちょっと、アスカ...?」

アスカ「痛みに耐えたご褒美よ、なによ、あたしの膝枕が気に食わないっての?」ギロッ

シンジ「...ううん、ありがとう、おやすみ、アスカ」

アスカ「ええ、おやすみ、バカシンジ」

インパクト後の突貫工事でマンションの耐震とかガバガバそう


アスカ「...ぅ、ん、結構寝れたわね、なにか進展あった、バカシンジ?」

シンジ「」

アスカ「あんたまで寝てるの?ほら、起きなさい、バカシンジ、膝から降ろすわよ」

シンジ「」


アスカ「...ねえ、シンジ?早く起きてよ、ねえ、シンジ?シンジ!?」

アスカ「ほら!冗談よしてよ!シンジ!なんでよ!シンジったら!ねえ!」ユサユサ

シンジ「...ア...ス......カ......」ヒュー ヒュー

アスカ「シンジ!どうしたの!ねえったら!」プルル プルル

アスカ「っ、もしもしミサト!今どこにいるの!」


ミサト『やっと繋がった!今そっちに向かってるわ!後少し待ってなさい!』

アスカ「ねえ!シンジの息が浅いの!どうしたらいい!?」

ミサト『っ!あんたもしかして、シンちゃんの足瓦礫から引っこ抜いたりしてないわよね!?』

アスカ「シンジが苦しそうだから、頑張って引っこ抜い」

ミサト『なにやってんのよバカ!!!』


アスカ「ひっ!」ビクッ

ミサト『電話口で言ったじゃない!絶対に足を抜いたらダメだって!』

アスカ「電波が悪くて聞こえなかったの!それになんでダメなのよ!」

ミサト『クラッシュ症候群よ!圧迫された場所が壊死して毒素が発生するの!』

ミサト『圧迫した部位を解放したら、その毒素が臓器に回ってダメージを及ぼすのよ!!』


アスカ「...う、そ、そんなの、聞いてない」

ミサト『しっかりしなさいアスカ!軽度のクラッシュ症候群なら治療も可能よ!』

ミサト『私達は後30分程度でそこに着くわ!今のシンちゃんの様子は!?』

アスカ「い、いまのシンジの様子は...」チラッ


シンジ「」ヒュー ヒュー

アスカ「唇が紫色で、顎だけで、呼吸してて」

ミサト『......』

シンジ「」ヒュ ヒュ

アスカ「あ、ぅぁ、どんどん、呼吸が浅くなって、ねえ、ねえ、ミサトったら」グスッ


アスカ「どうしたらいいの、ねえ、教えて、やだ、やだぁぁぁ」ポロポロ

ミサト『...アスカ、落ち着いて聞いて』

ミサト『......今の内、に、ね』

ミサト『今の内に、シンちゃんに最期の挨拶をしておきなさい』


アスカ「...え」

ミサト『それは、死線期呼吸の初期症状よ、直に、心停止することになる』

ミサト『いえ、もっとハッキリ言うわ、シンちゃんは、助からない』


アスカ「...イヤよ、イヤ、助かるの、シンジは、だって、もう大丈夫だって」

ミサト『私達も全力を尽くすわ、だけど、覚悟はしておくべきよ』

アスカ「日本の医療は、凄いってママが言ってたの、だから、だから」

ミサト『...アスカ』

アスカ「きっと、シンジは、すぐに治って」

ミサト『アスカっ!!!』


アスカ「っ!」

ミサト『逃げちゃダメよ、アスカ、現実からも、あなた自身からも』

ミサト『アスカ、私は伝えたわ、1日後のあなたが後悔しないように、あなたは行動すべきよ』

ミサト『すぐに...あっ...ううん、すぐに、すぐに、すぐに、行くから、待っててね』ピッ


アスカ「え、あ、ミサト、まって」プツッ

アスカ「...ウソよ、そんなの、だって、シンジは、シンジは」チラッ

シンジ「」

アスカ「っあ、あぁ、シンジ、しんじ、しんじぃ、なんでぇ...」ポロポロ


アスカ「しんじ、起きて、起きてよぉ、お願い、起きて、あぁぁ...」

アスカ「しんじ、しんじ、しんじぃ...ぅぁぁ...」

アスカ「.........」

『1日後のあなたが後悔しないように、あなたは行動すべきよ』


シンジ「」

アスカ(...死線期呼吸、思い出せ、これは、心肺停止のサイン、だから)

アスカ(心臓マッサージと、人工呼吸で、まだ、助かるはず)

アスカ「...っ、そうよ、そう、まだ、まだ死んでないから、だから」グッ

アスカ「起き、なさいよ、ばか、しんじ、あんた、大丈夫、って、言った、でしょ!」グッ グッ グッ

アスカ「だから、だから、起き、てよ、シンジ、んっ」グッ グッ フーッ


アスカ「...っ...!」グッ グッ グッ フーッ

シンジ「 ...っぁ」ヒュ ヒュ

アスカ「っ!シンジ!あんた、意識が!」

シンジ「......あ...す...か」


アスカ(シンジは、今にも消え入りそうな意識を、取り戻して)

アスカ(ああ、もう、思い出した、ドイツの座学で習った、クラッシュシンドロームの症状)

アスカ(応急処置を施しても、意味ないって、すぐに意識が低下して、それで)

アスカ(でも、そんな、意識を取り戻したのに、すぐに、すぐに、しんじは)

アスカ「しん、じ、あ、ぅぁぁ、ああぁぁぁぁぁ...」ポロポロ


シンジ「.........」

アスカ「ぅあ、ああぁぁぁ...ああああぁぁぁぁ......」ポロポロ

シンジ「...あす、か」スッ

アスカ「あ、ぅぁ、しん、じ...」


シンジ「ごめ、ん、ね」

アスカ「...っ!なんで、あんたが謝るのよっ!」ギュッ

シンジ「あす、か、を、泣かせた、から...」

アスカ「ううんっ、そんなことないっ、あたしは、あたしはっ!」

アスカ「あんたがいてくれたから、ここまで、これたのにっ!」


アスカ「あんたがいないと、ダメなの、だから」

アスカ「だから、あたしは、あんたにもっと...」

アスカ「ぅぁ、ああぁぁ、ああぁぁぁぁ.....!」

シンジ「あす、か...耳、よせて...」


アスカ「うん、うんっ、聞いてあげるからっ」

シンジ「あす、か」

アスカ「.........」

シンジ「...あり、がとう」

アスカ「っ!」


シンジ「...これ、だけは、伝えておきたくて」

アスカ「しんじ、しんじぃ...うあぁぁぁぁぁ...っ!」ギュゥ

アスカ「あたしだって、あんたに、感謝してて」

シンジ「う、ん」


アスカ「あたし、あんたと出会えて、ホントに人生変わって!」

アスカ「あんたと離れたくないのっ、好き、大好きなのっ、だから」

アスカ「あたしが死ぬ最後の時まで傍にいてよ!こんなところで死なないでよ!しんじ!」

アスカ「しんじぃ、離れちゃやだぁぁ、ああぁぁぁ...」


...

シンジ「...ごめん、ね、あすか」

アスカ「...なに謝ってんのよ、バカシンジ」

シンジ「本当は、だきし、めて、あげたい、んだけど」

シンジ「もう、体の感覚が、なく、てさ」


アスカ「ううん、いいのよ、こうやって最期に気持ちを伝えられたから」グスッ

アスカ「普通の奴だったら、意識を取り戻す前に死んでるわ、しぶといわね、バカシンジ」

シンジ「は、は、ねえ、あすか、最期にお願い、聞いてもら、って、いい、かな」

アスカ「今なら何でも聞いてあげるわよ、ほら、さっさと言いなさい」


シンジ「ひとりは、さみしい、から、さいごまで、そばに...」

アスカ「ふん、そんなの頼まれなくても、やってるっての」

シンジ「ふふ、あすか、あり、がとう」

アスカ「それはこっちの台詞よ、ありがとう、シンジ」


あすか いる?

ええ ここにいるわよ

はなれない で

ええ 何があっても離れないから 安心しなさい

あすか

なに


あえて よかった

あたしもよ

もう ねむくなってきたよ

そっか あたしは近くにいるから 安心して寝ていいわよ


あすか

うん

あす か

うん

あ す  か

うん


...

......

.........

「おやすみ、しんじ」

―――――――――
――――――
―――


ミサト『と、このように知識は時に命を救い、愛情もとい勇気は時に命を奪うわ、分かったかしらヤンデレ』

アスカ『誰がヤンデレよ誰があああああああ!』

シンジ『ちょ、アスカ、落ち着いて』

ミサト『一般人がエヴァの災厄に晒されるのと同様、あなた達も自然災害に巻き込まれる可能性はあるの』

ミサト『その時、命を守るのはあくまで知識よ、無謀な勇気じゃ人は救えない、そこは履き違えないでね』


シンジ『で、でも、友情で人を救えることだって』

ミサト『破ぁ?』

シンジ『漢字変換に悪意があると思うんですよミサトさん』

アスカ『破ぁ?』

シンジ『うるせえ父さんに言えダミープラグぶつけんぞ』


アスカ『でも、そうね、友情で人を救える時も、あるかもしれないかもわね』

シンジ『アスカ!やっぱり君だけはへぶしっ!』ベシッ

ミサト『あら、珍しいじゃない、アスカがシンちゃんの肩を持つなんて、それは、どういう時?』

アスカ「人の心を救うのは、知識じゃなくて友情だと思うわ、あたしの笑顔のようにね」


アスカ「人の命を救うのは幾人の知識かもしれないけど、人の心を救うのは一人の感情じゃないかしら」

アスカ「それは、機を逃すと二度と得られないものよ、だから、あたしはそれも大事にしていきたいわ」

アスカ「ちょっと、シンジ、何笑ってんのよ!バカシンジ!女の子を馬鹿にするなんて最低ね!」

ミサト「......アスカ」

アスカ「ミサトも!何からかってんの!ああもう!部屋で寝るわね!また明日!それじゃあ!」

アスカ「おやすみ、しんじ」



 終 劇 

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年03月19日 (月) 23:42:44   ID: 7l4RVtyX

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