男「サラリーマンだって妄想ぐらいするんだよ」 (33)

課長「おい、男君」

男「なんですか、課長?」

課長「なんですかじゃないよ。なんだね、この報告書は!」

課長「『客先で出されたコーヒーがとてもおいしかったです』なんて文章いらんよ!」

課長「報告書は日記帳じゃないんだ! 業務に関することだけを書きたまえ!」

男「す、すみません」

課長「すぐ書きなおすように!」

男「トホホ……」



同僚「あいつも相変わらずだな~」

OL「クスクス……」

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ザザザザザッ!

テロリストA「動くな!」ジャキッ

テロリストB「この会社は我々が占拠した!」ジャキッ



課長「な、なんだね!? 君たちは!?」

同僚「テ、テロだ……! 企業を狙うテロリストだ……!」

OL「いやぁぁぁぁぁっ!」

男「ふぅ、やれやれ……」

男「ここは俺の出番だな」スッ


テロリストA「――む!」

テロリストA「動くなと言ったはずだ!」ガガガガガッ


男「こんなもの、ちっとも痛くない」キキキキキンッ


テロリストA「なにィ!?」

テロリストB「弾が当たってるのに効かない!?」

男「とりゃ! せやぁ!」

ドカッ! バキィッ!

テロリストA「ぐはっ!」

テロリストB「ごはぁっ!」


同僚「す、すげえ! 二人を一瞬で!」

OL「かっこいい……!」

課長「これがいつもヘマばかりしてる男君の本当の姿なのか……!?」


男「皆さん……今見たことは内緒にしといて下さい! 俺は平凡な社員ですから!」


………………

…………

……

男「…………」ボー…

課長「男君」

男「…………」ボケー…

課長「男君!」

男「は、はい! なんでしょう、課長!?」

課長「なにをボーっとしていたんだね!?」

男「いや、ちょっとばかし妄想を……」

課長「妄想!?」

課長「君には毎回毎回あきれ果てるよ、まったく」

課長「妄想なんかしてる暇あったら、この溜まってる書類を少しでも片付けたまえ!」

男「は、はい!」バサバサッ




同僚「あいつも相変わらずだな~」

OL「クスクス」

OL「課長」

課長「ん?」

OL「内線で連絡があって、応接室にお客様がお見えだそうです」

課長「……? 今日は来客の予定はなかったはずだがな。まぁいい」

課長「分かった、すぐ行く」

課長「男君、しっかり仕事するように!」

男「はいっ!」

……

同僚「大変だ、大変だ!」

OL「どうしたの?」

同僚「応接室に来てる客、どうも暴力団の類らしくってよ」

同僚「すっげえ揉めてるって! 部長が出てもどうにもならないみたいだ!」

OL「え~、どうすんのよ!?」



男「…………」

男「……やれやれ、仕方ないな」スクッ

男「俺が行くよ」

同僚「ハァ?」

同僚「お前が行ったってどうにもならねえよ!」

OL「そうよ! 下手したら、火に油を注いじゃうわ!」

男「大丈夫さ」スタスタ



同僚「あいつ……いつもとどこか違ったな」

OL「うん……とても頼もしく見えたわ」

―応接室―

組員A「これはスキャンダルですよ?」

組員B「この情報が世間に知れ渡ったら、この会社の信用は地に落ちちまうぜ!」

課長「なんとか穏便に……!」

部長「どうすればよろしいでしょうか……?」

組員A「まぁ……手始めに十億ほど出してもらいましょうか」

課長「十億!?」

部長「そんな条件を飲めるわけが……」

組員B「うるせぇ! てめぇらは従うしかねぇんだよ!」

組員A「そういうことです」

コンコン…

男「失礼します」ガチャッ


課長「き、君!?」

部長「なんで平社員の君がこんなところに!? すぐ出ていきたまえ!」


男「…………」チラッ


組員A「?」

組員A「……ひっ!」

組員B「どうしました、兄貴?」

組員A「なぜ、あなたがここに……!?」

男「お久しぶりです」

組員A「ど、どうも……」

男「相変わらず、タチの悪い仕事をされているようですね」

組員A「ハ、ハハハ……」

男「ところで、おたくの組長さんはお元気?」

組員A「は、はいっ!」



課長「これは……!?」

部長「…………?」

組員B「何やってんですか! こんな奴、とっとと俺が追い出し――」ガシッ

組員A「バカ、やめろ!」

ドゴォッ!!!

組員B「がはぁっ!」

組員B「…………」ピクピク…

男「さ、どうしますか」

男「前みたいに、組を壊滅寸前まで追い込まれてみますか?」

組員A「い、いえっ! あなたを敵に回すなんてとんでもない!」

組員A「おい起きろ! 失礼しましたぁっ!」タタタタタッ

男「ふぅ……」

課長「君は……いったい……?」

男「ただの平凡な会社員ですよ」

OL「ねえ、聞いた? 男君が暴力団を追い払っちゃったんだって!」

同僚「信じらんねえ……」

プルルルル…

OL「お電話ありがとうございます」

OL「えっ、社長!? はいっ! お待ち下さい!」

OL「男君、社長からお電話!」サッ

男「どうも」

男「もしもし」

社長『話は聞いたよ。よくやってくれた』

男「いえいえ、いつものことです」

社長『あそこの組員も、君が我が社にいることは知らなかったようだな』

男「ええ……知ってたら、近づきすらしなかったでしょうね」

社長『ところで、ついでに頼みたいのだが、今夜ビルに産業スパイが侵入するという情報が入った』

社長『ひっ捕らえてくれないか』

男「いつもいつも人使いが荒いなぁ……あなたは」

男「まぁいいでしょう。必ずや遂行します」

夜――

スパイ「…………」コソッ

スパイ「…………?」

スパイ「おかしい、調べによればここにあるはずなのに……」ガサゴソ…


男「そんなところ探しても、重要書類はないよ」


スパイ「!!!」

男「本物はこっちだ」スッ

男「欲しかったら、俺を倒すんだな」

スパイ「ククク……どうやら貴様、俺をただのスパイだとナメているようだな」

スパイ「いっておくが、俺は拳法の使い手なんだ!」ビュオッ

バキィッ!

男「ふん、全然痛くないな」

スパイ「なにぃっ!?」

男「せやぁっ!」

ドカァッ!!!

スパイ「ぐはぁぁぁ……っ!」ドサッ…

男「もしもし、社長ですか?」

男「たった今、仕事は終わりましたよ。スパイは捕えました」

社長『ありがとう』

社長『やはり君は我が社に必要不可欠な存在だ!』

男「あまり褒めないで下さい。俺はしがない三流サラリーマンですよ」



………………

…………

……

男「…………」ボー…

課長「男君」

男「…………」ボケー…

課長「男君!」

男「は、はい! なんでしょう、課長!?」

課長「なにをボーっとしていたんだね!?」

男「いや、ちょっとばかし妄想を……」

課長「妄想!?」

課長「いったいどんな妄想だね?」

男「ほら、平凡な社員が実はすごい社員……みたいな妄想ですよ」

男「日頃しょうもない妄想ばかりしてる社員が、本当に暴力団を追い払ったり、産業スパイを退治したり……」

男「いわば学校テロリスト妄想の会社バージョンってやつです」

男「課長だってよくやるでしょう?」

課長「なんだねそれは」ハァ…

課長「そんな妄想なんかするわけないだろう!」

男「ひいっ! すみませんっ!」



同僚「あいつも相変わらずだな~」

OL「クスクス」

課長「いいかい、さっき頼んだ会議の資料、今日中に作ってくれたまえよ」

課長「明日の部課長会議で使うんだからね」

男「は、はい! 作ります、作ります!」カタカタ

同僚「ハハハ、妄想なんてのはせいぜい中学までで卒業しなきゃな!」

OL「ね~!」

男「いつまでも子供で悪かったな!」

男(……ちぇっ、うちの会社は少年の心を持った人間が少なすぎる)

男(もっと妄想を楽しんだ方がいいと思うんだけどなぁ)

バァンッ!!!


武装兵A「手を上げろ!」ジャキッ

武装兵B「全員、動くな!」ジャキッ



男「え!? え!? え!?」

男(突然、銃を持った兵士がやってきた!? なんなの!? なんなのこれ!?)

課長「おっと」サッ

パンッ! パンッ!

武装兵A「ぐおっ!」ドサッ…

武装兵B「あぐっ!」ドザッ…



男「課長!?」

男(課長が……二人を一瞬で射殺した!? なんのためらいもなく!? てか、なんで銃持ってるの!?)

同僚「やるぅ! 二発で二人仕留めた!」

OL「相変わらずお見事です、課長!」パチパチ

課長「まだ腕は衰えてないようでよかったよ」



男(課長がやったことに、あの二人もまったく驚いてない!)

男(どうなってんのこれ!?)

課長「ついに敵も本腰を入れて攻めてきたな」

課長「これでちょうどいい口実ができた。今度はこちらから攻め込むぞ!」

同僚「はいっ!」

OL「はいっ!」

男(敵ってなに!? 攻め込むってどこに!?)

課長「では男君、留守を頼んだよ!」

男「は、は、はい!」

課長「出撃!!!」

ザザザッ!


シーン…


男「…………」

男「ほっぺたつねってみるか……」ギュッ

男「痛い……」

男「どうやらこれは……夢でも……妄想でもないみたいだな……」







― 完 ―

以上で終わりです

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