神谷奈緒「気持ちはすぐ傍に」 (13)

アイドルマスターシンデレラガールズ 神谷奈緒のSSです

アイドルそれぞれに担当Pがいます

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奈緒「これから出張ぉ~~!?」


あたしの素っ頓狂な声が室内に響く。

朝の発声練習よりもその声は大きかった……と思う。


P「な、奈緒ちょっと声抑えて。周りのプロデューサーに迷惑だから」

奈緒「あぁゴメン……ってか急すぎないか!?」

P「そうなんだよ。ライブの運営の人手が足りなかったみたいでさ、この部署にも応援要請がきたんだ」

奈緒「それでPさんが行くってことか」

P「ごめんな、2日くらいで帰ってくるから。その間は渋谷さんのプロデューサーの指示に従ってくれ」

奈緒「……ん、大丈夫だよ。たった2日ならいつも通りレッスンやるだけでいいし」

P「あー……あとなんだけど……奈緒の誕生日、あるだろ?」


Pさんがあたしの顔を気まずそうに見てくる。

そう、明日は9月16日……あたしの誕生日だ。

P「直接祝ってやれなくてごめん」

奈緒「あ、謝らなくていいよ! あたしは平気だから。帰ってきてからお祝いしてくれれば良いからさ」

P「今年も一緒にワイワイ騒いで過ごそうと思ったんだけどなぁ……」

奈緒「あはは! それも後からで良いよ。……ほら、そろそろ行かなきゃ。見送ってやるよ」


あたしはPさんの後ろに回って背中をグイグイと押す。

……ちょっと今の顔は見られたくないから。

___


Pさんを見送った後、あたしはいつも通りレッスンルームに来ていた。

身体を動かすレッスンは好きだけど今日はちょっと……。

なんていうか……あまり気分が乗らない。


加蓮「聞いたよ奈緒ー」


トレーナーさんを待っている時、加蓮にいきなり話しかけられた。

なーんとなく嫌な予感……。

奈緒「何を聞いたんだ?」

加蓮「ふふ~♪ とぼけちゃって。奈緒のプロデューサーの事なんだけど」

奈緒「う……」

凛「私のプロデューサーが教えてくれたよ。出張だってね」

奈緒「凛まで……。あぁ、今日から2日間なんだ」

凛「……じゃあ、奈緒の誕生日には……」

奈緒「ん、まぁ……いないけど」

加蓮「だからそんなに寂しそうな顔してるんだ~」

奈緒「なっ!? あたしは別にそんな顔してないぞ!」

加蓮「強がっちゃって、このこの!」

奈緒「やめろ! つつくな~!」

加蓮「特別な日に会えないのは残念だけど、仕事なんだからしょうがないって」

奈緒「んなの分かってるってば」

凛「皆なにかと忙しそうにしてるからね。……そういえば加蓮、去年の誕生日はプロデューサー居なかったよね」

奈緒「あぁ、そういやそうだ」

加蓮「うん、事務所の企画のロケハンで出掛けてたんだ」

奈緒「……寂しくなかった?」

加蓮「んー、ちょっとだけ。……でもね」

奈緒「でも?」

加蓮「なんていうのかな、離れていても気持ちは繋がってるって感じ。だから平気だったよ」

奈緒「気持ち……」

加蓮「奈緒ももっとプロデューサーにアタックして絆を深め合わないとね~」

奈緒「い、いちいち茶化さなくていいから!」

凛「2人ともそこまで。トレーナーさん来たみたいだよ」

奈緒「……よし! 今は目の前のことに集中しなきゃな!」


……どうせすぐに会えるんだ。

気持ちを切り替えて頑張るぞ!

___

___


奈緒「……とは言ったものの、なんだかんだ気にしちゃうよなぁ……」


結局、事務所にいる間はずっと思い悩んでいた。

こうして帰り道でも……。


奈緒「……そういや一人で帰るのも久しぶりだな」


凛や加蓮たちと遊びに行った時以外はいつもPさんの車で送ってもらっていたな。

離れてみて初めて気が付くもんだ……。


奈緒「ふぅ、ただいまー」

奈緒母「おかえりー!!」

奈緒「……いやにテンション高くないか?」

奈緒母「気のせい気のせい! ほら、そろそろお父さんも帰ってくるから皆でご飯食べようか」

奈緒「う、うん」


……お母さんはこの後ご飯の時もずっとテンションが高いままだった。

___


奈緒「よし! 今日の復習終わり!」


パタン、とノートを閉じる。

レッスンやお仕事の中で指摘された点を記録するのが、あたしの習慣になっていた。

次に活かすために必要だからって、Pさんに教えられた事だ。


奈緒「お……もうこんな時間か」


机に置かれた時計を見ると、日付けが変わるくらいの時間。

あと10分ほどで9月16日……あたしの誕生日になる。


奈緒「……電話くらいしてくれてもいいのに、ばーか」


真っ黒な画面のスマホにちょっと悪態をつく。

もしかするとまだ仕事しているのかもしれない。

それでも声を聴きたかった。


奈緒「あーあ。こんなに寂しがり屋だったとはな……」

自分にもこんな一面があることを初めて知った。

……それもこれもアイツに出会ってからだ……多分。

そんな時、あたしのスマホがブルブルと震えだした。


奈緒「誰だろ…………っ!?」


着信画面には今一番話したい人の名前。

慌てて応答する。


奈緒「もっ……もしもし?」

P『奈緒、こんばんは。今いいかな?』

奈緒「あ、おう……いいけど」

P『夜遅くにごめんな。今さっき仕事を終わらせたところなんだよ』

奈緒「そ、そうか。お疲れ様」


変に緊張して素っ気ない返しになっちゃう……。


P『ありがとう。……実はさ、奈緒が寂しがってるかなーって思って電話したんだ』

奈緒「はぁ!?」

P『あはははっ! 俺が出張だって言った時に暗い顔してたからさ』

奈緒「なっ……バレてた!?」

P「奈緒はすぐ顔に出るからなー」

Pさんの呑気な笑い声が聞こえる。

……人の気も知らないで……ばかPさん。


奈緒「…………さ、寂しかった」

P『ん?』

奈緒「寂しかったよ! 悪いか!」

P『……』

奈緒「せっかくの誕生日、毎年毎年Pさんにお祝いしてもらってたから今年もそうなんだって思ってたよ!」

P『……』

奈緒「でもPさんはお仕事で……。お仕事だから仕方ないって分かってたけどさ……」

P『……ごめん』

奈緒「……あたしもごめん。いきなり怒鳴っちゃって」

P『気にするなよ。それだけ俺の事を想ってくれてるんだなーって』

奈緒「うぅ……言わなきゃよかった。……ばか」

P『奈緒』

奈緒「な、何?」

P『机の一番下の引き出しを開けてみな』

奈緒「はぁ? なんだよ一体」

P『いいからいいから』


妙にウキウキしてる声に促されて引き出しを開ける。

奈緒「あ……」


それと同時に16日を告げる時計のアラームが聞こえた……。


奈緒「これ……」

P『誕生日おめでとう、奈緒』


リボンの付いた小さな箱。


奈緒「Pさん! これって……」

P『プレゼント……直接渡すつもりだったんだけどね。出張に行く途中、奈緒の家に寄ってお母さんにお願いしたんだ』

奈緒「!! だからあんなに上機嫌だったのか!?」

P『ははは! 奈緒も喜んでくれるって言われたよ』

奈緒「あわわわわ……明日絶対いじられる……」

P『……奈緒』

奈緒「あ、え? なに?」

P『もう一度言わせてくれ。誕生日おめでとう』

奈緒「…………ありがとう、Pさん。あたし……すごく嬉しい!嬉しいよ!!」

P『喜んでくれて何よりだ。俺も嬉しいよ』


なんだか心が温かくなってきた……この温かい気持ちがPさんと繋がってるってことなのかな。

やっと分かった気がするよ。

奈緒「あはは! またアンタから元気をもらっちゃったな」

P『俺の方こそいつも奈緒から元気をもらってるよ』

奈緒「……そ、そうか? へへ~♪ 」

P『今絶対ニヤケ顔だろ』

奈緒「う、うるさいなぁ! …………あー、話変わるけどさ、プレゼントの中身ってなんだろ?」

P『イヤリングだよ。奈緒に似合うと思ってね』

奈緒「イヤリング……」

P『開けて見てみな』

奈緒「……いや、今はいいや」

P『どうしてだ?』

奈緒「絶対あたしにピッタリだって分かるもん。Pさんが選んでくれたものだからさ」

P『……そっか』

奈緒「Pさんが帰ってきてから開けようよ。付けた姿……あ、あなたに最初に見てもらいたいし……」

P『お、おぉ……』

奈緒「……な、何アンタまで恥ずかしがってるんだよ!!」

P『不意討ちでデレられると俺も弱いから……。……分かったよ。最高に可愛い奈緒を見られるの、楽しみにしてる』

奈緒「へへ♪ 見せてやるよ。とびっきり可愛いあたしをな!」


……ほんの少しだけ素直になれたかな。

今年の誕生日も、とても幸せな思い出になりそうだ。

終わりです



奈緒可愛い!

奈緒誕生日おめでとーーー!!


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