【ガルパン】西住みほ「これが私の戦車道・アンツィオ編」 (207)

※もしもアンツィオの戦車道強化にスカウトされたのがアンチョビじゃなくてみほだったら。

※そういえば9月12日はペパロニ姐さんの誕生日だったっすね、おめでとうっす。

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カルパッチョ「というわけでペパロニさん、彼女が転校して来た新隊長の西住みほさんよ」

ペパロニ「はあああ!?」

みほ「あ…あの…、よろしくお願いします…」

ペパロニ「おい!どういうことだよこれ!」

カルパッチョ「彼女、西住流の家元の次女で、黒森峰で副隊長やってたんだけど、事情があって転校することになって、
それで学長が戦車道の強化のためのコーチ兼隊長としてスカウトしたんだって。なに?自分が隊長やりたかったの?」

ペパロニ「いや、そういうわけじゃないけどさあ…」

ペパロニ「おいお前!」

みほ「ひぃっ!は…はいっ!」

ペパロニ「大丈夫かよこいつ…」

カルパッチョ「だったら試してみる?」

ペパロニ「え?」

みほ「え?」

カルパッチョ「ルールは4対4の殲滅戦、双方ともCV33を使用。旧日本軍では戦車同士の演習の際、
主砲の閉鎖器を外して、そこからピストルや小銃を撃ち合って砲撃に見立ててたそうよ。それに倣って
CV33の機銃を大砲に見立てて撃ち合います。でも、弾倉や給弾ベルトは使用せず、手動で遊底を開けて
1発づつ単発で発砲します。弾はペイント弾を使用、兵員室やエンジンブロックなどバイタルゾーンに命中
したら撃破、履帯、起動輪に命中したら走行不能、転輪、遊動輪に命中したら機動力低下ってことで」

みほ「はい、わかりました!」

ペパロニ「よーし、見てろよ!」

カルパッチョ「みほさんの車輌には私が操縦士として同乗するわ」

みほ「よろしくお願いします!」

ペパロニ「まあそのくらいのハンデは必要だな」

みほ「では行きます!パンツァー・フォー!」

ペパロニ「アヴァンティ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

みほ「カルパッチョさん、ありがとうございます。私、操縦はどうも苦手で…」

カルパッチョ「いえ、いいんですよ、機種転換訓練もなしでいきなり豆戦車に乗れって言われても無理でしょうし」

みほ「本当にすみません、動かし方は一通り頭に入れてたつもりなんですけど、実際にCVシリーズに乗るのは初めてで…」

カルパッチョ「えっ」

みほ「あっ、あの窪地の左、図上のB22、F5の所にお願いします。2号車は本車に随行、3号車・4号車はそれぞれ
図上C40、H12、C20、D4へ移動で」

カルパッチョ「あの…、なんで地図見ただけでこの演習場の地形がそんなに詳しく把握できてるんですか?」

みほ「ああ、今朝ジョギングのついでにちょっと一回りしてみたんです。障害物の位置とかも確認してきました」

カルパッチョ「あの…、ちょっと一回りってかなり距離あるんですが…」

みほ「でも、黒森峰にいたときは毎朝15kmくらい走ってたんで…」

カルパッチョ「ええ…」

モブ子A「すんませんペパロニ姐さん!やられました!」

モブ子B「こっちもです!」

ペパロニ「どういうことだよ!この演習場はあたしらの庭みたいなもんなのに!」

Si子「ペパロニ姐さん!あいつバケモノっすよ!」

ペパロニ「そんなわけないだろ!ええい!西住流がなんぼのもんだってんだ!」

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みほ「あのブッシュを迂回して反対側の丘へ。うまくいけばペパロニさんの背後に回れると思います」

カルパッチョ「なんでわかるんですか?」

みほ「ざっと目を通しただけなんですが、演習時の行動パターンのログを見たら、恐らくそうなんじゃないかなあって…」

カルパッチョ(単なる腕前の差なんかじゃない…、積み上げてきたものや背負ってるもののレベルが全然違うんだ…)

Si子「どうします!?」

ペパロニ「左だ!左の脇道へ入れ!うまくいけば回りこめるはずだ!」

Si子「Si!」

ペパロニ「あ、あれ?なんであいつらが真後ろに…」

Si子「がぁぁっ!やられた!エンジンに当てられました!」

ペパロニ「ウソだろ…、20分も経たないうちに全滅なんて…」

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カルパッチョ「どう?これでわかったでしょ?」

ペパロニ「…」

みほ「あの…」

ペパロニ「すげえよあんた!誰だよ隊長に相応しくないなんて言ってたやつは!」

カルパッチョ「誰もそんなこと言ってないでしょ。強いて言えばペパロニさんだったんじゃ…」

ペパロニ「こんな強いやつ初めて見たよ!あんたのこと姐さんって呼ぶよ!いいだろ!?」

みほ「いや、でも同い年だし…」

ペパロニ「じゃあ親しみを込めてみほ姐で!なあ、いいだろ!?」

カルパッチョ「好きにさせてあげてください、彼女なりにみほさんのこと認めたってことなんですから」

みほ「は、はあ…、じゃあそれで…」

ペパロニ「よーし!じゃあもうお客さん扱いしないぞ!」

カルパッチョ「最初からしてなかったでしょ…」

ペパロニ「お前ら!湯を沸かせ!釜を焚け!新人歓迎会の準備だ!」

一同「おー!」

カルパッチョ「うちはいつもこんな感じなんです。すぐ慣れますから」

みほ「大丈夫かな…」

カルパッチョ「大丈夫ですって。みほさんだったらきっとうまくやっていけるはずですよ」

みほ「改めて、よろしくお願いします!」

カルパッチョ「こちらこそよろしくお願いします」

ペパロニ「頼んだぜ!」

第1話終、次回第2話「戦車喫茶ルクレールでの再会です!」に続く。

第2話「戦車喫茶ルクレールでの再会です!」

第63回戦車道全国高校生大会抽選会場

ペパロニ「それにしてもさ、みほ姐って変わってるよな。普段はボーっとしててなんかズレてて、いかにもいいとこのお嬢って
感じなんだけど、戦車に乗ると人が変わるっていうかさあ」

カルパッチョ「そうねえ、さすがは家元の娘ってとこよねえ。黒森峰の副隊長だっただけのことはあるわ」

ペパロニ「でもさ、なんでウチなんかに来たんだ?あの腕前だったらどこでも引く手あまただと思うんだけどなあ」

カルパッチョ「いろいろと事情があるのよ」

ペパロニ「どんな?」

カルパッチョ「前回の62回大会の決勝戦のことなんだけど、試合中に黒森峰の戦車が川に転落したの。それで、
彼女…、みほさんはフラッグ車の車長だったんだけど、搭乗員を助けようとして戦車から飛び出して川に飛び込んだの」

ペパロニ「無茶するなあ、でもみほ姐らしいや」

カルパッチョ「実際、彼女が助けに行かなかったら搭乗員が危なかったんじゃないかって言われてるわ。本来なら川に落ちた時点で
試合は中断になるはずだったんだけど、運営側のミスで続行になってて、車長のいなくなったフラッグ車がそのまま撃破されてプラウダ高校
の勝ちになったの。それで黒森峰は連覇を逃したわ」

カルパッチョ「それでね、ちょうどその頃、西住流の筆頭師範だった彼女のお母さまが家元に就任することが決まってたんだけど、西住流の
一門の中にはそれが気に入らない派閥もあって、みほさんの事故はその人たちのネガキャンに利用されたのよ。それこそ針の筵だったらしいわ」

ペパロニ「ひでえ話だなあ」

カルパッチョ「本当にひどい話よねえ、それで、彼女、精神的にだいぶ追いつめられてたみたいで、転校させて環境を変えたほうがいいんじゃないかって…」

カルパッチョ「彼女、最初は盾無とか大洗とか、戦車道やってない学校に行きたがってたんだけど、『家元の娘が連覇を逃した責任も取らずに戦車道からも
逃げるとはどういうことだ』って例の派閥の人たちが言い出して、で、彼女のお父さまがウチの学長と友達で、『だったらウチに来るか?ウチはあんまり
厳しくないし』ってことになって、それで私たちの隊長役として来てくれることになったの」

ペパロニ「そうなんだ、それにしてもひでえ話だよなあ」

カルパッチョ「ひどい話よねえ、あっ、抽選が始まるわよ」

ペパロニ「えーっと、1回戦のウチの相手は…、知波単学園!?」

カルパッチョ「知波単…、あそこって割と強かったところよねえ、最近はパっとしないけど」

戦車喫茶ルクレール店内


ペパロニ「知波単かあ、あたし、あそこの連中って苦手なんだよなあ。もうちょっと人生を楽しめばいいのに」

カルパッチョ「ウチは楽しみ過ぎだってよく言われますけどね」

みほ「あはは…」

カルパッチョ「とにかく、帰ったら作戦会議ですね」

みほ「うん、とりあえず本会議に入る前に資料の検討会でも…あっ…」

エリカ「副隊長…、ああ、元でしたね」

みほ「お姉ちゃん…、逸見さん…、それに安斎先輩…」

まほ「みほ…」

エリカ「1回戦は知波単と当たるんでしょう?無様な戦いをして西住流の名を汚さないことね」

アンチョビ「おいエリカ!」

ペパロニ「なんだとゴルぁ!ケンカ売ってんのかてめえ!」

みほ「…」

エリカ「部外者は口を出さないで欲しいわね」

カルパッチョ「そんな物言いはあまりにも礼を失してるんじゃありませんか?それに我々は部外者ではありません、
今は彼女と共に戦う仲間です」

エリカ「あなたたちこそ戦車道に対して失礼じゃない?弱小校のくせに。戦車道のイメージダウンになるような学校は
参加しないのが暗黙のルールなの」

ペパロニ「ふざけんなゴルぁぁ!もう勘弁ならねえ!相手してやっから表に出ろやぁ!」

アンチョビ「ああっ!すまない!エリカお前なんてこと言うんだ!」

みほ「…」

まほ「…エリカ、もういい、やめろ」

エリカ「ですが隊長…」

まほ「私はやめろと言ったんだ」

エリカ「…」

まほ「みほ、それにそちらの皆さんも本当にすまない。私が謝っても意味がないのはわかってる、でもここは
これで許して欲しい。この通りだ、本当に申し訳ない。後日必ず本人にも謝罪させるから今日のところはこれで
納めてくれ」

エリカ「そんな、隊長…!」

まほ「黙ってろ、今のお前が口先だけで謝っても意味がないんだ」

エリカ「…」

アンチョビ「いや、みほもそっちのみんなも本当にわるかったな。後で必ず謝らせるから。ほら、行くぞ」

エリカ「…」

みほ「…」

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ペパロニ「何なんだよあいつ!腹立つなあもう!」

カルパッチョ「ちょっとあれはないですよねえ」

みほ「ごめんなさい…。でも、逸見さんがああ言うのも仕方ないから…、全部私のせいで…」

ペパロニ「みほ姐はちっとも悪くないって!周りの連中のせいだって!お人好しにも程があるよ!」

カルパッチョ「まあそこがみほさんの良いところでもあるんですけどね」

ペパロニ「それにしてもあの若白髪!試合で会ったらボコボコにしたらぁ!」

みほ「うーん…、でも逸見さんティーガーⅡの車長だからCV33では難しいかな…」

ペパロニ「そんなのやってみなけりゃわかんないだろ!」

カルパッチョ「絶対無理だと思うけど…」

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アンチョビ「おいエリカ、みほが出ていってお前や直下たちが裏切られたように思ってるのは知ってる。だからってあれはないぞ。
一番苦しんでいるのがみほだってお前もわかってるだろう?お前の軽はずみな言動でまほが人前で頭を下げることになったんだぞ。
そのことをよく考えろ」

エリカ「…」

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エリカ「あの…、隊長…、申し訳ありませんでした…」

まほ「謝る相手が違うだろう」

エリカ「…」

まほ「今度みほに会ったら必ず謝っておけ、他の人たちにもだ。それまでに頭を冷やしておけ」

エリカ「はい…」

エリカ「あの…、なんで私が副隊長なんですか?やっぱり安斎先輩の方が…」

まほ「またその話か、前にも言っただろう、副隊長の主な仕事は調整役と隊長のサポートだって。確かに安斎は技量は高いがあの気性だからな、
私のサポートをするよりも分隊長として独立支隊を率いてくれてた方がいい」

エリカ「私にみほの替わりが務まるとはやっぱり思えないんです…」

まほ「お前は私の判断が信じられないのか?それにこれだけは言っておくぞ、お前はお前だ、みほの…、誰かの替わりなんかじゃない」

エリカ「隊長…」

同じ頃、木更津沖・知波単学園の学園艦

絹代「えー諸君!我々の1回戦の相手はアンツィオ高校と決まったわけだが…」

玉田「西隊長!こいつは楽勝ですな!」

細見「相手は自走砲が何輌かある以外は豆戦車が主力で、我々の敵ではありません!」

名倉「それに、大飯を喰らって昼寝をしてるだけの連中です!精神面においてもとても相手になりませんな!」

絹代「まあ待て、いま黒森峰の元副隊長が軍事顧問として隊長として来ているとのことだ。格下の相手だと侮っていると
足元をすくわれることになりかねんぞ?」

玉田「はっはっは、心配ありませんよ!日頃の鍛錬の成果を試す良い練習台ですよ!」

絹代「とにかく油断は出来ん、福田、後で頼む」

福田「はい!」

第2話終、次回第3話「知波単学園との1回戦です!」に続く。

第3話「知波単学園との1回戦です!」

1回戦試合会場

ペパロニ「あいつら楽勝ムードだな」

カルパッチョ「ちょっと腹立ちますね」

みほ「まあ今のうちだけだと思って」

ペパロニ「そうだな!1挺だけだけどみほ姐の親父さんの協力で秘密兵器も用意できたからな!」

カルパッチョ「それにみほさんの作戦もありますし、そのためにみんな訓練を重ねてきましたから」

みほ「皆さんよろしくお願いします!」

チーム編成

アンツィオ高校

・CV33 6輌 (うち1輌はみほ搭乗のフラッグ車)

・M41セモヴェンテ 4輌

知波単学園

・九七式中戦車チハ 4輌(うち1輌は絹代搭乗のフラッグ車)

・九七式中戦車チハ改・新砲塔 5輌

・九五式軽戦車ハ号 1輌

『試合開始!』

絹代「いいか!決して挑発には乗らずフラッグ車以外の豆戦車は相手にするな、フラッグ車を見つけても深追いはするな。
自走砲の待ち伏せに注意しろ。やつらの唯一の対機甲戦力だが、確かに火力はあるが機動力はチハに劣るし装甲も正面以外
はチハと大差ない。旋回砲塔の利を生かし側面か後方に回り込んで確実に仕留めろ!戦車前進!」

みほ「ではこれよりチョロチョロ作戦開始します!パンツァー・フォー!」

ペパロニ「よーし!じゃあお色直しといくか!急げ急げ!」

Si子「Si!」

絹代「おかしいなあ、もっと挑発してくると思ったんだが全く動きがないな」

操縦士「あいつら怖気づいたようですな」

絹代「あの黒森峰の元副隊長が指揮を執っているんだ、それはないと思うが…、とにかく自走砲の所在が気になる、
どこかで待ち伏せしているのは間違いない。警戒を厳になせ。斥候に出ている福田たちからの報告待ちだな」

『九七式中戦車チハ1輌、行動不能!』

絹代「何っ!」

福田「こちら福田!偵察隊が攻撃を攻撃を受けております!図上、甲の12、乙の23地点、山腹の十字路付近であります!
1輌が撃破されました!」

絹代「敵の戦力は!」

福田「自走砲が4輌であります!」

絹代「4輌!?」

福田「圧倒的な火力であります!」

絹代(どういうつもりだ…、唯一の対機甲戦力である自走砲を4輌とも先行させるとは…。普通なら
フラッグ車を囮にしてこちらの主力を自走砲の待機する待ち伏せ地点に誘導するのが定石のはず…。
何かの罠か…)

砲手「西隊長!これは好機であります!敵の最大の火力が集中している今、待ち伏せを気にせずに
敵フラッグ車を索敵し撃破出来ますぞ!」

絹代「うーん…、まあいいか。よし!フラッグ車の直援は池田のみ!本フラッグ車と池田車は引き続き敵フラッグ車
の捜索を続行!残りは自走砲を片づけてから再び合流!」

「了解!」「了解!」「了解であります!」「突撃ぃぃぃっ!」

カルパッチョ「隊長、ペパロニさん、うまい具合に引っかかってくれたわ。敵の主力はこちらセモヴェンテ隊に集中しつつあります」

ペパロニ「こちらもお色直し完了!みほ姐!今そっちに向かうぜ!」

みほ「了解、カルパッチョさん、無理しないでくださいね」

カルパッチョ「今無理しないでいつ無理するんですか。それに、我々が全滅するまで敵主力を引き付けるのが作戦の成功条件なんだし」

みほ「本当にごめんなさいっ!」

モブ子「こちら5号車!隊長!うまくいきましたよ!そっちに敵フラッグ車と他1輌が向かってるっす!」

チハ砲手「見つけた!敵フラッグ車発見!1時方向!距離300!」

絹代「池田!先行しろ!榴弾装填!信管、瞬発!直撃させる必要はないぞ!至近に撃ち込んでひっくり返してやれ!
動きを止めてから落ち着いてとどめをさせばいい!」

チハ砲手「了解!」

チハ装填手「了解!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

みほ「かかった…!逃げてるけど逃げ切れない感じで走ってください」

CV33運転手「む…難しいな…、やってみます!」

ペパロニ「よーし!こっちも行くぜ!」

チハ操縦士「前方より豆戦車1輌出現!」

池田「なんだぁ?近衛兵のつもりか?」

絹代「構うな!狙うはフラッグ車のみだ!」

ペパロニ「当たれぇぇぇ!」

池田「うわぁっ!池田車、不覚にも被弾により行動不能!」

絹代「なんだ!何が起こっている!」

絹代「しまったぁぁぁ!謀られた!あの豆戦車、機銃じゃなくて対戦車ライフルを積んでる!距離を取れ!
この間合いではチハの前面装甲を抜かれるぞ!」

チハ通信手「こちらフラッグ車!全車至急救援を要請!」

ペパロニ「今ごろ気づいたって遅ぇよ!大将首、もらったぁぁぁ!」

チハ操縦士「わぁぁぁ!」

絹代「どうした!」

チハ操縦士「操縦席のバイザーを抜かれました…。撃破判定が出てます…」

絹代「くっ…!」

『知波単学園フラッグ車、行動不能!よって、アンツィオ高校の勝利!』

「ぃやったぁぁぁ!」「勝った!勝ったぞ!」「あたしらあの知波単相手に勝ったんだ!」

ペパロニ「勝ったぁぁぁ!」

カルパッチョ「本当に嬉しいです!1回戦突破なんて何年振りでしょうか…」

絹代「うーむ、搭載した20mm対戦車ライフルの銃身を外して、代わりに車外に露出している機関部に
13mm機銃に似せたカバーを被せて、試合開始後に元に戻したわけか…」

みほ「はい、ソロサーンの対戦車ライフルを搭載したCV33は制式モデルでも北アフリカでの現地改修型でもありましたから。
だますようなことになってしまいましたが、我々の戦力では知波単学園の皆さんに勝つにはこうするしか…」

細見「卑怯だぞ!」

玉田「そうだそうだ!汚い手を!」

池田「競技本部に抗議してやる!」

絹代「よさんか貴様ら!この程度の策略は十分認められる!自分らの油断を棚に上げて対戦相手に文句を言うとは何事だ!
西住さん、仲間の無礼をお詫び申し上げます。本当に申し訳ありません」

みほ「いえ…、そんな…」

絹代「前回の大会の件は自分も存じております。自分はあなたの判断は正しかったと信じております。今後の健闘をお祈り申し上げます!」

みほ「ありがとうございます!頑張ります!」

ペパロニ「おーい、準備できたよー」

みほ「あの…、よかったら一緒にお食事いかがですか?」

絹代「えっ、いいんですか?」

ペパロニ「いいっていいって、ほら、試合終わったんだしノーサイドってことで」

カルパッチョ「ご遠慮なさらずに」

絹代「じゃ…じゃあお言葉に甘えて…、いたーだきますっ!」

絹代「うわっ!何これ美味っ!」

細見「こんな美味いもの今まで食ったことありません!」

玉田「美味い!美味過ぎる!」

福田「お母さーん…」

みほ「みんな泣きながら食べてる…」

カルパッチョ「この人たち普段なに食べてるんでしょう…」

ペパロニ「でもまあ気に入ってくれたようで良かった」

みほ「あはは…」

第3話終、次回第4話『サンダース大学付属高校との2回戦です!』に続く。

ペパロニ「やっぱりダメだったな、お前の友達の学校」

カルパッチョ「うん…、たかちゃんは『お互い勝てたら2回戦で会えるね』って言ってたんだけど…」

ペパロニ「相手が悪いよ、サンダース大学付属だもん」

カルパッチョ「そうよね…、その上、戦車道経験者が1人もいなくて戦車も使い古しが5輌だけで、普通は出場するのも難しいようなチームだったし…」

みほ「どんなチームだったんですか?」

カルパッチョ「たかちゃんの話だと、隊長は生徒会の広報の人だけど、その人戦車のこととか全然ダメで、戦車に詳しい散髪屋さんの子と、たかちゃんと
ハウスシェアしてる第2次大戦に詳しい子が実質的な隊長と副隊長だったって…」

みほ「でも試合の内容を見ると、経験はないけどなんとか作戦で戦力差を補おうとして一生懸命に戦略を練ってるのが
わかります。立てた戦術も悪くないし、この試合のためにすごく練習してきたのが伝わってきます。これなら勝てなかった
としても、もっと善戦できたはずなのに、ここまで一方的な展開になるのはどうもおかしいような…」

ペパロニ「すると、サンダースの連中が何かインチキしてたってのか?」

みほ「いえ、そこまでは言わないけど、何か違和感が…」

カルパッチョ「サンダースの人たちが何か仕組んでたとして、どうしてたかちゃんたちに?そんなことしなくても
実力だけで十分勝てたのに…」

みほ「もし何か仕掛けがあったとしたら、恐らく実験だったんだと思います。もっと強いチームと当たった時、この仕掛けが
実戦で役に立つかどうかって…」

カルパッチョ「だとしたら許せません!たかちゃんたちがどれだけ頑張ってきたか知ってるから…!」

ペパロニ「だったら次の試合で敵を討ってやんなよ、1回戦には間に合わなかったけど、今度は新兵器があるからな」

カルパッチョ「そうだったわね、みほさんのお父さまの援助のおかげで、ずっと前から導入のためにお金貯めてきた例のアレが
遂にやってきたんだから」

ペパロニ「へっへっへ、第2次大戦中のイタリア軍の最大の重戦車、P40だ!」

みほ「まあ、他のイタリア戦車に比べて重いから重戦車の扱いになってるけど、重さ26トンでM4シャーマンやT-34より軽いし…」

ペパロニ「水差すようなこと言うなって!これさえあれば恐いものなしだぜ!」

カルパッチョ「大幅な戦力アップなのは間違いないですね」

みほ「はい、車種転換訓練が間に合うよう頑張ります!」

ペパロニ「こっちこそよろしく頼むな!」

カルパッチョ「私もセモヴェンテは1年生に任せて、装填手としてみほさんとP40に同乗します」

ペパロニ「それにしても、セモヴェンテの修理が間に合わないのは痛いなあ」

カルパッチョ「2回戦に出場できるのは3輌だけで、残りの1輌は無理みたいね」

ペパロニ「みほ姐の親父さんの会社の人も頑張ってくれてるんだけどなあ」

カルパッチョ「学長の話ではお友達価格でやってもらってるそうだから、あんまり無理は言えないし…」

ペパロニ「でもあのネーミングはどうかなあ、P40がタコさんチーム、セモヴェンテがイヌさんチーム、
CV33がネズミさんチームって…」

カルパッチョ「いいじゃないの、可愛くて」

ペパロニ「でもなあ…」

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2回戦当日…

ケイ「ハーイ!みほ!しばらく!」

みほ「お久しぶりです!」

ケイ「今日はよろしくね!お互いフェアにいきましょう!」

みほ「はい!こちらこそよろしくお願いします!」


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ペパロニ「何がフェアだよ、よく言うぜ」

カルパッチョ「でも、サンダースの隊長ってそんな卑怯な小細工するような人には見えないけど…」

みほ「うん、前に何度か会ったことがあるけど、曲がったことが大嫌いでいつもフェアプレーを心掛けてる人で…」

カルパッチョ「じゃああれは一体…」

チーム編成

アンツィオ高校

・P40 1輌(みほ・カルパッチョ搭乗のフラッグ車)

・M41セモヴェンテ 3輌

・CV33改・ソロサーンS18・20mm対戦車ライフル搭載モデル 3輌

・CV33 13mm単装機銃搭載モデル 3輌


サンダース大学付属高校

・M4シャーマン 75mm砲搭載モデル 3輌(うち1輌はケイ搭乗の指揮車)

・M4A3シャーマン 長砲身75mm砲搭載モデル 3輌

・M4A1シャーマン後期型 76mm砲搭載モデル 3輌(うち1輌はアリサ搭乗のフラッグ車)

・シャーマン・ファイアフライ 1輌(ナオミ搭乗)

『試合開始!』

カルパッチョ「で、どうしましょう?」

みほ「まだ向こうが何か仕掛けをしているとは断言できません。注意しつつ、当初の予定通りにいきましょう」

カルパッチョ「了解しました、しかし、ドイツ式の3人乗り砲塔に慣れてると、P40みたいな車長が砲手を兼ねる
イタリア式の2人乗り砲塔はやり難くありません?」

みほ「いえ、小さい頃に乗ってたⅡ号戦車を思い出します。これはこれで慣れてますから」

カルパッチョ「そういえばお宅に自家用戦車があるんでしたね…」

アリサ「隊長、意見具申願います。図上C47・B24地点は待ち伏せに最適です。ナオミと長砲身を向かわせて
ください、恐らくセモヴェンテが隠れているはずです」

ケイ「なに?また女の勘ってやつ?」

アリサ「はい、あと状況分析の結果です」

ケイ「いいわ、ナオミ!7号車連れて先行して!」

ナオミ「イエス、マム」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ファイアフライ車長子「ねえ、前回の試合もそうだったけど…」

ナオミ「ああ、わかってる。アリサのやつ…」

モブ子A「こちらカーネ・ドゥエ(イヌさん2号)!ファイアフライにやられました!位置がバレてます!」

カルパッチョ「これって一体…」

みほ「まさか…!CQ、ブレイク!繰り返します!CQ、ブレイク!」

モブ子B「これってなんだっけ?」

モブ子C「無電封鎖の合図だよ、次の指令が来るまで交信すんなってやつ」

カルパッチョ「どうしたんですか?急に無電封鎖なんて…」

みほ「双眼鏡で8時の方向を見てください」

カルパッチョ「あら?何か風船みたいなのが上がって…」

みほ「おそらく無線傍受装置の空中アンテナです」

カルパッチョ「それって反則じゃ…!」

みほ「いえ、ルールブックには明記されてません」

カルパッチョ「でも卑怯じゃないですか!たかちゃんたちもそれで…!」

Si子「ねえペパロニ姐さん、なんか変な風船みたいなの上がってるんすけど」

ペパロニ「あー?どれどれ、ああっ!まさか無線傍受装置!?」

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カルパッチョ「どうします?一番近くにいるのはペパロニさんたちですが…」

みほ「これは逆にチャンスかもしれません。相手はまだこちらが傍受に気付いていないと思ってるかもしれません、
各自が持ってる携帯端末のメールで通信して…」

カルパッチョ「そうか!無線でニセ情報を流してやれば…!」

みほ「はい、うまくいけば敵の動きを操ることができるかも…」

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ペパロニ「おい!機銃のマガジンを曳光弾のやつに替えろ!あと対空機銃架を出せ!」

Si子「そんなのなんにするんすかあ?」

ペパロニ「いいから手伝え!機関銃を外すぞ!」

カルパッチョ「じゃあ、その旨を一斉送信で…あっ」

みほ「あっ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ペパロニ「これでも喰らえええええっ!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

みほ「う…撃ち落としちゃったんだ…」

ペパロニ「へっ、ざまあみろバーカ。対空機銃架って初めて使ったけど、意外と当たるもんだな。おーい、
みんな、もう無線機使っても大丈夫だぞー」

みほ「…」

カルパッチョ「…」

ペパロニ「あ、あれ?なんかまずかったかな?」

カルパッチョ「ペパロニさん、今度から何かやる時は一言断ってからにしてね?」

アリサ「ぎゃああああっ!傍受装置が!傍受装置が!高かったのに!」

ヘルメッ子「ええっ!?あれって自腹だったんですか!?」

アリサ「当たり前でしょ!あんなの隊長が許してくれるわけないじゃないの!」

ヘルメッ子「無許可だったんだ…」

操縦士「知ーらないっと」

みほ「や…やっぱり当初の段取り通りで…」

カルパッチョ「そ…そうですね…、でも、あのファイアフライは要注意ですね」

みほ「はい、ファイアフライの17ポンド砲はジャイロスタビライザーが付いてないから動目標射撃や
行進間射撃は難しいんですが、あんな長距離での精密射撃を決められるなんて、砲手はただ者じゃないようです」

ケイ「ちょっとアリサ!どうしたの!」

アリサ「いっ…いえ!なんでもありません!」

ケイ「なんでもないわけないでしょ!隠してることあるんじゃない!?」

アリサ「いや…あの…」

ケイ「怒りださないうちに言いなさい!」

アリサ「もう怒ってるじゃないの…あの…実は…」

ケイ「はぁぁぁ!?無線傍受装置!?あんた、まさか1回戦でも…」

アリサ「…はい、使ってました…」

ケイ「ああもう!アンジーたちになんて言えば…!済んだことは仕方ないわ。ナオミ、聞こえたでしょ?
作戦続行よ、引き続き7号と共に敵フラッグ車のサーチを続けて。4号と3号を増援に廻すわ。アリサも
当初の作戦に戻って。5号と9号を直援に向かわせるからそれまでなんとか持ちこたえてね。あと、試合
が終わったら顔貸してね?話があるから」

アリサ「ひぃぃぃ…了解です…」

みほ「ぞろぞろ作戦、再開です!」

ペパロニ「よーし!いくぜ!」

カルパッチョ「ペパロニさん、手順ちゃんと覚えてる?」

ペパロニ「大丈夫だって、みほ姐とセモヴェンテ1号が囮になってる間にCV33チームと2輌のセモヴェンテが敵フラッグ車を索敵、殲滅だろ?」

みほ「うまくいけばいいけど…、セモヴェンテは既に1輌やられてるし…」

カルパッチョ「でも、この戦力でとれる最良の戦術だと思います。無線傍受もなくなったことだし、純粋な実力勝負ですよ」

みほ「はい、カルパッチョさんのお友達の敵を討たないと…」

カルパッチョ「隊長…」

ペパロニ「見つけたぁぁぁ!敵フラッグ車発見!CV33全車集まれぇぇぇ!えーっと、場所は…
ああもう!地図じゃわかんねえよ!信号弾撃ち上げるからそれ目印に集合!」

「了解!」「了解!」「了解っす!」

アリサ「ひぃぃぃっ!見つかった!」

ヘルメッ子「豆戦車、後方と側面より2輌、いや4輌!どんどん増えます!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ケイ「なんか信号弾がいっぱい上がってすごく賑やかになってるんだけど…」

ナオミ「アリサのやつ、見つかったな」

ケイ「私もそっちに行くわ。ナオミは引き続きフラッグ車をお願い」

ナオミ「イエス、マム」

ナオミ「こちらファイアフライ、敵フラッグ車発見、これより追撃に移る」

ケイ「了解!今4号と3号がそっちに向かってるわ」

ナオミ「いや、多分間に合わないと思う。ここからは私があいつを仕留めるのが早いかアリサがやられるのが早いか競争になる。
以上、交信終わり」

ケイ「あ、ちょっと!ああもう!あいつもアリサとは違う方向に問題児なんだから!」

モブ子「わぁぁぁ!こちらカーネ・ウーノ(イヌさん1号)!やられました!例のファイアフライです!」

カルパッチョ「最後の直援がやられて単騎になっちゃいましたよ!」

みほ「可能な限りランダムにジグザグ走行!なんとかペパロニさんたちに合流できれば…!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ペパロニ「みほ姐たちが見つかった!早くあいつを仕留めないとヤバいぞ!」

ヘルメッ子「ひぃぃぃっ!あっち行けぇぇ!」

アリサ「落ち着いて!20mm対戦車ライフルの貫通力は近距離でも40mm鋼鈑が限度よ!後方に回り込まれない限り、
前面や側面は絶対貫かれないわ!」

Si子「ペパロニ姐さん!あいつケツを向けないっすよ!」

ペパロニ「うーん…、13mmや20mmで貫けるとこは後方のあそこだけなんだが…」

アリサ「ああもう!増援まだー!?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カルパッチョ「34口径でこの距離で、なおかつ動きながらじゃ隊長の腕でも無理ですよ!」

みほ「命中は無理でも、なんとか牽制できれば…!」

ナオミ「ふん、そんな狼狽え弾など…!」

ペパロニ「そうだ!無理に貫通させることなかったんだよ!全車、やつの右に回り込め!目標、右の起動輪!」

アリサ「なに!?なんなの!?」

ヘルメッ子「敵火力、右の足回りに集中してます!」

アリサ「履帯の切断を狙ってるの!?撃ちまくって近付けないで!」

砲手「速過ぎて無理です!それに距離が近過ぎます!」

ナオミ(この動き…、操縦士の腕前というより指示を出してる車長の手柄だな。でも、もう回避行動のパターンは読んだ)

ナオミ「停止!主砲の照準もらうぞ!」

みほ「ファイアフライが止まった…!最大戦速!あと煙幕散布!」

ナオミ「もう遅い。ONE SHOT…」

アリサ「ひぃぃぃっ!今度はなによ!」

ヘルメッ子「起動輪が脱落しました…。修理不能の擱座判定が出てます…」

アリサ「がぁぁぁぁっ!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ナオミ「…ONE KILL!」

みほ「きゃああああ!」

カルパッチョ「大丈夫ですか!?」

みほ「私は大丈夫!みんなは平気!?」

カルパッチョ「はい!でも戦車が…」

みほ「ああ…」

『サンダース大学付属高校フラッグ車、走行不能!』

『アンツィオ高校フラッグ車、行動不能!』

『ただ今、競技本部で協議中です。しばらくお待ちください』


ペパロニ「どっ…どうなったんだ?」

アリサ「神様神様神様神様…」


『協議の結果、勝者、アンツィオ高校!』

ペパロニ「ぃやったああああ!」

アリサ「お…終わった…、いろんな意味で私は終わった…あは…あははは…」

ヘルメッ子「ちょっと!しっかりしてください!」

みほ「か…勝ったの…?」

カルパッチョ「はい!薄氷の勝利でしたが我々の勝ちです!」

ナオミ「遅かったのはこっちだったか…」

ケイ「準決勝進出おめでとう!完全に私たちの負けだわ」

みほ「いえそんな…、運が良かったようなもので…」

ケイ「運を呼び寄せるのも実力のうちだって!勝ったんだからもっと胸を張りなさいよ!」

ペパロニ「そうそう!あっちの隊長さんの言う通りだって!」

ケイ「それと、無線傍受については謝罪するわ。本当にごめんなさい、これは隊長である私の監督不行き届きだわ…」

みほ「いえ、もう済んだことですし…」

カルパッチョ「そうですよ、それに謝るなら私たちよりたかちゃん…大洗の人たちに…」

ケイ「そうね…、アンジーたちに会わせる顔がないわ…」

ペパロニ「おっと、用意できたみたいだぜ」

みほ「あの…、よかったら一緒にお食事いかがですか?」

ケイ「これこれ!これ楽しみにしてたのよ!アンツィオとの試合だと勝っても負けてもこれがあるから!
アリサ!たっぷり栄養つけといてね!反省会はかなりカロリーを使うと思うから」

アリサ「うぐぅっ…」

ナオミ「…」

ケイ「あら?このピザいいわね。ピザといえばアメリカ風のもちもちしたやつの方が好きだったけど、
イタリア式のカリカリのやつも悪くないわね」

ペパロニ「だろ?ウチのナポリ風ピザは日本一だって!」

ダージリン「こんな言葉をご存知かしら?『美味しい食べ物に国境はない』」

ローズヒップ「孫文ですわね」

ケイ「…誰?」

みほ「あの…ケイさんたちの関係者じゃないんですか?普通に混じってたからてっきりサンダースの人かと…」

ケイ「いや、全然知らない人」

オレンジペコ「ダージリン様!ローズヒップさん!何やってるんですか!」

アッサム「他所様のお食事に紛れ込むなんてさもしい真似はやめてください!」

ダージリン「いや、あんまり美味しそうだったものだからつい…」

ローズヒップ「だってー、聖グロの普段のお食事ってアレなもんですからー、ねえ?」

ダージリン「ねえ?」

アッサム「『ねえ?』じゃありません」

オレンジペコ「ほら、お2人とも帰りますよ?本当に申し訳ありませんでした。お騒がせしました」

ローズヒップ「タッパー持ってくれば良かったですわー」

ペパロニ「何だったんだ今の…」

みほ「あはは…」

第4話終、次回第5話「プラウダ高校との準決勝です!」に続く。

2回戦から数日後、アンツィオ高校の学園艦


カルパッチョ「隊長、お客さんですよ」

みほ「え?」

ケイ「ハーイ!みほ、しばらく!」

みほ「ケイさん、どうしたんですか?」

ケイ「隊長同士、ちょっと話があってね、少し時間をもらえる?」

みほ「はい、それはいいんですが…」

ペパロニ「なあ、サンダースの隊長、何しに来たのかな?」

カルパッチョ「さあ…」

ケイ「早速だけど、この写真見て欲しいの」

みほ「これ…M5軽戦車ですか?」

ケイ「そう、M3スチュアート改、M5軽戦車よ。これを2輌、ウチからアンツィオに提供する用意があるわ」

みほ「ええっ!?」

ケイ「学校同士の戦車のやり取りは禁止されてるから、書類上はスクラップとしてあなたのお父さまの会社に払い下げられた
ものを、再生してアンツィオに売ったってことになるわね。まあ、ウチはM4シャーマンが中心で、M5なんて置いといても
射撃の的か、ジャンクヤードで錆の塊になるのを待つだけだったからね」

みほ「でも、どうして…」

ケイ「それに関して、ちょっと嫌な事情があってね…。あなたのお母さまが西住流の家元になるのが
気に入らない人たち…、つまりあなたを黒森峰から追い出した人たちが絡んでるのよ」

みほ「それって、どういう…」

ケイ「簡単に言えば、嫌がらせね。あなたたちが強くなって、黒森峰の優勝を脅かすようなことになれば、
あなたのお姉さん、ひいてはお母さまが困ったことになるだろうってね」

みほ「…」

ケイ「私もこの前の借りを返したかったってのもあったけど、裏でこんな嫌なことが動いてるとなると…、
でも、サンダースのOGの中に西住流の門下の人がいて、その人の義理から頼まれて…」

みほ「お父さ…父はなんて言ってるんですか?」

ケイ「社長さんは『みほの判断に任せる』って…、確かに今のあなたたちには戦力の増強が必要だけど、
裏でこんな思惑が動いてるとなると…。どうする?断ることも出来るけど…」

みほ「いえ、申し出を受けます」

ケイ「いいの?あなたを陥れた人たちの思惑にはまることになるけど…」

みほ「今、みんなすごく喜んでるんです、『初めて2回戦突破できた』って…、みんなの努力の成果なのに、
みんな私の手柄だって言ってくれて…、だから、この先勝つためなら、私の感情なんて…」

ケイ「本当にいいのね?」

みほ「はい、よろしくお願いします」

ケイ「わかったわ、じゃあそのように手配するから。はあ…、前の大会のこともあるし、何かみほの力になれたらって
思ってたけど、こんなことになるなんて…」

みほ「いいんです。本当にありがとうございます、戦力アップに協力してもらって、その上こんなに気を遣ってもらって…」

ケイ「助けに来ておいて、逆に励まされたみたいね。何やってんだか…」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


熊本・西住家

菊代「奥様、みほお嬢さまは例の申し出をお受けになられるようです」

しほ「そう…」

菊代「あの…、今回の件に関して、旦那様は何と仰ってるんでしょうか…?」

しほ「常夫さんは、『みほの判断に任せる』とだけ…」

菊代「そうですか…」

しほ「常夫さんに叱られたわ…、『これ以上大人の派閥争いに娘たちを巻き込むな』って…、その通りね…」

菊代「奥様…」

しほ「怒鳴りつけられて叱られるなんて何年振りかしら…、まったく、私を怒鳴りつけるなんてダーリンだけだわ…」

菊代「…ダーリン?」

しほ「あっ」

菊代「あの…、夫婦仲がいいのは結構なことですけど、いい齢こいてダーリンはちょっと引きます」

しほ「…忘れなさい、あと、誰かに漏らしたらタダじゃおかないから」

菊代「後学のために聞きますけど、旦那様がダーリンなら、奥様はハニーなんでしょうか」

しほ「…後で憶えときなさい」

津軽海峡・プラウダ高校の学園艦


ノンナ「同志カチューシャ、アンツィオ高校が2回戦に勝利しました。準決勝の相手はあそこです」

カチューシャ「うん…」

ノンナ「カチューシャ、やはりまだ西住みほさんのことを気にしているようですね。あれはカチューシャの責任ではなく運営側の…」

カチューシャ「気にしてるのはそこじゃないわ…、隊長だったら…いや、戦車に乗ってる人間だったら誰でも…、ノンナ、あなたも
考えたことがあるはずよ、自分が彼女と同じ立場だったらどうするかってね…」

ノンナ「…」

カチューシャ「仲間を助けることを選択すれば、ただ試合に負けるだけではなく全てを失う。いままで積み上げてきた全てをね。
事実、彼女は自分の故郷を追われるような目に遭ったわ」

カチューシャ「もし、あの時仲間を見捨てていたとしても、不幸な偶然として自身は責任を問われなかったと思うわ。
カチューシャがもしもあの立場にいたら、仲間を見捨てていたかもしれない、それも、勝利のためではなく保身のため
にね…。そう思うと…」

ノンナ「同志カチューシャはそんな人物ではありません。それは私が一番よく知っています。カチューシャも必ず同志を
救う選択をしたはずです、その上で勝利を掴むことが出来る人です」

カチューシャ「買い被らないでよ…、あたしはそんな器用な人間じゃないわ…」

カチューシャ「とにかく、借りは返さないとね。知ってるでしょ?あたしが良い借りも悪い借りも必ず返すってこと」

ノンナ「はい、よく知ってます」

カチューシャ「だったらやることはわかってるわね?」

ノンナ「はい、作戦会議の招集ですね。向こうは新しい戦車が2輌、追加で配備されたとのことです。その対策も協議しましょう」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


再びアンツィオ高校


ペパロニ「よーし!新しい戦車も来たことだし、準決勝もがんばるぞー!」

Si子「それにしては、隊長なんか元気ないっすねえ」

カルパッチョ「隊長、またお客さんですよ」

みほ「お客さん?」

菊代「お嬢さま…」

みほ「菊代さん…」

菊代「みほお嬢さま、先日行われた臨時の一門会の決定をお伝えするために参りました」

みほ「…」

菊代「あの…、奥様を家元に推す方々の力が、それに反対する方々の発言を抑える結果となりました。奥様の家元就任はもはや動かないでしょう」

みほ「そうですか…」

菊代「ですが、その折衝の間、奥様を推す方々と、そうでない方々の間である種の妥協が成立しまして…」

みほ「えっ?」

菊代「…申し上げ難いのですが、反主流派の方々は、いままでの混乱の責任はみほお嬢さまにあることにして、
奥様を推す方々もそれで納まるのならと…」

みほ「それって、どういう…」

菊代「今後、みほお嬢さまはこの大会で一度でも負けることがあれば、西住流の一門から破門、西住の家も勘当されるということに…」

みほ「…それは、母の意思なんですか?」

菊代「それは違います!奥様も旦那様もまほお嬢さまも、最後までみほお嬢さまを助けようとなさっていました!ですが、
一門会の決定を覆すことは出来ず…」

みほ「…」

菊代「奥様と旦那様のお力で、サンダースからの増援車輌はなんとかそのまま使えるようになりました。あの…、
私に出来ることがあればなんでも仰ってください!このままでは、みほお嬢さまがあまりにも…」

みほ「いえ、私よりもお姉ちゃんの方をみてあげてください…。お姉ちゃん思い詰める性質だから、きっと今度の
ことも自分のせいみたいに感じてると思うから…」

菊代「みほお嬢さま…」

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ペパロニ「ひどい…ひど過ぎるよ…」

カルパッチョ「…」

みほ「2人とも、聞いてたんだ…」

カルパッチョ「ごめんなさい…、盗み聞きするつもりはなかったんだけど…」

みほ「みんなには内緒にしてね、心配かけるといけないから…」

カルパッチョ「どうするんですか?もしこの先負けたら…」

みほ「そうなったら、アンツィオもやめることになると思う。転校する前、お父さんとも話してたんだけど、国を出て、お父さんのいる
ドイツに行くことになると思う。向こうでお父さんの仕事を手伝いながら、技術系の高等専門学校に入ることになるんじゃないかな…。
小さい頃から、お母さんやお姉ちゃんみたいに戦車に乗るのもいいけど、お父さんみたいな技術の仕事もいいなって…、お父さんの話では、
世界中から生徒が集まってて、日本人も大勢いるからきっとうまくやっていけるだろうって…」

カルパッチョ「隊長は、本当にそれでいいんですか?」

みほ「…」

熊本・黒森峰女学園


アンチョビ「まほ、聞いたぞ。その…なんて言ったらいいのか…」

まほ「…もう知ってるのか」

アンチョビ「ああ、一門会には私の親類もいるからな」

まほ「また守ってやれなかったよ…。本当に何をやってるんだろうな、私もお母さまも…」

アンチョビ「…」

アンチョビ「それで、これからどうするんだ?もし決勝戦でみほたちと当たったら…」

まほ「その時は全力で叩き潰すさ、一切手を抜かずにな」

アンチョビ「おい!」

まほ「考えてもみろ、もしもみほたちが勝ったらどうなると思う?あの節操のない連中のことだ、手の平を返して
今度はみほを後継者候補に担ぎ出すかもしれん。そうなったらみほは完全に籠の鳥にされてしまう。逆に我々が勝って
みほが勘当されたら、西住家の庇護を失ったとしてもみほは自由になれる。きっとお父さまが面倒を見てくれるだろう」

アンチョビ「お前はそれでいいのか?」

まほ「ああ、長女として生まれた時から覚悟はしてる。それに、今度こそみほを守ってやりたい。でも…」

アンチョビ「おっ…おい!」

まほ「頼む…しばらくこうさせておいてくれ…」

アンチョビ「…ハグだけだぞ?キスなんてされたらこっちが治まらなくなるからな?」

まほ「すまん…」

八甲田山系・準決勝会場

みほ「プラウダとの準決勝…」

カルパッチョ「はい、隊長には因縁ある相手ですが…」

みほ「私のことは気にしないで」

カルパッチョ「ヴィンターケッテ…、雪上走行用の履帯アタッチメントを装着してますが、それでも機動力の低下は否めないですね…」

ペパロニ「おいそこ!何やってんだよ!セルモーターは回した時間より長く休ませるのが寒冷地での鉄則だろ!バッテリー上がるぞ!
寒空の下で手動クランク回してえのか!」

モブ子A「なんかペパロニ姐さんピリピリしてんなあ」

モブ子B「どうしたんだろ」

カルパッチョ「ちょっと、ペパロニさん…」

ペパロニ「ごめん…、でも、負けたらみほ姐いなくなるかもしれないってのにあいつら緊張感ねえから…」

みほ「…」

カルパッチョ「でも、M5軽戦車と一緒に自前の新兵器も間に合ったから」

ペパロニ「そうだな、CV33改・80mm多連装ロケットランチャー搭載型!」

カルパッチョ「第2次大戦の末期、イタリア降伏後にドイツ軍が接収したCV33をベースに試作した火力支援型ですね。
鹵獲されたフランスのルノー牽引車やロレーヌ牽引車でも同様の車輌が製作されています。実車と違って直接照準で水平射
できるように改良してあります」

みほ「うん、でも危険だから車外に出ての再装填は禁止で、装填してあるロケット弾を撃ち尽くしたらそれでおしまいなのが…」

ペパロニ「使いどころをよく見て使わないとな」

カルパッチョ「あっ、プラウダ高校のトラックがこっちに…」

みほ「たぶん隊長の挨拶だと思います」

カチューシャ「久しぶりね、今日はよろしく頼むわ」

みほ「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

カチューシャ「あなたも聞いてるでしょ?黒森峰が聖グロに勝って決勝進出を決めたわ。この試合であなたに勝って、
次の試合であなたの姉に勝つ。去年の優勝がツキに恵まれただけのまぐれだったなんてもう誰にも言わせないんだから!」

みほ「…」

カチューシャ「…それと、去年の試合は、こっちとしても不本意な勝ち方だったわ。それだけ言っておきたくて…」

みほ「いえそんな…、この試合、お互い頑張りましょう!」

カチューシャ「期待してるわ!失望させないでね!」

みほ「はい!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


カルパッチョ「隊長、どうしました?」

みほ「いや、去年の試合、勝ったプラウダの人たちもいろいろあったんだなあって…」

ペパロニ「本当に人がいいなあ」

『試合開始!』


チーム編成

アンツィオ高校

・P40 1輌(みほ・カルパッチョ搭乗のフラッグ車)

・CV33・20mm対戦車ライフル搭載型 5輌(うち1輌はペパロニ搭乗の副隊長車)

・CV33・80mm多連装ロケットランチャー搭載型 3輌

・CV33・13mm単装機銃搭載型 5輌

・M41セモヴェンテ 4輌

・M5軽戦車 2輌

プラウダ高校

・T-34/85 5輌(うち1輌はカチューシャ搭乗の指揮車)

・T-34/76 13輌(うち1輌はフラッグ車)

・IS-2 1輌(ノンナ搭乗の副隊長車)

・KV-2 1輌

申し訳ありません、素で勘違いしてました。この世界では準決勝から20輌OKってことで…

カルパッチョ「でも、さっきのペパロニさんの言葉じゃありませんが、なんかみんな浮足立ってるような気が…」

みほ「うん、それは私も感じてた…」

カルパッチョ「みんな、毎回出ると負けだったのが準決勝まで来ちゃいましたからね、舞い上がるのも無理ないと思います。
隊長、やっぱりご自身の進退のことをみんなに伝えた方がいいんじゃ…」

みほ「いや、これはやっぱり私個人のことだし、みんなには楽しんで戦車道やって欲しいから…、もし負けたとしても、
それで私が出ていくことを気に病んで欲しくないし…」

カルパッチョ「隊長…」

モブ子A「T-34/76、2輌、いや3輌接近!真正面から来ます!」

モブ子B「よーし!囲め囲め!」

モブ子C「やっちまえー!」

ペパロニ「おいこら!お前ら先走るなあ!」

みほ「いけない!それは…!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ノンナ「同志カチューシャ、敵主力が囮に食いついたようです」

カチューシャ「そう、彼女が指揮を執ってるにしては冴えないわね。ちょっとガッカリだわ」

ノンナ「彼女の常に仲間を思いやり気を配るという指揮官としての姿勢ですが、規律を重んじる黒森峰ではそれなりにプラスに
働いていましたが、規律の緩いアンツィオでは逆に隊員たちの甘えを誘発しているようですね。思わぬ連勝を重ねたこともあって、
浮足立って上手く統率が取れていないように見えます」

カチューシャ「それにしても、やはり軽戦車・豆戦車の機動力を活かした群狼戦術できたわね」

ノンナ「はい、サンダースとの試合でもそうでした。あの戦力では唯一にして最良の選択です。戦術思想としてはボンプルあたりの
やり方に近いですが、こちらの方が完成度が高いようですね。流石は西住流といったところでしょうか」

カチューシャ「とにかくまだ油断はできないわ」

モブ子D「あ…あれ?あんなとこに…わぁっ!」

モブ子E「こちらカーネプロチョーネ・ドゥエ(タヌキさん2号・M5軽戦車)!やられました!待ち伏せです!」

みほ「ああっ!やっぱり!」

ペパロニ「だから言ったろうがぁっ!」

カルパッチョ「隊長!囲まれてます!」

みほ「まだ完全に囲まれてはいません!二手に分かれて脱出します!偶数号車は北へ!奇数号車はフラッグ車とともに東へ!」

「了解!」「了解!」「了解です!」「了解しました!」

ペパロニ「撃てぇ!撃ちまくって牽制しろ!必ず当てる必要はねえぞ!ビビらせるだけでいい!」

「おい!あそこにでっかい倉庫みたいなのあるぞ!」「あそこに逃げ込め!」「急げ急げ!」

みほ「だめ!建物なんかに逃げ込んだら!」

ペパロニ「おいよせ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ノンナ「同志カチューシャ、敵は全車輌が工場跡に逃げ込みました」

カチューシャ「悪手にも程があるわね、まったくミホーシャらしくないわ」

ノンナ「やはり上手く統率が執れていないようですね」

カルパッチョ「こんなところに逃げ込んだら完全に逃げ場がなくなるのに…」

ペパロニ「あれ?あいつら撃ってこないぞ?」

みほ「撃ってこないんじゃなくて、撃つことが出来ないんです。中の状況がわからない状態で発砲したら、戦車から降りてる人に
当たるかもしれないし、建物が崩れたりするかもしれないし…」

カルパッチョ「でも隊長、このままでは…」

みほ「はい、このままじゃ、無気力試合ってことで判定負けに…」

ノンナ「同志カチューシャ、どうしましょう?」

カチューシャ「ノンナ、こっちに来て。あと無線手、競技本部につないで」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カルパッチョ「隊長、本部の車が来ましたよ?」

香音「アンツィオ高校の皆さん、審判長の篠川です。入りますよ」

みほ「あの…何か…」

香音「プラウダ高校、並びに競技本部からの通達です、今から90分の間に建物から出て試合を再開しなければ、
その時点でプラウダ高校の判定勝ちになります。プラウダ高校からは、その間の修理・整備、並びに偵察行動は
自由にして構わないとのことです」

みほ「…わかりました」

カルパッチョ「こちらの損害はセモヴェンテ・M5が各1輌、CV33・13mm機銃型が2輌、20mm対戦車ライフル型が1輌が撃破されました」

モブ子A「でもこっちもT-34/76を2輌やってます」

ペパロニ「ロケット弾は何発残ってる?」

モブ子B「6号車は全弾撃ち尽くしました」

モブ子C「7号車はあと2発です」

モブ子D「8号車は5発残ってます」

「でもまあ私らここまでよくやったよな」「そうそう、出ると負けだったのが準決勝進出だもんな」

「まあ去年の優勝校に勝つのは無理だったんだよ」「ここまで来れただけでも大したもんだよ」

「3位決定戦はがんばろうな」「アンツィオがベスト4進出ってすごくね?」

ペパロニ「お前らいい加減にしろぉぉっ!負けたらなあ、みほ姐いなくなるんだぞ!」

カルパッチョ「ああ…、言っちゃった…」

Si子「それって、どういう…」

カルパッチョ「実は…」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「なんだよそれ…」「ひど過ぎるよ…」

みほ「…」

ペパロニ「みほ姐はなあ、負けてもみんなに気に病んで欲しくないし、楽しんで戦車道やって欲しいって
このこと内緒にしてくれって…、それなのにお前らまだ試合の途中なのに勝負を投げるようなことを…」

カルパッチョ「あのね、ちょっと聞いて欲しいんだけど、私、たかちゃんって友だちがいて彼女は大洗女子学園にいるの。
でもね、大洗って廃校になることが決まったんだって。それで彼女、仲間と一緒にアンツィオに来るって言ってたんだけど、
始めは笑って話してたんだけど、自分の学校がなくなることがすごく寂しくなって、新しい学校に替わることも不安になって、
最後には泣きだしちゃって…。みんな、帰る場所がなくなるっていうのはそういうことなの。このままじゃ隊長…みほさんも
そうなっちゃうのよ?」

ペパロニ「それになあ、これはあたしらもバカにされてるってことなんだぞ!西住流のやつらはあたしらが負けるに決まってるって
思ってるからこんなこと言い出したんだぞ!悔しくねえのかよ!?」

カルパッチョ「隊長、隊長からも一言お願いします」

みほ「…皆さん、私は今まで皆さんと一緒にやってきました。皆さんと共に戦うことで、戦車道の楽しさを思い出すことが
できたと思います。だからここで終わりたくありません!まだまだみんなと一緒にやっていきたいです!この試合も、次の
試合も勝ちたいです。ですがそれは家に帰るためじゃありません、追い出されるんじゃなく、自分の意思で家を出るためです。
皆さん、力を貸してください!」

ペパロニ「おい!隊長がこう言ってんだ!やることはわかってるな!」

「整備急げ!」「偵察行ってきます!」「各車輌ダメージの報告!」「コーヒー淹れたよ!熱いの!」

カルパッチョ「ようやく調子が出てきましたね」

ペパロニ「ノリと勢いがウチの最大の武器さ!」

みほ「…みんな、ありがとう!」

観客席…


エリカ「…」

まほ「安斎、エリカ、帰るぞ」

アンチョビ「最後まで見ていかなくていいのか?」

まほ「ああ、カチューシャには悪いが、ああなったみほは絶対負けない。帰って安斎の提案した例のやつを実行に移そう」

エリカ「ですが、安斎先輩には悪いですけどあれは黒森峰の伝統的なやり方とは…。それに西住流とも…」

まほ「で、伝統を守って敗北するわけか。知波単の連中を笑えないな」

エリカ「…」

まほ「エリカ、気に入らないのはわかるがここは頼む。安斎、決勝戦に間に合いそうか?」

アンチョビ「今すぐ始めてギリギリってとこかな」

まほ「じゃあ頼む、早く帰ろう」

貴賓席…

しほ「菊代さん、帰りますよ」

菊代「あの…、最後までご覧にならないんですか?」

しほ「もうわかってます、今のみほに勝てるのは、まほだけです。それにしても、娘にあそこまで言わせてしまうなんて…。
帰ったらもう一度臨時の一門会を招集します、今度こそ娘たちに母親らしいところや、次期家元らしいところを見せてやらないと…」

ヴーッ、ヴーッ

しほ「あ、常夫さん?どうしたの?え?ネット配信でずっと試合見てたって…仕事しなさいよ仕事。心配で手につかなかったって…
何やってんのよ。それでね、もう一度一門会を開こうと思ってるんだけど…うん、みほにあんなこと言わせちゃって…、ありがとう、
じゃあよろしく。ちょっと!菊代さんもいるんだからハニーはやめて!じゃあまた連絡するから!…本当にもう…」

菊代「…」

しほ「なにニヤニヤしてるのよ、さっさと準備しなさい」

菊代「はいはい」

しほ「はいは一回」

みほ「7号車のロケット弾をランチャーから抜いて、8号車のランチャーに装填してください。6号車と7号車の
ランチャーにはそこらへんに落ちてる空になったガスボンベを差し込んでください、前から見たとき、まだ弾が残って
いるように見えるはずです」

ペパロニ「ハッタリかますんだな」

みほ「はい、この後は6号、7号、8号の連携に全てが懸かってます、よろしくお願いします!」

トリップ間違えてた…、ちなみに食品会社勤務で主に蕎麦を担当してます。
年越し蕎麦などという物を考案した江戸時代の職人のところにターミネーター送ってやりたいです。

またトリップ間違えてた…

カルパッチョ「偵察に行った子たちからの報告では、敵フラッグ車は村役場跡、役場の庁舎と消防署の建物の
間に隠れているそうです」

みほ「やっぱり…、あの時と同じ、フラッグ車を安全圏に待機させて直接行動を避けさせるやり方です」

ペパロニ「よーし!カウントダウンいくぞ!用意はいいか!10!9!8!7!」

みほ「…6、5、4、3、2、1…今です!」

カチューシャ「出てきた!…って全部バラバラ!?」

ノンナ「同志カチューシャ、これは…」

カチューシャ「一旦バラけてから離れたところで合流するつもりね!各車、なにがなんでも合流を阻止!」

モブ子A「こっから先は行かせねーぞ!」

モブ子B「向こうに隊列に突っ込んでかき回してやれー!」

ノンナ「同志カチューシャ、敵車輌がこちらの隊列と入り乱れて…!」

カチューシャ「同士討ちに気をつけて!サンダースと当たると思って中戦車・重戦車の編成に
したのが裏目に出たわね。ノンナ!雑魚は引き受けるわ!あなたはフラッグ車を追って!」

ノンナ「了解」

カチューシャ「ノンナ!そっちはどうなってる?」

ノンナ「フラッグ車を捕捉、M5を1輌随伴して北に向かっています」

カチューシャ「あ、あれ?1、2、3、4…しまった!CV33が1輌足りない!全部出たと見せかけて時間差をつけて1輌だけ
別に飛び出したのね!フラッグ車!そっちにロケットランチャー搭載型が向かってるわ!気をつけて!4号車!こっちはいいから
カーべーたんと一緒にフラッグ車の救援に向かって!」

カルパッチョ「IS-2がこちらを狙ってます!捕捉されたようです!」

みほ「榴弾装填!信管、瞬発!牽制射用意!」

M5車長「自分らが盾になります!」

みほ「なんとか時間を稼がないと…!」

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