【グラブル】童貞【SS】 (136)

書く、長くなるかも

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1504871412


ラカム「朝から悪ぃなグラン!ちょっとコイツ診なきゃなんねぇからよ!しばらく時間潰しててくれ!」


グラン「うん、わかった」


マギサ「あらあら…時間かかりそうね。ねぇ団長さん、待ってる間皆でお茶でもどう?」


グラン「そうだね、頂こうかな」


マギサ「そう、良かった。他の人にも声掛けてみるから少し待っててくれるかしら」


グラン「わかった、待ってるよ」


グラン達は船から一旦降りて、簡易的な椅子やテーブルとティーセットを草原に並べ数人で卓を囲む。


メーテラ「ねぇ、グランってまだ童貞なの?」


グラン「ブーーッ!!」


ビィ「汚ったねぇなぁ!おい!」


グラン「げほっごほっ!」


ビィ「なぁハレンチ姉ちゃん、ドーテーってなんだ?」


メーテラ「知らないのー?童貞ってのはね「ちょっと!」


クラリス「そんな事教えなくて良いから!急に何言ってんの!」


ビィ「えー!いいじゃねぇかよ!教えてくれよ!」


メーテラ「で、どうなの?」


グラン「メ、メメ、メーテラさん!?何でそんな…!」


メーテラ「うわー如何にもって感じの童貞ね。てゆーかマジ?ヤバくない?」


グラン「ヤ、ヤバイって何…別にヤバくは無いんじゃ…」


メーテラ「いやさー、グランって真面目だし?顔も悪くないじゃん?それにこの団女の子は沢山いるわけだし」


ビィ「なぁなぁ!教えてくれよー!オイラにも─「ビィちゃん、これ飲めるかしら」


マギサ「はい♪」


ビィ「な、何だこれぇ…?……あ!これ、林檎の匂いがするぜ!」


マギサ「ふふ…そうよ。アップルティーっていうの、良かったら飲んて頂戴」


ビィ「ゴクゴク……おー!これ美味いぜ!ありがとなねえさん!」


マギサ「ふふふ…良いのよ」


グラン「沢山いるからって…別に関係ないんじゃ…」


メーテラ「何言ってんの!選り取りみどりじゃない!それで童貞とかヤバいって言ってんのよアタシは」


グラン「え、えぇ…」


メーテラ「何?もしかしてホモ?」


クラリス「えっ…」


グラン「違う!僕はノーマルだよ!普通に異性が好きな男!変な事言わないで!」


ジークフリート「…美味いな、おかわりを貰えるだろうか」


マギサ「はい♪」



メーテラ「だったら彼女の四人や五人くらい作りなさいよ!男でしょ!」


グラン「男だけど!それは何というか…機会がないというか…」


クラリス「環境は関係ないと思う!」


メーテラ「大ありよ、好きな子とか居ないの?居るでしょ!居ないにしても好みの子ぐらい絶対居るでしょ!どうなの!」


グラン「う、うーん……」


メーテラ「うっそぉ…居ないの?」


グラン「う、ん~…特に…」


メーテラ「マジ?」


グラン「ははは…」


クラリス(…ふーん…居ないんだ…)


メーテラ「はぁ~これだから童貞は…そんなんじゃ一生童「姉様」


メーテラ「ん?スーテラじゃない、どうしたの?」


スーテラ「はい、ラカム殿が姉様を呼んでほしいと」


メーテラ「ラカムがぁ~?今イイトコなのに……わかった、行くわよ」


スーテラ「はい、では参りましょう。皆様失礼します」


メーテラ「ということで、アタシは行くわね。つぎはもうちょっと男磨いときなさいよ童貞君!」


グラン「そんな童貞童貞連呼しなくて良いから!」


スーテラ「姉様、どうてい…?とは何でしょうか?」


メーテラ「あっはは、アンタはまだ知らなくていーわよ!そのうち覚えるから待ってなさい」


スーテラ「そうですか!姉様がそう言うなら待ちます!」


メーテラ「ブレないわねーアンタはホントにー」


そんなやりとりをしながら姉妹は船の中へと消えていく。


グラン(はぁ…助かった…のか?)


クラリス「あはは…あの人ホント良く喋るよね、嵐みたい」


ビィ「姉さん!これもっとくれよ!」


マギサ「はーい♪」


グラン「そうだね……僕が…その~…童貞!…なんてどうでもいいのにね…?」


マギサ「大丈夫?声が震えてるわ」


グラン「えっ?いやぁ~…そんな事はないよ…?」


クラリス「めっちゃ動揺してんじゃん!」


グラン「き、気にしてないし!全然そんなんじゃないし!」


ジークフリート「グラン」


グラン「は、はい?何ですか…ジークフリートさん?」


ジークフリート「童貞かどうかでお前の価値は変わらんさ。お前は良い男だ、皆も解っている」


グラン「ジークフリートさん…!」キュン


クラリス「……」ジーッ


マギサ「ふふふ…」


グラン「はっ…!違うよ!そんなんじゃないから!そんな目で見ないで!ねぇ!」


ビィ「うるせぇなぁ…」


暫くして。
ラカムからグランサイファーの調子が悪いそうで、しばらくこの島、グランの故郷でもある『ザンクティンゼル』に滞在する事になった。
昼の騒ぎから時間も経ち、夕餉を終えて自室へ戻る頃──。


グラン(さて…依頼の報告書まとめなきゃ)


クラリス「あ、いたいた!待ってー!団長ー!」


グラン「ん?…クラリス?」


クラリス「どこいくの?お部屋?」


グラン「うん、ちょっと雑務をね」


クラリス「あ、ウチもそれ手伝おうか?二人でやる方が早いっしょ!」


グラン「ほんと?助かるよ、お願いしようかな」


クラリス「うん!ウチに任せてー!…あれ?ビィが見当たらないけど、居ないの?」


グラン「うん、ルリアと一緒にヤイア達と遊んでるよ」


クラリス「ふーん…そっかそっかぁ」


グラン「じゃ、行こうか」


クラリス「うん!」



一応知らない人の為に画像置いとく
まぁ知らない人は読まないだろうが

1.右から(グラン、ビィ、ルリア)
2.マギサ
3.ジークフリート
4.メーテラ
5,スーテラ
6.クラリス
https://imgur.com/gallery/N0NL1


自室へ戻ったグランはクラリスと共に作業を終え、クラリスは椅子、グランはベットに腰掛けている。


グラン「お疲れ様、助かったよ」


クラリス「ううん、良いの良いの。てゆーか団員の数が多いから報告書まとめるのも大変だねー」


グラン「そうだね、でもこのくらい依頼をこなさないと今の現状を維持出来ないからさ。慣れたもんだよ僕も」


クラリス「凄いね、大変なのに流石団長!って感じ」


グラン「あはは、褒めても何も出ないよー」


クラリス「…じゃあねぇ…」


クラリスは椅子から立ち上がるとグランの真横に腰掛けて身を寄せる。


グラン「!?…ク、クラリス?」


クラリス「ウチがね…そんな頑張ってる団長を労ってあげるよ…」



グラン「ね、労うって…何を…」


クラリス「団長って…そのぉ…嫌いじゃないよね?ウチの事」


グラン「えっ…そりゃあそうだけど…」


クラリス「よ、良かったぁ…。…じゃ、じゃあその…!…えっと…」


クラリス「ウ、ウチとさ……え、え……」


グラン「え…?」


クラリス「え……えっちな事とかしてみたいですか!!」


グラン「!?」


クラリス「……いや?ウチ…」


グラン「いやいや!!ちょ、ちょっと待って!?」


クラリス「団長となら……良いよ…」


そう言うとクラリスは、グランの手を絡むように握る。



クラリス「団長ってさ…好きな子居ないんでしょ…?だから…」


グラン「だからってこんな事…!」


クラリス「や、やっぱりウチとじゃ…ダメかな?今は別にウチの事何とも思ってなくても…後から、ゆっくり好きになってもらえば良いし…」


グラン「ダメって事はないよ!でも、そういう問題じゃない!その…順序ってものが──」


クラリスは言葉を遮るように絡ませた手を自分の胸へ押し当てる。


グラン「ぉわっ!?」


クラリス「……///」


グラン「ちょ、何を…!」



クラリス「ウチのそんなに小さくないでしょ…?団長は小さい方が好き…?」


グラン「え、いや、嫌いじゃないというか…その!」


クラリス「あは……ねぇ」


グラン「な、何…?」


クラリス「良い……かな?」


グラン「えっ…」


クラリスは目を閉じると、自分の唇をグランの唇へとゆっくり近づけていく。


グラン(う、うわっ!うわわっ!)


グラン(い、良いのか…?このままで…?)


グラン(クラリスって可愛いし…まさか僕の事好き…?だったなんて…)


グラン(ヤバイ…何も考えられなくなってきた…)


グラン(もう、このまま……)


『グラン?』


グラン(──ッ!!)


互いの唇が触れる寸前、グランはクラリスの両肩を掴み突き放す。


クラリス「え…」


グラン「ごめん……やっぱり僕には…」


クラリス「…そっか…」


グラン「こういう事はさ…本当に好きな人としかしたくないんだ…」


クラリス「うん、わかった。ご、ごめんね!急にこんな事!ウチ今日変だったみたいだ!」


グラン「クラリス…」


クラリス「あー!やだやだ!恥ずかしー!!」


グラン「ごめん…」


クラリス「ううん!団長は悪くないし!ウチが変だっただけ!ほら、今日のメーテラのせいだよ!」


クラリス「ってかウチもう行くよ!だ、団長…今日の事は忘れてね☆バイバーイ!」


クラリスはそう言って早足で部屋を出て行く。


グラン「……」


グラン「はぁー……」




グラン「…ジータ……」



一方グランの部屋から飛び出したクラリスは、自室へと戻る通路を早足で歩いていた。


クラリス(ああー…)


クラリス(ああああ!!)


クラリス(ウチのばかばか!ばかばかばか!!何やってんのウチーーー!!)


クラリス(絶対変な奴って思われた…明日からどうしよ…合わせる顔がないよーー!!)


クラリス(き、嫌われちゃったかな…?…いきなりあんな事したんだもん…嫌われるよね…)


クラリス(ぅあ…やっば…そう思ったらめっちゃ泣きそうになってきた!)


クラリス(やだな…とりあえず早く戻ろう…こんな所誰かに…)ゴシゴシ


パーシヴァル「……」ジー


クラリス「パ、パーさん!!?」


パーシヴァル「おい、その名で呼ぶな」


クラリス(さ、最悪だー!よちによってパーさんに見られるなんて!何言われるか…)


パーシヴァル「何だ貴様、泣いていたのか」


クラリス「べ、別に…泣いてないし…目にゴミが入っただけだよ」


パーシヴァル「ふん、白々しい」スタスタ


クラリス「ちょ、ちょちょちょ…!何でこっち来るの!」


パーシヴァル「同じパーティのよしみだ、勘違いするんじゃないぞ」バッ


クラリス「え……なに…何で両手広げてんの…?」


パーシヴァル「泣いている子供は抱き締めてやるのが一番だろう?さぁ、いつでも来い」


クラリス「……ば、ばかじゃないの…ぷっ…ぷふふ…あはは!」


パーシヴァル「おい、何を笑っている!」


クラリス「あははは!だってパーさんが優しいとか!珍しすぎ!」


パーシヴァル「全く…普段の俺をどう思っているんだ……だがまぁ、もう大丈夫そうだな。俺は行くぞ」


クラリス「あ、待って!」ギュッ


パーシヴァル「おい、まだ何かあるのか」


クラリス「話…聞いてよ」


パーシヴァル「……わかった」


クラリス「ほんと?」


パーシヴァル「ああ……ここからだと俺の部屋の方が近いな。そこで話を聞こう。付いて来い」


クラリス「うん…ありがと」


パーシヴァルとクラリスは通路を後にする。
すると、2人が向かった反対側の通路の角から2つの影が現れた。


ゼタ「ちょっとちょっと!!今の見た!?」


バザラガ「ああ…」



アニラもアンチラもマキラも居ないけど僕には水ゾが居る
念のために知らない人の為に画像貼り

1.ジータ
2.ヤイア
3.パーシヴァル
4.ゼタ
5.バザラガ
6.ベアトリクス
7.ユーステス
https://imgur.com/gallery/5P40C


ゼタ「何か見ちゃいけないもの見た気がするわ…わはー…やっば!!」


バザラガ「はしゃぎすぎだ。だが…確かに意外ではあったな」


ゼタ「あたしもパーティとか組むけどあんな所見た事ないよ、もっとテキトーにあしらうと思ったのに」


バザラガ「元々悪いヤツでは無いだろう。普段お前達がからかっているのを良く見る」


ゼタ「それはそれよ。ねぇそれよりさ!部屋行ったみたいだし尾行しましょ!」


バザラガ「おい、それはダメだ」


ゼタ「なんでよ!超面白そうじゃん!こんな機会滅多にないわよ!」


バザラガ「ダメだ。ベアトリクスとユーステスが待っている」ガシッ


ゼタ「ちょ、掴まないでよ!は、離せー!」ズルズル



翌日。
グランは皆に仕依頼を振り分け、自分は故郷へと足を運んでいた。


グラン「この道、懐かしいね」


ビィ「ああ!よくここを走ってジータと森に行ってたよな!」


グラン「うん、そうだね。ジータ…まだ居るかな?」


ビィ「流石に居るんじゃねぇのか?村のみんなに聞いてみようぜ!」


グラン「うん。もうそろそろ着く頃だと──」


その時、グラン達に後ろから声が掛かる。


「グラン…?」


グラン「えっ……」


グラン「あ…ジー「グラン!!」


ジータと呼ばれる少女はグランに勢いよく飛び付く。


グラン「うわぁ!?」


ビィ「ジータ!」


ジータ「戻ってきたの!?大丈夫!?怪我とかしてない!?」


グラン「く、苦しいよ…ジータ…」


ジータ「あ、ごめんね!……でも心配だったの…ビィも元気だった?」


ビィ「ああ!この通りだぜ!」


グラン「はは…久しぶり。でも心配はないよ、この通りピンピンしてる」


ジータ「あは、頑丈なのが取り柄だもんね……何か…一皮剥けたっていうか…あの頃とは雰囲気変わったね」


ビィ「そうだぜ!グランはちょっとやそっとじゃ倒れねぇぜ!」


グラン「頑丈が取り柄って……今僕はさ、団長をやってるんだ。だからかな?」


ジータ「え!?グランが団長なの!?あの時一緒にいたカタリナ?って人が指揮を執ってると思ってたんだけど!」


グラン「何というか…成り行き?でね。……ジータには話したい事いっぱいあるんだ」


ジータ「そうなんだ…。うん、話聞かせてよ。グランがどんな冒険してきたのか…教えて?」


グラン「勿論!ここじゃ何だし村に行こうよ!皆に挨拶もしなきゃだしね」


ジータ「うん!皆もきっと喜ぶよ!はやくいこっ!」


グラン「ちょ、急がなくても大丈夫だから!引っ張るなってー!」


ビィ「おい!待てよー!」



村についたグラン達は当時お世話になった人達の家を周り、帰ってきた事を大いに喜ばれた。
挨拶回りも終わり、ジータの家で今までの冒険をジータに嬉々として語る。
だが、楽しそうに冒険譚を話すグランとは違いジータはどこか寂しそうな表情を見せる。


ジータ「凄い…ね。ここから旅に出てからそんな沢山の出来事があったんだ…」


グラン「そうなんだ!でもまださっき話した帝国との決着は着いてない…まだまだ気は緩められないよ」


ジータ「……──も…」


グラン「うん?」


ジータ「私も……一緒に行きたかったな」


グラン「…え?」


ジータ「冒険でグランが感じた事、やってきた事、色んな人達に出会えた事。私も一緒に…グランと一緒に、冒険したいなって…本当にそう思ったの」


グラン「ジータ…」


ジータ「後悔してるんだ、私。あの時は踏み出す勇気が無くて……今では凄く後悔してる。あの時踏み出せてたら今頃は…ってね」


グラン「そうだったよね…ジータも島の外に行きたいって言ってたもんね」


ジータ「うん。でも、その気持ちは今話を聞いてより一層強くなっちゃった」


グラン「…うん?


ジータ「私も、グランの騎空団に入れて!」


グラン「……」


グラン「…ダメだよ、ジータ」


ジータ「!!…何で!」


グラン「あの頃とは違う…わかるよね。確かに色々あるけど、楽しく冒険を出来てるのは間違いないんだ」


グラン「でもね、命を落とすことだってありうる、ましてや僕達は帝国から追われているからね」


ジータ「わかってるよ!そんな事!」


グラン「本当に?あの日……僕が旅立った日。ジータはカタリナとルリアの所に行けなかったよね、足が竦んで」


ジータ「…!あ、あの時は…」


グラン「一つ…話してなかった事があるんだ」


ジータ「え…何?」


グラン「僕はその日に、死んでいる」


ジータ「…え?」


ジータ「何…言ってるの?」


グラン「本当だよ。ちょっと見てて」


グランは目を閉じ胸に手を当てる。


グラン「ルリア、起きて」


ジータ「ルリアって…え?」


ルリアと呼ばれた少女が、グランの背中からにゅるりと上半身を出す。


ルリア「ふぁ~……何ですかー……グラン…」


ジータ「!?」ガタッ


グラン「おはよう。今日はよく寝てたね」


ルリア「はい~…昨日遅くまで遊んじゃって…えへへ…」


ジータ「な、な、な…何…!」


グラン「僕はあの日死んで、ルリアの力で生き返ったんだよ」


ジータ「は…?え…?」


ルリア「はわ!…貴女はあの時の!確か……えーと」


ルリアはジータに気付くとグランの中から全身を出す。


ジータ「ジータ…」


ルリア「そう!ジータさん!わー!お久しぶりです~!」ギュッ


ジータ「わわっ!」


ルリア「お元気そうで何よりです!あれから何もありませんでしたか?」


ジータ「う、うん…。特には…」


ルリア「そうですか!それなら良かったです~♪」


ジータ「ちょっとグラン…ちゃんと説明してよ…」


グラン「わかった」


それからグランはあの日の事を説明する。
帝国が連れてきた星晶獣によって1度死んだ事。
ルリアの力によって蘇り、ルリアと命を共有している事。
それによりグランの中に自由に出入りできる事を。


ジータ「…そんな事があったんだ…あの日に」


グラン「中々信じられないよね、こんな話」


ジータ「いや…実際見たし、信じるよ」


グラン「まだ貫かれた所の傷残ってるけど、見る?」


ジータ「いいって!そんなの!」


グラン「ははは。……という訳で、危険だから連れていけないよ」


ジータ「…!それはそれじゃん!そんな危険な旅なら私がグランを守る!」


グラン「え…」


ジータ「私…強くなったんだよ。あの日から毎日欠かさず鍛錬を積んできたんだもん!昔の私じゃない!」


グラン「……はは。悪いけどそんな──」


ほんの一瞬だった。
ジータはテーブルの上に置いてあった林檎の皮?き用のナイフを取ると、グランの首筋スレスレにナイフを当てる。


ルリア「はわわっ!?」


グラン「……」


ジータ「…反応出来た?今の」


グラン「…いや…」


ジータ「言ったでしょ、昔の私じゃないって」



グラン「…そうみたいだね」


ジータ「ねぇ、私と勝負してよ。私が勝ったら騎空団に入れる、負けたら大人しく村に残る……どう?」


グラン「いや…ジータと勝負なんて……」


ジータ「このままだと私、意地でもグランの騎空艇に乗り込んじゃうけど」


グラン「うわ…やりかねない…」


ジータ「私に勝てば良いだけだよ、簡単でしょ?」


グラン「怪我とか…させちゃうかもしれないし」


ジータ「安心して、グランじゃ私に傷一つ付けられない」


グラン「…へぇ。言うようになったね、ジータ」


ルリア「グ、グラン?」


グラン「わかった、勝負しようか」


ルリア「グラン!?」


グラン「大丈夫だよルリア。昔よくやってた稽古みたいなものだからさ」ポンポン


ルリア「そ、そうなんですか…?」


グラン「うん。ルリアはビィを起こして先に船に戻ってて。あそこの道真っ直ぐ歩けば着くからさ」


ルリア「私…心配です…」


グラン「…大丈夫だから、ね?」


ルリア「グランがそう言うなら……はい、わかりました」


グラン「…ありがとう、ルリア」


ジータ「イチャついてるとこ悪いんだけど…もういいかな?」


グラン「違うよ!そんなんじゃないから!」


ルリア「はわわ…」


ジータ「はいはい。それで場所なんだけど…」


ジータ「あの森でいいかな?昔と同じ場所」


グラン「全く…。あそこね、わかった」


ジータ「それじゃ行こっか」


ルリア達を帰したグラン達は、昔ジータと稽古していた森の中へと足を運ぶ。
少し森の中へと入ると開けた場所に出る。


ジータ「…懐かしいね」


グラン「そうだね。ここで稽古して、いつも僕が勝ってたよね」


ジータ「それは昔の事でしょ!もう負けないから!」


グラン「僕だって負けない、ジータを危険な旅に連れていけないからね」


ジータ「ふん!グランが旅をしてどれ位強くなったか…見てあげる!」ポイッ


ジータはそう言うと木刀をグランに向かって投げた。


グラン「おっとと…。あれ、何でだろ…この木刀凄く馴染むや」


ジータ「そりゃそうでしょ、グランが使ってたんだから」


グラン「取っといてくれたんだ?」


ジータ「別に邪魔にならないしね。さぁ!そんな事よりさっさと始めよ!」


グラン「うん。……幼馴染みだからって手加減しないよ」


ジータ「手加減したら私が勝っちゃうよ。まぁしなくても勝つけどね」


グラン「はは。じゃ……行くよ」


さっきまでのグランと違い、ジータを見る眼光が鋭くなる。
眼光の威圧一瞬萎縮するが、ジータも呼吸を整えて構えに入る。


ジータ「…!あは、やっぱ手加減してもらおうかな…!」


グラン「もう遅い……よ!」ダッ


そして2人による稽古ではない、勝負が始まる。



場面は変わり、グランに依頼を頼まれたクラリス達。
依頼を終えて船への帰路を歩いていた。。


クラリス「やー!今日も皆お疲れー!」


マギサ「はい、お疲れ様♪」


ゼタ「んーと、これで今日の分終わりだっけ?」


クラリス「そだね、この後は何も無しっ!いぇい☆」


エルモート「そうか。だったら俺は先に帰らせてもらうぜ」


クラリス「ダメダメー!エルっちもこの後ご飯一緒に食べようよ!」


エルモート「あァ…?オイ…エルっちってまさか俺の──「ね!良いでしょー!」


エルモート「ちっ…うるせェ………ったく…少しだけだぞ」


ゼタ「いいね~♪個人的にクラリスには聞きたい事あるし!」


クラリス「え?なになに?」


ゼタ「ふふーん。後で、ね?」


クラリス「うぁー!めっちゃ気になるー!」


エルモート「…オマエも行くのか?」


マギサ「ええ。楽しそうだわ…ふふふ」


エルモート「はン…そうかい」


クラリス達は船に戻ると食堂に4人で席に着き、食事をする。
他の団員もチラホラと帰ってきていて皆食事をとっていた。


クラリス「それで?何かウチに聞きたい事あるんでしょ?」


ゼタ「そうそう!……でもこれ聞いちゃっていいのかな~?」


クラリス「何さ今更ー!言え言えー!」ツンツン


ゼタ「や、ちょ!やめてやめて!言う、言うから!」


ゼタ「えーっ……ゴホンッ…昨日クラリスさ、何してた?」


クラリス「え゛」


クラリス「……えっとぉ……別に…?普通に過ごしてたけど…?」


エルモート(…バレバレじゃねェーか…)


ゼタ「えー?ホントにー?」


クラリス「ホ、ホントだよ!別に何も無かったし!?」


マギサ「それにしては随分…」


クラリス「いやいや!ホント何も無いって!」


エルモート「だったら少しは落ち着けよ…」


クラリス「落ち着いてるよ!!」


エルモート(ダメだこりゃ…)


ゼタ「そっかぁ~!じゃあ昨日パーシヴァルに抱きついた後部屋に行ったのは…何?」


クラリス「!?」


マギサ「あら意外」


ゼタ「フフーン」ニコニコ


クラリス「み、見てたの…?」


ゼタ「たまたまね、たまたま」



遅筆ですまん。来年の干支は男かな。
エルモート以降に出る予定の画像を貼っておきます。

1.エルモート
2.ユエル
3.ソシエ
4.ヴェイン
5.ラカム
6.カタリナ
https://imgur.com/gallery/Q71Jg


クラリス「うぁぁ…ゼタにも見られてたなんてぇ……」


ゼタ(バザラガも居たけど…まぁ言わなくていいでしょ)


ゼタ「それでそれで?何してたのよ~」


クラリス「別に何もしてないし!話を聞いてもらっただけだし…」


ゼタ「うそだぁ~!あんな雰囲気の男女が同じ部屋に入ってなにもなしって…無いでしょ!」


クラリス「ホントだよ!パーさんそういう事しないし…てゆーかウチに興味無いし!」


マギサ「……恋愛相談?」


クラリス「!」


マギサ「もしかして団長さん絡みとか♪」


クラリス「!?」


エルモート「おい…追い込むな…」


マギサ「あら、ごめんなさい。ふふふ…」


エルモート「ったく…」


ゼタ「マジ?クラリスってグランの事好きだったの?」


クラリス「えぇと…その……べ、別に…?気になるっいうかぁ…」


ゼタ「わかりやす!そんでパーシヴァルに相談した訳だ」


クラリス「うん…パーさんちゃんと話聞いてくれたよ…」


ゼタ「マジかー!言っちゃ悪いけど相談する相手間違ってるよ!」


クラリス「そんな事ないよ!パーさんめっちゃ優しかったし!ウチちょっと見直したもん!」


ゼタ「ホントに~?想像出来ないわ~」


クラリス「ゼタだってさ…」


ゼタ「なによ?」


クラリス「あのバザラガって人といつも一緒だよね!付き合ってんの!?ウチずっと気になってたんだよね!」


ゼタ「はぁ!?バ、バザラガは別にそんなんじゃないし!!矛先こっちに向けるのやめてくれる!?」


クラリス「いーーや!怪しい!怪しすぎる!実は好きなんでしょ!」


ゼタ「ちょ、ちょっとやめてよ!別に好きじゃないし!ただの同僚ってだけだから!!」



その時、2人組がゼタ達のテーブルの近くを通る。


ゼタ「大体ねぇ!…え、あ…バザラガ!?」


バザラガ「ん、何だ?」


クラリス「あーぁ…ぷふふ…」


ゼタ「そこ!笑うな!ねぇ、バザラガ!」


バザラガ「だから何だ」


ゼタ「はいかいいえで答えて!さっきの話聞こえてた!?」


バザラガ「聞こえてないが…」


ゼタ「良し!ならいい!アンタも聞いて無いでしょうね!」


ユーステス「……」


ゼタ「ちょっと!聞こえてんの!」


ユーステス「……」チラッ


バザラガ「……」コクッ


ユーステス「ああ…聞いていない」


ゼタ「良し!行っていいわよ!」


クラリス「ちぇー…つまんないの」


ゼタ「あんたねぇ…!」


エルモート(うるせェ…)


ゼタに捕まった2人は事なきを得ると、ゼタ達からは離れた席に着く。


ユーステス「……聞いてもいいのか」


バザラガ「……」



ユーステス「何故、聞こえないフリをした?」


バザラガ「…関係ないだろう」


ユーステス「そうか」


バザラガ「すまなかった、付き合わせてしまって」


ユーステス「気にするな」


バザラガ「……」


バザラガは決して鉄仮面を人前では外さない。
その表情を伺えることは無いが、何処か寂しそうに鉄仮面を触るバザラガをユーステスは見つめる。


ユーステス「…関係ないと思うがな」ボソッ


バザラガ「…?何か言ったか?」


ユーステス「いいや、独り言だ」


船で色々な思惑が飛び交う中、グランとジータの勝負はまだ続いていた。
森の中に木霊するは、木刀のかち合う音。


グラン「…ほんっとに…強くなったね、ジータ…!」


ジータ「グランもね!私は大分強くなったと思ってたけど…ここまでとは思わなかったよ!」


何度か激しく打ち合うと鍔競り合いにもつれ込む。


ジータ「グランってさ!前は我流だったのに少し型にはまってるよね!」


グラン「僕の仲間に良い師が沢山居てね!剣を習ってるんだ!そういうジータこそどうしてこんなに?」


ジータ「村の近所のお婆ちゃんの事覚えてる?」


グラン「えーっと…」


ジータ「ビィみたいに言うなら、何でもお見通し婆ちゃん」


グラン「ああ!あのお婆さん!何でも言い当てられて凄かったよね」


ジータ「知ってた?あのお婆ちゃんってさ、かつて全空を馳せた伝説の英雄と冒険してたんだって!」


グラン「え…え!?」


ジータ「ビックリしたでしょ!」


グラン「そ、そりゃそうだよ!…あのお婆さんがそんな人だったなんて…」


ジータ「!…今ッ!」


グランの一瞬の気の緩みを見逃さず、木刀を押し弾く。
強く押されたグランは大きく後ろに仰け反るってまい、すかさずジータは追撃に移る。


ジータ(貰った!)


グラン「……」ニヤ


グラン(こういう所は変わってないね…!)


ジータの我流な戦い方はグランが一番良く知っている。
だからこそ、こうするとどうなるのか、というのが良くわかっている。
グランは仰け反った態勢から確信めいた自信で木刀を、突進してくるであろうジータに振り下ろす。


グラン(──ッ!!)


完全に捉えたと思った一撃は、ジータの残像を斬る。
ジータはグランの振り下ろした木刀を左に大きく交わし、居合いの態勢に入る。


グラン(油断したッ!この構えは!?)


ジータ(昔の勝機を目の前にした私だったら当たってたかもね!でも!今は違う!)


ジータ「破ッ!!」


グラン(間に合うッ!!)


ジータから繰り出されるは高速の斬り上げ。


グラン(くっ!……あれ…)


高速で振りぬかれた木刀を受け止めようと踏ん張るが、ジータの右手には木刀がない。
気付いたその時には、もう遅かった。


ジータ「終わりっ!!」


グラン「!!──あっ!」


ジータは受け止められる前に右手から木刀を離し、左手の逆手持ちでグランの木刀を吹き飛ばす。
グランの元から離れた木刀が音を立てて地面に転がった。


ジータ「……」


グラン「……」


ジータ「私の、勝ち」


グラン「僕の…負けだ。最後のは驚いたよ」


ジータ「えへへ、グランから一本取るなら驚かせないとダメかなって思ったんだ」


グラン「あの場面でそれを実行する度胸と成功させる技量…強くなったね、ジータ」


ジータ「グランもね!ビックリしちゃった!」


グラン「あはは……はぁ~~」


ジータ「何、そのわざとらしいデカイ溜息」


グラン「いやぁ、負けちゃったなぁって」


ジータ「約束、忘れてないよね」


グラン「……うん。でも、本当に良いの?」


ジータ「私のこの気持ちは小さい頃から変わってない。連れて行って…私を、外の世界へ」


差し伸べられた手。
グランは握り返す。
約束だからではない、ジータの夢を叶える為に。


グラン「よろしく、ジータ」


ジータ「うん!よろしくね!グラン!」ニコ


満面の笑顔を向けたれたグランは、あの日引っかかった事に確信を持つ。


グラン(ああ…そうなんだ)


グラン(僕は…ジータの事が好きなんだ…)



その想いは内に秘め、今ではないと奥へと隠す。
ジータを正式に騎空団に入れる事になった事を報告する為に船へと戻った。


グラン「ただいま」


ジータ「やっほー」


ルリア「あっ!グラン!ジータさん!おかえりなさい!」タタタッ


ビィ「おう!やっと戻ってきたかグラン!ジータがついて来てるって事はそういう事か?」


グラン「うん、見事にやられたよ」


ルリア「わぁ~!ジータさん、グランに勝っちゃうなんて凄いです~!」


ビィ「やるじゃねぇかジータ!グランってこれでもうちの団では強い方なんだぜ!」


ジータ「えへへ~それほどでも~」


???「何だか騒がしいな。…おや?君は…」


ジータ「…?あっ!」


ルリア「カタリナ!」


カタリナ「やぁ、あの時の…ジータ…だったかな?久しぶりだな」


ジータ「お久しぶりです!カタリナさん!」


カタリナ「ああ、そういえば此処は…あの時の島だったか…」


ビィ「あの日の、この島から始まったんだぜ姐さん!」


カタリナ「そうだったな。もう過去にしてしまうくらいに…経ったのだな」



ルリア「そうですね!今ではこんなに…たーっくさんの人達に出会い、共に旅をしてます!グランは凄いです!」


ビィ「ああ!グランはすげぇ奴だぜ!」


カタリナ「そうだな。改めて感謝するよ、グラン」


ジータ「へぇ~。慕われてるんだね、グランって」


グラン「ちょ、ちょっと皆!嬉しいんだけど今はそういうんじゃ無いでしょ!」


カタリナ「ふふ…そうだったな、すまない。これから他の者にも会いに行くのか?」


グラン「ううん、流石に皆に紹介してるとキリが無いからね。あとはラカムとかに挨拶しておくよ」


カタリナ「そうか、邪魔したな。では宜しく頼む、ジータ」


ジータ「はい!宜しくお願いします!」ペコ



カタリナに挨拶を済ませた後、ルリア達を甲板に残して動力室に居るラカムの元へ向かう。
途中何人もの団員とすれ違って行くが、次第にジータの表情が曇っていく。


ジータ「………」


グラン「ん?ジータ…?どうしたの…?」


ジータ「…あのさ、凄く気になる事があるんだけど…」


グラン「うん」


ジータ「この団てさ、女の人多くない?」


グラン「えっ……多いけど、男の人もいっぱい居るよ?」


ジータ「そうなの?すれ違った人達ほとんど女の人だったけど」


グラン「それは偶然だと思うけど…」


ジータ「ふーん……グランってさ」


グラン「…?」


ジータ「もしかして…その……なんて言うかな…」


ジータ「童貞……じゃないでしょ」


グラン「!!?!?」


ジータ「あ!やっぱそーなんだ!まぁそうだよねー!あんなに綺麗で可愛い人とか沢山いるしねー!」


グラン「あ、あの!?ちょっと何を言ってるかわからないんですかッ!!」


ジータ「こんなに沢山女の子囲っちゃってさー!何人に手出してんの!」


グラン「いやいや!!落ち着いて!!手とか出してないし!!それ以前に僕は……って何かちょっと怒ってない!?」


ジータ「お、怒ってないし!グランが見境ないから私は──」


???「なんや~?何かめっちゃおもろい事聞こえよったで~?」


???「ちょ、ユエルちゃん…!」


グラン「あ…ユエルとソシエ…」


ジータ「えぇ…また女……はっ!?」


ユエル「何の話してたかおじさんにも教えてや~♪」


ジータ「グラン!これは!?」ビシッ


グラン「えっ…何が…?」


ジータ「(ほぼ)裸じゃん!!」


グラン「いやいや!確かに露出は多いけども!」


ユエル「なははは、おもろい事言うなぁ嬢ちゃん。あんま見ぃひん顔やけど、新入り?」


ジータ「はい!そうです!グランの幼馴染みのジータです!!」


ソシエ「あぁそうなんや。そしたらウチらと同じやね、ジータはん」


ジータ「え、あ…そうなんですか?」


ユエル「せやで!ウチとソシエも幼馴染みなんや!仲良うしようなー♪」


ジータ「仲良くとは…普通にですよね」


ユエル「んん?他にどういう意味があるん?」


ジータ「い、いえ!何でもないです!」


ユエル「それにしてもアンタ…」チラッ


グラン「な、何…」


ユエル「まーたこんな可愛い娘捕まえてからに…なんや!ハーレムでも作りたいんか!!」バシーン


グラン「痛っ!違うよ!そんなんじゃないから!」


ジータ「……」ジーー


グラン「ジータもそんな目で見な……うわ!目が怖っ!」


ユエル「これじゃあまたウチら構ってもらえなくなるなぁ~寂しいなぁ寂しいなぁ、なぁソシエ?」


ソシエ「ふふ、そやねぇ。でもウチはユエルちゃんと居れれば大丈夫やよ♪」


ユエル「んもーっ!ソシエはほんま可愛いなぁ~!うりうり~!」


ソシエ「あは、あはは!ちょぉ…ユエルちゃんくすぐったいってぇ…!」


ユエル「ここかー!ここがええのんかぁー!」


ジータ「……何これ」


グラン「あははは…いつもの光景」


ユエル「よっしゃ、こんなもんやろ♪」


ソシエ「ハァ…ハァ…ウチもう…笑い疲れて…ハァ…しもうたよ…ユエルちゃん…」


グラン(!…ソシエって結構色っぽいな…)


ジータ「……ふんっ」ギュゥゥゥ


グラン「あだだだだ!何で頬をつねるの!?」


ジータ「今えっちな事考えてた顔した」


グラン「そ、そんな事ないよ!?」


ユエル「なんやなんや~?ウチのソシエに欲情でもしたんか?」


ソシエ「ユ、ユエルちゃん…ウチのって…///」


グラン「し、してないです!確かにちょっと良いなって思ったけどそこまで思ってないです!」


ユエル「なんやとぉ!それはソシエに色気が無いって言っとるんかー!」


ジータ「ほら!やっぱり!えっちな事考えてた!」


グラン「えええ!いやいや!そうじゃなくてね!?」


グラン(どうしたらいいんだこれは!?)


ソシエ「まぁまぁ二人共…団長はんも困ってるしそこまでに…」


ユエル「そーかぁ?そーかぁ…。まぁソシエがそう言うならこの辺で勘弁したる」


ジータ「……私もやり過ぎた、ごめん」


グラン「え、いや…大丈夫、うん…(た、助かった…)」


ユエル「ソシエはほんま優しい娘やな~ウチだったら絶対ほっとかんわ!」


ソシエ「は、恥ずかしいよ…ユエルちゃん。ウチだってユエルちゃんみたいな人は放っておけんよ?」


ユエル「ほんまー!?めっちゃ嬉しい事言ってくれるやーん!やっぱソシエ大好きやでー!」スリスリスリ


ソシエ「えへへへ…ウチもユエルちゃん大好きやよ」


ジータ「」


グラン「あはは……じゃあ僕達は行くよ。またね、ユエル、ソシエ」


ユエル「わかったー!ほななー!ジータもまた今度話そうやー!」


ソシエ「またな~」フリフリ


ユエル達と別れると、特に誰とも会う事なく動力室へと辿り着いた。


グラン「よし…やっと着いた…」


ジータ「……」ペタペタ


ここに来るまでジータは無言で、自分の身体のあちこちを触っている。


ジータ(皆スタイル良かったなー…ここも…大きい人いっぱい居たし…)ペタペタ


グラン「ジータ…?」


ジータ(私も自信ない訳じゃないけど……うーーん…)ペタペタ


グラン「お、おーい…?」


下に俯くジータを覗き込もうと顔を寄せる。


ジータ(まぁ…悩んでても仕方ないか…発育は人それぞれだし…)フッ


ジータ「って…わぁっ!!」


グラン「わぁっ!?」


ジータ「何!何でそんな顔近づけてたの!?」


グラン「だってジータ呼んでも返事しないし…俯いてるし…体調でも悪いのかと思って…」


ジータ「えっ……そ、そっか…ごめん」


グラン「いや、大丈夫なら良かったよ。じゃあ入ろうか」


ジータ「うん…」


グラン・ジータ(めっちゃドキドキした…)



出したいキャラが増えていくぅー↑
例の如く知らない人用の為に

1.ランスロット
2.クロエ
3.三馬鹿(右から、ローアイン、トモイ、エルセム)
https://imgur.com/gallery/TDpJP


グランが扉に手をかけた時、中から声が聞こえる。


メーテラ『ねーぇ、ちょっとだけ、良いでしょ?』


ラカム『おい、やめろよ?』


メーテラ『良いじゃん!ちょっといじるだけだから』


ラカム『うゎ!』


グラン(メーテラとラカムの声だ…またメーテラがラカムの邪魔してるんだな…注意しなきゃ)


メーテラ『うわっすごっ…硬~い』


グランがドアノブに力を入れた時、その手をジータが止める。


グラン「え?」


ジータ「今は入っちゃダメ」


グラン「えっ…なんで?」


ラカム『だから触んなって…』


メーテラ『そんな事言っちゃってー、アタシとするの好きでしょ?』


ジータ「良くないと思います」


グラン(何故敬語…)


ラカム『別に嫌いじゃねーけどよ、今はやめてくれよ』


グラン「よくわかんないけど…入るよ?」ガチャ


ジータ「ちょっ──」


ジータの静止を振り切り、扉を開ける。
中には修理をしているラカムと、どこかのパーツを持ったメーテラが居た。


ラカム「あん?…おお!グランじゃねーか!良く来たな!」


ジータ「………」


グラン「やあラカム、進んでる?」



ラカム「ああ!順調だぜ!もうすぐで本調子だ、待っててくれ」


グラン「そっか。メーテラも…邪魔してないよね?」


メーテラ「聞き捨てならないわね~、あたしが邪魔する訳じゃないのよ」


ラカム「よく言うぜ…つーか、その後ろに居るのは誰だ?」


グラン「ああ、紹介するよ。彼女は幼馴染みのジータ、腕は保証するよ」


ジータ「よ、よろしくお願いします!」


ラカム「へぇ!幼馴染みかぁ、いいねぇ!俺はこの、グランサイファーの操舵を任されているラカムだ、宜しくな!」


ラカム「そんでこっちに居るのはメーテラだ、ちょっとだけ変わってるが仲良くしてやってくれ」


メーテラ「ちょっと!変とは何よ!失礼ね!」


ジータ「あ、あはは…宜しく…」


ラカム「何だぁ?元気ねぇな?」


ジータ「い、いや!そんな事無いです!ちょっと恥ずかしかったといかなんというか…!」


グラン「そうなんだよ、ここに入る前に中からラカム達の声が聞こえたんだけどさ、その時も様子が──」


ジータ「ちょちょちょ!?余計な事言わないでよ!」


メーテラ「………ははーん、そゆこと」ニヤァ


ジータ「!……な、何でしょう」


グラン「?」


メーテラ「べっつにー?」ポイッ


ラカム「うぉっとと!?……っぶねぇ…」


メーテラは持っていたパーツをラカムに投げると扉に歩いていく。
ジータの近くに来ると、肩に手を乗せ耳打ちする。


メーテラ「えっち」


ジータ「~~~ッ!!」カァァァ


メーテラ「あはは、かーわいい♪」


そう言うとメーテラは出ていった。


ジータ「うぅ……バレてた…」


グラン「ジータ?顔赤いけど…」


ジータ「な、何でもないっ!」


ラカム「部屋はどーすんだ?」


グラン「んー…そうだね。誰かと同室になってもらうしかないけど…誰にしようかな」


ラカム「流石に男とって訳にもいかねーしなぁ…」


グラン「あぁそうだ、クラリスとか」


ラカム「お、良いんじゃねーか?歳も近そうだしな」


ジータ「クラリス…?ってどんな人?」


グラン「うーん…説明するより会った方が早そう…」


ジータ「…ふーん…わかった」


グラン「じゃ、早速クラリスの所行こうか。ラカム、頑張ってね」


ラカム「おう!任せとけよ!」


こうしてラカムに挨拶を済ませると、同室となるクラリスの元へと向かった。
同刻、他の場所では──。


ヴェイン「なぁなぁ!パーさん!!」


パーシヴァル「おい駄犬、その呼び方をやめろ!」


ヴェイン「今日食堂でパーさんの噂話聞いちゃったんだよ俺!」


ランスロット「噂話?」


パーシヴァル「全く…。下らん、どうせ言っていたのはゼタ辺りだろう」


ヴェイン「おぉ!すげぇなパーさん!正解だぜ!!」


ランスロット「で?どんな話なんだ?」


ヴェイン「良くぞ聞いてくれたランちゃん!実は昨日パーさんがクラリスと抱き合ってたらしいんだ!!」


パーシヴァル「…なに?」


ランスロット「へぇ、意外だな。パーシヴァルはあーいう娘が好みなのか?」


パーシヴァル「おい待て、勝手に話を進めるな。それに少し語弊があるぞ、俺は抱いていない」


ランスロット「じゃぁ…抱きつかれたのか?」


パーシヴァル「ああ、そうなるな」


ヴェイン「そうなのか?まぁ同じ事だぜ!!」


パーシヴァル「どこがだ!燃やすぞ駄犬!!」


ランスロット「ふーん…じゃあクラリスがパーシヴァルの事を?」


パーシヴァル「それも違う、アイツにはちゃんと想う相手が居る」


ランスロット「へぇ!……ん?そしたら何でパーシヴァルに抱きついたんだ?」


パーシヴァル「ああ、それにも理由があるんだが…」


ヴェイン「抱きついてきたクラリスを部屋に連れ込んだらしいぜ!!ランちゃん!!」


ランスロット「そうなのか?パーシヴァル」


パーシヴァル「駄犬は黙ってろ!!言い方に問題はあるが、その通りだ」


パーシヴァル「昨日アイツは泣いていてな、話を聞いてやるのに通路では都合が悪いから部屋に連れていっただけだ」


ランスロット「その過程で抱きつかれたのか、優しくしたんだな」


ヴェイン「やるな!パーさん!!流石だぜ!!」


パーシヴァル「フッ…子供の1人くらい慰められなくてはな」


ランスロット「そうか、じゃあその話の内容は…」


パーシヴァル「ふん……別に構わんぞ」


ランスロット「良いのか!?女の子の秘密をそんな軽々と…」


パーシヴァル「別に問題無いだろう、噂話になるくらい食堂に居た者達には聞かれてるんだ。遅いか早いかの問題だ」


ランスロット「そういう…ものなのか」


パーシヴァル「多分な……興味あるのかランスロット」


ランスロット「えっ!あー……まぁ」


ヴェイン「ランちゃんってこういう所子供っぽいよなー!」


ランスロット「う、うるさいな!別に良いだろう!」


パーシヴァル「では…何処から話そうか──」


**********************************


パーシヴァルの部屋に入るとクラリスは椅子に座り、パーシヴァルは端にあるテーブルで飲み物を注いでいた。


パーシヴァル「何か飲むか?」


クラリス「うん…お願い」


パーシヴァル「わかった、少し待っていろ」


パーシヴァルは手慣れた手つきでコーヒーを作る。
それを不思議そうにクラリスは見つめる。


クラリス「何か手慣れてんね。誰かよく来るの?」


パーシヴァル「ああ、駄犬とかランスロットがな」


クラリス「駄犬って……あー…ヴェインの事かー」


パーシヴァル「そうだ、中々適当な呼び名だろう」


クラリス「あはは、駄目かはわかんないけど…犬っぽいのはわかるね」


パーシヴァル「そうだろう」


クラリス「めっちゃ仲良さそうだもんね、流石四騎士」


パーシヴァル「やめろ、駄犬と仲が良いと思われるのは虫唾が走る」


クラリス「素直じゃないね~」


パーシヴァル「俺はいつでも正直だがな……コーヒーだ、飲めるか?」


クラリス「飲んだ事ないけど、多分大丈夫!ありがと…」


クラリスにコーヒーを手渡すと、パーシヴァルは反対側に腰掛ける。


パーシヴァル「……それで、何を話してくれるんだ?」


クラリス「あ、うん……うぇぇ苦い…」


パーシヴァル「脇にあるミルクと砂糖を入れて混ぜろ」


クラリス「うんん…」カチャカチャ


クラリス「……あ、これなら飲める!美味しいね!」


パーシヴァル「そうだろう」


クラリス「んー…そんじゃあどうやって話そうかな…確かに聞いてもらいたいんだけど、恥ずかしいというか…」


パーシヴァル「恥ずかしい話なのか?」


クラリス「まぁ、うん…結構」


パーシヴァル「ほう…」


クラリス「ウチってさ…団長の事好きなんだよね」


パーシヴァル「グランか。アイツに目をつけるとは中々だな」


クラリス「そんでね、今日ちょっと…ね」


パーシヴァル「何だ?」


クラリス「そのぉ……団長に迫ったっていうか…既成事実を作ろうとしたというか…」


パーシヴァル「なるほど、夜這いか」


クラリス「夜這いではないんだけどね!まぁ…近いかなぁ…」


パーシヴァル「ふむ…読めたぞ。グランに迫ってはみたが断られ、貴様は恥ずかしい思いをして通路に居たわけだな」


クラリス「うーーん!!まぁそうだね!」


パーシヴァル「まだまだ子供だと思っていたが、もうそういう事を考える歳か…」


クラリス「あ、あはははは…お恥ずかしい…」


パーシヴァル「それで?」


クラリス「うん…ウチね、団長と将来は結婚とか子供とか……ここには沢山女の子居るし…早くしないと誰かに取られちゃうんじゃないかーって思っててね」


パーシヴァル「ほう、そんな先を見据えてたのか」


クラリス「うん……ウチって重い…?」


パーシヴァル「いいや、想い人との婚結や子が欲しいと思うのは普通の女なら持っている思想だろう。俺は重いとは思わない」


クラリス「…パーさん……ありがと」


クラリス「…あはは、何かパーさんがそう言うとそうなんじゃないかなって思えてきたよ」


パーシヴァル「ふん…当然の事を言ったまでだ」


クラリス「ウチ…やっぱり団長を誰にも渡したくない…」


パーシヴァル「なら、もう悩む必要は無いだろう。お前の思いの丈をぶつけて来い」


クラリス「うん!ありがとパーさん!何か吹っ切れた気がする!」


パーシヴァル「気にするな、これくらい当然だ」


クラリス「ウチがもし団長の事好きじゃなかったら、パーさんの事すきになってたかも!」


パーシヴァル「お断りだ、子供に興味はない」


クラリス「ひっどーい!こんなに可愛いのにー」


パーシヴァル「自分で言ってたら世話がないな」


クラリス「あはは!そんじゃね!今日はありがと!コーヒーご馳走様!」


パーシヴァル「ああ、励めよ。クラリス…」


クラリス「!!……今…」


パーシヴァル「ん…何だ?」


クラリス「初めて名前で呼んでくれたね!何か気持ち悪ー!」


パーシヴァル「そうだったか?あまり気にしてなかったが…」


クラリス「気持ち悪いけど……何だか嬉しいや…」


パーシヴァル「おかしな奴だ…早く寝ろよ」


クラリス「わかってるよーだ!バイバイ!パーさん!」


**********************************


パーシヴァル「とまぁ、こんな感じだったぞ」


ランスロット「それ、ホントに話してよかったのか…?」


パーシヴァル「何か問題あるか?子供の恋愛だろう」


ランスロット「いやまぁ…うーん…そうなんだけども…うーーん…」


ヴェイン「つまりクラリスはグランの事も好きだけど、パーさんの事も好きって事だな!?」


パーシヴァル「話を聞いていたのか駄犬!」


ランスロット「パーシヴァルはクラリスの事を何とも?」


パーシヴァル「当たり前だろう、相手は子供だ」


ランスロット「子供子供って言うけど、ありきたりかもしれないが…恋愛に年齢は関係ないだろ?」


パーシヴァル「下らん。そもそも対象として見れないのだから俺には無縁の言葉だ」


ヴェイン「違うぜパーさん!!相手を見るのは年齢でも外見でもねぇ!内面だ!」


ランスロット「お、たまには良いこと言うなヴェイン」


ヴェイン「たまには余計だぜ!ランちゃん!!」


パーシヴァル「フン……」


パーシヴァルは手に持ったコーヒーを眺め、あの日のクラリスの事を思い出す。


パーシヴァル「…ありえんな…」


誰に聞こえるでもなく、小さな声で呟くと手に持ったコーヒーを一気に飲み干した。
その頃、グラン達はクラリスの元へ行き、ジータと同室になる事情を説明する。


クラリス「へぇ~!団長の幼馴染みなんだぁ!」


ジータ「そうなんです。えと、今日から宜しくお願いします」


クラリス「堅いよー!言葉とか崩していいから!ついでにおねーちゃんって呼んでも良いよ!」


ジータ「え、えっと……うん、わかった。おねーちゃんってのは遠慮しようかな、あはは」


クラリス「ちぇー残念」


グラン「そんな訳だからジータを頼んだよ、クラリス」


クラリス「うん!任せてー!」


グラン「それじゃ宜しく。また後でね、ジータ」


ジータ「うん、ありがと」


グランは2人に手を振り退出する。


クラリス「ではでは改めまして…ぶっちゃけトーク!」


ジータ「えぇ?」


クラリス「ぶっちゃけジータは団長の事どう思ってる!?」


ジータ「団長…あ、グランの事?」


クラリス「そう!」


ジータ「どうって言われてもなぁ……ただの幼馴染み…?」


クラリス「そんだけ?幼馴染みって、気が付かなかったけどお互い好き!みたいなのが定番じゃん?」


ジータ「そんな事ないよ?実際は一緒に居すぎて兄妹みたいだもん。あーでもグランが女の子に鼻の下伸ばすのは嫌かなー」


クラリス「それって好きって事じゃないの?」


ジータ「あれだよ、私のグランに対する気持ちはloveじゃなくてlike…みたいな?普通にグランの事は好きだよ」


クラリス「あーそういうね!なるほどなるほど…」


ジータ「何でそんな事聞いたの?もしかして…」


クラリス「そうだよ!ウチは団長の事好き!!」


ジータ「あは、そんな大声で言うくらい好きなんだ」


クラリス「うん!」


ジータ「こんな可愛い人に好きになってもらってるなんて…グランも隅に置けないねー」


クラリス「えへへ~それほどでも~」


ジータ「応援するよ、グランを宜しくね」


クラリス「うん!ありがと!…ねぇねぇ!団長の昔の事…聞かせて?」


ジータ「お、良いよー!どっから話そうかな~?」


クラリス「最初から最初からー!」


ジータ「最初からね、ではでは…コホン──」


女子トークに花を咲かせる2人は、部屋の取り決め等放っておいてグランに呼ばれるまで話し込んだ。
そして翌日。
組織に属しているゼタ、バザラガ、ベアトリクス、ユーステスの4人でザンクティンゼルにある遺跡に調査に来ていた。


ベアトリクス「なぁゼタ~…ホントにココで合ってるのかぁ~?」


ゼタ「っさいわよベア!あたしだって知らないわよ!」


ユーステス「うるさいぞ、奴らに見つかる」


ゼタ「はいはい、すいませんね~」


バザラガ「ふむ……ここか」ドンドン


ゼタ「…?バザラガ?さっきから壁叩いて何してんのよ?」


バザラガ「精巧な作りだな……だが」


そう呟くとバザラガは大鎌をとりだす。


ゼタ「ちょっと?」


ベアトリクス「お、おい…?何する気だ…?」


バザラガ「黙って見ていろ……ぬおおおおっ!!」


勢いよく大鎌で壁を叩き斬ると壁が透過し、空洞が現れる。


ゼタ「うっそぉ!」


ベアトリクス「く、空洞が…」


バザラガ「…これが本来の姿だ」


ユーステス「奴らに幻視の魔法を得意とするのが居るようだな…手が掛かりそうだ」


一行は空洞を通り抜けると、大広間に出る。
正面には何も無いが左右に進む道がある。


バザラガ「ふむ…」


ユーステス「手間を省く、ベアトリクスは俺と右へ行くぞ。お前達は左だ」


ベアトリクス「えー!私かよ!」


ゼタ「ちっ…アンタに言われると何か癪だわ」


ユーステス「何とでも思ってくれ」


バザラガ「いちいち噛み付くな、行くぞ」


ゼタ「はいはい…」


左の通路へと入っていく2人を見た後、ユーステス達も右の通路へと入っていく。


ベアトリクス「なぁ…何かやけに静かじゃないか?奴らって沢山いるんだろ?」


ユーステス「知らん。どこかに潜んでいるかもしれない、油断するなよ」


ベアトリクス「わ、わかったよ…」


ベアトリクス(ユーステスって何考えてるか判んないから苦手なんだよなー…)


通路を抜けると、何かが祀られている祭壇のある部屋に出る。


ベアトリクス「何だぁ…ここ」


ユーステス「さぁな、何かを祀っている部屋みたいだが…」


ベアトリクス「これって何を祀ってるんだろ…」ペシペシ


ユーステス「おい、あまり不用意に触るな。遺跡だから何が起きるかわからないぞ」


ベアトリクス「大丈夫だ、触ったくらいじゃ何も起きないって──ってわあああああ!?」


ユーステス「馬鹿が…!」


ベアトリクス立っていた辺りの床が開き、穴の中へと消えていく。
落ちてからも叫び声は届く様なのでそこまで深くはない、と判断する。
穴に耳を傾け、ベアトリクスの返事を待つ。


ベアトリクス『おおおーい!ユーステスー!!私は無事だー!!』


ユーステス(無事みたいだな…)


ベアトリクスの無事を確認すると、紙にメモ書きをして辺りにある瓦礫を包み込んで穴に落とす。


ベアトリクス『えー!!1人でここ行くのかよ!!』


次には『任せたぞ、俺は行く』というメモ書きを同じ要領で落として、奥へとユーステスは進む。


ベアトリクス『まじかよー!!薄情者ー!!冷血漢ーーッ!!』


ベアトリクスの叫びはもうユーステスには届かない。
ゼタ達の方は当たりを引いたらしく、奴らの溜まり場を見つける。


バザラガ「…最近まで使っていた形跡があるな」


ゼタ「当たりね、ベアには悪いけど手柄は貰ったわ」


バザラガ「俺も譲る気はないぞ」


ゼタ「私1人で十分よ!盗賊くらい!」


バザラガ「慢心はするなよ。奴らは荒くれ者が徒党を組んだ集団だ、その中でも頭領と副頭領は腕が立つらしい」


ゼタ「何よ、弱気じゃない?」


バザラガ「足をすくわれるなよ、と言っているだけだ」


ゼタ「そんな心配要らないわよ!ちゃちゃっと終わらせてやるわ!」


バザラガ「だと良いがな……奥に行くぞ」


ゼタ「ちょ、待ってよー!」


長い通路を歩き、大扉の前に辿り着く。


バザラガ「…ここか」


ゼタ「うわぁ…いかにも居ますよーって伝わってくるわ…」


バザラガ「だな。正面から入る形になるが…気は張っておけよ」


ゼタ「あったりまえじゃないの!あたしはいつでも良いよ!」


バザラガ「そうか」


バザラガは大扉を押し開く。


頭領「おう!良く来たな!待ってたぜぇ!!」


副頭領「……」


バザラガ「…どうやら、お待ちかねだったみたいだな」


ゼタ「ごめんねー、道に迷っちゃってさー」


頭領「ガッハッハッハ!!中々ノリの良いネーチャンじゃねーか!どうだ?俺達の仲間にならねぇか?」


ゼタ「え~!冗談は顔だけにして欲しいんだけど~!ぶっはっはっは!!」


頭領「ガハハハハ!!ますます気に入ったぜ!おいお前らァ!!ちょっとそこのネーチャン達と遊んでやれ!」


盗賊1「うぃーっす!」


盗賊5「別に?アンタらに?怨みは無いけど?ボスがやれっていうから?」


盗賊17「死ねやぁぁぁぁぁ!!コラァァァァァァッ!!!」


わらわらと沸く盗賊達に対し、特に焦る素振りを見せない2人。
互いに武器を取り出し、構える。


バザラガ「俺が頭領とやる。副頭領を任せたぞ、ゼタ」


ゼタ「仕方ないわね。まぁあんな見るからに筋肉バカっぽいのとやりたくないしね、アンタにお似合いよ」


バザラガ「フッ……では…」


バザラガ「行くぞ!!」
ゼタ「行くよ!!」


2人は左右に別れて、群れへと突貫する。
その頃のベアトリクスといえば、盗賊団の採掘現場に居合わせる。


ベアトリクス(コイツらが例の遺跡荒らしか…)チラッ


ベアトリクス(見た所親玉っぽいのは居ないみたいだけど…でも数が多いな…)


ベアトリクス(どうしよう…私1人でこの数とやるのか…?)


ベアトリクス(ユーステスを待つ方が良いのか……あー!わかんないー!)


その時、ベアトリクスの後ろから声が掛かる。


盗賊40「おい姉ちゃん、何してんだ?」


ベアトリクス「しっ!今乗り込むか仲間を待つか悩んでるんだ…静かに…」


盗賊40「そぉーかァー」


ベアトリクス「ん…?おま──」


盗賊40「野郎共ーーッ!!敵だーーーッ!!!」ドンッ


ベアトリクス「う、うわわっ!?」


高台の壁に隠れてたベアトリクスは、不意を付かれて高台から転がり落ちる。


ベアトリクス「痛ったぁ……」


盗賊40「残念だったなァ!姉ちゃん!」ズザザザザザ


ベアトリクス(かぁ~っ…足首いったぁ~…)


盗賊32「何だぁ?1人で乗り込んできたのか?」


盗賊4「ふぉっふぉっふぉ…生娘の匂いがするわい」


盗賊40「仲間が居るらしいが、どうやらはぐれたみたいだぜ?」


盗賊22「ひ、久しぶりの女だ…!や、やっちゃって良いのか…?」


盗賊40「ああ!どうせこの姉ちゃんは敵なんだ!俺達の怖さを思い知らせてやろうぜ!!」


ベアトリクス「とんだ失態だなぁ…」


ベアトリクスがそう呟くと、持っていた剣から藍色のオーラが漏れ始める。


盗賊40「な、なんだぁこりゃぁ…?」


ベアトリクス「敵に見つかるし、怪我はするし、大勢に囲まれるし…」


ベアトリクスが呟く度にオーラの量は増え、剣と同化していく。


盗賊40「お、おい…?」


ベアトリクス「こんな事アイツらに知られたら、凄い!馬鹿にされるんだ…!」


同化したオーラは剣の形状を成しながら肥大化していく。


盗賊40「け、剣が…!」


ベアトリクス「…エムブラスクの剣よ!!我が前に渦巻く因果を食喰らい!!窮地を断つ道を切り開け!!」


ベアトリクスが叫ぶと溢れ出していたオーラは纏まり、藍色の巨大な剣を生成する。


ベアトリクス「…来な。今の私は強いぞ」


ベアトリクスは冷静に、深く構えた。


奥へと進んでいたユーステスは地下へと続く階段を発見し、ベアトリクスの元へと急ぐ。


ユーステス(ここから地下に行けるのか……アイツは…無茶をするからな…)


ユーステス(無事ではあると思うが…急ぐか)


早足でベアトリクスの元へと急ぐ。
バザラガ達は雑魚を掃討し、残りは頭領と副頭領のみとなる。


ゼタ「準備運動にもなりゃしないわね…後はアンタらだけよ」


頭領「ククク…やはり雑魚では傷一つも付けられんか…」


バザラガ「余裕で居られるのも今のうちだ、かかってこい。相手になろう」


頭領「ガハハハ!!そこまで言われちゃあしょうがねぇ!!おい!副頭領はあのネーチャンとやれ!俺ぁ、あのデケーおっさんとやるぜ!」


副頭領「しかと心得た」


ゼタ「よっしゃ!アンタの相手はあたしよ!着物のおじさん!」


副頭領「すまぬが…拙者はまだおじさんではない…」


ゼタ「マジ?そうは見えないけど…」


副頭領「よく言われるのだが…拙者はまだ……」


副頭領は腰の鞘から刀を抜き、霞の構えで相対する。


ゼタ(油断は…しない!)ギュッ


先程のバザラガの言葉を思い出し、槍を再度握り直す。


副頭領「32だ!!」


ゼタ「──ッ!」


怒声と共に踏み込んでくる副頭領の一撃を上手く槍で捌く。


ゼタ「ってぇ…やっぱおっさんじゃん!!」


拙者「黙れぃ!」


ゼタは太刀筋を見る為に、とりあえず防戦へと移る。


頭領「ガハハハ!!早速あっちは盛り上がってるじゃねぇのよ!!」


鞘に入ったままの極長の大剣を軽々と肩に乗せて笑う。


バザラガ(特大剣か…)


頭領「対してこっちのデケーおっさんは…俺を楽しませてくれるかい?」


先程までの陽気な目ではない、場数を踏んで研ぎ澄まされた鋭い目に変わる。


バザラガ「心配するな、十二分にお前を楽しませてやる」


頭領「良いねぇ…!顔は見えねぇが殺気がビシビシ来やがる!」


肩に乗せた特大剣を鞘からゆっくりと抜くと、鞘を放り投げる。
その剣身は大量の汚れに塗れていた。


バザラガ「……血か」


頭領「応よ!!俺ぁコイツで何人も斬ってきたんだ!!この血の汚れこそが俺の強さの証よッ!!」


バザラガ「ならばその証、今日限りでへし折らせて貰おう」


頭領「へぇ!!やれるもんならやってみろよぉっ!!オラァッ!!」


バザラガ「──!!」


頭領は間合いの外から、言うなれば遠距離から大きくフルスイングをする。
バザラガはこれに違和感を感じ取り、剣筋から逃れるように交わす。
するとバザラガの後方、遺跡の壁が大きな音を立てて損壊する。


バザラガ「…属性力」


頭領「ご名答ッ!!初見でかわすたぁやるじゃねぇか!!だが、そうでなくちゃつまらねぇ!!」


バザラガ「フン…次は俺の番だ。ぬぅおおおおっ!!」


大鎌を大きく振りかぶり、一飛びで間合いを遠距離から近距離へと詰める。


頭領「ハッ!!見え見えだ!!」


振り降ろされた大鎌を難無く交わし、大鎌は地面に刺さるが──。


頭領「隙が──ッ!?」グラッ


頭領は大きくバランスを崩し、すぐに地面を見る。
大鎌が刺さった一帯の広範囲に地割れが起きていて、その隙間から漆黒のオーラが溢れ出す。


頭領「!!やべ──」


バザラガ「もう遅い」


瞬間、バザラガの前方一帯の地面が爆散する。


頭領「カハッ…!!」


黒煙の中から姿を現した頭領、誰が見ても判るくらいに満身創痍だが頭領は倒れない。


バザラガ「ほう、今の一撃で倒れないか。やはり只者ではないな」


頭領「へ…へへへへ…!!油断…しちまったぜ…!!まだ、まだ……こっからよォ…!!」


ボロボロの身体で、特大剣を構える。


バザラガ「やめておけ。動くのも辛いだろう。確かにお前は腕は立つようだが、相手が悪かった」


頭領「んだとォ…!!俺ぁ…まだ…!!足りねぇそォ!!」


バザラガ「すまなかった。十二分に楽しませてやるつもりだったんだが…力の差がありすぎた様だ」


頭領「テ、テメェ…!!」


バザラガ「喋りすぎた、これで終わりだ」


頭領「うぷっ!?」


バザラガは頭領の腹に拳をめり込ませる。
この一撃で完全に気を失ってしまった。


バザラガ(ふむ…所詮は荒くれ者の盗賊団だったか…噂を過信しすぎたな)


ゼタ「ぅわっ!?ちょ、たんま!!」


普段のゼタからは聞けない声色にバザラガは過敏に反応する。


バザラガ「!?……ゼタ!?」


少し時は戻り、バザラガが頭領と戦闘を開始した頃──。


副頭領(拙者が押しているのは間違いない……ただ…)


副頭領(この女子に拙者の刃が届く姿が…想像出来ん…!)


ゼタ(うーん……確かに中々やるけど…うちの団員達の方が強いかなー…)


太刀筋を見切り始めたゼタは、段々と余裕を持つようになる。


ドォォォォォン!!!


ゼタ(!?…うっわ、バザラガの奴が派手にやってるわねー)チラッ


ゼタが視線を逸らしたのは一瞬、だが副頭領はゼタの目線の動きを見逃さなかった。


副頭領(勝機ッ!!)


目にも止まらぬ速さで、袖に仕込んであった砂袋をゼタに向かって投げつける。


ゼタ「ぶはっ!?」


副頭領「ククククク…!油断したな女子!」


今だと言わんばかりにゼタに猛攻を仕掛ける。
ゼタは一瞬だけ開くブツブツの視界と殺気で副頭領の猛攻を凌ぐ。


ゼタ(くっそー!このままじゃ…!)


ゼタ(──あっ!?)


瓦礫を踏んでしまい、尻餅を着いてしまう。


副頭領「貰ったァ!」


ゼタ「ぅわ!?ちょ、たんま!!」


バザラガ『大鎌グロウノスよ!!その力を示せッ!!』


ゼタ(──!!)


バザラガの声が聞こえたと思った時、目の前にあった気配が無くなっているのに気付く。


ゼタ(あれ…?)グシグシ


ゼタは目を擦り、何とか視界を取り戻す。


ゼタ(アイツは…)チラッ


先程まで居た副頭領の行方を探すと、遺跡の壁にめり込むくらいに吹き飛ばされていた。



ゼタ(あちゃー…アレをモロに食らっちゃったか…)


バザラガ「無事か、ゼタ」


バザラガは大鎌をしまい、ゼタに歩み寄っていく。


ゼタ「あー…うん、平気」


バザラガ「油断するなと言っただろう」


ゼタ「別に油断してた訳じゃないし…」ゴニョゴニョ


バザラガ「…まぁ、無事なら良い」


ゼタ「…ごめん」


バザラガ「構わん。では、奴らを拘束するぞ」


ゼタ「はーい。あーぁ、結局手柄取られちゃったー」


バザラガ「次は頑張れよ、姫」


ゼタ「ちょっと!アンタの冗談はその鉄仮面だけにしてよね!」


倒れた頭領と副頭領を拘束すると、バザラガが2人を抱えながらユーステス達を探しに道を戻る。
ベアトリクスはエムブラスクの剣を開放したが、未だ安全では無かった。


ベアトリクス(ちぃっ!最初のひと薙ぎで大半を吹き飛ばしたのは良いけど…!)


ベアトリクス(やっぱり数が多いって!)


因果が累積したベアトリクスの瞬間火力は組織メンバーの誰よりも強い。
だが、開放したエムブラスクの剣はオーラの消費が激しく契約者自身の体力も大きく失う。


ベアトリクス(…このままじゃ…!)


盗賊44「…どしたぁ?もう終わりかぁ?」


ベアトリクス「ふん!……またまだ…こっから…!」


盗賊44「最初の一閃で野郎共が殆どぶっ倒れた時はヤベェって思ったが…ただの一発屋の姉ちゃんか」


ベアトリクス「だ、誰が一発屋だ!それに私は…まだ戦える!」


盗賊44「確かに俺1人じゃあ今の姉ちゃんには勝てねぇだろうけどよ、こちとら姉ちゃんの何十倍も野郎がいるんだぜ?全員を相手に出来んのかぁ?」


ベアトリクス「う…!い、いいからかかってこい!全員ぶっ飛ばす!」


盗賊44「ケケケ…!ボスの好きそうな気概のある姉ちゃんだ!よっしゃ野郎共!行くぜェ!?」


いざ動き出そうとした時、盗賊達の足元に銃弾の嵐が降り注ぐ。


盗賊44「な、なんだぁ!?」


ユーステス「……」


ユーステスは長銃を構えながら、ゆっくりと降りてくる。


盗賊44「何だテメェはぁ!!」


ユーステス「お前達の敵だ」


ベアトリクス「ユーステス…!来てくれたのか…!」


ユーステス「ああ。お前は相変わらず無茶をするな」


ベアトリクス「む、無茶って…」


ユーステス「1人で何とかなると思ったのか?」


ユーステスはそう言いながら辺りを見回す。


ユーステス「大方その力を使ってみたは良いものの、思ったより奴らが残って追い詰められていたのだろう」


ベアトリクス「ち、違う!これにはちゃんとわけがあるんだ!」


ユーステス「言い訳は後で聞く」


ベアトリクス「今聞けよー!」


盗賊44「てんめぇ…!ノコノコと現れて俺達を無視してんじゃねぇ!」


ユーステス「お前達…」


ユーステスはベアトリクスと盗賊達の間に立ち、銃口を盗賊に向ける。


盗賊44「あぁ?」


ユーステス「その弾痕より前に出たら排除する。大人しく退くなら見逃してやる」


盗賊44「そんな事言って勝算がねぇからフカシてんじゃねぇのかぁ!?ああ!?」


ユーステス「俺は後ろの奴みたく、甘くは無いぞ」


盗賊44「へっ!!口だけならなんとでも言えんだよ!!」


ユーステス「…2…」


ユーステスは小さく呟くと盗賊達の上に向かって弾放つ。
先程の銃弾とは違い雷を纏った銃弾、壁に衝突すると巨大な鉄球がぶつかったかの様な大きな穴が出来る。


盗賊44「なっ…!?」


ユーステス「今のでも加減した方だ。もう一度聞く、戦うのか退くのか……どうする?」


盗賊44「…何なんだテメェら…そこの姉ちゃんもそうだが…化け物みたいな力使いやがって!」


ユーステス「何とでも思え」


盗賊4「ふぉっふぉ…落ち着けよ、盗賊44。ここは彼奴の言葉に甘えようではないか…」


盗賊44「おやっさん…」


盗賊4「それに…他にも仲間が居るのじゃろ…お主らみたいなのが」


ユーステス「ああ」


盗賊4「だとしたらボスの方も……ここは退くのじゃ、わかったな?」


盗賊44「くっ…」


ユーステス「賢明だな」


盗賊4「すまんかったの…では行こうかの」


盗賊44「…覚えてろよ…!いつかテメェらの寝首を掻いてやるからな!」


ユーステス「ああ」


一部は反発していたが、大半は心底ホッとしたのか安堵の声が漏れていた。
集団はユーステス達の前から早足で消えていく。


ユーステス「……」


ベアトリクス「はぁ~~……ありがとう…助かったよ」


ユーステス「ああ…」


ユーステスは安心して座り込んだベアトリクスに近付き、目線を同じ高さまで合わせる。


ユーステス「…怪我はないか?」


ベアトリクス「えっ」


いつもの無愛想な顔のままだが、声色が柔らかい。
ユーステスの思わぬ言葉に少し萎縮してしまう。


ユーステス「怪我はないかと聞いている」


ベアトリクス「あ、ああ…えっと怪我はー…足首痛めたくらいかなぁ…基本エムブラスク使って疲れちゃっただけだし」


ユーステス「そうか。歩けるか」


ベアトリクス「まぁ大丈夫、痛みが引いたら行くよ」


ユーステス「そうか」モゾッ


ベアトリクス「ちょ…え、何…わっ!!わぁぁ!?」


ユーステスはベアトリクスを横にして抱き上げる。


ベアトリクス「なななな!何してんだよっ!?」


ユーステス「痛みが引くまで待ってられん。これでバザラガ達の元へ行くぞ」


ベアトリクス「えええ!!やだやだやだ恥ずかしい!!」


ユーステス「暴れるな、落ちるぞ」


ベアトリクス「落とせよ!ゼタに見られたら滅茶苦茶弄られる!私にはわかる!!」


ユーステス「いつもの事だろう。怪我人は黙って大人しくしていろ」


ベアトリクス「そうたけど!てゆーかヤケに優しくないか!?いつもなら『そうか…』で終わりだろ!」


ユーステス「たまたまだ、気にするな」


ベアトリクス「な、何なんだよそれぇ…」


観念したのかベアトリクスは大人しくなる。


ベアトリクス「重くないか…?」


ユーステス「普通だが」


ベアトリクス「そっか…」


特に会話は続かず、揺られながらユーステスの顔を眺める。


ベアトリクス(ユーステスって無愛想だけど…結構……って何考えてるんだ私!)ペチペチ


ベアトリクス(優しくないし…あ、たまに優しいけど…)


ユーステス「…何だ、俺の顔に何か付いてるのか」


ベアトリクス「えっ!?いや!?」


ユーステス「なら人の顔をジロジロと眺めるな」


ベアトリクス「別に眺めてないし…」ゴニョゴニョ


ユーステス「ここからは少し足場が悪くなる、しっかり掴んでいろ」


ベアトリクス「ああ、わかった」


ベアトリクスは頷くとユーステスの首に両手を回す。
一瞬ユーステスがビクッと反応するが、気付かれていない。


ユーステス「…何をしている…」


ベアトリクス「え?しっかり掴んでいろって言うから…」


ユーステス「他にもあるだろう」


ベアトリクス「はぁ…?別にどう掴ん──…」


ここでベアトリクスに閃きが走る。


ベアトリクス(もしかして…照れてるのか?)


そう思ったらベアトリクスは止まらない、不敵な笑いを浮かべ始める。


ベアトリクス「ふふふふ…」


ユーステス「何を笑っている」


ベアトリクス「うわー揺れるー」グイグイ


わざとらしい発声と共にベアトリクスの豊満な胸を押し付ける。


ユーステス「……」ギロッ


ベアトリクス(ぅあ、やば…!これ結構怒ってる感じの目だ!!)


ベアトリクス「あ、あははは…冗談だよ…冗談…」


態勢を元に戻すが両手は首に回したまま。
すると、ユーステスは急に立ち止まる。


ベアトリクス「えっ…」


ユーステス「……」


ベアトリクス「ご、ごめんって…そんなに怒るとは思ってなくて…」


ユーステス「……」チラッ


ユーステスはベアトリクスの顔を無言で見る。


ベアトリクス「ユ、ユーステス…ごめ───んっ!?」


最後の言葉を発しようとした時、ベアトリクスの唇はユーステスの唇に阻まれた。
時間でいえば二秒くらいだが、ベアトリクスには凄く長く感じられた。
顔を離すと、何事も無かった様にユーステスはまた歩き出す。


ベアトリクス「えっ……ちょ……今の何……え…?キスした…?」


ユーステス「冗談だ」


ベアトリクス「え?じ、冗談…?え、キスが…?」


みるみる顔が紅潮していくベアトリクスは首に回した両手を解き、自身の顔を両手で隠す。


ベアトリクス「ちょぉ……マジで笑えないって…私初めてなんだけど…!」


ユーステス「そうか」


何かを唸り続けるベアトリクスをよそに、涼しい顔をしたままバザラガ達の方へと戻っていった。


ゼタ「ねぇ、今更なんだけど…」


バザラガ「何だ?」


バザラガ達は二手に別れた大広間へと先に到着し、ユーステス達を待っている。


ゼタ「幻視の魔法を使う奴って…居た?」


バザラガ「見ていない。ユーステス達の方に居るんじゃないか?」


ゼタ「そもそも幻視なんて凄い魔法使える奴がこいつらの味方とは思えないんだけど……普通にどっかの偉い奴が雇いそうな物でしょ」


バザラガ「確かにな。だが性格に難があるという事もあるだろう」


ゼタ「そうだけどさー…何かスッキリしないわ」


バザラガ「なに、こいつらに吐かせれば良い」


頭領「…ら…ぇ…」


バザラガ「ん…?」


掠れ声だが、気絶していた頭領が意識を取り戻す。


頭領「知らねぇ……そんな奴は……俺の仲間にゃ居ねぇよ…」


バザラガ「何だと?」


ゼタ「じゃあ…あの幻の壁は何だったのよ」


頭領「幻の壁だぁ…?…一体何の話してやがる…」


バザラガ「お前の居た部屋に行く途中に幻の壁があった、本当の道を隠してな」


頭領「知らねぇ……俺達の仲間に、そんな器用な真似出来そうな奴ぁ………待てよ…?」


バザラガ「心当たりがあるのか?」


頭領「ああ……何で俺達が遺跡を荒し回ってたか…知ってるか?」


バザラガ「知らん」


頭領「依頼されてたんだよ…目当ての物が見つからなくても払いが良くてな…現状の活動資金を稼ぐのも楽じゃねぇからよ…」


頭領「依頼してきた野郎の素性は知らねぇ……だが、邪魔されないように少しだけ手伝ってやると言われてたんだ…何してたかは知らなかったけどよ…」


バザラガ「その依頼主があの壁を…」


ゼタ「てゆーか何なのよ、目当ての物って」


頭領「確か…ある星晶獣に関する事らしいが…良くは知らねぇ。ただそれっぽいのがあったら渡すだけだからよ…」


バザラガ「星晶獣だと…?」


ゼタ「ふーん…その依頼主、何者か気になるわね」


バザラガ「ああ…ユーステスに報告しておこう」


頭領「ヘッ……じゃあ俺ぁ寝る…疲れちまった…」


ゼタ「中々良い神経してるわねーアンタ」


バザラガ「今のうちに寝ておけ、後で絞られるだろうからな」


頭領「そうかい…」


ゼタ「それにしてもベアの奴おっそいわねー!」


バザラガ「そうだな。何か問題があった──お?」


ゼタ「やっときたの?……え?」


噂をすれば何とやら、丁度ユーステス達が到着する。
ベアトリクスは抱き上げられたまま。


ユーステス「…待たせたようだな」


ベアトリクス「……」


ゼタ「アンタ達の状態がすっっごい気になるんだけど」


バザラガ「…怪我をしたのか?」


ユーステス「ああ、足首を痛めているらしい」


ゼタ「ああ、なるほど……じゃあベアが顔を隠しているのは何…?」


ベアトリクス「…何でもない」


ユーステス「ああ、何でもない」


ベアトリクス「!!何でも無くはないだろ!?私に…!あ、あんな事しといて!」


ゼタ・バザラガ(あんな事!?)


ユーステス「嫌だったか?」


ベアトリクス「い、嫌とかそういう問題じゃない!時と場所とか…考えろよ…」


ユーステス「冗談に冗談を返しただけだろう」


ベアトリクス「あれを冗談で済ますのかよ!初めてだったんだぞ!」


ゼタ・バザラガ(初めて!?)


ゼタ「ちょ、ちょっと待って!何!?何したのよ!」


バザラガ「……」


ベアトリクス「今は…言えない…言いたくない…」


ゼタ「はぁ!?メッッッチャ気になるんですけど!?」


ユーステス「そんな事より…「そんな事だと!」首尾は」


バザラガ「あ、ああ…問題ない。奴らも捕らえた」


ユーステス「そうか。では、帰還する」


ゼタ「ベア!!後であたしの部屋に集合!絶対よ!!」


ベアトリクス「や、やだ!やだやだ!話したくない!」


ゼタ「うっさい!帰還!即!集合!じゃなきゃあたしからベアんとこ凸るから!!」


ベアトリクス「ええー!勘弁してくれよ~…」


ユーステス「うるさいぞ」


バザラガ(あんな事…初めて…ううむ…)


そして一行は帰還する。
時を同じくして、グランサイファーの整備も完了した。


グラン「もう飛べるの?ラカム」


ラカム「ああ!もう大丈夫だぜ!遅くなっちまったが、アウギュステに向かうか?」


グラン「うん、じゃあ皆が戻ったら行こうか」


ラカム「おう!それじゃあ出発まで俺はちっと寝させてもらうぜ、揃ったら呼んでくれ」


グラン「わかった。じゃあまた後でね」


ラカム「おう!」


そしてラカムも最終調整を終えると動力室を後にする。
すると物陰にこっそりと隠れ、話を聞いていた3人が姿を出す。


ローアイン「オイオイオイ、今の聞いたかオメーら。こりゃっべーぞマジで」


トモイ「んだよローアイン?」


エルセム「馬ッ鹿かオメー!今の会話で解んねーのかよ!?」


トモイ「あ?エルっちAIモード発動してっけど、どういうこったよ」


エルセム「次の行き先ギュステ!つまり?」


トモイ「海がある」


ローアイン「海といえば?」


トモイ「水着…ハッ!?」


ローアイン「気づいちまったようだな…」


エルセム「ここでワンチャン狙わなきゃ男じゃねーべよ?」


トモイ「オメーら…」


ローアイン「ッシャァ!今回はメタクソガチで行くぜ!!ブチアゲてけよダチ公!!」


トモイ・エルセム「ゥゥウウゥウウィィィ!!!」


ローアイン「そうと決まったら部屋に戻って緊急MTG開始ぃぃ!!」


3人「ウェーーーーイ!!」


部屋に戻った3人は緊急MTG(ミーティング)を開始する。


ローアイン「キャタリナさん…水着、よくお似合いですよ。俺と一緒に泳ぎませんか?……どーよこれ、褒めた所でぶっ込む訳よ」


エルセム「ぶははは!!ないないないない!!おめ、パンピー過ぎんだろ!!」


トモイ「つーかキャタリナさん水着着るとは限らない説あるから
、まずその前提から話していけ的な」


ローアイン「脱ぐっしょ、ギュステ、海、これ泳がないとかありえんティーじゃね?」


エルセム「あるから!バチボコあるから!だってだんちょは用事でギュステ行くんだべ?それにキャタリナさんが同行するっしょ」


トモイ「それな。キャタリナさんとかだんちょは俺らと違って芋剥いてねー的な」


ローアイン「あー?じゃあどうすりゃ良い訳?ご意見箱設置ー」


エルセム「功を焦るな?って事よ。用事済んだってすぐにどっかの島行かねーべや?そこを見計らって誘えば真面目なキャタリナさんも、ちょっとくらいなら…って!どーよこれ!?」


トモイ「オイオイオイオイ、どうしたんだよ今日のエルっち。マジでAI搭載してんじゃね?ワンチャンだんちょに言って皆でパーリーしね?って言った」

途中送信しちまった、最後の行から投稿する。
今更だけど焦点広げすぎて長いね、絞れば良かったよ。
それぞれでSS書ける気がしてきた…


トモイ「オイオイオイオイ、どうしたんだよ今日のエルっち。マジでAI搭載してんじゃね?ワンチャンだんちょに言って海でパーリーしね?って言ったら乗ってくれんじゃね」


ローアイン「はい、ご意見箱開示ぃぃ。中々悪くねーじゃん?」


ローアイン「ていうか俺、びっかん来たんですけど」


エルセム「出たー!ローアインの天啓!」


トモイ「はいそーれ!」


3人「ウェーーーーイ!!」


ローアイン「つまり?ルリぴっぴを籠絡しちゃえば良いって訳」


エルセム「はー?何でルリぴっぴ?意味不何だけどー?」


トモイ「そらおめ、ルリぴっぴとだんちょはニコイチだからよ」


エルセム「そうだけど……あーなるほどなー!たしかにルリぴぴの頼みならだんちょも断りにくそーだしな!」


ローアイン「そゆこと。ッシャ!そうと決まればギュステに着くまでにどう誘導するか決めんべ!」


3人「ウェーーーーイ!!」


こうして3人の議論はアウギュステに到着するまで続く事となる。


団員が皆帰還し、グランサイファーはアウギュステへと旅立つ。
移動中の甲板で、ジータは初めての雲海の景色に見蕩れていた。


ジータ「うわぁ~……」


グラン「どう?」


見蕩れていたジータの後ろからグランが声を掛ける。


ジータ「いやもう…何ていうか…凄いとしか言えないよ。何処までも続いてそうで…先が見えないね」


グラン「だよね。僕も初めて見た時は落ち着いてる状況じゃなかったけど、同じ事思ったよ」


ジータ「…これから、こんな景色に慣れる…飽きるくらいに見れるんだね」


グラン「うん。これから色々な島に行けると思うとワクワクしてこない?」


ジータ「するする!すっごい楽しみ!」


笑顔でグランに振り返り、その屈託のない笑顔にまた心が揺れた。
グランはジータの隣まで行き、雲海の方を見ながら話しかける。


グラン「あのさ」


ジータ「ん?どうしたの?」


グラン「僕…ジータの──」


??「はいドーーーン!!」


突然やってきた人物は2人の間に割って入り、2人の肩に手を回す。


グラン「ぅわっ!?ク、クラリス?」


クラリス「なーーにしてんの!2人で!」


ジータ「ほら、私って飛ぶの初めてだから雲海を眺めてたんだよ」


クラリス「なるほどー!どうどう?初めての空!」


ジータ「もう凄い!凄い凄い!これしか言えない!」


クラリス「わかるぅー!テンション上がっちゃうよね!」


ジータ「うん!──そういえばグラン、さっきは何て言おうとしたの?」


グラン「え、あ…あれだよ!僕、ジータの面倒とかちゃんと見れないかもしれないけど宜しくねって」


ジータ「子供じゃないんだから大丈夫だよー。それにクラリスもいるしね、心配しないで」


クラリス「そうそう!ウチに任せといて!ジータの事はちゃーんとお守りしますっ!」


ジータ「ちょっと、お守りとか言わないでよ~」


クラリス「えへへー」


グラン(随分と仲良くなってる…クラリスと同室にして正解だったかな)


クラリス「ねぇねぇ団長ー。今ちょっと良い?」


グラン「うん?これからジータに船内の事説明しようと思ったんだけど…」


その時クラリスがジータに向かってウインクをする。


ジータ(あ、なるほど)


ジータ「ううん、私の案内は後で良いよ。先にクラリスの方行ってあげて?」


グラン「そう?なら良いんだけど」


クラリス「やったー☆そしたら団長こっちこっちー!」グイグイ


グラン「ちょ、行くから!引っ張らないでー!」ズルズル


ジータ「あはは、行ってらっしゃい。頑張ってね」


グラン(…?何をだ?)


グランを引っ張り船内へと消えてしまう2人。
取り残されたジータはまた雲海を眺める。


ジータ(グランとの距離が近づくと良いね、クラリス)


ジータ(さて…とは言ったものの……このまま待ってるって訳にも行かないしなー。でも誰かっていうアテも無いし…)


ジータ(適当に歩いて挨拶回りでもしようかな。もしかしたら前に挨拶した人とかと会えるかもしれない)


ジータ(よし、そうしよう!)


基本移動中は皆自室に居るという団員達だが、外歩きしている者を求めてジータは船内に入る。


ジータ(さてさて…初めて見た時から大きいとは思ってたけど……部屋数が多いなー)


ジータ(この各扉の中に団員達がいっぱい居るとすると。凄い数になりそう…)


???『ふふふ…』


ジータ(お、ここから笑い声が聞こえる)


声のした扉に近づき、耳を澄ませる。


???『ふむ…中々勝てないな』


???『私に勝つまでは帰してあげないわ♪』


???『それは厳しいな…俺はこういったものには疎い。いつになるやら』


???『時間はたっぷりある…でしょ?付き合うわよ』


???『折を見て帰してくれると嬉しいんだがな…』


???『ふふふ…それは貴方次第よ』


ジータ「……」


ジータ(何だろう…カップルが遊んでるのかな…?)


ジータ(いやでも、こんなに美男美女がいるんだもん…カップルの二つや三つあっても可笑しくないよね)


ジータ(次行こ)


扉から離れると、また別の方へと歩き出す。


ジータ(いやー、迷子にはならないけどホント中広いなー。所々に甲板に出れる扉があるのは良いね)


???『ぅわー!やばたん何ですけど!!』


???『うるせェ…黙って食え』


ジータ(あ、また男女の声だ)


???『でもこれガチで美味いゃっ!ホントに作ってくれるとかハピぽよ』


???『相変わらず何言ってっかんかんねェ奴だなァ…』


???『エルモっさん料理上手だって聞ぃてたケド、マヂぢゃん』


???『誰から聞いたか知らねェが、別にこれくらい普通だろ…あとそのあだ名は何だよ…』


???『ロー君達ヵら色々聞いてる的な?』


???『だから誰だよ…』


ジータ(こっちはカップルというより友達っぽい…それか男の人が断りきれずに渋々相手してる…)


ジータ(女の子は若そうな感じだけど……最近の子はあーいう喋り方なのかな…?は、ハピぽよ…?どういう意味なんだろう…)


グゥゥ~


ジータ(あ、お腹空いた……確か食堂あるってグランが言ってたな。探してみよ)


聞き耳を立てるのをやめ、ジータは食堂を目指す。
だが、探すまでもなく普通に案内図があった。


ジータ(まぁお腹すいてたし…すぐに見つかって良かったかな、ちょっと残念だけど)


食堂までの道を歩いていると向かいから歩いてくる二人組が見えた。


ヴェイン「それでさー、ちょっとつまみ食いしただけで怒るんだよ」


ランスロット「はは、お前らってホント仲良いよな」


ヴェイン「おう!俺とパーさんは仲良しだぜ!」


ランスロット(ここに居たら殴られてるだろうなぁ…)


ランスロット(…おや?)


ジータ「あっ…どうも」


ジータ(わぁ…イケメンだぁ…変な娘って思われないように普通にだ普通…)


ランスロット「やあ。あんまり見ない娘だね?」


ヴェイン「おー?もしかして新入りかー!」


ジータ「はい、グランの幼馴染みのジータです。先日滞在していた島から同行しました」


ランスロット「へぇ!グランの幼馴染みか!…そうか、あそこはグランの故郷がある所だったか」


ヴェイン「宜しくな!ジータ!俺はヴェインってんだ!」


ランスロット「俺はランスロット、宜しくな」


ジータ「宜しくお願いします!」


ランスロット「ああ。これから昼食か?」


ジータ「あ、はい。そうですね、ちょっとお腹が空きまして…」


グゥゥ~


ジータ「ぅ、うわわわ…///」


ランスロット「あははは、急いだ方が良いみたいだね。それじゃ、俺達は行くよ」


ヴェイン「じゃあなジータ!今度一緒に飯でも食おうぜ!」


ジータ「はいぃ!」タタタ


ランスロット「……しっかりと挨拶も出来て良い娘だったな」


ヴェイン「何だランちゃん、あーいうのが好きなのか?」


ランスロット「別に好みの話はしてないだろ…」


???「お、みーっけ」


ランスロット「ん?…ああ、ユエルじゃないか」


ヴェイン「おう!どうしたよ!」


ユエル「やーっと見つけたわ、部屋に居らんからあちこち探したんやで」


ランスロット「俺達に何か用……ってどうしたんだ?その沢山のサンドイッチは」


ヴェイン「美味そうだな!」


ユエル「あんなーこの前の依頼のお礼したくてなー。お昼まだやったら食べへん?」


ランスロット「あー、あの時の。別に気にしなくて良かったんだけどな。ユエルが作ったのか?」


ユエル「せやで!ウチも作ったけどソシエも作ったんやで!(ほとんど)」


ランスロット(歪な形してるのがユエルだな…)


ヴェイン「おい、何かこれ形が──んんっ!?」


ランスロットはヴェインの口を片手で塞ぐ。


ランスロット「ありがとう、頂くよ。ただ…」


ユエル「なんや?」


ランスロット「ちょっと量が多いかな。ユエル達も一緒に食べないか?」


ユエル「ん、ええの?」


ランスロット「勿論、な?ヴェイン」


ヴェイン「え?俺達さっき飯──んんんっ!?」


ランスロット「ヴェインも良いってさ」


ユエル「ほんまー!じゃあ一緒食べよーや!ソシエが部屋で待っとるから行こ行こ!」


ランスロット「ああ」


ヴェイン「…ランちゃんてそんな食えたっけ」


ランスロット「……頼んだぞヴェイン」


ヴェイン「やっぱり俺かよ!」




食堂に着いたジータは頼んだランチを待っていた。


ローアイン「ウィース。おまちゃしたー、シェフのきまぐれランチです」


ジータ「うわぁ~美味しそう~」


ローアイン「でっしょー?今日のは自信作でね、見た目もパーペキだけど味もバカクソ美味いッスよ」


ジータ「え、貴方が作ったの?」


ローアイン「勿の論よ!こう見えてグラサイのキッチン任されてるんだぜ?俺」


ジータ「そうなんだぁ…ごめんね、少し意外だったから」


ローアイン「良いって良いって!俺はキャタリナさんに認められる為にも日々精進しなくちゃならねぇのよ!」


ジータ「キャ、キャタリナ…?」


エルセム「おいローアイン!早く戻れって!料理がケツカッチンだぞコラ!!」


ローアイン「わりー!秒で行くわー!」


ローアイン「んじゃ俺はソクサリするんで、ゆっくりとパクついちゃってね」


ジータ「あ、うん…」


ローアインは秒で厨房の中へと消えていき、ジータは目の前の料理を食べ始める。


ジータ(見た目とか喋り方がチャラチャラしてて、一見怖いけど良い人だったな)モグモグ


ジータ「美味っ!!」




食事が終わり食堂を後にしたジータは甲板へと戻り、グランの帰りを待つ。


ジータ(クラリスとグラン…遅いなー。何してるんだろう…)


ジータ(ん~~っ!こうしてゆっくりするのも良いけど、ご飯食べたら少し眠くなってきちゃったな)ノビー


ジータ(…部屋に戻って少し寝よ…)


大きな欠伸をしながら、自分の部屋へと戻っていった。





クラリスに腕を引かれ、グランは人気の無い所へと連れられていく。
この前の事もあり、グランは少し警戒する。


グラン(何で僕をこんな所に…?)


グラン「…クラリス?こんな所に何か用?」


クラリス「場所には用はないよ、団長に用があるだけ」


グラン「そ、そっか。それで…?」


クラリス「うん…。えっと…この前の事なんだけど…」


グラン(やっぱりか…)


クラリス「改めて…その…ごめんね」


グラン「いや、その事はもう…」


クラリス「うち、順番間違えちゃってた。だから今度はちゃんとする」


グラン「え…?」


クラリス「団長…いや、グラン。うち、グランの事好き。…好きなの」


グラン「………クラリス…」


何となくこうなるんじゃないかと、グランは分かっていた。


クラリス「………///」


グラン「……」


クラリス「…誰にも渡したくないの…うちの隣に居てほしい…」


グラン「……」


グラン(言うんだ…)


グラン「クラリス」


クラリス「うん…」


グラン「ごめん」


クラリス「………」


クラリス「…そっか……うちじゃだめなんだね」


グラン「僕には、好きな娘が居るんだ」


クラリス「えっ…」


グラン「………」


クラリス「前に…いないって言ってなかった?」


グラン「えっと…実は居て…」


クラリス「団員?」


グラン「うん」


クラリス「そうなんだ……そっかぁ…」


グラン「だからごめん、クラリスの気持ちには応えられない」


クラリス「…ふふ……あはは…」


クラリス「あははは!」


グラン「ク、クラリス…?」


クラリス「あははは!…あ~~~~っ!!もうっ!!」パチーン!


クラリスは自分の両頬を思い切り叩く。


クラリス「…っし」


呼吸を整え、グランの顔を見据える。


グラン「ど、どうしたn───」


クラリス「えいやっ!」バッ


クラリスはグランに思い切り抱きつくと、その勢いのままキスをするが、勢い余って歯が当たってしまう。


グラン「あだっ!」


クラリス「はがぁっ!」


グラン「てて…じゃなくて!いきなり何するんだ!」


クラリス「ぷ…あはは!顔赤くなっててかわいー!」


グラン「そりゃなるよ!クラリスだって真っ赤じゃないか!」


クラリス「う、うっさいなぁ~!」


クラリス「てゆーかさ、グランに好きな娘が居るからってうちが諦めるとでも思った?」


グラン「えっ」


クラリス「うちはね、本当にグランが好き!まだ誰の物でも無い!」


クラリス「のんびりしてると、その娘よりうちの事好きになっちゃうよ!てゆーかなる!」


グラン「ク、クラリス…」


クラリス「今のはその為の1歩なの!ドキドキしたでしょ!」


グラン「それは…」


クラリス「今回はこれで見逃してあげる、覚悟しててよね」

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ジータ「でもさ…今更なんだけど」


クラリス「うん?」


ジータ「グランってアレだよね、その…」


クラリス「アレとは」


ジータ「非童貞」


クラリス「!?」


ジータ「本人に聞いた時に何か挙動不審だし、女の子の扱いに慣れすぎてるというか…」


クラリス(本人に聞いたんだ…)


クラリス「でも、うちは童貞って聞いたけど…」


ジータ「え、ホントに…?」


クラリス「うん…多分。女の子の扱いに慣れてるのは…まぁ女の子いっぱい居るし…?」


ジータ「そっか…まぁ確かに普段からあんな過激な格好した人や美人や可愛い人と旅してれば慣れるか…」ホッ


ジータ(ん?何で安心してるんだろ?)


クラリス「あはは、でも誰とも色恋に発展しないという」


ジータ「不思議だよねー。まさか……ソッチの気が…」


クラリス「グランはめっちゃ否定してたからその線は無いかな~」


ジータ「あははは。でもイケメンも多いよねこの船、さっきも少しお話したよ」


クラリス「まぁね~。でもうちはグランがいちばーん!」


ジータ「まぁグランも悪くないよね~」


クラリスも元気になり、そんな女子トークをしながら時間が過ぎていく時、別室で。


ルナール「はっ!?今ボーイズラブ的な会話に発展しそうな波動をキャッチしたのだけれど!?」


コルワ「は…?」


ルナール「あえて言うなら団長×ランスロット…いや!でもやっぱりヴェランは捨て難いわ…!」


コルワ「何言ってんのよ貴女…」





しばらくすると、目的地であるアウギュステへと到着する。

おいィ?変なの出てるし…。
次レスは107の続きです。

ついでに
1.ルナール
2.コルワ
https://imgur.com/gallery/xx1tB

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グラン「僕は…」


クラリス「じゃあね!うち戻るから!」タタタ


颯爽とグランの横を抜けて立ち去る。


グラン(何をしてるんだ僕は…)


グラン(ハッキリと断らないから変に希望を持たせてしまう…正直ちょっと揺らいだ)


グラン(クラリスには悪いけど…僕はジータが好きだ…)


グラン(何があっても…僕は)





ジータは部屋に戻ろうと扉に手をかける。
開けた先には、ベットの上に蹲って枕に顔を埋めているクラリスが居た。


ジータ「あれ、戻ってたんだ?」


クラリス「うん」


ジータ「んん…?どうかした?」


クラリス「グランに好きって言ってきた」


ジータ「わぉ…」


ジータ(そこまで進展してたんだ…)


クラリスの雰囲気から大体を察する。


ジータ「…なんて言われたの?」


クラリス「好きな人が居るからごめん、て」


ジータ(居るんだ…)


ジータ「そっか……誰なんだろうね?」


クラリス「わかんないけど……グランに好きって想われてるその人…羨ましいな」


ジータ「そっか。……でもクラリスもよく言ったね。告白って勇気いるでしょ?」


クラリス「別に…もっと色々……告白くらい…」モニョモニョ


ジータ(色々…?まぁいっか)


ジータ「で、クラリスはどうするの?」


クラリス「諦めないよ、うち」


ジータ「おっ」


クラリス「グランの事好きだもん、断られたからって気持ちが無くなるわけじゃない。見苦しいけど、うちはそれでいい」


ジータ「そんな事ない…そんな事ないよクラリス。全然見苦しくない!むしろ凄い!」


クラリス「凄い…?」


ジータ「だって普通は断られたら折れちゃうっていうか…身を引く…諦めるのが一般的じゃない?だから諦めないクラリス凄いって!私は経験ないけどね!」


クラリス「…励ましてるの、それ」


ジータ「一応!」


クラリス「ぷ…あははは!……ありがとね、ジータ」


枕から顔を上げてジータに微笑む。


ジータ「……やっぱりクラリスは笑顔が1番可愛いよ」


クラリス「ちょ、いきなり何言ってんのさー!」


ジータ「ホントの事だもーん」


クラリス「もーっ!あってるけど!」


ジータ「あははは、いつものクラリスっぽい」


クラリス「何それー!」

レス107→112→113→109
の順番となります。
次のレスからは109の続き。


ルリア「わぁ~!アウギュステに来るの久しぶりです~!」タタタ


ビィ「おいルリア!勝手にどっかに行くんじゃねぇって!」ピュー


ユーステス「……」スタスタスタ


ゼタ「ちょっとユーステス!待ちなさいよ!まだ話は終わってないんだから!」ダダダ


ベア「ちょっとゼター!もういいってばー!」ダダダ


ヴェイン「ランちゃん海だぜ海!」


ランスロット「わかってるって」


ユエル「なーなーヴェイン!せっかくの海やし一緒遊ぼーや!」


ヴェイン「おう!良いぜ!」


ソシエ「ま、待って~…ユエルちゃーん!」


ランスロット「おっとソシエ、走ると危ないぞ」ガシッ


ソシエ「あ…ら…ランスロットはん…///」


ランスロット「?」


クラリス「海だー!泳ぐぞーっ!」


カリオストロ「何言ってんだ!まだオレ様の出した課題が終わってねーだろ!」


クラリス「えぇーっ!やだやだ!今はいーじゃん!」


カリオストロ「うるせぇ!終わるまでは泳がせねぇからな!」ガシッ


クラリス「ヤダーーーーっ!!」ズルズル


それけらもゾロゾロと団員達は降りてきて、各自自由に行動を始める。


ジータ「あはは……賑やかだね」


グラン「まとまりがないというかなんと言うか…まぁ別に良いんだけどね」


ジータ「ここに用事があるのはグランだけなの?」


グラン「まぁ……うん」


ジータ「ふーん…」


グラン「ジータも今のうちに皆と交流してみると良いよ、僕達は用事済ませてくるからさ」


ジータ「達?」


グラン「うん、カタリナとかとね」


ジータ「そっかー…それ、私も付いてって良い?」


グラン「え……別に良いけど。泳がなくていいの?折角の海なんだし…」


ジータ「海は後からでも泳げるでしょ?というか気になるしね」


グラン「そっか…なら付いてきて良いよ」


そう言うと目的地となる浜辺から離れた所にある岩群を見つめる。



グラン「……」


カタリナ「あそこに居るのか?」


グラン「うん、情報が正しければね。今は此処に居るらしいんだ」


ジータ「人探し?」


グラン「そうだね、というか仲間になって欲しいんだ」


ジータ「へぇ~」


ルリア「…グラーン!もう行くんですかー?」タタタ


グラン「うん、早速向かうよ。居るといいんだけど…」


ビィ「そうと決まれば善は急げだ!その剣豪ってのを見つけようぜ!」


ジータ「剣豪…か」


表情には出さないが、内心楽しみなジータ。
一行は軽装のまま岩群を目指す。





ビィ「大分奥まで来たけど…中々見つからねぇなぁ…」


ルリア「う~~ん…どこに居るんでしょうか…」


ジータ「こんな所で一体何してるの…その人って」


グラン「聞いた話によれば相当な鍛錬を積んでる人らしい。ここでも鍛錬してるんじゃないかな?」


ジータ「ふーん…鍛錬ね…」


カタリナ「だが…こうも見つからないか。日が落ちるまでに見つかると良いのだが…」


グラン「そうだね…早く見つかる…と…おぉ?」


ビィ「どうしたぁ?」


グラン「あれ……人っぽくない?」


グランは大分先にある滝を指差す。
今の位置からでは判りにくいが、人の形をした者が見える。


ジータ「あ、ほんとだ」


カタリナ「何?見えるのか?滝しかわからないぞ…」


ルリア「うーん…う~~ん!…はぁ…もっと近づかないとわからないです…」


ビィ「お前ら目ぇ良いな!オイラも全然わかんねぇぞ!」


グラン「はは。見失ったら元も子もないし、急ごう」


ビィ「おう!」


ルリア「あ、待ってくださいよー!ビィさーん!」


ジータ「いきなり斬りかかって来たりしない?」


カタリナ「流石に…ないだろう、多分」


グラン「あはは…対話出来る相手だと信じよう」





一行は滝の元に居た人物と接触する。


グラン「あのー…」


???「……誰?」


特に驚いた様子もなく、グラン達が来るのがわかっていた雰囲気だ。


ジータ(こんな小さい女性が剣豪…?胸は…立派だけど…別に良いけど)ジー


ビィ「ドラフだったんだな」コソコソ


ルリア「そうですね、この方が…」コソコソ


グラン「いきなり押しかけてごめんなさい。貴女が…噂の剣豪ですか?」


???「噂…?うーん…人違いじゃないかな?」


グラン「えっ」


???「別に私は噂になるような剣豪じゃないと思うんだけど…剣は扱うけどね」


カタリナ(……よく言う…警戒しているのか、穏やかに接しているが…全く隙が無い)


グラン(絶対この人で間違いないと思うんだけど…強そうだし…)


ビィ「なぁ姉ちゃん!確かすげぇ鍛錬を積んでるって聞いてんだ!少し見せてくれよ!」


グラン「ちょ、ビィ!いきなりそんな事…!」


???「えっ…別に普通の鍛錬なのだけれど…それでも見る?」


ジータ「あ、見たい見たい!」


???「そう、じゃあ軽いのを少しだけ」


グラン「……」ゴクリ


???「すぅ……」


彼女は刀の側面に少量の水滴を乗せると深い呼吸をする。
すると、何も無い方向に高速の斬撃を繰り出し始める。


ジータ「!?」


彼女の持つ刀が揺らぎ、その形を大剣、槍へと変えている。
最後にくるり、とグラン達に振り返ると刀の側面を見せるように向ける。
そこには最初に乗せた水滴がそのまま残っていた。


???「はい」


カタリナ「ははは…!これは…恐れ入ったな…!」


グラン(…水滴も飛ばさずに、落とす事も……)


ビィ「な、何だぁ!?今の!!」


ルリア「い、今何をしたんでしょうか…!」


ジータ「刀が煙みたいに揺れてると思ったら形が変化してたんだけど…」


ビィ「姉ちゃん!どうやったんだ今の!!」


???「えっ…どうって…普通に刀振っただけなんだけど…こうやって」ブンッ


ルリア「はわわっ!凄いです!振っただけで!」


???「からかわないで、別に凄くないよ」


グラン「やっぱり…貴女が噂の剣豪だったんですね」


???「え?だから人違いだって言ってるのに…今の見たでしょ?」


ビィ「いやいや!見たからこそ言ってるんだぜ?こんな事出来る奴そうは居ないしな!」


???「えぇ…」


???「仮に私が有名なら…『彼』が会いにきてくれる…はず…だもの」ボソボソ


グラン「ん…?」


???「…それで?話が逸れちゃったけど、私が仮にその剣豪だとして…何か用があるんでしょ?」


グラン「はい、単刀直入に言います。僕達の騎空団に、仲間になってくれませんか?」


???「えっ…私を…?」


???「でも……私なんか…役に立たないし…」


グラン「そんな事ないですよ、僕には貴女の力が必要だ」


???「どうして…」


グラン「僕の旅には危険が沢山あります、でも守りたい物も沢山あります。悔しいけど、僕では守りきれない」


グラン「だから腕の立つ貴女に、力を貸して欲しい」


???「私の力なんかで…」


グラン「なんかじゃない。貴女の積み上げてきた物は、嘘をついてないです。誇っても良いくらい凄い力だと思います」


ビィ「そうだぜ姉ちゃん!こんなすげぇー事出来んのに自分で否定すんなって!オイラ達みーんな姉ちゃんの事すげぇって思ってるんだぜ!」


ルリア「そうですよ!お姉さんは凄いです!」


ジータ「私もおねーさんみたいな人が仲間になってくれると嬉しいな。すっごい強いし!」


カタリナ「ああ…私達は貴女の力を借りたい」


???「みんな…」


グラン「…駄目ですか…?」


???(…皆…こんな私なんかを…誰にも認められなかった私をここまで…)


???(真っ直ぐな眼してる……本心から言ってくれてるのがわかる……)


???(だったら…私に出来ることは…)


???「…私の名前はナルメア。宜しくね皆」


グラン「!!」


ビィ「やったぜグラン!!良かったなぁ!」


グラン「うん!宜しく!ナルメアさん!」


カタリナ「これは驚いたな…もしかしたらとは思っていたが…貴女がナルメアか…」


ナルメア「えっ…私の事知ってるの?」


カタリナ「ああ確か…六旗の稀代の天才、剣豪ナルメアといえば、全空で知らぬものは居ないくらい有名人じゃないか」


ナルメア「え、えぇ~!そんな風に言われてるの私…!」


グラン「へ、へぇ~!そんな有名な人だったんだ!」


ジータ「どうりでね~!尋常じゃない強さな訳だ!」


グラン・ジータ(知らなかった…)


ビィ「姉ちゃんすげぇんだな~!そんな奴が仲間になってくれて嬉しいぜ!」


ルリア「ナルメアさんって有名人なんですね~!凄いですー!」


ナルメア「そんなんじゃないのに…や、やめて~恥ずかしいから~」



一行はナルメアを仲間に加え、その後もこれでもかと褒めちぎり続けながら船へと戻る。





エルセム「まぁ多少?」


トモイ「予定とは違うけど?」


ローアイン「結果オーライじゃね?」


3人「ふわっ!ふわっ!」


ローアイン「言ったろ?ギュステ来て泳がねーわけねーの」


トモイ「はいはい」


エルセム「あ、おい!オメーらあれ見ろ!なおん達が着替え終わったみてーだぜ!」


ローアイン「わりーけど、俺キャタリナさん一筋なんで。他のなおんには目もくれねー的な?そこんとこヨロシク」


トモイ「それはそれで今は見とけって。…あれは…メーさんじゃね?」


エルセム「だな。でも普段から結構露出度高めだし?ちゃけばあんま変わんねーって感じするわ」


トモイ「それ言ったらユエルっちに関しては普段着じゃね?」


ローアイン「馬鹿、そのちょっとの変化でも褒めてやんのが男の務めだろーが」


エルセム「わかりみしかねーな。……あっおい!来たぞローアイン!」


ローアイン「あーん?…はぅぁっ!!」


トモイ「……パねぇ…」


エルセム「Do感。他の追随を許さない的な?ギャップっつーの?」


ローアイン「マジパネーションだわガチで。……行くぜ野郎共!」


2人「ウウウゥゥイイイイィィィ!!」





クラリス「ねぇ、ジータ…」


ジータ「うん、言いたいことはわかる」


クラリス達の目線の先にはグランに寄り添って色々と話しかけてるナルメアが居た。


ナルメア「ねぇねぇ団長ちゃん、喉渇かない?」


グラン「あ、大丈夫です…」


グラン(当たってる…)


ナルメア「そう?あ、お腹すいてない?海の家でご飯食べる?」


グラン「あー…今はまだお腹すいてないです…」


グラン(何とは言わないけど…凄い当たってる…)


ナルメア「そっか!あとさっきも言ったけど別に敬語じゃなくて良いよ?普通に話して?」


グラン「はい、それもそのうち…」


グラン(クラリスのも触った事あるけど……人によって違うんだな…これは…凄い)


ナルメア「うん、待ってるね!あ、ルリアちゃん何してるの?一緒に遊ぶ?」


ルリア「あ、ナルメアさん!今サラちゃんと砂でお城作ってるんですよ!一緒にどうですか?」


ナルメア「うん、お姉さんも一緒に作るね♪サラちゃんも宜しく!」
タタタ


サラ「あ、はい…」


ビィ「…おいグラン…あれってさっきのすげぇ姉ちゃんだよな…?」


グラン「うん…そうだよ…」


ビィ「何ていうか…すげぇな」


グラン「あれが本来のナルメアさんなのかもね、ははは…」





クラリス「何か…めっちゃ近いよね、距離とか」


ジータ「あははは……まさかあんな感じになるとは思いもしなかったよ」


クラリス「グランもグランだよ!あんなに近くで…離れれば良いのに!」


ジータ「それ!顔には出してないけど絶ッ対変な事考えてるね、あれは!」


クラリス「あのナルメアって人さ、グランの事好きなの?」


ジータ「出会って数時間の人を好きになるかな…?」


クラリス「一目惚れとか!」


ジータ「いやーそれは無いかな。そんな感じしなかったし」


クラリス「むむむ…じゃあ何であんなにベタベタしてるんだろう…」


ジータ「誰かのお世話が好きなんじゃないかな」


クラリス「お世話が好きなだけであんなにベタベタしたらグランも心変わりしちゃうよ!」


ジータ「心変わり?」


クラリス「童貞ってのは別に好きな人居たとしても、構ってくれたり、ボディタッチ多い娘の事好きになりやすいって師匠が言ってた」


ジータ「師匠ってあの小さい女の子?見かけに対して口は悪かったけどやり手なのかな」


クラリス「あれでも錬金術の開祖なんだよ、師匠は。そして元男」


ジータ「へぇ開祖で男ね~。………えーーっ!?」


クラリス「うゎっ!?ビックリした!」


ジータ「え、開祖ってのも驚いたんだけど…男…?あんな可愛い女の子が男…?」


クラリス「う、うん…そうだね」


ジータ「…グランの騎空団て、もしかしなくてもすごい人達が集まってる…?」


クラリス「うん、全部はわかんないけど…何か凄い人達いっぱいいるよ」


ジータ「へ、へぇ~…」


ジータ(グランって実は凄いのかな…?)


ジータ(色んな意味ですごい旅をしてるとは聞いたけど……まだまだ突けば色々話が出そうだな)


クラリス「よし!うちもグランにいっぱいボディタッチしてくる!」


ジータ「程々にね、襲われちゃうよ」


クラリス「どんとこい!」


ジータ「こらこら…順序ね、順序」


クラリス「うっ…わかってるよ。じゃ、行ってくる!」ダダダ


ジータ「はーい、頑張って」


クラリス「グラーーーーーンッ!!」ガバァッ


グラン「わぁっ!?」


ビィ「おいおい、あぶねーな!」


派手にグランに飛び付いてるクラリスを横目に、ジータは交流を深める為に辺りを彷徨き始める。
ローアインは見事に空振り、ルリア達は立派な砂城か出来ていた。





そして夜も更けて遅めの夜食、団員達によるバーベキュー。


ヴェイン「ほい、ランちゃん」ヒョイ


ランスロット「ああ、ありがとう」


ヴェイン「沢山あるからどんどん食べてくれよな、皆!」


エルモート「ヒャーハッハァ!!燃えろ燃えろ…!テメェに逃げ場はねぇぞ…!!」


ローアイン「っべーよ、今日のエルモ先生バイブスパネェっしょ」


エルモート「テメェの旨味…一滴残らず逃してやらねェからよォ…!!くくくっ……!」


エルセム「てか俺達もパクつきたいんですけど…いつまで刺さなきゃなんねーわけ?」ブスブス


トモイ「Do感。まぁこれもキッチンの宿命ってヤツ?チームにまいうーな飯をデリすんのが俺の仕事的な」


ローアイン「デッケー男になんだろエルっち?俺達はあくまで支えるシャドウ、最後で良いんだよ」


エルセム「まぁそーなんだけどよォ…」ブスブス


クロエ「はい、お口あーん」


エルセム「え?……あれ、クロちんじゃん」


クロエ「ゃっほー。エルっちパクつきたぃんでしょ?ほら(´∀`)っ」


エルセム「今クロちんが女神に見えるわ、ガチで」


クロエ「ゎはは、ウケるんだけどわら」




ナルメア「はい、団長ちゃん。あーーん♪」


グラン「あ、あーん…」モグモグ


クラリス「うちのも食べてたべて!はい、あーん!」


グラン「あーん…」モグモグ


ナルメア「お野菜も取らないとね、あーん♪」


クラリス「男の子はお肉が好きなの!はいお肉!あーん!」


グラン「ま、待って2人とも…自分で食べられるから…ほんと待って…」


ナルメア・クラリス「あーん」


グラン(ひぃ…誰か助けて…!)


団員による大団円の端の方で、グランのやりとりを座りながら眺めるジータ。


ジータ(あははは、やってるやってる)


パーシヴァル「おい貴様」


ジータ「え、あ、はい?」


パーシヴァル「こんな端で何をしている、向こうの輪に混ざれば良いだろう」


ジータ「あ、えっと…まだ入りたてだし…輪に入るのはちょっと気が引けるっていうか…」


パーシヴァル「ふん、そんな事を気にする連中など居ないがな」


ジータ「あはは、まぁ皆良い人そうだし…そうだと思うんですけどね、何となく」


パーシヴァル「硬い。これから共に戦うのだろう、言葉遣いなんぞ気にするな」


ジータ「あ、うん…わかった。確か貴方は…えっと…パー…」


パーシヴァル「パーシヴァルだ、覚えておけ」


ジータ「そう、パーシヴァル!……端っこにいる私を気にかけてくれたの?」


パーシヴァル「勘違いするなよ、たまたまだ。歩いていたら目に付いた、それだけだ」


そう言うとジータから1人分離れた位置に腰を下ろす。


ジータ「ふふ……パーシヴァルって優しいって言われるでしょ」


パーシヴァル「知らんな」


ジータ「またまた~……あ、そうだ。私、話し相手欲しかったんだよね。付き合ってくれる?」


パーシヴァル「ふん…仕方ない、家臣の頼みを聞くのも俺の務めだ。構わないぞ」


ジータ「あはは…家臣って。…ありがと」





ナルメアとクラリスの猛攻から逃れたグランは他の輪に逃げ込む。


ルリア「はわわ…大丈夫ですか?グラン…?」


グラン「げふっ……お腹いっぱい…」


ジークフリート「慕われているな、グラン」


グラン「あ、あははは……」


マギサ「それで?どっちが本命なのかしら?」


グラン「はいっ!?」


マギサ「さっきの2人のうち…どっちが好きなの?」


グラン「い、いやいや!別に僕は2人に対してそんな感情は持ってないっていうか!」


マギサ「あら?そうなの?」


グラン「そうですよ!」


ジークフリート「想う相手でも出来たのか?」


グラン「えっ!?」


ルリア「想う…?」


マギサ「好きな人って事よ、ルリアちゃん」


ルリア「え?でもグランは皆さんの事好きですよね?」


ジークフリート「……フフッ…」


マギサ「あらあら…そうだったわね、ふふふ…」


ルリア「??」


グラン「と、とにかく!僕は別に2人の事は──」


その時、グランの視界に楽しそうに話すジータとパーシヴァルが目に入る。


グラン「あ……」


鼓動が早くなる。
胸が痛む。

ジータはよく笑う娘だ。わかってる。
あの向けている笑顔もいつもと同じ笑顔。わかってる。
当然だ、僕だけじゃない他の人にだって笑う。わかってる。
きっと僕の知らない所で、ジータはあの笑顔をしている。わかってる。

この気持ちは良くわかる、嫉妬だ。
この気持ちは良くわかる、恐怖だ。

相手がパーシヴァルだから?
関係ない。
相手が誰であろうと、きっとこの気持ちは生まれる。

僕は思ってしまった、その笑顔は僕にだけ向けて欲しいと。
僕は思ってしまった、他の男と親しく話さないでと。

なんて、醜い。


ルリア「グ、グラン…?どうかしましたか…?」


グラン「はっ……あ、いや…何でも…」


マギサ「……」


グラン「ちょ、ちょっと散歩…してくるね!夜風に当たりたくなってきた!」ダダダ


ルリア「え!グラン!?」バッ


ジークフリート「まぁ待て」ガシッ


ルリア「はぅぁっ!…ジ、ジークフリートさん…?」


ジークフリート「ルリア、今は1人にしておいてやれ」


ルリア「でも…様子が…」


マギサ「大丈夫。思春期の男の子には良くある事だから」


ルリア「思春期…?」


マギサ「悩みが多いお年頃なのよ。だからそっとしておいてあげましょ。ね?」


ルリア「うぅ~……はい…わかりました…」


マギサ「良い子ね、ふふ」


マギサはルリアの頭を撫でてあげると空を見上げる。


マギサ(…貴方のこれから導き出す答えに正解はないわ……グラン)





ルリア達の元から去ったグランは散歩ではなく、船の船首で海の景色を眺めて耽ける。
少し顔を下に覗かせれば引き続き宴会をしている団員達が見えた。


グラン(嫌だな…この気持ちは)


先程の光景を脳裏に浮かべると、複雑なのか単純なのかわからない感情が渦巻く。


グラン(ジータが僕のいない所で楽しそうに男と話すのがこんなに不安に…嫌だって思うなんて…)


グラン(馬鹿だな……別にジータは幼馴染で、一緒に過ごした時間が長くて……僕が好きな人だけど…恋人じゃない)


グラン(…いや……待てよ)


グラン(僕が…ジータを好きなように、ジータも僕の事が好きなんじゃないか…?)


グラン(だって僕達は“幼馴染”なんだ。あんなに沢山の時間を共有してるんだ、可能性は高い)


グラン(…いや、ある。きっとジータにも同じ感情がある)


グラン(僕が女の子と話すと怒ってたし…あれはきっとそういう事だったんだ)


グラン(はは、何も悩む事は無かったんだ。あとはどっちかが言うだけ、きっとそうだ)


グラン(今までは言いかけて諦めてたけど…言おう。男らしく、僕から。きっとジータなら受け入れてくれる)



「何してるの?」






──きっとこの時、君がここに来なかったら


違う未来もあったかもしれないね──






遅めの出てきたキャラ画像、恐らくこれ以上は増えない。

1.カリオストロ
2.サラ
3.ナルメア
https://imgur.com/gallery/isvw6

もう少し、お付き合い下さいませ。


グラン「…ジータ…?」


ジータ「そうだけど…こんな所で何してんの?」


グラン「…来てくれたんだ…ジータ…」


グランはゆっくりとジータへ向かって歩み寄っていく。


ジータ「何言ってんの、グランが見当たらないから探したんだよ?」


グラン「やっぱり……ありがとう」ギュッ


ジータ「ちょっ!?」


グランはジータを力強く抱き、左手の平でジーダの頭を自分の方へと押し込む。


ジータ「グ、ググググラン!?」


ジータは咄嗟に離れようとするが、がっちりと捕まっていて抜け出せない。


ジータ(力…!つよ…!)


グラン「ジータ…」


耳元で小さく囁く。


グラン「好きだ」


ジータ「え…」


一瞬ジータの思考が止まる。
だが、すぐに復帰しグランには見えないが優しい顔をする。


ジータ「今日のグラン…変だよ?」


そう言うとグランを抱きしめ、背中を優しく叩く。


グラン「変じゃない、僕はジータが好きだ…」


ジータ「うん、私もグランの事好きだよ」


グラン「!!……やっぱ「でもね」


グラン「…?」


ジータ「ごめんね、グランの気持ちは受け取れない」


グラン「えっ…?」


ジータは先程とは違い、力の抜けたグランから難無く離れた。


ジータ「私とグランの好きは、違い過ぎる…」


グラン「な、何を…言ってるんだ…?」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年04月13日 (金) 15:58:22   ID: TM1xzEMF

更新を…

2 :  SS好きの774さん   2019年07月29日 (月) 21:10:49   ID: 7DPYC88B

なんつーとこで止まってんだw

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