アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引く3 (1000)

~前スレ~


アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引く
アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引く - SSまとめ速報
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アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引く2
アライさんの脳天をスコープの照準に捉え、静かに引き金を引く2 - SSまとめ速報
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~ストーリーの概要~

日本中に巣食う、害獣アライグマのフレンズ。
やつらは人を倒すために、徒党を組んで都市を襲撃した。



未曾有の敵に、人類はどう立ち向かうのか。

~登場人物~


・俺(♂)
猟師であり、アライさんを仕留めによく山へ行く。
仕留めたアライさんは、保健所へ持っていく他、ジビエ料理店『食獲者』への売却もしている。

・食通の友人(♂)
ジビエ料理店『食獲者』の店主。
アライさんを料理して客に出している。
ネットでは『ショクエモンP』のハンドルネームで支持を集めている。

・大臣(フレンズ)
フレンズ省の大臣。
アライさん駆除活動の資金集めに今日も頭を悩ます。
驚くと体がシュっと細くなる。

・会長(フレンズ)
『特定有害駆除対象フレンズ根絶委員会』の会長。
アライさんを貪り尽くす天敵。
ブラウンP曰く、かつてはこんなんじゃなかったはず、とのこと。

・ブラウンP(フレンズ)
アライさんジビエ料理人の一人。
食通の友人をライバル視している。
恐怖や苦痛、絶望や嗜虐の表情の写真を取るのが趣味らしい。

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~メモ~
実験3は成功。
今度は起爆装置を押す必要はなかった。

この高分子で構成された物理プログラミング言語を、
教授は本気で読みとこうというのか?
…正気の沙汰ではない。私のような凡人がお手伝いできるのはここまでだ。

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つづく

アライちゃん101「なんなのだー」

アライちゃん102「かっこいいのらー」

アライしゃん201「あれほしいのだー!」ピョンピョン

軍用ヘリパイロット1「報告。村は完全にアライさんに占領されている。ほとんど子供だ。数は数百匹」

村全体に数百匹はいるであろう、アライさんの子供達。

それを見下ろしながら、軍用ヘリのパイロットは無線機に向かって話しかける。

軍用ヘリパイロット1「攻撃許可、了解。これより攻撃に移る。地上部隊は生存者を探しながら、敵を撃退せよ。森へ逃がすな」

装甲車運転手1「了解」ブルルルゥゥン

助手席の隊員「攻撃開始!」ジャキッ

アライちゃんの群れへ向かって突っ込む装甲車。
機銃は害獣の群れへ向けられている。

アライしゃん201「ひ、ひとなのだ!」

アライしゃん202「やっちゅけてやるのだ!たぁー!」ポイ

アライしゃん202は石を投げる。

※訂正のお詫び

前回更新時に、装甲車の重機関砲を「ブローニング・ハイパワー」と記載しましたが、誤りです。
正しくは「ブローニングM2」です。
脳内訂正お願いします。

助手席の隊員1「ファイア!」ジャキッ

機関銃「」ドカカカカカカカカカ!!!!

装甲車の重機関砲がうなりを上げて、大量の薬莢をばら蒔きながら火を吹く。

ブローニングM2は凄まじい破壊力をもつ機銃。
12.7ミリの弾頭は、装甲車を貫通し、航空機すら破壊してしまう。
それを毎秒10発のスピードで連射するのだ。

それを搭載した装甲車が7台。

例えアライさんの子供達が何百いようとも…


アライしゃん201「ひゃぶ!」グシャ

アライしゃん202「ごびゃ!」ブヂャァ

アライしゃん203「びっ」ドバァ

アライしゃん204「ぎゅ」ブシャアアバラバラ


あっという間に血溜まりとミンチ肉へ変わっていった。

ドガガガガガ…!

攻撃開始から1分。
この村に413匹いるアライさんの子供のうち、163匹が肉片となって宙を舞った。

機銃の音を、畑の近くのアライさん達も聞いていた。

アライさん6「な、何なのだ?何の音なのだ!」

雄牛「ブモ…」

ホルスタイン「い…だい…」

アライしゃん1「もういっかいぶらんこで、こいつをなげるのだ!」キャッキャッ

アライしゃん2「たのしいのだ!」ブンッ

ホルスタインちゃん1「ぎゃあっ!や…べで…」ポーン ドサッ

アライしゃん1と2は、ホルスタインちゃん1をブランコに乗せて投げるのに夢中で気付いていない。

アライしゃん3「もっかいあらいしゃんが、ぼーるけるのだ!」ドカッ

ホルスタインちゃん2「うっ!…あ…」ボンッ

アライしゃん4「あたまにあたったのだー!2まいなのだー!」

アライしゃん3と4は、ホルスタインちゃん2を的にしてボールを蹴るのに夢中で気付いていない。

アライしゃん5「もういっかい!ぱいるどらいばーなのだ!たあ~!」ズンッ

アライしゃん6「ふたりではさんで、だぶるぱいるどらいばーばのだ!たあ~!」ドガァ

ホルスタインちゃん3「」グシャメギボギ

アライしゃん5と6は、ホルスタインちゃん3を逆さに抱え上げ、頭から地面に何度も叩きつけるのに夢中で気付いていない。

畑に群がるアライさんは10匹ほど。
畑の近くの広場で遊ぶアライさんの子供たちは2~30匹ほど。

そこへ、戦闘用ヘリが1機、装甲車が1機現れた。

アライさん6「な、何なのだあれは!」

ヘリパイロット1「生存者だ!アライさんどもの群れに襲われているぞ!」バババババババ

装甲車運転手1「敵を排除する!」ジャキッ

装甲車の運転手は車を停め、機銃を握る。

ヘリパイロット1「了解!こちらも射撃する」ウィイイン

戦闘用ヘリは、機首からチェーンガンを出す。


隊員1「俺は生存者を救助する!」バッ

助手席に乗っていた隊員1は、アサルトライフルを抱えて車から降りる。

アライさん6「ひっ!じ、銃なのだ!」

隊員1「クソ害獣が!くたばりやがれぇッ!」ズガガガガッガガガ

アライさん6「のだああああぁ!」ドブシャ

アライしゃん1「ぎびっ!」バグシャ

アライしゃん2「ごびゃっ!」グブシャア

まずは3匹。
ホルスタインとその子供を襲っていた害獣が、蜂の巣となって吹き飛んだ。

アライしゃん3「に、にげるのだあ!」トテトテ

アライしゃん4「たすけて!おかーしゃーーんっ!」トテトテ

ホルスタインちゃん2を的にしていた匹のアライしゃんが逃げ出す‼

隊員1「今度はてめーが的になりな!」ドガガガガガ

アライしゃん3「ぎびぃーーーーっ!」ドブシャ

アライしゃん4「あぎゃっ!」ブシュウウゥゥ

背を向けて逃げ出したアライしゃん3と4は、アサルトライフルの的となって血煙を噴出しながら吹き飛んだ。

2匹合わせて腹に20発、頭に10発。おはなかーどとやらを40枚は貰えることであろう。

アライしゃん5「く、くるなあぁ!」ガシッ

アライしゃん6「あらいしゃんたちをうったら、こいつもしぬぞぉ!」ガシッ

ホルスタインちゃん3「」グッタリ

アライしゃん5と6は、ホルスタインちゃん3を盾にする。

隊員1「そうかそうか」ズイッ

隊員1はアライしゃん5に近寄り、銃口を顔面に押し付ける。

アライちゃん5「のだあああぁ!あ、じゅいのだあああ!はなしゅのだあああ!」ジュウウゥ

連射した後の銃口は、焼肉ができるほど熱くなっていた。

隊員1「地獄に落ちろ!」ズガガガガッガガガ

アライしゃん5「」ドブシャアァ

アライしゃん5の頭部は破裂し、悲鳴を上げる間もなく首無しになった。

アライしゃん6「あ…ぁ…やめて…あらいしゃんたちは、わるものをやっちゅけてたのだ…」ガクガクブルブル

隊員1「その子にパイルドライバーをかましてたのも悪党退治か?」

アライしゃん6「そ、そうなのだ!あらいしゃんはせいぎなのだ!だから…」

隊員1「じゃあ当然、悪役レスラーになんか負けねえだろうな!」ガシッグイッ

アライしゃん6「ひっ!は、はなすのだぁ!」ジタバタ

隊員1は、アライしゃん6を脇に挟むと、そのまま頭を下に向けて垂直に高々と抱え上げた。

隊員1「それじゃあ食らってみろや!スタイナー・スクリュー・ドライバー!」ズガアァ

隊員1は、体重を乗せて思い切りアライしゃん6の頭を地面に叩き付ける。

アライしゃん6 「」ボギィグシャアア

アライしゃん6の首はへし折れ、120°以上の鋭角に曲がった。

アライちゃん1「こあいのだー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん11「こないでぇー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん22「やなのらー!」ヨチヨチヨチヨチ

アライちゃんの群れ22匹が、一斉に四つん這いになってうじゃうじゃと小屋の方へ逃げ出す。

装甲車運転手1「こんな奴ら、弾を使うまでもねえ!」ブロロロロロロ

装甲車は、よちよちと逃げるアライちゃん達へ向かって、勢いよく走り出した。

アライちゃん2「ぴいいぃ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん19「はやいのらぁ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

アライちゃん21「もうしゅぐおうちなのらぁ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

装甲車運転手1「轢き殺してやるクソ共がァ!」ブロロロロロロズガアアァ

アライちゃん1「ぎゅ!」ドグシャ

アライちゃん3「ぎびぃ!」グシャブシャメギボギ

アライちゃん7「びいぃっ!」バチュ

アライちゃん15「おがーじゃっ…」プチッ

アライちゃん22「だじゅげでええぇーーっぎびいぃっ!」グシャアアァ

アライちゃん達22匹は、装甲車に跳ねられ、轢き潰された。

装甲車は血に染まり、地面には肉片と臓物のペーストが散らばり、タイヤ痕がついていた。

アライさん7「逃げるのだぁ!」ドタドタ

アライしゃん18「あのたてものにかくれるのだ!」ヨタヨタ

アライしゃん29「かんぜんぼーぎょなのだぁ!」サッ

アライしゃん45「これであんしんなのだ!」サッ

アライちゃん23「なのだー!」ピョコンッ

アライさん親子50匹ほどが、木造建築の建物へ隠れた。

隊員1「むっ…!」

装甲車運転手1「隠れたか…!」

アライしゃんの声『やーいやーい!あっかんべー!べろべろばー!』

木造建築の建物から声がする。

装甲車運転手1「くっ…撃つか?」チャキ

ヘリパイロット1「隊員1、そこのフレンズに、あの中に生存者がいるか聞いてくれ」バタバタバタバタ

隊員1「そこの生存者、あの建物に人はいますか?」

ホルスタイン「…いません」

隊員1「いないそうだ」

隊員1は、無線機でヘリパイロットと通信する。

ヘリパイロット1「俺がやる」バタバタバタバタ

ヘリが木造建築の建物へ機首を向ける。

ヘリパイロット「発射」カチッ

戦闘用ヘリからヘルファイアミサイルが発射される。

ミサイルは木造建築の建物の屋根をぶち抜き、轟音と共に大爆発を起こした。

建物の窓ガラスが割れ、爆煙が舞った。

建物はめらめらと炎上する。

ごうごうと燃える建物。
焦げた屋根がばきばきと音を立てて崩れ落ちる。

アライしゃん17「の、のぎゃああぁ!」バンッ

アライしゃん17が、ドアから飛び出してくる。
顔面にはガラスの破片が突き刺さっており、ふわふわの尻尾は火がついて燃えている。

アライしゃん25「あじゅいのりゃああ…いじゃいのりゃああ…!だじゅげでぇ…!」ズルズル

アライしゃん25も、ドアから這い出てきた。
身体中が重度の火傷を負っており、背中に大きな木片が刺さっており、這った痕は血が線をひいている。

アライさん8「こ、こーさんするのだぁ…!こーさんするからだずげでぇ…!」ヨロヨロ

アライさん8は、両手を上げながら出てきた。

ヘリパイロット「敵が飛び出してきた。射撃する」カチッ

機銃「」ドカカカカッ

ヘリの機銃が火を吹く。
30ミリチェーンガンは、車を一瞬で蜂の巣にする恐るべき威力の弾頭を毎秒10発連射する。


アライしゃん17「ぐぎゃ!」ドバアアァッバラバラ

アライしゃん25「のぁっ!」グチャアアバラバラ

アライさん8「ごひゅっ」ブヂグシャアアドチャドチャ

降伏を申し出てきた害獣達は、原形がわからないほどに破砕された。

数分前まで413匹いたアライさん達。
そのうち378匹が機銃で撃たれるか、燃やされるか、轢かれるかして肉片となっていた。

アライさん9「森に逃げるのだぁ!」ドタドタ

アライしゃん210「もりのなかならあんぜんなのだぁ!」トテトテ

アライしゃん230「かくれるのだぁ!」トテトテ

アライちゃん70「のぁー!」ヨチヨチヨチヨチ

残り僅かとなった20匹ほどの生き残り達は村を捨て、あちこちの方向から森へ逃げようとする。

隊員2「くらえ!」ポイ

隊員3「うりゃ!」ポイ

隊員4「そっちか!」ポイ

隊員達は、手榴弾を投げつける。

アライしゃん210「ぼーるなのだ!」

アライしゃん230「ひろってもりであそぶのだ!」ガシッ

手榴弾はバンッと音を立てて爆発し、鋭い破片をばらまいた。

アライさん9「」グシャア

アライしゃん210「」ドサァ

アライしゃん230「」ベシャ

アライちゃん70?らしき肉片「」ジュージュー…

森へ逃げようとした害獣は爆風で吹き飛び、草の中へ突っ伏したまま動かなくなった。



残り15匹となったアライさんの子供達は、一ヶ所に集められた。
成体のアライさんは全滅したようだ。

隊員1「お前達のボスは誰だ」

アライしゃん398「ひぃっ…あ、あらいきんぐ・ぼすなのだ…」プルプル

隊員2「何者だそいつは」

アライしゃん399「い…いちばんつよくてえらいあらいさんなのだ…」プルプル

隊員1「そいつは今どこにいる」

アライちゃん400「しらないのらぁ…」プルプル

隊員2「死ね」バァン

アライちゃん400「」バグシャ

アサルトライフルの弾が、アライちゃん400の口から肛門まで通り抜けていった。

アライしゃん401「ぼ、ぼすは、まちにいったのだぁ」ウルウル

隊員1「どこの待ちだ」

アライしゃん402「まちのなまえなんてしらないのだぁ…!ひぐっ、ぐすっ、ひとしゃん、おねがいなのだ、もう、ゆるして…」グスングスン

アライしゃん403「ゆるしてなのだ…もうあらいしゃんたちをいじめるのやめてほしいのだ…」シクシク

アライしゃん404「こんなわるいこと、もうやめるのだぁ…!あらいしゃんがかわいそうなのだぁ…!」ビエエエエン

アライちゃん405「おがーしゃーーんっ!おがーしゃーーんっ!」ビエエエエン

アライちゃん406「ひとしゃん、あらいしゃんだけでもたしゅけてほしいのら…こうびでもなんでもしゅるのら…」ウルウル

アライしゃん407「い、いまなら、みんなをころしたこと、ゆるすのだ…ともだちにしてやるのだ…」プルプル

隊員2「…」

これ以上聞ける情報はなさそうだ。

ホルスタイン「あ、あの…」ズルズル

ホルスタインが、折れた手足を引きずって這ってやってくる。

ホルスタイン「そ、その子たち、きっと悪い大人に騙されていたんです…許してあげてください…」

アライしゃん408「!そ、そうなのだ、おかーしゃんたちがやれっていったのだ!」

アライしゃん409「あらいしゃんたちはわるくないのだ!おねーしゃん、あらいしゃんをたしゅけて!」ウルウル

アライちゃん410「おねーしゃん!あらいしゃんたち、いいこになりゅのら!」グスングスン

ホルスタイン「き、きっとちゃんとした教育を受ければ、いい子になるはずです…」

ホルスタインちゃん1「…まま…」

ホルスタインちゃん2「…あやまるなら、なかなおりします…あやまってください…」

ホルスタインちゃん3「」グッタリ

アライちゃん411「ごめんなしゃいなのらぁ!」ビエエエエン

アライしゃん412「かいしんするのだ!はんせいするのだ!だからたすけるのだあぁ!」ビエエエエン

アライしゃん413「ほんとのほんとなのだぁ!」ビエエエエン

ホルスタイン「ね?ちゃんと、謝ってます…だから、命は助けてあげても…」

隊員1「じゃあ、こいつら全員、あんたが引き取って教育できるか?」

ホルスタイン「…」

ホルスタイン「…いやぁ…」

ホルスタインは目を逸らす。

ホルスタイン「……それは、ちょっと…」

隊員2「…」

アライしゃん401「…」

アライしゃん402「…」

隊員1「くたばれハエガイジ共ォォォ!」ズダダダダダ

アライしゃん413「のぎゃあああああ!!!!!!!」

こうして、村に巣食うアライさんの群れは全滅した。



救急隊員が、雄牛の目にライトの光を当てる。

雄牛「ウモ~ォ…」

救急隊員1「…ちゃんと反応してます。脳に障害はありません。軽い脳震盪だけです」

ホルスタイン「よかった…はなおさん…」

ホルスタイン一家は、担架に乗せられ、救急車へ運び込まれる。

ホルスタイン1「う、うぅ…」

救急隊員1「全身打撲だらけだ…可哀想に。病院に行こうね」

ホルスタインちゃん2「あ、あの、おてつだいします…いててっ!」ズキン

救急隊員2「無理しないで、あなたも怪我してます!」

ホルスタインちゃん3「…ぁ…ぁ…ま、まま…からだじゅう、びりびりするの…なにも、かんじないの…」プルプル

救急隊員3「AED急いで!人工呼吸機も早く!」

ホルスタイン一家は、フレンズ病院へと運ばれていった。

雄牛「…ウモ~ォ…」

雄牛は、その場へ座った。
彼女達の帰りを待つつもりなのだろうか。

隊員1「…」

隊員2「…えと、とりあえず…牧草でも食うか?」サッ

雄牛「モーゥ」モシャモシャ

良かったホルスタイン達は全員生きてた…子供も巨乳なのかな

救急隊員4「あっちに人が山積みになってるぞ!」

救急隊員5「…ひどい…みんな死んでる…」



都市を襲撃しているアライさん達の子供は、親の知らない間に皆殺しにまとめて駆除された。

アライちゃん達は、ここで殺されて不幸だったのであろうか。
それとも、捕まってフォアグライにされた方が幸福だっただろうか。



街では、避難経路と避難場所がラジオやテレビで放送されている。

襲撃された街の人々は、大部分が所定の場所へ避難完了していた。

警官達が、身を呈して住人を守り、誘導と警護に当たってくれたからだ。

だが、警官達はあちこちを幅広く警護しなくてはならない。
よって、一ヶ所一ヶ所の警護は手薄にならざるを得ないのである。

~中学校~

老人「ここに避難すればいいのか…」

女性「アライさん達…怖い…」

小学生「うえーん…」ビエエエエン

青年「早くあいつらを追っ払ってくれ…」

アライさん500「ヒトがいっぱいいるのだ!」ダッ

アライさん510「やっつけるのだ!」ゾロゾロ

アライさん520「根絶やしなのだ!」ゾロゾロ

老人「あ、アライさんが来たぁ!」

青年「あんなにいっぱい!」

武器(だいたい農具か工具)を持ったアライさん達が、避難場所の中学校を襲撃した。

警官1「く、くそ!来るな!」バァンバァン

アライさん501「いだいのだああっ!」バタッ

アライさん511「そんなのアライさんには当たらないのだ!」

アライさん521「こっちにも奪った鉄砲があるのだ!くらうのだ!」ジャキッ

警官2「なにっ…!」

警官達は人々を守るのに手一杯だ。
アライさんの飛び道具にやられるかもしれない。

ならば、市民が勝手をやるのは困るかもしれんが…
許せ。俺も加勢する。

俺はケースから12連射エアライフルを取り出した。
既に弾も空気もチャージ済みだ。

そして、アライさんの群れへ向かって連射した。

アライさん500「ぐぎゃあっ!」バチュンッ

アライさん512「のだああっ!」ドチャア

アライさん521「ぎひゃあ!」ドタァ

警官1「!?」

まだ空気はある。
俺は弾のカートリッジを詰め替えた。

警官2「き…君…猟師かい?」

そうだ。

警官1「ここは狩猟許可地域じゃないぞ…?」

だったら今ここで俺を、あんたが逮捕するか?

警官1&2「「とんでもない、百人力だ!!」」バァンバァン

「のだあぁ!」「ぎゃごあぁ!」

次々とアライさんの群は倒れていく。

アライさん225「殺してやるのだ!くらえ鉄砲なのだ!」バァン

俺のすぐ背後の鉄柵から、鉄がぶつかる音がする。

もっとよく訓練していれば、今の一発で俺を仕留めることもできただろう。

だがな。
銃の訓練ってのは、大変なんだぜ?
セーフティが外せるようになったくらいで、強くなった気になるのはよすんだな。

俺は2発目を撃とうとしているアライさんの脳天をぶち抜いた。

アライさん225「のだっ!」バタッ

アライさん225「」ビグンッビググビグッバタバッタタバタッ

警官1「す…凄いなあんた…」

警官2「猟師ってのは、こんなに強いのか…」

そうも言ってられねえ。
俺のエアライフルももうすぐ空気圧が切れる。
そしたら一旦俺は下がるぜ。

警官1「わかった!ご協力感謝する!」バァン

全く…だからこのクソ武器は嫌なんだ。
あんたらが持ってるグロックが羨ましいよ。

「のだー!」「なのだー!」

警官2「しかし……なんであいつら、死を恐れず向かってくるんだ!?」バァン

警官1「死ぬのが怖くないのか!?それともまさか、命より大事なものがあるとか…」バァン

簡単な話だ。
そいつらは皆、人間より強くなった気でいる。
だから自分だけは死なないと思い込んでるんだ。

警官2「え…!?」バァン

倒れていく仲間のことを、自分より弱いやつだと嘲笑っているんだ。

そして自分だけはそうはならない。
自分だけは人間に勝てると、根拠のない自信を持っているんだ。

自分こそがこの世界の主役だと。
絶対無敵のヒーロー、世界の中心だと思ってるんだ。

自分本位もここまでくると、恐ろしいもんだ。



アライさん1100「」ブシュウゥウ

会長「そろそろ腹も膨れてきたのです」

アライさん1101~1110「あ、あわわわわわ…」ガクガクブルブル

会長は、捕食者としての獣性を露にしていた。
彼女は鳥の力を身につけた少女ではない。
少女の姿をした鳥なのだ。

会長「でもアラジビは、別腹なのです」バグンッ

アライさん1101「」ブシュウゥウ

その在り方は、会長というより怪鳥であった。

ジャパリパーレェー♪

会長「はい、何なのですか、今いいとこなのです」ピッ

会長は、携帯電話を取り出す。

??『会長。お前に、戦闘員としての出撃要請が出たのです』

会長「戦闘員?私がですか?」

??『防衛省からの依頼なのです。私もお前と一緒に出るのです』

会長「…大臣…」

??『一緒に戦ってくれますね?ミミちゃん助手!』

会長「…」

会長は、目をつぶる。

会長「…分かったのです。一蓮托生なのです、博士」

会長は目を開いた。
そこに宿る意志は、獰猛な猛禽類の食欲ではない。

人々を守るため。
害をなす有害フレンズを駆逐するため。

自らの責務を全うせんとする、特定有害駆除対象フレンズ根絶委員会…
その長を担う会長の目。

人々を脅かす外敵を排除する使命を帯びた、ヒトの目であった。

会長は、フレンズ省本部へ向かって飛んでいく。

アライさん1102「逃げていったのだ…」

アライさん1103「これで強い奴はいなくなったのだ!あとは雑魚の人間だけなのだ!」ドタドタ

アライさん1104「突撃なのだ!たぁ~!」ドタドタ

警官隊員1「く…くそ…!」ジャキッ

警官隊員達の人壁が、アライさんの群れに飲まれそうになる…。

その時。

空中からダダダダという連続音が鳴った。

アライさん1102「のぎゃっ!」ドブシャ

アライさん1105「ぐびゃ!」ズブシャア

警官隊員1「!?」

次々となぎ倒され、血溜まりへ沈んでいくアライさん達。

アライさん1110「な、何なのだ!?」

アライさん達は上空を見る。


そこには、大きな満月の光に照らされる、二人の少女が飛んでいた。

二人は目が光っており、サンドスターの煌めきに包まれている。

大臣「野生解放なのです」ドカカカカッ

大臣は、アライさんの群れへ上空から機銃を放つ。
ばたばたと倒れ、蜂の巣となっていくアライさん達。

会長「なるほど…。上空からの機銃掃射とは、考えたのです」ドカカカカッ

あっという間に、フレンズ省前のアライの群は物言わぬ死体となった。

大臣「時代は航空戦力なのです。軍も同じことを考え、動き出したのです」

その時。

二人の少女の上を、防衛基地から出動した戦闘機と戦闘ヘリの大群が通過していった。

大臣「行くのです、ミミちゃん助手。ここで油を売っている暇はないのです」ブワッ

会長「分かってるのです。我々夜のハンターが、奴らを蜂の巣にしてやるのです」ブワッ


体に不釣り合いな巨大な機銃を抱えた2人のフレンズは、
野生解放の輝きに包まれながら、音もなく闇夜へ消えていった。

■■■■■■■■■

報告書5
~アライグマのフレンズの精神構造の特異性~

野生のアライグマがサンドスターにより変身したアニマルガール。
その多くが、人の社会生活に溶け込めない。
他のフレンズと何が違うのか?我々は実験により、精神構造を分析した。

その結果、重要な事実が明らかになった。
アライグマのフレンズは、他者の感情と共感する能力に著しく欠けている。
そして全ての物事を、自分の損得勘定でしか考えられないのであった。

これは全てのアライグマのフレンズに共通する先天的な障害であり、後天的に共感する能力を得ることは不可能に近い。

利己的であり、利益を独り占めしようとする。
喜びも悲しみも、他者と分かち合うことができない。
それが必須となる現代社会に溶け込めないのは必然であろう。

では、アライグマのフレンズが社会生活を送ることは不可能だろうか?
否。アプローチは2つある。

1つは、共感することを、精神でなく頭で考えて再現することだ。
共感によってすべきであろう反応を、学習経験によって再現するというものだ。
これは耳の聞こえない者が読唇術で会話したり、目の聞こえない者が杖で道を探るのと同じようなものだ。

しかし、それに伴う精神的苦痛は想像を絶するものだろう。
自身と思考形態が異なる生物と共に暮らすことは、我々がアライグマのフレンズの群れの中で暮らす以上に耐え難い精神的負担を強いられる。
そんな苦痛を味わい続けながら社会生活を送る我慢強さは、利己的なアライグマのフレンズには期待できない。

もう1つは、見返りを求めず一方的に施しを与え続け、頼られることで精神的充実感を得る者と共依存関係になることだ。
その者に病的な愛を注がれ、ペットとして生きることができれば、社会の中で生活していると言えるかもしれない。

だが、そんな病的な精神状態の人物を、アライグマのフレンズと一緒にしておくことは危険性が高い。


以上の結論から、アライグマのフレンズは、人や他のフレンズと根本的に思考形態が異なり、社会生活が不可能な生物と断定できる。

この結論をもって、我々研究員は教授の反対を押し切ってでも、アライグマのフレンズを特定有害フレンズと認定するようにフレンズ省に働きかけるものとする。

■■■■■■■■■■■

つづく

>>109
子供も巨乳です
これだけははっきりと伝えたかった



アライさんに襲撃された村。
あちこちに散在している村人達の遺体は、近くの病院の霊安室へ搬送された。

この村を出た若者達が、いずれ家族へ別れを告げに戻ってくるだろう。



あちこちに散在しているアライさんの死骸は、一ヶ所に集められた後、ガソリンをかけられて燃やされ、森へ捨てられた。

この村を出て街を襲撃したアライさん達は、ここへ再び戻ってくるだろうか。

果たして村の生存者はホルスタイン一家のみであろうか。


先述の通りだ。村から逃れた者は、一人もいなかった。
…だが、逃げはせずとも、隠れていた者がいたのだ。

かくれんぼをしていた少年1名と少女2名が、奇跡的に生存していた。
彼らはアライさんに村が占領されている間、家屋のクローゼットへ隠れていた。

子供達は警察に保護されたようだ。

自衛隊員達は、村を去る。

隊員3「くそ…胸糞悪い。あのクソコバエ共は、もっと拷問してじっくり痛め付けて殺してやれば良かったかな…」

装甲車運転手3「ならばそれだけの時間、俺達が都市防衛に加わる時間が遅れるわけだな」ブロロロロロロ

隊員3「…」

装甲車運転手3「俺達には、まだまだ戦わなきゃいけない相手がいる。限られた時間を使うべき場所がある。それをコバエ共に足止めされたのなら、都市襲撃してるアライさん共の得にしかならない」ブロロロロロロ

隊員3「…ちっ、分かってるよ…」

装甲車と戦闘用ヘリは、都市へ向かっていった…。



都市では、アライさん達の軍勢が部隊長を先頭に6手に分かれ、国家の主要機関の本部目指して突撃していた。

内閣府、防衛庁、警察庁、国土交通省、経済産業省、フレンズ省。
それぞれの本部へ殴り込みの突撃を行っていた。

部隊長アライさん2「のだのだのだーーー!」ドドドドドドドド

アライさん1251「天下を取るのだー!」ドドドドドドドド

アライさん1252「国家転覆なのだ!」ドドドドドドドド

部隊長アライさん2が率いる300の軍勢が、一直線に国土交通省本部を目指して進軍する。

そして、本部前の道路を一直線に進軍するアライさん達の前に…

戦闘用ヘリ3機が、上空で待っていた。


戦闘用ヘリ1「」バタバタバタバタ

戦闘用ヘリ2「」バタバタバタバタ

戦闘用ヘリ3「」バタバタバタバタ

部隊長アライさん2「ん?なんか飛んでるのだ」ドドドドドドドド

アライさん1351「構わないのだー!」ドドドドドドドド

アライさん1452「突撃なのだー!」ドドドドドドドド

戦闘用ヘリ1「発射」カチッ

戦闘用ヘリ2「発射」カチッ

戦闘用ヘリ3「発射」カチッ

一直線に突撃するアライさんの群れへ向かって、ヘルファイアミサイルが投下された。

発射されたミサイルは、アライさんの群れへ突っ込んでいった。

アライさん1222「のぎゃあ!」ドグシャ

アライさん1333「びぎっ!」グシャア

アライさん1444「ぶぎゅぅ!」ベシャ

直後、300の軍勢は一瞬にしてミサイルの爆発に飲まれた。

爆音によって呻き声すらかきけされ、アライさん達の300匹の群は一瞬にして90%が爆散した。

アライさん1234「ぐ…げ…」ピクピク

アライさん1256「い…ぎゃい…のぁ…」ピクピク

煙が晴れた後、ずるずると地面を這いずるアライさんの姿が現れた。

アライさん1278「あ…あ…み、みんな…げほっ…やられた…のか…!?」ゲホゲホ

戦闘用ヘリ1「機銃掃射、開始」バタバタバタバタ

戦闘用ヘリ2「機銃掃射開始」ズダダダダダ

戦闘用ヘリ3「開始」ズダダダダダ

アライさん1234「がひっ」グチャアア

アライさん1256「ぎゅっ」バシュァ

アライさん1278「のぎゃっ」ブシャアア

生き残った10%のアライさん達も、即座にチェーンガンの掃射を浴び、バラバラに解体された。

ボス直々に鍛えたという部隊長アライさん2は、ヘルファイアミサイルが直撃し木っ端微塵の焼き肉となって地面にばら撒かれていた。


戦闘用ヘリ1「残存勢力0匹。目標、排除完了」バタバタバタバタ

戦闘用ヘリ2「全機、直ちに次の待機ポイントへ向かう」バタバタバタバタ

戦闘用ヘリ3「ゴキブリホイホイ作戦、継続」バタバタバタバタ


部隊長アライさん2率いる300の軍勢は、ものの4分も立たずに壊滅した。

今の今まで自衛隊が練りに練っていた作戦は、いざ発動されると、効果覿面であった。

自衛隊は、アライさんの勢力を観察し、以下の3タイプに分類したのだ。

①リーダーの指導のもと、目的地に向かって突き進む「ムカデ型」
②リーダーからはぐれ、ひたすら人を探して攻撃する「ハエ型」
③後からとりあえず来たものの、既に避難済みの住人を見つけられず、食料のある場所でだらけている「ワラジムシ型」


この中で、真っ先に警戒すべき相手は①のムカデ型である。
というか、①さえ撃退すれば、後はさしたる脅威ではない。

よって、自衛隊は第一段階として、①のみへターゲットを絞った。

そしてムカデ型は6つに分かれて国の主要機関へ突撃していたが、
その目的地は『あまりにも露骨に分かりやすすぎた』。

そこで軍は主要機関の周辺で戦闘用ヘリによる待ち伏せを行い、
不意打ちのヘルファイアミサイルによって一気に鎮圧する戦術をとったのだ。

これが作戦の第一段階。
『ゴキブリホイホイ作戦』である。

>>216
アライさん、いっぺんゴキガイジムーブして来い
https://www.youtube.com/watch?v=-HszcdBhfrI

>>219
*素晴らしい動画だ。
*アライグマが死ねば死ぬほど、わたしは創作意欲に満たされる。
*…書かねば!

~経済産業省前~

部隊長2の軍勢に起こった惨状のことはいざ知らず、部隊長アライさん3率いる200程の部隊が経済産業省本部めがけて突撃していた。

変な男1「ハァッ…ハァッ…あそこです!あれこそが…ハァッ…人類の要!あれを破壊すれば我々の勝利です!…ゼェゼェ…」ヨタヨタ

部隊長アライさん3「わかったのだ!あの建物を、アライさん達のものにするのだ!」ドドドドドドドド

アライさん1512「新しいおうち、かっこいいのだぁ!」ドドドドドドドド

アライさん1523「はやくすみたいのだぁ!中の人間はみんなやっつけるのだぁ!」ドドドドドドドド



そんな軍勢を、上空から眺める戦闘用ヘリ部隊。

戦闘用ヘリ4「こちら経済産業省本部前。やはり狙いはここだ」

戦闘用ヘリ5「ここは道が狭い。機銃掃射で一気に凪ぎ払う!」ジャキッ

戦闘用ヘリ6「…待て!射撃待て!」

戦闘用ヘリ5「何故だ!?」



戦闘用ヘリ6「あの軍勢…人間だ!人間が混じっている!」

戦闘用ヘリ4&5「「なにッ!?」」

変な男1「ハァッ…ハァッ…!うへへへ、ここを壊せば、俺の復讐は果たされる!ざまーみろ社会!」ヨタヨタ

アライさん1533「のだのだー!」ドドドドドドドド

アライさん1543「行くのだー!」ドドドドドドドド


自衛隊に射殺許可が出されているのは、特定有害駆除対象フレンズのみ。

民間人を殺傷してしまってはいけない。

戦闘用ヘリ4「ど、どうして民間人が!」

戦闘用ヘリ5「おそらく、捕虜か人質か…。捕まって道案内させられているんだろう。可哀想に」

戦闘用ヘリ6「ならば、救出しに行くぞ!」ブウウウゥゥウン

戦闘用ヘリ4&5「「おう!」」ブウウウゥゥウン

部隊長アライさん3の前に、戦闘用ヘリ3機が現れる。

戦闘用ヘリ4「くたばれ、害獣共!」ズダダダダダ

アライさん1512「のぎゃああぁ!」ズブシャア

アライさん1523「ぐびゃあ!」ベシャ

アライさん1533「うぅっ!?何なのだあれは!?」

変な男1「ひっ…あ、アパッチじゃねえか!あ、あんなんに逆らったら殺されるゥ!」ガクガクブルブル

変な男は、死の危険を感じ取ったようだ。

アライさん1533「大丈夫なのだ!アライさんには、この凄い鉄砲があるのだ!」ジャキッ

変な男1「おおっ!?そ、それは…RPG-7か!?」

アライさん1533が持っている武器は、どこからどう見てもRPG-7だ。
こんなものを、アライさん1533は日本国内のどこで入手したというのだろうか?

戦闘用ヘリ4「な…なにッ!?」

アライさん1533「これで撃ち落としてやるのだ!ふぁいやーなのだ!」カチッ

アライさん1533は、武器の弾を発射した。

変な男1「いけいけー!」

弾は、ゆるやかな円弧を描いて飛んだ。
弾自体に、推進力はまったく無い。

やがて、弾はコツンと軽快な音を立てて、アスファルトの地面に転がった。

爆発はしなかった。

アライさん1533「あれ!?おかしいのだ、こんな弱いはずないのだ!もっとビューンって飛んでいくはずなのだ!」タタッ

アライさん1533は、弾へ駆け寄って、それを拾う。

アライさん1533「次は、外さないのだぁ!」ジャキッ

アライさん1533は、RPG-7と思わしきその武器の下についた、安っぽいレバーを引いた。

バネが縮み、カチッと金具の音がする。

アライさん1533「リロードなのだ!」カチャッ

アライさん1533は、中が空洞になっているプラスチック製の弾を、武器の先端へ再装着した。

アライさん1533「今度こそ、吹き飛ばしてやるのだ!」ジャキッ

アライさん1533が構えるその武器は、どこからどう見てもRPG-7だ。
素晴らしい造形と言わざるを得ない。

ちなみにこの武器は、モデルガンショップの棚から調達したものだ。

アライさん1533「ふぁいやーなのだ!たあ~!」カチッ

再びプラスチックの弾がポーンと飛ぶ。

変な男1「………」

戦闘用ヘリ4「なんかわからんがくらえ!」ズダダダダダ

アライさん1533「ごぶぎゃああああ!!」ブチャアア

アライさん1533は、モデルガンではない実弾を身体中に浴びて蜂の巣となった。

ヘリの機銃は次々と、変な男1から離れた場所にいるアライさん達を駆逐していく。

変な男1「ひ、ひいぃ!助けてくれえぇ!命だけはああぁ!」

戦闘用ヘリ4「わかりました、今助けます!」パサッ

戦闘用ヘリ4から、縄梯子が降りてくる。
縄梯子を握り、アサルトライフルを持った隊員が変な男1の上へ降りてくる。

隊員4「掴まってください!」スッ

隊員4は、変な男1へ手を伸ばす。

変な男1「…へ…?お、俺を、助けてくれるのか?」

隊員4「当然です!民間人の救助が第一優先!さあ早く!」ブンブン

アライさん1534「お、おい家来!アライさんを裏切る気なのか!?」

アライさん1535「お前言ってたのだ!アライさん達の味方だって!アライさん達が大好きだって!」

アライさん1536「ヒトに勝つ手伝いをして、家来になるって言ってたのだ!裏切りは許さないのだぁ!」

アライさん達は、ありのままの事実を口々に告げる。

アライさん1537「お前は自分から家来になりに来たはずなのだぁ!」

隊員4「…」

変な男1「っ…」

この変な男…
彼は、アライさんを盲目的に愛しており、
アライさんを傷付ける者すべてを敵だと思い込んでいる。
いわゆる、アライさん信者…略してアラ信だ。

毎晩アライさんの写真を見て興奮している。
それどころか、野良アライさんへ餌付けして顔見知りになり、妊娠させた事すらある。

アライさんの家来になりたいと言ったのも、打算ではなく本心からである。
彼がアライさん達に手を貸したのは、彼女達が駆除されない世界を作るためであり、
アライさんは最強だからその力があると本気で思い込んでいた。

だが。
こうして、アパッチの圧倒的な戦力を目の当たりにした今、
彼の意識はお花畑から現実へ戻ってきたのあった。

変な男1「…助けてください!捕まって、無理矢理協力させられてたんですッ!!」

アライさん1534「のだあぁ!?」

アライさん1534「お、おいヒコーキの人間!こいつは嘘をついてるのだ!アライさんは無理矢理協力なんてさせてないのだ!」

アライさん1535「自分から家来になったのだ!攻める場所もこいつが教えてくれたのだ!…無理矢理じゃないのだ!こいつは嘘ついてるのだ!」

アライさん達は、隊員4へ真実を告げる。

アライさん1536「アライさんの言ってることが正しいのだぁ!信じるのだぁ!」ガシッ

アライさん1537「嘘つかれたアライさん達は可哀想なのだぁ!だからあの建物をよこすのだ!」ガシッ

変な男1「ひいぃっ!」

変な男は、アライさん達に捕まれる。

隊員4「大丈夫ですか!」ズダダダダダ

隊員4は変な男をつかんでいるアライさん達へアサルトライフルを連射する。

アライさん1536「のぐあああ!」ブシュウゥウ

アライさん1537「ぐびいぃっ!アライさんががわいぞうなのだああっ!」ブシュウゥウドサッ

変な男1「せ、せせ、先導なんて、し、してません…あ、アライさん達のいうこと、信じないで…」ブルブル

隊員4「落ち着いてください。当たり前です。アライさんなんかの言うことを信じるはずないじゃないですか」ガシッ

隊員4は、変な男1を抱き抱える。

縄梯子がスルスルと巻き取られていき、二人は戦闘用ヘリへ入った。

アライさんがどれだけ真実を告げようとも。
変な男1が、どれだけ嘘を重ねて己の罪を隠そうとも。

アライさんと民間人では、証言能力に天と地ほどの差がある。

戦闘用ヘリ4「よし、民間人は救出した!ヘルファイア発射!」カチッ

変な男1…民間人の人質という盾を失ったアライさん達へ、
無慈悲にミサイルが撃ち込まれた。

アライさん1534「おぐびゃああああ!」チュドオォォン

アライさん1535「うぞづいでないのだあああぁぁ!」ボグオォォォン


アラ信にさえ見放されたアライさん達。
害獣達は、地獄の業火に包まれ炭となった。



ここはやや寒冷な、東北地方のとある県。
この地域も、アライさんの襲撃を受けていた。

自衛隊駐屯地が近くにない地域であり、比較的近隣である宮城の駐屯地から軍が派遣されている途中である。

現在は住人が避難中であり、警官隊が誘導を行っている。

一部地域は、住人の避難が完了しているが…

アライさん3000「ふはははは!都心のアライさん達に続くのだ!」ゾロゾロ

アライさん3050「こっちも便乗して、天下を取るのだ!」ゾロゾロ

アライさん3075「凱旋なのだ!勝者の行進なのだぁ!」ゾロゾロ

75匹程のアライさんの群れが、1列になって行進している。
住宅街を乗っ取るつもりである。

アライさん3000「ふはははは!人間たちは恐れをなして逃げたのだぁ!」ザッザッ

アライさん3050「今日からここはアライさんたちのお家なのだぁ!」ザッザッ

アライさん達の上空を、旅客機が通過していく。

…だが。
その旅客機よりも速いスピードで。
何かが、アライさんの群れの列に向かって突っ込んできた。

アライさん3001「ん?…なんかキーンって音がするのだ」

アライさん3002「何なのだぁ?」





大きな角の生えたフレンズ「うおおおおおおお!邪魔だああああぁっ!!」ズドドドドドド

アライさん3000「!?」



突っ込んできたのは、目に野生解放の光を宿したフレンズであった。

大きな角の生えたフレンズ「どけどけどけぇーーーーっ!!」ドッッゴオオォォ

アライさん3000「」グシャア

アライさん3025「」ベシャア

アライさん3050「」ドグチャ

アライさん3070「」ビッシャアアァッ

大きな角の生えたフレンズは、70匹のアライさんの列に真っ正直から突っ込み、
そして、通過していった。


衝突の衝撃でバラバラになって吹き飛ぶ70匹のアライさん達。

フレンズが過ぎ去った後には、原形がなにか分からなくなった、血と肉片ばかりが散らばっていた。



同県内の住宅地。

避難警報が出され、住人達は避難場所へほぼほぼ避難完了している…
はずなのだが。


少女「ぐがー…すぴー…」zzz


マンションの部屋の中で、一人の少女が寝ていた。
獣の耳と尻尾が生えている姿からして、彼女もまたフレンズであろう。

携帯電話『ビーーーッビーーーッビーーーッ!緊急避難警報!緊急避難警報!アライさんの群が襲撃しています!各自、放送の指示に…』

少女「ん~…うるさいなぁ…」ピッ


なんと、少女は警報の鳴る携帯電話の電源を切ると、
またすやすやと眠ってしまった。
…こんな危機的状況であるというのに!

アライさん3076「ふははは!この家はアライさんがもらうのだ!」バァン

アライさん3077「居心地良さそうなのだ!チビ達もきっと喜ぶのだ!」

アライさん3078「ん?誰かいるのだ。フレンズなのだ」

少女「すぴー…」zzz

少女の部屋へ、アライさん達が突入してくる。
だが、少女は相変わらず目を覚まさない。

アライさん3079「こいつも人間の仲間なのだ!」ブンッ

アライさん3080「やっつけるのだ!」ブンッ

アライさん達は、少女へクワやスコップを振り下ろし、叩きつける。

アライさん3076「ふはははは!よわいのだ!」ドカボカ

アライさん3077「ゴミクズなのだ!」ドカバキ

5匹のアライさん達は、少女へ武器を叩きつける。
何度も、何度も。

…しかし。

少女「すぴー…」zzz


少女は目を覚まさない。
それどころか、硬い金属の武器であれだけボコボコに叩かれたのに、
肌にはかすり傷一つさえない。

アライさん3076「何なのだこいつ!?硬すぎるのだ!」

アライさん3077「しかも起きないのだ!」

アライさん3078「なら…これを使うのだ!」キランッ

アライさん3078は、大きな包丁を持ってくる。

アライさん3078「これでとどめなのだ!」ブンッ

少女の首筋へ、包丁が振り下ろされる。

どずっと包丁が突き立てられる。

……しかし。

アライさん3078「さ…刺さらないのだ…!」プルプル

首筋へ突き立てた包丁は、肌に一切傷を付けていない。

アライさん3079「な…何なのだ、こいつ」

もさもさの髪の少女「むにゃ…痛ってーなー…」ムクッ

少女は、寝癖がついたもさもさの髪をかきむしりながら、不機嫌そうに目を覚ます。

アライさん3078「起きたのだ!や…やっつけるのだ!」バッ

アライさん3078は、包丁を持って飛びかかる。

もさもさの髪の少女「あ?」ブンッ

少女は、アライさん3078へパンチを浴びせた。

アライさん3078「ごびゃッ!」ボパァン バラバラ

なんと、パンチをくらったアライさん3078はバラバラに粉砕された。
それどころか、粉々になった骨が…

アライさん3079「のだあああっ!」ズブシャアアア

アライさん3080「ごぶえぇっ!!」ドブシャア

後ろの2匹へ散弾銃の弾のように飛んでいき、それらを蜂の巣にしたのである。

アライさん3078の破片「」バラバラ

アライさん3079「」ドサァ

アライさん3080「」ドチャッ

もさもさの髪の少女は、パンチ一発でアライさん3匹を絶命させてしまった。

もさもさの髪の少女「やっばー…部屋が汚れちゃったなぁ」

アライさん3076「ば、ばけものなのだぁ!」ダッ

アライさん3077「逃げるのだぁ!」ダッ

アライさん2匹が、ドアから出ていこうとする。

もさもさの髪の少女「バケモノじゃなくて…」グイッ

少女は、拳を握りしめる。

もさもさの髪の少女「ケモノだよ♪」ブンッ

もさもさの髪の少女のパンチは空を切った。

音速を超えたパンチは、文字通り『空を切り』、
ソニックブームを発生させた。

衝撃波はドアの外まで伝わり、アライさん達を吹き飛ばす。

アライさん3076「ごげぇっ!」ドシャア

アライさん3077「ぶぎぃっ!」ドシャア

吹き飛んだアライさんは壁に激突し、その壁を大量の赤いペンキで染めた。

もさもさの髪の少女「ふぁ~…。昼寝してたら、夜になっちゃってた。何これ?どうなってるの?」スタスタ

少女は部屋の外へ出ていく。

やがて少女は、公園に到達する。
そこで少女が目にしたものは。

小ボスアライさん「この街は制圧したのだぁ!」

アライさん3081「この辺の人間は、老人ばっかで弱いのだ!」ウジャウジャ

アライさん3131「次はどこに行くのだ?」ウジャウジャ

アライさん3181「天下を取ったのだ!」ウジャウジャ

アライしゃん3201「とったのだー!」

アライちゃん3211「なのらー!」ヨチヨチ

広間で集会をしている、100匹程のアライさん親子だった。

小ボスアライさん「ん?生き残りがいたのだ!やっつけるのだ!」

アライさん3081「倒すのだ!」ダッ

アライちゃん321「やっちゅけりゅのらー!」ヨチヨチヨチヨチ

100匹程のアライさんの群れが、少女へ向かって襲いかかってくる。

もさもさの髪の少女「…何で誰もいないの?近所の八百屋さんは?本屋のおっちゃんは?」ポリポリ

アライしゃん3082「ごーとぅーへるなのだー!」トテトテ

もさもさの髪の少女「みんな避難したからかな?」

アライさん3151「たあ~!」ドドドドドドドド

アライさん達はこれだけの数。
対して少女はたった一人。
あまりにも戦力差が大きすぎる。



もさもさの髪の少女「…それとも、お前らが殺したからか?」ゴウッ

少女の目が光り、サンドスターの輝きに包まれる。
野生解放したのだ。

…つまり、少女は今の今まで野生解放は行っておらず、
素の身体能力で戦っていたことになる。

もさもさの髪の少女「畑の野菜に飽きたらず、人の命にまで…」ググッ

少女は、腕をぐっと引く。


もさもさの髪の少女「手ぇ出してんじゃねーぞ」ブンッ

アライさん3081「」パァン

少女は、100匹はいるアライさんの群れのうち、先頭のアライさんたった一匹だけを殴った。

その一撃だけで。

雷鳴のような轟音が鳴り響き。

突風が起き、地面がえぐれ。

並木が吹き飛び。

アライさん3082~3212「」パァン バラバラ

小ボスアライさん「」グシャアァッ バラバラ

100匹以上のアライさんは粉砕され、破片となって互いを粉砕し合い、風に飛ばされていった。

風が吹き抜けた痕は、どこまでもどこまでも血と肉片で染まっていた。


もさもさの髪の少女「ふわ~あ…掃除大変そうだなこれ…」スタスタ

もさもさの髪の少女「みんなどこ行ったんだろ~…」スタスタ

少女は野生解放を解除すると、避難場所を探して再び歩き出した。

…場所が知りたいなら、携帯電話の電源をつけるだけでいいのだが…。

つづく

~フォアグライ加工場前~

アライさんの勢力は6つに分かれた…というが、
細かい目的達成のためにそれ以前に分かれた部隊がある。

これがそのひとつ。
30匹からなる、『チビ救出部隊』である。

保健所から脱走したアライさん達は、変な男2の案内のもと、フォアグライ加工場へやってきた。

ここに囚われている子供達を解放しに来たのだ。

アライさん1541「捕まったチビ達はここにもいるのか!?」ドタドタ

変な男2「はい。ここは…日本で、いや世界で一番邪悪な秘密結社です!絶対ぶっ壊しましょう!」ヨタヨタ

アライさん1542「見張りがいないのだ!突入なのだ~!」ダダッ

警官達は、民間人の安全を確保するのに精一杯であり、
こんな一企業の建物を守っている余裕はない。

アライさん達は、バール等の武器を使って窓を叩き割り、フォアグライ加工場へ侵入した。

~アライちゃん育成場~

アライさん1541「のだのだのだー!」ドガンッ

アライさん1542「アライさんの可愛いチビ達を返すのだぁ!」バァン

愛する我が子を救出すべく、アライさん達は建物内をずかずかと進み、ついにアライちゃん達がいる大きな部屋へ到達した。

そこでアライさん達が見たものは…

デブアライちゃん1「うぅ…げふっ…ぐるじいのらぁ…」ブヨブヨ

デブアライちゃん2「おえええっ…」ゲボゲボ

デブアライちゃん3「おうぢがえりだい…のらぁ…」ブリブリ

デブアライちゃん4「だれか…たしゅけてぇ…おかーしゃん…」ジョロロロ

デブアライしゃん5「もう…ころして…ほしいのだ…」

便器のようなものに座らされ手足を拘束された、百を超える数のアライちゃん、アライしゃんであった。

アライちゃん達は吐瀉物にまみれ、悪臭を放っている。

アライさん1542「うっ…!」

アライさん1543「なんなのだこれ…酷すぎるのだ…!」

変な男2「っ…ひ、ひでぇ…こんなの人間がやることじゃねえっ!!」

お面の男「よう、精の出るこったな」

変な男2「…!誰だ!」クルッ

アライさん1541「ヒトなのだ!お前がチビ達をあんな目にあわせたのか!?」

お面の男「まあまあ落ち着けよ。お前ら、腹減ってないか?」

声のする方を向くと、アライさんの紙製お面を被った男が、テーブルの側の椅子に座っていた。

テーブルの上には、銀の蓋で覆われた料理の皿がある。

アライさん1542「減ってるに決まってるのだ」

アライさん1543「お腹ぺこぺこなのだ」

お面の男「ほー、そうかい。じゃあ、ここらで飯にしねえか?」カパッ

お面の男は、蓋を外す。
皿には大きな大きな揚げ物料理が乗っていた。

アライさん1544「おぉーー!」

アライさん1545「美味しそうなのだぁ!」ジュルリ

「食べたいのだぁ」「それ、食わせるのだ!」

30匹程のアライさん達は、口々に食べたいと言っている。

お面の男「ちょっと待ってな。冷めてるからな、レンジでチンしてやるよ」ガチャッ

お面の男は、料理をラップで包むと、業務用の大きな電子レンジで温めた。

アライさん1546「わくわくするのだぁ」

アライさん1547「お前、いいやつなのだぁ!またヒトが家来になったのだぁ!」

アライさん1548「腹が減っては、戦はできないのだぁ!」

デブアライちゃん4「おかーしゃ…あいたかった…のだ…。た…たしゅ…け…て…」

デブアライちゃん4は、自分の母親を見つけた…ようだ。
いや、よく似た別人かもしれないが、自分の母親とでも思わないと精神が持たないのだろう。

アライさん1549「チビと会えてよかったのだ!アライさん達は今からご飯なのだぁ、お前はちょっと待つのだぁ!」ワクワク

変な男2「お前…何者だ?何でここにいる。何が狙いだ」

お面の男「そりゃこっちのセリフさ。お前は何者だ?何でここにいる。人に聞きたきゃ、まずは自分から名乗るのが礼儀ってもんだぜ」

変な男2「…俺は、もうアライさん達が傷付く世界が嫌になっただけさ。おかしいと思わないか?人と同じ姿をし、言葉を話し、心を持ったアライさん達が、無惨に殺される…」

変な男2「この国の連中は皆感覚が麻痺している。なんでフレンズを平気で差別し、虐殺することが、さも当然のように平然と行われてるんだ?」

変な男2「挙げ句の果てに、みろよこの狂った部屋を。人殺しどころじゃない、人食いだ。…みんな、狂ってるよ」

変な男2「正常な感覚じゃない」

お面の男「…優しいんだな、あんた」

変な男2「…アライさんの何が悪い。俺達人間だって、他の動物を、地球を、自分達のために犠牲にして生きている。何故アライさんだけを責められる!」

変な男2「アライさん達だって、子供を育てるため、生きていくために!畑の野菜を取ったり、民家を寝床にしているんだ!生きていることの何が悪いっていうんだ!」

お面の男「…哀れなもんだな、アライさん達ってのは」

変な男2「ああそうさ!分かってくれるのか、お前も!?」

電子レンジから、いい匂いがしてくる。

お面の男「ああ。アライさん達だって生き延びるのに必死なんだろうよ。…お前さんはつまり、こいつらの手助けをし、この国をブッ壊して解放してやろうとしてんのか?」

変な男2「そうだ!アライさんを虐殺するような鬼畜共は、もう人間じゃねえ!みんなくたばっちまえばいい!」

変な男2「はは、どいつもこいつもいい気味だぜ。今までさんざんアライさんを虐殺しておいて、いざ自分達が襲われる立場になったら、皆命乞いしやがる。…自分達は、アライさんの命乞いなんて聞かなかったくせにな」

お面の男「…そいつらは、どうしてやったんだ?」

変な男2「ああ!そいつらなら、アライさん達が殺してくれたよ!バットやバールでボコボコにしてな!」

お面の男「…そうか。大したもんだぜ、あんた」

電子レンジから、チーンと音が鳴る。

お面の男「ほい、どうぞ。超ビッグサイズのアゲアゲ揚げ料理だぜ」スチャ

お面の男は包丁を持ち、大きな大きな揚げ物をざくざくとカットしていく。
アライさんの数と同じ、約30個に分割した。

アライさん1541「いただくのだぁ!」タッ

変な男2「待った!こいつ怪しいぞ!この料理、毒が入ってるかもしれん!」

お面の男「入れねえよそんなもん。料理人が自分の料理に入れるのは、客をもてなす心だけだ。そんなに信用できねえなら俺が毒味してやるよ」

変な男2「むぅ…」

アライさん1542「食べるのだぁ!」ガシッ

アライさん1542が、フライを一切れ掴み、口へ運ぶ。

お面の男「俺はこの3年、表に出ず、ずーっと経営と料理の腕を磨いていたからな。じっくり味わいな、絶品だぜ?」

アライさん1542「あーん、がぶっ」ガブリ

アライさん1542は、大きなフライの一切れを噛み千切る。
断面からは、肉汁が滴り落ちる。

アライさん1542「もぐもぐ…」モグモグ

お面の男「どうだ?」

アライさん1542「…おいしーーのだあああああ!とっても美味なのだ、脂っこくて最高なのだぁ!」モグモグ

アライさんは料理を絶賛する。

アライさん1543「アライさんも食べるのだぁ!」ドタドタ

アライさん1544「栄養補給なのだぁ!」ドタドタ

アライさん1545「今度は料理ができる家来ができたのだ!」ドタドタ

アライさん1546「アライさんにも欲しいのだ!」ドタドタ

お面の男「はいはい、一匹一切れな。カロリー高いからな」

アライさん達は全員、一切れずつフライを食べた。

皿の上には、フライの一番はじっこの丸い部分だけが残っている。

アライさん1541「ふぅー、もっと食べたいのだぁ!」

アライさん1542「すっごく美味しかったのだ!ひとつだけ残ってるのだ、アライさんに寄越すのだ!」

アライさん1543「なぁっ、ずるいのだ!アライさんのものなのだぁ!」

アライさん1544「アライさんだってまだ食べ足りないのだぁ!」

アライさん1545「うおー、アライさんが貰うのだぁ!」ドタドタ

アライさん1545は、皿に向かって走る。

アライさん1546「させないのだぁ!」ガバッ

アライさん1545「のだっ!?」ドサッ

アライさん1546は、アライさん1545に後ろからタックルして押し倒した。

アライさん1546「これでフライはアライさんのものなのだぁ!」バッ

アライさん1546は、皿へ向かって手を伸ばす。

アライさん1545「よくもアライさんに乱暴したのだ!許さないのだ!」ドガァ

アライさん1546「のだっ!?」ドサッ

なんとアライさん1545は、先程タックルで押し倒された仕返しに、アライさん1546の後頭部を金属バットで殴った。

アライさん1546「あああああ痛い痛いのだあああぁぁ!」バタバタ

アライさん1546は、異常な痛がり方をする。
後頭部は頸椎と頭蓋骨の接合面であり、人体の急所。金属バットで殴られたら無事では済まない。

アライさん1545「ふーっ、ふーっ、アライさんに乱暴したからなのだ、お前が悪いのだ」フゥフゥ

アライさん達は、静まり返る。

アライさん1545「これはアライさんが貰うのだ」スッ

アライさん1547「ずるいのだ!そうはさせないのだ!」ガシッ

アライさん1547は、アライさん1545を羽交い締めにした。

アライさん1545「離すのだ!アライさんが一番強いのだぁ!」ジタバタ

アライさん1547「こんな乱暴で悪い奴に、美味しいゴハンを寄越すわけにはいかないのだぁ!」グイグイ

アライさん1545「アライさんはやられたからやり返しただけなのだ!そこでうずくまってる奴が元凶なのだ!アライさんは悪くないのだぁ!」ジタバタ

アライさん1547「みんな!こいつは仲間を殴った裏切り者なのだ!」グイグイ

アライさん1548「酷いのだ!」

アライさん1549「ゴミなのだぁ!」

アライさん1545「う、うぅ!なんで誰も分かってくれないのだぁ!アライさんは被害者なのだぁ!」ジタバタ

変な男2「もうやめるんだみんな!」

アライさん達「「!?」」ピタッ

変な男2「敵は人間だろう?こんな所で味方同士でいがみ合ってどうするんだ!子供達が見ているんだぞ!」

アライさん1545「…ちび…?アライさんのチビは、この中にいなかったのだぁ」

変な男2「いやそういう話しじゃなくてね!?」

変な男2「ここは料理を作ってくれた、あの人に感謝すべきなんじゃないのか?最後の一切れは、あの人に残してあげようよ」

変な男2は、お面の男を指し示す。

アライさん達「…」

誰も納得してはいないようだが…

アライさん1541「…わかったのだ」

アライさん1542「…それでいいのだ」

『共通の敵は人間』ということを思い出したおかげか、しぶしぶ変な男2の言うことを受け入れた。

アライさん達は、共通の敵を見つけた時のみ団結できるのである。

お面の男「いや、俺はいい。それよりあんた、この争いを静めるとは大したもんだな。あんたも腹減ってるんじゃねえか?」

変な男2「お…俺?」

お面の男「考えてもみろ。お前がアライさん達をここへ連れてきたおかげで、みんなは俺の料理が食えたんだろ?」

お面の男「だったら、お前にだって食う権利がある。そうじゃないか?」

アライさん1541「…それもそうなのだ。家来はいい仕事したのだ」

アライさん1542「お前も労ってやるのだ」

アライさん1543「アライさんはその辺バッチリなのだ」

アライさん1544「美しい友情なのだぁ!人間だったら絶対奪い合ってたのだ」

アライさん1545「…イゾンないのだ。その代わり、お前も家来になるのだ!お前も家来になって、毎日アライさん達にこれを作るのだぁ!」

お面の男「いいぜ。お前が本当にそれを心から望むならな。材料集めから料理の過程まで、じっくり見せてやっていいぜ」

先程の奪い合いとは裏腹に、アライさん達は残った料理を変な男2へ譲るようだ。

変な男2「…さっきは貶して悪かったな。頂いてもいいかい?」

お面の男「ああ。どうぞ」スッ

お面の男は、変な男2へフライを差し出す。
一番はじっこの、丸い部分だ。

お面の男「…おおそうだ。言っておくが、その部位はフライの衣を剥がしてから食った方が、料理をより深く味わえるぜ」

変な男2「そうなのか?ありがとう。どrどれ…」ペリペリ

変な男は、フライの衣を剥がす。

一旦風呂入ってきます
もしかしらそのまま寝るかも

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報告書10
~レベルアップと身体能力~

フレンズ達はレベルが上がると、超人的な力を発揮する。
人命救助活動をするカバやヒグマのフレンズが、500kgはある瓦礫を軽々と持ち上げているのを見たことはあるだろう。

だが、筋細胞がアデノシン三リン酸と酸素の化合によって出せる力には限界がある。
彼女らの腕の太さは年齢相応の少女と変わらない。それだけの力を発揮することは物理的にあり得ないのだ。
では、なぜあのような事が起こっているのか?

様々な実験により得たデータから結論づけると、
それは筋肉の力ではなく、サンドスターが励起することで発せられる力である。

フレンズ達は、自らの筋肉を動力源ではなく、油圧装置のパイプのように、サンドスターの経路として使うのだ。

そしてレベルが上がるほど、励起サンドスターの発揮できる運動エネルギーは上昇するのである。
莫大なレベルの持ち主であれば、絶えず身体中の筋肉をサンドスターが駆け巡り、ナイフすら刺さらない鋼の肉体を得ることも不可ではないだろう。

この研究の産物として、我々はASL(アンチ・サンドスター・リキッド)を開発した。
これを注入することで、サンドスターの活性化を阻害し、フレンズのレベルを強制的に1にできる。
ただし効果は一時的なものであり、20時間が限度である。

以上のことから、本薬品は対フレンズ用の暴徒鎮圧用に利用可能である。

もしもこの製品が、セルリアン討伐のときに開発できていれば、より多くの人々を救うことができたであろう。

願わくば、このシリンジの先端を、我々の友であるフレンズに向けずに済む未来が続いてほしいものだ。

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つづく

コメント貰えるのは作者的には嬉しいからウェルカムなんですけどね

とりあえず酉つけてみます

変な男は、フライの衣を半分ほど剥がす。

変な男2「…え?ぁ…ぁ…?な、なん…だ…これ…」

アライさん1541「どうしたのだ?」

変な男2「あ、う、うわあああああああああああああああああああッッッッッ!!」ポイッ

変な男2はフライ料理を投げ捨てた。
フライは床に転がる。

アライさん1541「勿体ないのだ!食べないならアライさんが貰うのだぁ」ガシッ

アライさん1541は、床に捨てられたフライを手で拾う。
衣を剥がれたフライを、正面から見る。

アライさん1541「…え…あ、あ…?のだあああああああああああっ!!」

アライさん1541は悲鳴をあげる。

アライさん1541「うぁ、あ、のあああっ…!」

アライさん1542「何なのだ?」ゾロゾロ

アライさん1543「食べないなら、アライさんが貰うのだぁ」ゾロゾロ

アライさん1541「くるなああああ!」ブンブン

アライさん1544「のぁっ!?何なのだ、食べないならよこすのだ」

アライさん1541「だ、だって、これ…」

アライさん1541は、フライの衣をすべて剥がす。


アライさん1541「アライさんが助けにきた…、たった一人の、大事な…ちび、なのだぁ……!」


フライの中に包まれていたのは。
苦悶の表情で絶命している、デブアライしゃんの頭であった。

みんな同じような顔をしているアライさんだが、一応父親となったアライグマは異なる。
母親には、子の顔が分かるのだろう。

アライさん1541「あ、ぁあ、あああ…み、見ない間に、こ、こんなに、おっきく、なって…」ガクガク

デブアライしゃんの頭「」

アライさん1541「…ぁあ…ちび…ちびぃぃっ…!ううぅ…!」シクシク

アライさん1542「ひっ…!あ、アライさんの頭、なのだぁっ…!」ゾクッ

お面の男「ヒャーーーアハハハハ!!やっと気付いたか!!てめーらは今まで、そのチビの肉を食ってたんだよ!共食いだァ!!」

お面の男「傑作だったぜェ!ガキの死体を共食いするために、奪い合いをして仲間割れするてめーらの姿は!金属バットで仲間を殴ってまで食ったチビの死体は美味かったかァ~?」

アライさん1546「…の…ぁ…」ビグンッビググッバタバタバタッビググッバタバタバタッ

お面の男「ギャーーハハハ!そのガキは煮えたぎる油の中で、最期までオカーシャーンオカーシャーンって泣いてたぜェ!!」

アライさん1547「う…ぷっ…!」

お面の男「良かったじゃねえか!くたばった後、大好きなおかーしゃんの腹の中に収まれたんだからなァ!ヒャーーーアハハハハ!!」

アライさん1541「お゛っ!おえええええええっ!」ゲボゲボ

アライさん1542「…ぅ…ぅ…!」ブルブル

アライさん1543「げえええええっ!」ビチャビチャ

アライさん達の多くは、その場でゲロを吐いた。

お面の男「ヒャーーーアハハハハいい反応だ!俺は避難警報が出た後、てめーらのその反応を見るために!このゲロくせー部屋にテーブルと電子レンジを運び込み、冷めた料理を皿に乗せて3~4時間ずっとスタンバってたんだ!」

変な男2「てめえ!腐れ外道がッ!どこまでも腐りきってやがるッ!クソ野郎!」

お面の男「ちなみにそいつは、肝臓を抜き取った後のリサイクル品だ。まだ生きてるうちに揚げたガキは美味かったか?貴重なご意見ありがとうございますって礼を言わなくちゃーなお客様!」

変な男2「…そのキチガイみたいな笑い声…お前、まさか!」

お面の男「まさか、何だァ?…聞き覚えでもあるのかァ?例えば…動画サイトとかでよぉ!」

変な男2「知らないわけがあるか!俺が世界で一番くたばってほしいと思う男…!アラジビ料理やフォアグライを流行らせ、罪もないアライさん達を多くのハンターに乱獲させた…全ての元凶ッ!」

お面の男「ほう、それはそれはよくご存知なこったなぁ」スッ

お面の男は、お面を外し、テーブルへ乗せた。



その下の素顔は。


???「さてはお前も、俺のファンになったのかな?」


なんということであろうか。

なんと、お面を被ったこの正体不明の男こそ…
フォアグライ加工場の経営者にして、フォアグライの特許取得者。





変な男2「ショクエモンPッ!」


食通の友人「ご紹介に預り、光栄だね」



…ショクエモンPこと、食通の友人だったのだ。
なんという衝撃的な事実であろうか。

食通の友人「で、お前はショクエモンPの何なんだ?俺の活動を支えてくれるファンか何かか?」

変な男2「冗談じゃねえ!その逆、アンチだ!ネットで何度お前に殺害予告したかわからねえッ!」

食通の友人「あー、ブログのコメント欄によく涌いてた奴か。『ショクエモン殺す。ナイフで滅多刺しにして殺す』とかあちこちで書いてたっけ」

変な男2「へ、へへ、そのチャンスが来たようだな」シャキンッ

変な男2は、ナイフを取り出す。

食通の友人「それで何する気だ?」

変な男2「決まってんだろ!滅多刺しにして殺すッ!今度はネットの殺害予告じゃねえ、ホンモノだ!」ダッ

食通の友人「それをやったら、あんた殺人犯だぜ」

変な男2「構うもんか!警察は今日、アライさん達に壊滅させられるからな!」ダッ

変な男2は、食通の友人へタックルし…
ナイフを、食通の友人の腹へ突き立てた!

変な男2「殺ったッ!」

しかし。
食通の友人は、その腕を掴み…

変な男2「なにっ!?」

食通の友人「ふんっ!」ブンッ

背負い投げを放ち、コンクリートの床へ頭からまっ逆さまに叩きつけた。

変な男2「ぐぶっ!」ドサァ

変な男2はダウンしている。

変な男2「な…なんで…」

食通の友人「生憎だが、今の俺はただの料理人じゃねえ。フランスや世界の富豪へフォアグライを届ける経営者だ」

食通の友人は、上着の前のボタンを開け始める。

食通の友人「でさ。お前の殺害予告を真に受けた株式達がよ…」パサッ

上着を脱ぐと、そこには防刃チョッキがあった。

食通の友人「これ着ろって、うるせえんだよ。重いし暑いし最悪だ」

変な男2「…な…」

食通の友人「残念だったなァ?てめーが先走ってネットでイキってなきゃ、今頃俺を血溜まりに沈められてたのによォ!ギャーーーーハハハハハッハハァ!」

変な男2「」ガクッ

変な男2は、脳震盪で失神した。

食通の友人は、失神している変な男2を引きずり、フォアグライ拘束機で固定する。

変な男2「」グッタリ

デブアライちゃん4「ぐがー…ぐごー…」zzz

変な男2の隣では、デブアライちゃんがいびきをかいて寝ていた。

食通の友人「本当はこいつの喉に強制給餌機を突っ込んでやりてえところだが、動けない相手を痛め付けるのは過剰防衛だ。ブタ箱にはこいつ一人で入ってもらうぜ」ピッ

食通の友人は、ポケットの中のボイスレコーダーの録音を停止した。
アライさんに自ら協力しテロ行為へ荷担していたこと、食通の友人を殺害しようとしたことが、全て自供として音声データに残った。

食通の友人「さて、向こうの方は」クルッ

アライさん1541「すぴー…」zzz

アライさん1570「すぴー…」zzz

アライさん達は、すやすやと寝ていた。
アラフライは、頭部以外のすべての箇所に睡眠薬が含まれていたのだ。

食通の友人「言った通りだ。毒は入っていないと。入れるのは客をもてなす心だけだとな」

食通の友人「…まあ、その客がてめーらクソバエなら、敵愾心をもってもてなすのが当然だろう」

食通の友人は、アライさん達をフォアグライ拘束機で固定した。



アライさん1541「…ん…」パチッ

アライさん1542「…寝てたのだ…」ムニャムニャ

アライさん1543「…!?何なのだ、動けないのだ!」ガシャガシャ

デブアライちゃん1「たしゅ…けてぇ…」ゼェハァ

食通の友人「よう、目覚めたか」

アライさん1544「お、おい、これは何なのだ!?アライさん達とチビ達を離すのだ!」

食通の友人「離したらどうするんだ?」

アライさん1544「決まってるのだ!お前をやっつけて、人間を倒すのだ!」

食通の友人「………」

食通の友人「…あのな。今ここで、手足を拘束されて動けねえてめーらを一匹ずつ刺し殺して回ってもいいんだぜ」

アライさん1547「のぁっ…!や、やめるのだぁ!」ジタバタ

食通の友人「だが、そうすると死体の置き場がねえ。ここは腐っても食品工場だ、てめーらの腐った死体を食品に近づけたくはねえ」

食通の友人「だから、コトが片付くまで、てめーらにはそうやって大人しくしていてもらうぜ」スタスタ

アライさん1548「ふざけるななのだぁ!」ジタバタ

食通の友人「ところで、だ。この中に、自分のガキを見つけた奴はいるか?」

アライさん1541「うぅ…アライさんは、見つけたのだ…。なのに、お前に殺されたのだぁ!」

食通の友人「とんでもねえ、むしろ感謝しろよ。本来肝臓以外は蚕の蛹みてーに捨てちまうもんだが、有効活用してやったんだ」

アライさん1550「…いたら、どうするのだ」

食通の友人「ああ。せっかく親がここまで頑張って助けにきてくれたんだぜ?お前らの苦労に免じて、そいつだけはこの拘束から解放してやるよ」

アライさん1550「ちび!おかーしゃんの声が聞こえるのだ?」

デブアライしゃん50「のあぁ、きこえる!きこえるのらぁ!おかーしゃん!おかーしゃん!」ジタバタ

デブアライしゃん51「いちばんうえのおねーしゃんはつれてかれたのだ!おねーしゃんとあらいしゃんがいるのらぁ!」ブヨンブヨン

拘束されているアライしゃん2匹が応える。

食通の友人「ふむ…この2匹だな。他は」

「チビ!」「おかーしゃん!」

「お前だけでも逃げるのだ!森に帰るのだ!」
「ありがとうなのだおかーしゃん!たしゅけてくれてありがとうなのらぁ!」

きっと声の違いも分かるのだろう。
親子のペアが、4組ほど見つかる。

合計7匹のアライしゃん・アライちゃんに、マークがつけられた。

アライさん1550「さあ約束なのだ。ちびを解放するのだ」

食通の友人「…」

アライさん1550「何もたもたしてるのだ!?嘘ついたのか!?ちゃんと約束を守るのだぁ!」ガシャガシャ

食通の友人「…本当に、全ての約束を守っていいんだな?」

アライさん1550「当たり前なのだ!さっさとするのだ!」

食通の友人「ああ、わかったよ。俺は約束を守る男だからな。ただし、一匹ずつだ。一匹ずつ解放してやる」カチャカチャ

デブアライしゃん50「のぁ…はずれたのだぁ」ペタン

食通の友人「ケツも口まわりもきたねえな、洗ってやるよ」ジャー

食通の友人は、デブアライしゃん50をシャワーで洗う。

デブアライしゃん50「のああぁ、綺麗になったのだ」フルフル

アライさん1550「解放されたのだ!さあ、チビを森に帰すのだ」

食通の友人「いーや、そういうわけにはいかねえ。約束したのは拘束から解放するとこまでだ」

アライさん1550「のぁっ!?」

食通の友人「それに俺は、お前らとのもう一つの約束を守らなくちゃいけねえ」

アライさん1550「もう一つの約束?何言ってるのだ!」

食通の友人「俺ぁさっきお前らに約束したよな?」





食通の友人「てめーらの家来になって、毎日アライさん達にさっきのフライを作るってよ」




食通の友人は、鉈をもつと、なんとデブアライしゃん50の腹をその場でかっさばいた。

デブアライしゃん50「ぎびぃーーーっ!?」ブシュウウウゥゥ

アライさん1550「ち、チビぃいいっ!?チビになにするのだああぁ!」

食通の友人「いーい脂肪肝だぁ、こいつぁ貰っていくぜ」ザグザグブヂィ

デブアライしゃん50「のぎゃあああああっ!!」

変な男2「ん…いてて、な、なんだ…」パチッ

その大声で、変な男2が目を覚ます。
どうやら打ち所がよく、大事には至らなかったようだ。

食通の友人「ヒャーハハハハ!約束通りだ!材料集めから料理の過程まで、じっくり見せてやるぜェ!」

デブアライしゃん50「のっ…ごっ…ぎゃ…」ブシュウウウゥゥ

肝臓を切除されたデブアライしゃん50。
しかし、即死には至らないようだ。

変な男2「うっ!し、ショクエモン!お前、その子に何をしたああ!血がいっぱい出ているぞ!」

食通の友人「長らくセミリタイア状態だったが、久し振りにやるか!ショクエモンPのライブキッチン!」

食通の友人は、ガスコンロと鍋、材料をテーブルの下から出す。
スタンバっていた間に、この部屋へ持ち込んでいたのだろうか。

食通の友人「ヒャーハハハハ!最高の観客が揃っているなぁ!部屋がゲロくせーことを除けば最高の条件だ!」カチャカチャ

食通の友人「えー、只今より!わたくしショクエモンPが!3年ぶりのライブキッチンを披露させて頂きまぁっす!」

変な男2「がああぁ!やめろ、やめろおぉ!俺を離せえぇ!」ガシャガシャ

食通の友人は、ガスコンロに火を着け、サラダ油を温める。

食通の友人「演目はもちろん!お客様の熱いアンコールにお応えしまして、アラフライとなりまぁす!」

材料をかきまぜ、衣のペーストが出来上がる。

アライさん1550「あ、あ、な、何する気なのだぁ!ちびが、ちびが怪我してるのだ!すぐ手当てするのだあぁ!」ガシャガシャ

食通の友人「手当てェ?俺は医者じゃありませんよお客様ァ!」ペタペタ

食通の友人は、デブアライしゃん50の顔以外全体にペーストを塗り、パン粉をふりかける。

変な男2「ふーっ、ふーっ!やめろォ!それ以上やったら殺す!殺してやる!」ガシャガシャ

食通の友人「できもしねー殺害予告にはもう懲りたと思ったが…まあ、観客席からの熱い声援と受け取っておこう」グイイッ

デブアライしゃん50「ぐぎ…ぃ…いだいのらぁ…だ…だじゅ…げ…」ブルブル

食通の友人「よーく見てろ、そのガキ共!次はてめーらの番だからなぁ!」

デブアライちゃん12「い、いや…なのら…あらいしゃんだけは…あらいしゃんだけは、たしゅけて…」ブルブル

食通の友人「さあ見ておけよ!母親共!てめーらのガキ共は、これからこうなるんだぜ!」

アライさん1550「やめるのだあああっ!さっきの約束は無し!無しなのだぁ!」ガシャガシャ

変な男2「やめろ!やめろおぉ!くそ!ブッ殺してやる貴様!これを外せえぇ!」ガシャガシャ

食通の友人「外したら殺されんのに、なんで外す必要があんだよ。頭アライさんかお前?」

アライさん1550「やめるのだあああぁぁっ!ちびを離すのだああああぁぁっ!やっと、やっと会えた可愛いチビを殺しちゃだめなのだあああっ!」

食通の友人「んー?やめて欲しいか?」

デブアライしゃん50「や…べ…で…」

変な男2「やめろぉぉおおぉっ!肝臓を元に戻して治せええぇ!」

食通の友人「今までさんざん人間を虐殺しておいて、いざ自分達が逆の立場になったら、許しを乞うんだな。…自分達は、人間達の命乞いなんて聞かなかったくせにな」

変な男2「そ、それは…」

アライさん1551「それは違うのだぁ!アライさん達は正義のためにやったのだ!でもお前は悪いことしてるだけなのだぁ!」

アライさん1552「そうなのだ!お前は悪いことしてるのだ!だから悪いことはやめるのだぁ!」

食通の友人「…」

アライさん1553「そうなのだ!だからアライさん達に謝って、アライさん達全員をこの椅子から外すのだぁ!」

アライさん1554「アライさんはなぁ、偉大なんだぞぉ!」

食通の友人「…そうすれば、俺のことは…許してくれるのか?」

アライさん1550「ゆっ…許すのだ。お前だけは見逃してやるのだ。だからアライさんの可愛いちびを…」

アライさん1555「お前は悪いやつなのだ、許すわけないのだぁ!懲らしめてやるのだぁ!」

アライさん1550「!?」

食通の友人「ほ~う、そうか…」





食通の友人「なら断るッ!」ブンッ

デブアライしゃん50「あぢゅいのりゃああああああああああああああああああああああああっ!!!!」ドボオォンッ ジュワアアアアアアアア

デブアライしゃん50は、無慈悲に煮えたぎるサラダ油の中へ叩き込まれた。

アライさん1550「ちびいいいぃぃぃぃいぃぃぃぃっっ!!!!!」ガシャガシャ

デブアライしゃん50「のぎゃあああああああああっ!ぎぴいいぃぃーーーーっ!あぢゅい!あぢゅいいいいぃ!だじゅげでぇぇ!おがーしゃあああんっ!おがーーーしゃーーーんっ!!」バシャバシャ

食通の友人「ヒャーハハハハ!肝臓をブン取られ、大量出血したとは思えない暴れっぷりだなぁ!傷口から腹ン中へ煮えた油が入って、内臓を焼かれる気分はどうだああぁ!?」ゲラゲラ

その通り。
アラジビフェスで初披露したときのアラフライは、結局焼かれるのは体表なのである。
だが、今回は腹を裂いているため、内臓まで焼かれてしまう。
その苦痛は旧アラフライの比ではない。

変な男2「これが人間のやることかよおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

悲鳴と怒声と高笑いが飛び交う中。
アライしゃん50の動きはなくなっていき、体は衣に包まれていった。

アライしゃん50「お…が…しゃ…」ジュワアアアアアアアア

アライしゃん50「なん…で…もっと…はや…ぐ…ぎで…ぐりぇ…ながっだ…のりゃ…」ジュワアアアアアアアア

アライしゃん50「なん…れ…」ジュワアアアアアアアア

アライしゃん50「」ジュワアアアアアアアア

アライさん1550「…!?ちび、ちび!何か言うのだ、何か応えるのだぁ!」ガシャガシャ

アライさん1550「ちびいいいぃぃぃぃいぃぃぃぃっ!!!こんなの嫌なのだああああああっ!!!」

食通の友人「ヒャアアアーーーハハハ!!!さっき食ったチビフライは美味かったろォ?もっと食いたかっただろォ?」

食通の友人「良かったなぁ!もうすぐ出来上がりだ!またカットして、さっきバットで殴られてくたばった奴以外の全員に食わせてやるよオォ!」

アライさん1541「うっ…うぷっ…」

アライさん1542「ま、また…」ジュルリ

アライさん1543「あ、あの脂っこくてじゅーしーなフライが…。い、嫌、なのだ…」ゴクリ

絶命してからも10分程揚げ続ける。
全身生焼けにならないように。

たとえ食わせる相手が害獣であろうとも、食通の友人は決して料理の手を抜かない。

調味料を、火加減を。
心をこめて調整する。

『できる限り、自分の仲間を美味しく感じてほしい』という、心をこめて。


食通の友人「さぁ~完成だァ!ビッグサイズ・チビフライ!」サッ

鍋から引き上げられたのは。

苦悶と絶望の表情のまま絶命し、全身がサクサクの衣でフライされた、デブアライしゃん50の死体であった。


アライさん1550「ちびいいいいぃぃいっ!!いやなのだああああああああああああっ!!!」


ショクエモンPの3年ぶりのライブキッチンは、
悲鳴と絶望と嗚咽に包まれて、終幕した。

食通の友人は、死体をざくざくと29ピースに切る。
その後、ウスターソースをかける。

食通の友人「ほ~ら、あ~んしな?食わせてやるぜ」

アライさん1542「た…食べないのだ!それは子供の肉なのだ!食べるわけないのだ!」プイ

アライさん達は、同族の共食いだけでなく、
人やフレンズを食べることにも嫌悪感を持つようだ。

襲撃された村でも、雄牛は食われそうになったが、ホルスタインのフレンズに対しては「食えるわけない」と言っていた。

食通の友人「いいのか~?コレ食わないと、明日の晩まで食い物ないぜ?」

アライさん1542「っ…で、でも、食べないのだぁ!」プイッ

食通の友人「思い出せよぉ、さっき食ったときの食感を。脂っこくてジューシーな食感。軟骨のプリっとした歯ごたえ。それに加え、サクサクとした衣。美味かっただろぉ?」

アライさん1542「やかましいのだ!食べないったら食べないのだぁ!」ジュルリ

食通の友人「美味いぜ、ほら。あーん、がぶっ。もぐもぐ…うむ、最高の出来だ」

アライさん1543「いいからさっさと消えるのだ!それかアライさんをこの椅子から外すのだ!」

食通の友人「あーそうかよ。その強情、いつまで続くもんかねぇ?…じゃ、次のやつ」スタスタ

変な男2「言っておくが、俺も食わないぞ!」

食通の友人「あーそうかよ。じゃ」スッ

食通の友人は、そこら辺のデブアライしゃんのゲロを掃除用スコップで掬った。

食通の友人「これでも食らってろ!」ビチャ

変な男2「うぎゃあ!」ベチャ

変な男2は、デブアライしゃんのゲロを顔面に浴びた。



結局、この晩は誰もアラフライを食べなかった。
食通の友人は残り物に睡眠薬を染み込ませ、再襲撃に備えた。

捕らわれたアライさん達は、翌朝、翌晩、どうなるのか…

それはひとえに、アライさんの総帥であるアライキング・ボスと、
人類(日本政府)の戦いの結果次第である。



~内閣府前~

日本の中枢、国会議事堂。
そこへ向かうアライさんの部隊があった。
軍勢の数、おおよそ400。

アライキング・ボス自らが率いるエリート軍団である。

アライキング・ボス「ふはははは!あの建物を乗っとれば、この国は終わるのだぁ!」ドドドドド

変な男3「ヘァッ、ハァッ、そうですゥ!やっちゃいましょう、ボスゥ!」ドドドドド

アライさん2500「のだのだー!」ドドドドド

アライさん2600「やっちまうのだー!」ドドドドド

警官隊員1「ここから先には行かせない!」ジャキ

警官隊員2「止めてやる!」ジャキ

議事堂前には警官隊がいた。
その多くは民間人の警護にあたっているとはいえ、さすがに議事堂は守っているようである。

アライキング・ボス「あれが最後の砦なのだ!みんな、あいつらに勝てば、アライさんの勝利なのだぁ!」ドドドドド

アライさん2700「行くのだー!」ドドドドド

アライさん2800「天下を取るのだー!」ドドドドド

警官隊員3「発砲します!」ジャキ

アライキング・ボス「おーっと待つのだ!撃ったらこいつの命はないのだ!」キラァン

アライキング・ボスは、変な男3の首へ爪を近付ける。

変な男3「わーたすけてくれーしにたくなーい(棒)」

警官隊員4「くっ…!民間人が捕まっている…!これでは発砲できん!」

アライキング・ボス「ふははははー!このまま蹴散らしてやるのだー!」ドドドドド

その時。

アライキング・ボスと変な男3の目の前に、何かがカランコロンと転がった。

どうやら、警官隊が投げたようだ。

アライキング・ボス「のだ?何のつもりなのだ?言っておくが、アライさんを攻撃したらこいつの命も…」

アライキング・ボスという、底知れない相手に対し、
警官隊が取った抵抗。



アライキング・ボスと変な男3は、

眩い閃光と、180dbの爆音に包まれた。



アライキング・ボス「のだあああぁ!?まぶしいのだああ!目が痛いのだあああ!耳も痛いのだあああ!」ゴロンゴロン

変な男3「うぎゃあああ!目が!目があああぁッ!」ゴロンゴロン

アライさん2500「眩しいのだあああぁ!」

アライさん2501「あだまがくらくらするのだぁ!」ヨロヨロ

アライさん達は、その眩しさと騒音によって、視覚と聴覚が一時的に麻痺している。

警官隊員1「今だ、人質を救出せよ!」ダッ

警官隊員が投げたのは、スタングレネード。
爆発による致死性はないが、失明しない程度の強い発光と、大きな爆音によって、敵の視覚と聴覚を封じる対テロ用鎮圧兵器だ。

アライさん2500「うわああああ!撃たれるのだぁ!目が開かないのだあぁ!」

アライさん2501「アライさんが可哀想なのだぁ!誰かなんとかするのだあぁ!」

警官隊員1「さあ、もう大丈夫です!こっちへ!」グイッ

警官隊員1は、変な男3の手を握って引っ張る。

変な男3「ぐああああ!離せ!離せえ
ぇ!」ジタバタ

警官隊員1「落ち着いてください!私は警官です!もう大丈夫ですよ!だから安心してついてきてください!」グイグイ

変な男3「警察ゥ!?俺を捕まえる気か!?逮捕する気か!行くもんかあああ!」ジタバタ

警官隊員1「な、なぜ抵抗するんだ!逮捕などしない!救出しに来たんだ!」グイグイ

アライキング・ボス「しゃらくせえのだ!」ブンッ

警官隊員1「がはっ!」グシャアァ

アライキング・ボスは、パニック状態と感覚麻痺から一足先に回復したようだ。

警官隊員1はバールを後頭部へ叩き込まれ、地に伏した。

警官隊員2「な、なんだ!?回復が早すぎる!」

アライキング・ボス「これが野生解放の力なのだ…!」シュウウゥ

アライキング・ボスの目に、野生解放の光が宿る。
サンドスターの光がアライキング・ボスを包む。

警官隊員2「本部から連絡!発砲許可が出た!人質に当たらないよう細心の注意を払えとのこと!」

警官隊員3「くっ…人質の人、すまない!発ぽ…」ジャキッ

アライキング・ボス「ここなのだ!」ヒュン

警官隊員3「…ぉ砲!」バァン

弾は地面に当たる。
なんとアライキング・ボスは、銃弾が発射される直前にステップ移動したのだ。

アライキング・ボス「遅いのだ!」ドガァ

警官隊員3「がはっ…!」ドサァ


十分な射撃と戦闘の訓練を積んだ優秀なベテラン警官隊員が、
また一人、アライキング・ボスのバールを食らって沈んだ。



所変わって、ここは避難所の学校前。

俺はエアライフルを使い、警官1と警官2と共に、避難所へやってくるアライさん達を拳銃で次々と倒していった。

校門の前には、アライさん共の死体が山積みになっている。

警官1「ハァ…ハァ…」ゼェハァ

警官2「一通り倒したようですね…」ゼェハァ

しかしこれだけの死体、片付けるのは大変そうだな。

警官1「全くですよ…」



その瞬間。
銃声が鳴った。




警官1「…ぐっ…」ドサァ

…何だ!?どこから撃たれた!

死骸隠れアライさん「ふはははー!やったのだぁ!」シュウウゥ

何ッ…!
アライさんの死体の山の中に、生きてる奴が一匹隠れていやがった!
しかも一発で当てやがった…!

死骸隠れアライさん「お前たちもやっつけるのだぁ!」バァンバァン

警官の拳銃はセミオート。
今どき撃鉄を手で起こすリボルバーなど使わない。
アライさんは拳銃を連射する。

警官2「ぐっ!この野郎!」バァンバァン

死骸隠れアライさん「ガードなのだ!」モゾッ

警官2「ハァ…ハァ…くそ…隠れやがった!」バァンバァン

アライさんの死骸の山「」グチャグチャ

『ふはははー!むだなのだー!』

死骸の山から、声が聞こえてくる。
どうやら拳銃では貫通できないらしい。

警官1「ぐ…はっ…」

警官2「おい!しっかりしろ!」ユサユサ

警官2は、警官1の傷を見ている。
おびただしい出血だ。

…あの位置は急所だ。きっと救助が来ても、助からない…。

その時、再び銃声が鳴った。

警官2のそばで、地面から跳弾の音がする。

警官2「ッ!てめえッ!」ジャキッバァンバァン

死骸隠れアライさん「無駄なのだー!」サッ

アライさんの死骸の山「」バチュバチュ

くそっ…あの害獣、無駄に隠れるのが早いな。
まるでゴキブリみたいだ。

『んー…それにしても、重いのだ…』

…ん?
重い、だと?

そうか、ならば。

俺はアライさんの死骸の山へ近付いた。

警官2「お、おい!?どうする気だ!」

こうするのさ。
俺はアライさんの死骸の山へ座る。

『むぎゅぅ!な、なんかまた重くなったのだぁ!』

死骸の山から、アライさんの声がする。

『のぁっ…顔を出せないのだ!上の奴、どくのだぁ!』

俺は警官2の方を…もとい、後ろで戦いを見守っている避難民に向かって叫ぶ。

勝手な事をしてすまない。
だが、この中に、警官に守られるだけでなく!
自らアライさんと戦う意志を持つ者がいたら!
どうか…力を貸してほしい!

力というよりも…
体重を、貸してほしい!

警官2「あ、あんた、まさか…」

そのまさかさ。
バリケードに潜ってて手が出せないなら、バリケードごと押し潰せばいいのさ!

しばらくすると、避難所から数名の人がやってきた。
来た人は皆、不摂生そう…
…オホン、失礼。
…殺傷力が高そうなボディをしている。

デブ男「ワ、ワイも戦うで!」ズシィ

体重90kgはありそうな巨漢が、俺の隣へ…
アライさんの死骸の山へ腰掛けた。

『のぎゃあああああああああっ!お、重いのだあああ!』

超デブ女「フスーッ、フスーッ!」ドスンドスン

なんと。
今度は体重100kgを超えそうなマシュマロ女子が、加勢しに来てくれた。

超デブ女「ヌフスーッ!ブラウンPたま、あだすに力を貸すて!」ズシイィ

『ぐぶぎゃああああああああ!ぎひいいぃいぃっっ!つ、つぶれぢゃうのだああああっ!おごええぇっ!』

効いているぞ…!

力士「…」ズシィン ズシィン

うおぉ…あんたは。
テレビでたまに出る力士だ。

身長185cm、体重200kgの大型力士。
最近戦績が芳しくないようだが…
ここに避難していたのか。

力士は、俺達のいるところから少し離れた場所で立ち止まる。

力士「…離れていてくれ」

お、おぉ…
俺たち3人は、死骸の山から離れる。

『ぜはーぜはー、軽くなったのだぁ、死ぬかと思ったのだぁ!』

『…きっとあいつらは諦めたのだ!こんな戦術を思い付くなんて、アライさんはボスより賢いのだぁ!』

『よーし、ヒトから奪った弾を拳銃にリロードしたのだ!また顔を出して、撃ってやるのだ!』

こいつ、一人言か…?
俺らが遠くに離れたと思って、油断しているな。

力士「…フウウゥゥウウンッ!」ズドドドドドド

力士が走ってくる!
速い!
あの体格だというのに…!さすが力士は、足腰の鍛え方が違う。

力士「ドスコォイ!」バッ

力士は、その強靭な足腰で高くジャンプし、
死骸の山へボディプレスを叩きつけた。

『ごぶええぇえぇっ!!』

まるでカエルが車に轢かれたかのような声が聞こえた。

力士「フンッ!」バッ ズシイイィン

力士は死骸の山の上で高くジャンプすると、
再びボディプレスを打ち込んだ。

アライさんの声は、聞こえなかった。

力士「フンッ!フンッ!フンッ!フンッ!フンッ!フンッ!」ビョーンッズシィンビョーンッズシィンビョーンッズシィン

力士は何度もジャンプとボディプレスを繰り返す。

力士「フゥーッ、フゥーッ…」ポイッ ポイッ

力士が、アライさんの死骸の山をどけていく。

死骸の山の、一番下には。

死骸隠れアライさん「…ご…ぼふ…」ドクドク

…口と肛門から大量出血しているアライさんの姿があった。
この出血量。
身体中の骨がメチャクチャにへし折れ、筋肉が潰れ、内臓が破裂しているに違いない。

力士「ドスコォイ!」バッ

力士は、再び高くジャンプすると…

力士「フウゥンッ!」ドグシャア

…アライさんの首を、体重を乗せた踵で踏みつけた。

死骸隠れアライさん「」メギャゴキィ

アライさんは、血泡を吹くことすら止まった。

アライさん討伐に加わってくれた3人の勇者達は、避難所へズシンズシンと戻っていった。

いや、誇張表現とかバカにしてるんじゃなくて。
事実として、靴の音がでかいのであった。

そして俺達は、警官1のもとへ駆け寄った。

警官2「くっ…!き、傷を布で覆って、塞いだ…ぞ!」

警官1「…」ドクドク

…すまない。
俺はあんたを助けられない。

警官1「…警官2、もう、俺以外、誰も人死にを出すんじゃない…ぞ」ドクドク

警官2「…ああ、わかった…よッ…!くそぉっ…!」ブルブル

警官1「…そこの、あんた…き、てくれ」

俺か?

警官1「これ…を…きみに…やる」スッ

何か麻酔銃のような物を渡された。
これは何だ?

警官2「警官1、それは…まさかASLか?…いいのか?彼に渡しても。彼は民間人だぞ」

警官1「…俺は、それを、敵を倒す…ためじゃ、なく、人を…守る、ために…使えと、いわれた」ブルブル

警官1「でも、だめだ、それじゃ…た、たの、む…あんた、猟師…なん、だろ…」スッ

警官1が、俺の手を握る。

警官1「た…の、む…やつ…ら、を…根絶やし…にっ…して、ぐれっ…!」ブルブル

手は震えており、冷たくなってきている。
血を大量に失っており、まるで幽霊のように白い手だ。

警官1「いっぴき、も…のこ…さ…」

警官1「」

…警官1は、それ以降一言も言葉を発さなかった。
警官2は、本部へ通話し、警官1の死を報告した。

警官2。さっきASLと言ったな。
これは何だ?俺が持ってていいものなのか?

警官2「…そいつはアンチ・サンドスター・リキッド。サンドスター科学研究所と三菱重工が共同開発した兵器だ。サンプル品で、まだ世界に一つしかない」

どういう兵器なんだ?

警官2「…その中の液体は、サンドスターを不活性化させる。そいつをフレンズに撃ち込めば、強制的にレベルを1にできる。身体能力をがた落ちさせられるんだ」

警官2「毒の効かないフレンズもいるだろう。銃弾や注射針を通さない硬さのフレンズもいるだろう。だが、ASLを撃ち込めば、免疫だろうと鋼鉄の皮膚だろうと無力化できる」

そんな貴重なものを、俺が?
あんたが持つべきでは?

警官2「…仕事に私情を挟むべきではないのだろうが…、あいつはお前にその最終兵器を託した。『警察』より、『猟師』が持つべきと判断したんだ」

警官2「…あいつには先見の明があった。きっと、一番有効に使えるのはあんただと、見込んだんだろう」

……分かった。受け取ろう。

警官2「それで、あんたはどうするんだ?」

どうする、とは?

警官2「…ここを出て、そいつで敵を倒しにいくのか?もしお前がそうする気なら、俺は止めないぞ」


…そういう話か。
答えは決まっている。





行かない。
俺は、この避難所を守る。




警官2「…いいのか?」

ああ。
俺は映画の主人公じゃない、単なる民間人だ。
俺なんぞが避難所から出て暴れても、自衛隊の軍事作戦の妨げにしかならん。
俺が邪魔で軍がドンパチやれなかったら、それだけ人が負傷するだろう。

それに、単独行動した俺が奴らに追い詰められ、こいつを『自分の身を守るため』に使う可能性だってある。
それは最悪の使い方だと思わないか?

警官2「…そうかもな」

それに、彼は言っていたぞ。
『これから一人も人死にを出すな』と。

さっき警官1も言っていただろう。
この兵器は、敵を倒すためじゃなく、人を守るために使えと言われた、と。

少なくとも、今この場では、
アライさんを1匹狩るより、人を1人助ける方がはるかに重要だ。
…そうだろう?

警官2「…ああ」

もしもだ。

もしもここに、異常にレベルの高いアライさんが攻めてきたら。
その時こそ、こいつを使わせてもらう。

警官2「…頼んだぞ」

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~メモ~

実験9は成功。
フレンズはフレンズを補食することで、
サンドスターを吸収し、自分の物にできる。

敵を倒して経験値を得るより、
はるかにレベルアップの効率は良いだろう。

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つづく

作者としては、感想や議論はウェルカムなんですけどね
事実、そこからインスピレーションを得てネタ考えたりもしてます



~国会議事堂前~

警官隊員7「う…うぅ…」ピクピク

警官隊員8「本部より撤退命令!隊員は、至急撤退せよ!」

国会議事堂前でアライキング・ボスと交戦していた警官隊は撤退していった。

数では圧倒的にアライさんに劣る警官隊だが、
個人個人の戦闘力では、何の訓練も積んでいない少女同然の野良アライさんの群れなど屁でもない。

しかし、変な男3という人質兼盾がいるため、警官隊はうかつに射撃できない。
さらに戦闘力の高いアライキング・ボスとその直属のエリート達の攻撃により、
多くが負傷し、うち数名は殉職した。

アライキング・ボス「ふははははー!逃げていくのだ!ついに最大の障害を退けたのだ!」

アライキング・ボスは、腕や脚、脇腹などを銃弾に貫かれ、血を流している。
それでもなお、野生解放の光を目に宿し、勝利の高笑いをする。

アライキング・ボス…
まさに底知れない敵の進軍により、国会議事堂はその目前まで迫られていた。

アライキング・ボス「それにしても、最初の光と音は何だったのだ…」ズキズキ

アライさん2500「ぼ、ボス!血がいっぱい出てるのだ!」

アライさん2501「大変なのだ!」

アライキング・ボスの銃創は、動脈などの致命的な部位は傷付けていないものの、
さすがに体に穴を空けられたとあっては出血は多い。

アライキング・ボス「大丈夫なのだ!たあ~!」コスリコスリ

アライキング・ボスは、患部を手でこする。
すると、銃創はかさぶたで塞がれ、血が止まった。

アライさん2502「おおー!凄いのだぁ!」

アライキング・ボス「ふははははー!これがマジカルウォーターハンドなのだぁ!どんな傷でも治るのだぁ!」

マジカルウォーターハンド。
アライグマのフレンズの単体回復スキルの正式名称である。

元々高い回復能力を持っているが、
野生解放を行うことで、その力はさらに増す。
そして患部を洗うように手でこすることで、患部の回復力を急激にブーストできるのである。
スタングレネードの閃光や轟音のダメージからいち早く回復したのも、このスキルによるものである。

ただし、どんな傷も治るわけではない。
できることは、細胞や骨同士を繋ぎ合わせることと、失った血液を骨髄から生成すること。

例えば指が切断された場合、それらの切断面をくっつけることで回復は可能だ。
しかし斬れた指が失われた場合、生やすことはできない。

アライキング・ボス…
見た目は普通のアライさんが赤いマフラーを巻いた程度であり、何ら違いはない。
しかし、その強さや知識は並のアライさんとは段違いである。

…何もかもが、底知れない。


変な男3「流石です、ボス!今のうちに行きましょう!」

アライキング・ボス「さあ行くのだ同胞たち!今のやつらが最後の敵なのだ!あの建物を攻め落とすのだ!」

アライさん達の部隊は、警官隊との交戦によって多くが負傷や死亡したが、相変わらず200程が無傷である。

アライさん達は、再び進軍する。

アライさん2500「今のやつらが一番強いのか?」ザッザッ

アライキング・ボス「そうなのだ!日本では警察が一番強いのだ!」

変な男3「えっ」

アライキング・ボス「それをやっつけた今、アライさん達はほぼ天下を取ったのだ!あの建物を制圧すれば勝利なのだぁ!」

変な男3「えっ」

アライキング・ボス「どうしたのだ、家来?」

変な男3「えっと…日本で最強なのは、警官隊じゃなく…」

変な男3「…自衛隊、なんですけど」


??「」バタバタバタ…

アライキング・ボス「?何の音なのだ?」

その音は、戦闘ヘリのプロペラのローター音。

警官隊が撤退したのは、アライキング・ボス部隊の強さに恐れをなし、国会議事堂の防衛を諦めたからではない。

ただ単純に。
もっと強い戦力と、交代したからである。


戦闘ヘリ1「あれが親玉か!」バタバタバタ

戦闘ヘリ2「待て、人間がいる!人間が捕まっているぞ!」バタバタバタ

戦闘ヘリ3「どうやって救出する!?」バタバタバタ

戦闘ヘリ1「警官隊の報告によると、人質は保護を拒否し、抵抗したそうだ」バタバタバタ

戦闘ヘリ2「恐らくパニックになっているんだろう。可哀想に。まっとうな手段では救出できまい」バタバタバタ

戦闘ヘリ3「…本部から、救出手段について命令が出た。実行するぞ」バタバタバタ



変な男3「う、うわ!アパ、アパッチ!あんなのまで出てくるのか!」

アライキング・ボス「何が来ようと無駄なのだ!アライさん達の進軍は止められないのだ!」ドドドドド

アライさん2500「なのだー!」ドドドドド

アライさん2600「勝利はアライさん達にあるのだ!構わず建物に突撃なのだー!」ドドドドド

その時、戦闘ヘリから何かが大量に落とされた。

落とされた15個の物体は、勢いよくなにかを噴出しており、コロンコロンと地面を跳ね転がる。

アライキング・ボス「のあああああああああ!涙が止まらないのだあ!?」グスングスン

アライさん2500「目が痛いのだあああああ!」グスングスン

アライさん2501「鼻も痛いのだあああああ!」グスングスン

変な男3「うぎゃあああああ!こりゃ…催涙ガスだあぁ!」グスングスン

隊員1「効いたぞ!今だ、人質を救助する!」スルスル

戦闘ヘリから縄梯子が降りてきて、ガスマスクを装着した隊員が降りてくる。

隊員1「救助しに来た!もう大丈夫だ!」ガシッ

変な男3「うああああ!殺される!来るなあああ!」ジタバタ

隊員1「くっ…すまない!」スッ

隊員1は、スタンガンを出し、変な男3へ当てた。

変な男3「ぎゃあああああああああ!?」バチバチ ガクッ

隊員1「手荒ですまない。目標を確保!引き上げてくれ!」

縄梯子はスルスルと巻き取られていき、変な男3は救助…された。
彼もまた、このまま大人しくしていれば、捕獲されて無理矢理従わされていた被害者として扱われるであろう。

彼がアライキング・ボスへ自ら進んで協力・助言し、多くの民間人や警官の殺傷を促した罪は、問われることはないだろう。

アライさん2500「のああああ!ボス!目が開けられないのだあ!」ゴロンゴロン

アライキング・ボス「くっ…何なのだ、これは…!」コスリコスリ

アライキング・ボスは、いち早く目の痛みから回復していた。
既に催涙ガスは出尽くしており、ヘリの風のせいもあってガスは拡散していった。
これ以上の催涙効果は期待できないだろう。

戦闘ヘリ1「本機にて、人質を救助完了!ヘルファイアミサイル、発射準備!」バタバタバタ

変な男3「ヘルファイア、だって…!?」

催涙効果が切れた変な男3は、戦闘ヘリ1の中で次の攻撃手段を耳にする。

戦闘ヘリ2「よし、ヘルファイアミサイル、発射準備完了!」ジャキィ

戦闘ヘリ3「いつでも撃てます!」ジャキィ

変な男3「ヘルファイア!?そんな事させるか…!」ガシッ

変な男3は、そばにあった手榴弾を握り、ピンを外す。

変な男3「させるかあああああっ!」ポーイ

戦闘ヘリ1のパイロット「!?な、何を…」

スタングレネードではない。殺傷力に一切のセーブがない手榴弾だ。

戦闘ヘリ1の中で、眩い閃光と爆音が鳴り響いた。
その爆音は、戦闘ヘリ2と3のパイロットにも無線を通じて伝わった。

戦闘ヘリ1は墜落していく。
ヘリコプターはエンジンが停止しても、パイロットがうまく操作すれば、
プロペラをグライダーのようにしてゆるやかに着地できる。

しかし、パイロットどころか操縦桿まで吹き飛んだのだ。
ヘリは、目をこすっているアライさん達の中へ落ちていく。

プロペラがまだ回っているため、真っ逆さまに落下というわけではないが、
このまま墜落すれば即死は免れないだろう。

隊員1「てめえっ!何てことしやがるッ!まさかお前、自分から奴らに荷担してたのか!?クソ野郎!」

変な男3の凶行を止められなかった隊員1は、目を放してしまったことの自責の念からか、
変な男3へ罵声を浴びせる。

変な男3「ぎゃあああーー!落ちる落ちる落ちる!助けてええ!」ヒュー

隊員1「…クソが。俺の友を殺しやがって。地獄には一人で落ちやがれ」バッ

隊員1は、まだ機体の落下スピードがゆるやかなうちに、パラシュートを装着する。

変な男3「ぱっ…パラシュートか!?俺も助けてくれえぇ!」

隊員1「…」

隊員1「…こちら隊員1。救助者は手榴弾を使って、パイロットと共に自爆した。生存者は俺一人。パラシュートにて降下する」

隊員1は、虚偽の報告をした。

変な男3「!?い、いや、俺も生きて…」

隊員1「…さっきは催涙ガスじゃなく、お前ごとヘルファイアミサイルで撃っておけばよかった」

変な男3「ま、待って!わざとじゃないんです!わざとじゃ…」ガシッ

隊員1「この汚いアラ信が」バチッ

なんと隊員1は、変な男3へスタンガンを浴びせた。

変な男3「ぎゃっ!」

隊員1「てめーにはこの鉄の棺桶がお似合いだ。地獄の業火に焼かれてもらうぜ」バッ

隊員1は、パラシュートを広げてアライさんの群れの上へ降下する。

変な男3「た、助けてええ!」

ヘリのプロペラが止まり、真っ逆さにアライさんの群れへ落下した。

通常、催涙ガスの効果が切れるまでは10分程を要する。

変な男3は、隊員1から手当てを受けたためにすぐに回復できたにすぎない。

もっとも、手当てした後に目を放したことが、この爆破事件を引き起こしたのだが…。

隊員1「くそっ…」

隊員1はゆるやかに降下しながら、下へ落ちていく墜落する戦闘ヘリを眺めていた。

アライキング・ボス「ひ、飛行機が落ちてくるのだ!みんな逃げるのだぁ!」ダッ

アライさん2500「のだああああ!」コスリコスリコスリコスリ

アライさん達は必死で目をこする。
回復力は多少上がるだろうが、催涙ガスの効果はまだ続く。

隊員1「くたばりやがれ!」

「たすけてー!」
ヘリコプターから声が聞こえてくる。

直後、ヘリコプターは、アライさんの群れの上へ墜落。エンジンが爆破し、大破炎上した。

アライさん2601「のぎゃあああああ!」グチャ

アライさん2602「」ベチャ

10匹程のアライさんが、ヘリの下敷きになった。

隊員1「くっ…」ファサァ

隊員1は、燃え盛るヘリコプターの上へパラシュートで降下した。

アライキング・ボス「よくも!」バッ

隊員1「っ…クソが…!くらえ!」ジャキィ

隊員1は、拳銃を構えるが…

アライキング・ボス「遅いのだ!」ドカッ

隊員1「ぐはっ!」ドサッ

隊員1は、バールで殴られ、昏倒する。

アライキング・ボス「今度はお前が人質なのだ!あと、銃はもらうのだ!」

拳銃はアライキング・ボスに持ち去られてしまった。

隊員1「がはっ…はぁはぁっ…!ちくしょう、撃て!俺ごとヘルファイアでこいつらを焼き尽くせ!」ゼェハァ

戦闘ヘリ2「くっ…!隊員1がやられた!まだ生きている!ヘルファイアは使えない!」

戦闘ヘリ3「なら…機銃掃射だ!隊員1には当てるなよ!」ジャキィ

戦闘ヘリ2「機銃発射!」ズダダダダダ

戦闘ヘリ3「機銃発射!」ズダダダダダ

アライさん2604「のぎゃっ!」ズガブシュウゥ

アライさん2605「ぐぎゃ!」ブシャアア

戦闘ヘリは、ヘルファイアミサイルなぞ無くとも、チェーンガンさえあれば十分に強い。
たちまちアライさん達は血煙となって散らばっていく。

アライキング・ボス「な…!」

アライさん2501「ぼ、ボス!なんなのだあれは!めちゃくちゃ強いのだぁ!警官より100倍強いのだ!」

アライさん2502「ボスは警官が1番強いって言ってたのだ!どうすればいいのだ!?」

アライキング・ボス「っ…」

戦闘ヘリによる機銃掃射は、次々とアライさん達を蹴散らしていく。
自衛隊の本気に対し、底知れぬ実力をもった敵…
アライキング・ボスは、どう立ち向かうのか。




アライキング・ボス「し…知らないのだ!何なのだあの飛行機は!警官隊より強い奴らがいたなんて知らないのだ!」

アライさん2501「!?」

アライさん2502「ボスうぅ!?」

…アライキング・ボスの、実力の底が知れた。


アライキング・ボス「と、とにかく!建物へ逃げ込むのだああぁ!」ダッ

アライキング・ボス達は、なお国会議事堂へ進軍した。

アライキング・ボスは、隊員1を脇に抱えて、国会議事堂へ走り出す。
アライさんたちも後へ続く。

戦闘ヘリ2「させるかああああ!!」ズダダダダダ

アライさん2505「ぶぐ!」ブシャアア ドサッ

アライさん2506「のだっ!」ズドンッ ドサッ

アライさん2505「」ビグビグビクビクッバタッバタバタッジタバタ

アライさん2506「」バタバタビグビグビクビクッジタバタビグビグビクビクッ

国会議事堂へ向かうアライさん達は、次々と射殺されていく。

アライキング・ボス「な…!だ、だが、こっちには人質がいるのだ!アライさんは撃てないのだ!」ダダッ

隊員1「…」グッタリ

戦闘ヘリ3「隊員1!く、くそ、どうする!また催涙ガスかスタングレネードを使って救出するか!?」ズダダダダダ

戦闘ヘリ2「いや、あのアライさん、走るスピードが速すぎる!それじゃ間に合わない!」

アライキング・ボス「ふははははー!」ダダッ

隊員1「…」シャキン

隊員1は、アーミーナイフを出す。

アライキング・ボス「それでアライさんを刺すのか?やってみるのだ、その前に腕をへし折ってやるのだ」ドタドタ

隊員1「…へっ、クズ野郎が…」スッ



隊員1「地獄で待ってるぜ…ぐふっ!」ドズゥッ

アライキング・ボス「!?」

なんと、隊員1は。
戦闘ヘリ2&3にはっきり分かるように、自らの頸動脈を切り裂いた。

戦闘ヘリ2「た、隊員1ぃぃいい!」バタバタ

戦闘ヘリ3「な、何を…うああぁ、あの出血は、もう助からない…!」

アライキング・ボス「な、何してるのだ、お前!」

隊員1「ざまぁ…てめぇも…道連れだ」ブシャアアドバドバ

隊員1「パイロット…下手こいて、悪かった…な…向こうで一服やろうぜ…」スッ

隊員1は、親指を立てて、戦闘ヘリへ向けた。

隊員1「…」スッ

そしてその親指で、首をかっきるジェスチャーをした。

隊員1「」ダラン

隊員1の腕は、力なく垂れ下がった。

アライキング・ボス「な、何てことするのだ!それじゃアライさんを守る盾がないのだぁ!」

アライキング・ボスは、足を止める。

戦闘ヘリ2「…隊員1…」

一分一秒を争う戦いの真っ最中。
仲間の死を悼むのは、今ではない。
その意思への弔いをしたいのであれば、戦いを終わらせるしかない。

戦闘ヘリ3「…人質はいなくなった。奴を撃つ!くたばれ、特定有害駆除対象フレンズ!」ジャキッ

アライキング・ボス「待つのだ!これを見るのだ!」サッ

アライキング・ボスは、腕の袖を捲る。
そこには、『の』の字を象ったバッジのついた腕輪があった。

戦闘ヘリ3「遺品の自慢か!?そんなもんブチ抜いてやる!」ジャキッ

戦闘ヘリ2「…待て!撃つな!?」

戦闘ヘリ3「!?」

戦闘ヘリ2のパイロットは、無線で戦闘ヘリ3のパイロットへ射撃中止を要請する。

戦闘ヘリ3「何言ってるんだ!隊員1の死を無駄にする気か!?」

戦闘ヘリ2「気持ちは分かる…が、見てしまった以上、どうしようもない。…俺達が、射殺許可を出されているものが何か、覚えているか?」

戦闘ヘリ3「アライさんだろ!今更何を!」

戦闘ヘリ2「違う。『特定有害駆除対象フレンズ』だ」

戦闘ヘリ3「同じことだろ!」

戦闘ヘリ2「違う。『特定有害フレンズの駆除促進のための法律第一条』では、特定有害駆除対象フレンズをこう規定している…」

戦闘ヘリ2「『戸籍を持たないアライグマのフレンズ』と。戸籍を持つ者は、他のフレンズ同様、人と同じ扱いをされる」

戦闘ヘリ3「…まさか」

戦闘ヘリ2「…あの腕輪は、アライさんの戸籍証明をするための目印なんだ」

戦闘ヘリ3「…ってことは」



戦闘ヘリ2「奴は…戸籍持ちだ。射殺許可はされていない」

戦闘ヘリ3「くそっ…!本部へ要請!奴は戸籍持ちだが…テロリストだ!射殺許可を!」

アライキング・ボス「今のうちに逃げるのだぁ!」シュタタタタタタタッ

アライキング・ボスは、ビル街の中へ逃げていった。
もはや勝利はないと悟ったのだろう。

戦闘ヘリ2「くっ…!逃げられた!仕方ない…アライさん共を倒すぞ!」ジャキッ

ドカカカッカカッ



こうして、アライキング・ボスには逃げられるが、
国会議事堂の防衛には成功。
他の要所を攻撃するアライさん部隊も制圧した。

司令塔を失ったアライさん達は混乱しているようだ。

続きはあとで

正直、「よく見えませんでした」でヘルファイア打てばよかったような…

>>683
万が一バレたら(人間に対する)フレンズの不安の種が育っちまう
この世界の優先順位はフレンズ>人間だと思うからフレンズを敵に回すのはマズイ

>>684
いや、少なくともアライさんの全国襲撃、
かつ首謀者であるアライキング・ボスが戸籍持ちだろうと
テロリストとして殺しておくべきだった
特定有害フレンズなら尚のこと、戸籍持ちであっても害であることが証明されたんだし

>>686
「戸籍があっても害であるから」で殺したとなると尚のことフレンズは不安になる
逆に人間視点で考えると「アライさんはフレンズだ。だから他のフレンズも何かするかもしれない」という感じに不安は伝染して行く

なので人間・フレンズ双方が納得、安心するようにキングゴミアライは裁判にかけてライブキッチンを行うのが妥当だろう



アライキング・ボス「はぁ…はぁ…」タタタタタ

アライキング・ボスは、街中を逃走する。

何故だ。いつもいつも自分の邪魔をしてきた警察さえ倒せる力を身につければ、
この国は制圧できる…そう思っていたのに、
まさかそれ以上の戦力がいたなんて。

アライキング・ボスは、自分の腕輪を見ながら、過去を思い出す。



アライキング・ボスは、小さな家屋の中で産まれた。

彼女の母は、野生のアライグマだ。
産まれたときは、フレンズでは無かった。

彼女は、自分たちがいた家を、自分の縄張りだと信じて疑わなかった。

自分達のものであると。

…しかし。
突如、人間達が一家を襲った。

母親が捕まり、兄弟も捕まった。
しかし、彼女は森へ逃げ切った。

幼い彼女はただ一人、森をさまよう。

食べ物を求め、人の畑から何度も野菜を収穫した。

その度に、人に追いかけられた。
仲間は何匹か捕まり、戻ってくることは無かった。

なぜ、自分達は、ヒトという存在に、こうも虐げられるのであろうか。

ヒトは、なぜこんなにも攻撃的なのであろうか。

ある日。
火山が噴火した。

そして、キラキラと光る、綺麗なものが降ってきた。

獣に、物体を綺麗だと感じる感性はあるのだろうか。

無いかもしれない。
だが、この一匹のアライグマには、
この物体がとても輝いて、綺麗に見えた。

器用な前足でそれを掴み、
夜はそれを抱いて眠った。



翌朝。
彼女は、自らの体を見て驚いた。

ヒトの姿を得ていたのである。

体が重く、木に上るのは大変だったが…
それ以上に、高い知能と器用な手、
そして高い身体能力を得られた。

そして…
前の体以上に、腹が減る。


深夜、いつものように、畑に行った。
夜目がきくのは獣のころから変わらない。

ここには何故か、森には実らないような美味しい野菜がたくさん生える。
空腹を満たすには、ここに行くのが一番だろう。

畑に降りたとき。
ヒトの声が聞こえた。

農家のおじさん「お嬢さん、ここはヒトの畑じゃよ。何しとるんだ?」

…驚いた。
今までは、わけのわからない声で唸っていただけの人間が、
自分に理解できる言葉でコミュニケーションを取ろうとしてくるのだ。

アライグマ「アライさんは、お腹が減ったのだ。ここの野菜は美味しいのだ。だから食べるのだ」

農家「でも、お金を払わずに野菜を盗むのは泥棒、犯罪だよ。親は何しとるんか」

アライグマ「…お前たち人間に捕まったのだ。もう会えないのだ」

農家「…!もしかして、フレンズか?君は」

フレンズ?
聞いたことのない単語であった。

アライグマ「知らないのだ。アライさんはアライさんなのだ」

農家「そうか、こないだの噴火でサンドスターが噴出したって言ってたか…。うちの牛もフレンズになったんじゃよ」

アライグマ「何言ってるか分からないのだ。とにかく、野菜は貰うのだ」

農家「やめなさいって!」ガシッ

アライグマ「離すのだ!ご飯食べなきゃ死んじゃうのだ!」ジタバタ

農家「…ご飯が欲しいのか?」

アライグマ「ほしくないわけないのだ」

農家「…それじゃ、こっち来なさい」グイグイ

アライグマ「何するのだ!離すのだ!アライさんを捕まえる気なのか!?」ジタバタ

農家「身寄りがなくて大変じゃろ。こっち来なさい、簡単な食事を作ってやるからの」

アライグマ「…本当なのか?」

農家「ああ、こっち来なさい」

農家のおじさんは、鮭とキャベツのスープをアライさんに出した。

アライグマ「美味しいのだ!すごく美味しいのだ!」モグモグ

農家「野菜を丸かじりするのとどっちが美味しいかの?」

アライグマ「こっちなのだ!」

農家「そうじゃろ。お前も、お金を稼いでちゃんと野菜を買えば、こんなご飯が食べられるんじゃぞ」

アライグマ「どうすればいいのだ?」

農家「うちの牛もフレンズになった後、しばらくは畑作業してたんじゃが…、都会で暮らしてみたいって言っとってな。行かせてやった」

農家「お前も、都会に行ってみたらどうじゃろうか。よかったら、車出してやるよ」

アライグマ「行くのだ!お宝がありそうなのだ!」

市役所職員「これからアライグマさんには、社会生活に馴染むために、ジャパリ学校に通ってもらいます」

アライグマ「何なのだそれ?」

市役所職員「アライグマさんが、これからヒトの社会で生きていけるように、知恵と知識、道徳を学ぶ場所です」

アライグマ「そこに行けばゴハンが食べられるのか?」

市役所職員「…ええ、まあ。労働に必要な知識は得られるでしょう。きちんと働いてお金を稼げば、美味しいゴハンが食べられますよ」

市役所職員「一応、ジャパリ寮でも奨学金を借りれば、ゴハンは食べられます」

アライグマ「じゃあそうするのだ!」

そしてアライグマは、ジャパリ寮へ向かった。

先生「初めまして、アライグマさん!わーもふもふの可愛い尻尾!」モフモフ

先生は、アライグマの尻尾を触る。

アライグマ「わあぁ!なんなのだお前!?」

先生「はっ…ごめんなさい。これから指導をつとめる先生です。お勉強以外のことも何でも聞いてね。お外をガイドすることもできますよ」

アライグマ「ゴハンはまだなのか?」

先生「えーっと、説明会でこれからのこと説明したんだけど…ちゃんと説明聞いてたかな?」

アライグマ「何かいっぱい喋ってたけどわからなかったのだ!それでゴハンはまだなのか?」

先生「^^;」

それから、アライグマは多くの問題行動を起こした。

先生の帽子を勝手に盗み、自分のものだと言い張る。

他のフレンズにはできる『心のコミュニケーション』が、
アライグマにはできなかった。

できないことに、何ひとつ負い目を感じることもなかった。

「まわりがわけの分からないことを自分に強いてくる。嫌だから従わない」。
そう思い、何の改善もしなかった。


ジャパリ学校は、彼女へ『チューター』をつける事にした。
過去の実績から、アライグマのフレンズへ基本的な道徳を指導できる人物をを探し、協力を求めた。

その人物…フレンズは、快く引き受けた。



先生「今日から、お友達と一緒に過ごして貰うことになります。先輩だから、いろいろ教えて貰ってくださいね」

アライグマ「お友達?どんなやつなのだ?」

先生「そのお友達は、前にも他のアライグマのフレンズさんと一緒に過ごしたことがあってね。アライグマさんの助けになってくれるはずですよ」

アライグマ「楽しみなのだ。意地悪したり、怒ったり、アライさんに逆らわない奴がいいのだ!」

先生「…」

アライグマは、自分の部屋に入った。

大きな耳のフレンズ「やあ、初めましてアライさーん」

そこには既に、チューターが到着していた。

アライグマ「はじめましてなのだ、アライさんはアライさんなのだ!お前は誰なのだ?」

大きな耳のフレンズ「私はフェネック。フェネックギツネのフレンズだよ。よろしくね、アライさーん」

アライグマ「よろしくなのだ!」

つづく

大きな耳のフレンズ…フェネックは、ジャパリスタジオという芸能事務所に所属し、漫才師をやっているらしい。

相方との絶妙な掛け合いは、お茶の間でも大人気だ。

そんな彼女が、アライグマのチューターとしてやってきてから数日後。

大きな耳のフレンズ「アライさん、今日は一緒にお出かけしない?」

アライグマ「行くのだ!フェネックといると、どこでも楽しいのだ!どこ行くのだ?」

大きな耳のフレンズ「…人間達がジャパリパークと呼ぶ場所だよ」

2人は外出する。

外を歩く二人。

アライグマ「フェネックー、これは何なのだ?」テクテク

アライグマはマンホールを指差す。

フェネック「それはマンホール。下水道を塞いでいるんだ」テクテク

アライグマ「下水道って何なのだ?」テクテク

フェネック「蛇口をひねると飲み水が出てくるよね。それを流すのが下水道だよ」テクテク

アライグマ(なるほど、この下に飲み水があるのか)テクテク



やがて二人は地下鉄へたどり着く。

アライグマ「暗いのだ!ここは何なのだ?」

フェネック「地下鉄だよ。線路を地地上にひくのには限界があるから、地下に通したんだ」

アライグマ(地上は狭いから、ヒトは地下を歩くのか…)

アライグマ「じゃあ、あれは何なのだ?」

アライグマは、通気口を指差す。

大きな耳のフレンズ「それは通気口。外と繋がっているよ」

アライグマ(つまり、緊急時の避難経路なのか)

地下鉄に、列車がやってくる。

アライグマ「うわ、大きいのがきたのだ?あのけものは何なのだ?蛇みたいなのだ!」

大きな耳のフレンズ「けもの…?ふふっ、アライさんは面白いなー。あれは電車。人を乗せて運ぶんだよ」

アライグマ(人のペットなのか)

二人は電車に乗り込む。



二人は、目的地までの道のりを楽しんでいる。

アライグマ「ジャパリパークって何なのだ?」テクテク

大きな耳のフレンズ「…昔は、島ひとつ使って、フレンズが自由に暮らせる楽園があったんだ」テクテク

大きな耳のフレンズ「ルールは一つだけ。自分の力で生きること」テクテク

アライグマ「森と変わらないのだ。アライさんも自分の力で、畑のまんまるやお野菜、鶏を捕まえたのだ!」テクテク

大きな耳のフレンズ「…」ピタッ

アライグマ「どうしたのだ?」

大きな耳のフレンズ「戸籍を取った以上、盗むのは犯罪だよ~アライさん。これからは働いたお金で、もっと美味しいものを買うんだよ」テクテク

アライグマ「わかったのだ」テクテク

思わぬ犯罪自慢に話の腰を折られかけたが、話を再開する。

大きな耳のフレンズ「…その土地では、セルリアンっていう怪物との戦いがあって…。奴らは、全ての植物をセルリアンに変えちゃったんだ」テクテク

アライグマ「それじゃ畑のまんまるやお野菜も食べられないのだ!」テクテク

大きな耳のフレンズ「そう。植物がなければ、誰も生きられない。大規模な掃討作戦があったけど、結局土地は汚染されてしまった…」テクテク

大きな耳のフレンズ「フレンズの楽園、ジャパリパークは…もう無いんだ」テクテク

アライグマ「じゃあ、そこに暮らしてたフレンズはどこへ行ったのだ?」テクテク

以外にも、まともに会話を続けているアライグマ。

大きな耳のフレンズ「行き先は3つあったよ。1つは自然の中で、動物として生きること」テクテク

大きな耳のフレンズ「2つめは、人間社会の中で生きること」テクテク

大きな耳のフレンズ「…だけど、どちらも簡単なことじゃない。特に2つめは…ね」テクテク

アライグマ「じゃあ3つめは何なのだ」

大きな耳のフレンズ「…着いたよ。ここが、自然にも人間社会にも馴染めなかった、行き場のないフレンズが辿り着く成れの果て」

大きな耳のフレンズ「人間が、かの楽園と同じ…ジャパリパークと名前を付けた場所だよ」

大きな建物の前に着く二人。

そこは動物園だった。

ただし、動物の檻の中には、その動物のフレンズが一緒に入っていた。

コツメカワウソ「…」ピョコピョコ

コツメカワウソのフレンズ「一緒にあそぼー!たーのしー!」ワイワイ

動物とフレンズは、アライグマ達が通りかかると、楽しそうに遊び出した。

アライグマ「な…何なのだ、ここは…」テクテク

大きな耳のフレンズ「ここに居れば、衣食住すべてを賄ってもらえる。三大欲求も、うち一つは制限があるけど…まあ、ぜんぶ満たされる」テクテク

アライグマ「凄いのだ!」テクテク

大きな耳のフレンズ「だけど、ここにいるフレンズ達は、檻の中が全て。自由なんてない。ピエロに…見世物にならなくちゃいけない」テクテク

大きな耳のフレンズ「さっきの子…コツメカワウソは、こないだ鬱病からやっと回復してきたばかりなんだよ」テクテク

アライグマ「…窮屈で退屈そうなのだ」テクテク

アライグマ「ここはどんな客が来るのだ」テクテク

大きな耳のフレンズ「子供や家族連れ…は、あんまり来ない。フレンズが檻にいるのって、牢屋みたいで不気味だからね」テクテク

大きな耳のフレンズ「一番沢山来るのは…男性客、だよ」テクテク

アライグマ「ヒトのオスなのか?何しに来るのだ」テクテク

大きな耳のフレンズ「…ここも経営資金稼ぎのために、出来ることはなんでもやらなくちゃいけない。まあ、この美少女動物園なら…いっぱい稼げるだろうねー…」テクテク

アライグマ「?」

大きな耳のフレンズ「私や相方の漫才師も、最初はここで働きながら勉強してた。でも、そういうサービスが嫌で嫌で…、外に出てバイトしたんだ」テクテク

アライグマ「?」テクテク

大きな耳のフレンズ「…アライさんは、ここに入りたい?」テクテク

アライグマ「嫌なのだ。よく分からないけど、閉じ込められるのは嫌なのだ」テクテク

大きな耳のフレンズ「でも、ヒトの社会は難しいことばかり。一般常識として身に付けなきゃいけないことのレベルが高すぎる」テクテク

大きな耳のフレンズ「今のジャパリ学校の勉強が難しいって言ってたね。お勉強ができなかったら、アライさんは人間社会で暮らせない。いずれここに入るしかなくなる」テクテク

アライグマ「い…嫌なのだぁ!」テクテク

大きな耳のフレンズ「だったら、どうすればいいか、分かるかい?アライさん」テクテク

アライグマ「…べ、勉強するのだ」テクテク

大きな耳のフレンズ「難しいよ。厳しいよ。だけど逃げ出さずに、きちんと知識を身に付ければ、アライさんは人間社会で自由に暮らせる。…できる?」

アライグマ「で、できるのだ!」

大きな耳のフレンズ「できなかったら、ここに入ることになる…これは脅しじゃない。ただ事実を言ってるだけだよ。…本当にできる?」

アライグマ「やるのだ!」

大きな耳のフレンズ「…それじゃあ、一緒に幸せな生活目指して、お勉強頑張ろう。アライさん」

アライグマ「頑張るのだ!」

その後、アライグマはとにかく勉強した。
まずは、世間一般の常識を身につけることが第一課題であった。

しかし、知識はいろいろ身に付いたものの…

彼女に求められる『一般常識』とは、知識でなく、道徳なのである。

アライグマは世間一般で当たり前とされる道徳が、まったく理解できなかった。


なぜ道を譲り合う必要がある?
自分が通れればいいではないか。

なぜ自分のことより周りを優先する必要がある?
そんな事したって、自分の得にはならないではないか。


…アライグマは、道徳心に対して叱られる度に、怒り返して食ってかかった。

自分の何が悪いか、全く理解できなかった。
意味不明な考え方を押し付けてくる、周りが悪いとしか思えなかった。



ある日、食堂にて…

アライグマ「今日も安いうどんなのだ。財布はフェネックが管理してるから、贅沢できないのだ…」ズルズル

テレビ『続いてのニュースです。アライグマのフレンズが、またも農地を襲いました』

アライグマ「?アライさんが映ってるのだ…。いや、別のアライさんなのだ」ズルズル

テレビ『現場をご覧ください。8名のアライグマのフレンズが捕獲されています。農作物はズタズタに荒らされており、家屋からは多くの物品が盗まれています』

アライグマ「…人間はおかしいのだ、食べ物なんて腐るほどあるのに、なんでアライさんに分けてやらないのだ」ズルズル

テレビ『今日本では、各地でアライグマのフレンズが大繁殖しています。フレンズ性善説が、今崩れようとしています』

アライグマ「アライさんが可哀想なのだ」ズルズル

ウェカムヨーコソジャーパリパー♪

アライグマの携帯電話が鳴る。
厳密にはアライグマ個人所有品ではなく、ジャパリ寮の貸し出し品だ。

アライグマ「はい、アライさんなのだ」ピッ

大きな耳のフレンズ『…ゴメン。しばらく、そっち行けない』

アライグマ「どうしたのだ?」

大きな耳のフレンズ『ちょっと…相方が……いろいろ大変で。家庭の方もやばくって…私がいなきゃ…』

アライグマ「?そうなのか。それで、いつ来れるのだ?」

大きな耳のフレンズ『…分からない。来れないかも』

アライグマ「それは困るのだ!アライさんの味方はフェネックだけなのだ!用事が済んだらすぐ来るのだ!」

大きな耳のフレンズ『…ゴメン…私にも、出来ることとできないことがあるんだ。またね』ピッ

アライグマ「…一体なんなのだ…」

フェネックが来なくなってから、アライグマの毎日はひたすら辛いものになった。

周りの視線が、いやに冷たい。
街の住人達も、あからさまに自分を避けている。

ジャパリ学校でも、自分に味方してくれる者は少ない…いや、ほとんどいない。

最初は皆優しかったが、どんどん冷たくなっている。

そして。
そんな傷ついた心を癒してくれる友が。
唯一どんな時も、自分の味方をしてくれた友が…側にいない。



やがて、アライグマは考えた。
『こんな所にいられるか』と。

そんなある日。

~フェネック宅~

大きな耳のフレンズ「…アライさん…。どうして、こんなことに…」

大きな耳のフレンズ「…もう少し一緒にいてあげたいけど。そろそろ、向こうのアライさんにも顔出さなきゃな…」

そのとき、玄関からドンドンとドアを叩く音がする。

大きな耳のフレンズ「…誰?」ガチャ

アライグマ「フェネック、こんばんはなのだ」

大きな耳のフレンズ「ああ、寮の方のアライさん…どうしたの?」

アライグマ「…お別れを言いに来たのだ」

大きな耳のフレンズ「!?…な、ど、どういうことなのアライさん!?」

アライグマ「アライさんは、人間社会でもない。ジャパリパークでもない。…自然に、帰るのだ」

大きな耳のフレンズ「帰るって…!ち、ちょっと待って!どういうこと?」

アライグマ「人間社会は嫌なことしかないのだ。みんながアライさんを虐めるのだ。そんな中で美味しい食べ物を食べても、不味くなるだけなのだ」

大きな耳のフレンズ「…そ、そんな…ゴメン、私がついてない間に何かあったの!?」

アライグマ「…もう、愛想がつきたのだ。何もかも。人間社会は、ゴミなのだ」

大きな耳のフレンズ「え…!」

アライグマ「フェネック、お前だけは、ずっとアライさんの味方で…友達でいてくれたのだ。ありがとうなのだ」

アライグマは『ありがとう』と人に言わされたことはあった。
だが自分の意思で感謝を伝えるのは、これが人生で初めてのことだった。

大きな耳のフレンズ「…ごめん、なさい…アライさん。アライさんを…仲間にしてあげられなくて…ごめんなさい…!」ウルウル

フェネックは泣き出した。

アライグマ「どうして泣くのだ。アライさんは見切りをつけただけなのだ」

大きな耳のフレンズ「うっ…ぐしゅっ…!こんな、こんな、はずじゃ、なかった…っ。私、何が、悪かったんだろっ…」ボロボロ

アライグマ「フェネックは悪くないのだ。アライさんも悪くないのだ。この社会が悪いのだ」

大きな耳のフレンズ「うっ…うっ…」シクシク

アライグマ「…でも、きっとフェネックは、そう思ってないのだ。…アライさんが悪いと思ってるのだ」

大きな耳のフレンズ「そっ…そんなこと…!」

アライグマ「だけど、ヒト達の『当たり前』は、アライさんの『当たり前』じゃないのだ。だから、おさらばするのだ」

大きな耳のフレンズ「…」

アライグマ「だけど、フェネック。お前だけは、ずっと友達でいてほしいのだ」

大きな耳のフレンズ「…うん、うん。ずっと、友達だよ、アライさん…」グスン

アライグマ「また会おうなのだ」タタッ


こうして、アライグマは街を去った。
見返済の奨学金を滞納したまま。

ジャパリ寮とジャパリ学校の退学手続きは、周りのみんながやった。

しかし、ここでリタイアしたからといって、アライさんの戸籍が本人の同意なしに抹消されることはないのである。

…いつか、また帰ってくるかもしれないから。



それからの出来事は、結果だけ書こう。

アライグマはしばらくの間、森で過ごしていた。

だが、アライグマのフレンズが『特定有害駆除対象フレンズ』に指定された後、
アライグマはアライさん達がハンターに狩られ、ショクエモンPに調理されるのを見た。


その時、アライグマは確信した。
『こんな奴らが世界を支配しているのは間違っている』と。
『アライさん達が、この世界を支配しなくてはいけない』と。

それができるように、アライグマは長い鍛練を続けた…。

ニワトリを狩り。
ウサギを狩り。
イタチを、豬を狩り。

どんどんアライグマのサンドスターは、レベルアップしていった。

だが、レベルは伸び悩んだ。
得られるEXPが、レベルアップに足らなくなってきたからだ。

一体どうすれば、もっと強くなれる?
そう悩んだとき、ふと思い浮かんだ。


そうだ。
人間は、フレンズを…アライさんを食べていた。


もしかしたら。





自分も…フレンズを食べれば、もっとレベルアップするかもしれない。





アライグマは、自分以外の戸籍持ちのアライさんを探し当てた。

フェネックの知人に一人、戸籍持ちのアライさんがいることを聞いていた。

その人物を見つけることは簡単だった。


その後、その人物の知り合いのフレンズを探す。
そして、戸籍持ちアライさんに成り済まし…
隙をついて、フレンズを襲った。


バールで一撃。
フレンズは倒れた。

フレンズを食べることには、物凄く強い嫌悪感を覚えた。

だが、人間達を倒さなくては、いずれ自分が倒される。
だから、強くならなくてはいけない。

アライグマは、フレンズのサンドスターが詰まった部位…
脳を食った。一欠片も残さずに食った。

結果。
大きなレベルアップを果たした。

…これだ。
これを続ければ、もっと強くなれる。

アライグマは、さらに戸籍持ちアップへ成り済まして、その知人のフレンズを狩った。



よく行く店の店主。

その店の常連。

そして、戸籍持ちアライさんの、武道の師匠。


成り済ましによって彼女達を油断させ、騙し討ちをし、そして…脳を食った。

特に、武道の師匠を食ったときのレベルアップは絶大であった。



そうして、力を得たアライグマは、
アライキング・ボスを名乗り、アライさんを率いたのだった。


勝機はあると確信していた。
なのに。


…勉強不足だった。



アライキング・ボスは、敗走した。
森へ逃げれば、まだなんとかなるはずだ。



~街中~

アライキング・ボス「はぁ…はぁっ…」タタッ

アライキング・ボスは、走り疲れたようだ。

アライキング・ボス「ぜぇはぁ…少し、水を飲むのだ」タタッ

やがてアライキング・ボスは、店を見つけた。
清涼飲料水を盗むために、店へ入る。

アライキング・ボス「はぁはぁ…お茶があるのだ」

アライキング・ボスは、棚からお茶を盗む。

アライキング・ボス「水分補給なのだ…」

「待つのだわ」

何者かが、アライキング・ボスへ声をかける。

アライキング・ボス「何なのだ」クルッ

「それは工場の人が一生懸命働いて作ったお茶なのだよ、欲しければお金を払うのだな」

アライキング・ボス「うるさいのだ!今それどころじゃ…」

声の主は、アライキング・ボスの腕をがしっと握る。
袖から『の』の字を象った腕輪が見える。

アライキング・ボス「な…何をするのだ!邪魔するなら、お前も殺すのだ!」ブンッ

アライキング・ボスは、人物へバールを振りかざす。

だが、その人物は、モップの柄を巧みに使い、バールの軌道をずらして回避した。

アライキング・ボス「のあぁっ!?」スカッ

清掃員「…お前のようなクソ害獣に、こんな話をしても無駄だったのだな」

アライキング・ボス「何なのだお前…ただの清掃員にしては、ずいぶんやる奴なのだ!」

清掃員「お前はあたしを見るのが初めてかもしれないが…あたしはお前をずっと追い続けていたのだ」

アライキング・ボス「敵なら、倒すまでなのだ!」ブンッ

アライキング・ボスは、再びバールを振りかざす。

だが。
それよりも早く。

モップの柄が、アライキング・ボスの喉へ食い込んだ。

アライキング・ボス「ごぼうえぇっ!?」ガハッ

清掃員「あたしの師匠の棒術は…こんなもんじゃなかったのだっ!」ヒュンヒュン

続けざまに、肩へ一撃。
アライキング・ボスの左肩は脱臼した。

アライキング・ボス「ぐぎいぃっ!?」

清掃員「さあ、さっさと自己回復するのだ!その肩も喉も治すのだ!」

アライキング・ボス「う…ぅ…」コスリコスリ

マジカルウォーターハンドで回復している間に、
今度はモップの柄が、アライキング・ボスの鼻を潰した。

アライキング・ボス「ぐぎゃああああっ!!!」ブシュウゥ

清掃員「お前は戸籍持ちなのだ。ブチ殺してやりたいけど、そうしたらあたしが過剰防衛で牢獄送りなのだ」

アライキング・ボス「はぁーっ…!はぁーっ…!」コスリコスリ

清掃員「だから…死なない程度に痛めつけてやるのだ!」

アライキング・ボス「上等なのだ!やってみるのだ!」シュウウゥ

アライキング・ボスは、野生解放の光に包まれる。

アライキング・ボス「たぁー!」ドカァ

清掃員「のぁっ!」ドサァ

タックルをくらった清掃員は吹き飛ぶ。
その衝撃で帽子が飛ぶ。

清掃員「…」ムクッ

アライキング・ボス「ん!?お、お前…!?」

清掃員の頭には、けもみみが2つ。
彼女はフレンズだったのだ。

そしてその耳や髪の色は…アライキング・ボスと瓜二つ。

清掃員「…」バッバッ

清掃員は、頭についた埃を手で払う。
めくれた袖からは、『の』の字の腕輪が見えた。



なんということであろうか。
つまり…


清掃員もまた、アライキング・ボスと同じ。
『戸籍持ちのアライさん』だったのである。

つづく

アライキング・ボス「お前…!お前もアライさんなのか!?」

清掃員「…見ての通りなのだ」

アライキング・ボス「丁度良かったのだ!お前、アライさんの家来になるのだ!なかなか強いのだ、一緒にヒトと戦うのd…」

清掃員「黙るのだ!」ヒュッ

アライキング・ボス「おっと!」ヒョイ

清掃員が放ったモップの突きは回避された。
野生解放したアライキング・ボスは、相手を見切れば射撃を回避できるほど素早い。
さすがに銃弾より早く動けるわけではないが、撃たれる瞬間にステップ移動することで、的をずらしている。

森で猟師と戦うことで身につけた技術だ。

アライキング・ボス「なぜアライさんに逆らうのだ?アライさんはなぁ、偉大なんだぞぉ!アライさんの中で一番強いんだぞ!」

清掃員「…その力、どうやって身に付けたのだ?」

アライキング・ボス「いっぱい敵をやっつけたのだ!ふはははー!」

清掃員「他には何をしたのだ」

アライキング・ボス「他には…別に、大したことしてないのだ!」

清掃員「大したことない?人の友達や恩師を食ったくせに、お前には大したことないのか?」

アライキング・ボス「…何故それを知ってるのだ!」

清掃員「アライさんの棒術を食らっても何も思い出さないのか?」

アライキング・ボス「…そうだ、お前の棒術。見たことあるのだ」

アライキング・ボス「アライさんが力をもらったフレンズに一人、滅茶苦茶強い奴がいたのだ。トリカブトの毒を盛ったのに、棒で反撃してきたのだ」

アライキング・ボス「…そうか、お前。アライさんが化けたアライさんなのか」

清掃員「アライさんが今、どんな気持ちかわかるか?」

アライキング・ボス「知らないのだ。とにかく、お前が強いのは分かったのだ!でもアライさんはもっと強いのだ!だからアライさんに従うのだ!」

清掃員「…お前みたいな奴が、よくあれだけの群れをまとめあげられたもんなのだ。不思議で仕方ないのだ」

あれ?襲われた戸籍持ちアライさんって一番最初に食われたんじゃ……?

>>891
書き方が悪かったのだ
>>820で倒れたフレンズは、戸籍持ちアライさんの知り合いなのだ
アライキング・ボスは、アライさんを食ったことは一度もないのだ(裏設定暴露)

清掃員「いいのだ。一緒に行ってやるのだ」

アライキング・ボス「おおー!物わかりいいのだ!じゃあさっそく…」スタスタ

完全に油断しきったアライキング・ボスのみぞおちに、
モップの柄の鋭い突きが食い込む。

アライキング・ボス「おごおおぉっ!?」ガハッ

清掃員「お前を連れて、地獄に落ちてやるのだ!」シュウウゥ

清掃員の目に光が灯る。
アライキング・ボスと同じ、野生解放の光だ。

アライキング・ボス「がはっ…そうか、お前、人間に寝返ったのか…!」ゼェゼェ

清掃員「人間は仲間なのだ!」ビュンッ

アライキング・ボス「裏切り者!」ガキィン

アライキング・ボスは、バールで防御する。

清掃員「たあ~!」ドスドス

アライキング・ボス「たあ~!」ガキィンガキィン

互いにレベルは互角…といったところだ。
アライキング・ボスは、厳しい鍛練とフレンズ食いでこのレベルへ至った。

この清掃員は、どうやってそれと同等のレベルを身に付けたのだろうか。

しかし。
レベルは同等でも、その差はすぐに現れ始めた。

清掃員「たぁっ!」ビュンッ

アライキング・ボス「かわしたのだ!くらえバール攻撃なのd…」

清掃員「フェイントなのだ!」ズガァ

アライキング・ボス「ごはぁっ!」

清掃員は、フェイントを入れてアライキング・ボスの動きを誘導し、先を読んで攻撃を放つ。

アライキング・ボスは目の前の敵を破壊することだけを考えてバールを振るが、
その軌道は読まれ、鋭い突きのカウンターを食らう。

アライキング・ボス「のあああぁっ!」ドサァ

清掃員「はぁ、はぁ…」

アライキング・ボス「何なのだ…!なんで、アライさんの攻撃が当たらないのだ!」ゼェゼェ

アライキング・ボス「アライさんはなぁ、偉大なんだぞぉ!森に攻めてきた猟師や、人に味方するフレンズをたくさん倒したのだ!」

アライキング・ボス「アライさんの戦い方は、洗練されてるのだぁ!たあ~!」ブンッ

清掃員「だぁ!」ドゴォ

アライキング・ボス「の゛だぁ!」ドサァ

下顎に鋭い突きが食い込む。

アライさん達が戦いによって負った傷は、野生解放によってブーストされた単体回復スキルによって癒えていく。

だが、スキルの発動には体力を消耗する。
この戦いでは、先に体力が尽きた方が負けるのである。

アライキング・ボス「裏切り者のアライさんは死刑なのだああ!」バッ

清掃員「裏切り者はお前なのだ!」ドズゥ

アライキング・ボス「ごぽぉっ!」

喉笛にモップの柄が食い込む。

清掃員「お前はフェネックを!先生を!フレンズの皆を!お前のためを想ってくれた皆を!裏切ったのだ!」ドズドズドズドズドズドズ

アライキング・ボス「ぐぶふぅっ!」

清掃員「裏切り者のアライさんは私刑なのだああ!」ドグシャア

モップの柄が、アライキング・ボスの眉間を打った。

アライキング・ボス「のあああぁっ!」ドサァ

アライキング・ボス「ひ、ひいいぃぃ!」シャカシャカシャカシャカ

眉間を強打したアライキング・ボスは、まるでアライちゃんのように四本足で逃げ回った。

アライキング・ボス「なんなのだ、お前のその棒術はぁ!」シャカシャカシャカシャカ

清掃員「お前は師匠を貪り食って、サンドスターを奪ったのだ」ツカツカ

清掃員「だがあたしは師匠から、戦い方を教わったのだ!」ドズゥ

アライキング・ボス「ぎひいぃっ!」

アライキング・ボス「も、もうやめるのだ…身体中痛いのだ…アライさんが可哀想なのだ…!」ブルブル

背中を丸め、うずくまるアライキング・ボス。

清掃員「…確かに可哀想なのだ…」スッ

清掃員「お前の頭が!」ブンッ

清掃員は後頭部めがけて突きを放つ。

アライキング・ボス「それはお互い様なのだ!」クルッ

パァン

清掃員「の゛ぁっ…!」ガクッ

アライキング・ボスは、ただうずくまって許しを請いていたのではない。

自衛隊との戦いで、隊員1から奪った拳銃。
それを懐から出して構えていた。

そして、それを清掃員へ撃ったのである。


清掃員「の゛…ぁぁっ…!」ガクッ

清掃員は下腹部を押さえて膝をつく。
撃たれた箇所から見るに、子宮と膀胱に穴が空いたとみていいだろう。

清掃員「あ゛っ…ぁああああああああっ!!!」ゴロンゴロン

大量の出血が床に広がる。

アライキング・ボス「アライさんは、自分の性格はちゃんと知ってるのだ。弱った相手を見ると、つい油断してしまうのだ」チャキッ

清掃員「ぐううぅっ…うううぅぅっ…!」コスリコスリコスリコスリコスリコスリコスリコスリ

清掃員は、下腹部と背中をこする。
マジカルウォーターハンドで治癒しようとしている。

アライキング・ボス「お前もアライさんなら!アライさんと変わらないのだ!」パァン

清掃員「の゛だああっ!」ブシュウゥ

清掃員の右肩が撃たれた。
神経を損傷したらしく、右腕はだらんと垂れ下がる。

清掃員「う゛っ…ううぅうっ…!」ガシッ

左手でモップを握るが、下半身と右腕をやられた以上、もはやそれを振ることすらままならない。

アライキング・ボス「そういう奴なのだ、アライさん達は!」パァン

清掃員「のぎゃああああっ!」ブシュウゥ

左肩も撃ち抜かれた。
急所を狙わないのは、自分に屈辱を与えた清掃員を
なぶり殺すためであろう。

アライキング・ボス「さあ謝るのだ!アライさんに逆らったことを!」

清掃員「…地獄に落ちるのだ」ハァハァ

アライキング・ボス「泣いて許しを請うのだぁ!」ドグシャ

アライキング・ボスは、清掃員の下腹部を踏みつける。

清掃員「のぎゃあああああああああっ!」

アライキング・ボス「よくも!よくもアライさんに、勝ち誇ったような態度を向けてくれたのだ!」パァン

清掃員「ごぶうぅっ!」

放たれた拳銃弾は、清掃員の右胸を貫いた。

清掃員「ご…ぶほっ…」ブクブク

清掃員の口と右胸から、血泡が吹き出す。

単体回復スキルには、体力…エネルギーを消耗する。
清掃員の傷口からは、血とともにブドウ糖、つまりエネルギーが大量に流れ出ている。

アライキング・ボス「もう気は済んだのだ。このバールでお前の頭をパッカーンして、サンドスターを食ってやるのだ」スッ

清掃員「…あ、たしは、おまえに…ごほっ、かてなかった…のだ…」ゴホッ

アライキング・ボス「ようやく分かったのか!」

清掃員「だけど、あたし、には、いつでも…でんわ、できる…ともだちが…いるの…だ…」ゴボゴボ

アライキング・ボス「アライさんにだって、慕ってくれる仲間がたくさんいるのだ!」

清掃員「…そう、おまえが…お茶を…盗もうとしてる、ちょっとの間にでも…、電話に出てくれる、ともだちが…」ゴボボ

アライキング・ボス「何言ってるかわからないのだ!パッカーンしてやるのだ!」ブンッ





「大胆不敵!トリッククローーーーーーっ!!!!」



アライキング・ボス「ごぼはっ!」ドガアァァッ

アライキング・ボスは、突如背中に大きな衝撃を受けて吹っ飛んだ。

アライキング・ボス「ぐふっ!」ドサァ

アライキング・ボス「だ、誰なのだ!」クルッ

アライキング・ボスは、後ろを振り返る。

そこには2人のフレンズがいた。

キツネ「アライさんっ!しっかりしてっ!アライさぁんっ!」ユサユサ

一人は、アライキング・ボスのかつての指導役であった、大きな耳のフレンズ…
フェネックと名乗ったフレンズだ。
そしてもう一人は。

ブラウンP「私の原稿を、楽しみにしている読者を、よくも痛め付けてくれたな…!」

ホラー漫画家にして、恐怖のアラジビ料理人。
アライグマの天敵である『狼』のフレンズ、ブラウンPであった。

キツネ「あっ、ゴメン。…御手洗さん、だったね」

清掃員「…キツネだけは、あたしを、アライさんと呼んで…いいのだ…」

清掃員は自らをアライさんと呼ばれることを死ぬほど嫌っているらしく、
普段は『御手洗』を名乗っているようだ。

キツネ「死なないで!やだよぉ!アライさんっ!」

清掃員「…腰と、右胸を、止血してほしいのだ…そうすれば、治せるのだ」

キツネは、店員のいないコンビニからガーゼや救急道具を拝借し、清掃員へ手当てする。

清掃員「後でちゃんと…お金払うのだ」

キツネ「そんなこと言ってる場合じゃないっ!」

アライキング・ボス「…フェネック?フェネックなのだ!」

アライキング・ボス「フェネック!久し振りなのだ!会いたかったのだ!」スタスタ

キツネ「…邪魔だから話しかけないで」

アライキング・ボス「見るのだ!アライさん、強くなったのだ!そいつもやっつけたのだ!」

アライキング・ボス「今は作戦不足だったけど…!この間違った社会を、アライさんの手で変えるのだぁ!」

キツネ「…話しかけないでって言ってるの」グルグル

アライキング・ボス「どうしたのだ?なんでそいつに手当てしてるのだ?アライさんは今から、そいつの脳を食ってさらにレベルアップするのだ!」

アライキング・ボス「共食いするのは嫌だけど…でも、そいつは裏切り者なのだ!制裁するのだ!だから食べてやるのだ!」

キツネ「っ…!!!」ワナワナ

アライキング・ボス「フェネックー?」

ブラウンP「そうか。君はまだ、アライさんの脳を食ったことはないのか」ガシッ

アライキング・ボス「のぁっ!?」

ブラウンPが、アライキング・ボスの背後から肩に手を置く。

ブラウンP「生で食べるのは会長くらいのものだが…脳もなかなかいけるぞ?一口サイズに切ってフライにすると美味だったよ」ギュウウゥ

アライキング・ボス「…何なのだお前…何言ってるのだ…」ブルブル

ブラウンPは、アライキング・ボスの胸部に回し蹴りを叩き込む。

アライキング・ボス「の゛あぁあっ!?」ドサァ

アライキング・ボス「あぁ、ぁああああ!いだい、いだいのだあああ!」ジタバタ

ブラウンP「どうしたんだい?肋骨が折れたのかな?それとも肺が潰れたのかな?」ツカツカ

アライキング・ボス「ぐ、うぅ、ぅうううう!」コスリコスリコスリコスリ

アライキング・ボスは、蹴られた箇所を手でこする。

ブラウンP「ハエみたいだね。こする手が2つじゃ足りないようにしてやるよ」スッ

ブラウンPは、両手の爪を煌めかせる。

ブラウンP「だああああああ!」ズバババッババババババッババババ

アライキング・ボス「のぶるゃぁああああああああ!」ブシュウウウゥ

鋭い爪で、アライキング・ボスの顔面が何度も切り裂かれる。
皮膚が裂かれ、筋繊維がズタズタに抉られる。

アライキング・ボス「いびゃいのびゃああああ!」ブシュウウウゥ コスリコスリ

ブラウンP「その傷も治るのかな?どんな風に傷が残るか楽しみだなぁ」ツカツカ

アライキング・ボス「ぬがああぁ!」ブンッ

ブラウンP「…」ドガッ

アライキング・ボスは顔面を血まみれにしながら、バールでブラウンPの頭を殴り付ける。

アライキング・ボス「はぁ、はぁ!どうだぁあああ!」ゼェハァ

ブラウンP「これが君の全力か?」パシッ

アライキング・ボス「の、のぁっ!」

ブラウンPは平然とバールを掴み、アライキング・ボスから奪い取る。

ブラウンP「ふっ!」ブンッ

そしてアライキング・ボスの右肩へ叩き込む。

アライキング・ボス「ごぶぉぉおぉ!!」ドゴオオォ

アライキング・ボスの肩の骨は粉砕された。
右腕はなるで胸から生えているかのように、歪に垂れ下がった。

アライキング・ボス「ひ、ひいいぃ、ひいいぃっ!た、たすけて、だずげでええぇっ!」コスリコスリコスリコスリ

アライキング・ボスはまだ動く左手で、右肩をこする。

ブラウンP「おやおや、また演技かい?」ガシッ

ブラウンPは、力無く垂れ下がるアライキング・ボスの右手を握る。

ブラウンP「また、隠し持った銃で撃たれたら…」ブンッ

アライキング・ボス「のああぁっ!」グイイイィッ

ブラウンPは掴んだ右手をロープのように振り回し、アライキング・ボスを宙に浮かせる。

ブラウンP「困っ!るっ!からっ!なぁっ!」ブンッ ブンッ ブンッ ブンッ

アライキング・ボス「ごぎゃぼ!のびゃあ!ぶぎぃ!ぎびぃ!」ドシャッ ドシャッ ドシャッ ドシャッ

右へ、左へ。右へ、左へ。
右腕を握ったまま大きく振り回し、アライキング・ボスを左右の床へ叩き付ける。

アライキング・ボス「や…やべ…で…も、もう……がいふぐ…でぎなひ…」ピクピク

ブラウンP「私がよく編集と打ち合わせに行った喫茶店…私のお気に入りだったんだよなぁ」

ブラウンP「そこの店主も、常連も、とてもおおらかな人物で…。昔からの付き合いもあったし。大好きな人達だったよ」ギリギリ

アライキング・ボス「ひ…ぎ、ぎひ…」ペタペタ

ブラウンP「お前のようなクソ害獣の命!百でも二百でも償えるものかああああああっ!」ドガアァァッ

ブラウンPはアライキング・ボスのふとももを踏み潰した。

アライキング・ボス「ぎびいいぃいーーーーっ!!」

ふとももに出血はないが、おびただしい内出血ですぐに風船のように膨らんだ。

ブラウンP「…もういいだろう。この法治国家で、私刑は許されないからな…」

アライキング・ボス「ふ、ふぇねっぐ、ふぇねっぐううぅ」

キツネ「…」

アライキング・ボス「たずげでふぇねっぐ、あ、あぁあ、みんなが、みんなが、いじめるんだあああぁ」ズリズリ

キツネ「…」

アライキング・ボス「ふ、ふぇねっぐは、あらいさんにいっだのら…ずっと、ずっと、ともだひだっへ」ズリッズリッ

キツネ「…」

アライキング・ボス「だずげで、ふぇねっぐううぅ」ガシッ

アライキング・ボスは、キツネの足をつかむ。

キツネ「…確かに、昔…ずっと友達だって、言ったね」

キツネはしゃがみこみ、アライキング・ボスに顔を近付けて言った。

キツネ「でも私は、殺人犯とは友達になりたくないな」

アライキング・ボス「ふぇね…っぐ…!?」

キツネ「あなたは私の大切な友達を殺したね」スッ

キツネ「こっちにも友達を選ぶ権利ぐらいあるよ」

アライキング・ボス「ぅ…!?うそ…なのか!アライさんを、裏切るのかぁふぇねっぐぅ!」

キツネ「私はあなたに、とっくの昔に裏切られたんだよ」

キツネ「それに今も、私の大切な友達を殺そうとした」

清掃員「う…ぅぅ…」シュウウゥ

キツネ「…はっきり言ってあげる。人殺しのあなたに、友達を作る資格はない」

アライキング・ボス「でも!でも!さきにアライさんの友達たちを殺したのは人間のほうなのだあああ!アライさん達は被害者なのだ悪くないのだあああ!」

アライキング・ボス「アライさん達は人間の常識がどうしてもわからないのだ!これはアライさんが悪いせいじゃないのだぁぁ!なんで分かってくれないのだあぁ!」

キツネ「それを直そうとしなかったのはあなたの判断でしょ?」

キツネ「あなたと同じ、心の病気を持ってた子を私は知ってるよ。だけどその子は、一生懸命がんばって、みんなの気持ちを知ろうとしてくれた。自分から手を伸ばしてくれた」ダキッ

キツネは、血だるまで横たわる清掃員を抱き締める。

キツネ「本当に本当に、自分勝手で、短気で…。でも、そんな自分を克服しよようとしてくれたのが、この子」スリスリ

キツネ「あなたと同じ、アライさんだけど…この子には本当の友達がいる」

キツネ「…」

キツネ「あなたとは、違う。自分の怠慢をまわりのせいにして、自分を甘やかすあなたとは…違う」ギロリ

アライキング・ボス「ふぇね…!」

キツネ「私はもう、あなたに怒らない。怒っても無駄だから」スタスタ

キツネは清掃員を背中に背負い、店を出る。

アライキング・ボス「まづのだ!ふぇねっぐ!アライさんは、どうしたらフェネックのお友だちになれるのだ!しうしたら!そいつになれるのだあああ!」

キツネは何も言い返さず、その場を去った。

ブラウンP「ふんっ」ポイッ

アライキング・ボス「ぐげえぇ!」ドサッ

アライキング・ボスは、店の外に投げ出される。

アライキング・ボス「お、お前、殺すのか、アライさんを…」

アライキング・ボス「だ、だけど知ってるのだ。アライさんは戸籍持ちなのだ。アライさんを殺したら、お前が殺人犯なのだ」ズリッズリッ

ブラウンP「お前を裁くのは私じゃない」

アライキング・ボス「のぁ?」

警官「容疑者確保!」ガシャン

アライキング・ボス「なぁ!」

アライキング・ボスに手錠がはめられた。

警官「アライグマ!お前を国家テロに大量殺人、扇動、窃盗、その他数え切れない程の罪状により連行する!」グイグイ

アライキング・ボス「の…のぁあぁ!離すのだあぁ!」ビクビク

アライキング・ボスはパトカーへ連行されていく。

ブラウンP「裁くのは、法廷の役目だ」

アライキング・ボス「だ、だけど!アライさんは知ってるのだ!日本では、よっぽど悪いことしないと死刑にはならないのだ!」ズルズル

警官「静かにしなさい」グイグイ

アライキング・ボス「アライさんは、日本中のアライさんのために戦った英雄なのだ!正義のヒーローなのだ!偉大なんだぞぉ!」ズルズル

警官「静かにしなさいと言っている」グイグイ

アライキング・ボス「悪いことは、何一つしてないのだああぁ!悪いのはお前たち人間なのだああぁ!」ズルズル

警官「やかましい黙れクソガイジがぁ!」グイグイ

アライキング・ボス「アライさんは無罪なのだあああ!アライさんが可哀想なのだああああ!」

ブラウンP「よっぽどの悪いことをしないと…か」

パトカーの扉がバタンと閉じる。
アライキング・ボスは連行されていった。



その後のことを、少しだけ書こう。

襲撃された村の生き残りの子供達は、街へ疎開していった。

一頭雄牛が残っていたが、ホルスタインの通訳によると、雄牛はこの村に残ると言っていたらしい。

比較的軽症なホルスタインちゃん2…的当ての標的にされた子供が退院し、雄牛の面倒を見ている。

ホルスタインは、いまだ病院で手足の骨折の治療中だ。

ホルスタインちゃん1…ブランコで投げられた子供も、全身の打撲はじき治るとのことだ。

パイルドライバーを何度も受けたホルスタインちゃん3は、手術により一命をとりとめた。
だが脛椎の損傷がひどく、全身麻痺に陥っている。
一応神経がある程度回復する見込みはあるらしく、治療が済んだらリハビリをする予定だ。

だが、ホルスタインちゃん3は笑顔だった。
生きていること、母親や姉妹、雄牛と生きて再会できたこと。
そして、自分の人生はまだいくらでも
選びようがあること。
彼女はそのすべてに喜んでいた。

誰もが皆、自己犠牲という一見非合理的な選択をしたことで、
最終的に全員の命が救われたのであった。



ハンターは、警官2とともに避難所を守り抜いた。
結局、ASLを使うことはかなった。

世界でただ一つの貴重なサンプル。
それは最終的に…ハンターの手元に残った。
いつか、虎の子を使うことがあるかもしれないから。

清掃員もまた、一命をとりとめた。
彼女は墓地に、墓参りに来ていた。

墓地には5つの墓が並んでいた。
はじめの2つには、お供え物として紅茶を置いた。

次の2つには、ジャパりまんを置いた。

最後の1つの墓には、『御手洗』の文字があった。
清掃員はそこへドーナツを1つ置き、深く拝むと、その場を去った。



~ジャパリパーク~

受付「おい!ちょっとお前何やってる!ここはお触り禁止だ!ふれあいコーナーは動物だけだ!」

受付「なにぃ、ここがいかがわしいお店だと…?バカモノ!フレンズ省直営のここを何だと思ってる!」

受付「まあ、男性客…いわゆるけもみも萌えのギーク達はたくさん来るな」

受付「サービス?ああ、たまに歌ったり踊ったりしてるぞ。地下アイドルみたいにな。ファンサービスってやつだな」

受付「コツメカワウソ?ああ…あいつか。なんか客から貰ったアニメのDVD観て、『推しキャラが死んだ~鬱だ~』って泣いてたよ。回復するのにまる1日かかったよ」

受付「ああ、キツネと御手洗か…あいつら、可愛い可愛いってチヤホヤされるのが苦手でな。『こういうのは向かない』っつて出ていったよ」

受付「…ここは狭っくるしいとこだけどな。互いが互いを思いやってるいいところだ…そう思うぞ」

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