ルビィ「プリンがおいしくない」 (17)

ルビィはいつもダイヤのプリンを冷蔵庫からとっては、食べていた


プリンを開け、居間でアイドル雑誌を読むのがルビィの楽しみだった


その度、ダイヤが小言を言っても、ルビィは聞く耳を持たなかった


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ダイヤ「ルビィ……またわたくしのプリン食べたでしょう…」

ルビィ「ヒッ……!」

ダイヤ「……あなたはどうしていつもいつも…!」

ルビィ「ご、ごめんなさい……!」

ダイヤがプリンを10個買って来ると、毎度7個はルビィに食べられてしまう

そんな様相にも、ダイヤはルビィにその都度小言を言うのみで、彼女には珍しく最後には

『しょうがない子ね』と根負けするのだった


年月が過ぎ、大学生となったダイヤは東京の大学へと進学した


寂しがりのルビィは目に一杯の涙を湛えたが既にルビィも高校生


グッと堪えて旅立つ姉を見送った

一人で使う居間は、少し広かった



手持ち無沙汰で、何にもする気が起きない

アイドル雑誌と、プリンを一緒に買ってきた


銀の匙を用意し、机の上で封を切る






あまりおいしくない

正確に言うと、おいしいのかもしれない



けれども、今のルビィには卵の甘みも、カラメルの苦みも全然足りなかった

夏休みになり、ダイヤが帰ってきた


玄関の開く音に急ぎ駆けつける


ダイヤの手には、一つの荷物


いつも冷蔵庫にあった、あのパッケージ

ルビィは理解した

ほとんど自分に食べられるのに、わざわざプリンを買ってくれていたこと

そしてそのプリンは出来の悪い妹に食べさせるにはもったいないくらい、上等なものだということ



悲しいわけでも、嬉しいわけでもない

なぜか涙が溢れて、止まらなかった

帰ってくるなり、わんわん泣く妹をダイヤは抱き留める

妹の涙の真意をダイヤは理解していない、大方寂しかった、くらいに思っているのだろう


二人の周りを取り巻く風景は目まぐるしく変わっていく。
それでも、ダイヤがルビィにかける言葉は、一つ

譴責と慈愛を含んだ声色で、囁くのだった





「……しょうがない子ね」

おわり

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