【モバマス】奈緒と藍子の2nd・Camera【水なおもり】 (53)

・モバマス、神谷奈緒と高森藍子のSSです
・すこぶるまったりしています
・神谷「奈緒」と高「森」藍子で「なおもり」です
・「水なおもり」ってなんだよとか考えてはいけません、字面の通りです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1504036197

・前作があります(奈緒と藍子のネオ・リレーション)が、読んでいなくても
 「奈緒と藍子がいい関係築いてるんだな」くらい把握していれば大丈夫です、多分

・「なおもり」を先陣切って開拓している「麦畑たく」さんが、前作によせた素敵なイラストを
 描いて下さいました、本当に有難うございます…
 冒頭部は、こちら見ながらお読みいただくと色々捗ります

<ある日の夜・奈緒の自室 with 奈緒と藍子の写真>


奈緒「………」


奈緒「…これ……あたしかぁ…」

奈緒「……うん、悪くはない…けど…」

奈緒「…やっぱ、ゆるくって……おっっっかしな、感じ、だなー……」


(藍子「『肩の力が抜けた奈緒ちゃん』が新たに増えた、それでいいんじゃないかな」)


奈緒「……新たに増えた自分、か……」

<同じ日の夜・藍子の自室 with 奈緒と藍子の写真>


藍子「…やっぱり奈緒ちゃん、凄い……」

藍子「……パワフルで、ストイックなのに、こんなにやさしく…」


(奈緒「あたしはただ、詩の心情を 歌声と身体全部で出そうとしただけで…」)


藍子「……あんなかっこいいこと、さらっと言えるって…」

<数日後・レッスン終わりの休憩室>


奈緒「ふいー、つっかれたぁ…」

藍子「あ、奈緒ちゃんいた」

奈緒「あれ、藍子も今日レッスンだったのか」

藍子「うん、私はビジュアルの…」

奈緒「そっか、あたしはダンスで、ちょっと入れておきたい振りがあって」

藍子「え、新曲か何か?」

奈緒「いや、前の曲にちょっと足したいなーって思ってたアイデアがあってさ」

藍子「…すごい、自分で提案したの?」

奈緒「…そうだけど…そんな凄いかなぁ」

藍子「お手本を憶え込むだけで手一杯だよ、私…」


奈緒「言われてみたら、最近割と どしどし意見出してるかもな」

奈緒「せっかくのチャンスだし、妥協したくないから…」

藍子「……眩しいなあ」

奈緒「そ、そんなに目を細められても…だな……」

藍子「でも奈緒ちゃん見てると、元気が貯まっていく感じがする」

奈緒「……元気吸い取られてるのか、あたし?」

藍子「さあ、どうでしょう、うふふ」


藍子「やっぱり今、リリイベとか忙しい?」

奈緒「まあね、しばらくは…ってか藍子だって、こないだ新曲出たじゃん」

藍子「あ…そうか、でも自然~とこなしてるかも」

奈緒「あたしには、そのスタンスが不思議だよ」

藍子「んー…でも手を抜いてるわけじゃ、ないよ…多分」

奈緒「わかるよ、むしろ藍子にしかできない芸当だから」

奈緒「藍子の言葉を借りれば、その…『眩しい』、から…」

藍子「………え」

奈緒「……はい終わり終わり!あんまり恥ずかしいこと何度も言わせない!」

藍子「…はーい、ふふふ」

奈緒「………」

藍子「…お互い、頑張ろうね」

奈緒「うん…そうだな」


奈緒「………あのさ」

藍子「?」

奈緒「よかったら、でいいんだけどさ…新曲の仕事がひと区切りついたら」

奈緒「オフ合ったタイミングで、一緒にどっか行かないか?」

藍子「本当? いいの?」

奈緒「勿論時間ができたら、の話だけど」

藍子「うん、わかってる…楽しみー♪」

奈緒「ありがと、あたしも楽しみにしてるから」

藍子「ちょうど…真夏、ぐらいかな」

奈緒「…かな、落ち着いたところで、連絡入れるから」

藍子「わかったー、奈緒ちゃんも、無理せず頑張ってね」

奈緒「おう…地味に難しい注文だけどな、それ」

~~~~~~~~~~~~~~~


<真夏の某日・千葉のとある砂浜>


奈緒「……………」

藍子「……………」

奈緒「…確かに平日だし……ちょっと東京から距離あるし」

奈緒「天気も微妙、って予報だったけど………」



奈緒「こんなにがらがらの砂浜、って………」

藍子「……人、いなさ過ぎだよね…」

奈緒「穴場、とは思ってたけど…ここまでとはなあ」

藍子「あっちで、スイカ割り?してる人しかいないよ」


            < ヨーシ、スイングハ マカセテ!!
            < …チガイマス…チガイマス


藍子「奈緒ちゃん、人払いの魔法とか使った?」

奈緒「ははは、なにそれ…まあ言いたいことはわかるけど」

藍子「奈緒ちゃんの魔法じゃなかったら…神様のいたずら?」

奈緒「かな…せっかくオフが取れたご褒美、って思おう」

藍子「そうだね…満喫しようね」

奈緒「ああ」


<海の家>

奈緒「………水着になっても、やっぱりゆるふわだな、藍子って」

藍子「……恥ずかしいよぉ、あんまりじろじろ見ないで」

奈緒「藍子らしくて似合ってるじゃん、自信持ちなよ」

藍子「奈緒ちゃん…かっこいいからそういうこと言えるんでしょ」

奈緒「あ、あたしはこれしか持ってないんだって」

藍子「ハイレグの競泳水着とか、櫂ちゃんくらいしか着てるの見たことないよ」

奈緒「…結構プレッシャーなんだぞ、これ…かっこよく泳げなきゃ、って」

藍子「……今日は大丈夫だね…人、いないから」

奈緒「まあ……なぁ」


奈緒「ま、いってもこの水着、お互い見てるからなあ、去年の秋」

藍子「ああ……プールで水泳大会」

奈緒「あの、拓海が大暴れした」

藍子「ポジパチーム、頑張ったんだけどなー」

奈緒「茜がゴールしたとき、藍子まだスタート地点にいたよな」

藍子「恥ずかしい///// あれ、ずーっと言われ続けてるんだからねっ」

奈緒「美味しいなあ、って見てた」

藍子「奈緒ちゃんまで/////」

奈緒「まだいいほうだよ、あたしなんか始まってすぐ落っこっちゃってさぁ」

藍子「あー… 見せ場、少なかったかもね」

奈緒「加蓮、見てるだけなのにげらっげら笑ってて」

藍子「あははは」


藍子「…あの頃は、まだ『顔を知ってる』くらいだったね」

奈緒「だなあ…なんか、こう言うとおかしいかもしれないけど」

奈緒「…急に、すごく距離が近づいた気がする」

藍子「ほんとだねー」

奈緒「……まだちょっと、あたしは距離感ぎこちないけど」

藍子「えーん、奈緒ちゃんが冷たいよー」チラッチラッ

奈緒「…藍子、意外といじり属性あるな…」

藍子「そんなことないよー、奈緒ちゃんに、もっと近づきたいだけだよー」

奈緒「………言うなぁ、さらっと」

藍子「??」


<波打際>


藍子「え~、なにこのきれいなちっちゃい魚」

奈緒「このへんいるんだよ、海水浴場なのに」

藍子「かわいい、これ、掬えるかな」

奈緒「意外とすばやいから、まず無理じゃ」

藍子「とれたー」

奈緒「……ぇぇ~~」


藍子「これ、写真撮れる?」

奈緒「え、ちょ、ちょっと待って、カメラ海の家じゃ」

藍子「うん、取ってきてー」

奈緒「おいいい」drrrrrrr


 <少女撮影中>


藍子「ばいばーい」

奈緒「ふぅ…急いで撮ったから、ちょっとピント甘いかも」

藍子「ううん、撮ってくれただけでもありがサンキュー」

奈緒「……ゆるふわだと、掬えるのかな、あれ…」

藍子「どうかなあ、たまたま私を気に入ってくれたのかも」

奈緒「あるのかな、そんなの」

藍子「魚は人を見る、って言うみたいだよ」

奈緒「へぇー」


藍子「あっ」

奈緒「ん?」

藍子「さ、さっきの魚が、足、つんつん、あは、あははは」

奈緒「ああなんかその魚、ちょっかい出すんだよ」

藍子「やーもぅ、なにこれ、わー」

奈緒「気に入られてるなあ、藍子」

藍子「え、これ、どう、したら、あはは、くす、くすぐった」

奈緒「別に害はないから、遊んであげなって」

藍子「ひゃ、ひゃ、えー、ちょ、ちょっとぉ、えい」ツン

奈緒「おい、なんであたしつっつくんだよ!」

藍子「わかんない、わかんないけど、き、気に入ったもの、つっつくのかな、って」

奈緒「意味わかんないぞ、じゃあたしも、ほれ」ツン

藍子「もーーー、だめだめえ」バシャバシャ

奈緒「やったなこのぉ~」バシャバシャ


奈緒「とったどー」

藍子「え??」

奈緒「これ」

藍子「…なにこれ、いつ撮ってたの?」

奈緒「割とずーっと」

奈緒「魚に夢中だったから、気がついてなかったみたいだけど」

藍子「全然わからなかったよー」

奈緒「しかも水かからないように必死だったっていう」

藍子「あ、それは大丈夫…生活防水だから」

奈緒「よかった、念のため自分のも持ってきてたけど」

藍子「あの短時間に!?」


奈緒「今更だけど…黙って撮っちゃってて、ごめんな」

藍子「ううん、寧ろありがとう」

奈緒「神谷カメラマン、いい仕事したかな」

藍子「ええ、感謝しますっ」

藍子「ただ…足だけ写ってる写真が多いのは、ちょっとマイナス」

奈緒「きびしーなあ」

藍子「ふふふ」


奈緒「…お腹すいてないか?」

藍子「そう…かな?」

奈緒「自分のことだぞ」

藍子「あはは、でもそっか、お昼近いもんね」

奈緒「じゃ、海の家戻るか」


<海の家>


オマッチョァーシター、レモンカキゴーリト、カレーニナリャース


奈緒「…食事じゃなくて、いいのか?」

藍子「えー、海といったら、カキ氷でしょう」

奈緒「がっつりカレー頼んじゃったあたし、ちょっと恥ずかしいんだけど」

藍子「いいじゃない、はらぺこ奈緒ちゃん」

奈緒「育ち盛りの小学生みたいに言うなー」

藍子「あはは」


奈緒「…」パクパク

藍子「…」シャクシャク


奈緒「…」モグモグ

藍子「…」ペチペチ


奈緒「…」

藍子「…」


奈緒「…ラジオだったら、放送事故だよな、これ…」

藍子「……おんなじこと考えてた」

奈緒「職業病だな、もはや…」

藍子「でも…奈緒ちゃんの前だったら、別に困らないし、気まずくもないし…」

奈緒「…遠慮なく黙ーってカレー食べられるのも…悪くないな」

藍子「だよね…お話するのもいいけど」

藍子「いっしょの時間が嬉しいから」

奈緒「ああ…ほんっと、そうだなあ…」


藍子「でも、ちょーっとだけ不満が」

奈緒「え、なになに?」


藍子「…カレー、『強い』」


奈緒「は?」

藍子「だって…隣からいい匂いがずーっと…カキ氷の負けだよぉ」

奈緒「…そういうことか…しょうがないなあ」

藍子「?」

奈緒「ほら、あーん」

藍子「え?どうしたの急に?」

奈緒「…はぇ?……た、食べたいんじゃ、なかったのか…?」

藍子「いや、あの、えーと…」


奈緒「うう……恥ずかしい…ノリで何やってんだあたし////」

藍子「奈緒ちゃん、大丈夫、食べたくないわけじゃないし、今の奈緒ちゃん、いけてたからっ」

藍子「ただ…突然過ぎたから…びっくりしただけで」

奈緒「////」プシュー

藍子「…奈緒ちゃんのカレー、ひと口欲しいなあ、できたら『あーん』で」

奈緒「…え……そ、そっか、じ、じゃ…ほら」

藍子「あーん」パク

奈緒「……」

藍子「んー、美味しぃ~♪ ありがとう」


奈緒「…………あたし一人だけ、大ダメージ負ってる気が」

藍子「じゃ、私のカキ氷食べる?」

奈緒「は、はぁ??」

藍子「……察してよね」

奈緒「え、え???」

奈緒「………あ、そっか……ごめん、ニブくて…」

藍子「はい、早くしないと、溶けちゃうよー」

奈緒「……うん…じゃあ……あーん」パク

藍子「ふふっ、いかがですかー?」

奈緒「………!!」キンキンキンキン

藍子「ちょ、ちょっと大丈夫、奈緒ちゃん、奈緒ちゃーん」


<5分後>


奈緒「…『あーん』って…その…」

藍子「うん…」

奈緒「する方もされる方も、結構…クるな」

藍子「でしょ」

奈緒「うん…もう軽率に…やらない」

藍子「でも奈緒ちゃん、カレー『あーん』してくれたとき…」

奈緒「うん?」

藍子「すごく…かっこよかった」

奈緒「なんだよそれー」

藍子「ほんとだもん…ちょっと、きゅんってしたくらい、いい表情してたよ」

奈緒「そ、そっか…恥かいた甲斐はあったんだな」

藍子「撮りたかったくらい」

奈緒「それはご勘弁願います」


奈緒「…藍子だって」

藍子「?」

奈緒「ナチュラルに、その…『あーん』?できるって」

奈緒「あたしからしたら、うわ女子力高っ、ってなったから」

藍子「そう、なのかなあ?」

奈緒「撮りたかったくらい」

藍子「いいよ」

奈緒「えっ」

藍子「…あーんしてるところ、撮ってもいいよ」

奈緒「…藍子……恐ろしい子っ」

藍子「?」


パシャッ

奈緒(右手にスマホ…左手にカレースプーン…それくわえて満面の笑みの藍子…)

奈緒(……すごい絵面……なにしてるんだ、あたし…)


藍子「ん~~、ありがとー、おいしかったよ」

奈緒「そ、そっか…それは、よかっ、たなー」

藍子「??」

奈緒「なんだこれ…なんだこれ…」

藍子「撮れた?見せて」

奈緒「うぇ!?あ、あの…あんまり、うまくは…ない、かもだけど…ほら」

藍子「えー、うまいよぉ、奈緒ちゃん写真いけるいける」

奈緒「…そ、か……てか、恥ずかしくないのか藍子は」

藍子「んー、ちょっと恥ずかしいけど…」

藍子「自分が何か食べて喜んでいる写真って、あんまりないから」

藍子「それを撮ってくれて、嬉しい、気持ちが強いかな」

奈緒「へえ…まあ確かに、あんまりこういう顔、TVでもなきゃ見せないからなあ」

藍子「あとで送ってね」

奈緒「うん、わかった」

奈緒「藍子の足と熱帯魚の写真もサービス」

藍子「わーい、あはは」


奈緒「…ちょっと、眠くない?」

藍子「うん…お昼、食べちゃったからね」

奈緒「藍子は、あれ…お昼でいいのか?」

藍子「ふた口もカレー食べたら、もうお腹いっぱい」

奈緒「仙人みたいだなあ、しっかり食べないと、大きく育たないぞ」

藍子「どこが?」

奈緒「いっ!?べ…別にどこがって、特定の場所じゃなくて、その…」

藍子「ふふっ、お姉様の忠告、心に刻んで起きますね」

奈緒「1コしか違わないし……ふわぁぁぁ…」

藍子「……お昼寝、しよっか」

奈緒「うん……ごめん、せっかくの海なのに、こんな抜けた感じで」

藍子「それがオフだよ、まったりしよ」

奈緒「わかった…ありがとう」


<SMT(スーパーまったりタイム)>


奈緒「……んっ……」ムクリ

藍子「…」スヤスヤ

パシャッ

藍子「……ん…?」

奈緒「…あ、起こしちゃった?ごめん…」

藍子「ううん…何か撮ったの?」

奈緒「まぁ…ただ、あんま意味ない画だけど」

藍子「余計に気になるよ、どんなの?」

奈緒「えー……ほら」


藍子「……」

奈緒「…な、言葉に困るだろ、ただの砂浜と、海と、空と、山」

藍子「…素敵…」

奈緒「そう、か?」

藍子「この画を切り取ろうとしてる奈緒ちゃんの感性が、素敵だよ」

奈緒「…照れるな、専門家にそんな言われると」

藍子「どこがぁ、専門家じゃないよお」

奈緒「あたし自身が、よくわかってなかったりするけど」

藍子「きっと奈緒ちゃんの胸の中に、なにかが湧いてきたんだよ」

奈緒「胸の中に、ねえ…………あ」

藍子「??? どうしたの」

奈緒「………………すっごい恥ずかしいこと、思い出した」

藍子「え、なになに?」


奈緒「小学校の頃さ、夏休みに、風景の写生の宿題が出て」

藍子「あー、あるね」

奈緒「そしたら、家族でクラゲ見に行こうって、江ノ島行ったんだよ」

藍子「いいな、クラゲさん見たい~」

奈緒「藍子は面白いかもな、あたしはその…『なにこれ』みたいな感想しかなくて」

藍子「ゆるふわだからね、クラゲ」

奈緒「ま、それよりも宿題の写生のほうで頭いっぱいで」

藍子「うんうん」

奈緒「沖に江ノ島が見える砂浜で写真撮って、それ見ながら絵を描いたんだ」

藍子「奈緒ちゃん、すごくうまいもんね、絵」

奈緒「魔法少女のバンクのシーンとかだけだし…風景は、今も昔も苦手」

藍子「へー、意外」


奈緒「でもまあ、時間もあるから頑張って描いてさ、学校に持ってって」

藍子「うん」

奈緒「そしたら先生が、微妙~な顔して、宿題の条件のとこ指さすわけ」

藍子「…うん?」

奈緒「わけわかんなくて指の先 追ってったら…」


奈緒「 『風景は、千葉県内の景色に限る』 」


藍子「ぷっ、あはははは」


奈緒「もうあたし恥ずかしくて恥ずかしくて…」

奈緒「さっきまで『うまく描けました』ドヤァ みたいな顔してたの、なんだったんだ、って」

藍子「あは、あははは、ひっ、ひっ、奈緒ちゃん、あはは、はぁ、はぁ」

奈緒「…笑いすぎ」

藍子「ごめーん、あーおっかしい、奈緒ちゃんって、奈緒ちゃんって……ぷっ、ふふふふ」

奈緒「結局、努力は認めるみたいな言い回しで大丈夫だったけどさ」

奈緒「周りからは『江ノ島は千葉でぇす』とか後々までずーっと言われて」

奈緒「…大丈夫か藍子」

藍子「あー、お腹痛い、お腹痛い、江ノ島…千葉…ふふふっ」

奈緒「…ツボ入っちゃったか…まあいいよ、もう思い出話だし」

藍子「ふー、ふー、もう奈緒ちゃん…あー面白い」

奈緒「……ま、この写真は、そのときのリベンジ、かな」

藍子「あーいっぱい笑った……でも、いいお話、かも」

奈緒「どこが」

藍子「私、こういう写真…撮らないから」

奈緒「そうなのか?割と風景写真とか多いと思うけど」


藍子「うーん…なんていうのかな、何か目を引くものがないとシャッター切らないかも」

奈緒「へー、意外、だなあ」

藍子「私が写真撮るのって、おしゃれな建物とか、料理とか、猫とか…」

藍子「ワンポイントこれ、っていうものを入れたがるところがあって…」

奈緒「ああ…わかる気がする」

藍子「この写真みたいに何の変哲もない…って言ったら奈緒ちゃんに失礼だけど」

奈緒「いいって、げんに何の変哲もない景色だし」

藍子「『私が見た景色』っていう、それだけを撮る感性は」

藍子「奈緒ちゃんならではだと思うよ」

奈緒「……ごめん、あたしそこまで深く考えずに撮ってた」

藍子「感性は、にじみ出るものだから、それでいいんだよ」

奈緒「そっか…多少は宿題のリベンジになったのかな」


奈緒「でもさ」

藍子「うん」

奈緒「……やっぱこれ、さびしいな…一緒に写ってくれるか?」

藍子「喜んでっ、じゃ私のカメラも隣に…」


ピッピッピッ パシャッ


藍子「…私も、ちょっと挑戦しようかな」

奈緒「何に?」

藍子「『私が見た景色』それだけを撮るの…何か、違うものが見えてくるかも」

奈緒「そっか…藍子の感性だと、どんなものが撮」


パシャッ


奈緒「…え??」

藍子「うん、いいかも」

奈緒「いや、今もろにあたし入ってなかったか」

藍子「なにげない景色、だよ」

奈緒「ほんとか?……ほらやっぱり入ってるじゃんか」

藍子「撮りたかったから、ねっ」

奈緒「むぅー」


藍子「ごめんごめん、でも…いい表情(かお)してるね」

奈緒「凛の真似にしちゃ、似てないよ」

藍子「本心だから」

奈緒「……そう…なのか?」

藍子「だよ、なにげない奈緒ちゃん、撮りたいなあって」

奈緒「なにげない、って…どうすればいいんだ」

藍子「んー…」

藍子「『高森藍子と話をしながら、高森藍子はそこにはいない』ような感じ?」

奈緒「なんだそれ、ははは」


パシャッ



奈緒「そういえば…泳いでないなあ」

藍子「……え?」

奈緒「いや、せっかく水着なのに、波打際ばっかりでさ」

奈緒「ちょっと、もったいないかなって」

藍子「『もったいない』って思うところ、奈緒ちゃんらしいね」

奈緒「そうか?藍子も行ってみないか、少し沖のほうとか」

藍子「んー………」

奈緒「……行きたくない?」

藍子「ううん、迷ってる…浮き輪でぷかぷか、なら大丈夫…………かな?」

奈緒「あ、無理しなくていいぞ…あんまり泳ぎ、得意じゃないなら」

藍子「でも……………………行ってみたい!」

奈緒「そうか…じゃ、ゆっくり行こうか」

藍子「………うん」


<海水浴場の沖合>


藍子「らくちーん」

奈緒「…殆どあたしが引っ張ってるだけだなこれ…楽しいか?」

藍子「うん…こんなところ、私一人じゃ来れないし」

奈緒「空と海、二人占めだなあ」

藍子「広いねー」

奈緒「あ、トンビ」

藍子「え、どこどこ?」

奈緒「あれ、ずーーっと上のほう」

藍子「え…わかんな…あ、あの、ちっちゃいの!?」

奈緒「そうそう、まわって飛んでるでしょ」

藍子「あれ、トンビなんだ…ピーヒョロロロ」

奈緒「うまいうまい」


奈緒「…そいえばさ…藍子は沖に出たら、何かやってみたいこととかあったのか?」

藍子「えっ……あの……」

奈緒「??」

藍子「…トビウオが見たいな、って」

奈緒「トビウオ?」

藍子「調べてみたら、このあたりにいる、って…」

奈緒「海水浴場にトビウオは、あんまり来ないかなあ」

藍子「そっか…ポジパのみんなで南の海にロケに行ったときには、ぴゅんぴゅん飛んでて」

奈緒「…日本だよね、それ」

藍子「茜ちゃん、手づかみで飛んでるのつかまえて」

奈緒「…人間だよね、茜」


藍子「そっか…いないのかぁ」シュン

奈緒「…がっかりするほど見たかったのか…ごめん」

藍子「あ、謝らなくていいよ、勝手に私が、いたらいいな、って思っただけだし」

奈緒「……いやまあ…その『トビウオが飛んでくる海水浴場』普通に興味あるし」

藍子「……いつか……一緒に行こっか」

奈緒「………いつになるかなあ」

藍子「ずーっと先でも…いいよ」

奈緒「うん……楽しみ、とっとこう」


奈緒「ぷはー、意外といっぱい魚とかいるなあ、藍子もゴーグルつけるか?」

藍子「…………ぃ」

奈緒「…え?」

藍子「……ゎ……ぃ…」

奈緒「ごめん、よく聞こえなかった」


藍子「……怖い…」


奈緒「…こ、こわ…い??」

藍子「…海の家…………あんな………遠くて……どうしよう…」

奈緒「大丈夫だって、ゆっても海水浴場の中だしさ、戻ろうと思えば…」

奈緒「……てか、さっきまで普通に満喫してたじゃんか」

藍子「……わかんない…急に……怖く、なっちゃって………戻ろ?ね?お願い」

奈緒「わかったわかった、じゃ、しっかりつかまってるんだぞ」

藍子「うん…」


奈緒「……えーっと、さ」

藍子「…??」

奈緒「しっかりつかまってて、とは言ったけどさ…」

奈緒「しっかりつかまるのは、浮き輪でいいんだぞ」

藍子「…でも…」

奈緒「あたしをがっしりつかんでると、泳ぎづらくてさ…」

藍子「やだー、こわいんだもん…」

奈緒「まいったなあ…」

藍子「……奈緒ちゃん……」

奈緒「ん?」

藍子「……頼って、いい…かな…」

奈緒「?? うん……」

藍子「…………ありがとう………………」ギューッ

奈緒「だーかーら!浮き輪だってば、なんであたしを…」

奈緒「……………」

奈緒「……」

藍子「……」


奈緒「……流されないように…離すなよ」


藍子「……うん……」


<波打際>


奈緒「はい、戻ってきましたぞ、藍子お姫様」

藍子「はぁぁ…よかったぁ…」ヘナヘナ

奈緒「…その、無理に連れ出して…ごめんな」

藍子「ううん、私が行くって言っちゃったんだし…」

奈緒「いや、水着だから沖に出ようとか、よく考えたらわけわかんないこと言ってたし」

奈緒「あんまり…あちこち振り回すの、やめるから」

藍子「ううん…怖かったけど、楽しかったから…これからも振り回して、ほしいな」

奈緒「…えっ…」


藍子「あの、ね…沖に出たい、って言ったのは…」

藍子「…トビウオもね、もちろん見たかったけど…」

奈緒「…」

藍子「ほんとは……奈緒ちゃんにリードしてもらいたかった」

奈緒「……」

藍子「頼り甲斐のある奈緒ちゃんに、いちど、甘えてみたかった…」

藍子「だから…言うこと聞かずに、泳いでる奈緒ちゃんを…」

奈緒「…そっか……うん…」

奈緒「ありがとな、頼ってくれて」

藍子「…」

奈緒「……うすうす、気がついてた」

藍子「……そう、だったんだ…」


奈緒「それ言ったら、あたしも、その……」

藍子「??」

奈緒「さっき藍子のこと、いっぱい撮ってたじゃん」

藍子「ああ…うん…」

奈緒「…いろんな藍子を、知りたいなって……思ってたから…」

藍子「え」

奈緒「あたしにないもの、いっぱい持ってる藍子が…眩しくて…つい…」

藍子「…浮き輪で浮いてても、怖いって半べそかいちゃうよ?」

奈緒「ああ」

藍子「……足をつっつく小魚に負けちゃうよ?」

奈緒「それも魅力だし」

藍子「………海水浴場から人払いしちゃうよ?」

奈緒「藍子のしわざだったのか、あれ」


藍子「そっか…奈緒ちゃんには、そんなに眩しかったんだ」

奈緒「……うん、まあ…」

藍子「私が奈緒ちゃんを、眩しいって思ってたのと…同じだったんだね」

奈緒「恥ずかしいけど…そう、だな…」

藍子「…嬉しい、ありがとう」

奈緒「あたしの方こそ…ありがとな」

藍子「………頑張ろう、って思えた」

奈緒「あたしも……ただ、さ」

藍子「?」

奈緒「なんて言ったらいいか…お互い、あくまで自然でいたいな、って…」

奈緒「藍子の前だと、猶のこと」

藍子「…ん、そう、だねっ」

藍子「ゆるーく、リスペクトしあおうね」

奈緒「『ゆるーくリスペクト』か…いいかも、それ」


<夕凪の浜辺>


奈緒「…遊び倒したなー」

藍子「うん、楽しかった♪」

奈緒「オフらしいオフ、だった気がする」

藍子「奈緒ちゃん、いつも気が張り詰めてるから」

奈緒「えー、そんなでもない…つもりだけどなあ」

藍子「でも、お互い満喫できたなら、よかったかな」

奈緒「ああ、ほんとに……名残惜しいけど、そろそろ帰ろうか」

藍子「今日はありがとう、素敵なところに連れてきてくれて」

奈緒「こちらこそ…ありがとう」

藍子「あとで、写真送ってね」

奈緒「わかった、足の写真だけ厳選して」

藍子「もうー、ぷんぷん」

奈緒「あはは」


~~~~~~~~~~~~

プシュー
ウサミンセイ-、ウサミンセイデス


奈緒「じゃ、あたしはここで」

藍子「うん、気をつけてね」

奈緒「寝過ごすなよ」

藍子「大丈夫だって、奈緒ちゃんもお肌のケア、入念にね」

奈緒「そうだった、痛えんだよなあ、ほっとくと」

藍子「ふふふ」

奈緒「じゃお互い、元気な顔でまた会おうな」

藍子「はーい、じゃあね♪」


トウキョウユキ、マモナク ダァシエリイェス


???「…おやぁ、あれは…あーちゃん? なんでこんな駅に…」


~~~~~~~~~~~~~~~


<その日の夜・自室 with 海の写真>


「今日は、二人の写真を入れるフォルダを作った」

「たくさん送られてきた写真から、いろんなものがよみがえる」

「なにげない景色、楽しい瞬間、思いの詰まった表情…」

「これからも、このフォルダにたくさん、増やしてゆきたい」



「お互いの眩しさを、見つけた数だけ」

 -奈緒-
 -藍子-


おしまい

おそまつさまでした

奈緒と藍子の間につくられるバランスが難しかったです
うっかりしたらエンダアアアアになりそうで、無理矢理距離を取った様なところがあります


ちょっと前フリみたいなことしていますが、次作はなんにも考えていません
やるとしたら「ポジパ名物藍子ちゃん会議」「トラプリ名物奈緒ちゃん会議」?
を絡めそうですが、どうなるやら

てかみんな「なおもり」書こうず
書けば出る、なおもりのSSR1枚もない自分が言うんだから間違いはない

------------

ちなみに、トビウオが飛び交う海水浴場、長崎の壱岐で体験しました
ちゃんと人はよけるので怖くはなく、ただただ感動します
千葉でも沖合いでは普通に獲れるので、なめろうなんかになりますね

以上余談でした
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