沢村栄治「実況パワフルプロ野球2016」 (42)

沢村栄治とは、タイトルの沢村賞でおなじみの、戦前の伝説のピッチャー

このSSでは彼が主人公で、パワプロ2016のサクセス『独立リーグ編』を元に、話を進めていこうと思います

(注意)
・沢村の人物像はウィキを元に、勝手な想像で作ってます
・このSSは一部ノンフィクションですが、実在の人物・団体・事件などは全く関係ありません

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1503978556

1934年、この年に行われた日米野球は散々な結果だった
圧倒的な力を見せつける一流メジャーリーガーたちを前に、日本人は手も足も出なかった

ただ1人を除いて

ズドォォォン!

審判「ストライク!バッターアウト!」

沢村「……」ゴゴゴゴゴ

ベーブ・ルース「クソ、何なんだ!!」

ベーブ・ルース「奴が17歳のガキだと!?信じられん!」

この日、メジャーリーガー達は全員が躍起になっていたが、まるで歯が立たなかった

ルー・ゲーリック「オレが決めてくる。あのガキにはこれ以上、好きにさせない」

沢村「……」ゴゴゴゴゴ

17歳の少年・沢村はこの試合、敗北を喫したが、8回5安打1失点と一流メジャーリーガー相手に好投を見せた

その後、彼は国内でも破竹の勢いで活躍し続けた
だが彼は時代に恵まれていなかった

日中戦争の開戦をきっかけに出兵
手榴弾を投げすぎて肩を痛め、左手を銃弾で負傷し、マラリアにかかる

戦地から戻ってきたときにはサイドスローになっていた

太平洋戦争でも召集を受け、約二年間、再び戦地へ向かう事になった
更に肩を痛め、戻ってきた頃にはアンダースローになっていた

1944年、ボロボロの体で本来の力を発揮できないまま、巨人を解雇される

1944年10月2日、三回目の出征

妻「行ってらっしゃい」

沢村「……」

黙って敬礼する沢村

妻「必ず生きて帰ってきてね」

娘「お父ちゃん…」グスッ

沢村「……」

沢村「後で手紙を送ったる、娘を頼むで」

そういって娘の頭をなでる

娘「やだー!いかないでー!」ボロボロ

沢村「……」

そして黙って背を向け、汽車に乗っていく沢村

妻「……」

沢村(野球…またやりたいわぁ。何でこないな事、何度も何度も)

沢村(お国のためとはいえ残酷や)

沢村(またベーブやゲーリックみたいな、バケモノと本気で戦り合いたい)

沢村(……殺し合いじゃなくて、野球で)

~~~

娘「お父ちゃんと野球したかったのに残念や」

妻「しっ!憲兵さんに聞こえるよ!」

妻「お父ちゃんはお国の英雄。そんな事を言っちゃ駄目」

娘「でもー」

妻「……お母ちゃんとやるかい?野球」

娘「うん、やりたい!」

妻(お父ちゃん、どんな風に投げてたっけ…後で練習しておこう)

その後、沢村は1944年の12月2日、屋久島沖西方にて戦死

????

沢村(どこやここ)

戦友「おーい栄治!」

沢村「…っ!?お前なんで生きとるんや。死んだハズやろ」

戦友「それをいったらお前もだろ」

沢村「そうだ。わしも死んだんや」

戦友2「まったく沢村くん、しっかりするでやんす」

沢村「お、おま…!お前はシナで死んだハズやろ。何しとるんや!?」

戦友2「フフフ、英霊になったから、沢村くんを待ってたでやんす」

戦友2「こんなに早く、ここに来るとは思わなかったでやんすけど」

沢村「そうか……すまんのう」

沢村「よし、野球しようか」

戦友2「野球バカなのは相変わらずでやんすね。道具はどこにもないでやんすよ」

沢村「言ってみたかっただけや」

沢村「しかし、ここに英霊たちがいるという事は」

「英雄・沢村栄治よ」

沢村「おどれ何者じゃ」

「君は類い稀なる才能を持ちながら、時代に恵まれず…その野球人生は短い物だった」

沢村「よう知っとるのう。で、誰やおどれ」

「お国ために三度も闘いに身を投じた、その功績を称え…」

「何か褒美をやろう。何でも言ってみなさい」

沢村「……」

「金持ちに生まれ変わりたい?それとも一国の王子?それともイケメンのモテモテが良いかな?」

沢村「野球がしたい」

「ほう、そんな事で」

沢村「あと妻に会いたい」

沢村「帰ったら家族のために生きていこうと思っていた。じゃが結果的にわしは…」

沢村「……」

「わかった。それで、いつ生まれ変わる」

沢村「妻が生涯を全うするまで、ここで待つ」

「そうか」

「ほれ!」パチッ

何者かが、指をパチンとならすと酒と豪華な食事が目の前に現れる

沢村「な、なんじゃこりゃ」

「英霊たちよ、私からの褒美だ。存分に食事と酒を楽しむがいい」

戦友「いただきまーす!」

戦友2「本当、英霊になれて良かったでやんす!」

沢村「……」

戦友2「あれ沢村君、食べないのでやんすか?」

沢村「……嫁が苦労しとるんや。こんな物は喰えん」

沢村「我らが陛下も然り、噂じゃあの身分であるにも関らず、あえて質素な食生活を送っているとか」

戦友「おいおい、俺達は英雄なんだぜ」

戦友2「褒美は素直に貰うべきでやんす」

沢村「貴様らを責める気はもうとうない」

沢村「だが妻も陛下も苦しんでる最中…こんなもの喉に通らん」

沢村「どうせわしは死者。喰わんでも良い」

沢村「なあ、これから日本はどうなるんや」

「……」

「日本人は強い。必ず再生するだろう」

沢村「……」

「勿論、野球の人気も上がるだろう」

沢村「職業野球が人気になるんなら、これ以上の喜びはないな」

「君は本当に野球が好きなんだな」

沢村「三度の飯より野球と嫁や」

沢村「ほんじゃ、どこのどなたが存じませんが」

沢村「わしゃ、長い時間をかけ、そっと家族を見守りたい」

~数十年後~

「英霊よ、いよいよだ」

沢村「……」

「君の妻が危篤の時が来たようだが」

「君は来世、また野球がしたいんだな?」

沢村「せや」

「ならばその才能、あの時と同等の物にしてさしあげよう」

沢村「それ何やけどな」

沢村「最初の20年位は、ボロボロの状態から始めてもらって、ええわ」

戦友達「!?」

沢村「戦争が原因で、全身ぶっ壊れた状態のまま…その能力で、わしは20数年ほど、過ごしたい」

戦友2「何いってるんでやんすか!」

戦友「何でそんな事を」

沢村「……これは罰や。必ず生きて帰ると誓っていたのに」

沢村「わしゃ、妻に苦労をかけさせてしまったんや。とんだ大馬鹿者や」

沢村「罰として、その半生を恥に塗れて生きたる」

沢村「周囲から疎んじられ、泥をすする覚悟や」

沢村「……ただ、野球やるからには活躍もしたい」

沢村「わしは20数年後、またここに現れる」

沢村「日本を守った英霊たちが集う、ここへ」

沢村「その約束をもし、果たしたら…本来の才能をわしに授けて欲しい」

沢村「だが思い出せないようなら、わしゃそのままゴミクズ野球バカで充分や」

「……自ら罰するように、課題を作るのか」

沢村「わしゃ、嫁や娘に苦労をかけさせた大馬鹿野郎や」

戦友2「はぁぁ…しょうがないでやんすね」

戦友2「ここで極楽な暮らしをするのもいい加減に飽きてきたでやんす」

戦友2「オイラもいくでやんす」

戦友「え、まじ?じゃあおれも。生まれ変わって、また二塁手やりたいぜ」

沢村「そうか。貴様らもくるか」

戦友2「沢村君がちゃんと約束を思い出せるように、オイラが導くでやんす!」

沢村「……」

「さあ、時間だ」

沢村「……」

沢村「すまんな…本当に苦労かけて…」

沢村「ご苦労様でした」

沢村の瞳から涙が零れ落ちる

沢村「よお、あんさん…わしらを下界に落としてくれ」

「承知した」

~20数年後~

栄治(わしの名は○○栄治)

栄治(かの大投手、沢村栄治を元に、名づけられた)

栄治(選手の登録名も『栄治』で通している)

栄治(野球が大好きで、高校も大学も野球をやって、いまは独立リーグのアマゾネスというチームに所属している)

栄治(プロを目指して毎日、汗を流しているが…なぜか野球が全然上手くならない)

栄治(奇跡的に付き合えた彼女にも婚約を断られ、挙句フラれる始末…)

栄治(一応チャンスをもらい、来年までにプロ野球選手になれれば、結婚しても良いと言われたが…)

栄治(この一般中学生みたいな能力から、一年でプロ入りできるかどうか…)メソメソ

矢部「泣いたって何も始まらないでやんすよ」

栄治「瑠菜(るな)ちゃんはわしの、初めての彼女…別れたくないんや」ボロボロ

矢部「そもそも、あんな美人と短い間でも、付き合えた事自体が奇跡でやんす」

栄治「なんでや…なんで野球が上手くならないんよ…あんなに練習してるのに」

矢部「確かにあの尋常じゃない練習量で、なんで上達しないのか、不思議でやんす」

矢部「もう野球も彼女も諦めて、一般人になったらどうでやんす?」

栄治「絶対にいやや、野球と共に心中したるわ」

矢部「困ったでやんすねぇ」

矢部「……そういえば今年も、もうあとわずか」

矢部「正月になったら、二人でどこか行こうでやんす。気分転換に」

栄治(そういえば、もうすぐ年明けやわ)

栄治「元日といえば、やっぱあそこしかないか」

矢部「そうでやんすね、まあ寮から近いところで、良いと思うでやんすよ」

ドクンッ

栄治「」ビクッ

矢部「っ?どうしたんでやんすか、急に体をビクッとさせて」

栄治「え、いや…なんでもあらへんわ」

栄治「……」

ドクンッ

栄治「……」

栄治「わし、行きたい所あるんや」

矢部「え?」

栄治「英霊が集う、あの場所に」

~元日~

矢部「何故、ここなんでやんすか…別に近場で良いんじゃ」

栄治「わからない。わからないけど…」

ドクンッ

栄治「……」

栄治「ここに来なきゃ、いけない気がした」

矢部「ご先祖様を敬うのはいい事でやんすが…何も今じゃなくても」

ドクンッ

栄治の鼓動が跳ね上がる

栄治「」

栄治「わしは…わしは…」

ドクンッ

栄治「」ビクッ

栄治「わしゃ、野球がうまくなりたいんや!ほんで瑠菜ちゃんと結婚したいんじゃ!!」

矢部「いきなり何を叫んでるんでやんすか」

ヒラヒラ…

矢部「ん?空から何かが落ちてきたでやんす」

栄治「紙や…なになに『天才の入部届け』?なんじゃこりゃ」

沢村はその紙を拾う
すると、全身に凄まじい衝撃が走る

栄治「がぁ…ぅあ…!」ビクッ

栄治「うっ…ぁぁ…」

ドサッ

矢部「ッ!?」

矢部「栄治くん!しっかりするでやんす!栄治くーん!」

栄治「」

~10分後~

栄治「ん、うーん…」

矢部「栄治くん!やっと目が覚めたでやんすか」

栄治「……」

栄治「全部、思い出したわ」

矢部「は?」

栄治はそういうと、矢部に黙って敬礼をする

矢部「なにやってるんでやんすか?」

栄治「矢部君、わしはのう…」

栄治「大和の魂を胸に…野球界で名を馳せてみせる」

栄治は天才型になった!
全ての能力が上がった!
ドロップを覚えた!
威圧感、ノビA、重い球、ジャイロボールを取得した!
超早熟タイプになった!

矢部「頭、大丈夫でやんすか?」

翌日・練習場にて

新島「あけましておめでとう!」

全員「おめでとうございますキャプテン!」

新島「んじゃ早速、練習しようか」

新島「ん?」

栄治「……」

新島「……」ジーッ

栄治「……?」

新島「お前誰だ!」

栄治「栄治です」

新島「なんか…ちょっと見ないうちに、面構えが変わったな」

栄治「そうっすか」

新島「短期間でこうも雰囲気が変わるとはな」

栄治「あんさんも眼鏡とったら別人になるやろ」

新島「む、そうか?」

阿比留「遅れてゴメンね。おはようみんな」タタッ

チームメイト「チッス代表」

阿比留「ん?新人さんがいるね」

栄治「栄治です」

阿比留「は?……あ、本当だ。失礼した」

阿比留「しかしちょっと見ないうちに、いい面構えになったね」

阿比留「前は明らかに呪われてそうな雰囲気を身にまとってたけど」

栄治「……」

新島「よし次はダッシュ!」

チームメイト「ウス!」

矢部「栄治くん!速すぎるでやんす!」

栄治「そっちこそどうしたんや。調子悪いんか?」

矢部「栄治くんは、いきなり足速くなりすぎでやんす!」

栄治「うお!」ドサッ

チームで誰よりも早く走っていた栄治は、突如、ぶざまにこけてしまう

矢部「栄治くん!?」

小石川「おいおい大丈夫かよ栄治。ほら手をかしてやるから」

栄治「む、戦友…悪いな」ガシッ

小石川「戦友って…まあ間違っちゃいないが」

小石川「そんなことよりも、なんで急にそんなにパワーアップしてんだ?」

栄治「色々と思い出したからだよ」

小石川「?」

矢部「栄治くんは元旦からちょっと様子がおかしいんでやんすよ…」

小石川「ふーん」

栄治「……」ダダッ

栄治「痛っ!」ドサッ

矢部「またコケたでやんす」

小石川「おいおい、もうたすけねぇぞ」

栄治(いきなり能力が上がりすぎて、うまく制御できていない)

栄治(本来の力を取り戻しても、まだまだ課題は残りそうだ)

栄治(昭和の男らしく、ひたすら泥をすすっていくしかない)

瑠菜「栄治。がんばってるわね」

小石川「あ、瑠菜さん!」

栄治「…!!」

栄治「……」

栄治(やっぱり…間違いない)

瑠菜「大丈夫?いきなりコケてたけど、気をつけないと怪我するわよ」

栄治「……」

瑠菜「……?」

栄治の瞳から水滴が零れ落ちる

瑠菜「ちょっと、子供じゃないんだから、転んだ程度で泣かないの」

瑠菜「全く、そんな事じゃプロなんて夢のまた夢よ」

栄治「……」テクテク

栄治は泣きながら、さらにユニホームを泥だらけにしたまま、ゆっくりと瑠菜の方へと歩いて行く

瑠菜「栄治…?」

栄治「……」ギュッ

強く彼女を抱きしめる

瑠菜「っ!?」

チームメイト全員「!!?」

新島「ぶっ!!」

瑠菜「」

栄治「ずっと辛い想いをさせたな」

瑠菜「え?」

栄治「苦労かけさせたな。大変な一時を一緒にいてやれなくてすまない」

瑠菜「え、え、あの…」

栄治「意味が分からなくてもいい。ただ言わせて欲しい」

栄治「本当にすまない」ボロボロ

瑠菜「え、栄治…いったい何のこと?」

栄治「わしは!!」

瑠菜「は、はい!」

栄治「今度こそお前を幸せにする。もう寂しい想いさせない」

瑠菜「栄治…」

栄治「わしは最強のピッチャーになったる。いまに見ててくれや」

瑠菜「……うん」ギュッ

矢部(なんで、ちょっと良い雰囲気になってるんでやんすか)

小石川「瑠菜さーん、泥!泥が服についちゃってるー!」

新島「な、なな…真昼間から貴様ら何やっているんだー!!///」

ここまで

今のところ、ドコまで書くか決まってないけど、最低でもサクセスまでの話は書く
気が向いたらプロ野球入ってからの所も書くかも

瑠菜かわ期待

名字は沢村でいいんじゃない?
野球好きなお父さんが沢村栄治みたいになってほしくて名付けたとかさ

影浦や石丸も出して欲しい。

>>19
曖昧にさせて置いたけど、そういう意見があるならば
今後、話の流れ的に苗字を名乗る事があれば、そうしようと思います

>>21
考えときます。どのチームへ入団させようか
北井さんに関しては、何か情報さえ得られれば

この2人以外に、1人だけ確実にだそうと考えてるのがいますが…
かなり数奇な運命を辿った人物なので、どんな風に登場させようか悩んでます

数時間後

瑠菜「栄治~がんばって~!」

泥だらけになった私服を洗いに出した瑠菜は、ジャージに着替えて、グランドへ応援に向かいにきた

栄治「……」スッ

栄治は黙って手を挙げる

新島「なあお前、アマゾネスに戻ってくる気はないのか」

瑠菜「今はあまり、野球がしたいって気分じゃなくて…」

新島「お前の実力なら独立リーグどころか、プロでも通用するんだがな…もったいない」

瑠菜「私の事よりも、栄治はどうしちゃったんですか」

瑠菜「さっきから練習を見ていて思いますけど、打撃、守備、走力…いずれも段違いにパワーアップしてますけど」

新島「ああ、あまりに能力アップしてるものだから」

新島「ドーピングやったのかとか、変な博士から改造手術をうけたのかとか、色々と問い詰めてみたんだが」

新島「……あいつ、なんて答えたと思う?」

新島「『自分が何者かを思い出した』だってさ」

瑠菜「えと…いまさら厨二病?」

新島「さあな。だが、あのチームで一番野球がヘタクソだった男が、あそこまで覚醒したのは喜ばしい事だ」

新島「よし、今日の練習はここまでだ!」

チームメイト全員「チス!あざーした!」

栄治(さて、今日はこのあと何をしようか…)

栄治(そういえば、今日は投球練習してないな。よし、ブルペンにでもいくか)

栄治「矢部くん、投球練習したいんや。付き合ってくれるか?」

矢部「良いでやんすよ」

瑠菜(お、待ってました。今日はやらないとばかり思ってたわ)

新島「さて、投手としてはどこまでレベルアップしたのか…」

~~~

栄治(前世で肩を壊して以来、現世の今日に至るまでアンダースローで投げてきたからな…)

栄治「久々にオーバースローで投げてみるか」

栄治「フン!!」

ガシャァァン!!

栄治が本気で投げた球は、とんでもない方向へと飛んでいく

矢部「栄治くん、いまのは流石にないでやんす」

栄治「すまんすまん」

栄治「うらぁ!!」

ガシャァァン!!

またしてもとんでもない方向へと投げてしまう

栄治(やっぱりまだ、体が慣れてない…)

栄治(制御しきれてないな)

新島「おいおい、パワーアップしたと思ったら、コントロールは以前よりも酷くなってるじゃないか」

新島「そもそもお前はアンダースローだろ?急にオーバースローに変えてどうした」

栄治「わしは本来、オーバースローなんですわ」

新島「え、そうなの?それにしても制球が酷すぎる、アンダースローの方が良いんじゃないか?」

新島「なあ、お前もそう思うだろ?」

瑠菜「……」

新島「瑠菜?聞いてるか?」

瑠菜(大暴投ばかり注目されてるけど…)

瑠菜(いまの球、ほとんど見えなかったわ)

瑠菜「えっと…栄治、失礼を承知で聞くけど」

瑠菜「やっぱりドーピング使ったの?それとも改造手術?正直に答えて」

栄治「聞いてなかったか?自分が何者か思い出したんや」

瑠菜「……あなたは何者なの」

栄治「野球を心から愛する兵隊や」

瑠菜・新島「」

矢部(ただの厨二でやんす)

次の日

新島「おい栄治」

栄治「へい、なんでしょう」

新島「私と勝負しろ」

栄治「えっと…打撃練習ですかい?」

新島「打撃練習などと言う生やさしいものじゃない」

新島「文字通り真剣勝負だ」

栄治「……」

栄治「すいません、その勝負を受ける事はできません」

新島「む、何故だ」

栄治「わしはまだ制球力がダメダメですわ」

栄治「デットボールを連発させかねないです。女性を傷つけたくない」

新島「紳士なのは良いが、気にするな」

栄治「しかし、ストライクが入らなければ…」

新島「ひとまず、慣れ親しんだアンダースローで投げてみろ」

栄治「……」

栄治「ほんじゃ、いきますぜキャプテン」

新島「こい!」

栄治「フン!」

ズバァァン!!

ボールは高めに入った

新島(まだ制球に難があるが、まあこれは許容範囲だな)

ズバァァン!!

新島(二級連続ボールか)

栄治「くそ…入ってくれ!!」

ゴゴゴッ!!

新島(うお!?なんだこの球は…異常にホップしていくぞ)

ズバァァン!!

新島(おしいな、いまのもボールか…)

新島(いや、それよりも今の球は)

新島「おい矢部!スピードガン持って来い!」

矢部「了解でやんす」

新島「暴投には気をつけろ。そこで計っていてくれ」

栄治(まずいな、あと一球でフォアボール)

栄治「ええいままよ!」

ズドォォン!!!

新島「うお!?」

地面スレスレの低めのボールが、打者の手前で異様にホップし、高めのボールゾーンへと入っていく

審判係「ファアボール!」

新島「……一応、この勝負は私の勝ちだ。あまり嬉しくないがな」

栄治「こんな結果で申し訳ないです」

新島「おい矢部、スピードガンみせろ」

矢部「……こ、これは…」

新島「どうした?」

新島はスピードガンを覗くと、その数値をみて、目を大きく見開く

新島「なっ、148キロだと!?」

新島(アンダースローでこんな球を、投げる奴いるのか!?)

栄治「もっと制球力を鍛えて、出直しますわ」

そういって、ブルペンへと向かっていく

それから毎夜、矢部は栄治の練習に付き合わされた

そして3週間が経過する

ズドォォン!!

矢部「ぎゃああ!!」

栄治「どうしたんや、矢部くん」

矢部「だ、だいぶ…コントロールが良くなってきたでやんすね…」

矢部「おかげで手が痛いでやんす」

矢部(キャッチャーミット使っても、ビリビリくるでやんす)

栄治(もうだいぶ、ストライクも入るようになったのう)

栄治「ほんじゃ、あと40球ほど付き合ってくれるか?」

矢部「ばっちこいでやんす!」

ズドォォン!!ズドォォン!!ズドォォン!!

矢部「~~~ッ!!!」

次の日

阿比留「全員、注目してほしい」

阿比留「アマゾネスに新しい戦力が加わる事になった」

番堂「番堂長児や。よろしく」

矢部「番堂ってあの…」

小石川「すっげぇ…本物だ。あのアメリカの名選手が…」

栄治(番堂長児…この世代のバケモンの1人…)

栄治(まさか、お目にかかれるとはのう)

この時、栄治の全身からアドレナリンが溢れ出していた

栄治(勝負したいわ。このバケモノと全力で)

~~~

新島「やはりアメリカで戦ってきた選手が来ると、みんな気合はいるな。良い傾向だ」

投手1「えい!」

カキィィン!!

番堂「おらどうした!こんなヘナチョコじゃ通用せんで!」

栄治「……」ジーッ

番堂「ん?」

番堂(……)

番堂「なあ新島キャプテン」

新島「どうしました」

番堂「あいつ何者や」

新島「ああ、あれは栄治っていう選手で、投手やってます」

番堂「まだ若いやろ。なんでこんな所におるんや」

新島「え?」

番堂「あいつからは、強者の雰囲気がするで」

番堂「去年の成績は?」

新島「たしか防御率8点台です。ちなみに中継ぎで」

番堂「んな!?そんなアホな!」ガクッ

栄治(勝負したい…あのバケモノと)ウズウズ

ギャーギャー!

栄治(何を騒いでるんや?)

番堂「嘘つけ!あれが防御率8点台な訳ないやろ!」

新島「だから!去年までの話だっつーの!」

番堂「じゃあ今年はどうなんや!」

新島「それが突然、覚醒し始めて…まだまだ未知数で」


矢部「番堂さんが栄治君の事を、評価してるみたいでやんす」

栄治「ふーん」

矢部「…?嬉しくないでやんすか?」

栄治「わしはまだ何も見せていない」


番堂「ち、もうええわ」テクテク

新島「あ、ちょっ…」

番堂はツカツカと、栄治の目の前まで歩いて行く

番堂「……」

栄治「……」

番堂はゴツッと音を立て、自分の額を、栄治の額にぶつける

矢部「あわわわ!?」

新島「こら!意味も無くケンカふっかけるのやめろ!」

番堂「栄治とか言うたな?」

栄治「ええ。会えて光栄ですわ番堂さん」

番堂「なんで独立リーグ何かにおるんや」

栄治「あんさんこそ」

番堂「……」

栄治「……」

番堂「ワシと勝負せいや」

栄治「望むところですわ」

矢部(元メジャーリーガーにあそこまで詰め寄られて、なんで堂々としてるんでやんすか)

瑠菜「何か騒がしいけど、どうしたんですか」

新島「実は…かくかくしかじか…」

瑠菜「え、番堂さんが入団してきて…しかも栄治と勝負?」

小石川「乱闘でも起きるんじゃないかってくらい、二人とも殺気立ってて…もう冷や冷やでしたよ」

瑠菜「……」

新島「んじゃ、私はあいつの球を受けにいってくる」

矢部「キャプテン」

新島「ん?」

矢部「覚悟したほうが良いでやんすよ」

新島「どういう意味だ」

矢部「すぐにわかるでやんす」

矢部「オイラはスピードガンを用意するでやんす」

栄治「……」ゴゴゴゴ

番堂「……」ゴゴゴゴ

小石川「な、なんだこの空気…」

矢部「二人とも威圧感がハンパじゃないでやんす!」

新島(番堂さんは分かる。だがなぜ栄治までもが、あんなオーラはなっているんだ)

栄治(毎夜毎夜、矢部君と特訓を積み重ねたおかげで、やっと力の制御が出来るようになってきた)

栄治(まずは…足を思いっきり上げて)グワッ

新島(なんだあのフォームは)

番堂(野球漫画に出てきそうな投げ方やな)

栄治(腕を振り下ろす!)

新島(なに、オーバースローだと)

手からボールが離れた瞬間、既にボールは新島のグラブの目の前まで接近していた
そして球は、勢いよくホップしていく

ズドォォン!!!

新島「うわぁぁ!?」

新島(な、なんだこの球は!!)

番堂「」

番堂(こ、こいつ…やっぱりアメリカのバケモン達と同等の球を…!!)

瑠菜は矢部のほうへと向かっていく

瑠菜「スピードガンは何キロだった?」

矢部「ひゃ…160キロでやんす…」

番堂(ふん。いまじゃ160なんざ、珍しくもない)

番堂(……とはいえ、あの手前でホップする球はやっかいや。クローザーの上原に通じる物がある)

矢部「凄いでやんすよ栄治くん!160キロでやんす!」

栄治(160か…大谷やチャップマンにはまだ勝てないか)

栄治「フン!」

番堂「…!!ぐ、速い」

ズドォォン!

バットは空を切る

矢部「今度は161キロでやんす…」

栄治「これで終わりだ!」

ガキィン!

栄治「っ!」

矢部「ファールでやんす!」

栄治(ライナー性のファールか。さすが海外にいっただけある選手や)

栄治「じゃが負けん!」

ガキィン!

新島「またファールだ」

それからしばらくして

栄治(……10級連続でファールか、やるのう)

番堂(チッ、ボールが前に飛ばん)

小石川「俺達はひょっとしたら、とんでもない名勝負を見ているんじゃ」

矢部「全部の球が、150キロ後半以上いってるでやんす…!」

栄治(まっつぐで決めたかったけど、止む終えん)

栄治(これで決めたるわ)グッ

シュッ…

番堂(遅いボールでひっかけてきたか。まあ予想はしてたわ)

番堂「これで終わりや!」

ククッ

番堂(な、カーブ!?いやちょっと違う)

驚愕した番堂だが、しっかりと球をバットでとらえる
弾く音が響くと、そのまま白球は斜め上に上がっていく

栄治「……っ!!」

番堂「バックスクリーンへ一直線」

番堂「この勝負はワシの勝ちや」

栄治「……」

栄治はマウンドに立ったまま、うつむく

新島(これほどまでの覚醒をして…うーむ、何か気の毒だ)

新島はマウンドへ近づいていく

新島「栄治、お前はよくやった」

新島「相手は元メジャーの男。いつまでもメソメソすんな!」

栄治「く…くくく…」

新島「ん?」

栄治「ハハハ…ええのう、やっぱこれ位、凄いのがいないと、気合が入らんわ」

新島「なんだ、落ち込んでると思いきや、目をギラギラと光らせてるじゃないか」

新島「そうだ、その調子で精進しろ!」

出井田「アマゾネスの偵察に来たのは良いですが…」

出井田「あんな怪物がいたとは…なぜ今まで騒がれなかったのか、不思議でなりません」

出井田「元々は番堂選手の様子を見るのが目的だったのですが…思いもよらぬ物を」

~~

瑠菜「栄治!やるじゃない!」

栄治「瑠菜ちゃん」

瑠菜「びっくりしたわ!覚醒したのは知ってたけど、ここまでとはね」

瑠菜「もう少し制球力が上がれば、怖いもの無しよ!」

栄治「……」ダキッ

瑠菜「キャッ!もう、また皆が見てる前で抱き付いてきて…」

栄治「新婚旅行はドコへ行きたいんや?」

瑠菜「ちょっと、まだプロに指名されてないじゃない。気が早いわよ」

栄治「そうやな。まだ約束は果たしていないが…」

栄治「必ず約束は果たす。その自信もある」

瑠菜「フフフ、期待して待ってるわ」

栄治「……」ギュゥゥ

新島「貴様ら!いつまでイチャついてるんだ!」

番堂「わかいのう」

~~

出井田「」

出井田(ちゃっかり、憧れの瑠菜さんに抱きついて…)ピキピキ

出井田「栄治さん…絶対に貴方には負けないですよ。二つの意味で」ゴゴゴゴ

今日はここまで

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