朋也「……リトルバスターズ?」(20)
世界が白に染まっていく。
雪。
そう、雪だ。
ゆっくりと降るそれは、確かに町に積もっていく。
汐「……パパ」
朋也「……どうした、汐」
汐「今……どこ?」
汐「……もう電車の中?」
朋也「っ!」
朋也「……ああ、もう電車の中だ」
言って、抱きしめる。
汐はすっぽりと腕の中に納まった。
……まだ、小さい。
汐「暗い……」
汐「夜なの?」
朋也「そうだよ、真夜中なんだ」
汐「そう……」
汐「パパ……」
汐「――だいすき」
朋也「ああ……パパも汐が大好きだ」
言って、一層強く抱きしめる。
離したくはなかった、離すわけにはいかなかった。
汐「……」
朋也「汐?」
そっと、顔を見る。
汐の体からは、もう、力が抜けていた。
朋也「汐!」
朋也「汐ぉぉおーっ!!」
朋也「…嫌だ」
朋也「こんなのは、嫌だ……」
朋也「渚……」
朋也「汐を助けてくれ……渚ぁ……」
なんて、情けない声だろう。昔なら……そう、きっと杏辺りがからかってくる。
俺は学生の頃を想起した。
春原と馬鹿やって、杏と智代が春原をぶっ飛ばして、
藤林は慌てふためいて、ことみは相変わらずのボケをかまして、
……ヒトデが空を飛んだ事も、あったような。
そして、渚。
藤林と一緒になって騒動を止めようとあたふたしたり、
ことみと共に凄まじいボケをかましたりしてくれたが。
いつも、あいつは、全てを包み込むんだ。
朋也「誰か……誰か汐を……っ」
渚……見てくれ。汐が大変なんだ。
こんな時、父親ってのはどうすればいいんだろうな?
渚……お願いだ。
どうか汐を守ってくれ。包み込んでくれ。
朋也「渚……」
汐を抱いたまま、俺は支えを失ったように、雪に倒れた。
一面、白い世界……
……
雪……
そう、雪だ。今なお、それは降り続け、僕の体を白く覆っていく。
ああ……
僕はこんなところで何をしているのだろう……
いつからこんなところに、一人ぼっちでいるのだろう。
物悲しい世界だった。
白くて、どこまでも白くて。
……でも、それだけだった。
……
雪に埋もれた、僕の手。
引き上げる。
僕には体があった。この世界には、白と、僕だけが在るんだ……
………
……
…
不意に……光が見えた気がした。
いや……確かに見た。玉のような形の、光だった。
……あれは、なんだろう。
見た事がある、ような……
僕はとっさに、手を伸ばした。
光に向かって。
……傍から見たら、きっと今の僕の姿は滑稽だろう。
でも、ここには誰もいない。気兼ねする必要は無かった。
……
手が、光に触れる。
そっと、包み込むようにして、光を捉えようとした。
……ダメだ、光は、光だから、僕の手では捕まえられない。
僕は落ち込んだ。こんな世界で、白以外の何か。それが小さな光であっても、僕は手にしたかった。
……
光は飛んでいく。
何処へ行くのだろう。
僕は出来る限り、あの光を見送ろうと考えた。きっとそれは、こんな世界では贅沢な行為だと思えた。
光が弾けた。
それは僕から程近い。
……いや、弾けた?
僕は自分の表現に首を傾げる。
弾けた、は違うような気がする。
まるで、そう、まるで。
水面に広がる波紋のようになって、世界に溶けていったんだ。
波紋は、それだけではなかった。
いくつも広がり、どこまでも広がり……
僕はその光景に目を奪われながら、沈んでいった。
暗い、意識の底に。
………
……
…
「きょーすけが帰ってきたぞーっ!」
その声に、俺は目を覚ます。
部屋の中は暗い。……日が昇っていないのだから当然だ。
朋也「……まだ、夜じゃないか」
眠い。
朋也「……はぁ、行くか」
しかし、無視してベッドに潜り込むわけにはいかなかった。
――きょーすけが帰ってきた。
この言葉から起こるイベントは、どれほど唸っても一つしか無いと言えた。
こんなところで、今回は終わりです。
話はついさっきおぼろげに浮かんだやつを行き当たりばったりで書いてますので、
進行は遅めです。
今後は書き溜めしていきつつ、朋也の性格やらをしっかり把握していきたいです。
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