少女「コミケ行くので泊めてください!」男「は……?」 (833)



セミ「ミンミィーーーーーーーーンミーーーーンミーンミーンミーンミィーーーーーーーーwwwwwwww」

セミ「ジルルルルルルルルゥルルルルルルジルジルジルルルルゥ……、ルルルゥ……、ル」

セミ「ツクツクボウシ! ツクツクボウシ! ツクツクボウシ! ニィーォニ! ニィーォニ! ニィーォニ! ニィーーーーwwwwww」


男「あ……、暑い……」フラフラ

男「ダメだ……、今年の夏は涼しいんじゃなかったのか? 溶ける、溶けるぞ……」

男「大学も夏休みになったばっかだし、この三連休は、クーラーきかせて家に引き込もるか……」


男「……ん? 俺のアパートの入口……、なんだ? 大家さんと、誰かがモメてる……?」

 

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・全部で600レスほどの予定です
・数日間に分けて更新します

※この作品はフィクションです。実在の人物や団体等とは関係ありません




少女「だから! 合鍵を貸してくださいと言ってるんです!」

大家「そう言われてもですね……。何か証明するモノが無い限りは」

少女「証明……? そうだ、このチャーム! 彼なら同じのを持ってるハズですよ!」

大家「そんなの知りませんよ」


男「あのー、どうかしました?」

大家「ああ。男さん。ちょうどよかったです。実はですね……」


少女「男さん!!!」ダキッ

男「うおっ!?」ヨロッ


少女(お願い、男さん! ハナシを合わせて!)ヒソヒソ

男(え……、えぇ!?)ヒソヒソ


大家「男さん。この女の子が、あなたの姪っ子だって言うんですよ。本当ですか?」ズッ

男「う……。うぅ、まあ。今は、そんなところです」ダラダラ

大家「今は……?」

男「え! あ。いや。昔から姪っ子ですとも!」

大家「こんなに歳も近そうなのに……?」

男「と、歳の離れた兄貴がおりまして……。その娘で……。ハハハ」


大家「ふうん……」

男「ハ、ハハハッ……」ダラダラ

少女「……、…………」ダラダラ

大家「…………」


大家「……まあ、いいでしょう」フゥ

少女「!」パァ


大家「―――ただし!!」

男「はっ!?」


大家「その子を部屋に置くのであれば、他の部屋にメイワクにならないように」

大家「また、今後もしばらく一緒にいるのであれば、必ず私に一言お願いします」

大家「……いいですね?」

男「は……、はぁいぃぃぃぃっっ!!!」

少女「すごいな、この大家さん……。威圧感がハンパじゃない」


大家「では、私はこれで」ガチャ

男「ごきげんようございますぅぅぅぅっっ!!!」


バタン


少女「……スゴいヒトですね」

男「あのヒト、怖いヒトに見えただろ? 本当に怖いんだよ」


男「……それで、君はいったい?」

少女「あ。その。ええ、と……」アハハ

男「…………」

男「今晩泊まるところとか、無いの?」

少女「え! ハイ! ありません!!」

男「なんでそんなに元気なんだ……」


少女「実は私、男さんにお願いがありまして」

男「いちおう聞くだけ聞くよ」

少女「ありがとうございます! それではお言葉に甘えて!!」



少女「コミケ行くので泊めてください!」



男「は……?」

少女「コミケです! 知ってますよね、コミケ!?」

男「コミ……、ケ……」


男「……いや、知らないな」

少女「えぇ!? いや、コミケですよ、コミケ! コミックマーケット!」

少女「有明は東京ビッグサイトで行われる、日本最大の同人誌即売会!!」

男「有開……、東狂ビッグサイト……? お前、まさか……」


男「“COMIKE”のコトか……?」

少女「COMIKE……?」

男「どうにもハナシが噛み合わないな」

男「まあ、とにかく部屋に入れ」



――男の部屋

少女「わあ! ボロっちいですね! ここに泊めてくれるんですか!」

男「ボロっちくて悪かったな。それにまだ泊めるとはヒトコトも言っとらん」

少女「えぇ!? てっきり、もう泊めてくれるものかと……」

男「それはハナシを聞いてから考える」


男「で? コミケ、といったか? それは何なんだ?」

少女「はい! コミケとは、全国から数十万の人々が東京に集まる、夏と冬の大イベント!」

少女「集まった人々は、三日間の会期中、自分の創作作品を発表し、また買い求めるのです!!」


男「ふうん……。聞く限りでは、COMIKEと大差無いようだな」

少女「アルファベットなのが、そこはかとなく威圧感を覚えますが……。COMIKEというのは、いったい?」

男「いや、概要は、そのコミケとやらと同じだな」

男「お盆と年末の年二回。有開の東狂ビッグサイトで三日間行われる、同人誌の即売会だ」

少女「……なんか、ちょっと漢字、違くないですか?」

少女「どことなくヤバそうというか……」

男「そうか? ムカシから、そういう地名なんでな」


男「……で、COMIKEに行くために、俺の家でどうするって?」

少女「ハイ! 男さんの家に泊めてほしいんです!」


男「……なんでまた俺の家なんだ? たしかに有開には近いが」

少女「え!? そ、それはですね……」


少女「……そう、優しそうだったので!!」

男「んな、テキトーな。どこで俺を知ったんだ?」

少女「……男さんの家の中とか?」

男「オイオイオイ盗撮されちゃってるのか」

少女「してませんけど!!」


男「まったく、弱ったな」


男「じゃあ、もし俺がココに泊まらせなかったら、どうする?」

少女「え、ええと……。ビッグサイト周辺のホテル、とか……」

男「んなモン、去年のこの時期から予約埋まってるに決まってるだろう」

少女「ぐ。では、都内のどこか、テキトーな場所……!」

男「女の子一人では危ないかもしれんなあ」

少女「ええい、ならば三日間ぶっ通しでビッグサイトに並んでやりますとも!」

男「徹夜組じゃねぇか!!!」


男「……マジでどこも行くトコ無いの?」

少女「はい……」


男「この近くに、友達とか知り合いとかは?」

少女「いません」

男「毎日実家からビッグサイトに通うのは?」

少女「……遠すぎます」

男「COMIKEに参加するのは諦めるのは?」

少女「絶対にイヤです」


男「……どうしてそんなにCOMIKEに参加したいんだ?」

少女「…………」

少女「……おじいちゃんから、聞いてたんです」

少女「コミケは、それは楽しい催し物だって」


少女「日本中から、星の数ほどの人々が集まり、創った作品を通じて交流する……」

少女「参加するのはタイヘンだけど、みんなイキイキしてて、自分も楽しかったって」

少女「そんなイベントに、私も行ってみたかったんです……!」

男「…………」


男「……わかったよ」フゥ

少女「ほ、本当ですか!!」

男「ああ。そんなハナシ聞かされて、追い出すのも薄情だろうしな」

少女「やったー!!」


少女「ありがとうございます、男さん! お礼に何でもしますから!!」

男「……何でも?」

少女「……? ハイ、何でもしますよ」

男「…………、……いや、俺から君に頼むコトは無いよ」

少女「ええっ! どうしてですか、料理くらい作れますよ!」

男「バカ。料理するとして、いったい何を作るつもりだ?」

少女「……? 普通に、冷蔵庫の中のモノを使って……」

男「……そんなコトでCOMIKEを乗り切れると思っているのか」

少女「なんですと」


男「いいか? COMIKEは、“戦場”だ」

少女「はい。おじいちゃんも言っていました。コミケは“戦場”そのもの、いや、それ以上であると」

男「調子乗って肉なんか食いまくれば、即リバースだ」

少女「なんですと……」

男「COMIKEに参加するつもりなら、まず食事から厳密に考える必要がある」

男「もちろん注意を払うべきは食事だけじゃない」

男「COMIKEに適した服装、装備、健康状態、心構え……。お前、体力に自信はあるか?」

少女「ハイ! 不肖私、元気なコトだけが取り柄なので!」

男「それはいいコトだ」


男「だが、生半可な体力では、COMIKEではとても保たない」

男「地上に存在する、あらゆるイベントよりもカコクなのが、COMIKE」

男「そう胸に刻んでおくといい」

少女「はい……。あ、質問なのですが」

男「なんだ?」

少女「男さんってCOMIKEに詳しいみたいですけど。今までに行ったコトがあるんですか?」

男「そうだな……。友人の付き添いだが、夏と冬の2回ずつ。計4回だな」

少女「うわあ……。結構なベテランですね」

男「俺なんかまだまだだぞ。その友人は、計20回近く行ってるらしいし」



男「まったく……。まさか、この三連休はCOMIKE参加だとはな」

男「しかも自主的に」

少女「というコトは、自分から行ったコトは?」

男「無いな。第一、アニメとかコスプレとか、そんなに詳しくないし」

男「だけど、友人は今回も参加するらしい。いちおう連絡は入れておくか……」

少女「友人さんは詳しいんですか? その、オタク文化ってやつに」

男「ああ。根っからのオタクというか、ロジカルというか、ム○クというか」

男「そういえば、君はアニメとか詳しいのか?」

少女「いやー、実は私も、それほどは」


男「……なのに、COMIKEに行きたいのか?」

少女「はい! コミケなのか、COMIKEなのか、わかりませんが」

少女「私はソレに参加するために、ここまで来たので!!」ムフー

男「……元気だなぁ」

少女「ハイ! 元気なコトだけが取り柄なので!!」


男「そうか。わかった。じゃあ、明日から三日間のジュンビをするとしよう」

少女「ジュンビ? 具体的には、何を?」

男「ん……。まあ、COMIKE用の服とか、携帯食料とか、飲み物の用意だな」

少女「えぇー、そんなのまで必要なんですか?」


男「さっきも言っただろう。COMIKEは、“戦場”だ」

男「戦場でジュンビを怠れば……、死、あるのみ」

少女「むぅ……。たしかにソレは同意できるところですね」


男「とりあえず、しばらく装備とか考えるから、そこらへんでもテキトーに見ててくれ」

男「……あ」

少女「……? どうしました?」

男「……俺、三日間もCOMIKEに満足に参加できるほど、金が無いぞ」

少女「ふっふっふ。ご心配なく。軍資金なら、ここに!」ビラビラビラッ

男「や、やめなさい! そういうの!!」

序章は以上になります。
第一章は、本日18時ごろの開始を予定しています。

メガテン4Fかな?

これってなんかの続き?
もしそうならurl貼ってもらえませんかね

>>23
検索したらまじで同じ名前で笑いました

>>24
新作ですよ


それでは、第一章を開始します。
200レスほどの予定です。





男「おい、起きろ」ユサユサ

少女「んゆ……、もう食べられましぇん……」

男「ベタな夢見てんなァ」


男「ほら、起きろ」ユサユサ

少女「んあ……。……っくぅ、ハァ。あ、朝ですか……」ガバァ

少女「……あれ? いま何時ですか?」

男「朝の3時半だな」

少女「いやソレ深夜でしょう! ほら外、真っ暗じゃないですか!」カーテンシャァッ


少女「COMIKEが始まるのって何時でしたっけ!?」

男「朝の10時だな」

少女「まだ六時間半もあるじゃないですかーっ!!」

男「……お前、知らないのか?」

男「“既にCOMIKEは始まっている”」

少女「え……?」

男「今からタクシーを呼ぶ。お前もすぐに支度をしてくれ」

少女「支度……、といっても、何を……?」

男「服を着替えて、顔を洗って、歯を磨くだけだ。他のコトは向こうで済ます」



――アパート前の道路

少女「はーい男さん。ジュンビできましたよー……、って何ですかそのカッコウ!?」

男「……? 何かおかしいか?」

少女「完全に登山服じゃないですか! それに何ですかそのバカデカいリュック!!」

男「COMIKEは登山のようなモノだ。実際、登山服が最も適していると友人の奴も言っていた」

男「それに、このくらいのリュックサックでないと、“戦利品”は積み込めない」

少女「おお……。“軍資金”に、“戦利品”。らしく、なってきましたね!」ムフー

男「やる気いっぱいで何よりだ」

少女「ええ! がんばりますとも!」グーキュルルルルルル!!!!


少女「あ……」

男「……。まあ、そりゃ腹くらい減るよな」

少女「お恥ずかしい……。そういえば朝食はどうするんですか?」

男「向こうで食べる。だが、完全に空腹というワケにもいかないな」

男「そら。エナジーバーだ。他にもノドが渇いたり、頭が痛くなったりしたら、言えよ」

少女「ありがとうございます!! むむ、カンソな見た目ながらオイシイ……」モキュモキュ

男「…………」フッ

男「……おっと。タクシーが来たぞ」


キキー


カパッ

少女「よいしょ、っと……。入っちゃっていいんですね?」

男「ああ」


運転手「では、どちらまで?」

男「有開の、ビッグサイトまで」

運転手「おお……。この時間から並ぶんですか!」

男「いえ、並ぶワケじゃないんですけどね」

男「正確には、ビッグサイト近くの、鷲ントンホテルまでお願いします」


運転手「承知しました」ブオー


少女「……? どういうコト、男さん?」

少女「こんな早くに行くからには、ビッグサイトに並ぶんじゃないの?」

男「ばか。電車の始発の時間、つまり朝5時半よりも前に待機列を形成しているのは」

男「“徹夜組”といってだな、COMIKE準備会はこういった徹夜行為を禁止している」

少女「ほーん、なんで?」

男「主な理由は近隣のメイワクになるからだが……。まあ、見ればわかる」

男「とにかく、到着はすぐだ。身を構えておけ」

少女「はーい」



――秋羽原

ゴー

少女「……誰も、歩いてませんね……」

男「いくら東狂といっても、夜明け前だからな」

男「人口1000万近いメトロポリスの中心地といっても、夜は寝静まるものさ」

少女「そう、ですか……。朝になったら、みんな出歩くんですよね?」

男「まあ、そうだろうな」

少女「そっか。良かった」

男「……?」



――豊州

ゴー

男「……さすがに人も車も増えてきたな」

少女「みんながビッグサイトのほうに吸い込まれていきますね」

運転手「実は、さっきもCOMIKEへ行くヒトを送ったのですがね」

運転手「ビッグサイトはタクシーの降車が禁止でして」

運転手「スタッフの隙を見つけて、こう、ずずいっと駐車するのですよ」

男「へぇー」

少女「運転手さんもタイヘンなんだなぁ」



――鷲ントンホテル前

運転手「さて、到着しました」

男「ああ、ありがとう」

少女「うっわー、すっごいおっきいビル!!」


男「ここは鷲ントンホテル、正しくは……なんていったかな」

男「とにかく、通称“鷲”と呼ばれる、ビッグサイト最寄りのホテルの一つだ」

少女「ほうほう。それで、今日からここに泊まるんですか?」

男「いいや。昨日も言ったが、キャンセルでも出ない限り、予約は一年前から埋まってる」


男「今日は、ここに泊まってる友人にアイサツしておこうと思ってな」

少女「おお! 何回か話に出てた、男さんの友人さんですね!」

男「既に話は通してある。行くぞ」


――鷲ントンホテル ロビー

少女「ひゃぁ~、豪華なエントランスだなぁ……」

男「こういうホテルは初めてか?」

少女「うん、そんなところ。でも、勝手に入って怒られないかなぁ?」

男「堂々としてりゃバレないモンさ。友人がいるのは10階だ、行くぞ」



――鷲ントンホテル 1029号室

男「ブジに到着できたな。それじゃあ、呼ぶぞ」

リンゴーン

少女「どんなヒトなんだろう……」


ガチャ

友人「おおwwww男氏! ヤケモーニンwwwwwwぴゃっwww」

男「久しぶりだな、友人。元気にしてたか?」

友人「んんwww健勝以外ありえないwww」


少女「…………」ポカン

男「……? どうした?」

少女「えぇ……。ええと。なんていうか、その」

少女「メガネで、シャツで、バンダナで……」

少女「……す、スゴい」


友人「おお! これはキャワイイおにゃのこではありませんかwwwwww」

友人「男氏! この、この! ヌケガケとは卑劣ですぞwww」

男「そういうんじゃないって。昨日会ったばかりだから」

友人「なんと、ナンパ……!? 男氏、いつの間に……」


男「だからそういうんじゃないから!!」

友人「照れ隠しは見苦しいですぞwwwおうふwww」

友人「失敬。しかし、知り合ってすぐにCOMIKEとは、いささかハードではありませんかなwww」

男「そうは言っても、この子が言い出したんだ。俺だって家で寝てるつもりだったからな」

友人「なんと! 少女氏、見かけによらずオタクであらせられますかなwww」

少女「うーん……。まだオタクではないと思うんですけど、私、COMIKEに行ってみたくて!」

友人「んんwwwCOMIKEに行きたいなら、既にリッパなオタクですぞwww」

少女「そ、そうかな……。エヘヘ……」

友人「んんwwwwww照れるところではありませんぞwwwwww」


友人「それで、男氏www今日は何用ですかなwww」

男「いや、今日から三日間、俺たちもCOMIKEに参加するから」

男「“戦友”に、アイサツくらいしておこうと思ってな」

友人「……!」

友人「男氏……。さすが、我が認めた漢……」

男「いや、お前こそ。毎度COMIKEに参加する気力には感服するよ」

友人「んんwww今回も無事、一日目でサークル当選できましたからなwww」

友人「一日目の今日は多忙ゆえ、次、会う時は戦場ですぞwww」

男「ああ。もしハケてなかったら、一冊買っていくとしよう」


友人「しかし男氏www参加するのがわかっていれば、ファンネルをサクチケで頼めたものをwww」

男「カンベンしてくれ、女の子連れなんだ。そこまでガッツリ参加するワケじゃない」

友人「おうふwww失敬失敬wwwいかに戦士といえど毎年は堪える内容でしたなwww」


少女「……ファンネル? サクチケ?」

男「ああ、そのへんの用語はさすがに知らないか」

男「ファンネルってのは、COMIKEで頒布物が欲しい本人に代わって、お使いを頼まれるヒトのコトだ」

男「自分の持ち場から動けないサークル主の他にも、大手の頒布物を狙う参加者が手を組んだりする」

友人「由来は某有名ロボットアニメですなwwwガノタでなくとも常識ですぞwww」


男「そして、サクチケについては……」

男「コレは直接見たほうが早いだろう」

少女「……?」

男「友人、部屋の窓、貸してもらえるか?」

友人「んんwwwこんなところで立ち話も何ですからなwww歓迎以外ありえないwww」

男「ありがとうな」


少女「友人さん、見た目や喋り方は変わってるけど、良いヒトですね」

男「ああ。俺もそう思うよ」


男「ビッグサイトのほうが見えるか?」

少女「はい。……うわぁ、もうとんでもない数のヒトが並んでますね」

男「あれが徹夜組だ。一説によると、始発までに10000人以上が集まるという」

少女「10000人? もうヘタなイベントより人数多いんじゃないですか!?」

男「ああ。だが、徹夜組による徹夜行為を、COMIKE準備会は禁止している」

少女「そういえば、タクシーの中でも言ってましたね。何でなんですか?」

男「うーん、理由は色々あるんだが……。これは友人のほうが詳しいだろう」

友人「んんwwwお呼びですかなwww」

男「COMIKEで徹夜が禁止されている理由を説明してくれないか?」


友人「んんwww承知以外ありえないwwwwww」

少女「よろしくお願いします!」

友人「まずは当然の理由としてwww大人数が長時間集まると、普通にメイワクですなwww」

友人「ビッグサイト以外の場所への不法侵入www器物損壊wwwゴミのポイ捨てwww」

友人「草も生えない悪行ですなwwwオタクは常に紳士淑女であらねばならないwww」

男「草、生えてるぞ」

友人「近隣にメイワクがかかれば、COMIKE存続の危機にも関わる由々しき事態www」

友人「合理、道徳、双方の観点から徹夜組は推奨されないのですなwwwwww」

少女「なるほど……。たしかにキンジョに知らないヒトがいっぱいいるのは、ちょっとコワいですね」


友人「第二に、東狂都の条例に反しますなwwwwww」

友人「条例では、18歳未満の青少年の深夜徘徊は認められていないwww」

友人「いかに狂った都といえど、子供は守られるべきですなwwwwww」

少女「良かった……。じゃあ私は大丈夫だね」

男「18歳以上なんだ」

友人「ちなみにwwwこの問題はCOMIKEだけでの問題ではないのでwww」

友人「警察からも強い指導を受けて取り締まっていますぞwww」

少女「あっ、本当だ。待機列の外に警察のヒトがいる」

男「COMIKEの時期はパトロールの警察官を増員しているらしいな」


友人「最後にwwwヨッパライのオヤジを辻強盗するオヤジ狩りという犯罪がありますがwww」

友人「これのオタク版、オタク狩りが夜な夜な行われているのですなwww」

少女「オ、オタク狩り……」

男「オタクだからって全員戦闘力が高いワケじゃないからな」

友人「参加者が被害に遭いwww犯罪の温床となる事態はwww避けたいところですなwww」

友人「もっともwww我は始発の時間までホテルで待機するwww善良なオタクですがwwwwww」

少女「うーん、でも無防備なほうが悪いんだし、仕方ないんじゃないかな?」

男「君、けっこうシビアだね」

少女「でも、どうしてそんなに問題があるのに、徹夜組のヒトは夜から並ぶんですか?」


友人「それはwwwひとえにwww目当ての頒布物を入手するために他ならないwww」

男「COMIKEでは、創作を発表するための数人のグループを、サークルと呼ぶ」

友人「我は今回もサークル側での参加ですなwww」

友人「むろん、サークルを出展できるのは一日だけなのでwww二日目以降は一般参加ですがwww」

少女「へえ。友人さんは、何を創ったんですか?」

友人「んんwww同人誌とだけ言っておきますぞwww」

少女「同人誌! 知ってます! マンガとかアニメとかゲームのキャラを使った、えっちぃ本ですよね!」

友人「少女氏wwwwwwそれではただのウ=ス異本wwwwww」

少女「あ、あれ……? 違うんですか?」


男「まあ、薄い本も、広義では同人誌と同じ意味なのだが……」

男「同人誌っていうのは、カンタンにいえば、仲間内で作る非商業の本だな」

男「完全なオリジナルの作品もあれば、二次創作の場合もあるし、全年齢対象のモノも多い」

男「……別にエロ同人のコトだけじゃない」

友人「同好の人が作る雑誌だから同人誌、ですなwww」

少女「あ……、そうだったんですか。ハズカシ……」

友人「ちなみに、同人制作ゆえにあまりページ数は多くならないから、厚さが薄くなるのですなwww」

友人「もっとも単に薄い本と言った場合は、ほとんどの場合はR18な内容ですがwwwwww」

友人「んんwwwですがえっちぃ表現をオブラートな言い方に変えるwww雅な文化ですぞwww」


男「そして、そういった同人誌も含めた頒布物をいち早く手に入れるために、徹夜組は並んでいる」

男「だが、そんな徹夜組よりも、さらに早く会場に入る手段があるんだ」

少女「ほ、本当ですか? それはいったい!?」

友人「んんwwwそれこそが、このサクチケですなwwwwww」

男「サクチケってのは、サークルチケットの略。正式名称は別にあったと思うが……」

男「サークル参加者は当然、頒布物を用意するために、一般参加者よりも早く入場する必要がある」

男「その通行証として、このサクチケはあるんだ」

友人「また、当然サークル参加者は自分のブースの頒布があるので、他の買い物に行けませんなwww」

友人「そんなサークル参加者が知人に依頼し、他の頒布物を手に入れるためにもあるのですぞwww」


少女「なるほど。だから、ファンネルがどうこう……」

友人「そうwwwサクチケを使えば、徹夜組をはじめとした一般参加者より有利に列に並べるwww」

友人「サクチケを持ったファンネルならば、大手の頒布物でも確実に入手できるのですなwwwwww」


少女「友人さんは、その、他のヒトにファンネルを頼んだんですか?」

友人「むろんwww一日目にも興味深い頒布物は多いゆえwwwwww」

友人「しかし売り子も我一人では人手不足な現状www気合いで何とかする以外ありえないwwwwww」

男「友人……。お前もタイヘンだな」

友人「なんのこれしきwww年に二回の大イベントなればwww」

友人「全力には全力をもって応えるのが礼儀ですぞwwwwww」


少女「…………」ホゥ

男「……どうした? ため息なんかついて」

少女「ああ、いや。やっぱりCOMIKEには、こんなに真剣に参加するヒトがいる……」

少女「とっても魅力的なイベントなんだなって」

男「……そうだな」


友人「おうふwwwいつの間にかこんな時間www」

友人「国際展覧場駅にシーサイド線の始発電車が到着する時刻ですぞwww」

男「おお……。もうそんな時間か」


少女「どういうコトですか?」

男「さっき徹夜行為は準備会に禁止されていると言ったが」

男「ならどこからなら来てもいい時間なのかというと、この始発電車が到着する時刻になる」

男「その最も早い始発が、シーサイド線の、国際展覧場駅着というワケだ」

友人「んんwww始発ダッシュ対COMIKEスタッフのバトルは見物ですぞwwwwww」

男「たしかに……。それもCOMIKEの一つの要素、風物詩といえるかもしれないな」

男「少女、行ってみるか?」

少女「ええ。なんだかわかりませんが、面白そうです!」

男「キマリだな」


男「友人、このホテルの朝食ビュッフェは、何時からだった?」

友人「んんwww6時45分ですなwww」

男「まだ二時間近くあるか……。さすがに小腹が空くな」

友人「ではwwwいつものネタも含めて、国際展覧場駅前のLAMSONはどうですかなwww」

男「ああ……。それも面白いか」

少女「……? LAMSONってコンビニですよね? 何かあるんですか?」

男「行けばわかる。行ってみよう」

友人「んんwww始発前の行動は、徹夜組と同じ、限りなくクロに近いグレーですから注意ですぞwww」

少女「自分は違う、なんて思っちゃダメだってコトですね……」



――鷲ントンホテル前

少女「お、もうかなり明るくなってきましたね!」

友人「きたるべきCOMIKE一日目への夜明けですぞwww」

男「だが、いつものこの時間帯よりは、暗い感じだな……」

友人「んんwww今日の降水確率は50%www」

友人「一日目は初心者向けのイージーCOMIKEになりそうですなwww」

少女「そうなんですか? なら良かったですけど」

男「ああ。夏コミは、気温が上がると、地獄だからな……」

友人「もっとも、雨は徹夜組にとって大きな痛手になったようですがwww」



――LAMSON 国際展覧場駅前店

店員「ラーシャッセー」

少女「あ、どうも……」


男「相変わらずココはコミケ仕様だな……。溢れかえるアニメグッズ、ストラップつきの自販機」

友人「なにしろ待機列最寄りのコンビニの一つですからなwww」

男「コンビニといえば、最寄りじゃないが、西雲駅前のデイリーザキヤマもベンリだな」

友人「西雲駅前のデイリーザキヤマなら4月にブッ潰れましたぞwww」

男「えぇ……」


少女「す……、スゴい!! なんですかコレは!!」

男「気付いたか」

少女「しょ……、商品棚一面を、埋め尽くすほどの!」


少女「ウイローinゼリー!」

少女「カロリーミート!!」

少女「レッドアオ!!!」


男「今年も臨戦態勢だな、このLAMSONは」

友人「この三日間は、ココのLAMSONがマチガイなく全国で売り上げトップのコンビニですなwww」


少女「な……、何故ですか! 何故このコンビニには、食べ物がたくさん!?」

男「そりゃ、ただでさえ多いCOMIKE参加者が、一斉に買い物に来るからな」

友人「一日のCOMIKE参加者はおよそ20万人近くwww」

友人「そんな彼らの食糧庫と考えれば、これでも足りないくらいですなwwwwww」

少女「す、スゴい……。これも、COMIKEの影響……」

男「他にもスケッチブックなんかもたくさんあるな。似顔絵とか、サイン用か?」


男「それじゃあ、適当におにぎりか手巻寿司を選んでくれ。ただし、買いすぎるなよ」

友人「ちょうど100円セールですなwwwオススメは腐りにくい梅おにぎりですぞwwwwww」


店員「324円ニナリヤス」

男「はい……、って友人、お前の分も俺が出すのか」

友人「んんwww108円くらいでカタいコトを言ってはいけませんぞwww」

男「108円くらい自分で払ってくれよ……」チャリン

店員「アリアトゴァッシター」

店員「COMIKE、お楽しみください」ニコ

少女「は……! は、ハイ!!」

男「完全に見破られてるな」

友人「今日ココを訪れるのは、どう考えてもCOMIKE目当てですからなwww」



――シーサイド線 国際展覧場駅

ザワザワ ザワザワ


少女「ここが、国際展覧場駅ですか……」

男「既に人だかりが出来ているな」

少女「みなさん、カメラを構えていますね。いったい何を……?」


友人「5時23分……。時間ですぞ」

男「ああ……」


<プシュー

<ドドドドドド…


男&友人「「……!!」」

男「この音……」

友人「来ましたな……!」

少女「え、何が? 何が来たんですか!?」


アナウンス『おはようございまーす。改札前は、走らないようにご協力お願い致しまーす』

<ドドドドドド…!


アナウンス『走らないでくださーい。走らな……』

始発組「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」ドドドドドドドド


__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___―― ̄
―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄_
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             rっ        vymyvwymyvymyvy、
             ||       mVvvMvyvmVvvmvyvmVvv、
             |/⌒ヽ /^ヽ (^^) /^ヽ (^^) /^ヽ(^^)/^ヽ

             (^ω^ )(ω^ )/⌒ヽ(^ω^)/⌒ヽ^ω^)  ( ^ω)-っ
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   ⊂二(^ω^ )二ノ   /( ^ω^ )  ⊂二\\_/⌒ヽ二二( ^ω^)二⊃

       ヽ    | (´ ._ノ ヽ   /⌒ヽつ  \( ^ω^)  |    /
        ソ  ) \\⊂二二二( ^ω^ )二二二⊃ ⊂_) ( ヽノ
       ( < \  レ’\\   ヽ   /   i ) ノ     ノ>ノ
        \|\|      レ  (⌒) |   /ノ ̄     レレ
                      ⌒| /
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___―― ̄

―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄_


少女「だぁ……っ?! ななな、なんですか改札の向こうから!! す、捨て身の特攻ですか!?」

男「来るぞ……っ! 呑まれるな!!」


始発組「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」ドドドドドドドド

アナウンス『走らないでくださーい。危険です、大変危険です』

野次馬「がんばれー!!」パシャパシャ

野次馬「いけいけー!!」パシャパシャ

始発組「「「「「「おおおおおおオオオオオオををををををヲヲヲヲヲヲ!!!!!!」」」」」」ドドドドドドドド

アナウンス『は し ら な い で く だ さ い』


少女「だ、誰もアナウンスの言うコトを聞こうとしない……」

男「よく見るとちゃんと歩いてるヒトはいるんだけどな」

友人「嗚呼、聞き入れられるべき警鐘は虚しく響く……。狂気の中の正気こそ狂気哉……」



「「「「「「ウオオオオオオラッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァイイイイイイ!!!!!!」」」」」」



少女「ひゃあッ!!? こここ、今度は何ですか何ですか!!」

友人「この耳朶を打つ、鼓膜をつんざく、大音声……!」

男「伝説の300人が……、来た……!!」


スタッフ長「ここから先は! 始発組も! 野次馬も! 一歩も通すな!!!」

      テルモピュライ
スタッフ長「駅前門を守れ!! 安全な来場のために!! 参加者を誘導しろ!!」


スタッフ「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」


      | |
      | |                      _、rセ州州h、
      | |                 Ⅶ州州州沁
      | |                 Ⅶ州州州;沁
      | |                       Ⅶ州州;州;沁
      | |                       Ⅶ州;州;州;沁              Λ
      | |                Λ     Ⅶ;州;州;州;沁            | |
      | |               | |    { ̄{  ̄ 寸jijハ            | |                 /|
      | |               ∨      ∨ ^'く   寸ij:i,             | /                | |
      | |    Λ            |::|     ./    \  寸}           | |                  |/
      | |    | /             |::|    /   |     \.  寸.           | |                ||
 ̄^\   | |    | |    j{       |::|.   |   |     \ |     Λ     | |                ||
   :.∨ | |    | |    j{       |::|.   |   |  __  ∨{    |/      | |          |    ||
_   V| |    | |    j{       |::|.   | i'丐| |丐,ノ    |Λ     ||  i   | |  │      |    ||
云]    }| |    | |    j{       |::|     ∨___|_〉 |    「/Λ  .||   |)  | |  ┼  |  |    ||
厂    ノj| |    | |    ||       |::|     ∨ |双双|     //从乂  ||   |   | |  |  |  ,.|.___    ||
   / |(\    | |    || j{     .|::|     .」 |Τ⌒|  /ノヘ/⌒  ||   |   | |  |  | / |  \ .||
 /ノ\ノ⌒Y \ | |    || j{ /Λ |::|  _/ 人|爻爻L//´ ̄ ̄二=- _ |   | |  |  ||  |    l ||
イ// { 二 }  } | |    || j{/ { ∨:|. <  /⌒\                ニ=- _ | |  |  || 云 云  l ||
/´ ̄ { 二入,.ノΛ |    || |||〒〒 L|/ \{  ┘| |______      \.|  |_|| |Ln「  | || /
    \|  | / / / \   .|| ||「.云/´⌒ / /^ー―┘―<__     _    \ /´ `\,.|示| /⌒∨ /
<´ ̄~~~~|  i\      \_| _/     { /          ⌒^''< _   `ヽ    /  >―く ', /   / /
    _|  |_\    / / Y^{   ノ  }/    | |            {::::{>x  Λ  / /       'こ)二二/ /
.  /  .|  |.  ̄∨         __彡  八    | |            }::::{   \ Λ/ /        ', ∨/ /
/    |  |    ∨     }      >'' ∨ッ  ノ八   r  ......::::::::::VΛ      / /           ',  / /
      |  |     \ \/   >''´  二Γ¨´   `:::::::....^::::::::::::::::::::{ ∨    / /          ', { {
      |  |       ⌒''冖''"´ \二二二乂 ノ八 _  ノ:::::::::::::::::::::{   ∨  / /           } { / ̄
      |  |                 ∨二二√     ⌒:::::::::::::::::::::::: {   ∨./ /                } ∨
      |  |               |二二乂  八_   }:::::::::::::::::::{   ∨ /                } {
      |  |               |二二√     ⌒  }:::::::::::::::::::{     { {                 }  \


スタッフ長「行くぞ……、選ばれし300のスタッフ兵たち!!!」

ジャキン ジャキン ジャキン ジャキン


          コ ミ   ケ ッ ト
スタッフ長「 C o m e G e t (来たりて取れ) !!!!!!」



スタッフ「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」ドドドドドド


始発組「「「「「「うああああああああああああああああああ!!!!!!」」」」」」ダダダダダダ

始発組「瑠璃イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」

始発組「鹿島ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」


始発組「ハルトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

始発組「アルパカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

始発組「定価の3倍出すから売ってくれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」

始発組(ファミチキください)

始発組「フラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン」


少女「なんですか、コレは……! 改札から来た軍勢と、半裸の軍勢が、激突して……」

男「COMIKE名物、始発ダッシュ……」

男「これから始まるCOMIKEの前哨戦ともいえる壮大な儀式だ」

友人「んんwww実情はツッコんでくる始発組をスタッフが止めているだけに過ぎないwww」パシャパシャ




スタッフ「……はーい、スタッフを先頭に並んで、ビッグサイトのほうに進んでくださーい」

始発組「トホホ……」


少女「アッサリ鎮圧されちゃいましたね」

男「こんなところでいきなり体力使ってもバカだからな。始発組も、スタッフも」

友人「それでも大迫力でしたなwwwつべにうp、と……www」


友人「さてwwwこのあと我は、サークル参加者の列のほうに移動しますがwww」

友人「男氏と少女氏はどうしますかなwww」


少女「そりゃあ、私たちも列に並びますよ!」

少女「この列に並ばないとCOMIKEに参加できないんでしょう!?」

男「いや……。少女、今から並ぶのはやめておこう」

少女「ええっ? 何でですか!?」

友人「んんwwwたしかにwww初参加で朝から並ぶのは、体力的にキツすぎるwww」

友人「行列が解消される正午前後に入場するのが安パイですなwwwwww」

男「そういうコトだ」

少女「ぐぐぅ……。でも、ベテランの皆さんがそう言うなら、ソレが正しいんだろうなあ……」

男「まずは会場の外で様子を見て、雰囲気を掴んでいくとしよう」


男「俺たちは鷲ントンホテルのビュッフェを食べていくよ。たしか泊まってなくても入れたよな?」

友人「んんwwwいかにもwwwもっとも、別料金を払う必要はありますがwww」

少女「友人さん、頑張ってくださいね!」

友人「おうふwwwおにゃのこにそう言われては、頑張らざるを得ないwww」

友人「会場に来たら我のサークルチェックもよろしくお願いしますぞwwwwww」

少女「友人さーん! それじゃあ、また後でー!!」


少女「……行っちゃいましたね」

男「戦場に向かう男の背中とは、雄々しくも、どこが物悲しいモノだ」



――鷲ントンホテル レストラン

男「大人2人です」

受付「ありがとうございます。それでは、ご自由に料理をお取りください」


少女「わーい! バイキングだー!!」

男「おい、はしゃぎすぎるなよ……。他の宿泊客もいるんだから」

少女「ねえ、何を取ってもいいの!?」

男「別にいいが。……ああ、ただ、腹が膨れすぎないようにな」

男「午後からの活動に差しつかえるぞ」


少女「はーい。それじゃあ、どうしようかな……」

少女「自分で作る海鮮丼かあ! 江戸前寿司ってやつだね!」

少女「イクラ、サーモン、シラス、マグロ、明太子……」

少女「ええい、全部乗せちゃえ!」


男「…………」フッ

男「……楽しそうだな」

男「東狂のコトも何も知らなかったみたいだから、旅行したコトも無かったのかもしれないな」

男「……。……マグロの、カブト焼き……?」

男「ゲテモノは、いらんな……」



                              __
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  /イ::                  {| }|               /          / ./'〈/ '//
   ∥                 |{ |              /          / , ヽ、 V
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   i|::              /      /::::::/   /                    r ' ´///
   ハ::..             ノ      /:::::::::/   /                ヽ/ //
    ゞ、::..               /:::::::::::::/   /                   /'
     \::..            /::::::::::::::::/   /                      ○


少女「……」ニコニコ

男「……コレを取る、バカがいるとはな……」


少女「あれ、ダメでした?」

男「……いや、食いきれるのならいいが」

少女「ですよね、いただきまーす!」ガツガツ

男「…………」モグモグ


少女「うわはー、新鮮だなぁ! カンヅメとは鮮度が違う!」

少女「塩の味がしない……!? 獲れたてだと、こうも違うのか……」

少女「ううっ、ツンツンする! ワサビが! ぎょえー!!」


男(うまそうに食う、というか……、ニギヤカな奴だ)



少女「ごちそうさまでしたー!!」

男「うまかったか?」

少女「うん、とっても! また食べたいな!」

男「そうか……、じゃあ、今日の昼食もここにするか」

少女「え? いいんですか!?」

男「ああ。ランチもディナーも、ビュッフェをやってるみたいだからな」

少女「やったー! 次は何を食べようかな……、お肉かな……、中華やイタリアンもあったな……」

男(やれやれ。デカい娘でも出来たような気分だ)

男(まあ、サイフはコイツ持ちなんだが)


少女「もう7時ですね! いよいよCOMIKEに行きますか!?」

男「いや、まだ早い。どこかで時間をつぶそう」

少女「ええ……。早くビッグサイトに入りたいですよぅ」

男「そう急くな。開場は10時、今から行っても三時間並ぶだけだ……」

男「それに、COMIKEの待機列は、地獄だぞ?」

少女「むぅ。地獄冥府、何するものぞ!」

少女「こう見えて、ガッツはあるほうですから、地獄程度、ヘでもありませんよ!」

男「ほう。そう言うなら、見に行ってみるか。待機列を」

少女「よしきた!」



――ビッグサイト周辺

シトシト

ザワザワ ザワザワ


少女「ゔ……」ムアッ

男「ぐ……。雨で気温が低いとはいえ、すさまじい熱気だな」

男「むしろスチームされている気すらする……。蚊がうっとうしい!」プゥーン

少女「こ、これは……。キツいですね……」

男「だから言っただろう。地獄だと」


男「レインコートを貸してやる。服を濡らすなよ。蒸れてヒドいコトになるからな」

少女「ありがとうございます! わお、花柄……。用意シュートーですね!」

男「登山も同じ……、モノらしい。すぐに天候が変わるところが」

男「ちなみにCOMIKEで傘は推奨されない。気を付けろ」

少女「え? どうしてですか?」

男「ああなるからだ」


待機列「いてっ、傘の骨が目に入った!」

待機列「ちょっと、水滴がこっちに流れてるのよ! 落とさないでよ!」

待機列「す、すみません……!」



スタッフ「待機中の皆様! 傘はキケンです! せめて相合い傘になってくださーい!」

スタッフ「持っている方はレインコートを着てください! ゴミ袋でも構いません!」

スタッフ「積極的にメジェド様になっていくのです!」


少女「な、なるほど……」

男「夏はまだいいが、冬コミの時の降雨は死活問題だ」

少女「どうしてですか?」

男「雨に打たれて凍えて死ぬ」

少女「ああ……」

男「ヒドい時は雪になるらしいが。いずれにしろ、レインコートは必須装備の一つだ」


少女「それでも今から並べば、どれくらいになりますかね?」

男「さあな。まあ、すぐには建物に入れまい……。ちょっと、友人に電話してみるか……」


プルルルルル

男『おい、俺だ。大丈夫か? まだ繋がる程度ではあるが』

友人『んんwww男氏wwwwwwヤケモーニンwwwwwwぴゃっwww』

友人『我ほどの猛者が小雨程度でくたばるハズがありませんなwwwwww』

男『ならいいんだが。今、待機列の始発組の場所はどこくらいだ?』

友人『んんwww逆三角形はまだ遠いですなwwwwww』


男「……だ、そうだ」

少女「うう……。なかなか建物にも入れないのに、皆どうして並んでるんでしょうか?」

男「それは友人も言ってただろう? 徹夜組と同じ」

男「目当ての頒布物を手に入れるためだ」

男「もちろんアニメグッズショップやネット通販に委託される頒布物もあるが」

男「COMIKE当日限りというモノも少なくない」

男「ソレを、たとえ苦しい思いをしてでも、手に入れる……」

男「ここはそんな“戦士”たちの集まる場所なんだ」

少女「戦士……」


男「わかってきたか? COMIKEの、“戦場”たる由縁が」

少女「……ええ。ほんの、少し」

男「…………」

男「……たしかに、COMIKEは楽しいコトばかりじゃない」

男「だが、試練を乗り越えた先にこそ、これだけの人が集まる理由はある」

少女「理由……」

男「俺やお前では、とうてい推し量れないような、理由がな」


ザァー


男「……まあ、開場までの時間を並ばないのなら、COMIKEもそれほど苦痛じゃない」

男「しばらく冷房の効いている場所で時間を潰すか」

男「そして、開場の10時ごろになったら、また戻ってくるとしよう」

少女「10時ですか? でもこの人の量、開場しても行列はすぐには解消されませんよね?」

男「ああ。だが、見るだけでも、聞くだけでも価値はある」

男「これもまたCOMIKE、というようなモノが、な」

少女「……?」

男「あとで、できるだけビッグサイトへ近づける場所に陣取るぞ。ついてこい」

少女「はーい」



――ビッグサイト周辺

男「ここらへんでいいだろう。雨もやんできたな」

男「時間は……、よし、まもなく10時だ」

少女「待機列はまだ長いですねー」

少女「むしろ、さっきより延びたような気も……」

男「そりゃ、始発の後も、人はどんどん来る」

男「いま上からビッグサイトを見下ろしたなら、人がゴミのようだろう」

少女「事実だとしてもソレはちょっとヒドいんじゃないですか?」

男「…………」


男「いちおう友人にも電話してみるか」プルルルル

ケータイ「プルルル! プルルル! プルプルプル!」

ケータイ「ぼく悪いケータイじゃないよー(繋がりませんの意)」

少女「通じませんね……。ココ、電波が悪いんでしょうか?」

男「いや、これもCOMIKEでは当然だ。むしろさっき繋がったのは運が良かった」

少女「へ?」

男「COMIKEでは皆が一斉にケータイを使うから、電波が入りにくくなるんだ」

男「だから各ケータイ会社の移動Wi-Fi基地なんかもやってくるがな」

少女「へえ……。じゃあ伝令兵を飛ばすしかないですね」


男「もっとも、午前中は人間の移動もままならんがな……、と」


アナウンス『お待たせしました。ただいまより、COMIKE 92――――』

アナウンス『一日目を、開催します!!』


ババババババババババババババババババババババババババババババ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

待機列「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」

ババババババババババババババババババババババババババババババ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


少女「な、なんですかこの音?! じじじ地震ですか! それともバクチク!?」


男「いいや、どちらでもない。今のアナウンスが聴こえたか?」

少女「え? たしか、COMIKEを始めると……」

男「そうだ。そして今のは、アナウンスとCOMIKE開始に対する、来場者たちの拍手だ」

少女「は、拍手!? こ、この爆音が、ですか?!」

男「ああ。何万人もの人間が一斉に拍手すれば、爆音となり会場の外にもとどろく……」

男「ただの人間でしかない俺たちが、そんな爆音を起こすことが出来る……」

男「なんとも面白いコトじゃないか?」

少女「……。たしかに……」

男「それだけ参加者たちは、COMIKEの開催を喜び、祝っているというコトだ」


男「俺たちも拍手するぞ。遅れて出るとはいえ、俺たちも参加者だからな」パチパチパチ

少女「えっ……。あっ、ハイ!」パチパチパチ

男「…………」パチパチ

少女「…………」パチパチ

少女「……男さんって、意外とリチギですね?」

男「そうか? COMIKEを前にして、俺もテンションが上がってるのかもな」

男「俺も参加者の一人として、COMIKEのはじまりはスナオに嬉しい」

少女「…………」

少女「……いいですね、なんかそういうの。一体感、っていうんですか」



――ビッグサイト周辺

男「…………」スイッ スイ

少女「……男さん、さっきから何してるんですか? ケータイばっかいじって」

男「ああ、悪い。ヒマしてたか?」

少女「そりゃヒマですよ。COMIKEが始まってしばらく経ったのに、会場には入れず! 列にも並ばず!」

少女「だったら私のハナシ相手にくらいなってくださいよー!!」

男「お前はケータイ持ってないのか?」

少女「あるけど繋がりません!!」

男「ケータイ会社間でも繋がりやすさの格差があるらしいな」


男「今、現在のビッグサイトのようすをリサーチしていた」

少女「ほう! それで、中では何が?」

男「傘をさしている人も減って、雨による混乱は減ったようだが……」

男「それと同時に、正常な混乱が訪れたようだ」

少女「正常な混乱……?」

男「ああ。とりわけ、不慣れな大手の列が、とんでもないコトになってるらしい」

プルルルルル!!!

男「……っと。友人から電話だ。少しは繋がりやすくなったか」ピッ

男「もしもし。どうした?」


友人『んんwww男氏www繋がりましたなwwwwww』

友人『それで、貴殿らは今どこに?www』

男「ビッグサイトの近くだが。いま行っても、まだ待機列のエジキだろう?」

友人『んんwwwそれがですなwwwwww』

友人『たった今、入場規制が解除されたようですぞwww』

男「なんだと! 30分も早いぞ、マジか!?」

友人『大マジでござるwww休憩に戻った我がファンネルからのタレコミwww』

男「そうか……。なら今から入る。ありがとう!」

友人『なんのwwwwwwぴゃっwwwwww』


少女「えっ、えっ? 男さん、ついに会場に入るんですか!?」

男「ああ。通例では、正午まで入場者数が制限されているんだが……」

男「今日は規制解除が少し早かったらしい。……お、スレにも情報が来たな」

男「よし! それじゃあ、行くぞ!」

少女「やったー!!」


男「ああ、先に行っておく。会場に入ったら、絶対に俺から離れるなよ」

少女「えっ、急に情熱的ですね。どしたんですか? キャラじゃないですよ?」

男「…………」

男「忠告はしたからな」



――ビッグサイト 入口


                  l ̄ ̄li         ,.、        ll ̄ ̄l
     _______|__|l____,z_壬个爻_z、____l|__|______
     \;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;:、'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::::/
      \;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::/人\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::/

        \;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;//圭\\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;:/
       ,ィE\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::/イニニニニト、\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;:/
      , イ:l:l:E圭\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'/イ三三三三三三ト\;::'::;::'::;::'::;::'::;::/
   , イ:l:l::レ''´  ̄ ̄\;::'::;::'::;::':/iニニニニニニニニニニi\;::'::;::'::;::'/
  , イ:l:l::レ'´_____ l三三三liY\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/Yl三三三l _________
,イ:l::l::レ''´ \/\/\/i l三三三liil;;;;;/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \;;;;lil三三三l ト、\/\/\/\/\/

::l::レ''´∠二∠二∠, ヘ l三三三liil;;;;l             l;;;lil三三三lへヽ'二ヽ'二ヽ'二ヽ'二
-- 、 「 ̄l| l ̄ ̄l |升l三三三liil;;;;l             l;;;lil三三三lヒ|__イ「 ̄|三i三i三
   | l   l| l__l |干l三三三liil;;;;l             l;;;lil三三三l;;| i─‐i l |r-i|「r──‐


少女「おおーっ! アレは! アレこそは!!」

少女「COMIKEの象徴たる、東狂ビッグサイトですね!!」

男「COMIKEといえば、やっぱあの逆三角形だよな」



  ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ

      ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ

    ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ


少女「うひゃぁーっ! 見渡す限りの、ヒト、ヒト、ヒト……!」

少女「朝の待機列もスゴかったですが、これは、比べモノになりません!」

男「ううん……。やっぱり実際にこれだけのヒトが動いてるのは」

男「いつ見ても、圧巻だな」

少女「いったい、これだけのヒトが、どこから来たんでしょうか?」


男「そりゃ中心は、首都圏近郊だろうが……」

男「なんといっても日本最大の同人誌即売会。北は北海堂、南は冲縄」

男「はては海外からも参加者が訪れるというハナシだ」

少女「海外からも……。他の国には、同じようなイベントは無いんでしょうか?」

男「あるにはあるだろうが。だが、数十万人規模となると、そうは無いだろうな」

少女「なるほど……。まるで観光地のお祭ですね!」

男「正しく祭だな。年に二度の大イベント、それが、COMIKEだ」

少女「むふぅー……。ソレに、私が、今から、参加できるんですね!!」

男「楽しそうだな」


少女「そりゃそうですよ! 夢にまで見た、リアルのCOMIKE!」

少女「ソレが今、目の前にあるんですから!!」

男「元気なのは良いコトだ」

男「だが、度を過ぎたヒートアップは禁物だ。そら」ポイッ

少女「わとと。これは……、スポーツドリンクですか?」

男「ああ。特に夏コミは、夏の気温と会場の熱気で、体力が激しく奪われる」

男「だから30分に一回くらいのペースで、こまめな水分と塩分の補給を心がけろ」

男「俺が何も言わなくてもな」

少女「……マジでスポーツみたいですね」


男「スポーツじゃない。戦いだ」

少女「……ええ。そうだったですね」キュポ

少女「んっ、んっ、んっ。……ぷはー! ただのスポーツドリンクなのにオイシイ!」

男「……わかってると思うが、あまり一気に飲むなよ」

少女「えっ! わ、わかってますとも! 資源は大切に!」

男「そうじゃなくてだな。まだストックはリュックにいくらかあるが……」

男「あまりヒンパンに便所に行かれると、困る」

少女「トイレですか……? 用を足すのは、早いほうですよ? お腹も強いし」

男「誰がそんなハナシをしろと言った。ちょっと、ついてこい」



――仮設トイレ前

ゾロゾロ ゾロゾロ…

ゾロゾロ ゾロゾロ…


少女「も、もう既に大量の行列が……!」

少女「コレはいったいどこに並んでるんですか!?」

男「別に会場の中じゃないぞ。ソコだ」ビッ

少女「ソコって。……ま、まさか……、トイレですか!!」

男「ああ。覚えておけ。人気サークルのコトを大手というが……」


男「COMIKEでの最大手サークルは、人気作家でも、大企業でもない」

男「―――トイレだ」

少女「ト、トイレ……。パっと見でも、数十人の列が、いくつかありますよ?」

男「こんなの序の口だ。これからもっと増える」

少女「えぇ……」

男「いちばんヒトが混む時間帯ともなると、1時間待ちとかにもなる」

男「さながら夢の国の人気アトラクションだな」

少女「な、なるほど……。さすがにトイレに時間取られたくはないですね」

男「だから一気にガブ飲みするなよ。女のお手洗い待ちはいただけん」


男「だけども、もし催したら、絶対に言えよ」

男「糞尿垂れ流し事件はカンベンだ……」

少女「またまたぁ。いちおう文化人の集まりですよ? そんなコトが……」

男「…………」

少女「……あるんですか」

男「行列は、長いからな。加えて炎天下。体調はすぐに崩れる」

少女「……食事中の方もいるかもしれないんですよ」

男「なら次はソイツの番だ……」

少女「シャレになってません」


男「とにかく、終了は16時。企業サークルはもう少し長く続くが……」

男「それまでは耐えられるように調子を整えてくれ」

少女「ラジャー。ちょっとやそっとで体調を崩す私ではありませんとも」

男「その慢心がクライシス。ボウシを渡しておく、外すなよ」ポフッ

少女「わふ。キャップですか、カッコいいですね!」キュッ

男「まあ、今日は気温が低いから、無用の長物かもしれんがな……」

男「あと頭痛がしたら、それは水分不足の影響だ。エンリョせずに俺に言え」

男「それと、タオルとウェットティッシュも持っておけ。……何故かはわかるな?」

少女「ハイ! 生乾きはヒドいものです!」


男「それじゃあ、会場に向かって歩いていくぞ」

少女「わっかりましたー。皆、あの逆三角形のタテモノに吸い込まれていきますね……」

男「別にあの逆三角形でCOMIKEやってるワケじゃないぞ?」

少女「え? そうなんですか?」

男「ああ。俺も最初はアソコでやってるモンだと思ってたが……」

男「実際は会議室になってる。COMIKE期間中はレイヤーの更衣室だったかな」

少女「……レイヤー??」

男「コスプレイヤーの略だ。コスプレをするヒトのこと、な」

少女「ああ。コスプレもCOMIKEの華だと、聞いたコトがあります」


少女「……おや? また新たな行列が現れましたね」

男「しかも複数ときたか……。こりゃ一つの案件じゃないな」

少女「片方はすぐ近くに吸い込まれていますね。これは……?」

男「……自動販売機か」

少女「ああ……。さすがに行列の長さが異常ですが、ナットクです」

男「まちがってもCOMIKE会場内で自販機を使おうなどと思うなよ」

男「この行列に並ばなければいけないのもそうだが」

男「たいていは売り切れ。その頃には行列も消えるがな」

少女「中身無けりゃタダのハコですね」


男「それに、よしんば飲み物を買うコトが出来たとしても」

男「出てくるのは、つめた~い、じゃなくて、ぬる~い、だ」

少女「ぬ、ぬる~い……。イヤな響きですね」

少女「しかしどうして。炎天下で冷却機能がオシャカとか?」

男「いや、マシントラブルじゃあない」

男「単に業者がストックを追加したそばから売れていくからだ」

少女「最初から、つめた~い、じゃないんですね……」

男「いつわりの表示だ。世の中なんてウソばっかりと知れ」

少女「世知ガラい世の中です……」


少女「だけど、となると、コッチの行列は?」

男「地平線の向こう側まで続いているな……。続く先は、東館か」

少女「東館?」

男「実際にCOMIKEを、つまりサークルが頒布を行っている場所だな」

男「となると、コレがその一つ、か……」


少女「あっ! 行列の向こうにケバブ屋さんが見えますよ! 行ってもいいですか?」

男「もう腹が空いたのか? さっき魚食ったばかりだろう」

少女「買い食いもお祭のダイゴミだと考えます!」

男「ああそう、好きにしろ……。だが、食べ過ぎるなよ」


少女「はーい! すいません行列のヒト、通りまーす!!」


ギュウギュウ

少女「んしょ、んしょ……。さすがに混みあってるなぁ」

参加者「……むふふ」ワキッ


男「おい」ガシッ

参加者「……!」アセッ

男「……ウチの娘に手を出すなよ」

参加者「……、……」フヒッ


少女「んー? 男さん、どうかしましたかー?」

男「なんでもない。早く抜けろ」

男(満員電車でも痴漢は多いのだから、当然か……)

男「すいませんねー、失礼します……」


少女「ぷは。やっと抜けた!」

男「やれやれだ。しかしこのケバブ屋、毎年見るな」

男「なら、まあ信用しても大丈夫そうか」

少女「なんかヤバいモノ売ってるところもあるんですか?」

男「そうじゃないが、実際、無許可営業してる出店はあるからな」


少女「すいませーん、ケバブ一つくださーい!!」

ケバブ店員「はーい。今すぐ作りまー……」

ケバブ店員「って、あなた、昨日の?」

少女「え? ……あ、ああ! もしかして、昨日の大家さん!?」

男「ん……? あれ、大家さんじゃないですか」

男「いったいこんなところで何やってるんですか?」

ケバブ店員「おや、男さん、奇遇ですねー」

ケバブ店員「見ての通り、ケバブを売ってるんですよ」

男「いやソレは見ればわかりますよ!」


男「そんなコトを訊いてるんじゃないです」

男「どうして大家さんが、COMIKE会場で出店なんかを?」

ケバブ店員「……気になります?」フフッ

男「……やっぱいいです」


ケバブ店主「おいおいどうした、何かモメ事か?」

ケバブ店員「あっ、おとーさん。私のアパートのタナコさんですよ」

少女「はいっ! その通りです!」

男「お前が借りてるワケじゃないだろ」

ケバブ店主「おお、おお! そうか! ウチの娘が世話になってるみてぇだな!」


ケバブ店主「それでケバブ、注文してくれるのかい?」

少女「ええ! 香ばしいお肉の香りに誘われて、やって来ました!」

ケバブ店主「そうかいそうかい。じゃあ、肉ちょっとオマケしちゃおう」ゴリゴリ

少女「やったー!!」


ケバブ店員「……で、昨日会ったばかりの女の子連れて、デートですかぁ?」

男「そんなんじゃないですから。ただ頼まれただけで……、……」

男「…………あっ」

ケバブ店員「ふふ、墓穴を掘りましたね」


ケバブ店員「やっぱり見ず知らずの女の子を家に泊めている、と」

男「ちちち違う! やましいコトは何も……!!」

ケバブ店員「ふふっ、まあ私はどっちでもいいんですけどねぇー」

ケバブ店員「というか男さんにCOMIKE行くような趣味があったほうが驚きですが」

男「別に、何か目当てがあるんじゃないんですけど……」

男「何度か友達に誘われて。そして今日は、あの子ってワケです」

ケバブ店員「そんなところだとは思ってました。ふつう、目当てあるなら朝来ますよね」

男「大家さんは、朝からココに?」

ケバブ店員「そうです。結構売れますよ?」


ケバブ店員「もっとも、今はあの行列で客足が遮られて、商売あがったりですが……」

男「そういや、あの行列……。どこかの大手の列ですか?」

ケバブ店員「ううんと、よくわかりませんね。おとーさん!」

ケバブ店主「ん? どうした?」

ケバブ店員「ココの列、どこのサークルの列だか知ってる?」

ケバブ店主「ああ、この列な。たしか、アイドルマス……、なんたらの列らしいぜ」


ケバブ店主「はい、お嬢ちゃん。パンにレタスにトマトに肉」

ケバブ店主「落とさないで食べてくれよ」

少女「わっはー! ありがとうございますー!!」


男「アイドルマス……。あのシャンシャンするソシャゲか」

ケバブ店員「そうなんですか? で、一日目で関連してそうなサークルというと……」

ケバブ店員「ああ、そのソシャゲのキャラデザのヒトかもしれないですねー」

男「公式のイラストレーターが個人でサークルを出してるというコトですか?」

ケバブ店員「そうですね。でも初参加らしいので、手際悪いのかもしれません」

ケバブ店員「もしうまくさばけてるなら、こんな行列は出来ませんから」

男「……やけに詳しいんですね」

ケバブ店員「当然ですよ。イベントのスペース間借りして店出してるんですから」

ケバブ店員「何をやってるかくらいは情報収集しておくものです」


男「そうですか。……ありがとうございます」

ケバブ店員「いえいえ。良いってコトですよー」

ケバブ店員「明日も明後日も来るなら、ぜひ当店のご利用を!」

男「は、はは……。忘れるまで覚えておきますよ」


少女「はぐ、はぐ。ケバブおいひー」

男「ったく……。館内に入るまでには食っておけよ。舌かむぞ」

少女「んぐ。そーなの?」

男「ヒトが多すぎて食い歩く余裕は無いな。行けばわかる」


男「さて……。まずはどこに行く?」

男「友人の奴がいる館内か? それとも、タテモノの外でも周るか?」

少女「そういえば、この行列は何だったんですか?」

少女「けっこう歩きましたが、まだ先頭は見えませんね……」

男「うん……。有名なイラストレーターのサークルの列らしいが」

男「まあ、行列もCOMIKEの一つの要素、か……?」

男「よし。じゃあ、この行列の先頭まで行ってみるか」

少女「これだけのヒトが並ぶ行列……」

少女「いったい先には何が待っているのでしょうか!」



――行列 中央部分

少女「うぐ……。こ、この列、本当に終わりがあるんですか……?」

男「あ、あると、思いたいが……。さすがに長すぎるな」

男「さっきと同じ列を辿ってるのかすら不安になってきた」

男「この分じゃ、行列に並んでる本人たちは、もっと不安だろうな……」

少女「その、コレは一サークル参加者の方に並んでる列なんですよね?」

少女「本当にただの参加者さんのためだけに、これほど並ぶんですか?」

少女「実はさっきみたいにトイレに並んでるのでは……?」


男「いや……。大手サークルの列なら、これくらいは普通だ」

男「むろん、こんな行列が無数にあるワケじゃないが」

男「それでも、COMIKEの日程の中では、普通に発生するモノだ」

少女「す、スゴいですね……。これが、COMIKE」

少女「朝並んでたヒトたちの目的の一つはコレだったワケですね」

男「そういうコトだ。うう、足が痛くなってきた」

男「登山靴でなければ即死だった」

少女「スニーカーも動きやすいですよー!」

男「きっと行列の終着点はもうすぐだ。もう少し、歩くか……」



――行列 先頭

少女「おっ、行列が止まってる場所がありますよ! きっとココがゴールですね!」

男「はあ、はあ。な、長かった……」

少女「で、すが。しかし……」


参加者「新刊とグッズセット、3つずつお願いします」

売り子「すみません、さっき1限にしまして……」クビサワサワ

サークル主「急いでセット作らないと~!!」

売り子「あ。お待ちの間に。名刺だけでも……」


少女「行列が! まったく進んでいません!!」

男「なるほど、渋滞の理由はコレだったか……」

男「初参加にありがちなミスといったところか」

少女「男さんは、サークルのほうにも詳しいんですか?」

男「まあな。友人の売り子として参加したコトもある」

男「だが、友人のサークルの規模なんぞ、大手とは比べモノにならん……」

男「見ろ。さっきから行列が、比喩じゃなく一歩も動いていない。コレはヒドい」

男「今回の横綱はココでキマリかもな」

少女「よ、横綱て……」


男「人気ゲームのイラストレーターなんだから、大手になるのは見えてたろうに」

少女「こういう不手際って、わりとあるコトなんですか?」

男「そうだな。本人の人気と、COMIKEの熟練度は、比例するワケじゃないし」

男「むろんCOMIKEへの参加を重ねて有名になったなら然りだろうが……」

男「人気かつ不慣れだと、こういう事態になるコトもある」

男「まあ、そんな不確定要素も含めて、COMIKEってところかな」

少女「今並んでるヒトたちが、無事に買えるよう願うばかりです……」


参加者「おい! ついさっき“サーキット”が始まったらしいぞ!」

参加者「マジかよ! 見に行こうぜ!!」


男「……!?」

男「サーキット、だと……?」


少女「どうかしましたか? 男さん」

男「……今、COMIKEへの参加を重ねて有名になったなら然り、と言っただろう」

少女「ええ、言いましたね。たしかに慣れてれば手際も良いかと」

男「どうやら、その手際の良い例が、今まさに“開催”されているらしい」

少女「開催……? あの、何が?」

男「行けばわかる。風を感じろ」



――サーキット会場

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二( ^ω^)二⊃          /⌒ヽ                 ┌┐.┌i   ┌┐  __ ┌┐  | | [][]
  |    /  /⌒ヽ ⊂二二二( ^ω^)二⊃            |└[][]L.ロロ | [][] | | ロロ |.[][] l└─┐
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参加者「三┏( ^o^)┛」ピューッ

参加者「三┏( ^o^)┛」ピューッ

参加者「三┏( ^o^)┛」ピューッ

売り子「遅い! 遅いよ! 何やってんの!! 遅い、遅い、遅い、遅い!!!」ホイホイホイ



参加者「お前に足りないものは、それは! 情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さァ――――」

少女「うわっと!」ヒョイッ

男「す、すいません!!」

参加者「そしてなによりもォォォオオオオッ!! 速さが足りない!!」ドドドドドド

スタッフ「世界を縮めないでください!!!」


少女「……す、スゴい数のヒトが、タテモノの中にスゴい速度で突っ込んでは、出てきます!!」

少女「男さん!! コレはいったい!?」

男「見たか。これが、“サーキット”と呼ばれる現象だ」


少女「さ、サーキット……」

男「サーキットの中では、安全運転など許されない……」

男「最速の称号のみが絶対正義とされるのだ」

少女「COMIKEとは、速さを争う競技だったのですか!!」


男「……と、冗談はおいとくとしてだな」

男「大手には多くの参加者が行列を作る。しかし必然、列が延びても誰の利益にもならない」

男「ならば可能な限り、速く列をさばいてしまおうじゃないか」

男「……そうした思想のもと、生まれたのが」

少女「この、サーキットですか……」


少女「しかし、これだけ速いと、会計も難しいんじゃないですか?」

少女「頒布物はタテモノの中で渡してるとしても、お金はどこで……」

男「速すぎて見えないか……。タテモノの入口だ」

男「よく、目を凝らしてみろ」

少女「ん……? ……あ、アレは!!」


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                   _,,,,rー'ブ´\,,
                 _r''゙ /  ,、   ヽ,
                .{:!.../  ./..../  .  \_
                }i゙'j::|:::::::|:::::::/  ./ー;  ヽ

           _,,-'''"^´:{;じノ|::::::|::::::/  .ノ゙::::::::::::::::::::::::::::    ..._      __   __  00  ∩  ∩
          - "´::::::::::::::::::;:::::::}'''!.ノ┐/-j:/:::::::::::::::::::::::::::::::::     辷l /7   コ L   | | r、   ∪  ∪
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少女「列に並んでいるヒトたちが、ものすごい速さで……」

少女「係員のヒトが持っているハコの中に何かを入れて……」

少女「そして、走り去っていきます!!」

男「リレーのバトンを手渡すがごとき、訓練された動き……」

男「その疾風怒濤は、サイセン箱、自動改札機、ETCレーンを思わせる……」

少女「質量を持った残像のようです! 今朝の始発ダッシュにも引けを取りません!」

男「この速さについてこれない者は、そもサーキットに並ぶコトすら許されない」

男「そして、彼らはスピードを極め、いったい何を為そうとしているのか?」

男「それが、それこそは、“コレ”だ」ピラッ


少女「せ、千円札……!?」

少女「あ、あのスピードで! 入れているというのですか!」

少女「千円札を!!!!」

男「ああ。この大手サークルはそこまでわかっている」

男「千円札ならば支払いやすいというコトも考慮した上で、このサーキットを構築しているんだ」

少女「な、なんという……」


少女「なんという、オオゲサな……」

男「そうか? 列をさばく最適解の一つだと思うがな」



売り子「遅い、遅い、遅い、遅い、遅い、遅い!!!」ホイホイホイ

参加者「ぐああ!!」ドシャア

売り子「大丈夫? ちゃんと持って行ってね!! 遅い、遅い、遅い!!!」ホイホイホイ


少女「激突事故も起きちゃってるじゃないですか……」

男「クルマとナニガシは急に止まれないというからな」

男「だいたい、普段から運動してるヤツばかりが集まってるワケじゃない」

男「急に走ればこうもなるだろう。サーキットは強制参加だ」

少女「こりゃ明日は筋肉痛ですね……」


男「というか、そもそもCOMIKEで走るのは禁止だったりする」

少女「そーなんですか?」

男「体格の良いヤツが急に突貫してきたら、コワいだろう」

少女「たしかに……」

男「それでもサーキットが黙認されているのは、大手がゆえだろうな」

男「スタッフとしても、列が早くさばかれるに越したことは無いだろうし」

少女「ケースバイケース……。臨機応変というやつですね」

男「細かいコトをグチグチ言ってても列は消えないからな」

男「なお、競歩はゆるされている」


男「とまあ、同じ大手でも」

男「慣れていたり不慣れだったり、色々あるワケだ」

少女「本当に色んなヒトが参加してるんですね……」

男「ヒトとヒトとの交流こそが、COMIKEのホンシツともいえる」


男「それじゃあ、大手を見たところで、今度は小さいサークルにも行ってみるか」

少女「小さいサークル? ですか?」

男「ああ。大手のほうが話題になるが、イベントのメインは、おおよそコチラだ」

男「友人のサークルもソレに含まれる。見舞いがてら、行ってやろう」



――ビッグサイト 某所

少女「それで、友人さんのサークルはどこにあるんですか?」

男「ココ、東館の中だ。まずは館内に入る道を探す必要があるな」

少女「うわっ……。コレもまたスゴい行列ですね」

少女「さっきのイラストレーターさんの列でしょうか?」

男「いや……。ココは、フレンズの監督の行列らしいな」スイッ スイ

少女「……フレンズ?」

男「彼は行列を作るのが得意なフレンズなんだね」



――ビッグサイト 某所

少女「ココにもスゴい行列が……。だけど、進むのも速いようです」

男「わりと近くで終わってるみたいだな。……ん?」


セレブ妹「並んでくださってありがとう。グッズはもうありませんが、名刺だけでもどうぞ」

セレブ姉「あらセレブ妹さん、指の皮がめくれてしまいましたわ」


男「……あんなヒトたちもCOMIKEに来てるんだな」

少女「並んでるヒト全員に名刺配ってるんだ、スゴいねえ」

男「丁寧な対応だ。ゴージャス……、いや、ファビュラスというべきか」



――ビッグサイト 某所

売り子「いえーい! 満員御礼、全枚完売!!」グビグビ

サークル主「わははは!!」グビグビ


少女「もう頒布物が完売したんでしょうか? カンパイしてますね」

男「この時間で既に完売とか、相当な大手じゃないか……?」

少女「金色の、シュワシュワ……。ビールでしょうか」

男「COMIKEでは飲酒も禁止のハズだが……」

男「ま、コッソリ持ち込むくらい、好きなんだろう。ビール」



――東館 館内

男「よし、ここから館内に入れるな」

少女「ふーっ、外は曇ってたけど、中は冷房が効いてるからコレで涼し……」


少女「……くない!!!」ムシッ

少女「男さん! 屋内なのに涼しくありません! どういうコトですか!!」

男「俺に怒るなよ……。というか、なぜ屋内なら涼しいと思った」

男「むしろ、屋外より湿気高くないか? ムシムシしてないか……?」

少女「ぐ……。コレは、たしかに……」


男「それに、見ろ、この人の数を……」


ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ

ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ


少女「ココは……、何かブースがあるワケじゃないですね」

少女「大きい通路のようなモノでしょうか?」

男「そんな通り道ですら、コレだ。本来集まるべきは、ココじゃない……」

男「これだけ人がいれば、暑くなるのも当然だ。だが目的地は、さらに奥だ」

少女「ううぅ……。外の行列とは、またベクトルの違った、地獄ですね……」



――東館 ホール内

男「―――ここだ!!」


ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ

ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ


少女「おおー……、コレです! コレこそが!!」

少女「私がハナシに伝え聞く、COMIKEの姿!!」

少女「天井は高く、先の見渡せない広間に、床を埋め尽くすほどの人がいて……!」

少女「ロマン!! 人間の、ロマンです!!」


男「あー。喜んでるところ、悪いが……」


男「この中を通っていくんだぞ」


少女「……え?」

男「たしかに先の見渡せない広間だな」

男「たしかに床を埋め尽くすほどの人がいるな」

男「その中を歩いていくんだぞ」


少女「……マジですか?」

男「大マジです」


男「この先の見渡せない広間から、目的のサークルを見つけなきゃいけないし」

男「この床を埋め尽くすほどの人に流されず、進み続けなきゃならない」

少女「……ちなみに、友人さんのサークルは、どこに?」

男「うーん、このホールなのは間違いないが、中央あたりかな」

少女「……うげー」

男「伝え聞いたハナシと違う……、ってコトも無さそうだが」

男「とにかく伝聞じゃなくて、コレは、現実だ」

男「進み続けなければ、けっして勝利は無いぞ」

少女「……そうでしたね。ココは、“戦場”だと」


少女「ようし! ならば、行ってやろうではありませんか!!」

男「おう、おう。その意気だ」


少女「男さ――――ん……! ココ、どこですか――……!?」

男「だから俺から離れるなと入場前に言ったろう!! コッチだ!」

少女「そういうコトですか――、ぎょえー! 待ってくださ――――い……!」


少女「あっ、アレは、ハナシに聞くレトロゲーの本じゃないですか!?」

男「レトロゲー言うな! 最近だろうが! よそ見をするな、前に歩け!」

少女「15年前を最近とは言いませんよぅ……」



――友人のサークル

友人「……お? もしやwwwその姿はwww」

友人「男氏と少女氏ですかなwwwwww」

男「ああ、そうだ。来てやったぞ」

少女「ひえぇ……、疲れたぁ……」

友人「んんwwwこれはご苦労様と言わざるを得ないwww」

友人「ファンの方に差し入れてもらったキンキンのコーラですぞwww」

少女「んっ、んっ、んっ……。……プッハー!! 生き返るー!!」ゲフゥッ

男「……おい、友人。お前、一人か?」


友人「んんwwwファンネルの方々は定期的に戻ってくるのですがwww」

友人「ピークが過ぎた今、売り子は我一人で十分と言わざるを得ないwww」

男「つまり、ボッチと」

友人「けっして我は友達が少ないワケではありませんぞwwwwww」


少女「……コレ、友人さんが描いた本なんですか?」ピラッ

友人「おうふwwwいかにもwwwwww」

友人「おにゃのこに自作のえっちぃ本見られて恥ずかしいwww」キャッ

男「お客さんの中に女のヒトがいないワケじゃないだろう」

友人「奴らは魂がオッサンですぞwww」


少女「……読んでも?」

友人「一向に構わないwww気に入ったら買ってくれると嬉しいですなwww」


少女「…………、…………」ピラッ ピラ


男「……食い入るように、読んでるな……」

友人「んんwwwこういった本が物珍しいのかもしれませんなwww」

男「確認するが、対象年齢は、いくつだ?」

友人「…………紳士淑女のための本ですなwww」

男「なんだその意味深な間は!!」


友人「もちろんwww既刊にはKENZENな本もありますがwwwwww」

友人「少女氏が手に取っているのはwww新刊のwww」

友人「……紳士淑女のための本ですなwww」

男「……はあ。こういうのにキョーミがある年頃なのかね」

男「女の子なら貞淑にしていてほしいモンだが」

友人「18歳以上ならwww正当な権利と言わざるを得ないwww」

男「だいたいこういうの、売るほうも恥ずかしいんだが?」

友人「んんwwwそれは男氏が界隈に不慣れなだけwwwwww」

友人「薄い本は売るほうもwww買うほうもwwwラブアンドピースですぞwww」


男「ていうかお前、まだこの作品の同人、描いてたのか」

男「たしかに有名なシリーズだが、もう流行りでもないだろう」

友人「んんwww作品を流行り廃りで見るのは外野wwwwww」

友人「真に作品を見るべき眼は、たしかな審美眼とwww」

友人「愛ですぞwwwwww」

男「ぐっ……。昔の作品の同人を作ってるお前に言われると反論できない」

男「だが、流行りの作品を題材にするのも悪くないんじゃないか?」

男「FG○とか、俺もやってるぞ?」

友人「たしかにFG○は我もやっているwww実際シナリオは面白いwww」


友人「だがwwwソレはソレwwwコレはコレwww」

友人「我の心身は、完全で瀟洒な嫁者に捧げしモノですからなwwwwww」

男「漢これやFG○の同人のほうが売れるんじゃないか?」

友人「そのように流行りになびくのは同人ゴロと言われざるを得ないwww」

友人「ですが、もちろんそういった作り手のコトも否定しないwww」

友人「好きな作品でなければ、そも同人を作るのは不可能ですからなwwwwww」

友人「だがwwwだからこそ、我は我の好きなモノを描くwwwwww」

友人「好きを表現していれば必ず振り向いてくれるヒトはいますなwww」

男「…………」


男「……お前、やっぱカッコいいよ」

友人「んんwww男氏に言われてもまったく嬉しくないwww」

友人「男氏がおにゃのこなら別ですがwwwwww」

男「ごめん、やっぱ死んで」

友人「おうふwwwwww辛辣wwwwww」


少女「…………友人さん」パタン

友人「少女氏www我の薄い本はどうでしたかなwww」

少女「……最後まで読ませていただきました。友人さんの考えてるコトが、よくわかりました」


少女「そこに積んである本、一冊ずつ全部ください」

男「!!!!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!」

友人「おうふwwwwwwwwwwwwキタコレwwwwwwwwwwww」

友人「おっとっとwww我『キタコレ』などとついネット用語がwww」

友人「我はけっしてハルヒをリアルタイムで観た世代ではござらんのでwwwコポォ」

少女「友人さん、私感動しました」

少女「友人さんは、普段その飄々とした態度に隠しているけれど」

少女「本当は、とてもアツい情熱を持った、表現者なんだって」

男「いや、隠してるワケじゃないと思うぞ……」


友人「んんwww我の内なるリビドーを理解するとはwww」

友人「少女氏wwwなかなか見所のあるおにゃのこですなwww」

少女「えへへ……」

男「照れていいのか照れるところなのかソコは」

友人「だがしかしwwwこの薄い本は男性向けwww」

友人「女性の少女氏には実用性が低いと思われるwwwwww」

友人「良ければ二日目の女性向けサークルを紹介しますがwww」

少女「いいえ、そんなコトありません! 友人さんの本がいいんです!」

少女「それに……、」



少女「友人さんの本みたいなやつにもたくさんお世話になっていますから!!」


男「!?!!??!?!?!!*>E!*DE{‘WDQWDQ?!?!?!????」プッシュウウウウウウ

友人「男氏wwwwwwメルトダウンwwwwww」

男「ま、待て待て待て! 少女!!」

少女「ハイっ! なんでしょうか!?」

男「その、なんだ。お世話になってるのは、個人の趣味だし、5000兆歩譲っていいとしてだ」

友人「ずいぶん譲りましたな。大陸横断できますぞ」

男「そんな本持ってるの友達とかに見つかったらシロい目で見られるんじゃないかなぁ~~~???」


少女「え? みんな持ってますよ」

男「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!?!??!?!?!?!?!??!?!」

友人「男氏、男氏。泡吹いてる」

男「お、俺が知らぬ間に、昨今の女子高生の性事情はそこまで進んでいたとは……」

友人「んんwww男氏、そのセリフが既に薄い本みたいwww」

男「あー、わかった。じゃあ俺は何も言わん。好きなだけ買うといい……」

少女「やったー!!」

友人「新刊1冊、既刊3冊で2000円ですなwww」

少女「ありがとうございます! あの、これよりも前の続きってありますか?」


友人「あるにはあるがwww少し前のCOMIKEで頒布を終えているwww」

友人「だがしかし家に売れ残りがあるかもしれないwwwwww」

友人「探してみてあれば、郵送するのもやぶさかではありませんなwww」

少女「ありがとうございます! 何から何まで……」

友人「んんwww直に感想をぶつけてくれる読者への返礼は惜しまぬ故www」


男「おれが おもってるよりも せかいは ひろいんだなあ  byおれ」

友人「男氏www少女氏の同人誌、リュックに入れておきますぞwww」ポフッ

男「戦利品入れは……、こっちの手提げバッグだ……」


少女「あー、いい買い物しちゃったなあ!」

少女「ねえ友人さん、ココにはこんな本が他にもいっぱいあるんですか!?」

友人「んんwwwいかにもwww」

友人「自分の欲しい頒布物を狙い撃ちするのもCOMIKEですがwww」

友人「クレイモア覚悟で表紙買いするのも、タシナミの一つwwwwww」

少女「ですって男さん! 探しに行きましょう、新たな出合いを探しに!」

男「まじか……」


友人「男氏wwwなかなかハードなおにゃのこに捕まりましたなwwwぴゃっ」



――とあるサークル

サークル主「全部で、1500円になります」

少女「1500円ですね! ええと、お金、お金」

少女「あっ、一万円札しかない……」

サークル主「あはは、大丈夫ですよ。お釣り用のお金もいくらかありますから」

男「いや、待ってくれ。小銭なら俺が持っている」

少女「男さん!」

男「1500円ですね? 千円札と、百円玉が5枚でも構いませんか?」


サークル主「3,4,5……、はい、たしかに1500円ですね! ありがとうございました!」

少女「ありがとうございましたー!!」


男「ったく……。ちょっと、サイフを貸せ。そろそろ小銭を補充する」

少女「何から何まで……。男さん、いつの間に千円札や小銭のジュンビを?」

男「昨日お前から金を借りた段階で、両替は済ませておいた」

男「既に気付いていると思うが、COMIKEでは、単価500円や1000円程度の頒布物が中心だ」

男「そこで万札や五千円札を使われると、お釣りを出すのもタイヘンなんだ……」

男「むろん、そういう事態も想定して、サークル側はお釣りの小銭も多めに用意するがな」


少女「なるほど……。たしかに、サーキットでも皆、千円札を既に用意していましたね」

男「だが、小銭が多く出るコトを逆用して、ちょっとしたサギも横行する」

男「コレを見ろ」キラーン

少女「これは……。100円玉ですか? 100って書いてあるし」

少女「でも、あれれ? なんか100円玉とはフンイキ違いますね?」

男「これは、100円硬貨じゃない。“100ウォン硬貨”だ」

少女「100……、ウォン……?」

男「韓国の通貨だな。日本円換算で、およそ10円だ。コレを支払いに混ぜて使うヤカラもいる」

少女「となると、だいたい10分の1の価値……」


少女「ガチ犯罪じゃないですか!!」

男「過去のイベントでは、偽札が使われたコトもあったらしいな……」

男「で、偽札だと思ったら、実は現行でも使える旧札だったり……」

少女「お金絡みのトラブルも……、多いんですね……」

男「現金がやり取りされる場だからな。気をつけなくちゃいけない」

男「いま立ち寄った、島中のサークルならまだしも」

男「壁やシャッター際のサークルは、どうしてもお金の確認がオザナリになるからな」

少女「島中? 壁……?」

男「ああ、ソレもついでに説明しておくか」


男「このあたりのサークルは、長方形を囲うように机が四辺に配置されているだろう」

男「この長方形のカタチを指して、“島”と呼んでいる」

少女「同じカタチのブースがいくつも点在するのが、たしかに島みたいですね!」

男「島に配置されるのは、主に小規模から中規模程度のサークルだ」

男「もちろんソレに比例して、対象のサークルの数も多い」

男「このように、ホールは一面、何百何千という島のサークルで埋め尽くされる」

少女「お目当てのサークルがあるなら、見つけ出すのも一苦労ですね……」

男「そのために、事前に販売されている、COMIKEの公式カタログがあるんだがな」

少女「もっとも、フリーで良さそうなサークルを物色するのも、十分にタイヘンですが!」


男「で、島の対義語として、“壁”がある」

男「これは名の通り、壁際に配置されているサークルのコトだ」

少女「行列が出来てたのも、ほとんどは壁際のサークルでしたね」

少女「何か関係があるんですか?」

男「関係があるというか、行列が並ぶから、壁に配置されるんだ」

男「島中でこんな肉の血栓を作られたら、他のサークルにメイワクだろう?」

男「だから壁に設営して、列は外に並べ、というワケだ」

少女「壁サークルは人気のアカシ、というワケですね」

男「壁に配置されるのはCOMIKEサークル参加者の一種のステータスだな」


少女「ぐ~~~……」

少女「うっ」

男「……ん? お前、今……」

少女「へっ!? ななな、なんですか?」

少女「お、お腹の音ですか!? わわわ、私じゃありませんよ!」

男「お前以外に誰がいる……」

男「というか寝言でも言ってたが……」

男「お前、けっこうな大食いだな?」

少女「ギクリ」


少女「そそそ、そうですかねぇ~? これくらい普通だと思いますよぉ?」

男「朝飯に魚をあれだけ食って、途中ケバブをつまんで、なお空腹……」

男「ソレを普通とは言わんと思うがな?」

少女「ぐぅ……。まあ、他人よりは、少しは多く食べるかもしれませんね」

少女「少しですよ?」

男「わかったわかった」

少女「なんで半笑いなんですかぁ!!」

男「まあ、時間としては、良い頃だろう。また鷲ントンにビュッフェ食べに行くか」

少女「やったー! バイキング、バイキング!」


男「現金な女だこと……」

男「それじゃあ、一度会場を出て、ホテルに戻るぞ」

少女「ハイ! ああ、良い買い物しちゃったなぁ……!」

男「既に同人誌、十数冊か……」

男「水は減ったが、またリュックに重みを感じてきたぞ」


少女「おっ! 行きと違って、人がけっこう減ってきましたね!」

男「COMIKEの本番は、開場から、おおよそ昼までだからな」

男「昼頃には大手の頒布物も概ねハケる」

男「エンジョイ勢が乗り込むなら、それからだな……」



――鷲ントンホテル レストラン

男「大人2人です」

受付「ありがとうございます。それでは、ご自由に料理をお取りください」


少女「おっ、朝と違って、人も多いですねえ……!」

男「昼時だからな。もっとも、ビッグサイトの混み様とは、比べるべくもないが」

少女「お昼はローストビーフやってるみたいですよ! いいですか!?」

男「ビュッフェなんだから好きなように取れ」

男(肉も、魚も、コダワリは無しか……)




少女「男さぁん! 取ってきましたー!!」

男「よし、俺も終わった。じゃあ、ソコに座って……」

少女「……? どうかしましたか?」

男「……お前、皿の上が一面まっ茶色なんだが」

少女「ふふん! 肉は元気のミナモトですよー!!」

男「だからといって肉だけ取る奴があるか! 栄養バランスを考えろ!」

少女「えっ……。でも野菜とか、だいたいマズくないですか?」

男「こんなところの野菜がマズいワケがないだろう!?」


男「引き返せ! 一度取ったモノを戻せとは言わんから」

男「野菜と、あとコメかパンも取ってこい!」

男「それと果物だ! 食後のフルーツも持ってきなさい!」

少女「ちぇー。わかりましたよっと。うるさいなぁ」

少女(でも、やっぱり、お母さんみたいだなあ……)


男「取ってきたか?」

少女「ええ。マコトに遺憾ながら、空前絶後のヘルシー盛りです」

男「茶色面積7割で自称ヘルシーとはお笑いだな」


少女「では、いただきます」

男「うん。さすがに一流ホテルのビュッフェだけあって……、昼もうまいな」モグモグ

少女「おっ! 野菜もオイシイじゃないですかー!!」ムシャムシャ

男「だから言ったろう。お前は今まで何を食ってきたんだ……」

少女「焼き飯もヒエヒエかと思いきやパラパラでオイシイですねえー」

男「ピラフだろう」

少女「もちろんローストビーフも! でも、ローストビーフって、取る時」

少女「肉切ってるヒトにニラまれるから、あんまり多く取れないですよねー!」

男「わかるよ。わかるが、デカい声で言わんでくれ……」




少女「ぷっはー! ごちそうさまでしたー!」

男「あれだけの量を食いきったか。よく食べる……」

少女「食べれる時にたくさん食べないと、ですね!」

男「そのわりには、体形は引き締まってるようだが」

少女「体質でしょうか? まあ、食後の運動くらいはちゃんとしますが」

男「健康で良いコトだ。それじゃあ、この後どうする?」

男「疲れたし、もう家に戻るという手もあるが……」

少女「なーにを言ってるんですか!!」


少女「私はまだまだ元気ですよー! いざ、第2ラウンドです!!」シュッシュッ

男「その無尽蔵の体力はどこから湧いてくるんだ……」

男「まあ、三日間通してその意気でいられるかは、見物だな」

少女「目にモノ見せてやりますとも!」


男「やれやれ。といっても、一日目終了まで、あと2時間くらいか?」

男「目的は絞れよ。寄り道が過ぎると、すぐに時間は経つからな」

少女「なるほど。では計画的に、かつ衝動的に!」

男「どっちなんだ……。いや、お前なら何故か実行できそうな気がするな」



――東館 ホール内

男「……お、重い…………」ズシッ

少女「なんか、買い終わった本を入れてたら、リュック膨らんできましたね……」

少女「私も少し持ちましょうか……?」

男「い、いや……。動き回るお前が持っちゃ、他のヒトにメイワクだろう……」

男「俺のコトは気にするな。お前は、先に行け……」

少女「いやいやいや! ソレは確実にダメなやつじゃないですか!?」

男「お前がどこまで知識持ってるのか、いまだにイマイチ掴みかねるよ」



少女「さて、めぼしい本はあらかた、買ってしまいましたが……」

男「健全なのも、そうじゃないのも買ったが、コイツにとってのめぼしい基準とはいったい……?」

男「まだまだわからないコトだらけだな」

男「昨日会ったばかりだから、当然だが」

少女「今日売ってるモノは、だいたいこんな感じなんですか?」

男「いいや。西館に行けば、企業サークルの頒布物もあるが……」

男「まあソッチは、朝のうちに売り切れてるだろうな」

男「だけど本じゃなくて、アクセサリーや自作CDなんかを売っているサークルもある」

男「見に行ってみるか?」


少女「ええ! ぜひとも!!」

男「わかった。じゃあ、このホールを出て、通路の向かいのホールに入れ」

男「その後は、また別の離れのホールだな」

男「金は……、まだまだあるな。俺のじゃないけどな」

少女「わっかりましたー! いざ、突撃!」ダダダ


スタッフ「ちょっと、ソコの女の子! COMIKEでは走らないでください!!」

少女「うわっと! すみません!!」


男「はは、バカめ。怒られてやんの……」



――東館 館内

少女「たっはー!! いっぱい買っちゃいましたー!!」

男「買っちゃいましたーじゃないぞ、お前……。ああ、重……」

少女「やっぱ少し持ちますよ。男さんだけには任せられません」

男「そうか……。じゃあ、こっちのアクセサリー袋を頼む」

男「コワレ物だ。あんまり持って走り回るなよ」

少女「了解です。こう見えて、危険物処理は、お手の物でして……」


ピンポンパンポーン


少女「……? アナウンスですか。何でしょう?」

男「ああ……。来たか、この時が」


パチパチパチパチパチパチパチパチ


少女「わわっ! 皆、拍手しはじめましたよ! これって……!」

男「ああ。そういうコトだ」


アナウンス『これにて、COMIKE 92 一日目を終了します』

アナウンス『皆さん、お疲れ様でした。残り二日も頑張りましょう』


ピンポンパンポーン

パチパチパチパチパチパチパチパチ


少女「ああ……。終わったんですね」パチパチパチ

男「いや、まだだ。まだ、一日目が終わったに過ぎん」パチパチパチ

男「本当の戦いはこれからだぞ」

少女「ええ。わかっていますとも!」


少女「そういえば、この後、サークルの参加者さんたちはどうするんですか?」

男「ん? そりゃあ、俺たち一般参加者は、ただ帰るだけだが……」


男「サークル参加者は、設営を撤収する作業も残っているな」

少女「友人さん、大丈夫でしょうか?」

男「何度も参加してるから大丈夫だと思うけどな」

男「まあ、アイサツくらいはしてやるか」



――友人のサークル

男「おーい、友人。生きてるかー?」

少女「友人さん! お昼ぶりです!」

友人「これは男氏、少女氏www無事で何よりですなwwwぴゃっwwwwww」


友人「それであの後、良い買い物は出来ましたかなwww」

少女「んもー、バッチリです!! 気になる本とか、グッズとか、いっぱい買えちゃいました!」

友人「んんwwwそれは何よりwww」

男「はたしてコレで良かったのか……」


白い死神「おい友人ー、ダベってないでゴミ片付けてくれよー」

友人「んんwwwこれはwww申し訳ないwwwwww」

男「お、白い死神か。お前も、毎回ご苦労なコトだな」

白い死神「あれ、男? 今回も来てたのか?」


男「いや、本当は不参加のつもりだったんだが……」

男「この子が、どうしてもCOMIKEに行きたいっていうんでな」

少女「こんにちは! 友人さんの、ご友人ですか!?」

白い死神「ああ、そうだ。今回はコイツ専属のファンネルでやらせてもらってる」

白い死神「“白い死神”って者だ。ヨロシクな」

少女「白い死神……? たしかに見た目、白いカンジですけど……」

友人「彼はwww通称“ビッグサイトの白い死神”wwwwww」

友人「狙った頒布物は必ず狙い撃つといわれるwww凄腕ファンネルですなwww」

白い死神「必ず狙い撃つといわれる、じゃない。必ず狙い撃つんだ」


少女「なるほど……。スナイパーの方ですか……」

少女「ちなみに、仕留めた敵のご遺族の方から恨みを買ったりは?」

白い死神「はっはっは! たしかに買えなかったヤツから恨みを買うコトはある!」

白い死神「だが、だからこそ転売はしないし、逃げも隠れもしない」

白い死神「その象徴が、この白い服なのさ」パリッ

少女「狙撃手でありながら、歴とした戦士でもある、というコトですね」

少女「……感服します」スッ

白い死神「おいおい、オオゲサだな。単に早くに並んで頒布物買ってるだけだぜ?」

少女「いえ。COMIKEに参加される方々には、敬意を払うべきだと思っていますので」


男「それで、白い死神。今日の釣果はどうだった?」

白い死神「上々だな! 友人のヤツに頼まれた依頼はすべて完遂した」

友人「まったくありがたいですなwwwwww」

白い死神「今回は、列が長くなりそうな大手は他のファンネルに任せて」

白い死神「俺自身は信用できる大手を複数回る作戦だったんだが……」

白い死神「コレが大当たり! 初参加の大手の列の、長いコト長いコト」

白い死神「案外列を早くさばいた新参の大手もいたのは予想外だったがな」

白い死神「その後は、しつこく島中を爆撃して、俺の目当ても買って、終わり」

男「まったく。お前もお前で、COMIKE、エンジョイしてるな」


白い死神「それよりも、男。どうしたこの子は? アキバで引っかけてきたのか?」クイクイ

男「……ホント、出会うヤツ出会うヤツ、マジで全員同じ質問するな……」

男「だからそんなんじゃないって。……実は、俺の姪っ子なんだ」

白い死神「うわウソくさ」

男「ちっ……」


黒ずくめ「友人さん、お疲れ様です」

友人「おうふwww黒ずくめ氏、お疲れ様ですなwww」

白い死神「黒ずくめちゃん、今日もイケメンだねー」


黒ずくめ「茶化すな死神。それよりも、朗報だ」

白い死神「あっコレ絶対朗報じゃないやつ」

黒ずくめ「ほらお前、ツイに写真アップされてるぞ。昼ごろ、戦利品チェックしてただろう」

白い死神「え? ……うわ、マジじゃん! 俺が写真撮ってるところを撮られてる!」

友人「どれどれ……、『白い死神、今日の大手の頒布物ほとんど持ってる……震える……』wwwwww」

白い死神「かーっ! 有名人はつらいわー、かーっ!!」


少女「友人さん、ホントに友達いっぱいいたんですね……」

男「アイツ、ああ見えて交流広いからな」

男「やはり時代は動けるオタクか……」


友人「あ、そうそうwww少女氏www」

少女「はいっ!? 何でしょうか!」

友人「こちら、黒ずくめ氏wwwwww」

友人「昼ごろに言ってた、我の知り合いの二日目の女性向けサークルの方ですぞwww」

黒ずくめ「おや。貴女が、友人さんのおっしゃっていた……」

黒ずくめ「初めまして。ご紹介に預かった、黒ずくめです」

少女「えっ!? あっ、ハイ!」ビクッ

少女「どどど、どうも。よよよよろしくお願いします」ドキドキ

男「何をビクビクしてるんだ」


少女「だだだだって、男さん! 黒ずくめさん、スゴいイケメンなんですもん!!」

黒ずくめ「あはは。言いすぎですよ」

男「…………」


男「……黒ずくめさん。あんたその服、まさかフォーマルスーツでCOMIKEに来たワケじゃないよな」

男「というコトは、レイヤーか?」

黒ずくめ「ええ。今日はコスプレエリアで、コスプレをしていました」

男「……重ねて訊くが、男が黒ずくめのコスプレなんてしないよな?」

黒ずくめ「はい、その通りです。お察しの通り、男装レイヤーですよ」

少女「えええっ!! ……お、女のヒト、ってコトですか!?」


黒ずくめ「そうですよ。似合っていますか?」

少女「似合ってるも何も……。ほ、本当に男のヒトだと思いましたよ!!」

黒ずくめ「ありがとうございます。イチバンの誉め言葉ですよ」ニコ

少女「うっ……。い、いえ、コチラこそ……」ドキドキ


男「……なあ、友人」

男「どんどん少女がアブナイ領域に引きずりこまれてる気がするんだが」

友人「んんwwwCOMIKEは参加者のカルマを映す鏡www」

友人「少女氏が初めからそれだけの宿業を背負っていたというだけのハナシですなwww」


友人「さてwwwwww男氏www少女氏www」

友人「黒ずくめ氏は明日、二日目にサークルを出されるんでしたな?www」

黒ずくめ「はい。今回も、自作の同人誌を出させていただきます」

少女「ち、ちなみに、どんな同人誌を……?」

黒ずくめ「ふふ。当日のヒミツ、というコトで」


友人「というワケでwww我は明日の朝、黒ずくめ氏のサークルに並ぼうと思うのですがwww」

友人「男氏と少女氏も一緒にどうですかな?wwwwww」

少女「えっ! 私たちも、黒ずくめさんのサークルに並ぶんですか!?」

男「おい、友人。ちょっと待て」


男「黒ずくめさん、あんたのサークルはどこだ。島か? 壁か?」

黒ずくめ「センエツながら、壁でやらせてもらっています」

男「……なら必然、始発と同時に並ぶ、というコトになるな……」

友人「何か問題がありますかな?www」

男「いや、俺としては問題無いが」

男「心配なのは少女だ。コイツは、COMIKE初参加だぞ?」

男「今日も安全策を取って、昼から会場に入った」

男「なのに、いきなり二日目で、待機列に並んでも大丈夫なモノか……」

少女「男さん……」


少女「心配してくださってありがとうございます」

少女「でも、私は大丈夫ですよ!」

少女「今日一日で、COMIKEのフンイキは掴みましたし!」

少女「今なら、朝から待機列にだって、並べる気がします!!」

男「…………」

友人「男氏www少女氏が心配なのはわかりますがwww」

友人「少女氏はCOMIKEに来るというチャレンジを既に行っているwww」

友人「何事もチャレンジですぞwwwwww」

男「…………」


男「……そうか」

男「なら、わかった。いいだろう」

少女「男さん!!」

男「ただし! 明日に備えて、今日は早く寝ること」

男「待機中は必ず俺の指示に従うこと」

男「……いいな?」

少女「ええ、もちろんですとも!!」

友人「明日は我も一緒に並びますからなwww」

友人「共に頑張りますぞwwwwww」


黒ずくめ「あの……、男さん」

男「なんだ?」

黒ずくめ「大丈夫でしょうか、彼女……」

黒ずくめ「ジマンじゃないですが、僕の列には、かなり人が並びます」

黒ずくめ「明日の天気もどうなるかわからないし、やはり初参加では……」

男「いえ、黒ずくめさん」

男「俺が許可を出したからには、最後まで責任を持ちますよ」

黒ずくめ「……そうですか」

黒ずくめ「彼女を、よろしくお願いしますね」



白い死神「おい友人ー、撤収作業終わったぞー」

友人「んんwww死神氏wwwありがたいwwwwww」


友人「では、我らはこれにて失礼いたすwww」

友人「男氏、少女氏、黒ずくめ氏wwwまた明日会いましょうぞwww」

男「ああ。明日行く時は、またホテルに寄るよ」

友人「大歓迎ですぞwwwwwwぴゃっwww」

白い死神「俺は明日もファンネルとして行動する。ココで会ったら、またヨロシクな」

少女「ええ! 二日目で、また会いましょう!」



男「さて、俺たちも帰るか」

少女「そうですね。黒ずくめさんは?」

黒ずくめ「僕も着替えたら帰ります。皆さんは、お先にどうぞ」

少女「着替える……? 何でですか?」

男「COMIKEでは、会場の外でのコスプレは禁止されているんだ」

男「だからコスプレイヤーは、会場で衣装を着て、会場で衣装を脱がなきゃならない」

黒ずくめ「そういうコトですね」

少女「…………」ウズウズ

男「……?」


少女「ちなみに、黒ずくめさん! 今日のお泊まりは、どこに?」

黒ずくめ「えっ……。都内のホテルですが」

少女「なら、私たちがタクシーで送っていきますよ!」

男「おい……」

少女「いいじゃないですか。お金は私持ちなんですから!」

男「……そうだったな。なら、俺からは異存は無い。黒ずくめさんは?」

黒ずくめ「……、そうですね……」

黒ずくめ「では、おコトバに甘えて」

少女「やったー!」


黒ずくめ「……?」

男「……?」

黒ずくめ「では、更衣室で着替えてくるので、少々お待ちいただけますか?」

少女「ええ、ええ! もちろんですとも! 待ってますね!!」

黒ずくめ「ありがとうございます。それでは、後で」


男「……お前、なんで黒ずくめさんを引き止めたんだ?」

少女「だって一緒に帰れば、コスプレしてない黒ずくめさんが見れるじゃないですか!」

少女「私服の黒ずくめさんって、どんなヒトなんだろうなぁ……!」

男「ああ、ナルホドね……」




黒ずくめ「皆さん、お待たせしました」

少女「あっ、黒ずくめさ…………」


少女「……ん?」

黒ずくめ「……? はい、黒ずくめですよ」

男「黒ずくめじゃない黒ずくめさんだな」


少女「……男さん」

男「なんだ?」


少女「フツーの、女のヒトですね」

男「……お前はいったい、何を期待してたんだ?」

少女「ええ!? そりゃ、こう……」

少女「私服でも隠し切れないイケメンオーラが、バリバリ出てるモノかと!」

男「お前は幻想を抱きすぎだ……」

男「コスプレってのは、たいてい、メイクで理想の姿に近づけるモンだぞ」

少女「そ、そうだったんですね……。メイク、スゴすぎます……」

男「ああ。ここはメイクがスゴいんだと思っておけ」

男「むしろ俺は黒ずくめさんが普通の美人な女のヒトで良かったと思うぞ」



――ビッグサイト周辺

少女「へい、タクシー」ビッ!


スーッ キキッ

カパッ


運転手「お乗りください」

少女「あっ、今朝の運転手さん!!」

運転手「おや。奇遇ですな」



――秋羽原

少女「……それでですね、ホールに入ったら、そりゃもうスゴかったんですよ!」

運転手「なるほど。私も昔は行ってましたが、最近はスゴいですな」

黒ずくめ「ふふ。三日目はいちばんスゴいよ?」

少女「そうなんですか!? うわはぁ、楽しみだなぁ……!」


男(女子同士の会話にはついていけんな)

男(俺は家につくまで黙ってるとしよう)

男(……というか、しれっと会話についていける運転手さんは何なんだ?)



――都内 某ホテル前

黒ずくめ「それでは、僕はここで」

少女「はい! また明日、ビッグサイトで会いましょう!」

黒ずくめ「ええ。……おっと、少女ちゃん」

少女「ひゃぁっ!! きゅ、急に私の首元を触ってどうしたんですか!?」

黒ずくめ「いえ。せっかくのかわいいネックレスのチャームが曲がっていたモノで」

黒ずくめ「身だしなみも油断しないように。家に帰るまでが、COMIKEですよ」ニコ

少女「うっ……。は、ハイ!」


少女「そ、それでは、お疲れ様でしたー!」

ブロロロロロ…


少女「……はぁ。黒ずくめさん、やっぱり私服でもイケメンだなぁ……」ウットリ

少女「あんなヒトが書く同人誌って、どんな本なんでしょうね!?」

男「さあな。オシャレなモノも好きそうだし、茶葉の解説本とか……」

男「いや、それなら最初から解説本だと言うか。……同人誌か」

男「まあ、二日目というだけで、だいたい想像はつくがな」

少女「……? まあ、楽しみにしておきます」



――アパート前の道路

パタン

少女「ありがとうございましたー!!」

運転手「いえいえ。またのご利用を」

ブロロロロロ…


少女「……はー、やっと帰ってきましたよー!! 懐かしき我が家!」

少女「なんだか何日も家を空けていたような気がします!」

男「ああ、そうだな。……まあ、お前は昨日初めてウチに来たハズだが」


少女「細かいコトは言いっこナシですよ。ほいガチャ、っと……」


――居間

ドシン!!!

少女「ハァー、重かったー!!」

男「まったくだ。こんなに買い物したのは、いつ振りかな……」


男「さて、俺の疲れが取れたら晩飯の時間にする」

男「それまでは、戦利品チェックでもしておけ」

少女「はーい! ああ、これが手に入れたお宝をあらためる感覚……!」



少女「ふーん、ふーん。健全な本はコッチ、えっちぃ本はコッチ……と」

少女「げ……。この健全じゃない本、ちょっとカゲキすぎません?」

少女「私、こんなの買ってましたっけ?」

男「嬉々として買ってたろうが。俺もサークルさんも顔引きつってたわ」

男「というかカゲキだと思うなら俺に見せるな」

少女「えー。いいじゃないですかぁ、男さんなんだから」

男「どうして俺ならオッケーなんだ」

少女「冷静な自分なら困惑するようなモノでも、無意識のうちに買ってしまう……」

少女「さすがCOMIKE、恐ろしい場所です。熱気にあてられないよう注意しなければ」



少女「コッチはCDですね。……これって、音楽ですよね?」

男「そりゃそうだが。お前、わからないで買ってたのか」

少女「そうじゃないんですが。ただ、どうやってCDで音楽を聴くのかな、って」

男「な……。ダウンロード世代は、CDの使い方もわからないのか? ウソだろ……」

少女「音楽はケータイで聴くモノじゃないんですか?」

男「ソレも間違っちゃいないが。……とりあえず、CDを貸せ」

男「まず、CDから音楽を俺のパソコンに取り込んで、そこからお前のケータイにコピーする」

少女「よろしくです! ああ、直に話したヒトの作った音楽が聴けるなんて、カンゲキだなぁ……!」

男「人生楽しそうだな、コイツ」



男「よし、そろそろ晩飯の時間だ」コト

少女「……? なんですかコレ」

男「何って、ココナッツミルクだが」

少女「いやソレはわかりますが。ば、晩ご飯が……、コレですかぁ?」

男「いちおう聞いてやるが、お前は晩飯に何を期待していた」

少女「そりゃあ高そうなところに外食とか、豪華に出前のお寿司ですね!」

少女「まあ男さんの手作り料理でもいいですよ?」

男「俺の料理が二の次に置かれているのが何となく腹立たしいんだが」


男「まず第一に、いちど家に帰った以上、わざわざ外に食べに行ったりしない」

男「寝る時間も遅くなるし、疲れるだけだ」

少女「むーぅ。出不精ですねぇ」

男「次に、なんでわざわざ出前とか高いモン取らなきゃならんのだ」

少女「家にお客さんが来てるんですよ? それにお金は私持ちですし」

男「こういう時だけ客気取りか……。だとしても。だとしてもだ」

男「お前、明日は朝から待機列に並ぶと言っただろう」

少女「ハイ、そうですね。ソレが何か?」

男「よほど死にたいらしいな」


男「明日、朝から何時間も並ぶとわかってるのに、前日の夜にバカ食いする奴があるか」

男「討ち死にが目に見えているだろう」

少女「えぇ……。12時間くらいじゃ食べたモノは出てきませんよ」

男「だったら腹に残ってるんだろう。人間、非日常の場では緊張もするし委縮もする」

男「その時、いま食ったモノが胃袋でカーニバらないと何故言える?」

男「それに、排泄のサイクルが24時間だというのなら」

男「お前は今朝から昼にかけて何を食ったか。その腹に訊いてみろ」

少女「うぅ。でも、さすがにココナッツミルクだけでは、空腹でお腹が痛くなります!」

男「わかったよ……。じゃあ、赤いき○ねと緑のた○きがあるから、好きなほう選べ」


少女「やったー! 私、カップ麺、大好きなんですよね」

男「インスタント中毒者か。ハンバーガーとか、ファストフードはどうだ?」

少女「あまり食べる機会はありませんでしたが、モチロン好きですよぉ」ベリベリ

男「まあ、今朝にしたって、ケバブ食ってたか……」

少女「おほー、容器の中の乾燥した香りがたまらない」スンスン

少女「お湯あります? ありませんね? 沸かしますよー」

男「急に元気になりやがって。まあ、俺も何か食うか……」


男「……アイツ、どん左ェ門もっていきやがった」




少女「ごちそうさまでしたー。このチープな感じは、他に代えられませんね」

男「ココナッツミルクを忘れるな。整腸の役割も兼ねてるんだぞ」

男「それでも胸焼けがすると思うなら、野菜ジュースを飲んでおけ」パカ

男「ヨーグルトもいいぞ」

少女「なんで冷蔵庫の食材は少ないのに、健康食品みたいなのはいっぱいあるんですか……?」

男「食材が少ないのは、この三連休に買いに行こうと思ってたからだ」パタン

男「それに、一人暮らしとなると、どうにも栄養バランスが偏りがちでな」

少女「あはは、きっと良いお婿さんになれますね……」


ピーッ ピーッ

男「お……っ。ようやく風呂が沸いたな」

少女「へえ、気付かなかったけど、お風呂もあったんですねー」

男「このアパート、わりと設備は整ってるからな」

男「……それが何故かは、察しろ」

少女「???」


少女「とにかくカラダも服もベタベタしてたので、ようやく汗を落とせそうで、助かります!」

男「今は夏の時期だからな。ましてやCOMIKEの後」

男「ちゃんと風呂に入っておかないと自分も他の参加者もヒドいコトになる」


少女「ああ……。たしかに、ちょくちょくですが、異臭を放ってるヒトもいましたね」

男「今日の天気は、朝が雨、昼が曇りだったから、夏コミにしてはかなり楽だったが」

男「その分、湿度が高くて、生乾き臭がスゴかった」

少女「自分の臭いは、自分じゃわからないのが、悩みのタネですね」スンスン

男「それに二日目以降は、家にも帰らず、カラダも服も洗わず」

男「通しで参加しているような野生のモンスターが幾度となく現れる」

少女「草むらならぬ人ごみから飛び出してくるという風情ですか」

男「まあヤツらは野生だから仕方ないが」

男「せめて俺たちはモンスターにならないよう、湯舟につかるぞ」


男「で、どっちから先に入る? 俺としては……」

少女「ハイ! 一番風呂、行かせていただきます!!」

男「元気でよろしい」


男「脱いだ服は、脱衣所のデカいカゴに入れておいてくれ」

男「あとで洗濯機で洗うが……。俺と一緒でいいか?」

少女「はあ。構いませんよ」

男「あっそう。まあ、水が節約できて助かるがね」

少女「資源は大切にしないといけませんからね」


少女「それじゃあ、また後でー」ダダダ


少女「んー! スッポンポンは快適だなあ!」

少女「わお、洗剤がいっぱい揃ってる! セッケンとボディーソープってどう違うの?」

少女「蛇口をヒネれば水が出るんだよね……。ひゃあ! 冷たぁい!」


男「…………」ハァ

男「知らない男の家でハダカになれば、襲われるかもしれないとか、考えないのかね」

男「いや、泊めてくれるなら何でもするとか言いやがるし、今さらか……」

男「……それとも、俺の常識がまちがってるのか……?」




少女「はー! サッパリしました! お風呂、お先です!!」モクモク

男「あ……っ、着替えはあるんだよな?」

少女「ハイ。持参していますが」

男「良かった。さすがに、女モノの服までは用意できないからな」

男「じゃあ、俺も入ってくる。戦利品でも見ながら好きにしててくれ」

少女「はーい! 実は中身が気になってる本があるんだよね……、と!」


男(……なんて、知らない女を一人で部屋に放置する俺も、大概か)

男(お互い、甘い親に育てられたモンだな)




男「あがったぞー」

少女「あ、うーん」シャクシャク

男「…………」

男「……てめえ、そのアイス、どこから出してきた」

少女「え? そこの冷凍庫からですが」

男「お前の親は人様の家の食い物を勝手に漁って良いとでも教えたか」

少女「そんなワケないでしょう。えへへ」

男「……頭が痛い。もう、好きにしろ」



少女「う。あ、いたたた。痛たた。きゅ、急に足が……!」

男「ふ。アドレナリンが切れて、痛みの波が来たか」

少女「痛みの波って無知の知みたいですね」

少女「でも痛い、痛いですよぅ。男さんは大丈夫なんですか?」

男「……今は、大丈夫だな」

少女「え? それって……」

男「……最近、痛みが来るのが遅くてな」

少女「…………」

少女「……イヤですね、老化って」


男「だが、当座の問題はお前だ。足は大丈夫か?」

少女「うーん、歩くのには問題無いと思いますけど。やっぱり痛いです」

男「どれ……。うーん、たしかに両足とも熱持ってるな」ピタ

男「とりあえず、冷水でひやすか」


――浴室

シャワー

少女「わっはー、つっめたーい!!」バシャバシャ

男「暴れるな、俺にもかかるから! ヒエッ、つめてっ!!」



――居間

少女「ふえ~、冷えた冷えた」

男「体温が下がって硬直したままだと筋肉痛めるぞ。揉んでやる」

少女「いいんですか? じゃあ、背中もマッサージお願いします」

男「誰がそこまでやるか。エステ屋いってこい」グイグイ

少女「―――あ゙ッ、気持ちイ゙ィ゙~~……」ゴキゴキ

男「えらい音が出てるぞ、色々と。普段カラダいたわってるか?」

少女「はあ? 疲れなんて、寝れば治るでしょう」

男「若いっていいね。でも、たまにはじっくり休むのもダイジ……」


男「…………」

少女「……? どうかしましたか」

男「……へ? あ、いや」

男「脚、長いな、と思ってな」

少女「どこ見てんですか。んー、他のヒトの脚とか意識しないんで、何とも言えませんが」

少女「あ、でも、回し蹴りとかトクイですよ?」シュッシュッ

男「トクイと自称できるほど回し蹴りを撃つ機会があったのか」

男「陸上部?」

少女「そこはカラテとかじゃないんですか? まあ、いずれでもありませんが」


男「ふーん。あっ、そう」


男(……なんだ、この足のマメの数)

男(片足だけで軽く10個は超えてる。ハッキリ言って異常だな)

男(だが、今日のCOMIKEで出来たのかといわれると)

男(そんなに新しいマメが多いようには見えない)

男(マメは前からあったと考えるべきか)

男(……コイツ、いったい今までどこで、何をしてきたんだ?)

男(知識が食い違う部分もあるし。ワケがわからんな)


男「……よし、こんなモンだな」スッ

少女「ふいー! ありがとうございます、だいぶ足が軽くなりました!」ブンブン

男「そりゃ良かった。あとはサロロンパスを貼っといてやる」ペタ

少女「うーん、つめた~い……」

少女「あ、そうだ。余ったサロロンパス、ちょっと分けてもらえます?」

男「別にいいが。何に使う?」

少女「ふふん。鼻にペタリ」

少女「どうですか! 勝利の勲章です!」ヘヘッ

男「アホだコイツ……」




男「よし、そろそろ寝るぞ」

少女「えー? まだ7時ですよ? 若い時から、お年寄りですか?」

男「年寄り扱いするな、まだ大学生だぞ」

男「……今日、何時に起きたか覚えているか?」

少女「ああ……。たしかに、まだ暗い時でしたね」

男「そういうコトだ。早く起きなきゃならないし、睡眠時間を欠いてもいけない」

男「COMIKEはスポーツだ。戦場だ。まず万全の体調が大前提と知れ」

少女「んー、ハイ! そうですね! おやすみなさい!!」


男「ちょっと待て。何故お前は当然のようにベッドを占領している?」

少女「え……? あ、たしかにベッド一つしかありませんね」

少女「ごめんなさい。このベッドは男さんに譲るべきですね」

男「お、おう……。急に殊勝だな」

少女「衣食住の重要性は心得ているつもりです」

男「でも、いいよ。お前がベッドで、俺がザコ寝。それで構わない」

少女「え? いいんですか?」

男「別に。礼儀には礼儀を、というやつだ。例えば友人とかなら蹴り飛ばしてたがな。じゃ、消すぞ」

少女「はーい」



パチ


男(……やれやれ。やっと一日目が終わったか)

男(本当に長い一日だった)

男(……まさか、三連休がこんなコトになるとはな)

男(昨日までは思いもしなかった……)

男(さて、今日は比較的うまくいったが、明日はどうかな)

男(……考えても仕方ないな。答えの出る問題じゃない)


男(……寝るか)

第一章は以上になります。
第二章は、明日18時ごろの開始を予定しています。

感想ありがとうございます。とても励みになります
緑は敵ですぞwwwwwwぴゃっwww


それでは、第二章を開始します。
今回も200レスほどの予定です。





ザァー…



少女「……、んっ……」

少女「ぐっ、うぅ~……、くぁ~~~」ノビッ


少女「あれ、ココは……」ガバッ


少女「……そっか、男さんの家か」

少女「あれ、でもさっきまで、COMIKEから帰って……」


少女「…………」


チクタク チクタク


少女「……3時」

少女「外は真っ暗……」

少女「ああ、そうか。もう朝になったのか……」


少女「…………」

少女「なんだか、肌寒いな」


少女「…………」


少女「……寒いのは、イヤだな……」


少女「……?」

少女「あれ。そういえば、男さんがいないな……」

少女「昨日は、この部屋で一緒に寝てたハズなのに」


少女「ああ、でも向こうの部屋だけ明かりがついてる」

少女「ヨイショっと」タタッ

少女「髪を……、まとめて……」



――ダイニング

少女「男さーん!」

男「ん。今、起きたか」

少女「ええ。ゆうべはグッスリ眠れたようです!」

男「なら良かった。出発まではまだ時間がある。体の調子を整えろ」スイッ スイ

少女「……? あの、男さんは、何を?」

男「ケータイで今の状況を調べていた」

男「どうやらココと同じく、有開でも雨が降っているらしいな」


少女「雨……」

男「天気予報では、昨日と同じく、朝は降ってても昼にはやむようだが」

男「とはいえ、待機列で雨に降られるコトは間違いない」

男「ある程度カクゴしておくことだな」

少女「……そうですか」

男「……? どうした。元気無いな。朝は低血圧か?」

少女「ええと……、ですね。それも、ありますが……」


少女「……ちょっと、私のハナシ、してもいいですか?」


男「…………」

男「わかった。聞こう」

男「ソコに座れ」ガタ

少女「ありがとうございます」


男「…………」

少女「…………」


男「……何か、飲み物を入れるよ」

男「寒いし、ホットコーヒーでいいか?」


少女「ホットコーヒー……」


少女「……ええ。お願いします」フフ

男「……? なに笑ってるんだ……」


男「ああ、そうだ。俺はあいにくとブラック派でな。牛乳と」

少女「―――牛乳とガムシロップの貯蔵は無いが、フレッシュならある」

少女「……ですか?」


男「……!」

男「あ……、ああ。たしかにそうだが……」


少女「いいえ、構いませんよ。実は私もブラック派なので」

男「ほう。その年の頃で、たいしたモノだ」

少女「ムカシから飲んでいますから」



男「……そら、コーヒーだ」コト

少女「うぅ……ん。おごそかな闇色の薫り……」スン

少女「一日はコレが無いと始まりませんね」

男「ふふっ。通だな」

男「俺も食にコダワリは無いが、コレだけはな」ズズ


少女「……苦くて、熱いですね。五臓六腑に染みわたります」

男「飲みすぎはキンモツだぞ。さて、ハナシを聞こうか」

少女「…………」

男「…………」


男「……話しにくいなら、別にいいんだが」ボリボリ

少女「いえ。私から言い出したコトですから、喋らせてください」


少女「……そうですね。男さんには、知るヨシも無いと、ことわっておきますが……」

少女「私の“ふるさと”のハナシです」


男「ふるさと。そういえばお前、いったいどこから来たんだ?」

少女「お教えしても良いんですが、絶対にご存知無いので、やめておきます」

男「おいおい。俺だって、そんなに世間知らずじゃ……」

少女「私にはそう断言できるのです」

男「…………」

男「……そうか。なら、まあいいがな」


男「で。お前の“ふるさと”というのは、どういうところなんだ?」ズズ

少女「……。そう、ですね……」


少女「……いいですか。カーテン」

男「ああ」

シャアッ



            ザァー…



少女「私のふるさとは、こんな風に、いつでも“雨”が降っているところです」

少女「いつでも。どこでも。いつまでも」

少女「やむコトの無い雨が、永遠に降り続けている場所です」


男「…………」

少女「まあ、そんなワケですから。私は生まれてからずっと、屋根の下で育ちました」

少女「別に、私にはソレが常識でしたので、何とも思いませんでしたが」

少女「この国に来て、青い空、白い雲、眩い海、瞬く星というのは」

少女「絵本の創作ではなく、本当に存在するモノだと、初めてこの肌で感じたのです」

男「それは、東狂の海か?」

少女「ええ。どこまでも眩く照らされる海、無窮に瞬く星々……」

少女「世界というのは、スバラシイものですね」

男「田舎のほうに行けば、自然はもっとキレイだぞ」


少女「ええ。一度、行ってみたいモノです」


少女「でも、私の“ふるさと”は」

少女「今の、この景色のように」

少女「ずっと、雨が降っていました」



            ザァー…



少女「ずっと、ずっと、ずっと……。終わるコトの無い雨」


少女「それに、この“雨”というのは、いささかタチの悪いモノでして」

少女「浴びると、カラダに良くないのですね」

男「……酸性雨のようなモノか?」

少女「きっと似ていますが、もっと、もっとタチの悪いモノをご想像いただければ」


少女「とにかく、その“雨”は、人々の往来を億劫にさせました」

少女「必然、一ヶ所に多くのヒトが住むと、食糧や資材も大量に必要になりますから」

少女「なるたけ行動しなくて済むように、少人数が分かれて住むようになったのです」

男「……それは、面白くないな」


少女「ええ。面白くありません」

少女「一緒に遊んでくれるオトナのヒトも、同年代の友達も少ないですから」



            ザァー…



少女「でも、そんな私にも、一つだけ楽しみがありました」

少女「それは、おじいちゃんから、大人数のヒトが集まっていた時のハナシを聞くことです」

男「君のおじいちゃんか。いったい、どんなヒトなんだ?」

少女「うーんと。そうですねえ……」


少女「普通のおじいちゃんでしたよ。うん、ごく普通の」

少女「物静かで、落ち着いていて……。優しくて、モノ知りで……」

少女「私の、大切なおじいちゃんでした」

男「…………」


少女「そんなおじいちゃんから聞いたんですね。私は、COMIKEのハナシを」

少女「もっとも、私が聞いたのは“コミケ”だったような気もしますが……」

男「ほーう。孫にCOMIKEのハナシをするとは、かなり変わったおじいちゃんだな」

少女「ええ、本人もそう言っていました」

少女「でも、私はそのハナシが好きでした」


少女「私には考えられないくらいのヒトが集まって……」

少女「その人々には、それぞれ一人一人に、目的が、嗜好が、人生があって……」

少女「自分のほんの人生の一部を見せ合い、認め合う」

少女「COMIKEはそんなところだと、おじいちゃんは話していました」


男「そんなキレイなモンじゃないぞ? COMIKEは」

男「色んなヒトが集まりすぎて、体臭はクサいし、変なヤツもやってくる」

男「昨日今日はマシそうだが、もし気温が上がれば、会場自体どうなるコトか」

少女「あはは。ソレについては、身をもって体感するコトにします」


少女「でも、伝え聞くCOMIKEの姿は、とても楽しそうで……」

少女「貸してもらったチャームや同人誌からも、その光景を想像していました」

男「お、おい……。お前のおじいちゃん、同人誌も持ってたのか?」

少女「ええ。その手のマニア、というワケではないようでしたが」

男「ちなみに聞くが、同人誌といっても、普通の本と変わらない健全なやつだよな?」

少女「いいえ? えっちぃのも多かったですが。えへへ」

男「えへへて……」

男「おじいちゃん。あなたは孫を、どんな風に育てたいんですか……?」

少女「ふふ。でも、ソレも、必要なコトだったのかもしれませんね」


少女「そしていつしか、私は、生でそのお祭に参加してみたい」

少女「そう思うようになりました」

男「だから、一昨日、ココに来たのか」

少女「ええ! その機会を手に入れた私は、それはもう、バビューンと!!」スッ…

少女「はるばるやってきたのですよ!!」シャキーン

男「……ふっふっ。エネルギッシュなヤツだ」

少女「ええ! 不肖私、元気なコトだけが取り柄なので!」

男「結構。だけどその元気も、二日目、三日目のいつまで保つかな?」

少女「いつまでも、ですよーっ!!」



少女「……ふう。話してたら、なんだか目も覚めました」コト

少女「さあ、男さん! 出発はいつにしますか!?」

男「そうだな、それじゃあそろそろ行くとするか」ガタ

男「だが、出来ればその前に腸の中のモノは出しておけ」

男「並び始めたら、待機列確定まではガマンしてもらうぞ」

少女「うぅ……。ちなみに、どうしてもダメだったら?」

男「喜べ。一気に十数万人の中のスターダムだ」

少女「そんなの喜べませんよーっ!!」

男「スターダストともいうな」



少女「ぐぅぅ……っ、そんなハナシしてたら、なんだか下ってきました」ゴロゴロピー

少女「では! ちょっと! おトイレお借りしますね!」ダダダッ

男「はいはい。……やれやれ、生理現象までニギヤカなヤツだ」


男「さて、アイツ薄着だし、防寒用のズボンも用意してやるか……」ガサガサ

男「それと上着。夏コミで追加の上着なんて、珍しいコトだが」

男「この雨だとレインコートじゃダメかもしれんな。使うかどうかは別にして、折り畳み傘か……」

男「あと、重要なのが防水カバー。戦利品を濡らすワケにはいくまい」ゴソゴソ


男「…………」ピタ


男「雨の降り続ける世界、ね」

男「一日中昼だったり、夜だったり、凍ってたりする国ならまだしも」

男「ニワカには信じがたいハナシだ、が」ギュウギュウ

男「……アイツがウソをついているというワケでもないだろう」

男「……本当に存在するのか、そんな国が」

男「…………」


男「少人数で人々が暮らして、COMIKEも行えない世界か」

男「……ふん」

男「あまり、好かんな」ギュウギュウ



――アパート前の道路

少女「男さん! 今日も今日とて重装備ですね!」

男「雨だから、特にな。それに列待機用のジュンビもある」


ブロロロロロ

キキー


カパッ

運転手「どうぞ」


少女「おっ! 昨日の運転手さん!」

運転手「またお会いしましたな」

男「この地区の担当なんですか?」

運転手「そんなところです。では、どうぞ」


ブロロロロロ…

バシャバシャ

運転手「今日はドシャブリの雨ですなあ」

男「ええ。雨の日は、やっぱり客足も遠くなるモンなんですか?」


運転手「いかにも。今朝は、お二人が最初のお客様で」

男「そうですか……。やっぱり雨の日はCOMIKEの人も少ないのかな」

運転手「経験則から言うと。ですが、しかし」

運転手「やはり行くヒトは行っておられますよ」

少女「私たちも今から行くところですもんね!」

男「お前、言っておくがそんなジマンするハナシじゃないからな……」

運転手「はっは。しかしこの十数年、COMIKEもずいぶん一般的になりました」

運転手「私としては喜ばしくも、フクザツでもありますな」

男(この運転手さんも、あるいは一家言あるヒトなのか……?)



――秋羽原

ゴー

少女「やっぱり朝はスイスイですね」

男「夕方はえらく混んでたがな」

運転手「東狂という街の日常ですな。……と!」

プァーン


少女「あ……っ! 左手の路地から、別のクルマが!」

男「危ない、ぶつかる!!」


運転手「――――――ふ」

キキッ!!

シュゴオオオオオオオオ!! ジャバアアアア


少女「な……っ!」

男「ドリフト走行で、回避した……ッ!?」

運転手「ほっほ」ギュウウウウン

男「運転手さん、あなたはいったい……?」


運転手「東狂という街の日常ですな」



――豊州

少女「ちょっと、男さん! 何ですかアレは!」

少女「前方の水たまりが、毒沼のような瘴気を発していますよ!」


ゴポゴポ…


男「音がおかしい! アレ絶対入ったらダメージ受けるやつじゃん……!」

男「明らかに色もグレープ味のそれだし!」

男「運転手さん! 何かご存知ですか……!?」


運転手「ああ。アレは、いま話題の“土壌汚染”の影響ですな」

男「土壌汚染!? それってそんな殺人的な問題でしたっけ!?」

運転手「新市場予定地から漏れ出した化学物質が、突然変異して道路を侵食しているのです」

運転手「東狂という街の日常ですな」

少女「と、東狂とはいったい……!!」


運転手「さて、日が昇れば、行政が対処に動き出すでしょうが……」

運転手「我らは悠長に待っていられませんな」キキッ

シュバ!! シュババ!! シュババババババ!!!!!!


男「た、ターンに次ぐターンで毒沼をかわしていく……!」

少女「車体は方向転換と、急失速、急発進を繰り返している……」

少女「なのに!!」


少女「サイドブレーキ脇の、紙コップに入れられた水が、一切こぼれていない……!!!」


運転手「一万一千回転まで」

運転手「キッチリ回せ!!」バッ!!

男「ソレは誰に向けて!?」

ブオオオオオオオオ…



――鷲ントンホテル前

運転手「さて、今日もココで良かったですかな」

男「ありがとうございます……。あの、スゴいドライビングテクニックでしたね」

運転手「なんの。ココは峠でもなければ、張り合う相手もいない」

運転手「文字通り、ロートルの朝飯前ですよ。では」

ブロロロロロ…


少女「……なんで、ただのタクシー運転手さんに、あんなヒトがいるんですか?」

男「ううむ、わからん。東狂、おそるべし……」



――鷲ントンホテル 1029号室

友人「おやwww男氏、少女氏wwwヤケモーニンwwwwwwぴゃっwww」

白い死神「来たか。男とカノジョさん」

少女「おっはよーございまーす!!」

男「二人とも揃い踏みか。……だから、そういうんじゃないからな」


男「ていうか死神、今日はお前もいたのか?」

白い死神「ああ。昨日は初日だから、下見も兼ねて、早くに出てたが……」

白い死神「今日は二日目だからな。しかも雨だ。濡れネズミになるシュミは無い」


友人「それでは死神氏www最後の作戦確認をwww」

白い死神「ああ。まず今日は二日目、女性向けの日だ。さらにこの天気、低い気温」

白い死神「さして混むというコトはあるまい」

白い死神「だが、それでも待機列は既に徹夜組でごった返している……」

白い死神「主な大手は瞬殺と考えるべきだろうな」

友人「んんwwwCOMIKEの厳しい現実www」


白い死神「お前さんたちが狙う黒ずくめも、結構な大手だが……大丈夫か?」

友人「ダイジョウブかwwwダイジョバナイかでいえばwww断言はできないwww」

友人「COMIKEには常に例外が存在するwww」


友人「だがwwwその例外の中でwww最善を尽くすwww」

友人「それが我ら“戦士”たちのやり方wwwwww」

白い死神「さすが、ベテランは言うコトが違うね」


白い死神「じゃあ、黒ずくめはお前たちに任せるとして」

白い死神「俺たちは天帝をはじめとした商業作家の大手に波状攻撃を仕掛ける」

白い死神「いちばん人気は、おそらく、ボッチ系ラブコメの柑橘類だろうが……」

白い死神「今回、俺たちはココはトラッシュだ。リスクが高すぎる」

友人「委託もありますからなwww適切なリスクマネジメントと言わざるを得ないwww」


白い死神「俺も柑橘類の絵は好きなんだがな……」

白い死神「しかし、限5なら、派遣するのは一人で十分といえる」

白い死神「また、同じ理由で、企業もパスだ」

白い死神「企業といえば、昨日レジ1台で牛歩作ってたところもあるらしいから、恐ろしいハナシだ」

友人「それでも一時期に比べればwww企業の失態も聞かなくなったwww」

友人「スナオに喜ぶべきか、なんとするべきかwww」


白い死神「逆に今回速攻をかけるべきは、限3の行楽地だ」

白い死神「よほど在庫に自信があるのか、それともただのバカなのか……」


白い死神「開場一時間くらい経ってから行って、やっぱ限1にしましたー」

白い死神「なんて言われたら、たまったモンじゃない」

友人「自分の人気を適切に見極めるのもwwwサークル主の重要なスキルですなwww」

友人「謙虚すぎるのも、傲慢すぎるのもいけないwww」


白い死神「ちなみにお前は昨日、売れ行きはどうだったんだ?」

友人「んんwwwあの後、宅配便を利用しましたなwwwwww」

白い死神「余ったってコトね。やっぱオワコンじゃねえの?」

友人「委託は売れているからwww根強いファンはいると信じたいwww」



少女「……お、男さん! 専門用語がバンバン飛び出していて、ワケがわかりません!」

男「別にわからなくてもいいよ。俺たちには関係の無いハナシだ」

少女「でも、気になりますよぅ……」

男「そうだな……。じゃあ、何が訊きたい」


少女「まず、二日目が女性向けの日、というのは?」

男「文字通りだな。二日目は、女性向け作品の頒布物が多い日だ」

男「そもそも、COMIKEは、開催日ごとに頒布物の傾向がある」

男「ちなみに一日目は小説・ゲーム・アニメ中心。三日目は……、男性向けだな」


少女「ほう。私がキョーミありそうな作品も、頒布やってますかね?」

男「そんなの知らん。自分の…………、……胸に訊け」

少女「……? ハイ、わかりましたとも」


少女「じゃあ、限5とか、限3というのは?」

男「限は限数のコトで、そのサークルで一人が一度に買える頒布物の数のコトだ」

男「たとえば限5なら、一人が一度に買えるのは5セットまで、となる」

少女「そんなの、あらかじめ決めておく必要あるんですか? 適宜対応すれば?」

男「決めておかないと、転売屋に在庫根こそぎ持っていかれるんだよ」

男「限数決まってないのを良いコトに、ダダコネられると、列も停滞するしな」


少女「なるほど……。色々と、メンドクサいんですね」

男「もしこんなコトを何も知らないCOMIKE初参加の大手なんか現れたら、大事故だろうな」

男「つまらん暗黙の了解で参加の敷居が上がるのも、如何なものかと思うが……」

少女「秩序と自由の兼ね合い、ですか」フーム

男「そんなところだ。まあ、売れるのがわかってるなら、限1にしてもらえると親切だな」

男「限1にすると、今度はアイツらファンネルが苦しむコトになるんだが……」

男「まあ、それでも転売屋なら、一度買って、二周目並んだりするけどな」

少女「むーぅ。二回以上並ぶのって、オッケーなんですか?」

男「マナーとして良くはないが、並んだヤツの顔一人なんて、覚えられないからな……。黙認だろう」



少女「それでは、柑橘類とか、行楽地っていうのは?」

男「それは、参加サークルの名前の隠語だ……。わからないなら、深く追究するな」

男「検索しても出てこないぞ! もし出てきても人違いだ!」

少女「別にしませんよ……」


白い死神「おっ、そろそろ始発の時間だぞ」

友人「んんwwwではwww出陣といきますかなwwwwww」

男「本当に、あの待機列に並ぶのか……。苦労しそうだな」

白い死神「お前らが並んでるとこ、まずは文字通り高みの見物と洒落込ませてもらうよ」


少女「あれ? 死神さんは、列には並ばないんですか?」

白い死神「ああ。俺は7時半ごろ、サークル待機列から入場させてもらう」

少女「え……? 死神さん、サークル参加してたんですか?」

白い死神「いやいや、違うよ。コイツを使うのさ」ピラッ


少女「それは……、サークルチケット……!」

白い死神「ああ。始発組よりも、徹夜組よりも早く入場できる、魔法のチケットさ」

友人「んんwwwその言い方はwww」

白い死神「おっと、悪い悪い。本来そういう使い方じゃなかったな」


白い死神「んじゃま、お三方。健闘を祈るぜ」ビッ

少女「ええ! 死神さんも、お目当てのモノが買えるように!」

白い死神「ああ。この白い死神の名にかけて、狙い撃つぜ」


――鷲ントンホテル前

男「雨、だな……」

少女「今朝からずっと、降ってますね……」

友人「んんwww待機列につくまで、傘は必須www」ブバッ

友人「ついでに今日の始発ダッシュも見ていきますかなwww」



――シーサイド線 国際展覧場駅

始発組「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」ドドドドドドドド

          コ ミ   ケ ッ ト
スタッフ長「 C o m e G e t (来たりて取れ) !!!!!!」

スタッフ「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」


アナウンス『は し ら な い で く だ さ い』


                               ヽ`
                              ´
                               ´.

                           __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
                      ..‐´      ゙          `‐..
                    /                    \
        .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                       ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
   .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙       .'                             ヽ      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;.............................              ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
                ゙゙゙゙i;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;l゙゙゙゙゙
              ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ
                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
                `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `,  ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
                 ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
                    ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙|lii|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´`゙
                         ´゙゙´`゙``´゙`゙´``´゙`゙゙´´



ブアァァァァァァァァッ


少女「う……、ぐ。すさまじい、風圧……!!」

男「二日目だってのに、元気なコトだ……」

友人「ですが始発組は毎回、同じ人間とは限りませんからなwww」

友人「真に賞賛するべきは300人のスタッフ兵ですぞwwwwww」


ダン!! ガン!! ギン!! グチャァ ドン!!

始発組「ぶるああああああああああああああああああ」

始発組「なのはは完売しましたーー!!!」



――LAMSON 国際展覧場駅前店

店員「ラーシャッセー」


男「今日はココで本格的に食糧調達していくか」

友人「ツナマヨとかいう邪道具材は悪ですぞwwwwww」

少女「ツナマヨもオイシイのに……。あっ、私イクラにしようーっと」ガシッ

男「やめておけ、生モノは腐りやすい。しかも今日湿ってるからな」

少女「えぇ? でもさすがに数時間じゃ……」

男「死にたいヤツだけ前に出ろ……」


少女「やれやれ……」ポス

少女「あれ、ていうか商品棚、なんか食べ物減ってます?」

少女「ところどころに穴が……」

男「消費期限切れの早いモノは、即日入れ替えしてるだろうが……」

男「それでもやっぱり、減ってるな」

友人「んんwww昨日どれだけの人が食糧を買い求めたかは想像に難くないwww」

友人「むしろLAMSONの在庫入荷能力に感心せざるを得ないwww」

少女「ある意味ちょっとコワいですね」

男「戦いはこれからだ。さて、明日にはどうなってるかな……」



――ビッグサイト周辺

男「さて、待機列の最後尾は、このへんか……」


スタッフ「COMIKEに参加される皆さんはコチラでーす!!」

スタッフ「東待機列と、西待機列に分かれてくださーい!」


少女「おや。二つの列のどちらかに分かれないといけないみたいですが」

少女「いったいどっちに並ぶんですか?」

男「むう……」


少女「……? 男さん、どうしたんですか?」

男「……いや、どちらにするべきか、と思ってな」

少女「え。男さんにも、列の意味わからないんですか?」

男「いや、列の意味はわかる。東ホールに行く待機列と、西ホールに行く待機列」


男「今回は大まかにいって、同人サークルが目当てなら、東ホール」

男「企業サークルが目当てなら、西ホールだ」

少女「なあんだ! ソレならカンタンじゃないですか!」

少女「黒ずくめさんは当然同人サークルでしたよね」

少女「ならば、東ホールに行く列でキマリです!」


友人「…………、いや、少女氏www」ジジジ

友人「ここはあえて西ホールに行く列へ行く列を選ぶwwwwww」

少女「ええっ! どうしてですか!?」


男「なるほど……。西東、というワケか」

友人「いかにもwwwwww」

少女「え……。西東……、って、何ですか?」


友人「んんwwwこれはCOMIKE上級者の高等テクwww」

友人「たしかに本来、東ホール、つまり東館が目当てなら」

友人「当然東ホールに行く列を選ぶべきwww」


男「だが、“東ホールに行く列のほうが早く東ホールに入れるか”、」

男「“西ホールに行く列のほうが早く東ホールに入れるか”は」

男「開催されるCOMIKEごとに傾向が違ってな」

友人「この場合、後者が“西東”と呼ばれるルートになるワケですなwww」


少女「えぇ……。東に入るのに、西から行ったほうが早いコトがあるんですか?」

男「ある。常識的に東に入るなら東からだから、東に待機列が殺到するコトが多い」

男「その結果、西のほうが空いて、西からのほうが東に入りやすくなるんだ」

男「実際、一日目の昨日はそうだったらしい」

友人「そして今日もwwwどうやらその傾向にある様子wwwwww」


少女「その傾向って……。どうしてそんなコトがわかるんですか?」

友人「それはwwwコレを聞いてみるといいですぞwww」ジジジ

少女「イヤホン……? ハイ、わかりました」

男「おい……」イラッ

友人「んんwwwこうみえて耳の穴は毎日洗っているwww」


スタッフ『こちら東待機列。西待機列の現状は?』

スタッフ『こちら西待機列。雨足は強く、人影もまばら』

スタッフ『東も雨はキツいが、既に待機列は長いな』



少女「……こ、これは……!」

男「無線傍受か。なかなかハデなコトをやるな」

友人「んんwwwコレは死神氏の贈り物www」

友人「我は盗聴器を自作できるほどキカイには強くないwww」

男「だけどソレ、ちょっとヤバくないか? 見つかったらどうする?」

友人「死神氏にはwwwカン付かれたらキカイごと壊せと言われているwww」

友人「ですが、そもそもこの雨では傍受してる音なんて周りに聞こえませんなwww」

少女「おお……。なんか、キンチョー感出てきましたね!」


友人「とにかくwwwスタッフの無線によるとwww」

友人「今日も西待機列のほうが空いているwwwwww」

友人「つまり、西東が正解ですなwwwwww」

男「よし。じゃあ、西ホールに行く列に並ぶとしよう」


少女「しかしこの盗聴器。いったいどういう仕組みなんですか?」

友人「借り物なので我にも詳しいコトはわからないがwww」

友人「どうやら市販のトランシーバーを受信専用にしてwwwwww」

友人「かつ、周波数をスタッフが使っている数値に固定しているもようwww」

少女「へえ……。けっこうアナログなんですね」


友人「ちなみに、西待機列のほうが、コンビニやトイレなどの施設もジュージツしていますなwww」

少女「え? 東待機列のほうは、無いんですか?」

男「ああ。人気ジャンルを狙う時は、東待機列に並ぶコトになるが……」

男「施設も無いし、日陰も無い。本当にタイヘンだぞ」

友人「そのため、仮設トイレなどの施設が当日のみ出現しますがwww」

友人「まさに最大手の名に恥じぬ威容を誇りますなwww」

少女「うへえ……。さすがに行きたくないなぁ……」

男「欲を出さなければいいんだ。欲を」

男「もっとも、本当に欲しい頒布物があるなら、なりふり構ってられないだろうがな」



署長「……?」ギロ


署長「おい、君」ポン

友人「あひぃっ!」ビクッ

友人「なっ、ななな、なんですかなwww」


少女「うっ!」

男「……!」


男「……、警察官か……」


署長「……いや。……君の持っている、この、黒いキカイ……」

署長「コレは、何かね?」

友人「んんんんんwwwwwwこ、コレはwwwwww」

友人「……そ、そう!」

友人「知り合いと連絡を取るためのトランシーバーですなwww」

署長「…………」ギロ

友人「んんんwwwwww」

友人「COMIKEではwww通信回線が渋滞しwwwケータイでの連絡もままならないwww」

友人「ゆえに一般人でもトランシーバーが重宝されるのですなwwwwww」



少女「……ちょっと。男さん。ポリスメンですよ……」

男「ああ……。ウワサをすればナントヤラ、だ……」

男「なんで警察って、会いたくない時に限って会っちまうんだろうな」

男「COMIKEだと本当に会いたいヤツには会えないのに」

少女「まあ、昨日から待機列の外、見回りしてましたからね……」


少女「……しかし、あのおまわりさん。すっごい威圧感だな」

少女「大家さんとはまた違った、別種の凄みを感じます」

少女「東狂のおまわりさんって、皆がああなんですか?」


男「いや……。いくら大都市の警察官でも、あんなのがゴロゴロはいないだろう」

男「あのヒトがたぶん特別なんだと思う」


署長「このあたりを管轄する警察署の署長だ」


少女「……!」

男「……き、聞こえてたんですか」ダラダラ

署長「COMIKEの開催にあたって、治安維持のため」

署長「私をはじめとした警官隊自ら会場近辺に赴き、都民の“保護”を行っている」


署長「……あまり、かぶいたマネはせんコトだ」


男「は……、はぁぁいっっっっっっ!!!」

少女「お、お勤めご苦労様です!!」ビシィッ

署長「うむ」


署長「君たちも、法律と法令を守って、健康的な営みに努めるように」


男「……は、はい……」


署長「それで、君」

友人「……ん、んんwwwなんですかなwww」

署長「……ふん。トランシーバーか……」


署長「たしかに、COMIKEでは、一般都民でもトランシーバーを重宝しているのを見るが……」

友人「…………」

署長「重宝、ね」フン


署長「諜報のマチガイではないかね?」

友人「……!!!」

男「……、…………」ダラダラ

友人「めめめ、めwww滅相も無いwww」

友人「コレはスタッフの中にいる知人と連絡を取っているだけにあるからしてwww」


署長「…………」

署長「……そうか。なら、構わないが」

友人「ほっ」


署長「だが」


友人「……!!」

男「……!」

署長「無線通信を傍受して存在や内容を漏らし、また窃用した場合は」

署長「国が定める電波法第59条に抵触するコトになる」


友人「……、…………」

署長「もし当該行為が発覚し、物的証拠が提示された場合には」

署長「われわれ警察も。それ相応の対処を迫られる」

署長「ゆめ、忘れぬコトだ」

友人「りょ、了解でございまするwwwwww」

署長「……では」


ザッ、ザッ、ザッ…


少女「…………」


少女「…………あー、キンチョーしたぁー!」

男「はあ、はあ……。焦った……」

友人「んんwwwあやうく豚箱行きかと思いましたなwww」

男「友人、やっぱソレ使うの、やめたほうがいいんじゃね?」

友人「たしかにwww常用しないにしても、油断はキンモツですなwww」

少女「情報の漏洩は生死に関わる。まさに、戦場……」

少女「警察の方とこんなにカンタンにエンカウントするとは。気を抜けませんね!」

男「なんでお前は燃えてるんだ」

友人「ふとした行動が犯罪に繋がるのはコワいモノですなwww」



スタッフ「おはようございまーす! 雨の中ですが、大丈夫ですかー? 生きてますかー?」

スタッフ「本日のCOMIKE、シャワー機能が開放されておりまーす」

スタッフ「ただしみなさんの心の醜さは洗い流せませーん」


少女「うへぇ……、相変わらず雨はやむ気配がありませんね……」

男「昨晩から降り続けてるんだったか? いい加減やんでほしいが」

男「というか今回もスタッフ、相変わらずキレッキレだな」

友人「んんwwwここまで寒い夏コミは世にも珍しいwww」

友人「ですが、その影響で体調を崩している参加者も少なくない様子www」



スタッフ「本日、低体温症が多発していまーす」

スタッフ「具合の悪いヒト居ませんかー。冷たくなってるヒトいたら声かけてくださーい」

スタッフ「そいつは死んでる!! 置いていけ!!」


男「ここは冬将軍に襲われたナポレオンの陣営か何かか……?」

少女「まさに、カコクな戦場ですね……」

少女「かくいう私も……。ブルブルブル」

男「おい、大丈夫か? 革ジャンを貸してやる」ホイッ

少女「あ、ありがとうございます。はーっ、ファーがあったかい……」


男「あとはモノ食べてカラダあっためるくらいだな」

少女「やったー! あさごはん、あさごはん!」バタバタ

男「騒ぐな……。メイワク女としてネットに晒しあげられるぞ」

友人「非日常の場とて、公共の場には違いありませんからなwww」

友人「テンションが上がっても常識はわきまえるべきですぞwww」


男「あ。スレに不審者情報の書き込みだ」

友人「ほうwwwBIPの民が食いつくような参加者でも現れましたかなwww」

男「リアルで論者口調のヤバい奴が近くの待機列にいるんだって」

友人「んんwwwwwwwwwwwwwwwwww」


男「やっぱお前その口調やめられないの?」

友人「んんwww我がもしこの口調を変えてしまったらwww」

友人「それはもはや我ではありませんなwwwwwwぴゃっwww」

男「バンダナ、メガネ、チェックのシャツじゃ周りに埋没しちまうもんな」


男「ほら、梅おにぎりとスポーツドリンクだ」

男「涼しいように思えても水分と塩分は確実に失ってる。補給を怠るな」

少女「はーい。いただきまーす」モシャモシャ


少女「うーん、しゅっぱぁーい!!」


男「酸っぱいのはニガテか?」

少女「いや、そーじゃないですが。それでも酸っぱいモノは、すすす、しゅっぱ……」

男「つらかったら、スポーツドリンクで押し流せ」

少女「はぁい。んっ、んっ、んっ……。ぷはぁ」


少女「……おコメとスポーツドリンクってあんまり合いませんね」

友人「んんwww白米と牛乳の次に合いませんなwwwwww」

男「……お茶は、利尿作用が強いんだ……」

男「もっとも、この雨なら漏らしてもわからんかもしれんがな」

少女「それはヒトとしての尊厳を失っています」


男「しかし、ここまで寒くなるとは、さすがに予想外だな……」

友人「今朝の東狂の気温は23度wwwwww」

友人「さすがに半袖は死にますなwww」

男「結局のところ、登山服が大正義ってワケですか……」


男「スタッフはさすがに透明のゴミ袋みたいなの被ってるヒトばかりだな」

友人「メジェド様のコスプレイヤーも混じっていますなwwwwww」

男「俺もジャンパーを着るとするかな」

友人「男氏wwwジャンパーは死語ですぞwww」

男「うっそだろお前」



カイロ屋「えー、カイロ。カイロはいりませんかー」


男「カイロ……? そんなモノを売ってる店まであるのか」

友人「普段の暑い夏コミなら、ただの嫌がらせですがwww」

友人「低体温症の犠牲者が出ている現状では、かなりオトクな買い物ですなwww」

男「……。……って、ちょっと待て……」


カイロ屋「はい、一つ300円! ありがとうございます。カイロー……」

男「ちょっと、大家さん!!」

カイロ屋「ん……? …………、あっ」


カイロ屋「その声、さては男だなオメー」

少女「大家さんじゃないですか! こんなところで何を?」

カイロ屋「少女ちゃんもおはようございます。見ての通り、カイロを売っています」

男「えぇ……。この、雨の中?」

カイロ屋「火の中、水の中、なんのその。商売チャンスは逃しませんよ!」

男「商魂たくましいコトで」

カイロ屋「だけど、さすがに寒いので自分でも使います。さながらマッチ売りの少女ですね……」

男「そこまで貧しい身の上じゃないでしょう……。しかも若干ボッタくってるし」

友人「あ、我もカイロ一つー」



少女「……っていうか、男さん」

少女「なんか、私たちより前に並んでるヒト、多くないですか?」

男「うん、多いな。1000人ではきくまい」

少女「私たちって始発組のヒトの、すぐ後についてきましたよね?」

少女「なのに、何でこんなに人が多いんですか……?」

友人「それはwwwひとえにwww徹夜組が多いからwww」

友人「おそらく現在の列の3分の2は、徹夜組と思われるwww」

少女「3分の2……。そんなに多いんですか」


少女「私たちは、ルールを守って並んでるのに」

少女「ちょっとシャクですね。納得いきません」フンス

男「まあ、徹夜は禁止されてるとはいえ、別にペナルティとか無いからな……」

少女「えっ、無いんですか? ペナルティ!?」

友人「COMIKEの徹夜組は数が多すぎて、処罰しきれないのが現状ですなwww」

男「むしろ、準備会もあらかじめ徹夜組に整理券を配ったり」

男「非公式だがスタッフが列を誘導したり、事実上、徹夜を黙認している」

少女「……。じゃあ私も徹夜してやりましょうか」

男「しんどいだけだから、やめときなさい。そこまでして欲しいモノも無いだろう」


少女「むぅー……」


スタッフ「みなさーん、お知らせでーす! つい先ほど、待機列確定しましたー!」

スタッフ「でも8時半には戻ってきてくださいねー! 遅れたらパワー系のスタッフが押し出します!」


男「おっ、列確定きたか」イソイソ

友人「それでは近くのダルイーズで時間を潰しますかな」イソイソ

少女「……? ちょ、ちょっと! 二人とも、列を抜けてどこに行こうとしてるんですか!」

男「ん?」

少女「こ、ここまで並んだのに、入場せずに帰っちゃうんですかぁ!?」


友人「んんwww少女氏www違う違うwwwwww」

少女「え……?」

男「ああ……。少女。COMIKEには、待機列確定というシステムがあってな」

男「スタッフが待機列を確定させたら、しばらく持ち場を離れててもいいんだ」

友人「ただしwww列を離れていて良い時間にも制限があるwww」

友人「今回は8時半を過ぎて列に戻っていなかったらwww問答無用で並び直しですなwww」

少女「そ、そんなシステムが……。知らなかった……」

男「まあ、誰も教えてくれない部類のハナシではあるな」

友人「前後左右の人確認や現在地の暗記は必須ですぞwww」


男「さて。目印となるモノは、何を置いておく?」

友人「んんwwwでは、コレをwww」ニョキッ

少女「わああ!!? なに、これ……」


少女「男のヒトの、巨大な、板?」

友人「等身大パネルですなwww炎の妖精のwww」

男「『できる!』、『君は最高だ!』……」

男「……相変わらず、アツい」

少女「……ほう。……ほう、ほう、ほう」

男「友人、こんなモノ、いったいどこで手に入れたんだ?」


友人「もとは書店の店頭宣伝用のパネルですなwww」

友人「ソレを、フェア期間が終わって、廃棄するのは忍びないというコトで」

友人「ならばと我が貰ってきたのですぞwwwwww」

男「お前の家、こんなのばっかで溢れかえってそうだ」


男「ちょっと待て。ソレはソレとして、今お前、コレどっから出した……?」

友人「んん、深く追究してはいけませんぞ」


友人「彼のパネルを置いておけば雨雲も吹き飛ぶかもしれませんなwww」

少女「……なるほど!! テルテルボーズのような方なんですね、この彼は!!」


友人「おおwww少女氏、炎の妖精氏が気に入りましたかなwww」

友人「彼は、諦めない、絶対できるをモットーとする熱血漢で有名な男ですぞwww」

友人「一説によると元プロテニヌプレイヤーらしいですなwww」

男「ソッチのほうがサブなのかよ。いや、俺も試合は見たコト無いけど」


少女「諦めない……、絶対できる……。スバラシイ! 最高のコトバです!!」

少女「私も信じています。前向きに生きていれば、絶対必ずイイコトあると!!」

友人「んんwww熱血少女ですなwww」

友人「では少女氏には、炎の妖精のポジティブで暑苦しい教えを伝授しますぞwww」

少女「ええ! ゼヒ、よろしくお願いします!!」ギュッ


友人「頑張れ頑張れ出来る出来る絶対出来る頑張れもっとやれるって!!」

少女「ガンバれガンバれ出来る出来るゼッタイ出来るガンバれもっとやれるってェェッ!!!」


男「!?」

待機列「!?」


友人「やれる! 気持ちの問題だ、頑張れ頑張れ、そこだ! そこで諦めんな!」

少女「やれる!! 気持ちの問題だっ、ガンバれガンバれ、そこだァ!! そこで諦めんなァァ!!!」


待機列「マツオカ…?」

待機列「シジミ?」

待機列「ザワザワ」


友人「絶対に頑張る積極的にポジティブに頑張る頑張る」

少女「ゼッタイにガンバる積極的にポジティブにガンバるガンバるゥッ!!」



友人「―――北狂だって頑張ってるんだから!!」


少女「―――ペキンだって、ガンバってるんだからァァァァァァッッッ!!!!!!」




待機列「……オオオオ」パチパチパチ

待機列「熱くなれよぉぉ!!」

待機列「オコメタベロ」パチパチパチ



男「……いつの間にか、人が集まってきてる……」

男「まあ、大声で北狂のアレ、復唱してたらなぁ」

男「しかも友人のヤツ、完コピしてるし」

男「……こりゃあ今回のマンレポに載るかもなぁ」

男「あ、マンレポってのは、COMIKEのカタログや公式ホームページに載ってる」

男「前回のCOMIKEの様子を1コマ漫画にまとめた、まんがレポートのコトな」


男「……あれ? なんか、晴れてきた?」


スタッフ「えー、西待機列に炎の妖精発見。北狂だって頑張ってるなどと意味不明なコトを……」



――喫茶店 ダルイーズコーヒー

少女「いやあ! スっとしました!!」

少女「大声で叫ぶってのは良いモノですねぇ!!」

男「……もう、謝るの俺なんだから、やめてくれよ……」

友人「んんwww我一人ならカクジツにしょっぴかれていたwww」

友人「やはりおにゃのこ補正おそるべしwww」

友人「あとは、炎の妖精氏の人徳ですかなwww」

男「あー、もうネットに動画アップされてるよ……」ガタタン


少女「え、マジですか? 見せてください!」

男「見切れてるけど、俺もハシッコに映ってるよぉ……」

友人「んんwww一部始終が完全に撮影されているwww」


男「ヘンなコトしたら、こうやって晒し上げられて一生残るんだから、気を付けろよ」

少女「一生、ですか……。うぅ。スイマセン」

少女「でもソコはソレ、なかなか良く撮れていますね! この動画!」

少女「もうちょっとお腹から声出したほうが良かったかな……」

友人「ジューブン男らしい声でしたぞwww」

友人「あ、それポチ。ダウンロード」ヴヴゥン


友人「少女氏は学校で応援団長でもやってたのですかな?www」

少女「応援団長、ですか……。いわゆる、チアガール、とかいう?」

男「いや、友人の言ってるのは、ソレじゃないと思うぞ。ソッチじゃなくって……」

男「ほら。頭にハチマキ巻いてて、膝下まである丈の長い黒の学生服のやつだろ」

友人「んんwwwいかにもwww」

友人「先程の大音声は、まさに経験者のソレでしたなwww」

少女「なるほど。ソレでしたら、似たようなモノをやったコトがあります」

少女「大きな声でテンション上げていくのは! ダイジですからねぇ!!」

男(応援団長……ねぇ。けっこう似合いそうだな)



男「……さて。この喫茶店も、けっこう混んできたな」

友人「ココのダルイーズは、列確定後によく利用するのですがwww」

友人「COMIKE期間中でも混んでないのに、今日はヤケに混んでいますなwww」

友人「おっとwwwヤがついていても、そのままヤケという意味なので悪しからずwww」

少女「やっぱ雨だからですかねえ?」

男「今日は雨だから人少ないとかいうのは何だったのか……」


少女「……ん?」

少女「おっ、窓の外を見てください男さん、友人さん! 空、晴れてきましたよ!」


男「ああ。さっきから明るくなってきてたが、雨もやんできたみたいだな」

友人「雨雲レーダーでも、徐々に赤い部分が通過しつつありますなwww」

少女「コレはさっきのペキン、効果テキメンですね!!」


少女「やっぱりやまない、雨は無い!!」ガタッ

少女「もう一回、いっちゃいますよぉぉ――――!!!」ダンッ

男「やめろ! 店の中だぞ……!」

男「コラ待て片足をテーブルに乗り上げるなァァァ!!!!」

友人「んんwww男氏の声がイチバン大きいwww」



――西待機列 某所

男「さて、もうすぐ8時半だし、待機列に戻ってきたワケだが」


ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ…


少女「なんだかんだで、人、多いですねえ……!」

友人「んんwww晴れたはいいが、気温が上がって蒸してきたwww」

友人「すなわち、ここから開場の10時までが、戦いの佳境ですなwww」

少女「勝負とは山場の一瞬で決するモノ! 頑張りますよーっ!!」



サワ…


少女「あ、でも、風が涼しい……」

男「うん……。気温が高ければ、風なんて吹いても熱風だが」

男「気温の低い朝の風は、こうも快いか……」


少女「かすかに聞こえる波の音、あまねく漂う潮の香り……」

少女「これぞ海に面した港町、ってカンジがします」

友人「でも少し……この風……泣いています……」



友人「…………」ジジジ

友人「……んんwww」

男「……? 友人、どうした」

友人「いや、今またスタッフの無線を傍受していたのですがwww」

友人「やはり今日は待機列の人が少ないとのコトwwwwww」

男「そうか。俺にはいつも通りの数に見えるが」

男「俯瞰で見れば、案外列が伸びてなかったりするのかな」

友人「だがwww少し気になるのがwww」

友人「既に入場している参加者が、気持ち多いというスタッフの発言ですなwww」


男「何……? まだ一般参加者が入場できる時間じゃないだろう」

男「……いや。そうか、……サクチケか。キナ臭いな」

スタッフ「然りwww加えて、スタチケの使用者もいるもようwww」


少女「何なに、どうかしましたか?」

男「既にサクチケやスタチケで入場しているヤツが多いらしい」

少女「スタチケ……? って、何ですか」

少女「サクチケはわかりますけど。サークルチケットのコトですよね」

友人「んんwwwスタチケとは、スタッフチケットのコトwww」

友人「サクチケと理由は同じwww当日、頒布物を買えないスタッフのためのモノですなwww」


少女「ああ、たしかに……。スタッフのヒトも、サークル参加者と同じで」

少女「COMIKE中は、自分の持ち場を離れられないから」

少女「気になる頒布物があっても、買いにいけませんもんね」

友人「また、COMIKEのスタッフはボランティアですがwww」

友人「連日の労働に対する、実質的な報酬という側面もありますなwww」

男「スタチケの場合も、サクチケと同じで、あらかじめ一人に配られる枚数は決まっている」

男「もっとも、全員が均一、というワケではないだろうがな」

友人「これらチケットを使用すればwww我ら一般参加者よりも早い入場が可能www」

友人「そんなチケット使用での入場者が今日は多いというハナシですなwww」


少女「なるほど。つまりそのヒトたちは、今日出てるサークルやスタッフの代わりに」

少女「頒布物を買うために、先に入ってる、ってコトですか!」

男「…………。まあ、そうだな」

少女「……なんですか、その沈黙は」


友人「……しかし、オカシイとは思いませんかな、少女氏www」

少女「え?」

友人「今日の一般参加者は、スタッフ自身が“少ない”と証言しているwww」

友人「なのに、チケットを使っての入場者は“多い”と、これまた別のスタッフの発言www」

男「……ちっ。そういうコトか」


少女「ど、どういうコトですか?」

少女「ええと。おハナシを聞く限りだと、チケットはサークルやスタッフのためのモノで……」

少女「別に一般参加者や、その数には関係ありませんよね?」

友人「いかにもwwwですが、こうも考えられませんかなwww」


友人「“一般参加者が少ないのは、チケット入場者が多いからだ”」

少女「……!」

男「むろん、参加者が少ない主な理由は、さっきまでの雨と、今日が女性向けの日であるコトだろう」

男「パっと見ればわかるが、COMIKEに限っては、男の参加者が多いからな」

男「だが……。それらがカモフラージュに利用されていたとしたら」


男「普通は、今日は雨だし二日目だから、人が少ない」

男「物事の表面だけ見れば、そう思うだろう」

友人「むろんwwwただの人間が天候や日程をどうこうするコトは出来ませんなwww」

友人「だが、あらかじめ予想される事象を、利用するコトができるのも人間だけwww」

少女「で、でも……。仕方なくないですか?」

少女「チケットを使って入場するヒトたちは、サークルやスタッフのために……」

男「本当にソレだけだと思っているのか」

少女「…………えっ」

友人「他の参加者よりも自分が早く入場したいと思うのは、単純な心理www」


友人「徹夜組や、我ら始発組とて、動機自体は同じですなwww」

男「それにだ……。すべてのサークルが、スタッフが、全日の頒布物を欲しいワケじゃない」

男「必然、チケットは余る場合もある。すると、どうなると思う?」

少女「……。早く入場したいヒトに、チケットを、譲る……?」

男「“無償で”譲るだけなら良いな。チケットの理念範囲内だ」

少女「……ちょ、ちょっと待ってくださいよ……」

友人「COMIKEのサークルの当落発表は、開催の数ヶ月前に行われるwww」

友人「そして、その時期になると、ネットオークションを湧かせる“商品”がありますなwww」

少女「……サークル、チケット……ですか……」


男「そうだ。サクチケやスタチケは、誰よりも早く入場できる魔法のチケット、という見方もある」

少女「そ、そんなの……。まちがってないですか!?」

少女「チケットは、当日のサークルやスタッフのためのモノなのに!!」

友人「もちろんチケットの転売行為は準備会に禁止されているwww」

友人「ですが、サクチケやスタチケに高額で取引される需要があるのも、また事実www」

男「当然チケットは、早くに入場し、貴重な大手の頒布物を手に入れるために使われるが」

男「そういった貴重な大手の頒布物は、貴重ゆえに金銭的な価値を持つ」

男「これをまたネットオークションで転売し、儲けるヤカラもいるワケだ」

少女「許せない……。そんなの、チケットが、ただの転売の引換券に成り下がってる!!」


少女「COMIKEはお金儲けのためのイベントじゃないでしょう!!?」

男「その思想は、あまり極端に振りすぎないほうがいいがな」

男「実際、COMIKEの開催によって近隣の印刷所やホテルが儲かるのは、正当な権利だし」

少女「……。でも……」

少女「サークルのヒトたちが、魂を込めて作った同人誌を、食い物にするなんて……」

少女「まちがってますよ……」


友人「んんwwwまあwww転売屋の是非は別としてwww」

友人「今日この場に、転売屋が多いかどうかは、我らの仮説に過ぎないwww」

友人「あまり本気にしすぎないほうがいいですなwww」


少女「……。はい……」

男「おどかして悪かったよ。あまり、気を落とすな」

男「ほら、エナジーバーでも食え」ポイッ

少女「……はい」モシャモシャ


男「…………」

男「それで、実際のところ、どうなんだ。友人」

友人「……んんwww」

男「その顔は知っている顔だな。正直になれよ」


友人「……今日のチケット入場者に、転売屋らしき人物が多いのは、まず間違いありませんなwww」

友人「というかソレそのものな、スタッフの発言がチラホラwww」

男「見た目で転売屋かどうかなんて、わかるモノかね」

友人「何年も毎回チケットで入場して、列に二周三周並んでるヤツはまちがいなくクロですなwww」

友人「そしてその領域になると、スタッフも顔を覚えているwww」


友人「また、死神氏も、実は同様の作戦で入場しましたなwww」

男「サクチケを持ってるな、とは思ってたが。ふん、推理そのものが受け売りだったか」

男「相変わらず、限りなくクロに近い部分を踏み込んでいくヤツだ」

友人「そうでもしなければ、と本人は言っていましたがなwww」



スタッフ「それでは列移動開始しまーす。並んでるヒトは前に進んでくださーい」

スタッフ「待機列ダイエットしまーす! 詰めてー!」

スタッフ「オイイイイイ!!! 今から入ろうとした奴はパンケーキだぁぁ!!!」


男「お……。もう8時半か」

友人「ここからは止まりつつ進みつつ、館内のいけるところまでマッシグラですなwww」

少女「…………」

男「……おい、何ぼーっとしてる。行くぞ」

少女「……え? あ、ハイ……」



――ビッグサイト 入口


                  l ̄ ̄li         ,.、        ll ̄ ̄l
     _______|__|l____,z_壬个爻_z、____l|__|______
     \;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;:、'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::::/
      \;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::/人\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::/    _,n_00  _n__   _,n_00  _n__
        \;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;//圭\\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;:/     └l n |   └i┌z」 └l n |   └i┌z」
       ,ィE\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::/イニニニニト、\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;:/        U U     U     U U     U
      , イ:l:l:E圭\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'/イ三三三三三三ト\;::'::;::'::;::'::;::'::;::/
   , イ:l:l::レ''´  ̄ ̄\;::'::;::'::;::':/iニニニニニニニニニニi\;::'::;::'::;::'/

  , イ:l:l::レ'´_____ l三三三liY\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.___;;;;;;;;;;;/Yl三三三l _________
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::l::レ''´∠二∠二∠, ヘ l三三三liil;;;;l        ゝュ'/ _゙ヽ l;;;lil三三三lへヽ'二ヽ'二ヽ'二ヽ'二
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..}{ i}兮.、!} ト'ニ}{ i}兮i´<|‐^‐〈....、!} ト'ニ}{ i}兮i´<|‐^‐〈介〉′「!ト._/j! , i}_/} !r'/ Уノr,'.」..}{ i}兮i´<|
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|!:|.i|:llll| |i !|「|!:|.i|:llll| |i }:::!:{ }_!}」l..!|「|!:|.i|:llll| |i }:::!:{ }_!}」l||i|:|i |T!iT「!|| || i!/ T/,i |.゙!|「|!:|.i|:llll| |i }



男「……さ、さすがに昼前の入場と違って、人も多いな……」

友人「ですがwwwこの、ウォーリアズ・ラダーを昇って逆三角形に向かう人々を見ているとwww」

友人「COMIKEに来ている、というカンジがしますなwwwwww」

男「まあ、たしかにな……。壮観ではある」


少女「…………」

男「おい。大丈夫か?」

少女「えっ? あっ、ハイ!!」

少女「大丈夫です! 私は、大丈夫ですとも!!」


男「…………」

男「顔が青白いぞ。目の焦点も、ところどころ合っていない」

男「あまり大丈夫とは言えんな」

少女「…………」

男「……。ムリはするな。汗をふけ」ポイッ

少女「あ……。ハイ」ゴシゴシ

男「それとスポーツドリンクだ。一気には飲まないほうがいいが、それでも苦しければ言え」ポンッ

少女「…………」ギュッ

少女「……すいません」


男「……なぜお前が謝る」

少女「私が、朝並びたいとか言ったからですよね。こんなコトになってるのは」

男「並びたいと言ったのがお前なら、並んでもいいと言ったのは俺だ」

男「お前だけの責任じゃない。自分を追い詰めすぎるな」

少女「……優しいんですね、男さんは。いつでも」

男「……はんっ。俺に任せやがれ」


友人「男氏、イケメン~」

男「うるせ。お前がぶっ倒れてたら天日干しにしてやる」



――ビッグサイト 逆三角形下

男「はー……っ。冷房だー……」

男「日陰だし、風は吹いてるし。なんだココはァ!?」

少女「い、生き返る~~~……!!」

友人「まさに天国ですなwww」


友人「ですが、このまま逝ってしまわぬよう注意をwww」

男「この場面で言うと冗談じゃないからな。な?」

友人「おうふwwwwww失礼wwwwww」



少女「……おや。また、列が二つに分かれていますね」

少女「最初の待機列選び以来ですが。今度はどちらに?」

男「今度も左が東ホール、右が西ホールか……」

友人「今回は迷わず東ホール行きですぞwww」

友人「もはや会話の時は終わり、いざ行動の時www」

友人「ヘタな小細工は無用の真剣勝負ですなwww」

少女「なるほど……。あとは押し通るのみ、というコトですか!!」

男「ここからが最終ステージだ。気を抜くなよ……!」



アナウンス『リンゴンリンゴンリンゴン! 一斉点検の時間だよ~』

アナウンス『晩鐘は汝の荷物を指し示した』


少女「……? なんですか、この放送」

男「ああ。昨日は気付かなかったが、COMIKEでは定刻に不審物の一斉点検を行っている」

男「一日に三回ほどだな。コレがその一回目、開場前のタイミングだ」

スタッフ「あ、このへん点検しますねー。不審物、不審者などいましたら、お声かけくださーい」

友人「了解しましたぞwwwwwwぴゃっwww」

男「お前がイチバンの不審者では……?」



――館内 東西連絡橋

少女「あれ……。ココは、昨日も通った気がする……」

男「ビッグサイトの東館と西館を繋ぐ、東西連絡橋だな」

友人「連絡橋といってもwww入口と出口以外、完全に密閉されている通路www」

友人「その出入口の狭さと、天井の低さから、ゴキブリホイホイなんて言われていますなwww」

少女「ゴキブリホイホイ……。たしかに、ソレそのものですね」

男「ゴキホイとか誰が言い出したんだろうな。ドンピシャすぎる」

友人「言い得て妙な俗称というモノは世代を超えて受け継がれるモノですなwww」


少女「……しっかし、アッッッづゥイ゙ぃぃぃっっ!!!」

少女「む……。蒸し焼きになる……」

男「ぐぅ……。この狭い通路に、バカみたいな量の人が集まって、熱気がスゴい……」

友人「んんwwwココは、早朝からCOMIKEに並ぶ者にとって、最大の難所www」

友人「実際にゴキホイに並ぶのは、わずか十数分www」

友人「しかして、この地獄は、今までのすべての待機時間の苦しみに匹敵するwww」

少女「ふやけちゃいます。ふやけちゃいますよぅ」

友人「ゴールまで、あとほんの少しwww頑張りますぞwww」


ゴゴゴゴゴゴ…


男「なっ? なんだぁッ!?」


ゴゴゴゴゴゴ…!!


少女「きゅ、急に地鳴りが……! これはいったい!?」


ゴゴゴゴゴゴ…!!!!!!


友人「んんwwwwww我にもわかりませぬwww」


待機列「お……、おい! アレを見ろ!!」

待機列「窓が! ―――ああ、窓が!!!」



ゴゥン… ゴゥン…!!


                                        / ̄|
エ エ|//l 77\ \夫l夫l夫l天l天天天天天天_天天天天天天|.|   /. |夫/ /77|//|エ エ
 エ .|//|'777\ \夫|天|天|_ィ≦ ̄ ̄Yi'´ ̄ ̄`:i../7    |__/__  /7777|//| エ

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男「ご、ゴキホイの……」

少女「窓が、開いた……っ!?」



友人「んんwwwまさか、ゴキホイが変形するとはwwwwww」

友人「不覚にも男のロマンをくすぐられてしまいましたぞwww」

友人「それもゴキホイにwwwwww」


待機列「うおお、涼しいー……!!」

待機列「ゴキホイ最高ォォォーーー」


少女「皆さん、換気の雄叫びを上げています!」

男「その漢字で間違いないんだな? ……と。来るぞ!」



アナウンス『お待たせしました。ただいまより、COMIKE 92――――』

アナウンス『二日目を、開催します!!』


ババババババババババババババババババババババババババババババ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

待機列「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」

ババババババババババババババババババババババババババババババ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


少女「おおっ、これは! 昨日は、外で聞いていた……!」パチパチパチ

男「ああ。スゴいだろう、間近で見る拍手は」パチパチパチ

友人「奇跡のカーニバル    開     幕     だ    」



待機列「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」ドドドドドド

待機列「突撃だああああああああああああ」ドドドドドド


少女「あっ、皆さん一斉に走り出しました! 私も……」

男「待て! 動くな!!」

少女「え……!?」

友人「んんwwwこんな光景を、つい最近、どこかで見かけませんでしたかなwww」



スタッフ長「―――走らないでください」ザッ



スタッフ長「―――ゆっくり。ゆっくり、ご移動お願いします」



      | |
      | |                      _、rセ州州h、
      | |                 Ⅶ州州州沁
      | |                 Ⅶ州州州;沁
      | |                       Ⅶ州州;州;沁
      | |                       Ⅶ州;州;州;沁              Λ
      | |                Λ     Ⅶ;州;州;州;沁            | |
      | |               | |    { ̄{  ̄ 寸jijハ            | |                 /|
      | |               ∨      ∨ ^'く   寸ij:i,             | /                | |
      | |    Λ            |::|     ./    \  寸}           | |                  |/
      | |    | /             |::|    /   |     \.  寸.           | |                ||
 ̄^\   | |    | |    j{       |::|.   |   |     \ |     Λ     | |                ||
   :.∨ | |    | |    j{       |::|.   |   |  __  ∨{    |/      | |          |    ||
_   V| |    | |    j{       |::|.   | i'丐| |丐,ノ    |Λ     ||  i   | |  │      |    ||
云]    }| |    | |    j{       |::|     ∨___|_〉 |    「/Λ  .||   |)  | |  ┼  |  |    ||
厂    ノj| |    | |    ||       |::|     ∨ |双双|     //从乂  ||   |   | |  |  |  ,.|.___    ||
   / |(\    | |    || j{     .|::|     .」 |Τ⌒|  /ノヘ/⌒  ||   |   | |  |  | / |  \ .||
 /ノ\ノ⌒Y \ | |    || j{ /Λ |::|  _/ 人|爻爻L//´ ̄ ̄二=- _ |   | |  |  ||  |    l ||
イ// { 二 }  } | |    || j{/ { ∨:|. <  /⌒\                ニ=- _ | |  |  || 云 云  l ||
/´ ̄ { 二入,.ノΛ |    || |||〒〒 L|/ \{  ┘| |______      \.|  |_|| |Ln「  | || /
    \|  | / / / \   .|| ||「.云/´⌒ / /^ー―┘―<__     _    \ /´ `\,.|示| /⌒∨ /
<´ ̄~~~~|  i\      \_| _/     { /          ⌒^''< _   `ヽ    /  >―く ', /   / /
    _|  |_\    / / Y^{   ノ  }/    | |            {::::{>x  Λ  / /       'こ)二二/ /
.  /  .|  |.  ̄∨         __彡  八    | |            }::::{   \ Λ/ /        ', ∨/ /
/    |  |    ∨     }      >'' ∨ッ  ノ八   r  ......::::::::::VΛ      / /           ',  / /
      |  |     \ \/   >''´  二Γ¨´   `:::::::....^::::::::::::::::::::{ ∨    / /          ', { {
      |  |       ⌒''冖''"´ \二二二乂 ノ八 _  ノ:::::::::::::::::::::{   ∨  / /           } { / ̄
      |  |                 ∨二二√     ⌒:::::::::::::::::::::::: {   ∨./ /                } ∨
      |  |               |二二乂  八_   }:::::::::::::::::::{   ∨ /                } {
      |  |               |二二√     ⌒  }:::::::::::::::::::{     { {                 }  \



少女「あ、あれは。……こ、国際展覧場駅の……!」

男「300人の、スタッフ兵……!!」


待機列「うおおおおおお俺が一番乗りだああああああ」ドドドドドド

待機列「どけどけどけェェェェェェェェェェェェ」ドドドドドド


スタッフ長「我らは参加者を守るために存在する」

スタッフ長「そのためならば、参加者を害するという、ムジュンさえ呑み下そう」ジャキン

スタッフ長「選ばれし300人の精鋭よ!! 武器を取れ!!」

スタッフ「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」




          コ ミ   ケ ッ ト
スタッフ長「 C o m e G e t (来たりて取れ) !!!!!!」



スタッフ「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」ドドドドドド



待機列「「「「「「うああああああああああああああああああ!!!!!!」」」」」」

待機列「徹夜で並んだのに、こんなところでぇぇぇぇぇぇ」グサグサグサ

スタッフ「ルールを守らぬからだ……」ビチャァ!!

待機列「なのはは!!! 永遠です!!!!!!」バタッ



少女「血祭り!! アレは完全に血祭りですよ!!」

男「いや……。あの最前列に並んでいるならば、おそらく歴戦の徹夜組だろう」

男「徹夜組は、ああ見えて精強だ。槍の十突きや二十突きでくたばりはしまい」

友人「しかし傍目には、コレで徹夜組が制裁を受けているように見えるwww」

友人「一種のプロレスですなwwwwww」

少女「そ。そーなんですか……」


スタッフ長「仕留めた徹夜組の首は、逆三角形の前に晒せぇぇぇぇぇぇ」

スタッフ「「「「「「うおおおおおおおおおおおお」」」」」」



男「そんなコトより、早く黒ずくめさんのサークルに向かうぞ」

少女「は、ハイ! ええと、どっちに……」

友人「コチラですなwwwゴキホイを通りぬけて、通路に出ますぞwww」


――東館 館内 2階

友人「東ホールへの入口は、ココの1階ですなwww」

少女「わあ、もうスゴい人の数……!!」

男「降りるぞ! 乗り遅れるな!」

友人「エスカレーターへフリーフォールですぞwwwwww」



――東館 ホール内

黒ずくめ「新刊2部ですね。ありがとうございます」

売り子「コチラ黒ずくめ、限2となっておりまーす」


少女「ありました! あのサークルですよね!?」

男「ああ、そうだな。……だが」


                                            /:::::::::::::::::\
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                                          八从人从八__}
                                            |      } )
              r-‐‐- 、                        ヽ    /.|/
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   ::: : {¨',     ({.:::::::::::::::::}                       /::::::::::|/ ̄`‐---‐´ ̄\:::::::::}
   ::: : }_'ノ    ヽ:::::::::::/                   |:::::::::::::: |.           /ヽ:::::|
.   =r'〉 \⌒ ___r==┐              ,-‐‐、  ゝ::::::::/ヽ|          /  ∨
    |¨ ̄\ v  ̄   ̄ ̄\/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ . {:: : / }⌒'.__r=={   |           |    |ニ、
    |     /. }      |/. |/⌒ヽ:::::::::::: . /⌒ヽ}-┘ノ  {|.  |   |           |    |
.     ノ . \/  |      |  |.::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ̄ ̄\/⌒ヽ. !____|           |__|ニニ
       7 ̄|      |____}::::::::::::::::::::::::: : ∧      | ̄ | }. |  |         |  |
.         /__|      | | |:::::::::::::::::::::::::::::::| |     {  | }. |  |         |  |==
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    ======={.        |/ /.:::::::::::::::::::::::::::::: : |    〔二二}i:」|. |  |         |  |二二



少女「ものすごく、並んでいます……!!」

男「くっ……。壁というからには、人気なのはわかっていたが……」

男「これほどか!? さすがに異常だ……!!」


友人「…………」

男「おい、友人!!」

友人「……んん、なんですかなwww」

男「この行列の最後尾はどこだ? まったく見えんぞ……!」

少女「最後尾には何か目印とかないんですか!?」


友人「最後尾なら、サークル名が書かれたカンバンを持っている者がいるハズですがwww」

少女「わかりました! カンバンですね、探してきます!」タタッ


友人「…………」

男「……おい。さっきからどうした」

男「ホールに入ったとたん、黙りこくって」

友人「……男氏、悲報ですぞ」

男「は?」

友人「“悪いニュース”と、“もっと悪いニュース”。どっちから聞きたいですかなwww」


男「……ふん。ヤケに洋画みたいな訊き方だな」

男「じゃあ、あえて“もっと悪いニュース”から聞かせてもらおうか」


友人「……待機列の途中で、我らが立てていた仮設がありましたなwww」

男「ああ。今日はチケット入場者が多いとかいう……」

男「……まさか」

友人「結論から言って大アタリですなwww」

友人「ホールに入ってから、注意深く観察しておりましたがwww」


友人「明らかに列の長さがおかしい」


男「……!」


友人「いくら大手といっても、最初に並ぶチケット組は100人もいませんな」

友人「だが見る限り、一列あたり、そのおよそ倍の人数……」

友人「それが、何ヶ所も」

男「……さすがに、偶然じゃ済ませなくなってきたな」

男「ハナシが本当なら、チケット組の動員数は、1000人近いというコトになる」

男「それらが、カモフラージュが目的でも、あるいはそれ以外の目的でも」

男「示し合わせもしないのに集まれるハズが無い」


男「つまり、コレは……」

友人「ああ。マチガイありませんな」

友人「組織的な犯行。彼らは打ち合わせた上で、今日、この場に集まっている」


友人「何者かが背後にいる、と考えるべきですな」

男「……スケールが大きくなってきたな」

友人「悔しいですが、我らにどうこう出来るハナシではありませんな」

友人「死神氏ほどの、実力者なら、また別かもしれませんが……」

男「…………」


男「……これだけ大規模に人間を動かしての、目的はなんだ?」

友人「パっと思いつくのは、転売価格のつり上げですな」

友人「同じグループで頒布物を独占し、一定の金額で出品するコトで、相場のインフレを図る」

友人「転売の一回あたりの利益を増やそうとしているワケですな」

男「……コメの買い占めや、出し渋りみたいなモンか」

友人「原理的には。一種の寡占ですからな。ギルド制にも近いモノを感じますな」


友人「……ですが、コレは、黒幕が目先の利益に囚われている場合のハナシ」

友人「もっとタチが悪ければ。あるいは……、…………」

男「…………」



友人「……いや、考えても仕方ありませんな」

友人「今は目先の問題に取り組むべきですぞ」

男「……! そうだ、少女……!」


少女「男さーん! 友人さーん! 最後尾、コッチみたいですよー!!」


男「いたか……! わかった、今行く!!」

友人「…………」

男「……それで、友人。もう一つだけ質問だ」




男「“悪いニュース”、というのはなんだ?」


友人「…………」

男「……当ててやろうか」

友人「……構いませんぞ」

男「…………」


男「今から黒ずくめさんの列に並んだところで、新刊は買えない」


友人「…………」



――行列 先頭部分


係員「黒ずくめ完売! 黒ずくめ、完売しましたー!!」


少女「え……っ。ちょ、ちょっ。黒ずくめさんとこの係員さん!!」

少女「完売したってどういうコトですか!?」

係員「す、すいません。予想外に、並んでいる方が多く……」

係員「新刊は、すべて売れてしまったのです」

少女「……!!」

男「…………」


係員「だ、だが、既刊ならまだあるので!」

係員「良ければ、お買い求めいただければ、と……!」

少女「……ハイ。わかりました……」

友人「…………」


男「……予想通りか」

友人「そのようですな」

男「これが、組織的なファンネルのチカラか」

友人「死神氏もファンネルのチームを組んでいますが……」

友人「さすがに一つの大手を全滅させるほどではありませんな」


男「……さすがに完売したと聞いて、列を抜けるヒトも多いな」

友人「…………」

男「お前はどうする?」

友人「……正直言って、他にも狙っているサークルはありましたが……」

友人「このまま男氏と少女氏を置いていくのも夢見が悪いし、ココに残りますなwww」

男「…………」


男「……いや、なら行ってこい」

友人「…………」

友人「男氏……」


男「ほら、こう話している間にも、他の列には人が並んでる」

男「加えて組織的なファンネルの攻撃があったなら」

男「ウカウカしてるヒマは無いんじゃないか?」

友人「…………」

友人「……そうですな。ありがとう」


友人「……少女氏、少女氏」

少女「…………なんですか?」

友人「申し訳ないが、我、他のサークルも回らざるを得ない」

友人「ついては、ひとまずココでお別れ、というコトに……」


少女「…………」

少女「……そうですよね。友人さんには、友人さんのCOMIKEがありますもんね」

友人「本当に、申し訳ない」

少女「いいんですよ。友人さんが謝るコトじゃありませんって」

男「…………」


男「……それじゃあ、俺たちはとりあえず、黒ずくめさんのところまで並んでみる」

男「そのあとの予定は特に決めていない。また、縁があれば会うとしよう」

友人「……どうか、黒ずくめ氏によろしく、と」

友人「それでは……、また会いましょうぞwwwwww」タタタッ



少女「…………」

男「…………」

少女「……行っちゃいましたね」

男「ああ。第一の目的がダメになっても、すぐに第二、第三に頭を切り替えなきゃいけない……」

男「それが、COMIKEという戦場でもある」

少女「…………」

少女「……本当に、戦場なんですね」

男「…………」



ザワザワ ガヤガヤ


少女「……なんか、列、ガランとしちゃいましたね」

男「ほとんどが新刊目当てのヒトだろうからな」

男「それに、友人のように、複数の目的を持っているほうが普通だ」

少女「…………」

男「…………」

男「……薄情だなんて、思わないでやってくれ」

少女「わかってますよ」




少女「……スイスイ、進めちゃいましたね」

男「そうだな。……おっ、どうやら先頭みたいだぞ」


黒ずくめ「あっ……。少女ちゃん、男さん。来てくれたのですか」

男「ああ。いちおう、約束だったからな」

少女「…………」

黒ずくめ「……あの。少女ちゃん……」

男「ああ、すまん。コイツやっぱ、熱さにやられて疲れちまったみたいでな」


男「ああいや、黒ずくめさんのせいじゃないよ。俺たちが勝手に疲れただけだ」

黒ずくめ「…………」

少女「…………」

男「……すまん。既刊はまだあるか?」

黒ずくめ「あ……。はい、3種類ほどありますよ」

男「では、一冊ずつ、お願いする」

黒ずくめ「ありがとうございます。1500円です」

男「はい、コレで」チャリン

黒ずくめ「……たしかにいただきました。良かったら、楽しんでくださいね」ニコ


少女「…………はい」

男「…………」

黒ずくめ「…………」


男「……友人のヤツも、並んでたんだがな」

黒ずくめ「すいません。新刊無いなら、並ぶ意味無いですよね」

黒ずくめ「僕が、もっと正確に、需要を読めていれば……」

男「……いや。少なくとも今回は、黒ずくめさんの責任じゃないかもしれん」

黒ずくめ「……?」

男「まあ友人のヤツにでも、会ったら尋ねてみてくれ」


男「それとアイツ本人も、黒ずくめさんによろしく、と言っていた」

黒ずくめ「……そうですか」

男「まだ二日目は始まったばかりだ」

男「俺なんかが、エラそうに言うのも、ナンだが……」

男「頑張ってください」

黒ずくめ「あ……。……ありがとう」


少女「…………」

黒ずくめ「…………」


黒ずくめ「…………そうだ、少女ちゃん!」

少女「は!? え、えっと、ハイ!?」

黒ずくめ「コレ、僕の連絡先です」

黒ずくめ「その、厚かましいかもしれないけど……」

黒ずくめ「今日並ばせちゃったコト。お詫びがしたいので」

黒ずくめ「また夕方にでも。かけてくれると、嬉しいな」

少女「……わ。わかり、ました……」

黒ずくめ「…………」

男「…………」


男「……それじゃあ、これで」

黒ずくめ「ありがとうございましたー。次の方ー……」

少女「…………」



男「…………」

少女「…………」


男「……アソコの日陰で休むか」

少女「……ハイ」


ドサ


男「ふーっ、やっぱ荷物重いな……」

少女「…………」

男「なんだかんだで、二日目、始まってまだ30分か」

男「みんな忙しそうだなー」

少女「…………」


男「……そんなに、気、落とすなよ」

男「既刊は買えたんだしさ」

少女「…………」


男「別に、黒ずくめさんのサークルのコト、前から知ってたワケじゃないし」

男「新刊も既刊も似たようなモンだろ?」

少女「…………」

少女「……そうじゃ、ないんです」

男「…………」

少女「……なんて、いうか。なんて言ったら、いいんだろう。この気持ち」

少女「ゴチャゴチャしてて、うまくコトバに言い表せません」

男「…………」

男「ムリに、口に出す必要は、無いんだぞ」


少女「…………」

少女「……そうですね」


男「…………」

少女「…………」


男「スポーツドリンク……、飲むか?」

少女「……ありがとうございます」


ゴクゴク


少女「…………」

男「…………」


チャポン


少女「……ああ、そうだ」

少女「ちょうど、このスポーツドリンクみたいなモノなのかもしれませんね」

男「……? 何がだ」


少女「今の私です」


少女「スポーツドリンクって、冷たいほうがオイシイじゃないですか」

少女「ぬるくても、飲めるけど、オイシくなくなる」

男「…………」


少女「それと一緒ですよ」


少女「たしかに私は、既刊を買えました」

少女「あの黒ずくめさんが作った本なんだから、きっと面白いモノだと思います」

少女「……だけど、新刊は買えなかった」

少女「私は、黒ずくめさんの新刊を買うために、朝起きて、ココまで来たのに」


少女「……たしかに、目的のモノは、そこにあるけれど」

少女「正直、満足なんて出来ないです」


男「…………」

少女「…………」


少女「あー、私、なんでこんな苦労してるんだろう……」

少女「なんで私が、こんなしんどい思いしなきゃならないんだろう……」

少女「なんて、思いますね。正直言って」

男「…………」


男「……腹立つか?」

男「俺たちの前に買っていったヤツらが」

少女「いいえ。そんなコトはありません」

少女「これは、競争ですから」

少女「勝つ者がいれば、負ける者がいる」

少女「生きる者がいれば、死ぬ者がいる」

少女「そこに善も悪も関係ありません」

少女「ただ、私が劣っていた、ってだけですから」

男「…………」


少女「…………でも」

少女「常識とか、摂理とか、理屈とか」

少女「そんなの全部抜きにして言うと」



少女「悔しいなぁ…………」



男「…………」



                                    バタン


少女「!?」

男「……? なんだ、今の音……」


参加者「おい、ヒトが倒れたぞ!!」

参加者「ど、どうしよう。まずは119番か……?」


男「お、オイ!! COMIKEで救急車なんて呼ぶ奴があるか!!」

参加者「なっ?」

男「ここで呼んだところで広いビッグサイトのどこに探しに来てくれるんだ!」

男「まずは救護室だ!! どこにある!?」


参加者「きゅ、救護室なら、逆三角形のところに……」

男「なら救護室行って、車イスかタンカ持ってこい! コイツは俺が何とかする!!」

参加者「わ、わかった……!」ダダッ


徹夜組「う、うーん……」ビクッ

男「おい、大丈夫か……。ちっ、アワ吹いていやがるな」

男「しかも大量の汗……」

男「どう考えても熱中症だな。急に晴れてきたからか」

男「少女! 俺はコイツを運ぶ。お前はコイツの荷物を……」


少女「…………」


男「……? おい、少女!!」

少女「えっ? あっ、ハイ……!」

男「俺はコイツを日陰まで運ぶから、お前はコイツの荷物を持ってきてくれ!!」

少女「は、ハイ……。わかりました!」


男「ぐっ……。しかし、体臭がスゴいな。昨日風呂入ってないな、コイツ」

男「しかも、目の下のクマ。さては徹夜組か……」

徹夜組「…………」ズリズリ



少女(病人か。私も、ちょっと、チョーシ悪かったしな……)

少女「はっ。それよりも、荷物、荷物……」


少女「あった! この紙袋かな……」


少女「…………」

少女(……中身、何が入ってるんだろう)チラッ


少女「…………、……!!」


少女(……これ、黒ずくめさんの、新刊……!?)



少女「…………」ゴク


少女「……」キョロ

少女「……」キョロッ

少女「……」キョロ


少女「……、……」ドクッ

少女「…………」ドクッドクッ


少女(……今なら、誰も見てない)ゴクッ


少女(……今なら、バレない)

少女(今なら、この本を取っても、誰も気づかない)

少女(…………)

少女(……な、何を考えてるんだ、私は……)

少女(……でも、一冊くらい)

少女(私だって、並んだんだし、買えてもオカシくなかった……)

少女(そうだ。今なら誰も見てない。誰も、誰も……!)



男「―――おい」


少女「あっ……」


男「…………」


少女「…………」


男「……お前、いま何をしようとしていた」

少女「…………」ガチガチ

少女「ち、違う。これは、これ、は……」

男「…………」


男「その袋を貸せ」

少女「……!」

男「いいから、早く」

少女「……うん」ガサ

男「…………」


男(黒づくめさんの本……)

男(そういうコトか)


スタッフ「すいませーん! このあたりで倒れたヒトはどちらですか!?」


男「あ、コッチです!!」

スタッフ「うわ、これはヒドい……。とにかく、アワを拭いて……」

スタッフ「ひとまずタンカに乗せます。手伝ってくれますか?」

男「ええ。わかりました」


少女「…………」


男「……少女。ついてこい」

少女「え……っ。あっ、ハイ……」


男「…………」



――救護室

スタッフ「天使さん! 急病患者です!!」

天使「またですか。どうせ熱中症でしょう」

スタッフ「え、ええ……。おそらく」

天使「そこのベッドに転がしておいてください。え、ベッドが足りない……?」

天使「ならばマットで構いません。とにかく汗をふき、氷で体温を下げるように」

スタッフ「は、ハイ……!」


男「す、スゴいテキパキしてる……」


白い死神「スゲーだろ? アレであのヒト、“ビッグサイトの天使”って呼ばれてるんだぜ」

少女「し、死神さん!! いつの間に……」

白い死神「よう。なんかタイヘンだったみてーだな」ビッ

男「死神か。どうした、もう引き揚げか?」

白い死神「半分そうだな。なんと、この時間でもう、めぼしい大手が全滅しちまってな」

白い死神「これから数時間、並び続けるつもりだったんだが、やるコトも無し」

白い死神「仕方ないから、島中を回る前に、逆三角形に涼みに来たってワケだ」

男「なるほど……。今日は大荒れのようだな」

白い死神「おっ、わかるかい? まあ、さすがにここまでロコツじゃあねぇ」


白い死神「それはそうと、あんたら、黒ずくめさんトコのは買えたかい?」

男「…………」

少女「……、……」

男「…………」フルフル

白い死神「おっと。アソコも、先発で行ったのに、ヤラレちまったか……」

白い死神「まあ、COMIKEに来たらそういうコトもあるって。落ち込むな」


男「そういう死神。お前の首尾はどうだった?」

白い死神「俺か? 俺はまあ、予定通りさ」


白い死神「各自ファンネル、分担して、一つ目の狙いの獲物は仕留めた」

白い死神「だが、まあソコまでだな。二つ目を並ぶ余裕は無かった」

白い死神「なんでも大手や準大手が一瞬で根こそぎヤラレたってハナシだ」

白い死神「こりゃ、今日のオークション……。荒れるぜ?」

男「やはり転売目的だと思うか」

白い死神「そりゃそうだろ。俺たちみたいに、身内でシュミを分担してるだけならまだしも」

白い死神「ここまで大規模で組織的なのは、そうとしか思えねえ」

白い死神「しかしヤッコさん。ここまでハデにやれば明日警戒されると、わからんのかね」

白い死神「いや。今日、目立つコト、それ自体が目的というセンもあるか……」


男「陰謀の考察はソッチでやってくれ」

男「俺たちは純粋にCOMIKEを楽しみに来てるだけなんだからな」

白い死神「おや。その割には、面倒ゴトに巻き込まれたみてーだが?」

男「ふん……。黒ずくめさんトコの、帰りにな。タマタマだ」

少女「…………」


白い死神「お前が持ってる紙袋は、ソコでぶっ倒れてるあんちゃんのか?」

男「ああ。置いていきたいんだが、どうにもタイミングが無くてな……」

白い死神「いいじゃねえか。どうせこの後の予定も無いんだろ?」

白い死神「しばらくジャマにならないココで涼んでようぜ」


白い死神「ん……。ちょっと、その袋の中身、見せてもらってもいいか?」

男「…………」

白い死神「ははっ、盗りゃぁしねーよ」

少女「……、……」


白い死神「どれどれ。……げ、黒ずくめ持っていやがるのか」

白い死神「何コイツ、チケット組?」

男「いや……。俺が確認したところ、クサかったし、クマも出来てた」

男「たぶん、昨日の夜から並んでる徹夜組じゃないかな」

白い死神「徹夜か……。成仏しろよ」


男「死んではいないと思うけどな」

白い死神「いや、わからんぜ? 比較的涼しいとはいえ、灼熱の夏コミだ」

白い死神「……もっとも、ビッグサイトにあの天使ある限り、死人は出さないだろうが」


天使「氷が溶けてきました。至急、冷凍庫から新しいモノを取り出してください」

天使「起きましたか。保護者に連れていってもらいなさい、救護室のスペースは有限なのです」

天使「また徹夜組ですか。ルールを破った畜生の治療は後回しです」


男「……天使?」

白い死神「はっは。あの無慈悲な働きも含めて、神の使い、“天使”と呼ばれてるのさ」


白い死神「対となる死神の二つ名を持ってる俺としては、どうしても意識しちゃうね」

男「勝手に意識しておけ……」

白い死神「まあ実際、あの女がCOMIKEに赴任してから」

白い死神「ビッグサイトからの病院送りの数は劇的に減っている」

白い死神「病院に行かせず蹴り出しているだけ、ともいうが……」

白い死神「対処は的確で、治療は確実だ」

白い死神「野戦病院さながらの、この地獄じゃあ、崇め奉られような」

男「野戦病院か……。たしかに、そんな感じだな。ココは」

男「ベッドにも置かれず、ザコ寝してる患者が多いのが、特に」


白い死神「“戦場”の病院なんだから、野戦病院でマチガイないね」

白い死神「俺の仲間も何度かお世話になったコトがある」

白い死神「チケット組だとバレたら、白い目で見られたがな! はっはっは!」

男「ふーん。チケット組とか、関係あるのか?」

白い死神「ああ、関係大アリだ。あの天使、ルール違反者には、かなり厳しい」

白い死神「チケット組の患者はすぐに追い出され、徹夜組の患者は対処を後回しにされる」

白い死神「根っからのレイシストってヤツだぜ、アイツぁ」

男「それは、ある意味で公平ともいえるような気がするが……」

白い死神「違いない! あれほどの正義の執行者は、あとはスタッフ長くらいだね!」


白い死神「ほら、徹夜組のあんちゃんも。ソコに転がされていやがる」


徹夜組「…………」


男「まだ起き上がらないか」

男「よほど、ムリをしていたんだな……」

白い死神「徹夜組なら、ただの善良な被害者ってワケか」

白い死神「まあ、今日に当たった運が悪かった、としか言いようが無いな」

少女「…………」

男「善良、ねえ」


白い死神「おや。男も、徹夜組差別主義かい?」

男「そこまでポリシー持ってるワケじゃないが……」

男「まあ、徹夜はいけないコトなんじゃないか?」

白い死神「はん。俺に言わせれば、身勝手に徹夜組を叩くヤツこそ、本当の悪だね」

少女「……どういうコトですか?」


男「少女……」

白い死神「おや、少女ちゃん。復活かい? さっきからずいぶん、おとなしかったが」

少女「キョーミのある話題だったので」

少女「身勝手に徹夜組を叩くヤツこそ、本当の悪……って、どういうコトですか?」


白い死神「いやあ、深い意味は無いがね」


白い死神「―――事情も知らないで、準備会という公式が禁止しているのをいいコトに」

白い死神「安全な立場から、無責任に、正義をかざして非難する」


白い死神「そういった行為は、ムショーに腹が立つんでな。小市民的には」ギリ

少女「…………」

少女「……その、“事情”っていうのは?」

白い死神「…………」


白い死神「……ちと、深いハナシになるがね」


白い死神「徹夜組が、なんで徹夜行為を行うのかは、知ってるか?」

少女「え……。そりゃ、欲しい頒布物があるからですよね」

少女「でも、だからってルールを破るのは、ダメだと思います」

白い死神「ああ、そうだな。実際ダメだ」

白い死神「だが徹夜組だって、ルールを破らずに、欲しいモノが手に入るなら」

白い死神「はじめから徹夜なんてしないさ。そうだろう?」

少女「……。そりゃ、まあ……」

白い死神「どう考えてもルールに問題があるんだよ。準備会の標榜する、な」

白い死神「だから徹夜組は、いくら禁止しても、無くならない」


白い死神「そして、ルールを破って並んで、頒布物を手に入れようとした、徹夜組の末路が」

白い死神「そこのあんちゃんだ」


徹夜組「…………」


少女「…………」

白い死神「俺としても、さすがにいたたまれないね」フルフル

白い死神「黒ずくめは辛うじて手に入れているが、他にも欲しいモノがあったろう」

白い死神「だが、ココでぶっ倒れたせいで、その計画はオジャンだ」

男「たしかに徹夜組のほうが、俺たちなんかより、よほどCOMIKEに真剣なのかもしれないな」


白い死神「あんたら、黒ずくめを手に入れられなかったんだろう」

少女「……!」ドキッ

少女「……は。ハイ」

白い死神「始発と同時に行ったのに、徹夜組に先を越されている」

白い死神「ルールを守って、ルールを破った奴に出し抜かれた」

白い死神「さぞ悔しいだろうなァー」

少女「…………、……」


白い死神「だったら、盗っちまいなよ」


少女「……!!」

白い死神「コイツらはルールを破った悪だ。誰も咎めやしねえぜ?」

白い死神「むしろ、コレは正義の鉄槌だ」

白い死神「キマリを守らず、COMIKEを存亡のフチに追いやる、徹夜組へのな」

男「おい、死神……!」

白い死神「くっくっく。だが、俺の言ったコトは間違っているか?」

男「…………」


少女「……ええ。ソレはマチガイです」


男「……!」

少女「いくらルールを破ったヒトだからって、目の前で頒布物が売り切れたからって」

少女「他人の“戦利品”を奪ってはならない」

白い死神「ほう……」

少女「私が頒布物を手に入れられなかったのは、私のチカラが劣っていたから」

少女「彼が頒布物を手に入れたのは、私よりも情熱が勝っていたから」

少女「ソレを我欲に濡れた願いで覆そうとするコトこそ、マチガイです」

白い死神「…………」

白い死神「嬢ちゃん……」



白い死神「なかなか良いガッツ持ってんな」ポン


少女「え……」

白い死神「男よぅ。良い女、捕まえたじゃねえか?」

男「だから、ホントそういうんじゃないから……」

白い死神「かっかっか。よきかな、よきかな」


白い死神「ホント、準備会にこんな公平な人間がもっといれば、良かったんだがねえ」

男「何……? どういうコトだ?」


白い死神「ん? 準備会がもっと公平なら、こんなルール」

白い死神「とっくにもっと違うモンにすり替わってるだろ」

男「いや……。単に良いアイデアが無いだけなんじゃないのか?」

男「10000人にもなる徹夜組を排除するのは、難しいだろうし……」

白い死神「…………」


白い死神「あんた、本当にそう思うかい?」


男「……!」

少女「え……?」


白い死神「さっき、このあんちゃんは黒ずくめしか手に入れられなかったと言ったが」

白い死神「そんなのは氷山の一角だ」

白い死神「場合によっては、行列に並んだ挙句、何も手に入れられなかった……」

白い死神「そんな始発組と変わらないような徹夜組だって、現れる」

少女「な……。そ、それはどういうコトですか?」

少女「徹夜組のヒトは、確実に頒布物を手に入れられるから、並んでるんでしょう?」

白い死神「んっんー。その言い方には、ちと語弊がある」


白い死神「正確には、“頒布物を手に入れられる可能性が高い”から、並ぶんだ」


少女「……そ。それは……」

少女「徹夜をしても、頒布物を手に入れられないコトがある……?」

白い死神「ご名答! さすが、聡い嬢ちゃんだ」


白い死神「そう。徹夜組だって、無敵じゃあない」

白い死神「ツラい思いして、前の夜から並んでも……」

白い死神「さらに別のヤツに、出し抜かれるかもしれねえんだ」

少女「べ。別のヤツ、って……?」

男「…………」

白い死神「考えてもみろ。いくつか、方法があるだろう?」


白い死神「始発組よりも、徹夜組よりも。早くに会場に入れる、“魔法のチケット”が」

少女「……!!」


白い死神「そう。始発組は徹夜組に、徹夜組はチケット組に、さらに出し抜かれる」

白い死神「チケットを手に入れた者こそが、真の絶対正義なのさ」

男「……そして、そのチケットを発行しているのが」

白い死神「そう。まぎれもなく、準備会の連中」

白い死神「モチロン、チケットも理念通りに使えば、正しいアイテムだが」

白い死神「哀れかな。使う人間が悪ならば、アイテムも悪に成り下がる」


白い死神「そして。この二種類のチケットの通称。その名前を、なんと言った?」

少女「え……。たしか、片方がサークルチケット。ソレと……」


少女「……!!」

白い死神「……そういうコトさ」

白い死神「準備会は身内の特権を守るために、スタッフチケットを発行している」

白い死神「ソレ自体がマチガイだとは言わん。事実、当日スタッフは頒布物を買えないからな」


白い死神「だが、準備会が発行したチケットが存在するために」

白い死神「準備会が提示したルールは守られず、徹夜組があふれ出す」


白い死神「しかも、結局徹夜組も、チケット組には敵わない」

白い死神「どうだ? コレがCOMIKEの現実だ」

少女「……そ。ん、な……」

男「…………」


男「一つ、いいか」

白い死神「おう。なんでも」

男「死神。お前は、今日もファンネルと協力して、頒布物を手に入れたようだが……」


男「その頒布物を手に入れるために、お前たちはどうやって入場した?」


白い死神「…………」

少女「……!」


少女「ま、まさか……」

白い死神「……ああ、そうさ」

白い死神「俺たちだって、一般参加者より早く入場したよ。サクチケを使って、な」


男「お前、やっぱり……」

白い死神「おっと、カン違いするなよ」

白い死神「俺たちは、転売だけは大嫌いなんだ」


白い死神「サクチケは、転売で手に入れたモノじゃなく」

白い死神「友人をはじめとした、当日のサークル参加者と協力して手に入れているし」

白い死神「頒布物を買うのは、ファンネル仲間と、サクチケを提供してくれたサークルのためだ」

白い死神「けっして頒布物を転売するためじゃない」


男「だとしても、お前たちも、一般参加者の列には並ばず」

男「サークル参加者でもないのに、先に入場しているのは、たしかだろう」

白い死神「ああ。その通りさ」


白い死神「目には目を。歯には歯を。悪には、悪をもって制す」


白い死神「それが、俺たちのやり方だ」

少女「…………」

白い死神「というより、チケットというシステムが存在する以上、それが最善手だ」

白い死神「結局のところ。準備会が内部改革しないコトには、どうしようもないんだよ」


男「…………」

白い死神「……おしゃべりが過ぎたな」

白い死神「ジューブン涼んだし、そろそろ俺は島中の絨毯爆撃に行くぜ」

白い死神「その紙袋は、ちゃんと徹夜組のあんちゃんに返しておけよ」

白い死神「じゃあな。男、聡い嬢ちゃん。機会があったら、また会おうぜ」



――ビッグサイト 入口

男「…………」

少女「…………」


男「……なあ、このあと、どうする?」

少女「…………」

男「まだ島サークルでも見に行くか」

男「友人でも探しに行くか。それとも……」


少女「……いや」


少女「……今日は、もう帰りたいです」

男「…………」


少女「死神さんのおハナシ……」

少女「まさか、COMIKEの現実が、そんなだなんて、思いませんでした」

男「おいおい。アイツのハナシを本気にしてるのか?」

男「そんなの、アイツが言ってるだけだぞ」

男「もっと他の見方だってあるだろう」

少女「ハイ。でも、彼の言うコトも、真実の一端だと思います」


少女「……それに、私は、徹夜組のヒトのモノとはいえ」

少女「一度、尊敬すべき戦士の“戦利品”を盗もうとしました」

男「…………」

少女「恥ずかしいです。今すぐ、消えてしまいたいくらい」



少女「……私に、もう、COMIKEを楽しむ資格なんて……、ありません」



男「…………」

男「…………そうか」


男「……じゃあ、今日はもう、帰ろうか」

少女「……はい」


男「その前に、コレを食っておけ」

少女「……? エナジーバー、ですか……?」

男「この暑さだ。家に帰るまでに、あの徹夜組のように倒れるとも限らん」

男「家に帰るまでが、COMIKEだぞ」


少女「…………」

少女「……、ハイ」



――ビッグサイト 周辺

魔法陣「17歳♂暇だから全レスします☆」

魔法陣「おっさんネロ。……おっさんだったわ」

魔法陣「年齢2ケタはオッサン(キリ」


魔法陣「BIPで本格的にRPG作ろうぜ」

魔法陣「未完乙、クソスレ乱立すな」

魔法陣「死ね。氏ねじゃなくて死ね」


男「……。あれは……」


男「すまん。ちょっと待っててくれ」

少女「……? ハイ」


男「すみません、BIPの魔法陣ですよね?」

魔法使い「はい、そうですよ。あ、ヘンなヤツばっかでスミマセン」

魔法陣「これぞ馴れ合いスレwwwwww」

魔法陣「股の名をBIPヌクモリティ」


男「あ、あはは……。あの、チャームって、まだあります?」

魔法使い「ええ、ありますよ。BIPPERのヨシミで、一つどうぞ」


男「ありがとうございます!」

魔法使い「いえいえ。スレのほうでは、またよろしくお願いしますね」

男「BIPも、結構仲良いですよね。罵詈雑言もあんま飛ばないし」

魔法使い「あなたCOMIKEの期間中だけBIP来てるでしょう」

男「……バレましたか」


男「すまん。お待たせ」

少女「何やってたんですか?」

少女「あそこ、なんか人が輪になって集まってるみたいですが……」


男「ああ。アレは、通称“魔法陣”」

男「とある、ネット掲示板の住民の集まりでな」

男「なんとなく仲間で集まってケータイいじってる姿から、そんな名前がついたんだ」

少女「……は、はは……。まあ、集まるのは自由ですよね」


少女「……あれ。ってコトは、男さんも、その掲示板を?」

男「まあな。COMIKEの情報とか、けっこう書き込まれるし」


男「そうじゃなくって。ハイ、これ。あげるよ」

少女「あれ? ……、コレって……」


男「チャームのアクセサリーだ。魔法陣では、毎回タダで配ってるんだよ」

男「どうだ? オレンジの輪切りみたいで、けっこうカワイイだろう?」

少女「ええ……。ソレは、そうなんですが……」

少女「私、同じの持ってますよ?」


男「……え?」

少女「ほら、この首のとこ。ネックレス」

男「……あ。ホントだ、同じだ……」

男「……同じの二つは、いらないよな……」ガックシ


少女「…………」

少女「……なら、ソレは、男さんが持っていてください」フフッ

男「へ? ……俺が?」

少女「それで、もしビビっとくる女性に出会ったら、ソレを渡す」

少女「……と、いうのはどうでしょう」

男「えぇー。俺、女には縁が無いからな……」

男「あ、今ならお前がいるけど」

少女「ふふ。私はノーカンで」

少女「男さん良いヒトですし、良い女のヒトに出会えますよ。ええ、必ず」


男「そのコンキョはどっから出てきたんだ」

少女「へへ。私、カンは良いほうなので」

少女「きっと良い出会いが、すぐ近くに待っていますよー」

男「……そうか。だと、いいんだがな」


男「ていうか、そのネックレス、ホントにこのチャームとソックリだな」

男「ソレも魔法陣産か? 毎回、チャームにCOMIKEごとの連番を押してくれるんだが……」

男「その番号も今回と同じだし」

少女「えぇ!? そ、そーですね。私のコレは貰いモノなので」

少女「元の持ち主が、COMIKEに参加していたのかもしれませんねー」



――アパート前の道路

パタン

少女「ありがとうございましたー」

運転手「今回もどうも。三日目も、お願いしますね」


少女「……、…………」

男「ええ。モチロンですよ」

運転手「では」

ブロロロロロ…



――居間

男「……はあ。けっこう、早く帰ってきちまったな」

少女「…………」

男「まだ昼か。ビッグサイトは忙しそうだな……」


男「昼飯はどうする? どっか、食べに行くか?」

少女「…………」


少女「じゃあ、ちょっとワガママ言ってもいいですか?」


男「…………」

男「……いいぞ。大学生のフトコロの深さというのを、見せてやろう」

少女「…………」フフ


少女「では、男さんの手料理が食べたいです」

男「…………?」


男「お、俺の? 料理?」

少女「ええ。昨日の口ぶりだと、作れますよね?」

少女「コンダテは問いません。ぜひ、よろしくお願いします!」


男「…………」ボリボリ


男「……マッタク。弱ったな」

少女「あれ? 作れないんですか?」

男「いや、作れるがな」


男「材料が無い」

少女「…………、あー」

男「まずソコから調達しなきゃならん。弱った」

少女「……そうですか」


少女「じゃあ、一緒に買いに行きましょうよ! 食材!」

男「……へ? 今からか?」

少女「そうです。東狂では、どこで食材買うんですか? やっぱスーパー?」

男「そうだな。……いや、かなりの田舎でもない限り、そうだと思うが」

少女「よっしー!! それじゃあキマリですね、レッツショッピンショッピン!」


男「…………」

男「……はあ。やれやれ」

男「わかった。だが、今日の戦利品くらい片付けておけ」

少女「…………」


男「戦場から帰った戦士としての、当然のタシナミだぞ」

少女「……。そう、ですね……」

少女「わかりました。といっても、黒ずくめさんの既刊、3冊だけですが」

男「それでもリッパな戦利品だ」


男「……そういえば、いったいどんな本だったんだ?」ガサ


男「……!!」

男「……こ、コレ、は…………」

少女「ん……? どれどれ」


少女「男のヒトが二人、見つめ合っている表紙ですね」

少女「男さん、これはいったい?」

男「…………、…………」

少女「ちょっと、私には知識が無いので、わかりません……」

少女「少なくとも、おじいちゃんはこういうの、持ってなかったですね」

男「…………」


男「……まだ早い。というか、一生早い」

少女「えー。いったいどういうコトなんですか」グラグラ


男「揺らすな……」ガクガク


パサ


少女「あ……」

男「ん……? この紙は……」

男「黒ずくめさんの連絡先だな」

男「ああ、そういえば……。今日並ばせたコトへの、お詫びがしたいと」


男「……どうする?」

少女「…………」


少女「…………」

男「…………」

少女「…………」

男「…………」

少女「…………ええ。かけてみてください」

男「そうか。……って、俺のケータイで?」

少女「ハイ。私のは、繋がりませんから」

男「俺のだって繋がる保証は無いが……」

男「まあ昼ならちょっとは空いてるだろうし、サークルもヒマしてるだろう」



男「やれ。この電話番号だな」タタターン


ケータイ「プルルル! プルルル! プルプルプル!」

ケータイ「プルルル! プルルル! プルプルプル!」

ケータイ「ぼく悪いケ……」


黒ずくめ『はい、もしもし』

男「良かった、繋がった。もしもし、黒ずくめさん?」

黒ずくめ『あ……。男さんですか?』

男「そうだ。タイミング悪かったか?」


黒ずくめ『いいえ、とんでもない。既刊もハケて、設営の撤収中だったんです』

黒ずくめ『お二人は、今、どちらに?』

男「ああ……。実は、もう家に帰ってきちまってな」

黒ずくめ『そうですか……。まあ、暑いですからね』


黒ずくめ『それで、少女ちゃんは、今ソコにいますか?』

男「うん。たしかにいるが」

黒ずくめ『……伝えたいコトがあります。良かったら、代わってもらえませんか?』

男「……わかった」


男「おい、少女。黒ずくめさんが、代わってほしいそうだ」

少女「え……」

男「ご指名だぞ。まさか、ここで居留守使う気か? もういるって言っちまったぞ」

少女「……いや。出ます」


少女「お電話代わりました。少女です」

黒ずくめ『ああ、少女ちゃん。今日はゴメンね。気分悪くさせて』

少女「いえ……。黒ずくめさんのせいじゃありませんよ」

黒ずくめ『ありがとう。でも、元は僕が言い出したコトだから……』

黒ずくめ『だから、代わりと言っちゃナンだけど、僕から提案があるんだ』


少女「提案……?」

黒ずくめ『そう。僕は、明日の三日目は一般参加で入るんだけど……』

黒ずくめ『一日目と同じように、コスプレをしようと思うんだ』

黒ずくめ『だから……』




黒ずくめ『少女ちゃんも。コスプレ、やってみませんか?』




少女「は……?」



 

第二章は以上になります。
最終章は、現在鋭意制作中です。もう少々お待ちください。

おつおつ
行楽地限1なったなーとか
COMIKEに行った時のことが思い返されるようで面白い

感想ありがとうございます。AAを含めてとはいえ、既に
200KBを超えていますが、お楽しみ頂けているようで幸いです

>>440
当日参加された方ですか、恐縮です
実際の出来事と異なる部分は“COMIKE”限定のイベントということでお楽しみください


お待たせしました。完結の目途が立ちましたので、
最終章は前編、中編、後編に分けて今日から更新します。

それでは、最終章 前編を開始します。
今回は少ないですが30レスほどの予定です。





ふと、目が覚めた。



あけぼのというには深すぎる、大都市の外れの、住宅街を包む夏の宵闇。

壁時計の針がさすのは丑三つ時。


ふと、窓から吹き込む夜の風に、目が覚めた。


なんとなく二度寝するのもきまりが悪いような気がして、

冷たい床から体を起こす。


だが。そこまで脳が覚醒して、……引っかかった。


この二日は、たしかに深夜に早く起きていた。

だが、早すぎる。

早く目覚めすぎるのも体に悪い、起きるのはせいぜい午前3時ごろ。


誤差といってしまえばそれまでかもしれない。

だが、今の時刻は、午前2時を少し過ぎたあたり。


なぜ俺は、今日に限って、少し早く目が覚めた?



そこまで頭を巡らせて。

俺は、自分を眠りから揺り起こした要因に気付く。


風。


ベッドのそばにある窓から吹き込む、間近の秋を思わせるほのかに冷たい風。


しかし俺は、この風をしばらく肌で感じてはいなかった。

記憶が確かならばおよそ二日間ほど。

昨日までは何か、窓の風を、さえぎるモノがあって――――



いない。



この二日、いつのまにか見慣れた姿になっていた、彼女。


少女の姿が、そこには無かった。



男「…………」




男「そうか」





男「…………」



男「アイツは、行ったか」


男「キレイに自分の荷物だけ無くなっていやがる」


男「干しといた、昨日の服も……」

男「見事に無いな」


男「……ふう」


男「そりゃあ、もともと一人暮らしだし」

男「寂しいってこたぁ無いが……」



男「……ちょっと、薄情なモンだな」


男「…………」

男「……となると、今日の予定も、変更か」


男「今日の天気は、一日を通しての晴れ」

男「予想最高気温は30度。べらぼうに暑くはないが……」

男「それでも進んで外に出たくはないな」


男「加えてビッグサイトなら。人々の熱気で、気温はマシマシだ」

男「そんなところに、好きこのんで行く理由は……」


男「もう、無いな」


男「やれやれ」


男「…………」


男「……いや、ないな」

男「目当ても無いのに行っても、疲れるだけだ」


男「が、目が覚めちまったモンは、仕方がない」

男「どうしようかね」



男「…………明るいな」


男「……月か」


男「満月とはいかないが、たいした光だな」

男「それでも、夏は空気中の水分が多いから」

男「さほどクッキリ見えているワケじゃないんだろうが」


男「でも、たとえば冬なら、空気が澄んで」

男「星も瞬いて……」


男「…………」


男「……やめだ、やめだ」


男「アイツは、自分の意思で、行った」

男「ソレを俺がああだこうだ考えてどうする」


男「こんな時は月見酒だ」


ガサゴソ


男「一杯いくらの安物の酒でも」

男「気晴らしくらいにはなりますよってね」



トクトク


男「…………」


ズズッ


男「…………」




男「まっず」


ケータイ「プルルル! プルルル! プルプルプル!」


男「ん……?」

男「こんな時間に誰だ。メイワク電話か?」


男「…………」



男「友人か」


男「真夜中にいったい何なんだ。ったく……」ピッ


男「はい、もしもし。俺だが」

友人『んんwww男氏wwwヤケモーニンwwwwwwぺゃっwww』

男「おはようという時間でもないだろう」

友人『それはwwwたしかにwww』

友人『しかし業界のアイサツは、すべてヤケモーニンですなwwwぴゃっwwwwww』

男「そんなコンビニか何かみたいな……」

男「いや、そんなコトはどうでもいい。こんな時間に何の用だ」

友人『んんwww男氏、黒ずくめ氏から聞きましたぞwww』

友人『三日目の今日はコスプレで参加する予定だとwww』


男「…………」


男「いや、その予定だが」

男「申し訳ないが取りやめるコトになった」

友人『んん!?www何故ですかなwww』

友人『少女氏は乗り気であったと聞いているwwwwww』

男「その少女がいないんだ」


友人『…………んん?www』

友人『それはwwwいったいwwwどういうコトですかなwwwwww』


男「だから、少女は、もう俺の家にいないんだよ」

男「昨日は、昼は俺のメシ食って、夜は出前で寿司とって」

男「それでさっさと寝たんだが」


男「いま起きたら、少女の姿が消えていた」

男「荷物も無い。自分の家に帰ったんだろう」

友人『……んんwwwだからソレはどういうコトですかなwww』

友人『我、まったく状況がつかめないwww』

友人『少女氏は、ザシキワラシか何かであったとwwwwww』

男「どうしてそうなる」


友人『男氏、少女氏とケンカでもしたのですかなwww』

男「あいにく、一切断じて何も無い」

友人『では、何故wwwwww』

男「俺にもわからんよ」


男「ただ……」

友人『ただ?www』


男「アイツはどうも、満足したみたいだ」

男「この街に来た目的を終わらせてな」


友人『んんwwwそのような抽象的なコトを言われても、まったくワケがわからないwww』

友人『我にもわかるよう説明するべきwww』

男「そう言われても、俺もこうとしか説明しようがない」


男「少なくとも、目的の一つはCOMIKEみたいだったが……」

男「それも、昨日、ああだったしな」


友人『…………』

男「そういうコトだ」

男「で、お前、結局何の用だったんだ?」


友人『……いや、我、今日の朝はちと所用がありますのでwww』

友人『今のうちに、コスプレに関して、何か手伝えるコトがないかとwwwwww』

男「お前、コスプレの用意まであるのか……。ホント全方位だな」


男「だが。ソレも必要無くなった」

男「コスプレする当人がいないんだからな」


友人『…………』

男「本来なら俺から断りを入れるべきだが」

男「お前さえ良ければ、黒ずくめさんに伝えてくれないか」


男「少女がいなくなったから、コスプレは出来ない」

男「俺も、三日目は、行く気は無い」

男「……って」


友人『…………』

男「理にかなってはいないんだろうが」

男「……それだけのために会うのも、バツが悪くてな」

友人『……わかりましたぞ』


友人『ですがwww男氏はソレで、いいのですかなwww』


男「……? どういう意味だ」

友人『んんwww文字通りの意味www』


友人『男氏はソレで後悔は無いのですかなwwwwww』


男「…………」

友人『……んん、では我はまだ今日のサークルチェックが終わっていないwww』

友人『それではこれにてwwwぺゃっwwwwww』


プチ

ツー ツー ツー…



男「…………」


男「言いたい放題、言いやがって……」


男「…………」


男「だけど俺は、アイツの保護者でも何でもないんだぞ……」

男「何の権利があって、何の責任がある……」



男「…………」


男「…………」


男「……ちょっと、外の空気でも吸うか」


ガチャ



――アパートの外廊下

ヒュウウウウウウ…

カタカタカタ


男「…………」


男「……月がまぶしいな」


男「相変わらず、ボロっちいアパートだ」ギシ

男「風呂設置する余裕があるなら」

男「リフォームの一つでもしやがれっての」

大家「いやー、すみませんね。そんなお金無くって……」


男「……!」

男「な……。……、な……」

大家「私が出店した稼いだお金で、少しでも男さんたちに還元できればいいんですけどね」


大家「というのは冗談ですが」

男「冗談なんですか。断固リフォームする気は無いというコトですね」

大家「ええ。そんなコトしても、私に一銭のトクもありませんので」

男「コッチはコッチで、現金なヒトだ」


大家「……で。男さん」

大家「こんな朝早く、いや夜遅くに、いったいどうしました?」

男「…………」

男「……それは、コチラのセリフですよ」


大家「え? 私ですか?」

大家「私はホラ、大家として、アパートの掃除なんかもしなきゃいけないのでー」サッサッ

男「…………」

大家「で、どうしましたか」


大家「もしやとは思いますが、……少女ちゃん案件ですか?」

男「……!」


男「…………」

大家「ふふっ、その顔は、アタリって顔ですねー」


男「……どうして」

大家「え? だって私、会いましたもん」


大家「少し前、男さんの部屋を出ていく、少女ちゃんと」


男「……!!」

男「お、おい! アイツは! アイツはどこへ行った!?」

大家「…………」クス


大家「気になりますか?」


男「……!」

男「……いや。べ、別に」

大家「ふっ、ふっ、ふっ。男さん、面白いなあ」

大家「そこまで取り乱しておいて、真逆のウソつくんですか?」

男「……ちっ」

大家「もう。オトコのヒトって、ほんとメンドクサイですねえ」


大家「心配だから、行き先を知りたい」

大家「気になるから、追いかける」

大家「それでいいじゃないですか」


男「…………」

大家「…………」


大家「だーっ、もう。ホントにスナオじゃないんだから……」


大家「……じゃあ。コレは私のヒトリゴトです」

大家「聞くも聞かないも、動くも動かないも、男さんの自由です」

大家「それに関して私は何も思いませんし、何も言いません」

大家「ソレでいいですね?」


男「…………」


大家「ヘンジが無いってコトは、承諾と捉えますよ」


大家「……そうですね。少女ちゃん、荷物を持って向こうの道に走っていきました」

大家「方角でいえば西。ちょうど太陽の沈む、夜明けとは逆の方向ですね」

大家「もっとも、今はまだ、朝焼けの時間には早いですが」


大家「あと少女ちゃん、なんでどこか行くのかって私が尋ねたら、こうも言ってました」

大家「『私はもう、ココにいちゃいけないから。ココにいる資格は無いから』」

大家「『男さんのメイワクになりますから』……」

大家「って」


男「…………」

男「……アイツめ」


男「勝手なコトを……!!」ダッ


大家「ちょ、ちょっと! どこへ行くんですか!!」

大家「まさか本当に少女ちゃんを追いかけるつもりですか!?」

大家「西ってコト以外何もわからないんですよっ!?」


男「そんなコト、知ったことか!!」


男「ココにいる資格は無い? 俺のメイワクになる!?」

男「そんなコト、一方的に聞かされて、黙ってられるかっ!!」


大家「…………」


男「……大家さん。情報ありがとう」

男「アテはある。だから、あとは俺一人で探します」

男「それでは」ダッ


大家「……待ってください」


男「……?」

大家「…………」キュポ


無線『……繰り返します。お嬢、目的の少女、発見しました』

無線『どうやら高雄山に向かっているもよう。タクシーを使用しています……』


男「……、そ、それは……」

大家「もしかするとこういう事態になるかと思って、組のヒトに尾行してもらっていました」

大家「私のこまやかな心遣いに感謝してくださいね?」

男「…………」


大家「さて、高雄山といいましたか」

大家「けっして近くはない場所ですが、クルマかっ飛ばせば、まだ間に合います」

大家「さすがに朝のタクシーは巡回していない時間帯ですので」

大家「深夜勤務のタクシーのケツを叩く、というコトになりそうですが」


大家「……どうしますか?」

男「そんなの、考えるまでもない」

男「少女を追います」

大家「…………」フフ

男「ありがとう、大家さん。やっぱり優しいですね」


大家「ふふ。カタギのヒトに良い印象与えるのも、大切なシゴトなのでー」

大家「あんまりカン違いしないでくださいねー?」

男「わかってますよ」

男「それでは、俺はこれで……!」ダッ

大家「ええ! 思う存分、やっちゃってきてくださーい!!」



大家「……さて」


大家「組員さん。高雄山に向かうとおぼしきヒトは、本当に少女ちゃんだけですか?」


無線『いえ。少女さんと同時に、いえ、少女さんを追うようにして……』

無線『数台のナンバープレートの無い車も高雄山に向かっています』

大家「……なるほど。私の直感も、捨てたモンじゃないですね」

大家「コチラ側ではないにしろ、尋常ではないのも確かでしたか」


大家「―――では皆さん。この夏、大一番のシノギです」


大家「組長には私から伝えます。組員の皆さんは、いつでも“動ける”態勢で、山へ」

大家「有事の場合は、現場判断での介入も許可します」

無線『了解です。お嬢』


大家「ええ。お互い、頑張りましょう」ピッ


大家「……今日はCOMIKEの、三日目でしたか」

大家「まったく。どこのシマの人間だか知りませんが」

大家「カタギのヒトが楽しむお祭の日をジャマするのは、いただけませんね」




大家「さーてと。東狂、救っちゃいますか!」





 

最終章 前編は以上になります。
最終章 中編は、明日18時ごろの開始を予定しています。

それでは、最終章 中編を開始します。
今回は100レスほどの予定です。




――高雄山 頂上


ヒュウウウウウウ…


少女「…………」


少女「さすがに、夏でも、晴れてても」

少女「標高の高いところの夜は、寒いなあ」



ヒュウウウウウウ…



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少女「…………」


少女「真夜中なのに、あんなに煌々とネオンが輝いている」

少女「この世界は、あんなにもたくさんの人が暮らしてて……」


少女「そして、その人々には」

少女「それぞれ一人一人に、目的が、嗜好が、人生がある……」


少女「かぁ」


少女「…………」グス


少女「あはは、なんで泣いてるんだろ」


少女「おじいちゃんにはたくさんメイワクかけちゃったなあ……」


少女「でも」

少女「ホテルのバイキングで、魚のカブトやお肉ばっか取って怒られたり」

少女「カップ麺に一緒にお湯をそそいだり」

少女「スーパーで食材買ってきて、一緒に料理作ったり」

少女「お寿司の出前でイチバン高いヤツ頼んじゃったり……」


少女「小っちゃいころみたいで、楽しかったなぁ」


少女「って、食べるコトばっかりだ」

少女「あはは。他には……」


少女「…………」


少女「COMIKEかぁ」

少女「ありえないくらい、いっぱい人がいて……」

少女「ふふ。えっちな本やアクセサリーなんかも、いっぱい買って」

少女「……タイヘンなコトもいっぱいあったけど」

少女「想像通りの。いや、想像以上のお祭だった」



少女「でも」


少女「あのお祭は、集まった数十万人という人々が」

少女「あんなに色んなヒトがいるのに」

少女「皆。少しずつルールを守って」

少女「絶妙な自由と秩序のバランスの上で成り立っている」


少女「だから」

少女「私みたいなヤツが、いちゃいけないんだ……」


少女「私みたいな、心の汚れたヤツが……」


少女「…………」グス

少女「おじいちゃん。ごめんね……」




男「ココにいたか」ザッ


少女「……!」



少女「……お。…………男、さん……」


男「…………」

少女「…………」

男「…………」


男「……まあ、その、なんだ」

男「別れのアイサツのヒトコトくらい、しておくべきかと思ってな」


少女「…………」

少女「……どうして、ココがわかったんですか?」

男「あー……」


男「一つは、情報のタレコミ」

男「プライバシーに配慮して名前は伏せるが。お前を心配してくれている、ヒトがいた」


少女「…………」


男「そして、高雄山でも、頂上にいると思ったのは」

男「東狂の海のハナシしてたろう。眩い海、瞬く星……」

男「海でも空でもないが、山でそれらにイチバン近い場所といえば」

男「この頂上だと思ってな」


少女「…………」


男「俺の推理は以上だ」

男「だけど、なんでお前がココに来たのか、そんなコトはセンサクせん」

少女「…………」

男「…………」


男「だけど、ゴカイは解いておきたい」

少女「……?」


男「お前、俺のメイワクになるから帰る、とか言ったらしいな」

少女「え……!」


男「あー。タレコミ元、バレちまったか……」

男「まあいいや。大家さんも共犯ってコトだ」

男「あのヒトも、あのヒトなりにお前のコト、心配してたぞ」

少女「……そうですか」


男「とにかく。お前が自分のコト、俺のメイワクになるとか思ってるなら」

男「ソレはマチガイだ」

男「お前のコトをメイワクだなんて、一度も思ったコトは無い」

少女「男さん……」


男「それよりもな。この二日間……。いや、出会った日も含めれば、三日間か」

男「俺はお前と一緒にいて、楽しかった」

男「そりゃあ人の多いCOMIKEは苦行のヒトコトだったが……」

男「それでも、お前と行くCOMIKEは、楽しかった」

男「ガラにもなく、今日も行ってやろうか、なんて一瞬思ったくらいだ」

男「お前がいないんなら、行く意味も無いけどな」

少女「…………」グス

男「少なくとも、この三日間、俺は娘が出来たみたいで楽しかった」

男「だから……」



男「俺のメイワクになるとか、言わないでくれよ」


ギュッ


少女「……!」


男「こんな明るい子に、そんな風に自分を責められたら……」

男「哀しくなるだろ……」


少女「……男さん…………」


男「お前はメイワクなんかじゃない。俺が断言する」

男「お前さえ良ければ、来週も、来月も、いつまでも……」

男「俺と一緒にいてほしい」


少女「男さん……」


少女「……うぅ。私も、私だって……」

少女「男さんと一緒にいたいですよぉ……!!」

男「…………」

少女「うっうっ。うぅ、うわぁぁぁ――――ん…………」



 




男「……落ち着いたか?」

少女「……ハイ」


男「なら、戻ろう」グッ

少女「…………」


少女「それは、出来ないんです」


男「どうして」


少女「…………」


少女「……私が、この街にいられるのは、あと一日」

少女「今日にはもう、帰らなくちゃいけませんから」


男「だったら、今日一日だけでも」

男「今日一日だけでも、一緒にいるコトは出来るだろう」

少女「…………」

少女「だけど」



少女「私なんかが、戻っていいんでしょうか」

少女「戦士の戦利品を盗もうとした、私なんかが……」


男「…………」


男「……そうだな」

男「窃盗未遂でも、窃盗は窃盗」

男「見つかれば許されるハナシじゃあないだろう」

少女「…………」


男「でも」

男「集まった数十万人だって、全員が全員根っからの善人じゃない」

男「ちょっとくらい心に後ろ暗いところだってある。人間なんだから」


少女「…………」

男「……ナットクいかないって顔だな」


男「…………上を見ろ」

少女「上……?」


男「夏の夜明けは早いが、まだ日は昇っていない」

男「空を見てみろ。黒い夜の空を」


少女「空……」





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少女「…………」


少女「きれい」


男「だろう。ココは、東狂で最も空に近い場所の一つ」

男「最も星がよく見える場所の一つだ」


少女「こんな星空が、本当にあるなんて……」

少女「まるで天然のプラネタリウムだなぁ」

男「なんじゃそりゃ」


男「……これでも、夏は空気中の水分が多いから、冬のほうがよく見える」

男「街の光が届くこんなところより、内陸の山のほうが、もっと星はよく見えるぞ」

男「自然は限りなく広い」

男「お前の目に見えている部分なんて、ほんの一部なんだ」

少女「…………」


男「って、大学生風情が何を、ってハナシだがな」


男「だけど。ヒトも、同じコトだ」

男「見てみろ、星を」


男「様々な大きさ、様々な色、様々な輝きをする星が、無数にある」

男「俺たちの目に見える太陽系の星から、銀河の果てまで、限りなく」


男「そして、無窮に瞬く星々……」

男「とはいうが、永遠に輝きつづける星なんて、この世には存在しない」

男「すべてが等しく有限で。すべてには等しく終わりがあり」

男「だからこそ、こうして今を、きらめくんだ」


少女「…………」

男「人間だって、色んなヤツがたくさんいて、色んな考えを持ち、ソレを表現している」


男「だからこそ。俺も、お前も」

男「COMIKEっていう、デカいお祭に、心惹かれるんじゃないか?」

少女「…………」


男「そして、俺もお前も、その一員だ」


男「スタッフも、サークル参加者も、一般参加者も」

男「それは店と客の関係じゃなく、等しく皆が同じ“参加者”」

男「……それが、COMIKEの理念の一つだ」


少女「参加者……、ですか」


男「そうだ。だから、悔やむ意味はあっても、恥じる必要はない」

男「幸いにも、表現する手段は、黒ずくめさんや友人が用意してくれている」

男「だから」

男「あと一日だけ、COMIKEに戻って、悔いの無いように参加しても」


男「いいんじゃないかと、俺は思うがな」


少女「…………」


少女「ふふっ」

男「む。何がおかしい」


少女「いえ。オカシクはありませんが」


少女「男さんは、いつでも、同じコトを言うんだなって」


男「はぁ? こんな……、ハズカシイことっ、言ったのはコレが初めてだと思うが」

少女「ふふ。目は口程に物を言う」

少女「というワケではありませんが、いつも心に思ってるコトは」

少女「ふとした時に口をついて出るモノですよ」

男「そうか。……用心しなければな」ムム

少女「ふふふ」



男「で、どうする。それでもなお行くというのであれば、止めはしないが」

少女「……いいえ。戻りますよ、私は」


少女「今年の夏のCOMIKEの、最終日」

少女「二人で。いや、みんなで」

少女「悔いの無いように楽しみましょう」


男「…………」

男「そうだな」


ザワ…



少女「あ……」


男「朝日が……」




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           iwiiwi                         ''゙"


少女「きれいですね……」


サワ…


少女「朝日とともに、光も、風も、鳥も、一緒に動き出して……」

男「…………」

男「太陽が昇れば、小さな光は消えていく」

男「いや……。太陽という大きな光に、集まっていく」

男「行こう。俺たちも、俺たちの場所に集まっていく時間だ」

少女「はい!!」




ザッ



男「……?」


チャキ チャキ チャキ チャキ

特殊部隊「動くな!!」



男「……!!」

少女「……、……」



ザッザッザッザッ ザッザッザッザッ

チャキ チャキ チャキ


男「……おい。何のマネだ、これは?」

特殊部隊「動くなと言っている」チャキ


特殊部隊「…………」チャキ

特殊部隊「…………」チャキ

特殊部隊「…………」チャキ


男(拳銃を構えた迷彩服が、6,7……、およそ十人足らず)

男(COMIKEのコスプレ……、というワケではなさそうだな)


男「おい、少女」


少女「…………」

男「なんだ、コレは。お前の友達か?」

少女「……いえ」

少女「こんな悪そうな友達がいたら、怒られちゃいますから」


男「…………」タラ

男(……サッパリ意味がわからんが)

男(ヘタに動けば、明日のお天道様は拝めないコトはわかる)

男(まずはコイツらの目的がハッキリしないと……)



少女「わかっているぞ。目的は私だろう?」


男「……!」


特殊部隊「そうだ。スナオじゃないか」

少女「いやー、見慣れた顔だからな」

少女「おおかた。私がココに戻るのを、この数日、ずっと待ってたんだろう」

少女「暑い中、雨の降る中。ご苦労ってモンだ」

特殊部隊「それ以上喋るな」チャキ


特殊部隊「“ブツ”のある場所に、案内してもらおうか」


少女「…………」

男「…………」


少女「……すいません、男さん」

男「……?」

少女「残念ですけど、ココでお別れみたいです」


男「な……!」


少女「さすがに。一人、二人ならまだしも」

少女「十人近くが相手では、さしもの私も、手も足も出ません」


少女「おい! このヒトは関係無い。解放してやれ」

特殊部隊「ふん……。いいだろう」


男「…………」

少女「男さん。少しの間だったけど、楽しかったです」

少女「この数日間は、私の短い人生の中でも、イチバン輝いていたと思います」

男「おい! そんな言い方……」


少女「行ってください」

少女「これは、私の戦い」

少女「あなたを巻き込むワケには、いきませんから」


男「…………」


特殊部隊「……ハナシは決まったようだな」

特殊部隊「それでは、“ブツ”を見せてもらおうか」

少女「ええ。それなら、こ……」




ヒュルルルルルル…


男「……ん?」

男「なんだ、この音…………」




          .                                :;:.,':;":..,,,
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                  '              ..
                       :::::::::::   :::::::::::



ズガァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!!



特殊部隊「ッ!!?」

特殊部隊「総員、伏せろォォォッッ!!!!」



男「な……、な……!?」

少女「なんですか、コレ……!」



ヒュルルルルルル…



             ┌──┐                                        "
             │::::::::: │                                          ,   ,
             │::::::::: │ ┌─┐            ┌──┐               /
             │::::::::: │ └─┼─┐        │::::::::: │  ┌┐         /   '
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          ´⌒):..ヾミ=-.::;    ..-彡ミ:::..  . )ミ/三::.      ..:::`ミv彡:::.:.. .::-=彡ノム _
             ヽ∧ヘ、ヘ人从ヽ∧ヘヘ从ヽ_ノ三|三:::::... ∵  ..:.::=il=::.  ・..:.::三ミ:、て ̄
                              ´⌒):.ヾミ=-.::;    ..-彡ミ:::...   . ..::::ノソ⌒` 、
                                ヽ∧ヘ、ヘ人从ヽ∧ヘヘ从ヽ∧ヘ、ヘノ(



特殊部隊「ぐわああああああッッッ!!!」

特殊部隊「敵襲、敵襲! いったいどこに……!?」



男「おい、少女! お前の手引きか!?」

少女「知りませんよ! こんな超火力出せる重火器持ち込んでませんし!!」


組員「男さん、少女さんですね」ヌッ


男「……!? どうおわぁぁぁぁっっっ!!!」

少女「黒服のヒトたち……。いったいどちら様です?」


組員「私どもは貴方がたの味方です」

組員「それとも……。お嬢の部下、と申し上げたほうが通りが良いでしょうか」


男「ああ、大家さんの……!」

少女「えぇ? 大家さんがお嬢で、部下って……、えぇ!?」

組員「細かい説明は後で」


組員「あの特殊部隊は、我が組の精鋭が抑えています」

組員「お二人はコチラへ」

組員「友人さんから連絡を受けたという“有志”の方が、お待ちです」


男「え、友人の奴が……? いったい誰を……」




           ___00                __    ∩ ∩
           └‐┐l   ___n_ ___n_ ___n_└┘/7 ∪ ∪
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´,,r'´,,、'⌒'ヽ,        ` .、
〃/〃,r'⌒`ヾ           ` .、
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i l i!i  〃'⌒`' 、`ヽ、∵'`     ` .、            ,,.
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 'i,i   .'i, ,i〃´`  'i, ','i i,},       ≠==≦、    ,ィ≦≦≦
  ':,  'i,' i,'i, ( ) i  'i, l゙}      {==(◎)==j  {≦≦≦≦
      'i, 'i、、   i   ! i'}        ゞ==='   ゝ≦≠"´
    :' , 'i、 、`ー''" i ,i'i,i'l}      :          ,,.. ''"
   ∵ ,' , .'h、 `-,、,,ノ ,i!l川      ;  __,,.. ''"    ,,

  :'', '. ・  .`-,、,,_,,,ノ斗' {       《≧イ    ,,.. ''"
              ≠彡 \     (    ,,.. ''"
                   `ー─── "


少女「く、クルマ!?」

男「……ちょっと待て。このタクシーは……!!」


運転手「ええ。お久しぶりです」パカッ

運転手「およそ半日ぶりですな」


男「う、運転手さん……!」

少女「あなたが、一体どうして……」

運転手「いや。今日もいつも通り、日が昇ってから動き出す予定だったのですが」

運転手「息子に呼び出されましてな」


男「え……? 息子って、いったい誰」

運転手「さあ、ウカウカしてるヒマはありませんぞ!」

運転手「この山を脱出します。はやく後部座席に!!」


男「わ。わかりましたけど……」パタン

少女「……そ、その口調。まさか……」


組員「それでは、運転手さん。お二人をお願いします」

運転手「任されましたぞ。走り屋の誇りにかけて」

運転手「目指すは、朝日をその逆三角形に浴びる、ビッグサイト!!」



運転手「んん、久方ぶりの全力全開!!」


ギュルルン!! ギュルルン!!





運転手「―――フルスロットル以外はあり得ない!!!」






ブオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!




――首都高速道路


ブオオオオオオオ


少女「……高雄山が、みるみる遠ざかっていく」

男「い、いったいこのクルマ、何キロ出てるんですか!?」

運転手「今、120キロになりましたな」ブオオオオオ

男「ブッ壊れますよ!?」

運転手「私の運転に耐え得る程度の改造は施していますので」


男「だいたい、何もこんなに急がなくても……」

男「謎の特殊部隊は、組員のヒトたちが止めてくれてるし……」


ドォォン!!!!!!


少女「あ。また、山のほうで爆発が」

少女「アイツら、ホンモノの仕事人ですよ。大丈夫かな……」

運転手「ほっほ。ご安心を」

運転手「仮に相手がホンモノだとしても」

運転手「彼らもまた、“ホンモノ”なので」



プァンプァンプァンプァン!! プァンプァンプァンプァン!!


男「……!?」


パトカー『そこの暴走タクシー!! 今すぐ止まれぇぇぇ!!!』プァンプァンプァンプァン


運転手「おっと……。サツの小僧の群れが、何か言っていますな」

男「う、運転手さん? ココの高速道路の制限速度は!?」

運転手「ん……。たしか、通常は60キロでしたかな」

男「ダブルスコア!!」


男「俺たち、そこまで急いでませんから! 法定速度内で走りましょう!?」

運転手「残念ながら、一度動き出した“相棒”は」

運転手「私にも止められないのです」

男「うっそだー!!!」


少女「でも……、男さん! 私、燃えてきましたよ!!」

少女「不肖私。カーチェイスは何度か経験がありますが」

少女「こんなにアツい逃走劇は、コレが初めてです!!」

男「君も君で何でカーチェイスの経験なんてあるのかな!」



パトカー『そこの……、暴走タクシー……。今すぐ……、止ま……』プァンプァン…




少女「……みるみる、遠ざかっていきますね」

運転手「既に老いぼれた身ですが、ぺーぺーの若造どもには負けませんぞ」ブオオオオオ

運転手「というか量産型の白黒パンダごときの出力に」

運転手「我が“相棒”が、遅れをとる道理がありませんな」

運転手「なあ、相棒!!」


タクシー「…………」



男「…………」ハハッ


少女「ちょ、ちょっと待ってください!!」

少女「進行方向にETCのレーンが!」


二|≧s。
二|==== ≧s。
二|========|\
二|========|\|

二|========|\|\              .|「う≧s。
二|========|\|\|            .|___|__
二|==/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄::|         __,,|王王王|──|
二|==| |ニニニニニl |        .|二二二二二二::|

二|==| |ニニニニニl |           |--|--|--|--|--ll|            ┌───┐
二|==| |ニニニニニl |         /|--|--|--|--|--ll|            |     _|
二|==| |ニニニニニl |       |/|--|--|--|--|--ll|      ,ィ⌒ヽ/| ̄ ̄ ̄ ̄ |
二|==| |ニニニニニl |       |/|--|--|--|--|--ll|       |-_-_| |/| lニニニl |  ____
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二|==| |ニニニ,|二|    |_,,|‐┬r‐|/|--|--|--|--|--ll|   |王|-|-_-_| |/| lニニニl |/|]]]]]|__
二l ̄ ̄ ̄¨|_,|二|    |=ニ二二二二二二二二二二∟_|王|-|-_-_|]|/| lニニニl |/|]]]]]|ニ|

        |_,|二|    |    jI斗-‐''´ ̄/)   `ヽ、    -=ニ二ニ=-_ ̄ ̄ ̄二二二ニ=---.|ニ|__
-─   ̄ ̄__|二∟ -‐‐''゙゙ ̄    。o</      `ヽ、、      ̄-=ニ二ニ=-_         ̄
__,,..-‐‐''゙゙ ̄          。s<  _ ‐¨          \ヽ          ̄‐-=ニ二ニ=-_
             。s≦   _ ‐¨              \\              ̄ ̄-=ニ
         。o≦     _ - ¨                 \\
     。o≦      _ ‐ ¨                     \\



運転手「―――む」キキッ


ギュリルルルルララララララララララララ!!!!!!!!!!!!



男「ちょ、ちょっと! 車体がイケナイ声あげてますよ!!」

運転手「―――奔れ! 天馬の如く!!」


ヒヒイイイイイインンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!



少女「ま……、まるで! クルマから出る摩擦音が、馬のいななきのようです!!」


男「というか奇蹄目の鳴き声そのものではァ!!?」

運転手「久方のエキサイトに相棒も悦んでおりますな」


運転手「さあ、ここからですぞ!!」バッ


シュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!


少女「車体が、空気の層を破って……! いや、走りながら取り込んで!!」

少女「いわば風の結界!! インビジブル・アーマーを作りだしています!!」

運転手「数多のライバルと渡り合うためには……。こういった技術も必要だったのですよ」

男「いったいナニと戦ってたんですかぁぁぁ!!?」



ETC係員「ん……? なんだありゃ…………」


ETC係員「ってぇ!? う、うおああああああああああああ!!! 轢かれるぅぅぅ!!!!!!」

                                                                 /し'7
                                                           /´刀 ./  /
                                                       / .yく(   {
運転手「どいた、どいたァァ!!」                                    / _イ l|  /     /`l
                                                      / / l l|  _」      l  |刀
                                                         / / l  lレ′  _   l  |レ'
                                                      /  ヽ レ、ゝィ.__.. //-‐''´ヾ=,'
                                                        / ハ ヽ、 /     __  /
           ,r 'j ,r'ゞ,         ,r ' ´ `丶、       ,r、             ./ /  ヽ  { l  ,r''7゙/ ./ /
          ,イ ゞ'´:`イ  ,r ' ´  `丶、      `ヾ       /:;/  //          l /   ヽ-' {/ / / ./ /
         /     〈   }  (´  ) :`i      `ヾ  /:;:;:;/      ¨`イ、  . レ′       l /  l / ィ.__.. -‐z
     _,,イ从     /   /            _,,、  ,r '´ /:;:;:;:;,/    `ゝ                レ′ .レ゙/     _ /
   /:;´i  (´,  ):`i/  ,イ ゝ.::.  '' ,,:: ::´ `: (:  フ /:;:;:;:;:;:;/ ,.‐(  ..::   ,,`ヽ               l  ,r''7゙// ,'
  /:;:;:;:;:;i      ゞ,,-‐,ゞ、                    /:;:;:;:;/           ヾ,                 {/ / ∠ノ
/:;:;:;:;:;:;:;:;l `ゞ    ,,ノ( ヾ    ,.‐(  ..::   ::´ `: (:,/:;:;/`‐-‐'  .: )  '' ,,:: ;; `;.)                    / /,r‐r‐z
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,!  r≡=、_      ゙ト、    (イ      //'' ,,:: ::´  _,,、-‐─ー-‐、    /            l. / l / ノ
:;:;:;:;:;:;:;/    ,,-‐ ゞー、 ,,:: ,.‐( ..:\ヾ   ,,::⌒、       _,,、-'´:;:;:;:;:;:;:;_,、-‐、:;:;ヽ,ノ( ヾ.,, ..)          レ′| ル/乃
,彡イ'´        '' ,,:: ::    jソ ⌒ヽ::   ..::.  '' ,,:..:) ) ,.イソ´_,、-‐'''"´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,!  ::.⌒ヽ:: ゝ、            ." / /
ゝ.::.  '' ,,:: ::il                、     /i      //:;/i:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;//  /  ゞ                   / /
、         '      '¨  ,.‐(  ..::  ,ノ,l l      //:;/ /:;:;:;:;/二/´ ̄:;:;:;:;:;:;,イ ) :` ,,..  j.            i /
 `丶、    ,.人 .:.: .:⌒ヽ.,    `i        | |::.⌒ヽ:: ,! !:;:;l/:;:;:;:;:;:;:;:;,、rー、-‐ '"ソノ`ゞ    ,,ノ( ヾ.,, ..)          レ′
       _,、-‐ ─‐-t‐r‐-、 _,ィ  イ     iユ    /:;/:;:;ゞ  -‐''"´7 ,r‐7 ,、ノノ       ..::)  )
_,、-‐'' "´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,!イl  ji三彳   ,      /i ,/:;/:;:;.;;::;:;:;:;三彡// ,/ /     /
二ゞ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,!イl  ,!l´ ̄     ゙´   l/ i':;/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,//イ , ! ´``ゞ    ,,ノ( ヾ.,, ..)


パラパラ…

ETC係員「あ~~~れぇ~~~!!!」ジャポン


男「……い。ETCが、木端微塵に……」ダラダラ

少女「係員のヒトは海に投げ出されました! いちおう無事です!」

運転手「避けられるか、避けられないかを考える必要は無い……」

運転手「ジャマだと思ったら、とりあえずぶち破ってみる」


運転手「それが、ハードボイルド……」


少女「か、カッコイイ……!!」


運転手「タバコ。よろしいですかな」

男「え、ええ……」

運転手「かたじけない」

シュポ


運転手「ふぅー…………っ」


運転手「やはり走りの最中に吸うシガレットは格別ですな」

男「……あ、あの。あなたは、以前からこんなコトを?」


運転手「東狂という街の日常ですな」


男「本当に、この運転手さん。いったい何者なんだ……」




ギャルルルルルルルルルルルル…


男「……? 今、何か……」

少女「あれは……? 後ろから、何か白いのが……」

少女「このクルマに、超スピードで猛追してきます」


運転手「――――……!!」

運転手「……あ。アレは……」


__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___―― ̄ ̄___ ̄―==―_―____
―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━―― ̄ ̄___

                                 {///}
                              ∨/   __||__ |7|7      ||   ||      ||   ||      ||   ||
                                   |.|    二二||二二             ||   ||      ||   ||      ||   ||
                               从.    ̄ ̄|| ̄ ̄  ┼ュ     /′ |レ    /′ |レ    /′ |レ
                           ___\<=ァ=..||      |      /         /         /
                   -=ミ:、  / , -==ミ:、`{ f~   jf∧∧   /
                     )/ム./  /////⌒Vハ j  ./::::::::}⌒`¨´
                , =-z≦< /  / ///   ,zシ^/:::::::_::∨_ __
               (: : :(__     ∧ {///{   //  /:::://///フ'⌒>x::::>x
           ___   `.ー=≦⌒ヽ∧ \//>=イ/  /: ///////::::::::::::::::::::::::::if^>:、
          /:\\ヽ _    ≧x: : ∧>'^/¨¨ ./:: //////::::::::::::::::::::::::::::::::::i|〕iト .,\
       ,∠斗=ミ: : :\\:.~> '^⌒`ヽ /! ./   /::::::://////:::::::::::::::::::::::::::::::::::::j}//// 〕iト .,
          , -=ミ.. \: : :\/  .___|::|/  ,/::::::::::〈///.∥::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j}///////// `iト .,
       /: : : : : : :`>:'77777f'く ̄ ̄ ̄|::|  ∥::::::::::::::∧///|::::::::::::::::::::::::::::::_≧'^///////////////` :、
      廴_ _>'^.//////∧=-t─i<^|∧  |::::::::::::::::::;_〉//.!::::::::::::::::::rf≦^//////////////////////\
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                      V    ∥\∨  Vハ 〕iト .,   \::::::::: ̄ ̄::::::::::::::::::::::>:、.////////////////.
                          \ _丿_ .`〉f=<.ム斗く^\    \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ >:、///////// /
                        ∨   `V      _zxミ.\  /〕iト .,:::::::::::::::::::, '^     ` ー==≦
                           ∧    }_ ニ=- ''¨   `ヽ_)^>=- < ̄ ̄ ̄
                              ` ー=≦
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___―― ̄ ̄___ ̄―==―_―____
―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━―― ̄ ̄___



少女「し、白バイです!! しかも改造車!!」

少女「ば、バイクなのにスゴいスピードですよ! このままじゃ追いつかれる!!」

男「チョーシ乗ってるから何かトンデモナイのが出てきちゃったじゃないですかぁぁ!!?」


運転手「……単車で、私の相棒に追いつく警察……」

運転手「まさか……」


運転手「ちょっと、揺れますぞ。どこかに掴まってください」

男「へ!? 揺れるって……」


少女「そういえば、今日もある、サイドブレーキ脇のコップ……」

少女「いまだに中身の水が、一滴もこぼれていません」


チャポン


少女「ソレがこぼれるほどの。“何か”を、すると……!?」

男「何かってナニ!!?」


運転手「どうやら、“重り”を外す時が来たようですな……」

運転手「バックタイヤ!! パージ!!」

ポチ


バカァン!!!!!!


少女「ああっ、車体の後ろについていたタイヤが外れました!!」

男「そ、そのままバイクのほうに飛んで……!」


白バイ「――――!!」


                                             i
                            l\        ┌:,    ,!'|   ` .
                             ! | !ヽ. ,、 |\_|| ’ j  i! i    ,-、、
                              ! .| l l.|゙i |「`ヽ`i   { ||   /  /
                             l | l |! l └′/,/ :、,ィl! l! {′/  ;/

                              ! ヽ、 ̄ `'''  , `   Yl!|:  | |. /  /
                               ! r 二コ    | 、 ゙リN: ; !li└ヽ/ /゙:、
                              | |      }'′    i  ;}|! ,/ ,/
                              ``'     ,:;:;:,!     ''′ ,. !/ _,,.-''   ヽ
                                      (''゛ j! ..:;;:==-:、  ゙''"ィi {ヘ!,l .
                                 〃’ :; {`' ,ィ゛ '′.  ) jj」li|liY、⌒}
                                       j∨il!ィ' {’      へヾ;;イ
                                 ’ λ' ,j、l! / 、     ., ,il{ ,゙!j!;|   :
                                    ゙ハ! ;. ゙:、     j|   '/'}′ ,
                                      じ:、 i,'  ゙:、 ,,.,   ′彳レ/
                                   丶、v{ ヒ!   i!||il.   , 八 Z
                                  __   _,ゝ、;_    ゛:|!  ゙ ,rカ  ̄
                                _  ̄`ζ」'(´ ヽ  j! ゛ ,ィ彡′_.. -

                                  二 ニ ゙て∠rιク_;.,、_,ー-'^- =ニ_


男「起爆したぁ!? ちょっ、なんてモノ載せてるんですか!!」

男「ていうか何で爆弾なんて使ってるんですかァ!?」

少女「あーあ。ありゃ、あの白バイ、運転手もろとも爆発四散ですねぇ……」


運転手「―――いや」






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男「……!!」

少女「爆発の中から、人影が……!?」



ギャルルルルルルルルルルルル!!!!!!!!!!!!



少女「あの白バイ!! 爆発をモノともせず、追いかけてきます!!」

運転手「やはりか」


男「……ちょっと、あの白バイ、なんか構えてますよ!!」




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  ./              ヽ ヽ     lニゝ!∨ミl、          / /'"  _/゙''.'''''ー ..,,_.
  /              _,,....、 .ヽヽ,   i".,,∠二-、゙'、     /. /   /         .`'、.
. /        , /    \ .l  lx、│.|.l.;;;;;;;;;゙l.} !   ., ‐_/./   ./、              \
..!       ,/          ,.l_| │`'.! `'`-ニ'" .l ._,/゙"_,, イ  / l                ヽ
.|     ./           `''ヽ |       |゛       !  ! l               l
.ヽ   ./               ヽ.!         |       l  ! ,`                 !
 .ヽ. ./                  _..-'''゙.!      l.'''‐、    .!  .|r'"^^^''''ー .._            /
   `''.l               /´   .|"ーi―‐i''''}  .l    .! ./         `'‐、     /
     \             l     ゙'!、 l  .! ,! '!、.ヽ    l,/              `x   /
      ゙'、,、        ,!      ̄` !  .l  ミヽ..,__丿 ./                 l /
        ! .l      / ヽ      .|  .,! .'''''/'i  _,_ /                   l/
        ,! .ヽ     l゙   .ゝ....-- ..,,,|  .し,,,,,,ゾx″、ヽ                   /
       l   \.   .ヽ         、 .`'"     / .l、 `'-、              /
       /    . \   /  .\   !     ./ ,〃  `   .!             /
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少女「……!! マシンガンです、あれは!!」

少女「当たったらいくら改造車でもハチの巣ですよぉ!?」

男「なんで今日は機関銃とか爆弾とか改造車とかが出てくるんだァ!!?」

運転手「……ふ」

運転手「どうやら相手は、本気で私たちを仕留める気のようですな」


運転手「掴まって! ドリフト旋回のち、防護シールドを展開し、迎撃します!!」キキッ

男「迎撃!!? 何なの、このクルマ!!!」


シュゴオオオオオオオオ!!



白バイ「――――」ニヤ

カシャァン!!


少女「……? 白バイ、マシンガンを捨てました……!」

運転手「なんだと、重火器はフェイク!!」キキキキィ

運転手「では、本命は……!」


白バイ「――――」チャキ


     ライフル
運転手「小銃!! 止まったところで、タイヤを撃ち抜く気か……!」



男「もぉ~~~ダメだぁ~~~!」


運転手(読まれた? この私が……)

運転手「だが、ならば!!」パカッ


少女「や、屋根を開けて何をする気ですか!?」

運転手「その素顔、見せてもらおう……!!」スチャ

男「バズーカ!?!!??!??!?! 今あなたコレどっから出したんですか!!?!?」


運転手「深く追究してはいけませんぞ!」

白バイ「――――!!」


                 (⌒ヽ

                {⌒ヽ  ヽ
                ヽ  ヽ_}
             / ヽ ヽ   ト__
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          =ニ;:;:;:;:;:;:; \     /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
       三;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\    〈;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
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     ニ三;:;:;:;:;:;:;:'          \  〉   ' 、;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
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  i 三──   //三/ Ξ         \    ヽ
  | 二二二ミヽ| |三  ≠         r‐'   ∧  l
  | 三 ̄Ξ=i| |三 ≡=         \  { `ー'
  乂 三三  ヘヘ乂 ヾ           `ー'

_ 三=─-   ヘ人≧ ___ ________\\______
  三=───≧─三二二ラ'    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄,:':;:;:;:;:;\\;:;:;:;:;:;≧ ̄ ̄ ̄

 =三三三三;:;:;:;:;:;:'、                ,.,.;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\\;;:;:;:;:ニ─
    ニ三;:;:;:;:;:;:;:;:;:` ,,             ,,, ;:;:゙:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\\Ξ=‐
     =ニ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:      ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\\
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ブアァァァァァァァァッ


少女「ぐ……。トンデモナイ爆風です……」

運転手「すぐに再発進しますぞ! 掴まって!!」

ブオオオオオオオ


男「こ。公道でコレはイカンでしょ……」

男「はっ、それよりも、あの白バイは!?」

運転手「…………」




カラァン



少女「……あ」

男「ヘルメットが、外れて……!」

運転手「…………」

運転手「お前しかいないと思っていたよ」



運転手「署長」



署長「…………」


署長「……久しぶりだな。運転手」

署長「オレも、朝から首都高を爆走するようなバカは」

署長「お前しかいないと思っていた」

運転手「ふ。署長になっても、真っ先に現場に出るのは変わりなし、か」

署長「否定はせんがな。そのパトロールで、昨日、お前の息子にも会ったぞ」

運転手「……!」

署長「COMIKEで無線傍受をしていたが。……いい面構えをしていた。懐かしいな」

運転手「血は争えんというコトか。ならば代わりに、親の私をナワにかけるか?」

署長「……望むところだ。決着をつけよう。いつかの因縁、いつかの勝負に」


少女「しょ、署長? 署長さんって、あの!?」

男「昨日、COMIKE会場で、出会った……!」


運転手「奴とは、若い頃、ちと因縁がありましてな」

運転手「今はこの付近の警察署の署長なんかに収まっていますが……」

運転手「当時は、それはそれは、激しくぶつかり合ったものです」


署長「……いくぞ!!」

ギャルルルルルルルルルルルル!!!!!!!!!!!!


少女「白バイ、再発進します!!」


運転手「ならば我らも逃げるまで」

運転手「……しかし、どうやら、タイムアップが近いようですな」

男「え……? それは、どういう……」

運転手「見てくだされ。左手を」


      Fi
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男「あれは……、虹の大橋……!! いかにも封鎖されそうな……」

運転手「橋を抜ければ、ビッグサイトはもう間近」

運転手「ココで振り切れなければ、我らの敗北です」

少女「でも、振り切るって、どうやって!?」


少女「初手の分離爆弾はかわされ!」

少女「ドリフトと防護シールドは見切られ!!」

少女「バズーカの砲撃を受けても、なお走り続ける!!!」


少女「あの署長さん、尋常な警察官ではありません!」

少女「そんな相手を……、止めるスベがあるというのですか!?」


運転手「…………」

運転手「モチロン、今までに使用した武器の他にも、このクルマには」

運転手「対戦車用も含めていくつかの弾薬を積んでいます」


運転手「だが、ソレではおそらく奴には通用しない」

運転手「奴を倒すには、焦土兵器でもなければ……」

少女「……。さすがに、東狂の街を荒野には出来ませんね」


男「焦土兵器が無いと倒せない警察官って何なんだ……」

男「だいたい、荒野にはならなければ、重火器使ってもいいのか……」


運転手「ともかく、大橋に入ります。直進!」キキ

ブオオオオオオオ


少女「……あ」

少女「左手。東の海から、日が昇って……」


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男「…………」

男「暁の水平線か。眩く照らされる海……」

少女「ミナモに朝日がきらめいて。……美しいです」


男「――――!?」

男「ちょっと待て。太陽を背にして飛んでいる、アレは……!!」


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運転手「―――ま、さか」


運転手「署長のバイク……!?」

少女「え……!?」


少女「……あ! 本当だ、バイクがコッチに向かって飛んでる!!」

男「そ、そこの埠頭を踏み台に飛び上がったのか!? そんなムチャな……!」


運転手「マズい、追いつかれる……!!」


ピー ピー ピー


運転手「……? こんな時に無線通信!?」

ピッ

運転手「誰だ! 何の用か知らないが、今は取り込み中だ!!」



無線『―――、一日遅れの“雨”が降る。傘が無いなら、左にかわせ』



運転手「……!!」

男「な……?」

少女「こ。この声は……!!」


運転手「……そうか。そういうコトか」

キキ!!



署長「とらえた――――!」



少女「白バイ……。上から来ます!!」

男「つ。潰される……!」



運転手「―――急発進。フルスロットルゥゥ!!」



――虹の大橋 ビッグサイト側

自転車「フーン、フーン♪」チリンチリン

パトカー「ちょっと、ソコのキミ!!」プァンプァン

自転車「げ……!」

パトカー「こんな時間に自転車で出歩いて」キキッ


パカッ

警察官「いったい何してるんだ?」

自転車「ええ……、と、ですね。実はCOMIKEに行くために」


警察官「ふぅん。COMIKEに、ね……」

警察官「いったいどこから来たの?」

自転車「愛智県の小牧t……」


パトカー「バキバキバキバキ!!!!!! メキメキメキメキメキメキ!!!!」


警察官「えっ!!?」


トラック「お……? あ。悪いな! パトロールの兄ちゃん!」

トラック「トラックでパトカー、ぺしゃんこにしちまったわぁ!!」


トラック「ガッハッハッハ!!!」バンバン


警察官「えっ? えっ!!?」

自転車「うわあ……。これはヒドい」


トラック「そんなコトより、おとーさん! もう無線入れたんでしょ、ジュンビするよ!」

トラック「おうよ。コロンビア・AAモデル、装填! 発射よーい!!」


トラック「撃ェェェェェェェェェェェェいッッッ!!!!!!」


シュボボボボボボボボ!!!!!!!!!!!!



――虹の大橋 中央部

運転手「―――急発進。フルスロットルゥゥ!!」

ギャリギャリギャリギャリギャリ!!!!!!!!!!!!


男「左に発進したはいいけど……。白バイにすぐに追いつかれますよ!?」

少女「待って……。何かが、飛んでくる!!」



ヒュルルルルルル…


運転手「……なるほど」


運転手「これは、たしかに“雨”ですな」


男「え……?」

少女「あ……、“雨”って。もしかして……」


少女「あのデタラメに飛んでくるミサイルのコトですかぁぁぁ!!!?」


ヒュルルルルルル…


署長「なん―――、だと―――!!!」


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二.ll.| . 二 ̄ ̄|=,ィ'⌒ニニエニニil]1lー-il]|_三rーilil ̄|  .i|..| ||lll|||ii|||lliii..| ||ll|i.: ;: ;: ;:  ; ::; : ;:; :; :  :: 、/  `" "´ ,, ‐"
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韭|  |:::.. ..  |巫|il]il]|_三‐┬ lil「l ̄|i、_r lil「l韭l《fニニll ̄'' ;~'',;''゚ ;~'',;'', ;~,;''゚ ;~゚''゚ ;~'',;'',;''゚ ;~,;, ‐''"~ ̄.つ  _/`



署長「ぐわああああああああああああ!!!!!!」


運転手「ぐぅ……っ!」

少女「ミサイル、数十発……。虹の大橋の中心をぶち抜きました!」

少女「大橋の中心部は完全に崩落。私たちのいるほうと、向こうで分かれています」

少女「そして、私たちのいる反対側、崩れた橋の向こう岸にいるのは……」


署長「ぐっ……」


少女「署長の姿です! 完全に署長の追跡を止めました!!」


男「は……、はは。やったのか……」

男「今日だけで、いったい何回、爆発が起こったんだ……?」


少女「しかし。この数十発のミサイルの主は、いったい?」

少女「見たところ、発射角がデタラメ過ぎて、橋の架かっている湾内はおろか……」

少女「都心のほうまでミサイルが飛んでいますが……」



トラック「はっはっはァ!! それなら大丈夫だ!!」

トラック「ミサイルはヒトの住んでる地域に飛ばないようセッティングしてるんでなぁ!!」


男「お、大型トラックから声が……!?」

少女「この声……。さっきの、無線の!!」

運転手「……まさか、お前たちまで現れるとはな」


トラック「よう」ガバッ



組長「愛と正義の救援隊、到着だァ!!」

大家「あ、私もいますよー」


男「お。大家さん……!」

少女「それに大家さんのお父さんも!!」


組長「おお、おお! バカ娘のタナコども! 一昨日のケバブ屋以来だな!」

組長「謎の特殊部隊に襲われたってのに、元気そうで何よりだ!!」バンバン

大家「ぐふっ……」


少女「な、謎の特殊部隊って……」

少女「大家さんのお父さん、高雄山の特殊部隊のコトを!?」

組長「ああ、モチロン知ってるぜ。なにしろ」

組長「特殊部隊をハデに爆撃したのは、ウチの組のモンだからな!!」


少女「え。く、“組”って……?」


男「ああ……。さすがに説明しなきゃならないか」

男「大家さんの家は、このへん一帯の地主なんだ」

男「そしてお祭に出店なんかもよくする」


男「……ここまで聞いて、何か思い当たる職業は無いか?」

少女「そ……。それは、ウワサに聞く、アレですか」


少女「大好きなモノは、金、女、暴力」

少女「失くした小指は忠誠のアカシ」

少女「恐怖を恐怖で支配する、ヤのつく自営業そのヒトであるとっ!!」


組長「はっはっはァ! そりゃまあ言いすぎだがよォ!!」


組長「場合によっては、そういうコトもある」


男「ひえッ……」

少女「おトナリさんが実は極道だった……」

少女「アパート暮らしとかは、かくも面白いモノなんですね!」


大家「はいはい。お喋りはそのへんで」

大家「まずは男さん。目的を達成できたようで何よりです」

男「あ……」


大家「次に少女ちゃん。勝手なコトして、男さん困らせたらダメですよ?」

少女「……はい。スミマセン」

大家「うん。わかればいいんです」


大家「そして運転手さん!!」

運転手「何ですかな。組長のお嬢どの」

大家「……あ、あなたが。伝説の?」

運転手「いかにも。もっとも、伝説かどうかは、私には判断しかねますが」

組長「はっはっはァ! まあ、イカれた暴走伝説ってやつだ!!」


大家「友人さんのコトも含めて、色々と問い詰めたいコトはありますが」

大家「まあ、今はそれどころではないようですね」



プァンプァンプァンプァン!! プァンプァンプァンプァン!!



少女「げ、このサイレンは……」

少女「向こう岸にパトカーの大軍が!!」

男「今はまだ向こうにいるが、コッチに周ってくるのも時間の問題だな」

大家「はい。ですからお三方は、今すぐCOMIKE会場に直行してください」


少女「え……」

大家「どうせ行くんでしょう? COMIKE」


男「…………」

少女「……ええ。モチロンですとも!!」

少女「だって私は、そのためにこの街に来たんですから!」


男「…………」フッ

運転手「良いカノジョさんですな」

男「さて。何のコトだか」


大家「良いヘンジです。そうこなくっちゃ」


大家「それと、男さん! コレを」ポイッ

男「……ん? おとと、ウワァ!!」ドカッ

大家「忘れ物ですよ」


大家「COMIKEに向かう戦士には必需品じゃないんですか、そのバッグは」

男「持ってきてくれたんですね……。昨日の装備を入れっぱなしにしておいて良かった」

男「ありがとう」

大家「いいってコトですよ」


大家「では、この場は私たちに任せてください!」

大家「さあ。パトカーの集まっていない、今のうちに!!」


運転手「……かたじけない!」ブオオオオオオオ

少女「大家さーん! ありがとうございましたー!!」

男「このお礼は、必ず!!」

シュゴオオオオオオオオ!!



大家「……行きましたか」

組長「やれやれ。ハデにやってくれたモンだぜ」


組長「山ン中での撃ち合いくらいならともかくよォ」

組長「橋の真ん中がゴッソリいっちまったとか、どうすんだ?」

大家「私としては、都心のほうに飛んでいったミサイルも気になるんですが……」


大家「……あ。山毛線、全線運行見合わせみたいです」テロテロリン♪

大家「車線に爆発物落下とかで」

組長「はっはっはァ! こりゃあ大事故だなァ!!!」

大家「笑ってる場合じゃないですから……」


組長「だが、あの嬢ちゃんは帰ってきて、全員無事で、万事うまくいった」


組長「そうだろう?」

大家「…………」


大家「まあ、たしかに?」

大家「終わり良ければすべて良し、といいますか。当初の目的はすべて達成できましたね」

組長「そうそう! あとは自分で自分のケツを拭くだけだ!!」


大家「といっても、高雄山での爆発事件隠蔽、首都高のETC破壊の損害賠償支払い」

大家「タクシー速度超過事件の揉み消し、それにこの虹の大橋の崩落事件弁明……」

大家「ああ、そういやさっき、なんかパトカー一台も潰してましたっけ」


組長「はっはっはァ! そのへんの事後処理はお前に任せるぜ!!」バンバン

大家「ぐふ。ホント、都合いいんだから……」


プァンプァンプァンプァン!! プァンプァンプァンプァン!!


署長『そこのトラックの持ち主!! 組長だな、動くな!!!』


大家「あ。署長さんの白バイ来ちゃいましたよ。どうやって逃げるんですか?」

組長「ん? 今回はヘリも出してないし、逃げ場無えなあ」

大家「……え。それって……」


組長「そう! 夏の海なら安心だァ!!」



組長「飛び込めェェェ!!!!!!」


大家「ウソだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」




ドボーン


ドボーン



 

最終章 中編は以上になります。
最終章 後編は、無事に完成した場合は、明日18時ごろの開始を予定しています。

それでは、無事に完成しましたので、最終章 後編を開始します。
最後は150レスほどの予定です。




――鷲ントンホテル前

キキッ


運転手「ひとまずココでよろしいですかな」

男「あ……、ありがとうございます」

男「なんかとんでもないコトになっちゃったんですけど……」

運転手「いやいや。年甲斐もなく私も、楽しませてもらいましたぞ」

少女「アレで、まだ余裕があったと……? このヒトの本気とはいったい……」


運転手「おそらく私のクルマは、既にマークされているハズ」

運転手「このままココにいてはメイワクがかかるので……」

運転手「ホトボリが冷めるまでは、どこかに身を潜めていますかな」


運転手「それでは、私はこれで」

運転手「お二人とも。三日目、楽しんでくだされ!」

ブロロロロロ…


男「ええ! 運転手さんも、お元気でー!」

少女「捕まらないよう、頑張ってくださいねー!!」



男「…………」

少女「…………」

男「行っちゃったな」

少女「ええ。トンデモナイおじいさん……、いやおじさんでしょうか」

少女「とにかく常軌を逸したアラフィフの方でした」


男「常軌を逸したといえば……。お前」

男「あの特殊部隊は、いったい何だったんだ?」

少女「…………」


少女「平たくいえば、私の敵のようなモノです」

少女「私たちは普段、彼らを相手に戦っています」

男「……冗談じゃないんだな」

少女「ええ」


少女「でも、今日だけは、今だけは、ソレを忘れたいと思います」

少女「こんな爆速で走ってきたなら、ヤツらも捕捉できていないでしょうから」

少女「……いいですよね?」

男「……ああ。モチロンだ」



男「ちょうど、もうすぐ始発の時間だな」

少女「最終日の今日も、やっぱり始発ダッシュって、やってるんでしょうか?」

男「そりゃ、まあ……。やらない理由が無いしな」


男「むしろ、基本的に来場者は三日目がイチバン多い」

男「今日が最も激しい始発ダッシュになるんじゃないか?」

少女「おお。それは……」


少女「この目で確かめるしかありませんね!!」

男「言うと思ったよ」



――シーサイド線 国際展覧場駅

アナウンス『走らないでくださーい。走らな……』


始発組「「「「「「始発からきますた!!!!!!」」」」」」ドドドドドドドド


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       ヽ    | (´ ._ノ ヽ   /⌒ヽつ  \(. ./⌒ \   |   _二二二つω^ )(\ ( ^ω^ )二⊃ /⌒ヽr
        ソ  ) \\⊂二二二( ^ω^ )二 ⊂二(^ω^ )二ノ   /( ^ω^ )  ⊂二\\_/⌒ヽ二二( ^ω^)二⊃
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                      ⌒| /         ( < \  レ’\\   ヽ   /   i ) ノ     ノ>ノ
                                   \|\|      レ  (⌒) |   /ノ ̄     レレ
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___―― ̄ ̄___ ̄―==―_―____
―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━―― ̄ ̄___



少女「うわキモ! ……いえ、失礼」

男「失礼しなくていいぞ。実際ここまで数が多いと、さすがにキモい」


男「……と、いうか、目の焦点の合ってないヤツらが」

男「もう数人じゃ、きかないんだが……」

少女「なのにこの数。彼らはいったい、何故、そこまでして……?」

少女「COMIKEへの情熱というだけでは、もはや割り切れないと思うのですが」


男「ああ。それは、今日が三日目だからだろう」

少女「三日目……? たしか男性向けの日だっけ」


男「そうだ。…………男性向けだ」

少女「……。ああ……」


少女「そういうコトですか……」

男「元来、COMIKEというのは、女性の参加者が中心となって始まったと聞く」

男「現在でも基本的にCOMIKE以外の同人誌即売会といえば、女性が中心らしい」


男「だが……。COMIKEだけは特別だ」

男「参加者の比率も男が多く、男性向けの頒布物も多く出展される」

男「つまり、日本中の、その、愛好家が……。今日、この日に集まる」


少女「……。なんとも、原始的なハナシに聞こえますが……」

少女「いえ。だからこそ、生きようとする意志! あふれんばかりの生命力!」

少女「底無しのバイタリティー!! まさしく崇高なリビドーを感じます!!」

男「言いつくろってるけどコイツら全員変態ってコトだからな」


少女「いえいえ。ソレ言っちゃオシマイですよ」

少女「私たちだって立場は同じですし」

男「ぐ……。まあ、俺だって気にならないといえばウソになるし」

男「否定は出来んな」

少女「それも含めて、情熱的なこのお祭が、私は好きですよ!」


男「いちおうフォローしておくと、健全な頒布物と、健全じゃない頒布物の種類の割合は」

男「一説によると、およそ7対3だという。CDや雑貨もあるからな」

男「まあ、出回ってる数となると、結局逆転するんだが……」



「「「「「「ウオオオオオオラッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァイイイイイイ!!!!!!」」」」」」



ザワザワ

少女「こ……。この、叫び声は……!」

男「来たか……!!」




スタッフ長「ぬかせぃ始発組!」

スタッフ長「力を以て事を成すなど徹夜組だけで十分!」


スタッフ長「苦情、主張があるのならまず話し合い!」

スタッフ長「その為ならば我ら三百兵、一丸となって機を刻もう!」


スタッフ長「行くぞ友よ、魂(いのち)を此処に―――!」


       テルモピュライィ・エノモタイア
スタッフ長「駅前門のぉ、守護者ァァァア!」


     :!                .: : :.; :l{ }/  } ( _}      j{ }/ j{ /  |  レ,'     :!        | |
          00              .: :: .;: i{しi  }/  }i      し'{  }/   |   {            | |
       「二^^l              ,:: :: .;:|}  ト、  丿        て     j}  (              : l
         | | ;‐i             .: :: .;:iヽ、 }i   _}       i{  /{i   / Y´.           l.i   !l
        「二__lニ ニl          :: :: .;:|;. \ }i  ト、       i{ ノ /  / ,イ´            | l.  l!
            〈/!_| ;‐i       :: : ノ〉     ㍉ ノ´      し' /  j{ /.゙:. :.:          li !
              lニ ニl      :゙) 廴ノ{    `!        j{   j{ (.|;.:. :.:         | |
               〈/!_|        {   しi  {廴i{        /   j{/´. :. :.:.            l!l
        ! :il |            : :l .;:,:|   {  `ヽ、        て    :l.:. :.:            !i    il
         :| |            : : ト、Y¨リ   ノ          j{       |.:. :.:            i!  ... |:
         :! l   l       :: : }i | ) }! /{  )         /⌒ ,イ.   |:. :.;.::                 l l
            :: il   |!       ..: :}!{ ヽ、{ }/  弋      て _ノ /.   i:.:. :.:              | |
          :: |   i:.       .,:: リ  )   }i  )_     廴/ j{ /{.  |:;.:. :.:                ! l
            | :|   | !       : :: .;:i      }ヽ、_}i         て/ {i|....:. :.:  ;‐i              .:: |
 i        l! l   l :.       .:: :: .;:|,ィイ  丿  ¨         /j{  / . |.:. :.:  lニ ニl           | |
 l!           | :..   | |       .: :: .;:゙(   |  `¨ヽ、      >´ / /... i:.:. :.: .〈/!_| ;‐i           l !
 l|        ||    .:; |       : :: .;:゙) ノ    ノ       {_ /⌒...  |;.:. :.:    lニ ニl       i ::
. l |          :!   | .:!       : :: .;:.リ     \     てノ}.     :.:. :.:      〈/!_|  ._ _  | |
. | !             | |       : :: .;:,:| \    ≦´    _ノ′ノ{    :l.:. :.:       l .   ////  i!. |
 i|                ! i       : :: .;:i   ヾ廴__)    __て´/ 才'し'/ :.:     |l  O' O'     | |
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少女「ぐっ。すさまじい、火柱……!!」

男「スタッフ兵たちの気迫がカタチとなり、炎となって燃え上がっているのか!?」

少女「人間聖火というワケですね。私も燃えてきました……!」


野次馬「今年もスタッフ長がついに点火したぞ!!」

野次馬「いったいどっちが勝つんだ……!?」


スタッフ「スタッフ長。今年の夏、最後の戦いです! 頑張りましょう!」

スタッフ長「…………」


スタッフ長「退くなら今のうちだぞ」


スタッフ「……!」


スタッフ長「この戦いは、三日間で最も激しいモノになる」

スタッフ長「加えてこの天候。昨日までの鬱憤を晴らすような、快晴……」

スタッフ長「撤退は負けではない。逃走は恥ではない」

スタッフ長「退き際を見極められるのも、また一流の戦士だ」


スタッフ「……いえ、スタッフ長」

スタッフ「我らスタッフ一同。夏のCOMIKEも、冬のCOMIKEも、スタッフ長についてきました」

スタッフ「かつてのジェノサイドCOMIKEを経て、紡いだこの絆」ゴオオオオオ


スタッフ「生半なコトでは燃えつきません!!」ゴオオオオオ


男「300人のスタッフ兵からも、炎が……!」

少女「暑苦しい……。だけど、コレがスタッフたちの絆!!」


野次馬「そうか、あのジェノサイドCOMIKEの時も……」

野次馬「COMIKE雲は別にスタッフ兵関係無いのがスゴいよな」


スタッフ長「…………」フッ

スタッフ長「そうか」

スタッフ長「カクゴは出来ているんだな」


スタッフ「ええ」

スタッフ長「ならば、行くぞ」スッ

スタッフ長「これが最後の戦いの始まりだ!!」


スタッフ長「ここから先は! 始発組も! 野次馬も! 一歩も通すな!!!」

スタッフ長「駅前門を守れ!! 安全な来場のために!! 参加者を誘導しろ!!」

スタッフ長「行くぞ……、選ばれし300のスタッフ兵たち!!!」



          コ ミ   ケ ッ ト
スタッフ長「 C o m e G e t (来たりて取れ) !!!!!!」



 


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                                /へ                    |     .|
                              / | \                  |「芸芹|
              /「 \                | __ | __|        /Λ      _|  |Д||   //⌒\
             | |  |         _| {云V云}. | _       // Λ⌒ー<\\,」ー |ノ⌒>//   Λ
             |テVテ]|  //  ̄\/⌒\| !zzz|  |//⌒\ /   Λ/⌒\ \ r― <  ̄.| |
         /  | |ム「 |⌒ | |    / ⌒\V|  |____,|  |        { {    .Λ      ̄└―┘ー | |      |
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        {ノ⌒\{こ}∠  | |  /´ ̄⌒^<{こニ} __   ――{ {     Λ{\ッ_     _ッ/ | |      |
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 \       j  }Lr_ 人_r/      ノ{レ      }       Τ\ .{ {      |  {_ ̄}{ ̄_/| |      |
. \\     / _八   个 _,/_ {   / {      }{      } \\{ {      |\_____    ノ .| |      |
    \\  Г |  ) 个〈    \/    \;;: __/ \ ::;;::イ  \{ {      |   \   ̄\  { | |      |
     \\|  |  」_  ∨    }      } { =个=  _ノ{    { {      |\   \    \  .| |      |
      \\ } 「二二二∨^\}_―=‐ } { =个= _ノ {     { {      |  \       /⌒ | |      |
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        \__ノ ∨ ._-ニ= しノ      {\__   _,、<ニニニ}.  { {      |  \   厂    | .∨
            _-ニ- ̄/   |       {二二ニニニニ/⌒V .{ {      / |   \/ |    |  ∨
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              {ニ{ニニニ|       ∨   /    \.\   ∨//   /   .「ニニニ|
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スタッフ「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお…………!」」」」」」





 



――シーサイド線 国際展覧場駅前

ミーンミンミン ミーンミンミン


少女「最後まで、アツい……。方たちでしたね……」

男「ああ……」


スタッフ長「今年も良い勝負だった。次は冬コミで会おう」ガシッ

始発組「ああ……! 始発組の新たな団結力、見せてやるぜ」ガシッ

スタッフ長「でも駅のホームで走るのは危ないからやめろよ」

始発組「ふひ、サーセン」



少女「それにしても……。今日は、暑いですね……」

男「ああ。一昨日、昨日と、曇ってたり雨だったからな」

男「晴れてる今日が夏コミ本来の姿というべきか」

男「いや、この暑さでも、じゅうぶん涼しいほうなんだが……」

少女「朝でコレですよね。昼にかけて、もっと気温が上がるのかと思うと」


少女「…………」

男「……帰るか?」

少女「いいえぇ? 帰りませんとも!!」

少女「私は黒ずくめさんとの約束を果たさなければなりませんからァァ!!」


男「そうだな。コスプレの約束を……」


男「あっ」


少女「……なんですか、そのやべーコト思い出したみたいな『あっ』は」

男「……いや。今朝、お前がいなかったからさ」

男「今日は参加しないって、友人通して黒ずくめさんに伝えちゃったんだよね」


少女「ハァァ!!? なに勝手なコトを……!!」

少女「……って、私のせいですよね。ほんと勝手なコトしてスミマセン……」

男「い、いや。謝るな。早とちりした俺も悪いし」


男「……となると、どうしたモノか」

少女「黒ずくめさん、今日は一般参加だから、早ければ」

少女「もうこの待機列のどこかにいるんじゃないですか?」

男「ううん……。とりあえず、電話してみるか」プルルル


黒ずくめ『はい、もしもし』ムシャムシャ

黒ずくめ『……あっ、男さんですか!?』

男「ああ、そうだ」

男「その……、友人の奴から連絡は、いってるか?」


黒ずくめ『はい。今日は参加なされないと……』

男「ええと、そのハズだったんだが」

男「少女の奴が見つかったんで、良ければ、今から参加したいなー、と……」

黒ずくめ『えっ? 本当ですか!?』

男「ああ。ムシの良いハナシだとは思うが……」

黒ずくめ『いや、いや! 大歓迎ですよ!! 少女ちゃんいます!?』

男「うん、ココにいる。おい、少女……?」

少女「…………」コク


少女「お電話代わりました。少女です」


黒ずくめ『少女ちゃん……』

少女「……スミマセン、私のせいで色々振り回しちゃって」

少女「男さんにも、友人さんにも、黒ずくめさんにもメイワクかけちゃって」


男「…………」


少女「でも。そんな私を許してもらえるのなら」

少女「もう一度だけ! COMIKEに参加したいんです!!」


黒ずくめ『…………』

少女「…………」


黒ずくめ『少女ちゃん』

少女「はい」

黒ずくめ『僕は、君が今までどんな人生を送ってきて、何を考えているのかは、わからない』

黒ずくめ『昨日なにがあったのかも、僕は知らない』

黒ずくめ『でも。ビッグサイトの前では、誰でも、等しく参加者の一人だ』


黒ずくめ『君にはCOMIKEに参加する資格がある』


少女「……!」

黒ずくめ『君さえ良ければ。ゼヒ、このお祭に参加してほしい』


少女「……は! ハイ!!」


少女「聴きましたか、今の声……!」

少女「ああ、もう。トロけちゃいそうです……」

男「…………」ボリボリ


男「……もう一回、代わってもらっていいか?」

少女「え。男さんも、黒ずくめさんの声聴きたいんですか?」

男「いやそうじゃなくて。訊かなきゃいけないコトがあるから」

少女「……? はーい」



男「すまん、もう一度俺だ。一つ訊きたいコトがある」

黒ずくめ『はい? なんでしょうか?』

男「黒ずくめさん、今どこにいる?」

男「ビッグサイトの近くにいるなら、合流したいんだが……」

黒ずくめ『ああ、それなら。近くにいますよ……!』


黒ずくめ『有開パークビルってわかります?』

男「ああ。たしか、鷲ントンホテルのすぐトナリの……。そこに?」

黒ずくめ『はい。一階のマグロナルドで、朝食中です』


男「わかった。今すぐ行って構わないか?」

黒ずくめ『ええ。朝食がまだでしたら、一緒に食べましょう』

男「そうするよ。じゃあ」ピッ


男「黒ずくめさん、鷲のトナリのマグロナルドで朝飯中だそうだ」

少女「マグロナルド……? って、ハンバーガーのチェーン店ですよね?」

男「ああ、そうだが。ソレがどうした?」

少女「いや。黒ずくめさんも、ハンバーガーとか、食べるんだなって」

少女「てっきりケーキと紅茶しか食べないようなヒトだと……」

男「そんなヤツはCOMIKEではとっくに死んでるな」



――有開パークビル 1F マグロナルド

黒ずくめ「あ。男さーん、少女ちゃーん! コッチですよー」

男「どうも。今日は私服から黒ずくめなんですね」

黒ずくめ「ええ。もっとも、コスプレ用の衣装ではありませんが」


少女「くくく、黒ずくめさん!! ここここんにちは!!」

黒ずくめ「昨日ぶりだね、少女ちゃん。でもこの時間帯なら、おはようかな」

少女「そそそそうですね! おはようございますですともっ!!」

男「キンチョーしすぎだろ……」


男「もう注文は済ませてきた。相席、良いか?」

黒ずくめ「ええ、構いませんよ。少女ちゃんも、どうぞ」

少女「え? 私なんかが黒ずくめさんの前の席で、良いんですか!?」

黒ずくめ「モチロンだよ」ニコ


少女「わっはー、エスコートする姿もイケメン……!」

少女「立てばイーグル、座ればオパール、歩く姿はクロスイレンというやつですね!!」

男「テキトーに黒っぽいモノ挙げてみました感ありがとう」

黒ずくめ「フフ。二人とも面白いなあ」


黒ずくめ「まるで、長年連れそった夫婦……」

黒ずくめ「いや、違うか。でもとにかく、そんなカンジがする」

男「いちおう三日前に会ったばかりなんだぞ?」

少女「夫婦……、ですか。たしかにそのくらい一緒にいたかもしれませんね」

男「あーコイツついに壊れやがった」

黒ずくめ「くっ、くっ、くっ。本当、面白いよ」


男「そういや黒ずくめさん、今日は一人なのか?」

黒ずくめ「いや。昨日と同じ連れが二人、いたんだけどね」


黒ずくめ「あ、コーヒー飲ませてもらうね」ズズッ

少女「連れのお二人さん……?」

黒ずくめ「ほら昨日、列を誘導していた係員のオトコが、いただろう」

男「ああ……」

黒ずくめ「それと後ろで本を出してくれていたオトコもね」

男「案外、オトコと一緒にCOMIKEに来てたんだな」


男「てっきり女の子でも、はべらせてるモノかと」

黒ずくめ「くっ、くっ。ヘンな言い方はよしてくださいよ」

黒ずくめ「二人は大学の時のサークル仲間なんです。あと数人、いますが」


黒ずくめ「ああ、そうだ。昨日の同人誌は、読んでくれたかな?」

少女「えっ? あっ、ハイ! モチロン読みましたとも!」

少女「なんというか……。打算の無い、とってもキレイな、愛の物語でした」

少女「プラトニックラブといいますか!!」

男「…………」ハハッ

黒ずくめ「うん。以前のモノとはいえ、たしかに精魂込めて描いたモノだからね」

黒ずくめ「楽しんでくれたなら幸いだ」


黒ずくめ「……で。実は、その同人誌のモデルなんだが……」

少女「は? モデル?」


黒ずくめ「うん。実は、あの一連の同人誌の登場人物には」

黒ずくめ「モデルにさせてもらった友達がいてね……」

黒ずくめ「それが、サークルを手伝ってくれた、彼らなんだ」

少女「まじですか!」

男「……。そういえば、ちょっと、似てたかも……」


黒ずくめ「ふふっ。さすがに本人たちに教えたら、顔を赤くしてたけどね」

少女「現実世界から着想を得る、というコトですか……。ナルホド」

男「いやナルホドじゃないからな。コワいな、COMIKE……」


黒ずくめ「…………」ジー

男「……?」


男「……あの、俺が何か?」

黒ずくめ「ああ。いや、その……」


黒ずくめ「ふふ」


男「何だその意味深な笑いは!!」

黒ずくめ「ふふふっ」


黒ずくめ「いや、男さんはノーマルのほうが合っている気がします」

黒ずくめ「ああ。僕の個人的な見解ですよ?」

黒ずくめ「男さんは、男さんの思うように、生きていただければと」

男「コワい。コワいなぁ、ホント、COMIKE……」


少女「……? それで、黒ずくめさん」

少女「昨日のお二人はどうされたんですか?」

黒ずくめ「ああ……。その二人なんだけどね」

黒ずくめ「さっきの山毛線運行見合わせだかなんだかで、足止め食らってるんだ」


男「山毛線が運行見合わせ……?」

男「いったいどういうコトだ?」

黒ずくめ「うん。なんでも、山毛線の線路で事故があったとか」

黒ずくめ「たしか……。爆発物が落下、だったかな?」


男「爆発物が……」

少女「落下……?」


男&少女「「…………」」


黒ずくめ「……?」ズズッ


黒ずくめ「どうしたんだい二人とも、アイマイな表情で沈黙して」

男「いやぁ……。なんでもナイデス」

黒ずくめ「そうかい? ならいいんだけどね」


少女「ちょっと、ヤバいですよ男さん!」ヒソヒソ

少女「あのミサイル、モロ都市部に着弾しちゃってるじゃないですか!!」

男「ううん。でも爆発物が落下ってだけで」ヒソヒソ

男「人身事故にはなってないみたいだし……」

男「いちおう組長さんは有言実行したのか。セッティングのやつ」

少女「でも山毛線って数百万人に影響あるんですよね? 泣き出すヒトいますよ……」



黒ずくめ「……で。なら、タクシーで来ればいいじゃん、って言ったんだけど……」

黒ずくめ「片方が、何万人が詰めかけてる駅のホームに閉じ込められてるうちに気分悪くなったらしくて」

黒ずくめ「今、二人して自分のホテルの部屋に、こもってるんだ」

少女「そうだったんですか……」

黒ずくめ「一昨日に昨日と、COMIKEに連れ回した僕も悪いんだけどね」

黒ずくめ「オトコならもうちょっと根性見せてくれないかなー」

男「ははは……。まあ、COMIKEは普通のヒトにはキツいからな」


黒ずくめ「まったく。だけど、それで困ってたんだ」


少女「困ってた……? お二人と合流できないコトですか?」

黒ずくめ「モチロンそれも困るんだけどね」


黒ずくめ「コスプレ先行入場の通行証が余ってしまうから」


少女「コスプレの。先行入場……?」

黒ずくめ「あ。そうだ!」

黒ずくめ「なら、先行入場の通行証がもったいないし」

黒ずくめ「二人も僕と一緒に会場に入るというのはどうかな?」

男「は……?」


少女「コスプレの、先行入場。そんなコトが、出来るんですか?」

男「聞いたコトがある……。コスプレイヤー限定のサービスだが」

男「サークル参加者と同じ7時半から、先に入場できるシステムがあると」

黒ずくめ「うん。COMIKEの開催前に、ネット上で申し込めるんだけどね」

黒ずくめ「当選すると、通行証が発行されて、当日早く更衣室を使えるんだ」

少女「……。それは、良いシステムだと思いますが……」

男「…………」


少女「単刀直入におうかがいします」


黒ずくめ「……? 何かな」

少女「そのコスプレ通行証を使って、早くにサークルの列に並んだり」

少女「……というコトは、可能なんですか?」

男「…………」

黒ずくめ「…………」


黒ずくめ「いや、それは不可能だ」ニコ


少女「え……?」

黒ずくめ「先行入場できるといっても、更衣室からの移動には制限があるからね」


黒ずくめ「……チケットと同じような使い方は出来ないよ?」

少女「……!!」ギク

黒ずくめ「ふふ。期待した?」

少女「い、いえ。そういうワケでは、ないのですが……」


黒ずくめ「準備会もソコはちゃんと考えているね」

黒ずくめ「僕としても、コスプレを利用して、チケット組まがいのコトをされるのは」

黒ずくめ「とうてい承服できるコトじゃない」


男「…………」


黒ずくめ「まあ、気にするコトは無いさ」

黒ずくめ「元はベンリなアイテムなんだから、正しく使えば、正しいアイテムになる」

黒ずくめ「そうだろう?」


少女「……!」

少女「はいっ!!」

黒ずくめ「うん、うん。やっぱり君は、暗い顔より、元気な顔がイチバンだ」スッ

少女「ひゃあっ! ほ、ホッペタ撫でないでくださいよぅ……!」テレテレ

男「…………」ヤレヤレ



男「……ちょ。ちょっと待ってくれ……」

男「それは俺もコスプレをするというコトか?」


少女「……! 男さんのコスプレ姿!」

少女「見たい! ゼヒ見てみたいです!!」

男「えぇー……。俺、別に興味無いんだが」

黒ずくめ「くっ、くっ。ムリにする必要は無いと思いますけどね」

黒ずくめ「せっかくコスプレ先行入場するんだし、少しはどうですか?」

男「えぇー」


黒ずくめ「といっても、凝ったコトをする必要はありません」

黒ずくめ「ザンネンながら僕は女モノのサイズの服しか持ち合わせていないですし」


黒ずくめ「でも、ほら、今年はアレが流行ってるじゃないですか」

男「アレ?」

黒ずくめ「あの、FG○にも登場してる。エジプトの……」

男「ああ。メジェド様か」

黒ずくめ「そう。白い布に目を描いて被るだけのやつ」

黒ずくめ「アレならカンタンに出来るんじゃないですか?」


男「……コスプレ。やる、のか……」

少女「男さん。チャレンジ、チャレンジ! ですよ!」

男「はあ……。わかったよ」

男「コスプレ先行入場して、コスプレしないのもマナー違反だろうしな」

少女「やったー!!」

黒ずくめ「それじゃあ、キマリというコトで」


店員「失礼します。コチラ、ご注文の朝マッグとハンバーガーになります」

少女「おっ、やったー! ありがとうございます!!」


少女「いっただっきまーす!!」パクパク


黒ずくめ「何を注文したんですか?」

男「朝マッグを、俺とコイツの分、2つと……。ハンバーガー数個だ」

黒ずくめ「ハンバーガー数個? ソレは……」

男「コイツが食べる」

黒ずくめ「え? 少女ちゃんが?」

男「ああ。こう見えて、けっこう大食いなんでな。コイツ」

少女「んぐっ。ばばば、バラさないでくださいよー!!」


黒ずくめ「あはは……。よく食べるのは、イイコトだよ」

男「朝マッグとかせっかく量少ないのに、追加注文してちゃ意味無いと思うんだがな」

黒ずくめ「でも、これからCOMIKEに臨むのなら、エネルギーは蓄えたほうがいいですよ」

男「たしかに。待機列に並ぶワケでもないし、まあ、いいか……」


少女「んー、これがあの、有名なマッグのハンバーガーかぁ!!」モグモグ

少女「この安っぽさが良い!!」バーンッ

男「こら、デカい声でそういうコト言うな……!」

黒ずくめ「あはは」



――有開パークビル前

少女「ごちそうさまでしたー!!」


黒ずくめ「さあ、そろそろ時間だ。ビッグサイトに行こうか」

男「ああ。その前に、LAMSONに寄らせてくれないか?」

黒ずくめ「国際展覧場駅前の?」

男「実は、昨日の着の身着のままで来ててな……。いや、服は着替えてるが」

男「装備の食糧の備蓄が心もとないんだ」

黒ずくめ「わかりました。そういうコトでしたら、まず寄りましょう」



黒ずくめ「あっ……」

男「どうかしたか?」

黒ずくめ「いや、さっきおハナシしてた、コスプレ先行入場通行証ですが……」

黒ずくめ「本来なら、申請した本人しか使えないんです」

男「まあ、それこそ転売して使われたりしたらマズいからな」

黒ずくめ「まあ。サークル入場と同じで、厳しく取り締まってはいないと思いますが」

黒ずくめ「万が一、目をつけられた場合は引き下がるので、そのつもりで」

黒ずくめ「その時は僕も一般入場の入口から入りますよ」

男「……。できるだけ、この待機列に、並びたくはないんだけどな……」


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少女「うひゃあ……。もう、パークビルのすぐ近くまで」

少女「みんなカラーコーンの内側に座ってますね」

男「昨日の同じ時間でも列はここまで来てなかったぞ……。やはりコレが三日目か」


黒ずくめ「晴れだから人が集まったのか、人が集まったから晴れたのか」

黒ずくめ「三日目の参加者が晴れ男、晴れ女説。あるね」

男「集まってる人間の性質からして、あまり前向きに考えたくはないが……」


少女「ああ。でも、おぼろげな白い雲がまばらにかかった、朝の青い空を背にした」

少女「ビッグサイトの前に、色んな格好をした人々が集まって……」

少女「いよいよCOMIKEの最終日が。はじまるんですね!!」


男「……。そうだな」

黒ずくめ「ふふ。本当にCOMIKEをイチバン楽しんでいるのは、彼女のようなヒトなのかもしれないね」



スタッフ「東待機列は既に封鎖されました。西待機列に回ってくださーい」

スタッフ「Hey, you! I said that you can not enter the east!」

スタッフ「不要打入列! 子曰! 學而時習之! 不亦説乎!!」


待機列「おぉー……」パチパチパチ


男「今のは……。日本語の後のやつは、英語か?」

黒ずくめ「そして最後は中国語ですね。ウワサのトリリンガルスタッフかもしれない」

男「さ、三か国語……? スゴいヒトがスタッフにいるんだな……」



――LAMSON 国際展覧場駅前店

店員「ラー…」

店員「ラーシャッセー…」


少女「て。店員さんも、息絶え絶えです……」

男「コンビニもついに三日目だからな」

男「しかしこのヤツれよう。まさかワンオペ? まさかな……」


黒ずくめ「あ。男さん、この白い透明なゴミ袋でいいですか?」

男「ああ……。うん。いいよ」



少女「……!」


少女「み、見てください男さん!!」

男「……? どうした」

少女「あ、あれだけ食べ物が詰まっていた商品棚が!」


少女「まるで虫に食い荒らされたかのように、穴だらけになっています!!」


男「本当だ、品揃えがまばらになっている……」

男「いよいよ佳境というワケか……」


店員「……!!」ガタッ

シュババババババ


少女「うっ……。店員さん、ものすごい速さで商品を補充していきます!」

男「寸分の狂いも無い手つき……。コンビニ店員も極めればアレほどか」

黒ずくめ「コンビニ店員ってたまにとんでもないヒトいるよね」

黒ずくめ「でも、僕の売り子も負けていない」

黒ずくめ「もし僕のところの金髪が太陽の下であれば、通常の三倍の速さで品出しを……」

男「黒ずくめさんの売り子はサンフラワーか何かか……?」



――LAMSON 国際展覧場駅前店 前

男「梅おにぎりは買ったな。それじゃあ、そろそろビッグサイトに行くぞ」

少女「ま、また梅おにぎりですかぁ……?」

黒ずくめ「くっ、くっ。梅干しは、腐りにくいからね」

男「そういうコトだ。おにぎりの具の定番なだけはある」

少女「ツナマヨが食べたいですよぅ」

男「さっきハンバーガー食ったろう、まだ味の濃いモノ食い足りないのか」

黒ずくめ「それじゃあ行こう。待機列を尻目にビッグサイトに入るのは、ちょっと気が引けるけどね」



――ビッグサイト コスプレ参加者 先行入場入口

黒ずくめ「3人。登録料、3000円です」

スタッフ「はい、確認しました。更衣室は男性女性ともに会議棟ですが」

スタッフ「女性は東8ホールも使えます。混雑の分散にご協力ください」

黒ずくめ「ありがとうございます」ニコ


男「ふぅーっ。怪しまれずに通れたな」

黒ずくめ「オドオドしてたら当然怪しまれます。こういうのは思い切りがダイジですよ」ニコ

男「営業スマイルとか、トクイそうだもんな……。ハハハ」


少女「…………」

男「……? どうした、少女」

少女「……本当に、これで良かったんでしょうか」

黒ずくめ「…………」

少女「黒ずくめさんのお連れさんが、間に合わなかったのは、仕方ないとしても」

少女「ルールを破って、私たちが入っちゃって……」

男「…………」


黒ずくめ「……そうだね」


黒ずくめ「これは人間の集まりだ」

黒ずくめ「当然ルールは守るべきだが、バカ正直でいては痛い目を見るコトもある」

黒ずくめ「……昨日の、君たちのようにね」

少女「…………」

黒ずくめ「いや。ソレに関しては、僕にも責任があるんだが」


男「黒ずくめさん。アレは……」

黒ずくめ「わかっています。友人さんや死神から聞いている」

黒ずくめ「昨日はイレギュラーな事態があったと」

男「……。そういえば、今日は、友人たちは……?」


黒ずくめ「さあ。朝に所用があるとは聞いていますが」

黒ずくめ「……もしかしたら、その“後始末”に動いているのかもしれませんね」

男「アイツら……」


黒ずくめ「とにかく。色んな人が集まる大きなイベントである以上、臨機応変な対応が必要だ」

黒ずくめ「モチロン、ルールを破るコトを正当化してるワケじゃない」

黒ずくめ「でも、少しずつ助け合い、少しずつ出し抜き合う」

黒ずくめ「それがCOMIKEというイベントの実情なのかもしれない」

少女「…………」


黒ずくめ「だけど。他人の裏をかいて、出し抜き合うのが人間であれば」

黒ずくめ「他人を慮り、支え合って助け合うコトが出来るのも」

黒ずくめ「また人間だ」

黒ずくめ「僕がこんなコトを言うのも、おこがましいかもしれないが」

黒ずくめ「どうか、COMIKEを嫌いにならないでほしい」

少女「…………」

少女「……はい。わかっていますよ」

黒ずくめ「…………」ニコ


黒ずくめ「少なくとも、僕は今日、ココでソレを表現したいと思う」



黒ずくめ「さて。女子更衣室はコチラ、男子更衣室はアチラだ」

男「ひとまずココでお別れだな。着替え終わったら、またこの逆三角形の下に集まろう」

黒ずくめ「ええ」

少女「……あれ。そういえば、私、どんなコスプレをするんですか……?」

黒ずくめ「そうだね。いくつか衣装はあるんだが、どれにする?」

男「ああ……。それなら」


男「俺に一つ、アイデアがある」


少女「……?」



――数十分後  ビッグサイト 逆三角形下

参加者「……?」

ザワザワ


男「…………」


参加者「メジェド…?」

参加者「デマセイ」

参加者「フケイデアルゾ」

ザワザワ



男「…………」


男(この、ビニール袋に目を書いて、足から上を覆っただけのコスプレ……)

男(本当にこれでいいのか?)

男(他の、クオリティの高いコスプレとは、比べるべくもない……)

男(穴があったら入りたい……)


メジェド「…………」ゾロゾロ

メジェド「…………」ゾロゾロ


男(……あ)

男(でも、他にもメジェド様のレイヤー、いっぱいいるな)

男(ちょっと安心した)ホッ


参加者「……う、うう……」ボロボロ


男(う。あれは、浮浪者……!!)

男(の、ようなコスプレか。『無人島で100年生きたのび太』って書いたスケッチブック持ってる)

男(COMIKEに来るのは友人について回ってだから)

男(コスプレはさほど詳しくはないが、スゴいな……)


参加者「…………」スタスタ


男(ん? スーツのヒトだ。日曜出勤の社畜がCOMIKEにまぎれこんで……)

男(なワケ無いか。となると、アレも何かのコスプレ……)

男(……待てよ。あの髪型。最近、どこかで見たコトがある)


キラン☆


男(あ。あの、小脇に抱えているのは……。将棋ゴマ!!)

男(まさかこのまえ公式戦で29万連勝を果たした、あの四段のコスプレか!?)

男(は? まるで将棋だな……)



少女「……男さーん!!」

男「おお。来たか」


少女「どうですか!? この、応援団コス!!」


男「ああ。とても似合ってるぞ。黒い服と白いハチマキが良いカンジだ」

少女「~♪♪」

黒ずくめ「男さん、お待たせしました」

男「黒ずくめさんも。今日も黒ずくめ、キマってるな」


黒ずくめ「いえいえ。男さんも」

黒ずくめ「メジェド様でしたっけ? よく似合っていますよ」

男「絶対できる誰でもコスプレナンバーワンだと思うがな」

黒ずくめ「ふふ。たしかに」


少女「え? 絶対できる!!?」ガタタッ

男「なんでお前は特定のワードに反応してるんだ。スクリプトか?」

少女「いえ、そういうワケじゃないんですが」

少女「どうも、この格好だと、絶対に諦めないという情熱が湧き出てきまして!!」ゴオオオオオ


男「アツい……。暑苦しい」

黒ずくめ「でも、ホント似合っていますね。少女ちゃん」

黒ずくめ「僕は普通にカワイイコスプレをしてもらおうかと思ってましたが」

黒ずくめ「まさかの応援団長風のコスプレとは。たしかに、アツい彼女にピッタリだ」

黒ずくめ「前から似合いそうだなー、とか思ってたんですか?」

男「そうだな……。昨日、待機列中で、ちょっとした事件があったんだが」

男「着想はソレだ」

男「どうもアイツには、とにかく頭カラッポにして燃え上がるような」

男「そんな格好が似合うような気がしてな」



黒ずくめ「…………」クス


黒ずくめ「ずいぶん、彼女のコト、わかっちゃってるんですね」

男「そうか? ただの第一印象だがな」

黒ずくめ「ご謙遜を。繰り返しになりますが、長年連れそった……」

黒ずくめ「そんなカンジがしますよ」

男「だとしたら、アイツがヤケに馴れ馴れしくしてくるからだな」


男「でも……」

男「なんだか俺も、そんなカンジがしてきたよ」



――ビッグサイト 某所

男「…………」チク タク

男「あれから数時間が経った」


男「ついにこの時が来たな」

少女「ええ! 最後まで、張り切っていきますとも!!」

黒ずくめ「そうだね。きっと、悔いの無いように」


ピンポンパンポーン

アナウンス『みなさん、長らくお待たせしました』


アナウンス『ただいまより、COMIKE 92――――』

アナウンス『三日目を、開催します!!』


ババババババババババババババババババババババババババババババ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

待機列「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」

ババババババババババババババババババババババババババババババ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 ,-=  ̄  ̄!

 ',  r¬  l ___   /,、\                   , 、
  Lノ  |   l └―┐ 〉 く/ l l   く\            /, 、\
    /  /  「l ノ/   くヽく/   __\\          く/  \ ヽ  .t__┐
   く_/   〈/ `     Ll     ノ ノ// _         く\く/  ,__ l |
                    く/  ̄  └-、ヽ   __   i !     l .l[_ノ l二¨7
                            「l〈_/    ニ7 /   L,l    L」    nく/
                           〈ノ       Ll`              〈ノ
                  l ̄ ̄li         ,.、        ll ̄ ̄l
     _______|__|l____,z_壬个爻_z、____l|__|______
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      \;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::/人\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::/

        \;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;//圭\\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;:/
       ,ィE\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::/イニニニニト、\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;::'::;:/
      , イ:l:l:E圭\;::'::;::'::;::'::;::'::;::'/イ三三三三三三ト\;::'::;::'::;::'::;::'::;::/
   , イ:l:l::レ''´  ̄ ̄\;::'::;::'::;::':/iニニニニニニニニニニi\;::'::;::'::;::'/
  , イ:l:l::レ'´_____ l三三三liY\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/Yl三三三l _________
,イ:l::l::レ''´ \/\/\/i l三三三liil;;;;;/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \;;;;lil三三三l ト、\/\/\/\/\/

::l::レ''´∠二∠二∠, ヘ l三三三liil;;;;l             l;;;lil三三三lへヽ'二ヽ'二ヽ'二ヽ'二
-- 、 「 ̄l| l ̄ ̄l |升l三三三liil;;;;l             l;;;lil三三三lヒ|__イ「 ̄|三i三i三
   | l   l| l__l |干l三三三liil;;;;l             l;;;lil三三三l;;| i─‐i l |r-i|「r──‐




ドドドドドドドドドドドド…

ウオオオオオオラッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァイイイイイイ!!!!!!



少女「ど。どこからか鳴り響く、この叫び声は……」

男「向こうも向こうで戦いが始まったらしいな」

黒ずくめ「スタッフ長さんたち、今年もやってるんだ? 懲りないなぁ~」


黒ずくめ「さて。じゃあ僕たちも、行動を開始しようか」


少女「そうですね!!」

少女「……って、コスプレをするヒトは、どこに行ったらいいんですか?」

男「そうだな。基本的に、ビッグサイトの会場内なら」

男「どこでコスプレをしていてもいいんだが……」

黒ずくめ「コスプレをするならココがオススメですよ、と」

黒ずくめ「コスプレエリアといってね。準備会に推奨されている場所もある」

少女「ほう。それはいったい、どこに?」


黒ずくめ「うーん。毎年コロコロ変わって、ややこしいんだけど……」

黒ずくめ「今年は逆三角形付近や、屋上、あとは東館のトラックヤードかな」


男「じゃあ、トラックヤードにするか。人は多いが、行列も見れるし」

黒ずくめ「え……。行列を見に行くんですか? 変わってますね」

男「ははは……」


少女「……黒ずくめさん」

黒ずくめ「うん? どうしたの?」

少女「やっぱりこれだけ晴れてると、倒れるヒトとかも出ますよね?」

黒ずくめ「そうだね。そりゃ、まあ」

少女「……そうですか」

黒ずくめ「……?」



――ビッグサイト 東館外 トラックヤード


  ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ

      ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ

    ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ



少女「……う、ウワァ――――!!!」

少女「こ。こここ、この黒いの。全部ヒトですか……!?」

黒ずくめ「あはは。もしかしたら、ヒトじゃないのも、混じってるかもね」


男「まあ、チミモーリョーが一匹や二匹混じってても、わからんかもな……」

少女「す、スゴい人の量ですよ」

少女「長い行列がいくつも出来ていた一日目も、私も並んだ二日目をも、しのぎます」

少女「本当に、スゴい、スゴい人の量です!!」

少女「ボキャブラリーが不足しててバカみたいですが、そうとしか言えません!!」

男「昨日はこんな列の中に並んでたのかと思うと、ゲッソリするな」

黒ずくめ「といっても、列の勢い自体は、昨日よりかはマシのようだけど」


男「ちなみに今日の大手は、どんなカンジなんだろう?」

黒ずくめ「そうですね。Eマンガ先生のヒトをはじめとして、常連大手サークルが多いようです」



参加者「おい、三日目もサーキットが始まるらしいぞ!」

参加者「見に行こうぜ!!」


男「……はは」

黒ずくめ「サーキットをやるのは大手のアカシですね」

黒ずくめ「あとは、FG○島と、その関連の商業作家の列が延びるのではないかと」

男「FG○って今日だったか。こりゃあ、人も多くなるぞ……。いや、もう多いか」

少女「これは、男さんじゃないですが、まるで。人がゴミのよ……」


レイヤー「人がゴミのようだ!!!」


少女「!?」クルッ



レイヤー「目が、目がァァァァァァ」

カメコ「「「パシャパシャパシャパシャパシャパシャ!!!」」」


レイヤー「三分間待ってやる……」

カメコ「「「パシャパシャパシャパシャパシャパシャ!!!」」」



男「スゴいな。大佐のコスプレもいるのか」

黒ずくめ「あのヒト毎年いますよ」


少女「うわぁ……」

少女「人がゴミのようだ、とか、本当に言うヒトいたんですね」

男「いやそういうネタだからな?」

少女「そ、そーなんですか。変わってますね……」


カメコ「バルス!!」

レイヤー「あァァ、目がぁ、目がァ、っ……ああああアアアア~~~!!!」

カメコ「「「パシャパシャパシャパシャパシャパシャ!!!」」」


男「しかし……。大佐のあの作品って、いったい何十年前の作品だっけ?」


黒ずくめ「うーん。二十年……、いや、それ以上前かと」

黒ずくめ「僕や男さんが生まれる前からあるのはマチガイないですね」

男「そんな前の作品だったか……」

男「なのに、発表から数十年経った今でも、こうしてコスプレするヒトがいる」

男「あらためてスゴい場所だよな。COMIKEは」

黒ずくめ「好きなら何でもアリ、の精神ですからね」


レイヤー「いいこと? 暁の水平線に勝利を刻みなさい!」

レイヤー「問おう。あなたがわたしのマスターか」


男「……っと。とは言っても、やっぱりコスプレの中心、ハナガタは」

男「最近のアニメやゲームのキャラクターのようだが」

黒ずくめ「美人なレイヤーさんのほうが、人目も引きますからね」

黒ずくめ「ていうか男さん、ああいうのが最近のアニメやゲームのキャラとか、わかるんですか?」

黒ずくめ「なんだかオタクじゃない風を装っていたように見えますが」

男「……ん? ふふーん、さて何のコトだか」

男「それに。ニワカがソレを名乗っちゃ、ホンモノに失礼だよ」


少女「あの。男さん、男さん」

男「ん……?」


少女「あの、レイヤーさんの周りで、カメラ持ってるヒトたち……」

少女「アレはいったい、何なんですか?」

男「ああ。アレは、“カメコ”といってだな」

男「カメラ小僧の略で。COMIKEで、レイヤーを撮影するヒトたちだ」

黒ずくめ「カメラマンさんだね。レイヤーは撮影に快く応じるモノさ」

少女「へえ……。うーん、撮ってるヒトもスゴい情熱だなあ」

黒ずくめ「まあ、マナーの悪いカメコだって、いるにはいるんだけど……」


ドローン「バラバラバラバラバラバラ!!!」



少女「……?」

少女「お、男さん。なんですかアレは」

少女「上を飛んでる、ちっさいヘリコプターみたいなのは……」

男「ん? アレはドローンだな」

男「最近流行りの、上等なラジコンみたいなモンだ」

黒ずくめ「アレでレイヤーを撮影してるのかな」

黒ずくめ「でも、ソレはさすがに……」


ヒュルルルル…



ドローン「チュドオオオオオオオオオオオオンンンンンン!!!!!!」


映画泥棒「ド、ドローン!!?」


自宅警備隊「ドローンでのコスプレイヤーの撮影はマナー違反だ!!」

自宅警備隊「おとなしくナワにつけ! 映画泥棒!!」


少女「……!?」


映画泥棒「へっ、こんなところで捕まってたまるかよってんだ……!」

映画泥棒「あばよ! パトランプのとっつぁ~ん!!」ダダダッ


自宅警備隊「待てー! 映画泥棒!!」

ダダダダダダダダ



黒ずくめ「うわー、彼らも彼らで、今年もやってるなー」

少女「……黒ずくめさん。今のは?」

黒ずくめ「ん? ああ、今のコントかい?」

黒ずくめ「特殊部隊みたいなほうは、非労働武装集団、自宅警備隊 M.E.E.T.」

黒ずくめ「絶対に働かないコトにイノチをかける集団だ」

少女「……は?」


黒ずくめ「普段は自宅だけを警備しているんだが、この期間はCOMIKEにも出張しているという設定らしい」

黒ずくめ「そして逃げていったビデオカメラ頭が、映画館のCMでオナジミの映画泥棒だね」

黒ずくめ「あはは。ビックリした? 面白いでしょ」


少女「…………」

男「……安心しろ。アレもコスプレの一つだ」

男「今朝の特殊部隊に姿は似ているが、別に関係は無い」

少女「……そうですか。なら良いんですが……」


黒ずくめ「…………」


黒ずくめ「……少女ちゃん!!」

少女「はいっ!?」

黒ずくめ「それじゃあ、僕たちも。そろそろ、コスプレ、始めようか」

少女「は……、ハイ……」

黒ずくめ「カラーコーン置いて。仮の設営して……、と」


カメコ「あの、撮影、いいですか?」

少女「えっ……」

黒ずくめ「はい、モチロンですよ。何かご要望はありますか?」

カメコ「それじゃあ、ソッチの応援団の女の子に、何かセリフを!」


少女「え……」

少女「お。男さん……。どうしましょう」

男「ん? 何か好きにソレっぽいコト、言えばいいじゃないか」

少女「そんなコト言われたって思いつきませんよ!!」

男「……うーん。そうだな……」


男「あっ。ほら、“アレ”があるだろう」

少女「“アレ”……?」

男「昨日待機列でやっていた……」


少女「え。あんなので、良いんですか?」

男「良いんだ。思いっきり、やってやれ」


カメコ「お願いします!!」


少女「…………」

少女「それじゃあ、失礼して」スゥゥ…


黒ずくめ「え? 何が始まるんです?」

男「まあ見てロッテ銘治ブルガリアヨーグルト」



少女「ガンバれガンバれ出来る出来るゼッタイ出来るガンバれもっとやれるってェェッ!!!」


黒ずくめ「!?」

参加者「!?」



少女「やれる!! 気持ちの問題だっ、ガンバれガンバれ、そこだァ!! そこで諦めんなァァ!!!」


参加者「シュウゾウ?」

参加者「イワナ?」

参加者「ザワザワ」



少女「ゼッタイにガンバる積極的にポジティブにガンバるガンバるゥッ!!」


少女「―――ペキンだって、ガンバってるんだからァァァァァァッッッ!!!!!!」




参加者「……おおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!!」パチパチパチ

参加者「昨日の娘じゃん!」

参加者「この夏に、あえて応援団の服とは……」

参加者「正直に言おう、俺も水着は好きだ」

参加者「熱くなれよぉぉ!!」



少女「はぁ、はぁ、はぁ……」


パチパチパチパチパチパチ

パチパチパチパチパチパチ


少女「え……? ……あっ」


カメコ「いいね、今の叫び! コッチ向いて!」

少女「あっ……。ハイ!!」


パシャッ



黒ずくめ「…………」アングリ

男「どうだ。驚いたか?」

黒ずくめ「ええ。そりゃ、驚きますよ……」

黒ずくめ「なんですか、今の?」

男「知らないか? ほら、いるだろう。よくテレビに出てる、日本一アツい元テニヌプレイヤーが」

黒ずくめ「……ああ。その、彼が、……え?」

男「彼が出てる動画を編集して、既存の音楽に乗せた、MAD動画群があってな」

男「今のは、その動画群の中でも、トップクラスに有名なセリフだ」

男「昨日、友人の奴がな。朝の待機列で教えやがったんだよ」


男「ほら。これが、その時の動画だ」スイッ スイ

男「ハシッコで俺が見切れてるのは気にしないでくれ」


黒ずくめ「……うわぁ。本当だ……」

黒ずくめ「なるほど。それで、あの衣装を……?」

男「ああ。でも、事前には何も言わなかったけど、黒ずくめさんがピッタリの服持ってて良かった」

黒ずくめ「いえいえ。黒い服なら、なんなと、ありますからね」


黒ずくめ「……そっか」

男「…………」



黒ずくめ「……いや、ね。実は気にしてたんですよ」

黒ずくめ「朝、電話もらった時から、少女ちゃんの声が暗くて」

黒ずくめ「だからあんなコト言ったんだけど」

男「…………」

黒ずくめ「でも、安心しました」


黒ずくめ「少女ちゃんは、一昨日に友人さんからおハナシを聞いたのと同じ、少女ちゃんだって」

黒ずくめ「僕が知ってる中で、最も“COMIKEを楽しもうとする”、女の子なんだって」

男「……そうだな。俺も、そう思う」


黒ずくめ「ふふ。いや、昨日会ったとき少女ちゃん、グッタリしてたじゃないですか」

黒ずくめ「だから、一昨日は、あんなにCOMIKEを楽しもうとしてたのに……」

黒ずくめ「もしかしたら、COMIKEのコト、嫌いになっちゃったのかなって」

男「……それは」


黒ずくめ「でも、杞憂だったようですね」

黒ずくめ「僕は、少女ちゃんにこのまま帰ってほしくないと思って、コスプレに誘ったんですが」

黒ずくめ「そもそも。COMIKEのコトが嫌いなら、今日は来てくれなかったろうし」

黒ずくめ「COMIKEのコトが好きだから、あんな元気いっぱいに、楽しめるんだろうなあ」

男「…………」


黒ずくめ「まあ、人間がいっぱい集まるんですし、色々ありますが」

黒ずくめ「……少なくとも、僕は。色んなヒトの全力が見れる」



黒ずくめ「COMIKEのコトが大好きですから」

黒ずくめ「少女ちゃんが楽しんでくれるのは、スナオに嬉しいです」


男「……ああ。俺も楽しいよ」

男「全力で楽しんでるヤツってのは、見てるだけで、コッチも楽しくなってくる」



カメコ爺「ふおおお! 貴女が黒ずくめさんですな!?」

黒ずくめ「え……? あ、ハイ」


カメコ爺「やはり。タクシーでお見かけした時から」

カメコ爺「すばらしいコスプレイヤーだとお見受けしていましたぞ」

カメコ爺「はい! 目線をコッチに! 心底見下したカンジで!!」パシャパシャ

黒ずくめ「ハァ……?」

カメコ爺「んん、その冷ややかな目線がたまらない!!」パシャパシャ


男「……って、ちょっとちょっと! ソコのカメコさん! あんた!!」

カメコ爺「おや、どうしましたかな。メジェドどの」

男「あんたタクシーの運転手さんでしょう!!? 今朝の!!」


カメコ爺「おや。バレましたかな」

男「バレましたかなじゃないですよココで何やってるんですか!!」

カメコ爺「見てのとおり、カメコですが」

男「カメラ……。……小僧?」

カメコ爺「ほっほ」


カメコ爺「たんパンこぞうは、いくつになっても、たんパンこぞう」

カメコ爺「カメラ小僧は、いくつになっても、カメコですぞ」

男「いや意味がわかりませんから」


男「それより、タクシーはどうしたんですか!」

カメコ爺「普通にパーキングに預けてきましたな」


カメコ爺「いや。もうCOMIKEは、若者たちの催しであると、一線を退いていたのですが」

カメコ爺「今朝がたの走りで“コチラ”のほうも、血が騒ぎましてな」カチャ

カメコ爺「老骨にムチ打って。最後の一日だけでもと、馳せ参じたのですぞ」

男「え……。って、コトは……」

カメコ爺「ほっほ」

カメコ爺「会場が有開に移って、ベンリになりました」

カメコ爺「今のビッグサイトでCOMIKEを出来る参加者は幸せですなwww」


男「……って! そ、その口調……!!」

カメコ爺「んん、それでは私はこれで」

カメコ爺「星の数ほどのコスプレイヤーが私を呼んでいますぞー!!」ダダダッ


男「…………」


男「はぁ」

男「血は争えない。という、コトか……」


黒ずくめ「男さん? 今のおじいさんは……。一昨日のタクシーの?」

男「ああ。ヒトに歴史あり……、だな」



黒ずくめ「さて。COMIKEは、ここからが本番です!」

黒ずくめ「僕たちも張り切っていきましょう!」

男「ああ。そうだな……」


男「って、俺も?」

黒ずくめ「そうですよ。男さん、見たところ僕と同じくらいの歳だと思いますが」

黒ずくめ「ちょっと落ち着きすぎだと思います」ドンッ


男「そ。そんなコト言われても、生まれつきで……、うわっ!」バタタッ

少女「うわっと! 男さんも叫ぶんですか? ええ、一緒に頑張りましょう……!!」



――ビッグサイト 東館外 トラックヤード

少女「はぁー……っ。疲れましたー!! 海風がキモチイイー」

黒ずくめ「カメコたちもハケたね。そろそろ、終わりにしようか」

男「もう昼前か……。よくこの炎天下の中で、突っ立ってたよ」


黒ずくめ「本当なら、もっと館内を動き回ってもいいんだけどね」

黒ずくめ「まあ。行列を眺めながらのコスプレというのも、案外悪くない」


ザワザワ ザワザワ ガヤガヤ ガヤガヤ

黒ずくめ「もっとも、その行列は。まだ解消されていないようだけど……」


黒ずくめ「さて。このあと、君たちはどうする?」

男「ん? そうだな。……どうする、少女?」

少女「そうですね! せっかくまたCOMIKEに来たんだし、島の頒布物とか、見てみたいです!!」

黒ずくめ「そうか。なら、僕は……」


金髪「おーい、黒ずくめ~……!!」

紫髪「ココにいたかー……!」


黒ずくめ「おや。騎士は遅れてやってくる、というやつかな」

男「……? あの二人は……」


黒ずくめ「今朝、話していただろう?」

黒ずくめ「ほら。本当なら今朝一緒に入る予定だった、連れの二人だよ」

男「ああ。昨日の売り子の……!」


紫髪「探したぞ!!」

黒ずくめ「そうかい? 悪いね。でも、なら連絡くれれば良かったのに」

金髪「COMIKEで電話が繋がるワケがないだろう……!」

黒ずくめ「あはは。それもそうか」


黒ずくめ「それで金髪。体調は大丈夫なのかい?」


金髪「ご安心を!! 太陽の下であれば、元気三倍なので」

紫髪「まったく。駅の屋根の下ではヘナチョコになる、金髪にも困ったモノだ……」

金髪「ぐ。あの人の量では、仕方ないだろう!」

黒ずくめ「あはは。ケンカしないで」


黒ずくめ「それよりも、せっかくコスプレ衣装を持ってきたんだろう」

黒ずくめ「昼からの立ちシゴトは、いささかキツいが。頑張るかい?」

金髪「ゼヒとも!!」

紫髪「そのために来たんだからな!!」



黒ずくめ「というコトだ。僕たちは、もう少しコスプレしていく」

黒ずくめ「男さんと少女ちゃんは、二人でも大丈夫?」

男「モチロンだ。一日目は二人だけで行動してたからな」

少女「黒ずくめさんも! あと数時間、頑張りましょう!!」

黒ずくめ「うん。思う存分、COMIKEを楽しんでね」


金髪「あの……。お二人?」

男「は?」

紫髪「状況を鑑みるに。黒ずくめと一緒にコスプレをしていてくれたのですか?」


少女「ええ! 黒ずくめさんのおかげで、コスプレ、めっちゃ楽しめました!!」

金髪「そうですか。それは良かった」

紫髪「黒ずくめの奴、ごメイワクをおかけしませんでしたか?」


紫髪「……たとえば、薄い本のネタにしようとするとか」

男「あ。あはは。アハハ……」

金髪「まったく。今日も我々を置いて、勝手に行ってしまうし」

金髪「まあ。我々が足カセになって、COMIKEを楽しめないよりは、よほど良いですが」

紫髪「世話の焼けるヒトだ……。だが、それがいい」



少女「お二人も、コスプレを?」

金髪「ええ。今日は、西洋騎士の衣装ですね」ガサゴソ

少女「おわ。カタそうなメタルプレートだ……!」

金髪「見た目だけですよ。実際は利便性を考え、軽い素材を使って作っています」

少女「自作なんですか! スゴい……!!」


紫髪「今日はお二人とも、ありがとうございました。まったく、金髪が倒れなければ……」

男「あ……。いえいえ、良いんですよ。ソレ、俺たちにも責任ありますし」

紫髪「……?」


男「とにかく。黒ずくめさんをお願いしますね」

金髪「ええ、もとより」


紫髪「ところで、お嬢さん。なかなか良い腕の筋肉をしていますね。普段の運動は何を?」

少女「へ? 私ですか……?」

金髪「おい、紫髪!!」

紫髪「痛い痛い痛い。エリを引っ張るコトはないだろう!」

男「ははは……。それじゃあ、お元気で!」

金髪「ええ。お二人も、ご武運を!!」



少女「ふう……。ホントCOMIKEには、色んなヒトが参加してるんですね~」

男「ああ。俺たちの知ってるヒトでも、全然知らないヒトと友達だったりする」

男「そんなヒトの考えてるコトが見られるのも。COMIKEの良いところだ」


男「さて。このあとは、島の頒布物を見に行くんだったか?」

少女「ハイ! そうだ、たしかコスプレのままでも歩いていいんでしたよね!?」

男「いやいや、着替えていくぞ。俺の格好を見ろ……」

少女「あ。たしかに、ビニール袋かぶったままじゃ、キツそうですもんね……」


男「まずは逆三角形のところで着替えよう。そのあとは、東館の島めぐりだな」



――東館 ホール内

ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ


少女「うう……。もうお昼だというのに、スゴい人ですね!!」

男「そうだな。むろん、大手の行列が、いまだに生き残っているのもあるが……」


男「……ん? 大手の行列が、いまだに生き残ってる?」

少女「どうかしましたか?」

男「……いや、なんでもない。本来なら、コレが正常なんだが……」



男「とにかく。スゴいな、今年のFG○の勢いは……」

男「外も行列が長いが。アレは島か、島だよな? トンデモナイ量の血栓だ」

友人「FG○は去年の年末がキッカケで大ブレイクしましたからなwww」

男「そうそう。あの時の採集決戦の盛り上がりといったら……」


男「ってぇ、友人!!?」

友人「男氏wwwヤケモーニンwwwwwwぺゃっwwwwww」

白い死神「おっと。俺もいるぜぇ」

少女「友人さんに、死神さん……!」



男「お前ら、今日は何して……。というか、なんで島の内側に座ってるんだ?」

男「まるでサークルみたいに」

友人「んんwwwそれはwww死神氏の本を売っているからですなwww」

少女「し、死神さんの本!? サークル参加してたんですか!?」

白い死神「そんな驚くコトか? 俺だってファンネルばっかやってるワケじゃない」

白い死神「せっかくCOMIKEに参加するんだ。同人誌の一冊くらい書くさ」


少女「で、でも……。今日って三日目。男性向けの日でしたよね」

少女「その、死神さんも、やっぱり?」


白い死神「ん……? ……いや、違う。違う!」

白い死神「嬢ちゃん、三日目はエロ同人ばかりだと思ってないか?」

白い死神「三日目は評論、解説本の日でもある。俺が出してるのは、コレだよ」ピラッ

少女「……? コレは……」


少女「『白い死神の絶対失敗しないファンネル術』?」


白い死神「そうだ。俺が教えられるコト、っていったら、やっぱコレしかないからな」

白い死神「あの白い死神がレクチャーするファンネル術。キョーミあるだろ?」

男「なるほど……。たしかに、白い死神のネームバリューは、強いな」ペラッ ペラッ



参加者「あっ、死神さんですよね? 新刊1部ください!!」

白い死神「はいよー。良いファンネルライフを、心がけてな」ポンッ


男「死神……。お前、考えたな」

白い死神「おうともよ! おかげで本はバカ売れ!」

白い死神「いやー、来年もサークル参加しちゃおっかなー!!」

男「だけど。お前、ファンネル術なんか教えちゃっていいのか?」

男「他のヤツにも知れ渡ったら、これから動きにくくなるんじゃないのか?」

白い死神「ちっちっち。俺がテクニックのすべてを書いたと思ってるのか?」


白い死神「こんなのは、俺の108あるファンネル技術の、序ノ口に過ぎん!」

白い死神「それに、知れ渡ったら知れ渡ったらで、ソレを逆用する手段もある」

白い死神「そう。たとえどんな状況であろうとも。俺は頒布物を、迅速、かつカクジツに……」


白い死神「狙い撃つ!!」


少女「うーん、カッコイイなあ……!」

白い死神「おや嬢ちゃん。俺はチケット組だぜ? 本当に尊敬しちゃっていいのかい?」

少女「ええ。死神さんはチケット組ですが、転売しないだけ、志の高いヒトだと思います」

少女「……それに。出し抜き合うのが人間ならば。助け合えるのも、また人間だと思うので」


白い死神「……嬢ちゃん。ちょっと、成長したな」

少女「えへへ……」


友人「こうして少年は大人への階段を上っていくのですなwww」

男「少女だけどな。で、お前たち。今朝は何をしていたんだ?」


少女「やっぱり、今日の頒布物のファンネルですか?」

白い死神「んー? まあ、そんなところだな」

友人「そんなところですなwwwwww」

男「…………」



男「……おい、友人」

友人「んん?wwwなんですかなwwww