RWBY Red trailer (13)

3DCGアニメ『RWBY』のトレーラー映像のSSです。地の文のみ。セリフはありません。よろしくお願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1503593799

明るく月の照らす夜。雪の降る丘で一人。赤いフードをかぶった少女は一つの墓標の前に立っていた。

『サマー・ローズ』……そう刻まれた墓碑をしばらく眺め、やがて踵を返す。

少女は『夏』とは縁遠い冬の森を歩く。森の木々は寂しく葉を散らせ、ただそそり立つだけ。その合間を縫って黒い影が蠢く。少女は知ってか知らずか、影の蠢き去る方向へと歩を進める。
ただ歩き続け、森を抜けると、大きな雪原がひろがっている。だが、なにやら生きものの気配がある。フードを被ったまま顔を上げると、そこには黒、黒、黒。
真っ白な雪原を埋め尽くすほどに、真っ黒な獣が、少女を取り囲んでいた。
赤い牙を見せつけ、低く呻きながら黒い獣は少女との間合いを測るように回り込んでいる。

少女は動かない。

────刹那。
少女の正面にいた三匹の獣が矢のように飛び出し、ただ立ち尽くす少女に飛びかかり、ぎらりと爪を光らせ距離を詰める。

なおも少女は動かない。

飢える獣。ほんの数瞬後の快楽に勝利を確信し、その鋭い爪で少女を引き裂いた。
そこにいた獣のどれもが。空に浮かぶ月が。風に揺れる木々が。足下の雪が。そう確信した。が、ほんの瞬き程度の一瞬。少女は消え失せた。代わりに、少女がいたところにはおよそこの季節に似つかわしくない真っ赤な薔薇が舞い、獣たちの爪によって引き裂かれ、吹き飛ばされる。
白銀の中風に舞う真紅の花弁。その思わず目を見張るような美しい風景の中、獣たちは少女がどこへ消えたのかと訝りあたりを見回す。
ふと、今まで風と雪を踏む音しかしなかった雪原に人工物の動作音が響いた。それほど大きな音ではない。不審げに獣たちは音の方向を見やる。

大きな満月。それをバックに少女は高く跳んでいた。瞬間的に。その拍子にフードが脱げ、腰元の赤い板のようなものと、顔が顕になる。まだ幼い、15,6の顔つきだった。特筆すべきは毛先が赤い、綺麗な黒髪と、まるで空に浮かぶ満月をそのまま収めたような銀色の目。 その目線は一直線に、雪原を埋める獣たちの姿を捉えていた。
少女は飛び上がったまま、腰元の板をベルトから外す。すると板を掴んでいた部分は伸びて折れ、板の端はがしゃりと音を立てて穴をのぞかせる。ほんの一瞬のことだ。
ただの赤い板は、気づけばライフルとなって少女の手に握られていた。
未だ空中で舞っている少女はその銃口をほんの数瞬前、自らを引き裂こうと爪を掲げた獣へ向け────躊躇いなく引き金を引いた。

地面にいた獣が空に飛び上がった少女に気づく。月明かりで反射する彼女をよく見ようと目を凝らすも、見えたのは白い雪原のみ。獣は顔を上げる間もなく、少女の放った弾丸によって頭が吹き飛ばされていた。
少女は着地すると同時、正面から飛びかかってくる獣を前中の要領で華麗に躱わしつつ、自らは逆さになったまま獣の後頭部へと銃弾を撃ち込み、回転そのままの勢いでさらに奥から突っ込んできた獣のわき腹を貫く。
勢いよく飛び込んだ反動を転がって殺し、さらに目の前にいた獣も吹き飛ばす。
そのライフルの反動に自身の体重を任せ、慣性の法則に則り後転。少女はライフルを回しながら立ち上がる。グリップ部分は銃身と一直線になり、棒状のパーツが伸びた。銃身部分は棒状のパーツと垂直になり、渦巻いた紐を解くように弧を描く刃を展開させる。完全に開ききった後、刃の逆側にはライフル時元々サイト部分だった箇所から鋭い刃が飛び出ていた。
驚くべきことに、少女のライフルはあっという間に大鎌へと変形したのだ。

銃という文明的な武器から現れた、鎌──もっと言うなら刃という原始的な武器に哮る獣たち。その咆哮が終わらぬ間に1匹の獣が少女へ向けて駆け出す。
鋭く振りかざすその爪は、しかし少女には届かない。少女が振り下ろした鎌の先は地面に突き刺さり、柄と刃の間の空間に獣を拘束する。
身動きが取れないことで憎々しげに少女を見上げる獣。対して、にこりと不敵な笑みを浮かべる少女。その表情の差は、イコールそのまま余裕の度合いをも表していた。
少女は鎌の柄に付いているボタン───ライフルだった時に引き金だったものだ───を押し、撃鉄を起こしながら鎌に力を入れて強引に振り切る。柄の延長線上から発射される弾丸とともに猛烈な反動が生まれるが、鎌を振り抜いた勢いそのままにその反動をも猛烈な推進力とし、少女の鎌は刃が接触していた状態から獣を真っ二つに引き裂いた。

その残骸は大きく弾け飛び、白い月の光を煌々と受けながら、雪原へ落下する。力なく伸びた残骸は傷口から赤い花弁をまき散らし、黒い霧となって消えた。奥に控えていた獣がその霧を蹴散らすように少女に迫る。

数匹の獣が少女を狙うが、少女は至って冷静なもの。鎌をぐるんと一回転させ、ボルトを引く。薬莢が飛び出し、刃が雪原へと突き刺さった。そしてそのまま引き金を引く。大鎌の柄がそのまま重心となっている長銃だ。強烈な反動が来るはずだが突き立てた刃がポッド代わりとなりそれを抑えている。

放たれた弾丸は迫る獣を撃ち砕く。しかしなおも少女は獣の波そのものを打ち破らんと引き金を引き、ボルトを引く。何度も何度も連射し、掃討する。が、弾丸の雨をくぐり抜けた獣が一匹、少女を捉える。大きな爪を横薙ぎの一撃に屠らんとするが、少女は軽やかに飛び上がり、銃口を下げ撃鉄を起こす。獣は思い切り後方に弾け飛び、少女もまた弾丸の反動で後ろへ跳ぶ。

地面と平行に飛んだ大鎌の上に乗り、刃を再び雪原に突き立て少女はさらに飛びかかってくる獣たちを相手取り、そうして鎌の上で踊るように翻弄する。真上を通過し少女の後ろへと回った獣を確認し、弾丸を放った。少女の正面にいた獣は不意の一撃に沈黙させられ、後ろへ飛んだ獣はその反動による少女の蹴りで倒される。

獣の波は終わらない。怒涛のように押し寄せる獣を少女は立ち上がりざまに切りつける。先程蹴り飛ばした獣はすぐさま起き上がり少女へと再び背後から迫るが、廻るように動く鎌の動きに対応出来ず、思い切り振られた刃の射程圏内。あわれぶん回される鎌の餌食となる。

少女は休むことなく、さらに飛びかかる獣の背中に刃を当て、引き金を引く。強引に動かされた刃は獣の肉を強引に引き裂き、ついでに放たれた弾丸も正面の獣をぶち抜いた。その隙をついて二匹の獣が爪を振りかざすも側転の要領で回避、一度引き金を引くだけで弾丸と刃の凶悪な殺傷力その物ものが二匹の獣の生命を終わらせる。

キリの見えない戦いに少女は辟易しつつ、獣の上を宙返りしながら牙を避け、数匹の獣の陣中へ。

万事休す?いいえ、それは獣たち。少女は鎌の柄を腰に固定し、そのまま大きく回転。空気を切断しながら刃は周りの獣を肉塊と黒い霧に変えてゆく。最後に残った獣の首へ鎌を引っ掛け、振り子の動きで鎌を起点に獣の上へ。首元へ鎌を据えたまま引き金を引き撃鉄を起こす。弾け飛ぶ首。共に飛ぶ少女。空に浮かぶ月は幾度無く獣の残骸と鮮血、黒い霧を見ているはずだがなおも完璧に丸く綺麗だ。

落下ざまに地上から飛び上がった獣を縦に回転しながら屠り、その獣を足場にしてまた一匹引き金を引いて頭をとばす。

地面に付く前に1匹の獣が鋭く爪を一閃。少女はそれを柄で受け、しかし空中での攻撃に大きく後ろへ飛ぶ。距離を取り、少女が見たものは相も変わらずの黒、黒、黒。一体どれほど切っただろう。どれほど撃っただろう。辟易か絶望か。少女の表情からは読み取れない。

彼女はおもむろに銃鎌のマガジンを落とし、腰のポケットから別のマガジン──丸に四方向から矢印が向けられているデザイン──を取り出した。それ鎌へとをセットすると、腰を落とし、鎌を地面と平行に構えた。

撃鉄音。雪が舞い、より少女に近い獣は既に両断されていた。このとき、少女の起こした撃鉄の反動は少女のスピードを一瞬にしてトップギアへと運んでいた。先程までの弾丸の反動ではこうは行かない。反動によるスピードアップを目的に、少女はマガジンを替えたのだ。

文字通り勢いづいた少女は走りながら、反動で浮きながら何度も後方へ弾丸を放ち、自らのスピードをあげてゆく。そして一切のブレーキを考えることすらなく獣たちの大軍の中へと突っ込んでいった。

鎌は刃を展開し、柄と垂直になる。丁度反りが逆になった薙刀のような形。よりシンプルに切り殺すことに特化した形。

──少女は最後の加速をする。縦回転しながら獣達を切り裂き、吹き飛ばしてゆく。
少女は獣の大軍の中で縦横無尽に鎌を振り回し、撃鉄を起こしまくる。反動で飛ぶ先で獣を切り、返す刀で弾丸を放つ。切る。撃つ。切る。撃つ。とにかく切る。とにかく撃つ。切りまくって撃ちまくって、そして鎌は回旋しながら少女の足元に獣の残骸をを作り上げ、月の照らす夜空には獣の体の一部と弾かれた薬莢が景色を飾る。

そして、最後の1匹を鎌の形に戻し、雪原に突き立て弾丸を放ち脳天を撃ち砕く。その反動で少女はくるりと回転。鎌を背負った。
獣がいなくなり、静寂の訪れた月の雪原には、高く高く弾かれていた薬莢の雨が降った。

終了です
RWBYを知らない方はぜひご覧になってくださいねー

↓この動画がこのSSの元動画となります。宜しければ
https://youtu.be/pYW2GmHB5xs

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