【ペルソナ5】Do not deny my Noir.【R18】 (17)


タイトルの通り、主春です。
ベッドの中で豹変する女の子っていいなあって思います。

主人公の名前は 来栖暁(くるすあきら)にしています。



 私――奥村春がここまで彼を求められるようになったのは、シルバーウィークで彼が帰ってきたのがきっかけだった。

 それまでは、互いにいろいろ悩んでいた。だってどっちも初めて同士だったから、どうすればいいなんてわからなかったから。





 来栖暁(くるすあきら)は、ひそかに悩みを抱えていた。だれかれ構わず話せるような悩みでもない。

 だからとりあえず、相棒のモルガナに相談してみた。

「春がお前を嫌がってる?」

 黒猫に白い手袋と靴下をはかせたような愛らしいネコだが、ネコと呼ぶと怒る。カリカリは食べるんだけどな。

「んなわけないだろう、会う度に幸せオーラ全開じゃねえか」

 まあ傍目にはそう見える。

 だが暁は男で春は女で、だからどうしようもなくわからないことが存在していた。

「その、春と……」

 その事実を認めて言葉にすることに、多少の時間を要した。

「春は俺と寝るのを嫌がってる気がする……」

 モルガナは目を丸くした。

「……うーん」

 モルガナもそういう方面の知識はかなり疎い。だってネコだし。理解しているだけでびっくりだ。

「まずなんでそう思うんだ?」

「その、行為よりも……腕枕とかしているときの方が幸せそうに見えるっていうか。ぶっちゃけ反応が鈍い」

「ぶっちゃけたな。でもそうか」

 モルガナは思案する顔になった。

「春はあの元婚約者から嫌な目に遭っていたことがある。なおかつその嫌な奴と結婚まで決まっていて、それを会社のためならと我慢できる」

 相棒は嫌な可能性しか指摘しなかった。

「お前のためならどんなことでも我慢できるだろうな」

 やっぱり、そうか。

「なあ、これは結構深刻な悩みじゃないか? 女性にも相談、できればいいんだが……うーん」

 双葉には無理だし、杏が一番詳しそうだが杏も進路で大事な時期だ。となると必然的に、

「真に相談してみるか。ちょっと怖いけどな。真面目な話なら理解するだろ」



 うちのリーダーから相談があると深刻なトーンで電話がかかってきたのはさっきのこと。

「ちょっと待ってね」

 いったん保留にした。

「わーわーわー! ……よし、もう取り乱さないー!」

 向こうは真面目に相談しているのだから、わあわあきゃあきゃあいうのは失礼すぎる。何より真にとっても友達である春のためなのだ。

「はい、大丈夫。うーん、事情は分かったけど」

 反応が鈍い、と言われても漠然としている。というか怪盗団の女性陣の中でいま最も詳しいのは春になっている――つまり経験があるのは春だけということになっている。好奇心がないと言ったら嘘になるのだけど、きちんと聞いたことはない。

「その、モルガナが言った我慢している可能性っていうのはあると思う。女の子って、好きだからと言って……Hなことまで好きわけじゃない子も多いみたいだし」

 可能性、あると思う、みたいだし。自分じゃそのぐらいのことしか言えない。

 情けないけど、自分じゃ春の気持ちはわからない。

「杏にも聞いてみましょう。同時通話で私も参加していい?」

 杏が出るかどうかはわからない。ただ出たら絶対に協力してくれる。

 プー、プー、

『もしもし? どしたの?』

「ああ、暁、あなたは説明しなくていい。えっとね、杏、まじめに聞いてほしいんだけど」

 ――説明――
『わ、う、うん。……進んでるね……』

「本当に……」

 怪盗団の中では春が一番後輩で、力を疑っていたわけじゃないけど常に何かあったらフォローを考えていたのに、今は完全に先を越された感があった。まあそれは、暁と付き合うことになった時点でわかっていたけど、悔しさとは違う敗北感がある。

『その、二人ともこういう話付き合わせてごめんな』

『それは気にしなくていいから。でも、うーん』

 杏も悩んでいた。人のトラウマを引っ張り出しかねない話だけに慎重にならざるを得な、
 
『本人に直接聞くしかないんじゃない?』

『でも、春はすごい嫌な話なんじゃ』

『そうとは限らないでしょ。こういう話って、ライトに聞かれた方がむしろ話しやすいかも』

 私に任せて、と杏は頼もしく言うと通話を切った。行動の早い杏だから、すぐ春にかけたんだろう。

「頼りなくってごめんね」

 一番にかけてきてくれたのに、その言葉は黙っておいた。




 暁くんどうしてるかな。チャットで聞いてみようかな。でも勉強中だったら迷惑かも。

 ある意味幸せな悩みだよねと思いつつ、それでも会えない寂しさは募る。今度のシルバーウィークで私が彼のうちまで行くけど、それまでは極力、受験勉強の邪魔をしないように連絡を取らずにいた。

 プルルルル、

「杏ちゃん?」

 またおしゃべりがしたくなったのかな、と思って春は付き合うことにした。惚気に思われそうだけど悩みを聞いてほしかったし。

『もしもし、春?』

「杏ちゃん。勉強の方はどう?」

『英語は楽勝なんだけどさー』

 他愛もない会話をしているけど、何か様子が違う気がする。電話越しでもあまり楽しそうじゃないのがわかる。

「何か悩みでもあるの?」

『ぶえ!? え、えっと』

 明らかに狼狽していたけど、息を吐いて真剣なトーンで話し始めた。

『……あのね、春。これは友達の話なんだけど、私の周りにはそういう経験してるのって春しかいないから……』

 そういう経験?

『男とその、寝たことがあるの』

「」

 一瞬間を空けてしまったけど、まじめな話なんだから聞かないと。

「う、うん。大丈夫。何でもは答えられないけど、大丈夫。真面目に考えるから」

『あ、ありがとう。えっとさ、変な話だけど。えっとね、ぶっちゃけHって気持ちいい?』

「え、ええ? う、うん、多分」

『多分?』

「あ、あのね。私の場合だけど、最初は痛かったけど、慣れてきたら……暁くんが私の中にいるんだって思ったら、すごく幸せだよ」

『……そ、そうなの?』

「う、うん」

 まずい、きっと今耳まで真っ赤になってる。

『やっぱり、気持ちいいの?』

「気持ちいい……」

 しばらく考えてみたけど、うまく表す言葉がない。

「うーん、こんな感じなんだ、って感じ」

『どういうこと?』


「映画とかでね、そういう過激なシーンがあるじゃない? あんな感じになるのかな、って思ったんだけど、意外と普通っていうか。想像してたよりは平気だったかな。多分、暁くんが優しくしてくれたから……だと思う」

 これじゃ惚気だ、と内心自分で突っ込んだ。杏ちゃんもそう感じたのは間違いなくて、

『ご馳走様』

 そうじゃない、そうじゃないんだってば!
「えっとね、だから……私の場合はそんなに大袈裟なことはなかったかな、っていう」

『春はそれで満足してるの?』

 満足しているのか。

 不意に、わけのわからない空白がストン、と心の中に落ちてきた。

「わ、わからないかな。私も暁くんが初めてだし……ただ……」

『うん』

「もどかしいっていうか……ああ、うん、あれに近いかな」

 いい例えが見つかった。

「シャドウを真っ二つにしたいのに、斬りどころが悪くてすっとイケない感じかな」

 しん、と電話の向こうが静かになった気がした。

「杏ちゃん?」

『春はさ、そういう子だったよね、うん』

「?」

『すごくわかりやすい例えだったって話、うん。すごく参考になった』

「そう? ならよかったけど、私も話したことがなかったし、新鮮だったかも」

『うん、なんか。答えが見つかった気がする。ありがとう』

「ううん。あ、そろそろ寝ないと、明日経営会議があるの」

『あ、ごめん。じゃあおやすみー』

「おやすみ、またねー」



 春の答えを間接的に杏殿から聞いた時、暁はすごくへこんだ。

「大体お前が情けないせいじゃねえか?」

「言うなモルガナ……」

「いやまあ、やさしくした結果だと思うから、ワガハイはいいと思うぞ?」

「絶対嘘だ……」

 へこむのも無理はなかった。テクニックがありませんって言われたようなものだしな。男としては自尊心バッキバキに折られるだろうな。

 まあこれ以上のことはワガハイにはできそうもなかった。春が嫌がってないならそこから先は二人に任せるしかないしそこまで干渉するつもりもない。

「…………」

(何を考えこんでいるんだか)

「モルガナ」

「なんだ?」

「俺は春のためを思って特にベッドの上では優しく扱ってきたつもりだ」

「そうだな」

「もっと乱暴に扱った方がいいってことか?」

「いやそれは違うだろ、どう考えても」

「だよな。春の趣味ってなんだ?」

「スリラー映画……だな」

「春の得物ってなんだっけ?」

「斧だな」

「……拷問する側だよな、これ」

「とは限らないと思う……が、暁に言っておかないといけないことがある」

「ああ」

「春がメメントスで『シャドウをバサッと切り捨てるのが気持ちいい』と言っていた」

「うん」

「あと、『シャドウの命乞いを聞くと背筋がゾクゾクする』とも言っていたな」

「……ああ」

「春のペルソナは全体的に高飛車だったな」

「…………」

「ワガハイの口からはここまでだ……」

 ぼふん、とベッドに潜り込んだ。

 ワガハイはさっさと寝ることにしよう。淑女の知ってはならない一面を暴くような真似は紳士じゃないからな。



 シルバーウィーク。5月のゴールデンウィークと対になる言葉として、9月の長期休暇を指す言葉。

 私も休みを利用して、暁くんに会いに来た。ご両親は今日は旅行らしい。その隙を、というわけじゃなく、ちゃんとしたごはんとか食べてもらって元気に勉強してもらわないと。

 でも模試の結果が良く、今日ぐらいは私にも気晴らしをしてほしいと私の好きそうな映画を借りてきてくれた。

「es(エス)かあ。昔見たかも」

 ある大学で、人は役割を与えられるとその役割に合わせて行動してしまうという仮説を基に、刑務所に見立てて看守役と受刑者役に分け、演じさせた実験があった。それを基にした映画で、看守役はより看守らしく、受刑者役はより受刑者らしい行動を、指示があったわけでもないのにとるようになったことから起こる惨劇の話。

 少しわかる気がする。私もノワールという正義の怪盗を演じていた部分があるから。演技でも行動に起こせば事実となり、事実は人格に影響を及ぼすと思う。

「暁くんはどう思う?」

「俺や春もこんなふうに残酷なことするのかな?」

「うーん、私はともかく、暁くんはそんなことないと思うけど」

 暁くんが周りに流されて誰かを傷つける場面が想像できない。

「春もそうだよ」

「だといいな」

「じゃあ試してみる?」

「試す?」

「春はノワールとなって、俺はジョーカーで、そういう設定で」

「なんだか久しぶりにコードネーム聞いたな……ノワールとジョーカーで、何するの?」

「ノワールの喜びってなんだった?」

 ノワールの喜び……、

「仲間と一緒に」

「違う。それは春の喜びだ。俺の知ってるノワールは、シャドウを追い詰めた時に薄く笑っているような女だ」

 ぴき、と何かひび割れるような音がした。

 多分きっと、これが最初の、

 理性が壊れる音。

「そういう冷酷で、獲物を見つけたら狩るのが貴族の嗜みと言わんばかりに屠るのが、俺のノワールのイメージ」

「そ、そんな風に思ってたんだ」

 間違っているだろうか? 否定しようとしたけど、否定できない。なぜ?

「ノワールも春の一部だ。だから今日はノワールと一緒に……」

 ぎゅ、と腰を掴まれる。意図はわかった。

 なんだろう、今日はなぜか、動けない。

「う、うん。それで、ジョーカーは?」

「そんなノワールに惚れこみながらも呑まれないように必死な怪盗、かな」

 嘘だ。

 いつもの優しい目とは違う。さっき暁くん自身が言った、シャドウを追い詰めるときに薄く笑っているイメージは、そのままジョーカーに当てはまる。

 今まさに、その眼をしている。

 動けない。


「怖いのか?」

 ごく、と生唾を飲んだ。

 背筋がゾクゾクする。下肚に力が入る。久しぶりのこの体の反応は、獲物を見つけた時の、シャドウが命乞いするのを見下す時の、

「ん、だめ、その、ノワールになるには黒い仮面と斧が必要だから」

「と思って作っておいた」

「なんで作ってるの!? 斧はどうしたの?」

「岩井さんとこから送ってもらった。現実世界では刃があるわけじゃないし大丈夫」

 仮面を触ってみるとさすがによくできていた。暁くんの手先の器用さは知っていたけど、これなら勉強に向けて頑張ってほしかったな。

 どこかでそれは単なる言い訳だと叫んでいる自分がいた。

「春が嫌ならやめるけど」

「嫌じゃないけど、びっくりはしたかな……今回だけね」


 仮面を纏い、斧の重さを確かめると、ノワールだったころに戻った気がする。

 何でもできた気がする、あの頃に。

 何でもできた、正義の怪盗に。

 彼も白い仮面をつけていた。

 白い仮面のジョーカーと、黒い仮面のノワール。

 斧はレプリカといえど相応の重量があって、だけどこの重さがあの頃の感覚をリアルに思い出させてくれる。

 ツー、と刃をなぞる。刃の冷たさに背筋のゾクゾクが加速する。

 あ、この感覚、いい。

 はっきりと自覚した。このゾクゾクの先を、私は知りたい。

 知ってはいけない。

 戻れなくなる。

 なのに、どうして?

 ――斧をジョーカーに向けて振り下ろした。

「!!」

 ひゅ、とジョーカーの喉から空気が漏れる。ジョーカーの額の3センチほど上で斧を停止させる。

 私の唇が異様に乾いていた。唇を舐めて、仮面越しに驚愕と恐怖をたっぷりと味わう。

「危ないな」

「本当に頭を割ると思った?」

「予備動作が一切なかった。慣れすぎだろ、ノワール」

 これで命を懸けて戦ってきたのだから、慣れているのは当たり前。

 だけど相手は、私の大好きなジョーカーのはず。

 それなのに、ゾクゾクの加速は止まらない。

「けどジョーカーも得物は持っているんでしょう?」

「バレた。油断してるとこに突きつけようかと思ったんだけど」

 ジョーカーがベッドの枕の下から短剣を取り出す。あの短剣で鮮やかに敵を翻弄するのを見て、ダンスみたいだと思ったことがあった。

「あのね、聞いて」

「どうした?」

「もしかしたら私たち、趣味が似てるかもしれない」

「今更?」

「今更、……そっか」

 このことだけ、謝ることにした。

「今まで我慢させててごめん。本当は、こういう刺激が欲しかったんだよね?」

「……先に謝るなよ、男の立場がなさすぎる」

 そっか。

「じゃあ、遊びましょ」

 私は嗤った。

 斧を突き出す。

 その勢いを遠心力に変えてジョーカーに追撃。

 狭い室内では斧のような重くて大きい武器より、短剣の方が有利。

 関係ない。それを追い払うほど力を込めればいいだけ。

 すぐに力は払われて、ジョーカーが私を押し倒した。


「んんっ!」

 唇が奪われる。荒々しく乱暴に。これまでの優しくて丁寧なキスじゃない。犯されている。荒々しく、乱暴に、私がせき込むのも無視して、上あごから頬の裏側、喉の奥まで舌を差し出し、えづいてしまう。

 唇が離れた時には頬までジョーカーの唾液で濡れていた。

 この男。

 心の中で、何かがプツン、と切れた。

 誰にこんな狼藉を働いたと思っている?

 ノワールに?

 奥村春に?

 どちらにしても許すわけにはいかない。

 背中のゾクゾクはさらに加速し、下腹部に熱を集めていく。

 唇が弧を描いていることには気づかなかった。

「ジョー……カー……」

 わざと弱々し気な声を出してやる。

「…………」

 やりすぎたか、と一瞬迷い、けど笑みに気付いた瞬間に。

 手に持っていた斧を、抱きしめるように、ジョーカーの背中に叩きつけた。

「……っ!?」

 衝撃でこちらにもダメージはあったけど、向こうのダメージの方がはるかに上。

「気にしないで。ただの罰だから」

 ジョーカーの下から抜け出し、逆にジョーカーの上に馬乗りになって見下ろす瞳は、冷酷極まりない。

「でも今までで一番感じた」

 ショーツが張り付くほど濡れているのがわかる。ここまで濡れた経験がなかった。

 “感じる”の意味をようやく知った。

 いや、知ってはいたけど、ようやく自覚した。

 ジョーカーから奪い取った短剣を喉元に突きつける。主導権はこちらにある。

「あはっ、はあ、はっ」

 異常なほど心臓がバクバクしている。けどそれは不快ではなく、むしろ期待を増幅させるもの。

 シャツをまくり上げる。細身のくせに鍛えられている胸板をちろり、と舐める。

 ちろり、またちろり……


 ――あなたは私のモノよ、ジョーカー。


 普段ならそんな高圧的なことを言ったりはしない。

 けどこれは、まぎれもなくノワールの、――春の本音だった。

 誰にも渡さない。独占欲に満ち満ちていく。

「!?」

 ずお、と一気に吸い上げた。

「ふふ、キスマーク、付けちゃった」

 わずかに跳ねる反応が愉しくて、何個も吸い上げる。そのたびに赤黒い花びらが散っていく。


 だけどそのたびにまとわりつくショーツが鬱陶しくなってきた。

 もどかしく脱ぎ捨てる。タイツも一緒に。この短剣が本物なら切り裂いた方が明らかに早いのに。そんな物騒なことを思うほどに今の自分は理性が飛んでいた。

 太ももの上にまたがり、ズボンの上から手をかざす。

「すごく硬い……」

 陶酔しきった声で、チャックを下した。ブルンと見慣れた、だけどいつもよりも大きく見えるソレが、今はひたすら愛おしい。

 ツプ、と一気に刺し入れた。

 十分に濡れていたけど、それでも抵抗がある。みちみちと無理やりに押し広げる。

 ジョーカー自身がさらに勃き上がって、それをさらに貪欲に呑み込もうと、全体重を一点に集中させる。

「あああああああ! いい、これいい! ジョーカー、これ、好き!」

 初めての騎乗位という体勢は、これまで感じたことのない征服欲を掻き立てた。

 ジョーカーが負けじと体を起こし、私の胸を揉みしだこうとする。けど私はそれを許さない。

 今のジョーカーは私のモノなのだから、勝手に動くな。

 理性が取れかかった力はすさまじかった。ジョーカーの両手を力ずくで引き剥ぎ、ベッドに押し付ける。

 ジョーカーの目にはわずかな怯えと、敵意。

 ジョーカーもさっきのノワールと同じように、屈辱に唇を噛み締めている。

 たまらない。

 腰の前後運動とピストンの回数が明らかに激しくなってきた。

「あ、あ、あ、あああぁぁああ!!」

 ――絶頂。

 背中が仰け反る。背中のゾクゾクが全身に伝わり、おなかに集中して、陰部をビクビクと打ち震えさせる。

 涙も涎も出ていた。それでも腰の勢いが止まらない。

「え、あ、ちょ、ああ! 私、イッた、初めて、イッたばかりなのに、これ以上は、あ、あ、」

「ノワール、ノワール……!」

 春。

 彼の腰が、震えた。

「あ、ジョーカーが、私の中で、んああ!」

 あっという間に、二度目の絶頂。

 体力を使い果たして、私はジョーカーに倒れこんだ。


「…………」

 春が虚ろな顔でこちらを見ている。いや、見ていないのか。わからない。

 自分の中に眠っていた快楽を急激に引き出され、放心していた。

「春……?」

 恐る恐る、仮面を外す。ノワールから春に戻り、ジョーカーから暁に戻る。

「あ、ごめん……重いよね……」

 立ち上がろうとして、がくんと腰が抜けていた。

 春の陰部からは注ぎ込んだ白濁液が流れ落ちる。

「あ、ジョーカー、暁くんの……」

「ごめん」

 中出しはしたことがなかった。それぐらいの理性はあると思ったのに。

 春の中の激しすぎる情欲に、引っ張られた。

 言い訳にもなりはしないけど。

「ごめん」

「大丈夫」

 いつもの春の優しい笑みに戻って、でもどこか底の知れない笑顔で。

「そうなったら、きちんと責任取るから、大丈夫……安心して、アフターピルっていうのがあるみたいだから、まず大丈夫」

 安心していいのかよくわからなかったけど、とりあえず頷いた。

「……私、こんなふうになるんだね」

 先ほどまで丁寧に手入れされた百合のようだったのが、いばらに咲いた薔薇のような蠱惑的な香りを放っているように思えて、本当に同一人物かと疑ってしまうほど違って見える。

 春が自分の陰部から自分の愛液と暁の精液の混じった液体を掬い取って、舐めた。

「ん、美味しい……私まだ、知らないことがいっぱいあるんだ……」

 一瞬、春の背中が震えた。

 嫌な予感。

「……まだ、できるよね?」

 ヤバい。

 今の春は、ノワールは、本当に容赦を知らない。

 絶対に敵に回してはいけない女がここにいる。

「ああ、もちろん」

 恐れとは裏腹に、快諾していた。

 なんだ、今の自分も暁じゃなくジョーカーなんじゃないか。

 自分の恋人がこれほど歯応えのある獲物だったなんて、どれだけの幸せだろうか。

 春は、ノワールは冷酷で無慈悲な微笑を浮かべる。

 同種の笑みを浮かべて、自分もノワールの体を欲望のままに貪ることを決めた。


―END―

入れ忘れ。春パイセンはベッドの中で絶対豹変すると思うんだよなあ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom