モノクマ「オマエラにはノナリーゲームをしてもらいます!」 (101)

このSSは「ダンガンロンパシリーズ」「善人シボウデス」のネタバレを多分に含みます

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「……ねぇ……聞こえる?」

……

「ねぇ、大丈夫?」

……

「……だいぶ参ってるみたいだね?」

……

…………

………………


日向(わからない……)

日向(頭が……痛い……)

日向(……?)

日向(俺は……どうした?)

日向(何をしていた?)

日向(……ここは……何処だ?)

日向(一体……何が……?)

日向(痛む体を無理やり起こして、辺りを見回す)

日向(どうやら俺は、綺麗で柔らかいベッドに横たわっていた、などという事はなく……)

日向(狭い四角い部屋の冷たい床に投げ出されるような体勢で突っ伏していたようだが)

日向「……部屋、じゃないな。エレベータか?」

?「そうみたいだね」

日向「っ……!?」

日向「誰だ、お前は!」

?「……」

日向「……? おい聞いてるのか?」

?「……」

日向「いや、お前が誰かはどうでもいい。ここは何処なんだ?」

日向「どうして俺はこんな場所にいる?」

?「……」

日向(無視かよ……けど、さっき俺に話かけてきたのってこいつだよな?)

日向(まあいい。とにかくいつまでもこんな床に座っている訳には……)

日向「っ……なんだ……? 頭が重いような……」


――

カチッ カチカチッ

日向「エレベータのボタンは反応なし。非常ボタンもダメか……」

?「無駄だよ。その扉はこちら側からは任意に開けられないんだ」

日向「どうしてそんな事が解る?」

?「……」

日向「まただんまりか……」

日向「じゃあ、改めて聞くが、ここが何処なのかお前は知っているのか?」

?「いいや……ゴメン、知らないよ」

日向「……そうか」

日向「これももう一度聞くが、お前、名前は?」

?「……【ヒナタ ハジメ】」

日向「それは俺の名前――って、お前、どうして俺の名前を知っているだ!?」

?「……。どうしてかな? ハハッ、不思議な事もあるものだね」

日向「もしかして、俺が気付いていないだけで昔の知り合いとか?」

?「いや、特に面識は無かった……筈だよ」

日向「じゃあ、どうして……」

?「うーん。あっ、もしかしてキミ、超高校級の『何か』だったりする?」

日向「超高校級……そ、そうだ! 俺は確か、希望ヶ峰学園の入学式に行こうと学園の中に足を踏み入れて……それで……」

?「なるほどね。それで気付いたらこの場所にいた、と。ボクと一緒だね」

日向「お前も?」

?「うん。ボクの名前は狛枝凪斗だよ。自己紹介が遅れてしまってごめんね」

日向「俺は、もう言うまでもないかもしれないが、日向創だ」

狛枝「日向クン。……うん、日向クン、か」

日向「? なんだ」

狛枝「いいや、気にしないで」

日向(気にしないでとは言っても……不思議な奴だな……)

狛枝「ボクは超高校級の幸運として入学する予定で希望ヶ峰学園まで訪れていたんだけれど……」

日向「超高校級の幸運、ね」

狛枝「そういうキミは?」

日向「え?」

狛枝「キミだって人類の希望の一人として超高校級に選ばれたから希望ヶ峰学園に入学予定だったんだよね」

狛枝「キミの才能はなんだったのかな?」

狛枝「申し訳ないけど、ボクの記憶にはキミの名前しかうっすらと残っていなくて……あ、おそらくね、ボクがキミの名前を知っていたのは同じ超高校級の仲間だったからだと思うんだけれど、肝心の才能の方は覚えていなかったみたいでさ」

狛枝「普段ならこんな事は無いんだけれどね。ボクとした事が希望の象徴である一人の才能も覚えていないだなんて……! 本当にゴミクズでどうしようもないよ……!」

日向「は、はあ……」

狛枝「それで? キミの才能は?」

日向「俺は……」

日向(狛枝はまるで小さな子供が憧れのヒーローと直面しているかの様に、目を輝かせながら俺に問いかけてくる)

日向(けど……)

日向「俺は……超高校級の……超……高校級……の……」

狛枝「日向クン?」

日向「……」

日向「っ、ダメだ……頭が痛くて……思い出せない……!」

狛枝「大丈夫? いきなり変な場所に連れてこられて混乱しているのかな?」

日向「た、たぶん……」

狛枝「顔色も良くないし、少し休んでいた方がいいかもしれない」

狛枝「って言ってあげたいのはやまやまなんだけどね。キミにも少し確認して欲しい事があるんだ」

狛枝「これ、なんだと思う?」

日向(そう言って狛枝は、自分の左手首を俺の目の前まで突き出した)

日向「腕輪……いや、時計か? それにしては時間はおおざっぱにしか表示されていないみたいだけど」

日向(狛枝の腕時計には大きく【3】と【赤】で表示されている)

狛枝「これ、キミの腕にもついているんだけれど」

日向「え? ……あっ! ほ、本当だ! なんだこれ!?」

日向「いつの間にこんな……ぐっ……外れない……!」

狛枝「ボクも引っ張ってみたり色々してみたんだけど、外れる気配が無いんだよね」

狛枝「それから……数字の下に書いてある【PAIR】ってなんだろう?」

日向「俺のものにも同様の表示が出てるが……」

日向(一体なんの事だかわからないな)

日向「この両側についてるボタンでどうにかならないのか?」

狛枝「それも適当に押してみたけどダメだった。無反応だよ」

カチッ カチカチカチッ

日向「なるほど……」

日向「……くそっ、なんなんだよ! 一体誰が、何をしたくてこんな事を……!」

狛枝「! 日向クン! 見て!」

日向「今度はなんだ!?」

狛枝「モニターに……何か映ってる」

日向(狛枝の言葉に反応して、俺は勢いよく後ろを振り返った。すると、そこには……)

「やあ! 目覚めの気分はどう?」

日向「な、なんだ……?」

狛枝「たぬきかな」

「ちっがーう!」

「ボクの名前は、【モノクマ】――この学園の学園長なのだ!」

狛枝「モノクマ……?」

日向「それより……おい、今……【この学園】って言ったか?」

モノクマ「聞きたい事は沢山あると思う。だけどまあ、こんな形で長話するのもなんだし……」

モノクマ「さっそくだけど、オマエラにはゲームをしてもらおうと思ってる」

モノクマ「名付けて……」

モノクマ「のなりーげぇぇぇむ!」

日向「……」

狛枝「……」

モノクマ「詳しい事はそこを出たら教えてあげるよ」

モノクマ「それじゃあ、待ってるからね」

日向「お、おい! ちょっと待てよ! おまえは一体――」

モノクマ「ああ、そうそう、大事な事を言い忘れてた」

モノクマ「今オマエラが乗ってるエレベータだけど……しばらくしたら、自動的に墜落するようになってるから」

日向「つ……墜落!?」

狛枝「……」

モノクマ「まあ、せいぜい急ぐ事だね。ほいじゃあまた後で! Have a nice trick~!」

日向(そう言いたい事を言いたい事だけ言って、モノクマと名乗った謎の生物?はモニターの中から姿を消した)

日向「ちっ……ふざけやがって。何が良きイタズラを、だ」

狛枝「トリップとトリックをかけてたね」

日向「感心してる場合じゃない! ……とにかく、話は後だ!」

日向「まずは、一刻も早くここから出ないとっ……!」

狛枝「うん、そうだね。しばらくしたらって言ってたけど、具体的な時間は言っていなかったから出来るだけ早く出る方法を見つけた方がいいだろうね」

日向「お前……言ってる割になんだかやけに冷静だな?」

狛枝「そうかな? まあ、エレベータの中に閉じ込められるなんて経験は初めての事じゃないからね」

日向「そ、そうなのか……いや、なんでもいい。とりあえず急ぐぞ!」

狛枝「了解だよ。よく見てみると何やら物が色々あるみたいだから、手始めにそれを片っ端から調べていけばいいんじゃないかな」

日向「そうだな。とりあえず目立って気になる物といえば……後ろの方にあるATMの機械のようなものだが」

狛枝「下の方に金庫まであるね。パスワードを入力する画面があるからそう簡単には開きそうにないと思うけど」

日向「まさか、この金庫の中に出る為のヒントが……?」

狛枝「どうだろう。とにかくこの金庫の謎から解いてみようか?」

日向(そうして、俺と狛枝は協力してエレベーターの中を隅々まで調べギミックを暴いていった結果、思ったよりも早く金庫を開く事が出来た)

日向(そして、その金庫の中には……)

日向「鍵だ!」

狛枝「エレベーターのボタンの上に小さな鍵穴らしきものがあったらから多分そこの鍵じゃないかな?」

日向「これで扉を開くボタンをどうにか出来るのかもしれないな。すぐに鍵を使おう」

ガチャッ

日向「これは……赤いボタンがあるな」

狛枝「えいっ」ポチッ

日向「うわっ!? ば、馬鹿! そんな警戒もなしに押すなんて……」

ゴウン

日向・狛枝「!?」

ガチャッ

日向「な、なんだ? 今の音は……」

狛枝「日向クン、上を見て」

日向「上……? あっ!?」

狛枝「今ので天井のハッチが開いたみたいだよ」

日向「ハッチって……どうしてそんなものがエレベーターに……」

狛枝「けど道はひらけたのは確かだよ。早いところここから出よう」

日向「それもそうだな」

狛枝「日向クン。さあ、ボクを踏み台にして先に上まで登って」

日向「お、おう? ……なんだか悪いな」


――

日向(俺たちは協力して開いたハッチから外へ出た。その先は……)

日向「なんだ、ここは……」

狛枝「エレベータシャフトの中、ではなさそうだね」

日向「……俺の目には体育館に見えるが」


モノクマ『ボクの名前は、【モノクマ】――この学園の学園長なのだ!』


日向(やはりここは……)

狛枝「どうやらボクたちは動かないエレベータの中に閉じ込められていたようだよ」

狛枝「……いや、動かないし落ちない、かな」

日向「墜落するっていうのはただのハッタリだった訳か」

狛枝「みたいだね」

狛枝「それより、見てごらんよ。あそこ」

狛枝「人がいる」

日向「……!」

狛枝「全員で5人かな。見る限り、ボクたちと同じ腕輪を嵌めているようだけど」

日向「本当だ。敵……ではなさそうか」

狛枝「どうかな。けど、とりあえず行ってみようか」

日向(俺たちはその場から降りて急いでその人が固まっている場所へと走っていった)

日向「おい! 教えてくれ! 一体なにがどうなっているんだ……!?」

眼鏡の少女「わかんない……。私たちもついさっき出てきたばかりなんだ。あのエレベータから」

スーツの若い男「キミたちもさらわれてきたんだよね?」

日向「さらわれて……きた?」

スーツの若い男「おそらくは……という話だけど」

パーカーの少女「私は希望ヶ峰学園の入学式に行くところだったんだけど、気付いたら何故か意識を失ってエレベータの中に……」

狛枝「ボクや日向くんと一緒だね。というとキミも超高校級の……?」

パーカーの少女「君たちもなの?」

日向「5人一緒にいたのか?」

セーラー服の少女「ううん。私と【モナカ】ちゃんは同じエレベータの中にいたけど、他の3人は……」

日向「モナカちゃん?」

セーラー服の少女「あっ、私がおぶってるこの子の事だよ」

おぶられた子「モナカはね、モナカって言うんだー。よろしくなのじゃー」

モナカ「モナカをおんぶしてくれているお姉さんは【こまる】さんっていうの」

こまる「よろしくね」

日向「あ、ああ……よろしく……」

狛枝「他の3人は?」

モナカ「【苗木】さんと【五月雨】さんと【七海】さんはそれぞれ別のエレベータの中で目が覚めたんだって」

スーツの若い男「うん、そうだね」

日向「ええと、貴方が……?」

苗木「ボクが苗木だよ。【苗木誠】――それで、眼鏡の女性が……」

五月雨「私が五月雨――【五月雨結】 で、隣の彼女が……」

七海「【七海千秋】でーす。【超高校級のゲーマー】でーす」

七海「君たちの名前は?」

狛枝「ボクは狛枝凪斗。超高校級の幸運だよ。話からして、ボクと……そして日向くんも七海さんの同期になるんじゃないかな」

日向「日向創だ。よろしく」

モナカ「日向さんの才能はなんなのかにゃー?」

日向「それは……」

狛枝「日向くんは精神的なショックからか記憶の一部を思い出せないらしいんだ」

五月雨「つまり、自分の才能を覚えていないって事?」

日向「あ、ああ……そうなるな」

モナカ「ふーん?」

苗木「無理も無いよ……いきなりこんなわからない場所につれてこられて、平気な方がどうかしてる」

狛枝「ところで、五月雨さんとこまるさん、それから苗木クンも……キミたち歳が近そうに見えるけど、この流れからするとキミたちも超高校級の……?」

五月雨「あー、私は違うんだよね。残念ながら」

こまる「わ、私も違います……」

苗木「ボクは……ええと……」

日向(……そうやって、各々の自己紹介を進めていると)


ガコンッ

日向(俺たちが出てきたエレベータの方から不意に音がした)

日向(一同が揃って振り返る)

日向(真後ろには俺たちが閉じ込められていたエレベータが並んでいるのがすぐ目に映るが……)

日向(その一番左端のエレベータの天井のハッチがゆっくりと開いていくのが見えた)

日向(そして……)

日向「な、なんだ……アイツは……」


?「……」


日向(そこから異様な姿をした人型の何かが何かを抱えて出てきたのだ)

日向(何故そんなまどろっこしい表現をするのかといえば……それは本当に異様な恰好で、見ただけで性別の特定も本当に人間だと断定していいのかどうかさえわからなかったからだ)

日向(金属製の仮面に同じ金属製の……ボディースーツとでも言えばいいのだろうか)

日向(とにかく、重々しい格好をしたその人型はエレベータの屋根を蹴るとすとんと軽々しく俺たちの立っている体育館の床へと降り立ったのだ)


五月雨「霧切ちゃん!?」

日向(知り合い……なのか?)

日向(五月雨が仮面の人物に走り寄っていく)

日向(けれどどうやら、俺の見当は外れたようだった)

日向(五月雨の目当ては仮面の方ではなく……その仮面の両腕に収まっている小さな人間の方だったらしい)

五月雨「霧切ちゃん! しっかりして! 霧切ちゃん!」

霧切「……」

日向(小さな少女は眠っているのか気を失っているのか……五月雨の声に返事を返さない)

日向(名前を呼んでいるという事は知り合いなのだろうか?)

日向(見たところ、霧切という名の少女の見てくれは中学生ほどに見える)

日向(制服を着ていなかったらもしかしたら小学生と思ってしまうかもしれない。そんな華奢で小さな少女だ)

日向(五月雨の同級生……というようにはみえないが……)

五月雨「ちょっと! あなたこの子に何をしたの!?」

?「僕は何もしていません。僕が意識を取り戻した時には、既にその様な状態だったのです」

?「大丈夫。心配には及びません。息もしっかりしています。おそらく眠っているだけでしょう」

苗木「連れ去られてきてからまだ目を覚ましていないってことか」

?「連れ去られて……きた? すみません。おっしゃっている意味がよくわからないのですが」

?「そもそもここは何処なのでしょう? あなたたちは一体……」

日向「待て。その前に、お前の正体を教えろ。お前は誰だ? どうしてそんな恰好をしている!」

?「僕は……」

?「……僕は一体……誰なんでしょう……?」

日向「な……なんだって?」

?「覚えていないのです。なにも……」

?「ここがどこで、今がいつで、僕は一体何者なのか……」

?「逆に教えていただきたい。僕は本当に……誰なんです?」

日向「……」

モナカ「えー? あなたも日向さんと同じパターンなのかなぁ?」

?「日向……さん……?」

こまる「というか、その恰好は一体……?」

五月雨「金属製の仮面にボディスーツ。誰かに無理やり着せられた……とでも言うつもり?」

?「おそらく……。それ以外に考えられません。なにしろ、目覚めた時にはすでにこの状態でしたから」

苗木「それにしてはやけに落ち着いて見えるけど……」

?「見える? その表現は適切ではないでしょう。僕の顔はこの仮面に覆われていて見えない筈です」

狛枝「その口ぶりが不自然だって話なんだと思うけどね」


霧切「……ん……んん……」

五月雨「霧切ちゃん!? 目を覚ましたの!?」

霧切「……」

五月雨「霧切ちゃん! 大丈夫!? しっかりして!」

霧切「……結……お姉……様……? ……ここ……は……?」

……

…………

………………

日向(霧切が少し落ち着いてから、五月雨は彼女にこれまでの事を軽く説明し始めた)

日向(霧切は黙ってそれを聞き、一区切りつくと短く『そう』とだけ呟いて、少し間を置いてから再び口を開いた)

霧切「再度確認させてもらってもいいかしら?」

五月雨「確認?」

霧切「ええ。まず……最初にあのエレベーターからこの場所に出てきたのは誰だったのか、覚えている人は?」

五月雨「あ、それは私だよ?」

霧切「なら話は早いわ。結お姉様、貴女は何処のエレベータにいたの?」

五月雨「【右から3番目】のエレベータだったかな」

霧切「その後、誰がどの部屋から出てきたか結お姉様は確認している?」

五月雨「ん? うん、見てるよ? ええとね……」

五月雨「次に出てきたのは苗木くん……でいいかな? 呼び方は」

苗木「好きに呼んでくれて構わないよ」

五月雨「苗木くんが【左から2番目】のエレベータから出てきたんだよね」

五月雨「3人目は七海ちゃん。【一番右】のエレベータから出てきて……」

五月雨「続けて出てきたのが、こまるちゃんとモナカちゃんのペアだった。それが【右から2番目】のエレベータ」

五月雨「それで……」

狛枝「ボクと日向クンが【左から3番目】のエレベータだよ」

五月雨「そうそう」

霧切「……そして、そこの仮面の人が私を連れて【一番左】のエレベータから姿を現した。そういう事ね」





霧切/仮面
苗木
日向/狛枝
五月雨
こまる/モナカ
七海

霧切「続けてみなさんの腕輪を確認させてもらってもいいかしら?」

日向「腕輪の確認?」

霧切「ええ。どうやら私の腕輪と結お姉様の腕輪とで表示が違ったようだったから、きっとみなさんのものも比べてみたら違うのかと思って」

日向(霧切の言葉に一同はその腕輪のついた左腕を前へと出していく。その結果……)

霧切「なるほど」

霧切「七海さんは【青】の【SOLO】」

霧切「こまるさんとモナカさんは【青】の【PAIR】」

霧切「結お姉様は【赤】の【SOLO】」

霧切「日向さんと狛枝さんは【赤】の【PAIR】」

霧切「苗木さんは【緑】の【SOLO】」

霧切「そして、私と仮面の人は【緑】の【PAIR】」

霧切「表示されている数字は全員【3】になっているようね」

狛枝「へぇ、【三色】の色と【SOLO】と【PAIR】の組み合わせで少しずつ違っているんだね」

苗木「それにしても、キミもこの腕輪を嵌められていたのがボクは驚きだよ」

日向(彼が驚いているのは仮面の人物に対してだ)

日向(仮面の人物はその不審なボディスーツの隙間から俺たちと同じ腕輪の表示を覗かせていた)

日向(……つまり、素性が知れず怪しい人物である事に違いは無いが、この人物もまた俺たちと同じ状況に立たされている人物の一人であるという事)

日向(少なくとも、俺たちを拉致してきた側の人間ではないのだろうという事だ)

七海「けど、どうしてこんな風に表示がわかれているのかな?」

霧切「それは……話を聞く限りはおそらく……」




「ゲームのためだよ!」

日向「今の声は……!」

モノクマ「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!」

日向(いつの間にか、あのモノクマとかいう訳のわからない物体が体育館の壇上に姿を現していた)

こまる「だ、誰も呼んでなんかいないよね……?」

霧切「もしかしてあなたが、結お姉様が話していたモノクマなのかしら?」

モノクマ「さすが霧切さん! 察しが良くていらっしゃる!」

モノクマ「それでは……オマエラにはここで改めてゲームの説明をしたいと思います!」

日向「ゲームなんかどうでもいい! 早く俺たちをここから出せ!」

モノクマ「だーかーらー、これは【ここから脱出する為のゲーム】なんだって」

日向「なっ……脱出する為……!?」

狛枝「何故わざわざボクたちを捕らえてまでそんな事を?」

モノクマ「それが必要な事だからだよ」

モノクマ「人類の【希望】の為に……ね」

モノクマ「とでも言えば納得してくれる?」

狛枝「希望の為……」

日向(何を言っているんだ、コイツは……!)

モノクマ「話を先に進めたいからちょっと黙っててね」

モノクマ「えー、それでは、これからこの【ノナリーゲーム】のルールについて話すよ!」

モノクマ「まずオマエラの腕輪……以降、【バングル】と言わせてもらうよ」

モノクマ「そのバングルの数字を改めて確認してくれるかな?」

モナカ「それならついさっきみんなで確認したばかりだよ? 【3】だよね?」

モノクマ「そう! では次に向こうの扉を見て貰えるかな」

苗木「【9】って大きく書かれているけど……」

モノクマ「実はその【9の扉】がオマエラが目指すべきゴールなんだ」

日向「なっ……! それじゃあ一刻も早く……」

モノクマ「ただぁーし! あの扉を開くには、オマエラがつけているバングルの数字――【バングルポイント】、略して【BP】が【9以上】にならないと開けられない仕組みになっているんだクマ」

モノクマ「しかも、あの扉は【一度しか】開く事が出来ないんだ。そのうえ、9秒間しか開かないからね!」

こまる「その【BP】はどうやったら【9】になるの?」

モノクマ「そこで再びあのエレベータの出番です!」

モノクマ「あのエレベータの名前は【ファイナルデッドルーム】、長いから【FDルーム】と呼ばせてもらうけど……」

モノクマ「【FDルーム】の中である事をしてもらいたいんだ。それについては、その時が来たらまた詳しく説明するから」

五月雨「けど、あの部屋の扉ってどうやって開くの? またハッチから入ればいいって話?」

モノクマ「あのハッチはキミたちが話している間に閉じさせてもらったよ。もう開かないようにしちゃったからそれは出来ない」

モノクマ「ボクはこの施設を統括しているAIでもあるからね! それくらいは朝飯前なんだ」

モノクマ「けど大丈夫。部屋の扉の横にはカードリーダーがあるんだ。つまり専用のカードキーさえ手に入れば扉は開くって事」

モノクマ「そのカードキーの在処は、あっちにある色のついた三枚の扉――カラードドア、【CD】の先にある」

モノクマ「【CD】の【第一扉】ついては時間で開く様になっているんだけど……バングルの両脇のポッチを同時に押してみてくれる?」

日向「あのボタンか……」

カチッ


00:10


七海「時間が出てきたね。今は、0時10分って事?」


00:09

七海「あれ? 時間が減った?」

七海「……そっか、つまりあと9分で【CD】が開くって事だね?」

モノクマ「ご名答! これは【CD】の【第一扉】があとどれくらいで開くのかを現わしているんだ」

モノクマ「ここで注意してもらいたいのが、この【第一扉】は【5分】で自動的に閉まっちゃうって事。その時に扉を通らずに残っていた人には【オシオキ】が待っているから気を付けるように!」

こまる「【オシオキ】……? って、な、何……?」

モノクマ「うぷぷ。それはね……」

モノクマ「死んじゃうって事だよ」

日向「っ……!?」

こまる「し、しんじゃう……!?」

モノクマ「実は、オマエラがつけているバングルにはオマエラを死に至らしめる為の薬剤が装填されているんだ」

霧切「……クスリ?」

モノクマ「ルール違反を犯すとバングルの中から注射針が飛び出して【2つの薬剤】を順番に投与する仕組みになっているんだよ」

モノクマ「その薬剤っていうのは……ひとつは【マンドレインβ】っていう麻酔薬」

モノクマ「もうひとつは、【ハイメトリン】っていう筋弛緩薬」

モノクマ「まずは【マンドレイン】で意識を失わせて、その9分後に【ハイメトリン】を注入して呼吸筋を麻痺させる」

モノクマ「文字通り、『息の根を止める』ってやつだよ! うぷぷぷ……」

モノクマ「まあ、今はまだ時間があるから大丈夫大丈夫! 時間ギリギリにならない様にする為にもさっさと先を説明しちゃうね」

日向(ルール違反を犯すと死ぬだって……? そんな……そんな馬鹿な……)

モノクマ「で、今まで【第一扉】っていうワードが出てきてたと思うんだけど、CDの先には【第二扉】が存在するんだ」

モノクマ「この【第二扉】は【第一扉】が閉じるまでは開かない仕組みになっていて……」

五月雨「随分面倒くさい手順を踏むんだね……」

モノクマ「それはオマエラを分断させる為だよ」

日向「分断……」

モノクマ「では、【第二扉】を開く為のルールついて話そうか」

モノクマ「ここでは【CD】の【色】とオマエラが嵌めているバングルに表示された【色】が重要になってくる」

モノクマ「さて、ここには【紫色】と【黄色】と【水色】の【CD】がある訳なんだけど……」

モノクマ「オマエラは【光の三原色】って知ってるかな?」

狛枝「【赤・緑・青】の三色のことだね?」

モノクマ「イエス! その三色の組み合わせによってほとんど無限の色が表現できるんだ」

モノクマ「じゃあ【紫色】は、何色と何色を組み合わせればいい?」

狛枝「【赤】と【青】」

モノクマ「【黄色】は?」

狛枝「【緑】と【赤】」

モノクマ「【水色】は?」

狛枝「【青】と【緑】……そうか、なるほどね」

霧切「つまり、【バングルの表示色の組み合わせ】によって【組み合わせた色の扉】を開く事が出来る。……そういう事かしら?」

モノクマ「ピンポーン! 大正解!」

モノクマ「けど、ちょっとだけ補足をさせてもらうよ」

苗木「同じ色の人同士が組んだ場合の事か」

モノクマ「そういう事! その場合は例外的にその色の補色――反対色の扉を開く事が出来るんだクマ」

苗木「という事は……」

苗木「【赤】と【赤】なら【水色】」

苗木「【青】と【青】なら【黄色】」

苗木「【緑】と【緑】なら【紫色】」

苗木「こんな感じになるのかな?」

モノクマ「これまた大正解ー!」

モノクマ「ところで、話はオマエラのつけているバングルの話に戻るんだけど……」

モノクマ「そのバングルには、数字と色の他にも表示されているものがあったね?」

日向「【SOLO】と【PAIR】……だったな」

モノクマ「それについてなんだけど、簡単に言えば【同じ色のPAIRのバングル】――【ペアバン】同士の人たちは一心同体の運命共同体、一緒に行動しなければならないというルールが課せられるんだクマ」

日向「つまり、【赤のペアバン】である【俺】と【狛枝】――」

日向「【青のペアバン】である【こまる】と【モナカ】――」

日向「【緑のペアバン】である【霧切】と……ええと」

日向「お前の事、なんて呼べばいいんだ?」

仮面「僕……でしょうか? そうですね……」

仮面「それでは、『K』とでも呼んでいただければ」

モナカ「記憶喪失なんじゃなかったのかにゃー?」

K「ええ……ですが、ふと頭をよぎったのです。『K』という文字が」

モナカ「ふぅん? なんだか怪しいなぁ」

日向「……じゃあ、【緑のペアパン】は【霧切】と【K】」

日向「この組み合わせ同士で行動しなければ……必ず同じ色の扉に入らなければならない。という事になるんだな?」

五月雨「【SOLO】の人についてはどうなるの?」

モノクマ「【SOLOのバングル】――【ソロバン】の人にはこれといった制約はないよ」

モノクマ「ただ、【CD】を通る際の最後のルールがある」

モノクマ「それは【一つのCDを通るためには3つのバングルが必要になる】って事」

モノクマ「これは、2以下じゃダメだし4以上でもアウト。きっかり3つのバングルを使わないといけないんだ」

苗木「という事は、【ペアバン一組】と【ソロバン一人】の三人でひとつのCDを通れって事か」

モノクマ「ま、大体はそういう事だね」

日向(ここまでの話をまとめてみよう)


▼ここから脱出する為には?
【9】の扉を開けばいい

▼【9】の扉を開くには?
【BP=バングルポイント】を【9】以上にしなければならない

▼【BP】を【9】以上にするには?
具体的に何をすればいいのかはわからないが、とにかく【FDルーム=ファイナルデッドルーム】に入る必要があるらしい

▼【FDルーム】に入るには?
カードキーを見つけなければならない

▼カードキーは何処にある?
モノクマは【CD=カラードドア】の先にあると言っていた

▼【CD】の第一扉を開くには?
所定の時間になると自動的に開くようだ
(バングルの左右ののボタンを同時に押すと、残り時間はわかるようになっている)

▼【CD】の第二扉を開くには?
まずは人数制限が3人
その3人のバングルの表示色を合成したものが、扉の色と同じであれば、その扉を開く事が出来るという
(基本:赤+青=紫色 緑+赤=黄色 青+緑=水色)
(例外:赤+赤=水色 青+青=黄色 緑+緑=紫色)

ぴんぽんぱんぽーん


モノクマ「カラードドアが開放されました! カラードドア閉鎖まで、残り5分です!」


日向「……えっ!?」

日向(モノクマのアナウンスと共に、CDが開いていく)

日向(つまり、あと5分以内にここから出なければ……)


モノクマ「悪いけど、時間がきちゃったみたいなんだクマ」

モノクマ「それじゃあ、まったねー! Have a nice trap~!」

日向(モノクマはそう言って、またいつの間にかその姿を消していた)

日向(この腕輪の中に毒薬が仕込まれているだなんてにわかには信じ難い)

日向(……けど……俺たちはどうすれば……)

七海「みんな、ぐずぐずしている時間はないよ。とにかく動こう。第二扉の先に進むんだよ」

こまる「進っていっても誰がどの扉に入ればいいのか……」

狛枝「時間がないからボクから手短に説明するよ」

狛枝「さっきのモノクマの説明はわかりにくかったかもしれないけど、実は考えられる組み合わせは、たったの3つしかないんだ」


狛枝「ここではボクのバングルの色を基本に説明させてもらうけど……」

狛枝「まずパターンA――【赤ペアのボクと日向クン】が【青ソロの七海さん】と組んで、【紫色の扉】を開く」

狛枝「この場合、必然的に【緑ペアの霧切さんとK】は【赤ソロの五月雨さん】と組んで【黄色の扉】を開く事なって――」

狛枝「残った【青ペアのモナカさんとこまるさん】は【緑ソロの苗木クン】と組んで【水色の扉】を開けばいい」


狛枝「次、パターンB――【赤ペアのボクと日向クン】が【緑ソロの苗木クン】と組んで【黄色の扉】を開く」

狛枝「この場合、必然的に【緑ペアの霧切さんとK】は【青ソロの七海さん】と組んで、【水色の扉】を開く事が決まる」

狛枝「残った【青ペアのモナカさんとこまるさん】は【赤ソロの五月雨さん】と組んで【紫色の扉】を開くんだ」


狛枝「そして最後、パターンCは補色を使った組み合わせになる」

狛枝「【赤ペアのボクと日向クン】は【赤ペアの五月雨さん】と組んで【水色の扉】を……」

狛枝「【緑ペアの霧切さんとK】は【緑ソロの苗木クン】と組んで【紫色の扉】を……」

狛枝「【青ペアのモナカさんとこまるさん】は【青ソロの七海さん】と組んで【黄色の扉】をそれぞれ開くのがこのパターンだね」


狛枝「問題は、これらの3つの組み合わせのうち、どれを選ぶかだけど……」

七海「日向くん、君が決めてよ」

日向「え……ええっ!? なんで俺が……」

七海「誰が選んでもいいだよ。とにかく、誰かが決めれば自ずと残りは決まるんだからさ」

日向「だから、日向くんでも誰でもいい。早く決めよう」


モノクマ『カラードドア、閉鎖まで、残り1分です!』


日向(姿の見えないモノクマが俺たちを急かしてくる……その勢いに、俺は負けた)

日向「わかった! わかったよ! 俺が決めればいいんだろ!?」

日向(タイムリミットが迫っているからか異論を唱えるものもいなかった)

日向(俺は――俺と狛枝のペアは――)



1:七海と組んで【紫色の扉】に入る
2:苗木と組んで【黄色の扉】に入る
3:五月雨と組んで【水色の扉】に入る

安価下

一度ここで終わります

1

ノナリーゲームのSSは前もあったけどそっちはエタっちゃったんだよね
こっちは頑張って欲しい

日向「俺は七海と組んで【紫色の扉】の先へ行こうと思う。狛枝もそれでいいか?」

狛枝「ボクは異論ないよ」

七海「私もそれでいい。みんなは?」

霧切「構わないわ」

五月雨「私は霧切ちゃんのペアと一緒に行く事になるんだよね? それなら文句はないよ」

K「僕も問題はありません」

モナカ「って事は、モナカたちは苗木さんと一緒かぁ」

こまる「そういう事だね」

苗木「今更決めなおしている時間も無いし、それで賛成だよ」

日向「よし。じゃあ、行こう!」


……
…………
………………

うおシボウデスとか懐かしいな
期待

日向(紫色の扉を抜けて真っ直ぐ行くと、辿り着いたのは……)


日向「ここは……食堂か?」

七海「無人みたいだけどね。料理の匂いもなにもしない。比較的綺麗ではあるみたいだけど」

日向「最近まで誰かが使っていたのか?」

七海「どうなんだろう……?」

狛枝「けど、ここはただの食堂じゃないよ」

日向「ただで食える食堂なんて普通ある訳ないだろう?」

狛枝「そういう意味じゃ無くてさ……ここは食堂は食堂でも【学生食堂】だと思う」

日向「学生……食堂」

狛枝「二人とも、モノクマの言っていた言葉を覚えているかい?」

狛枝「モノクマは自分の事を【この学園の】学園長だとそう言った。それはつまり……」

日向「ここは【学校】だって言いたいんだろう?」

狛枝「そういう事」

日向「その学校っていうのは……」

狛枝「ボクは希望ヶ峰学園の可能性が高いんじゃないだろうかって、そう思ってる」

日向(……狛枝もか)

七海「それはどうして?」

狛枝「だって、ボクも日向クンも七海さんも希望ヶ峰学園の入学式に向かう途中で意識を失った」

狛枝「ボクは校門をくぐった所の記憶まであるんだけど……キミたち二人は?」

日向「俺もそうだ。けど校門に足を踏み入れたその先からの記憶はあやふやで……」

七海「……私もそうだね」

狛枝「でしょ? もしかしたらこれは、希望ヶ峰学園の才能テストの一環なのかも」

日向「けど、希望ヶ峰学園は入学試験は行わなかったはずだぞ?」

狛枝「そうじゃなくて。ボクたちは入学条件は満たしている事に間違いは無いけれど、その希望ヶ峰学園に才能研究をさせられているのかもって事」

日向「才能研究!? け、けど、モノクマは言っていたぞ!? ルール違反を犯したら死だって……」

日向「希望ヶ峰学園が俺たちをそんな危険な目に合わせるのか!?」

狛枝「もしかしたら、ボクたちを極限状態に追い込む事で才能をより高めさせようって事なのかもしれない」

日向「な、なんだよそれ!」

狛枝「ほら、火事場の馬鹿力って言葉あるじゃない? それと同じ原理で……」

日向「だからってそんなっ……」

七海「ねえ、二人とも。憶測でアレコレ言うのはいいけれど、まずこの食堂を調べてみない? 何か手掛かりが見つかるかもしれないよ?」

日向「あ……そ、そうだな」

七海「それにほら……あれを見て」

狛枝「ん? あれは……エレベータの中にあったのと同じ金庫のようだね」

七海「それとその近くに、もうひとつ扉があるみたい」

日向「扉か……けどロックがかかってて先には進めないみたいだ」

七海「ここまでは一本道だったから、おそらくここを調べてその扉のロックを解除する必要がある……と思うよ」

日向「なるほど。そうと決まれば探索開始だな」


――

日向「……ん? テーブルの上に紙切れが……なんだこれは」ペラ

日向「一枚の紙が半分に割かれてる状態になっているが……」

日向「『第七十八期』『超高校級のアイドル』『超高校級の軍人』『超高校級の野球選手』……」

日向「これは……『才能』がずらずら書かれているのか? ええと、続きは……」

日向「『超高校級のプログラマー』『超高校級の暴走族』『超高校級の風紀委員』『超高校級の同人作家』『超高校級のギャンブラー』『超高校級の格闘家』『超高校級のギャル』『超高校級のスイマー』『超高校級の占い師』『超高校級の御曹司』『超高校級の文学少女』『超高校級の探偵』……」

日向「『超高校級の幸運』……?」

狛枝「何を見てるんだい?」ヒョイッ

日向「うわぁっ!?」

狛枝「あ、ゴメン。ボクなんかが急に声かけちゃって……びっくりした?」

日向「い、いや……それより、狛枝もこれを見てくれ!」

狛枝「どうしたの?」

日向「ここに『超高校級の幸運』って書いてあるんだが」

狛枝「え? ……これは……『超高校級の』という事は希望ヶ峰学園が関係している資料……いや、名簿なのかもしれないけれど」

日向「名簿……?」

狛枝「うん。半分に割かれているから、おそらくもう半分にこの才能を持った人物の名前が書かれているんじゃないのかなって」

日向「なるほどな。じゃあ、これは俺たちの学年の名簿の半分になるんだろうか」

狛枝「うーん……けど、ここに『超高校級のゲーマー』という才能は書かれていないようだけど」

日向「あ、七海の才能か。じゃあ、これは学年全体の名簿じゃなくてひとつのクラスの名簿で、七海は別のクラスなのかもしれないな」

狛枝「……そうなのかな」

日向「ん? どういう意味だ?」

狛枝「そもそもこれは、ボクたちの学年の名簿ではないかもしれないという事だよ。だって……」

七海「おーい、二人とも! 金庫が開いたよ」

日向「へっ!? は、早いな!?」

七海「このくらいのゲームは画面の中で日常的にやってるんだから楽勝楽勝」ドヤァ

狛枝「素晴らしいよ! 流石は『超高校級のゲーマー』だ。このゲームは七海さんにとってはうってつけだという事だね!」

日向(凄いな……俺にもこんな才能があれば……)

日向(……才能が『あれば』?)

日向(何を言っているんだ。俺は才能があるから希望ヶ峰学園にやってきた……そうじゃないか……その筈だ……)

日向(もしかしたら、この名簿の半分が見つかれば、俺の名前が書かれてあって……俺の才能がなんだったのかもわかるのかもしれない)

日向「なあ、七海。学食を見て回った時に半分になった紙切れは何処かに落ちていなかったか?」

七海「半分の紙切れ? 食堂の謎を解くヒントのメモならあったけど……」

七海「金庫の中にも紙があるみたいだけど、それの事?」

日向「どれだ?」

七海「はい、どうぞ」ピラッ

日向「ありがとな。ええと……」


【ルールの補足】……なんだクマ
一度開いた扉は、内側からでも外側からでも自由に開く事が出来るんだクマ
【CD=カラードドア】も同様。一度開きさえすれば、何度でも出入りする事ができる
またこの時には、人数制限や色の制限も解除されるんだクマ
ただし、CDの先にある部屋を抜けた後じゃないと、この自由解放ルールは適用されないんだクマ
部屋の出口を開ける前に来た道を戻ろうと思っても扉は一方通行になったままだから注意するように、なんだクマ

狛枝「要するにこの部屋を抜け出しさえすれば、体育館から引き返す事も可能になる。そういう事だね?」

七海「そうみたい」

日向(名簿の半分ではなかったか……)

七海「他に金庫にあるのは、マップと……」

狛枝「カードキーが三枚あるね」

七海「FAINAL DEAD ROOMって表に書いてあるからこれがきっと……」

日向「FDルームを開く為のカードキーか!」

七海「そして最後は、小さなカギだね。これが多分、ロックのかかっている扉のカギ……と思うよ?」

日向「お手柄だ、七海! さっさと先へ進もう!」

狛枝「日向クン……キミ、何か焦ってないかい?」

日向「そ、そんな事はないぞ」

狛枝「そう?」

七海「けど、ここに居たままじゃどうしようもならないし、行こう?」

日向「ああ」


……
…………
………………

日向(俺たちはロックを解除した扉の先へと進んで歩いて行った。そこには……)

日向「エレベータ、か。今度は本物のみたいだが……」

七海「動きそう?」

日向「わからない。ボタンを押してみない事には……」

狛枝「あれ? 通路の向こう側から誰か来るよ?」

日向「ん……? あれって……五月雨と霧切とKじゃないか?」

七海「それから、こまるさんとモナカさんと苗木くんもいるみたいだよ」

五月雨「あっ、日向くんたちもいる!」

日向「どういう事だ?」

五月雨「すぐそこで会ったんだよ。ばったりとね」

モナカ「運命的な再会ってやつじゃなさそうだけどねー?」

狛枝「七海さん。さっき金庫にあったっていうマップを見せてもらえる?」

七海「うん」

狛枝「……へえ、なるほど。どうやら3つのルートに分かれて進んでも、結局はここで合流するようになってたみたいだね」

K「そのマップ、【保健室】にあったものと同じですね」

日向「保健室……?」

こまる「あ、それだったら私たちも見つけたよ。【学生寮】で」

日向「そっちは学生寮か……俺たちが入ったところは学生食堂だったが……」

苗木「どうやら情報交換をした方がよさそうだね」

狛枝「待って。そこのエレベータを調べてからでも遅くはないよ」


――

モナカ「んー? 上の階と殆ど変わらないねー?」

七海「けど、扉に色が着いているみたいだよ」

七海「エレベータを背にして、左手が【緑】、正面が【青】、右手は【赤】に塗られてる」

こまる「これってもしかして……新しいCD?」

日向「表示からしてLOCKがかかっているみたいだけどな」

苗木「どうやら力尽くでは開きそうにないようだね」

五月雨「霧切ちゃん、どうしたの? バングルなんか眺めて」

霧切「ええ、ちょっとね。……やっぱりだわ」

五月雨「何? どうかしたの?」

霧切「残り時間が変わっているのよ」

日向「残り時間って……ああ、そういう事か」

日向(俺は、バングルの両端のボタンを同時に押してみた)

カチッ


02:06


日向「2時間6分……」


モナカ「ええー? こんな狭苦しいところであと2時間も待たないといけないのー?」

苗木「仕方ない。ここはひとまず引き返すしかなさそうだね」

苗木「こまる、さっき見つけたメモの事、みんなに教えてあげて」

こまる「あ、うん、そうだね」

K「それはもしかして、ルールの補足と書かれたメモの事でしょうか。だとしたら、僕たちも持っています。それからカードキーも。保健室で見つけたので」

日向「俺たちもだ。七海が食堂にあった金庫の中から見つけてくれて……」

苗木「じゃあ、もしかして部屋分のカードキーもみんな所持してるって事かな」

七海「これが本当だとすると、全員おなじルートを通って最初にいた体育館まで戻れる事になるけど」

狛枝「戻れるというよりも、戻ってこいと言っているんじゃないのかな、モノクマは」

狛枝「そうでなければ、例のカードキーの意味がなくなるからね」

七海「……とにかく、戻ってみようか」


――

モノクマ「ふあーあ……待ちくたびれちゃったよ」

日向(ちっ……いっちょまえにあくびなんかしやがって)

モノクマ「さて……全員ここに戻ってきたという事はカードキーを見つけたという事だろうから、さっき保留にしていた話の続きをしようかな」

モノクマ「【BP=バングルポイント】を【9以上】にするにはどうしたらいいか」

日向「あそこにある【FDルーム=ファイナルデッドルーム】に入ればいいんだろ?」

七海「けど、どの部屋に入ればいいのかな?」

モノクマ「えーと……特に決まってないよ。誰がどの部屋に入ってもいいんだ」

モナカ「じゃあ、モナカは最初に入っていた部屋がいいな。あそこにモナカの車椅子が置き去りになってるから」

日向「車椅子?」

こまる「モナカちゃん足が悪いの。だから一人で歩くことが出来なくて」

こまる「ハッチから脱出する時に車椅子までは一緒に持ってこられなかったから……」

日向「ああ、なるほど。だからこまるがずっとモナカの事をおぶっていたのか」

五月雨「けど、部屋は6つしかないよ?」

モノクマ「だから言ったじゃん。表示が同色のペアバンの2名は一心同体の運命共同体なんだよ」

K「つまり、ペアバンの2名は一緒に同じ部屋に入ればいいという事ですね」

モノクマ「そういうこと」

こまる「それで、部屋に入ったらどうすればいいの?」

モノクマ「投票をしてもらいます」

霧切「投票?」

モノクマ「詳しい説明は後でしよう。その方がわかりやすいと思うからさ。とにかく、部屋に入った入った!」

日向(モノクマの言いなりになるのは癪に障るが、今はそうするしかなかった)

日向(誰がどの部屋に入ってもいいという事だったので、俺たちはモナカの要望を聞く以外は適当に分かれて扉の前に向かった)

日向(俺と狛枝が流れに任せて辿り着いたのは、一番左端の部屋だった)

日向(俺は手にしたカードキーを部屋の脇にあるカードリーダーの通し、部屋を開け……)

モノクマ「FDルームが解放されました! 投票の締め切りまで残り45分です!」

日向「なんだ……このゲームにもタイムリミットが……って」

日向「……え?」

狛枝「え……」

日向「な……なんだ……部屋に誰かが倒れて……誰なんだよ、コイツは!」

日向(部屋のど真ん中に髪の長い知らない女性がうつ伏せになって倒れている……)

狛枝「とにかく、早くみんなを呼ぼう!」

日向(俺よりも先に動いたのは狛枝だった)

日向「あ、ああ……!」

日向(俺はそのあとに続き……)

日向「おい! みんな来てくれ! 人だ! 人がいる!」

日向「部屋の中に女がひとり倒れているんだ!」

日向(みんなが集まるのを待たずに、俺と狛枝は部屋の中へと飛び込んだ)

日向(女性のかたわらに駆け寄り、その体を仰向けに倒す)

日向(すると目に飛び込んできたのは――)

日向「血……血だ……!」

日向(慌てて女性のくちもとに耳元を添える)

日向(続けて首筋に手を伸ばし、頚動脈を探った)

日向(ひんやりとした感触が指先にしみる……)

こまる「な、なに? どうしたの……!?」

モナカ「もしかして……その人……」

日向「見るな、モナカ! こまるはモナカを連れてここから離れろ!」

こまる「う、うん……!」

K「ということは、その人はやはり……」

狛枝「……息もないし、脈もないみたいだね」

狛枝「すでに冷たくなっているから、だいぶ前に――殺されていたんじゃないのかな?」

日向(俺と同様に女性の安否を確認していた狛枝が静かにそう告げた……)

五月雨「殺された……!?」

霧切「事故や事故死には確かに見えないわね」

日向「霧切! お前も向こうへ……」

霧切「胸を何かで突き刺されているようね。けれど、室内に凶器は見当たらない」

霧切「という事は、犯人がそれを持ち去ったか、あるいは肉体の一部が凶器だったという可能性も……」

日向「お、おい!」

日向(霧切はなるべく現場を踏み荒らさないように気を付けたような足取りで部屋の中と女性の様子を軽く調べる)

日向(その様子はなんだか手慣れたようにも見えるが……)

五月雨「肉体の一部……?」

霧切「たとえばその人物が怪力の持ち主で、指先が鋼鉄に覆われていたりすれば、胸を貫くのも不可能ではないでしょう?」

K「霧切さん。それはどういう意味でしょう」

霧切「ただのジョークよ。真に受けないでちょうだい」

日向(と言っても、半分は本気で……少なくとも可能性のひとつとして考慮している事は確かなような口ぶりだった)

霧切「いずれにせよ、凶器がなんなのかくらいは傷口をあらためればすぐにわかる事だわ」

霧切「とりあえず、保健室へ運びましょう。女性だもの。こんな場所で胸元をさらすわけにはいかないわ」

霧切「それに、保健室には検死に適した機材もそろっていたようだし……」

日向「け、検死……!? けど、そんなこと出来る奴は……」

霧切「軽くなら私にも出来るわ」

日向(検死が出来る中学生って……な、なんなんだよ、こいつは……!)

霧切「では、男性のみなさん。手伝ってもらえるかしら?」

日向(かくして、女性の遺体は俺と狛枝とKで保健室へと搬送することになった)

日向(苗木も『男性のみなさん』の中に含まれているはずだったが、彼は一切手を貸そうとしなかった)

日向(それどころか遺体に近付こうとさえせず、ただ遠巻きに俺たちの事をじっと見ていただけだった)

日向(その瞳はどんよりと濁り、ほのかな熱を帯びていた)

日向(こちらを睨みつけているようでもあり、しかし同時に俺たちのことなどまるで見ていないようでもあった)

日向(そういえば、苗木は死体を発見してからまだ一度も口を開いていない)

日向(呼吸さえもしていないのではないかと思うほどだった)

日向(血の気の失せた顔はとても人のものとは思えず、そのぎこちない足取りは鉄球を引きずる囚人のように重かった)

日向(女性の遺体は驚くほど軽かった)

日向(俺たちはその体が折れてしまわないように、そっと優しく保健室のベッドに横たえた)

日向「安らかな死に顔だな……今にも起き上がってきそうだ」

狛枝「あまり苦しまずに亡くなったのかもしれないね」

七海「それだけが唯一の救い……なのかな」

霧切「さて、申し訳ないけれど、ご遺体をあらためさせてもらう事にするわ」

日向「いくらなんでも、こんな子供に遺体を調べさせるのにはやはり抵抗があるんだが……」

霧切「……」ムッ

五月雨「あ、あー、えーっと、大丈夫大丈夫! 私も一緒についてるからさ! ね?」

日向「五月雨は検死が出来るのか」

五月雨「えっとね……そこにあるの、小型の医療用のスキャナなの」

狛枝「そういえば、五月雨さんはこの保健室を調べていたんだったね」

五月雨「うん。でね、詳しい説明は省くけど、あれって生体の自動診断解析装置なんだよ」

五月雨「それを使えば、検死のような事も出来る。……はず」

日向「そうなのか」

日向(五月雨が説明をしている間に、霧切がその小型の医療用スキャナで女性の全身をスキャンし始めていた)

日向(結果は瞬く間に表示された)

性別:女性
推定年齢:10代後半から20代前半
状態:死亡
死因:失血死
死亡推定時刻:3時間~4時間前
損傷個所:左胸部第4肋間から心臓(左心室内腔)にかけて刺創あり
創の性状:創縁=整 創角=鋭・鈍 創洞長=150mm 創口長=30mm 鈍側創端幅=3㎜
所見:上記創の性状から、刺創は有尖片刃器によるものと推察される


日向「うーん……よくわからないな。有尖片刃器ってなんだ?」

霧切「先の尖った刃物の事よ。ナイフや包丁みたいな」

日向(中学生より知識量が無いって若干ショックだな……)

狛枝「要するに鋭利な刃物で心臓を一突きされたって事かな?」

K「これでひとまず、僕への嫌疑は晴れた事になるでしょうか」

霧切「いいえ、悪いけどそういう訳にはいかないわ」

K「何故です?」

霧切「この女性が発見されたのは、6つあるうちの一番左端にあるFDルームだった」

霧切「ここに閉じ込められていたのは言うまでもなく……」

霧切「私とあなた」

霧切「けど、私は外に出るまで意識を失っていた。それはあなた自身が証明してくれる筈よ」

霧切「でも私は気を失っていたからあの部屋の最初の様子は確認していない」

K「待ってください。断言しますが、僕とあなたがあの部屋にいた時は彼女はいなかった」

K「おそらく何者かが、あとで運び込んだのでしょう」

モナカ「けど、正面の扉にはロックがかかっていてカードキーがなければ開かなかったんだよ? それはどう説明するのー?」

K「確かにそうですが……」

七海「天井のハッチももう開く事は出来ないって言ってた。だとすると、死体を室内に運び込むのは不可能……と思うよ」

モナカ「じゃあ、やっぱりKさん。あなたが殺しちゃったんじゃない?」

K「……」

日向(室内に緊迫したムードが漂う……しかし、そこに底抜けに明るく不快な声が響いた)

モノクマ『投票の締め切りまで、残り10分です!』

モノクマ『プレイヤーはすみやかに投票を済ませてください!』

モノクマ『所定の時刻までに投票を行わなかった場合、未投票者の選択は【希望】に設定されます!』


日向「なんだ今のアナウンスは……」

こまる「さっぱり意味がわからないね……」

霧切「けど、ひとつだけ確かなことがあるわ」

霧切「どうやら、10分以内に『投票』を済ませないと、何かまずい状態になりそうだってこと」

霧切「……気になる事はあるけれど、この女性の事についてはひとまず置いておきましょう」

日向「……そうだな」


――


【体育館】

日向「この場所に入るのか……なんだか気が引けるな。さっきまで死体が横たわっていた場所だし……」

日向「って狛枝はどこだ?」

狛枝「上だよ」

日向「上……? って屋根の上か! 何やってんだよ、お前!」

日向「他の連中はとっくにFDルームの中に入っちまったんだぞ!」

狛枝「うん、ちょっとね。一応確かめておこうと思って」

日向「確かめるって……まさか、ハッチの事か?」

狛枝「その通り。開いてみようとしてもびくともしない」

狛枝「という事は、やっぱりこのFDルームは密室状態だったって事だよ」

日向「あの女性が発見された時の事か?」

狛枝「うん」

日向(ならば、Kの容疑はますます否認出来ない事になる訳か……)


モノクマ『投票の締め切りまで、残り5分です!』


狛枝「おっとごめん。行こうか」

日向「ああ」


――

狛枝「見てみなよ。奥のモニターに何か表示されてる」

日向「確かに……」


投票を開始します
投票を行う場合は画面下にある
【START】ボタンに触れてください

このとき入り口の扉は自動的に閉鎖されます
閉じた扉はこのラウンドが終了するまで
開放されないので注意してください


【START】



狛枝「えいっ」ポチッ

日向「うわー! 馬鹿! お前またそういう……」


ガシャン


日向「扉が……」

狛枝「閉まったね」

モノクマ「やあやあ、やっとそろったみたいだね。待ってたよ」

日向(モノクマが最初に映った時と同じモニター内に姿を現した)

モノクマ『時間がないから手短にルールの説明をするよ。ちょっと黙っててね』

モノクマ「さて……オマエラにはこれから【投票】を行ってもらいたい訳なんだけど、これって実は選挙なんかにある投票とは少し勝手が違うんだ」

モノクマ「ラウンドごとに対戦相手が存在し、ひとつひとつのラウンドは個人戦になっている」

モノクマ「と言っても、【ペアバンの二人は一人とみなした上での個人戦】だけどね」

モノクマ「だから正確に言うと【2対1の戦い】って事になるね」

モノクマ「さて、その対戦相手は誰なのかっていうと、【さっきチームを組んで同じ色の扉に入った人物】がそれになる」

日向「という事はつまり……」

狛枝「ボクたちの対戦相手は七海さんっていう事だよ」

狛枝「逆に、七海さんの対戦相手もボクと日向クンという事になるだろうね」

モノクマ「ではここで、奥のモニターにちゅーもーく!」


A:希望
B:絶望


モノクマ「表示は見えたかな? オマエラがする事はたったひとつ――【希望か絶望、そのうちのどれかを選ぶこと】」

モノクマ「その結果によって、オマエラの【BP=バングルポイント】は増えたり減ったりする事になるんだ」

モノクマ「結果は以下の通りになるよ」

モノクマ「たとえば、自分が【希望】を選び相手も【希望】を選んだ場合――このケースは【自分も対戦相手も+2点される】」

モノクマ「次に、自分が【絶望】を選び相手も【絶望】を選んだ場合――このケースは【自分も対戦相手も点数は加算されず、±0点】だ」

モノクマ「じゃあ、自分が【希望】を選び相手が【絶望】を選んだ場合だけど――このケースは【自分の点数は-2点になり】そして【対戦相手の点数は+3点】される事になるんだ」

モノクマ「その逆で、自分が【絶望】を選び相手が【希望】選んだ場合――このケースは【自分の点数は+3点になって】そして【対戦相手の点数は-2点】になるんだよ」

モノクマ「……で、ペアバンの場合はどうなるのかって話だけど……ここでも二人で一人のルールは適用されるから、二人が投じる事の出来る票は一票のみなんだ」

モノクマ「だからと言って、今話した増減値が二分の一になったりする事はないから安心していいよ!」

モノクマ「とまあ、こんな感じで基本的な説明は終了だよ。本当はもっと言わなきゃいけないことがあるんだけど……時間が無いから仕方ないよね。だって……」

モノクマ「投票の締め切りまで、残り1分です!」

モノクマ「ということだから、またあとで! Have a nice trouble~!」


シュンッ

日向「あっ……くそっ! またか!」

狛枝「……」

狛枝「日向クン。時間が無いよ」

日向「だがっ……!」

狛枝「日向クン。ボクはキミの決定に従おうと思っている」

日向「……え?」

狛枝「キミがどちらを選ぼうと、ボクは文句を言わないと言っているんだよ。つまり……」

狛枝「投票権をキミに委ねると言っている」

日向「ど、どうしてだ……?」

狛枝「……。それはね。キミの【希望】を見たいからだよ」

日向「は……? それはどういう事だ? 俺に希望に投票しろと言っているのか?」

狛枝「そういう事じゃない。キミがどちらに投票しようと……それが【キミの希望】であるのなら、ボクは構わないって言っているんだよ」

日向「い、意味がわからない……」

狛枝「ふぅん……。じゃあ、ひとつだけ助言しておこうかな」

日向「助言……?」

狛枝「この投票、ボクは【絶望】に投票するべきだと思っている」

日向「なっ……なんでだよ!? 七海を裏切れっていうのか!?」

狛枝「七海さんが【希望】を選ぶとは限らないからね」

狛枝「もしも、ボクたちの選択が【希望】で彼女の選択が【絶望】だったら……ボクたちのBPからが2点が引かれる事になる」

狛枝「……BPが【1】になったら、もう後がないんだ。だから」

日向「待てよ。『後がない』って……どういう意味だ?」

モノクマ「投票の締め切りまで、残り30秒です!」


狛枝「いいから早くしなよ」

日向「お前……なにか隠しているのか!?」

日向「俺の名前を知っていたのもそうだし、その後だってお前は動じる素振りをあまり見せなかった!」

日向「まるで初めから、何もかも知っていたかのように……」

日向「まさかとは思うが、お前……」

狛枝「……」

日向「答えろ! 『後がない』ってなんの事なんだよ!」


モノクマ「投票の締め切りまで、残り10秒です!」

狛枝「……」

モノクマ「9……8……7……」

日向「……」

モノクマ「6……5……4……」

狛枝「……」

モノクマ「3……2……」

狛枝「BPが【0以下】になれば」




狛枝「死ぬ」




モノクマ「1――」




A:希望
B:絶望

選択
安価下

希望

モノクマ「第1ラウンド終了ー! 結果は体育館内のディスプレイに表示されます!」

モノクマ「FDルームの扉を開放します!」



日向(俺と狛枝はFDルームを出た)

日向(他の者たちも次から次へと飛び出してきて、我先にとばかりにディスプレイの前に群がっていく)

日向(ただひとり、苗木の足取りだけは相変わらず重かった)

日向(一体なにを思っているのだろう、苗木は……)


狛枝「ふふっ……」

日向「何をひとりで笑ってるんだよ……お前は」

狛枝「【BPが0以下になれば死ぬ】と聞いた上で、自分の意志で【希望】に投票した日向クンに心を打たれただけだよ」

狛枝「それが【日向クンの希望】……七海さんを信じるというその希望は果たして……あははっ」

日向「お前はいいのかよ」

狛枝「何が?」

日向「もしこれで七海が絶望に投票していたら……俺だけでなく、お前のBPも【1】になるんだぞ!?」

狛枝「だから、言ったじゃないか。ボクは日向クンに委ねる、文句は言わないって」

狛枝「それは、結果も含めての事なんだよ?」

狛枝「仮にBPが【1】になったとして……キミが【真の希望】であるのなら、そのくらいの絶望は乗り越えられるとボクは信じている」

狛枝「だから、あまりボクをガッカリさせるような言動はしないで欲しいな」

日向「狛枝……お前は……」

狛枝「それよりも、少し気になった事があるんだけど」

日向「そ、それよりもって……!」

狛枝「日向クンはどうして、【七海さんが希望を選択する】と思ったのかな?」

日向「……は?」

狛枝「ボクが絶望を選択するべきだと思うと告げた時、キミは言ったよね?」

狛枝「『七海を裏切れっていうのか!?』……ってさ」

狛枝「これって、日向クンは七海さんが希望を選択するって確信していたようにも聞こえるんだけど?」

日向「そ、それは……七海がこの状況下で絶望を選択するような奴には見えなかったというか……」

狛枝「出会ったばかりの人間の何がわかるっていうんだい?」

日向「お前なぁ……!」

モノクマ「おぉーい! 日向クーン! 狛枝クーン! なにしてるんだよぉー!」

モノクマ「結果発表始めちゃうよぉー!」

狛枝「行こうよ、日向クン。とにかく結果とやらを聞こうじゃないか」

狛枝「……もしかしたら――が……変わってるかもしれないし……」

日向「え? 何が変わってるって……」

日向(狛枝は俺の言葉なんか耳に入っていないとでも言う感じですたすたと先へ行ってしまった)

日向(俺は……狛枝の事がわからなくなっていた)

日向(いいや、初めからアイツの事なんて、何ひとつわかっていなかったのかもしれない)

日向(同じペアバンで、一心同体の運命共同体という言葉に惑わされていたのだろうか)

日向(狛枝の言う『出会ったばかりの人間の何がわかるのか』……というのは、狛枝にも当てはまっているという事を俺はこの時まで失念していたのだ)

モノクマ「うん。そろったみたいだね」

モノクマ「ほいじゃあさっそくだけど始めることにしよっか!」

モノクマ「第1らうんど結果発表ぉぉぉ!」

モノクマ「オマエラ、画面にご注目ください!」


     PAIR       SOLO
   【K 霧切】   【五月雨】
現BP: 3 / 3      3
選択: 絶望       希望
増減: +3       -2
結果: 6 / 6     1


     PAIR        SOLO
   【モナカ こまる】【苗木】
現BP: 3 / 3      3
選択: 絶望       希望
増減: +3       -2
結果: 6 / 6     1


    
     PAIR        SOLO
   【日向  狛枝】  【七海】
現BP: 3 / 3      3

選択: 希望       希望

増減: +2        +2
結果: 5 / 5      5

日向(+2点……!)

日向「ありがとう! 七海」

七海「ううん、お礼なんて言わないで。当然の事だから」

七海「だって私、日向くんの事も狛枝くんの事も、信じてたもん」

狛枝「信じあう心が希望を生んだようだね……素晴らしいよ!」

日向「……」

七海「?」

狛枝「けど、他のチームはそうでもないみたいだね」

苗木「こまる、これは一体……」

こまる「ち、違うんだよ! だってモナカちゃんは協力を選ぶっていうから! だから、私はモナカちゃんに投票を任せて……」

モナカ「ちーがーうーのー! データーラーメーなーのー!」

モナカ「こまるさんのうそつき!」

こまる「なっ、なにが嘘つきなの!? 嘘つきはそっちでしょ!?」

モナカ「モナカはあの装置には触ってないもん。選択したのはこまるさんでしょ?」

こまる「違うよ! 違うんだってば! 信じてよお兄ちゃん!」

苗木「……」



日向(お兄ちゃん……?)

五月雨「……とりあえず、話はわかったよ」

霧切「……ごめんなさい、お姉様」

K「僕からも謝ります。本当に申し訳ありませんでした」

五月雨「とにかく過ぎたことを言ってもしょうがないもんね」

五月雨「次の投票で挽回すればいいだけだからさ」



五月雨「ねえ、モノクマ。次のラウンドはいつ行われるの?」

モノクマ「よくわかったね。次のラウンドがあるって」

五月雨「だってさっき第1ラウンドって言ったじゃない? 第1があるなら第2だってある筈でしょ?」

K「それに、そもそもこの投票はBPを【9以上】にする事が目的だったはずです」

K「二回目がなければ、誰もその数値に達する事が出来ません」

モノクマ「うん、まあそうだね」

モノクマ「確かに、オマエラが言った通り、第2ラウンドは開催されるよ」

霧切「いつ?」

モノクマ「いつかはわからない。投票の受付は【FDルームの扉=FDゲート】が開いた時からは始まるからね」

七海「既に開いてるけど……?」

モノクマ「そうだね。じゃあ、閉めちゃおうっと」

ガチャン ガチャン ガチャン……


モノクマ「FDゲートが閉鎖されました! 第2ラウンドは【月ノ回】です!」

モノクマ「ゲートは【月のマーク】が記されたカードキーにより開錠されます!」

日向「月のマーク……?」

日向「そういえば、今手にしているカードキーは太陽のマークが記されているが、これはもう使えないって事か?」

モノクマ「そうなるね。次は月のマークがついたやつを探さないと」

モナカ「で、結局トータルで何回投票は行われるの?」

モノクマ「さあ? 何回になるんだろうね?」

モノクマ「回数はわからないけど、とにかく誰かが【9】の扉を開くまでは続けるつもり」

苗木「逆に言うと、誰かのBPが【9以上】になった時点でゲームは終了って事か」

モノクマ「ううん。その人が【9】の扉を開きさえしなければ、ゲームは継続されるよ」

日向「ひとつ聞いてもいいか?」

モノクマ「なーに?」

日向「確か、CDの第二扉には人数制限があったよな? 3人でチームを組まないと入れないはず」

日向「じゃあ、【9】の扉のほうはどうなんだ? やっぱり3人じゃないと……」

モノクマ「ううん。【9】の扉については人数制限はないよ。ルール上は9人全員で脱出することだってできちゃうんだ」

モノクマ「それから、少し訂正させて欲しいんだけど……CDの第二扉を通るには必ず3人でチームを組まなければならないっていうの。それ、間違ってるから」

日向「え? けど……」

モノクマ「正確には【バングルが3つあればいい】んだよ。あの扉は何も生体認証を行っている訳じゃないからね」

霧切「正しい組み合わせのバングルさえ揃っていれば2人だろうと1人だろうと扉に入れる……そういう事ね」

モノクマ「ご名答!」

こまる「けど、このバングル外れないんだよ? だったらやっぱり3人で行くしか……」

モノクマ「え? 外れるよ?」

こまる「えぇ!? ど、ど、ど、どうすれば外せるの!?」

モノクマ「方法は2つある」

モノクマ「ひとつめは――【9】の扉を開いて脱出する事」

モノクマ「この建物を出れば、バングルのロックは自動的に解除される」

モナカ「ふたつめはー?」

モノクマ「モナカさん。キミはすでにその方法を知ってるんじゃないの?」

モナカ「え?」

モノクマ「そのバングル、本当に取りたいって思ってる?」

モナカ「あたりまえなのー! だってかわいくないもん!」

モノクマ「あっそ。だったら簡単だよ。教えてあげる」



モノクマ「死ねばいいんだ」

日向「……!?」


モノクマ「心臓には――っていうか、他の筋組織についても言える事なんだけど、わずかな電気が流れているのを知ってるかな?」

モノクマ「で、電気が流れているって事は、当然そこから微弱な電波も放たれているってことになるわけで……」

モノクマ「オマエラのバングルはその電波を常に拾ってるんだよ」

モノクマ「んで、その電波が途絶えると……」

狛枝「バングルのロックが解除されるんだね」

モノクマ「そういうこと。これがふたつめの方法。心臓が止まればその人のバングルは外れるようになってるんだよね」

モノクマ「これらふたつの方法以外では決してバングルを取ることはできない」

モノクマ「もしも無理にはずそうとしたり、破壊を試みようとした場合、即座にルール違反とみなされて【オシオキ】がまっているので気を付けてね! うぷぷぷ……」

モノクマ「あ、そうそう! 運が良ければ次のラウンドで、実際にバングルが外れるところを見られるかもしれないよ」

モノクマ「当事者にとっては運が悪ければ、だろうけどね。うぷ、うぷぷぷぷ……!」

苗木「次のラウンド……?」

モノクマ「うん」

五月雨「どういう意味?」

モノクマ「わからないかなぁ。次の投票で誰かが死ぬ事になるかもしれない。そう言ってるんだよ」

モノクマ「まあ、死ぬとしたら、苗木クンか五月雨さんのどっちかなんだけどね。あ、両方って可能性もあるか!」

苗木「な、なんでだよ!」

五月雨「どうして私が死ななきゃいけないの!?」

モノクマ「BPが【0以下】になった人にはルール違反を犯した時と同じように【オシオキ】が待ってるからだよ」

苗木・五月雨「……!?」

日向「……」

日向(狛枝の言っていた通りだ……)

日向(なんでアイツはモノクマから聞く前にこの事を知っていたんだ)

苗木「そうか……ボクと五月雨さんのBPは【1】……次のラウンドで2点引かれて【0以下】になるのはボクたちしかいないんだ」

五月雨「ふざけないでよ! どうしてそんな大事な事を最初に言わないの!?」

五月雨「これはゲームなんでしょ!? 正確なルールも知らされずゲームをするなんてフェアじゃないよ!」

モノクマ「フェアだと思うけど? だって他のみんなだって知らなかったわけだし」

モノクマ「ね? 狛枝くん」

狛枝「……。そうだね」

日向「……」

日向(俺は今の話を頭でまとめた)


・投票は誰かが【9】の扉を開くまで続けられる

・【9】の扉に人数制限はない
9人全員で脱出する事も可能

・CDの第二扉は、正しい組み合わせのバングルさえあれば開く

・バングルのロックは、建物を出るか、または心臓が停止することによって解除される

・BPが【0以下】になると、【オシオキ】によって死ぬ

モノクマ「最後にひとつだけ言っておこう」

モノクマ「オマエラが次に開くべきCDは下のフロアにある。もう見たよね?」

モノクマ「例の【赤・青・緑】の3枚の扉がそれだ」

モノクマ「これらの先に進むには、表示色が【水色・紫色・黄色】になったバングルが必要なわけなんだけど……」

モノクマ「実はこれ、オマエラはもう持っていたりするんだよね。バングルを見てごらん」


日向「文字の色が……変わってるな。俺のは【赤】から【水色】になっている」

五月雨「あ、私も同じ。水色になってる」

霧切「私もよ。けど変わっているのは色だけじゃないわ。【ペア】と【ソロ】の区別もさっきと違っている」

五月雨「私は【ソロ】から【ペア】に、霧切ちゃんは【ペア】から【ソロ】になってるね」

K「僕のバングルも【ペア】から【ソロ】に変化しています。【紫色】の」

苗木「ボクはその逆だね。【ソロ】から【ペア】になってる。【紫色】のね」

こまる「私は【ペア】のままみたい。色は【紫色】」

七海「私は【黄色】……【ソロ】のまま変化なしだよ」

七海「という事は、狛枝くんと、モナカさんも【黄色】だね?」

モナカ「そうなのじゃー!」

狛枝「二人とも【ペア】のね」

こまる「いつの間に変わったの……?」

モノクマ「FDゲートを閉鎖した時だよ」

モノクマ「FDゲートが閉じると、バングルの表示色とソロとペアの区別が自動的にランダムにシャッフルされるようになっているんだ」


モノクマ「さて……大体の説明は終わったかな。次に会うのはおそらく再び投票タイムが訪れた時になるだろうね」

モノクマ「ま、投票タイムまでたどり着けるのかどうかまではわかんないけど」

モノクマ「ほいじゃまた、どこかで! Have a nice tragedy~!」




……
…………
………………

日向(モノクマはまた姿を消してしまった)

日向(次にCDの第一扉が開くまで、あと40分近くあるようだが……)

五月雨「ねえ、他に出口があるかどうか、今のうちに探してみない?」

K「賛成です。こんなところでじっとしていても仕方がありません」

狛枝「じゃあ、分かれて探索する事にしようか?」

狛枝「集合時間はCDの第一扉が開く5分前――場所はCDの第一扉前という事でいいかな?」

日向(意義を唱える者はいなかった)

日向(みんなは3つの扉に分かれて散っていった――)


――

今回の更新はここまでです
次回の更新でまた安価取るところまでいく予定です

【学生食堂】


五月雨「あ、日向くん」

モナカ「グッドタイミングってやつだね」

日向「どうした?」

五月雨「この食堂を最初に調べたのは確か日向くんだったよね?」

日向「ああ。俺と狛枝と七海でここの探索を……」

五月雨「その時、どこか怪しいところは見つからなかった?」

日向「怪しいって?」

モナカ「秘密の抜け道が隠されてそうな場所とかー?」

日向「そんなもんあったらとっくに教えてるよ」

日向(と言っても、ここはほぼ七海に任せきりだったから俺も自分の目で再度確認しに改めてやってきたんだけどな……)

五月雨「じゃあ、他に何か変わったところは?」

日向「変わったところ? そうだな……この部屋全てが変わってるといえば変わってると思うけどな」

モナカ「まあそれはそうだけど」

五月雨「調理器具は一式揃ってるし、ラップやアルミホイルもあるから冷凍食品の簡単な調理も出来る。調理場の方は普通に機能するみたいだけど……」

五月雨「たとえば、この壁にあるアルファベットとか、なんだろうね?」

モナカ「黒い文字と赤い文字で書いてあるけど……暗号?」

五月雨「【RLRL OEDI IMLI OONR ONEN】 このうちの【L.O.I.N】だけ赤いのか」

日向「それは、多分この部屋を脱出する時のギミックの一部分だと思うぞ」

モナカ「多分?」

日向「あ、い、いや……その……」

日向(脱出する時、女子に任せきりだったとか恥ずかしくてあまり知られたくないな……)

日向「そ、そういえば、モナカ。車椅子回収出来たんだな」

モナカ「うん! ちゃんと最初に居たFDルームの中にあったんだ。モノクマが意地悪して取り上げるような事はなくてホッとしたよー」

日向(モナカは車椅子に乗りながらくるくると自由自在に回ってみせる。どうやら、自分だけで運転出来るタイプの車椅子のようだ。かなり高性能に違いない)

五月雨「ねえ、これなに?」ペラッ

日向「ああ……それは希望ヶ峰学園の生徒名簿じゃないかって狛枝と話していたんだが」

五月雨「ふーん? なになに……【超高校級の探偵】……かぁ」

日向(そういえば、あの時狛枝が何か言いかけていた気がするけど……)

モナカ「ふむふむ。これ【高等本科】の方の名簿っぽいね」

日向「【高等本科】……?」

モナカ「希望ヶ峰学園は【超高校級の才能】を集っているから高等部が中心だけど、付属の小等部とか他にも色々な人間が集まってるって知らない?」

日向「そうなのか?」

モナカ「そうなのじゃ! なにを隠そう、モナカこそがその付属の小学校に在籍している【超小学生級の学活の時間】なんだよー」

日向「え!? じゃあ、モナカも希望ヶ峰の関係者って事か!?」

モナカ「そういうことだね」

五月雨「へえー。さしずめ【未来の超高校級候補】ってところなのかな? すごいね」

モナカ「えっへん」

五月雨「けどこれ、名簿って言っても縦半分に割かれてるよね? もう半分は見つからなかったの?」

日向「どうやらここには無いらしい。五月雨たちのところにはこの名簿のもう半分は無かったのか?」

日向「いや……名簿でなくてもいい。何か変わったものや、変わったことは?」

モナカ「学生寮の方には特に無かったかな。あ、でも猫さんの本が一冊あったんだにゃー」

五月雨「猫の本……?」

モナカ「うん。『箱の中の猫は生きてるか、死んでるか』っていう感じの内容の」

日向「なんか聞いた事あるような感じの中身だが……でも、その本がなにかの手がかりになりそうとは思えないな」

モナカ「そうだよねー」

五月雨「保健室の方は?」

五月雨「えーと……それが、その……実はひとつだけあるんだよね」

日向「なんだ?」

五月雨「別に隠そうと思ってたわけじゃないんだよ? ただタイミングがなくて言いそびれちゃってただけで」

日向「前置きはいいから要点を頼む。一体なにを見つけたっていうんだ?」

五月雨「これだよ。見て」ペラ

日向「なんだ? ……書類か?」

五月雨「誰か宛のメールを紙に印刷したものみたいなんだけど……」

日向「えーと、件名には定期報告とあるが……ん……?」

日向「『【人類史上最大最悪の絶望的事件】以来、感染拡大を続ける【絶望病】ウイルスの蔓延は、いまだ終息せず……』?」

日向「なんだ? これ」

五月雨「とにかく目を通してみて」

日向「あ、ああ。えーと……『調査の結果、このウイルスによるものと見られる死亡者数が、推定で十万人を超えたと発覚した』」

日向「『我々【未来機関】はこの事態に対し、早急な打開策を見つけねばならないだろう』

日向「『また、感染者の徹底的な隔離を行うため、施設の確保と施設環境の改善に努めてもらいたい』」

日向「……。まさかとは思うが、ここがその隔離施設だったりは……」

モナカ「モナカたちがその【絶望病】に感染してるっていうの? ないと思うけどなぁ」

五月雨「私たちって健康そのものじゃない? 絶望病にどんな症状が現れるかは知らないけど、それだけ死者が出ているっていう事は、よほど凶悪なウイルスであることは間違いないと思うし」

モナカ「そうだよね。モナカの足が悪いのは病気のせいじゃないし……あっ、日向さんやKさんの記憶喪失に関してはどうなんだろう?」

五月雨「うーん、記憶喪失が死に繋がるのかな? Kの方は割と大部分を忘れているようだけど、日向くんは一部の記憶だけなんでしょ?」

日向「あ、ああ……」

五月雨「第一、もしここが感染者の隔離施設だとしたら、閉じ込められた人間があまりにも少なくないかな?」

日向「確かにそうだな」

モナカ「それにモナカたちは今、『ノナリーゲーム』をさせられているんだよ。どうして感染者がそんなゲームをやる必要があるの?」

五月雨「治療の為……とは到底思えない内容だしね」

日向「なら、俺たちがさらわれてきた件と、絶望病のウイルスについてはなにも関係がないと……?」

モナカ「そうじゃない?」

日向「……けど、それにしても気にはなるよな。【絶望病】のこと」

日向「外には家族や友人だっているわけで……」

五月雨「う、うん。そうだよね……」

日向「そもそもこのウイルスが広まったのはいつなんだ? 俺はそんなニュース一度も耳にした事はないぞ」

五月雨「メールの文章には『【人類史上最大最悪の絶望的事件】以来』って書かれてるけど……私にはその事件の事もさっぱり心当たりがないよ」

日向「俺もだ」

モナカ「モナカもなのじゃー」

日向「どうやら【未来機関】とやらが解決に努めているようではあるが……」

モナカ「もしかしたら、その【未来機関】っていう人たちがモナカたちをこんな目にあわせてるのかな?」

五月雨「けど、私たちがここにいる事と、ウイルスの件は関係ないってさっき……」

モナカ「他に理由があるのかもしれないよ?」

日向「他の理由……って?」

モナカ「それは知らないけどー」

五月雨「うーん……とにかく、考えても答えが出るような問題じゃないし。手がかりを探そうよ」

日向「……そうだな。じゃあ、俺は他の場所へ行ってこよう」

【保健室】


狛枝「やあ、日向クン」

日向「ここには狛枝と……こまるとKがいるのか。どうだ? 何か見つかったか?」

こまる「いいえ、何も……」

日向「そうか……」

K「ここは僕と霧切さんと五月雨さんとで徹底的に調べ尽くしましたので、目新しい発見はもう特に無いかと思われます」

日向「だったらどうしてお前はこの部屋に?」

K「あの女性の事が気になったものですから」

日向(保健室のついたての向こうにあるベッドには、まだ先ほど発見した女性の遺体が横たわっている……)

K「一体、誰がこんな事を……」

狛枝「今のところ判明している事実から考えると、K……キミが一番怪しいんだけれどね?」

K「そうでしょうね。否定はしません。否定できる材料もありませんので」

こまる「そ、それはつまり……自白って事?」

K「いいえ。今のところ判明している事実から、僕が犯人でないという証明が出来ないというだけの事です」

K「ですが……それは、あなたたちも同じ事ではないのですか?」

日向「え……?」

K「僕が状況的に怪しいからといって、それがイコール『僕以外のあなたたちが犯人ではない』という確実な証拠にはなりません」

日向「それは……そうだが……」

日向(なるほど……Kは自分の無実を証明する為にこの女性を調べにやってきたのか?)

日向「なあ、今までバタバタしていて聞きそびれちまっていたが、そもそもあの女性は一体何者なんだ?」

K「さあ……見覚えのない顔ですね。と言っても、僕は記憶を失っているのでなんとも言えないのですが」

狛枝「うーん……ボクは何処かで見た事があるような気がするんだよね」

日向(またこいつか)

K「誰なんです?」

狛枝「いいや、それははっきりとは……それに、人違いかもしれない」

日向「どういう事だ?」

狛枝「見たことある気がするって言ったけど、その記憶よりここにいる彼女の方が大人びている気がするっていうか……ボクの記憶にうっすらといる誰かのそっくりさんなのかも」

日向「他人の空似ってやつか。……こまるはどうだ?」

こまる「……」

日向「こまる?」

こまる「……え? なんですか?」

日向「いや、そこにいる女性に見覚えがないか、っていう話だが……どうしたんだ? ぼーっとして」

こまる「いえ……」

日向「……?」

狛枝「ねえ、K……キミの記憶喪失ってやつ、本当なの?」

K「そこまで疑うのですか?」

狛枝「だって……ね? 日向クン?」

日向(俺に振るのかよ! ……だが、まあ確かに……)

日向「疑うも何も……おまえ自分の姿、鏡で見たことあるのか?」

狛枝「頭の天辺からつま先まで、怪しさ成分で満たされているよね」

K「はあ……すみません、妙な恰好していて」

狛枝「根本的な事を聞くけれど、それって脱ぐ事は出来ないの?」

K「はい。何度も試してみたのですが、無理でした。何処をどうすれば脱げるのかさせわからないのです」

K「むしろ逆におたずねしたい。僕の目の届かないところになにか……これを外す為のスイッチのようなものはありませんか?」

日向「ふむ……」

日向(言われて、俺はKの背後へと回った)

日向(気になる箇所は、すぐに見つかった)

日向「おい、うなじのところ……穴があるぞ?」

狛枝「本当だ。何かの差込口みたいだね」

日向「【OPEN】って文字があるから、ここにプラグかなにかを突っ込んでひねれば……」

K「このマスクとスーツを外せる事が出来るかもしれない……と」

K「では、そこに刺さるような何かを見つければいいわけですね」

日向「たぶんな」

K「なるほど……では僕はその何かを探しに別の場所へ行こうと思います」

狛枝「ボクはもう少しここに残って調べようかな。Kたちが発見出来なかった何かが見つかるかもしれないし」

日向「こまるは……あれ?」

狛枝「こまるさんなら、ボクたちが話をしている間に出ていっちゃったみたいだけど」

日向「いつの間に……。俺も別の場所へ行くかな」

【学生寮】


日向「ここが学生寮か。部屋はたくさんあるが、ネームプレートの類は特についてないか」

日向(誰が使っている、あるいは使っていた形跡がわかれば、何か手掛かりになると思ったけど……)ガチャッ

日向「! おまえ……」

苗木「……日向クンか」

日向(苗木は部屋の端の方でぼーっと突っ立っていたが……手にしていた紙のようなものを素早く小さく畳むと無理やりポケットに捻じ込んでいた)

日向「苗木、今のそれは?」

苗木「いや……ただのポスターだよ。ここに貼ってあったものが剥がれて落ちていたから拾っただけで」

日向「ポスター?」

日向(確かに壁には何か貼ってあったような痕跡が残っている)

苗木「うん。この区域から脱出する時のギミックのひとつだったんだけど、今はもう自由に出入りできるから関係ないよ」

日向「ふーん……?」

日向(苗木は喋れるだけの気力はあるようだったが、やはり目の色が何処か曇っていた)

日向(それがやはり気がかりで……)

日向「なあ、苗木。一体なにがあったっていうんだ?」

苗木「なに、って……」

日向「あの女性の死体を発見してから、お前の様子は明らかに変だ」

苗木「そうかな。気のせいじゃないかな」

日向「……。わかった。じゃあ、質問を変えよう」

日向「お前とこまるの関係についてだ。こまるはお前の事を『お兄ちゃん』と言っていたが……」

苗木「こまる? ……あれ、言っていなかったっけ? ボクとこまるは兄妹だよ」

日向「俺は初耳だな。その情報は」

苗木「けど、どうしてそんな事を気にするのかな?」

日向「どうして? そんなの決まってる」

日向「俺たちはわけのわからぬままにさらわれてきて、わけのわからない場所に閉じこめられて、わけのわからないゲームをさせられている」

日向「この『わけ』を、少しでもわかるようにしたいんだ。ただそれだけのことだ」

日向「お前たちが兄妹でここに連れてこられた事は……ただの偶然なのか? お前は偶然だと思っているのか? 何か心当たりは……」

苗木「……」

ガチャッ


七海「あれ? 日向くんもいたんだ?」

日向「七海……それに霧切も」

七海「苗木くんしかいないのかと思ってた」

霧切「私たちの三人でここに来た後でわかれて捜索をしようって事になっていたのよ」

七海「何か収穫はあったのかな?」

苗木「ゴメン、特に何もないみたいだ」

霧切「そう。こちらもこれといってなかったの」

日向「七海の方もか?」

七海「うん。これといって変わったところは。まあ、この建物自体が『変わったところ』みたいなものだけどね」

日向「そうだな。あちこちにパズルやギミックみたいなもんが仕掛けられていて……それにしても、モノクマはどうしてこんなものを……?」

七海「うーん、そうだね。もしかしたら、それらを解くことを含めてノナリーゲームなのかもしれないよ」

日向「けど、ノナリーゲームはFDルームで行われる投票を複数回行いさえすれば成立するはずだろ?」

日向「特にパズルやギミックを解く必要なんてないと思うんだが……」

日向「そもそもノナリーゲームって一体何なんだ? どうしてモノクマはこんなゲームを俺たちにさせている……?」

七海「えーと、これも『もしかしたら』の話なんだけど……」

七海「例えば、何処かの大富豪たちの道楽って可能性はないかな? ゲームでよくあるパターンなんだけど」

日向「どこかに大金持ちの人たちが集まって、モニターで俺たちが右往左往する姿を見ながら楽しんでるとか……そういうやつか?」

霧切「道楽……ね」

苗木「道楽で人がひとり殺されたっていうのか……浮かばれないね」

七海「あの女性が亡くなったのは、ゲームとは関係ないかもしれないんじゃない?」

苗木「それは違うよ」

苗木「だって、もしも彼女の殺害がイレギュラーな事態だったとするのなら、モノクマがなんらかのコメントを残しているはずだよ」

苗木「けど、あいつはその事については一切触れようとしなかった。まるで何事もなかったかのようにゲームを淡々と進めていった」

苗木「それは何故か? ……彼女の殺害は、モノクマの計画のうちに含まれていたからじゃないのかな?」

霧切「少なくとも様子からしてあの女性が死んだところでこの状況に何も支障はない事は確かなのでしょうね」

日向「あの女性を殺したのは……俺たちをここに拉致してきた黒幕かもしれないってことか?」

苗木「おそらくね」

日向「その黒幕の目的……やっぱりどうも不明瞭だな」

日向(俺たちがここにいる『わけ』を少しでもわかるようにするには……)

日向(そういえば、苗木とこまるは兄妹で知り合いだった訳だが、もう一組知り合い同士がいた筈だ)

日向「なあ、ちょっと聞きたいんだが、霧切と五月雨ってどんな関係なんだ?」

霧切「どうして急にそんな話が出るのかしら?」

日向「苗木にも話していたんだが、俺たちがここにいる理由の手がかかりが欲しいからだ」

日向「霧切は五月雨と知り合いなんだろう? その繋がりが何かのヒントになるかもしれない」

霧切「……」

日向(霧切はこちらを睨みつけるようにしながらしばしの間沈黙した)

霧切「それを言う前に、こちらから少し確認をしてもいいかしら?」

日向「なんだ?」

霧切「先ほど、これは何かの道楽なのではという話が出ていたけれど、あなたたちの中に【黒の挑戦】という言葉に聞き覚えのある人はいる?」

日向「【黒の挑戦】……?」

苗木「ボクは知らないな」

七海「私もわからないけど、クソゲーのタイトルみたいだね」

霧切「……そう」

日向「それが一体どうしたっていうんだ?」

霧切「いえ、知らないと言うのならそれでいいの」

霧切「それで……私と結お姉様の関係だったわね。私とお姉様は……そうね。『同士』とでも言えばいいのかしら」

日向「同士? ってなんの?」

霧切「それを言う義理はないわ。今はね」

日向「なっ……どうして!」

霧切「あなたたちの事を信用しきれていないからよ。もしかしたら、あなたたちの中に私たちをここまでさらってきた黒幕がいるのかもしれないのだから」

日向「……!」

日向(俺たちの中に黒幕が……!?)

霧切「私と結お姉様の話はこれで終わりよ。けど、もしあなたたちの事を本気で信じてもいいと確信が出来たのなら、その時はもっと詳しい話をするわ」

霧切「……私にも、まだ断言出来るだけの情報も揃ってはいないのだし」

日向「……?」

霧切「何よりも、長話をしている時間はもうないみたいよ。バングルを確認して」

日向「え? ま、まさかっ……」ポチッ


00:04


日向「集合時間が過ぎてるじゃないか!?」

霧切「だから言ったでしょう? 時間はもうないみたいって」

七海「急いだほうが良さそうだね」

苗木「うん。行こうか」

――

モノクマ『カラードドアが、開放されました! カラードドア閉鎖まで、残り5分です!』



狛枝「遅いよ。一体何をしていたんだい?」

日向「す、すまん……」

五月雨「謝って済む問題じゃないよ! 人の命がかかってるんだからね!」

霧切「ごめんなさい、お姉様。少し話し込んでしまって……」

五月雨「いや、霧切ちゃんに怒ってるわけじゃないけどさ……心配はしたんだからね?」

苗木「こまる、ごめん。待たせたね」

こまる「……」

七海「CDの第一扉は開いちゃったから早く誰と誰が組んでどの扉に入るか決めないといけないね」

K「ええ。言い争いをしている時ではありません」

モナカ「それで、どうするの?」

狛枝「時間が無いからまたボクから説明するよ」


狛枝「考えられる組み合わせの数は、前回と同じく3つになる」


狛枝「パターンA――【水ペアの日向クンと五月雨さん】と【黄ソロの七海さん】が組んで【緑色の扉】を開く」

狛枝「この時残りは、【紫ペアの苗木クンとこまるさん】と【水ソロの霧切さん】が組んで【青の扉】を開く事になり――」

狛枝「【黄ペアのボクとモナカさん】と【紫ソロのK】が組んで【赤の扉】を開く事になる」


狛枝「パターンB――【水ペアの日向クンと五月雨さん】と【紫ソロのK】が組んで【青の扉】を開く」

狛枝「【紫ペアの苗木クンとこまるさん】と【黄ソロの七海さん】が組んで【赤の扉】を開く」

狛枝「【黄ペアのボクとモナカさん】と【水ソロの霧切さん】が組んで【緑の扉】を開く」


狛枝「パターンC――【水ペアの日向クンと五月雨さん】と【水ソロの霧切さん】が組んで【赤の扉を開く】」

狛枝「【紫ペアの苗木クンとこまるさん】と【紫ソロのK】が組んで【緑色の扉】を開く」

狛枝「【黄ペアのボクとモナカさん】と【黄ソロの七海さん】が組んで【青の扉】を開く」


狛枝「で、問題は前回と同じくどのパターンを選ぶかになるわけだけど……」

K「僕は苗木さんと組むのは遠慮させてもらいます」

苗木「ど、どうして?」

K「苗木さんの現在のBPは【1】――どう考えてもあなたが次の投票のラウンドで【希望】を選ぶとは思えない」

K「仮に『【希望】を選ぶ』とあなたが宣言しても、やはり僕にとっては都合が悪い」

K「何故なら、僕は【絶望】を選ぶことができないからです」

K「もしも僕が【絶望】を選び、あなたが本当に【希望】を選択してしまったとしたら、僕は……」

K「僕はあなたを殺すことになってしまいます。だからです」

K「なので、同様の理由から五月雨さんとも組みたくはないですね」

五月雨「大丈夫だよ。私と日向くんのペアは霧切ちゃんと組むから」

霧切「私は別にそれで構わないけれど、でも……」

日向「ちょ、ちょっと待ってくれ! 勝手に決めないでくれよ!」

七海「私は日向くんか狛枝くんがいいかな。さっき【希望】を選んでくれたからね」

モナカ「じゃあ、モナカと組む? モナカのペアは狛枝さんだよ?」

K「だめです。霧切さんと五月雨さんが組み、七海さんがモナカさんと組むということは、それは必然的にパターンCの組み合わせになることを現わしています」

K「しかし、先ほども申し上げたように、僕は苗木さんとは組みたくありません」

日向「じゃあ、一体どうすれば……」


モノクマ『カラードドア閉鎖まで、残り1分です!』

日向(そうやって揉めている間に刻一刻と時間は過ぎていく)

日向(そんな緊張が巡っている時に――事は起こった)

ドサッ

こまる「……」

日向「ど、どうしたんだ、こまる! 膝なんかついて……」

こまる「もうダメだよ……もう終りだよ……どうせみんな死んじゃうんだ……」

五月雨「ど、どうしたの、いきなり……?」

こまる「ううん、違う……違うの……死んじゃうんじゃない……死んじゃうんじゃなくて……」

こまる「死ななきゃいけないの……ここで……みんな……」

苗木「な、なにを馬鹿なこと言ってるんだよ! しっかりしろ! こまる! 目を覚ませ!」

こまる「私は正気だよ……おかしいのはみんなの方じゃないかな?」

こまる「こんなくだらないゲームに真剣になっちゃったりしてさ……もうやめようよ……もう終わりにしよう……」

こまる「全部……なにもかも……」

七海「とにかく――とにかく保健室へ運ぼう!」

狛枝「無理だよ。そんな時間はない」



モノクマ『カラードドア閉鎖まで、残り30秒です!』


苗木「仕方ない。幸いな事に、ボクとこまるはペアだ。ボクがこまるをひきずってでもCDの先へ進むよ」

モナカ「けど、まだ扉が決まってないよ?」

苗木「ボクはどの扉でも構わない。誰か選んでくれないかな」

七海「日向くん、お願い!」

日向「な――なんでまた俺が」

七海「いいから早く! 時間がないんだよ!」

日向(とは言うものの……Kが赤の扉の前に立ち塞がって俺へと顔を向けている)

日向(どうやらそれほどまでに俺を赤の扉へと――パターンCを選ばせたくはないようだ)

日向「俺は……俺と五月雨のペアは……」


1:七海と組んで【緑の扉】に入る
2:Kと組んで【青の扉】に入る

安価下


あとこれ原作は何周もして事件の真相がわかるタイプだっけど二週目三周目はあるの?

>>79
あります
そこは原作通りと思っていただければ
ひとつのEDを迎えたりした時にどの安価の場所に戻るか安価するみたいな感じで

続きはまた後で

日向「五月雨! K! 【青の扉】だ!」

五月雨「わかったよ!」

K「! しかし……」

日向「いいから早く来い!」

日向(俺が扉を選んで叫ぶと、他の連中もそれぞれの扉へとわかれて中へと入っていく)

日向(Kは俺の選択に何か言いたげではあったが、その様子を見るとすぐに俺と五月雨について青の扉へと寄り……そして俺たちはその扉の先へと進んだ)

日向(道に沿って歩いていくと、そこには……)


日向「扉が三枚あるぞ?」

K「全てロックされているようですね」

五月雨「まさか行き止まりなの?」

日向「ん……なんだこれ? レバーみたいな装置がある」

五月雨「これ……【9】扉の横にも同じようなのがあった気がする」

K「そのレバー、下げられますか?」

日向「やってみるか」


ガチャン

ウィーン


日向(俺がそのレバーを下すと右手側にあった扉があっさりと開いた。だが……)

五月雨「右の扉しか開かないんだね」

K「ここに入れという事でしょうか」

日向「他の扉はどうすれば開くんだ?」

K「他に操作出来そうな装置は見当たりませんから、わからないですね」

五月雨「とりあえず、進める方に進んでみようよ」

日向「そうだな。よし行こう」

――

日向「この部屋は……なんだ?」

五月雨「扉には【娯楽室】って書いてあったよ?

日向(娯楽室か……前のエリアは学校にありそうな施設が続いていたのに、今回はそうでもないな)

日向(いや。もしここが希望ヶ峰学園だとするのなら【才能】を磨く為にこういった施設を用意していてもおかしくはないのだろうか……?)

K「娯楽……なんとも皮肉なものですね。今の我々の状況からすると程遠い存在です」

日向「しかし、ビリヤードにダーツなんかはわかるが、あれはなんだ?」

K「甲冑ですね。四体も並んでいますし……その甲冑が手にしている斧や槍も本物なのではないでしょうか」

五月雨「あっちにある遊具も異様じゃない?」

日向「本当だ……これはモノクマの形の……」

K「乗り物……ですか?」

五月雨「コインを入れると動く遊具だよね。子供の頃に乗った事あるよ」

日向「こんなものがあるってことは、ここに子供がいたってことなのか……?」

五月雨「ただのコレクション――趣味じゃないのかな?」

K「悪趣味ですね」

五月雨「けど、娯楽室なんてものがあるだなんて……まるで長期滞在を想定しているような印象があるよね」

K「食堂で料理も出来るし、保健室の設備ならちょっとしたケガや病気も治療可能……」

K「娯楽設備も長期間の滞在で退屈しないように……閉鎖的な環境には必要な設備ですね」

日向「外に出なくても生活出来るように作られた施設か。好きなだけここに滞在しろってことか? 冗談じゃない」

五月雨「同感。さっさと【月のカードキー】ってやつを見つけて外に出ようよ」

K「あそこに扉がありますね」

日向「……ダメだ。ロックがかかっていて開かない」

K「という事は、ここに【月のカードキー】が隠されているのでしょう」

K「おそらくは……扉の近くにある、この金庫の中だと思われますが」

日向「この金庫……さっきFDルームのカードキーを手に入れた時と同じ金庫だよな?」

日向「よし、それならこの金庫を開く手がかり――パスワードを探してみよう」

五月雨「ねえ、ここに冷蔵庫があるんだけどさ」

日向「ん? 喉がかわいたのか?」

五月雨「いや、中には飲み物は入ってなくて緑色の布の切れ端とルミノール試薬のスプレーが入ってるんだよね」

日向「なんでまたそんなものが……」

五月雨「わからないけど、これを使う場所が何処かにあるのかも。ちょっとこれ持って探してみるね」


――

K「ふむ……」

日向「Kは何を見ているんだ?」

K「ここにあるダーツの機械の説明書が貼られているんですよ」

日向「どれどれ……一番外周に数字が書いてあって、真ん中の円には100……」

日向「100に一番近い円の範囲から順に×3、×2、×1って書いてあるが」

K「おそらく点数の計算式を表しているのかと。たとえば、外周に20と書いてある個所の100に一番近い円の範囲、×3の部分に矢を刺すと20×3で60点になるんです」

日向「ふぅん。ダーツってそういうルールなのか?」

K「僕も詳しくはないので……」

日向「実際の機械の方を見てみると、ホールケーキが切り分けられたように区切られて、円の範囲とその区切られた場所毎に赤・青・緑の色で更に範囲が分かれてるみたいだな」

K「これもおそらくパズルのうちのひとつなのでしょうが、ダーツをする為の矢がありません」

日向「じゃあ、まずその矢を探すか」

――

日向「この遊具……モノクマの形をしているのに、コインを入れる口はライオンの顔なんだな」

五月雨「その口のところが空洞になってるから多分ここにコインを入れるんじゃない?」

日向「そのコインは……」

K「ああ、そうだ。さきほどこのような物を手に入れたのです」

日向「それって、このライオンの顔がついてる四角い箱にある穴の鍵じゃないのか?」

K「ええ、ですからこれをこうして……」ガチャン

日向「開いたな。中は、と」

五月雨「わ、メダルがいっぱい!」

K「通貨としての価値は無いでしょうが、ここに入っていたという事はこの遊具に使えるものなのではないでしょうか」

日向「なるほど。試しに動かしてみるか」チャリン

日向「……って、K!?」

K「……」ガコンガコンガコンガコン

日向(Kが何時の間にかモノクマの遊具に鎮座して揺られている……)

K「……」ガコンガコンガコンガコン

日向(何を思ってそんな事をしたのかはわからないが、黙って揺られ続けているだけなのでそれはわからないし、なんだか不気味だ……)

五月雨「なんか……見てはいけないものを見てしまったような気がする……」

日向「そうだな……」

――

日向(こうして三人で娯楽室内のパズルとギミックを解き明かし、俺たちはついに金庫のパスワードを手に入れ、その扉を開いた――)

五月雨「やったね!」

日向「よし! じゃあ、中身をあらためるとしようか」

K「中には……マップと小さな鍵、それから」

日向「【月のマークのカードキー】が三枚あるな。Kが一枚持っているといい」

K「そうですね。では……」

五月雨「それ以外の目ぼしいものは無いみたい」

日向(これ以上情報になりそうなものはない、か……)

五月雨「その小さい鍵がおそらくあのロックのかかっている扉の鍵だよね?」

日向「そうだろうな。早いところここから出よう」

K「そうしましょう」

――

日向「ここは……なんだ? また体育館にきたぞ? 元の場所に戻ってきちまったのか?」

五月雨「ううん、違うと思う。さっきのマップを見てみたけど、娯楽室のあるのはBフロアってところなんだ」

K「エレベータを使ってここまで下りてきたわけで、マップをあらためてみてみるとその上がAフロアと記されていますね」

五月雨「うん。つまり最初にいた体育館はAフロアにあったってこと。けど、娯楽室を抜けてから私たちは再び上にのぼったりはしていないから……」

日向「つまり、Bフロアにももうひとつ体育館があるってことか」

K「! あそこを見てください」

日向「扉があるな。けど……白く光ってる? これもCDなのか?」

五月雨「三枚とも白い扉だね。ロックもかかってるみたい。ロックの装置を見る限りはやっぱりCDなんだと思う」

日向「次はここが開くってことか。急いでみんなに知らせよう」

五月雨「そうだね」

日向(そのときふと、Kがあたりを見回しながら首をひねっているのに気が付いた)

日向「K、どうかしたのか?」

K「いえ……なんだか以前、この体育館を見たことがあるような気がして」

日向「まさか、ここに来たことがあるのか!?」

K「わかりません。似たような場所だったのかも……」

五月雨「それ、Aフロアの体育館じゃないの?」

K「そうかもしれません。……ですが……」

モノクマ『FDゲートが解放されました! 投票の締め切りまで残り45分です!』


日向「は!? おい、どういうことだ――!?」

K「他のチームがFDゲートを開けてしまったのでしょうか」

五月雨「まだ私たちが戻ってないのに!?」

K「他の人間のことなどどうでもいい。そういうことでは?」

日向「くそっ……俺たちも急いで戻ろう!」

――

【Aフロア 体育館】

狛枝「日向クン、おかえり」

日向「狛枝……! 苗木たちは!? まだ戻ってないのか!?」

狛枝「うん。ボクたちが一番だった」

五月雨「だったら、FDゲートを開けるのはもう少し待っててくれても……」

霧切「私も止めたのよ、お姉様。けれど、モナカさんが……」

モナカ「ゲートをいつ開こうと勝負には関係ないんだからいいんじゃない?」

五月雨「いいわけないよ!」

K「モナカさんたちのチームは、ずいぶんと戻ってくるのが早かったんですね。探索は順調に進んだんですか?」

モナカ「うん、そうだよ」

日向「お前たちは何処の部屋を通ったんだ?」

モナカ「【治療室】ってところ」

日向「治療室? 保健室とは違うのか?」

モナカ「治療室には【治療用のポッド】ってやつが置いてあって……まあ、百聞は一見にしかずだよ。詳しいことはあとであの部屋に行って、自分の目で確かめてみて」

日向「……?」

霧切「そういえば、モナカさん。治療室を出る時に何か隠したでしょう?」

モナカ「えー? なんのこと?」

狛枝「ボクも見たよ。金庫を開いたとき、中に入ってたものをポケットに入れていたよね?」

狛枝「ほら、これ」

モナカ「っ……!?」

日向(狛枝の手にはいつの間にか何かが握られていた。それは……)

日向「注射銃、か……? 装填されたビンのラベルには……【ステログミン】って書いてあるが、なんの薬だ?」

霧切「ステログミン……? それって確か……」

モナカ「かーえーしーてー! それはモナカが見つけたからモナカのものなのー!」

狛枝「あ」

霧切「ちょっと、あなた……」

日向(モナカは狛枝の手から素早く薬を奪い返していて……霧切が文句を言おうとした、そのとき――)

苗木「ひ、日向クン!」

七海「みんな一緒!?」

日向「苗木! 七海も一緒だな! よかった、戻ってきて……」

苗木「こまるを……こまるを見なかった!?」

日向「こまる? こまるが……どうかしたのか?」

七海「【赤の扉】の先には【食糧庫】があったんだけど……そこを出て、通路をしばらく進んでいったら、突然姿が見えなくなっちゃって……」

苗木「行けるところは全て探したんだけど、見つからないんだよ!」

日向「まさか、迷ってるのか?」

モナカ「ふぅん。そんな呑気な話なのかなぁ?」

日向「どういう意味だよ……?」

モナカ「こまるさんも今頃どこかで殺されちゃっているのかもしれないねってことだよ」

モナカ「死体がすでに一体発見されてること、忘れたわけじゃないよね?」

苗木「ばっ……馬鹿なこと言わないでよ!」

七海「そうだよ。そんな縁起でもないこと言わないで」

モナカ「モナカは可能性の話をしたまでだよー?」

日向「とにかく、みんなでこまるを探しに行こう!」

苗木「うん、お願いするよ!」

日向(みんなでA階の体育館を出ようとしたとき、ふと、五月雨がひとり、体育館の奥を見つめているのが目の端に映った)

日向(少し気にかかったが、今はこまるを探すのが先決だ)

日向(俺は【紫色の扉】へ駆け込んだ)

――

【学生寮】


日向「こまる! いないのか!?」

日向(このあたりには来ていないのか……? 仕方ない、Bフロアに行ってみよう)


――

日向(苗木のチームは【赤の扉】の先に進んだはずだ)

日向(そっちはよく探しただろうから【青の扉】の先を確認してみよう)



【娯楽室】


日向「こまる! 何処にいる!」

日向「……。ここもダメか……一体どこに……」


ガチャン


K「日向さん。……どうですか?」

日向「ダメだ。見つからない」

K「そうですか……」

日向「K……おまえのほうは……? って、見つかってたら、すぐに報告してるよな……」

K「ええ……治療室や、Bフロアの体育館に行ってみたのですが、こまるさんの姿はどこにも……」

日向「仕方がない。一度Aフロアの体育館に戻ってみよう」

K「そうですね。もう誰かが見つけたかもしれませんし」

――

【Aフロア 体育館】


苗木「日向クン! K! どうだった!?」

日向「ダメだ……どこにもいない」

苗木「そ、そう……か」

K「戻ってきているのは、苗木さんと狛枝さんと霧切さんだけですか?」

狛枝「うん。他の人たちはまだだよ」

日向「その様子だとそっちも収穫はなかったみたいだな」

霧切「ええ……残念だけど」

狛枝「しかし、解せないね。これだけの人数で探せば、すぐに見つかりそうなものだけど……」

苗木「こまる……」


モナカ「誰か! 誰かいる!?」

日向「モナカ……?」

モナカ「みんな! 早く学生寮の方に!」

日向「どうしたんだ?」

モナカ「とにかく早くするのー!」

――

【学生寮】


日向(モナカに言われ、急いでその場にいる連中と学生寮までやってきた)

日向(そこには、そこ……には……)



日向(胸から血を流して壁にもたれかかる五月雨と、そのすぐ近くの床の上に倒れる七海の姿があった――)

霧切「……」

日向「ま、まさか……そんな……」

日向(倒れているふたりの傍らには、ふたりが装着していただろうバングルが外れて転がっている)

日向(モノクマは言っていた……バングルはその人の心臓が止まれば外れるようになっている、と)

日向(俺は茫然としながらゆっくりとふたりに近付いていった)

日向(まずは五月雨の首筋に手を当てる)

日向(温もりは残っているのに……脈はなかった)

日向(それも当然かもしれない)

日向(胸に突き刺さった凶器を中心に、おびただしい量の血液が流れている。生きていられるはずがない――)

日向(俺は震える足を叱咤し、今度は七海に近付いた)

日向(五月雨と違って、一見すると外傷はない)

日向(しかし、首筋に手を当てようとしたとき、あごのあたりに注射を打たれたような跡があるのに気付いた)

日向(目の端に、床に転がった注射銃が映る)

日向(絶望的な予感に答えを出すかのように、七海の鼓動はいくら待っても伝わってこなかった)

日向「ふたりとも……死んでる」

苗木「そんな……」

K「一体ふたりになにが……」

モナカ「きっとあいつが殺したんだよ」

日向「あいつ……?」

モナカ「あのFDルームの女の人を殺した犯人だよ」

日向「そいつがふたりを同時に殺したと……?」

狛枝「ひとりを殺害している現場を見られて、口封じにもうひとりを殺害したってことかな」

モナカ「あるいは相打ちという可能性もあるよ。七海さんが五月雨さんの胸に凶器を突き立てて、五月雨さんが注射銃を七海さんに……」

霧切「それは考えにくいわ。見て……お姉様の死体、着衣の乱れがまったくないの。もみあった様子はないわ」

日向「じゃあ、ふたりは別の場所で殺害され、ここに運び込まれたというのは……?」

K「いえ、もしそうならば、ここにこんなにも大量の血が残っているはずはないでしょう」

日向「確かにそれもそうか……」

霧切「なんにせよ、今の時点では手がかりがなさすぎて、犯人を推測するのは不可能よ」

霧切「私たちはこまるさんを探すために単独行動をしていた。誰にでも犯行の機会はあったのだから」

日向「俺たちの中に犯人がいるっていうのか?」

霧切「この施設の中に、私たち以外の人間がいると思う?」

日向「それは……」

モノクマ『投票の締め切りまで、残り10分です! プレイヤーはすみやかに投票を済ませてください!』

モノクマ『所定の時刻まで投票を行わなかった場合、未投票者の投票は【希望】に設定されます!』


日向「未投票者の選択は【希望】に設定……」

日向「七海の投票は【希望】に設定されるってことか」

K「そういうことですね。もしかしたら、それが犯人の狙いでは……?」

日向「【希望】を選ばせるために殺したっていうのか? 七海の対戦相手って……」

苗木「ボクとこまるだよ」

モナカ「チームの中のひとりは行方不明でひとりは死亡かぁ。それって苗木さんが一番あやしいよね?」

苗木「そ、そんな……!」

モナカ「投票を都合よく進めるために殺しちゃったんじゃないの?」

苗木「だったら五月雨さんの件はどうなるの? 五月雨さんの対戦相手はKだったよね?」

K「僕の場合は当てはまりませんよ。五月雨さんがいなくても、ペアの日向さんが投票出来ますから」

狛枝「だから七海さんが死んだりしてね」

狛枝「本来であれば日向クンを殺すつもりが、手違いで七海さんを……」

K「それを言われてはなんとも返す言葉がありませんね」

K「憶測でなら、なんとでも推理できますよ」

日向「……。とにかくそろそろ体育館に戻った方がいいんじゃないか?」

K「でしたら、ふたりのバングルを持っていきましょう」

日向「バングル? いまさらバングルなんて……」

K「バングルがなければこの先のCDが開けられません」

モナカ「こんなときによく冷静でいられるよねー? もしかしてKさんがやっちゃったの?」

K「キリがありませんね。次はなんですか? 仮面を被っているから犯人だ、ですか?」

日向「やめろよ! そんなことで言い争っても意味がないだろ?」

狛枝「同感だね。時間ばかりが過ぎていくだけだよ」

K「……。失礼しました。それでは体育館に戻りましょう」

霧切「……お姉様」

日向(霧切は五月雨の死体をじっと見つめている)

日向(親しい相手が亡くなったんだ。ショックはきっと俺たちよりも大きいはず……ましてや、霧切は俺たちよりも幼い女の子だ。労わってあげなければならない。だが……)

日向「霧切……お前も辛いと思うが、今は……」

霧切「……ええ。わかっているわ」

霧切「いくら犯人が気になるとはいえ、ここに残って投票を棄権するわけにはいかないもの」

霧切「私は絶対に投票しなければならない。でなければ……」

日向「……?」

霧切「行きましょう」

日向「あ、……ああ」

――

【Aフロア 体育館】


モノクマ『投票の締め切りまで、あと5分です!』


日向(気持ちの整理がつかないまま、俺は【月のカードキー】で扉を開けた)

日向(五月雨と七海を殺したのは誰なのか、こまるは何処に行ったのか、疑問はいくつも浮かび上がってくるが、ひとつとして答えは出なかった――)

日向(とてもゲームをするような気分ではなかったが、投票の締め切りは刻一刻と迫っている)

日向(俺はもやもやした気分のまま、部屋の入口へと一歩足を進めた――その時)

K「日向さん。一緒に【希望】に投票しませんか?」

日向「……?」

K「日向さんの現在のBPは【5】――このラウンドでお互いに協力を出せば【2点】が加算されて【7点】になります」

K「そして次回もまた、対戦相手とともに【協力】を出しあえば、さらに【2点】が追加され、【9点】に」

K「逆に、日向さんが今回【絶望】を選んで【3点】が加算されたとしても、合計値は【8】」

K「つまり、いずれにせよ、次回の投票でしか【9点】にはならないということです」

K「であるならば、ここはお互いに歩み寄って確実に【2点】を獲得したほうが賢明でしょう」

日向「それはそうだが……K、お前のBPはいくつだ?」

K「僕ですか?」

日向「確か、1回目の投票でおまえは【絶望】をえらんでいたから……【6点】だったはずだ」

日向「すると、今回の投票で同じように【3点】が加われば……お前のBPは【9点】になる可能性があるじゃないか」

K「それはそうですね。しかし、僕はいち早く脱出したいわけではありません」

日向「けど、最初の投票では【絶望】を選んだんだろう?」

K「あれはあくまでも念のためです。【3点】の状態で【2点】を引かれたら、心もとないでしょう?」

K「その点、今は気が楽なものです」

日向「でも普通なら、早く外に出たいと思うんじゃないか?」

K「もちろん、僕もここから出たいとは思っています。ただ『いち早く』とは考えていないだけです」

日向「なんでだよ?」

K「なんでって……当然でしょう? 僕が脱出したら、残されたみなさんは永久に出られなくなってしまいますので」

日向「永久に? どういう意味だ?」

K「モノクマが言っていたでしょう。【9】の扉はたった一度しか開放できない――と」

日向「誰かが一度開いて脱出したら、その後は誰も……」


モノクマ『投票の締め切りまで、残り1分です!』


K「そろそろ時間のようです。それではよろしくお願いします」

日向「ああ、わかった。お前もたのむぞ」


――

日向(Kからは【希望】を選べと言われたが……さて……どうするか)

日向(そもそもKは本当に【希望】を選ぶのか?)

日向(もし俺が【希望】を選んで、Kが【絶望】を選んだら、KのBPは【9】になる)

日向(ただ【9】になっても、ひとりで先に脱出するとは限らないが……)

日向(そこまで信用出来るのか? 顔もわからない相手を?)


モノクマ『投票の締め切りまで残り10秒です!』

モノクマ『9……8……7……6……』

モノクマ『5……4……3……2……』

モノクマ『1――』



日向「……」



選択
A:希望
B:絶望

安価下

希望

あげ

あげ

あげ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年09月13日 (水) 17:38:41   ID: 8za4B7Dx

@_e_xel

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