男「金髪ヒロインのみのギャルゲーを作りたい」 (16)

約4000字、暇つぶしにどうぞ。

ジャンル……アニメを見て思いついたギャグコメディ

この物語はフィクションです。現実のゲーム制作とは、これっぽっちも関係ありません。


とあるゲーム会社開発部

上司「……」

男 「……」

上司「……なんだこれは!?」

上司は目に見えて、イライラしている。

男「企画書っす」

上司「見ればわかる! ふざけているのか! 問題はコンセプトだ!」

男「金髪ヒロインのみ登場のギャルゲーっす」

上司「貴様は何年ゲーム作っているんだ!」

男「十年ちょいっす」

上司「なら分かるだろう」

男「なにがっす? 主語を省いた会話を業務に用いるのは三流では?」

上司「くっ! いいだろう。はっきり言う!」


上司「こんなコンセプトの作品が売れるわけないだろう!!!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1503310611

男「……なるほど」

男は突然、真面目な表情になる。

上司(顔つきが変わった!)

男「だが金髪ヒロインは、無限の可能性を秘めている」

上司「無限の可能性?」

男「過去のギャルゲーの歴史を振り返れば、たくさんの人気金髪ヒロインが登場する」

男「高貴なお姫様、高飛車なお嬢様、片言の留学生、イケイケギャル、そしてツンデレ幼馴染」

男「それら、すべてをこなす」

男「そんな金髪ヒロインに無限の可能性が無いといえるだろうか? いやそんなことはない」


男「金髪ヒロインを制する者こそが、ギャルゲーを制するのだ」


上司「……」

男 「……」

上司「カッコつけても、ダメなものはダメだ」

男 「え~、でもこの企画はやりたいっす」

上司「ダメだ」

男「絶対やりたい」

上司「……」

男 「……」

上司「いいだろう。何がダメなのかを具体的に説明してやる。貴様に分かるようにな」

上司「貴様は特撮が好きだったよな」

男「戦隊ヒーローとか大好きっす」

上司「なら戦隊ヒーローを例に説明してやる」

────

────────

戦隊ヒーロー達は窮地に立たされていた。ヒーロー達の攻撃が効かないのだ。

怪人「はっはっはっ無駄だ」

レッド「畜生! 負けるもんか!」

勇敢に敵に立ち向かう熱血漢のレッド。

ブルー「待て、レッド。ここは引くぞ」

冷静に分析するクールガイのブルー。

レッド「引くって逃げるってのか? 俺たちが戦わなかったら街の人々はどうなる!!!」

ピンク「やめて! 仲間同士で争わないで」

争いを止める紅一点のピンク。

イエロー「でもあんな敵どうすりゃいいんだよ」

思ったことをそのまま口にするお調子者のイエロー。

???「……ククク、そんなことで悪が倒せるものか」

レッド「お前は!?」

ブラック「今回だけは力を貸してやろう」

敵か味方か、謎のヒーローのブラック。

────────

────

上司「このようにイメージカラーとキャラクターの個性をリンクさせ、分かりやすくしているわけだ」

上司「貴様の企画はすべて同じイメージカラーで、キャラクターの個性を潰すのだ」

上司「三流以下の企画だよ」

男「……」

上司(大人しいな。言い過ぎたか?)

男「……上司さん」



男「上司さんも戦隊ヒーロー好きだったんっすね?」

上司「話聞けよ!!!」

上司「もう一度、説明するぞ。ちゃんと聞いとけよ!」

上司「いいか、お前の企画は全員レッドなんだよ!」

男「ぷっ、全員レッドって、みんな退場したみたいっすね」

上司「黙って聞け!!」


────

────────

怪人「はっはっはっ無駄だ」

レッドA「畜生! 負けるもんか!」

レッドB「そうだ! 逃げるわけにはいかない!」

レッドC「俺たちが戦わなかったら街の人々が!」

レッドD「俺の力を受けてみろ!」

レッドE「平和は俺が守る!」

レッド達「うぉ~!、突撃ぃぃ!!」

怪人「うわ?! おい?! 無駄だって言ってるだろ?!!」

レッド達「うぉ~!」

怪人「話を聞けよ!!! ちょ?! 待てよ?!!」

レッド達「うぉ~!」

────────

────

男「……」

上司「分かったか。みんな同じレッドだと話が広がらないのだ」

上司「ワンパターンなんだよ。いつも突撃なんだ」

上司「個性が同じなら、複数人も登場する意味がない。つまらないんだよ」

男「……」

上司(やっと、分かってくれたか)

男「……上司さん」



男「上司さんもレッドが一番好きなんすか?」

上司「貴様もワンパターンかよ!!!」

上司「いいか。俺はレッドが一番好きだから、レッドだけにしたんじゃない。例え話だ」

男「いやー、やっぱり戦隊ヒーローで一番カッコいいのはレッドっす。レッド最高」

上司「黙れ! レッドだけで喜ぶのは、貴様みたいなレッド信者だけだ!!」

上司「いいか! 貴様の企画も同じだ! 金髪キャラが好きなユーザーしか喜ばないんだよ!!」

上司「はぁはぁ」

男 「……」

上司「……」

男「気になったんすけど、この場合」

男「やっぱり乗り込むメカも赤い色してて、五体合体で真っ赤なロボットができるんじゃ」

上司「どうでもいいんだよ! そんなシャア専用なロボに乗り込む戦隊は!!」



社長「どうしたのかね? 上司くん」

上司「社長!? 何故ここに!?」

社長「女子トイレ等でないのなら、わが社のどこにいようがワシの勝手だ」

社長「それよりも、随分と大きな声を出していたね」

上司「! それは……」

社長「部下を大きな声で怒鳴りつけるのは、十分にハラスメント行為だよ」

上司「……申し訳ありません」

社長「それで何の話をしていたのかね? シャア専用だとか聞こえたが」

社長「ワシもガンダムは好きだが、仕事中に私語はいかんよ」

上司「いえ、それは例え話で……」

男「新企画の話をしていましたっす」

上司「貴様は黙っていろ!」

社長「上司くん。君が黙りたまえ」

社長「本来は社を預かる身として、ハラスメント行為には減俸等の処罰を下さないといけないのだよ」

上司「くっ……」

社長「それでどんな企画なのかね?」

上司「くだらない企画ですよ」

社長「上司くん。わが社の最終決定権は私にある。くだらない企画かどうかはワシが決める」

男(最終決定権って必殺技みたい。奥義!最終決定拳! いや剣でもいける?)

上司「……」

社長「さて話の続きだ。企画の内容は?」

男「金髪ヒロイン(だけ)のギャルゲーっす」

社長「金髪ヒロイン(の登場する)のギャルゲー?」

社長「別にいいじゃないか」

上司「社長!? 金髪ヒロイン(のみ)ですよ!?」

社長「上司くん。特定のユーザーの嗜好を否定するような発言はいけないな」

社長「金髪ヒロインの何がいけないのかね?」

社長「今の業界に求められているのは多種多様なニーズに答えることだ」

男(ニーズとニーソって似てる)

上司「社長はこの企画(金髪ヒロインのみ)に需要があると?」

社長「もちろんだよ。この企画(金髪ヒロイン登場)の需要は必ずある」

社長「良し分かった。ワシの権限でこの企画を進めよう。プロジェクトリーダーは男くんだ」

社長「上司くんは彼の指示に従い、サポートしてあげたまえ」

上司「本気なんですね?」

社長「本気だ。なに心配するな。進捗状況はワシも確認させてもらうよ」

社長「新しい時代は老人が作るものではないよ」

上司「……」

社長「……」

男(金髪ヒロインのニーソはやっぱり黒)

こうして金髪ヒロインのみ登場のギャルゲー制作が始まった。

数か月後 開発部

グラフィッカー「大変です! マップに各ヒロインの居場所をSDキャラで描写すると、誰が誰だか分かりません」

上司(それみろ、一目でキャラを見分けられるSDキャラの利点も、使えないではないか)

男「その表現方法はしなくていいと思うっす」

上司(馬鹿な!)

上司(それをしなかったら目当てのヒロインに会えるまで、リセットを繰り返す不毛な作業をプレイヤーに強いるだけだ)

上司(ありきたりな表現には、ありきたりになるだけの理由がある)

男「SDキャラアイコンにこだわる必要はないっす。このヒロインは陸上部だから、スパイクをアイコンにすればいいっす」

男「他のキャラもイメージアイテムをアイコンにして、その下にキャラ名を付けるっす」

上司「……」

学園設定担当「もう無理ですよ! 日本の学校なのに金髪ヒロインだらけなのは、おかしいと思います」

男「普段、赤髪ヒロインとか青髪ヒロインが登場するゲーム作っていて、なに弱気になってるっす」

男「リアリティが、ゲームの面白さに直結するわけじゃないっす」

男「しかし世界観にある程度の説得力は必要」

男「主人公が通う学園には、国際教養科がある設定を追加するっす」

男「重視すべきなのは、ヒロインの可愛さ」

男「ヒロインが可愛ければ、多少の粗は気にならないっす」

上司「……」

シナリオライター「どうしましょう!? 主人公の恋愛をサポートする黒髪サブヒロインだしたら」

シナリオライター「周りが金髪ヒロインばかりだから、メインヒロイン並みに目立ってます!」

男「なら隠しヒロインにするっす」

男「日本人に見えるけど実はクォーターで、地毛は金髪だけどコンプレックスで、黒髪に染めてた設定にするっす」

男「主人公は地毛が金髪という秘密を知ってしまい、さらにコンプレックスだった金髪を褒めるっす」

男「秘密の共有とコンプレックスの肯定から始まる隠しシナリオっす」

シナリオライター「そんな今からヒロイン追加なんて、納期に間に合いません」

男「……」

シナリオライター「……」

上司「……私が何とかしよう」

シナリオライター「上司さん!?」

上司「人員は他部署から、応援をもらう。これでなんとか納期に間に合うはずだ」

男「……」

男「……上司さん」

上司「勘違いするな。私は社長からの業務命令に従っているだけだ」

男「上司さんも金髪ヒロイン好きだったんっすね?」

上司「本当に勘違いするな!!!」

社長室

社長「ふ~」

秘書「お疲れ様です」

社長「まさか、我が社のスマホゲームに、不具合がでて炎上するとは」

社長「例の企画の進捗状況は?」

秘書「タイトルはまだ未定ですが、こちらが資料です」

社長「ふむふむ」

秘書「シナリオ及び原画作業は、ほぼ終了しています」

秘書「しかしスタッフにインフルエンザが流行り、着色作業に遅れが出ています」

社長は白黒の開発資料に目を通す。

社長「問題ない。これで進めるように伝えてくれ」

秘書「かしこまりました」

社員「しゃ、社長!」

突然、社長室に社員が入ってくる。

社長「どうした!?」

社員「ガチャの確率表記に誤りがあり、消費者センターを巻き込んで、返金騒ぎの大炎上です!!!」

社長「な~~に~~!!」

こうして社長は以後、企画の進捗状況を確認することなく、

金髪ヒロインのみ登場のギャルゲーは発売された。


ギャルゲー発売後

どこかのゲームショップ

?「『きんいろメモリーズ』?」

?「とりあえず僕の好きなパッケージ裏を確認」

?「金髪ヒロインのみ登場のギャルゲーなんてすごいなぁ」




またまた、とあるゲーム会社開発部

男「上司さん。新しい企画書っす」

上司「……見せろ」

男「タイトルはレッドオンリーコマンダーっす」

男「プレイヤーは司令官になって、レッドしかおらず突撃しかしないヒーロー達を導き、悪と戦う」

男「巨大化した怪人に対しても、猪突猛進で瞬く間に蹴散らされる」

男「だからドンドン、レッドを集めて、レッドを鍛える。レッドの通信対戦や交換もできる」

男「コンセプトはこんな感じっす」

上司「……」

男 「……」

上司「……レッドってなんだっけ?」

終わり



読んで頂きありがとうございました。

このゲーム『きんいろメモリーズ』が売れるかどうかは、想像に任せます。

ゲーマーズ絶賛放送中。

朗報。金髪ヒロインだらけのエ〇ゲ『金色ラブリッチェ』発表。
このSSをお読み頂いた方は金髪ヒロイン好きか、ギャルゲ好きに分類されるはず。
18歳以上かつ金髪ヒロイン好きの方は、発売を楽しみに待ちましょう。
18歳以下もしくはギャルゲ好きの方は、よろしければ私のラブコメ過去作でもどうぞ。違うトリですが。

女「君も僕の体がほしいのかい?」男「えっ!?」~私と僕と欲張りショートケーキ~
女「君も僕の体がほしいのかい?」男「えっ!?」~私と僕と欲張りショートケーキ~ - SSまとめ速報
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