【シンフォギアSS】翼「緒川さんが戦う…だと!?」 (75)


【第一期】ライブ会場の悲劇後



翼「……」

緒川「おい、時間だ。そろそろ出番だぞ」

翼「…はい」スタスタ

緒川「そんなシけた面でステージに立てるかよ、全く…」




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弦十郎「どうだ? 翼の様子は」

緒川「変わんねぇ。あんなザマで戦ったら、そのうちやられちまうぜ」

弦十郎「しかし、奏君が亡くなった今、翼以外にシンフォギアを纏える者はいない…」

緒川「んじゃ、俺の出番だな」

弦十郎「本気か? お前の力の解析はまだ不十分で…」

緒川「こうでもしなきゃ、仕事が追っつかないだろ」コキコキ


グサッ、ブシュゥッ


翼「はあぁッ!」ザシュッ

藤尭『新たなノイズの発生を確認! 数は50!』

翼「くッ…追撃します!」ゼェゼェ

友里『翼さんの適合係数が、徐々に減少しています…!』

弦十郎『命令だ、翼! 一旦退け!』

翼「なっ、何を言うのです! 防人たる私がここで退いたら…」

弦十郎『後は緒川が片付ける』

翼「え…? 今、何と…」


ドッゴォォン


翼「な、何だ!?」

緒川「よぉ、着いたぜ」ザッザッ

翼「緒川さん!? どうしてここに…」

緒川「決まってるだろ。ノイズをブチのめすのさ」ポキポキ

翼「緒川さんが戦う…だと!? どういうことですか司令!」

弦十郎『説明は後でする。早く下がるんだ』

緒川「さぁて、おっ始めようかァ!」グッ


シュウゥ…


緒川「ぐッ…!」メリメリ

翼「お、緒川さんの腕が…」

緒川「ヘッ、これくらいで驚くんじゃねぇよ」

翼「そ、それは、その腕は…シンフォギア!?」

緒川「違ェな。コイツは俺の“アルター”だ」

翼「あ、アルター…?」

緒川「さぁ、片っ端からぶっ飛ばしてやるぜ!!」ダッ



ゴォッ


緒川「でやあぁッ! 衝撃の、ファーストブリットォッ!!」

ドゴォ

緒川「おらおらァ! まだまだ足りねェぜ!!」

バキッ、ボゴッ
ゴォッ

緒川「撃滅のォ、セカンドブリットォッ!!」

ドッゴォォン

緒川「なぁんだ、もうこれっぽちしか残ってねぇのか」パンパン

翼(こ、これは一体、何がどうなっているのだ…)




弦十郎「ご苦労だったな、緒川」

緒川「ッたく、大したことなかったぜ」

翼「司令、緒川さんは一体…」

弦十郎「お前には話していなかったが、緒川は特殊能力者なんだ」

翼「能力者?」

弦十郎「この能力を我々は“アルター”と呼んでいる」

翼「アルター…」



弦十郎「ロストグラウンド、という言葉は知っているな?」

翼「確か…22年前に起きた、大規模な隆起現象によって形成された土地のことですか?」

弦十郎「そうだ。そのロストグラウンドで生まれた新生児は、ごく僅かな確率でこのアルター能力を生まれながらに持っている」

翼「つまり緒川さんも、その一人であると?」

弦十郎「ああ。公にはされていないが、アルター能力者は希少な存在として政府機関の管理下に置かれ、シンフォギアシステム同様、最高レベルの機密として扱われている」

緒川「ま、細かい話は抜きにしようぜ。それよりも腹減ってよぉ…」グゥゥ


【第一期】ガングニール



響「私、翼さんの力になれるように頑張ります!」

翼「…」チッ

緒川「あー、また始まっちまった…」

翼「…認めるものか」

響「え?」

翼「お前が…奏のシンフォギアの装者であるなど、絶対に認めるものか!!」ダッ

響「あ…」

緒川「やれやれ…」




響「私…何か悪いことでもしたんでしょうか」

緒川「言葉足らずってゆうのもあるが、元々はあいつ自身の問題だ。気にすることじゃねぇ」

響「でも…」

緒川「あいつの力になれるなんて考えるなよ。先ずはてめぇが、てめぇの力になれなきゃダメなのさ」

響「わ…わかりました」

緒川「さぁて、風鳴のオッサンから特訓するよう言われてるんだろ? さっさと始めようぜ!」

響「はっ、はい!」





友里「装者と思われる反応あり! これは…」

弦十郎「ネフシュタンの鎧か! 翼!」

翼「心得ています!」

響「わっ、私も行きます!」

翼「!!」キッ

弦十郎「しかし響君、君はまだ…」

緒川「良い機会だ。行かせてやれよ」

翼「緒川さん!?」

緒川「心配すんな、もしもン時は俺がやる。いいだろ?」

弦十郎「…わかった。いいか、響君。絶対に無茶はするなよ!」

響「はい!」


クリス「さぁて、どこにいやがるんだ? 例の小娘は」

翼「見つけたぞ!」

クリス「ハッ、早速出てきやがったか」

翼「ネフシュタンの鎧…是が非でも返してもらうぞ!」ジャキ

クリス「フン、誰が!」

響「や、やめて翼さん! 相手は人間ですよ!? 話し合えばきっと…」



翼&クリス「「戦場で何を馬鹿げたことを!!」」


響「!!」ビクッ

翼「フッ、むしろあなたと気が合いそうね」

クリス「なら、一緒にじゃれ合うとするかぁ!」ヒュオッ


ガキンッ ガキンッ
ドゴッ


響「こんな…こんなの、おかしいよ。相手はノイズじゃないのに…」

クリス「あんたはコイツらの相手でもしてな」バシュッ バシュッ


ズズズ…


響「そんな、ノイズを操って…!?」




弦十郎「響君…やはりまだ早かったのでは」

了子「いくら適合者とはいえ、まだ不馴れよね」

緒川「……」

弦十郎「緒川、いざとういう時は行ってやれ」

緒川「あいよ」



ズシャッ


翼「うぁッ!!」

クリス「へン、こんなものかよ。ガッカリするねぇ」

翼(これが…完全聖遺物の力なのか…!)ゴホゴホ

響「翼さん!!」

クリス「あんたの相方はノイズに捕まって身動き取れないたぁ、情けないにも程があるねぇ。ま、ホントはコイツを連れ帰るのが目的なんだけどな」

響「くっ…! お願い、お願いだから私のアームドギア、出てきて!」グググ

ドッゴォォン!


クリス「な、何だ!?」


ザッ ザッ


緒川「ッたく、見ちゃいられねぇ」

響「お、緒川さん…!」


バゴッ


響「あうっ!」ドテ

クリス「な…(シンフォギアなしに、ノイズを!?)」



緒川「よぉ、そこの小せぇの」

クリス「だッ、誰がちょせぇだこのヤロー!!」

緒川「こいつらの代わりに俺が、アンタの喧嘩相手になってやるよ」

クリス「はッ! ギアもなしにどうやって…」


シュウゥゥ…


緒川「お互い妙な能力持ってるんだ、派手にやり合うのも悪かねぇ。悪かねぇよなぁ」メリメリ

クリス「こ、コイツ…腕が変形して…!?」

緒川「そう思うだろ、アンタもッ…!」グッ


ダンッ


緒川「おらぁッ! 衝撃の、ファーストブリットォッ!!」

クリス「速っ…!」


ドゴッ


クリス「うぐゥッ!?」ズサアッ

緒川「! ッ、手応えがねェ…!?」チッ

クリス(ギアもなしにこの威力…だが、耐えれないワケじゃねぇ!)ペッ

緒川「どォりゃァッ!」ブンッ

クリス「そうそう当たってたまるかよ!」

緒川「ちくしょう、ちょこまかと…!」


バシュッ バシュッ
ズズズ…


響「そんな、またノイズが…!」

緒川「邪魔くせぇ! どきやがれってンだ!」バキッ






友里「響ちゃんの適合係数、急激に弱まっています!」

弦十郎「ぬぅ…緒川と翼は!?」

了子「マズいわね。アルターの酷使によるオーバーシュートが起きかけているわ」

藤尭「翼さんも辛うじて動けていますが、消耗が激しく…」

了子「ノイズを自在に操る聖遺物…アレが厄介ね」

弦十郎「車を出せ! 俺もすぐ行く」



ドカッ バキッ



緒川「う、くそッ…」ゼエゼェ

響「はッ…はッ…」ゴホゴホ

クリス「ハハッ、こんだけのノイズを相手にしてりゃ、流石に応えるか」

緒川「ちくしょォ、腕が動かねェ…!」

クリス「さて、そろそろ終い…に…?」

クリス(か、体が動かねぇだと…!?)ガシャガシャ


≪影縫い≫


ザッ


響「つ、翼さん…?」

翼「緒川さん、彼女を連れて早く」

緒川「おぃ、まさかお前…」

翼「これは私がつけるべき始末です。だから、どうか」

クリス「てめぇ、これで何しようって…」

翼「悪いが、その鎧を返してもらうまで付き合てもらうぞ」チャキ


スゥ…


クリス「まさか…歌うのか!? 絶唱を!」


響「翼さん、何を…」

翼「…防人の戦い、生き様を、あなたに見せてあげる。その目に焼き付けなさい」

クリス「ひッ、やめ…!」


カッ
ゴォオッ



響「うわぁぁッ!!」

緒川「ぐおぉぉッ!?」ズサアッ

クリス「うわあああぁぁっ!!」



ヒュゥゥ…



響「翼さん!」

緒川「くそっ、ホントに歌っちまったのか…」

弦十郎「翼ァ!! 大丈夫か!」バンッ

翼「……私は剣、この程度で折れはしません…」ポタポタ

響「!! ひッ…」


ドサッ


弦十郎「翼! しっかりしろ翼!!」




二時間後―




緒川「う、うーん…」

弦十郎「よぉ、ようやく起きたか」

緒川「あいつは…どうなったんだ」

弦十郎「一命は取り留めたが、今も治療中だ。戦線への復帰はすぐに望めんだろう」

緒川「クソッたれ! 俺があのヤローの鎧を砕けなかったばっかりに…」ギリッ




弦十郎「それよりお前、アルターを無理して使ってたな?」

緒川「へへ…やっぱバレちまったか」

弦十郎「お前も、しばらくは戦いは禁止だ!」

緒川「冗談じゃねェ! 俺が戦わなかったら、これからどうすンだ!」

弦十郎「敵もそれなりのダメージを受けたはずだ。そうすぐには襲って来まい」

緒川「けどよ…!」

弦十郎「あまり時間はないが、響君は私が鍛えることにする。お前はゆっくり休め」バタンッ

緒川「……」

緒川(このまま、じっとしてられるかよ!)



バンッ バンッ



響「はぁッ!」ブンッ

弦十郎「まだまだ浅い! もっとこう、拳で雷を放つ感じで!」

響「はぅぅ…言ってること全然わかりません…」

緒川「オッサンの教え方はフツーのやつじゃわかんねェからな。気にすンじゃねぇ」

響「あ、緒川さん!」

弦十郎「緒川! お前まだ…」

緒川「頼むよオッサン。こうでもしなきゃ、いても立ってもいられねぇんだ」

弦十郎「むぅ…」




緒川「おぃ、そこの、あー…何だっけ」ポリポリ

響「立花響、です!」

緒川「あぁ、そうだ響。まずはお前に、拳の握り方を教えてやる」

響「拳の握り方…ですか?」

緒川「アームドギアがなくたって、お前の拳は十分強ェ武器になる。信じてみろって」

響「はい! お願いします!」






響「はぁ…もうくたくたです…」

緒川「しゃあねぇ、今日はここまでにしとくか」

響「そういえば、緒川さんの右腕って、どうしてそうなってるんですか?」

緒川「ンぁ? そんなの知らねぇな。生まれて気付いた時にゃ、俺の腕はこうなってたのさ」

響「そうなんだ…」

緒川「バケモノ扱いされることなんざ腐るほどあったけどよ、別に呪っちゃいねぇよ。俺はこの腕で、掴みたいモノは掴んできた。誰に言われるまでもねぇ、自分の力でな」



響「…私、何も出来なかった。戦ってほしくないって思っても、翼さんを…二人を止められなかった」

緒川「お前、誰かを傷つけることに怯えてンのか?」

響「…は、はい」

緒川「いや…違うな。お前は他人を傷つける以上に、自分が傷つきたくないのさ」

響「え…」

緒川「他人を傷つけて、そんで自分が傷つくのが一番怖いンじゃねぇのか」

響「…!」

緒川「けどよ、そんなことじゃ何もできねぇ、何も守れやしねぇんだ」

響「……」グッ

緒川「ま、よく考えるこった。ただ、これだけは覚えておけよ」

響「?」

緒川「一度こうと決めたら、自分が選んだのなら、決して迷うな。迷いは、それが他者に伝染する。選んだら進め、進み続けろ」


6日後―



友里「司令!」

弦十郎「どうした? 何を慌ててるんだ」

友里「緒川君が、今朝からどこを探してもいなくて…!」

弦十郎「何ィ!?」

藤尭「緒川さん…どこ行っちゃたんだよ」


響「あれ、どうしたんですか皆さん?」

弦十郎「…緒川が、二課から姿を消した」

響「そっ、そんな!」

弦十郎「響君、君は昨日まで緒川と一緒に特訓してたはずだが、何か心当たりはないか?」

響「…そういえば緒川さん、昨日の特訓が終わったとき…」




緒川『お前に伝えたいことは全部伝えた。あとは、お前がどう進むかだな』




弦十郎「緒川…お前、何を考えている…?」



了子「なんとなく…だけど、心当たりはあるわね」

弦十郎「何? 了子君、それは一体…」

了子「自分のアルターの限界を知った彼が、行きそうな場所…弦十郎君ならわかるでしょ?」

弦十郎「…!! まさか、ロストグラウンドに…」

了子「あそこには、アルターの“森”があるわ。確証はないけど、彼はそこで何か得られる信じて行ったんじゃないかしら」

弦十郎「緒川…」



コンコン


弦十郎「どうだ? 調子は」

翼「叔父様…」

弦十郎「唐突な話で悪いが、今朝、緒川がここから姿を消した」

翼「! 緒川さんが、なぜ…」

弦十郎「さぁな。ただ、あいつは自分の力不足を感じていた。結果、お前に絶唱を使わせてしまったと、内心悔いていたのだろう」

翼「…私が、防人でありながら不甲斐ないばかりに」ギッ

弦十郎「そう責めるな。それよりも響君のことだが…」

翼「…?」

弦十郎「少しずつだが、いいツラになってきたぞ。リハビリも落ち着いたら、今度会いに行ってやるのもいいんじゃないか?」

翼「……」

翌日―



弦十郎「日本政府から通達があった。“デュランダル”を移送せよとのことだ」

響「デュランダル…って、何ですか?」

了子「この基地の最下層に厳重保管されている完全聖遺物のことよ。早い話が、とーっても大事なモノってとこね」

弦十郎「デュランダル強奪を狙う勢力の襲撃が予想される。よって響君、君には移送の護衛についてもらいたい」

響「私が…ですか?」

弦十郎「翼は療養中、緒川は不在…ならば、唯一の装者である君が頼りだ。行けるか?」

響「はいッ! 問題ありません! 特訓もたくさんしてきましたから!」

弦十郎「よし。ならば10分後に行動開始だ」








弦十郎「上空から見てるが、移送車を追ってくる姿は見えない。了子君、頼むぞ」

了子「ここまで順調。何もないことを祈るわ」ブロロロ

響「! あれは!}


ドゴォッ


弦十郎「ノイズだ! 地下から湧いてくるぞ!」

了子「響ちゃん、しっかり捕まっててね!」ギュイン

響「うわわっ!!」ガッ

弦十郎「500メートル先に薬品プラントがある! そこに誘導するんだ!」




ガッシャァン!!



響「あいたた…」

了子「響ちゃん、大丈夫?」

響「はい、…ッ!?」ハッ

了子「あちゃー、マズいわね。ノイズに囲まれてるわ」

響「…」スゥ



<Balwisyall Nescell gungnir tron>



バシュッ!
カシンッ



響「…よし。行ける!」グッ


バキッ ドゴッ


響(拳は、当たる瞬間に全力を込める!)ドンッ


ドゴオッ


響「てやぁッ!!」ブンッ


グシャッ


響(余計なことは考えない! 全神経を、拳にッ…!)ダッ


クリス「アイツ…戦えるようになっているのか!?」


ボンッ


響「どうだ!」

クリス「へッ、このくらいでいい気になるなよ!」バシュッ バシュッ

響「! あの子、この前の…」


ズズズ…


響「くっ…はァッ!!」バゴッ

クリス「よし、今のうちにデュランダルを…!」

クリス(コイツを持ち帰りゃ、あたしは…)



ガコッ
キィィン


了子(!! これは…!)

響「! デュランダルが!」

弦十郎「起動しただと!?」

クリス「いただきだァッ!!」バッ


ガッ


クリス「がッ!?(こ、こいつ…!)」

響「渡すもンかぁぁッ!!」


パシッ
ドクンッ


響「――!!」ビクンッ



クリス「な、何だ!?」

響「ッ、ガアアアアァァッッ!!!」クワッ


ギュオッ
ドッカァァン!!


クリス「なッ、うわああぁぁッ!!」

クリス(ちくしょお…こんなとこで…!)


シュウゥゥ…


響「」ドサッ

弦十郎「終わったのか、響君…」

了子(…これが、この力こそが…!)ニッ




翌日―


響「……」ボーッ

未来「響、どうしたの? もう行かないと遅刻しちゃうよ」

響「あー、いや、ちょっと寝不足で…」アハハ

響(あの時、デュランダルに飲み込まれたような感覚…私がもっと強ければ、あんな風いならずに済んだかもしれないのに)

響「未来、ごめん! 今日は体調悪いから学校休むね」

未来「…わかった。休むんなら、ちゃんと寝てなきゃダメだよ」






響「お待たせしました!」

弦十郎「おお、響君。ちょうどいいとこに来てくれた」

響「ど、どうしたんですか?」

弦十郎「実はな、翼の部屋の掃除を手伝ってほしいのだ」

響「翼さんの…?」

弦十郎「入院生活も長くなったからな。きっと、ひどい有様になってるかもしれん」



ゴソゴソ
バサッ


響「うわぁ、こんなモノまで出しっ放しに…」ビローン

翼「ちょっ、ちょっとあなた何してるの!?」ガラッ

響「あぁっ、えっ、翼さん!?」

翼「人の病室に勝手に入るなど…!」

響「すすっ、すみません! でも、これにはワケがあって…」







響「ふぅー、だいぶ綺麗になりました!」

翼「別に、こんなことしなくて良かったのに…」

響「気にしないでください。こういうの、好きでやってるんですから」

翼「そう…。でも、あなたがやってくれて少し良かったかも」

響「え?」

翼「…緒川さんだったら、いろんなもの勝手に捨てられていたかもしれないし」

響「えーと、それってつまり…」



――その頃、ロストグラウンド





緒川「劉鳳ォォォッッ!!」

劉鳳「カズマァァァッッ!!」


ドゴォン!!


瓜核「それくらいにしとけ劉鳳! そいつは政府の人間なんだ、あとは隊長に…」

劉鳳「いや、下がらん! この男を跪かせるまでは!」

緒川「ヘヘッ、目的を終わらせたらすぐ帰ろうと思ったけどよぉ、予定変更だ! てめぇをぶっ倒すまでなァ!!」

劉鳳「絶影ィ!!」ピキィィン

緒川「うおぉぉッ! 抹殺の、ラストブリットォ!!」ゴオッ



『ネフシュタンの鎧を纏った少女を確認! 響ちゃん、急いで指令室へ!』




響「は、はいっ! すぐ行きます!」

翼「待てっ、立花!」

響「え?」

翼「そのっ……戦う覚悟、できているのか?」

響「…本当は、戦いたくなんかありません。できれば、ちゃんと話し合って手を取り合って、それで解決すればいいなって思ってるのに…」

翼「ならば…!」


響「でも、私もう迷いません」

翼「迷わない…?」

響「緒川さんに教えてもらったんです。自分で選んだのなら、決して迷うな。選んだら進め、進み続けろ…って」

翼「立花…」

響「わかってもらえなくてもいい。ただ、私の思いが伝わるまでこの拳をぶつける。それが、今の私のやり方です!」



ダダッ


弦十郎『周辺区域の住民は避難させている。そのポイントに向かうんだ!』

響「はい!」

未来「あ。響!」

響「未来!? どうしてここに―」

クリス「見つけたぜ、おらぁッ!」ヒュンッ


ドゴッ


未来「きゃあぁッ!!」ズサッ

響「未来ッ!!」ダッ

クリス「しまった…! まだヤツの他にいたのか!?」



<Balwisyall Nescell gungnir tron>



ダンッ


未来「え、響…?」

響「…ごめん、未来」


シュンッ


友里「響ちゃん、市街地を避けて移動中!」

弦十郎「よし、そのままトレースしつつ映像記録を照会! 絶対に見失うな!」

クリス「鈍くさいヤツが挑発たぁ、生意気だね!!」シュッ



ドゴンッ


響「くっ!」

クリス「もういっちょ!」ヒュッ

響「はっ!」サッ

クリス(こいつ…動きが良くなっている!?)

響「なんで、どうしてこんなことするの? 私たちはノイズと違って言葉が通じるんだから、ちゃんと話し合おうよ! 言葉が通じ合えば人は…」

クリス「うるさいッ! 分かり合えるものかよ、人間が!」


クリス「クソッ! 気に入らねぇ、気に入らねぇ、気に入らねェッッ!! 何も分かっちゃいないことをベラベラとしゃべるお前がァ!」

響「…!」ビクッ

クリス「お前を引きずって来いと言われたが…そんなことはどうでもいい! お前をこの手で叩き潰し、今度こそお前のすべてを踏みにじってやる!!」

響「私だって…もう迷わないって決めたんだ!」グッ

クリス「吹っ飛びやがれェッ!!」カッ


≪NIRVANA GEDON≫


響「くぁっ…!」ビリビリ

クリス「持ってけダブルだ!!」カッ



ドッゴォン!!


クリス「ハァッ…ハァッ…」ゼェゼェ

響「はぁぁ…!」ゴゴゴ

クリス(ば、馬鹿な…!)

響(アームドギアがなくたって、その分のエネルギーをぶつければいいだけ…!)

響「私にはこの“拳”があるッ!」カシンッ

クリス「くっ、させるかァ!」ヒュッ

響「ハッ!」パシッ

クリス「なっ…(あたしの攻撃が掴まれた!?)」


グイッ
バシュッ!


クリス「うわっ!?」

響(最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に…!)ゴォォ

クリス「ひッ…!」

響「これが、緒川さん譲りの…!」


ギュイィィ!!


響「“唱撃の、ファーストブリットォッ!!”」


ドゴンッ
バキバキバキッ


クリス「…ぁっ!!(馬鹿な、ネフシュタンの鎧が…!)」カハッ

響「でぇぇいッ!!」クンッ


ドゴォッ!!


クリス「ぁ…ぐ…」ビクン

響「はっ…はっ…」ゼェゼェ



藤尭「響さんの放ったエネルギーの解析結果、出ました」

友里「司令、これは…」

弦十郎「間違いない。フォニックゲインに紛れて僅かに溢れ出したこの反応は…アルターだ」

友里「響ちゃんが、アルター能力者…?」

弦十郎(ネフシュタンの破片を分解・再構成し、腕の形状を一部変化させたというのか…)



ビーッ ビーッ


弦十郎「どうした!」

藤尭「アウフヴァッヘン波形、検知!」

弦十郎「なっ…イチイバルだと!?」


<Killter Ichaival tron>



響「! その歌は…」

クリス「…歌わせたな、私に歌を歌わせたなぁッ!」


ガシャッ


クリス「教えてやる! あたしは歌が大ッ嫌いだ!」ババババ


≪BILLION MAIDEN≫


響「く、クリスちゃん…!」ピシッ ピシッ

クリス「でりゃあぁッッ!!」ボボボボ


≪MEGA DETH PARTY≫


響「くぅあッ!!」ボッカァン!!

クリス「クソが…!」ハァハァ




響「クリス、ちゃん…」ボロッ

クリス「こっ、コイツ!! まだ生きて…」


ダンッ


響「…っ、だあぁぁッ!!」ゴォォ

クリス「突っ込んできやがる!? バカめ!!」バシュ バシュ


ボッカァン!!


響「うおぉぉッ!!」バッ

クリス「ばっ…直撃のハズだぞ!?」


ギュイィィ!!


響「“壊滅”の…セカンドブリットォッ!!」


バゴンッ


クリス「ぐうゥッ!!」ミシミシッ

響「クリスちゃんッ…!!」グググッ

クリス(あ、あたしのイチイバルが…!)ペキッ


ガッ


響「がッ!」ガクン

クリス「な、何だ!? 上から!」



ヒュンッ
バキャッ


クリス「うわッ!(ノイズだと…!)」


『全く…命じられたことも満足にできないなんて、どこまで私を失望させれば気が済むのかしら?』


クリス「! フィーネ!?」


『もうあなたに用はないわ。あとは一人で好きになさい』バサッ


クリス「なっ…何だよそれ! 待てよ、フィーネッ!!」ダッ

響「うぅ……クリス、ちゃん…」バタッ



【第一期】シェルブリット



クリス「うッ…」ヨロッ

クリス(ノイズに追われてそろそろ三日…身体が…!)ハァハァ


バシャ


クリス「……っ」

クリス(パパ…ママ……イヤだ…)







クリス「……ん(ここは…どこだ?)」

かなみ「あ、良かったぁ! 目が覚めたんですね」

クリス「あ…あんたは」

かなみ「びっくりしたんだよ。裏路地で倒れたんだから」

クリス(…そうか。あん時、意識が消えてから…)



かなみ「はい。あったかいもの、どうぞ」コトッ

クリス「…ぉ、おう」ズズッ

かなみ「あの…あんなとこで、一体何があったんですか?」

クリス「あぁ?」

かなみ「ごっ、ごめんなさい! その、ちょっと気になっただけで、別に言わなくても…」

クリス「……ちょいと、風邪をこじらせちまっただけさ」

かなみ「……」




クリス「それよりさ、あんたはどうして、見ず知らずのあたしを助けたりなんかしたんだ?」

かなみ「それは……私も、あなたと同じ思いをしたからです」

クリス「…?」

かなみ「寒くて、ずっと辛かった。だけど、あの時カズくんが来てくれたから…」

クリス「カズくん…?」

かなみ「本当は、“カズマ”って名前なんです。カズくんって呼ぶと、嫌そうな顔するんだけど…」

ビーッ ビーッ


クリス「な、何の騒ぎだ?」

かなみ「避難警報、知らないんですか…?」

クリス「避難…って」

かなみ「ノイズが出たんですよ。早く逃げましょう!」

クリス「…ッ!」ダッ

かなみ「あっ! 待って…」

クリス(クソッたれ!! あたしったら、何やらかしてんだ!)ギリッ




ズズズ…


クリス「あたしはここだ。だから…関係ないヤツのとこに行くんじゃねぇッ!!」


<Killter Ichaival ――>?



クリス(こ、声が…!)ゴホゴホ

クリス「クソッ! このままじゃ…」



ヒュンッ


「どぅりゃあぁぁッ!!」ゴアァッ


バッゴォン!!


クリス「うっ…!(な、何だ…?)」

緒川「ッたくよォ…久々にかなみの所に戻ってみりゃあ、すぐにこれだ。たまんねェぜ」ザッ



クリス「お、お前は…!」

緒川「かなみから話は聞いた。この前の続きなら、コイツらをブチのめしてからにしようぜ」

クリス「あっ、あたし一人で十分だ! こんなヤツら、すぐぶっ倒して…」

緒川「そうかよ。なら、好きにしやが…れッ!」ダッ

クリス「おいッ! ッたく…ちくしょうッ!」

クリス(このままじゃ…格好つかねェじゃねぇか!)


<Killter Ichaival tron>



藤尭「ノイズの密集エリアに、強力なアルター反応!」

友里「あっ、あれは…司令!」

弦十郎「緒川…!」

翼「叔父様、私も出撃を…」

弦十郎「翼か。見てみろ」

翼「あの姿は…緒川さん!?」

弦十郎「ああ。いつの間に戻ってきたのか知らんが、雪音クリスと共にノイズと戦っている。しかも、以前より力を増しているようだ」

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