男「頼みがあるんだけど」

女「あらなに？　もしかして象に乗せて欲しいの？」

女「もちろん大丈夫よ！　この子、とっても大人しいから！」

男「いや……」

男「君のインド象を食べたい」

女「！？」

女「ちょっ……やだ、いきなりなに言ってんの？　冗談でしょ？」

男「いや、その巨体、その長い鼻、その優しそうな瞳、そのぶ厚そうな皮膚……」

男「全てが俺の食欲をそそるんだ」ｼﾞｭﾙﾘ…

男「頼む、食べさせてくれ！」

インド象「パオ……」

女「ダメに決まってるでしょ！　そんなの！」

男「だったら……ムリヤリ食べるまでだ！」

男「うおおおおおおおおおっ！！！！！」

インド象「パオッ！」ﾌﾞﾙﾝｯ



バチィンッ！



男「おぶっ！！！」

男「ち、ちくしょう……！」

男「だが、このままじゃ済まさねえぞ！　絶対……絶対お前を食ってやるからな！」





インド象「パオ……」

女「大丈夫よ、あなたは私が守る！」

男（この墓場なら、きっとあのポケモンがいるはずだ……）

男「いた！」





ゴース「ゴース……」ﾌﾜﾌﾜ…

ゆうれい「……」ﾌﾜﾌﾜ…

男「ゴース！」

ゴース「ゴス？」

男「頼む、俺についてきて一緒にインド象を倒してくれ！」

ゴース「ゴース！」

男「ありがとう！」

ゴース「ゴースゴスゴス」

男「え？　ただし友達の“ゆうれい”も連れていきたいって？　まぁいいだろ」

ゴース「ゴース！」

ゆうれい「……」ﾌﾜﾌﾜ

ゴース

ガスじょうポケモン

たかさ　１．３ｍ

おもさ　０．１ｋｇ


うすい　ガスじょうの　せいめいたい。

ガスに　つつまれると

インドぞうも　２びょうで　たおれる。





男（ゴースさえ手に入れればこっちのもんだ！）

男（インド象……お前は必ず俺が食べてみせるッ！）

男「よう」

女「あっ、あんたまた来たのね！　なんの用！？」

インド象「パオ……」

男「もう一度いおう。君のインド象を食べたい」

女「だから、そんなことさせないって言ってるでしょ！」

男「だったらしょうがない……行けっ、ゴース！」

ゴース「ゴース！！！」ﾌﾞﾜｯ

ゴース「ゴォォォォォス！」ﾓﾜﾜｯ

インド象「パオッ！？」

インド象「パオッ！　パオッ！　パオッ！」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝﾌﾞﾝｯ

男「無駄だッ！　ガスであるゴースに象の攻撃など通用しないッ！」

男「しかも、ゴースに包まれたら、インド象は２秒で気絶しちまうのさァァァッ！」

ゴース「ゴスゴスゴス！」ﾑﾜｧｧｧｧｧ

インド象「パ、パオッ……！」

女「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ！！！」

ゆうれい「……パオ」

インド象「パオ！？」

ゴース「？」

女「え？」

男「ん？　な、なんだ？」

ゆうれい「パオォォォォン！　パオォォォォォン！」

インド象「パオッ！　パオッ！　パオォォォォン！」

ゴース「ゴス？」

女「象の鳴き声？　ってことは、あの“ゆうれい”も象なの？」

男「！　――ま、まさか！　まさか……」

男「あの“ゆうれい”は、あのインド象の死んだ母親！？」

ゆうれい「パオ……パオ……パオォォォォン！」

インド象「パオォォォォォン！　パオォォォォォォン！」

ゴース「ゴス……」ﾎﾛｯ

女「母子の再会……二頭とも嬉しそう……」

男「死んでもなお、母親は子供の身を案じてたってわけか……」

ゆうれい「パオ……パオ……」ｽｩｩ…

インド象「パオ！？」

ゴース「ゴース！」

女「“ゆうれい”が消えていく！？」

男「きっと、元気そうな息子の姿を見て、満足したんだろう。だから――」

女「成仏できたわけね？」

男「その通りさ」

インド象「パオォォォォォォォォォォン！！！」

インド象「パオォン……パオォン……」

女「ねえ」

男「ん？」

女「この子、あなたに自分を食べてもいいよ、だって。お母さんに会わせてくれたお礼だって」

男「いや……もういいんだ」

女「どうして？」