男「アライさん虐待トーナメント?」 (295)

アニメけものフレンズのアライさん虐待SS
グロ・残酷な描写あり 苦手な方はブラウザバック推奨

男(ハァー、今日も仕事疲れたわ…)

自宅に帰ってきた男はそう呟きながらテレビをつけ、スーパーで買った弁当を袋から取り出した。
今はちょうどニュースの時間帯で今日あった出来事が報道されている。
しばらくテレビを眺めながら晩メシを食べていたら、ふとアライさんによる農業被害の特集コーナーが始まった。

アライさん―――― 十年ほど前、ジャパリパークという施設から逃げ出したアライグマのフレンズ。

通常ならフレンズは動物や動物だった物にサンドスターという物質が作用して生まれるらしいが、
パークから逃げたアライさんはサンドスターが検出されていない地域にもかかわらず繁殖し続け、農作物に被害をもたらす程に増えてしまった。

男の住んでる市はジャパリパークから遠く離れているが二年前からアライさんによる被害が確認され始め、
こうしてたまにローカルニュースで取り上げられる様になった。

テレビには捕獲用の檻に入りこんで捕まったアライさんが大きく映しだされている。

男「うぇ、相変わらず気持ち悪い顔してんな…飯時にこんなモノ映すなよ…」

男はチャンネルを変え、弁当の残りを急いでかきこんだ。

―――――――――――――――

男(風呂も入ったし明日も早いからもう寝るか)

そう思いながら電気を消し、二階の寝室のベッドに横になった。
目をつむってしばらく経った時、屋根裏のほうからゴトッと音がしたが疲れていた男は気にする事もなく眠りについた。

男「雨かよ…今日はよりによって外回りなのについてねえ」

翌日、男は夜中に何か音がした事なんかすっかり忘れて家を出た。

仕事が終わり、帰宅した男は絶句した。家の中が荒らされていたのである。
居間や寝室はもちろんの事、台所の冷蔵庫までひっかき回されている。テレビもつけっ放しでおまけに犯人は土足で上がりこんだのか、
泥のついた足跡らしきものが無数に残っていた。男は動揺しながら110番通報をする。

警察とのやり取りを終え、少し経つと警官がやってきた。

警官「大変な目に遭われましたねえ。お怪我が無くてなによりです…犯人と鉢合わせするケースもありますんでね。

ではお部屋の中を拝見させて下さいね」

警官はしばらく部屋を眺めていたが、一人でうなずいて納得した様な仕草をみせるとこう言った。

警官「これは人間の仕業ではなくてアライさんですねえ」

男「アライさんってあの?何故です?」

警官「この足跡、人間の大人のものより小さいでしょ?」

最初は動揺して気が付かなかったが、言われてみればかなり小さい足跡だ。

男「子供や小柄な大人の可能性もありますが」

警官「それだけじゃありません。足跡の横に何か別のものがありませんか?」

男「なにか…引きずった様な跡がありますね」

警官「それはアライさんの子供が這った跡ですね。それにここ。冷蔵庫のドアに引っ掻いたキズが沢山ありますよね。

それもアライさんの特徴です。一応人間のセンで指紋なども調べさせてもらいますが、九割九分アライさんの仕業ですよ」

警官「ここ最近になって農作物だけじゃなくて空き巣まがいの被害も増えてるんですよ。金目の物を取ったりはしないですが、

こういう風に食べ物や調味料をアライさんの子供がぶちまけるんで家具や壁紙への被害がひどく出てますね」

男「しかしドアは鍵が掛かってましたし、窓も割られてません。アライさんが家に入れると思えないのですが」

警官「あいつらはどうやってか床下や天井裏から入り込むんです。もしかしたら住みつかれているかもしれません。

一度駆除業者に見てもらう事をオススメしますよ」

男「なんてことだ…」

警官が去った後、男はそう呟く事しかできなかった。

―――――――――――――――

気を取り直した男はあらためてどの位被害にあったのかを確認した。
床にキズが大量にある上、冷蔵庫もひどく汚され、居間の家具やオーディオ機器なんかも汚されたり倒されたりしている。
ほぼ買い替えなければならないだろう。中古の一軒家とはいえ、リフォームにそれなりに金を掛けて綺麗にしたというのに。

男(クソが。ムカつくが片付けより駆除するのが先か。明日業者に来てもらおう)

男は翌日職場で上司に事情を話し、午後から休みをもらうと迅速な対応がウリだというアライさん駆除業者を手配した。


―――――――――――――――

駆除業者「本日は当サービスをご利用頂きありがとうございます。担当の○○です、よろしくお願いします」

男「こちらこそよろしくお願いします」

駆除業者「早速ですが床下と屋根裏を調べさせて頂きますね」

一時間も経たないうちに駆除業者は大きな袋を抱えて戻ってきた。

男「お疲れ様です。アライさんはいました?」

駆除業者「はい、今檻に移しますね」

そう言いながら駆除業者はワゴン車の後部ハッチを開け、小さな檻に親であろうアライさんを1匹、
子供のアライさんを2匹それぞれ別の檻に押し込んだ。

男「これがアライさん…実物を見るのは初めてです」

駆除業者「ええ、結構そうおっしゃるお客さんはいますよ」

男「ところでアライさんは気を失ってる様ですが」

駆除業者「抵抗されたので電気ショックで眠らせました」

男(スタンガンみたいなものか?)

駆除業者「後はアライさんのフンを片付けて殺菌消毒して作業は完了です」

そう言うと駆除業者は車から消毒用の機材を取り出し、家に戻っていった。

男(もうしばらく掛かりそうだな…しかし見れば見るほど薄気味の悪い顔だな)

そう思いながら檻のアライさんを眺めていると親のアライさんが目を覚ました。

アライさん「んん…ここはどこなのだ…人間が来て手がバチッとなってから覚えてないのだ…とりあえず起きるのだ」

アライさんが立ち上がろうとすると派手な音がする程の勢いで檻の天井に頭をぶつけてしまった。

アライさん「痛いのだ!一体なんなのだ!?」

立ち上がれないのでアライさんはあぐらをかいて座り込みながら、檻の格子を両手で掴み押したり引っ張ったりしている。
頑丈に作られているであろう檻がそんな程度で開くわけが無く、ガシャンガシャンとうるさい音がするだけである。
そうしてるうちにやっとアライさんがこちらに気付き話しかけてきた。


続く

アライさん「さっきとは違う人間なのだ?おい人間、アライさんをここから早く出すのだ」

男(閉じ込められてる癖にでかい態度だな)

男「出してやるから俺の質問に答えてくれないか?」

アライさん「なんなのだ?なんでも聞くといいのだ、アライさんは物知りなのだ」

男「昨日あの家で食べ物を探してたのはお前か?」

男は自分の家を指差しながらそう訊いた。

アライさん「そうなのだーあの家はいっぱい食べ物があったのだ!ちび達も大喜びだったのだ」

男「他に何かいじったか?そう…例えば何か光る物とか」

アライさん「ピカピカ光るものならあったのだ。ポチポチが沢山あったから押してたら何かうつってキラキラで楽しかったのだ」

男「そうか、もうわかったよ」

警官が言っていた通り、家を荒らしたのはこいつらで間違いなさそうだ。

アライさん「もういいのか?質問に答えたんだからここから出すのだ」

男「あれは嘘だぞ」

アライさん「アライさんを騙したのか?ウソつきは泥棒のはじまりなのだ!」

こいつがそれを言うのか…とあきれていたら作業を終えた駆除業者が戻ってきた。

アライさん「さっきの人間なのだ!おいおまえ、アライさんをここから出すのだ」

バカの一つ覚えみたいに出せ出せと言うが、駆除業者は一言も喋らず完全に無視を決め込んでいる。

駆除業者「作業完了しました。いま請求書をお作りしますのでもう少々お待ち下さい」

男「お疲れ様でした」

アライさんが何やらわめいているが駆除業者は気にも留めずペンを走らせている。日常茶飯事なのだろう。
駆除というからにはこれからアライさん達は殺されるんだろうが、こいつらがどう処分されるのか最期まで見届けたくなった。
ダメもとで駆除業者に尋ねてみた。

男「あのう、お願いがあるのですが」

駆除業者「なんでしょうか」

男「もし良かったらですが、アライさんを処分するところを見学させて頂きたいのですが」

駆除業者「ええ、かまいませんよ」

男「頼んでおいてなんですが本当にいいんですか?」

駆除業者「稀にですが見学を希望する方はいらっしゃいますよ。我々としても害獣被害に関心を持ってもらいたい気持ちもありますので、

見学を許可している業者もいます。ではこちらが請求書になります」

請求書に書かれていた金額は会社のホームページに記載されていた額とほぼ変わらなかった。正直ボッタくられると思っていたが
どうやら良心的な所だったようだ。

家を出る前に警察に連絡して昨日の空き巣はアライさんの仕業だった旨を伝えておく。

駆除業者「では出発しますので車にお乗り下さい」

男「よろしくお願いします」

―――――――――――――――

家を出て10分位経った頃、車の中でアライさんはやっと思い出したかの様に自分の子供達の心配をし始めた。

アライさん「ちび達、起きるのだ」

アライさんは格子から手を伸ばし、アライさんの子供が入れられている檻をゆすっている。だが子供は2匹とも起きる様子が無い。

男「○○さん、アライさんの子供が動かないみたいですけどアレ死んでるんじゃないですか?」

駆除業者「電気ショックの機器はアライさんの成体に合わせて調整してるので、子供の場合そのままショック死する事もありますね。

人間でも大人と子供では耐久力に開きがありますが、アライさんのそれは人間の比では無い様で…」

後ろから時折ノダァ…ノダァ…と声が聞こえてくるが、駆除業者と色々話している内に会社に到着した。

山に近い街はずれにあるその会社の敷地は思ったより広く、白い倉庫の様な建物があった。

駆除業者「では見学の申請書類に署名をお願いしたいので事務所まで来て頂けますか?」

男「わかりました」

手続きを済ませると駆除業者にアライさんを処分するという区画に案内された。
そこは床が殺風景なコンクリートになっていて、さっきサインした事務所とは全く異なる雰囲気だ。

駆除業者「そこは段差になっているのでお気を付け下さい」

駆除業者が指す方を見ると大人の腰くらいの深さで縦横3m四方ほどの穴があいている。

駆除業者「この穴に水を張り、アライさんを檻ごと沈めて殺処分します」

そう言いながら穴の脇にあるバルブをひねると勢い良く水が流れ出した。

駆除業者「水が溜まるまで少々掛かりますので、捕まえたアライさんを一時保管する場所にご案内しますよ」

案内された先には男の自宅で捕まえたアライさんもすでに運び込まれていて、他に数匹のアライさんやその子供が檻に入れられている。
おそらくこの市で捕まえられたものだろう。アライさんの数だけ自分の他にも同じ様な被害に遭った人がいると考えたらまた怒りがわいてきた。

よく見てみると檻の大きさはそれぞれ違うが、どの檻にもアライさんが一匹ずつしか入れられていない。子供なんかはまとめて入れたほうが
省スペースになりそうなものだが…。ふと駆除業者に疑問を投げかけると、彼は一瞬笑みを浮かべたがすぐに無表情に戻り

駆除業者「アライさんは餌をやらずに放っておくと共食いするんですよ。いくら害獣とはいえ、見た目は人間に近いですから。

流石に我々でもそんなものは見たくありません」

男「…それは気持ち悪いですねえ」

駆除業者「そろそろ水が溜まっていると思いますので戻りましょう」

男「おっ、いよいよですか」

親のアライさんは相変わらずわめいているが駆除業者は全く反応する様子は無く、さっき捕まえたアライさん親子が入った檻を台車に乗せ男とその場を後にした。

失礼、最後に「続く」と入れるのを忘れました

駆除業者は水が張られた穴の横に台車を停め、ロープが輪っか状に結ばれた物にフックが取り付けられた道具を二つ取り出し
意識を失ったままの(死んでいる?)子供が入っている檻の上部左右に引っ掛けた。そして両手でそれを掴むと穴にゆっくりと沈めた。

アライさん「なにをするのだあ!そんなことしたらちびが死んでしまうのだあ!!」

アライさんの子供A(以下アライちゃんと表記)「…………………………」

駆除業者「やはり死んでいた様ですね。通常ならこのまま20分沈めますがこれは計る必要はないでしょう」

男「20分って随分長いですね。半分でいいのでは?」

駆除業者「以前はそれ位で済ませていたのですが、一度だけ耐えた個体がいて危うく取り逃がしそうになった事がありまして。

それ以来念を入れて20分にしていますね」

男「恐るべし害獣の生命力…」

そう話しながら駆除業者はアライちゃんBの檻にもフックを引っ掛け同じ様に沈めた。

アライちゃんB「~~~~~~~~~~~っ!!!!」

アライちゃんBは息があったらしく、水を吸い込んだ拍子に目が覚めたらしい。口と鼻から泡を吹き小さな体からは想像できない位の速さで手足をバタつかせているが、
3分も経たない内に動きが止まった。

アライさん「ああああああ!!ちびが…ちびが…なんでこんな事するのだああああ!!」

駆除業者はアライちゃんBの様子を少し眺めた後、今度はアライさんの檻に手を掛けた。

アライさん「ひっ。次はアライさんなのか?」

駆除業者「……………」

駆除業者は無言でフックを引っ掛ける。

アライさん「アライさんは…アライさんだけは……ここから出してほしいのだぁ……。アライさん何も悪いことしてないのだぁ……」

男(命乞い始めたよ…この状況じゃ無理も無いか)

駆除業者「………」

アライさんの檻が持ち上げられる。

アライさん「人間っ!やめるのだぁー!!」

アライさんの叫びもむなしく、檻は沈められた。

水中のアライさんは最初は我々が遊びで息止め勝負をする時の様な目を閉じ、頬を膨らませるような顔をしていた。
そんな事をしても無駄だというのに…。想像でしか無いがこういうのは我慢すればするほど苦しくなるんじゃないのか?
いっその事楽な道を選べばいいと思うが、アライグマあるいはフレンズの生存本能が許さないんだろう。

3分経過したころ、アライさんが大量の泡を吐いた。こりゃあもうダメだな、と思ってるとアライちゃんBの様に手足を動かしてもがき始めた。
成体のアライさんだけあってか激しく振り回した腕が檻にぶつかってガン!ゴン!と音が伝わってくる。しかしそんな状態も1分も持たず、アライさんは沈黙した。

20分きっかり経った後、アライさん達の檻は引き上げられた。
もがき苦しんで死んだアライさんの顔は見るに耐えない位ひきつっており、醜いとしか言いようが無かった。

駆除業者「後は適当に放置して乾いたらこの建物の裏にある焼却炉で焼却、灰は廃棄物として処理業者に引き取ってもらい終わりです」

男「いやあ、とても勉強になりました。最期に一つだけ…よく動物の殺処分にガスを使うって聞きますけど…」

駆除業者「普通ならそうなんですけどね。アライさんの場合捕獲されるペースがまちまちな上、飼育しておく訳にもいかないので

来た端からこの方法で処分していくのが一番いいんですよ」

男「なるほど。今日は急に見学をさせて頂きありがとうございました」

駆除業者「お帰りになりますか?最寄の駅までお送りしますが」

男「いえ、おかまいなく」

駆除業者「そうですか、では来た道を15分ほど歩くとバス停があるのでそちらからお帰りになって下さい」

男「ではこれで失礼します」

男は駆除業者に一礼し会社を後にした。

男(しかしあのアライさんの最期の顔…夢に出てきそうなインパクトだったな)

男はそんな事を考えながら帰路についた。


アライさんを駆除してから三週間経ったがちょっとまずい事になった。

上司「男、また同じミスしてるぞ?早くやり直して来い」

男「はい、申し訳ありません…」

最近仕事に集中できなくなったのである。

同僚「おい男、最近どうしちまったんだよ?先月はあんなに調子良かったのに。もしかしてあのアライさんに受けた被害の事まだ引き摺ってんのか?

まー泥棒なら捕まればいくらか戻ってくるかもしれないけど、アライさんだもんなぁ~泣き寝入りするしかないわなあ。メシ奢ってやるから元気出せや?」

アライさんが原因なのは間違いないが本当の事は言えないので黙っておく。
駆除した後少しの間は気分良く過ごしていたが、アライさんの最期を思い出すたびにまたアライさんが苦しむ姿が見たいと考える様になってしまった。

アライさんを虐待した動画や画像はインターネット上にそれなりに転がっている。最初男はそれで満足を得ようと思ったが
映像を見てもやはり生で見たインパクトを超えるものは無かった。

何をしてもアライさん、寝ても覚めてもアライさん、といった風に常に頭の中をアライさんがぐるぐるしている。
これは流石にまずいと思い、計画を立て次の休みに実行する事にした。
簡単に言ってしまうと、自分の手でアライさんを捕まえて痛めつけてやろうという事である。

害獣とはいえ捕獲するのに許可が必要だったような、と思い出し検索したところ野生のアライグマとは違いアライさんは許可の必要が無い。
勝手に捕まえて勝手に殺してもいい様だ。ただし繁殖や成育を目的とした飼育と生きた個体の売買は禁止されている。(一部例外あり)
人間の様な姿をしているのに本家のアライグマより扱いが悪いとは…。確かにあれだけ好き勝手に被害を出していれば同情もされないだろう。

しかし喜んだのも束の間、罠を取り扱うのには狩猟免許と許可が必要との事。
流石に素手で捕まえる訳にもいかないので、おとなしく2ヵ月後にわが市で行われる狩猟免許の試験日まで勉強する事にした。

―――――――――――――――

同僚「やっと調子取り戻したみたいじゃん?さっき上司も褒めてたぞ。いい事あったか?」

男「まあな」

同僚「えー何よ?宝クジ当たった?奢ってくれよ」

男「そういうのとは違うが…まあそのうちな」

無事に狩猟免許を取得した男は役所で許可申請を済ませ、アライさん専用の箱型の罠も用意した。
後は実際にアライさんを捕まえるだけである。そう考えただけで男のモチベーションは上がり、仕事の調子も良かった。


続く

訂正 >>18

誤×  男「いやあ、とても勉強になりました。最期に一つだけ…よく動物の殺処分にガスを使うって聞きますけど…」

正○  男「いやあ、とても勉強になりました。最後に一つだけ…よく動物の殺処分にガスを使うって聞きますけど…」

失礼しました

待ちに待った休みだ。あらかじめ調べておいたわが市のアライさん出没スポットに向け早朝から車を走らせる。
男の目的は言うまでも無くアライさんを捕まえる事だが、アライさんといえど野生で生き抜いているフレンズには変わりないので
複数体取り扱うには狩猟の素人である男では手に余る。そう判断して今回はアライちゃんだけを生け捕りにする気でいた。

問題はアライさんとその子供は行動を共にする事が多いので、どうやって引き離そうか考えたが最悪の場合、親は隙を見て殺す事に決めた。
アライさんを殺す用に手斧と鉈を用意したが、途中で職務質問を受け銃刀法違反の容疑でしょっぴかれる訳にはいかないので、
通用するかわからないがキャンプ道具一式も車に積んでおいた。

到着した場所は山のふもとの畑が多い地域だ。アライさんの被害を受けた農家も少なくないだろう。あまり山の奥に入ってしまうと回収が
困難になりそうなのでそこそこ進んだ後、アライさんが好みそうな木陰に箱罠を設置すると車に戻った。後は二時間おき位に様子を見に行く事にする。

適当にタブレットや雑誌で暇を潰しながら待っていたが、朝早かったせいかいつの間にか眠ってしまってた様だ。
時計の針は正午すぎを指しており、失敗したなと思いながら罠の確認に行こうと車を出た。
箱罠の近くまで来た時、何やら金属が鳴る音と声がした。これはもしやと思い、太い木の陰から様子をうかがう。

いた。アライさんだ。だが不安が的中してしまった。箱罠の中にはアライちゃんが一匹いるが、親であろうアライさんが一匹外にいるのだ。
アライさんは閉じ込められた子供を助けようと罠を叩いたり揺すったりしている。

アライさん専用罠はこういう場合も想定して、罠にかかったら自動的に鍵がかかる仕組みになっている。なのでアライちゃんが逃がされる心配は無いが…
ねぼけていたせいで手斧と鉈を車に置き忘れてきてしまった。仕方なく一旦車に戻ろうとしたその時、

アライさん「誰かいるのか?」

男「……………」

アライさん「そこにいるのはわかっているのだ。出てくるのだ」

アライさんは顔をこちらに向け言った。匂いでも察知したのか、完全にバレている。
しかし相手が武器を持ったプロの猟師である可能性などは考えないのだろうか?よほど自信過剰なのか警戒心が無いのか…
まあいい、野生動物と違い言葉が通じるフレンズなら敵意を見せなければどうとでもなるだろう。

男「………こんにちは」

アライさん「やっぱり人間なのだ。ここに何しに来たのだ?」

男「山菜を取りにきたんですよ」

なんせ手ぶらだから明らかにそんな格好には見えないが、登山や調査よりはマシと思いそう言った。

アライさん「山の食べ物は全部アライさんのものなのだ。お前、横取りする気か?」

男(食いつくのはそっちかよ)

男「いやあ、そんな気は無いですよ。アライさんがいるとは知らなくて。それにしてもこの山全部アライさんの物だなんてすごいですねえ」

アライさん「そうなのだ!アライさんは“もりのおう”だからすごいのだ」

どう考えてもそんな偉大な存在では無いが…このまま話してても雲行きが怪しくなりそうなのでこっちから質問する。

男「ところでそっちの箱に入っているのは?」

アライさん「うっかり忘れてたのだ!食べ物探しに夢中になっていたらはぐれたちびが箱の中から出られなくなったのだあ」

アライちゃん「ままー、はやくここからでたいのらぁ」

男「それはツイてませんね。良かったら出すのを手伝いましょうか?」

アライさん「本当か!?早くやるのだ!」

アライちゃん「にんげんしゃん、たすけてくれるのらぁ?」

男「まあ待ってください、この箱を壊せる道具を取って来ますよ」

アライさん「早く戻ってくるのだー?」

アライちゃん「なのらー」

とりあえずこの場から離れる事はできたが、この様子じゃ親が罠から離れる事は無い。
予定通り殺すしかないか。車まで戻り、手斧と鉈が入ったリュックを背負う。

―――――――――――――――

男「道具を持ってきましたよ」

アライさん「待ちくたびれたのだぁー、お前がのろまだからちびが寝てしまったのだ」

男「ところでアライさん、お腹空いてません?」

アライさん「空いてるけど…今はそれどころじゃないのだ」

男「まあまあ…何か食べないと力出ませんよ?これからこの堅い箱を一緒に壊さないといけないんですから」

アライさん「それもそうなのだ。何か持ってるならよこすのだ」

男「今出しますよ」

男はリュックの中身がアライさんから見えない様に昼に食べる予定だったコンビニ弁当と菓子パンを取り出した。

アライさん「おおー、人間の食べ物はおいしいから大好きなのだ」

男の手からひったくる様に弁当とパンを取るとあぐらをかいて袋を破り始める。こいつらの座り方はあぐらで共通でもしてるのか?
それにてっきりアライちゃんを起こして分けてやるのかと思ったら…一人で全部食べそうな勢いだ。

男がアライさんの後ろに回りこんでもまるで意に介さず、クチャクチャと音を立てながら下品にむさぼり食べている。
リュックから静かに手斧を取り出すと両手で握り締め、アライさんの頭頂部目がけて振り下ろした。

アライさん「プゴッ」

斧の刃が半分以上アライさんの頭に食い込んだ。男はすぐに斧を引き抜き、右足でアライさんの右肩あたりを横から蹴った。
アライさんは座ったままの状態で左側に倒れる。間髪いれず男はアライさんの首を狙い斧を振り下ろした。

ゴキッ、と首の骨に刃が当たった感触が伝わってくる。引き抜いた後もう一度同じ場所へ振り下ろす。さっきと位置がズレてしまったが、
傷口はさらに広がり血がゴボゴボとあふれ出てきた。男はここまでやればもう助からないだろうと思いアライさんから距離をとる。

すると突然アライさんが仰向けになり口から血を吐きながら手足を上下左右に激しく動かし始めたのだ。
男は心の底から驚いたが、怯まず斧を握り直し身構える。アライさんはうなり声のようなものをあげていたがすぐにこと切れた。

男(まさかあの状態であんな動きをするとは思わなかったが…うまくいったようだな)

男は血の付いた斧とアライさんの食べ残しを別々のビニール袋に入れ、リュックに詰めると箱罠に近づいた。
親があんな事になったというのにアライちゃんはまだ寝ている。こんなんでよく野生で生きていけるなと思いながら罠を持ち上げた。

歩き出してから五分ほど後、流石に気付いたのかアライちゃんが目を覚ました。

アライちゃん「なんかゆれてるのらぁ?ここどこなのらぁ?」

男「やあアライちゃん、やっと起きたね」

アライちゃん「しゃっきのにんげんしゃんなのらぁ…ままはどこなのら?」

騒がれても面倒なのでママはこの先にいるよ、だからまだ寝ててもいいよと伝える。

アライちゃん「わかったなのらぁ…おやしゅみなのら…」

車に戻ってきた男は罠をトランクに入れた後、厚手の毛布を掛けた。シャツにアライさんの血が付いていたので替えに着替えた後、車を出した。


続く

夕方に自宅に戻った男は車から罠を運び出し、浴室の前に置く。
ネタばらしの前にこのままでは臭いし泥だらけなので洗ってやる為だ。アライちゃんはというとまだ寝ている。

男「アライちゃーん、起きてー」

男は罠の鍵を開け、アライちゃんが出られる様にした。

アライちゃん「にんげんしゃん…おはようなのら…」

アライちゃんは眠そうに目をこすりながら言う。

アライちゃん「ままは?ままはぁ?」

男「ママはアライちゃんがいい子にしてたらすぐに来てくれるよ。その前にアライちゃんをきれいにしてあげたいからその箱から出てきてくれる?」

アライちゃん「わかったのらー」

アライちゃんはほふく前進の様な動きをして身をよじらせながら進んでいる。もう少し成長すれば四つん這い、さらには二本足でよちよち歩きといった具合に
人間と同じ過程を経て大きくなるのだろう。最初に最も扱いやすそうなアライちゃんを手に入れられてラッキーだった。

アライちゃんが罠から出たところで男はアライちゃんを両手で優しく持ち上げ、浴室に入れた。まずはシャワーで泥汚れを洗い落とす事にする。
大体汚れを落としたところで大きめのプラスチックのタライにアライちゃんを移してやり、蛇口からタライにお湯を入れた。

男「アライちゃん、お湯はちょうどいい?」

アライちゃん「きもちいいのらー♪」

アライちゃんが無邪気に喜ぶ様子を見た男はふと出来心でアライちゃんの頭を強めに押しお湯の中に沈めた。

アライちゃん「ゴボッ、ププププ……」

アライちゃんは男の手を掴み、水面から頭を出そうと抵抗した。数秒のち、男は手を離してやる。

アライちゃん「プハッ、ハァーハァー……なにしゅるのらぁ……くるしいのらぁ!!」

男「ごめんごめん、アライちゃん。力加減間違えちゃった。後でおいしい物あげるから許してくれないかな?」

アライちゃん「ぶぅー。しかたないのだ、あらいしゃんはこころがおおきいからゆるしてやるのらぁ」

数分お湯に浸からせた後、仕上げに今度は石鹸を使い体と頭を洗ってやる。首筋や背中をこすった時に発するウウン…だのキャッキャッだの言う声が気持ち悪い。
その後アライちゃんを浴室から出しバスタオルで拭きドライヤーで乾かしてやると、外で罠に入っていた時とは見違える様にきれいになっていた。

男「じゃあアライちゃん、おいしい物を持って来るからおとなしくここで待っててね」

アライちゃん「きたいしてるのらー♪」

男は使ってない洋室にアライちゃんを置き部屋を出る。アライちゃんがもう生きてこの部屋を出る事は無いだろう。
アライちゃんはそんな事に気付く訳が無く、目を閉じてニコニコしていた。

男(何か適当な食べ物は…。これでいいか)

男は冷蔵庫の隅っこにあった賞味期限の切れたソーセージと工具箱、そしてビニールシートを持って洋室に戻った。

アライちゃん「やっときたのらー。にんげんしゃん、なにをくれるのらぁ?」

男「ちょっと待っててね」

工具箱からカッターを取り出しソーセージを食べやすい大きさに切ってやる。アライちゃんが夢中になって食べている間、床にビニールシートを敷く。
ソーセージが一袋全部無くなりそうになった時、アライちゃんは満足した様子で大きなゲップをした。

アライちゃん「もうおなかいっぱいなのらー。おいしかったのら。はやくままにあいたいのらぁ」

そろそろいい頃合だろう。

男「ママはもう来ないよ」

アライちゃん「うーそなーのらぁー。ままがあらいしゃんをひとりぼっちにするわけないのら」

男「ママはもういなくなったんだよ。人間に殺されてしまったからね」

アライちゃん「ころ…され…ってなんなのら?にんげんしゃんのいうことはわからないのらぁ」

男「ひどい事をされて消えてしまったって事かな?アライちゃんはもう二度とママと喋ったり遊んだりできないんだよ」

アライちゃん「なんでしょんなうそをつくのらぁ!ままはずっといっしょにいたのらぁ!ままがいなくなるわけないのら!!」

男「嘘じゃ無いよ?これからアライちゃんにママにしたのと同じ事をしてあげる」

アライちゃん「えっ」

男はアライちゃんの背中を掴んで持ち上げると手を離し肩の高さから落とした。

アライちゃん「プギャッ」

アライちゃんは受身も取れずモロに床に叩きつけられる。男はもう一度同じ事をした。アライちゃんはまた同じ様な悲鳴を上げて丸く縮こまる。
数十分前まできれいだったアライちゃんの顔は鼻血と涙でもうグシャグシャになっていた。

男(さて…どうしようか)

男は工具箱を開いたが日曜大工をやるタイプでは無いので金槌・ペンチ・ドライバーといったどこにでもある工具しか入ってない。
それにビニールシートを敷いてるとはいえ、血の処理が面倒そうなので派手に出血する様な事はしたくない。なので今回刃物は使わない事にした。

とりあえずこれを使ってみるかとウォータープライヤーを取り出す。水道管を掴んでひねる為の工具で、アライちゃんの手足を潰すのにちょうど良さそうだ。
手始めにアライちゃんの右足の脛をグリグリと挟み込む。

アライちゃん「キャアアアアアアアアアアいたいいたいいたいのらああ!!」

思ったよりでかい声が出たので驚いた。男の自宅は近所の家からやや離れた所に建っているのでこの位の悲鳴なら聞こえないだろうが、
念の為に工具箱からガムテープを取りアライちゃんの腕を後ろ手にぐるぐる巻きにし、口を覆うようベッタリと貼り付けた。

悲鳴が聞けないのは楽しさ半減だな…と思ったが仕方ないので今回はアライちゃんの苦しむ顔で我慢しておこう。
気を取り直し骨の一本でも折っておこうと、同じ部分に力を込めて挟むとベキッと割り箸を折った時の様な感触があった。

アライちゃん「~~~~~~っっっ!!」

アライちゃんの目と鼻から涙と鼻水が一度に吹き出し、フゥーッフゥーッっと鼻息を荒くした。
手足全て折ってみようかと思うが、失神でもされたらつまらないので両足だけにしておく。

工具をあさっていると金槌と釘が目に入った。次はこいつを打ち込んでやろうと取り出すが少し気が変わった。
釘の代わりに木ネジにしよう。このネジネジになってる部分が肉に食い込んでより苦痛を与えられるのでは?

アライちゃんをうつ伏せにし背中に木ネジを当て、金槌を振り下ろす。ブチュッと皮膚(毛皮?)を突き破り肉に突き刺さった。

アライちゃん「フウウゥゥー……」

反応がさっきと比べ薄い。もう一本打ち込んでみるがあまり変わらない。もしやもう虫の息か?と思い口のガムテープを剥がしてやる。

アライちゃん「いたいのら…いたいのらぁ…」

叫ぶ元気も無い様で小声で呻くしかできないらしい。刺さっているネジの頭をつまんでグリグリした後、ズボッと引き抜く。

アライちゃん「のらっ」

体をビクンッと揺らした後、身をよじらせて逃げようとする姿は大きいイモムシの様で心底気持ち悪い。失禁したのかアライちゃんが這った跡が濡れている。

男「あーあ、ダメじゃないアライちゃん。汚したら片付けないと」

アライちゃんの頭を掴み、尿に押し付ける。

男「なめてきれいにしましょうねー」

アライちゃん「いいにおいなのら…あんしんするのら…」

男が期待していた反応と違ったので驚いた。いい臭いってなんだよ。この悪臭がか?こいつらの感覚は本当にわからない。


続く

その後ライターで炙ったドライバーを顔に押し付けたり、千枚通しで手の甲を突き刺したりしたが体を少し震わせ呻くだけなので興ざめしてきた。
アライちゃんの中で最も小さい状態の個体の耐久力も解ったしもう楽にしてやろう。

男「アライちゃん、ママがいる所に行きたい?」

アライちゃん「……にんげん…しゃんは…うそつき…なのら…どうせ…あらいしゃんに…ひろいこと…するのら……」

男「良く分かってるね」

アライちゃんの胴体を片手で押さえつけるともう一方の手で頭を掴み、思い切り捻った。ゴキゴキと音がし、アライちゃんは動かなくなった。
男の初めてのアライさん(ちゃん)虐待はなんとも不完全燃焼な形で終わった。

死体は紙袋に入れてから生ゴミと一緒にポリ袋に入れ、明日の燃えるゴミに出せばいいか。ビニールシートは洗うのが面倒だし高いもんでも無いから捨てよう。
後は防音対策と作業台がいるな。この二つが解決するまではアライさんの捕獲は一旦中止だ。

―――――――――――――――

リフォーム業者にオーディオルームにしたいという名目で洋室に防音工事を施してもらい、その後天板のブ厚い頑丈な作業台を運び込んだ。
アライさん虐待に興味を持ってからやたら金が掛かるが、どうせ独身の身だし以前より生活にハリが出たのでむしろ良かったのではないかとさえ思える。

次の捕獲目標は二本足で歩き始めたアライちゃんか成体のアライさんにする。小さいアライちゃんは体力が少な過ぎるので
できるだけアライさんの苦しむ姿が見たいという男の嗜好から外れるからだ。

休日、男は前回とは違うアライさん出没スポットへ向かった。罠を設置しようと山に入り、30分ほど歩いた所で誰かいた。
頭は白髪交じり・短い髪型の50歳くらいのおじさんで、背は男よりやや低いが肩幅は広めでがっしりとした体型をしている。
リュックを背負い腰には鉈をブラ下げているという出で立ちで、男の存在に気付いたおじさんが話し掛けて来た。

おじさん「おはよう、お兄さん。あなたもアライさんを捕まえに?」

アライさん専用罠はアライグマ用の罠と違い明らかに頑丈な見た目をしているので、少し知っている人ならすぐに判る。

男「ええ。あなたもですか?」

おじさん「そうですよ。良かったら一緒に協力してアライさんを捕まえるのはどうです?」

このおじさんがどれ位の経験者なのかは知らないが、男は勉強させてもらうつもりでOKした。

おじさん「いやあ、助かりますよ。あなたの罠を仕掛けた後、昨日仕掛けた私の罠の様子を見に行きましょう」

男「実はまだ一度しか捕まえた事がなくて。どこかいい場所をご存知ないですか?」

おじさん「ああ、そうでしたか。私で良ければお教えしますよ」

男はおじさんにアドバイスを貰いつつ罠を設置する。その後おじさんは歩きながらアライさんが好む食べ物や場所、動き回る時間帯など色々聞かせてくれた。

おじさん「ところでこんな場所まで来てアライさんを捕まえるだなんてあなたも物好きですねえ。もしかしてそういう人?」

物好きなのはお互い様だと思うが…それにそういう人ってなんだ?………いや、意味は分かっている。
アライさんを捕まえるのは普通であれば駆除が目的だが、それならこんな回りくどい聞き方はしない。

ペットとして飼ったり、生きた個体の譲渡も禁止されているのでわざわざ自白する人などいないだろう。
つまりおじさんは男にアライさんを捕まえていじめているのか、と聞きたいのだ。

正直に答える義務は無いが、初対面のおじさんにどう思われようが別にいいと思い

男「まあ…そうですね。あなたは?」

おじさん「あなたと同じですよ。……そろそろ私の罠がある場所に着きますねえ」

おじさんの罠にはアライさんが一匹入っていた。

おじさん「今回はアライちゃんを狙っていたんですがアライさんでしたか、残念。ですが今回はこれで良しとしましょう」

アライさん「あ、人間なのだ。食べ物があったから入ったら出られなくなったのだ。ここから出してほしいのだぁ」

おじさん「ごめんねえ、アライさん。そういう訳にはいかないんだよ」

おじさんは厚い革の手袋を取り出し着けると罠を持ち上げた。

アライさん「わっ。アライさんをどうするつもりなのだあ!」

おじさん「…………。一旦私の車まで戻ってからあなたの罠の様子を見に戻りましょう」

男「わかりました。しかしアライさんってなんでこんな簡単に罠に引っ掛かるんですかね?」

おじさん「んー、アライグマはそれなりに警戒心を持った動物ですけど、アライさんは尊大な性格が影響してるみたいで

それが警戒心の薄さに繋がってるみたいですねえ。一概には言えませんけど」

アライさん「おーい。アライさんの言う事聞いてるのかぁ?」

男「………。言葉は通じるのに随分単純な脳みそしてますね」

おじさん「ハハハ。ですがごく稀に罠や人間の暴力から逃げ出した個体は流石に学習するのか、

強い警戒心を持つ事もあるといいますから油断してはいけませんよ」

男「肝に銘じておきます」

アライさん「アライさんの事を無視するななのだあ!!」

発言をスルーされた事に業を煮やしたのか突然アライさんが叫ぶ。するとおじさんは罠を地面に置き側面を蹴った。
ガシャーンと金属同士がぶつかり合う音がし、罠が激しく揺れる。靴の先芯に鉄板でも入っているのだろうか?

おじさん「アライさん、黙っててくれない?」

アライさん「ひぃっ。アライさんは脅しには屈しないのだぁ!」

おじさん「そう。じゃあ大人しくしててね」

アライさん「そういう訳にはいかないのだ!アライさんはちび達に食べ物を持って帰らないといけないのだあ!」

おじさん「ふーん、アライさん子供いるんだ?どこにいるの?」

アライさん「あっ。やっぱり子供なんていなかったのだ、気のせいだったのだ」

いくらなんでも馬鹿すぎだろ…と思っているとおじさんはあっさり引き下がり罠を運び出した。男はひそひそとおじさんに話しかける。

男「いいんですか?ちょっと押せば子供の居場所吐きそうですけど。それにあなたの狙いはアライちゃんだったのでは?」

おじさん「構いませんよ。そこまで狙っていた訳でも無いですしね。じゃあ行きましょうか」

男が罠を運ぶのを交代しますよ、と申し出るとおじさんはありがとう、と言いその場を後にした。しばらく歩いているとおじさんの物と思われる車が見えてきた。
以前の駆除業者と同じワゴンタイプで、後部ハッチを開けると空の罠やら色んな道具が入っている。おじさんはそれらを隅に寄せてスペースを作ると、

おじさん「ではここに罠を積んでくれませんか?」

男「わかりました」

おじさん「どうもありがとう。アライさんを捕まえるよりも運ぶ方が大変でして。良かったら好きな物をどうぞ」

おじさんは車からクーラーボックスを取り出して冷えた飲み物をくれた。

男「いただきます。いや~生き返りますねえ」

おじさん「1時間ほど休憩したらあなたの罠を見にいきましょう」

男「うまく掛かってるといいんですけどねえ」

休憩している間、自分がアライさんの被害を受けた事を話したりおじさんの話などを聞いた。
その話から分かったのはおじさんはここの近くに作業場を持っている事と、三年前からアライさんを捕まえ始めたという事だった。

この市内にアライさんが出始めたのは二年前と聞くから、それ以前から捕まえていたという事になる。
おじさんはずっとこの市に住んでいるそうなので、わざわざ別の地域に出向いて捕まえていたのか…
さっきは人に物好きと言っておいて自分の方がよっぽどじゃねえか、と男は思った。


続く

休憩した後、男の罠へ戻ると罠の中にアライさんが一匹、外にアライちゃんが二匹いた。前回と逆のパターンだ。
アライちゃんはどちらも四つん這いで動くタイプで、アライさんを心配そうに見ている。

おじさん「ああいうアライちゃんを連れている場合、近くにアライさんの巣穴がある事が多いですよ。あの状態じゃあまり遠くまで行けませんから」

男「なるほど。もしかしたら巣穴に残してきたアライちゃんがいるかもしれませんね。ところで私はアライさんを一匹捕まえられれば十分なので、

良かったらアライちゃんの方はお譲りしますが」

男は一瞬、これは譲渡に当たるのでは?と思ったが一緒に捕まえた(まだ捕まえてはいないが)獲物を分け合うだけなので関係無いだろうと納得した。

おじさん「いいんですか?では遠慮無く」

おじさんは丈夫そうな袋を取り出すと罠へ向かった。男も後を付いていく。

アライさん「人間なのだ。この箱から出られないのだぁ。お前達、アライさんを助けるのだあ」

いい加減この反応も飽きてきたな。おじさんはアライちゃんを掴むと二匹とも袋に放り入れ、素早く袋の口を閉じた。

アライさん「ちび達に何をするのだあ!はなすのだあ!」

そしてお決まりのセリフだ。

―――――――――――――――

男は車に戻り、罠を積み込むとおじさんにも車に乗ってもらい彼の車まで送った。

おじさん「今日はとても助かりました」

男「こちらこそ。色々と教えて頂きありがとうございます」

おじさん「この後もし時間があったらお近づきの印にウチにどうです?コレでちょっと面白いものがありますよ」

おじさんはアライちゃんが入っている袋をブラブラさせて言う。面白いものと言ったらもうアレの事しか無いが…
他人がアライちゃんに何をするのか興味があったので招待される事にする。

おじさんの車に30分ほど着いていくと山に続く細い道路に入った。おじさんの車が停止し彼が出てくると、道を封鎖していたチェーンを取り外しまた車に戻る。
この一帯はおじさんの私有地なのだろうか。少し考えているとひらけた場所に出た。

そこにはトタン屋根の簡素な平屋の建物があった。おじさんはウチと言ったが居住を目的とした建物には見えない。さっき言ってた作業場だろう。
おじさんが車を停めて出てきたので男も並べて停車させる。

おじさんがアライさんの入った罠を運ぼうとしたので男は手伝おうと声を掛けたが、もう大丈夫ですよと断られた。おじさんの後に着いて建物に入る。

おじさん「いらっしゃい。余りきれいな所ではないですが」

男「お邪魔します」

中は整頓されていて入り口から向かって左の壁際には数個の小さい檻が置いてある。正面には作業台が設置され、壁にところ狭しと工具が掛けられている。
右側には…フタに鍵が掛かっている分厚いガラス(プラスチック?)で出来た大きい水槽があった。影になって薄暗くて中はよく見えない。

おじさん「そいつはワニガメですよ」

アライさんの入った罠を置き終わったおじさんが言う。その後外に出ていって、アライちゃんが入った袋を持って戻ってきた。
ワニガメ?特定動物とかいうテレビでたまに見るあれだろうか。飼っても良かったっけ?と訝しんでいるとおじさんが察したのか

おじさん「ちゃんと県に許可は得ていますよ。それが飼養許可証です」

おじさんが視線を上にやるとそこには額に入れられた許可証が掛けられている。

おじさん「元々爬虫類を飼うのが好きでして。昔は色々飼っていましたが…今はこいつだけですね」

喋りながらおじさんはアライちゃんを袋から取り出し、まとめて檻に入れた。

男「それで面白いものって何ですか?」

おじさん「お察しかと思いますが、こいつにアライちゃんを与えます。いい栄養になるんですよ」

男「そうですか…それならやってみたい事があるのですが」

おじさん「何です?」

男「ちょっと待ってて下さい」

そう言うと男は外に出て、自分の車からアライちゃんの親であるアライさんの入った罠を持って戻る。

おじさん「なるほど、あなたも人が悪いですね。……ですがこの後困った事になるかもしれません。すみませんが少しの間私が何をしても

黙って見ててもらってもいいですか?」

男「…?了解です」

おじさん「ではあなたの罠の鍵を貸して下さい」

おじさんに鍵を渡すと彼は男の罠の鍵を開けた。

おじさん「アライさん、もう出てきてもいいよ」

アライさん「やっと出す気になったのだ、早くちび達を返せなのだ人間」

アライさんがのそのそと罠から頭を出した瞬間、おじさんはいつの間にか手にしていた鉄パイプでアライさんの後頭部をガツンと殴りつけた。

アライさんは呻き声を上げて倒れこむとそのまま動かなくなってしまった。おじさんはその様子を確認すると、作業台からロープを取り出して
アライさんの手足を縛り、また罠の中に戻して鍵を掛けた。おじさんは男に鍵を返しながら

おじさん「もう喋ってもらっても大丈夫ですよ。アライさんは気絶しただけですから、後は目が覚めるまで待ちましょう」

男「わかりました」

10分後、アライさんが目を覚ました。

アライさん「うう~…、頭がいたいのだあ……。……!手と足が動かないのだ!?」

おじさん「おはよう、アライさん。アライさんには今からアライちゃんがどうなるかそこで見ててもらうよ」

アライさん「何をするつもりなのだ!ちび達に何かあったら絶対に許さないのだあ!」

おじさん「はいはい…これから準備するから少し待っててね」

おじさんはワニガメの水槽のフタの鍵を外すと、ポンプを使って水を抜き始めた。

おじさん「いつもはやらないんですが…今回はこっちの方が見え易いかと思いまして。

上から覗くのは構いませんが、絶対に手は近づけないで下さい。噛み付かれたら指が無くなりますよ」

男「頼まれてもしませんよ」

水槽の水が抜けきった頃、おじさんは檻からアライちゃんを出しアライさんの前に置いてやる。最後の別れでもさせてやるつもりだろうか。

アライちゃんA「やっとでられたのだー」

アライちゃんB「おかあしゃん、まだうごけないの?」

アライさん「アライさんなら大丈夫なのだ。それよりもちび達、早くここから逃げるのだ!」

アライちゃんA「なんでなのだ?」

アライさん「説明してるヒマはないのだ、アライさん達の危機なのだあ!」

アライちゃんA「よくわからないけどわかったのだー」

アライちゃんB「にげるのだー」

何が起こっているか理解できてないアライちゃん達はこの場から離れようと四つん這いで移動する。
どうやら親の言う事は盲目的に聞くらしい。事情が分かっていれば親を助けようとしていたのかもしれないが…

だがアライちゃん達は出入り口を開けるどころか、どこにあるのかすら分からないので右往左往するだけである。
男とおじさんはその様子を黙って眺めていた。


続く

訂正 >>54 一行目

誤×  おじさんの後に着いて建物に入る。

正○  おじさんの後に付いて建物に入る。

失礼しました

おじさん「では始めましょうか」

男が無言で頷いたのを確認したおじさんは、アライちゃんAを掴み上げた。

アライちゃんA「きゃっ。はーなーすーのだぁ」

アライさん「人間、ちびに手を出すのはやめるのだぁ!」

おじさん「少し肉付きがいいこっちにしましょう。ロン、食事だぞ」

アライちゃんAが水槽に入れられた。ロンと名前を呼ばれたそのワニガメはアライちゃんAのふた回りかそれ以上の大きさで、
時たま食べているごちそうに気付きゆっくりと動き出す。

普通ならただならぬ雰囲気を察して逃げる所だが、アライちゃんAは亀を見た事が無かったらしくあろう事か興味を示した。

アライちゃんA「はじめてみるけものなのだ。おまえ、なんてなまえなのだ?」

ワニガメが喋る訳も無く、徐々に近づいていく。

アライちゃんA「あらいしゃんはねー、あらいしゃんっていうのだ!」

キャッキャッと手を振った瞬間、ワニガメが噛み付きアライちゃんAの右の手首から先は無くなっていた。噛まれた腕の先からは血がピュッピュッと出ている。

アライちゃんA「きゃあああいだいのだあぁぁ!!」

生まれて初めて感じたであろう激痛に悲鳴をあげると、アライちゃんAはその場から逃れようと残った腕を使って這いずり回る。
水槽の深さは男のひざ上くらい迄あるので立ち上がれないアライちゃんAでは出る事は無理だ。

アライちゃんA「いだいのだぁ…とうめいのかべがあってすすめないのだぁ……」

アライちゃんAはガラス面をぺたぺたと触ったり叩いている。ちぎれた手を飲み込み終わったワニガメはまた近づくと、今度は左足に噛み付く。
ひざが噛み砕かれ、足が切断された。

アライちゃんA「ぎゃああああああっっ」

アライちゃんAは仰向けにひっくり返り残った手足をばたばたとさせながら悶えていると、水槽の外から見ていたアライさんと目が合った。

アライちゃんA「おかあしゃん…!おかあしゃん!!」

アライさん「ちび!ちびぃ!人間、何を見ているのだ!ちびをあそこから早く出すのだあぁぁ!!」

アライちゃんA「おかあしゃん、たすけて!!」

ワニガメはアライちゃんAにのしかかり、爪を使い柔らかそうなお腹を引き裂いた。
男はワニガメに対し強靭なアゴによる噛み付きのイメージが強かったが、よく見てみると確かに太く鋭い爪をしている。

アライちゃんA「げふっ……」

アライちゃんAはそれっきり声を上げなくなり、手をピクピクと動かすだけになった。

ワニガメが内臓をひきずり出したり手足を飲み込んだのをひとしきり眺めた後、

おじさん「大体こんな感じですよ。こいつはもう満腹ですから残った方は後日与える事にします」

おじさんは母親のそばで震えていたアライちゃんBを檻に戻しながら言う。

男「貴重なものを見させてもらいました」

面白い物を見る事ができて本当に来て良かったなあと思い、せめてものお礼に片付けを手伝おうとすると

おじさん「お客さんにそこまでしてもらう訳にはいきませんよ。ですが今後ともよろしく出来たら嬉しいんですがね」

男「こちらこそよろしくお願いします。また色々教えて下さい」

おじさんと連絡先の交換をした後、親のアライさんを車に積み作業場を後にした。

―――――――――――――――

自宅に戻った男はアライさんを洋室に運んだ。当たり前だが子供を目の前で殺されたアライさんは怒り狂っている。
罠から出した瞬間に飛び掛ってきそうな勢いだが、おじさんの縛りは完璧で全く手足が動かせない。

アライさんは小柄だが、鋭い爪や歯を持っているので成体ともなると危険である。おじさんが前もって縛ってくれなければ相当男の手を焼かせていただろう。
最悪の場合罠から出さずに殺す事も出来るが、それでは苦労して捕まえた意味が無い。男は手足を封じる前に挑発しようとしたのは流石に軽率過ぎたと反省した。

男はアライさんの足を引っぱって罠から出すと、噛みつかれ無い様に注意して作業台の上に乗せた。

アライさん「人間、お前だけは絶対に許さないのだ…なんであんなひどい事をしたのだ!?」

男「酷い事って?」

アライさん「しらばっくれるななのだ!ちびをあのけものに食わせた事なのだ!」

男「アライさんだって虫やらトカゲやら捕まえて子供に食べさせた事くらいあるでしょ?」

アライさん「あるけど…それとこれとは違うのだあ!」

男「どう違うの?いつも自分がやってる事をされただけじゃないの?」

アライさん「うぬぬ…でも人間!お前だって自分が食べられるのはイヤじゃないのか?自分がされてイヤな事はしちゃいけないのだ!」

なぜアライさんは自分の行動を棚に上げて正論めいた事を抜かすのか。

男「アライさん達に食べられた虫さんやトカゲさんも嫌な事されたんだよなー」

アライさん「うぐっ。どうせあいつらは頭が悪いから何にも考えてないのだ!」

またこうやって自分に都合のいい事を言う。話にならないが、もう少し付き合ってやる事にする。

男「アライさんさあ…さっき自分が食べられるのは嫌じゃないのか、って言ってたけどそりゃあ嫌だよ?

だから人間は危険な動物がいる所にはむやみに行かないんだよ。お互いにとってそれが一番いいからね。

アライさんも大人しく山に引っ込んでればいいのに、人間の縄張りに来て悪さするから嫌われて捕まえられるんじゃないの?」

アライさん「悪さってなんなのだ!アライさんは悪い事なんてした覚えはないのだ!」

男「ああそうですねーアライさんは自分に正直なだけですもんねー」

アライさん「その言い方はなんか腹が立つのだあ!」

男「一番腹が立ってるのは被害を受けた農家の人なんだけどな。どうせアライさんも畑から何か持ってった事あるよね?」

アライさん「アライさんが見つけた物を拾って何が悪いのだ。アライさんの物なのだぁ!」

男「あっそ。まあ俺も偉そうな事言ったけど一つだけアライさんに謝らないといけない事はあるかな」

アライさん「それみろ、なのだ。やっぱりお前は悪い人間なのだ」

男「アライさんは生きる為に生き物を殺してるけど、俺は自分の都合でアライさんをいじめてるって事だね。

単にアライさんの苦しむ声を聞いたり顔が見たいんだよ」

アライさん「ひっ。なんでそんな事するのだ…?」

男「なぜって言われてもなあ…面白いからとしか言い様が無いな」

アライさん「面白いってなんなのだ…お前はおかしいのだぁ……」

アライさんの声がすっかり小さくなってしまった。最初の怒っていた状態から痛めつけた方が怖がる顔とのギャップで楽しめたのでは、と思い
余計な事を喋らなければ良かったと後悔した。今日は失敗ばかりだ。

―――――――――――――――

男「アライさんも今頃お腹空いてるかな…」

男は仕事の昼休憩中、食事を取りながらそんな事を考えていた。結局やる気を失った男はアライさんを罠に戻した後、放置していた。
飼育する訳にはいかないので今日中にケリをつけなければ。仕事帰り、アライさんにお腹いっぱい食べさせてあげようと食料をしこたま買った。

男「アライさーん、ただいまー」

アライさん「…………………」

アライさんは昨日の怒りを取り戻したのか空腹で機嫌が悪いのか、黙って男を睨みつけている。
男はかわいい顔が台無しだよ、と言おうとしたがお世辞にも言えない顔なので言うのを止めた。


続く

男「アライさん、今食べ物を持って来てあげるよ」

アライさん「いらないのだ。お前みたいな人間に施しを受けるアライさんじゃないのだ」

男「やせ我慢は良くないなあ。まあ待ってなよ」

男は買ってきた食材で簡単な調理をすると洋室に戻った。

男「お待たせ。おっと、罠から出してあげなきゃね」

本当はアライさんを椅子に座らせてあげたかったが、足が折り曲げられる様に縛られていたので作業台の上に寝かせる。

アライさん「どういう風の吹き回しなのだ?………わかったのだ、食べ物になにか悪いものを入れてアライさんを苦しめるつもりなのだ」

男「疑り深いなあアライさんは。何も入ってないよ」

男は全ての料理を一口ずつアライさんの目の前で食べてみせた。

アライさん「本当に何も入ってないのか?仕方ないから食ってやるのだ」

さっきまで意地張ってた癖に、と言いそうになったがへそを曲げられても困るので黙る。
アライさんは手を縛られているので男が箸やスプーンを使って食べさせてやった。

おじさんの話によるとアライさんは何でも食べるが特に脂っぽいものを好むらしく、
与えた食べ物のうちステーキと生クリームを使ったデザートをおいしそうに食べた。

男「アライさんおいしい?」

アライさん「昨日からなにも食べてなかったからこんなものじゃ足りないのだ」

男「まだ沢山あるからお腹いっぱい食べるといいよ」

アライさん「早くよこすのだ」

―――――――――――――――

アライさん「ゲフッ。もう食べられないのだぁ」

男「もう?まだ食べ物残ってるよ」

アライさん「そんなに言うならもうちょっとだけ食べてやるのだ」

―――――――――――――――

アライさん「げーぇぷっ。今度こそお腹いっぱいなのだ…」

男「いやいやアライさん。まだイケるでしょ?」

アライさん「もう無理なのだ…」

男「そんな事言わずに。さあさあ」

男は食べ物が乗ったスプーンをアライさんの口に押し当てる。

アライさん「しつこいのだあ!もういらないのだ!」

アライさんが口を開けた時、スプーンが口の中に入った。スプーンが舌の奥に当たったせいかアライさんはえずいてしまい、
食べた物を吐いてしまった。

男「もったいないなあ。でもこれでまた食べられるね」

アライさん「ウエェ…もう食べたくないのだあ…」

吐いた時に出たのか、アライさんは涙と鼻水を垂らしながら言う。男はそんな事おかまいなしにスプーンを口に当てる。
対するアライさんはもう絶対に食べまいと口をかたくなに閉じた。

男「アライさん、本当にもういらないの?」

アライさんは無言でコクコクと頷く。

男「そう…せっかくアライさんの為に用意したんだけどな」

男は作業台の下から木製バットを取り出し、アライさんの頭を叩いた。

アライさん「がぁっ!?」

男「食べろって言ってるんだよ」

アライさんは殴られた恐怖でまた食べ始めた。実際、胃の中の物を吐いてしまったので物理的に不可能という訳では無い。
それでもまたすぐに限界が来てもう食べられないと訴えると男に殴られ、吐いた。

食べては吐く、殴られて食べては吐くをくり返してる内にアライさんの頭や顔は腫れ上がり、
床は嘔吐物や血だか鼻水だかわからない液体で汚れていった。

アライさん「アライさんが悪かったのだ…もう許してほしいのだぁ……」

男「なんで謝るの?アライさんは悪い事してないのに」

アライさん「もう許して…許してなのだあ……」

以前駆除業者の施設で命乞いをしているのを見た事を思い出す。
畑から作物を悪びれもせず盗む事といい、アライさんはその場しのぎの言動しかしない生き物なんだと確信した。

男「いいよ。許してあげる」

アライさん「本当なのか…?」

男「あとそこに残ってる食べ物を20分以内に吐かずに食べきったらね」

アライさん「わかったのだ……がんばって食べるのだ…」

アライさんは希望を得たのか積極的に食べ始め、制限時間ギリギリでなんとか食べきった。

男「頑張ったねアライさん。ご褒美にこれをあげるよ」

アライさん「なん…なのだ…?」

意識が朦朧としているアライさんが口を開いた瞬間、男は丸めた布を突っ込みさらにその上からタオルを口に咬ませる様に巻いて縛る。
そしてアライさんが驚く間さえ与えずバットでお腹をぶっ叩いた。

アライさん「~~~~~~っっ」

アライさんの胃の中の物は逆流するが口が塞がれているので出す事は出来ない。かろうじて液体は鼻から出てくるが、
そのうち固形物が気道に詰まって息が出来なくなった様で、痙攣を起こし始めた。全身を震わせて苦しみながら脱糞し、意識を失った。

しばらく経った後、ドラマなんかでよく見る瞳孔に光を当ててみたり、脈や心臓の音を測ってみたりしたが反応が無いので素人なりに死亡したと判断する。
顔面を殴られた跡と窒息した事でアライさんの顔は見れた代物では無く、男はかなりの満足を得た。アライさんの糞という置き土産さえ無ければ…

ゲロと糞を片付けた男はアライさんの死体を見る。個人で捕まえたアライさんは保健所に持ち込めば処分してくれるが、
さんざん痛めつけた死体を持ち込むのは流石に憚られる。かといって解体して生ゴミとして出す訳にもいかないので
結局山に捨てるしかなさそうだ。男はさっきまでの良い気分がもう落ち込んでるのを感じた。

まだ日が昇っていない早朝、眠い体をなんとか動かしてアライさんの死体を山に捨てる。一度家に戻り風呂に入らなければ。
成体のアライさんをいたぶるのは連休が取れた時だけにしようと心に誓った。

―――――――――――――――

前回の経験がよほどこたえたのか男は二ヶ月間アライさん捕獲から遠ざかっている。しかしその間、何もしていなかったという訳では無く
おじさんと情報交換したりアライさん虐待画像などを見て気を紛らわせていた。

そんなある日、仕事から帰ってきた男は食事を済ませた後、たまに覗いている巨大インターネット掲示板にあるアライさん虐待に関したスレッドを開いた。
いつもならアライさんムカつくだの、本当かはわからないがこれこれどういう虐待をしてやっただの他愛の無い書き込みばかりだが、
今は何か雰囲気が違う様である。

過去の書き込みを見てみると、有名動画投稿サイトにアップされたあるアライさん虐待動画が原因らしい。
その動画のアドレスが貼られていたので、釣りでは無さそうな事を確認して見てみる事にした。


続く

その動画は5分ほどの長さで、始まるとすぐに原っぱのような場所にいる一人の人物が映し出された。
その人物はパーティーグッズで見る馬の頭の形をしたマスクを被っていて、顔はわからない。
服装は長袖のシャツにスボンを着ているが、体型からいっておそらく大人の男だろう。

馬男が無言で背を向けて歩き出すとカメラも動きだした。周りに人はいなく、その場にいるのは馬男と撮影者だけのようだ。
少し移動すると地面に刺さっている2本の木の杭にそれぞれロープで拘束されている2匹のアライさんが映し出された。

アライさんA「おい人間、早くこの縄をほどくのだ、今ならまだ許してやるのだ」

アライさんB「そうなのだー、今なら食べ物一ヶ月分で許してやってもいいのだ」

男はここまで見てなんだよくある虐待動画じゃないかと思ったが、突然馬男がシャツで隠れた腰の部分から拳銃を取り出した。
そしてほとんど間を置かず、アライさんAの額を撃った。

アライさんAの頭から血やらよくわからない液体が噴き出し、アライさんが死に際によくやる手足を激しく動かす動作をしながら絶命した。
もっとも、手足は固定されていたので肩と腰を大きく揺すった様な動きだったが…とにかくそれきりアライさんAは動かなくなってしまった。

アライさんB「ひいっ。その黒くて光るものをこっちに向けるななのだぁ…」

馬男は一言も発さず、銃口をアライさんBの顔にグリグリと押し付ける。アライさんBの表情はさっきまでのふてぶてしい様子から一変して恐怖しかなかった。
アライさんBが何かを喋ろうと口を開けた時、銃口が口に入ってしまう。モゴモゴ言いながら首をよじらせて口から銃口を抜こうとした瞬間、
発砲音と共にアライさんBの後頭部から血が飛び散り、アライさんAと同じ動きをして死んだ。

動画はそこで終わり、男は何が何だかわからなくなってしまった。馬男は誰なのか。なぜ拳銃を所持しているのか。
もしかして外国?だとすれば日本にしかいないはずのアライさんがどうやって海を渡ったのか。
そもそもこの動画は本物なのか?作り物の可能性だってある。

許可された期間と区域の山中で猟銃を使ってアライさんを撃ち殺す事はあっても、拳銃でとなると話は別である。

案の定アライさん虐待スレッドではこの動画に関する議論がしばらく続き、ここは日本で銃は違法に所持してる物であるとか、
誰かが国外にどうにかしてアライさんを持ち出しただのいろんな意見が出されたが、結局推論の域を出るものではなかった。

久しぶりに刺激を受けた男は連休が取れそうな週末にアライさん捕獲に行く事にした。

―――――――――――――――

もう季節は秋で山の木々が色づいている。今回は久々なのでとにかく何でもいいからアライさんを捕まえて帰る事に決める。
罠を持って山に入り、しばらく経った時に何か聞こえた。音のした方にこっそり近づき、様子をうかがう。

そこにはアライさんがいて、何やら木に登ろうとしているがうまくいかないようである。アライさんはそれなりに身軽で、
木登り位なら楽にこなすはずだが…よく見てみるとそのアライさんは普通のものよりひとまわり小さい。

もしかして二本足で歩き始めたばかりの個体か?だとすれば見るのは初めてだ。これはなんとしてでも捕まえたい。
周りに他のアライさんがいないか確認すると男は罠を置き、アライさん(アライちゃん?)に接触する事にした。

男がこんにちわと声をかけるとアライさんはかなり驚いたようで、

アライさん「びっくりしたのだ!きゅうにこえをかけないでほしいのだ…」

男「ごめんね。アライちゃんは何してたの?」

アライさん「アライちゃんじゃないのだ、アライさんなのだ。アライさんはもういちにんまえなのだ」

男「そうなの?その割には何か苦労してたみたいだけど」

アライさん「うううるさいのだ!ちょっとまだきのぼりはなれてないだけなのだ!」

男が木の上を見ると何か実がなっていて、アライさんはそれを取りたいらしい。

男「良かったら木登り手伝おうか?」

アライさん「よけいなおせわなのだ。アライさんはだれのたすけもいらないのだ」

アライさんは鼻息を荒くしながらまた木登りにチャレンジし始め、今度はうまく登り木の実を取る事が出来た。
しかし今度は下りれなくなったようで、少し経ってから意を決して下り始めたが手を滑らせて落ちてしまった。

アライさん「ぎゃっ」

男「ハハッ。とんだ一人前だなあ」

アライさん「ひとのしっぱいをわらうとはイヤなヤツなのだ…もしかしておまえがニンゲンってヤツなのか?」

男「アライさん、人間に会った事ないの?」

アライさん「あったことはないけど、おかあさんからニンゲンにはきをつけろといわれてたのだ」

男「それはなぜ?」

アライさん「ニンゲンはアライさんたちにひどいことをするれんちゅうだときかされたのだ」

どうやらこのアライさんの母親が以前おじさんが言っていた人間に強い警戒心を持った個体だったようで、その情報が子供にも伝わっているらしい。
面倒な事になったと思いつつ話を続ける。

男「確かにアライさんをいじめる人間もいるけど、俺はそんな事しないよ」

アライさん「しんようできないのだ…」

男「アライさんをいじめる気ならとっくにしてるよ。俺はアライさんに興味があって話をしに来ただけなんだ」

アライさん「まあはなしをきくくらいならしてやってもいいのだ」

男「本当に?そうだ、これ食べる?」

チョコバーを取り出すとアライさんは興味津々で受け取り食べ始めた。

アライさん「すごくあまくておいしいのだ!こんなたべものがあったなんてしらなかったのだ」

男「喜んでくれて良かったよ。アライさんにちょっと聞きたい事があるんだけど」

アライさん「なんでもきくといいのだー」

男「アライさん、さっき一人前って言ってたけど親元から離れたって事?」

アライさん「そうなのだ!アライさんはひとりだちしたのだ。もうなんでもできるのだ」

男「それっていつごろ?」

アライさん「アライさんがあるけるようになってすぐなのだー。おかあさんにもうおまえはじぶんのちからでいきるのだ!っていわれたのだ」

見たところまだ知識も体力も不足してるし、これから山に食べ物が少なくなる時期にほっぽり出すとは…アライさんは子育ても無責任だな。
しかし今まで親のアライさんと一緒にいる所を見なかった理由は分かった。

男「アライさんは姉妹はいるの?」

アライさん「いたけど、いっしょにひとりだちしてからはあってないのだ」

男「へえ~、なんで一緒に行動しないの?そっちの方が安全じゃない」

アライさん「さっきもいったけどアライさんはだれのちからもかりないのだ」

男「立派だねえ。アライさんにもナワバリってある?」

アライさん「アライさんはもってないけど…もってるアライさんもいるのだ」

男「よそのナワバリに入ったらどうなるの?」

アライさん「おとなしくでていくか、あらそいになるのだ」

男「アライさん同士で争いになる事なんてあるの?それは知らなかったな」

アライさん「かぞくどうしならほとんどあらそいはおこらないのだ。でもしらないものどうしならあらそいがおこることもあるのだ」

男「アライさんの社会も大変なんだねえ」

増えすぎて縄張りを持てなかったアライさんが人里に来て食べ物を盗んでいくという訳か。おとなしく餓死すればいいものを…
そういえば以前共食いする事もあると聞いたしそんなタマではなかったな。


続く

男「ところで人間はアライさん達に酷い事をするって言ってたけど、具体的に何かされたの?」

アライさん「おかあさんがいうには、まえにひろいばしょであまくておおきなまんまるをもっていこうとしたら

ニンゲンどもにぼうでたたかれて、おいまわされたそうなのだ」

どんな酷い仕打ちを受けたのかと思えば…単に畑からスイカかメロンあたりを盗もうとした所を見つかって追い掛け回されただけらしい。
自業自得な上に逆恨みとは恐れ入る。逆に言えばその程度の事でも人間に不信感を持つんだな。普段は偉そうで単純なクセに、
少し嫌な事があるととたんに疑り深くなる…知れば知るほどどうしようもない生き物だ。

面白い話も聞けたし、後は隙を見て拘束するだけだが…せっかく目の前のアライさんの警戒心は少しゆるんでいる様なのでもうちょっと遊ぶか。

男「それは大変だったね。でもアライさんと仲良くしたいと思ってる人間もいるって知って欲しいなあ」

アライさん「ほんとうなのか?」

男「本当だとも。アライさん達を保護しようって活動をしている人達もいるよ」

無論嘘である。現実にはアライさんに同情する人などいない。

アライさん「アライさんはほごされるつもりはないけど、なかよくできるならしてやってもいいのだ」

男「人間に酷い事されても許してくれるなんて偉いね。そんなアライさんにさっきの食べ物もっとあげるよ」

アライさん「まだあるのか?もっとたべたいのだ!」

まだこのアライさんは単純なままの様だ。いくら情報として人間には気をつけろと言われていても、自身で体験しなければ意味が無いって事だな。
まあこの後身をもって知ってもらうとしよう。

男「はい、どうぞ」

アライさん「わあ、たくさんあるのだー。おまえはいいニンゲンなのだ!」

男「少しは信用してくれたかな?」

アライさん「さっきはうたがってわるかったのだ」

男「分かってもらえたなら嬉しいよ。ついでにこれもあげる」

リュックから出てきたのはレンチだった。普通なら山に持ってくる道具ではないが、アライさんの頭を殴るのに丁度いい大きさと重さなので入れておいたのである。
人間に会った事すらないアライさんはそれが工具であると理解できず、何かの食べ物だと思っている。

男はレンチを掲げると、アライさんの頭目掛けて振り下ろした。

アライさん「ギャッ……」

呻き声をあげて倒れたアライさんはそのまま動かなくなった。男はロープを取り出しアライさんの手足を縛ると置いていた罠にアライさんを入れ、
引き揚げる準備をする。アライさんの不意をついてぶん殴るのは本当に楽しいなあ、などと考えていると面倒な作業の苦労も感じずに済んだ。

捕獲がスムーズに終わったので、男が自宅に戻ったのはまだ正午前だった。罠を洋室に運ぶと少し早めの昼食を取る事にする。
テレビをつけるとニュースがやっていて、特に変わった事は起こっていない様子だった。

いつもの平凡な日常だが、今日は違う。二ヶ月ぶりにアライさんを痛めつける機会を得た男は気持ちが昂ぶっているのを感じた。
食後のコーヒーを飲み、気分を落ち着けると洋室に戻った。

アライさんは気絶した後そのまま寝てしまった様でまだ動かない。男は好都合だと思いながらアライさんを罠から出し作業台に乗せる。

男「アライさーん、起きてー」

アライさんの頬をペチペチと叩きながら言うとアライさんは目を覚ました。

アライさん「ううーん……とつぜんなにかがあたってめのまえがまっくらになったのだ…ここはどこなのだ……?」

男「気が付いたね、アライさん。ここは俺の家だよ」

アライさん「さっきのニンゲンなのだ…おまえがアライさんになにかしたのか?」

男「そうだよ。アライさんと仲良くしたくて連れて帰ってきたんだよ」

アライさん「なかよくしてやるのはいいけど、アライさんをもといたばしょにもどすのだ。ここにはなんかいたくないのだ…」

アライさんが起き上がろうと体を動かした時、やっと自分の手足が縛られている事に気付いた様で、

アライさん「これはなんなのだ!?てとあしがうごかないのだ!」

男「アライさんは人間に捕まったんだよ」

アライさん「つかまったって…どういうことなのだ!?おまえはアライさんとなかよくしたいんじゃないのか?」

男「全部嘘に決まってるでしょ。アライさんと友達になりたい人間なんていないよ」

アライさん「アライさんをだましたのか!?」

男「そういう事になるね」

アライさん「やっぱりニンゲンはうそつきでひどいやつらなのだ…おかあさんのいったことはほんとうだったのだ…」

男「気が付くのが遅かったねアライさん。そんなんじゃどのみち野生じゃ生きていけなかっただろうけど」

お喋りはこのくらいにしておくか。今回は具体的に何をするか考えてなかったが…こういうのは思いつきでやるに限る。
そういえば少し前から気になっていた耳と尻尾を調べてみよう。

以前フレンズについて簡単に検索した所、フレンズの動物の耳や尻尾はけものプラズムとかいう物で形成されているそうで、本人が強く願えば
出し入れできるらしい。本当にそんな事が可能なのだろうか。

男「アライさん、耳と尻尾を消したりできるらしいけど…ちょっとやってみせてよ」

アライさん「そんなのしらないのだ。きいたこともないのだ」

どういう事だ?情報が間違っていたのか?しかしけものプラズムに関しては通説であるらしいし、間違っているとは信じ難い。
長年ジャパリパーク外で繁殖を繰り返している内に性質が変化でもしたのか?それとも単にこのアライさんが知らないだけかもしれない。

とりあえずアライさんの動物の耳を掴み強く引っ張ってみる。

アライさん「いたいいたいのだあ!やめるのだあ!!」

普通に痛覚がある様だ。今度は布切り用の大きなハサミで耳の上から真ん中の部分に切れ目を入れてみる。
ジャクッ、ジャクッとコリコリした物を切る感覚があった。

アライさん「ぎゃああああ!!なにしてるのだあぁぁ!!」

アライさんは大きく頭を揺さぶりハサミから逃れようとする。手元が狂っては危ないのでそこで止めた。
耳からは血が垂れ、アライさんの顔を伝ってポタポタと作業台に落ちた。

自由に出し入れできるモノから痛みを感じたり血が出るなんてあるのだろうか?痛みはまだしも、血はなあ…
やはりジャパリパークにいるフレンズ達とは別の存在になってしまったのか?まあ俺は研究者じゃないし細かい事はいいか。

男は片手でアライさんの頭を掴んで固定し、もう一方の手で切れかけてプラプラしている耳を掴み引っ張った。
ミチミチと音がし、アライさんの耳は半分にちぎれた。

アライさん「いっいっいだいのだぁ!」

男「ありゃ、耳が取れちゃったねアライさん。今からでも耳をひっこめれば助かるんじゃない?」

ちぎれた耳をアライさんに見せながら言う。

アライさん「そっそんなことっ、いぃわれてもっ、むりなものはむりなのだあ!」

アライさんは泣いて鼻をすすりながら言った。本当に出来ないみたいだな。となると尻尾も同じか。
今度は尻尾の毛を乱暴に掴み、むしり取ってやる。一見フワフワな様に見えるが、実際は毛が硬くゴワゴワしていて気持ち悪い。

アライさん「い゛い゛ーっっ」

尻尾はそれなりに敏感な様で、毛を毟っただけでもかなり痛がっている。アライさんが発した声が少し面白かったので、
男はしばらく尻尾を毟って遊んだ。所々毛が無くなり禿げあがってきた頃、飽きたので根元を掴み思い切り引っ張った。

アライさん「ぴいいぃぃっっ」

ミシッミシッと音はするが流石に素手で引っこ抜くのは男の力では無理な様だ。それならこいつを使ってみようとワイヤーカッターを出した。
以前は持っていなかったが、アライさん虐待を始めてから少しずつ買い足していった工具のうちの一つだ。

男「アライさーん、尻尾とお別れですよー」

アライさん「もうやめるのだぁ…アライさんがなにをしたのだ…」

アライさんの言葉を聞き流しワイヤーカッターの刃を尻尾の根元にあてがうと、柄に力を込めた。


続く

アライさん「ぎゃう゛っっ」

バツン、といとも簡単に尻尾はちょん切れた。硬いワイヤーを切る為の道具だから当たり前なのだが、男は妙な感動を覚えた。
切れた尻尾がズルリと作業台から落ちてしまったので、アライさんに見せ付けるのに拾おうと手を伸ばすと突然尻尾がビクビクと動き出した。

反射の一種だろうか。ウネウネと動くさまは毛の色や模様も相まって大きい毛虫に見え、気持ち悪いったらない。
少し眺めていると動きが止まったので、拾い上げてアライさんに見せながら

男「尻尾って意外と重さがあるんだね。体が軽くなって良かったねえアライさん」

アライさん「なんてことをするのだぁ…アライさんのじまんのしっぽをかえせなのだあ!」

声を荒げるとはまだ余裕がありそうだな。なんせ久しぶりだからこれぐらいで音を上げられては困る。
次はどうしようか。もう少しワイヤーカッターを使ってみたいが…それならばここしか無いだろう。

男はアライさんの手に視線を向ける。黒くて細長い指はいつ見ても不愉快だ。人間に近い猿やゴリラの手を見てもなんとも感じないのに、
この不快感はどこからくるのだろう。アライさんの腕は後ろ手に縛られているので、体を転がしうつ伏せにすると

アライさん「まだなにかするのか?もういいかげんにするのだぁ!」

アライさんからは男が何をしようとしているのか見えないので、口調からは若干焦りを感じる。
まずは右手の親指からいくか。尻尾と同じ要領でワイヤーカッターの刃をあてがい、切断する。
ゴキンというよりはサクッといった感触で、尻尾以上に簡単に切れた。

アライさん「!!??いだああああっ!!」

切れた指がさっきの尻尾の様にピクピクと動く。今度は黒いイモムシか…

男「どんどんいくよアライさん」

親指の次は人差し指、中指と順番に切断する。切るたびにアライさんはいい悲鳴を上げた。薬指に差し掛かろうとした時、

アライさん「こっ、これいじょうゆびがどうにかなったらっ、ごはんがたべれなくなるのだあ!」

なんだそりゃ。この期に及んで食事の心配をするとは…このアライさんは死に関する意識が甘すぎやしないか。偉そうな性格を考えれば
自分が死ぬと思ってないだけかもしれないが…このレベルだと死の概念があるのかも怪しい。
だがアライさんに対し死について説く気もないのでそのまま続行して薬指と小指を切る。

アライさん「ぎゃんっっ。……もうやめろっていってるのだあ!!」

わめけばわめく程、男が満足するだけなのにそんな事に気付く訳もなくアライさんは叫び続ける。
しかし耳、尻尾、片手の指とかなりの苦痛があるはずだが、アライさんは涙こそ流しているもののまだ怒りの方が勝っている状態だ。
アライさんの性格にも幅があるのか?このアライさんはなかなかいい根性をしているなと思うが、そろそろ怖がる顔も見たい。

よく目隠しをするとより恐怖感が増す、みたいな話を聞くが…今このうつ伏せにしている状態がそれと似たようなもので、
これでダメなんだから効果は期待できなさそうだ。

逆に指を切ってやる所を見せれば恐怖を感じるのでは、と考えたがその為には腕の拘束を解かなければならない。
片指を失ってはいるが、面倒な事になっても困るのでよそう。アライさんから見える部分で丁度良さそうなのはやはり足だな。

足は足首の所で縛られているが、これもまた解く訳にもいかないので両足いっぺんにいくか。作業台の端に設置された万力で。
万力は大きめの物を用意したので、両足首から下の部分を同時に挟む事が出来た。

もうこの時点でかなり痛みがあるらしく、これからされるであろう事にも気が付いたみたいで

アライさん「おいっ、はやくこれをはずすのだぁ!!」

さっきうつ伏せにした時よりもかなり焦った言い方になり、表情もこわばっている。
やはりアライさんには目に見える形で暴力をかました方が効果的なのか。

男は無言で万力のハンドルをゆっくり回すと、

アライさん「いたいいたいいたいいい!!きょわああああああっ」

ミシミシッと音がした後、ゴリッと骨が砕けた。

アライさん「あっ…ああっ………」

アライさんは悲鳴なのか呻き声なのか良く判らない声を出し、失禁した。

男「やっちゃったねアライさん。これはもう片っぽの指も没収かな」

最初から全部の指を切るつもりだったが、わざとらしい事を言って左手の指も切り始める。
アライさんの息は弱まり、抵抗する気力も失い指を切られてもウッ、オウッといった声しか上げなくなった。

指を切り終わりまだもう少しは楽しめるかな、などと考えていると

アライさん「……まだ…アライさんにひどいことするのか……おまえはさいていのニンゲンなのだ…」

男「何言ってるのアライさん。アライさんは他の人間に会った事無いんだから比較なんてできないでしょ。

それを言うならニンゲンはさいていなのだ、だよ」

アライさん「…………………」

何か言い返す事も出来なくなったようだ。

アライさん「……………………のだ……」

男「もっとはっきり喋ってくれないと聞こえないよ?」

アライさん「それ…でも…お…まえ…はさいてい……なの…だ……」

そう言うとアライさんは気を失ってしまった。もっとやりたい事があったが…
これ以上痛めつけても男の期待する反応は得られ無さそうなので楽にしてあげるか。男は気絶しているアライさんの首を締め上げて殺した。

例によってアライさんの死体は山に捨てる事にするが、男はこのアライさんに今までに会ったアライさんとは何か違うものを感じ、
最初に会った木の近くに埋めてやった。自宅に戻った時にはすっかり日が暮れていたが、明日も休みなのでゆっくり酒でも飲むとしよう。

次にアライさんを捕まえるまでにアライさんの両手両足を拘束できる様に作業台に細工をしておこう、と今回の反省をした。

―――――――――――――――

アライさん虐待をしてから二週間ほど経ったある日、仕事を済ませて自宅に戻った男はメールをチェックしていた。
珍しくおじさんからメールが来ていたので早速開く。

男に紹介したい人がいるので、もし会ってもらえるなら都合のいい日時を教えて欲しいといった内容だった。
おじさんの頼みならきかない訳にもいかないと思い、都合のつけられそうな日にちをいくつか書いて返信した。
少し経つと返事が来て、一週間後におじさんと会う事となった。

出来れば徒歩で来て欲しいと言われたので、待ち合わせ場所である男の最寄駅に早めに行くとすでにおじさんが来ていた。
おじさんと会うのは山で会って以来だ。

男「こんにちは、お久しぶりです。お元気そうでなによりです」

おじさん「こちらこそ。今日はわざわざ来てもらって感謝します。早速ですみませんが車で移動しますのでこちらへ」

おじさんに付いて駅のそばにあるコインパーキングに行くと、山で見たのとは違うセダンタイプの立派な車があった。
男が乗り込み、シートベルトを締めたのを確認するとおじさんは車を発進させた。

車に乗っている間、お互いにアライさん関係でどんな事をしたのかとか例の動画の感想であるとか雑談で盛り上がった。
しばらく経つと、男が初めてアライさんを捕まえに行った田園地帯の近くに来た。

運転していたおじさんがふと何かに気付き、車を道路わきに停める。

おじさん「すみませんが少しの間待っててもらえませんか?」

男「わかりました」

おじさんはそう告げると車から出て行き、畑の端っこで作業している老人に声を掛け何か話し始めた。
その様子を見るにおじさんと老人は知り合いに見える。五分ほど経つとおじさんが戻ってきた。

おじさん「お待たせしました。あの人は昔お世話になった方でして、ご挨拶をしていました。

実はこれから行くのはあの方の家なんです」

それならば男も挨拶した方がいいのでは、と思うがもう車は走り出しているので無理だった。
そうなると紹介したい人というのはあの老人の家族の誰かという事だろうか。

間もなく老人の家に着き、停車させる。敷地は広く、大きな母屋と納屋の様な建物が二つある。
おじさんが母屋の呼び鈴を鳴らすと、今出ますと声がした。

玄関に出てきたのは若い男で、背が高く見た目は今時の若者といった風体だ。


続く

おじさん「ケイ君、来てもらったよ」

若者「ありがとうございます、マサおじさん」

ケイ君と呼ばれたその若者は男に向くと

若者「はじめまして○○って言います。今日は突然来てもらってすみません」

男「△△です。本日は□□さん(おじさんの名前)の紹介で来ました」

若者「立ち話もなんですからどうぞ上がって下さい」

おじさんの後に続き家に上がる。客間らしき広い和室に通されると、今お茶を持ってきますと若者が部屋を出た。

男「紹介したい人って彼の事ですか?」

おじさん「そうですね。彼はさっきの方のお孫さんで、子供の頃から知ってるんですよ」

男「今更ですが、アライさん関係って事でいいんですよね?」

おじさん「まあそれは彼の話を聞いてみましょう」

なんか歯切れが悪いなと思っていると、お茶と和菓子を持って若者が戻ってきた。どうぞ、と言われたので遠慮なくお茶を飲む。

若者「マサおじさんから聞いたんですが、アライさんに興味があるって本当ですか?」

ずいぶん直球で来たな。男がおじさんをチラッと見ると、おじさんは男に対して少し申し訳無さそうな顔をした。
……なんとなく事情はわかった。おじさんが軽い気持ちで男の事を話したら、予想以上に若者が男に興味を示したとかそんなとこだろう。

男「ええ、そうですよ。まだ日が浅いのであまり大した事はしてませんが」

若者「実は自分もなんです。けどこういう話を出来るのがマサおじさんしかいなくて……最近△△さんの事を聞いて、

ぜひ話をしてみたかったんです」

男「私もネット以外でアライさんの話が出来る知り合いは□□さんだけですから、他にそういう人と知り合えるのは嬉しいですね」

若者「ありがとうございます!」

よほど嬉しかったのだろうか。その後若者は少し打ち解けた様子で色々と話始めた。彼は市内の大学に通う学生で、普段は市街地に下宿しているが
週末になるとたまに実家に戻ってきて祖父の農作業を手伝ったりするのだそうだ。

若者(以下大学生と表記)「二年前からこの辺りにもアライさんが出だしてウチの畑も被害に遭う様になったんで、

おじいちゃんが捕まえる様になったんですよ。最初のうちはおじいちゃんがアライさんの首を折ったり切ったりしてシメてたんですけど、キリがなくて」

男「ワイルドなおじいさんだなあ」

大学生「それで最初はなんとも思ってなかったんですけど、その様子を見てるうちにアライさんに興味がわいてきちゃって。

実際に手を出す様になったのは去年の夏ごろからですね」

おじさん「丁度その頃でしたかねえ、ケイ君に私がアライさんを捕まえている事を伝えたのは」

大学生「あの時は驚きましたよ。マサおじさんが趣味で狩猟をやってるのは知ってましたけど、アライさんも捕まえていたのは知らなかったんで…」

男「そうだったんですか」

結局おじさんも実際に話せる仲間が欲しかったのだろうか。まあなんとなく共有したい気持ちはわかる。

さらに話を聞くと大学生は生き物としてのアライさんに興味があり、処分するついでに色々したという。
暑い所や寒い所に閉じ込めてどれ位生きられるか見たり、複数のアライさんを同じ場所に入れて様子を観察したりと様々だ。

その話の中ではどの位寒い場所でもアライさんは生きられるのか、というのは気になったのでそのうちにでも話を聞いてみる事にしよう。
そんな事を考えながらしばらく雑談していると

大学生「ところでなんですが、先日おじいちゃんが捕まえたアライさんを処分しようと思ってるんですけどもし良かったら見ていきませんか?」

わざわざここに連れてくるからには何かあると思っていたが…。ここまで来て断る訳にもいかないので了承する。
男の返事を聞いた大学生は、ではこちらへと敷地にある納屋のうちの一つの前へと案内した。

大学生は金属製の扉に掛かっている頑丈そうな鍵を外し、中へ入っていった。おじさんと男も後に続く。
中は広く、天井も高い。薄暗かったので大学生は電気をつけた。奥には大きな金属の台があり、所々錆だか血の跡の様な汚れがある。

台の脇に作物を収穫する時に使う様なプラスチックのコンテナボックスが二つあって、一つには色んな道具が無造作に入れられていた。
もう一方には何か白いような赤茶けた物がたくさん入っている。アライさんの骨か?

大学生「そのうちアライさんの標本でも作ろうと思っていたんですけど、まだ手付かずのままですね。管理が適当で混ざってしまったので

正直もう面倒になったってのもありますが…」

大学生は恥ずかしそうに言った。物音がして気が付いたのか、壁際にある檻の中で寝ていたアライちゃん達が目を覚ました。

アライちゃんA「あ、ひとしゃんなのだ。いつになったらここからだしてくれるのだ?」

アライちゃんB「ひとしゃん、ここはさむいのだ。アライしゃんをはやくあったかいところへつれていくのだ。あとおなかもすいたのだ」

アライちゃんC「………………」

アライちゃん達は四つん這いで檻の端に寄ってきた。アライちゃんCだけまだ寝ている。

おじさん「アライちゃんだけかい?親のアライさんはどうしたの?」

大学生「箱罠の中にはアライちゃんだけが掛かってたんですけど、おじいちゃんが近づいたらそばにいた親はびっくりして逃げたそうです。

でもその後、おじいちゃんが罠を運ぼうとしたら親がちび達を返せなのだあ!って言って取り返しに来たので問答無用で叩き殺したって言ってました」

おじさん「あの人は怒ったら恐いからねえ」

おじさんは冗談っぽく言って笑った。

大学生「収穫のピークは過ぎてますが今だにこうやってフラフラ現れるんですよ。本当に迷惑ですよねえ」

おじさん「ここらは山に近いですし、山から追い出されたアライさんが子連れでも無理して来るんでしょうなあ」

大学生「良かったらアライさんに何かしていきますか?ここにある物は自由に使ってもらっても構いません」

突然言われてもな。初めて来た場所で勝手がわからないし、おじさんの作業場に行った時もそうだが
他人がアライさんをどうするのかもたまに見てみたいので、

男「いえ、今回は遠慮しておきます」

おじさん「私もですかね」

大学生「そうですか……じゃあ久しぶりにあれでもやろうかな」

大学生は少し考え込んでから言うと、まだ寝ているアライちゃんCを檻から取り出した。

アライちゃんB「いもうとだけだすなんてズルイのだぁ!アライしゃんもだすのだ!」

アライちゃんA「おちつくのだ。きっとじゅんばんにだしてくれるのだ」

親が目の前で叩き殺されたのに随分と悠長な態度だなと思ったが、殺したのは彼の祖父であって大学生に対してはまだそれほど反抗的では無いらしい。
しかし大学生はアライちゃんCだけ出すと出入り口を閉めた。

アライちゃんB「やっぱりだしてくれなかったのだ!」

アライちゃんA「お、おちつくのだ…なにかのまちがいなのだ……」

アライちゃん同士で何やら言い合っているが目もくれず、大学生はコンテナから黒くて太いベルトの様な物を出してアライちゃんCの胴体に巻きつけた。
背中側にはリングが付いていて、それを納屋の天井の梁に取り付けられた金属棒の下端にあるフックに引っ掛けた。
地面と体が平行になる様にブラ下がった状態で、空飛ぶヒーローの様な姿勢だ。

そしてアライちゃんCの左右の手首と足首に鎖のついた鉄の輪っかを嵌めた。
輪っかはガッチリと嵌っていてちょっとやそっとでは外れそうにない。アライちゃんCは少し前から目を覚ましていたが、
まだ意識がはっきりしていないみたいで小声でのだぁ…のだぁ…と呟いている。

大学生「たまにこうやってアライさんにどれくらい力があるか調べてるんですよ。今回はアライちゃんですけど…。

毎回結構差が出るので面白いんです」

アライちゃんC「ここどこなのだあ…?あれっ、アライしゃんがちゅうをとんでいるのだ!?アライしゃん、とりしゃんになっちゃったのだ!?」

大学生「アライちゃん、あと少し付き合ってくれたら外に出してあげるよ」

アライちゃんC「ひとしゃん、アライしゃんとべるようになったのだ!もうひとしゃんなんかよりもすごいのだぁ!」

大学生「そうだね、アライちゃんはすごいよね。だったらこれも簡単に持てるよね?」

大学生は右手首の輪っかに付いた鎖に、筋トレで使うダンベルのプレートの様な重りを引っ掛けて吊るした。


続く

アライちゃんC「いっ。きゅうにてがおもくなったのだ……でもこのくらいへっちゃらなのだぁ」

大学生「流石アライちゃん。これはどうかな」

右手首にもう一つ同じ重りが追加された。

アライちゃんC「うぐぐ…も、もうむりなのだ…」

アライちゃんCは左手も使い、右手首を支えながら言った。

大学生「ズルしちゃダメだよ、アライちゃん」

そう言って今度は左手首の鎖に重りを吊るす。

アライちゃんC「きゃんっ」

耐え切れなくなったアライちゃんCの腕は二本ともピーンとブラ下がる形になった。そしてさらに左手に重りを一つ追加する。
アライちゃんCの顔は真っ赤になり息が荒くなってきた。

アライちゃんC「ひ…ひとしゃん…もううでがくるしいのだあ…おもいのとってほしいのだあ…」

大学生「アライちゃんの限界が知りたいからそれは無理かな」

アライちゃんC「もっもうむりなのだぁ…げんかい?ってやつなのだ…」

大学生は無視して右手に重りを一度に二つ追加すると、ブチブチッとあっさり手首がちぎれて落ちた。

アライちゃんC「きゃああっいたいのだああ!!」

大学生はコンテナからノートとペンを出して何か書き始めた。今までにした色んな事の記録が書かれているノートだろう。
中身が見たいような見たく無いような代物だ。

アライちゃんC「いだいのだ…てが…てが…」

大学生「左手はどこまでいけるかなあ」

右手の時と違いまずは三つめを掛ける。なんともなかったので、右手がちぎれた四つめを掛けた。

アライちゃんC「あっ…あふっ……」

左手はなんとか耐えた。そして五つめを掛けた時、今度は肘の下の部分からちぎれた。

アライちゃんC「あがっ……がが…」

アライちゃんCは腕の残った部分をバタバタさせている。空中でもがいているさまはなんとも滑稽で、男は笑い出しそうになってしまった。
大学生はアライちゃんCをフックから外し、地面に落とした。

アライちゃんC「プギャッ。……アライしゃん、もうとべなくなっちゃったのだぁ……?いたいのだ…いたいのだぁ……」

アライちゃんCはブツブツ言いながら傷口をペロペロ舐めたり、地面を這いずりまわっている。大学生はその様子を見ながら、

大学生「大人のアライさん用の重りなので、アライちゃんが相手じゃかなり雑になってしまいましたね。

あのアライちゃんはあのまま放っておけば出血でそのうち死にますんで次にいきましょう」

大学生が檻に向くとアライちゃん達がビクついた。そりゃあ目の前で妹があんな目に遭わされればな…。

アライちゃんB「ひいっ、こっちにくるななのだぁ!」

アライちゃんA「………………」

アライちゃんAは恐怖のためか言葉も発さず、ブルブル震えている。

大学生「今度はおとなしいこっちにしますか」

檻からアライちゃんAを取り上げると、金属の台に載せ両手両足を台に固定する。少し抵抗されていたが所詮アライちゃんの力ではどうする事もできず、
仰向けに大の字の姿勢で拘束された。あの仕組みは作業台の細工をする時の参考にさせてもらおう。

次に大学生はコンテナではなく、納屋の奥にあるスチールラックから電動ドリルを持ってきた。
スチールラックにはコンテナとは違い、主に電動工具が収納されている。他には大きな丸い刃のついた電動ノコギリ等があった。
大学生はドリルのスイッチを入れてバッテリーの確認をしながら、

大学生「手っ取り早くしたい時はやっぱりコレですね。力も使わずに済みますし。血が飛ぶ事もあるので、

少し離れてた方がいいかもしれないです」

そう言うと大学生は回転したドリルの刃をアライちゃんAの左太ももに刺した。

アライちゃんA「ぎゃあああ!!やめてっ、やめてなのだあ!!」

手っ取り早く、と言った割りには単に痛めつけてるだけにしか見えないが…。アライちゃんAは頭をイヤイヤと左右に振ったり
手足を動かそうと必死になるが、拘束が解けるはずもなく叫ぶ事しかできない。ドリルの刃を抜くと、穴から血があふれ出てきた。

アライちゃんA「いたいのだぁ…なんでひとしゃんはいたいことするのだ?くるしめるのだ?アライしゃんなにもしてないのだあ…」

もう何度目かわからない聞き飽きた言葉だ。自覚が無いから余計タチが悪い。

大学生「説明してもどうせアライちゃんには分からないよ」

アライちゃんA「アライしゃん、そんなにばかじゃないのだ…はなせばわかるのだあ」

大学生「頭がいいとか悪いとかじゃないんだなあ。考えが全く違う者同士で話し合っても無駄だよ」

大学生からしてみればこんなやり取りは一度や二度じゃ無いんだろう。
さっさと話を切り上げると、彼はアライちゃんAの頭のてっぺんからドリルを刺した。

アライちゃんA「あっ、ウンッ、あふんっ」

アライちゃんAは白目をむいて舌を出しながら声にもならない息を漏らしている。さらに大学生はドリルを左右に揺らして回すように動かす。
ビクンビクンと震えていたアライちゃんAの体はやがて動かなくなった。

大学生はアライちゃんAが死んだのを確認し、最後に残ったアライちゃんBを出そうと檻に近づくと

アライちゃんB「ひ…ひとしゃん、なにをおこってるのかしらないけどもうこんなことはやめるのだぁ…」

大学生「………………」

アライちゃんB「ひ、ひとしゃん?だまってたらわからないのだ…?ア、アライしゃんだけでもゆるしてほしいのだあ…」

恒例の命乞いだ。まあ許す訳ないよなあ、と思っていると出入り口の方からドンドンと扉を叩く音がした。

??「おーい、ケイタロウ、そこにいるのか?」

大学生「どーしたの、おじいちゃん」

大学生は外にいる祖父に聞こえる様に大きめの声で返事をすると、

大学生の祖父「おお、ここにいたのか。悪いんだが10分だけ手を貸してくれ」

大学生「わかった、今行くよ。………呼ばれちゃったので少し行ってきますね。なんでしたら残ったアライちゃんで

遊んでもらってても構いません。…これが檻の鍵です」

大学生は鍵を男に渡すと外に出ていった。

男「どうします?」

おじさん「とりあえず彼が戻ってくるまで待つとしますか」

男「そうですね。……ところで聞いてもいいですか?」

おじさん「どうかしましたか?」

男「彼のおじいさんとはどういったお知り合いなんですか?」

おじさん「簡単に言うと、狩りの先生です。昔あの方から狩猟のイロハを学んだんですよ」

聞くとおじさんは昔罠の他に猟銃も使って猟をしていたが、捕まえる対象がアライさんに移ってからはほぼしなくなったという。
したとしても知り合いに頼まれて害獣の駆除を手伝ったりする程度で、その際捕まえた動物は虐待する様なマネはせず
速やかに保健所に引き渡していたそうだ。

なぜおじさんがアライさんだけは虐待するのかは分からないが、それとは別にアライさんを捕まえる事自体が楽しいらしく
銃は使わず罠や刃物といった単純な方法で捕まえるのが面白いのだそうだ。

男にとってアライさんを捕まえるのは面倒な作業にしか過ぎないので、今更ながら色んな人がいるなと思った。
大学生にしてもそうで、彼の場合畑に次から次へとわいて出るアライさんを処分する目的もあるので、
長く苦しめたい男と違い手早く始末できる方法を好むのだろう。たまにいたぶって観察したり電動工具でわざと派手に殺す事もある様だが…

そんな事を考えていたら大学生が戻ってきた。


続く

大学生「すみません、お待たせしました」

大学生の視線が檻に向き、まだアライちゃんBが残っていることに気が付いた素振りをみせたので男は彼に鍵を返した。

大学生「では残りもすぐに処分しますね」

アライちゃんB「………………」

大学生が檻に近づいてもアライちゃんBは黙ったままだ。さっきは命乞いしようと必死に語りかけていたのに…。
もう助からないと悟ったのか。しかしアライちゃんBの視線は怯えているというよりは何かを期待している様な目だ。

大学生が檻の出入り口をゆっくり開けると、アライちゃんBは外に飛び出した。四つん這いにしてはなかなか素早い動きでカサカサッと移動する。
しかし大学生に驚いた様子はなく、アライちゃんBを眺めているだけだ。最初から気付いていたのだろう。

アライちゃんBは納屋の扉へ向かって進んでいる。さっき大学生が扉から出入りしていたのを見て、
あそこまで行ければ助かるかもしれないと思ったに違いない。アライちゃんBは我々の誰一人として追ってこないのに気付くと、

アライちゃんB「アライしゃんがここからでて、おおきくなったらおまえたちにしかえししてやるのだあ!おぼえていろなのだぁ!」

捨て台詞を吐き、アライちゃんBは扉の前まで移動した。

アライちゃんB「あとはここからでるだけなのだ。うーんしょ、うーんしょなのだ!……!?あかないのだ!?

ひとしゃんはあけてたのに……なんでアライしゃんだとあかないのだ?」

大人の男でも重そうな扉なのに、アライちゃんが開けられる訳がない。アライちゃんBが必死で扉を押している間に大学生が後ろから近寄った。

アライちゃんB「きゃあ!あっちいけなのだぁ!………たぁーーーっ」

悲鳴をあげたかと思えば今度は覚悟を決めたのか、大学生の足首にしがみつき噛み付いた。
しかし大学生はエンジニアブーツの様な厚い革の靴を履いているので、痛がる様子は無い。
彼が片足を上げて振る動作をすると、あっさりアライちゃんBは足首から離れてしまった。

アライちゃんB「ふぎゃっ」

大学生は地面にひっくり返ったアライちゃんBを掴み上げると、納屋の中央付近へと放り投げた。

アライちゃんB「おごっ………く…くるしいのだぁ………」

アライちゃんBは腹部を強打し手足も痛めてしまった様で、さっきまでの素早い動きは出来なくなってしまった。

大学生「アライちゃん、大人しくしてれば苦しまない方法で逝かせてあげようと思ってたのになあ」

その言葉が本当かはわからないが、アライちゃんBを怖がらせるには充分効果があったようだ。

アライちゃんB「ひいい……ひとしゃん、にげようとしてごめんなさいなのだ…。なんでもするからゆるしてなのだぁ……。

そっそうなのだ、ひとしゃんのこぶんになってあげるのだ」

大学生「子分にしてあげてもいいけど、もしそうなったら自分の代わりにアライちゃんに他のアライさんやアライちゃんの

処分をやってもらうけどいいの?」

アライちゃんB「そ…そんなことできるわけないのだ…。ほかのことならなんでもするのだあ…おやぶん、おねがいなのだぁ…」

大学生「出来ないなら残念だけどダメだね。死んでもらうよ」

アライちゃんB「しょ、しょんなあ……」

アライちゃんBは涙目で鼻水を垂らしながらうなだれる。大学生はコンテナから前掛けを出し身につけ始めた。
その前掛けは茶色い汚れがたくさん付いていて、男はアライちゃんBがこれからどんな目に遭うのか察した。

大学生はアライちゃんBの首根っこを掴むと、アライちゃんAにした時の様に金属台に拘束した。
さっきと違う点は、台の端の部分にある拘束具を使った事だ。アライちゃんBは両腕と腹部で固定されていて、
腰から下の部分が台からはみ出ている状態である。

そしてスチールラックから丸い刃の付いた電動ノコギリを出すと、長い電気コードを繋いで戻ってくる。
おじさんと男は何も言わず台から距離をとった。その様子を確認した大学生が電ノコのスイッチが入れると刃が回転する音が響く。

アライちゃんBはその音を聞いて今目の前にあるモノがさっき自分の姉を殺した電動ドリルと似た物だと気付き、

アライちゃんB「きゃああ!そのうるしゃいのこっちにむけるのやめてなのだあ!!」

大学生は電ノコの刃をアライちゃんBの左太ももに当て、切断した。

アライちゃんB「ぎゃおおおああ!!」

ピシャッと前掛けに血が飛び、少しガリッと音がして簡単に脚は切れてしまった。

アライちゃんB「あへ…あへぇ……」

そして大学生が右足も切ろうとした時、アライちゃんBは口をパクパクし始め

アライちゃんB「ひ…ひとしゃん……しょ、しょぶんするから…しょぶんするのてつだうから……アライしゃんをたす…けて…なのだ……」

大学生「仲間を裏切る子はいらないかな」

アライちゃんB「!!……しゃっきはこぶんにしてくれるっていったのに……ひとしゃんのっ、うそつき!!」

今度は腰骨の辺りに刃を当ててスライドさせる。

アライちゃんB「あごごごおおおお……ゲボッ」

流石に脚と違い胴体を切るのには少し時間が掛かったが、見事にアライちゃんBは真っ二つになった。
ゴロンと落ちた下半身が地面でカクカク動いていたのはちょっと面白かった。

大学生はアライちゃんBの拘束を解き、地面に落とす。

アライちゃんB「ブッ。コヒュー……ヒュー…」

アライちゃんBの体からはものすごい勢いで血が出ている。あれではもう一分も持たないだろう。
断面からは骨が見え、内臓も飛び出しているがそれでもなおアライちゃんBはこの場から逃れようと這った。

アライちゃんB「ア…アライしゃんは……もっと…おいしいものたべ…たり…あそんだり……したい…のだぁ……」

正直この生への執着には感心する。だがそれのせいで人間は迷惑を被っているので、疎ましくも感じた。
一分もしないうちにアライちゃんBは動かなくなり、死んだ。

そういえば最初のアライちゃんCはどこに行ったかと納屋を見回すと、檻がある反対側の壁際で丸まっていた。
大学生も気付いて生死の確認をしようと近づき、仰向けになるように軽く蹴って転がした。

アライちゃんC「うあ……あ………?」

まだわずかに息があった様で、大学生はアライちゃんCの首に足をかけると強く踏み込む。

アライちゃんC「カハッ、ハーッ…ハ……」

ゴリッと音がし、アライちゃんCの舌は飛び出し醜い顔をして死んだ。

大学生「結局一番簡単なのはコレなんですけどね。ついアライちゃんには余計な事したくなるんですよ」

言葉には出さないが、気持ちはわかる。あの無駄に痛めつけたくなるウザさは本当になんなんだろうな。
その後大学生はアライちゃんの死体をゴミ袋に入れ、ポリバケツに放り込んだ。後日焼却するなり処分できる施設に持ち込むんだろう。

おじさん「もういい時間ですし、そろそろここいらでお開きにしましょう」

大学生「そうですね。△△さん、今日は来て頂いて本当にありがとうございました」

大学生と連絡先を交換して納屋を出ると彼の祖父が敷地で作業していたので、おじさんに紹介してもらい挨拶をする。
そしておじさんの車に乗って大学生の家を後にした。

―――――――――――――――

おじさん「本当に駅前でいいんですか?家まで送りますよ」

男「ここで大丈夫です。少し寄りたい所もあるので…」

おじさん「そうですか。ではそのうち都合が合えばまたアライさんを捕まえにでも行きましょう」

男「はい。その時はよろしくお願いします」

おじさん「では私はこれで。今日は付き合ってもらってありがとうございました」

おじさんは軽く頭を下げて車を出した。今日はなかなか面白いものが見れたなと思っていると
腹が鳴ったので焼肉でも食べに行く事に決めた。


続く

大学生と知り合ってから10日ほど経った日、男はアライさんを捕まえに山に来ていた。
大分気温が下がり、吐く息は白い。あと半月もすれば雪が降り出す時期である。

男の仕事のスケジュールもあわせると今年最後のアライさんを捕まえる機会だ。この機を逃せば来年の春まで
アライさん虐待がお預けになってしまう。それ故できれば成体のアライさんを捕まえたい、と男は考えていた。

しかし今回は待てども待てども罠にアライさんは掛からない。日が落ちるのも早くなり、気温もさらに下がってきたので
次に見にいってダメなら残念だがあきらめよう。

男は期待して最後のチャンスに賭けたが、空振りだった。ため息を吐きながら引き揚げる準備をし、車に戻ろうと歩きだした。
戻る途中の落ち葉が溜まっている場所を通ろうとした時、足元で何か動いた。

男は驚き、罠を置いて急いでその場から離れた。そして遠巻きに様子を伺うと、何か小動物のようなものが動いているが
落ち葉が邪魔でよく見えない。しかし罠を回収しなければならないので、男は鉈を手にして慎重に近づいた。

罠の近くで黒いものがモゾモゾとしていたが、よく見ると一番小さいタイプのアライちゃんだった。男は周りを警戒する。
このアライちゃんが迷子だとすれば、近くに子供を捜しに来た親のアライさんがいるかもしれない。

しかしアライさんの声や足音のような音は聞こえず、風に吹かれた木の枝や落ち葉の音しかしていない。
今はまだこの周りにはいない様だ。

どうする?このアライちゃんをこのまま連れ帰ってもいいが、うまく使えば親のアライさんをおびき出して捕まえられるかもしれない。
だがもう今日は時間がない。………考えていても仕方ないのでとりあえず何か聞き出そうとアライちゃんに話しかける。

男「アライちゃん、こんな所でどうしたの?お母さんは?」

アライちゃん「にんげんしゃん?にんげんしゃんなのらぁ?」

男「ああ、人間だよ。お母さんと一緒じゃないの?」

アライちゃん「おかあしゃんってなんなのら?」

男「あー……ママって言えばわかる?」

アライちゃん「ままならアライしゃんをのこしてどっかいったのらあ」

男「いなくなる前に何か言ってなかった?」

アライちゃん「うー…。いまおもいだしゅのらぁ……。アライしゃんがもどってくるまでここでまつのらって

いってたきがするのらあ……」

男「どのくらい前に言われたの?」

アライちゃん「おひしゃまがてっぺんにいたころなのらあ」

3、4時間前か…。食べ物でも探しに行った親の身に何かあったのか?足を滑らせて急斜面を滑落したとか、
他の動物に襲われたとか色々考えられる。

男「随分長くここにいたんだね。でもじきに暗くなるからもうお家に帰ったら?」

アライちゃん「でもでも、ままにここにいろっていわれたのら…しょれにここがどこかわからないのらぁ」

そんなに巣穴から離れた場所まで来たのか?もしやと思い、更に尋ねる。

男「アライちゃんがお家を出たのはいつごろなの?」

アライちゃん「まだあしゃはやくだったのら。アライしゃん、まだおねむだったのにままにいっしょにくるのら、

っていわれてここまでつれてこられたのら。くたくたでうごけなくなったのらあ」

アライちゃんの移動スピードが遅いとはいえ、朝早くからとなると結構距離がある。遊んだり食べ物を探すために
子供を連れてそんなに移動するとは考えにくい。……これは多分親に捨てられたな。
おおかた食べ物が少なくなって養いきれなくなったアライちゃんが邪魔になったんだろう。

アライちゃん「くたくたになったから、はっぱのおふとんでねてたらにんげんしゃんがきたのら」

何も気付かずのんきなものだ。しかし捨てられたとなるとこのアライちゃんを利用して親を捕まえるのは無理だな。
なんせ親からすればもう邪魔者にしか過ぎないのだから。残念だが、手ぶらで帰るよりはマシだから連れて帰ろう。

男「アライちゃん、このままここにいたら危ないから一旦俺と帰ろう?明日一緒にアライちゃんのママを探すのを

手伝ってあげるよ」

アライちゃん「でもぉ……」

男「夜になったらこわーいけものが来て食べられちゃうよ?」

アライちゃん「ひゃあ…しょれはいやなのらあ……にんげんしゃん、アライしゃんをつれてってなのらあ」

男「じゃあこの箱に入っててくれる?」

アライちゃん「わかったのらー」

アライちゃんは言われるがままに箱罠に入る。そういえば罠に入り込む瞬間を見るのは初めてだ。
純粋に罠に掛かった訳では無いが、こんなに間抜けに見えるんだな。そして罠を持ち上げ歩き出すと、

アライちゃん「らくちんなのらー♪しゅしゅめしゅしゅめーなのらあ♪」

アライちゃんは乗り物にでも乗った気分なのか、無邪気にはしゃいだ。

男「アライちゃん、楽しい?」

アライちゃん「たのしいのらぁ。でもままのしぇなかにのるほうがもっとたのしいのらっ♪」

男「そうなんだ。アライちゃんはママの事が大好きなんだねえ」

アライちゃん「しぇかいでいちばんしゅきなのらあ。ままはしぇかいいちのままなのらー」

車に着いた頃にはもう暗くなっていた。罠をトランクに積むと

男「俺の家まではもう少し時間が掛かるから寝てたらいいよ」

アライちゃん「わかったのら。おやしゅみなしゃいなのらぁ…」

罠に毛布を掛けてやり、車を出した。最初にアライちゃんを捕まえた時もこんな事があったな…。
アライさんはともかくアライちゃんなんて抵抗されてもたかが知れてるんだから、
最初から乱暴に捕まえてしまえばいいのに何故か良い人間のフリをして騙して遊びたくなるんだよな。

昔読んだ漫画か何かに出てきた表現を借りれば、野球でホームランを打ったその打球がスタンドに届くまでの時間、とでも言うのか。
この後裏切られたアライちゃんがどんな目に遭うのか、どんな表情をするのか想像する時間が楽しい。

―――――――――――――――

自宅に着き、罠を洋室に運び込む。毛布を外すとアライちゃんはぐっすり寝ていた。
まだ片付けが残っているから今は放っておくか。

手を動かしながらどうやってアライちゃんを苦しめるか考えてみるが、小さいアライちゃんは少し痛めつけただけで弱ってしまうからなあ。
今回はなるべく傷をつけずに苦しめようと思うが、何かいい方法は無いものか。

腐った物でも食わせて腹痛と嘔吐でも起こさせるか?だが外で虫やら食べているアライちゃんが腐った物くらいで
お腹を壊すとは限らない。それに今すぐ腐った食べ物を準備するのも無理だ。

洗剤など薬品を与えるのはどうか。知識が無いから加減が難しそうだな…最初にあっさり死んでしまう可能性もある。
最後に始末する時に試すにはいいかもしれない。

小さい傷をつけて出血させて経過を見る……う~ん、地味だ。もっと泣いたり叫んだりするのが見たいんだよな。
やっぱり水責めか?あれなら傷も付けないし手加減もしやすい。

風呂の浴槽が汚れるのは嫌なので、前にアライちゃんを洗う時に使った大きめのタライを使おう。だがこれだと水に沈めた時に
アライちゃんの顔がよく見えない。プラスチックの水槽でも買うか。アライちゃんを一匹沈めるだけなら小さいモノでも充分だろう。

ホームセンターの閉店時間にはまだ時間がある。……が今日は朝早くから山に入ってギリギリまで粘ったのでもう気力が無い。
明日も仕事は休みだから今日は休んで明日アライちゃん虐待を楽しもう。片付けも終わったし少しアライちゃんの様子でも見ておくか。

アライちゃん「あ、ひとしゃんがもどってきたのら」

男「アライちゃん、起きてたんだ。お腹空いてない?」

アライちゃん「きょうはあしゃからたべてないから、おなかぺこぺこなのらあ」

そういえば朝から連れ回されてたんだっけな。せめて置いていく時に少しくらい食べ物を残していってやればいいものを…。
アライさんの親としての愛情は完全に無くなっていたという訳だ。

人間に嫌われ、親に捨てられ、あげく男の遊びの為に殺されようとしている。流石に哀れになってきたので、
最初はそんな気は無かったが風呂にくらいは入れてやる事にした。


続く

男「アライちゃん、ごはんの前にお風呂に入ろうか」

アライちゃん「おふろってなんなのら?たべものとはちがうのら?」

男「体をお湯で流してキレイにする事だよ」

アライちゃん「しょんなことどうでもいいのらあ。アライしゃんはおなかぺこぺこなのら、しゃきにごはんがいいのらぁー」

男「体をキレイにしてさっぱりしてから食べた方がもっとおいしくなるよ?」

アライちゃん「ううー。めんどくしゃいけど、しょこまでいうならしかたないからはいってやるのらあ」

男はアライちゃんを両手で抱えて浴室へ連れていき、前にやったのと同じ要領でシャワーを浴びせた後
お湯を張ったタライにアライちゃんを浸からせた。

アライちゃん「ぬくぬくできもちいいのらぁ……」

男「入って良かったでしょ?」

アライちゃん「こんなにきもちいいなんてしらなかったのら。にんげんしゃんはいつもこんなことしてるのら?」

男「まあ大体の人は毎日してるね」

アライちゃん「にんげんしゃんばっかりじゅるいのらぁ。そうなのら、あしたままにもおしえてあげるのらー。

そしてままといっしょにおふろにはいるのらっ♪」

しばらくお湯に浸からせていたら、突然アライちゃんが目を閉じプルプル震えだした。…これはもしや……。
アライちゃんの下半身あたりのお湯が黄色くにごり、水面に糞が浮いてきた。

アライちゃん「ふいー。きもちよしゅぎてうんちとおしっこがでちゃったのら。しゅっきりしたのらぁ」

男「あー、アライちゃん。お湯を取り替えるから一旦出ようね」

アライちゃんをタライから出し、糞に触れない様にビニール袋を使って取り除いた後、お湯を排水溝に流した。

男「アライちゃん、体が汚れちゃったからもう一度洗うよ」

アライちゃん「ええー、もういいのらあ」

男「ダメダメ、ちゃんとキレイにしないと病気になっちゃうよ?」

石鹸を泡立てた後、男は糞を垂れ流されたうっぷんを晴らそうと指を立てて強くアライちゃんの体をこすった。

アライちゃん「にんげんしゃん、いたいのらあ!もっとやしゃしくしてなのらっ」

男「これくらい強くしないと汚れが落ちないからね。我慢しててね」

男はアライちゃんの嫌がる声を楽しみながら体を洗ってやった。

アライちゃん「にんげんしゃんはひどいのら。アライしゃんがいやっていってもやめてくれなかったのら」

風呂から上がり、体を乾かし終わったアライちゃんは不機嫌そうに言った。

男「ごめんねえ。ところでアライちゃんの好きな食べ物は何かな?」

アライちゃん「アライしゃんはくるみがしゅきなのらあ。よくままがからをわってたべしゃしぇてくれたのら」

クルミか…。今ウチには無いが、アーモンドとピーナッツなら買い置きがあったな。買いに行くのも面倒だからそれでいいか。
台所の戸棚からナッツ類の袋を取ってきて皿に出してやり、

男「クルミじゃないけど、これもおいしいから食べてみて」

アライちゃん「ええー。きたいしてしょんしたのらあ。よういできないならしゃいしょからきかないでほしいのらぁ」

男「まあ騙されたと思って」

アライちゃん「くるみよりちいしゃいし、なんかおいしくなさしょうなのら。でもおなかぺこぺこだし、しかたないのらあ」

アライちゃんは文句を垂れながらナッツを鷲掴みにして口に放り込み、ボリボリクチャクチャと音を立てながら食べた。
しかしおいしい事に気が付いたのか、そのうち夢中になって両手を使ってむさぼり食べ始めた。

アライちゃん「おいしいのらあ、ちょっぴりしょっぱくて、こくがあるのがやみつきになるのらあ。これなんてたべものなのら?」

男「アーモンドとピーナッツっていう食べ物だよ」

アライちゃん「あーもんど…ぴいなっつ…おぼえたのら。しゃっきのおふろといいにんげんしゃんばっかりいいおもいしてるのらぁ」

男「タダで手に入る訳じゃないけどね。欲しい物を手に入れる為にしたく無い事をしたり、人間も苦労してるんだよ」

アライちゃん「にんげんしゃんのはなしはよくわからないのら。ほしいものがあったらしゃがして、みつけて

じぶんのものにしてしまえばいいのらあ」

男「アライちゃんらしいね」

苦笑いしている男をよそにアライちゃんはナッツを食べ続けた。

―――――――――――――――

アライちゃん「げぷぅ。もうおなかいっぱいなのら、よはまんじょくなのらぁ」

男「アライちゃん、面白い言葉を知ってるね。ママに教えてもらったの?」

アライちゃん「しょうなのら。よくままとねぇねとおうしゃまごっこしてあしょんでたのら」

ねぇね?姉の事か?

男「アライちゃんはねぇねが何人いるの?」

アライちゃん「いち、にー、しゃん、しー……、ごにんいるのら。アライしゃんはいちばんしたなのらぁ」

そんなに子供がいたらそりゃ食べ物も無くなるわ。ほかの姉妹も今頃捨てられているかもな。

アライちゃん「でもでも、アライしゃんはなかなかおうしゃまのやくをやらしぇてもらえないのら。ままとねぇねに

おまえにはまだはやいのら、っていわれるのらぁ。だからアライしゃんはおひめしゃまのやくをするのら!

かわいいかわいいアライしゃんにはしょっちのほうがにあっているのらっ♪」

男「お姫様より王様の方がなんでも命令できて楽しくない?」

アライちゃん「アライしゃんはかわいいから、めいれいなんかしなくてもまわりがかってにいうことをきいてくれるのらー♪

しょうらいはやまのおひめしゃまになるのらあ」

お姫様になれるかは美人であるかどうかじゃなくて生まれで決まるんだけどな。アライちゃんを迎えに来る王子さまでもいれば別だが…。

しかし最初に会って話した時はわりと素直そうなアライちゃんだと思っていたが、こうしてよく話を聞くと
子供ながらアライさん特有の偉そうな態度や自己評価の高さがうかがえるな。

アライちゃん「ふぁ~あ。おなかいっぱいになったらなんだかねむくなってきたのらぁ」

男「そう。箱の中に毛布を敷いてあげるから、今晩はここで寝てね」

アライちゃん「わかったのら。ふかふかであったかくてきもちいいのらー。いいゆめみられしょうなのら♪」

男「おやすみ、アライちゃん」

―――――――――――――――

翌朝、疲れが溜まっていたのか起きた時には九時を大きく回っていた。アライちゃんの様子を見ようと洋室のドアをそっと開けると
まだ寝ているので、起こさないように身支度を整えるとホームセンターへ向かった。

ホームセンターに着くと、目当ての水槽はすぐに見つかった。値段も安くて丈夫そうで申し分ない。
他にも何かアライちゃんをいたぶるのに使えそうな物でも探してみるか…。

いくつか面白そうな物があったのでカゴに入れて清算を済ませた後、チェーン店で牛丼を食べてから帰った。

自宅に戻った男はさっそく浴室で水槽に水を張る。できればここでアライちゃん虐待をしたいところだが、叫び声が漏れても困るので
水槽を洋室に運んだ。

アライちゃん「にんげんしゃん、どこいってたのら?しょろしょろままにあいにいきたいのら」

男「そうだね。その前に何か食べようか。そこから出てきてくれる?」

アライちゃんがモソモソと罠から出てきたのを見計らい、男はアライちゃんの背中を掴んで水槽へと突っ込む。
完全に不意をつかれたアライちゃんは声を上げる事すらできなかった。最初はちょっとだけ水につける程度にして水槽から出してやる。

アライちゃん「ケホッ…、なにしゅるのらあ!つめたいのら!」

冬が近づき、水道水の温度は大分下がっているので当然だ。アライちゃんは歯をカチカチ鳴らしブルブル震えながら言った。


続く

アライちゃん「しゃ、しゃむいのら……。にんげんしゃん、またおふろにはいりたいのらあ」

男「その必要はないよ」

男は再びアライちゃんを水槽に突っ込んだ。

アライちゃん「ガボッ。ヤ゛メ゛ル゛ノ゛ラ゛ア゛ア゛ア゛……」

アライちゃんは水中で泡を吐きながら口をパクパクさせて叫んでいる。
10秒ほど後、アライちゃんの頭を押さえつけていた手をゆるめた。

アライちゃん「プハッ。ハアーハァー………。やめるのらあ!アライしゃんはくるしいのら!」

男「アライちゃん。俺とちょっと遊ぼう」

アライちゃん「おことわりなのら!アライしゃんはあしょびたくなんかないのら、おうちにかえりたいのらぁ!」

男「……………」

男は何も言わずにまたアライちゃんの頭を押さえつけ、今度は20秒くらい水につけた。

アライちゃん「ゲホォッ。ゲボッゲーッ……。くるちぃ…のら…オェッ」

男「じゃあアライちゃんが水の中で一分以上息を止める事が出来たらやめてあげるよ」

アライちゃん「なんでしょんなことしないといけないのら!もうにんげんしゃんのいうことなんてきいてあげないのらぁ!

べーーっなのらあ!」

アライちゃんは舌を出し、目をツリ上げて言った。

男「ふーん、そういう事言うんだ?」

アライちゃんのプクーッと膨らんだほっぺたを強くねじってつねり、上に持ち上げた。

アライちゃん「いちゃいいちゃいいちゃいのりゃあああ!!」

男「アライちゃんは言う事をきく以外ないんだよねえ。それでやるの?やらないの?」

アライちゃん「やりゅ!やりゅから!はにゃしてにゃのりゃあ!」

手を離すとアライちゃんは床に倒れこみ、ウエッ、ウエッと泣いた。

男「アライちゃん、泣いてる場合じゃないよ。さっきも言ったけど一分間息を止めてもらうよ。

なーに、アライちゃんなら簡単に出来るよ」

アライちゃん「いっぷんってどのくらいなのらぁ…?」

男「六十びょ…って言ってもわからないか。じゃあ10秒ごとに水槽の壁を叩くから、その音が六回聞こえたら

水面から顔を出していいよ。数をかぞえるくらいは出来るよね?」

アライちゃん「そのくらいできるのら、アライしゃんをばかにしゅるななのらぁ!」

男「頼もしいね。それじゃスタートね」

アライちゃん「ちょっ、まだこころのよういができてないのらぁぁぁ」

男は叫ぶアライちゃんを水槽へと突っ込んだ。アライちゃんは目を閉じて必死で息を止めて我慢している。
壁に掛かっている時計を見ながら10秒ごとに水槽の側面を叩いてやると、アライちゃんは指を折りながら数えた。

3回、4回……。5回目を叩こうとした時、アライちゃんは水面から頭を出したので水槽から出してやった。

アライちゃん「ゼエーッ、ハアハア……。にんげんしゃんがいきなりいれるから…だめだったのら…。

アライしゃんのしぇいじゃないのら……」

男「へえ、人のせいにするの。じゃあもう一回やって失敗したら罰を受けてもらおうかな」

アライちゃん「しょんなのきいてないのら、おかしいのら!だいたい、ばつってなにをしゅるきなのらっ」

男「次で成功すればいいだけの話だよ。今度はアライちゃんの好きなタイミングでどうぞ」

男はアライちゃんをゆっくりと水槽に入れ、アライちゃんが合図したら手を離すよ、と伝えた。

アライちゃん「いまなのら!」

アライちゃんはほっぺたを膨らませて水に潜った。30秒…40秒…とここまでは順調だ。そして50秒が過ぎ、
これはいけるかと思ったが55秒くらいで頭を出してしまった。

前に駆除業者の処分場で窒息死させられたアライちゃんは二分くらいは耐えていた記憶がある。
三分ほどで意識は失っていた気がするが…。個体差を考えても一分なら余裕があるはず。
なのにこのアライちゃんが我慢できないのは単に苦しい事からすぐ逃げる性格をしているからだろう。

アライちゃん「ハアーハーハー……まただめ…だったのらぁ……ばついやなのらあ…やめてなのらぁ……」

男「結局さっきと余り変わらないねえ。それじゃあ罰ゲームね」

男はホームセンターの買い物袋の中から釣り針を出した。余り大きくなく、ポピュラーな形の物だ。

アライちゃん「しょれはなんなのら…?アライしゃんになにしゅるきなのらぁ?」

男「これはこうして使うんだよ」

男はアライちゃんの動物の耳を掴むと、耳の根元あたりに釣り針を刺した。プチュッと食い込み、貫通した。

アライちゃん「!!いたいのらあああ!」

アライちゃんはジタバタしながら耳に刺さった針を取ろうとするが、釣り針には返しが付いているのでなかなか抜けず、
さらに痛みが増すので取る事をあきらめた。

アライちゃん「ひいーーっ、ひいーー。にんげんしゃんっ、これとってなのらあ……」

男「本当は口に使う物なんだけど、最初だから耳で勘弁してあげるよ。それじゃあもう一回いこうか」

アライちゃん「えっ。もうむりなのらあ……できないのらぁ」

男「大丈夫大丈夫、今度は手伝ってあげるから」

アライちゃん「てつだってもらってもむりなのら!いやなのらあああ」

男はアライちゃんを掴み、水に沈めた。アライちゃんはガボガボともがき苦しんでいるがそんな事はおかまいなしに
頭を押さえつけ時間を計る。やがて一分が過ぎ、さらに30秒経ってから水から出してやった。

アライちゃん「ゲボッゲエーッ……ハアハァー……オエッ……」

アライちゃんは虚ろな目をして咳き込んでいるが、命に別状はない様だ。

男「やれば出来るじゃない、アライちゃん。目標より大幅に息を止められるのに何で最初からやらないの?そうしたら余計に

苦しまずに済んだのに」

アライちゃん「にんげんしゃんがむりやりにしただけなのら!アライしゃんはしたくないのらあ!

なんでしたくないことをしないといけないのら!」

男「もうしたくないとか言ってる状況じゃないんだよアライちゃん。そんな事もわからないの?」

アライちゃん「もういやなのらあ!おうちにかえりたいのらああ!ままにあいたのらあああ!うええええぇぇぇぇ………」

男「………わかったよ、アライちゃん。一分耐えたからもうやめてあげるよ。針も取ってあげるからじっとしてて」

アライちゃん「ふえええええ……。ふえ?」

男はペンチを使って釣り針を切り、耳から抜いた。そして消毒液をぬり、絆創膏を貼ってやった。

男「体もこんなに冷たくなっちゃったね。お風呂に入って温まろうか」

アライちゃんを浴室に連れていき、お湯を張ったタライに入れてやった。

アライちゃん「……にんげんしゃん、どうしてあんなことしたのら?アライしゃんはとってもこわくてきじゅついたのら」

今まで黙っていたアライちゃんがオドオドしながら言った。

男「アライちゃんが甘い事ばかり言うから腹が立っちゃって。俺はただアライちゃんに強くなってもらいたいだけだったんだよ。

外で生きていけるか心配で…でも俺が間違ってたよ……ごめん、アライちゃん」

アライちゃん「………きもちはわかったのら。……アライしゃんはでっかいこころのもちぬしだからゆるしてやるのらあ。

アライしゃんはまちがったことないけど、にんげんしゃんならまちがってもしかたないのらあ」

男「ありがとう、アライちゃん。アライちゃんは将来必ず良い山の王様になれるよ」

アライちゃん「だーかーらー、アライしゃんはおひめしゃまになるのら!こんなかわいいおうしゃまなんているわけないのら♪

………でもアライしゃん、あまいこといったおぼえなんてないのら。もしかしてにんげんしゃんのかんちがいなのら?

もーにんげんしゃんってばおばかしゃんなのらあ」

男「アライちゃんのそういう単純な所は嫌いじゃないよ。単純というかお馬鹿さんに近いけど」

アライちゃん「のらっ?」

男「それにお姫様は無理でも虐待サーの姫ならなれるんじゃないかな」

アライちゃん「ぎゃくたいしゃー…?にんげんしゃん、しゃっきからなにをいってるのら?」


続く

男「アライちゃんをいじめるのが好きな人達の集まりの事だよ。実際にあるのかは分からないけどね。

そこでならアライちゃんはチヤホヤされると思うよ」

アライちゃん「しょんなことをしゅるにんげんしゃんがいるのら?アライしゃんをいじめるなんてゆるしぇないのら!

やっつけてやるのらぁ!」

男「アライちゃん、体は温まった?」

アライちゃん「もうぽかぽかなのらー。……にんげんしゃん、しゃっきへんなこといってなかったのら?

アライしゃんがおばかしゃんとか、おひめしゃまになれないとか……アライしゃんのきのしぇいなのら?」

男「言ったよ。アライちゃんは馬鹿で高貴な生まれでもなんでもないからお姫様にはなれないってね。

もう体が温まったならさっきの続きをしようか」

アライちゃん「いったいなにをいってるのら…にんげんしゃん、どうしちゃったのら……?」

男はアライちゃんを無理やりタライから出して水が垂れないようにタオルでくるみ、洋室へ運んだ。

アライちゃん「にんげんしゃん、もうらんぼうはやめるのらあ!」

男「今までのは準備運動みたいなものだよ。息を止めるくらいで終わると思ったの?」

アライちゃん「しゃっきあやまったのはうしょだったのら!?」

男「そうだよ。アライちゃんが泣いてうるさかったから、ちょっと優しくしただけだよ。

そしたらコロッと騙されちゃって……アライちゃんはかわいいねえ」

アライちゃん「アライしゃんをもてあしょぶなんてゆるしぇないのら!」

お母さんって単語は知らなかったクセに変な言葉は知ってるんだな。どうせ母親がろくでもない言葉ばかり教えたんだろう。

男はアライちゃんを掴み、作業台に載せた。

男「アライちゃん、さっきいじめる奴はやっつけるとか許せないとかって言ってたけど…具体的にどうするのさ」

アライちゃん「しょれは……アライしゃんのつめでぎったんぎったんのばったんばったんにしてやるのらあ!」

男「じゃあやってみてよ」

アライしゃん「にんげんしゃん、しょこをうごくななのらあ!」

作業台は男の腰くらいの高さだが、体の小さいアライちゃんからすれば結構な高さだ。
立ち上がる事すら出来ないアライちゃんが落ちれば、かなりの衝撃を受けるだろう。
アライちゃんもそれに気付いてか、なかなか降りられずにいた。

男「アライちゃん、早くしてよ。怖くて降りられないの?」

アライちゃん「うるしゃいのら!いましょっちにいくのらあ!」

結局、アライちゃんはブルブル震えるだけで下りる事は無かった。男はその様子を見るのにも飽きたので、
買い物袋から粘着スプレーを取り出し、アライちゃんの顔にプシューと吹きかけた。

アライちゃん「キャッ!?めがいたいのらあああ!なんでかおがべたべたなのらああ!?」

アライちゃんは仰向けに転がり、両手で顔をペタペタと触っている。目が見えないのにゴロゴロ転がって動きまわるから
やがて台から落ちてしまった。

アライちゃん「ぎゃんっ。い…いたいのら…いきが…できないのら……」

アライちゃんは腹とひざを打った様で、顔とひざを交互に押さえる動きをして苦しんでいる。
その様子を少し眺めた後、男は再びアライちゃんを水槽に突っ込んだ。

アライちゃん「!?つめたいのらあ!ガボッ…」

男「そこで顔でも洗ってるといいよアライちゃん。洗うのは得意なんでしょ」

そう言うと買い物袋からさっき使った物よりもちょっと大きい釣り針とテグスを出した。
テグスを1.5メートル位の長さに切り、釣り針に結ぶと水槽の中でもがいているアライちゃんに向かって針を垂らした。

アライちゃんの顔のベタベタが取れ、目が見える様になった頃に釣り針がアライちゃんの鼻の穴にヒットした。
男がテグスを引っ張り上げると、釣り針の先が鼻を突き破りアライちゃんは釣り上げられた。

アライちゃん「ぎゃあああああ!!いだっ、だっ、だっいだいのらああ!!」

男「きったない顔だねえ」

テレビ番組の罰ゲームに出てくる鼻フックをかけた様にアライちゃんの鼻が上に持ち上がり、
ただでさえ不細工な顔がより醜悪になっている。

アライちゃん「いだいいだいのらあ!おりょしてええええ……」

男がテグスを持つ手をゆるめてやると、アライちゃんは無様に床に叩きつけられた。

アライちゃん「へぶっ。……アライしゃんのかわいいかおをきじゅつけるなんてゆるしゃないのだあ!」

今度はテグスを上では無く横方向に軽く引っ張ってやる。最初アライちゃんは抵抗していたが、男が力を込めると
アライちゃんはあっけなく床を引き摺られた。

アライちゃん「フゴッ、フガガガいちゃいいちゃいのらあああっ……」

男はそのままアライちゃんを引き摺って作業台の周りを三周して遊んだ。

男「飽きたから針を取ってあげるよ」

アライちゃんの頭を掴み、もう片手で釣り針を思い切り引っ張ると、メリメリとアライちゃんの鼻の穴が破れて針が取れた。

アライちゃん「あぎゃああああ!!はにゃが、はにゃがあああいだいのらあああ!!」

両手で顔を押さえて転げまわっているアライちゃんを作業台に載せ、仰向けに手足を拘束する。
この間大学生の家で見た仕組みをそのまま使わせてもらった物だ。

男「あーあ、ひどい顔。今鼻をくっつけてあげる」

ティッシュで血をふき取り、さっき買ったゲル状の強力接着剤を鼻に塗りたくり、接着剤に触れない様にして押さえつけると
数分で傷口は固まった。

アライちゃん「ひいいっ、しみりゅのらああああ」

男「ついでに鼻の穴も塞いでおこうか」

残った接着剤を鼻の穴に流し込み、小さく切ったガムテープを貼って漏れて出てこない様にしてやる。

やがてアライちゃんは口を開けて息をしだしたので、残っている釣り針を咬みつかれない様に注意しながら
上唇に引っ掛けて刺してやった。

アライちゃん「いちゃいのりゃああ……もうやめちぇにゃにょりゃあ……」

声もか細くなってきた様だからもうそろそろ強めに痛めつけて弱らせて終わりにしてやるか、と思い買い物袋から
ハンダごてを出してコンセントに繋ぐ。

アライちゃん「いまにままがたしゅけにきちぇくれりゅのりゃ……しょしたりゃにんげんしゃんなんて

こりょりとやっちゅけちぇくれりゅのら……」

この期に及んで母親が助けに来てくれると思っているらしい。アライちゃんは母親に見捨てられたんだよ、と
伝えたところでどうせ信じる訳が無いから、希望を持たせたまま死なせてやるのもいいか。

ハンダごてが熱せられたみたいなので、手始めにアライちゃんのほっぺたに押し付けた。ジュッと音がし、

アライちゃん「あちゅいいいいのりゃあああ!!ひいいいいいいい」

アライちゃんは顔をブンブンと振り回し嫌がった。こての先っぽが目に刺さらないように顔を焦がして遊んでいると、
恐怖が頂点に達した様でついに尿と糞を漏らした。

男「まーたやっちゃったのアライちゃん。どうしようもない糞漏らしだね」

アライちゃんの拘束を外し、糞尿をふき取ると今度はうつ伏せにして台に拘束する。
糞を漏らした穴でも焼いてやるか。スカート状になっている毛皮をめくると、タイツの様なもので覆われた尻が出た。

アライちゃん「ひゃっ、おしりしゃわりゅのやめちぇにゃにょりゃ!くしゅぐっちゃいのりゃあ……」

顔を赤らめてモジモジしてるのが気持ち悪い。毛皮で覆われて尻の穴の正確な位置が判らないので、尻の割れ目に沿って
ハンダごての先っぽを押し付ける。

アライちゃん「あじゅっ!?しょこはやめちぇにゃにょりゃあ!」

そのうちズブリ、と刺さるポイントがあったのでこてを強く握り、ねじ込んだ。

アライちゃん「おんぎゃああああああああ!!!」

今日聞いた一番大きい絶叫だった。


続く

ご期待に応えられるか…ですが何点か
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http://i.imgur.com/AR39JYP.jpg
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http://i.imgur.com/tzvpuIW.jpg

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先日の分は修正の上、こちらに貼らせていただきます

アライちゃん「あぎゃあああ!!おしりが…おしりがああぁぁ!」

アライちゃんは尻を大きく左右に振りハンダごてから逃れようとするが、男は上からアライちゃんの腰を
押さえつけて肛門にハンダごてをさらに挿し込んだ。

そのうち肉と糞の焼ける臭いがし(糞の焼ける臭いは初めて嗅いだが)、気分が悪くなってきたので
ハンダごての柄から手を離す。

アライちゃん「ふんーーっ、ふんーーーっっ」

アライちゃんは目を閉じて歯を食いしばりながら踏んばって、ハンダごてを肛門から抜こうとした。
しかしこての先っぽは大分肛門に突き刺さっているので、非力なアライちゃんが踏んばった所で抜ける事は無かった。

アライちゃん「おしり…おしりが…おにゃかにょにゃかがいぢゃいにょりゃあ……ぐりゅじい…にょりゃあ…」

どうやら内臓にも相当なダメージが入っているらしい。男はハンダごてをグポッと引き抜くと、

アライちゃん「あ゛あ゛んっ」

男「臭っ。ほら、アライちゃんも嗅いでみなよ」

こての先っぽをアライちゃんの鼻先に向けたが、さっき鼻の穴を接着剤で塞いでしまった事を思い出し
代わりに気を失いかけて半開きになっている口の中へと突っ込んだ。

アライちゃん「ビャッッ!?ぺっ、ぺーーーっっ!!」

アライちゃんの顔がビクンッと跳ね上がり、口からハンダごてを吐き出そうと舌を出す。
その舌にハンダごてを押し付けるとジュッ、ジュッと白煙と悲鳴が上がり、顔を振って嫌がるさまが
男のツボに入って面白かったのでしばらく舌を焼いた。

アライちゃんの頭の周りが唾だらけになった頃、十分にハンダごてを堪能したのでコンセントから抜いて
付属の台に立てた後、アライちゃんの拘束を外して仰向けに寝かせる。

体が自由になってもアライちゃんはぐったりとしていて、逃げ出そうとする気配は無い。
アライちゃんはヒリヒリと痛んでるであろう舌を出し、ハアハアと息を荒げているだけだ。

男「アライちゃん、今はお尻と舌、どっちが痛い?」

アライちゃん「………………」

返事をしないのでアライちゃんの頬を強く平手で叩いたが、バチンと音がしただけで反応が無い。

舌を焼かれて喋られないのか喋る気力が無いのか分からないが、アライちゃんは目の焦点も合わさずボーッと
しているだけなのでそろそろトドメといこう。

いつもなら首を絞めて殺すところだが、今シーズン最後だからな。シメにあれを見ておきたいと思い、
工具箱から五寸釘と金槌を取り出した。

いつか使おうと思って以前に買っておいたが、結局使う機会が無かった大きい釘の先をアライちゃんの額にあてがい、
金槌を振り下ろす。

ガリッと硬いものを貫通した感触があり、数回叩くと五寸釘の三分の一ほどが突き刺さった。
大学生みたいにドリルで穴を開けるのも面白そうだが、自分のこの手で打ち込んでやるのもオツなもんだな。

アライちゃん「~~~~~~~~~っっっ!!」

数秒後、あんなにぐったりしていたアライちゃんの手足が嘘の様に大きく振り回される。時折腰を上げて足を
バタバタさせたり、そのまま尻尾をグルングルン回したり……動画などで何回も見たはずなのに、毎回笑える。

ずっと眺めていたいが、二十秒くらい経つとアライちゃんは動かなくなった。今回はか弱いアライちゃんでもかなり虐待を
楽しめたので満足だったな。アライちゃんの死体なら明日の燃えるゴミの日でいいか…と新聞紙にくるんでおく。

また山に入れる季節になるまで仕事に精を出すか、と後片付けをしながら前向きに考える事にした。

━━━━━━━━━━━━━━━

年が明けて二月に差しかかろうとした時、おじさんから親睦を兼ねて大学生も交えて食事でもどうか、と話が来た。
仕事がそれほど忙しくない時期なので、夜ならいつでも大丈夫ですよ、と返事をすると明後日の20時くらいに
彼らと会う約束となった。

当日、仕事が少し長引いてしまったが時間までには間に合いそうだ。指定された店の近くまで来た時、おじさんに
もうすぐ着きますと連絡すると、私はもう店にいるので受付で私の名前を出して下さいと返事が来た。

着いた店は高そうな所で、受付でおじさんの名前を告げると個室に案内された。
戸を開けると大学生もすでに来ており、二人と挨拶を交わす。

おじさん「お仕事お疲れ様です。外は寒かったでしょう。飲み物は何にしますか?」

男「じゃあ…とりあえずビールでお願いします」

大学生「カトウさん、なんかオジサンくさいですねー」

男「まあ…若い人からしたらオジサンに見える年だしなあ。スギタ君も元気そうで」

おじさんは店員を呼ぶと飲み物と食事の注文を済ませた。少し経つと、先に飲み物が来たので乾杯する事にした。

おじさん「年が明けてもう一ヶ月近く経ってしまいましたが、今年も皆健康に過ごせる様にという事で…乾杯」

男・大学生「乾杯」

やはり仕事終わりの酒はうまいな。しばらく味気ない食事ばかりだったからここの料理にも期待しよう。

やがて料理が来て食べながら適当に喋っていたが、この三人に共通する事はアライさんしかないので
自然と会話の内容はアライさんに移っていった。飲食店でする様な話ではないが…。

大学生「━━━━━とまあ先月は二匹、今月は一匹でしたね。去年と余り変わらない感じです」

大学生の家の畑で捕まえられたアライさんの数だ。この時期でも食べ物を求めて山からやって来るらしい。
彼の畑だけでそれならあの田園地帯全体ではどの位の数になるのか…。考えただけで頭が痛くなってくる。

大学生「カトウさんは冬の間はお休みしてるんですか?」

男「そうだねえ。流石に雪山に入ってまでアライさんを捕まえる気は無いかな。

そもそもアライさんは冬はどうしてるんです?冬眠とか?」

おじさん「ここより更に北に生息しているアライさんは冬眠に近い事をして行動を制限する事も

ある様ですが…この地域のアライさんは冬でも活動しているみたいですよ。現に畑で捕まえられてますしね」

男「ハアー、せめて冬の間だけでも寝てればいいのに…。モギさんは冬でも狩りを?」

おじさん「私も今の時期はしませんねえ。せいぜい家族サービスにでも努めますよ」

直接話せるいい機会だからおじさんに尋ねてみた。

男「春になったらまた一緒にアライさんを捕まえに行きませんか?良かったらですが…」

おじさん「そうしたいのはやまやまなんですが、生憎と春にはやらないとならない事がありまして。

夏以降でしたら予定が組めると思いますが」

男「そうですか…ちなみにどういったご用事で?」

酒が入っていたせいか、つい余計な事を言ってしまった。すぐに立ち入った事を訊いてすみません、と謝ると

おじさん「謝らなくても大丈夫ですよ。実は春先に私が管理する山に他の地域からアライさんが移動して来ていないか

調べる事にしているんです。先ほども話に出ましたがアライさんは冬でも活動しますから、人間が立ち入らない

冬の間に移動してきて、定着してしまう事もあるんですよ」

大学生「春のうちに探し出して駆除してしまえば繁殖が抑え易くなる、と…」

おじさん「そうです。夏以降もよそから入り込んでくるので定期的に見回りと駆除はしていますが、

今のところこれで繁殖を防げてはいます。しかし野生のアライさんの繁殖期についてはまだ分からない事が多いので、

これからどうなっていくかは見当もつきません」

おじさんも苦労してるんだな、と思いながらも他人事みたいで悪いが興味がわいたので
駆除を手伝わせてもらえないか、と申し出た。

おじさん「それは悪いですよ。私事に付き合わせる訳にはいきません」

男「そこをなんとかお願いします」

おじさんは少し考え込んでいたが、そこまで言ってくれるならぜひ手伝って欲しいと言った。


続く

>>214

すごい…頭の中のイメージ通りでびっくりしました、どうもありがとうございます

台に乗ってるアライちゃんは正直かわいいと思ってしまいましたww

修正版、半田ごてです

http://i.imgur.com/2akgD4S.jpg
http://i.imgur.com/iKrRChV.jpg
http://i.imgur.com/yxU9JCj.jpg

こんな感じでじょうか

>>222

しゅごい…自分で書いといてなんですがかわいそうすぎて泣いた

素敵なMMDをありがとうございました!!

その後、アライさんにどんな事をしてみたいかだとか、今年する予定の事といった話題で盛り上がり
やがて食事会はお開きとなった。

店の外で大学生と待っていると、支払いを済ませたおじさんが出てきた。

大学生「じゃあ自分はこれで帰ります。カトウさん、今度自分とも何かしましょう。マサおじさん、ご馳走様でした」

おじさんがまた今度、おじいさんにもよろしく、と返事をすると大学生は立ち去った。
彼を見送った後、男はせめて自分の食べた分だけは支払おうとしたが、断られてしまった。

おじさん「誘ったのは私ですから、お気持ちだけ受け取っておきます。ではアライさんの駆除を

手伝って頂ける件については後日こちらから改めて連絡するという形でいいですか?」

男「はい。急にお願いをしてすみません」

おじさん「いえ、助かりますよ。去年は少し大変でしたので。…それでは私もこれで失礼します」

男「今日はご馳走様でした」

おじさんと別れ、男は家路についた。

―――――――――――――――

春と呼ぶにはまだ間があるとある休日、男は家で暇を持て余していた。
久しぶりにアライさん虐待スレッドでも見るか、とパソコンの電源を入れる。

スレッドを開き、適当にスクロールさせて先月の始めあたりの書き込みから読んでみる。

この時期は男と同じ様にアライさん虐待のお預けをくらっている人が多くいて、アライさんに○○してー、だとか
早くアライちゃんをひねり潰したい、といった不満が多く書き込まれている。どうやら毎年恒例の流れらしい。

誰かがアライさんに○○してくれ!とか書き込むと、もの好きな虐待ファンが実際にやって動画をアップするといった事もあり、
虐待スレにはギリギリ実行できそうな遊びが書き込まれる事がしょっちゅうある。

その為、過去に色々な遊びが流行った事があった。モグラのおもちゃをアライちゃんと取り替えたアライちゃん叩きや、
アライさんを的にしたダーツなんかは良く動画が作られてこのスレを賑わせていた。

スレを読んでいると、最近は「幸運のアライちゃん」という遊びが流行っているらしい。

それは呪いのワラ人形よろしく、人形に見立てた生きたアライちゃんを釘で木に打ちつけ、最後に胸に太い釘を突き立てた後
アライちゃんが死ぬ前に願い事を大声で三回叫ぶと、願い事が叶うといった趣味の悪いおまじないの様な遊びだ。

男はまた変な事が流行っているなあ、と思いながらも絵面的には面白そうなので動画を見てみる事にした。

動画サイトで幸運のアライちゃんで検索するといくつか動画が出てきたので、適当なものを再生させた。

動画が始まると、目出し帽を被ってサングラスを掛けた大柄な男が映し出された。場所はどこかの森のようである。
カメラが動いて一本の木の根元に向くと、そこには頭から血を流している成体のアライさんが木にもたれかかって倒れていた。
ピクリともせず、呼吸している様子も無いのでおそらく死んでいる。

カメラが上に向くと、木の枝には体を縄でぐるぐる巻かれてぶら下げられているアライちゃんが二匹いた。
必要以上に縄が巻きつけられていて、まるでミノムシの様になっている。

さっきの死体はこのアライちゃん達の母親で、邪魔だから最初に殺されたんだろう。

アライちゃんA「しゃっきにんげんしゃんにぼうでぶたれてからおかーしゃんがねてるのだ?」

アライちゃんB「どうしてしゃっきからだんまりなのだ?おかーしゃん!」

アライちゃんA「おかーしゃん、はやくアライしゃんをたすけてなのだ!」

アライちゃん達は母親がもう死んでいると理解していないのか、死体に向かって叫んでいる。

アライちゃんA「このにんげんしゃん…いやニンゲンはわるものなのだ!アライしゃんをうごけなくして

なにかいじわるをするつもりなのだあ!」

アライちゃんB「おかーしゃんがたすけてくれれば、おやこのちからでわるいニンゲンをせいばいできるのだあ。

おねがいだからはやくめをしゃましてなのだ!」

このアライちゃん達のどっちが木に打たれるんだ?と思っていると、目出し帽男は地面に転がっていた袋の口を開けて手を突っ込み
中から別のアライちゃんを取り出した。

アライちゃんC「ここどこなのだ?アライしゃんをもとのばしょにかえすのだっ」

アライちゃんCは首根っこを掴まれ、手足をバタバタさせながら訴えた。

アライちゃんA「!?…おいおまえ、どこのだれだかしらないけどアライしゃんたちをたすけるのだ!」

アライちゃんB「それかアライしゃんたちのおかーしゃんをおこすのだぁ!」

アライちゃんC「おまえたちなんかたすけてるばあいじゃないのだ!アライしゃんはにげるのだあ!」

アライちゃんA「なんだと!?おまえはさいてーなのだ!アライしゃんのかざかみにもおけないくずなのだ!」

アライちゃんB「てきぜんとーぼーはこしぬけがやることなのだ!」

アライちゃんC「うるしゃいうるしゃいうるしゃーーいのだあ!!おまえらこそぐずでのろまだから

ニンゲンなんかにつかまるのだぁ!アライしゃんはこれからかれいにすたこらしゃっしゃなのだ!」

なにやらアライちゃん同士で罵り合いが始まった。アライちゃんA・Bは姉妹で、アライちゃんCはどこか別の場所で
捕まえられた赤の他人もとい、他アライちゃんらしい。

知らない者同士だと争いが起こる事がある、と以前捕まえたアライさんが言っていたが、こんなに簡単に起こるとは思わなかった。

アライちゃんCは歯をむき出しにして目出し帽男の手に噛み付こうとしたが、首をガッチリ押さえられているので
顔をまわす事さえ出来ない。その様子を見た目出し帽男は手を高く掲げると、アライちゃんCを地面に叩きつけた。

アライちゃんC「ぶべっっ」

アライちゃんCは不様に大の字になって倒れこんだ。そして目出し帽男は底の厚いゴツいブーツで
右足の脛を踏みつけ、ボキッと折ってしまった。

アライちゃんC「あぎゃっ?………いだいのだあああ!!あんよがまがってるのだああ!」

さらに目出し帽男は上着のポケットから5センチくらいの長さの釘を出すと、痛がってジタバタしているアライちゃんCの
両方の手の平に刺して貫通させた。

アライちゃんC「えぐっ、えぐっ……おててが…あんよがあ……」

アライちゃんCが泣いて苦しんでるのを見たアライちゃんA・Bの顔から血の気が引いていくのが判った。いまさら人間の暴力に
さらされている事に気がついたらしい。おそらく母親のアライさんは最初の一撃で苦しむ間も無く死んでしまったので、
母親の身に何が起こったのか判断できなかったのだろう。

アライちゃんA「ひいい…。おかーしゃん、はやくおきてなのだ!このままじゃアライしゃん、ニンゲンにらんぼーされるのだあ!」

アライちゃんB「あのやくたたずがいじめられてるあいだにあらいしゃんをたすけてなのだぁ!」

目出し帽男は小刻みに震えるだけになったアライちゃんCの首を掴んで持ち上げ、腰にぶら下げた道具袋から
金槌を取り出すと、アライちゃんCの手に刺さっている釘を木に打ちつけ始めた。

カッ、カッと釘が打ち付けられる度に木の枝は揺れ、ぶら下がっているアライちゃんA・Bもプラプラと揺れた。

アライちゃんA「おかーーしゃん!おかあしゃあああああんん!!」

アライちゃんB「ふにゅっ!ふにゅううううう!!」

アライちゃんAはひたすら母親に助けを求め、アライちゃんBは縄から抜け出そうと必死で体をよじらせるが
どちらも抵抗と言うには程遠い行為だった。

アライちゃんC「おててが…おててがやぶれちゃうのだぁ…」

木にはりつけにされたアライちゃんCの手は裂けそうになり、もうさっきまでの威勢のよさが無くなっている。
目出し帽男は五寸釘を手に取り、アライちゃんCの胸に当てると金槌を振って釘を突き立てた。
釘はアライちゃんCの肋骨を砕き、肺か心臓に刺さったのだろう。

アライちゃんC「ゲボオッ……カハァ…」

アライちゃんCは血を吐き、虫の息だ。そしてすかさず目出し帽男は叫んだ。

目出し帽男「アライさんが絶滅します様に!アライさんが絶滅します様に!!アライさんがっ!絶滅しますようにいぃぃ!!!」

やっている事とは裏腹に、願い事は案外まともで男は笑った。


続く

胸に五寸釘を突き立てられたアライちゃんCはすぐに動かなくなり、死んでしまった。
大声で叫び終わり、呼吸を落ち着かせた目出し帽男の顔が吊るされたアライちゃん達に向くと、

アライちゃんB「ひっ。ニンゲン、アライしゃんたちにもおなじことするきなのか?」

アライちゃんA「ニンゲン、もうへんなことはやめるのだ!こんなことしてなんになるのだ!?」

目出し帽男「一つ目のお願い完了っと。お願いはもう一個あるからお前らのどっちかに生贄になってもらうかな。

姉妹で仲良く話し合って決めてくれや」

アライちゃんA「!!…なんてことをいうのだ…そんなのきめられるわけないのだ!」

アライちゃんB「ニンゲン…いやにんげんしゃんっ、あやまるからゆるしてなのだぁ…?」

アライちゃんA「いもーとよ!こんなニンゲンにあやまることなんてないのだ。アライしゃんたちは

なーんにもわるいことしてないのだ。あやまるのはこいつのほうなのだ!」

アライちゃんB「でも…このにんげんしゃんはすごくこわいのだ…。このままじゃあのやくたたずとおなじまつろなのだ…」

アライちゃんA「おちつくのだ、いもーとよ。あのニンゲンはアライしゃんたちをけんかしゃせようとしているのだ。

しまいのなかをひきしゃこうとしているのだ。こんなときこそしまいでちからをあわせないといけないのだあ」

アライちゃんB「わ、わかったのだ…。でもおねーしゃん、いいかんがえはあるのだ?」

アライちゃんA「それは…い、いまからかんがえるのだ……」

アライちゃんB「うわあああああん!おねーしゃんもやくたたずなのだあ!!おねーしゃんはいつもそうなのだ!

きれーごとばっかりいってなにもしないのだぁ!」

アライちゃんA「なっ!?いもーとよ!それはききずてならないのだあ!いつもぐずぐずしてのろまなおまえの

めんどうをみてやってるのはだれだとおもってるのだあ!」

アライちゃんB「おねーしゃんのせわになったおぼえなんてないのだ!やっぱりにんげんしゃんにあやまって

ゆるしてもらうのだああ!!」

目出し帽男「全部聞こえてるんだよ、馬鹿か?…なんでもいいけどよ、早く決めないとどっちもやっちまうぞ」

アライちゃんB「にんげんしゃん、ごめんなしゃいなのだ!もうにどとにんげんしゃんのまえにでてこないから

アライしゃんたちをにがしてほしいのだ!」

目出し帽男「ダメだって言ったら?」

アライちゃんB「おねがいします!おねがいしますぅ!なのだ!!」

アライちゃんA「………………」

目出し帽男「やっぱりダメだな。早くどっちかに決めろや」

アライちゃんB「いやいやいやなのだあああ!!ゆるしてゆるしてなのだああ!!」

アライちゃんA「ニンゲン……ほんとうにみのがしてくれないのか…?」

目出し帽男「くどいなー。次同じ事言ったらもう後は無いからな。良く考えて喋れよ?」

アライちゃんA「…わかったのだ。ニンゲン、ひとつだけやくそくしてほしいのだ。アライしゃんがみがわりになるから、

いもーとはにがしてやってほしいのだ」

アライちゃんB「おねーしゃん!?なんで……」

アライちゃんA「いいのだ、ほんとーはわかってたのだ…アライしゃんがくちばっかりでなんにもできないのは…。

おおきくなるまでにがんばろーとおもってたけど……いまのアライしゃんにはこれしかできないのだ…」

アライちゃんB「おねーしゃん……しゃっきやくたたずっていってごめんなしゃいなのだ…」

男はこれは意外だと思った。今まで何匹かのアライさん達の利己的な面を見てきたので、いくら姉妹の為とはいえ
自分の身を犠牲にするはずが無い、と考えていたからだ。それは目出し帽男にとっても同じだった様で、

目出し帽男「ふーん。珍しい事もあるもんだな。同じ様な事したら必ず泣き喚いてケンカおっぱじめるのに…。

まあいいや、それならお前にしてやるよ」

目出し帽男は腰に下げていたナイフを鞘から抜くと、アライちゃんAを吊っている縄を切り始めた。
ブツリと音がして、アライちゃんAはポテッと地面に落ちた。

アライちゃんA「のだっ」

アライちゃんAは体をぐるぐる巻きにされているのでもちろん手足は動かせない。出来る事といえばゴロゴロ転がるくらいだ。

目出し帽男「覚悟は出来たか?」

アライちゃんA「アライしゃんにてをだすまえにいもーとをかいほーするのだあ!」

目出し帽男「何お前が命令してるんだよ。調子に乗ってんじゃねえぞ害獣。お前らと違って約束は守るから安心して逝けや」

アライちゃんB「………………」

男はいよいよか、と思っていると目出し帽男はずっと黙っていたアライちゃんBの方を向き、近寄った。

目出し帽男「おいお前、正直ホッとしただろ?」

アライちゃんB「な、なんのことなのだ…。そんなことおもうわけないのだ…」

アライちゃんBが横を向いて目を逸らすと、目出し帽男はアライちゃんBの左右のほっぺたを
片手の指で挟み込むように掴んで正面を向かせて

目出し帽男「本当の事を言えよ。言わないとお前にするぞ?」

アライちゃんB「ひい…。お…おもいまじだあ…。……おねーじゃん、ごめんなじゃいなのだあ…ひぐっ…ひっく……」

ポロポロと涙をこぼしながらアライちゃんBは白状した。

目出し帽男「聞いたか?お姉ちゃんも大変だなあ、こんな奴の為に身代わりになるなんて。今からでも遅くねえぞ、

考え直したらどうだ?」

アライちゃんA「ニンゲン、なんといおうとアライしゃんはまけないのだ。おねーしゃんがいもーとをまもるのはとうぜんなのだ」

アライちゃんB「おねえじゃあああんんん……」

目出し帽男「おうおう、カッコイイねえ。いつまでその覚悟が持つやら…。じゃあ今度こそお姉ちゃんに決まりだな。

少しマシなアライちゃんの方が生贄としてご利益がありそうだしな」

目出し帽男は屈みこんでアライちゃんAの縄を解くと、突然ナイフを右手の手首にゴリゴリと押し当て、切ってしまった。

アライちゃんA「きゃあああああ!?」

手首を切ってしまっては木に打ち付けられなくなるのでは、と男が思っている内に目出し帽男は手際よく左手首、
両足首と順番に切断していった。

アライちゃんA「あっ…あうう……」

アライちゃんAは先っぽの無い手足を血を撒き散らしながら振って呻く。

目出し帽男「せいぜい苦しんでくれや」

姉妹で喧嘩させるという目論見がうまくいかず、内心ムカついていたんだろう。男の勝手な想像だが…。

あまり放っておくと死んでしまうので、まだ意識がある内にアライちゃんAを仰向けに寝かせると五寸釘を二本取り出し
両肩のあたりにブスリと刺した後、グリグリとねじ込みながら肩に釘を貫通させた。

アライちゃんA「あぎゃっ。あぐぅ……」

そして乱暴に首を掴んで木の前に連れていき、アライちゃんCにしたのと同じ要領で木にはりつけにした。

アライちゃんA「フウーッ、フーーッ」

顔が真っ赤になり息も荒くなっているが、ここまで泣き喚かずよく耐えている。胴体が固定されていて、
先の無い手足がヨジヨジと動いている様はいかにも壊れた人形といった雰囲気が漂い、男は不気味さを感じた。

そして目出し帽男はアライちゃんAの胸に五寸釘を当て、金槌を振るった。

アライちゃんA「グエッ…エッ…キュウ~……」

目をつぶって舌を出してアライちゃんAは苦悶の表情を浮かべている。目出し帽男は息を吸い込むと、叫んだ。

目出し帽男「アライさんを根絶やしにできます様に!アライさんを根絶やしにできます様に!!

アライさんを!根絶やしに!してええええぇぇぇ!!!」

願い事がさっきと同じじゃないか。どんだけアライさんを滅ぼしたいんだよ。


続く

アライちゃんA「クエエェ…キューン……」

アライちゃんAは目を細めて苦しみ後は死を待つだけとなったが、妹に何か伝えようとか細い声で言った。

アライちゃんA「い…いもーと…アライしゃんのぶん…まで…がんばっていきる…のだ…やくそく……のだ……」

アライちゃんB「おねえじゃあああんん…わかったのだぁ……りっぱなアライしゃんになってみせるのだあ…」

その言葉を聞くとアライちゃんAは目を閉じ、首がガクッと揺れた。事切れたんだろう。

目出し帽男「害獣として立派なアライさんの間違いだろ。本当にまともなアライさんがいるなら見てみたいけどな。

まあいいやお前は約束通り逃がしてやるよ」

目出し帽男はナイフを使い、アライちゃんBの拘束を解いてやった。大分きつく縛られていたせいなのだろうか
縄が解かれてもアライちゃんBの動きはどことなくぎこちなかったが、特にケガなどは無い様に見えた。

男はアライちゃんBがそのままその場から去るのかと思ったが、何故か木の根元で死んでいる母親のそばへと移動した。

アライちゃんB「おかーしゃん、おかーしゃん、そろそろめをしゃますのだ。おねーしゃんのおかげで

あらいしゃんたちはじゆーになったのだ」

アライちゃんBはいまだに母親が寝ているだけと思っている様だ。アライちゃんCと姉の死に様を見てなお察する事が
出来ないとは…。目出し帽男もさぞあきれてる事だろう。

アライちゃんB「おかーしゃん、どうしておきないのだ?………もういーかげんにするのだ!

いくらおかーしゃんでもおこるのだ!」

アライちゃんBはいつまで経っても反応を示さない母親に対し怒りをあらわにし始める。

アライちゃんB「もとはといえばおかーしゃんがねてなければ……おかーしゃんがたすけてくれればおねーしゃんが

あんなめにあわなくてすんだのだ!おねーしゃんがうごかなくなったのはおかーしゃんのせいなのだ!

……きっとそうなのだ、アライしゃんはわるくないのだ!」

自分の身代わりになって姉が死んだ事を認めたくなかったんだろう。母親に責任をなすり付けるとは将来有望なアライちゃんだ。
そもそも目出し帽男がこの一家を悲惨な目に遭わせた張本人なのに、そこから目を背けているのが救えない。

アライちゃんBが恨み言を言い終わった後、何かに気づいてハッとした様な表情を見せてブツブツ呟き始めた。

アライちゃんB「おねーしゃんがうごかない…おかーしゃんがうごかない…おかーしゃんもうごかない…?

おねーしゃんとおかーしゃんはおなじなのだ…?」

そう言うとアライちゃんBの顔は青ざめていく。それとほぼ同時にアライちゃんBの体は目出し帽男によって持ち上げられた。

アライちゃんB「きゃあ!なにをするのだあ!?」

目出し帽男「残念だが時間切れだな」

アライちゃんB「っ!?……やくそくがちがうのだ!はなしてなのだぁ!」

目出し帽男「逃がす約束はしたが、また捕まえないとは言ってねえだろ」

アライちゃんB「そんなのしらないのだ!いやいやなのだ、にんげんしゃんはずるっこなのだあ!」

目出し帽男「うるっせえな。大体本当に逃げられると思ったのか?俺の願い事聞いてたよな?

アライさんを絶滅させたい人間がどうしてお前らを逃がすんだよ」

男は「まあ知ってた」と心の中で思った。アライさん虐待ファンの間では一度捕まえたアライさんやアライちゃんは
どんな形であれ必ず殺す、というのが鉄則なので目出し帽男がなんやかんや理由をつけてアライちゃんBを逃がすはずが無い、
というのは最初から分かっていた。

アライちゃんBの縄が解かれてからここまで4~5分だから、仮に全速力で逃げていたとしても四つん這いで
移動できる距離はたかが知れている。目出し帽男からすればちょっとした追いかけっこをする程度の事だ。

ともあれ目出し帽男に再び捕まってしまったアライちゃんBはこれから自分がどうなるのか想像でもしたのか
みるみる泣きそうな顔になり、すぐに大声で泣きだした。

アライちゃんB「うびゃああああああ!びゃああああああんんん!!…いやなのだあ…おねーしゃんとおかーしゃんと

おなじになるのはいやなのだあああぁぁぁ……アライじゃんはおおぎぐなりだいのだぁ……

おおぎぐなっで、がぞぐをづぐっでっ…ずっどずっどながよぐぐらずのだぁ……やぐぞぐっ!…やぐぞぐじだのだあぁ……」

汚い声でわめき散らし、涙と鼻水を流し真っ赤になった不細工な泣きっ面がズームアップされた所で動画が終わってしまった。
せっかくいいところだったのに…。

なぜ目出し帽男がここで動画を終わらせてしまったのかは分からないが、アライちゃんBが姉達と同じ様に木に打ちつけられたか
はたまた別の方法で殺されたかという事だけは確実だろう。

しかしこきたない泣き顔のどアップでシメるとは目出し帽男も人が悪いな。死に顔よりも印象に残ってしばらくの間思い出してしまいそうだ。

余韻に浸りつつ動画のコメント欄を眺めていたら、ちらほらと英語で書かれたコメントが目についた。
外国にもアライさん虐待ファンがいるというのは知っていたが、こうやって直接コメントを見たのは初めてだ。

「クール」「日本人ばかりアライさんで遊んでズルイぜ」「クレイジー」「アライさんは神からの贈り物」

「日本に移住したいが銃は使えるのか?」「oh.japanese hentai」「キモかわいい、特にアライちゃんが」

「アライさんを捕まえると金がもらえるらしいが、俺は金払ってでもハンティングしてみたいよ」「アライを讃えよ」

「他のアニマルガールと比べて汚すぎないかアライさん」「アライさんがよく言う『なのだ』ってなんだ?日本語はわからん」

よく分からないコメントもあったが、おおむね日本の虐待スレで言われている事と同じ様なものだな。
しかし批判的な感想が無いあたり、外国人から見ても不快に映っているらしいのが流石アライさんといったところか。

そんな調子で結局休日は他のアライさん虐待動画を漁っていたら終わってしまった。

―――――――――――――――

3月のとある休日、今日は以前約束したおじさんの山のアライさんの駆除を手伝う日だ。
山ならまだちらほら雪が残っているかもしれないが、今日いっぱいは天候も良く特に問題はなさそうだ。

早朝、待ち合わせ場所の以前おじさんと知り合った時に招待された作業場に車で行き、車を停めていると
音で気づいたのかおじさんが建物から出てきて出迎えてくれた。

男「おはようございます、今日はよろしくおねがいします」

おじさん「おはよう、カトウさん。手伝いに来てくれて本当に助かりますよ。駆除と言っても別に仕事って訳じゃないですから

気楽に考えて下さい。もちろん山に入る事に関しては用心しなければなりませんが」

男「わかりました」

おじさん「罠の設置などは事前に終わっているので、今日は罠の回収・アライさんがいたら即刻処分するといった

作業をするつもりです。何か聞きたい事などはありますか?」

男「いえ…今のところ特には」

おじさん「では不明な点があれば気づいた時に遠慮無くどうぞ。…何箇所か回らないとならないので、着いてすぐですみませんが

早速出発しましょう。トイレなどは大丈夫です?」

特に尿意は無かったが一応、ということで便所を借りる事にした。


続く

用を足し終わり外に戻ると、おじさんが作業場の壁際で煙草を吸って待っていた。

男「お待たせしました…タバコ、吸われるんですね」

おじさん「ええ。まあ禁煙に失敗したんですがね。今回はもった方ですよ」

ハハ、と笑いながらおじさんは地面に置いてあった水が張られている一斗缶に煙草を投げ捨てると

おじさん「山の中腹までは車が通れる道があるので車で移動します」

車に乗れ、という事だろう。促されるままにおじさんのワゴン車の助手席に乗ると、おじさんも運転席に乗り
シートベルトを締めた後、車を発進させた。

禁煙か。子供のころ俺の親父も禁煙したのはいいが、嫌な事があったり短気を起こすたびに換気扇の下でタバコを吸ってたな。
おじさんと親父が同じとは思わないが、何か腹が立つ事でもあったのかもしれない。

土と砂利の混じった細い道を進んでいると、

おじさん「ところで前に会ってからアライさんは捕まえましたか?」

男「いいえ…今年はまだ捕まえに行ってないです。シーズン初めなのでまた話を聞きたいと思いまして」

おじさん「ああ、なるほど。…さっきカトウさんがここに着いた時は急かすような言い方をしましたが、

実のところ罠の回収は半分以上終わっているので、滞りなくいけば昼頃には終わると思いますよ。

ですので今回はお役に立ちそうな話ができるかはわかりませんねえ」

男「そうだったんですか。罠の設置や回収は全部お一人で?」

おじさん「昔からの猟仲間数人に手伝ってもらいました。私も彼らの作業を手伝ったりする事もありますから…

まあ持ちつ持たれつってヤツです」

男「いいですね、そういうのって。それでアライさんは何匹捕まったんですか?」

おじさん「今のところ二匹です。離れた場所で成体のアライさんが一匹ずつ捕まりました。

どこから来たのか聞き出した後にすぐ処分しましたが」

男「どこから来たんです?」

おじさん「それが二匹とも冬の間に移動してきたのではなく、去年の夏から秋にかけて来たみたいでして。

一応見回りなどはしていたんですが…。このぶんだとまだこの山で年を越したアライさんがいそうですねえ」

おじさんは少し顔をしかめながら言った。

男「やっぱり完全に駆除するのは難しいんですねえ。去年の春にも駆除されたんですよね。その時はどうだったんですか?」

おじさん「その時はここで年を越した成体のアライさんが一匹、冬の間によそから移動してきたアライさんの親子が二組でした。

親子はどっちとも親一匹、子供一匹といった具合です」

男「全部で五匹ですか。それより少ないといいですねえ」

おじさん「比較する為に罠の設置した場所や数は去年とほぼ同じにしましたが…冬期の平均気温や天候が違いますので

あまり参考にはならないでしょうね」

その後しばらく道を進むと、作業場があった所の様な少しひらけた場所に出て、おじさんは車を停めた。

おじさんと男はリュックを背負い、準備をする。

おじさん「じゃあここからは歩いて行きましょう。特に足元が危険な場所はありませんが、念のため私の後に付いてきて下さい」

男「わかりました」

おじさん「おっと…こいつを忘れてました」

おじさんはワゴン車の後部ドアを開け、ストックを一本取り出した。男は最初、それを登山用のストックだと思ったが
よく見るとスキーで使うストックだった。ストックの先に付いている円盤状の部品が外され、先端は機械で削ったのだろうか鋭利になっている。

削られて露出した、銀色に鈍く光る金属面には赤い物が付着しており、何に使うかはおおよそ察しがついた。

男「ストックですか。そういえば子供の頃はよくスキーの練習をしてましたね」

おじさん「私はからっきしですね。今でもおやりに?」

男「就職して地元を離れてからはすっかりやらなくなってしまいましたねえ」

おじさん「そうでしたか。…ではそろそろ出発しましょう」

男は頷いて返事をし、おじさんの後に続いて歩き出した。しばらく森を歩いていると

おじさん「さっき子供の頃の話が出ましたが…。私は運動はあまり得意では無かったですが、よくこの山で遊んでいましたね。

昆虫を採集したり色々な押し花を作ったりしたものです」

話を聞くと、この山はおじさんの曾祖父の代から引き継いでいるもので、七年前にそれまで元気だったおじさんの父親が
急病で亡くなってからはおじさんが管理している。

子供のころはおじさんと友人達の良い遊び場で、生き物や植物に興味を持つきっかけになったのだそうだ。

おじさん「父が死んだ後、何かに利用している訳でも無いので山を手放したらどうか、と親族から言われましたが…

私には出来ませんでしたねえ」

おじさんにとっては思い出深い場所という事だろう。そんな場所がアライさんに好き勝手されるのは我慢ならないというのは容易に想像できる。
だが他にもいわゆる害獣と呼ばれている動物はいる訳で、おじさんの中では害獣とアライさんとの間にさらに線引きがある、という事か。
それはアライさんだけは虐待する、という事から見ても明らかだ。

そういえばもう一年前になるのか。俺の家を荒らしたのはアライさんだと警官に告げられた時、言いようの無い怒りを感じた事があったな。
もしこれが人間の泥棒だったら?ただのアライグマだったら?勿論ムカつきはしただろうが、処理場を見学した時の様に死に顔を拝んでみたい、
とは流石にならなかっただろう。

結局しばらく考えていてもアライさんに対する不快感の正体はわからなかった。
もしかしたらおじさんも俺と同じ様な感情をアライさんに抱いているのかもしれない。

おじさん「そろそろ罠のある所ですね」

箱罠は空っぽだった。アライさんがいないに越した事は無いが、単に罠に引っ掛からなかっただけかもしれないので素直に喜べない。
罠の中の餌はそのままになっており、周りにもアライさんや野生動物の足跡らしき物も無い。罠をスルーした訳では無く、
ただこの場所には現れなかっただけの様だ。

おじさんが罠を持ち上げて運ぼうとしたので、男は「自分がやりますよ」と声を掛けたがおじさんは「じゃあ次の罠はお願いします」と返事をした。

―――――――――――――――

一旦車に戻って空の罠を積み、二個目の罠の回収に向かった。到着すると罠の中にはアライさんが一匹閉じ込められていたが、
やせ細っている上に丸く縮こまっていたので、よく見なければ成体のアライさんだとは気が付けなかった。

アライさんは物音を感じ取ったのか頭を上げ、

アライさん「また人間なのだ…。お前たちもアライさんを追い回すのか?違うならここからアライさんを出すのだぁ…」

この口ぶりを聞くに、元々この山にいたのでは無く最近どこからかやって来たアライさんの様である。
聞く手間が省けたので後は処分するだけだろう。おじさんがストックを構えると、

アライさん「その棒はなんなのだ…お前たちもやっぱりアライさんを叩くのか?でもこの中にいればアライさんを叩く事なんて出来ないのだ。

アライさんを叩きたいならここから出すしかないのだ。ほらほらどうするのだ?人間?」

挑発してるつもりなんだろう。出た瞬間にお前たちに噛み付いて逃げてやろう、という意思が目つきから見て取れる。
爪や牙を持っているクセに、刺すという発想は無いのか。

おじさんは罠の上の格子からストックを挿し込むと、アライさんの胸に狙いを定めて突き刺した。

アライさん「ぶふぉおっ!?」

アライさんは目を丸くして我が身に突き立てられたストックを両手で握って抵抗した。


続く

おじさんは右手でストックのグリップを握り、左手を上からかぶせる様に置いてストックに体重を乗せた。
ストックはズブズブとアライさんの体にめり込んでいく。

アライさん「ぐぎぎぎぃぃ……」

アライさんは口を噛み締めながらストックを掴んで自分の体にそれが沈んでいくのを阻止しようとするが、
弱って力が出ないのかすぐに腕から力が抜けていく様子が見えた。

アライさん「なんで…アッ…アライさんを…のけものにする…のだ…。アライさんは…なにも…してなぃ……」

搾り出す様にそれだけ言うとアライさんは目をつむり動かなくなった。細い棒で刺しただけなら痛みでかえって暴れだしそうなものだが…。
よほど衰弱しきっていたのか、それともおじさんの手際が良かったと言う事なのか男にはわからなかった。

おじさん「力尽きた様ですね。ではこの罠はお願いしてもいいですか?」

アライさんの死体は罠に残ったままだ。死体はここに打ち捨てていくと思っていたので一瞬疑問に思ったが、
きちんと回収して然るべき方法で処理をするという事だろう。

さっき質問は遠慮なくしてくれて構わない、と言っていたがわざわざ聞く程の事でも無いか。
それに今日はあくまでおじさんの手伝いに来ているだけだから、余計な口を挟むべきではない。

男「わかりました。よっこいせ…」

返事をし、おじさんの後に続く。久々に持ち上げる罠はズシリと重く、冬の間にジムにでも通っておくべきだったなと少し後悔した。

男「このアライさん、どこか別の所から来たみたいですけど、場所は聞かなくて良かったんですか?」

このくらいの質問はしてもいいだろう。普通に気になったしな。

おじさん「あの態度ではまともに話をする気は無かったみたいですので、前々からこの山にいた訳ではない事が分かれば十分でしたね。

それに方角を理解しているアライさんはほぼいないですから、聞いたとしても満足のいく返事は得られなかったと思いますよ。

せいぜいあっちとかこっちといった言い方しかしません。時間によって太陽の位置が変わるくらいの事は知っている個体もいる様ですが、

方角に結びつけて考えるには至っていないんでしょうね。ましてや星を観測して方角を知るなんて以ての外でしょうなあ。

…じゃあ今度またアライさんが捕まったら、試しに聞いてみますか?」

男「はあ、そういう事だったんですか。そういえば人間に追われてここにやって来た、みたいな事言ってましたけど

そういうアライさんって警戒心が強いんですよね?それなのになんで罠に引っ掛かったんでしょう」

おじさん「あの衰弱ぶりを見るに罠に掛かる前から弱っていたでしょうから、単に背に腹は代えられなかったんじゃないですかね。

あんな状態でも自分なら大丈夫だろう、みたいな過信もあったのかもしれません」

男「つくづく目先の事しか考えない生き物ですねえ」

その後、休憩をはさみながら次々と罠を回収していったが、罠は空だったりただの野生の小動物が掛かっていたりもした。
野生動物だった場合、おじさんは衰弱した様子が無いか確認した上で逃がしてやっていた。

おじさん「次の罠で最後になります。もうひと踏ん張りといきましょう」

男が腕時計を見ると十一時を少し過ぎた頃で、このまま順調にいけばおじさんの見立て通り昼には作業が終わるだろう。
やがて罠に近づいてきた時、何か金属が鳴る音と共にアライさんとアライちゃんのものと思われる声が聞こえてきた。

アライちゃん「おかあしゃん、おかあしゃん、まだでられないのだ?」

アライさん「さっきからたくさん蹴ってるのに全然開かないのだ…。なんでこんなに硬いのだぁーー!」

箱罠の中にアライさんがいて、外側から一匹のアライちゃんがそれを見ているという形だ。声の大きさや比較的活発な動きからするに、
罠に掛かってからまだ余り時間が経っていないとみえる。箱罠の天井は低いので、アライさんは横向きに寝そべっているといった姿勢だ。

おまけに横幅はアライさんがギリギリ通れるくらいしか無いので、膝を折って蹴るといった動作がしづらいらしく、
蹴るというよりは単に足で押しているだけといった感じだ。あれでは到底塞がった入り口をこじ開ける事は出来ないだろう。
もっとも全力で蹴ったとしても問題ない強度なのだろうが…。

先に外にいるアライちゃんを始末した後、アライさんをさっきと同じやり方で処分するのだろう。
とそう思っていた矢先、おじさんはリュックから袋を出した。アライちゃんは生け捕りにするのか?

アライさんは自分の足先ばかり見ていたので、まだ人間の存在には気が付いていない。
しかし地面に尻をつき、脚をまっすぐ伸ばして座っていたアライちゃんはこちらに気付いたらしく、首を傾げながら言った。

アライちゃん「のだ?…おかあしゃん、だれかきたのだ?」

アライさん「なんなのだ?……人間なのだ!?ちびぃ!早く隠れるのだ!」

アライちゃん「なぜなのだ?それにおかあしゃんをここにおいていけないのだぁ」

アライさん「いいから早く行けなのだあーっ!人間に捕まってしまったらタダでは済まないのだ!」

アライちゃん「いやいやなのだ!おかあしゃんのそばにいたいのだ!はなれたくないのだあ!」

アライさん「ばか!そんなわからずやはウチの子じゃないのだあ!!」

アライちゃん「!?…ひどいのだ、なんでそんなこというのだぁ…?アライしゃんはおかあしゃんがすきなだけなのだぁ…」

アライさん「ああああ!!とっとと行くのだ、ちび!!……人間っ、こっちに寄るななのだあ!!」

親の言う事は何でも聞くのかと思っていたが、そういう訳でもないらしい。ぐずぐずしてくれた方がこっちの都合は良いけどな。

おじさんは両手で目をこすりながらベソをかいているアライちゃんを掴み上げ、袋に放り込んだ。

アライちゃん「のぎゃっ!?ここからだしてなのだっ」

ブラブラ揺れる袋の中からアライちゃんのわめき声が漏れ出てきた。久しぶりに聞く活きのいい悲鳴だ。これだけで今日ここに来た価値がある。

人間を知っていてかつ敵視しているあたり、さっき処分したアライさんと似た様な境遇だったのであろう事はわかるが、
それでもおじさんはあえてアライさんに質問した。

おじさん「こんにちは、アライさん。アライさんはどこから来たの?」

アライさん「うるさいのだ!ちびをはなせなのだぁ!」

おじさんはアライちゃんが入っている袋を地面に落とすと、

アライちゃん「ぷぎゃあ!?おしりいたいのだぁ!」

おじさん「答えてくれないと、アライちゃんがどうなるか賢いアライさんなら分かるね?」

地面でモゾモゾと動いている袋を踏みつける様なジェスチャーをするおじさんを見たアライさんは、

アライさん「うぬぬ…わかったのだ…。アライさん達はとなりのとなりの山から来たのだ…」

おじさん「隣の山じゃ分からないなあ。このあたりは山が多いからね。私が聞きたいのはどっちの方向から来たの、って事だよ」

アライさん「方向なんてわからないのだ…。必死で食べ物を探していて気が付いたらここにいたのだあ」

おじさん「なるほどね。じゃあここに来たのはつい最近って事でいいのかな?」

アライさん「……………人間、アライさん達がどこから来たのか知りたいならアライさんが案内してやるのだ。

だからこの箱からアライさんを出してほしいのだあ」

今しがたどっちから来たのか知らないって言ったばかりだろうに。わざとらしい間を空けてまで必死で考えた騙し文句がこれだ。
しかしアライさんでも人を騙そうとするんだな。その場しのぎの言動が多い事を考えれば意外という訳でも無いが、
アライさんは良くも悪くも正直というイメージがあったので、やはり意外というほか無かった。

実体験や動画などを通してアライさんの事を少し知った気になっていたが、実のところ俺はまだ良く分かっていないんだなあ、と気付かされる。

おじさん「別に案内してくれなくてもいいよ。それよりもさっきの質問に答えて欲しいんだけどねえ」

おじさんはそのへんの事も良く心得ている様で、無視して話を続けた。

アライさん「えーっと、ええと、ついでにアライさんのおうちにも案内してやるのだ。あったかくて広くていい所なんだぞー、

そっ、それにごちそうもいっぱいあるから食べさせてやるのだ」

立派な家と十分な食べ物があるのになんでこんな所にいるんだよ。アライさんは嘘に嘘を重ねてもう自分でも何を言ってるのか分かってないんだろう。

おじさん「じゃあ質問を変えようか。アライさんの子供はこのアライちゃんだけかい?」

アライさん「そう!そうなのだ!聞いてほしいのだ!」

おじさんの質問を聞いたアライさんは待っていたと言わんばかりに急に大声を出して喋り出した。


続く

アライさん「ちびがどれだけアライさんにとって大切か教えてやるのだ。……アライさんはとなりのとなりの山よりもっと遠い所で生まれたのだ。

優しくて聡明なお母さんに育てられたアライさんは姉妹の中で一番早く独り立ちしたのだ」

もしかしてアライさんの身の上話が始まる流れか?どうでもいい気もするが、アライさんの生態について何か分かるかもしれないからちょっと聞いてみるか。
おじさんの反応次第だが…。

おじさん「……それで?」

アライさん「一番早く独り立ちした優秀で有能なアライさんはしばらくしてちびを作ったのだ!ちびは三人産まれて、どれもアライさんに良く似た

かわいくて賢いちび達だったのだ」

おじさん「だった、とは?」

アライさん「それが…ちび達はすくすく育ってたけど、最初の寒い時期を越せなくてみんな死んでしまったのだあ…」

おじさん「それは残念だったねえ。原因は何?」

アライさん「あの寒い時期にあんなに食べ物が無くなるなんて知らなかったのだ…。ちび達を満足に食べさせてやる事が出来ず、

みんな細い棒みたいになって死んでしまったのだ…。そんな寒い時期でもアライさんを育ててくれたお母さんは、

やはりすごくて偉大だったのだとその時に気付いたのだ」

おじさん「お母さんの話はひとまず置いといて…その後どうしたの」

アライさん「その後またかわいいちびを二人産んだのだ!今度は失敗しない様に、寒くなる前に食べ物をいっぱいいっぱーい貯めておいたのだ!

山にある分だけじゃ足りないから、人間のナワバリに行って食べ物を拾ったりもしたのだ。アライさんが見つけた食べ物を人間が奪おうと追っかけてきて、

何度が捕まりそうになったりもしたけど逃げてやったのだあ。その時にお前ら人間はなんて野蛮な奴らなのだ、と思ったのだ。

そして今度はなんとか寒い時期を乗り越えられたのだ!」

おじさん「それが今連れてたアライちゃん?もう一人はどうしたの?」

アライさん「今回の寒い時期は前より長かったから、体があまり丈夫じゃなかったちびは寒さに耐え切れずに死んでしまったのだあ…」

確かに今年の冬は例年より気温の低い日が長く続く事がたびたびあった。人間が普通に生活する分にはせいぜい暖房費がかさんだり
野菜が高くなったりする程度の影響しかないが、野生のアライさん達にとっては命に関わる出来事だったであろう。

アライさん「でもちび一人だけはなんとか守り抜いたのだ。寒い時期さえ越せればちびが独り立ちするまではなんとかなるのだ」

生態について何か新しい事が分かるかもしれないと期待したが、結局分かったのはアライさんは相変わらず子育てに関しては
無策で行き当たりばったりという事だけだった。

アライさん「ふふん、どうなのだ?これだけ話せばちびがどれだけアライさんにとってかわいくて大事であるか、人間の頭でも理解できたのだ?」

おじさん「へえ、アライさんも苦労したんだねえ」

アライさん「そうなのだそうなのだ。アライさんは苦労に苦労を重ねてきてやっとここまでちびを育てあげたのだ。そんなアライさんを

箱に閉じ込めて嫌がらせするなんてひどいのだあ!アライさんがかわいそうだと思わないのか!?」

要は同情を引く目的で身の上話をした訳だ。一応話に不自然な点は無いし、ペラペラと流暢に喋っていた様子からするとおそらく本当の事だろう。
しかしさっき騙そうと嘘をついた事もあるし、完全に信用は出来ない。わざと先に支離滅裂な事を言っておいて、より真実味を増そうとした疑いすらある。

身の上話が本当だろうが嘘だろうが、殺して処分する事に変わりはないからどうでもいい事なのだが、どうも引っ掛かる。
こういうのは一度疑い出したらキリがなくて、アライさんは思慮が浅くて単純だと分かっていても、もしかしたらという思いが頭を駆け巡り結論を出せなくなる。

今後もアライさんを捕まえたり、話をしたりする機会はあるだろう。その時アライさんが嘘をつかないとは限らない。
その時の為にアライさんが嘘をついているかどうか探る方法を考えてみるのもいいかもしれない。

おじさんの作業に余計な口は挟まないと決めていたが、好奇心の方が勝ってしまった。まずはおじさんに話をしなければ。

男「モギさん、少しいいですか?」

おじさん「なんです?」

男はおじさんをアライさんから少し離れた場所へと誘導し、小声で自分が考えている事を簡潔に話した。
作業を中断されたにも関わらずおじさんは嫌な顔ひとつせず、ときおり相槌を打ちながら男の話を聞いていた。話を聞き終わったおじさんは少し黙り込んでいたが、

おじさん「ふーむ。するとカトウさんはアライさんが我々の同情を引く為に嘘を言ってるのではないか、と言いたいんですね?」

男「そうです。今の話はほぼ本当の事だとは思っていますが、どうしても白黒つけたくて」

おじさん「私も本当の事を言ってるとは思います。しかし平然と嘘をつくアライさんがいないとは言い切れませんし、

確かめてみるというのは良い試みだと思いますよ。まあ暴力で脅せば一発でしょうけど、それは本意ではないのでしょう?」

男「ええ。出来るだけ普通に会話して探りたいのですが…」

おじさん「単純なアライさんといえど心を完璧に読むのは神様でもなければ無理でしょうね。神様がいればの話ですが…。

しかしアライさんの本音を垣間見るくらいなら出来るかもしれません」

男「どうするんですか?」

おじさん「そうですねえ…ではこういうのはどうでしょうか?」

おじさんはアライさんの方へ近づくと、

アライさん「何をコソコソ話していたのだ人間。アライさんに隠し事をしても無駄なのだあ!」

おじさん「待たせてごめんねアライさん。アライさんの思いは良く伝わったよ」

アライさん「じゃあここから出す気になったのだ?」

おじさん「その前にもう少し話がしたいんだけどねえ」

アライさん「出してくれたらいくらでも話してやるのだあー」

おじさん「まあまあ…すぐに終わるよ。例えばの話だけど、アライさんとアライちゃんのどっちかだけしか助からない場合、アライさんならどうする?」

アライさん「何でそんな事聞くのだ…。そんなのちびを助けるに決まってるのだ!そしてかっこ良くアライさんも助かるのだ!」

おじさん「それだと質問の答えにならないけど、とりあえずアライちゃんを優先するって事でいいんだね。

私も家族がいるからその気持ちは分かるよ。でも本当にそうかな?」

アライさん「どういう事なのだ?」

おじさん「考えてごらん。どっちかしか生き延びられない様な厳しい状況でアライちゃんだけ生き残っても、その後どうなると思う?」

アライさん「何が言いたいのだ…」

おじさん「その場ではアライちゃんの事はあきらめて、アライさんが助かる道を選ぶ方が今後の為にはいいんじゃないかな?」

アライさん「!!…とんでもない事を言ってるって分かってるのか!?これだから人間はくずで浅はかなのだ!

それに比べればアライさんのちびは賢いから、アライさんがいなくてもどうにかなるって信じてるのだ!」

おじさん「アライちゃんを信じるのは勝手だけど、いかに賢くてもアライちゃんがその後すぐに死んでしまわない保証なんて無いよねえ。

それにさっきアライさんも言ってたよね。お母さんの偉大さに気付いた、って。もし寒い時期にお母さんがいなければ

まだ小さいけど優秀で有能だったアライさんでもどうなっていたかは、苦労しながら子育てしてきたアライさんなら分かるよね?」

アライさん「うぐぐ…それでも…それでもアライさんは……ちびを選ぶのだ…」

おじさん「アライちゃんなんてまた産めばいいじゃない」

アライさん「っ!?…お前は最低なのだ!ちびを…ちびをなんだと思っているのだあ!!」

おじさん「でも事実、アライさんはそうしてきた訳じゃないの?最初の寒い時期に三人のアライちゃんを失ったって言ってたよねえ」

アライさん「うぐう…あれは…あれは仕方が無かったのだあ…。アライさんのせいじゃ無いのだ…寒いのが悪いのだぁ…」

アライさんがここまで思い悩むという事は、さっきの身の上話やアライちゃんの身を案じているという気持ちは本物だった、という事か。
平然と嘘をつく様なアライさん(実際にいるのか全くもって疑わしいが)なら、話の内容を突っつかれてものらりくらりと言い逃れていただろうからな。

おじさんも目的は果たしたと考えた様で、男の方を向き軽く頷いた。その後アライさんの方に向き直し、

おじさん「別にアライさんの事を責めている訳じゃないよ。その経験のおかげで今度はアライちゃんを無事に育てる事が出来たんだしね。

でも状況によっては非情になる事も必要なんじゃないかなあ」

アライさん「うう…わ、わかったのだ…。人間もたまには役に立つ事を言うのだ…」

アライさんは大分落ち込んでる様子だ。おじさんは地面に転がっていた袋からアライちゃんを出すと、罠の前に置いてやった。

アライちゃん「ぷはぁー、やっとでられたのだあ、くるしかったのだ。あ、おかあしゃん!たすけてなのだ!ひとしゃんがいじわるするのだあ!」

アライちゃんを一目見たアライさんは少し元気を取り戻し、

アライさん「ちび…かわいいちび…アライさんの大事なちびぃ…今助けてやるのだ。やい人間、話をしてやったんだからアライさんをここから出すのだ!」

おじさん「アライさん、もう一度聞くよ。アライさんとアライちゃん、どっちかしか助からない状況になったらどうする?」


続く

アライさん「もうその質問はいいのだ。そんな事は考えたくないのだ…」

アライさんは目を逸らしてうつむきながら言う。さっきみたいに即答しないあたり、答えはほとんど決まっている様なものだ。
返答を聞いたおじさんは、四つん這いになって折れ曲がっているアライちゃんの右脚のふくらはぎをギュッと踏みつけた。

アライちゃん「ひぎいぃ!?いだいのだ、ひとじゃんっ、やめるのだあ!!」

アライちゃんは尻尾をブンブンと振り回しながら訴えている。おじさんはすぐに踏むのを止め、足をどかした。力加減はしていたらしく、
痛がってはいるもののアライちゃんの脚が折れているといった様子は無い。一方アライさんはアライちゃんが踏まれた瞬間を見ていなかった様で、

アライさん「ちびに何をしたのだ!?ちびが嫌がる事をするのは許さないのだあ!」

おじさん「はっきりと答えてくれないと困るねえ。アライさんは今そういった状況に置かれているのだから」

今更言うまでもないが、おじさんは遊んでいた。これが最後の罠だし、時間もまだ正午前で余裕はある。だからそういった事をしたくなる気持ちは分かるが、
いかに慣れた場所とはいえ何が起きるか分からない山中で悠長に遊ぶのはいかがなものか。いたぶるのなら下山してからじっくりやればいいのではないか。
どうにも今まで見てきた彼らしくない。

…と思ったが良く考えてみればすでに答えは出ていて、要するにおじさんはじっくり遊ぶ気なんて無いという事だ。
適当に言いくるめておじさんが望む言葉をアライさんから引き出した後、速やかに処分するつもりなんだろう。相変わらず趣味が悪い。

アライさん「もう答えたくないって言ってるのだ!そんな事よりとっととアライさんとちびをかいほーするのだあ!今ならまだ許してやるのだ!」

おじさん「じゃあアライさんにだけ聞くのは不公平だからアライちゃんにも聞いてみようか。アライちゃん、さっきみたいな痛い事をアライちゃんか

お母さんにするけど、どっちがいいと思う?」

アライちゃん「ひいっ。アライしゃん、いたいのやーなのだぁ…。でもでも、おかあしゃんがいじめられるのもいやなのだ…。

……ひとしゃん、アライしゃんがいたいのがまんすれば、またおかあしゃんとあそべるようになるのだ?」

おじさん「遊べる様にはならないねえ。それだとアライちゃんがいなくなってしまうからね」

アライちゃん「えっ、アライしゃんいなくなっちゃうのだ?アライしゃんきえちゃうのだ?……じゃあおかあしゃんががまんしたらどうなるのだ?」

おじさん「今度はお母さんがいなくなってしまうから、同じ事だよ」

アライちゃん「おかあしゃんがいなくなったらおかあしゃんとあそべなくなるのだ…。アライしゃんがいなくなってもおかあしゃんとあそべないのだ…。

いったいどうすればいいのだ……アライしゃん、きめられないのだぁ…」

おじさん「どっちを選んでも結果が同じならアライちゃんが楽な方を選べばいいんじゃないの」

アライちゃん「それもそうなのだ。おかあしゃんも『むだなことはしてはいけないのだ』ってよくいってたのだ。

あと『そうしないとやせいではいきていけないのだ』ともいってたのだぁ」

おじさん「いい教えだねえ。それはぜひ実践するべきだね」

アライさん「ちょっと待つのだ」

おじさん「どうしたのアライさん」

アライさん「さっきから黙って聞いてれば何を勝手な事を言ってるのだ!そもそもお前らの言う事をきく必要なんてないのだあ!

ちびもちびなのだ、何を人間となかよく話なんてしてるのだ!そんなヒマがあったらとっとと逃げるのだぁ!」

アライちゃん「でもおかあしゃん、ひとしゃんにしゃからったらなにしゃれるかわからないのだあ…。アライしゃん、しゃっきすごくいたかったのだ」

アライさん「それは……うぐう…とっ、とにかく!ちび、お前は人間にだまされてるのだ、目を覚ますのだあ!」

窮地に立たされている事を認めようとしない母親よりアライちゃんの方がよっぽど今の状況を理解しているな。成体のアライさんほど我が強くない分、思考が柔軟なのだろうか。
いや単純と言うべきか?それとも単に痛めつけられた恐怖によるものか…。

アライちゃん「しゃびしいけど、おかあしゃんがいなくなってもアライしゃんはりっぱにいきるのだ!アライしゃんはそーめーだからあんしんしてほしいのだあー」

おじさん「決まったね。じゃあアライさんにいなくなってもらおうかな」

アライさん「ちょっと待つのだあ!」

おじさん「またなのアライさん。今度は何?」

アライさん「わかったのだ、アライさんも覚悟を決めたのだ。こんな事を言うのは本当につらいけど言うのだ。…ちび、今回お前の事はあきらめるのだ」

アライちゃん「ええー」

おじさん・男「ええー」

アライさん「なんなのだお前達…」

アライちゃん「おかあしゃんはアライしゃんがいなくなってもへいきなのだ?」

アライさん「残念だけど仕方ないのだ。またちびを作ってやりなおすのだ」

アライちゃん「おかあしゃんははくじょーなのだ…アライしゃんはかなしいのだ…」

おじさん「アライさん、さっきアライちゃんを優先するって言ってたよね。どうして心変わりしたの?」

アライさん「お前がそうしろって言ったのだあ!」

おじさん「命令した覚えは無いんだけどねえ。そう決めたのはアライさん自身だよ」

アライちゃん「おかあしゃん、しゃっきアライしゃんのことを『たすける』とか『しんじてる』っていってたのはうそだったのだ?」

さっきアライちゃんが袋に閉じ込められてる時にそんな事言ってたな。聞こえてたのか。どうやらアライさんが声を荒げていた部分しか覚えていない様だが…。

アライさん「う、うそじゃないのだ!ちびの事は信じてるけど…とにかく今回はアライさんにゆずるのだあ!ちびならアライさんの言う事をきくのだ!!」

アライちゃん「でももういたいのいたいのやーなのだ。おかあしゃんならアライしゃんのためにがまんするのだあー」

おじさん「アライさんも大人なんだからさあ、明るい未来のあるアライちゃんに譲ってあげなよ。二回出産したんだしもう十分でしょ?」

アライさん「おまえええ!!さっきと言ってる事が違うのだああ!!」

おじさん「そう?じゃあ話はもう終わりという事で。…カトウさん、良かったら処分してみませんか?」

アライさん「おい、待つのだ!アライさんはこんなの認めないのだあ!!」

ここで俺に振ってくるとは思わなかったが、せっかくの機会だから引き受ける事にしよう。はい、と返事をしストックを受け取る。

アライさん「何する気なのだ!?その棒を向けるのはやめるのだぁ!やるならちびにするのだあ!!」

ストックを構えてアライさんの胸を狙ってみたが、アライさんは仰向けになり両腕でガードする様な姿勢をとっていたのでなかなか狙いがつけられない。
攻めあぐねていると、突然後ろからアライちゃんの叫び声が聞こえてきた。

アライちゃん「ぴぎゃああああああああ!!おがあじゃん、だじゅげでええええ!!」

アライさん「っ!?……やっぱりちびが死ぬ運命なのだ!アライさんは運命に勝利したのだ!!もうちびなんて助けてやらないのだ、くたばればいいのだあ!」

男が振り向くと、おじさんがアライちゃんの尻尾を踏みつけている。男を見兼ねてアライさんの注意をそらす為にしてくれたんだろう。
アライさんの防御に隙間が空き、胸が見えた。今だ。

アライさん「ぎゃぼおおおお!?」

刺そうとした瞬間にアライさんが背中を仰け反らせる様な動きをしたため、胸ではなくみぞおちのあたりに刺さってしまった。グニュッとした感触が伝わってくる。

アライさん「いだいのだあああ!!なんでアライさんもおおおおお!?やぐぞぐがぢがうのだああああ!!ヒーーッ、ヒィーー……」

アライさんは叫び声を上げながら暴れだし、罠を大きく揺らした。その衝撃で思わずストックを引き抜いてしまったので
腹に空いた穴から血があふれ出てきて、アライさんの毛皮が赤く染まっていった。

おじさん「こうなるとしばらく暴れ回ってしまうので、少し待って大人しくなってから隙を見てもう一度胸を刺してみて下さい」

男「わかりました…やってみます」

アライさん「うぐうううう!!ぐごごおおおぉぉ……」

アライさんは両手で腹を押さえ、涙を流しながら声にもならないうなり声を出している。

アライちゃん「ひいいいい……。いつものおかあしゃんじゃないのだ…。おかあしゃんがけものになっちゃったのだあ…」

アライさん「おまえらぁ…おまえらニンゲンも…ヂビもぉ…ゆるざないのだ…ゴロジデヤルのだぁ……!」

おじさん「怖いねえ。アライちゃん、お母さんがあんな事言ってるけど」

アライちゃん「あんなのはもうおかあしゃんじゃないのだ…。ただのけだものなのだあ…」

アライさんの動きが少しずつ弱まってきたので、もう一度胸を狙いストックを刺す。今度は狙い通りに突き刺さった。

アライさん「ウギギ……グガアァ!!」

アライちゃん「こわいのだ…すごくこわいのだぁ…………………のだ?ちょっぴりおしっこがでちゃったのだぁ~……」

アライさんは徐々に弱っていったがその表情やうなり声はまさに憎悪の塊といった風で、しばらくの間アライちゃんを怯えさせた。
やがて抵抗する腕力も失ってされるがままになっていき、ようやくアライさんは涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら息絶えた。
死んでも目を見開きツリ上がったままになっていたのがアライさんの諦めの悪さを体現していて、いかにも相応しい最期であったと言えよう。

処分が目的だから無駄に痛めつける気は無かったが、結果的にそうなってしまった。しかし久々に直に苦しむ顔を見る事ができたのは少し得した気分だ。

男「手間取ってしまいすみません」

おじさん「余力のあるアライさんを処分するのは少しコツがいりますからね。別に気にする事はありませんよ。じゃあ戻りましょうか」

男「はい…それでアライちゃんはどうするんです?」

おじさん「この場で始末してもいいですが、アライちゃんはそれなりに使い道があるので…後で適当に処分しておきますよ。何か案があったらお気軽に」

おじさんはいつの間にやら袋に詰められたアライちゃんを持ち上げながら言った。


続く

作業場に戻る車中、車の振動が心地よく急に眠気が襲ってきたので何か喋ろうと口を開いた。

男「さっき言ってたアライちゃんの使い道って…またカメ君(性別が判らないのでとりあえず君をつけた)の餌にでも?」

おじさん「それもいいですが冷凍アライちゃんが貯まっていて、そっちを消費しないといけませんからねえ。何か別の事に使おうかと」

冷凍アライちゃん……冷凍マウスみたいなノリで言われてもな。あのマヌケ面がカチコチになっているのを想像したら少し可笑しくて、

男「今更言うのもなんですが、アライさんみたいな得体の知れないものを食べさせて大丈夫なんですかね」

おじさん「言いたい事は解ります。毒かもしれないものをペットに食べさせるとはなんて酷い飼い主だ、という事でしょう?」

男「いえ、そこまでは…」

眠気が覚めた。

おじさん「ハハハ、冗談ですよ。ところでアライさんが野に放たれてから十年…いや十一年程経ちましたが、野生のアライさんの研究は存外進んでいませんね」

?…なぜ急にそんな話題を振ってきたのか。

男「そうなんですか?あんな不思議な生き物を研究しないのは不自然だと思いますが」

おじさん「研究者さん達はフレンズにご執心で、野生のアライさんには大して興味が無いんですよ」

男「あんなに農業被害を出しているのに?研究して対策するべきでは?」

おじさん「主に農業被害しか出してないからじゃないですかね。この言い方だと少し語弊がありますけれども。ああ、あなたは空き巣の被害に遭われてたんでしたね。

それはともかくアライさんは人間から危害を加えたり、なんらかの理由で勘違い…例えばアライさんの持ち物が人間に盗られたとか勘違いでもしない限り、

アライさんの方から襲ってくる事はあまりありません。そのせいでそこまで危険視されていないんですよ。もちろん凶暴化したアライさんは危険であり

傷害事件が起きたケースもいくつかありましたが、それは野犬等にも言える事なのでアライさんだけ特別視する者は数年前までは少なかったですね」

言われてみれば男も実際に被害を受けるまでは「何か良く知らないが迷惑で嫌われ者の動物」といった程度の認識しかなかった。

おじさん「とはいえ農業被害も当事者にとっては死活問題ですから一応国や自治体により研究対策は進められていますが、人員と予算が足りていないのが現状です。

それに加え他にも害獣はいますから、アライさんにばかりかかりっきりという訳にいかないのも対策が遅れた要因でしょう」

男「どうしてそんな話を?」

おじさん「そういった状況でしたので、四年前に私なりにアライさんの事を調べる事にしたんです。まず最初は昆虫にアライちゃんを食べさせてみました」

そういう事か。昆虫やおそらくその他の動物達…ネズミみたいな小動物だろう…に食べさせて安全性はとっくに確認してある。だからペットのカメに食べさせるのは問題ない。
そう言いたいのだ。

男「ええ…もう大体わかりました」

おじさん「理解いただけた様でうれしいです。アライさん達が捕食されるのは私達の知らない自然界ではもはや当たり前の様に起こっている事ですし、

今後その影響も研究されていくのでしょうね。私としては一刻も早くアライさん達に消えて欲しいですが」

その後作業場に着いて車から降りると、おじさんはアライちゃんを袋から出してやった。

アライちゃん「ふきゃっ。くらいところからきゅうにでたからまぶしいのだぁ…」

アライちゃんは目が慣れるまでは余り動こうとせず、四つん這いの姿勢のまま目をパチパチさせたり手でこすったりしている。
こんな場所に出してもう処分するのかと思っていたら、おじさんはアライちゃんを掴み上げて地面に叩きつけた。

アライちゃん「のだっ……きゅう~~……」

殺すのではなく、気を失わせるかぐったりさせるのが目的だったのか。

おじさん「すみませんが、そこにある脚立を持って付いて来てくれませんか」

おじさんは車からロープを出しながら作業場の入り口の方を指差して言った。男は返事をして脚立を取ってきておじさんの後に続いた。おじさんに首根っこを掴まれた
アライちゃんの口はだらしなく開き、よだれがブラーンと糸を引きながら垂れている。林道の脇に生えていたとある樹の前まで来ると、

おじさん「ここに脚立を立ててもらっていいですか」

男が言われた通りにすると、おじさんはアライちゃんとロープを持ったまま軽い身のこなしで脚立を上っていき、地上から二メートル位の所で幹から分かれていた
枝の根元付近にアライちゃんを手際よく縛りつけた。

おじさん「後はここにカメラをセットしておけば稀に面白いものが撮れるんですよ」

男「はあ」

おじさん「とりあえず作業はこれで終わりですかね。お疲れ様です、本当に助かりましたよ」

男「こちらこそアライさんについて色々知れたので来て良かったです」

おじさん「ところでこの後何か予定はありますか?」

男「特にありませんが」

おじさん「それなら少し話したい事があるんですが…もうお昼ですし、とりあえず何か食べながら話しましょう」

風が少なく日差しも出てきたので、外にテーブルとイスを出して食べる事になった。持参したおにぎりと菓子パンといった味気の無い物ではあったが、
自然に囲まれているのとおじさんが湯を沸かして淹れてくれたお茶のおかげで幾分おいしく感じられた。

男「話というのは何ですか?」

おじさん「カトウさんは自宅でアライさんで楽しまれているのでしたよね」

男「ええまあ…」

おじさん「失礼ですが、不便な事もあるのでは?」

男「そうですねえ。確かに火は使えないので不便と言えばそうですが、元々大掛かりな事をする気はありませんし、そこまで不満は無いです」

おじさん「でも出来ればやってみたいとはお思いで?」

男「それはまあ…多少は」

おじさん「そこでなんですが、ここの近くに昔動物を飼育するのに使っていた場所があるんですよ。あなたさえ良ければ使ってもらっても構わないのですが」

そういや初めて会った時に色々生き物を飼ってたって言ってたな。爬虫類がなんとか…。

いい話だとは思うが、正直少し迷った。おじさんは目上の人間ではあるが、共通の趣味を持った知り合いといった間柄であるから借りを作ってしまうと
今後の付き合いがやりにくい。しかしおじさんも今日のお礼の意味でこの話を持ちかけてきたのだとしたら、彼の方も俺に借りを作りたく無かったという事で納得がいく。

男「今日のお礼という事ですか?」

おじさん「そう受け取ってもらっても構いません」

そういう事ならありがたく受けた方がお互いにスッキリするだろう。

男「わかりました。良ければ使わせて下さい」

おじさん「受けてくれますか。使わないでいると朽ちていく一方ですので助かりますよ。では早速案内します…とその前にアライちゃんの前にカメラをセットしておきましょう」

作業場からカメラを取ってきたおじさんに付いていくと、

アライちゃん「ひっ、ひとしゃん!めがしゃめたらアライしゃんがきにくっついてうごけないのだ!アライしゃんをたすけるのだあああ!!」

おじさん「しばらく何事も起きなかったらそのうち助けてあげるよ」

アライちゃん「アライしゃんになにかあったらどうするのだ!いますぐたすけるのだあ!アライしゃんのいうことをきくのだあー!!

しゃっきアライしゃんのかわいいしっぽをふんだのはゆるしてやるからあーーーっ!!」

なんかさっきよりも態度がでかくなってるな。自分の方が高い位置にいるから偉くなったとでも思っているのか?
カメラをセットし終えたおじさんが背を向けて戻ろうとすると、

アライちゃん「ひとしゃんーーーっ!いっちゃだめーーーっ!あっ、そっちのひとしゃんでもいいのだ!アライしゃんをたすけしゃせてあげるのだ!!」

この耳をつんざく声が響くと痛めつけてやりたい気持ちが湧いてくるが、成り行きに任せてみるのも面白そうだ。
アライちゃんの嘆願…いや命令を無視し、男とおじさんは各々の車に乗り込んだ。

―――――――――――――――

作業場から車で十五分位の場所にその建物はあった。トタン屋根の平屋といったおじさんの作業場とほぼ変わらない外観だが、しばらく放置されていたせいか壁は薄汚れている。
しかし建物の周りの雑草はきれいに刈り込まれており、最近手入れされたものである事がわかる。おじさんがドアの鍵を開けて入っていったので付いていった。

中も特にこれといった特徴は無く、壁際にいくつかのスチールラックと水槽が残っている他には何も無い部屋だった。

おじさん「電気と水道は通っているのでご自由にどうぞ。あんまり使われすぎると困ってしまいますがね」

男「気をつけますよ…といいますか光熱費は自分で払いますが」

おじさん「知り合い同士でお金のやり取りをするのは性に合わないので気にしないでいいですよ。では鍵を渡しておきますので後は好きに使って下さい」

男「ありがとうございます。それとさっきのアライちゃん、何か面白いものが撮れたら私にも見せてもらっていいですか?」

おじさん「それは勿論。何か撮れたらデータを送りますよ。では私は戻りますがカトウさんはどうします?」

男「私は少しここに残ってから帰ります」

おじさん「そうですか。では私はこれで失礼…またそのうち食事かなんかでも」

おじさんが車に乗って去るのを見送った後、男は建物に戻った。ここを使うのはどうしても家でやりにくい事をする時だけにしよう。
とりあえずイスと机だけは用意しておいた方がいいな。後は自宅に帰ってから必要な物をじっくり考える事にするか…しばらく楽しみが増えて仕事にも力が入れられそうだ。


続く

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