【艦これ】五十鈴「何それ?」 提督「ロードバイクだ」【2スレ目】(359)


※深海棲艦と仮初の和平を以て平和になった世界観における、とある鎮守府での一コマを描くほのぼの系

 艦娘がロードバイクに乗るだけのお話

 実在のメーカーも出てきます

 基本差別はしません

 メーカーアンチはシカトでよろしく


※以下ご都合主義
・小柄な駆逐艦や他艦種の一部艦娘もフツーに乗ったりする(本来適正サイズがないモデルにも適正サイズがあると捏造)
・大会のレギュレーション(特に自転車重量の下限設定)としては失格のバイクパーツ構成(※軽すぎると大会では出場できなかったりする)
・一部艦娘達が修羅道至高天
・亀更新

上記のことは認めないという方はバック推奨。
また、上記のことはOK、もしくは「規定とかサイズとかなぁにそれぇ」って方は読み進めても大丈夫です


【前スレ】

【艦これ】長良「なんですかそれ?」 提督「ロードバイクだ」
【艦これ】長良「なんですかそれ?」 提督「ロードバイクだ」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1454251122/)


https://www.youtube.com/watch?v=N9j9oP92nA0

陽炎型のロードバイクの続きー、はーじめーるよー


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陽炎型駆逐艦:谷風

【脚質】:オールラウンダー/ダウンヒラー

 ―――おっしゃああああああ!! 谷風ッ、出るよぉッ!!

 自称するだけあって本当にすばしっこい。スプリントもイケるオールラウンダーで、反射神経という点においては、鎮守府最速タイ。そう、島風とタメを張るのだ。
 が、いかんせん駆逐艦内では特に小柄な部類で体重が軽すぎるため、スプリンターとしての爆発力はあっても持続力×。
 反射神経に対して瞬発の持続力が追いついていないため、スプリントで同時発射しても島風よりはずっと遅い。つーか谷風が規格外なら、島風は次元外である。
 反射神経の高さはアタック潰しにも通じるため、敵チームのアタックを潰すのが実に上手い。
 脚質とは異なるが、際立って下り坂に強い選手をダウンヒラーという。谷風自身の脚質はその名と裏腹に万能型。(谷風とは谷に沿って山に吹き上がる風の意)
 だが谷風の本領はコーナーリングの切れ味とバイクコントロール、そして下り坂におけるクソ度胸と動体視力、そして反応速度にこそある。
 以後鎮守府において語り草となる谷風伝説の幕開けであった(※谷風伝説については後々別記載)
 レースにおける下り坂では、背後に敵選手がいた場合、積極的に後続を落車させにかかる容赦のなさがある。
 下りを含んだ山岳コースだと雪風相手でも充分に勝ち目があるという時点でもう色々お察しである。
 凄まじい下りへの執念からまさかの異名が付き、誰が呼んだか『谷風の逆落とし』とか『渓谷の鬼風』。下り坂においては間違いなく鎮守府最強であり、

 ――――最恐である。

 後に合流する『とある改白露型駆逐艦』が好敵手となる。あ、こいつら名前からしてある意味同類だ。


【使用バイク】:NEALPRYDE DIABLO Blue/White carbon
 新西蘭(ニュージーランド)の「にぃるぷらいど」の「でぃあぶろ」ってんだ。どうも横文字は読みにくいったらないねぇ。
 提督が選んでくれた自転車さぁ! ところで『でぃあぶろ』ってどういう意味なんだい?
 ま、いいか。こんぽはかんぱだよ。しまののガチッと止まるヤツよか、
 かんぱのヌルッと利くぶれぇきが速さを調整しやすくてね、性に合ってんだ!
 んでこの『ふれえむ』がまたいい! すっげえ固くてキビキビ反応するから、
 りずむに乗って坂を登る谷風さんの乗り方と実に合うんだなぁ。下りは下りでいい反応するしさぁ―――かぁぶで後輪が良く滑るんだマジで。
 お、提督! 昼飯は天丼を食べに行くってかい? そいつは旨そうだね!
 早く食いに行こうか! え? 下りはゆっくり走れ? もしくは先頭で行って降りきったところで待ってろ?

 …………ぬぁんで?

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野分(言葉の端々に狂気が滲み出てる……!!)

舞風(流石に無理だよ……? あくまで舞風はバイクをコントロールするのが得意なの……滑るのは既に『コントロールを逸している』と思う)

親潮(え? す、滑る? 下り坂のカーブで? こ、後輪が? え? え?)ゴクリ

黒潮(アカン……アカンやつがアカンやつに乗っとるってのは分かる……ディ、ディアブロって、確かスペイン語で……)


 ――――〝悪魔〟である。


提督(なお三日月もこのロードバイクにやたら興味を示していたが、別のロードバイクに誘導した。さりげなくな。内心冷や汗ダラッダラのドバドバだった)

秋雲(提督ぐう有能)


 シャレにならないダウンヒラーである。


提督「ちなみに谷風にせよ島風にせよ、個人タイムトライアル(個人TT)が苦手だ。なんでだと思う?」

不知火「何故です? 谷風や島風以上の反応速度を持つ者など……」

提督「その反応速度が問題だ。呆れた理由だぞ――――フライングだ」

陽炎「は?」

提督「神経系の構造上、人類の反応速度の限界点はおよそ0.12秒。だが谷風はスタートのピストルに0.08秒で反応する」


野分「え………え? それは、フライングなのですか?」

提督「フライングになる。0.12秒より速く反応しちまうと、科学的見地から見ればフライングになってしまうわけだ。

   本人がちゃんと音の後に反応したと言っても限界突破してる時点でアウト」

提督「島風といい谷風といい、二人そろっておっそろしく勘もいいからその気になればピタリ合わせることもできるらしい」

舞風「」

提督「反応できるのにわざわざゆっくり出なきゃいけないのがストレスで、やる気が萎えて好きじゃないんだと」

野分(私の姉は化け物ですか……!?)ゾッ

雪風「う、うわあ」


 雪風もドン引きであるが、雪風はヒルクライムにおいては誰よりも化け物なのでどっちもどっちだ。


谷風「?」キョトン


 目の前で拳銃ぶっぱしても軽く回避するのが当鎮守府の谷風。ガンダム・バルバトスのような奴である。ミカ? それは三日月だ。三日月もマジヤベー。

 恐怖を押し殺して勇気で下り坂を下るのではない。そもそもこれっぽっちも怖いと思ってないマジキチタイプの化け物。恐怖を振りまく存在で、決して尊敬されない。

 大戦時、雪風と同じく、ここ二年ほどは実戦において一度の被弾も経験していない。なお後方支援とかではなく、ガチの前線で敵の集中砲火の嵐の中で、である。


 演習時に直撃弾を当てたことがあるのは島風、夕立、綾波、雪風、時雨、高波、霞だけ。なお時雨と高波はまぐれ。あ、当たった。当たったかもです!?

 夕立をして「谷風は五感全部を使って索敵してるっぽい。ただでさえ反応速度がヤバいのに、感覚が鋭すぎて背後からの砲弾すら避けるっぽい! あんなのズルい!」とブー垂れるほど。

 ちょっと気合入れるとすべての物質の運動が止まって見えるとかなんとか。光速のインパルス。頭の中で警鐘が鳴った次の瞬間には体が勝手に最適の動作を取っているという天才+野生型。

 言ってみればもしも雪風がスプリント能力を持つオールラウンダーだったら、というのを体現している。

 五十鈴と多摩をミックスしたような、味方にとっては実に頼もしく、敵にとっては無駄玉撃たせる上に放置することもできない厄介な相手。

 余談だが卓球がクソ強い。少なくとも鎮守府内の駆逐艦でいい勝負ができるのは島風ぐらい。



提督「こちょこちょこちょこちょ」

谷風「みぎゃああああきゃああああああはははははは!!! ちょ、ちょっと、やめなってぇえええ、いいこだからぁ!!」

提督「俺が戸棚に隠しておいたとっときの羊羹、勝手に食ったろ」コチョコチョ

谷風「ご、ごめんってえええええあははははは、やめ、やめぇwwwwwこ、このっ!」コチョチョチョチョ

提督「ぶわはははwwwwwちょwwwwてめえwwwwなにしやがるwwww」

陽炎「ガキかあんたら」


 なおくすぐりに弱いもよう。


※提督のことは洒落の分かる小粋でイナセな若者だと思ってる勢。おばちゃんか! 将棋仲間でもあり、結構強い。

 なお下りに強い艦娘は他にもいるが、谷風=サンには遥かに劣る。山キチの雪風といい、スプリンターやTTスペシャリストの多い陽炎型は癖が強い特化型ばかり。

 島風ですら「下り坂では谷風に勝てない」と断言するレベル。ありえねー。

 具体的に言うと歴戦の戦艦や重巡、空母があっさり心を折られるほどで、同じくダウンヒルにそこそこ強い五十鈴、木曾、能代、夕立も顔面蒼白になる。

 例外的に伊勢・日向は奮戦するが、こいつらも谷風=サンと同類。物理限界を突破したおぞましい走行を見せるが、悲しいかな下位互換。

 そんな彼女らをして谷風に下りでついていこうとしたら死ぬ、と確信するレベルで次元が違う


谷風「でも、下り方を教えてくれたのって提督だよ?」

提督「――――」ダッ

陽炎「待ちなさい司令! あんたのせいか!! あんたのせいか!!」

提督「俺は悪くない!! まさか完璧に覚えるなんて思ってなかったんだ! 俺は悪くねえ! 俺は悪くねえっ!!」

磯風「いや、流石に今回ばかりは司令が悪いと思うぞ」

不知火「谷風の度胸というか、思い切りの良さは司令も知ってるでしょう!? 待ちなさい!!」


 俺は悪くねえと叫ぶ提督は、勝利のストーリーライターとして優秀なようですが、勝った後のことは考えないタイプのようです。

 というかダウンヒルで教えたことを渇いたスポンジが水を吸うかの如く吸収する谷風に、つい楽しくなって教え過ぎた結果がこれよ。


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陽炎型駆逐艦:野分

【脚質】:不明(提督の見立てでは限りなくオールラウンダーに近い持久型)

 ――――さ、行こう。舞風!

 ポタリング派と言い張る。「おまえらのようなポタリング派がいてたまるか!」という提督の叫びを否定する艦娘はいなかった。
 舞風には及ばないものの、曲乗りが得意。バランス感覚に優れ、体幹がしっかりしている
 ロードバイクの使用目的はポタリング(自転車でぶらぶらと散策)
 ロードバイク云々より、舞風らと一緒に遊べるのが純粋に楽しい様だ
 休日には舞風・萩風・嵐と共にポタリングしつつ、喫茶店で女子会するのが習慣となった

【使用バイク】:ORBEA ORCA AVANT OMP B1(Carbon Blue)
 オルベアはオルカ・アヴァンOMPです。カンパレコード仕様に乗せ換えました。やはりカンパはスピードコントロールがやりやすいですね。
 レースより日常的に走りを楽しむための性能を求めたということもありますが、いいものです。
 と言っても、やっぱり速い方が嬉しいですし、公道における悪路やストップアンドゴーの多いルート、将来的にレースに参加することも考慮して、
 充分な性能を備えたものにさせていただきました。
 ……はい! 舞風とは色違いの御揃いなんですよ、ふふっ。司令、素敵なプレゼント、ありがとうございます!
 あら、お昼は天丼ですか? うう、その、実は昨日、鳳翔さんのところでてんぷらを食べてしまって……。
 い、いえ、すいません! 野分のことはお気になさら……え? 牛ステーキ丼や海鮮丼もある?
 しかも凄くおいしい? そ、それ本当に天丼屋さんなんでしょうか。
 なんにしても、いいですねぇ、ビフテキ丼! 行きましょ、司令!

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提督「好きなプロレーサーは?」

野分「ヴィットリオ・ブルモッティです」

舞風「ブルモッティ!! サガンもかっこいいよね!!」

嵐「知ってた」

萩風「知ってました」

提督「絶対言うと思ったよ」


 ブルモッティ。バランス感覚最強のロードバイク選手――――と書くと色物っぽいがナメてはいけない。

 元バイクトライアルの世界王者でもあり、更にはギネス記録の保持者である。実際スゴイから動画で検索してみるのをオススメする。

 サガン。言わずと知れたワールドチャンピオン。ゴール後に片手でウィリーするなど、非常にバランス感覚に優れたスプリンター選手。ルックスもイケメンだ。

 某動画サイトではどんなコースでもやたらサガン向けコースとか言われる風潮がある。


提督「スゲーよ。ブルモッティ、スゲーよ。スゲーのは認めるよ。だがどうしてあの地形でベストを尽くそうと思った?」

磯風「大丈夫だ司令。その感覚は正常だ」


 よくわからない人は「ブルモッティ ロードバイク」とかでググッて一度は観てみるがよろし。「ヒュンッ」ってするから。


※のわっち可愛いよのわっちー。いいよー、すごくいいよー。(小北上感)

 大好きな舞風に優しくしてくれる提督のことが大好き、という理屈のおかしさを最近自覚しつつある。

 己の思いを整理して組み立て直した時に出た答えを直視したら、提督に対する態度がかなり乙女になってくるという噂。

 ラブ的な意味で。別に少女革命的な百合の花は咲かない。


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陽炎型駆逐艦:嵐

【脚質】:TTスペシャリスト

 ―――陽炎型駆逐艦・嵐!! まかり通るぜ!!

 瞬間的な加速力は劣るものの、高速域を維持する能力が陽炎型の中では極めて高い。平地のタイムトライアルにおいて陽炎型では浜風と並び双璧
 浜風に比べ、僅かに最高速と加速力に勝るため、比較的距離の短いTTコースでは浜風に対する勝率は高い。
 かなり要領が悪いタイプで本人も自覚しているが、青春ド根性そのままに努力できるタイプ。
 今後はひたすら場数をこなしてペース配分と勝負勘を磨く心算でいるようだ。
 本人はバリバリのレース嗜好だが、それはそれとして舞風らとポタリングするのは別腹。
 今度、第四駆逐隊と提督の五人で、温泉街まで日帰りロングライドの予定を立てており、とても楽しみにしている。
 目下の目標は朝潮型の荒潮。あいつは平地のロングコースにおける駆逐艦娘のラスボスだから死なない程度に頑張んなさいネーとは提督の言。

【使用バイク】:BOTTECCHIA EMME 695 MATT CARBON
 記念すべき第一回ツール・ド・フランス初優勝を飾ったイタリア人にして、
 史上初めて全ステージでマイヨジョーヌを守り抜いたオッタビオ!
 ……とコラボレーションした名門ブランド・ボッテキアのフラッグシップ、エメ695だ。
 カンパのスパレコ組だぜ。やっぱ機械組だよ、変速がすっげえ気持ちいいんだ!
 ブラケットも握りやすし最高だぜ。あ? 性能はレコードと同じだって? そ、そんなことねえって。
 スプリントじゃまだ陽炎ねえには勝てないけど、すぐに追いついて嵐を巻き起こしてやるぜ! 見てなぁ!
 んぁ? 天丼食いに行くのか。ヘヘッ、じゃあ食った分、またガッツリ走らねえとな!

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提督「スパレコはプロでもほとんど趣味の領域。性能変わらず重さほとんど変わらず、素材の強度的な問題からレコード使うプロもいるぐらい」

嵐「なんだって!?」

提督「カンパの迷走っぷりは今に始まったことじゃないから(震え声)」

嵐「こっち向いていえよぉおおおおお!!! い、いいじゃねえか! カンパは見た目カッコイイだろ!? なぁ!?」

提督「2015年以降はクランクがカブトガニに……シマノに、追いつきましたね(邪笑)」ボソッ

嵐「い、言うなぁああああああ!!! おまえ意地悪だな司令!?」ウワアアアア

萩風「あ、あわわ、と、止めた方がいいんでしょうか?」

陽炎「別にいーんじゃないの? かくいう提督だってカンパもシマノも好きだし……(弄り方が天津風の弄り方に似てるし)」

不知火「提督の親睦の深め方ですよ」

雪風「雪風、あれはやられたことないですよ? しれぇはいっつも、すごくやさしい人ですよ? ねえ、舞風、野分?」

舞風「うん? 優しいって言うか、提督ってばノリがいいし、楽しい人だよ?」

野分「え? 私は優しい人だと思うけれど……私たちに色々と差し入れしてくれるし、気の利く方よ?」

時津風「へぁ? 優しいとか気が利くとか、そんなんじゃないでしょー? しれえは面倒見がいいって言うか、付き合いのいい人じゃん、ねえ?」

雪風「あれ?」

舞風「んん?」


不知火「提督は相手によってコミュニケーション方法を色々変えてますので。そうでもなければ百名以上の艦娘から、一定の評価を得ることはできません」

谷風「落語とか将棋とか、いろいろオススメしてもらったっけなぁ……あ、そうそう、弄られと言えば、嵐が来る前は天津風が弄られる子の筆頭だったねえ」

天津風「…………」ムカッ

磯風(? 弄られなくなったのだろう? あんなに嫌がっていたのに……どうして天津風は不機嫌そうなのだ?)ヒソヒソ

浜風(いや、その、実は嫌がってなかったんですよ。ポーズです、ポーズ……弄られるのは嫌っていう素振りを見せてた分、素直になれずジェラシー感じてるのでは?)ヒソヒソ

浦風(めんどくさい子やねぇ)ヒソヒソ

天津風「聞こえてるわよアンタたち?」ピキピキ

陽炎「天津風来る前は不知火や初風が散々弄られまくってたわよねえ。あれー、そういえば天津風に構うようになって偉く御立腹だった子がいたような……?」ニヒヒ

初風「………そ、そんな子がいたの? し、知らないわね、ねえ、不知火?」

不知火「ぬ、ぬい………そ、そうね? 忘れたわ」プイッ

提督「フィジークのアリオネはいいよな。見た目もこう、シュッとしてていかにも速そうだしな」

嵐「! 分かる! 分かってんじゃねえか提督!! アレってポジショニング変えやすいから好きだよ!」

萩風(あ、意気投合してる)


 提督はいつもこんな感じで、新参の艦娘達と仲良しになっていくのであった。


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陽炎型駆逐艦:萩風

【脚質】:なし(ロングライド派。ランドヌーズ)

 ――――もっと、みんなで広い世界に。

 瞬発力はないが、持久力に優れ、一定ペースで走るのなら何時間でも延々走り続けられるタイプ。
 不得意というものがないが、別段特化しているものもない。ギアを最後まで売り飛ばさずに走れる当たり、結構剛脚なのかもしれない。
 当初は変速時にチェーンが外れるアクシデントが多発したが、すぐに変速のコツを掴んだ模様。
 山も好きだし平地も好きだし下り坂も好き。
 とにかく風景の移り変わりを見ながら、風を感じて走るのが好きという、自転車本来の魅力を味わう楽しみ方をする。
 遠出して温泉に行って帰ってくるというアクティブさも持ち合わせる。

【使用バイク】:VAN NICHOLAS ASTRAEUS
 21世紀初頭にオランダで生まれた若きブランド、ヴァン・ニコラスのチタンバイクです。
 鎮守府は海沿いだし、少し錆が怖くて……みんな手入れが大変なの。だけどびっくり、チタンは腐食に強くて、なんと錆びないんです。
 といっても部品は交換しなきゃいけないし、カーボンよりは重いし、焼き付きなどのトラブルもあるけれど……。
 なんといってもヴァン・ニコラスはチタン専門のブランドですから、その品質も素晴らしいんですよ。
 癖が少なくて乗りやすいんですよ。ぴかぴかの銀色もお気に入りです。
 提督が仰るには、チタンバイクは振動吸収性能?……が割と高くて、金属疲労による劣化が少ないチタン特性から、
 長い期間、長距離をゆっくり走るにはもってこいのバイクだって……一生物の逸品なんですよ、ふふっ。
 毎週末の休暇には、第四駆逐隊でのんびりポタリングして、女子会するんです!
 あ、私、レースはあまり………ううん、観戦するのは大好きですよ! いっぱい声出して応援しちゃいます!
 あら、天丼を食べに? てんぷら定食も美味しい、提督おすすめのお店なんですか?
 はい、御馳走になります!

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提督「おお……! 見たことないタイプ! いいなー! やっぱチタンいいなー! オランダバイクいいなー!!」キラキラ

嵐「お? 司令もオランダバイク好きなのか。俺もイタリアンかオランダか迷ったんだよな」

提督「超好き。コガもニールプライドもトップチューブに乾電池を縦列駐車させてんのかってデザインのバンムーフも好き」

陽炎「バンムーフ? 乾電池? ちょっと興味あるわね………」ポチポチ

野分「ば、ん、むー、ふ、と……」←陽炎と同じくスマホ検索中

陽炎「ぶはっ!? ぶははははwwwww乾電池の、じゅ、縦列駐車wwwww」

野分「ぶ、ぷふっ……こ、これは、確かに乾電池ですね……」

提督「まあ初見だと笑えるデザインだろうが、これがなかなか性能がいいんだぜ。カジュアルな服装には意外とマッチする。近未来的っていうかさ」

萩風「ふふ、これはこれで面白いバイクですね、司令」

提督「でもちょっと意外だ。萩風はおしゃれ好きだから、もっとこう、クラシカルでデザイン性に富んだヤツを選ぶものかと」

萩風「あはは、ちょっと渋いですか? でも、これはこれで大人っぽい味わいがあっていいと思ったんです」

提督「―――訂正。俺が思ってたより、萩風はずっと大人だな」

萩風「っ、あ、は、はいっ!! あ、じゃなくて、えと、あ、ありがとうございます……?」

提督「それ、乗り心地どうなんだ? 聞かせてくれよ」

萩風「きょ、興味がおありですか? えっと、ではその……」


黒潮「司令はん、おしゃべり好きな萩風の嗜好をよう理解しとるな」

天津風「あれを御機嫌取りとかの打算はなくてやってるから始末に置けないのよ」フン

初風「本当それよ。女ったらし」フン

提督(部下と色々交流深めにゃ色んな意味でアカン提督業の難しさに対して、陽炎型は理解が低かとです……)

萩風「……でね、聞いて聞いて、司令。それでね、あのね……♪」ニコニコ


※中々にマイナーなバイクチョイスであるが、提督は嫌いじゃない。むしろ好き。

 ハンドメイドポリッシュ仕上げの非常に美しいバイク。シートステーのエロさが異常、とは明石の言。

 他者と被りたくない! とか、長く乗れるバイクが欲しい! って方には非常にお勧めできるバイク。乗り心地が素敵。

 何気に体力の鬼で、那珂や羽黒のインターバル皆無な殺人的日帰り旅行にも鼻歌混じりでついていける。川内曰く「嵐と同じく逸材」だとか。

 実は嵐は提督に恋してる勢。萩風はその恋を応援する勢だが、提督の艦隊指揮への悪影響という憂慮も分かってるので板挟みされてる勢とも言える。

 川内が苦手。夜戦は克服したとはいえ進んで夜戦はしたくない。当たり前だ。

 嵐と同日に着任したため、まだまだ新参。自由闊達な当鎮守府の空気がお気に入りのようである。

 漣にスイーツ作りを教わったり、鳳翔・磯波達に和食を習ったり、利根・谷風に将棋、舞風に踊りと、色んなことに興味津々。

 提督とお喋りして嵐の恋の勝機を探りつつ、自他ともに認める多趣味な提督に楽しいことを教わって一石二鳥。なかなか強か。非常に充実しているらしい。


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陽炎型駆逐艦:舞風

【脚質】:不明(高い瞬発力と持久力を備えていることは一目瞭然)

 ――――てーとく! 舞風と一緒に、サイクリングにいこ! そーれ、わんつー!

 ウィリーやダニエルジャンプ、果ては逆立ちまでやってのける、明らかに機材も競技も間違えている乗り方が悪魔染みて上手い
 鎮守府内ではバランス感覚最強で、後に野分・そして『とある初春型駆逐艦』と共に鎮守府内でライディングテクニックの講師を務める。
 スタンディングスティル(ストップ状態からペダルに両足を乗せたまま静止するスキル)を始めとした実戦的な教室で、非常に評価が高い。
 ここでは重巡も空母も戦艦も、彼女たちの生徒である。鼻高々。
 レースに参加することは稀であるが、記念参加勢の癖にまさかの『空渡り』という異名持ち
 教え方が上手く、特に信号待ちなどでは重宝されるスタンディングスティルのやり方は、舞風が教えて習得できなかった人は皆無だとか
 だけどロードバイクでダニエルジャンプとか段差越えは無理とは言わんが危険ですのでやめましょう。大和型とか長門型は特に。やめろフレームが逝く。
 それと野分、のわっち叫びながらのウルトラマン乗りはやめろ腹筋が壊れる。
 その後、野分の爆笑必至の持ちネタとして、のわっち乗りが野分の心のスロットに装備されることとなる。
 高い瞬発力と同時に持久力も持ち合わせているようで、BMXやシクロクロスなどでは相当活躍できると思われるが、
 ロードバイクでのレースにはさほど関心がないもよう。自転車に乗って色々とアクロバティックをカマすのは凄く好き。
 レース時はもっぱら観戦派であり、野分・萩風と共に嵐の応援に精を出すようだ
 なお谷風伝説の全ての元凶は、実は提督のみならず舞風にもある。
 その気になれば舞風にも同じことができるともっぱらの噂。下り坂に舞う悪魔と化す日が来るのか。


【使用バイク】:ORBEA ORCA AVANT OMP BA(Carbon Orange)
 舞風のバイクは、スペインのオルベア、オルカ・アヴァンOMPだよー! 素敵なオレンジ色のバイクでしょ!
 のわっちとは色違いの同じヤツなんだー、えっへっへぇ。コンポも同じカンパレコードに乗せ換えてるんだよ。
 うん、良い反応するバイクだね。提督、今度一緒に走ろうね! 踊ってもいいよ!
 ふぇ? あー、うん。踊りをしてるからかな。バランス感覚はちょーっと自信アリですよ。
 ほら、両手放しで静止ー! かーらーのー、ジャーンプ!! えっへへ、ちょっとしたもんでしょ?
 踊った後は、とってもお腹が空くけど、ロードバイクの後はもっとすくねー………お昼なにかなぁ。
 え、寄り道? ここ、天丼屋さん? わぁ、舞風、天丼大好きだよ! もちろん天丼で!
 えっ、近くに牧場もあるの? できたてのジェラート!? それも食べたい!! ありがと!!

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舞風「そーれ、わんつー!」ジャッ、クルンッ、クルクル

提督(スキッドから180度ターンして、そのままウィリーかよ……しかも膝で巧いこと衝撃を殺してる。バイクコントロールだけなら、鎮守府イチじゃないか、これ?)


 なお提督のこの認識は、後にやや修正されるもよう。具体的には『とある初春型駆逐艦』と『とある軽空母』によって。


舞風「こんな感じー? 自転車って楽しいねー!」ニコニコ

提督「そういう乗り方じゃ……ま、まぁいいか(今度トライアルバイクやMTBも買ってやろうかな。俺も久々に乗りたいし)」


 提督は元々そっちの競技からロードバイクに入ったため、バランス感覚が並ではない。並ではないが、相手が悪い。舞風や野分は異常の乗倍である。

 舞風は正しくバランス感覚最強の駆逐艦。強風が荒れ狂う中に張られた1センチ幅のロープ上を全力疾走できるレベル。

 レースに参加しない=出番少ないというわけではない。提督は面白くてノリのいい兄ちゃん的存在。たまにジョジョの5部よろしく、提督・野分と一緒に音楽に合わせてズッダンする。


舞風「あはは、てーとくってばリズム感良いねー! でも踊りはへたくそー! あははは!」

提督「ぐぬぬ」

野分「は、張り合わないでください、司令」


 提督のことが大好きな舞風。ずっとずっと、みんなで一緒にいれたらいいね、と思ってる。


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陽炎型駆逐艦:秋雲

 脚質:オールラウンダー

 ――――描きたいものは、今しか描けなかったんだよ。だから……。

 本当は木炭のように脆い心を、ダイヤよりも固く鋼よりも柔軟な鎧で覆う駆逐艦。
 ことエースのサポートにかけては駆逐艦内のデウス・エクス・マキナ的な存在。
 オールラウンダーの万能性を持ちながら、秋雲にとってはそれはあくまでも土台でしかない。
 本領も本分も本懐も軍艦であり、そして絵描きである。故にロードバイクでは己の勝利にこだわらないエンジョイ勢。
 だがその経験は正しくロードバイクに活かされている。

 見たいものだけを見てきたわけではない。描きたいものだけを描いてきたわけではない。好きなことだけをしてきたわけではない。

 チャラけているようで誰より真剣に日々を過ごしてきたことは、陽炎型では初風と雪風が、秋雲型では巻雲と風雲がよく知っている。
 ポスト提督と一部で言われるほどに多方面で才能を発揮するマルチプレイヤーが、この秋雲であった。
 しかし決して『天才ではない』。
 それ故に艦娘達は秋雲を高く評価している。
 観察力が高いのは雪風も同様だが、雪風の観察力はあくまでも己の内側で完結したもので、それを言語化する術を持たない。
 だが秋雲は違う。その『活かし方』においては秋雲の方が圧倒的に上であった。

【脚質および使用バイク】:???

 どんなバイクくれるのかなぁ。楽しみだね~♪

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※どすけべ。不健全? そういう年頃だから健全だ、いいね? むしろ一切興味がないのは不健全である。

 エロいことに興味津々勢で、まんざらでもない提督にそういうこと教えてもらえたらラッキーとか妄想すると頗る勢。

 結構意味深な事を言って提督をからかうように誘うが、顔に出ないだけで実は心臓バクバク。朝霜も似たような感じだが、朝霜はもう少しマイルドムッツリ。

 たまに巻雲や朝霜をからかって遊ぶ。同じムッツリ系の巻雲・朝霜・漣・秋津洲・大鯨(今は龍鳳)は同人仲間。

 大戦時にイタリア遠征へ同行し、イタリア提督にデッサンや絵画技法を学んだため、絵がメチャクチャうまい上に速い。

 ネームはアナログ。通れば速攻でデジタルで仕上げる。二年前に商業デビューを果たし、現在は月間連載一本を持つ。ペンネームは『雲井秋水』。性別不明。

 タイトルは『クソ提督の艦隊これくしょん』。主人公クソ提督。ヒロインは現在不明(やたら赤城・加賀・龍驤・雪風の出番多め)。

 クソ提督の着任からの鎮守府運営を描いた、日常系ギャグマンガである。

 無駄に画力の高い変顔をする下種い提督、純粋無垢で外道な提督をなぜか尊敬している雪風と、頻繁に提督を裏切って亡き者にしようとする赤城・加賀コンビの心理戦、常識人枠で弄られキャラの龍驤、センスの高いセリフ回しに定評がある。

 雪風以外の陽炎型の出番が少ないのは描いている人の事情から。仮に姉らを登場させてヨゴレ扱いした日には殺される。かといって出したら汚さずにはいられないという呆れたサガを持つ。

 巻頭カラー8ページ+原稿42ページを五日で上げる。原稿を落とすことは許されない。プロ意識高い。下書きしない。自分のために漫画を描いている。岸部露伴か貴様は。

 鎮守府の駆逐艦では何気に一番金持ちだったりする。

 提督のことは好きではあるが肉欲的な意味でもある。秋雲曰く「あの人のウエストライン超エロい」。腰フェチ。く、腐ってやがる。


 んあ? あ、ここが天丼屋さん? あんま天丼って気分じゃないんだけどなぁ。まあいっか。うどんとかあるでしょ。多分。

 おー、囲炉裏がある。趣深いところだね。あはは、谷風や萩風は好きねぇ、こういうの。せっかくだしスケッチ……分かりましたよ、注文してからね?

 どれどれ、メニューは………ん? 牛ステーキ丼? 海鮮丼? なにゆえに………え? どっちも凄く美味しいの? ラッキー!

 んじゃー秋雲は~……え? 特盛だけは頼んじゃだめ? いや、頼まないけど。駆逐艦よ、私たちゃ。並にしとくよ。何? 提督ってひょっとしてケチんぼ?

 ……んー、牛ステーキ丼か、海鮮丼か……悩むけど、秋雲は牛ステーキ丼で!! お、野分もステーキ丼? ははん、舞風と半分こだね?

 提督は海鮮丼か。いいね、提督は秋雲さんと半分こしな~い? いいの~? やったぁ、これで食べ比べできるね!

 ……え、なんで不知火姉ちゃんは秋雲を睨むのよ? 怖いよ? やめてくれる? マジで。

 島風ちんよぉー、おっそーい言い過ぎ。お店に失礼じゃ……お、来た……って、デカッ!? デカいねこの天丼!? これ、本当に普通サイズ?

 あ、大盛なんだそれ。誰がそれ――――あ、言わなくていいよ。もう分かったから。時津風が「うそ、んなバカな」って顔してるし。

 あー、そういう店かぁ……アレだよ、大盛を頼んだらいけない類の店。ん? いや、牛ステーキ丼は大盛がそもそもメニューにないし。お、来た。

 ま、とにかくいただきまーす。味は……うわ、牛肉柔らかジューシー。醤油ベースの甘い玉ねぎタレがまたいいね。んまい。んまいよこれ。

 タレの染みたふっくらご飯がまた……うん、こりゃ大盛入らないわ。並で十分な量だね。けど、こんだけうまいと案外食べきれそう。このお味でこのお値段はヘタなステーキ屋行くよりいいわぁ。

 提督が作ってくれるヤツもおいしーけど、提督って薄味好きだよねぇ。旨み重視っつーか、素材の味重視っていうか……いやいや、好きだよん? よく噛んで食べるよーになったし。


 流石は提督推しのお店だね……っと、提督。海鮮丼とそろそろ交換……ん? どしたの不知火姉ちゃん。顔色悪いよ?

 え? 不知火姉ちゃん特大頼んだの!? マジで? 提督やめろって言ってたじゃん!

 は? こっそり頼んだ? 落ち度しかねえ! キャンセル? もう遅いっしょ。だってほらぁ、来ちゃったみたいだよ?

 ――――うっわなにコレ、戦艦用? 時津風の大盛にしても、重巡が食べる量だってのに。

 いやいや、そんな目で秋雲さんを睨まれても。いやいや涙目で「落ち度でも?」って言われても。

 提督がやめろって言ったのに特盛頼んだ不知火姉ちゃんの落ち度っしょ?

 秋雲さんしーらぬい、じゃなくて、しーらない。


……
………


※萩風はその女子力の高さを発揮し、周囲のお客さんに運ばれる丼サイズからボリュームとカロリーを察し、急遽てんぷら定食をご飯少な目に注文変更。

 安定の雪風もまた危険を直感で察知したのか並から小に注文変更。海鮮丼(小)と時津風の天丼(大)と天津風のステーキ丼と島風のほっけ定食で四等分して食べきったもよう

 結果的に雪風・時津風・天津風・島風は三種の丼物+ほっけをおなかいっぱい食べ比べできて幸せであった。流石は雪風ねーちゃん歪みねえ、とは秋雲の言。

 なお浜風は(大)を頼んだが、普通に堪能したもよう。ダテにバルジはでかくねえってわけね、とは秋雲の言。ショックを受ける浜風。隣で聞いてた磯風に秋雲はチョップを喰らう。

 駆逐艦だと(小)でも十分すぎるほどお腹にたまるサイズ。

 (並)で駆逐艦だとちょっと食べ過ぎ、軽巡・重巡・軽空母満足サイズ。

 (大)から千代田・空母・大鳳・戦艦御用達サイズ。

 特大は赤城・加賀・長門型・大和型が二十杯ぐらい頼んで満足する。金のかかることです。

 上記メンバーおよび他の(並)注文組はご満悦。
 
 が、提督は展開を読んで海鮮丼(小)を注文。

 ラック値が高く、嫌な予感は九割当たる提督であったが、珍しく読み間違える。

 完全に読んでいたなら自分の分は何も注文すべきではなかったのだ。不知火と共に天丼(特盛)に挑む。

 なお不知火は内心で提督と分けっこ(明らかに提督担当分が多い)が出来て内心ガッツポーズ。落ち度などぬい。


提督「特盛には勝てなかったよ………油切れが良くてうまいけど、うまいけど、物量が多すぎる………」ウプ


不知火「し、司令官……!!」

黒潮「不知火はええからさっさと手伝ったりぃ。司令はんの担当分多すぎやろ……受け持ってあげなアカンで」

親潮「そ、そうですよ、不知火姉さん。厳しいことを言うようですが、元はと言えば不知火姉さんの……」

不知火「わ、分かってます。で、でも、こんな……司令官と、このままでは、か、か、か、かん、間接ちぅをして……」

黒潮「乙女プラグインか! そら結構やけど、ほとんど司令はんに食わせるんはどうかと思うで?」

提督「あの燐光めいた輝きは……ここはサーモン海域北方か……? はは、ははははは……よう、レ級……ブチ殺しに来たぜ……死に方選べや……」アバババ

不知火「ぬいッ!? し、司令、しっかり!!」

提督「駆逐艦六隻と侮るなよ……我が艦隊の駆逐艦は、他の鎮守府における標準的な戦艦と遜色なき強さを誇ルールル♪ ルルル♪ ルールル♪ ルルル♪ ルールールールールールルー♪」

秋雲「うおぉ、びくッた!? な、なに!? 唐突に歌いださないでよ!?」

雪風「おひるのテレビにでてくるすごい頭のおばちゃんのお部屋のテーマですか?」モグモグ

天津風「美味しいわね、この海鮮丼……あ、こっちのステーキ丼もいけるじゃない」モグモグ

時津風「いやー、雪風が小さいサイズ頼んでくれて助かったー。おいしいおいしい」モグモグ

島風「天丼も海鮮丼もステーキもほっけもおいひぃ」モグモグ

谷風「自由だねえ、あんたら」

陽炎「ちょ、ちょっと、司令、大丈夫!?」


萩風「お、お気を確かに!」

提督「殺す……殺してやるぞ”レ級”ぅ……おまえはここで”沈む”んだよぅ……この”ソロモン海”でよぅ……」


 !?


親潮(怖い!! 顔が! 怖い!!)

嵐「こ、これヤバいヤツじゃねえか? なんだ、フラッシュバックってやつか?」アワアワ

陽炎「懐かしー、二年前ね。ソロモン海北方に出撃した時よ」

雪風「あー……あの時のしれぇはこわかったです」

天津風「ああ、あの時期ね。取り巻きを昼の内に全部沈められた時のレ級の顔ったらなかったわね」

時津風「セルの完全体に笑えと言われたベジータとか、フリーザ第四形態の圧倒的な力に絶望したベジータとか、とにかくベジータみたいだったよね」

萩風(なにそれ情けない)

嵐(いや、どっちかっつーと……姉貴らがオカシイんじゃねえの?)


提督「おどれとはもう二度と海上で出会うことはないやろ……せやから今言うとく……陽炎型駆逐艦ってのは、こんなもんや」アウアウ


陽炎「あら、この台詞は……いやー、油断だったなぁ、黒潮カッコ良かったねぇ」


黒潮「……ウチと不知火と雪風がブチ切れたときの、ウチの台詞やね。や、恥ずかしいなぁ」

不知火「恥じることなどないものと。あの時の黒潮はとても頼もしかったわ」

雪風「思い出すだけでげきおこちゃんです!」プンプン

初風「あの時の三人は怖かったなあ………陽炎が被弾したのを嗤ったレ級が、二度と笑えなくなったもんね」

秋雲「ありゃしばらく夢に見る恐さだったよマジで」

嵐「そ、そうなのか」

萩風「」


 萩風は違和感に気づいて、顔面蒼白となった――――艦隊は基本、六人がセットである。

 ソロモン海北方へ出撃するにあたり、初風の発言を鑑みれば、少なくとも六人中六人が陽炎型駆逐艦だったということになるが、それの意味するところはつまり、


萩風(駆逐艦六人でソロモン海北方を攻略したってこと、よね?)


 今更ながらに萩風は気づいた。


 ――――この鎮守府は、そういう鎮守府なのだと。


天津風「私と時津風、夕立・文月・綾波・敷波の六人で行ったときにも似たようなことあったっけ」

時津風「あー、あったあったー。敷波が中破してからもー物凄いったらなかったよー。もうレ級ってば轟沈してんのに綾波が魚雷や砲撃全弾バラ撒きまくってさー。オーバーキルってレベルじゃないね、うん、ないない」

天津風「手が付けられないぐらいキレちゃってたもんね。もうあの子一人でいいんじゃないかなって感じだったわ」

萩風「」

親潮「」

嵐「あー……のわっち? オレたち、話に着いていけないんだけど……マジ?」

野分「えらくマジよ。新参の嵐や萩風は知らないのも無理はないけれど……ウチの鎮守府の古参の駆逐艦は、私を含めて誰も彼も似たようなことできるわよ?」

舞風「あたしも戦艦ぐらいならワンパンできるよ」

嵐「戦艦ぐらいっつったかぐらいって!?」

舞風「あ、誤解しないでよね! 戦艦って言っても深海棲艦の戦艦の事だから! うちの戦艦の人たちは絶対無理!!」

嵐「違いが判らねえ」

舞風「いやいや、綾波ちゃんや夕立ちゃんや暁ちゃんは飛行場棲姫とかワンパンするし」

萩風・嵐(ひょっとしてそれはギャグで言っているの(です)か!?)

黒潮「大丈夫、大丈夫やて。そのうち萩風も嵐も同じことできるようになるわぁ。雪風や島風クラスは難しいかもしれんけど、せやな……うちぐらいならなれるで、きっと」

萩風「………色々突っ込みたいんだけどよ、その、なんだ、まず……雪風ってそんなにヤバいの?」


陽炎「っていうか雪風・島風クラスは無理よ。海軍最強になるってことと同義だから」

萩風「えっ」

嵐「えっ」

初風「うん……全く理解できないと思うんだけど……うちの雪風、海軍の中で最強の駆逐艦だからね? 次点が島風」

嵐「!?」ギョッ

萩風「!?」チラッ


天津風「美味しかったわね。ちょっと食べすぎちゃったかも……時津風、もう大盛なんて駄目よ?」メッ

時津風「うー、わかったよ。反省してまーす。反省反省。ありがとね、三人とも」

雪風「ううん、いろいろ食べれて幸せです………はぁ、おなかいっぱいです」ケプ

島風「はー、おいしかった。ごちそーさまー。お食事はゆっくりでもいいねー。はやさはいらないねー」ケプ

天津風「アンタ美味しい料理が出てくるときは大人しく待つわよね」

島風「速くても美味しくなきゃヤだもん」


嵐(アレが海軍の一位と二位の駆逐艦……?)

萩風(た、確かに伝説的な逸話はありますけど……それは史実ですよね? 史実だけの話ですよね?)


初風「なにせ着任から二年目以降は一度も被弾したことないのよ、雪風。実戦でも演習でも。常に最前線にいたのに。一度もね」

谷風「谷風さんも二年目からは実戦だけなら被弾ゼロなんだけどなぁ……雪風は避けるだけじゃなくて、敵の旗艦とかバカスカ沈めるもんなー」

時津風「島風もそうだよ? 一度も被弾したことないよねえ――――雪風との演習以外じゃ、いひひ」

島風「おうっ!? だ、だって、雪風ちゃん速くないのにすっごく射撃うまいんだよー。あんなの避けるの無理ー」

野分「そうだ、今後、雪風と一緒に護衛任務にでも着けてもらったらどうかしら? 稀にはぐれ艦隊と遭遇したらいいもの見れるわよ?」

嵐「い、いいもの?」

野分「敵の砲撃や雷撃はもちろん、敵艦載機もぜーんぶ撃ち落として護衛するから。参考になるわよ」


嵐(見たことはないけどこれだけは間違いなく言える……)

萩風(きっと、次元が違いすぎて参考にならない)


 この一週間後、未だ戦火に激動するヨーロッパ方面へのタンカー護衛の任に雪風・島風と共についた嵐と萩風は、奇跡を見ることになる。

 神通をして「技の百貨店」とすら言わしめた雪風の超絶的な戦闘の引き出しと、砲撃や雷撃の方が避けているのではと錯覚するほどの回避テクニック。

 魚雷の扱いにかけてはその雪風をも上回り、北上すら参考にするという島風の雷撃術と敵艦隊の誘導術。

 曰く「島風ぇ? ああ、あの駆逐………うざい。ちょこまかマジうざい。演習とはいえ当てるの超しんどい。気を抜くとこっちが当てられるし? ほんっと屈辱。あいつと闘るときってすっごく神経使うんだよねー」とのこと。

 これが北上の最大の賛辞であると島風以外の誰もが知っている。


秋雲「秋月型が防空駆逐艦の名が泣くって嘆いてたけど? あの子ら、防空に関しては雪風ねーちゃん以上だから気にしなくてもいいのにねー」

雪風「雪風がいる以上、ぜったいに誰も沈みません!!」キリッ

天津風「頼もしいわね雪風。だけど……ほっぺにご飯粒ついてるわよ?」

雪風「ほあっ」

谷風「あはは、雪風はおちゃめさんだね」

時津風「あたしがとったげるー」ヒョイパク

雪風「えっへへぇ」テレテレ


 なお、雪風。更に強くなる出来事が未来で待ち受けているのだが、この時点では誰一人知る由もなかった。

 さておき、食の暴力にさらされる提督と、追い詰められる不知火の決着であったが、


不知火「クッ………し、死なばもろとも……あなたも一緒よ………黒潮!!」

黒潮「はァ!? ウチ関係あらへんやん!? あんま脂っこいもの、ウチはよう食わ……ちょ、そんなおっきいの(丼の半ばほどに隠れている拳大の掻き揚げ。最後のトラップ)口にはいら―――アッーーーーー!?」

雪風「あーーーっ! 直撃弾です!!」

親潮「く、黒潮さーーーーーん!?」

舞風「南無、黒潮ねーちゃん」ナムナム


野分「これもコラテラルダメージというやつですね。黒潮姉さん、どうか安らかに」ナムナム

初風「鬼かあんたたちは」

浜風「んむ……いいぞいいぞ……あむ……もぐ……こういうのでいいんですよ、こういうので………メロ………」

浦風「ええ味やねぇ、うん……もむ……んぐ……はぐ……ナポ……モニュ……」

磯風「うむ、これはなかなか……はふ……ぱく……もにゅ……ズズ……ガプ……」

浜風・浦風・磯風「「「ごちそうさまでした」」」

初風「あんたら三人は空気読みなさい。というか余裕たっぷりなところ、司令の手助けしてきなさい」

浜風「初風姉さん、この浜風……人の食べ物を欲しがるような浅ましさは持ち合わせてはいません」キリッ

浦風「そうじゃそうじゃ。人を食いしん坊さんみたいに」キリッ

磯風「全く心外なことだな。誇り高き陽炎型の一員として断固抗議するぞ」キリッ

初風「ほっぺにご飯粒付けて何言ってんのかしらこの馬鹿妹どもは。いいから行け空気読め」ゲシッ

浜風「あう」イタイ

浦風「きゃんっ」イタイ

磯風「くっ」イタイ


 陽炎型のおっぱいの大きい子は花より団子な風潮。


嵐(この食い意地の張った三人も、戦艦ワンパンするのかよ……)ゴクリ


 ※磯風に至ってはワンパンどころか塵一つ残しません。

 敵の深海棲艦からは「なんかこの駆逐艦の砲撃、黄金に輝いて見えるんだけどいや錯覚じゃなくてマジで」ともっぱらの噂。


萩風(わ、私、大丈夫かな……同じぐらい強くなれるかな……)ドキドキ


 なれます。正しくは軽巡らが強くします。修羅道・軽巡界はまさに魔人の巣窟である。軽巡最弱の天龍・龍田ですらノーマルのレ級なら昼戦で真っ二つにする。

 なお特盛天丼は、この後仲良く手分けして食べきりました。

 元々小食な黒潮は完全に胸焼けとなった。

 そして天丼屋で戦術的勝利Bを引っ提げて、彼女たちは牧場へと向かった。


陽炎「あー、チョコジェラートおいしー。間宮さんとはまた違った味わいね」ペロペロ

不知火「いいところですね、ここは。次からはツーリングの時にここへ寄りましょう」ペロペロ

黒潮「し、不知火……おんどれ、何をしれっとジェラート食ってんのや………く、食べられん。今食ったら、戻す……覚えときぃ………」ウプ


不知火「ご、ごめんなさい……」


 陽炎と不知火はデザートは別腹と称して、牧場でジェラート食べたもよう


雪風「あっ!? 見て、島風ちゃん! 時津風、天津風! 牛さん! 牛さんです! 牛さんがいっぱい! わーい!!」

島風「ほんとだー! わー、おっきいね! 私初めて見た! あはは、やっぱりおっそーい! でもかわいいー!!」

時津風「おー、うしーうしだー! あっ、こうしがいる! おーい、もぅー、もぅーもぅー」

天津風「あら、か、可愛いじゃない……」キラキラ

野分「これは和むわね」

秋雲(牛食った後に牛を見て和むと申すか)

舞風「そうだねー。ジェラートはおいしーし、風景はのどかだし、なんだか笑顔になってきちゃう」

浜風「これはっ………まろやかで、口どけが良くて、はむ………なんて自然な甘さが……もむ……実に……イタリアに遠征に行った時を、あむ、思い出しますね……おいしい」

谷風「落ち着いて食べなよ浜風ぇ。しかし、こうやってのんびり過ごせる日が来るなんてねぇ……いいもんだねぇ、平和」


 平和を噛みしめる駆逐艦達。その一方で提督は、


提督「も、もう……いっぱいでち。天丼はもういやでち!! うごご……」


萩風「し、司令、お気を確かに……!」

嵐「あの量は、流石になぁ……伊勢さんや日向さんが食ってるクラスだぜ」

黒潮「あかん。こりゃあかんで」ウプ

初風「明らかに食べ過ぎよ。まあ、同情するけど……」

黒潮「わ、わかっとるなら、なんで手助けしてくれなかったんや初風ェ……」

初風「だ、だって……提督と、間接キスなんて……は、恥ずかしいじゃない」プイ

黒潮「は、初風、あんたもか……乙女プラグイン導入しとるんか……流行っとるんかそれ……う、うぷ」


 提督は犠牲になったのだ……。


提督「次は戦艦か空母組を必ず一人は連れてこよう………保険だ保険」

 
 なお、この予感がほどなくして的中する。

 ここ最近での改二実装祝い、またその前祝いとして、提督は鎮守府でのおめでとうパーティとは別に、個人的なお祝いとして件の店に向かう。

 彼女たちたっての願いで連れてきた、皐月、大潮、霞、江風がやらかした。


皐月「美味しいけど……可愛くない……この海鮮丼、可愛くないよ!!」ゲキオコ

大潮「くちくかん、おおしおです。ちいさないぶくろに、おおきなおさかな……おまかせくださ……すいません! こんなどどどどどーんとした量は無理です!!」アワアワアワ

霞「はァッ!? なによこの量! 食べきれないったら!!」フンガー

江風「まろーん……調子に乗りすぎたかなぁ……なンだよこの量はよぉ……」マローン

提督「君たちってばまー揃いも揃って俺の話を聞かないね」


 うずたかく積み上がる刺身の山と、拾っても拾ってもなくならないてんぷらの沼。

 彼女たちの瞳から光が失われそうになる、その時だった。


長門「心配いらんぞ皐月よ! この長門がいる! 何、案ずるな! ビッグセブンは胃袋もビッグなのだからな!」


 あらかじめ提督に示唆されてなおステーキ丼と天丼(特盛)を一杯ずつ注文済みの長門。

 そして、


武蔵「フッ………霞。ガッつくようで少々気恥ずかしいのだが、これだけではいささか物足りなくてな―――私に分けて貰えないだろうか?」


 武蔵に至ってはもはや何を言っているのか理解できないレベルであった。各三種の丼を一杯ずつ注文しておいてこれである。


赤城「あら、この天丼……それに海鮮丼も……おいひぃ……うん、うん……イケまふねぇ……上々れふ……あ、残すなら下さいね、大潮ひゃん、江風ひゃん」ハムハムモムモムモグモグ


 各種二杯を注文しておきながら、なおも大潮と江風の天丼と海鮮丼に手を伸ばす一航戦・赤城。

 艦種を越えた過剰なまでの摂取量。しかし提督はそれを咎めたことがない。

 スペックの上では加賀や瑞鶴は赤城を凌いでいる。にも拘らず、この鎮守府において最多MVP獲得数を誇る正規空母は赤城であった。


提督(絶句だよ)


 提督は焼き魚定食を注文した。脂がのって実にウマい。そもこの定食屋にはハズレがない。あえてハズレがあるとすれば初見殺し的な量だけである。

 長門・武蔵・赤城も難なくクリア。この戦艦・正規空母は本当によく食べる。燃料・弾薬・鋼材・ボーキサイトだけでなく、メシを良く食う。


長門「うん、美味しかったぞ。提督の作るさっぱり目でカラッと上がった天ぷらもいいが、こういうガッツリも悪くない……ありがとう、提督」

武蔵「馳走になった。また来ような、提督よ」

赤城「御馳走様でした。堪能致しました」

提督「まぁ、いいか……」


 その後、仲良くジェラート食べて帰ってこれたのであった。


 なお提督は艦娘たちにお土産として、各種ジェラートをキロ単位で大量購入した。自腹で。

 一方赤城は数十キロ単位で購入し、鎮守府当てに冷凍便で配送手続きを行った。


長門「恥を知れ恥を」

武蔵「どういう胃袋してるんだ貴様。全部自分で食う気だろうそれ」

赤城「…………」ニ、ニコー

長門「効くと思うか?」

武蔵「他の空母や戦艦ならいざ知らず、この武蔵と長門に?」

赤城「くっ……じ、自分だけで食べるつもりなどありませんよ? か、加賀さんと食べますし、はい」

提督「いや、いいんだけどさ……少し自重しろよ。また太るぞ」

赤城「!」

長門「提督、貴方は赤城に甘いな……着任当初からそうだった」

武蔵「赤城が好みか? そうなのか?」

提督「邪推すんな……赤城のみならずお前らは魅力的な女性だと思ってはいるが、それはそれだ」

長門「そうか…………(なんだ? 胸の奥が……? 痛み……? いや、しかし不快ではないが、苦しい……なんなのだ? ん? んん?)」


武蔵「それにしたところで赤城には随分と格別の待遇と感じているんだがな。いや、責めているわけではない。赤城も誤解してくれるな」

提督「いや、大戦時に激務というのも生ぬるい任務に当たってもらっていた空母の中で、赤城にはまとめ役として特に頑張ってもらっただろう? このぐらいはしてやらなきゃって思うし……」

赤城「て、提督……!」ジーン

武蔵「むむ……私と大和は比較的中堅よりの古参だからな……この鎮守府の黎明期から尽くした赤城に対する労わりか……納得した。すまなかった、赤城。気を悪くしただろう。この通りだ」

赤城「いいえ、私としましても働きに対していささか過分なご配慮を頂いてはいないかと不安に思っていた次第で……汗顔の至りです」

提督「長門も武蔵も遠慮せず選べよ。陸奥も大和も喜ぶぜ」

武蔵「それはありがたいが……なあ、提督よ。私の記憶では、その加賀・瑞鶴よりも数倍頑張ってた輩がいた筈なんだが……?」

赤城「え………あっ(察し)」

提督「嘘だろ誰だよ? 死ぬぞ?」

赤城(貴方ですよ。七日七晩不眠不休で指令書を作成したり資源確保のための交渉で各地を飛び回ったりと、色々やってたじゃないですか……)

長門(貴方だよ。高速艇を用いて敵の攪乱なんて超ド危険任務を率先してやる司令官なんか貴方しかいないだろうが)

武蔵(おまえだよ。レ級を蹴っ飛ばす阿呆な人類がいるとは思わなかった。成功するとも思わなかったが)

提督「??? 誰だ……? イムヤか? いや、潜水艦はガッツリ働いたらドーンと長期休暇取らせてたし……航空支援で出ずっぱりだった龍驤・隼鷹? 随伴での実戦教導に当たっていた鳳翔? あれ? 俺ちゃんと休暇取らせたぞ?」

赤城(そのくせ艦娘には全員休暇取らせるんですもの……)


提督「! わかった! 明石だな! アイツには艤装の修理やら改修やらで全然休暇取らせてやれなかった時期があったもんな!!」

武蔵(その明石には一月出ずっぱりだった報酬としてのボーナスと二週間の長期休暇をプレゼントしただろーがッ……!!)

提督「あれ? 違う? じゃあ――――大淀だ! 今度は当たりだろ! あいつには俺の執務をずーっと手伝ってもらってたしな!」

長門(ああ。確かに三ヶ月出ずっぱりだったが、ちゃんと定時に上がらせてただろう……? 貴方はその間ほぼ丸一日働き通しで)



 艦娘らが修羅となる下地は、提督の働きっぷりを見ていたが故である。

 ――――強くなって、提督に楽させてやりたい。

 弾薬一つまみ、ボーキサイトの一欠けらすら無駄にはできない。

 彼女らは強さを求め、求めた分だけ提督が強くなれる環境を整えた。

 そんな信頼関係によって成り立つロードバイク鎮守府は、今日もいつも通り修羅道を突っ走っていた。




【夢の後日談(表):艦】

※書き終えてるんだけど今日はもう投下無理だなこれは

 時間かかり過ぎちまった。

 2スレ目突入しました。レース編にも突入できたらいいなあ。

 明日あたり余裕があれば阿賀野のその後を投下していきたいですね

 ところで陽炎型で出てきた牧場は実在する牧場をモデルにしています

 埼玉の上尾にあるよ。牧場はろんぐらいだぁすでも出てきてるね。その近くにある天丼屋さんも実在の店


それにしてもこの文量で2スレ目とは恐るべし

2スレ目乙です
秋雲の商業誌の下りでボンバークレープ氏のアドミラルシリーズ思い浮かんだのは私だけでいいw

乙なんだよ!
これが連休中の癒やし&楽しみになっている……

>>1のおかげでチタンロードフレームを買ってしまいました

>>44
お主もか。あれは中々濃ゆくて好き

自分もエントリーのロード買ったわ
ヒルクライムで自分を追い込むのは死ぬほど楽しい
しかし体重70近いし痩せないとちょっとなあ


ロードバイクスレなのにお腹空いてきた

なお脚の痙攣が始まったら大人しくギアを売り飛ばしてトルクを軽くすること、痙攣しても踏み続けると最悪肉離れを起こすっぽい

>>42
読者「だま、した……」
>>1「はい?」
読者「よく……も……よくも俺たちを」
 寝ころんだままに、>>1を射抜かんとするほどに鋭い瞳には、怒りが燃えていた。読者にとっては正当なる怒りであった。
読者「よくも俺たちをッ、だましたなァアアアアア!!」

明日あたりとはなんだったのか

>>1がまた落車して寝ころんでるかもしれないじゃん……

>>51
縁起でもないこと言うなよ。

ただでさえ、お盆期間なんだから祭られざるご先祖様に呼ばれてたら……

>>1のおかげ?でピナレロのFP1(2009)から、CARRERAのPHIBRA EVOに乗り換えすることにしました。
あのデザインは、1度見たら忘れられないすなぁ。
更新… 更新が楽しみなのです……!


【夢の後日談(裏)】


 時間は少し前後する。雪風とのヒルクライムバトルを終えて二週間後のことであった。

 阿賀野の朝は早い。

 朝四時に起床、というか提督に布団を引っぺがされて起こされる。


提督「おら、朝だぞ」

阿賀野「おふぁようごじゃいまふぅ」フラフラ

提督「顔洗って」

阿賀野「んぅ」

提督「歯ァ磨いて」

阿賀野「しゃこしゃこ」

提督「髪を梳いて」

阿賀野「しゅっしゅー、しゅっしゅーっ、しむしゅっしゅー」

提督「(占守?)……目ェ覚めたか?」

阿賀野「あい……」


提督「よし、飲め。いつものだ」

阿賀野「くぴくぴ……」


 提督の差し出したクエン酸入りのドリンクを摂取する。阿賀野にとって、朝の水分補給の定番となっていた。


提督「じゃあサクッと着替えて寮の前に。5分で支度しろ」

阿賀野「うふふ、着替えさせてくれてもいいのよ?」

提督「その無様な腹を布越しではなく直に俺にさらけ出すとか、蛮勇以前に不敬だと思わんか」

阿賀野「」


 提督の朝の有難くも痛烈な一言はいつも阿賀野の意識を完全覚醒させると共に、ダイエットへの意欲を高めてくれたという。

 指示通りに5分で身支度を整え、未だに涙がにじむ瞳をアイウェアで隠した阿賀野は軽巡寮を出る。

 提督と速吸に合流した後、軽く運動前の準備運動とストレッチを行う。

 そのまま一時間から一時間半ほどロードバイクで一定の心拍数――――有酸素運動のレベルを保って走り込む。


提督「心拍に注意」

阿賀野「はぁい! ふっ、ふぅっ、はぁっ、ふっ……」


速吸「朝のひんやりした空気はやっぱり気持ちいいですね」


 運動が終わった後は、乳酸抜きのために軽くストレッチを行う。


阿賀野「よいしょ、よいしょ……ふー、はー、ふー……」

提督「よし、軽めの朝飯としよう」


 提督お手製のたっぷり野菜スープがコップ一杯分と、一欠けらのチーズとゆで卵が出される。

 食堂で仕込みをしている間宮や伊良湖も、相伴に預かることもあった。

 運動後に食べるというのがミソだ。空腹時の運動は度を過ぎなければ、体脂肪を燃焼させるのにこの上ないベストタイミングである。

 また阿賀野は、これまで任務内における訓練を必要最低限しか行わず、非常に間食の多い生活を送っていた。

 朝にも昼にも夜にもガッツリ食べ過ぎてしまう。消費カロリーと摂取カロリーのつり合いが取れていなかったため、駄肉が付いた。

 軽めの食事を採って朝食までの空腹をしのぐと同時に、程よい満腹感をもたらすことで、一日のカロリーの過剰摂取を防ぐ算段である。

 提督と速吸指導の元に行われるダイエットは、いわゆる食べて動く健康的ダイエットであった。


提督「フーッ、フーッ……ゴク、ハグ……はふ、はふ」

阿賀野「んぐ、あぐ……ごく、ごきゅ……がじがじ……」


速吸「おいひ……フゥフゥ、ごく……わちちっ、はむ、もぐ……」

間宮「あむ、あむ……ごくごく……ふー、ふーっ」

伊良湖「はふ、はふ……はちちっ、はふ、もっもっ……」


 チーズを齧り、良質の鶏ササミとトマトベースのダシで煮込んだジャガイモやキャベツの入ったスープを、はふはふと啜る。

 食感の残った野菜が磨り潰されるまで、よく咀嚼する。ひと噛みひと噛みを大事にして食べ、啜る。

 簡素であるが味わい深い食事である、と阿賀野は感じた。とても美味しいと。

 固めのチーズがスープの温度で口の中に溶け込んでいき、カロリー不足を訴える肉体に染みわたっていくようだった。ほっくりしたゆで卵も胃袋に充足感をもたらす。

 デザートにリンゴをシャクシャクと齧る。旬を外れていたリンゴはどこか味気なく酷い食感だったが、甘味が運動後の頭をリフレッシュさせていくのを感じた。

 腹2~3分目ぐらいまでの食事を摂取した後、次いで熱いシャワーを浴びて、運動の汗を流す。


阿賀野(………ん? ちょっと、お腹のお肉、減ってきた?)


 当初はこの段階で、阿賀野の全身は悲鳴を上げた。更なるカロリー摂取への欲望が阿賀野の五体を駆け巡る。

 食欲との戦いだったが、一週間たった今ではそれもさほどではない。

 ちょっとした己の身体の変化に気づき、阿賀野のモチベーションが僅かに上がる。


 一連の運動と後処理を終え、これで大体朝七時になるのだ。

 この時間帯になると総員起こしのかかった艦娘達も身支度を整えて、各々が食堂へやってくる。阿賀野もまた身支度を整えて食堂へと向かう。

 ここから本格的に朝食を取る。

 提督特製の野菜炒めに、速吸特製のたっぷりのご飯と納豆にお味噌汁。メインはもちろん間宮特製のオリーブオイルで炒めたさくさくのサケである。

 オリーブオイルの使用も最低限。上質なエキストラバージンオリーブオイルを用いたサケのソテーは旨味がぎっしりとつまった塩味で、高タンパクでかつ栄養満点の献立だ。

 自然と箸が進む。この時も、よく噛んで食べる。


阿賀野「はふ、もぐ、さく……もぐ、もぐ、もぐもぐ……ごくん」

提督「納豆はいいよねぇ、納豆はさぁ(裏声)」


 川内ボイスで言うとなんでもかんでも野戦に聞こえてくる不思議であった。

 幸せな食事を終えた後は、休日なら再びロードバイクに乗る準備を始める。間宮・伊良湖と速吸に頼んでいた補給食とドリンクを受け取った後、ジャージを纏う。

 ロードバイクを押しながら向かう先は外――――ではなく、まずは駆逐艦寮である。

 駆逐艦寮の鎮守府道路沿いのD5出口横には、通称『魔法使いの喫茶店』があった。

 オーダー後、程なくして差し出された蜂蜜と一匙のココナッツオイルの入った特製のエスプレッソ・ソロを、三口で飲み干す。


阿賀野「ごきゅん。ふぅーーーーー…………――――よし」


 気合の入った瞳をアイウェアで覆い隠し、ロードバイクに跨る。

 鎮守府外へと遠乗りに出かける。提督の監視は絶対に外れることがない。

 提督自身もオフならば同行し、提督自身に仕事があれば能代ら妹たちが同行。それも無理ならば、島風の連装砲ちゃんが走行中の阿賀野を追跡する。

 そう――――遂に完成したホバーボードのテスト走行も兼ねた、阿賀野の監視である。その頭には小型カメラが取り付けられていた。

 小型カメラの映像は提督の執務室内のモニターにリアルタイムで配信されている。

 執務の傍ら、サボったりヘタレた走りをしようものなら即座に罵詈雑言を浴びせかけるという本気っぷりである。

 プライバシーの侵害などというものはない。これも一つの任務であるゆえだ。軍人たるもの基礎訓練は必須。まして堕落した者を教導するものが目を光らせるのは当然であった。

 むしろこれは有情である。提督が無情ならば神通や鳳翔を同行させているからだ。


提督『20m先を左折』

阿賀野「えっ!? そ、そっちって確か……」

提督『――――山だ。といっても丘みたいなモンだ。平均斜度は5%、距離8km程度のとっても優しいコースだよ? 平らげて帰って来い』

阿賀野「っ、う、うん! あ、阿賀野、がんばる!!」


提督(――――おや。当初は悲鳴を上げていたのに、随分といい顔するようになった)

連装砲ちゃん【>ω<】キュイ

提督『心拍維持を忘れるな。旨いもん作って待ってるからさ』

阿賀野「ほ、ほんと!? 提督さんのお料理、阿賀野大好きだから! 期待しちゃうからね!!」


 一見すると可愛らしい連装砲ちゃんから、男である提督の声が響くのは実にシュールであった。裏声使えば別であるがそれはそれで恐ろしいものがある。

 すれ違う一般のサイクリストたちが奇異の目で阿賀野と連装砲ちゃんを見ていたが、地元のローディはすぐに気づいた――――ああ、あの鎮守府の艦娘だ、と。

 それで納得するあたり地域に密着した鎮守府運営が出来ていると取るべきか、それだけ奇行っぷりが広まっていると取るべきか、判断に悩むところである。


阿賀野「はっ、はっ、はぁっ……」

提督『頃合いだな。そろそろ補給しろ』

阿賀野「は、はぁい、あむ、あむ……」

提督(ふむ…………当初は食欲も失せるぐらいバテてたのが嘘のようだな)


 阿賀野は気づくことはなかったが、提督のコース選択が良かったこともある。違う景色が見え、かつペース維持しやすい平坦を選定していた。

 毎度、走りに飽きが出てこないようにという提督の配慮であったが、これが提督の想定を上回る効果を発揮した。


提督(ッ―――――80km/h、だと? 向かい風の中の、平地で?)


 阿賀野は、たぐいまれなスプリント能力を備えていた。元々太る前は、運動神経は長良に迫るほどであった。

 未だ調整中でベストから遠い体型に在ってなお、この走りだ。これが完成したならば、それは一体どれほどのものか――――提督は考えるだけで口元の笑みを隠せないほどに滾った。

 任務のある日は、早くロードに乗るためにてきぱきと働き、昼食以降の食事は軽めだがきっちりと取り、仕事が終わり次第、夕食までくたくたになるまで走る。

 夜は夜で入浴後に入念にストレッチを行い、歴代三大ツールのDVDを姉妹で鑑賞したり読書をしたり、日課の提督日誌を付けた後は、夜九時にはぐっすりだ。

 およそ七時間ほどの睡眠で次の日には軽い疲労こそあれど、朝の有酸素運動ですっかり調子が良くなるという永久機関めいたダイエット生活である。

 それまでは不規則かつ自堕落な生活を送っていた阿賀野の睡眠の質はとても良いとはいえなかった。

 しかし運動を日課とすることでくたくたになった体は、自然と睡眠を欲するようになり、朝まで熟睡である。


提督(ま……いっぱい食べていっぱい運動していっぱい休む。健康的なダイエットはこうでないとなァ)

提督「こんなものが阿賀野であるものか!!!」

能代「提督! 本音と建前が逆になってます!!」

矢矧「気持ちはわかるけれど、落ち着いて頂戴」

阿賀野「お願い、少しは頑張った私に優しくしてくれない!?」

※里帰りしてー、帰ってきてー、投下してたらー、先日の落雷でー、停電でー、漏電してー、お察しだよー
 ピンポイントで阿賀野編データ破損
 メッチャ今日書き直したらより面白いので来たから良しとする
 肉付けして来週ぐらいに投下予定でつ

>>62
乙&どんまい
毎回楽しみにしてる

……マジカルもな

>>62
おお、お気の毒でしたがより面白いと聞いてwktkが止まらぬい

>>62
どんまいと言いつつ面白いとかテンション上がるわー

阿賀野知っているか?
レース体重に対して8パーセントまでなら「太るべき体重」の範囲だからへーきへーき
女子のレース体重が25~27パーセントだから春先の体脂肪率は……まぁうん……


 涙目の阿賀野は腹の底から叫んだ。その腹は見事に引っこんで、駄肉は消え去っていた。

 僅か三週間で元の体重に戻ったのだ。しかも胸部装甲に着いた肉をそのままに、そっくり腹の肉だけ落とすという芸当である。

 それで元の体重になったということはつまり、


提督(選んだ色で塗った世界に囲まれていたのに、選べない筈の減量箇所まで選びやがった……)


 扶桑型や千歳、潮や浜風の如く一部分だけがそのままという有様である。那珂といい阿武隈といいチート体質の軽巡は多いものの、これには提督も苦笑いである。

 肥満で僅かに太った胸はその大きさ・ハリ・美しさを保ったままに、余分な肉だけが引っこみ筋肉の質が上がるという奇跡的な結果である。その後のリバウンドも一切ない。むしろ更にプロポーションが良くなった。

 というのも――――。


阿賀野(――――楽しいかも、これ)


 阿賀野自体がロードバイクの速度に魅了された。より速く走るためにどうすれば良いのかを考えた末、行きついた答えはやはりダイエットである。

 毎日規則正しい生活を心がけるようになったのだ。

 苦痛を伴うダイエットは地獄だ。しかし楽しいダイエットならば、それは一日ごとにモチベーションを高めていくだけの好循環である。

 天国というほどの法悦は、この世界にはない。だが阿賀野にとってこのダイエット生活は、そこまで地獄ではなかったのは確かだった。


酒匂「うんうん、阿賀野お姉ちゃん、すごいよ! お腹周り、すっきりしてきてるよー! もうちょっとだよ!」

阿賀野「!! う、うん! お姉ちゃん、もっと頑張るわ!」


 痛烈な言葉ばかりを浴びせる提督と妹×2と違い、酒匂は阿賀野を大いに励ました。

 ――――提督と能代・矢矧の仕込みである。


提督(これも飴と鞭だ)

能代(うん……私たちの仕込みとはいえ、妹に与えられる飴でモチベーション上げる姉ってどうなのよ阿賀野姉……)

矢矧(とても複雑だけれど、いい傾向ね)


 阿賀野は鈴谷ら一部の艦娘らと同じで褒められて伸びるタイプであった。

 大戦時、阿賀野は軽巡の戦果ランキングにおいて首位争いを繰り広げていた長良・球磨の間に割り込める程に、高い実力のある軽巡だったのだ。

 当時は戦果を競える相手が上にも下にも沢山いた。それ故に阿賀野という子の本質を提督も妹たちも少し見誤っていた。自己を高めるストイックな面も持ち合わせているのだと、誤解していた。

 そう、阿賀野は――――典型的な「他人と競う」タイプであった。鞭を入れてくれる誰かが、競う誰かがいないと堕落していく。

 平和になった途端に堕落したのは当たり前であった。


提督(何にせよ、頃合いか)


 提督が何かを企み始めた頃、阿賀野のダイエット生活がついに四週目に入った。

 7月某日――――それは夏の日差しが大気を焦がすような、とても暑い日であった。

 阿賀野の朝は早い。

 朝四時に起床、というか提督に布団を引っぺがされて起こされていた。

 過去形である。


阿賀野「………んゅ」ムクリ


 今や「目覚ましの音に一秒で反応し、即座にタイマーを切る。しっかりとした足取りで洗面台に移動し、


阿賀野「んー…………しゃこしゃこ……しゅっしゅー、しゅっしゅー、りーしゅりゅーりゅー」


 顔を洗い、歯を磨き、髪を梳く。

 その時、小さなノックの音が響いた。「はーい」と声を出してドアを開くと、


提督「ん………よし、起きてるな」


 ドリンクを手に持った提督が、ジャージ姿で立っている。もう日課となった光景であった。


提督「飲め。いつものだ」

阿賀野「くぴくぴ……」


 提督の差し出したドリンクを摂取する。


提督「じゃあいつも通りだ。サクッと着替えて寮の前に。5分で支度しろ」

阿賀野「うふふ、着替えさせてくれてもいいのよ?」

提督「お前のような可愛い子が、迂闊にそんなことを言うもんじゃないよ」


 そう言って提督が扉を閉める。ぽつんと自室の玄関に残された阿賀野は、 


阿賀野「…………ふえ?」


 少しだけ、その日の提督の反応が違ったことに――――その意味を考えて、頬を染めた。


阿賀野「……こ、好感度が上がってる!? い、いつ!? いつフラグたったの!?

    お腹引っこんだから!? 龍驤さんたちが歯ぎしりするような洗練バディに戻ったから!?

    まさか―――――提督さんはツンデレ属性だったのかな!?」


 阿賀野はどこまで行っても阿賀野であった――――飴と鞭作戦の成功である。

 その日、少しだけ指示時間をオーバーした阿賀野は、いつものように提督と鎮守府内道路を周回する有酸素サイクリングを行った。

 その日は阿賀野が秘書艦を務める日だった。

 代謝量が増えたことで食事量が増え始めたことを大喜びする阿賀野だったが、油断せずに毎日運動に励んでいた。

 提督と共に朝の有酸素サイクリングを終えた後、シャワーを浴びて朝食の時間が訪れた時、阿賀野は違和感を覚え始めた。


提督「ほい、朝飯」

阿賀野「えっ? 量……多くないかな? 脂質は少な目だけど……」

提督「いつも通りの食事じゃ、今日は多分もたんぞ」

阿賀野「え゛っ? そんなにキツいお仕事なの、今日って!?」

提督「いいや? ある意味キツくはあるだろうが、それ以上にきっと―――楽しいぞ」

阿賀野「……?」


提督「ほれ、食え。冷めるぞ」

阿賀野「うーん……まぁ、いいや! いただきまーす!」


 少しだけ違和感を覚えたものの、阿賀野はある種のチートデイのようなものと判断した。筋トレやロードバイクによる有酸素運動を積み上げ、阿賀野の身体はすっかり引き締まっていた。

 やや低燃費モードに入っている肉体を誤魔化すために、多くの食事を採ることで肉体の低燃費モードを解除するトレーニング方法があると、速吸から聞いたことがある。

 これはきっとそれなのだと、阿賀野は思った。


提督「…………」


 ――――もちろん真実は違う。阿賀野の体重は順調に落ちて行っている。現在は四週目だが、そのペースは三週目に入ってからずっと一定であった。体質からしてチートであった。

 阿賀野が感じた些細な違和感は、提督がそれを言わなかったこと――――提督は嘘をつかない。だが隠し事や言わないことはいっぱいある。

 目の前に出されたのは朝に食べるには少しヘヴィ気味な、薄切り牛肉をトマトソース炒め、その大盛だ。

 いつもの野菜スープとは違う、鶏ガラを使ったコンソメスープもある。

 千切りのキャベツをふんだんに使ったサラダの添え物のマカロニもまた美味しそうであった。ひじきたっぷりの副菜もある。

 更にデザートにはバナナヨーグルトだ。


阿賀野(………ツバが出てきた。運動するようになって、本当にご飯が美味しくて困る)ゴクリ


 どれもが阿賀野の大好物であった。とろんとろんになるまで煮込んだ濃厚なトマト、その旨みがぎゅっと詰まったソースで香ばしく炒めた、赤味の薄切り牛肉。

 ボリューミィな見た目と味わい深さに反して、カロリーはかなり抑えてある。旨みがあってカロリーが少ないという素晴らしさである。


阿賀野「おいしーい♪」

提督「たんとお食べ」


 久々に満腹感を覚える食事を堪能する。


阿賀野「ぷぅ…………あぁ、おいしかったぁ」


 腹八分目をやや通り過ぎたぐらいに満たされた胃袋をぽんぽんと押さえて執務室に向かおうとすると、


提督「阿賀野、突然だがお前の秘書艦業務は明日に変更となった」

阿賀野「本当に突然だね!?」

提督「俺のスケジュール管理ミスでな。すまんが今日はオフだ。別に有給使わせるつもりはない」

阿賀野「う、うん……それは、別にいいんだけど……」


 その後、自室に戻った阿賀野は少しだけストレッチした後、明石のロードバイク工房へ向かう――――その時、違和感が疑惑へと変わる。


阿賀野「え!? 今日、借りれるロードバイクないの!?」

明石「う、うん。そうなの、そうなのよー」

阿賀野「うわぁ、まいったなぁ……」


 まずは明石である。いつもの共用のロードバイクを借りに行った際、阿賀野がほぼ占有状態だったロードバイクがレンタル済みであった。

 朝四時台ではもちろん余裕でレンタル出来たが、昼間となればそうもいかないこともあるとは思ったが、


阿賀野「………じー」

明石「な、なんですかその疑いの目は? 私が嘘をついているとでも?」


 あからさまに明石の目は泳いでいた。嘘が下手過ぎである。

 というか、言いたくて言いたくて仕方ないといった風であった。笑っているような引き攣っているような、とても不謹慎な顔であったと阿賀野は後に述懐する。

 それに対し提督は「だってばかしだからねあの子は」とにべもなかった。


阿賀野「しょーがない……うーん……そうだ、能代たちは自分のロードバイク納車してたっけ! 借りてこよっと」

明石「!?」


 目に見えて明石が狼狽えだす。

 その反応をうかがっていた阿賀野は、明石を疑いの視線で見やった。


阿賀野「…………じー」

明石「えあ゛」

阿賀野「…………じー」

明石「ぅ、うう……!」


 確定であった。明石は何かを隠している。

 そんな折だった。


天龍「――――ほらな。やっぱダメだったろ」

川内「もうちょっと持つと思ったんだけど……」

球磨「明石は嘘が下手すぎクマ……」


 そんな声が明石のロードバイク工房の入り口から響いたのは。


香取「はぁ……10時ぐらいまで引っ張ってほしいと言ったじゃないですか、明石さん」

夕張「まぁまぁ、それを見越して私たち間に合ったんだからいいんじゃない?」

大淀「結果論でしょうそれは……」

阿賀野「え?」


 阿賀野が振り返った先には、軽巡級・練巡級の巡洋艦、そのネームシップたちがいた。

 それぞれが、各々のロードバイクを携えている。


天龍「よお、阿賀野――――あれからちったあ走れるようになったかよ」

阿賀野「ふぇ? て、天龍ちゃ……さん?」

天龍「ちゃん言おうとしたなオマエ」


 「ちゃん」呼びを嫌うロードバイク鎮守府最古の軽巡、天龍。

 愛車はスコット・フォイルプレミアム。脚質はオールラウンダー。

 雪風と島風が着任し、初期艦と共に出撃した戦果――――正面海域で邂逅した、初めての軽巡であった。


香取「ダイエット、無事に成功したそうですね」

大淀「ダイエット作戦成功、おめでとうございます!」


 共に柔らかな微笑みを湛える知性的な二人は、多くの駆逐艦たちから「先生」と呼ばれる練習巡洋艦・香取。

 そして「鎮守府影の支配者」とか「裏ボス」とか「あの眼鏡マジ鬼畜」とか「解体はやめて」など一部から誤解を受ける連合艦隊旗艦・大淀である。

 香取の愛車はビーエムシー・チームマシーン――――その脚質はパンチャー。

 大淀の愛車はトマジーニ・シンテシー……のはずが、何故か携えているバイクは異なった。

 自費購入したレース用の愛車は、サーヴェロ・S5――――判明した脚質はTTスペシャリスト。


夕張「おめでとー! これで名実ともに最新鋭軽巡よね! 羨ましーぐらいのスタイル、取り戻したじゃない! 見違えちゃった!」

阿賀野「え、あ、うん、あ、ありがと……?」


 快活な笑みを浮かべて手を叩く、兵装実験巡洋艦として多くの兵装の改良に貢献した夕張。

 愛車はビアンキ・スペシャリッシマ――――脚質はスプリンターである――――現時点では。


球磨「ちょっくら球磨が揉んでやるクマ!」

川内「さ! 私たちとサイクリングしよ!!」

阿賀野「え、え、え……? い、いきなり、なに? 何が起こってるの?」


 その天龍に遅れること一週間、同時に建造された球磨と川内。

 それぞれの愛車はクオータ・カーン、デローザ・プロトス――――共にスプリンター寄りのオールラウンダーである。


阿賀野「………どゆこと?」


 いくつもの疑問符を頭上に浮かび上がらせる阿賀野の耳に、とても気まずそうな咳払いが聞こえた。


明石「…………えっと、その…………『今の阿賀野になら、まあいいだろ』って!」

阿賀野「ふぇあ? え、ロードバイク……それ、誰の?」


 不謹慎極まる表情をした明石が携えるロードバイク。白地に紅のカラーリングが施されたカーボンバイクだった。

 見るからに気品のある、独特な美しさを備えたそのバイクは、


    タイム  サイロン 
明石「TIME SCYLONです! 提督からの、阿賀野へのプレゼントですよォ!!」

阿賀野「えっ」


 ほとんどやけっぱちで明石が叫び、押し付けるように阿賀野に引き渡しを完了させる。

 そして明石はぽかんとする阿賀野を尻目に、己の愛車たるデ・アニマに颯爽と跨り、


明石「どーせ私は嘘の下手くそなばかしですよぉおおおおおおお!!!」


 涙の帯を作りながら、叫びのドップラー効果を残して己が工房から脱兎のごとく逃げ出した。明石が足止め役を買って出た時、提督が物凄く渋面を作ったことにカチンと来て、やってみた結果がこれである。

 本日の明石のロードバイク工房は、秋津洲と高波が臨時店主として代行することが決定した瞬間であった。


阿賀野「」


 阿賀野は展開についていけなかった。

 以前、提督にこのロードバイクが欲しい、といった話をしたことはある。このロードバイクがまさにそうだ。

 それが突然納車され、突然軽巡ネームシップたちが自分の元を訪れ、一体何が自分の身に起こっているのか、わからなかった。

 分からないままに、再び視線を工房の前へと向けると、


https://www.youtube.com/watch?v=s8aeVI6XBKc



阿賀野「――――――――あ」


 すとんと腑に落ちた。

 阿賀野の脳裏に、提督の言葉が蘇る。


長良「そろそろいいよね!! 一緒に走ろう!! いっぱい走ろう!」


 喜悦に染まった満面の笑みで立つのは、提督が初めて建造した軽巡洋艦・長良。

 愛車はピナレロ・ドグマF8―――――脚質はピュアスプリンター。


長良「ずっと阿賀野と、一緒に走ってみたかったんだ!!」

阿賀野「長良……ちゃん」


 阿賀野にとって、長良は前世においても、今世においても憧れの先輩だった。

 練習巡洋艦たる香取と、中堅の大淀を除けば、ほとんどが先任だらけの軽巡洋艦たちの中にあり、阿賀野が特に世話になったのが長良だった。


 軍艦であった頃も――――阿賀野が艦娘として生まれた時点でも、既に長良は歴戦の強者だった。


阿賀野(かっこいいなあ……)


 艦娘としてある今もそうだった――――阿賀野が着任した頃、長良は既に球磨とツートップで戦果を争う軽巡で、多くの人に慕われていた。


阿賀野(なんで、阿賀野は、ああなれなかったんだろう……)


 そんな疑問がふっと浮かび上がった瞬間、阿賀野は理解した。

 まさに氷解するように、あっさりと。


阿賀野「あ……」


 阿賀野はその時、己が燻った理由が、腐った理由が、何が阿賀野を停滞させたのか、分かった気がした。


阿賀野(そっか――――――長良ちゃんに、勝ちたいんだ、私。他でもない、長良ちゃんだから)


 ずっと憧れていた。

 前世の頃から、ずっとそうだった。


 トラック島沖で曳航してもらった時から、ずっとずっとそうだったのだ。

 だから大戦時―――長良に追いつこうと、努力した。

 いつだってその背中は目の前にあった。

 もう少しで、届きそうだった。


 ―――――戦争が終わったのは、ちょうどその時期だった。


阿賀野(……しょうがないよ。平和になったんだもん。それを残念に思うなんて、おかしいよ)


 そう言い聞かせた。それでも、阿賀野は自分の中で、何かがすっぽりと抜け落ちたような音が聞こえた。


阿賀野(……何か、あるとおもったんだけどな。阿賀野、頑張れば、きっと、阿賀野は、きっと……)


 目標を見失ってしまった、そんな気がした。

 見たい光景が、掴みたかったものが、指がかかる寸前で消え去ってしまった感覚。

 だけど。


阿賀野(ああ、だけど――――)


長良「行こう、阿賀野! 一緒に走ろう!!」


 その声が聞こえた。かつて戦場にあった頃とは違う、ロードバイクのジャージを纏った姿でも、同じ声で。

 いつだって自分の前にいる人だ。

 島風にとって夕張がそうであったように。

 夕張にとって島風がそうであるように。

 二人にとって、提督がいつもそうであるように。

 阿賀野の前にはいつも、長良がいた。いつだってそこにいたのだ。


阿賀野(見失ってなんか、いない)


 動けなくなった自分を牽いてくれるこの人は、それを恩に着せることなく、いつも楽しそうだった。

 歴史をなぞるように、艦娘になってからもそれはあった。深追いしすぎて魚雷を喰らい、中破してしまったことがあった。

 母港へ――――鎮守府へ帰還した時も、阿賀野を牽いたのは、長良だった。


長良『陣形乱しちゃ駄目だよ、阿賀野。次はちゃんとやらなきゃね』

阿賀野『は、はぁい……ごめんなさい、長良先輩』


長良『長良でいいのにー』

阿賀野『じゃ、じゃあ、長良……ちゃん?』

長良『長良ちゃんかー! うん、じゃあそれで!』


 阿賀野はメキメキと力を伸ばした。その成長は留まることなく伸び続け、いずれは長良・球磨を追い抜くことすら期待された。最強の軽巡と呼ばれたこともある。

 それでも、長良にだけは勝てる気がしなかった。他の軽巡ならば、球磨だって、北上や神通にだって負ける気はしなかった。

 なのに、長良だけはだめだった。

 弱みがあるから―――違う。

 相性が悪い―――違う。

 いつだって阿賀野を見る長良の目は優しかった。そして尊敬する者を見る目だった。


長良『長良って旧型だからさ、ちょっと羨ましいんだ。阿賀野は新型だけど、新型だからってそこに胡坐をかいているわけじゃないって、わかるよ』

阿賀野『―――――』


 自分の頑張りを、見てくれていた。尊敬しているとまで言ってくれた。

 私の前にいるのに、振り返ってみてくれている。勝ちたいと思う一方で、ずっとその背中を見ていたいという、相反する思いがあった。


阿賀野(だけど―――――)


 いつしか長良の目が、何を望んでいるのかが分かってきた。

 笑みの底に、少しだけ悲しさが滲んでいたのだ。


 ――――追いついて、こないの? と。


 泣き出す寸前の子供のような目で、阿賀野を見るのだ。憐みではない。残念そうに、寂しそうに、阿賀野を見るのだ。

 遊び相手を探す、子供のような目だった。

 何故か、一月以上前の思い出がよみがえる。

 島風が叫んだ言葉を、思い出す。

 見つけた、と。

 新しい世界は、あったと。

 私が望んでいたものが、あったと。

 ここにあった、と。


 そして阿賀野もまた――――。


阿賀野「…………あ」


 もうダメだった。胸の内側から瞳へと集まっていく熱量が、抑えきれなくなった。

 まるで火を噴くように、阿賀野の全身から熱が溢れだす。


阿賀野「…………うん!!」


 ぎゅうとハンドルを握りしめて、涙の浮かんだ瞳のままに頷いた。

 失ったはずの目標を見つけて。失っていないことに気づいて。

 海の上では追いつけなかったけれど、陸の上でも先輩として前にいるこの人に、


阿賀野「――――――――阿賀野と一緒に走ろう、長良ちゃん!」

長良「そうこなくっちゃ!!!」


 遊び相手を見つけた子供のように笑う、長良の笑みが大好きだったから。 

 今度こそ――――長良に追いつこうと思った。

 
【夢の後日談(裏):艦】

※今日はここまで

 阿賀野型・香取型のバイクは平日に余裕があったら投下予定。なけりゃ来週末。

 それと大淀が物欲に負けた小話も。その後、提督vs雪風、その悪夢の後日談。

 その後はどうしよう。オリョクルズか、睦月型か、白露型か、初春型か、妙高型か、高雄型か、軽空母組か……未定!

>>1
投下乙。

乙おつ
全部読みたいけど白露型が気になるねえ

オリョクルズと白露型から希望かな?

島風vs夕張の裏話だった青葉衣笠加古古鷹のサイクルフェアレポートなどはいかがでしょうか?

やったぜ待ってました!
相変わらず熱くていいなあ……

思ったけどそろそろ足柄さんにバイクあげないとキレて暴れるんじゃねww


軽巡+練巡の8人でオリオンをなぞるのか

軽空母組見てみたいけどロードに目覚めて酒の抜けた隼鷹なんて
ただの美人お嬢様になってしまうのでは…

>>67
> 典型的な「他人と競う」タイプ
うわ、何か解る。
普段はスピードとか興味無いけど、ポタリング中に追い抜かれると追尾したくなるし、追い抜き直後にペース落とすような舐めたガキは抜き返したくなる

>>93
まぁここの提督だと自転車飲酒運転なんてする輩には強烈な厳罰を課しそうだしなぁ
あと、隼膺は「自分がお嬢様であることを自覚した上でフランクな付き合いができるお姉さん」というポジションを意識して狙ってる感
酒飲みすら含めて割と自覚的にやってると思うので、ソコこそが隼膺の個性なのだと思うのだが


********************************************************************************

阿賀野型軽巡洋艦:阿賀野

【脚質】:スプリンター

 ――――行かなきゃ……長良ちゃんが呼んでる。

 後に長良の最大にして最強のライバルとして立ちはだかるスプリンターは、まさかの阿賀野であった。
 島風にとっての夕張であり、夕張にとっての島風である。意外にも超アウトドアでスポーツ大好きな長良とインドア派の阿賀野は仲良し。
 軍艦時代の先輩後輩として、そして艦娘としては良き友達としての関係を築いている。でも長良のハイペースに付き合うのだけはカンベンなって感じ。
 なんせ長良はTTもこなせるタイプのスプリンターで、坂も嫌いだが苦手ではない癖してスプリントはピュアスプリンターのそれという特級脚質である。
 女子力低めな長良とは結構持ちつ持たれつの関係である。なお長良と違い、山は別に嫌いでも苦手でもない。
 大戦時、球磨と長良の戦果争いこそ半年以上後任の阿賀野は及ばなかったものの、あと数ヶ月ほど戦争が続いていたら並んでいたと言われている。
 自他ともに認めるスロースターターで尻上がり。一度コツを掴むと際限なく応用発展していくタイプで、大戦でも戦果グラフは右肩上がりどころかほぼ垂直方向に向かう物凄いことになっていた。
 戦争が終わって安心した一方、ぽっかりと胸に穴が開いたような気持ちでこれまでの日々を過ごしていた。
 ピュアスプリンターばりの剛脚を持ちながらも、山岳や高速巡航にも対応したバランスの良いスプリンター。実は運動神経抜群でバランス感覚に優れる。
 五十鈴や多摩らが己を天才と自覚してなおそれに驕らなかった理由は、優秀な同僚や姉に恵まれたこともあるが、特に阿賀野という存在に集約している。
 究極の理不尽とも呼べる才能の権化が阿賀野という軽巡であった。ちなみに五十鈴は阿賀野が苦手である。努力が結果に直結しすぎなのは悲劇に近い。
 天才ゆえに感動が少ない。

【使用バイク】:TIME SCYLON AKTIV (Factory Racing color)
 きらり~ん☆ 最新鋭軽巡! 阿賀野のバイクはフランスの老舗タイム! そのフラッグシップ・サイロンよ!
 同じフランスのルックと並び称される「いつかはタイム」――――カーボンの老舗の本領、発揮しちゃうからね!
 この洗練されたデザイン、いいでしょ? フロントフォークには独自のチューンドマスダンパーが内蔵されてるのよ!
 どれだけ荒れたパヴェ(フランス語で石畳・敷石を意味する)だってへっちゃらへーよ! とっても高性能なんだから!
 提督さん、ありがとう! 今度こそ阿賀野、長良ちゃんにも勝って見せるからね!

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長良「タイム? ……ビンディングペダルにそういうのあったような。記憶違いかなあ……?」


 なお長良はスピードプレイ使いである――――ロードバイクにおけるホイールやハンドルなどの装備選択は提督とまるで変わらない。


阿賀野「違わないよ? 阿賀野はペダルもタイムよ? ほらほら」

長良「あ、やっぱり? へぇ、タイムってペダルだけじゃなくてフレームもあるんだねー」

阿賀野「えっ」

長良「えっ」

香取「あ、あのう。誰も突っ込まないんですか、あのやり取り……」

天龍「ほっとけ。目に見えてる」

大淀「…………タイムは元々ルックと同じ会社から分裂して生まれたカーボンバイクの老舗メーカーでして。

   その確かな技術を活かしたフレームはプロライダーすら唸らせる性能を有しています。ロードバイクにおけるF1マシンという高評価です。

   フランス車らしいルックスなどで人気を博していて、ルックと並び「いつかは」と称される憧れのバイクの一つです。

   またタイムは軽量なビンディングペダルにも定評があり……RTM(Resin Transfer Molding)工法を採用したカーボンの使い方は流石は老舗というべき精度を誇って……」

夕張「大淀、その辺りで」

大淀「え? ここからが本番で――――」


夕張「私個人としてはすっごく楽しいお話なんだけど、肝心の相手には無駄だから、その説明」

天龍「おう。よく見てみろ、あいつらの顔」

大淀「…………え?」


阿賀野「? ???? ???!?!?!?」プシュウ

長良「!? !?!??? ??????」プシュー


 阿賀野も長良も耳から煙を上げていた。今にも爆発しそうである。


大淀「」

天龍「…………アレだ。要はなんだ、スゲーバイクメーカーなんだよ。フレームはおろかペダルまで作っちゃってプロからも高評価っていうアレだ。うん、スゲー、スゲーよ、マジスゲー」

香取(ふわっとしすぎです!!?)

阿賀野「な、なるほどー! 流石は天龍さん! 超わかりやすい!!」

長良「大淀の説明って小難しくてよく分かんないんだよねー。さっすが天龍さん!!」

天龍「おう……ま、まあ、世界水準軽く越えてるからな……」


 天龍にとって出来が良いがとても出来の悪い妹分共であった。


阿賀野「タイムはすごい!」

長良「タイムすごい!」

天龍「…………後でアイス奢ってやるよ」

阿賀野「本当!? 御馳走様です! 阿賀野、今日は大目に走らなきゃ!」

長良「やったぁ!! 天龍さん大好き!」

天龍「は、ははは……大淀にもな」


 天龍が長良と阿賀野に接する時は、幼い駆逐艦娘らに接する時の態度と寸分変わらないという。


大淀(#^ω^)

球磨(納得いかねえって顔に書いてあるクマ……)

川内(何が納得いかないって、この二人が大戦の後半からウチの軽巡単艦最強を競ってたってのが納得いかない)


 北上や大井を差し置いてである。

 長良は考えた。そして阿賀野も考えた。

 そして同じ答えに辿り着いたのだ。


 『夜戦で勝てないなら夜戦に入る前に倒せばいいじゃない』と。


 言葉にするには易く、実行するには恐ろしく難題である――――何せそれを自覚した上で北上も大井も動く。

 だが逃げられない――――そんな理不尽が長良と阿賀野である。

 球磨に至っては『昼戦だろーが夜戦だろーが、撃って当てりゃ同じことクマ』と好き嫌いがなかったもよう。北上・大井と夜戦しても、勝率こそ低いが勝てないこともないというデタラメさ。

 アクの強い球磨型姉妹をまとめる長女として一目置かれるのは当然の帰結であった。そんな長良・阿賀野・球磨でも夜戦に持ち込まれたら勝てないのが川内である。

 何せ夜戦馬鹿と言われるこの軽巡だが――――その実、どうやって夜戦をするかではなく、どんないい状態で夜戦に持ち込むかを重要視している。

 否、それどころか、どうすれば昼の内に終わらせられるかすら考え、極力夜戦に持ち込まないスタンスを保っているから演習時の旗艦は大混乱である。

 なのにいざ夜戦が始まれば、川内に対峙することは絶対の敗北を意味した。さながら瀑布に晒された木の葉の如き有様である。


香取(私にはわからない世界です……)


 練習巡洋艦としては破格の実力を持ちながらも、教導艦としての分を弁えている香取は大人であった。

 夕張もまたその兵装実験巡洋艦としての本分を弁えており、第六水雷戦隊旗艦としてもお役目を全うした。

 大淀は事務メインのデスクワーク派と思いきや、連合艦隊規模の艦隊率いさせたら右に出る者がいない。

 提督曰く『それこそ適材適所よ』――――今日もロードバイク鎮守府は修羅道至高天。

※先に阿賀野
 もう二度とだらし姉などと言わせないという覚悟

設定が明かされる……というか登場する艦娘が出揃って来れば来るほど、全艦娘が参加するような大規模レースが待ち遠しくなるが、他の艦娘もどんな感じなのか色々知りたくなってくる

けど全員紹介されるの待ってたら、レースとかどんだけ先になるのか分からないというジレンマ

大規模レースが出てくるのは何年後なんだろうww

>>1
投下乙

イタリア・フランス系の艦娘とかが楽しみ
でもリシュリューがロードレーサーに乗ってる風景が見えない
あいつ古い自転車をメンテして乗るタイプだろ・・・

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阿賀野型軽巡洋艦:能代

【脚質】:ルーラー(スピードマン)

 ――――今度は私が、阿賀野姉を牽くから!!

 パーフェクトルーラー。(ただし阿賀野限定でしか全てを発揮できない)
 アレだ、龍田や大井と同じタイプ。
 阿賀野に補給食を運んだり、阿賀野を牽いたり、阿賀野にちょっかいかける敵チームの牽制やアタック潰しにおいて一人で全てをこなすマルチプレイヤーである。
 ヒルクライムがやや苦手なのが現在の課題である。やっぱり、その搗き立ての餅のような柔くて重いものがついているせいじゃないですかね。(小並艦)
 大戦中は大先輩たる神通と、妹の矢矧と共に第二水雷戦隊の運用に携わった。苦労人タイプ。
 島風にとって史実の第二水雷戦隊旗艦は神通というより能代の印象が強いが、神通・能代は島風が「さん」づけで呼ぶ数少ない軽巡である。矢矧? 矢矧は矢矧だよ?
 何気に史実では第二水雷戦隊旗艦として、神通に次ぐ長い期間を務めている。戦果が地味? うん、確かに地味。
 大戦においても『海の精華』と謳われた第二水雷戦隊の旗艦として、神通からも目をかけられた逸材なのだが、何故か地味。
 三つ編みなのは関係ない。磯波と浦波がガンダムハンマーばりに錨を振り回しながら深淵から見てる。
 なお鎮守府内でも事務に旗艦に調練にと、大淀ばりに八面六臂の大活躍なのだ――――が、やはり影が薄いと言われることしばしば。ステルス艦かな?
 きっと軽巡の次女に個性派が多い中、常識人だからだ。神通? 神通はまともに見えるだけである。
 余談だがかなりのシスコン。大戦時の阿賀野が派手な戦果を上げ続けたこともあって、阿賀野を尊敬している。
 精神的に依存しているのは果たしてどっちなのか。

【使用バイク】TIME RXRS ULTEAM(White silver)
 能代のロードバイクですか? 阿賀野姉と同じ、フランスのタイム、そのかつてのフラッグシップ・RXRSアルチームです!
 はい、ルックと並ぶカーボンの老舗とあって、流石の乗り味です!
 少し型は古いですけれど、カチカチのカーボンよりこのぐらいが丁度いい感じですね。
 長丁場のレースだとその恩恵はとても有難いです。このバネ感は癖になりますよ。
 阿賀野姉を良いポジションまで持っていけるよう、能代、リタイアするわけにはいきませんね!

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能代「やっぱり私って……影薄いのかな……」

山城「ふふ……影が薄くても幸が薄いよりマシだって、私をディスる気ね?」

能代「!?(ど、どっから出てきたのこの人!?)」

山城「そうなんでしょ?」

能代「え、なんで私いきなり絡まれてるの……やだ……怖いんですけどこの人……」

山城「なんですって……その影の薄さをなんとかしようと提督の正妻の座を狙っているのね?」

能代「本当に何!?」

山城「ステルス性能を活かして気が付かぬうちにそんな状態に持って行こうとしてるんでしょ……?」

能代「阿賀野姉! たすけて! 阿賀野姉! 話の通じない怖い人が! あがのねええええええええ!!!」

時雨「やめないか、山城」ポコン

山城「いたい……不幸だわ。どうして叩くの、時雨……私の事、嫌いになった……?」

時雨「そんなわけないよ。君が集合場所にいつまでたっても来ないから……ほら、今日は扶桑たちと一緒にサイクリングしてくれるんだろう? 楽しみにしてたんだ、早く行こうよ」

山城「……ええ、そうだったわね。行きましょう。私も楽しみにしてたわ」

時雨「うん、行こう………ごめんね、能代さん」

能代「え、ええ………なんだったのかしら……一体なんだったの――――ハッ!?」


龍驤「影が薄かろうと胸が薄いよりマシやってウチを――――」

能代「ディスりませんから! なんなんですか次から次へと!?」

龍驤「まあ冗談や冗談。うち、みんなが言うほど胸のこと気にしてへんし」

能代「は、はぁ……」

龍驤「そんなことよりな、能代」

能代「なんでしょう、龍驤さん」

龍驤「キミんとこの妹の矢矧――――なんか更衣室でベソかいでたで」

能代「矢矧が!? なんで!?」

龍驤「ウチが知るかいな。たまたま通りがかって見ただけやし、一応伝えとこ思ってな」

能代「あ、ありがとうございます! 私、行ってきますね!」

龍驤「ダッシュでか? 揺らすんか? やっぱ胸が薄いより影が薄いのはマシやってウチを――――」

能代「絶対気にしてるでしょう龍驤さん!?」


 能代は自分の影の薄さを気にするお年頃であった。

 華々しい戦果を上げる神通と己を比較し、なんやかんやで大活躍な阿賀野へ尊敬と憧憬と劣等感を感じている。


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阿賀野型軽巡洋艦:矢矧

【脚質】:TTスペシャリスト/ダウンヒラー

 ――――そんなアタックで! この矢矧を! 刺せると思うかァアアア!!

 スプリントも得意なTTスペシャリスト。「筋力と心拍が枯渇したとて、この矢矧、脚から肉が削げ落ちるまでペダルを回し続けるわ……!」というタイプ。
 幾度となく提督の魂を震わせる逆転劇を魅せ付けた軽巡洋艦の一人。散り際の花火のような儚げな危うさの中にぞっとするほどの色香を讃えている。
 「放たれた矢のような生をありったけ」という信念。深海棲艦が死ぬまで撃てば良い。撃ちきったなら拳で殴ればよい。腕が千切れたなら歯で喉笛を噛み千切れば良い。
 この提督をして「何が何だかわからない……」という顔をする。
 軽巡のベルセルク枠。深海棲艦絶対皆殺す軽巡。矢矧のストッパーとなりうる霞と初霜は、矢矧本人もお気に入り。
 というのも矢矧自身、己の猪武者っぷりを自覚しているからである。霞と初霜にしょっちゅうやらかしに関して説教されている。
 超前時代的な根性論とか特に説教される。色んな所で誰かのやらかしを説教しに行く霞と初霜の胃はどこまで大丈夫か、軽空母でトトカルチョされているのは内緒だ。
 神通・能代とは第二水雷戦隊を共に率いた仲で、ライバルでもあり絶対の信頼を寄せる相手でもある。みんな大和に優しくも厳しい。
 おう、ロングライドしろよ。そうだよ、300kmだよ。あくしろよ。おう。五秒で支度しな。ドーラより厳しい。
 深海棲艦からは通称「宇宙艦獣・ヤハギン」として恐れられている。あれが艦娘? ハハッ、ナイスジョーク。
 余談だが女子力/ZERO。木曾でさえ掃除・洗濯・炊事・裁縫にパシリと完璧だというのに。
 無手の組み打ちという条件下ならこの修羅揃いのロードバイク鎮守府内でも艦種問わず十指に入るという化け物。

【使用バイク】:TIME ZXRS
 フランスのタイム、そのです。
 ええ、フランスバイク特有のヒラヒラ感は嫌いじゃないの。
 イタリアンのどっしりとした重厚な味わいもいいとは思うけれどね。
 反応性? ええ、素晴らしいわ。パリッとした踏み心地にギュンッと反応してくれる。
 ええ、いずれは第二水雷戦隊の子達をお預かりして、ロングライドにも出かけたいわね。
 
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 提督や速吸らが阿賀野のダイエットに付き合う裏で、実は大和のダイエットも進行していた――――のだが。


大和「」


 一週間目で失敗していた。体重計の指し示す数値は、一週間前とまるで変わらぬどころか、やや増えている有様である。

 なお大和の名誉として記述しておくが、決して彼女が怠惰であるとか計画性がないというわけではない。

 むしろ日本の秘密兵器として、大和の名を冠する者として、それはもうストイックにロードバイクに乗った。

 初霜や霞がフォローに付き、運動量も食事量についても間宮と伊良湖が計算の上で適切な管理を行っていた。

 なのにこの有様である。その理由は、そう――――。


矢矧「おかしいわね……」

初霜「や、矢矧、さん……? 貴女、何を、何をしたのですか?」


 最近料理の勉強をしている矢矧――――意外と器用な彼女は優秀な生徒だと鳳翔と磯波からの評価も高い。

 そんな話を覚えていた初霜は、なんとなく予想がついていたが、怖いもの見たさに等しき好奇心からそれを問うた。


矢矧「え? 夜食の差し入れよ? 昨晩のステーキはどうだった、大和?」

大和「………お、いし、かった、わ」

初霜「や、や―――――矢矧さぁああああん!?」

霞「なんてことしてくれてんのよあんた……? ダイエットしてる人に、よりにもよって夜食……それもステーキ!? は!? 食事制限させてんのに何考えてんの!?」


 大和はしくしくと泣き出した。大和はかなり量を食べる方である。そして善良な性格をしている。

 せっかく差し入れてくれたものを食べずに捨てるなどできるわけがなかった。まして、矢矧にはまるで悪意がないのだ。全くの善意でやっている。


矢矧「食事制限? 何を言っているの――――食べなきゃパワー出ないわ」

初霜「」

霞「」


 初霜も霞も「何言ってんだこいつ」って顔をして矢矧を見ていた。


朝霜「ぶひゃひゃひゃひゃwwwww」


 朝霜は腹を抱えて嗤った。


雪風「ぐにぐにです!!」グニー

大和「や、やめて……雪風、お腹つままないで……!」

雪風「つまんでません!」

浜風「ええ、つかんでますね。つかめるって凄いですね」

磯風「つかめるな。凄いなこれ。大和、これは乙女としてどうだろう……居住性は確かに良さそうだがな……枕として使ったらふかふかしてそうだ」

大和「」

朝霜「やめたげろおまえらwwwwwあたいのwwww腹がwwww死ぬwwwww」


 矢矧は太らない体質であった――――そして三食ガッツリモリモリ食べて運動で限界まで発散するタイプ。

 故に持ち込む料理もまたボリューミィでカロリー地獄である。

 なお阿賀野も、この時期は矢矧の善意の夜食の犠牲になりそうだったが、提督や速吸らが親身になってダイエットに付き合ってくれていることを想い、なんとか断っていた。

 もう二度とだらし姉などとは言わせないという覚悟は、本物であったのだ。


矢矧「大和の食事を見たわ。あんな貧相な食べ物……量も少ないし……あれっぽっちの食事じゃ、戦艦としての強さを維持なんてとても――――」

初霜「…………正座です」


矢矧「え、え? あ、あの、初霜? いきなり何を言い出すの?」

霞「誰が口ごたえをしていいと言ったの? 正座しろと言ったのよ初霜は」

矢矧「え、え……やだ……怖い……」

初霜「座りなさい! お説教します!!」

霞「そこ座れ、一秒で座れ……クズ鉄にするわよ? あの軽巡棲姫のようにね!」

矢矧「はい」ストン


 鎮守府に着任したタイミングとして先輩にあたり――――駆逐艦内で数少ない第二水雷戦隊の旗艦経験者たる霞と初霜に、


霞「よく聞きなさい……その悍ましいほど前時代的なクズ脳味噌に、改めて現代のスポーツ医学の基礎と」

初霜「減量時の食事制限の大切さ、そして夜食がどれだけ健康に良くないのかを教えて込んであげますよ……」

矢矧「」


 矢矧は逆らえなかった。性格的に勝てる気がしなかった。


霞「このバカ! どーしよーもないアホ! 落ち武者! 脳筋! あんたの姉ちゃん阿賀野!」

初霜「もぉー! だめっ! だめっ! だめったらだめ! 矢矧さんのおばかさん! メニューを考えてる間宮さんと伊良湖さんに謝りなさい!」

矢矧「はい……はい……すいません……ごめんなさい……姉が阿賀野ねえでごめんなさい……おばかさんですいません……間宮さん、伊良湖さん、ごめんなさい……」


 迫力満点な霞と、まるで迫力はないが一生懸命な初霜のお説教の二重奏に、ただ静かに項垂れながら矢矧は落涙した。

 龍驤が見かけたのはこの光景である。能代の到着まであと数分の時を要した。



 なお無事に大和のダイエットは、阿賀野と同時期に終了することになる。


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阿賀野型軽巡洋艦:酒匂

【脚質】:オールラウンダー

 ――――今、酒匂が行くからね。

 姉たちと同様に瞬発系に優れながらも高い持久力と適応力をも備えた、阿賀野型の完成形。
 夕張の次に軽巡では小柄で体重が軽いためか、パンチャー型のオールラウンダー。
 100km未満のレースならいい結果を出せるが、長距離となるとスタミナ不足が目立つ。
 なお提督が阿賀野型で最も警戒しているのが酒匂。隙あれば度を超えたスキンシップを迫ってくる。
 木曾は提督を素で風呂に誘ってくるが、酒匂は無知を装って誘ってくる。顔が真っ赤なのでバレバレであるが、酒匂、恐ろしい子……!
 長門やプリンツ・オイゲンによく懐いており、大戦時から二人を陰に日向に、ほぼ無自覚で支え続けた。
 酒匂が水雷戦隊を率いると駆逐艦たちが必死にフォローに走る傾向にあるが、他の軽巡が軒並み化け物のためあまり旗艦経験はない。
 それでも艦隊指揮能力は及第点をクリアしている。だがむしろ随伴艦となってはじめて輝く不思議な軽巡洋艦である。
 そんな酒匂はロードレースではエース級の脚を備えていた。どんな活躍を見せてくれるか、提督はとても楽しみにしている。

【使用バイク】:TIME VXRS ULTEAM World Star(2009年モデル)
 酒匂のバイクもフランスのタイム! その名車中の名車と呼ばれた、VXRSアルチーム・ワールドスターだよ、ぴゅぅ!
 カタログ落ち? 古い? ………えっへっへぇ。
 ……実はねえ、このバイクって確かにお下がりなんだけど……。
 なんと! ななんと! なな、なーんと!
 しれぇが着任前に乗ってたバイクなんだよー♪ ぴゃー♪
 しれぇのサイズが合わなくなったから、酒匂にくれたの! しーれーえーのバーイクぅー♪
 ねえねえしれぇ、そのF8も乗らなくなったら、次も酒匂でよろしくね!
 大丈夫、酒匂、おっきくなるから! これから!

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 矢矧がぽろぽろ泣き出し、能代が更衣室まで疾走していたのと同時刻、明石のロードバイク工房ではVXRSの検査が行われていた。

 組み立て前に明石による入念なチェックが行われたのだ。

 その結果――――。


明石「結論から言えば………極上の保存状態です。ほぼ新品同様と言って差し支えありません。

   塗装の退色は皆無、よほどいいコーティングをされたのでしょう。

   素地のカーボンの劣化もなく、ボトムブラケット部も問題ないものと……(綺麗なネジ切り……提督、愛車のF8といい、雪風ちゃんの586SLといい、ネジ切り好きなのかな?)」


 明石はなかなかいい着眼点をしていた。

 提督はネジ切りタイプのBBを好む。整備面で楽という点で一つ、BB周囲に過剰な剛性は必要ありませんねえという提督の好みが一つである。

 圧入式BBも嫌いではないが、無用なトラブルが起こる可能性がある、というのはそれだけで軽いストレスである。


酒匂「じゃ、じゃあいいの? しれぇ、いいよね? 酒匂、これ乗ってもいいよね!?」

提督「むしろ酒匂がいいのか? 試乗車に回そうと思ってたバイクなんだが……」

酒匂「酒匂は全然オーケーだよぅ! しーれぇーのばーいくー♪ ぴゃー♪ ぴゅう!」

提督「まあ酒匂がいいならいいんだが……」

※あ、>>107ミスった。修正

【使用バイク】:TIME ZXRS TEAM12
 フランスのタイム、その旧フラッグシップ・ZXRSです。有難く戴くわ。
 ええ、フランスバイク特有のヒラヒラ感は嫌いじゃないの。
 イタリアンのどっしりとした重厚な味わいもいいとは思うけれどね。
 反応性? ええ、素晴らしいわ。パリッとした踏み心地にギュンッと反応してくれる。
 ええ、いずれは第二水雷戦隊の子達をお預かりして、ロングライドにも出かけたいわね。

酒匂「いいの! これがいいの! しれぇが乗ってたバイクに変えられるものなんてないよぅ!」

提督「愛い奴め」

酒匂「褒められた! ういって!」

明石「あははは、良かったわね酒匂ちゃん。しかしそこまで状態がいいものを、どうして乗っていなかったんです?」

提督「いや、こればっかりはな……当時よりかなーり身長が伸びたからもう乗れないんだよ。思い出もあるバイクだし、売るのもちょっとなーと」

酒匂「しれぇの思い出の詰まったバイクだね! 酒匂、とっても大事にするからね!!」

提督「おう、託したぞ酒匂」


 そんな折であった。


神風「ち ょ っ と ま っ て」

朝風「いい話してるところ待って、ねえ待って」

春風「お待ちになって……私、今、とても混乱しています」

松風「僕もだ。少し待て。情報を整理させてくれ……」

旗風「お待ちください、司令」


 ――――六月の護衛遠征ラッシュ時に、朝風と松風、旗風が発見され、艦隊に加わり、ついに勢揃いした神風型の面々が待ったをかけていた。


提督「おお、神風、朝風、春風、松風、旗風。ウチにはもう慣れたか? 青葉と衣笠から聞いたが、ウォーターベッドが届いたって?」

酒匂「アレって寝心地いーよねえ。疲れの取れ方が段違いだよね!」

神風「あ、その節はお世話に……じゃなくて、質問いいかしら?」

提督「何だ? ロードバイクなら遅くても三週間後、早ければ来週には納車予定だぞ」

朝風「えっ、ホント? やったあ!」

春風「ふふ、楽しみですね朝風さん」

松風「それは嬉しいニュースだね。だけど今、僕たちがキミに聞きたいのはそれじゃあないんだよ」

旗風「ええ……きっと、神姉さんも松姉さんも、旗風と同じ疑問を抱いているものと」

酒匂「ぴゃ?」

明石「どうしたの?」


 彼女たちは同時に息を吸い、同時に言葉を発した。


神風型「「「「「「司令官(様)、(お)歳はいくつ(なの)(よ)(ですの)(なんだい)(ですか)?」」」」」


 思いのほか大声となったその声は、工房内でロードバイクの調整をしていた他の艦娘達の耳にも届く。

親潮「―――――そういえば、おいくつなのでしょう? 黒潮さんはご存知かしら……」

浦波「……着任前ということは、三年以上前……背が伸びたって……若い方だとは思ったけれど……磯波姉さん、ご存知ですか?」

磯波「えっ、あ、はい……知ってます、けど……心して聞いた方がいいと思いますよ?」

沖波「あっ……え、えっと、沖波は姉さまから聞いたけれど……」

藤波「あー……私も。うん、びっくりするよね」

水無月「水無月もうーちゃんから聞いてるから知ってるよ? 司令官はさんじゅ――――」



提督「――――今年で二十歳だ。これ乗ってた頃は七年前ぐらいだから……まだ中学上がりだったな」



 水無月は得意げに口を開いたまま、硬直した。

 その背後で卯月がうっそぴょーんと笑いながらぴょんぴょん跳ねていた。


朝風・松風「嘘だッッッ!!!」

神風「その落ち着きようはどう低く見繕ったって三十代でしょ!? だ、騙そうったってそうはいかないんだから!!」

旗風「さ、流石に、それは……それですと、逆算すると、とんでもないことに…………」

春風「!? !?!? !?!?!?」


 神風たち新参の狼狽えっぷりは相当なものであった。


神威「流石に冗談だと思いますよね……神威もそうでした」

江風「……まあ、ビックリすンよなァ。車の免許証見せてもらうまで信じられなかったし」

初月「着任当時16歳とはな……聞かされた時は本当に驚いたものだ」

嵐「なー?」

萩風「本当に」


 すでに姉妹や先輩たちに聞いていた艦娘の表情は苦笑いである。

 水無月は絶句していた。その背後でしてやったりとばっかりに卯月が笑っている――――なお三十代と伝えられて、水無月は本気で信じていたもよう。


提督「俺……そんなに老けてるかな……」


 地味に傷ついている提督に対し、艦娘達は思った――――顔云々ではなく精神性の話をしているのだと。


神通「神風さん達……気持ちはわからなくもありませんが、嘘じゃあありませんよ」

最上「あははっ、ボクも最初は驚いたけど、嬉しかったよ。同じぐらいの年頃の男の子とお話しできるって、なんかわくわくしない?」


鈴谷「鈴谷もー! 厳格そうなおじさま提督より風通しよさそうだし、賑やかだったし! 鈴谷はうまくやってけそーって思ったし、うまくやってこれたじゃん?」

千代田「ま、まあ、昔っから頼りにはなったけど、ね。最初はちょっぴり不安だったわよ? ちょっとだけよ? ちょっとだけ……い、今は、心から信じてるから」

提督「サンキュー最上、鈴谷、千代田」

青葉「! 司令官! 青葉、気づいちゃいました!」

提督「何に?」

青葉「司令官が今乗られているバイクが少しサイズ小さめのに乗ってるのって、一年前ぐらいに買ったからですか?」

提督「……正解。特にF8な……予約注文した時にはサイズはベストフィットだったんだよ。でも……」


 提督は見るからに肩を落とし、深く息を吐く。


提督「もう背が伸びるのはそろそろ止まるだろうと思ったんだが……まさかこの一年で8cm以上伸びるとは思わなんだ……」

明石「流石の提督も己の身長の伸びまでは予測できませんでしたか」

提督「できるかンなもん。まあ、その分はステム伸ばして調整して……誤魔化し誤魔化しで乗ってんだよな」

武蔵「昨年まで私や大和と同じぐらいの身長だったものな」

長門「うむ! 着任当時は私より小さかった!」

提督「……………そうだな」


 目に見えてテンションが下がる提督。男にはちっぽけなプライドがあるのだ。安いプライドだ。誰もがそれにしがみ付いて生きている。


金剛「何を暗い顔してるのサー、提督ぅー! あの頃の提督も、今と変わらずとってもステキデース!」

提督「キュン」


 提督のテンションがやや上昇。


比叡「はい! 当時は私とあんまり身長変わりませんでしたね!」

提督「シット」


 元通り。


榛名「なんだか遠い昔のことみたいですね」

霧島「あの頃の司令は、今よりも余裕のない顔をされていましたね……今のお顔の方が、その、す、す……よ、良いと思います、よ」

提督「キュン」


 提督のテンションがかなり上昇。


日向「どちらの頃の提督も、私は嫌いではないぞ」

伊勢「あはは、懐かしいねえ。あの頃の提督は可愛かったなー♪」

扶桑「あの頃からとても素敵な殿方でしたが……ますます魅力的になりました」

提督「サンキュー日向、ファッキュー伊勢、空が青くて綺麗ですね扶桑」


 日向と伊勢でプラマイゼロ。扶桑でテンションはかなりアゲアゲに。


長門「? 今や私より拳大ほど背が高いではないか。何を一喜一憂している?」

陸奥「長門。提督はね、男の子だからよ」

長門「??? 何を言っているのだ陸奥? 男児だろうが女児だろうが、身長の高低など大した問題ではない。大切なのは心根だ」

提督「キュンキュンキュンキュンキュンキュン」

扶桑「提督が未だかつてなくときめいたわ!?」


 提督は熱血に弱かった。今も昔も熱くさせるものが好きである。

 さておき。


提督「ま、話を戻すが――――ニ十歳だ。今年で」


神風「ほ、本当、なの……?」

朝風・松風「「ぶ、ブラック鎮守府……?」」

春風「むしろ大本営がブラックすぎでは……?」

旗風「今も未成年の司令官を……どういうことです?」

提督「――――ま、その辺りの話は、機会があったらおいおいな。長い話になるから……こんなところで気軽に話すことでもなし」


 話は終わりとばかりにパン、と手を打ち鳴らす。


提督「そんなことより、試乗車でサイクリングに行くんだろ? 酒匂のシェイクダウンもある――――ついていってやれよ、神風型」

酒匂「そ、そうだ! そうそう! 神風さんたちー! 酒匂と一緒にサイクリング行こうよー!」

神風「え、あ、は、はい! 酒匂さんって言ったかしら?」

朝風「いいわね! 納車される前にしっかり身体づくりしておかなきゃだし、朝の優しい日差しも好きだけど、昼の暑い日差しの中を走るのもいいわよね!」

松風「そのおでこで日光を反射するもんな、姉貴は」

朝風「――――表に出ろ」

松風「勿論出るさ。ロードバイクでね。一勝負、するかい?」

朝風「じょ~~~~っとうよ! 泣きべそかかせてあげるからね!」


春風「も、もう……朝風さんと松風さんったら」

旗風「ふふ、いいではありませんか、春姉さん。喧嘩するほどなんとやら、ですよ」

提督「球磨と川内みたいなもんだな」

春風(それはありえません)


 視線がぶつかり合うだけで空間が歪むほどの殺気が撒き散らされるのは、喧嘩の枠中には入らない。入ってはいけない類のものだ。

 唸り声を上げる朝風の視線を見えないもののように飄々とした態度で、松風はロードバイクを転がしながら外へ出る。

 朝風がそれに続き、神風・春風・旗風もまた酒匂と共に工房を去っていく。

 そのタイミングだった。提督の横に立つ艦娘が――――武蔵が口を開く。


武蔵「そう気に病むこともあるまいよ……ナリだけでもなく、実力だけでもない。実績を積み重ね、名実ともに太くなった。匂い立つような男ぶりではないか。思わず見とれてしまうぐらいだ」

提督「お前に言われると悪い気はしないな」

武蔵「私だけじゃあないぜ。みんなそう思ってるさ――――その横に、立ちたいとな」


 着任当初……というか古参から中堅にかけての艦娘達は、当時16~17歳の提督を知っている。

 多くの艦娘が提督を認めた。


 提督・司令官として。

 人間として。父として。兄として。男として。

 多くの理由で、艦娘達はこの提督を求めている。


提督「………何が言いたい?」

武蔵「なあに、物は相談だ――――提督よ」


 あっけらかんと、実に気軽に、武蔵は言った。

 提督だけに聞こえる声で、言った。





武蔵「ケッコンは、しないのか?」






……
………

※っかしーな。香取と鹿島と大淀のニューバイクまで投下できなかった

 日中にロードバイクに乗りつつ艦これのイベントをこなし、SSも書くのは結構キツいのかもしれんね

投下乙!

乙です

乙!のんびりやっていけばいいさ

乙!

推定中学生時代に有名ブランドのフラグシップモデルを乗り回し、終いには暗峠の住人になっていただと!?
ヘタクソな関西弁からすると関西地元民ではなく恐らく転勤族、つまりロード提督は空自の官品か大企業幹部級の子息あたりか

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香取型練習巡洋艦:香取

【脚質】:パンチャー/ルーラー

 ――――それでは単位はあげられませんね。

 ミスパーフェクト練習巡洋艦・香取。鎮守府内の風紀維持を司る執行部の部長でもある。
 日常生活における隼鷹らの天敵。あの鞭伸びる上に分裂するんですけど。禁鞭か何か? 躾! 躾です!
 ロードレースにおいても野生や爆発力を売りにする連中にとっては天敵。むしろ手玉。あっさりスカされる。理の極点に到達している。
 大淀と共に軽巡ではガチの頭脳派。事務も経理も総務も、鎮守府内のあらゆることは大淀や香取に聞けば何でも分かるレベル。
 ルーラーやオールラウンダーと見まがうほどの万能性を持ちながらも鋭いアタックに平地巡航維持力、スプリント能力を持つ。
 如何せん小柄であり、バリバリの前線組に比べると流石にスタミナに不安要素があるため、提督は悩みながらもパンチャー脚質と判断した。役割としてはルーラーもこなせるという極めてオイシイ万能さ。
 ぶっちゃけ脚質なんて、所詮は目安でしかないというのを体現している乗り手である。
 彼女の元で航海のイロハを叩き込まれた駆逐艦は、座学にせよ実戦にせよ何一つ苦手がない、どれもこれも一線級の性能に仕上げるという仕事人、否、教育者である。
 ただし良くも悪くも無理をさせない。また、教導対象となる本人の嗜好を無視した分かりやすい万能を作るため、特化させるなら別の艦娘。
 本人が苦手がないゆえか、万遍なく鍛えて苦手を消すのが得意で、伸びしろをより伸ばす方針は苦手。ルーラー製造機と呼ばれるようになる。
 多用な艤装を使いこなした経験からか、非常に器用でもある。大淀や夕張と仲良し。野分と舞風がとても懐いている。
 空母や重巡、潜水艦、幅広く交流を持つ。コミュ力がおっそろしく高い。
 物事のコツを掴み、それを他人に理論として教え込むことにかけては神通と並び特級クラス。物覚えの悪い子ですら香取にかかればあっさりモノになる。『先生』の異名は伊達ではない。
 練習巡洋艦としての兵装から火力には乏しいものの、敵の主砲の砲口にピンポイントワンホールショットというキチガイ染みた魔技を編み出した元凶の一人である。
 「豆鉄砲でも使いようです。強さは弱さ。弱さは強さ。強さを伸ばすことも大事でしょうが、弱さから目を逸らさぬこともまた大事なことですよ」とは本人の言。
 実演として12cm単装砲を用いてル級の主砲を爆裂四散させるところを見せつけられながらにそう言われた新参駆逐艦らはただ汗ダラッダラな顔で頷くしかなかったという。
 駆逐艦未満の火力であろうと砲口をピンポイントで狙い撃ちされてはひとたまりもない。
 まさにパーフェクトである。鹿島は憧れの目で香取と大井を見てる。


【使用バイク】:BMC Teammachine SLR01 TWO(carbon yellow)
 スイスのBMC、そのオールラウンドモデルのフラグシップ、チームマシン・SLR01・ツーです。スラムe-tapに乗せ換えています。
 2011年のツール……カデル・エヴァンスの大活躍は燃えましたね。ええ、それでBMCです。ふふ、結構ミーハーなのかもしれませんね、私。
 ですが、もちろんそれだけではないですよ? デザインも気に入っています。意外ですか?
 シートに繋がるトップチューブ部後端の上下の分岐には、どこか全体的に柔らかさを抱かさせる調和がありますよね。
 はい、試乗して決めました。乗ってみてわかることもありますが、とてもふしぎな子ですね、このマシン。
 きわめて剛性が高くはなく、大きなトルクをかけて爆発力を発揮するわけでもない。
 ですが、その力の伝導率は決して柔なものではなく、しっかりと推進力へ変わっていく。
 どっしりとした見た目と裏腹に、軽いのですよ。とてもしなやかに坂道を登ってくれる子です。この軽やかな加速力にやられましたね。
 軽快さ、即ち楽しさ――――楽しいアタックを、山ほど掛けられますね。
 ふふ、提督? 私、運動は得意なんですよ? 特に――――何かに乗るのって……とても。
 乗ったことのないものはまだいっぱいあるんですけれど……ふふ♪ 何を想像したんですか? 『乗り物』のお話ですよ、提督?
 でも……乗られたりすること、あるのかしら……♥

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 姉妹揃って魔性の女。それがロードバイク鎮守府の香取型である。


球磨「おおー!? 鹿島のバイク、見るからに強そうだクマ!?」

川内「いいじゃーん! 分かりやすい! 好きだなー、こういうの!」

天龍「ダウンチューブ太ッ! デカッ!?」

香取「そうでしょうか? ふふ、五年ぐらい前に比べると、これでも大分大人しくなったんですよ、この子」

大淀「こ、これでですか……? あっちこっち角ばってますね。丹念に削り出された彫刻のような……」

夕張「おおお! BMCだ! それも2018年度モデル! シート部のブリッジなくなったんだ、へぇー、へぇー……これはこれでいいなぁ、かっこいいなぁ」


 「ところで今、西暦何年?」というツッコミを入れてはいけない。決して……。


香取「ふふ、夕張さんには提督からいただいた大事な『特別』があるじゃないですか。他の皆さんも」

川内「そうそう。いいなー、妬けちゃうなー」

夕張「あ、ははは……て、照れちゃうよ。もちろん私にはスペシャリッシマが一番だけど、いろんなバイク見ると楽しくなってきちゃってさ」

球磨「それは分からなくもないクマ。でもやっぱり自分のバイクが一番だクマー……カーン……カーン……カーン……♪」

川内「連呼すんな。うちの那珂ちゃんがやけに怯えんのよそのバイク」

>>133修正
球磨「おおー!? 香取のバイク、見るからに強そうだクマ!?」


球磨「ここに那珂はいねークマ。それに夜戦夜戦と所かまわずうるせえバカにどーこー言われる筋合いはねークマ」

川内「あ? やんの? レース? レースしたいの? 私のおしり眺めながら敗北噛みしめたいの?」

球磨「お? 球磨に勝てると思ってんのかクマ? おしりどころか視界に入らないぐらい大差付けて負かしてやるクマ」

長良「やめなよ二人とも。今日はレースとかそういうの無しって取り決めしたでしょ? 鬼怒呼ぶよ、鬼怒」

川内「やめて! 分かった、喧嘩しないから!!」

球磨「やめろクマ! それだけはやめるクマ!!」


 川内・球磨は鬼怒を交えてサイクリングロード周回コースを走ったことがある―――――詳細は省くが、平地でハンガーノックになりかけたという。

 坂があるならともかく、平地オンリーはTTスペシャリストばりの高速巡航と馬鹿げたタフネスを備えたスプリンターたる鬼怒の独壇場であった。

 二人とて体力に自信はあるが、いわゆるコドモの体力にはついていけないというアレだ。


天龍「それはさておきだな……ウチの試乗車のラインナップにBMCのエントリーモデルがあったよな? 敷波や沖波がやたら気に入ってたぞ、そのメーカー」


 提督曰く「サイコガンダム的な立ち位置のロードバイク」だという。「成程、わからん」と天龍は首を傾げた。分かる筈もない。


阿賀野「はぁー、いろんなバイクがあるのね。阿賀野、それは乗ったことなかったなぁ」

長良「みんな違うからいいよねえ……同じじゃ面白みないよ!」

香取「ふふ、ですよね」

大淀「そういえば妹さん――――鹿島さんは何のバイクを? 彼女もBMCですか?」

香取「…………あの子は、その」


 香取は頭痛をこらえるような渋面を作った。というのも、なんと鹿島は提督に――――。

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香取型練習巡洋艦:鹿島

【趣味】:ヴィンテージバイクコレクション(ポタリング派)

 ――――行きたい場所はいっぱいあるけれど、生きたい場所はいつも一つですよ。

 全ての提督にとって最大最強の敵の一人。ナチュラルボーンエンチャントレスこと魔性の鹿島。本人に自覚があるタイプなのでタチが悪い。
 戦艦は伊勢・日向やウォースパイト、空母/軽空母はグラーフや鳳翔、水母なら神威や瑞穂らがヴィンテージバイク好き。ポタリング用のサブバイク持ちは他にも結構いる。
 足柄や多摩をヴィンテージバイク好きと見るかが問題である。どっちかと言えばファニーバイク好きと見るべきか。
 レアパーツ集めが好きな子も出てくる。最上型と古鷹型がはまさにそう。クラシカルなバイク大好き。駆逐艦では菊月やマックスなどは実にシブいのに乗っている。ダブルレバーって素敵やん?
 どいつもこいつも提督が持っているロードバイクのヴィンテージこれくしょんを1話の時の長良ばりのヤバい目で狙っている。
 サンツアーのシュパーブプロのコンポフルセットとか、カンパの初期レコードとか、マジストローニ社のヘッドパーツとか、各メーカーのコロンバスフレームとか50年代のオルモとか、スピナジーのバトンホイールとか、往年のプロ選手のレースジャージとか。
 やらん! やらんぞ! やらんからな! なお結局上げることになるもよう。「お父様、私たち、お嫁に参りますわ」と言われた父親気分で送り出したという。馬鹿だ。
 まだ新参の域を出ない鹿島だが、姉の香取の教育もありすくすく成長中。香取曰く「練度は99になってからが本番」。ケッコンカッコカリもしてねえのになんだここの艦娘共の強さは。
 軍艦時代の井上提督の教えをそのまま体現したような香取の教育方針に共感を示すとともに尊敬と敬意を払っており、姉妹仲は極めて良好。
 第四艦隊の旗艦繋がりで那珂、練習艦として大井と交流を持つ。この鎮守府の那珂と大井はやたら女子力高いので色々学んでいる最中。甘えるのが非常に上手い。
 最近だと提督の持つ80年代のピナレロ・モンテロを恋する乙女の目で見てる。袖をくいくい引っ張って何かを訴える潤んだ眼差しで提督を見上げるとか。
 やめろ鹿島……その視線はここの提督にすら効く。やめて差し上げろ。

【使用バイク】:CHINELLI LASER(1980年モデル極上品)
 鹿島のバイクは当時一世を風靡したエアロデザイン! 御存じイタリアブランド・チネリ――――走る芸術品、レーザーです!
 えっ、知らない? ……うふふっ、それじゃあ手取り足取り、鹿島が優しく教えてあげますね♥
 自転車の伝説的なメーカーがチネリ、80年代当時は全盛だったスチールフレームにおいて数々の伝説を生み出した名車中の名車なんですよ!
 なによりもこの外見、どうです? 素敵でしょ? ロードレーサーとしての獰猛さと繊細な佇まい、無駄のないフォルム……。
 コンポーネントはカンパのCレコード組です! ペダルもトゥークリップ式! ふふっ、いいでしょ? ダブルレバーもすごく使い心地良くって♪
 一目惚れだったんですよ、提督さん。貴方と出会った時みたいにね……♥

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 提督が手勢の艦隊を率い、イタリアの窮地を救ったのは何年前のことだったか。

 現地のロードバイク好事家から新品のチネリ・レーザーを始め、多くのヴィンテージロードを譲り受けたのは、果たして何年前のことか。

 二年前? いや、二年半前だったか。

 ……まぁいい、彼にとってはつい昨日の出来事だが、彼女にとっては多分明日の出来事だ。

 彼女には『有明の女王』とかいろんな通り名があるから、何て呼べばいいのか。

 とにかく提督にとっての彼女の名前は一つきり――――鹿島。

 そう、彼女は最初から言う事を聞かなかった。提督の言うとおりにしていればな。まあ、可愛い子だよ。


提督「」


 提督が鹿島に出逢ったのは、確か昨年の秋のことだ。

 鹿島は最初からいうことを聞かなかった。特にこのロードバイクを一目見てからというのも、そのまんまるの瞳の中にはハートマークが浮かびっぱなしだった。


提督「そんな装備で大丈夫か(震え声)」

鹿島「鹿島、これがいいです。これじゃなきゃ、嫌です」


提督「ふ、古いバイクだよ……? ほ、他にもほら、いっぱい、最新のバイクが……」

鹿島「ヤです! これがいいです!! これ欲しい! 下さい、提督! 私、私、なんでもしますから!」


 鹿島は言っている――――このロードバイクを寄越せと――――。

 鹿島にとっては幸運なことに、そのチネリ・レーザーは鹿島の身体にベストフィットサイズであった。


鹿島「くれないの……? なんでも、何でも言う事、聞きますよ……?」

提督「あ、いや、その……こ、これは、これは俺の大事なこれくしょ……」

鹿島「鹿島より、大事なんだ……?」

提督「い、いや、おまえをこれくしょんにした覚えはないって言うか……モノとおまえを比べようがないっていうか」

鹿島「ぐすっ……て、提督さん、だめ? だめ?」

提督「あ げ る」



 ――――ああ、やっぱりダメだったよ。提督は演技ではない女の涙にめっぽう弱いからな。


 提督のロードバイクこれくしょんの中でも一二を争うお気に入りの一台であった。ここまで極上の状態を保つレーザーは世界広しと言えど十台存在するかどうか。


鹿島「やったぁ! ぐしゅっ……提督さん、ありがとう……優しいんですね」

提督「」 


 こぼれる涙を拭いながら、しかし逆の手でしっかりと絶対にもう話すものかとハンドルを握りしめる鹿島。ああ、もうあれは二度と俺の元に戻ってくることはないのだろうなと、提督は思った。

 提督は鹿島の笑顔を護れたが、代わりにロードバイクを失った。

 サイズ的に乗れないとはいえ、盆栽バイクは提督の癒しの一つであった。


 盆栽バイク:まさに盆栽の如くディスプレイされるだけのロードバイク。


 なおどんどん提督の凡才バイクは奪われていくことになる。三隈とか三隈とか、特に三隈とかに。くまりんこ♪



……
………

※鹿島といい三隈といい、ラグの綺麗なクロモリロードが似合うと思います

富は再分配されてこそ富なのだ

下手な最新フラッグシップより貴重なロードバイクじゃねーかww
くまりんこ楽しみです

どんなものかとCHINELLI LASERの画像検索したけど……

TTフレームの前傾姿勢エグいなww

※やだ……読み返したら私、チネリの綴り間違えてる上に盆栽バイクが凡才バイクに……!

×:CHINELLI
〇:CINELLI

Hがあったら健全じゃなくなっちゃうというオチ(ry
誤字が多いだらしない>>1ですまない

>>145
Hの後にちゃんとアイ(愛)があったから大丈夫だよ!
いつも楽しみにしてる
気にせず頑張れ


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大淀型軽巡洋艦:大淀~その2~

【脚質】:クラシックスペシャリスト(TTスペシャリスト型)

 ――――私だって、たまには一人で思いっきり走りたい時ぐらいありますっ。

 ミスパーフェクト軽巡洋艦・大淀。執行部副部長。
 副部長なのはかつて部長だったが別の仕事が多岐に渡りすぎて流石に手が回らず香取に引き継いだため。要は副部長という名の相談役、最後にして最恐の監査である。
 秋雲を旗艦とする同人サークルの天敵。この淫らな本を書いたのは誰ですか……? 明らかに重力が増したような威圧。盤古幡か何か?

 軽巡内では矢矧や天龍に並ぶ長身。シルエットが細身で足がおっそろしく長いので目立たないが、下半身の肉付きが素晴らしい。
 細身だが馬鹿げた出力を持つ脚を持っており、蓋を開ければ素晴らしい回転効率を保ちながら高速回転させるTTスペシャリストだったというお話。
 提督も前々から「いい脚してんなー」と(性的な意味皆無で)思われてた。
 登坂で爆発できるカンチェラーラタイプのTTスペシャリスト。(という名の宇宙人)
 楽しいことは苦ではない、という意外なことにシンプルな嗜好。天龍に良い影響を受けた軽巡の一人でもある。性格はまるで正反対だがウマが合う。意外なこと!
 頭脳明晰でレースでもその頭の回転の速さは活かされるが、本領はプレッシャーや期待を掛けられれば掛けられるほど強くなるところ。本番で120%出せるタイプ。
 自己管理能力が極めて高く、レースまでに肉体・精神の両方でベストな状態に仕上げてくるところも脅威である。キラ付けは完璧です!
 足柄も似たようなものだが、大淀の場合はもはやライフワークと化している。
 半面、複数日にわたって開催されるステージレースは好きではない。できなくもないが、ワンデーレースで搾り切る感覚が好きらしい。
 デスクワークが主体ではあったものの、もともと運動好きで、レース用ロードバイクに乗ったことで己がスピード狂であることにも気づいてしまった。足柄ァ!

 公私ともにまさにパーフェクト――――なのだが、恋愛には奥手で消極的。
 なまじ頭が回るせいで色々とロジカルに考え過ぎて、恋愛的な選択は最終的に心に従う。女としての自分を選ぶというの?
 そういう意味でロードバイクにハマッたのは必然とも言える。頭の中を真っ白にしたいお年頃。
 戦後となり現状は比重の重すぎる作業の引継ぎを順次行っている。気が楽になった反面、その分提督と接する時間が少なくなってちょっと寂しいとか思う自分に赤面。乙女か。
 なお以前はうやむやになった提督とのサイクリングデートは無事に履行されたもよう。ドイツの洋館風な喫茶店に赴き、提督と二人きりで至福のひとときを過ごしたとか。


【使用バイク2】:Cerv?lo S5 2013 Tour de France 100th special edition
 本拠地をカナダ・トロントに置くロードバイクメーカー、サーヴェロ。
 そのエアロロードのフラッグシップ、S5です。サーヴェロがエアロロードに極めて高い評価を持つのは御存じですよね。
 トライアスロン用のバイクだけじゃないんですよ、ふふ。
 そしてこのバイクは、2013年に通算100周年を迎えたツール・ド・フランス――――その記念モデルとして販売されたスペシャルエディションです。
 黒地のフレームに蒼の格子模様を施したロゴがマッチしています……意外なこと!
 ところで皆さん、サーヴェロの名前の由来を御存じですか?
 Cerveloの「e」は「?」と表記されます。Cerveloではなく、Cerv?loです。
 イタリア語で「頭脳」を意味する「cervello」とフランス語で「自転車」を意味する「v?lo」を掛けてサーヴェロ……。
 あらゆる風を切り裂く鋭利なデザインの、卓越した頭脳を備えたロードバイクなんです。

 え、っと……提督も、その……私に似合うと、仰って、くれたので。

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川内「…………まあ、御覧あそばせ阿賀野さん。あの大淀って子、提督に買って貰ったバイクをほったらかして早々に別のバイクに浮気してるわ……!」ヒソヒソ

大淀「………(貴女の妹だって二台買ってるじゃないですか……!!)」


 ポタリングも好きだが、足柄のレース用ロードバイクを借りて走ってるうちに頭の中が真っ白になるぐらいシャカリキに回す魅力に気づいた大淀は、日に日にその欲望に抗えなくなった。


阿賀野「川内さんもご存知? 全くけしからん子だわ! アレコレとっかえひっかえなんて品性を疑うわ……!」ヒソヒソ

夕張「スカートにスリットまで入ってて、卑猥、卑猥よ……執行部副部長が聞いてあきれるわ」ヒソヒソ

大淀「………(貴女たちだっておへそ出してるじゃないですか!?)」プルプル


 もちろん、大淀は今でもトマジーニ・シンテシーの見た目も乗り味も好きである。

 ラグフレームの美しさは近年のカーボンバイクからは失われたものだ。細身のパイプを繋ぎ合わせたフレームは実にスマート。

 レトロな外観は歴史の重みを感じさせる一方で、上品な高級感をも纏っている。

 年代を重ねて味わいが深まる色褪せない魅力がそこにあった。

 ――――だがポタリングの楽しさとサイクリングでガッツリ走る楽しさは似て非なる別物である。


球磨「まったく卑しい軽巡クマ! 司令部施設でナニをしてるんだクマ……? それはとっても意外なことクマ?」ヒソヒソ

大淀「」ブチッ


 気が付けば大淀は虚ろな目で、足柄から借りていたロードバイクと同じタイプのエアロフレームを発注していた。

 100周年記念のS5……税込み100万円の完成車である。

 しかもコンポは最新のシマノDi2に乗せ換え、ホイールもライトウェイトのマイレンシュタイン・オーバーマイヤーという大盤振る舞い。

 ジャージにペダルにハンドルにと、出費は更に加速した。

 ――――なお自腹である。

 当初は2~3万でロードバイク買おうとしていた子がロードの暗黒面に堕した瞬間であった。


大淀「次のボーナス査定を楽しみにしていなさい貴女達……!!」

川内「ちょっ!? 何言ってくれてんのこの鬼畜メガネェ!? 神通と那珂ちゃんと一緒に伊豆半島ナイトライドする計画がおじゃんになるじゃんか!!」

香取(……私は琵琶湖がいいですね。湖岸の道は丁寧に整備されていて、とても走りやすいと聞きます)

球磨「そ、それはヒドいクマ! 職権乱用だクマ!! 球磨の楽しいしまなみ海道旅行がポシャになるクマ!?」

長良(しまなみ海道かぁ……長良も行きたいなぁ……妹たちや第十戦隊のみんなと一緒に走りたいなあ……きっと楽しいだろうなあ……)

夕張「やめて!? 私だって次の長期休暇に秩父のダム巡りとかしたいし、さみちゃんやらぎちゃん連れて軽井沢サイクリングにも行きたい! 欲しいホイールやペダルがいっぱいあるの!」

天龍(…………オレは断然、沖縄だな。やっぱあの景観は一度観ときてえ)

阿賀野「あ、阿賀野だって妹たちと乗鞍に行きたいのに! 白川郷を観たいの! 買いたいローラー台だってあるのに!」

大淀「だまらっしゃい。訂正してください! 私、う、浮気なんてしませんっ! それはそれ、これはこれなんですっ! 別物なんですっ! 思いっきり走りたいときだってあるんですっ!」

長良「すっごくわかる」

大淀「そりゃあなたはわかるでしょうよ!!」

長良(なんで長良、怒られてるんだろう)

香取「お、落ち着いて大淀さん」

天龍「ああ、落ち着け。いろんな試乗車乗ってるのはおめーらもだろ……あんまからかったりすんなよ」

川内「じょ、じょーだんだってば、あははは………すいませんでした」

球磨「そ、そうクマそうクマ………ごめんなさいクマ」

夕張「悪乗りが過ぎた。ごめんごめん」

阿賀野「ごめーんね♪」

大淀「まったくもう!!!」


 大淀がそんな感じで、物欲に負けた話であった。


【悪夢の後日談】


 阿賀野のダイエット生活が始まって三日が過ぎた頃のことだ。

 いつも通り書類関係の雑務を速攻で終わらせた提督の元を、武蔵が訪ねてきた。


武蔵「なぁ、提督よ。一つ頼みがあるんだが」

提督「ロードバイクか? 発注なら先日済ませたが、変更があるならまだ間に合うぞ」

武蔵「先読みで答えるのやめろ」

提督「違うのか?」

武蔵「………いや、ある意味で間違ってはいないのだが、おまえのロードバイクを貸してくれないか? 試乗車が余ってなくてな」

提督「ああ、そっちか。武蔵なら丁度いいサイズだと思うが、何に乗る?」

武蔵「私はやはりレース向けのモデルに乗るからな。件のF8をお貸し願いたい――――んだが」

提督「はは、考えることは同じだな。1時間ぐらい前に長門がホクホク顔で持ってったよ」

武蔵「むぅ……先を越されたか。なら、他のバイクは?」

提督「御覧の通り、そこにあるのだけ」

乗りたいバイクがあったら仕方ないね

琵琶湖の湖岸はルートによっては地交通量多いから獄見るよ...
けど桜並木がすごく綺麗な場所あるから咲き始めたらほぼ毎週走りに行ってしまうな


武蔵「……まぁ、それならそこのクロモリ――――カザーティ・ピエトロ1920を。大和のダイエットがてらだし、精々のんびり走るとするさ」

提督「そうしろそうしろ。あ、コケるなよ?」

武蔵「誰に言ってる、ははは。それではありがたく――――――しかしなんだな、提督」

提督「ん?」

武蔵「雪風から聞いたぞ。一勝負したんだって?」

提督「自分で言いふらしてんのか雪風は……」

武蔵「ああ、しれぇは凄いって、子供みたいに目を輝かせてな……色々聞いたよ」


 提督からルック・586をプレゼントされて機嫌を直した雪風は、その日の提督との勝負の顛末を、あちこちで語った。

 いっぱいいっぱい頑張ったけど勝てなかった。

 しれぇは凄いハンデを持っていたのに、負けてしまった。

 武蔵が言うには、悔しさをにじませない、憧憬ばかりが募った声と口調だったという。


提督「…………そっか(いい負け方、させてやれなかったな)」

武蔵「その日、提督が乗っていたのはF8じゃなかったそうじゃないか―――――『これ』で雪風に勝ったんだって?」

提督「あー、うん。まあ」


 武蔵が呆れた表情で指さすのは、件のカザーティ・ピエトロ1920である。

 クロモリ製のロードバイクフレームだ。フレーム重量は優に1.74kgにも達する。900gに達しないF8と比して、その重さはヒルクライムにおいて致命的である。

 ましてその時の提督は、ヒルクライムにまるで向かないカーボンディープホイールを穿いていたというのだから呆れるほかなかった。

 純粋なレーシング仕様のロードバイクではなかった故に、島風もサイクリングロードを走っていた時点でそれに気づき、挑むのを諦めた――――否、見送ったのだ。

 提督の技量ならばそれでも勝負はできただろう。だが「ベストな提督に挑んで勝ってこそ、その勝利を誇れる」というのは島風の矜持の問題であった。


武蔵「クロモリの重量にホイール不一致のハンデ……ナメてかかったのか?」

提督「馬鹿言え。そもそも最初は勝負する心算もなかったんだよ。あくまでトレーニングのつもりだったからな」

武蔵「フ、そうか……ああ、おまえが疲労困憊だったことも聞いたぞ? 辛勝とはらしくもない」


 からかうように口元を釣り上げ、武蔵が台座からピエトロ1920を持ち上げようと手を伸ばす。


提督「馬鹿言うな、アレは他にも理由が――――って、あ」

武蔵「ん? なん……なんだと」


 提督の声に少し注意を取られながらロードバイクを持ち上げた武蔵は――――口を大きく開けたままに、硬直した。


武蔵「な……なんだ、これ……は……」


 右手から伝わる異常さに、武蔵は眉をひそめた。

 ――――重い。

 クロモリフレームであることを考慮しても、違う。
 ・・・・・・・
 これは重すぎる、と。


提督「―――――いけね」


 提督は椅子から立ち上がってピエトロ1920を武蔵から受け取る。

 シートポストをアーレンキーで緩めて引き抜き、クルンとロードバイクを上下反転させた。

 ごどん、と重量感溢れる音が、マットレスを敷いた床の上に響く。


提督「シートポストに重し、入れっぱなしだったな」

武蔵「…………!! そ、れは、なんだ?」

提督「6キロの重りだ。ジャージに縫い込むとバランス狂うからバイクに仕込んでるんだよ。脚に仕込むとペダリング阻害されるし、シートポストだと重心狂わんからな」

武蔵「な、なんでまたこんなものを」


提督「? だからトレーニングだよ。平地はともかく、登坂時にかなーり効いてくる。あの日の予想外の追加トレーニングで流石に疲れて、取るの忘れてたぜ」

武蔵「はは、流石にストイックで…………待て。これはいつから仕込んでた?」

提督「三日前に」

武蔵「―――――」


 それは阿賀野がダイエットを開始した日であると共に、提督が雪風と勝負した日である。

 ――――既に雪風のクライマーとしての強さは、鎮守府では噂になっている。

 そして武蔵は、天才でありながらも努力家である。一時はそれを鼻にかけ、天狗になったこともあるが文字通り提督に粉砕された。

 本格的にロードバイクに乗るにあたって、事前知識として脚質のことも学び、ロードバイクに関して広く知識を身に着け始めていた。

 武蔵は既に知っている――――ヒルクライムにおける重要なファクターは、単位重量当たりの動力である。

 重ければ重いほど、速度を上げるためには力がいる。言うまでもなくバイクそのものに動力は存在しない。下り坂を除けばあくまで人間の力で動くものだ。

 だからこそクライマーがより軽い体重とバイクを求めるのは必然であった。体重は軽くし過ぎればパワーを失う。その犠牲を可能な限り少なくするために、軽い機材、軽いロードバイクフレームを求める。

 クライマーがこぞって軽いバイクを欲する傾向にあるのは、そんな理論があるからだと、武蔵は知っていた。

 故にこそ、呆れと敬意が混ざった声で、ため息をつくように言った。


武蔵「………これで、勝ったのか。雪風に」


提督「見縊るな。そもそも負けるかっつーの。鈍ってるとはいえ、雪風がクライマーとはいえ、始めて一年どころか一月に満たん初心者に負けるほど鈍り切ってねえよ」

武蔵「………頭が痛くなってきた。その、なんだ、おまえ、その―――――それで鈍ってるのか」

提督「五年……いや、四年前の全盛期と比すれば、今の方が速いが、ベストじゃないな。鍛え抜いたときの想定からすれば六割ってとこだ。

   特に勝負勘と反応がどうにも……勘を取り戻すにはもうちょいかかりそうだな。

   それと筋力トレーニングというより回転効率だな。足の長さまで変わっちまったから、筋肉を使い分ける回し方が少しぎこちなさを感じる。

   今の俺の身体とペダリングや重心を加味して、もっと馴染ませんと。」

武蔵(――――見栄でも誇張でも強がりでもない。この男がそう云うのなら)


 島風や雪風から見ても、提督は完成されているように見えていた。それが更なる飛躍を遂げると聞いたならば、あの二人はどんな顔をするのか。

 武蔵はそれを想像して、ますます頭痛が酷くなった。


武蔵「クライマーは可哀想にな……提督がこれほどの目標だとは、そうそう乗り越えられんよ」

提督「ん? 俺はクライマーじゃないけど?」

武蔵「……………は?」


 そしてその言葉に、武蔵はとうとう頭の中が真っ白になった。


提督「俺の身長で体重70kgオーバーのクライマーがいるかっつーの」

武蔵「」


 提督の身長は現在182cm。鎮守府では最長の身長を持つ大和や武蔵、そのヒールのような形状の艤装を外せば拳一つ分は背が高い。

 その身長に対し70kgオーバーは、クライマーからすれば太り過ぎである。

 武蔵は思った。


 ――――それでこそ提督。


 そしてこうも思った。


 ――――いい加減にしろよ提督どこまで化け物だ。


 その名に恥じぬ『天下無双』――――『全世界最強の艦娘』と謳われた武蔵も、流石に絶句である。


武蔵「なあ……もうひとつ聞いていいか、提督」

提督「おう」


 武蔵にしては珍しくも恐る恐ると言った風な言葉は、かつて島風が尋ねようとしたことと同じで、



武蔵「―――――きゃ、脚質は、なんだ?」



 にこやかに笑みを浮かべ、提督はこう答えた。



提督「――――秘密だ」






【悪夢の後日談:艦】

※次回はオリョクルズ

 その次は睦月型をやりたいような……夕雲型編もいいような……テクニック編をやりたいような

甲型スキーとしては、夕雲型を希望したい……と思ったが、未実装艦が大飯からもう少し充実してからのほうがいいか。

ともかく、オリョクルズ待ってます。

妖怪だー! 人間の皮をかぶった妖怪がいるぞー!www

そもそも未成年なのに世界最強の鎮守府を造り上げた提督はヒトの皮を被っているのか?

そらもちろんズルムケよ

カフェレーサー提督

しかしロードバイクか……
面白そうだがいかんせん金がない悲哀

>>168
気負わずに、クロスバイクから始めるっててもあるぞ

ロードバイクを最終目標とするなら、ドロップハンドルのシクロクロスが向いてるのでは?

最近トラックばっかだったけどロードはいいよな
気楽に美味いもの食べに行きたい

投下でもないのにageんな

>>168
いきなり高いの買わなくてもいいぞ
というか、一定ライン越えた機材は定期的な整備が必要になるから初心者にはお勧めできない。
見た目と走り方だけで言えばNEXTYLE ZNX-7014とかは安くていいと思うよ。
ママチャリに毛の生えた性能だけどロードレーサーの楽しさはわかる。
あとは一概にあるとは言えないけど、ロードレーサーを取り扱ってる店に相談して中古を探してもらうというのも手ではあるな。

番外
自転車屋に来てるロードレーサー乗りと仲良くなって、余っていたら譲ってもらう
うん、ロードレーサーはね勝手に増えるんだよ・・・

誰かがMMDにして見てみたいって言ってたので、言い出しっぺではないです。

予算ギリギリのバイクを買った筈なのにウェアにペダルにシューズにサドルで+数万簡単に飛んでった

次作者でもないのにageたら荒らすぞクソ読者

>>175
サドルは買いすぎだろう。

整備用品に手を出すとさらに数万円要求されるから、準備しとくといいよ。

>>177
ヒルクライムやる度にEDになりそうな痛みがしたからつい…

※たろいも。更新遅れてすいません、もうちょっとかかるんじゃ。
 書いてた時点でニムもヒトミもイヨもごーちゃんもいなかったもんだから追記追記



 ――――というのは建前で、実は赤城山ヒルクライム行っててな……。
 えがっだー……もう背筋バキバキで尻が痛い。


【4.5 鉄血のオリョクルズ】


 ――――始まりは、鉛色の音だった。


 いつから自分が其処に在ったのかは分からない。

 いつから自分が底に在ったのかも分からない。

 ここは暗い海の底。

 ここは冷たい海の底。

 まっくらでつめたい水底で、ただじっと目を閉じて膝を抱える自分がいた。

 どぉん、どぉんと、遠く響く砲火の音。

 いのちの音が消えていく音。

 目を開いても、何も見えない。まっくらで濁った水の中、私は必死に身を丸めていた。

 冷たさをこらえるように、耳を塞ぐように、目を瞑ってただ音を聞く。

 これが私の初めて認識した世界だった。それでも意識だけははっきりしていた。

 耳を塞いでも全身を刺し貫くようなどす黒い深淵の底から響く音が聞こえた。

 ……そうだ、全部聞こえていた。私には最初から全部聞こえていたのだ。


 改めて目を開く。何も変わらなかった。

 そこはただひたすらに黒かった。

 ふよふよとした浮遊感があっても、そこに一定のベクトルがない。浮いたり沈んだりと、漂っている。

 上も下も分からない場所。まるで宇宙に一人取り残されたような心地だと、今ならそう表現するだろうか。

 ただはっきりと音だけが響く。色を宿した音。殺意に塗りつぶされた赤い色と、絶望を悦ぶ黒い色が、まだら模様になっている。

 それは声だ。世界を憎悪する声で作られた、怨嗟の詩だ。

 血の通わない悲哀がある。破裂する憤怒がある。氷みたいな慟哭の音だ。

 癇癪を起した子供のような感情の発露は、大人だって敵わない特大の暴力を伴っていて。

 色のない自分たちを、せめて赤く色づけしたいと叫んでいた。

 尚更に深まるくろに絶望して、彼女たちは更なる赫怒に身を焦がす。


 シズメシズメと、ウタをウタうのだ。


 …………こわい。 

 くらい。

 なにもみえない。


 つめたい。さむい。

 おなかがすいた。

 だんだんいきがくるしくなって。

 だけど、上も下もわからなくて。

 こわい。つらい。くるしい。さびしい。

 初めての感覚は、思い返せば散々なものだった。


 それがとても嫌だと思ったから、腕を動かした。脚を動かした。


 だけど何も変わらない。漂うだけの私は、どちらが上でどちらが下かもわからないから。

 ただもがいているだけだった。

 ケタケタと笑い声。

 私の様を嗤う声。

 無駄なあがきだと、無様だと、何をやっても意味などないのだと。

 くやしかった。つらかった。なさけなかった。


 ―――――無様か。無駄か。無意味か。それの何が悪い。 


 嵐のように渦巻く音に、不意に他の音が混ざった。

 ほんのわずかな小さな音だ。


 ―――――必死に生きようとすることの何かおかしい。こいつは、名前も知らないこいつは、お前らよりも遥かに『生きて』いる。足掻くことは、生きようとする意思だ。


 どくんと、心の内側から、強く音が響いた気がした。

 何もかもを呑み込む悪意の黒に挑む音。

 誰かの『こえ』と一緒になって、黒い色を打ち消そうと挑んでいく音。


 ―――――扶桑、山城、伊勢、日向。お前たちの心火を、生を嗤うクソガキどもに叩き込め。

 ―――――殴って仕舞いにゃしてやらん。潰せ。俺の眼前に欠片であろうと、こんなものが存在するのは許さない。


 わずかだと思っていた音は、とても力強いことに気づいた。

 了解と、応と、各々が声を上げて、次いで戦の咆哮を発した。

 負の感情ではない。絶望はない。悲哀もない。赫怒もなく、慟哭ですらない。


 煮え滾るような怒りは、悪を憎む正義を源としていた。

 引き裂かれるような哀しみは、曲げられぬ信念を示すために。

 破滅的な怒りは、たった一つのプライドを守るために。

 喉が潰れんばかりに上がる斗(たたかい)の歌声は、天を貫く雄々しさを宿していた。

 許さん、負けぬ、倒す、失わぬ、と。

 その声は荒々しくて、なのにとてもきれいだと思った。

 耳を澄ませて、出所を探った。


 ――――来いよ、と。


 私に声がかけられた。ただそれだけだったのに。

 ゆびがうごいた。

 あしがうごいた。

 うでも。

 くびも。

 ――――めをひらく。


 水面の向こうに、透き通るようで、それでいて深い青が見えた。もう、暗闇なんてどこにもなかった。ただ、ここはとても冷たかった。

 だから、腕を再び動かす。足をばたつかせてもがく。今度は、動いた。段々と光を発する音へと近づいていく。

 ふしぎな音だった。深くも鮮やかな蒼い音。その底では灼熱の赤が燃えている。透明な蒼の中心で、暖かい燈火が揺らめく色。

 それは海面の向こうから見えて、聞こえてきた。気が付けば、上がどちらで、下がどちらかわかるようになっていた。

 その先に見えるものがある。聞こえるものがある。

 まっくらなそこに、一筋の光がさしていた。だからもがく。無様にもがく。

 あの人が馬鹿にするなと言っていた。くやしくてかなしくて、黙っているしかできなかった私を、あの人は馬鹿にしなかった。認めてくれた。


「っ、ぷぁ……けふっ、けほっけほっ」


 気が付けば私は、黒い海から浮上していた。

 喉奥に絡む潮の辛さにえづきながら、涙目になってその人を見上げた。ぼやけた視界の中にいるその人は、確かにほほ笑んでいたと思う。

 夜闇に溶けるような濃紺の軍装を着こなした、若い男の人だ。

 人懐っこそうな笑みを浮かべて、彼は高速船の縁から私に向かって手を伸ばしながら、


提督「――――――掴め。それでもう、大丈夫だ」


 何故か、涙があふれてきた。

 さむくて、つらくて、こわくて、おなかがすいて―――――でも、きっとそのうちのみっつはすぐになくなる。

 この人が、無くしてくれるんだと。

 手を伸ばさなくても、掴まなくても、私はもう大丈夫だった。安心したのだ。

 こんなにも優しい声を出せる人がいるんだって、そう思った。世界は辛いことばかりじゃないってことが、それで分かった。

 心地の良い音。流れるような声。


「―――――……すきです」


 それが、出会いだった。


提督「おう、まずはご飯だな…………ん?」


 凛と結ばれた口元が不意に緩み、呆けた顔は少年のそれで、ますますその人のことを知りたくなって。


イムヤ「伊168、です…………潜水艦、です。イムヤって、呼んでください……司令官」


 それが、私――――伊号潜水艦・伊168と、大好きな司令官との出会いだった。


 私を引き上げて、呆けたままに固まる司令官を貫く、四対の視線がある。私のを含めたらきっと五対だ。

 硬直する司令官を見やる、私と、その周囲の戦艦四隻の視線。


日向「………――――またか君は」


 呆れたような声を上げる戦艦が一隻――――否、日向さんは一人、やれやれと首を振った。


イムヤ「子供は、五人欲しい、な……♥」

伊勢「話が飛躍しすぎだ!? 足柄だってそこまでじゃなかったぞ!?」

扶桑「い、伊勢、日向には……潜水艦にだって、負けたく、ないの……!!」

日向「張り合うところかそこは? まあ我々は航空戦艦だ。潜水艦に後れを取る瑞雲などいない」

山城「…………また、面倒臭そうな子が増えたわね」



 今だから言えるけれど――――それを貴女にだけは言われたくないわ、山城さん。



……
………


※イムヤや足柄を始め、一部の艦娘は提督に一目ぼれ勢がいる。

 短いけど今日はここまでですねえ

>>1


>>1が地元に来ていた件w

オリョクルズ編はギャグ回かと思ったがシリアス?
イッチのはどちらも好きよ
乙した次も期待

>>1
まさかのシリアス回か

>>177
自転車いじる最初はサドルじゃないのか
ハンドルだのなんだのは多少合わなくても何とかなるがサドルだけは合わない奴はどうやっても無理
合わないので悩むぐらいなら買い換えた方が早いだろ
革サドルの場合は「我慢しろ」の一言で終わるから別問題か

>>192
確かに乗りクチのことを考えたらサドルですねー
自分が最初に変更したのがステムハイト↓ サドル↑ のポジショニングだったのでパーツ更新にまで至ってない

そろそろピンディングシューズを導入したいんだが……


艦娘たちのロードバイクも気になるが、>>1の愛車がなんなのかも知りたいとか思っていたりする今日この

3連休のどこかで次が来るのではと予想

詳しくない人間からするとやっぱ欧州のイメージだけど、国内でもいろんなとこでイベントや大会が開かれてんのね。

ロードマン

>>193
ビンディングは立ちごけだけは気を付けよう。

>>196
じーさん乙

>>193
ビンディングは、絶対(?)こけるから、最初に脱着練習した方がいいと思ふ
出発して1番最初の信号で立ちごけした自分が言うんだから間違いない(ヲイ)

初めてのロングライドでいろは坂行ったら膝ぶっ壊した

>>193
ペダル側は一番緩いとこから初めて、ちょっと進んで着脱着脱→少し締める。を繰り返して、固定出来てるけど自然な力で外せる締め位置を探す
あとはとにかく漕いでない時に意識して着脱しまり、どのタイミングでも外せるよう体に覚えさせれば大丈夫

>>197-200
アドバイスありがとう。

激坂で浮き石踏んでリアタイヤ空転させたあげく、タイヤに縦キズ入ったのでタイヤ交換を優先した。
ピンディング導入は来月以降になったわ。

にしても、脅かしすぎではないの?

信号付近でバランス崩したときとか、とっさに外せないと転倒して最悪轢かれるし
それに、自動車のドライバーの心臓をいたずらに悪くするのも良くはないしな

信号横で倒れたとき、あ、死んだなって思いながらゆっくり倒れるように感じたんだ。
後悔するより、なにかに掴まりながらの着脱練習した方がいいよ!
脅しというか実体験だからなぁ…
つい気合いが入って書いちゃうんだよな。


【ンモーしょうがないなぁな番外編:ビンディングペダル・ぷち!】


隼鷹「ビンディングペダル………あのパチンと嵌めこんだ時の感触のゾクゾク感は最高だぁねえ」

飛鷹「気持ちいいわよね。ついカッ飛ばしてしまいたくなる気持ちもわかるわ」

千歳「でもそこをグッとこらえて、一度ぐらいは付け外しの練習はした方がいいわよ」

千代田「ほんの十分ぐらいの時間でいいの。練習するのとしないのでは違うのよ。道幅広めのサイクリングロードで練習しとくとイー感じ?」


 余裕ぶっこいた結果、何もない平地で思いっきり立ちゴケして恥かいたのがこの軽空母たちである。


祥鳳「シマノならペダル側で締め付け調整してやや緩めに、最初の頃は黄色のクリート使って可動域広めにしてポジション合わせてみるといいでしょう」

瑞鳳「何事も基礎からだよ! たまごやきだってそう! 片足だけクリートを嵌めて、丁寧に片足ペダリングをすると回し方が体感的にも理解できてくるんだって!」

鳳翔「付け外しの練習にもなりますね。それでもコケる時にはコケますので、せめて正しいコケかたは覚えておきましょう」

龍驤「左にコケるんは常識やで。右やとディレーラーイカれる可能性もあるからなあ」

大鷹「車が横切っていくのも、とても怖いですしね……」


 最強の締め付けで外れなくなって結果的に信号無視する破目に陥り、奇跡的に車の間をすり抜けるミラクルを起こし、顔面蒼白になったのがこの龍驤である。

 以後はタイムを使うようになったとか。


熊野「お財布への優しさを考えますと、やはりシマノがよろしくてよ。シューズにクリートを固定するのも難しくありませんし、頑丈なペダルはオーソドックスな使い心地ですし、次のペダルを選ぶ際のベンチマークとして用いてみたらいかがかしら?」

鈴谷「スピードプレイはちょっとクリートを嵌めるのに慣れるまで時間がかかるよ! でも踏み心地のダイレクトさと可動域の微調整はとってもおすすめじゃん?」


 当初はシマノ使ってたが、提督がスピードプレイユーザーと知って試しに変えたらド嵌りしたのがこちらの鈴谷です。


雪風「雪風はフレームはルックですけど、ペダルはルックかタイムです! 軽いです! ぴゅんぴゅんです! 好きです!」


 なお最上位のXPRESSO 15ユーザーである。ペダル重量は片側でなんと66.5g、ただし値段は税抜59,000円という財布に厳しいお値段であった。


龍鳳「鳳翔さんがおっしゃっていましたが、それでもコケるときはコケてしまいます。もはや宿命と言ってもいいのだとか」

龍驤「せやで! せやから、上手にコケる時の鉄則があるんや!

   一つ、絶対に右側にはコケるな。コケるなら左側にコケよう!

   右に倒れるとリアディレーラーがイカれる恐怖もさることながら、公道を走ってるときは車に轢かれる恐怖が付きまとう!

   二つ、コケる時はあがいたらあかん! 左にコケるように誘導したらあとは身を委ねるんや。死んでもハンドル離すな!

鳳翔「本能的に受け身取りたくなるものですが、離したら肉体へのダメージはむしろ大きくなります。むしろ肩からいくべきです。

   下手に腕で支えようとしたらパッキリ逝ってもおかしくないぐらいの衝撃が来ますよ。痛いのは我慢してください。男の子でしょう?」


 結構スパルタンだが的を得た意見である。コケるときヘタに受け身取ろうとするとますます怪我が増えるので注意されたし。


提督「とはいえ、コケることを恐怖してたら自転車は乗れん。

   マジゴケして怪我したり、フレームに傷が付いたりすると、それだけでテンション下がってしまう。モチベーションを失うのも悲しい。

   練習は必要だ。簡単なことほどな。ペダルからのクリート着脱なんぞ毎日乗ってれば一週間足らずで無意識でやれるようになる――――だからこそ、その一週間が怖い。

   最初に練習して肉に覚えさせろ。骨に刻め。楽しい自転車ライフも、まずは地道な練習からだ。何、すぐ楽しく走る前の儀式だと思えばこれはこれで乙なもんだぞ」


 左足先を軸に踵を外に広げて外し、サドルから降りながら地面に脚を着く。

 それだけの話だが、身に染みた動きと意識した動きは違う。前者はあっさり出てくるが、後者は驚くほどド忘れすることがある。

 簡単な動作だが、シャカリキに走って疲れているとそんな簡単な動作がスッと出てこない。そういう時ほどコケる。


提督「ヘルメットや前照灯、シートポストに尾灯付けるのも忘れずに! 安心安全な自転車ライフが待ってるぞ!」


 ――――と、提督が申しております。



【完】

番外編だが来てて嬉しい
乙おつ

>>1の有情っぷりよ
まだ転けたこと無いからハンドルから手を離すなは意外だけど、反射的にやっちゃいそう……
個人的にはミラーも着けるけど

初めて立ちゴケしたのは家の玄関の1m前だった思い出
気を抜くとやる

>>193
ビンディングペダルそのものよりも靴にお金をかけるのがお勧め
靴だけは合う合わないがはっきりしてるから靴だけは実店舗で試し履きをして買う
メーカーの製品品質が安定してないからシマノですら同じ型番サイズでも合わない場合がある
足が横方向に動かず、縦方向にもずれず、指先がある程度自由に動き、立ち上がった時に過度なフィット感がないものを選ぶといいと思う

ペダル?余った予算で適当に買えばいいよ
シマノかLOOK買っておけばまぁ間違いはないさ


※10月はイベント盛りだくさんだったクマね……ジャパンカップ……10月の週末の天気の荒れっぷりは異常

 ところで今週末の11/3(金)~11/5(日)はサイクルモードっていう大規模イベントが幕張メッセで行われるにゃ

 メジャーなブランドからドマイナーなブランド、「もはやこれに乗る奴がいるのか?」ってぐらいファニー……もとい芸術的なバイクも目白押しなんだよ。

 ウェアブランドやサイコンのブランド、初心者向けのコーナーやロードバイク選手も来るから、玄人から初心者まで楽しめるオススメイベントです

 このSS内でもそのうち青葉型と古鷹型らを突撃レポートさせる予定のイベント(モデル)ですって!

 じっくり試乗したい人にはあんまり向かん。がっつり乗るなら彩湖とかの大規模試乗会の方がいいかもね。

 けど、これを機に自転車乗りたいって人は一度行ってみると良い。チケット制だけどな。前売り券なら少し安いです。

 中学生以下は学生証もっていけば無料よ。

 駐輪場ももちろんある。自走で行くのもいいけれど、盗難には注意だ。本当に。まじで。

 イモビ標準装備でガチの地球ロックやってもパクられるときはパクられる

11/3 資格取得試験のための講習
11/4 休日出勤決定済み

11/5に晴れることを信じて粛々とこなす予定


久々に雨の降らない予報の週末なのにな……

今週末ならさいたまクリテリウム(&サイクルフェスタ)もあるな

サイクリング日和

そろそろ防寒が必要

グルペット

>>216
何処に登るの?

島風友の会

まだかのう

週末のたびにここに来ている

前スレとここの読んで初ロード買ったよ。
初心者的な艦娘って出ないのかなあ。
続き楽しみにしてます。

※週末あたりに行きますかね
 初心者なら今のところ天津風・時津風
 一緒に成長していくなら深雪や電、敷波や潮、菊月に長月、文月あたりかなあ
 長門あたりもか

>>222
静かに待ってる。


天津風・時津風も乗れるようになったら、一気に上達するんだろうけどね。
秋雲さんは『ア○バ自転車店』風の教え方はしなかったんだろうか?


日本海側在住としては冬場は天候に悩まされるばっかりですわー


………
……



 ロードバイク鎮守府の敷地は広大だ。

 艦娘が世に顕れ始めた黎明期に生まれた鎮守府ということや、様々な要素がかみ合った結果、広い敷地を有している。

 後に後発で世界各国に敷かれる鎮守府や泊地、そのテストケースとして新築・増築を繰り返した結果に現在がある。

 戦争が一応の終結を見せた現在も、この土地を預かることを許されている理由の大半は、やはり戦時に上げた多大な戦果によるものだろう。

 それにしたところで、広い。明らかに史実を鑑みれば多くが着任することが見込めるであろう駆逐艦娘ですら部屋を持て余している。

 何せ一キロ四方の土地である。東京の名を冠しておきながら千葉にある不届きな夢の王国が丸々二つは入るほどの広さだ。決して名前を言ってはいけないあの場所のことである。

 トレーニング設備や資材備蓄用の倉庫、兵器廠・工廠や、艦娘たちの宿舎を戴いてなお土地は余っていた。


提督『大本営め―――――土地を余らせすぎだ(深海棲艦を全滅させた暁には、ここの土地を目いっぱい私物化して好き放題やってやるからな)』

初期艦娘(……凄く何か言いたげ!)


 着任当初の若き――――というか過激な思想といい、まだ生の感情を表情から察せさせてしまう迂闊さといい、はっきり『幼い』と言った方がいいほどに少年だった――――提督がそう思ったとか思わなかったとか。


 オーリョクールズ
 閑話休題。 


 ――――その建物は海沿いの林に面した絶好の角立地にある。

 南仏蘭西の意匠を取り入れた白亜の建物――――潜水艦寮だ。

 数ヶ月に大規模改装されたばかりでありながらも、出来立ての『軽さ』を感じさせない、自然に生えてきたかのような厚みがある。

 清潔感と品の良い落ち着きを纏うこの邸宅は、一見して軍の宿舎であることを忘れさせてしまうほどに荘厳かつ広壮であった。

 鎮守府内道路から高い壁で切り離された内側には、見事なまでの花と樹木が生い茂る庭園がある。入り口から左右対称に展開される西洋庭園だ。

 庭木は無論のこと、咲き誇る季節の華に至るまでもが麗しく輝いていた。

 いかにもな人の手が入っている庭園はどこか幾何学的である。されど計算された秩序に基づく形態を有した庭園は、作り手のセンスをうかがわせる素晴らしい造詣であった。

 風、音、景観、匂いに至るまでもが、四季折々の変化を計算して作られている。

 この見事な庭園を作り上げたのは、誰あろうかつてこの潜水艦寮に属し、潜水艦達と苦楽を共にした艦娘、潜水母艦・大鯨――――今は軽空母・龍鳳と呼ばれる――――である。

 西洋風ガーデニングにかけて彼女の右に出るものは鎮守府には一人もいない。

 その見事な庭園を抜けて邸内に入れば、その外観が張りぼてではなく、庭園を戴くに相応しい建物であることを確信させる造りとなっている。

 地下に潜水訓練用のプールを備えた建物は4階相当の高さを誇り、1階のラウンジから3階まで吹き抜けの階段が続く。


 ホールを抜けた先、延々と続く白い廊下には等間隔で天吊りのシャンデリアが掛かっている。ガラス製のアンティーク調でありながらも主張しすぎない琥珀色を湛えたシックなデザインだ。

 厳かな光を放ち、左右の白い壁に飾られたいくつもの絵画を淡く照らし出す――――秋雲が描いた、世界中の海の絵画だ。

 一つ一つの絵に思い出がある。潜水艦娘の多くは、時折懐かしげにこれを眺め、これから加わる潜水艦達も先任艦娘に話を聞きながら、その海へ思いを馳せる。

 その廊下の先に繋がる扉の向こうには、潜水艦娘達が三食を共にするためのリビングルームがある。

 あるのだ。

 あるのだが――――。


 https://www.youtube.com/watch?v=_pyfH3oj_eg&feature=youtu.be&t=24s 


ゴーヤ「ぴっかぴかに磨き上げるでちぃー!! マ〇ア様でも油断して「ここならいいよね?」って思うぐれーに!!」

ろー「ですって! 見事にひり出させてやりますって!! マ〇ア様の! ×××から! ドス黒い魚雷を! ですって!」

イムヤ「げひィん!!? 本当にひり出させてどーするのよ!? 気概の話よ、気概の!! ちゃんとやんなさい!!」

ゴーヤ・ろー「「オーケイ、オリョクル!!」」b


 地獄の有様であった。マリア様もこの罰当たりどもからは目を背けるであろう。涙目で。気概というよりキ〇ガイの話である。


イムヤ「ホントに分かってんの!? この罰当たりコンビッ……!! そもそもリビング汚しっぱなしなのは二人でしょっ!! きっちり片す!」


ゴーヤ「し、失敬な! ゴーヤはちゃんと片付けてるよ! ろーが散らかしっぱなしなんでち! お菓子も! 使ったお皿も! 普段からすぐ片付けねーからこうなるんです!」

ろー「うう……」

イムヤ「監督責任ってもんがあるでしょうが! ゴーヤもしっかり指導しなさい!」

ゴーヤ「ギギギ、中間管理職はつれーでち……おい、ろー。今回ばかりはゴーヤも手伝ってあげる。これからは一人でもしっかりできるように! みっちり教えてやるでち!」

ろー「が、がんばりますって!!」


 提督の前では無垢で清楚に振る舞っていても、その目がなければこの有様であった。

 大戦では十字を切って祈りつつ、放った魚雷が直撃すればピュウと口笛を鳴らして「Direkter Einschlag!」とか「きたねえ花火でち!」と嘲笑い、沈んでくる残骸に中指を立てて舌を出す二人である。

 ――――深海棲艦は全て肥溜めよりも薄汚い臓物をまき散らしながら沈むべし、慈悲はない。

 どうあがいても オ リ ョ ク ル ズ 。

 原罪はきっと立川あたりでルームシェアしてるジョ〇ー・デップ似のお兄さん二人、その片割れが勝手に背負ってくれるからヘーキヘーキと思っている。


 オーリョクールズ
 閑話休題。


 ――――『第一次ロードバイクショック』と呼ばれる事件当日、ヒトゴーマルマル。

 提督による身の毛もよだつような説得により、ひたひたと寮へと戻った潜水艦たちは、斯様な感じで自寮の浄化作業に精を出していた。


イク「汚物は消毒なの~~~~~っ!!」


 きゃっきゃと笑いながらも床をモップ掛けしていくイクの手つきは非常に丁寧だった。


まるゆ「たいちょーが潜水艦寮にお越しになるのは、実に二十一日とんで三時間四十一分ぶりのことです! はりきっていきましょー!」

イムヤ「おっと、忘れてた! アロマを焚かなきゃ! 配合どうしようかな……!? ゼ、ゼラニウムがなくなってる!? 由良さん……は、今いない!?」

しおい「しおいが行ってくるよー! 叢雲ちゃんならきっと持ってるからお願いしてくるね!」


 せわしなく動き回る彼女たちは、西へ東で大奔走――――彼女たちは「綺麗にすること」が得意だった。特にオリョール海とかバシー沖とか。


ニム「ん~………? 提督なら、もうちょっと薄味の方がいいかな?」

はち「どれ、味見します……うん、そうね。もう少し薄い方がいいかな? 煮込むとこれから味が染みますから、少しブイヨンで伸ばしてみましょう」

ニム「わっかりました! よーし、それじゃあブイヨン投下! このまま煮込んでいくよ! そっちはどう?」

はち「こっちもリンゴがいい感じで煮えてきました。生地は、と……よし。提督がお越しになるの、何時ごろかな? あっ、間宮さんのところでアイスも買ってこなきゃ……」


 一方、別室のキッチンではオリョール、もといお料理組が御馳走を用意している。大きめの鍋でぐつぐつと煮込まれる具材は、後は煮込み続けて仕上げを残すばかり。

 アプフェルシュトルーデル――――ドイツ風のアップルパイのアイスクリーム添えも、後は生地を極薄に伸ばしてリンゴを巻き上げ、焼き上げる段階になっている。

>>1
乙?


 そうして時間は過ぎていき、二時間後――――ヒトナナマルマル。


イムヤ「…………」ツー


 小姑よろしく窓枠に指を添わせ、その指を見つめるイムヤを、緊張した面持ちで眺める面々。


イムヤ「―――――よし」

イク「!」


 めでたく了承が降り、お掃除完了である。埃はおろかチリ一つ落ちていないリビングルーム。

 開放的なホールも、仄かにアロマオイルが薫る空間へと変わっていた。

 歓声を上げる潜水艦たちの声を合図にしたように、リビングの電話機が鳴り響く。


まるゆ「はい! 潜水艦寮のまるゆです! あっ、たいちょー!?」


 提督からの入電に、ぴくりと潜水艦たちの耳が動く。


まるゆ「は、はい……かしこまりました。少々お待ちください……みなさん! 執務室のたいちょーより入電! たいちょーは本日フタマルマルマルに我らが寮にお越しになります!」


イムヤ「今から三時間弱……?」

イク「てーとく、すっごく時間かかってない? ロードバイク組み立て、明石さんが一緒だったんじゃないの?」

まるゆ「諸々の事情がかみ合った結果、明石さんが組み立て作業班から離脱したそうです!」

ニム「えっ!? じゃあ手伝いに行った方がいいかな?」

まるゆ「はい、いいえ! それで、本当はもっとかかるはずだったみたいなんですけど、実は―――――」


 時を同じくして、執務室。 


提督「……うん、このままのペースで行けば余裕で残業回避できるな。ありがとう―――」


 明石らが退室してから数十分後、一人黙々とバラ組みを続けていた提督の素に訪れた艦娘がいる。


提督「――――龍鳳」

龍鳳「いいえ、大したことは」


 淡い笑みを浮かべながら、ロードバイクフレームにケーブルを通す――――明石に請われて執務室を訪れたのは、まさかの龍鳳であった。


まるゆ「代わりに大鯨さ……龍鳳さんが手伝ってくれているそうです!」

イムヤ「龍鳳さんが? へぇー……ロードバイク、組めるんだ! ホントに手先器用だなあ……いいなぁ」

ニム「大鯨……龍鳳さんが……そっかあ、感謝だね! ね、ね、龍鳳もお食事会に招待しようよ! ニムの馬鈴薯カレー、ご馳走したい!」

はち「そうですね。ニムちゃんと私の料理の腕、改めて見てもらいましょうか。いっぱいありますし、祥鳳さんと瑞鳳さんもお誘いしましょう」

イク「それがいいの! 賑やかなのは楽しいの! イクもたまごやき作るの!」

まるゆ「わかりました! まるゆ、たいちょーにお伝えしますね! ………たいちょー、お待たせしました! その、相談なんですが、龍鳳さんに……」


 龍鳳――――かつて大鯨と呼ばれた潜水母艦は、この潜水艦寮の寮母兼、地獄の猟犬たちの首輪であった。

 祥鳳――――かつて剣埼(つるぎざき)と呼ばれた潜水母艦である。直接オリョクルズ達を指導したことこそないものの、龍鳳との繋がりで交流があった。

 瑞鳳――――龍鳳は空母としては瑞鳳型と呼ばれることもあるため、同じくそのつながりで潜水艦とは交流があった。潜水艦達に美味しいたまごやきの作り方を教えたのはもちろん彼女である。


 なお祥鳳と瑞鳳がここに訪れることはない。祥鳳は二日酔いでグロッキー状態、その面倒を瑞鳳が見ているが故に。



……
………


………
……



 そして再び場面は執務室へと戻り、


提督「――――ん、分かった。声かけておくよ………行く? ………ああ、OKだって。一緒にご馳走になるよ。それじゃまたな、まるゆ。皆にもよろしくな」


 電話口で元気いっぱいに返事をするまるゆの明るい声に、口元を優しげに緩めながらスマホの通話ボタンを押下し、


提督「ってわけで、この作業終わらせたら、潜水艦寮に行こうか。あ、その前に風呂か? 俺も結構汚れちゃったし」

龍鳳「す、すいません、私も御呼ばれしちゃって」

提督「俺に言うこっちゃない。あいつらが是非とも龍鳳にも来てほしいってさ。俺からはまた別に、何かお礼させてもらうよ」

龍鳳「え、えっと、それじゃあ、ロードバイクを、その、今度……私にも」

提督「それは勿論だ。バラ組み希望だったら、是非とも俺に組ませてほしい」

龍鳳「ほ、ホントに? やったぁ!」


 両手を掲げて喜びを露わにする龍鳳に、提督もまた微笑む。素直な感情表現のできる龍鳳のそんな一面を、提督は実に好ましく思っていた。


提督「しかし器用だな、君は。手順を一通り教えただけなのに、ここまで綺麗に仕上げるか」


 感心したように提督が、龍鳳の手掛けたロードバイクを一台ずつチェックしていく。

 文句の付け所のない仕上がりであった。フレームに通されたケーブル・ワイヤーは、適切な張りでフロント・リアのディレーラーへと繋がっている。


龍鳳「で、電気溶接の難易度に比べれば、このぐらいは、ホントに……ひ、歪み……歪みが……艦首と、船尾を、切断……こむらがえり的な何かが……!!」

提督「すまん、今のは俺の失言だ。俺が悪かった。思い出さなくていい」


 手先が器用なのは、鎮守府では周知のとおりである。

 おっとりとした性格の中に確かな芯を感じさせる気丈な面を持ち合わせ、潜水母艦としての面倒見の良さから潜水艦たちの信頼厚く、もともと空母予備艦として建造されたこともあるためか、多岐に渡っての平行作業が大得意である。

 かつて潜水艦寮の寮母としては庭師としての手入れに、オリョクルズ達への『躾』、炊事・洗濯・掃除、総務部としては仕入れに書類整理とパーフェクトなマルチプレイヤーである。

 創造性豊かでありながらも、黙々と同じ作業をこなすことも得意という、鎮守府にとって稀有な人材であった。そんな彼女は前世的な意味で歪みにトラウマを持っているのか、きっちりしていないと落ち着かないらしい。


提督「この調子なら今から二時間……19時前後に調整終わらせて、風呂入ってから20時には潜水艦寮に行ける。本当にありがとう、龍鳳」

龍鳳「い、いえ。本当に、私……これぐらいなら、いつだって」


 少しだけ、憂いに揺れた瞳。それを見逃すほど、提督は鈍ってはいなかったし、その憂いが何に起因することなのかも、提督にはおおよそ分かっていた。


提督「………………そうか。じゃあ頼まれついでに、もう一つ頼んでいいか?」

龍鳳「え? あ、は、はい! 私で良ければ!」


 自らがどんな顔をしていたのかという自覚もなく、龍鳳は明るく笑みを浮かべて背筋を伸ばす。


提督「女性に身支度を急がせるのは少しばかり情けない話なんだが、これから準備して、先に潜水艦寮へ向かってくれないか? あいつらのことだ、きっと大いに悩んでる」

龍鳳「ふぇ?」

提督「ああ。さっき君には教えたけれど、ロードバイクのコンポーネントには種類があってな――――例えばシマノは……」

龍鳳「あ、そう、そうですか、なるほど……わかりました、私が先に行って説明しておきますね!」

提督「重ね重ね、助かる。凄いの組んでやるから、君も候補を絞っておくといい」

龍鳳「分かりましたぁ。では、失礼しますね、提督! お待ちしてます!」



 そう言って退室していく龍鳳の笑顔は、かつて知ったる潜水艦寮の寮母としての笑みだった。




……
………

※さて、次回は生臭いお話である。コンポ選択……使い心地まで言及すると主観が入るから大変だ

 なお>>1は電デュラ派だったが、今ではRed-eTapも好きだし、カンパのウルトラシフトももともと好き

 ところでここの初期艦は誰ザマショ

 遅くても来週末には、続きを

更新おつです

初期艦は漣かな?

>>1
ここの初期艦は漣かな

オリョクルコンポ編待ちわびていたぜ
そしてSRAMのレバー高杉なんですが

>>1乙、細々とオリョクルでダジャレを挟むとか、おちょくってんのか!?


ふむ、初期艦らしきセリフは>>244が初出っぽいけど、漣か吹雪っぽいかな?

未来に生きてんな

>>244への熱いネタフリ


>>237-238

 さーて、誰でしょうネー



>>239

 パーツ単位で見ると極めて高価ですよね。フルセットの合計価格をデュラDi2やスパレコEPSと比較して見てみるとそうでもなかったりする。


>>240-242

 ンモー、イジメはよくない。よくないなー

 >>244だな?

 見た目は可憐な駆逐艦、海の上では修羅道至高天!

 真実はいつも一つとは限らない(冷酷)――――君にこの謎が解けるか!

 >>244の中に! 初期艦がいる!


吹雪「特型駆逐艦・吹雪です! 脚質はオールダメンダー……って司令官ひどい!!? メインコンポはシマノ105、愛車はオルベアです! ま、まだまだへたっぴデ、転んでばっかりで、レース用なんて怖くて乗れないけれど……私、頑張ります!」


 大器晩成型ブッキー。要領が悪い。七転び八起き。トライ&エラーを恐れぬブッキーは成長限界がおっそろしく高い。雑草などという名の草はない。ソフトボールみたいなコロッケを作る子。憧れの艦娘は扶桑さん! 扶桑さんです! 赤城さん? 舞風が尊敬してる艦娘ですねえ。


叢雲「特型駆逐艦・叢雲よ。脚質はルーラー。ま、TTも山岳もイケるけどね。メインコンポはスーパーレコードEPS、愛車はフランスのルックよ。何? ウィリエールにしろって? 私の勝手でしょ!」


 「斧槍(ウィリエール)使えよ」と色んな所でツッコミ入れられるルック乗り叢雲。龍田は誰にも言われないし誰も言えない。そうよね、だって怖いもん!(小島風感) 嗅覚がヤバい。とある初春型駆逐艦と乗るバイクがダダ被りして大喧嘩(傍目には殺し合いにしか見えないが喧嘩の範疇)する。チームレースは代理戦争に近い。


漣「特型駆逐艦、もとい綾波型駆逐艦・漣ですよ! 脚質はスーパーアルティメットブラボーファンタスティックビバクライマークイーン、メインコンポはスラムe-Tap! 愛しのバイクはスペシャライズド・エスワークス(゚∀゚)キタコレ!! ご主人様ったら漣の事好きすぎじゃね!? 可愛すぎてすまんの! あじゃーっす!」


 そんな脚質も事実もありませんねえ。伊語・仏語・英語をミックスしすぎ。でもクライマーとしては特級だ。ところでお調子者な気質が災いしてしょっちゅう提督の怒りを買いゴルゴダ風味に磔刑される駆逐艦がいるらしい。ゲェーッ、ごしゅじんたま!?


電「特型駆逐艦・電です。電の脚質はルーラー、メインコンポは『電』動式のアルテグラなので……ッ、だ、駄洒落じゃないのです! 乗っているのはアンカーですよ! とってもかっこいいのです!」


 言われてはじめて気づく電動式を使う電という微妙な微笑ましさにほっこりする提督の笑みに、鬼怒が物陰から嫉妬。ギギギ、鬼怒と何が違うのか。艦種かな? 天龍や阿武隈にとても懐いているのです。エースを護り抜く名アシストになるか、はたまた主役に躍り出るのか。


五月雨「白露型駆逐艦・五月雨って言います! 脚質はオールラウンダーなんですよ! メインコンポは機械式のアルテグラで、大切なバイクはピナレロ! もうドジッ子なんて言わせませんから!」


 大天使五月雨。史実でメシマズ艦だったのを気にしていたのか奮起し、今では駆逐艦内で漣や磯波に並ぶお料理上手勢の一人。活けスズキを余裕で捌ける。夕張が大好き。ドジ故に提督にフォローしてもらうラブい役得が発生しがち。万能脚質でサポートも主役もなんでもござれです!

回収乙w
さみちゃんオールラウンダーかいな


>>235からの続き
………
……


 ――――ヒトナナサンマル。場面は再び潜水艦寮。

 掃除を終え、料理も仕上げを待つばかりとなった彼女たちは、二手に分かれて入浴となった。

 ゴーヤ、ろー、はち、ニムが風呂に入っている間に、残るメンバーは先にカタログを読んでおこうという目論見である。

 目論見だったのだが――――。


イムヤ「さぁ、四人がお風呂行ってる間に、カタログに目を通しておくわ! その後は私たちがお風呂よ!」

イク「キレーなお部屋にキレーな体で、てーとくをお迎えするのね! イクたちのロードバイクを決めちゃうの! すーっごく楽しみなの!!」

まるゆ「まるゆ、上手に乗れるかなぁ」

しおい「大丈夫だよきっと! ね、ね! 早く読もうよ! しおい、もうわくわくしてきちゃって!」

イク「こ、これがロードバイクなの……いろんなバイクがあって目移りしちゃうのね~!」パラッ

しおい「うん! わっ、すごい! きれいだね! イクちゃん、もうちょっとこっち寄せてよー」

まるゆ「ま、まるゆにも見せてよぉ……わぁ………まるゆたち、こんな綺麗な自転車に乗れるの? 嬉しいなぁ」

イムヤ「うーん、いろんな国のバイクがあって、目移りしちゃうわね」


しおい「そーだねー。あ、でも提督言ってたよ! 「自分一人で解決できる問題なら、悩んだ時こそ自分がこれがいいって思ったのが一番いい」って! だから、しおいはこれっ!」

まるゆ「そうなんだ。じゃあまるゆは一目見て気に入ったこれにします―――――って」

しおい「? どうしたの?」

まるゆ「ふ…………ふぅれむ販売?」

イク「フーレム? ハーレムの親戚か何かなの? …………って、フーレムじゃなくてフレームなの。ところでフレーム販売って、なんなの?」



 問題に対峙する時、自分一人で解決できる問題ではないという見極めこそがまず大事である。



しおい「え、あ、あれ? しおいのもよく見たら……? え? コンポーネントは別売り……? ペダルは付属しない……?」

イムヤ「でもホラ、写真だとちゃんと完成して……あ、あら? そういえばペダルはついてないような……ん? んんん??????」


 それが分からない状態で一人思い悩むことこそがドツボなのだ。既に相談必至の案件である。

 そんな感じで――――まず、しおいとまるゆが落とし穴に落ちた。


イムヤ「あれ? そういえばこっちのカタログ……」

イク「あれ? そんなカタログもあったの? そういえば二冊貰ったのよね?」


しおい「これ、バイクのカタログじゃないよ? えーっと、あれだ、こん、こん……えっと、なんだっけ………そう、コンポ! これか! これがコンポーネントのカタログだ!」

まるゆ「ロードバイクの部品………あ、そうか。フレームで選ぶと……えっと、部品? 部品は別で選ばないといけないんです、よね?」

イク「そうなるみたいなのね。ハンドルやステムは付属されてたりされてなかったりなの………って、イクが欲しいロードバイクもフレーム販売なの!?」

しおい「イムヤちゃんは?」

イムヤ「ま、まだ決めかねてるけど……むしろこれ、完成車でいいの? なんだか、高い奴はみんなフレーム販売とかバラ売りって書いてあるような……」

イク「そ、そんなことないの! こ、こっちはハイエンドモデルだけど、完成車、で………し、仕様スペック?」


 そしてイムヤとイクもまた落ちる。


まるゆ「……バラ組み? 完成車? バラ組みって、フレームだけってことですよね? 完成車は……………………えっと、こ、コンポ…………こん、ぽ……?」


 まるゆがじっと見つめるカタログの項目に並ぶ文言を、他の三人も注視する。


 シマノ、カンパニョーロ、スラム。

 レッド、コーラス、ソラ、アルテグラ、スーパーレコード、105、ポテンツァ、ティアグラ、レコード、フォース、デュラエース、ケンタウル、レッドe-Tap、アテナ、ライバル、ヴェローチェ、アペックス。


イク(…………呪文? ハイエイシェント的な? カイザード・アルザード的な? それともモビルスーツの名前?)


 「なんでも横文字を魔法の名前に見立てたり、ガ〇ダムを頭に付ければそれっぽく見える不思議」という香ばしい思考にイクは陥った。


イムヤ(ぽ、ぽて、ぽてん……ポテンツァ? ポテンヒット? ……アテナって何……音速や光速で拳を振るったりするあの……?)


 それは野球用語である。そしてそんな速度で走れるロードバイクがあったらこのSSは終わりだ。


まるゆ(れこーど……? すーぱーが付いてるからこっちの方が強いんでしょうか?)


 プッツンして強くなったり速くなったりする輩は夕立や綾波を始めいないわけではない。だが根本的に着眼点が違う。


しおい(ふぉーす……ゆーうぇあーざちょーずんわん?)


 四人が四人ともロードバイクのダークサイドに堕ちかけているという点においては共通している。

 大いに混乱している四人であった。何が何だかわからない。見た目で選んでいいものかがまずわからない。

 機構の違いこそ説明書きを読めばなんとなくわかるものの、理屈で分かってもまるで実感がない。


 グレードの違いもまた同様である。

 三社の中で値段が最も安いものと、最も高いものを比べると二十倍以上の価格差があるのはどういうことか。

 そこまで違うのか? そんなにも違うものか?

 仮にそこまで違うのならば、選択次第では誤りがあるのではないか?

 考えれば考えるほど、読めば読むほどドツボに嵌っていく。落とし穴の底には底なし沼が用意されているという念の入れようである。


イムヤ(クラリスってあれだ。泥棒さんに心盗まれちゃったあの子……私が司令官に心奪われたような……)

イク(こっちは穴だらけなの……なんで穴だらけの方が高いの……? おかしいのね、乗り物と言うものは須らく穴が開いてない方が希少価値がある筈なの……!)

まるゆ(105? 波号第百五潜水艦? それともハサウェイ的な……?)

しおい(Di2って、何……? ESPって……機械? 電動? 無線? 何が違うの……?)


 それでもまだ慌てない。慌てるような時間ではなかった。

 彼女たちは頭が悪いわけではない。

 ただ前述の通り、実感がないのだ。

 乗ったことも触ったこともないものを、その機構やお値段だけを見て性能を計れというのは無理がある。


イク「だ、ダメなの……ホイールはメーカーが多すぎて何が何だかわからないの……!」

しおい「あ、よく見たらEPSだ……いーぴーえす……いーえすぴー……えす、ぴー、いー……かんぱ……かんぱ……ちねりれ……こっぴどく……」

イムヤ「しっかりしなさいしおい!」

まるゆ「うう、たいちょーに聞いた方がよさそうですよこれ……なんとなくで決めたら後悔する予感がします……!!」

しおい「や、やめてよ!? まるゆちゃんの予感ってかなり当たるじゃない!?」

イムヤ「こ、こんな、こんなの、どうしろっていうの……す、スマホ! スマホで調べるわ! こんな時こそインターネットの出番よ!」


 十数分後に「日本シマノ党vs熱狂的カンパ教団vsスラム街の悪夢」という構図を悟り、偏向した意見が交錯するインターネットの闇を垣間見るイムヤであった。

 何気にまるゆが大正解である。

 「司令官(提督)が選んだものなら間違いはない」と即断即決した長良や天龍、金剛、そして鬼怒。彼女たちは正解だ。なんせ何一つ疑ってないからだ。

 「天龍ちゃんと御揃いがいーなー♪」で受動的に決めた龍田。彼女もまた正解。天龍と御揃いと言うのが至上である故に。

 「カッコいいからこのカンパニョーロっていう奴でお願いします!」で直感を信じた比叡。結果的には大正解だった。手が小さめの比叡には使用感が合ったという。

 「やっぱり統一感は大事だと思うんですよね!」という質実剛健な理由で、和製フレームのパナソニックと揃えて親方日の丸のシマノにした青葉。凄く正解の一つだ。そもそもどのコンポもみんな良くてみんな好きと言う稀有なタイプである。

 そう、誤りなどない。だが疑ったまま選ぶとなんであれ誤りとなるのがコンポーネント選択という罠である。

 アレにすればよかった。コレにすればよかった。なんでこれを選んでしまったんだ。どうしてどうして――――知らなかったからである。


 そんな彼女たちはともかく、五十鈴らや大淀をはじめ、コンポーネントの吟味には相応の時間をかけた。


大淀(シマノの変速性能もいいですが……やはりトマジーニはイタリアンフレームですし、カンパの方がルックス面でも……あ、このアテナ、銀色が映えていいですね)


 市場からアテナシルバーが消えたのは大淀の仕業という噂が立つ。


五十鈴(スラムは惜しかったけれど……カンパニョーロのブレーキフィーリングは好き。試用した際の感触からこれは確定。問題は機械式か電動式か……軽量性か確実性か……うーん)


 求める外観と使用感のマッチングが極めて良好だった五十鈴が、最後に求めるのがまさかの性能というのはなんとも皮肉な話であった。


名取(シマノ、かな……このカブトガニみたいな見た目はちょっと、その……だけど、Di2の滑らかな変速は、すごく……ああ、でもやっぱりスーパーレコードEPSも……レッドE-Tapも……ううううう)


 悩みに悩んだ後、親指スイッチの変速時に頭の中で何かがハジケる感覚が決め手となり、スパレコEPSを用いることとなる。


由良(うーん、悩ましいなあ……試乗会に行ってみようかな……提督さんに聞いてみちゃおっかな。うん……)


 自分で弄ることにも楽しみを見出した由良は、整備面でも優秀な機械式のシマノデュラエースを選択するに至った。


阿武隈(か、軽さを考えれば絶対にスラム……で、でも、あのクリック感はあたし的にはイヤ! それにイタリアンフレームには絶対にカンパの方がキレイ……で、でも変速ならやっぱりシマノ……超悩みどころなんですけどぉ! ふぇえん)


 シフトレバーの握り心地を重要視した結果、機械式スーパーレコードを選択する阿武隈である。


榛名(変速の確実な管理を考えれば、電動か無線の二択に絞れますが……やはりここはもう一度、試乗会に行きましょう。今度はコンポーネントの差を意識して……)


 独特のエアロポジションを保ったままに変速ができることを考えた時、小指でシフトチェンジが確実に行えるデュラエースDi2を選ぶことになる榛名はとても大丈夫です。


霧島(コンポーネントチェックー、ワン、ツー……まずは資料、資料、と―――――レースにおけるコンポーネント使用率……実績……各社の株価と、ハイエンドコンポの性能比較表を作って……よし、と)


 増設可能なスプリンタースイッチやその他諸々の情報を精査した結果、榛名と同じくデュラエースDi2を選択した霧島は流石ね。

 各自が様々な価値観から吟味する中で、例外が二人。


島風(電動デュラ。だって速いもん)

夕張(電動スパレコ。だって島風をあとちょっとまで追い詰められたもの)


 白熱したレースを魅せつけた二人は、プレゼントされたバイクに最初から搭載されているコンポーネントにお熱であった。

 一目惚れ同然である。


 オーリョクールズ
 閑話休題。


 ヒトハチマルマル――――潜水艦寮のエンタランス、ホールへとつながる扉が開く。


ゴーヤ「艦隊戻ったよ! 今日もいいお湯だったでち……やっぱり広いお風呂は最高です」

はち「うん。特にアロマ風呂のオイル配合といい量といい、絶妙でしたね」

ろー「ですって! そろそろ暑い時期だから、さっぱりミントなお風呂はいいですって!」

ニム「はぁ、ほっこりなのにすーすーする……おーい、イクお姉ちゃん! ニムたち、帰投したよー! 今日のお風呂はすーすーだったよ! おーい!」


 元気いっぱいに声を張り上げるが、返ってくるのはニム自身の声が反響する音ばかり。


はち「……? 返事がないわね。どうしたんでしょう……?」

ゴーヤ「きっと夢中になってロードバイクカタログ読んでるだけです。ろー、フルーツ牛乳飲むでち」

ろー「ですって! ろー、取ってきますって!」


 とてとてと廊下を走ってリビングへの扉を開けるろー――――その扉の先に広がっている光景は、


ろー「………で」

ゴーヤ「でち? どしたんで……」

ニム「どしたの、ゴーヤちゃん、ろーちゃん? ニムにもフルーツぎゅうにゅ……」

はち「はっちゃんはコーヒー牛乳がい………」


 四者四様、言葉が止まり硬直する。


ろー「で、で、で………」


 蒼ざめたろーが指さす先、そこには先ほどまで元気いっぱいに先行入浴組を見送った四人の、


https://www.youtube.com/watch?v=_pyfH3oj_eg&feature=youtu.be&t=24s


まるゆ「カンパのシフトレバーにシマノの正確無比なディレーラー変速が加わり、更に明石さんの魔改造を経て無線化したレッドE-Tapが加わることによりハンドル周りの軽量化がまさに究極それはきっと最強のMOGURAとして木曾さんも気に入ってくれるわけでつまりシマのもかんパもすラむもみんなもぐらになれだれですかいままるゆのことをもぐらってイッたひと」

しおい「あ~、いいね、いいとおもいます! ところでまるゆちゃん正気? しおい? しおいはね……どぼーん! どぼーん! どぼーーーーん!」

イムヤ「オーケイ、オリョクル………質問に答えて………この世で最も正解なコンポーネントはなあに? …………なによ、なんで答えてくれないのよ……イムヤのこと嫌いになった……?」

イク「い、いくぅ……」


 無残な姿があった。

 瞳の中がぐるぐるしているまるゆ。正気度が無くなっているしおい。病んでるイムヤ。曖昧になっているイク。

 もぐもぐ、どぼーん、わぁおわぁお、イクイクイクの――――煉獄の有様である。オリョール海のように。


ろー「で―――――DEATHって!!」

ゴーヤ「うめーこと言ったつもりでちか!?」

ニム「イクお姉ちゃんが!? お姉ちゃんがぁあああああ!!」

はち「」


 この数分後、龍鳳が到着するまで惨状は続いた。

※深く考えると死ぬ

>>1

BASTARD!の七鍵守護神の呪文なんて今時誰がわかんだよw

にゃしぃ

初走り

一月空くと不安になる…
保守!

あっちのスレで近況言ってるだろう
無茶を言っちゃいけない

あっちってどっちだよ!教えてよ!

他にも書いてるのか!
知らなかった…

ここで満足してるなら知らなくてもいいかも

身内の不幸が重なって洒落にならんくらい多忙状態らしいからしゃーないさ
「ゴタゴタが解決したら復活する、1月くれ」ってあちらでは言ってたし
こっちのことも一応触れてたからまったり保守しながら待とうや

保守

まだかなー

お待ち申し上げております

保守&支援
他スレ知らないからわからないけれど、大丈夫なのでしょうか……

生存報告だけでも欲しいよねえ

※他のスレ? 知らない子ですね。生きとったんやワシィ。

 ほぼ書き終えてますが平日は投下の余裕がないデース

 身内と艦これと仕事でイベントラッシュなのデース

 オリョクルズ編の続きは今週末には投下行きます。

 >>1ね、このイベントが終わったらね、サイクルジャージ姿の海防艦たちをカルガモの親子の如く単縦陣で曳きながらほのぼのサイクリングする短編も書きたい

生きとったんか青葉ァ!
楽しみに待っとるで



………
……


 ヒトハチサンマル―――夜の帳が落ち始めた鎮守府内道路にバンを走らせ潜水艦寮に到着したのは、軽空母・龍鳳だ。

 勝手知ったる他人の寮――――血よりも濃い絆で結ばれた――――潜水艦寮へと合流した龍鳳は、かつて面倒を見ていたオリョクルズ達の有様に目も当てられないといった表情で、静かに呟いた。


イムヤ「オリョクル……オリョクル……オリョクル……あの時、私たちが撤退させられたのは深海棲艦の策略……謀った喃、謀ってくれた喃……」

イク「狂ほしく血のごとき月はのぼれりなの……秘めおきし魚雷いずこぞや、なの……」

まるゆ「木曾さん、木曾さん……まるゆはこんなにも、こんなにも上手にもぐれるようになったんですよ、ねえ、ねえ……? 敵だって、たくさん沈めたんです、いっぱい、たくさん、やまほど……」

しおい「どぼーん、どぼーん、あはは、どぼーん! ヲ級改Flagship……その機関部、もらい受けるよ! 生まれてきた意味も知らずにぃ!! どぼーんするといいよぉ!!」

ゴーヤ「おめーら正気に戻るでち!! 木曾さんはおらんでち! そしてここにおわすはヲ級じゃなくて龍鳳さんです! とっとと風呂入ってきてね!」

イムヤ「龍鳳、さん……? ああ、龍鳳さん……龍鳳さんだ!!」

龍鳳「―――――成程……『なまじ生真面目な子たちほど、この罠にはまる』……提督の仰っていた通りになりましたね」


 その表情には苦笑が滲んでいる。こうなることが分かって私を呼んだとしたら、やはりあの人は切れ者だなと思う。


イムヤ「おかしいの、おかしいのよ龍鳳さん……このばかスマホ、答えてくれないの。イムヤのことがきっと嫌いなのよ……こんなに一番すごいコンポを教えてって頼んでるのに、デジタルプレイヤーしか表示させてくれないの……」

龍鳳「イムヤちゃん、貴女はそれでもオリョクルズリーダーですか。私の渡したバトンはそれほどまでに重いものですか? 長たる者に相応しい冷静さを身に付けなさい。それと『ロードバイク』を検索ワードに組み込まないと。それではオーディオ機器しか出てきませんよ……!」

しおい「あー、龍鳳さんだ! 聞いて聞いて! あのね、しおいね、考えたんだ! もうね、何が何だかわからないってことが分かったの!! こんなんじゃ提督に嫌われちゃう、嫌われちゃうよぉおおおお!!」

龍鳳「大丈夫、大丈夫よしおいちゃん。提督はしおいちゃんのことを大事に大切に、大好きだと思っていらっしゃる。安心していいのよ」

まるゆ「りゅーほーさんりゅーほーさん、カンパとシマノを合体するんですよ!! スラムもですよ! なんかイイって言われてるところ全部ごちゃまぜでいいとこどりにしてしまえばまるゆのかんがえたさいきょーのろーどばいくが! ああ窓に! 窓に!!」

龍鳳「落ち着きなさいまるゆちゃん。戦艦並みの砲撃に空母並みの航空運用力を備えたところで、出来上がるのはあの謎のSF時空に突入している航空戦艦というキメラだったことを忘れましたか」

イク「くるほしく ちのごとき イクはのぼれり」

龍鳳「秘めおきし魚雷を放つのは今宵でもこの場でもありません。ええ、左様ですとも。さ、お風呂に入ってオリョール脳を平時脳に戻してきなさい、みんな」

イムヤ「うん……わかりました……」


 龍鳳の有無を言わさぬ号令と共に、幽鬼の如く怪しげでぬるりとした動きで立ち上がった四人。


龍鳳「後程、提督も此処へいらっしゃいます。それまでに今抱えている疑問は深く考えずにおいて、素直に提督に聞きましょうね」


 その背に優しく声をかける。こくりと四人は首肯し、のろのろと大浴場へ向かって行くのであった。

 潜水母艦であった龍鳳。彼女はこの地獄の猟犬たちの首輪がわりであった大半の潜水艦から絶対の信頼を得ていた。母のように、姉のように。そして鬼のように。


龍鳳「さて、それではゴーヤちゃん、ニムちゃん、はっちゃん、ろーちゃん。ちょっとお外に出てくれますか?」

ゴーヤ「ぴぃっ!? お、お許しを、お許しを……!! オリョクルもバシクルもカレクルも行けと言われれば行って殺ってやるでち! でも、訓練だけはいやでち!!」

ろー「も、もう対潜訓練の的にされるのは嫌ですって……!」

はち「あの四人に責を問われるのであれば、このはちに……何卒、何卒、他の子達には寛大な処置を……!!」

ニム「!? は、はっちゃんだけが悪かったんじゃないです! 怒るならこのニム、ニムを!」

龍鳳「……何を勘違いしているのかは知りませんが、別にお説教に来たわけではないですよ?」


 龍鳳は苦笑しつつ部屋の外へと指先を向けて、言った。


龍鳳「外に車を停めてあるのだけれど、ロードバイクを積んであるわ。八台ね。それをここへ運んでほしいのよ」

ゴーヤ「えっ! そうなんですか!?」

龍鳳「やはり実物をその目にしながら体感してもらうのが一番だと提督は仰りました」

ろー「やった! やりましたって、でっち! ろーちゃんたち、ロードバイクに乗れるんですって!! 取ってきますって!」

ゴーヤ「でっち言うな! 龍鳳さん、ありがとうございまち! はっちゃん、ニム、おめーらも手伝いなさい!」

ニム「が、がってんしょうちー!」

はち「よ、よかったぁ……」


龍鳳「慌てちゃ駄目ですよ、まずは予習ですよ。提督もいずれここに……食事の後に本格的な説明はしてくれますが、ええ、とりあえず私から軽く触りを教えて差し上げましょう」


 先の四人と比べれば足取りも軽く寮の外へ走っていく。

 その背中に向けて声をかけると、はーいと力強く返事が返ってきた。

 龍鳳はますます笑みを深め、


龍鳳(後であの体たらくについては叱りはしますが)


 刃の如く刺々しい威を放つ笑みであった。


龍鳳(とはいえ、私自身も触りだけの突貫理論武装を済ませた程度。ならば話すのは最低限のことでいいでしょうね)


 かくして、ロードバイクコンポーネント説明と相成った。



……
………

>>1

いいところで切りやがって……乙ぅ


………
……


 ヒトキュウサンマル。すっかり日が落ちて夜の帳に包まれた鎮守府。

 入浴を済ませた四人も合流し、集結したオリョクルズの八名は、龍鳳の指示で運び出されたロードバイク八台を各々の傍に携え、リビングの大広間で龍鳳の説明に耳を傾けていた。


龍鳳「では予習と行きましょう。ロードバイクには完成車とフレーム販売というものがあります」

ニム「完成車と……」

イク「フレーム販売なの……さっきはこれにしてやられたの」

龍鳳「皆さんに先ほどお貸ししたロードバイクを見てください。それは既に走れる状態にあります。いわばこれが完成車の状態です。あ、ペダルは別売りという場合が大半ですよ?」

イムヤ「ペダルは別売り……!? あ、頭が痛くなってきた……!!」

しおい「今は考えない方がいいと思うな!」

龍鳳「ええ、その通りです。そちらには今フラットペダルを装着していますし。(私もよくわからないですし)

   対してフレーム販売は、ロードバイクのフレームとフォークのセット。中にはシートポストも付属するものもあります。

   フレーム販売とはこのようにまだ自転車として走ることができないフレームの状態での販売形態を指すもので、BBやクランク、変速機、ブレーキといった部品は別途購入して使う必要があります。

   一般的には購入したお店でそうした部品も一緒に購入し、組み上げて貰うのが主流だそうですが、中には自分で組み上げてしまう方もいらっしゃるとか」


ニム「う、うぐぐ……ど、どっちが正しいんですか? 完成車と! フレーム販売!」

龍鳳「正しいというか好みと言うか……提督が仰るには、やはり完成車の方が別途部品を購入して組み立てて貰うより安く上がるそうです。好みの構成が揃ってるなら完成車の方が予算を抑えやすいとか。

   ですが、フレーム販売にもメリットはあります。完成車を構成するパーツは一つずつ選択することはできません。カタログ通りの構成で気に入れば購入すればよい、と」

まるゆ「やはりシマノとカンパニョーロとスラムを合体することで究極のロードバイクが?」

龍鳳「いいえ、まるゆちゃん。提督曰く、それは原則としてかなり調整がシビアでお勧めしないとのことです。

   話を戻しますが、こうしたロードバイクの部品をコンポーネントと言い、これらの主要パーツを同一ブランドの同一グレードで揃えて販売されているものをグループセットと言うんです」

ゴーヤ「グループセット……や、ややこしいでち」

ろー「こんぽーねんと……奥が深いですって」

龍鳳「ロードバイクコンポーネント市場、そのグループセットのシェアは三社が占めており、三大コンポーネントメーカーと呼ばれています。

   ひとつは日本が誇る大阪は堺に本拠を構えるシマノ。

   ひとつはイタリアの走る芸術品カンパニョーロ。

   ひとつはアメリカはMTB界を席巻したスラムです。

   原則として同一のメーカーでコンポーネントを揃えるのが主流です」

はち「シマノと、カンパニョーロと、スラムですね……」

まるゆ「そっかぁ、メーカーを統一するのが主流……」


龍鳳「そして各メーカーで販売されているグループセットにはグレードがあります。こちらのホワイトボードに記載した通りです」


〇Shimano(シマノ)機械式

 CLARIS(クラリス)⇒SORA(ソラ)⇒TIAGRA(ティアグラ)⇒105(イチマルゴ)⇒ULTEGRA(アルテグラ)⇒DURA-ACE(デュラエース)

〇Campagnolo(カンパニョーロ)機械式

 CENTAUR(ケンタウル)⇒POTENZA(ポテンツァ)⇒CHORUS(コーラス)⇒RECORD(レコード)⇒SUPER RECORD(スーパーレコード)

〇Sram(スラム)機械式

 Apex(エイペックス)⇒Rival(ライバル)⇒Force(フォース)⇒Red(レッド)

〇Shimano(シマノ)Di2(電動式)

 ULTEGRA-Di2(アルテグラDi2)⇒DURA-ACE-Di2(デュラエースDi2)

〇Campagnolo(カンパニョーロ)EPS(電子式)

 CHORUS(コーラスEPS)⇒RECORD(レコードEPS)⇒SUPER RECORD(スーパーレコードEPS)

〇Sram(スラム)無線式

 Red E-Tap


龍鳳「シマノならばクラリスが下位、デュラエースが最上位グレードとなりますね」


イク「で、出たの!? 呪文なの!!」

イムヤ「あ、あれ? アテナがないわよ? アテナっていうやつがあった筈よ?」

龍鳳「あ、あら? そんなのあるの? 後で提督にお伺いしますね(カタログにはあるけれど、これってひょっとして……)」


 2018年現在ではとっくに廃盤である。


しおい「こ、この機械式と電動式と電子式と無線式って、なんなんですか……?」

龍鳳「変速の方式ですね。お手元のロードバイクを確認してください。ハンドルレバーのところにスイッチがあるでしょう?」

はち「あ、はっちゃんの借りたこのバイクに装備されてるのは、カンパニョーロの……レコードですね。翼が生えた車輪のデザインですか……いいですね」

まるゆ「まるゆのもカンパニョーロです。レコードESP!」

ろー「ろーちゃんのはシマノですって! えっと、えっと……アルテグラ? ですって!」

ゴーヤ「ゴーヤのもシマノでち。ゴーヤのもアルテグラって書いてありますが……これ、Di2?」

ニム「ニムはスラムだね。えっと、レッド?」

イク「イクのもスラムなの。レッドEタップって読むの?」

ここまでかな?
乙です


イムヤ「イムヤのは……ほえ? これ、なんか全然違う?」

しおい「しおいのも、なにこれ……?」

龍鳳「イムヤちゃんとしおいちゃんのはダブルレバー……機械式です。STIレバーと呼ばれるハンドル部分にある機構で操作するものとは違い、よりクラシックなクロモリバイクに見られる、ダウンチューブに装備されたレバー操作のものです。

   ダブルレバーを除けば、各社で操作方法は異なりますが、原理は同じ。まず機械式は手の力でワイヤーを引っ張ることで、ディレーラーを動かして変速する方式です。

   ワイヤーのテンションの張り方などの調整一つで渋くも滑らかにもなりますが、より操作している実感を楽しめる変速方式とのことですよ」

はち「なるほど……あ、あれ? 変速しませんけど?」

ろー「ですって!? こ、壊れてる……?」

ニム「い、いきなり壊しちゃった……!? お、怒られる、怒られる……」

龍鳳「ち、違います。クランクを回しながらでないと変速できませんよ。固定ローラー台も持ってきたんですから、せっかくですからみんな回してみてください。

   リアのギアを重くすることをシフトアップ、軽くすることをシフトダウン」


 やたらと落ち度を気にするオリョクルズである。

 極端にミスを恐れるのは、リーダーのイムヤを始め、多かれ少なかれ彼女たちに共通している点であると言えよう。


はち「お、おお……こ、これは……成程、動力を与えないとディレーラーが動かないのですね。

   カンパは右手の親指でリアのシフトアップ、レバーを押すとシフトダウンする……フロント側は左手で操作、シフト操作は右手の真逆になる……はっちゃん、覚えました」


ろー「た、楽しい! 右手をかちかちしてると、後ろの車輪がカチョンカチョンって変速していきま――――ぴぃっ!? ぶ、ブレーキレバーがぁ!? こ、壊しちゃった!?」

龍鳳「大丈夫ですろーちゃん。シマノのハンドルはブレーキレバーごと押し込むことでリアがシフトダウンします。左手はフロント操作ですが、右手とは逆の操作になります」

ニム「よ、良かった。壊れてな………こわれてるぅうううう!? シフトアップしたりシフトダウンしたりするよぉおおお!? 同じレバー押してるのにぃいいいい!?」

龍鳳「落ち着いてニムちゃん。スラムのレッドはダブルタップレバー方式を採用しています。右手のレバーを軽くタッチするとリアシフトアップ、深く押し込むとリアシフトダウンします」

ニム「ひ、冷や汗が出てくる……で、でもこれ、面白い! 面白いよ!」

イムヤ「成程。ダブルレバーってシンプルね。右側のレバーを手前に倒すとシフトアップ、奥に倒すとシフトダウン……左はやっぱり逆になるんだ? あ、クラシックってひょっとして……」

しおい「そっか、変速するのにいちいち手をハンドルから放さないといけないから……」

龍鳳「最速を競うレースにおいて、このダブルレバー方式が廃れた理由がそれですね。提督が仰るには調整しやすいからホビーで使う分にはとても面白くて良い、とのことです」

イムヤ「確かに……」

しおい「うん、いいね! いいと思います!」

龍鳳「続いて電動式・電子式……これは呼び方が異なるだけで、原理は同じ。

   バッテリーによるエレクトリックな変速方式……要はスイッチ一つでギアを切り替えるための、いわばリモコンです。

   操作性は言うに及ばずストレスフリーですが、値段が高価になりがちで、バッテリーで動く故に電池切れすればたちまち動かなくなります。たまの充電は必須ですね」

ゴーヤ「お……! これは、なかなか面白いでち! スイッチを押すとチュインチュインと……あ、電動式だとブレーキレバーは押し込めないんですね?」

まるゆ「わ、わ……うん。面白いです。操作方法は、機械式と変わらないのかぁ……」

リアルタイム更新が見られるとは思わなかった
いいぞもっとやってください

久々のまとまった更新で嬉しい


イク「ねえねえ、イクのは? これ、無線式っていうの?」

龍鳳「ええ、最後に無線式ですが、現在では最新の変速方式で、文字通り通信方式が無線タイプになっています。

   現在はレッドEタップだけがこの方式ですね。前述の電動式との違いは、通信方式が無線のため、配線の必要がないという点です」

イク「はっ!? 確かにイクのバイク、ハンドルから配線が伸びてないの!? すっごくハンドル周りがスッキリしてるの!」

龍鳳「また操作方法が機械式のレッドとはやや異なります。左手のスイッチを押すとシフトアップ、右手でシフトダウン、左右を同時に押し込むとフロント変速です。

   より直観的に操作できる点が高く評価されているようですね」

イク「こ、こいつぁ面白い玩具なの……!!」

ニム「い、イクお姉ちゃん! 交代! 次、私がそれ弄ってみたい!」

イク「OKなの! 取り換えっこして色々試してみるのね~♪」

はち「まるゆちゃんの電子式も試してみたいなあ」

まるゆ「あ、はい! まるゆも機械式のカンパ、使ってみたいです」

ろー「でっちー、でっちー、ろーちゃんも電動式を試してみたいですって」

ゴーヤ「でっち言うなと言ってるサル!!」

イムヤ「ちょ、ちょっと、私としおいにも貸してよね! ダブルレバー同士だから交換しても同じなのよ!」

しおい「そうだそうだー!」

※ごめん、誤記

○:龍鳳「~(中略)右手のスイッチを押すとシフトアップ、左手でシフトダウン、左右を同時に押し込むとフロント変速です。

×:龍鳳「~(中略)左手のスイッチを押すとシフトアップ、右手でシフトダウン、左右を同時に押し込むとフロント変速です。


 こうして各メーカーのコンポーネントの操作方法を実感したオリョクルズである。


龍鳳「とりあえずこの三社のメーカーのグループセットの、いずれかのグレードから選んでおけば、楽しい自転車ライフは確約される――――提督はそう仰っていました」

ろー「なるほどですって! 似たようなものってことですか?」

龍鳳「違います」

ゴーヤ「それ、見方を変えたらこの三社以外のメーカーは地雷ってことでち?」

龍鳳「初心者向けではないという意味では冒険でしょうね。結果が出なければ『次』がありませんから」

イムヤ「次がない?」

龍鳳「では問いますが、売れないという結果が出てしまった商品に次をと望む多くの声はありますか?」

イムヤ「世知辛すぎるわ」

まるゆ「…………なるほど。需要がなければ供給はありませんね。当たり前のことでした」


 例えばローターやオーシンメトリックといったメーカーの楕円形チェーンリングは、一定のユーザーから指示を受けているが、初心者向けとは言い難い。形状からしてお察しである。

 初心者からすれば間違いなく地雷であるが、まず選択することはないだろう。

 なんせこの三社に対して我こそは四社目よと名乗りを上げたはいいものの、数年足らずで廃れるメーカーは後を絶たない。廃れるということは後発がないということだ。

 各メーカーは数年のスパンで商品は最新のものへと切り替える。マイナーチェンジであれ大幅なバージョンアップであれ、そこには確かな変化があるが、他のメーカーを選ぶということはその商品が廃盤になった時に心中する覚悟を持たねばならない。


 70年代のコンポーネントセットの概念がなかった時代ならいざ知らず、今やコンポは各メーカーでまとめるのが主流。しかし例外はある。

 ミックスコンポだ。効率的なペダリングを行うというメリットを得るために楕円形チェーンリングに変えるのとは違い、完成車として購入した時点でミックスコンポである場合だ。

 完成車の値段をより安く抑える点では理に適っているが、同じメーカーで統一したいというある種のコンプリート願望を持つ乗り手にとってはイマイチな組み合わせである。

 オーリョクールズ
 閑話休題。


イムヤ「それじゃあ龍鳳さん……結局のところ、どれを選べば正しいのかしら?」

龍鳳「それは……」


 龍鳳が口を開こうとした時――――ホビーで乗る分にはどれ選んでもいいぞ。好みでいいんだ好みで――――と、そんな声が割り込みをかけた。

 声の主を求めて龍鳳が振り返った先にはやはり、


龍鳳「あ、て、提督!」

提督「龍鳳、ご苦労だった。悪いな、覚えたてなのに説明任せちまってよ」

イムヤ「!! 司令官! いらっしゃいませ!!」

提督「や、イムヤ。すっかり遅くなって済まなかったな。八時回っちまったよ」

イク「そうなの、てーとく! とってもおそいの! イクたち、首を長~くして待ってたの!」

しょっぱな突然の航空戦艦ディスりで笑ってしまった


提督「そう詰ってくれるな。俺もここに来れるのを楽しみにしてたよ」

はち「もう、相変わらずお上手ですね……お待ちしておりました、提督。はっちゃん、もうおなかぺこぺこです」

ニム「あっ、そうだ! ニム、カレー温めてくるね!」

提督「お、夕飯はニムのカレーかァ。久々だなあ。大盛でよろしく!」

ニム「うん、ニムに任せておいて! ほら、まるゆちゃんたち、提督をご案内して!」

まるゆ「ようこそお越しくださいました、隊長! さあ、どうぞこちらへ!」

提督「ん。まず手を洗わんとな。おまえたち、ロードバイク弄ってたろ? 俺も一応外から来たし……洗面台に連れて行ってくれ」

ゴーヤ「はっ!? それもそうです!」

ろー「洗面所はこっちで……ああああああ!?」

ゴーヤ「どうしたんでち、ろー」

ろー「せ、洗面所はダメですって……まだお洗濯してないから、洗い物籠に、みんなのお洋服や下着が……」

しおい「それはだめだよ!?(乙女的な意味で)」

提督「それはいかんな(風紀的な意味で)。しゃーねえ、イムヤ、おしぼり作ってきてくれ」

イムヤ「はい、ただいま!」

提督「相変わらず、賑やかだなここは」



龍鳳「お、お恥ずかしい限りです……」

提督「元気があるのはいいことだよ――――重ねてご苦労だった、龍鳳。どこまで説明してくれたか、後で報告を頼むよ。夕食の席でな」

龍鳳「は、はい!」


 ほっとしたように笑う龍鳳に、提督もまた微笑み返す。

 イムヤはそんな二人を、おしぼりを取りに行く後ろ目で――――否、後ろ耳で聞いていた。




……
………

※久々の投下で案外投下に時間がかかるのを思い出した

 次回は提督の生臭い(ロードバイクコンポーネント選択の)お話である。

お疲れさまでした
これからも楽しみにさせていただきます

>>1

シマノあかんことになってる

乙した


あまり航空戦艦を虐めないでやってくれ、ウチの日向は対潜旗艦なんだ


待ってたんだよ貴方のことを!
昔買ったopera盗まれてもうロードバイク乗らないかなと思ってたけどまた欲しくなってきたよ
まとめから入った勢だけど面白い、夕張vs島風は本当に涙ぐんでしまった
プライベートが忙しそうですが、次回投下をお待ちしてます

生きとったんかワレェ!
たのしみにしてます!!


………
……


 かくして待望のお食事タイムであった。提督はもちろん、オリョクルズたちもお腹を可愛らしくくぅくぅと鳴らしている。

 長手のテーブルの中央上座に座る提督に対し、輪を作る様に卓を囲っていくオリョクルズ。提督の左隣はゲストの龍鳳。

 オリョクルズリーダーのイムヤは、右隣……ではなく、提督の正面である。実質、潜水艦寮の主故にゲストには机を挟んで対峙する。これが礼儀である。

 寄り添えることはなくとも、真正面から提督と見つめ合えるこの位置取りは、かつて龍鳳が大鯨であった頃の定位置である。この位置を、イムヤはとても気に入っていた。

 提督の右隣でニコニコ笑顔で食事を楽しみにしているのはまるゆであった。事前に決めていた純粋なくじ引きの結果である。二位のゴーヤと三位のろーが表現しがたい表情でまるゆを睨んでいる。

 龍鳳を恨むことはないが、龍鳳が来なければ提督の隣に座っていたのはゴーヤであった。並々ならぬ葛藤の末、行き場をなくした感情の矛先はまるゆへと向けられていた。それは八つ当たりという。

 されど、まるゆもまた立派なオリョクルズ。刃の切っ先のようなゴーヤの視線を豪胆にも柳に風とばかりに受け流し、横目で提督の顔をちらちらと見上げながら、時折提督と視線がかち合うと、嬉しそうにえへへと笑う。

 提督は思う――――なんて平和なんだと。空母寮ではこうはいくまい。その感慨深い思いが中断された。料理が運ばれてきたのだ。

 ニムとはちが手にしたトレイの上に並ぶメニューはもちろん――――。


ニム「ニム特製! フィリピン風のココナッツミルクを使ったチキン馬鈴薯カレーなの!! 新作だよ!」

提督「フィリピン風……オリョール海か」


 オリョール海のモデルはフィリピンのオーモック海と言われている。


 フィリピンのカレーと言えばココナッツミルクカレーだろう。だが、その常道から少しばかり外れたものだと、提督の視覚と嗅覚は感じ取っていた。

 まず色が赤い。フィリピンカレーは使われる香辛料次第であるが、黄色いものが多い。

 そして香り。ココナッツのふんわりとしたミルキーな香りに纏われる香辛料の香りは、ほのかな酸味を帯びている。

 しかし提督は慌てない。慌てるのは戦艦寮における金剛型の部屋と、駆逐艦寮における陽炎型の部屋だけだ。

 常道から外れようとカレーは期待を裏切らない。人の本能に根付く渇望、それを潤すための存在である故にだ。

 一部例外があるが、それは往々にして作り手側に問題がある。


提督「では、いただきます」


 提督の礼に合わせ、オリョクルズや龍鳳もまた唱和する。それが終われば、待ちきれないとばかりにスプーンを手に魅惑の赤い液体をライスに絡めてはむとほおばるゴーヤとイク。


ゴーヤ「あ、あれ? 赤っぽい色合いから覚悟決めて口に入れたけど……辛くないでち? っていうか、これ……」

イク「ちょっと酸っぱい……かな? でもおいしいの! とろとろの鶏肉によく絡むの~♪」


 さらさらの汁気が強い黄色い液体に、くったりと蕩けた具材が浮かんでいる。


まるゆ「カレーっぽくないのにちゃんとカレーですねコレ……」


ニム「あはっ、提督、どうどう? わかるわかる?」

提督「……ん、この酸味と甘みは……トマトとタマリンドを加えたのか。成程、ベースはフィリピン『風』の南インドのエッセンスを取り入れたのか。これは旨い」

ニム「ホント? やったぁ!」

提督「ブイヨンで伸ばしてサラサラ仕立てなのがいいな。盛り付けもきれいだし」

はち「あ、盛り付けははっちゃんですよ。上手になったでしょう?」

提督「おお、味といい盛り付けといい、腕上げたな二人とも……うん、うん、旨い。パクパクいける」

ろー「てーとく、食後にははっちゃん特製のアプフェルシュトルーデルもありますから……お腹いっぱいにはしないでくださいって」

まるゆ「あ、はい! まるゆもアイスクリン、作るの手伝ったんです!」

提督「ほう、はちとまるゆが? それは楽しみだ。ちゃんと腹八分目にして期待してるぞ」

イムヤ「あ、あの、司令官? お飲み物、どうぞ」

提督「お? カットライムを添えた……炭酸水か? ペリエ? ゲロルシュタイナー?」

ゴーヤ「ペリエでち! てーとくは炭酸水好きなんですよね?」

しおい「うん! イムヤちゃんから教えてもらったんだ!」


 炭酸には疲労物質たる乳酸を排除する効能がある。代謝を加速し、運動に対するパフォーマンスを上げる効果や血流量の増加などいいことが多い。


 提督が愛飲する飲み物の一つであった。

 談笑しながら食事は進んでいく。じっくりと染みたさらさらのルーは食べやすく、空腹も手伝ってかあっという間にみんなの皿はからっぽになった。


提督「ごちそうさま……さて、龍鳳からはコンポーネントの主要三社について聞いているらしいが」


 デザートのアプフェルシュトルーデルをパクつきながら、提督が龍鳳に話を振る。


龍鳳「はい。実際にコンポーネントにも触れてもらいましたが……こちらのホワイトボードに」

提督「ふむ……シマノのターニーを除いたのは?」

龍鳳「クラリスからデュラエースまではシフトチェンジ機構は同じだが、このターニーだけは違います。カンパニョーロに近い機構の親指シフトです。

   比較対象とするには微妙過ぎるかと……クラリスとの価格差も誤差のレベルですし」

提督「実機としてアルテグラ、レコード、レッドの各二種のグレード、そしてダブルレバーを選定した理由は?」

龍鳳「はっ! ……まずアルテグラとレコードですが、機械式と電動式、もとい無線式の違いを最も肌で知れるグレードです。

   かつレースパフォーマンスにおいて十二分な性能を有しているものと説明してくださったのは提督です。

   スラムにおいてはフォースもまた性能面においては足るものではありますが、無線式との比較ならばやはり同グレードのレッドが適切かと。

   また、ダブルレバーは懐古主義的ではありますが、クラシックバイクを用いる上では避けては通れないコンポーネントです」


提督「シマノのデュラエース、カンパニョーロのコーラス、あるいはスーパーレコードを選ばなかった理由は?」

龍鳳「ロードバイクのコンポーネントは上位に行くほど不可逆的な感覚が襲ってくると教えて下さったのもまた提督です。下を知ってから上を知るのはともかく、上を知れば下では満足できぬようになると」

提督「愚問だったな。ダブルレバーに使ったのはどこだ? シマノか? シュパーブプロか?」

龍鳳「ダブルレバーとしての性能を追求したダブルレバー式のデュラエースに、古き良き時代の変速感を味わうことを狙いとしたシュパーブプロで組み上げられた逸品です」

提督「………」

龍鳳「………」


提督「――――パーフェクトだ龍鳳」

龍鳳「感謝の極み」


 男くさい笑みを浮かべて頷く提督に、花開き感極まったように深くお辞儀をする龍鳳。

 ある種の様式美であった。


イムヤ「………」


 それを面白くなさそうな目で見ているのは、イムヤだった。

 オリョクルズのリーダーになった。だけど、提督と楽しそうにお話している龍鳳を見ていると、実質のリーダーはきっとまだ龍鳳の――――大鯨のままなのだと、思い知らされたようで。

※おしごと、おしごと、おしごと……

>>1

※よっしゃ来週末は間違いなく書けるでぇ

よっしゃこれで1週間戦えるわ
マジチンの方も楽しみにしてる


 大鯨が改装を経て龍鳳となった時のことを覚えている。

 彼女は潜水艦寮から離れ、空母寮へと住まいを移した。

 隠し切れぬ寂しさに表情も昏く俯いたイムヤに、龍鳳は言った。


 ――――潜水艦隊を頼みましたよ、と。


 後日、正式な辞令が下り、イムヤは潜水艦たちのリーダーとして龍鳳から業務の引継ぎを行い、すぐに重要な作戦会議や鎮守府運営にかかわる議案にも関わるようになった。

 それはきっと喜ばしい事なのだろう。しかし沸き立った心に冷静さが戻った頃、『なぜ自分なのか』という疑惑がイムヤの心中に浮かび上がった。

 リーダーとしての業務は苛烈を極めたが、それに忙殺されることはなかった。

 当時の潜水艦隊にニムはいなかったが、イムヤは己がリーダーとして適正であるとは思えなかった。管理職として潜水艦隊をまとめる日々が続くにつれ、その疑念はますます強まっていく。


イムヤ(あの時、大鯨さんはこんなに大変なことを、苦労なんておくびにも出さずにこなしてたのね……)


 大鳳には足を向けて眠れないと新たに尊敬の念を深めると共に、イムヤは改めて己の価値を検分する。

 果たして、自分には何があるのだろうかと、いつだってベストを求めてきた。ベストを尽くしたって安心できなかった。

 だって、イムヤは―――――イムヤ自身をこそ、何よりも信用できなかった。


 イムヤは旧型の潜水艦である。史実においてこそ大戦果を挙げたものの、スペックひとつとっても他の潜水艦達には劣っていた。


 破格の砲火力に冷静沈着な判断力を持ち、土壇場では腹を据えた苛烈さと勇猛さをも持ち合わせたはち。

 雷撃のみならず、航空機運用に砲撃・防空と隙のない戦術の幅広さを持つマルチプレイヤーのしおい。

 神がかり的な予見と勝負勘を頼りに敵の作戦を読み切り、多くの戦果を挙げてきたイク。

 隙の無いスペックにここぞという決定力を持つ純粋な強さならばゴーヤ。夜戦における敵の撃沈率は、ゴーヤが魚雷を放つ=撃沈数という、潜水艦内の撃沈王だ。

 この四人は、潜水空母への改装を経て、水上機まで運用できる。

 当時は着任していなかったニムもまた、今は潜水空母だ。彼女たちに負けず劣らずのポテンシャルを持っている。未熟なれど前向きな頑張り屋で、姉のイクに負けじと強さに貪欲なひたむきさを見せた。

 ではろーは? その頃はまだ艦隊に加わっていなかったが……呂500に改装する以前から、ろーは――――ゆーはイムヤでは及びもつかない性能を誇っている。彼女もまたギフテッドであった。

 ではまるゆは? 純粋なカタログスペックを問わぬ心の強さという意味では、イムヤはまるゆ以上の艦娘を知らない。事実、まるゆは潜水艦隊にとって欠かせぬ、立派な戦力を備えるに至った。


 翻って、イムヤにあるものはなんだろう。近代化改修を済ませた結果、火力も装甲も増えエンジン放射音を極限まで抑えた防音性を有した。

 だがそれは全員がそうだ。ならばイムヤにあるものは、なんだろう。真面目さか? 負けん気か?

 イムヤは否だと思う。ならばきっと、自分が選ばれた理由は『それ』意外に考えられなかった。

 そして『それ』を考えれば考えるほど―――自分は、ただの提督にとって便利な『いい子』に過ぎないのではないかと思えた。

 客観的に己という存在を、旧型の潜水艦たる自分に価値を見出すとすればそれしかありえないと思うようになって、漠然とした不安はどんどん大きくなっていった。


 ――――嫌な『音』が聞こえた。いつもの『音』だ。鉛色の音。はじまりの音だ。

 不安を抑えきれなくなって、すぐに提督に問いを投げた。返ってきた答えは呆気にとられるぐらいシンプルで、とても嬉しい言葉だった。


イムヤ(覚えてる。今でも、一言一句違わず、音程一つ間違えず、頭の中で再生できる)


 その時の声を思い返すたびに、『音』は消えた。天にも舞い上がるような気持ちになる。嬉しくて嬉しくて、涙が出そうになる。

 だけど、あの時の提督は、どんな『音』をしていただろう。それが、喜悦の彩で塗りつぶされている。

 イムヤの心中では、今頃になってそれが不安に思えてきていた。

 また、『音』が聞こえだした。


イムヤ(…………いやだ)


 イムヤは初めて提督という存在を知覚した瞬間に、恋に落ちた。

 提督の采配の下で戦い続けた。しゃにむに戦った。深海棲艦の補給線を破壊し、時に資材を奪い、脅威となる敵を無音潜航で秘かに沈めて行った。

 帰投した時には温かく出迎えてくれる提督のことがどんどん好きになった。

 闘いの日々は辛く厳しいものだったが、それでも楽しかったと思える。一航戦と二航戦――――あの飛龍とも再会を喜び合い、少しずつ増えていく潜水艦の仲間達と親睦を深められるのは、有難い事だった。

 それに、こうして提督と交流できる時間は、イムヤにとって掛け替えのないものだ。


 その一瞬一瞬が宝物のように煌めいている。

 好きな人のちょっとした仕草やクセ、色んな表情が分かっていく。知って幻滅することなんて、イムヤには一つもなかった。提督のことがますます好きになっていく。

 出撃中の提督に会えぬ日々は辛いものだったが、増えていく仲間と共に戦場の海を泳げることは心強かった。

 過ぎゆくとともに、想いは募り焦がれて、もう鉛色の音を忘れかけた。そんな日のことだった。

 待ちに待っていたはずの『あの日』は、イムヤにとって―――。


提督「イムヤ」

イムヤ「っ、え?」


 心音と共に視線が跳ね上がる。そこにはじっと心配そうにイムヤの顔を見つめる、提督の両目があった。その両隣では、まるゆや龍鳳も同様の視線を向けている。


提督「これからコンポーネント市場の主要三社のより詳細な説明しようと思うんだが……」

まるゆ「顔色が悪いですよ? 大丈夫、ですか?」

イムヤ「っ!? だ、大丈夫。大丈夫よ! イムヤ、元気いっぱいだから!! ちょっと考え事してて……」


 嘘だ、とイムヤは思った。自分自身の言葉が嘘だと。きっと今、イムヤはひどい顔色をしている。それを自覚していた。


 気づけば、提督だけではなく、誰もがイムヤに視線を向けている。ある者は心配そうに、ある者は不安げに、ある者は苦虫をかみつぶしたような表情で、一様にイムヤの様子を見ていた。


イムヤ「ご、ごめんなさい、みんな! 本当に大丈夫だから……司令官! お話を続けてください……」


 日を改めることすら考慮に入れ始めた提督の思考に割り込んだのは、イムヤの悲痛さすら感じさせる声だった。


提督「…………ん、そうか。体調悪いなら、あんまり無理しちゃ駄目だぞ」


 提督はきっと、困った顔をしている。それがイムヤには分かった。顔を見なくても、俯いたままにそれが分かった。

 自分自身さえ納得させることができない言葉では、この場の誰も欺けない。

 もちろん龍鳳もだ。その横で静かに瞳を細める龍鳳だったが、あえて言葉はかけなかった。

 追及はすまいと、無言のままに、誰もがそう思っていた。


提督「さて、では改めて………コンポーネントの選定。まずシマノ・カンパニョーロ・スラムの三社から一社を決定するためには、何を重要と捉えるかが肝だ」

イムヤ「そ、そうなんだ。それで、どのメーカーのどのグレードを選ぶのが正解なの?」

提督「ぶっちゃけるぞ――――まずグレードを後回して、ただ三社を選ぶだけなら好みでいい」

イムヤ「…………え?」


 イムヤは、己の胸の中心から、何かが跳ねる音を聞いた。


はち「……あら。それはどうしてですか? 好み……というのも、少し漠然としている気がします」

提督「純然たる好みという意味でもいいんだが、要は嗜好や事情、そこに利便性や自転車に乗る目的を絡めての『好み』だ。

   そういう意味じゃあシマノは断然オススメだぞ。なんせ日本製だ。ロードバイクを扱うショップならばどこでだって入手が容易だ。まず間違いはないってメーカーだよ。優等生よな。

   カンパニョーロはイタリアンバイクが似合うって風潮がある。人間的な……エルゴノミクスに配慮した直観的な操作感覚はクセになる。他のメーカーと比すれば少しお高いがね。ブランド志向も強めだ。

   スラムもまた独特の変速性能はやみつきになる魅力を備えている。カチンッ、カツンッと来る刺激的な変速の快感は、とても言葉にできん。より感性や本能を刺激する攻撃力があるな」


 提督にしては、言葉を重ねてなお曖昧な表現であると言わざるを得ない――――はちは胸中で少し微笑んだ。可愛いところもあるんだなと。

 しかし、成程、案外そういうものなのかもしれない――――そうも思った。

 あくまで感性の話である。いかな提督とて個々の持つ感性を完璧に表現する言葉は持ち合わせてはいまいと、はちはそう結論付けた。


提督「変速方式が使ってみて気に入ったとか、使用感が好きとか、見た目が好きとか、イタリアンバイクに乗りたいからカンパにするとか、アメリカンだからスラムとか、日本製だからシマノにするとか、そういうこだわりでイイのだ」

提督「そこからグレードを選ぶわけだが、財布の中身と相談ってのが最も多い。グレードが高い方がもちろん性能はいいよ」

しおい「むむむ……あの、提督、その上でどれが一番性能がいいんです? シマノ? カンパニョーロ? スラム?」

イク「そ、そう! それなの! イクたちが知りたいのは、まさにそれなの!」


提督「それ聞いちゃうか。地雷を踏みたがるというか、もとい機雷にぶつかっていきますね君たち」

ゴーヤ「は?(殺意)」

はち「機雷? 大嫌いです……」

まるゆ「たいちょー……いくらたいちょーでも、言っていい事と悪い事があります。まるゆ、知ってますよ。それこそが、まさに地雷っていうんです」

提督「そ、そうだったな……じゃ、じゃあここからは生臭い話だ。ホワイトボード借りるぞ」


 先刻の龍鳳と同じように、提督もまたホワイトボードに情報を書き連ねていく。


提督「大体こんなところだろう。()内は備考だ」


 1.値段(予算に相談)

 2.整備性・維持費(メーカーやグレードごとに違うものもあるので自分で整備するなら勉強必須。乗るのが目的なら維持費の計算まで入れておいた方が吉)

 3.取り回しの良さ(まさに好み)

 4.変速性能(予算が潤沢でかつコスパを大事にするとか、面倒なのは嫌いなら電動か無線。整備の腕に自信があるとか軽い方がいいなら機械式)

 5.マッチングとフィーリング(価値観次第。美意識。えこひいきとも言う)


提督「以上の要素で、自分にとって何が最も重要なポイントとなるかで、正解は枝分かれして分岐する」


ニム「えと、じゃあ提督のオススメは?」

提督「色んな意味でシマノ」

イク(もうシマノでいいんじゃないの?)

ゴーヤ(てーとくのロードって、ひょっとして全部シマノさんかな……?)


 ゴーヤもイクも提督はシマノ贔屓かと思った。合っているが、微妙に違う。提督としてはカンパもスラムも好きだ。むしろこのロードバイクにはスラムだろ、こっちはカンパニョーロだと思ってるものもある。

 しかし、提督はフレーム素材を乗り比べるのも好きだが、ホイールを使い分けるのも好きだ。

 同じシマノ製の同じグレードに纏めることで、ホイール交換の互換性を重視した結果、やむなく同じメーカーに統一しているというのが正確である――――ホイールのスプロケットは、グレードやメーカー次第で互換性がないものがあるのだ。


提督「ちなみに上記の点は重要だが、それらを冷徹に判断した上で、この中にはそうして出た結論をひっくり返しうる要素がある。項番の5……マッチングとフィーリングだ。これ以外に重要なものはないと断言する猛者もいるね」

ろー「まっちんぐ?」

しおい「フィーリング?」


 何故しおいの方が流暢に喋るのか? 提督は訝しんだが、話が逸れるのでそのうち聞いてみようと思った。


提督「己の欲すべきところをまず見定める――――好み。やはりこの一言に尽きる。つまり正解はない。あえて言い換えるとすれば、美意識だ」

ニム(美?)

イク(意?)

ろー(識?)

提督「例えばさっき話したイタリアンバイクにカンパニョーロコンポを至高とする教団のことだ。彼らはホイールもカンパニョーロにすることを絶対の正義とする」

はち「……ああ! なんというか、少しわかる気がしますね。統一感というか、同じお国で同じパーツを使うと、ふしぎな安心感があるっていうか」


 はちは納得した。几帳面な性質故か、そうした『きっちり』したものを好む傾向がある。

 だがその一方、


しおい(えー……)

まるゆ(ちっともわかんない)

ゴーヤ(せ、正解が、ない? なんでちそれは……っていうか生臭いところがどこにあるんでち?)

ろー(コクゴの問題かなあ。えっと確か、かい、かい……カイシャク、次第? カイシャク、シモス? だっけ?)


 微妙に違う上に残虐薩摩風味だが、ろーの感想はとても的を得ていた。


イク「は、話変わってないの!! 結局『好み』ってなんなの!?」

提督「いいや、変わってるよ。ここからは感想ではなく、価値観だ……冷徹な評価に基づいた話になる。その上で、その結果をどう見るかは、やはり本人の好みとなるわけだ」

はち「結果、評価…………成程、レースですか」

提督「そう。レースにおける最速を、より純粋に目指すのならば、各社のトップグレードを選ぶべきだ。だがそのどれかを選ぶのは乗り手次第……ところがプロとなると機材を選べん」

ニム「? 選べない?」

提督「えり好みできんということだ。レース機材ということは結果が求められる。レースリザルトはメーカーにとって見逃せない商売材料になる。フレームメーカーは無論、コンポーネントメーカーもな……故にこそ、どれを選んでも正解だが不正解、つまり正解がない」

ゴーヤ「………ああ! そういうことだったんでちか!!」

はち「時節と結果、求められる性能はそこから来るという訳ですか……はっちゃん、よくわかりました」

イク「い、いくぅ……」

ニム「て、提督! もっと、もっともっと簡単にお願い! イ、イクお姉ちゃんが曖昧に!」


 ――――イクはしばしば曖昧になり、精神の均衡を崩す時があった。

 昂ぶる感情を上手く処理できない時や、難しい話を聞いた時、魚雷を外した時……提督の意を理解できぬ己に不甲斐なさを感じた時など……その兆候が顕著になる。

 ただし仲間が傷つけられた時は一転して、秘めおきし魚雷による、およそ一切の潜水艦において見たことも聞いたこともない雷撃を放ち、射程距離内にいる深海棲艦を艦種の区別なく轟沈させる魔神と化すのだ。

 『オリョール海の魔神』と呼ばれた伊19の真骨頂である。


提督「……優勝したレーサーは注目される。要はメチャクチャ目立つんだ。観客が沸く。島風と夕張のレースを見た時、お前たちも心が躍っただろう?

   では、あのレーサーが使っていたロードバイクはなんだろう? 用いていたフレームは? アイウェアは? ヘルメットは? コンポーネントは?

   レースの結果が劇的であり、より輝かしい勝利を得た選手の用いた機材ほど光り輝いて見える。

   こうして購買層への訴求力が高まることで……「あれ欲しいのー☆」って気持ちが来るわけだ。わかるな、イク?

   その奈落の底みたいな目も可愛いが、俺はいつものキラキラしたイクの目の方が好きだぞ」

イク「イク、とってもすごくよくわかったのー♪」


 即座に精神の均衡を取り戻すイクであった。

 最後の言葉が特に効いているのもあるが、イクは悪く言えばミーハー、よく言えば流行に敏感なところがあった。


龍鳳(さす提)


 龍鳳は提督のペラ回しに絶対の信頼を置いていた。大鯨だった頃にもイクへの教導には手を焼いた。焼かれたのは手だけではなく、脳髄にまでこびり付くような香ばしい記憶である。


提督「分かりやすいのは、やっぱりあこがれの選手が使うロードバイクのあれこれだろうよ。ファン心理はわかるだろ?」


 こくこくと頷くオリョクルズ達と龍鳳。イムヤだけは未だに顔色が悪く俯いたままだったが、提督は『あえて』無視した。


提督「では目的を定め、メーカー選んだ上で、いよいよコンポーネントを選ぶ――――グレードを選ぶわけだが」

イムヤ「………」

提督「多くの初心者ロードバイク乗りにとってネックとなるのは値段だろう。初心者はそもそもロードバイクってのがどんなものかキチンと理解できているかも怪しい。

   ホビー嗜好の消費者観点から性能面を見ると、シマノなら105、カンパならコーラス、スラムならライバルのグレードが欲しいところだ。

   これらは日常乗り回しても遠乗りでもレースでも充分な性能を備えており高級感があっていい。

   だがホビーならば、金を積めるなら何でも構わん。性能に不満が出ることを恐れる、言わば安物買いの銭失いを避けるなら上位のグレードを買うのが良いだろう。

   ――――ほら、これは好みではないか?」

ゴーヤ「い、いやいや、確かに好みですけど、イチマルゴもコーラスも、それってミドルグレードでち。そもそも下位のグレードでも高いでちよ? コンポだけでママチャリが買えます。上位グレードだと10台以上買えちゃうレベルです!」

はち「ええ……物凄く高い買い物だと思います……」

提督「ごもっとも。ところがロードバイクには、ロードバイク乗りにしかわからぬ不思議な法則があってな……」

まるゆ「ほ、法則って……」

提督「大袈裟じゃあねんだなぁこれが。続けていくと金銭感覚が麻痺していくんだ。金銭感覚の麻痺、即ち価値観の麻痺だ――――重度になると「デュラ組のフラッグシップ完成車が税込80万以下」というだけで「あら! お買い得!」と感じるようになる」

しおい「病気だよゥッッッ!!」

提督「そして見栄と言う厄介なシロモノが心を支配してくる。あいつは総額いくらのバイクに乗ってやがる、畜生負けてたまるか! とな」

ろー「何と争ってるんですって……」


提督「プライド? じゃね? そもそもレースに出ないならハイエンドモデルは乗り回そうと宝の持ち腐れってのは、皮肉にも一般ユーザーにとって大多数の意見よ」

イク(あ、なんか、分かったの)

ニム(ニム、それすごく分かる)


 二人は各々がより強い魚雷装備を求めて、それを与えられた時の優越感を思い出していた。

 多分、それと似たようなものだろうと。そしてどれだけ凄い魚雷でも、近海への輸送任務で用いるには勿体ないということも。使うべきは命を懸けて戦う難敵であるべきだ。

 提督が言いたいのは、まさにそういうことである。適材適所だ。

 要は入りたての新入社員なのだ。何が分からないかが分からないという、フレッシュで何色にも染まっていない状態である。

 それに何かを与えるとすれば、即戦力ならまだしも、仕事道具より先にルールや仕組みを徹底して覚えさせる。


提督「フレームからのバラ組みというのは予算が潤沢ならば何も言うことはないんだが、予算が限られている場合となると、これは必然的にシマノへ傾向する」

ゴーヤ「なんでです?」

提督「はい、ここからとても生臭い話その1――――この中ではシマノが一番安いが、コストに対して一番精度が高く整備性が良好でパーツ入手しやすいのもシマノというツッコミどころの多いお話。親方日の丸は馬鹿に出来んよ」


 日本のものづくり、手作りであろうと工業製品であろうと、比類なきクォリティを誇る。

 特に後者の製品に対する一律した精度の高さは誰もが納得の変態性である。

※さて、このペースでガンガン書いていきましょうねえ

 次の次ぐらいでオリョクルズ編はラストよ

乙でち


シマノの冷間鍛造技術は、ソッチ方面の専門家が絶賛するほど凄いらしいからなぁ

>>1

乙、ちなみに夕張の覚醒予定ってあるん?

ふと、ちょっと思い出したことがあって電ちゃんのバイクを検索したらコンポがデュラエースだったでござる
うーむ残念、艦番号「105」が「いなづま」、具体的には現役「むらさめ」型護衛艦の5番艦にして旧海軍から通算4代目だったのだが

まってます!

※復活の―時ー(来週ぐらいから)

めっちゃ待ってた

めちゃくちゃ待ってた。

梅雨の時期、ってか雨天時は更新が増えるかな~なんて期待してる。

全裸待機


ろー「じゃ、じゃあシマノさんを選ぶべきですって。比較的お安くて、整備性もいいなら……」

提督「多くの人にとってはそうだろう。三社の中では一番安いし頑丈だし精度が高い。コストパフォーマンスでも性能でも文句はない。

   ところがそう簡単な話じゃあない。龍鳳が説明してくれたように、各メーカーごとに変速機構が異なる点や、微妙な違いがある。つまりフィーリングの話になってくるわけだ」

しおい「フィー」

イク「リン」

ゴーヤ「グ」

提督「そ、フィーリング。使ってみてどうだった? 『あ、これ面白いな』とか『しっくりくる』って思ったのがあったろ?」

まるゆ「は、はい! まるゆ、手がちっちゃいから、カンパニョーロのブラケットは握りやすいなって思いました!」

はち「まるゆちゃんもですか? はっちゃんも同じものを感じましたね。カンパのはブラケットの形状が少し内側に向かって緩やかにカーブしているせいか、握った際にスッと馴染む感覚があって……」

提督「お、それはカンパの強みの一つだ。価値観の違いと言ってもいいんだが、純粋な変速性能だけ見ればシマノはやはり強い。

   一方で使い心地や扱いやすさはカンパニョーロの方が手に馴染みやすい。

   スラムはと言えば、先ほども言った通りメカニカルなシフト操作の快感が快楽中枢を直に突き抜けるような面白さがある。

   そういうのって大事なんだよ。苦しいレースの中で重要なものの一つが『楽』だ。

   より『楽』しめる、より『楽』できる。そういう要素がコンポーネントにはある。

   レースに求められるものの違い、狙いというのが主要三社で異なるんだ」


ろー「せいぞんせんりゃく、ですって!」

提督「まあそんなところだ。カンパニョーロの話に戻るが、日本販売はホイール含めて高級ブランド路線ってのもあって見落とされがちなんだが、エルゴノミクスに配慮したハンドルはしっくりと掌に馴染みやすい。

   ブレーキフィーリングについてもよりレース志向の微細なスピード調整に向いている。

   五十鈴と名取が電子式スパレコ、阿武隈も機械式スパレコを使ってるが、それぞれが選んだ理由は共通部分もあるが異なる部分がある」

まるゆ「い、五十鈴さんが……た、たすけて、たすけて木曾さん!」

はち「あの全潜水艦の天敵めいた悪魔と、その悪魔の姉と妹たち……ああ、爆雷が! 爆雷が!!」

イク「い、いくぅ……お、おのれ、五十鈴め……あ、あのとき、あのとき、イクのてーとくのご褒美を得るチャンスをふいにしたるは、忌まわしき爆雷が起因……やってくれた喃」

ニム「イクお姉ちゃん!」

しおい「寝ておられるのですか!?」

提督(おまえらトラウマスイッチ多すぎだよ)


 まるゆもはちも五十鈴型、もとい長良型が苦手だ。五十鈴を筆頭に特に後期型である由良・鬼怒・阿武隈は対潜性能が高く、幾度となく演習で煮え湯を飲まされてきた過去に起因する。

 特に五十鈴だ。潜水艦は海の中にいる。いるのに、『視線がかち合う』のだ。その度に歯の根が合わなくなる。


ゴーヤ「……わかったでち。この話題はやめるでち。ハイ!! やめやめ……! スラムの話するでち。イクが気に入ってたみたいよね」

イク「い、イクは……スラムのあのカチカチした変速、スキなのね。とーっても素敵な感覚がしたのね!」


ニム「あ、それ分かる分かる! 電動、じゃなかった、無線のすっきりしたハンドル周りも良かったけど、機械式の変速してるなーって感じ、あたし好きだよ!」

提督「スラムか。スラムはこの三社の中で一番後発だが、後発故にMTBで培ったノウハウを注ぎ込んだメカニカルさが少年ハートをくすぐる面白さがある。無線式も大きなメリットがあるしな」

ニム「うんうん!」

イク「誰か使ってる子いないの?」

提督「ん、それは………………ん?」


 シマノ:長良・由良・鬼怒・天龍・龍田・雷・電・青葉・金剛・榛名・霧島・島風

 カンパニョーロ:大淀・五十鈴・名取・阿武隈・暁・響・比叡・夕張・明石


提督「うん、間違いない………今のところいないな」

イク「そうなの!? じゃあイク、スラムにしようかなー。なんか人が使ってないものって使いたくなってくるのね!」

ニム「ニムもー! なんかレア!! レアなのは重要だよ!」

しおい「雑! 二人とも雑です!!」

提督「そうか? 良いと思うよ。そんなもんでいいのだ」


 そういう理由でスラムを選ぶ者は少なくない。


提督「そんな感じで三社のうちのどれかを決めたら、次はグレードだ。グレードはフレームに釣り合うか、目的に釣り合うか、どちらにも釣り合うか、これが肝要だ」

イムヤ「………釣り合い? 釣り合いって、何?」

提督「ここから生臭い話その2だ……ふむ、仮にエントリーモデルのフレーム、目的は街乗りという場合にシマノコンポを選ぶケースを考えてみよう」


 提督が再びホワイトボードに向かい、シマノの項目を赤丸で囲う。


〇Shimano(シマノ)機械式
 CLARIS(クラリス)⇒SORA(ソラ)⇒TIAGRA(ティアグラ)⇒105(イチマルゴ)⇒ULTEGRA(アルテグラ)⇒DURA-ACE(デュラエース)

〇Shimano(シマノ)Di2(電動式)
 ULTEGRA-Di2(アルテグラDi2)⇒DURA-ACE-Di2(デュラエースDi2)


 右に行くほどグレードが上位となり、値段も加速度的に上がっていく。


提督「ブレーキのストッピングパワーを考慮するなら精々が105までが正解だろう。それ以上は少しやり過ぎだ。

   アルテグラはDi2がでたところで、整備面や調整のストレスフリーな点を考慮してフィーリング面ではまあアリかもしれんが、デュラエースはやり過ぎだ。というかやる奴は何をしたいのか分からん」

ゴーヤ「? どういうことです? いいものを使った方がいいでち?」

提督「釣り合いというのはそこよ。レース機材だから変速性能を求めるのは重要だが、問題なのは街乗りって点だ。街乗りで使えるエントリーグレードクラスのフレームはフレーム単品じゃあ10万円を切るものがほとんど。

   ではそのフレームに対し10万、20万するコンポーネントが必要かと言えば、あらゆる意味でいらない。美意識的なところでも性能面でもだ」


ゴーヤ「あ、そういうことでち?」

提督「そういうことでち。ではカリッカリのレースで上位を狙うという目的ならばどうか? デュラは無論、アルテグラも当然アリ、105だって十分な性能を誇る。

   が、ティアグラ以下になると「もうちょっと変速時にシームレスな反応が欲しいなあ」になってくる」

しおい「うーん……遠乗りとかで使うならどれがいいんですか?」

提督「どれでもあり。フレーム次第と言っていいだろう。エントリーグレードなら先ほどの街乗りと大差なし。

   ミドルグレードになればアルテグラでもあり。

   ハイエンドクラスのエンデュランスフレームを求めるなら、そこにデュラがハマッていても俺は別におかしいとは思わん」

まるゆ「うーん、よくわかんないんですけれど、フレームとの釣り合いっていうのが、こう」

提督「そうだな……エントリーグレードとミドルグレード、そしてフラッグシップやハイエンドグレードのフレームの値段は知ってるか? 完成車でもいいから比べてみ?」

まるゆ「え? あ、そうだ、カタログ……………うぇっ!?」


 手元のカタログをぱらぱらとめくるまるゆは、目が点になった。

 厳密に言えば、ロードバイクのフレームは5段階でグレードが分かれていると言われる。

 エントリーモデルは10万円未満のロウアークラス。これは分かる。分かる。まるゆも理解できた。

 10~20万円台のロウアーミドルクラス。これもまだ理解できる。何とはなしに分かる。だが、10~20万のどこがロウアーミドルなのか? カタログを持つまるゆの手が震え出してきた。


 30~50万円のミドルクラスと、60~90万円のアッパーミドルクラス。もはやまるゆにはロードが付かないバイクのカタログを見ている気がしてきた。

 60~90万円となれば普通に単車が購入できる。なのにロードバイクは人力だ。一体なんだ。何が起こっているというのだ? まるゆは目の前が真っ白になりそうだったが、霞む視界にそれを捕らえた。

 ――――ハイエンドモデルは軽く100万円以上。

 まるゆの意識が飛んだ。


提督「見ての通り、エントリーグレードはフレーム単品で取り扱ってるところは少ない。大抵が完成車だ。

   なんでだと思う? そもそもエントリーグレードフレームを上位のコンポで組もうとする人が極めて少数派だからだ。そらそうよ、フレームより高価なコンポーネントって何なのさって話だよな。

   俺もお勧めしない。ハイエンドフレームにエントリーグレードコンポというのだけはやめた方がいい。マジで。有り得ん」

イムヤ「な、なんで?」

提督「素で正気を疑われるからだ。フレームとコンポのグレードが釣り合っていないロードバイクは、目的が定まっていない」

はち「釣り合いに、目的、ですか」

提督「くどいようだが、ロードバイクフレームはそもそもレース機材。街乗りで用いる目的ならレース用の変速機の性能は不要、というかあっても無駄」

ゴーヤ「どうしてでち? 見た目もかっこいいですけど」

提督「信号のストップアンドゴーが多いから。特に都内住まいには猫に小判。

   例えるならばメインとなるフレームもコンポーネントも、車で言えば外観と内装。エンジンは己の両脚よ。見た目ポンコツだがエンジン最高みたいなのはある意味浪漫だろ?」


イク(男の子の発想は分からないの)

提督「だが見た目が超高級車なのにエンジンポンコツってのはどうなんだ?」

ろー(あ、それはなんとなくわかる気がしますって)

提督「高級なロードバイクフレームに乗っている肥満体を想像してみろ」

ゴーヤ「…………」


 苦瓜を噛みしめたようなゴーヤの表情が全てを物語っていた。


提督「ああ、財力はあるんだろうなと思うよな。そして自分を客観視できてないんだなあとも思うよな。まあいいんだよ、趣味ってのは自己満足だから」

ゴーヤ「ひょっとしててーとく、肥満体の人がハイエンド乗ってるの、嫌いでち?」

提督「嫌いじゃないよ。すぐに後方に消えていくからね。痩せて鍛え抜けば一緒に走れるのになあって惜しむ気持ちでいっぱいになる」

ゴーヤ(嫌いよりタチが悪いでち)


 きっと阿賀野を見る叢雲のような目をするのだろう。


提督「形から入っていくっての言うのは好きよ。モチベーション上げて運動のパフォーマンスや頻度も上げちゃおうって剛毅さな」

※次回、オリョクルズ編最終回。そしてオリョクルズ達が駆るロードバイクが明らかに。

 そして深海へ沈むイムヤの心を提督は掬うように、救い上げることができるのか。

 raise your flag!

>>1

舞ってた

待ってる

はやくしないとツール・ド・フランスはじまるぞ

ツール・ド・フランスが終わってしまったな。

夕張の代わりに秩父のダム巡りしてきました

ロード始めようと思って気が付いたら山登りがメインになりましたとさ

ロードで登山口まで行って、そこから徒歩で登山するのか?


登山と言えば、新しいイージス艦が「まや」様襲名したな

トライアスロンの為にロード始めたら膝壊してランニングさえまともに出来なくなった勢がここに

まってます

この人の文章はキャラがイキイキしてて好きだな。
提督にしても>>342の時の表情、ゴーヤからどう見えたのやらw

続きはのんびりと待ってますね

てすと

しまった昔の酉だ。再テスト

しまった昔の酉だ。再テスト

※むぅ、酉忘れてしまったぞ……この酉で週末頃に再開します
 今週さえ乗り切れば夏休みぞよ

>>355
>>1か?無事で何より

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年09月17日 (日) 10:51:11   ID: 4ewWPTbD

あの娘がバケモンだのこの娘がバケモンだの言ってたけど1番のバケモンは提督なのか…

2 :  SS好きの774さん   2017年10月23日 (月) 17:12:52   ID: 7bfUus3i

さすがです提督さまwww

3 :  SS好きの774さん   2017年11月07日 (火) 23:58:29   ID: 82_e5gft

完ってついてるってことは終わりなのか
すごい楽しく読めました
おめでとうございます

4 :  SS好きの774さん   2018年04月04日 (水) 08:29:50   ID: KjqUz1d2

↑終わりじゃないぞー?

5 :  SS好きの774さん   2018年04月11日 (水) 21:20:31   ID: I9wG6JTJ

楽しみすぎ

6 :  SS好きの774さん   2018年04月21日 (土) 03:31:16   ID: xFNPrV80

続きが待ちきれない!

7 :  SS好きの774さん   2018年05月29日 (火) 12:32:15   ID: dXUJh5od

はやーく

8 :  SS好きの774さん   2018年06月02日 (土) 13:41:56   ID: dSPP23EC

>>1殿ー?提督殿ー?何処かー?

9 :  SS好きの774さん   2018年06月10日 (日) 21:54:56   ID: 8j4Y1iZV

不定期更新で間隔数ヶ月はよくある作者じゃけん気長に待ちんさい

10 :  SS好きの774さん   2018年07月05日 (木) 08:01:07   ID: WB9mf10v

まってます!!

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