剣闘士の休息 (47)



この世界の生物は何かしらの目的を持ち生きている。

君もまた、大きな目的を抱いて生きている。


……願わくは、皆が幸せであらんことを。



この物語は、別の場所で活躍していた剣闘士達の話である。

ここで語られる内容は、元の世界で起きていない事も含まれる。

……それを念頭に置いてほしい。



ある村に双子の兄弟が居た。

……弟の名をシャド。兄の名をライトと言う。


弟は、才能に溢れる兄を尊敬していた。

手のかかる弟だなと言いつつも、兄は弟を悪く扱う事が無かった。

その為だろうか、弟は兄の後ろを何時も付いて回っていた。

弟がこれは何か? と聞けば兄は得意な顔をして答えてくれる。

燻製にしていたチーズを弟が拝借すれば、兄は烈火のごとく怒った。

一度は怒る兄も最後は弟に許しを与え、笑って流してくれた。


平和に暮らしていたそんな二人に転機が訪れる。

………村が襲われたのだ。



辺りの家は燃え、何処か遠くからは悲鳴が聞こえる。


双子はその光景に目を疑った。

村に何が起きているのか理解したくなかったか、それとも理解出来なかったか。


近くに居た両親が、咄嗟に双子を地下へと連れ込む。

だが、その地下は双子が入れるだけの広さしか無かった。

双子の兄が両親はどうするのかと聞くが、悲しそうな顔をするだけで父母は何も言わない。



……両親が双子を地下に押し込んだ直ぐ後、家に男の怒声が飛び込んでくる。

耳を塞いでいた弟とは違い、兄は家で何が起きているかを理解してしまった。

怒声を上げて押し入った男が、父を殺して母を凌辱しているのだと。


その惨状を想像した兄は震え、顔を青ざめた。

長い時が過ぎた後、兄は双子の弟を置いて地下から飛び出す。

その動機は、村を荒した下種を殺す。……ただその一心で。


地下へと押し込まれた弟は何も動けなかった。

弟は兄とは違い、早くから現実逃避をしていたのだ。

平和だった村がこんな惨状になる訳が無いと……。



……村の襲撃、両親の死、兄との別れ。

これらが一斉に襲ってきた為に、弟の心はいとも容易く壊れた。

燃え盛る村を眺めると、両親の死体を燃やし始めたのだ。

コレは自分の両親ではない、幼心にそう思ってしまったのだろう。


それが異常な行動だと気付くのは、弟が成長してからだった。

荒廃した村は、成長するとともに修復されるが、彼の心は壊れたまま。


生活に余裕が出来た頃、弟は村の中に家族が居ない事を思い出して涙を流した。

長らく抑圧されていた感情が溢れたのだ。


そうして弟は、長く過ごしていた故郷を離れ、自分の兄を探しに旅へ出た……。



旅に出た弟は、オレン闘技場に辿り着く。

……なぜ、彼はこの場所に来たのか。

兄が名を上げる事に憧れていたのを覚えていたからだ。


弟は門をくぐり抜ける際に、門番へ名乗りを上げた。


「僕の名はシャド」

「……兄を探しにこの場所へ来ました」



闘技場では数々の人物と出会った。


剣闘士の基礎を教えてくれた バシクス。

オレン闘技場の看板野郎 オウガ。

専属医師として傷を癒してくれた サビニア。

……最も深い関係を持つ ラディー。

…今はもうこの世にいない ズルー。

胡散臭い男 カンジ。

筋肉を研究する変人 アイガ。


闘った者を含めると、その数は二桁にも上る。



「食事に誘ったラディーと宿に泊まった話」



ベッドに彼女を押し倒したシャドは、掌で彼女の乳房を揉み上げて耳元で囁く。


「んっ♡……はぁっ…///」

「ぁ♡…やっ…めろぉ……///」


彼女の反応が君の嗜虐心を煽る。

君は彼女の耳を甘噛みし、軽いボディータッチを繰り返す。


「っ……くぅ♡」


ラディーから甲高い声が上がった。

どうやら彼女はとても敏感になっているようで、乳頭がピンと膨れあがっている。

それを指で弾くと、面白いように彼女の身体が跳ねる。



手を下へどんどんずらしていくと、彼女は身を捩って逃げようとする。

だが腹部へと手を回し、それを許さない。


「やっ……///」

「だめだ……ゆるして…///」


下腹部に手が当たった所でその理由が解った。

触れた所がとても熱く、潤んでいる……。

シャドはそこを指で擦った。


「んはっ♡……」


水気と粘りが君の指に絡みつき、糸を引いているのが良く解る。

顔の前で指を離して見せると、彼女は恥ずかしそうに顔を背けた。


「……////」


彼女は無言だ。その顔は羞恥で真っ赤に染まり、肌が熱を帯びている。

シャドは彼女の身体をまさぐり、指が沈み込む感触を楽しんだ……。



「あ♡…は♡…入っ…た♡」


彼女は腰を深く落として、シャドを根元まで咥えた。

その動きはぎこちなく、結合している股からは血がうっすらと見える。

彼女が処女であったという事実に、君は一種の征服感を覚えた。


「んっ……♡ふっ……♡」


彼女は恍惚とした表情を浮かべて腰を夢中で振っていた。

君も彼女の動きに合わせて腰を振る。


パンッ……パンッ……パンッ……。


「あっ♡……やぁ♡……ぃい♡」


肉が爆ぜる音に合わせて彼女が喘ぐ。

その声をしばらく聞き続けると、君の下腹部に射精欲が込み上げて来た。



「んっ♡……出そうなのか?……いいぞ♡……膣内にだせ♡♡」

「ほら…♡…ほら……♡」


彼女は射精に導く様に、いやらしく腰を振った。

前後、上下と動き続ける彼女の膣内へ君は勢いよく精を放つ。


ビュルッ……ピュッ。


「あ♡……出たぁ♡……あつぅい…♡」

「ッ……♡…ハァ……♡」


この性行為を皮切りに、朝まで彼女は彼の上で腰を振るのだった……。



「ラディーが自慰に耽っていた話」


スルスル……シュル……パサッ……。

私は身に纏う衣服を脱ぎ捨てて寝台へと転がった。

そして股へと手を伸ばし、か細い声を上げながら自慰に耽る。


「あ♡……んくっ♡……っふ♡」

「……ぃい♡……はっ♡♡」

「ハァ……ハァ……///」


訓練を終えた後は何時も身体が昂る。

私はそれを鎮める為にこうやって一人で処理していた。


「あぁ♡………だれでもいい♡」

「おとこと…えっちしたい……♡♡」


誰の目から見ても、今の私は下品で浅ましい女だった。

雌の身体から滲む快楽に支配されている。


気持ちよくなりたかった私は――

その日、何時もならかける部屋の鍵をそっと外した。



部屋の前を人が通り過ぎる度に、私は興奮を覚えた。


……私に用件のある者が、痴態を見てくれるかもしれない。

立ち入った者が男で、衝動のまま私を犯してくれるかもしれないと……。


私は日が高い内から、そんな不純でいやらしい事ばかりを考えていた。


「……ぁん♡…いつも……より♡…きもちぃい♡」

「んっ♡……んっ♡……もう…だめ♡」

「ぁああーー♡♡」


その日の自慰は人生で一番気持ちが良かった。

部屋の鍵を外しているスリルが原因なのか、気持ちを昂らせきる事が出来たからだ。



「……ハッ♡……ハァ……♡……ハァ……///」

「ん♡…からだ……あっつぃ♡」


昂った気持ちと身体が急速に冷めていく。

私は快楽を得る為に、また自分の身体を弄りだす。


「あっ♡……ああ♡♡」

「…ん♡」


私が自慰に夢中になっていたその時だ。



「ラディーさん。いますか?」


ノックと共に私を呼ぶ、男の声が聞こえて来た。

私は気が動転して裸のまま扉へと近づいてしまった。


「だ、誰だ!」

「シャドです」

「貴様か……ちょ、ちょっと待て!」


そんなやり取りをした後、私は目を部屋へと向ける。

荒れた部屋を見て我に返った私は、急いで服を着直して出来るだけ元通りの状態にした。

本当に男が訪ねて来て焦ったが、自慰をしていた事だけは隠し通せたはずだ。



「あ♡……らんぼぉ…しないでぇ♡♡」

「だめだめ♡……膣内は…いやぁー♡♡」


訪ねて来た男が帰ったその日の夜、私は激しく乱れた。

……男が押し入って来た時を想像しながら…。


「TPが上がった話し」


「……貴様にお願いがあるんだが、聞いてくれるか?」

「目を閉じていてほしいんだ、30分程」

「絶対に目を開けないと約束してくれるなら、ぜひ頼みたいんだ……」


ニア【はい】
【いいえ】

シャドは目を瞑る事にした。


人が近寄ってくる気配、ほのかに甘い匂いが鼻腔を満たす。

――ゴクリ。

君は思わず生唾をごくりと飲んだ。

気配はしばらくくじっとしていたが、君の近くを離れた。


シュル……スルスル……バサッ……。

なにやら衣擦れの音が、近くから聞こえてくる。



クチュクチュ……ニチッ……クチュ……。

ア…ハァ……ハァ……ンッ……イクッ……。


誰かの喘ぎ声と共に、粘り気のある水音が室内に響く。

少し時間が過ぎた後、ラディーが君を呼んだ。


「ふぅ……もういいぞ」


ラディーはスッキリした顔でツヤツヤしている。

彼女の内腿を伝うあの液体は一体何なのだろうか……。


「ラディーさんは料理が得意じゃない」


「私は生まれて自炊というものをした事が無い」

「何? それでどうやって生きてきたか、だと?」

「作ってくれる人間が居た。今は作る必要が無い……それだけだ」

「……わ、私が作った料理を食べたいだと?」

「良いだろう、待っていろ。貴様を驚かせてやる」


――1時間経過。


「出来たぞ! さあ、食べてくれ!」


そう言って彼女が差し出したのは、異様な粘りを持つ焦げたミール。

にこやかな顔をしている彼女に、味見をしたのか聞きたくなった。


(これは絶対人が食べれる物じゃない。……劇物か何かだ)


「下着なんて着けてないです」


訓練も一段落した所で、彼女の方を不意に見てみると……。

股がだらしなく開けられており、大事な所が見えている。

……なんてこった! 彼女は下着を穿いていない! 思った以上に毛が薄い!

鼻から血が流れそうになりながらも、君はその光景を目に焼き付けた。


「匂いがする」


私は医療関係者であるが為に、いつも薬品の臭気に囲まれている。

私だって女だもの、少し気にする事ぐらいあるわ。

気に入った植物の抽出液を希釈して身体に振りかけるの。

男性が鼻を引くつかせるのを見る事が嫌じゃなくなったわ。

……でも別の意味で男が嫌いになってしまった部分でもあるわね。


「飯の質」


俺は恵まれてるとつくづく思う。……なにを言ってるかって?

簡単な事だ、飯の話をしてる。

俺はここの飯が嫌いじゃない。

食いっぱぐれねえ、そんでもって寝床がある。

試合で身体を動かせば、終った後の酒が美味い。

誰に何を言われようが、これはやめられねえな。

だから腹が出てるんだろうって? ……うるせぇ!



「もしあの時止まらなかったら」



倒れた男の頬に星型の痣。

……何という事だろう。彼は君が探していた【兄に酷似している】。


「そんな……嘘…だろ……」


目の障害を患っているのか、彼の瞳は変色していた。

周辺の焼けた様な皮膚が、痛ましさをより協調している。


「……片目どころか、両目が見えて無かったのか……?」


……返事は返ってこない。

兄らしき人物は君の攻撃によって絶命したのだ。

君は係員が引き摺って行くまで、ずっと遺体を眺めていた……。



「初めて出た時に名前をよく間違えられた人」



……どう声をかけようか。

――――――――――――――――――――――――

「ダブリンさん、手合わせありがとうございました」

ニア「タブリンさん、手合わせありがとうございました」

「タフリンさん、手合わせありがとうございました」

――――――――――――――――――――――――


「……俺の名前は、ダ↑ブリンだ! 間違えんじゃねえ!」


君が言った言葉に、凄い剣幕で反応してきた。

……彼の名前を間違えてしまったようだ。(´・ω・`)



「ラディーと引き分けた勝負の話」


「て、てんで大したことなかったな(震え声)」

「なんだと!?貴様!もう一度言ってみろ!」


ラディーは激しい表情でこちらを見ている。


「やめておきなさい。ラディー」

「これ以上やれば、二人とも無事では居られない」

「君もだぞシャド。内容で勝って嬉しいのは解るが、自分の状況を弁えるべきだ」


窘められ、大人しくなる二人。


「君は医者にかかって傷を癒しなさい、今日はここまでだ」

「明日の午前と午後にまた、訓練を行う」

「それまでは自由に過ごし、英気を養うと良い」

「では……行くぞ」


バシクスはラディーの腕を引っ張りその場から離れていった。



「ラディーと引き分けた勝負の話 その2」


「バシクスさん、僕もう体が悲鳴上げてて……きついです……」

「おお、すまない。君はいまからすぐに医者の所へ行くんだ、いいね?」

「訓練はここまで、明日の午前と午後にまた訓練を行う」

「それまでは自由に過ごし、英気を養うと良い」

「ではな……行くぞ」


バシクスはラディーの腕を引っ張りその場から離れていった。

身体が悲鳴をあげている君は、その場に居続けることよりもまず傷を治すことを優先した。



「ズルーと食事を共にした時の話」



君はこの空気を換えるため、目を引いた事柄を質問した。


「食べ方が綺麗ですね?」

「テーブルマナーは幼少期から指摘されました。その名残でしょうか」

「パンをちぎる行為も、中に異物がないかを確認する為でもあります」

「毒が入っていたが故に命を落とす……なんていうのは無様ですから」



「ズルーと食事を共にした時の話 その2」



「変な話ですが、私はよく女と間違えられるんです」

「……髪が長いのと細身である事が原因なのか」

「背後から男性が声をかけてきては、困った顔で立ち去ってゆくのを何度も経験しました」

「稀に私が男であろうと構わないと仰る方も居ましたが」

「…少なくともあまりいい記憶では無いですね」


「ズルーと食事を共にした時の話 その3」


「バシクス師は私の恩人です」

「闘士として有名な彼に、指導を受けられる」

「その事実は私の心を支えてくれるものでした」

「え? 私の過去…ですか?」

「まあそんな話でよければ構いませんが……」



彼は目線をすこし下げて話し始める。


「……私は前の主人と問題を起こして、業者に売られたんです」

「数日経った頃ですか……私と同じ様な境遇の奴隷が、町の一カ所に集められました」

「奴隷としてまた売り出された訳ですね」


「私達は町の通りに、手足に枷を嵌めたまま横並びに立たされました」

「商品として陳列された私達を、町の人が奇異の眼差しで見ていたのを覚えています」

「…そんな往来の中で、数人の男を引き連れた女性が足を止めました」


「女性は業者と話している最中、私の経歴に強い興味を示したそうで……」

「業者に値下げ交渉を持ち掛けてから、私を購入しました」


「そうして私は新しい主人の元で働くことになったのですが……」

「その主人は私の言動に不満があったのか、普通の仕事を宛がってくれず」

「なくなく今に至る……と言う訳です」



「ニイさん元気ですかぃ?」

「あっしはホラ、この通り!」

「……元気が有り余って仕方がねぇ!」

「え? 目の焦点があってねぇって?」

「そりゃあ気分がハイになってるからっすよ!」

「いやあ……サビ姉の薬はキくっすねー!」


彼は普通では無かった。

空に向かってゲラゲラと喋っている為だ。


……通り行く人は皆、その人物を見て見ぬ振りをする。


彼は今日もまた夢の世界へと旅立つ……。


「蒸し風呂で限界を超えた時の話」



「ラディーさ……」


急に立ち上がった為か、立ち眩みを覚える。

君はそのまま床へと倒れ込んだ。


「………」

「……」

「…」


一つの遺体が公衆浴場で見つかった。

それから蒸し風呂の利用は、マメな水分補給が励行されるようになる。

歴史的な事例を残した事で、彼の名は民衆に長く覚えられた。


男の名はシャド。連勝していたオレン闘技場の剣闘士。

……不名誉にも蒸し風呂で死んだ男。


「ラディーが作ったミール とろみの正体」



「ハァ……ハァ……シャド……んっ」

「あぁっ……駄目っ! もう無理!」

「……ふぅ」

「出来た。持って行こう」


彼女が手に持っているのは大麦のミール。

これを食べさせる為に喘いでいた。

何を言ってるか全く意味が解らないだろうが、彼女はとにかく喘いでいた。



「んー味は普通ですけど、とろみがある……何か入れました?」

「入れたな。私の愛を沢山」

「…愛?」


彼がミールを口に運ぶのを見る度、私は身体の奥底が熱くなる。

それは何故か?

……彼が口にしている物は【私の体液だから】だ。



「一点集中の男」


私は剣闘士のワン。

ここオレン闘技場で生活をしている。

剣闘士には序列が存在し、それぞれ第1~第8剣闘士までがある。

その中で私は「第7剣闘士」の序列に位置するのだが……。

試合で新人に降参をしてしまった。


新人は二刀使いの若い男だった。

別にそこは至って普通。なんの変哲もないスタイルでもある。

……が、その男にはこちらの攻撃が全く当たらない。全く普通では無かった。

首を狙った一閃を何度も弾かれ、逆に命を狙われる始末。


……こんな屈辱な事は今まで無かった。

もちろん、周囲からの評価もボロボロ。

『新人相手に降参とは、大したもんだ』とも言われた。


 
……私は今、奴との再戦を強く望んでいる。

それが周囲の人間を黙らせる一番早い方法だから。



「水質」


よう。初めて見る顔だな。

俺はこの都市に繋がってる水道管の補修をやってるモンだ。

お前らが何気なく使ってる水だが、あまり飲用にゃあ適しちゃいない。


それはなぜか……いや簡単な事だ。

水道管に含まれる「鉛」ってヤツが身体を蝕む要因になってる。

……長い事水を飲んでた奴らを見てみろ。

男女問わず奇行が目立ち、病気で倒れる奴が多いだろ?


あの「暴君」だって鉛が原因で人格が変わったとも言われる程だ。

まぁ、それについてはお偉いさん方でも賛否両論はあるが。


お前は出来るだけ、水が使われてない液体を飲め。

俺が言えるのはそれだけだ。

……じゃあな。


男は言うだけ言って去っていった。

彼の話しは面白かったが、何故唐突に話してくれたのか……。



「剣闘士との別れ その後」


奴がここを離れてもう数週間。退屈で仕方がない。

初めて会った時、奴も他の有象無象と同じかと思っていたがそうでは無かった。

我の行動に理解を示してくれる、数少ない人間であったからだ。

奴が望むのならば、我が従者として迎え入れる事も考えてはいた。


……だが、それが叶う事はもう無い。

野蛮な闘技で必要な分だけ金を稼ぎ、故郷へ帰って行ったのだ。

我の見込んだ男は他者への許容量が十分にあり、そして強かった。


我は奴を評価している。

あの世界を長く続ければ、心が徐々に闇へと染まっていく。

それを奴が知っていたかは知らぬが、適切な引き際だと我は褒めてやりたい。

……出来る事ならば、奴と再び相まみえる事を我は望む。



「帰郷 その後」


「ふふっ。今お腹を蹴ったぞ」

「本当ですか?」

「ああ。元気いっぱいだ」

「早く生まれないかなぁ」

「頼りにしてるぞ。”お父さん”」

「任せて下さい」

「幸せそうで何よりだ」


「兄君! 帰ってらしたんですか」

「もう、それなら言ってくれよ。兄さん」

「悪い。2人の間に割って入るのはどうかと思ってな」

「気にしなくていいよ。家族なんだから」

「……そうか。そうだよな」


村へ帰ってきてから彼女のお腹も大分大きくなった。

ラディーさんの胸も毎晩揉んでいるから大きくなっている気がする。


……それはそれとして、お腹の子供はどちらに似るだろう?

ラディーさんの目元や僕の黒い髪。

もしかしたら、僕達の親が持つ特徴が現れるかもしれない。

生まれる日が待ち遠しいなぁ……。



「体液採取」


私は剣闘士の専属医として雇われた女。

今日も暇ねーと思ってたら、朝早くの医務室に若い男が来たから驚いたの。

試合があるから念入りに治療して下さい! ……念入りにですって?

普段なら治療を終えて直ぐに帰すけど、その日の私は魔が差してたみたい。

背中に抱き着いて私の手を腰布へ滑り込ませたの。

前後に動かすと、中々可愛い反応を見せてくれるから思わず夢中になったわ。

彼には恋人が居るようだけど、そんなの関係ないわよね?

だって、治療を口実に私が誘ったら躊躇い無く挿入れて来たんだから。

ベッドに押し倒されてみっともない声を上げる私。

獣の様に腰を振って私の身体を貪る若い男。

彼が出そうと言ったから、腰を引いて外に出して貰おうとしたのだけれど……。

尻肉を掴まれて膣内にいっぱい出されちゃった……♡

…………。



熱い子種が一滴残らず私の子宮に注ぎ込まれる感覚に、暫く放心してたみたい。

私は無心で乱れた服を整える。


「……私が出した条件はこれでいいわ」

「ハァ……ハァ……治療の方は…」

「そっちは大丈夫よ」

「ただ……栄養が足りてないようだから、食事を欠かさない事ね」

「ありがと……ございます」


彼は息を荒く吐きながら、医務室を後にした。



……あれから月の日が来ない。

もしかして私、彼の子を孕ん……



「邪な思い」


彼が胸を揉んでいる最中、何時も考えている事があった。

家の外でやって他人に見つかったりとか、兄君が混ざったりしないかとか。

好きな人が目の前に居るのに私はこんな想像ばかり。まるで痴女だ。

彼はこんな事を私が思っているとは夢にも思わないだろう。

イヤらしい想像をする変態女とはまだ知られていない。

……でも実の所は知って欲しい。むしろ知られたい。いや罵られたい。

人の往来で薄布一枚で放置されてみたり、急に衣服を破かれて情事に耽ったり。

有体に言えば男に乱暴がされたい。

極端に言えば誰が親かも解らない子を孕まされるぐらい輪姦されたい。

朝まで犯してくれる精力はあるけれど、私にとって彼は優し過ぎて物足りなくも感じるのだ。

いっそ、今度兄君のベッドにでも潜り込んで……



「もしも女医の深くまで立ち入ろうとしていたら……」



「尿を採取していた理由?」

「それは勿論、金持ちに売るための道具よ」

「どんなに身分の高い権力者でも病は怖いのね」

「治らない病気に効くっていうのなら、人から作った物でもお構いなしよ?」

「巷では、闘いで命を落とした闘士を体内に取り入れると、治るって噂の病気があるの」

「医術の心得が無い者が伝播させた迷信ね……でも、そのお陰で私も一儲けが出来る」

「そ、そんな……」

「……話が逸れたわね。用途についてだけど」

「尿は洗浄効果があるの。それを抜いた歯に使って汚れを落とす……」

「汚れが落ちたら乾燥させて粉状になるまで磨り潰して、水と小麦を混ぜて小さく丸めて」

「その後は水気が粗方飛ぶまで焼き固めるの。これで妙薬の完成よ」

「ここなら材料も沢山あるし、在庫が切れることも無い」

「一部のお客には飛ぶように売れるわ」

「全く……医者の肩書は便利ね」

「嘘…ですよね……」


常軌を逸した内容を口にしながらも、彼女は悦に入っている。

君の背中を冷や汗が伝った。

……彼女は狂っている。



「違法薬物製造者 サビニア」



「この場所に遺体が無かった?」

「……ああ。それは簡単な事よ、幻覚をあなたに見せたの」

「物質から抽出した成分を、揮発性の高い溶剤と混ぜ合わせる」

「これを部屋の中に充満させて、あなたが吸入すると……ふふっ」

「即効性はお察しだけど、キメればまるで別世界。本当に世界が変わるの!」

「でも、あなたはあまりにもかかるのが早いから、逆に怖くなったわ」

「私はあなたを手に入れる為に、ここまでしたの」

「長かったわ……でも今日でそれは終りね」

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