小林オペラ「この裁判…絶対に逆転して見せる!」 (263)

恰好良い小林オペラ先生をもう一度書きたかった。

下記シリーズの外伝的なものです。

最終話↓
小林オペラ「これが最後の逆転だ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1473004622/)

第4話↓
小林オペラ「この裁判の逆転の逆転の逆転」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1464693588/)

第3話↓
小林オペラ「この裁判…逆転できるのか?」 - SSまとめ速報
(ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1462460504/)

第2話 ↓
小林オペラ「この裁判…逆転して救ってみせる!」 - SSまとめ速報
(ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1460818882/)


第1話↓
小林オペラ「この裁判…逆転してみせる!」 - SSまとめ速報
(ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1460390223/l50)


前作です↓ニャル夫「真尋少年を誘拐したったwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
ニャル夫「真尋少年を誘拐したったwwwww」 - SSまとめ速報
(ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454167931/)

紅白テントの下で、大勢の観客が一糸に一輪車でまたがる少女に熱狂し、光り輝く幻の人影に幻惑されながら全員が一点を見つめる。

虎を従わせる少女、関節がどんな方向にも自由自在に曲がる少女。針の先の上でも平らな地面に立つが如く豪人な平衡感覚を持つ少女。

そして、その中心には球体に入った全身が漆黒を纏う団長と思わしき少女が居た。

彼女達はサーカス団。トイズを用いて人々を幻惑し、熱狂させるエンターテナーと呼ばれる者達である。

球体の少女は、球体からすり抜けるように現れると、身にまといし黒きオーラのように迫力のある声で彼女らを囲む観客に宣言した。

「今、再び我らの庭の光が闇に囲われ、光が打ち勝つ時、諸君らは奇跡の少女を見るであろう!」

漆黒の少女の言葉は、誰ひとりとして意味を理解しようとはしていない。だが、誰もが少女の言葉に熱狂し歓声をあげた。

少女が微笑むと、テントの中の証明が消え、闇が広がる。

大きな音と、機械が軋む音。そして、二人の少女の悲鳴。

何事かと騒ぐ者が現れる度、騒ぎが大きくなる。

そして、光が闇に打ち勝ち、テントの中を照らした後の光景は――

機械に魅惑な光を発す大きな”矢”が突き刺さり、中に居た奇跡の少女は

機械の歯車と起動部の歯車に巻き込まれ、破裂した水風船のように皮が伸び中身が流れ出て臓物が歯車を巻きつける。

少女達は叫ぶ。漆黒の少女はその光景を目を見開かせ硬直する。

その歯車の前には、二人の少女が立っていた。

一人は”弓”を持ち、一人は”盾”を持っていた。

二人の全身は血と肉片にまみれていて、まるで歯車の臓物の中から現れたようであった……。



外伝【悲劇と意志から生まれし戦士達】


小林(…ホームズ探偵学院に戻ってから、慌ただしい毎日が続く)

小林(アンリエット会長の指示による教師としての活動。それが僕があの事務所で寝泊まりをする条件の一つとなっていた)

小林(とりあえず、ここ当分ホテルで過ごしても問題ないくらいには金があったので拒否をしようとすれば、ミルキィホームズの皆には全力で反対され)

小林(アンリエット会長までもが、涙ぐみながら今の学院の現状の惨状をわざとらしく語り、僕の逃げ道を必死に塞いだ)

小林(…という事が起こったので、僕は今、多くの生徒を連れて課外授業をする為にある施設に居る)

小林(まぁ、何て事のないレジャー施設のようなもので、ホームズ探偵学院が購入した古い屋敷の中…)

なぜこっち?グロやエロあるのか?



【ホームズ探偵学院 課外館 12月01日 午前10時30分】


小林「はい。と言う訳で皆さんには、この屋敷の出口を見つけてもらいます」

小林(そこで、協力して脱出するというある種、ゲームみたいなものをする為の施設だ)

シャロ「はい!!やりましょう先生!」

ネロ「へへーん!僕達には小林がいるから、脱出なんてすぐだよね!」

コ―デリア「教官!もしもの時は…お力を貸して下さい!」

エリー「え…ええと……」

小林「…君達、やる前から僕に頼ろうとする魂胆がまる見えだけど、僕は関われないよ」

小林「だって僕は、この講義の当事者だからね」

シャロ「そ…そうだったですー…」ガク

ネロ「まぁ、そんなに落ち込む事も無いんじゃない?脱出するだけなら、エリー一人に任せればいいしさ」

コ―デリア「そうね…。エリーのトイズさえあれば、二秒で脱出できるわ!」

エリー「え……えええええ!!?」

小林「…トイズの使用も禁止されてるよ」

ネロ「え!?何だって小林!それじゃぁ僕達は…」

ネロ「どうやってこの屋敷から脱出しろっていうのさ!」ダンッ

小林「だから、それを考える授業なんだよ!?これは!」ガーン

生徒A「…ミルキィホームズが、どれだけ小林オペラに依存していたか分かるわねぇ」

根津「……俺、あいつらと同じチームじゃなくて良かった…」

小林(ううぅ…彼女達の評判がどんどん悪くなっていく…)


コ―デリア「…確かに、私達は教官に頼りっきりな気がするわね」

エリー「…………・」シュン

シャロ「ううぅ…だって」

シャロ「…先生がいれば、私達は何だってできるんだもん…」シュン

ネロ「美味しいご飯だって食べられるし、事件だってアッサリ解決できるんだもんね」

ネロ「あーんな事件や、こーんな事件だって、怪盗やサイコパスまでみーんな」

小林「…君達。僕に頼りっぱなしでは立派な探偵になんてなれやしないよ?」

小林「ちゃんと自分達だけの力で、この試練を乗り越えてくれたら…僕も嬉しいな」ニコッ

ネロ「!」

エリー「!///」

シャロ「…先生」

コ―デリア「…分かりました教官」

ダンッ!

コーデリア「皆!今こそミルキィホームズの真の力を見せる時よ!」

コーデリア「教官に良い所を見せて、私達も立派に成長している事を思い知らせてやりましょう!」

「「「おー!!」」おっ…おー…」

小林(ううん…何だか、出会った時より頭が軽くなっているような気が…)

小林(そんで僕は…出会った時より頭が痛くなっているような気が…)

シャロ「それじゃぁ始めましょう!」

ネロ「うんうん、僕達の着眼点と推理を披露した」

エリー「み…みんなで力を合わせて」

コーデリア「ミルキィホームズの論理と推理の実験劇場!」ドーン

小林(…何だろう。何故だか凄く嫌な予感がする…)



【推理開始】 The game is afoot!

Topic1
→ここはどこか

シャロ「…場所は古びた洋館。しかし掃除が行き届いています!」

エリー「ここで…まるで誰かがまだ住んでいるかのようです…」

小林「!」

ネロ「おおっと!その様子だと図星みたいだね小林!」

コーデリア「そう…ここはかつで誰かが住んでいた洋館…」

カシャッ

シャロ「この洋館のご主人は誰か…それを見極めるポイントは”机の上の写真立て”です!」

小林「?」

シャロ「その写真の中の人物こそ…この洋館の持ち主に関係する証拠です!」ピーン

コーデリア「写真の中に写っているのは身体だけ…頭から上は破り捨てられている…。つまり被害者なのよ」

ネロ「この館の中では殺人事件があったって事さぁ!!」ババーン

小林「…え」

小林「ぇぇぇええええええええ!!!!?」ガガーン

カシャッ

シャロ「それを物語っている証拠は…壁にかかった”しゃれこうべの飾り”です!」

小林「?」

エリー「は…話しの…流れだと、この骸骨は…殺された主人のもの…」

コーデリア「つまり、ここは殺人事件が起こった呪われた洋館なのよ!!」ビシィー!!

Topic1
→ここはどこか

Conclusion
→殺人事件のあった洋館



Topic2
→出口はどこか


ネロ「しかしあくまで目的は脱出…つまり、ここからどう出るか…」

シャロ「文字通り鍵となるのは、”しゃれこうべの周りにある動物の首”です!」

小林「!」

ネロ「酷い、動物虐待だ!…って、思ったけど、どうやら本物の動物を使っているわけじゃ無くて彫刻だからまぁ良いかな」

カシャ

ネロ「でもこの動物達の首の用途は分かったよ。これは…主人への”伴い”なんだ」

小林「?」

コーデリア「殺された主人の無念を晴らす為に…せめて寂しくないように動物の彫刻を並べたのよ」

カシャッ

シャロ「つまり!この動物に囲まれた主人の骨を成仏させれば」

シャロ「私達は!この洋館の呪いから解放されて脱出できるのですー!!」ババーン

小林「………」

コーデリア「それじゃぁ皆!早速お経を唱えるわよ!!」

「「「おー!!」」お…おー…/////」


Topic2
→出口はどこか

Conclusion
→呪いを解けば現れる

シャロ「以上!」

ネロ「ミルキィホームズの」

コーデリア「名推理でした!」

エリー「………でした」



小林「………」

根津「………」

「………」

シャロ「なーむあーみだー」チーン

コーデリアー「なーむあーみだー」チーン

ネロ「なんーみょーほーれん」チーン

エリー「観自在菩薩・行深般若波羅蜜多時、照見五蘊皆空、度一切苦厄…」ブツブツ…

根津「…なぁ、こいつら何してんの?」

小林「…どうやら」

小林「自分達の推理に凄く…自信を持っているみたいだね…」スタスタ

小林「あの…ちょっと良いかな?君達」

シャロ「なーむあーみ…あっ、はい先生!どうしたんですか!?」

ネロ「もー小林!折角良い所までいったのに邪魔しないでよ!」

小林「うん…あのね?とりあえず、いくつか言わせてもらいたいんだけど…」

小林「この屋敷では、過去にも殺人事件が起こったっていう事実はない」

シャロ「え」

小林「…そもそも、そんな所を講義に使ったりはしない」

コーデリア「えっ」

小林「一応、学院が購入したわけだからね?」

ネロ「……そ、それじゃぁ…」

シャロ「私達は!どうやってここから脱出すれば良いんですか!?」ガーン

小林「だからそれを考え……」

エリー「う…ううぅ…」シューン

コーデリア「また…私達はやってしまったのね…」ショボーン

ネロ「うぅ…折角、答えにたどり着いたと思ったのになぁ…」シュ~ン…

シャロ「う…ううぅ……」

シャロ「…やっぱり私達は、ダメダメホームズ…なんですかぁ…」ショボボーン…

小林「うっ…」

小林(しまった!落ち込ませちゃったか?)


小林「い、いやでも、決して着眼点は悪くなかったよ」

コーデリア「!」

小林「寧ろ、あとおしい所まで来ていた」

ネロ「!」

小林「もう一度推理すれば、きっと正解にたどり着けると思う」

エリー「!」

小林「だから、諦めずにもう一度推理するんだ」

小林「すれば、絶対に正解にたどり着ける筈だから」

シャロ「………」

シャロ「はい!!分かりました先生!!」

ネロ「よーし!後もう少しだ!もう一度推理するぞー!」

「「「おー!!」」」

小林(…ふふ。元気があるのは良い事だ)

小林(さて…。彼女達がズレている着眼点と推理を、そぉっと入れ替えないと)

小林(今度こそ、大泣きしてしまうかもしれないな…彼女達が)


【検討開始】 Hold it Ther Milky Holms.

Topic1
→ここはどこか

Conclusion
→殺人事件のあった洋館

シャロ「…場所は古びた洋館。しかし掃除が行き届いています!」

エリー「ここで…まるで誰かがまだ住んでいるかのようです…」

小林「!」

ネロ「おおっと!その様子だと図星みたいだね小林!」

コーデリア「そう…ここはかつで誰かが住んでいた洋館…」

カシャッ

シャロ「この洋館のご主人は誰か…それを見極めるポイントは”机の上の写真立て”です!」

小林「?」



バァーンッ!



小林(…少なくとも、この洋館の住民は写真立ての人物とは関係無い)

小林(彼女達はおそらく、僕の目線の先を見て判断したのだろう)

小林(そのあたりは評価するべき所かもしれないな。でも、着眼点がズレているようだ)


小林オペラの本当の目線の先は?

→【写真立て】

→【経費書】

→【シャーロックホームズの冒険】



→【経費書】


小林「ここだっ!」ビシッ

小林「この主人が誰か…その確実たる証拠はこの”経費書”だね」

シャロ「えっ?」

コーデリア「そう!この経費書に書かれた人物の名前さえ調べれば…この館の主人が分かるはず!」

コーデリア「経費書の中の人物の名前は…アンリエット・ミステール!!」

シャロ「ぇぇぇええええええ!!!?」ガガガーン

ネロ「じゃ…じゃぁ!この館はアンリエット会長が住んでるって事!?小林!」

小林「う、うん…。一応、アンリエット会長が持ち主だね」

カッ

コーデリア「しかし、そうなれば写真の中の人物は何ものなのか」

シャロ「その写真の中の人物こそ…過去にこの洋館で怒った事件による証拠です!」ピーン

コーデリア「写真の中に写っているのは身体だけ…頭から上は破り捨てられている…。つまり被害者なのよ」

ネロ「この館の中では殺人事件があったって事さぁ!!」ババーン

小林「…え」

小林「ぇぇぇええええええええ!!!!?」ガガーン

カシャッ

シャロ「それを物語っている証拠は…壁にかかった”しゃれこうべの飾り”です!」

小林「?」



バァーンッ!!



小林(…驚いたな)

小林(まさか、館の主人が生きている人間と分かっても、また殺人事件を押してくるとは…)

小林(てかそもそも、君達推理を曲げる気なんて一切無いじゃないか…!)

小林(…記録に無いと言ってるのに、どうにも殺人事件が起こっていると思いたいみたいだけど…ハッキリ言った方が良いな…)


殺人事件を全面否定するものは?

→【しゃれこうべの飾り】

→【しゃれこうべの値札】

→【二十里先生の自画像】

しばらくお待ちください…



→【しゃれこうべの値札】


小林「ここだっ!」ビシッ

小林「――それを物語っている証拠は、壁にかかった”しゃれこうべの値札”だ!」

シャロ「ええっ!?」ガーン

ネロ「そう!このホームセンターと丁寧に書かれた値札は剥がし忘れを示すものはただ一つ!」

コーデリア「このしゃれこうべはただの飾りであり、事件とは関係がない…」

エリー「つまりっ!」

カッ

エリー「この館では…殺人事件なんて起きていなかったのです!」

小林(良かった…!ようやくスタート地点に戻ってこれた…!)

コーデリア「つまり!」

ネロ「ここはアンリエット会長が所有する、講義の為だけの館という訳だったのさ!」ダァーン

シャロ「…ううぅ、何だか私…ボロボロにされた気がします…」


Topic1
→ここはどこか

Conclusion
→殺人事件のあった洋館×
  →アンリエット会長所有の洋館○


Topic2
→出口はどこか

Conclusion
→呪いを解けば現れる



ネロ「しかしあくまで目的は脱出…つまり、ここからどう出るか…」

シャロ「文字通り鍵となるのは、”しゃれこうべの周りにある動物の首”です!」

小林「!」

ネロ「酷い、動物虐待だ!…って、思ったけど、どうやら本物の動物を使っているわけじゃ無くて彫刻だからまぁ良いかな」

カシャ

ネロ「でもこの動物達の首の用途は分かったよ。これは…主人への”伴い”なんだ」

小林「?」



バァーンッ!



小林(皆…まだ写真立ての男が死んでいると思っているのか…?)

小林(その写真の人物は…僕なんだけど……)

小林(…しかし、この動物達の首が脱出の鍵となっているのは間違っていない)

小林(後は、それに気がつけるよう手助けしないと)


動物達の首と関係する部屋に在るものは?

→【机の上の写真立て】

→【しゃれこうべの値札】

→【二十里先生の自画像】

→【経費書】

まるで大逆転裁判の「論理と推理の実験劇場」だな



→【机の上の写真立て】

小林「はいっ!」ビシッ

小林「その通り、この動物達の首の用途は…”脱出の鍵”だ」

小林「君達が先ほど指摘した、”机の上の写真立て”と大いに関係するね」

ネロ「!つまり……」

シャロ「やっぱり、殺人事件は起こってたんですね!」ダンッ

小林「えっ」

カシャッ

シャロ「つまり!この動物に囲まれた主人の骨を成仏させれば」

シャロ「私達は!この洋館の呪いから解放されて脱出できるのですー!!」ババーン

小林「………」



バァーンッ



小林(しまった…!また、元の位置に戻ってしまった!)

小林(…しかし、これが過ぎれば後少しだ)

小林(頑張れ僕…頑張れ、僕!!)ダンッ!


写真立ての写真と関係するものは?

→【しゃれこうべの飾り】

→【二十里先生の自画像】

→【経費書】


→【しゃれこうべの飾り】

小林「ここだ!!」

小林「最初に話した通り、この授業は着眼点と推理を養うためのものだ」

小林「ここは初心者用。つまり、そこまで難しくないどころか子供だましの正解が隠されている」

小林「しかし、それは謎を見極める為の試験と言ってもいい」

ネロ「…つまり?」

エリー「あっ…!」ピコーン

小林「…どうやら、エルキュールは分かったみたいだね」

エリー「…はい。まず、写真が示しているのは文字通りの”脱出の鍵”で…」スタスタ

エリー「まず…偽物のしゃれこうべを…外して……」カポッ

シャロ「きゃぁ!?エリーさん!?」ガーン

エリー「…さすがに、写真立てにはしゃれこうべを頭部に…はめこめないから…」

エリー「二十里先生の自画像の頭に…はめこめば…」カポッ

コーデリア「…えっ?」

シャロ「ぴっ…ピッタリはまって…」

ゴゴゴゴゴゴゴ…

ネロ「額が…開いた!」ガガーン

生徒A「…!」

根津「うっ…嘘だろ?」

小林「そう、これこそが……」

小林「この部屋の、謎の答えだ!」ダァーンッ!

Topic2
→出口はどこか

Conclusion
→呪いを解けば現れる×
  →謎を解けば現れる○


【推理完了】 Elementary!



生徒A「………」

生徒B「………」

根津「………」

シャロ「…… やっ」

シャロ「やりましたエリーさん!私達、一番乗りです!」

ネロ「そうだよ!よくやったよエリー!」

コーデリア「ミルキィホームズ復活!です!」

エリー「え?えっ!?え、ええと…あの」

小林「…うん。君達も、良い推理だったよ」

エリー「!」カァァ////

小林(そして僕も、結構頑張ったよ…)

根津「…う、嘘だろ?」

生徒B「ミルキィホームズが、一番乗り…?」

生徒A「……」ムゥ

シャロ「よぉーし!それじゃぁこのまま外に出て、いっぱいご馳走食べましょう!」

ネロ「うん!勿論、小林の金で!!」

ダダダダダダダダ

シャロ「……えっ!?」


コーデリア「こっ…ここは」

エリー「と…扉と廊下が…いっぱい…」

小林「…そう、今回の授業はあの”部屋”からの脱出ではなくて、この”洋館”からの脱出」

小林「さっきのは、そのスタート地点って所かな」

ネロ「そ…それじゃぁ…」

シャロ「まだ…謎はいっぱいあるんですか」

小林「うん。何せ、一つの講義につき50分だからね」

小林「さっきので15分経ったから、後35分って所かな」

コーデリア「ええええ!?」ガガーン

ネロ「そんなっ!?短すぎるよ!」

小林(予定では、もっと早くに解ける予定だったからなぁ…)

シャロ「大丈夫です!だって私達には、先生が居るんですから!」

生徒A「!」

コーデリア「そうね!教官が居れば洋館の脱出なんて――」

ガシッ

生徒A「小林先生!私達の推理も聞いてください!」

生徒B「いえ!私の方から!」

小林「うっうわっ!」グラッ

ネロ「! ちょっと!何僕の小林に抱きついてるのさ!」

生徒A「うるさい!アンタ達ばっかり小林先生に構ってズルイわよ!」

生徒B「小林先生独占禁止法です!」

シャロ「そんなっ!?私達の先生なのに!」


コーデリア「きょっ…教官から離れなさい!!」

エリー「離れ…て…!!」

生徒A「今はアンタ達の先生じゃないでしょ!?私達の先生よ!」

生徒B「独り占めは禁止です!!」

ネロ「このー!離れろー!!」

根津「…………」スタスタスタ

小林(ね…根津くんが心底冷めた目で一人で捜査に向かった!)

ネロ「離れろー!」

シャロ「離れてー!」

コーデリア「離れなさい!」

エリー「離…れて…!」

生徒A「独占ー!!」

生徒B「禁止ー!!」

小林「あの!君達!早く捜査しないと時間が―――」

「「「「「「先生(小林、小林さん、教官)は黙っててください!!」」」」」」

小林「えええええええ!?」

ネロ「離れろー!」

シャロ「離れてー!」

コーデリア「離れなさい!」

エリー「離…れて…!」

生徒A「独占ー!!」

生徒B「禁止ー!!」

小林(……これは)

小林(講義が終わる前に…終わるんだろうか?)



【ホームズ探偵学院 12月01日 午後0時20分】

小林「……はぁ」

姫百合「どうしたんですか?ため息なんてついて」

小林「ああ、いや…先ほどの講義がちょっと、大変でね…」

小林「結局、根津くん一人だけしか合格できなかったんだ…」

姫百合「それは…ちょっと、想像できない大変さがあったのでしょうね」

小林「ははは…まぁね」

小林(…僕がホームズ探偵学院の教師に赴任してから数か月)

小林(そこまで高くなかったクラスの平均点が、一昨日の小テストで大躍進にまで至り、優秀な生徒ばかりになった)

小林(根津くんもあまり成績がよろしくなかったみたいだけど、今ではそれがとても信じられない程に成績が伸び今ではクラスのトップになっている)

小林(僕が担当している”彼女達”も、成績は少しずつではあるが上がっている…のだが)

小林(…それでも、ぶっちぎりの”最下位”である事は否めない…)

姫百合「…しかし、小林さんが教師に赴任して学院の講義の質が上がったのは事実です」

姫百合「私達指揮クラスの講義は、ほとんどが小林さんの真似ごとを行うだけの講義ばかりでしたが…」

姫百合「…小林さんが赴任してから、それが全て撤廃され、今では指揮に必要な観察力と指揮力の向上が主の内容になっています」

小林「うん…さすがに、人の真似ごとだけでは指揮なんて絶対できないからね」

小林(そもそも、そんな当然の事すら分からなかったのだろうか…)

小林「…とりあえず次は科学の講義だから、一度事務所に戻って書類を捜すよ」

姫百合「あ、私も一時間程休憩があるので、そこでお昼ご飯を食べようかと」

小林(…手にぶらさげてる紙袋か。…チリドッグかな?)

小林「それじゃぁ、一緒に事務所に入ろうか」ガチャッ

姫百合「はい。……!?………っ!!?」

小林「?………っ!!?」

姫百合「………っ!?」

小林「………!!!?」


小林(事務所の扉を開けて、目の前に広がったのは……)

姫百合「……なっ」

姫百合「何ですか!?これは!!」ガーン

小林(大量の白い羽と……机の上に強く刺さった)

小林(巨大な…光り輝く矢だった…!)

小林「しゅ…襲撃か…!?」

姫百合「…とりあえず、捜査をしましょう」

小林「!」

姫百合「まだ、どこかに居るかもしれません。…犯人が!」ダダダダ

小林「……捜査」

小林(それも…そうだけど、それ以上に…)

小林(僕は…、一体何に巻き込まれてるんだ?)



→【白い羽】


小林(この白い羽…どうやら、鶏や鳩のような鳥類のものではない)

小林(……トイズか?)

小林「姫百合くん。この羽に向かって強制終了のトイズを使ってみてくれないか?」

姫百合「え?…はい。分かりました」

ティロン♪

ジュッ

姫百合「!…消えた…!」

小林「…間違いない。これはトイズで生まれた副産物だ」

小林(…しかし、一体何の目的で?僕の事務所にこんな事を…)


→【矢】

小林(この光る矢…どこかで見たような…)

小林「…あれ?」

小林(これは…トイズじゃないぞ?ただの矢に発光塗料を塗っただけだ)

小林(一体…どういう意味だ?)

小林「…ん?」

小林「この矢…良く見たら手紙が結ばれている」

姫百合「!」

証拠品①【矢文】をファイルに書き込んだ!
<発光塗料を塗られた矢と一緒に結ばれていた手紙。筆跡から強い念を感じる>

小林「どれ、これは…一体」ピラッ

ダァアンッ

シャロ「せっ……先生!先生ぇえ!!先生ぇえええ!!!」バンッ

コーデリア「大変…とても大変なんです!!教官!」バンッ

ネロ「小林!ねぇ助けて!勿論助けてくれるでしょ!?小林!?」バンッ

エリー「小林……さん…!」ウルウル

小林「うっうわ!どうしたんだ君達!?」

シャロ「一大事です!大変なことが起こったんですよ!大変な事が!」

姫百合「大変な事というと…事務所が羽だらけになっている事と何か関係が…」

ネロ「そんなものどうでもいいんだよ!そんな事よりもこっちが大事だよ!」ダンッ

小林(…この異様な光景すら、どうでもいいと切り捨てるとは…)

小林「…一体、何が起こったんだ?」

シャロ「捕まったんです!!」

小林「………誰が?」

シャロ「私達の後輩の…カズミちゃんと!アリスちゃんが!!」

コーデリア「殺人罪の容疑で…捕まってしまったんです!!」ダンッ

小林「…………え」

小林「ぇぇぇぇええええええええ!!!?」ガガーン


→【フェザーズ】


小林「…一体、何が起こったんだ?」

シャロ「あの!サーカスで!テントで!観客席で!ワーって楽しんでて!暗くなって!」

ネロ「明るくなって!血まみれになって!フェザーズの二人がトイズで!歯車で!そして!」

小林「うん。落ちついてから話してみようか。ほら、深呼吸して」

シャロ「…は…はい……。すぅ…はぁ…」

ネロ「…………」

小林「…それで、一体何が起こったのかな?」

コーデリア「……」

コーデリア「…教官は、”漆黒の魔法団”というサーカスがあるのを、知っていますか?」

小林「え?ああ、確か…最近CMでもよくやってるね」

小林「確か、黒い羽が飛び舞うサーカスなんだっけ?見るたび掃除が大変そうだなと思って――」

ネロ「…二人は、そのサーカスのチケットが取れたってはしゃいでいて、今日見に行ってたんだ」

エリー「学院側にも…休むって報告していたから…間違いなく……」

シャロ「…事件は、奇跡の少女の項が始まった時に起こりました…。一瞬、暗闇になったと思ったら…」

コーデリア「…再び明るくなった後、歯車に巻き込まれてぐちゃぐちゃになった被害者の前には……」

コーデリア「…フェザーズの二人が、血まみれの姿でトイズを発動させたまま立っていたのよ…」

小林「………」

姫百合「………!?」

ネロ「…そんで、歯車にはカズミのトイズの象徴である光る矢が突き刺さっていて」

ネロ「それが決定的の証拠となり、今は二人仲良く留置所に居るよ」

姫百合「……いっ…一体」

姫百合「何が起こったっていうんですか!?まるで意味が分かりませんよ!」ダンッ

ネロ「僕だって分からないよ!?」


小林「……どうやら」

小林「まず、被告人である彼女達にも話を聞く必要がありそうだね」

シャロ「!」

小林「ひとまず、彼女達の居る留置所まで向かうとしようか」

コーデリア「教官…!」

小林「よし!それじゃぁ、君達の中でフェザーズの二人が収監されている留置所の場所を知っている人は?」

シャロ「はい!分かりません!」

コーデリア「分かりません!」

ネロ「僕も!話を聞いただけだから!」

エリー「私も……分かりません…!!」

小林「………」

姫百合「…こんな、堂々と連ねて言う団体、初めて見ましたよ…」

小林「……(参ったな)」

小林(何か、この部屋にあったもので手掛かりになりそうなものは無かったかな…?)



→証拠品①【矢文】を突きつける


小林(…そういえば、この手紙をまだまともに読んでなかったな)

小林(どれ、ちょっと読んでみるか…)ペラ


小林オペラ殿

 我、匿名での手紙に大変失礼致す。

 我の目的は、横浜第二留置所で震える明神川 アリスの救出であり
 
 明神川 アリスの弁護をお願いし、ここに記す。

 我が望むのは完膚なきまでの勝利であり、それ以外のものを得れば

 我は貴公を永遠の闇へと招待し、現世の地を二度と踏めない身体となるだろう。



小林「……え?」

シャロ「…あ!これは!」

コーデリア「横浜第二留置所…!そこに二人が居るのね!」

姫百合「……………」

シャロ「それじゃぁ早速横浜第二留置所に向かいましょう!」

姫百合「いっいや!ちょっと待って下さい皆さん!」

ネロ「なんだよヒメ!僕達は今すぐでも二人を助けなきゃいけないんだ!」

姫百合「あの、怪しいと思わないんですか!?この羽まみれの部屋に、謎の光る矢!それに結ばれていたんですよ!?」

シャロ「怪しくありません!」ドンッ

姫百合「そんな訳が無いでしょう!?」

小林「…彼女達にも、何か考えがあるんだと思う」

姫百合「!?」

小林「ひとまず、情報はこれだけしかない。いや、神津に聞けばもうちょっと分かるんだけど…」

姫百合「じゃぁ、それで良いんじゃないですか…?」

コーデリア「良くないわ!今すぐにで行かないと…面会時間が終わってしまうのよ!」

姫百合「それは…そうですが…」

小林「…とりあえず、行ってみましょう。第二留置所」

姫百合「!」

小林「この筆跡から見て、冗談や詐欺の意志は一切感じられない」

小林「ただ…強く委ねる意志だけが感じられる。それは、内容から見ても明らかだ」

小林「…それに、僕は彼女達…いや、少なくとも明神川アリスくんの弁護をしなければ、殺されてしまうだろうしね」

シャロ「はい!殺されない為にも…」

コーデリア「行きましょう!横浜第二留置所へ!」ダッ

小林(…まだ、僕には、事件の概要が見えていない)

小林(一体誰が殺されたのか、何故、サーカスで殺人が起こったのか。そして…)

小林(…何故、彼女達がその場に立っていたのか)

小林(その為にも、まずは情報が必要だ)

小林(謎を解く為の…一つでも多くの情報が!)


【横浜第二留置所 同日 某時刻】


シャロ「ううぅ…こんな暗い所にカズミちゃんとアリスちゃんが…」

ネロ「ここは、何度来ても慣れないよね」

姫百合「…そう、ですね。慣れたくもない…所です」

小林「……(殺人罪を犯した者だけが入る留置所)」

小林(その環境がどれほど劣悪か、あまり想像したくない所だな…)

ガチャッ  ギィィィィ……

シャロ「あっ!カズミちゃんとアリスちゃんが入ってきました!」

ネロ「!」

エリー「!」



カズミ「……」

アリス「………」


小林「……ど、どう…も?」

小林(やっぱり、想像以上に沈んでるな…)

カズミ「……がう…です……」

小林「……え?」

バンッ!!

カズミ「違うんです!私じゃないんです!」

カズミ「私達!殺してない!殺人なんてしてないんです!!」ダンダン

カズミ「本当に!本当…暗闇の後に気付いたらあそこに立っていただけなんです!!」バンバンバン

カズミ「信じてくださいミルキィホームズさん!刑事さん!検事さん!!」

カズミ「うぇえええええええええん!!!」ビィイイイイイイ

小林(いっ…一気に騒がしくなった!)

ダンッ!

シャロ「信じます!信じますよカズミちゃん!アリスちゃん!!」

ネロ「僕達は、その為にここに来たんだからね!」

コーデリア「私達が来たからには、もう安心よ!」

アリス「…………」

カズミ「うっ…うぅ…み…皆……」フルフル

カズミ「うぇぇえええええええええん!!!!!」ビィイイイイイ

小林(再発した…)


→【事件の事】

小林「…その、事件の事を聞いても良いかな?」

カズミ「?ええと…この人誰ですか?シャーロックさん」

シャロ「ふっふっふ…何を隠そう、先生こそ!カズミちゃんやアリスちゃんを弁護してくれる…」

ネロ「僕達の教官であり、過去に小林少年として名を轟かせ――」

エリー「今でも多くの難事件…サイコパス事件も解決に導いて…くれた…!」

コーデリア「名探偵小林オペラ!教官なのよ!」

アリス「!!!」

カズミ「…え」

カズミ「ぇぇぇえええええええ!?」ガガーン

ダンッ

カズミ「小林オペラって…あの、小林オペラ!?」

カズミ「14歳で多くの難事件を解決し!ミルキィホームズの教官として現れ、育て上げた…あの!?」

小林「う、うん…。それで、間違いない…かな?」

シャロ「その先生が!カズミちゃんとアリスちゃんの弁護になってくれるんです!良かったね!カズミちゃん!」

カズミ「うん!!もう、こうなったら無敵じゃん!私達、完璧に無罪じゃん!勝訴じゃん!」

カズミ「そうと考えたら、お祝いはどこで――」

小林「あの、信頼してくれるのは嬉しいけど…まずは、事件の事について、話してもらえるかな?」

カズミ「おっと!そうだった!…でも」

カズミ「…私達、あんまりよく知らないんですよね…」

小林「えっ」

カズミ「抽選でペアチケットが当たって…ウキウキの時にキラキラしたステージ、そこで繰り広げられる奇跡の数々…」

カズミ「そしてメインイベントである”奇跡の少女”が始まった時…突然の暗転」

カズミ「真っ暗で何が起こったのか全く分からず、気づけばトイズ発動してて身体が血まみれ」

カズミ「…そして一分待たないうちに拘束されて、さ、殺人罪の逮捕状が…」

カズミ「う…うぇ…うぇええええええええええん!!!!」ビィイイイイイイイ

小林(ううん…相当恐ろしい目にあったんだろうな…)



→【サーカス漆黒の魔法団】

ネロ「でも、凄い倍率が高いサーカスだって噂だよ?ここ」

コーデリア「大相撲の席を取るより難しいって…よく取れたわね。ここのチケット」

カズミ「うん……私達、もっと倍率が高い”トイズ席”のチケットを狙ったんだけど…」

シャロ「トイズ席?」キョトン

エリー「…トイズを持っている人専用の席…です…」

小林「本来は、トイズ専用のチケットは一般より割高になっている事が多いけど…」

ネロ「ええ!?」ガーン

小林「このサーカスでは、トイズ席と一緒に”トイズ割”っていうのがあるな…」

カズミ「そう!トイズを持っている人だけ安くなるんだよ!」ババーン

アリス「………」

カズミ「そのせいか倍率が20倍くらいにもなってたんだんけど、さすが私の運!抽選で席が当たっちゃってさー!」

姫百合「そのせいで、殺人容疑で捕まってしまったのですね」

カズミ「……う…うぅ……」

カズミ「うぇぇえええん!!うぇええええええええん!!!」ビィィイイイイ!!

姫百合「ああ!ご、ごめんなさい!」アタフタ

小林(…相当ショックだったんだな。感情が極度に不安定だ…)

アリス「………」

小林(しかし…隣の子は何も言わないどころか、僕に目を合わせようともしない…)


→証拠品②【抽選チケット】を証拠ファイルに収めた!
<トイズ割とトイズ席の番号が書かれている。二人のトイズの用途も併記されている。>


→【弁護】

シャロ「それじゃぁカズミちゃん!アリスちゃん!先生に弁護、お願いしちゃいましょう!!」

カズミ「うん!するする!だって、私はやってないんだもん!」

ネロ「こりゃぁ、意外と簡単に勝訴できるかもね。で、依頼費の事なんだけど――」

カズミ「うっ――」

コーデリア「ネロ!…大丈夫よ。教官だって鬼じゃないんだから、私達の後輩にまでお金は取らないわ」

コーデリア「…多少の生活費以上は」

カズミ「ううぅっ!!」ガガーン

小林「それ、君達がお金欲しいだけだよね!?後輩から金を巻き上げようとしてるよね!?」

カズミ「…お土産代がまるまる残っているから…それで何とか…なりますか?」ズーン

小林「…そんな事しなくても、初回は普通にお金取らないから大丈夫だよ」

カズミ「ほっ本当ですか!?」キラキラキラ

シャロ「勿論!可愛い後輩さんからお金なんて取るわけ無いじゃないですか!」

姫百合「少なくとも二人は取ろうとしてたみたいですけどね」

ネロ「………」

コーデリア「………」

カズミ「やったぁ!それじゃぁぜひ!是非今回はお願いします小林オペラさん!!私達の無罪を――」

アリス「あのっ!」

シャロ「!」

エリー「!」

小林(…は、初めて喋った…)


コーデリア「…どうか、したの?」

アリス「……いや…です」

小林「…え?」

アリス「……私……」

アリス「小林オペラに……弁護されたく…ありません」

カズミ「………えっ」

シャロ「えっ」

ネロ「えっ」

コーデリア「えっ」

エリー「えっ」

カズミ「……ぇぇぇええええええええええ!!!?」ガガガーン

ガシッ

カズミ「どっどういう事アリス!?小林オペラさんに頼めば、私達の無罪は保障されるんだよ!?」ブンブンブン

アリス「あうあうあうあうあうあう」グワングワングワン

シャロ「カズミちゃん!アリスちゃんの肩を離して!」

パッ

アリス「………」フラフラ

アリス「……私の事は、弁護しなくても…結構です」

アリス「カズミちゃんの事だけ…弁護…してあげてください…」キッ

小林「!」

小林(何だ…?この、眼差しは…)

小林(彼女の目から…明らかな”敵意”を感じる…)


→【弁護拒否】

カズミ「アリス…どういう事なの?」

アリス「………」

カズミ「どうして、そんなに小林オペラさんの弁護を嫌がるの!?」

アリス「…カズミちゃんには…関係無い事だよ」フルフル

アリス「とにかく私は…小林オペラの弁護は受けたくないよ…」

カズミ「でも!」

シャロ「そうですよ!先生がアリスちゃんを助けなかったら…!」

コーデリア「カズミちゃんは一人ぼっちになってしまうのよ!?」

小林「………」

ネロ「ねぇ、小林も何か言ってやってよ!」

小林「……仮に、君が僕の弁護を受けなかったとしても」

小林「僕が裁判でやる事は、真実を追求する事だ」

アリス「………」

小林「だから、僕は君の弁護を受けようが、受けまいが、君がやっていないのなら、それも証明する」

小林「それでも、僕は君の弁護を受けなくても良い。それでも良いのかい?」

アリス「…なら」

アリス「余計に、私が頼まなくても良いんじゃない…ですか?」

小林「………」

小林「今のは、君がこの事件について隠してる事がないかの確認だ」

カズミ「!」

小林「騙してるようで済まないが、あえてもう一度問わせてもらう」

小林「君は、今回の件で殺人を犯していないんだね?」

アリス「………」

アリス「…私達は、誰も、殺していません…」

小林「…それだけ聞けば、十分です」ニコッ

小林「行こう君たち。まずは現場の調査からだ」スタスタスタ

シャロ「あっ!待ってください先生ー!!」

ネロ「………」ムスッ

コーデリア「待ってください!教官」

エリー「あ、あの…その……」オロオロ

アリス「………」

エリー「しっ…失礼…します…!」バッ

ドタン  バタン



アリス「………」

カズミ「…ねぇアリス?」

カズミ「小林オペラに、一体何の恨みがあるの?」

アリス「………」

アリス「カズミちゃんには…関係ないよ…」


【漆黒の魔法団テント 同日 某時刻】


小林(…ここが、事件現場の中…か)

小林(もうすでに、何人もの鑑識が来てるみたいだな)

ネロ「…………」

エリー「………」

小林(…後、間違いじゃなければみんなの空気も重い…)

シャロ「え。あの、ええと……」

シャロ「…調査!調査しましょう調査!」ドンッ

コーデリア「そっそうね!あっ教官!ここに落ちてるカニパンの袋なんか怪しいんじゃないですか!?」ガサッ

小林「…それは、間違いなく事件には関係ないゴミだね」

コーデリア「…うう」

小林「あっ!で、でも!細かいところも調べる意識は素晴らしいと思うよ僕は!」

シャロ「そのとおりです!どんな細かい証拠品になりえそうなものも見逃さずに、どんどん調べていきましょう!!」ズザザ

小林「シャーロックの言う通り。僕たちもコーデリアを見習って調査を…あっ!シャーロック駄目だ!立ち入り禁止のテープの中は警察の許可が――」

「コラァアアア!!アンタ達何やってんのよぉ!!」

「あー!ココロちゃーん!!」

「ココロちゃん言うな…って!それどころじゃない!とっととそっから出なさいよぉ―!!」

小林「………」

姫百合「…無鉄砲なのも、考えものですね」

小林(…そういえば、まだ彼女達は今日の講義を全部受け終えてないんだよな…?)

小林(学院に返してこようかな…?)

ネロ「駄目だよ。小林も科学の講義すっぽかしてここに来てるんだからね」

小林「はは…それを言われたら、何も言えないな…後、できれば心を読まないでくれるかな?」



小衣「ほら!とっとと出て行きなさい!ここからは神奈川県警の管轄よ!シッシ!」

シャロ「そんな!私達だってカズミちゃんの弁護するんです!」

小衣「そんなもの知ったことか!捜査の邪魔よ!シッシッシ!!」

ネロ「なんだとー!?そっちだって!怪盗対策のクセに、勝手に乗り出してるくせに!」

小衣「はんっ!小衣は警視の付き添いよ!」ババーン

次子「小衣”達”…だろ」

平乃「…仕事が増えるのも、あまり良い事でもありませんけどね…」

咲「ああー…だるい。なんで怪盗対策の私らがサイコパス殺人の事件なんかぁー…」グデー

小衣「うっさい!小衣が警視に無理言って参加させて貰ってるんだから!もっとありたがりなさい!!」

次子「だからってなんでアタシらまで…」

平乃「…被害者の遺体を見たとき、朝食を戻しそうになりました…」

咲「ありゃぁ相当凄かったよねー。今後、あれ以上にエグい遺体なんて遭遇すらしたくないもんだけどー」

小衣「うくぅっ!!」ギクッ

小衣「………」

小衣「あっあんな遺体なんて!警察に入れば何度だって見るんだから!慣れよ慣れ!私はもうなれたわ!」

小林「ちょっと待ってください。被害者の遺体って…」

姫百合「…今回、そんなに酷いんですか?」

咲「酷いなんてもんじゃないよ」カタカタ

咲「恐らく、神奈川県で最も最悪な死に方した被害者って感じー?」バッ

小林「っ!!!!!」

シャロ「うっ…うわぁああああああ!!!」ガガガーン

コーデリア「きゃぁあああああああ!!!!」ガガガガーン

姫百合「うわぁああ!?」ガーン

ネロ「なっ…何…この……!?」

エリー「」

バタン

シャロ「エッエリーさんが白目むいて倒れました!!」

コーデリア「きゃぁああああああああああ!!!!!」

小衣「ええい黙りなさい!静粛!静粛に!!」ダンダン


小林「………これは」

平乃「酷い…ですよね」

次子「…今日の夕飯、絶対食えねえよな」


→証拠品③【現場写真】を証拠ファイルの収めた!
〈二つの歯車に巻き込まれ、体は引きちぎれバラバラになり被害者の顔もろともトイズの矢が突き刺さっている〉


次子「ううぅ…もう、とうがらしが食えないじゃねえかよ」

咲「見事に真っ赤っかーだもんね」

コーデリア「」

バタン

シャロ「今度はコーデリアさんが倒れました!」

姫百合「遺体が更に増えていきますね」

小林「死んでないからね?」

次子「…それで?調べるのか?ここ」

小林「…ええ。むしろ、調べなければ何も始まらないのですが」

平乃「ううん…警視は今、目撃者と関係者に話を聞いていますけど」

平乃「わざわざ聞かなくても、特時操作権限が探偵にはありますからね」

小衣「ちょっと!?小衣が言う前に何を言っているの!?」

次子「何かを行ってくるから、先手で言ってやったまでだろ?」

小衣「なによ!リーダーは小衣なんだからねムキィー!!」

小林(…G4も大変なんだな)


→【事件の概要】

小林(…そういえば、警察側の人間なら事件について知っているはずだ)

小林(依頼人も彼女達も、この事件については全然知らないからな…)

小林「…聞きたい事があるんだけど、話を聞いてもいいかな?」

次子「おっ?答えられる範囲までなら良いぞ」

小林「…今回の事件についてのあらましを教えて欲しいんだ」

平乃「………」

咲「………」

小衣「なんで探偵なんかに情報を共有させなくちゃいけないのよ!!そんなもん却下に決ま痛たたたたたた!!」ギュゥゥウウウ

次子「はいはーい。黙ってような小衣ー」

姫百合「…銭形警部。皆さんの顔が一瞬強ばりましたけれど」

姫百合「何か、答えにくい事でもあるんですか?」

次子「ん?いや。警察側は結構シンプルに捉えてるぞ」

平乃「被害者は丸尾椿(15)死因は写真の通り歯車に巻き込まれての失血死」

次子「そこらへんは検死が仕事するまでそれ以上の事は分からないけど、歯車についての情報はすでにある」

次子「奇跡の少女の回で使われる筈だった機械の一つらしい。どう使うのかは今警視が聞いてるんだけど」

咲「んで、警察側は歯車の前に立っていた常盤 カズミと明神川 アリスを緊急拘束して起訴。翌日には裁判が行われるってわけー」

シャロ「前に立っていただけで逮捕なんですか!?」

次子「いや、もっと色々理由があるぞ」

次子「まず、発見されたときは二人共血まみれで前に立ってたんだけど」

平乃「その血についてさっき科学班が結果を出したのですが…間違いなく被害者のものでした」

ネロ「う…」

咲「無残な遺体の前で血まみれで立っていて、尚且つトイズが発動した状態なんて…」

咲「怪しくない訳無いって感じー」

シャロ「でっでも!動機がありません!」

シャロ「カズミちゃんとアリスちゃんには、その人を殺す動機が…」

次子「だから、それを調べてる最中ってわけさ」

平乃「今のところ、私達が考えても彼女達が犯人と考えて異論はありませんし…」

平乃「目撃者も多数。しかも全員が彼女達が犯人だと証言しています」

小衣「はん!今回はアンタ達の悪あがきも、効果が出ることないわね」

シャロ「そっ、そんな~ココロちゃん~」

小衣「ココロちゃん言うな!」

小林(…やっぱり、警察もこれ以上の情報がまだ無いのか…)

小林(しばらく調査を待ってから、神津の報告を待つか…)



→【漆黒の魔法団】

小林「この、漆黒の魔法団っていうサーカスの団員は何人なんですか?」

次子「ん?確か、今警視が話を聞いてる最中なんだけどな」

平乃「確か…、4人で経営している団体だとは聞いています」

小林「4人…」

シャロ「あっ!私達ミルキィホームズと同じ人数です!」

次子「その内の一人が殺されたんだけどな」

シャロ「…あう」

小林「なるほど。それで、その人たちに話を聞くことはできますか?」

平乃「できない事はありませんが…」

小衣「はん!警視が話を聞けば事件なんて解決するんだから、何度も言ってるけど探偵なんて必要ないのよ」

小衣「わかったらとっとと家に帰りなさい!捜査の邪魔よ!」

小林「…僕たちは被告人の弁護士だって先ほど言った筈なんだけど」

小衣「私達は現場に怪しい人物が寄ってこないか見張ってろって警視に言われてんのよ!」ビシッ

小衣「だから私の仕事の全うのために!アンタ達はとっとと気絶してる二人を担いで家に帰――「待て」」


神津「…やはり、来たか小林」


小林「神津!」

小衣「けっ…警視!」ビクッ

神津「…あの二人が明日の裁判の被告として出頭すると耳に挟んでから、予感はしていたが…」

神津「お前、謎に頭を突っ込みすぎじゃないのか?」ギロッ

小衣「そうですよね!警視もそう思いますよね!」

小衣「ほら!警視がそう言ってるんだからとっとと帰「小衣」」

小衣「はいはーい!何ですか警視ー!!」クルクル

神津「黙っていろ」

小衣「えっ……」ピタッ

神津「…お前の事だ。俺に情報を聞き出すつもりだろう」

小林「まぁ、そうしてくれるとありがたいかな」

神津「特時操作権限には逆えん。やむを得ないが最低限の情報なら――」

小衣「まっ…待ってください警視!」ガシッ

神津「………」

小衣「ココロは!ココロは怪しい奴を追い出そうとしただけd「聞こえなかったのか?」」

神津「黙って捜査をしていろと言ったのだ俺は」

小衣「…………」

小衣「……はい」ショボーン…

小林(…何だかこれも、様式美みたいになってきたな)


神津「それで、何を聞くつもりだ?お前は」

神津「検察側が何を考えているかくらいはG4に聞いていると思うが…」

小林「ああ、(やっぱり、神津にはかなわないな…)」

小林「そうだな、ええと、何から聞こうか…」

バッタァーン!!

小林「!?」

姫百合「えっ!?」

ネロ「わぁ!?」

シャロ「きゃぁあああ!!!」

???「………」

小林(…て、天井から黒い格好した人が落ちてきた!?)ガーン

???「………」

次子「…お、おい?動かねえぞ?」

???「………」

???「漆黒なる堕天使よ、我に回復術を與たまへ…」ブツブツ

姫百合「なっ…何かブツブツ言い始めましたが」

???「さぁ目覚めよ…漆黒の悪魔よ!!」ガバァッ

シャロ「わぁああ!!」ガガーン

ネロ「ぎゃぁああ!!?」ガガーン

平乃「こっ今度は起き上がりました!?」

???「……きゃう!!」バターン

小林(…と思ったら、勢い余って後ろに倒れた…)

???「あ…ううぅ…」グデー

姫百合「…あの、大丈夫ですか?」

???「…無論。少数の時の砂が落ちるのを待てば、我の魔力は蓄えられる」

姫百合「はぁ…え?今なんて?」

小衣「…つべこべ変な事言ってないで、とっとと起きなさい!」グイッ

???「ああ!時の砂を動かしてはならぬ!動かしてはならぬ!!」ブンブン

小衣「何言ってるのか分からないのよアンタ!!」ウガァッ!!

小林(…何なんだ?この人は)



→【自己紹介】


小林「その…初めまして。私の名前は…小林オペラと申します」

???「………」

小林「ええと…あの、貴方は…誰ですか?」

???「………我が名を世界樹の記憶に記すというのか」

小林「………はい?」

???「よかろう。ならば世界樹の精に伝えておけ。我が名は漆黒の魔術師(ダークシュタインズ)だと!!」ビシィー!!

小林「……え?ダーク…シュタインさん?」

ダークシュタイン「うむ!!それが我が真名である!!」ドドーン

小林「……神津」

神津「なんだ」

小林「まさかと思うが、この人が今回の事件の担当検事なのか?」

神津「そんな訳が無いだろう」

神津「こいつは今回の事件の目撃者であり、このサーカス団の団長であり、名前は花輪小百合(14)だそうだ」

小百合「なぁっ!!?」ガガーン

小林「ああ、花輪さん…」

シャロ「何だか、お金持ちみたいな名前です!」

小百合「きっ貴様ら…!我が禁忌をそれ以上語ると災いが降りかかるぞ!!」ムキー!!

姫百合「言い回しが遠まわしすぎて、何を言いたいのかよく分かりません」

神津「…控え室に不在だったから、後回しにするつもりだったが」

神津「ちょうど良かった、今までどこに居たのかも兼ねて詳しい話を聞かせてもらおうか」

小百合「…クックック。良いだろう」

小百合「我の鎮魂歌を聞きたいか…ならば、その許可をくれてやる!」ドーン


→【鎮魂歌】

神津「まず、先ほどまで何をしていた?」

平乃「屋上から落ちてきましたよね…?」

小百合「愚問。我はこの世界の神であり、天界からの堕天使である」

小百合「我を堕天した空の民の邪気に当てられ、敗北しただけに過ぎぬ!!」ドドーン

シャーロック「うーん…やっぱり!何を言っているのか分かりません!」

姫百合「翻訳機があれば良いんですが…」

咲「駄目、中二病の翻訳機使っても意味が全く分かんないって感じな事に」ブンブン

小林(そんな翻訳機があるのか…)

ネロ「……天井にある照明を見てたんじゃないの?」

小林「え?」

ネロ「だってほら、あそこの照明おかしいじゃん」

小林「……あっ!本当だ」

姫百合「何か、影ができてますね」

神津「…鑑識。あの影について一応調べてみてくれ」

鑑識A「はっ!了解しました神津警視!」ダダダダダダ

小百合「うむ!我が無念をどうか晴らしてくれ!」

小林「…凄いねネロ。彼女の言っている事が分かるのかい?」

シャロ「ええ!?そうなんですかネロ!」

ネロ「いや、さすがに言ってる意味までは分からないよ。でも」

ネロ「僕のトイズを使えば、ある程度の感情は読めるし。それと合わせればかろうじて分かるって感じかな」

小林「それは……とても助かる能力だね」

シャロ「それじゃぁ!どんどん聞いちゃいましょう!!」


小林「そうだね。それじゃぁ…」

小林「…事件当時、君は被害者の近くに居たと思うけど…」

小百合「!」

小林「一体、何が起こったのか。…分かった事だけ教えてくれないかな?」

小百合「………」

小林「…………」

小百合「……」

小林「…あの?」

小百合「……存ぜぬ」

小林「え?」

小百合「存ぜぬ!存ぜぬ!存ぜぬ!存ぜぬ!!」ダンダンダンダン

小林「うわぁ!」ビクッ

小百合「そのような事!私が聞きたいよ!漆黒の闇の中で、何故我が友が殺されなくちゃいけないんですか!?」ジワ…

小百合「酷い…酷いよ!悪の光を宿いし矢と盾を持つゴドムとソドラよ!地獄の業火に焼かれるが良い!!」ポロポロポロポロ

小林(ちゅっ中二病と素の言葉が混ざってカオスな事になっている!)

シャロ「カズミちゃんとアリスちゃんは人殺しなんてしません!」ダンッ

ネロ「そうだ!だからそれを踏まえた上でもう一度情報を――」

小百合「黙れ!!」

小百合「何があろうと、我は悪魔の使いゴドムとソドラを許さぬ!!正当以上の裁きを受けるがいい!!」ダンッ!

姫百合「…ゴドムとソドラって、地名なんですけど」

小林(…どうやら)

小林(この子は、フェザーズの二人を完全に殺人犯だと思っているらしいな…)



→【歯車】


神津「……先ほどの二人に話を聞いても、企業秘密だと団長に聞いてくれと言われたのだが」

神津「あの歯車の仕組みと用途を教えて欲しい。調査に必要だからな」

小百合「…………」

小百合「………あの機械は、奇跡の少女の力を増幅する為にある」

次子「……うん?」

小百合「歯車が合わさり、因果が回れば奇跡は集い、奇跡の少女は神となり現れる」

小百合「これが、あの歯車の全てだ!」ドドーン

小衣「………」

神津「………」

姫百合「…あの、何一つとしてわからないんですが」

小林「…ネロ、お願いできるかな?」

ネロ「えっ!?ううーん…じゃぁ、スニッカーズ10本」

小林「そう来たか。…帰りに買ってあげるから」

ネロ「やりぃ!…ええと、あの歯車の中には人が入れるスペースがあって」

ネロ「その中に入れば、被害者のトイズの力が増幅される…って事を言ってるよ。詳しくは実物を見ないとわからないけど」

小百合「おお!我が絖翠なる天空の言語がわかるのか!」キラキラ

小林「…神津、その機械は今、どこに?」

神津「今は遺体解剖班に回している。事件が終わるまで引き剥がすわけにもいかず、検査は難航しているようだが」

次子「うわぁ…想像すると気の毒としか言えねぇな…くわばらくわばら」

小百合「………」

小林(…黙ってしまった。当然か)

小林(彼女にとっては、大切な友人の事なんだからな…)

鑑識A「警視!照明の中の、電球の中にあると思われます!」

鑑識B「外して、調査しますか!?」

神津「…そうだな。調査班に要請してくれ」

鑑識A「了解です!」

小林「…電球の、中?」

神津「…俺達が確認できるのは、明日の裁判の事だろう」

神津「電球を分解するのには、時間がかかるからな」

小林(…叩き壊せば良いんじゃないかな)


神津「…さて、まだ聞きたい事はあるだろうが、時間が無い」

神津「花輪小百合。これから明日の裁判に向けて神奈川県警にまで来て欲しい。同行は願えるか?」

小林「!」

小百合「…愚問だ」

小百合「我が友のマナを奪った悪魔を打ち倒せるのなら…手段は問わん!!」キッ

小林「まっ待ってください!まだ、僕たちも聞きたい事が――」

小衣「はん!黙りなさいアンタ達は明日の裁判の事だけを考えれば良いのよ!」

小百合「……裁判?」

平乃「ええ。あの人達は明日、被告人の弁護士として弁護席に立ちます」

咲「今まで何度も依頼人を無罪にしてきた、かなーり優秀な弁護士…いや、探偵だからねー」

小百合「………」

次子「いや、でも今回は分かんないぞ?なにせ、今回は特例で――」

小百合「―悪魔の使いよ!!」ダンッ

小林「!」

小百合「危うい所であった…、まさか、ゴドムとソドラの使者が我の元に騙し入りしてくるとは」

小百合「…だが、我は騙されんぞ。今回の裁判…我は証言してやる」

小百合「貴様の仕える悪魔が、絶対的に不利になる証言をなっ!!!!」キッ

小林「………」

姫百合「なっ…何を言い出すんですか!?」


ネロ「…まさかと思うけど、証言席で偽証するつもりじゃないよね?」

小百合「否!!…我は真実の名の元で、どのような手を使っても貴様の仕える悪魔を敗訴かせてくれる!!」

小百合「原罪から逃げられると思うな!!私の…私の親友を…!!」

次子「分かった分かった。続きは署で聞くから。な?」ズルズル

小百合「明日を楽しみにしていろ!このっ……殺人鬼!!バーカ!バーカ!!」ポロポロポロ


…・………


シャロ「………」

ネロ「………」

姫百合「…完全に、嫌われてしまいましたね」

小林(…まぁ、無理もない…か)

小林「…彼女の為にも、この事件の真犯人を見つけましょう」

小林(こんな…誰も幸せにならない事件を…)

シャロ「……!」

シャロ「はい!それじゃぁ他の人にも話を聞いていきましょう!」

姫百合「そうですね。確か、他に二人ほど団員が居た筈です」

小林「その二人は、どこに居るのかな?」

平乃「はい。確かその二人はまだ控室の方に居ると思います」

平乃「先ほどの小百合さんに比べたら、まだ話ができる方なので安心してください」

小林「はは。それを聞いて安心しました」

小林(フェザーズの名前を聞いて、また発狂したりしないよな?)

シャロ「それじゃぁ早速行きましょう!!控室へ!」



【控室 同日 某時刻】



シャロ「………」

ネロ「………」

姫百合「………」

小林「………(な、なんだ?)」

小林(何なんだ?この…地獄絵図は?)

????「………」グデー

???「………」ボー…

小林(部屋は散乱していて、そして団員らしき二人は……)

小林(一人はソファで白眼を向いて気絶。そして一人は鉄の傘をさしたまま立ちつくしている…)

???「………」

小林「…あの」

???「………」

小林「…ちょっとお話、よろしいでしょうか?」

???「………」ニコッ

???「…はい。勿論よろこんで」

???「まずは、何から話しましょうか?やはり、この事件の概要ですよね?」

???「私が知り得る情報は多くありませんが、大丈夫です。喜んで協力します」

小林「それも…そうなんですが…」

????「…………」グデー

小林「そちらの、ソファで白目を向いてる娘は、一体どうなさったんですか?」

???「…………」

???「それは、事件とは関係ありませんわ」ニコッ

小林(関係なくても、少し…いや、かなり気になるんだよなぁ…)


→【事件について】


小林「お初にお目にかかります。僕は、小林オペラを申します」

???「…あら、貴方が殺人鬼の弁護士さん?」

小林「!」

姫百合「!」

シャロ「カッカズミちゃんとアリスちゃんは殺人なんてしていません!!」

ネロ「そーだそーだ!」

???「…まぁ、それはどうだか分かりませんが」

???「私も、一体誰が犯人なのかまだ分かっていませんからね」ニコッ

小林「………はぁ」

叶「私の名前は、つげ叶(17)と申します。今後、お見知りおきを」ペコッ

叶「そして、このソファの上でグッタリしているのが」

????「…………」

叶「…私どもの仲間、ねこ千衣(15)と申します」

小林「…………(ねこ?)」

叶「はい、”根子”です。不思議な苗字ですわね」

シャロ「へぇ!この人、ねこって名前なんですか!でも、とてもネコには見えません!」

ネロ「確かに、ネコというよりリスって感じの顔と体つきだよね。食われる方の」

叶「そうですわね。よく、私のネジシキも餌と勘違いして襲う時が何度も」

小林(…ネジシキ?)


姫百合「…それでは、事件当時の話を聞かせてもらっても?」

叶「…ええ。それは構いませんが…」

叶「私も、お客様以上の情報は持ち合わせていないかもしれませんわ。なにせ、一瞬の暗闇の間に全てが終わっていたのですもの」

小林(…つまり、小百合さんとフェザーズの二人と同じ情報しか持っていないという事か)

小林「…ちなみに、あの歯車と被害者は照明が切れた間に現れたのですよね?」

叶「ええ」

小林「なら、それを運んだ人とかが居るんじゃないんですか?あれを、運ぶ役割の人は――」

叶「それは、ワタクシどもの団長様ですわね」

小林「えっ?」

叶「いえ、正しくはあの機械、下に車輪がついていて、リモコン等を使えば動かす事ができるのです」

叶「そのリモコンを持っているのが、私どもの団長、小百合様なのでございます」

小林(…あの、黒い衣装を纏った女の子か…)

小林(リモコンなんて、そんな話聞いてなかったんだけどな…)



→【被害者について】


小林「…仲間である団員が死去した事は、心中お察しします」

叶「…………」

小林「ですが、できれば教え願えますか?被害者がどのような人物だったのか」

叶「………分かりました」

叶「このサーカス団は、元々小百合様の一人芝居劇だったのです」

シャロ「えっ!?」

叶「その芝居劇を見た私達が、それに感銘し小百合様の下につくことを願ったのです」

姫百合「それは…。入団するのになかなか手間取りそうですね。何せ、言葉が――」

叶「いえ、小百合様はすんなり私達を入団させてくれました」

姫百合「え?」

叶「最初は何を言われたのか分からなかったのか、冗談かどうかと色々と言われましたが、私達の意思をちゃんと伝えた所、急に泣き出しましてね」

叶「その日から、私達は漆黒の魔法団の団員になったのです」

小林(寂しかったのか…)

叶「…被害者である丸尾椿様は、その中でも特に小百合様と仲が宜しかったのです」

叶「小百合様も心底楽しそうにお仕事をするようになり、椿様も当初の心情からかなり変わったと思います」

小林「…当初の心情?」

叶「……成長、という意味です」

小林「………(なんだ?今のは…)」

小林(今、何かしらの違和感が――)


コーデリア「こっ…これは!一体どういう事なのですか教官!?」

小林「ん?…あ、コーデリア!」

シャロ「コーデリアさん!目を覚ましたんですね!」

エリー「…あ、あの…。これは…一体何が」

叶「…………」

叶「…今回の事件には、関係の無い事なので――」

コーデリア「そうはいきません!この狂った状況である以上、私達の出番です!」

シャロ「おおー!そうですね!こういう時こそ!探偵の出番です!」

小林「…今やる事は、一つでも多くの情報を集める事――」

ネロ「何言ってるんだよ小林ー!こんな状況で情報が頭の中に入るわけないじゃん!」

小林「……(ようやく慣れ初めて来た所だったんだけどな…)」

叶「………何をなさるつもりで?」

シャロ「今から、ここで何が起こったのか推理するんです!」

ネロ「僕たちの、”論理と推理の実験劇場”でね!」



【推理開始】 The game is afoot!

Topic1
→何が起こったのか

カシャッ

コーデリア「物が散乱した部屋。この状況から推理するのは至難の技ですが…」

コーデリア「ソファで白目を剥いて気絶している…その状況を把握する鍵は、貴方の鉄の傘です!」

叶「!」

シャロ「傘が鉄なら、どんなものだって防げます!槍だって矢だって。つまり!」

ネロ「この気絶した女の子の状況は、頭の上の”トロフィー”が示しているのさ!」

叶「?」

シャロ「もぉ!ネロ!私の台詞の横取りー!!」プンプン

カシャッ

コーデリア「この部屋の荒れ具合。そして鉄の傘。それらが示すのは、鉄の傘についた傷です!」ビシッ

叶「!」

エリー「かっ傘が…傷つくのは…ただ…一つ…」

カッ

シャロ「その答えは!床に散乱した”物”達です!」

叶「?」

ネロ「そう!この控え室では、不条理な事が行われていた…」

コーデリア「とても信じられない事ですが、この状況を説明する言葉はただ一つ!」

コーデリア「この部屋で、雨ではなく”物”が降ってきたのです!!」バァーン

姫百合「………」


Topic1
→何が起こったか

Conclusion
→控え室に物の雨が落ちてきた



Topic2
→気絶した団員

カシャッ

ネロ「となると、この気絶した団員はどうして白目を剥いて気絶しているのか」

シャロ「それは、さっき頭の上のトロフィーが示しているって言いませんでした?」

ネロ「他にも全身の関節が有り得ない方向に曲がっているのを見る限り、全身に物を受けたみたいだね」

クルクルクル

コーデリア「そう!この団員は”頭を強く打って”気絶しているのよ!」

叶「!」

ネロ「おっと!目を逸らしたね。つまり――君が関係してるって事だよね?」

叶「………」

カシャッ

シャロ「そう、被害者は貴方の”傘に弾かれて頭の上にトロフィー”が落ちた事により気絶したんです!」

叶「?」

ネロ「空から物が落ちてくる。それはさぞ驚いた事だろうね。でも、例え故意じゃないとしても、傘の所為で団員を傷つけてしまったのは事実」

カシャッ

エリー「…これは、貴方のトイズに…関係していますよね?」

叶「!」

クルクルクル

シャロ「そうです!更に、貴方のトイズの能力を示している証拠品だってあります!」

シャロ「貴方のトイズを示しているのは…その大きな”鉄の傘”です!!」

叶「?」

コーデリア「勿論、その傘自体がトイズの能力とは言わないわ。貴方のトイズは…」

コーデリア「見て分かる通り、空から物が落ちてくるトイズなのです!!」ババーン!!

叶「………」

ネロ「その傘を見るに、自分の都合じゃない場合でも発動するに違いないよね」

シャロ「そう!貴方は勝手に鳴ったトイズで発動した後、落ちてくる物を傘で防いでいて…」

シャロ「その傘で弾かれたトロフィーが!団員さんにあたってしまったのです!!」



Topic2
→気絶した団員

Conclusion
→叶のトイズの巻き添え


シャロ「以上!」

ネロ「ミルキィホームズの」

コーデリア「名推理でした!」

エリー「………でした」



小林「………」

姫百合「…………」

シャロ「ほら先生!何してるんですか!早く机の下に隠れてください!」イソイソ

ネロ「そうだよ!さっきの推理聞いたろ!?この控え室には物が落ちてくるんだから!!」イソイソ

叶「……あの」

叶「それ…本気で言ってるんですか?」

コーデリア「なんですって!?私達の推理を宛にしないの!?」

叶「いえ、だって…私のトイズは何も無い所から物を発生させません」

シャロ「えっ」

叶「私は調教師ですのよ?サーカスで飼育しているタイガーとかライオンを教育する為に居るのです」

叶「私の能力も、それにちなんだものですのよ」ニコッ

シャロ「…………」

ネロ「………」

コーデリア「そ…そんな。本当にもしそうだったら…」

コーデリア「私達の推理が、根本から覆されちゃうじゃない!」ガッ

コーデリア「ああうううう…頭打った…」ヒリヒリ

小林(…やれやれ)

シャロ「ううう…また、外しちゃいました…」ショボーン

ネロ「…今度は自信あったんだけどなぁ」ブツブツ

姫百合「本気で言ってるんですか?突拍子も無さすぎです」

エリー「……クスン」

小林「…皆。そんなに落ち込む事はないよ」

小林「推理なんて間違えての繰り返しなんだ。間違えても何度も推理をすれば、真実に確実に近づく」

シャロ「!」

小林「だから諦めずに、もう一度推理をしてみよう。今度は僕も参加するから」

シャロ「…はい!!」ニパー

ネロ「よぉし!それじゃぁもう一回だ!」

コーデリア「何度間違えたって繰り返してやります!」

小林(…さて、コッソリ推理を入れ替えて正しい答えにしないとな…)

姫百合「…小林さんも大変ですね」


【検討開始】 Hold it Ther Milky Holms.

Topic1
→何が起こったか

Conclusion
→控え室に物の雨が落ちてきた

カシャッ

コーデリア「物が散乱した部屋。この状況から推理するのは至難の技ですが…」

コーデリア「ソファで白目を剥いて気絶している…その状況を把握する鍵は、貴方の鉄の傘です!」

叶「!」

シャロ「傘が鉄なら、どんなものだって防げます!槍だって矢だって。つまり!」

ネロ「この気絶した女の子の状況は、頭の上の”トロフィー”が示しているのさ!」

叶「?」



バァーンッ



姫百合「どうやら皆さんは、頭の上にトロフィーが落ちてきたと思いたいみたいですね」

小林「はは。まぁ、気絶する理由にしては王道だからね」

小林「しかし、外傷がほとんど無いみたいだし、頭にはたんこぶがあるけど場所的に恐らく違う」

小林「一度、気絶した団員の周りを調べてみよう」


【団員が気絶した理由は?】

→【頭の上のトロフィー】

→【床に散乱した物】

→【手に持ったアルバム】



→【手に持ったアルバム】を選ぶ

小林「はい!!」

小林「この団員が気絶した状況は、手に持った”アルバム”が示している!」

ネロ「…あっ!よく見たらこのアルバム、二つの穴が空いてるよ!」

シャロ「…これ、もしかすると歯型ですか!?」

叶「…!」

コーデリア「はっ!まさか…このアルバムは」

コーデリア「何者かが、噛んでいた可能性が高い!!」

姫百合「…いや、そりゃぁ歯型がついてるんですからね?」

カシャッ

コーデリア「…分かりました。このアルバムの惨状、それらが示すのは、鉄の傘についた傷です!」ビシッ

叶「!」

エリー「かっ傘が…傷つくのは…ただ…一つ…」

カッ

シャロ「その答えは!床に散乱した”物”達です!」

叶「?」



バァーンッ



姫百合「…まだ、空から物が落ちてきたと思っているんですかね?」

姫百合「トイズの犯行じゃない以上、絶対に不可能だって言うのに…」

小林「はは…彼女達、意外と頑固だからね」

小林「推理自体は柔軟すぎて変な形になっちゃうんだけど…」

姫百合「…アルバムに歯型がついていて、鉄の傘にも傷がついている以上」

姫百合「原因はわかりやすく、一つしかありません」

小林「…その通り。まずはこの部屋をくまなく探索してみよう」


【傘が傷ついた原因は?】

→【床に散乱した物】

→【手に持ったアルバム】

→【猛獣の檻】

→【灰皿】



→【猛獣の檻】

小林「はいっ!!」

小林「傘が傷ついた原因、それは、”檻に入れられた猛獣”ですね!」

シャロ「はい!…って、わぁああああ!!猛獣だぁあああ!!!」ガビーン

コーデリア「きやぁああああ!!!」ビクゥーン!!

エリー「」

バタン

シャロ「えっエリーさんがまた白目剥いて倒れました!」

叶「白目死体が二人に増えてしまいましたわね」

小林「いえ、死んでませんからね?」

姫百合「…アルバムの歯型、物が散乱した床。そしてその鉄の傘も全て…」

姫百合「この、猛獣が暴れた事による所為だったのです!!」バァーン

シャロ「ぇぇえええええ!?」ガガーン

コーデリア「ひっ…ヒメちゃんに最期持って行かれちゃった…」


Topic1
→何が起こったか

Conclusion
→控え室に物の雨が落ちてきた×
         →猛獣が暴れていた○


Topic2
→気絶した団員

Conclusion
→叶のトイズの巻き添え



カシャッ

ネロ「となると、この気絶した団員はどうして白目を剥いて気絶しているのか」

シャロ「それは、さっき頭の上のトロフィーが示しているって言いませんでした?」

ネロ「…いや、その説はついさっき小林に叩き潰されたよ」

クルクルクル

コーデリア「そう!この団員は”頭を強く打って”気絶しているのよ!」

叶「!」

ネロ「おっと!目を逸らしたね。つまり――君が関係してるって事だよね?」

ネロ「檻に入れられた猛獣くんじゃなくて、君がね」

叶「………」

カシャッ

シャロ「そう、被害者は貴方の”傘に弾かれて頭の上にトロフィー”が落ちた事により気絶したんです!」

叶「?」



バァーンッ



姫百合「…あの、シャーロックさんは忘れているのでしょうか?それとも、まだ理解していないんでしょうか?」

姫百合「先ほどは、猛獣が暴れた後だって照明した後なのに…」

小林「ま、まぁ。猛獣が暴れてトロフィーが落ちてきたって事もあり得るから」

小林「さて、本当は何が原因なのか、これもちょっと調べてみようか」


【団員が気絶した原因は?】

→【頭の上のトロフィー】

→【外れた右足】

→【鉄の傘】

→【猛獣の檻】


→【外れた右足】

小林「これだっ!!」

小林「そう、団員の気絶は猛獣の檻の中にある”外れた右足”が示している!」

シャロ「!」

ネロ「!」

コーデリア「!」

シャロ「きゃぁああああ!!!」

ネロ「うわぁあああああ!!!」

コーデリア「」

バタリ

シャロ「こっ今度はコーデリアさんが白目を剥いて気絶しました!」

小林「――この団員の右足が外れている以上、義足、ですね?」

叶「………」

小林「恐らく、檻の中の猛獣が義足を外してしまったのでしょう」

カシャッ

姫百合「この団員は、義足が外れたショックで気絶した。という事ですか?」

小林「いや、自分の身体の事で。欠損したならともかく、元から無かったものを取られて気絶するとは考えにくい」

小林「そして、彼女は自分のトイズが関係しているとも言っていた」

叶「…………」

カシャッ

小林「貴方のトイズの能力を示す証拠品は、この部屋にある」

小林「それは――これです!」


【つげ叶のトイズを示すものは?】

→【猛獣の欠けた歯】

→【鉄の傘】

→【アルバム】


→【猛獣の欠けた歯】を突きつける


小林「これだっ!!」

カシャッ

小林「貴方のトイズは、この散乱した物の中に紛れ込んでいる猛獣の欠けた歯ですね?」

叶「!!」

小林「その鉄の傘、その傘も本当はトイズの力で普通の傘を鉄にしただけにすぎない…」

ジジジ…   フッ

小林「どうやら、効力切れのようです」

叶「………」 バッサバッサ

小林「貴方の持つトイズは、物を一つだけ硬化させる能力――」

小林「…そう、貴方は咄嗟に傘を硬化させ、猛獣を檻の中に入れようと奮闘した――」

小林「その時に傘を振り回した所為で、被害者は頭を打ったのです!!」ドドンッ

小林「よほど大きく振り回したのでしょう。衝突で義足が檻の中に吹っ飛んでしまうほどに!」

叶「……うっ…」

叶「きゃぁあああああああああ!!」ガガガガーン!



Topic2
→気絶した団員

Conclusion
→叶のトイズの巻き添え×→○



【推理完了】 Elementary!



小林「………とまぁ、真実を明らかにしましたけど」

小林「ようするに、不幸な事故だったみたいですね。ご愁傷様です」

叶「…とても、お恥ずかしい限りで」ウウゥ…

コーデリア「」

エリー「」

姫百合「あの、この人たちどうしましょうか?また気絶しちゃったんですけど」

ネロ「今日一日の事、覚えてるかな?」

小林「…それで、そちらに居る猛獣なんですけど。その子が檻から一度出ちゃったんですか?」

叶「いえ、そもそもまだ檻に戻していなかったので、戻そうとしたのですが…」

叶「ねこ様が持っていたアルバムを、その…噛んでしまいまして、大事な物だと分かっていたものですから、すぐにトイズを使用したのですが」

叶「歯が欠けてしまった事によって…ネジシキが暴れてしまって、部屋が…その、滅茶苦茶に」

小林(ネジシキって、あの猛獣の名前だったのか…)

ネロ「…何だかネジシキが可哀想に見えてきた」

シャロ「そうですよね。大事な歯が欠けてしまったんですよね…」

叶「いえ、ねこ様の大事な物を傷つけたのですから、少しは反省して貰わないと」

ネジシキ「…………」

小林(…相当絞られたのか、ネジシキくんも凄く大人しいな)

ねこ「………」

ねこ「ん…んおお…」モゾモゾ

小林「!」

ねこ「んな…お、おお…あれ?」ボリボリ

叶「あら、お目覚めでしょうかねこ様」ニコッ

ねこ「あれ?…右足が、無いなぁ?」

小林「えっと、ああ、ネジシキくんの檻の中に――」

ねこ「おっとぉ!ネジシキくん、それはエサじゃないよぉ!」ヒュンッ カンッ!

ネロ「!?」

シャロ「!?」

姫百合「!?」

小林(ぎ…義足が一瞬で元の位置に戻った!)

ねこ「ふぅー危ない危ない。噛み砕かれたら洒落にならない所だった」


小林「…あ、あの?ねこ…さんで宜しいですか?」

ねこ「…ん?」

ねこ「おおー!また警察の人かな?だから何度も言っている通り、私達は知りません!!」バーン

小林「いや、警察じゃないんだけど…僕は、その、被告人の弁護士をしている…」

ねこ「弁護士?」

姫百合「ちょっと!?小林さん!」

小林「……あっ!」

小林(そうだ…殺されたのは、ここの団員の一人だったんだ!)

小林(また、気分を悪くされたら…情報提供の拒否なんか――)

ねこ「弁護紙って、何?何かの書類?書くの?」

叶「…………」

小林「………」

ネロ「………」

シャロ「弁護士を知らないんですか?それじゃぁ教えてあげます!先生はフェザーズの二人のムグッ」パフッ

姫百合「…それで、今回の事件の事について、何か知ってる事を教えて欲しいのですが」

ねこ「事件?…あー!実はこの部屋はね!あそこに居るネジシキが私のアルバムを――」

小林「いや、それは既に分かっているので大丈夫です」

ねこ「ええ!?嘘ぉ!普通はこんなに滅茶苦茶だったら分からないよね!?」

ねこ「…あれ?そういえば私も分からないや。どうして気絶してたんだっけ?」

叶「…コホン」

姫百合「…失礼ですが、頭が若干弱い人のようですね」

小林(…こう言ったら、なんだけど)

小林(あまり、情報に期待できそうにないな…)



→【アルバム】


小林(…事件の事をいきなり聞いても、恐らく有力な情報は出てこないだろう)

小林「そちらのアルバムは、貴方の物ですか?」

ねこ「…ん?」

ねこ「ああ!これ?私の一生が全て記載されている大事な大事な思い出だよ!」ドーン

小林「ええ。まぁ…アルバムですしね」

ねこ「えっとねー、これが一昨日公演した後の打ち上げでー!これが皆で海に行った時のでー!」

小林「…ああ、ええと、とても楽しそうな写真ですね」

ねこ「それでこれが着替えてる時の花輪ちゃんの全裸を激写した写真――」

小林「うわぁっ!…いっいや、いや。そういうプライパシーに関わるものは遠慮しておきます…」ソッポムキ

ネロ「……」ジー

シャロ「……」ジー

ねこ「そうなの?レアなのに。後、これが皆でバーベキューした時のでー!んでこれが怪盗帝国からのお誘いの手紙でー」

小林「!?」

ねこ「後、これが打ち上げでブッフェ行った時のでー、これもブッフェ行った時のでー、これも――」

小林「ちょっ…ちょっと待ってください!怪盗帝国から!?お誘いの手紙が来たんですか!?」

ねこ「ん?そうだよ。誘われたのは花輪ちゃんだけど」

姫百合「そ、それで…、花輪さんは誘いに乗ったんですか?」

ねこ「あれ?どうだったっけ…ねぇ!つげちゃん!」

叶「…さぁ、私も聞いてないので分かりません」

小林「…あ、あの、もうちょっと詳しく見せて貰っても良いかな?それ」

ねこ「ん?いいよ!でも思い出だから後で返して!」

小林「は…はぁ」


→証拠ファイル④【怪盗帝国からの手紙】を証拠ファイルの収めた!
〈花輪小百合を怪盗に誘う旨が書かれている。送り主は怪盗帝国〉


ネロ「ね、ねぇ小林。…これって」

小林「…うん。間違いない怪盗帝国のものだ」

小林(中身は、確かに怪盗帝国からの誘いのものだ。…トリックと演出の魅せ方に才能を感じたとの事らしい)

小林(…というか、スカウトもやっていたのか怪盗帝国…)

シャロ「…先生。団長さんはもしかして、怪盗帝国の誘いに乗っちゃったんでしょうか?」

小林「それは分からないけど、…もし、あの団長が怪盗という裏の顔を持っているとしたら…」

姫百合「…あの団長が、より一層怪しくなりますね…」

小林(…どうやら)

小林(…この殺人事件、相当闇が深いようだ)


→【ねこのトイズ】

小林「…僕たちは、まだ団員全員のトイズの能力を把握していません」

叶「はぁ」

小林「なので、良ければ教えて貰えませんか?つげさんのトイズは分かっているのですが…」

ねこ「ん?何?何の話?」

叶「…どうやら、この弁護士様は、私達の事をご存知で無いみたいなのです」

姫百合「………」

ねこ「え!?私達、すっごく有名になったと思ったんだけどなぁ…」ポリポリ

ねこ「…まぁいいや!教えちゃおう!まず私の名前はねこ千衣って言って…」

叶「名前の方は、もう既に存じていると思いますわ」

ねこ「あれそうなの?そんなのチラシを見ればすぐ分かるもんじゃない?」

小林「…チラシ?」

シャロ「あっ!ここに一枚だけありましたよ漆黒の魔法団のチラシ!」ピラッ

姫百合「どれ…あ、名前の横にトイズの名前が書かれてますね」



→証拠⑤【漆黒の魔法団のチラシ】

【名前の横にトイズの能力が書かれている。花輪小百合は黒い羽を散蒔く、つげ叶は何でも一つ硬化する、丸尾椿はテレポート、ねこ千衣は触れた物を自由に動かせる】



小林「…被害者はテレポートが出来たんですか」

叶「ええ。…そのような能力を持っていた筈なのに、このような事件が起こってしまって…」

小林「いえ、現場は暗くなった時に行われたと聞いているので、トイズを用いても逃げるのは――」

シャロ「先生!それでもカズミちゃんとアリスちゃんは――」ムッス!

小林「う、うん。僕もそれは、ちゃんと信じているから」

小林(…そうだ)

小林(被害者はテレポートが出来た。なのに現場から逃げられず歯車に巻き込まれて絶命した…)

小林(…何か、理由があったのか?)



→【被害者について】


小林「…貴方達の団員だった、丸尾椿さんの話を伺いたいのですが」

ねこ「おっ!団長さんのマブダチだね!?」

叶「私達の仲間でもあります」

小林「その仲間である丸尾椿さんなのですが、最初は三人一緒に団長である花輪小百合さんに弟子入りしたのでしたよね?」

ねこ「その時の事はよく覚えてるよ!すっごく泣いて喜んでたの花輪ちゃん!」

叶「…団長さんと出会った時は、私達ともども運命だと思っておりました」

叶「丸尾椿もその一人で、…彼女は団長様とは波長が合ったのでしょう。次第に親友と呼べる程になっていましたわ」

小林(あの言動と波長が合ったのか…会話を想像するのが怖いな)

ねこ「…最初はねー。私達の中でも当初の目的が私の次に強い子だったんだけど」

ねこ「そんなの忘れちゃったように、今では団長さんの右腕になるほどに仲良くなっちゃったんだよねー!」

姫百合「…先ほどから思っていたのですが、当初の目的とは何ですか?」

姫百合「話を聞く限り、団長さんと関わるのが目的であっても、仲良くする気が無かったように聞こえるのですが」

叶「それは当然でしょう。私達は団長様の技術に惚れて入団したのです」

叶「師弟の関係。それが当初私達が考えていた目的ですわ」

シャロ「それでも!仲良くなっちゃったのなら嬉しい事ですよね!」ニコニコ

ねこ「ん。まぁ、そうなのかなー?」ポリポリ

小林「…………(何だろう)」

小林(先ほどの叶さんの言っていた事、表面だけの事しか感じ取れなかったような…)



バターン!


北芝「…よぉし、残りの証人はここね」

神津「むやみに動かないよう指示をしたからな」

シャロ「…あっ!」

小林「きっ…北芝検事!」

ネロ「またお前かぁ!今回の裁判もケチョンケチョンにしてや――」

北芝「邪魔」ゴッ

ネロ「ゴハッ!」クルクル

小林「ネロ!?」ガーン

カッ

北芝「アンタ達が、残りの被害者の関係者よね?」

叶「………」

ねこ「ん?被害者ってなんだ?調味料?」

神津「…………」

北芝「これより、アンタ達は被告人常盤 カズミと明神川 アリスの殺人罪を立証させる為の証人として明日の裁判に召喚されるわ」

北芝「丸尾椿を殺した、殺人鬼としてね」

ねこ「……!?」

叶「………」

北芝「…しかし、きったない部屋ね。掃除が行き届いてないの?」

コーデリア「」

シャロ「ちょっと北芝検事さん!コーデリアさんを踏まないでください!!」

北芝「ん?…おーおーこれは済まなかったわね。床が散らかりすぎてて分からなかったわぁ」

北芝「じゃぁ、こっちに移動するわね」ダンッ

エルキュール「きゅぅっ!」

小林「今度はエルキュールを踏んだ!!」

ネロ「ちょっと!いくらなんでもやって良い事と悪い事があるでしょうよ!!」

北芝「そんなの知った事じゃないわ!そもそもなんでこの二人が散らかった床の上で寝そべってんのよ!!!」

姫百合「それは―――…ごもっともな意見ですけど…」

北芝「とにかく!この二人は明日の証言台に立つ手続きをしてもらうわ。こっちに来なさい!!」

ねこ「………」


叶「…どうやら、お話できるのはここまでのようです」

小林「…ええ、そのようですね」

神津「詳しい話は、明日の裁判で語られる」

小林「……」

神津「特時操作権限と言えど、司法には逆らえないのは分かっているな?」

北芝「へへーん!神津くんの言う通りなんだから!」フンスッ

神津「…だが、最低限の情報提供は義務付けられているのも確かだ」

神津「被害者の解剖記録と、凶器の写真の発行は完了した」

小林「!」

神津「裁判に出る前に、目を通しておく事だな」


→証拠⑤【丸尾椿(15)の解剖記録】
〈歯車による圧死もしくは失血死。死亡推定時刻は不明。顔にはトイズにより発生した矢が貫かれている〉


→証拠⑥【奇跡の少女の歯車】
〈一人の人間なら容易く圧死させることも可能な歯車。全方位の写真が送付されている。血まみれだが人が一人入れるスペースがあったようだ〉


小林(…死亡推定時刻が、不明!?)

神津「遺体の損傷が激しすぎの故、解剖班が最終的に下した決断だ」

神津「頭部にも、巨大な矢による損傷が酷すぎるのと、現場で起こった状況を考えれば不明でも問題無いとの考えで――」

北芝「神津くん!それ以上敵に情報を教えちゃ駄目よ!」

シャロ「誰が敵ですか!」ドーン

ネロ「こっちには特時操作権限があるんだぞ!」ドーン

姫百合「…私達が敵側だと思われそうな言い方はやめてください」

北芝「…はん!まぁ、でもどうせ無駄だろうけど」

北芝「明日は、司法の実験も兼ねた”特殊裁判”なのだからね」

小林(……特殊裁判?)


北芝「ふっふっふ…覚悟しなさいよ小林オペラ。今回の裁判は、敵は私だけじゃないのよ」

北芝「今回の事件、観客席に座っていた者だけが選ばれた”陪審員6人”という私の頼もしい仲間が居るんだから」

小林「…陪審員」

小林「つまり、裁判長一人が決定権を持つわけでは無いのですね」

北芝「その通りよ!今回はあのヒゲだけを騙せても、善良な一般市民である陪審人は騙せないんだから!!」ドドーン

北芝「せいぜい数の暴力に負けて、依頼人を処刑台に送ってやりなさい!あーっはっはっはっは!!!」

ネロ「なんだよ小林に勝った事無いくせにー!!」

シャロ「カズミちゃんとアリスちゃんはヤっていません!陪審員さんなんて、先生の力で蹴散らせてみせます!!」ドーン

姫百合「いや、陪審員蹴散らしちゃ駄目ですよ」

小林「…それに、陪審員は正当な判決を促すものであって」

小林「別に検察側の頼もしい仲間っていうわけではないですよね?」

北芝「…それはどうかしらね」

小林「…え?」

北芝「先ほど陪審員の話を聞いてきたけど、全員間違いなくあの二人を殺人犯扱いしている者ばかりよ」

シャロ「!!」

北芝「つまり、開廷する前から結果が見えているようなもんよ!せいぜい頑張りなさい。ま、どうせ負け戦だろうけどね!」ドドン

北芝「アァーッハッハッハッハッハッハ!!」ゲラゲラゲラ

小林「………」

北芝「…さて、それじゃぁさっさと行くわよ!ちゃんと有力な情報を喋りなさいよね!明日の裁判でも!」

ねこ「………」

叶「………」

神津「…陪審員が現れた事により、検察側と弁護側には対立する目的がもう一つ現れた」

神津「それは、陪審員を納得させる証拠品と証言を証明する事だ」

小林「…!」

神津「検察側は、被告人二人が殺人をした事実を証明する」

神津「弁護側のやることは、その対照的だ」

小林「………」

神津「せいぜい、目的を見失わないことだな」スタスタスタ

「それじゃぁ一緒に向かいましょう神津くーん!」  「離れて歩いてください。北芝検事」

小林「………」

ネロ「クッソーあのクソガキ検事め!神津と一緒に歩いてた事を明智警部補にバラしてやる!!」ムッキー!

姫百合「…やめてあげましょう。神奈川県警が荒れてしまいます」

シャロ「…ううう。でも、どうしましょう…」


小林「…神津の言った通り、僕たちがやることは陪審員が来ても変わらないよ」

小林「フェザーズの二人を、最後まで信じれば良いんだ」

シャロ「!」

ネロ「!」

小林(そうだ…。やることは変わりない)

小林(僕が行う事は、依頼人をどんな時でも心の底から信じる事だ)

小林(…しかし、)

小林(僕は証明できるのか…?現場に居た目撃者に対して、しかも6人の一般人に…)

姫百合「……あれ」

シャロ「どうしたんですか?ヒメちゃん」

姫百合「さっきの人、アルバムを置いていっちゃいましたよ。しかも開いたまま」

小林「ああ、相当ショックだったんだろうね。団員が殺された事が――」ピラッ

小林「………っ!!?」ガタッ

シャロ「えっ!?どうしたんですか先生!」

小林「……い、いや、これ……」

シャロ「…これ?」ピラッ

シャロ「ええと、あっ!これ6年前のサーカスのチラシです!」

ネロ「本当だ。…ただ、漆黒の魔法団とは違うみたいだけど」

小林「…………」

姫百合「…あの、小林さん。どうしたんですか?」



小林「……(6年前)」

小林(メディアにも引っ張りだこで、ブームを引き起こしたサーカス団”ドイサース”があった…)

小林(その団長はある日、団員全員を解雇してワンマンショーが開催された)

小林(…悲劇は、そこから始まった)

小林(団長がある機械に入ると、機械は大爆発を起こしテントの中に居た大勢の観客の命を奪った…)

小林(瓦礫となったテントの中から遺書が見つかり、内容は大勢の人間を巻き添えにして自殺すると言った内容だった…)

小林(共用される不服な仕事に、自由のない演出。細かい事のバッシングや同業者の嫌がらせ等、そういった事への復讐の告白も書かれていた)

小林(…団長は、壊れてしまっていたのだ…)



シャロ「………」

ネロ「………」

姫百合「………」

小林(僕は、そのような過去があった事を全員に話した)

シャロ「…こっこれが、その…団長さんの大規模自殺があった公演日のチラシなんですか…?」

小林「ああ、間違いない」

姫百合「そっそれじゃぁ、どうしてそんなものがアルバムの中に…!?」

小林「それは…まだ、分からない」

小林「しかし、彼女達にはまだ僕たちに隠している事実があるのは明らかだ」


→証拠⑦【アルバム】を証拠ファイルに収めた!
〈団員達の思い出の全てが、この中に詰まっている。最初のページにはドイサースの大規模自殺があった公演日のチラシが挟まっている〉


小林「…だが、もう今日は彼女達の話を聞くことができない」

小林「全ては…明日の裁判に持ち越しだ」

ネロ「………この過去の事件と、今回の事件、本当に関係あるの?」

小林「それも…今はまだ分からない」

小林(しかし、彼女達が隠しているのは、それだけじゃない)

小林(漆黒の魔法団の団長に憧れて入ったというのも…何か、違和感があった)

小林(…一体)

小林(この事件の裏には…何が隠されているって言うんだ?)


シャロ「あっ!あと…コーデリアさんとエリーさん!」

コーデリア「」

エリー「」

シャロ「二人も目を覚まさないのですが、どうしましょう!」ツンツン

小林「うん…それは、担いで歩くしかないよね」

ネロ「ええー?二人共僕たちより重いんだよ?小林が担いでよ」

小林「うん……んんっ!?」ギクッ

シャロ「そうです!先生は男の人ですし、私達よりずっと力持ちです!」

ネロ「エリーが起きていれば何とかなったんだろうけど、今はエリーも気を失ってるからね」

小林「えっええええっ!?いや、でも!僕は、その、男だし、」

シャロ「そうです!男の人です!」

小林「うんそう!だから!さすがに、女の人を担いで歩くというのは、その……」

姫百合「…何を考えてるんですか?」ジトー

小林「え”っ…いや、やましいことは無いんだけど…!さすがに!ヤバイんじゃないかなって!」アタフタ

小林「しかもその…二人だし」

ネロ「あー!小林もコーデリアとエリーの事重いって思ってるんだぁー!!」

小林「いや、そういう訳じゃ…」

ネロ「コーデリア、起きてそれを知ったらショック受けるだろうなー!!エリーも泣きだすだろうなー!酷いなー小林は!」

小林「だから、そういう事じゃ…」

姫百合「……はぁ」

ガラガラ

姫百合「部屋の隅に、台車がありました。これに乗せて運びましょう」

シャロ「ヒメちゃん!ナイスアイディアです!」

ネロ「えー、ちょっとヒメ、もう少しだけ空気読んでよー」ブーブー

小林「…ネロ、君分かってて僕をいじってたね?」

姫百合「年頃の女性といえど、さすがに二人は小林さんの負担が大きいので、これが一番良手だと思います」

ネロ「…まぁいいか。小林、僕が気絶したら、その時はちゃんと背負ってね」ニヤニヤ

小林「はは…。考えておくよ」



【ホームズ探偵学院前 同日 某時刻】


ガラガラガラガラ

シャロ「うーん…戻って来ちゃいましたね」

ネロ「あんまり、有効な証拠品も見つかってないし」

姫百合「…このままで、明日の裁判は大丈夫なんでしょうか?」

小林「…う~ん、陪審員とかも出てきちゃったからなぁ」

シャロ「先生!先生がそんな弱気になっちゃダメです!」ドンッ

ネロ「そうだよ!ただでさえ僕たちも不安だってのに!」ドンッ

小林(…ちょっと軽めに発言しただけなのに、凄いバッシングされた…)

姫百合「ま…まぁまぁ、小林さんなら大丈夫ですよ」

姫百合「今までに何度も、依頼人を冤罪から救ってくれたんですし」

シャロ「それは……その通りです!」

ネロ「うん!今までどおりに弁護すれば、フェザーズの二人の冤罪も晴れるのは間違いないしね!小林!」

小林「はは…うん。そうだね」

小林(陪審員が居るから、今まで通りとはいかないんだけどなぁ)

小林(…だから、戦略を少し変えないと。フェザーズの二人の印象を良くする必要もある)

小林(そのためにも二人の話をもう少し聞いていきたいのだけど…)

小林「…ん?」

???「………」

小林「学園の前に、誰かが居るな」

シャロ「…あっ!」

小林「シャーロック、君の知り合いかい?」

シャロ「いえ、でも確か…、アリスちゃんのお兄さんです!」

小林「アリスくんの…”お兄さん”?」


シオン「………」

シオン「…」ズカズカズカ

ネロ「うわ、こっちに近づいてくるよ?」ササッ

シャロ「きゃぁ!凄い怖い顔です!」ササッ

姫百合「…あの、お二人共。年下の後輩の後ろに隠れるなんて情けないと思わないのですか?」

シオン「………」ピタッ

小林「……あの、僕に何か用でしょうか?」

シオン「…………」

シオン「…貴方が、小林オペラですか?」

小林「え?…はい。そうですけど」

シオン「―っ!」ガシッ

小林「!」グイッ

ネロ「襟首!?」

シャロ「せっ先生を離してください!」

シオン「…話が違うじゃないか…!」グググ

小林「…え?」

シオン「貴方は…!僕のアリスを弁護するんじゃなかったのか!?」

姫百合「!」

ネロ「ちゃんとするよ!…確かに一人しか弁護依頼受けなかったけど」

シオン「さっき、アリスに聞いたら…小林オペラの弁護は受けていないと!一体、何をしていたんだお前らは!」ギリギリ

姫百合「…先ほどの私達の事務所を荒らしたのは、貴方ですか!?」

シオン「そうだ!だが、今はそれは関係無い!」

姫百合「関係あります!掃除してください!」

小林(そういう問題なのか…)


シオン「…このままアリスだけ弁護されずに殺人犯扱いされるのは絶対に許されない事だ!アリスの弁護を受けないというのなら…今ここで――」

小林「…アリスくんからは、弁護を断られてしまったのです」

シオン「!」

小林「身に覚えはありませんが、…彼女は僕に強い敵意を抱いているように見えました」

シャロ「はい!まるでいつものアリスちゃんじゃないみたいでした!」

小林「一体、彼女は僕に何の憎悪を抱いているのですか?その問題を解決しない限り、彼女は絶対に僕の弁護を受けないと思います」

シオン「くっ……」

小林「…もし、彼女の弁護を取り付けたいのであれば、分かって居る事を話してください」

シオン「…………」

シオン「…そうか。やっぱり、まだあの事を…」

小林「…あの事?」

シオン「…分かった。話そう。アリスが君に敵意を向ける理由。それに心当たりがある」

小林「!」

シャロ「いっ一体それはどういう事ですか!?」

シオン「…まず、一つ大前提として話しておきたいのは」

シオン「僕の…いや、祖父にあたる人物は、…名のある怪盗だった」

小林「…!」

姫百合「!」

シャロ「ええ!?」

ネロ「……」

シオン「…貴方も知っている名でしょう、何せ…」

シオン「祖父は、貴方と対峙して負けてから、行方不明なのですから」

小林「………」


シオン「祖父の通り名は、怪盗ジュエル・ザ・ファントム」

シオン「過去の怪盗Lと、同じくらいに強大な怪盗だったと聞く」

小林「…はい。確かに覚えています。怪盗J・ファントム」

小林「一度は追い詰めたものの、逃げられてしまった怪盗の一人です。…その後のことは、情報がなく僕も行方を追っているのですが…」

シオン「…アリスは、君のせいで祖父を失ったと思い込んでいるようだ」

シャロ「…!」

シオン「祖父は、怪盗以外の普段は、家族想いで人格者であった。…当然、アリスも俺も祖父に対しては良い思い出しかない」

シオン「…かくいう僕も、そんな祖父を追い詰め僕たちから取り上げた貴方のことは好かない」

小林「………」

シオン「…だが、貴方の弁護実績はどんな依頼者も無罪判決を勝ち取っているのは事実…」

シオン「僕にとっても苦渋の選択だが、だからこそどうしても貴方に弁護をしてもらいたいんだ!!」ダンッ

小林「………」

シオン「………頼む」

シオン「僕の妹を……、アリスを…!助けてくれ……!!」ガクッ

小林「………」

小林「………分かりました」

ネロ「!」

小林「その覚悟を、前向きに受け取っても良いのなら」

小林「是非、貴方の妹であるアリスくんを弁護させていただきます」


シオン「……!」

姫百合「…そもそも、本当にフェザーズの二人が殺人を犯していないのなら」

姫百合「真実を明らかにするだけで、無罪も同然なんですけどね」

シャロ「その通りです!何度も言っていますが、フェザーズの二人が人を殺すなんて事しません!」

ネロ「だからさ、もうちょっと妹を信じてあげなよ。小林は弁護するのは二の次で、真実を明かすのがあくまで第一なんだからさ」

シオン「…………」

シオン「…どうやら、僕は貴方をほんのちょっぴり誤認していたようだ」フッ

小林(ほんのちょっぴりか…)

スタッ

シオン「明日はよろしくお願いします。…小林”先生”」

小林「ええ。あなたも妹さんを信じてあげてください」

小林「やっていないと信じているのなら、僕がそれを証明してみせますから」ニコッ

シャロ「はい!カズミちゃんとアリスちゃんは殺っていません!」

ネロ「それさえ分かれば、後は楽勝さ!」

コーデリア「」

エリー「」

姫百合「……ええ、その通りですね」



小林(そして、今日の捜査はこれで終わった)

小林(後は、警察側が捜査している情報がハッキリするまで待つしかない)

小林(…恐らく、もう裁判に出るまで僕たちは何もできないだろう)

小林(そして僕は思い知らされる事になる。この裁判、この事件は…)

小林(….僕たちが思っている以上に、残酷で強大な憎悪と闇が、裏に隠れている事を…)

小林(…その事件の闇に、対面した時)

小林(僕たちは歪んだ戦士の姿を見ることになる…)



つづく

つまんね>>1中学生か?

探偵編終わり。
次は裁判編やります。しばらくお待ちください

証拠品整理

証拠品①【矢文】
<発光塗料を塗られた矢と一緒に結ばれていた手紙。筆跡から強い念を感じる>


→証拠品②【抽選チケット】
<トイズ割とトイズ席の番号が書かれている。二人のトイズの用途も併記されている。>



→証拠品③【現場写真】
〈二つの歯車に巻き込まれ、体は引きちぎれバラバラになり被害者の顔もろともトイズの矢が突き刺さっている〉


→証拠ファイル④【怪盗帝国からの手紙】
〈花輪小百合を怪盗に誘う旨が書かれている。送り主は怪盗帝国〉


→証拠⑤【漆黒の魔法団のチラシ】

【名前の横にトイズの能力が書かれている。花輪小百合は黒い羽を散蒔く、つげ叶は何でも一つ硬化する、丸尾椿はテレポート、ねこ千衣は触れた物を自由に動かせる】

→証拠⑥【丸尾椿(15)の解剖記録】
〈歯車による圧死もしくは失血死。死亡推定時刻は不明。顔にはトイズにより発生した矢が貫かれている〉


→証拠⑦【奇跡の少女の歯車】
〈一人の人間なら容易く圧死させることも可能な歯車。全方位の写真が送付されている。血まみれだが人が一人入れるスペースがあったようだ〉

→証拠⑧【アルバム】
〈団員達の思い出の全てが、この中に詰まっている。最初のページにはドイサースの大規模自殺があった公演日のチラシが挟まっている〉

また見れるとはおもわなかった
期待

なんでこっちなんだろう?少なくてもグロ要素はないのに

復活ktkr
本家ホームズも出てる大逆転裁判要素もあるとは、ええのう

個人的キャラのイメージ

ダークシュタインさん

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira143295.jpg

ねこ

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira143296.jpg

一部を硬くする人

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira143297.jpg

さっき気づいて追いついた
また先生の活躍が見られてうれしい

今日の深夜、もしくは明日の夜に投下予定です。

投下します

【横浜裁判所 第二控え室  12月02日 午前11時45分】


小林(…うぅ、ついに来てしまったな…殺人事件の裁判)

小林(いつ来ても、この空気は慣れないな…)

小林「…しかし、陪審員か…」

小林(平等で民主主義な判決を目的とした制度。…の筈なんだけど)

小林(何故だろう。物凄く嫌な予感しかしない)

シャロ「……先生!」ズイッ

小林「ん?…うわぁ!シャーロック!顔が近い!」ビクッ

シャロ「だって、何度呼んでも返事してくれないじゃないですか!」ムッ

小林「…え?ああ、さっきから呼んでいたのかい?」

小林「その、それは…ごめん」

コーデリア「…今日は、私達の大事な後輩、フェザーズの無実を証明する裁判ですが…」

コーデリア「いつもの事ながら、こちらが有利になる証拠品がほとんどありませんね…」

小林「まぁ、うん。いつもの事ながら…ね」

姫百合「まぁ、本当にいつもの事ですけどね」

ネロ「…いつもの事だから、気にしなくても良いんだけど…」チラッ

カズミ「………」ツーン

アリス「………」ツーン

エリー「あのお二人は…いつもの様子じゃ…ありません」


カズミ「…あっ!小林オペラさん!」パァッ

カズミ「今日一日!よろしくお願いします!」ペコッ

小林「う、うん…。君達の無罪を証明できるよう、全力を尽くすよ」

カズミ「はいっ!」

アリス「………」ツーン

コーデリア「…ところで、どうしたの?」

コーデリア「さっきから、お互い喧嘩してるようにも見えるんだけど…」

カズミ「…喧嘩?」

カズミ「喧嘩だってしますよ!そりゃぁ!」ダンッ

カズミ「小林さんが!私達を無償で!もう無償で弁護してくれるっていうのに!断固として小林さんに対してあんな態度!」

カズミ「もう!口だって聞いてやらないんだから!!」プン プン

アリス「………」

小林(…随分仲の良い喧嘩だな)

シャロ「…で、でも!でも!アリスちゃんのお兄ちゃんは小林さんにお願いしてくれたよ!?」

アリス「…!」

コーデリア「ええ!…ええ!?そうなの!?」ガビーン

ネロ「そうそう。「ウチのアリスを助けてくれー」って言ってたよ。何なら言質だってあるし」

小林「録音していたの…?」

アリス「……」

カズミ「…シオンさんも、そう言ってたの?」

シャロ「はい!アリスちゃんの事も聞きました!」

姫百合「お爺さん、名のある怪盗だったみたいですね」

アリス「………」

シャロ「お兄さんだって応援してくれてるんだから、アリスちゃんも先生に――」

アリス「余計な事を…しないでください!」ダンッ

シャロ「!?」

アリス「……」ツーン

小林(…どうやら、想像以上に傷が深いようだな…)

シャロ「ううぅ…先生、どうしましょう」


小林「……6年前、僕は確かに怪盗J・ファントムを追い詰めた」

小林「その事に関しては、僕も謝る理由が無いから、どうにもならない」

アリス「………」

小林「それに、僕は捕まえてすらいない。し、彼は行方不明だ」

小林「…少し酷い言い方だけど、今回の事件に関係ない事まで面倒は見られないよ…」

ネロ「………」

姫百合「…………」

カズミ「…そんな必要ありませんよ。小林さん」

カズミ「だって、アリスのおじいちゃんが捕まったのは自業自得なんですから!」ムキー!

小林「いや、捕まってはいないんだけどね?」

カズミ「そんな事を、こんな状況でもズルズル持ってくるなんて女々しすぎだし鬱陶しい!」

アリス「!」

アリス「カズミちゃんには分からないよ!…私の、気持ちなんか!」

カズミ「なんだとー!!」プン プン

アリス「ムッスー!!」プリプリ

カズミ「フンッ!」プイ

アリス「フンッ!」プイ

小林(…口を聞かないんじゃなかったのか?)

エリー「ううぅ…どうしよう…?」

シャロ「…そうだ!マリネちゃんの事務所の隣の空き地に私の秘密農園があります!」ピコーン

シャロ「ちょっと今から仲直りの為に私の野菜を――」

係官「弁護人!被告人!開廷の時間が迫っています!」

係官「今すぐ入廷するように!」

シャロ「あ…ああうううぅ…」オロオロ

カズミ「………」ツーン

アリス「………」ツーン

コーデリア「どっ…どうしましょう…教官」

小林「…今は、こっちの方が大事だ」

小林「彼女達は今、殺人容疑がかけられているんだからね」

シャロ「そっ…!…それもそうです…けど……」

小林(…でも、どうでも良いというわけでは無い…んだよなぁ)

小林(殺人容疑に陪審員に複数の証人…弁護側に不利な証拠…)

小林(…大丈夫だ。やれる。だって、二人を信じれば――)

小林(真実を明らかにすれば、二人の無実も明らかになる筈だっ――!!)ドンッ



【横浜裁判所  第一法廷室】



カッ!!

裁判長「これより、常盤 カズミと明神川 アリスの裁判を始めます」

裁判長「弁護側、検察側、準備はよろしいですか?」

小林「弁護側、準備完了しております」

北芝「検事側、準備完了しているわ」

裁判長「…分かりました」

裁判長「今回の裁判は、更なる正当な判決を目的に陪審員制度を採用しています」

裁判長「選ばれた6人の陪審員よ、罪を裁く覚悟は持ち合わせていますか?」


1号「ダー!!ソ連の星将軍の空の下、軍法会議を今こそ開廷する!!」バババババババババ!!

2号「はい。ソフィアちゃんの準備が完了しているのでしてー」ニコニコ

3号「…三分二十二秒の遅れがあります。早急に判決に移る事を推奨致します」ペラペラ

4号「ハイ。ワタクシニホンゴ。ワカリマセン」

5号「勿論じゃぁああ!!山本ぉ!!貴様の命もこれまでぇ!!覚悟しろぉお!!」ゴゴゴゴゴ

6号「電波を受信しています。ピコピコ。ローディングローディング…ローディング完了しましたぁー」ピコピコピコ


裁判長「……分かりました」

裁判長「それでは検察側は、今回の事件のあらましを…」

小林「ちょっと!!」


小林「あの…正気ですかっ!?」バンッ

北芝「…言いたい事は分かるわ。弁護人」

北芝「それでは、今回の事件は至ってシンプル――」

小林「異議あり!!」

小林「いやあの…本当にやるんですか!?この陪審員で!?本気で!?」

裁判長「…陪審員は、司法が厳正なチェックの下に選ばれています」

ネロ「嘘だっ!!」

裁判長「確かに、ちょっぴり個性豊かな人たちですが、判決に関しては問題ないでしょう」

北芝「そういう事。ちょっぴり個性がついてるくらいで騒ぎ過ぎなのよ」

3号「弁護側は自乗してください。貴方のせいで私のスケジュールが5分遅れです。今すぐその口を閉じなさい」ペラペラ

1号「往生際が悪いぞ弁護側よ!ヤーは既に覚悟を決めている!ヴィも軍人なら覚悟を決めろ!!」ガチャンッ カチャッ カチャッ カチャッ

5号「もう逃げられんぞ…山本ぉおおおお!!!」ゴオオオオオオ

4号「ワタクシ、ニホンゴワカリマセン」

6号「スタートボタンを押してください。スタートボタンを押してください」フラフラ

小林(…いや!これは絶対にちょっぴりでは済まされない人選だっ!!)

姫百合「…小林さん、私、今すぐ帰りたいです」

カンッ

裁判長「…それでは、気を取り直して」

裁判長「検察側は、事件のいきさつを証言してください」

北芝「…了解したわ」


北芝「今回の事件は、漆黒の魔法団というサーカスの公演の最中に行われた」

北芝「一度照明が消された後、再び点灯した。その後に観客の全員が目撃しているわ」

北芝「歯車に巻き込まれ、トイズにより発生した矢に貫かれ絶命している被害者を」

小林「…ほとんどの人が、これ以上の情報を知り得ませんでしたが」

北芝「ええ。それでも私達は被告人が殺人を犯した事を立証できるわ」

シャロ「…!」

北芝「まず、被害者の遺体の顔には常磐アリスのトイズである矢が貫かれていた」

北芝「更に、被告人以外に被害者の血液を浴びた者がいない」

北芝「そしてもう一つ、これは、天井の照明の電球の中にあったものだけど、分かるかしら?」カラッ…

小林「……これは、何ですか?」

北芝「…電気を消して、トイズ可視機を使用すると…」パチン

パッ

小林「!!」

裁判長「何と…!二本糸が直線で壁や障害物を通り抜けていますぞ!」

北芝「これは、トイズにより発生した物質に反応する特殊な糸よ」

姫百合「…!」

北芝「人間の眼球を用いた裏世界の商品だから、持っている者は限られている」

北芝「まず、トイズを持たない人間は使う事がない。更に、この糸はテントのある観客席に繋がっていた」

小林「……まさか」

北芝「そう、被告人の席…その下よっ!!」ドドンッ

小林「うっ…」

小林「うぉおおおおおおおおおおお!!!?」ガガーン


裁判長「…何と、被告人の席に、そんなものが…」

北芝「この球体は、その糸の中間点だと言う事が分かったわ」

北芝「被告人は、この糸を使い、自分の持つ矢と盾のトイズに引っかけ、被害者の元へと移動した…」

北芝「…つまり」

ダンッ!

北芝「この殺人を行える者は、被告人二人以外に存在しない!!」

北芝「それは、この隠されていた特殊糸により明らかよ!!」

小林「ぐ…ぐぅぅ…」

小林(…まさか…そんなものが…!)

→証拠⑨【トイズ糸】を証拠ファイルに収めた!
<トイズにより発生した物質に反応し、糸に沿って移動する事ができる。が、物質が無ければ何もできない>


裁判長「…なるほど。分かりました」

裁判長「確かに、これで被告人が怪しいという事実は浮き彫りになりましたな」

裁判長「…では、次に検察側は最初の証人――」

「待った!!!」

1号「――裁判長!!我々の決議は今!確定された!」

2号「うん。こんなにも犯人が明らかななんだから、ソフィアちゃんの意志を尊重するね」

3号「やれやれ、ようやく判決に移れますか」パタン

小林「…え?」

6号「ピピピー。電波を受信中。被告人は有罪ー」ピコピコ

5号「山本ぉぉお!!ワシはなぁ!最初から貴様がクロだと分かっていたぁああ!!」バシーン

4号「ワタクシ、ニホンゴガ、ワカリマセン」

コーデリア「えっ…?えっ!?」

姫百合「あ…アンタ達まさか!?」

ダンッ!

小林「ちょっ…ちょっと待って下さい!まだ、最初の証人すら――」

1号「不要だ!時間の無駄だ!これより、我々の最終決議を開示する!!」ガッチャンッ!


1号「有罪!」ボッ

2号「有罪」ボッ

3号「有罪」ボッ

4号「ユーザイ」ボッ

5号「有罪ぃい!!!」ボッ

6号「ピコーン、有罪」ボッ

ボシュボシュボシュボシュボシュボシュ

ギギギギギ…

ガタァァァァァン…!


小林「……えっ」

小林「ぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!???」ガガガガガーン!

裁判長「…これは、前代未聞です」

裁判長「まさか、証人が現れる前に判決が下されてしまうとは…」

小林「異議あり!!」

姫百合「異議あり!!!!」

姫百合「こんなの!認められるわけがありません!まだ、何の議論もしていないのに判決なんて!!」

ネロ「そうだそうだ!こんなの認めるかあー!!!」

コーデリア「弁護側は!やり直しを要求します!!」ダンダン

北芝「…どうやら陪審員達はそう考えでないみたいよ」

北芝「裁判を開くまでの事ですらない。ですって」ハンッ

ダンッ

小林「…冗談じゃありません。こんなもの…審議ですらない!!」

小林「弁護側は!ただいまの判決を断固拒否致します!!」

1号「何だと!?軍事裁判の最終判決を受け入れぬというのかっ!?」ガッチャンッ

1号「甘えるなぁ!!貴様も極刑だ極刑ぃいい!!」バババババババババ

5号「ワシは貴様を絶対に許さんぞ山本おおお!!」ダンダンダン

姫百合「…小林さん。あの陪審員達は危険です。特に1号さんと5号さん」

小林「うん。それは…見れば分かるよ」

カンッ

裁判長「…確かに、まだ、何の議論もしていない上での判決は決議に欠けます」

裁判長「しかし、陪審員の判決も無碍にする事はできません」

シャロ「そっ…そんな…」ガタガタ

裁判長「…ですので、弁護側には”最終弁論”の権利を与えたいと思います」

小林「………」

小林「最終弁論…ですか?」


裁判長「はい。今から陪審員が下した評決の理由と根拠を証言して頂きます」

裁判長「それを聞いたうえで、弁護側は弁論し評決を覆す事ができれば」

裁判長「――この審議を続けるものとします」

北芝「はん!そもそもこの陪審員達は全員もれなく被告人を疑ってるのよ?」

北芝「判決を覆す事なんて無理なのに、そんなもの本当にやるつもりなのかしら?」

裁判長「…確かに、前にも何度か陪審員制度を取り入れた裁判はありますが」

裁判長「最終弁論を成功させた前例はありませんね」

エリー「そっ…そんな…!」

小林「…………」

小林(成功した前例がない、最終弁論…か)

小林(もし、これを受けなければ…フェザーズの二人は問答無用で有罪判決を受けてしまう)

小林(そんなもの…許してなるものか!)カッ

小林「……分かりました」

ダンッ!

小林「弁護側は、最終弁論の権利を主張します!!」

シャロ「!!」

ネロ「!!」

コーデリア「!!」

エリー「!!」

姫百合「こ…小林さん!本気ですか!?」

小林「…元より、これしか手は無いんだ」

小林「それに、まだ裁判は始まってすらいない。つまり、まだ陪審員も詳しい事は分かっていない!」

小林「だから、絶対にここで終わらせてはいけないんだ!!」ダンッ!!

裁判長「…分かりました」

裁判長「それでは!これより最終弁論を行うものとする!!」

裁判長「陪審員は答えてください。被告人の有罪を確定する理由と根拠を!!」



【陪審論告】

~陪審員の主張~


1号「被害者を殺せる可能性を持つのは奴ら二人しかいない!!これは軍事裁判にかけるまでも無い!!」ババババババババ

2号「私はソフィアちゃんの言う事に従うだけでしてー」ニコニコ

3号「判決を急いでいるのです。犯人が被告人なら早急に判決を下すまでです」ペラペラペラ

4号「ワタクシ、ニホンゴ。ワカリマセン」

5号「犯人は山本じゃぁ!!奴は絶対にクロなんじゃぁああああ!!」ゴゴゴゴゴゴ

6号「電波を受信したのです。有罪だと受信したから有罪なのです」ピコピコ







小林(うわぁ…見事に主張がバラバラだ…)

姫百合「…そもそも、事件の事を全く理解していない人が何人かいますよね?」

小林「こんな判決で裁判を終わらせるわけにはいかないな…」

コーデリア「その通りです!その気持ちを奴らにぶつけて、説得してやりましょう!」ダンッ

シャロ「私達の熱い気持ちで!二人の無罪を主張するのです!!」

小林「…いや、それだけだと、ちょっと厳しい」

シャロ「え!?」

エリー「…どういう、事ですか?」

小林「一度出した評決の後に被告人の無罪を信じている僕達の言葉を彼らが耳を傾けるとは考えられない」

小林「おそらく、皆が頑張って説得だけしても逆効果になるだろう」

シャロ「そっ…そんな。それじゃぁ…」

ネロ「どうしろっていうのさ!理不尽すぎるよ!」

小林「うん。本当にね。今までの裁判の中でも今のこの瞬間が一番の理不尽だと思うよ僕も」

小林「こういう時に一番効果が期待できるのは、”陪審員達の言葉”なんだ」

エリー「言葉…ですか?」

小林「そう。だから僕達が今することは説得ではなく、彼らの理由と根拠をよく聞く事だ」

小林「その中に、彼らの評決を覆す鍵が必ず存在する。…フェザーズの無実を信じるなら、絶対にね」

カンッ!

裁判長「それではこれより、≪最終弁論≫に入ります」

裁判長「証言台へ移動の上、明確な”反証”を述べてください」

小林「……はい。了解です」


【弁論開始】


1号「被害者を殺せる可能性を持つのは奴ら二人しかいない!!これは軍事裁判にかけるまでも無い!!」ババババババババ


小林「待った!」

小林「なら、他に被害者を殺害できた人物が居れば、評決を変えてくれますか?」

1号「…どういうつもりだ?」

小林「確かに今のところは被害者を殺害できたのは被告人だけだと思われるかもしれません」

小林「しかし!審議はまだ始まってすらいないのです!」ダンッ

1号「はんっ!審議など始める必要すらないわ!!」ガッチャン

1号「ナーシ(私達)は観客席に居たのだからなぁ!!これ以上の裁判などするだけ無駄だぁ!!」バババババババババババ

小林「うわぁ!…ほっ法廷内で発砲しないでください!!」ビクッ!

1号「はんっ!この国はいつもそうだ!銃を持ちこむだけで違法だの犯罪だの!!」ガッチャン

1号「だから私が止むなく持っているのはなんだと思う?偽物だ!!」

1号「実弾が打てない虚しさを、偽物で我慢するしか無いのだぁあ!!」ババババババババ

小林「いえ、そういう訳ではなく、というか偽物でも法廷内での発砲は…」

1号「この国はいつもそうだ!偽物でも危険だから駄目とか人に向けては駄目だの!!」ガッチャン

1号「だから私が泣く泣く撃ってるのは何だと思う!?マシュマロだっ!!」

1号「プラスチックすら撃てないこの国の現状に涙するしか無いのだぁ!!!」バババババババババ

小林(この人も人の話を聞かないな…)

シャロ「あっ本当です!あの娘が撃った銃弾、柔らかくて甘い!」モグモグ

ネロ「こりゃぁ、もっともっと撃って貰った方が良いかもね!」モグモグ

小林「…落ちてるマシュマロを食べてはいけません」


2号「私はソフィアちゃんの言う事に従うだけでしてー」ニコニコ


小林「待った!」

小林「…つまり、1号さんの評決が覆された時には」

小林「貴方も評決を変えてくれるというのですか?」

2号「はい。そうするのでしてー」

1号「はんっ!!だが、それは無駄な事だな」ガッチャン

1号「私は評決を変える気はビタ一文無い!一文もだ!!」バババババババババ

姫百合「…どうやら、1号さんの評決を変えれば、一気に二票こちらに入りそうですね」

小林「はは。…うん。そうだね」

小林(1号さんは評決を変えるつもりは無いと言っているけど…まだ、審議は始まったばかりだ)

小林(つまり、そこまで詳しい事は分かっていないに違いない)

小林(それを突いて行けば、評決を覆す鍵になるかもしれないな)


3号「判決を急いでいるのです。犯人が被告人なら早急に判決を下すまでです」ペラペラペラ


小林「待った!」

小林「しかし、まだ裁判は始まったばかりです!まだ事件の詳しい事は審議すらされていません!」ダンッ

小林「そんな状態で、判決を下しても良い筈が――」

3号「…7分です」

小林「…はい?」

3号「この裁判が開廷してから、既に7分の時が経過しています」

3号「私は、後1時間後には横浜を出て新宿支部の○×ビル22階にある第三会議室に向かわねばなりません」

3号「貴方は、責任を取れると言うのですか?」

ダンッ!

3号「この重役会議に遅れた時の、私の責任を!!」

小林「そっそれは…」

3号「答えられないのならば、この審議はとっとと閉廷するべきです!後、5分以内にねっ!!!」ダンッダン

小林(…どうやら、この人は物凄く不本意に選ばれたみたいだな)

コーデリア「陪審員の選択って、時に残酷に選ばれるのね…」



4号「ワタクシ、ニホンゴ。ワカリマセン」


小林「待った!」

小林「………あの、すいません」

小林「この事件の主旨は、理解できていますでしょうか?」

4号「ワタクシ、ニホンゴ。ワカリマセン」

姫百合「…してないみたいですね」

小林「…なら、安易に評決を決める事はできない筈です!」ダンッ

4号「ワタクシ、ニホンゴ。ワカリマセン」

小林「貴方は、この裁判にただ流されているだけですよね!?」ダンッ!

4号「ワタクシ、ニホンゴ。ワカリマセン」

小林「ぐくぅ!!」グッサ

ネロ「…どうやら、全然話が通じて無いみたいだよ」

小林「…ええと、…Do you speak English?」

4号「ワタクシ、エイゴ。ワカリマセン」

小林(分かってるじゃないか!!)

姫百合「分かってるじゃありませんか!!」ダンッ

4号「ワタクシ、ニホンゴ。ワカリマセン」

コーデリア「教官!この人、私達を馬鹿にしています!絶対!!」

小林「ううぅ…どうするべきかなぁ…?」

姫百合「この人の評決を覆すのは、難しそうですね…」


5号「犯人は山本じゃぁ!!奴は絶対にクロなんじゃぁああああ!!」ゴゴゴゴゴゴ


小林「待った!」

小林「…あの、山本ってどちら様ですか?」

5号「なんじゃと…?しらばっくれるか山本ぉおおお!!」ダンッ!!

5号「貴様がぁ!!貴様がワシの大事なせがれを殺したんじゃろがぁああ!!」カァー!!

小林「覚えがありませんが…」

5号「可哀想に…!ワシが、ワシが3年かけて育てた、世界にも認められた美しい模様を持つ錦鯉と謳われたせがれが…!」

5号「せがれが昨日!死んでおったんじゃぁあああ!!」ダンッ!!

5号「貴様だけは許さんからなぁ!!山本ぉおおおおお!!!」ダンッダンッダンッダン

姫百合「…この人も、今回の事件の主旨を全く理解していないみたいですね」

小林(…この人の評決は諦めよう)


6号「電波を受信したのです。有罪だと受信したから有罪なのです」ピコピコ


小林「待った!」

小林「…その、電波…とは?」

6号「ミミミプ星から流れ出てくる、ノノの機密事項なのです。教える事はできなません」

小林「…分かりました。その電波から出てきたのは、本当に有罪判決の内容なのでしょうか?」

6号「あなたの主旨が理解できないです」

小林「いや、まだ審議も始まっていないし…。その、もしかしたら無罪判決の内容なんじゃないかなーって」

コーデリア「そうよ!だって、有罪判決も無罪判決も頭文字が違うだけでほとんど同じ文字だし!」

姫百合「いやいや!全く逆の意味ですよ!?無理があるでしょう!」ガーン

6号「理解不能です。確かに頭文字が違うだけで読み間違えた可能性は否めません。ピピピピガッシャーン」ピロピロ

6号「しかし、ノノ以外の全員が真っ黒。まるで私のパンツの色とは違う。だから多分絶対有罪なのだ」ピッコーン

小林「どういう根拠なのですか?それ…」

6号「仮に一人でもシロく無罪に判決してたら、私のパンツを確認してから評決を変えるものとする」ガシッ

姫百合「小林さん、あの人スカート掴みましたよ」

6号「その色を見て、私もミミミプ星人のプライドにかけて無罪判決と認めるのだ」ピピピッコーン

小林「あの、言っている意味がちょっと―――」

ダンッ!

ボシュ

小林「…あ?」

姫百合「え?」

シャロ「ん?」

ネロ「おっ?」

コーデリア「え?」

エリー「あっ……」

ギギギ…ガッターン

シャロ「むっ無罪に一票入りました!!」

ネロ「なっ…何で?!一体誰が…」

コーデリア「あっ…あれは!4号さん!?」

姫百合「!」

エリー「4号さんの票が、真っ白に…!」

4号「………」

小林「よ…4号さん……!」

小林(絶対…日本語知ってるじゃないかっ!!)


6号「ピピピピピ…ガッターン」ガバッ

小林「っ!」ビクッ

6号「…どうやら、私のパンツと同じ色のようなので」パッ

6号「無罪」ボッ

ダンッ!

ボシュッ

ギギギ…ガッターン

シャロ「やりました!これで二票入りましたよ!」

姫百合「何はともあれ、裁判続行に少し近づきましたね」

小林「うっ…うん……」

シャロ「どうしたんですか先生!?顔が少し赤いです!」

小林「いっいや!別に、何でも…」

ネロ「…もしかして、パンツ見て動揺しちゃってるー?」

エリー「えっ…!」

コーデリア「そっ…そうなのですか教官!」

小林「いっいや!そういう訳じゃなくて…!」

姫百合「…とにかく、まだ最終弁論は終わっていません」

姫百合「小林さんも、気を引き締めてください!」

小林「う…うん。分かったよ…」

ネロ「もー。ヒメはもうちょっと空気を読むって事意識しようよ。折角面白くなってきたのに…」

コーデリア「ネロ!教官を苛めて楽しもうとしてたわね!?」ダンッ

小林(敵が内部にも居る…)



小林(…一通り陪審員の根拠を聞いてきたけど)

小林(こんなバラバラのまま、本当に評決を下して良いと思っているのだろうか…?)

コーデリア「しかも、半数以上が普通の人間ですらないですもんね…」

姫百合「全く事件の主旨を理解していない人が二人くらい居ます」

ネロ「後、聞こうともしないで終わらせようとしてる人が一人だね」

小林「ううん、絶望的だなぁ…」

小林(とにかく、この普通じゃない根拠も詳しく聞いていこう)

小林(すれば間違いなく、武器になる証言がある筈だ!)

小林(それを、他の陪審員の主張にぶつけてやれば、突破口はある!)



5号「犯人は山本じゃぁ!!奴は絶対にクロなんじゃぁああああ!!」ゴゴゴゴゴゴ

↓ぶつける

1号「被害者を殺せる可能性を持つのは奴ら二人しかいない!!これは軍事裁判にかけるまでも無い!!」ババババババババ


小林「異議あり!!」

小林「この二つの主張は、明らかに矛盾しています!」

裁判長「…どういう事ですかな?」

1号「…そうだ!どういう事だ貴様…!」ガッチャン

1号「この私を嘘つき呼ばわりとは、よほど軍法会議にかけられたいみたいだなぁ!!」バババババババ

5号「そうじゃぁ!どういう意味じゃ山本ぉおお!!」ダンッ

小林「…1号さん。先ほど貴方は言いましたよね?」

小林「被害者を殺せる可能性があるのは、被告人の二人だけだって」

1号「…確かに、言ったが?」

小林「しかし、5号さんはしきりに言っています」

小林「この事件の犯人は、山本だと」

5号「そうじゃ!犯人は…貴様じゃ山本ぉおおお!!」ダンッダンッ

姫百合「…あの、小林さん?」

コーデリア「まさか…」

小林「そう、つまり…」

小林「犯人は、別に居るという事実に他なりません!!」ビシィッ

シャロ「………」

ネロ「………」

エリー「………」

5号「そうじゃ!この事件の真犯人は被告人じゃない!!」

5号「貴様じゃぁ山本ぉおお!!せがれを返せぇぇえええ!!!」ダンダンダン


姫百合「…あっあの、小林さん。本気なんですか?」

1号「……クッ!確かに!」

1号「他に殺人鬼が居る可能性が証明された以上、うかつに判決を下せない!」ダラダラダラ

3号「…え?」

1号「…致し方ない。ソ連兵士に二言は無い」

1号「この裁判、もう少し見届けてやるとしよう。貴様の覚悟を認めて!」ボッ

2号「それじゃぁ、私も便乗するのでしてー」ボッ

ダンッ

ダンッ

ボシュシュッ

ギギギ…ガッターン

3号「…なっなんだとぅー!!」ガーン

カンッ!

裁判長「…ただいまの最終弁論の結果、評決が変更されました」

裁判長「有罪が二人、無罪が4人…したがって、本法廷は現時点で評決不一致とみなして」

裁判長「審議の続行を行うものとします!」カンッ!

北芝「…………」

シャロ「やっやりました先生!評決を覆しましたよ!」

ネロ「うん!僕もう駄目だと思った!さっきのは!!」

コーデリア「よっ良かったですねー!さっさっきの説得ー」

姫百合「わっ私もー、良かったと思いますよー?」

エリー「………結果、オーライ…です」

小林「…うん。分かるよ。君達の言いたい事は」

小林「正直僕も、押し通せて良かったと思っているよ、心の底から」

北芝「…ヘンテコな反論で、評決を覆せておめでとう。弁護人」

北芝「だけど覚えておく事ね。こいつらが、こんな早急に有罪判決を下した意味を」

小林「…!」

シャロ「…ど、どういう意味ですか?」

ダンッ

北芝「…陪審員は、早急に判決出来るほどに心の奥底から被告人二人を疑ってるって事よ!」

ネロ「…!」

コーデリア「…!」


北芝「…今回の敵は、私だけじゃない」

北芝「せいぜい今回の裁判、醜くのたまうがいいわ」

小林(確かに、彼らの評決は覆されたとは言え異常に早かった)

小林(…どうやら、僕達にとってかなり厄介な存在なのは確かのようだな)

カンッ

裁判長「それでは!検察側は最初の証人を――」

3号「ああああぁぁあああぁぁあぁぁっぁぁぁああぁぁぁあああああああ!!!!!!」

小林「!?」

裁判長「!?」

シャロ「!?」

姫百合「!?」

ダンッ

3号「…貴様ぁ…!弁護士ぃ!!貴様のせいでぇぇ…!完全に遅刻ではないかぁあああ!!」

3号「もう間に合わない…会議がぁあ!!スケジュールが!!あああああああああああああああああああああああ↑!!!!!!!!」

裁判長「…そうですか」

裁判長「それでは、これからはゆっくりと審議していくとしましょう。検察側は最初の証人を召喚してください」

北芝「…了解したわ」

北芝「係官!最初の証人をここに連れてきなさい!!」



神津「…………」

北芝「それじゃぁ神津くぅん!貴方の名前と職業を言ってもらえる?」

神津「……神津玲。今は警視正をしている」

北芝「うんうん!立派な出世コースまっしぐらで将来有望ね!」

「警視を品定めするんじゃないわよこのババァー!!」

「はいはい小衣落ちつこうな。また追い出されたく無いだろ?」

シャロ「ココロちゃーん!法廷内ではお静かにー!」

「ココロちゃん言うなぁー!!」

北芝「それで、この事件について詳しい証言、お願いできるかな?神津くん!」

神津「…それは承知してるが、いいのか?」

神津「陪審員の一人が、首を括ろうとしているぞ」

3号「…」キュッ

裁判長「係官!今すぐ止めてください!」

係官「了解です!」ダッ

3号「はっ離せぇぇ!!私のスケジュールは狂った!道から外れた!もう死ぬしか無いんだぁああ!!」

3号「死んでやる!この裁判に最も迷惑をかける方向で命を使ってやる!!うわぁあああああああ!!!」

小林(なんて迷惑な人なんだ…)

北芝「問題無いわ。それじゃぁ早速証言してちょうだい!神津くぅ~ん!」キャピ

神津「…承知しました。」



【証言開始】


①「場所は横浜みなとみらいに建てられたサーカステントの中で起きた」

②「犯行時刻は11時45分。奇跡の少女の公演の開始直後に、それは起こった」

③「証明の暗転までは予定通りだったが、再び明るくなった時、それは現れた」

④「血まみれの被告人二人の後ろに、トイズの矢に貫かれ歯車に巻き込まれた無惨な被害者の姿が――」

⑤「トイズ糸が被告人の席からのびているのを発見。検察側は被告人をサイコパス殺人者と断定している。」





小林「………」

神津「…以上が、警察側が被告人を告訴した理由と根拠だ」

裁判長「…なるほど。分かりました」

北芝「神津く…証人が言うように被告人の二人は客席から一瞬のうちに移動していた」

北芝「トイズでしか接触できない糸を使ってね」

小林「待った!」

小林「しかし!彼女達には動機がありません!それを証明できなければ――」

神津「――サイコパス殺人では、動機は大して意味を持たない」

神津「何故なら、サイコパスの殺人動機は我々の理解しないものや無い物が多いからだ」

小林「しかし――」

北芝「一応、無い訳では無いのよ。大して意味が無いだけで逮捕には必要な事だし」

北芝「被告人の一人は、過去に怪盗の経験があるそうね」

小林「!」

北芝「更にサーカス団はトイズを魅せる事から、怪盗からも目をつけられている…」

北芝「これだけで様々な動気の立証が可能よ。更に、」

北芝「トイズ糸が使われている以上、トイズ所持者が真犯人であるのは間違いないわよ」

北芝「更に、糸は被告人の席にあった事から、検察側は被告人二人以外に犯行は不可能だと断言するわ」

小林「ぐっ…!」

カッ

裁判長「…それでは、弁護人。尋問をお願いいたします」


【尋問開始】



①「場所は横浜みなとみらいに建てられたサーカステントの中で起きた」


小林「待った!」

小林「犯行場所は、本当にそこ間違いないのか?」

神津「…そもそも、あんな巨大な建物を間違う筈が無いのだが」

北芝「あのテントも銃弾は貫通しない特殊なものを使用しているし、寧ろその中以外での犯行は不可能よ」

小林「いえ、死体が見つかったのはあくまで死んだ状態のままです」

小林「殺害された場所は、他ではありえなかったのですか?」

神津「あり得なかった」

コーデリア「そんなキッパリと答えられるなら、ちゃんとした証拠があるんでしょうね!」ダンッ

神津「…証言は最期まで聞け」

神津「死亡時刻こそハッキリしなかったが、犯行時刻は正確に把握できている」



②「犯行時刻は11時45分。奇跡の少女の公演の開始直後に、それは起こった」


小林「待った!」

小林「奇跡の少女…、結局内容はどんなものだったんだ?」

神津「…情報提供者の独特なニュアンスのせいで詳しい事までは把握できなかったが」

神津「どうやらあれは、入れ替わりを主題とした手品だったようだ」

小林「…手品?」

神津「歯車の中に入れば、出口から出てくる者は全く違う人物で」

神津「中からはウサギやら蛇、揚句の果てには虎など人外も現れたようだ」

神津「被害者がその中に入り、他の二人が葡萄酒とパンを入れた瞬間に次々と客や多種の動物が現れる…」

神津「それが、奇跡の少女の全貌のようだ」

小林「…それは、被害者のテレポート能力を使っての事かい?」

神津「ああ。そうだ」

小林「……一つ、疑問があるんだけど」

小林「被害者は、殺害される前にテレポートをして逃げる事はできなかったのかな?」

北芝「…真っ暗闇の中で、被告人が不意に襲ってきてる時に?」

北芝「面白いわね。貴方はできるのかしら!?真っ暗闇の中でそんなアサシンみたいな事が!」ダンッ

小林「…無理かもしれません」

北芝「はんっ!だったら神津くんの証言に難癖つけるんじゃないわよ!!」

小林(純粋な疑問だったんだけどな…)



③「証明の暗転までは予定通りだったが、再び明るくなった時、それは現れた」


小林「待った!」

小林「…明るくなった時、被告人は被害者を殺す瞬間が映されましたか?」

神津「いや、その時は既に殺された後だった」

小林「なら、被告人が殺したという証明には――」

北芝「異議あり!!」

北芝「現場では、被告人以外殺人ができる者は誰ひとりとして居なかった!それを断言しているのよ!?」

北芝「それに、まだ証言は終わっていないわ!それ以上難癖付ける気なら、退廷させるわよ!」

シャロ「異議あり!!」

ネロ「例え証人が誰であれ、弁護側は難癖をつける権利がある!!」ダンッ

コーデリア「検察側だって、同じような事してるじゃない!」ダンッ

姫百合「弁護側の権利を潰そうとしないでください!!」ダンッ

北芝「ぐっ…!ぬぬ…」

小林(…凄いな、総攻撃だ)

神津「…難癖をつけるのは構わないが、ちゃんとした根拠を提示する事だな。小林」

小林「そこで僕を睨むのか…」


④「血まみれの被告人二人の後ろに、トイズの矢に貫かれ歯車に巻き込まれた無惨な被害者の姿が――」



小林「待った!」

小林「…他に、歯車の近くに居た者は?」

神津「…傍には、サーカスの関係者以外誰も居ない」

神津「強いて言うなら団長が一番近かったが、被害者の血痕は付着していなかった」

北芝「…現場で被害者の血痕を浴びていたのは被告人二人だけよ」

北芝「それを示しているのは一つ、至近距離で被害者を殺害した事他ならない!」ダンッ

小林「異議あり!」

小林「しかし、被告人のトイズは”アロー”と”バウンド”です!遠距離でも十分に殺人ができる!」

小林「わざわざ凶器の近くに行って殺人を犯すなんて、考えられません!」

北芝「異議あり!!」

北芝「遠距離から犯行を犯せば、自己紹介しているようなものじゃない!」

北芝「更に言えば被害者の顔にはその”アロー”が貫いていたのよ!?これは、被告人が殺人を犯した確かな証拠よ!!」ダンッ

北芝「それも、バウンドを使えばさぞ強力な威力でしょうね!!」

小林「ぐっ…!」

神津「…被告人は12歳前後だった」

神津「爪が甘かったと、警察はそう考えている」

ネロ「くっそー!動機なんてコジツケで何とかなるからってー!」

シャロ「カズミちゃんとアリスちゃんを馬鹿にしないでくださいー!!」

神津「…証言を続けさせて貰おう」


⑤「トイズ糸が被告人の席からのびているのを発見。以上の事から検察側は被告人をサイコパス殺人者と断定している。」



小林「待った!」

小林「…そのトイズ糸というのはどういう代物なんだ?どこから来たんだそんなものは」

神津「……それは、警察にも良く分かっていない」

小林「…分かっていない?」

北芝「トイズ糸は主に裏ルートからでしか入手する事ができないのよ」

北芝「何せ、今のところトイズ所有者の眼球を用いないと作れないのだから」

小林「!?」

コーデリア「ト…トイズ使用者の…眼球!?」

神津「…その通りだ」

神津「怪盗の間でも、トイズ所有者の眼球を狙うものも多い。非常に高値で売れると聞くからだ」

神津「逃走路の確保、暗殺の応用、使い方は様々だが非常に利用価値が高いと見れる」

神津「…公にはされていないが、過去にも眼球を抉られた事例が存在している」

北芝「暴力団の中では、不用になったトイズ持ちの組員の眼球を抉り売りに出されるとも聞くわ」

小林「…そんな…恐ろしい物が…!?」

神津「…ああ。被告人二人が独自ルートで購入した可能性がある」

神津「もしくは、誰かに譲り受けたか…だが。どちらにせよ、それらを追跡するのはほぼ不可能だ」

小林「なっなら、それが被告人の物である可能性だって…」

北芝「異議あり!!」

北芝「答えの無い議論をするつもりは無いわ。証言はここで終了よ!!」ダンッ

神津「…ああ、これらを持って俺達は」

神津「被告人をサイコパス殺人罪の容疑として告訴する」

小林「くぅぅっ…!!」

小林(…くそぅ…トイズ糸…かっ……)

小林(そんなものがあるなんて…聞いてないぞ…)

シャロ「わっ…私も…怖い人に眼球取られちゃうんですか…!?」

コーデリア「やっやめてよシャロ!わっ私だって…怖くなっちゃうじゃない…!」ガタガタ

エリー「あうあう…あうあうあう…」プルプル

小林(…こっちもこっちで、大変な事になってるな…)

小林(しかしどうだろう。この証言…)

小林(もっと、言及してみるべきか?)

  →言及する

    言及しない


小林「…裏ルートと言う事は、怪盗なら容易に手に入るという事でしょうか?」

神津「そういう問題ではないが、…その通りだ」

小林「そして、決定的な証拠はそのトイズ糸…なのですよね?」

神津「…まぁ、その通りだ」

小林「神津」

小林「その事を、証言に加えてくれないか?」

北芝「!」

神津「…どういう事だ」

小林「頼む、とても重要な事なんだ」

小林「弁護側は、その証言を加える事を要求します!」

北芝「ちょっと!何を勝手に――」

裁判長「…弁護側の要求を認めます」

北芝「!」

ネロ「よっし!」

神津「………承知した」


⑤「トイズ糸が被告人の席からのびているのを発見。以上の事から検察側は被告人をサイコパス殺人者と断定している。」

↓追加

⑥「トイズ糸は裏ルートで手に入れる事ができる。主に怪盗側の人間だ」



⑥「トイズ糸は裏ルートで手に入れる事ができる。主に怪盗側の人間だ」


小林「待った!」

小林「それならば、被告人がそれを手に入れたという根拠を――」

北芝「異議あり!!」

北芝「だから!無理だって言ってるでしょうが!!」

北芝「匿名ブラウザと裏社会のネットワークを通じてじゃないと無理なのよ!?使い方さえ分かれば手には入るけど、ルートを探るのは不可能!」

北芝「誰が手に入れたなんて、この法廷では何の意味も持たない!!」ダンッダンッ

小林「………」

小林(ルートを見つけるのは不可能。それならば…)

小林(”そこ”だけは不安定な証言という事だ)

小林(この証言を上手く突けば、他の可能性を提示できるかもしれない)

小林(……まずは、証拠品を見直してみよう)



姫百合「…さすがに神津警視は、隙の無い証言をしますね」

コーデリア「どこにツッコミを入れれば良いのか、私には分かりません…」

小林「…そうだね。この証言だけではツッコミの入れようがない」

小林「まだ審議は始まったばかりだ。神津から情報をどんどん引きだそう」

小林「その中にきっと、答えがある筈だ」

小林(もう一つの可能性を示す、答えが―!)

しばらくお待ちください…


⑥「トイズ糸は裏ルートで手に入れる事ができる。主に怪盗側の人間だ」に

↓を突きつける

→証拠ファイル④【怪盗帝国からの手紙】



小林「異議あり!!!」

ダンッ

小林「…悪いけど神津、警察側の告訴がそれだけなら…」

小林「被告人を犯人だと断定する事は、できない」

北芝「何ですって…!?」

神津「…ほう」

小林「まず、こちらを見てください」ピラッ

裁判長「はいはい。どれどれ……」

裁判長「こっこれは!怪盗帝国からの招待状ではありませんか!!」

北芝「!」

神津「…!」

小林「その通りです。このサーカスの団長は、怪盗への誘いの手紙が来ています」

小林「つまり、団長も怪盗を兼業している可能性があるのです」

北芝「…それが、何だと言うの」

小林「…弁護側は、召喚を要請します」

小林「漆黒の魔法団の団長、花輪小百合さんに!!」ダーン


ザワザワ…ザワ…

カンッ!

裁判長「静粛に!静粛に!」

裁判長「…まさか、その団長を殺人犯の容疑で告訴するのですか?」

小林「…いえ、そうではありません」

小林「あくまで確認の為です。彼女がこの誘いに乗ったのかどうか」

北芝「…何よ、さっさと言ってしまいなさいよ」

北芝「どうせアンタの事だから!そいつが人を殺したと言いたいんでしょう!?まどろっこしい事すんなっての!!」ダンダン

小林「異議あり!!」

小林「…確かに、彼女も殺人をしている可能性がある事を否めません」

小林「しかし、今のこの状況では立証はほぼ不可能です!!」ダンッ

姫百合「私達は!検察側のように雑な告訴を許すわけにはいかないのです!!」

北芝「なっ…なんですってぇえええ!!?」ダンダンダン

小林(凄い事言ったな…姫百合くん)

カンッ

裁判長「…弁護側の意図は、良く分かりました」

裁判長「それでは、漆黒のまちょ…漆黒のまも…しっぽ…」

裁判長「…サーカスの団長を、検察側は連れて来て下さい」

小林(今噛んだな、裁判長)

姫百合「噛みましたね…今」

シャロ「噛みまみた!さいばんしょーさん!」

小林「…うん。僕は何も言わないよ。シャーロック」



小百合「…………」

北芝「…証人、名前と職業を」

小百合「………クックック…我の名を要請し召喚するというのか?それが魔族解放の鍵とも知らず…」

小林「………」

北芝「……は?」

小百合「良いだろう、申そうでは無いか。世界樹の精に伝えておけ!我が名は漆黒の魔術師(ダークシュタインズ)だ!!!」ドドーン

小百合「漆黒の魔法団で、世界のマナを集め黒きサタンを背中に宿いし民衆の絶叫をもたらす……」

小百合「闇の世界の、魔王だっ!!」ババーン

小林「………」

北芝「………」

裁判長「………あの」

裁判長「証人は、一体何を言っておられるのですかな?」

小林「分かりません……」

北芝「…おい、私達を馬鹿にしてるのか?」

小百合「クックック…違うな。ここは裁きの地。我がここに立つという事は、ラグナロクが始まるのだろう!?」

北芝「……は?」

小百合「良かろう!語ってやろうではないか…我が世界の歴史と全てを!!」ババーン

北芝「あー…分からぁあん!!黙れぇえ!!この中二病!!!」ダンッ ダンッ

小百合「うひぃ!?」ビクッ

北芝「私達の分かる言葉で喋れ!喋らないと法廷侮辱罪を施行させて、刑務所に送るわよ!!!!」

小百合「ぴっ…!!……花輪小百合です。漆黒の魔法団の団長をしています…」

小林(弱っ!)

北芝「…よーやく分かる言葉が出てきたわ」

裁判長「それは良かった。特殊な言葉が飛び交う裁判の中で審議できる自信がありませんでしたから」

裁判長「それでは証言して頂けますね?証人」

裁判長「貴方達サーカス団の事について、話せる事を全て話して下さい」


【証言開始】


①「聖騎士4天皇の我らは以前、孤独の戦いであった」

②「しかし、三人の我が友が舞い降りた時、我らは4天皇となった」

③「強固なる絆と共に、我らが力は強大していった…」

④「だが、その絆も失われた…ゴドムとソドラによって!!」ダンッ!



北芝「………」

小林「………」

裁判長「…どうやら、戻ってしまったようですな」

北芝「…これを記録しなきゃいけないのが一番の拷問だわ…」

小林「…(これを…尋問しなければならないのか)」

北芝「もういい。もう分かった。じゃぁ後は頼むわね弁護人」

カンッ

裁判長「それでは、弁護人は尋問をお願いします」

小林「…早急に僕に回そうとしないでください」

小百合「フゥーハハハ!!」



【尋問開始】


①「聖騎士4天皇の我らは以前、孤独の戦いであった」


小林「待った!」

小林「…え、ええと、ちょっと待って下さい?」

小林「……4人になる前は、一人で活動していた。という事でしょうか?」

小百合「……貴様は、あのゴドムとソドラの仲間だな?」

小林「え」

小百合「酔狂な!そのような者に情報を与えるわけにはいかぬ!!」ダンッ

小百合「我が重要な記憶を、貴様らの手で改惨などされてたまるものかっ!!」クワッ

姫百合「…どうやら、全然信用していないみたいですね」

小林「あ、あの。証言してくれないと裁判が進まないのですが…」

小百合「神殺しに塩を贈るくらいならば、我はこの舌を噛み切って死ぬ!!」

ダンッ!

姫百合「証人!」

小百合「ひぃっ?!」ビクッ

姫百合「本当に舌を噛み切るのであれば、止めはしません」

姫百合「できるものなら、今すぐやってください!!」ダンッ

小百合「…あ、…あうぅ…」ビクビク

小百合「……椿ちゃんとつげちゃんとねこちゃんが入る前は、一人で手品やってたの…」

小林「………」

北芝「………」

裁判長「…それは、なんとも寂しいサーカス団ですね」

小百合「…うっ…ううぅ…」プルプル

小林(…苦労していたんだな…)

裁判長「それでは証人。証言を続けてください」



②「しかし、三人の我が友が舞い降りた時、我らは4天皇となった」


小林「待った!!」

小林「…それは、何年ほど前の事なのでしょうか?」

小百合「…クックック!月の変わりが6となり、隣合わせになる時、三人は舞い降りた…」

小百合「我は、孤独から脱却し4人の聖戦士として世界と戦っているのだ!!」バッ

小林(…何と戦っているんだ?)

シャロ「団長さん、お友達の事になると嬉しそうに証言しますね!」

姫百合「…月の変わりが6回。という事は半年前の事でしょうか?」

ネロ「以外と近いんだね」

小百合「フハーッハッハ!我ら4人が揃えば!世界を掌握するのも容易い!」

裁判長「…その内の一人がお亡くなりになった事、心苦しく思います」

小百合「…………」

小百合「うっ…うううっ…うっ…」ポロポロポロ

シャロ「あー!裁判長さんが証人を泣かせたー!!」

コーデリア「何て酷い!軽蔑します!」

ネロ「見損なったよ!!」

エリー「最…低……!」グスッ

裁判長「えっ…?えっ!?」ギクッ

北芝「…裁判長」

北芝「失礼だけど、今のは無かったと思うわ」

裁判長「………っ!?」ガーン

小林(可哀想に…裁判長総攻撃だな)


③「強固なる絆と共に、我らが力は強大していった…」


小林「待った!」

小林「…つまり、彼女達三人が入団した事で評価が上がった。と考えても良いのでしょうか?」

小百合「愚問!我が漆黒の魔法団は一人では成しえなかったのは確実だった!」

姫百合「まぁ、一人だと団にはなりませんからね」

小百合「母と別れ、父が死別し…仲間のいない世界で一人、孤独の中で私は悟った」

小百合「例え魔王であれど、一人では帝国にすらならぬと!!」ババーン

小林(…想像以上に辛い境遇の中に居たみたいだ)

小林(どうする?心の傷を抉るようだが…何か聞いてみた方が良いだろうか?)


→【家族の事】

→【一人ぼっちの学園生活】


訂正

③「強固なる絆と共に、我らが力は強大していった…」


小林「待った!」

小林「…つまり、彼女達三人が入団した事で評価が上がった。と考えても良いのでしょうか?」

小百合「愚問!我が漆黒の魔法団は一人では成しえなかったのは確実だった!」

姫百合「まぁ、一人だと団にはなりませんからね」

小百合「母と別れ、父が行方不明…仲間のいない世界で一人、孤独の中で私は悟った」

小百合「例え魔王であれど、一人では帝国にすらならぬと!!」ババーン

小林(…想像以上に辛い境遇の中に居たみたいだ)

小林(どうする?心の傷を抉るようだが…何か聞いてみた方が良いだろうか?)


→【家族の事】

→【一人ぼっちの学園生活】


→【家族の事】を選ぶ

小林「…大分辛い境遇を受けて育ったみたいですが」

小林「良ければ、家族の事についてお話願えますか?」

小百合「…それは、この裁判に必要な事なのか?」

小林「え?」

小百合「我の家族の事は、本当に事件と関係あるのかと聞いている!!」ダンッ

北芝「…確かに、全く関係無い事に思えるわね」

裁判長「ふむぅ…確かに」

小林「……」

小林「確かに、この事件の事には関係無い事かもしれません。ですが」

小林「今聞く事は、事件の背景を知る為ですよね?」

裁判長「!」

北芝「………」

小百合「…?」

ダンッ

小林「…では、話して下さい証人。貴方の家族の背景を!」

小百合「……なっ何故だ!?何故そこまでして知ろうとする!?」ガーン

小林(……探偵の勘。とか言ったら、総攻撃を喰らうんだろうなぁ)

小百合「グヌヌ…!分かった!だが、この事件とは一切関係ないぞ!」

小百合「せいぜい無意味な時間を堪能するがいい!ゴドムとソドラの使用人め!!」ダンッ

小林(…僕が仕えてるのはカズミくんとアリスくんの二人なんだが…)

小林(名前を覚えようともしていないな。この子…)


→⑤「母は幼き頃に別居し、父は行方不明だ!それ以外に家族はおらぬ!!」が追加


④「だが、その絆も失われた…ゴドムとソドラによって!!」ダンッ!


小林「待った!」

小林「しかし、被告人二人は殺人を犯していないと主張しています!」

北芝「異議あり!!」

北芝「被告人には発言力は一切存在しない!!それを分かって反論しているのかしら!?」

小百合「そうだ!罪人の意見など戯言当然!聞くに値しないのだ!!」ダンッダンッ

小百合「このっ…返せ!椿ちゃんを返せ!!ううぅ…返せぇ!!」ポロポロポロ

小百合「返せ…返してよぉ…ううぅ…うぇぇぇ……」グスッグスッ

小林(…やっぱり、今この証人は感情が不安定のようだ)

小林(こんな状態の証人に証言をさせても良いのだろうか?)

シャロ「うう…団長さん、なんだか可哀想に見えてきました」

コーデリア「そうよね。恨む相手を間違えてるとは言え、親友を失ったんだもの」

裁判長「…その気持ちは、私も痛い程に分かります」

裁判長「しかし、ここは裁きの場。感情は心証にこそなれど証拠にはなりません」

小百合「ううぐぅ…しんしょーってなんなのぉ…?しょーこってなんなのぉ…」グスッグスッ

姫百合「…何か、泣くたびに幼児退行していませんか?あの人」

ネロ「赤ん坊になる前に、全ての証言を吐かせた方が良いね!」ダンッ

小林「…君達も酷いな」



⑤「母は幼き頃に別居し、父は行方不明だ!それ以外に家族はおらぬ!!」


小林「待った!」

小林「…母親と父親の名前までは、覚えていませんか?」

小林「後、できれば職業を…」

北芝「異議あり!!」

北芝「証言以上の情報はこの法廷には不必要!余計な発言は控えてもらえるかしら!?」

小百合「…それは、そうだ!確かに――」

北芝「どうせ!この証人の頭では覚えてないでしょうしね!!」ダンッ!

小百合「なっ――失礼な!!」

小百合「覚えてるもん!そりゃぁ、お母さんは他の男の所に行ったから分かんないけど…」

小林(重すぎる…!)

小百合「でもお父さんは立派な人だもん!覚えてるんだもん!!」プンップン

姫百合「…父親の事になると、口調が戻りましたね」

小林「ずっと、このままだったら良いんだけどね」

小百合「お父さんは立派なマジシャンで!あの”ドイサース”の団長なんだから!!」

小林「……えっ!?」

ダンッ

小林「証人!それは本当ですか!?」

小百合「勿論だ!ただ、6年前から行方が分からなくなって――」

小林「証人!それを証言に加えてください!!」

小林「それは何よりの、重要な証言です!!」カッ

小百合「…ほう、我の父に強く敬意を示すとは、貴様、なかなか見どころがあるではないか」

小百合「よかろう!我が父の名、証言に付け加えてしんぜようぞ!!」


→⑤「母は幼き頃に別居し、父は行方不明だ!それ以外に家族はおらぬ!!」

     →⑤「母は幼き頃に別居、父は偉大なドイサースの団長だった!!」に変更



小林「…彼女についての証言は、これくらいか」

姫百合「一聞しただけでは全然分かりませんね…」

小林「そうだね。これは証言から更に情報をゆさぶる必要がある」

小林「彼女の不可解な言葉の中に、重要な意味が隠されている可能性があるからね」

シャロ「…なるほど!それではネロもお願いします!」

ネロ「いや、さっきから意味を読み取ろうとトイズも使ってるんだけど…かなりキツイよこれ」

ネロ「誰か…交代して…」

コーデリア「ネロ!貴方以外に誰が読心術できると思っているのよ!」

エリー「ネロしか…できない……」

姫百合「頑張ってください。ネロさん!」

ネロ「ううぅ…もう僕泣きそう…」

小林(…ネロの心が折れる前に、証言を終わらせないとな…)

しばらくお待ちください…


⑤「母は幼き頃に別居、父は偉大なドイサースの団長だった!!」

↓突きつける

→証拠⑧【アルバム】 を突きつける


小林「異議あり!!」

小林「…証人、こちらのアルバムをご覧ください」

小百合「…なっ!それは!我が団員、ねこちーのアルバムではないか!」

小林(ねこちー…)

シャロ「可愛い呼び名ですね!」

小百合「ねこちーが見つからないと言っていたが…貴様が持っていたのか!返せ!!」

小林「…花輪さん」

小林「貴方はこのアルバムを、詳しく見た事がありますか?」

小百合「ふん!侮るなよ…、我は、ねこちーと叶ちゃんから横からの観覧を許可されているのだ!」

小林「…つまり、自分から見た事が無いのですね?」

小百合「…………」

小百合「…なっ何を言っている!そもそも、人のアルバムは勝手に見たら…駄目なんだぞ!」ダンッ

小林「そっそれは……ご尤もですけど」

姫百合「痛い所を突かれましたね」

小林「…それじゃぁ、こちらのページは見た事が無いのですね?」ペラ

小百合「何を…あっ!これは!?」

小百合「おっ…お父さんのサーカスのチラシ!」

北芝「…なっ!?」

裁判長「何ですって!」

小林「…そう。更にこの日付、覚えがありませんか?」

小林「サーカス団ドイサースにとって、とても重要な日なのですが」

小百合「……こっこれは…!」

小百合「6年前……お父さんが最期に仕事をした日だ!」ガーン

北芝「……なっ」

北芝「なんですってぇえええ!?」ガガガーン

ダンッ

小林「…そうです。貴方の父親は、この日を境に行方不明になっているのですね?」

小百合「うっ…うん!あっ!いや…うむ!我が叔母…悪魔騎士の一人が!我に耳打ちでそう伝えた!」

小林「やはり、親族から語られたのですか…分かりました」

小林「では、今から本当の事を弁護側が証言します」

小百合「本当の事…?」

北芝「…ちょっと待って、6年前…ドイサース…そしてそのチラシのデザイン…」

北芝「…ま、まさか…!」

ダンッ

小林「…花輪さん。大変心苦しい事なのですが…」

小林「貴方の父親は…、この日を境に死んでいるのです」

小百合「………え?」


小林「この日、テント内で事故が起こりました」

小林「…貴方の父親が機械の中に入った瞬間に、それは行われたのです」

小林「大規模な、観客を大勢巻き込んだ大爆発が…」

小百合「…………え?」


ザワザワ…ザワ…

カッ


裁判長「静粛に!静粛に!」

裁判長「…その事件は、私も分かっております」

裁判長「それは…本当に、とても残酷な…」

小百合「待った!!」

小百合「なっ…何なの…?それ…。嘘…絶対嘘だ!」

小百合「信じない…!私は、絶対に信じないんだから!!」ダンッ!!

北芝「…そもそも、その事故が今回の事件に何か関係あるのかしら?」

小林「……!」

ダンッ

北芝「私には、全く関係無い事件を持ってきてこじつけようとしてるように見えるけどね!?」

小百合「そっそうだ!信じない!我はそのような戯言信じないぞ!!」

小林「…ドイサースはこの事故の前、多くの噂が飛び交っていました」

小林「父親は隠していたように思えますが、何か心当たりがありませんか?」

小百合「…!」

小林「僕も当時、依頼があってドイサースの事を調べていた時期があったのですが」

小林「確実な証拠はなく、悪い噂もほとんどがねつ造によるものでしたが、一つ」

小林「…怪盗と繋がりがあったのは、間違い無かったようです」

小百合「…え?」

北芝「…それが、どうかしたの?」

小林「小百合さん。貴方の最近心当たりがありますよね?」

小百合「………」

小林「貴方と怪盗とつなぐ、とある証拠品も存在します!」

カンッ

裁判長「そっそれは!一体何だと言うのですか!?」

北芝「…だったら、提出してもらおうかしら?」

北芝「この証人が、怪盗と繋がってるっていう証拠を!!」



→証拠ファイル④【怪盗帝国からの手紙】

小林「これだ!」

小林「…怪盗帝国から、貴方宛てに手紙が届きましたよね?」

小百合「!」

小林「そう、こちらがその手紙で、間違いありませんか?」

小百合「あっ…あ!?どうして!?」

小百合「私…間違い無く捨てた筈なのに!!」

ピラッ

裁判長「これは……ああっ!確かに怪盗帝国って書いてあります!」

北芝「!!」

小百合「ちっ…違う!」

小林「何が、違うと言うのですか?」

小百合「だって私…確かに、お誘いは来た、でも!」

小百合「ちゃんと断った!我は魔王だと怪盗である器ではないと!更におととい来るがいいともな!!」

小林「断った…?」

シャロ「一体、どうして断ったんですか!?」

小百合「だっ…だって…」

小百合「泥棒なんて…悪い事だもん!!」ドーン


小林「………」

北芝「………」

裁判長「………」

裁判長「…これは、完全無欠の正論ですね」

北芝「どんな証拠品突きつけても、突破はできないわね」

小林「………はい。分かりました」

カンッ

裁判長「それでは、もう聞きたい事は聞いた事と思います」

裁判長「もうそろそろ、この証言を終わらせても宜しいかと…」

シャロ「!」

シャロ「どっどうしましょう先生!証言が終わってしまいます!」

姫百合「そ、そんな事言われましても…あんな正論を崩す事は…」

小林「…いや、正論を踏まえると、新しい疑問が生まれるよ」

ネロ「…え?」

コーデリア「どっどういう事ですか?教官!」

小林「考えても見てくれ、彼女は怪盗とのお誘いを断った。更には手紙も捨てた」

小林「なら、どうしてこの手紙は今もこうして残っているんだ?」

シャロ「……あっ!!」

裁判長「それでは!これでこの方の証言を終わ――」

小林「待った!!」

ダンッ

小林「…その前に一つ、質問をよろしいでしょうか?」

裁判長「…一つだけ、ですか?」

小林「はい。今ハッキリとさせたい事があるのです」

小林「証人、貴方は本当にこの手紙を処分したのですね?」

小百合「うっ…うむ!確かに我が手でゴミ箱に捨てたぞ!間違い無い!」

小林「……分かりました」

裁判長「…分かりました」

裁判長「では証人、次に事件についての証言を――」

小林「待った!!」

ダンッ

小林「…弁護側は早急に、ある人物の召喚を要請します」

裁判長「……召喚、ですか?」

小百合「召喚!?」キラキラキラ

姫百合「…団長の目が輝きだしましたよ」

小林「弁護側は、怪盗からの手紙を保存していた、このアルバムの持ち主――」

小林「ねこ千枝さんとつげ叶さんの召喚を求めます!!」

裁判長「ねこ…?まさか、団員さんの事でしょうか?」

北芝「異議あり!!」


北芝「弁護側は勝手に流れを変えないように!今はこの証人の次の証言を――」

小林「この証人は、この事件について我々以上の事は知り得ていない!!」

小百合「なっ――!」

ダンッ

小百合「失礼な!ちゃんと我も目撃しているのだぞ!あの事件を!」

小百合「きゅうに真っ暗になって!電気がついたら歯車に巻き込まれた……その前には!あのゴドムとソドラが――」

小林「…それ以上の事は?」

小百合「…そっ…それ以上とは、何だ?」

小林「例えば、事件の前に何かがあった。とか」

小百合「それ以上に…何かあるのか?」

ダンッ!

小林「…これが、この証人が事件当日の事について覚えている事です」

北芝「……何が言いたいの?」

裁判長「これ以上、この証人からの証言を却下し、新しい証人の召喚を要請を?」

小林「…いいえ。この証人にも証言台に立って貰います」

小林「証言台に、三人同時に立たせるのです!!」

北芝「!?」

シャロ「!?」

姫百合「!?」

ネロ「!?」

裁判長「……それは、また……突拍子もない事ですが、どうしてですか?」

小林「…あの手紙は、ねこ千枝さんのアルバムに挟まれていました」

小林「そして、つげ叶さんもその事については知っている様子でした」

小百合「……え?」

小林「更に、最初のページに挟まれていた大事故があった日のドイサースのチラシ」

小林「…それと、先ほどから気になっていたのですが、部屋の隅にある耳が――」

シュシュッ

コーデリア「…あっ!今何かが高速で横切りましたよ!?」

裁判長「いっ…今のは?」

北芝「…控室の中に…入って…!?」

小林(……やはり、誰かが聞いていたのか…)

ダンッ

小林(やっぱりだ。やはり、この事件には…)

小林(僕達が知り得ない。大きな闇がある!)

小林「――裁判長!もう一度言います」

小林「弁護側は、証言台に三人立たせる事を要請します!!」ダンッ

北芝「異議あり!!」

北芝「あっ…あんた!裁判の規則を根元からぶっ壊す気なの!?」

北芝「そんな…そんな事!私が絶対に許さな――」

カンッ

裁判長「…こんな事は、正直言って初めてです」


裁判長「証言台に三人立たせる等…しかし」

裁判長「前例が無いわけでは、ありません」

北芝「……!」

裁判長「まぁ、それはあくまで早急な判決が必要だった時の話ですが…弁護側は、何か考えがあるのですね?」

小林「……はい」

裁判長「良いでしょう。本法廷は15分の休廷の後、再審理を行うものとする!」

裁判長「その時までに、検察側は三人の証人を準備するように!」

北芝「………」

北芝「…クソッ!!」ダンッ

小林(…よしっ!これで、何とか繋げた!)

小林(あの耳は、おそらく団員の内の一人の物に違いない。彼女達は間違いなく…何かを隠している)

小林(逃げられる前に、ここで一気に叩けば――)

3号「ふん!弁護人貴様ぁ!これが私の為になるとは思うなよ!!」ボロボロ

3号「この遅刻はそもそも!貴様が余計な事をしたせいなのだからなぁ――!!!」ダンッダンッ

小林「……あ、はぁ…」

シャロ「なっ…何だか見ない内に凄い荒れてますよ!三号さん!」

小林「…うん。スーツが引っ張り跡と引っかき傷で穴だらけだね」

姫百合「審議中に一体何があったんですか…?」

カンッ

裁判長「それでは、!一時閉廷!」

【横浜裁判所 第二控え室  同日 某時刻】


小林「………」

姫百合「…あの、今回の裁判も…」

ネロ「相当…ヤバかったよね」

コーデリア「まさか、初っ端から有罪判決を喰らうとは思わなかったわ…」

ネロ「ねぇ、二人もどう思う?あの6人に判決を委ねられてるんだよ?」

カズミ「………」

アリス「………」

小林(…そりゃぁ、かなり不安だろうなぁ)

カズミ「…う…うぅ…」ポロポロ

カズミ「なっ…何で…何で私達がこんな目に…」ポロポロ

アリス「…!」

アリス「………」アタフタ

小林(アリスくんがカズミくんの前でアタフタしている…)

カズミ「私達…何もやってないのに…!ただ…座って楽しんでただけなのに…!」ポロポロ

カズミ「何で…!殺人犯呼ばわりされなきゃ…いけないんですか…!」ポロポロ

小林「…確かに、それはかなりの理不尽だろうね」

シャロ「………」アタフタ

小林(シャーロックもアリスくんと一緒にアタフタしている…)

小林「……今はまだ、泣く時じゃない」

カズミ「!」

小林「今回の事件、何かが後ろに隠れているのは間違いないんだ」

小林「そして次の審議の時、僕をそれを引きずり出す事になる」

シャロ「なっ…何かって、何ですか?」

小林「…その前に一つ、皆の意見を聞きたい」

ミルキィホームズ「「「「えっ!?」」」」

小林「皆は、この事件を通して何か気になる所とか疑問点とか無かったかい?」

小林「どんな些細な事でも良いから、教えてくれ」

シャロ「…あ、はい!」

ネロ「よし来た!」

コーデリア「了解です!話させてもらいます!」

エリー「……はい!」


小林「…ありがとう」

小林「それじゃぁ、シャーロックから」

シャーロック「はい!」

シャーロック「…団長さんは、怪盗帝国からのお誘いの手紙を断り、更に手紙を捨ててしまっています!」

シャーロック「なのにどうして、アルバムには手紙が挟まっていたのでしょうか?」


シャーロックの疑問点をメモに挟んだ!
【何故、アルバムに断った手紙が挟まっていたのか】



小林「うん。確かにそれは重要なファクターだ」

小林「この事件の裏を暴く鍵になるだろう…次にネロ。君の意見を聞かせてくれないか?」

ネロ「勿論だよ!」

ネロ「あのトイズ糸の事なんだけど、照明の中に隠されているって言ってたよね?」

ネロ「そもそも、あんなものをフェザーズの二人が仕掛けられるかな?」

ネロ「もっと、このサーカスに近い人じゃないと無理だと思うんだけど」


ネロの疑問点をメモに挟んだ!
【照明の中のトイズ糸は誰のものか】


小林「…確かに、トイズ糸をフェザーズの二人が仕掛けたとは、考えにくいかな」

カズミ「そんなの当然ですよ!だって!私なんて今日までそんな恐ろしいものが存在するなんて思いもしなかったんだから!」ダンッ

小林「…僕も知らなかったからね。眼球が売り買いされているのは知っていたけど…」

小林「…それじゃあ、コーデリアは?」

コーデリア「はっ…はい!」ビシッ

コーデリア「…その、シャロとちょっと被ってしまうんだけど…」

コーデリア「どうしてねこ千枝さんは、ドイサースのそれも最後の公演のポスターを大事そうにアルバムに挟んでいたのでしょう…」

コーデリア「あんな、…教官から聞くまで分かりませんでしたが、酷い大事故の事なんかを…」


コーデリアの疑問点をメモに挟んだ!
【何故、アルバムにはドイサースのポスターが?】


小林「…そう、これこそが最も重要なファクターだ」

小林「恐らく、この事件の闇はそのポスターに掛かっていると言っても良い」

コーデリア「!」


小林「最後にエルキュール。君の意見も聞きたいな」

エリー「あっ…はい!」

エリー「…一つ、心の奥に引っかかっているのがあって…」

エリー「…どうして、被害者は逃げ出そうとはしなかったのでしょうか?」

エリー「いくら暗闇とは言え、歯車に巻き込まれるまで…トイズを使わないでいられるでしょうか…?」

エリー「まるで…逃げ出したくても逃げ出せなかったように見えます…」


エルキュールの疑問点をメモに挟んだ!
【何故被害者はトイズで逃げなかったのか】


小林「…分かった。確かにそこも、気になる点だね」

小林「姫百合くんはあるかな?一つでも疑問に思った点が」

姫百合「…そんなもの、一つしかありませんよ」

姫百合「どうして、フェザーズの二人があの場所に立っていたのですか」

カズミ「!」

アリス「!」

姫百合「…これが、誰かの罠だと言うのなら、何故この二人だったのか」

姫百合「それだけが、どうしても分からないんです」

姫百合の疑問点をメモに挟んだ!
【何故フェザーズの二人だったのか】


小林「…確かに、その通りだ」

シャロ「本当です…どうしてカズミちゃんとアリスちゃんなんですか!」

ネロ「何だか益々理不尽に思えてきたぞ…!」

小林(しかしそれは、もしかしたら…)

小林(大した理由が、無いんじゃないのか?)

小林「…もしかしたら、それがこちら側の有力な武器になるかもしれない…」

エリー「…え?」

シャロ「どっどういう事ですか?」

小林「今はまだ確証はない。しかし」

小林「そう考えれば、仮説のつじつまが合うんだ」

姫百合「…仮説、ですか?」

小林「ああ。このサーカス公演には裏がある事、そしてフェザーズの二人がトイズ糸のある席へと座った事」

小林「この二つを合わせれば、おのずと二人が選ばれた意図が見て取れるよ」

シャロ「…?」

カズミ「…?」

アリス「…」

小林(…だが、今ここで確信はできない。全ては次の審議の時だ!)

小林(この事件の闇を、この裁判で全て暴いてみせる!)

カズミ「……」

アリス「……」

小林(彼女たちの、為にも!)



神津「…まだ、入廷していなかったか」スタッ

小林「!っ…神津!」

アリス「!」

カズミ「ちっ違います!私たちはやってないんです!刑事さん!」ガシッ

神津「……」

カズミ「信じてぐだざい!無実なんでずぅぅ!」ビェエエエ

神津「…被告人の無実を証明するのは、弁護人の仕事だ」

小林「…何しに来たんだ?神津。何の用事もなしに来る奴じゃないだろ?」

神津「なに、被害者の新しい情報が入ったから、お前にも伝えに来てやっただけだ」

姫百合「!」

シャロ「えっ!?」

小林「被害者の…新しい情報!?」

神津「ああ。まず、死因についてだが…」

神津「被害者は即死であった事と、圧死だった事は変わらんが、歯車によるものではなかった」

小林「…え?」

姫百合「ど、どういう事ですか!?神津警視!」

神津「…被害者は歯車に巻き込まれる前、別の力で押しつぶされ、引き裂かれていた」

神津「推定すれば、巨大なローラーのようなものだ」

証拠⑥【丸尾椿の解剖記録】を書き加えた!
〈ローラーのようなものに巻き込まれて即死。歯車は死因に関係がない。顔にトイズで発生した矢が貫かれていた〉


小林「…な、何なんだ?それは…」

神津「…現場からは、そのようなローラーは見つからなかった」

神津「恐らく、これもトイズによる犯行と考えた方がいいだろう」

小林「…この事を、北芝検事は?」

神津「当然、伝えてある」

小林(そこは黙っていて欲しかったな…)

ネロ「なんだよー!そこは黙っていてよ!使えないなー!」プンプン

神津「…俺はお前らの味方ではない」

神津「この情報提供も、平等な審議を目的として、だ」

小林(…まぁ、仕方ないか)

係員「被告人!弁護人!開廷の時間だ。直ちに入廷するように!」

シャロ「あっ!裁判が始まります!」

小林「…そのようだね」

小林「行こうか。みんな」

姫百合「…はい!」

シャロ「はい!」

ネロ「勿論!」

コーデリア「ついていきます!」

エリー「頑張り…ます…!」

カズミ「…小林さん」

カズミ「どうか!よろしくお願い致します!」

アリス「……」

小林(…よし、気を引きしめろ!小林オペラ!)

小林(この先に、どんな闇が現れようが…怯むな!進め!)

小林(僕には、こんなに頼もしい仲間たちがいるんだから…!)


【横浜裁判所  第一法廷室】



ザワザワ…ザワ……

カッ!!


裁判長「これより!審議を再開する!」

裁判長「弁護側と検察側は、準備完了していますか?」

小林「弁護側、準備完了しています」

北芝「……ドウイウコトナノ...?ナンデハグルマガシインジャナイッテケツロンヲダシタノヨ?アノケンシカンナニヲカンガエ…」

裁判長「…あの、北芝検事?」

北芝「イミガワカラナイ...フツウニカンガエレバツブレタゲンインハハガルマノハズナノニナニヲコンキョニ...」ブツブツ

裁判長「北芝検事!」

北芝「きゃわァァァアアー!」ビックーン

裁判長「…検察側は準備が完了していますか?」

北芝「………はい」

小林(北芝検事も混乱してるな…)

裁判長「…よろしい」

裁判長「弁護側は、証言台に三人を立たせるとの意見ですが」

裁判長「証人の準備も完了していますかな?」

北芝「………………はい」チッ

小林(今舌打ちしたな)

裁判長「よろしい」

裁判長「それでは、係官は三人の証人を連れてくるように!」



小百合「……」

ねこ「……」

叶「………」

北芝「…それでは証人、名前と職業を」

小百合「……クックック!我が名は…」

裁判長「いえ、貴方の名前は聞きましたので言わなくても大丈夫です」

小百合「……」シュ-ン

ねこ「…私の名前はねこ千枝!ねこチーって周りから言われてるよ!真っ黒な魔女団ていう劇団してまーす!」

叶「…私はつげ叶と申します。四国の魔法使い劇団という劇団員をしております。どうぞお見知り置きを…」

小林(…全員劇団の名前言えてないじゃないか)

裁判長「ふむぅ…みんな違う劇団に所属しているみたいですが…」

小百合「否!私たちは漆黒の魔法団だ!」ダンッ!

裁判長「えー、ではしこくっ、しっこつ、こっせつ…」

裁判長「…同じ劇団に所属している。という事でよろしいですね?」

小林(裁判長も未だに言えてないな…)

小百合「しかり!」フンス

北芝「…そこにいる弁護人はせっかちのようでね。貴方達の証言を一気に聞くつもりでいるようなのよ」

ねこ「なんと!」

叶「…それはそれは、聖徳太子みたいなお方なのですね」ニコ

北芝「ええ。弁護人が、もう一度言うわ。弁護人がね、一気に証言を聞くというものだから」

北芝「…尋問ができなくなるくらい、どんどん証言して頂戴!」ダンッ!

小林「………」

カンッ!

裁判長「…それでは、証言していただきます」

裁判長「事件当日、貴方達は何をしていたのか!」


【証言開始】

叶「ショーは予定通り、11時から開始されました」

小百合「我々は実に快調に現代人共に我々の魔法を魅せていた!…奇跡の少女が舞い降りるまでは」

ねこ「奇跡の少女が始まる前に消灯するんだけど、そこまでは順調だったんだよね」

叶「再び照明がついた時には、血まみれの被告人と歯車に巻き込まれて絶命している椿さんが…」

小百合「…我が友の顔には、ゴドムとソドラの持つ光の矢が刺さっていたのだ!!」



裁判長「…なるほど。よく分かりました」

北芝「証人達は、恐らくこれ以上の情報は持ち合わせていないわよ」

北芝「それは、取り調べでも明らかだったわ」

小林「……」

裁判長「…分かりました」

裁判長「確かに、三人は同じ光景を見ていた。これ以上の情報は無いと思うのですが…弁護側は、それでも尋問を要求しますか?」

小林「…当然です」

小林「弁護側は、尋問の権利を手放すつもりはありません!」ダンッ

裁判長「分かりました」

裁判長「それでは!弁護側は尋問を行ってください!」


【尋問開始】


叶「ショーは予定通り、11時から開始されました」


小林「待った!」

小林「その証言は、確かですか?」

叶「…どういう事ですか?」

小林「いえ、もしかしたら…少し遅れていたり、早めていたり…とか?」

姫百合「何で疑問形なんですか」

ねこ「それは無い!」ビッシー

小百合「うむ!我ら魔法団の演武の公演を待たせる等、神の冒涜!神は時間に厳しいのだ!」ビシッ

小林「…神、とは?」

叶「スポンサーの事です」

小林「あぁ…」

小百合「なっ…何なのだ!?その憐れむような目は!?」

ねこ「しょうがないじゃん!お金いっぱいくれるんだから!」

ネロ「聞きたくなかった黒い部分が見えた!」

コーデリア「教官!ここでビシバシ突っ込み入れましょう!!」

小林「いや、ここは別に聞かなくても…」

シャロ「一体誰と誰がスポンサーなんですか!その人たちが犯人なんじゃないですか!?」ビシッ

コーデリア「そうよ!その人たちがお金を払いたくなくて殺人を――」

小林「ねぇ君達!チラシを見よう!?書いてあるから!スポンサーの名前なら!!」

叶「…投資者に、大変失礼な物言いですなぁ」


小百合「我々は実に快調に現代人共に我々の魔法を魅せていた!…奇跡の少女が舞い降りるまでは」


小林「待った!」

小林「…事件が起こるまでは、順調だったのですね?」

小百合「しかり!我が友の椿が織りなす綱渡り!つげが操るネジシキの曲芸!ねこちーの回る全関節!!」

ネロ「うわ…ねこちーの技すごく気持ち悪そう」

ねこ「なんだとー!股間接と肩関節をぐるぐるあり得ない方向に回しながら柱を登るって凄い技なんだからなー!!」プンプン

叶「ええ。それはとても、ゴキブリのような動きで這いまわるのです」

小百合「幼き人間と観測の女性の金切り声は、相変わらず健在であった!」

小林(これは相当気持ち悪かったらしいな…)

小百合「しかし技術は本物、ねこちーの動きに魅いられ慕うカルトが居るのは事実」

小百合「彼女は新たなる神その者となったのだ!」ドドーン

小林(かなり失礼だけど…物好きっているんだなぁ)

小林「…被害者の 丸尾椿さんは、どうだったのでしょうか?」

叶「椿さんですか?」

小百合「…我が友は、細い針の上にも一本の紐の上にも乗れる」

小百合「更には、テレポートというトイズまで持ち合わせる。我ら魔法団の中でも大きな戦力だった」

ねこ「いわゆる、王道な芸は全部椿ちゃんがやってたんだって!」

叶「…ただ、哀しきかな。あんまり人気は良く無かったと聞きます」

ねこ「だから今回、椿ちゃんの為だけに奇跡の少女を新しく採用したって訳さ!」

小百合「なっ…!それでも椿ちゃんは私達の大事な仲間だもん!」ダンッ

小百合「あっ…我が友は!例え知られなくとも、我らにとって酸素のような、いやグリモアのような存在であったのだ!!」ドドーン

小林「いえ、言いなおさなくても良いです。ややこしくなるので」


ねこ「奇跡の少女が始まる前に消灯するんだけど、そこまでは順調だったんだよね」


小林「待った!」

小林「事件が起こる前、消灯の前までは被害者は生きていたのですか?」

小百合「当然だ!我らがこの目でちゃんと確認したからな!!」ダンッ

叶「確かに、消灯の前はしっかりと生きていました」

ねこ「うーん、私も目視でだけど、ちゃんと立って歩いて動いてたよ?」

姫百合「…どうやら、殺されたのは照明が消えた時と考えて間違いないようです」

小林「…その消灯時間。厳密には何秒ほどの事ですか?」

叶「そうですねぇ…一応、プログラムには…1分以内には再灯するように書かれていたと思います」

小百合「奇跡の少女は天界の歯車を台車で運ぶだけの事。ほとんど時間はいらぬからな!」ダダーン

小林「消灯の前、その内に何か怪しいものとか見ませんでしたか?」

叶「…怪しい物ですか?」

小林「ええ。仮に被告人が犯人であれば、何かしらの怪しい動きがあった事と思います」

小林「どんな些細な事でも良いので、何か証言して頂いてもよろしいですか?」

ねこ「そりゃぁー無理な話だぜ!だって、私達ショーは凄く真剣に取り組んでるんだよ!」

ねこ「私達だってお互い、一言も言葉を交わさず次を待っていたのさ!」

小百合「…?」



→疑問を浮かべた花輪小百合をゆさぶる

小林「ちょっと!!」

小林「…小百合さん。ちょっと良いですか?」

小百合「!?」

小百合「なっ…何だ!我が何か変な事でも言ったのか!?」

姫百合「ええ。ある意味変な言葉だらけです」

北芝「記録するのも面倒くさいわ」

小林「…その、変な言葉はともかく」

小林「先ほどのねこさんの言葉に、何か思い出したような顔をしましたね」

小百合「!」

小林「話していただけますか?一体何を思い出したのかを」

小百合「…………」

小百合「…照明が落とされる前、我が友と話をしたのだ」

小林「被害者とですか?」

小百合「ああ。と言っても、禁書目録ほど大した言葉では無く、証言に転生も不可能であるが…」

北芝「…大した言葉じゃないなら、証言にする必要すらないわね」

ダンッ

小林「そういう訳にはいきません。証言してください!」

小林「照明が落とされる前、貴方は被害者と何を話していたのですか!?」

小百合「…ほっ本当に大した事は話していないよ?」



===回想===


椿「…………」

椿「…ねぇ、椿ちゃん」

小百合「うむ、儀式の最中に何用か我が友よ」

椿「……私ね、この劇団に入って…本当に良かった」

椿「本当に…本当に良かったの…」

小百合「ほほう、我もだ!我も君達が我が漆黒の魔法団に入団してくれた所為で、なんとも充実した――」

椿「あっ、もうそろそろだね」

パッ

椿「そろそろ…行かなきゃ」

椿「……バイバイ」


===回想===



小林「………」

小百合「………」

北芝「…確かに、何の他愛の無い会話にしか聞こえないわね」

裁判長「ふむぅ…確かに、今回の事件とは何の関係も無いように聞こえますが」

裁判長「どうですかな?弁護人。この証言、重要な意味を持っていると思いますか?」

小林(……どうしようかな)


→証言に追加する

 証言に追加しない


ダンッ

小林「この証言は、本法定に置いて非常に重要な証言です!」

小林「弁護側は、証言に加える事を求めます!」

北芝「はんっ!どうせハッタリでしょうが!」ダンッ

カンッ

裁判長「…いいでしょう」

裁判長「証人、先ほどの被害者と交わした言葉を証言に加えるように」


証言を追加

小百合「我が友と交わした言葉は、まるで最期の別れのようであった…」



叶「再び照明がついた時には、血まみれの被告人と歯車に巻き込まれて絶命している椿さんが…」


小林「待った!」

小林「…本当に、歯車が被害者の命を奪ったのでしょうか?」

叶「…どういう意味ですか?」

小百合「そんなもの…一目瞭然だろうが!」ダンッ

小百合「我が友のあの引き裂かれた身体は!どう見ても歯車に巻き込まれた事による所為のものだ!!」

ねこ「まぁ、なんだってんなら1万人以上の観客が証人になるからね」

叶「…そういう事です」

小林(…しかし、入廷する前に神津は確かに言った)

小林(被害者の死因は、歯車による圧死では無い。という事を)

小林(…という事はつまり、歯車以外の何かの圧迫で絶命したという事になるが…)

小林(それが何か分からない以上、ここに突っ込みを入れても無駄だな…)

北芝「……ソウヨ。アレハハグルマイガイノシインハアリエナイ。アリエナインダカラ…」ブツブツ

小林(北芝検事も、このことには頭を抱えているようだし)

小林「…分かりました。次の証言に移ってください」



小百合「…我が友の顔には、ゴドムとソドラの持つ光の矢が刺さっていたのだ!!」


小林「待った!」

小林「それは、本当に被告人の矢だったのですか!?」ダンッ

北芝「ええ。間違いないわよ」

北芝「あれから徹底的に調べて、調査の結果被告人の一人常盤 カズミが作り出す矢の物だと断定したわ」

北芝「なんなら、調書だってあるのよ」

小林「うっ…!」

シャロ「し…しかし!カズミちゃんは…カズミちゃんは…!」

北芝「はん!殺人鬼は所詮クズなのよ。それに」

北芝「トイズ糸で移動する際には、物理的なトイズの発生が必要不可欠なのよ?」

北芝「だからその時、被告人のトイズが発生していても、何一つも疑問は無い!!」ダンッ

小林「くぅっ……」

小林「うぉぉおおおおおお!!!」ガガーン

北芝「…所詮、アンタなんてその程度なのよ」

北芝「あぁーっはっはっは!!」ゲラゲラゲラ

ネロ「ぬぐぐぐ…!ちょっと小林を言い負かしたからって…!」グヌヌ

シャロ「カズミちゃんとアリスちゃんは、絶対に有罪になんてさせませんから!!」

小林(…た、確かに、トイズ糸は説明通りならばトイズが発生しないと使えない…)

小林(しかし、なら何故二人のトイズはあの時発生したんだ?)

小林(……ん?)


【暗闇の時、フェザーズの二人のトイズが発生した】

この疑問点を覚えますか?

→はい
  いいえ


→はいを選ぶ


小林(………)

北芝「まぁ、せいぜい頑張りなさい。この味方の少ない裁判の中で」

北芝「陪審員の6人も、既に心証は有罪に傾きかけてるわよ」

小林「……くっ」

小林(何か…何か、この証言で真実につながるものを見つけないと…!)



小百合「我が友と交わした言葉は、まるで最期の別れのようであった…」


小林「待った!」

小林「…その時の事、詳しく教え願えますか?」

小百合「…これ以上、何を申せと言うのだ?」

小百合「我はこれ以上の言葉は知らぬ!証言として記録を贈与することは不可能だ!」ダンッ

小林(…余裕がないのか、中二言語にキレが無くなってきたな…)

小林「いえ、何も言葉だけではありません」

小林「何か、暗闇になる前でも、直前でも、怪しい動きがありませんでしたか?」

小百合「…あ、怪しい動きだと?」

小林「ええ。歯車に巻き込まれて死んだ。というのなら前兆のような動きがあったと思われます」

小林「わからなくても、おかしいと思った事だけでも教え願えますか?」

ねこ「?」

叶「そんな事言われましても…、私達が近くに居たわけではありませんし…」

小百合「ふむ。…大しておかしい動きは無かったと思われるが…」

小百合「そういえば、公演の一時間前に奇跡の少女は一人でやると申し出があったな」

ねこ「!?」

小百合「本来は、我が我が友を支えながら行う物だったのだが…」

ねこ「ま…待って!?それ本当!?私聞いてないよ!?」ダンッ

小百合「えっ…!?…その、公演の一時間前だったから…」ビクッ

ねこ「………」

小林(…なんだ?急に豹変したように形相を変えたぞ?)

叶「………」

小林(…どうだろう、これ、誰に詳しく話を聞くべきだ?)


→花輪小百合に詳しく話を聞く

  ねこ千衣に詳しく話を聞く



→花輪小百合に詳しく話を聞く


小林「…奇跡の少女は、貴方も参加する演目だったのですか?」

小百合「御意!我が友が輝く様を、我も全力をかけて力を貸すつもりであったからな!」フンス

小林「詳しくは、どのような事を手伝うつもりで?」

小百合「うむ、まずは我が友を歯車の上からベルトに繋げ――」

小百合「あっいや!ワイヤーを繋げて!…いや、天からの蜘蛛糸を――」

小林「…ワイヤーをベルトに繋げたのですね」

小百合「その通りだ!……あれ?」

小百合「…ちょっと待て?何かおかしいぞ?」

小林「?何がおかしかったのですか?」

小百合「いや、私は確かに、我が友が一人でやるとは言っていたが」

小百合「ワイヤーはまだ繋げなかったのに…そうだ!我が友は!」


小百合「紐無しで、空へと飛び立ったのだ!!」ドーン


小林「…え?」

北芝「……は?」

シャロ「……え?」

裁判長「………」

小林「………」

小林「ぇぇぇええええええええ!!!??」ガガガガーン




ザワザワザワ…ザワ…

カンッ


裁判長「せ…静粛に!静粛に!」

北芝「どっ…どういう事!?紐無しで空を飛んだ…いや!」

北芝「現場は暗かった!故に見間違えだと検察側は主張する!」

小百合「いや!確かに椿ちゃんは宙に浮い…我が友は地から浮き上がったのだ!」ダンッ

コーデリア「ど…どういう事なのですか?教官!?」

小林「…僕にもサッパリ分からないよ…」

シャロ「待ってください!そうです…分かりました!」

シャロ「被害者は、空を自由に飛べるトイズを持っていたのです!」バーン

北芝「異議あり!!」

北芝「阿呆が!被害者のトイズはテレポーテーションよ!?」

北芝「一瞬で位置を変える事は出来ても、宙に浮くことは不可能なのよ!!」ダンダンダン

シャロ「くぅ…!」グサッ

小林(……確かに、被害者のトイズでは宙に浮くことは難しい)

小林(しかし、この証言はどうにも無視できない)

小林(というのも…小百合さんは随分自信気に答えている。嘘を言っているとは思えない)

小百合「嘘ではないからな!」ムッフー

小林(……何か無かっただろうか?)

小林(何か、被害者が宙に浮く事ができる方法が…)



→証拠⑨【トイズ糸】を突きつける


小林「これだ!」

小林「弁護側は、被害者が宙に浮いた事実を示す証拠品を提示できます!」

北芝「なっ?!」

裁判長「い、一体それはなんだと言うのですか?!」

小林「それは、このトイズ糸です!」ダンッ

北芝「トイズ糸……」

北芝「…あっ!?」

小林「そう、トイズ糸から発せられる糸は…”二本”です!」

小林「被害者は、この糸に乗って宙に浮いたのです!!」

北芝「異議あり!」

北芝「しかし!被害者のトイズは物質を作り出すものではない!テレポーテーションだ!」

北芝「そんな奴が、どうやってトイズ糸に乗れるというのよ!?」

小林「……それは、ある人物のトイズを用いたのです」

北芝「ある…人物!?」

小林「そう、それを示す証拠品は…これです!!」


→証拠⑤【漆黒の魔法団のチラシ】



小林「くらえ!」

小林「…このチラシには、全員分のトイズの効力が説明されています」

裁判長「ええ。確かに全員分の名前の下に書かれているようですね」

裁判長「花輪小百合は黒い羽を散蒔く、つげ叶は何でも一つ硬化する、丸尾椿はテレポート、ねこ千衣は触れた物を自由に動かせる…」

小林「…その中に一人、いますよね?」

小林「トイズにより、物質を作り出せる人物が、ただひとり」

北芝「………!?」

裁判長「………あっ!」

小百合「…え?」

ダンッ

小林「そう、被害者は…」

小林「花輪小百合さんのトイズで発生する黒い羽で、トイズ糸を移動したのです!!」

北芝「……いっ」

北芝「いやぁぁあああああ!!!」ガガガーン


ザワザワ…ザワ…

カンッ!


裁判長「静粛に!静粛に!」

小百合「…うっ…嘘……」

小百合「うそだ!そんな…私が…!?」

小林「…このサーカスには、黒い羽が飛び舞うものだったのですよね?」

小林「つまり、サーカス内にはそこらじゅうにトイズで発生した黒い羽が飛び交っていた事になります」

小百合「!!」

小林「…被害者が宙に浮いたと言う以上」

小林「黒い羽を使って、トイズ糸で移動していた以外に有り得ない!!」ダンッ

北芝「異議あり!!」

ダンッ

北芝「…なら、尚更被告人が犯人だという事の証明になるわね」

北芝「あのトイズ糸を仕掛けたれたのは…被告人以外に有り得ないのだなら!」

小林「異議あり!!」

小林「何故そう言い切れるのですか!?」

北芝「…貴方、本当にこの裁判で私達の話を聞いていたの…!?」

北芝「トイズ糸は、二本あったのよ?」

小林「………」

小林「あっ」

北芝「一本が、その被害者の真下につながっていた…としても」

ダンッ

北芝「もう一本の糸が、被告人二人に指している事実は変わらない!!」

北芝「あの何万人もの観客の中、しかもトイズ持ちの二人を偶然に引き当てたとは考えられない」

北芝「すなわち、被告人と被害者の関係はこれで証明されたわ!!」ダダーン


小林「………」

小林(…いや、本当にそうか?)

小林(あの何万人の中、どうしてフェザーズの二人だったんだ?)

小林(トイズ糸が、どうしてフェザーズの二人に向いていた?)

小林(…これは、もしかしたら――)

小林「……もしかしたら、これは―――」

1号「裁判長ぉぉおおおおお!!」バババババババッバ

小林「!?」

姫百合「!?」

1号「陪審員一同は、再び判決を下す準備ができた!!」

2号「みたいでしてー」ニコニコ

6号「ピコーン、真っ黒な評決の電波を受信中~」ピコピコ

1号「これより!我ら陪審員の最終決議に入る!!」

小林「ちょっ…!?」

シャロ「ちょっと待ってください!」ダンッ

コーデリア「そうよ!まだ判決を下すのは早すぎます!」

3号「だぁぁまぁぇれぇえええ!!!」ダダダン

エリー「!」

コーデリア「!」

3号「…たった今、会議が…終わったんだ…」

3号「私のスケジュールに重要な会議が!!うわぁああああああああ!!!」グワングワン

ダンッ

1号「これより!この裁判の最終決議に入る!ヤーよ!準備は完了か!」

2号「私は、ソフィアちゃんの決議に便乗するだけでしてー」ニコニコ

1号「よろしい!では最終決議、開示!!」

姫百合「まだ一人しか聞いてません!!」ガーン


1号「有罪!」ボッ

2号「有罪」ボッ

3号「有罪」ボッ

4号「ユーザイ」ボッ

5号「有罪ぃい!!!」ボッ

6号「ピコーン、有罪」ボッ

ボシュボシュボシュボシュボシュボシュ

ギギギギギ…

ガタァァァァァン…!



小林「……うっ」

小林「うぅぅぅぅぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」ガガガガガーン!

裁判長「……どうやら」

裁判長「これが、陪審員達の最終決断らしいですな」

北芝「…ええ、そうね」

北芝「まぁ、分かりきってた事だけどね」ハンッ

シャロ「あ…あうあうあうあう……」パクパク

ネロ「…ど、どうするのさ!?さっ最終的な決断が下されちゃったよ!?小林!」アタフタ

コーデリア「どどどどどうしましょうきょきょきょ教官んんんん」ガタガタガタガタ

小林「…………弁護側は」

ダンッ

小林「弁護側は!最終弁論の権利を要求します!!」ダンッ

北芝「異議あり!!」

北芝「陪審員は最終決断だと断言したのよ!?そんなもの必要無いわ!!」

小林「異議あり!!」

小林「しかし、判決を下すにはまだ審議を終えるには早すぎます!!」

小林「裁判長!僕は、この不完全な評決に最終弁論を行う事を要求します!!!」ダンッ

北芝「異議あり!!」

北芝「裁判長!そんなものは必要ありません!陪審員は最終決断と申したのです!!」

裁判長「…………」

裁判長「…最終決断を申したのは、一号さんだけで、本法定では認められていません」

北芝「!」

1号「!」


裁判長「しかし、これが陪審員の決めた決議だという事は事実」

裁判長「もし、この最終弁論で評決が覆されなかった時は、ただちに判決を受け入れるものとする!」

裁判長「更に、最終弁論で評決が覆されたとしても…」

裁判長「弁護側には、もう次が無いと思ってください」

小林「…………」

小林「…分かりました」

カンッ!!

裁判長「それでは!これより最終弁論を行うものとする!!」

裁判長「陪審員は答えてください。被告人の有罪を確定する理由と根拠を!!」



【陪審論告】

~陪審員の主張~


1号「被告人と被害者は糸でつながっていた!これは最早確定的だ!」ババババババババ

2号「と、ソフィアちゃんが主張してるのでしてー」ニコニコ

3号「私のタイムスケジュールを引っ掻き回した事…後悔するがいい弁護人んんん!!!」

4号「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセン」

5号「山本ぉおおお!!ワシは騙されんぞぉおおおお!!!」

6号「電波を受信しています。被告人は元怪盗だとー」ピコピコピコ




小林「………」

姫百合「…な、何なんでしょう?」

姫百合「最初の理由と根拠とあまり変わりない気が…」

小林「…う、うん」

小林「そもそも…裁判の中身を本当に理解しているのか怪しいな…」

カンッ!

裁判長「それではこれより、≪最終弁論≫に入ります」

裁判長「証言台へ移動の上、明確な”反証”を述べてください」



【弁論開始】


1号「被告人と被害者は糸でつながっていた!これは最早確定的だ!」ババババババババ


小林「待った!!」

小林「しかし!それが被告人が被害者を殺したという証拠にはなりません!!」

1号「なんだと…?」ガッチャン

1号「糸は被告人と被害者とつながっていた!これが」

1号「被告人を裁き人と言わずなんだと言うのだぁ!!」バババババババババ

小林「…マシュマロを撒き散らさないでください」

小林(トイズ糸が被告人が被害者を殺す証拠になる)

小林(何か…それを否定できる証拠品があるはずだ)

小林「…1号さん」

1号「なんだ!小林二等兵!!第一隊列軍曹に何か用か!」ガッチャン

小林(僕はいつから軍隊になったんだ…?)

小林「…被告人が被害者と糸でつながっていた。それが貴方の言う理由と根拠ですね?」

1号「そうだ!」

ダンッ

小林「しかし…たったそれだけでは、被告人を犯人だと断定できません!」

小林「それは、この証拠品が証明しています!!」



→証拠品②【抽選チケット】


小林「くらえ!」

小林「これは、被告人の座席チケットです。よくご覧になっていただけますか?」

1号「…ほう、トイズ席のチケットか」

1号「発行日は一ヶ月前…これなら、トイズ糸を仕掛けるのもたやすい!」ガッチャン

1号「つまり!被告人が殺人犯である証拠であろう!!」バババババッババババババ

ダンッ

小林「…いいえ、逆です」

小林「これは、被告人を犯人だと断定できなくなる証拠品でもあります」

1号「!?」

小林「いいですか?このチケットはトイズ割のチケット。更に座席まで指定されているのです」

小林「あの照明から一つの座席にピンポイントで狙うなんて、それこそ至難の業です」

小林「つまり」

小林「このトイズ糸を仕掛けたのは、運営側の人間という事になります!!」ダンッ

1号「!!?」

小林「サーカス団の運営側の人間に、被告人を冤罪に仕立て上げた奴が居る!!」

小林「そしてそいつこそが――真犯人だと弁護側は断言します!!」ダーン


ザワザワザワ…ザワ…

カンッ!


裁判長「せ、静粛に!静粛に!」


1号「な…なんなのだ!?その根拠はどこから来る!!」

1号「そもそも…その真犯人とは一体誰なのだ!!」

小林「…それは、まだ分かりません」

1号「ほら見ろ!所詮、そんな不完全な弁論では――」

ダンッ

小林「だからこそ!まだ審議が必要なのです!!」

小林「良いのですか!?貴方は!このままだと本当に殺人を犯した奴が野放しにされてしまう!!」

1号「……ぐっ!」

小林「それが、貴方の軍人の信条なのですか!?罪無き者に、冤罪を被せ真の罪人を野放しにする事が!!」

1号「…し、しかし…!」

1号「わ…私達は最終決断を下して……」

小林「異議あり!!」

小林「そんな貴方の言葉だけの事に意味はありません!!今、行われているのは、被告人の人生を大きく左右する裁判なのです!!」

小林「それを最終決断とか勝手な理由で、終わらせないでください!!!」ダンッ!!

1号「………………」

1号「………ご」ジワ

1号「ごめんなさわぁぁぁあああああああああああああああん!!!!」ビィェェエエエエエエエエエエエン

ダンッ!

ボシュッ

ギギギ…ガッターン


2号「…あららー、泣いちゃったですねーソフィアちゃんー」

2号「しょーがありませんねー」ニコニコ

ダンッ!

ボシュッ

ギギギ…ガッターン

シャロ「や…やりました!一気に二票入りましたよ!」

エリー「や…やった…!」

ネロ「よぉし!このまま票を集めて審議続行だぁー!!」

コーデリア「やりましたね!教官!」

小林「…う、うん…。そうなんだけど…」

2号「ほらほらー、ソフィアちゃん泣きやんでー。偉いねー自分の悪い所に気付けてー」ナデナデ

1号「グスッグスッ…ウェェェ…」エグッエグッ

小林(何だか…言いようのない罪悪感が…)

カンッ

裁判長「それでは、弁護人は最終弁論を続けるように」



3号「私のタイムスケジュールを引っ掻き回した事…後悔するがいい弁護人んんん!!!」


小林「待った!」

小林「それは…お気の毒と言いようがありませんけれども…」

小林「そもそも、陪審員になった事を会社に伝えればある程度の調整が出来た筈では…」

3号「分かってないな弁護人…今日が!その調整を行う会議だったのだ!!」

小林「えっ」

3号「いや!正しくは陪審員になったとして、ここからどうスケジュールを立て直すか!」

3号「その為の会議だったのだぁぁぁああああああああああ!!!!」ダダダーン

小林(なっ…何て効率の悪い会議なんだ!)

3号「私は決めたぞ」

3号「私は!どんな事があっても、この評決を覆す事は無い!!」

3号「絶対にだっ!!!!」ダダダーン

姫百合「うわぁ…この人が一番のモンスターでしたね…」

小林「ううん…確かに厄介だよなぁ…」

小林(このままだと…真実が明らかになっても一人だけ有罪に票を入れそうだ…)


4号「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセン」



小林「待った!」

小林「あの…本当は分かってますよね?日本語」

4号「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセン」

小林「いやいやいや!先ほどの最終弁論でハッキリ反応してたじゃありませんか!!」

ネロ「そーだよ!6号のパンツに反応してたくせにー!!」

4号「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセン」

コーデリア「今さら言い逃れできないわよ!ムッツリスケベ!」ビシッ

4号「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセン」

シャロ「先生!私、この人がだんだんオウムに見えてきました!」

小林「気が合うね。僕もだ」

小林(…この人が日本語を理解できる…確信はないけど、ある程度知っているのは事実だ)

小林(何か…無かったか?証拠品で、何か仕えそうなものは…)



→証拠⑧【アルバム】 を突きつける


小林「くらえ!」

小林「…4号さん、この証拠品を見てもらえますか?」

4号「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセン」

小林「これは、今回の被害者が属していたサーカス団の思い出が詰まったアルバムなのですが…」

4号「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセン」

小林「ねこさんの話によれば、着がえ途中の花輪さんの全裸を激写した写真が――」


ダンッ!

ボシュッ

ギギギ…ガッターン


ネロ「あっ!」

シャロ「4号さんが無罪の方に票を入れました!」

姫百合「やっぱりあの人、日本語分かってますね」

小林「…これでよしと」

4号「…………」

シャロ「あっ!4号さんが物欲しそうな目でこちらを見ています!」

ネロ「うわぁ、アルバムを見せろって欲望がひしひしと伝わってくるよ…」

小林(…ううん、あまり見せたくは無いなぁ…証人のプライパシーに関わる事だし…)

北芝「…その写真なら、検事局が押収したわよ」

小林「え?」

北芝「裁判の時に、万が一でも晒されたら困るし恥ずかしいからと、証人の依頼でね」

4号「Damm it!!」ダンッ!!!!

ボシュッ

ギギギ…ガッターン


シャロ「ああっ!有罪の方に切り替わっちゃいました!!」ガーン

ネロ「くそう!後少しだったのにー!!」ヌグググ

小林(英語も分かるじゃん……)


ダンッ!

姫百合「…とにかく、4号さんが日本語も堪能だって事はよーく分かりました」

姫百合「弁護側は、4号のまともな被告人についての理由と根拠を要求するものとします!!」

4号「……………」

4号「……シカタ、アリマセンネ」ヌギッ

小林「!」

バッ

4号「…分かりました。ここからは証言するしかありませんね」ババーン

コーデリア「………えっ」

シャロ「……ええええええー!!日本人だったんですかぁー!?」ガガガーン

小林「日本人だったんじゃないですか……」

3号「!!」ビクッ

4号「…………」

3号「……ま、まさか……!」

4号「…今まで、世話をかけたな。…京介」

3号「…と……父……さん……?」

小林「……えっ?」

小林「ぇぇぇぇえええええええええええええ!!!?」ガガガーン

4号「すまなかったな…京介」

3号「そっ…そんな!父さんは…父さんは!」

3号「下着泥棒と覗きとエロ本の袋とじを未購入で開けた罪から逃れる為に!ラトビアに逃げた筈じゃないか!!」ダンッ

裁判長「…なんとも、下半身に忠実な犯罪者だったのですね」

4号「ああ…確かに逃げてきたさ」

4号「だが…ラトビアでも同じ罪を犯した私は…気づいたら他の国でも同じ事をやり続けて…気づいたら日本に戻ってきてしまったんだ…」

小林「何やってるんですか…?」

4号「そして、裁判所から入廷命令が出た時、とうとう俺も終わりだと思った…」

4号「しかし…違った。俺を別の人物として、陪審員として選ばれた事に…気付いた、その時私は!」

4号「ここをやり過ごして…今度は中国でパンツを探そうと思ったんだ…」

姫百合「最低ですね」

4号「だが、もうその必要も、無いみたいだな…」

4号「私は!今日ここで私の罪を裁かれる事にしよう!」ドンッ

4号「京介…次に会った時は、綺麗な身体でな」

3号「と…父さん……!!」ブワッ

3号「…俺は…俺達を捨てた父さんのようになりたくなくて…真人間として…スケジュールと規律を守る為に…真面目にって…!」ポロポロ

3号「でも…でも!自らの罪を…ようやく認めた父さんを見て…僕も決心をつけた…」

3号「…本当の真面目は…自分の為じゃなくて…人の事を想う事からあるんだって…!」

小林(今のどこからそれを学んだんだ…?)

ダンッ

3号「父さん…俺…決めたよ!」

3号「本当に…本当に!全てが明らかになるまで…判決は下さない!」

3号「この裁判に、最期まで付き合うんだぁあ!!」ダンッ!!!


ボシュッ

ギギギ…ガッターン



小林(何だったんだろう…今のは…?)

シャロ「やっ…やりました!再び一票!無罪に入りましたよ!」

ネロ「4号も入れてくれたら、評決が覆ったんだけどねー」

4号「…………」

小林「…しかし、4号さんは評決を覆すつもりは無いみたいだね」

4号「…さて、被告人を有罪にした理由と根拠…ですかな」キュッキュ

4号「話しましょう。彼女達が有罪である根拠を…」


4号「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセン」

↓変換

4号「トイズ糸は怪盗しか手に入りません。この中で怪盗は、ただ一人です」


5号「山本ぉおおお!!ワシは騙されんぞぉおおおお!!!」


小林「待った!」

小林「あの…さっきから山本って誰の事なんでしょうか?」

5号「しらばっくれるな山本ぉおおお!!貴様が山本だろうがぁあああああ!!」ダーン

小林「…一度聞きますが、山本とは、どのような容姿をしている方なのですか?」

小林「その人を捜しますので、どうか本当の山本さんと二人で話し――」

5号「山本が誰かじゃと!?鏡を見れぇい!!山本ぉぉぉおおおおお!!!!」ダダダーン

姫百合「…もう、この人は本気で諦めた方が良いんじゃないでしょうか?」

小林(話が通じないって、こういう事を言うのかな…?)



6号「電波を受信しています。被告人は元怪盗だとー」ピコピコピコ


小林「待った!」

小林「…貴方は、怪盗だけがトイズ糸を手に入れられる。そう言いたい訳ですか?」

6号「そうです」ピコピコ

小林「…どうやら、トイズ糸の事をそもそも誤解しているようですね」

小林「トイズ糸は、先ほど検察側が証言した通り怪盗が好んで使うものです」

小林「しかし、手に入れる方法を持つのは、怪盗だけという訳ではありません」

6号「…電波が混戦中。混戦が治るまで、しばらくかかります」ピロピロピロ

小林「…主に裏取引でトイズ糸の購入が可能で、購入履歴が分からないというだけです」

小林「それだけ聞くと、手に入れる事事態はそう難しい訳ではない。そうですよね?」

北芝「………」

小林「つまり」

小林「方法と多額の金さえあれば、トイズ糸は誰にでも手に入るのです!」ダンッ

6号「…………」

6号「電波を受信。内臓データを整理しますです」ピコピコピコ

ピコーン

6号「ダウンロード終了。ロムの開示をしますか?」

小林「……証言をお願いします」

6号「了解、理由と根拠を上書き上書きぃ」ピコピコピコ


6号「電波を受信しています。被告人は元怪盗だとー」ピコピコピコ

↓返還

6号「トイズ糸は誰でも手に入るけど、糸は被告人にありましたー」ピコピコピコ




小林(話は…こんな所か)

ネロ「ねぇ小林!こいつら本当に陪審員なの!?全員結構な自分勝手だよ!?」

小林「まぁ…それは確かに」

姫百合「…多分、何人かは自分自身を隠しているようにも見えますね」

姫百合「そこを突いていけば、いくつかの真実にたどり着けるかもしれません」

小林(そしてそれが、この裁判の真実の鍵になると……)

小林(…とりあえず、何人か揺さぶって情報を集めてみようかな)



6号「トイズ糸は誰でも手に入るけど、糸は被告人にありましたー」ピコピコピコ

↓ぶつける

4号「トイズ糸は怪盗しか手に入りません。この中で怪盗は、ただ一人です」


小林「異議あり!!」

小林「この二つの主張は、明らかに矛盾しています!」

6号「……なんとっ!?」ピッギャーン バチバチ

4号「……………」

小林「まず先ほども明らかになった通り、トイズ糸は何も怪盗だけが手に入れる代物ではありません」

小林「裏に出回っているとは言え、情報とお金さえあれば誰にでも手に入ります」

小林「つまり、被告人に怪盗だった経歴があろうとも…全く関係ないのです!!」ダンッ

4号「……確かに、そうかもしれませんね」

4号「ですが、だとすれば一つ疑問が残ります」

小林「…疑問、ですか?」

4号「はい。トイズ糸は、使うには物理的なトイズを使う必要がありますよね?」

4号「もし被告人が犯人で無いというのなら、どうして被告人はトイズを発動させたのでしょうか?」

小林「…!」

4号「そもそも、検察側も陪審員も」

4号「”そういった前提”があるからこそ、被告人を犯人だと主張しているのです」

4号「…発動したその理由は、私達には被害者を殺す為。それ以外の理由は皆目見当がつきません」

小林「……ぐっ!」

1号「言われてみれば…そうだ」

3号「トイズ糸は、それ単体では使えないって、さっきも言ってたよな…?」

6号「…ピコピコ。やっぱり被告人はユーザイー」

4号「…弁護人」

4号「貴方は、この前提を崩せるというのですか?」

小林「………!」

ネロ「ど…どうするの!?小林!」

シャロ「どっ…どうしましょう!先生!」

小林(…言われてみれば、そうだ)

小林(何故、フェザーズの二人のトイズが発動したんだ?)

小林(…何か、それを証明する証拠品は無いか?)

小林(もっと…もっと詳しく調べてみるべきか…!?)

カンッ!

裁判長「…どうでしょうか、弁護人」

裁判長「この前提、崩せそうですか?」

→崩せる

  崩せない


→崩せるを選択

ダンッ!!

小林「弁護側は…この前提を崩せると断言します!」

北芝「…!?」

4号「…ほう」

裁判長「……面白い」

裁判長「それでは証明して頂きましょう。この前提を崩せる、証拠品とは!?」



【証拠品を調べる】
      →証拠⑨【トイズ糸】を調べる


小林「…あれ?ここだけ、段差のようなものができてる」

ネロ「ほほーう?これは…リモコンの受信口だね!」

小林「受信口?」

コーデリア「おかしい…トイズ糸は常に糸が出っぱなしの筈ですよね?」

ネロ「こういうものは、使ってみるのが一番だよ。触らせて!」ティロン♪

小林「うわ!こらネロ――」

ネロ「うひゃぁ!」フワァ

エリー「きゃぁ!!」ドンッ

小林「!?」

姫百合「どっ…どうかなさいましたか!?二人とも!」

シャロ「え…ええと、何だか急に…」

エリー「トイズが…発動して……」

小林「…トイズが、発動した?」

コーデリア「あっ!教官見てください!ここに、色の違う三本目の糸が!」ダンッ

小林「これは…まさか!」

小林「この糸が、トイズを強制発動させていたのか!」


→証拠⑨【トイズ糸】の法廷記録を書き換えた。
<トイズにより発生した物質に反応し、糸に沿って移動する事ができる。トイズを矯正発動させる糸も三本目として存在する>



→証拠⑨【トイズ糸】を突きつける


小林「くらえ!!!」

小林「…こちらのトイズ糸には、もう一つ機能があります」

小林「ネロ、よろしく頼むよ」

ネロ「オッケー!任せて!」ティロン♪

ビィ――――

北芝「ぃっ!!?」

裁判長「なっこれは!?」

4号「…三本目の糸、ですか」

シャロ「うっうわぁあ!勝手にトイズが発動しちゃいます!」フワァ

小林「…その通りです。このトイズ糸には、リモコンで反応するもう一本の糸がありました」

北芝「なっ…何よこれ!?トイズ強制発動のトイズ糸!?そんなの…」

北芝「そんなの私、聞いてないわよ!!?」

小林「トイズを強制発動させる糸…本当に、被告人が被害者を殺す気であったのであれば…」

小林「こんな機能は!一切必要無い筈です!!!!」ダダーン!


ザワザワ…ザワ…


4号「………!」

6号「う…ノノは混線ちゅう…頭が痛く…ビリビリビリ」バチバチバチ プシュー

4号「…どうやら、認めざるを得ないようですね」

4号「私達の持つこの前提が、覆された事を」ボッ



ボシュッ

ギギギ…ガッターン



小林「…………」

シャロ「…や、やった…!」

コーデリア「やりました教官!再び評決を覆しました!!」


カンッ!!


裁判長「…ただいまの最終弁論の結果、評決が変更されました」

裁判長「有罪が二人、無罪が4人…したがって、本法廷は現時点で評決不一致とみなして」

裁判長「審議の続行を行うものとします!」カンッ!

北芝「……ぬぐぐぐ…」プルプル

姫百合「…これは、意味のある躍進です」

姫百合「今回ので、このトイズ糸がフェザーズの二人のものである可能性も低くなりました」

小林「……そうだ」

小林(そして…ここからだ)

小林(ここから…この事件の真実を引きづりだす!!)ドンッ

小百合「………」

ねこ「………」

叶「………」

小林(あの証人の中でも、何かを隠している奴は確かに居る!)

小林(この尋問で、それを引きづりだすんだ!!)

カンッ!!

裁判長「…それでは、証言に移りましょう」

裁判長「今回の最終弁論で、新しく分かった事がありました」

裁判長「トイズ糸が被告人のもので無い可能性と、抽選チケットの事について」


ねこ「………」

叶「………」

小百合「………?」オロオロ


カンッ!

裁判長「…詳しい証言をお願い致します」



【証言開始】

小百合「私はちょっと…任してたから分からないんだけど…」オロオロ

ねこ「抽選チケットだっけ?そんなもの適当だよ適当ぉー!」

叶「選ばれたトイズ持ちの子は、幸運だったんでしょうね」

ねこ「それとトイズ糸だっけ?そんなものは知らないなぁ」

叶「私達には、何も後ろめたい事なんてありませんからね」


小林「…………」

北芝「………」

裁判長「…ちなみに、検察側は抽選がどのような形で行われているか、調査しましたか?」

北芝「…そんなもの、捜査するまでもないわ」

北芝「証人のPCには抽選管理のソフトが組み込まれていた。それで抽選しただけに過ぎない」

裁判長「…なるほど、分かりました」

小林「…………」

裁判長「それでは弁護人、尋問をお願いします」



【尋問開始】

小百合「私はちょっと…任してたから分からないんだけど…」オロオロ


小林「待った!」

小林「本当に身に覚えが無いのですか!?トイズ糸も、抽選チケットも!」

小百合「ほっ本当に知らないんだよぉ!トイズ糸なんて…そんな物騒なもの知らないよ!」

小百合「そ、それに…抽選チケットはねこと椿ちゃんに任せてたし…」

ねこ「うけっ!?わっ私にふっちゃう!?」

叶「…そういえば、私は抽選について何も知らされてないですね」

ねこ「ううぅ~ん…抽選については、できれば企業秘密にしておきたいんだけどねぇ」

北芝「…それが、この事件と全く関係なかったら、私もそうしておくつもりだったんだけど」

北芝「この目の前の弁護人が変な可能性と結び付けちゃったせいで証言せざるを得ない状況なのよね」

ねこ「ほほーう、なるほどなるほど。私の敵は弁護人か」

北芝「元々敵よ、こいつはアンタらの仲間を殺した被告人を弁護してるんだからね!」ダンッ

小林「異議あり!!!」

小林「検察側は弁護側の心証を無意味に悪くしないようにしてください!」

北芝「……ふんっ!」プイ

姫百合「子供かっ…!」

ねこ「うーん、抽選かぁ、なんていうかさぁ…」


ねこ「抽選チケットだっけ?そんなもの適当だよ適当ぉー!」


小林「待った!」

小林「何故、そう言いきれるのですか?」

ねこ「いやだって、抽選なんてパソコンが選ぶだけのエンターキー一つで終わる作業だもん」

ねこ「そんなもんに詳しく証言とか…ねぇ~?」ニコニコ

小林「…その単純作業に、どうして被告人が関わっていたのでしょうか?」

小林「先ほど、団長さんは被害者である丸尾さんにも任せていたと言っていましたが」

ねこ「そりゃぁ、深い意味は無いよ?」

ねこ「だって、小百合ちゃんは椿ちゃんにベッタリ任せっきりだったんだし」

叶「影の団長…私は、そう呼んでましたわね」

ねこ「正直、団長さんいらねーんじゃねーかなーっても思ってね」

小百合「ううぅ……」ズーン

小林(酷いな…)

エリー「可哀…想……」ウルッ

ねこ「あっ!でも一番人気あるのは団長さんだし、団長さんが居るからこその今の人気だからさ!」

叶「そうですよ。団長様が居るからこそ、今の私達が居るのです」

小百合「……………」

小百合「…ククッ!我が魔力は時に、無意識にも漏れ人々を魅惑し続けるものなのだな…!」クックック

小林(どうやら調子が戻ってきたみたいだな)

ねこ「まぁそういう訳で、抽選自体はかなり適当だったんだよねー!」



叶「選ばれたトイズ持ちの子は、幸運だったんでしょうね」


小林「待った!」

小林「…つまり、自分達の手で選ぶ、と言う事は無かったと?」

ねこ「まぁそりゃぁ、さすがに転売ヤーとか偽造クレジットが判明したら除外するけど」

ねこ「それもクリック一つ、だしねぇ」

姫百合「…結果的に、殺人犯を除外出来なかったわけですが」

叶「出来るわけがないでしょう。誰が、分かるというのですか」

ねこ「さすがに世界を滅ぼすとか、人体発火現象を起こす奴は分かるけど、そういう人には誓約書書かせてるからね」

ねこ「今回のはちょっと、予想外だったかな~って」

小百合「…我の魔眼を持ってしても、見抜けなかったなど…不覚だ!」

ねこ「ほら、団長さんもこんなんだしさ」

小林「……うぅん…」

小林(自らが故意に座席を指定する事ができない…でも、それなら)

小林(その座席を、確認する事は出来た…という事だよな?)


ねこ「それとトイズ糸だっけ?そんなものは知らないなぁ」


小林「待った!」

小林「…本当に、知らないのですか?」

ねこ「寧ろ、何故知っていると思ったのか」

叶「先ほどの陪審員の話ですけど…結構物騒なものみたいですよね?」

叶「トイズ糸…確かに、サーカスにも使えそうですけど、使ってしまえば大問題になってしまいます」

ねこ「まー、”漆黒の魔法団!本当に闇と繋がっている!?”みたいな」

小林(洒落にならないな…)

小百合「ほほう…闇、か。我が悪魔との儀式と取引の名としては、悪くない…」

小林(こっちは満更でも無さそうだ…)

シャロ「ええと、ど、どうしましょう!先生!」

小林「…もし、フェザーズの二人が無罪だったとして、この人たちの物だという確証は無いよ。数万人はその場にいたんだからね。」

小林「しかし、彼女達が何かを隠している事は確実だ」

小林(問題は、その隠している内容と…)

小林(…一人だけ、その内容を知らないような気がする事だな)

叶「そもそも、そんなものに頼っている証拠なんてありませんよ。何故なら…」



叶「私達には、何も後ろめたい事なんてありませんからね」


小林「待った!」

小林「…何故、そう証言する事が出来るのですか?」

叶「えっ?」

小林「本当に後ろめたい事が無い人は、そんな証言はしません」

小林「なのに、わざわざそう証言するっていう事は…」

ダンッ

小林「貴方達は、何か後ろめたい事を隠しているんじゃないですか!?」

叶「!?」

ねこ「!?」

小百合「はっ!?えっ!?えっ!?」

北芝「異議あり!!」

北芝「弁護人は!証人の内情を勝手に決め付けないように!!」

北芝「それは司法や法律どころか…人として失礼よ!!」ダンッ

小林「ぐうぅ!」ゴーン

姫百合「…確かに、今のはちょっと無いですよ小林さん」

コーデリア「少し…嫌らしかったかもしれません」

エリー「い…いや… らし……////」

小林「……い、いや、だけど」

小林「僕は、彼女達が隠している後ろめたさ。それを証明する証拠品が…確かにあるんだ」

シャロ「…え!?」

コーデリア「!?」

姫百合「なっ…!?どういう事ですか!?小林さん!」

小林(…そうだ。今までの証言を思い出せ)

小林(団長さんを一人だけ立たせてた証言の時、彼女は何を言っていた?)

小林(あの、アルバムに挟んでいたものについて…!!)

小林(…ここで逃がしては駄目だ!ここで、突きつける!!)



小林「彼女達は、トイズ糸と抽選チケットについては容疑を認めないみたいだね」

姫百合「…まぁ、トイズ糸なんて私も今日初めて知りましたし」

シャロ「そんなの!カズミちゃんとアリスちゃんだって絶対知りません!」ムスー

小林「…ああ、そうだね」

小林(今、トイズ糸とチケットの事を審議しても煙にまかれるだけだ)

小林(なら、別の方向から突いて、そこから真実を引きずりだす!!)

小林(落ちついて、証拠品と証言を見比べてみよう)

しばらくお待ちください…


→叶「私達には、何も後ろめたい事なんてありませんからね」に
→証拠ファイル④【怪盗帝国からの手紙】 を突きつける


小林「異議あり!!!」


小林「…証人、一つよろしいでしょうか?」

ねこ「ん?何何?」

叶「はぁ…どうなさいました?」

小林「貴方達は、確かに先ほど言いました。自分達には後ろめたさは無いと」

叶「ええ…だって、私達は真面目に公演を続けてきましたゆえ」

ねこ「まぁ、一度や二度の失敗くらいはあったからね」

小百合「…それが、どうかしたの?」

小林「花輪さん」

小林「貴方、この招待状を捨てた。と申しましたよね?」ピラッ

ねこ「!」

叶「!」

小百合「え?…その通りだが。それが…どうかしたのか?」

小林「この怪盗帝国からの招待状、僕達はどこで見つけたと思いますか?」

小林「…この、アルバムの中にあったのです」

小百合「……え?」

小百合「それ…ねこちーの…アルバム…だよね?」

ねこ「………」

ダンッ

小林「今、確かに花輪さんはこの招待状を捨てた!と証言しました!」

小林「しかし!このアルバムにはこれが挟んでありました!これは――」

小林「一体、どういう事なのか!弁護側は証言を求めます!!」ビシッ

ねこ「………」

叶「………」

小百合「…ど、どういう…事なの…?」

カンッ!

裁判長「…確かに、気になる事ではありますね」

裁判長「証人、…証言をお願いできますかな?」

ねこ「…………」

裁判長「この招待状、団長が捨てたにも関わらずアルバムに挟んだ」

裁判長「その真意を、ここで証言してください!」


【証言開始】


①「いやぁ?そんな事言われてもねぇ…」

②「珍しいじゃん?怪盗からの手紙なんて」

③「だからとっておこう!って思っただけなんだよねー」



裁判長「………」

北芝「………」

小林「…あ、あの、それだけですか?」

ねこ「ん?だって、それ以外に理由なんて無いもん」

ねこ「それとも、これから詳しく聞いちゃう?これ以上の情報なんて一切無いけどね!」

裁判長「…どうですか?弁護人。尋問をしますか?」

小林「…はい」

小林「弁護側は、尋問の権利を手放すつもりはありません」

北芝「…あんたは本っ当!迷惑な尋問がするのがお好きのようね!」ダンッ

裁判長「…分かりました」

裁判長「それでは弁護人、尋問をお願いします」


【尋問開始】


①「いやぁ?そんな事言われてもねぇ…」


小林「待った!」

ねこ「ええ!?今ここで言っちゃう!?」ガーン

ねこ「もうちょっと我慢しておくれよ~ここからなんだからさぁ」ニヤニヤ

北芝「…証人は、まだ何も証言してないわよ?」

北芝「一体、何に「待った!」なんでしょうねぇ?」

小林(うぅぅ…何故さっき、僕は待った!って叫んだんだろう…職業病かな…?)

ねこ「んじゃ、早速言わせて貰うんだけど」


②「珍しいじゃん?怪盗からの手紙なんて」


小林「待った!」

小林「しかし、団長は呼んだ上で放棄しています」

小林「それをゴミ箱から漁る程なんですか?その手紙というのは」

ねこ「チッチ、甘いね探偵くん。こういうのはゴミ箱だからというのじゃないんだよ」

ねこ「だって怪盗帝国から連絡が来たんだよ!?こんなの、取っとくしかないじゃーん!何かに使えるかもしれないしさ!」

ねこ「コレクター欲というものだよ!」ドーン

小林(…何だか、この人”ネコ”…というより、”イヌ”みたいだな)

ねこ「まぁ、怪盗帝国って、一部の人からは崇拝されてるみたいだし高値で売れたりするかなーなんて思ったり」

ネロ「高値!?」ガバッ

小林「ネロ、ステイ。今からしようとした事、してはいけないよ」

ねこ「まぁ、てなわけでさ」



③「だからとっておこう!って思っただけなんだよねー」


小林「待った!」

小林「だから、アルバムにはあんなに写真が多いのでしょうか?」

叶「ええ…写真はほとんど、ねこさんが撮っていますわね」

ねこ「そー!”無くなる”よりは”有る”方が良いからさ!」

小林「……?」

小林「”無い”…ではなく、”無くなる”…ですか?」

ねこ「ん?…ああ、ちょっとした言い間違いかな?気にしなくていいよ!」ドーン

小林「過去に、何か失くした者…とか、あるのでしょうか?」

ねこ「……………」

小林「……?」

ねこ「…人間はさぁ!何でも無くなって生きて行くようなものだよ!」

ねこ「だから、生きる目的ってのが一番大事なんだと思うよ私ぁ!」

叶「…そうですね。それは一理あります」


小百合「…?」



→疑問を浮かべた花輪小百合をゆさぶる

小林「ちょっと!!」

小林「…小百合さん。ちょっと良いですか?」

小百合「う…うむ?」

小林「先ほどのねこさんの証言に、何か頭を抱えていましたが」

小林「何か、思い当たる事でもありましたか?」

小百合「…いや、その、ねこちーの生きる目的なんだけど…」

小百合「最初に出会った時、私に言ってくれたんだよね…あの時…」


===回想===

ねこ「花輪さんは、私の生きる目的なんですよ」

ねこ「花輪さんの後ろで、……いえ、背中ですかね」

ねこ「いつか叶えたい願い。それが花輪さんの中にあるのは間違いなくいんです!」

===終了===


小百合「何て事が、あったかなぁ…って」

小林「………」

姫百合「た…ただの思い出話……」

ねこ「………」

小百合「だから今でも、私はねこちーの事も誇らしく思っているのだ!」ドドーン

ねこ「…い、いやぁ、そういうのはほら…良いんじゃない?だって…ねぇ?」ダラダラ

叶「あらあら、ねこさん。恥ずかしくて汗がダラダラですわ」

ねこ「あ…あははぁ。…ちょっと、恥ずかしかった…ってかなぁ?」

小林「……?」

ネロ「…何か、おかしいよ?」

小林「ああ。一見照れて汗を流しているように見えるけど…」

小林「ねこさんの顔は…何故青ざめているんだ?」


カンッ!


裁判長「はいそこまで!」

裁判長「…どうやら、怪盗帝国への手紙に嘘偽りは無いようです」

裁判長「そしてその理由は…本法廷とは関係ないと断言できます」

北芝「ハンッ!ざまぁないわね弁護人。ただ時間を無駄にしただけで!」

小林「…………」

裁判長「それでは陪審員よ!判決に移って貰いましょう!」

裁判長「抽選チケットに関しては審議不要。トイズ糸はこれ以上審議しても無駄です」

北芝「そもそも、トイズ発生機能は元からついてた可能性で、使われた形跡も洗えないしね」

裁判長「では!これより本法廷を―――」


小林「待った!!」


裁判長「!」

北芝「……」

小林「…最期に、一つだけ」

小林「証人に証拠品を提示する権利を、ください」

北芝「…………」

北芝「そんなもの、必要ない!」ダンッ

北芝「もう審議は下そうとしている!変な茶々を入れたりは――」

小林「お願いです裁判長!この証拠品を出すことで――」

小林「弁護側は!もう一つの可能性を提示できます!!」

北芝「そんなハッタリが――」

カンッ!

裁判長「……良いでしょう。出してみなさい」

小林「…!」

裁判長「しかし、その証拠品が本法廷と全く関係無いと判断したその瞬間――」

裁判長「即刻!判決に移らせて貰います!」

小林「……分かりました」

北芝「…………」ギリギリ

小林「事件の新しい可能性を提示する証拠品は……これです!」


→→証拠⑧【アルバム】 を突きつける


小林「くらえ!!!」

裁判長「…これは、アルバムですかな?」

小百合「ねこちーの写真記録書だ!」ドーン

姫百合「アンタもさっきアルバムって言ってたでしょうが…」

小林「…問題は、最初のページです」

小林「先ほど言いましたね?そのアルバムには、ドイサースの事件の日のチラシが入っていた…と」

裁判長「はい。確かに言いましたな」

小百合「…あ、そう言えば、言ってた!」

ねこ「!…花輪ちゃん…見たの!?」

ダンッ!!

小林「…この証拠品で、新しい可能性が浮かび上がるのです!」

小林「この事件の、真実に繋がるような可能性が!!」

ねこ「っ!!」

カンッ!

裁判長「では…答えてください」

裁判長「その、新しい真実に繋がる可能性とは何か!」




→ドイサースのファンだから

  本当は警視庁の人間

  事件の被害者

→事件の被害者


ダンッ!!


小林「……事件が起きたあの日から、ドイサースの評判はあまりよくありません」

小林「多くの犠牲者を出した、そして自死した、悪人と呼ばれています」

小百合「………っ!」

小林「そんなドイサースの娘という事で、近づく事は無い筈です」

小林「花輪さん。貴方は彼女達からドイサースの話を聞きましたか?」

小百合「……聞いて…無い……!」

小林「はい。しかし、彼女は…少なくともねこさんはドイサースの存在を知っています」

小林「アルバムの位置から見て、おそらく相当昔から」

ねこ「………」

小林「そして、そんな娘に対し、生きる目的だ。叶えたい目的がある。その理由は――」

ダンッ!

小林「彼女がドイサースの集団自殺の被害者であり!!その娘に復讐を誓っていた以外にあり得ない!!」

北芝「異議あり!!」

北芝「そんなもの…証拠が無いでしょうが!!」ダンッ!

北芝「そもそも!そんな事が出来たなら…!もっと早くから殺されていた筈…!」

小林「なら、聞いてみましょう」

小林「貴方達が本当に花輪さんの下についたのは、彼女の手品を見たから、ですか?」

叶「え!?…そ、その通りでございます!」ドーン

ねこ「……そうだよ、今…なら!特に言える!」

ねこ「私は!花輪ちゃんのサーカスの為に!下についている!」

小林「異議あり!!」

小林「ならば…何故!怪盗帝国の手紙を取っておいたのですか!?」

小林「その手紙を使って、花輪さんを不利に陥れる為ではないのですか!?」

ねこ「ぐごっ…こっ……」

ねこ「……そんなわけ…無いじゃん!!」ダンッ

ダンッ

北芝「そもそも貴様…!一体何の根拠でそんな事が言える!!」


小林「根拠…?それは、今までで何度も目撃してきました」

小林「まず、三人は一緒に花輪さんの弟子になりたいと申し出た!」

小林「彼女達は、その時から計画を始動していたのです!」

小百合「……!」

小林「その中でも被害者は、当初の目的を忘れるほどに花輪さんと関係が強くなったみたいですね」

叶「……!」

小林「そして、被害者は事件当日、公演目から外れる様な行為を取っていた」

小林「そうですね?花輪さん」

小百合「…う、うん。本当は…私と二人でやるつもりだったから…」

ダンッ

小林「そして…一人になった事をねこさんは知らなく、驚いていましたね」

ねこ「…………!」

小林「そもそも、何故被害者は一人で公演しようと思ったのか?」

小林「…それは、おそらく」


→一人で目立ちたがったから

  奇跡の少女は殺害計画だった

  計画を聞かされてなかった



→奇跡の少女は殺害計画だった


小林「奇跡の少女、その演目を考えたのは、誰ですか?」

小百合「え!?…ええと、確か…」

小百合「一番最初に…提案したのは………」

ねこ「…………」

小林「…ねこさん、貴方ですね?」

小林「貴方は、この奇跡の少女を殺害計画の為に組み込み…」

小林「花輪さんを、殺すつもりだったのです!!」

北芝「異議あり!!」

北芝「しかし…!実際に殺されたのは被害者じゃない!!」

小林「異議あり!!」

小林「そう!そして被害者はこの殺害計画を知っていた!」

小林「だから被害者は!花輪さんを殺害計画からかばう為に!」

小林「自らを犠牲にして、代わりに殺されたのです!!」

小百合「…そ…そんな…そ……そんなの…」

小百合「嘘だぁぁぁあああああああああ!!!!」ガガガーン


ザワザワ…ザワ……

カンッ


裁判長「静粛に!静粛に!」

北芝「み…認められるか…!そんなの!そもそも!!」

北芝「奇跡の少女が殺害計画だった!そんな証拠は一体どこにあるのよ!!」

小林「…これは、今までの証言と証拠品を照らし合わせて導き出した、可能性です」

北芝「だったら!何の根拠も――」

小林「しかし、、まだ議論されていない証拠品なら存在します!」ダンッ!

北芝「!?」

小林「それは、この証拠品に書かれています!!」



→証拠⑤【漆黒の魔法団のチラシ】


北芝「こ…こんなチラシが!一体どうしたって言うのよ!!」ダンッ

小林「…分かりませんか?これが、この殺害計画が存在した証拠の一つになるのです」

小百合「…どういう事…だ?」

ダンッ

小百合「私は…認めない!」

小百合「こんな…!こんな!馬鹿馬鹿しい!私の友達が…私を!?殺すなんて!」ダンッダンッダン

小林「…この証拠品で、気になるのはねこさんのトイズの事です」

ねこ「!!」

小林「ねこさんのトイズは、このチラシによると触れた物を自由自在に動かせる。とあります」

小林「しかし、実際の演目では関節が自由自在に動き回る。そう言われています」

小林「…一体、そんなトイズはどこから現れているのか」

ねこ「…………」

小林「ねこさん」

小林「その手足の付け根を、一度見せて貰ってもよろしいですか?」

ねこ「…!!」

小林「その手足は、見た感じだと全て偽物。義足と義手である事が分かります」

小林「問題は、何によって手足を失ったのか」

小林「服で隠されていて分かりませんが、接合部で分かる筈です」

小林「それが先天的な物なのか、傷がついていれば事故で起こったものかどうかは」

ねこ「…く……くくっ…!」プルプルプル

叶「………」


北芝「…だ、だけど!」ダンッ

北芝「それが!この証人があの事件の被害者である証拠にはなり得ないわ!!」

北芝「だって、手足を失う事故なんて交通事故でもなるんだから!」ダンッ

小林「なら、ドイサースの集団自殺事件の被害者の名簿を調べてください」

小林「その中に四肢を失った少女が居る筈です。そして、その者の名前をここで、公表願います!!」ダンッ

北芝「異議あり!!」

北芝「そんな必要は…無い!!」ダンッ

北芝「何故なら…!仮に!トイズ糸を用いた計画だとして!」

北芝「この証人が犯人だというのは、あり得ない!!」ダンッ!!

小林「……どういう事ですか?」

北芝「証人達のトイズは、硬化、触れた物を動かす能力、そして黒い羽を舞わせるだけのものよ」

北芝「そして、その…トイズ…糸の!………被害者がっ…!!」

小林(…何だ?北芝検事の歯切れが…?)

北芝「…………」ハァー…

北芝「もう一つのトイズ糸の位置!それは歯車を通らなかったからよ!!!」ダンッ

小林「……!」

裁判長「きっ北芝検事!それはどういう意味ですか!?」

北芝「そのままの意味よ!トイズ糸は歯車から位置が少しズレていた!!」

北芝「人間一人分が、歯車から避けられる程にねぇ!それを!歯車で引き殺すには…」

北芝「顔に矢が刺さって、歯車の上から落ちる以外にあり得ない!!」ダンッ

北芝「つまり、殺人を犯せるのは被告人以外にあり得ないのよ!!」

小林「異議あり!!」

小林「…北芝検事、貴方、僕達に隠している事実がありますね?」

北芝「…何ですって!?」

小林「トイズ糸が歯車からズレていた。これを隠した事も問題ですが…」

小林「貴方が隠している問題は…もっと大きな物だ!!」


→証拠⑥【丸尾椿(15)の解剖記録】 を突きつける


小林「くらえ!!!」


小林「新しく更新された解剖記録によると、被害者は圧死ではあるものの」

小林「それは…歯車によるものでは無かったのです!!」ダンッ

ねこ「!」

叶「!」

小百合「…え!?それってどういう…」

北芝「異議あり!!」

北芝「そんなものは!検死官が解剖を間違えただけに――」

小林「異議あり!!」

小林「貴方は検察側の証拠品を疑うと言うのですか!?それでも貴方は検事か!!」

北芝「ぐぅぅっ…!!」

北芝「ぐぅぁあああああああああああああああああ!!!!」ガガガーン

ダンッ

小林「そう!被害者は別の凶器によって殺されたのです!!」

小林「被害者が、宙に浮いているその時に!」

北芝「異議あり!!」

北芝「だっ…だったら!その凶器は一体何だと言うの!?」

北芝「それが何なのか…弁護側は提示できるというの!?」

小林「…弁護側は、この証拠品を……」


→提示できる

  提示できない


→提示できない

小林「それは…無理です」

北芝「だったら!」

ダンッ

小林「何故なら、この解剖記録はついさっき更新されたものであり」

小林「この死因が不明と書かれている以上、まだ見つかっていない物の可能性が高いからです!!」

北芝「!!!!」

裁判長「…それでは、一体どこにあるというのですか!?」


小林「…………」


小林「その為には、一度事件をおさらいしておく必要があります」

北芝「おさらい…ですって?」

ダンッ

小林「それじゃぁ皆…聞かせてくれ!」

小林「この裁判を通して気付いた、君達の重要なファクターを!!!」


【暴露開始】


→コーデリアの疑問点
【何故、アルバムにはドイサースのポスターが?】

小林「コーデリア!!」

コーデリア「はい!!」

コーデリア「6年前、一つのサーカス団が事故を起こしました」

コーデリア「その事故は、多くの犠牲者を出したとても痛ましいものです」

コーデリア「そして、ねこさんのアルバムに挟まれていたのは、その事件当日のポスターです!」

コーデリア「彼女が警察関係の者でない以上!このポスターが挟んであった理由はただ一つ!」

コーデリア「ねこさんと、つげさんと被害者!この三人がこの事件の被害者で――」

コーデリア「事件を引き起こした団長の娘…花輪小百合に近づき…復讐する為です!!」

小林「よしっ!!」


小百合「だから…そんなっ…信じない!」

小百合「私はっ…そんな…そんな事…絶対に!!」ダンッ

小林「…しかし、これが無視できない注意点である事は事実です」

小林「それは、彼女が説明してくれます!!」



→シャーロックの疑問点を突きつける
【何故、アルバムに断った手紙が挟まっていたのか】

小林「シャーロック!」

シャロ「はい!!」

シャロ「そのアルバムにはもう一つ、怪盗帝国からの手紙が挟まっていました!」

シャロ「復讐を誓った三人、その三人がその手紙をわざわざ保管する可能性は一つしかありません!」

シャロ「それは……武器です!」

シャロ「後に復讐に使えるのではないかという、脅しやマインドコントロールに使用するつもりだったのです!!」

小林「よしっ!!」

ねこ「…そんなの」

ダンッ!

ねこ「そんなの…ただの詭弁じゃん!」

ねこ「私は…!そんな!……ふざけるな!!」

ねこ「もう…もう!これ以上は止めろ!!」

小林「いえ、止める訳にはいきません!」

小林「僕達は、まだこれについての議論が終わっていないのですから!」



→ネロの疑問点を突きつける
【照明の中のトイズ糸は誰のものか】


小林「ネロォ!!」

ネロ「よし来た!」

ネロ「…このトイズ糸だけどさ、ついさっき色々いじってみたんだよ」

ネロ「そしたら…物凄い事が分かったんだよ。聞く?」

ねこ「………!?」

ネロ「これさ、販売経路がそもそも分かんないらしいけど、これは絶対に分からないよ」

ネロ「だってこれ、…君の眼球から作られているよね?」

小林「よs……えっ?」

小林「ぇぇぇえええええええええええええ!!!!???」ガーン

小百合「……えっ?」

ネロ「だからさ、これを化学班に持っていったりして調べて貰えば、これが君の眼球のものだって分かるんだよ」

ねこ「………っ!!!!」

ネロ「よくもまぁ、頑張って作ったよね。これ」

ねこ「…黙れ」

ねこ「黙れ…黙れ黙れぇええ!!」ダンッ

ねこ「それ以上…喋るな!!これ以上…私の…私の生きる目的を…奪うなぁ!!!」

小林「…このトイズ糸が誰の物か、これ以上議論する必要も無いみたいですね」

小林「しかし、まだ聞くべき事があります!!答えてください、ねこ千枝さん!!」ビシッ



→姫百合の疑問点を突きつける
【何故フェザーズの二人だったのか】


小林「姫百合くん!!」

姫百合「はい!!!」

姫百合「何故、フェザーズの二人が選ばれたのか…それは、抽選の結果なのはそうかもしれません」

姫百合「しかし、トイズ糸の習性から物理的の物でしか引っかけ移動する事ができない…」

姫百合「だから貴方達は、物理的なトイズが使用できるフェザーズの二人を選んだのです!」ダンッ

姫百合「そして!被害者の顔に刺さったあの矢は!」

姫百合「強制発動の時に、必然的に放たれた飛び先だったのです!!」

小林「よしっ!!」

北芝「ぶっ…物理的な…トイズだから…何……!!」

北芝「あっ…ああああ!!」ガガーン

小林「…そうです。このサーカス団には他では珍しく、トイズ席が設けられていました」

小林「普通はトイズ持ちの人は割高になる事も多いのですが、ここでは逆にトイズ割りというものを実施していたみたいですね?」

小林「つまり…貴方達は探していたんですよね?」

小林「冤罪を着せる、被告人になりえる人物を!!!」ビシッ

小百合「…っ!!!!!!」

叶「…………」

ダンッ

ねこ「もう…もうやめろ!喋るな!!」

ねこ「その口を閉じろ!私は…私はまだ…!!!!」

小林「…これで最期です」

小林「さぁ、聞かせてくれ!もう一つの…最期の重要なファクターを!!」


→エルキュールの疑問点を突きつける
【何故被害者はトイズで逃げなかったのか】



小林「エルキュール!!」

エリー「はい!!」

エリー「…被害者である椿さんは、計画の参加者でした」

エリー「当然…殺害計画の内容は把握していたと思われます…」

エリー「だからこそ…!被害者はトイズで逃げなかったのです…!」

エリー「被害者は…団長さんの親友でした…!かけがえの無い親友だと思っていたのは…団長さんだけではありませんでした…!」

エリー「だからこそ!被害者は…暗闇の中だからと…団長の代わりに殺されたのです…!!」

エリー「大切な親友を…守る…為に…!!」

小林「よしっ!!」

小林「これらを全て聞いた上で導き出した答えは!先ほど申した通り殺害計画があったという事」

小林「そして、証拠品は全てサーカスの中にある…」

ダンッ

小林「僕達にそう思われる事を、”知っていた”という事です!!」

北芝「!?」

ねこ「………!!」

裁判長「どっどういう意味ですか!?」

小林「彼女は、テントの中を調べつくされる事を知っていました」

小林「だからこそ、隠しているのです。今もなお、本当の凶器を!」ダンッ

北芝「なっ…なんだと…!?」

カンッ

裁判長「いっ一体!どこにあるというのですか!?」

裁判長「その、本当の凶器というのは!!」


→テントの中

  控室の中

  法廷の中


→法廷の中を選択


小林「それは…法廷の中です!!」

北芝「なっ…!法廷の…中ですって!?」

ダンッ

北芝「そんな!人間一人を捻りつぶしそうな大きな道具なんて!法廷の中には無い!!!」

小林「しかし!ちゃんと存在しているのです!」

小林「今!僕達が居るこの法廷の中に!!」

シャロ「!?」

ネロ「!?」

コーデリア「!?」

エリー「!?」

姫百合「!?」

北芝「!?」

ザワザワ…ザワザワザワザワ

カンッ

裁判長「…それは、どこにあるというのですか?」

裁判長「ただちに、場所の提示を要求します!!!」



→裁判長席

  検事席

  証言台


→証言台を選択


小林「……ねこさん」

小林「前から思っていたのですが、その胸にぶらさげた袋の中に、何が入っているのですか?」

ねこ「………っ!!!」

小林「その大きさからすると」

小林「このトイズ糸の一つくらいは入りそうな大きさですよね?」

ねこ「……あ…あ………」

小林「ねこさん」

小林「その袋の中身を、今ここで提示してください」

ダンッ

小林「もし、関係無いのなら謝罪します」

小林「その中に入っているのは…、今回使用されたトイズと関係がありますね!?」

ねこ「…や……やめ…て…」

小林「トイズ糸が作れるのならば!他の物も作れる筈です!」

小林「自分と違うトイズを発生させるなら、違う人物の眼球を使えば良い!そう!」

ダンッ

小林「その中に入っているのは…違うトイズを発生させる”眼球”です!!」

小林「…もし、違うと言うのでしたら、その中身を裁判に提示してください」

小林「すれば、貴方の疑いは全て晴れます!!!」ダァーン!!!



ねこ「……………」

ねこ「……私の…私の……生きる目的……」

ねこ「私から…全部奪った…あいつを………!」フラフラ

ねこ「…死んでしまったあいつの…復讐が……!!」フラフラフラ

ねこ「娘を…あいつを……殺せば……!!」フラフラフラフラフフラ

ねこ「私の…家族の……復讐が……!!」

バッ!!

ねこ「!?」

メラメラメラメラ

ねこ「あ……あああ…!火…火!!」  ダン! ダン! ダン!!

ねこ「あああ!も…燃えてる!爆発してる!!ああ…!天井が倒れてくるよ…!!」

ポロッ ガラガラガラ

ねこ「ああああ!右脚が…!お父さん!燃えてる!動いて!動いてよ!お父さんの身体が燃えているんだよ!?」

ポロッ ギギギギギ…

ねこ「ああっ!…左脚…!お姉ちゃん!ねぇ…お姉ちゃん!血まみれだよ!?起きて!起きてよ!助けて!助けて!」

ポロッガガ…ガガガガガ…

ねこ「ああ…左腕ぇぇ…!お爺ちゃん!ねぇお婆ちゃん!お爺ちゃんがバラバラだよ!?…何で?何でお婆ちゃん頭が無くなってるの…!?」

ポロッギギ…ギギギギギギギギ

ねこ「右腕……お母さん…お母さん!ねぇ!?何で!?私、もうすぐお姉ちゃんになるんだよ!?お腹の中に私の妹が居るんでしょ!?」

ねこ「何で…!?死んじゃ駄目だよ!だって、私!まだ…皆と一緒に居た……い………」

メラメラメラメラ……

ねこ「……ああ…身体の糸が…絡まって……動き……が……」

ギギギギ……

ねこ「……………」

ブッツン

バラバラバラバラバラバラバラバラ………

…………

……


【暴露完了】



===回想===

ねこ『ねぇねぇお母さん!今度の誕生日、ドイサースのサーカス行こうよ!』

お母さん『そうねぇ。…でも、取れるか分からないからねぇ』

ねこ『えー!?でも、これを逃したらもう無いんだよ!?だって、ドイサースも今回が最期の公演だって言ってるし!』

お姉ちゃん『ふふ、そうしたら千枝、もうドイサースのサーカス見れないね』

ねこ『そうだよ!だから私、ドイサースのサーカスに行きたい!』

お母さん『はいはい。それじゃぁお父さんにお願いしてみるから、ちゃんと良い子で居るのよ?』

ねこ『本当!?やったー!じゃぁお爺ちゃんとお婆ちゃんも連れてって良いよね!?』

お姉ちゃん『あらら…これじゃぁ、お父さんのお財布が可哀想な事に』

お母さん『でも、折角千枝の誕生日なんだもの。こういう日くらいは奮発してあげないと。ね?』

ねこ『うん!』

お姉ちゃん『もう、お腹に赤ちゃん居るんだから、こういうのは妹で我慢しなさいって言うものだよ』

お母さん『それでも、半年先だから…ね』

ねこ『わぁい!お母さんも、みんなも!だーいすき!!』





ねこ『…やだ…助けて……』

ねこ『死にたく…ない…。まだ…死にたく…ないよ……』

ねこ『……お母さん…お父さん…お姉ちゃん…お爺ちゃん…お婆ちゃん……』

ねこ『…誰か…誰か……助けてっ!!』

ティロン


===回想終了===



裁判長「…………」

小林「…………」

小百合「…………」

叶「…どうやら、全てを話す日が来たようですね」

叶「ええ。確かに私達は、ドイサースの娘、花輪小百合さんを殺す為に漆黒の魔法団に入団しました」

小百合「……っ」

叶「動気は、先ほど申してくれたように、ドイサースへの復讐です」

叶「椿さんは、あの事故で兄を失くし、私は両親を失くして」

叶「ねこさんは……”全て”を失いました」

小林「全て…ですか」

叶「はい。両親を含めた全ての家族、そして両手足を失っています」

叶「その時に得たのは、トイズたった一つです」

ねこ「………」

叶「私達三人が出会ったのは、およそ一年前」

叶「出会ったのは、本当に偶然でした。三人とも、あの事件の被害者で大切な人を失った者同士でしたから大層驚きました」

叶「そして半年後…あのドイサースの娘が地下劇場でマジシャンをしている事を私達が聞きつけ、奴の娘の殺害計画が立ちあがりました」

小百合「………」

叶「最初は、椿さんも花輪さんに憎悪を向けていて殺意がありましたが、彼女の反応と人格。そして私達に対する想い等で心が変わってきました」

叶「私も、あんな事件を起こした娘が、こんなにも良い子だったなんて思いもよらなかったのです」

小林「……つまり、最期まで殺害計画を行おうとしたのは、ねこさんだけだと」

叶「それは…そうかもしれません。ねこさんが一番、失った物が多すぎましたから」

叶「もう…引くに引けない。そんな心意気さえ感じましたのです」

ねこ「……………」

ねこ「……生きる…目的だったんだよ」

小林「!」


ねこ「…あの男の…娘を…同じ方法で…」

ねこ「皆が見ている前で…大勢の前で………同じように殺すのが……」

ねこ「私の…たった一つの生甲斐だったんだ……!」ギリギリ

ダンッ!

小林「しかし、貴方も迷っていたのではないですか?」

小林「そんな、憎悪の為に動いていたというのなら…アルバムにこんなに写真を載せたりはしません!」

小林「中には個人の写真も、4人で仲良く撮っている写真もあります!そして、その撮影者は貴方だった!」

小林「なら、貴方も悩んでいた筈だ!そして、分かっていた筈です!ドイサースと彼女とは、違うという事を!」

ねこ「……そんな綺麗事がまかり通るくらい、もう私は綺麗な身体じゃ無くなっているんだよ…」

ねこ「私のこの袋…ね。見る?この中には…」

ねこ「私の…”たった一人の家族”が…入っているの…」ゴソゴソ

スッ

小林「!?」

北芝「っ!?」

小百合「…!!」

裁判長「…なっ!?そっ…それは!?」

裁判長「胎児のようなものに…肥大化した眼球が!!」


ねこ「…私のね、生まれてくる筈だった…私の妹なのよ」

小林「…ま、まさか!貴方はそれをいつも持ち歩いて…!?」

ねこ「凄いんだよ…?妹…智以ちゃんはね?たった6歳でトイズが発動したのよ」

ねこ「本当に…凄かった…。だって…この子のトイズは…」

ねこ「…視界に入ったどんなものも、全て捻り潰す能力だったんだから…!」グッ

小林「!!」

姫百合「!!」

ねこ「だから……これが、最期のチャンスだ」

ねこ「ここに居る皆……全員…!捻りつぶして!智以!!」グッ

ブンッ!!

北芝「!!」

裁判長「うっ…上に!?ぶん投げました!?」

小林「……くっ!!」



△シャーロック

○ネロ

□コーデリア

×エルキュール

Rエラリー姫百合


→Rエラリー姫百合


小林「姫百合くん!!」

姫百合「はい!!」ティロン♪

ねこ「…………」ブンッ

姫百合「きゃぁっ!?」ビチャッ

コーデリア「!?」

小林「タバスコ!?」

シャロ「ヒメちゃん!」

姫百合「くっ…あぁっ…!!」ビリビリビリ

小林「…っ!!」


△シャーロック

○ネロ

□コーデリア

×エルキュール

Rエラリー姫百合



→△シャーロック


小林「シャーロック!!」

シャロ「はい!!」ティロン♪

フワァ…

裁判長「!胎児が…落ちてきません!」

小林「良いぞシャーロック!そのまま胎児の目を天井に向けるんだ!」

シャロ「はい!ムムムム…!!」プルプル

ねこ「………」ユラァ…

ビュンッ!

小林「!!」


△シャーロック

○ネロ

□コーデリア

×エルキュール

Rエラリー姫百合



→□コーデリア


小林「コーデリア!」

コーデリア「はい!」ティロン♪ パシッ

コーデリア「これは…!針!?」

ネロ「シャロの眼球を狙っていたの…!?」

ねこ「………」パキリッ

小林「…え?」

コーデリア「腕を…外して…?」

ねこ「……」スッ

ゴォッ!

小林「!」

ネロ「肩で、証言台を持ち上げた!」

小林「そうか…!トイズは!触れた物を自在に動かす事のできる能力!」

ねこ「…」ブォォンッ!!



△シャーロック

○ネロ

□コーデリア

×エルキュール

Rエラリー姫百合


→×エルキュール


小林「エルキュール!!」

エリー「は…はい!!」ティロン♪

バッ

バッキャァアアアアアン!!

ねこ「……!」

コーデリア「やった…!エリーが盾になってくれたおかげで!証言台が!」

シャロ「あ…ううぅ…!」プルプルプル

シャロ「もう…限界ですぅぅう…!!」プルプルプル

小林「!」

コーデリア「シャロ!待って!」

姫百合「シャーロックさん!お願いです!もう少しの辛抱を――」

シャロ「あっ――――」フッ

エリー「あっ…あ!」

ネロ「アレが!落ちてくる!」

小林「―――!!」


△シャーロック

○ネロ

□コーデリア

×エルキュール

Rエラリー姫百合



→○ネロ


小林「ネロォ!!」

ネロ「ぬぅうっ…!こうなったらヤケだ!!」バッ

ティロン♪   バチバチバチ

叶「…無駄です。智以の目は、夜目にも効きます。だから、暗闇の中でも椿さんを、殺せたのですよ」

ネロ「……だったら、こうするまでさ!!」カッ!

バァアッ!!

ねこ「かっ…!!」

姫百合「きゃぁっ!この…光!」

シャロ「まっ眩しすぎて何も見えません!!」

ネロ「これだけ眩しかったら…アイツもしばらく何も見えないだろうさ!!」バチバチバチバチ

フッ

ねこ「あっ…あっ!智以!」タッタッタッタ

グシャッ

ねこ「…………あ」

ねこ「…………智以」

ねこ「………」

ねこ「…………死んじゃった…」スゥ…


「……」



カンッ!!




裁判長「…係官は、すぐに証人を拘束するように」

裁判長「そう、今すぐに!!」

係官「…は、はい!了解しました!」タッタッタ

ガシッ

叶「…どうやら」

叶「これで本当にお終いみたいですね」

ねこ「…………」

小百合「…………」

叶「……でも、これで良かったのかもしれません」

叶「…小百合ちゃん。私は、貴方と友達でいれて本当に良かったと思っています」

ねこ「………」

叶「こんな計画、私と椿ちゃんが…全力で止めていれば…きっと」

叶「まだ…貴方と友達で居れたのかもしれませんね」

ねこ「………」

係官「ほら!立て!歩くぞ!」

ねこ「…」フラ

叶「…いえ、私は止められなかったのだから、どのみち本当の友達には…なれなかったのでしょう」

叶「さようなら…小百合ちゃん。どうか、お元気で…」

小百合「…………ぁ」

小百合「……」

小百合「…………っ!」

ダンッ

小百合「待って!!」


ねこ「……」

叶「…!」

小百合「私のお父さんが…!とても…酷い事したのは……私が謝っても許される事じゃ…無い…かもしれない…」

小百合「…でも!私は!…皆の事!友達だと思っている!」

小百合「今までも!そして、今でも!」

ねこ「………」

ねこ「…」

小百合「だから……私!二人が戻ってきても分かるように!今よりずっと!ずっと頑張るから!」

小百合「だから…戻ってきて!!」

叶「…!」

小百合「ねこちーの新しい生甲斐なんて、私が!私達が作るから!!」ジワッ

小百合「だから…!また、一緒にサーカスをやろう!」ポロポロポロ

ねこ「……」

ねこ「…!!」

小百合「だって!私達は…友達…なんだから!!」ポロポロポロ


ねこ「……何…言ってるんだよ…本当に…」

ねこ「私は…貴方を…花輪……小百合ちゃんを…殺そうとしたんだよ…?」

ねこ「もう…生甲斐が…無くなって…殺す事も……無い…のに…」

ねこ「親友を…奪った……のに……」ポロポロポロ

ねこ「…私…ただの…馬鹿…だったのに…!」ポロポロ

ねこ「こんな…!こんな大切な物が…近くにあったのに…今になってようやく…ようやく気付くなんて…!」ポロポロポロ

ねこ「いや…違う。気づいてたんだ。気づいて…気づいて気付かなかったフリをしてただけなんだよ…!!」ポロポロ

ねこ「それを…今になってようやく気付くなんて……」

ねこ「私は……そんな馬鹿野郎…なのに……!!」ポロポロポロ

ねこ「う…ううぅ……うわぁぁぁぁぁぁ……ぁぁぁぁぁ……」エグッエグッ グスッグス


……………

………



裁判長「……それで、先ほどの証人は…」

係官「はっ!先ほど、留置所へと届けられました!」

裁判長「……よろしい」

裁判長「私達は、ようやくこの事件の本当の真実にたどり着きました」

裁判長「それはここに居る全員、陪審員の皆も納得済みです」

北芝「…ぐっ…ぐぐぐぐっ……!!」ギリギリギリ

小林(納得していないのが一人居るな)

北芝「こっ…この…!小林…オペラァァ…!!」プルプルプル

北芝「またしても…この私に…敗北をぉぉおお……!!」ギリギリギリ

北芝「ぐ……ううぅ………あ…あ……」ガタガタガタ

北芝「ぎゃぁぁあああああああああああああ!!!!!」ガラガラガラガラ  バッターン

グサグサグサ  ザクッ  ギャァァアアアアアアアアアア!!

「……………」


小林「…今、色々刺さる音がしましたが、大丈夫なんですか?」

裁判長「…どうやら、今回のダンボールは彫刻等が入っていたようです」

裁判長「検察側は伸びてしまったようなので、ここで判決を下してしまいましょう」

裁判長「それでは!これより判決を――」


「待った!!」



5号「…その判決、ちょっと待って貰おう」

裁判長「…貴方は、陪審員5号さん?」

姫百合「また、山本がとか言うつもりですかね?」

5号「今回の裁判、全て拝見させて頂きましたが」

5号「…やはり、私は間違えている事に今、気づきました」

裁判長「…まぁ、確かに今回の裁判に山本さんという人物は存在しな――」

5号「いえ、そちらの方ではなく…」


バッ


J・ファントム「私の、過去の過ちにです」

裁判長「……え?」

小林「………あっ!!おっ…お前は!!」

アリス「……おっ…お爺ちゃん!?」

小林「怪盗!J・ファントム!!」

姫百合「……え?」

ミルキィホームズ+カズミ「「「「「ぇぇぇうぇええええええええええええええ!!!!!」」」」」ガガーン


J・ファントム「…私はあの日、探偵オペラに負けて逃げ出してしまった」

J・ファントム「いや、あの時は負けたとは思っていなかったのです。何せ…」

J・ファントム「我が弟子、ドイサースの最期の公演についての、真実を奪う仕事だったのですから」

小林「!!」

裁判長「ど…ドイサースですって!?」

J・ファントム「はい。この裁判にも出てきたと思います」

J・ファントム「あの日、…彼が自殺する前日、彼は確かに言いました」




===回想===

J・ファントム『…おい、何だこの火薬の量は…?』

ドイサース『……来てくれましたか。師匠』

J・ファントム『おい、一体何のつもりだ?それに、この火薬の量は…?』

ドイサース『…これは、今回のサーカスに使うものですよ』

ドイサース『私は、今回のサーカスで全てを終わらせるつもりです』

J・ファントム『…一体、何をするつもりだ?』

ドイサース『娘を守る為ですよ』

ドイサース『裏の世界の奴らが、私の眼球と娘を狙っているのはご存知の筈でしょう』

ドイサース『今回、このショーの後に取引をする事になっていましてね。奴らもここを見に来る筈なんですよ』

ドイサース『一応、客として参加している…と、言っていたものですからね』

J・ファントム『…きっ貴様!それで観客もろとも奴らを殺す為に…この火薬の量を!?』

ドイサース『…仮に殺せなくても、身よりが居なくなった娘は孤児院で守られます』

ドイサース『あの卑劣で少女を穢れた道具としか思っていない奴に奪われるくらいなら…』

ドイサース『闇の世界に落としてしまうくらいなら…ね』

J・ファントム『だが!お前のショーを見に来る客は!?そいつらは何の罪も無いぞ!!』

ドイサース『師匠…貴方も子供や孫が居るなら分かるでしょう』

ドイサース『親は…子供の為なら、悪魔にだってなれるんです』


===回想終了===


J・ファントム「…そして、私は奴の暴行を止める事ができなかった…」

J・ファントム「せいぜい、観客の被害を最小限控える為に、引率するしか…無かったのだ」

J・ファントム「…幸か呪いか、裏世界の奴らは全滅していたがね」

小林「…一体、彼は何をしていたのですか?」

J・ファントム「分からない…だが、裏世界の奴には目をつけられていたのは間違いない。トイズ糸の材料にするつもりだったのだろう」

J・ファントム「だが、奴を狙う裏世界の奴らは…まだ残っていたのだ」

J・ファントム「私は、そいつらからドイサースの残した大切な宝を…娘を守る為に、今までに暗躍していた」

アリス「…………」

小林「……では、あの時僕と対峙していた、あの時の事件の目的は――」

J・ファントム「……そうだ。ドイサースの遺産のものだ」

小百合「…!」

J・ファントム「だが、後一歩のところで小林オペラ…お前に邪魔をされたのだったな」

J・ファントム「……しかし、もういい…もういいのだ」

スッ

J・ファントム「今までに、ずっと奴の尻拭いをしてきたが…、もう、それもこれで終わりだ」

J・ファントム「奴を狙う裏世界の奴らも、もう居ない。娘を狙う奴も、もう居ない」

J・ファントム「…これからは、罪を償う時だ」

カッ

J・ファントム「裁判長!この裁判が終わった時、私はすぐにでも拘束してくだされ!」

J・ファントム「私は全ての罪を認め!小林オペラに負けた事も認める事とする!!」

小林オペラ「…………」

J・ファントム「かの娘が、これほど立派な女性に育ってくれたのなら、もう私が心配する事も無いからな」

小百合「…………」

J・ファントム「そしてアリスよ…すまなかった」

J・ファントム「弟子の娘に執着するばかりか、孫娘を窮地に陥るようなこの老害を…どうか、許してくれ」

アリス「……………」

J・ファントム「それでは裁判長、この審議に終わりを――」

アリス「お爺ちゃん!」


J・ファントム「…!」

アリス「…また、帰ってきた時には…」

アリス「今までのお話…全部、聞かせて」

アリス「お兄ちゃんと一緒に、全部、聞くから…!お爺ちゃんの活躍を、…全部!」

J・ファントム「……………」

J・ファントム「…アリス、あまり老人を泣かせるな」

J・ファントム「……だが、ありがとう」


カンッ!


裁判長「これより!常盤 カズミと明神川 アリスに判決を下す!!」




 
       無         罪    









ワーワー! キャー!!  ワーワーワー!!  ワー!!



裁判長「それでは!これにて閉廷!!」




カンッ!!!




【横浜裁判所 第二控え室  12月02日 午後3時11分】


小林「…………」

小林(…やった…んだよな?)

小林(…勝った…んだよな?)

小林(…本当に、この瞬間だけは、実感が湧かないな…)

小林「…はは、ははは……」

カズミ「小林さんんん!!!」ダダダダダッ

ギュッ

小林「うっうわ!」

カズミ「あり…ありがとうございます!本当に…本当に!私達の無実を証明してくれるなんて!!」

カズミ「本当に…さすがは!名探偵!ミルキィホームズの生みの親!!本当の恩人です!!」

シャロ「ぜんぜぇえええええ!!!」ダキッ

シャロ「やりまじだぁああ!!勝ぢまじだぁあああ!!ぜんぜぇえええ!!」ビエエエエエエエエ

ネロ「やった!また勝った!もうこれで、負けなしって感じだよ!ねぇ小林!」ダキッ

エリー「小林さん…う…ううう…!!」ポロポロポロ

コーデリア「また…また!勝ってしまいましたね!教官…教官!」ダキッ

小林「みっ…皆……」

姫百合「…今回の裁判の、勝訴…おめでとうございます」

姫百合「これでまた、冤罪から依頼人を助けられましたね」ニコッ

小林「姫百合くん……」

アリス「………………」

小林「…あっ!明神川くん」

アリス「………小林さん」

アリス「…今までの無礼…本当に申し訳ありませんでした!」ガバッ

アリス「今の今まで…助けてくれていたのに…!とても…とても失礼な態度を取ってしまって…!」

アリス「もう本当に…何てお詫びすれば良いか…!」

小林「いや、そんな事はいいよ。僕だって君達の無実を証明出来た事が、一番嬉しいんだから」

小林「勝ったのに、そんなに申し訳なさそうな顔をされる方が…ちょっと、かな?」

アリス「あっ…ごっごめんなさい!」バッ

カズミ「もーアリス!小林さんが嫌がっているのは、そういう態度だよ!」ガバッ

カズミ「もっとこうやって笑っていれば良いんだよ!イーって!」ギュゥゥゥ

アリス「イ…イイイイ~~」ギギギギギギ

小林(指で……)


シオン「ああ…アリス!アリィイス!!」ババッ

カズミ「あっ…!シオンさん!」

小林「あ…どうも。このたびは――」

シオン「僕は信じていたよ…アリスが無実だって事を!!」ガシット

シオン「そりゃぁそうさ!こんなに可愛いアリスが人を殺す筈無いじゃないか!なぁ?皆!」ガバッ

アリス「おっお兄ちゃん……」

カズミ「……え、私は?」

シオン「さぁ、裁判で疲れただろう?今日はもう帰ってゆっくり休みなさい」

シャロ「あっ!ちょっと待ってください!これからカズミちゃんとアリスちゃんの為の打ち上げがあるんですよ!」

コーデリア「そ…そうです!まだ連れて行かないでください!」

ネロ「そうだよ!今日”も”小林に奮発してもらうんだからさ!」

小林(どうしよう…僕も帰りたくなってきたぞ…)

シオン「…ん?貴方は…確か、アリスの弁護士の……」

小林「……いや、昨日挨拶しましたよね!?さすがに忘れてませんよね!?」ガーン

シオン「…はは、冗談さ」スッ

シオン「今日は、アリスとカズミちゃんの為に、全力で戦ってくれてありがとうございました。…小室オイラーさん」

小林「……いえ、それに関してはおめでとうございますとしか申し上げられません」

小林「ですが、僕の名前は小林でオペラです。」

シオン「これは失礼いたしました。小野オクラさん。このたびは、是非謝礼金を払わせていただきます」キラッ

小林(…僕の名前って、そんなに覚えにくいのだろうか…?)


小百合「……………」ズーン

小林「……ん?」

小林「うっうわぁ!花輪さん!?」ビクゥッ!!

小百合「…………」

小百合「…その」

小百合「……我が団員が…迷惑を…か、かけて……」

小百合「も…申し訳…な……」ブワッ

小百合「ふぇ…うぇぇえええええええええええん!!!」ビェエエエエエエエ

小林「えっ……えっ!?」

シャロ「どっどうしたんですか!?団長さん!!」

小百合「ヒグッ…!お父さんが…自殺…して…!裏の世界…とか…!団員に…色んな人に酷い事して……」

小百合「私…私…やっぱり、一人ぼっちなんだ……!!」ポロポロポロ

小百合「これからも…ずっと、友達もできずに一人なんだ……!!」グスッグス

小百合「ううぅ……ぐすっ……うううううううう」ポロポロポロ

小林「……………」

小林「……いえ、きっとそんな事はありませんよ」

小百合「……?」

小林「だって、貴方はさっき言っていたではありませんか。友達だからと、ずっと待っているからとも」

小百合「……………でも、」

小百合「きっと…ねこちーも叶ちゃんも……もう…私に会いたくない……って……!」ブワッ

小林「そんな事はありません。それは――」

小林「この証拠品を見れば、明らかです」



→証拠⑧【アルバム】


小林「くらえ!」


小林「…これは、紛れもなくねこさんのアルバムです」

小百合「……?」ポロポロ

小林「最初の方こそ、貴方のお父さんに対する憎悪に対してしか無かったかもしれません」

小林「しかし、最期のほうまでめくっていってください。すると、最初の方とは違う物が沢山あります」ペラ

小百合「……あっ!」

小林「そう、日付が進むたびに彼女達の笑顔も増えているのです。それも、心の底から笑っているものばかり…」

小林「丸尾さんも、貴方を守ろうと命を投げうってでも守ろうとしました」

小林「叶さんも、貴方の事を友達だと思っていました。ねこさんも最期には迷いました」

小林「貴方のお父さんも、貴方を守る為に悪魔に魂を売りました。そしてJ・ファントムも…貴方を守る為に今までずっと戦ってきました」

小林「誰も、貴方が一人ぼっちだと思わない筈です」

小百合「…………」

小百合「……」ゴシゴシ

キッ

小百合「…我が名は、漆黒の魔術師(ダークシュタインズ)だ…!」

小百合「仲間達と出会ったその時も!漆黒の魔術師(ダークシュタインズ)だ!!」

小百合「これは、永遠の別れですらない!仲間はいずれ戻ってくる!」

小百合「父の命の下に!我の守護神J・ファントムに感謝の念を!」

小百合「我は生きて行くだろう…」

小百合「私の大切な、大切な人たちの光として!!永遠に!!」

小百合「フハーハッハ…フハーッハハッハハハハハハハ!!!」タッタッタッタ

姫百合「…行ってしまいましたね」

小林「ああ。…彼女なら、きっと大丈夫さ」

小林「どんな困難にだって、立ち向かっていける…。そう、J・ファントムも言っていたからね」




パチパチパチパチパチ


パチパチ



ネロ「あれ?何この拍手の山…」

シャロ「……あっ!」

アンリエット「今回の裁判、大変見事な物でした。小林さん」パチパチパチパチ

シャロ「アンリエット会長!」

姫百合「…と、後ろに居るのは…ホームズ学院の生徒達…ですか?」

アンリエット「ええ。今日の講義は小林さんの裁判の見学。それに徹底していたのです」

アンリエット「おかげさまで、有意義な授業ができました。本当に、おめでとうございます小林さんと、ミルキィホームズ」パチパチパチパチ


おめでとー! おめでとう小林先生!!

勝訴おめでとー!!  大好きー!!  結婚してー!!


小林(…と言う事は、傍聴席の半数以上がホームズ学院の生徒達だったのか…。僕もよく気付かなかったな…)

コーデリア「…今二人ほど、教官に告白した奴が居るわ!?」ピキーン

アンリエット「…まぁ、そういう事で」

アンリエット「今回も、フェザーズのお二人の勝訴込みで、小林さんの勝訴を称えるパーティを開きたいと思っています」ニコッ

カズミ「わっ…私達の無実がおまけ扱い!?」ガーン

アリス「まぁ、ほとんど小林さんのおかげだから…」

シャロ「アンリエット会長ー!!私達も頑張りましたー!!」ブンブン

ネロ「そうだぞ!小林を称えるなら、僕達も称えろー!!」ペチペチ

姫百合「ちょっと…図々しすぎませんか…?」

小林「…いや、今回も彼女達がいなければ解決できない事件だったよ」

小林「だから、…その、できるならそういうパーティには僕…欠席したくて」

アンリエット「駄目です」ニコッ

小林「…さいですか」


アンリエット「もう既に石流先生が今回の裁判の勝訴パーティの準備を仕上げている頃ですから」

小林(…石流先生、本当に大丈夫なのかな…?)

根津「今頃、石流先生は過労でミイラになってる頃だぜ、そろそろ行ってやれよ」

小林「根津くん…」

二十里「そう!僕も先ほどまで僕の為に華麗な装飾を手伝っていたのさイエスベリベリワーン!!」グルグルグル

根津「そして俺が、所々に張られたこいつの全裸が描かれたシールと写真を全部撤去してきたって訳だ」

小林(それは凄く大変だったな…)

根津「だから、いやいや言ってないでとっとと出席しろよナヨナヨ先生」

根津「…あんた以上に分かりやすく授業してくれる先生なんて、他に居ねぇんだから…」ボソッ

小林「…ん?何だって?よく聞こえなかったんだけど」

根津「うっ…うるせぇ!!やっぱてめぇなんか祝ってやんねー!!とっとと帰れ!!」クワッ!

アンリエット「…根津くん?」ニコッ

根津「ヒッ」


「小林先生も行きましょうよー!」  

「そうそう!今回の裁判!もっと色んな事が聞きたいです!」グイッ

ネロ「!」

コーデリア「!」

小林「うわっ!そんなに引っ張らな――」

コーデリア「このっ…教官を引っ張らないで!!」ギギギギギ

ネロ「そうだよ!僕の小林を取るなぁー!!」ギギギギギギ

エリー「小林さんを…取られたら…また…私達……!」グググググ

小林「痛たたたたた!!待って!板挟みになってるから!一回離して!ねぇ!?お願いだから!!」

ネロ「シャロも加勢してよ!このままだと小林取られてまた僕達の地位がダダ下がりだよ!!」

シャロ「え”っ!?…先生が取られる何て、そんなの嫌でずぅううううう!!!」ガバッ

小林「うわあああ!!シャーロック…顔にしがみつかないでくれっ!!」

「何よー!あんた達の小林先生じゃないでしょー!?」

「あんた達ばっかり独占してー!ズルイのよこのダメダメホームズー!!!」

ネロ「むぅぅうううううう!!!」

コーデリア「ぬぅぅうううううううう!!!!」

姫百合「うわぁ…」

根津「うわぁ…」

カズミ「あの中に入っていく勇気は無いなぁ…」

アリス「真ん中の小林さん、凄いダメージそうですね」

アンリエット「…ふふ、本当に、小林さんが居ると賑やかで面白い事になりますわね」ニコニコ


小林「…………」ギギギギギ

小林「……ちょっと、一言だけ良いですか?」

ネロ「勿論!言ってやりなよこいつらに!」

コーデリア「教官最大の武器!見せてやりましょう!」

エリー「私達と一緒に…戦ってきた……」

姫百合「その言葉で、何度も誰かを助けてきた」

カズミ「勿論私達も助けて貰った!」

アリス「真実を…貫き勝ちとる言葉……!」

シャロ「折角なので、皆で言っちゃいましょう!!」

小林「それじゃぁ、遠慮なく………」





               i.     i'ヽ、        ,
   、       !ヽ、 _  i.ヽ,.--、 i  ノヽ      ./i           _,.-
   ヽ丶、._   ノ,.._ヽヽ ̄ヽ,._ヽ、`' ´_,.!ヽ 、__ /. |        _. -'./
    ヽ  _.. '´  iヽ、i. '´ .`'´,.ィ ."'´〉.<      !、  __..-‐' ´ /
   ___ ..`''´ ._. -'! 、.!-‐'´ _ .. -<' _,. .'´'´、 <ヽ      ̄       /
  <  _..-'! `''´.、 .ヽ、,シ'´_.ィ',.:'´、.'i i'.ゝ'、ヽ          / ___
   i `-'´,.  !-' _ノ i、_-'´_._-、. r'" ,. ヾ、_.ィヽ    ____    /´  `ヽ、
    !  !.-'´_,.、 !_'´ヽ_> 、´" .'´ : ';'、 /´ >! ヽ..__ ヽ、  `.i、.,'      iヽ
 .  i ,ri `'´_i ''"´ `!  i'´! .、-‐ヾィ.、 `'''´ .i´  `)ヽ.!   ! i    ,. ' _!
   _,`r'"_, `'´_,.._. =ニ、.'i  !''、_/i   ) _> ̄ヽi  /´,、.ィ|  .i i    / /
 ーニ_,. >'´  -、ヽ.   ノ!_.ノ i'ヽ!   '´_...  _ノi   ! /./. 〉!  .||  / /、_
   ヽ_,..イ  / ソ ,.-'´ノ、ー-'‐'´  i''、-‐ 、二!  .'' .| .,' !.  ∥ / /---‐'
     >' / .ハ、_,.:-'´. ヽ、__ノ,i  '´  ,.、_  ヽ.  `iノ   /.| ,:' /
.   < '´_.,.-'´        .>'´_,  !' /. /!.  !`'´   _.-' .!i /
     `´/  _. - ' ´ヽ   /  / !  / //  // _..:‐'´_.. -'ノヾ、ヽ
   . /, -'´       |  _!、_ '、/ .,、!,_/'_.-'/_ : ' _. -'´ r'´   ヽ、ヽ
   -'´        !./  ヾi、__/. 人 _/-'´_ 、'.i'    ヽ_ ...-'. !`ヽ
            !     .ヽ--'  < _ -'´ ヽ     `ー‐''´





                      外伝【悲劇と意志から生まれし戦士達】 ……終わり



【某日 某所 ベルギー ブリュッセル】



小林(…それは、ある街に表示された電子広告で見た)

小林(12月の初旬、あのサーカス、漆黒の魔法団の公演広告だった)

小林(ポスターに移っているのは、団長一人だけで他には誰も居ない)

小林(しかし、ポスターに移っている花輪小百合は、)

小林(とても…清々しく楽しそうな表情をしていた)

シャロ「あっ!先生見てください!あの人は!」

ネロ「へぇー…。あの団長、とうとうここまで来たのか」

小林「…うん。そうみたいだ」

小林「良かったら、今度見に行ってみようか」

シャロ「えっ!?本当ですか先生!」

コーデリア「ええ!ぜひ見に行きましょうとも教官!」

エリー「楽しみ…です」

姫百合「…ええ、どのように魅せてくれるのでしょうか」

小林「……うん。きっと」

小林「迷える人の見る希望のように、強く輝いているんだろうね」




お終いです。久しぶりに描きましたが楽しかったです。ありがとうございました。


面白かった

陪審員の勝手なイメージ
1号
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira143853.jpg
2号
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira143852.jpg
3号
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira143854.jpg

4号
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira143855.jpg
5号
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6号
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira143857.jpg

トイズ糸ってのがどういったものか最後までよくわからなかった
球体から不可視の糸が伸びているって解釈でいいのか?

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