百合子「隣に座る貴女」【ミリマス】 (20)

今日は学校もお仕事もお休み、こんな日は外に出掛けて思いっきりお休みを満喫……

って人も沢山居るだろうけど、私と杏奈ちゃんはそうじゃなくて、ふたりきりでおうちデート

ひとつのベッドに並んで座って私は読書、杏奈ちゃんはゲーム

せっかくふたりで遊んでいるのに別々のことをするのは変かもしれないけど、お互いがお互いに干渉しないこの状態はとっても楽

それに、右隣に座って軽く私に寄りかかる杏奈ちゃんの丁度いい重量感とほのかに香るシャンプーのにおい、そのふたつはより心地よい読書の時間を私に与えてくれる

俯いて無言でゲームをしてる杏奈ちゃんの顔は見えなくて、何を考えているかはわからないけど、きっと杏奈ちゃんも私と同じようにこの空間を心地よいと思ってる はず……

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杏奈ちゃんがゲームを止めた

それまで夢中でやっていたゲームが一段落したのか、電源を切ってイヤホンを外し、機械をその辺りに置く

私は杏奈ちゃんの雰囲気を察して、本を閉じて同じく邪魔じゃない所に置いた

杏奈ちゃんは立ち上がって、私の左隣に座り直す これが『合図』

私の左から服を掴んで、上目遣いで私を見つめてくる

言葉は無い、けど『そういうこと』だってわかってる

私は杏奈ちゃんの頬を軽くさする、もちもちとした感触が手のひらから伝わってくる こんなに白い肌 どうしたらなれるんだろう?

そのまま少し手を上に持っていって、杏奈ちゃんの目を手で覆う

杏奈ちゃんが目を閉じたのを確認して、私も目を閉じてゆっくりと顔を近付ける

私と杏奈ちゃんだけの静かな部屋の中、唯一耳に入るのは一人用のベッドがふたりの重さに耐えている音だけ

そんな周りの状況になんて興味無くて、ゆっくりと私は杏奈ちゃんへと近付き……


キスをした

大人みたいなキスなんて恥ずかしくて出来ない、私たちがするのは唇と唇が触れあうだけのバード・キッス

それでも私の胸はとってもドキドキして熱くなって、自分の体じゃないみたいで

唇もとにかく熱くなって触れている杏奈ちゃんの口を溶かしてしまうんじゃないかと思うほど

キスをするのはいつも私から、だけど何度やってもこの行為になれることはなくて

杏奈ちゃんの肩に触れる手が少し震えているのが恥ずかしい

長くて短い時間の後、唇を離して見つめ合う

私は恥ずかしくて仕方がないから今すぐ目をそらしたいけれど、杏奈ちゃんの綺麗な目がまっすぐ見つめてくるからそうもいかない

その瞳は私に魔法をかけたように、私の動きを止めてしまう

少し頬を赤らめた杏奈ちゃんの、ぼうっと私を見つめる表情からは何の感情も読み取ることが出来なくて

ただただキスの余韻を味わう時間が続いていく

沈黙を打ち破るのはいつも杏奈ちゃん、キスする前にその辺に置いたゲームを拾い上げて

「百合子さん、ゲーム…… しよ?」

って

「あ、うん……」

いつも何だか脱力しちゃう、さっきまであんなにドキドキしていたのはどこへやら

普通にゲームを始めて勝った負けたで大盛り上がり、段々とさっきのことも忘れられて……

ひとつ、わからないのが杏奈ちゃんの気持ち

杏奈ちゃんはキスする時、何も喋ってくれないし、表情にも乏しくて、何を考えているのか全然わからない

私はキスする時は緊張して手も震えるし、キスの味なんてわからないくらいなのに、杏奈ちゃんはいつだって平然としていて、それが怖い

もしかしたら、杏奈ちゃんは私のキスに不満を持っているのかもしれない

もしかしたら、杏奈ちゃんが左に座るのを合図だと思ってるのは私だけで本当は杏奈ちゃんは嫌がっているのかもしれない

そんな、色々な考えが私の頭を巡っていく

またある日、杏奈ちゃんが私の左隣に座り 私に『合図』を送ってきた

私はそれに応え、杏奈ちゃんの肩に手を置きゆっくりと唇を近付ける

私の瞳に映る杏奈ちゃんがどんどん大きくなっていって、唇がまた重な…… らなかった

ダメだった、杏奈ちゃんが本当に私とのキスを望んでいるのか、そう考えるとどんどん私の勇気は無くなって、私はキスするのをやめてしまった

「?」

いつまでも唇に感触が来ないことを不思議に思ったのか、杏奈ちゃんは目を開き私の方を見る

私は杏奈ちゃんの視線に応えられず、目線を下へ送る

暫くの沈黙、打ち破るのは私

「ねぇ、杏奈ちゃん…… 杏奈ちゃんは……」

そこから言葉が出ない、キスしてる時何を考えているの? どうしていつも私からなの? 杏奈ちゃんは私のことが好きなの? 聞きたいことはいくつもあるのに……

「…… なんで、何も言ってくれないの?」

私の口から出たのは、こんな曖昧な言葉

「……」

杏奈ちゃんはそれでも何も答えてくれないまま

「ごめん…… なさい……」

杏奈ちゃんはそう呟くと、のそのそとベッドの上を這って、私の右隣に座った

「えっと……」

困惑する私を、杏奈ちゃんはまっすぐ上目遣いしてくる こういう時いつもは杏奈ちゃんが左隣に居るはずだから何か変な感じ……

「杏奈…… ね」

杏奈ちゃんがゆっくりと口を開いた、私はそれをじっと聞く

「喋るの…… 苦手……」

「だから、ちゅー…… してる時は、ね…… 喋らなくていいから…… すき、だった……」

「けど、百合子さんは…… それじゃ…… いや?」

「嫌、じゃないよ…… だけど、たまに言葉にして欲しいし…… 杏奈ちゃんからもして欲しい…… かな」

「ん……」

杏奈ちゃんは突如私の首に手を回して、強く抱きついて、私へ体重を乗せて…… キス…… した……

「っ!?」

私は突然のことに驚くままベッドに倒れ、杏奈ちゃんに押し倒される形になった

驚きの声を出したくても唇は塞がれていて、見開いた視界一杯には杏奈ちゃんの姿

私の体の上には間違いなく杏奈ちゃんが覆い被さっていて、私の胸に来る柔らかい圧迫感がそれを証明している

杏奈ちゃんの回した手はどんどん強くなって、私と杏奈ちゃんの距離はこれ以上縮まらないっていう距離から更に縮まろうとして

「っはぁ……」

「はぁ…… はぁ……」

「ねぇ…… 百合子さん…… 好き……だよ」

杏奈ちゃんから告げられる『好き』の言葉

それは私の心拍と思考を加速させていって

「杏奈は…… 『もっと』…… してもいい…… よ?」

「っ……」

その日から、私と杏奈ちゃんにもうひとつ、『合図』が出来た

杏奈ちゃんが私の右隣に座った時、それは……


おわり

読んでくれた人ありがとうございました。

このあんゆり直接の描写ないのにエロい……
乙です

>>1
七尾百合子(15)Vi/Pr
http://i.imgur.com/o3k8t5t.jpg
http://i.imgur.com/3tqpRsy.jpg

望月杏奈(14)Vo/An
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