財前葵(アイスが食べたい)(18)
ジリ……ジリ……
葵「…………」トボトボ
葵(暑い……)
葵(テスト明けで授業は午前中に終わったけど、もう服の下が汗でびっしょりだわ)
葵(これだから夏は、嫌い)
ミーンミーン……
葵「…………」
葵(アイスが食べたい)
…………
葵(アイスは大好き)
葵(とても美味しい上に、どんなに暑い時でもアイスを食べれば涼しくなる)
葵(夏は冷たいジュースやかき氷も良いが、やはり私はアイスを推したい)
葵(というか本当にアイスは凄いと思う。考えた人は天才なんじゃないかと思う)
葵(ノーベル平和賞辺りを送りたいけど、私にその権限が無いのが非常に残念だ)
…………
コンビニ……
葵(アイスは何処じゃ~。ここか~)
店員「いらっしゃいませ~ん」
葵(涼しい。クーラーがよく効いている)
葵(こんな涼しい所で1日仕事が出来るなんて……バイトをするならコンビニの店員が良いかもしれない)
客「はあ? 年齢確認? 20歳以上なんて見れば分かるだろうが!!」ガミガミ
店員「いえ、画面を押して頂かないとレジが動かないので……」
葵(……やはりもう少し考えよう)
葵「それよりもアイスを……あった」トコトコ
葵(この冷凍のケースに敷き詰められた無数のアイス……いいわ、見ているだけで涼しくなる。そしてウキウキする)ウキウキ
葵(どれを買うか……実はすでに狙いは決まっているのである)
『ハーゲンダッツ・クリスピーサンド(キャラメルクラシック)』
葵(ああ、やはりハーゲンダッツはお洒落だし高級な感じがするわね。実際お値段も少しお高いし)
葵(だけどその分、味は保障されている。さらにクリスピーのサクサクが加わったらもう……ふふふっ)
幼女「お母さん、あのお姉ちゃんアイス見ながらニコニコしてるよ。アイス大好きなんだね♪」
母親「こら、大きな声出さないの」クスクスッ
葵「!?///」ハッ
葵(恥ずかしい所を見られてしまった。いけない、いけない)
葵(とにかくアイスは確保して……ついでにちょっとコンビニの中も見て回りましょうか)
葵(あ、新作のお菓子出てる。ここにも……駄目ね、コンビニってつい目移りしちゃうわ)
葵(そういえばお金って幾ら持っていたかしら? 先週お小遣い貰ったばかりだから余裕はあるはずだけど……)
葵「…………」ガサゴソ
葵「……あれ?」
財前宅……
葵「…………」
葵ちゃんの財布「」←机の上に置かれてる
葵(家に忘れてたぁ~~~~!!)ガクッ
葵「迂闊だった……午前中はお財布使う機会なかったから気づかなかった……」orz
葵(会計前に気づけたのが不幸中の幸いだけど……どうしよう? お財布持ってもう一度買いに行こうかしら?)
ミーン……ミーン……
葵(……流石にこの暑さでもう一度外に出る元気はないかも)
葵(ここがリンク・ヴレインズなら暑さとか関係ないのに……現実って厳しいわね)
葵「……冷凍庫にアイスあるかな?」トコトコ
葵「…………」ガサゴソ
葵「……スーパーカップのバニラ、か」
葵(これも確かに美味しい。大好き。でも今の私が求めているのはスーパーカップでは無くクリスピーサンドなのよ)
葵(外に買いに出るか……スーパーカップで我慢するか……残された道は2つに1つ……)ウーン
葵「…………」
葵「あ、そうだ」ピコーン
…………
葵「よし、準備OK」
『ゴーフル』
葵(ゴーフル……薄く焼いた生地にクリームを挟んだお土産などでお馴染みのお菓子だ)
葵(正直私はあまり好きではない。食べ応えはないし、何処か味気ない。お茶請けには良いのかもしれないけれど)
葵(我が家にはこのゴーフルがたくさんある。というのもお兄様が出張の度、お土産に買って来るからだ)
葵(お兄様のお土産だから勿論受け取ってはいるけど……正直そろそろゴーフル以外の物にして欲しいと思っている)
葵「でも今日、そのゴーフルが輝く瞬間が来た……これにスーパーカップのアイスを挟めば手作りクリスピーサンドが作れるかもしれない」
葵「まずスプーンでアイスを一口サイズすくう」
葵「ゴーフルに乗せる」
葵「そして……挟む!」バキッ←ゴーフルが割れる音
葵「…………」
葵(ゴーフル、脆い!?)ガビーン
葵「いえ、これはどちらかといえばアイスが固いのね。そうよね、さっきまで冷凍庫に入っていたんだから」
葵(無理に食べれない事もないでしょうけど、絶対にグチャグチャになりそうだし……いけると思ったんだけど)
葵「…………」
葵「あ、そうだ」ピコーン
…………
チン♪
葵「よし、いい感じね」
葵(固いなら柔らかくすればいい。ほんの少し、10秒くらいだけアイスをレンジでチンして)
葵(それを少しスプーンでかき混ぜる)マゼマゼ
葵(そして柔らかくなったアイスをゴーフルで挟めば……)
葵「出来た……手作りクリスピーサンド」
葵(やったわ、お兄様! 葵、勝負に勝ちました!!)バンザーイ!
葵「では……いただきます」
葵「…………」
葵「…………」パクッ
葵「…………」サクサクッ
葵「!?」カンコーン☆
葵(何かしら、これ……)
葵(それっぽい! 明らかに違うのは分かるけどそれっぽいわ!)
葵(うん、これはこれで美味しい! むしろこれが美味しい!)
葵(おそらくバニラのくどい味をゴーフルの生地が中和しているのね。サクサク感も良い感じだし)
葵(アリね! 私の中では十分アリな組み合わせだわ、スーパーカップ&ゴーフル!!)
葵「はむはむ……うん、もう1個作ろう」サクサクッ
葵(こうやってクリスピーサンドを作りながら食べるの、何だかとても楽しい……そう、美味しくて楽しい)
葵(まさに美味しさと楽しさの融合召喚! 見える! 今回も私には夢と希望のサーキットが見えるわ!!)
~~~葵ちゃんの脳内映像~~~
タッタッタッ!!
クラゲ頭の少年「いくぜ、俺は手札の《フェザーマン》と《バーストレディ》を融合!!」
クラゲ頭の少年「融合召喚! 現れろ、マイ・フェイバリット・カード! 《E・HEROフレイム・ウィングマン》!!」
フレイム・ウィングマン「ウオオオオォォォ!(訳:俺の頭はピクミンでは無い)」
クラゲ頭の少年「ガッチャ! 美味しいおやつだぜ、葵!!」
ドゴオオオオオオオオン!!!
~~~~~~~~~~~~~~~
葵(…………)
葵(……ああ)
葵(これぞまさに超融合……)
葵(…………)
…………
夕方……
晃「ただいま。葵、今帰ったぞ……ん?」
葵「Zzz」←ソファで寝ている
晃「まったく、こんな所で寝て。仕方の無い奴だ」クスッ
晃(おや、机の上にゴーフルの空の箱が……受け取る時も笑顔だし、やはり葵はゴーフルが大好きなんだな)
晃「今度の出張の時も2、3箱買って来るとしよう……さて、葵をベッドまで運ぶか」
葵「むにゃむにゃ……お兄様~……」
こうして今日も微妙にすれ違う兄と妹であった。
<おわり>
読んでくれた人、ありがとうございました。
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