【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて (11)


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白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
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・Twitterに投稿したデレステSSを修正、まとめたものです
・「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」の白菊ほたるコミュ1を下敷きにした二次創作です。
・登場人物は白菊ほたるコミュ1で仕事をすっぽかしたアイドルと、前事務所のプロデューサー。
・捏造、妄想注意



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1501168823


軽い音を立てて、ケータイが鳴った。

見なくても、事務所のプロデューサーからだと解る。

そして、何の用かも、電話を取る前から解る。

だけど、電話を取らないわけにもいかなかった。

頭までかぶった布団の中から手を伸ばして、ケータイを取る。


●●(以下アイドル)「…もしもし」

プロデューサー(以下前P)「●●か。お前何してるんだ。白菊はもう現場入りしてるんだぞ!」

アイドル「…」

前P「なんとかギリギリまで待ってもらってるけど時間がない。今からでも行け。まったく、なんでこんな…」

アイドル「…かない」

前P「なんだと?」

アイドル「あたし、絶対行かないから。白菊さんと一緒には、絶対出ない」

前P「お前何言ってんだ、プロだろうが。一度受けた仕事なら」

アイドル「そんなの、聞き飽きた。絶対イヤ」

前P「……そんなの、通ると思うのか。お前だって干されちまうんだぞ」

アイドル「そんなのわかってる」

前P「だったら泣き言言ってないで、さっさと支度して」

アイドル「……無理!!」

前P「それじゃ解らんだろ!事情を説明しろ。話によってはタダじゃおかんぞ」

アイドル「だって…」

アイドル「だってだって…今あの子と一緒に映ったら、あたし喰われちゃうもの!!」

前P「……?お前、何言って」

アイドル「白菊さんは違うんだよ。あたしとはモノが違うの。気付いちゃったの」

前P「落ち着け、落ち着け。あいつはルックスも地味だし。お前を脅かすようなタマじゃ…」

アイドル「それ、本気で言ってるの。だったらプロデューサーさんの目は節穴だよ!!」

前P「お前…」



アイドル「最初はあたしも、ぱっとしない子だって思ってた。だけど間違いだった」

アイドル「初めて仕事が来たって知ったときの、あの子の笑顔を見た?」

アイドル「そのあとのレッスンを見た?」

アイドル「あの子には、本物の『華』がある。レッスンの時とか、いつの間にか、みんな白菊さんを見てる」

アイドル「ちょっとの切欠で、あの子は輝きだす。そしたら、あたしが添え物になっちゃう。解るの、あたしには」

アイドル「…わかってるよ。この世界は実力が全てだもん。光る子が上に行って、そうでない子は消えていく」

アイドル「でも、こんなのあんまりじゃない!!」

アイドル「ずっと事務所のためにがんばってきたのに。一人でいろんな現場に行って嫌なことも、恥ずかしいこともしてきたのに。カメラの前でメッキを剥がされて、バーターのはずの子に喰われて壁の花になっちゃうなんて」

アイドル「そんなの、惨めすぎるよ。残酷だよ…」

前P「いや、しかし」

アイドル「あたしがこんな風に苦しんでるなんて、プロデューサーさん、知らなかったでしょ?…そうだよね。そういうの興味ないものね貴方」

アイドル「とにかくあたしは、白菊さんと一緒なら、出られない!…自分がプロ失格だって、解ってる。でも、ごめんなさい。クビにでもなんでもしてくれていいから…切るね」

前P「おぃ、待」

あたしは電話を切って頭から布団を被った。



―――決して、白菊さんが嫌いなわけじゃない。

あんなにいい子なんだもの。嫌えない。

だけど、どうしようもなかった。

あの子の華を知って湧き上がった怖さ、嫉妬。

そして、羞恥心。

あの子の輝きを見て初めて、あたしは、自分が純金だと信じて粋がっている、金メッキの人形だったのだと気がついた。

あの子と一緒に並んだら、あの子が輝きだしたら。

きっと、誰の目にも、あたしのの輝きが金メッキだってわかっちゃう。

金メッキはたちまち剥がれて、みすぼらしい地金のあたしがみんなの前にさらけ出されてしまうだろう。

それがどうしようもなく怖くて、恥ずかしくて、悔しくて、ねたましくて。

仕事をボイコットすれば、自分の評判を落すなんてことは、わかっていて。

それでも、怖くて、どうにもできなかった。

「白菊さん、ごめん」

彼女に届くはずのない、謝罪の言葉を口にする。

「ごめんなさい、ごめん、ごめん…」

涙と羞恥心と罪悪感で顔をぐちゃぐちゃにして、あたしは泣いた。



―――結局、あたしは事務所をクビになった。

アイドルに未練がないわけではなかったけど、当然のことだ。

突然仕事をボイコットするようなコを使ってくれるようなとこなんてあるはずもない。

フツーの女学生に戻って、なんとなく毎日をすごしている。

友達と買い食いしたり、カラオケ行ったり。

退屈で、変化のない日々だけど、これがきっと分相応。

こういうのも悪くないんだろうって思う。



―――ある日、友達と一緒に遊びに行った帰り、店先のモニターに白菊さんが映ってるのを見た。

菊の花をモチーフにした衣装を着て、歌ってる。

輝いて、踊ってる。

ああ、綺麗だ。

本当に綺麗だ。

あたしが感じたあの子の華は、本物だった。

自分には無かった輝きを振りまいてアイドルしてる彼女を見て、あたしは泣いた。




(おしまい)


おわりです。
コミュ1でアイドルが仕事をボイコットしたのは、彼女がいいかげんだったからでもほたるを嫌っていたからでもなく、ただ一人白菊ほたるの輝きに気付いたその子が恐れを抱いたからではないか?
という妄想に基いたお話です。

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