佐藤心「あんにゅいはぁと」 (16)

 お誕生日って、めでたい日。みんなにお祝いしてもらえて、プレゼントをもらえて。楽しくて、うれしい日。
 小さい頃は、とにかく誕生日が近づくとそわそわしっぱなしで。『今年はなにがもらえるのかな』『お人形ハウスがほしいな』『あとマイクもほしいな』『新しいゲームもほしいな』『ていうかそろそろ自分の部屋がほしい』なんて、いろんなことを考えて。……思い返すと、幼い頃の自分、結構欲深いな。
 まあ、とにかく。お誕生日っていうのは、ワクワクが100パーセントの楽しいイベント。当日が近づけば近づくほど、ドキドキがおさまらなくなるの。


 ――昔は確かに、そうだったはずなのに。

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「ん、うう……」

 暑さによる不快感で目を覚ますと、いつもの自室の白い天井が視界に入る。

「あ゛~~……暑い。だるい。起きたくない」

 朝から襲ってくるムシムシとした熱気に、私は完全にグロッキー。
 枕元に置いてあるスマホを確認すると、ちょうどそろそろ起きなきゃいけない時間だった。

「……21日、か」

 意識していたわけではないけれど、画面に時刻と一緒に映されている今日の日付が目に入る。
 7月21日。私の誕生日の、一日前。
 昔なら、記念日を前にしてウキウキ布団から飛び出ていただろうか。

「今日で26歳もおわりかあ」

 でも、今頭に浮かんでくるのは、明日への期待だけではなくて。

「シュガーハート、27歳になってもまだ消費期限切れないよね……?」

 ……昔は、もっと純粋に心躍らせてたのになぁ。
 辛い朝は思考もネガティブ寄りになりやすいとはいうけれど、それでも今この胸に浮かぶ思いは、嘘なんかじゃなく本当で。

「つーか、そろそろ身を固めないと父さんも母さんも心配するよね……」

 子どもの頃、ワクワクを100抱いていたとしたら、今はワクワク50と不安50といったところかな。ううん、ひょっとすると不安のほうがもっと大きいかも……

「……って、やばっ。こんなことしてたら遅刻するっ」
 
 そんな感じで、私の26歳最後の日は、とてもワクワクなんて呼べない心もようから始まったのだった。




「おはスウィーティー☆」

 朝はテンション低かったけど、それはそれ、これはこれ。シュガーハートはプロのアイドルなんだから、事務所に着いたらスイッチ切り替える派なの。

「おはようございます、心さん」

 元気よく挨拶をしながら部屋に入ると、プロデューサーが軽く手を挙げて出迎えてくれた。パソコンの前でコーヒーを飲んでいる姿を見ていると、なんだか仕事のできるオトコって感じがしていいな。

「あれ、プロデューサーだけ?」

「ええ、学生組は学校に行ってる時間ですし。俺ひとりだと退屈ですか」

「いや、むしろ独占できるからラッキー☆」

「はは……喜んでいいんですかね」

「こーんな美少女に独り占めしてもらえるんだぞ♪ 喜ぶのが正解に決まってるって☆」

「美『少女』?」

「デリカシー」

「はい」

 何か言いたげだったプロデューサーを圧で黙らせながら、荷物を置いてソファーに腰かける。

「はぁ~、やっと座れた……って、今の年寄り臭かった?」

「俺も時々言いますし大丈夫ですよ」

「大丈夫なのかな、それ……」

「さあ、どうでしょうね。心さんも何か飲みます?」

「んー、アイスティー!」

「了解」

 ちびっ子たちがいる時はお姉さんキャラやってるし、こういう時くらいはプロデューサーに甘えちゃおうっと♪
 おいそこ、『ちびっ子がいる時、お姉さんキャラでしたっけ?』とかツッコむなよ☆

「はい、アイスティーです」

「あ、サンキュ☆」

 脳内でもうひとりの自分と会話しているうちに、目の前にひんやりしていそうなグラスが置かれていた。外が暑くて喉が渇いていたから、ソッコーでぐびぐび一気飲み。

「うーん、冷たい! 生き返る~」

「一気にいきましたね。ビールみたいだ」

「飲み会だともっと勢いよく飲んでるでしょ?」

「はは、確かに」

「それより。このアイスティー、いいテイストだったぞ☆ プロデューサー、お茶淹れるの上手だね♪」

「別にうまいってわけではないですけどね。ただ、心さんの好みはちゃんと覚えていますから」

「………おう、そっか」

 ……急に穏やかな笑顔で言ってくるもんだから、対応できなくてどもっちゃった。そういう不意打ち、よくないぞ。

「心さん?」

「さーて! はぁとはそろそろレッスンの時間♪ 今日もマストレの姐さんにばっちりしごかれてくるぞ☆」

「は、はい」

 ドキドキしたのを悟られないように、勢いよく立ち上がってレッスンへ向かう準備を始める。あー、でもこういうごまかし方してると余計意識しちゃって顔が熱い……

「んじゃ、いってきます☆」

 そのまま部屋から出ようとすると、プロデューサーが一言。

「がんばってきてください」

「……トーゼンっ」

 その言葉で、ちょっとだけ気持ちが落ち着いた。でも、部屋を出て廊下を歩いている間も、胸のドキドキはなかなか収まらない。

「今日、なんか乙女モードだなぁ」

 お姉さんモードのスイッチ切ったぶん、そういうところも精神年齢下がっちゃったかな。
 そんなことを頭の中でぐるぐる考えるけれど、結局大元の原因なんてわかりきってるわけで。

「ホント、好きになる人間がハードモードだよね」

 そもそも、ひと目見た時から割と好みの外見だったし。プロデュースが長続きしてるってことは、性格もいろいろと相性がいいことになるし。
 だから、私がプロデューサーに惚れちゃうのも、ある意味自然な流れだったのかもしれない。
 我ながら単純な人間だと思うけれど、好きになってしまったものはしょうがない。

「好きになること、わかってたのに」

 今の私には、叶えたい夢がふたつある。
 ひとつは、シュガーハートとしてアイドルの世界でキラキラ輝くこと。
 もうひとつは、佐藤心として、あの人と――

「ひとつ叶えるだけでも大変だっていうのに」

 自分で自分に愚痴ってもしょうがないけど、もう少し夢の嚙み合わせってものを考えてほしい、なんて思っちゃう。 
 でも、どれだけ文句を言ったところで、これは私が私の意思で抱いた夢。叶えられるのは私だけだし、責任をとれるのも私だけだ。
 ……今日で26歳もおわりだからかな。普段は目を逸らしている問題に、やたらと考えが及んでしまう。

「……レッスン、頑張ろう」

 結局、考え事に決着はつかないまま。とりあえず、目の前のダンスレッスンに気持ちを切り替えることにした。

 午前にダンスレッスン。お昼を食べてからボーカルレッスン。身体を動かしている間は、余計なことを考えずにすむから楽っちゃ楽だった。

「ふう。ただいまー」

 一息つくために、プロデューサーのいるであろう部屋に戻る。するとそこにはプロデューサーはいなくて、かわりにいたのは。

「あ、ハートさん。おかえり」

「梨沙ちゃん、もう来てたんだ。おはスウィーティー☆」

「うん、おはようございます」

 学校が終わって直接事務所に来たのだろう。近くの棚には梨沙ちゃんのランドセルがしまわれている。
 普段は口が悪いのに、あいさつだけは丁寧にちゃんとやるタイプ。いい子だと思う。

「それ、なに書いてるの? 学校の宿題?」

「そ。家族の誰かの似顔絵書いてきなさいって」

「ふうん。となると、梨沙ちゃんが書くのは」

「パパ」

「だよね♪」

 机にスケッチブックを広げて、熱心に鉛筆を動かしている梨沙ちゃん。本人がその場にいない状態でスラスラ似顔絵を描けるあたり、さすがはパパ大好きっ子だなと思う。

「おお、うまいな」

「でしょ? アタシなんでもできるから。それに、他の子に教えてもらったりもしたし」

 ふふん、と勝気な笑顔を見せる梨沙ちゃんは、私に完成途中の絵を見せながら、

「パパに見せてあげたら、喜ぶかしら♪」

 なんて、ウキウキした様子で未来に期待を寄せていた。

「梨沙ちゃんは本当にパパのことが好きなんだね」

「トーゼンよ! いつも言ってるでしょ、パパと結婚するって」

「そっか」

 パパと結婚する。それが梨沙ちゃんの夢。現実的に考えたら、それを叶えるのはとんでもなく難しい。いろんな問題が立ちふさがるだろうし、この子だって、賢いからそれはわかっているはず。
 それでも、梨沙ちゃんは夢を諦めない。夢を叶えるためにアイドルになって、毎日汗水たらして頑張ってる。ぐったりきちゃいそうな夏の日も、変わらずに。
 そこには『子どもだから』だけで片づけちゃいけないものが、あるような気がする。

「ねえ、梨沙ちゃん。一個聞いてもいい?」

「なによ?」

「梨沙ちゃんが夢に向かって頑張れる秘訣って、なに?」

「ヒケツ?」

「えっと、ほら! 頑張るための心がけとか、そういうの」

「心がけ、ねえ……」

 ふと私が投げかけた質問に、梨沙ちゃんは鉛筆を置いてうーんとうなり始める。『心がけ、心がけ……』と小さくつぶやいている様子を見るに、真剣に考えてくれているみたい。

「やっぱりアレかな」

「アレ?」

「そ、アレ!」

 うん! と大きくうなずいて、梨沙ちゃんはびしっと人差し指を突き出した。

「女は欲張りでいい!」

「欲張りで、いい?」

「そ! ママがよく言ってるの! だからアタシもそうしてるの。好きなものがたくさんあるのに、ひとつしか選べないなんてつまんないでしょ?」

 パパの話は耳にタコができるほどよく聞くけれど、ママがどんな人なのかを聞くのは初めてかもしれない。
 たぶん、すっごい強い人なんだろうなぁ。そんなことを考えながら、私は梨沙ちゃんの言葉が驚くほどするりと胸の内に入ってくるように感じていた。

「だからアタシは好きなもの全部手に入れる! パパの愛も、ファンの視線もね!」

 ……ああ、そっか。この子、私の小さい頃に似ているんだ。
 家族に愛されていて、欲張りで、勝気で生意気。全部、昔の佐藤心とそっくり。
 ……いや、でも。昔の私は、ここまで強くはなかったかな。

「あと、ここまでじゃじゃ馬でもなかった」

「誰がじゃじゃ馬よ!」

 思わず漏れ出てしまった心の声に反応して、ウガーッとうなる梨沙ちゃん。そういうところだぞ、と答える代わりに、私の口からは笑い声がこぼれていた。

「あははっ……うん、梨沙ちゃんはそれでこそ、だよね♪ けど、ファンの視線独り占めならはぁとも負けないぞ☆」

「ふん! アタシだって負けないんだから!」

 この子が幼いはぁとの強化版だとしたら、なおさら負けらんないな。うん。

「よくぞ言った☆ 褒美にさっき買ってきたアイスバーをやろう☆」

「ホント! ありがと!」

 ま、それはそれとして。的場梨沙って子は本当にキュートだから、かわいがってあげようって思うんだよね。


「女は欲張りでいい、か」

 さっきの梨沙ちゃんの言葉を思い返しながら、事務所の階段を上っていく。
 ちょっと考え事をしたいと思ったから、青空の下に出たいと思って。

「うわ、やっぱ暑いな……」

 でも、さすがにこの時期は……なんて思っていたら、ちょうどいい具合に屋上の一部分に日陰ができていて、そこには。

「あ、いた。屋上の主」

「屋上の主ではない」

 秒でツッコミを返しながら、風になびくエクステをはためかせる女の子。飛鳥ちゃんだった。

「こんな暑い日にも屋上くるんだ」

「この時間帯だけさ。ちょうど隣のビルのおかげで日陰ができるんだ」

「おー、さすが屋上博士!」

「屋上博士ではない」

「最近飛鳥ちゃんツッコミ速くなったよね♪ 鍛えた?」

「おかげさまで、いつの間にか鍛えられていたよ」

 意味ありげな視線を向けながら、右手に持っていたアイスバーを口に運ぶ飛鳥ちゃん。

「アイス食べてるんだ」

「あぁ。熱気には冷気で対抗だ」

「なるほど♪ 実はね、はぁとも持ってきてるんだ☆」

「そう」

「てことで、一緒に食べよっか☆」

「かまわないよ」

 素っ気ない返事はいつものこと。イエスの答え自体はすぐに返ってきているから、私は安心して飛鳥ちゃんの隣に立ってアイスバーの封を開け始めた。

「やっぱり夏にはアイスだよね〜♪」

「うん」

 はむはむとチョコアイスバーをくわえている飛鳥ちゃんの表情は、わりと幸せそう。

「飛鳥ちゃんは、いつも屋上に来てなにしてるの? 考え事?」

「そうだね。なにをするでもなく、ただ青空の下で時間を過ごしていることもあるけれど……思考の海に潜っていることも多いかな」

「なるほど♪」

「そういう心さんは、なにをしに屋上へ?」

「んー、はぁとも考え事。今日はそういう気分なの」

「そうか」

 小さく頷いて、飛鳥ちゃんは雲ひとつない青空を見上げる。

「心さんにも、やっぱりそういう日はあるんだね」

「まあね。あんにゅいはぁとってやつ」

「このセカイはいつも不安定だからね。きっと、ヒトの心も同じさ」

「だよね。しかも今日暑いし」

「まったくだ」

「そこは『いや、気温は関係ないだろう』ってツッコむところじゃない?」

「だって、この暑さにはボクも辟易としているし」

「そういう問題?」

「そういう問題」

「……ふふ、そっか☆」

 飛鳥ちゃんのこういう独自のテンポみたいなやつ、結構好き。

「考え事してる時って、いつの間にか思考が同じところぐるぐる回っちゃうよねぇ」

「理解るよ。ボクも同じだから」

 アイスバーの最後の一口を飲み込みながら、飛鳥ちゃんは私の顔を見て話し始める。

「何度も同じことを考えて、同じところでつまずいて。一度考えをリセットしても、次の日にはまた同じことで悩んでいることだってある。なんとかそこを乗り越えたとしても、また新たな壁が待ち受けていて……場合によっては、またスタート地点まで戻されてしまう」

 でも、と。
 首を小さく横に振って、飛鳥ちゃんは私から青空へ視線を移した。

「最近は、同じところを回りながらも、少しずつ前に進んでいるように思える。そしてきっと、その思いは間違いじゃないと信じられる」

「飛鳥ちゃん……」

 私が今日のような悩みを抱いたのは、これが初めてじゃない。たまにふっと脳裏をよぎって、そのたびひとしきり悩んでから蓋をしてきたものだ。
 ぐるぐると同じところを回って、悩んで。けれど飛鳥ちゃんは、それで前に進めるんだって言う。
 『考えたってしょうがない!』でだいたい切り抜けてきた私にとっては、新鮮な答えだった。

「……ふふっ。その証拠に」

 そんな私の様子に気づいているのかいないのか、飛鳥ちゃんは食べ終わったアイスの棒を天に掲げて。

「ほら。当たり、だろう?」

 木の棒に書かれてある文字を、誇らしげに見せてきた。
 飛鳥ちゃんにしては珍しい、ニカっとした笑顔と一緒に。


 夕方。
 全部のレッスンを終えた私は、プロデューサーとふたりきりでおしゃべりするタイミングを見計らっていた。
 普通に考えれば、他のアイドルが帰るまで残っていればいいんだけど……飛鳥ちゃんが結構長くまで居残りすることが多いんだよね。たぶん、みんなが帰った後プロデューサーとお話ししているんだろうけど。つまり、今の私と同じことを考えているんだろうな。

「晴ー、早くしなさいよ」

「やっぱ水着なんてサイズが合うなら去年と同じものでもいいんじゃねーか?」

「いいわけないでしょ! 毎年オトコをノーサツするくらいの気持ちで新しいのを買うのよ!」

「ノーサツ? なんだそれ」

「ノーサツっていうのはね……えっと。ほら、飛鳥」

「悩殺。一般的には、女性がその魅力で男性を夢中にさせることを意味するね」

「そう、それ! それが言いたかった!」

「夢中にさせる、ねえ……そりゃ、ステージとかフィールドの上でならそうしたいけどさ」

「海でもプールでも一緒よ! ていうか、飛鳥も一緒に行く?」

「ボク? ボクは……」

 じーっと飛鳥ちゃんの動向をうかがっていると、ふとした拍子に視線が合ってしまった。やばっ。
 私がそそくさと膝に上に置いていた雑誌に目線を移すと、飛鳥ちゃんはちょっとの間考え込むように顎に手を当てて。

「……そうだね。行こうか」

「よし! じゃあ出発!」

「飛鳥。梨沙が暴走しそうになったら頼むぜ」

「それは相方であるキミの役目じゃないか?」

「年上のアンタの役目じゃないか?」

「晴も飛鳥もアタシの押しつけ合いするなっ!」

 ツインテールをひょこひょこ揺らす梨沙ちゃんと、それを見てにやにやしている飛鳥ちゃんと晴ちゃん。3人が並んで出ていくと、部屋に残っているのは私とプロデューサーだけになった。
 ……気、遣わせちゃったかな。

「明日からはちゃんとお姉さんモードに戻ろう、うん」

 大人としての自覚を持とうと決意した。それはそれとして、今はプロデューサーだ。

「プロデューサー。ちょっとだけ、いい?」

 確認中の資料から目を離したタイミングを見計らって、声をかける。コーヒーをすすっていたプロデューサーは、顔を上げて快くうなずいてくれた。

「なるほど。年を重ねることへの不安ですか……朝から様子が変だったのは、それが理由だったんですね」

「うん。ほら、はぁとも明日で27でしょ? だから、いろいろ考えちゃって」

「俺も同年代だからわかります。この年になると、誕生日を迎えるのも一概には喜べないですよね」

 昔はもっと純粋に楽しんでたのになあ、とつぶやくプロデューサー。この人も、私と同じことを考えているんだ。そう思うと、ちょっとだけうれしい。我ながら単純。

「俺は男でプロデューサー、心さんは女性でアイドル。だから、俺の抱える不安と心さんの抱える不安がいろいろと違うだろうってこともわかります」

 年は同じだけど、それ以外は違うところも多い。だから、すべての思いが、悩みが共通しているわけじゃない。
 それでもプロデューサーは、それを理解したうえで。

「けど、できる限りは俺も一緒に背負います。心さんの力になりたいですから」

 ためらいなく、私にそう言ってくれた。
 こうなると、やっぱり私はきゅんときちゃって。

「……ありがとう。でもやっぱ、プロデューサーってずるいぞ」

 お礼と同時に、照れ隠しのセリフも口にしてしまった。

「………」

 プロデューサーはというと、そんな私の言葉を聞いて頬をかくと。

「……心さんも、普段の言動は十分ずるいですよ」

 なんて、意味深なことを言ってきた。

「……はぁとはオトナだから、ずるくてもいいんだぞ」

「じゃあ俺も、大人だからずるくてもいいんですよ」

「………」

「………」

「ぷっ」

「ははっ」

 無言で見つめ合ってから、お互い我慢できずに笑ってしまった。

「どう? プロデューサー、この後暇ならごはん食べない?」

「そうですね……あと30分くらい待ってくれるなら」

「オッケー☆ じゃあ決まり! なに食べよっか♪」

「うーん……魚?」

「魚かー。それなら――」



 ――お誕生日って、いろんな思いがめぐりめぐる日。昔のように楽しい気持ちだけではいられなくて、将来への不安とか、夢への距離とか、難しいことがないまぜになって降りかかってくる日。
 トップアイドルになれるのかな。あの人と両想いになれるのかな――不安は年々増していって、これは決して消すことはできないんだと、そう思う。少しずつ前に進みながらも、悩み続けることなんだって。

「俺達には、心さんの不安の全部を消すことはできません」

 昨日、帰り際にプロデューサーが言ったことを思い出す。どれだけうまいことやったとしても、50ある不安を0にすることはできないと。確かに、それは正しいと思う。私だって、彼が抱える不安を全部消し飛ばすなんてことはできない。

 ――だけど。不安を消すことはできないとしても。

「でも。不安を覆い隠してしまえるほど、ワクワクを増やすことならできます。きっと」


 ……うん。それ、きっと正解☆



『心(ハート)さん、お誕生日おめでとう(ございます)!!』

 不安が50あっても、ワクワクを250くらいにしてくれるみんながいる。それって、とっても素敵なことだと思う。
 だから私は……はぁとは。

「ありがとう! めちゃくちゃスウィーティーだぞ、みんな☆」

 これからも、エンジン全開でシュガーハートをやっていける。ぶいぶい言わせて進んでいける。
 いつまでって聞かれたら、もちろん……夢が叶うその日まで。
 きっと………ううん、これは絶対!


 だからそれまで、付き合ってくれよな♪ はぁとのプロデューサー☆



おしまい

おわりです。お付き合いいただきありがとうございます。

佐藤心さんお誕生日おめでとう。この一年はボイスついたり歌ったりアニメ出たりと大活躍でうれしかったです。次の一年も活躍を期待して見守っていきたいと思ってます

シリーズ前作:二宮飛鳥「七夕アフター」 佐藤心「そうめん食べるぞ☆」



的場梨沙SSRは引きました

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