仮面ライダーWss Aの罰/生きることを許されなかった罪 (26)

仮面ライダーWと仮面ライダーアマゾンズのクロスssです。
本編の内容はWは本編終了後。アマゾンズは1期終了直後の設定です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1500728870



風が漂う街、風都。

その街の場末に存在する鳴海探偵事務所。

事務所のデスクにて愛用のカップに珈琲を注ぐ男、左翔太郎。

うん、香ばしい匂いだ。やはり珈琲は豆から煮るに限るな。

この大人の男が漂わせる香りはまさにハードボイルドだ。

さらに…クンクン…何か臭い。

まるで便所の悪臭みたいな…この臭いはまさか…




「ほ~ら。はるなちゃ~ん。おむつ交換の時間でちゅよ~♪」


「ほう、赤ちゃんのおしめのやり方は実に興味深いね。」


「あらま、大きなう○ちでちゅねぇ~。すぐおしめ取り替えてあげまちゅからねぇ~♡」


「…ってやっぱりかよ!?
コラ亜樹子!
人がクールにコーヒー飲んでる時に赤ん坊のおしめ取り替えてるんじゃねえ!!」


さっきまでのクールなシーンが全部台無しだよ。

ここはハードボイルド探偵左翔太郎がクールに活躍する鳴海探偵事務所だろ。

それなのに何で赤ちゃんのおむつ取り替えてんだよ!

つか職場に子供連れてくんな!幼稚園連れてけよ!?


「しょうがないじゃん。
この子まだ赤ちゃんなんだよ。幼稚園に預けるにはまだ小さすぎるわよ。」


「だからってなあ…
ここは危険な依頼だって請け負う探偵事務所だ。
そんな場所に子供を連れてきたら危ねえだろ。」


数年前にこの街を牛耳っていた悪の組織ミュージアムは壊滅した。

だがヤツらが製造していた

人間をドーパントという怪人に進化させるガイアメモリの使用者は未だに後を絶たない。

そのため俺たちは常に危険と隣り合わせだ。

だから子供を探偵事務所に置いとくわけにはいかないんだ。



「うっさいわね!この探偵事務所の所長は私よ!わ・た・し・文句は言わせないわよ!」


おのれ…亜樹子め…

口喧嘩になるといつも事務所の権利書を持ち出してきやがる。

今は亡き鳴海のおやっさんから引き継いだ探偵稼業。

だが事務所の権利は未だに娘の亜樹子が担っている。

つかお前もう照井と結婚しただろうが!大人しく家で専業主婦でもしてろ!


「喧しい!文句言うならアンタが出て行きなさい!」


「ぐっ…バカ言え…俺がいないと依頼人が…」


「心配ないよ。事務所には僕もいるから依頼を聞き損じることはない。」


おのれ…フィリップ…相棒を裏切って赤ん坊に付くとは…

それでも相棒か!悪魔と相乗りしている俺を見捨てるな!


「あ、それと赤ちゃんの新しいおしめ買ってきて。安物じゃダメだよ。この子嫌がるから。」


しかもちゃっかり買い物頼まれるなんて…

わかったよ。行ってくればいいんだろ。

こっちだってう○この臭いがこびり付いた部屋で珈琲なんか飲めるか。

そんなわけで俺は事務所を出ようとした時だった。



「失礼、ぶつかりました。申し訳ありません。」


行きがけに奇妙な男とぶつかった。

その男はスーツ姿でメガネを掛けた中年風の男。

そこらへんのサラリーマンみたいだが佇まいがどうにも機械的な感じがした。

男は俺とぶつかったあたりを持っていたハンカチで丁寧に拭くと

なにやら事務所の方へと入っていくのだが…

いつもならここで踵を返して事務所へ戻ろうとしたかもしれない。

だが先ほどの亜樹子たちとの口論で苛立っていた俺は

依頼をフィリップたちに任せて

愛車のハードボイルダーに跨りそのまま外へと出掛けてしまった。

その依頼が後にこの風都に重大な事件を巻き起こすとも知らずに…



「あ~やっぱり外は落ち着くな。」


この街のシンボルである風都タワー。

そのタワーがよく見える公園で俺は缶コーヒーを飲みながら佇んでいた。

これで一応ハードボイルドに決まった。

まあ隣に亜樹子に言われて買ったおしめの入った袋を持ってなければ完璧なんだが…

しかし子供が出来て亜樹子もすっかり母親になっちまったな。

だが亜樹子なんてまだマシだ。父親の照井はもっと酷い親バカだ。

普段はクールで愛想の欠片もないあいつが赤ん坊の前では赤ちゃん言葉で喋り出すんだぞ。

昔はこの街は汚れているとか散々捲し立てていたあいつが変わるもんだよなぁ。

まあそれも無理もないことだ。

かつて照井はこの街で暗躍していた

ウェザードーパント/井坂深紅郎に家族を皆殺しにされた。

それに亜樹子もこの街に住んでいたおやっさんを訪ねに遥々大阪から出てきたはずだった。

だがおやっさんはビギンズ・ナイトの時に俺たちを庇って死んだ。

つまり二人とも家族を失った過去がある。

その過去を思えば今こうして新たな家族である子供を愛でるのは当然のことだろう。


「そういえばおやっさんも俺くらいの歳にはもう亜樹子がいたんだよな。子供か…」


今は亡き俺の師匠である鳴海荘吉。そのおやっさんにも家族はいた。

だが俺には…

思えばこの数年、ガイアメモリーの驚異から風都の平和を守るために戦ってきた。

それは別に構わない。何故なら俺は探偵であり仮面ライダー。この街を守る義務がある。

だがたまに思うことがある。もしも子供が出来たらどうなのか…

あのおやっさんだって亜樹子という娘がいた。

それなら…俺はどうだろうか…俺に子供が出来たら…

ふとそんなことを思った。

いや、よそう。この街は未だにガイアメモリの脅威に晒されている。

それなのに子供がいたら足でまといになる。

おやっさんだって娘の亜樹子の身を案じていたから長年離れて暮らしていたんだ。

だからこんなことを考えるのはもうやめよう。

さっさと帰ろうと駐輪場に止めてあるハードボイルダーに乗り込もうとした時だった。



「ハァ…ハァ…」


バイクに乗り込もうとした俺の前に若い女性が駆け込んできた。

傷つきボロボロの女。

憔悴しきっているがその手には生まれてまもない赤ん坊を大事そうに抱えていた。

ひと目で何かやばい事態が起きていると察しがついた。

そして女の背後からぞろぞろと妙なヤツらが…


「もう終わりだ!その赤ん坊をこっちに寄こせ!」


「そしてお前も俺たちと一緒に来い!」


「嫌よ…この子は絶対渡さない…だってこの子はあの人の子だもの…」


なるほど、どうやら話が見えてきた。この女性はこいつらに追われている。

しかもこいつらの目的は知らんが赤ん坊がお目当てのようだ。

だが運が悪かったな。何故ならこの俺の目の前でそんな悪事は許さねえ。



「おっと、悪いことは言わねえ。
お前ら今すぐこのレディーから手を引け。そしてこの街からさっさと失せろ。」


俺はこいつらを睨みつけるような眼光でそう言ってのけた。

だがそれだけで引き下がるような連中じゃない。いや、待て。何かおかしいぞ。

連中の身体から蒸気が溢れ出してきた。

それはヤツらの身体を包み込み次第に異形の姿へと変貌させていく。



「 「ガァァァァッ!」 」



そして変化を遂げたこいつらは化物の姿に変わり果てた。

この姿…ドーパント…?

いやちがう。ドーパントとはちがう別の何かだ。


「いくぜフィリップ!」


この事態に俺はすぐさま懐からダブルドライバーを相棒のフィリップに連絡を取った。

さあフィリップ出番だ。こいつらに俺たちの力を見せてやろうぜ!



『あきちゃん、次は僕にも!僕にもはるなちゃんを抱かせてくれ!』


…ってコラー!フィリップ!

街に怪人が出たんだぞ!仮面ライダーの出番なのに何をしてんだ!?

だがフィリップは俺の返事に出やしない。さっきと同じく亜樹子の子に構いきり。

クソ、だから事務所に子供を連れてくるなって言ったんだ。

しかしこうなるとダブルには変身出来ない。

だからといってこいつらが俺たちを簡単に見逃してくれるとも思わない。

それになんだかこいつらの様子もおかしい。


「ウゥ…人間…ウマソウ…」


「コイツ…喰ッチマオウ…」


何だこいつら?俺を見て涎を垂らしているぞ。

まさか…こいつら…人を喰うのか?

マジでやばそうなヤツらだ。このまま放っておいたら最悪の場合死人が出る。

こうなったら…

俺はダブルドライバーを取り外してすぐにもうひとつのロストドライバーを取り出した。

そこに俺専用のガイアメモリであるJの刻印が刻まれたJOKERメモリを装填。



<< JOKER !>>


さあ、変身だ。


「変身。俺は仮面ライダージョーカー。」


仮面ライダージョーカー。俺が変身する仮面ライダーの姿だ。

獰猛なまでに襲いかかる怪人たち。

その戦い方は爪を尖らせ牙を用いて相手に噛み付こうとするまさに獣の戦いだ。

だがこんなヤツらはこれまでのドーパントとの戦いで何度も経験してきた。

この程度で怯んでたまるか。


「一気に終わらせてやる!ライダーパンチ!」


勝負は一瞬で決まった。

ジョーカーのライダーパンチを叩き込むと

こいつらは身体がドロドロに溶け出して跡形もなく消えた。

イマイチ歯応えのないヤツらだったが恐らく末端の怪人だったのだろう。

それともこの俺が強すぎたせいだな。

さて、それよりも…



「大丈夫だったか。よければ事務所まで運ぶぜお嬢さん。」


クールな男は常に女性の心配をする。これがハードボイルドの鉄則だ。

事情を聞くのはとりえあえず後回しにしてまずは彼女を落ち着かせないとな。


「あなた戦う力があるのね。それならお願い。この子を預かってほしいの。」


だがその女性は俺の気遣いをそっちのけでこの赤ん坊を預かれと言ってきた。

ちょっと待て!いきなりそんな頼みを聞けるわけがないだろ!


「私はさっきのヤツらに追われている。
なんとかあいつらを巻いてみせる。だからそれまでの間この子を預かって。お願い!」


だが女性は俺の話など一切耳を貸さず預かってくれの一点張り。

冗談じゃねえ。人さまの子供を簡単に預かるわけにいくか。

だが運命とは常に気紛れだ。

そんな拒み続ける俺たちの前に再び彼女に迫り来る追っ手が駆け込んできた。


「オイ!いたぞ!その赤ん坊を渡せ!」


クソ、こっちは立て込んでいるのに次から次へと厄介事ばかり起こりやがって。

こうなったらもう一度ひと暴れしようかと思った時だ。



「この子の名前は千翼。千の翼を持つ子。どうか大切に守って…」


千翼、その言葉を告げると同時に彼女は再び何処かへと走り出してしまった。

追っ手も俺のことなど無視して彼女を追い出した。

残ったのはこの事態を未だに把握できずにいる俺と

それにいつの間にかハードボイルダーの脇に隠されていた赤ん坊だけ。


「どうしたら…いいんだ…誰か説明してくれよ…」


呆然とする俺とは対照的に

赤ん坊は母親に置いて行かれたことも知らずにスヤスヤと眠り続けていた。

こうなったらこいつに事情を聞きたいがさすがに赤ん坊からは何も聞けないか。

諦めた俺はとりあえず赤ん坊を連れて事務所に帰ることにした。

あ~これ絶対揉めるぞ。亜樹子からはすんげぇ文句言われそう。




「 「この………アホォォォォォォォォォォォッ!!」 」



事務所全体に亜樹子の怒鳴り声が響いた。



「 「オギャァァァァァァッ!?」 」



その声に驚いたのか赤ん坊たちは一斉に泣き出す有様に…

おいおい、子供がいるんだから大きな声出すんじゃねえよ。


「何で赤ちゃん連れて帰ってくるのよ!アンタ子供を犬猫と勘違いしてんの!?」


「うっせぇ!こっちにも事情があるんだよ!」


「事情って何よ!赤ちゃん預かるほどの事情なら今すぐ説明してみせなさい!!」


説明しろと言われてもなぁ…

それは俺の方こそしてほしいくらいだ。

まあ亜樹子が怒鳴るのも無理はない。

いきなり素性も知れない子を連れて帰ってきたんだからな。



「それでわかっているのは子供の名前が千翼ということだけなんだね。」


「ああ、それ以外わかっていることは何もねえ。
なあフィリップ。地球の本棚でこの子の親がどこの誰なのかわかるか?」


「無茶を言わないでくれ。
地球の本棚だって万能じゃない。もっと検索キーワードがないと調べようがないよ。」


まあそうなるわな。

フィリップは地球の記憶の全てが存在する地球の本棚に入ることができる。

だがそこで知識を得るためにはその件に関するキーワードが必要だ。

さすがに千翼という名前だけでは検索は出来ないわけだが…


「亜樹子、とりあえずこの赤ん坊はお前に任せた。しっかり面倒みろよ。」


「ハァッ!何で私なの!?」


「そりゃ俺はハードボイルド探偵だぞ。子育てなんて出来るわけないだろ。」


「アホか!預かったのは翔太郎くんでしょ!責任持って面倒みなさいよ!」


「何言ってんだ。
男所帯の俺たちに子育てなんて出来るか。
はるなのついでに面倒見りゃいいだけの話じゃねえか。」


「か~っ!これだから男は…
赤ちゃんの世話ってのはついでに面倒見れるようなもんじゃないの!
何でそれがわからないかな!?」


まったく赤ん坊一人やってきただけでこの有様だ。

どうすんだよこれ。収集つかないぞ…と思っていた時だった。



「はるなちゃ~ん!パパでちゅよ~♪」


「オォッ、照井じゃねえか。いいとこに来てくれた。」


そこへ勤務を終わらせた照井が事務所に亜樹子と娘のはるなを迎えに現れた。

ちょうどいい。こいつにも味方になってもらうのが一番手っ取り早い。

そんなわけでこれまでのやりとりを説明してみせたが…


「断るッ!」


「何でだよ!?」


「うるさい。俺に質問するな!」


相変わらずの質問するなか。

けど今回ばかりは説明してもらうぞ。

お前らだって人の親だろ。他の子の世話くらいついでにしてくれよ。



「別に俺はその子を嫌っているわけではない。問題は他にある。」


「それは…」


「その子は男の子だということだ。」


「うちの可愛いはるかに手を出すなど絶対に許さんッ!」


ひぇっ!こいつエンジンブレードまで持ち出してきやがった!?

マジだ。まだ赤ん坊なのに今から娘を嫁に出す気ゼロの頑固親父に成り果ててるぞ!?


「とにかくうちにははるながいるので無責任に子どもを預かることなど出来ん。」


「そうよ。翔太郎くんが責任持って面倒みなさいよね!」


「だけどなぁ…」


「まあ落ち着け。子供はいいものだ。
お前らも将来の予行演習と思ってその子を育ててみたらどうだ。」


「じゃあね翔太郎くん。私たちはもう帰るかね~」


結局照井夫妻に押し切られる形で赤ん坊の面倒を見る羽目になった。

つーかあいつおまわりさんだよね。

それなら赤ん坊保護するのが警察官の役目じゃねえの…?

それにしても…結婚してないのにいきなり一児の父ちゃんかよ…

まずは嫁さん娶るのが先じゃねえのか?



「さてと漫才はここまでにして本題に入りたい。
実はキミが出かけている間にとある依頼を請け負うことになった。」


「おいおい、俺がいない間に勝手に依頼引き受けんなよ。」


「すまない。大金を出されてそれにあきちゃんの目が眩んでね。
だが事は急を要する。それも場合によっては仮面ライダーの力が必要になるかもしれない。」


仮面ライダーの力が必要になる。

その話を聞いてすぐさま俺はクールなハードボイルド探偵に戻った。

それからフィリップは俺の不在に請け負ったという依頼内容を説明してくれた。



「野座間製薬という会社を知っているかい。」


「聞いたことあるぜ。大手の製薬会社だろ。
けどあそこは以前に事故を起こして規模縮小したって話じゃないか?」


「ああ、だがその規模縮小した理由は単なる事故じゃなかった。」


それからフィリップは野座間製薬がかつて起こした事故の詳細を説明してくれた。

先ほど俺と肩をぶつかった男。

その男こそが今回の依頼人で素性は野座間製薬の社員。名を加納省吾という。

野座間製薬は秘密裏に人工生命体を研究していた。

だが不慮の事故により4000体の実験体が脱走。

まさに大企業さまの不祥事なわけだ。


「まさかと思うがその逃げた4000体を見つけ出せってわけじゃないだろうな?」


「いや、その問題は解決したらしい。僕たちに依頼したいのはこの男についてだ。」


それからフィリップはある写真を俺に見せた。

そこに写っていたのは一人の男。

ボサボサ頭に金髪のメッシュを入れて無精髭を生やした不衛生なヤツ。

見るからにして近づきがたい危なっかしいそんな風体。

『鷹山仁』

加納から受けた依頼はこの男を見つけ出すことにあった。



「彼は鷹山仁。僕たちの依頼はこの男を探すことだ。」


「まあ探すのはわかった。
けど探すにしても何の手がかりも無しじゃ話にならねえ。
他に情報はないのか?」


「そのことだが実は鷹山には一人だけ関係者がいる。それがこの女性だ。」


それからフィリップはもう一枚の写真を俺に見せた。

歳は20代。若くて美人だなって…ちょっと待て!この女は…


「この女…さっき俺に赤ん坊を預けた女じゃねえか!?」


「本当かい?世間は狭いね。まさかこんなにも早く手掛かりが見つかるなんて。
ちなみに彼女の名前は泉七羽、加納さんが言うにはこの人は鷹山仁の同行者とのことだ。」


同行者…?

変だな。さっき追われていた時の彼女は赤ん坊と二人で逃げ回っていた。

鷹山仁なんて男はどこにも見当たらなかったんだが?

だが待てよ。年頃の男女が二人ってことは下世話な勘繰りだが…

つまりこの赤ん坊は写真にある二人の子供ってことか?


「よし、依頼はわかった。
この二人を見つけ出せば赤ん坊も親元に返してやることが出来るし一石二鳥ってわけだ!」


これで俺たちのやるべきことはハッキリした。

加納という男から言い渡された依頼。

鷹山仁と泉七羽。この二人の男女を見つけ出す。それに七羽さんから預かったこの赤ん坊。

父親か母親のどちらかを見つけ出して預かった赤ん坊を返す。

それですべての問題は解決する。まさに至って単純なことじゃねえか。

だがひとつ疑問があった。それは逃げた4000体についてだ。



「なあフィリップ。その逃げた4000体ってのは一体何なんだ?
それにさっきお前はいざとなったら仮面ライダーの力が必要になるとも言ってたよな。
それってつまり…」


「ああ、お察しの通りだ。その4000体というのは人を襲う化物だ。」


――――AMAZON


野座間製薬が実験の果てに開発した化物たちのことだ。

つまりこの依頼、場合によっては俺たちもまたアマゾンに襲われる可能性があるのか。

まったく亜樹子のヤツめ。大金に目が眩んでこんな危険な仕事をよくも引き受けたな。

だが受けたからにはきっちり仕事をこなさなければならない。

それにアマゾンについても警戒しなきゃいけないな。

先ほど俺を襲ったあいつらがアマゾンならこの風都に新たな脅威が迫っている。

どうやら久しぶりにでかい事件になりそうだ。



「ごめんマモル。あの女に逃げられた。」


さて、俺たちが探偵事務所で依頼の内容を把握している時だった。

この風都の人気のない路地裏であるヤツらが挙って何かを話し合っていた。

そんな連中の中にはマモルと呼ばれるリーダー格になる青年の姿があった。


「一刻も早くあの女を探し出さないと…そうじゃないと僕たちアマゾンは全滅する…」


あの女、恐らく俺たちが話し合っていた七羽さんのことだろう。

どうやらこいつらにも何か事情が有って彼女を探しているようだ。

だが先ほど俺が阻んだせいでそれを台無しにされた。

そのためこいつらは血眼になって七羽さんを探しているわけだ。


「あの男…鷹山仁…」


「僕たちを殺し続ける悪魔のような男…」


「あいつの大切な人を人質に取れば仲間がこれ以上殺されずに済む。」


「それなのにまだ見つからないなんて…」


そんな理由から七羽さんを探しているマモル。

こいつらが勝手の知らないこの街で一人の女を見つけ出すのは思いの外、困難だ。

しかしグズグズしているわけにはいかない。

自分たちがこの街に留まればいずれは鷹山仁が自分たちを殺しに来ると危惧していた。

だからこいつらは一刻も早く七羽さんを見つけ出さなければならなかった。



「ほう、お困りですか。よろしければ手を貸しましょうか。」


そんな途方に暮れていたマモルたちに思わぬ救いの手が現れた。

それは一人の男。

白い制服に身を包みジュラリミンケースを片手に持つ無表情で感情の起伏を感じない男。

その男は財団Xのエージェント。かつてこの街で暗躍していたミュージアム。

そのミュージアムを背後から支援していた財団Xがマモルたちに手を貸そうとしていた。

それから男はジュラリミンケースを開けてそこからあるモノを取り出した。

その中には『AMAZON』と刻まれたガイアメモリが入っていた。


「このメモリを使いなさい。ただし使い方はキミたちが使うのではなく………」


財団Xのエージェントは

マモルにだけわかるように小声でこっそりとメモリの使い方を教えてそれを渡した。

メモリを渡されたにも関わらず未だに戸惑う様子を見せるマモル。

突然現れたこの男を本当に信用できるのかと不安だからだ。



「何で僕たちにこんなことをするの?あなたは人間のはずなのに…」


「別に私たちも無償でそれを渡すわけじゃない。あなた方にあることを頼みたいからです。」


「あることって…何なの…」


「それは………」


男の言葉に更なる不安に駆られるマモルと他のアマゾンたち。

だが今はこの男の言うことを聞くしかない。

何故なら目の前に死という脅威が迫っている以上、彼らに選択肢などない…

彼らは自分たちが求める安寧の地を求めるため、渋々ながらも財団Xの甘言に誘われた。

ここまで

続きはぼちぼちとやっていきます

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom