まどか「私、魔法少女になるからバナナほしいバナナ!」ほむら「アホかっ!」 (64)


まどか「ねぇねぇ! ほむらちゃん! ほむらちゃん!」

ほむら「なに?」

まどか「実力テスト、全部0点だったぁ!」

ほむら「アホね」

まどか「キュゥべえにテレパシーで答え確認したのに! すごくない!?」

ほむら「キュゥべえに誰の答案をカンニングさせたの?」

まどか「マミさん」

ほむら「……すごく、アホね」

ほむら(学年が違うわよ、まどか)


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これは、私が数えるのを諦めるほどに繰り返した時の牢獄の中で、すぐに犠牲にしようと決意した世界の物語。



ほむら「鹿目まどか。貴女は自分の人生が、貴いと思う? 家族や友達を大切にしてる?」

まどか「バナナうめぇ」モキュモキュ

ほむら「度を越したアホさは甘さに繋がるし、蛮勇は油断になる」

まどか「あぁ……バナナ、うめぇ!」キラキラ

ほむら「貴女が破滅していく姿を私は見たくない。いっそ私がこの手で今すぐ殺してあげるわ……」

まどか「えぇ!? 私、死ぬの!?」

まどか「な……なら、死ぬ前に、せめて……」ウルウル


まどか「せめてもう一本バナナ食べたい!!」ブワッ


ほむら「ホントアホね」


キーンコーンカーンコーン


ほむら(早くワルプルギス来ないかしら)ハァ

さやか「転校生っ! これからまどかとCDショップ行くけど、一緒に行かない?」

ほむら「貴女から誘ってくるなんて珍しい……もしかして私にアレの"お守"をさせる気?」


 まどか「先生ッ! やっぱり目玉焼きにはマヨネーズだと思います!」

 早乙女「鹿目さん、授業中ずっと寝てたでしょう!? 今すぐ職員室に来なさいっ!」


さやか「あはは~、気付いちゃいましたか~」

ほむら「まぁ、放っておいて問題が増えると厄介だし……仕方ないわね」


CDショップ


まどか「さやかちゃん! 駅前のバナナ屋に行くっていう約束は嘘だったの!?」ガシッ

さやか「後で行くから、ね? ちょっとだけあたしの用事に付き合って! お願い!」

まどか「ひどいよ……こんなの、あんまりだよ……っ」ポロポロ

ほむら「ほ、ほら、まどか。バナナをあげるから泣き止んで?」スッ

まどか「ほむらちゃん……! 私の、最高の友だち……!」ズビーッ

ほむら「私の制服で洟をかまないで……」


まどか「お礼になんでもしてあげる! ほむらちゃんの夢と希望を叶えてあげる!」キラキラ

ほむら「い、いいわよ……早くバナナ食べちゃいなさい」

まどか「あ! もしかして、エッチなこと!? いいよ、ほむらちゃんなら……」ドキドキ

ほむら「ちょっ!? ここ、店内!!」オロオロ

ほむら(で、でも、中身はアレでもこの子はまどか……!)ドキドキ

ほむら(い、いえ! だからこそダメよ、まどかは、まどかはぁ……!)ドキドキ

まどか「お礼にパンツ見せてあげるーっ!」バサッ!

さやか「やめろぉ!」ガシッ


ほむら「た、助かったわ、さやか……」ハァハァ

さやか「いやもう、慣れてるからね……」

まどか「何するのさやかちゃん! 希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、私、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せます!」

ほむら「別にまどかのお子様パンツに希望なんて抱いていないわ……」

まどか「えぇっ!? だってほむらちゃん、私のこと大好きなんじゃないの!?」

ほむら「っ!?」ホムッ

まどか「だからバナナくれたんじゃないのぉっ!?」ヒシッ

ほむら「…………」

さやか「まどか。良い子だから、このヘッドホンしてて」スッ


まどか「ふんふん♪」ズンチャカズンチャカ

さやか「いや~、まどかはすっかり転校生に懐いちゃったねぇ」

ほむら「私が偶然バナナを持ち歩いていたせいね」

ほむら(初対面で開口一番にバナナが欲しいと言われ、こっそり時間を止めてバナナを持ってきてしまったわ)

ほむら(まさか中身がこんなことになっているとは知らずに……)

まどか「きた~のぉ~! 酒場通りにはぁ~!」ズンチャカズンチャカ

さやか「ちょ、ちょっとまどか! 試聴コーナーで歌っちゃダメでしょ!」ガシッ

まどか「あーっ! さやかちゃんのいじわるーっ!」

ズンチャカズンチャカ

ほむら「これ、流れてる曲、細川たかしじゃなくて五木ひろしだわ……!」


ケテ…

タスケテ、マドカ…


まどか「あーっ! 今何か聞こえた! 助けにいくよ、さやかちゃん! ほむらちゃん!」ガシッ

さやか「うわっとぉ!? またまどかが変な電波を受信したぁ!」

ほむら(いや、これは……)



キュゥべえ「助けてまどか! 魔女に襲われているんだ!」ボロッ

まどか「うっぎゃーっ! なにこれなにこれ、なにこれぇー!?」

さやか「変な生き物がいっぱい!? もしかして、まどかのアホな妄想が具現化した!?」

キュゥべえ「今すぐ魔法少女に変身して―――」

まどか「きゃーっ! いやーっ! うわーっ! あはーっ!」

キュゥべえ「ちょ、あの、話を……」

ほむら(そう言えば前にもこんなことがあったわね。たしかあの時は……なら、私の出る幕じゃ無いかしら)


マミ「貴女たち、下がってなさい!」


キュゥべえ「助かったよマミ」

マミ「それで、貴女たちは?」

まどか「見滝原中学校、2年B組鹿目まどかです!」ビシッ

さやか「お、おなじく美樹さやか」

まどか「そして! 私の最高の友だち、暁美ほむらちゃんですどうぞー!」パチパチ

ほむら「!?」ホムッ

マミ「貴女……もしかして、魔法少女?」

ほむら「……ええ、そうよ」

マミ「どうしてさっきの魔女との戦いに参加しなかったの?」ジロ

ほむら「あの子から目が離せなかったから」


まどか「あーっ! 私のパンツにおしっこついてるー!」バサッ

さやか「だぁぁ!? あとで着替えようね!?」ガシッ


マミ「なるほど」


さやか「魔法少女!? 二人とも!?」

まどか「すげーっ! 魔法少女すげーっ!」クンクン

マミ「そう。これがソウルジェ……って、鹿目さん? 私、何か匂うかしら?」

まどか「マミさん、バナナの匂いがする! 黄色いし!」

ほむら「っ!!」

マミ「えっ? あ、さっきバナナシフォンケーキを食べてしまったからかしら。恥ずかしいわね」ウフフ

まどか「私も食べたい食べたい食べたーい!」ゴロゴロ

さやか「こら、まどか!」

マミ「ええ、いいわよ。ここじゃなんだし、お話ついでに私の家に来る?」

まどか「バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ!」


マミホーム


まどか「ケーキうめぇ……!」キラキラ

ほむら(なぜか悔しいわ)グッ

ほむら(……こんなまどかでも、幸せで居て欲しいでほしいと思ってしまうのは私のエゴかしら)

キュゥべえ「君達には素質がある。それに、魔女と対面してなお自らの食欲を優先させる豪胆さまで兼ね備えているようだ」

さやか「いや、まどかがアホなだけだから」

キュゥべえ「僕は君たちの願い事をなんでも一つ叶えてあげる。何だってかまわない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ」

さやか「マジ!?」

まどか「えーっ!? だったら、だったら!」

ほむら「っ!? 待って、まど―――」


まどか「バナナケーキのおかわり欲しい!!」


マミ「ウフフ。その願い事は私が叶えちゃうわね」ニコ

ほむら(……まどかがアホで助かったわ)


キュゥべえ「他には何かないかい?」

まどか「じゃあ、願い事を三つにして! 我ながらなんて頭がいいんだ!」ウェヒヒ

さやか「あはは、まどかはアホだなぁ」

キュゥべえ「願い事は一つと言ったはずだよ」

まどか「だーかーらー、その一つの願い事で願い事を三つにしてって言ってるの!」

さやか「あ、あれ? これってどうなるんだ……?」

ほむら「どうせ"願い事を三つ"にしただけで魔法少女にさせられてタダ働きよ」

まどか「えぇーっ!? やーだー! 願い事を三つ叶えてくれなきゃやーだー!」ゴロゴロ


マミ「キュゥべえ、どうしてもダメなの?」

キュゥべえ「前例は無いね。ただ、絶対に不可能というわけでもない」

ほむら(これは、授業よりも小難しい説明が始まってしまう? ……そんなの、まどかが耐えられない!)シュイン

マミ「暁美さん? どうしたの、急に変身して」

ほむら「ねえ、まどか。この紙を見て」

まどか「あ、ほむらちゃんの字で『ねがいごと』って書いてある」

ほむら「よく見ててね。3、2、1……はいっ」

まどか「ああーっ!? 『ねがいごと』って字が三行に増えたぁーっ!」

ほむら「これで貴女の願い事は叶った。ね?」

さやか「えっと、魔法で文字を増やしたの? いくらまどかでもそれは―――」

まどか「わーい! わーい! 私の願い事叶ったー! ほむらちゃん大好きーっ!」

ほむら「ふぅ」ホムッ

キュゥべえ「えぇ……」


まどか「んごぉ……ぐがっ……」ポリポリ

ほむら「お腹がいっぱいになったのか、寝ちゃったわね」

マミ「ちなみに美樹さんの願い事は?」

さやか「まどかのアホを治すこと」

キュゥべえ「残念だけど、美樹さやかの素質ではその願い事は叶えられないみたいだ」

ほむら(腕一本より重症なのね、まどか……)


マミ「候補の子が現れたら魔法少女見学ツアーにでも連れて行ってあげようと思っていたけど」

さやか「本当に申し訳ないです、巴さん」

ほむら「この子をそんな危険な目に遭わせられないわ。わりと本気で」

マミ「ええ、わかってるわよ。キュゥべえももう勧誘はやめてね?」

キュゥべえ「それは僕が決めることじゃないよ」

まどか「バナナがいっぱい……うぇひひ……」ムニャムニャ

キュゥべえ(やっぱり諦めようかな)


別の日 


早乙女「はい。ここまででわからないところはありますか?」

まどか「はいっ! 全部わかりませんっ!」

病院


上条「テストも近いのに、わざわざお見舞いに来てくれてありがとう。暁美さん」

ほむら「構わないわ」

さやか「あたしひとりじゃまどかの面倒見切れないからね」

ほむら「今までどうしていたの?」

上条「僕がフォローしてたんだけど、入院しちゃってからはさやかにまかせっきりでね」

上条「それはそうと、その鹿目さんは?」

ほむら「えっ」


 まどか「ぎゃー! 水かと思ったらアルコール消毒液だったー!」オエーッ!


さやか「アホだなぁ」


まどか「さやかちゃーん! 今日もかわいいねー!」

ほむら「貴女、ここまで3人で一緒に来たでしょう?」

まどか「バッカほむらちゃんバッカ! 上条君の気を引くためだよっ!」ヒソヒソ

ほむら(アホくさ)

さやか「そ、そう? ふふん、さやかちゃんの可愛さの前にはどんな男子も逆らえないのだ!」

ほむら「アホは1人で十分。それと、貴女よりまどかの方が美少女よ」

さやか「ひどぉっ!?」

まどか「ええ、それ本当ぉ!? 世界一!? 宇宙一!?」ドキドキ

ほむら「え、ええ。だから、鼻水拭いて。チーンして」

上条「あんまり鹿目さんを調子に乗せたらダメだよ。それに、さやかの方がかわいいよ」

さやか「えっ」キュン

上条「少なくとも鹿目さんよりは」

さやか「あ、うん」


まどか「でも上条君はいいなー。毎日学校休んでも怒られないんだもん」

上条「いや、それはこうして事故で怪我しちゃって――」

まどか「バイオリン上手ければ勉強しなくても怒られないんだよね! あーっ!!」

上条(うるさ……)

まどか「いいこと思い付いた! 私も特技を見つければ勉強しなくていいんだぁ!」パァァ

さやか「いやいや、そんなわけないでしょ。そもそもあたしらは特技なんて無いし」

まどか「もっと自分に自信を持って、さやかちゃん! 大丈夫。さやかちゃんだって、頑張れば人の役に立てるんだよ!」

さやか「お、おう……てか、まどかの特技って?」

まどか「魔法少女だよ、さやかちゃん!」

キュゥべえ「呼んだかい?」

ほむら「っ!?」ガタッ


まどか「ちょうどいいところに! キュゥべえ、私を魔法少女にして!」

ほむら「まっ―――」

キュゥべえ「わかった。願い事は?」

まどか「願い事?」ポカン

ほむら(あ、これ大丈夫なやつだわ)ホッ

上条「鹿目さんは窓に向かって何を?」

さやか「ああ、恭介は気にしないでいいよ」

上条「うん、そうする」


まどか「だから、魔法少女になるのが願い事だってば」

キュゥべえ「いや、魔法少女になるには願い事が必要なんだ。その願いの種類や大きさで―――」

まどか「もうっ! 私は特技が魔法少女になりたいの! 全国優勝するの!」

さやか「どういうこっちゃ」

ほむら「まどか。魔法少女の私が貴女の特技になってあげるわ」

まどか「ホント!? ありがと、ほむらちゃん! これで私も上条君みたいに学校を休めるよ!」

ほむら「い、いえ、それはできないのだけれど」

まどか「ええーっ!!??」ガーン

ほむら「……バナナ毎日あげるから学校に行きましょう?」

まどか「わーい! やったー!」キャッキャッ

上条「今日も空が綺麗だなぁ」

帰り際


まどか「今度グラビア写真集にさやかちゃんの顔をコラって上条君にあげよう」

さやか「やめて!?」

まどか「えー? さやかちゃん、上条君に好きになってほしいんでしょー?」

さやか「い、いや、だから、それはもっと別の方法で……あーっ! あそこ!」

ほむら「……魔女の卵、グリーフシード。孵化しかかっているわ」

さやか「病院で魔女が暴れたら……転こ、ほむら! なんとかできそう!?」

ほむら「ええ。でも、そっちはなんとかできるかしら?」


まどか「さやかぁ。いつの間にこんなに胸が大きくなったんだい?」※声真似

まどか「いやーん! 上条君ったら、エッチー!」キャッキャッ


さやか「……マミさんを呼ぼう」


ほむら「とりあえずお菓子の魔女シャルロッテはなんとかしたけれど……」


まどか「ジャーン! 私の泥団子が一番きれいー!」キャッキャッ

マミ「え、ええ。そうね、負けたわ」

さやか「ほ、ほらまどか? もう日も暮れたから帰ってテスト勉強しよう?」

ほむら「貴女たち、何をしているのかしら?」

まどか「ほむらちゃんが来た! よーし次は鬼ごっこだー!」ダッ

さやか「ま、待ってまどかぁ!」


ほむら「…………」


ほむら(こんなことで魔法を使うのはどうかと思うけれど)シュイン

まどか「うほぉ!? 目の前にほむらちゃんがテレポートしてきたぁ!? 魔法すげぇ!」

ほむら「はい、捕まえた。それじゃ、帰ってテスト勉強しましょう?」

まどか「えー。余裕余裕」ヘラヘラ

マミ「はぁ、はぁ……。わ、私が勉強を見てあげてもいいわよ?」

さやか「願ってもない申し出! あたしなら金貰ってもやらない!」

ほむら「ほら、まどか。そろそろ現実を見ましょう?」

まどか「こ……これが……!」プルプル


まどか「夢も希望も失った、現代社会の子どもたちかぁーっ!!」


さやか「奇跡も魔法もあるんだよっ!?」


まどか「あ、そっか。キュゥべえに頼めばテスト受けなくて済む!」キラキラ

ほむら「良い点を取るという発想は無いのね」

まどか「大丈夫、きっと大丈夫。信じようよ。だって魔法少女はさ、夢と希望を叶えるんだから……」

キュゥべえ「きゅっぷい。まどかの願い事は決まったようだね」

まどか「うんっ! 次のテストの日、私を風邪にして!」

キュゥべえ「えっ」

マミ「アホね」

さやか「アホだなぁ」

キュゥべえ「……あれ? おかしいな。まどかの持っている因果の量でも、その願いは叶えることができないみたいだ」

ほむら「……? ……ハッ!?」


ほむら「―――アホは風邪を引かない!」


まどか「ガァーン!!」


さやか「"馬鹿は風邪を引かない"じゃなかった?」

ほむら「大差無いでしょう?」


まどか「もういいよっ! キュゥべえなんかなんにも叶えてくれないじゃん! 詐欺じゃん!」グスッ

まどか「これ以上私の心を弄ばないでぇ!」ピェーッ

キュゥべえ(ここで僕の信頼を失うわけにはいかない……多分)

キュゥべえ「ごめんね、まどか。それなら、今度テレパシーを使わせてあげるよ」

まどか「てれぱしー?」

キュゥべえ「頭の良さそうな人の答案を僕が覗いて、答えを教えてあげる」ヒソヒソ

まどか「……クラスのみんなには、ナイショダヨ」ニヤリ


ほむら(あの顔、またよからぬことを……)ハァ


ほむら「それで結局0点だったのね」

マミ『私のせいで鹿目さんが0点……! 私、なんてことを……!』※テレパシー

ほむら『貴女のせいではないけれど、そのまましばらく落ち込んで居てくれると助かるわ』※テレパシー

まどか「あんの耳毛……今度会ったらむしりとってやる……」ブツブツ

ほむら「安心して、まどか。貴女より100倍のアホが居たみたいだから」

まどか「ええっ!? 100倍ってことは、えっと、いち、に、さん……100倍!?」

さやか「な、何よ。あたしが魔法少女になったことがそんなにいけなかった?」

ほむら「アホと呼ぶのはまどかが可哀想だから、愚か者と呼んであげるわ。美樹さやか」

さやか「はぁっ!? 喧嘩売ってんのか転校生! あたしが魔法少女になってなかったら仁美もまどかも危なかったんだからね!?」

さやか「今日もこれからマミさんに代わって使い魔を狩りに行くんだ! 邪魔しないでよ!」

ほむら「……ふん。行きましょ、まどか。……まどか?」キョロキョロ

まどか「この消火器持って帰ってもいいかな!? いいよね! ふんっ! 重っ!」

ほむら「…………」


ほむら「もうさやかと関わってはダメよ、まどか」

ほむら(いずれさやかは魔女になる。そんな姿をまどかに見せられない)

まどか「……ほむらちゃんはやさしいね」

ほむら「えっ?」

まどか「テストで0点取ったのに、私のこと怒らないでいてくれて」

ほむら「あぁ、そっち……」

まどか「でもね? さやかちゃんと喧嘩するのは、ダメ」

まどか「私、これからもみんなで一緒に遊びたいもん」ニコ

ほむら「……もしかして貴女、その消火器で使い魔と戦うつもり!?」ハッ

ほむら「ダメよ、まどか! いくらアホだからって、その身を危険に晒すようなことは―――」

まどか「え? ううん、これは家宝にするの」

ほむら「そ、そう」ホッ


ほむら「いつまで消火器を持ってるの。私が盾の中に預かっててあげるわ」シュイン

まどか「わーい! ありがとうほむらちゃん、大好き!」

ほむら(これ、ワルプルギスに効くかしら?)スッ


??「へぇ。一般人のくせに使い魔と戦うアホかと思ったら、案外脳みそあるみたいじゃん」


ほむら「貴女は……」

まどか「誰!? あーっ! ポッチー食べてる! いいなー! いいなー!」

杏子「あたしは佐倉杏子……って、寄るな! 触るな! わかったよ、一本やるから!」

まどか「わーいわーい! ポリポリポリポリ」

杏子「なんだこいつ……」

ほむら「ごめんね、アホで……」


まどか「ほむらちゃんの友だち?」

ほむら「そんなところよ。それで、どうして見滝原に来たの? 佐倉杏子」

杏子「へぇ、それがあんたの魔法か。ま、キュゥべえがイレギュラーイレギュラーうるさくてな」

ほむら「私の牽制ということ」

杏子「それだけじゃねぇ。そっちの、鹿目まどかもだ」

まどか「もう一本頂戴! ギブミーポッチー! ポッチミー!」

杏子「……ほら、全部やるよ」

まどか「バンザーイ! バンザーイ!」

杏子「なるほど。中身はアレだがすげぇ素質を持ってるみてぇだな」

ほむら「中身はアレだけどそこは信じていいわ。中身はアレだけど」


まどか「ポッチーの借りはいつか返すよ! 杏子ちゃん!」

杏子「い、いいって。どうせ盗んだやつだし」

まどか「え、えええっ!? 私、盗んだもの食べちゃったの!?」ガーン

まどか「ダメだよそんなの! ちゃんとお金払わなきゃ!」

ほむら(さっき消火器を盗んだのはどこの誰だったかしら)

まどか「ポッチーがひと箱200円で、10本中8本私が食べたから、えっと、えっと……?」

ほむら(指で数えてるけどわかってないわよねアレ)

杏子「おいおい、そんな簡単な計算もできねぇのかよ? 200×10÷8で210円だ210円」

まどか「おおーっ! 杏子ちゃんすごーい! 頭良いっ!」

ほむら「杏子も間違えてるわよ」


まどか「ええっ!? 杏子ちゃんもアホなの!?」キラキラ

杏子「はぁっ!? テメ、ほむら、テキトーこいてんじゃねぇ!」

ほむら「安心しなさい。まどかよりは全然マシよ」ニコ

杏子「嬉しくねーよ!」

まどか「まぁまぁ。同じアホ同士仲良くしようよぉ」ニヤニヤ

杏子「一緒にすんな! あたしは中学通ってねぇから仕方ねぇだろ!

まどか「君はいい加減認めるべきだ。そう、アホは死んでも治らない!」ドヤッ!

杏子「やんのかコラ!」ガシッ

ほむら「私は冷静な人の味方で、無駄な争いをする馬鹿の敵。貴女はどっちなの? 佐倉杏子」ジャキッ

杏子「ば、馬鹿って言うな。わかったから銃しまえって」

まどか「アッホなっかま! アッホなっかま!」

杏子「うるせぇ!」


まどか「一緒にアホライフを楽しもうよ、杏子ちゃん!」

杏子「んなポジティブに言われてもな……」

ほむら「安心しなさい。たとえ貴女たちがアホでも、ワルプルギスの夜が来るまでは私が面倒見てあげるわ」

杏子「誰がアホだ! って、ワルプルギスの夜だと!?」

ほむら「キュゥべえに何をそそのかされたかは知らないけど、貴女は私と共闘すべきだわ」

杏子「へぇ……手の内を明かさない相手の情報を信じろってのか? あんたも相当アホだな」ケッ

まどか「ほむらちゃんはすごいんだよ! なにもない場所からバナナを取り出せるんだよ!」

ほむら「ほら、まどか。バナナの時間よ」ポイッ

まどか「わふんっ!」パクッ

杏子「テ、テメェらと一緒に居たら頭がおかしくなる! うわあああっ!」ダッ


杏子「はぁ、はぁ……全く、とんでもねぇアホだった」ハァ

さやか「あれ? あんた、その格好……魔法少女?」

杏子「あ? なるほど、あんたか。キュゥべえが言ってた新米魔法少女の美樹さやかってのは」

杏子「何でも、一人で使い魔狩りをしてるんだって? 巴マミの真似事か?」ケラケラ

さやか「はぁ? 何、喧嘩売ってんの?」

杏子「……なぁ、ひとつ聞いていいか」

さやか「ん?」

杏子「……アホってさ、一生治らねぇのかな?」ウルッ

さやか「あー……」

さやか「そんなことない! きっと、アホも、治る!」

杏子「……一緒に居てやるよ、美樹さやか。ひとりぼっちは寂しいもんな」グスッ


まどか家


ほむら「こんにちは」

詢子「ひやあ!? 何この普通に良い子そうな子はっ!?」ビクッ

まどか「私の最高の友達の、ほむらちゃん!」ウェヒヒ

詢子(このにやけ顔……まさか、まどかにそっちのケが!?)

詢子(いや、全然ありえるわ……だってこの子、アホだもの!)

詢子(それにあのほむらとかいう娘……まんざらでも無さそうな顔……!)

詢子(マズイ、このままだと孫ができない! 私の老後が……!!)


詢子「ちょっと! ほむらちゃん!? パンツ見せなさい!」ガシッ

ほむら「は、はあっ!? ちょ、あの、やめっ!」///

詢子「もし、貴女がお子様パンツでないのなら、それはまどかに見られることを意識していることになる!」グググ

ほむら「ま、まどか! お母様を止めて! やめさせて!」グググ

まどか「おほー。いいよー、いいよー。燃え上がってきたよー!」ウェヒヒ

ほむら(しまった! この子、アホだったわ!)

詢子「其れ即ち、まどかを欲しがっているという証拠ォ!」グググ

ほむら「そ、それの何が、問題なんです!?」グググ

詢子「あの子にはさやかちゃんに近づいて、こっそり上条君の隣を横取りしてもらって玉の輿に乗る使命があるのよっ!」

まどか「上条君なら仁美ちゃんと付き合ってるよ?」

詢子「なにぃぃぃっ!!??」ガーン

ほむら(この世界が狂った元凶はこの人か……!)


詢子「そんなぁ……わたしの、老後がぁ……」ガクッ

ほむら「お、落ち着きましたか?」

詢子「いいえ、まだよ! まだ上条君を諦めるには早すぎる! まどか、今から寝取ってきな!」

まどか「サーイエッサー!」ビシッ

ほむら「やめなさいまどか! お母様もやめてください!」

詢子「悔しいけどね、正しいことだけ積み上げていけばハッピーエンドが手に入るってわけじゃない」

詢子「まどか、アンタは良い子に育った。でもね、いっそ思い切って間違えちゃうのも手なんだよ」フフフ

ほむら(な、なんという悪人面!)


まどかの部屋


ほむら「なんとかあの母親の前から逃げ出せたわ」ハァ

まどか「ほむらちゃん! 見て見て! これ、私のバナナ置き!」ンフー!

ほむら「ええ、可愛いわ。それでね、まどかによく聞いてほしいことがあるの」

まどか「なになに? もしかして、新しい遊び!?」

ほむら「……そう。これはちょっとした遊びよ」

まどか「わーい! わーい! ほむらちゃんと遊べるー!」

ほむら「明日一日、私に見つかってはダメ。ううん、私だけじゃない。さやかにも、マミにも、杏子にも」

まどか「うおおっ!? レベル高ぇかくれんぼだね! 魔法少女すげぇ!」


ほむら(まどかがアレだから、私が対ワルプルギス用に重火器を用意する時間は無かった)

ほむら(その上杏子達の協力も得られなくなったこの世界では、ワルプルギスの夜を乗り越えられる可能性は限りなく低い)

ほむら(最初からわかっていた。だから、諦めていた、はずなのに……)

ほむら(なぜ、私は運命に抗おうとしているの?)


キュゥべえ「人類の行動規範はわけがわからないよ。理解に苦しむね」

ほむら「やっぱり来たわね」

まどか「あっ! 勝手に入ってくんな耳毛猫! バナナはあげないよっ! あげないよっ!」ヒシッ

キュゥべえ「い、要らないし取らないから安心して、まどか。それより、一体君は何を考えているんだい?」

キュゥべえ「時間遡行者、暁美ほむら」

ほむら「……さぁ。私にもさっぱりわからないわ」

まどか「ええっ!? 自分の考えてることがわからないの? ほむらちゃん、かわいそう!」

ほむら「哀れんでくれてありがとう、まどか」

キュゥべえ「歪んでるなぁ……」


キュゥべえ「この世界がおかしくなったのは鹿目詢子のせいだと思っているようだけど、それは違うよ」

キュゥべえ「それは間違いなくほむら、君が原因だ。他に変数が無いからね」

まどか「多分ママのせいだと思うなー」

ほむら「……何がいいたいの?」

キュゥべえ(時間遡行によってまどかに結びついた因果が集約された。無限回の試行の中で、まどかの素質が膨れ上がっていった)

キュゥべえ(いずれ人間本来の器を突破し、かさぶたのように修正される時が来る。それがこの周回の世界だったんだ)

キュゥべえ(おそらく次の周回の世界からは、それこそ人外レベルの素質を備えることになるんだろうね)

キュゥべえ「まどかを変質させたことで母親である詢子の因果も書き換えられた。未来が過去を変えたのさ」

まどか「……ぐぅすかぴー」zzz

キュゥべえ「まどかには難しすぎたかな」


キュゥべえ「安心して。きっと次の周回のまどかは君の言うところの正常な状態に戻っているはずだ」

キュゥべえ「それが時間遡行の魔法の本質だからね」

ほむら「消えなさい、インキュベーター」ジャキッ

キュゥべえ「せいぜい無駄な努力をするといいよ、暁美ほむら」スッ…


まどか「むにゃむにゃ……ほむらちゃんの、バカぁ……」ポリポリ

ほむら「ええ、わかってるわ。私の行動が一番アホだってことくらい」

ほむら「利己的になりたいならこのまどかを無視すればいい。こんなまどかは、私の救うべきまどかじゃない」

ほむら「そう思っていた。でも……たとえアホでも、そのやさしさは、本物だったわ」

まどか「うぇひひぃ……」プゥー

ほむら(おならくっさ……)


翌日


キャハハハハ…


ほむら「くっ……。やっぱり、準備不足。使い魔たちにも、太刀打ちできないわ」ハァ ハァ

キャハハ! キャハハ!

ほむら「足が動かない、のに、もう武器が……あった」プシューッ!

キャハハ!? キャハハ!?

ほむら「ここでアホの消火器が役に立つなんてね……」

ほむら「マミたちは……杏子あたりから話を聞いて、避難したのかしら」

ほむら「ええ、それが賢明よ。私みたいに、惰性でワルプルギスの夜と戦うなんて、愚か者のすることだわ」


マミ「あら? 愚か者で悪かったわね」

杏子「全く、ざまぁねぇなぁ」

さやか「正義のヒーローはここぞって時に登場しないとね!」


ほむら「あ、貴女たち……! 一体、どうして……!?」


マミ「残っていた住民の避難に時間を取られてしまったわ」

さやか「どうしてって、魔法少女が悪をやっつけるのは常識でしょ?」

杏子「これ以上、まどかにアホ呼ばわりされたくないからな!」


ほむら(……そうか、この三人はまだ魔法少女の真実を知らない)

ほむら(夢と希望を持ったまま、無知のままここまで来てしまったのね)


まどか「あーーーっ!! みんな、みーっけた!!」


ほむら「えっ」


まどか「もう、ひどいよぉ! 私だけ置いてけぼりにして、みんなでサーカスを楽しんでるなんて!」

ほむら「えっと、まどか? 今はかくれんぼの途中よ?」

まどか「かくれんぼ?」ポカン

ほむら(しまった! この子、アホだったわ!)

ほむら「どうして避難所から出てきてしまったの」

まどか「ママに上条君を寝取って来いって」

ほむら(あの母親……!)


さやか「ほむら! こっちは私たちに任せて! まどかはほむらに任せるから!」シュタッ


ほむら「……一番厄介なのを押し付けられたわね」


カチッ

ほむら(……砂時計が溜まった。今なら、もう一度時を繰り返すことができる)

ほむら(このままあの三人が滅んでいくのを見るよりは、今ここで……でも……)

ほむら「……いえ、万に一つも希望なんて無いわ」

ほむら「どうせさやかが倒されて、自分たちが魔女になることに気付いて絶望……まるで白痴ね」

ほむら「こんな世界、何もかもメチャクチャになって、壊れてしまえばいい。そうは思わない? まどか」

まどか「ほえー。魔法ってキレーだなー。あっ! ビルの消滅マジックショーだ!」キャッキャッ

ほむら「あははっ。なんだか、アホらしくなっちゃった」

ほむら「そうだ、一番簡単な方法があるじゃない」

ほむら「私がまどかを、諦めてしまえば―――」


まどか「諦めることに慣れてはダメな大人になるぞよ!」


ほむら「っ!?」ビクッ


まどか「諦めることに慣れてはダメな大人になるぞよ!」

ほむら(なぜ二回言った……)

まどか「夢を諦めるな!!」

ほむら「と、突然どうしたの?」

まどか「ほむらちゃんは途中で諦めるような人じゃない! だって、こんな私にずっとバナナをくれたんだよ!?」

ほむら(ああ、諦めるっていう単語に反応しただけなのね)

まどか「バナナの数だけ、夢と希望が叶うんだよ。ほむらちゃん!」b

ほむら「……食事と睡眠ばかりを繰り返す、救いようのないアホでも、だとしてもこの子は、かつてのあの子なんだ」

ほむら「それを、覚えてる。決して、忘れたりしない」

ほむら「だから私は、戦い続ける……!」


キャハハハ…

まどか「ねえ、ほむらちゃん。あの一番おっきくて、悲しい声を出してるのが魔法サーカスの団長さん?」

ほむら「えっ? ええ、多分」

まどか「そっか……」

キャハハハ…

まどか「貴女、今までずっと誰とも遊んでもらえなくて、素直になれなくなっちゃったんだね……」

ほむら「……まどか?」

まどか「わかるよ……遊びたいのに遊べないのは、つらいよね……」

まどか「でも、大丈夫。私が、魔法少女になって一緒に遊んであげる!」


まどか「キュゥべえ!」

キュゥべえ「きゅっぷい」

ほむら「まどか!?」

まどか「ほむらちゃん、ごめんね。私、魔法少女になる」

まどか「私、やっとわかったの。叶えたい願い事、見つけたの」

ほむら「わかっているの!? それは、貴女の滅亡を意味しているのよ!?」

まどか「うん。だからそのために、この命燃やすね」

キュゥべえ「鹿目まどか。君は終末に何を願う?」


グゥ~


まどか「―――私、魔法少女になるからバナナほしいバナナ!」


ほむら「アホかっ!」


こうしてまどかは宇宙規模のバナナによってワルプルギスの夜を討ち果たした。

しかし同時に力を使い果たしたまどかはバナナの魔女となり、地球はもれなくバナナの山に埋もれた。

私は、阿呆少女の残したバナナを一口食べ、また時を繰り返す。


ほむら「バナナ、うめぇ……っ」ポロポロ





おわれ

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