デレP「蘭子の字幕が消えた」 (109)


ちひろ「どうしたんですか、不景気な顔をして」

デレP(以下P)「あんたに毎日搾り取られてたらそりゃ不景気にもなりますよ。いやそうじゃなくて」

P「蘭子の字幕が消えちゃったんですよ!」

ちひろ「……字幕?」

P「ほら、いつも蘭子が熊本弁を喋ってるとき、……こう、胸の辺りに字幕が出てたじゃないですか、標準語で」

ちひろ「あー……、出てましたね、なんか、こう……副音声的なのが」

ちひろ「いつも思うんですけどなんなんですか、あれ。VFX?」

P「いやそんな大層なものじゃないと思いますけど。とにかく見てください、ほら、あれ」


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すみません酉打ち間違えてました。


蘭子「煩わしい太陽ね……」

ちひろ「……」

P「……」

ちひろ「……あれ?」

P「……ね、おかしいでしょう?」

ちひろ「え、ええ、そうですね。いつもだったら……、こう、胸の辺りに(おはようございます!)って字幕が出るのに……どうしちゃったのかしら」

P「ですよね……、どうしましょう、これ」


蘭子「過に面妖な色を……。魔物の邪気に中てられたか」

P「アカン、意味が三割くらいしか理解できん」

ちひろ「とりあえず私たちの顔色が悪くて心配……ってことが言いたいんじゃないんでしょうか」

P「ああ、なるほど、合点が行きました」

蘭子「むう……怪なる蜜を啜りあって……」

P「えっと……?」

ちひろ「蜜……? なんでしょう、甘いものでも飲みたいんでしょうか?」

P「あー、なるほど、それっぽいですね。ホットレモンでも沸かしましょうか」

蘭子「むー!」ブンブン

P「日傘で叩くな痛い!」


蘭子「我が眷属の様子がおかしい……。これは何者かの謀略か」

P「おかしいのは俺じゃなくてアナタの方だと思うんですけど」

蘭子「くぅ……! 忌まわしき闇の魔術よ!」

P「頼む、対抗してくれ、蘭子! 今のままじゃ何言ってるか分からん!」

蘭子「おのれ……我が眷属を異なる混沌へと誘うとは……! 何たる悪戯……!」

ちひろ「すみませーん、誰か蘭子ちゃんの熊本弁を和訳してくださる方はいらっしゃいませんかー!」

P「あれ、熊本弁って日本語じゃなかったっけ……!?」


茜「どうしましたか、プロデューサー! ちひろさん! ランニングに連れてかれた乃々ちゃんみたいな顔をして!」

P「助けてくれ、茜! 蘭子の字幕が消えて熊本弁が解読できない!」

茜「なるほど!?!!??!?」

ちひろ「すみません、文章にするとわけわかんないですけど本当にそうとしか言えない状況なんです。藁にも縋る思いなんです」

茜「おー! なんだか不本意な扱いを受けた気もしますが、分かりました! 全力で蘭子ちゃんの言葉を解明します!」

P「頼んだぞ、茜!」

茜「お任せください!」


茜「おはようございます! 蘭子ちゃん! どうしましたか!」

蘭子「我が眷属が異なる魔術師の手に陥り深き混沌へと呑まれてしまった……!」

茜「ふむふむ!」

蘭子「この私の手を以てしても抗い難き魔術……! 混沌を切り裂く無垢なる雷鳴は鳴りを潜め瞑目している……!」

茜「そうですね!」

蘭子「斯くなる上は、新たな闇を以てより深き闇へと誘うのみ……!」

茜「それは大変ですね!」

蘭子「然れば、我が双皿に禁断の智と禁忌の蜜を与えたまえ……!」

茜「分かりました! プロデューサーに伝えます!」

蘭子「其方の暗躍……歓待しようぞ!」


茜「戻りました!」

P「どうだった!?」

茜「なにひとつ分かりませんでした!」

P「お疲れ様! よくやった!」ギュッ


ちひろ「どうするんですか、これ。字幕が無いと意味を判別できかねますよ」

P「怒ってるとか笑ってるとかそういうアバウトなニュアンスしか掴めないからな。日常生活に支障をきたすぞこれ」

??「お困りのようですね……」

P「! その声は……!」

P「六代目シンデレラガール……高垣楓!」

楓「どうも、六代目でございます。なにやらお困りのようで」

P「聞いてくれ、楓! 蘭子の字幕が消えて蘭子が何言ってるか3割くらいしか分からなくなったんだ!」

楓「なるほど……。不肖この高垣、親愛なるプロデューサーにお力添え致しましょう……」

P「ありがとう、助かる!」

楓「別に最近構ってくれなくて寂しいわけじゃないんですからね」

P「そうか、分かった!」

楓「別に一緒にお酒を呑む仲間が欲しいわけじゃないんですからね」

P「分かったから! 分かったから蘭子の元へ!」


楓「蘭子ちゃん、こんにちは」

蘭子「フッ……新たに聖杯を掲げ栄光の頂へと登り詰めし舞踏姫よ……。意を決しを決し強大なる闇の権化を照らそうと目論むか」

楓「ウフッ」

蘭子「而して斯様な奸計を試みようとも……瞳の力を持たらざる者に斯かる大義を成せようか……」

楓「うんうん」

蘭子「然し……私とて悪魔ではない。若し望むのであれば、禁忌の扉の錠を緩めることも吝かではない……!」

楓「ありがとう、よく分かったわ」


楓「ただいま戻りました」

P「おお、蘭子はなんて言ってた?」

楓「今晩お酌に付き合ってくださいって言ってました」

P「会話の内容あまり聞こえなかったけど120%違うって断言できるぞ!」

楓「ついでに高垣楓も誘ってほしいって言ってました」

P「そもそも蘭子まだ未成年だからね!?」

楓「いいから行きましょうよ、プロデューサー」

P「もはや取り繕わなくなった!?」


みりあ「あれー、何してるの、プロデューサー?」

P「みりあ、ちょうどいいところに! 蘭子が何言ってるか分からなくなったんだ!」

みりあ「えー、どうしちゃったの、蘭子ちゃん!?」

ちひろ「今まで、こう……胸の辺りに熊本弁の字幕が出てたんですけど、今日はなぜかそれが無いんですよ。おかげで意味が3割くらいしか把握できません」

みりあ「うーん……、よく分かんないけど、みりあに出来ることなら協力するよ!」

ちひろ「そういえばみりあちゃん、熊本弁の数少ない理解者でしたね」

P「頼むぞみりあァ! お前だけが頼りだ!」

みりあ「任せて、プロデューサー!」


みりあ「ねーねー蘭子ちゃーん、いったいどうしたのー?」

蘭子「くっ……稀少なる理解者よ。我が眷属が混沌に堕ち、希望がうち消え、翼は焼け落ちた……!」

みりあ「えー、大変だねー!」

P「どうだ、みりあ! 蘭子はなんて言ってる!?」

みりあ「プロデューサーさんが蘭子ちゃんの言葉を理解できなくなって、蘭子ちゃん、とっても寂しいって!」

P「ちくしょう……こんなことなら国語の授業で方言について勉強しておけば……!」

ちひろ「いや、あの、熊本弁ってそもそもこういう言葉じゃないですからね?」


蘭子「而して我が言の葉は膨大なる魔力の媒……! 安易に手放しては闇の結界が砕け堕ち、神羅万象に亀裂が走る……!」

P「みりあ、蘭子はなんて?」

みりあ「蘭子ちゃん、今の喋り方は止めたくないって!」

蘭子「くう……やはり日々勢力を増す灼熱の豪華が眷属の魔術回路に多大なる負荷を与えたか……!」

P「みりあ、今のは?」

みりあ「えーっと、暑さでプロデューサーの頭がおかしくなったんじゃいかなって」

P「え、マジ? そこまで辛辣なこと言ってるの?」


蘭子「斯く言うこの身も……度重なる灼熱の魔手に身を蕩かされ……あるべき姿を惑い、頼みとなるエルフの息吹も清廉なる輝きに陰りを見せている……!」

P「みりあ、今のは?」

みりあ「この事務所のクーラー壊れてない? だって」

P「みりあさん、あの、だいぶ意訳してない?」

蘭子「斯くなる上は……青く眩き氷山の結晶をこの身に胎し、錆往く我が身に栄光を再び宿さなければ……!」

P「今のは……?」

みりあ「アイス食べたい」

P「みりあさん、ひょっとして飽きてきた?」

蘭子「くう……! 深き溶岩より出でし灼熱の古龍がその業火で鉄砂より生まれし結界をも侵し我が身に降りかかる……!」

P「みりあ……?」

みりあ「暑い」

P「2文字!?」


ここまで読んで頂きありがとうございます。残りは後日書きます。


お疲れ様です。
スマホでポチポチやってたら書き溜めができたのでまとめて投稿します。


ちひろ「どうするんですかプロデューサーさん、これじゃあ今日の蘭子ちゃんの収録大混乱ですよ」

P「どうする……!? 通訳も一緒に向かわせるか……!?」

ちひろ「でも熊本弁が分かる子、他にいませんよ。みりあちゃんはこれからロケですし」

P「そうだな……、美波とアーニャは例のプールだし……」

ちひろ「飛鳥ちゃんと小梅ちゃんはリトルリドルの収録ですし……」

P「ちくしょう俺だよこんなスケジュール組んだのは!」

ちひろ「ツッコまれる前にあらかじめ自分でツッコンどくとか斬新すぎません?」

P「ああもう、とにかく! みりあ、蘭子! 車出すから表へ! 」

みりあ「はーい!」

蘭子「闇の力の解放の刻……!」

楓「参りましょう」

P「いや高垣さん今日アンタ収録じゃないでしょ」


ディレクター(以下D)「あー、どうも、お疲れ様です、Pさん!」

P「どうもお疲れ様です! 今日はウチの神崎をお願いします!」

D「ええ、ええ、もちろんですとも! 神崎さんのトークは彼女の可愛さも相まって中学生に大ウケでしてね! 今日も期待してますよ!」

P「あっ、っ、ハイ!」ダラダラ

D「ハッハッハ、ところで神崎さんはどこに?」

P「えっと……、その、そこにいるんですけど……」

D「お、神崎さーん?」

蘭子「ククク……」


蘭子「轟轟と喧しき祭典の主宰よ……。我の紡ぎし言の葉の魔術に酩酊するが良い……」

D「……」

P「……」

D「……あれ? 君なんかいつもの神崎さんと違くない?」

P「(ビクッ)あ、あのっ……」

D「……あの、神崎さん……!?」

蘭子「……フム、我が魔力の強大さ、よもや我を呼びし主宰の想像をも超えるとは……、如何ともし難く面妖な……」

D「……あ! 分かった! 今日の神崎さんひょっとして字幕が無い!?」

P「申し訳ございませんんんんん!!」


D「そうだよね!? やっぱそうだよね!? いつも神崎さん……こう、胸の辺りに字幕があるよね!? でもなんか今日無いよね!?」

P「すみません……ホント、私にも理由が分からないんですけど……なんか無いんですよ……!」

D「えええ……どうしよう、これ……」

P「すみません、あの、もし宜しければウチの高垣を代わりに出しますんで……!」

楓「代わりに出されますので……」

D「本当ですか!? うーん……いや、でも、今回やっと神崎さんがウチの番組に出てくれるってことで凄い話題になってるし……」

アシスタントディレクター(以下AD)「監督ー、どうしたんスか? もうそろそろ収録しないと、メインの方の日程が合わなくなるんスけど……」

D「……いや、その、ちょっと問題が起きて……」

P「すみません、ウチの蘭子の熊本弁の字幕がなぜか出なくって……」

AD「ちょっと何言ってるか分からないです」

蘭子「ほぅ……主宰の奴隷よ……。其方もその宝珠を深淵なる混沌により濁らせし悲運の贄か……」

AD「……」

AD「……あ、あー、あーっ!!」


AD「……どうするんスか、これ」

D「仕方ないよもう……このまま収録するしか……」

P「いや、あの、ホント申し訳ありません……」ペコペコ

蘭子「……」

D「いや、いいんですよ! 誰だって調子悪いときくらいあります! むしろピンチをチャンスに変えてこそ名ディレクターと言えるでしょう! とにかく任せてください!」

P「宜しくお願いします……!」

蘭子「……」

蘭子「……あの……」

P「蘭子!」ガシッ

蘭子「!……」

P「……まあ、なんだ、その、生きてれば字幕が出ない日くらいあるさ。めげずに頑張れ」

蘭子「……」

蘭子「……フン、祭典の主賓、完璧にこなしてみせよう」ニヤッ

P「それじゃあ監督、お願いします!」

D「了解です! じゃあ神崎さん、控え室へ!」

AD「神崎さん、とりあえずこっち来てもらっていいッスか? メイクさん待ってるんで」

蘭子「フフッ、化粧も又、我が神格を高める妖しき秘術……」

D「ハハハッ」

P・D・AD(どうしようこれ……)


司会男(以下男)「どうも、司会の男でーす、今回はね、ゲストとして神崎蘭子さんをお呼びしてます! では神崎さん、どうぞ!」

蘭子「闇に飲まれよ!」

男「アハハ、お疲れ様です、とのことです! さすがはファンの方を大事に思ってますね! それじゃあまずは、視聴者からの質問コーナーです!」

司会女(以下女)「はい、ではまず、東京都にお住まいのハンバーグ大好きさんから!」

蘭子「ククク……禁断の果実を好み皿に供えるとは……なんと怪しき趣向……」

女「『神崎さん、やみのま! 私生活でもゴスロリを着てると噂ですが、最近暑くなって着るのが大変じゃないでしょうか? あと、新曲とてもカッコよかったです! これからも頑張ってください!』」

男「……だそうです! 確かにあれだけゴワゴワしてる服、外を歩くだけでも大変そうですよね! どうしてるんですか?」

蘭子「ククク……」


蘭子「我が黒衣は闇より出でし歓喜の調……。暗黒の天蓋を以て地の底より湧き出る龍の火灼を退けるなど造作も無きこと……!」

男「……」ポカーン

女「……」ポカーン

蘭子「……」

男「えっ……、……えーっとですねー……、そうですね、やっぱりこう暑いと好きな服を着るのも参っちゃいますよねー、あはは……(ヤッベどうしよう、何言ってるか3割くらいしか分かんねえ……!)」

女「そ、そうですね、私もこの時期にフリフリのドレスは辛いなー(よく分かんないけどあのドレス大変そうですよねー。特に夏場は)」

男「ハハッ、やっぱりそうですよね!(いや女さんがフリフリのドレスは夏に限らずキツいでしょ)」

女「それでは次のお便り行ってみましょー!(お前後で屋上な)」

D「みんな頑張れ……!(オイオイオイ死ぬわアイツ)」


女「えー、続いてのお便りです。兵庫県のお前の前の棚のスマホ取ってスマホさんから。『神崎さん、やみのま! 中学生と大きなお友達から絶大な人気を誇る神崎さんですが、神崎さんが彼氏を作るとしたら何歳くらいがいいですか?』」

男「あー、これ結構ギリな質問ですね! 神崎さんどうです?」

蘭子「フッ……闇の魔族に齢の概念など無く……そこにあるのは只、見目の美しさと魂の強さのみ……。然して敢えて月の巡りを詠むならば……生命の環を二つに分かちたその片割れ……とでも言っておこうか」

男「……」ポカーン

女「……」ポカーン

男「そ、そうですね、はい、やっぱり年齢がどうこうっていうよりは見た目的にどうかって感じですよね!(最初の3割くらいは分かったけど後はチンプンカンプンだ……!)」


女「ええと……じゃあ次が最後のお便りなんですけど、群馬県の這い寄る混沌さんから、『ククク……闇より出でし暴虐の魔女よ……。……いや、魔女だった者よ……。闇に飲まれよ、……というのが、貴様の好む挨拶だったか。我は闇よりも混沌を好むのだが……、まあいい、他愛も無い戯言だ。既に時は満ちた。貴様は知る由もないだろうが、太陽が貴様の身を最も強く、足掻くように焼き尽くす時、深淵より目覚めし邪義が貴様の息の根を止めるだろう……。だが案ずることはない。我は奴の弱点を知っている。我が魂の在処はその文に刻んだ。……フフッ、警告はしたぞ。精々足掻け』」

男「うわぁどうしよう質問からして既にわけ分かんねえ」

女「ちょっ、男さん、分かってるフリだけでもしてってDに言われたじゃないですか!」

蘭子「なッ……斯様な狂乱の祭典でそのような醜き不届きを寄越すなど……! 月の巡り合わせを詠まぬか!」

男「あ、これ神崎さん的にはアウトなんですか!?」

蘭子「当たり前であろう! クッ……よもや我との接触を試み、禁忌に触れ、悪しき、穢れた邪気を文に込め、呪いとして放とうとは……! 恥を知れ!」

男「なんかよく分かんないけど神崎さんおこです! すみません、どうしょうもないんですけどこれ!」

女「と、とりあえずふつおたのコーナーは終了です! ありがとうございました!」



D「放送事故だコレ!」


ありがとうございました。
続きはまた後日書きます。


お疲れ様です。
23:30くらいからちょっとだけ再開します。


アーニャ「ミナミ、今日の仕事、楽しかった、ですね」

美波「うん、そうだね。なぜかやたらとプールから出るシーンばかり撮られたのは気になったけど……」

アーニャ「……私、あの人、ちょと嫌いです」

美波「あはは、心配しなくても大丈夫だよ。……それにしても、潮風が気持ちいい」

アーニャ「ダー、そうですね。私、この海、好きです」

美波「前は奏さんと一緒に来たんだっけ。今度は蘭子ちゃんと一緒に、……って思ったんだけど、仕事帰りしか来られないから……」

アーニャ「そう、ですね。……プロデューサー、来るまで、少し、時間、あります」

美波「あは、そうだね、ちょっと寄って行こうか……」

美波「……ん?」

アーニャ「ミナミ?」

美波「……あれ」

アーニャ「……グジェー?」

美波「……あれ、蘭子ちゃん?」


蘭子「……」

蘭子「……現世と冥界の境界よ……。その狭間に息吹く陽炎は何を映すか……」

美波「蘭子ちゃん♪」

蘭子「ひゃわっ!? だ、誰……!?」

アーニャ「蘭子、私です。アーニャです」

蘭子「あっ……、えっ……」

蘭子「……フ、フフ……、清廉なる微笑みと白銀の妖精よ……。汝らが……」

美波「蘭子ちゃん、なんだか黄昏てたけど、どうしたの?」

蘭子「フッ……我は黄昏をも操る悠久の姫君……。今は魔力を蓄えて……」

美波「蘭子ちゃん?」グニグニ

蘭子「ひゃわっ……!? ほっへふにふにひあいえ……!」

アーニャ「ランコ、ミナミ、とても寂しがってます」

蘭子「……」

蘭子「……ごめんね、美波ちゃん、あのね……」


美波「そっか……そんなことがあったんだね……」

蘭子「……うん。おかげで会場の人たちに迷惑かけちゃった……」

蘭子「私の言葉が伝わらないせいで……」

アーニャ「……ランコ」

美波「……そんなに、気に病むことじゃ……」

蘭子「でも! ……このままじゃ、お仕事……なにも……」

蘭子「……」

美波「……」

美波「……そうだね、蘭子ちゃんにとって、その喋り方はとっても大切なものだもんね」

蘭子「……うん」

蘭子「この言葉は……、この喋り方には、私の好きなものが詰まってるから……」

美波「それじゃあ……」

蘭子「……でも!」

蘭子「……人に伝わらないんじゃ……意味、無いよ」

美波「……」

蘭子「周りに迷惑かけて、……なにより、プロデューサーさんに伝わらなくて……」

美波「蘭子ちゃん……」

蘭子「……これじゃあ……」


蘭子「……私の存在意義、無くなっちゃう……」


アーニャ「ランコ!」ガシッ

蘭子「!? アーニャちゃん」

アーニャ「ランコ、間違ったこと、言ってます」

蘭子「ふえっ……?」

アーニャ「ランコの魅力、は、言葉だけ、違います」

蘭子「……えっ……?」

アーニャ「だって、ランコ、いっぱい、可愛いです」

蘭子「……はあ、あ……」カアア…

アーニャ「それだけ、違います。ランコは、とても、魅力的、です」

蘭子「……」プシュー

美波「アーニャちゃん……」

アーニャ「ミナミも、ランコのいいとこ、いっぱい、知ってますね?」

美波「……うん、そうだよ、いっぱい知ってる! 蘭子ちゃんのいいところ!」

蘭子「美波ちゃん……!」

美波「字幕が出なくたって、落ち込まなくていいんだよ、蘭子ちゃん。だから元気を出して、ね?」ニコッ

蘭子「……」


蘭子「……でも、私、この言葉は……止めたくない……」

アーニャ「ダー、好きなこと、やめる必要、ないです」

美波「そうだね。……でも、字幕が出ないんじゃ分かり辛いよね……。どうすればいいんだろう?」

アーニャ「それは、簡単です。ランコが、普通に喋って、その後に、私が、解説すればいいです」

美波「それができればいいんだけど、いつでもアーニャちゃんが蘭子ちゃんと一緒にいるわけじゃないから……」

アーニャ「アー、だったら、ランコが、普通に喋って、その後に、蘭子が、解説すればいいです」

美波「それだったら普通に喋ればいいんじゃないかな……」

アーニャ「アー、だったら、ランコが、紙に、訳を書きながら、普通に喋ればいいです」

美波「恐ろしく手間がかかりそうだね……」

アーニャ「アー、ミナミの、意見は、どうですか?」

美波「うーん、そうだね……、せめてもうちょっと分かりやすい言い回しがあればいいんだけど……」

蘭子「!」ガバッ!


蘭子「エウレカ!」

美波「……えっ? 幽霊か?」

アーニャ「アー、ランコ、幽霊、苦手、ですね?」

蘭子「クックック……! 感謝するぞ、清廉なる微笑み、白銀の妖精よ……!」

美波「私? あんまり有意義なこと言ってないと思うけど……」

蘭子「クク……、汝らが生み出し先鋭なる魔術、我の前に憚りし黒ずみの扉を開けるのに最も相応しい……! 感謝するぞ!」

美波「そう? 役に立てたなら嬉しいけど……」

蘭子「時は満ちた! 我が魔力は豊潤に溢れ、魔術回路は潤沢に稼働している! 今こそ悪鬼を滅する時!」

アーニャ「パスドラヴリャーユ! ランコ、頑張りますね?」

蘭子「それでは諸君、さらばだ! なーっはっはっは!」スタスタ


美波「……行っちゃったね。大丈夫かな、蘭子ちゃん……」

アーニャ「……ランコ、水素水の飲みすぎで……」

美波「それは関係ないと思うよ、アーニャちゃん」


ありがとうございました。
続きはまた後日書きます。
あと2回くらいで完結できると思います。


お疲れ様です。
少し書く時間ができたので22:45くらいから再開しようと思います。


蘭子「……」

蘭子「……現世と常世が繋がる刻……。もう、そこまで闇は街を覆ったか……」

蘭子「……フフッ……」カリカリ

蘭子「永遠の美と静が交わりし堅牢なる魔術結界を完成させるに相応しい……!」カリカリ

蘭子「嗚呼……、我が魔術回路が歓喜の悲鳴に軋んでいる……」カリカリ

蘭子「しかし……、禁断の果実を胎せし我が身に不可能など皆無……!」カリカリ

蘭子「今こそ……我の真の姿を解き放つ刻……!」カリカリ

蘭子「……」カリ…

蘭子「我が眷属よ……。然と……この……魔術……を……」

蘭子「……すぅ……」


ちひろ「おはようございます、プロデューサーさん! 今日のログインボーナスはこちらです♪」

P「分かってますよどうせスタドリでしょう? 遠回しにオッサンの肉体酷使するの止めてくれません?」

茜「おはようございます、プロデューサー! 突然ですけど今日ってオフでしたっけ!?」

P「それ事務所来てから聞く? メールで聞けばよくない?」

茜「すみませんぶっちゃけ暇なので来ました!」

P「はははこやつめ」

心「おはようプロデューサー♪ 突然だけど今日オフってことでいい?☆」

P「お前語尾に☆付けてればなんでも許されると思うなよ」

心「ごめっ、ちょ、マジ……うぇっぷ☆」

P「なんで二日酔いしてやがんだテメー!」

楓「おはようございますプロデューサー以下同文」

P「以下同文じゃねーよ! お前か佐藤をこんなにした原因は!」

楓「だって……付き合ってくれないんですもの」

P「だからって! だからって!」

心「違うぞ、プロデューサー☆」

P「え、なにが……?」


心「佐藤じゃなくて、しゅがはだぞ☆」

P「うわあ心底どうでもええわあ」

凛「おはようプロデューサー、ところで楓さんと付き合うって何の話?」

P「これですよこれ」クイクイ

凛「ああなるほどね、小指がね、なるほどね」

P「違う、そうじゃない」

みりあ「おはよう、プロデューサーさん!」

P「ああおはよう、ちょっと待ってな三代目を落ち着かせたら今日の予定話すから」

薫「せんせぇ、おはようございまー!」

P「ああおはよう、ごめんな凛とまゆをちょっと宥めてるから待っててな」

仁奈「プロデューサー、おはよーごぜーます!」

P「おはよ、ごめ、ちょ、まっ、俺を睨むのはいいけど俺を間に挟んでガン飛ばし合わないでくれない?」

桃華「プロデューサーちゃま、トマトジュースがシミになっていましてよ?」

P「あー、うん、トマトジュースなら良かったんだけどなー」

千枝「今日は私がリーダーだから……しっかりしな――っ!? どうしよう、プロデューサーさんが例の如く!」

P「あーもう恒例行事扱いかこれ」


李衣菜「おー、プロデューサー、朝から血まみれなんてロックだねー」

P「お前ぜってー分かってて言ってるだろ」

千秋「プロデューサーさん、今日のL.M.B.Gの子たちを送ってく話なんだけど、車が車庫に入らなくて」

P「待って千秋さんまさかあなたリムジンで来た?」

蘭子「ああ、照りつける太陽が我が身を焦がすわ……!」

P「蘭子さん水分補給しっかりね」

友紀「キャアアアアアアアッツゥゥゥがァァ勝ああああああああああったぁあああああああああ!!」

P「畜生動物園かこの事務――」



P「――あれ?」


P「……蘭子さん?」

蘭子「なにかしら、我が眷属? まさか瞳の力を鈍らせたわけじゃないわね?」

P「……」

蘭子「呆けた顔をしてどうしたのかしら? 数多の宝石を磨き、統べるのが眷属の役目でしょう?」

P「……」

P「……えっ?」


P「……待って、君、本当に神崎蘭子?」

蘭子「だったら何だと言うのかしら? 私は神崎蘭子。闇を統べる魔術師であり、その魅力で眷属を生み出し、偶像として君臨する者」

P「……いや、ちょっと待て。なんか違う。絶対違う」

蘭子「……」

P「蘭子は……そんなキャラじゃ……」

蘭子「そんな――」


みりあ「蘭子ちゃん、おはよー!」

蘭子「!? え、ええ、えっと……」

みりあ「蘭子ちゃん、いつもと違うねー! イメチェン……なのかな!?」

蘭子「いえ、その……」

みりあ「……蘭子ちゃん?」

蘭子「あ、あう……」

みりあ「?」

蘭子「きょ、今日は……えっ……と、わ、我が美貌を……えっと、フィルムに焼き付けるので!」

P「あ、そう、その話なんだけど、今日は美優さんが――」

蘭子「わ、我は施しは受けないのでー!」ダダダ

P「あ、ちょ、蘭子!」

P「……行っちまった……」


ちひろ「……蘭子ちゃん、どうしたんですか?」

P「いや、知らない……。俺は何も……」

千秋「……分かりやすかったわね」

P「……えっ?」

千秋「今日の……神崎さんの……、えっと、熊本弁で良かったかしら。喋ってる言葉、いつもより分かりやすかったわね」

ちひろ「……確かにそうですね。いつもは3割くらいしか分からないんですけど、今日は8割くらい理解できた気がします」

P「それは……まあ、そうだけど……」

千秋「……神崎さんが歩み寄ろうと思ってることは……、……いえ、一概に私がそれを『良いこと』と言っていいのかも分からないけれど」

P「……」

P「……それは……」

みりあ「蘭子ちゃん、なんだか辛そうだった」

P「……えっ?」


みりあ「蘭子ちゃん、いつもと同じ喋り方ができなくて……辛そうだった」

P「それは……まあ、確かに……」

ちひろ「字幕が出なくなったことと……、何か関係があるんでしょうか」

P「まあ……その辺だよな、理由としては……」

P「――っと、やっべ、もうこんな時間か」

ちひろ「送迎……もうそろそろしないと間に合いませんね」

P「そうだな、待っててくれ、すぐ手配するから」


ちひろ「……」

P「……」

ちひろ「……」

P「……」

ちひろ「……」

P「……あー、ダメだ、仕事が手につかん」

ちひろ「暇ならアイス買ってきてくれません?」

P「暇じゃねーよこれから来月の公演の企画練らなきゃいけねーんだよ」

??「公園で公演……フフッ」

ちひろ「楓さんバレてますから。構ってほしいの見え見えですから」

P「よっしじゃあジャンケンで負けた人がアイス買いに行くっていうのでどうですか!」

ちひろ「この炎天下で外に出るなんてそんな鬼みたいなこと言うつもりですか」

P「鬼みたいってか鬼じゃないですか」

ちひろ「あ?」


楓「それにしても今日は一段と暑いですね。外でロケをしてる子たちは大丈夫でしょうか」

ちひろ「そういえば蘭子ちゃん、今日もまたフリフリのゴスロリでしたね。他の服持ってないんでしょうか」

P「いや、普通にノースリーブとか持ってますよ。今日は着てませんでしたが」

楓「そうなんですか……、熱中症とか……大丈夫かしら」

P「大丈夫ですよ、水分補給はいつもするように言ってますから」

P「アイツ最近水素水にハマってて、事あるごとに飲んでるんですよ」

楓「水素水ですか、美容に良いと聞いて一度飲んでみたことはあるのですが」

ちひろ「……」


ちひろ「水素水って、塩分補給できるんですか?」

P「  」


楓「……私、水素水の原料見たことあるんですけど、水と水素だけでした」

P「……ちょっと待て」

ちひろ「……そういえば、蘭子ちゃん、昨日とても暑がってましたね。この冷房の効いた事務所の中で」

P「……待て待て待て」

ちひろ「……頭が痛いとか、言ってませんでした? 魔術回路がどうとか……」

楓「……確かに、朝の蘭子ちゃん、なんだか……具合が悪そうに見えました。寝不足みたいな……」

P「何言って……」



ヴー、ヴー、ヴー


ちひろ「……プロ―デューサーさん、電話……」

P「ああ、すみません、ちょっと失礼」ピッ

P「はい、もしもし……、あっ、はいっ、大変お世話になっております~」

楓「……いつも思うんですけど、プロデューサー、事務所にいるときと人に会うときで声違いますよね」

ちひろ「まあ……誰でもそうだと思いますけど」

楓「私もあんな風に優しい声をかけられたいです……」

ちひろ「えー? んー? ……うえぇ……」

楓「え、あの、ちょ、なんで引く――」


P「……蘭子が……倒れた?」


ありがとうございました。
次回で最後になります。
良ければお付き合い頂けると嬉しいです。


P「ここか……」

P「……久しぶりに来たな、女子寮……」

P「管理人から入室の許可貰ってるけど……、うん……、やっぱり緊張するな……」

P「ええぃ、悩んでても仕方ない! いざ!」

ウィーン


P「えーっと……、あっちが食堂でこっちが……、……ああ、共用スペースか」

P「お邪魔しまーす」ガチャッ

美波「……あっ、プロデューサーさんっ」

アーニャ「プリヴェート、プロデューサー」

P「ああ、美波、アーニャ、お疲れ様」

美波「お疲れ様です。……蘭子ちゃんのお見舞いですか?」

P「……ああ」

アーニャ「私、ランコ、急に倒れたと聞きました」

P「おそらく熱中症でな。……蘭子、最近なにか悩んでなかったか?」

美波「……」

アーニャ「アー……」


アーニャ「ランコ、前、言ってました。言葉が伝わらないから、迷惑、かけたと」

P「……そっか……」

美波「蘭子ちゃん……、字幕が出なくなって、凄い、悩んでたみたいです。昨日も夜遅くまで起きてたって、寮長さん、言ってました」

P「遅くまで?」

美波「声とかは聞こえなかったので、多分、勉強かなんかをしてたんだと思うんですけど……、何をしてたかまでは、私にも……」

P「……ありがとう、美波。後は蘭子に聞いてみるよ。部屋はどこだっけ?」

アーニャ「私、案内します。こっちです」

美波「……プロデューサー、蘭子ちゃんのこと、お願いします」

P「……ああ、任せてくれ」


P「失礼しまーす」ガチャッ

P「……暗いな、電気は……っと、これか」カチッ

パッ

P「……」

P「……なんというか、まあ、趣味が分かりやすいというか……」

P「ところで蘭子は……?」

蘭子「……すぅ……」

P「……」

P「……寝てる……、か」

P「大事にはなってなくてよかった……」


P「……に、しても」

P「……果たして、蘭子の熱中症は、水素水だけだったのかどうか……」

P「ちひろさんの言うとおり塩分が補給できてなかったってのは……まあ、あるだろうけど……そればっかりが原因とも思えないんだよな……」

P「……」

P「……楓さん……言ってたな、『朝はなんだか寝不足で体調が悪そうだった』て。美波もそんな感じのことを言ってたし」

P「……まあ、蘭子に直接聞けばいいんだけど、果たして素直に教えてくれるだろうか……」

P「……なんかこの部屋にそれに関する手がかりでもないだろうか……」

P「……ん?」


P「……これ……蘭子のノートか」

P「グリモワール……は、スケッチブックのことだったか。じゃあこれは差詰めヴォイニッチ手稿ってところかな」

P「……蘭子の熊本弁の翻訳が書かれてたりしてな、ハハッ……」

ペラッ

P「……」

P「………………えっ……」


〇闇に飲まれよ

闇:まったく光がないこと・暗いこと
・プロデューサーならまだしも他の人にとって「闇」はマイナスイメージなので「お疲れ様です」という意味にならない
・「神崎蘭子は堕天使である」ということを知ってても、「飲まれよ」では攻撃的な意味になってしまう

「飲まれよ」をプラスイメージにする?←「祝福」「喝采」とか?

闇に良い修飾語を付け加えるとか(ex「甘美な」「めくるめく」「妖艶なる」)
←神崎蘭子はクール系だから「甘美な」はちょっと違う?


P「……」


〇煩わしい太陽ね

「太陽」が「面倒くさい」←?
・神崎蘭子は「太陽の光が苦手」
・「光」を浴びたくないという意味に

太陽による被害をもっと具体的に
朝特有のイメージ←夜から朝に変わったことが伝わればいい

「太陽が身を焦がす」←太陽が苦手な理由が伝わる(朝ということになる?)


P「……」ペラッ


〇アイドル→輝きを放つ者←もう少し簡潔に(車のライトとかみたいにも取れる)
 ↓
宝石←ただ宝石だと伝わりづらいから「統べる」とか「操る」とか人に使う言葉みたいにする

〇映画→魂の刻まれし幻影←「幻影」というのが映像っぽく思えない←イリュージョン?

「フィルム」?

ちょっと単調すぎる?←分かりやすさ重視


P「……こんな……何ページも……」


〇怪なる蜜

こそこそ話←ホットレモンと勘違いされた←仕方ない

「甘美なひと時」←休憩と間違われる?


P「……昨日の会話も含まれてる……」

P「……いや、違う」ペラッ


〇混沌

私の言葉が伝わらないこと←「混沌」は「闇」の対義語じゃない
←一度分かれば解読しやすい←それじゃ意味がない

暗澹?←闇と似てる


P「違う……これ……昨日書き始めたんだ……。収録が終わってから……」


〇禁忌の扉の錠を緩める

お友達になりたいです

←こちら側へいらっしゃいという意味が伝わる?

←なにも伝わってない(×楓さん)


P「これ……。……こんな、大学ノートの全てのページを使って……」


←これじゃ何も伝わらない


P「蘭子のヤツ……必死に考えてたのか……」


←これじゃ誰にも伝わらない


P「夜遅くまで……。自分の言葉を届けたくて……」


←これじゃ私が伝わらない


P「無理して……夜遅くまで必死に考えて……」


←プロデューサーが、私を見てくれない


P「それでも……みりあに聞かれて、分かりやすい言い方ができなくて……」


←この言葉は、私のアイデンティティだから


P「……」

P「……」ペラッ

P「……!」


〇眷属

プロデューサーは家来じゃない
大切な人


P「……」

P「……」パタン

P「……」スッ


蘭子「……」

蘭子「……ん……」

蘭子「……」

P「……」

蘭子「……」

P「……」

蘭子「……ぷろ、でゅー……」

蘭子「……プロデュー……サー……?」

P「おはよう、蘭子。もう夜だけど」

蘭子「……」

蘭子「……え?」

蘭子「……ひゃわえええええええええええっ!?!!??!!?」

P「!?」

蘭子「ぷ、ぷぷぷ、ぷろ、えっ!? なんっ、えっ!??!?!?」

P「ちょ、待て、大きい声だすな! みんな起きちまうだろ!」

蘭子「くぁwせdrftgyふじこlp;!!!!」


P「……」

蘭子「……」

P「……すまん、その……驚かすつもりは無かったんだが……」

蘭子「……いえ……」

P「……」

蘭子「……」

P・蘭子「あのっ」

P「……」

蘭子「……」

P「……なんでしょう、蘭子さん」

蘭子「いえ……プロデューサーの方からどうぞ……」

P「……」

P「……その」


P「すまん、ノート見ちゃったわ」

蘭子「オベリスクの鉄槌!」ブスッ

P「鳩尾がああああああ!!」


P「すまん、蘭子、ホントっすまん」

蘭子「い、いくら、ぷ、ぷぷプロデューサーでもやっていいことと悪いことがあります!」

P「重々承知であります!」

蘭子「本当に……アレは……!」

P「ちなみにやっていいことってどこまで?」

蘭子「えっ?」

蘭子「……」

蘭子「んー……」

蘭子「……なでなで……とか?」

P「ほー……?」

蘭子「……あっ、ダメです! やっぱナシ!」

P「ははは、分かってるよ。こんなオッサンに撫でられたくないよな」

蘭子「むー!」バンバン

P「だから叩くの止めろって! そんな痛くないけど!」


P「……で、だ」

P「今日の収録……倒れちゃったことなんだけど」

蘭子「!……」ビクッ

P「まあ、なんだ……」

P・蘭子「「ごめん」なさい!」

P「えっ?」

蘭子「ふえっ……?」

P「……」

蘭子「……」

P「……なんで蘭子が謝るの」

蘭子「そ、それはこっちのセリフです! なんでプロデューサーが謝るんですか!」


P「いやいやいや、だってほら、アレじゃん、どう考えたって俺の管理不足じゃん」

蘭子「管理不足って……、自分のことくらい自分で分かります!」

P「いやいやいや、アイドルが撮影中に倒れるとか下手すりゃ俺の首がぶっ飛ぶくらいの大惨事だよ。完璧に俺が悪い」

蘭子「プロデューサーは悪くないです! 私に責任があるんです!」

蘭子「私の字幕が消えて……、……だから……私が悪いんです!」

P「……」

P「……それで……考えてたのか」

蘭子「……」

P「深夜……遅くまで……あのノートに書いてたんだろ」

蘭子「……」


P「どうしたら、俺に、蘭子の言葉が伝わるか、ずっと考えてたんだろ」

蘭子「……」

P「どうしたらもっと分かりやすくなるか? 他に良い言い回しはないか? なんとか今のキャラを崩さずに多くの人に理解されるようになるか? そんなこと考えてたんだろ」

蘭子「……悪いですか」

P「悪くはないよ。努力家な蘭子らしい、スッゲーことだと思う」

蘭子「じゃあ……!」

P「……だけどさ、それで蘭子がぶっ倒れたら意味無いだろ」

蘭子「……」

P「蘭子は……俺の大切な――」


蘭子「私にはこれしか無いんですよ!」


P「!……」

蘭子「皆にそう言って……プロデューサー……皆大切って言って……」

蘭子「このままじゃ……私……埋もれちゃう……」

蘭子「プロデューサーさんに……見てもらえなくなっちゃう……」

蘭子「大好きなプロデューサーさんと……もう……!」

蘭子「私には……これしか……」

P「……違うだろ」

蘭子「……それに、キャラ付けのためだけじゃないんです。私、本当に好きなんですよ、この言葉が、趣味が、世界が」

蘭子「棄てたくなくて……ずっと持ってたくて……受け入れて欲しいのに……、……皆に……!」

蘭子「なのに……なのに……!」

P「……蘭子」

蘭子「……なんですか」

P「一つ……言っていいか」

蘭子「……はい」


P「君はもう、シンデレラガールじゃない」


蘭子「!……」

P「……ずっと考えてたんだ。なんで、蘭子の字幕が消えたのか……」

P「考えて、考えて、考え抜いて……、やっと分かった」

蘭子「……」

P「もう、魔法は解けたんだよ、蘭子」

蘭子「!……」

P「楽しいこと、辛いこと、色んなことを、沢山経験して、蘭子は成長して……」

P「……大きくなって、もう、ガラスの靴では小さくなったんだよ」

蘭子「……そんな……」

P「……ああ……」

蘭子「じゃあ……私は……これから……」

P「……」


P「これからは、魔法じゃない、本物のお姫様になるんだ」

蘭子「!……」

P「もう、蘭子は、ガラスの靴が無くたって、……魔法に掛けられてなくたって、輝いていける。その先の世界を見ていくことができる」

蘭子「……」

P「字幕という魔法が無くたって、蘭子、君は今以上にずっと、素晴らしい活躍をしていけるんだ」

蘭子「……なんっ……」

P「……だって、君は、……蘭子は、それだけの魅力があるから」

蘭子「……うっ……」

P「その言葉に頼らなくたって、……黒い翼が無くたって、皆が蘭子のことを好きになってくれるから」

蘭子「……」グスッ

P「だから……蘭子、無理する必要はないんだよ」

蘭子「うう……」

P「蘭子は蘭子のペースで、またゆっくり、自分の趣味を深めていけばいいんだ」

蘭子「はうぅ……」ポロポロ

P「大丈夫、皆ちゃんと蘭子の魅力は分かってくれる。そのままの蘭子を好きになってくれる」

蘭子「うう……はう……」

P「……だってさ」


P「なにより俺が、蘭子のこと、大好きなんだから」


蘭子「……ぷろ、でゅーさー……!」

P「……だから安心しろ、蘭子」

P「お前のプロデューサーは、ちょっと字幕が無くなったくらいで、お前のことを放っておかない」

P「誰がお前を見捨てても、俺はお前の傍に居て、ずっとプロデュースし続けるよ」

蘭子「……うん……」

P「だから……その、なんだ、無理せず、またゆっくり歩んでいこう」

P「トップアイドルへの道を」

蘭子「……」

蘭子「……はい……!」

蘭子「……これからも……宜しくお願いします……!」

P「……ああ、宜しく、蘭子」


ちひろ「おはようございます、プロデューサーさん! 今日のログインボーナスはこちらです♪」

P「分かってますよどうせスタドリでしょう? ……って、なにこれ、水素水? ねえ、ちょっと!」

茜「おはようございます、プロデューサー! 突然ですけど今日ってオフでしたっけ!?」

P「それ事務所来てから聞く? つーか構ってほしいなら直接言えよ」

茜「……えっ?」 ポッ

P「え、ちょ、マジで照れてんの!?」

心「おはようプロデューサー♪ 突然だけど今日オフってことでいい?☆」

P「いいわけねーだろぶっ飛ばすぞ☆」

心「ごめっ、ちょ、マジ……あっ」 ポキッ

P「えっ、そっち!? まさかのギックリ腰!?」

楓「おはようございますプロデューサー以下同文」

P「以下同文じゃねーよ! なんで二人も揃ってこの歳で!」

楓「ちょっとヨドバシでハッスルしちゃいまして」

P「腰痛めるまで健康器具使うヤツがあるか!」

心「違うぞ、プロデューサー☆」

P「え、なにが……?」


心「ロデオマシンじゃなくて、カボチャの馬車だぞ☆」

P「いや何も上手くねえよ!?」

凛「おはようプロデューサー、ところで楓さんにロデオって何の話?」

P「そこだけ切り取って聞かないで!?」

凛「ああなるほどね、中指がね、なるほどね」

P「高校生アイドルの発言じゃねえ!」

みりあ「おはよう、プロデューサーさん!」

P「ああおはよう、ちょっと待ってな3代目がこれこれこういうわけで」

薫「せんせぇ、おはようございまー!」

P「ああおはよう、ごめんな凛とまゆと奈緒と加蓮をちょっと宥めてるから待っててな」

仁奈「プロデューサー、おはよーごぜーます!」

P「おはよ、ごめ、ちょ、まっ、俺を睨むのはいいけど俺を間に挟んで胸ぐらつかみあうのやめて?」

桃華「プロデューサーちゃま、ケチャップがシミになっていましてよ?」

P「昨日より表現が生々しくなってるね」

千枝「今日も私がリーダーだから……ちゃんとしないと……。あっ、プロデューサーさんおはようございます」

P「あーもうヤバイ最後の良心すら動じなくなってきてる」


李衣菜「おー、プロデューサー、女の子侍らすなんてロックだねー」

P「ロック過ぎて焼死寸前なんですけど」

千秋「プロデューサーさん、今日のL.M.B.Gの子たちを送ってく話なんだけど、私、普通免許しか持ってないことを失念してて」

P「まさかの中型!?」

蘭子「おはようございます、プロデューサーさん!」

P「蘭子さん今日も元気ね」

友紀「キャッツがあああああうああああああああ!!」

P「チクショー動物園かこの事務所!」



全員『……あれ?』

P「?」


凛「あれ、蘭子……?」

蘭子「凛さん、おはようございます!」

まゆ「蘭子ちゃん……なんですか? 本当に蘭子ちゃんですか?」

蘭子「ええ、そうですけど……」

みりあ「あー、蘭子ちゃん、おはよー! またイメチェンしたの?」

蘭子「うん、そうだよ! 見た目は変わってないけど!」

楓「いったいなにがあったのかしら……」

P「いや、まあ……」

蘭子「フフッ」


蘭子「永遠の契を誓いし我が友との約束…….其れを果たすのに最も賢き道を選んだまで!」

ちひろ「……」

みりあ「へえ……!」

P「ま、まあ、そういうことで……」

凛「ちょっとプロデューサー、聞き捨てならないんだけど、永遠の契ってなに?」

P「いや、あの、それは……」

まゆ「まゆも蘭子ちゃんの言葉はあまり分かりませんけど……なんとなく良からぬことを言ってることは分かりますよぉ……?」

P「いや、えっと……」

奈緒「プロデューサー、まさか蘭子と……」

加蓮「プロデューサー……そんな……」

美優「また……私以外にも……」

P「あ、ごめん、今日蘭子のバラエティ番組の収録があるんだ」

奈緒「それ一昨日だよ!」

P「ごめん、ちょっと急用を思い出しちゃった!」

奈緒「何の用事?」

P「適当に考えといて!」

奈緒「あーうん、分かっ……いや全然分かんねえよ!?」

心「っつーか逃げる気だぞあのスケコマシ☆」

凛「みんな捕まえて!」

P「ひえええええええ!!」ダダダダ


蘭子「……えへっ♪」

蘭子「プロデューサーの夢……。きっと私が、この手で……!」

蘭子「魔法じゃない、この私の両手で……!」

蘭子「……フフッ♪」

蘭子「祝福の刻を待たれよ、プロデューサー!」


以上です。ありがとうございました。
当初はスレタイありきの出オチの予定だったのですが、オチをどうするか考えた結果、こんな感じのちょっと重くて長いSSになってしまいました。
次回、また書く機会があったら、そのときは徹頭徹尾バカバカしいSSを書きたいなーと思います。
ちなみに前作は↓になります。

千秋「ステマをします」
千秋「ステマをします」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1499953594/#footer)

それではHTML化依頼を出してきます。
お読み頂き重ねて有難うございました。

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