白菊ほたる「幸運とはっぴー☆」 (52)

Opening
運というものは、この世の最も残酷なシステムである。いとも容易く努力を裏切り、何の罪もなく罰を与え、ある日唐突に人を[ピーーー]。
壮大なzero-sumゲームである世界において、運は貧富の差を与える。例えば、割り箸を割って、先が付いてくる方と持っていかれる方に分かれるのに良く似ている。
そう、丁度今蕎麦を食べようと少女が割った割り箸の様に。


※ちょっと長めです。具体的には15000字くらいあります。
※地の文の量や一人称視点などがチャプター事に変わったりします。ご留意ください。
※原作と解釈が違ったり歴史の改ざんがあります。
※わりとシリアスです。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1500120034

すみません「殺/す」です このままいきます。

Chapter1 ~街中~


白菊ほたる「あっ……また割り箸割るの失敗しちゃった……」

白菊ほたるという少女を簡潔に表すとしたら、不幸である。
それはアイドルという夢に向かって日々努力をしている彼女にとっては重大なバッドステータスとなっている。
レッスンをすれば靴紐が切れ、テレビの収録に臨めば中止になり、挙げ句の果てに所属した事務所は倒産した。それも一度や二度ではなく、三度だ。
その事実は13歳の少女が擦れるには十分過ぎる程に重い。

ほたる「今日もついてないなぁ…」

歪に割れた割り箸で、うどんの少し混じった蕎麦をすすり、店を出る。 オーデション帰りの彼女の顔は暗く、俯いたままに。

ドンッ)
男「っ……ちゃんと前向いて歩け!」

ほたる「あっ……ごめんなさい、ごめんなさい……」

元々責任感の強い彼女はある日、自分の不幸が他人に迷惑を掛けていることを自覚してしまった。そして人が怖くなった、人の目が、口が、存在が怖くなった。それはアイドルとして致命的な欠点であり、どこの事務所もそんな爆弾を抱えるのを嫌がった。

白菊ほたる「私、もうアイドルになれないのかな。実家に帰った方が、いいのかなぁ……」

不幸にまみれた白菊ほたるの人生に、一つだけ幸運があるとすれば。



「君、うちの事務所でアイドルにならないか?」

たった今、人生を変える出会いの第一歩を歩み始めた事である。


Chapter2 〜カフェ〜




ほたる「正気ですか?」

P「正気も正気だよ。説明した通りうちの事務所は最近設立されたばかりで現在アイドルを1人抱えている、そして資金も貯蓄出来たからそろそろ2人目のアイドルをスカウトしたい。もう1人と合わせるためにある程度の経験者が望ましく、そういう意味では業界の長いほたるちゃんは最適なんだ。」

ほたる「理由は分かりましたけど……私の噂くらい聞いたことはあるでしょう?現に私の所属した事務所、三回も倒産してるんですよ?今回だって……」

P「言ってる事はわかるよ。迷惑が掛かるから、私なんか所属させない方が良いって言いたいんだよね。」

ほたる「わかってるならっ……!」


キッと睨むと、驚く程真剣な眼差しが私を見つめていた。久しぶりに見る、品定めをするでもなく、批難でもない、純粋な目に、私の熱は奪われる。




P「やっと目を合わせてくれたね。」

P「……一つ聞きたかったんだ。ほたるちゃんは、どうして今、オーデションを受けてるの?」

ほたる「……っ!」

P「言わなくてもわかる。アイドル、続けたいんでしょ?」

ほたる「でも……私はっ……!」

P「……酷いと思われるかも知れないけど。僕は君のバックヤードなんか何一つ興味はないんだ。いつかのイベントで見た笑顔で踊る白菊ほたるが、踊れなくなった君がもう一度、笑顔で踊る。僕はそれが見たい、見たいし僕と僕の事務所なら絶対にそれが出来ると信じてる。」

ほたる「…………。」


P「いつまでも待つなんて事は言わない。明日の8時から24時までにその名刺の事務所を訪ねて欲しい。その時は君を事務所のアイドルとして歓迎するよ」






仕事があるからこの辺で失礼すると言い彼が会計を済ませ帰った後も、ずっと事務所の資料を見つめていた。


すっかり冷めたミルクティーを飲み干し。彼に渡された名刺を手に取る。


ほたる「……。」



ちひろ「プロデューサーさん、おはようございます!今日は随分早いですね。まだ8時前ですけど。」

P「ちひろさん、おはようございます。いえ、8時丁度に来客があるので。」

ちひろ「そうなんですか?お茶でも用意しましょうか。」

P「そうですね……」


コンコン

「すみません、Pさんはご在席でしょうか?」

P「ミルクティーを二つ、おねがいします。」



Chapter3 〜事務所〜

ほたる「あっ、あの!今回はPさんに声をかけて頂いて…」

P「まぁまぁ、とりあえず腰を下ろそうか。 飲み物はミルクティーでいい?」

ほたる「はい……。失礼します。」




P「まずは来てくれてありがとう。改めて自己紹介させてもらうね。」

P「僕はP、ここの事務所でプロデューサーをしている。と言っても事前に渡した資料の通り、社長と事務員と僕と担当アイドルしかいないんだけど。」


ちひろ「白菊さん、ミルクティーに砂糖は付けますか?」

ほたる「あ、いえ、大丈夫です。」

P「彼女はうちの事務所が誇る事務員の千川ちひろさん。」

ちひろ「初めまして、千川ちひろと申します。」

ほたる「は、初めまして…」

P「あと、うちの事務所のアイドルが1人。そろそろ来るはずだけど。」

ガチャ
鷹富士茄子「おはようございます〜」

P「紹介しよう、僕の担当アイドル 鷹富士茄子だ。」



Chapter 4

ほたる「綺麗……。」


すらりと伸びた綺麗な脚と服の上からでもわかるプロポーションの良さ、ツンと高い鼻と優しそうな目、琥珀色に輝く瞳、柔和で温厚だけどどこか神秘的なオーラ。
一切の無駄もない完璧な女性がそこにいた。 そして何より目を引いたのは背中まで伸びた艶やかな長い黒髪だった。


茄子「あ、貴方がほたるちゃんですか?初めまして、鷹富士茄子と申します〜。」

ほたる「あっ、は、初めまして!白菊ほたるです!」

ニコニコと嬉しそうに微笑む鷹富士さんはとても優しそうで、女神様か何かに見えた。成る程、テレビで見てるだけじゃ分からない、とても素敵な人だった。

P「……ほたるさん、ほたるさん?」

ほたる「はっ、はい!すみません!」

P「いや、そんなに謝らなくてもいいけど…。社長は海外に出てるから、とりあえず紹介はこれくらい。ほたるちゃんはここに所属したいって事で話は進めていいのかな?」

ほたる「はい、宜しくおねがいします、履歴書も書いて来ました、判子も持って来ています。親からは一度会社から電話をくれたらそれで良いとの事です。」

P「さすが、手際が良くて助かる。書類は預かるね。」

Pさんはさっと目を通して満足そうに頷いたあと


P「白菊ほたるさん、ようこそうちの事務所へ、これから宜しくおねがいします。」



ニッコリと微笑んだ。



Chapter4.5

P「只今もどりましたー。」

ちひろ「あ、見送りお疲れ様です。今お茶いれますね。」

P「あ、ありがとうございます。」

茄子「ほたるちゃん、入ってくれて良かったですね。これで私もお友達が出来ます!」

P「まあ、な。」

ちひろ「……『一筋縄ではいかなさそうだ』って顔してますね。」

P「そうですね、昨日今日と話してて、やっぱり人の視線と機嫌にとても敏感になってしまってますから、まずはそこらへんのケアからですね。」

茄子「任せてください! 何したら良いかはよく分からないけど、きっと上手くいきますから。」

P「茄子が言うと根拠がなくても説得力があるから困る。」

ちひろ「茄子さんの幸運には何度も助けられてますからね〜」

茄子「そんな、私はそれ以上にPさんとちひろさんに助けてもらってますよ、幸運だけじゃアイドルになれませんから。」

P「そうだな、幸運はアイドルになる理由にならない。」

茄子「不幸もアイドルをやめる理由にはならない、ですね。」

P「その通りだ。茄子、明日からほたるを頼む」

茄子「もちろん!」


Chapter5 ~レッスンルーム~


シューズの音がトレーニングルームに響く。いつもより倍多い足音、キュッキュッという摩擦音が、心地よい。



トレーナー「白菊!動きが硬い!鷹富士はテンポが遅れてるぞ!お互いをよく見ろ!」

ほたる 茄子「「はいっ!」」

トレーナー「それじゃあ最後にワンセット通しでやるぞ!気合い入れろ」

ほたる 茄子「「はいっ!!」」


トレーナー「茄子はテンポキープは良くなった、が体力が持ってないぞ。ほたるはまだ少し動きが硬いからしっかりダンスを覚えて力を抜く事、それじゃあストレッチをして解散!」

「「お疲れ様でした!!!!」」



茄子「はふぅ〜〜、疲れましたー。」

ほたる「お疲れ様です、茄子さん、まだ一年目なのにとても上手ですね……。」


ほたるちゃんはドリンクを一飲みすると話しかけてくれる、その息はあまり乱れておらず、練度の高さを実感する。


茄子「そんなそんな、私はまだまだですよ、それよりほたるさん、見かけによらず凄くタフなんですね〜。」

ほたる「歴だけは長いですから……私が一年目の時は茄子さんみたいに上手くありませんでしたし……。」

茄子「でも、これからは一緒に組むんですから、経験の差なんて言ってられません。それに私の方がお姉さんですしね〜、頑張らないとっ。」

ほたる「茄子さんは凄いですね……。」

私にはそんなポジティブな考え方は出来ませんと笑う彼女は、可愛いのに何処か物悲しく見えた。


ほたる「それにしても、入ってすぐにユニットを組むなんて思いませんでした。」

茄子「私もビックリです。ミスフォーチューン、素敵なユニット名ですね〜」

ほたる「フォーチューン、私には程遠いですけど…。」


悲しそうに俯く彼女の表情は、とても13歳の少女のそれには見えなかった。


茄子「そんなことありませんよ。だってほら。」


茄子「今日は靴紐、切れなかったじゃないですか。」

ほたる「あ、ほんとだ……えへへ。これも茄子さんのおまじないのお陰です……。」


自慢だけど、私は強運だ。奇跡といっても差し支えない程に。くじを引けば当たりが出るし、壊れた物は叩けば治る、そしてそれは人にも伝播する。それはほたるちゃんも例外じゃない。


茄子「私は何もしてませんよ〜。神様が頑張ってるからご褒美をくれたとか?」

ほたる「ふふっ、茄子さんもそういう冗談好きなんですね。

茄子「そうだ!時間ありますし2人で何処か食べ歩きでもしませんか?この歳になると1人で食べ歩きはすこし…。」

ほたる「はいっ!茄子さんがいいなら是非!」


日に日にほたるちゃんは人並みの幸せを取り戻していく。 それは雨でできた水たまりが干上がるように、元の位置に戻っていくように当然の事。


P「茄子!ほたる!ライブが決まったぞ!茄子は初めてのユニットライブ、ほたるは久しぶりのライブだ、気を引きしめていこう!」

「「はいっ!」」



幸せというのは連鎖的に起こるもので、いい事は重なる。



トレーナー「ワン ツー スリー!フォー!ファイ シックス セブン エイツ! よし!2人とも良く頑張った!これなら大丈夫だ!後は本番に備えて各自、体調管理を怠らない事!」

「「はいっ!」」

トレーナー「解散!」

「「ありがとうございました!!」」


ほたる「いよいよ前日ですね……緊張しちゃいます……。」

茄子「ふふっ、私たちは必死に努力して来ましたから、後はそれを信じるだけですよ〜。」

ほたる「茄子さんに言われると安心します、えへへっ。」

茄子「明日も頑張りましょうね。」

ほたる「あの、茄子さん、良ければこの後…。」

茄子「私も、ちょっとこのまま帰るのは寂しいと思ってました、どこか行きますか?」

ほたる「はいっ!」





だから私は忘れていた。





「「ありがとうございましたー!!」」


ウォー!! 茄子さーーん!!ほたるーー!!



P「良くやった!!!文句なしの大成功だ!!!」

ほたる「わぁ……。」

茄子「やりましたね!!!」

ほたる「よかった…よかったよぉ……ぐずっ……。」

P「おいおい、泣くなよ、まだまだこれからだぞ?」

ほたる「だって私……アクシデントもなくこうやって大成功なんて初めてで……いっつも……失敗して……迷惑かけてたから…だから……う、うぅ〜っ。」

茄子「よしよし、ほたるちゃんは頑張りましたね〜。」




幸せはとても甘い





ほたる「茄子さん!駅前のクレープ屋さんに行きませんか?」



ほたる「今週の日曜日空いてますか?茄子さんが良ければお出かけしませんか?」



ほたる「茄子さんの実家って島根?出雲大社?行って見たいです!」



ほたる「茄子さん、これから暇な時は…電話をかけても良いですか?一人暮らしだと寂しい時があって……本当ですか!?ありがとうございます!」






毒である事を。


Chapter6 


ほたるちゃんと私は順調にお仕事をこなしていった。

ライブ、握手会、食レポ、バラエティ。様々なお仕事にチャレンジして、どれも大成功と言っても差し支えない程に盛り上がった。

私はそれも私とほたるちゃんが一生懸命頑張ったおかげだと思っていた。



でもほたるちゃんはそうじゃなかったみたい。

成功すると「茄子さんの幸運のお陰です」と嬉しそうに言う。まるで自分の努力を否定するかのように。


そしてほたるちゃんは私に依存をし始めた。 休日は毎日遊びに誘ってくるし、毎夜の如く電話もかかってくる。事務所にいる時も、プロデューサーさんに呼ばれた時とお手洗い以外はだいたい一緒にいる。


それ自体は嫌じゃない。可愛いし小さいし、それこそ小動物に懐かれたような感覚を覚えている。


けど、ほたるちゃんは自分を捨て始めた。何かを行う時はまず私に意見を伺い、私が何か言うと自分の主張は曲げて同意する。
それが一番幸せになる方法だと言わんばかりに。


まるで"鷹富士茄子"になるとでも言わんばかりに。



私は忘れていた。幸せというものが、人にとっては麻薬のように甘美で、人を狂わせる毒だということを。

私はそれをよく見て来た。私に神頼みに来る人、幸運を手にしそれに狂ってしまう人を。
そしてその末路はどれもろくなものじゃなかった。 努力を忘れ、自分を忘れ、そして破綻していった。私が殺したのとなんら変わりない。
アイドルになって暫くそういった事をしていなかったせいで気付くのが遅れてしまった。


ほたるちゃんが、 白菊ほたるが確実にその一途を辿っている事に。



トレーナー「白菊!!ステップが全く出来てないぞ!!どうした!!」

ほたる「す、すみません……。」

最近はレッスンも身が入ってないみたい。

トレーナー「……10分休憩だ、各自水分補給を怠るな。」

「「はいっ!」」

茄子「ほたるちゃん、大丈夫?もしかして体調わるい?」

ほたる「いえっ!すみません……なんか……うまくいかなくて……。」

茄子「そう、なの。」

ほたる「でも、大丈夫です!」



ほたる「茄子さんがいますから!」


私はめまいを覚えた。
その瞳に、以前のレッスンの時の力強さや芯の強さは無かった。


ほたるちゃんは私といると、間違いなく堕落してしまう。幸運の海に溺れて、死んでしまう。私が、私が殺してしまう。
それだけはいけない、私はもう他人の人生を台無しに出来ない。私は……。


トレーナー「今日は終わり!各自ストレッチして帰宅するように!」

「「はいっ!」」


茄子「ねぇ、ほたるちゃん。今日は私、寄るところあるから先帰るね?」

ほたる「そうですか……わかりました。」


そして私は、命を切り落とす。


Chapter 6.5 〜バーの一角〜

P「茄子の奴……急に話ってなんだろ……あんまり良い予感はしないけど。」


カラン、と扉が開く音がする。いつもと同じ待ち合わせ時間の五分前。
そしていつもと違う、彼女の姿。

茄子「あ、Pさん。すみません来てもらって。」

P「それはいいけどお前……髪どうしたんだよ……。」

茄子「これは……私なりのケジメです。」

似合ってますか?と微笑む彼女の髪は以前の様な長さはなく、肩の上で揃えられている。

P「そりゃぁ、抜群に似合ってるけど……。」

茄子「勝手な事をしてごめんなさい……そしてお話なんですが……。」




P「移籍!?」

茄子「はい」

P「なんでまた急に……と言いたいところだけど、何となく予想はついてるよ。ほたるのことだろ?」

茄子「はい、ほたるちゃんは私のせいで……」

P「茄子のせいなのかは置いといて。 本当にそれしか選択肢は無かったのか?」

茄子「私が決めたから間違いないです。」

P「そうか……それなら俺からは何も言えない。移籍って事はアイドルは続けてくれるんだろ?」

茄子「はい。せっかく教えてくれた、私が打ち込める世界ですから。」


P「……一つ約束してくれないか?」

茄子「なんですか?」

P「……お互い、しがらみが無くなったその時は。ライブバトル受けてくれよな。」

茄子「! 是非っ!」


P「じゃあ、俺はここで飲んでるけど」

茄子「私もそうします。Pさんとゆっくり出来る最後の時間ですから……」

P「そうだな……マスター、マッカランの一番古いの。ロックで。」


Chapter7 〜ほたるの家〜
朝起きて、顔を洗って、歯を磨いて、朝ごはんを食べて、用意をして、今日着る服をクローゼットから出して、少しのおめかしをして、家を出る。

少し早く家を出て、周りの風景を見て歩く。 昨日の雨で出来た水たまりが残っている、雨が降った後の土の香りが鼻をくすぐる。
最近は雨が降った後も、トラックに水をかけられたりしない、滑って水たまりに尻餅をつく事も無ければ傘を持ってない日に限って雨が降り出す事も無い。とても、幸せな出社。



それはいつまでも続くものだと思っていた。



ほたる「えっ………茄子さんが……………移籍?」

P「先日本人から話を聞いた、急だが運良く仕事も入ってなくタイミング的には問題が無かったため許可した。」

世界がひっくり返ったような衝撃を受けた。上下がわからなくなり、ふらつくいて、近くにあったデスクにもたれかかる。

P「だ、大丈夫か!ほたる!」

ほたる「許可したって……Pさんは平気なんですか!?茄子さんが……移籍なんて…。」

P「……俺はいちプロデューサーで、茄子はいちアイドルだ、本人の選択に対してどうこう言う権利は無い。」

ほたる「それは……。」

私は思い出したかのように、嫌な予感を拭い去れずに、たまらなくなって茄子さんに電話をかけた。

『お掛けになった電話番号は、現在使われておりません。番号をお確かめになって……』
アナウンスが言い切るまえに、私は電話を切った。

P「……酷い顔だぞ、ほたる。」

ほたる「そんな……そんな……。」

私はこれから午後誰と過ごせばいいの?
私はこれから夜誰に電話をかけたらいいの?
私はこれからどうやって不幸に立ち向かえばいいの?


私はこれからどうやって生きて行けばいいの?

色んなことが頭の中を駆け巡って

P「ほたる……ほたるっ!?」

私は気を失った。


ほたる「あれ、ここは……。」

ちひろ「気が付きましたか?仮眠室ですよ。」

ほたる「ちひろさん……私、気を失って……。」

ちひろ「ああっ、急に動いちゃダメですよ。頭を打ったんですから。」


そういえばズキズキと頭が痛む。頭を打った拍子に記憶が抜けて仕舞えばいいのにと思ったけど、全部覚えていて、心の中が空っぽになっていくのを感じた。


ちひろ「Pさんはオーディションの審査員だって。今日はレッスンはお休みだから。この後一度病院で診てもらってね。」

ほたる「わかり…ました……。」

ちひろ「あ、それから、これ。茄子さんからほたるちゃんにって。お守りだそうです。」

ほたる「ありがとう……ございます……。」


夢なら覚めて欲しい。現実なら…夢に戻って欲しい。そんな叶わない願いを胸に、私はもう一度布団を被った。


Chapter7.5  ~事務所下~

P「今日も成果なしか……とりあえず部屋に戻ろう」

??「ああああー!!!ちょっと、そこの人ー!」

P「な、なんだっ!?」

??「はろ〜☆ あなたがプロデューサーね!そのすーつ、まちがいない!あたしの目はごまかせないぞっ☆」

P「えっと……君は?」

そら「野々村そら15歳! みんなをはっぴーにするアイドルになりたくてやって来たよ☆」


P「そうですか、オーディション会場はあちらですが…。」

そら「だめ!だめ!だめ!のん!のん!のん!それじゃだめなのん!」

P「どうしてですか?」

そら「おーでぃしょんの応募書類、送ったよ!? でも、送るたびに返ってきちゃう!」

そら「これは、だいれくとあたっくするしかなーい!って思って!書類では伝わりきらないはーとを伝えに、福岡からやってきましたー☆」

P「そ、それはそれは。所で、書類で伝わりきらないはーと、とは?」

そら「みんなをこのそらちんすまいるではっぴーにしたい!!だからアイドルになりたいの!」

そら「あたしが笑って、みーんなも笑う!みんながすまいる!みーんなはっぴー!わんだふるはっぴーわーるど☆」

そら「あたし、アイドルの才能あると思うー! どうー?」


P(ふむ……)



そら「むずかしい顔してどうしたの?ほら、すまいるすまいるー☆」

P「応募書類、今は持ってますか?」

そら「持ってる持ってるー☆はい、あげる!ありがとう!これで、私もアイドルだね☆」

そら「今日からあたしのお手伝いさせてあげるねっ!どう、うれしいでしょっ?あたしもうっれし〜♪ さあっ!れっつぷろでゅーす!」

P「それは、すぐにはお答えできません、結果は後日です。」

そら「ありがと!さんきゅー☆お返事待ってるよ!待ってるからね!」

P「あっ!!待ってください!!」

そら「んー?やっぱり、今すぐアイドル?それはわんだふる☆」

P「では無くて、真面目なお話ですけど。 一人の女の子が自分が不幸だと落ち込んでいる時、貴方ならどうします?」

そら「んーーーーっ、そらなら、その子もはっぴーにする☆ はっぴーはせかいをすくう!」

P「不幸なのに、幸運に、ですか?」

そら「のん!のん!はっぴーと幸運はちょっと違うの! 不幸と幸運は逆だけど、不幸とはっぴーは逆じゃないべつのなにか☆」

P「っ!……… ありがとうございます。」

そら「それじゃあ、またね〜♪」



P「ふぅ、どっと疲れたな……。書類見ないと。」

P「しかし、あれだけの子がどうして今まで書類選考通らなかったんだ……あっ!」

P「送り先、間違えてるじゃないか、そりゃあ、届かないはずだ。」

茄子(わたしじゃあの子を幸せに出来ませんから……だからほたるちゃんを宜しくお願いします。きっと、良い出会いがありますから。)


P「ちひろさん!合格通知お願いします!。」


Chapter8 〜ほたるの家〜

朝起きる、体がだるい。
顔を洗う、イマイチすっきりしない。
歯を磨く、歯磨き粉の残りが少ない。
朝ごはんを食べる、あまり味がしない。
用意をする、忘れ物が多くて手間取ってしまう。
今日着る服を決める、上手く決まらない。
家を出る、靴底が外れてる。
仕方ないので昔の靴を出して向かう。

水たまりは依然として残っている、むわっとした湿度が肌を舐める。
急に雨が降り出して、急いで途中のコンビニで傘を買う。
不意に向こうから来たトラックが、水たまりの水を跳ねた。
不快、不運の全てが巻き戻って行く。

私は不運だ。忘れていた、全てを忘れていた。舞い上がっていた、茄子さんの後ろについて歩いて、少し幸運になった気でいただけだ。虚しさだけが、埃のように積もって行く。

事務所のビルがいつもより高く見える。
そしていつもより重いドアを開く……

P「紹介しよう、うちの担当アイドル 白菊ほたるだ。」

そら「はろー☆野々村そらだよー☆ みんなにはっぴーを届けるアイドルになりに福岡から飛んで来ました!」

私は目眩がした。




二人ぶんのシューズの音、少し走り気味な足音は私のリズムを狂わせる。


トレーナー「ワン!トゥー!スリー!フォー!ファイ!シック!セブン!エイッ!」

トレーナー「野々村!走りすぎだ!ちゃんと曲を聴いてそれに合わせろ!白菊はテンポがずれてる!ちゃんと自分を持て!」

「「はいっ!!」」

トレーナー「……各自10分の休憩!」

「「はいっ!!」」



そら「うーん、疲れた〜!そらちんべりーたいあど☆」

そら「今日は髪留めのゴムは切れちゃうし、靴下は穴空いちゃうし。びっくり〜」


ここ数日、私と一緒にいる野々村そらさんは確実に運が悪くなっている。 でも、へこたれない。私と違って強い芯を持っている。


そら「ほたるちゃんはぴんぴんしてるね!すごい☆」

ほたる「う、うん…。」


何処かでしたやり取りに、私は茄子さんの面影を感じてしまう。でも、もうここに茄子さんはいない……

その事実を噛み締めたく無くて、素っ気ない返事ばっかり返してしまう。ダメだなぁ私。こんなので先輩なんて、笑えちゃう。


そら「ほたるちゃん、お顔が悲しそうだよ〜?」


やめて、その呼び方をしないで。


そら「ほたるちゃん、すまいるすまいるー☆はっぴーに生きよう☆」


やめて、やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて。

ほたる「やめてっ!!!!」


そら「ひっ……」


やってしまった、やり場のない怒りと、不快感と、不安を何の非もない少女に、ぶつけてしまった。

でも、止めようとしても溢れ出る。もう自分にも止められなかった。


ほたる「やめてよ!!私は……私は幸せになんかなれないの……」


やめて


そら「そ、そんなことないよ……はっぴーは誰にだってあるんだよ……」


やめて


ほたる「そんな……そんなこと……」


それ以上言っちゃ……



ほたる「幸せな人に……何不自由なく生きている人に私の気持ちなんてわかんないんです!!!」


そら「……っ!」



ほたる「あ……ごめんなさ………っ!」

そら「ほたるちゃん!!待って!!」



その日初めて私はレッスンをサボった。


Chapter9 〜事務所〜

それからというものの、事務所の空気がぎこちない。

いや、ぎこちないんじゃない。私がみんなに合わせる顔がなくて、俯いて、会話が出来ないでいる。
でも、野々村さんも、プロデューサーさんも、ちひろさんも、優しいから何も言わないでいてくれる。

その優しさが、痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

悪いのは私、それでもみんな優しくしてくれて、なのに私はその優しささえも受け取れない。
あまりにもワガママで醜い自分、ふと鏡を見ると、目の下に酷いクマが出来ていた。
今日も野々村さんは明るく話しかけてくれる。とってもとっても優しい人。
なのに私は、上っ面の酷い笑顔しか返せない。 アイドルとしてあまりにも最低な自分。


結局、身体もフラついてレッスンどころじゃ無いので。早めに帰らされた。
トレーナーさんも、本当は怒りたそうなのに、怒らない。また、気を使わせている、こんな最低な人間に。


辞めた方が良いんじゃないの?
やっぱり不幸な自分にアイドルなんて出来ないんだよ。
地元に帰ってパッとしない人生を送ろう。


睡眠不足と劣等感は頭の中でノイズを生み出す。

その苦痛に顔をしかめて歩いたせいで、私は周囲の警戒をしていなかった。




その事実に気が付いたのは、植木鉢が落ちて来ているのに気が付くのと同時だった。



Chapter10 ~?~

ふわふわとした浮遊感に意識が覚醒する。
あれ……私……何してたっけ……疲れて……帰ってて気がついたら鉄骨が……もしかして死んじゃったのかな……。
みんなに迷惑かけ過ぎたし、神様が怒っちゃったのかな……それならそれでいいけど、みんなに謝れなかったなぁ……。


ん……るちん……

なんだろう、遠くから声が聞こえる。凄く、煩くて、暖かい声。聞き覚えのある声。

た…ちゃん……ほたるちゃん……!

えっと、私を呼んでる?私呼ばれてるんだ、行かなくちゃ……



そら「ほたるちん!!」

ほたる「っ!?」

そら「起きた!?良かった!!良かったよぉ〜〜〜。」

ほたる「あれ……野々村さん……ここは……。」

そら「ううぅぅ〜〜〜〜っ。」

ほたる「えっと、落ち着いて……泣き止んでください……大丈夫ですから……。」


ほたる「結局ここはどこですか?なにがあったんですか?」

そら「びょういん!びょういんだよ!ほたるちん、ふらふらだったから、大丈夫かな〜と思って帰り道おいかけたの!
そしたら植木鉢がぴゅーって落ちてきて!ほたるちんが倒れちゃって!そらちんびっくりしちゃった!いそいで救急車呼んで、運ばれて、今ようやくふっかつ!って感じなの。」



ほたる「そ、そんなことが……私また迷惑をかけてしまって……。」

そして私は気付いた、気付いてしまった。野々村さんの頬に、大きなガーゼがしてある事に。

ほたる「野々村さん……その顔のガーゼは…。」

そら「あ、これ?えーっと、植木鉢がじめんにおちて割れたときの破片がぴゅーって飛んできて、ほっぺをしゅーん☆って、あぶなかった〜。」

ほたる「そんな……ご、ごめんなさい!私のせいで……ごめんなさい……私が不運だから……。」




そら「ほたるちゃん、あんまり自分を悪く言っちゃあダメだよ。」

ほたる「えっ……。」

そら「……ようやくちゃんと顔を見せてくれたねっ☆」

ほたる「あっ……。」


そら「もっともっとはっぴー☆に生きないとダメだよ?ほたるちんはとくに、ね?」

ほたる「でも…私……物心ついてから不幸だし……幸せになんて……。」

そら「のん!のん!ほたるちん、それはのんだよ!はっぴーに幸運か不幸かなんて関係ないの。」

そら「ほたるちんは絶対はっぴはっぴーになれる!そらちんが保証します!」

ほたる「……。」



そら「……前に言ってたよね。『幸せな人に私の気持ちなんかわからない』って。」

ほたる「っ!!…ごめんなさい!私あの時酷い事を……。」

そら「ううん、いいの。あの後ね、ほたるちんの事、前にいた茄子さんっていうアイドルの事。色々プロデューサーに聞いたんだ。それでね、しょっくだったの。 そらちん、何にも知らないでほたるちんにはっぴーの押し売りをしちゃった。」

そら「わらっちゃうよね、みんなをはっぴーに!って言ってたのに、一人をあんはっぴーにしちゃうなんて、ごめんね?」

ほたる「そんな…野々村さんは私の為を思って言ってたんだし。」

そら「……ほたるちんは優しいね。」


そら「ちょっとしみっぽくなっちゃった!えっとね!ほたるちんの話を色々聞いたけど。それでも、ほたるちんは絶対はっぴーになれると確信してるの!」

そら「世の中不幸しかないなんて事は、絶対ないの、だからね、ほたるちん。 もうちょっとだけ顔を上げて? きっと世界はもっときらきらに輝いてるから。」

ほたる「でも……。」

そら「それにね。茄子さん、ちゃんとほたるちんの事見てると思う。だってほら。」

ほたる「あっ…おまもり……紐が千切れて…。」


そら「破片も含めると、奇跡的に当たらなかったんだって。お守りが守ってくれたんじゃないかな?」

そら「でも、これからはほたるちんが前を向いて歩くばんだよ。まだ不安ならそらちんが前を歩いて引っ張ってあげるから、一緒にはっぴーを探しにいこ?」

ほたる「野々村さん……」

そら「わーーっ!泣かないで!せっかくのきゅーてぃーふぇいすが台無しだよ☆」

ほたる「うん……ありがとう。私、頑張る。」

そら「そっか、よかった…。これで一安心だね☆じゃあ私、そろそろ寮に帰るね?」



ほたる「あっ、待って!」

そら「んー?どうかした?」

ほたる「明日から、そらちゃんって。呼んでいい…?」

そら「!もちろん!!むしろ今からばっちこい☆」

ほたる「うん、それじゃあ、また明日ね。…そらちゃん!」

そら「うん! ばいばい☆」


Chapter10.9 
やっほー☆そらちんだよ!

今回は、そらちん目線でお送りします!なんちゃってね☆

さて、ほたるちんなんだけど。すっかり元の調子を取り戻したみたい!
まぁ、そらちん元の調子って知らないんだけどね〜?
でもプロデューサーさんもちひろさんも、トレーナーさんもすっごく嬉しそう!だからいいこと!いぇい☆

それでね?そらちんたちはお仕事を一つずつ丁寧にこなしたの。 それでも急に番組が中止になったり、ろけの途中で大雨になったり、色々なはぷにんぐがあったの。
でもね!ほたるちんもわたしも、絶対に諦めなかった!失敗してもさっと反省会してすぐにとらい☆
そしたらね!少しずつだけどお仕事が増えて、忙しくなってきたの!お仕事が増えるとそらちんもどんどんみんなをはっぴーに出来るからね☆


うん、ここまで来るのに一年かかっちゃったんだけどね。でも、と〜ってもわんだふるな日々だったの!


そして!!今度のお仕事で私たちは遂に海外ロケに行く事に!

場所はしあわせの国ぶーたん!
一度行って見たかったからべりべりーえんじょいめんと!
飛行機なんて絶対無理!なんて言ってるほたるちんを引っ張ってでも連れて行くよ☆
それじゃあばいば〜い☆

Chapter11 〜パロ空港〜

そら「…………」

ほたる「…………」


そら「着いたね。」
ほたる「着きましたね。」

そら「いぇ〜〜い!!!はっぴーかんとりーブータン!!ふっふ〜〜☆」
ほたる「良かった………生きた心地が一切しなかった……。」

そら「ほたるちん、顔真っ青だね〜。」

ほたる「真っ青にもなりますよ!私ですよ!?立てば頭をぶつけるし座れば椅子が折れる、歩けば植木鉢が落ちてくる白菊ほたるですよ!?そしてパロ空港ですよ!?世界一着陸の難しい空港ですよ!?」

そら「まさかそらちんもロケで遺書を書く事になるとはね〜☆世の中あんびりーばぼー!」

ほたる「本当に……私の人生ここで終わりだと思いました……。」

そら「と!に!か!く!着いたんだからさっそく観光!れっつさいとしーいんぐ〜☆」

ほたる「あっ、そらちゃん待って〜。」


ほたる「えっと、ブータンの観光は伝統文化とか、自然とか…。」

そら「のん!のん!だめだよほたるちん!こういう海外の楽しみ方はね、そういうここ行って〜とかじゃなくて、ありのままを楽しむの!」

ほたる「えっと……というと?」

そら「今回はブータンの人たちの幸せの秘密を探そう!ってロケでしょ? だからそういう観光用の美味しいれすとらんとかじゃなくて、ブータンの人たちの行く食堂みたいな場所に行くの!」

ほたる「あっ、なるほど……そらちゃんたまにはいい事言いますね。」

そら「"たまには"は余計!そらちんはおーるまいてぃーぐっとすぴーきんがーだから☆」

ほたる「なんかもうルー○柴みたいになってます……。」

そら「気にしない気にしない!ほらほら時間ないんだから!ほたるちん行くよ〜☆」

ほたる「だから待って〜!」



それから私たちは色々な所を回った。

名前のない丘とか、聞いた事の無い料理屋さんとか、よくわからないけど陽気な音楽とか。

ブータンの人々はみんな楽しそうだったし、そらちゃんもそれに混じって本当に楽しそうにしてた。私もとても楽しかった。
凄い出来事が有るわけじゃないけど、幸せに溢れていた。

その日の夜。ホテルに泊まった私は中々寝付けなかった。


そら「ほたるちん、起きてる?」

ほたる「おきてますよ。そらちゃんも寝れないんですか?」

そら「うん、ちょっとね。あのね?一年前、ほたるちんに植木鉢が落ちてきて、それで私がほたるちゃんに『ほたるちゃんが不幸でもはっぴーになれる』って、言ったの、覚えてる?」

ほたる「うん……覚えてる。」

そら「そらちん、あの時の答えがこの国にはあると思うんだ。」

ほたる「……。」

そら「この国はべりべり☆はっぴーな国だよ、でも幸福な国じゃない、例えば藤居朋ちゃんがよく行くようなぱわーすぽっとじゃないの。でもね、はっぴーである為に必ず幸福である必要は無いんだ、不幸の中にも運は転がってる。運は平等じゃ無いかも知れないけど、はっぴーは平等に、それこそ受け取れない程与えられてるの。それに気付くか気付かないか、それだけの違いだって。そらちん思うんだ。」

ほたる「うん……。」

そらちん「ほたるちんは確かにちょっぴり不幸な所もあると思う。でもね?その前のれっすんでそらちんに本当の気持ちをだいれくとにぶつけてれた時。あの時の目を見たときにほたるちんはきっとはっぴーを見つけられるって思った。」

ほたる「うん……。」

そらちん「あれから一年も経ったんだね。ほたるちん、見つけれたんじゃない?」


ほたる「うん。ここに来てようやく掴んだと思います。なんていうか、普遍的なはっぴー?ってのを。」

そら「そっか、それならそらちんもすっごくはっぴー。」



ほたる「ねぇ、そらちゃん。何か隠してますよね。なんかそんな感じがします。」

そら「!!」


そら「ばれちゃったか……そらちんね。このお仕事がおわったら。他の事務所に行こうと思うんだ。」

ほたる「……。」

そら「ほたるちんにも、プロデューサーさんにも、教えたい事と教わりたい事は全部済ませたから。そらちんはにゅーわーるどにたびだつのだ!なんてね…。」

ほたる「……良いと思います。」


ほたる「というか、最初からそんな気はしてたんです。そらちゃんこれ以降お仕事一個も入れてないし。」

ほたる「そらちゃん、私。そらちゃんと出会えて、一緒にアイドルが出来て、こうやって旅行にも来れて、とってもとっても幸せです。」

そら「……。」


ほたる「そらちゃんがあの時、私でも、幸せになれるって。 そらちゃんが正しいんだって証明出来たから。」


ほたる「私は、すまいるで送り出すね!」


そら「ほたるちん……ありがとう……。」

ほたる「なーんて!アイドル辞めるんじゃないんですから、いつでも会えます!しめっぽい話は辞めて、明日も早起きだし早く寝ちゃいましょう!」


そら「うん!すまいる満開でぐっどすりーぴんぐだよ☆おやすみほたるちん!」

ほたる「おやすみなさい………。」





そら「ぐずっ、はっぴーになってくれて本当にありがとうね、ほたるちん」




Chapter12
結局あのあと、目覚ましが鳴らなくて二人とも寝坊したり、色々ハプニングはあったけど。
番組は大好評でした。

そして、そらちゃんは帰るとすぐに、移籍の準備を進めちゃって。 私は挨拶しか出来なかったけど。ちゃんと見送って。また一緒にお仕事しようねって約束もしました。

だから、これで良いんです。私は私の道を、前を向いて進みますから!


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お疲れ様です。 ここまで読んでいただきありがとうございました。
白菊ほたるを根本的に救えるのは野々村そらなんじゃないかな、と思いつつ書き始めて、二人の力があって白菊ほたるが一つの壁を越えると良いなと思いました。
長くなってしまいましたがもし少しでも面白かったと思って頂けるなら幸いです。

それでは、最後に少しだけエピローグを挟んでお別れにしたいと思います。
*/


epilogue

千鶴「うぅ……やっぱり先輩アイドルとのユニットなんて無茶だよ…相手も大御所だし……私なんて……。」
裕美「…………。」

ほたる「千鶴ちゃん、裕美ちゃん、大丈夫?緊張しすぎちゃダメだよ?」

千鶴「はっ!私また声に出して……。」

裕美「すみません……つい……。」

ほたる「今回の相手は、元うちの事務所のアイドルだから、安心して胸を借りる気持ちで。あと千鶴ちゃん自身が楽しむ気持ちで行けば大丈夫、私を信じて?」

二人「「はいっ!」」

ほたる「じゃあ、行きましょう!」



MC「さぁ!始まりました今回のライブバトル!「はっぴー☆にゅーいやー」vs「GIRLS BE」勝つのはどっちだ!!それではパフォーマンススタート!」


〜Fin〜

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