善子「コワレヤスキ」 (26)


【LINEグループ:善子と梨子】

ヨハネ:なしこ先輩

梨子:なぁに?よしこ後輩

ヨハネ:会いたい

梨子:へ?

ヨハネ:会いたい

梨子:今?

ヨハネ:今

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梨子:うん、まずは落ち着いて時計見てみよっか

ヨハネ:見た

梨子:何時だった?

ヨハネ:23時30分

梨子:そうだね、真夜中だね

ヨハネ:で、会ってくれるの?

梨子:察してよ!


梨子:ダメだよこんな真夜中に!

梨子:バスだってとっくに終わっちゃってるから!

ヨハネ:自転車でがんばる

梨子:だめだってば、女の子がこんな夜中に一人で!

梨子:危ないよ!

ヨハネ:梨子なら大丈夫よ

梨子:って私が行く前提なの!?


梨子:ていうか

梨子:元気ない?

ヨハネ:そんなことない

ヨハネ:こともない

ヨハネ:わけでもない

ヨハネ:というわけでもない

梨子:どっち?

ヨハネ:わかんない

梨子:わかんないかぁ……

ヨハネ:わかんない


【Side:梨子】

梨子「うーん……」

 いっこ下の後輩ちゃんの急なおさそい。

 それだけでもびっくりするような話なんだけど、話してるうちになんだか違和感が膨らんでいった。

 ためしに善子ちゃんとのLINEトークを昨日の分までスクロールして戻してみる。


ヨハネ:堕天降臨!


 うん、基本こういうテンションだよね、善子ちゃんって。

 それがなんだか今日の善子ちゃん、妙にしおらしいというかなんというか。

 いつもと違う雰囲気が漂っているのでした。


 ピロリン♪

 軽快な通知音がスマホから流れる。

ヨハネ:あと25分

梨子「25分? ……って、ああ」

 そっかそっか、そういうこと。

 今日は7月12日。今は23時35分。

 あと25分経ったら。

梨子「へぇ……善子ちゃんにも、こういう可愛いところあるんだ」


【LINEグループ:善子と梨子】

梨子:ははーん、お姉さんわかっちゃいました

ヨハネ:?

梨子:善子ちゃん、直接言ってもらいたいんだ?

梨子:ふふ、かーわい

梨子:でもだめだよ、さすがにそれだけの理由でこんな時間に外出なんて

梨子:明日になったら耳にたこができるくらい言ってあげるから、ね?

梨子:……善子ちゃん?

梨子:見てる?もしもーし

梨子:って、既読ついてるんだから見てないはずないか……

ヨハネ:そうじゃなくって

梨子:え?

ヨハネ:そうじゃなくって

梨子:違うの?

ヨハネ:うん

梨子:じゃあ……なんで?


【Side:梨子】

梨子「また返信止まっちゃった……」

 私の予想は外れだったらしく、善子ちゃんの思惑は謎のまま。

 そうしている間にも、その時間は刻一刻と近づいていた。

 どうしよう? このままの流れで言ってあげるのは、なんだか気まずくないかな……

 ピロリン♪

梨子「ん、きたきた……え?」


 ヨハネ:こわい 


梨子「……どういうこと?」


【LINEグループ:善子と梨子】

梨子:どういうこと?

梨子:なにが怖いの?

ヨハネ:私は

梨子:うん

ヨハネ:私は、みんなにとって、なに?

梨子:うん?

梨子:えっと、どういうこと?

ヨハネ:私は堕天使ヨハネ

ヨハネ:神に見放された薄幸の美少女

梨子:あ、美少女って自分で言っちゃうんだ

ヨハネ:神に見放された薄幸の少女

梨子:恥ずかしくなるなら最初から言わないでおこうよ……


ヨハネ:それはともかく

ヨハネ:私は堕天使だから、いつも孤独を愛していたわ

梨子:あー、中学の時は浮いちゃってたんだっけ

ヨハネ:うるさいばか

梨子:ごめん

ヨハネ:許す

梨子:優しいね

ヨハネ:うん

梨子:そんな優しい善子ちゃんが大好きです(ハート)

ヨハネ:うそつき

梨子:え?

梨子:いや、冗談っぽく言ったけど、嘘ではないよ?

梨子:善子ちゃん?


【Side:梨子】

梨子「――――」

 なんだか、とても重要な部分をつついてしまったような気がした。

 善子ちゃんの致命的な部分というか。

 決定的な部分に、今、触れてしまった?

 沈黙するLINEトークが、いやに心を焦らせる。


【LINEグループ:善子と梨子】

ヨハネ:あくあは楽しい

梨子:え?

梨子:うん、そうだね

ヨハネ:こんなに楽しい友達、初めて

梨子:うん

ヨハネ:でも

ヨハネ:私は不幸だから

ヨハネ:みんなに迷惑かけるから

ヨハネ:私のことを好きになってくれる人なんていない

梨子:待って

ヨハネ:みんな

ヨハネ:私と一緒にいればみんな私の不幸に巻き込まれる

ヨハネ:私は堕天使だから

ヨハネ:善子じゃなくてヨハネだから

ヨハネ:嫌われ者だから

ヨハネ:だから

ヨハネ:ほんとうはみんな

梨子:待って!


梨子:やめよう?善子ちゃん

梨子:そんな言い方……よくないよ

ヨハネ:もし

梨子:え?

ヨハネ:もし、誰も、気にかけてくれなかったら

ヨハネ:明日一日、誰も気づいてくれなかったら

ヨハネ:私はきっと

ヨハネ:誰にも必要とされてない


ヨハネ:ねえ

ヨハネ:こわい

ヨハネ:こわいよ梨子

ヨハネ:こんなに怖いの初めて

ヨハネ:失いたくない

ヨハネ:嫌われたくない

ヨハネ:だけど私のこの気持ちは

ヨハネ:一方通行じゃ、ない?


【Side:梨子】

梨子「――――」

 少し――ううん、かなり意外だった。

 いつも周りが呆れるくらいの我の強さを持つこの子が。

 こんな、こわれもののような気持ちを持っていただなんて。


 だけど、それはそれとして。

梨子「……まったくもう」

 ほんと、この後輩はわかってない。

 私が、私たちが、Aqoursが。

 どれだけ優しくて、どれだけあったかいのかを。

 ねえ、善子ちゃん。安心して。

 善子ちゃんの不安は、きっとみんな笑い飛ばしてくれるから。

 ばかだなーって、吹き飛ばしてくれるから。

 だから、ね?






梨子:大丈夫だから

梨子:泣かないで、善子ちゃん





【Side:善子】

善子「うううぅぅぅぅ……」

 誰かとつながるのがこんなに苦しいなんて思わなかった。

 幸せに浸れば浸るほど、それが夢心地であればあるほど。

 いつか冷たい現実が突き付けられるんじゃないかって、怖かった。

 それがひとつはっきりするのが、明日。

 誰も覚えてなかったら。

 誰も気にしてなかったら。

 私は――その程度。


 ピロリン♪


 LINEの通知音。

 梨子かな、って思ったら。


 ピロピロピロピロピロピロリン♪

 
 壊れたおもちゃみたいに通知音が連続する。


 なにごと? ってスマホの画面をタップして。

 LINEアプリを立ち上げる直前に見た時間は。

 ゼロがみっつ、ならんでいた。


【LINEグループ:Aqours】

まる:善子ちゃんハッピーバースデーずら~

ルビィ:お誕生日おめでとう!善子ちゃん!

ちかっち:よしこちゃんハッピーバースデー!

YO:善子ちゃんお誕生日おめでとうなのであります!

黒澤ダイヤ:お誕生日おめでとうございますわ、善子さん

マリー:Happy Birthday!Yoshiko!

かなん:誕生日おめでとう、善子


【LINEグループ:善子と梨子】

梨子:だから言ったでしょ?

梨子:大丈夫だ、って

梨子:もう、善子ちゃんはみんなのこともっと信じなさい

梨子:わかった?

梨子:おーい?

梨子:……まったく

梨子:意外と泣き虫さんだったんだね?善子ちゃんて

梨子:まあ、それはともかく


【LINEグループ:Aqours】





梨子:お誕生日おめでとう、善子ちゃん

梨子:みーんな、善子ちゃんのこと、大好きだよ




以上
善誕間に合わなかったくやしい
アニメ世界よりもGODの設定に近い感じなので違和感あるかも

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