聖來「肇ちゃんの不思議体験」 (18)

短めの七夕ネタです。
よろしくお願いします。

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紗枝「さーさーのーはーさーらさらー♪」

肇「のーきーばーにーゆーれーる♪」

いつき「……そういえば子どもの頃、『のきば』って何のことかわからないで歌ってたなぁ」

聖來「童謡の歌詞って、意外と難しい言葉使ってたりするもんね」

肇「リズム感で覚えてしまうものですよね」

いつき「さて、今年は何をお願いしようかなー」

聖來「ケバブ1年分とか?」

いつき「それはPさんにお願いするからいいとして」

肇「するんですか……」

紗枝「いつきはんとこのPはんも大変やなぁ」

いつき「やっぱり、宝くじが当たりますよーに!とかかな」

肇「欲全開ですね」

いつき「一等とかだとちょっとお星さまには荷が重そうだから、5万くらいにしとこ♪」

聖來「その上偉そう」

肇「数字もやたらリアルですね」

紗枝「もうちょい、かいらしいお願いなら叶えてあげるやけどなぁ」

聖來「お、さすが織姫経験者。判定が厳しい」

肇「織姫経験者って言葉もなかなか使わないですよね」

いつき「むー、じゃあそういう織姫さまは何をお願いするの?」

紗枝「犬が飼いたい」

いつき「欲全開!」

紗枝「織姫特権主張します~♪」

いつき「ずるい!職権濫用だー!」

聖來「わがままな織姫さまだなぁ」

紗枝「聖來はんが叶えてくれはってもええんやで?」

聖來「なんであたしが……ってもしかしてわんこ?狙われてる!?」

紗枝「えへへ~」

聖來「だ、だめだよわんこは!あたしの大事な家族なんだから!」

いつき「姫さまというより暴君だね……」

紗枝「肇はんは、何をお願いしはるん?」

肇「私は……そうだなぁ……」

聖來「ん?どしたの?」

肇「あぁ、いえ。願い事といえば、前に七夕の日に、ちょっと不思議な体験をしたことあったなーって」

紗枝「不思議な体験?」

いつき「なにそれ、教えてよ!面白そう!」

肇「えっと、アイドルになる前のことだったんですけど……」

――――――

その日は、おじいちゃんに出された課題が上手くいかなくて、気晴らしに釣りをしにいったんです。

普段通ってる渓流じゃなくて、少し遠めの広い川で、せっかくだからゴムボートも借りてみて。

なかなか釣れなかったんですけど、あまり苦にはなりませんでした。

もともと気分転換のつもりでしたし、普段乗らないボートの感覚も面白くて。

波に揺られる感覚があんまり心地よかったので、竿を上げて、ボートに寝転がったんです。

ゆらゆら~、ゆらゆら~って。

流れに身を任せながら鳥の声や川の音を聞いていたら、モヤモヤしていた気分もすっかり晴れていきました。

どれくらいそうしていたんでしょうか。

ぼんやりと眺めていた空に、いつの間にか星が出ていて。

周りには街灯も少なかったので、綺麗な天の川が見えてました。

しばらく見惚れていたんですが、そろそろ帰ろうと起き上がったところで、様子がおかしいことに気づきました。

辺りは真っ暗。

最初は、街灯が無いせいかと思ったんですけど、目を凝らしてみても、岸が見えなかったんです。

――――――

聖來「え。なにそれ、流されちゃったってこと?」

いつき「ていうか遭難じゃん!」

肇「私も最初はそう思いました」

いつき「まさか、臨死体験でしたーって話じゃないよね……?」

紗枝「肇はん、ほんまはお化けやったん……?」

肇「大丈夫だよ。ちゃんと足はあるから」

いつき「そういう問題……?」

聖來「でもそれ本当に遭難したんじゃないの?大丈夫だったわけ?」

――――――

いつもと違うところで迷子になって、携帯も何故か圏外で。

よくパニックにならなかったなって、自分でも思います。

とりあえず行けばそのうち岸につくだろう、なんてのんびり考えて、ボートを漕ぎだしました。

進むにつれて周りも少しずつ明るくなっていって。

普段見るより少し月が大きくて、季節外れの蛍なんかも飛んでいて、とても綺麗でした。

――――――

いつき「そんな時に景色を楽しむ余裕があったんだ……」

聖來「肇ちゃんって、意外と度胸あるんだよね」

肇「おじいちゃんの教育の賜物ですね」

紗枝「それ、関係あるんかなぁ……」

聖來「今度、肝試しでもやってみよっか」

いつき「お、いいですね。お化け経験者の腕の見せ所」

紗枝「えぇ~、怖いの嫌やわぁ。ほんならうち、度胸ある肇はんにくっついてこ」

いつき「でも、肇ちゃんがお化けになった時の話してるんだよ?」

紗枝「はっ!せやった……うち、どないしたら……」

肇「いや、お化けにはなってないですって……」

――――――

しばらく漕いでいったら、遠くに明るい岸が見えました。

目を凝らしてみたら、数人の男女がとても楽しそうに遊んでいて。

やっと人が見えた安心感と、楽しそうな様子が妙に羨ましくて。

私もそこへ行こうと、一生懸命漕いだんです。

でも、なかなかボートは進んでくれませんでした。

やっとのことで岸の近くまではきたんですけど、それ以上はどうしても近づけなくて。

そうしたら、男の人が一人、私に気づいてくれて、岸から手を差し伸べてくれたんです。

私は、その手を取ろうとして……

――――――

聖來「……それで、どうなったの?」

紗枝「魂抜かれて、お化けになってしもたん?」

肇「いえ、おじいちゃんの手を取っていました」

3人『……はぁ?』

肇「なかなか私が帰らないから、心配したおじいちゃんが迎えにきてくれたらしいんです。そしたら、ボートの上で寝ていた私を見つけた、と」

いつき「……ってことは、夢オチ!?」

肇「そうなりますね」テヘペロ

いつき「体験っていうか、夢の話だったんだ……」

肇「おじいちゃんも、私を起こそうとしたら急に手を掴まれたから驚いたって言ってました」

聖來「そりゃびっくりするでしょ」

肇「そもそも、ボートはロープで桟橋につないであったので、流されるはずがなかったんですよね」

いつき「じゃあ寝転がった時にはもう寝ちゃってたんだね」

紗枝「じゃあ肇はん、ほんまにお化けやないの……?」

聖來「まだその心配してたんだ」

いつき「でも、確かに不思議な夢だね」

紗枝「せやなぁ」

聖來「何かの暗示だったりして」

肇「……私は、もしかしたら、未来の暗示だったのかなって思います」

聖來「……ほほぅ?」

肇「あの明るかったところはステージで、楽しそうに遊んでいた人たちはアイドルのみんなで」

肇「私もそこに行きたかったっていうのは、その時の私の願いだったんだなって」

いつき「……あれ?なんか急にロマンチックになった」

肇「だからきっと、私のその願いは、もう叶ってるんだと思います」

紗枝「……なるほどなぁ。つまりこういうことやね」

紗枝「その手を差し伸べてくれはった人が肇はんのPはんで、お願い事はPはんが叶えてくれはったと」

肇「……そういうことになる、のかな。確かに、Pさんにスカウトしてもらったのって、そのあとのことだったし」

紗枝「ほんでもって、そのPはんのことが、肇はんは大好きやと」

肇「!?」

いつき・聖來「「……あ~~~~」」

聖來「つまりあたしたちは、そのお惚気を聞かされていたと」

いつき「肇ちゃんとこ、ほんと仲いいもんね」

肇「ちょっ!そんなつもりで話したんじゃ……」

紗枝「Pはんは、肇はんの彦星さまやったんやなぁ♪」

聖來「じゃあ今年のお願い事は『彦星様が素敵なデートに連れて行ってくれますように』って書きなよ♪」

いつき「いいね!Pさんの机に貼っといてあげるよ!」

肇「もう!そんなんじゃないのに!」

聖來「連れて行ってほしくないの?」

肇「それは……!連れて行って……ほしい……です……けど」

聖來「決まりね」

いつき「決まりだね」

紗枝「決まりやなぁ」

肇「あうぅ……」

いつき「Pさん、短冊見たらどんな顔するかな~」

聖來「そりゃあ面白いくらいに慌てるでしょうね」

紗枝「なんや楽しゅうなってきたなぁ」

肇「お、お手柔らかに……」

おしまい

以上になります。

中国の七夕伝説の中にある「銀河を旅した人」というお話をモチーフにしています。
興味がある方は探してみてください。

ありがとうございました。

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