【モバマス】北条加蓮「Frozen Tears」 (40)

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佐久間まゆ「遠く届かなかったあなたへ」
佐久間まゆ「遠く届かなかったあなたへ」 - SSまとめ速報
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「お願い!北条さん!!文化祭のライブ…出てもらえないかなぁ」
十月も中頃の放課後
事務所に向かおうと下駄箱で靴を履き替えて歩き出そうと言うときに
文化祭企画委員会といったたいそうな腕章をしている女子生徒に声をかけられた
先に行っておくとアタシ北条加蓮はただいま絶賛売り出し中のアイドルで
決して大物芸能人というわけではない

ついこの間まではただの高校一年生

やっと高校に入ってすぐ、まだ新しい環境にも慣れてない時期に

変な男の人に名刺を渡されて適当に話を聞いていたら

あっという間にアイドルに転身してしまった訳である

デビューして半年くらいたった頃だろうか

たまたま事務所の偉い人に見つかって大きめのプロジェクトに抜擢され

テレビ露出が増えてきたなーと思っていたところにこんな声をかけられたのだ

「いきなりなに?こういった話は事務所を通してもらわないとー」

「そこをなんとか!!」

アタシが話を切ろうとしたときに被せて頼み込んでくる実行委員の人

よく見たら先輩のようで今にもつかみかかってきそうなほどの勢いで迫ってくる

「だからアタシ、今はアイドルだから気軽に出られないの」

プロデューサーさんにも釘を刺されてはいることだが

一応アイドルは仕事だから事務所の仕事以外ではステージに立つことを極力控えるようにとは言われている

「そんなぁ、考えてくれるだけでもいいからさ!!」

それでも実行委員の人は食い下がる

「はいはい、考えるだけならね~」

そう言ってアタシはその場を後にする

後ろから「絶対考えてね~」と声が聞こえてくるけど

実はあんまり考えるつもりもなく

携帯で先日リリースされた自分のデビュー曲を聴きながら

事務所に向かうことにした

事務所の中にあるレッスンルームに着くと先に来ていた同じ事務所の先輩の城ヶ崎さんがいた

年も一つ上だけどアタシがアイドルになってから不安だったときとかに

一番に仲良くしてくれた、今では美嘉、加蓮と呼び捨てる仲になっている

「おっすー加蓮★あれ?どうしたの?考え事?」

結局事務所までの間考えるつもりもなく歩いていたつもりが

ずっと頭の中にさっき言われた文化祭の話がもやもやしていた

「美嘉…何でわかっちゃうかなぁ」

「やっぱり悩み事?相談乗るよ★」

「うーん、美嘉になら話してもいいかなぁ…」

「実はさっきさぁ、学校で文化祭委員?のひとに文化祭でライブしてくれないかって頼まれたんだけど…やっぱ、ダメだよね、アイドルのアタシが勝手にやったら…」

美嘉はアタシの話をゆっくり聞いてくれている

「それにアタシなんてまだデビューしたばっかのアイドルなのにさ、みんなが期待してるような人ってやっぱり美嘉とかみたいなトップアイドルなんじゃないかなぁ-とかも思っちゃったり…」

すると美嘉は

「へーすっごいじゃん!!」

「え?」

「アタシも言われたことあるんだけど、どうしてもその日外せない仕事があってさぁ…文化祭のライブ立ってみたかあったなぁ」

美嘉は懐かしむようにうなずく

「それに…」

アタシの目を見つめ話を続ける

「もっと自信持ちなよ、アイドルって、みんなに好かれるためにはさやっぱり自分も信じてあげられないとダメだと思うなー」

美嘉はアタシの心の奥底を見透かしたように言う

「それに」

「ん?」

「アタシは加蓮はしっかりアイドルできてると思うよ★」

「あはは…ありがと」

アタシは美嘉の言葉を思い出す

「自分を…信じる、かぁ」

そしてアタシはその言葉を受け入れるようにして復唱する

「美嘉が初めて先輩みたいなことを言ってる」

アタシは冗談で返す

「あーなにそれーいつものアタシは先輩じゃないって言うの~?」

「うそうそ、でもいいの?ライブに勝手に出たりして」

「勝手にじゃなかったらいいんじゃないの?」

「どういうこと?」

「プロデューサーに話通したらいいんじゃない?」

確かに、プロデューサーに話を通したら行けるかもしれない

「まぁ、私もあんまり乗り気じゃないんだけどねー」

「えー!もったいないよ!!アタシ見に行くからさ★」

「ほんとに~?まぁ考えとくよ」

「うん、楽しみにしてる」

そんな話をしているうちにトレーナーさんが来てレッスンが始まることになった

そして次の日


「北条さん!!昨日の話考えてくれた!?」

昨日私に話しかけてきた文化祭実行委員の人が、また今日も声をかけてきた

「北条さんがライブしてくれたらきっといいライブになると思うの!!」

「だからその話は事務所に聞いてもらわないと…」

「この間のライブ見たよ!!すっごくよかった!!」

ライブというのはこの間アタシがついに小さいながらもライブをやったときのことだろう

「へぇ、見てくれたんだ。それはありがとう」

「それで、やっぱりこの学校にも北条さんのファンはたくさんいると思うの」

それについてはあたしもそう思ってはいた

最近アタシ宛てに机の中にファンレターが入っていたり

教室まで来て手渡しされたり

みんなほんとによく見ていると思う

「やっぱり北条さんがライブしてくれたら盛り上がること間違いなし!!」

「そこまで言ってくれたのはうれしいんだけど、もうちょっと考えさせてもらえないかな」

実行委員会の人は目を丸くし、その後すぐに笑顔に戻った

「考えてくれるの!?」

「ちょっとだけね、アタシ自身もちょっと興味でできた」

「ほんとに!!?」

「でもほんとに事務所の人に聞いてみないとわからないから、返答は待ってほしいかな」

「うん!!わかった!!」

その日はそう言って委員会の人と別れた

実際アタシ自身話をしたライブは楽しかった

その時の感動がずっと頭の中に残っている

けどそんなお仕事は滅多に来るようなものではない

これはチャンスなのでは?

そんな考えがまたアタシの頭の中でもやもやし出した

「プロデューサー、ちょっといい…かな?」

結局今日も事務所までの間ずっと頭の中に残ってしまい

事務所に着いたとたんプロデューサーに相談することにした

「んー、どうした北条、なんか用か?」

プロデューサーはカタカタと叩いていたパソコンを閉じ

アタシの方へ向き直した

「あのさ、学校の人に文化祭に出ないかといわれまして…」

「文化祭?ステージにか?」

「うん、そうらしい」

「北条は出たいのか?そのステージ」

「うーん、すごく出たい…って訳じゃないけどライブの機会があるなら立ってみたいってのが本音かな」

「ライブかぁ…ライブねぇ…」

プロデューサーさんは何か少し考え込むようにパソコンを弄りだした

「やっぱり…だめ、かな?」

「いんや?だめではない…けど」

「けど?」

「うーん、あっ!!そうか!!」

プロデューサーは何かを思いついたように立ち上がりにやりと笑う

「え?なになに?」

「話は変わるが北条、おまえにいい話があるんだがどうだ?」

「いい…話…?」

「え!?結局出てくれるの!?」

今日は自分から委員会の会議をしているという部屋に行き話をすることにした

「うん、事務所の人に聞いてみたら案外OKだったらしい」

昨日事務所でプロデューサーには許可をしてもらえている

「それでね、アタシが出るのに条件って言うかお願いがあるの」

「お願い?」

「テレビの取材が入ったりするかもしれないから、うちの事務所の人と話をしてほしいの」

「それくらいはやりますよ!!はぁ…北条さんがライブしてくれるのかぁ」

委員会の人は恍惚の表情を浮かべアタシの手を握ってきた

「ありがとうね!!」

委員会の人はうれしそうにアタシの手をぶんぶんと振り回す

ぶんぶん振り回される手を見ながら昨日のプロデューサーの話を思い出した

「いい話ってなに?」

「実はこの間のライブの反響がよくてなぁ

実はテレビ取材とかの話もちらほら来てるんだ」

「テレビ!?ほんとに!!?」

「あぁ、それでちょっといい話がたくさん来てるんだ、新曲とかな」

「新曲もあるの!?」

「そう、だから今回そのライブ逆に利用しよう」

「利用?」

「あぁ、せっかくだからテレビ取材も入れて新曲の発表もしたらいいじゃないか」

「それいい!!」

「だろ?」

「ちなみに新曲ってできてるの?」

「一応な、覚えるの時間かかりそうか?文化祭まであと何日だっけ?」

「えっと11月のはじめの方だから半月くらいかな?」

「行けそうか?」

「もちろん!!」

アタシは掌をグッと握りしめプロデューサーに向けた

「やる気は十分みたいだな」

「当然!!」

「オッケー、じゃあ明日も学校あるだろ?そこでその委員の人に俺に連絡くれっていっといて」

そう言ってプロデューサーは自分の名刺と白いCDを渡してくる

「何このCD」

「なにって…新曲いらないのか?」

アタシはプロデューサーの手からCDをひったくりすぐに鞄の中に隠す

「ありがと!!」

アタシは顔がにやけているのを隠せない

「ふふっ」

「あっ、CDは事務所のレコーダー使ってくれていいからな」

「はーい」

そんな感じでアタシは文化祭のライブに出ることになった

ライブまでの半月アタシは自分でも驚くくらい真剣にレッスンに臨んだ

もう一度あの景色を見たいから

そして文化祭当日

「みんなー今日は来てくれてありがとー」

アタシはステージの横で何を話そうかについて悩んでいた

せっかく学校でやるんだったら学校での生活について話そうかな…

でもみんなが知っている話しても面白くないかな…

そんなことを考えているうちにプロデューサーと文化祭委員の人が側に来る

「北条さん今日はありがとうね」

「ううん、こっちこそありがとう」

文化祭委員の人は以前見せたような感じで目を丸くする

「アタシにこんな機会を作ってくれて、感謝してる」

「いえいえ、そんなことないですよ」

アタシと委員の人はお互いに笑い合う

「まぁ今日はどっきりもあるしな!」

プロデューサーはすごくいい笑顔でそう言う

きっと新曲発表のことだろう

ワァァァァァァァアア!!!!

「みんなぁー!!今日は来てくれてありがとー!!!」

アタシは一つ目の持ち歌『薄荷』を歌いきり

アタシのイメージカラーなのか青色のペンライトに染まる観客席を見て

アタシは満足げな顔を浮かべる

「さて…今日はみんなにサプライズがあるんだ」

アタシは観客席のみんなを見渡してそう告げる

その隣には担任の先生がいたり…

「なんかこういうの恥ずかしいな…」

アタシは一言つぶやき

「今日は…新しい曲を歌います」

観客がざわめく

「アタシをこんないい舞台に立たせてくれた文化祭委員のみんな、

こうやってアタシを応援してくれているみんなのために一生懸命歌います…聞いてください」

アタシは大きく息を吸い

ここまで一生懸命に練習してきた日々を思い出しながら新曲の名前を口にする


「Frozen Tears」

キラキラ輝いている観客席を見ながら心を込めて歌い上げる

文化委員の人とプロデューサーが作ってくれたこのライブ

絶対いいものにしたい

サビに入り後ろの人まで届けようと顔を上げたときに

ふと、入り口付近に立っているアタシに声をかけてくれた文化祭委員の人が見える

その近くにはプロデューサーもいる

みんながアタシをみてアタシを応援してくれているんだ…

そう思うとなぜか泣けてきそうになった

こんな身近にも応援してくれている人…いたんだ

目を閉じて最後まで心を込めて歌いきる

「凍った星が瞬く夜~♪」

『Frozen Tears』を歌いきりゆっくり目を開ける

みんなから沸き上がる歓声

「みんな!!ありがとー!!!」

感動…届けられたかな…

そう想い、入り口にいるプロデューサーを見る

すると横に黄色い髪の毛の女の子が見えた

(美嘉の…妹…?)

「さぁ!!今日はスペシャルゲストをお招きしてやっています文化祭ライブ!!」

司会を務めているいつもお昼の放送をしている放送部の子の声が聞こえる

スペシャルゲストって…恥ずかしいなぁ

「なんと!!今日はもう一人、来てくれています!!」

え?何それ、アタシそれ聞いてないよ?

「皆さん!!会場入り口の方をご覧くださーい!!」

司会の言うがままに観客は振り返る

アタシも真正面の入り口を見つめる

そこには桃色の髪の毛をした彼女が立っていた

「スペシャルゲスト二人目はぁ!城ヶ崎美嘉さんでーす!!」

「えええぇぇぇぇぇぇ!!!!」

観客が今日一番の歓声を上げる

アタシも素の声で驚いてしまった

え?なんでいるの?

そういえばライブやるって伝えてなかったはずだけど…

「やっほー加蓮!!来ちゃった★」

美嘉は花道を通ってステージ上まで上がってくる

「さぁみんなー盛り上がっていくよー!!」

アタシは訳がわからずにただ呆然としていた

観客のワーという歓声に満足したのか

美嘉はアタシの方を振り返ってにっこりと微笑み

「自分のこと信じれるようになった?」

あ…そっか

きっとプロデューサーはアタシに自信をつけるためにOKを出したんだ…

こんなにたくさんの人がたくさん応援してくれていることを私に伝えたかったんだ…

美嘉の一言はあたしの心に溶け込み代わりに涙になって溢れ出る

「うん…うんっ!!!」

私は美嘉の言葉に力強く返事をし

流れる涙もそのままに再び観客の方を見てマイクをかまえる

「みんな!!まだまだいっくよー!!!」

これが今の私の全力!!

みんなにもっと届きますように…

ここまでのお付き合いありがとうございました

また次回お会いしましょう

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