「菜々、17年ゼミなんですよ」【モバマス 安部菜々】 (19)

トンデモ設定・展開が苦手な方はそっ閉じで。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1375858540

   / ̄ ̄\      /⌒  ⌒\      γ         ヽ、
 / =ミミ'、彡\   /ィ'tテヽ: :ィ'tテヽ\    /           ヽ
 |  イて)ゝ /て)/::::: ` ̄''":::` ̄´  \ γ  人 人 人 人  ヽ
 |     f ,、_,., ) |     f ,、_,., )     | (  /ミミヽ  rz彡‐\  )  …
 |   、_ _ _ノ \.   .:.:,._‐_‐_、:.:..  /  \:/ 、_tッ、,゙ ' r' rtッ_‐ァ'\ノ

 |     ー  }   ( r .'ヾ'三'シ`  |     |  `ー 'ノ  !、`ー '   | 
 ヽ    `"´ } ̄ ̄ ヽ○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\\   f ,、_,., )、   /
  ヽ     ノ     \きったねぇケツだなぁww / 竺=ァ‐、 
   /    く \ |__| _ ..._...\>>1初めてかここは /     / /
   |  .  \ \ \ /  ヽオイ勃ってきてるぞ/      (__ノ
    |    |ヽ、二⌒)、^
        {`丶、

ミーンミンミンミン……




こっちはクソ暑さに参っているというのに、

盛り続けるセミさんにはほとほと感心する。

この炎天下、鳴き続ける体力が、

あの小さな体のどこに隠れているのか。

ひとえに、性欲の為せる業だろうか。

セミの鳴き声というのは、求愛行動だそうだ。

オスが一生懸命に鳴くことで、

自分の子を産んでくれるメスを惹きつける。

顔、財産、人格、服装、趣味、エトセトラ。

人間ならば、伴侶を選ぶ基準は多様だけれど、

鳴き声が唯一の武器であるセミにとっては、

たとえ干からびようとも鳴き続けるしかないのだろう。

それに、いったん地上に出てきて羽化すれば、

成虫として、一か月と生きることはできない。

個体によっては百年も生きる人間に比べれば、

ほんの刹那しか生きられないからこそ、

激しく命を燃やして生きているのではないか。

そんなセミの中に、とても個性的な種のセミがいる。

17年ゼミという、周期ゼミの一種で、

アメリカ北部にしか生息しない、非常に珍しい種だ。

ある個体が、地上に出てきて成虫になるまで、17年。

その子孫が17年おきに、大量発生を続ける。

今から僕が語ろうと思っているのはそんな、

日本ではお目に掛かれないセミにまつわる話だ。

現在時刻は、18時を回った所だ。

風通しの為に窓を開けている所為で、

庭の梅の木に留まったアブラゼミの鳴き声が耳をつんざくほどだ。

「クーラー壊れててごめんなさい、Pさん……」

「いえ、大丈夫ですよ。扇風機で十分です」

昔ながらの瓦屋根の一軒家の二階。

本来なら実家に帰る筈の、お盆真っ只中。

僕は、ウサミン星に――つまり、菜々さんの自宅に招かれていた。

期待

これは夢なのか、現実なのか・・・。

総武線各駅停車という名の銀河鉄道に揺られ、1時間弱。

○○駅から徒歩で数分の場所に、ウサミン星はあった。

一見すると、トップアイドルが住んでいるようには、

とても思えないように見えるけれど、

しかし、菜々さんの自宅と言われれば納得するような家。

自分の実家を思い出させるような安心感がある。

僕が受けた印象は、そういった感じだった。

家の周りは2メートルを越える生垣に囲まれており、

正面口である門の上からは、クロマツの枝が顔を出している。

門をくぐると、小さいながらも庭園が広がっていた。

まず目に入ってきたのは、右手にある大きな木だった。

「これって、梅ですよね?」

僕は立ち止まって、菜々さんに問いかける。

「そうですよー! ウサミン星の固有種で、今年もいっぱい実が取れたんですよっ!」

「それじゃ、梅干しでも作ったり?」

「梅酒のほうがおススメですよ! 菜々も味見してかくに……」

『しまった!』という顔の菜々さんだったけれど、

「大丈夫ですよ。僕しかいませんからね」

と言うと、それもそうですね、と表情を緩めるのだった。

庭には芝生が広がっており、5、6個の敷石が玄関まで続く。

菜々さんその上を、ぴょん、ぴょん、と跳ねて行く。

「Pさんも、早く来てくださいっ!」

僕は、菜々さんのはじけるような笑顔に引き寄せられた。

しかし途中、まだ青い紅葉の木が脇にあったのだけれど、

僕がそばを通ると、セミが急に飛んで、驚いてしまった。

菜々さんも通ったはずなのに……と、不思議に思った。

欝展開じゃないよね?

僕が玄関前に着くと、菜々さんは鞄を漁り始めた。

「あれ、ご両親は留守ですか?」

「は、はい、そうなんですよ! ちょうど旅行に行っちゃってて、あはは……」

つまり、この家で菜々さんと二人きりということだ。

不意に胸の鼓動が高まるのを感じた。


「あの、Pさん? どうかしましたか……?」

「いえ、ちょっとぼーっとしました、あはは……」

かちゃり、と家の鍵が開いて、ウサミン星のゲートが開く。

僕らは挨拶をしたものの、返答はある筈もない。

しかし、ご両親がお盆に旅行なんて……

本当に、タイミングが悪かっただけなのだろうか?

玄関のほぼ正面には、(家と同じ種類の)階段がある。

その突き当たりには窓があって、斜陽が注いでくる。

それを眺めていると、改めて夜が近いことがわかる。

果たして本当に、お邪魔しても良かったのかと自問してしまう。

「Pさん、先にウサミンルームに行っててもらえますか?」

「え、そんな、菜々さんと一緒に行きますよ」

「お茶とかお菓子とか持っていかないといけませんから! えっと、階段あがって右に曲がって、一番奥の部屋がウサミンルームですっ♪」

背中を押されて、階段の方に追いやられてしまう。

ここは素直に従って、菜々さんを待つしか選択肢はなさそうだ。

僕は、ぎしぎしと軋む階段を、ゆっくりと上がった。

言われた通りに右に曲がって、突き当たりまで進むと、

『ウサミンルーム』と描かれたプレートが下がっている部屋があった。

ここが間違いなく、菜々さんの部屋だろう。

しかし、いざ入ろうとドアノブに手を掛けたところで、僕はフリーズした。

いくら許可されたとしても、女性の部屋に勝手に入るのは躊躇われたのだ。

僕は、菜々さんが来るまで、後ろの窓からの景色を眺めていることに決めた。

見えるのは、この家の裏庭。そして、この家に接している家の庭だ。

比べると、ウサミン星は他の星よりも、緑が豊かだった。

名前は分からないが、僕の実家で見たことのある植物もある。

菜々さんの祖父母か、あるいは両親か。大穴で、菜々さん自身が育てたという線もある。

僕は、祖母が濃厚だと踏んだ。我が家がそうだった、という短絡的な理由で。

しばらくすると、菜々さんが階段を上ってきた。

「あれ、入っててくれてもよかったんですよ?」

「すいません、窓からの眺めが良かったもので、見入ってました」

「窓からの眺め……そんなに良いですか?」

「ええ、すごく。なんだか、実家に帰ったような気持ちになりました」

「そ、そうなんですか、あはは……」

菜々さんは複雑そうな顔で、乾いた笑い声をあげた。

「あ、それ持ちますよ。やっぱり菜々さんが先に部屋に入ってください」

そう言うと、彼女は持ってきたお盆を僕に渡し、部屋へと入っていった。

僕もお盆をひっくり返さないように、ゆっくりと続いた。

>>12
鬱展開ではないと思います

日光で焼けてくすんだ畳や、幾つもあつはぎのある障子から、

なかなか年季の入った部屋だということが読み取れる。

しかし、それに似つかわしくないヌイグルミや衣装の数々が、

えも言われぬちぐはぐさを生み出していて、可笑しくなった。

「な、何か変ですか? 菜々の部屋……」

菜々さんはびくびくしながら、僕の顔色をうかがった。

「いえ、菜々さんらしい部屋で、かわ……素敵だなぁって」

かわいい、と素直に褒めてあげたかったけれど、

安易にその言葉を使うことを窘められた記憶が、脳裏をよぎった。

「す、素敵ですか……えへへ」

それが正解かは分からないけれど、少なくとも菜々さんは喜んでくれたようだ。

菜々さんの一人称が……
スイマセン建て直します

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom