「菜々、17年ゼミなんですよ」【モバマス 安部菜々】 (19)

トンデモ設定・展開が苦手な方はそっ閉じで。

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ミーンミンミンミン……




こっちはクソ暑さに参っているというのに、

盛り続けるセミさんにはほとほと感心する。

この炎天下、鳴き続ける体力が、

あの小さな体のどこに隠れているのか。

ひとえに、性欲の為せる業だろうか。

セミの鳴き声というのは、求愛行動だそうだ。

オスが一生懸命に鳴くことで、

自分の子を産んでくれるメスを惹きつける。

顔、財産、人格、服装、趣味、エトセトラ。

人間ならば、伴侶を選ぶ基準は多様だけれど、

鳴き声が唯一の武器であるセミにとっては、

たとえ干からびようとも鳴き続けるしかないのだろう。

それに、いったん地上に出てきて羽化すれば、

成虫として、一か月と生きることはできない。

個体によっては百年も生きる人間に比べれば、

ほんの刹那しか生きられないからこそ、

激しく命を燃やして生きているのではないか。

そんなセミの中に、とても個性的な種のセミがいる。

17年ゼミという、周期ゼミの一種で、

アメリカ北部にしか生息しない、非常に珍しい種だ。

ある個体が、地上に出てきて成虫になるまで、17年。

その子孫が17年おきに、大量発生を続ける。

今から僕が語ろうと思っているのはそんな、

日本ではお目に掛かれないセミにまつわる話だ。

現在時刻は、18時を回った所だ。

風通しの為に窓を開けている所為で、

庭の梅の木に留まったアブラゼミの鳴き声が耳をつんざくほどだ。

「クーラー壊れててごめんなさい、Pさん……」

「いえ、大丈夫ですよ。扇風機で十分です」

昔ながらの瓦屋根の一軒家の二階。

本来なら実家に帰る筈の、お盆真っ只中。

僕は、ウサミン星に――つまり、菜々さんの自宅に招かれていた。

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