【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十輪目】 (1000)

このスレは安価で

久遠天乃は勇者である
結城友奈は勇者である
鷲尾須美は勇者である
乃木若葉は勇者である
久遠陽乃は……である?

を遊ぶゲーム形式なスレです


目的


・バーテックスの殲滅
・伊集院家の説得
・救われる

安価

・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります


日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2


能力
HP MP SP 防御 素早 射撃 格闘 回避 命中 
この9個の能力でステータスを設定

HP:体力。0になると死亡(鷲尾、乃木) 友奈世代のHP最低値は基本10
MP:満開するために必要なポイント。HP以外のステータスが倍になる
防御:防御力。攻撃を受けた際の被ダメージ計算に用いる
素早:素早さ。行動優先順位に用いる
射撃:射撃技量。射撃技のダメージ底上げ
格闘:格闘技量。格闘技のダメージ底上げ
回避:回避力。回避力計算に用いる
命中:命中率。技の命中精度に用いる

※HPに関しては鷲尾ストーリーでは0=死になります


戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%


wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】  不定期更新 ※前周はこちらに

前スレ
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【一輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【九輪目】
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√8月4日目 (病室)朝 ※木曜日


「申し訳有りません」

大赦から連絡を任されているであろう女性は、天乃に対して深く頭を下げる

普段は連絡を任されている瞳ではなく、会った事もないような女性職員による連絡

それが、不許可であることに苛立ちそうな感覚を覚える天乃は、

落ち着こうと一息ついて、目を向ける

天乃「どうして?」

「治療に専念するためと、伺っています」

天乃「意識がないの? それほど深刻なの?」

「いえ、意識はありますが……その、すみません。私も詳細の方は聞かされていませんので」

天乃「…………」

どこかで何かが削れる音がする。ぎりぎりと。

女性職員の緊張と恐怖に満ちた表情、泣き出しそうな瞳が天乃へと向く

まだ若い、研修生、新人そんな若々しさのある女性職員がなぜ、勇者への報告を任されたのか

天乃「……そういうこと」


思った以上に低い声だった

思った以上に嫌な感情が含まれてしまった声だった

誰が悪いのか、何が悪いのか

何ゆえこのような扱いをされなければいけないのか

天乃「ふふっ……そう。そうね。私は貴女のような人に対して厳しく当たれないだろうと。そう、そう思われていると」

「ひっ」

天乃「大赦は、どれだけ……あぁ……もう……」

布を引き裂きそうな力で握り締めていた手が、顔を覆う

嫌な感情、悪い感情

湧き上がるそれらが押さえ込める限界に達しそうで。

天乃「貴女は、別に悪くはないのだけど。きっと、私は大赦に信頼されて。貴女は大丈夫と任されたのだろうけど」

表情のわからない天乃が、

くぐもって、震えている声しか出さない天乃が

女性には得体の何かにしか思えなくて、尻餅をつく

震えた体は動くことを拒絶する

何かをすること。それさえも火薬庫でライターを使うようなことのような気がして

天乃「出て行って……くれる?」

「ぅ……ぁ」

低く冷めた声が心臓を握り締めた


天乃「……ねぇ、お願い」

女性からかろうじて見える横顔を覆う左手がゆらりと落ちて、真っ赤な瞳が女性を見る

その目は酷く淀んでいて、見えているなんて事はなさそうで

けれども、女性は恐怖を感じた。いや、恐怖以上の何かを感じた

ポロポロと、瞳から零れ落ちていくものを拭うこと、気に留めることすら女性には出来なくて

千景「何をしてるの……?」

どこからともなく現れた少女の問いに顔を上げると

その少女、千景は呆れたようにため息をついて、女性を軽々と引き上げて病室の外へと引っ張り

病室の外、常設された椅子の上に座らせた

千景「ここで少し休んだら、さっさと報告をして帰ることね」

「で、でもまだ、私……」

千景「……大赦の【信頼】と、言っていたでしょう?」

「え?」

千景「アレは【私のことを甘く見ているのね】という意味よ。残念だけれど。貴女でも普通に殺されるわ」

千景は困り果てたように零すと、女性を一瞥して首を横に振る

仕事を頑張ろうという姿勢はいいことだろうが、生き急ぐべきではない


千景「…………」

「!」

病室の中から、押し殺されたような、覆い隠されたような

さっきまで冷酷な雰囲気を放っていた少女の嗚咽があふれ出してくる

どうして、なんで。と、疑問が零れ、空気が嘆きに波打つ

それと同時に、

意を決したような面持ちをした少女が部屋を出てきて千景がその前に立ちはだかる

若葉「退いてくれ」

千景「……一時の感情に流されるなら、私はそれを容認できないわ」

若葉「千景」

千景「私は精霊であって人間ではないわ。だから――久遠さんを守るのよ」

その言葉に反応した若葉は、

ゆらりと体を揺らしながら、千景へと目を向ける

その瞳は活気などない。

悲しさと、怒りに狂わされた危うい瞳

若葉「大赦は私達の罪だ……私達が生み出してしまった汚点だ! ならば、私が手を下さなければならないだろう!」

若葉の怒りが弾けて、悲しみが迸る

強く噛み締めただろう唇は赤く充血して、握り締めていただろう手には爪あとが深く残る

千景「だから私はここにいるのよ。それが久遠さんの罪にならないように」


若葉「退いてくれ……千景!」

千景「私はもう道を開けたはずよ。それなのになぜ、ここに貴女がいるの、乃木さん」

若葉「…………」

千景「自分がいるべき場所もわからないのに、私の忠告を無視したというの?」

千景は半ば怒りのような感情を見せながら

しかし、あくまでも冷静さを保った表情で問いかける

若葉は大赦に抗議するつもりなのだ

理由も話さずに夏凜から天乃を遠ざけようとする

そんな、冷酷な組織に。

だがそれは、何も良いことにはならないと千景は思う

むしろ、天乃の精霊という立場にある若葉の行動は、天乃の責任にされ

より、立場が悪くなる可能性さえある。

いや、そうならないわけがない

だから、千景は止める。止めなければならない

自分が過去に己の思いゆえに過ちを犯しているのだと知っているから

それが正しいことに繋がらなかった悲劇を聞いているから

千景「引き裂かれた孤独を、今寄り添える貴女が埋めないで誰が埋めれば良いの……?」

若葉「っ……」

千景「どうにかすべき。貴女のそれは正しいかもしれないわ。けれど。【今】正しいのはなに?」

それを良く考えて。

そう告げた千景は、敵意の薄れた若葉が病室へと消えるのを見送って

驚きに戸惑い、恐怖に満ちた表情を浮かべる女性に立ち去ることを求めた


若葉「……天乃」

晴れた空とは裏腹にどんよりと重苦しい空気

明るいはずなのに暗く感じる室内

その中、ベッドの上にいる天乃へと若葉は声をかける

天乃「若葉……私は……っ」

見えるのは、泣きはらした少女の顔

幸せな顔が見たいのだと思っていたのに、

そうしたいと思っていたのに、目の前にあるのは、見たくないもの。させたくない表情

若葉「天乃っ」

駆け寄った。

力加減も忘れて、ただ想いのままに抱きしめた

湧き上がる怒りを押さえ込んで、悲しみを押さえ込んで、

零れ落ちる涙を天乃の髪に伝わせる

若葉「悪くない、天乃は何も悪くないんだ……」

天乃「でも……私が穢れているから。夏凜には会えないんでしょう……?」

若葉「それでも悪くない。天乃は何も悪くないんだ」


大赦は、天乃が穢れているから夏凜と会わせる事を許さなかった

治療に専念しているというのも嘘ではないが

その弱った状態に穢れが悪影響を及ぼすのではないかと、警戒しているのだ

世界のために頑張った

愛する人々のために頑張った

その代償に体を蝕まれ、その報酬が孤独

そんなことはあって良いはずがない

天乃「うっ……うぅ……」

若葉「……すまない。私がいる。今は、私がいるからな」

心の弱りきった天乃には、人が離れていく不安と、恐怖、

そして今目の前にある孤独を堪えるほどの力は無かったのだ

嗚咽を零す天乃を若葉は強く抱きしめて、感じる罪悪感を噛み締める

千景がとめてくれなければ、きっと過ちを犯していた

千景のような凶行に走ったかもしれない

もしかしたら、それ以上のことも

そんなことが、天乃に堪えられたのだろうか

考えて、振り払う

若葉「そんな思いはさせるものか……させて、良いわけがないんだ」


√8月4日目 (病室)昼 ※木曜日


01~10 
11~20 千景
21~30 友奈
31~40 
41~50 沙織
51~60
61~70 九尾
71~80
81~90 悪五郎
91~00 

↓1のコンマ 

※ぞろ目夏凜
※空白 若葉



では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



夏凜「なーに泣いてんのよ。馬鹿じゃないの?」

天乃「っ!」

夏凜「大赦ごときが、私とあんたを引き離せるかっての」ギュッ

天乃「夏凜……っ」

夏凜「ったく……しょーがないわねぇ」ナデナデ


では、少しずつ


√8月4日目 (病室)昼 ※木曜日


天乃「すぅ……すぅ……」

若葉「……こうして見ていると、歳不相応に幼く見えるな」

身長が1年生の樹と同じで、

それは平均的に言えば小学生の枠にさえ収まってしまうほどのもの

ベッドの中に入って寝息を立てていれば、それはもう中学3年生の女の子ではなく

もっと幼いとさえ思う……そして

世界はそんな小さな少女に過酷な運命を背負わせているのだと

より強く、不快感を覚えてしまう

若葉「…………」

そっと頭を撫でて、顔にかかる前髪を指で払ってあげると、

泣きはらし、赤色に染まってしまった目元が見えた

普段なら堪えられたかもしれない

平然としつつも、まったく大赦は。なんて、不平不満に内心の怒りをちらりと見せるくらいだったかもしれない

だが、今の天乃にはそんな精神的な余裕がなくて、泣いてしまって、縋ってしまって

若葉「穢れ……か」

深刻さを増していくその進行具合を不安に思う若葉は、

自分の手を握り締める小さな手を握り返して――

若葉「誰だ」

気配を感じて出入り口に向かって声をかける

若葉「生憎、今は休んでいるんだ。控えてくれ」


検査の医師であろうと、看護婦であろうと、通す気はないし、

大赦なんていうのは言語道断。そのつもりだったが。

「会いたいって泣き喚いてたんでしょ。しょーがないから来てやったのよ」

若葉「その声……」

聞き覚えのある声の主は扉を叩かずに病室の中に入ってきたけれど

その姿を見るや否や、若葉は警戒を解いて、笑みを浮かべる

若葉「やはり、夏凜か」

天乃が会いたがった、一番初めの恋人。三好夏凜

右目を邪魔する頬に張られたガーゼ

痛々しさを感じる両手足の包帯

まだ一日しか経過していないからか、隠されていない生傷はまだ赤い

その姿は痛々しく、過去、守れなかった勇者達の姿と重なりそうだったが

当事者は暢気に寝てるわけか。と、呆れたように言った夏凜のため息にはっとする

見えた夏凜の表情には、罪悪感と安堵があった

若葉「……怪我は、平気なのか?」

夏凜「まだ痛いわよ。動くと結構……でもま、それは私が自分で選んだことだし」

何か理不尽なことでついた傷なら、動かなかったかもしれない

いや、それでも動いたかもしれない

結局のところ、自分はそう言う人間なのだと夏凜は嘲笑するように笑みを浮かべて、首を横に振る


夏凜「べったりね」

若葉「……譲るべきだろうか」

ベッドに腰掛けて天乃に手を握られ、握り返している若葉は夏凜を見ずに呟く。

夏凜は天乃の恋人だが、きっと、自分が気持ちを打ち明けたことは知らない

だから、寄り添うべきは本来、夏凜であって若葉ではない。そう思う

しかし、夏凜は答えなく、小さく笑って

驚きに若葉が顔を上げると、困り顔の夏凜と目が合った

夏凜「別に気にしなくたって良いわよ。遅れたのは私。ここにいたのは若葉。ただそれだけなんだから」

若葉「…………」

夏凜「子供の泣きじゃくった騒がしさに付き合う程度には、お気に入りなんでしょ」

大人のように、感じた

少なくとも恋愛観は夏凜のほうが上なのだと若葉は思った

ゆっくりと天乃に近付いた夏凜は、天乃の見せる無防備な寝顔に微笑んで

若葉と同じように髪をなでて、泣きはらした目元に唇を噛む

夏凜「こうしてみるとほんと。子供のように見えるのよ」

若葉「同意だ。心を穏やかにしてくれる」

夏凜「赤ちゃん見てる感じ」

若葉「聞かれたら怒られるぞ」

夏凜「そのために来たんだし」


悪戯に笑って見せた夏凜の手元でピクリと天乃の体が反応し、

二色の瞳が少しずつ露わになっていく

夏凜「おはよ」

天乃「ぇ……?」

夏凜「休めた?」

天乃「夏凜……?」

寝起きの弱弱しい声がどこからか零れる

浮ついた現実感の中、頬に触れる手の感触だけが真実だった

優しさと、ぬくもりと、手入れの足りないちょっとかさついた肌

若葉に抱かれながら大泣きした、少し前とは違う目頭の熱

じわじわと、染め上げるような感覚で瞳から涙が零れ――夏凜の指が拭う

夏凜「また、そうやって」

天乃「だって」

夏凜「悪かったわよ。無茶して」

天乃が泣くのは夏凜が無茶したからではなく、

夏凜に会えなくなって、そして、こうして会えたから

どれだけ心が弱っているのかを察した夏凜は、笑みを浮かべて、天乃の頬を拭う


夏凜「本当は怒って欲しかったんだけど」

冗談めかして言ってみる

天乃はなにも返さない、それどころか今すぐにでも泣き出しそうで

夏凜「ごめん」

少し砕けた謝罪ではなく、しっかりと句を紡ぐ

柔肌を包む羊毛のように穏やかさを心がけて、

涙に濡れる瞳と濡れない瞳を見据えて、夏凜はそっと唇を重ねる

呼吸が続く最大時間の約半分程度

ただ、重ねるだけのキスをして、ゆっくり離れる

夏凜「っは」

天乃「ぅ」

またしたいと思った

また出来れば嬉しいと思った

もやもやとする何かを吹き飛ばす唇の感触

最後の一滴が天乃の瞳から流れ落ちるのを、夏凜は見送って

夏凜「生きた実感が、湧いてきた」

天乃「生きててくれた信憑性が増してきた」

夏凜「なら、もう泣くんじゃないわよ」

天乃「……ならもう、泣かせないで」

夏凜「努力はするわ」


天乃の願い、それは叶えて上げたいものだけれど

夏凜自身もそうできるのならばしたいものだけれど。

ここまで負傷しながらも、今回は辛勝だった

なのに負傷を避け、過度な力の使用まで避けるとなっては

もはや勝ち目がなくなると夏凜は考え拒絶する

天乃「……またあえなくなるのは嫌よ」

夏凜「私も嫌だから、何が何でも会いに来る」

いや、違う。そうじゃない

会えるとか、会えないとかそう言う問題ではない

そんな問題になる時点で、ダメなのだ

天乃からはなれた夏凜は、まだ感触の残る唇を引き締めて

呆然としているような天乃を見下ろす

以前、自分のことをボコボコにした鬼のような力強さは、そこにはない

夏凜「もうそんなこと考えなくて済むように……もっと、強くなるわ」

今すぐに強くなるなんてきっと無理だ

けれど、必ず強くなると夏凜は誓う

かつて見たあの鬼にすら勝てるくらいに。

そうでなければきっと、自分はまた泣かせてしまうから。


若葉「病室には戻らなくて平気なら、ここにいてくれ」

天乃からはなれる夏凜に、若葉は立ちはだかるように回りこんで願うと

どうでも良い事を思案するかのような気軽さで、夏凜は苦笑する

夏凜「戻らないわけには行かないのよねぇ……まぁ、来ちゃったけど」

夏凜自身、会いたかったのだ

心配させたから、不安にさせたから

きっと会いたいと思ってくれていて、会いたいと思っているから

互いの心のために、会わなければいけないと、思ったから

夏凜「天乃は? もう少し寝てたいんじゃないの?」

天乃「私……」

朝からもうすでに気のだるさはあって

泣きはらしたせいか、その疲れは抜けるどころか増していて

正直に言えば、体は寝たいと思うけれど……



1、一緒に寝てくれないの?
2、なら、寝るまで
3、ううん、寝ないわ
4、戻らなくたって良いじゃない
5、手を掴む


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



東郷「えっちをすると、よく眠れるそうですよ」

沙織「よし来た」

天乃「え? えっ、ちょ、やっ――」

千景「……はぁ。若くて羨ましいわね」

若葉「千景も若いだろう?」

千景「郡千景、300歳よ」

夏凜「良いから手を貸しなさいよ」


では、少しずつ


天乃「それなら、夏凜……寝るまで一緒に居て」

夏凜「子供か」

子守唄や絵本が必要なんじゃないかとまで茶化そうかと考え、控える

幼児退行したというよりは、精神的に脆くなりすぎているだけで

そしてなにより、その原因の一部は自分だと、思っているからだ

天乃「だめ?」

夏凜「いつまでも寝ないとか、ズルすんじゃないわよ」

天乃「それは考えてなかった」

夏凜「なら良いけど」

天乃「だから今から考えるのも吝かじゃないわ」

夏凜「はいはい」

クスクスと笑う天乃に呆れたため息をついた夏凜は、

ベッド脇に腰を下ろして、天乃の額に触れる

ほんの少し巻き込んだ髪がざらざらとした手のひらを擽って

そのこそばゆさを堪えながら、夏凜は笑みを浮かべる


夏凜「小説を読んでると、たまに母親がこんな感じのことをする描写があるのよ」

天乃「…………」

夏凜「母は愛おしそうに子の髪を撫でる。私には余り見せない、自愛に満ちた母親の顔だった。ってね」

記憶の中にある小説の一文を抜き出した夏凜は、

ふと、天乃の方に目を向けて、橙色の瞳に映る自分を覗き込む

果たして、自分はどんな表情なのだろうか

そんな母親のような表情なのだろうか

天乃「なに?」

夏凜「あんたの目に見える私はどんな顔してんのかと思って」

天乃「母親っぽく見える。って、言うと嬉しい?」

夏凜「ちょっと複雑」

母親のように見えるということが、そのまま歳をとって見えるといわれているように感じるわけではないけれど。

そんな感じにも取れなくはないし、

そもそも関係はそんなものじゃない

もしもそうなら、自分達は所謂近親相姦なるものに手を出していることになる

夏凜「……ま、それを悪く言う気は無いけど」

天乃「?」

夏凜「いや、なんでもない」

身近なところにそこに手を出しかねない。もしくはもう出している人たちがいる

だからとは言わないが、夏凜はそんな愛情の形を否定する気は、なかった


夏凜「なんだか、今の天乃は子供みたいに思えるのよ」

天乃「……嫌?」

夏凜「からかわれてるなら嫌だけど。そうじゃないなら全然」

天乃「どっちだと思う?」

夏凜「傍にいるのが答え」

率直に答えるのはなぜだか気恥ずかしく思って、

夏凜は逃げの答えを返して天乃の頭から手を離したけれど――

天乃「ダメ」

天乃の手に捕まえられて、離れかけた手の動きが止まる

夏凜「…………」

ただ手を離しただけだった

傍からいなくなるつもりもなかった

なのに、不安に満ちた表情で、恐怖に追われた瞳で、天乃は手を掴む

その弱弱しさに底知れない不安を覚えながら

夏凜はそれを振り払い、

しかしながら逃さないようにと手を握り返す

夏凜「じゃぁ、握ってるから」

天乃「……うん」


ああ、子供だと。夏凜は思った

今は、今だけは、きっと

久遠天乃という勇者ではなく、久遠天乃という女の子なのだと

夏凜はそう考えて、何もしていない右手で天乃の額の髪を拭うように払って、キスをする

ほんのりと熱い

微熱のような、生ぬるくも思う感触

それは無意識だった

巡る空気のように、極当たり前のような行動だった

天乃「っ」

夏凜「ごめん、つい」

唇じゃないから良いでしょ。などと思う夏凜は、

天乃が不意を突いた行動にはめっぽう弱いことを思い出して、謝る

天乃「寝られなく、なるから……」

夏凜「悪かったってば」

天乃「ばか」

夏凜「どうせ馬鹿よ。私は」

顔を赤らめた天乃の可愛らしい不満の声に、

夏凜は笑みを浮かべながら答えて、手を握る

握れば握り返す。握られれば、握り返す

いつの間にか、若葉はいなかった

そんな気遣い要らなかったのにと、夏凜は思う


夏凜「良いから寝ろ」

天乃「寝たら、帰っちゃうでしょ?」

夏凜「少しは居てやるから、休みなさいよ。ほんと、頼むから」

戦いに参加したわけではないが、

天乃は常に穢れに蝕まれて、心身共にすり減らしてしまっているのだ

だから、休んで欲しいという夏凜に天乃は目を向けて、手を握る

天乃「夏凜も一緒に寝れば良いのに」

夏凜「……………」

心配なのだ。不安なのだ

嫌な夢を見てしまわないか、

眠ることができずに起きてしまわないか

休むことができずにただ疲弊していってしまわないか

そんな想いを飲み込んで、たった一言に詰め込む

夏凜「あんたが寝るまで寝られるかっての」

天乃「でも、起きたら居ないんでしょ?」

夏凜「そこまで面倒見れるかは解らないけど」


そこに関しては不可抗力というか、どうしようもないことなのだ

原因は夏凜にあるかもしれないが、

怪我の経過観察や治療は避けられないし

そのために用意された部屋がある。設備がある

だから、ずっとここに居るのは殆ど不可能な話で。

夏凜「私の退院が遅くなっても良いなら、居てあげるけど」

天乃「……私も入院長引きそうなのよ」

夏凜「おい」

天乃「冗談よ」

本気にしないで。と

茶化すように静かな笑みを浮かべながら、天乃はゆっくりと瞳を閉じる

握り締めた夏凜の手を自分の胸元へと、近づけて。

天乃「お休み……ごめんね」

夏凜「………気にしなくて良いわよ」


それからしばらくして天乃の手から力が抜けて、

病室には心地良く思う小さな寝息が溶け込み始めた

天乃「すー……すー……」

夏凜「…………」

そうっと抜き取った熱の篭ったその手を見つめて、夏凜は声なく笑う

天乃の温もり、天乃の優しさ

熱い夏の日でも、これはまったく苦にはならない

そう思い、そう感じることが、なんだかおかしくて。

夏凜「おやすみ、天乃」

蝋燭の灯火のような声で囁き、そっと離れると

暗くなりつつあった病室のもっとも暗い角から影が伸びて

千景「悪いわね……送るわ」

夏凜「このくらい平気よ。それに私自身、千景に感謝してるから」


感謝を述べる千景に対して薄く笑みを浮かべた夏凜は、

一瞬、天乃へと振り向いて、千景へと目を向け直す

夏凜「言われなきゃきっと、私はここまで知らなかった」

千景が呼びに来てくれなければ、きっと

夏凜は動きたくても動けないまま

治療のためだからと言いくるめられて、我慢していたかもしれない

だから、ここに来たことを感謝されても、困るのだ

夏凜「……千景」

千景「何かしら」

夏凜「天乃は千景のことも人間として見る。千景がどれだけ言っても。ね」

千景「…………」

夏凜「だから、無理強いはしないで上げて欲しいのよ。命令に忠実であるべき精霊だと思うなら」


千景が主のためにと行動するような正しい精霊としてあろうとしているからこそ

天乃のために、そうあるべきなのだと夏凜は願う

千景「……それは結局、苦しめることになるわ。私達を貴女と同等に見るのは危険よ」

夏凜「天乃にはそんなことできやしないのよ。長所であり短所。天乃の弱点」

夏凜は困り果てたように言うと、

そろそろ戻らないと。と、呟いて千景の肩を軽く叩き、病室から出て行く

その後姿を目で追った千景は天乃へと視線を移して、息をつく

千景「私達は無茶してこそ。無理してこそ。そういう存在よ……いざという時、盾になれないような精霊なんて……」

自分の手を見つめ、握り、そして天乃へと目を向ける

そうして盾になった時、自分が守れるのは天乃の何なのか。

千景「…………」

天乃の見せた弱さ、

傷つき、心の磨り減ってしまった姿を思い出す

そこに導くのは、自分の押し通した無理であり、無茶だとしたら

千景「何も、守れていない……?」

迷い、躊躇い、模索する

自分は何が正しいのか

精霊として、彼女の思う人間として、郡千景本人として

一体、どうすることが正しいのか

足元さえも見えない暗闇の中

進むべき道を見失って、少女は佇む

√ 8月4日目  夕(病室) ※木曜日


01~10 千景
11~20 
21~30 樹
31~40 
41~50 九尾

51~60  友奈
61~70 
71~80 若葉

81~90 
91~00  悪五郎

↓1のコンマ 

※ゾロ目  千景(特殊)


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


友奈「……お邪魔しまーす」

天乃「zzz……」

友奈「寝てる……」

友奈「…………」ゴクリ

東郷「友奈ちゃん。ご飯は食べたら太るけれど、女の子は食べても痩せるのよ。だから安心して食べて良いわ」

友奈「え? どういうこと……?」


では、少しずつ


√8月4日目 (病室)夕 ※木曜日


本当は来るべきかどうか迷った

夏凜よりは軽度で済んだとは言っても、生々しい擦り傷はあちこちに見えるし、

腕や足には包帯が巻かれてしまっている

勇者としては軽傷だとしても、傍から見れば重傷患者のそれである友奈は

天乃の病室の前で立ち止まって、一息つく

友奈「…………」

胸に手を宛がうと、自分がどれほど緊張しているのかが、伝わってくる

ランニングをした後のような激しい動悸、頭に浮かぶ天乃の悲しげな表情

自分の戦いの結果がそれであるという現実は、この扉を開かなければ見ずに済む

どこかで逃げたいと思う自分が居る。目を背けたいと思う自分が居る

友奈だって実際には勇気と責任感が人一倍強いだけの、女の子だから

誰かのために強くあれるのだとしても

それは甲冑を着けた武士というだけで。

友奈「っ」

……そんなの、ダメだっ

心をしかって、胸元で固まっていた拳で扉を叩くと

返事こそなかったが、扉が開いて

千景「今度は結城さん、なのね」

友奈「千景さ――」

千景「とりあえず入って」

千景が、病室へと招き入れた


夏の日と言っても、8月だからなのか

それとも立地の問題なのか、病室は光に勝って影が伸びていて

窓側にあるベッドでは、目的の天乃が寝息を立てていて

起こしたり邪魔するのも悪いからときびすを返すと、

千景が立ちはだかった

千景「平気よ」

友奈「え、でも」

千景「久遠さんは今、一人になるのは嫌がるのよ」

そう言った千景は天乃を悲しげに見つめて、小さくため息をつくと首を横に振る

もっと何か、別のことを言おうとしているような

もっと何か、悩んでいることがあるような

そんな、雰囲気で

友奈「どうか、したんですか?」

千景「……何もないわ」

友奈「何かあるなら、聞きますよ。久遠先輩には、上手く相談乗ったり出来るかはわからないですけど」

友奈は天乃の傍の椅子に腰掛けると「難しいかなぁ」と、

思い出したように笑って、千景に背中を向ける

見えるのは、穏やかに眠る天乃の表情

そしてふと、思う

友奈「……夏凜ちゃん、来たんですか?」


千景「なぜ?」

不意に切り出してきた問いに、千景は驚きをかみ殺して聞き返す

確かに会いに来たのは事実だし、少し前まで居たのも事実で

けれど、一緒に居たと解るような何かは残っていないはずだったから

だから少し、気になったのだが

友奈「久遠先輩。安心してるから。きっと、夏凜ちゃんに会えたんだろうなって。そう思ったんです」

適当な勘ですよ。と、友奈は笑う

けれどそれは間違っていなくて

正解を知る千景は今度こそ驚いて目を見開いたが

友奈の視界にそれは収まることなく、千景は小さな笑みを零した

千景「結城さんの言う通りよ。三好さんは少し前に来たわ」

友奈「えへへっ、大正解ですね」

嬉しそうに笑う。楽しげに笑う

それは、天乃とはまったく違うものだけれど、

そこに抱いている感情はきっと、同じで

千景「……結城さん」

名前を呼ぶ。問うために。

しかし、それは握りつぶされて消えていく

まず郡千景がどうしたいのかを、見つけられていないから

千景「私は席を外すわ。悪いけれど、久遠さんを頼むわ」

だから、そう言い残して千景は姿を消した

悩むために、考えるために

天乃の為とは、どうあるべきなのかを求めて。


友奈「久遠先輩」

二人きりになった部屋で、友奈は小さく名前を呼ぶ

ピクリとも反応しない天乃は、まだ、静かに眠ったまま

起きて欲しかったような、起きなくて良かったような

そんな二股する思考を絡めて、人差し指で天乃の頬をつつく

ふにふにと柔らかい

真っ白で、スベスベしてて、ちょっと抓んでみたくなる

友奈「……ダメダメ」

むにゅりと抓もうとした手を引っ込めて、眠る天乃を眺める

落ち着いたリズムの寝息、

このまま眠っていて欲しくなるような穏やかな寝顔

程よく暗くなっていく病室に

友奈は思わずあくびをして、首を振る

寝るために、来たわけじゃない

寝てるから寝ちゃうのも有りとは思うけれど

それはやっぱり、違うのだ

……寝たいとは、思うけど。


友奈「…………」

天乃「……ん」

ゆっくりと、目が開く

赤い瞳と、橙色の瞳

ルビーと琥珀

夏凜が言っていた言葉を思い出しながら、友奈はその右目にだけ映る自分を覗き返して

友奈「おはようございます」

天乃「友奈……?」

友奈「はいっ」

朝ではないが、そう言うべきだと思った言葉

対する言葉は寝ぼけたような、ふわふわとしたもので

まだ半分程度の瞳は考えるようにゆらいで、薄い掛け布団を手が引っ張って顔を覆う

天乃「どうしたの?」

友奈「久遠先輩の顔が見たかったんです。えへへっ、寝顔まで見れちゃいましたけど」

天乃「言うと思った……」

友奈「可愛かったですよ」

天乃「言わなくて良いから」

布団で顔を覆ったまま言った天乃は、深くため息をつくと、目元だけひょっこりと覗かせて、友奈へと目を向ける

それだけでも、照れくささに赤面しているのは、わかってしまう


天乃「怪我は、平気なの?」

友奈「まだ少し痛みますけど、大丈夫です」

ぐっと見せた握り拳よりも、手首の包帯へと天乃の視線は動く

元気で活発な友奈は運動部の助っ人や、外でのボランティア活動でよく擦り傷を作ったりしていたけれど、

その包帯に隠された部分は、その比ではないはずで。

不安になる、怖くなる。それは穢れのせいだろうか

覗き込んだほの暗い穴のそこから延びてくる何かが、絡み付いていく

そんな感覚に襲われて――

友奈「久遠先輩?」

天乃「え?」

友奈「大丈夫ですか?」

友奈の優しい声に、ハッとして

友奈の小さな手が伸び、額の汗を拭ってくれていることに気づいた

友奈「急に汗が出てきて、それで……」

天乃「何かあった?」

友奈「左目が、変に揺らいだというか……」

石の投げ込まれた水面の波紋のようなものが見えたのだ

ほんの一瞬だから、気のせいかもしれないが

友奈は見えた気がすると、報告する


天乃「連動っていうと変な感じがするけど、多分。穢れに反応してこの目もなにか起きるのよ」

友奈「……大丈夫なんですか?」

天乃「ええ、平気よ」

友奈の不安そうな問いに天乃はすぐに答える

心を乱すような何かは、今は感じない

何かを悩むとき、考えるとき、干渉してくるだけ

まるで、虫の羽音だ

あるいはテスト前の部屋の片づけ

口だけで言っても友奈は少し不安そうで、

笑って見せはするけれど、そこには緊張が紛れ込んでいて

何も取り繕えていないのだと、天乃は察する

それもこれも、天乃の性格ゆえ。だ

不安に思っている人を前にすると、隠そうとする。

もちろん、友奈自身が天乃と似たような性格だということもあるのだろうけど。

天乃「そんな不安そうな顔しないの」

友奈「解ってます。けど」

戦いには参加しなかった

なのに、穢れが進行しているのだとすれば

自分達がしていることは延命措置にさえなっていないのではないかと、不安になる

天乃「…………」



1、ねぇ友奈は一人でエッチなことする?
2、ねぇ、今度友奈のご両親にご挨拶したいわ
3、ねぇ、ご両親とはもう。話したの?
4、手を引く


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「ねぇ友奈は一人でエッチなことする?」

東郷「それは気になるところですよね。そんなときは、私にお任せください」

東郷「それではこちらの映像をご覧ください」ピッ

友奈「えっ、東郷さ――」


友奈『んっ……っ、はぁっんぅっ……久遠先ぱっぁっ』

友奈『っ……ぁっ、んっ、もっと来て下さ――』


友奈「わーっ! わぁぁぁぁぁぁーっ! 見ちゃダメですっ!」


では、少し遅いですが、少しだけ


天乃「…………」

不安そうな顔、悩んでいる顔

それはきっと自分のことについてなのだろうと

天乃は感じ取って、沈みそうな心を横に振って唇を噛む

天乃「ねぇ、ところで友奈に聞きたいことがあるんだけど」

友奈「聞きたいこと、ですか?」

迷いのある表情から一転

なんだろう。と考える優しげな悩みへと切り替わった友奈に天乃は微笑んで

たいしたことではないけれど。と、前置きする

とはいえ、それが友奈にとっても大した事がないとは、限らないが。

友奈「答えられるか解らないですけど、答えられることなら何でも答えますよ!」

力になれるかもしれない

それが嬉しいのだろう。友奈は満面の笑みで張り切って

天乃との距離を少しだけ詰める。

そして――

天乃「友奈は一人でエッチなことってするの?」

友奈「えっ?」

呆然と、唖然と、必然に。

友奈は見る見るうちに顔を真っ赤に染め上げた


友奈「ひ、一人でエッチなこ、ことって、その……っ、あ、アレですか」

周りには誰も居ないし、

初めから病室の外まで声が響くような大きさでもなかったのに

友奈は無意識により声を小さく潜めて、呟く

天乃「アレ?」

友奈「あ、あれです……えっと、ジー……です」

天乃「黒光りして平たい、人類の宿敵のゴ――」

友奈「それは違うジーです!」

最後まで言わせまいと声を張り上げた友奈は

天乃からそっと目を逸らして、頬をかく

羞恥の熱に茹で上がっていてもまだ理性は抜けていない

それがかえって、友奈の枷になっていた

勢いで言おうと思っても、口が半開きで止まってしまう

言った後、どんな空気になってしまうのかが怖くて

言った後、自分がどう思われるのかが怖くて

人と話すことが苦手なのは、言葉足らずになってしまうのは

きっと、先のことを考えすぎるからなんだろうな。と、

友奈はまったく別のことに逃避して、息を呑む

友奈「……えっと、調べたら。その……別の呼び方もあったみたいですけど。東郷さんが言う、自慰っていうやつのこと、ですよね?」

天乃「聞いたような聞いてないような……でも、多分それよ」


何の変哲もない疑問の答えを得たかのような、

穢れのない笑みを見せる天乃に、友奈は答える

ほんのりと、恥ずかしさに頬を染めて。

友奈「……時々、してます」

一人でのえっちなこと、自慰行為

好きでしているのかどうかは、友奈にはまだわからないけれど

自分の意志でそれを行っているのは間違いなかった

一週間に一回、二回。その程度

えっちな気分というのは曖昧で、ドキドキとして下腹部がじんわりと疼くような、熱っぽさ

それを感じたときは大体、自慰行為をする

友奈「ダメ、ですか?」

天乃「?」

友奈「お、おしっこする……ば、場所。でもあって。だから、その、汚いとか、そういう、えっと……」

途切れ途切れに言葉を紡いで、羞恥心に顔を真っ赤に染めて泣きそうになりながら

友奈は自分の手を見つめて、握る

えっちなことをしたとき、時々、透明の何かがつぅーっと伸びているのを見ることがある

やっちゃったんだな。えっちだな。そう思わせるそれが手にあるような気がして

天乃「友奈、私は――」

友奈「や、やめた方が良いかなって思うこともあるんです……っ、でも、むずむずして、変な気分で、どうしても……」


否定されるのが怖い

何か別種のものだと奇異の目で見られるのが怖い

そう思われるのが怖い

そんなことを思っているような、怯えているような、辛そうな表情

友奈の浮かべるそれがひとりでに暴走してしまいそうだと感じて「友奈」と

語気を強めて呼び、膝上の手を握る

天乃「友奈、良いのよ。私だってそれには興味があるし。きっと出来るのなら。私も一人でやってたと思うから」

友奈「っ」

そっと、頬の涙を拭う

悲しげな表情に、笑みをかぶせていく

天乃「それに、友奈の体は綺麗よ。毎日お風呂にだって入ってるでしょう?」

友奈「それは、そう、ですけど……」

天乃「だったら良いじゃない。一人えっちしていたって。寧ろ、私は友奈が実はそう言うこと嫌いなのかもって、迷ってもいたのよ」

本当は迷っていない

友奈が悩んでしまうから、不安になってしまうから

それをそらそうと言い出しただけ

その結果がまた、思い悩ませてしまうことなんていうのは、受け付けない

天乃「だから、少しだけ安心したわ」

友奈「久遠先輩……私、えっちな子でも、いいんですか?」

天乃「友奈でダメなら。沙織や東郷とも付き合ってはいけないわね」


天乃「だから、ね」

ちょっぴり困ったように、笑って見せて

引き合いに出してしまった二人への謝罪を内心にとどめて友奈をまっすぐ見つめる

頬に重ねた指の上に、また一筋が流れ落ちて

天乃は仕方がないわね。と、言葉にはせずに笑みをこぼすと、唇を重ねた

友奈「っ――」

天乃「ん……っ、は」

すぐにはなれると、驚きに戸惑う友奈の瞳が見えて

天乃は艶のある唇を微かに開き、熱っぽく湿った吐息を溢してまた、重ねる

優しく強く押し付けるようにして、そうっと離れて、見つめる

天乃「大丈夫よ。私も少し。えっちだから」

友奈「……久遠先輩も、するんですか?」

天乃「私は無理よ。後片付けとかがあるから。でも、出来るならするわね」

友奈「なら、その……わ、私。と、とか……」


天乃「友奈と? 二人で?」

友奈「は、はい」

告白する直前のような緊張感

そんなものを身に纏いながら、真っ直ぐ見つめてくる友奈

勢いだけじゃない

考えて、そう言ったのだろう

訂正するそぶりは全くなくて

天乃もまた、されたらされたでどうしようかと、無駄なことを思う

天乃「それはもう、自慰じゃなくて、普通のえっちね」

友奈「ぅ……」

天乃「ふふっ、すぐ赤くなるのも可愛いいわ」



1、でも。ごめんね。今の私は疲れやすいから出来ないの
2、友奈に全部任せて良い?
3、それじゃ、私が主導権握っていいなら


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「私が主導権を握っていいなら」

友奈「……良いですよ」

グイッ――ドサッ

天乃「ゆ、友奈っ?」

友奈「もちろん、握れるのなら……ですけど」ニコッ


では、少しだけ


天乃「そうね……」

東郷や沙織も優しくしてくれるだろうが、

二人のそれは天乃には少し、過激で

二人だったら断っていたかもしれないが、友奈ならいいかな。と、思う

しかし、友奈は好奇心があっても未熟

それゆえに二人のそれとは違う過激さになる可能性もありえると、考えて。

天乃「それじゃ、条件一つ」

友奈「条件ですか?」

天乃「そう、主導権は私に譲ってほしいのよ」

今まで自分からしたことなんて数えるほど……いや

指折りさえ必要ないほどしかしていない―出来ていない―が、

今回はと、思ったのだ

それなら自分に対してもある程度抑制は出来るだろうし、

攻め手をメインに行えば、体の負担も少なくて済むはずだから

友奈「久遠先輩が……」

呟くように言った友奈は、使い手のいない望遠鏡のように虚空を眺めて動きを止めて

うっすらと赤みがかっていた顔をまたしても真っ赤に染め上げる


天乃「…………」

何を想像したのか

聞いた方が良いような聞かない方が良いような

考えを彷徨わせた天乃は後者を選ぶ

話の流れからくみ取れば、主導権を握られてエッチな事される自分を想像してしまったのだろう

好奇心旺盛で、想像力があると言うのは、良いことばかりではないのかなと、天乃は思って小さく笑う

友奈「ぁっ」

その小さな笑みで現実に帰ってきた友奈は、赤い顔を隠すように俯く

天乃「どうする?」

友奈「お、お願いします……」

天乃「うん、友奈で少し。勉強させてもらうわね」

友奈の体とみんなの体では、色々と違う部分もある

けれど、似通った部分もあって

それ以前に、どれくらいに優しく扱えば性的な感覚を与えることが出来るのか

自分が受けるだけでは学べないようなことを学ぶために、天乃は自分の手を見つめる

東郷や沙織だったらきっと、「それではまず、お手本を見せますね」だの「じゃぁ、勝負しよっか。あたしが先攻ね」とか

結局快楽の波に押し流されて敗北させられていただろう


天乃「頑張らなきゃ」

今、自分がみんなにしてあげられること

他にもあるけれど、今の友奈の心が求めている癒しはきっと、これだから

天乃「それじゃ、夕方だと邪魔が入る可能性もあるから、夜に。ね」

友奈「平気なんですか?」

天乃「大丈夫よ。そうでしょ? 九尾」

姿を見せてはいないが、気配を感じる九尾に声をかける

相変わらず姿を見せることはなく答えも返ってくることはなかったが、

九尾なら、友奈がここに来ることや夜の見回り程度ならばなんとかしてくれるはずだと

天乃は信じて、「よろしくね」と、呟く

友奈「あの……久遠先輩」

天乃「なに?」

友奈「こ、こんなこと言うのは、何というか。あの、へ、変……なんですけど……」

恥ずかしさに迫られた表情で

恐怖ではない緊張感に体を震わせながら――天乃へと目を向ける

友奈「た、楽しみです!」


勢いだけで言い残し、友奈は逃げるように走り去っていく

そんな慌ただしい背中は、瞬く間に病室から失われて。

ゆらゆらと影の伸びていく病室

個室という自由な孤独に浸ろうとした瞬間

パチリと音がして、明かりがつく

九尾「安請け合いしおって」

天乃「九尾、やっぱり聞いてたのね」

悪態のごとく言い捨てた九尾は呆れたままに病室のカーテンを閉め、

友奈の使っていた椅子を片付けて、天乃へと目を向ける

馬鹿者め。と、言う目だ

九尾「主様に小娘を悦楽の底で溺死させる力などあるまいに」

天乃「あってもそこまでしないわよ」

九尾「悦楽に浸ればいずれ穢れゆく。なれば勇者からの解放も出来るやもしれぬが?」

天乃「神樹様はそんなお優しい方ではないわ。それに、大赦だって」

九尾「主様との交際自体、家族が容認していようと異論がないわけではないからのう……」

考え込むように伸ばした九尾は息をつき、首を振る

それ以上は考えないのか、考えたことを、振り払ったのか。


九尾「細かい事はこの際抜きじゃ。主様も結城友奈の体を使って息抜きをすることじゃし」

天乃「息抜きってわけじゃないけど」

九尾「よいよい。所詮主様じゃ。後半に下剋上で急転直下の大敗を喫するのが目に見えておるからな」

天乃「べ、別に戦うとかないから」

煽るような言葉に天乃は思わず怒鳴って、顔を赤くする

今までしたエッチ

そのどれもこれもが責められ、そしてなすがまま、されるがままで醜態というべきか

淫らな姿をさらしてしまったことを思い出す

天乃「それに、友奈はきっと。みんなほど上手くない……と、思うし」

九尾「ふむ……」

弱点が知られている以上、

上手ではないとしてもある程度のことが出来てしまうのだが

九尾はそのことを言わずに、頷く

九尾「せいぜい頑張る事じゃな。夜の件、承った。完璧な営みの場を提供してやろう。盛大に盛るとよい」

天乃「もう、馬鹿っ!」

久しく見られていなかった悪だくみをしている笑みを遺して姿を消す九尾に

天乃は遅く声を上げて、小さく「ばか」と、呟く

体の熱は恥ずかしさか、行為への期待か

ぼんやりとしたうやむやな感覚に

天乃は下腹部に触れたくなる何かを感じて、耐えしのいだ

√8月4日目 (病室)夜 ※木曜日


一歩一歩病室へと向かうたびに、脈打つ鼓動が激しさを増していく

多少は離れているはずの距離は想定外に早く終わりを迎えて、あっという間もなく、

友奈は天乃の病室にたどり着いた

友奈「うぅ……」

今更冷静になって、あんなこと言わなければよかったなぁと思う反面、

夢見ていた―妄想していた―天乃からの積極的な誘いが受けられたことを悦ばしく思う友奈は

緊張感を握った拳を持ち上げて、扉を静かに叩く

九尾「遠慮せず入れば良かろうに……まぁよい。入れ」

友奈「お、お邪魔しますっ」

病室の中は夕方来た時とほとんど変わってはいなかった。目に見えて変わったのは、

夕日の明るさがないことくらいで、月光頼りの室内は少し暗い

そんな部屋の、もっとも明るい窓際にあるベッドに、天乃はいた

友奈「……っ」

月明りに照らされた明るい桃色の髪、雪のように白い肌、愁いを帯びたように見える横顔

一瞬にして流れ込んできた視覚情報に友奈は熱暴走を起こしかけて、俯く


天乃「あら、意外と早いのね」

友奈「っ、そ、そう……ですか?」

天乃「看護師さんの巡回は終わったの?」

九尾「案ずるな。それに関しては妾がしっかりと施しておる。無論、この部屋に関してもじゃ」

誇らしげに語る九尾に、天乃が「ありがとう」とほほ笑むと

九尾は満足げに「主様の望みじゃからのう」と笑みを返して姿を消す。消える寸前、赤い瞳が向けられた気がしたが

今の友奈にはそんなことを考える余裕などなかった。

二人きりという状況に、心臓はより強く脈打って痛みさえ感じてしまうほどで。

乾きを忘れた口の中、なんども唾を飲み込んで飲み込んで進んだ体は、

気づけば天乃のすぐそばにまで来ていて。

天乃「ふふっ、お膳立てされちゃったわね」

向けられた瞳は、優しかった。囁かれた声は温かかった。

天乃「そんなに緊張しなくても良いのに。とはいえ、私もしちゃってはいるんだけどね」

友奈「…………」

天乃「友奈?」

和ませるための、言葉

けれども、友奈からの返事はなくて、それどころか身の危険を感じて名前を呼ぶ


友奈「あ、あのっ」

天乃「な、なに?」

友奈「う、受ける側って。その、あの……絶対に手を出しちゃいけないんですか?」

天乃「えっ……それは」

どうだろうか。攻め手が上手いのならば受け手が攻めに転じる余裕などありはしないのだろうが、

拮抗していたり、受け手に上回られているのならば、反転する可能性はなくはないかもしれない

とはいえ、天乃が経験してきたときは、天乃は常に受け手だった。手も足も出ず

出せたのは嬌声などの淫らな産物のみ。

天乃「で、でも。ほら。私が、ね? 主導権貰うって約束だし」

思い返してしまった自分の醜態に赤面しながら宥めるように言うと、

友奈は乗り出しかけていた体を引き戻して、「そうでした」と、ちょっぴり残念そうに溢す

天乃「…………」

友奈「…………」

本当は攻め手に回りたいのだろうか?

九尾の言っていたことを気にして身震いした天乃に、友奈は自分の患者衣の紐を解きかけて、そう言えば。と思う

友奈「久遠先輩、脱ぎますか? それとも、そのまましますか?」

天乃「えーっと……」




1、みんなと同じく着衣から
2、とりあえず、脱ぐべき?

↓2


では、ここまでとさせていただきます
可能であれば通常通りお昼頃から



東郷「友奈ちゃん、私から言えることは一つ」

東郷「久遠先輩を裸にすると、お風呂の介護の時とかを思い出しちゃうから」

東郷「服を着たままえっちをすると気乗りしやすくなるってことよ!」

東郷「布の擦れ合う音、抵抗のない抵抗。あの窮屈な感覚。あれは着衣セ――」

夏凜「はーいそこまでー、続きはWEBで」


では、少しだけ
一日のまとめまで進めて中断する予定です


通常の状態なら、エッチなことをする際は服を脱ぐべきだと思うものだが、

友奈も天乃も、見たことあるのも経験したことがあるのも、全て着衣状態で

それで良いのかと少し迷いながらも、天乃はみんなと同じ条件で行おうと、決めて。

天乃「着たまましましょうか。もしあれなら……脱げばいいし」

友奈「私服じゃないのが、なんだかちょっと、あれですね」

下着を身に付けてはいるけれど、あとは患者衣くらいで脱がすも何もないような、

なんて思う友奈は天乃をちらりと見てそっと、ベッドの端に手を置く

ゆっくりと沈み込んでいく感触、近づいていく距離。このまま自分から唇を重ねてしまいたい衝動が友奈を襲う

けれど、ベッドの上の手に天乃の手が重ねられて、自分からだけでなく天乃からも距離が詰められ――唇が重なる

まずは一つ、一瞬、始まりを知らせる、微かな触れ合い

アイスを一口食べたときのような、うっすらと広がる甘さを感じながら離れて、見つめ合う

友奈「っ」

天乃「ん……っ」

東郷たちがなぜ、あんなにも積極的に天乃に迫るのか、

自分が受けに回るのではなく、常に攻め手としていようとするのか、

友奈はなんとなく、分かった気がした


愛らしいのだ。とても

教えてあげたくなるのだ。心地よさを

染め上げたいのだ。穢れない純白さを

もう一度唇が重なって、天乃も緊張していると言うのが言葉だけでなく友奈に伝わっていく

ほんの一瞬のキスではわからない、震え。

傷つけてしまうのではないか、心地よくさせてあげられないのではないか、

そんな悩みゆえの、おぼつかなさ

一人で行う淫らな事、その妄想の中の天乃とは全く違う無垢さを感じ、

友奈は天乃の体を押し倒そうと動いた手を、止める

空中で止まった手はぐっと拳を作り、そしてベッドへと落ちていく

主導権は握ると言う約束だから

この初々しさを感じられること、それは無知ではない東郷や沙織では得られること無いものだから

その貴重な体験を、純粋で無垢に淫らな思い出として記憶する

友奈「んっ」

天乃「っ、ごめんね……変だった?」

友奈「だ、大丈夫ですよ。全然。急だったので、つい」

天乃「そ、そう……駄目だったら、言ってね」

友奈「大丈夫ですよ。久遠先輩は、優しいです」


自分よりもはるかに性体験は上の立場なのに一つ一つが初心で

不意に触れられて驚いただけなのに、自分まで驚いて不安そうにする

そんな天乃の姿に、友奈は自分の情欲がより強く刺激されていくのを、感じた

体が内側からじわじわと熱を帯び、吸い込む空気は生ぬるく、吐き出す吐息は艶かしい

脈打つ心臓は強く激しく、騒音で。けれども、痛みは伴わない

まるで、触れ合うことで分担しているかのような、不可思議な感覚

天乃「触るわね」

友奈「自由にしてください、信じてますから」

天乃「う、うん」

初めて自分から攻めていくという慣れない状況。性行為の勉強なんて出来てはいないし、してもいない。

思い浮かぶのは実体験。東郷や沙織、夏凜との本番、みんなとのキス。

自分に出来るだろうかという不安を覚えながら、友奈の患者衣のズボンの上から太腿のあたりを優しく撫でる

風呂上がりの水滴を拭うように、デリケートな柔肌を扱うように押し解すことももみほぐすことも出来ないような弱弱しい力で撫でていく

友奈「っ……」

それでも、自分以外からの誰かに、その意志を持って触れられると言う感覚は刺激を孕み体中の神経を鋭敏にさせる

抱きしめたい、キスしたい、もっと、もっと深く……

そんな淫らな欲望が次から次へと姿を現しては、準備中の立札の前に行列を作っていく

絶対に開いてはいけない。友奈はそう思いながらも、天乃のたどたどしさに、自分が我慢できる自信は微塵も得られなかった


太腿を撫でていた天乃の右手はゆっくりと上り詰めて天乃の脇腹にたどり着く。

布の上からでは肌の実感はわかないけれど、しっかりと絞られた体つきで、

滑らかな曲線を描いている女の子らしい体形なのだとはっきりする

目を閉じれば、思い浮かぶ友奈の体。どこに触れればどんな反応をするのか、覚えていく

友奈の為だけの、エッチな勉強、エッチな教科書。参考資料は実体験

ごくりと、息を飲む、額に浮かぶ汗が顔の表面を伝い落ちていく

そんなことは関係ないと友奈のくびれに手を這わせ、

ずり上がった患者衣の隙間から覗いた白いトップスの上に、手を忍ばせる。柔らかいような、固いような

筋肉と脂肪が入り乱れて感じるお腹とその中央、ぽこりと可愛らしく指を誘う小さなくぼみ

太腿の時とは変わって少しだけ力を込めて、撫で解す。手の平で押し伸ばすように、指先でさするように、

そして、人差し指でお臍のくぼみに潜り込む

友奈「ひぅっ」

びくりと、友奈の体が震えた。驚いたのか、くすぐったかったのか……けれど、天乃は手を休めない。

右手の人差し指から親指へと臍の探検家を入れ替えて、残り四本の指で友奈の脇腹を掴む

当然ながら背中では届かない。届く必要はない、むしろ、中腹までしか届かないからこそ、行うのだ


友奈「んっ、っ……」

天乃「くすぐったいかも、しれないけど……」

爪が立つか立たないかの微妙な角度で指先を立てさせ、

わき腹をくすぐるようにひっかくと、友奈の愛らしい悲鳴が小さく聞こえてくる

目は閉じられていて、唇は固く閉ざされながら震えて、頬は紅潮の一途を辿る

友奈「んっ、くっ」

天乃「……友奈」

腹部を弄りながら堪える唇に唇を重ね合わせる

零れ出す吐息を奪い取って、扉をこじ開けて離れると、友奈の赤色の視線を感じ、ほほ笑んで。

開いた友奈の唇からあふれ出す温い色気に蓋をする。ぬるぬるとした、友奈の口腔

狭い中で機能を失った二人の舌が絡み合う味のないキス

ただただぬるりとしたざらつきと、粘ついた唾液に塗れていく深みのあるキス

友奈「んっ、っ……ぁ」

息苦しさは体を追い詰める。まとわりつく情欲への抵抗を削いでいく。

下腹部の疼きが強く、自由な手が、伸びていく。淫らなことをしたいと、より強く感じたいと、身体が求める


天乃「っは……だめ」

友奈「っ」

その手を天乃の手が掴む、伸びた手はまだ下腹部を望むけれど

握られて捕らわれて自由を失った手は、動かない。刺激を求める下腹部の疼きだけが、酷くなっていく

一人エッチの時は、したいようにできた、やりたいように気持ちよくなれた

自分の体だから、激しくも優しくも自由で、触るのも自由で。

だけれど、これは違った。東郷と天乃と友奈、三人での休む間もないような濃密さのない交わりとも違う。

二人きりの受ける側、まったくの自由も与えられないというもどかしさに、泣きそうになる

友奈「っ!」

ぐいっと手を惹かれ、身体がベッドへと引き倒された友奈は、

その強引さに驚き目を見開くと、月明りを受けた天乃の怪しげな笑みが見えた

天乃「……なんとなく、どうすればいいのか分かってきたわ」

友奈「く、久遠先輩……」

妄想していた姿、自分を慰める時、思い浮かんだ久遠天乃という淫らな力。

自分の体を弄ぶようにして、優しくも焦らす意地悪な触れ合い、それが現実のものとなっていく


友奈「あぁ……」

やっぱり自分はエッチな子だと、友奈は思う

天乃の普段は見られない姿、強引さ、淫靡な行いに興じる姿に、

自分の体が火照っているのを感じるから

自分の心が悦んでいるのを感じるから

天乃「んっ」

友奈「んぅ……んっ」

唇を重ね、舌を絡めながら、天乃は友奈の手を握るのとは逆の手で腹部を弄る

患者衣はもちろんのこと、薄いトップスも中ほどまではだけて

快活な子らしく健康的な色合いの肌、埋めたくなるお臍の窪み、

呼吸に合わせて動くお腹がはっきりと見えた

天乃「…………」

優しく、静かに手を置く。撫でず、這わせず、揉まず。ただ、手と手を合わせるように置く

感じる素肌の感触が、柔らかくフニフニとした頬とはまた違う手触りで、天乃は思わず、ほほ笑む


友奈「っは……ぁ……」

キスが途絶え、唇に空気が触れる。質感のある獣の蹂躙はなく、

変幻自在で愛想のない空気が喉を通っていく。

友奈「ぁ……ぅ」

切ない。寂しい、物足りない。キスがしたい。

唇が物欲しそうに動く、言葉を紡ぐよりも、息苦しい痺れと甘さが欲しい

目頭が熱く、目元に涙が溜まっていく

天乃「……貴女の体も、学んでいるのね」

友奈「っ」

天乃はそんな友奈の頬に触れ、目元の涙を拭って笑みを浮かべる。

囁く声が、鼓膜を震わせ、心に触れる。

想像以上の、心地よさだった

淫らなことをしていると心と体が強く自覚して、

羞恥心なんていう余計なものを、蹴とばしてしまう

手を握る天乃の手を握り返すと、天乃もまた握り返して、軽いキス

友奈「んっ、っ」

頬から腹部へと手が戻り、ゆっくりと昇っていくのを感じる

心臓がどきどきと脈打つ。私はここにいるのだと主張する。ここに来てほしいと、胸が躍る

天乃「体、熱いわね」

友奈「っ……」


這うように動く手が、胸に触れかけてそのまま脇へと滑り落ちていく

感じていた汗がぬぐい取られていく感覚と、くすぐったさ、そして心地よさ

友奈「久遠先輩……っ」

天乃「どうしたの?」

友奈「あの……その……」

一言言えば良いだけだ。焦らさないでほしいと、もっと、もっと強く感じたいのだと

けれど、天乃の浮かべる笑みが、動きの止まった手が、友奈から言葉を奪う

天乃「言葉にしてくれないと……解らないわ」

友奈「ひゃぅ……ぅ」

耳元のささやき、感じた熱のある吐息。思わず甘味のある声を漏らした友奈に、天乃は唇を重ねて

天乃「ドキドキしてるの、分かるわ。どんどん強くなっていってるのも」

友奈「ぅ……」

声が近い、触れ合う熱が重なり合っていく。

その抑えきれない鼓動に友奈は目を瞑り、固く唇を閉ざしてしまう

心は、解放を望んでいるのに、そうした方がより攻めて貰えると、身体が勝手に動く


天乃「……まったく」

キスを求めているかのように震える唇、閉じられた瞼、激しく高鳴る心臓の音

一つ一つを天乃は視覚、触覚、聴覚。全てで感じ取って

まだ望みのある愛らしい膨らみに触れる

友奈「っん……」

ピクリと、友奈の体が動く。自分と同じように胸に触れられるのが気持ちいいのだろうかと、

考えながらゆっくりと手を動かす

最初は指先だけで、形を確かめるように優しく力を抜いて

布に隠された実りの形を頭の中に描いていく

友奈「んっ、っ……ふ……」

天乃「一人でする時に……触ってる?」

友奈「そ、それは……っ」

天乃「……触ってるのね」

友奈「ひぅっ!」

答えなかったのに、指先だけだった感触は手の平も含めた全体へと切り替わり、

揉むと言うよりも握られるような刺激を受けて、友奈は声を漏らす


何をされるか分からない、その先の見えないところから飛び出してくる刺激は

友奈の体に深く刺さるのだ

そして、天乃の指と指間に導かれた先端がゆっくりと絞められていくのを、感じた

友奈「ぁっ、っん」

小指と親指で弄ぶように乳房を押し揉みながら人差し指と中指で隆起していく赤子の為の突起を絞る

ここからいつか、母乳が出ることはあるのだろうか

自分が囲っている限り、母親としての役割を持つことはないのではないだろうか

そんなことを思い、頭を振る。そこから出ていくものがないのだとしても、

知識を蓄えていく中で、いずれ自分が求めるだろうと天乃は思う

友奈「っ、んっ……ぁっ……ふ……」

友奈の体が火照り、艶かしさの入り混じった声が漏れ出して

握り合っていた手が自由に出来る事に気づく

天乃「……もう少し、ね」

その手で友奈の下腹部に触れた瞬間――

友奈「ひゃぁぅっ!?」

一際大きく友奈の嬌声が響く

九尾の対策がなければ誰かが駆けこんできそうなほどに、大きな媚声だった


天乃「もう……声が大きいんだから」

友奈「だ、だって――んっ」

何かを言いかけた友奈の口を口でふさぎ、舌で舌に触れる

舌をつつき、表面を舐めて、動けば翻弄するように逃げて、唇で唇を包む

そして、自由な手で友奈の患者衣のズボンの中に手を忍び込ませていく

友奈「!」

友奈の驚きが、口の中から伝わってくる

何をするのかと、恐怖にも似た何かを感じる

けれど、天乃は蹂躙する。抵抗を許さずに、口の中から解していく

子供らしくと言うべきか、大人の色香を感じるような作りのない友奈の下着

その上から淫靡の扉のあたりに指を這わせると、湿った布が指先に張り付いて

水をため込んだスポンジを押したときのように布から溢れる淫らな水を感じる

喘ぐ声が喉を通っていく、口での呼吸を肩代わりする鼻息が荒々しくなっていく

中指をゆっくりと沈み込ませて、淫欲の出入り口を掠めて、

その上の小さな穴と、友奈の高ぶりを示す陰核を弾く

友奈「んにゅぅぅ!」

天乃「んっ、っは……」

一際大きく震えた友奈の体

陰部からしみ出していく淫らさに溶けた理性の涙

離れた天乃の口先から伸びる舌から伸びる交わりの糸は

友奈の吐息に包まれながら口の闇へと消えていく


友奈「はぁ……はっ……ぁ……」

目元の雫、紅潮した頬、閉じない唇、あふれ出る熱気

自由なのに動かない両手、上下する胸

天乃はそのすべてを視界に収めて、ほほ笑む

天乃「……貴女の体は、覚えたわ」

一方的に手を出されることも、自分が一方的に手を出すことも、

どちらも心が躍る。体が疼く。だから思う、だから気づく

天乃は自分が淫らな子であるのだと錯覚する

穢れは求む。穢れなき少女の柔肌を

穢れは求む。穢れゆく少女の嬌声を

ゆえに浸る。愛欲の狂宴こそが穢れに満ちた闇を停滞させる術だと願い

ゆえに呑まれていく。それが己の意思であるのだと【彼女】に誘われていると知らずに。

天乃「ふふっ……夜はまだまだ。長いのよ」

天乃の口は誰かの言葉を囁いて、淫らな艶舞へと沈みゆく

長くも短い月明りだけの闇夜に、少女たちの秘かな交わりは溶けていった


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流無()
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流有(一人エッチについて、主導権を譲って、淫欲の子守歌)
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流有(会えない、会いに来る、寝るまで一緒に)
・   乃木若葉:交流有(弱さ)
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流有(すべきこと)
・ 伊集院沙織:交流無()

・      九尾:交流有(えっちのお膳立て)
・      神樹:交流無()



8月4日目 終了時点

乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 66(とても高い)
犬吠埼樹との絆 56(とても高い)
結城友奈との絆 75(かなり高い)
東郷美森との絆 56(とても高い)
三好夏凜との絆 96(かなり高い)
乃木若葉との絆 62(とても高い)
土居球子との絆 31(中々良い)
白鳥歌野との絆 26(中々良い)
藤森水都との絆 17(中々良い)
  郡千景との絆 20(中々良い)
   沙織との絆 78(かなり高い)
   九尾との絆 50(高い)
    神樹との絆 9(低い)

汚染度???%


√ 8月5日目 朝(病室) ※金曜日

01~10 
11~20 やりすぎた
21~30 
31~40 若葉
41~50 
51~60 九尾
61~70 
71~80 悪五郎
81~90 
91~00 東郷

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊


では、いったんここまでとさせていただきます
再開は出来れば19時までには
コンマは外れなので通常朝チュンお休み友奈ちゃん


えっちは速報クオリティの不完全燃焼なので、余裕があればwikiリテイクします
失礼しました


では、少しずつ


√ 8月5日目 朝(病室) ※金曜日


朝になって、車の音、鳥の声

すぐ横で眠っている愛らしい女の子の小さな寝息を感じ

汗特有の不快感を伴う生暖かさを全身に感じてゆっくりと覚醒していく

友奈「んっ……ぇへへっ……」

触れ合う素肌の感触と体温

ほころんだ笑みの寝顔を見せる友奈に、天乃は仕方がないわね。と、笑みをこぼす

ほんの数時間前まで、ずっとエッチなことをしていた

体中が淫らな産物に塗れ、部屋が淫欲の中に沈んでも

なお、甘く蕩けた【女】の声を入り乱れさせていた

そんな姿などみじんも思わせない、あどけなさが

今の友奈にはあって

天乃は小さく握られた拳を、優しく握る

友奈「久遠……先輩……」

甘えるような、切なさのある声

夢の中ではまだ、続いているのだろうか

天乃「ほんと……あなたはエッチな子ね」

自分も人のことは、言えないが。


1、友奈に対して  ※再安価
2、精霊を呼ぶ
3、イベント判定
4、ベッドを調べる

↓2


天乃「…………」

ふと気になって、薄い掛布団を捲ってみると

貯め込まれた淫臭があふれ出て、鼻をつく

ねっとりとして、生温く、甘酸っぱさを感じるような、不可解なにおい

けれども魅惑的で癖になってしまう、危険性のあるにおい

天乃「……あぁ」

それが匂ってくると言うことはつまり、後片付けが実行されていないと言うことだ

友奈が全裸で、自分も全裸で

まぁつまりそう言うことなのだろうと言う思いはあったものの

一縷の望みというべきか、一糸の望みはあっても良いような気がしたけれど

やはり、現実はかくも非情なものらしい

布団の中で脱ぎ放たれた下着が淫らなものに浸ったまましわくちゃになっていて

昨夜の激しさを物語る

天乃「どう……しよう」

どうもこうもない

友奈を起こすか精霊に頼んで片付けて貰うか

性行為の後片付けを行為とは無関係な誰かにやらせると言うのは

羞恥心をもはや通り越して悲しささえ溢れてくる


天乃「………」

汗か、欲情の産物か

まだ僅かに湿ったベッドを撫でると、昨夜のことが今もなお行われているかのように、思い出せる

友奈の頬の柔さ、腹部の程よい固さと柔さ、潤んだ唇の肉質、

流し込み、奪い去った熱のこもる唾液、まだ望みはある年相応な乳房

愛液に塗れて艶かかり、解す手間の薄れた陰唇

淫らな嬌声と、魅惑の水音

鮮明に浮かぶ記憶に、天乃の胸はまた高鳴ってごくりと喉が鳴る

下腹部の熱、囁くような疼き

臍のあたりに触れると、その内側からは鼓動にもにた何かが伝わって来る

めくれた布団は、友奈の上半身をさらけ出していて、

まだ未熟な果実の実り、出てきた小さな芽が誘うように上下する

天乃「……っ」

穏やかに、日常を演出する友奈の眠りに欲情する自分

それを戒めるように、天乃は唇を噛み締めた


01~10 
11~20 まぁ、やるよね
21~30 
31~40 夏凜
41~50 九尾
51~60 
61~70 風
71~80 
81~90 東郷
91~00 

↓1のコンマ  


天乃「ばか……」

淫らな考えに染まってしまいそうな頭を横に振り、

考えをどこかへと放り投げて、息をつく

天乃「友奈は、今はそんな気分じゃないんだから」

穏やかに眠っているだけなのだ

何か幸せそうな夢を見て

緩んだ笑顔を見せてくれている

それは心を落ちつけてくれるもののはずなのに

――ぐちゃぐちゃに、したい

天乃「っ!」

眠っている間に、身体を弄ばれて

目を覚ましたとき、絶望色に染まる友奈の顔が見たい……そうでしょう?

天乃「違う」

――嘘

天乃「……嘘じゃない」

――嘘よ

天乃「嘘じゃないっ」

嘘。だって貴女は胸を躍らせている。生唾を飲み込んで、未成熟な体に欲情して

ケダモノのように蹂躙することを思い、夢見て、今にでも食らいつきたいと涎を滴らせているんだもの……

貴女の中にある性的欲求は、みんなの理性と性欲を食い殺すことを望んでいるの

天乃「っ」

彼女は言う。彼女は嗤う

昨夜の愛ある交わりの全ては、自分自身の欲求の開放のみが目的なのだと、指摘する

それは……嘘。なのだろうか


友奈「んぅ……ぅ……ぁ」

天乃「!」

小さくあえぐような声を漏らして覚醒へと至った友奈の寝ぼけた瞳に見つめられて

天乃は困ったように、笑みを浮かべる

天乃「お、おはよう」

友奈「おはよう……ございま、す……う?」

段々と今の状況が頭の中に入り込んでいくにつれて

友奈の顔は赤色に染まって、瞳が見開かれていく

それはそうだ

大好きな人が裸で、昨夜顔を埋めて、味わった覚えのある魅力的な膨らみが曝け出されているのだから

恥じないと言うのは、無理な話だった

友奈「わ、私……もしかして」

天乃「友奈というより、私達ね。完全に寝落ちというか……気を失っちゃったみたい」

友奈「か、片付けは」

天乃「当然ノータッチ」

友奈「朝ごはんが来るまで――」

天乃「あと20分くらい?」

友奈「間に合わないですよっ!」

シーツを新調して、身体を洗って、換気して……

すべきことを考え優先すべきことを考え、思う

友奈「こ、この際私は良いので、久遠先輩だけでも綺麗になってください!」

強引に、けれど優しく丁寧に、友奈は後片付けへと着手する


√ 8月5日目 昼(病室) ※金曜日

01~10 
11~20 風 樹

21~30 
31~40 
41~50 夏凜

51~60 
61~70 東郷
71~80 
81~90 沙織
91~00 大赦

↓1のコンマ

各当たりコンマ一桁奇数 特殊  


では、少し早いですがここまでとさせていただきます
明日は少しはやめ、可能であれば19時頃から


友奈「お風呂は無理なので、身体を拭きますね」

天乃「え、ええ――っ、んっ!」ビクッ

天乃「ちょ、ちょっと友奈っ、ぁっ、そ、そこは……」

友奈「い、一番汚れた場所だと思うので、念入りにやらないと」

天乃「ま、待って。ほんと、だめっ、また汚しちゃうから――」

東郷(そろそろ入っていいかしら。動画も盗れたからチラつかせれば久遠先輩を好きにできるわ)

東郷(なんて、駄目ね。久遠先輩は私のこの手で屈服させてこそ、気持ちが良いの!)グッ


芽吹(……乱れ過ぎていて気色悪くさえ思う。三好さんはこんな人達でさえ守るんでしょうね。私にはきっと、無理だわ)


では、少しずつ


√ 8月5日目 昼(病室) ※金曜日


朝食の看護師襲来を何とか凌いだ天乃と友奈は、

戻るべきだと促されて解散し、病室には一人きりになっていた

別に二人でいてもいいじゃないかと思ったけれど、

性行為に関してのことが一切ばれなかっただけでも救いなのだと考え、不満を飲み込む

余りの望みすぎると、嫌なことが起こる気がしたからだ

天乃「……ふぅ」

深くため息をついて、疲れの残る体を横に寝かせると

窓から差し込む光が真っ直ぐぶつかって。

思わず呻いて身体の向きを入れ替えると、丁度、ノックする音が聞こえた

東郷「久遠先輩、入っても良いですか?」

天乃「知らない人は、ちょっと」

東郷「何を言ってるんですか……東郷です。東郷美森です」

ちょっぴり呆れたような声で名前を告げた東郷は、

そのままドアを開けて、病室の中へと入ってきた


天乃「あら、一人?」

東郷「院内なので、それなりに自由に行動できますよ。車椅子での移動も慣れていますので」

自信たっぷりに笑って見せる東郷に、

天乃はそれなら私もよ。と少しばかり競って、苦笑し――

東郷「……久遠先輩、えっちなことでもしました?」

それはすぐに、固まった

きょろきょろと病室を見渡す東郷は、

すんすんと空気を感じ取って、小さく唸る。

そんな東郷を前にして、天乃はひやりとした汗が流れていくのを感じて、困ったように笑って見せる

天乃「なんの話?」

東郷「そんな匂いがします。相手は分からないですけど……病院のは共通だから……」

天乃「東郷?」

東郷「それとも一人でしたんですか?」

天乃がえっちなことをしたと言うことには確信めいたものがあるのだろう

していないと言う否定は受け付けないとでもいうような表情で聞いてきた東郷は、

天乃が応えられないでいると、笑みを浮かべて、ごみ箱の中を覗いて

まだ湿ったティッシュの塊を摘まみだし、天乃に見せる

東郷「……さすがに、ごみ箱は変えた方が良いかと思います」

天乃「えっ、あっ……あ……」

東郷「……樹ちゃん? いや、友奈ちゃん……かしら」

後片付けの仕方をちゃんと教えた方がよさそうね。と

母親のようなことを、呟く



天乃「っ……よ、良く、分かったわね。一応、蓋つきのゴミ箱なのに」

東郷「久遠先輩の匂いがしたので、なんて。冗談です。結構いっぱいいっぱいで見えてたんです」

東郷は少し嬉しそうに語りながら、ごみ箱の袋を入れ替える

その最中、隠れていた淫らな匂いが一気に広まって

天乃は思わず、呻く

天乃「ぅ……」

もはや隠せるわけはないし、そもそもばれてるし

顔を真っ赤に染めた天乃は何も言えずに俯く

東郷とも体の関係はすでに経験あることだが

他の人としたことが目の前で暴かれると言う恥ずかしさは……拭えない

東郷「上手く出来たんですか?」

天乃「言わないと、駄目なの?」

東郷「いえ、無理には聞きませんが……」


1、私が主導権を握って上手く出来たわ
2、よく、分からないわ
3、……私、組み伏せられるよりも組み伏せる側の方が好みみたいなの
4、私ね。自分から手を出すと穢れが影響してきちゃうみたいなの……
5、なら、ごめんなさい。秘密で

↓2


天乃「…………」

言うべきかどうか、迷う

友奈とエッチしたことではなく、それによって気づいたこと

東郷は言えないと言っても無理に聞くことはないだろうし

きっと、友奈から話は聞くだろうが、昨日の夜のあの有様でこの問題に気づいたとは思えない

だから、これは言わなければ秘密に、出来る

誰にも知られることなく、抱えて

不安にさせず、心配かけず

そう思い、かんがえ、天乃は唇を噛んで首を振る

そんな考え、きっと見破られる【彼女】ではなく、あの子なら、きっと見破ってしまう

天乃「私ね? 自分から手を出すと穢れが影響してきちゃうみたいなの……」

東郷「え……?」

天乃「皆からされる側じゃなくて、私がみんなにする側になると、何というか、こう。攻撃的になるのよ」

淫らなことに関する会話とは思えないほど

少しばかり重みのある空気に切り替わっていく中で、天乃の瞳に映る東郷は驚いた表情のままで

天乃は困ったように笑って見せる。

気丈に振舞っていると分かってしまいそうな、笑みだ

天乃「そんな心配はしなくても良いのよ。私は――」

東郷「あ、いえ。その、久遠先輩が攻めに回ったのが信じられなくて」

天乃「えっ?」

東郷「先輩がそっち側……それはそれで魅力的ですね」

天乃「待って、ねぇ、ちょっと、東郷さん? 話聞いてくれる?」


東郷「あ、はい。話は聞いています」

天乃「聞いてないわよね?」

東郷「久遠先輩が存外に攻める側もお気に召したと言う話、ですよね?」

天乃「悪いけれど減点ね? 丸は上げられないわ」

東郷の態度は変わらなかった

普段通りの、日常の中にいる声色と表情で

好きな事、楽しいこと、そんなありふれたことの会話のように、東郷は態度を変えなかった

しかし、天乃の浮かない表情に対して、

ようやく、小さなため息を聞かせた

東郷「淫らな行為は久遠先輩の穢れがより深刻化してしまう。ということですか?」

天乃「ううん、そうじゃなくて。私がみんなにむけて手を出すと。駄目なの」

東郷「……相手を拘束したり、痛いことをしたり。大まかに言えば、嗜虐的なことへの興味があると言うことだったりしますか?」

東郷の真剣なまなざしに、天乃は首を横に振る

そこまで残虐なことではなかったはずだ

ただ、そう。少し嫌がるようなことをしたり

求めていることが分かっていながら、焦らそうとしたり

そういうたぐいのものだと、天乃が説明すると

東郷は困り果てた表情で首を傾げた

東郷「要するに、ちょっぴり加虐性欲的なものが入り混じると……それは私も同じなのですが……」

天乃「何か言った?」

東郷「いえ、久遠先輩のそれは話だけ聞くとそこまで大きな問題があるようには感じませんね」


しかし、穢れがより体を侵食してしまうと言うのなら、話は別だ

単ににサディストであるのと、天乃の侵食する加虐性は似て非なるもの

そんな危険を許せるわけがない。

それはつまり……

東郷「……久遠先輩、そこで一つ。大事な話があるんですが」

天乃「なに?」

東郷「今まで通り久遠先輩が受け側であれば問題はないんですよね?」

天乃「う、うん……?」

真剣な表情で切り出された疑問の持つ空気の場違いさに、

天乃は思わず間の抜けた返事を返して、

けれど、東郷の表情は真剣そのものだった

東郷「問題がある場合、久遠先輩とのえっちは二度と出来ません」

それはつまり、子供を産む産まないの問題にも深く影響してくることになるし、

跡継ぎ云々の問題も、解決することは出来なくなる可能性がある。

……などと、東郷は自分の持つ本当の疑問の理由を隠して問い、天乃を見る

東郷「無いんですよね?」

天乃「それは……」



1、ない
2、分からない
3、あるかもしれない
4、……確かめて、見れば?

↓2


どうだろうか、今まで問題はなかったのだから

問題ないはずだが、絶対という保証はない

天乃「それは……そう、ねぇ……」

かんがえて、思う。

そして、天乃は今目の前にいる東郷を見つめた

天乃「……確かめて、見れば?」

浮かべるは悪戯心に満ちた少女の笑み

それはゆえに――

東郷「確かめるのは構いませんが……別に、本気で攻めても構いませんよね?」

天乃「え……えー……」

冗談のような言葉と、なるはずだった

東郷の浮かべる満面の笑みには、否定も拒絶も出来ないような威圧感があって

天乃は焦る気持ちを落ち着けようと息を飲んで、苦笑い

天乃「私、激しい一夜を過ごしたばかりで……」

東郷「それでも、誘ったのは久遠先輩ですからっ」

天乃「あ、うん……」

東郷「精霊の方は人払い、よろしくお願いします」

天乃「え、待って……東郷。もしかして今からや――」

迫りくる車椅子

そこの鎮座する淫行の覇者

捕らわれの姫君に――逃げ場はなく。


01~10 風

11~20 
21~30 
31~40 樹

41~50 友奈
51~60 
61~70 クラスメイト
71~80 
81~90 大赦
91~00 

↓1のコンマ 


ゾロ目特殊 


天乃「っ……ふぁ……あっ」

東郷「んっ……ふ……っは」

はだけさせた胸元に這わせていた舌を生き戻して、ごくりと飲み込む

お風呂にはしっかりと入れなかった影響か、ほんのりと汗ばんだ刺激が舌をうつ

けれど……嫌いではない。と、東郷は笑みを浮かべて、天乃の顔へと顔を近づけていく

抑えこんだ手がもがこうと動くが、余っていた患者衣のズボンで縛られている以上

どうしようもなくて、天乃は東郷をまっすぐ見つめて、首を振る

天乃「と、東郷……やりすぎよ……っ、んっ!」

東郷「少し激しくと言ったのは久遠先輩ですよ」

天乃「それはそ……っひゃんっ!」

東郷は右手を筋肉質な腹部に這わせながら、天乃の胸の下を左手でなぞる

こそばゆさを感じるくらいの、擦るような手つきで

汗ばんで感覚の鋭敏になってしまう場所を……意地悪に

そして、天乃が声を上げるたびに、腹部で唯一弱そうな臍の窪みに指を押し付けてぐりぐりと悪戯する

天乃「うぅ……と、東郷っ」

東郷「ふふっ、まだまだ序の口ですよ。実は、胸を揉み解す方法を研究してきたんです」

天乃「……ね、ねぇ、私が。その、胸が――」

東郷「だから、勉強したんです」

もっと気持ちよくなってもらうために、もっと満足してもらえるように

東郷が浮かべる笑みに、天乃は恐怖しか感じられなかった


上側からゆっくりと、クレーンゲームのように胸を掴むような動作で、触れて、

けれど握ることなく掠めるように手を滑らせて、意地悪な刺激を与える

無視したくても無視し出来ない、

どうしても気になってしまう、神経を集中させてしまう、そんな触り方

焦らされる天乃は触られたくないと思う反面、

そこが心地よさを得られる部分であり、東郷が行うまだ知らない刺激ゆえに、

胸は期待に踊り、先端に見える乳首は愛らしく存在感を示す

東郷「そしたら――」

若葉「ま、待てそこまでだ!」

東郷「!」

天乃「わ、若葉!?」

突然姿を見せた若葉に驚く天乃と、不満げな目を向ける東郷

その二つの視線を受けながら、照れくさそうに頬をそめた若葉は「取り込み中に済まない」と、言って

若葉「天乃のクラスメイトが来てる。入院してることを知ってしまったみたいなんだ」

天乃「え」

なんで。と

問う間もなく扉がたたかれて、クラスメイトの声が入り込んでくる

次の瞬間には東郷が慌てて天乃の手首の拘束を解き、はだけさせていた服を戻そうとして―胸のせいで―つっかえて

「入るよー」

天乃「ちょっ、まっ」

天乃はぎりぎりで患者衣を着なおして布団を胸元まで引き上げ

主に乱れたままの服装のせいで車椅子に戻る余裕がない東郷はベッドに寝そべって息を顰める

東郷「………っ」

天乃「ひぅっ」

東郷の目の前には、天乃の曝け出された下着があって。

少し呼吸をすれば……吐息がかかる状態だった


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「よ、よくここにいるって解ったわね」

「うん、凄く驚い――」

東郷(ふーっ)

天乃「にゃぁっ!」ゴンッ

東郷(ふぐっ!?)

「!? く、久遠さん?」

天乃「あ、あはは……今変な風が吹いた気がして……それで、なんだっけ?」グググッ

東郷(い、息が……できな……あ、でも、久遠先輩の割れ目で窒息するのは……悪く……)ガクッ

では、少しだけ


「ごめんね、急に来ちゃって」

若葉の言うクラスメイトは、明日に大会を控えている運動部の子だった

お見舞い用に持参した飲み物を冷蔵庫へとしまう

こういうときは花とかが一般的らしいが、クラスメイトとしては

そう言うのは邪魔だと思ったらしい

天乃「う、ううん……平気」

とは言うけれど、まったく持って平気ではない

つい数秒前までエッチなことをしていた体は火照っているし、

驚きと緊張と高揚感に、心臓は激しく高鳴っている上に

布団の中に隠れた東郷の吐息が、下腹部に触れてむずむずする

「驚いたよ。明日のことで話そうと思って家に行ったら居ないよー入院してるよーって。言われて」

天乃「……大赦の人が素直に答えてくれたの?」

「多分、前科があるからだと思う。普通に教えてくれたんだ」

クラスメイトの女の子にとってはもう笑って話せるようなことなのか、

困ったように笑って見せると「凄いよねー」と、呟く

「体のほうは平気? 大赦の人は久遠さん自体は大した問題はないって話だったけど」

天乃「ええ。体に関しては全然」


クラスメイトの気遣いに、天乃は笑みを浮かべる

精神的な穢れの問題はあるけれど、身体的な問題は何もない

だから、退院しようと思えば今すぐにでもすることは出来るだろう

もっとも、大赦がそれを許可するかどうかはまた別の話だが。

そっかぁ。と、安堵の息をつきながら零したクラスメイトは無意識なのか

優しい笑みを浮かべて、自分の手元を見る

左右の手には何もなくて、互いに握り合う

「明日のこと、なんだけどね」

天乃「大会の応援よね? それなら――」

「やっぱり、大丈夫」

天乃「……………」

「勇者部のみんなも大変だろうし。久遠さんだってほら。入院するような状態で」

笑っていた。

残念そうな顔も、悲しそうな顔も、そんな感情さえ微塵も感じさせない

気丈に振る舞い、嘘を通り越して真実とした表情で。


だが、天乃には解る

それは天乃の得意とするものだから。

彼女が明日の大会にどれだけのものを抱き、どのような思いで誘ってくれたのかを、知っているから

「だからさ、ゆっくり休んだ方が良いよ」

天乃「でも」

「良いよ、良いよ。高校もあるし」

今日、天乃に会いに来たのはこんなことを言うためではなかったはずだ

家出会うことが出来ていれば、セミロングのクラスメイトが走るレーンとか、時間とかの話をして

もしかしたら、お昼はどうこう、帰りはどうこう。

そんな楽しげな話をする予定だったのかもしれない

「私のことは気にしなくて良いからさ、あの子も来るし」

天乃は退院をしようと思えば出来る

大赦がとめるかもしれないが、それでも出来る


布団の中の東郷は問題ないだろうし、友奈の回復も順調で

風と樹に関しても退院は可能だろう……しかし、夏凜だけは無理だ

けれど、彼女が一番初めに求めてきたこと、【天乃一人】であれば、容易だ

「お役目で大変なんだろうから、せっかくの休みに炎天下に出て来させるのは、なんかね」

苦笑しながら言うクラスメイトは、「あの子からしてみれば、その肌を焼くなんてとんでもない! だろうし」と、

幼馴染らしく良く似た真似をしてみせて、席を立つ

天乃「色白すぎるのもあれなんだけどね」

「良いと思うよ。久遠さん、凄く綺麗だから」

天乃「綺麗って……」

「本気だよ? 私が男の子だったらきっと、好きだって告白してただろうね」

そう言いつつも、もしかしたら高嶺の花過ぎてこんなに話すこともなかったかもしれないけど。と、呟く

その瞬間、布団の中でモゾモゾと動いた気がしたが、天乃はそのふくらみに手を押し付けて、クラスメイトへと目を向ける


1、……ごめんね
2、私達はね。勇者として壁の外の化け物と戦っているのよ
3、私だけでもいくわ。私のこれはただの検査入院だから平気だし
4、……頑張ってね。応援してるから
5、じゃぁ……優勝できたら。貴女の望みを一つ。何でも叶えてあげるわ

↓2


天乃「……頑張ってね。応援してるから」

「うん、ありがとね」

セミロングのクラスメイトは怒ったり、悲しんだりもせず

ただ、嬉しそうに笑みを浮かべる

一ヶ月も前に約束したことなのに

あんなに、嬉しそうにしてくれていたのに

それを……破棄にして。

「頑張るよ。だからさ……ちゃんと、帰って来てね」

クラスメイトはそう言うと、天乃の手を優しく握って

「これだけは、破らないでね。久遠さんも……勇者部のみんなも」

そっと、離れていく

天乃「貴女……」

まるで、勇者部が何をしているのか

なぜ、こんなことになるのかを、分かっているかのように

踵を返したクラスメイトの後ろ髪が靡く

「……私達、応援することしかできないね」

天乃「大赦から聞いたの?」

「ううん、きっと私の知ってるは久遠さんの知ってると等しくない」

一瞬振り返ったクラスメイトは「またね」と、言い残す

それは、いつかの別れを彷彿とさせる

それは、嫌なことを思い出させる

クラスメイトに握られ、手放された手が布団の上に落ちて――扉が閉まる

天乃「……止めてよ。貴女が居なくなるなんて」

東郷「久遠先輩……」

その呟きを受けた東郷が、布団の中から顔を出した


東郷「あの先輩は大赦に関係しているわけでは無いんですよね?」

天乃「ええ」

あのクラスメイトの家は、大赦とは全くの家柄

本人からも、周りからもそう聞いているのだから

示し合わせていたりしない限りは、間違いない

天乃「だから、前に暴動を起こした時以上のことは知らないと思う」

けれど、また改めて

それも、意味深な雰囲気を携えて言ってきたのだ

勇者として戦っていることを知った可能性はある

東郷「……大丈夫、でしょうか?」

天乃「流石に大赦もあの子を消すなんてことはしないはずよ」

転校だとかなんだとか

天乃達から引きはがすようなことは

何の得にもならないことはきっと、大赦も分かっているはずだ

ならば……あとはバーテックスの介入がないことを祈るしかない

それでなくても、今の勇者は傷を癒している最中。なのだから

東郷「……久遠先輩」

天乃「東――んっ」

ぐっと天乃の体を押し倒して、頭から布団を被って覆う

東郷「嫌な考えは……忘れさせてあげます」

個室の中の個室、二人きりの空間は熱気に満ち満ちていて、息苦しかった

√ 8月5日目  夕(病室) ※金曜日


01~10 夏凜
11~20 
21~30 若葉
31~40 
41~50 千景
51~60

61~70 
71~80 大赦 
81~90 
91~00 九尾


↓1のコンマ 


範囲内ぞろ目 特殊


1、精霊交流 ※再安価
2、勇者交流 ※再安価
3、イベント判定

↓2


1、九尾
2、千景
3、若葉
4、悪五郎
5、歌野
6、水都
7、沙織

↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

久しぶりの水都さん



天乃「藤森さん、いる?」

水都「!」ビクッ

歌野(どうしたのみーちゃん)

水都(う、うたのん……ついに白羽の矢が立っちゃった……)

歌野(え?)

水都(あの人に純潔を散らされちゃうんだ……私。淫らに貪られちゃうんだ……ごめんね、うたのん)

水都(私もう……お嫁にいけない)

歌野(大丈夫だと思うよ……?)


では、少しだけ


√8月5日目 (病室)夕 ※金曜日

まだ陽の高い夕方、深夜まで続いた友奈との情事

中断することもあったけれど

少し前まで続いた東郷との一方的な交わり

消耗しきった天乃は気だるげにため息をついて、自分の胸元に手を宛がう

まだ、体が熱い

行為をしているときとか、その前とか程ではないが、

平熱のそれとは違う熱っぽさだ

天乃「……東郷先生、ねぇ」

一人エッチの仕方から、それの後片付けの仕方。いろんなことを教えてもらった

知りたかったかどうかは別にして

天乃は一応、それなりの知識を体含めて学ばせられたのだ

だからだろう、少し試したいという気持ちも沸いてくる

もっとも、憔悴しきった今の天乃には、流石に好奇心だけでやるほどの力は無くて

天乃「……藤森さん、居る?」

過去の時代から呼び寄せた精霊ではあるが、

勇者ではなく、巫女としての力を持っている少女、藤森水都

彼女の名前を呼ぶが、反応はなくて

歌野「ほら、大丈夫だから、みーちゃん」

歌野が、導くように姿を現して水都を引っ張り出す


水都「…………」

天乃「…………」

出始めの空気は、少しばかり重苦しさがあった

天乃は話したいことがあって呼んだのだが、

歌野が連れ出すだけでそのまま姿を消してしまった為か、

水都の纏う雰囲気が少しばかり触れがたかったからだ

チクタクと時計が進む。

どこかから走る車の音、大きな車体を揺らすトラックの音

元気な子供の叫び声が聞こえてくる

しかし、この病室はその全てから隔離されていた

確かに聞こえるのに、口にしたそれがまるで無味無臭の食物だったかのように

無関心に通り過ぎてしまう

天乃「藤森さ――」

水都「!」

動かなければと天乃が声をかけた瞬間

名前を呼びかけただけで、水都の体は怯えたように震えた


天乃「藤森さん?」

水都「あ、えっと……」

じりじりと後退りした水都は、自分でもその行動には罪悪感があったのだろう

申し訳なさそうに眉を潜めて、首を振る

水都「ごめん、なさい」

天乃「別に良いんだけど……なにかあった?」

天乃は極めて優しく声をかける

水都はまだそこまで打ち解けられていないと思うし

それでなくても、怯えられただけできつく当たるような性格ではないからだ

むしろ、それがなぜなのかと聞くし

適うことならば、天乃はそれを解決しようとするからだ

水都「そう言うわけじゃ、ただ。その」

それでも、水都は迷い躊躇う

それを口にすることで、天乃がどう出てくるのかを想像してしまうから

悪戯好きな天乃はこの言葉を聞いて、便乗してくることはないだろうかと。

天乃「……うん」

水都「っ」

だが、相槌を打った天乃の表情はそんな心配を、不安を

全て拭い去ってくれるような優しいものだった


それはある意味マッポンプ染みたものなのだが。

水都は拳を強く握って、床を踏みしめる。逃げないように

そして

水都「き、キス! さ、されるのかと思ったら、つい」

天乃「う、うん?」

自分が距離を置いてしまった理由を叫ぶ

が、天乃と言えば水都の恥ずかしそうな表情に対し、

何を言えばいいのかと困ったように笑みを浮かべて、目を逸らす

天乃「ねぇ、藤森さん。答えにくいならいいんだけど、どうしてそう思ったの?」

水都「自分で、わかってない……の?」

天乃「あ、うん……ごめんね」

水都の照れくささには呆れた表情が隠れていて

天乃は平謝りよりも少し雑な謝罪を述べて、ほほをかく


とはいえ、水都がそんなことを思う心当たりもあるといえばある

誰彼構わずにキスをするような破廉恥極まりないことをした覚えはないが

この子。と決めた―と言っても勇者部―に対しては、

付き合うことを話すときなどにキスをしたしそれを想いを伝える手段。とも言った

つい先日だって、淫らな理由なしに樹や若葉と唇を重ねたりしたわけで。

その全てを水都が見ていたのであれば、そう思うのも半分くらいは理解できる。かもしれない

……それで避けられるのはちょっと複雑だけれど

天乃「大丈夫よ。別にそういうことをするために呼んだわけじゃないから」

水都「でも、今少しそう言う気分な感じが――」

天乃「大丈夫だから」

穢れが最大限にまで汚染してきている状況ならわからない

いや、寧ろ危険かもしれないが、今の天乃にそんな意欲は毛頭なくて

そもそも、今はまだ攻めるより攻められてしまうタイプだから、問題はない

身を引く水都に対して、自分は平気だからと笑って見せた天乃は、

それでも距離を置いたままの水都から目を逸らして、寂しげに息をつく


天乃「まぁ、良いわ。そのままで」

水都「久遠さ――」

天乃「それで、穢れの方はどう? 沙織と一緒に請け負って……体は平気?」

水都「…………」

ほんのひと時の和むことさえできそうな空気は、一変する

恥ずかしそうにしていた水都の表情も、悲しげに沈んで

ただ、天乃の声色だけが優しさを保つ

天乃「多少の被害を世界に堪えてもらうんだとしても、それなりの影響はあったはずよ」

水都「それは……」

水都は何かを言おうとして一旦口を閉じると、考えに耽って沈黙する

自分の体についてのことなのに、だ

何かあるけど、何がどうあるのかわからないのだろうか?

それとも、今まで通り過ごせていて、ただ寝付けないとか軽微な影響しかまだ感じていないのか

水都「……今のところは、無事」

水都はそう言うと。きゅっと唇を締めて右腕で自分の体を抱き、目線を下げる

天乃「…………」

見たところの影響はないし、本当に問題はないのだろうか

それとも……


1、……そう。なら良かった
2、本当に?
3、今は良いけれど、本当に駄目なときはちゃんと教えてね?


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「……本当に?」

水都「ほ、本当に」

東郷「……ほんとう、ですか?」ギュッ

水都「!」ビクッ

東郷「本当は、目の前の人に触れたいのよ。抱きしめたい抱きしめられたい。キスだって……したいのよ」

水都「そ、そんな……っ」チラッ

天乃「東郷、止めなさい」


では、少しだけ


天乃「…………」

水都「だから、そんな心配しなくても……」

天乃は聞いても、何も言わなかった

視線すら向けずに、考え込むようにしていて

水都は自分の言葉が嘘なのだと、違うのだと

そう、看破されてしまいそうな気がして、言葉を紡ぐ

けれど、ゆっくりと天乃は目を向けた

天乃「……本当に?」

水都「っ」

天乃「本当なら、良いけれど」

明らかにわかっている言い方だった

何を隠しているのかまでは知らなくても

何かを隠しているのは解っている言い方

嬉しそうに笑みを浮かべているけれど、

きっとその裏には沢山の不安が渦巻いていて

だから、水都は唇を噛み締めた

言うべきだと。隠すべきではないと

けれど、その結果抱かせるものを、水都は快く思えなかった

それでも、水都は意を決する


水都「……本当は、少し。感じることはあるよ」

これと言って大きな影響は今のところ出ていないけれど

体の気だるさというべきか、重みは増しているし、

実った果実が徐々に腐っていっているような感覚が手足には付きまとっている

歩いている間に根元から腐り落ちてしまうのではないかと不安になるような感覚

だが、痛みはないのだ。痛くもなんともない

極ありふれた自然現象、蛇の脱皮のようにさえ、思えてくるような、なにかが。

水都「でもそれは自然の摂理。なんだと思う」

天乃「そんなことないわ」

水都「そんなことある。精霊はいつか必ず消えるから。それが早くなるか遅くなるかの違いでしかない。だから、きっとその程度なんだ」

天乃「……貴女も、千景の意見が正しいって言うのね」

天乃の嫌悪感の含まれた声、悲壮感感じる声

それに、水都は声なく頷く

千景が言う、精霊のあるべき姿

そして、千景が言う久遠天乃という精霊の主のあるべき姿

それは間違っていなくて、天乃が望んでいることが間違いなのだと、水都も思っているのだ


水都「私はね、きっと。あと2回、3回。被害次第ではあと一度の戦闘の被害軽減で消えると思う」

天乃「そこまで……きてるのね」

水都「うたのんは頑張るから、大丈夫だからって、言うけど……でも、私も巫女だったから。解るんだ」

歌野たちが力不足だとは言わない

みんながとても一生懸命で、鍛錬を積んで、戦い方を考えて

被害を少しでも軽減しようと、満開などの悪影響を及ぼす力を使わなくて済むように、頑張っていること

そのすべてを、水都は見てきたから

けれど。それだけではどうしようもないことがある

だから、言う。それは自然の摂理なのだと。

水都「まだ、戦いは終わってない。もっと厳しい戦いがある。だから……私はきっと。消える運命なんだって」

天乃「そんなことはさせないわ」

水都「そうしたら、世界が壊れる。東郷さんのお母さんが少し怪我する程度じゃ済まなくなる」

天乃「…………」

天乃には申しわけないと思うし

夏凜が言っていたことも解らないわけじゃない

けれど、問題の解決は理想では行えないのだ

水都「現実を見るべきだって、私も思う……穢れのことだって問題ないよ」


問題ない。水都の言うそれは水都自身の体に関して影響があるかないかではなく

天乃に関しての問題があるかどうかでしかない

天乃「止めて……」

水都「久遠さん、私達は精霊だよ。こうやって人間みたいに何でも出来るけど……でも」

天乃「止めて、藤森さん」

声は静かで、けれども空気は険悪に引き締まる

それは確実に怒りがこもっていて、悲しみがこめられていて

強く握り締められた天乃の手が、それを強く物語る

天乃「やめて」

水都「…………っ」

天乃は喪失に対して酷く拒絶反応を示す

千景の時だって、そうだった

それを知っていながらもこうして繰り返したのは

自分が居なくなってしまう可能性が高く

そして、そんな自分のことにでさえ、天乃が心を痛めてしまうような人だからだ


水都「……逃げてたって、何も変わらない」

天乃「逃げてるわけじゃないわ。ただ、嫌なのよ……私が生きているうちは、誰にも消えて欲しくないの」

水都「誰かを助けるために誰かが犠牲になる。それは当たり前のことだよ。どうしようもないことだよ」

天乃「……解ってるわ。でもね、藤森さん。だからって……」

水都「……?」

話の途中で天乃は気づいたように目を見開き、ゆっくりと閉じて息をつく

総毛立たせるような憤怒の雰囲気は薄れて、悲しげな笑みが天乃の表情に描かれていく

天乃「だからって、誰かが犠牲になっていいわけじゃない。それはね。みんなが私に求めたことなのよ。だから、私もみんなに求めるのよ」

水都「…………」

天乃「だから、誰かが犠牲になるというのなら。どうしようもないなら。私は私の力でみんなを守るつもりでいるの」

戦わないと約束した

出来うる限りの信頼を持って、戦いを委ねると決めた

だが、それはみんなが犠牲になってしまうことを許可したわけではない

天乃「貴女の事だって、私は見捨てたくない。出来ることがあるのなら、なんだってしたい」

水都「……久遠さんにとって、私は」

天乃「友人よ」

天乃は笑顔で即答する。曇りも迷いもない

そうだと信じ、そうであると決め付けた、現物を切り抜いたような答え

天乃「だから、私は貴女と千景の言葉も、思いも。受け入れるつもりはないわ」

精霊だと見限ること

それは絶対にありえないのだと、天乃は改めて明確にした


√ 8月5日目  夜(病室) ※金曜日


01~10 風  樹
11~20 
21~30 沙織

31~40 
41~50 
51~60  千景
61~70 
71~80 
81~90 若葉

91~00 

↓1のコンマ 


では、ここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から



若葉「私は天乃の在り方を支持する」

水都「ごめんうたのん、乃木さん。私は現実を見るべきだと思う」

歌野「ノードリーム、ノーライフ。みーちゃん、人は夢で生きていけないけど、夢に生きてるんだよ」

千景「私は……」

沙織「夢に生きて、理想を求めているからこそ……人間は現実という底なし沼で足掻くことが出来るんじゃないの?」

沙織「夢も理想も語らないで、現実を見て、現実を語って。そんな生き方に何の意味があるのさ。馬鹿らしい」


では、少しずつ


※√8月5日目 (病室)夜 ※金曜日


月明かりが雲に遮られてしまうような、薄暗い夜

消灯時間が近く、殆どの患者が休んでいるということもあって、

各病室の明かりが心もとないものに切り替わったり、消えていたりする中

はっきりと目を覚ましている天乃は、上半身を起こした姿勢のまま呆然としていて

不意に、コンコンッっと室内の机が音を鳴らす

若葉「……そろそろ横になったらどうだ?」

天乃「眠くないの」

若葉「そのままでいたら、なるものもならないだろう」

感情の起伏が乏しい反応に、若葉は小さく笑みを浮かべて、距離を詰める

少し動かすぞ。と声をかけてから操作用のリモコンを手にとって

ベッドを平らにして、天乃の体を横にさせる

天乃「満腹の人が、目の前に食事を出されて食べるとは限らないわよ」

若葉「ふふっ、好物だったら食べるかもしれない。可能性というのは少なくとも二つあるものではないのか?」

天乃「自慢げな顔、叩いて良い? そうしたら眠れるかも」

天乃は体を横にした傍から若葉に背中を向けていて、その顔は見えていないはずなのに

そう決めつけて―実際にしていた―息をつく

天乃「それで? 用件次第で帰ってもらうけど」

若葉「……見ていられなかった。というのが正直な原因だな」


天乃の問いに、若葉は偽りも装飾もなく率直に述べる

水都との会話を若葉は黙って見ていたのだ。聞いていたのだ

それは精霊同士の約束

互いが認め合った場合にしか、そういったお遊びの枠に収まらないやり取りの場への介入はしないと。

もちろん、例外もないわけではないが。

若葉「もう天乃は気づいているだろうが、私達の中でも意見は大きく割れているんだ」

天乃「私が精霊を見捨てられないような弱い子だからでしょ? 迷惑かけるわね」

若葉「あまり卑下するな」

そうっと、天乃の横髪に触れて、若葉は優しく言う

元気のない、横顔、悲しそうで、切なそうで、辛い思いをしている嘆きに満ちた表情

だが、若葉はそこに導いた水都を責めないし憎もうとも思わなかった

互いに信念あってこその言動。であれば、害意あるものでなければ責める必要は無いからだ

天乃「……どうして?」

若葉「その優しさは、私が天乃を好む理由の一つだからだ」

ただただ真っ直ぐな気持ち、恋だとかなんだとか

そういった意識のない、無意識な本心だから。

若葉の表情には照れ臭さがなく優しげで。

そしてすぐに、はっとしたように頬を染めた


若葉「…………」

取り乱してしまいそうになる心を抑えるように、

若葉は一息ついて、瞬き一度。

まだ目を向けてくれない天乃の頬に触れる

柔らかくて、包み込んでくれる

けれども反発するような張りもある頬

指の腹で撫でて、小さく笑う

若葉「みんな、理解はしているんだ」

天乃「…………」

若葉「天乃がたとえ精霊であれど使い捨てには出来ないと。人間ではないとしてもそのようには扱えないと」

道具のように使い捨てても、精霊からしてみれば異論はない

自分達はそう言う存在なのだから

扱われるために存在しているのだから。

だけれども、天乃はそういう扱い方が絶対に出来ない

若葉「だが、ゆえに私達の免れ得ない消滅が天乃の心を傷つけるのではないかと、恐れてしまう」


若葉「天乃は優しいから。きっと心を痛めるうえに、私達の為なんかに涙を流してしまうだろう?」

今は流れていない涙を拭うように目元に指を滑らせて、天乃の肩に手を置く

ほんの少し、熱く震えも何もない体。見える横顔、解る瞳は開かれていて

若葉がそっと手に力を入れると、天乃は簡単に仰向けになって、目が合う

天乃「……………」

若葉「それが、みんな嫌なんだ。天乃には笑顔が似合う。そうあるべきだと思うんだ……私達は夏凜の望み通りであるべきだと、思う」

笑顔で居て欲しい、幸せで居て欲しい

夏凜の望み、夏凜の願い

夏凜が勝ち取ろうとしている未来の形

若葉はそれを追いかけるように語って

天乃「……みんな。ね。そこには千景たちも含まれてるの?」

若葉「無論だ」

天乃もそれは解ってるはずだ

そう信じて、若葉は笑みを浮かべながら即答する

若葉「みんな、抱く思いに差はあれど。好意があるからな」

天乃「だからって、自分達を犠牲にするなんて」

若葉「ふふっ」


天乃のぼやきに、若葉は思わず笑い声を零して、

何よ。と不満げに唸る愛しい人に「すまない」と、笑いながら謝罪する

若葉「いや、すまない。本当に。ふふっ」

天乃「若葉」

若葉「その、あれだ。これはアレだろう? お前が言うな。というやつだろう?」

使えたことが嬉しいのか

それともまだ愉快なのか、言葉には笑みが付属する

とはいえ、若葉が言っているまさにその通りだ

今までそうしてきたのは天乃自身で、その結果が今の有様

戦うことはできるけれど、戦えない

両足は動かないし、左目は見えなくて、片方の耳も使えず、味覚もなければ、家族の顔も思い出せない

天乃「そうかも知れないけど……」

若葉「だろう? 人のことをいえたものじゃない」

天乃「なんで笑――」

ぐっと握った拳、軽く叩こうとした手

けれど、若葉はそれを容易く押さえ込んで、天乃の上に跨る

若葉は笑みを浮かべたままで

ちょっと……と、少し怯えて見える天乃の頬に伝う冷や汗に髪が張り付く


若葉「なんだか……不思議な気分になるな」

天乃「貴女、東郷とのやつ見てたわね……っ」

若葉「すまない。つい……見てしまった」

思い出して恥ずかしそうにする若葉は、

さっきまでの凛々しさとは一転した可愛らしい恥じらいのある笑みを浮かべる

それは、恋した女の子の表情

勇者という重責を担っているとは思えない、雰囲気

天乃「私、今日は友奈と東郷に付き合ったからそんな余力無いんだからね?」

若葉「一妻多妻を望みながら、体力が無いなんて言い逃れが出来ると?」

天乃「……思わないけど」

若葉の浮かべる珍しい表情に、天乃はそっぽを向いて息をつく

半ば悪戯心が混じっているのだ、若葉に

落ち込んでいたから、嫌な気分になっていたから

深い悩みを抱え込んでしまっていたから

それを、少しでもうやむやにかき乱して落ち着かせようとしてくれているのだろう

若葉「なら、良いだろう?」

……だろう。か?

1、明日に、して
2、良いわよ
3、あっ、ダメ……もう眠い。すやすや
4、……私は千景たちの意見を認めない。その意思は変わらないから
5、ち、力づくなんてっ……たとえ体が穢されても。心は貴女のものになんてならないんだからっ!


↓2


※5は、【という抵抗】


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「たとえ体が穢されても。心は貴女のものになんてならないんだからっ!」

若葉「そうか」パチンッ

沙織「はーい」

東郷「東郷美森……参ります!」

友奈「押し花がえっちな意味だったなんて……」

風「あたしの女子力、受けきれる?」

樹「縄で縛るのは痕がつくので好きじゃないです」

若葉「その強気がいつまで持つか……楽しませて貰うとしよう」


遅くなりましたが、少しだけ


天乃「……っ」

ほんの僅かに若葉の力を押し返した天乃の力

けれど、それはすぐに押さえ込まれベッドへと沈んでいく

抵抗するように込めた力を抜いて、一息

全力で力を使ったところで、この力は押し返せない

今の若葉はお遊び程度の力なのに……

若葉「どうした、抵抗しないのか?」

天乃「ふふっ……なによ。経験なんてこれっぽっちもないくせに」

煽るような笑みを浮かべる若葉に対抗して

天乃もまた、挑発的な笑みを浮かべながら嘲笑すると

頬に浮かんだ汗が伝い落ち、若葉の指が拭う

若葉「言うじゃないか。いつもいつも、されてばかりの――」

天乃「んぐっ」

唇を重ねる。これは強引に、押し付けるように

互いの心を通わせるようなものではなく一方的な、略奪

若葉の手の中で天乃の手が跳ね除けようと動くけれど

それはまるで赤子のように、力なくて

若葉「っは……ふふっ」

天乃「っ……」

若葉「されてばかりの姫様が、よく言えたものだ」

余裕を見せる若葉に天乃は睨みを効かせた視線を若葉へと突き刺す


天乃「ち、力づくなんてっ……」

若葉「か弱いな」

どれだけ力を込めても、若葉の力は押し返せない

最初は僅かに押し返せたものも

もはや、手馴れたように封じ込められて

天乃「たとえ体を穢されても、どれだけされても……心は絶対に貴女のものになんてならないっ!」

抵抗は無意味だと判断した天乃は力を抜きつつも

抵抗の意志をはっきりと示す瞳、言葉を向ける

若葉「……ほう」

天乃「それでも良いなら、好きにしたら良いじゃない……」

若葉「言ってくれるじゃないか」

そっと天乃の頬を手で撫でる。良くあるような手全体ではなく

指だけで、なぞるのだ。口元、耳付近、目元

一つ一つを、学ぶように

若葉「こんなに顔を紅くして、体を熱くして……心は私ではなく快楽の虜になっているのか? それはそれは、嫉妬するな」


目元まで指が来て、きゅっと瞼を閉じた天乃の耳元に口を近づけて囁く

天乃「んっ」

そして、怯えて揺れる唇に唇を重ねる

真っ暗な視界の中で、されたキス

驚きに震えた天乃の体がビクリと跳ねたが、気にせず唇を重ねる

擦り合わせるように、かつ、強引に

しかしながら自分は君を愛しているのだと

想いを込めて丁寧に

こじ開けられた唇は折り重なるように交わって、若葉はぬるりと舌を忍び込ませる

天乃「んくっ……っ、んっ」

ぬちゅりとした淫靡さを醸し出す水音

かすかに感じるざらりとした質感

天乃の震える体が、なぜだか気分を高揚させる

それはきっと、悪い部分の感情だ

精霊ゆえに善悪が混在しているのか、人間ゆえの混濁か

いずれにしても、若葉は思う

若葉「っは……はぁ……なる、ほど……これは、魅惑的だ」

性的な触れ合いと言うものは

想いが強ければ強いほど、依存的な何かを引き出させるものだ。と


天乃「はぁ、はぁ……んっ」

こくりと、天乃の喉が鳴る

紅潮した頬、上気し、熱っぽい吐息

乱れ、ベッドに舞う髪と張り付いた髪

悲しみか、怒りか、悦びか……感情を孕んだ瞳

呼吸に合わせて揺れる胸元は、少しばかりはだけて、白いインナーが見える

天乃「どう、したのよ……こんなもので? 終わり?」

若葉「そんなわけない。本当に好みなものは五感全てで味わわなければ……勿体ない」

天乃の頬に手を這わせた若葉は、親指に唇を割らせて艶かしいぬめりを拭いとって天乃に見せる

指を擦り合わせて離せば、糸が伝う

若葉「天乃はキスが好きなんだったか」

天乃「だったら、なに?」

若葉「なんでもない」

反抗心感じる天乃の厳しい瞳から胸元へと目線を下げた若葉は、

そのまま体を起こして、天乃の足に触れる

もちろん、手は押さえたままで。


若葉「あまり使うことはないというのに、綺麗な肉の付き方をしているな」

細すぎず、太すぎないすらりと伸びた足

脹脛は強張っているのもあってか、柔らかいけれど固めで

筋肉が衰えていないのも、感じる

その一方太腿は無駄に削ぎ落とさなかった筋肉と死亡の程よい調整が行われていて

押せば弾くような弾力があるのに、押せばその形に馴染んでくれる

感触は不鮮明だけれど、記憶には鮮明なひなたの膝枕、友奈の膝枕

耳かきまではさせなかったが、悪戯で引き倒され、させられた陽乃の膝枕

それぞれを思い出し、天乃はどうなのだろうと考えながら、天乃の足の側面を優しく撫でる

天乃「……褒め、たって」

若葉「言葉でどうにかなるとは思っていないさ。私の行動は天乃を辱めているからな」

天乃「っ」

ズボンタイプの患者衣、そのウエストはゴム紐状で若葉はその結び目に指を引っ掛けて引く

じわじわと、焦らすように時間をかけて

呼吸に合わせて体が動くたびに、ウエストの紐が段々と緩みほどけていく

それが嫌に伝わる天乃は、唇を噛み締めて若葉を見る


天乃「友奈のほうが上手よ。あの子は優しいから」

若葉「ほかの 女の名前を出すのか……まだまだ余裕だな」

天乃「っ!」

内股を撫でるようにしながら、股座へと一直線

下着とズボンの隔たりを踏まえての指圧は少しだけ強く

心地よさは天乃の意志に反して火照り、下腹部の性感帯を隆起させていて

拭い取るように擦れる下着の刺激が、天乃を責める

天乃「やっ……んっ」

若葉「いい声だ」

天乃「やっ!」

耳元で囁いた若葉は人差し指に力を込めて、擦る

本来なら閉じようとする足は動かず、捻ろうとする体は若葉が押さえ込んで

されるがままに、天乃の体は心地よさを募らせていく

天乃「っ、んっ……ぅ……ゃ、ぁ……」

吐息の色気が増し、顔の赤みがより濃くなって

抵抗する力は比例するように弱くなる


天乃「や、やめ……やっ……ぁっ……」

ぐっと指先に力を込めて強く刺激した若葉は、

天乃の体がビクッと震えたのを見て、手を離す

天乃「ぁ……っ」

ちいさくこぼれた天乃の驚きの声

それはそぷだ、こんな場面で手を止める相手なんて

今までの経験の相手の誰にも居ないのだから

若葉「まだ早いぞ。天乃……もっとも、天乃が早くして欲しいというなら――」

天乃「言わないわよっ」

若葉「本当に良いのか? もっと、しなくて」

若葉は挑発するように笑う

そんな言い方をされて、いえるわけがない

そこで言うのは屈服の証だ。敗北証明だ

けれど

気持ちが良かった。くすぐったさもあったけれど、布に巻き込まれて擦られていく感覚は快感には快感を覚えた

それが半ばで中断されては……不快感しか、残らない


天乃「っ……」

ドキドキとする。中途半端に刺激された下腹部が疼く

溶け出した理性に下着の中は蒸れて、それが羞恥心を打つ

閉じた唇が震える。開いてしまえと、言葉を発してしまえと

口の中が嫌に潤う。飲み下したつばが粘つく

そして――

天乃「んっ」

若葉「んっ……ふふっ」

唇が重なる。若葉からの強引なキス

閉ざした唇を強引に開いて、舌を捻じ込んでいく

それはまるで、心をこじ開けられていくような感覚だった

逃げ惑う舌は絡めとられて、味わわれて

口腔は好きに蹂躙され、汚され、若葉に染められていく

若葉「は……ぁ……ふ、ふふっ」

天乃「ぅ」

二人の間を、愛が伝う

穢れを感じさせない、無色透明の想いが伝う

全ての病室が闇に包まれる中、たった一部屋だけが淡い光を灯す

渦巻く嬌声、漂う熱気、弾ける水音は淫靡に融けて

二人の少女の淫らな触れ合いは外の世界のように濃密だった


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流無()
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流有(後片付け)
・   東郷美森:交流有(気づく、穢れの影響、やってみれば?)
・   三好夏凜:交流無()
・   乃木若葉:交流有(無謀な抵抗)
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流有(本当に?)
・     郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流無()

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()



8月5日目 終了時点

乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 66(とても高い)
犬吠埼樹との絆 56(とても高い)
結城友奈との絆 76(かなり高い)
東郷美森との絆 59(とても高い)
三好夏凜との絆 96(かなり高い)
乃木若葉との絆 65(とても高い)
土居球子との絆 31(中々良い)
白鳥歌野との絆 26(中々良い)
藤森水都との絆 19(中々良い)
  郡千景との絆 20(中々良い)
   沙織との絆 78(かなり高い)
   九尾との絆 50(高い)
    神樹との絆 9(低い)

汚染度???%


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から




『私達の主様は絶対負けない。R18』

監督:乃木園子

脚本:東郷美森

演出:伊予島杏

撮影:上里ひなた


夏凜「んなもん出ないわよ」

園子「えー……」

夏凜「当たり前でしょうが」


√ 8月6日目 (病室) ※土曜日


開始前判定↓1 

20~29   71~80




√ 8月6日目 朝(病室) ※土曜日

通常再開

01~10 大赦
11~20 風
21~30 
31~40 若葉

41~50 
51~60 
61~70 九尾

71~80 
81~90 沙織
91~00 

↓1のコンマ  


√ 8月6日目 朝(病室) ※土曜日


天乃「結構、いい気分で寝ていたんだけど……」

友奈とは違って、部屋は綺麗に片付けられ、空気は新鮮に入れ替わって

体も丁寧に拭われていた天乃は、下腹部の不快感も何もなく目を覚ました

けれど、それはすぐ不快感に塗り替えられていく

「申し訳ありません」

朝から大赦の職員が接触を図ってくる場合、

伝えてくる大抵の事柄が天乃にとって嫌な事だ

前回に引き続き姿を見せた女性職員は天乃に苦手意識があるのだろう

少し怯えた様子を見せながら、頭を下げる

「久遠様には、大赦の本部に来ていただきたいと」

天乃「本部に?」

「はい、内容は伺っておりませんが、お連れしろとの命を受けています」

天乃「……拒否権は?」

「私はお連れしろと言われたのみで……」


天乃「本部に行くということは、私は退院? 皆は?」

「それに関しても、詳しくは……」

天乃「…………」

本当に何も聞いていないらしい

普通なら、退院して面倒話を聞かされて、家に帰る……ということになると思うが

天乃以外の勇者が検査入院中ともなると、

天乃一人を孤立させる退院はあまり良い選択とは言えない

しかし、天乃なら平気だろうと

大赦が退院させることはないとは言えない

もっとも、本部に行かなければいけないと言う時点で

退院どうこう。という話にまで言ってくれるとも限らないのだが

「よろしいですか?」

天乃「…………」

断って平気だろうか……?


1、承諾
2、拒否


↓2


天乃「……解ったわ」

「ありがとうございます」

天乃「お礼なんて」

礼儀正しく言う女性に、天乃は小さく息をつく

これ以上があるのかは別として

断ればさらに立場が悪くなってしまう可能性がある

そうなれば、みんなとの交際も……

もちろん、周りの言葉なんて無視して押し通してしまうと言う手もあるけれど

天乃「それじゃ、準備は……手伝ってくれるのよね?」

「あ、は、はい」

天乃「変なことしないでね?」

「変な事……ですか?」

天乃「なんでもない」

皆なら可愛らしい反応が見られる冗談も

やはり、他人ではそううまくいかないようだ

そして、つまらない女性との退屈な時間を過ごしながら

天乃は呼び出された大赦へと向かう


√ 8月6日目 朝() ※土曜日


大赦のところへと向かった天乃は、

形式的な禊を行い、身体を清めさせられ巫女が纏う衣服に着替えさせられ、さらに移動する

辿り着いた先は儀式を行うような、明かりの乏しい部屋

神官の衣装、大赦の仮面

何も知らない人が見れば踵を返して逃げ出すような絵面の室内に

天乃はため息をつくこともなく、進む

春信や瞳は天乃の根強い要望―世界を滅ぼすような―で付き合い方は砕けているが

彼らは本来、そう言う人間なのだ

もっとも、天乃に対しては園子のような扱いはしない辺り

崇拝というよりは、恐れが勝ってしまっているのだろうが。

天乃「……」

辺りを見渡す

見慣れた瞳はおろか、少しくらいの高い春信も見えない

恐らく、知り合いはここにはいない

「久――」

天乃「面倒くさい前書き言うのなら、帰るわよ」

「…………」

天乃「初めに言ったはずよ。私は園子のように優しくない。気に入らないのは気に入らないと、実力行使で示すって」


「…………」

天乃の厳しい一言、射殺すような視線を受け、

仮面をつけた人たちは口を閉ざして、互いの仮面を見合わせ天乃へと向き直る

全員が知っているわけではないだろうが、

天乃は以前、その実力行使を本当にやってのけたし

そうでなくとも、天乃の力は容易く神樹を屠り、世界を滅ぼす力を持つ

それは園子ですら確実に抑えられるとは言えない力

ゆえに、頷く

「……解りました。そのようにいたしましょう」

天乃「助かるわ。そもそも、貴方達の心にもない祝詞とかお礼とか、虫唾が走る」

「…………」

天乃「私なんて要らなかった。私が居なくても園子ならなんとかできた。それなら被害はもう少し軽かった」

天乃は努めて平坦な声で述べると

誰にも目を向けずに薄く笑みを浮かべる

天乃「皆がそう思っていることくらい、知ってるもの」

「そのようなことは……ありません」


仮面をつけているせいで表情も感情もうかがい知ることはできないが

困り果てた表情を浮かべているのが透けて見えて

天乃は満足げな笑みを浮かべて首を振る

切り替えるべきだ

天乃「それで? 何か大切な話があるから呼んだのでしょう?」

「はい。先日の事ですが、以前とは変わり、街への被害がありました」

天乃「何をしてたんだって言いたいの?」

「いえ、久遠様が被害を請け負うことによってより追い込まれてしまうことは伺っておりますので」

そう答えた神官は一拍置いて、天乃を見た。気がした

「ですが、その場合樹海化の際に久遠様がお傍にいる事は勇者様にとって防衛対象が増えてしまうのではないか。と……」

天乃「それ、要するに私が足手纏いって言いたいの?」

「…………」

神官は答えない

ひきつった緊張感のある空気のまま、

代表らしき神官は黙り込む天乃に仮面を向け、続ける

「これから、戦いはより厳しいものになっていきます。ゆえに、懸念は少しでも排除すべきかと、私達は思うのです」

天乃「……それ、私が嫌だと言っても、無駄だったりしないわよね?」


みんなの傍に居たい

みんなと離れ離れになりたくない

そんな願いゆえに、大赦の提案を断ったところで

ここに来た時点でもう、強制されたのと同じことなのではないかと、天乃は思う

それに対する大赦の答えは、沈黙だった

天乃「……冗談、止めてよ」

「久遠様は現状戦うことのできる力を有しておりません」

天乃「それは……別に、戦えるけど、だけど」

「久遠様がご友人と共に居られることを望まれていることは理解しております」

ですが。と

神官は天乃の介入を許すことなく言葉を紡ぐ

感情が死んだような、神官の声

それは、なんの思いも感じられない、淡泊なもので

「激化する戦いにおいて、自らをお守りできない久遠様は勇者様を危険に晒す原因になりかねないのです」

天乃「……………」


1、みんなはなんて言ってるの?
2、お断りするわ
3、……わかった。わかったわよ
4、ねぇ、そんなことを言うってことはまた。それも、前回よりも厳しい襲撃があるとお告げが出たってこと?
5、考える時間を頂戴。せめて、1日

↓2


天乃「皆は、なんて言ってるの?」

もはや聞くまでもないことだと天乃は思いながら、

あえて、問いかける

依然のただ接触を控えて欲しいという指示でさえ、

みんなは拒んだのだ

こんな、その程度では済まないような願いを受け入れるはずはなかった

「皆さまには、後々ご連絡差し上げる予定になります」

天乃「皆の承諾もなしに決めて良いの?」

「戦いをより安全に行う為です。皆さまも承諾いただけることかと」

天乃「みんなのことなんて、貴方達は本当に何もわかっていないのね」

「……その点に関しては善処します」

何の意味もない【善処する】という言葉

空気でさえ入っていないように軽いそれはあっという間にどこかへ消えていく

天乃「ならせめて、みんなに聞いて答えを聞いてからにして頂戴」

「しかし――」

天乃「現場の声を聞かない提案が、なんの役に立つのよ」

「…………」

天乃「勇者は、私のクラスメイトと違って力があるのよ。貴方達なんて殴り飛ばせる力が」


天乃「だから、下手なことはしない方が良いわ」

皆の事だ、そこまで過激なことをするとは思えないが

精霊に関してはその限りではないし

みんなだって、いざというときは手を出す可能性はある

「……それは、承知しているところです」

天乃「だったら」

「しかし、勇者様はおそらく、私達の言葉を受け入れることはないのは明白です」

天乃「だから、こうやって極秘で呼び出して監禁しようって言うの?」

「いえ、そのようなことは有りません」

神官は天乃の言葉を否定すると

天乃のすぐそばに控えていた女性神官へと指示を出す

「これを」

天乃「?」

手渡されたのは、封筒だ

無地の茶封筒、中身は……

天乃「……転校?」

「この地域から一度、離れるべきかと。そうなれば樹海化に巻き込まれることも避けられます」

天乃「……この近辺そのものから追い出そうって魂胆なのね」

「追い出すわけでは――」

天乃「転校なら、クラスメイトも大きな抗議は出来ないし、沈静化も図れる……そう言う考えがないわけではないでしょう?」


神官は天乃の質問には答えない

彼らが考えたことなのだから

その答えを知らない、答えられないなんてことはないはずなのに

もちろん、答えたことで天乃がどう出てくるのか警戒しているのだろうが

それなら、初めからしないで欲しいと天乃は思う

提示された学校は讃州中学とかなり離れているし、

皆の家とも―計画通りなのだろうが―離れている

とてもではないが、学校が始まってから会おうと思えるような距離ではない

少なくとも、自転車では。

天乃「これ、みんなに話しても平気?」

「勇者様を確実に生還させるためです。どうか、お考え頂きたく」

天乃「……………」

本当に危険な時のバックアップとして戦場に出ているが

それは、ただの足手纏いでしかないのだろうか……

そう考える頭の中には、彼女の笑い声が響く

気に障る、嫌な声

考えるべきだ

戦闘に集中できないなんて

護衛対象が増えるなんて

そんなの……危険な戦いでは命取りにしかならないのだから


√ 8月6日目 昼() ※土曜日


1、病室
2、自宅


↓2


帰る場所を選択できます


√ 8月6日目 昼(自宅) ※土曜日


天乃は病院ではなく、自宅に帰ることにした

病院に帰ればみんなに会うことはできるが

きっと、考えていること、抱えてしまった悩みはみんなに筒抜けになってしまう

そんなの、無視したらいいと言うだろうか

そんな確証は、持てそうもない

天乃「…………」

夏凜達は、天乃と一緒にいるのが好きだ

だが、天乃が生き延びることが出来る可能性

危険な目に合わなくなる可能性と、自分たちとの時間を天秤にかけたとき

前者を得ようとする可能性は、大いにあるのだ

みんなは、そう言う子達だから

今までのように、学校に行く前や学校帰りに会いに来るのはむずかしくなるとしても

休みの日には会いに来ることが出来る

その前日に準備をしていれば、泊まりに来ることだって

だから、絶対に会えないわけではないのだ


そう。それならみんなは貴女を手放す

そうね。きっとあなたにごめんねと言って離れていく

全部終わったら、ちゃんとみんなでまたずっと。って

貴女を一人ぼっちにするのよ

天乃「っ……」

彼女は嗤う。幸せそうに

天乃とは全く逆の感情を、彼女は抱くのだ

別の中学校への、転校

この時期だからクラスメイトには不審に思われるだろう

だから、断る?

大事なのはクラスメイトじゃないわ

大事なのは勇者が死ぬか生きるかでしょう?

貴女のような足手纏いが、戦場にいるべきかどうか

天乃「私は、バックアップだから」

そう言う理由で、みんなを危険に晒すのね?

ああ、なんて素晴らしきマッチポンプ、自作自演

貴女は演技の天才ね



1、うるさい……うるさいっ!
2、封筒を破り捨てる
3、みんなはそんなに弱くない。みんなは……解ってる。気にしなくても良いんだって
4、精霊を呼ぶ


↓2



1、九尾
2、千景
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、悪五郎
7、水都

↓2


天乃「五郎君……っ」

声をかける

若葉や千景、歌野、球子、水都、九尾の選択肢もあったけれど

今は、なんとなく悪五郎が良い気がした

悪五郎「……良いように使うな、お前は」

皮肉っぽくいう悪五郎がどこからともなく姿を見せると、

彼女は悪態をつきながら、天乃の内側に消えていく

その消えた先の暗闇は、以前よりも広く、深く、どんよりとしているように感じた

悪五郎「お前はいつもいつも、悩んでばかりだな」

天乃「…………」

悪五郎「人間は悩める生き物だと記憶しているが、お前ほど濃密に悩む人間もそう多くはないだろうな」

嘲笑する悪五郎に、

天乃は悲し気な笑みを向けて、首を横に振る

天乃「そうね……まるで、みんなが生きる人生を半分以上に凝縮してるみたい」

悪五郎「確かに、否定は出来んな」


悪五郎「……なぁ、天乃」

天乃「なに?」

悪五郎「死にたいと……お前は思ったりしていないか?」

悪五郎にしては珍しく、神妙な雰囲気での言葉だった

天乃と同じ境遇を経験してきて、悟ったかのような

そんな、優し気な表情だった

ベッドに座る天乃の頬に、小さな手が触れる

大きく見ても中学生、そんな少年の手は綺麗で、温かい

夏凜とは、正反対だ

悪五郎「お前は日々体が蝕まれているように見える」

天乃「…………」

悪五郎「少しずつ。どれだけ些細な事であろうと、攻め入る隙があるのなら、穢れが侵食しているのだろう?」

天乃「五郎君……」

悪五郎「肯定も否定も、それ以外でも。もしもお前に隙が生まれるなら、そのまま黙っていればいい」

悪五郎はそう言いながら、

天乃の頭を誘うように動かして、抱く

小さな体では遠く、不器用に前のめりで

触れる場所は胸とお腹の中途半端な所だが

悪五郎は想う一人として、天乃を包む

悪五郎「だから悩みすぎるな。俺の傍では一々、言葉を選ぶなんて馬鹿な真似はする必要はない」


 天乃「……珍しく、優しい」

悪五郎「俺はお前を孕ませるんだろう? ならばそうすべきだ」

確かに、悪五郎とはそう言う約束だ

どこのだれかとも分からないような男の子

あるいは、男性と無理矢理な恋愛をさせられるよりも

夏凜達との交際をしたままでも許される、悪五郎と。と

悪五郎「なんなら、今すぐやっても構わんぞ?」

天乃「今やって、どうにかなるの?」

悪五郎「正直に言えば、難しいかもしれんな。お前の体というより、お前が戦えなくなる間、娘たちが無事が。だが」

天乃というバックアップが無くなるのは

これから戦いが厳しくなるというのならば、得策ではない

もちろん、園子に戦って貰うと言うのもあるが、

それは本当の本当に、最終手段だ

正規の勇者であり天乃のように死ぬことはないが、身体機能は確実に奪われていく

それはもう……見ることも聞くことも話すことさえも出来なくなる可能性があると言うことだ

そこまでは、行かせたくない



1、なら、それ以外のエッチな事くらい、する?
2、ねぇ、貴方は穢れが分かるの?
3、どうしたら、良いの?
4、なら……傍にいるだけで良いから。お願い


↓2


天乃「ねぇ……五郎君」

体を預けたまま、悪五郎に問いかける

彼は何も言わず、ただ、抱く力を少しだけ強めて言葉を受け止める

天乃「どうしたら、良いの?」

悪五郎「それはお前がどうしたいか。ということが分からなければ何とも言えないな」

天乃「私……?」

悪五郎「そうだろう? お前が聞きたいのは過程。目指すべきは結果だ」

悪五郎は真面目な様子を崩すことなく言って天乃の体を離すと、

すぐ横の椅子に腰かけて、まっすぐ天乃を見る

子供ゆえか座高が低く、目線はだいぶ下がった

悪五郎「お前が娘たちと居たいのなら、何のことはない。今まで通りでいればいい」

天乃「…………」

悪五郎「お前が自分の無力さを嘆き、娘たちの足手纏いだと思うのならば、大赦に従い転校すればいい」

悪五郎は一つ一つ、指を立てて確認するように言う

悪五郎「簡単に言えば、娘たちと居るか居ないか。だ。お前の心はどこで救われる?」


天乃「私の心……」

夏凜達と居られれば、楽しくて、嬉しく幸せだろう

しかしその反面、夏凜達が傷ついていく姿を見なければいけない

そのたびに、自分のやるべきことを思い、否定され

何もできないもどかしさに苦しむ

夏凜達と居なければ、楽しくないかもしれない、幸せじゃないかもしれない

けれど、夏凜達が苦しむ姿を見ずに済むだろう

自分がすべきことを悩まず、苦しまず

何もできないもどかしさから解放されるかもしれない

悪五郎「ああ、それ次第だ」

天乃「私がどちらでも。貴方は否定したりしないの?」

悪五郎「それが御前の本心に違えることならば、否定しよう。そうでなければ、俺はお前のその選択を助けるだけだ」


1、転校手続き書類を書く
2、転校手続き書類を破く
3、夏凜達にも聞いておく

↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「こんなもの……っ!」ビリッ

神官「な、なにを!」

天乃「私はこんなことしない……転校なんて!」

神官(兄)「くっ……」

神官(どさくさに紛れて婚姻届けにサインさせようと……)

神官「くっそぉぉぉぉぉッ!!!」

天乃「ひっ」ビクッ


では、少しだけ


ビリッっと、壊音が響く

二度、三度それは続いて天乃の布団の上には細切れになった紙が散らばっていた

天乃「これが、答え」

天乃は静かに呟いて、破り捨てた【何か】をかき集めてゴミ箱へと投げ込む

悪五郎は何も言わない

天乃も何も続けない

そして、数瞬

穏やかな流れで顔を見合わせて、天乃が微笑んだ

天乃「ダメかしら?」

悪五郎「その判断はいつかのお前が決めることだ。今のお前も、今の俺も。定めるのは早計だ」

そういいつつも、悪五郎の表情には不満も何もなく

ただ、その選択をした天乃の表情に適したものを見せる

天乃「私はみんなを見届ける。ここで逃げたら、みんなを信じていないのと同じこと」

悪五郎「それは、お前が戦うことにも言えるが?」

天乃「言ったでしょ? 夏凜達が本当の危機に陥ったときは、問答無用で力を使うって」

悪五郎「…………」

天乃「だから、そうでないのなら。私はたとえこの心がどれだけ痛むのだとしても。みんなを信じて待つわ」


そう決めたのだ。曖昧だった、うやむやだった

自己保身的に言えば、臨機応変

さまよっていたその考えは、彼女が付け入るにはとても容易な場所

だから、定める。こうあるべきなど決め付けて、支柱を立ててしまう

悪五郎「それで、大丈夫か?」

天乃「支えてくれるのでしょう?」

悪五郎「…………」

笑みを浮かべ、そっと手に触れてくる天乃に

悪五郎は一瞬、言葉を無くして……小さく笑う

困ったように、おかしくてたまらないというように

悪五郎「お前という女は、本当にずるい女だ」

天乃「そう……かしら?」

悪五郎「解っていないところが、俺はより煩わしく愛おしい」


天乃の頬に触れ、顔を近づけさせて悪五郎は微笑を浮かべる

天乃「ちょ、ちょっと、五郎君……?」

真面目な話をしていたのだ

そう言う雰囲気では微塵もなかったのだ

そんな唐突な状況に、天乃は驚きつつも悪五郎の肩に手を置く

けれど、少し距離を置くために込めた力は無力に抑え込まれて

さらに近付く距離に、天乃は思わず目を瞑る

天乃「ぅ……ご、ろうくん……」

悪五郎「嫌か?」

天乃「そ、そういうわけじゃ……で、でも」

顔が熱を帯びる、心が強く脈打つ、唇が固く閉じられていく

キスをする距離感ゆえの緊張感

女の子相手なら手馴れたものだが、男の子相手は、不慣れだ

もちろん、男の子だろうと女の子だろうと

不意を突けば簡単に天乃を照れさせることが出来るのだが。


悪五郎「お前は本当、こういうことに弱いな」

天乃「だ、だってそんな雰囲気じゃ……」

悪五郎「……嫌ならもう少し強く抵抗すると良い。娘と違って俺は精霊だ。怪我も何もせんぞ」

得意げに言い、抵抗感を楽しむように天乃との距離を詰めるだけで何もしない悪五郎に、

天乃はもう少しだけ力を込めて、押す

それでも、悪五郎の力には適わない

それは相手が精霊だからではなく――

悪五郎「お前……力がなくなっているだろう?」

天乃「…………」

悪五郎「穢れの影響か」

悪五郎の指摘を、天乃は否定できなかった

東郷の時も、若葉の時もそうだ

自分が思っていた以上に力が入らなくて

抵抗らしい抵抗―本気じゃない―がまったく出来なかったのだ

天乃「……少し前から、なんかダメだなって感覚はあったのよ」


天乃「日常生活では大した問題ではないし、戦闘の時はみんなの力を借りるから、平気だけど……」

悪五郎「流石に自重が支えられないという話ではないのか?」

天乃「腕は平気、足は……どうかしらね」

天乃は些細なことだと笑ってみせる

確かに、天乃が抱えていること、みんなが抱えるかもしれないこと

それと比べれば、ほんの少し力が入れられなくなったなんていうのは

些細なことだし、気にするようなことでもないかもしれない……けれど

悪五郎「まったく……」

天乃「ゃっ」

力づくで押し込まれて、体がベッドに落ちる

押し返す力はもちろん、足りない

目の前に居るのは、男の子だ

悪五郎という精霊ではなく、天乃と似たような年代に見える、男の子

嫌な緊張感で、胸が痛み冷や汗が頬を伝う

天乃「ちょ、ご、五郎君、痛い……痛いって」

悪五郎「お前は今、普通の小娘と何も変わらん」

天乃「っ……」

天乃の自由な左手が頬にぶつかるが、悪五郎は平然とした表情でその手を掴み、

右手と重ね合わせて、片手で押さえ込む

圧倒的だった

勝ち目なんてなかった

天乃はとても、無力だった


天乃「っ……ぅ……」

悪五郎「……………」

それを自覚してしまうと、耐え切れなくなった涙が溢れ出す

怖くて、恐ろしくて、嫌で、悲しくて

痛みなんてどうでも良い。ただただ、この状況、これから起こること、それが――

悪五郎「少し悪ふざけが過ぎたな」

天乃「ぅ……ぐすっ」

悪五郎「東郷の小娘や乃木の小娘では問題なかったが、流石の男児となれば話が違うか」

天乃「ば……かっ」

涙目で怒る天乃には迫力も気迫もない

ただただ、罪悪感を引き出す何かしかなくて

悪五郎はばつが悪そうに笑みを浮かべると、天乃の手を離し、涙を拭う

悪五郎「これが男と女の性の差よ。通常ならば問題もなかろう。だが、今のお前は容易く組み伏せられる」

天乃「だ、か、だからって」

悪五郎「だから、問題がないなどというな。些細なことだと割り切るな」

天乃「……………」

悪五郎「体が弱っているのなら、心の弱さも晒してしまえ。心体乖離はすべきではない」


悪五郎「怖がらせてすまなかったな」

天乃「ぁ……」

悪五郎は一言詫びると、天乃の頬を撫でて、手を握る

さっきまでの緊張も、恐ろしさもなかった

気づかずに震えていた手が、静かになって

悪五郎の手に収まる

天乃「……私、ただの女の子?」

悪五郎「そうだな、今は……そうだ。俺にはそう思える」

天乃「……そう」

そんなにか弱く見えるのか

そんなに華奢に見えるのか

天乃は自分の体を見下ろして、息をつく

天乃「なら、ちゃんと守ってね?」

悪五郎「愚問だな。俺以外に対しても。無論、お前を守る。心配するな」

見た目的には年下の少年のような悪五郎の手が、頭に触れる

撫でるように、優しく、ぽんぽんっっと、触れる

それはどこか懐かしくて、嬉しい感触だった


√ 8月6日目  夕(自宅) ※土曜日


01~10 
11~20 バテクス

21~30 
31~40 
41~50 クラスメイト

51~60 
61~70 若葉

71~80 
81~90  千景
91~00 

↓1のコンマ 


追加判定


01~10  1
11~20 2

21~30  3
31~40  圏外
41~50 2

51~60  1
61~70 3
71~80 圏外

81~90  1
91~00  2

↓1のコンマ 


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば、通常時間から



クラスメイトは大会結果圏外……


では少しだけ


※√8月6日目 (自宅)夕 ※土曜日


何かをしていても、何もしていなくても時間は経過していく

動きのないものを見ていても、どこかで何かが動いてそれを刻む

大赦職員の常駐する天乃の家は、自由ではあるが自由がない

天乃が自力では歩けないというのもあるが、

少し出歩いたりするのにも、許可を得なければいけないし、同伴者が必ず一人は居なければいけない

ひっくるめて言えば、暇だった

天乃「はぁ……」

天乃の端末は手元にあるけれど、

勇者部のみんなの手元に端末があるわけもなく、連絡はできなくて。

自宅ではなく病室に戻ればよかったかなと思い始める頃、来客を知らせる音が鳴った

天乃「誰……かしら?」

天乃への来客か、大赦の人か

それとも……嫌がらせをするような人か。考えつつ耳を澄ます。

完全には聞こえないけれど、少しなら聞こえる

来客応対した男の人が「なぜ」と、疑問を問い

聞き覚えのある声が「病院行ったら~」という返事を返す

少しの沈黙、あるいは小声での会話

それに続いて、足音が近付く

これは来客ではなく……常駐する職員だ


「久遠様、ご学友がお会いになりたいと」

ノックをしてから入ってきた女性は、大赦の仮面をつけていない一般紛れの職員

対応への悩みを見せるその表情に、天乃は笑みを浮かべて「通して」と、返す

それが面倒な何かならば避けるが、学友というのなら話は別

それに、聞いた声。

その主は天乃が今日、声をかけるべき相手だったからだ

「よろしいのですか?」

天乃「通さない理由もないし。門前払いなんて大赦にくらいしかしないわよ」

「かしこまりました」

瞳と違って冗談の中々伝わらない職員は一礼して下がり、

それからすぐに、天乃の学友

今日、大会に出ていた運動部のクラスメイトを連れてきた

「こんにちは」

天乃「やっぱり、貴女だったのね」

なぜここに居ることがわかったのかという疑問はあったけれど

つい先日も同じことを話したからと言葉を飲み込んで、笑みを向ける

普段真っ直ぐ伸ばした状態のセ髪は後ろで結ばれたままで

服装も大会帰りを表すように大会に向かったジャージ姿のまま。

クラスメイトは、笑った

「大会、全然ダメだったよ」

笑って、そう言った


大会の走者になったのは、1年生

最初の大会は力及ばず5位に終わり、先輩の励ましを受けながらも

悔しくて悔しくて、だから本気で取り組んで

学校の大会や、地方のマラソン大会、いろんなところに足を運んで、頑張って

2年生では年間を通して、表彰されないことはなかった

それゆえに期待され、羨望され、挑んだ中学生最後の大会

それは……

「最後の最後でね躓いて、ほんと、見事な終わりだった」

天乃「…………」

「一番最悪……かな。いや、最低かも」

笑みを浮かべたまま、クラスメイトは零す

彼女にとってそれは酷く滑稽で、惨めだったのだろう

熱い日差しが照りつける中、スタートの合図を待って、姿勢を低く

ドキドキと高鳴る緊張感に息を呑んで、空砲にあわせて駆け出して――

最初は好調だった。優勝できるという早さだった。けれど

最後、ただゴールのみを見ていた視線が揺らいだ。誰も居なかった視界に、誰かが入っていくのが見えた

自分は終わったのだと、自分はとんでもない失敗をしてしまったのだと。

崩れた体勢を立て直したとき、すでに落ちたゴールテープが見えて、思った

「みんなは、一番強く思っているときこそそう言うことがあるって励ましてくれたんだけどね」


天乃「…………」

天乃は何も問わずにクラスメイトの瞳を見つめて

そっと彼女の手をとって引く。

弱弱しい力。悪五郎が言う少女というのはどの年代なのか

適した年代かそれとも下か。定かではないけれど。

しかしそんな弱い力でも、彼女の体は容易く天乃へと倒れこんで

天乃よりも大きい体

スポーツ選手といえる、しっかりとした体を天乃は抱きしめる

天乃「後輩が居て、知り合いが居て、みんなが優しい言葉をかけてくれる。励ましてくれるそれはきっと、貴女を強くしてくれた」

「久遠さん……?」

天乃「でもね、私は貴女を強くする言葉を持っていない。貴女が頑張る理由を私は受け取らなかったからよ」

「っ……」

応援に行くという約束。それを天乃は無くしてしまった

前日に頑張ってね。という言葉をかけるだけに終わってしまった

だから、天乃には彼女に平常心で振舞わせる力はないのだ

もしも約束通りその場に居たのなら、天乃はクラスメイトを頑張らせる理由になっていたけれど

みんなと同じく差し出す言葉、見せる表情、その全てが彼女の努力を強いていたけれど

天乃は【約束を破った】のだから

彼女は期待を裏切ったのだと、怒鳴って良いのだ

約束を破ったせいだと八つ当たりしていいのだ

心乱され、集中しきれなくなってしまったのだと、喚いて良いのだ

天乃「私に出来るのは、貴女の言葉を受け止めること。貴女の感情を受け止めること。だから、貴女は貴女がしたいことをして良いの」


少女らしい力で抱きしめながら、肩を叩くように撫でて頭を撫でる

弱くていいのだと、今は気丈に振舞う必要はないのだと

「っ……あぁもう……なんで、ここ着ちゃったんだろ……」

天乃「……そうね」

「電話とか、そういうの、それで、べつに……良かったのに」

天乃「そうね」

抱かれるだけだった少女の手が背中に回って

ただ引かれるだけだった体が預けられて、胸元に埋まっていく

「久遠さん……」

天乃「うん」

「私、私……っ」

天乃「うん」

体につかまる彼女の手に力が篭る

それは彼女が吐き出せなかった悲しさ、自分自身への怒り

そして、悔しさ

天乃「うん……全部私が包んであげる。貴女が見せたくないものを私が全部看取ってあげる。だから、良いのよ」


感情が服に染み込み、声が体に溶け込む

それを天乃は黙って受け入れる

声が漏れないようにと体を包み込んで、口を固く閉ざす

悔しいと零れ出る感情を、天乃は隠してしまう

天乃「…………」

応援に行っていれば、結果は変わった?

変わったかもしれないし、変わらなかったかもしれない

いずれにしてもその可能性はもう過去になって潰えたのだから

悩むだけ無駄だ

今は出来ることに集中したらいい

クラスメイトの悲しさを、クラスメイトの悔しさを

包み込んで、受け止める

彼女が満足するまで、天乃は身動ぎ一つせずに抱きしめ続けた


夕方になってから大分陽が傾き始めた頃、

もう大丈夫。と天乃から離れた女生徒は、照れくさそうに笑みを浮かべる

瞳は少しばかり赤く、頬は紅潮しているけれど

表情は来たばかりの彼女とはまったく、違うもので

「ごめんね、なんか……ほんと。こういうことするつもりじゃなかったんだけど」

天乃「気にしなくて良いわよ。ここに来た貴女がそうしたいって思ったことなんだから」

「……ほんと、久遠さんが男の子だったり、私が男の子だったらなぁって思っちゃうなぁ」

天乃「そう?」

「だって、久遠さんが男の子なら。私はきっと凄く勘違いして告白してるよ。もうね、ずっと一緒に居て欲しいって」

天乃が誰にだってそういう人で

分け隔てなく、優しく、明るく、幸せにしてくれるような人だとわかってはいても

勘違いしかねないと、クラスメイトは苦笑する

「久遠さんはさ」

天乃「うん?」

「誰かと付き合うとか、ないの?」


1、ないわ
2、私はもう付き合ってる人が居るから
3、私はもう付き合ってる人たちが居るから
4、もう付き合ってるのよ。女の子と
5、ごめんね、秘密


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から



「知らなかった、久遠さんが複数の女の子と付き合ってるなんて……」ポンポンッ

沙織「今更一人二人増えるくらい、久遠さんは平気だよ」

「伊集院さ――」

――ドンッ!

「ひっ」ビクッ

東郷「秘密を知った以上、堕ちて頂くほかありませんね」カチャッ

東郷「……性的な意味で」


園子「という演劇が見たいな~」

大赦「そ、それは……出来かねます」


では、少しだけ


天乃「付き合う、ね……」

クラスメイトの言葉に薄く笑みを浮かべた天乃は静かに目を向けて

もしかしてとクラスメイトが驚くと、頷く

天乃「ええ。私はもう付き合ってる人たちが居るのよ」

「そっか、久遠さん優しいし可愛いし、それはそうだよ……じゃ、ないよね? えっ?」

天乃「?」

「いや、うん? じゃないよ久遠さん、可愛く首を傾げても耳に残ってるよっ」

流れるように言葉を紡ぎ、

ちょっと待ってと顔を手で覆ったクラスメイトは、

一人で何かを呟き「いやいや」と否定して、「えー」と、唸る

「えっと、聞いても、いい?」

天乃「答えられることなら」

あまりにも平然としすぎている態度には、強制されているような何かは微塵もなくて

昨今ありえないとは思いつつも警戒していたようなことはないのだろう。と

少しばかり安堵しながら、クラスメイトは一息ついて

「人達って言うのは、冗談とか。言い間違いじゃない?」

天乃「ええ」


「……そ、か」

天乃「どうかしたの?」

「いや、久遠さんならそれも難しくはないだろうし、付き合えるならってみんなも納得する可能性はあるけど」

可愛くて、優しくて、時々格好いい

そしてスタイルも、まぁ、身長だけいえば子供だけれど、それ以外に関してはとても魅力的で

侍らせるのも難しくはないだろうと、クラスメイトは思う

「でも、その。なんというか。男の子って凄くエッチじゃない?」

天乃「?」

「クラスの男子だって体育のあとの久遠さんを良く見てるし、髪を纏めようとしてるときとか、こうじーっとね」

困ったようにクラスメイトは言うと、天乃の事を心配そうに見つめる

入院したりなんだりと忙しい身で、そういう相手を出来る日は限られる

そうなると、纏まって相手をしなければいけないわけで

それはつまり……

「だから体が持たないとか、あるんじゃないの?」

天乃「男の子がどうだか解らないけど、みんなはそうでも……? ある、かもしれないけど」

歯切れ悪く言い換えた天乃は、思い出して呆れた笑みを浮かべる

本人が苦に思っていないのなら良いのかとクラスメイトは考えて

けれど、いやいやと、首を振る


「こ、子供とか、どうなる? 一人ひとりに作るの?」

天乃「?」

「ほら、男の子ってやっぱりそういうの求めるだろうし、久遠さんがその複数人分の子供――」

天乃「あぁ、そういうことね」

気づいたように笑って見せた天乃は、

何か違う気がしたのよね。と、楽しげに呟いて首を振る

見える瞳は、幸せそうで。

天乃「私、付き合ってるといっても相手は女の子よ?」

「おん……なのこ?」

天乃「そう。勇者部」

「あ、あー……そーいうー、あー」

自分の勘違いに気づいたクラスメイトは発言のきわどさに思わず赤面して「忘れて」と願って

天乃は別に良いけど、と苦笑する

天乃「確かに色々大変なこともあるけど、みんな優しいから。幸せよ」

「そんな笑顔が出来るなら、きっとそれは本心なんだね」

クラスメイトは気恥ずかしさを残しながらも、

天乃が浮かべた明るく愛らしさを覚える笑みに笑みを向ける

それは共感を表すような笑みで

幸せなのだと、嬉しいのだと、解る笑みで

「良かったよ。久遠さんが幸せそうで」


女の子同士、複数の相手

そこに言及することなくクラスメイトは天乃を見る

内容は知らないけれど

身体機能を損なう大変なお役目を担っているのだ

生き方くらい、恋愛くらい

何にも縛られることのない自由なものでいいはずだと、クラスメイトは思う

「もしも、私が久遠さんに恋愛的な意味での好意を抱いたら、受け入れてくれる?」

天乃「難しい質問ね」

「残念……でも、考えちゃうなぁ」

想いを込めて呟くクラスメイトから、天乃はすっと目を背けて笑みを浮かべる

本気なのか、冗談なのか。いまはまだ後者の色が強いけれど

いつか、それは本気になるのだろうかと考えて、首を振る

彼女の心は別に向いていて、彼女に向いている誰かの心もあって

だからきっと、それはないだろうと思う

「さて……と、帰ろうかな」

天乃「もう少しゆっくりしていってもいいのよ?」

「彼女がいるのに、女の子を連れ込むのはダメだよ」


茶化して言ったクラスメイトは、

さっきのあれとかも危ないだろうなぁ。と苦笑する

「久遠さんさ」

天乃「なに?」

「正直襲われても文句言えないから、気をつけたほうが良いよ」

天乃「それは……」

実際に襲われた―キスされた―事を思い出してしまったからか

天乃の表情には薄っすらと影が差して

クラスメイトはあったのかと察して唇を噛む

「久遠さんはパーソナルスペースが狭いんだよね。精神的にも物理的にも」

天乃「…………」

「特に男の子相手には一線あってしかるべきだと思う。高校生で今の距離感だと、大変だよ?」

天乃「肝に銘じておくわ」


クラスメイトは知らないが、天乃のガードは物凄く固い

もちろん、本人はただの自動ドアみたいなものだが

そのセキュリティシステムが強固ゆえ、近付くことはもう、恐らく容易ではない

天乃から縮めた距離なら何もないが、相手から縮めた距離なら問答無用で割ってはいるだろう

「そうしておいてね。正直今の久遠さんは目を離したくないよ」

天乃「心配しすぎよ。大丈夫」

「だと良いけどね……あ、そうだ」

椅子から立ち上がったクラスメイトは、思い出したように天乃へと目を向けて

天乃「!」

その頬に、軽くキスをする

それは恋愛的な好意とは違う思いが込められていて

しかしながら、驚く天乃の目の前。セミロングの乙女は頬を染めてはにかむ

気恥ずかしさに彩られた、少女の笑み

まさしくそれは、少女が送る日常の中の景色

「ありがとね、心すくわれたよ」

それは救われたのか、掬われたのか

天乃には明確にしないまま、少女は立ち去る

天乃「……もう、みんなが見てたら私。大変なんだからね」

彼女の唇が触れた場所に手を宛がって、天乃は困ったように呟いた


√8月6日目 (自宅)夕 ※土曜日


01~10 
11~20 
21~30 
31~40 
41~50 バテクス

51~60 
61~70 
71~80 
81~90 
91~00  バテクス

↓1のコンマ 
※夕方追加判定


√8月6日目 (自宅)夜 ※土曜日


01~10 
11~20 九尾

21~30 
31~40 
41~50 沙織

51~60 
61~70 
71~80 若葉

81~90 
91~00 千景

↓1のコンマ 


√8月6日目 (自宅)夜 ※土曜日

1、九尾
2、悪五郎
3、若葉
4、千景
5、球子
6、歌野
7、水都
8、イベント判定

↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


バテクス戦だった場合は被害次第でクラスメイトは銀と女子会


では、少しだけ

※√8月6日目 (自宅)夜 ※土曜日


明るくなって、暗くなって一日が終わる

その終わりが見えて来る時間、天乃は眠れずに寝返りを打って窓へと傾けていく

右足を傾けて、その上に左足を同じく傾けながら乗せて

動かせない人形のような足を、整える

天乃「…………」

この生活になってから、二年だ

自由に歩きまわれた足、走り回れた足

それが自分の手で関節を曲げ、持ち上げなければ動かせなくなってからそれだけの時間が流れて、もう、慣れた筈なのに。

少しだけ気が滅入ってしまう

一人だからか、月の見えないどんよりとした曇り空だからか。

ふとため息をついた天乃は微かに埃が舞うカーテンの裾から頭を差し入れて、窓を開ける

網戸を抜けてくる生温い風は、潮臭さと土臭さの混じった自然の匂いがして

縁に肘を突いて、ぼぅっと外を眺める。闇の中でぽつぽつと光る人工灯は、懸命に存在感を主張していた

天乃「五郎くん、いるんでしょ?」

何気なく数名の精霊の中、悪五郎の名前を呼ぶと

音もなくただ唐突に存在感が空気に入り混じって、ベッド脇を支配する

悪五郎「いつになく憂鬱に見えるが、あの娘とのことに悩むことでもあったのか?」


悪五郎の言うあの娘とはクラスメイトのことだ

夕方に来て抱いて、泣かせて、頬にキスをされたあのクラスメイトの女の子

カーテンの中に頭を入れたままの天乃は、そこから戻ることなく「別に」と

否定して、小さく息をつく

悪五郎「ならどうした。悪いが、俺は子守唄など嗜んではおらんぞ」

天乃「ねぇ、五郎くん」

悪五郎「なんだ?」

天乃「とても大事なこと、聞いても良い?」

冗談めかして呟いた悪五郎の作った空気

それを跳ね除けるような沈んだ声で言った天乃は、

カーテンの中から顔を見せて、問う

その表情はやはり、浮かないもので

その瞳は赤色が少し……強くなっている

悪五郎「答えられることなら、答えるが」

天乃「私、五郎くんの子供を産むでしょう?」

悪五郎「そうだな」

天乃「それで、私が死なずに済む可能性はどのくらい? そこから私が生きられるのは、どのくらい?」

悪五郎「また唐突な疑問だな……それは」


声のトーンこそ変わらず平坦だったが

悪五郎は少し驚いたように笑って見せて、天乃を見る

天乃の体の穢れの問題は非常に深刻だ。身体的な汚染はもちろん、精神にも深く影響している状況

本来ならば、今すぐにでも処置を施すべき案件だが……

天乃「日に日に体が悪くなっていってるのをね、私。なんとなく感じるのよ」

悪五郎「…………」

天乃「今までみたいに起きられなくなった。今までのように力が入らなくなった。食事だって、噛んで飲み込むのが少しだるい」

悪五郎「穢れは人間が時折患う進行する病患と似たようなもので、大人しくしていれば治癒するような甘いものではない」

そして、それは大人しくしていれば進行速度が【通常】というだけであって

遅延するわけでもなんでもない

気分的に晴れやかになるようなことをしていても【時間稼ぎ】にはならない

悪五郎「お前がいうように、その体はこうしている間にも少しずつ。穢れに蝕まれている」

天乃「…………」

悪五郎「お前は子供を産んだら死ななくて済むのか。それで生きられるのはどれほどか。と、いったな?」

口を挟まず、沈痛な雰囲気を纏いながら聞き入る天乃を見つめたまま、

悪五郎は少し間を置いて、口を開く

悪五郎「悪いが、それはどちらにせよ確実なことは言えん」


悪五郎「人間の言葉で言えば、50%や100%。ことこれにおいて、それは語るだけ無駄なことだからな」

天乃「どうして?」

悪五郎「結果は、未来から現在にならない限り永続的に変動するもの。そして……」

悪五郎は何かを言おうとしたが、

一旦口を噛んで首を振ると、悲しげに目を細めて背ける

あまり言いたくは無いことだ

だが、これは言わずとも言おうとも、もはやどうにもならないことなのだと

悪五郎は考えて

悪五郎「そして、穢れは犠牲無しに好転することは決してありえないからだ」

天乃「……ここで50%助かると言っても、最終的には30%20%10%……下がるか維持か。あがる希望はないのね」

悪五郎「むしろ、下がる以外にないだろうな」

はっきりと告げて、天乃の様子を見る

取り乱すことも、泣き出すこともなく

以外に落ち着いた様子で、天乃は「そっか」と零して笑う

笑うべきではない会話、雰囲気、その中で笑う

それは一体、どのようなものなのか。


天乃「穢れはこの世界が受けて、爪痕を残し、それを誰かが補修する。回復ではなく復興」

悪五郎「そう。産み増える人間、作り上げる町並み。それらと違い、お前の修復は出来ん」

天乃「…………」

悪五郎「死神……今は郡千景か。その力を用いて世界を穢せば、可能性はあるが」

それはしない、出来ないだろうという悪五郎の言葉に

天乃はごめんね。と、笑う

悪五郎「……馬鹿な女だ」

天乃「自覚は、ある。かな……」

大赦からは嫌われて、神樹様には親友や沢山のものを奪われて、

頑張って頑張っても、恐れられ怖がられ、奇異の目で見られて、

そんな世界を無理にでも守るなど、馬鹿といわずしてなんなのか

嘲笑するように笑った天乃はため息をついて首を振る

悪五郎「それで、どうした。まさか今から子供を作れとでもいうのか?」



1、ダメなの?
2、……眠れないの
3、一緒に居てくれない?
4、出来れば、子供を遺して死にたくないな……


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「駄目なの?」

悪五郎「お前……大丈夫か?」

天乃「……死にたくない。死にたくないの。みんなのこと、私……だからっ」ギュッ

若葉「待て!」バンッ

悪五郎「!」

若葉「そのアヴァロン。納めるのは我が伝家の宝刀、天叢雲剣だ!」



杏「とか」

園子「グッジョブ」

若葉「やめろ! 私はそんなじゃない!」


では少しだけ


悪五郎のまさかそんなことは言わないよな。と

問いかけるような言い方に目を向けた天乃は、

物憂げな、静かな雰囲気のままに口を開く

天乃「ダメ……なの?」

悪五郎「お前……」

もう疲れてしまったと。

そう捉えてしまいかねない表情

滑らかに動く視線は、大切な供人を失ってしまったように。

悪五郎「疲れているなら、休んだ方が良いが」

悪五郎は努めて落ち着いた声色でそう述べると、

天乃の体を押さえ込むようにベッドへと寝かせる

天乃「五郎くん」

悪五郎「………」

ぐっと、力ない手で手を掴まれ、目を向ける

お前は未亡人かと。

茶化すのならば扱う言葉を飲み込んで

悪五郎「俺は構わん。だが、お前が孕めば娘共が窮地に立たされた時に手は出せんぞ」


天乃「…………」

悪五郎「俺はあくまでお前の精霊だ。娘達がいくら磨り減ろうとお前を優先する。何があってもお前を一番に思う」

だがな。と

悪五郎は少しだけ語気を強めながら、握られた手を握り返し

ベッドに座ると、天乃の額を優しく撫でて

張り付いたように垂れていた前髪が払われて、視界が少しだけ広がった

悪五郎「お前は良いのか? それで。俺は構わんが」

天乃「……後回しにしたらそれだけ私は死んでしまう可能性が高くなるんでしょう?」

悪五郎「そうだな。だから俺は構わんと言っている。あとは、お前が本当に平気かどうか。だ」

みんなを信頼しているから平気。そんな簡単な話ではないのだ

信じていようと、戦うたびに強化されていくバーテックス相手に、

満開を使用せず、だれも死なずに勝利できるのかどうか

たとえそれが出来なくて、精霊の誰かがひと時離脱することになっても

みんなが満開を何度もしなければいけないことになっても

天乃が自分を責めず、苦に思わず、嘆くこともなく居られるのかどうか

悪五郎はそれが不安で、心配だから手を出さないのだ

悪五郎「大丈夫か?」

天乃「…………」

悪五郎「満開を使っていけば世界の崩壊を免れることは問題なく出来るだろうが……無制限にみなが傷つく」

それが堪えられるのかと、悪五郎は問う


みんなは天乃が戦闘に参加しなくなったからと言って簡単に満開を使おうとはしないだろう

それは天乃を不安にさせるし、悲しませるし、何より苦しませてしまうことだと解っているからだ

けれど、天乃が子供を作るということは、そこに生きたいという思いがあるからで、

みんなはそれを全力で叶えようとする

何をしてでも、何を失ってでも

より確実に、それが実現できるのであれば

腕の一本や二本、足の一本や二本、記憶、視覚、聴覚、声、味覚

みんなは容易く切り捨てて、奮闘するだろう

天乃「そうよね……きっと、みんな頑張っちゃう」

悪五郎「最善策としては、世界に穢れを譲渡して時間を稼ぐことだが……」

天乃「それはっ」

悪五郎「だろう? ならばどうする?」



1、みんなを信じて、する
2、もう少しだけ、このまま


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



沙織「ついに久遠さんが満開をするんだね……」

東郷「私には神樹様が……かくなる上はこのシロガネで!」

沙織「何言ってるのさ、東郷さん。その触手は飾りなの?」

東郷「ハッ……!? その手が――」

風「あるかッ!」パンッ


では、少しだけ


天乃「……それは、私も怖いと思う」

みんながより頑張ってしまうこと

自分の事を考えずに天乃の事を優先してしまうこと

それを実際に行動に移してしまった天乃自身が、

みんなにもその気質があることをわかっているから

だから、怖くないとは言えない

不安に思わないとは言えない

だけれど、思うのだ

天乃「私が死んでもね。みんなは同じように自分を蔑ろにしちゃうと思うの」

全員が全員そうするとは思わない

天乃が居た世界、生きた世界

それを守るためならと常に満開を含めた全力で挑むことがあるかもしれない

大赦の反応、世界の対応、それ次第ではこんな世界など。と

守ることすらせず滅ぼす手助けさえしてしまうかもしれない

天乃「だったら、だったら……ね? 私はそんなお馬鹿な子達を叱れる立場に居てあげたいの」


天乃は微笑む

勇者部の楽しげな姿を見ているかのように

はしゃぐ友奈と、付き合う沙織と球子に歌野

困り果てた夏凜と風と若葉

助長させる東郷

傍観する千景と水都

そんな、今はまだ存在できる世界を想って。

悪五郎「お前は先刻言ったな。私は見届けると。それは境界の外側という意味で良いのだな?」

天乃「……このままぼーっとしてても、私は死ぬ可能性が高くなっていく」

痛みはない、けれど違和感を感じる左目を覆うように手を宛がって

天乃は顔を伏せる

左半分が暗闇の視界。それは手をどけても変わらなくて

ゴミが入ったと擦ったような感覚に触れたがる手を握る

天乃「明日には起きたらお昼で、体を起こすこと、食事をすること、こうして話すこと。それさえも億劫になってしまっているんじゃないかなって」

悪五郎「怖いのか」

天乃「ええ。そして不安なの。それがみんなにまた嫌な思いをさせるのが。怖い思いをさせるのが。不安にさせてしまうのが」


だからね。と、天乃は紡ぐ

自愛に満ちた表情で

子供らしさのない、すでに母となった女のような表情で

天乃「私はみんなのために生きるのよ。みんなが生きるべきだと、思えるように」

悪五郎「…………」

天乃「私の言葉は、不満かしら?」

悪五郎「……いや、不満はない。お前が覚悟を持ってそうすると。そう決めたと俺は信じる」

悪五郎は気持ちを切り替えるために深々と息を吐くと、天乃に背中を向けて、天井を仰ぐ

暗い部屋、大した装飾もない年頃の女の子にしては殺風景な部屋

精霊として出てきたとき、見た世界と似た景色。

悪五郎「天乃」

天乃「……うん」

悪五郎「俺は俺の妖力、霊力を持ってお前を孕ませる。持ち得る力の全てを使って、だ」

天乃「聞いたわ」


以前九尾に聞いたときに言っていたことだ

悪五郎と子供を作った場合、悪五郎は力を放出する側のため

その存在は消滅してしまう可能性が高い。と

悪五郎「そうか」

天乃の小さな声に、悪五郎もまた静かに返して頷く

悪五郎「その上ならば、俺はもう何も言わん」

天乃「ご――」

悪五郎「謝るな」

いつの間にかふりかえった悪五郎の手に口をふさがれ

思わず目を見開いた天乃の前で、悪五郎は困ったように笑みを見せる

悪五郎「謝るな。それは必要の無いことだ。女狐が言ったとおりだからな」

天乃「じゃぁ……ありがとう」

悪五郎「そうだ、それでいい」

優しい声だった

子供ではあるけれど、自分よりも小さくて弱い存在の前を歩いているような

そんな、兄のような穏やかさだった


悪五郎「お前が望むように、俺はお前を抱いてやる」

ギシリと、ベッドが軋む

寝かされた天乃に跨る悪五郎は、自嘲気味に笑みを浮かべて

ふと、息をつく

悪五郎「それは、贅沢な言い方か?」

天乃「……嫌なら変わるぞって、言われそうね」

悪五郎「そうだな」

笑う。笑い合う

きっと、これが最後になってしまうから

茶化すように言って見せて、悪五郎は天乃の頬に触れる

小さな顔だ

けれども、悪五郎の手も小さくて、収まらない

悪五郎「極力優しくしてやる。無理そうなら、そう言え」

天乃「……ええ。お手柔らかにね」

精霊と、人間

少女と、少年

二人は子を宿すために交わり、願い、祈り、求める

それが少女にとっての幸であれと

それが未来にとっての宝であれと

それが世界にとっての毒であれと

【二人】の子供は想い、【一人】の親は誓う


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流無()
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流無()
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流無()

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()



8月6日目 終了時点

乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 66(とても高い)
犬吠埼樹との絆 56(とても高い)
結城友奈との絆 76(かなり高い)
東郷美森との絆 59(とても高い)
三好夏凜との絆 96(かなり高い)
乃木若葉との絆 65(とても高い)
土居球子との絆 31(中々良い)
白鳥歌野との絆 26(中々良い)
藤森水都との絆 19(中々良い)
  郡千景との絆 20(中々良い)
   沙織との絆 78(かなり高い)
   九尾との絆 50(高い)
    神樹との絆 9(低い)

汚染度???%


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
以降天乃は樹海化してもその場に登場しません



そして、14年の時が流れ……世界は再びバーテックスの危機にさらされることとなった


では、少しだけ


五郎くんとの交わりは思った通りに書けないので、
現状では見送りしています
万が一出来た場合は、wikiに出します


√ 8月7日目 朝(自宅) ※日曜日

01~10 九尾

11~20 
21~30 
31~40 千景

41~50 
51~60 
61~70 若葉

71~80 
81~90 
91~00 沙織


↓1のコンマ  


√ 8月7日目 朝(自宅) ※日曜日


天乃「…………」

ゆっくりと目が覚めた天乃は、

微かに違和感の残る下腹部に手を触れて、そのまま腹部を優しく撫でる

昨夜、してしまったのだ

悪五郎という少年、自分の精霊を犠牲にして

天乃「……犠牲にしてなんて言ったら、怒られる。わよね」

小さく、笑う

笑って、笑って……けれど

天乃「っ」

ぐっと唇を噛んで、首を振る

そう悲しい気分になるのはお腹の子に悪いと、聞いた覚えがあるから。

妊娠できたと決まったわけではないけれど、でも

出来ていると信じて、天乃は悲しみそうな気持を振り払う

そんな天乃のすぐ横に、九尾が姿を見せた

九尾「主様」

天乃「……九尾」

九尾「主様はそうすべきと考えて、思って、そうしたのだろう?」

天乃「…………」

九尾「ならば、そんな顔をするな。きゃつも言っておったであろう?」


天乃「九尾、言ってたわよね。この中に五郎くんが入ってくるんだって」

九尾「うむ」

天乃「なら、私は五郎くんのお母さんになるって、ことなのよね?」

九尾「そうじゃな……もっとも、きゃつと似た赤子が産まれるとは限らぬが」

天乃の悲し気な表情でありながら笑っている姿に、

九尾は困ったように答えて、息をつく

嘘は言っていない

流れ込んだのは悪五郎の力で、子を作るのはその力

ゆえに、悪五郎と似た子供が生まれてくる可能性がないとは言えない

九尾「まぁよい……主様に話しておくことがある」

天乃「私に……?」

天乃の気力の足りない、声

しかし、言っておかなければいけないのだと

九尾は思う

九尾「東郷美森に、妾の持つ記憶を譲渡した」

天乃「え?」

九尾「きゃつが求めてきたのでな、それが必要なのだと」

天乃「…………」


東郷からそんなことを聞かれた覚えはないし

そうしていいのかと聞かれた覚えもない

けれど、かんがえたのだろう

悩んだのだろう

そのうえで、東郷は九尾に頼んで記憶を戻して貰ったのだ

天乃「……そう」

九尾「何も言わぬのか?」

天乃「貴女が無理に押し付けたわけではないんでしょう?」

天乃の問いに、九尾は小さく笑みを浮かべて、頷く

それなら文句はない。

少しばかり問題はあるかもしれないけれど

覚悟の上ならば、言えることはないのだ

これからの厳しい戦い

そのすべてから身を引いてしまう、自分には。

九尾「自分が自分であるために必要だと言っておった」

天乃「銀や園子、戦いの二年間。あるかないかできっと、とても変わるでしょうね」

九尾「主様に対しても、変わると思うかや?」

天乃「さぁ……? そこはあの子次第よ」


東郷美森が鷲尾須美だったころ

良い事も悪いこともした

銀や園子と結託して悪戯をしたりもした

嫌な先輩どころか

嫌な人だと言われたこともあった

そんな他愛もないことを思い出して笑みを浮かべた天乃は

九尾へと目を向けて

天乃「東郷は平気? 目を覚ましてないとか、あるの?」

九尾「問題はない。今朝、目を覚ましたのは確認しておる」

むしろ、それを確認するためにこの場にいなかった可能性もある

……そんなことをした東郷よりも

ただえっちをしただけで目を覚ますことが出来なかった事

それを心配するべきかもしれない



1、みんなに、私が五郎くんとしたこと。話しておいてくれないかしら
2、別に、したからと言って体調が良くなるわけではないのね
3、バーテックスの動きはどうなの? 大丈夫そう?
4、夏凜の様子は? 怪我はもう完全に大丈夫?


↓2


天乃「…………」

自分の端末を確認した天乃は、

スリープ状態に切り替えて、一息つく

本来なら自分で伝えるべきだろう

けれど、みんながいつ戦いに行くのかが分からない

自分から会いに行くことは出来そうもない

病院ゆえに、みんなは端末を常時使用できるようにしているわけでも無い

そんな条件が整ってしまっては。と

不幸続きの人生に悪態もついてしまうと天乃は苦笑する

天乃「皆に、五郎くんとのことを伝えてくれない?」

九尾「阿鼻叫喚の地獄絵図になるが、良いか?」

天乃「皆なら平気よ……理由を話していれば、嫌がるような子達じゃないわ」

九尾「人妻は要らぬ」

くすくすと茶化すように溢した九尾は

承知した。と、答える

九尾「安静にしておれ。主様はもう、ただの女じゃからな」

天乃「……うん」


まだ左目は見えないし、足は動かない

味覚は……まだわからないが、きっと戻っていない

けれど、精霊の存在を感知する力が弱弱しくなってしまったのは、分かる

今までははっきりと存在を感じたのだ

火に手をかざせば熱を感じるように

けれど、今はそれが靄のように希薄に思えて。

普通になりつつあるのだと、分かってしまう

天乃「……でも、きっと」

終わらない

バーテックスとの戦いが終わらない限り

全てが終わることはないのだと

そう、天乃は感じていた


√ 8月7日目 昼(自宅) ※日曜日

01~10 夏凜
11~20 
21~30 東郷
31~40 
41~50 友奈
51~60 
61~70 風
71~80 
81~90 千景
91~00 

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊


√ 8月7日目 昼(自宅) ※日曜日


何もない、平穏な日常

夏休み真っ只中だからか、

外を自転車で駆けていく子供たちの楽しげな声が、聞こえてくる

どこに行くか、何をするのか

男の子の声、女の子の声

天乃「……私の子供にも、そんな世界を残してあげたいものだわ」

それは夏凜達に託してしまった

他力本願……だろうか

けれど、それを口にしたら皆に怒られるだろう

天乃「九尾、まさか適当な伝え方はしてないわよね?」

大雑把、大げさ

嘘ではないけど本当でもない

そんな、悪ふざけな言い方をしていないかと

心配になって、端末を見る

連絡は……来ていない


1、千景
2、若葉
3、球子
4、歌野
6、水都
7、沙織
8、イベント判定 ※再安価

↓2


天乃「沙織、沙織……いる?」

ぼんやりと、傍に気配を感じた天乃は

悪五郎と同じように自分の精霊と化している沙織の名前を呼ぶ

沙織も恋人の一人

昨夜の件はもうすでに見ていた……だろうか

沙織「久遠さん、いるよ。ここに」

天乃「……やっぱり、いたのね」

どこか悲し気な雰囲気を感じさせる沙織は、

どこからともなく姿を現して、天乃の手を握る

まるで、目の見えない人に対してするかのような手に、

天乃は苦笑して、沙織の頬に手を伸ばす

天乃「目は見えてるわ。ただ、精霊の存在を感知できないだけ」

沙織「そか……体の中で穢れが動いてるのが分かる」

天乃「……どんなふうに動いてるのかは、聞かない方が良いんでしょうね」

穢れがどのように動いているのか

どこに向かっているのか

なんとなく察した天乃の言葉に、沙織は苦笑して頷く

沙織「あんまり良いものじゃないかも」

天乃「なら、聞かないでおく」


沙織「久遠さんの初めては、あたしが貰おうと思ってたんだよ?」

天乃「っ」

そっと天乃の腹部に手を伸ばした沙織は、

胎児がいる母に触れるような繊細な手つきで撫でると

怪しく笑みを浮かべ、残念そうに息をつく

沙織「でも、これでよかったのかな。とも思う」

天乃「そう?」

沙織「だって、久遠さんの処女は誰が貰うんだって話になってたかもしれないし」

天乃「そうかしら」

沙織「みんな女の子だから、ちょっと解らない部分があるかもしれないけど」

天乃は平等に愛してくれてはいるが

その中でも突出して頼り、思い、信じている人がいることを知っている沙織は

平気かなー。と、おどけたように笑う

天乃がえっちをしたこと

それに関して、怒っていたり悲しんでいるような様子はなかった


1、妖怪との子供がいつ生まれるとか分かる?
2、名前、どうしようか
3、バーテックスは、大丈夫?
4、大赦にも伝えないといけないのよね……
5、沙織、私がこうした理由。ちゃんとわかってるわよね?



↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



沙織「…………あ」

天乃「どうかしたの?」

沙織「そういえば、久遠さんって、これしってる?」

天乃「これって?」

沙織「”中に、誰も居ませんよ”って」シャキンッ

天乃「!?」



歌野「あれはミッ――」

水都「それ違う! せめてチャッキーにしようようたのん!」


では、少しだけ


自分の血が繋がった子供ではないのに、

愛おしそうにする沙織へと天乃は目を向ける

この場合は連れ子になるのだろうか

少し複雑になってしまいそうな関係

育った子供への説明にはいまから頭悩ますべきかもしれない

他愛のない、思考

今までに比べて、平穏な考え

切り替えるように、「ねぇ」と、小さく声をかける

天乃「私がこうした理由。ちゃんと解ってるわよね?」

沙織「もちろん」

天乃「じゃ――」

沙織「ついに久遠さんのお胸が本格的に味わえるんだよねっ!」

天乃「違う」


沙織「えー……」

天乃「えーじゃなくて」

沙織「だって、子供が出来たらついに母乳が出るんだよ? 母乳が出――」

冗談っぽく、軽くぱしんっと叩かれて、沙織は楽し気に笑みを浮かべて

天乃が困ったように悪態を付くと、沙織は「冗談」と、呟いた

沙織「……解っては、いるよ」

はっきりとせずに曖昧に濁し、天乃の腹部からそっと手を離した沙織は、

切な気に笑みを浮かべて、天乃へと目を向ける

沙織「解っては、居るんだよ。みんなね」

沙織だけでなく、若葉たち精霊みんな

天乃がどんな思いで居るのか、どんな思いでその行動をするのか

全部とは言いきれないけれど、わかっているつもりなのだ


復活することのできる精霊が一時的にでも死んでしまうこと

それさえも嫌がる天乃が、スサノオを犠牲に若葉を呼び

稲荷と稲狐を犠牲に歌野と水都を呼び

死神を犠牲に千景を呼び

犠牲になってしまうこと、犠牲にすることを天秤にかけ

守りたいもの、守り抜くものの苦渋の取捨選択をして……ここまで来た

それを見てきたから。

沙織「でもね、久遠さんがどうしようもないことがあるように、あたし達にもどうしようもないことは少なからずあるんだよ」

天乃「…………」

沙織「儚い希望とか。あたしは久遠さんにそういうの見せる気は無いから、はっきり言うけど……」

心が痛む。ねじ切れてしまいそうなほどに

だが、そうなってしまえば良いのにと思わざるを得ない

いっそ、自分で胸をかきむしってひねり潰したいほどの罪悪感が蠢く

だが、それは逃げだ

戦い、立ち向かい、今もなお倒れずに居る恋人への侮辱

だから、沙織は言う

沙織「あたしは生き残るなんて約束は出来ない。精霊のみんなもそう。全力は尽くすよ。この世界に対しても」

天乃「っ」

沙織「でも、だからこそ。あたし達は絶対なんて誓いをすることはない。解っているよと答えるけれど、約束はかわさない」


沙織や水都がその力を抑制したり、使わなくなってしまえば、

滅び去るのはこの世界。根本的なものが潰えて消える

友奈たち勇者が力を抜けば、傷つくのはみんなであり、その被害を請け負うのは沙織たちだ

満開という代償のある強大な力。それを行使しないという誓いは立てられない

若葉たち精霊もまた同様に、自身の存在が消滅するのだとしても

全力で力を行使する覚悟で挑まなければ

守りたいものさえも、守ることなどできはしない

沙織「ごめんね。久遠さんがとても頑張ってくれているのに」

天乃「沙織……」

沙織「泣かないで」

一筋の流れを阻むように頬に触れた沙織は、キスすることなく額と額をくっつけて優しく囁いて

沙織「頑張るから、みんなで、頑張るから」

悲しませると解ってはいた

けれど、泣いて欲しいわけではない

だから優しく抱く。心を伝えようと、ぬくもりを分け与えていく


沙織「生き残ろう。ちゃんと、みんなで」

天乃「……うん」

天乃はもう、戦いには参加できない

どれだけ厳しい戦いであっても奇跡が起きなければ

あるいは相当な不運でない限り、天乃はもう勇者としての力を振るうことは出来ない

沙織「そのために、その望みのために。久遠さんはここに居てくれるんだから」

周りを不安にさせ、怖がらせ、悲しませる力を使うよりも

一人の少女としてそこに居ることを選んでくれた天乃に、沙織は言葉を紡ぐ

天乃「約束……は、してくれないのよね?」

沙織「ごめんね」

天乃「……なら、居なくなったら許さないって、お呪いくらいはしておくわ」

沙織「あはは」

お呪い。呪いと書いておまじない

それは後者なんだろうなと沙織は考えて、内に抱えたものを密かに……置いた



※√8月7日目 (自宅)夕 ※日曜日

01~10 風 
11~20 
21~30 千景

31~40 
41~50 若葉

51~60 
61~70 
71~80 夏凜

81~90 
91~00  大赦

↓1のコンマ 


√ 8月7日目  夕(自宅) ※日曜日

1、九尾
2、千景
3、若葉
4、歌野
5、水都
6、球子
7、イベント判定

↓2


01~10 東郷  
11~20 大赦

21~30  友奈
31~40  風
41~50  樹
51~60  歌野
61~70  千景
71~80  若葉

81~90  夏凜
91~00  …………

↓1のコンマ 


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



若葉「天乃、体調はどうだ?」

天乃「平気よ、大丈夫」

若葉「そうか」

天乃「……ねぇ、一つ聞いても良い?」

若葉「ん? どうした、改まって」

天乃「どうして空のコップ……持ってるの?」

若葉「実はな、こう見えて搾――」

天乃「まだ出ないってばっ!」

では、少しだけ

√8月7日目 (自宅)夕 ※日曜日


夕方になって、夏凜以外の勇者部のみんなは

身体的問題がないとして退院したことが大赦の職員から伝わってきた

夏凜に関しては問題がなければ明日、なにかあれば明後日以降と、

まだちょっとだけ時間がかかるとの事だった

天乃「…………」

樹海化が起こっても、天乃はその場に向かうことは出来ない

それは、樹海化を感知できないのと同じだ

何も起きていない平穏な時間だったと感じるその裏で

みんなが頑張って戦っているかも知れないと思うと、不安になる

そして、思うのだ

精霊化するまえの沙織はずっと、こんな思いをしていたのではないか。と

天乃「…………」

みんなが大丈夫だと、平気だと

なにもなかったと言ってくれても、それが優しさなだけではないかと――

天乃「っ」

こつんっと、額を打たれて我に返ると

いつの間にか傍にいた若葉は心配そうな表情を浮かべていて

若葉「考えすぎだぞ、天乃」

天乃「うん……解ってるんだけどね」


若葉「不安か?」

天乃「不安になっちゃうの」

考えないようにと思ってもふと気がつけば不安を感じ、恐怖を感じる

バーテックスが現れている時間は感知できない人にとっては一瞬で、

だからこそそれを知っている以上、一時も安心できるような時間なんてない

そう思い、不安そうな表情で自分を嘲笑して笑みを浮かべる天乃に、

若葉はそっと手を伸ばして、触れる

以前は躊躇ったことも、今はもう躊躇わない

千景と対等に話して、決めたことだから

そうするのだと、決意したから

若葉「心配するな。戦いが起きたらちゃんと話す。大赦は何も言わないかも知れないが、私達はちゃんとな」

天乃「誰が怪我したとか、誰が満開したとかも?」

若葉「それは自己申告だな。罰として」

怒られに来るんだ。と、楽しげに語る

こんなミスをした、こんなことがあった、こうすべきだった

自分で報告に来て、怒られて、心配かけたことを詫びて

次はそんなことにはならないと心を新たに精進する


若葉「ひなたも似たことで悩んでいたんだ。天乃ならわかるだろう?」

天乃「…………」

若葉「だから、私はそんな心配をかけたくないと思う。かなうなら、もう二度と」

けれど、戦いは終わっていない

今こうしている間にも呼ばれて戦わなければいけないかもしれない

だからせめて何かがあった時は迅速に伝える事にしたのだ

不安だろうから、心配だろうから

一瞬一瞬が、心休むことのできないもになってしまうだろうから

若葉「だから、何も言われないときは安心していてくれ」

天乃「嘘、つかない?」

若葉「ああ、つかないさ」

いつもの強さのある声ではなく、歳相応

あるいは実年齢よりも低く感じてしまいそうな声で問いかけてくる天乃に体を寄せて、若葉は微笑む

不安にならないように、心配にならないように、怖がらなくて済むように

若葉「不安や恐怖などのストレスは体に障るからな。少しずつ成長していく胎児に悪いだろう?」

天乃「……そうね」


若葉「子供の名前は考えたか? 男の子と女の子どちらか解らないからな、両方考えておいた方が良い」

天乃「まだ先の話よ?」

若葉「何を言う! 大事なことだぞ、考えすぎなどということはない、後先の話でもない!」

まるで自分が親であるかのように、若葉は語る

必要なことだと、悩むことだと、

初めて子を持つ父親のような落ち着きのない忙しなさを前に

天乃は思わず笑みを零す

天乃「ふふっ、ふふふっ」

若葉「な、なにかおかしいか?」

天乃「ううん、おかしいとかじゃ……でも、なんというか。うん、安心する」

たとえ血の繋がりがないのだとしても

我が子のように愛情を持って接してくれるというのが、はっきりとわかる

そしてそれはきっと、若葉だけでなくみんながそうで

だから天乃は嬉しそうに笑って、胸を撫で下ろす



1、まるで貴女がお父さんみたい
2、子供の名前、みんなで決めないとね
3、それにしても、昨日の見てたの?
4、沙織との話を聞いていただろうけど、ちゃんと解ってくれてるって、信じてるからね?


↓2


天乃「それにしても……昨日の見てたの?」

若葉「!」

びくっと体をはねさせた若葉は、

天乃の頬に触れていた手をゆっくりと引いて、姿勢を正す

逸らした目はどこかを見つめ、頬は内面を現して紅潮する

若葉「なんの……こと、だろうか?」

天乃「見てたのね」

若葉「……その、はい」

申し訳なさそうに息をついて答えた若葉は

気恥ずかしそうに頬を掻いて、ちらりと天乃を見る

怒っている様子はない天乃の視線に安堵しつつも

覗き見るものではなかったという罪悪感に追い詰められて、

しゅんっと沈んだ雰囲気がにじみ出ていく

若葉「見ようとしていたわけじゃないんだ。本当に、偶然なんだ」

天乃「悪いことした人って大体そうい――」

若葉「そ、それはそうだがっ……だが、その。何と言えば良いか。離れるべきだと頭では分かっていたのに、動けなくて、な」


不思議な感覚だった

してはいけない事だと分かっているのに

その場ですべきこと、やるべきことが明確に分かっていたのに

それをすることが出来なかった

天乃と悪五郎の交わり、それを見ていることしか出来なかった

それはとても、痛みなく胸を打つ何かがあって

若葉「あれは――」

天乃「背徳感に魅了されたのね、堅物だから」

若葉「そう言うわけではっ」

天乃「知ってるのよ? みんなとしてる時もチラチラ見てるの」

若葉「うぐ……す、すまない……言い訳はしない」

天乃「えっち、はれんち、わかばっち」

若葉「何も言えん」


しょんぼりと肩を落とす若葉から眼を逸らして、

天乃はちょっぴり呆れたようなため息をつく

別に怒っておるわけではないし、責めているわけでも無い

ただ、見ていたことは知っているのだと言っておきたかっただけで

天乃「結構、見られてるのも恥ずかしいのよ?」

若葉「すまない、その……色々と学ぶ必要があったんだ」

天乃「東郷とか、沙織なら教えてくれるわよ? 体に」

若葉「っ」

冗談めかして言った瞬間、

若葉はぶるりと身震いして、「それは分かっているが」と

意味ありげな表情で呟いて、笑みを浮かべる

少しひきつっているようにも、見えた

天乃「何かあった?」

若葉「い、いや、気にしないでくれ。本当に、大丈夫だ……問題ない」

天乃「問題しかなさそうに見えるけど……」

若葉「そ、そんなことよりだ。もう普通の少女のようなものなんだ。体の気だるさを無視してまで起きていたりするんじゃないぞ」

天乃「ちょ、若」

有無を言わせずに若葉は姿を消して

部屋には静寂が戻ってくる

何かがあったのだろう。きっと

それは別にシリアスになるようなものではないのだろうけれど

気になるなら少し、つついてみても良いのかもしれない

√ 8月7日目  夜(病室) ※日曜日


01~10 
11~20 夜這ーテックス 
21~30 
31~40 
41~50 沙織

51~60
61~70 
71~80 千景
81~90 
91~00 水都

↓1のコンマ 

√ 8月7日目  夜(自宅) ※日曜日

1、九尾
2、千景
3、若葉
4、歌野
5、水都
6、球子
7、イベント判定

↓2


01~10 沙織
11~20 千景

21~30  歌野
31~40  球子
41~50 水都

51~60  若葉
61~70  九尾
71~80 大赦
81~90  夜這ーテックス
91~00 千景

↓1のコンマ 


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



バーテックス「一番強い勇者が引退したと聞いて、退職祝いに来ました」

バーテックス「とりあえずお腹がすいたので、コレ(勇者)食べて良いですか?」


では、少しだけ

√8月7日目 (自宅)夜 ※日曜日


今までのような、急激な眠気はないし

押し込まれるような体の重さもなくて

ただただ、まだ何かをしていたい。そんな感覚に目を開いて

天乃は薄いかけ布団の中で端末を握り締める

夏凜は……まだ病院だ

起きているかもしれないし、寝ているかもしれない

もしかしたら寝ていられるかと、病室で出来る自主トレにでも励んでいるかもしれない

そう思って、考えて、首を振る

夏凜はそう言う無茶はしない

あくまで健康的に、自分を鍛えようとするのが夏凜だから

夜に無理な鍛錬はしないはずだ

天乃「夏――」

ふと、ピリッっとした静電気のようなものを感じて上半身を跳ね起こし、見渡す

何も居ない、誰も居ない、精霊の存在感は微弱で掴めない

窓の外は変わらずに日常に包まれていて、一つの明かりが消えては一つの明かりが点き

一つずつ、それは確かに減少していくだけで

天乃「……なに? 今の」


ただの気のせいかもしれない

冬と比べれば発生しないだけで、静電気が起こることはある

それが偶々起きただけで、気にするようなことでもないのかもしれない

けれど、全身がゾワゾワと総毛立って、不快なほどに心音が大きく響く

天乃「っ……」

不安に駆られ、恐怖に追われ、体を抱きしめ首を振る

心配ない、大丈夫、何もない

若葉は報告するといった。報告させると言った

だから、それがないのなら大丈夫だと、落ち着いてと自分で自分を慰める

世界は何も変わらない

時計の針が刻む時間、小さな虫達の鳴き声、時折走る車の音

消える明かりと灯る光、窓を撫でては逃げるように走り去る風

その何の変哲もないものが、今はなぜか、恐ろしくて堪らなかった

独りが、孤独が、沈黙が、【日常】が、怖い

天乃「独りは……嫌……」

強く体を抱き、背中を丸めて俯く

けれども今は誰も、触れてくれるものはいなかった


戦闘難易度は判定忘れたので>>514一桁4で行きます
本来の観測者である天乃が欠員なので
戦闘結果をコンマのみで終了することが出来ます
判定は難易度ごとに下記を基準に更に細かく設定します

■難易度

1 判定不要
2 判定有り 満開無し ダメージ有(小)
3 判定有り 満開無し ダメージ有(小)
4 判定有り 満開無し ダメージ有(小~中)
5 判定有り 満開有り(少) ダメージ有(小~大)
6 判定有り 満開有り(少) ダメージ有(中~大)
7 判定有り 満開有り(少~中) ダメージ有(中~大)
8 判定有り 満開有り(中) ダメージ有(中~特大)
9 判定有り 満開有り(中~多) ダメージ有(中~特大)
0 判定有り 満開有り(多) ダメージ有(大~特大)

■例:難易度4

01~10 
11~20 負傷 
21~30 
31~40 
41~50 負傷2

51~60
61~70 
71~80 負傷
81~90 
91~00 負傷


戦闘をスキップしますか?


1、はい
2、いいえ
3、傷つく女の子たちが見たいです


↓2

難易度4  戦闘リザルトのみ

01~10 怪我

11~20 
21~30 
31~40 
41~50 怪我

51~60
61~70 
71~80 怪我2
81~90 
91~00 怪我


↓1


世界への被害は難易度、戦闘結果から判定免除
軽微なものとして処理します


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流無()
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流無()
・   乃木若葉:交流有(昨日の件)
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(昨日の件、理由)

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()



8月7日目 終了時点

乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 66(とても高い)
犬吠埼樹との絆 56(とても高い)
結城友奈との絆 76(かなり高い)
東郷美森との絆 59(とても高い)
三好夏凜との絆 96(かなり高い)
乃木若葉との絆 67(とても高い)
土居球子との絆 31(中々良い)
白鳥歌野との絆 26(中々良い)
藤森水都との絆 19(中々良い)
  郡千景との絆 20(中々良い)
   沙織との絆 79(かなり高い)
   九尾との絆 50(高い)
    神樹との絆 9(低い)

汚染度???%-α


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


8日目朝は初回若葉交流の戦闘報告


では、少しだけ

√8月8日目 (自宅)朝 ※月曜日


押し付けられているような体の重み、ぐちゃぐちゃにかき乱されているような頭の痛み

じりじりと痛む瞼を強引に押し開いて、天乃は目を覚ます

目覚めの悪い、朝だった

照りつける日差しはカーテンに遮られてはいるものの、

その熱は確かに室内へと通り、少女を蒸し焼きにしようと湿度を上げていて

若葉「目が覚めたか」

天乃「!」

額に張り付く前髪がさっと払われ、

ひんやりとした何かが肌を拭って、若葉の顔が視界に入る

若葉「体を起こせるか? 無理なら横にするだけで良いが」

天乃「……若葉」

若葉「大丈夫だ。樹海化は起きたが、みんな問題ない。怪我も被害もない完勝だ」

嬉々として報告した若葉は、「動かすぞ」と声をかけながら天乃の体を横にして、

患者衣をはだけさせて、背中を拭う

若葉「唯一問題があったといえば、夏凜の経過観察が一日伸びたことだな」

天乃「何かしたの?」

若葉「いや、樹海化したことには変わりないからと、そうなったようだ。夏凜自身は戦闘で問題なく戦えていたし、過剰な力の使用もしていなかったから安心してくれ」

天乃「そう……」


少し安心したように、天乃の口からはため息が零れて

若葉は何も言わず、ただ薄く笑みを浮かべながら息をついて天乃の白い肌に触れる

じっとりとした汗をかいていた

目を覚ます前、苦しそうで、辛そうで

疲れ切った表情は泣いたのだと示して

寝たのではなく眠ってしまった。あるいは落ちてしまった

そんな状態だとわかりやすかった

若葉「すまない」

天乃「……どうして、謝るの?」

若葉「不安だったろう……確認も含めて、戻るのが遅くなった」

天乃「…………」

背中に向けた言葉は、返事を持ち帰れずに消息を絶つ

故意だったわけではないけれど

それでも、心配をかけてしまったことに罪悪感を感じていて

若葉「任意で、向こうと行き来できたら良いのにな」

天乃「死神さんは出来たわ。千景は……どうかしら。神的部分が取り除かれてるのなら無理よね」

若葉「ああ、千景は難しいそうだ」


試そうとはしたのだ。けれど、出来なかった

それは天乃が言うように、死神の力の一部を引き継いだだけで

そう言った神聖な部分に関しては引き継がれなかった可能性もあるし

あるいは、天乃が現状では干渉する能力を失っているため、

力が足りずに行えなかったか……

天乃「だったら仕方がないわよ……それに」

窓を向いていた体を若葉の方へと傾けながら

天乃は少し寂しさを感じさせる笑みを浮かべて、タオルを握る若葉の手を掴む

天乃「無事に帰ってきてくれたなら。それで良いから」

若葉「…………」

儚さを帯びた瞳、切なさを携えた口元

不可抗力とはいえ、それは自分たちが関わることで浮かべさせる笑み

意志があろうとなかろうと、バーテックスのせいで生まれる感情

若葉「……ああ」

静かに呟いて、天乃が握っていない手を強く握りしめていく

若葉「ああ……そう、だな。無事が一番だな」


若葉の笑みに、天乃は「うん」と、呟く

握る手は天乃よりも少し大きくて

精霊ゆえに傷のない手は綺麗で

汗を拭ったタオルは、少し湿っていて

天乃「タオル、貸して」

若葉「ん?ああ」

天乃「……それとも、前も貴女が拭きたかった?」

若葉「な、何言ってるんだっ」

茶化す言葉、楽しそうに見える笑み

天乃が見せるそれらに対して、若葉は中途半端に赤く塗られた頬を掻き、息をつく

若葉「こ、困るだろう……?」

天乃「あら、私は別に構わないわよ。えっちはまだ、あれだけれど。そういう意図がないなら全然」

若葉「私が困るんだ。最初はそんな気がなくても、そういう気になるかもしれない」

初心ね。と、小さく呟いた天乃は少し嬉しそうな笑みを浮かべていて

からかわれているのだとわかってはいても、若葉は少しばかり反抗心が芽生えるのを感じた

若葉「な、なら、天乃が拭いているのをじっと見ていてやる。どうだっ」

天乃「どうだってなにがなの? もう……それはそれで恥ずかしくもあるけど。でも、私は今まで介護されてきたのよ?」


天乃はこの二年間、入浴等を他人に委ねた経験がある

むしろそれが多い生活を送ってきているがゆえに、

何かしらの手を借りなければならないような状況であるのならば

人に肌を晒すということに関しては、エッチなことをするときのような恥ずかしさはないのだ

若葉「それもそうか……い、いやまて。だからと言って安易に肌を晒すのは――」

天乃「そんなに慌てなくても貴女達くらいにしか晒さないわよ」

若葉「う……」

天乃「ふふっ」

日常だった

若葉が精霊だということを除けば

天乃の体が病気や事故でなく不自由である事を除けば

それは仲の良い少女達の、ちょっぴり大人の世界に踏み込んだ会話だった

若葉「…………」

好きだと感じた。守りたいと思った

この時間を、自分にとっては非日常であるこの日常を

天乃「!」

無意識に、抱きしめる。

強く、強く、誰にも奪われるものかと、強欲に

天乃「……汗くさいのに」

若葉「そんなことないさ。私は好きだ」

天乃「……馬鹿ね」

若葉「恋は盲目……なのだろう?」

生きているのだと実感できる一つ一つ、それが若葉は心から好きだった


√8月8日目 (自宅)朝 ※月曜日

1、九尾
2、千景
3、若葉 ※継続
4、歌野
5、水都
6、球子
7、沙織
8、勇者部に連絡※再安価
0、イベント判定 ※再安価

↓2


1、風
2、東郷
3、友奈
4、東郷
5、樹


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



天乃「そうだわ」

天乃(確か東郷は記憶を戻したのよね……連絡してみようかしら)

ベッド下「ピリリリリリ……」

天乃「!?」

ベッド下「ガタッ……ピッ」

天乃「……東郷?」

「……にゃぁお」

天乃「こらっ!」


では少しだけ

8月8日目 (自宅)朝 ※月曜日


結局逃げてしまった……と言っていいのかは解らないけれど

若葉が居なくなってから体を拭き終えた天乃は、一息ついて、端末に視線を落とす

夏凜は一日経過観察が伸びたからまだ病院で、端末に触れられる機会は少ないだろうけれど

それ以外のみんなはもう、自宅に戻っているし、端末もすぐ傍にあるだろう

天乃「…………」

おもむろに端末を手にとって、クラスメイトや商店街関係

部活で必要になった連絡先で溢れる中、勇者部の名簿を見つけ出して東郷を選ぶ

そういった相談は受けては居ないけれど

東郷は自分で考えて、悩んで、九尾から失った二年間の記憶を得ることを選んだ

それに関して、天乃は九尾に言ったように注意等する気は無いが

それでも、気にはなるもので……

天乃「出られるかしら」

昼に入る少し前の時間であることを確認してから、電話をかける

普段、東郷は早ければコール1回で出るし、遅くても3回くらいなればお待たせしました。と出てくれる

しかし、今日に限っては5回鳴っても、電話は繋がらなければ切れもしないし留守電にもならなくて

近くには居ないのではときりかけた瞬間、繋がった……けれど

東郷「……ぁ」

天乃「東郷?」

言葉は中々続かなかった


天乃「東郷?」

もう一度名前を呼ぶと、端末の奥、東郷の居るどこかではごそごそと音がして、ため息の音が混ざる

そしてもう一度、東郷の声が近付いて

東郷「お、おはよう……ございます。すみません、本当なら会いに行くべきなのに」

天乃「ううん、いいわよ。むしろ私が会いに行くべきだわ」

自由なら、きっとそうしていたしそうすべきだった

退院したのは天乃藻含めて夏凜以外のみんなだけれど

本当に必要で入退院したのは東郷達だからだ

天乃「体の方はどう? 若葉は問題ないって言っていたけど、本人としては」

東郷「特筆すべき問題は……私は遠距離なので、若葉さん達と比べれば安全圏ですから」

天乃「そう……ねぇ、東郷」

東郷「はい」

天乃「なんか、他人行儀というか、ぎこちなくない? 貴女」

どう考えても記憶を戻した影響……なのだが

居心地の悪さを感じた天乃は耐え切れず問いかけて、東郷は口を閉ざす

どこか遠くではなく、端末自体が軋んだかのような音が零れ落ち

微かな布擦れの音が聞こえ、その奥では蝉の大きな鳴き声まで届く


東郷「そう、かもしれません」

天乃「……………」

東郷「本当は出るかどうかも迷ったんです。かける言葉が見つかりそうになくて、心の整理がつかなそうで」

東郷の声は落ち着いているようで、揺れている

恐怖ではない何かの緊張感に揺さぶられて、言葉が上手く結びついていない

そんな感覚が、天乃には伝わってきて

東郷「もう、伝わっているかもしれませんが……2年間の記憶を九尾さんに戻してもらって……」

あれは記憶を取り戻すといっても半分、追体験のような感覚に近い

美味しいものを食べれば美味しいと思うし、怖い思いをすれば恐怖に心乱れ

悲しければ涙を零し、嬉しければ心が温まるような……だから、東郷は

東郷「少し、複雑なんです。今の自分と2年間の自分。それがあまりにも違えていて」

天乃「それは」

東郷「解ってはいるんです。人は成長するものだって。だから、自分が今のようになったこと、それもまた一つの成長なのだと」

けれど、東郷が複雑な心境になってしまっているのはそれだけが理由ではないのだ

寧ろそれならば楽だった、かも知れない

天乃「……………」

声だけしか聞くことが出来ないこと、

目の前には居ないこと

感じるもどかしさに天乃は眉を潜めて

東郷「でも、過去の自分が抱いていたものとはまったく違うなと思わずには居られなくて、どう接したら良いのか。解らなくなってしまったんです」


迷いの言葉、躊躇いの言葉

それに続いて東郷の息を呑む音が聞こえて

東郷「彼女はただ、久遠先輩の傍に居ることが出来れば良かったんです。手を繋ぐことにすら心迷わせて、触れただけでドキリとして」

少しずつ、物語を語る語り部のように穏やかな口調で、東郷美森は語る

自分が失った2年間、得た2年間

東郷美森ではなく、彼女――鷲尾須美がどのような心だったのかを

東郷「鷲尾須美は、久遠先輩の子供のような明るさに煩わしさを感じて、その余裕に苛立ちを覚えて、けれど、その変わらない光に憧れていた」

天乃は黙って端末を耳に押し当てて、体を動かさず雑音の一切を排除して聞き込む

しとしとと雨が降っているような空気は、簡単に壊せるだろうけれど。

今は、その必要がないと思った。

どんよりとした曇天でも、荒れていなければ心地が良い時もあるのだ

東郷「今更ながらその気持ちを思い出して、感じて……本当、猫を被る。というものに近いかもしれませんが、純真再発、まるで病気のようです」

苦笑しながら呟いた東郷は、深く息をついて

しばらく、何もなかった

キスをした後の余韻に浸るのに似た雰囲気

懐かしんで、回帰して

そこには居ないけれど居るように感じる

東郷「……でも、だからこそ。私はより強く意思を保つことができる気がします」


失ってしまったのだと聞いてはいても覚えていなかったのが

失ってしまったことを思い出し、失う怖さを思い出せた。

そして、失う怖さを改めて自覚できたからこそ意思はより強く、決意は固く。想いは募る

東郷「久遠先輩が生きていく決意をしてくれたのなら、私達は。それを守るための決意を」

天乃「……私がそうした意味、私が求めてる生きていたい世界。解らないとは言わせないわ」

東郷「解ってます、ちゃんと」

園子を含めたとしても、一緒に居た期間は誰よりも長いと自負できるから。と

東郷は心の中で思い、笑みを浮かべて目を瞑る

どんな顔をしているだろうか

怒っているか、悲しんでいるか、それとも……

東郷「久遠先輩は死んででも誰かを守ろうとする人だって、彼女も私も、良く解っていますから」

天乃「そうね、私はそういう人よ」

沙織は約束をしてくれなかった

そしてきっと、東郷も約束してはくれない

その決意は固いのだと、目で見ていなくても声で解ってしまうから



1、子供を作った事に関して
2、銀のお墓
3、園子に会う
4、大赦
5、交際に関して、東郷家



↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



プルルルルルッ

東郷「!」

東郷(く、久遠先輩から……出るべきだろうけど)

東郷(で、でもなんて言えば良いのか……記憶がまさかこんな影響があるなんて)チラッ

東郷(なせば成る……なんとかっ)ピッ

大地「天乃だと思った? お兄ちゃんでーす」

東郷「……満開ッ!」イラッ


では、少しだけ


天乃「ねぇ、東郷。園子に会ってみる気は無い?」

せっかく記憶を元に戻したのだから改めて話すこともあるだろうと声をかけると

東郷は「そうですね……」と、静かに答える

東郷「以前、共に戦って以降会うことが出来ていないので、叶うのなら」

失ってしまった2年間のこと、

天乃の居なくなってしまったあの戦いで、尽力し守ってくれたこと

話すこと、謝ること、お礼すること

色々あるからと、東郷は望みを託すように呟く

東郷「久遠先輩なら、会わせて貰えるんですか?」

天乃「どうかしら、園子の体調次第なのよ」

東郷「やはり……」

東郷自身も会いたいと願い出たことはあったのだ

けれど、園子の体調不良を理由に会うことはできなくて

それ以降も、まだ会うことは出来ていなくて

東郷「久遠先輩なら、強権使えるのでしょうか……」

天乃「少なくとも嘘はつかせないわよ」

冗談めかして笑いながら言うと、東郷は「笑顔が見えます」と、笑う

今まで通りというには少しぎこちなくて

けれど、決して悪い空気にはならなくて

ぎこちなさの割には居心地のいい雰囲気に浸りながら、

東郷はふと息をついて

東郷「そのっちも、いつかこの輪に加われるのでしょうか」


天乃よりも酷く傷ついて

自分ひとりでは本当に、何一つ出来るような状態ではなくなってしまった子

それはやはり、みんなを守るためで

大切な人たちを守るためで

報われるべきなのだ、救われるべきなのだ

そう思い、強く握りこぶしを作る東郷の耳元で

僅かな電子音が乱れて

天乃「それを決めるのは、私達よ。東郷」

東郷「私達……ですか?」

天乃「あの子が居場所を作れる場所なのか、あの子のために居場所を作って上げられる人達なのか」

小さく笑う

電話相手である東郷には聞こえないような、自己満足の笑み

それは、勇者部への信頼だ

きっと問題ない、きっと大丈夫

ひねくれそうだった自分が大丈夫だったのだから

天乃「でも、きっと大丈夫」

東郷「そう、ですね。そうですよね」

東郷の安堵した声に、

天乃もまた楽しげな笑みを零して

天乃「とりあえず大赦に掛け合ってみるわ」

東郷「お願いします」


01~10
11~20 許可
21~30
31~40
41~50 許可
51~60
61~70
71~80 許可
81~90
91~00

↓1のコンマ 


※ぞろ目特殊


√8月8日目 (自宅)昼  ※月曜日


天乃「……はぁ」

夏を象徴する虫のけたたましい声が窓を突き抜ける部屋の中に

すぐにかき消されてしまいそうなため息が混じる

解ってはいたことだが、やはり、却下されたのだ

有無を言わせることなく。

体調がすぐれていないとの理由で、また後日。と

電話ではなく直接話したのに、大赦からの返事は機械のように精確無二で

録音したテープを流しているような感覚には

流石の天乃も何も言えなかったのだ

天乃「本当に体調不良ならいいけど……いや、良くはないけど。でも」

何か隠しごとをしていて

園子に何かしているというのよりはまだ良いのかもしれないと

天乃は考え、またため息をつく

園子の周りにはちゃんとおつきの人がいるし

瞳や春信さんもいる為、ひとりぼっちということはないだろうが……

やはり、心配にはなってしまう


安易に寝返りもうてない体を少し無理矢理に動かして、出入り口の方へと体を傾ける

東郷に関しては、鷲尾須美の記憶との激しい混濁は見られなかったし

恐らく、接し方に多少の変化はあるかもしれないが、問題はないと言ってもいいだろう

悪五郎との子供の件に関しても

九尾が上手く話を付けてくれたのか動揺も何もなく

追及されたり責めたりされることもなかった

天乃「みんなも……そんな風に納得してくれたのかしら」

なぜ行動に移したのか

その理由、その意味を理解して、認めて

自分たちなりの努力をしようとしてくれているのか

それとも……

天乃「…………」

ちらりと見る端末は、反応しない



1、九尾
2、球子
3、千景
4、歌野
5、若葉
6、水都
7、沙織
8、勇者部連絡
9、イベント判定


↓2


1、風
2、樹
3、友奈
4、東郷


↓2
※夏凜は入院中の為出来ません


では、ここまでとさせていただきます
明日は出来れば昼ごろから


プルルルルルッ

風「ん? あーちょっとー樹ー?」プルルルルルッ……プルルルルルッ

風「今洗い物……っていうか着信長い、樹ー?」プルルルルルッ

風「あーもー、天乃から? おまちーっ!」ダダダッガチャッ

天乃「ねぇ、なんですぐにでないのなんでなにしてたのだれかいるのねぇわたしからのでんわなのにこんなにわた――」

風「怖いわッ!」ピッ

プルルルルッ

風「んー? また天乃? はいはい。ちょっとわるふざ――」

天乃「話し中長かったわね……大赦から連絡でもあった?」

風「は……えっ?」


では、遅くなりましたが
少しずつ


√8月8日目 (自宅)昼  ※月曜日


電話をかけると、少し時間はかかったが

風は少し慌てた様子で、電話に出てきた

風「ごめん、今洗い物してて……どしたー?」

天乃「意外と普通の対応なのね」

風「ん? あぁ……」

いつもの犬吠埼風

それと何も変わらないことに疑問も違和感も不満も無かったが、

何気なく天乃が零した言葉に、

風は察したように語尾を伸ばす

風「天乃が男の子と寝たって話でしょー?」

天乃「言い方……でも、そうね。そうよ」

風「その理由は聞いたからねぇ。そりゃ、思うことが無いって言えば嘘になるけど」

でも。と

風は少し含みのある笑みの吐息を漏らして

風「納得はしてるし、理解もしてるつもりよ。あの天乃が戦えなくなることを選んだって時点でね」


電話の奥でカチャリと音が鳴って

限りなく近かった声が少しだけ遠くなる

普段の年代関係なく子供っぽい姉としてではなく

一段上の姉のような余裕を感じさせる、空気

風「だから、あたしはそれに対して特に言えることが無い」

本当は言えることはある

けれどそれは天乃が言われたくない事だろう

ごめんなさいとか、そういうものだから

天乃「貴女は話が早くて助かるわ」

風「他に面倒な人でもいた? 男子ならともかく、みんな女の子だから大した文句は出ないと思うけど」

天乃の純粋な体が穢されたと言うような人は、もしかしたらいるかもしれないけれど

天乃が戦いから退くことになると言う話を聞いてなお

しつこく食い下がってくるような人は、少なくとも勇者部にはいないはずだと風は言う

確かにそうだろう。風の言うとおりだ

一々こうやって電話してくる必要なんて

正直に言ってしまえば必要はないのだ


天乃「実のところ、まだ東郷にしか連絡は入れてないのよね。沙織にはもう、話はしたけれど」

風「そか、でも東郷も平気だったでしょ?」

天乃「ええ」

東郷に関しては、悪五郎との件は天乃から聞かなければ話題にさえ出さなかったほどで

聞いても理解はしていると、すぐに答えてくれて

風が小さく笑ったのが、聞こえた

安心したと言うよりも、分かっていたことを言われて「でしょうね」とでも言うような

少し、自慢交じりの音

風「あ、そうそう。若葉から聞いた? 戦いの件」

天乃「朝のうちに」

風「場合によってはあたし達から連絡居れることもあるけど、基本的には若葉に報告してもらうようにしたのよ」

天乃「怒られるから?」

風「違う違う」

茶化して言うと、風は困ったように笑いながら否定して

電話の奥でぱたぱたと手を仰ぐのが目に浮かぶ

風「一番早くそっちに戻れるから。千景や歌野達も時々は報告になるかな。ま、精霊組ね」


風「それで? 戦いの事は聞いてるみたいだし、子供の件だって伝わってることは知ってたでしょ?」

九尾に伝えるようにと願い出たのは天乃だ

風が初めて聞く相手なら、

九尾がまだ伝えていない可能性も考えてのことだと思えるけれど

東郷に連絡したうえで、連絡を入れてきたのだ

風「それ以外に何かあるから連絡してきたんでしょ?」

天乃「それは」


1、五郎くんの件でショックを受ける人もいるのかと思って
2、私の行動の意味、ちゃんとわかってるのかなって思って
3、だって、一人ぼっちは寂しいもん
4、例の約束の件もあるから


↓2


天乃「五郎くんの件でショックを受ける人もいるかなぁって」

風「ん~……男の子だったらショックだったかもしれないけど……」

自分でもすることが出来るのだ

なら、自分を選んでもらえなかったことのショックはあって然るべきだが

それが出来ない風としては

その行為の相手に選んでもらえなかったことは必然であり、当然で

とはいえ。と、風は思う

まだ未経験な状態での天乃と淫らな事が出来なかった事

それは少しばかり、惜しい気がしなくもなかった

風「…………」

けれども、きっとこの電話の相手は

男の子と一回淫らなことをした程度では何も変わらないだろう

無垢なままとはもう、いかないかもしれないけれど

いつもと変わらない久遠天乃なのだと、風は思う

風「みんな女の子だから平気でしょ。きっと」

天乃「そうかしら?」

風「それに、天乃はどれだけえっちしても、処女みたいなもんだから」

天乃「そんなことはないと思うけど……」


それがあるから困るのだ

東郷や沙織、夏凜達と行為を重ねても

初々しさは結局変わらないままだったと聞いている風としては

また誰かのことを―本人がする気があるかは別として―誘惑するのだろうと

むしろ心配そうにため息をついて「あのね」と、風は呟く

風「あたしとしては、経験済みでちょっぴりエロい天乃も見てみたい気もするのよ」

天乃「そんなこと言われたって」

風「でしょうね」

そこで困ってしまうから

もはや永遠の処女だと言ってもいいのだと、風は苦笑する

もちろん、本当にそうなのかは別だが。

風「ねぇ、天乃」

天乃「うん?」

風「例の約束だけどさ、子供の件もあるし全部滞りなく済んでからってことでどう?」

天乃「それって、バーテックスの件も?」


そう問いかけると、

風は「もちろんっ」と、少しだけ大声で、明るく、強く

はっきりとした意思を示すように言って

風「来るかもしれない大きな戦い。それが終わって、天乃がちゃんと子供を産めて、そしたらさ……しようよ」

天乃「……その時はもう、私忙しいかもしれないわ」

そもそも、身体が無事であるかどうかの保証もない

けれどきっと、風はそれを分かったうえで言っているのだ

自分たちも無事でいるから

天乃もまた、無事でいて欲しいと

風「解ってる。でもさ、なんというか……鎖ってわけでもないけど。不安なのよ」

天乃「不安?」

風「そう言う約束しとかないと天乃はどこか行っちゃうんじゃないかって」

天乃「…………」

絶対的な約束をすることはできない

けれど、そんな約束があれば破るわけにはいかないと強く意志を持てるかもしれないと天乃は思って、苦笑する

天乃「大丈夫よ。私はね。むしろ貴女達が心配だわ」

風「あたし達だって、平気だから」

約束をしようとしない沙織達とは違う風の言葉、風の想い

それにこたえるべきなのだと、天乃は強く――思った

√ 8月8日目  夕(自宅) ※月曜日


01~10 友奈 
11~20 
21~30 千景

31~40 
41~50 大赦

51~60 
61~70 
71~80 樹

81~90 
91~00 

↓1のコンマ 

√ 8月8日目  夕(自宅) ※月曜日

1、九尾
2、球子
3、千景
4、歌野
5、若葉
6、水都
7、沙織
8、勇者部連絡
9、イベント判定


↓2


01~10 友奈
11~20 樹
21~30 九尾
31~40 千景
41~50 大赦
51~60 歌野
61~70 水都
71~80 沙織
81~90  大赦
91~00 球子

↓1のコンマ 

ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



大赦「いけませんなぁ。許可されていない少年と事に至るとは」グィッ

天乃「っ……私が誰としようが、貴方達には関係のないことよ」

大赦「いや、あるさ!」

シュバッ

大地「ある時は卑劣な大赦仮面、またある時は卑猥なくそ兄貴」

大地「その名は――お兄ちゃんであるッ!」

天乃「ひっ」


では、少しだけ


√8月8日目 (自宅)夕  ※月曜日


天乃「何しに来たの?」

夕方になって訪れた大赦の職員に向かって、天乃は冷たく言い放つ

園子の体調が優れなかったからという理由はあれど、

まったく会わせてくれないという部分には、不満があったからだ

「久遠様が自身の精霊と性的な行為を行ったと報告を受けたのですが、事実ですか?」

天乃「……プライベートも何もなし。筒抜けってこと? 一応、そういう対策はしたはずなんだけど」

若葉にも言ったが、

介護という名目であれば、肌を晒すことに恥を覚えることもない。けれど

性的な行為を、それをしている相手以外に見られる聞かれるというのは不快で

悪五郎との行為の際にも、誰か似見られる聞かれることがないようにと対策はしておいたはずなのだ

そしてもちろん、九尾が大赦に赴いて伝えたとは思えない

天乃「夏凜達のことを監視してたりしないわよね?」

「私のあずかり知らないところです。久遠様」

天乃「ずいぶんと……歪んだものね」

今回訪れたのは大赦の仮面をつけた神官の立ち位置にいる大赦関係者だ

それゆえに深い部分を知らないというのは、いささか妙な話で。

天乃は不快感を露わにしながらも

どこか寂しげに、悲しそうに呟いて握りこぶしを作る

巻き込まれた敷布がギリギリと音を立ててしわを寄せていく


天乃「園子は本当に面会謝絶?」

「……………」

女性神官は何も言わずに佇んだまま、

見えているのかどうか不確かな仮面を天乃へと向ける

答える気は無い

けれども答えてくれるまではここにいる

そんな気色悪くさえ思えてくる雰囲気が漂う

天乃「私は私のプライベート。それも、性体験の有無を答えろと言われてるのよ? なのに、友人の体調さえ答えられないの?」

「行った可能性が高いことは確認済みです。これはあくまで、それを確定させるための問いです」

天乃「……そう」

「お答え頂けないのであれば、行ったと仮定して事を進めさせていただきます」

女性神官はあくまで情報の提供はしない。というスタンスなのだろう

ただ冷たく、ただ無感情に

自分が与えられたことをこなそうとしているだけ

天乃「恥ずかしいとか、どうとかいう話じゃないわね……不愉快極まってもう何もいえないわ」

「……では久遠様。申し訳有りませんが特別病棟へと移送させていただきます」


どこにその申しわけなさがあるのかと疑問に思いながら、

天乃は不快感を露わにした鋭い目つきで神官を睨む

天乃「お断りよ」

「久遠様が行ったのは前代未聞の行為です。然るべき機関で保護し、経過をしっかり把握しなければなりません」

天乃「もっともらしいことを言ってるけど、それって結局信用できないだけでしょう? 私達のことを」

天乃の指摘に、神官は一旦言葉を止めて

沈黙ゆえに流れる空気は不快感と、緊張感に溢れて

天乃「私も貴女と同じ道を辿ろうと考えたわ」

「……………」

天乃「でもね、そんなことで救えるものなんてないのよ。救われるものなんてないのよ」

睨むように見つめていた視線を穏やかに、優しく

ゆるりと切り替えた天乃は小さく息をついて、目を逸らす

天乃「自分自身の心でさえも……ね。そうでしょう? 先生」

「機関にて保護させていただきます」

彼女は何も言わない

そんな言葉への答えはプログラムされていないというような一貫した対応

それはある意味で立派であると。天乃は寂しく思う




1、お断りすると、言ったわよ
2、若葉、外まで送ってあげて
3、勝手にしなさい。それが正しいと思うのなら
4、悪いけれど、私は産むわよ。彼が私の為にくれた大切な命だから


↓2


天乃「……先生」

仮面の奥でどんな顔をしているのかは分からない

けれど、なんとなく想像は出来ていて

天乃は切なく息をつく

今は一応、二人きりのような状況なのだ

それでも機械的な対応なのだから

色々あるのだろう

天乃「悪いけれど、私は産むわよ。彼が私の為にくれた大切な命だから」

「…………」

天乃「貴女達にこの体を好きに弄らせるつもりはない」

「そのようなことは致しません。どのような影響が出るか分からない以上、可能性を踏まえて保護観察とさせていただくのみです」

女性神官は一貫して自分の目的のみを告げると、

ベッドに横になっている天乃から顔を背けて入口の方を見る

「迎えは来ています。すぐにお呼びいたしますので、そのままお待ちください」

天乃「私が素直に待っているとでも?」

「逃げても、勇者部を警護しているうちに久遠様にたどり着けると思います」

天乃「……なるほど」


元から、有無を言わせずにつれていくつもりだったのだ

天乃は樹海の穢れを引き受けることが出来る力を持っているし

なにより、今でこそ子供の影響か抑えられているが、強力な力を保持している

そして、勇者部やクラスメイト達を繋ぎとめる重要な支柱

放置して置けるような存在ではないのだ

そこに、妖怪との子供という理由が出来れば

保護という名目で捕まえに来るのは、当たり前だったかもしれない

「では、失礼――」

天乃「そうやって仮面をつけている時点で、貴女は昔と何も変われていないわ」

「…………」

天乃「ただ蓋をして、見えていないふりをしているだけ。変わることが出来ないから。仮面をつけるのよ」

「失礼します」

女性神官は天乃の言葉にはやはり、何も返さず

ただ一礼のみを遺して去っていき

そしてすぐ、彼女の言った迎えが天乃を連れ出しに部屋へと集まる

皆には伝わっているだろうか

勝手な行為ではないだろうか

そんな聞いても無駄なことを思い、天乃はため息をつく

天乃「ちゃんとみんなには話をつけておきなさい。取り返しのつかないことになっても。私は責任なんて取ってあげないからね」


√ 8月8日目  (特別病棟) ※月曜日


01~10 
11~20 有り
21~30
31~40 
41~50 あり
51~60
61~70 
71~80 あり
81~90 
91~00

↓1のコンマ 

ぞろ目特殊

※特殊判定


√ 8月8日目 夜(特別病棟) ※月曜日


01~10 
11~20 若葉
21~30
31~40 千景 
41~50 瞳
51~60
61~70 春信 
71~80
81~90 沙織 
91~00

↓1のコンマ 

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から




若葉「天乃、あとは任せてくれ」

若葉「…………」

若葉「とりあえず……大赦を撤退赦!」

千景「妊婦に冷房の効き過ぎは良くないわ」

若葉「ふむ……ダメか。もう少し良い言葉を選ばねばならんな」

千景「諦めると言う言葉を学んで。切にお願いするわ」

では、少しだけ


√8月8日目 夜(特別病棟) ※月曜日


天乃が連れてこられた特別病棟は、

天乃が逃げることを想定しているためか、窓がなかった

真っ白な壁、純白の天井

医療目的ですよ。とでも言いたげな医療機器が申し訳程度に設置され、

統率の取れた泣き声を上げる

天乃「……お豆腐みたい」

もっとも、その白さは良く見れば一つ一つが人型を模した紙で埋め尽くされているだけで

実際は真っ白な天井でも壁でもないが。

若葉「主様」

天乃「出てこられるのね」

若葉「問題はない。薄気味悪さは……まぁ、これはこの場に来る誰もが感じることか」

あたりを見渡して嫌悪感たっぷりの表情を見せた若葉は、

ため息をついて、天乃へと目を向ける

若葉「天乃の自室には監視しているような機材は確認できなかった」

天乃「そう……じゃぁ、私が普段必ず持ってる端末が怪しいわね」

若葉「そのことだが、今回の入院中に預けていただろう? そのときに改良された可能性がある」

天乃「……そっか」


淫らなことをしている姿がどこの誰かも解らない相手に筒抜けで、

恐らくは、記録として残されていて

恥ずかしいと思うよりもただただ、言葉にし難い何かが湧き上がってくるだけで

若葉「……大丈夫か?」

天乃「体は、ね。でも……自分でもなんて言えば良いのか分からないけど、多分、悲しい、のかな」

そっと体を抱きしめて、笑みを浮かべる

分からないのだ、複雑で

けれども悲しいという感情があるのだけは分かって

包み込むように覆い被さって来る温もりに、身を委ねていく

若葉「端末に関しては、新しいのを知り合いに新調してもらうことにしよう」

天乃「知り合い?」

若葉「ああ、鍛錬で知り合った人なのだが、これが色々と凄い人でな。機械関係に詳しいそうだから、任せて問題ないだろう」

嬉しそうに語る若葉の声

鍛錬での知り合いなのだから、夏凜達の関係者か誰かだろうか

けれど、きっとこんなにも楽しげに言うのだから、心配は必要ないはずだ


天乃「男の人?」

若葉「そうだな」

天乃「好きになっちゃった?」

若葉「人として……は、少し微妙なところがあるが鍛錬相手、所謂武人としては尊敬に値する……か?」

曖昧で、はっきりとしない言い方をする若葉は

明らかに困った様子で、苦笑する

若葉「それも微妙なところだな。だが、愉快な人物であることには変わりがないな。変わり者ではあるが」

天乃「貴女がそう言うのだから、きっと良い人なのね」

若葉「ああ、とはいえ……出来れば会わせたくないけどな」

若葉の抱く力が少しだけ強くなったのを感じて

天乃は「どうしたの?」と、問いかける

外敵から守るようなその仕草は、

若葉が見せる明るい喜ばしさとは擦れ違っていて、少し不安だった


若葉「彼は少し特殊なんだ。屈折させずに言えば性癖……がな。ある一定の条件下では、彼はあまりにも危険だ」

天乃「若葉は平気なの?」

若葉「私は問題なかったが……その、友奈が少し被害に遭ったんだ」

罪悪感を滲ませながら答えた若葉は、

もちろん、友奈自身もそうなることは分かっていたんだが。と

その謎の変人を庇うように続けて、ため息をつく

天乃「友奈も問題ない?」

若葉「心配するな、何かあろうものなら、強力な助っ人が手を貸してくれるからな」

相変わらず抽象的というべきか具体的な言い方をしてくれない若葉だが、

恐らくは、それについては言えない理由があるのだろう

天乃「そっか、なら良い……の?」


1、ねぇ、しばらく一緒にいてくれない?
2、大赦に来たのに、干渉はしないの?
3、園子がどこかにいるかも知れなんだけど……探せない?
4、何かがありそうなら、助けてね

↓2


ではここまでとさせていただきます
明日は出来れば少し早めから



天乃「一緒にいてくれない?」

若葉「ああ、いいぞ」

グイッ……ドサッ

天乃「っ」

若葉「では、もういっそ見せつけてやろう」

若葉「大赦が目を背けたくなるほどに熱烈に、耳を塞ぎたくなるほどに淫靡に。私達のまぐわいを」


では、少しずつ


どちらかと言えば良いと言えるだろうな、と

苦笑する若葉を横目に、天乃は燻る恐怖を掴むように胸元に手を宛がう

窓さえもないヒトガタに囲まれた部屋の中、

監視されていることさえわかる状況で、たった一人

その心細さがあって

ぐっと、若葉の服の裾を掴む

若葉「? どうした?」

天乃「……しばらく、一緒にいてくれない?」

若葉「天乃……」

掴まれた裾に感じる微かな震え

今は抵抗力が皆無と等しい天乃には、この状況はつらくて

若葉は優しく、その手を包む

若葉「言われなくてもいるさ。一緒に」

天乃「我儘でごめんね」

若葉「気にするな。天乃はむしろわがままで良いのだからな」


そっと体を寄せる

何かをするわけでもなく、若葉は天乃の体を預かって

互いの存在を感じ合う

手の触れ合いはない。ただ、肩に肩が触れるだけ

若葉の体に、天乃が身を寄せているだけ

それでも、静かな部屋で不気味な空間は二人きりの場所になる

それでよかった

それだけでよかった

一人ぼっちではないのだと、感じられるから

天乃「……一人はね、怖いの」

若葉「ああ」

天乃「一人はね、寂しいの」

若葉「解ってる」

少し前にも聞いた感情、聞いた弱音

それを繰り返してしまうほどの状況を見渡して、若葉は息をつく

若葉「叶うなら、ここから君を連れ出したい。だが、それはきっと、私達の今後にとっては悪いことになる」

天乃「……………」

若葉「だから、傍にいる。戦いが起きた時以外は、ずっとだ」





天乃「……捕らわれのお姫様みたい」

若葉「ふふっ、そうだな」

まさにその通りでしかないと若葉は思いながら、

それを言葉にしないようにと笑みを浮かべる

助けたくても助けられない

時は車ではそのままでいなければならない

嫌な思い、辛い思い、寂しい思いをさせてしまう

若葉「天乃は私の……いや、私達の可愛いお姫様だ」

次から次へと出てくる自分の非力さの証明

だが、若葉はその全てに対して力を尽くすと決めた

だから、卑屈にならない

天乃「何言ってるのよ……」

若葉「せっかくだ。どちらが妻か夫かこの際激しく論じるのはどうだ?」

天乃「とはいっても……今の状況だと、私が妻よね」


天乃がまだ不確かな胎児を愛でるように腹部を撫でると

若葉は確かにそうだな。と愛おしそうに答えてほほ笑む

いつかきっと、必ず生まれる子供

その母親が天乃なのだ

であれば、夫役というものは必然で

若葉「なんだか、似たような会話を繰り返してしまうな」

天乃「……うん」

若葉「…………」

天乃「でもね。それがきっと日常なのよ。話すようなことなんてほとんどなくて、くだらなくて他愛ない話をする。それが、そういうものなのよ」

きっとね? と、自信を持たずに天乃は言う

天乃は本当に、心から日常というものを味わった経験がない

だからこそ不確かで

その未だ報われていない心に寄り添うように

若葉は体を寄せ、天乃を抱く

若葉「全てが終わったら、そんな……くだらなくて他愛ない話で、どれだけ時間が潰せるのか。楽しんで生きよう」


↓1コンマ

一桁+二桁+5

※ぞろ目特殊
※わっしー


4+4+4+4+5=21
東郷さんわっしー記憶補正

1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流有(悪五郎との件)
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流有(二年間の記憶)
・   三好夏凜:交流無()
・   乃木若葉:交流有(戦闘報告、一緒にいて欲しい)
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流無()

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()



8月8日目 終了時点

乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 67(とても高い)
犬吠埼樹との絆 56(とても高い)
結城友奈との絆 76(かなり高い)
東郷美森との絆 80(かなり高い)
三好夏凜との絆 96(かなり高い)
乃木若葉との絆 69(とても高い)
土居球子との絆 31(中々良い)
白鳥歌野との絆 26(中々良い)
藤森水都との絆 19(中々良い)
  郡千景との絆 20(中々良い)
   沙織との絆 79(かなり高い)
   九尾との絆 50(高い)
    神樹との絆 9(低い)

汚染度???%



√ 8月9日目 朝(特別病棟) ※火曜日

01~10 
11~20 若葉

21~30 
31~40 
41~50 千景

51~60 大赦
61~70 
71~80 瞳
81~90 
91~00 変な人

↓1のコンマ  

√ 8月9日目 朝(特別病棟) ※火曜日

1、九尾
2、千景
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、水都
7、大赦
8、イベント判定

↓2

01~10 水都
11~20 若葉
21~30 沙織
31~40 春信
41~50 千景
51~60 大赦
61~70 特殊
71~80 瞳
81~90 久遠
91~00 変な人

↓1のコンマ  


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


千景「私は乃木さんとは違うわ……」

千景「貴女を……ここから誘拐する……!」


では、少しだけ


√8月9日目 朝(特別病棟) ※火曜日


いつもと違う、歪んだ天井

目を覚ませば見えるそれが嫌で横に体を傾けると、

若葉ではない手が見えて、上へと視線を上げていく

千景「遅くもなく早くもない時間ね……おはよう、久遠さん」

天乃「千景……?」

千景「乃木さんなら鍛錬に出ているわ。私では、不満かしら」

そっけなくも思えるような単調な声色

けれど、嫌われていると思わずに済む優しい瞳に、

天乃は小さく息をついて、首を振る

天乃「そんなことないわ。ただ、千景がいてくれるのが、ちょっと。不思議で」

千景「……そうね。私もそう思うわ」

以前、天乃が一緒に居てほしいと頼んだときは

精霊とはかくあるべきだと拒絶していた

だから、天乃は不思議だったのだ

若葉が鍛錬に出ると言っても、

歌野たちではなく、千景であることが。

天乃「何か、迷ってるの?」

千景「……っ」


千景は一瞬驚き、視線を彷徨わせたが

天乃を一瞥すると落ち着きを取り戻して、首を振る

吐き出されたため息が、緊張しかけた空気を絶つ

千景「少し前に、三好さんに言われたわ。私が貴女に求めたことは、結局貴女を傷つけるだけでしかないと」

天乃「それって、千景達の事は人間ではなく、精霊としてみるべきだって話のこと?」

千景「そうよ」

頷いて答える千景の手が、ゆっくりと握り締められていく

握り締められているのは、なんなのだろうかと。

思い、動いた天乃の視線の先で千景は悲しげな表情を浮かべていて

千景「私達は精霊であるべき存在よ……むしろ、現存していてはいけない存在でさえある」

天乃「…………」

千景「だから、私達は戦いが終わったら消えるべきだと思う。貴女は私達を精霊として扱うべきだと思う」

前にも言ったことを繰り返し告げた千景は

だけど。と、小さく呟いて続けて

千景「三好さんに言われて解らなくなってしまったのよ……久遠さんが厄介なせいで」

天乃「それを本人に言う?」


千景の容赦ない一言

どう反応すべきかと困りながら苦笑する天乃に向けて、

千景は「事実よ」と、追撃を加えて

千景「精霊扱いしてもしなくても、久遠さんは辛い思い、苦しい思い、嫌な思いをする」

呆れたように、千景は言う

握り締めていた拳はいつの間にか解かれて

悲しげだった表情は苦笑いを浮かべる

天乃「…………」

天乃が持つ若葉の記憶の中の郡千景のそれとはまったく違う

良く変わる少女の姿

天乃「ふふっ」

千景「……なぜ、笑うの」

天乃「ちょっと、思うことがあって」

本当はこんな少女であるのだと

こんなにも感情を持っているのだと

分かること、見られること、それが儚く切なく嬉しくて

天乃「……ごめんね、面倒くさい性格で」

千景「そうね」


違うと否定しない

そんなことはないと取り繕うことはない

千景は若葉とは違うのだ

千景「…………」

少しの沈黙、以前は聞こえた虫の声もない本当の沈黙

おもむろに天井を見上げた千景は、

敷き詰めるように貼り付けられたようなヒトガタから目を逸らし、

床の一枚を剥ぎ取って握りつぶす

千景「けれど、それが久遠さんなのでしょう……?」

自分の言葉は決して間違いではないのだと自信はある

精霊がどうあるべきか、その考えも変えるつもりはない

けれど天乃の考え方を否定して、強制するのは誤りだと千景は思ったのだ

千景「だから、それで良いわ」

天乃「千景……」

千景「貴女が決めたことに対してどう進んでいくのか。その覚悟、その強さ、その意志は見せて貰ったから」


自分が保険として戦場にいること、そのバーテックスとの戦いにおける利点

みんなが危なくなった際に力を使って助けることができる、自分のための現状維持

天乃はみんなとのこれからのために、それを捨てた

みんなを信じて、自分はこうすべきなのだと決意し、貫いた

それは決して簡単な選択ではなかったはずだ

それは決して天乃にとって容易い道ではないはずだ

それでも目的のために決行するその意志、揺らがせられるとは思えなくて。

千景「だから、決めたわ。私達精霊は精霊としてではなく久遠天乃の精霊として生きると」

天乃「……貴女はそれで良いの?」

千景「良いのよ。それに、私があのままで居続けても、無駄に長引くでしょう?」

天乃「そう、だったかもしれないわね」

否定しない天乃に、千景は解っていたというようにため息をつく

千景はきっと、若葉たちのように完全に心を許してくれたわけではないだろう

しかし、良き友人として傍にいてくれるその有り難味に、感謝を述べる



1、貴女は優しい子ね
2、東郷も、若葉も、歌野たちも記憶を戻したわ。貴女は本当に、良いの?
3、なら、千景。今度はもう、添い寝してくれるのよね?
4、ねぇ、この病棟のどこかに園子がいたりしない?
5、若葉が言ってた変な人って、千景は解る?


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から


天乃「記憶は、良いの?」

千景「ええ、構わないわ」

千景「だって……」グイッ

天乃「!」

千景「そこに、貴女との記憶はないのだから」



杏「これです、これですよっ!」

園子「良いよね~」

杏「はいっ!」


では、少しだけ


千景には記憶を戻してはいないけれど、

何も覚えていない千景に口頭で話して聞かせたことがあった

死神が力を譲渡し、生まれた郡千景がまだ敬語を使っていた頃だ

それを思い出した天乃は思わず笑みを浮かべながら、

自分の手を見下ろして、そっと千景へと目を向ける

なぜ笑うのかと言いたげな表情に、また、微笑んで

天乃「東郷達は記憶を戻したわ。貴女は良いの?」

千景「……必要だと、思ったことはないわ」

天乃「どうして?」

千景「300年も昔のことを思い出したところで、今の私がその過去に対してどうする事もできないから」

嘲笑するように笑って見せた千景は、

自分の手を強く握り締めて、ため息をつく

その姿は切なそうで、悲しそうで

何よりも悔しさが感じられるもので

千景「それに、私が犯した過ちはもう知ったから。誰かのために生きること、そして抗わずに消えてしまうこと。それが私の生き方で良いと思った」


思いを馳せるような言葉が、空気のように薄く溢れて溶け込んでいく

穏やかな声は、天乃の記憶の中の千景が犯した過ちとは通じるものがなくて

あの頃の千景とは記憶だけの違いのはずなのに、

どこか、大人びたようにも見えた

千景「なんて、きっと言い訳だわ……私は自分が過去の過ちを繰り返さないという自信がないのよ」

天乃「記憶が戻ったって……いや……そっか」

千景「解るでしょう? 普通の記憶回復とは違って、九尾が行う方法は追体験に近いから……」

だから、絶対に精神に影響がないとは、言えない

実際に東郷は良いとも悪いとも言えない特殊な状態ではあるけれど

精神的な影響を受けてしまっていた

自分にそれがないかどうか、それが心配で、不安で

千景は記憶を戻すことを避けているのだ

もちろん、そうする必要がないと思っているというのも、完全な嘘ではないが。

天乃「……今の貴女は過去の貴女とは違うわ」

千景「それでも、私には抗えるなんて自信を持つことが出来ない……弱いのよ。私は」


薄く笑みを浮かべた千景は

明らかに自分のことを下に見ていて、嘲笑していて

けれど、そんな自分であることを悔いているように、悲しく思っているように

不快感を感じる表情を一瞬だけ見せる

千景「一度屈した以上……簡単には戻せない」

天乃「私が信じていても?」

千景「それは逆効果だわ……久遠さん」

その信頼、その純真な思いを裏切りたくないがゆえに努力する人もいるだろうが、

逆にそれゆえに物怖じしてしまう人も少なからずいるのだ

そして、今の千景は……後者

せっかく見つけた居場所

せっかく出会えた人々

精霊として散り去っていくわけではないのならば

失う理由が、必ずしも必要なものではないのならば。

千景にとって、それはとても惜しいものだった……けれど。


千景「……私は大切に思うあまり過ちを犯した。でも、それを知りながら、私は久遠さんの精霊になると決めたわ」

天乃「ちか――」

守りたいもの、大切に思う存在

それを千景は強く抱きしめて、思い、願う

天乃「千景……?」

叶うならば強くあれるようにと。

千景「だから、もう少し考えさせて。記憶を戻すかどうか」

天乃「…………」

千景「少しずつ、進んでいくべきことだと思うから」

若葉や歌野、東郷とは違って、千景の過去には闇がある

それゆえの受け入れがたさ

千景は儚げな笑みを浮かべながら天のを手放して

急に悪かったわ。と、冷静に告げて、息をつく

若葉のように寄り添っている千景の距離は

まだ少し、若葉よりも遠い気がした



√8月9日目 昼(特別病棟) ※火曜日


01~10 変質者
11~20 
21~30 九尾

31~40 
41~50 
51~60 歌野

61~70 
71~80 
81~90  水都
91~00  大赦

↓1のコンマ 


√8月9日目 昼(特別病棟) ※火曜日

1、九尾
2、千景
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、水都
7、大赦
8、イベント判定

↓2

01~10 沙織
11~20 水都
21~30 若葉
31~40 歌野
41~50 九尾
51~60 大赦
61~70 変な人
71~80 久遠
81~90 瞳
91~00 特殊

↓1のコンマ  


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


大赦「昼食をお持ち――」

歌野「ちょーっとまったぁーっ!」

大赦「!?」

歌野「うどんなんて許さん……蕎麦を食え、蕎麦!」

水都「うたのんってば……もう……」

では、少しだけ


√8月9日目 昼(特別病棟) ※火曜日


歌野「実際に見るとホラーだわ」

お昼になって姿を見せた歌野は床にまで敷き詰められたヒトガタを避けるようと、

わざわざつま先立ちで踊るようにしながら、呆れたように零す

歌野「でも、みっちゃん曰く身代わりなのよねぇ……ここまでいくと。って言うのもあるけど」

天乃の近くにまで歩み寄り、ベッドの端に腰掛けた歌野は「知ってる?」と、

少しばかり自慢げに笑う

快活な笑みは友奈に通じるものがあるが

それはやはり、歌野独特の雰囲気があって

天乃は停滞する息苦しい雰囲気が乱れていくのを感じた

天乃「……知ってる。穢れを祓うためにも用いるヒトガタの人形……それ以外にも用途はあるけど残念ながら、私には無意味だった」

歌野「なら、こんな部屋にしなくたって良いんじゃないかしら」

天乃「保険だと思うわ。誰に対してか、なにに対してかは不確かだけど」


思い返せば、園子も似たような部屋に入れられていたのだ

園子は天乃以上に身体機能を損なっており、穢れなどが園子に影響を及ぼさないようにと

正しく身代わりのために置かれていた可能性がある

もしくは、この人形によって、樹海化による影響を受けずに済むか……

天乃「それは、ないわね……」

それなら、知らないうちに消えてしまって、死んでしまっているのではないか。

巫女がそんな恐怖に駆られることはないはずなのだから。

天乃「それにしても、貴女達入れ替わり立ち代りで忙しないわね」

歌野「ん~マンネリ回避? 久遠さんはノーサンキュー?」

天乃「ううん、ただ……」

歌野の笑みに小さく零した天乃は、

薄く笑みを浮かべながら視線を下げると、首を横に振る

天乃「大変じゃないかなって、思――痛っ」

ベチッっと、中々に良い音を響かせた額を押さえ、天乃が顔を上げると

少年にも似た、無邪気な笑みを歌野は見せた


歌野「ノープロブレム! 誰もそんなことは思ってないわ!」

天乃の額を打った右手の中指で何度も素振りを繰り返しながら、

歌野は高らかに声を上げて、明るい笑みから一転

優しげな表情へと転化する

歌野「みんな久遠さんが好き。だから、乃木さんも郡さんも私も……みんながこうして傍に来る」

天乃「……嫌なこと、言って良い?」

歌野「うーん……あんまり良くはないなぁ」

それはそうだろう。嫌なことを聞きたいか聞きたくないかといわれれば、

それが知りたい事ではないのだとしたら、聞きたいというはずがないわけで。

だから結局、歌野は「おーけー、良いよ」と続ける

歌野「その悩み、聞こう!」

天乃「もう……」

歌野のその明るさは、元気のよさは天乃が持つ雰囲気を悉く打ち砕く

どうしてもシリアスになりきれない、真剣になりきれない

ある意味では話しやすく、ある意味では話しにくい姿勢

天乃は呆れたため息をついて、苦笑する

天乃「それは私の精霊としての義務とかだったりはしないの?」

歌野「それは、私以外には言ったら駄目なことだね」

天乃「うん……でも、なんというか」

歌野「不安に、なるのよね」


空気を沈ませるような天乃の浮かない表情に、歌野は言葉を合わせる

その気持ちを完全に理解できるとはいえない

けれど、見ていて分かる。感じる

天乃がどんな状態に陥ってしまうのか

無用な心配だと心では分かっていても、頭は考えてしまうのだ

こんな自分、こんな状況。そんな自分に付き添うのは……と。

歌野「まるで、出かけた後にガス栓を気にするみたいね」

天乃「そうかしら」

歌野「そうでしょ。だって、気になったらもう気にせずにはいられない」

冗談を語るように苦笑して見せた歌野は、

自分も農作業しているときに~と、過去に感じた不安を話して手を上げる

歌野「それも必要かもしれないわ。でも、自分がしっかりしてるって、みんなが思ってくれているって、信じることも必要なんじゃない?」

天乃「信じる……?」

歌野「ノーポジティブ、ノーライフ! 温かいのも、優しいのもいつだって明るいところにあるものだっ」

ビシッと決めて見せた歌野はどこか冗談めかしているけれど

それ以上に真剣味に溢れていて、浮かべる笑みには自信をひしひしと感じる


歌野「大体、義務でやるならそこ譲れ! な、アイラブユーさんがいるじゃない?」

天乃「アイラブユーって……」

歌野「違う?」

天乃「ちがわ……ない?」

どこかで誰かが何か文句を言ったのか

一瞬、震えた空気を歌野は吸い込んで、笑みを浮かべる

終始笑顔だ

自分が語っていること、それは嘘じゃないよと、言うように

アイラブユーさんこと、自称乃木若葉さんは確かにそう言う人だ

義務感ゆえに不本意な形で寄り添うのなら、

自分にその席を譲れときっと彼女は言うだろう

歌野「だから、私達は自分の意志でここにくるのよ」

天乃「そう……よね。そうよね……ごめんなさい」

歌野「それこそノーサンキューよ。久遠さん」


求めていないのに、望まれていないのに謝罪を口にしてしまう

そんな心の疲弊を感じさせる天乃に、

歌野は優しく声をかけて、そっと肩を叩く

歌野「みんな好きでやってる。だから平気。オーケー?」

天乃「う、うん」

歌野「ノンノン、オーケー?」

天乃「オーケー?」

明るく求めてくる姿勢に少し戸惑いながら続けて頷く

歌野はそれでも少し不服そうではあったけれど、「良ってことで!」と、笑う

歌野「久遠さんは我らが姫君だからね、ご贔屓するわ」

天乃「貴女までそう言うの?」

歌野「否定する?」

天乃「ううん、多分出来ないし無駄よ。聞いてた、だろうけどね」

天乃の浮かべる困った笑み

それは見ていて心配になるようなものではなくて

ようやくだと、歌野は満足げに息を付く

歌野「そのスマイルで良いのよ。久遠さん」

それこそが日常的なものだと、歌野は思うからだ


1、水都はどう? 戦闘後とか、大丈夫そう?
2、ねぇ歌野。貴女達も消えないでね……?
3、歌野も若葉が言う変な人を知ってるの?
4、歌野は大赦に関してどう思う?


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできればお昼頃から



歌野「ノンノン」

天乃「うたのん」

歌野「あまのん」

天乃「うたのんのん」

歌野「あまのんのん」

沙織「さおりんりんっ!」

園子「そのこけこっこーっ」

杏「あんZUNZUN」


では、少しずつ


その明るさはとても大切で、損なわれてはいけないもの

目を向ければ見せてくれる笑みに、

天乃はいつかの日の、居なくなってしまった彼女に通じるものがあるような気がして

ベッドの上、暇を持て余している手を掴む

歌野「? どうかした?」

天乃「歌野……貴女達も消えないでね……?」

歌野「…………」

切なそうな声

寂しそうな雰囲気

歌野「……それは、約束できないなぁ」

その気持ちに答えてあげたいと思った

けれど、ほかの誰かが言うように

その約束はどうしても出来ないのだ

自分は精霊であって人間ではない

戦いが終わった後、天乃が本当に力を失った後

存在を残しておけるという保証はない

戦いで力を使い果たした後、消えないと言う保証はない

歌野「でも、出来るだけ頑張るわ。必死に、本気で、全力で、生き残れるよう努力はする」


精霊である歌野達は戦いによって傷つき、存在が消えても

しばらくすれば戻ってくることが出来る

しかし、それは天乃の力がしっかりと存在していた時で

天乃が力を損ない、存在の感知さえ鈍ってしまった現状

戦いによる傷の治癒は出来るだろうが、

消失した存在が戻ってくるのかは分からない

いや、きっと戻ってくることはできないだろう

歌野「ほんと、久遠さんはエクセレントよりもパーフェクトを求めるわね」

天乃「……ごめんね」

歌野「あーっ、ドンクライ、ドントクライ!」

天乃「泣いてなんか」

歌野「……弱ったなぁ」

こんなときどうしたら良いのか、十分な知識はなくて

見て来てはいたけれど、思った以上に天乃の心は傷ついていて

歌野は思わずそう溢しながら、天乃の頭に触れる

自分がその役目を負って良いのかは分からない

けれど、この場にいるのは自分だからと、かんがえて。

歌野「当然私達もパーフェクトを求めてる。だけど、犠牲なしに何かを成し遂げるなんてきっと無理」

天乃「……………」

歌野「でも、それがせめて最小限であるように頑張るから。だから、久遠さんはスマイルスマイル」

ぐっと天乃の口元を指で押し伸ばして、無理矢理に笑みを作らせ、歌野は笑う

歌野「そのために、そして久遠さんのハッピーエンドの為に。私達は戦うんだから」


その形がどのようなものであれ、

皆が天乃に好意を抱いていることは間違いのない事実

そして、みんなが天乃の幸せのために力を尽くすつもりなのも事実

だから、歌野の声は力強い

天乃「……ごめん、なんか、泣きそう」

歌野「えっ、あー……あー、うん」

手を掴んでいた天乃の手が腕へと昇って、

俯きがちだった頭が胸元へと倒れ込んできて

歌野は優しく抱きしめると、長く伸びるさらりとした髪に顔を埋める

歌野「嬉しい方なら、許可する」

天乃「私の方が、主人なんだから」

歌野「メイドに甘えるご主人様もいるって、伊集院さんは言ってたわ」

その良く分からない言葉はきっと、不要な知識で

天乃は顔を埋めたまま「あの子はもう……」と

呆れたように呟いた


√8月9日目 夕(特別病棟) ※火曜日


01~10 園子

11~20 
21~30 
31~40 水都

41~50 毒
51~60 
61~70 大赦

71~80 
81~90 
91~00  九尾

↓1のコンマ 


√8月9日目 夕(特別病棟) ※火曜日


窓がなければ、端末も時計もない部屋は

今が昼なのか夕方なのか、夜なのか

自分の感覚で判断するしかない

部屋に来るのは、天乃の精霊を除けば大赦の職員

それも神官の装いの人たちばかりで、生真面目で

冗談も何もなく、

ただ与えられた仕事をこなすだけの、つまらない人たちばかり

天乃にとってそれは、ただただ。退屈なだけだった


1、九尾
2、千景
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、水都
7、大赦
8、イベント判定

↓2


01~10 大赦
11~20 水都
21~30 若葉
31~40 沙織
41~50 九尾
51~60 こっそり
61~70 変な人
71~80 久遠
81~90 瞳
91~00 特殊

↓1のコンマ  


√8月9日目 夕(特別病棟) ※火曜日


水都「体の方は……問題なさそうですね」

天乃「ええ、大丈夫」

水都「それは良かったです」

天乃の落ち着いた様子に安堵の息を漏らした水都は、

少しかりますね。と、天乃の手を握って、瞳を覗く

穢れによって光を失った左目はまだ赤色で視力も戻っていない

水都「穢れの進行は確認できないので、今のところは停滞している……見たいですね」

天乃「停滞……じゃぁ、回復は?」

水都「それはまだ……悪五郎さんとの一件よりは退いてはいるけど、それ以上は」

天乃の状態を確認した水都は不安げに零し、天乃の手を離す

天乃は水都の浮かない表情には希望を感じることは出来なくて

そっか……と、辛いため息をついてしまう

水都「あ、えっと、でも、だ、大丈夫!」

天乃「そう、なの?」

水都「まだ子供が出来たわけじゃないから、穢れの抜けていく道がないの」

それゆえに停滞しているままなのだと水都は必死に説明する

歌野のようにはできない。そんな自分の不甲斐なさをまた、苦に思う


天乃「出来る……のよね?」

不安そうに、心配そうに天乃が自分の腹部を撫でる

歌野が何とかしてくれたものをすぐにまた壊してしまった自分を戒めるようにした唇を噛み締めた水都は、

きっと出来るから。と、

少しばかり不安に濡れた声で返して、笑みを見せる

それはとても、ひとを安心させられるような笑みではなくて

けれど、天乃は「ならよかった」と、笑う

落ち着けようと一生懸命

それが、分かってしまう人だから

水都「……………」

天乃「……………」

水都「……あ」

天乃「? なに?」

水都「えと……」

吹く風になびく砂粒のように零れた声

目を向けてきた天乃から、水都は逃れるように眼を逸らす


何でもないと言ってしまえば話は終わる

それを真っ先に考えてしまいそうな頭を横に振って、

水都は小さく息をつく

まだドキドキと緊張感に体は揺れてはいるが、

いつまでも、こんな調子ではいられないと思うからだ

水都「巫女として、色々とみてきたんだ」

天乃「大赦の……?」

水都「うん、変装とか潜入とか、そう言うのは苦手で誰かに話を聞くとかは出来なかったけど、出来る範囲でこの施設を見て回ったの」

何もできないままは嫌だった

何かを変えたかった

だから、頑張って、行動して

水都「乃木さん、見つけたよ」

天乃「……やっぱり、いたのね」

水都「うん、部屋を覗いてきたけど寝てたから話は出来なかった。多分、体調が優れない面会謝絶は決して嘘ではないと思う」


天乃「貴女から見て、園子はどうだった? 治りそうなの?」

水都「解らない」

園子に関しては、天乃とはその状態に陥った理由等相違があって

水都は困ったように首を振る

水都「神樹様の力を借りた結果、供物として捧げたのなら……真珠様次第だから」

天乃「……そうよね」

水都「ねぇ、久遠さんは乃木さんに会いたいと思う?」

天乃「それは、まぁ」

けれど、誰かの手を借りなければいけない以上、

ここから抜け出して会いに行くというのは難しい

真っ当な手段で大赦に許可をもらわなければいけない

そしておそらく、勇者部のみんなも、同じだ

何らかの理由を付けられて、面会謝絶中だろう

水都「私……なんとか、頑張ってみる」

天乃「えっ?」

水都「力に、なりたいから」



1、無理はしちゃだめよ
2、ううん、大丈夫よ。そんなことしなくたって
3、……解った。お願い


↓2


天乃「……解った。お願い」

それはきっと簡単なことではないけれど

水都が自分から言い出したことだから

天乃は何か、その気持ちを止めてしまうような言葉の一切を排除して、頷く

本人がやると言ったのだ

して貰う側であるのならば、ただ、願う他ない

水都「うん、頑張ってみる」

胸元に手を宛がい、より強くなった緊張感を感じながら水都は答える

出来るかどうかわからない

もしかしたら失敗してしまうかもしれない

けれど、自分から何かを変えようとしていかなければ、きっと何も変わらない

変わるきっかけが自分以外の何かだとしても

それで変わるのは自分しかいないのだと

そう教えてくれた千景の言葉を思い出して、息をつく

水都「乃木さんもきっと会いたがってる。だから……行ってくるね」

天乃「うん、気を付けて」

水都は笑みを携え、姿を消す

不安がある、心配がある。けれど、少しだけの自信を感じる笑みだった


√8月9日目 夜(特別病棟) ※火曜日


01~10 園子 (精霊)

11~20 
21~30 
31~40 毒

41~50 
51~60 九尾
61~70 大赦

71~80 
81~90 
91~00  変な人

↓1のコンマ 


√8月9日目 夜(特別病棟) ※火曜日

1、九尾
2、千景
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、大赦
7、イベント判定

↓2


言葉通り味気のない夕食を終えてから、しばらく時間が経って、

神官による就寝用の明かりへと切り替えられた部屋で、天乃は眠れずに目を開いて、息をつく

天乃「……九尾、いる?」

静寂に包まれた部屋の中に小さな声が響く

けれど、返事はない

いつもそばにいるはずの九尾からの返しがないことに不安を覚えながら

もう一度「ねぇ、九尾」と声をかけると

すぐそばに気配を感じて目を向けると、女性の姿をした九尾が佇んでいた

九尾「そう不安そうにするでない」

天乃「いたなら、すぐに来て」

九尾「善処しよう」

無表情にも見える表情で答えた九尾が近づく

暗い部屋の中、心許ない明かりに照らされる九尾の金色の髪、白い肌は宝石のように煌めき、

天乃の瞳に映る

九尾「勇者部が恋しいかえ?」

天乃「恋しくないと言えば、嘘になるけど……でも。みんながいてくれるから」


九尾「そうか」

ほんの少し安心したように言う九尾だが、

表情は相変わらず固定されたままで

何を考えているのか読みにくい様子に天乃は喉元まで来た言葉を飲み込む

何を企んでいるのか。

それを聞いても、九尾は何もないと誤魔化すか、適当な言葉で茶化すだけだと思うからだ

九尾「娘らに泣きついていたのは妾の夢かや?」

天乃「……見てたのね」

九尾「くふふっ、見ておるぞ。他の精霊ものう」

少し前なら感じ取れたこと

それが出来なくなっていることをわざと茶化すように言う九尾は

にやりと笑みを浮かべて

九尾「ごく普通の少女のようじゃった」

天乃「普通の女の子でももう少し強いわよ」

九尾「普通の小娘がここに連れてこられて、強く居れるわけがなかろう」


天乃の卑屈にも思える物言いに、九尾は不満げに言葉を投げてベッドに腰を下ろす

成人女性の重さが加わっても、ベッドは軋むことさえしない

九尾「して、主様はなぜ妾を呼んだ」

天乃「それは――」

九尾「淫行の手ほどきかえ?」

天乃「ヒトガタ使って封印するわよ、貴女」

もちろん、そんな事は出来ないし

それを分かっていながら、九尾は怖い怖いと茶化して笑うと

一息ついて、一転して表情を整える

妖怪ゆえか、切り替えが早いのだ

九尾「特別妾に要件などあるまい? 今の主様など、力はないのじゃから」

天乃「…………」



1、悪五郎との子供の件
2、本当に戦えないの?
3、園子の体……というより、満開の供物はどうなるの?
4、戦いは……いつ来るの?
5、ここに連れてきたときの巫女、連れてこられる?


↓2


では、いったんここまでとさせていただきます
出来れば、22時頃に再開しますが
出来なければこのまま終了となります


では、また少しだけ


天乃「そのことについて疑問があるのよ」

九尾「そのこと。とはなんじゃ?」

天乃「私の力について」

恍けるような九尾の態度に、

天乃はすこしだけ語気を強めて言うと

九尾はくくくっといつもの調子で笑って見せて

九尾「主様は出来るかもしれないと言う可能性のみの状況であろうと、可に懸けて力を使う女じゃろう?」

天乃「え?」

聞いたこととは違う答えに戸惑い間の抜けた声を溢すと、

九尾は嫌悪感のにじむ表情を浮かべた

九尾「正直に言おう。主様の力は現状ではまだ行使可能じゃ」

天乃「なら、どうして私はみんなを感知できなくなっちゃったの?」

九尾「主様の中に入り込んだ小僧の力と結びつき、流出。つまり、力の放出が出来なくなっておるからじゃ」

例えば、と

九尾はいいながら自分の髪を数本引き抜くと、

結び合わせて、引き合う

結び目が締まっている髪はどちらにも抜けずに留まる

九尾「主様の力は現状、こうなっておる」


天乃「でも、それだと力は完全に使えないんじゃないの?」

九尾「普通ならば、な」

天乃「普通なら?」

九尾「うむ。普通ならば、ここで思いとどまるだろう? 解くこともできない糸。なれば仕方がないと」

けれど、と

九尾は含みを持たせるように言葉を区切り、

少しの間をおいて、「力を使う方法はある」と、続ける

天乃「今さっきも行使可能と言ったわよね? でも、力を使えないと……」

九尾の手元、

結び付けられ、引っ張られていく髪へと視線を移した天乃は

もしかしてと、口を閉ざす

その驚き、その悟りに九尾は悲しげな表情を向けて

ブチリと、音がした

左右数本ずつ、しっかりと結ばれていた髪は長さもまばらに引きちぎれて

九尾の手に張り付くように垂れ下がっていく

九尾「そうじゃ。強硬手段を取れば力は無理矢理に扱うことが出来るようになるじゃろう」

天乃「でも」

九尾「……間違いなく、主様と悪五郎の子は産まれぬ」


子供を形成していくために流れている力

それを無理やり切断してしまうのだから、当然だろう

天乃「…………」

九尾「主様がそれでもなお力を使うべきと思うのならば、使えばよい」

天乃「そんなの……」

出来るわけがない

けれど、本当に出来ないのかとも思う

夏凜達が満開を使い、

それでもなお勝つことが出来ず、死んでしまうかもしれない

そんな状況はないとは思う。だが、あったとしたら……

天乃「っ」

首を横に振って考えを取り消し、

ネガティブに染まり始めた頭の中身をぐちゃぐちゃにして、息をつく

天乃「夏凜達は大丈夫……だから」

九尾「絶対という保証はないぞ」

天乃「解ってる。けど」

でも、信じるべきなのだと、天乃は思う

歌野にも言われたこと。だから

天乃「私はみんなを信じるわ。みんななら大丈夫だって」

自分の腹部に手を宛がい、天乃は願うようにそう言った


九尾「ならば、信じてやるがよい」

さっきまでとは違う優しい声色で言った九尾は、

天乃の腹部にある手に手を重ねて、目を閉じる

まだ鼓動はない

そこに命は存在していない

だが、少しずつ絡み合って一つになろうとしている力を感じる

九尾「案ずるな」

天乃「九尾……?」

九尾「主様が無茶さえしなければ、必ず子は生まれてくる」

男の子か、女の子か

一人か二人かは分からないが

かならず子供が生まれてくるだろうと

九尾は予言のように告げて天乃の腹部から頬へと手を移す

九尾「我らが愛しい主様、子と共に生きよ。主様は充分頑張った。もう休め」

天乃「どうしたの……?」

九尾「……いや、それが娘共の願い。というだけじゃ」

そう言って、九尾は笑みを見せる

愁いを帯びた、どこか遠くを見ているような……笑みだった


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流無()
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流無()
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流有(消えないで)
・   藤森水都:交流有(頑張って)
・     郡千景:交流有(過去の記憶)
・ 伊集院沙織:交流無()

・      九尾:交流有(力について)
・      神樹:交流無()



8月9日目 終了時点

乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 67(とても高い)
犬吠埼樹との絆 56(とても高い)
結城友奈との絆 76(かなり高い)
東郷美森との絆 80(かなり高い)
三好夏凜との絆 96(かなり高い)
乃木若葉との絆 69(とても高い)
土居球子との絆 31(中々良い)
白鳥歌野との絆 29(中々良い)
藤森水都との絆 21(中々良い)
  郡千景との絆 22(中々良い)
   沙織との絆 79(かなり高い)
   九尾との絆 52(高い)
    神樹との絆 9(低い)

汚染度???%


√8月10日目 朝(特別病棟) ※水曜日


01~10 園子 (精霊)

11~20 
21~30 
31~40 特殊

41~50 
51~60 
61~70 大赦

71~80 
81~90 
91~00  変な人

↓1のコンマ

ぞろ目特殊 


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早めから




九尾「…………」

千景「言わなくてもいいの?」

九尾「いう必要など、あるまい」

千景「……そう」

九尾「妾の事より、お主は問題なかろうな? 妾の力、扱えぬでは許さぬぞ」

千景「問題ないわ。私の力はずっと貴女達と共にあった力。貴女も私も。変わらない」


では、少しずつ


√8月10日目 朝(特別病棟) ※水曜日


目を覚ます。相変わらず時間も陽の明かりも解らない部屋では

今が朝かどうかですら分からないけれど

きっと朝だと信じて、股閉じてしまいそうな瞼を開いて息をつく

誰もいない部屋は静かで

特別で、けれど、有難みのない病床でしか聞けないリズムが聞こえる

天乃「夏凜は……まだ病院かしら」

若葉は一昨日、夏凜の退院までは一日延びた。と言っていた

つまり、昨日あるいは今日が退院の期日

今日ならば、退院はしても昼過ぎの可能性が高い

とはいっても、迎えに行くことや、会いに来てもらうこと

何もできはしないのだが。

天乃「皆は、きっとみんな一緒」

大赦に天乃の事を訪ね、激高……はしないと信じたいが

何らかの反抗あるいは、怒りをため込んでしまっている可能性が高い

しかしそれに対しても、

天乃自身が出来る事はなかった


何もできない

何もさせて貰えない

出来る事は限られてしまったけれど、

それでもこの一瞬の間にも戦っているかもしれない大切な子達

皆にしてあげたいこと、させてあげたいことはあるのに

天乃「……無力ね」

自分の小さな白い手を見つめて握り、息をつく

天乃「駄目ね。まだ、名残がある……すぐ、悪い考えに流れちゃう」

穢れによって押し流されてしまう考え、心

それを抑えて、天乃は扉側へと目を向ける

誰か居るのだろうか

存在を感じ取れなくなってしまった精霊の、誰かが。


1、九尾
2、千景
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、大赦
7、沙織
8、水都
9、イベント判定
0、

↓2


01~10 沙織
11~20 特殊
21~30 若葉
31~40 大赦
41~50 春信
51~60 瞳
61~70 特殊②
71~80 変な人
81~90 久遠
91~00 球子

↓1のコンマ

ぞろ目特殊 


こんこんっと扉がたたかれて

天乃は思わず身構える

しかし、いつもなら―天乃にとっては―無意味な前口上もなく扉が開き

神官と思しき人が、部屋へと入ってきた

天乃「貴方……なに?」

どれだけ言っても、神官たちは言葉遣いを直そうとはしない

それはすべきことだと言い張り、機械的にこなそうとするからだ

だが、この神官は違う

前口上はなく

歩き方も礼儀なんて感じないどかどかとしたもので

ヒトガタのいくつかが怯えて蹲るように倒れてしまう

「久遠様、本日は汗もかかれたことでしょう。禊の準備が整っております。御召し物をお持ちしましたので、着替えましょう」

天乃「……それは良いけど、なぜ貴方なの? 普通は巫女が来るはずよ」

「巫女は久遠様に触れることで穢れる事を気にしているので、私が指示を受けた次第です」

天乃「男性なのに?」

「良いではありませんか。男性経験もお済でしょう?」

天乃「は?」

明らかによろしくはない

明らかに怪しい

そんな神官をよくよく見れば、仮面は正しく作られたものではなく

ただの、紙だった


天乃「……誰?」

近づいて来た男性はベッドの隣で立ち止まると

仮面の奥からじっと天乃を見下ろす

問いかけても、何も言わない

天乃「誰なの……?」

九尾の悪戯ではない

若葉達の身長でもない

つまり、精霊たちによる退屈を紛らわすためのドッキリ大成功ではない

では、なんなのか

力を喪失した状態であり、ベッドの上で逃げることが出来ないと言う状況

完全に追い詰められた天乃は恐怖に叫ぶ心臓を抑えるように胸元に手を宛がう

睨もうとしても、恐怖が勝る

力では勝てないと、分かっているからだ

「心配は要らないよ」

天乃「っ……」

どこか差しさを感じる声

それとは逆に大きな手が天乃の体目がけて伸びていく――


1、助けてみんな!
2、若葉!
3、千景!
4、手を弾く
5、無抵抗
6、自分で脱ぐ


↓2


天乃「若葉っ!」

思わず目を瞑り、背中を丸めて名前を叫ぶ

触れる寸前だった男性の手がびくりと止まる

どこからともなく風が吹き、金色の髪が靡いて煌めきの一閃が天乃と男性の間に割り込む

若葉「――退けッ!」

「!」

若葉が叫んだ瞬間に閃光瞬き、男性が服装に似合わず後ろに飛び退く

紙一重――いや

「お見舞いの方ですか? 刀は持ち込み禁止ですよ」

彼にとって、それは全く恐れることも慌てる必要もないことだったらしい

仮面の奥で少しだけ困った声が漏れる

若葉「我が主に許可なく触れることは許さん。もう二度と、見逃すものか」

刀を構え、若葉はふっと息を吐き。そして――神官が動く

ヒトガタの首が飛ぶほどに強く床を踏み、蹴り飛ばした男性は神官装束をバタバタと小うるさく靡かせながら若葉へと肉薄

若葉の刀の腹を右手の甲で弾くと、下顎に左手を押し付ける……が

若葉「ッ!」

弾かれ、交差する左右の腕

斬り返す時間はないと瞬時に諦めた若葉は左手で鍔ごと右手を撃ち抜き、

男性の喉元目がけて肘打ちを仕掛けて

「おっ」

男性が回避し、距離を置いたのを見計らい、距離を試算

二歩瞬時に踏み込んで、右に振り抜いた状態の刀の刃をカチャリと切り替え――一閃

だが、それもまた男性は危なげなく回避して「怖い怖い」と、心にもない声で呟く


若葉「……速いな。その格好で」

「職業柄、手と足だけは速いんだ。悪いな」

手の平を上に向け、お茶ら桁ように言った男性は

さてさて、と、袖を無理矢理にめくると仮面に手をかけ、姿勢を低くする

獲物を狙う獣のように

前傾姿勢になって、右手が床につく――瞬間

若葉「なっ」

一瞬だった

人形の形をしていた紙が舞う中、

瞬きする暇さえなく距離を詰めた男性が若葉の右手を左に弾き飛ばし、

地面スレスレを這わせていた右手を伸ばして足を掴んで引き倒す

若葉「うわぁっ!?」

若葉が天乃の視界から消え、ゴツンッと鈍い音がしてすぐ男性は後ろに飛び退く

若葉は気を失ったわけではないが、

ぶつけた頭を痛そうに撫でながらよろよろと立ち上がって

若葉「な、なっ、な……なにをするッ! 返せっ!」

何かに気づいて顔を真っ赤に染め、涙を浮かべた瞳で彼を睨む


「もう襲わないなら」

若葉「ぐっ……」

ひらひらと、白い布を揺らして見せる男性に対し、

若葉は強く唇を噛んで、深く息をつく

心を落ち着かせるように姿勢を正し、刀を強く握る

若葉「解った。なら、それはくれてやる」

「…………」

若葉「好きなだけ私を辱めたらいい……だが、私の後ろには一歩も行かせない。天乃には指一本触れさせない!」

もう一度切っ先を向けた若葉はもう、顔色は元に戻っていて

スカートを抑えていた手も離れている

自分を考えず、ただ、守るべきものに尽くそうとするその姿に

男性は剥ぎ取った下着を投げ渡して仮面を外す

大地「解らなかったか? 俺だ」

若葉「大……じゃなかった。兄様だったのか」

大地「いかにも、兄様であるぞ!」

若干どころかかなり引き気味に後退りした若葉は、

下着を履きなおして、刀を納める

若葉「なぜここに来たんだ。兄様」

大地「つかまってると聞いてな、来るしかないと思った。ただそれだけだ。隠しておくのも酷だろうからな」


若葉の言う兄様という言葉

それは信じてあげるべきことだが、しかしそれはあり得ないと天乃は首を振る

なにせ、若葉は300年前の人間で

若葉の記憶の中には兄なんて存在していなかった

仮にしているのだとしても

この世界に召喚していない以上、若葉の兄などいるはずがないのだ

天乃「……若葉にそんな呼び方を強要するなんて、最低だわ」

大地「そのヒンヤリ感、気持ちがいいぞ」

天乃「ひっ」

近づいてくる色んな意味で化け物の男性は、

頭を覆うフード状のものを外して、天乃へと見せる

短く切られた桃色の髪と、少し暗めの橙色の瞳

それは、まるで天乃のようで

天乃「なっ、え……」

大地「初めまして……と、言うべきだろうな。我が義妹たちの鍛錬にも付き合ってる優しいお兄ちゃんこと久遠大地だ。気軽にお兄ちゃんと呼んでくれ」

天乃「は?」



1、信じる
2、な、なに言ってるのよ……ふざけないで
3、若葉、どういうこと?
4、気軽にって、嫌よ……怖い
5、鍛錬……? まさか、友奈に変なことしたのも貴方なの?


↓2

では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から




天乃「そんな……嘘よ……」

天乃「こんな人が私の兄だなんて」

天乃「嘘よ……ッ!」

若葉「それが……現実なんだ。兄様は、天乃の兄だ」ギュッ


では、少しだけ


√8月10日目 朝(特別病棟) ※水曜日


彼はお兄ちゃんだと言った。そして若葉たちに対しても兄であると

つまり、みんなとしては義兄義妹の関係で、天乃とは本当の兄妹だと言いたいのだろう

そこまで頭は回っているし、理解も出来てはいるのだが

天乃の口からはこんな人が兄? と驚嘆の声が零れ落ちていく

天乃「…………」

若葉との戦いを見るに戦闘能力は人のそれを超えているだろうが

下着を剥ぎ取ったり、兄と呼ばせるなどと危ない意味でも超越している残念な自称兄へと目を向けた天乃は

ふと、若葉との会話を思い出して、向ける視線を鋭くする

天乃「……鍛錬って、言ったわよね」

大地「言ったぞ。若葉含め何人かの可愛い妹達の相手をしてる」

天乃「なら……友奈に変なことをしたのも貴方なの?」

大地「変なこと? ふむ?」

対して驚くようなことのない兄は眉を潜めながら考え込み、

ちらりと若葉へと目を向けて、察したように苦笑する

大地「若葉、人を勝手に変なお兄さんにしないでくれ」

若葉「わ、私は嘘は言っていないぞ。兄様が――」

大地「はいはい。それと、若葉は兄様ではなく兄上だぞ。千景に頼まれたな?」

若葉「ぐ……」


強く出て行く素振りを見せたものの、

動じない大地の姿勢、困った表情に身を引き、

若葉は悔しそうに自分の手首を握り締める

大地「好きに呼びたければお兄ちゃんに勝つのです」

若葉「わ、分かっているが、だが……いや、良い。すまない兄上」

大地「よろしい」

天乃「…………」

若葉があまりにも不快感を滲ませながら兄上と呼んだのに対し、

大地は上機嫌な笑みを見せ、天乃は思わず「き」で初めて「い」で終わる3字短縮可能な言葉を紡ぎかけたが、

無力な身の上、本気を出されてはと落ち着い息をつく

天乃「どうなの? 友奈になにかしたの?」

大地「お兄ちゃん教えてって言ったら教えてあげるぞ」

天乃「え……はぁ……?」

大地「さぁ、どうぞ」


にっこりと。

そんな表現の良く似合う子供のような笑みを浮かべる自称兄

もちろん気が向くわけがなく呆然としていると、

若葉が庇うように前に出て「兄上」と呼ぶ

若葉「今の天乃はただの女の子なんだ。酷いことはしないであげて欲しい」

大地「酷いこととは心外だな。お兄ちゃんはお兄ちゃんと愛おしい妹に呼ばれたいだけなんだが……」

心から残念そうに、悲しそうにぼやいた大地は

明らかに気力を損なった覚束無い足取りで適当なところに腰掛けると

はぁ……と、ため息をついて項垂れる

大地「お兄ちゃんは友奈ちゃんに酷いことはしてないぞ。それは約束する……というより誓えるぞ」

若葉「それは兄上基準だろう。私達からしたら酷い有様だったんだ」

天乃「何をしたの?」

大地「何をしたか。というのに答えるなら、俺はただ友奈ちゃんにお兄ちゃんと呼ばせただけだ」

さも当然のように自称兄は答え、何が問題なのかと言いたげな目を若葉へと向けため息一つ

大地「そのときにちょーっとお兄ちゃん呼称の素晴らしさについて説いたけど」

若葉「それが問題だったんだっ、知ってるだろう、そのせいでしばらくお兄ちゃんお姉ちゃんと付けて呼ぶ癖がついたんだぞ!」


憤りを見せる若葉の前で、しかし余裕綽々と言った様子で瞬きする自称兄は、

それが問題だとまったく理解していないといった様子で「はぁ……」とほうけた声を漏らして首を傾げる

大地「いいじゃん」

若葉「良いものかッ! コンビニ店員にありがとうお兄ちゃんっと言ってしまう友奈の気持ちになってみろっ!」

大地「お兄ちゃん…………」

言われ、理解できたのだろうか

眉を潜めて不快そうな表情を浮かべた自称兄に向けてため息をつくと

若葉は飛びかかろうとしているような体勢を控えて、首を振る

若葉「分かったか」

大地「ああ……良く分かった」

若葉「それなら――」

大地「若葉にはお兄ちゃん呼びは似合わないなっ」

若葉「そこじゃないだろっ!」

ああもうなんなんだ、なんなんだ助けてくれ教官……と

苦しそうに悶えた若葉は激しく頭を振って項垂れて、頭を抱えたままベッドへと腰掛ける

天乃「……大丈夫? 若葉」

返事はない。ただの抜け殻のようだ


大地「さて、友奈ちゃんにしたのはそれくらいで、後は正しく鍛錬に付き合った。へんなことはしてないぞ」

天乃「……若葉の時みたいに下着を剥ぎ取ったりは?」

大地「勇者状態で鍛錬してるからな。余計なことしようとすると弾かれる」

なら出来るならするのかと。

聞きたいと思う反面、聞いたら後戻りできない気がして口を閉ざし、

天乃は若葉の力ない手を握って、自称兄を見る

天乃「若葉が言ってた友奈に対する仕打ち、貴方との考えが違うということで解決したわ」

大地「そうか」

天乃「それで、貴方は本当に私の……兄。なの?」

大地「兄じゃない。お兄ちゃんだ」

天乃「うん、どっちも変わらな――」

大地「なんだとっ!」

天乃「ひぃっ!?」

ぐっと瞬間的に近付いてきた変態の挙動、見開かれた瞳に

天乃は耐え切れず悲鳴を上げて若葉の体に隠れる

大地「同じなものかいいか良く聞けお兄ちゃん兄上兄様お兄さん兄さん兄ちゃんと呼び方は多種ありそれは当然ながら一緒くたにすべきではない」

天乃「うぅ」

大地「例えばこのお兄ちゃんと兄ちゃんだが、一聞ではまったく同じようにも思えるがそう言う奴はまるで分かっていない。いいかお兄ちゃんというのは、【お】が付くか付かないで――」

天乃「分かった分かりましたごめんなさい。許して許してくださ――」

大地「いいや何も分かってないぞ良いかこれから大事なことをだな」

若葉「止めろ兄上!」


大地「むぅ」

若葉「天乃を泣かせるな」

大地「……そうか、すまん。あとでお兄ちゃん広辞苑を持ってきてやるからな。それを読んでくれ」

天乃「っ」

一転して穏やかな声色で話しかけた大地だったが、

これまでの態度でそう簡単に心を許すわけはなく

天乃は涙を浮かべながら睨むと、さっと若葉の影に隠れる

大地「昔はお兄ちゃんと結婚するって言って離れてさえくれなかったのになぁ」

天乃「…………」

大地「時間の流れは残酷だなぁ……」

しみじみと呟く大地の態度に天乃と若葉は警戒を怠らずに身構えて

しかし、大地は何をするでもなく、端末を取り出すと操作して

『私ねっ、私ねっ、お兄ちゃんのお嫁さんになるーっ! えへへっ』

可愛らしい女の子の元気な声が流れた

天乃「えっ?」

大地「これが証拠だ。可愛いだろ?」

若葉「兄上、最初から思っていたが流石に酷だと言わなかったことを言わせてくれ」

大地「ん?」

若葉「その、なんだ……気味が悪いぞ」

大地「……なら可愛い義妹である若葉にも理解できるようにお兄ちゃん広辞苑をプレゼントしよう。今度テストするからな?」

若葉「やめてくれ、私が悪かった」


大地「まぁまぁ、落ち着け」

散々茶化して満足したのか、大地はこれが本題なんだ。と

自分の端末とは別の端末を取り出して、天乃へと手渡す――のは無理だったので

若葉に渡し、天乃がそれを受け取る

大地「頼まれた端末だ。許可されていない端末からのアクセス等は出来ないよう設定しておいたから安心してもっておくといい」

若葉「頼んだのは昨日だったはずだが……」

大地「大事な義妹からの大好きな妹のための端末だぞ。何よりも早く願いをかなえてやるのがお兄ちゃんって奴だろ」

さっきまでの変な人と同一人物ではあるのだが、

それが嘘だったのではないかと思ってしまいそうなほど、優しい兄らしい笑みだった

大地「大赦には見つからないようにな? 多分回収されるだろうから」

されても下手な改造で気やしないだろうが。と

自慢げに言った大地は、まだ怯える天乃に少し切なげな息をつく

それは優しく、どこか嬉しそうで

大地「幸せになれ。お兄ちゃんからのお願いはそれだけだ」

そういうと、さっと立ち上がって「またな」と、手を振り去っていく



1、ありがとう
2、……ありがと、お兄ちゃん
3、ごめんね

↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



「600円になりまーす」

友奈「1100円でお願いします」

「あーい、500円のお返しでーす」

友奈「ありがとう、お兄ちゃんっ」

「あり……えっ?」

友奈「あ……な、何でもないですごめんなさいっ!」ダダッ


では、少しだけ


正直に言えば、怖い

兄に対する呼称についてあまりにも熱が入っていて

本当の本当に変質者そのもので

天乃「…………」

けれど。

そうっと若葉の背中から顔を覗かせて、自称兄の背中を見つめる

容姿は身長こそ大差あるが、髪の色や瞳の色はまさしく天乃の血縁者

大分前に沙織に聞いた兄の存在

そして、記憶にはなくとも感じる何かは、彼を認めている

……あまり、認めたくはないけれど。

若葉「大丈夫か?」

天乃「ん」

握った手の力が想像以上だったのか、若葉が少し心配そうに聞いてきて

天乃は小さく頷いて口を開く

天乃「あ……ありがと、お兄ちゃん」


自分に対して行ってくれたこと―もちろん端末の件―への感謝を込めて

望みに応じて、言葉を投げかける

意識してというものはなんだか気恥ずかしく、むず痒く

顔は赤いし、声は小さなものになってしまったけれどしっかりと届いたはずだ

しかし

大地「えっ? なんだって?」

彼は振り返る。満足げなニヤついた笑みを浮かべながら

耳元に手を当て、聞き耳を立てるように天乃へと向ける

天乃「っ、き、聞こえたはずよ」

大地「すまん聞こえなかった。で、なんだって?」

天乃「だ、だからっ、その……」

大地「聞こえないぞー?」

天乃「~~~~~っ」

明らかにわざとらしくて、聞こえていたのは確実で

それでも求めてくる姿勢を続ける大地に天乃は苛立ちと恥ずかしさを湧き上がらせて、歯を食い縛る

動けるのなら、引っ叩いていただろう

天乃「もう二度と呼ばないっ!」

大地「悪かった悪かった! だから呼んで、お兄ちゃんと呼んで、我が愛しの妹、あまのん!」

天乃「絶対に言わないわよっ、もう、ばかっ! 帰って!」


思わずそう怒鳴りつけると、

大地は「わーすまんすまん」と罪悪感など微塵も感じられない謝罪を述べて、

嫌味のない満足そうな笑みを見せる

大地「どうだ。兄ちゃんといるときは退屈しなかっただろ?」

天乃「っ」

大地「お前は笑ってるほうが絶対に良い。今みたいに怒ってる顔も良いけどな……だから、今朝みたいな顔はするな。しそうになったら兄ちゃんを呼べ」

いつだって、どんなときだって、どんなところにいたって、笑わせてやるからな。と、

大地は天乃へと、若葉へと、みんなへと告げて踵を返したが

すぐに振り返って、思い出したように口元に人差し指を立てる

大地「あ、若葉。ここに来たこと晴海には内緒だぞ。ダメ、絶対」

そんなしまりのない様子で、大地は部屋から抜け出していく

荒らすだけ荒らして、兄が消えて

取り残された二人は脱力感に襲われて大きくため息をつく

若葉「疲れるんだ……あれの相手は」

天乃「心中お察しするわ……」

いたのはほんの数分程度だが、

それでも面倒くささと煩わしさ忙しなさは十分に感じた。味わわされた


天乃「でも、退屈は……しなそう」

相手するのは大変だが、それでも退屈はしない

寂しい思いなんて当然しないだろうし

きっと、悲しいことがあっても包み込んでくれるだろう

天乃「面倒だけどね」

直前のことを思い出し、笑みを浮かべた天乃は

彼から受け取った端末を大事に握り締める

若葉が言うように変な人だった

けれど、嫌いになりきれない人だった

何かがあったら、呼んでもいいのかもしれないと思う

若葉「正気か?」

天乃「そのときは若葉も一緒にね?」

若葉「やめてくれっ、千景だ。千景がいるぞ!」

千景「乃木さん!?」

天乃「あら、いたのね」

若葉「いいや、さっきまで逃げ――」

千景「その口を閉じなさい!」


千景を身代わりにしようとする若葉と、それを押さえ込もうとする千景

300年前ではありえなかった光景を前に、天乃は小さく笑う

これも、彼が引き起こしたこと

若葉「兄上が来た途端に逃げただろうに!」

千景「それは……乃木さんに任せて平気だと思ったからよ」

ふいっと目を逸らした千景に、若葉は「なぜ目を逸らすッ」と、

追い討ちをかけるように言って

千景は気恥ずかしそうに頬を染めて、ため息をつく

千景「苦手……なのよ。生理的に……兄さん。なんて」

若葉「私も少し苦手だが……強くなるためだ。我慢するしかない」

千景「それは、分かっているけれど」

濁すように言う千景の目が向けられたのを感じて、

天乃は笑みを浮かべて、千景を見る

天乃「大丈夫よ。私もお兄ちゃんって呼ぶことになったから」

千景「そういう問題じゃ……いえ、良いわ。我慢すると決めたものね」


千景は何か反論しようとしたが、

すぐに首を横に振って取り消すと、諦めの滲んだ笑みを浮かべて呟く

けれども、天乃は思う

千景に姉さん。と、呼ばれるのはどんなものなのだろうかと

お姉ちゃんでも、姉ちゃんでも、姉様でも姉上でもなく姉貴でもなく……

それはそう、千景が呼ぶべき呼称のような気がして――

天乃「ばかーっ!」

千景「!?」

呻いて枕へと顔を叩きつける

アレの妹の血が騒いだのか、アレの病気か何かが感染してしまったのか

とにもかくにも危うい考えをぺしゃんこにすべく、天乃はしばらく枕を抱え込んでいた


√8月10日目 昼(特別病棟) ※水曜日


01~10 夏凜

11~20 
21~30 
31~40  友奈
41~50

51~60 東郷
61~70 
71~80 特殊
81~90 
91~00 大赦

↓1のコンマ 


1、精霊組 ※再安価
2、勇者組 ※再安価
0、イベント判定

↓2


1、夏凜
2、友奈
3、東郷
4、風
5、樹


↓2

※全てメール
※ナルコは念のため不使用


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



大地「ほら、どうした。簡単だろう? 御願いするんだ。ちゃんと」

千景「くっ……わ、私は……」

大地「俺は別に構わないぞ? 君が欲しいか欲しくないか。だからな」

千景「っ……私……」

千景「私に……教えて……に、兄さん」フイッ

大地「よしきた!」


では少しだけ


√8月10日目 昼(特別病棟) ※水曜日


若葉「世話係は少し警戒していたようだな」

天乃「そうね……」

天乃に対して、というよりは

散ったヒトガタの無残さに怯えていたのだけれども。

天乃が自力の移動がほぼ不可能なのに対し、床のヒトガタが散っていたのが

より、不気味に思えたに違いない

若葉は申し訳なさそうに眉を潜めて、すまない。と呟く

若葉「兄上と無用な争いをしてしまったせいだ」

天乃「それ以前に千景が握り潰してもいたし、別に良いわよ。元々恐れられて嫌われているのは解っていた事だし」

ある意味で爆発物のようなものだと思われてると、天乃は自分への評価を思う

利用価値はあるが、危険物。取り扱い注意の代物

若葉「天乃……」

天乃「これまでと何も変わりはしないわ。きっとね」

若葉「……たとえ何かが変わっても、変わらなくても、全てが変わっても。私達は天乃の味方であり続ける」

若葉はそういいながら、世話係から隠し通した端末を天乃へと手渡す


若葉たちに預けて一緒に消えていて貰うだけだが、

それこそ誰にも見つかることのない絶好の隠し場所なのだ

天乃「ありがと」

若葉「気にするな。何かあったら呼んでくれ。すぐ傍にいるから」

天乃「うん」

優しく声をかけて姿を消した若葉を見送り、

天乃はふと息をついて端末の電源を入れる

ホーム画面は例の不審者が結婚届のサインをせがんでいるシチュエーションだったため

とりあえずはと、画像をデフォルトに切り替えて、アプリ一覧を見る

入っているアプリは勇者部と共通のもので、勇者専用のものもしっかりと入っているが、

その中の一つ、連絡用として用いることのできるアプリはサーバー側の監視の可能性も考えて試用を控える

なら。と、天乃は電話帳を開く

兄、姉、伊集院沙織、犬吠埼樹、犬吠埼風、東郷美森、三好夏凜、結城友奈、夢路瞳……クラスメイト数人

記憶には薄いが、天乃が元々持っていた端末との差異は殆どない

もっとも、兄と姉が追加されてはいるが。

天乃「……自分を先頭にするため、でしょうね」

名前ではなく兄、姉となっているのは、カナ順でトップに来させる為だろうと読んでため息をつく


天乃「とりあえず……」

アドレス一覧から夏凜のみを選択し、

退院に関してと、自分が今どうなっているのか

それを完結に文章化させて送信する

みんなにも知らせるべきではあるのだが

複数人とのやり取りになるとその分対応が増え

手放す―隠す―動作が手遅れになることを考慮して、夏凜一人

一応はみんなにも伝えてとの一文を入れてあるため、問題はないだろう

天乃「夏凜……怒ってるかしら」

こうなったのは不可抗力だ

しかし、その根本はといえば、天乃が相談せずに悪五郎との一件を行ったせいだ

それに対する答えも聞けていないのが

天乃は少しばかり、不安で

少ししてから、端末が受信を知らせる光を放つ


天乃「えーっと……」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 別にたいしたことはなかったわよ
 聞いてるとは思うけど、バーテックスの追撃のせいで
 無駄に検査入院期間が延長されただけだし…

 それよりもアンタでしょ
 あんたがするべきと思ったことだから、あんたが信じた相手だから
 私が信じるあんたの頼った相手だから、私には出来ないことだったから
 あんたの為になることだったから
 あんたがしたことに対して、文句はないし責めるつもりもない

 そもそも、そうすることであんたが避けたいってゴネ続けた力の無力化が起こるし
 私としては…まぁ、友奈達もか。そうしてくれてよかったと思う

 でもあんたは辛いはず、苦しいはず、嫌だろうし、怖いはず
 そんなストレスを溜めさせるような状況で、私達はあんたの傍にいられない
 それが、私は不安よ。

 あんた、寂しがり屋だし、じつは結構臆病で、怖がりで
 甘えん坊で、泣き虫だから
 それなのに誰からも頼られて、
 誰よりも強くて、誰よりも頑張って、誰よりも優しいから
 
 良い? 一人で抱え込むんじゃないわよ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


夏凜にしては長いメールだった

ほんの少しツンツンとしていて、けれども優しさのある文章

天乃「分かったようなこと言っちゃって」

寂しがりや、臆病、怖がり、甘えん坊、泣き虫

羅列された決め付けの文字列を視線でなぞりながら、天乃は笑み交じりのため息をつく

そんなことはないはずだと天乃は思って

スリープの真っ黒な画面に映った自分を見る

寂しそうで、不安そうで、誰かに……

天乃「そんなことはないと思うけど」

人差し指を口元に当て、にぃっと伸ばす

それでも瞳に変わりはなくて

結局、メールが出来ようが電話が出来ようが

それは一時凌ぎにしかならないのだと察する


天乃「……甘えん坊、かな」

できるのならば会いたいと

音だけでなく、寄り添う温もりを求めるというのは望みすぎだろうかと考えて

天乃は端末を握りながら、ため息をつく

何もないときは仕方がないと諦めがついたのに

こうして連絡手段が手に入った途端に頑張ればもしかして。と望みが顔を覗かせる自分に

天乃は少しだけ失望したのだ

それでは寂しがり屋ではないか。と

天乃「……ばーか」

指が触れて、夏凜からのメールが表示されて

天乃は冗談でも言うかのような軽い口調で呟き、返信を選ぶ

天乃「夏凜が変なこというから、変に考えちゃうじゃない」


1、私のこと何も分かってないわ。寂しがり屋とか、甘えん坊とか全然違うわよ
2、そんな寂しがり屋な女の子に会いたいとか思わないのね。夏凜は
3、それ全部夏凜のことじゃない。なに? どうしたの? 会いたいの?
4、じゃぁ、そんな寂しがり屋で甘えん坊で泣き虫で臆病で怖がりな女の子が嫌なこと、しないでね?
5、ねぇ、夏凜は自分が女の子じゃなく男の子だったら良かったなーとか、思わないの?



↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



夏凜「……メール。か」

風「ん? どしたー?」

夏凜「天乃からメール来たのよ。なんていうか、会いに行ってやれたらと思って」

風「ならどうよ、ちょっと大赦潰しに行かない?」

夏凜「馬鹿言うなっての」

東郷「私の弾丸は仮面ごとき撃ち抜きますよ」

樹「拘束くらいなら」

夏凜「やめろーっ!」


では、少しだけ


少しむくれながら、メールの文章を簡単に入力していく

夏凜のメールが思いのほか長くて

自分のメールが短いのはどうなのかなと思い悩んで

出来るだけ長くと文字を羅列していって消す

長く書けばいいというものでもないのだ

天乃「っ……こんな、別に悩むようなことでも」

普通に思ったこと

聞きたいこと、いいたこと

それをただ文字にしてしまえばいいだけなのに

それが中々上手くいかない

天乃「…………」

端末を握ったまま、ぐるっと寝返りを打って画面を見つめる

タイトルには何もなく、本文にもない

天乃「夏凜が変なこというからいけないのよ……」

ぶつぶつと文句をいいながら、

夏凜が抱く天乃の印象その全ては自分のことではないのかと、

会いたいのかと、ちょっぴり煽り文句の売り言葉で紡ぎ、メールを送った


送ってすぐに返事が来ることはないだろうと端末を枕元に置き、深く息をつく

見えないだけでどこかに若葉たちがいてくれている

呼べば出てきてくれるだろうし、寂しいということはない

けれど、呼ぶ時点で寂しいのではといわれれば、負ける

天乃「負けるって……」

数日前に会ったばかりで若葉たちだっているのに

天乃は言葉にし難い寂しさを感じて端末を握る

機械的な熱が肌を暖めて、すぐに冷めてしまうそれがまた、切なさを孕む

天乃「臆病、寂しがり屋……私が? そんなの……」

どうだろうかと思う

一人ぼっちになったとき、自分は寂しいと思わなかっただろうか

何かを恐れたりすることなく、強くいられただろうか

自分のいない戦いがあった日は、どうだったのか

天乃「……良く、見てる」

ぼそりと呟き、端末を握る手を額に宛がう

色々と相談事をした、後輩なのに頼ることもあった

それを思い出し、天乃は儚げに笑みを浮かべる

臆病で、寂しがり屋それはきっと嘘じゃない間違いでもない、まさしく自分のことであると

チカチカと点滅する端末のランプを見て苦笑し、スリープを解除する


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 はぁ?私が寂しがり屋で臆病で甘えん坊で泣き虫で怖がり?なに言ってんのあんた
 私は別に怖いものとかないし泣き虫じゃないし甘えたりしないし泣いたりもしないわよ
 あんたとは違うっての
 
 けど、

 家に戻った時、あんたの姿が見えない、あんたの声が聞こえない
 それは少し、物足りないと思う

 だから、

 会いたいとは思ってるわよ。本当に
 あんたのためにも、私達の為にもきっと会うべきだと思うし、
 そうじゃなくても、私はあんたの顔が見たい

 あんたはいつも頑張ってるから、無茶ばかりするから
 傍にいないと、いつも見ておかないと、どうにかなるんじゃないかって
 ほんの少し不安で、怖くもあるから

 なんて…

 結局、私もアンタと同じなのかもね
 

 大赦は私達をあわせようとはしてないわ。理由を付けて接触を阻んできてる
 大赦は心身への穢れの影響が不安定なためって言ってる

 あんたが悪五郎としたのは、精神的に狂って
 悪い妖怪でもあった悪五郎にそそのかされてしまったって考えてるのかもって
 瞳は言ってた

 でも、あんたのそれは私達にとって守るべきもの
 私達が残していかなければいけないもの
 兄貴にも言っておいたけど……何かあったらすぐに知らせなさいよ

 空メールでもいい

 そうしたら――私達が何が何でもアンタを取り戻しに行くから


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

天乃「また、ちょっと長い」

長さに思いは関係ないと天乃は思うが、

いつも短く終わる夏凜のメールが長く続くというのは嬉しくて、幸せで

天乃はメールに目を通しながら小さく笑みを浮かべた


天乃「何が何でも……か」

その気持ちは嬉しかった

その優しさはありがたかった

けれど、それは最後の最後の本当に最悪な手段

夏凜達もそれが分かっているからこそ、何かがあったらと言った

天乃「無茶は、しないでね。無理もしないでね。夏凜……貴女は良く、分かっているだろうけど」

お前が言うなと夏凜は言うと思う

けれどそれでも願い、祈り、求める

自分が散々して来たことだとしても……

聞こえないことを承知の上で呟きながら、文章を打つ

きっと、夏凜はメールを見たら笑うはず

何を言ってるんだかと、分かってるわよと

呆れ混じりに笑いながら、当然。と、返してくる

天乃「でもね……言葉が欲しい」

メールを送信し、胸に端末を抱いてふっと一息

夏凜は会いたいと言った

なら自分はと、考えて

熱を帯びる目元を覆い隠すように手の甲を当てる

天乃「……私も会いたい」

今いる場所は久遠天乃にとって日常だ

けれど、それは少女にとっての日常とは大きくかけ離れていた


√8月10日目 夕(特別病棟) ※水曜日


01~10 
11~20 大赦

21~30 
31~40  特殊
41~50 
51~60  友奈
61~70 
71~80 
81~90  樹海化
91~00 

↓1のコンマ 

※ぞろ目特殊


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から




バーテックス「本気出す」

鎮魂歌「特殊樹海化で出陣する!」


では、少しずつ


√8月10日目 夕(特別病棟) ※水曜日


お初にお目にかかります。国土亜耶と言います

夕食をとらされている時間に訪れた訪問者は、丁寧に頭を下げてそう切り出した

聞いたことのない名前ではあるが、

彼女は天乃のことを知っているのだろう

天乃が名乗るよりも先に、少しだけ近付く

天乃「食事中よ」

「すみません。ですが、通しておきたいお話があるんです」

天乃の突き放すような言葉にもめげることなく、

巫女装束を着込んだ少女は話がしやすい距離にまで近付くと

また、一礼をして

「そう遠くない未来に、私達は外の世界に向かわなければなりません」

天乃「だから、なに? その許可を出せとでも言うの?」

「いえ、久遠様には浄化の力が――」

天乃「ないわよ。無い。今の私にはね」


頼りたい部分にしか頼らない姿勢には苛立ちを覚えるが、

そんな感情を押し隠すように箸をおき、答えた天乃は、

巫女の少女の顔をまっすぐ見つめて繰り返す

天乃「今の私には勇者になる力さえないのよ。いわなかったかしら」

「……伺っておりません」

天乃「なら、そういうこと」

突き放すように言葉を投げて、目を背ける

今は力になることなんて出来はしない

精霊に頼んでその力を使ってもらうことはできるが

それをすれば精霊であるみんなが背負うことになる

なら、本当に必要だと判断できるまでは頼むことはしない

天乃「それにしても、よくそんな考えが出来たものね。策はあるの?」

「神樹様もいつまで持つのか定かでは有りません。ですので、人類が生き延びるにはしなければならないことなのです」

天乃「……それもまた、勇者にやらせるつもり?」

「それに関してはまだ確定してはいませんので」


天乃「……あら」

嘘だと、天乃は気づく

極めて無感情なように言葉を並べている少女ではあるが

所々に感情が滲んでいるし

嘘をつくのは不得手なのか、表情が変わったからだ

しかし、ここで追求してもこの少女が答えるとは限らないし

ただ困らせ、苦しませるだけになる

それに、勇者がやると限った話でもない

もちろん、その可能性もあるがそれはそれで今までと大きな変化は無い

天乃「そう」

「……はい」

天乃「で? 私に力があるならどうして欲しかったの?」

「外に出た調査隊の影響を抑制する方法を探るためにご協力いただければと……」

そう言った巫女は、力が使えないのであれば。と

一礼して出口へと向かっていく

外へ出る必要があることは天乃も分かっているのだ

しかし、今はまだバーテックスが結界の外にはいる

星屑ならばまだしも、バーテックスが出現する今は無理なはずで

そんなことはいくら大赦でも分かっているだろうし、無謀であると控えてくれるはずなのだ

天乃「……でも、私に会いに来た。私の力を借りに来た」


それが、天乃には疑問だった

まだまだ先のことなのなら、こうして会いに来る必要は無いはずだし

多少、情報を集めてから交渉に来るはずだ

けれど、それを怠った状態で大赦からの使いがやってきたのが

天乃には不可解で、しかし、だからこそ思う

近いうちに大きな戦いが確定していて、

その結果次第では調査隊を派遣しようと考えているのではないか。と

天乃「…………」

夏凜達にはその神託が伝わっているのか

それが気になって、隠していた端末を握る

勇者に行わせるかどうかが不確定というのも

その考えに対しては……不穏だった


√8月10日目 夜(特別病棟) ※水曜日


01~10 沙織
11~20 夏凜

21~30 
31~40 
41~50 友奈

51~60 大赦
61~70 
71~80 東郷
81~90 
91~00 風

↓1のコンマ 


では、風先輩からの連絡を着信スルーしてここまでとさせていただきます
明日は出来ればお昼頃から


亜耶「失礼しました」テクテクテク……

亜耶「…………」

亜耶(優しい人って聞いたのですが)

亜耶(優しい人って聞いたのですが!)

亜耶「人を……殺せる目をしていました……」グスッ

九尾「おやおや、そこのお嬢さん。どうされました?」クフフ


では、少しずつ


√8月10日目 夜(特別病棟) ※水曜日


夜になって、風からのメールが届いた

とはいっても、内容はそこまで緊迫したものではなく、

ただ、端末を取り戻したみたいだから連絡してみたよ。という

夜にしなくてもいいような、メールで

天乃「……何よ」

そこには夏凜と同じように天乃は寂しがり屋だからと記されていて、

天乃はすこし膨れた様子で文句を呟く

返信せずに放置してあげようか

そんなことを考えて、息をつく

風は夏凜と並んで大赦に繋がりのある勇者部員

であれば、さっきの話を聞いている可能性もあるのだ

しかし、あれが内密な情報である可能性は高く―むしろ確定的―それを風に知らせるのは

風を危険に晒すのではないかと、天乃は思う


天乃「どうするべきかしら」

一人で抱え込まないようにと夏凜には言われたし

今の天乃には特殊な物事を解決できるほどの力はない

しかし、殆ど確定となった大きな戦いと

勇者ではない何かによる結界外の調査

明るい話題など一つもないものを

風に伝えても良いのだろうか

天乃「……風もきっとそんな相談されるなんて考えてないわよね」

普通の友人のように

端末が戻ったから、寂しいだろうから

そんな気遣いでくれたメールなのだから



1、大きな戦い、殆ど確実みたいよ
2、壁外調査を行う可能性があるみたいよ
3、別に寂しくはないわよ。平気
4、何なのよ貴女まで……夏凜も寂しがり屋だなんて言ってきたわ
5、寂しいって言ったら。会いに来てくれるの?
6、みんなはどう? 大丈夫そう?



↓2


天乃「…………」

少し考えてから、

みんなが不安そうにしていないか、元気にやっているか

ごくありふれた質問を並べたメールを返す

大赦もさすがに、襲来の神託を受け取っておきながら

それをみんなに知らせないと言うことはないはずだと思ったし

それならむしろ、勇者―自分たち―以外を使っての調査計画という

今後のみんなの安否が不安になったり、大赦に対してより憎しみに似た感情を持たせてしまうようなことは

極力避けるべきだと考えて。

天乃「風……一応、私達約束しているのよ?」

にも拘らず悪五郎と行為をして遥かに延期したのは自分だけど。と

皮肉を思い浮かべて苦笑する

天乃「溜まった性的欲求が悪い方向に流れていなければいいけど」

それは少しだけ、心配になってしまう


色々なことを考えていると、風からのメールが返ってきた

勇者部の活動は可能な限りに手を付けているようで、

町内会の手伝いや、ごみ拾い等の掃除に着手しながら

自分たちが本来いるべき日常を忘れないようにしていると、風は綴る

樹に関しては、今までと変わらず友奈と一緒に鍛錬へと出かけているようで

風と東郷もそれに付き合って鍛錬をするようになったことも合わせて報告が来た

天乃「みんな頑張って……えっ?」

ほのぼのとした内容が続く風からの活動報告だったが

それが終わるかというところで、見つけた一文に思わず声を漏らす

天乃「…………」

鍛錬ではお兄ちゃん呼びが強制されるのは何とかしたいわね。と

困り顔の絵文字のようなものが添えられた一文

確実に、あの変質者―兄―のことだろう

天乃「風にまで強制……って言うことは、東郷もよね……」

記憶を戻した東郷であれば、

天乃の兄が妹に対して異常なまでの執着を持っていることも思い出してしまったはずだ

天乃「……確か須美はお兄ちゃんの事、物凄く苦手だった気がするんだけど」

抜けた記憶では不確かではあるが、覚えている限りの須美の言動から察するに

それは間違いないと、天乃は息づく

天乃「大丈夫かしら?」


風からの報告にそのあたりのことは記載されていなくて

ほんの少し不安にもなるけれど

でも、特に明記しないと言うことは風が見ている限りでは問題なかったと言うことにもなる

天乃「……どうしようかしら」

深く聞くべきか、それとも聞かずにいるべきか

今でも兄の印象は天乃にとって庁がつくほどのシスコンさんになり果てており

それ以下になる事はないかもしれないが

それでも、好奇心が芽生えるのは少し難しい

天乃「…………」

端末を握りしめていると、

時間が経ちすぎたのかスリープモードへと移行して画面が真っ暗になる

それと同時に部屋の明かりも大きく損なわれて

一人ぼっちという感覚がより色濃くなっていく


1、東郷は大丈夫だった?
2、これからも、メールちょうだいね
3、エッチは、平気?
4、鍛錬で無茶しすぎないようにね?


↓2


子供が無事に生まれて、いろんなことが問題なく終わることが出来たら

風とはそう言う約束をしたけれど

それでも人間には欲求というものがあって、

理性緒で押さえつけることもできるが、出来ないことだってあるわけで。

天乃は本当に送っていいのかどうか

メールの文章をうち終えた後に悩んで、送信を選ぶ

天乃「……えっちは、出来ないけど」

天乃が受けることはできないし

出来たとしても今は監禁されている状態ゆえに、することはできない

それでも話を聞いて、天乃にはおもい浮かばないような

天乃がここにいてもしてあげられることを

風が求めてくるのではないかと

それで力になってあげられるのではないかと

そう考えたからだ

天乃「……なんでも、言ってね。風。出来る事なら、するから」


01~10 
11~20 にゃんにゃん

21~30 
31~40 
41~50 わんわん

51~60 
61~70 
71~80 あの子のスカートの中

81~90 
91~00 

↓1のコンマ 

※ぞろ目特殊風先輩ストレス大の可能性


天乃「……あら」

風からのメールは変身までの時間が長かった割には

とても短く、しかしながらとても不自然な改行の多いものだった

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   大丈夫だから、気にしなくて良いから。平気






━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

その明らかな違和感は文章を何度も書いて、消して

考えて悩んでやっぱりやめた

風の苦悩が透けて見える気がして

天乃は困ったように笑みを浮かべる

天乃「無理しちゃって……」

そうしてしまったのは自分だから

少しばかりの罪悪感を抱く天乃は

合流することが出来たら

何かしてあげるべきだろうなと思い、何が出来るのだろうかと

考えておくことにした

1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流有(日常報告、えっちについて)
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流有(メール、会いたいの?)
・   乃木若葉:交流有(助けて)
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流無()

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()



8月10日目 終了時点

乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 70(かなり高い)
犬吠埼樹との絆 56(とても高い)
結城友奈との絆 76(かなり高い)
東郷美森との絆 80(かなり高い)
三好夏凜との絆 99(かなり高い)
乃木若葉との絆 70(かなり高い)
土居球子との絆 31(中々良い)
白鳥歌野との絆 29(中々良い)
藤森水都との絆 21(中々良い)
  郡千景との絆 22(中々良い)
   沙織との絆 79(かなり高い)
   九尾との絆 52(高い)
    神樹との絆 9(低い)

汚染度???%


では、少し中断します
21時には再開予定ですが
もしかしたらこのまま終了、明日の通常時間再開の可能性もあります


では、再開します


√ 8月11日目 朝(特別病棟) ※木曜日

01~10 樹

11~20 
21~30 
31~40 友奈

41~50 
51~60 バテクス
61~70 東郷

71~80 
81~90 
91~00 大赦


↓1のコンマ  


√ 8月11日目 朝(特別病棟) ※木曜日


天乃「………」

皆からの連絡や、大赦からの接触がない限り

天乃は手持無沙汰で空虚な時間を強制されてしまう

いまでこそ兄が持ち込んでくれた端末があるため

気が狂いそうな自由とまではいかなくて済むのだが。

天乃「東郷……」

昨日少し気になった東郷と兄の件

それを聞くか、風にもう一度話をするか

まだ連絡を取れてない友奈達と話をするのも良いし

勇者部の依頼に何かを書き込むとかでもいい

あるいは……ネットのサイトを見てみるか


1、勇者組
2、精霊組
3、端末関連 ※ネット、勇者HP
4、イベント判定

↓2


天乃「………」

大赦の誰かが来ないか耳を澄ませて、

警戒をしつつ端末を取り出して電源を入れる

天乃「そう言えば……充電」

充電器等何も預かっていないし

預かっていてもこの部屋に充電するための場所は見当たらない

どうすればいいのだろうかと考えながら

メールやSNSを避け、ブラウザを開いてネットにつなぐ

天乃「さて」

どうしようか


1、勇者部HP
2、どこかのネット掲示板
3、えっちいことについて


↓2


天乃「えっと……」

こんな検索をしていいものかと迷いながらも

天乃は文字を打ち込んで……指が止まる

後一回操作すれば検索が開始されるけれど

それを押すのが何だか気恥ずかしかったのだ

天乃「うぅ……お勉強だからっ!」

躊躇いを抱え、半ば眼を逸らすようにしながら検索する

【女の子同士 えっち】

なんとも直接的な検索だったにもかかわらず

以外にも検索結果にはしっかりと出て来てくれて

一番望んだ答えが得られそうな、

女の子同士のえっちのやり方というものが出て来ていた

天乃「……東郷たちも、こういうの見たのかしら。見たのよね……?」

そうであってほしいと願いながら

そのページを開いてみた


天乃「あっ……っ」

ページを開くと、現実の女性では問題があったのかイラストが書かれていて

項目ごとに参考イラストが描かれている

舌を使う、手を使う

道具を使う、下腹部同士を……

天乃「っ……!」

最後まで見てしまった天乃は、顔を真っ赤に染め上げて体を丸める

文章が生々しく書かれていたわけではないけれど、

一部は東郷たちにされたことだったせいか

読んでいる間にその光景、その感覚が鮮明に思い出せて来てしまったからだ

天乃「うぅぅっ」

覆うように顔に触れた手が、熱を感じる

じわじわとした、恥ずかしさゆえの熱

口の中が嫌に潤って、衣服の中をすり抜けていく微かな空気が肌を撫でる感覚に

淫らな意思が引き出されてしまうようで……

天乃「な、こ、こんな、のっ……」

ブラウザを閉じて、端末を隠す

けれど……変な気分は収まらない


天乃「……………」

凄く、ドキドキとしていた

張り裂けそうなほど強く脈打って、

体の熱がどんどん上がっていく

天乃「んっ……っ、ぁっ」

落ち着けようと、胸に触れる

触れる柔肌を優しく掴んで、傷つけないように一つ一つの指に気を配って――

天乃「やっ……違っ……」

慌てて手を離して、驚きに見開いた眼をゆっくりと閉じて

枕に顔を埋める

何をしてるの……何をしようとしたの

駄目よ、こんなところで、そんな……えっちなことっ

欲求を感じさせる心音を抑える為に心の中でしかりつける

でも、少しだけ心地良い感覚だった

中途半端に切り上げた虚しさが、切なさが、物足りなさが、渦巻く

天乃「だ……め……っ」

唇を噛む

自分がエッチな子であるのだとしても

こんなところでするわけにはいかないと、強く。そう、身体を縛り付けた


√ 8月11日目 昼(特別病棟) ※木曜日

01~10 夏凜
11~20 
21~30 九尾
31~40 東郷
41~50 
51~60 若葉
61~70 大赦

71~80 
81~90 
91~00 沙織


↓1のコンマ  


√ 8月11日目 昼(特別病棟) ※木曜日


1、精霊組
2、勇者組
3、端末関係
4、えっちなこと……?
5、イベント判定


↓2


ではここまでとさせていただ来ます
明日もできれば通常時間から



沙織「見られるかもしれないドキドキの一人エッチゲーム開幕!」

沙織「見るよ!」

天乃「やらないし見せないからっ!」


では、少しだけ


√8月11日目 昼(特別病棟) ※木曜日


天乃「何でこんな……もう……」

ドキドキとした感覚は収まりを知らず、

体の熱はまったく薄れることがないまま、気づけば昼食後

何をしていてもみんなとの交わりの光景が端々に浮かんできてしまう

目を瞑ってもそれが鮮明になるばかりで

どうしようも無いのかと、諦めて

天乃「んっ……」

さっき触れたように、みんながしてくれたように、自分の胸に触れる

服の上から鷲掴みにするような荒っぽさで

けれど、傷は付けないような優しさを忘れずに

左手で絞るように揉みながら、右手で自分の腹部に触れる

天乃「っは……ん……」

元々熱が溜まり、昂ぶりが残っていたからか、

零れる吐息は妙に艶っぽくて、羞恥心を刺激する

けれど、それがまたドキドキトして

もう少し、もう少しと体が疼いてしまう

天乃「はぁ、はぁ……ぁ、んっ」

胸の側面を撫でるようにしながら手を撫で下ろし、

裾から手を忍び込ませてブラの上から胸に触れる

地肌に近付いた分感じる熱はより強い


駄目なことをしているという自覚はあった

淫らなことをしているという後ろめたさがあった

けれど、どうしても……触れたい

誰かの手、誰かの温もり、誰かの優しさ、誰かの欲求

体がそれを求めて止まず、疼いてしまうから

天乃「っは……ぁっ、んっ」

自分の体ゆえにどこをどう触れれば一番気持ち良くなることが出来るのか

それが分かっているせいか、刺激は一際強くて、我慢しきれない強制が零れ落ちる

キスしてもらえない口元は寂しく、

開くたびにねっとりとした熱と、ぬちゅりとした艶かしさの増した音がする

天乃「はっ……は……んっ!」

ついにブラの中にまで手を忍ばせた天乃は、人差し指で目に見えない乳頭を押しつぶすと

その周囲の乳房を他の指で掴み、めり込んでいく人差し指を少しだけ上下させる

傷つくような鋭さは無い。けれど刺激を与えるには十分なつめ先が押し込んだ芽側面を擦りあげて、

激しい感覚は疼く下腹部へと急降下して――

天乃「はうぅっ」

――弾かれたように飛びあがって頭を穿つ


ビリビリとした感覚が体内を駆け巡る一方で、

じわじわと何かが広がっていくのを感じて、下腹部に手を伸ばす

天乃「ぁ……」

下着の中にまで入れた手は蒸れた空気を感じて

指先には、ねっとりとした液体が付着する

天乃「や……はっ、んっ!」

そのまま手を引き抜くべきだった。なのに、我慢できなくて触れる

みんながしてくれるように、入り口の周囲を指でなぞり、隆起した性感帯を爪で仰け反らせて指の腹で擦る

胸に触れていた手を出し、口元に触れさせてぱくりと噛む

下腹部を直接玩ぶ感覚は、胸を弄ったりするものとは違って、

背筋をなぞるようにしながら駆け上がってくるのだ

全身系を束ねて快楽へと直結さえるようなそれによる快感は声を押し殺す余裕さえくれないから

だから、指を咥えて堪える

天乃「んっ、くっ、っぁ……」

足が動かない。だからこその密閉空間

感じる熱気、感じる淫靡な空気がより濃さを増し、どこからか漏れ出して鼻を突く


鋭敏になった耳には指先に刺激される情欲の出入口から発せられるぬちゅり、くちゅりという音が鮮明に聞こえて

その恥ずかしさに身悶えるのと同時に、迸る快楽に体が仰け反る

天乃「んっ、っ……ぁっ、んんっ!」

人差し指から、中指へ

触れる指を切り替えて、小さな小さな子供が出て行くための穴にキスのような優しさで触れてから

そうっと、押し込んでいく

ぬりゅりと言う感覚が指から伝わる

じわじわと染み込む心地よさが体に広がっていく

それ以上はダメだと思った

けれど、生殺しになってしまう中途半端な行為は、堪えられそうもなくて

夏凜や東郷、沙織

みんながしていたように、指を曲げて――

天乃「んんくぅぅぅっ!!!」

大きすぎる淫猥な衝撃に天乃は大きく呻き、迸るものを右手で受け止める

けれどもその肉欲の湧き水はべっとりと流れ落ちて下着をぬらし、シミを大きく広げていく

天乃「はっ、はっぁ……ぁ、んっ」

ゆっくりと熱が下がっていく体

荒々しく整わない呼吸

その呆然とした状況で、取り残された右手の指がまた動く

天乃「だ、め……もう……」


誰かにしてもらうことを経験していた天乃にとって

一人でするというのは余りにも物足りなかったのだ

初めから一人エッチの経験があったのなら、それが最低限の快楽だと分かるし、諦めもつく

けれど天乃はこれが初めてだったのだ

だから……みんなによってあたえられた感覚、気持ちよさ

それとの相違に満足がいかなかった

天乃「あっ、んっ……」

だから、手が止められない

もう少し、もう少し欲しいと気持ち良くなろうとしてしまう

天乃「ひゃっぁっ……んっ!」

左手で胸を弄り、右手の中指を膣口に挿入して、

親指で陰核を潰すようにクニクニと刺激を加えていく

天乃「んっ……ぁ……」

嬌声に開かされた口元を空気が撫でる

相手がいたら、みんながいたら、口元が寂しさに寄り添われることはない

天乃「んんっ!」

その寂しさから逃れようと……また、刺激は強くなろうとしていく


√8月11日目 昼(特別病棟) ※木曜日


01~10 
11~20 沙織

21~30 
31~40  夏凜
41~50 若葉

51~60 
61~70 大赦

71~80 
81~90 
91~00 九尾


↓1のコンマ 

※ぞろ目特殊


昼の継続回避、夕方に移行

√8月11日目 夕(特別病棟) ※木曜日


01~10 若葉
11~20

21~30 
31~40  九尾
41~50 友奈

51~60 
61~70 沙織

71~80 
81~90  千景
91~00 

↓1のコンマ 

※ぞろ目特殊


1、精霊組
2、勇者組
3、イベント判定

↓2


1、九尾
2、球子
3、若葉
4、千景
5、水都
6、歌野
7、沙織

↓2


では、ここまでとさせていただきいます
明日もできれば通常時間から


九尾「行きたいかえ? 行きたいじゃろう?」

九尾「じゃが残念じゃなぁ? お主は主様が一人乱れているのを見ているしか出来ん」

九尾「所謂生殺しというやつじゃ、くふふふふっ」

若葉(これはこれで……良いな)


杏「とかですね?」

若葉「……成仏して貰おうか、杏」

杏「成仏……では、えっちい姿を見せてくれたら昇天ペガサスM――」ギュッギュッ

若葉「違う、その昇天じゃない」


では、少しだけ

√8月11日目 夕(特別病棟) ※木曜日


天乃「……はぁ」

淫らなことをしたせいで色々と乱れてしまい

世話係に後片付けしてもらうことになってしまった天乃は

その羞恥心ゆえに頬を染めながら、大きくため息をつく

結局、数十分くらい自慰をしてしまった

我慢できなかったし、してもしても満たされることが無くて

むしろ、空しさと切なさが増すばかりで……

天乃「…………」

今もまだ、体の奥底で触れてしまいたい熱が燻っているのを感じる

整えて貰った清潔感が抑圧するけれど、夏場ゆえの―そうであると思いたい―じっとりとした生温い暑さが

ほんの少し、そちら側へと流そうとするのだ

天乃「見なければ良かった」

女の子同士のえっちなこと

そんなものを調べた結果、こんなことになってしまったからか

天乃は自分の軽はずみな行いを悔いて、僅かに寝返りを打って出入り口のほうを見る

誰かがくるような気配は無い


天乃「若葉、ちょっといい?」

呼べばいつでも傍にいてくれる

そう言ってくれた若葉の名前を呼ぶと

いつもよりも少しだけ間が空いて、若葉がこっそりと姿を現した

傍にいたからこそ、若葉はあの情欲に溺れてしまう天乃の姿を見てしまっていたのだろう

その恥ずかしさからか、顔色は少し赤みがかっていた

若葉「その……なんだ。わ、私は、責めたりはしないぞ」

天乃「うん……」

若葉「…………」

険悪さゆえの空気の悪さではないけれど

あまり良くなりそうも無い気まずい空気の中、

若葉はさまよわせていた視線を天乃へと向けて、頬をかく

さっきまでのみだらな光景が鮮明に思い浮かんでくる

劣情を抱かせるような甘い声がどこからとも無く聞こえてくる

そんな、気がして

若葉「ど、どうしたんだ?」

天乃「…………」


天乃「私の……見てた、のよね?」

若葉「あ、ああ」

天乃「どう思った?」

若葉「どうって……それは」

天乃はきっと汚らわしいとかいやらしいだとか、

そういう否定的な意見をもったのではないか。と、聞きたいのだろう

そう言われたわけではないが、少しばかり不安そうな瞳が、そうなのだといっているように感じて

若葉は困って、目を伏せる

どう感じただろうか、どう思っただろうか

そんなものは悩むまでも無い

若葉「手を出したいと、思ったよ」

だって、天乃は若葉の大切な人で、恋人なのだから

そういった行為をしているのを目の当たりにして情欲をそそられないといえば、嘘になってしまう

しかし、それは自分でいいのかとも思った

その寂しさ、その切なさ、その物足りなさ

それを埋めてあげるのに、自分の力量は果たして申し分ないのだろうかと。


若葉「……っ」

天乃「!」

物憂げな表情を浮かべる天乃の体を、

何も告げずにベッドへと押し倒し、馬乗りになって見下ろす

広がる髪と艶のある唇、

そうされるとどこかで分かっていたのだと分かる瞳

少しだけはだけてシワの寄った服が、妙に艶かしい

若葉「……天乃はどうして、私を呼んだんだ?」

天乃「…………」

何か話したいことがあったのか

何か聴きたいことがあったのか

それとも、さっき解消できなかったことを解消して欲しいのか

果たして、自分はどれであって欲しいと願っているのだろうかと、

天乃のことを真っ直ぐ見つめて答えを待つ


1、して……くれる?
2、あの巫女の話について、聞こうと思ったの
3、園子がこの病棟にいるらしいから、会いに行かないのかなって
4、キスをする
5、あんなことしちゃったから、引かれてないかなって……少し、心配になったの



↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



天乃「ば、ばかっ」フイッ

天乃「私はただ……あの巫女の話について……聞きたかっただけ、なのに」

若葉「!」

若葉「あ……」

若葉(は、早まってしまった……ッ!)

若葉「す、すまない」

天乃「う、うん……」


では、少しだけ


天乃「ごめんなさい……あの巫女の話について聞こうと思っただけなの」

若葉「あ……そ、そう、だよな」

思っていたことと違って落ち込んだ。というよりは、

自分のしたこと、しようとしていたことが的外れで

天乃をただ傷つけてしまうようなことだったというのが、ショックで

若葉「本当にすまない」

覆いかぶさるような体勢からぐっと体を引き起こして、天乃に背中を向ける

罪悪感を感じるその背中に、天乃は小さく笑みを浮かべて

そっと上体を起こして、身だしなみを整える

天乃「いいのよ。へんなこと聞いたのは私だから」

若葉「し、しかし……それで早とちりしたのは、私だ」

天乃「アレを見てたんでしょ? 仕方が無いわよ」

若葉「…………」

気にしないでという天乃、自分が悪いという若葉

そのままではすれ違うままなのだろうとどちらからとも無くため息が零れて

不意に、笑いが空気を振るわせる


天乃「ふふっ、真似した?」

若葉「そ、そんなつもりは、ないが……」

天乃「もう、若葉もお茶目なんだから」

向けられた背中に手を宛がい、重さを感じない程度に体を預けてみる

精霊でも、どこかに人肌を感じるようで

骨と筋肉を感じるあまり柔らかさの無い背中ではあったけれど

天乃にとっては、心地が良かった

若葉「天乃……?」

天乃「どう思った? 壁外調査の件」

若葉「……現状では無謀だといわざるを得ないだろうな」

若葉の時代でも、神樹様が永遠に存続できるなんて保証は無かったし

いつかは出て行かなければいけないのだと、いつかは出向いて取り戻すのだと、そう意気込んでいた

けれど今はまだ理想でしかない。夢でしかない

若葉「バーテックスは確実に強くなってきている。それをどうにかしなければ……」

天乃「近いうちに大きな戦いがあるなら、どう?」

若葉「ふむ……そこでバーテックスが大きく磨り減れば、あるいは」


若葉は考え込みながらそう言うと、

それなら無謀とはいえなくなるかもしれないが、と続けて

若葉「天乃が聞いていたが、勇者かそれ以外かが気になるところだ」

天乃「そうね……若葉は何か聞いていたりしないの?」

若葉「いや、何も。ただ、私達を鍛えてくれている人たちは、今後忙しくなるかもしれないといっていたからな」

ということは、これから鍛えなければいけない人

あるいは鍛えなければいけないチームのようなものがあるということだろう

つまり、壁外調査は現在の勇者チームではない可能性が非常に高いということだ

その考えには若葉も同意のようで、「恐らくはな……」と、神妙な面持ちで切り出す

若葉「だが、みんなを使い捨てにするつもりは無いだろう」

天乃「…………」

若葉「大きな戦いがあってきっと大小問わず傷を負うだろう。だから、壁外調査のような仕事は他に任せるのかもしれない」

天乃「……そうね」


若葉のような考え方は、別にポジティブすぎる考え方ではない

寧ろ、そう言った考えを持つのが当たり前で

そう思うからこそ、天乃は若葉に押し付けた頭、見せない表情を曇らせる

自分の考え方が少し、いやらしくて。

若葉「彼女達の受けた神託、その結果が怖いのか?」

天乃「…………」

言葉にしない

でも、少しだけ強く若葉の服を握り締める

シワが寄って若葉の体に衣服がきつく纏わりついていく

それでも若葉は動じることなくどこか遠くを見るように白いヒトガタを見下ろす

若葉「私も、それを考えないわけじゃない。恐れないわけじゃない。けど、天乃。私はな? 私は……」

すっと、言葉が途切れる

余韻を残すように静かに流れてく若葉の言葉

追うように目を上げると、横目に天乃を見ようとしている若葉の視線とぶつかって

若葉「私は、信じて欲しいと思う。怖いかもしれないが、辛いかもしれないが、己の愛を受けるみなが無事乗り越えてくれる者達であると信じて欲しいと思う」

天乃「それは……」

若葉「難しいか?」



1、……ごめん
2、信じたら、帰ってきてくれるの?
3、なんか、信じたら帰ってこなそうで……嫌
4、わかった
5、無言で服を握り締める


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


友奈「ヒロインです」

風「ヒロインだわ」

東郷「ヒロインですね」

樹「ヒロインですよ」

沙織「ヒロインでしょ」

夏凜「ヒロインね」

若葉「ヒロインだ」

天乃「私は主人公だってば!」


では、少しだけ


天乃「……ごめん」

呟く。とても小さく、聞こえないほど声で

ほんの軽いそよ風にでさえ、かき消されてしまいそうなそれは

しかし、若葉の耳に届いた

信じていないわけじゃない

信じることが出来ないわけでも無い

だけど、それでも

もしかしたらということを考えてしまうのだ

みんながみんな、確約は出来ないという

だから、勝つことはできると信じられても

戻って来てくれるとまでは信じられない

信じたくても信じられなかった

若葉「……………」

強く握りしめられていく服が背中に伸びていく

ぐっと押し付けられるようにして、天乃の頭が体にぶつかる

若葉「……天乃」

今は少女なのだ

少女なのに、まだ……肩の荷を下ろすことさえできていないのだ

そう、若葉は思った


若葉「天乃……みんなだって死にたいわけじゃないんだ」

この世界に生きていて、勇者をやっているみんなはもちろんのこと

この世界に生きているわけではないけれど

この世界にかりそめの命をもらい受ける事の出来た自分たち

その誰もが死にたいわけではないのだと、若葉は語る

若葉「生きたくて、生きていて欲しくて、戦うんだ。私達、天乃達。みんながいる時間を守りたくて、戦うんだ」

そこに自分が居なくてもいい

そう考えないのかと言われれば、考えていると言う

けれども、出来るならばいたいという【理想】は抱く

若葉「惚れた女に寄り添いたい、叶うならば自分が。そう思うのは当たり前のことだ」

天乃「…………っ」

天乃の手を一度は自分から引きはがして

すぐに振り向いて引き留める

若葉「叶うなら自分が一番幸せにできるものでありたいと【野望】を抱くのは当たり前のことだ」

それは、自分がいなくなったら叶わないことで

逆に悲しませて、永遠にとは言わずとも不幸にさせてしまうことになる

だから。と、若葉は紡ぐ

若葉「死にたいやつなどいるものか……我々には欲がある。しかも我欲だ! 性欲にだって通ずるはしたない欲だ!」

引き留めて、驚きに戸惑う天乃の小さな体

重荷を背負わされてきたとは思えないほど、華奢に思えてしまうそれを抱きしめる

若葉「私達の性欲の強さは身に染みているだろう……? だから、信じてくれ。信じて待っていてくれ」


天乃「なにそれ……意味わからない……」

抱きしめている天乃のもっともな言葉に、

若葉はぐうの音も出なかった

自分でも良く分かっていないし

はしたないとか性欲とか何を言っているんだろうかと

冷静になってしまったら頭を抱えて壁に頭突きするのではないか

そんな風に思ってさえいて。

天乃「でも、確かにみんなえっちよね……私のことまで、あんな体にして……」

若葉「え、な……いや、それは……」

それは果たして自分たちの責任なのだろうか

などと考えつつも、言葉にはせず

ゆっくりと抱きしめていた天乃を手放していく

天乃「じゃあ……今度から若葉には一人でエッチしてるところを見てるだけでいて貰おうかしら」

若葉「はっ!?」

天乃「無事に帰ってこれたら、好きにさせてあげるって条件で」

若葉「い、いや、待ってくれ。それは何かおかしい! 私もだが天乃だって恥ず――」

天乃「みんなが帰ってこられるなら……どんなにエッチなことだってして見せるわ」

強く意志の込められた瞳

羞恥心に歪むことのない表情

それは本気の言葉

だから、若葉は諦めて、笑みをこぼす

若葉「解った……解った……私の負けだ。絶対に帰ってこさせて見せる。だから心配するな」

若葉はそう、誓う

√8月11日目 夜(特別病棟) ※木曜日


01~10 九尾
11~20

21~30  夏凜
31~40 
41~50 
51~60 友奈

61~70 
71~80  沙織
81~90 
91~00  千景

↓1のコンマ 

※ぞろ目特殊


√ 8月11日目 夜(特別病棟) ※木曜日


1、精霊組
2、勇者組
3、端末関係
4、一人エッチ
5、イベント判定


↓2


1、九尾
2、球子
3、若葉
4、千景
5、水都
6、歌野
7、沙織

↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


沙織「ん? えっちがしたいって? 違う? 性欲の強さ?」

沙織「あたしの性頭力は53万です」

夏凜「ただのエロい人かッ!」

沙織「やめて三好さん」

夏凜「!?」

沙織「あたしは突っ込まれるより久遠さんにツッ――」

夏凜「やめろぉっ!」バンッ


では少しだけ

√8月11日目 夜(特別病棟) ※木曜日


天乃「…………」

8月も段々と終わりに近付きつつあるけれど

夏の暑さというものは薄れることを知らないらしく夜でもまだ蒸し暑さを感じる

寝返りを打って、一息

前髪が張り付きそうな額を手の甲で拭い、

目の前に見えるヒトガタばかりの天井から逃れるように目を瞑る

天乃「……眠れない」

昼間のような感覚に苛まれているわけではないけれど

それでも、誘ってくれる睡魔も襲ってきてはくれない

むしろ、それ自体が先に眠ってしまっているかのように。

天乃「……沙織、いる?」

精霊全員がいるとは限らないが、

ここで少しは付き合ってくれそうな沙織の名前を呼ぶ

沙織「寝られない?」

囁くような声とふわりと触れる手に目を向けると、

いつもと変わらない笑みが、見えた


沙織「いろいろあったからね」

天乃「ん……」

天乃自身に関してもそうだが、巫女から聞かされたこともあって

不安だったり、恐怖だったり、性的なことだったり

心にも体にも負担ばかりで、逆に眠れなくなってしまっているのかもしれない

沙織「普段、神託は抽象的なもので表されるんだよ」

そう切り出した沙織は、ジェスチャーを交えながら、

どんなものが夢に現れ、どんな風になるのかをを説明すると

雰囲気に似合わず、困ったように笑ってみせる

沙織「今回はソレが大きかったんだ。それも、一つじゃ無くて、いくつも」

天乃「…………」

沙織「大きさのせいでいつも以上に、その襲来がいつ起こるのかが予想できないんだ」

だから大赦も把握しかねているし、対応に追われている

そして、そんな大きな戦いが起こるのであればと、いつかするべきと考えられていた壁外調査

それの準備もし始めるべきだろうとされているのだと、沙織は言う


沙織「…………」

沙織は長く語った後に言葉を止め、ぐっと唇を噛むと

天乃を一瞥して、その頬に手を伸ばす

天乃「なに? するの?」

沙織「……慣れたね」

キスをしようとしたわけではないけれど、

自分からソレを言い出し、平然としている姿には

少しだけ嬉しくも、寂しく感じて、沙織は笑みを浮かべる

沙織「……でも、一人エッチは初めてで混乱しちゃうの、可愛かった」

天乃「っ!」

沙織「ビクッってした……ふふふっ、目を逸らすのも可愛い」

天乃「さ、沙織……」

冗談なのか本気なのか掴みにくい、沙織の動き

天乃の口元を親指でなぞり、喉元を指でカリカリと掻く

まるで子猫のような対応だった


天乃「なによ……」

沙織「んーん。乃木さんが言ってたでしょ? あたし達は我欲が強い。それも、三大欲求の性的な、ね」

にやりと怪しげな笑みを浮かべる沙織は、

天乃の体をぐっと押し込んで馬乗りになると

垂れていく髪をそのままに、天乃を見下ろす

沙織「久遠さんも溜まってるみたいだし、しちゃおうかなって」

天乃「っ……わ、私は……別に」

沙織「気持ち良く……寝られるよ?」

耳元で、ぼそりと

こそばゆさを感じさせる動作で告げた沙織は、くすくすと笑って

沙織「なーんて。久遠さんが望むならしてあげるけど……?」



1、じゃ、じゃぁ……
2、お、お願い
3、呼んだのはそうじゃなくて、若葉と同じで……
4、あ、あのね……そうじゃなくて、私。急にこうなっちゃったから……なんでなのか沙織は分かるかなって


↓2


天乃「…………」

そんなことを望んで良いのだろうかと、悩む

沙織は自分から言い出しているのだから、天乃が良し悪しを悩む必要はないはずなのだが

それでも、自分は主で、沙織は精霊で

どこかにそんな何かがあるのではないかと思わずにはいられなくて

けれど、思う

皮切りになったのは……沙織だったと

天乃「……え、っと」

思わず、眼を逸らす

ただ一言御願いと言えば良いだけなのに

その一瞬の、呼吸をしている合間に終わってしまいそうなたった一粒が。

唇を噛む、。目を向けると沙織の微笑みが視界に入る

沙織「ん? なぁに?」

天乃「ぅ……」

茶化しているわけではないと思う

けれど、どこか挑発染みた音色の声に

天乃はとてつもない気恥ずかしさを感じて――息を飲む

天乃「お願い……」

沙織「ん。分かった」


天乃「っ」

沙織「逸らしちゃ……だめ」

横に傾いて逃れようとしていた頭をぐっといじられて、

天乃と沙織の視線が交わる

目に見える沙織の唇が、少しずつ自分へと近づいているような感じがして

天乃は思わず目を瞑る

固く縛った唇が震える、どこからともなく薄い吐息が聞こえる

誰野だろうか……沙織の? 自分の?

そう混乱してしまいそうになる中で

心が強く脈打つのを感じた

怖さもある。けれど

目を瞑っていると相手がどう来るのかが分からない

そんな緊張感があって……

沙織「初々しいなぁ」

天乃「ひゃぅっ!?」

不意に耳元で囁かれた声に驚いて声を上げた瞬間、

唇……ではなく、額に口づけをされ、目を見開く

沙織「唇かと思った?」

天乃「ぁ、ぅ……」

沙織「残念。まだしないよ」

悪戯が成功したことを喜ぶような沙織の笑みが……見えた


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


友奈「えーっと……」

東郷「どうしたの? 友奈ちゃん」

友奈「私も、勉強した方が良いかなって」

東郷「……ふふっ」

東郷「一緒に勉強……しましょ」ギュッ


では、少しだけ


気づいたら残りがないので、こちらで続きをやっていきます

【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十一輪目】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十一輪目】 - SSまとめ速報
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