姫川友紀「クロワシさん] (67)


姫川友紀「…着いたー!」

二宮飛鳥「フム…良い風だ。杜の都とはよく言ったものだよ」

友紀「そっか。飛鳥ちゃんは、仙台初めて?」

飛鳥「ああ。先日のLIVEには、同行できなかったからね」

友紀「宮城良いとこだよー?ねっ、美玲ちゃん!」


友紀「…?美玲ちゃん?」


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早坂美玲「ここが、こぼすた…!」

飛鳥「どうかしたのかい?美玲」

美玲「うん。ウチ、ここに来るの初めてなんだ…ッ」

飛鳥「へぇ…。地元なら、もう何度も来ているものかと思っていたよ」

美玲「…だからぁ!ウチは元々、そこまで楽天追っかけてたわけじゃないんだってば…」

飛鳥「フフッ、そうだったね。失礼した」

友紀「まぁ…野球ファンだからって、必ずしも球場に通うとは限らないもんね!」

飛鳥「…キミの口からでは、今一つ説得力に欠けるような気がするんだが…」

美玲「こぼぱでいーぐるすの試合観れるなんて初めてで…ウチ、ちょっと緊張してきた…ッ」

飛鳥「それはボクも同じさ。…まさか、球場にまで来ることになるとは」

美玲「…意外というか、ミスマッチすぎるな…アスカと球場って…」

飛鳥「フッ、自覚はしているつもりさ」

友紀「…正直、あたしも最初は2人が来てくれるとは思わなかったよ」

飛鳥「おや、誘った張本人がそれを言うのかい?」

友紀「だって元々、あたしがお仕事で球場に来るだけの予定だったし」

美玲「あれ?関係者席あるからって話じゃなかったか?」

友紀「そうそう。試合前の始球式を是非!ってオファーをもらったのが始まりなんだけどね」

美玲「コラボ先の始球式なんて、大仕事だなッ!」

友紀「うん!…そしたら、向こうが3席ぐらいなら、って用意してくれたの。…まぁ、どっちにしろ観て帰るつもりだったんだけど」

美玲「それで、声かけまくってたのかッ」

友紀「どうせなら一緒に観に来てくれる子いないかなって!」

飛鳥「あぁ…なるほど、そういう話の流れだったのか。理解したよ」

美玲「…アスカも、知らずに着いてきてたのか」

飛鳥「ボクは、2人が行くというから誘いに乗ることにしただけだ」

美玲「えぇ…それでよく仙台まで来る気になったな…」

飛鳥「先日よりキミたちからレクチャーを受けている身としては、最高のタイミングじゃないか。未知から既知へ…その出会いに、理由なんていらないのさ」

美玲「お、おう…?」

飛鳥「それに…何事も、直接触れなければ理解らない感覚というものがあるだろう?」

友紀「うんうん!球場にしかない熱気とか興奮とか、いっぱいあると思うよ!」

飛鳥「ボクの知らない新鮮な風と煌めきを、身を以て経験してみるのも悪くないと、そう感じた。ただそれだけのこと」

美玲「うーん…?相変わらず、よく分かんないヤツだな…」

美玲「でも、それを言ったらウチだって、友紀に誘われたから来てやっただけなんだぞッ!」

友紀「あ、そうなの?」

美玲「だって、席があるって言うから…丁度休みだったし、帰省みたいなものだし。…それに、」

飛鳥「それに?」

美玲「…いーぐるすの話できる相手がいるのも、ちょっと楽しいっていうか…」ボソボソ

友紀「?」

美玲「…ほ、ほら!友紀にいーぐるすのこと、ちょっとだけど教えてやっただろッ?それの報酬だ、ホーシュー!」

友紀「あぁ、なるほど!ありがとね、美玲ちゃん!」

美玲「フンッ」

飛鳥「…素直じゃないね」フフ

美玲「アスカにだけは言われたくないッ!」


――



@ @ @


これまでのあらすじ!


パリーグコラボの出番も決まり、(地獄の)交流戦・そしてキャッツの連敗を(満身創痍で)(なんとか)乗り切った、我らが野球担当アイドルこと姫川友紀!

そんな彼女に迫る、小さな影が2つ。


球団応援歌なら知ってるぞッ!地元・宮城県民にしてプチ楽天推しアイドル、早坂美玲!

記念すべき獲得ファン第1号?お茶と野球はさっぱり理解らないよ系アイドル、二宮飛鳥!


2人が仲間に加わり、楽天ゆっきーとしての第一歩を踏み出したのであった!



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※詳しくは 姫川友紀「スマート&スピリット」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1496681178/)

――


友紀「えーっと、控え室ってどこに行けば良いのかなぁ…」テクテク


美玲「…なぁ、アスカ」

飛鳥「なんだい?」

美玲「ウチらもこっちに来て、良かったのかな…?」

飛鳥「座ろうにも座席を知らないのでは、仕方がないだろう。プロデューサーの到着が遅れているのに問題がある」

美玲「だけどさ…」

飛鳥「それに、こちらには友紀がいる。一緒に居さえすれば、ボクらも立派な関係者だよ」

美玲「…そんなに堂々としていられるの、なんかすごいな…」

飛鳥「…むしろ、今日のキミが小心なのではないかな。いつもの強気な早坂美玲は、何処へ行ったんだい?」

美玲「き、緊張してるんだってばッ!」

飛鳥「そんなものかな…」

美玲「だって初めてなんだぞッ?なんかこう…色々あるだろッ!」

飛鳥「色々、か……フム。ボクの知らない景色や感情が、また1つ明るみに出たね。…興味深い」

美玲「れ、冷静に分析しなくていいってば…」


友紀「あ!ここかな!」

美玲「!着いたのかッ?」

友紀「うん、多分ここだと思う!失礼しまーす!」


ガチャ


???「………!」



美玲「えっ」

友紀「うわっ」

飛鳥「…!」


― ― ―


それは、あまりにも異質な光景であった。

そこが控え室と疑うことなく、扉を開けた3人。

しかし待ち構えていたのは、ボクらの理解という概念を超えた存在。



"ソレ"さえいなければ。

何のことはない。ごく一般的な楽屋と評するに抵抗はなかったであろう、その部屋に。



"ソイツ"はひとり…否。一羽。

死んだ魚のような目をしながら、一羽。


不気味に佇んでいたのである。



             ~二宮飛鳥は、後にこう語る~

― ― ―


???「…ア、ドモ……」

友紀「あ、あれ…?部屋、間違っちゃったかな…あは、あはは…」

美玲「ぉ、おじゃましました…ッ」


バタン



友紀「…」

美玲「…」

飛鳥「…」

美玲「…なあ。何なんだ、今の…?」

友紀「楽天の選手…じゃあ、ないよね」

美玲「試合前の選手が、あんな格好してこんなとこにいるわけないだろッ!」

飛鳥「だが、ユニフォームは着ていたね」

美玲「それ以前の問題だッ」

飛鳥「…仮装大賞か何かかもしれないよ」

友紀「カラスとかかな」

美玲「仮装!?アレが?」


美玲「頭に変な黒い鳥被ってるだけのおっさんじゃないかッ!」

飛鳥「…もしくは余興の出演者、だろうか。何か聞いていないのかい?友紀」

友紀「知らないよぉ…あたし、始球式させてもらうってしか知らない…」

美玲「…あ!もしかしたら、始球式で打席に入る人なんじゃないかッ?」

友紀「嘘…あたしさっき、思いっきり目逸らしちゃったんだけど…」

飛鳥「いや…それは正常な反応だろう。大丈夫、こんなところで自身を失くしてはいけない」

友紀「というか、そもそも関係者なのかな…?不審者とかだったら…」

飛鳥「鳥の被り物をした侵入者だって?それこそ聞いたこともないぞ…」


P「…何してんのお前ら、こんなとこで」


友紀「!ぷ、プロデューサーぁ!」

美玲「お、遅いぞッ!」

P「ごめんごめん、ちょっと用事で遅れちゃってさ」

飛鳥「…やぁ、待っていたよ…。どうにかしなければいけないと、そう思っていたところだったからね…」

P「悪かった…って、どうにか?なんか問題でもあったの」

友紀「大問題だよぉ!このままじゃ、控え室に入れない!」

P「は?…鍵でも閉まってんの?」

美玲「あっ、ストップ、ストップ…ッ!」

飛鳥「止せ!これ以上、パンドラの箱を開けてはならない!」


ガチャ


P「ってなんだ、開くじゃないか…」


???「……」


P「ヒエッ」

― ― ―


それは、あまりにも異常な光景であった。

彼は鍵が閉まっているものかと誤解して、扉に手をかけた。

しかし待ち構えていたのは、そんな思い込みも一度に吹き飛ばす衝撃的な光景。



"ソレ"さえいなければ。


…以下同文だ。



― ― ―

飛鳥「…理解ってくれたかい」

美玲「やばい奴がいるんだよッ!」

友紀「スタッフの人なのかな…?プロデューサー、何か知らない?」


P「…あぁ、クロワシさんか!」

美玲「…へ?」


クロワシさん「…どうも……」ペコリ


友紀「くろ」

美玲「わし」

飛鳥「…さん?」



友紀「誰?」

飛鳥「知り合いかい?」

P「いや違うけど」

P「えーっと…今年から、いーぐるすがたまに黒いユニフォーム着てる時あるんだけど。美玲は知らないか?」

美玲「ぅえ…っと、何となく…見たことあるような、ないような…」

P「ホームで黒ユニ着て試合する日のことを、ブラックいーぐるすデーって呼んでるらしいんだけどさ」

飛鳥「…フム」

P「その時だけ特別に現れる、楽天の新しいキャラクターだよ」

友紀「あぁ、なるほど!つまり、ねこっぴーみたいな…」



友紀「キャラクタァ!!?」

飛鳥「!?」

美玲「はァ!?」

美玲「嘘だッ!」

P「嘘なんかつかないよ」

美玲「だって!露骨に人間じゃないかッ!」

飛鳥「これをキャラクタ扱いするのは、流石に無理があるだろう…」

P「ちゃんと公式サイトにも乗ってるんだぞ」

友紀「もっとこう…マスコット的な感じじゃないの、普通」

P「俺に言われても」

P「それに、すごいんだぞクロワシさん。観てた今年の試合は、今のところ3戦全勝だ」

美玲「絶対嘘だッ!」

P「本当だってば」

飛鳥「仮に本当だとしても…彼との因果関係は無いに等しいだろう」

P「いやでもさぁ、見てたら勝つってなんかすごくね?」

友紀「そりゃちょっと羨ましいけど…」



クロワシさん「あ、あの…」

P「?どうかしましたか」

クロワシさん「…その……」


クロワシさん「なんか、すみません……」



友紀「謙虚だ!」

美玲「声が小さいッ!」

飛鳥「普通に喋るのか…」

P「あぁいえ、こちらこそ騒がしくしてしまってすみません」

クロワシさん「…」ペコリ

P「ほら、友紀」

友紀「ぅええっ!?は、はい!」

P「今日の始球式でお邪魔させてもらってます、うちの姫川です。よろしくお願いします」

友紀「ぅ…よろしく、おねがいします…」

クロワシさん「…そう、だったんですか…こちらこそ、お願いします…」



美玲「ま、マジメだッ」

飛鳥「頭に乗ってるものがなければ、もう少しマシな絵面なんだが…」

P「今日はいつ頃の出番なんですか?」

クロワシさん「ええと…最初と、あと中盤頃、ですかね…」

友紀「…」

P「最初…というと、始球式も見ていただけるんでしょうか」

クロワシさん「はい…お話には聞いていましたし…是非見たいと、思ってます…」

P「そうですか!それはよかった…」

友紀「…」



美玲「…あ、友紀が戻ってきたぞッ」

飛鳥「耐え切れなくなったのだろう…無理もない」

友紀「なんか普通のおじさんだった」

美玲「うん。ウチも、見ててそれは分かった」

飛鳥「まるで楽屋の挨拶回りのようだったよ」

友紀「キャラクターの筈なのにね」

美玲「アレで良いのか…?」


prrrr...


P「っと、電話だ。すみません、失礼します」

友紀「ええっ!?ちょっと、行っちゃうの!?」

P「すぐ戻るから。本番まで、少し待ってて!」タタタ

友紀「待ってってば!置いてかないでよぉ…」


バタン


友紀「…プロデューサーのばかーー!」

美玲「えぇ…」

飛鳥「…」

クロワシさん「…」

クロワシさん「…」

友紀「…」

飛鳥「…」


美玲「…おい、どーするんだこの空間ッ」ヒソヒソ

飛鳥「…どうと言われても…友紀に任せるよ」ヒソヒソ

友紀「任されても困るよぉ…」ヒソ

飛鳥「今日の主役だろう?…それに、この中では一番年長なんだ、こんなに頼もしいことはない」ヒソ

友紀「あっズルい!こんな時だけ年上扱いして!」

飛鳥「ズルくない。現状、それが一番丸く収まるだろうという判断さ。…なに、本番までの時間を稼いでくれるだけで良い」

美玲「…なんか、アスカの扱いが一番辛辣な気がするんだけど…」

飛鳥「ボクは彼を、マスコットキャラだと認めた訳じゃない。それだけのことだよ」

美玲「うーん…。でも確かに、友紀がいくのが一番良いような気がするッ」

友紀「美玲ちゃんまで!?最近の14歳ってみんなこうなの!?」

美玲「だってウチ、あいつと会話する自信ないんだモン…」

友紀「あたしだって1人じゃ嫌だよ!公平にいこう、公平に」

飛鳥「しかしだ。この状況で、どうやってフェアな人選ができるというんだい…?」

美玲「あ、それなら簡単だッ!じゃーんけーん……」

――


飛鳥「…」

クロワシさん「…」



友紀「…やっぱ、あたしが行くべきだったかな」

美玲「じゃんけん弱いアスカが悪いッ」

友紀「ちょっと罪悪感が…」

飛鳥「(…これが、俗にいう言い出しっぺの法則、というヤツなのか)」

飛鳥「(友紀に押し付けるような妙な真似、しなければよかった)」

飛鳥「(…良いだろう。これが、天が与えし試練だと言うのならば…望むところだ、受けて立とうじゃないか…!)」

クロワシさん「…、…?」



友紀「すっごくマジメな顔で何か考えてるよ、飛鳥ちゃん」

美玲「クロワシさんも困惑してるな」

飛鳥「…さて」

クロワシさん「…」

飛鳥「初めまして、かな…フフッ。まずは自己紹介をするとしよう。ボクはアスカ、二宮飛鳥だ」

クロワシさん「はぁ…どうも……」

飛鳥「…先程から、ずっと考えていたことがある。…宮城という緑あふれるこの地でこうして巡り合ったのは、果たして偶然なのだろうか…ってね」

クロワシさん「は、はぁ…?」

飛鳥「宮城に…しかも、野球を観に、だなんて。それまでのボクなら、絶対にあり得ない選択肢だった。…ハズなんだ。にも関わらず、ボクはキミとこうして会話を重ねている」

飛鳥「キミのキャラクタとしての在り方に、思うことは多々あれど…。こうして出会ってしまったのも何かの縁。あるいは、星の導き。そうは考えられないだろうか…」

クロワシさん「…?」



友紀「あっ、これクロワシさんのためにもあたしが行くべきだったやつだ」

美玲「遠慮ってやつを知らないのかアスカはッ!」

友紀「会話になってないんだよなぁ…」

飛鳥「…しかし。こんな奇妙な巡り合わせも、そうはないね」

飛鳥「キミの名前、"クロワシ"だったかな…フフ。なかなかカッコいいじゃあないか」

クロワシさん「…そうですか」

飛鳥「アスカ。飛ぶ鳥と書いて、飛鳥。…同じく鳥を名に持つ者として、何かシンパシーめいたものを感じるよ」

飛鳥「もし良ければ、聞かせてくれないだろうか。キミの名は…そして、キミに課せられたストラテジーには。一体どんな想いが込められているのかを」

クロワシさん「…はぁ」

飛鳥「…」

クロワシさん「…えぇと」

飛鳥「…」

クロワシさん「……」

飛鳥「…」

飛鳥「……」

飛鳥「…きょ、」


飛鳥「今日は、良い天気、だね…」



友紀「諦めちゃったよ」

美玲「が、頑張れ…ッ」

友紀「あんなに普通な話題を出す飛鳥ちゃん、あたし初めて見た」

クロワシさん「…二宮さん?」

飛鳥「…ム。あぁ、そうだが」

クロワシさん「あ…やっぱり、ニノさんでしたか…」

飛鳥「にの?」

クロワシさん「先日は、お世話になりました…」

飛鳥「…は」



友紀「ちょっ、えっ!?」

美玲「知り合いだったのかッ!?」

友紀「まさかの展開!」

飛鳥「ちょ、ちょっと待ってくれ…?ボクとキミは初対面のハズでは…」

クロワシさん「テレビなんて、初めてだったもので…あの時は緊張してしまって…」

飛鳥「だから…」



美玲「しかも番組で共演してたのかッ!」

飛鳥「外野の2人!少し静かにしていてくれないかっ!」

友紀「知らばっくれてあたしに押し付けてたの!?飛鳥ちゃん酷い!」

飛鳥「ご、誤解だ…!ボクは本当に何も知らない!」

クロワシさん「…あ、勘違い…?」

飛鳥「…あぁ、そうだね。間違いなく、完全に、キミの人違いであると。ボクはそう思う」

クロワシさん「二宮違いでしたか…すみません…」

飛鳥「…うん。誤解が解けて、何よりだよ…」



飛鳥「…何なんだアイツは!」

友紀「ニノさんって誰のことだろ」

美玲「さぁ?」

――


美玲「…」

クロワシさん「…」



友紀「次は美玲ちゃんの番だね」

飛鳥「…一体何だろうね、この時間…」

美玲「な、なぁ…」

クロワシさん「?」

美玲「その…頭のソイツ、何なんだ?」



飛鳥「訊いたな」

友紀「訊いたね」

飛鳥「ずいぶん直球な物言いだ」

友紀「さすが美玲ちゃん」

クロワシさん「…えぇっと……」

美玲「いーぐるすだし、鷲なんだよなッ?多分。でも、なんで頭になんか乗っけてるんだ?」

クロワシさん「…」


クロワシさん「……わ、」

美玲「わ?」

クロワシさん「わかりません…」

美玲「…いやいや、分からないってことはないだろッ!」

クロワシさん「…ええと、」

美玲「上と下のどっちが本体かとか、鳥の名前とか、何かしらあるだろッ!」

クロワシさん「…」

美玲「…なんか答えろよッ!!」



友紀「飛鳥ちゃんの時もそうだったけどさ。基本的に聞いても答えないんだよね、あの人」

飛鳥「トークNGの指示でも出ているのだろうか…」

クロワシさん「……!」

美玲「ん、どうし……!?う、これはッ?」

友紀「あぁ!頭のクロワシの目が!」


クロワシさん「…!」ギラギラ


飛鳥「光っている…だと?これは、一体…」

美玲「な、なんだよ急に?もしかして、怒っちゃったのかッ…?」

クロワシさん「あ、いえ…別にそういう訳では」

美玲「違うのかよッ!」

クロワシさん「たまに光らせると、良いみたいで…」

美玲「…だからッ!そういうのがなんでかってのを知りたいんだよコッチはッ!!」



飛鳥「理解できない」

友紀「あたしも」

クロワシさん「…あの、ですね」

美玲「おっ!なんだなんだ?」

クロワシさん「その……」

美玲「…じれったいなッ!なんだよぉ!?」


クロワシさん「そういう設定、あまり決まってなくて…」

美玲「…もったいぶってそれかッ!!」



飛鳥「なるほどね」

友紀「道理で答えてくれない訳だよ」

飛鳥「答えないのではなく、アンサーが用意されていない故の、梨の礫だったということか…」

クロワシさん「…あ、でも…」

美玲「?」

クロワシさん「そちらのフードと、役割は似てるかもしれないですね…」

美玲「…」


美玲「…い、」

美玲「一緒にすんなーーッ!!」ガルル



飛鳥「…限界だな。友紀、回収だ」

友紀「ほいきた」

美玲「何なんだッ!何なんだアイツ!」ウガー

友紀「まぁまぁ。悪気はないんだよ、きっと」

飛鳥「しかし…少しずつだが、見えてきたね」

友紀「何が?」

飛鳥「ヤツの生態がさ」

友紀「生態って」

――


友紀「…」

クロワシさん「…」



美玲「大トリかぁ…」

飛鳥「ワシだけにね」

美玲「やかましいわッ」

友紀「(うーん…悩んでても仕方ないよねっ)」


友紀「どうもっ!さっき、うちのプロデューサーからも紹介ありました、姫川ゆっきーですっ!」

クロワシさん「…どうも……」


美玲「あ。そういえばウチ、名前言ってないな」

飛鳥「必要性を感じるのなら、後で名乗ってくると良いさ」

美玲「…別に、良いや」

友紀「今、パ・リーグとのコラボで楽天担当やらせてもらってるんです!」

クロワシさん「…」

友紀「それで、始球式にも呼ばれちゃってさ!お仕事で野球に関われるの、すごく嬉しいんだっ!」


友紀「まぁ…本来の推し球団はキャッツなんだけど。どっちも応援してるよってことで!」

友紀「おじさ…じゃなくって。クロワシさんは、どこの球団のファンなのかな?やっぱり、いーぐるす?」



美玲「…なんか、いつも通りの友紀だなッ」

飛鳥「あぁ。あの分け隔てのなさ…。彼女の良いところの1つでもあるからね」

美玲「…ふーん?さて、どうくるか…」

クロワシさん「…野球は、そんなに…」

友紀「えっ」

クロワシさん「すみません…あまり詳しくなくて…」

友紀「そんなぁ…」



美玲「楽天のキャラクターなんだよな…?」

飛鳥「野球に詳しくないボクが言うのもなんだが…それはどうなんだ…」


友紀「…で、でも!楽天の試合、観てるんでしょ?」

クロワシさん「服が黒い日だけ…」

友紀「観てて誰か好きな選手とか…ポジション!ピッチャーとかキャッチャーでどこがお気に入りとか!なんか無いの!?」


クロワシさん「…投げてる人が変わったなぁ、ぐらいは…」

友紀「嘘でしょ」



美玲「おいッ!いくらなんでも、あんまりじゃないかッ!?」

飛鳥「…同情するよ、友紀…」

美玲「責任者出てこいッ!ウチがひっかいてやるッ!」

クロワシさん「でも…」

友紀「…うん」

クロワシさん「ホームランが出ると、かっこいいと思います…」

友紀「…!」

クロワシさん「…あと、ヒットも…」



美玲「なんかほるひすみたいなこと言い出したぞッ」

飛鳥「小学生並み…というより、野球素人のボク並みの感想じゃないか」

友紀「そう!それだよ、おじさん!!」

クロワシさん「…え?」

友紀「良いよねぇ、ホームラン!1球で試合の雰囲気が変わるっていうかさぁ!」

友紀「逆転のホームランなんかはまさにそれでね?4番の一発が出た時なんかは、もう興奮しすぎて爆発しそうになっちゃうくらいだもんっ!」

クロワシさん「…!」

友紀「他にも、先頭打者で打線に勢いをつけるホームランでしょ?逆転の狼煙を上げる一発だってあるし!」

友紀「ダメ押しの追加点でホームランなんかしたら、試合も決まっちゃったりさぁ…!」



美玲「…すごい、一気に空気を換えた…ッ」

飛鳥「…いやはや、流石だね。好きが生み出すエネルギー…これほどとは」

美玲「やっぱり野球、大好きなんだなッ。友紀って」

友紀「…それでねそれでね。あたしは、ライナー性のホームランのが好みなんだけど、どうかな!」

クロワシさん「……?」

友紀「そりゃ、インコースをガツン!って叩いて確信する当たりも良いんだけどさー。技術を生かした、技ありの打球も捨て難いなぁって思う訳よ!」


友紀「低い弾道で、ギュンッて伸びてくボール見てると、いっけーッ!!ってなるでしょ?だからさ…」

クロワシさん「…、……」



美玲「…あっ、内容が専門的になってきて、付いて行けなくなってるッ!」

飛鳥「そろそろ引き剥がした方が良いかもしれないね…」



ガチャ


P「おーい、友紀ー」

飛鳥「…遅かったね」

美玲「時間かッ?」

P「うん、そろそろ着替えとかスタンバイの時間だってさ」

友紀「そっか、もうそんな時間かぁ!」

P「…あ、なんか話してた?すみません、邪魔して」

クロワシさん「あ…いえ……」

友紀「じゃあね、おじさん!また野球トーク、しようねっ!」

飛鳥「トークというか…」

美玲「こっちが一方的に喋ってるだけの時間だったような…」

P「?」

友紀「よーし、やるぞー!!」


――

――


友紀「たっだいま~!」

飛鳥「やぁ、お疲れ様」

美玲「ナイスピッチだったぞッ!」

友紀「ありがと!…へへ、なんかすっごく良いマウンドだった!」

飛鳥「…場所によって違うものなのかい?」

友紀「うん!土の感じとか、バッターの見え方とか!全然違うんだよ?」

飛鳥「へぇ…面白いね」

友紀「さ、あとは思いっきり試合を観るだけだー!」

美玲「おぉーッ!」

友紀「そうと決まれば…おねえさーん!こっちこっちー!ビールと、コーラ2つね~!!」

飛鳥「…フフッ。ブレないな、キミは」

美玲「いつも通りだなッ!」

美玲「…あ」

飛鳥「どうしたんだい?」

美玲「ほら、あそこッ!」

飛鳥「あそこ?……ム」

友紀「クロワシさんだ!」

飛鳥「目立つね…」

美玲「本当に試合観てるんだな…ッ」

友紀「…あ、ビール飲んでる」

飛鳥「頭以外は、中年男性そのものじゃないか」

――――
――



バッターアウッ!


美玲「…うあぁー!負けたー…ッ」

友紀「いやぁ、惜しかったねえ」

美玲「3塁まで進んで、もう一歩で同点だったんだけどな…」

友紀「でも、良い試合だったね!お互いに、追い付け、追い越せ!ってさ」

飛鳥「…フフ、これが守護神というヤツか。頼りになる」

友紀「あれ。飛鳥ちゃん、さふぁては知ってるんだ」

飛鳥「…まぁ。少しは」

美玲「あっ!アスカお前まさかッ、ほーくすのことちょっと調べてるんだろッ!」

飛鳥「何のことかな」

美玲「蘭子の推してるチームだからって!ウチと一緒にいーぐるす応援するんじゃなかったのかッ!?」

飛鳥「…推測だけでモノを喋るのは、賢明とは言えないな。たまたまだよ、たまたま」

美玲「そう言ってぇ!」

友紀「まぁまぁ美玲ちゃん、怒らない怒らない」

美玲「うーッ!」ガルル

飛鳥「…そういえば、」

美玲「?」

飛鳥「途中から、姿が見えないね」

友紀「誰が?…ってあれ、ほんとだ」

美玲「…あっ!クロワシさんがいないッ!」

友紀「いつの間に居なくなったんだろ…」

飛鳥「これまでに、彼が観ていた日は全て勝っていた…と聞いていたが」

友紀「居なくなってるんじゃ、判断しようがないなぁ」

美玲「…いやいやッ、勝利の女神じゃないんだから…」

飛鳥「あんな女神がいても困るけどね」

友紀「でもマスコットキャラって言うにはちょっと…おじさんくさすぎるというか…」

美玲「ホントに何だったんだアイツは…」

飛鳥「…少なくとも、」

友紀「?」

飛鳥「口数の少ない、シャイなヤツだったが…少なくとも、彼もまた。ボクらと変わらぬ1人のヒトなのだということだね…」

友紀「…」

美玲「…」



友紀「球団キャラクターに対するまとめ方じゃないよ…」

美玲「あんな見た目だもんな…」

友紀「帰ろっか」

美玲「おうッ」



飛鳥「終わりだよ」

姫川友紀「スマート&スピリット」
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続いた。続けてしまった。無理やり締めた。


Koboスタの新アイドルことクロワシさんをよろしくお願いします

ロッテの魚もよろしくね

おわり


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