サターニャ「ラフィエル、好きよ!」ラフィエル「ごめんなさい」 (19)

――空き教室――

サターニャ「て、天使と悪魔という違いはあるけど……えっ?」

ラフィエル「ごめんなさい、私はサターニャさんの気持ちには応えられません」

サターニャ「…………えっ?」

ラフィエル「お友達としては好きなんですけど」

サターニャ「……えっ?」

ラフィエル「耳大丈夫ですか?」

サターニャ「…………」

ラフィエル「頭大丈夫ですか?」

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サターニャ「……うるさいわね」

ラフィエル「聞こえてるじゃないですか」

ラフィエル「どうして無視するんですか?」

サターニャ「…………」

サターニャ「…………」

サターニャ「だって、だっておかしいじゃない」

ラフィエル「はい?」

サターニャ「あんた私のことストーキングしてきたり何かにつけて私にちょっかい出したりするじゃない」

ラフィエル「まぁ確かに」

サターニャ「そんなの! そんなの私のことが大好きだからに決まってるでしょう!?」

ラフィエル「ずいぶんな飛躍ですね」

サターニャ「いやそうでしょう!? 家にいる時とか身の危険を案じるくらいの視線を感じてるもの!」

ラフィエル「ただ見てただけなんですけどねー」

サターニャ「ほ、他にも……布団入ってきたり、欲求不満とか言い出したり……」

ラフィエル「それは導って(いじって)あげただけですよ? 可愛かったですね~あの時のサターニャさん」

サターニャ「うっ……だって……他にも……他にも……」

ラフィエル「んー……困っちゃいますね」

サターニャ「な……何よ、本当に私の勘違いだったとでもいうつもり?」

ラフィエル「そうなりますねー」

サターニャ「」

サターニャ「そ、そんなぁ……」ヘタッ

サターニャ「絶対、私のことそういう目で見てると思ったのに……」

ラフィエル「なんですかその決めつけは……」

サターニャ「クラスメイトに、二人は付き合ってるの? って聞かれたことあったし……」

ラフィエル「とんでもない勘違いですねー。失礼しちゃいます」

サターニャ「……そ、そうよね、私なんかが……思い、上がって」シュン

ラフィエル「あっ……ごめんなさい! そういうつもりではなかったんです」

ラフィエル「サターニャさんの勘違いで突っ走るようなとこ、私好きですよ?」ナデナデ

サターニャ「……それって」

ラフィエル「ええ、友達として、普通に」

サターニャ「そう……よね」

サターニャ「……ふつうに」

ラフィエル「…………」

サターニャ「…………」

ラフィエル「でも」

ラフィエル「好きだって言ってくれたことは、純粋に嬉しかったです」

サターニャ「…………」

ラフィエル「嘘じゃないです」

サターニャ「…………」

ラフィエル「…………」

サターニャ「…………」

――

ラフィエル「夕焼けが眩しいですね……そろそろ、帰らないと」

サターニャ「…………」

ラフィエル「もうすぐ見回りの先生が鍵をかけにくるかもしれませんし」

サターニャ「…………」

ラフィエル「大丈夫ですか?」

サターニャ「……大丈夫」

ラフィエル「大丈夫なようには見えませんが」

サターニャ「……大丈夫なわけないでしょ」

ラフィエル「そうですか」

サターニャ「胸のあたりがチクチクするわ……体も頭も重い」

サターニャ「動きたくない……もういっそ、このまま夜になってしまえばいいのに」

ラフィエル「そしたら校舎に閉じ込められちゃいます」

サターニャ「…………」

ラフィエル「困りましたね」

サターニャ「…………」

ラフィエル「…………」

ラフィエル「すみません」

サターニャ「謝んないでよ……違うわ、それは」

ラフィエル「……じゃあ」

サターニャ「…………」

ラフィエル「そうですね……」

サターニャ「…………」

ラフィエル「キス、しましょうか?」

サターニャ「…………なっ!?」ガバッ

ラフィエル「そしたら、元気になってくれます?」

サターニャ「そ、そんなの……!」

サターニャ「…………」

サターニャ「…………」ギリッ

サターニャ「なんで、そんなこと言うのよ……」

ラフィエル「サターニャさんは、大切なお友達ですから」

ラフィエル「一人教室に放っておいて帰るわけにはいきませんよ。ダメですか?」ニコー

サターニャ「…………私」

サターニャ「嫌いよ、あんたのそういうとこ」

ラフィエル「あら~、嫌われちゃいました?」

サターニャ「…………はっ」

サターニャ「そんなわけ、ないでしょっ!」ガシッ

ラフィエル「!!」ビクッ

サターニャ「そういう人をバカにしたような態度とか、神経を逆なでするテクニックとか、ひねくれた部分全部含めて……私は……」

サターニャ「……なんでだろ、やんなっちゃうわよね」

サターニャ「んっ…………」

チュッ

ラフィエル「――――」

ラフィエル「…………あら、あらあらあら」フラ

ラフィエル「無理やり、されちゃいましたかぁ……ふふ」

サターニャ「はあっ……はあっ……」

サターニャ「……ごめん、こんなつもりじゃ……さっき言ったのも、忘れて」

ラフィエル「いいんですよ、元気は出ましたか?」

サターニャ「ん……」

ラフィエル「そうですか、じゃあ帰りましょう」

サターニャ「…………ちょっと、だけ」

ラフィエル「え?」

サターニャ「あっ、その……まだちょっと、元気じゃないかもしれなくて……」

ラフィエル「はい?」

サターニャ「あ、ごめん……なんでもないわ! 忘れて……何言ってんだろ私」

ラフィエル「もう一回したいんですか?」

サターニャ「だっ……違うわよっ! 忘れなさい!」

ラフィエル「いいですよ」

サターニャ「だからもう……えっいいのっ!?」

ラフィエル「えぇ、だってそんな」

ラフィエル「捨てられた子犬のような目をしてるサターニャさんがいたら」

ラフィエル「少しでも楽になってほしいと思うでしょう?」ニコリ

サターニャ「…………」

ラフィエル「じゃあ公平に、今度は私からいきますね」

サターニャ「ん……っ!?」


チュッ

ラフィエル「んっ、はぁ……」

サターニャ「うー…………」ハァハァ

ラフィエル「ふふふ、さっきから顔真っ赤ですよ?」

サターニャ「……あんたもじゃない」

ラフィエル「気のせいじゃないですか」

サターニャ「…………」

ラフィエル「…………」

ラフィエル「さっ、帰りましょうか?」

サターニャ「ねぇ」

ラフィエル「……はい」

サターニャ「私のこと、好き?」

ラフィエル「さっきお断りしたはずですが?」

サターニャ「……好きなんでしょ」

ラフィエル「さぁ……どうでしょうね?」

サターニャ「……性悪」

ラフィエル「そんな悪口がきけるなら大丈夫ですね」

サターニャ「……ふん、帰るわよ」スタスタ

ラフィエル「…………」

サターニャ「…………」

ラフィエル「…………手」

サターニャ「えっ?」

ラフィエル「手でも繋いで帰りましょうか」

ラフィエル「これからもずっと『友達』ですからね」

サターニャ「…………っ」

ラフィエル「嫌でしたか?」

サターニャ「」ブンブン

サターニャ「………………つなぐ」ギュ

ラフィエル「……はい」ニコ

ラフィエル(想いを受け入れない私が触れ合いだけをちらつかせれば、彼女はいとも簡単に動揺してくれる)

ラフィエル(私が見たいのは、彼女の心がかき乱される様子。複雑な感情を伴う物欲しそうな仕草)

ラフィエル(そこに表れる嫌悪が、好意が、葛藤が、欲望が、怒りが、喜びが、哀しみが、苦しみが、私を――)

ラフィエル(だから私は彼女の欲望を、一番望まれない形で満たし続けてあげます)


ラフィエル「サターニャさん、肌寒いので指絡めてもいいですかー?」ギュッ

サターニャ「ちょっ……!///」

ラフィエル「うふふ~、ズッ友ですね!」


ラフィエル(悪魔のような、天使の笑顔で)


おわり


ラフィエルの好きは他のみんなほど素直ではなさそう、というお話でした。

ご覧いただきありがとうございました。

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