ブライアン・ホーク「鷹村に復讐する」 (411)

はじめの一歩SS
ブライアン・ホークがメインの話です

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1498554326

(ニューヨーク・スラム街の自宅にて)

ホーク「ゴクゴク…プハァ」

グラスに入った酒を飲み干すと、ゴトッと音を立てて置く

ホーク「もう夜の11時か…」

ホーク「毎日沢山飲んでいるのに、全然寝れない」

ホーク「睡眠薬もあんまり効果が出なくなってきた。慣れってのは怖いもんだよ」

ホーク「いつからだ?オレが不眠症になったのは」

ホーク「」ビクッ

ホーク「た、た、たか…むら…」ガクガク

ホーク「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

発狂したホークの声が響く
汗だくになり、体を震わす

ホーク「あああ…ぁぁ…!!」ガクガク

ホーク「こ、怖い…寝れないよ…ど、どうすればいいんだ…」

ホーク「そうだ、女だ。女を抱きにいこう。フフ、ハハハハ…」ガクガク

(売春街にて)

娼婦「あらホーク。待ってたわ」

ホーク「フフフ、待たせたね。今夜もたっぷりと楽しませてあげるよ」

娼婦「あらやだ。フフフ」

娼婦「さあおいで、ホーク」

ホーク「ハハハハハ」

娼婦「……」ジッ

ホーク「どうした?」

娼婦(いつもはもっと、ギラギラとした目で来るのに…やけに静かね)

娼婦「今日は随分と落ち着いてるわね」

ホーク「ああ…ちょっとナーバスなのさ」

娼婦「フーン。まあ良いわ」

~~~

ホーク「……」

娼婦「あの、ホーク?」

ホーク(なんだ、この感覚)

ホーク(目の前にいる娼婦とは、長い付き合いだ)

ホーク(オレのお気に入り。超がつく上玉だ。それなのに…なぜだ!?)

娼婦「えっと…病気、なの?」

ホーク「ありえない…このオレが…」ガクガク

ホーク「なんで立たないんだ!!!」

娼婦「ホーク、元気になったらまたおいで。バーイ」

ホーク「……」

娼婦「ホーク…」

ホーク(バカな…このオレが、EDだと…)

ホーク「……」

ホーク「これからどうしよう…」

ホーク「酒をいくら飲んでも寝れない。睡眠薬もきかなくなってきた…」

ホーク「」ガクガク

ホーク「怖い…怖いよぉ…」

ホーク「あ…ぁぁ…」ガクガク

ホーク「こうなったら、ぶっ倒れるまで飲み続けるしかない…」

不良1「おいおい、あれブライアンホークじゃねぇか?」

不良2「まじだ!」

不良3「お前、金あんだろ?」

不良4「金出せよ」

不良5「これだけ刃物をもった人間そろってれば、いくらお前でも歯が立たないよな?」

不良6「やっちまえ!」

ホーク「……」

ドス、ドガ、バキ

不良達「」

ホーク「頂くぜ」ゴソッ

ホーク「コレだけ金があれば」

(次の日の昼・裏路地にて)

日陰で廃人となったホーク、深夜からずっと飲み続けていた
幾度も吐いては、また飲みなおす。ホークを囲むように空き瓶が転がっている

ホーク「」

ホーク「全然寝れない…」

ホーク「」ビクッ

ホーク「頭の中に…鷹村がぁ…!!」

ホーク「ぁぁ…ぁぁああ!!」ガクガク

ホーク「やめろぉぉぉ!!オレの中に現れるな!!!」

ホーク「ぜぇぜぇぜぇ」

ホーク「何故だ、何故オレがこんな目に…」

ホーク「……」

ホーク「アイツのせいだ」

(ボクシングジム)

ミゲル「いいぞウォーリー!その調子だ!」

ウォーリー「ハハハ、ボクシング楽しい!」

ジムメイト「つ、強い…」ガクッ

ミゲル「流石は、私のラスト・サン…唯一の希望」

ガシャァァン!

全員「!?」

ドアが突如、破壊される
全員がその視線を壊れたドアへと向ける

ジムメイト「なっ、おまえは!」

ウォーリー「だれ?」

ミゲル「ホーク…」

ホーク「……ウィー、ヒック」

ホーク「久しぶりだな。ミゲル」

ミゲル「どうした、やけに臭いが。昼間から酒か?」

ホーク「お前を殺す」

ミゲル「な…」

ジムメイト「!?」

ホーク「殺してやる…!!」

ホークは、一気にミゲルの目の前まで接近する

ミゲル「!!」

ホーク「ゴートゥーヘェェェル!!!」

ボゴォォン!!!

ウォーリー「ぐっ!」

ミゲル「マイボーイ!」

ミゲルとホークの間に挟まるように、とっさに現れガードするウォーリー

ホーク「どけ、ガキに用はない」

ウォーリー「ミゲルには指一本触れさせないよ!」

ホーク「このクソガキが!!」

~~~

ホーク「ぜぇぜぇぜぇ」

ホーク(こいつ、なかなか良いスピードしている)

ウォーリー「凄いパワーだ。まるで幕之内みたい…いや、それ以上かな?」

ウォーリー「やっぱりボクシングは楽しい!」ニヤッ

ホーク「っ!!!笑ってんじゃねぇ!!!」

ズドォォン!!!

ウォーリー「うわわ!!腕が折れちゃうよ!?」

ミゲル「怠けてた割には、実力は衰えてないようだな」

ミゲル「なぜ私の命を狙うんだ、ホークよ」

ホーク「……寝れないんだよ」ガクガク

ミゲル「なに?」

ホーク「毎日毎日…寝ても覚めても…あいつが、鷹村が!!」

ホーク「ああ…ぁぁ…」ガクガク

ウォーリー「…?どうしたの、寒いの?顔色悪いよ」

ミゲル「……」

ホーク「ミゲル…キミがオレにボクシングなんか教えなければ…」

ホーク「こんなに苦しまなくて済んだ!!あの路地裏で喧嘩相手をぶっ殺してれば…エクスタシーに達していられたんだ!!!」

ホーク「お前のせいだぞ!?喧嘩しても、もう全然ハイになれねぇ!!」

ホーク「女とヤリたくても、立つモン立たなくなっちまったんだよぉ!!!どうしてくれるんだよぉぉ!!!」

ホーク「酒も女も喧嘩も、全てが楽しめねぇ!!夜も寝れない!!」

ホーク「だから殺すんだよ!!お前を、ミゲル!!地獄行きだ!!!」

ウォーリー「そうはさせないよ」

ホーク「じゃあまずはお前からだ、モンキーボーイ!!」

ミゲル「マイボーイに手を出すな。私を殺したければ殺すが良い」

ウォーリー「何いってるんだ!?」

ホーク「観念したようだな」

ミゲル「だがキミは、こんな老いぼれを殺して本当に満足なのか?」

ホーク「ああ満足さ」

ミゲル「いいや、それじゃあキミはエクスタシーを取り戻す事はできない」

ホーク「なに?」

ミゲル「私を殺してもキミはタカムラというトラウマを、一生抱え続けるだろう」

ミゲル「喧嘩をしても、女を抱いても、酒を飲んでも、ハイになれないキミは…もはや人生で楽しむという感覚を失ってしまっている」

ミゲル「キミはこれからも…生ける屍だ」

ホーク「う、うぁぁ…」ガクガク

ホーク「知ったような口聞くんじゃねぇよ!!!」

ホーク「ぜぇぜぇぜぇ…」

ミゲル「どうした?私を殺さないのか?」

ホーク「………………」

ホーク「………………」

ホーク「どうすれば良いんだ」

ホーク「どうすれば!?おれは!またエクスタシーを取り戻せるんだよぉ!!」

ミゲル「……呪縛を解き放つのだ」

ミゲル「またボクシングをやらないか?」

ホーク「!?……ッ!!!!!」ガクッ

ミゲルの勧めを聞いた瞬間、ホークは腰が砕け、尻餅をつく
ガタガタと体を震わせながら

ホーク「ぼ、ボク、シング…」ガクガク

ミゲル「そうだ」

ホーク「イヤだ!!!そんな事したら、リングに上がれば余計、あいつの事を思い出しちまう…!!!」

ミゲル「ならば、キミの未来はゾンビだ」

ホーク「イヤだ!!またエクスタシーを感じたい!!心行くまで…」

ミゲル「ならば立ち上がるのだホークよ。これはキミがエクスタシーを取り戻すための…治療だ」

ホーク「治療…」

ミゲル「ただし、これは荒治療。以前の様に、練習をサボる事は許されない」

ホーク「れ、練習だと?このオレが?なんでそんな面倒な事を」

ミゲル「キミは今のままで、鷹村に勝てると思っているのか?」

ホーク「ッ!!」

ミゲル「鷹村はいまや、WBAとWBCの統一チャンピオン。階級も1つ上に上がっている。二階級制覇者だ」

ミゲル「キミがエクスタシーを取り戻すには…鷹村に勝つしかないのだ」

ミゲル「そのためには、努力と忍耐が必要なのだ」

ホーク「……」

ミゲル「さあホーク、選べ」

ミゲル「堕落を選択し、一生エクスタシーを感じれない日々を過ごすのか?」

ミゲル「それとも荒治療を選択し、鷹村に復讐するか?」

ミゲル「好きな方を選ぶのだ」

ホーク「………………」

ホーク「わかった、やってやるよ」

ミゲル「……!」

ホーク「前はエクスタシーを達したいからボクシングを始めた。今度は…」

ホーク「エクスタシーを取り戻すために闘うよ。荒治療も覚悟するさ」

ホーク「鷹村をぶっ殺して、もう一度女を抱けるようになって見せる。夜も安心して眠れる様になってみせるさ」

ホーク「鷹村に復讐する」

ミゲル「そうか…」フッ

ミゲル「お帰り、ホーク」

ウォーリー「えっとミゲル。改めて聞くけど、この人はなんなの?」

ミゲル「彼はかつて、私の元でボクシングをしていた。元ジュニアミドルの世界チャンピオンさ」

ウォーリー「世界チャンピオン!?すごい!!」

ウォーリー「ヘイ、ホーク!一緒にスパーリングしよう!」

ミゲル「待てウォーリー!彼は強すぎる…危険だ!」

ホーム「いいぜ。キミは割と強そうだしね」

ミゲル「ホーク、やめるのだ!」

ホーク「鷹村を殺す…鷹村を殺す…鷹村を殺す…絶対殺す!!!」

ミゲル「駄目だ。全然聞いてない…」

ミゲル(しかし、まさかホークが復活してくれるとは)

ミゲル(私の希望が二つに増えた)

(スパーリング終了後)

ミゲル「すごいぞウォーリー、あのホークを相手に1ラウンドやり合うとは」

ウォーリー「ま、まるでゴリラだ…ぜぇぜぇ。凄い、凄いよホーク!」

ホーク「……」

ミゲル「どうしたホーク。浮かない顔して」

ホーク「……」

ミゲル「軽量級相手に1ラウンド、ノックアウト出来なくてショックだったかな?」

ミゲル「気にするな。彼はインドネシアの国内チャンピオンだ。実力も桁違い。天才の中の天才だ」

ホーク「……」

ホーク「全然、感じないんだ」

ホーク「殴っても殴っても、全然楽しくない…鷹村を思い出しちまう…」ガクガク

ミゲル「ホーク、荒治療は始まったばかりだ」

ホーク「オレはこの後、どうすればいい」

ミゲル「ウォーリーとロードワークに行くといい」

ホーク「マラソンタイムか…気が滅入る。だがこれも鷹村を殺すための荒治療…」

ウォーリー「さあ行こうホーク!」

ホーク「フン、仕方ねぇ」

ミゲル「あのホークが復活し、いきなりロードワークの参加とは…今日はなんと素晴らしい日なんだ」

ミゲル(だが問題は階級の事だ。鷹村は階級を上げた)

ミゲル(ダメ元で、相手に階級を下げてもらう様に頼んでみるか?いや、どう考えても無理な交渉だ)

ミゲル(ホークの階級を、ミドル級に上げるしかない)

ミゲル(減量の逆、増量でのトレーニングが求められる)

ミゲル(今後の為に、あらゆるプランを立てる必要があるな)

ミゲル(鴨川よ、今度こそ我々が勝たせてもらうぞ)

ミゲル(まず目の前の目標は…そうだな)

ミゲル(かつて鷹村と戦った強者達を倒す)

ミゲル(相応の強者に勝利し、アピールしていくしかない)

今日はここまで

荒治療じゃなく荒療治」じゃね?

>>19
たしかに日本語がおかしかったので、3レスほど訂正しときます

>>10(訂正)

ホーク「!?……ッ!!!」ガクッ

ミゲルの勧めを聞いた瞬間、ホークは腰が砕け、尻餅をつく
ガタガタと体を震わせながら

ホーク「ぼ、ボク、シング…」ガクガク

ミゲル「そうだ」

ホーク「イヤだ!!!そんな事したら、リングに上がれば余計、あいつの事を思い出しちまう…!!!」

ミゲル「ならば、キミの未来はゾンビだ」

ホーク「イヤだ!!またエクスタシーを感じたい!!心行くまで…」

ミゲル「ならば立ち上がるのだホークよ。これはキミがエクスタシーを取り戻すための…治療だ」

ホーク「治療…」

ミゲル「ただし、これは荒療治。以前の様に、練習をサボる事は許されない」

ホーク「れ、練習だと?このオレが?なんでそんな面倒な事を」

ミゲル「キミは今のままで、鷹村に勝てると思っているのか?」

ホーク「ッ!!」

ミゲル「鷹村はいまや、WBAとWBCの統一チャンピオン。階級も1つ上に上がっている。二階級制覇者だ」

ミゲル「キミがエクスタシーを取り戻すには…鷹村に勝つしかないのだ」

ミゲル「そのためには、努力と忍耐が必要なのだ」

ホーク「……」

>>11(訂正)

ミゲル「さあホーク、選べ」

ミゲル「堕落を選択し、一生エクスタシーを感じれない日々を過ごすのか?」

ミゲル「それとも荒療治を選択し、鷹村に復讐するか?」

ミゲル「好きな方を選ぶのだ」

ホーク「………………」

ホーク「わかった、やってやるよ」

ミゲル「……!」

ホーク「前はエクスタシーに達したいからボクシングを始めた。今度は…」

ホーク「エクスタシーを取り戻すために闘うよ。荒療治も覚悟するさ」

ホーク「奴をぶっ殺して、もう一度女を抱けるようになって見せる。夜も安心して眠れる様になってみせるさ」

ホーク「鷹村に復讐する」

ミゲル「そうか…」フッ

ミゲル「お帰り、ホーク」

>>13(訂正)

(スパーリング終了後)

ミゲル「すごいぞウォーリー、あのホークを相手に1ラウンドやり合うとは」

ウォーリー「ま、まるでゴリラだ…ぜぇぜぇ。凄い、凄いよホーク!」

ホーク「……」

ミゲル「どうしたホーク。浮かない顔して」

ホーク「……」

ミゲル「軽量級相手に1ラウンド、ノックアウト出来なくてショックだったかな?」

ミゲル「気にするな。彼はインドネシアの国内チャンピオンだ。実力も桁違い。天才の中の天才だ」

ホーク「……」

ホーク「全然、感じないんだ」

ホーク「殴っても殴っても、全然楽しくない…鷹村を思い出しちまう…」ガクガク

ミゲル「ホーク、荒療治は始まったばかりだ」

ホーク「オレはこの後、どうすればいい」

ミゲル「ウォーリーとロードワークに行くといい」

ホーク「マラソンタイムか…気が滅入る。だがこれも鷹村を殺すための荒療治…」

ウォーリー「さあ行こうホーク!」

ホーク「フン、仕方ねぇ」

訂正終了したので、書き溜めしてきます

投下します

ウォーリー「ただいま!」

ミゲル「うむ、二人とも、まだまだ元気なようだな。流石だ」

ホーク「……」

ホーク(疲れはするが、不思議と以前の様に、練習への面倒臭さは感じない)

ミゲル「二人ともシャワーを浴びたら、レストランへ行こう。そこでミーティングがしたい」

ウォーリー「やったー!楽しみだな」

ミゲル「こらこら、遊びじゃないんだぞ」

(レストラン)

ミゲル「さあ、食べたまえ」

ウォーリー「わぁぁ!ステーキだ!」

ホーク「おいおい、ボクサーがこんなもの食べて大丈夫なのかい」

ミゲル「まだ試合は決まってない。問題ない」

ミゲル「特にホーク。キミにはコレから毎日。ステーキを食べてもらう」

ホーク「なに?」

ミゲル「食事代は私がおごる。朝昼晩、しっかり食べるんだ」

ホーク「それじゃ、ブヨブヨになって動けなくなっちゃうよ」

ミゲル「心配いらない。毎日、しっかりとトレーニングを積んでもらう。それでカロリーは充分、消費できる」

ミゲル「何よりも君には、体重を増やしてもらわないと困るのだ」

ホーク「何故だ」

ミゲル「言っただろ?鷹村はいま、ミドル級へと階級を上げたと」

ホーク「っ!!」ガタッ

『鷹村』という単語を耳にした瞬間、ホークは手に持っていた、ナイフとフォークを落とす

ホーク「た、たか…むら…」ガクガク

ウォーリー「大丈夫?顔色悪い、もう無理して食べないほうがいいよ」

ミゲル「ホーク、いま鷹村はいない。安心したまえ」

ホーク「そ、そうだ…ここはアメリカ。いるはずがない」

ミゲル「もちろん食べるだけではない。それだけじゃ、キレのある動きは出来ない」

ミゲル「君にはしっかりと筋肉を付けてもらう。ウエイトトレーニングをしっかり積んでもらう」

ミゲル「ジュニアミドルから、ミドル級の体へと改造するのだ」

ミゲル「だが走りこみは怠るなよ。スピードが落ちてしまうからな」

ホーク「プランはよーく分かった」

ホーク「で、基礎練習ばかりで良いのか?」

ミゲル「もちろん、パンチの打ち方も改めて教えようとおもう」

ミゲル「ずっと自己流にまかせていたからね」

ミゲル「野生のままでは、鷹村には勝てない。野生と科学が融合してなければならない」

ミゲル「それと、ウォーリーとはスパーリングしてはならない」

ウォーリー「ええ!?なんで!」

ミゲル「ウォーリー、さっきも話したが彼は尋常じゃなく強い」

ミゲル「下手したら壊れてしまう」

ウォーリー「じゃあ、一緒に練習するのは?」

ミゲル「それは良いよ」

ウォーリー「やった!」

ホーク(ふん、変なガキだ)

(次の日)

ウォーリー「おはようミゲル」

ミゲル「やあ、おはよう。ホークは来てるかな?」

ウォーリー「うーん、分かんない」

ミゲル「そうか、せっかく朝食を作ってあげたというのに」

ミゲル「君も食べるといい」

ウォーリー「やったー!」

~~~

ウォーリー「目玉焼きにパン、バナナ、スープ、サラダ…」

ミゲル「悪くないだろ?」

ウォーリー「うん。でもホークの分は、僕の倍の量があるね」

ミゲル「階級を上げるからね」

ミゲル「彼は以前、ほとんど練習しなくてもジュニアミドルの体重を保っていた」

ミゲル「逆を言うと、ほどよく練習しないと、体重が必要以上に落ちてしまう」

(数時間後・昼間の12時)

ミゲル「~~~~っ」

ミゲル「ホークはまだ来ないのか」

ウォーリー「どうする?いっしょに迎えにいく?」

ミゲル「ああ、止む終えない」

ガララッ

ウォーリー「あ、来た」

ミゲル「遅いじゃないかホーク」

ホーク「ぜぇぜぇぜぇ…」

ウォーリー・ミゲル「…?」

ホークは全身を汗だくにしながら、ジムへと入っていく

ホーク「ロードワークいって来たよ…ぜぇぜぇ」

ミゲル「お、おお…」

ミゲル(あの練習嫌いのホークが、自発的に特訓をしていたとは)

ホーク「いま、何時だ」

ミゲル「昼の12時だよ」

ホーク「なに?もうそんなに経ったのか」

ミゲル「……ちなみに、何時から走ってた」

ホーク「深夜の3時からかな」

ミゲル「なんだと!?」

ウォーリー「9時間走りっぱなし!?」

ホーク「いやいや、そんな訳ない。水飲んで休憩を挟みながら走ったよ」

ミゲル「休憩をはさんだとしても、これはオーバーワークすぎる」

ミゲル「なぜそんなに走り続けたんだ。あの練習嫌いの君が」

ホーク「寝れないだよ。全然」

ホーク「そのうち、鷹村を思い出して発狂しちまう」

ホーク「しかも女は抱けないし、酒を飲んでもハイになれない」

ホーク「だから走ったんだよ。走って走って…」

ホーク「鷹村を殺すための体作りしてたんだ」

ミゲル「そうか、君の意気込みはよーく分かった」

ミゲル「だがオーバーワークは体を壊してしまう。気をつけるんだ」

ウォーリー「ホーク!ミゲルが朝食を作ってくれたよ!」

ホーク「ふん、もう昼だけどな」

ホーク「まあ折角だ。いただくよ」

~~~

ミゲル「食事を終えたな?ホークよ。休憩も終わったし、まずは体重計るのだ」

ホーク「ああ」ガシャッ

ミゲル「うーむ、やはり走りすぎて体重が落ちてる」

ホーク「食べ終えたばかりなのになぁ」

ミゲル「ホーク、午後からのトレーニングは、ウエイトトレーニングだ」

ミゲル「上半身の筋肉をしっかりつけて、体重を増やすのだ」

ホーク「ああ」

ホーク「フン!」

ホークはバーベルを上げ、上下に動かしていく

ミゲル「ウエイトトレーニングを終えたら、夜からシャドーをやってもらう」

ホーク「外はすっかり暗くなったね」

ミゲル「ああ。ではそろそろ、シャドーの時間だ」

ミゲル「まずはウォーリーの動きをみるのだ」

ホーク「あ?あの青臭いガキの動きを?」

ウォーリー「いっくよ!ホーク!」

シュシュッ!シュシュッ!

ウォーリー「ふっふっ!」

ホーク(いい動きだ。惚れ惚れしてしまう)

ウォーリー「今やったのは左ジャブ…そして」

ブン!ブン!

ウォーリー「これが右ストレート!」

ホーク「ふむ」

ミゲル「キミは以前、自己流で世界一になった」

ミゲル「だが昨日も言ったが、野生だけでは駄目なのだ。鷹村には勝てない」

ホーク「」ビクッ

ホーク「ほ、ほひ…ほひ、本当に、左ジャブと右ストレートを形に出来れば、鷹村を殺せるのか?」ブルブル

ミゲル「勝利へ一歩、近づく事になる」

ホーク「……」ガクガク

ホーク「やるよ!!やってやるよ!!いますぐ!!」

ミゲル「そうか、ならばこれから一週間。左ジャブのシャドーの特訓をしてもらう」

ホーク「ん?右はストレートは?」

ミゲル「右は私からオッケーが出るまで封印」

ホーク「??」

ホーク「まあいい…やるよ。強くなるためなら、何でもするよ」

ホーク「フン!フン!」

ミゲル「力みすぎだ。もっと力を抜いて!」

ホーク「フン!フン!」

シュッシュッ!

ミゲル「そうだ、その調子だ」

ホーク(うん、たしかにキレのある音に変わってきたのが、よーく分かる)

ホーク(だがこんな地味な作業を延々と続けるのか?これは辛い)

ホーク(ああ!!右ストレートをサンドバックにぶちこみてぇ!!)

ブン!ブン!

ミゲル「こらこら、また力んできてるぞ。もっと力を抜いて」

シュッシュッ!

ミゲル「そうだ。その調子だ」

ホーク(ちくしょう。ちくしょう!)

ミゲル「さあ、今日はここまでとしよう」

ミゲル「レストランに行って食事だ」

ウォーリー「やったぁ!待ちわびてたよ!」

ホーク「」ドサッ

ウォーリー・ミゲル「!?」

ミゲル「ホーク!!」

ウォーリー「ホーク、しっかりして!」

ホーク「zzz」

ウォーリー「あれれ」

ミゲル「ふむ、疲労で寝てるだけか」

ミゲル(無理もない。常時寝不足なのに、朝からオーバーワーク)

ミゲル「医務室まで運ぼう。寝かせておくんだ」

~~~~~

ホーク「ん?ここは…」

ワァァァァァ…!!!

ホーク「リングの上?観客の声…」

ホーク「ああ、そうだ。オレは戻ってきたんだ…」

ホーク「……戻ってきた?なんで?何のために?」

ホーク「敵は誰なんだ」

「……」クルッ

ホーク「ひっ…!!」

鷹村「オレ様だ」

~~~~~~~

ホーク「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

ホーク「はぁはぁはぁはぁ…!」

ホーク「ゆ、夢…?」

ホーク「ぜぇぜぇ…」

ホーク「朝の5時か」

ホーク「ぅ……」ガクガクガク

ホーク「何かしてないと、落ち着かない…」

ホーク「頭の中で、鷹村が…グルグルとあいつの姿が…浮かんでくる…」ガクガクガク

ホーク「走ろう。どこまでも」

(朝8時)

ガラッ

ホーク「ただいま。ぜぇぜぇ」

ミゲル「む、今日は早かったな」

ホーク「ミゲル、腹が減った」

ミゲル「ああ、ちゃんと作ってあるよ」

ホーク「……」

ホーク「ハムエッグにスープ、パン、サラダ…」

ミゲル「ああ。量はウォーリーの倍だ。結構な量だろ?」

ホーク「これじゃ足りない」

ミゲル「むむ」

ホーク「これを食べたら、レストランへいきたい」

ミゲル「ふむ、そうか。今度からはもっとボリュームを増やしておこう」

ミゲル「ではレストランで、ステーキでも食べに行こう」

ホーク「ふぅぅ、生き返った」

ミゲル「帰ったら、縄跳びをやって、ウエイトトレーニングだ」

ホーク「んで、仕上げは左ジャブの練習か」

ミゲル「ああ」

ウォーリー「今日も頑張ろうねホーク!」

ホーク「あ?ああ…」

ホーク(なんか調子狂うぜ…)

ウォーリー「ねぇホーク!」

ホーク「んだよ」

ウォーリー「明日からさ、一緒にロードワークしよ!」

ホーク「あぁ?何言ってんだお前」

ウォーリー「練習は1人よりも、2人の方が楽しいよ!」

ホーク「チッ…調子狂うぜ」

ホーク「勝手にしろ」

ウォーリー「やったぁ!」

ホーク「……」

ホーク(純粋な目をしてやがる、スラムにいた頃には、こんなガキはいなかった)

ホーク(オレは悪の巣窟みたいな場所で育ったからな。無理もないが)

(次の日の朝)

ホーク「うわぁぁぁ!!!」ガバッ

ホーク「はぁはぁはぁ、ちくしょう…また夢の中で…あいつが…」

ウォーリー「ヘイ!ホーク!」

ホーク「あぁ?なんでお前がオレの部屋に」

ウォーリー「さあ!ロードワークの時間だよ」グイグイ

ホーク「お、おい!引っ張るな!」

ホーク「いま行くって…たく」

~~~

ホーク「ぜぇぜぇぜぇ」

ホーク(やっぱり走ってる時が一番落ちつくぜ。この瞬間だけ、悪夢を忘れられる)

ウォーリー「ねぇホーク。なんでボクシング始めたの?」

ホーク「あ?オレは…」

ホーク「ミゲルから殺人許可証を貰ったんだ。気持ちよくなりたいから始めた」

ウォーリー「世界チャンピオンにもなったんでしょ?」

ホーク「ああ、無敵だったさ。あいつに会うまでは」

ウォーリー「鷹村だっけ?ビデオみたけど強いよねぇ」

ホーク「うっ!!」ドサッ

ホークは突然、つまづいて転んでしまう

ウォーリー「大丈夫?」

ホーク「あ、ぁぁ…」ガクガクガク

ホーク「あああああああああああああああああああ!!!!!」ガクガクガク

ウォーリー「わわわ!?ホーク落ち着いて!」

ホーク「やめろぉ!来るなタカムラァァ!!」

ウォーリー「大丈夫だよホーク!ここには鷹村はいないから!」

ホーク「ぁ…ぁぁぁ…」ガクガク

ウォーリー「ひとまず、ジムに帰ろう?ほら、肩を貸すから」

ホーク「ご、ごめんよ…ウォーリー…」ガクガク

顔面が真っ青になり、ウォーリーに肩を貸してもらいながら、不安定な足取りでジムへ帰っていく

ミゲル「……少しは落ち着いたかい?」

ホーク「ああ…」

ミゲル「じゃあ、昨日と同じメニューをこなしてくれ」

ホーク「ああ…縄跳びをやってくるよ」

ミゲル「ウォーリーはサンドバックを」

ウォーリー「まだホークが心配だから、一緒に縄跳びやる」

ミゲル「む、そうか」

ミゲル「……」

ミゲル「さて、挑戦者はどうしようか…」

ミゲル「まだ交渉するには時期が早いが、具体的な事を考えておかなければ」

ミゲル「鷹村が過去に戦った世界ランカーのビデオでも見るか」

~~~

ミゲル「黒人ボクサーのピーター・ラビットソン…あの鷹村を相手に12Rまで粘った…」

ミゲル「だが鷹村自身も中盤までは、あまり調子が良くなかった。後半に鷹村が、強烈な一撃を与え、ラビットソンを一撃ノックアウトした」

ミゲル「技巧派で逃げるのが得意で、地道に点数稼ぎに徹している選手…」

ミゲル「ホークが、ボクシングの勉強をする上では持って来いの選手だ」

ミゲル「技術をしっかり身に付けて野生と科学を融合させるのだ」

ミゲル「そして鷹村戦前までの、総仕上げは…」

ミゲル「やはりWBCのデビッド・イーグルか、WBAのリチャード・バイソン…」

ミゲル「この二人のどちらかを乗り越えなければ、鷹村に挑戦できないだろう」

(2週間後・とあるジムにて)

ヴォルグ「ぜぇぜぇ、ただいま」

団吉「おかえりヴォルグ」

ヴォルグ「……」

団吉「どうしたんだ?」

ヴォルグ「気のせいか…」

団吉「ん?」

ヴォルグ「ダン、聞いて欲しい」

ヴォルグ「さっき、ウォーリーを見かけた」

団吉「天才ウォーリーか、あの幕之内を苦しめた…」

ヴォルグ「そして、その隣に…」

ヴォルグ「ブライアン・ホークがいた」

団吉「なっ!?バカな…何かの間違いじゃないか?」

ヴォルグ「……ダンもそう思うかい?」

団吉「再起不能だと聞いたぞ。精神不安定にして戦意損失、それでボクシングが出来ない状態だと」

ヴォルグ「……だだの気のせいかもしれない。忘れてくれ」

団吉「うむ」

団吉(確信が持てるまでは、鴨川に連絡は取れないな)

ホーク「ミゲル、もう二週間たったぞ。約束が一週間もオーバーしてる!いい加減に右ストレートを教えろ!」

ミゲル「まずは左ジャブを見せろ」

シュッシュッシュッ!

ホーク「ほらどうだ」

ミゲル「うむ、合格だ」

ミゲル「右ストレートだけでなく、アッパーも教えてあげよう」

ホーク「ほう、気前が良いね」

ミゲル「元々、キミは性能が段違いだ。今日中に物に出来るだろう」

ホーク「何てったって、元王者だからな」

ミゲル(ジャブは基本中の基本。地味ゆえに、ホークみたいなタイプにはあまり好きな練習ではない)

ミゲル(逆に豪快な一撃技は、すぐに吸収できるだろう)

ミゲル(左ジャブはもう体に染みこんだ。あとは大砲を撃つための練習を積み重ねていく)

ウォーリー「いいかいホーク!お手本を見せるよ!」

ウォーリー「これが右ストレート!」ブンッ

ミゲル「ウォーリーの動きを目に焼き付けるのだ」

ホーク「ああ、分かったよ」

ミゲル(しかしウォーリーもまだキャリアが短いのに…この吸収力…まさに天才だ)

(それから、時がたち)

ミゲル「体重を量るのだ」

ホーク「うん」ガシャッ

ホーク「……」

ミゲル「ミドル級の体重になったようだな」

ウォーリー「やったねホーク!」

ホーク「……ああ。これで闘う準備は整った」

ミゲル「よし、ではこれから交渉をしてみよう」

ミゲル「二人は練習をしていてくれ」

ホーク「ウエイトトレーニングをしてくる」

ウォーリー「僕もやろうかな!」

ホーク「お前はムキムキになる必要ないだろ。体重が無駄に上がるぞ」

ウォーリー「一緒に同じ練習!しよ!」

ホーク「ほどほどにしとけよ」

(数週間後・鴨川ジム)

鷹村「……」ペラッ

一歩「ねぇ青木さん、今日の鷹村さん…やけに静かじゃないですか?」

青木「確かに、何かあったのか?」

木村「ボクシング雑誌を読み始めてから、様子がおかしくなったな」

板垣「ちょっとのぞいて見ます?」

木村「やめとけ、マジで機嫌悪かったら、とばっちり喰らうぞ」

鷹村「……」ググッ

鷹村(あの野郎…まだ生きてたのか)

~~~~

鴨川「おお…団吉か。久しぶりだな、どうした国際電話までして…」

鴨川「……」

鴨川「な、なんじゃと!?あの男が…復活しただと!?」

今日はここまで

一歩「ブライアンホークが復活…!?」

鷹村「ああ、1ヵ月後に復帰戦が行われるそうだ」

青木「いきなりミドル級の世界ランカー相手とは…」

木村「しかも、わざわざ階級を上げたって所に、妙な物を感じるぜ」

板垣「まさか、鷹村さんにリベンジを考えてるとか…」

鷹村「……」

鴨川「どうやら、既に情報が出回っているようじゃな」

鷹村「ジジイ、どうするんだ?」

鴨川「フン、貴様こそどうなんじゃ」

鴨川「散々、スーパーミドルに階級を上げたいと、言っておったが…この現状を知ってもなお、そういえるのか?」

鷹村「……ホークが以前と、どう変わったかにもよる」

鷹村「何も変わってないのなら、闘う価値もないしな。オレ様は次の階級を目指す」

鴨川「つまり変化があるのなら、闘い意志もあるのじゃな?」

鷹村「交渉の方は任せるぜ」

青木「で、でもよ、ホークって物凄く練習が嫌いで有名じゃねぇか」

木村「そう簡単に変わるのか?」

鷹村「いずれにせよ、1ヵ月後の試合をみて判断するしかねぇな」

ミゲル「復帰戦の相手は、世界ランカーの1人、ピーター・ラビットソンだ」

ミゲル「かつて鷹村とも戦ったこともある、黒人ボクサーだ」

ホーク「強いのかい?」

ミゲル「ビデオを見るか?」

ホーク「」ビクッ

ホークは体をビクッとさせると、ガタガタと震えだす

ホーク「た、たか、鷹村がビデオに映っているんだよな?」ガクガク

ミゲル「……わかった。無理に見なくてもいい」

ミゲル「鷹村を相手に、12Rまで戦い抜いた」

ホーク「!?」

ミゲル「ポイントを取るのが非常に上手い選手だ。だが、逆を言うと迫力に欠ける」

ミゲル「現に鷹村は最後の最後で、一発で倒した」

ホーク「小細工の得意なボクサーなんだね」

ミゲル「良くも悪くもね。だが良い勉強にはなる」

ミゲル「ひとまず『フリーダム』は封印だ。基本に忠実に立ち向かえ」

ホーク「オーケー。特訓の成果をみせてやるさ」

(1ヵ月後・ラスベガス)

実況「さあ、今日はラスベガスより、ミドル級の10回戦…ブライアンホークの復帰戦を開始します!」

ワァァァァ!!!

~~~

一歩「わぁぁ、凄い盛り上がりですね」

一歩たちはジムで、テレビから世界戦を観戦していた

青木「鷹村さんと出会うまでは無敵だったしな」

木村「ああ。それに復帰戦で、わざわざ階級をあげたって所に、思う所あるのは客も一緒なんだろうよ」

板垣「今日の相手、鷹村さんがかつて戦った相手ですよね?」

鷹村「ふん、雑魚の事なんざ忘れちまった」

青木「12ラウンドまで苦戦したくせに」

鷹村「うるせぇー!」ボゴッ

青木「ぎゃっ!」

一歩「あ、選手入場ですよ」

実況「さぁ!選手入場です…!」

司会「青コーナー!ブライアン!ホォォォク!!」

ウオオォォォォォ!!!

鷹村「ん?」

一歩「あれ、入場がやけに地味ですね」

青木「ホークガールがいねぇな!」

木村「あのふざけた、鎧も身にまとってない。コートすらきてない。普通にセコンドと入場している」

板垣「悪ふざけを反省したのかな?でも地味すぎる入場でつまんないや」

鷹村「……そんな事よりも、なんだあの目は」

全員「目?」

鷹村「まるで生気の無い目をしてやがる」

青木「たしか、闘う前のボクサーの面構えじゃないな」

一歩「目に光が無い…」

木村「生ける屍って感じだな」

~~~

ウォーリー「がんばれー!ホークー!」

ホーク「……」

ミゲル「良かったのか?ホークガールを連れてこなくて」

ホーク「そういう気分じゃねぇ…いまのオレはEDだしな」

ミゲル「そうか」

審判「両者、前に出て」

ホーク「……」

ラビットソン「……」

カーン!

実況「いま、ゴングが鳴った!!」

ホーク「……」グッ

観客1「お、あの構え…いつものホークと違う」

観客2「基本に忠実だ」

観客3「なんだよ、あのハチャメチャな打ち方はしないのか」

ラビットソン(ビデオで散々チェックしたが、あの型破り戦法はしないのか)

ラビットソン(ムム、これは計算外)

相手セコンド「まような!いつもどおり、コツコツとポイントを奪っていけ!」

ラビットソン「それもそうだな…覚悟!」

ホーク「うおっ!?」ツルッ

ドサッ!

ラビットソン「ん??」

審判「スリップ!」

実況「おおっと!ブライアンホーク、いきなりスリップダウン!緊張しているのか!?」

ホーク「」ガクガクガク

ホーク(ちくしょう…なんだ…急に足が、ガクガクしてきやがった…)ガクガク

ホーク(なぜだ…なぜ、こんな時に限って…)

ホーク(鷹村を思い出してしまうんだ…!!)

ミゲル(リングに上がった事で、鷹村との闘いを思い出してしまったか…!)

ミゲル「ホーク、今日の相手は鷹村じゃない!」

ホーク「……!」

ミゲル「思い出せ。今日は勉強の日だ」

ミゲル「積み重ねてきた基礎を、ココで発揮するんだ」

ホーク「そうだ…今日の相手は鷹村じゃない…」ガクガク

ホークはゆっくりと立ち上がり、拳を構える

審判「ボックス!」

ラビットソン(いつもとおり、ヒットアンドアウェイでポイントを稼ぐんだ!)

ボス!ボス!

ホークの顔面に、二発のジャブが飛んでくる

ホーク「うっ!」

ミゲル「もっとガードを!高めにガッチリと構えるんだ!」

ホーク(顔面を殴られないように…ガッチリと)

ラビットソン「今度はボディが、がら空きさ」

ボス!ボス!

ホーク「ぐぅ!」

実況「今度はボディに二つ!」

ボスボス!

ホーク「ぐぅぅ!」

実況は「続いてリバーブローを二つ!」

ラビットソン(なんだ?これじゃ、逃げる必要がないじゃないか)

ラビットソン(ホークはどうしたんだ。なぜ攻撃しない。調子が悪いのか?)

ボス!ドゴ!ボキ!

ミゲル「落ち着けホーク!避けれるパンチはしっかり避けて、厳しいのはしっかりガードして受け止めるんだ!」

カーン!

実況「ここで1ラウンド終了です」

ホーク「ぜぇぜぇ…」

実況「ブライアンホーク、手も足も出ずに、ラビットソンにポイントを持っていかれる!」

~~~

一歩「調子が悪すぎる」

青木「無理に基本に忠実にしようとするからいけないんじゃねぇか?」

木村「たしかに、あいつの性にあわないんだろうな」

鷹村「……あいつの気持ち次第さ」

鷹村「あんな格下相手、ホークなら難なくクリアできる」

鷹村「だがオレ様のことでも思い出して、びびってんだろうよ」

板垣「じゃあホークが本気を出せば…」

青木「まだ本気じゃねぇのか。まあ見るからにアレは本気の状態とは言えないが」

鷹村「セコンド次第だ。ホークの力を呼び起こせるか、否か」

ホーク「どうしようミゲル…やっぱりどうしても、頭の中で…鷹村がちらついて…」

ホーク「」ガクガク

セコンド1「困ったな…」

セコンド2「やはりトラウマが邪魔して、本領を発揮できない」

ミゲル「……」

ミゲル「良いのか?ホーク」

ホーク「え?」

ミゲル「キミは鷹村に勝ちたいのだろ?だがこの試合に勝てないようじゃ…鷹村との再戦はありえない」

ミゲル「そして当然、キミは永久にエクスタシーを取り戻せず、一生を終えることになる」

ホーク「ッ!!!」

ビーー!

審判「セコンドアウト!」

ホーク「……イヤだ」

ホーク「オレはまた…絶頂を感じたいんだ!!」

~~~

鷹村(相変わらず、目が死んでるが…)

鷹村(どことなく、雰囲気が変わった)

審判「ボックス!」

カーン!

実況「さあ、第二ラウンド開始!」

ラビットソン(さて、まずは手始めにジャブから)

ホーク「ゴートゥーヘル…」

ズバァァン!

ラビットソン「ッ!?」

ポタ、ポタ…
赤い液体が、マットに落ちる

ホーク「……」

ラビットソン(なんだ…いま、まぶたに凄い衝撃が走った…)

ラビットソン(左目が…見えない?何かが目に入り込んで…)

実況「おおっと!ゴングと同時にラビットソンの左瞼が切れた!!」

実況「いったい何が起きたんだ!?」

ラビットソン(血か!?血で左目の視界を塞いでいるのか!?)

ラビットソン(なぜだ…なぜいきなり、まぶたが切れたんだ)

ズバァァン!!

ラビットソン「ぐぁぁ!」

ラビットソンの頬に衝撃が走る

ズバァァン!

ラビットソン「ぐぅ!!」

相手セコンド(いかん、ホークのやつ、本気できやがった…!)

相手セコンド「まずい!ひとまず逃げろ!!」

ラビットソン「オーケー…」サッ

ホーク「逃がさないよ」

ホークがボソッと呟いた、その瞬間

ラビットソン「なっ…!」

ラビットソン(なんだ…これは…)

ラビットソンの顔面に、無数のジャブが、一瞬にして飛び交う

シュパァァ…

血しぶきが、リング上に舞う

審判「ストップ!」

ホーク「チッ」

ラビットソン「……!!」

ラビットソン(た、助かった…あのまま続いてたら…完全にやられていた…)

実況「ここで審判がストップ、すかさずドクターを呼ぶ」

ドクター「どれどれ」

ラビットソン(まだ2ラウンドの序盤だ。これでTKOにはなるまい)

ドクター「……」

ドクター「審判…これは…」

審判「む、そうか」

審判「……」サッ

カンカンカンカン、カーン!

ラビットソン「ッ!?」

実況「おおっと!審判の両腕が交差した!試合終了!!」

ラビットソン「おいちょっとまて!どういうことだ!」

ドクター「まぶたのキズが、筋膜に達している」

ラビットソン「馬鹿な!!まだ2ラウンド序盤だぞ!?こんな簡単に筋膜に達するハズがない!ありえない!!」

審判「ルールはルールだ。あきらめろ」

ラビットソン「そんな…」ガクッ

相手セコンド「」

実況「ブライアン・ホークの復帰戦!2ラウンド10秒!まさかのTKO勝ちぃぃ!!」

ホーク「……」

ミゲル「」

ミゲル(想像以上の仕上がりだ。思わず震えてしまったよ)

セコンド達「やったー!」

実況「ここで勝者インタビューがなされます」

女性「おめでとうホーク、いまの気持ちはどう?」

マイクを向けられるが、ホークは相変わらず生気の無い目で、ジッと遠くを見ていた

ホーク「………」

女性「あ、あの…」

ホーク「つまらないな、全然気持ちよくなれない」

ホーク「誰かおれを気持ちよくさせてくれ」

女性「あ、ちょっ…」

ホークは生気の無い目のまま、マイクを持つ女性に背を向け歩き出す

ホーク「帰ろうミゲル」

ミゲル「ああ」ニヤッ

セコンドのミゲルは怪しく微笑みながら、ホークの背中をゆっくりと追う

ウォーリー「ホークゥゥ!!」ダキッ

ホーク「なんだウォーリー。抱きつくな、暑苦しい」

ウォーリー「すごい!すごいよホーク!!」

ホーク「フン、お前じゃなくて女を抱きてぇよ。EDだけど」

一歩「」

青木「」

木村「」

板垣「2ラウンド10秒のTKO勝ち…!?嘘だろ…」

青木「しかもホークが攻撃をし始めたのは2ラウンドからだ」

木村「その気になれば、1ラウンド10秒でケリがついた訳だ」

青木「鷹村さん、これちょっとヤバイんじゃないですか?」

鷹村「…………」

鷹村「フン、格下相手に2ラウンドも使いやがって。さっさと1ラウンド10秒で倒して来いってんだ」

そういうと鷹村は、ソファから立ち上がる

一歩「鷹村さん、どこに」

鷹村「ロードワークだ」

ガチャンッ

全員「……」

一歩(鷹村さん…)

一歩(それにしても物凄い左ジャブだったな…速過ぎてよく見えなかった)

一歩(いったい、何発打ち込んだんだろう?)

一歩(雰囲気も別人だ。野生のボクサーから…)

青木「まるでロボットみたいだったな」

木村「ああ、凶暴な野生児から、冷酷無比のマシーンになったな」

板垣「危ない事には変わりないですけど…いずれにせよ前よりもやっかいですね」

一歩「鷹村さんは、またブライアンホークとやりあうのかな…」

一歩(本気を出したら、たったの10秒でTKO勝ちなんて…聞いた事ないよ)

今日はここまで

鷹村「エクスタシー感じたいだと?俺様が教えてやるぜメスイキってのをな」パンパンパン

ホーク「おぉぉぉおーーイエースもっともっとついてー!」

ミゲル「おめでとうホーク。良い仕上がりだ」

ホーク「ああ、それで次の試合はいつなんだい?」

ミゲル「うむ、大してダメージは受けてないようだ」

ミゲル「とりあえず二ヶ月後を目安に、次の相手に交渉してみよう」

ホーク「……二ヶ月も待つかの?」

ミゲル「無茶はよくない。いくらキミが頑丈でもね」

ホーク「チッ」

(4日後・ジムにて)

ガチャッ

ホーク「ぜぇぜぇ…ただいま」

ウォーリー「ただいまミゲル!」

ミゲル「うむ。二人ともお帰り」

ミゲル(試合が終わった次の日からも、ひたむきに練習に励むとは…以前のホークなら考えられん)

トレーナー1「散々、体を休めるように言ったんだけどなぁ…」

トレーナー2「大丈夫なのかいミゲル」

ミゲル「ダメージ自体は小さい。それに止めたところで、いまのホークが素直にいう事を聞くとは思えない」

ミゲル「ひとまず、問題はないだろう」

ウォーリー「さあ、縄跳びの時間だよ」

ホーク「分かってるよ」

ミゲル「待て、少し呼吸を整えてから」

タンタンッ

ホーク「ゼェゼェ…!」

ウォーリー「ふっふっ!」

ミゲル(二人とも練習に熱くなりすぎて、全然耳に入っていない…まあ、これはこれで、良い傾向だ)

ウォーリー「そろそろ休憩しよう」

ホーク「ああ、流石に限界だ」

ジムメイト達(あの二人、バケモノだろ…一体、何時間まともに休憩なしで動いてんだ)

ガチャッ

ミゲル「ん?君たちは…」

扉が開かれると、その先には4、5人ほどの美しい女性が立っていた

ホークガールズ「ホーク!久しぶり!」

ホーク「みんな…」

ホークガール1「この間の試合、見たわよ!」

ホークガール2「凄いじゃない、圧倒的だったわ」

ホーク「ハハハ!そうだろ?」

ホークガール3「復帰したなら私たちを呼んでよ」

ホークガール4「また応援してあげるわ。今度の試合は一緒に入場しましょ?」

ホーク「ああ。君たちが望むなら、それでも良いぜ」

ホークガール5「それと久しぶりに私たちと良いこと、しない?」

ホーク「…………」

ホーク「ごめんよ皆、おれ実は…EDになっちゃって」

ホークガールズ「ッ!?信じられないわ…あのホークが!?」

ホーク「オレがボクシングを再開したのも、もう一度エクスタシーを取り戻すためなんだ」

ホークガールズ(病院に行ったほうが早いんじゃ…)

ミゲル「キミ達が考えてる事は大体わかる。だがホークの精神的ダメージは尋常じゃない」

ミゲル「彼の治療はボクシングで、鷹村に勝つしかない。それしか彼が復活する方法はないのだ」

ホーク「ごめんよ、オレは必ず鷹村をぶっ殺して…」

ホーク「またみんなを気持ちよくさせるから、もうちょっと待っていてくれ」

ホークガール1「そう、寂しいわね」

ホークガール2「試合が決まったら、また呼んでね」

ホーク「ああ、勿論さ」

ホーク「それと皆、どうしても欲求不満なら、変わりに別に相手がいるぜ」

ホークガール3「ええ?言って置くけどホーク以外の男は勘弁よ」

ホーク「あそこにオレのブラザーみたいなのがいる」

ホークガールズ「ブラザー?」チラッ

ウォーリー「え、ぼく?」

ホークガールズ「……」

ホークガール1「あら、かわいいボーイね」

ホーク「ああ見えて、遠いお国の国内王者だぜ」

ホークガール2「屈強な男は好きよ」

ホークガール3「強い上に、可愛い…最高じゃない!」

ホーク「ハハハハ!良かったなウォーリー…これでオレとお前は、正真正銘の『穴兄弟』さ!」

ウォーリー「…?うん、ホークにそう言われると嬉しい」

ウォーリー「で、僕は彼女たちと、なにをすれば良いの?なにをすればホークと兄弟になれるの?」キョトン

ウォーリー(なんだろ穴兄弟って。ゴルフでもするのかな?)

ウォーリーは無垢な表情で、首を傾げる

ホーク「なんだよ~察しが悪いなぁ」

ホークガールズ(やだ、超純粋)

ホーク「お前なぁ、もう17だか18歳になるんだろ?いい加減に察したらどうだ」

ホーク「耳を貸せ」

ウォーリー「うん」

ウォーリー「…………」

ウォーリー「~~~~ッ///」プシュゥゥ

ウォーリーは顔を真っ赤に染める
いつになく落ち着きがなく、目を泳がせる

ウォーリー「ぼ、ぼくは…そういうこと、故郷の女の子と、するって…き、決めてる、から…」ドキドキ

ホークガール1「やだ、顔が真っ赤よ~」

ホークガール2「オー、プリティー!」

ホーク「なんだお前、彼女いたのか?それとも気になる女でもいるのかい?」

ホーク「だったら今のうち経験しておけ!女をイカせるには経験を積むしかないのさ!」

ホーク「みんな!兄弟の筆下しを手伝ってやるんだ!」

ホークガールズ「オーケー!」

ウォーリー「もう!ホークのバカ!」ダダッ

ウォーリー「ミゲル!ぼく、またロードワークに行ってくるよ!」

ホーク「待てウォーリー!お前も真のエクスタシーを知っておく義務があるぜ!!」ダダッ

逃げるようにウォーリーは走り去り、ホークはウォーリーの背中を追う

ミゲル「……」

ミゲル(下品極まりない最低な会話ではあったが…ホークに笑顔が戻ってきたな)

ミゲル(試合に勝った影響か…いや、それだけじゃない)

ミゲル(自分を支えてくれる同じボクサーが、仲間が出来たからだ)

ミゲル(考えてみれば以前のホークは、私や女以外とはつるまなかった)

ミゲル(彼は孤独だったのかもしれない)

ミゲル(精神的に安定してきた今、そろそろ次のステップへと進む必要があるな)

(数日後)

ミゲル「ホーク、次の試合が決まったぞ」

ホーク「ついに来たか」

ミゲル「場所はニューヨークの会場」

ホーク「ほう、それで?相手は」

ミゲル「元WBCミドル級世界チャンピオン…」

ミゲル「デビッド・イーグル」

ホーク「っ!!あいつか…」

ミゲル「流石に知ってるか」

ホーク「ずっと前、ウチに来たよ…オレの心配をして様子を見に来た」

ホーク「優等生気質の善人で、気にいらない奴だった」

ホーク「思い出したらイライラしてきちゃったよ…ああ、ブチ殺してぇ…」

ミゲル「フフフ、そうか」

ミゲル「ホーク、やはりキミは、段々と元気を取り戻してるようだね」

ホーク「ん?そう見えるかい」

ミゲル「ああ」

ホーク「……」

ミゲル「さて、イーグルのファイトスタイルを知っておくために、ビデオを見る必要がある」

ミゲル「鷹村VSイーグルの試合をな」

ホーク「ッ!!…!!?」ドサッ

ホークは思わず腰が砕けてしまう
だがミゲルは、そのまま喋り続ける

ミゲル「復帰戦は見事な物だった。そして徐々に、以前の活気を取り戻しつつある」

ミゲル「さらなるステップを進むには、鷹村の姿を、ビデオで確認しておく必要がある」

ホーク「」ガクガクガク

ミゲル「ホーク、いつまでも恐怖心に負けてる場合じゃない」

ミゲル「その目で!鷹村の姿を見るんだ!」

ミゲル「気持ち良くなりたいんだろ?」

ホーク「はぁはぁ…ぜぇぜぇ…」ガクガク

ホークは両足をガクガクと震わせながらも、立ち上がる

ホーク「分かった…見るよ。ビデオ」

ミゲル「これが鷹村VSイーグルの試合だ」

ホーク「……」

ミゲル「見てのとおり、彼はかなり高等なテクニックを持っている。元五輪金メダリストでもある。キャリアも長い」

ホーク「……」

ミゲル「平たく言ってしまえば、前に闘ったラビットソンの強化版と思えばいい」

ホーク「……」

ミゲル(ふむ、思ったよりも静かに視聴しているな…もっと発狂するんじゃないかと思ってたが)

(ビデオ視聴終了後)

ミゲル「彼は全体的に安定感もある。前の試合の様に、簡単にはいかない」

ミゲル「特訓を積み重ね、力を底上げするしかない」

ホーク「……」

ホーク「」ドサッ

ミゲル「!?」

ミゲルが解説をしていると、ホークは突如倒れる

ミゲル「おい!しっかりしろ!」

ホークの大きな体を抱えるミゲル
そのホークの顔面は青ざめていて、口から泡を吹いていた

ホーク「……ん」パチッ

ホーク「医務室か」

ホーク「……」

ホーク(そうだ。たしかビデオを見てたら気を失ってしまったんだ)

ホーク「た、たた、たか…鷹村…」ガクガク

ホーク「いま、何時だ」チラッ

ホーク(明け方4時…)

ホーク「れ、練習だ。練習しよう」

ホーク「少しでも、不安を…」

ホーク「サンドバックを叩こう」

ドスン!ドスン!ボゴォ!ドゴォ!

ホーク「フン!フン!フン!」

ドスン!ドスン!ボゴォ!ドゴォ!

ミゲル「む、今日も朝から気合が入ってるね」

ミゲル(しかし朝からサンドバック打ち…いつもと練習の順序が違うな)

ウォーリー「ん?ねえミゲル、床が赤くなってる…」

ミゲル「なに?」

ウォーリー「ほら、ホークの叩いてるサンドバックの下の床」

ミゲル「これは…一体…」

ミゲル「……ハッ!」

ミゲル「ホーク!いますぐやめなさい!」

ホーク「フン!フン!フン!」

ドスン!ドスン!ボゴォ!ドゴォ!

ミゲル「ウォーリー!一緒にホークを抑えてくれ!」

ウォーリー「…?うん、わかった」

ウォーリー「ホークごめん!練習止めて!」

ミゲル「やめるのだホーク!」

ホーク「離せ、離せぇぇ!!!」

ホーク「練習してないと、気がおかしくなっちまいそうなんだよぉ!!」

ミゲル「うおぉ!?」

ミゲルは軽々と吹き飛ばされるが、ウォーリーは辛うじてホークにしがみ付く

ウォーリー「つ、強い…」ググッ

ウォーリー「ホーク!頼むからやめて!」

ヌルッ

ウォーリー「え、いまの」

ウォーリー「っ!?ホーク、血が!血が出てるよ!」

ホーク「ぜぇぜぇ…なに?」

ツーッ…ボタボタ…

ミゲル「いますぐ拳を見せなさい!グローブを外せ!」

ミゲルは強引にホークから、グローブを奪う
そしてホークの左右の拳を、確認する

ミゲル「……遅かった」

ホークの拳は、真っ赤に染まっていた

ウォーリー「ホークの拳…真っ赤…これ、マズイ…」

ホーク「ぜぇぜぇ…大げさなんだよ!いちいち!」

ホーク「早くグローブを返せ!」

ミゲル「残念だが当分は、サンドバック叩きも、ミット打ちも禁止だ」

今日はここまで

拳の治療後、ミゲルと今後の事を話し合う

ホーク「痛てて…急にジワジワと痛みが…」

ミゲル「アドレナリンのせいで痛みが緩和されていたが、時間が経って、その影響も薄れてきたのだろう」

ホーク「なるほど、これじゃミット打ちもサンドバックも叩けない訳だ」

ホーク「今後、オレはどうすればいい?」

ミゲル「一ヶ月間は治療に専念」

ホーク「試合は二ヵ月後なんだろ?何もせずに一ヶ月を過ごすのか」

ミゲル「一ヶ月間の準備期間も残っている。君なら遅れを取り返すのに、さほど苦労はしないだろう」

ミゲル「グローブを付けれない期間は、ひたすら走り込みだ」

ホーク(走りこみもずいぶん慣れた。打てない期間は陸上選手以上に走りこまないと)

ミゲル「言っておくが寝れなくても、深夜での走りこみは禁止だぞ」

ホーク「なぜだ!打てないなら徹底的に走り続けるしかないだろ!」

ミゲル「キミはオーバーワークをして拳を痛めた。足でも同じ事を繰り返すつもりか?」

ホーク「~~~~ッ!!」

ミゲル「どうしても不安ならシャドーボクシングをやればいい」

ホーク「シャドーだけじゃ足りない!」

ミゲル「言うとおもったよ。そこで私にも考えがある」

ホーク「なんだ?」

ミゲル「これからは毎日毎晩、ボクシングの試合のビデオを見るんだ」

ホーク「ボクシングのビデオ…」

ミゲル「これも勉強だ」

ミゲル「それと鷹村慣れするために、鷹村の試合を特に注目してみるんだ」

ホーク「それは…気がすすまないな」

ミゲル「以前の君なら、『鷹村』という名前を聞いただけで震えていただろ?」

ミゲル「だが今はどうだ?」

ホーク「あ、そういえば…」

ミゲル「キミは前進している。心も体も」

ミゲル「だから今度は、目に焼き付けるのだ。鷹村守の姿を」

ホーク「鷹村の…姿を…」

ミゲル「それとこの度、合宿を行おうと思う」

ホーク「合宿?ドコへ旅行に行くんだい」

ミゲル「ちょっとしたバカンスさ」

ホーク「ほう。ヌーディストビーチにでも行くのかな?」

ミゲル「いや、もっと珍しい場所さ」

ホーク「フーン、まあいい。楽しみにしてるよ」

(数日後・インドネシアのとある島)

ミゲル「ついたぞ」

辺りには美しい海、おいしい空気に溢れる大自然、ゴミ1つない白い砂浜、そして暑い日差し

ホーク「……なるほど、確かに珍しい場所だ」

ミゲル「ここはウォーリーの故郷。合宿はこの場所で行う」

ウォーリー「みんなー!ただいまー!!」

先住民たち「おかえりウォーリー!」

ミゲル「ちょうど1ヵ月後、ウォーリーの防衛戦がある」

ホーク「一ヶ月…オレの拳が復活する時期か」

ミゲル「今日はパーティーを開く。特訓は明日からだ」

ホーク「パーティー?」

(夜の食事会)

ウォーリー「みんな!僕は必ず次の試合勝ってみせるよ!」

先住民たち「うおお!いいぞウォーリー!!」

先住民たち「ウォーリー!ウォーリー!ウォーリー!」

先住民1「はい、これ食べて!」

ホーク「あ?ああ」

ホークの目の前に、たくさんの食事が用意される

ホーク「……」

ウォーリーを含む、先住民たちは楽しく踊り歌っている
その姿を、食事を取りながら眺めるホーク

ホーク「……」

ホーク(なんとも…不思議な気持ちになるぜ)

ホーク(旅行自体が初めてだからか?いやそれだけじゃない)

ホーク(何かここは、オレの故郷には決して無い、温かみがある)

ミゲル「フフフ、いい場所だろ?」

ホーク「ああ。マイタウンとは大違いだ。実に気持ちが和らぐ」

ミゲル(闘いに身を投じるだけではダメだ。時にはホークの心を癒すのも大事だ)

ミゲル(ホークは、今まで感じた事のない感覚を覚えてるだろう)

(次の日の朝)

日の出とともに、三人は砂浜に立つ

ミゲル「さあ、二人ともロードワークの時間だ」

ミゲル「砂浜の走りこみは難しい。ホークは、しっかりとウォーリーの背中を追うんだ」

ホーク「……??おいおいミゲル、このオレがウォーリーに走り負けると思ってるのかい?」

ミゲル「いまに分かる」

ミゲル「さあ、行くんだ!」

ミゲル「行くよホーク!」ザッ

ホーク「おう!」ザッ

ザクザクザク!

ホーク「んん??」

ウォーリー「ぜぇぜぇ」

ホーク(なぜだ…いつもならオレが先頭きってるのに)

ホーク(それにしても、何て走りづらいんだ)

ホーク「な、なるほど。ミゲルの言ってた意味が分かった気がする」

陽が上って来たころ、二人は砂浜からジャングルへと進む

ウォーリー「さあ今度はここでロードワークだよ!」

ホーク「ふっふっ!」

ホーク(ここも足場が安定していない…走りづれぇぇ…!)

ホーク(ドロでベチョベチョしたり、急にまともな道になったり…草木ばかりある道だったり…)

ホーク(そ、それに…日陰にいるのに…暑い、暑い…!!)

ウォーリー「ははは!遅いよホーク!」

ホーク「くそ…さすがアイツのホームグランドだけあるな…」

ウォーリー「あ、上から何か落ちてくるよ」

ホーク「あ?ぐあ!?」

ドサッ!

猿「ウキィ!」

ウォーリー「あ、友達だ!久しぶり~!」

ホーク「友達を叱っておけウォーリー…」

ミゲル「午前中はずっと走っていたようだな。どうだ、ここでの練習は?」

ホーク「ウォーリーが天才だと言われる理由がよく分かったよ」

ミゲル「そうか。だが天才は君も一緒だ」

ミゲル「午後からは、ウォーリーはグローブつけての練習」

ミゲル「そしてホーク、キミは腹筋と縄跳び、水中でのスクワット、シャドーをやってもらう」

ホーク「ひたすら基礎練習ってやつか」

ミゲル「拳が回復してきたら水泳もしてもらう。水泳は全身を使うから良いトレーニングになる」

ホーク「そうか、なら早く拳を治さないとな」

夜になり、宿舎に戻る

ミゲル「今日のトレーニングはここまでだ」

ホーク「流石に、もうクタクタだ」

ミゲル「夕食を終えたら、私の部屋に来て欲しい」

~~~

ホーク「おっ…なんだ。テレビがある」

ミゲル「電源はバッテリーからだ。貴重だからな、あまり無駄使いするなよ」

ミゲル「君にはビデオを見てもらう」

ホーク「なんだい、AVでも観るのかい?だったらウォーリーも呼ばないと」

ミゲル「AVよりも刺激的な物さ」ガチャッ

ホーク「む、これは…ボクシングの試合…」

ホーク「っ!?た、たた、鷹村…」ガクガク

ミゲル「そうだ。鷹村戦の試合だ」

ミゲル「目に焼き付けろ…彼の試合を」

(次の日の朝)

ウォーリー「ふわぁぁ…さーて、今日も頑張る」

ウォーリー「わわ!ゲロがまき散らされてる!?」

ウォーリー「だれか酒に酔って、吐いちゃったのかな」

ホーク「オレのゲロだ」

ウォーリー「え!どうしたのコレ?」

ホーク「……ホラー映画を見すぎてな。あまりの恐怖に吐いちゃったよ」

ウォーリー「??」

ホーク「さあ、いくぞ」

ウォーリー「大丈夫?」

ホーク「もう大丈夫だ」

ホーク(今夜もゲロを吐き散らすハメにはなりそうだがな)

(3週間後)

砂浜を走る二人
ウォーリーは防衛戦を一週間後に控える

ホーク「ぜぇぜぇ」ダダッ

ホーク「おらどうした!完全にオレが逆転しちまったぜ!?」

ホーク「試合前なんだろ?そんなんで大丈夫なのかい?」

ウォーリー「ぜぇぜぇ待ってよホーク!ペースが早すぎるよ!」

ホーク「ぜぇぜぇ…どうした、お前のホームグランドだろ!?」

~~~

ホーク(ジャングルの走り込みも慣れたぜ)

猿1「ウキィ!」

ホーク「おっと危ない」サッ

猿2「キキキッ!」

ホーク「甘い甘い、オレをおちょくるなんざ100年早い」

ウォーリー「ひゃっほう!」

ホーク「おいおい、ターザンはずるいぞウォーリー!ロードワーク中だぜ!」

ウォーリー「ワードワーク終わったら、次はこの先にある、大きな川でスイミングだよ!」

ホーク「ああ!」

(深夜)

ミゲルとホークは、共にビデオを観戦する

ミゲル「……」

ホーク「……」

ミゲル「どうした、今日は吐かないのか?」

ホーク「いまにも吐きそうだよ…くそ、あんなに果物たべなきゃ良かった…」ガクガク

ミゲル(体は震えている。だがいつもなら、もうとっくにゲロを吐き散らし、倒れてる頃だ)

ミゲル(前進している。ホークは確実に前進している)

ホーク「……」ガクガク

(数時間後)

ミゲル「今日のビデオ鑑賞は終わりだ」

ホーク「ああ、寝る前にちょっと…散歩してくる」

ミゲル「あまり遠くへ行くなよ」

ホーク「分かってる」

(ジャングルの中)

ホーク「まったく。毎晩のように、鷹村主演のホラー映画を見るのはキツイぜ…」

ホーク「ん?ウォーリーじゃねぇか」

ウォーリー「あ、ホーク!」

ホーク「どうしたんだい。こんな深夜に」

ウォーリー「なかなか寝付けなくて、ちょっと散歩」

ホーク「そうか。オレもそんな所だ」

ウォーリー「一緒に歩こうか」

ホーク「おう」

ホーク「ん?おい、アレ見ろ」

ウォーリー「??」

ウォーリー「……」

ウォーリー「はわわわ///」

ホーク「ほう、良いね良いね。野外プレイは燃えるよな」

ホーク「……」

ホーク「オレも…女を抱けるようになりたい…一生不能のままは、イヤだ。絶対イヤだ」

ホーク「そのためには、鷹村をブチ殺さないと…」

ウォーリー「はわわわ///す、凄い…」

ホーク「ウォーリー。防衛戦が終わったら、好きな女に告白しろ」

ウォーリー「え?」

ホーク「しっかりその口で伝えるんだ」

ホーク「キミと朝まで気持ちよくなりたいと、な」

ウォーリー「そんな事いえない!順序メチャクチャ!」

ホーク「ハハ、男と女はヤリ合ってなんぼさ」

今日はここまで

(合宿終了日)

ウォーリー「じゃあね、みんな!」

原住民たち「ウォーリー!がんばれー!」

ホーク「良い場所だった。また来たいな」

ミゲル「ああ、インドネシアでの国内防衛が続く限りはまた来るだろう」

ミゲル「それで、ホークよ。拳の方はどうかな?」

ホーク「痛みなんざとっくに引いてるよ」

ミゲル「そうか。ならばアメリカに帰ったら、グローブを付けての練習をしよう」

ホーク「やっとか。毎日、基礎練習間ばかりで、いい加減飽き飽きしてた所だ」

ミゲル「まずはウォーリーの試合をみて、しっかり勉強しなさい」

(インドネシア・フェザー級王座決定戦・試合当日)

ウォーリー「今日はどんな風にやっていけばいい?」

ミゲル「今日は、『半分フリーダム』だ」

ウォーリー「半分?」

ミゲル「そうだ」

ウォーリー「んー、わかったよ。やってみる」

カァァン!!

ウォーリー(ゴングなった!)

挑戦者「フン!」シュシュッ

ウォーリー(しっかりガードして…ダメージを防ぐ)

挑戦者(ガッチリガードをしてるが、噂じゃとんでもない事をしてくるとも聞く)

挑戦者(油断できない!)

ウォーリー(半分フリーダム…半分フリーダム…)

ウォーリー「……」

ウォーリー「よし、これで行こう」

挑戦者「ん、あの構え…」

ミゲル「なるほど、そう来たか」

ウォーリーの左腕がだらりと下げ腹部に添え、右腕は上げたまま口元で添える

ミゲル「ヒットマンスタイル…フリッカーで行く気か」

ウォーリー(相手のジャブを避けて)サッ

挑戦者「くっ…早い!!」

挑戦者(体ごと豪快に避け、オレの視界から消えた)

挑戦者(横か?オレの真横へと移動したのか)

ウォーリー「……」シュッ

スバァァン!

挑戦者「ぐぁ…!」

ウォーリーの伸びていく、しなやかなジャブが挑戦者の頬にヒットする

挑戦者(は、速い!ジャブも…足も…!)

スバァァン!スバァァン!スバァァン!

ウォーリーはグルグルと挑戦者の周囲を、円を描くようにして動き、確実にフリッカージャブを打ち込んでいく

挑戦者「ぐぅ…がぁぁ…」ガクガク

相手セコンド「な、なんだあいつ…」

挑戦者は早くもダメージが深刻な物となる
両手のガードもゆるくなっていく

相手セコンド「意識をしっかり保て!ガードをしっかり!」

ウォーリー「……」ピタッ

挑戦者(…?なんだ、急に動きが止まった)

ウォーリー「……」ニヤッ

ウォーリーはニヤリと微笑むと、クイクイと手首を動かして、相手を挑発する

挑戦者「!?……っ!?!?」

相手セコンド「なめやがって…おい!負けんな!行け!」

挑戦者「ガキが…図に乗るな!」ダダッ

挑戦者「フン、フン!」

頭に血が昇る挑戦者。
基本を忘れずに、左ジャブ、そして右ストレートと、ワンツーを素早く打つ

だが、二発のパンチはウォーリーには当たらない

挑戦者(なんだ!?また消えたぞ!)

相手セコンド「おい…なんだあのスウェー!?」

挑戦者「なっ…!なんだあの体勢は…!?」

ウォーリーは体を大きくのけぞって避ける
同時にのけぞった体勢から、片腕を振り上げる

ボゴォォン!

その拳は挑戦者のアゴに直撃する

ウォーリー「……」ニヤッ

挑戦者「がぁ…ぁぁ…」ガクガク

挑戦者のマウスピースが鮮血と共に、跳ね上がっていく

挑戦者(駄目だ…こんなクソガキに…舐められたままじゃ…)クルッ

意地でも倒れない挑戦者
歯を食いしばって振り返ると、やはりウォーリーの姿がいない

挑戦者「どこだ…!」

相手セコンド「うしろだ!うしろ!」

挑戦者「そっちか!」クルッ

スパァァンッ!スパァァンッ!

挑戦者(またフリッカージャブが…!)

後ろに振り返った瞬間、あっと言う間に挑戦者のガードを、鋭いフリッカーでこじ開ける

ウォーリー(ガードが開いた、これはチャンス)

ウォーリー「グッバイ」

ズドォォン!!

ウォーリーの強烈な右ストレートが、挑戦者の顔面を襲う

挑戦者「っ!!?」

ドサッ!

そのまま挑戦者を、リング場外へと叩き落す

審判「これは…」

審判「……」サッ

カンカンカンカーン!

審判「勝者、ウォーリー!」

ウオオオオオ…!!!

観客が驚きとも歓喜とも言える声が会場に響く

相手セコンド「おい、しっかりしろ!」

挑戦者「」

ミゲル(相手選手はタンカーに運ばれ退場か…まあ、1ラウンドでの出来事だ。命に別状はあるまい)

ウォーリー「やったよミゲル!防衛成功!」

ミゲル「ああ、見事だよマイボーイ!!」

ホーク「……」

ホーク(1ラウンド、55秒KO勝ち……)

ホーク(1分もかからずに倒しやがった。全く驚きだ。仮にも相手はランキング1位の国内ランカーだぜ?)

ウォーリー「あ、ホーク!やったよ!勝ったよ!」

ホーク「流石だぜブラザー」

ウォーリー「んー、でも出来ればホークみたいに10秒で相手を倒したかったな~」

ホーク「オレのは2ラウンドかかったぜ」

ウォーリー「でも、本気出してからの10秒だったでしょ?前の試合は」

ホーク「まあな」

アメリカに帰ってからも、さっそくジムでトレーニングを積む二人

ホーク「フン!フン!」

ミゲル「いいぞ!その調子だ」

ミゲル(久しぶりのミット打ちだが、衰えていない…それどころか、パワーアップしている)

ミゲル(基礎練習を徹底したかいがあったな)

ホーク「……」ピタッ

ミゲル「どうした?」

ホーク「すこし、試したい事が」ブラン

ミゲル「む、その構え…」

ホーク「オレもやってみるよ」

スパァァン!スパァァン!

ミゲル「おおお…フリッカージャブ…!」

ホーク「うーん、難しいねこれ」

ミゲル「その割には、なかなかサマになっている様だが。実は密かに練習でもしてたのかな?」

ホーク「いいや、全くの初めてだよ」

スパァァン!スパァァン!

ミゲル「うん!良い感じだ」

ホーク「フン!フン!」

ミゲル「もっと力を抜いて、スナップをきかせて!」

スパァァン!スパァァン!

ウォーリー「あ!ホークがフリッカーやってる!」

ウォーリー「ぼくもフリッカーやる!」

スパァァン!スパァァン!

ホーク(だけどやっぱり、フリッカーは打ちづらいな…試合ではどうしようか…)

(4週間後・試合前日)

ウォーリー「ホーク、明日の試合がんばってね!」

ホーク「ああ、必ず勝ってくるよ」

ミゲル「計量も問題なくクリアだな」

ホーク「腹がへった。レストランへ行こう」

ミゲル「うむ」

オオオォォ…!

部屋の中にいた記者たちが、驚きの声が響く

ミゲル「ん?あれは…」

ホーク「来たな…」

イーグル「……」

ホーク・ミゲル(デビッド・イーグル…!!)

パシャッ!パシャパシャッ!

カメラのシャッター音が鳴り響く

イーグル「やあホーク、久しぶりだね」スッ

ホーク「フン」

手を差し伸べるイーグル
だがホークはそれを無視して帰っていく

ホーク「ミゲル、早くレストランへ行こう」

ミゲル「すまないな、イーグルよ」

ホーク「ウォーリー!!そんな奴と握手するな!」

ウォーリー「え、どうして?良い人だよイーグル」ギュッ

イーグル「……」ニッコリ

ホーク「おい、オレのブラザーから手を離せ。そのニヤケ面もやめろ。殺すぞ」

イーグル「オー…ソーリー」パッ

ウォーリー「??」

(数時間後・記者会見)

記者「ミスターイーグル、この度の試合について何か」

イーグル「あのブライアンホークと闘える事が、今でも信じられない」

イーグル(あの壊れてしまった、ブライアン・ホークが…良くぞここまで復活を…)

イーグル「彼は凄いボクサーだ。失礼のないように、全力尽くすつもりだ」

記者たち「オオオォォ…」

記者「ありがとうイーグル。では次に、ミスターホーク、この度の試合について何か」

ホーク「イーグルはね、前にオレが鷹村に負けてヘコんでた時に、心配して声をかけに来てくれたんだ」

ホーク「しかも、わざわざウチに来てね」

記者たち「そんな事が…さすが紳士イーグル」

ホーク「ああそうさ、彼は優しくて素晴らしい男だよ」

ホーク「だから彼に恩を返したい」ガタッ

そういうとホークは立ち上がる

イーグル(……ん?)

ホーク「イーグル、ボクシング人生も楽じゃないよな?」

ホーク「だから一生楽にしてやるよ。明日、お前のリングが墓場となる」

ホーク「今のうち、遺書でも書いておくんだな」

そういうとホークは親指を下に降ろす
イーグルの顔をジッと、にらみながら

記者たち「」

イーグル「……」

相手トレーナー「なんて失礼な男だ…どうやら性格は相変わらずの様だな」

今日はここまで

夏休みももう半分が過ぎ去った 野原家

みさえ「しんのすけ! 風間くんが来たわよ!」

しんのすけ「母ちゃんが出迎えれば?」

げ ん
こ つ

みさえ「あんたの友達でしょうが!」

ガチャ

しんのすけ「ローンが後23年残っている家ですが、どうぞ」

風間くん「入りにくくなる様な事言うなよ・・・」

居間には、野原家が勢ぞろいしていた。

風間くん「みなさん、お揃いで」

ひろし「何たって、ウィーズリーさんには一月も息子が世話になるっていうんだし、俺の方からも一言挨拶しとかなきゃ」

風間くん「ここに迎えにくるって手紙が来たけど、どうやるんだろ?」

しんのすけ「シャカシャカパウダーじゃない?」

風間くん「それをいうならフルフル・・・じゃなくてフルパウダーだろ?」

みさえ「で、何なの?その振るパウダーって?」

風間くん「魔法使いの家の暖炉間を移動出来る、魔法の粉ですよ。」

ひまわり「でもうちには、暖炉なんて・・・あるのはローンだけ・・・」

ひろし「悪かったな!」

そのとき、ピンポンピンポンピンポーン

「……ちょっと待って。あなたたちって何者?」

ランダムが扉を開いたのを見て、女が訝しげに言った。ライラの表情がむっとしたものに変わる。

「それはこっちの台詞よ。……あの緑色の目玉を相手に、一人で大立ち回り?
あんたが『一族』じゃないなら、シデさんやダナちゃんじゃなきゃできないわよ」

「済まない、仲間が失礼をしたが……彼女の疑問は、私も同じだ。何者だ?」

90-魅力(22)×3=24以上で成功

投下します
今回は長く、大体30レス近くあります

(翌日・ニューヨーク)

実況「さあ、今日はニューヨークよりミドル級の10回戦…2匹の鳥の、命をかけた闘いが始まろうとしている!」

ワァァァァ!!!

「イーグル!イーグル!イーグル!イーグル!」

実況「会場はさっそく、デビッド・イーグルの声援がコールされています!!」

~~~~~

そのころ、鴨川軍団はジムでテレビを見ていた

一歩「すごい人気だなイーグルさん」

青木「紳士の方が人気だな」

木村「正統派って感じだもんな」

板垣「理想的なアスリートって感じでカッコいいですよね」

鷹村「フン、真のアスリートは実力が全てだ。正義の味方を応援したけりゃ、ヒーローショーでも見てろってんだ」

青木「あれ、意外にもホークの応援するんですか?」

鷹村「別にどっちの見方でもねぇよ」

鷹村「ただこの試合は…興味深い。今まで見てきたどの試合よりも」

司会「青コーナー!ブライアン!ホォォォク!!」

煙幕と共に現れるホーク
そして美人達が、ホークを囲みながら歩んでいく

青木「あれ?ホークガールが復活してる」

木村「前の試合には出てこなかったよな」

板垣「復帰戦に勝って、調子にのってやがる…!」

一歩「……」

一歩(でもなんだろう、やっぱり復帰前のホークとは雰囲気が違う)

鷹村「……だがやっぱり、雰囲気が違うな」

一歩「鷹村さんも、そう思いますか?」

鷹村「ああ。それにあの野郎…」

鷹村「あんなに美人に囲まれて、オレ様なら集中できなくなる」

鷹村「あいつ試合中、おっ立てたままヤルつもりか!?」

一歩・板垣「」ガクッ

木村「まあ確かに、集中できなくなるな。目のやり場が困る」

青木「そうか?女からの応援ってのは力にもなるぜ?」

鷹村「まあ何にしても」

鷹村「前の試合よりも、目に光があるな」

司会「赤コーナー!デビッド…イーグルー!!」

ウオォォォォォ!!!!

一歩「いよいよ始まる…」ドキドキ

ホーク「みんな、オレはまだアソコが不能だけど…」

ホーク「どうかオレの勇姿を見届けてくれ」

ホークガールズ「オーケェーイ!」

ミゲル「相手は強敵だ、油断するなよ」

ホーク「わかってるよ。あの鷹村ですら倒すのに8ラウンドかかったって言うしね」

審判「両者、前へ」

ホーク「……」

イーグル「……」

カーン!

実況「いま、ゴングが鳴った!!」

ホーク「……」グッ

イーグル「……」グッ

実況「ゴングは鳴ったが、二人ともまだ動かない!」

実況「得物を狩る為に、静かに集中を高める!」

ホーク(オレはお前を殺すために…死に物狂いで、あのビデオを何度も再生した)

ホーク(鷹村VSイーグルの試合を)

ホーク(ゲロを吐きながら、何度も!)

イーグル(意外にも、冷静にコチラの動きをうかがっているな)

ホーク「……」

ホーク(研究してきたのは、何も鷹村だけじゃない)

ホーク(お前のファイトスタイルも、何度もこの目で見てきた…あのビデオでね)

ホーク(始めの2~3ラウンドは、あまり本気を出さない)

ホーク(それは相手のレベルを肌身で計るためだ。そして、それに対応するために考え行動する)

イーグル「……」

イーグル(本当にあのブライアンホークなのか?彼は、慎重に相手をうかがうタイプではない)

イーグル(相手を挑発する事はあっても…)

イーグル(まるで僕の全てを見通しているような目)

ホーク(お前のパターンはもう分かってんだよ)

ホーク(体力は無駄にしない。使うべき時に、一気に開放する。いずれ闘いの幕は必ず下ろされる)

ホーク(……そうだよね。ミゲル)チラッ

ミゲル「うむ」コクッ

実況「1ラウンド開始から2分が経過!しかし未だに膠着状態!」

ブゥゥゥ!ブゥゥゥ!

実況「おおっと!会場もたまらず、ブーイングが鳴り響く!」

ホーク(こいつはギアを全力ださない。後のために隠し持ち、相手をあとで驚かせる)

ホーク(まあブーイングは気にしないが、さすがにこんな事をずっと続けるのは、ちょっと飽きちゃうぜ)

ホーク(早く来てくれよ。お前のトップギアでな)

イーグル(このまま1ラウンドを終えてしまいのはファンに申し訳ない)

イーグル「フン!」

シュッシュッ!

実況「イーグルの左ジャブが炸裂!」

ホーク(やっときたか)

実況「ホーク、がっちりとガードを固める!」

イーグル「フン!フン!」

実況「ここでイーグルの得意の!左右のワンツー!」

ボォン!ボォン!

ホーク(素晴らしいジャブとストレート。一級品だよ)

ホーク(だが、鷹村はこんなものじゃない)スッ

ガッチリとガードを固めた、ホークの腕がわずかに動く
その瞬間を、ミゲルは逃さない

ミゲル「ノー!」

ホーク「っ!!おっと…いけない…」

イーグル「……??」

イーグル(攻撃しようとして、またガードを固めなおした?)

イーグル(らしくないぞ、ホーク)

カンカンカンカーン!

実況「ここで1ラウンド終了!」

以降、ホークはまともな攻撃をせずにひたすら、イーグルの攻撃を耐えてきた
そして4ラウンドが終わった

観客「ブゥゥゥ!ブゥゥゥ!」

実況「早くも4ラウンド終了!しかし試合内容は一方的にイーグルが殴り、ホークがガードの一点張り!」

イーグル「ぜぇぜぇ…」

相手セコンド1「イーグル、手の内を見せすぎてないか?」

イーグル「何もせずに、ジッと伺いつづける方がイヤだ。それはボクシングファンに申
し訳ない」

イーグル「それに何もしないのでは、いずれ審判にも注意をうける」

相手セコンド2「それはもっともだが…熱くなりすぎてないか?」

相手セコンド1「らしくないぞイーグル。冷静になるんだ」

イーグル「ああ…」

~~~~~~~~

ホーク「そうとうカッカしてるね。珍しいよ、あの優等生が」

ミゲル「うむ、さすがに痺れをきかし、徐々にイーグルもごり押し気味になって来てる」

ミゲル「そしてその分、体力も消費している」

ホーク「ああ、かなり息が上がってたよ。汗もびっしゃりだった」

ホーク「でもさ、ミゲル」

プルプルと小刻みに震えるホーク

ホーク「カッカしているのはオレも一緒なんだ…そろそろ良いよな?」

ミゲル(本当は5ラウンドも我慢させたかったが…流石に無理か。ホークの気性を考えると)

ミゲル(だがこの4ラウンドまでで、だいぶ相手のペースを乱した)

ミゲル(何より…ホークを抑える事で、かえって闘争本能を引き出させやすくなった)

ミゲル(以前の、あの荒々しい闘いをまた見れる)

ミゲル「いいぞ、暴れてきなさい」

ホーク「よし、それでスタイルは?」

ミゲル「まだ基本通りに」

ホーク「……まあ良いだろう」

ビー!

審判「セコンドアウト!」

ホーク「終わらせてくるよ」

ミゲル「ああ、君なら1ラウンドで相手を倒す力がある。自信を持て」

審判「ボックス!!」

イーグル(あのガード…どうやってこじ開けようか…)

ホーク「……」ダダッ

イーグル「!?」

実況「おおっとホーク!全力で立ち向かった!!」

ホーク「フン!!!」

ボゴォォン!!

強烈な右ストレートが、イーグルを襲う

イーグル「……!!」

しかし、辛うじてショルダーブロックでガードする

ホーク(おおっと、いけない。いきなり大砲をうっちゃったよ)

ホーク(それにしても肩でガードが…クク、ビデオで見たとおりの事しやがる)

イーグル(な、なんだこの右ストレート…!こんなの何発も喰らったら…肩の骨が…!)

ホーク(ミゲルに基本とおりにといわれたけど…)

ホーク(あの優等生の歪んだ顔をみちゃったらさ…)ニヤッ

ボゴォォン!!ボゴォォン!!ボゴォォン!!ボゴォォン!!

ホーク(何度でも大砲を打ち込みたくなっちゃうよ!!)

実況「ホーク!これまでの静寂を断ち切り、イーグルを襲う!!」

イーグル「ぐあぁぁ!?」

メキ…メキメキ…!

イーグル(か、肩が…壊れてしまう…)

イーグル(ショルダーブロックは中止だ!もう相手を見計っている場合ではない!)

イーグル(バックして…回避!)

イーグルがとっさに、バックして距離を置く
だがホークとの距離は縮まらない

ホーク「遅いぜぇ?」

イーグル「なっ…速い!!」

ホーク「フン!フン!フン!フン!」

ふと気がつけば、イーグルはロープを背にしていた
ホークの型破りの攻撃がイーグルを襲う

イーグル(想像以上のパワーだ!一瞬でも油断すると、ガードがこじ開けられてしまう!)

ミゲル(うーむ、やはり我慢できなかったか)

ミゲル(だが、いい調子だ。そのまま攻めるんだ)

ホーク「フン!フン!フン!フン!」

ボゴォォン!!ボゴォォン!!

イーグル(耐えろ…耐えろ…)

イーグル(もう慣れた、そして見えてきた)

ホーク「フン!」

イーグル「ここで…右ストレート」

ボゴォォン!

ホーク「オォォ!?」ガクッ

ホークとイーグルの腕が交差され、互いの拳が頬にヒットする

ミゲル「クロスカウンターだと…!?」

観客「オオオオォォォォ!!!」

ホーク「ぐ…ぅぅ…!!」ガクガク

イーグル「……??」

イーグル(なんだ、クロスカウンター1発だけで…ホークはもっと打たれ強いボクサーだと思っていたんだが)

ミゲル(おかしい、ホークならまだやれる)

ミゲル「ハッ!そうか…思い出しているのだ…鷹村からの一撃を」

ホーク(こんな凄い一撃…あいつ以来だ…)

ホーク(鷹村…鷹村…)ガクガク

ミゲル「ホーク!彼は鷹村じゃない!!」

ホーク「っ!!」

ホーク「そうだ…あの優等生が…鷹村のはずない…」

イーグル「フン!フン!」

ボゴォォン!!ボゴォォン!!

ホーク「ぐぅぅ!!」

ホークの一瞬の油断を見逃さない
イーグルのワンツーが、ホークを襲う

ボゴォォン!!ボゴォォン!!

実況「基本通りのジャブと、ストレートの攻撃が続く!ホークの顔は歪んでいく!」

ミゲル「ホーク!ガードだガード!」

ホーク(分かってるよ!分かってるって…でも…)

ホーク(コイツの動きが早く…追いつかない…)

ホーク(こ、こんな…こんな優等生のパンチが…なんでこんなに重い…!)

イーグル「フィニッシュだ!」

ボゴォォン!!

ホーク「ぐぅぅ!!」

実況「イーグルの右ストレート!ホークはたまらず…」

ゴォォン!

実況「リング場外まで叩き込まれる!!」

ホーク「」

ミゲル「ホーク!!」

審判「ワン!ツー!」

ホーク「まだ…やれるよ…」ガクガク

ホーク(ちきしょう、リング場外だと!?このオレが!?)

イーグル「……」

ホーク(なにを見下ろしてやがる)

ホーク「なに見てんだゴラァァ!!!」

実況「辛うじて立ち上がったホーク!怒りの咆哮!」

ホーク「まだやれるよ!!」

実況「ホーク、リングへ上がりポーズを構える!」

カンカンカンカーン!

実況「怒涛の5ラウンド終了!!」

観客「オオオオオオオ!!!!」

実況「観客も待ってたと言わんばかりに、大歓声だ!」

ホーク「ぜぇぜぇ…」ガクガク

ミゲル(まずい、リング場外になったとき、頭部を強打した)

ミゲル(足にきてる…!)

ホーク「こんな感覚…久しぶりだよ」

ホーク「あいつ以来だよ。このオレの足をガクつかせたのは」

ミゲル「うむ、だが奴は鷹村ではない」

ホーク「ああそうだ。奴は鷹村のようなバケモノじゃない。奴の様な悪魔染みたオーラも無い」

ホーク「あんな優等生に負けたくない…イヤだ、イヤだ…」

ホーク「イヤだぁぁぁ!!!」

ミゲル「その意気だ」

ミゲル「闘い方は任せる。だが忘れるな」

ミゲル「奴は鷹村ではない」

ホーク「ああ、分かったよ」ギンッ

ミゲル「ッ!?」

ホーク「どうした?そんな怯えたツラして」

ミゲル「イヤ、気にするな」

ホーク「……」

ビー!

審判「セコンドアウト!」

ミゲル「あの真っ赤な眼…久しぶりに見た」

※イメージ画像
http://imgur.com/iGF1kON

審判「ボックス!」

観客「……!?」ザワッ

イーグル「……!!」ビクッ

会場の誰もが恐怖した
人間のそれとはかけ離れた、悪魔のような表情に

ホーク「ふぅ…ふぅ…」

イーグル「な、なんだあの眼は…」

イーグル(真っ赤に充血しきった眼…何だアレは…)

ホーク「ウオォォアア!!!」ダダッ

ホークは猛然とダッシュして、イーグルに飛び込む

ホーク「フン!フン!フン!フン!」

ボゴォォン!!ボゴォォン!!

イーグル(スピードもパワーも…僕が想像してた以上だ)

イーグル(これでは序盤、どのみちホークのレベルを計る余裕なんて無かった)

イーグル(ガードばかりじゃ駄目だ!カウンターを与えるんだ!)

ホーク「フン!」

イーグル(ここだ!左ジャブを…)

ホーク「ひっかかったなぁ…」

ホークは状態を勢いよく反らす
その不安定な体勢、アッパーを繰り出す

ボゴォン!

イーグル「ぐぅぅ!」ガクッ

イーグル(ホークのビデオを何度も見てきた…だが…)

イーグル(回避を実戦するのは難しい)ガクッ

実況「イーグル!腰を落とす!危ない!」

ホーク「フン!フン!フン!」

ボゴォン!ボゴォン!

実況「ホークの型破りのパンチが炸裂!!」

イーグル(負けるな!屈するな…ここは後ろへ下がるんだ…)

ホーク「また同じ事を繰り返す気か?」

イーグル(くっ!さっきよりもギアを上げたはずなのに、僕のスピードについてきてる…)

イーグル(ホークのギアも上がってるのか!?)

ボゴォン!ボゴォン!

イーグル(ミドル級の動きとは思えない!まるで軽量級の速さ!)

ボゴォン!ボゴォン!ボゴォン!

ホーク「倒れろ!倒れろ!倒れろ!!」

イーグル「がぁ…!!!」

実況「イーグル!ローブを背にしながら…ホークのパンチが炸裂!!」

ボゴォン!ボゴォン!ボゴォン!

実況「物凄い集中打!ホーク止まらない!!」

イーグル(僕もダメージがある。なによりホークの動きが速過ぎて回避はできない…)

イーグル(打つんだ、カウンターしかない…)シュッ

ホーク「遅いよぉ」スッ

軽快にイーグルのカウンターを避ける

ホーク「ウォーリーから教わったアッパー」

ボゴォォン!!

イーグル「ぐぅ…!」

イーグルの体が宙に浮く

ホーク「そして右ストレート」

ボゴォォン!!

イーグルの体がリング場外へ放り出される

イーグル(こ、今度は僕が場外に…)

審判「ワン!ツー!」

イーグル(足にきてる。うまく立てない)

審判(スリー!フォー!)

イーグル「……っ」

辛うじて立ち上がるイーグル
頭部から血を流しながら

イーグル(リングに…上がるんだ…)グイッ

審判「ファイブ!シックス!」

イーグル「まだ…やれる!!」グッ

実況「おおっとイーグル!頭部から出血!しかし果敢にファイティングポーズをとる!」

ホーク「地獄に送ってやる」

審判「ボックス!」

~~~

カンカンカンカーン!!

実況「第六ラウンド終了!」

ホーク「見ろよミゲル。仕返ししてやったぜ」

ホーク「同じ場外にな」

ミゲル「うむ、しかもキズの深さは相手の方が重症のようだな」

ホーク「ああ。オレもまだクラクラするが、あいつの頭みろよ?血だらけだぜぇ?」

ホーク「へ、へへ、ハハハハ…!」

~~~

相手セコンド1「……」

相手セコンド2「イ、イーグル…」

必死の治療を施すが、すでに諦めた表情を浮かべているイーグルサイド
だが当の本人は、未だ闘志を燃やし続けている

イーグル「か、勝つんだ…絶対に…諦めない…」

イーグル「鷹村のときは、途中で満足してしまった。でも今度は絶対に満足しない…」

イーグル「勝つまでは!絶対に!」

相手セコンド1「……」

相手セコンド2「イ、イーグル…もうやめよう」

イーグル「勝つんだ!あのホークに!」

相手セコンド1「……」

相手セコンド2「イーグル…」

カン!

実況「第七ラウンド開始!」

ボゴォン!ボゴォン!ボゴォン!

ホーク「フン!フン!フン!」

イーグル「……っ!!」

ボゴォン!ボゴォン!ボゴォン!

ホーク「フハハハ…」

実況「イーグルのガードが下がっている!イーグル、ホークの攻撃で蜂の巣状態だ!!」

相手セコンド1(ダメージと疲労で、意識が朦朧だ…)

相手セコンド2「もうタオルを投げよう…」

ボゴォォォン!!

ホーク「グァァ!!」

相手セコンド1・2「!?」

実況「ここでまさかの、イーグルからのカウンター!!」

ホーク「ちょ、調子に乗ってんじゃ…」ガクガク

ホーク「ねぇーよ!!!」

ボゴォォォン!!

ホーク「ぐぅぅ!!」

実況「またカウンターが決まった!!」

ホーク「ちくしょう!!」

イーグル「フン!」

ホーク「来たな右ストレート…」スッ

ホークは上半身を反らす

ホーク(ここからアッパーを…)

ブンッ!

ホーク「なっ!外した…!?」

実況「イーグル!ホークの変則パンチを避けた!!」

イーグル(負けない…絶対に負けない…)

ホーク「ちくしょう…距離をとられた…」

ホーク「スピードなら負けないよ!」

イーグル「……!!」

ホーク「なっ…!速ぇぇ」

ホーク(こいつ…ここにきて、またギアを上げてきやがった!!)

実況「イーグルとホークのスピード勝負!互いに標的を追い続ける!!」

実況「高次元のフットワークの勝負だぁ!!」

パァン!パァン!パァン!

ホーク「ぐぅぅ…!」

実況「ホークのパンチ華麗に避け、丁寧にカウンターを与えていく!」

ホーク(なんだこいつ…もうヘトヘトなのに…なんでパワーアップしてんだよ!!)

ミゲル(追い詰められた事でかえって、いつも以上に練習の成果を発揮できるようになってきた)

ミゲル(さすがキャリアが長いだけある。積み重ねてきた物が違うか…)

ミゲル(だがホークも積み重ねてきた)

ホーク(くそ…いい加減くたばれ!!)

イーグル(大振りな右…ここだ!)

ボゴォォン!!!

実況「イーグルのクロスカウンター!!」

ホーク「ぐぁぁ…!」ガクッ

イーグル「……ッ」ガクッ

互いの頬が歪み、血が噴き出る
そして同時に体がマットに沈む

実況「な、なんと!両者ノックダウン!」

審判「スリー!フォー!」

ホーク「まだ…やれるよ…」

イーグル「負けない…絶対に負けない…」

審判「……ボックス!」

相手セコンド1・2(なぜ8カウントまで休まない…!?)

ミゲル(二人とも相当熱くなっているな)

ホーク「……」

ホーク(よーく分かったよ、もうココからは)

ホーク(ウォーリーとミゲルから教わった通りに)

イーグル「ぜぇぜぇ…ここにきて、基本に立ち返るか…?」

ホーク「いや、ちょっと実験してみよう」スッ

イーグル「っ!?デトロイトスタイル…」

実況「な、なんとホーク!ここにきてスタイル変更だ!!」

ホーク「いくぜ…フン!!」

スパァァン!スパァァン!

イーグル「ぐあぁ…!」ビリビリ

イーグル(し、痺れる…いいパンチだ…)

イーグル(一体いつ覚えたんだ!?フリッカーなんて)

ホーク「フンフン!」

イーグル「何度も打たせないぞ!!」グッ

実況「鋭いフリッカーから、キッチリガードして堪える!!」

イーグル(フリッカーは幻惑的な技だ。腕が本当に伸びて感じる)

スパァァン!スパァァン!

イーグル「ここから…もぐりこんで…インファイトで…」スッ

ホーク(なっ…こいつ、オレの懐まで…)

イーグル(アッパーだ!!!)

ツーッ…

アッパーを放つその刹那、イーグルの視界が赤く染まる

イーグル(しまった!頭部の出血が…また…)

イーグル(見えない…標的が…見えない…)

イーグル(信じろ、今までの練習を信じて…アッパーを!!)

イーグルのアッパーは当たらなかった
出血によるコントロールミスではない

ホークが、のけ反ったからだ

イーグル(っ!?ここに来て上体そらし!?基本に戻った筈じゃ!?)

ホーク「フン!!!」

ボゴォォン!!!

上体反らしからのアッパーが、イーグルのアゴを襲う
鮮血が飛び散り、マウスピースが宙に舞う

ホーク「ぜぇ…ぜぇ…!」

イーグル「」ガクガク

ミゲル「決まったな」

イーグル「あ…ぁぁ…」ガクガク

イーグル「フン…!!」グイッ

実況「おおっと倒れない!!イーグル耐えた!!」

ホーク「」

ホーク「いつになったら…!!死ぬんだよ!!」

ホークは堪らず、大振りの右ストレートを打ち込もうとする

イーグルは果敢にファイティングポーズを構える

イーグル「負けない…絶対に、絶対に」

ホーク「ゴートゥーへェェル!!!」ブンッ

フワッ…

ホーク「あ?」

ホークの動きが止まる
頭上に何かが落ちたからだ

ホーク「なんだ、頭の上に何かが落ちた」

ホーク「これは…タオル…?」

カンカンカンカンカン、カーーン!!

実況「試合終了!!勝者は…」

審判「ホーク、君の勝ちだ」ガシッ

ホーク「…」

実況「ブライアン!ホークだ!!!」

観客「ウオオォォォォ!!!」

実況「7ラウンド…2分50秒!相手陣営のタオル投入により、TKO勝ち!!」

ホーク「ぜぇぜぇ…」

ホークは相変わらず、目を真っ赤に充血にしたまま、イーグルを見つめる

イーグル「負けるものか…負けるものか…」ブンブン

実況「おおっとイーグル。試合が終わった事を、まだ理解していない様です!」

イーグルは丁寧に、左ジャブ、右ストレートとワンツーを打ち続ける
だがその攻撃は誰にも当たらない

相手セコンド1「イーグル!もう終わりだ!」

相手セコンド2「水!水をかけるんだ!」

バシャッ!

イーグル「……はっ!」

イーグル「あれ?なぜ皆が…」

相手セコンド1・2「イーグル、もういい」

イーグル「タオルが落ちてる…勝敗はどうなった!?どっちのタオルだ!」

相手セコンド1「これ以上闘えば、後遺症を残す」

相手セコンド2「これはタイトルマッチではない。これ以上、命をかける価値はない」

イーグル「負けたのは…僕か」

ミゲル「やめろホーク!!」

ホーク「離してくれミゲル!!!」

全員「!!?」

眼を真っ赤にしたホークが、興奮した様子で、イーグルに立ち向かってくる

ホーク「もう少しで気持ち良くなりかけてたんだ…」

ホーク「思い出せそうだったんだよ!エクスタシーが!!」

ホーク「テメェをぶっ殺さないと気がすまない、来いよ」

ホーク「かかって来いよ!!血祭りにしてやる!!!」

イーグル「……」

イーグルは黙ってホークの元まで歩み、手を差し伸べる

イーグル「素晴らしかったよホーク」

イーグル「くやしいけど、完敗だ」

ホーク「……」

ホークの額から、血管が浮かび上がる
悪魔の形相のまま、怒りのボルテージが上がる

ホーク「テメェの優等生ヅラが…」

ホーク「気に入らねぇって!言ってんだよ!!」

イーグル「っ!!」

相手セコンド1「イーグルを守れ!」サッ

相手セコンド2「ああ、命に代えてでも!」サッ

ミゲル「やめるのだホーク!!」

ダダダッ…シュタッ!

一触即発の空気の中、突如、リング中央に何者かが降り落ちる

全員「ッ!?」

イーグル「き、キミは…」

ホーク「マイブラザー…」

ウォーリー「ホーク!!やったね!勝ったね!!」ギュッ

ウォーリーは、激怒したホークに抱きつく

ウォーリー「ホークやっぱり強い!天才!」

場の空気などお構い無しに、無邪気に戯れる

ウォーリー「あれ、眼が真っ赤だよ?大丈夫?」

ウォーリー「あ、これこれ!ミゲルから前に貰った!」

ウォーリーはホークに目薬を渡す

ウォーリー「これやると眼がスッキリ!ホークもやるといい!」

ホーク「おお…」スッ

素直に受け取り、目薬をさしていく

ホーク「……」

閉じたまぶたを、ゆっくりと開かせる

ミゲル「おお…ホークの目が…」

相手セコンド1・2「悪魔の目から、人間の目に戻ってる…」

ホーク「……」

ホーク「ハハハ、だろ?オレは強い」

ホーク「ファイトマネーも入る。レストランでとびっきり美味しい物でも食べよう。おごるぜマイブラザー」

ウォーリー「本当?やったー!」

ホークはウォーリーと肩を組む

ホーク「悪いなミゲル。帰ろうぜ」

ミゲル「あ、ああ」

パチパチパチパチ…!!

拍手と熱い声援の中、ホーク達は帰っていく

イーグル「……」

相手セコンド1「さあ帰ろうイーグル」

イーグル「あの少年は、そんなにホークにとって特別な存在なのか?」

イーグル(昨日もホークの側にいたな)

相手セコンド2「彼はフェザー級の、インドネシアの王者ウォーリー」

イーグル「っ!?なんだって」

相手セコンド1「まだ年齢は17から18らしい」

相手セコンド2「実力はすでに、世界ランカークラスとも言われている」

イーグル「……そうか」

イーグル(いずれにしても、ホークにとって大切な存在が出来たようだ)

イーグル(強くなる訳だ)

イーグル「うっ…」ガクッ

相手セコンド1「無理に歩くな!いまタンカを」

イーグル「大丈夫、ちゃんと歩いていくさ」

パチパチパチパチ…!

(鴨川ジム)

一歩「流石、イーグルさん…あのホーク相手に7ラウンドも」

青木「鷹村さんはたしか、8ラウンドのKO勝ちだったよな?」

木村「鷹村さんより早い…」

鷹村「フン、早さが問題じゃねぇよ」

板垣「それにしても今日のホーク、以前の狂人振りを彷彿させる感じがありましたよね」

一歩「確かに、試合後は冷や冷やしたよ」

鷹村「……ホークの狂気が戻ってきてるのは確かだな」

鷹村「さて、オレ様は…」

一歩「ロードワークですか?」

鷹村「いや、帰ってシコッてくる」

一歩・板垣「」ガクッ

青木・木村「んな情報いらねぇーよ!」

鷹村「うるせー!ホークだってこの後、どうせシコって寝るだろう!」

(控え室)

ホークガール1「今日は大変だったわねホーク」

ホークガール2「キズ、大丈夫?」

ホーク「ああ、こんなに苦戦したのは鷹村以来だ」

ホークガール3「あれ、ホーク…それ…」

ホーク「ん?おお…」

ホークのズボンはテントを張っていた

ホークガール4「EDが治ったじゃない…!」

ホークガール5「今夜は私たちと楽しみましょう!」

ホーク「……」

ホーク「これは、まだ半立ちだ」

ホークガールズ「え?」

ホーク「こんな中途半端な、半立ちじゃ…みんなを気持ちよくさせられない」

ホークガール1「でもホークのアソコはヘビー級じゃない!半立ちでも良いじゃない」

ホーク「ノーノー。やるなら徹底的にだ」

ホーク「オレの荒療治は、まだ終わっていない」

ホーク「すまないな皆」

ホークガールズ「ホーク…」

ホーク「ミゲル、今日はドコへいきたい?」

ミゲル「私は今日はいい」

ミゲル「ウォーリーと二人で行ってきなさい」

ミゲル「男同士、心行くまでな」

ホーク「……そうか」

ホーク「ウォーリー!今日はサシで楽しもうぜ!」

ウォーリー「うん!おいしい物いっぱい食べる!」

ホーク「ハハハハ!」

ウォーリー「ハハハハ!」

二人は肩を組んで部屋をあとにする

ホークガール1「男の友情か…」

ホークガール2「なーんか妬いちゃうわね」

ホークガール3「私達の事も、もっと可愛がって欲しいわぁ」

ホークガール4「良かったの行かなくて、ミゲル?」

ミゲル「ホークが勝った。それで私はお腹いっぱいだよ」

ミゲル(ホークの野生も戻ってきた。いきなり過激だったがな)

ミゲル(そして同時にホークの中で、情も生まれてきた)

ミゲル(ホークはまだまだ成長する)

今日はここまで

(翌日・ジムにて)

ミゲル「ホーク、しばらくジムに顔を出さなくてもいい」

ホーク「おいおい、連れない事いうなよ」

ミゲル「キミは昨日、イーグルから多大なるダメージをもらった」

ミゲル「休養せねばならない」

ホーク「そうは言ってもね、やる事ないんだよ」

ミゲル「EDは完治したんじゃなかったのかい?」

ホーク「あんなの一時的に、半立ちになった程度だ。やるなら徹底的にヤリたいんだ」

ミゲル「ふむ…」

ミゲル「ならばホーク、君には十日間、ボクシング観戦でもしてもらおうか」

ホーク「ボクシング観戦?試合を観にいくのかい」

ミゲル「試合がある日は必ず観にいく。階級は問わない」

ホーク「試合がない日や、昼間はどうしてればいい」

ミゲル「ビデオでボクシングを見る」

ホーク「ずっと試合を見て勉強しろってことか」

ホーク「分かったよ、これも強くなるためだ」

ホーク「人種も階級も問わない。何か見せてくれ」

ミゲル「良いだろう」

ホーク「どれどれ…」

ソファに座り、ビデオを再生する
テレビ画面からは二人の日本人が映る

ホーク「東洋人か」

ミゲル「二人は日本人。階級はフェザー級」

ホーク「日本人のフェザーだってぇ??」

ホークは思わず、すっとんきょうな声を出してしまう

ミゲル「人種や階級は問わないと言わなかったかい?」

ホーク「そうだけどさ、こりゃ流石に…」

釈然としない態度のホーク

ミゲル「キミは以前、記者会見で、日本人は脆弱と言って馬鹿にしていた事を覚えてるかい?」

ホーク「よく覚えてるよ」

ミゲル「……確かに日本人は、他の東洋人、白人や黒人と比べて、身体が劣っている事が多い」

ミゲル「だが日本人は努力家だ。頭も良い。そして何よりも…」

ミゲル「奇跡を起こす、不思議な力を持っている」

ホーク「奇跡を起こす…不思議な力?」

ミゲル「私は若い頃、終戦直後の日本の現地で、直に見たことがある」

ミゲル(鴨川…アンダーソン軍曹を倒した男…)

ミゲル「あれはまさに侍だ」

ミゲル「それに君自身も、日本人の底力を直に味わっただろ?」

ホーク「……耳が痛いね」

ミゲル「そして、このツンツン頭の少年は…幕之内一歩というボクサーだ」

ミゲル「鷹村と同じジム所属だ」

ホーク「……思い出したぞ、前に鷹村を挑発した時、隣にいたな」

ミゲル「ああ見えて、国内防衛を8回もこなしている」

ホーク「日本チャンピオンなのかい!?」

ミゲル「いまは王座を返上。世界ランカーとして闘いに挑んでいる」

ミゲル「ウォーリーとも闘った事がある」

ウォーリー「あ、幕之内だ!!」

ホーク「おお、いたのかウォーリー」

ウォーリー「彼は強かったよ。パンチが尋常じゃなく強い」

ホーク「ハードパンチャーか、見かけによらないな」

ウォーリー「僕が初めて負けたのも、幕之内だった」

ホーク「お、お前を倒したのか…!?」

ホークは額から汗が溢れ出す

ホーク「ジャパニーズ…恐ろしいぜ…」

ホーク「おおっ…」

ホーク「なかなかスリリングな試合をするんだね」

ミゲル「階級こそフェザーだが、パンチ力はヘビーだからね」

ホーク「幕之内の相手の選手は何ていうんだい?」

ミゲル「彼の名は千堂武士。彼もまた日本屈指のハードパンチャー」

ホーク「彼は野生的な目をしてる。いいね」

ホーク「……ところでさっきから気になっていたんだが」

ミゲル「ん?」

ホーク「幕之内のあの動きはなんだい」

ミゲル「デンプシーロールか。あれは幕之内の必殺技だ。随分と古い技だけどね」

ホーク「あれだけの集中打を浴びせられたら、相手もたまったもんじゃないな」

ホーク「……鷹村を殺す為には、あれ位やらないと駄目だな」

ホーク「ミゲル、他にも日本人のビデオはないかい?」

ミゲル「あるよ、いま持って来る」

それからホークは、来る日も来る日も、ボクシングのビデオを見続けた

~~~

ホーク「うーん、このボクサーは地味だな。足はそこそこ速いけど」

ホーク「だが良いファイトだ。あの悪魔みたいなフリッカー使い相手に、よく頑張ってるよ」

ホーク「いまの上下のコンビネーションも素晴らしい」

~~~

ホーク「これはピエロのショーかな?」

ホーク「……本当に日本ランカーなのかコイツ」

ホーク「おっ…おお??」

ホーク「……」

ホーク「HAHAHAHAHAHA!!」

ホーク「これは使える…うん、良いね」

ホーク「なるほど、そうやって勝ち続けてきたのか」

~~~

ホーク「こいつは天才の匂いがする」

ホーク「足も圧倒的に速い。ウォーリーに近い物がある」

ホーク「だがパンチ力はイマイチだな」

ホーク「……」

ホーク「あのジャブはなかなか良いな」

ホーク「時々、奇妙な動きをするが…挑発行為には持って来いだな」

~~~

ホーク「ミゲル、日本人のビデオは他にないかい?」

ミゲル「なんだ、もう観終わったのかい」

ミゲル「いま、新しい物を持って来る」

(十日後)

ミゲル「体の調子はどうだい?」

ミゲルが部屋に入ると、ホークは黙々とビデオを見ていた

ホーク「……」

ミゲル(聞こえていないか…それほどまでに熱中している)

ミゲル「ん?この試合は…」

ホーク「お、ミゲル。来てたのか」

ミゲル「このビデオ、また見ていたのかい」

ホーク「ああ、昨日からこの試合ばかりずっと見てるよ」

ミゲル「何か気になる事でもあったのかな」

ホーク「この試合の幕之内は、凄い事ばかりだな」

ミゲル「うむ、自らの弱点を克服しつつあるからな」

ホーク「だがそれ以上に、オレは相手選手に注目しているんだ」

ホーク「この悪魔の名前は?」

ミゲル「沢村竜平。元日本ジュニアライト級チャンピオン…当時はまだフェザー級だった」

ホーク「コイツはオレに近いものを感じる」

ホーク「とてもクレイジーな目だ」

ホーク「見ろよ、敵を殴るたびに顔がイッちゃってるぜ。心から暴力を楽しんでやがる」

ホーク「だが特筆すべきは…あの左ジャブだ」

ホーク「なんだアレは!?まるで弾丸だ!」

ミゲル「その通り。彼のあのジャブは『バレット』と呼ばれている」

ミゲル「そして右の大砲は閃光と呼ばれている」

ホーク「背筋がゾクっとしたよ…マイタウンで、銃を向けられた時のことを思い出した…」

ホーク「決めたよ。オレはこの技をマスターする」

ホーク「そして鷹村を殺す」

メキ…メキメキ…ゴキッ…

ホークの拳から、鈍い音が響く

ミゲル「あのジャブは、コークスクリューブローから成り立っている」

ミゲル「コークスクリューブローをジャブ感覚で、何発も放つのは至難の業」

ミゲル「手首や肩が強くないとできない」

ホーク「オレを誰だとも思ってる」

ミゲル「うむ、君なら可能だろうな」

ホーク「丁度、体も癒えてきた」

ホーク「明日からさっそく、このパンチの練習をするよ」

ミゲル「そうか、では私も交渉に向かおうか」

ホーク「次は誰だい?」

ミゲル「まだ正式決定ではないが…」

ミゲル「リチャード・バイソン。元WBAのチャンピオンだ」

ホーク「今度はWBAか…オーケェー」

ミゲル「それと交渉が決まり次第、強化合宿に行こうと思う」

ホーク「今度はドコへ旅行に行くんだい?」

ミゲル「悪いが今度は暖かい場所ではない」

ミゲル「アラスカに行こうと思う」

ホーク「随分と寒い場所を選んだね」

ミゲル「寒い分、体重は落ちにくいだろう」

ホーク「ボクサーが、体重落ちにくい場所を選ぶってのも変な話だな」

ホーク「それと暖かい場所で慣れてるウォーリーには、ちょっと酷な場所だな」

ミゲル「動いてればイヤでも熱くなるさ」

今日はここまで
次回は合宿

(数日後・アラスカにて)

ミゲル「さあ、今回の合宿場所だ」

ホーク「見事に銀世界だな」

ウォーリー「わぁぁ、雪!見るの初めて!」

ミゲル「練習は近くにあるスポーツセンターで行う」

ホーク「じゃあ、わざわざこんな寒い所くる必要なかったんじゃ?」

ミゲル「もちろん、外でも練習はするよ」

ミゲル「この雪原の中でね」

ミゲル「そして宿泊所はこのロッジだ」

ホーク「ほう」

ウォーリー「ホーク!いっくよー!」

ウォーリーは雪球を投げつける

ホーク「ハハハ、冷たいじゃないか…」

ホーク「お返しだ!」

ウォーリー「わわ、冷たい!」

ミゲル「こらこら、ほのぼのと遊んでる暇はないぞ」

ミゲル「みんな準備はいいね?」

トレーナー1「まかせろ」

トレーナー2「二人とも、並びなさい」

ウォーリー「ん?それは」

ホーク「白いゴムボールか…攻撃を避けるための練習だな」

ホーク「今日はテニスボールやピンポン玉じゃないんだな」

ミゲル「辺りを見たまえ」

上空は雲に覆われ、雪がポツポツと降っている

ミゲル「白い物に覆われているだろ?」

ホーク「この条件を生かして動体視力を鍛えろって事か」

ミゲル「さあ、練習開始だ!」

トレーナー達「いくぞ!」

ミゲルやトレーナー達は一斉に、ホークとウォーリーに目掛けて、白いボールを投げつける

ボスッ、ボスッ

ホーク「ぐっ…」

ウォーリー「避けるのが難しいよ」

ミゲル「どうだ?想像以上だろ」

パァァァ…

ホーク「なあ、さっきよりも雪の勢いが強くなってないか?」

ミゲル「そうだな、風が強くなれば中止にしなければなれない」

ミゲル「だがこの程度なら、単に降雪量が増えてるだけだ」

ホーク「ちっ…ボールが見え辛いぜぇ」

ミゲル「次は走り込みだ」

ミゲル「あまり遠くにはいくなよ。遭難してしまうからな、決められた安全なコースを走るんだ」

ホーク「分かったよ。この矢印マークのとおりに走っていけば良いんだな」

ウォーリー「いってきまーす!」

ザクッザクッ!

ホーク「足場が悪すぎるぜ…」

ウォーリー「砂浜の感覚とまた違うな」

ホーク「なかなか前に進まねぇぜ」

ビュゥゥォォ

ウォーリー「風が強くなってない?」

ホーク「吹雪の中のランニングか…キツイぜ」

(次の日)

ホークとウォーリーは、近くのスポーツセンターで練習に励んでいた

ドスッ!ドスッ!

ウォーリー「グッ…!」

トレーナー1「あと5分!耐えろ!」

トレーナーはウォーリーの腹に目掛けて、メディシンボールをぶつけて行く

ミゲル「さあ、ホーク。ミット打ちを始めるぞ」

ホーク「お腹をボールで、散々と痛めつけられたあとに、ミット打ちか…」

ミゲル「休憩はもう終わった。さあ来い」

ホーク「分かってるよ」

右手を顔面の前に、左手を前に突き出す

ミゲル「お、そのスタイルは」

ホーク「ああ、今日からはじめるよ」

ホーク「沢村の左ジャブ…『バレット』の練習を」

ホーク(合宿前に、コークスクリューの練習はしてきた)

ホーク(あとはこのコークスクリューを、素早く連打できるかどうかだ)

ホーク「フンッ!」

ズバァァン!ズバァァン!ズバァァン!

(深夜)

ミゲルとホークはソファに座り、テレビ画面に注目する

ミゲル「これが次回の相手、リチャード・バイソンだ」

ホーク「デトロイトスタイル…フリッカー使いか」

ミゲル「そうだ。かなりのハイレベルだぞ」

ホーク「鷹村もだいぶ苦戦してるね」

ホークは小刻みに体が震えている

ミゲル「まだ、鷹村は怖いかい?」

ホーク「……いや、寒いだけさ」

ミゲル「暖炉に火はついているが?」

ホーク「イジワルだな…」ガクガク

ホーク「ああ、そうだよ。怖いよ。いまでもアイツを見ると震えが止まらない」

ミゲル「でも、ゲロは吐かなくなったな」

ホーク「前よりは…だいぶマシになった」

ホークとミゲルは黙々とビデオを観戦する

ホーク「……」

ホーク「オレは思い上がってたよ」

ミゲル「ん?」

ホーク「オレはかつて、この世で一番強いと思っていた」

ホーク「鷹村に負けてから…久々に復帰して、またボクサーになってからも」

ホーク「鷹村をのぞけば、オレが一番強い。オレと鷹村以外は雑魚で話にならないと思ってた」

ホーク「鷹村だけが特別なのだと」

ミゲル「……」

ホーク「だが違う。悔しいがあのイーグルも、そしてこのバイソンも…」

ホーク「鷹村を苦しめてきた」

ミゲル「相手の強さを認めることは情けない事ではない。いい事だ」

ホーク「……イーグルやバイソンだけじゃない」

ホーク「オレはかつて日本人をバカにしていた…まして、日本のフェザー級?論外だった」

ホーク「でも今は、その軽量級の選手からヒントを得て練習をしている」

ギュッ…ゴキゴキ、メキメキ…

ホークの拳がうねりを上げる

ホーク「もっともっと練習して…」

ホーク「今度こそ、人類最強になってみせる」

ミゲル「その意気だ」

(3週間後)

ミゲル「合宿も総仕上げだ」

ミゲル「今日は外でスパーリングだ」

トレーナー達は、外で木にロープを張り付け、四角いリングを作る

ホーク「今日は雪が強くないか?視界が悪すぎる」

ミゲル「だからこそ、スパーリングをする必要がある」

ミゲル「2ラウンドまでだ。二人とも存分に力を発揮すると良い」

ウォーリー「うん、いくよホーク!」

ホーク「ああ、悪いが手加減はしないぜブラザー」

二人はヘッドギアを装着する

カァァン!

ミゲル「ボックス!」

ウォーリーは左手をだらりと下げ、ホークは左手を前に突き出す

ホーク「フリッカーでくるか…ちょうどいい。オレの次の相手もフリッカー使いだ」

ウォーリー「いくよ!」

ヒュンッ!ヒュンッ!

ホーク「良いジャブだ…」

切れ味の良いフリッカーを、ホークは軽々と避けていく

ホーク「だがオレのバレットには及ばないぜ!」

ズドォォン!!

ウォーリー「ぐっ…!!」

ウォーリー(これがジャブ!?なんて破壊力だ!)

~~~

カンカンカーン!

ミゲル「そこまで、スパーリング終了だ」

ウォーリー「凄い破壊力で驚いたよ」

ホーク「ああ、だが命中率がわるかった。もっと精度をあげないと」

ミゲル「命中率が悪かったのは相手がウォーリーだというのと、この吹雪のせいだ」

ミゲル「まあ何にしても、二人ともいいファイトだった」

ミゲル「今日はじっくり休んで、明日はジムに帰るぞ」

ホーク「……」

ホーク「最後のロードワークに行っていいかい?もっと足腰を鍛えたい」

ウォーリー「僕もいく!雪、もうちょっとみていたい!」 

ミゲル(この程度の吹雪なら問題ないか)

ミゲル「あまり遅くならないように」

ザクッザクッザクッ…

ホーク「3週間もこの雪の中を走ってくると慣れるもんだな」

ウォーリー「寒いの苦手だけど、良い物みれた!」

ホーク「お前の次の相手は誰だっけ?」

ウォーリー「次はね、アメリカの世界ランカーとだって。ホークと同じ日!」

ホーク「そうか、お互いがんばろうな」

ウォーリー「うん!」

ホーク「そろそろ、折り返し地点か…」

ホーク「ん?」

ウォーリー「??」

ホークとウォーリーは、目の前に何かを発見する

ホーク「何だアレは、巨木か?」

ウォーリー「木にしては小さくない?」

?「グオオォォォ!!」

ホーク「ッ!?」

ホーク「なんだ、いま吠えたぞ」

ウォーリー「あ、もしかして動物?」

?「……」

ズシン…ズシン…

ホーク「ッ!?…!!?」

ホーク「し、シロクマじゃねぇか…!!」

ウォーリー「わぁぁ!でっかーい!」

吹雪の中、額から冷や汗が流れるホークに対し、ウォーリーは呑気に微笑を浮かべる

ウォーリー「へロー!ホワイトベアー!」

ホーク「やめろ!迂闊に近づくな!」

シロクマ「グオォォ!!」

ウォーリー「え」

シロクマの鋭い爪がウォーリーを襲う

ウォーリー「ちょっと!危ないじゃないか!」サッ

ウォーリーは軽い身のこなしで避ける

ホーク「ほっ…危なかったぜブラザー」

ホーク「そいつはジャングルのお友達とは違う」

ホーク「友好的じゃないぜこりゃ」

ウォーリー「……」

流石のウォーリーも顔つきが変わる

ホーク(どうする…流石のオレやウォーリーでも、シロクマなんぞ…)

ホーク(人間が素手だけで、どうやってシロクマを倒せってんだ!くそ、銃があれば…)

シロクマ「グオォォォ!!!」

ザシュッ

吹雪の中、赤い鮮血が飛び舞う

ホーク「ぐああぁぁぁ…!」

ウォーリー「ホーク…!!」

ホーク「痛ぇぇ!痛ぇ…チクショウ!!」

ホークの胸元が、シロクマの爪で抉られる

ホーク(試合が近いってのに…なんて事だ!)

シロクマ「グオッ!!」

ホーク(こんな恐怖…前にもあったな)

ホーク「マイタウンで銃を向けられた時。そして鷹村と戦ったとき」

シロクマ「グォォ!!」

シロクマが再び襲い掛かる

ホーク「こんな所で…くたばる訳には、いかないんだよぉ!!」

ズドォン!!

ホーク(よし、アッパーが決まった!)

シロクマ「……」

シロクマ「グォォォ!!」

ホーク「なっ…きいてない!?バカな!」

ホーク「この!この!こんの!!」

ボス!ドガ!ボゴ!

闇雲にシロクマを殴りまくるホーク
しかしシロクマは全くきいていない

シロクマ「ゴォォォ!!」

ホーク「オーノー!!」

ウォーリー「うぉぉ!!」

ドゴッ

シロクマ「ッ!!」

ウォーリーはジャンプして、シロクマの後頭部を蹴る

ウォーリー「ほら、こっちだよ!」

シロクマ「……」クルッ

ホーク「待て、オレのブラザーに…手ェ、出してんじゃねぇよ!」

ボゴォン!!

シロクマ「……」クルッ

ウォーリーの方へと方向転換しかけていたシロクマ
ホークの怒りを込めたパンチ背中に当ると、再びホークの方へと向く

ホーク「シロクマを倒せる奴なんざ、この世にいる訳がない」

ホーク「だが、それでも…お前を倒して…オレは…」

ホーク「鷹村に会いに行くんだよ!!」

ボゴォォン!!

ホークの左ジャブが、シロクマの額に直撃する

シロクマ「グォ…」クラッ

ホーク「……!!きいたか!?」

ホーク「もう一回!」

ズドォン!

今度は右ストレートを当てる

シロクマ「……」クラッ

ホーク(間違いない。額が弱点だ)

ホークの目が真っ赤に充血していく

ホーク「殺してやる…」

ズドォン!ズドォン!ズドォン!

ウォーリー「僕も応戦だ!」

ズドォン!ズドォン!ズドォン!

ウォーリーはジャンプしてキックを連発し、ホークはひたすら殺気をこめたパンチを打ち続ける

シロクマ「……!!」

ドスゥゥン

ホーク「ぜぇぜぇ…や、やった。倒した」

ウォーリー「危なかった…」

(ロッジにて)

ミゲル「……」

トレーナー1「遅いね」

トレーナー2「心配だ」

ミゲル(やはりこの天候でいかせるべきではなかったか?)

ガチャッ

ホーク・ウォーリー「ただいま」

ミゲル「遅かったじゃないか二人とも…」

ミゲル「ッ!?なんだそのキズは!!」

ホーク「実はシロクマと出会っちゃってさ」

トレーナー達「!?」

ミゲル「なんだと!?」

ウォーリー「二人でどうにか倒したんだ!すごいでしょ!」

ミゲル「と、とにかく。ホークは治療を…」

ホーク「そうだ、お土産があるんだ」

シロクマ「」

ウォーリー「見て見て!シロクマだよ!」

トレーナ達「」

ミゲル「」

ウォーリー「二人で倒したんだ!」

ホーク「俺達はもはや、人類最強だ」

ミゲル「銃を…早く、銃を持って来るんだ!!」

トレーナー達「あ、ああ!」

パァァン!パァァン!

ウォーリー「シロクマに襲われた時はどうなるかと思ったけど…」

ホーク「ま、今はそのおかげで、シロクマの肉でバーベキューが出来てるんだ」

モグモグ…

ホーク・ウォーリー「美味い!!」

トレーナー1「シロクマを持ち帰ってこられた時は、心臓が止まると思ったよ」

トレーナー2「道中で目を覚まさなかったのは、ラッキーだった」

ミゲル(次回からは、絶対にクマが出ない所で合宿をしよう)モグモグ

ミゲル「……悔しいが、美味い」

ミゲル「ホーク、胸のキズの方はどうなんだ」

ホーク「ん?ちょっと抉られた程度だ。心配ない」

ミゲル「……」

ホーク「それよりもさ、あのシロクマの皮だけど」

ミゲル「ん?」

ホーク「あれを、次回の試合で使いたい」

ミゲル「シロクマの皮なんて何に使うんだい」

ホーク「オレの新しいガウンにする」

ミゲル「アレを着て登場したいのか…」

今日はここまで
次回はVSバイソン

(試合前日・記者会見)

ホーク「……」

バイソン「……」

会場に着くといきなり二人は、互いに目の前まで歩み、視線で火花を散らし合う

パシャッ!パシャパシャッ!

カメラマンたちは、睨み合う二人の撮影を行う

記者1「おお、二人とも気合入ってるな」

記者2「無理もない、バイソンもホークも、着実に順位を上げている」

記者3「再びタイトルマッチのチャンスを手に入れるには、ここで勝っておかないとな」

記者1「ミスターバイソン!この度の試合について何か」

バイソンはホークを睨みながら、ゆっくりと口を開く

バイソン「まさか、あのブライアン・ホークとやり合えるとは夢にも思わなかったよ。心から光栄に思う」

記者たち「おおお…」

ホーク「……」

バイソン「オレの出身はデトロイトだけど、スラムで育った」

バイソン「お互い似た境遇で育ってきたが、勝利への執念は負けない」

記者1「センキュー、ミスターバイソン!」

記者1「それでは、続いてミスターホーク、今回の試合について何か」

ホークもバイソンを睨みながら、口を開く

ホーク「……オレは今回の試合の前にアラスカへ修行にいってきた」

ホーク「寒かったよ。そして自然の厳しさを知った」

ホーク「シロクマに襲われたのさ」

記者たち「……!?」

ホーク「まあ、殺して食べちゃったんだけどね」

記者たち「」

ホーク「おおっと、動物愛護団体に訴えるのは後にしてくれよ?」

ホーク「目の前にいる牛を、じっくりいたぶって」

ホーク「殺してやるからさ。オレの楽しみを奪わないでくれ」

ホークはそう言うと不敵に、煽るように笑う

ホーク「このオレと似た境遇で育ってきただと?笑わせるな」

ホーク「オレとお前じゃ根本的に性能が違うだろ?牛は牛らしく、全身バラされて、オレの胃袋でオネンネしてな」

ホークはそう言い終えると、舌を出しながら中指を立てる

バイソン「……」ニヤッ

記者たち(煽られているのに、バイソンが微笑んでいる…余裕だな)

バイソン「アル中の廃人の癖に、よく吠えるじゃないか」

ホーク「あ?」

ガシッ

ホークはバイソンの胸ぐらを掴む

バイソン「……カモーン」ニヤニヤ

ホーク「いまココで牛肉解体ショーをおっ始めてもいいんだぜ?」

バイソン「フン、それでオレに負けて、また廃人に戻るんだろ?鷹村やオレに怯えながら日々を過ごすのか。かわいそうに」ニヤニヤ

ホーク「ファァァック!!!!!」ブンッ

ホークが殴りかかるが、それを抑えるミゲル達

ミゲル「止めるんだホーク!!」

トレーナー1「落ち着け!!」

トレーナー2「ここで相手を殴り飛ばしたって、鷹村には会えないぞ!」

ホーク「フー!フー…!!」

敵トレーナー「こらバイソン、その辺にしておけ」

バイソン「そうだな。こんな所で乱闘をしても意味がない」

バイソン(リングの上で決着を付けなければ、鷹村に会うチャンスは永遠に来ない)

ウォーリー「ホーク!落ち着いて!」

ホーク「おお…ブラザー…」

(翌日)

実況「今宵、闘牛VS鷹の、命がけの闘いが始まる」

ワァァァァ!!!

実況「果たしてどちらが勝つか!?」

~~~~~

そのころ、鴨川軍団はジムにあるテレビに注目していた

一歩「いよいよ始まる…」

板垣「あれ、鷹村さんがいませんが」

一歩「え?そういえば昨日もいなかったような」

木村「何やってんだあの人は。さては旅にでも出たか?」

青木「でも今回の試合は、特等席で観るって言ってたぜ」

青木「わざわざソファを空けて、俺達全員、後ろで立ってみてるのによ…」

木村「あーもう!アホくせぇ!知るか!座って見ようぜ!」

青木「全くだ!せっかく気をつかってやったのによ!」

全員、ソファに座る

一歩「……みなさんは、どっちが勝つと思いますか?」

木村「難しいな、なにせあのバイソンも、鷹村さんを苦しめた相手だからな」

青木「会長もタオル投げたしな。オレと木村が全力で阻止したけど」

板垣「下手すれば今頃、統一チャンピオンはバイソンになってましたね」

司会「青コーナー!ブライアン!ホォォォク!!」

ウオォォォォ!!!

煙幕が勢いよく飛び出る

今回も美女達が、ホークを囲みながら歩んでいく
しかし一つだけ、いつもと違う点がある

観客1「なんだアレは」

観客2「変なガウン…」

観客3「おい…あれ、シロクマの毛皮じゃないか!?」

ホーク「……」

~~~~

木村「」

青木「」

一歩「あ、あれって…まさか、クマの毛皮…」

板垣「……鷹村さんの真似でもしてるんですかね?」

木村「そういえば、アラスカで修行にいったとき、クマを食ったとか言ってたな」

青木「あれ、ジョークじゃなかったのかよ…」

司会「赤コーナー!リチャード…バイソォォン!!!」

ウオォォォォ!!!

アメリカバイソンの衣装を身にまといながら、胸をボコボコと叩く
そして意気揚々と、リングへ向かう

相手セコンド「油断するなよ」

バイソン「油断?できるハズないさ。相手はあのブライアンホークだ」

相手セコンド「うむ」

バイソンとホークは互いにガウンを脱ぎ終えると、ゆったりとした歩調で、相手の目の前へ接近する

そしてゼロ距離になった所でストップする

ホーク「……」

バイソン「……」

カーン!

実況「いま、ゴングが鳴った!!」

ホーク(前座ではウォーリーが、世界ランカー相手に2ラウンドでKO勝ちだった。流石だぜブラザー)

ホーク(オレも2ラウンド以内に倒す…!!)

バイソン「……」サッ

バイソンは後ろへバックすると、ゆっくりと左腕を下げる
そして左腕は振り子運動を始める

実況「さあ、さっそくバイソンお得意のデトロイトスタイルが披露される!」

バイソン「……」ブンッ

実況「フリッカーの嵐がホークを襲う!!」

ホーク「……」スッ

バイソン「……!?」ブンッ

ホーク「……」スッ

実況「おおっと!バイソンの目にもとまらぬ鋭いフリッカーが!全く当たらない!!」

バイソン(バカな!?このオレのジャブを、初見で潜りぬける奴なんて…今までいなかった!)

ホーク(フリッカー対策は充分にしてきたよ)

ホーク(吹雪の中、ウォーリーを相手にね)

ホーク(ついでに、オレの新兵器を見せてあげるよ)クンッ

バイソン「…?今度はなにを」

クンッ…クンクン

ホークは右腕で前をガードし、左腕を前に突き出す
突き出された左腕は、僅かにクンクンっと上下に揺れている

バイソン(独特な構えだ…)

ホーク(オレは鷹村に負けてからも、日本人を馬鹿にしていた)

ホーク(だが、このスタイルは日本人から学んだ物)

ホーク(おかげで、銃を手に入れた気分だ)

ホーク「フン!」

バキュン!!

鋭いコークスクリューがバイソンを襲う

バイソン「うぉぉ!?」

鮮血が宙に舞う

実況「なんだ今のパンチは!」

ポタ…ポタポタ…

バイソン(左瞼から…血が…?)

バイソン(……!!まずい!!ガードを…!!)

デトロイトスタイルから一転、すぐにガードを堅め、被弾に備える

バイソン(覚えているぞ。ホークの復帰戦は…2ラウンド10秒…TKO勝ち…)

バイソン(あの時とパターンがそっくりだ!!まずい、こんな序盤から目をやられたら…)

バイソン(オレのスタミナや意志とは関係無しに、試合が終わってしまう…!!)

~~~

青木「あ、あれは…」

一歩「沢村さんのバレット…!!」

板垣「なんでアイツが使えるんだ!!」

木村「たしかにあの構え、攻撃。間違いなく沢村のバレットだな」

ホーク「どうした、顔面ばっかり守っちゃって」

ホーク「ボディがガラ空きだぜ!!」

ボゴォォ!!!

バイソン「ぐぁぁ…!!」ガクッ

バイソンは膝を崩しかけるも、辛うじて耐える

バイソン(な、なんてパンチだ…!!)

ホーク「おいおい…オレの新兵器は、まだ他にもあるんだぜ?」

ホーク「こんな所で…終わらせるなよ!!」

ボス!ボス!ボゴォォン!!

バイソンのボディに数発当てていく

バイソン「ぐふぅぅ…」

ガード越しからでは見えないが、バイソンは苦悶の表情を浮かべる

バイソン(練習嫌いの男が努力を積み重ねると…こうも化けるのか…!!)

カーン!

実況「1ラウンド終了です!」

実況「言うまでもなく、このラウンドはホークが優性です!」

ミゲル「素晴らしいじゃないか」

ホーク「だろ?オレはあのフリッカーに、まだ一度も被弾していない」

ホーク「バイソンの奴、左瞼きれて焦ってたぜ?オレの復帰戦での出来事を思い出してるのかな?」

ミゲル「油断は禁物だ。相手の動きをよく見た上で攻めるんだ」

ホーク「ああ、分かってるよ。別に舐めてるワケじゃない」

ホーク「現にあいつは、何発もボディを殴られてるのに、結局ダウンしなかった」

ホーク「打たれ強いよ、バイソンは」

ホーク(だがオレにはまだ秘密兵器がある)

~~~

カーン!

審判「ボックス!」

実況「さあ2ラウンド開始です!!」

バイソン(左瞼は、セコンドのおかげで、なんとか治まってきた)

バイソン(このまま顔面ばかり守ってても、結局は相手の思うつぼだ)

バイソン(フリッカーでせめるのみ!!)

ホーク(どうやら、腹をくくったようだね)

ホーク(だがいいのかな?また瞼が切れちゃうかもよ?)

ズバァァン!!

ホーク「ぐっ…!!」

ポタ…

ホークの左瞼が切れ、血がマットに落ちていく

実況「バイソン、2ラウンド開始早々、逆襲をはじめる!!」

ホーク「やるじゃないか、それでこそだよ」

バイソン「……」シュッ

ズバァァン!!ズバァァン!!

ホーク「ぐっ…さっきよりもハンドスピードを上げてやがる…!」

ホークの左瞼にフリッカーが直撃していく

ホーク「いい加減にしろよ、このままじゃオレがTKO負けになっちまう」

ホーク「銃を乱射する!!」

バキュン!バキュン!バキュン!

バイソン「ぐぅぅ…!!!」

実況「ホーク!負けじとバイソンの左瞼を集中攻撃!!」

バイソン(まずい…また出血してしまう…)

バイソン(だがあの高速のスクリューブロー…簡単には回避できん)

バイソン「ええい!攻めまくるのみ!!」

ズバァァン!!ズバァァン!!

ホーク「くっ…早い…!!」

バイソンのフリッカーが、ホークの顔面を襲う

ホーク「だんだん慣れてきたよ」サッ

バイソン「む」

序盤の様に、ホークは再びフリッカーを軽やかに避けていく

ホーク「銃に撃たれて死ね!バイソン!」

バイソン「オレも慣れて来たよ」サッ

ホーク「ッ!?」

バイソンも、ホークのバレットを避けていく

ホーク「ぐっ…ちょっと回避できるようになったからって…調子に乗ってんじゃねぇよ」

バキュン!

バイソン「うおぉ!!」

ボタボタ…

バイソンの左まぶたの傷口が開く

バイソン(しまった…!!)

ホーク(フィニッシュだ!!)ブンッ

バイソン「……大振りすぎるぜホーク」

ボォォン!!

ホーク「ぐぅぅ!!」

ホークの右ストレートに対し、鮮やかなカウンターを決めるバイソン

ミゲル(焦っているようで、ちゃんと状況判断が出来ている。さすが元WBAの王者だ)

ホーク(フン、カウンターを決めたところで、奴がピンチなのは変わりない)

ホーク(……そろそろ、新兵器の第二段といこうか。今度こそフィニッシュを決めるために)

ホーク「……」

ホーク「……」チラッ

バイソン「ん?」チラッ

ホークは、よそ見する
それに釣られて、バイソンもよそ見

観客1(なんだ?)

観客2(ん?)

ホーク「……」

バイソン「……」

観客「……」

本来の予定なら、ここでホークはフィニッシュをしかけるハズだった
奇襲をしかけ、バイソンは窮地に追いやれていたハズだった

だが会場にいる全員が、思わずそのまま固まってしまう

ホーク「」

バイソン「」

観客「」

全員が絶句した

鷹村「付き添い悪いな京姉、それに渡。オレ様は海外旅行は初めてで、英語もサッパリなんだよ」

京香「良いのよ守ちゃん。気にしないで」

渡「久々に守兄さんに会えたんだもん。むしろ嬉しいよ」

鷹村「そうかそうか、へへへへへ…」

ジーッ…

鷹村「ん?んん??なんだ、全員、こっちを見ている様な」

渡「ほ、本当だ」

京香「……どうやらバレちゃったみたいね」

渡「最前席だし、無理もないか」

鷹村「ああ。それにオレ様は世界チャンピオン様だからな。目立って当然だ」

実況「な、なんと!あのミドル級の統一王者!鷹村選手が会場にいます!!」

ウオォォォォ!!!

実況「アメリカ現地の観客も思わず驚いています!!」

~~~

一歩「」

板垣「」

木村「ドコに行ってたのかと思ったら…あの野郎!アメリカまでいって観にいってたのか!!」

青木(ツッコミが追いつかない)

バイソン(鷹村…わざわざ、アメリカまで来ていたのか)

バイソン(しかも家族連れか)

ホーク「」

バイソン(ん?)

ホーク「」

バイソン(なんだ…ホークの様子がおかしいぞ)

ホークは全身から嫌な汗が溢れ出す
小刻みに体は震え、足をガクガクと震わす

バイソン(ホークの顔色が見る見る悪くなっていく…)

バイソン「……」

ボゴォォン!!

ホーク「ッ!?」

バイソンのアッパーが炸裂する

ホーク「」ガクッ

そのまま膝を崩し、うつ伏せに倒れる

ミゲル「ホーク!!!」

ウォーリー「ッ!?ホーク!!」

審判「ワン!ツー!スリー…!」

審判の声が会場に響く
だがホークの脳内は、審判の声よりも、鷹村への恐怖心でいっぱいだった

ホーク(な、なんで…アイツが…)ガクガク

今日はここまで

ミゲル「ホーク!立つのだ!ここで立たなければ…」

ミゲル「鷹村とは戦えない!」

ホーク「……」ムクッ

審判「フォー!ファイブ!シックス!」

ホーク「……」グッ

ホークは辛うじて立ち上がり、ファイティングポーズを構える
しかし、相変わらず足をガクガクと震わせている

バイソン(ホークほどの男が、あのアッパー1発で足に来ているハズがない)

バイソン(精神的動揺だろうな)

バイソン(どうやらウワサ通り、鷹村との闘いで、メンタル面を破壊されてしまったようだな)

バイソン(まあ、それでも復帰した根性は認めよう…だが)

バイソン(オレもまた、あの男との再戦を望んでいる)

審判「ボックス!」

ホーク(鷹村が…なんで、なんでここに…)ガクガク

バイソン「フン!!」

ズバァァン!ズバァァン!ズバァァン!

ホーク「ぐぅぅ!!」

実況「バイソンのフリッカーが炸裂!!ホーク、なぜかガードを下げたままだ!!」

ミゲル「ガードを下げるな!逃げろ!フリッカーを回避するんだ!」

バイソン「フン!!」

ズバァァン!ズバァァン!ズバァァン!

ホーク「うっ…」ガクッ

実況「ホーク!早くも2回めのダウン!!」

ホーク(またダウンしちゃったよ…立たないと…)

ホーク(立って、立ち上がって…勝つんだ…)

ホーク(勝ったら…そしたら…そしたら…)

鷹村「……」

ホーク「ひぃぃ!?」

ホーク(あいつと殺し合いしないといけないのか…!!)ガクガク

審判「セブン!エイト!…」

ミゲル「良いのかホーク!一生、女を抱けない生涯になるぞ!!」

ホーク「っ!!」ムクッ

審判「ナイン!」

ホーク「やれるよ」グッ

審判「……ボックス!」

カーン!

実況「第二ラウンド終了です!ホーク、ゴングに救われた~!」

ホーク「」ガクガク

ホーク「会場に鷹村が…」

ミゲル「うむ、私もさっき確認した」

ホーク「どうしよう…殺される、殺される…」ガクガク

ミゲル「ホーク!」ガシッ

ミゲルは、縮こまっているホークの肩に両手を置く

ミゲル「良く考えるのだ、イーグルにせよバイソンせよ、鷹村を苦しめた相手だ」

ミゲル「その彼らを相手にキミは、力をしっかりと見せ付けている」

ミゲル「己の力を信じるのだ!君ならやれる!」

ホーク「」ガクガク

ミゲル「ホーク!」

~~~~

相手セコンド「まさか鷹村が来ていたとはな」

相手セコンド「あの動揺をみるに、やはり鷹村に負けてからは廃人になっていたようだな」

バイソン「……」

バイソン「この試合に確実に勝てる方法を思いついた」

相手セコンド「なに?」

バイソン「正直、あまり気が進まない方法だがな」

バイソン「おれは何としても、鷹村と再戦したい。そのためなら何だってするさ」

カーン!

実況「さあ第3ラウンドです」

バイソン「……」スッ

鷹村「む?」

実況「おおっと?バイソン、ロープを背にしているようだが…?何がしたいのでしょうか」

ホーク「……?」

バイソンの意図を理解できずにいるホークは、ゆっくりとバイソンに近づいていく
だが、そのバイソンの目の前まで辿り着くと、ビクッと体を震わす

ホーク「……!!」ガクガク

バイソン(どうやら作戦は成功したようだな)

バイソン(おれの背後には、ロープの先には鷹村がいる)

バイソン(動揺して、試合に集中できないよな?ホーク)

バイソン(悪くおもうよ。おれは何としても鷹村と戦いたいんだ)

ズバァァン!ズバァァン!ズバァァン!

ホーク「うっ…ぐっ!!」

実況「フリッカーの嵐!ホーク、まともに喰らってしまう!」

バイソン(まるで試合に集中できていない。この勝負…勝った!)

ボゴォォン!!ボゴォォン!!

フリッカーを止めてボディブローを数発

ボゴォォン!!

そしてトドメと言わんばかりのアッパー

ホーク「」ガクッ

実況「ホーク、ここでダウ~ン!」

ミゲル(駄目だ…もはや、わたしの声も届いていない)

ミゲル(だがここまできて諦める訳にはいかない。どうする…どうすれば)

ホーク「……」ガクガク

ホーク(もう楽になっちゃおうかな)

ホーク(戦うことも、そして女を抱く事も諦めて)

ホーク(……でもそのあと、何が残る)

審判「ワン!ツー!スリー!」

ホーク(何のために復帰した)

ホーク(何のために努力してきたんだ)

審判「フォー!ファイブ!」

鷹村「帰ろうぜ。京姉、渡」

京香「え?」

渡「まだ終わってないよ?」

鷹村「こんな試合、見る価値ねぇよ」

鷹村「序盤は良い内容だったのによぉ、残念だぜ」

ホーク(……?ドコへいく)

ホーク(なぜ背を向ける、どうして席から離れていく)

ホーク「待てよ…」

審判「シックス!セブン!エイト!」

ドォォン!!!

ホークは勢いよく、マットを拳で叩き付ける
音は会場中を響かせる

ホーク「タカムラァァァァァァ!!!!!!!!!!」

観客「……!!」

審判「っ!?」

ホークの叫び声に誰もが言葉を失う
審判も思わずカウントを止めてしまう

ホーク「まだ…まだやれるぞ」

審判「あ、ああ…」

バイソン(眼が生き返っている)

バイソン(仕方がない、ここからは覚悟をもって望むとしよう)

審判「ボックス!!」

ホーク「うぉぉ!!」ゴゴッ

実況「ホーク、合図と同時に接近する!!」

バイソン(インファイトでくるのか?いいだろう)

フリッカーを仕掛けるバイソン、だがホークは猪突猛進ながらもフリッカーの嵐を避けていく

バイソン(流石じゃないか…もう懐まで。ここは右で打ち下ろしを)

左ジャブのフリッカーを止め、右を打ち下ろすバイソン
それに対しホークは右腕を振り上げようとする

バイソン(アッパーだな。いいだろう。カウンターで迎え撃つ!)

ボゴォォォン!!

バイソン「ぐっ…!」

ホーク「ぐあ…」

二人のパンチが、互いの顔にジャストミートする

バイソン「ぐっ…」ガクガク

バイソン(足に来ている…だが、この程度なら少し休憩すれば回復できる)

バイソン「それよりも…」

ボゴォォン!

バイソン「~~ッ!?」

実況「バイソンとの相打ちにも負けず、ホークのリバーブロー!」

バイソン(ガードを、ガードをかためて…)

ホーク「そんな柔なガードで防げるかな?」ブンッ

ホークは再びアッパーを仕掛ける
その軌道は丁度、相手の両腕の間に衝突し、ブロックをこじ開けていく

バイソン「なっ…」

ボゴォォン!

バイソンの顔が天井へと向く
だがホークの猛攻はとまらない

ホーク「フン!フン!フン!フン!」

ボゴォォン!ボゴォォン!ボゴォォン!ボゴォォン!

実況「ホーク!バイソンにダウンをさせない勢いで、集中打を浴びせていく!!」

審判「ホーク!ストップ!」

ホーク「フン!フン!フン!フン!」

ボゴォォン!ボゴォォン!ボゴォォン!ボゴォォン!

審判「ストップだ!ストップ!」ガシッ

ホーク「離せぇぇ!!」

審判に両腕で動きを塞がれる
それと同時に

バイソン「」ドスッ

バイソンは頭からマットに沈む

ホーク「ぜぇぜぇ…!!」

審判「…!!これは」

審判「……」サッ

実況「ここで審判は両手をクロスさせる!」

カーン!カーン!カーン!カーン!カーーン!

実況「バイソン、続行不能により試合終了!!勝者、ブライアン・ホーク!!」

観客1「うそだろ…あの元世界王者の男を…わずか3ラウンドで…」

実況「まだ意識を取り戻していない様です」

実況「いま、タンカーで退場していきます」

相手セコンド「バイソン…」

バイソン「」

ホーク「はぁはぁ…ぜぇぜぇ…」

女性「ミスターホーク、今回の勝利おめでとう!」

実況「ここで勝利インタビューです」

ホーク「……」

女性「今回の試合のご感想は?」

ホーク「……」

女性「あの、ミスターホーク?」

ホークはゆっくりと歩いて行く
そしてロープの目の前まで辿り着くと、ジッと一点を見つめる

鷹村「……ふん、ちったぁやるじゃねぇか。見直したぜ」

ホーク「……」

観客1「おおお…」

観客2「あの二人が睨み合っている」

しばらく睨み合ったあと、ホークはインタビューを無視したまま、終始黙って会場をあとにする

(控え室)

ホーク「……」

ホークガール1「お疲れ様ホーク」

ホークガール2「どう?今夜は私たちと楽しめそう?」

ホークは黙って首を横に振る

ホーク「インタビューしてきた女も、良い女だった…でも、立たなかった。前回は半立ちくらいはしたのに」

ホーク「オレは、まだちゃんと完治してない」

ホークガールズ「ホーク…」

ミゲル「……とりあえず、今日はよく頑張ったね」

ホーク「……」

ミゲル「あとは鴨川が、我々のメッセージに答えてくれるか、否か」

ホーク「次は、間違いなく…鷹村となのかい?」

ミゲル「君はイーグルを7ラウンドで、そしてバイソンをわずか3ラウンドでKO勝ちした」

ミゲル「今後、君との対戦を避ける者が続出するだろう」

ホーク「どの道、戦う相手は奴しかいないのか…」

(2日後・鴨川ジム)

鷹村「おれ~のパンチは、ダイナマイト~ブンブンブン!」

ガラッ

鷹村「よー!」

一歩「鷹村さん、びっくりしましたよ!」

青木「目を疑いましたよ」

鷹村「む、どうやらお前らも気付いた様ようだな。ハハハハ!」

鴨川「……」

鷹村「お、ジジイ」

鴨川「ついさっき、交渉成立した」

一歩「え!?」

板垣「じゃあ、まさか」

八木「ブライアン・ホークとの再戦が決まったよ」

木村「とうとう、決まっちまったか…」

鴨川「試合は3ヵ月後じゃ。覚悟はできておるな?」

鷹村「勿論だ」

鴨川「ホークの復帰後、闘って来た相手…その全てが、鷹村と戦ってきた相手じゃった…」

鴨川「しかも全員が、貴様を苦しめてきた者たちばかり」

鴨川「これは、ミゲルゼールとブライアンホークからの…もう一度闘って欲しいと言うメッセージじゃ!」

鴨川「わしは、それに答えようと思った」

鷹村「同感だ。オレ様も、気持ちに答えるつもりだ」

鴨川「さぁ、ロードーワークへ行くぞ!鷹村!」

鷹村「おう!」

ミゲル「……交渉を終えてきた」

ミゲル「試合は三ヵ月後」

ミゲル「だが焦る必要なはない。まずは2週間の休養を」

ホーク「……」ガクガク

ミゲル「震えている場合じゃない。現実を受け止める時がきたのだ」

ホーク「おれは…死ぬ…三ヵ月後…殺される…」

ホーク「けっきょく女を抱く事もできず…おれは…死ぬ、殺される」

ホーク「死ぬんだ…死んでしまうんだ…」ガクガク

ミゲル「ウーム…」

ミゲル「ウォーリー!」

ウォーリー「なに?ミゲル」

ミゲル「君も世界ランカーと戦ったダメージがあるはずだ。君にも2週間の休養を命ずる」

ウォーリー「そっか」

ホーク「……」ガクガク

ウォーリー「ホーク!」

ホーク「……?なんだいウォーリー」

ウォーリー「僕も2週間休む!いっしょにドコか遊びに行く!」

ホーク「……」

ウォーリー「この辺、くわしくない。ドコか連れてって!ホーク!」

ホーク「……」

ホーク「ああ、良いともブラザー」

ホーク(だがドコへ行こうか)

ホーク(……ひとまずマイタウンにでも行くか。近くにバスケットコートもあるし)

今日はここまで
次回は日常&特訓回

感想と指摘どうも
誤字を直しておきます

試合期間も早すぎるって事なので、こちらも訂正文3レスほど載せて起きます
(休養期間は2週間→1ヶ月。試合は3ヶ月後→5ヶ月後に変更)

>>243(訂正)

観客1「うそだろ…あの元世界王者の男を…わずか3ラウンドで…」

実況「まだ意識を取り戻していない様です」

実況「いま、担架で退場していきます」

相手セコンド「バイソン…」

バイソン「」

ホーク「はぁはぁ…ぜぇぜぇ…」

女性「ミスターホーク、今回の勝利おめでとう!」

実況「ここで勝利インタビューです」

ホーク「……」

女性「今回の試合のご感想は?」

ホーク「……」

女性「あの、ミスターホーク?」

ホークはゆっくりと歩いて行く
そしてロープの目の前まで辿り着くと、ジッと一点を見つめる

鷹村「……ふん、ちったぁやるじゃねぇか。見直したぜ」

ホーク「……」

観客1「おおお…」

観客2「あの二人が睨み合っている」

しばらく睨み合ったあと、ホークはインタビューを無視したまま、終始黙って会場をあとにする

>>245(訂正)

(2日後・鴨川ジム)

鷹村「おれ~のパンチは、ダイナマイト~ブンブンブン!」

ガラッ

鷹村「よー!」

一歩「鷹村さん、びっくりしましたよ!」

青木「目を疑いましたよ」

鷹村「む、どうやらお前らも気付いた様ようだな。ハハハハ!」

鴨川「……」

鷹村「お、ジジイ」

鴨川「ついさっき、交渉成立した」

一歩「え!?」

板垣「じゃあ、まさか」

八木「ブライアン・ホークとの再戦が決まったよ」

木村「とうとう、決まっちまったか…」

鴨川「試合は5ヶ月後じゃ。覚悟はできておるな?」

鷹村「勿論だ」

鴨川「ホークの復帰後、闘って来た相手…その全てが、鷹村と戦ってきた相手じゃった…」

鴨川「しかも全員が、貴様を苦しめてきた者たちばかり」

鴨川「これは、ミゲルゼールとブライアンホークからの…もう一度闘って欲しいと言うメッセージじゃ!」

鴨川「わしは、それに答えようと思った」

鷹村「同感だ。オレ様も、気持ちに答えるつもりだ」

鴨川「さぁ、ロードーワークへ行くぞ!鷹村!」

鷹村「おう!」

>>246(訂正)

ミゲル「……交渉を終えてきた」

ミゲル「試合は5ヶ月後」

ミゲル「だが焦る必要はない。まずは1ヶ月の休養を」

ホーク「……」ガクガク

ミゲル「震えている場合じゃない。現実を受け止める時がきたのだ」

ホーク「おれは…死ぬ…三ヵ月後…殺される…」

ホーク「けっきょく女を抱く事もできず…おれは…死ぬ、殺される」

ホーク「死ぬんだ…死んでしまうんだ…」ガクガク

ミゲル「ウーム…」

ミゲル「ウォーリー!」

ウォーリー「なに?ミゲル」

ミゲル「君も世界ランカーと戦ったダメージがあるはずだ。君にも1ヶ月の休養を命ずる」

ウォーリー「そっか」

ホーク「……」ガクガク

ウォーリー「ホーク!」

ホーク「……?なんだいウォーリー」

ウォーリー「僕も1ヶ月お休み!いっしょにドコか遊びに行く!」

ホーク「……」

ウォーリー「この辺、くわしくない。ドコか連れてって!ホーク!」

ホーク「……」

ホーク「ああ、良いともブラザー」

ホーク(だがドコへ行こうか)

ホーク(……ひとまずマイタウンにでも行くか。近くにバスケットコートもあるし)

訂正終了です
続きの執筆してきます

1レスだけ訂正文を投下し、前回からの続きを投下します
間隔が空いてしまったから、軽くあらすじを↓

・鷹村の登場で激しく動揺するも、気持ちを持ち直す
・元王者のバイソンを3ラウンドでKO
・試合後、恐怖心が蘇るホーク。ミゲルから、ウォーリーと共に休養を命じられる

>>246(訂正)

ミゲル「……交渉を終えてきた」

ミゲル「試合は5ヶ月後」

ミゲル「だが焦る必要はない。まずは1ヶ月の休養を」

ホーク「……」ガクガク

ミゲル「震えている場合じゃない。現実を受け止める時がきたのだ」

ホーク「おれは…死ぬ…5ヶ月後…殺される…」

ホーク「けっきょく女を抱く事もできず…おれは…死ぬ、殺される」

ホーク「死ぬんだ…死んでしまうんだ…」ガクガク

ミゲル「ウーム…」

ミゲル「ウォーリー!」

ウォーリー「なに?ミゲル」

ミゲル「君も世界ランカーと戦ったダメージがあるはずだ。君にも1ヶ月の休養を命ずる」

ウォーリー「そっか」

ホーク「……」ガクガク

ウォーリー「ホーク!」

ホーク「……?なんだいウォーリー」

ウォーリー「僕も1ヶ月お休み!いっしょにドコか遊びに行く!」

ホーク「……」

ウォーリー「この辺、くわしくない。ドコか連れてって!ホーク!」

ホーク「……」

ホーク「ああ、良いともブラザー」

ホーク(だがドコへ行こうか)

ホーク(……ひとまずマイタウンにでも行くか。近くにバスケットコートもあるし)

(ニューヨーク・スラム街・バスケットコートにて)

ホーク「よっと!」

鮮やかにシュートを決めるホーク

ウォーリー「ホーク凄い!何回もシュート決めてる!しかも離れた所から!」

ホーク「ハハハ、これはスリーポイントって言うんだ」

ウォーリー「僕もスリーポイント決める!」シュッ

ガンッと音を立てて、ボールはウォーリーの元へ返ってくる

ウォーリー「スリーポイントできない!難しい!」

ホーク「なーに、ウォーリーなら練習をすれば、すぐにできる様になるさ」ダンダン

ホーク「フン!!」

ズドォォン!!

颯爽と走り、ホークは力強くダンクを決める

ホーク(あー…久々にやったぜ。バスケットボール)

ホーク(いつの頃からか、みんな、オレの存在にビビッて、バスケの相手してくれなくなったなぁ…)

ウォーリー「よーし!ぼくもダンク!決める!」

ホーク(ウォーリーは小さいが、ダンク位は余裕だろうな)

ウォーリー「とう!!」

ホーク(なっ!?おいおい、フリースローラインからジャンプだと!?)

ウォーリー「てりゃ!」

ズドォォン!

ウォーリー「やった!ダンク成功!」

ホーク「さ、流石だぜブラザー…」

ホーク「オレも、やってみるかな。フリースローラインから…」ダダッ

ガンッ

ホーク「ぐっ…」

ボールはリングに直撃し、ホークは思わず体勢を崩す

ホーク「うぉぉ!!?」ドンッ

ウォーリー「ホーク大丈夫!?」

ホーク「ああ、背中から落ちたが、なんてこと…」

ビキキ…!

ホーク「グッ…!!」

ウォーリー「ああ…やっぱり痛めてる…!」

ホーク「いや、これは背中からの痛みじゃない」

ホーク(バイソンと闘ったとき痛みだ…)

ウォーリー「そっか。でも無理するのよく無い。今日は終わりにしよう!」

ホーク「ああ。そうだな」

(地下鉄にて)

ウォーリー「ハンバーガーって料理、おいしいね!」

ホーク「食べたのは初めてかい?」

ウォーリー「うん!でもポテトは何回か食べた事ある」

ホーク「お前の故郷じゃ味わえないからな。よく味わっておけ」

ウォーリー「……それにしても、なんだかジロジロ見られてるけど?」

不良達「……」ジッ

ホーク「ハハハ、そりゃ俺達は有名人だからな」

ホーク「でも1人で地下鉄には乗るなよ?ここは危ない場所だからな」

ウォーリー「うん!」

不良達(お前が一番危ないよ)

ホーク「明日はどうする?」

ウォーリー「今日みたいに、またバスケやって、地下鉄のる!」

ホーク「オーケーブラザー」

数日後、スラム街のバスケットコートで、二人は仰向けになりながら、空を眺める

ウォーリー「ぜぇぜぇ、汗で全身がビショビショだ」

ホーク「室内プールにでもいくかい?」

ウォーリー「いくいく!」

ホーク「よーし、なら休憩を終えたら行こう」

ウォーリー「……」

ホーク「……」

ホーク「そういや」

ウォーリー「ん?」

ホーク「ウォーリー、なんでボクシングを続けてるんだ」

ウォーリー「え?」

ホーク「ミゲルとの出会いがキッカケってのは知っている。だが、ボクシングは辛いし大変だろ?」

ホーク「何よりお前は、おれと違って普段は温厚だ。なぜ危険を冒してまで闘う」

ウォーリー「えーとね、はじめはミゲルにボクシング教わって…練習楽しくて、強くなる度に自信もついて」

ウォーリー「プロで活躍すれば、有名になれるって聞いたから、だから続けてきた」

ホーク「栄光が欲しかったのか」

ウォーリー「ううん、そうじゃない」

ホーク「ん?じゃあ一体…」

ウォーリー「僕の故郷、だんだん壊れてきてる」

ウォーリー「環境、もっと大事にしてほしい。自然を守って欲しい」

ウォーリー「だから有名になることで、その事、訴える」

ホーク「」

ホーク「そ、それが…お前の闘う原動力なのか…」

ウォーリー「うん」

ウォーリー「あ、でもボクシング自体は大好き!もっと強い相手と戦いたい!鍛えて強くなりたい!」

ホーク「……」

ホーク「く…くく…」

ホーク「ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

ウォーリー「あ!ひどい!」

ホーク「ソーリー、悪気はなかった」

ホーク「いいぜ、その夢…オレも一緒に追いかけてやるさ」

ウォーリー「え?」

ホーク「まずはオレが再び世界チャンピオンになる。そして言ってやるのさ」

ホーク「おれのブラザーの故郷を大事にしろってな」

ウォーリー「ホーク…」

ホーク「……そう思ったら、次の試合、負けられないよな」ブルッ

上機嫌だったホークは途端に顔色を青くして、小さく震え、小声で呟く

ウォーリー「ありがとうホーク」

ウォーリー「でも、僕の夢に付き合わなくて良い」

ホーク「おいおい、寂しい事いうなよ」

ウォーリー「これは僕の闘いだから、僕自身で目的を達成しないと」

ウォーリー「ホークにはホークの闘いある」

ウォーリー「勝って、気持ちよくなりたいんでしょ?」

ホーク「……ああ、気持ちよくなりたい。またエクスタシーを…感じたい」

ウォーリー「なら、気持ちよくなるために、闘わないと。僕の夢のためじゃなくて」

ウォーリー「それに、ホークがテレビで、僕の故郷について訴える姿、似合わない」

ホーク「ん?」

ウォーリー「ホークは、ヒール役のほうが似合ってるでしょ?」

ホーク「……」

ウォーリー「……」

ホーク・ウォーリー「ハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

二人は天に向かい笑い出す

ホーク「ああ、間違いないぜ」

ウォーリー「でも心配いらないよ。僕はホークの見方だから」

ホーク「それはお互い様だぜ、ブラザー」

2週間後、二人は映画館に来ていた

ウォーリー「まだ始まらないの?」

ホーク「ああ、ポップコーン食べて待っているんだな」

ウォーリー「なに読んでるの?」

ホーク「雑誌さ」

ホーク(おれの事が書かれてたから、気になって買ってみたが…)

ホーク(チッ、いつの間にパパラッチどもが。オレとウォーリーの有意義なる時間を…勝手に許可なくとりやがって。見つけたら殺す)

ウォーリー「映画、観終えたらどうする?」

ホーク「そうだな。地下鉄乗って移動して、またバスケでもするか」

映画を見終え、バスケットコートに到着する二人
だがそこには思わぬ人物が待っていた

ウォーリー「ホーク、あの人たしか」

ホーク「……」

ホーク「殺されにきたのか?」

バイソン「フン、殺し損ねた男が言う言葉か?」

ホーク「あぁ?」ビキッ

バイソン「ま、死に掛けたのは事実だがな」

バイソン「試合後は丸1日意識を失い、先日退院したんだ」

ホーク「なぜ俺達がここにいることが分かった」

バイソン「その手に握られた雑誌に答えが書いてあるぜ」

ホーク「何しにきた?」

バイソン「気分転換にニューヨークに訪れるつもりだった。その途中、雑誌みてたら偶然、お前の記事を見つけた」

バイソン「ココに来たのは気まぐれさ」

ホーク「ほう、お前は気まぐれで自殺する男なのか」

バイソン「ノー、オレは気まぐれで復讐をする男さ」

ホーク「あぁぁ!?」ビキビキ

バイソン「おいおい、ここはリングじゃなくてコートの中だ」

バイソン「オレも故郷のスラム街で、よくストリートバスケはやった」

バイソン「ここは殴り合いじゃなくて、バスケットでもしないか」

ホーク「望むところだ」

数時間後

ウォーリー「ホーク!外は真っ暗だよ!」

ホーク「ぜぇぜぇ…おれの勝ちだ」

バイソン「チッ…入院さえしてなければ」

バイソン「ま、良い運動になった。ホテルに帰るよ」

ウォーリー「僕達も帰ろうか」

ホーク「ああ」

バイソン「……」

バイソン「約4ヵ月後に、鷹村と闘うんだって?」

ホーク「ああ、お前に勝ったからな」

バイソン「全くよ、困っちまうぜ。どいつもコイツも」

バイソン「ライバルが多すぎて、誰から挑めば良いのやら」

バイソン「イーグル…鷹村…そしてお前…」

バイソン「どうしてオレよりも高い場所にいるんだ」

ホーク「フン、とっとと引退するんだな」

バイソン「しない」

バイソンは振り向いて、後ろにいるホークと向き合う

バイソン「力ある限り、何度でも挑む」

ホーク「……」

バイソンは再び前を向いて歩き出す

バイソン「応援しに行くぜ、ホーク。お互いスラム育ちで、同じアメリカ人だからな」

ホーク「良いのかい、オレの応援なんかして」

ホーク「オレとの再戦を熱望してるんだろ?次、闘ったら完全に壊れるぜ、お前」

バイソン「そういう台詞は、鷹村に勝ってから言うんだな」

ガチャッ

金網のドアを開けて、バイソンは静かに去って行く

(しばらして、ジムにて)

ミゲル「久しぶりだ。よく体は休めたかな?」

ホーク「ああ」

ミゲル「一応、聞いておくが、どんな休日をすごしてたのかな」

ホーク「毎日、バスケやって、映画見て、時々プールでのんびりしてたさ」

ウォーリー「地下鉄のって、いろんな所を観光してたよ」

ミゲル「バスケはやりすぎてはいないな?」

ホーク「別に丸1日やってた訳じゃないさ」

ホーク「本当は、女も抱きたかったんだがな…まだオレは…」

ミゲル「分かっている。そのためにここまで闘ってきたのだろう」

ミゲル「さあホーク。鷹村との闘いに備え、特訓だ」

ホーク「ああ」

ウォーリー「僕の試合はきまった?」

ミゲル「うーむ、それがまだ。どうやら君もだいぶ警戒されてるようでね、避けられ始めてる」

ウォーリー「ええー!じゃあリカルドとやりたい!」

ミゲル「いまの君じゃ絶対に勝てない。それに世界ランク1位にならないと駄目だ」

ウォーリー「ええぇぇ!?」

ミゲル「焦る必要は無い。君には王者になる才能があるからね」

今日はここまで

本当は特訓編も書いておきたかったけど、だいぶ間隔が空いてしまったので一先ず、日常編だけでも

ホーク「フン!!」

ボゴォォン!

ジムメイト「ぐあぁ…!」ドサッ

ホーク「おい、ミゲル。もっとまともなスパーリングパートナーを用意してくれ」

ホーク「このままじゃ、全員潰れちまうぜ?」

ジムメイト達「」

ミゲル「むむむ」

スパーリングを行っていたホークだが、大半のジムメイトを数秒でノックダウンしてしまっていた

ウォーリー「じゃあ僕、相手する」

ホーク「ブラザーか…お前とて容赦はできないぜ?」

ウォーリー「望むところだよ!」

カーン!

ホーク「第2ラウンド終了か、早いな」

ウォーリー「ゼェゼェ、やっぱり強いやホーク」

ホーク「ハハハ、お前のスピードと技術もなかなかだぜ」

ミゲル「……」

ホーク「ん?どうしたミゲル、やけに汗だくじゃないか」

ミゲル「いや…そんなこと」

ホーク「若きホープが壊されないか心配だったのかい?」

ミゲル「うーん、まあ、君の破壊力は桁違いだからな」

ウォーリー「心配性だなミゲルは」

ホーク「まあ、ミゲルの心配ももっともだ」

ホークは自分の拳を見つめる

ホーク「おれは、ウォーリーにだけは、殺人許可証を使いたくない」

ミゲル「……」

ミゲル(ホークの力は圧倒的だが、多分、無意識に加減をしているだろうな。さぞ闘いづらいだろう)

ミゲル「出かけてくる」

ホーク「スパーリングパートナーを探しに行くのかい?」

ミゲル「ああ。しかし君はすでに、ミドル級の選手たちから避けられ始めている」

ミゲル「スパーリングでさえもな」

ホーク「じゃあどうする」

ミゲル「避けられてはいるが、全くあてが無い訳ではない。交渉してくる」

(そのころ、日本では)

一歩「フン!フン!」

一歩は土手で、体を無限(∞)の軌道を描いていた

鷹村「こんな真夜中に特訓か」

一歩「っ!鷹村さん、どうしたんですか」

鷹村「眠れなくてな。おれも特訓しにきた」

一歩「あんなに特訓してたのに…まだ体が動くなんて…」

鷹村「フン、今更おどろくことでもあるまい」

そういって、鷹村はシャドーを始める

鷹村「フッ…フッ…!」シュシュッ

一歩(よし、僕も引き続き)

再び体を無限の軌道を描く
そしてその反復運動に、小さな変化を加える

一歩(横…横…ここから、斜め…斜め…)

鷹村「……」

一歩(縦の変化も加えて…また横…斜め…横…斜め…)

鷹村「調子良さそうだな」

一歩「え?」

鷹村「新型デンプシー、調子良さげだな」

一歩「い、いや~鷹村さんにそう言われると、照れちゃうなぁ…」

鷹村「その技が決まれば、世界ランカーの猛者共さえも、ひとたまりもない」

一歩「は、はは…でも、まだまだですよ」

一歩「会長が望む形に、もっと近づかないと。もっと努力を」

鷹村「……その必要ない」

一歩「え?」

鷹村「悪い事は言わない。次の試合で引退しろ」

一歩「ま、まだそんな事を」

鷹村「確かに強力な技だ。パターン化した旧型デンプシーより、攻略も難しくなった。カウンターも簡単には決まらないだろ」

鷹村「だがな、いまのお前は」

一歩「壊れてません!!!」

一歩の叫びが土手に響く

一歩「僕は壊れてません…大丈夫…大丈夫…」ワナワナ

鷹村「……分かったよ。もう何も言わない、今度こそな」

鷹村「人間、明確な目的を持っちまうと、それを止めるほうが困難ってもんだ」

一歩「……」

鷹村「だからこそ、一度ぶっ壊れたあの男も、帰って来たんだ」

一歩「ブライアンホークの事ですか?」

鷹村「ああ」

鷹村「やつは、オレ様と闘うまでは、ほとんどダメージを受けていない」

鷹村「精神的にぶっ壊れてたんだ。ずっとな」

鷹村「それはある意味では、パンチドランカーや網膜はく離なんかよりも、もっとたちが悪い。闘志そのものが萎えちまってるからだ」

一歩「それでも…ホークは帰ってきた」

鷹村「ああ。何が奴を奮い立たせてるかは知らんが」

鷹村「あそこまで分かりやすく。オレ様への復讐を誓っているのなら」

右拳を前に突き出し、ブンッと音をたてる

鷹村「それに全力で答えるつもりだ」

鷹村「そして勿論、全力で叩きのめす」

鷹村「身も心も、全てを破壊する…二度とボクシングなんてやらないと、思いたくなる位にな」

一歩「……」

鷹村「ボクシングってのはそういう世界だ。だから一歩」

鷹村「引くなら今のうちだ。全て失い、手に負えなくなる前に」

一歩「手に負えなくなる前に!新型で相手を倒します!」

鷹村「……そうか。まあ、ガンバレや」

一歩「鷹村さんも!頑張ってください!」

鷹村「言われなくてもそうするつもりだ」

鷹村「少し、休憩する」

一歩(凄いな、まだ帰らないんだ…)

鷹村「どうした?もう遅いぞ」

一歩「ぼ、ぼくも残ります!」

鷹村「それ以上はオーバーワークだぜ」

一歩「……」

鷹村「フン」

ゴンッ!ドス!

一歩「痛っ…痛い!なんで殴るんですか!」

鷹村「お前に言われたくないと、顔に書いてあったからだ」

一歩(理不尽だ。図星だけど)

~10分後~

鷹村「……こうかな」

グルン…グルン…

一歩「え、その動きは」

鷹村「フン!フン!フン!フン!」

一歩「な、なんて力強い動きなんだ…」

鷹村「ぜぇぜぇ…どうだ?」

一歩「えっと、初めてですよね?」

鷹村「ああ、デンプシーなんざやったことない」

一歩「初めてとは思えないですよ!」

鷹村「そうか…しかし、よくこんな単純パターンで、国内王者にまでなったな」

鷹村「オレ様はまだ、ここで練習していくが、お前はどうする」

一歩「残ります!」

鷹村「お前も本当、意地っ張りだよな。普段は気弱なくせに」

(一ヵ月後・アメリカにて)

ジムメイト1「すげぇなあいつ…」

ジムメイト2「さすが、ホーク相手に7ラウンドまで張り合った男だ」

ミゲル「デビット・イーグル…」

イーグル「くっ…フン!」

ホーク「……」

イーグルを相手にスパーリングをする事になったホーク
ホークの目はすでに、悪魔のごとく真っ赤にそまり、イーグルを本気で殺す勢いだった

ホーク「フン!!」

ボゴォォン!

強烈なアッパーで、イーグルを襲う

イーグル「グゥ…!」

カーン!

ミゲル「3ラウンド終了」

イーグル「お役に立てたかな?」

イーグルはヘッドギアを外す

ミゲル「うむ、国内で彼を相手に出来るのは限られている。感謝する」

イーグル「ホークには是非、勝って欲しいからね」

イーグル「アメリカの誇りにかけて…」クルッ

ボゴォォン!!

イーグル「うっ…!!」

イーグルは爽やかに振り返ると、顔面に凄まじい衝撃が走る

イーグル「うっ…うぐぅ…」

ミゲル「ホーク!なにをやっている!」

ホーク「ふぅ…ふぅ…ふぅ…」

ギラギラと真っ赤に染まった目で、イーグルを睨むホーク

ホーク「もっと闘わせろ…もっと!殴らせろぉぉ!!!」

ミゲル「やめるんだホーク!もう終わりだ!」

ホーク「どけミゲル!そいつを殴らせろぉぉ!!」

ウォーリー「ホーク!もう終わりだよ!」

ホーク「……おお、ブラザー」

興奮しきったホークの真っ赤な目は、正常な目へと変わっていく

ミゲル「やれやれ、ウォーリーがいなかったら、どうなっていたか」

ミゲル「3日間も、彼のスパーリングに付き合ってくれてありがとう」

イーグル「こちらこそ、良い勉強になった」

イーグル「だが、僕はあまりココにはいない方が良さそうだ。彼は僕の事を何故か嫌っているようだし」

ミゲル「うむ…そうだな。あまり長くいるとトラブルを起こしかねない」

ミゲル「さて、次のスパーの相手はどうしようか」

イーグル「それならいるじゃないか。もう一人、彼に近い力を持つものが」

ミゲル「……」

イーグル「少なくとも、僕よりは気が合うと思うよ」

ミゲル「どうかな。さらに面倒な事になりそうな気がするが」

ウォーリー「ありがとねイーグル!ホーク、また強くなった!」

イーグル「いやいやこちらこそ、君の活躍も期待してるよ」

ホーク「おい、次にウォーリーに話しかけたら殺すからな」

(数週間後)

ミゲル「怪我の具合は?」

バイソン「もうとっくに癒えている。特訓もしてるし、コンディションも悪くない」

ホーク「またお前か」

バイソン「ああ、またオレだ」

ホーク「ストーカー野郎」

バイソン「黙れ異常者」

ホーク「あぁ?」ピキッ

バイソン「……」ニヤニヤ

ホーク「リングへ上がれ、マゾヒスト」

バイソン「ああ分かったよ、臆病者」

ミゲル「二人とも、落ち着け」ハラハラ

ミゲル「ほら、ふたりとも、ヘッドギアをつけるのだ」

ホーク「……」

バイソン「……」

ジッと、手に持ったヘッドギアを見つめた後、二人はほぼ、同じタイミングでヘッドギアをリング外へ、放り投げる

ミゲル「なっ…!?」

ホーク「分かってるじゃねぇか」

バイソン「お前こそ」

ミゲル「やめ」

ドゴォォン!!

二人の拳が交差し、互いの顔面が歪む

ホーク「ゴォォ…ォ…!」

バイソン「ウゥゥ…!」

ミゲル「ウォーリー!ウォーリーはいるか!」

ジムメイト1「ウォーリーはロードワーク中だ…」

ミゲル「くそ!こんな時に限って…」

ホーク「オラァァ!!」

バキュン!バキュン!バキュン!

ホークの銃弾のようなジャブが、バイソンを襲う

バイソン「フン!フン!」

負けじとバイソンもフリッカーで応酬

ホーク(相変わらず、すげぇフリッカーだ。ジャブとは思えない位に重い)

バイソン(この銃撃戦のようなジャブの打ち合い…スリルで良いが…長期的にはきつい)

バイソン(アッパーで…!)

ボゴォォン!!

バイソン(ぐっ…こいつも…!)

ホーク(同じ事考えてたか…!)

ほぼ同じタイミングで、アッパーを打ち合う
互いの頭部が、天井に向く

ミゲル「もう3分がたつ…ゴングをならせ!」

カーン!

ホーク「ウオォォ!!」

ミゲル(まずい!ホークの闘志が消えていない!)

バイソン「……」ガシッ

バイソンはホークの両腕を掴み、動きを制止させる

バイソン「おっとここまでだ」

ホーク「ヘッドギア外してまで闘志を剥き出しにしてたくせに、今更なにを言ってんだよ」

バイソン「ここでダメージを蓄積して、鷹村戦に影響が出たらどうするんだ?」

ホーク「っ!?」ビクッ

血走っていたホークの目が、とたんに怯えた目に変わる

ミゲル「まったく、ホークを心配するなら初めから、ヘッドギアを装着しなさい」

バイソン「ソーリー、つい興奮してしまって…」

ミゲル「2ラウンドは無し」

バイソン「え、そうか…じゃあまた明日か?」

ミゲル「いや、悪いがもう君には任せられない」

バイソン「手厳しいね」

ミゲル「君がまた興奮して、ヘッドギア無しでやられたら困るんだ」

ホーク「」ガタガタ

バイソン「人が変わったように小さくなっているが、大丈夫か?」

ミゲル「あれでもだいぶ、マシにはなったんだ」

ミゲル「前は名前を聞いただけで発狂し、ビデオを見ただけで気絶してたからな」

バイソン「……」

バイソン「そうだ。帰る前に、彼とレストランに行ってもいいかい?」

ミゲル「……私と同伴なら構わん」

バイソン「別に喧嘩しないさ」

ミゲル「それでもだ」

(レストランにて)

ホーク「……」

ホークは黙ったまま、ステーキをカットしていく

バイソン「おいおい、野獣がずいぶんと情けない姿に見えるぜ」

ホーク「あ?殺されてぇのか」

ミゲル「やめるんだ二人とも」

ホークは、ナイフをバイソンに向ける

バイソン「違う、お前を倒したい」

バイソンも対抗するように、フォークを向ける

ホーク「前に言ったよな。次におれと本気でやりあったら、間違いなく壊れると」

バイソン「それで壊れるなら本望だよ」

ホーク「なに?」

バイソン「オレはまた世界王者になりたいんだ」

バイソン「イーグルも、鷹村も、そしてお前も倒してな。本当の意味での世界王者に」

バイソン「リスクは承知だ。ボクシングとはそういう者だ」

ホーク「……」

バイソン「だからお前も、いつまでも怯えてるな」

バイソン「鷹村はオレを倒すのに6ラウンド掛かった。満身創痍のオレだったが、リングから下りる時は、自分の足で下りた」

バイソン「だがお前は、オレに対し、わずか3ラウンドでKO勝ち。しかも病院送り」

バイソン「自身、持てよ」

ホーク「……」

バイソン「同じスラムの出身者としちゃ、何だかんだオレは、お前に勝って欲しい」

ホーク「ふん、お前はデトロイトだろ」

バイソン「でも同じアメリカ人だ。絶対王者アメリカの力、見せ付けて欲しい」

バイソン「それじゃ、またスパーリング呼んでくれよ」

ミゲル「気が向いたらね」

ホーク「……」

ホーク「ジムに戻っても良いかい?」

ミゲル「今日はもう充分だ」

ホーク「鷹村のビデオがみたい」

ミゲル「そうか、なら付き合おう」

~~~

ホーク「なあ、鷹村には何か弱点はないのか?」

ミゲル「なんだ、何度も観ているのに気がつかないのか?」

ホーク「ん?」

ミゲル「以前闘ったときにも、分かったはずだ」

ミゲル「鷹村の弱点、それは」

ミゲル「スタミナだ」

ホーク「っ!そうか、奴はたしか減量で苦しんでいた」

ミゲル「だが彼は、目には見えない力を秘めてもいる」

ホーク「ああそうだ。なぜかあいつは、追い詰めるたびに、妙な力を引き出していた」

ミゲル「バックボーンだよ」

ホーク「なに?」

ミゲル「積み重ねた事が、力となる。君と鷹村との差はそこにあった」

ミゲル「君は前回の試合でも、途中、彼の意志の強さに怯えていたね?」

ホーク「あ、ああ」

ミゲル「減量苦に加え、君は散々と鷹村と鴨川を罵倒してきた」

ミゲル「メンタルというのは時に奇跡を起こす。特に日本人はそのメンタルが凄まじく強い。世界でもトップクラスに」

ミゲル(ゆえに、体も壊れやすくもあるが…)

ホーク「……努力なら負けてない」

ミゲル「そうだ。君は以前の物とは全く違う。積み重ねてきた」

ホーク「じゃあ、もっと練習しないとな」ガタッ

ミゲル「ホーク!これ以上はオーバーワークだ!」

ホーク「シャドーならいいだろ?」

ミゲル「うーむ…30分な」

ホーク「よし」

ホーク(努力だけが…恐怖を打ち消してくれる…)

シュッシュッ…!!

黙々とシャドーを開始する

(時は遡り、試合1ヶ月前。日本)

鷹村「ぜぇぜぇ…!!」

真夜中に土手で、鷹村はひたすら走っていた
すでに、鷹村の肌はガサガサになっている

一歩「鷹村さーん!」

鷹村「おう一歩。お前も毎夜毎夜、飽きないな」

一歩「鷹村さんだって、日中、殺人的なメニューをこなしてるのに」

鷹村「言っただろ、寝れないんだ」

一歩「……」

一歩「まだ一ヶ月前なのに、もう体重クリアしてるんですよね?」

鷹村「ああ。ジュニアミドルの頃に比べれば、今の減量なんざ、軽いもんだしな」

鷹村(少し、飛ばし過ぎた感はあるがな)

一歩「会長、心配してますよ」

鷹村「問題ない」

鷹村「気力もいつもより充実している。いつでも闘える」

鷹村「うっ…」フラッ

一歩「鷹村さん!?」

鷹村「大丈夫だ。家に帰って、水飲めば充分だ」

一歩「……」

鷹村「心配すんなよ。ジュニアミドルの頃なんて、水すら飲めなかった」

(翌日)

鴨川「あと2週間トレーニングを積んだら、そこからは回復に努める。練習はそこそこにやればええ」

鴨川はバイク乗りながら、走る鷹村に声をかける

鷹村「ぜぇぜぇ…バカヤロウ、相手はブライアンホークだ。休むヒマなんざねぇよ!」

鴨川「じゃが飛ばしすぎじゃ!」

鷹村「そんなのいつもだろ!」

鴨川「今回は特にじゃ!」

鷹村「ぜぇぜぇ…」ピタッ

鷹村はストップし、息を整える

鷹村「噂は聞いてるぜ、あいつ、人が変わったみたいに努力してるってな」

鴨川「む…」

鷹村「ま、試合を見てれば分かるけどよ」

鷹村「ジジイ、言ってたよな?努力が報われるとは限らない。だが成功者は皆、努力してるってよ」

鴨川「うむ…」

鷹村「あいつは、ろくに練習もせずに、オレと張り合った」

鷹村「オレが言いたい事、わかるよな?」

鴨川「……ああ。わかっちょる」

鴨川「わしも正直、眠れぬ日々が続いとる」

鴨川(鷹村もじゃが、小僧の事も心配じゃしのう)

鷹村「勝つのはいつだってオレ様だ。奴はオレ様には勝てない」

鷹村「……だが、練習を怠れば話は別だ。少しでも怠けたらオレ様は負けてしまう」

鴨川(鷹村…すまぬ、わしに力があれば、すぐにでも階級を)

鷹村「……ああ、そうだ。言っておきたい事が」

鴨川「む?」

鷹村「その…オレ様もこれまで、散々、階級あげろと文句言ってきたが」

鷹村「いま振りかえりゃ、ずっと防衛を続けて良かったかもな」

鴨川「これまで散々、無意味な防衛と言っていた癖に、どういう心境の変化じゃ」

鷹村「覚醒したブライアンホークを、この手で叩き潰す事ができるんだからな」

鴨川「鷹村…」

鷹村「まあ、防衛やってて楽しく感じた事は少ないが」

鷹村「今度の試合は、今まで一番の試合にしたいと思っている」

鷹村「だからよ」ポンッ

優しく鴨川の肩をたたく

鷹村「この闘いが終わったら…今度こそ、階級あげてくれや」

鴨川「……ああ、努力しよう」

鷹村「ま、どうせホーク戦が終わっても階級、変わらなそうだけどな」

鴨川「な、なにお!?」

鷹村「期待しないで待っててやる」

鴨川「ぐぬぬぬ!見ておれ!絶対に交渉を成立させてみせるからのう!」

鷹村「言ったなぁ?守ってくれよ。ま、期待してないけど」ニヤッ

鴨川「上等じゃ!」

(その頃、アメリカにて)

ウォーリー「待ってよ!ホーク!」

ミゲル「困ったな、ホークの姿が見えない」

この日、ミゲルは自転車に乗りながら、ウォーリーとホークのロードワークに付き合っていた

あたり一面、霧が掛かって前がよく見えないでいる

ウォーリー「そういえばさ、明日には日本に向かうんだよね?」

ミゲル「うむ。東京のとあるジムでお世話になるつもりだ」

ウォーリー「僕も同伴だって聞いたけど、試合無いのに行くの?」

ミゲル「うむ、君はホークの精神的な支柱になっている」

ウォーリー「そっか。頑張ってホーク応援する!」

ミゲル「それと、前座の選手も、海外からそのジムに訪れるそうだ」

ミゲル「君はその前座の選手の、スパーリングパートナーになってほしい」

ウォーリー「ふーん。どんな人?」

ミゲル「フィリピンのジュニアライト級王者のエレキ・バッテリーと、インドネシアのライト級王者のパパイア・ダチウの相手をしてもらう」

ウォーリー「なんか…強そうだね!」

ミゲル「遠慮はいらない。全力で相手をしなさい」

ホーク「ぜぇぜぇぜぇ…!!!」

真っ白い霧の中、ホークはわき目も振らず、走り続ける

ホーク(怖い…怖い…怖い…)

ホーク(闘いたくない…日本にいきたくない…)

ホークの心臓の鼓動は、激しく高鳴る

ホーク「うお!?」ドサッ

ホーク「くそ、こけちまった…」

ホーク「膝を擦りむいた…血が出てる…痛ぇ…」

ホーク「……」

ホーク(なぜだ、なぜ、オレはこんな想いしなけりゃならないんだ)

ホーク(どうしてこんな、惨めな思いしなきゃならないんだ)

ホーク(酒飲んでもハイになれねぇ…EDで女も抱けねぇ…つらい練習に耐えるしか無い日々…)

ホーク(チクショウ…チクショウ…)

ホーク「チクショゥゥゥゥ!!!」

四つん這いのまま、やり場の無い怒りで叫ぶ

ホーク「ぜぇぜぇ……ぜぇぜぇ……」

ホーク「そうだ…鷹村、お前のせいだ…」

ホーク「殺してやる…絶対に殺してやる…」

今日はここまで

次回は来日、ウォーリーのスパーリング戦、記者会見、鷹村とホークの入場あたりまで

報告

私生活の忙しさと、原作一歩での内容にショックで、なかなか書けなかった
山を越えたので少しずつ、次の投下の準備していきます

(3日後・日本にて)

八木「改めて説明する。キミ達二人の対戦者相手は…」

八木「フィリピンのジュニアライト級王者のエレキ・バッテリー。そしてインドネシアのライト級王者のパパイア・ダチウ」

八木「かつて二度にわたり闘った相手だ。覚えてるハズだよ」

青木・木村「またあいつらかよ!!」

八木「いやー彼らがどうしても、キミ達と試合したいって言うからさ…つい」

青木「ついじゃねぇよ!」

木村「断れよ!あいつらなにげにやっかいなんだよ!」

鴨川「つべこべいうでない!文句言う暇あるなら、鍛錬じゃ!鍛錬!」

青木「くそ~今度こそ勝つぞ~!」

藤井「よっぽど縁が強いんだな、あの外人たちとは」

一歩「あ、藤井さん!」

木村「やな縁だぜ、全く」

藤井「ついさっき、彼らの公開スパーリングを観て来た」

青木「ど、どうでした?」

藤井「すこぶる調子が良い」

青木「あ~もうヤダヤダ!!」

木村「世話になったジムのボクサーが哀れだぜ」

藤井「……いや、実はエレキもパパイアも、二人とも2ラウンドノックアウトだったんだ」

青木・木村「っ!?」

一歩「どういう事ですか!?」

板垣「言っている事が矛盾してますよ!」

藤井「たしかにエレキもパパイアも、絶好調だったんだ、1ラウンドは」

藤井「だが2ラウンド目から相手は本気をだした」

一歩「その相手と言うのは…」

藤井「かつて君と戦った男…ウォーリーだよ」

全員「!!?」

藤井「彼はいま、ミゲルゼールとともに、あるジムでトレーニングを積んでいる」

一歩「なぜミゲルゼールたちが…は!まさか」

藤井「そうだ、ブライアンホークが来日した」

藤井「数年前に来日したときと、同じジムで調整を行っている」

鷹村「……ついに来やがったか」

一歩「あの、ちなみに二人は大丈夫なんですか?」

藤井「さすがに試合前に、壊されたらたまったものじゃないからな」

藤井「レベルの差を感じて、両トレーナー共に、タオルを投げたんだ」

木村・青木(チッ、いっそ壊してくれたほうが俺達に有利なのに)

一歩「ウォーリー君…すごい勢いで成長してるな…」

鷹村「フン、小物がどうなろうが知ったこっちゃないが」

鷹村「ホークのやつ…ちゃんと調整してんだろうな」

藤井「ブライアンホークの変わりぶりには、もはや異常そのものだ」

鷹村「む、では噂とおりに」

藤井「何かに取り憑かれたみたいに練習していた」

(棒ボクシングジム)

ウォーリー「やったやった!チャンピオン二人も倒しちゃった!」

エレキ「ぜぇぜぇ…」

パパイア(このガキ…!!痛ぇぇ…)

エレキのトレーナー「頼むよミゲル!うちの選手を壊さないでくれ!」

パパイアのトレーナー「タオルを投げなかったら、二人ともどうなっていたか…」

ミゲル「むぅ、すまない。だが二人とも優秀なボクサー。簡単にはこわれないハズさ」

ミゲル「さあ、ウォーリー。そろそろ昼食をとろう」

ウォーリー「待って!ホークがまだ練習してる!」

ズドォォン!ズドォォン!

ホーク「フン!!」

熱き拳を止める事無く、サンドバックを縦に揺らし続ける

ジムメイト全員「」

会長「あれがブライアンホークだと…数年前にも、我がジムに来たが、あの時は女と遊んでばかりだった」

会長「信じられん…」

ホーク「ぜぇぜぇ…ミゲルそろそろ」

ミゲル「ん?ああ…わかった」

ミゲル「会長さん、ホークがスパーリングをやりたがっているが、いいかな?」

会長「スパーリング!?いやいや…それはできない」

会長「数年前のあの時ですら、相手を一撃KOだったんだ」

会長「いまのホークは明らかに、あの時の倍以上の強さだ。ウチの選手が壊れてしまう」

ミゲル「うーむ…ホーク、実は」

ホーク「え?なに……」

ホーク「なんだよ。雑魚しかいないのか、もういい」

ホーク「走ってくる」

ミゲル「迷子になるなよ」

ホーク「周辺をグルグル走るだけだ、大丈夫」

(数時間後)

ホーク「ただいま…ぜぇぜぇ」

ミゲル「少々、オーバーワークだな」

ミゲル「まあいい、夕食へいこう。昼食すらとってないだろ?」

ホーク「ああ、すっかり忘れてたよ昼食の事」

ウォーリー「おなか減った!お昼なにも食べてない!ホーク早くいこ!」

ホークー「おいおい、お前まで昼食を抜く必要はないんだぜブラザー」

(ラーメン屋にて)

青木「ヘイラッシャイ!」

店長「お、外人さんたちか」

ウォーリー「僕、日本のラーメンはじめて!」

ミゲル「ラーメンはうまいぞぉ。ただし、食べ過ぎると健康にわるい」

ホーク「……」

青木「」

店長「どうぞ、水です」

ミゲル「うむ」

青木「」

店長「おい、どうした」

青木(な、なんだぁ!?あのメンツ!!?)

青木(なんでここに、アイツらが来てんだよ!!)

ホーク「……」ジーッ

青木(なんかガン見されてるー!!こえぇぇぇ!!)

ミゲル「では、私と彼はラーメンと餃子のセットで」

店長「へい」

ミゲル「ホーク。君は?」

青木(いまホークって言ったよな!?やっぱり本人じゃねぇか!!)

ホーク「この大盛チャーシュー麺と、餃子、それとチャーハンで」

青木(めっちゃ食うなこいつ。試合前の鷹村さんは、ほとんど水だけで生活してるのによ)ガルル

店長「おい、何を睨んでる。失礼だぞ」

店長「すいませんうちの店員が…」ペコペコ

店長「早く作れ、もたもたするなよ」

青木(気がのらねぇ…だが、いまのおれはラーメン屋の店員であって、敵だからと言って差別は…)ブツブツ

店長「おい青木!」

青木「へ、へい!ただいま!」

~~~

青木「へいお待ち!」

ウォーリー「うーん!おいしい!」ズルズル

ミゲル「やはりラーメンは良い物だ」ズルズル

ホーク「……」パチッ

二人をよそに、ホークはゆったりとしたモーションで割り箸をわり、ハシを麺に入れていく

ミゲル「そのラーメンは君の血肉となる」

ホーク「ん?」

ミゲル「鷹村いまごろ、ほぼ水だけで生活をしているだろう」

ミゲル「その苦行こそが、奇跡を起こすカギでもある」

ミゲル「だが減量苦が試合で、圧倒的に不利なのはたしかだ」

ミゲル「逆にそのラーメンは、君のエネルギーとなり、勝利の源になる」

ミゲル「よくよく、意識して食べるのだ」

ホーク「ああ、覚えておくよ」

パクッ…ズルズル…

ホーク「うまい…」

ズルズル…ガツガツ…

ホーク(この麺も、野菜も、肉も、スープも)

ガツガツ

ホーク(餃子もチャーハンも)

ゴクッ…

ホーク(もちろん、水も…)

ホーク(全てが、オレの力となる…!!)

青木「」

青木(け、おいしそうに食いやがって…調子狂うぜ)

ホーク「ヘイ」

青木「あ?」

ホーク「―――」

青木「あ、なんだって?」

ミゲル「餃子とチャーハンをおかわりと言っている」

青木「へ、へい!」

青木(しかしよく食うなコイツ)

ホーク(たくわえるぜ…エネルギーを!!)

青木「合計○○○○円です」

青木「あざしたー!」

ミゲル「では、ホテルへ戻ろう」

ウォーリー「うん!」

ホーク「……」ジーッ

ミゲル「どうしたホーク」

青木(また見られてるーー!?)

ホーク「……」

ホーク「……」ニヤッ

ホークはジッと青木を見た後、ポンッと青木の肩を叩く

青木「」

青木(なんだ!?いきなり肩を叩かれた!?!?)

ホーク「ボクシングだけじゃなくてラーメンも一級品だ。流石だぜ青木」

ミゲル「む?ああ…そういえば…なるほど。ふむ、ここで働いてたのか」

ウォーリー「あ、よく見たら青木!ラーメンおいしかった!」

青木「」

青木(いまコイツら青木って言ったよな!!なに!?オレの事しってんの!?なんで!?)

ホーク「シーユー」

(翌日)

青木「……っていう事があってよ」

一歩「」

板垣「」

木村「ま、まじかよ…まあラーメン屋に来たってのは信じてやってもいいが」

木村「お前の事を知ってるはず無いだろ」

青木「いやいや!明らかに青木ってハッキリいってたんだよ!」

板垣「聞き間違いじゃないですか?」

青木「いやだから」

鷹村「ガタガタうるせぇ!!!」

全員「っ!!」

鷹村「……」

一歩(試合前の鷹村さんは機嫌悪いからな…静かにしないと)

木村(さすがに青木をいじってられるほど、気持ちに余裕ないしな)

青木(そういや最近はいじられてない、よし、一生減量してろ)

鷹村「いま!おまえは一生減量してろと思ったな!?」

青木「は!?なんで分かる…じゃなくて!そんなこと思ってませんって!」

鷹村「問答無用!」ニギッ

鷹村は青木の玉袋をギュッと握る

青木「ギャーーーー!!!!」

鷹村「安心しろ、潰してはいない」

青木「この悪魔―――!!」

青木は腹痛をこらえながらジャンプする

鷹村「帰る」

一歩「あれ、今日はもう帰るんですか?」

鷹村「ジジイが、休め休めとうるさいからな。たまには早めに切り上げる」

(鷹村宅)

鷹村「む、そういや京姉が作っくれたスープ、まだ飲んでないな」

鷹村「走りすぎて、体重がジュニアミドルに戻ってたしな…」

鷹村「うし、ちったぁまともなエネルギーを補給するか」

~~

鍋を温めたあと、鷹村はどんぶりにスープを注いでいく

鷹村「いい香りだぜ」

具の野菜が千切りされているもので、太い具材はない
ほぼ具無しに近い状態だ

鷹村「……」ズズズッ

鷹村「……」

鷹村「ああ、うめぇ」

鷹村「……」

鷹村「寝るか」

そういって、鷹村は横になる

鷹村「……」グゥゥ

まだまだ空腹なのか、お腹が鳴る

グゥゥゥ

鷹村「……」

鷹村(ホーク…好きなだけ、好きなもん食ってろ)

鷹村(最後に勝つのはこのオレ様だ…!!)

グゥゥゥ

鷹村「……腹減った」

(試合前日・記者会見)

鴨川「問題なく、計量もパスしたな」

鷹村「ああ。さっき飯も食ったから、元気モリモリだ」

木村(ファミレスでめっちゃ食ってたしな)

青木(減量後のボクサーがいきなり暴食したら、普通は確実にお腹壊すんだけどな…どうなってんだコイツの体は)

木村「さて…おい、分かってんだろ」

青木「あったりめーよ」

一歩「どうしたんですか?」

木村「記者会見の時のことだよ」

一歩「あっ…」

青木「今日も何か、波乱を起こす可能性があるからな」

板垣「身構えてないと駄目ですね」

(記者会見場)

パシャパシャ、パシャパシャ

記者たちが、両陣営を写真に収めていく

鷹村「……」

鷹村は威風堂々と、腕を組んでいる

~~~~

一歩「堂々としてるな~鷹村さん」

板垣「前回と様子が全く同じですね」

青木「それよりもなんだ、あのホークのやつれ具合。あんだけ食いまくってた癖に」

木村「思いっきり震えてるぜ」

~~~~

ホーク「」ガクガクガク

ミゲル「……」

ホーク(や、やべぇ…恐怖のあまり、昼食で食べた寿司が、胃の中から出てきちまいそうだ)

記者1「えーでは、さっそく質問したいのですが」

記者1「鷹村選手、この試合について一言」

鷹村「とりあえず、再びこのオレ様に挑んできた事を褒めてやる。ブライアンホークをな」

鷹村「だが勝つのはオレ様だ。ベルトは譲らない」

記者全員「オオオォォォ…」

一歩「いたって普通だ」

板垣「前回と変わらず、模範的な回答だな」

青木「らしくねぇけどな。まあ相手が相手だし」

木村「だがその相手の顔色、まじで死にそうだぜ?」

記者1「続いて、ブライアンホーク選手。今回のリベンジについて何か」

ホーク「」ガタガガタ

記者たち「おい大丈夫か…アレは」

ホーク「」ガタガガタ

藤井「おいおい、あんなんで試合になるのかよ」

真理「……ザマァみろね」

藤井「そういやお前は数年前、ホークにセクハラ発言を受けてたな」

真理「でも困ったわ。あれでは、どのみちインタビューは困難」

記者1「それじゃ両選手、改めて撮影をしたいので、二人ともよってファイティングポーズを」

鷹村は、ガタガタと震えるホークの側に行き、ファイティングポーズを取る
ホークも渋々、恐怖で震えながらポーズをとる

鷹村「……」

鷹村とホークの互いの腕が交差し、己の拳が、相手のアゴの下へと添える

ホーク「」ガタガタ

パシャパシャ、パシャパシャ

鷹村「……」

鷹村「ふん」

ゴンッ

ホーク「がっ…」

全員「!?」

鷹村の拳は、軽く垂直に上げる事で、ホークのアゴに当たる
辺りは騒然となる

一歩「」

青木「な、な…?」

木村「鷹村さん…!?」

鴨川「何を考えとるんじゃ!!」

鷹村「……」

鴨川「聞いておるのか!!」

ホーク「なっ…なっ…」ワナワナ

ホーク「何しやがる!!」ガタッ

鷹村「……」ギロッ

ホーク「ひぃ…!」

鷹村に一度は接近する物の、その気迫に気圧されてしまい、再び尻餅をつくホーク

ホーク「あ…ぁぁ…」ガクガク

鷹村「……」

鷹村「おい、ミゲルゼール」

ミゲル「む?」

鷹村「日本語わかるんだよな?ホークに伝えてやれよ」

鷹村「――――」

ミゲル「なっ…」

全員「」

鴨川「何を馬鹿げた事を言っておるんじゃ!!この馬鹿者馬鹿者!!」バシバシ

鷹村「いってぇぇな!今回はちゃんと『種』って表現したじゃねぇか!」

鴨川「そういう問題じゃないわ!!こんの大馬鹿者がぁぁ!!」

ホーク「ミゲル…鷹村はなんて言ったんだい?」

ミゲル「……」

ミゲル「彼曰く…『お前の変わりに、日本は勿論、アメリカ中の女に、自分の種を蒔いてやる。20年後は日本とアメリカから世界チャンピオンが大勢出てくるだろう』と言っている」

ホーク「……」

ホーク「……」

ホーク「く、くくく…」

ミゲル「ホーク?」

ホーク「ヒャーッハハハハハハハ!!!面白いジョークだぜ鷹村!!!」

記者1「ホークの様子が…」

記者2「昔の様に戻っている」

ホーク「必死に努力してようやく勝ったお前が!このパーファクトになったオレに勝つ気なのかい!?」

ホーク「前回までは練習なんて全然してなかったからな!だからお前は運よく勝てた!」

ホーク「だが今回は違う!もうオレはパーフェクトなんだ!」

ホーク「お前とは生まれ持った資質が違うのさ!」

ホーク「今度こそオレが勝って!日本中の女をメチャクチャに犯してやるよ!!!お前の変わりにな!!!」

ホーク「雑魚しかいない日本人を変えてやるよ!!泣いて喜べ日本人!!」

ホーク「ヒャーッハハハハハハ!!!!」

鷹村「……」

鷹村「通訳」

ミゲル(こ、これは前よりも過激な…こんな事、正直に言えるわけが)

鷹村「一言一句、間違いなく言え。ごまかすなよ」ギロッ

ミゲル「」ビクッ

気圧されたミゲルは、そのまま誤魔化す事無く、通訳し終える

ミゲル「い、以上だ…」フイッ

全員「」

真理「……最低」

一歩「」

板垣「」

青木「」

木村「」

鴨川「な…何を!?」ピキピキ

鷹村「……」

ホーク「ぜぇぜぇ…へへ、ハハハ…」ニヤニヤ

鷹村「それで良いんだよ」ズイッ

鷹村は両手をポケットに入れたまま、ズイッと、ホークに接近する
互いの額がぶつかり合う

ホーク「ひぃ!?」ドンッ

虚勢を張っていたホークは、恐怖に耐え切れず、また尻餅をつく
顔面が真っ青になり、目に涙を浮かべている

鷹村「いつまでもビクビク、ビクビクさせられても困るんだよ。返って調子狂うぜ」

鷹村「お前はいつも通り最低野郎で良い。前回の舐めきった態度はともかく、今更お前に怒りなど感じない」

鷹村「いつだってやることは一緒だ。今回も貴様を踏み台にする」

鷹村「オレ様の野望。6階級制覇のため、その踏み台だ」

ホーク「あ…ぁぁ…ぁぁ…」ガクガクガク

ギロっと睨む鷹村、そして怯えるホーク

パシャパシャ、パシャパシャ

記者たちはその構図を、写真に収めていく

(記者会見終了後)

ホーク「ぁぁ……ぁぁ…」ガクガク

ウォーリー「ホーク!」

ホーク「おお…ブラザー…会いたかったぜぇ…」ガクガクガク

ウォーリー「大丈夫?顔色悪い!一緒に帰ろ!」

そういって肩を貸すウォーリー

ホーク「悪いなブラザー…あ、足が震えちまって…」ガクガク

ミゲル(やるだけの事はやってきた。が、最後まで恐怖心はぬぐい切れなかったか…)

ホーク「渋い顔するなよ、ミゲル」ガクガク

ミゲル「む…」

ホーク「こんなにビビッちまっても…オレァこれでも、もう覚悟はできてんだ」

ホーク「足が震えようと、逃げたくても…それでもリングには上がる」

ホーク「何のために闘ってきた?何のために努力してきた?」

ホーク「全部、明日始まる試合ためだ」

ミゲル「うむ、分かっているなら、それでいい」

ホーク「……2人には感謝してる。オレは最後まで諦めねぇ」

(翌日・試合当日)

実況「今宵、この国技館にて」

実況「ボクシング史上、最高に熱い闘いが、幕を開ける…!!」

ワァァァァ!!!

観客が大きな声で歓声をあげる

青木「まだ始まってないよな?」

一歩「あ、青木さんに木村さん!お疲れ様です!」

木村「まったくよ~!例のごとく、また引き分けだったぜ!チキショー!」

板垣「でもあの強者に3度も、引き分けに持ち込むなんて凄いですよ」

青木「へん、もうおれらの事は良いよ」

青木「それよりもメインイベントだ!」

(控え室にて)

ホーク「うーん、惜しかったぜ青木。実に残念だ。このオレが直に応援しに行ったほうが、良かったかな?」

ウォーリー「それじゃ流石に、ミゲルに怒られちゃうよ」

ホーク「ハハハハ、それもそうだな」

ガチャッ

ミゲル「意外とリラックスしてるな」

ホーク「いや?だいぶナーバスになってるよ。これでも」

ホーク「だが昨日も言ったように、覚悟はできてる」

一歩「わ!急に真っ暗になった!」

突如、会場中が闇に包まれる
そして、しばしの静寂の後に大きなモニター画面に、映像が映し出される

観客1「おお…あれは!」

観客2「数年前の…鷹村とホークの試合映像だ」

その映像では、鷹村が見事にKO勝利しているシーンと、ホークが無残にマットに沈むシーンが映し出されている

そして巨大モニター画面は突如、暗転する

暗闇の画面の真ん中に、白い文字が映し出される

『伝説のあの試合から』

『数年…』

『今宵、あの男が帰ってくる…!』

司会「おまたせいたしました!」

司会「WBA・WBC統一王座決定戦を行います!」

ウオォォォォォ!!!!

会場が熱気に満ちると同時に、煙幕が勢いよく飛び出る

ホークガール達「さあ、行くわよホーク」

ホーク「ああ」

ミゲル「全てを出し尽くすのだ」

ホーク「勿論だ」

煙幕を搔き分けながら、美女と野獣、そして指揮官が入場する

入場曲の、ワルキューレの騎行が、ホークの闘争本能を掻き立てていく

司会「青コーナー…WBA1位・WBC1位…」

司会「ブライアン!ホォォォク!!」

ウオオォォォォォ!!!!

リングに上がったホークは、ゆっくりと、白クマの毛皮ガウンを脱いでいく

ホーク「さあ、君たちはリングから降りるんだ」

ホークガールズ「ええ」

ミゲル「……」

ホーク(ついに戻ってきた)

ホークはジッと赤い入り口を見つめる
会場は再び暗転し、暗闇の中から、飛び交う赤いレーザー光線

そして煙幕が噴き出る

『セブン~セブン~セブン~セブン~』

『セブン、セブン、セブン!セブン、セブン、セブン!』

ウルトラセブンの歌が入場曲として、意気揚々と流れる

派手な翼がついた、鷹のガウンを着用した、鷹村が入場していく

鷹村「……」

鷹村(ついにきたぜ…この時が!)

司会「赤コーナー…WBA・WBC統一チャンピオン…」

司会「タカムラァァ!マァモォォルゥゥ!!!」

ウオオォォォォォ!!!!

国歌斉唱を終えると、リング全体が明るくなる

審判「両者、前へ」

ホーク「……」ツカツカ

鷹村「……」ツカツカ

審判「ちょっ!?二人とも」

ゴンッ

ホークと鷹村は、互いの額をぶつけ合い、にらみ合う

鷹村(フン、昨日まではビクビクしてたようだが…ようやく良い面構えになってきたじゃねぇか)

ホーク(思い出せ…この惨めな数年間。復帰してから積み重ねてきた努力の日々を)

鷹村(お前はオレ様の踏み台だ。永遠にな)

ホーク(お前をブッ殺して、エクスタシーを取り戻す)

ウォーリー「ホーク!!がんばれー!!」

ホーク(わかってるさブラザー)

一歩「鷹村さぁぁん!!」

鷹村(ああ、心配すんな)

実況「さあ間も無く、闘いのゴングがなります!!」

あけおめ、ことよろ
今日はここまで

一歩「緊張してきた…!」

青木「ゴングはまだかよ!」

木村「こういう時って、ゴングなるの長く感じるもんな…」

猫田「ぜぇぜぇ、どうにか間にあったダニィ」

一歩「あ、猫田さん!来てくれたんですね!」

猫田「そうそうたる面子がそこにもいるダニィ」

宮田「……ブライアンホークは、どう進化したか」

一歩「宮田くん!」

宮田「オレだけないぜ」

千堂「ワイらも来てるで」

伊達「よっ!久しぶりだな」

一歩「千堂さんに、伊達さん!」

板垣「真柴さんも来てますよ」

真柴「……」

一歩「」

木村「ぎゃあああああぁぁ!!!」

真柴「チッ、うるせーな木村は…おい、幕之内。テメェは何かいう事ねぇのかよ」

一歩「あ、ああ…こ、こんばんは!!」

真柴「フン」

千堂「負けたくせに随分、態度でかいんやな、おどれは」

真柴「二回も負けたやつがそれをいうか」

千堂「あ?」

真柴「あ?」

宮田「まったくお前ら毎回、似たような会話で喧嘩して、飽きないのか」

千堂「おおっと、それもそうやな。もう試合が始まる」

真柴「フン」

一歩「これだけ凄い人が来るという事は、やっぱり今日の試合はボクサーにとって特別な物なんだな…」

宮田「国内のやつらだけじゃないぜ」

そういって、宮田はある場所へ視線を送る

一歩「……!あれは…」

バイソン「……」

イーグル「……」

宮田「かつて、ホークや鷹村さんに負けた、世界ランカーたちもこの会場にいる」

イーグル(まったく想像がつかない。どっちが勝つんだ)

バイソン(さあ見せてくれ。お前の覚醒しきった姿。オレと闘った時ですら、まだ未完成なハズだ)

実況「さあ、世界最強のミドル級の立場はどちらの手に」

カーン!!

実況「いま、ゴングがなったぁぁ!!!」

鷹村「……」

ホーク「……」

実況「1ラウンド開始より、早くも30秒!」

実況「両者、腕をだらりとさげたまま」

実況「リング上で円を描くようにして歩き、互いの様子をうかがう!」

鴨川(うむ、初めはそれでええ。前回のホークとはワケが違う)

鷹村(前も1ラウンド目はこんな感じで、始まったっけな)

鷹村「なら、まずは」

実況「鷹村、まずはガードをガッチリと堅め、オーソドックスなスタイルで挑む」

鷹村(さあ、今日のお前はどうくる)

ホーク「……」

ホーク「始めようか」スッ

クンッ…クンクン

実況「ホーク、右腕で顔面をガードし、左腕を前に突き出す。独特な構えだ!」

突き出された左腕は、僅かにクンクンっと上下に揺れている

ホーク(まずはリズムを作る…)

鷹村(やはり、そのスタイルで来たか)

~~~

一歩「出た、あのスタイル…かつて僕と戦った」

沢村「オレのパクリじゃねぇか」

一歩「ぎゃああああああぁぁぁ!!!」

木村「さ、沢村!?」

真柴「チッ、来てたのかよ」

千堂「ワイが呼んだんや」

真柴「余計な事を」

千堂「あ?」

真柴「あ?」

宮田「黙って観戦できないのかお前ら」

沢村「フン、オレはただ試合を観に来ただけだって言うのによ」

実況「さあ、1ラウンド開始より早くも1分が経過!」

審判(そろそろ、両選手に警告しておくべきか?これじゃラチがあかない)

鷹村(減点喰らう前に、そろそろ手を出しておこう)

ヒュン!

鷹村「ッ!」

ホーク「……」

鷹村(なんだ?いま、何かが目の前まできて…)

ヒュン!

鷹村「!?」

鷹村(まさか、こいつジャブを打っているのか!?早ぇぇ…!)

ヒュン!

鷹村(だがなぜ当てない?なぜ寸止めなんだ)

ヒュン!

鷹村(こいつ…さては挑発か!?)

鷹村(いい度胸してんじゃねぇか!!)

ホーク「ハッ…!」ビクッ

鷹村(ん?なんだ急に…ビビッた面みせやがって)

鷹村(オレ様がにらんだからか?チッ、まだオレ様にビビッてんのか!)

ホーク「……」チラッ

鷹村「ん?」チラッ

観客全員「んん?」チラッ

ホークはおびえた表情のまま、チラッと視線と横に向ける
思わず会場中の全員が、ホークの視線につられる

鷹村(おっといけねぇ…つい、よそみを)

鷹村「あれ?」

鷹村「ホークがいねぇ。どういう事だ」

鷹村「奴はど、ゴォォッ!?」

ボゴォォン!!!

その刹那、鷹村の顔面は真上へと向けられる
アゴから垂直に凄まじい、衝撃が走る

鷹村(ま、まぶしい…?)

鷹村(なんだ、なぜオレ様は、天井の照明を見つめているんだ)

鷹村(なぜ体が宙に浮いている)

鷹村(あれ、照明の他に…あれは、腕?グローブ?)

鷹村(やばい、倒れちまう…!踏ん張れ!!)

鷹村「フンンン!!!」

実況「なんだ!?何が起きた!!」

実況「鷹村!いつの間にか殴られていたが、どうにか踏ん張る!」

鷹村「危なかった、もう少しでマットに沈むところ…ガッ!?」

バキュゥゥゥン!

ホーク「さあ、銃の乱れ撃ちだ」

バキュゥゥゥン!バキュゥゥゥン!バキュゥゥゥン!バキュゥゥゥン!

鷹村「……ッ!!!」

実況「まるで銃弾のようなホークのジャブが、容赦なく鷹村を襲う!!」

一歩「ば、バレット…!!」

板垣「は、早すぎて見えない…」

沢村「やっぱりオレのパクリじゃねぇか」

木村「いや、その前にツッコムべき所が他にも」

青木「オレのパクリじゃねぇか!!?よそ見!カエルパンチ!」

鷹村(まずい…!やつにペースを…)

鷹村「ここはカウンターで!!」ブンッ

ホーク「おおっと逃がさないよ」

ホーク「フン!!」

ホークが左ジャブをやめると同時に、鷹村は右ストレートをはなつ
そのタイミングに合わせるようにして、ホークも右ストレートを打つ

ホーク「いくぜ…閃光!」

ズドォォォォン!!!

鷹村の右ストレートを避け、同時に目にも留まらぬホークの右の一撃が、鷹村の顔面をとらえる

鷹村「ァ…ァァ…」

鷹村の体は宙に、グルッと1回する

ドォォン

実況「ダ、ダウゥゥン!鷹村!早くもダウン!!」

鴨川「」

八木「鷹村くんが1回転した!?」

鷹村「」

ホーク「ぜぇぜぇぜぇ…」

審判「ワン!ツー!」

青木「い、いま鷹村さんの体、1回転したよな…!?」

木村「信じられねぇ…あの鷹村さんの巨体を…」

一歩「じ、人外…」

板垣「そんな、これで終わりってことは…」

宮田「あるわけないだろ!バケモノなのは鷹村さんも一緒だ!」

一歩「鷹村さぁん!立って!!」

観客「タッカムラ!タッカムラ!タッカムラ!」

実況「早くも鷹村コール!しかし、この信じられない事態を、乗り超える事ができるか!?」

審判「ファイブ!シックス!」

鴨川「鷹村!もどってこぉぉい!!」

鷹村「」ビクッ

鷹村「う…ぁぁ…」

審判「セブン!」

鷹村「……おい、カウントやめろ」ギロッ

審判「ッ!」

審判「ボ、ボックス!」

実況「鷹村!どうにか立った!」

鷹村「や、やろう…」ピキピキ

鷹村「このガキィィ!!」ダッ

実況「全力疾走で相手に向かう」

ズドォォン!!

ホーク「ッ!?」

実況「鷹村の右フルスイングがホークの顔面を襲う!」

鷹村(ディフェンスの弱さは相変わらずだな!その構えは攻撃主体だ、ダメージを受けやすい!)

ズドォォォン!!!

実況「今度は左!!」

ホーク「ウォォォ!!」ガクッ

ウォーリー「ホークゥ!!!」

ホーク(心配するなブラザー、たしかに奴のワンツーは凶器だが)

ホーク(この程度じゃ、くたばらないよ)

鷹村「もう一発!!!」

ズドォォン!!!

実況「フルスイング3発目!!!」

ホーク「お…おお…ぉぉ…」フラフラ

鷹村「ん?」

実況「ホーク、逃げるようにフラフラと後ろ歩きで、ロープ際へと逃げていく」

鷹村(フン、前回の防衛戦でも、挑戦者を一撃KOでマットに沈めたからな)

鷹村(とはいえ相手はホークだ、こんな簡単にくたばるハズないのだが…)

鷹村(まあいい、追撃するぜ!)

ホーク「あ…ぁぁ…」ガクガク

ホーク「ぁ…」ガクッ

実況「おおっとホーク!ダウン寸前だ!」

鷹村(ダウンする前に、顔面をもう一発なぐらせろ!!)

実況「背面から倒れこむホーク、しかし追撃をやめない鷹村!」

ホーク「……」ガシッ

実況「ホーク、ギリギリの所で、片手でロープを掴む」

鷹村(表情がイッちまっている…反撃はない!)

鷹村「このままブチのめしてやるよぉ!!」

ホーク「……」スッ

ズドォォン!!!

上からパンチを打ち下ろそうとした瞬間だった
追い詰めていたハズの鷹村のアゴに衝撃が走った

鷹村「ガハァ…!?」

実況「でたぁ!ホーク必殺の、上体反らしからのアッパー!」

鷹村「あ…ぁぁ…」ガクガク

鷹村(足が…いう事、聞かない…)

鷹村(まだ1ラウンドだぞ!?ばかな!!)

ホーク「……」

鷹村「ッ!!」

ホーク「……」ニヤッ

鷹村(余裕の笑み…コイツまさか、ワザとダメージが、きいてた演技してたのか!?)

鷹村(青木みたいなマネしやがって…!!)

ホーク「ゴートゥゥヘェェル!!」

メキャ…!!

鷹村「」

ホークの右の打ち下ろしパンチが、鷹村の顔面を襲う
そしてそのまま、強引にマットに沈めていく

鴨川「鷹村!!!」

実況「鷹村!なんと二度目のダウン!」

鷹村「く、ぐぅぅ…ぅぅ…」

審判「ワン!ツー!」

鷹村「舐めやがって!!!」

鴨川「これ!もっと休まんか!」

鷹村「こちとらイラついてんだよぉ!」

審判「ボックス!」

鷹村「ぶっ殺してやるよぉ!!」

ズドォォン!ズドォォン!!

ホーク「ぐっ…!!」

実況「ホーク!鷹村の気迫に押され、おもわずガッチリとガードを堅める!」

ホーク(パワーアップしたのはオレだけじゃない…奴も一緒のようだ)

ホーク(1つ1つのパンチが、早くて、鋭くて重い!!)

ズドォォン!ズドォォン!!

ホーク「ぐっ…押されてたまるか!!」

ズドォォォォォン!!!

鷹村・ホーク「グガァ…!!!」

互いの腕が交差しながら、鷹村の左と、ホークの右が、互いの顔面を強打させていく
同時に口から血が噴き出る

カァァァン!!

実況「ここでゴングが鳴った!第1ラウンド終了!!」

青木「な、なんて内容の濃い1ラウンドだったんだ」

木村「まだ1ラウンドしか経ってないのかよ…」

鴨川「派手にやられたのう」

鷹村「あんにゃろ、ふざけた真似しやがって」イライラ

鴨川「言い訳しとる場合か」

鴨川「しかし、ホークが強いのも事実。なかなか鍛えこんできたようじゃな」

鷹村「闘い方だけじゃねぇ。身体能力も跳ね上がっている」

鷹村「それに頭も使ってる。まったく小ざかしいぜ」

鴨川「それだけ、貴様を倒すのに躍起になっている証拠じゃ」

鷹村「ああ、だが心配すんな。まだ試合は始まったばかり」

鷹村「この足の震えだって、オレ様なら1分以内で回復し、おさまる」ガクガク

鴨川「あまり貰いすぎるなよ」

鷹村「安心しろ、最後に勝つのはオレ様だ」

鷹村(……とはいえ、いきなりダウンを2つ奪われたのはキツイぜ)

ホーク「見たかい?1ラウンドで二度もダウンを取っちゃったよ」

ミゲル「ああ、いい調子だ。上々の立ち上がりだ」

ホーク「この日のために鍛えてきたんだ…絶対にアイツを…」

ホーク「フ、フフフ…ククク…」ニヤッ

ホーク「……思い出してきたよ。そして感じてきた」

ミゲル「ん?」

ホーク「エクスタシーを」

ホークの目は、悪魔のごとく、真っ赤に染まっていた

ホーク「実はさ、もう半立ち状態なんだ」

ホーク「あともう少しで、ギンギンのガチガチさ」

ホーク「このまま鷹村を殴りまくって」

ホーク「完全に立たせて見せる…!!」

ミゲル「興奮するのは結構だが、油断はするなよ?」

ホーク「分かっている。奴が本当に怖いのは、後半からだ」

ホーク「後半になるまえに…殺す!!そして気持ちよくなる!!」

鷹村「……ジジイ、頼みがある」

鴨川「む?」

鷹村は立ち上がり、鴨川に背を向ける

鷹村「アレ、やってくれ」

鴨川「アレとは、なんじゃ」

鷹村「アレだよアレ!前回もやっただろうが」

鴨川「……」

鴨川「良かろう、行くぞ」

鴨川「オラァァ!!」

バシィィィィン!!!

鷹村の背中に、平手で叩く
その背中には鴨川の手形、赤い手のあとが残る

一歩「出た、会長からの気合の精神注入!!」

鷹村「おっしゃああ!行くぜ!」

鴨川「いってこい!」

~~~

ミゲル「さあ、ホーク」

ミゲル「エクスタシーを取り戻してこい!」

ホーク「ああ!ギンギンになって帰ってくるぜ!!」

今日はここまで

(状況)
1ラウンド終了
鷹村2回ダウン
ホーク0回ダウン

【報告】
しばらく、更新が遅れるかもしれません(今更感)

理由は転職&事務手続き、そして新しい職場での仕事を覚えなければならないから

1日1レスの勢いで書いていけば、更新できなくもないけど…
基本的に、テンション上がらないと書けない性質なので、それが実現できるか分からない

次回の投下量が、10~20レスなのか、それとも1~3レス程度なのかは多分気まぐれになるかもしれません
申し訳ないです


やっと一歩の原作ショックから立ち直れてきたのによぉ…

【報告】
報告を2つほど

①非常に申し訳ないのです。
このSS落とそうと思います

二ヶ月前に、>>368の報告した直後は、まだイケると思ってた。でも現実は甘かった
新しい生活と仕事をしながらの、執筆は自分には限界だと感じました

②このSSの顛末、プロットを投下しようと思います

限界だと感じながらも、ここまで書いておいて消化不良なのも事実
何より、「楽しい」と書いてレスしてくれた人にも申し訳ないので…

最後にブライアンホークがどうなったのか、このSSの一歩達や、ウォーリーがどんな結末を迎えたのか
それだけでも書いていこうと思います

もはやSSではなく、プロット形式だから簡潔な内容だけど

こんなお粗末な終わりで、本当に申し訳ない
話の続きが気になる方、興味がある方だけ、読んでいってください


早ければ今夜の10時ごろ、遅くて日付が変わる頃に、ネタばれプロットを投下します

たったいま、プロット編集を書き終えた。眠い
投下はまた今夜か、次の日になるかも

では、投下します
内容を区切りつつ、数レス使って投下します

(前回までのあらすじ)

圧倒的な力で、鷹村相手に1ラウンド目で、2度もダウンを取る
鷹村は、鴨川会長に精神注入(背中ビンタ)を願い、気合を入れてもらう
ホークは目を真っ赤にさせ、エクスタシーを取り戻しつつある

以下、プロット的なネタバレになります
↓↓



(2ラウンド開始)

鷹村、基本に立ち返りつつ、前回の試合同様、フットワークを駆使し、『スピード地獄』を開始

それに答えるようにホークも『スピード地獄』を開始
スタイルは沢村と同じまま、バレットを打ち続ける

ここでも、ホークが力で圧倒する
ホーク「以前よりも力を上げたようだけど、強くなったのはオレも一緒さ」

壮絶はフットワーク戦の中、鷹村はまたしても、2つのダウンを取られる
2ラウンド終了

宮田(たった2ラウンドで、4度のダウン…)
観客たちも、ざわつき始める
鷹村が負けるかもしれないと

圧倒的な力に愕然とする鴨川会長
しかし鷹村は「何度でも奇跡を見せてきたじゃねぇか、そんな不安なツラすんな」とまるで不安などない表情

(3ラウンド開始)

鷹村(たしかにお前は強くなった。スピードやパワーだけじゃない。戦術的に色々考え込まれている)
鷹村(だがな、オレ様とお前とじゃ、積み重ねてきた物が違う)

再び始まる『スピード地獄』の対決

突如、鷹村のパンチが当るようになる
ホークは、避けようとしているのに、上手くよけれない。そしてガード仕切れない

一歩(見える…見えないはずのパンチが僕にも見える!あれは!)
昔、山奥の合宿で、一歩に教えた『殺気を込めたフェイント』を繰り出す鷹村

ホーク、このラウンドで2度のダウンを奪われる

ホークは苛立っていた
ホーク「チクショウ…あと少しで、イキそうだったのに…!!」

ミゲルは、鴨川の姿勢を見習うように、らしくない事をする
ホークの頭を掴み、軽く頭突きする

ホーク「何しやがる!!」
ミゲル「もうキミのEDは、恐らく完治しているだろう」
ミゲル「だがここで慢心をいだき、その果てに負ければ、新しいトラウマを生み、キミのアレは不能になるだろう。それでいいのか?」
ホーク「……っ」
ミゲル「気持ちよくなりたければ、終わった後に、ホテルでヤればいい」
ミゲル「そして本当の闘いはこれからだ」
ホーク「ああ…肝に銘じておくよ」

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↓↓(続き)


(4ラウンド開始)
真っ赤に充血した目が、すっかり普通の目に戻ったホーク
頭の中を冷静にさせながら、打開策を練る

ホークは、ダウンを取られる
そこでようやく、何かに気付く

ホークも無意識に『殺気をこめたフェイント』を打つようになる

鷹村、ダウンする。
すぐに立ち上がって、そのまま4ラウンド終了

(5ラウンド開始)

鷹村のフェイントにも鳴れてきて段々、本能で避け始める
そして殺気をこめたフェイントのおかげで、攻撃も当るようになる

フェイントだけでなく、ここでも、よそ見を実行
鷹村、このラウンドで2度ダウンを取られる

鷹村の髪型が、この頃から崩れ始める

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↓↓(続き)



(6ラウンド開始)

鷹村、ふとうしろを見ると、リングサイドまで一歩達が応援に来ていた

一歩「鷹村さぁぁん!!負けちゃいやですよぉぉ!!」
板垣「しっかりしてください鷹村さーん!!!」
青木「負けたら承知しねーぞ!!鷹村さぁぁん!」
木村「また俺達に奇跡をみせてくれよ!!」

応援も虚しく、またしてもピンチになる
そして倒れ掛かる鷹村の背中に、見えない『手』が現れ、背中を支える

一歩、板垣、青木、木村と鴨川会長の、幻影が、鷹村の背中を支えていた

鷹村(そういや前も、こうやって支えられたっけな)
鷹村(ああ…よーくわかった。その気持ちに、答えてやるよ)

鷹村、殺気のフェイントを込めつつ
ショートパンチの連打…板垣の必殺技・ハリネズミを使う

ホークはバレットが上手く決まらず、鷹村のハリネズミに翻弄される
板垣「アレは…僕の技だ!」

ホークは、止む無く、ガッチリガードをかためる

鷹村、今度はホークの右脇腹にめがけて、フックを打ち続ける

ホーク、ガードの意識を右脇腹へ持って行く
ホーク(ショートパンチ連打から、今度は馬鹿みたいにフック?なに考えてやがる)
ホーク(……フックの連打?待てよ、これはまさか!!)

ホークはとっさに、左ガードを上げる
しかし間に合わず、鷹村のパンチが顔面に直撃し、グルッと1回転する

木村「おれのドラゴンフィッシュブロー…!!」

ホークはダウン。しかしなんとか立ち上がる

ホークはフラフラの状態、若干、足もガクガクしている

ホークはそれでもバレットを打ち続ける

やがて、鷹村はピーカブースタイルに切り替え、体を左右に振り始める

ホーク「こ、こいつ…まじかよ…!」
観客達「あ、あれは…まさか!」
一歩「デンプシーロール…!!」
宮田(幕之内の得意技…あの人が使うのか!?)

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↓↓(6ラウンド後半、続き)



ホーク(血迷ったか。オレとの闘いでもう分かっているハズだ)
ホーク(オレは日本人ボクサーのビデオを観て、研究し尽くしてきた)
ホーク(バレットという武器を手にしたこのオレに、それをやるのか!)
ホーク(いいぜ、受けて立つ)

左右の振り子運動から、鷹村のパンチが放たれる

ホークはパンチで迎え撃とうとする、鷹村は動きをストップする

宮田(デンプシー破り破り!)
真柴(まあ鷹村なら、これくらい、初見で出来るか)

ホーク(分かっているよ。ここで止まるんだろ)
ホーク(そして恐らく、次も止まるだろ…沢村はこの次の攻防のかけ引きに失敗してたが、オレはそうはいかない)

ホークも止まる
宮田&真柴「!!」
沢村「……」

鷹村、パンチを止めたまま、体を逆方向に傾ける
ホーク(知ってたよ。幕之内もこうやって、沢村を倒したんだよな)

ホーク(さあ、この次はどうでる)
ホーク(オレは、オレなら…オレなら!)

ホークが何かを決断した瞬間
鷹村はよそ見をした

ホーク「ん?」
観客「ん?」
青木(よ、よそ見…!!)

一瞬の隙をつかれ、鷹村のデンプシーロールが再始動する

ホーク(しまった…!)
気がついた時には既に手遅れだった
鷹村のデンプシーロールに、数え切れないほどのパンチを浴びせられる
そのままダウン

辛うじて立ち上がるホーク
そのまま6ラウンド終了

バイソン「鷹村守と書いて…何でもできる…」
イーグル「でもそれは…ホークも一緒だ!」

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↓↓(続き)



(7ラウンド開始)

ダメージが抜け切れないホーク
完全に鷹村のペースとなる

ホーク、このラウンドは2つのダウンを取られる
7ラウンド終了

(8ラウンド開始)

8ラウンド開始早々、ホークは僅か1分で2回もダウンする
ミゲル(ホーク、よくやった。もういい)
ミゲルはタオルを投げようとするが、できずに葛藤する
ミゲル(何を躊躇している!?私らしくない…!!)
一方、ウォーリーは2階席から飛び降りて、リングサイドまで応援に来る

ウォーリー「ホーークーー!!」
ウォーリーの叫び声が響く

倒れかけていたホークの背中に、何かが支え、踏ん張る

ホークの背中を、ウォーリーとミゲルの幻影が支える

ホークはこれまでの日々を思い出す
負けて廃人になり、復帰し、ミゲルやウォーリーと練習を積み重ねる日々

ホーク、雄叫びを上げ、持ちこたえる
激しい死闘の中、8ラウンド終了

(9ラウンド開始)

9ラウンド目に突入し、ホークは本来の自由なスタイルに戻る

悪魔の様に、目を真っ赤に充血させ、野生が剥き出しだが
ドコか以前とは違い、頭を使った攻防を繰り広げるホーク

鷹村も同様、自由なスタイルで動く

ホークの必殺。変則のけ反りパンチを、鷹村は真似して、
ホークをダウンに追いやる

その後、破れかぶれで、ホークもデンプシーロールを開始する

鷹村と同様、デンプシーロールとよそ見のコンボを繰り出すも、鷹村によそ見が通用せず、
鷹村の打ち降ろしで、またしてもダウンを取られる

立ち上がると同時に、9ラウンド終了

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↓↓(続き)



(10ラウンド開始)

以前として、ホークの劣勢は続く
早々にダウンを二回もらう

鷹村から顔面へ、強烈な一撃をもらう
ホークは大量の吐血と、鼻血が噴き出す
(前回での勝負の時、勝敗を決定付けた瞬間と同じシチュエーション)
しかしホーク倒れず

審判、棄権とみなし、手を交差しようとした瞬間、ドクターが何かを訴え始める

鷹村もまた、左目のまぶたが切れて、出血を起こしていた

審判、ストップの合図を決意するが、そうこうしている内に、追い詰められていたハズのホークが先に動き出す。あぜんとする審判

鷹村(やべぇ…視界が…)

鷹村を追い詰めていくホーク。ドクターに再三、忠告をうけていた審判は、ようやく動き出す

試合はストップ。鷹村は治療をうける

ドクター「筋膜には達していないが、相手は…言うまでもなく強者。これ以上は危険だ」
鷹村「おいアンタ、『アレ』を見せ付けられて、このオレ様が止まるとでも?」

鷹村の視界の先には、ニュートラルコーナーで、目を真っ赤に充血させながら、血だらけのホークが、両手を上げて勝利のポーズを決めていた

会場全体が「続行」の声で鳴り響く

結局、雰囲気に押されたドクターはそのまま試合続行を許す
少しして、10ラウンドが終わる

(11ラウンド開始)

もはや二人ともボロボロで、まともな動きが出来ずにいた
そんな二人の胸中は、努力を積み重ねてきた事を思い出していた

(11ラウンド終了)


鷹村「次で…最後か」
鴨川「ああ、そうじゃ」
鷹村「観てろよ、必ずKOを決めてくる」
鴨川「そうか。それじゃまずは身なりを整えんとな」

鴨川はワセリンで、鷹村の崩れた髪をセットする

ホーク「ウォーリー、ミゲル…次で、あいつを倒してくる。絶対にだ」
ウォーリー「うん、信じてる!!」
ミゲル「ここまで来たら、もうタオルは投げない。君を信じるよ」


続き

↓↓(続き)



(最終ラウンド開始)
鷹村(こんな泥仕合、青木だけで充分だ…オレ様は勝つ!)
ホーク(もうお前は怖くない、勝つのはこのオレだ!)

鷹村「一歩ォォ!!オレ様について来い!!」
ホーク「ウォーリー!!一緒にチャンピオンになろうぜ!!」
二人の声が会場に響く
一歩「鷹村さぁぁん!!」
ウォーリー「ホーク!!」

互いにノーガードの死闘が続く
そして互いの拳が顔面にヒットし、相打ちになった所で、ゴングが鳴り試合終了


(試合終了)



鷹村は納得いかず怒りだし、試合続行を審判に要請する
鴨川会長が鷹村を抑え、その場で説得する

一方、ホークは茫然と立ち尽くす
いまだに自体を飲み込めていない

ウォーリーとミゲルに、支えられながら、コーナーへ戻る

勝敗の判定は……『1対2』で、鷹村が勝ち、防衛に成功する

鷹村は依然として納得いかず、コーナーを殴り続ける
鷹村「こんな勝敗、納得いくかぁぁ!!!」

そんな中、ホークがグラブを外して、鷹村の目の前まで近づく

ホークが何かをつぶやき、手を差し伸べる

ミゲル「マモル・タカムラ…君をもう馬鹿にしない」
ミゲル「今度こそちゃんと、握手がしたい…と、彼は言っている」

ホークの血だらけの手の甲を見つめる鷹村

鷹村(ふん…KO出来なかったのは面白くねぇが…)
鷹村「ま、いいか」

鷹村とホークは、握手を交わそうとする。

その瞬間、鷹村はバタッと気絶し、倒れてしまう
(あしたのジョーの力石みたいに)

会場は騒然。担架で運ばれながら、ベルトも巻かれずに退場

ホークは自力でリングを降りたが、その直後、やはり体力の限界で気絶する
ホークもまた担架で運ばれる

続く

↓↓(続き)



(日常編へ)

試合終了から3日が経過
鷹村が目を覚まさず、強烈な不安を抱く、鴨川ジムの面々
鷹村の家族も毎日見舞いに行っていた

試合終了から4日目
久美に案内され、見舞いに行くと、鷹村はナースにセクハラしていた
(ナースは割りと満更でもなかった様子)

久美に見付かったナースは流石に恥ずかしくなり、走って逃げ出す
一歩達は唖然としていた
鴨川会長は杖で、容赦なく、鷹村を殴りつける
鷹村「おい!オレ様はずっと寝ていたんだぞ!」
鴨川「一生寝ておれ!このスケベ大王が!!」

ホークも、同じ位のタイミングで目を覚ます
ホークガールズ達に、EDが治った事を喜んで語る
ホークは早速、ホテルに行く為に脱走を試みるが、全身の激痛で、止む無く退院まで諦める


(1ヶ月後・ジムにて)

怪我が治ってきたホークは、ジムに訪れる
ウォーリーに軽く抱きしめると
ホーク「ありがとうウォーリー、それとミゲル」
ミゲル「……」
ミゲルは黙って頷く。そして何かを悟った表情でいた
ミゲル「……」
ホークはジムをあとにする

それからしばらく、ホークはジムに顔を出さない

ウォーリーはホークはどうしたのかとたずねる
ミゲルは、ホークは旅立ったのだと言う
ミゲル「彼は元々、エクスタシーを取り戻すために戻ってきた」
ミゲル「彼は勇敢に戦った。夢を観させて貰った。もう…充分だ」
ウォーリー「そんな…!」

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ホークは再び、性に不埒で、堕落した日々を送る
久々の性の快楽に喜び溺れ、毎晩浴びるように酒も飲んでいた

しかし時々、夢の中に鷹村が出続けていた

ある日、女との行為終えたホークは、ホテルでつぶやいていた
ホーク「あの時、もっと…こうすれば…」
女「……?」
女は不思議がる

次の日の早朝、ホークは早起きしていた
女「こんな朝早くからどうしたの?」
ホーク「ロードワークだよ」
女「はぁ?もう引退するんじゃなかったの?」
ホーク「あ…」
ホーク「そうだ。もうオレはエクスタシーを取り戻した。鷹村だって怖くない」
ホーク「もう、ロードワークやる必要はない」
そう言いながらも、シャドーボクシングを開始するホーク
女はコーヒーを淹れて、飲むように促すも、まるで聞こえてない

段々、夢の中で鷹村が出る頻度が増えてきた

ある日、ホークはホテルで複数の女を囲っていた

ホークは行為を終えたあと、何かを決断していた

ジムに顔を出すホーク
喜ぶウォーリーと抱き合う

ミゲル「ホーク…」
ホーク「どうやらオレは、もうボクシングから離れられないようだ」

ホーク「オレも鷹村と同じく、6階級制覇を目指すよ」

ミゲル「残念だが、君がベストな状態でいられるのは…恐らく次の、スーパーミドル級までだ」
ミゲル「筋肉を増量すれば、良いと言う問題じゃない」

ホーク「構わないさ。大体、鷹村だって、減量でハンデ背負って闘っているようなもんだろ」
ホーク「アイツと闘えるなら、ボディビルダーになってやるよ。そして…」
ホーク「鷹村に復讐する」

ミゲルはホークの、6階級制覇の協力を約束する
まずは増量の為の、トレーニングを始める

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(そして、時がたち)


一歩は、リカルド・マルチネスに勝利し、WBAの王者となる
※ このSSでの一歩は、ゲバラには負けず勝利して現役続行、という設定でやってます



しかし体に限界を覚え、一歩は引退
現在は家業を継いでいる


一歩VSリカルドの試合のビデオを見ていた、ウォーリーとホーク
ウォーリー「僕も早く、ホークみたいに世界王者になりたい!」
ホーク「ハハハハ、もうそれも時間の問題さ。マイブラザー」

扉を開けるミゲルは、「そろそろ時間だぞ」と言って、二人を呼び出し、ホークとウォーリーは部屋を後にする

三人はタクシーの中へ

ミゲルは、ボクシング雑誌を見ていた
そのボクシング雑誌の内容

・宮田は、東洋太平洋の王座を返上。階級を上げ、ジュニアライトで東洋太平洋王座に

・ゲバラは、フェザー級の東洋太平洋王者として、防衛を続けている
 (ウォーリーに一度負けている)

・真柴も世界ランカーとして活躍

・幕之内が引退後、再びリカルドがWBAの王者になる

・千堂はWBCの王者となる。WBAのリカルドに挑戦する意志を表明している

・板垣もかつての一歩の様に、世界ランカーとして奮闘中。力を付けて、今井にリベンジを目指している

・木村と青木は現役を続行。相変わらず日本上位ランカー止まり


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ウォーリーは、車中にて、質問する
ウォーリー「僕の次の試合はいつ?」

ミゲル「慌てるな、まずはダメージを抜くのが先だ」

ウォーリー「僕はもう、世界ランク1位だよ!リカルドと闘ってもいいよね!?」

ミゲル「前々回に闘ったゲバラや、前回のゴンザレスとは訳が違う。文字通り、伝説の王者だ」
ミゲル「その伝説に臆する事無く戦う勇気と、覚悟があるなら…交渉してみよう」
ウォーリー「やったー!!」

ホーク「だが奴は、もうだいぶ歳食ってるんだろ?いい加減、リカルドも限界来てるんじゃないか?」

ミゲル「一理あるが、それは戦って見ないとわからない」
ミゲル「いずれにしても、油断はできん。良いなウォーリー」
ウォーリー「うん!がんばる!」

ホーク「ウォーリーなら、必ずチャンピオンになれるぜ。オレが保証する」
ミゲル「ホーク、いまは自分のことに集中しなさい」

ホーク「分かってるよ」
ミゲルは雑誌のあるページに止まる
・ブライアンホークは、スーパーミドル級のWBA王者として、3回防衛中
・鷹村はWBCの王者として、1回防衛中

ミゲル「さあ、会場へついたぞ」

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リングの上で、鷹村とホークは相見える
WBA・WBC の、スーパーミドル級統一王座戦が始まる

ホーク「待ちくたびれたよ鷹村…!!」
鷹村「今度こそKO勝ちだ…ブライアンホーク!!」

不敵に笑みを浮かべる2人

観客席では色んな面子がいた

引退した一歩の隣に、指輪をはめた久美がいた。互いに手を握り合っていた
その隣には試合を終え、ボロボロになっている真柴

板垣、青木、木村は息をのんで、闘いの瞬間を見届けている

ホークは、鷹村の目の前まで歩いて行くと、何かに気がつく

ホーク(鷹村…お前、なんか右目が…?)

鷹村「おい、どうした」
ホーク「っ!いや、なんでもないよ」
鷹村「ふん、もう試合は始まるぜ」

互いに言葉は通じてないが、何が言いたいのか、何となく理解し、言葉を交わし合った

ゴングが鳴る

不敵な笑みを浮かべながら2人は、拳をそっと当て合う
そして次の瞬間、互いの拳が、激しく交差する

終わり

ここまで読んでくれて
どうもありがとうございます

こんなお粗末な結果で終わらせてしまい、申し訳ないです


(追伸)
本当は執筆したい作品が他にもあったけど、それすら諦めざるえなかった
最後に、執筆できなかった作品のタイトルも、残して去ろうと思います

・丹下段平「立て!立つんだ一歩ぉぉ!」
 …もしも、明日のジョーの主人公が、一歩だったら的な話

・矢吹丈「なんでい、喧嘩の邪魔だ!」鴨川「その辺にしておくんじゃ」
 …もしも一歩のポジションが、矢吹丈だったらというお話

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年10月18日 (水) 18:00:56   ID: AfBd5vod

面白い

2 :  SS好きの774さん   2018年01月11日 (木) 15:02:11   ID: M-hGhSbr

楽しみにしてるぞ

3 :  SS好きの774さん   2018年01月27日 (土) 15:31:54   ID: TiSIXdg9

確かに原作はショックでしたねー

リアル優先で体に気を付けて!
楽しみ待ってますよ

4 :  SS好きの774さん   2018年03月27日 (火) 16:49:24   ID: vTpJdBPc

お疲れ様でした!

悔やまれる事は多々あると思いますが
数あるSSの中で失踪する人が多い中
形だけでも終わらせてくれたのは嬉しく思います。

ありがとうございます。
お疲れ様でした。

5 :  SS好きの774さん   2018年10月26日 (金) 21:44:32   ID: 6c80XDPN

すげぇ面白かった~!
ホークが主人公になるとは思わなんだ

6 :  SS好きの774さん   2018年11月24日 (土) 03:22:49   ID: cWdJGoQ0

正直最近の原作の展開より面白かったです。
ラーメン屋でホークとウォーリーが青木を知ってたのは草。

7 :  SS好きの774さん   2019年02月18日 (月) 04:49:08   ID: 4e-9vL2P

面白かった!!

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