千歌「愛哀傘」 (28)

サクッと。
お気軽にどぞ。

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ザーッ・・


千歌「・・・」

果南「・・・」

千歌「雨だね~・・・」

果南「うん、雨だね・・・」

千歌「ここ最近止まないね、雨・・・」

果南「そうだね・・・」


千歌「・・・」

果南「・・・」

千歌「あじさいってさ~・・・」

果南「うん・・・」

千歌「紫に太陽の陽、花って書いて紫陽花(あじさい)って読むんだって・・・」

果南「へぇ~・・・」


千歌「・・・」

果南「・・・」

果南「カタツムリってさ~・・・」

千歌「うん・・・」

果南「外国じゃ食べられるらしいよ・・・」

千歌「あ、聞いたことあるかも・・・」

果南「確か食用カタツムリの名前が、えっと・・・」

千歌「マグ○ルゴ・・・?」

果南「それはポケ○ンだよ、しかも熱いよ・・・」

千歌「あ、そっか・・・」

果南「千歌ったら・・・」

千歌「あはは・・・」


千歌「・・・」

果南「・・・」

千歌「前にルビィちゃんとお話してたんだけどさ・・・」

果南「うん・・・」

千歌「この雨が全部お菓子のあめ玉ならすっごく嬉しいのにな~ってさ・・・」

果南「あはは、可愛らしい・・・」

千歌「じゃあほんとにそうなったらどうする?って聞いたらさ、スカートで受け皿みたいにしてキャッチしたいって言われてさ・・・」

果南「ルビィ可愛い・・・」


千歌「わたしはそのまま口開けて食べるって言おうとして、あまりの笑顔に言葉を飲み込んだよ・・・」

果南「あめ玉は飲み込んじゃダメだからね・・・」

千歌「あはは、分かってるよ~・・・」

千歌「でも、そう言われた瞬間さ、ルビィちゃんも由緒正しい黒澤家の娘なんだな~って思った・・・」

果南「確かに。でもダイヤは非常識ですわ~!って言って気絶しそうかも・・・」

千歌「あはっ。分かる~・・・」

果南「でしょ・・・?」


千歌「・・・」

果南「・・・」

果南「雨で思い出したんだけどさ・・・」

千歌「うん・・・」

果南「善子って自分が不幸体質だから雨降るって見込んで毎日傘持って来てるらしいんだけどさ・・・」

千歌「そういえばそんな設定だっけ・・・?」

果南「やめたげなよ・・・」

千歌「ごめんごめん、それで・・・?」

果南「もう。それでこの前、急に夕立が来てさ、わたし傘忘れちゃっててさ、走って帰ろうとしてたの・・・」


千歌「そうだったんだ、言ってくれたら港まで傘入れてあげたのにさ・・・」

果南「まあまあ。で、いざ走ろうと思ったら善子に呼び止められてさ、この傘使えって無理矢理渡されてさ・・・」

果南「善子はどうなのか聞こうとしたら、バス停まで猛ダッシュしていってさ・・・」

千歌「やっぱり善子ちゃんいい子だ・・・」

果南「次の日返そうかなって善子探してたら風邪で休んでてさ、なんか申し訳なくなってさ・・・」

千歌「休んでた日あったね・・・」

果南「学校来た日に改めてお礼言いに言ったらさ、わたしのリトルデーモンに不幸が起こるくらいなら、元々不幸なわたしが不幸になる方がいいでしょ!って言われて・・・」

千歌「ぜんぜん堕天使してないじゃん・・・」

果南「だよね・・・」


千歌「・・・」

果南「・・・」

千歌「善子ちゃんと言えばさ、この前梨子ちゃんと仲良くデートしてたんだよね・・・」

果南「そうなんだ・・・」

千歌「ふたりして、あれじゃない!これじゃない!って言い合いながらお買い物してた・・・」

果南「ふーん・・・」

千歌「そしたら梨子ちゃんがなにか言った瞬間に善子ちゃん真っ赤になってさ、梨子ちゃんぽかぽか叩いてさ。すっごく可愛かったな・・・」

果南「なんか想像できるよ、簡単に・・・」

千歌「でも覗いてるのバレちゃって全速力で逃げたからそのあとどうなったか知らないんだ・・・」

果南「残念・・・」

千歌「ま、どうせお互いのプレゼント選んでたりしてたんじゃないのかな・・・?」

果南「かもね・・・」


千歌「・・・」

果南「・・・」

果南「また善子の話だけどさ・・・」

千歌「うん・・・」

果南「曜ってさ善子と住んでるとこ一緒じゃない?バスでいろんな話を最近はするようになったらしくてさ・・・」

千歌「それで・・・」

果南「なんかある日、わたしともっと仲良くするにはどうしたらいいかみたいな事話してたみたいでさ・・・」

千歌「よーちゃん、それ果南ちゃんに言っちゃダメなやつじゃん・・・」


果南「まあまあ。でさ、曜もなんて答えていいか分からなかったらしいから、いつも自分がするみたいにハグすればいいんじゃない?みたいなこと言ったらしくてさ・・・」

千歌「わたしとよーちゃんの果南ちゃんとの手っ取り早いスキンシップだもんね・・・」

果南「善子、その日すぐ実行しようとしたらしいんだけど恥ずかしくて出来なかったんだってさ・・・」

千歌「善子ちゃんがなんかおろおろしてたのはそういうことだったんだ・・・」

果南「わたしに気なんか使わずにハグしてきたら良かったのにね・・・」

千歌「まあちょっと善子ちゃんにはハードル高かったんじゃないのかな・・・?」

果南「気にしないのにな~・・・」


千歌「・・・」

果南「・・・」

千歌「善子ちゃん最近よく梨子ちゃんに会いに来るんだけどさ・・・」

果南「うん・・・」

千歌「時々ふたりでどっか行っちゃう時があってさ、わたし気になってふたりを追いかけたんだ・・・」

果南「千歌はよくこそこそ動くね・・・」

千歌「気分は忍者だよ・・・」


千歌「それでふたりして空き教室入ってさ、普通におべんと食べ始めたの・・・」

果南「まあ普通だね・・・」

千歌「と思うじゃん・・・?」

千歌「どうも、善子ちゃんが梨子ちゃんのために作ってきたみたいでさ・・・」

果南「ふーん・・・」

千歌「たぶん梨子ちゃんがほめたんだろうけどさ、善子ちゃん照れながらにこにこ笑ってた・・・」

果南「へぇー・・・」

千歌「ほんと仲良いよね、あのふたり・・・」

果南「ほんとだね・・・」


千歌「・・・」

果南「・・・」

果南「最近ダイヤがすごく眠たそうにしててさ・・・」

千歌「あのダイヤさんが・・・?」

果南「なんでも楽しみが増えたらしくてさ・・・」

千歌「んー・・・?」

果南「なんか、1年生はわたくしの妹にしてやりますわ!って花丸や善子を可愛がるようになってさ・・・」

千歌「ときどきダイヤさんぶっ飛んでるよね・・・」

果南「ま、そんなダイヤも嫌いじゃないけど・・・」


果南「お悩み相談からなんの変哲もない話を夜遅くまで親にバレないようにしてるんだってさ・・・」

千歌「由緒正しい黒澤家が・・・」

果南「あはは。最近は恋愛相談もしてたらしくてお姉ちゃんらしくズバッと成功させますわ!ってめちゃくちゃ気合い入ってたな~、授業はときどきボーッとしてたけど・・・」

千歌「恋愛相談か、誰だろ・・・」

果南「・・・」


果南「千歌・・・」

千歌「なーに・・・?」

果南「・・・」

果南「善子と付き合うことになった・・・」

千歌「・・・」

千歌「そっか・・・」


果南「昨日、告白された・・・」

千歌「そっか・・・」

果南「わたしも善子の事、あのときの事がきっかけで気になってたからさ、すごく嬉しかった・・・」

千歌「良かったじゃん・・・」


果南「そのあと、プレゼント渡されてさ。梨子と選んだんだってさ、少し大きめの緑の傘・・・」

千歌「ふーん・・・」

果南「この傘でならふたりで入っても平気だよねって顔赤くしながら渡してくれてさ・・・」

千歌「へぇー・・・」

果南「それにお弁当も作ってくれた。梨子に作り方教えてもらったんだってさ・・・」

千歌「なるほど。つまり、わたしの目撃情報はぜんぶ果南ちゃんに繋がってたってことか・・・」

果南「みたいだね・・・」


千歌「そっか、そっか・・・」

千歌「おめでとう果南ちゃん・・・」

果南「あんがと・・・」

千歌「よかったじゃん・・・」

果南「うん・・・」


千歌「・・・」

果南「・・・」

果南「わたし、そろそろ帰るね。千歌は・・・?」

千歌「そう?わたしはもう少し雨見てるよ・・・」

果南「分かった。気を付けて帰りなよ・・・」

千歌「うん。またね・・・」

果南「じゃあね・・・」


千歌「・・・」

千歌「・・・」

千歌「・・・」

千歌「はぁ・・・」

千歌「惨めだな、わたし・・・」

ザザーッ・・・


千歌「あ。雨強くなってきた・・・」

千歌「・・・」

千歌「あ・・・」

千歌「・・・」


千歌「相合い傘、か・・・」

千歌「・・・」

千歌「果南ちゃんのばか・・・」

おしまい


過去作です。

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