シンジ「その日、セカイが変わった」 (840)

▫️あらすじ
第7使徒イスラフェルへのユニゾン攻撃による撃破から数日後、授業で使用している端末に一通のメールが届いた。開いてみると恵まれない子供達へのボランティアだという。碇シンジは、解答を進めていくのだが……。
アンケートをきっかけにシンジの人生が大きく変わることとなる。

【ミサト宅 シンジの部屋】

▫️ご意見をお聞かせください

この度は、恵まれない子供達への募金サイトにアクセスしていただき、誠にありがとうございます。簡単なアンケートにお答えいただきますと、提携先企業様から弊社に代金が支払われ、支援団体に寄付させていただきますので、ご協力をお願い致します。
次へ、をクリックしていただくとアンケートが開始されます。

シンジ「――連絡メールだと思ったけど、違ったみたいだ。えっと、恵まれない、子供達か……よし、少しやってみようかな。どんな内容なんだろう……?」カチカチ

設問にお答えください。該当するお答えのチェックボックスをクリックしていただくと、画面が自動的に切り替わっていきます。進みますか?

シンジ「ここで、クリックしたらいいのかな」

1.あなたの性別をお答えください。

シンジ「お、でたでた。男、と」カチ

2.あなたの年齢をお答えください。

シンジ「10代だね」カチ

3.あなたは今、好きな人はいますか?

シンジ「えっ? うーん、いないから、あれ? YESしかチェックボックスがない……? まぁ、ただの質問だからなんでもいいや」カチ

4.好きな人は同級生ですか?

シンジ「今度はYES/NO両方ある。でも、いないってないから答えようがないんだよなぁ……適当にYESで」

5.好きな人がいる。と答えた方に質問です。どのようなところに惹かれましたか? 該当する項目をお選びください。

シンジ「ひとつしか選択肢なかったじゃないか。それとも僕が見落としたのかな……」

・気立てがよかった。
・落ち着いてる雰囲気がよかった。
・優しいところがよかった。
・見た目がタイプだった。

シンジ「うぅん、どれにしてもいいけど、僕が付き合うとしたら……いや、そんなの考えるだけ無駄だ。僕を好きになってくれる人なんかいるわけないし。見た目にしておこう」カチ

6.あなたは、願いが叶うとしたら、その子と付き合ってみたいですか?

シンジ「……まただ。またYESしか選択肢がない。どうなってるんだこれ? 見落としもあるようなインターフェイスじゃないのに」カチ

以上で質問は終了です。
あなたのご協力に感謝します。碇シンジさん。

シンジ「えっ? なんで、僕の名前」

尚、このコンピューターは20秒後に自動的に爆発します。端末を窓から投げ捨ててください。

シンジ「えぇっ?」

カウントスタートします。20、19、18――。

シンジ「いきなりブルースクリーン⁉︎ ……ウィルスサイトだったの⁉︎」

13、12。

シンジ「ノートパソコンから煙? ……熱っ⁉︎ そんな、まさか……?」

自爆までテンカウント、10、9――。

シンジ「う、うそでしょ⁉︎」

5秒前。レッドアラート。

シンジ「ケースが溶けてきてる……⁉︎ この端末、学校でも使うのにっ!!」ガシッ

――……ドォオンッ!!

シンジ「……っ! ぐっ! ……いっつつ。咄嗟に投げだけど、ほんとに爆発するなんて」

ミサト「シンジくんっ⁉︎ 今の音はなに⁉︎」

シンジ「あ、あの」

ミサト「開けるわよ⁉︎」

シンジ「ど、どうぞ」

ミサト「部屋の中に手榴弾でも投げ込まれたの?」

シンジ「僕にもなんでこうなったのか、さっぱり」

アスカ「うわぁ、なにこれぇ。……ところであんた、変な体勢で転がってなにしてんの?」 ヒョイ

見たことがあるんだけと

【リビング】

ミサト「シンジくんがアンケートに答え終わったらポップアップがでたのね?」

シンジ「はい。それからあとは、その通告通り20秒後に爆発しました」

ミサト「おかしいわ。エヴァパイロットを狙うにしてもやり方がまわりくどすぎる」

アスカ「アンケートで端末を爆破とかありえる? シンジが嘘ついてんじゃないの?」

シンジ「そんなわけないだろ。僕が嘘をつく必要なんてないよ」

ミサト「……とにかく、私は確認の為、ネルフ本部へ向かうわ。このマンションには、保安部から警備を数名つけておくから。シンジくんとアスカは何も心配しないで」

アスカ「アホくさ。私はバカシンジみたいに引っかからないわよ」

ミサト「それでも用心するにこしたことはないはずよ。シンジくん、これからは無闇にそういうメールを開かないでくれる?」

シンジ「そんな、僕は、善意で……でも、すみません」

アスカ「またすぐ謝る。そういうとこがさぁ――」

ミサト「やめなさい、2人とも。送付されてきたアドレスはわかるかしら?」

シンジ「いえ、たまたま開いたメールですから覚えてません。遠隔操作で爆破なんて可能なんですか?」

ミサト「普通に考えれば難しいわね。アンケートに答えるように誘導され、答え終わるのが合図となるようにあらかじめ仕組まれていたのかもしれない」

シンジ「あ……」

アスカ「やっぱりあんたがまぬけなだけだったんじゃない」

シンジ「そんな言い方しなくたっていいじゃないか……」

アスカ「ふん。だったら問題を起こさないでよね」

シンジ「僕だって、起こしたいわけじゃないよ!」

アスカ「ほんっとにガキね。結果が全てだっつってんのよ。犯罪をやるつもりがなかったなんて言い訳が通るなら警察なんていらない」

ミサト「はぁ……そこまでにして、今夜はもう寝なさい。シンジくんは私の部屋を使っていいから」

シンジ「すみません」

アスカ「よかったわねぇ~。女の部屋で寝るからって下着を漁ったりするんじゃないのぉ?」

シンジ「いい加減にしろよ! するわけないだろ!」

ミサト「今のはアスカが悪いわ」

アスカ「ちっ、なによ。シンジばっかり」

ミサト「今夜は帰らないと思うから。それじゃ、もう行くわね」

>>3
立て直しです
現在まとめ作業中です

【一時間後 リビング】

シンジ「はぁ……どうしてこんなことになったんだろう」

ペンペン「クエ~」

ガラガラ

アスカ「お風呂、あがったわよ」

シンジ「あぁ、うん、わかったよ」

アスカ「あんた、まだ座ってうなだれてたの。いい加減切り替えなさいよ、うっとうしい」

シンジ「色々迷惑をかけたら申し訳ないって思うのは当然じゃないか」

アスカ「あいかわらず内罰的ね。そういう時は、そもそも爆弾を仕組んだやつが悪いって開きなおるのよ」

シンジ「そんなに、簡単じゃないよ」

アスカ「ぐちぐち悩んでるよりずっとマシじゃない。そんなんだからあんたはダメなのよ」

シンジ「そうなの、かな……」

アスカ「呆れて開いた口が塞がらないわ。あたしにここまで言われて悔しいとか思わないわけぇ?」

シンジ「思ったって、アスカには口でかなわないじゃないか」

アスカ「ぷっ、なによ、諦めてんの?」

シンジ「僕だって、ちゃんとしてるつもりなんだ」

アスカ「ひとりよがりで?」

シンジ「うるさいなぁ。もういいだろ。アスカだって、口ではどうでもいいとか言っておきながら僕に文句ばかり言ってくるじゃないか」

アスカ「あんたがあまりにも情けないからよ。見ててイライラすんの!」ビシ

シンジ「それは僕がよくわかってるよ。僕だって、うまくやりたいって思ってるんだ」

アスカ「無理ね」

シンジ「な、なんでアスカにわかるんだよ!」

アスカ「根本的な問題よ。あんたは悪いと思った、で? うまくやろうとしてるってなにを?」

シンジ「それは……もっと、要領よく、前向きになれるように」 もごもご

アスカ「そこがズレてるのよ。いい? 開きなおるにしてもそれだけじゃただのクズ。人間、なにをやるかで価値が決まる」

シンジ「そうだけど」

アスカ「前向きになったら? その先は? とりあえず目先のことしか考えてないあんたはすぐ壁にぶち当たる。そしてまた悩みだすんでしょ」

シンジ「……」

アスカ「またダンマリ。癖ってのは、簡単に治るものだったら苦労しないのよ。あんたはそこを理解してない」

シンジ「そうかもしれないけど」

アスカ「断言してやるわ。あんたはそう。悔しかったら私を見返すぐらいの根性見せるのね」

ペンペン「クエクエッ」 クイクイッ

アスカ「ん? なに? ペンペン」

ペンペン「クエ~」スッ

アスカ「なにこれ? 牛乳? くれるの?」

ペンペン「クエッ!」コクコク

アスカ「ありがと」ヒョイ

ペンペン「クエ~」 ペタペタ

アスカ「それじゃ、私は部屋に行くから。あんたはそうやっていつまでも悩んでなさい」 スタスタ

シンジ「(僕は……)」

【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「まったく、こんな夜中に叩き起こされるなんて思わなかったわよ」

ミサト「ごみ~ん。今度なにか奢るからさ」

リツコ「あなた、いつもそう言うけど奢ってくれたの大学の学食以来ないのわかってる?」

ミサト「そうだったっけぇ?」

リツコ「はぁ……。それで? これが爆発したというノートパソコンの残骸?」

ミサト「人を使ってできるだけ集めさせたけど、かなり粉々になっちゃってるのよね~」

リツコ「ミサト? HDDもこの破片の中のどれかなの?」

ミサト「でへへ。たぶん」

リツコ「帰るわよ」 クルッ

ミサト「ちょ、ちょっと待ってよう!」 ガシッ

リツコ「パソコンの仕組みぐらい理解しているものだと思っていたけど。どうやら私の思い違いだったようね。義務教育からやり直したら?」

ミサト「わかってるってぇ! だけど、その、リツコならなんとかならないかなぁ~って」

リツコ「この有様で復元できるわけないでしょ。爆発物のデータは?」

ミサト「あ、それはこっちです、どーぞ」

リツコ「……」ペラ

ミサト「マイクロチップ型の爆弾だと確認されたわ。シンジくんのパソコンにいつ細工したのかしら」

リツコ「素人には手に入らない代物ね」

ミサト「となると、潜入したスパイ? プロの仕業ってわけか」

リツコ「えぇ。わかるのはそれぐらい。証拠隠滅まで完璧だもの」

ミサト「また、接触あると思う?」

リツコ「なんとも言えないわね。必要な情報が揃ったのならもうないのかもしれないし、そうであってもあるとは断定はできない」

ミサト「うーん、相手が見えないし。なにより、犯人の目的がわからないのよねぇ。ちょっと、不気味、かな」

リツコ「他のチルドレンに対しても警護レベルを引き上げることを提案します」

ミサト「なぜ?」

リツコ「質問の内容がアナグラムではないとしたら、好きな相手を特定する為に接触してくるかもしれない」

ミサト「まっさかぁ? 本気でシンジくんの好きな子の情報を知りたいってわけ?」

リツコ「内容を額面通りに受けとるとそうなるわね」

ミサト「……わかった。そんな理由はないと思うけど、備えは必要か」

【ネルフ本部 初号機ケイジ】

冬月「やぁ、三年ぶりだね」

「ご無沙汰しております」

冬月「生活に不自由はないか? 困ったことがあれば、なんでも言うといい」

「お気遣い、ありがとうございます。すみません、夜更けに」

冬月「気にしなくていい。老人の朝は早いのでな、ちょうど起きようと思っていた。ところで、話は変わるが碇には、まだ何も言うつもりはないのか?」

「はい……その方があの人にとっても、私にとってもいいんです」

冬月「――しかし、君たちの息子はもう中学生になる。ユイくん自身が、死んでいると思われて平気なわけないだろう」

ユイ「シンジには……いずれ、対面することになります。あの子が、子供達が幸せに暮らせる世界。それこそが追い求める理想ですもの」

冬月「その為に、己を殺してもか」

ユイ「……この初号機も、そしてゼーレも実験材料でしかありません。先生には、ご迷惑をおかけしますが」

冬月「その顔には、君がまだ学生の頃から敵わんよ。碇には、これまで通り黙っておこう」

ユイ「ありがとうございます」

冬月「ユイくん、ひとつだけ確認してもいいかな?」

ユイ「はい?」

冬月「君の生物学者としての信条は、あの日、初号機に取りこまれてからサルベージされるまでに変化はあったのか?」

ユイ「なにも。昔から、いえ、志した時から変わってはいません」

冬月「そうか……それならばいい」

ユイ「先生もお元気で。シンジを、よろしくお願いします」

冬月「あぁ。君の息子について心配しなくていい。もっとも、EVAの中が一番安全だと知っているだろうがな」

ユイ「ふふっ、そうですね。では、失礼します」コツコツ

【翌日 第三新東京都市立第壱中学校 HR前】

ケンスケ「なんてこったぁっ! ネジがバカになってしまってるじゃないかぁ!」カチャカチャ

シンジ「ケンスケ、部品広げてなにやってるの?」

トウジ「見ての通り、いつものカメラいじりや」

シンジ「調子でも悪いんだ?」

トウジ「さぁなぁ。何回も分解したり組み立てたりで何が楽しいん――」

ケンスケ「この楽しさがわからないだってぇ⁉︎」ガバッ

トウジ「お、おう? なんや、聞こえとったんかいな」

ケンスケ「はぁ……まったく、これだから凡人は。いいかい? 物作りっていうのは技術ひとつひとつの集大成でもあるんだ」

シンジ「うん」

ケンスケ「新しいパーツの進歩は凄いんだぞ! そりゃ、まぁ、同じ技術の進化をなぞっているものだけど。その中で取捨選択をして、自分だけの物をプロデュースするおもしろさ。このロマンがわからないかぁ⁉︎」

トウジ「ぜんっぜんわからん。そら組み立てるチョイスはあるやろけど、市販されてる物であるんなら誰かと被ったりするやろ」

ケンスケ「いいや! そんなのが重要じゃないんだ。自分で作り上げるという達成感! なにものにも変えられないね!」

トウジ「はぁ」

ケンスケ「碇だったらわかるよな⁉︎」

シンジ「ん、えーと、なにかにそこまで熱中できるのは凄いと思うよ」

トウジ「オタクなだけちゃうかぁ?」

ケンスケ「妬みだね! 打ちこめるものがない大衆は僕みたいな人を蔑称を使ってバカにするのさ!」

トウジ「こじらせとるのぉ」

シンジ「でも、いいんじゃないかな」

トウジ「ふん、それはそうとシンジ。今日の放課後、時間あるか?」

シンジ「うん。あるよ」

トウジ「それなら、ワシに付き合ってくれ。寄りたいところがあるんや」

シンジ「わかった。あ、そうだ。ケンスケってパソコンにも詳しいの?」

ケンスケ「ん? まぁ、ある程度なら」

シンジ「実は僕、昨日、授業で使うパソコンが壊れちゃって。帰りに買って帰ろうと思うんだけど」

ケンスケ「あぁ、使いやすそうなのを選ぶのは簡単だけど。でも、学校指定の端末になってるから、新しく発注するしかないね」

シンジ「そうなの?」

ケンスケ「授業で使うドライバとかアプリケーションなりがプリインストールされてるものじゃないといけないっていう決まりがあるからな」

トウジ「ワシらにやらせてくれればいいのに、融通がきかんもんなんやのぉ」

ケンスケ「一括で管理する方が簡単じゃないか。個々に任せると方法がわからない連中もでるだろうし」

シンジ「それじゃ、事務で頼まなきゃ駄目なんだ」

ケンスケ「そうゆうこと。……前の端末の時は、手続きどうやったんだ?」

シンジ「うーん、僕が直接やったわけじゃなかったから。リツコさんが全部用意してくれてたし」

レイ「――碇くん」 スッ

シンジ「あ、どうしたの、めずらしいね、僕たちのところに来るなんて」

レイ「赤木博士から、渡すよう頼まれた。これ、新しい端末。ないと授業に困るだろうからって」 ゴトン

トウジ「いたれりつくせりやのぉ」

レイ「それと、伝言。インターネットへの接続はもうできないようになっているそうよ」

シンジ「そっか、うん、わかった」

レイ「席、戻るから」スッ

シンジ「待って! 重かった、よね? その、持ってきてくれて、ありがとう」

レイ「別に、いい」

【授業中】

教師「え~、ですから、セカンドインパクトはこのように巨大隕石の衝突によって」

シンジ「(ん……? ポップアップ? なんだろう?)」カチ

先日は、弊社が行なっている調査に関するご協力をしていただきありがとうございました。つきましては、恵まれない子供達のために引き続き回答をお願い致します。
アンケートを開始しますか?

シンジ「いっ⁉︎」

アンケートを開始する場合は、次へをクリックしてください。自動的に画面が切り替わります。

シンジ「(これって、昨日のと同じ……? インターネット回線に繋いでないはずなのに)」キョロキョロ

可否の有効時間が経過しました。まもなく、アンケートが開始されます。

シンジ「(まだなにも選択してないよ⁉︎)」

1.あなたの好きな人を出席番号で答えてください。

シンジ「(な、なんなんだよ……しかも、また、選ぶしか選択肢がない)」カチ

エラー。回答してください。

シンジ「(ブラウザを閉じられないのか。コマンドキーで強制終了はどうだろう)」カチャ

エラー。試行回数は、残り二回です。

シンジ「(まずいんじゃないの、これ。まさか、また爆破なんて……)」

残り時間をカウントします。

シンジ「(ゆっくり選ばせてもくれないの? ちょっと待って、よく考えるんだ、落ち着いて。深呼吸)」

20秒前。

シンジ「(ふぅ……試行回数があるってことは回避に有効な方法があるのか、それとも、ちゃんと答えるしかないのか。どっちなんだろう)」

15秒前。

シンジ「(そもそも、なんで僕なんだ? ……だめだ。考えてもわかりっこない)」

12秒前。

シンジ「(選ぶしかないのか)」

テンカウントスタート。

シンジ「(いや、でも、どうせ爆破する可能性があるんだ。だって、この端末を操作してる人は証拠を残したくないはず、だよね)」

5秒前。

シンジ「(――決めた。放置だ)」

教師「今のところを、あー、今日は何日だったかな? ……ふむ。では、洞木さん。わかりますかな?」

ヒカリ「はい」ガタ

シンジ「(なにも起こらない?)」

エラー。試行回数は残り一回です。

シンジ「(そ、そうか、もう一回あったんだ。ってことは、これも放置したらいいのかな)」

警告。回答いただけない場合、教室にいるクラスメイトを狙撃します。左手の屋上をご覧ください。

シンジ「はぁ?」

キランッ

シンジ「(なんだ? キラキラ光ってるの……ん? システムメッセージ更新?)」

おわかりいただけたでしょうか。狙撃翌用スコープに反射している太陽の光です。

シンジ「あ……ぁ……」

残り試行回数は、一回です。

シンジ「(ちょっ、ちょっと待ったっ! ど、どうしたらいいんだ! こんなの!)」

カウントを開始します。

シンジ「(だめだ! 僕じゃ対処しきれない! こうなったら大声を上げて――!)」

不審な動きを見せた時点で、立って授業を受けている女子を撃ちます。残り20秒前。

シンジ「(ほ、洞木さん⁉︎ 見張られてるの⁉︎)」

15秒前。

シンジ「(仕方ない、誰か選ばないと。でも、誰を……)」

残り10秒前。

シンジ「(迷ってる時間なんてない。こうなったら知ってる人の中で誰かを選ぶしか、アスカか綾波か)」

5秒前。

シンジ「(……ごめんっ!)」カチ

教師「よろしい、では席について」

シンジ「(だ、大丈夫だったのかな……)」

2.好きの度合いを次の中から該当する項目を選んでください。

シンジ「(……なんだこれ)」

・彼女のためなら、死んでもいい。
・彼女を愛している。
・たまらなく好き。

シンジ「(どれ選んでも同じじゃないかぁっ!)」

カウントをスタートします。

シンジ「(くそっ! バカにしてる! たまらなく好き、で)」カチ

3.たまらなく好きと選んだので、彼女に向かって消しゴムのカスを投げてください。

シンジ「(アンケートですらないよ……)」

カウントをスタートします。

シンジ「(でも、やらなきゃ。クラスの誰かが狙撃されるかもしれないんだ。僕が、やらなきゃ)」

残り20秒前。

シンジ「(まずは消しゴムのカスを作らないと)」ゴシゴシ

残り10秒前。

シンジ「(僕が選択したのは――)」コネコネ

アスカ「(ん? なんか髪に違和感が。……なに? ゴミ?)」キョロキョロ

シンジ「……」ポイ ポイ

アスカ「(あんのバカ……っ! なにしてくれてんのよ!)」

シンジ「(ご、ごめんよ)」」パクパク

アスカ「(今さら謝っても遅いのよ! さては、昨日の仕返しのつもり? 上等じゃない!)」パクパク

シンジ「(今日はアスカの好きなハンバーグを作るよ)」パクパク

アスカ「(そんなので誤魔化されると思ってるわけぇ⁉︎ ちょっと待ってなさい。やられたら百倍返しにしてやるんだから!)」ゴシゴシ

トウジ「おい、見てみぃケンスケ」こそ

ケンスケ「あぁ、見えてるよ」

トウジ「あいつら口パクで会話しとるで。芸人かいな」

ケンスケ「それだけお互い意思疎通ができてるんじゃないかぁ? さっきから碇がソワソワしてると思ったら……じゃれついていたとは、いやぁ~んな感じ」

アスカ「(このっ! この!)」ポイ ポイ

シンジ「(消しゴムのカスでよかった。アスカが投げてきてるけど、当てられてもあまり痛くないし)」

双方の距離感は確認いたしました。アンケートへのご協力を感謝します。尚、このパソコンは20秒後にショートします。

シンジ「(ば、爆発じゃないんだ? よかったぁ)」

強い電磁波を発します。電子機器に対する干渉がありますので、できるだけ教室から離れてください。

シンジ「せ、先生っ!」ガタッ

カウントスタートします。

教師「なにかね? 碇くん」

シンジ「あの! お腹が痛くて! トイレ行ってもいいですか⁉︎」

教師「かまわんが、そんなに大声で叫ぶほど急を要するのか?」

女子生徒A「くすくす、なぁにぃ? あれぇ?」

女子生徒B「わ、わらっちゃ、かわいそうだよ。く、くっくっ」

アスカ「はぁ……ダッサ」

残り20秒前。

シンジ「ま、まずい、じゃなかった! すぐに行きたいんです! お願いします!!」

【男子トイレ】

シンジ「はぁ……パソコンの電源つかなくなっちゃったな。携帯電話は、使えるみたいだ。電磁波はウソだったのかな、しかたない、ミサトさんに報告しておこう」

ピッ プルルルルッ

ミサト「はい?」

シンジ「あ、ミサトさんですか?」

ミサト「あらぁ~シンちゃんが電話くれるなんて初めてじゃない? 渡した携帯電話、やっと使ってくれたのね」

シンジ「いえ、そんな。持ち歩いてはいたんですけど」

ミサト「あは、そっか。プレゼントした側としては嬉しいわ」

シンジ「それで、新しいパソコンについてなんですけど」

ミサト「あぁ、リツコから? そういえばシンジくん、まだ授業中の時間じゃない?」

シンジ「緊急だと思ったので、電話したんです。実は、また昨日と同じアンケートが」

ミサト「――なんですって?」

シンジ「今度は、質問が終わると爆発じゃなくショートしました」

ミサト「シンジくんに怪我はないのね?」

シンジ「僕は大丈夫でしたけど、質問に答えないとクラスメイトの誰かが狙撃されてたかもしれなくて」

ミサト「脅迫してきたの? なにか、要求されたりした?」

シンジ「いえ、今回も設問があって、回答しただけです。終わると、電磁波か周囲に影響するとシステムメッセージが出たので、先生に嘘をついてトイレにいるんです」

ミサト「そう……よくやったわ、シンジくん。的確な判断よ」

シンジ「この端末、どうしたらいいですか?」

ミサト「ちょっち待ってて。すぐにネルフ関係者を送る。詳しく経緯を聞きたいから、警護がきたら同行して本部まできてもらえる?」

シンジ「わかりました。このままトイレで待ちますか?」

ミサト「そうね……教室にもどるのは、危険かもしれない。五分で到着させるわ」

【ネルフ本部 執務室】

ミサト「それで?」

保安部「はっ、我々が到着した頃には、既にサードチルドレンの姿はなく――」

ミサト「そんな報告を聞きたいんじゃないわよっ! その後の消息は⁉︎」バンッ

保安部「し、失礼いたしました! 目下、捜索中です!」

ゲンドウ「作戦課長、どういうことだ」

ミサト「はっ! サードチルドレンよりヒトヒトマルマルに連絡がありました。そこで、保安課の者を使いにださせたのですが……」

冬月「いるはずの場所にいなく、行方不明。つまり、こういうことかね」

ミサト「はい、申し訳、ありません」

リツコ「葛城一尉とサードチルドレンの会話は録音してあります。やりとりはこちらのデータに」

ゲンドウ「……」ペラ

冬月「責任問題だぞ。もしなにかあれば、パイロットを選別するのは容易ではないのだぞ」

ミサト「承知、しております」

冬月「君のクビで済むと思っているのかっ!」バンッ

ミサト「も、申し訳、ありません」

ゲンドウ「アンケートをとったのは、誰の仕業だ」

ミサト「それは……」 ギュウ

ゲンドウ「もう結構だ。一度だけ、挽回のチャンスを与える。保安部の総力をあげてサードチルドレンを探せ。諜報部を使うのも許可する」

ミサト「了解しました!」ビシッ

【ネルフ本部 ラボ】

ミサト「サードチルドレン捜索の進捗状況は?」

保安部「現在、中学校周辺において検問を実地中です。また、上空からヘリ5機にて、怪しい車両がないか監視しています」

ミサト「近隣への聞き込みは?」

保安部「200人体制で行っています」

ミサト「本部の第三会議室に特別捜索チームを結成したわ。人員をあと300人増やして」

保安部「了解」

ミサト「報告があればオペレーターに繋いで。それと、諜報部への連絡も。全ての情報をかき集めるのよ、行って」

保安部「はっ!」タタタッ

リツコ「首の皮一枚で繋がったわね」

ミサト「なんとかね」

リツコ「時間の猶予はあまり残されていないわよ。副司令がカンカンなんだから」

ミサト「わかってる。私の失態だわ」

リツコ「連れ去られた足どりについて目星をつけてるの?」

ミサト「シンジくんが自分で離れたとは考えにくい。だとしたら、拉致されたのよ。運ぶための手段が必要だわ」

リツコ「そうね……」

ミサト「端末を操作できると考えられる可能性は? 赤木博士」

リツコ「工場から出荷されて、ネルフに到着してから再度検査を行っています。すなわち、考えられるのは、私の手にある内にがひとつ。レイに渡してからシンジくんの手に渡るまでがひとつ。渡ってからがひとつ、この三つになる」

ミサト「シンジくんに渡してから仕組む時間ある? やはり、内部の人間に破壊工作員が紛れ込んでいたのかしら。たしか、電磁波がでるってシンジくんが言ってたわよね……」

リツコ「こういう場合、辻褄合わせをしようと思うと闇に片足いれるようなものよ。考えるのはひとつずつでいい」

ミサト「つまり?」

リツコ「端末を操作できる状況下にあったのは、授業をしてた教師じゃないかしら」

ミサト「疑わしくは罰せよと?」

リツコ「チルドレンは人類の希望でもあるのよ。個人と天秤にかけるつもり?」

ミサト「……わかったわ。学校関係者、全員に事情聴取を取り行います」

リツコ「念の為、残りのチルドレンを保護しておきなさい」

ミサト「えぇ」

【ネルフ本部 女子ロッカールーム】

アスカ「えぇ~~~~っ⁉︎ 家に帰れないぃ⁉︎」

マヤ「ネルフの中なら、安全だから。コンテナの中で寝泊まりしてもらうけど」

アスカ「狙われてるのはシンジなんでしょ⁉︎ なんで私までとばっちりくうのよ!」

マヤ「攫った目的が、わからないらしいの。もしかしたら、あなたたち他のチルドレンもターゲットになってるかもしれないし」

レイ「碇くんは、大丈夫なんですか?」

マヤ「今は、なんとも」

アスカ「自分の身は自分で守らないからよ。自業自得ってやつね」

マヤ「こら、アスカ、そんな言い方しないの。シンジくんは、クラスメイトを守ろうとしてたみたいよ?」

アスカ「そうなの?」

マヤ「トイレに行ってたらしいじゃない」

アスカ「あぁ……それであいつあんなに慌ててたの」

レイ「赤木博士は?」

マヤ「先輩なら、葛城一尉に協力してる。今頃はプロファイリングチームに協力して犯人の人物像を分析してるんじゃないかしら」

【第三会議室】

冬月「どうなっている! サードチルドレンが学校からでるまでに目撃者すらいないのか!」バンッ

保安部「授業中を狙われたせいで、生徒への目撃情報が望めません。また、近隣への聞き込みを行なった結果、こちらも人通りの少ない時間帯でして……」

冬月「貴様はもういい! 諜報部! 報告しろ!」

諜報部「はっ! こちらでも同じく足取りを掴もうとしましたが、その時刻に車両を目撃したという情報はありませんでした」

冬月「別の手段でサードチルドレンを運んだのではないのか⁉︎」

諜報部「身長と体重を考えれば、その可能性は多分に考えられます。しかし」

冬月「人ですら目撃情報がないのか!」

諜報部「はい。まだ全世帯への聞き込みは終えていませんが」

冬月「三時間以内に人海戦術で徹底的に探し出せ! 赤木博士、プロファイリングチームに助言を行い、犯人が複数なのかどうなのかもあらゆる面から検討したまえ!」

リツコ「はい」

保安部&諜報部「了解!」

ミサト「副司令が熱くなるのなんて珍しいわね」こそ

リツコ「神経が図太いのは結構。だけど、あなたの落ち度もあるの。さっき、碇司令に釘を刺されたのを忘れたの?」

ミサト「とほほ」

リツコ「万が一、死体にでもなってたら、あなたもコンクリートで固められて海に沈んじゃうわね」

ミサト「や、やめてよ~……え? ちょっと、やだ、目が笑ってない。マジ……?」

リツコ「危機感を持ちなさい、葛城一尉。今後のためにね」

加持「おふたりさん。今日も仲良くつるんでるな」 ポン

ミサト「うげっ、うっとーしいのがでた」

加持「ツレないね。シンジくんがいなくなったらしいじゃないか」

リツコ「加持くんはなにかわかる?」

加持「間違いなくプロの仕業、としか。それもかなり用意周到に計画されたものだね」

ミサト「あの場で拉致するのが?」

加持「いや、それはどうかね。タイミング次第だったのかもしれない。プロと確信してるのは場所じゃなくやり口だからな」

ミサト「結局、あんただってわからないんでしょ」

加持「おいおい、そうは言ってないだろう?」

ミサト「えっ⁉︎ なにかわかったの⁉︎」

加持「目撃情報がひとつだけ、ある……この情報がほしいか?」

ミサト「あんたねぇ、ふざけてる場合? シンジくんの安否がかかってるのよ?」

加持「副司令に渡すか、葛城に渡すか、どちらでもかまわないってだけさ」

ミサト「望みはなによ?」

加持「そうだなぁ。海の見える見晴らしのいい展望台でディナーでもいかがかな?」

ミサト「……わかった。それで手を打つ」

リツコ「あら? 私だけ仲間はずれ?」

加持「リッちゃんならいつでも歓迎さ。なんなら、今夜でも、もちろん、二人きりで……」スッ

ミサト「わかったから! はやく教えなさいよ!」

加持「冗談が通じないねっと、まずはこれを見てくれ」ペラ

ミサト「なにこれ? 搬入業者の日程表? ……購買へパンの仕入れが行われてるわね」

加持「調べを進めていっても怪しい人影の姿が見えない。あえて人の往来の少ない時間帯に犯行に及んでいるからな」

ミサト「それが?」

加持「葛城。完全犯罪というのは、いかに逃げ切るかが目的じゃない。いかに気がつかせないがかキモなのさ」

リツコ「業者に扮していた?」

加持「この時間帯に目撃されず、かつ不自然じゃない外部からの侵入ルートは限られている。ま、そう考えるのが妥当だろうね」

ミサト「業者の出発時刻は?」

加持「パートのおばちゃんによると、いつも通り昼休み前には作業を終えて帰ったそうだ。時間にしておよそ二十分にも満たない。ただし、帰る前に男子トイレに寄ったそうだがね」

リツコ「怪しいわね」

加持「まだなんとも言えないがな。ろくな目撃情報がない以上、これが現時点での有力な情報になる」

ミサト「うぅん……でも、弱いわね」

加持「行動に結果はつきものだ。なにかしらほころびを見つけてその小さな隙間から目星をつけていくしかない」

リツコ「加持くん、警察官にでも転職したら?」

加持「よしてくれよ。ネルフは元々技術畑の人間の集まりだからな。保安部や諜報部の連中が場慣れしてない分、多少は俺に慣れがあるっていうだけさ」

ミサト「とりあえず、業者に連絡をとって担当していたドライバーを確認してみる」

加持「こっちでも引き続き調べてみるよ。最悪の事態だけは避けたいんでね」

リツコ「それは、シンジくんの安否?」

加持「両方さ。用意周到に進めたプロの犯行で、身代金の連絡がないとしたら……雇い主が、いや、やめよう。憶測の域をでない」

ミサト「シンジくんは人類の希望を担うパイロットよ。彼の安否を最優先事項とします」

加持「りょーかい」

【ネルフ本部 コンテナ内】

アスカ「こ、こんな場所で寝泊まりしろっていうの?」

マヤ「一時的な処置だから……個室だとここしかなくて」

アスカ「家具は⁉︎ ベットは⁉︎」

マヤ「職員が使ってる布団ならあるわよ? 歯ブラシとか必要なものがあれば言ってくれたら買い出しも」

アスカ「こんな空調もきいてないような倉庫で寝泊まりなんて嫌よ!」

マヤ「なら、仮眠室に……」

アスカ「それはもっと嫌! 職員が使ってるってことは不特定多数ってことでしょ⁉︎ 不衛生よ!」

マヤ「その気持ちわからなくもないけど」

レイ「私の部屋は?」

マヤ「レイは隣のコンテナ。大丈夫そう?」

レイ「問題ありません」

アスカ「ちっ、なによ? ポイント稼いでるつもり? これだから優等生気取りは」

レイ「別に。そんなつもりじゃない」

アスカ「こんな無機質な空間の中で不満がでないわけないじゃない! あたしを悪者にしようって魂胆なんでしょ⁉︎」

レイ「……」

アスカ「なんとか言ったらどう⁉︎」

レイ「いつも通りだもの。私の部屋、これと変わらないから」

アスカ「はぁ? あんたんとこってこんな感じなの?」

レイ「ええ」

アスカ「信じらんない。自分でなんとかしたらいいのに」

レイ「どうして?」

アスカ「過ごしやすい環境を作るのは当たり前でしょ。毎日自分が寝泊まりするんだから」

レイ「寝れればいいんじゃないの?」

アスカ「無関心もここに極まれりね。好きなグッズとかそういうのないわけぇ? 寝るだけにしたってねごごちがいい枕とかお気に入りがあるものでしょ?」

レイ「よく、わからない」

アスカ「はぁ……それで? 何日ここで寝ればいいの?」

マヤ「少なくとも、今回の事案に折り合いがついて、安全が確認されるまでは」

アスカ「えぇ⁉︎ それって、わからないんじゃない!」

マヤ「まぁ、その……」

アスカ「あのねぇ! 先の見えない不安ってのもあるんですけど⁉︎ エヴァパイロットのそこらへんの精神安定はどうしてくれるわけ?」

マヤ「むっ。薬なら、先輩に言えばもらえるわよ」

アスカ「どいつもこいつも! そんなの言ってるんじゃないわよ!」

【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「チルドレンの様子はどうだった?」

マヤ「レイは大丈夫そうです。アスカは……」

リツコ「まぁ、文句がでるでしょうね」

マヤ「そうですね……」

リツコ「不自由には変わりがないもの。人はリラックスできる場所を求める。自分の部屋というものは、好きにしてもいいという空間でもあるのよ」

マヤ「気を使っちゃいますもんね」

リツコ「そうね。加えて私達女性は巣作りをするという本能でもあるけど。はい、コーヒー」コト

マヤ「先輩、シンジくんの件はなにか進展ありそうですか?」

リツコ「いいえ。まだなにも。上層部は可及的速やかに事態の解決を試みて人材を投入しているけれど、足取りが掴めないのよ」

マヤ「端末に爆弾が仕掛けられてたんですよね? そこからなにか掴めないでしょうか?」

リツコ「難しいわ。元になる端末は、こちらが気がつく前にバラバラになるまで爆破されている。いつ仕組まれたか、内部の人間が噛んでいるとしても容疑者は、数万人の技術者にのぼる。外部から潜入した工作員という線も捨てきれない」

マヤ「パイロットを狙うなんて、信じられません」フーフー

リツコ「警護の意識が低かったみたいね。普段から気をつけてはいた。しかし、網をかいくぐれるプロにとっては施錠ですらなかったのかも」

マヤ「シンジくん達がいなければ人類は滅んでしまうのに」

リツコ「その日暮らしをしている者にとっては、明日人類が滅びようが関係のない人達だっているのよ」

マヤ「理解、できません」

リツコ「考えすぎないほうがいいわよ。理解できないものはいつまでたっても理解できないまま終わることも多いから」

マヤ「無事だと、いいですね……」

リツコ「さて。今頃はなにしているのかしらね、シンジくん」

【第三新東京都市第壱中学校 放課後】

トウジ「なんや、学校中がえらいごったがえしとるのー」

ケンスケ「碇、いなくなっちゃったしな」

トウジ「また使徒やあるまいなぁ」

ケンスケ「いや、使徒だったら学校にネルフの人達が来ないんじゃないか? 避難警報も放送もないし」

トウジ「せやかて、綾波とゴリラ女は昼休み前に呼びだされていなくなってもうたやないか」

ケンスケ「うーん」

トウジ「なんかあったんやろか?」

ケンスケ「僕たちが考えてもわからないさ……そういやさ、碇に用事あったんじゃないのか?」

トウジ「妹がお礼を言いたいから一度連れてきてくれってうるさいからのぉ」

ケンスケ「あぁ、トウジが碇を殴って怒られたっていう例の」

トウジ「エヴァのパイロットちゅーのは、ヒーローなんやと。ま、ワシ達の生活の守ってくれとんのは事実やしな」

ケンスケ「僕でよかったら行こうか?」

トウジ「お前が行ってなにすんねん? ま、まさか、オタクなだけやなくて、ロリコン?」

ケンスケ「バカなこというなよ!」

トウジ「じゃあかあしい! 妹にお前は絶対に近づけへんぞ!」

ケンスケ「偏見だね! そうやってオタクを変な趣味と結びつける誇大妄想だ!」

トウジ「見た目からして怪しいと思っとったんじゃ!」

ケンスケ「なんだと⁉︎」

ドンッ

ユイ「あら、ごめんなさい。まわりをよく見てなくって」

ケンスケ「お、おい。トウジ」

トウジ「あ、すんまへん」

ケンスケ「あの、すいません。僕たちこそ」

ユイ「いいえ、気にしないで。それよりもなんだか騒がしいわね?」

トウジ「なんか、ネルフから人がぎょーさんきとるみたいです」

ケンスケ「職員室にご用ですか?」

トウジ「こらケンスケ! 美人だからって抜け駆けすな!」

ユイ「ふふっ、ありがとう」

トウジ「い、いえっ! 滅相もありません!」

ケンスケ「顔真っ赤にしててよく言うよ」

ユイ「忙しそうだし、また日を改めようかしら」

トウジ「たしかに、今やと取り次ぐの時間かかりそうですもんね」

ユイ「それじゃぁ、私はこれで……お友達と仲良くね?」

トウジ&ケンスケ「は、はいっ!」ビシッ

トウジ「……はぁ~。べっぴんさんやったの~。誰かの母親やろか」

ケンスケ「どこかで会ったような……」

トウジ「あないな美人なお姉さまを会ったら忘れるわけがないっ!」

ケンスケ「いや、似てるっていうか……」

トウジ「あん?」

ケンスケ「あ⁉︎ そうだよっ! 綾波だ! 綾波に顔立ちが似てるんだ!」

トウジ「そうかぁ? 綾波とは髪の色も」

ケンスケ「いいや! 盗撮をしている僕は被写体のパーツを鮮明に思い出せるんだ! 間違いないね!」

トウジ「また変な特技を」

ケンスケ「綾波の母親かな?」

トウジ「いてもおかしくはないが」

ケンスケ「他人の空似なのかな。似てると思ったんだけどなぁ」

トウジ「しかし、ぐふふ。ええ匂いやったな」

ケンスケ「トウジぃっ! ぶつかったのは肩か? ここなのかぁ?」 スリスリ

トウジ「わわ、さわんな! 残り香が薄れるやろ! ぺっぺっ!」

ケンスケ「ツバとばすなよ!」

【ネルフ本部 シャワールーム】

アスカ「つめたっ! もぉ、なんで湯の加減が一定じゃないのよ!」

レイ「……」ゴシゴシ

アスカ「おまけにこいつと一緒になにが楽しくて」

レイ「音、反響してうるさい」

アスカ「悪かったわねぇ! うるさくて!」

レイ「石鹸、使う?」

アスカ「使う!」

レイ「あなた、碇くんが心配じゃないの?」

アスカ「……少しはね。そういうあんたは心配なの?」

レイ「よく、わからない。死ぬってこわい?」

アスカ「あたしはこわいというより嫌。ただ、まぁ、世の中には自[ピーーー]る人だっているのは子供でも知ってるしさ、こわくない人もいるんじゃない?」ゴシゴシ

レイ「碇くんは、死ぬのがこわい?」

アスカ「あいつは自分のことだけでいっぱいいっぱいだもの。きっとこわがるんじゃない?」

レイ「そう……」

アスカ「バカシンジはもうちょっと頼りがいってものがあればいいんだけどさぁ」

レイ「どうして?」

アスカ「守ってもらいたいって思うのは、女なら誰しも持ってる幻想じゃない。自分でやろうと思えば何だってできる。けど、頼れる人がいると安心するもの」

レイ「安心……」

アスカ「ま、ガキシンジには無理な注文ね」

レイ「……」

アスカ「それに、私たちはパイロットなんだから。死ぬ覚悟はしておくべきよ」

レイ「あなたは、死んでもいいの?」

アスカ「だからぁ、そうじゃないんだってば。私はやりたい夢がたくさんある。だから死ぬのがこわいんじゃなくて、嫌なの。でも第一線で戦うのは、私たちでしょ?」

レイ「えぇ」

アスカ「心構えの問題よ。死と隣合わせだからこそ、そうなってもおかしくないと考えていなくちゃ」

レイ「でも、碇くんは、今はエヴァに乗っているわけじゃないわ」

アスカ「……」

レイ「使徒が相手じゃない。ヒトが相手だもの」

アスカ「それはあんたの言う通り、私たちは、狙われてるのかもしれない」

レイ「使徒が相手じゃなくても、死んで、いいの?」

アスカ「ずぅ~~ぇったいに嫌!」パシャ

【第三新東京都市 繁華街】

ミサト「はぁ、これで何件目?」

マコト「二十件目になりますね、今日だけでですけど」

ミサト「なんで高層マンションばっかりあるのよ! この土地は!」

マコト「仕方ありませんよ。ネルフ関係者が使ってる集合住宅地ですから」

ミサト「人口が多すぎるのよ。いっそN2でもぶちこんでやろうかしら」

マコト「またそんな物騒な」

ミサト「諜報部から業者の件、なにか連絡は?」

マコト「青葉からの報告によりますと、たしかに業者は搬入作業にはいっていました。しかし、正規の者です」

ミサト「えぇ?」 ガックシ

マコト「……シロですね。怪しい点は見受けられません」

ミサト「またふりだしに戻っちゃったじゃない」

マコト「どうします? 近隣への聞き込みを続けますか?」

ミサト「うーん、本部で大規模捜査を実施してるし、私たちがやったところで意味なんてないんだけどねぇ」

マコト「会議室は副司令がいるからこっちに加わったんでしょ?」

ミサト「そうなのよぉ~。まさに針のむしろって感じ」

マコト「使徒が来ていないのが不幸中の幸いですね」

ミサト「本当にね、ネルフの業務はMAGIがほとんど行ってるから問題ないけど、影響が全くないってわけじゃないし……」

マコト「もし、使徒がきたら」

ミサト「そうならないように一刻もはやく解決しなくちゃ。続き、行きましょうか」

【第三新東京都市 郊外 廃工場】

シンジ「うっ……」

「気がついた?」

シンジ「(ここは? 真っ暗でなにも見えない)」

「いつまでも寝てるから心配になったわよ」

シンジ「どこですか? ここ。なんで真っ暗なんですか?」

「それは麻袋を被せているせい。あたりも陽が沈んでる時間帯だけど」

シンジ「誰ですか? 僕にどうして、こんなことするんですか?」

「苦しくない?」

シンジ「質問に答えてください」

「あまり暴れると縄が食いこんで痛むわよ」

シンジ「(ぐっ! なんなんだよ! いったい!)」

「もういいの?」

シンジ「えっ?」

「本当はエヴァに乗りたくなかったんでしょう?」

シンジ「……」

「私はその手助けをしているだけ。あなたが望むなら、このまま消えさせる」

シンジ「なに言ってるんですか……」

「大人達の都合を押しつけてしまったんですもの。今までよく頑張ったわね」

シンジ「いったい……」

「あなたが思っている以上に、計画は進んでしまっている。いいえ、エヴァに乗るように仕組まれた時点で、準備は終わっていたの。あとは、スケジュールに沿って進めていくだけ」

シンジ「……?」

「好きにしていいのよ。未来は、あなたが選択するの」

シンジ「わ、わけがわからないよ」

「そうね、ごめんなさい。戸惑いが先にあるわよね」

シンジ「縄を解いてくれませんか?」

「いずれ解いてあげる。ただ、今夜はこのままで。トイレがしたくなったら言いなさい」

シンジ「えぇ⁉︎」

「なにも恥ずかしがることはないのよ」

シンジ「そ、そんな! 嫌ですよ!」

「ふふっ。緊張はあまりしていないようで、安心したわ」

シンジ「……」

「灯台下暗し。先生は気がつくわね、それまで少し、お話をしましょう」

シンジ「……」

「古い、古い、昔の話。シンジは神話を知ってる?」

シンジ「いえ」

「アダムとイヴは? 知恵の実を食べて、エデンの園から追放された」

シンジ「少しなら」

「似たような話が現実に起こっていたとしたら、と、想像してみた?」

シンジ「そんなの、あるわけないじゃないですか、だって、神話ですよ」

「そうね」

シンジ「聖書だって人の都合で後から書き加えられた項目が多いって、テレビで見ました」

「それも事実。だけど、元となった話は、関連する記載が実在する、死海文書というの」

シンジ「そんなのウソだ」

「よく気をつけてまわりを見てみなさい。ネルフのマークも、使徒という呼称も。それら全てがある点に繋がっていくの」

シンジ「話が突拍子すぎて、わかりません」

「破滅の日が、現実に起こりうると仮定してみて。人類が生き残る為に進められているのが、エヴァに乗らされている理由なのよ」

シンジ「……おかしいよ」

「信じられない?」

シンジ「信じられるわけないでしょうっ! いきなりこんな状況になってるだけでもわけがわからないのに!」

「現代に至るまで、人類が誕生した謎はほぼ解明されていない。これは知ってる?」

シンジ「……」

「研究は進められてるわ。理論で固められて、これなら間違いないという域にまで高めていくけど、それも新しい発見があれば、簡単に塗り替えられてしまう。物理的証拠がないから、その程度でしかないの」

シンジ「僕に、僕にいったい、なにを説明しているんですか」

「真実を知ってほしい」

シンジ「……」

「その上で、あなたがどうしたいのか、判断してほしい」

シンジ「僕は、わかりません」

「わからなくても、生きている以上は、なにかを選んで生きているのよ。物を食べる、何時に寝る、そういった必要な選択肢はありふれてる」

シンジ「それとこれとは、話が……どうして、僕が選ぶんですか?」

「あなたはもうどっぷりと巻き込まれてしまっているから。中心にいると言ってもいいぐらい。最初に仕向けたのは、私」

シンジ「えっ?」

「シンジ、元気に育ってくれて嬉しいわ」

シンジ「だ、誰なんですか?」

「少し、眠りなさい」

シンジ「寝ろって言ったって、今まで……」

「子守唄、いる?」

シンジ「いりませんよ」

「そう。それなら、注射でいいわね」

シンジ「えっ? ……いっ!」プス

「おやすみ」

シンジ「ぼ、僕の質問にまだ答えて……!」

「ゆっくり眠りなさい」

シンジ「う……」 ガク

ユイ「あの人にも、会わなくちゃいけないわね」

【ネルフ本部 第三会議室】

リツコ「副司令、こんな時間まで」

冬月「なんだ、君か」

リツコ「報告はいたしますので、そろそろあがられては……ご無理などなさらないよう、ご自愛ください」

冬月「年寄り扱いはしないでくれ」

リツコ「申し訳ありません。お気に障ったのなら」

冬月「いや、かまわんよ……そうだな、たしかに歳に夜更かしは堪える」

リツコ「湯のみが冷たくなっておりますわ。差し支えなければ、淹れ直しいたしますが」

冬月「うん、頼もう」

リツコ「はい」

冬月「君は、赤城ナオコ博士の娘だったね」

リツコ「はい……」トクトク

冬月「親娘でネルフに勤務とは、因果なものだな」

リツコ「私は、ここで働けて誇りを持っております。碇司令と副司令のお側にお仕えできるなんて、光栄ですわ」

冬月「ふん、おだててもなにも出やしないぞ」

リツコ「本心です、どうぞ」コト

冬月「ありがとう」

リツコ「副司令が、サードチルドレンに躍起になっておられるのは、やはり計画のためでしょうか」

冬月「ん?」グビ

リツコ「いえ、気にかかったものですから」

冬月「……それもある。我々には目的があるからな。別の理由は、ある教え子からの頼みでもあるからだ」

リツコ「と、言いますと」

冬月「碇がまだ、学生だった頃の話だが。生物学者を志している女生徒がいてね」

リツコ「それは、あの、失礼ですが」

冬月「君も名前ぐらいは聞いたことがあるだろう。碇ユイ、あの男の妻になった女だ」

リツコ「……」

冬月「不思議な魅力を持つ女性だったよ。掴みどころがなく、それでいて、慈愛に満ちていた」

リツコ「E計画の実験の際に、初号機のコアへ取りこまれたと聞きました」

冬月「それが彼女の望みだったからな」

リツコ「初号機に、ですか?」

冬月「女の考えは理屈ではない。彼女は常に慈愛に満ちていた。しかし、それと同時に、とても頭が良かったのだよ」

リツコ「……?」

冬月「私にも不確定な部分がある。もしかすると、彼女の頭の中では、碇ゲンドウでさえ計画の一部だったのかもしれんな」

リツコ「あ、あの碇司令を手駒に?」

冬月「その通りだ……少し、話すぎたか。老人の戯言だと思って聞き流してくれ」

リツコ「はぁ、それはかまいませんが」

冬月「しかし、要求はまだないのか?」

リツコ「依然として、なんの連絡も。戦自や各国政府が秘密裏に拉致したという可能性が」

冬月「いや、それは考えにくい。パイロットは各国にとっても資産だからな。ゼーレがそれを許すはずがない、得をするとすれば、いや……待てよ」

リツコ「どうかなされました?」

冬月「――女は、理屈で動くものでは」

【シンジ 夢の中】

男「君の母親は実験中に亡くなった。父親は、妻を殺した疑いがある」

シンジ「違う!」

男「実験の為に、自分の妻を殺したんだ!」

シンジ「違う! ……母さんは、笑ってた……」

ユイ「シンジ……」

シンジ「母さん! どうしていなくなるの⁉︎」

ゲンドウ「シンジ、逃げてはいかん」

シンジ「自分の楽しいことばかりで人は生きてはいけないんだ。逃げたいから逃げてなにが悪いんだよ⁉︎」

ゲンドウ「よくやったな、シンジ」

シンジ「エヴァに乗ればみんなが褒めてくれるんだ! 父さんだって、あの、父さんが、僕を褒めてくれたんだ……」

ユイ「反芻するの?」

シンジ「そうだよ! 思い出せば辛くても生きていける!」

ユイ「シンジ、世の中にはもっと素晴らしい眺めがあるのよ」

ゲンドウ「だが、見るには自分が前に進まなければならない」

シンジ「簡単に言わないでよ。僕には、無理なんだ……」

ゲンドウ「待つだけではなにも得られない。傷つくのがこわいか?」

シンジ「こわい、たまらなくこわいんだ……」

ユイ「殻に閉じこもるのは自分を守る行為ではないわ。追い詰めているだけ」

ゲンドウ「勝ちとれば何ものにも得難い経験になる。そうなった時に、実感できる」

シンジ「ぐすっ、うっ……エヴァに乗っても、楽しくないんだ、僕には、わからないよ……」

ユイ「シンちゃん、顔をあげなさい」

シンジ「母さん」

ゲンドウ「お前の人生だ。お前が選び、お前が決めろ」

シンジ「父さん」

ユイ「しっかりね」

【翌日 第三新東京市 郊外 廃工場】

シンジ「うっ、こ、ここは?」

ユイ「起きたのね」

シンジ「そうか、僕はまだ拘束されて……」

ユイ「寒くない?」

シンジ「いや。というか、人肌の感触、なんだか、いい匂いが……うわあぁぁっ⁉︎」 ガタン

ユイ「どうしたの?」

シンジ「なんだ⁉︎ これ、抱きしめられてますよね⁉︎」

ユイ「そうね、寒そうだったから」

シンジ「い、いや! いいですよ!」ジタバタ

ユイ「そう?」

シンジ「はい! お願いですから、離れて……!」

ユイ「わかったわ」スッ

シンジ「……はぁ、なんなんですか、本当に」

ユイ「なに、と聞かれても困るんだけど」

シンジ「僕はいったいこれからどうなっちゃうの?」

ユイ「もう少し、時間があるわ」

シンジ「時間って……それに、あなたは誰なんですか? たしか、僕を知ってるみたいな」

ユイ「あなたが、膝の高さぐらいの頃に会ったことがあるの」

シンジ「ネルフの関係者ですか?」

ユイ「ふふっ、そうね。そう言えば間違いではないのかもしれない」

シンジ「僕を攫っても、父さんは、顔色なんて変えませんよ」

ユイ「ええ」

シンジ「僕にはパイロットとしての価値しかありませんから」

ユイ「あなたの父親の話を聞かせてもらえる?」

シンジ「そんなの、聞いて……」

ユイ「知りたいだけ。不器用な人だとはわかっているけど」

シンジ「ぷっ、父さんが、不器用ですか?」

ユイ「あら? 違う?」

シンジ「よく、わかりません。父さんとは僕がまだ小さい時に離れて暮らしましたから」

ユイ「あまり話ができなかった?」

シンジ「そうですね」

ユイ「話そうとはしたの?」

シンジ「ぷっ、くっくっくっ」

ユイ「どうかした?」

シンジ「いえ、綾波というクラスメイトがいるんですけど、同じことを聞かれたので」

ユイ「そう……」

シンジ「どうなんだろう。話そうとはした、んじゃないかな。けど、幼い頃の記憶ですし、その後は、努力が足りなかったのかもしれません」

ユイ「親子でも難しいのね?」

シンジ「他の家庭がどうかなんてわかりません。だけど、父さんは、僕にとって、難しい人です」

ユイ「母親は?」

シンジ「母さんは……ほとんど記憶にないんです。思い出といえることはなにも。ただ、父さんは母さんを今でも忘れてないんだと思います」

ユイ「なぜ?」

シンジ「毎年、墓参りに行ってるから」

ユイ「あなたは、お母さんを恨んでる?」

シンジ「いえ、不慮の事故で亡くなったらしいんです。ただ、かわいそうだな、としか」

ユイ「他人事でしかないのね」

シンジ「実感がわかないんです。母さんがいたというだけで」

ユイ「興味深いわ」

シンジ「え?」

ユイ「あぁ、ごめんなさい。癖みたいなものだから」

シンジ「……」

ユイ「人は、誰しもが個を確立して生きているの。自分が自分であるという証明ね。何事にも二面性があるように、良いところと、悪いところがある。なにかわかる?」

シンジ「自由と、孤独、かな」

ユイ「正解。あなたの母親は、人の孤独に寄り添う永遠の存在になりたかったのよ」

シンジ「母さんが?」

ユイ「えぇ。裏死海文書に記載されている意味を、真に理解しているのは、彼女だけだったんじゃないかしら」

シンジ「う、うら……」

ユイ「昨日の神話の話の続き」

シンジ「また、その話ですか」

ユイ「母親があなたを、そして夫を捨てたことに後悔をしていないとしたらどう思う?」

シンジ「え? だって、事故で亡くなったのに」

ユイ「聞いた話だけが全てではない。あなたを、夫を、愛していた。だけど、罪悪感なく捨てていたとしたら?」

シンジ「まただ。言ってる意味がわかりません」

ユイ「あなたはまだ何も知らない。教えたとしても、理解できる受け皿がないのね。でも、仕方ないのかもしれない。そうやって生きてきたんだから」

シンジ「……」

ユイ「時は残酷ね。個人の都合とはかけ離れた概念で動いている」

シンジ「はぁ」

ユイ「あなたの話に戻しましょう。エヴァパイロットになってよかったことは?」

シンジ「僕は、迷惑をかけてばっかりです」

ユイ「それでも人類を守っているのでしょう?」

シンジ「そう言ってくれます。ミサトさん、職員の人たち。だけど、僕はみんながそう言ってくれてるのに、エヴァパイロットの価値しかないって」

ユイ「自分自身の価値を見つけられないのね」

シンジ「わがままですよね」

ユイ「自分を責めないで、当たり前よ。だけど、エヴァパイロットも含めて、あなたの価値だと思わない?」

シンジ「……」

ユイ「なぜ選ばれたのか、なぜ乗れるのか。それは理由のひとつずつにしか過ぎない。あなたが乗れる、そして、あなたが守っている。その事実を、周囲の人は認めてくれているのよ」

シンジ「やっぱり、僕には関係ない」

ユイ「ジレンマを抱えるのはわかるわ。でも、あなたがあなたを認めてあげなくちゃ。そんな自分でもいいって」

シンジ「そんな、自分でも、いい」

ユイ「ひとつじゃないのよ。あなたが選んだものが正解になる、正解にしてしまうの。誰だって突き詰めれば自分の為に生きているんだもの」

シンジ「そうでしょうか?」

ユイ「自己犠牲で愛する人の為に、なんて建て前を言っても、愛する人の喜ぶ姿が見たい自分の為でもあるでしょう?」

シンジ「そうかも、しれません」

ユイ「無限の可能性であふれている。だから、選ぶのに迷うし、こわい」

シンジ「もし間違っていたら」

ユイ「良くても悪くても、結果はでてしまう。悪かった場合が、他人を傷つけ、自分を傷つけてしまうのがこわい」

シンジ「う……」

ユイ「だから、なにもしない、というの?」

シンジ「そ、それは」

ユイ「選択のひとつなのよ。シンジ、あなたがなにもしないと決めたの」

シンジ「僕がなにかしたって……」

ユイ「なにかしても、なにもしなくても悪くなるのなら、同じではない?」

シンジ「……」

ユイ「決めたのなら責任を持ちなさい。あなたが選んだという自覚から逃げてはだめ」

シンジ「耐えきれなかったら、どうしたらいいんですか」

ユイ「不安感に? 持ち札は多くないと割り切れる?」

シンジ「できそうもありません」

ユイ「シンジはまだ若いから。でも、こわがっちゃだめよ。歳をとるのはね、可能性を消費しているの。今しかできないと判断したら飛びこみなさい。これなら、言っている意味わかるわよね?」

シンジ「はい」

ユイ「シンジ……」スッ

シンジ「……?」

ユイ「あなたならきっとできる。あなたが持つDNAはそこらの凡人に負けるはずのない、サラブレッドですもの」

シンジ「……」

ユイ「母さんの血筋を信じなさい」

シンジ「なんだか、懐かしい匂いがします」

ユイ「……覚えがある?」

シンジ「なんとなく、そう思っただけで。変ですよね。僕、誘拐されて、相手の顔だってわからないのに、こんな話するなんて」

ユイ「話してくれて嬉しいわ」

シンジ「いえ……」

ユイ「まだ、エヴァに乗り続ける?」

シンジ「ふぅ……すぐには、答えがだせそうもないや。だけど、乗ってみんなが笑顔に……自分の為に僕は乗るべきだと思います」

ユイ「そう」

シンジ「ありがとうございました……あれ、お礼を言うのは、変ですかね」

ユイ「いいのよ」

シンジ「あんまり、考えを話せる人いないから」

ユイ「また会える。次は、麻袋無しで。チクっとするけど、我慢してね」スッ

シンジ「え? いっ! また……⁉︎」プス

ユイ「おやすみ」

【第三新東京市 繁華街】

ミサト「うぅーん、足がぱんぱん! 結局、ビジネスホテルで夜を明かすなんて」

マコト「今日は成果をあげられればいいですね」

ミサト「そうね、誘拐から身代金の要求がないいままに時間だけが経過すると、生存率が低くなる。目撃情報を得ないと」

マコト「大丈夫かなぁ……」

ミサト「マジにやばいかも」

マコト「シンジくんだけじゃないかもしれませんしね、ひょっとしたら他のチルドレンも」

ミサト「今はシンジくんよ」

マコト「はい、わかってます」

ピリリリリッ

ミサト「日向くん、携帯、鳴ってるわよ」

マコト「青葉からだ。なにか動きがあったのかな」

ピッ

マコト「はい、もしもし……あぁ、葛城さんなら、ここに……うん……なんだって⁉︎ わかった! すぐに本部に戻る!」

ミサト「どうしたの⁉︎ ま、まさか、死体が……」

マコト「違いますよ! って、シンジくんが見つかったのは違ってないですが! 生きてます!」

ミサト「よっしゃあっ!」グッ

マコト「急ぎましょう!」

ミサト「おっけー! 駐車場に私の車があるから! 飛ばすわよ!」

マコト「いっ⁉︎」

ミサト「どうしたの? 日向くん! はやく本部に向かわなくちゃ!」タタタッ

マコト「はぁ、葛城さんって、運転荒いんだもんなぁ……」ガックシ

【ネルフ付属病院 202号室】

シンジ「う……うぅん……」 パチ

レイ「起きた?」

シンジ「綾波、アスカ?」

アスカ「はぁ、まったく、人騒がせなやつよねぇ」

シンジ「僕は、いったい」

アスカ「あんたがいなくなったおかげでこちとら大迷惑よ」

レイ「気分はどう?」

シンジ「大丈夫、特になんともないよ。僕は、いつ病院に?」

レイ「二時間前。駅のベンチで寝ていたそうよ」

アスカ「あんた、誘拐されてたんでしょ? 拷問とかされなかったの?」

シンジ「ご、拷問って。そんなんじゃなかったよ」

アスカ「なぁ~んだ。心配して損した」

シンジ「アスカが、僕を?」

アスカ「あ、あたしは別にっ! ファーストがうるさいからよ!」

レイ「私?」キョトン

アスカ「そうでしょ⁉︎」

レイ「違うわ。心配してたのは、あなた」

アスカ「うぐっ! 気がきかないんだからぁ!」

シンジ「そっか、心配かけてごめん」

アスカ「ふんっ!」

レイ「起きたら、連絡するよう赤木博士に言われてるけど平気?」

シンジ「うん、そうだね、大丈夫だよ」

アスカ「……ん? シンジ、あんたなんか顔つきがすっきりしてない?」

シンジ「そう?」

アスカ「気のせい、よね。なにも食べてないとか?」

シンジ「そんな。たしかに食べてないと思うけど、一日かそこらじゃないか」

アスカ「ま、それもそうか。ならやっぱり気のせいね」

レイ「なにか食事は?」

シンジ「……りんご、食べようかな」

レイ「いいわ」 カタ

アスカ「はっ! 起きたらさっそくいちゃついちゃってさぁ!」

シンジ「アスカ」

アスカ「なによ」

シンジ「変わる意味がわかった気がする」

アスカ「はぁ? 頭でも打ってきた?」

シンジ「よくわからないけど」

アスカ「……どっちなのよ」

シンジ「僕はこわがってちゃいけないんだね」

アスカ「……?」

シンジ「違う、いけないってわけじゃない。それが、自分の為にも、いつか、誰かの為にもなるんだろうね」

アスカ「や、やっぱり、なにかされてきたんじゃ……」

シンジ「アスカ」

アスカ「人の名前を何度も呼ばなくても聞こえてるっちゅーの!」

シンジ「アスカは、僕とは違う」

アスカ「はぁ」

シンジ「よっと」ギシ

アスカ「ちょっと、いきなり立って大丈夫――」

シンジ「こうしたら、どうなるんだろう」スッ

アスカ「んなっ⁉︎ ふぁんたぁっ⁉︎」

シンジ「アスカのほっぺた、やわらかいね」ムニムニ

アスカ「ふんっ!!」 ブンッ

バチンッ!

アスカ「エッチバカ変態っ! 信じらんないっ!」

シンジ「ぷっ、あは、あはははっ、ジンジンして、痛いや」

アスカ「え……? ちょ、ちょっと?」

シンジ「そうだよね。なにかをしたら、なにかが返ってくる。簡単な話なんだ」

アスカ「し、シンジ?」

レイ「碇くん?」

シンジ「くっくっくっ。だめだ、おかしくて、あははっ」

アスカ「ファースト、赤木博士に連絡してはやく精密検査受けさせるべきよ。そうしないなら隔離するべきね。きっと脳になにかされてきたんだわ」

シンジ「ひ、ひどいや、アスカ。あはははっ」

アスカ「急ぐのよ!」

レイ「え、えぇ」

【ネルフ本部 第三会議室】

シンジ「失礼します」

冬月「楽にしたまえ」

シンジ「はい」スッ

冬月「災難だったが、無事でなによりだ。検査の結果は問題ないそうだな」

シンジ「すぐに退院できました」

冬月「赤木博士から報告は受けているよ。書類で確認してもいいが、直接話を聞きたくてね」

シンジ「かまいません」

冬月「君は、将棋を打つかね?」

シンジ「あ、いえ……」

冬月「ふむ。山崩しならできるだろう」ガシャカシャ

シンジ「それなら知ってます」

冬月「聞きたいのは、君を誘拐した相手だ。女だったそうだな」スッ

シンジ「はい。声を聞いたので」

冬月「麻袋を被せられ、両手両足を縛られていたと聞いたが?」

シンジ「間違いありません」

冬月「やけにはっきりと答えるな」

シンジ「え……あの、なにか?」

冬月「老人と2人きりでは息苦しいのではないか」

シンジ「……はい、息苦しいです」

冬月「ん?」

シンジ「でも、望んでるのは副司令ですから」

冬月「この席をかね?」

シンジ「はい」

冬月「それは違いない。多少の無礼は許そう」

シンジ「質問に答えるかわりといいますか、ひとつお願いしてもいいですか?」

冬月「めずらしいな、なんだ?」

シンジ「父さんと、少し、話がしたいんです」

冬月「碇と?」

シンジ「はい。母さんのことを聞きたくて」

冬月「なぜかね? もしや、君を誘拐した相手は――」

シンジ「え?」

冬月「いや、なんでもない」

シンジ「誘拐した相手は、誰だかわかりません。ただ、僕を知っていて、小さい頃に会ったとは言ってましたけど」

冬月「やはり、我々は彼女の手のひらで遊ばれていただけなのか」

シンジ「彼女?」

冬月「それだけでいい。碇には会わせてやろう」

シンジ「あ、ありがとうございます」 ホッ

冬月「山崩しはまたにしよう。今なら、多少の時間があるはずだ。ついてきたまえ」

【ネルフ本部 発令所】

ゲンドウ「どうした?」

シンジ「あ、あの……」

ゲンドウ「ぐずぐずするな。用件があるならさっさと言え」

冬月「母親について知りたいそうだ」

ゲンドウ「なに?」 ピクッ

シンジ「母さんって、どんな人だったの?」

ゲンドウ「なぜだ?」

シンジ「知りたいって、おかしいかな……」

ゲンドウ「そうではない。なぜ今なのだ」

シンジ「気になったんだ。父さんは、母さんのことを大切に思ってるのは知ってるから」

ゲンドウ「シンジ」

シンジ「なに?」

ゲンドウ「無駄な話に時間を割くな」

シンジ「そ、そんな」

冬月「――サードチルドレン、面白い話をしてやろう」

シンジ「……?」

冬月「ここにいる男はな。昔、私の教え子だった」

シンジ「と、父さんが?」

ゲンドウ「……」

冬月「大学の頃の話だがね。当時からこいつは、一匹狼を気取っていてな。変わり者の類だった」

ゲンドウ「冬月」

冬月「キャンパス内では孤立していたよ。しかし、そんな折に、君の母親に出会った。最初は疎ましそうにしていたな」

シンジ「そ、それで?」

冬月「しかし、ユイ君の態度に、この男の心もやがて氷解していった。いつのまにやら、なくてはならない存在になっていたのだ」

ゲンドウ「過去の話だ」

冬月「やがて、2人は付き合うようになった。男女の仲というやつだ。そして、ユイくんは君を身篭った」

シンジ「父さんって普通に恋愛してたんだ」

ゲンドウ「いいかげんにしろ!」

冬月「碇、もういいのではないか」

ゲンドウ「なんのつもりだ?」

冬月「俺もお前も、やり方を間違えていたのだ。お前は言ったな。ゼーレと死海文書の存在にはじめて気がついた時、俺にこれを世間に公表すると」

ゲンドウ「なぜ蒸し返すのだ」

冬月「ネルフがまだゲヒムだった頃、お前は人が変わったようになって、決意を滲ませて帰ってきた。人類補完計画を遂行するために」

ゲンドウ「冬月、シンジを連れてさがれ」

冬月「ここから見える職員を見たまえ」

マヤ「あ、ここの解析間違ってる」
シゲル「じゃんじゃんじゃかじゃ~ん♪ いぇ~い♪」
マコト「はぁ、仕事が終わらない」

ゲンドウ「それがどうした?」

冬月「誰しもが、夢にも思うまい。人類が滅ぶ手助けをしているとはな」

ゲンドウ「滅ぶのではない。人が形を変える為の進化だ。必要な補完だ」

冬月「息子は、お前ではないよ」

ゲンドウ「なにを言っている」

冬月「認めたらどうだ。お前は息子から逃げている。俺もお前も。いや、ここにいる誰しもが、なにかしらの現実から逃げているのか」

シンジ「あ、あの」

冬月「俺は降りはしない。親子の時間を取り戻せ。破滅の日まで、まだ時間はある」

ゲンドウ「必要ない。思い出は心の中で生き続ける。今はそれでいい」

冬月「素直に受け入れられんか。歳というものは難儀だな。若い発想と柔軟性が羨ましいよ」

ゲンドウ「冬月、今日は休め」

シンジ「父さん」

ゲンドウ「なんだ⁉︎」

シンジ「僕は、幼いころ、父さんから逃げ出したんだ」

ゲンドウ「……子供の戯言には」

シンジ「父さんはあの時、僕に、わからないけど、なにかに失望したんじゃないの?」

ゲンドウ「それは違う。お前が逃げ出したのだ。お前の選択だ」

シンジ「そうかもしれない。父さんは何を選択したの? やっぱり母さんの――」

ゲンドウ「茶番はやめろ!」 バンッ

冬月「碇、今日中の仕事は俺が引き継いでやる。息子と飯でも食ってこい」

ゲンドウ「先生」

冬月「ふん、はねっかえりはあいかわずだな。老人のたまに見せるわがままだ。ここは俺の顔を立てろ」

【ネルフ本部 初号機ケイジ】

ミサト「たらりらったらぁ~ん♪」

リツコ「そこ、踏みはずすとL.C.L漬けの完成になるわよ」カキカキ

ミサト「わかってるってぇ~」

リツコ「呆れた、相変わらず現金ね。シンジくんに外傷なく発見できたからといって。チルドレンの警護体制見直しを検討しなくていいの?」

ミサト「そんなのはあとよ、あと。左遷もなさそうだし、この喜びを親友と確かめあわなくっちゃ、ね?」

リツコ「リーチがかかっているの、忘れないようにね」

ミサト「実験は明日から再開するの?」

リツコ「えぇ。シンジくんに問題はないし、そうなるでしょうね。そこのアンビリカルブリッジの固定具、締めつけが甘いわよ」

作業班「え! どっちすかぁ⁉︎」

リツコ「二番よ」

ミサト「使徒が相手ならなんとかなるんだけどさぁ。さすがにああいうやり方されるとちょっちねぇ~」

リツコ「あなた、戦闘訓練も受けているでしょう? 優秀な成績だったはずだけど」

ミサト「小難しい推理は苦手。今回の件では、かたなしだって」

リツコ「そう……あら? あれは、碇司令と、シンジくん?」

ミサト「あらまっ! 本当だ! 2人で歩いてるのなんてめずらしいわね!」

リツコ「なにかあったのかしら?」

ミサト「気になるぅ?」 ジトー

リツコ「ミサト? なによその目は」

ミサト「いんやぁ~? リツコって碇司令を目で追っかけてない?」

リツコ「……っ! バカなこと言うのはやめなさい!」

ミサト「なんでムキになるのよぉ~?」

リツコ「あなたがそうやっていつも茶化すからでしょう⁉︎ 私は尊敬しているだけよ!」

ミサト「あらま、本気で怒ってる? ご、ごめん。悪かったわ」

リツコ「まったく!」コツコツ

【ネルフ本部 レストラン】

シンジ「……」チラ

ゲンドウ「どうした? お前が希望した会食だ」

シンジ「あ、うん。そうだね」

ゲンドウ「俺の顔色を伺ってないではやく決めろ」

シンジ「はは。父さんでも、わかるんだ」

ゲンドウ「くだらん」

シンジ「だけど、僕は嬉しいよ」

ゲンドウ「……そうか」

シンジ「父さんと、こうして食事できるのは本当に何年ぶりになるだろう」

ゲンドウ「十三年ぶりだ」

シンジ「やっぱり、僕が逃げ出した時からだね」

ゲンドウ「ああ。だが、それ以前の俺は研究に没頭していたからな」

シンジ「父さんがしていた研究ってやっぱりエヴァの?」

ゲンドウ「様々な研究だ。基礎構造に関わっている人員は万をゆうに超えている。俺はそのタスクの一部を担当していたにすぎん」

シンジ「凄いんだね。母さんも……?」

ゲンドウ「ユイは、エヴァに子供達の夢を託していた。シンジ――」

シンジ「なに?」

ゲンドウ「お前にとって母親とはなんだ?」

シンジ「うーん、会ったことのない、人、かな」

ゲンドウ「だが、お前の母親はたしかに生きていた」

シンジ「うん」

ゲンドウ「ユイはかけがえのないものを俺に教えてくれた。俺の心の中で生き続けている」

シンジ「もし、もし今も母さんが生きていたしとたら何かが変わっていたのかな」

ゲンドウ「そんな話はするだけ無駄だ」

シンジ「そうだね、ごめん」

ゲンドウ「俺は、お前に何もしてやれない」

シンジ「えっ?」

ゲンドウ「だが、ユイの願いは、お前に対する願いでもある」

シンジ「父さん、なに言って……」

ゲンドウ「シンジ。二度は言わん。よく聞け」

シンジ「う、うん」

ゲンドウ「俺は父親失格なのだろう。この手は、血で汚れてしまっている。過去を振り返りはしない」

シンジ「……」

ゲンドウ「犠牲が、あまりに多すぎる。俺だけの話ではない、関わってきた者、志半ばにして倒れてきた者たちの願いが託されている」

シンジ「うん」

ゲンドウ「俺は、お前に嫌な思いしかさせていないのだろうな」

シンジ「そ、そんな……」

ゲンドウ「初号機パイロットは、ユイの願いでもあるお前がやり遂げるのだ」

【ネルフ本部 発令所】

冬月「(ユイくん、これでよかったのだろう?)」

リツコ「副司令」

冬月「なんだね?」

リツコ「さきほど、碇司令とご子息をお見受けしました」

冬月「ああ。たまにはいいだろう。なに、ただの親子の食事会だ」

リツコ「お、親子の食事……?」

冬月「どこの家庭でも見受けられる、日常的な光景だよ」

リツコ「あの2人にとっては、その、大変、申し上げにくいのですが……」

冬月「言わんとしているのはわかる。だが、誰しもにきっかけは必要だ」

リツコ「は、はぁ」

冬月「俺は手助けをしているだけにすぎん。どうするかは、当事者が決める」

リツコ「今さら、関係の修復などありえるのでしょうか?」

冬月「いつになっても遅いというのはないが、歳をとれば、臆病になる。息子の頑張り次第だな」

リツコ「サードチルドレンは、かなり受け身だと思われますが……」

冬月「ふっ、期待しよう」

【ネルフ本部 レストラン】

ウェイター「お待たせいたしました。ハンバーグセットとアメリカンコーヒーでございます」コト

シンジ「い、いただきます」 カチャ

ゲンドウ「……」

シンジ「父さん、僕は、やっぱり、父さんと母さんに何があったのかわからないよ」

ゲンドウ「ああ」

シンジ「だけど、母さんの願いも、父さんの願いも、実現したらいいと思う」

ゲンドウ「お前に心配される覚えはない」

シンジ「そうじゃないんだ。僕は、父さんと母さんの息子だから」

ゲンドウ「形だけの親だ。お前が母親に抱いている感情と俺に対する感情になにも違いはない」

シンジ「父さんからしたら、バカみたいな話かもしれないけど、僕は父さんに褒められるためにエヴァに乗ってるんだ」

ゲンドウ「……」

シンジ「父さんはこう思ってるんでしょう? 乗れればいいって。僕にだってわかるよ。そうやって、父さんは切り捨ててきたんだね」

ゲンドウ「そうだ」

シンジ「父さんの手がなにかで汚れていても、命の尊さは変わらない。僕には、今が大事なんだ。だから――」

ゲンドウ「シンジ。会食は一度きりだ。冬月の顔を立てて話をしている」

シンジ「だけど! 父さんが言ったのは本心だったんでしょう⁉︎」

ゲンドウ「……」

シンジ「普段なら絶対に言わない話をしてくれたのを僕は聞いてたよ!」

ゲンドウ「はやく食え」

シンジ「なんでそうなんだよ」

「ご一緒してもよろしいですか?」

シンジ「えっ?」

ゲンドウ「……っ!」ガタッ

「お久しぶり」

シンジ「あ、えっと」

ゲンドウ「ば、バカな⁉︎ そんなはずは!」

「立ち上がってないで席に座ったらどう? 注目を浴びるわよ。碇司令」

ゲンドウ「な、なぜ……っ!」

「シンジ。ハンバーグセットを頼んだの? おいしそうね」

シンジ「あの……?」

ゲンドウ「ゆ、ユイ……君なのか……」

ユイ「シンジ、飲み物は? ジュースはいらないの?」

シンジ「――ユイ? ゆ、ユイって、え、えぇっ⁉︎」

ユイ「あなたの母さんよ」 カタ

ゲンドウ「ど、どうなっている。キミはたしかにサルベージに失敗して」

ユイ「バカね。私はいつもあなたのそばにいたのに。シンジをきちんと育てずになにをしていたの?」

ゲンドウ「お、俺は、キミに会うために」

ユイ「時がくれば会えたのよ。私達の息子が叶えてくれるはずだった」

シンジ「お、お母さん、なの?」

ユイ「そうよ。麻袋無しで会えたわね」 ニコ

シンジ「えぇ⁉︎ ってことは、あの時の人が⁉︎」

ゲンドウ「初号機のコアはどうなっている⁉︎」

ユイ「それなら心配ないわ。対応策は組んであるから。シンジのシンクロに問題なかったでしょう?」

シンジ「あ、あ……」

ユイ「ハンバーグ、冷めるわよ?」

ゲンドウ「本物か?」

ユイ「失礼ね。なんなら学生時代の恥ずかしい話を列挙してあげましょうか?」

ゲンドウ「……」

ユイ「私はあなた達を捨てたのよ。自分の望みの為に進んで初号機に取りこまれたの、なぜだかわかる?」

ゲンドウ「……」

ユイ「生き続ける限り、孤独感は切っても切れない関係にある。人類補完計画は心の壁を取り除き完全な個体への道標、今さら説く必要はなかったわね」

ゲンドウ「ならば、計画の完遂を待てば……」

ユイ「いいえ、それでは永遠にはなり得ない。私はね、この大地に還りたかったの」

ゲンドウ「……」

ユイ「なんの罪悪感もなかったわ。だって、この大地の土となり、木になり、空気となって、一緒にいるんですもの。始祖、そう呼ばれる存在になりたかった」

ゲンドウ「補完は人をやめるのではない、キミは人をやめようとしたのか」

ユイ「私はこの星と運命を共にして、誰よりも近く、あなた達のそばにいられるのよ? 終わりのない、永遠に」

ゲンドウ「未来永劫など理想だ。種はいずれ滅びる、星にも寿命はある」

ユイ「そうね、それに気がついたからここにいるわけだけど」

ゲンドウ「……」

ユイ「そんな話よりも、あなた。シンジをほったらかしてなにやってるの。さっきのやりとりは聞かせてもらったわ。自分に酔っているつもり?」

ゲンドウ「俺はだな」

ユイ「この子は私達の息子なのよ。あなたの手を、はじめて握ったあの頃の感覚を忘れたの?」

ゲンドウ「……」

ユイ「シンジの言う通り、命は尊いものよ。あなたはこの子から力強い鼓動を学ばなかったのね」

シンジ「(す、すごいな。父さんのこんな表情はもう見れないかもしれない)」

ユイ「シンジ」

シンジ「は、はいっ⁉︎」

ユイ「勉強はちゃんとしてる? 授業の成績はどれぐらいなの?」

シンジ「えーと、中間ぐらいの」

ユイ「あなたは頭がいいはずよ? 私は当然として、この人も学会では天才と言われていたんだから」

シンジ「す、すみません」

ユイ「勉強のノウハウを教える人がいなかったのね、いえ、学ぶ楽しさ、生き方を」

シンジ「いや、その……」

ユイ「でもね、シンジ。与えられるだけが当たり前だと思わないで。過酷な環境でも、生きて、自分で考えている子供はたくさんいるわ」

シンジ「は、はい」 シュン

ユイ「あなた」

ゲンドウ「なんだ」

ユイ「私は姿を消します。また会いたかったら、父親の背中を息子に見せるのね」

ゲンドウ「今さら俺に父親になれというのか」

ユイ「なにを言ってるの。あなたは血の繋がった父親その人でしょう。浮気をしているの、知っているのよ?」

ゲンドウ「……」

ユイ「シンジ、ハンバーグゆっくり食べなさい。それと、あなたの為に用意してある計画はたくさんあるから。しっかりね」

シンジ「は、はぁ」

ユイ「シンジも私が永遠となるDNAを宿してるんだもの。次の世代へのバトンね」 ニコ

ゲンドウ「お、おい」

ユイ「追いかけてきたら二度と会わないわよ」

ゲンドウ「……」

ユイ「それじゃ、元気でね」コツコツ

シンジ「い、行っちゃった」

ゲンドウ「……」

シンジ「と、父さん」

ゲンドウ「なにも言うな。あれはお前の母親だ」

シンジ「い、生きてたんだね、びっくりした」

ゲンドウ「あぁ」

シンジ「あの、どうするの? これから」

ゲンドウ「葛城一尉を呼び出す。お前もついてこい。それと、ハンバーグをはやく食べろ」

【ネルフ本部 執務室】

ゲンドウ「冬月」

冬月「どうした? 本日の業務は引き継ぐと言ったはずだ」

ゲンドウ「ユイが生きていた」

冬月「そうか。ふっ、ようやく姿を見せたのだな」

ゲンドウ「知っていたのか、なぜ今まで黙っていた」

冬月「すまなかったな。俺はお前の悩む姿を見て、内心でほくそえんでいたからだよ」

ゲンドウ「……」

冬月「嫉妬していたのかもしれん。それぐらいはこれまでの苦労を計算に入れればお釣りがくるだろう」

ゲンドウ「俺たちの目的が、補完計画の目的がなくなってしまったと同義だとわかっているのか?」

冬月「無論だ。だが、ゼーレによって、補完計画は発動される。それまでは時間を取り戻すといい」

ゲンドウ「ユイの血筋はゼーレそのものだ、委員会が生きていると知れば」

冬月「そういうと語弊がある」

ゲンドウ「これから、どうすればいい」

冬月「子供じゃあるまいし、俺に聞くな。ユイくんは何と言っていた」

ゲンドウ「父として背中を見せろと」

冬月「ならばそうしろ。余計な気を揉まんでいい、お前が背負っている十字架は消えやせんよ」

ミサト「失礼いたします! 碇司令、ご用でしょうか?」

ゲンドウ「……」

ミサト「あら? シンジくんも?」

シンジ「どうも、ミサトさん」

ゲンドウ「シンジ、葛城一尉に不満はあるか?」

ミサト「は、はい⁉︎」

ゲンドウ「どうだ?」

シンジ「いや、ミサトさんはよくしてくれてるよ」

ゲンドウ「そうか」

ミサト「碇司令、いったい、これは」

冬月「碇、過保護はちと違うぞ」

ゲンドウ「レイと同じ扱いではだめか?」

冬月「それでは育たん」

ミサト「ねぇ、シンジくん、なんなの、いったい」

シンジ「いや、あ、あはは」ポリポリ

冬月「気にしなくていい。中年の病気だ」

【ミサト宅 リビング】

ミサト「それじゃ~、シンジくんの帰還を祝してぇ! かんぱぁ~い!」

ペンペン「クエ~ッ!」

ミサト「んくんくんくっ、ぷはぁ~~っ! くぅ~~っ! シンジくんが無事に帰ってきてくれてよかったわぁ~! 今日は奮発してお寿司よぉ、さ、どんどん食べて!」

アスカ「はいはい」

シンジ「はぁ……」

アスカ「えぇい、うっとうしい! あんたもため息ばっかりつくな!」

シンジ「いいじゃないか、少しぐらい」

アスカ「みんなでワイワイやろうって時に陰気臭いオーラしてる奴がいるだけで濁るもんなのよ! どうせまたくだらない悩みなんでしょ?」

シンジ「くだらないかはわからないけど」

ミサト「まぁまぁ、シンちゃんだってお年頃なんだもの。悩みのひとつやふたつ、あるわよ」

アスカ「私に悩みがないみたいじゃない」

ミサト「アスカはアスカでないとは言わないわ。だけど処理の仕方がそれぞれあんのよ」 グビ

シンジ「アスカ」

アスカ「あによ」 パク

シンジ「アスカって、お母さんと、どう?」

アスカ「やぶからぼうになんなのこいつ」 もぐもぐ

シンジ「いや、別に」

アスカ「だったら聞くんじゃないわよ……ん……⁉︎」

ミサト「……?」

アスカ「は、は、鼻が痛い! つ、ツーンって!」ガタッ

ミサト「大当たりね! アスカが引いちゃったか!」

シンジ「ミサトさん、まさか」

ミサト「そのま・さ・かぁ♪ いくつかは特製ワサビ入りってやつなのよねー! あっはっはっ、シンちゃん見て見て、アスカ、涙目になってる、ぷっ」

アスカ「こんの……っ! し、シンジっ!水、水!」バタバタ

シンジ「う、うん!」

【ネルフ本部 執務室】

冬月「やれやれ、まだ悩んでいるのか」

ゲンドウ「そうではない。今さらどう向き合えと言うのだ」

冬月「構えることかね」

ゲンドウ「親としての接し方がわからん」

冬月「そうではないだろう。お前は、息子を愛しているのかさえわかっていない。ユイくんに向けている情のカケラでさえ持ち合わせているのか、自信がない」

ゲンドウ「……」

冬月「不器用なところばかり似よって。お前たちはまぎれもない親子だよ」

ゲンドウ「シンジに親として接するのがユイのためであるのは明白だ」

冬月「自分の為だ。履き違えるな。お前の望みを叶える道具として扱うから、道具を愛するのはどうしたらいいかわからんのだろうが。レイに対しては、ユイくんの面影を投影していたようだがな」

ゲンドウ「……」

冬月「ユイくんが生きているからといって、当然のように手に入ると自惚れるなよ? 見捨てられんように、せいぜい気をつけろ」

ゲンドウ「ああ」

冬月「ひとつだけ助言をしてやろう。……“家”とは帰る場所でもある。息子に帰る場所はあるのか?」

ゲンドウ「生活に不自由はないはずだ。規定にのっとって葛城一尉に世話を一任してある」

冬月「そうではない。規律や法律は弱者を守る為にあり、現代社会は物に溢れ、便利になった。必要な管理と設備を整えれば、不自由はないだろう。だが、それだけでいいのか? 心が貧しくなっているのではないか?」

ゲンドウ「人は、与えられた道具をどう使うか選ぶ、娯楽でさえも溢れている。選択肢は多いにこしたことはない……使う側の問題だ」

冬月「MAGIのような市政さえも行える極めて効率的なコンピューターという例もある。機械という電子製品に頼り良い結果が得られる、それは同意する」

ゲンドウ「……」

冬月「しかし、それだけでは満たされない。人の心は人でしか埋められないからな。人類補完計画もそこに起因する」

ゲンドウ「俺がやるのは性に合わん」

冬月「昔と今では価値観が違うがね。昔の人が不便だから、生活ができていなかったから、幸せでなかったかと言うと違う、食卓に笑顔があったからだ」

ゲンドウ「なにが言いたい」

冬月「答えを言っているだろう、わからなければ息子に学ぶんだな」

【第三新東京都市第壱中学校 昼休み】

ケンスケ「どうしたんだよ、ずっと窓の外見て黄昏ちゃって」

シンジ「あ、いや、なんでもないよ」

ケンスケ「碇がなんでもないって言うときは大抵なにかある時だよなぁ」

トウジ「シンジはめずらしくないやろ」

ケントウ「そういや、そうか」

トウジ「せや、この前はあかんかったが放課後時間あるか?」

シンジ「あぁ、ごめん。でも、そんなに大事な用事?」

トウジ「妹がなぁ」

ケンスケ「碇にお礼を言いたいんだとさぁ」

シンジ「それって、僕のせいで怪我したっていう……」

トウジ「まぁ、シンジのせいやないのはワシもわかっとる。サクラや、妹の名前は」

シンジ「お礼なんて、僕はなにもしてないよ」

ケンスケ「僕も一緒に行っていいんだろう?」

トウジ「お前は連れ行くわけないやろっ!」

ケンスケ「仲間外れにする気か⁉︎」

トウジ「ワシは兄として妹の身の安全を確保しとるんや!」

ケンスケ「トウジっ⁉︎ 僕は変態じゃないぞ!」

トウジ「お前が普段やっとる盗撮は変態行為やないんかい!」

ケンスケ「ブロマイドはビジネスさ! トウジだって儲けに一枚噛んでるだろ!」

トウジ「ぐっ」

ケンスケ「僕の趣味はあくまでカメラなんだからな!」

トウジ「はたからみたら女の尻追っかけとるストーカーやないか!」

ケンスケ「見損なったよ! 僕たちの友情はそんなものだったんだな!」 バンッ

シンジ「ちょ、ちょっと2人とも」

トウジ「今は会わせる気はない!」

ケンスケ「そうかよ! だったらいいよ!」タタタッ

シンジ「トウジ、ケンスケが」

トウジ「かまへんやろ。いざとなったら拳で語りゃええ」

シンジ「ケンスケは、変態じゃないよ」

トウジ「それはワシもわかっとる。妹は、そんなに長く話せる状態やないんや」

シンジ「あ……そう、なんだ」

トウジ「しみったれた空気にさせてすまんのぉ」

シンジ「いいんだ。まだ、回復してないの?」

トウジ「目処はたってない……。病院の先生からは、もっと設備の揃った病院に転院を薦められるが、そんな金、どこにあるっちゅうねん」

シンジ「……」

トウジ「あいつが笑顔になれるんなら、今はそれでええ。シンジ、すまんが励ましたってくれ。お前の活躍の話をすると、ほんま嬉しそうな顔するんや」ペコ

シンジ「やめてよ! 僕のせいなんだ! 僕ができるのならなんでも……!」

トウジ「お前なら、そう言ってくれると思うとったわ。怪我は事故やが、パイロットがシンジでよかったとワシかて思うとるで。どうしようないクズやったらやるせないだけやからな」

【小田原病院 病室前】

看護師「あら、鈴原くん。今日もお見舞い?」

トウジ「お世話になっとります」 ペコ

看護師「めずらしいわね。友達も一緒だなんて」

シンジ「はじめまして」

看護師「はい、こんにちは」

トウジ「サクラは、変わりないでしょうか?」

看護師「鎮痛剤を投与しているから、今は落ち着いてるわよ」

トウジ「そうですか……」ホッ

看護師「あんまり根を詰めすぎないようにね。毎日来るのはいいけど、鈴原くんが倒れたら……」

シンジ「え? トウジ、毎日来てるんですか?」

看護師「えぇ。よっぽどサクラちゃんがかわいいのね。新聞配達もしてるんでしょう? 今時えらいわ~」

トウジ「あ、その」

シンジ「知らなかった……」

トウジ「まぁ、その、な」

看護師「あら? 言っちゃまずかった?」

トウジ「いえ。ワシらは、病室にはいるので」コンコンッ

サクラ「……はい?」

トウジ「サクラ、はいるで」 ガララ

サクラ「……」ニコ

トウジ「そのまま、ラクにしとけ。なんや、またカーテン閉めとったんか」

シンジ「お、お邪魔します」

サクラ「兄ちゃん、今日はお友達、連れてきた?」

シンジ「……」

トウジ「せや、誰やと思う?」

サクラ「うーん?」

トウジ「お前にいつも話を聞かせてたやつや」 シャ

サクラ「えぇ?」

シンジ「はじめまして、サクラちゃん」

サクラ「わぁっ! 怪獣をやっつけてくれてるシンジさん⁉︎」

トウジ「そうや。どや? 嬉しいか?」

サクラ「うんっ! とっても嬉しい! 兄ちゃん、身体起こして!」

トウジ「よしきた! そうか、嬉しいか、よかったな、ほんまに、よかったな」

シンジ「(だめだ、トウジが我慢してるのに僕が泣いちゃだめだ)」

サクラ「どうぞ、座ってください。なにもないとこで申し訳ないわ」

シンジ「ごめん、ごめんね。本当に、怪我をさせてしまって……うっ、うぅ……」ポロ

トウジ「泣くやつがあるかぁ! サクラ、シンジも会えて嬉し泣きしとるみたいやぞ⁉︎」

シンジ「ぐすっ、ごめん、僕が、もっとちゃんとしていれば……ごめんよ……」ポロポロ

サクラ「エヴァっていうんでしょう……? あないにおっきなものに乗ってたらしかたないよ、私は気にしてないよ?」

シンジ「トウジ……」

トウジ「なんや?」

シンジ「今まで、本当にごめん。僕は、自分がなにをしたのかわかってなかった」

サクラ「……? 兄ちゃん、シンジさんどないしたん?」

トウジ「おい、サクラかて、びっくりしとるやないか」

シンジ「もっと、はやく、くるべきだったんだ」

トウジ「もしシンジがきたいと言うてもワシは断っとったはずや」

シンジ「そうじゃないんだ。もっとはやく申し出るべきだった。来れる来れないんじゃないんだ」

トウジ「まぁ、そんな深刻に考えんなや」

シンジ「僕がなんとかしてみせる……!」

トウジ「はぁ?」

シンジ「僕の力じゃ無理かもしれないけど。今から、父さんのところに、ネルフ本部に行かなくちゃ」

トウジ「お、おい。せやけど、時間が遅くなるんちゃうか?」

シンジ「ジッとしていられないんだ。また、明日学校で。なにかあったらすぐに言うよ。サクラちゃん、ごめんね、改めてお見舞いにくるから」

サクラ「う、うん……」

【ネルフ本部 発令所】

シンジ「はぁっ、はぁっ、父さんっ!」

ゲンドウ「お前と話している……いや、どうした?」

シンジ「忙しいのはわかってるよ。ごめん。頼みがあるんだ」

ゲンドウ「手短に済ませろ」

シンジ「僕が、初号機に乗って出撃したときに、怪我をした子がいるんだ。その子がとても重い怪我みたいで」

ゲンドウ「……」

シンジ「ネルフ付属病院に転院させるのは無理かな」

ゲンドウ「甘えは許さん、望みがあるのならば自分で勝ち取ってみろ」

シンジ「でも、僕じゃできる範囲が、だから父さんに頼んでるんじゃないか!」

ゲンドウ「俺を動かすに足る理由を示せ」

シンジ「なんだってするよ。エヴァにだって乗り続ける。それならどう?」

ゲンドウ「取り引きしたい場合は、自身の不確定な行動に対して手にあまる発言をするな。なぜ、助けたいと思った?」

シンジ「えっ?」

ゲンドウ「我々は使徒を相手に戦っているのだ。怪我人はこれからも出続ける」

シンジ「そうかもしれない、けど!」

ゲンドウ「クラスメイトだからか」

シンジ「友達の妹なんだ! 僕のせいで怪我したんだ!」

ゲンドウ「誰しもに救済はない。お前は、友達だからという理由で選ぶのか?」

シンジ「……っ!」

ゲンドウ「どうした? この程度で揺らぐのか? もう一度だ。お前が怪我をさせる人々はこれからも出続ける。エヴァに乗り続けるとはそういうことだ」

シンジ「ぼ、僕は……」

ゲンドウ「シンジ! 答えろ!」

シンジ「う……」

ゲンドウ「責任を持てないのならば帰れ、目障りだ」

シンジ「自分の目の届く範囲は、守りたいんだ。だって、それが僕がエヴァに乗る理由だから!」

ゲンドウ「俺に褒められたいからというのは、取り繕ってつけたウソだったのか」

シンジ「違う! ……ひとつじゃないんだ。僕が乗り続ける理由は誰かに嬉しいと思ってほしいから」

ゲンドウ「多様性はある、だが、お前が望む未来は実現に程遠い」

シンジ「お願いだよ、父さん。どうか、転院させてやってほしいんだ」

ゲンドウ「ふっ、次は拝み倒しか」

シンジ「どうしたらいいかわからないんだよ!」

ゲンドウ「……」

シンジ「くっ!」ギリッ

ゲンドウ「お前がやっているのはなんだ? 求めている結果に至るまで、お前にできるのはなにか、よく考えてみろ」

【ミサト宅 リビング】

司会(TV)「それでは、次の万国びっくりさんは、何と、算数のできるワンちゃんの登場です!」

芸人(TV)「ほんまでっか⁉︎ うさんくさいわぁ~」

シンジ「アスカ」

司会(TV)「それが本当! さぁ、登場してもらいましょう! 新潟からお越しの、天才ワンワン、ハナちゃんです!」

アスカ「ん~?」

シンジ「前に僕に、目先しか考えてないって言ったの覚えてる?」

アスカ「あぁ? あったよーな、なかったような」

シンジ「覚えてなくてもいいんだけど、僕は、どうしたらいいのかな?」

アスカ「はぁ、また病気が発症したの?」

シンジ「病気って……」

アスカ「今の時点で目先だけじゃない。人に聞く前に自分で考えようとした?」

シンジ「考えたよ。考えたけどわからないんだ」

アスカ「そうやってつまずくとすぐ他人の力に頼ろうとする」

シンジ「……」

アスカ「なにを考えたのよ? 具体的に! 言ってみなさい!」

シンジ「トウジ、知ってるだろ? 妹さんが僕のせいで怪我したから父さんに転院を頼みに行ったんだ」

アスカ「それでぇ?」ジトー

シンジ「そしたら、父さんは、僕がエヴァに乗り続ける限り、怪我人はでるって。なにをしているのか、よく考えろって言うんだ」

アスカ「はぁ」

シンジ「あ、僕が、エヴァに乗るならいいかって聞いたからなんだけど……」

アスカ「バッカみたい」

シンジ「そ、そうかな」

アスカ「なんでそんなこともわからないのよ」

シンジ「えっ?」

アスカ「あんた、碇司令が[ピーーー]って対価を要求してきたらどうするつもりだったの?」

シンジ「そ、そんなの、できるわけ」

アスカ「そうよね。じゃあなんでいちいち真に受けて返すわけ?」

シンジ「ど、どういう……?」

アスカ「ホントにバカね……。いい? 碇司令が考えろっていうのはね、なにかを犠牲に差し出せっていうものじゃないわ」

シンジ「そうなの?」

アスカ「他には? なにか言われてない?」

シンジ「えっと、なんだったかな。責任をもたないなら、帰れとか、あとは……」

アスカ「そこね。あんたさぁ、自分では責任持ってるつもりかもしれないけど、全部丸投げしてんのよ」

シンジ「う、うん」

アスカ「怪我人にしてもそうだし、面倒についてもそう。一人を助ける為に何人が動くか考えないのぉ?」

シンジ「うーん」

アスカ「権力はないよりはあったら手段が増える。それは力だし、お金も付加価値。だけど、それで不幸になるかもしれない人がいるってことよ」

シンジ「ど、どうして不幸になるのさ」

アスカ「急な仕事が入って、娘の誕生日に帰れない人がいるのかもしれない。他ならないあんたの頼みのせいで」

シンジ「……」

アスカ「その子に、あんたはなんて謝るのよ? 僕は友達の妹を助ける為にって言い訳すんの? 大層な理由よね。我慢して、許してくれるかもしれない、だけど、あんた、それでいいの?」

シンジ「だけど、その人にとってはそれが仕事で」

アスカ「ふん。ラチがあかない」

シンジ「うぅ……」

アスカ「あぁん、もうっ! よーするに! 信念を持てって話よ! 自分で決めた結果に! 悪くても良くても受け入れる覚悟が、あんたにはあったの⁉︎ 本気ってそんなもん⁉︎」

シンジ「……」

アスカ「ぐじぐじ悩んでるのがなかった証拠でしょ⁉︎ 一度頼みを蹴られたからなんだってのよ。ダメなら相手が折れるまで何度でも頼めばいいじゃない」

シンジ「……」

アスカ「どうせ、一時のテンションに身をまかせたとかなんじゃないの? ガキにありがちな話ね」

シンジ「そうか、だから父さんは僕に念をおして聞いてきたのか……」

アスカ「やっとわかったの?」

シンジ「うん、僕はやっばりバカだね」

アスカ「またすぐそうやって自虐に走る」

シンジ「だけど、アスカに聞いてよかった。ありがとう」

アスカ「ま……あんたにしちゃ、悪くない選択だったわね」

シンジ「僕はまだまだ子供で、すぐには大人になれない」

アスカ「……」

シンジ「階段を一段目から十段目にはいけないように、すぐに結果なんてでないんだね」

アスカ「このあたくし様は凡人とは違ってすっ飛ばしてきたけど」

シンジ「アスカはそのかわりに、努力をしてきたんだと思う。だけど、僕は何もしてこなかった。いつでもできたのにしなかった。だから今という結果があるんだ」

アスカ「少しはわかってきたみたいね」

シンジ「トウジの妹にしても、なんとかしてみせるって根拠のない約束をしてしまった。僕に、そう言い切れるはずがないのに」

アスカ「言い切ってもいい。それを必ず達成するなら」

シンジ「うん」

アスカ「あんたは、ちゃんと約束を守れる男になりなさいよ」

シンジ「守ってみせるよ……! 必ず! 僕、ちょっと出かけてくるから!」

アスカ「えぇ? 晩ご飯はぁ⁉︎」

シンジ「冷蔵庫にあるタッパーに入ってるひよ!」タタタッ

アスカ「いっちゃった……。あいつどこに行ったんだろ。ダイヤ改正してるから終電なくなってるのに。バカを通り越して大バカね」

ペンペン「クゥゥゥ~」

アスカ「お腹すいちゃったわね、ペンペン。タッパーの中身はっと……」ガチャ

ペンペン「クエ~ッ! クエッ!」

アスカ「ロールキャベツか。チンして食べましょ」

ペンペン「クエッ!」

アスカ「不器用だけど、マシになってきてるのかな」

ペンペン「クエ?」

アスカ「大人の男性もいいけど、育てるってのもありかもしれないわね。どう思う? ペンペン」

ペンペン「クエッ! クェクァッ!」 パタパタ

アスカ「足りない部分は補ってやればいいわけだし。……うーん……はっ⁉︎ な、なに考えてるの⁉︎ しっかりしなきゃ! アスカ!」

【ネルフ本部 初号機ケイジ】

ゲンドウ「(ユイ……)」

リツコ「碇司令、こちらにいらっしゃったのですか」

ゲンドウ「君か」

リツコ「本日は泊まりですか?」

ゲンドウ「あぁ」

リツコ「私もです」

ゲンドウ「まだ終電はあるだろう」

リツコ「地下拡張工事の為、ダイヤの改定が行われています。二時間前に運休となっておりますわ」

ゲンドウ「そうか」

リツコ「近くのラウンジでお酒でもいかがですか?」

ゲンドウ「いや」

シンジ「はぁっ……はぁっ……」

リツコ「シンジくん? あなた、まだ帰ってなかったの?」

シンジ「父さんっ!!」キッ

ゲンドウ「……」

シンジ「トウジの妹を! 転院させてやってくださいっ!」

ゲンドウ「なぜだ?」

シンジ「僕がそうしてほしいんだ! 理由なんてないよ!」

ゲンドウ「考えたのか、短い時間でだせる程度のものか」

シンジ「そうじゃない! だって、僕にはなにもないから!」

ゲンドウ「……」

シンジ「僕にはこうするしかないんだ! 何度ダメと言われても諦めずにお願いするしか!」

リツコ「この子、なにを言ってるの?」

シンジ「父さんは僕に考えろと言った! だけど、僕はトウジに約束したんだ! なんとかしてみせるって!」スッ

リツコ「無様ね。立ち上がりなさい、シンジくん。土下座なんて不恰好なまねを中学生が――」 スッ

シンジ「離して! お願いだよ、僕はこれぐらいしかないんだ。父さんのように権力があるわけでも、お金があるわけでも、人脈があるわけでもない」

ゲンドウ「……」

シンジ「でも、僕は! 願いを叶えるためにあがいてみせる!」ガシッ

リツコ「シンジくん、いい加減にしなさい。碇司令の足を離すのよ」 グイッ

シンジ「お願いします。父さん、今はこれが僕にできる精一杯なんだ。拝み倒しでもなんでもいい、それしかできないのなら、格好悪くても」

ゲンドウ「シンジ」

シンジ「……」

ゲンドウ「転院したとしても回復しなかったらどうするのだ?」

シンジ「それでも、なにもしないよりはいいっ!」

ゲンドウ「お前が勉強し、救おうという気持ちがあるか? 諦めなければいけない機会は必ず訪れる」

シンジ「なにかをやらなくちゃわからない! そうなる時もあるかもしれない! 怪我人だって、これからも……」

ゲンドウ「そうだ。お前が乗り続ける限り、大なり小なり、犠牲はつきものだからな」

シンジ「守れた人達だっていたんだ!」

ゲンドウ「全員は無理だ。どうやって選び、切り捨てる?」

シンジ「そ、それは……」

冬月「碇、それぐらいでいいだろう」 コツコツ

リツコ「ふ、副司令」

冬月「若人とは詰めが甘いものだ」

ゲンドウ「冬月、口を挟むな」

冬月「子育てにハリきりすぎだ。メリハリをつけんと、潰れてしまうぞ」

ゲンドウ「シンジ」

シンジ「はい」

ゲンドウ「お前が手続きをしろ。わからなくても解決する方法を見つけるのだ。赤木博士」

リツコ「は、はい」

ゲンドウ「全職員に通達。サードチルドレンを現時点より部外者として扱え。いかなる時もだ」

リツコ「しょ、承知いたしました」

ゲンドウ「葛城一尉にも連絡して、同居を解消。身の回りの世話は、全て、自分でやらせるのだ」

冬月「おい、碇」

シンジ「いいんです。それで転院を認めてくれるんだね?」

ゲンドウ「ああ」

シンジ「だったら、僕はそれでいい」

ゲンドウ「口だけならなんとでも言える。お前が挫けないか、見せてみろ」

シンジ「わかったよ。それが、父さんの望みなら」

ゲンドウ「一区切りの結果に過ぎない。お前が選び、お前が行動したせいでこうなったのだ。自分で選んだというのを忘れてはならない。いかなる結果が待ち受けようと、悔いは残すな、胸を張れ。自分自身に、言い訳はするなよ」

シンジ「……っ!」ギュウ

【ネルフ本部 ラボ】

ミサト「マジに言ってんの?」

リツコ「ええ。これがシンジくんの支給される生活費」ペラ

ミサト「……ちょっとこれ、十万ぽっち? 家賃を含めたらギリギリの生活じゃない! ワンルームに住まわせる気⁉︎」

リツコ「碇司令が直々にお決めになったわ」

ミサト「厳しすぎるわ! 私が直訴します!」

リツコ「無駄よ」

ミサト「シンジくんはまだ中学生なのよ⁉︎ こんなはした金でどうやって生活しろって! エヴァに支障をきたすかもしれない!」

リツコ「そうなったら、どうなるのかしらね」

ミサト「情がないからってあんまりよ! やりすぎだわ!」

リツコ「そうは見えなかったけど」

ミサト「え……? というか、なんであんた、むくれてんの?」

リツコ「なんでもないわ」

ミサト「とにかく、碇司令に話をしないと!」

リツコ「やめなさい。左遷させられるわよ」

ミサト「どうしてよ! シンジくん、なにもしてないわよ⁉︎」

リツコ「シンジくんが望んだのだから、あなたも従いなさい」

ミサト「はぁ? シンジくんがぁ?」

加持「女が男のやることにいちいち口出しするのはご法度だぞ」トン

ミサト「チッ、あんた、こんなところでブラついてて仕事はどうしたのよ、仕事は」

加持「葛城に言われるとは心外だな、初号機ケイジで面白いものを見かけたんでね。リッちゃん、コーヒーもらうよ」

リツコ「ぬるいわよ?」

加持「かまわない」

ミサト「わたしはねぇ! シンジくんを心配して!」

加持「余計なお節介だろう、なぜ、そこまでシンジくん気にかけるんだ」

ミサト「気にならないわけがないでしょ。あの子、まだ中学生なのよ。使徒と戦うだけでも重荷なのに」

加持「いいんじゃないか? それがシンジくんの意思なら」

ミサト「純粋すぎるのよ。まわりに利用されるわ」

加持「それも勉強さ」

ミサト「あんたねぇっ! そうなってからじゃ遅いのよ⁉︎」

加持「心配してるのは、エヴァに乗れなくなるからか? それともシンジくん自身の?」

ミサト「両方よ!」

加持「シンジ君は今、現実と歩きだそうとしている。このままじゃ弱すぎるからな。向き合う準備をしている段階なのさ」

ミサト「わかったような顔しちゃって」

加持「蝶は芋虫からサナギへ、そして羽ばたいていく。人間も成長は一緒さ。いずれ通る道だ」

ミサト「潰れるわよ、シンジくん」

加持「セカンドインパクトを経験した俺たちは、地獄を見た。それに比べれば、どんな環境でも恵まれてるよ」

ミサト「価値観が違うの!」バンッ

加持「……」

ミサト「今の子供たちはみんな、セカンドインパクトを教科書でしか知らない! シンジくんたちはその変わりはじめた世代なのよ!」

加持「時代が変わっても、与えられた環境でしか生きていけないのはみんな同じだ。子は親を選べないのと同じでね」

ミサト「私は納得がいかない! 生活にだって、すぐに行き詰まるわよ!」

加持「切り詰めるか、新聞配達なり手段はあるぞぉ? 中学生でも事情を話せば雇ってくれるしな」

ミサト「パイロットなのよ⁉︎ 人類を守るかたわらで、そんなことさせるの⁉︎」

加持「しちゃいけないって決まりはないだろう?」

ミサト「もういい。あんたと話してもストレスがたまるだけだわ!」

リツコ「あなた達が子育てしているわけではないのよ、夫婦喧嘩ならよそでやってくれない?」

ミサト「ふ、夫婦って、そんなつもりじゃ!」

加持「俺も心配してるのは一緒さ。どことなく弟に似てるからな」

ミサト「……?」

加持「それじゃ、葛城のマンションに行きますか」

ミサト「なんでよ!」

加持「アスカにも話してておきたいんでね」

ミサト「アスカに?」

リツコ「私はいなくなってくれるならなんでもいいわ」

【ミサト宅 リビング】

ミサト「アスカ、ただいま」

アスカ「あっ! 加持さぁ~んっ!」 ダダダッ

加持「よう」

アスカ「私に会いに来てくれたのね! 嬉しいっ!」 ギュウ

加持「元気にしてたか?」

アスカ「も~! 日本に来てから全然顔見せてくれないんだもの!」

加持「悪い。仕事が立てこんでいてな」

アスカ「私の為に時間を作ってくれなきゃや~よ」

加持「シンジくんとうまくやってるそうじゃないか」

アスカ「うげっ、バカシンジ?」

ミサト「シンジくん、ここから出てくのが決定したわ」

アスカ「マジ……?」

ミサト「マジよ。友達の妹を転院させる交換条件だそうよ」

アスカ「え? だって、さっきの、私のせい?」

加持「なにかあったのか?」

アスカ「べ、べつに!」プイッ

ミサト「明日には全職員に通達されるわ。碇司令の発令は絶対遵守、組織である以上、規則には逆らえない」

アスカ「なにやってるのよ……! あのバカっ!」

ミサト「アスカ、なにか訳知りみたいね」

アスカ「正直に言うと少しね……それで、どこに住むかもう決まったの?」

ミサト「三日の猶予を与えられたわ。それまではネルフで寝泊まりするようになってる」

アスカ「どこに?」

ミサト「シンジ君が誘拐された時にあなた達も寝泊まりしたコンテナよ」

アスカ「エヴァのシンクロはどうするの?」

ミサト「通常通り、行ってもらうわ。当人も了承済みの決定よ」

アスカ「……」

ミサト「はぁ……」

加持「一人暮らしをするから、寂しくなるな」

アスカ「平気よ。むしろせーせーするわ」

加持「いなくなってはじめてわかることもあるさ」

アスカ「そんなのわからなくていい!」

加持「アスカは今回のシンジくんの判断をどう思う?」

アスカ「まぁ、バカはバカなりに根性見せたって感じ。ただ、ここまでするとは思ってなかった。他人の面倒なんてほっとけばいいのに」

加持「だが、シンジくんはそれを選ばなかった。立派じゃないか」

アスカ「ふん。どうせ三日坊主でしょ」

加持「みんなが無理だと、厳しいと言うが、シンジくんは挑戦しようとしている。彼は歩き出したんだよ」

アスカ「私だって、そんなのやれと言われればできるわよ」

加持「アスカは大学に飛び級で合格し、卒業してるしな。努力を継続させる辛さを知っている。しかし、シンジくんは今なのさ」

アスカ「……」

加持「誰しもに最初がある。アスカが決意した日を思い出してみろ。その時と同じ気持ちでシンジくんが立ち上がったとしたら……」

アスカ「まだなにもわからないわ」

【第三新東京都市立第壱中学校 昼休み】

シンジ「トウジ」

トウジ「おう、昼休みから出勤か。ネルフの用事やったんか?」

シンジ「今朝は、転院に必要な手続きの詳細を聞きに付属病院に行ってたんだ」

トウジ「病院て……」

シンジ「父さんに頼んだら、転院が認められたんだ。サクラちゃんが治るかもしれないんだ!」

トウジ「やっぱり、そうなったか。サクラに会わせたのは失敗やったのぉ」

シンジ「え?」

トウジ「話はありがたい。やけどな、頼んでほしいなんて、ワシがひとことでも言うたか?」

シンジ「い、いや、でも」

トウジ「こうなると思うたから会わせたくなかったんや。ワシがお前がきたくても断るというたのは」

シンジ「治るかもしれないんだよ?」

トウジ「人間ってのは複雑やな。ワシはサクラを心配しとる。せやけど、お前も心配や」

シンジ「僕はいいんだ」

トウジ「治療費は、ネルフが負担してくれるんか?」

シンジ「そうだよ、なにも心配しなくていい」

トウジ「なぜ、ワシに一言、聞いてくれへんかったや」

シンジ「それは、僕のせいだから」

トウジ「お前がやっとるんは押しつけや。どうにもならんと判断したらワシから相談する」

シンジ「ご、ごめん、だけど……!」

トウジ「ワシがお前に感謝の気持ちがなくても、ええんか?」

シンジ「いいよ、考えが足りなかったのは僕が悪い。トウジの気持ちを」

トウジ「いや、ええよ。転院させてもらうわ」

シンジ「よ、よかった! 転院には紹介状が必要で!」

トウジ「それぐらいワシも知っとるわ。必要な手続きは全て調べ終わっとるからの。万が一、転院となった時の為に」

シンジ「そっか。転院させるのは、考えたりするよね」

トウジ「必要な書類は近日中に渡す。それでええか?」

シンジ「うん、受け取ったらすぐに父さんに話て、金銭的な詰めにはいるよ」

トウジ「わかった……。シンジは先に教室に戻っておいてくれ。ワシは少し、風に当たって戻る」

アスカ「鈴原、ちょっと待ちなさい。あんた、打算したわね……」

トウジ「……?」

アスカ「こうなるのがわかってて、シンジを妹に会わせたんでしょ⁉︎」

シンジ「アスカ?」

アスカ「転院させるために! あんたは言わずとも最初からシンジに頼んでたのよ! 妹の状態を見せつけることで!」

トウジ「……」キッ

アスカ「シンジ。あんた、利用されてんのよ?」

シンジ「やめてよ、トウジがそんな……」

アスカ「なんでシンジに会わせたのよ!」

トウジ「お前は、シンジが心配なんやな」

アスカ「話をすり替えないで!」 バンッ

トウジ「妹が会いたがったからや」

アスカ「シンジがこうなるとわかってて、妹の頼みを断らなかったのは、そういうことでしょ⁉︎」

ケンスケ「(僕に会わせなかったのは、そういう理由か)」

トウジ「せやったら、なんや! こうでもしない限り、どうしようもなかったんや! シンジが自分で決めた選択や! ワシたちを見捨てるのもできた!」ガンッ

アスカ「ようやく本音を言ったわね。だったら、シンジに最初からそうお願いしなさいよ。あんた達、友達でしょ? 利用するなんて」

シンジ「いいんだ。治るなら」

アスカ「ばっ、バカァ⁉︎ あんた、今の話聞いてた⁉︎ こいつは最初からそのつもりで会わせたのよ⁉︎ それなのに、えらっそーに」

トウジ「う、いや、ワシは」

アスカ「怪我させたのをまだ根に持ってるんじゃないの⁉︎ 心のどこかで!」

トウジ「ワシはシンジを友達と思っとる! せやけど! サクラを救うにはこうするしか!」

アスカ「昨日は煽って言ったけど、まだ中学生なのよ? 身分証だって社会的に認められてない。こいつの魂胆は今わかったでしょ⁉︎」

シンジ「トウジにはトウジの事情があったんだ。僕が怪我をさせたし、それに、やると決めた。最後までやってみせる。トウジとした約束だけど、父さんとの約束でもあるから」

アスカ「根性は認めてあげる、今回は逃げても責めないから撤回しなさいよ」

トウジ「シンジは、お偉いさんの息子なんやし、頼めば、それぐらい……」

アスカ「たしかにナナヒカリだけど! すんなり通ると思う⁉︎」

シンジ「もういいんだ、アスカ」

アスカ「くっ! この私が心配してやってんのよ⁉︎」

シンジ「ありがとう、アスカに助けてもらってばかりで。だけど、やらせてほしいんだ」

アスカ「好きにすれば⁉︎ もう知らないっ!」

トウジ「シンジ、お前……」

シンジ「なんでもない。気にしなくていいよ」

トウジ「あいつの取り乱し方はそんなんやなかったやろ。心配せなあかんようなのがあったんちゃうんか⁉︎」グイッ

ケンスケ「話は聞かせてもらったよ」

シンジ「ケンスケ……」

ケンスケ「トウジ、僕に謝らなきゃいけないんしゃないか?」

トウジ「今はシンジの話を……!」

ケンスケ「もちろん碇にもだ! なんで正直に話さなかったんだよ! 碇だって、僕だって、事情を知ってれば力になろうとしたのに! 僕にはコネがないからか⁉︎」

トウジ「うっ、そ、それは」

ケンスケ「いいか、順番を間違えちゃいけないんだ! 僕たちは友達だろう、だったらまずは誠意を見せなくちゃ!」

トウジ「……」

ケンスケ「トウジッ! なんのために碇に殴らせたんだよ!」グイッ

トウジ「……離せ」

ケンスケ「離さないね! 友達が間違った道に進んだら正さなきゃならない! 碇がどういう戦いしてるか僕たちは見たからだろ⁉︎」

トウジ「ぐっ……」

シンジ「ケンスケ。もう、その辺で」

ケンスケ「碇、そんなんじゃだめだよ。僕たちは他人同士だ。ぶつかるのは当たり前なんだ! 喧嘩したっていい! 友達を続けたいなら、きっちり清算しないと!」

シンジ「……」

ケンスケ「どうした⁉︎ トウジ、殴りたいなら殴ってみろよ⁉︎」

トウジ「わかった。わかったから、もう離してくれ」

ケンスケ「……」スッ

トウジ「すまんな、シンジ。ワシは卑怯モンや。惣流が言うたのは当たっとる」

シンジ「いいよ」

トウジ「自分に言い訳をしたんや、簡単に許したらあかん。心のどこかで、許してくれる、悪いのはお前やって、そう思っとった」

シンジ「……」

トウジ「怪我をさせたのはとっくにチャラになっとったはずやのに、痛みに耐えてる妹を見るたんびに、なんでこんな目にあわなきゃあかんのかって、ワシは、ワシは……!」ガク

シンジ「怪我が治るまで、そう思うのも仕方ないよ」

ケンスケ「碇、それでいいのか?」

シンジ「うん」

ケンスケ「いいやつなんだな、碇は」

トウジ「ケンスケも、黙っとってすまん」

ケンスケ「ロリコン扱いしたのもだろ!」

トウジ「そっちも気にしとったんかいな」

ケンスケ「こいつぅ……!」

トウジ「すまん」

ケンスケ「まぁ、僕は碇に比べたら、なんてことないように思えるけどさぁ」

トウジ「それで、シンジ。お前、なんかあったんか?」

シンジ「……なにも、ないよ」

トウジ「ほんまか?」

シンジ「いやだな。なにもないのに、なにかあったなんか言えないじゃないか。僕にウソをつけっていうの?」

ケンスケ「そうだな、ウソをついたってすぐにわかるんだぞ?」

シンジ「や、やめてよ。二人とも。本当になにもないよ、教室に戻ろう。そろそろ昼休み終わるから」

【放課後 第三新東京都市 繁華街】

シンジ「うーん、やっぱりどこを選んでも自転車は必要になるな」

加持「本を読みながら歩くと危ないぞ?」

シンジ「す、すみませ……加持さん? 外で会うのめずらしいですね」

加持「奇遇だな。手に持ってるのは賃貸雑誌か?」

シンジ「そうです、けど」

加持「そこのベンチで少し座ってかないか? コーヒーぐらいは奢るよ」

シンジ「……僕、男ですよ?」

加持「ぶっ、な、なんだぁ?」

シンジ「加持さんって、女の人じゃないと奢らないんじゃないんですか?」

加持「お、おいおい、誰だ、そんなホラ話したのは」

シンジ「ミサトさん、ですけど」

加持「あいつもよからぬことしか吹きこんでないな。俺は、女相手だけじゃないよ」

シンジ「そうなんですか。それじゃ遠慮なく」テクテク

加持「葛城から聞いたよ。一人暮らしするんだって?」ガコン

シンジ「(自転車が1万円ぐらいで、引っ越し費用は負担してもらえるだろうから、これは必要ないと)……え、あ、はい」

加持「ふっ、計算でもしてるのか? 昔を思い出すな」

シンジ「昔?」

加持「俺も、ちょうどシンジくんと同じ歳の頃、極貧生活の中で切り詰めた暮らしをしていてね。今とは違い、物資がなかったってのもあるんだが」

シンジ「家出でもしてたんですか?」

加持「そんななまっちょろいもんじゃない、帰る家がなかったのさ」

シンジ「帰る、家が?」

加持「セカンドインパクト。未曾有の大災害は、世界に大きな影響を与えた。気候の変動、生態系への影響。俺たち人間社会にもね」

シンジ「あ……」

加持「孤児だったのさ。俺は。とにかく毎日の生活が大変でね。守ってくれる人も、頼れる人もいなかった。俺は運悪く、特に治安の悪い地区にいてね」

シンジ「……」

加持「食料の不足。誰しもが誰かを疑い生きている。人間の汚いところを幾度となくみてきた」

シンジ「教科書でしか、知らないから」

加持「今のシンジくんなら、想像しようとするだろう。だから俺は話してるのさ」

シンジ「……」

加持「聞きたくないかもしれないが、俺からすれば君は恵まれている。生まれた時から人はみな平等ではないからね」

シンジ「加持さんがセカンドインパクトを体験したのっていくつぐらいの時なんですか?」

加持「まだ小さかったよ」

シンジ「どうやって生活を?」

加持「盗みさ。軽蔑するかい?」

シンジ「いえ、そんな。だけど、想像がつかなくて。今って、復興してるから」

加持「国内はだいぶな。しかし、発展途上国はいまだ復興には程遠いのが現実だ。紛争はいつの時代でも行われている。気にしないものだろう? 外に目を向けない限りは」

シンジ「そう、かな」

加持「もっと、シンジくんには世界を見てもらいたいがな。それも難しい」

シンジ「世界、ですか。僕は自分の生活で手一杯ですよ」

加持「実際に見るのと、想像は違うぞぉ」

シンジ「毎日盗んでたんですか?」

加持「孤児同士で集まって生活をしていたからな。食料はいつもかかえている問題だった」

シンジ「……」

加持「ある時、俺が失敗してね。 その相手がヤバかった。拷問をね」

シンジ「え……」

加持「こわかった。でも、相手は許しちゃくれない。残りの孤児の居場所を聞かれて、どうしたと思う?」

シンジ「わ、わかりません」

加持「俺は喋った。自分が助かりたい。その一心で」

シンジ「一緒に暮らしてた人達は……?」

加持「縄を解かれたあと、しばらくして、俺は、おそるおそる戻ったよ」

シンジ「……」

加持「みんな殺されてた。誰も生きちゃいなかったのさ」

シンジ「あ……」

加持「俺は自分を責めた。しかし、この世の中が悪いという考えもあった。セカンドインパクトを呪った」

シンジ「僕なら、立ち直れないだろうな」

加持「そうなってみなければなんとも言えないだろう。現実は理不尽で残酷な瞬間もある。運命、なんて一言では片付けられないほどにね」

シンジ「……」

加持「みんながそんな経験をするわけじゃないさ。今は世代も違う。シンジくんは、なにが起こっても、諦めないで前に進むんだ」

シンジ「はい」

加持「重い話をしてすまなかったね」

シンジ「いえ、そんな……」

加持「金がなくなったらパンの耳でもかじるといい。揚げたらうまいからな」

シンジ「そうですね、最初は出費も多いだろうし、そうします」

加持「ま、生きてりゃなんとかなるさ」ポン

シンジ「……はい」

【ネルフ本部 発令所】

マヤ「あの、先輩」

リツコ「どうしたの?」

マヤ「シンジくん、どう接したらいいでしょうか」

マコト「みんな困惑してますよ。突然、パイロット扱いするなだなんて」

リツコ「いつも通りでかまわないわ」

マヤ「でも、それじゃ、命令違反になるんじゃ」

シゲル「そうスよ。碇司令にバレたらどうするんすか」

リツコ「私はあの子に仕事以上の感情はないもの。あなた達はあるの?」

マヤ「え! いや、そういうわけじゃ……」

リツコ「特別優しくしていたわけでもないし」

マヤ「先輩は、フラットなんですね。どこまでも科学者で尊敬します。私は、どうしても感情的に考えちゃって」

マコト「でも、今まで通りって言われても」

リツコ「部外者として扱うといってもエヴァパイロットとしての業務はいつも通りなのよ。普通にしなさい」

シゲル「うっす」

マヤ「はい」

リツコ「ただし、馴れ合いすぎないようにね。子供が頑張っていたら褒めてあげたり、気遣ってあげたくなるのをやめればいいだけ。仲間意識は捨てて、派遣社員相手だと思えば?」

マコト「じゃあ、僕たちは正社員ですか? クビを切られるのは、こっちが先な気がするけどなぁ」

リツコ「個の価値としてはあなた達が下なのは間違いないわね。くだらない話をする暇があったら、手を動かしなさい」

マヤ「わかり、ました」

ミサト「まめなんでこう、スカーッとしたいときに使徒は来ないのよ! こんなにも待ち遠しいなんて!」 ズンズン

リツコ「更年期障害にはまだはやいんじゃなくて? それとも欲求不満?」

ミサト「うっさいわねぇ! リツコこそ、ラボに引きこもってないでなにしてんのよ!」

リツコ「MAGIの確認よ。ミサトも給料泥棒と言われない内に仕事をしたら?」

ミサト「わかってるってばぁ。ねぇ、シンジくん、やっぱり、うちで」

リツコ「しつこいわね。シンジくんに惚れてるの?」

ミサト「じょーだん言うんじゃないわよ! 私は家族として!」

リツコ「ごっこでしょ。ミサトのは。本物の親子の決定に他人が口をだすのは筋違いよ。シンジくんの為を思うのなら見守りなさい」

ミサト「親子って言えるぅ⁉︎」

リツコ「ミサト、これ以上の追求は、自分が納得したいだけと見なすわよ」

ミサト「はぁ、シンジくんは? もうコンテナ生活はじめてるのよね?」

リツコ「確認しに行ってきたら? 邪魔されるより、そうしてくれると助かるわ」

【ネルフ本部 コンテナ】

ミサト「シンジくーん? いる?」

シンジ「ミサトさん? どうぞ」

ミサト「では、失敬」 ガチャ

シンジ「どうしたんですか?」

ミサト「昨日の今日で話する機会がなかったから、どうしてるのかと思って。部屋は決まった?」

シンジ「いえ、まだ。条件を照らし合わせて煮詰めてる最中です」

ミサト「候補はあるの?」

シンジ「家賃との相談になるからまだ、なんとも言えないんですけど、その中でこれ」ペラ

ミサト「やっぱりワンルームね……内見はしたの?」

シンジ「内見?」

ミサト「実際に見て、確かめること。あなたはまだ一人暮らしをした経験がないからわからないでしょうけど、近隣の様子や、汚さとか立て付けとか、あと何畳という記載に至るまで見るまでわからない部分が多いのよ」

シンジ「なるほど……」

ミサト「それにここ、学校まで電車で通うの?」

シンジ「それなら自転車で」

ミサト「シンジくん、頭で考えるよりも実際に行うのは大変よ? 毎日の話だってほんっとーにわかってる?」

シンジ「はい、わかってるつもりですけど。やらなきゃわからないと思います」

ミサト「あなたが望むのなら、また一緒に暮らすのもできるのよ?」

シンジ「いえ、父さんの期待を裏切りますから」

ミサト「どこに期待があるっていうの⁉︎ こんなの、ただの横暴じゃない!」

シンジ「僕は一度、父さんから逃げました。今回も逃げ出したら、次はいつ向き合おうとしてくれるか」

ミサト「私は、あなたの為を思って!」

シンジ「ありがとうございます。でも、決めたんです。僕は、やらなくちゃいけない」

ミサト「辛いわよ?」

シンジ「僕も、そして、父さんも不器用だと思うんです。皮肉、ですよね。似ているからわかるんです。辛い選び方をしているのかもしれません。だけど、手探りでも前に進みます」

ミサト「バカ……」

シンジ「すみません」

ミサト「男はなんでも自分でやらなきゃ気が済まないのね」

シンジ「ミサトさん……?」

ミサト「わかったわ。なにも言わない。ただし、最後までやりとげるのよ。いい?」

シンジ「はい、わかりました」

【ミサト宅 リビング】

アスカ「スーパーの惣菜ぃ?」

ミサト「やっぱ、だめ?」

アスカ「はぁ、まだいいけどさぁ、毎日じゃいつか飽きるわよ? それに、食費だってかさむわ」

ミサト「うっ……今月はカードの支払いが」

アスカ「ミサトが外飲みばかりしてるからでしょ。居酒屋とかバーとか」

ミサト「うぅぅ。だってぇ、お酒ぐらいいいじゃなぁ~い」

アスカ「よくアル中にならないわよね」

ミサト「まぁ、肝臓は丈夫だし♪」

アスカ「ほかには……? なんかないの?」ガサガサ

ミサト「枝豆とジャーキーでしょ。あとチーズと。するめと……」

アスカ「いい加減にしてよね! 全部ツマミじゃない! しかもなにこれぇ? ビール、ビール、ビール、チューハイ」トントントントン

ミサト「アスカは唐翌揚げが……」

アスカ「それもツマミ! 窓から投げ捨ててやる!」

ミサト「ひぃぃぃっ⁉︎ や、やめてぇっ!」

アスカ「くっ! 離しなさいよ! 往生際がわるいんだからぁっ!」

ミサト「ら、ラーメンで手を打たない⁉︎」

アスカ「太るだけよ! 塩分高いんだからね!」

ミサト「シメにはラーメンって……」

アスカ「そこをどきなさい。全部捨ててだめな大人を躾てあげるわ」

ミサト「ストップ! わかった! 出前とりましょう! ねっ⁉︎」

アスカ「今日はそれでよくても今後どうするつもりなのよ……」

ミサト「とほほ。シンちゃん、帰ってきて……」

アスカ「まさかこんな形でシンジがいなくなったのが痛手とはね」

ミサト「アスカもやっぱりシンジくん、いた方がいいわよね?」

アスカ「どういう意味?」ジトー

ミサト「アスカが希望するなら、碇司令に……」

アスカ「やめてよね! あんな頑固モン知らない! せっかく、このあたしが」ブツブツ

ミサト「……? アスカ、なにかあったの?」

アスカ「あんまりにもバカバカしくて嫌気がさしただけ。はぁ、加持さんこないかなぁ」

ミサト「アスカは結婚するとしても、あんなの選んじゃだめよ。そうねぇ……シンジくんみたいなタイプが合ってると思う」

アスカ「シンジがぁ? ぜんっぜん、実感わかないんですケドぉ?」

ミサト「たしかに、シンちゃんは付き合うと考えたら、面白味にかけるわね。一緒にいて楽しいというより、落ち着く感じだもの」

アスカ「だから?」

ミサト「付き合うのと結婚は別って話よ。シンちゃんは家庭的だし、いい夫になるんじゃないかしら」

アスカ「はぁ、あのねぇ、私まだ中学生なのよ?」

ミサト「シンジくんだって、まだ若いんだし。これから化けるかもしれないじゃない」

アスカ「私はいいの! ミサトこそ、加持さんは?」

ミサト「まぁ、大人には色々あるのよ」

アスカ「ふん、言い訳ね。歳を重ねてるだけじゃない」

ミサト「うぐっ! い、痛いとこつくわね」

アスカ「料理もできないのがその証拠よ。ぐーたら酒飲み!」

ミサト「す、すみませぇん」

【ネルフ本部 ラボ】

レイ「あの、赤木博士」

リツコ「なに?」

レイ「碇くんが、一人暮らしするって本当ですか?」

リツコ「ええ」

レイ「私が住んでるマンションなら空きが」

リツコ「却下」

レイ「……」

リツコ「碇司令がお許しにならないわ。余計な口出しはしないで、用件が済んだなら、下がっていいわよ」

レイ「碇くんは、どうして引っ越しようと思ったんですか?」

リツコ「シンジくんは、意地を張らず、人の間で流れるように生きようとする他人指向型の子よ。ことなかれ主義とも言うわね。人の指図には逆らわず、波風を立たせるのを嫌う」

レイ「……」

リツコ「ヒトは変わっていくものよ。どこまでいっても自分という概念に変わりはないけれど、それぞれが持つイメージを覆せるかどうか。その一点に集約される」

レイ「碇くんは、変わろうとしてるんですか?」

リツコ「シンジくんは、問題を放置する消極的な姿勢をやめて、解決しようと試みた。それを変化というのならそうなるわね」

レイ「……」

リツコ「どちらにしろ、あなたには興味のない話でしょ?」

レイ「はい」

リツコ「私から見れば、碇司令の変化が気になるけど」

レイ「碇司令、ですか?」

リツコ「言ってもしょうがない……いえ、レイなら誰かに喋る心配は……いいかもしれない。レイなら感情という概念がないわよね」

レイ「……」

リツコ「変、なのよねぇ。以前の碇司令ならば、シンジくんと話をする機会すら設けなかったはずよ。なのに、シンジくんが話をしたいと言えば応えている」

レイ「碇司令が……」

リツコ「今まで徹底して無関心、放任主義を貫いてきていた……今になって、導いているとすら思える節があるわ。親子の関係が似合わないイメージだからこそ、強烈な違和感がある」

レイ「……」

リツコ「副司令がなにか企んでいるのかしら」

レイ「……」

リツコ「条件付きとは言え、碇司令がシンジくんの頼みを聞くに値する価値はどこにもない。泣き落としが通用するような人ではないもの」

マヤ「先輩、はいってもいいですか?」コンコンッ

リツコ「どうぞ」

マヤ「失礼します。あ、レイもいたのね」

リツコ「なにか問題?」

マヤ「はい、第二技術課からパーソナルデータについて不備があるという指摘を受けまして」

リツコ「どの数値?」

マヤ「ここです。計算したみたところ、たしかに誤差がマイナス0.03ほど発生しています」

リツコ「通常ならばありえないわ。MAGIのシステムデータ更新は?」

マヤ「新しい更新プログラムを適用したばかりですが……バージョンが原因でしょうか」

リツコ「バグかもしれない。発令所に行って確かめてみましょう」

マヤ「今日も、残業、ですね」

リツコ「一通り目処がついたら帰れるようにしてあげるから」

マヤ「いえっ! 私、そんなつもりじゃ!」

リツコ「どのつもりでも構わないわ。行くわよ」コツコツ

【二日後 第三新東京都市第壱中学校 屋上】

シンジ「(今日がいよいよ期日だな。決めたアパートは、学校から13km……。自転車でどれくらい時間かかるんだろう)」

男子生徒A「お前か? ロボットのパイロットって」

シンジ「えっ?」

男子生徒A「お前だろ。ネルフだかなんだかしらねぇけど何様だよ?」

シンジ「えっと、誰?」

男子生徒A「うるせぇ。気にくわねぇんだよ、お前みたいな調子にのってるやつ」スッ

シンジ「ちょ、ちょっと待ってよ。僕がいったいなにしたって――」

男子生徒B「こいつに何かしたら、俺たちが……」

男子生徒A「あ? ビビってんのかよ?」

男子生徒B「ビビってねーよ⁉︎」

男子生徒A「度胸試しにちょうどいいじゃん。ロボットのパイロットをボコしたって言えば、ハクがつくし」

シンジ「な、なんだ?」

男子生徒A「ま、そういうわけだから、お前には踏み台になってもらう。覚悟しろよ、なっ!」ブン

シンジ「いつっ……!」 ズザザ

男子生徒A「へ、へへ。ほら見ろ! パイロットなんて言ってもたいしたことねぇじゃん!」

男子生徒B「お、おい。もうやめろって」

シンジ「……」キッ

ヒカリ「誰かいるの?」キィィ

男子生徒A&B「……っ⁉︎」

ヒカリ「なに? 碇くん? どうして倒れて……血がでてるじゃない⁉︎ あんた達、なにやってるのよ⁉︎」

シンジ「洞木さん?」

ヒカリ「……っ!」タタタッ

男子生徒A「な、なんだよ。邪魔するのか?」

ヒカリ「上級生ね! 先生に言いつけられたくなかったから、帰りなさいよ!」バッ

男子生徒B「やりすぎだって、なぁズラかろうぜ」

男子生徒A「ふ、ふん。先生に言うなよ!」タタタッ

ヒカリ「最低。なんでこんな……。碇くん、大丈夫?」スッ

シンジ「平気だよ。ちょっと殴られただけだから」

ヒカリ「殴られたって……保健室、行く?」

シンジ「いや、やめとく。そろそろネルフに行かなくちゃいけないし」

ヒカリ「どうして?」

シンジ「わからない。名前を聞く暇もなかったんだ」

ヒカリ「そんな……やっぱり、噂のせい」

シンジ「噂って?」

ヒカリ「碇くんがいなくなった時に、ネルフの人達が学校にきて、すごく騒がしかったの。だから、それでちょっとこわいねって。でも、三年生達は遊びが」

シンジ「そっか……さっき話してた度胸試しって」

ヒカリ「誰かに言ったほうがいいんじゃない? 」

シンジ「言っても、どうせなんともならないよ」

ヒカリ「そうなの? 碇くんならエヴァパイロットなんだし」

シンジ「僕がなんとかしなくちゃいけないんだと思う。自分でやりはじめてわかったんだ。僕はきっと、父さんに試されてる」

ヒカリ「試す……?」

シンジ「これまで自分の耳も目も塞いで生きてきた。だから辛くて僕がまた逃げださないか、父さんはきっと……洞木さんは、こわくないの?」

ヒカリ「私は、アスカとも友達だし。よくわからないから、軽々しくは言えないけど。孤立しちゃったら、かわいそうじゃない」

シンジ「僕たちは、何も危害をくわえるつもりはないよ」

ヒカリ「わかってる……。でも、力ってこわいの。それが権力でもなんでも。私達が、弱い人達が、危ないと思うものに近づかないようにしようって思うのは普通でしょ?」

シンジ「うん」

ヒカリ「きっと、こわがる必要ないんだと思う。けど、まわりがこわいって言ったら本当にこわいのかもって、流されてるのかな……ごめんね。こんな話、私達を守ってくれてるのに」

シンジ「僕もパイロットじゃなかったら、そうかもしれない。関わろうとはしないよ」

ヒカリ「アスカには、今の話、言わないで。友達でいたいの」

シンジ「わかった、約束するよ」

ヒカリ「えへへ、ありがとう。でも、その腫れた顔でネルフに行ったら、わかると思うよ?」

シンジ「あ、そうだね。でも、すぐにひくようなものじゃないし……」

ヒカリ「やっぱり、保健室に行こう? アイシングしてあげる。気休めでも腫れがおさまるかもしれないから」

シンジ「あ……ありがとう」

【ネルフ本部 作戦会議室】

アスカ「ぷっ、あっはっはっはっ! なぁ~によ、その顔ぉっ?」

シンジ「仕方ないだろ、階段で転んだんだから」

アスカ「く、くくっ。転んだって、あんた本当に間抜けね」

ミサト「アスカ、それぐらいにしときなさい」

レイ「作戦司令……。今日はなぜ招集を」

ミサト「みんなのシンクロ率がなかなか上がらないからヒアリングをね」

アスカ「私はトップでしょ! なんで私まで受けなきゃならないのよ!」

ミサト「言ったでしょ? 問題は順位ではなく、伸び代。アスカだって日本に来てから上昇が見受けられないけど」

アスカ「私はっ、まだ慣れてないからよ!」

ミサト「そう、それじゃ、いつまでに慣れるの?」

アスカ「そんなの、いつまでとか……」

ミサト「具体的に提示できなければ、甘えでしかないわ。もっとも提示するからには守ってもらいますけど」

アスカ「だったらもっとパイロットのケアをちゃんとしてよね! 満足に行き届いてるなんて一度も思ったことないわよ!」

ミサト「規定にのっとって必要な待遇は、すべて管理されています。今は使徒が来ていないから、対策が後手に回らないように話を聞く機会を設けているのよ」

レイ「私は、現状に不満はありません」

アスカ「またあんたはっ! いつもそうやって優等生ぶる!」

ミサト「レイ、環境と別に原因があると思い当たる点はある?」

レイ「いえ」

ミサト「アスカは?」

アスカ「私はもっと、最高のスタッフを揃えてほしい! そうしてくれるのなら、どこまでも高めてみせる!」

ミサト「考慮します。シンジくんは?」

シンジ「いえ、僕は、なにかあると言うわけじゃ」

ミサト「それは、あなたに上昇志向がないという考え?」

シンジ「いえ、そういうわけじゃ」

ミサト「この際だから言っておくわ。みんなよく聞きなさい」

シンジ&レイ&アスカ「……」

ミサト「あなた達はエヴァに乗るのが仕事ではないわ。使徒を倒す、ひとつの目的の為に、ネルフ全体が、いいえ、人類全体が協力しあっているの」

アスカ「わかってるわよ!」

ミサト「シンクロ率の上昇は作戦の成功率を高めるにも有効な手段のひとつよ。ここまでで満足なんて低い意識ではなく、しっかりと自覚を持ってテストにも取り組んで」

レイ「了解」

ミサト「シンジくん、少し話があるからついてきて。アスカとレイはお互いに問題点をだしあってみなさい」

アスカ「またシンジだけぇ?」

ミサト「住居の件を碇司令に報告しなくちゃいけないのよ」

シンジ「あ、わかりました」

ミサト「そんなに時間かからないと思うから。二人はまとめといてね」コツコツ ガチャン

アスカ「――ムカつくっ!」ガンッ

レイ「……」 チラ

アスカ「なぁ~にが人類全体よ。私達が最前線で戦わなきゃどうしようもないくせに!」

レイ「わめいたって何も変わらないわ」

アスカ「なんですって⁉︎」

レイ「あの場でそう発言すればよかった」

アスカ「言っても暖簾に腕押しでしょ。結局ねぇ、自分達の正当性を主張してそれで終わるのよ!」

レイ「エヴァに乗らなければいい」

アスカ「そんな話じゃないのよっ! 私はっ! 私は! やらなくちゃいけないんだから!」

レイ「そう」

アスカ「シンジばっかりずるいわよね。誰に殴られたか知らないけどさぁ」

レイ「え?」

アスカ「あんた、人形みたいなやつね。気がつかなかったの? 転んだってウソついてたけど、あれ。どう見てもそういう腫れ方よ」

レイ「……」

アスカ「ミサトが気がついてないはずない」

レイ「あなた、笑ってたわ」

アスカ「気にするのそこぉ? あたしは、あいつがウソつくんだから、合わせてやっただけよ」

レイ「合わせる……」

アスカ「かっこつけたいんじゃないの? 男ってのはそういうのあるみたいだし」

レイ「経験があるの?」

アスカ「な、ないけど! 雑誌で見たの! いいでしょ、別に!」プイッ

【ネルフ本部 執務室】

ミサト「失礼いたします」

冬月「……? サードチルドレンの顔の腫れはどうした。報告を」

ミサト「階段で転んだとの申告を受けております」

冬月「学校のかね?」

シンジ「はい」

冬月「この場では、虚偽申告をするなぞ許されん。パイロットの健康管理は葛城一尉の管理下にあるのだからな。管轄には、安全面も含まれている」

シンジ「……」ギュウ

冬月「まともな証言を得られないのであれば、葛城一尉にけじめをつけさせるだけだぞ」

シンジ「ミサトさんに……?」

ゲンドウ「作戦部長。中学生のお守りひとつできないのか」

ミサト「申し訳ありません」

シンジ「……! 父さんっ!」

ゲンドウ「いつ、どこで、どのように転んだか裏をとったのか」

シンジ「父さん、ミサトさんはなにも悪くないよ!」

ミサト「サードチルドレンの自主性に任せております」

ゲンドウ「嘘の申告を許したのか」

ミサト「問題になるようでしたら、改めて対処すべきかと」

冬月「タイミングが悪かったな。危機管理の問題なのだ、これは。また誘拐されるような事態に陥ったら、弁明の余地なし、すべて迅速かつ適切に処理してもらわんと困るよ。理解した上で発言しているのだろう?」

ミサト「はい」

ゲンドウ「二ヶ月の減給処分だ」

ミサト「はっ!」ビシッ

シンジ「そんな、ミサトさん、違うんだ、この腫れは」

ゲンドウ「次の報告を」

シンジ「僕の話を聞いてよ! ミサトさんが僕のせいで、そんな話……」

ミサト「サードチルドレンの住居についてご報告が」

シンジ「ミサトさんっ⁉︎」

ゲンドウ「聞こう」

ミサト「申告により、住所が決定いたしました。こちらがそのアパートになります」ペラ

冬月「安全とはもちろん言いがたいな」

ミサト「警護はいかがいたしますか?」

ゲンドウ「保安条例第十二項を適用させろ」

ミサト「厳重警護ですか?」

冬月「葛城一尉。復唱はしたまえ 」

ミサト「了解。保安条例第十二項を適用させ、出頭させます」

シンジ「くっ、なんなんだよっ! 僕にまかせるんじゃなかったの⁉︎」ギリッ

ゲンドウ「ご苦労だった。さがっていい」

ミサト「碇司令。ひとつだけ、質問をよろしいでしょうか?」

ゲンドウ「なんだ」

ミサト「シンジくんをどうなさりたいのですか?」

ゲンドウ「どうもしない。こいつの人生だ」

ミサト「エヴァに乗るのもですか⁉︎ 十四歳に背負わせるのは過酷すぎます!」

ゲンドウ「いまさらなにを言う。我々は子供に頼るしかない。パイロットは必要だ」

【ネルフ本部 エレベーター内】

シンジ「あの、ミサトさん。僕のせいで」

ミサト「黙って」

シンジ「でも……! 僕がウソの申告をしたのが原因でミサトさんが!」

ミサト「黙りなさい」

シンジ「……」ギュウ

ミサト「シンジくん。自分で決めるのは結構。でも、その判断が正しいものかどうか、もう一度考える必要があると思わない?」

シンジ「僕は、なんとか自分で解決しようと」

ミサト「碇司令に部外者と言われたから? あなたはパイロット、代わりのきかない者でもある」

シンジ「……」

ミサト「決断には責任がついてまわるの。シンジくんの責任ではないかもしれない。だけど、関わっている者達に影響する。パイロットは、そんなに軽い立場じゃないのよ」

シンジ「す、すみません」

ミサト「……にひひっ」ペチンッ

シンジ「い、痛っ!」

ミサト「ガキが気にしてんじゃないわよ。失敗はつきものなんだから。私がへこでると思う?」

シンジ「えっと」

ミサト「現場からの叩き上げはねぇ、こんなのしょっちゅうなんだから。毎日胃に穴があきそうになる中で戦ってるの。シンジくん達がエヴァに乗ってるように、私たちだって日常で自分の居場所を守るために、ね」

シンジ「……」

ミサト「全部を守るなんて考えるのやめちゃいなさい。まずはできることから、それが最初の一歩」

シンジ「はい」

ミサト「しっかし、減給はちょっち痛いわねぇ~」

シンジ「あの、僕で力になれるのなら、なんでも」

ミサト「ぷっ、だっはっはっ! シンジくんがぁ? ……あら、でも、そうねぇ」

シンジ「……?」

ミサト「シンちゃん、ウチに料理作りに来てくれない?」パチン

【ミサト宅 リビング】

シンジ「なにがあるんだろう」ガチャ

ミサト「買い足しはしてないけど、まだそんなに日数たってないから。腐ってないでしょ?」

シンジ「そうですね。お肉は冷凍していたのがあるし、野菜も少し痛んでるけど、うん、これなら食べられそうだ」

アスカ「うげっ、本当に大丈夫?」

シンジ「匂いを嗅げば大抵わかるよ。牛乳は、新しいね。トマトもあるし、これならホワイトソースが作れると思うよ」

ミサト「よかったわねぇ~、アスカ。シンジくんが作りにきてくれて」

アスカ「助かったのはミサトでしょ」

ミサト「お惣菜続けたかったの?」

アスカ「うっ」ヒク

シンジ「料理、覚えたらいいのに。トマトソースも作っておくよ。瓶にいれておくから。パスタにでもあえて食べたらいい」

アスカ「ふ、ふんっ。料理なんてあたしは嫌だからいいの」

シンジ「この家には必要じゃないか」

ミサト「シンジくーん、熱燗、もう一本、おねがぁ~い」プラプラ

シンジ「はい、エプロンはっと」

アスカ「あんたさ……」

シンジ「ん?」

アスカ「不安とかないの?」

シンジ「へ?」キョトン

アスカ「べ、別に。気になったわけじゃない。ただ、ぬくぬく育ったお坊ちゃんじゃない?」

シンジ「おぼっちゃ……て、そうでもないけど」

アスカ「まぁ、そりゃ誰だって生きてりゃなにかしらあるだろうけど、あたしに比べたらお坊ちゃんって話よ。なんたって、このあたしは天才とか神童とか言われてたんだし」

シンジ「そう、だね。アスカに比べたら」

アスカ「新しい目的を掲げてはじめる不安は私だからわかる。……本当は、泣きたいんじゃないの?」

ミサト「……」グビリ

シンジ「そんな、一人暮らしするだけだよ」

アスカ「鈴原は、まだ知らないの?」

シンジ「あぁ、うん。トウジには、言いいたくないんだ。言ったら、きっと心配するから」トントントン

アスカ「お人好しもいい加減にしなさいよ、あんたのやってるのははっきり言って偽善だわ、自分の為でしょ」

シンジ「うん、そうだよ」

アスカ「あんた、少し変わった」

シンジ「それは、アスカが僕を知らないからだよ。僕たちはパイロットっていう繋がりがあるけど、身の上話をほとんどしないからねぇ」

アスカ「当たり前ね。エヴァがなければ、あたしは日本にすら来てない、うぅん、きっとママの時に……」

ミサト「……」ピクッ

シンジ「アスカのお母さん?」

ミサト「そっか、シンちゃんは知らないんだっけ」

アスカ「ミサト」キッ

ミサト「はいはい」

シンジ「……? なんですか?」

アスカ「なんでもない! 料理まだぁ?」

シンジ「今作ってるよ」

ミサト「シンジくん」

シンジ「はい?」

ミサト「誰かを守るには、強くならなくちゃだめよ。今のシンジくんに求めるのは難しいかもしれない、強さってなにかわかる?」

アスカ「……」

シンジ「最近考えたというか、こういうことなのかなって思う時が多くて」

ミサト「話してみて」

シンジ「僕は、自分でいっぱいいっぱいだったんじゃないかって。他人から良く思われたい、自分のしたいようにしたい、みんな誰だって持ってる話ですけど」

ミサト「そうね」

シンジ「できないってわかった時に、駄々をこねたり、いろんな反応があると思うんです。僕は、できるの少ないから」

ミサト「強くなるには、どうしたらいいと思う?」

シンジ「当たり前にできるようになる、のが必要、なんじゃないかな。最初は不慣れかもしれない、だけど、それができて当然まで繰り返す。そうなれば、きっと色んな、予期しない出来事にもぶつかると思うから」

ミサト「そうよ、様々なパターンがあるの。私たちの歳になっても変わらない。驚きと困惑の連続なの、不安にもつながる」

アスカ「ふん」

ミサト「アスカは、背伸びをしているけれど、この子はこの子で、わかっているの。大人たちの理不尽さを、そして子供である自分の限界を」

シンジ「アスカが?」

アスカ「やめて!」バン

ミサト「アスカ、あんたも、素直になるのを覚える良い機会なんじゃない?」

アスカ「こんな話聞きたくない! ミサトだって他人をとやかく言えないわ!」

ミサト「わたし?」

アスカ「保護者面してなによ! 自分が寂しいだけなんでしょ⁉︎」

ミサト「大人になればわかるわよ。たまには、虚しいと思う時だってあるって」

アスカ「私は都合のいいペットなんかじゃない! 素直になりたかったら自分からそうするわ!」

シンジ「アスカ、言いすぎたよ」

アスカ「シンジもシンジよ! ちょぉ~っと変わったったぐらいで調子にのっちゃってさぁ!」

シンジ「そんな、僕は、ただ自分で思ったから」

アスカ「ほぉら、また言い訳! 現状がわかったら次は自分の壁にぶち当たんないようにしないと!」

ミサト「ぷっ、アスカったら、シンジくんに世話やいてるじゃない」

アスカ「ぬぐっ!」

ミサト「さ、シンちゃん。料理、はやく作っちゃって」

【第三新東京都市 ホテル バー】

加持「はやかったじゃないか」

リツコ「クラシックがかかっているバーなんて」

加持「リッちゃんは嫌いかい?」

リツコ「いいえ」

加持「バッハの無伴奏。一人舞台は演奏者によって聞く耳の解釈が違う。弾き語りみたいなものさ、なにを想うか、それで心に響く度合いが違う」

リツコ「ちょうどよかったのかもしれない。気分を高めたいわけではないから」

加持「昂りがあるなら、それはそれで俺としちゃ歓迎なんだが?」

リツコ「やめて。今日はそんな話をしにきたんじゃないの」

加持「わかってるよ。ここなら誰かに聞かれる心配もない。リッちゃんは碇司令とシンジくんについてどう考える?」

リツコ「わからないわ。私にもなにか頂ける?」

加持「山崎18年のウィスキーでかまわないか?」

リツコ「ええ」

加持「あの二人の間に誰かが介入したのは間違いない。それも影響力のある誰かだ」

リツコ「それで?」

加持「想像がつかないよ。シンジくんだけならわかるが、碇司令、と推察すると副司令以上には。リッちゃんだと思ってたんだが、アテがはずれたな」

リツコ「タバコ、吸ってもかまわないわよね」スッ

加持「火をつけよう」 カチ

リツコ「いつから私と碇司令の関係に気がついていたの?」

加持「いつをご希望で?」

リツコ「ふざけないで!」

加持「そう怒るなよ。最近さ」

リツコ「加持くん、これはプライベートな問題よ」

加持「悪かったよ」

リツコ「碇司令との関係は詮索しないで……!」

加持「しかし、どうにも気になってね。悪癖だな。自分の目でたしかめないと気がすまない」

リツコ「あなたが確かめたいのはもっと別の件ではなくて? 好奇心は猫をも[ピーーー]わ」

加持「おっと、これは手痛いしっぺ返しだ」

リツコ「ちゃんと聞いて。これは友人としての忠告。委員会に消されてからじゃ遅いのよ」

加持「謎は暴かないと面白くないだろう?」

リツコ「碇司令も勘づいてる。いつか身動きがとれなくなるわ、袋小路に追いつめられたネズミのようにね」

加持「そうなったら、葛城をよろしく頼むよ」

リツコ「自分でやりなさい」

加持「学生時代が懐かしいな。あの頃に戻りたいよ」

リツコ「なにも考えず、夢と希望に溢れ、若さで生きていた。でも、誰しもが汚れて大人になっていくのよ」

加持「難儀なもんだ」

リツコ「話を戻しましょう。私も、気になってはいる」

加持「そうだろうな。だからここにいる」

リツコ「わからないのは事実よ。碇司令以上の特権階級というと思い当たる人物はキール議長達ぐらいしか」

加持「シンジくんの身辺調査はしているんだろう?」

リツコ「ふぅー。ええ」

加持「きっかけは誘拐事件だ。犯人は捕まっていない。それどころか、捜査に消極的な姿勢が見られる」

リツコ「パイロットが無事に戻ったからではなくて?」

加持「なぜだ? なぜシンジくんは無事に戻ってきた? 誘拐した目的が今だに見えず、音沙汰がないのは不自然じゃないか」

リツコ「痕跡がないのだから、わかりようも」

加持「いや、それができたのさ。シンジくんを帰した、そして碇司令との関係の変化でね」

リツコ「……」

加持「誘拐までは完璧だった。足取りも掴めず、証拠を全て抹消するには明らかな悪手だ。と、なると、目的はそうではない」

リツコ「シンジくんにもう一度聞いてみる?」

加持「その必要はないさ。そうすれば、碇司令が止めるだろう。俺には確信に似たなにかがあるね」

リツコ「つまり」

加持「ここまでの経緯を話すと、碇司令とシンジくんを取り持つことができ、尚且つ碇司令にとってかなりの影響力を持つもの。それは権力じゃない。脅しが通用する相手とも考えにくい」

リツコ「二人にとって、親しい者?」

加持「リッちゃんだと思った理由がわかったか? それが、誘拐犯の正体さ」

リツコ「でも、そんな人が……」

加持「先入観を捨てて考えるんだ。俺は引き続き調べてみるよ」

リツコ「まさか、そんなはず、ありえないわ」

【ネルフ本部 コンテナ】

シンジ「はぁ、疲れた……」ガチャ

ユイ「おかえり。シンジ」

シンジ「わ、わぁっ⁉︎」

ユイ「そんなところで立ってないで、はやく中に入りなさい。一人暮らしをするのね」

シンジ「えぇ、まぁ……はい」 スッ

ユイ「どうしたの? 正座なんかして」

シンジ「いや、なんでいるのかなって」

ユイ「いちゃだめだった?」

シンジ「そういうわけじゃ」

ユイ「どう接していいかわからないの無理がないわね。いきなり現れて母親なんて言われても」

シンジ「あ、いや、そのっ」

ユイ「それでかまわないわ。親子の縁は簡単に断ち切れないものだから。私たちは血が繋がっているという事実さえあれば、やりなおす機会はある」

シンジ「そうですね」

ユイ「ええ。あなたは冷たくされた父親に自身の価値を認めてほしいと追い縋り、そして死んだと思っていた母である私にはなにをしてほしいの? 愛情? 思いきり甘えたい?」

シンジ「わかりません」

ユイ「反動は誰にだってあるものよ。シンジは頑張ってないわけじゃなかった。ただ、自信がなかった。そうよね?」

シンジ「僕は、そんな」

ユイ「頭を撫でてほしいの? 抱きしめてほしい?」

シンジ「その、僕は中学生ですから」

ユイ「母親にとってはいくつになっても息子なのよ。それとも、母ではない、異性にそうしてほしい?」

シンジ「あの、なんて呼べば、そこからはじめませんか」

ユイ「好きなように呼びなさい。どんな呼び方をされても私は怒ったりはしないわ」

シンジ「そ、それじゃぁ、ユイさん?」

ユイ「やっぱり母さんとは呼んでくれないのね」シュン

シンジ「え、だって今どんな呼び方をされても」

ユイ「怒らないとは言ったけど、悲しまないとは言ってない。それに、残念そうな素ぶりが見えないと愛していると伝わらないでしょう?」

シンジ「あ、愛してるって」

ユイ「私にとってもシンジにどう接したらいいかわからないの。だから、時にはストレートに伝えないとね?」

シンジ「なんで、今になって戻ってきたの?」

ユイ「シンジに会いたかったから」

シンジ「……」ギュウ

ユイ「本当よ」

シンジ「そんなのウソだ。だったらもっとはやく戻ってきてくれたってよかったじゃないか」

ユイ「そうね。私が愚かだった。こんなにも簡単な答えに行き着けなかったなんて」

シンジ「答え?」

ユイ「私の望みは、星と共に悠久の時を超えた存在になることだった。でも私はすでに、望みを叶えていたの。あの人を利用してシンジを産めたんだもの」

シンジ「なに言ってるかわからないよ」

ユイ「知恵の輪は既に出来上がっていたの。あなたの選択で人類に、生きとし生けるもの全てに、福音をもたらしなさい」

シンジ「ほ、本当になに言ってるんだよ」

ユイ「あぁ、シンジ。私の望みは全てあなたにある。あなたが私の願いそのもの」

シンジ「な、なんなんだよ。この人が、本当に母さん?」

ユイ「紛れもなく、母親よ。六分儀という性もあなた。 少しの間眠りましょう。起きたらまたいつも通り。眠りなさい、かわいいかわいい私のシンジ」プス

【ネルフ本部 執務室】

冬月「加持特別監査官。呼びだされた理由は説明するまでもないな?」

加持「いやはや、驚きましたよ。夜分遅くに、まさか副司令直々のお呼び出しとは」

冬月「無駄口を叩かんでいい。なにやら、こそこそと嗅ぎ回っているみたいだが」

加持「さて」

冬月「下手な誤魔化しはやめるんだな」パサッ

加持「……」

冬月「ここにある写真で、君の姿がはっきりと確認できる。スーパーコンピューターMAGIの配線管理室でなにを傍受していた」

加持「碇司令もご存知っすか?」

冬月「報告するかどうかは詳細を聞いてから決める」

加持「なぜ、すぐに報告しないんです?」

冬月「碇も暇ではないのでな。こういった雑務はどの道、私にまわされる」

加持「苦労してますね」

冬月「まったくだよ。だが、問題を生みだしているのはキミだ」

加持「サードチルドレンと碇司令の変化が気になったもので」

冬月「それだけのために命を危険に晒すのか」

加持「裏を返せば、俺の命よりも重い価値があるということでは?」

冬月「勘違いするな。キミの命など、道端に転がる石ころと同じだ。とるにたらんよ」

加持「それもそうだ……俺はあるひとつの仮説を立てています」

冬月「言ってみたまえ」

加持「2人の仲を取り持とうとしているのは、死んだはずの人間の亡霊なんじゃないかとね」

冬月「なぜ、そこまで」

加持「碇ユイ。彼女が生きているとすれば、セカンドインパクトの真実にもっとも近い。ある意味では、委員会や碇司令よりも。それは、魅力的なんですよ」

冬月「我々の子飼いでいれば今しばらくは長生きできたろうに、裏の顔を持っていたか。後悔はないか?」

加持「するならとっくにやめてますよ」

冬月「そうか」カチャ

加持「副司令に拳銃は似合わないっすね」

冬月「似合わん姿を見せるのも仕事というものだ」 パァン

ユイ「――失礼します。あら、こちらで倒れてるのは……お取り込み中でしたか?」

冬月「問題ない、かたはついた。死体はすぐに処理させるよ。今日はどうしたね?」

ユイ「まずは感謝の言葉を。シンジを守っていただき、ありがとうございました」

冬月「白々しい、私は、あの子を守っていたのではない。キミを守っていたつもりだったよ」

ユイ「結果に相違ありません」

冬月「全てはキミの計画の内だったのだろう」

ユイ「私はこれまでの人生で計画など考えたこともありません」

冬月「キミのその笑顔に、俺もすっかり騙されたよ。ただ、純粋なだけだと思っていた」

ユイ「私は願いに対して真っ直ぐでいたい。それだけです」

冬月「そのために、どれだけの人間を欺いてきた」

ユイ「かわいそうな人。あなたは、自分が思っていた理想像と違う私に幻滅なさっているんですね」

冬月「キミに振り回されるのはもうたくさんだ」

ユイ「いいえ。あなたはもう引き返せない。私から解放されたい? それとも、愛されたい?」

冬月「う、き、キミは」

ユイ「感謝しています。あの人から私を守ってくれた。私のために自分を押し殺し、耐えてきたのですね」

冬月「碇の悩む姿も、キミは気にもとめなかったんだろう。俺のようにざまあみろとほくそえんでいたんじゃない。興味がなかったんだろう?」

ユイ「いいえ。愛情を注いでいました。ただ、形が変わるだけなのです」

冬月「詭弁だな」

ユイ「ふふっ、先生。もうひとつ、最後のお願いを聞いてくださいますか」

冬月「聞くだけならな。言ってみろ」

ユイ「シンジをください」

冬月「次は自分の息子を翻弄するつもりか」

ユイ「私の願いの成就は、あの子に幸せな結末になります」

冬月「人を操り、行き先を誘導する。形だけの意思になんの意味がある」

ユイ「重要なのは、自分で選んだという事実のみですわ。それだけで簡単に納得してしまう」

冬月「あくまで己に責任はないと言い張るつもりか。キミのやっているのはただの刷りこみだぞ」

ユイ「そうかもしれませんね。幸せは、掴みとることもできますし、作為的に用意することもできる」

冬月「籠の中の小鳥にするのかね」

ユイ「塀の中の世界が全てであるならば、それは何よりの幸せです」

冬月「間違っている! 人は外を見なければ中の有り難みを実感できん!」

ユイ「シンジならば価値を見い出せるはず」

冬月「なんたる言い草だ! これまでの計画を水泡に帰すつもりなのかっ!」バンッ

ユイ「元々、裏死海文書をゼーレに渡したのは私。……発端は私なんです」

冬月「始まりはきっかけにすぎん。動きだしてしまっている以上、キミの手から離れているのだぞ。直接的にも、間接的にも関わってきた多くの人間の運命が狂わされてしまっている」

ユイ「修正させてもらいます。補完計画をあるべき姿に」

冬月「バカな……! 今さらそんな話が」

ユイ「先生、許してください。約束の時、願いの成就の為に」

キール「そこまでだ」コツコツ

冬月「その声は……?」

キール「久しぶりだな。こうやって対面するのは」

冬月「キール議長、なぜここに。もしや、委員会とユイくんは最初から協力関係にあったのか」

キール「存命を知る立場にあったのは、正確には、議長である私だけだ」

冬月「ならば、碇の企みもとっくにご存知なのでしょうな。我々の命運もこれで尽きたか」

キール「そうはなるかは、キミ次第だ」

ユイ「先生にはまだ使い道がありますもの」

冬月「俺が嫌だと言ったら?」

キール「ユイ博士が帰ってきた以上、その選択肢は用意されていない。ネルフなぞもはや形骸だけの姿にすぎん」

冬月「……」

キール「キミが選ぶのは、ラクに死ぬか、悶え苦しんで死ぬかのどちらか」

冬月「沈黙をもって答えよう」

キール「そうか。加持リョウジ」

加持「……」ピクッ

キール「いつまでそうしている」

加持「もうよろしいので?」 スッ

冬月「お前はっ⁉︎ たしかに先ほど撃ったはすだっ!」

加持「その拳銃、空砲っすよ。あとはこうやって、血のりをね」

冬月「まさか、私をここにおびき出すために」

加持「まんまと罠にかかってくれましたね。いつも碇司令と一緒にいるんで、遠回りしましたが」

冬月「そうか、最初から狙いは俺だったか。拉致すればいいものを。キール議長もまわりくどいやり方をなさる」

キール「まだ、碇に悟られるわけにはいかない。まだ、答えは聞いていない。沈黙以外で答える最後の機会を与える」

ユイ「先生、賢い選択をなさってください。あなたはあの人に嫉妬していた」

冬月「違う。あれは気の迷いだった」

ユイ「そうやって逃げるのですね。私の存在を心から消しさるおつもりですか」

冬月「魔性の女め!」

ユイ「生きてきた時間を取り戻すには、先生はあまりにも遅すぎたんです」

冬月「……」

ユイ「私のために汚れた手も、包みこんでさしあげます」スッ

冬月「なぜだ? どうしてこうなってしまったのだ」

ユイ「先生はなにも悪くありません。何も考えなくていいのよ、全て、私のせいにしてしまえば、先生はラクになれる」ニコ

【ネルフ本部 ラボ】

マヤ「先輩? まだ残って……だ、大丈夫ですかっ⁉︎」 タタタ

リツコ「マヤ?」コトン

マヤ「うっ、お、お酒の匂い。ちょ、ちょっと飲み過ぎなんじゃ」

リツコ「ふっ、かまわないでしょ。どれぐらい飲もうと、あの人は、心配すらしてくれない、優しい言葉をかけてくれた記憶なんかないわ」トクトク

マヤ「いったい、誰の話……こ、こぼれますっ! こぼれてます!」

リツコ「あの人はね、今だにいなくなった人が忘れられないのよ。私はいったい、なんなの……なんだっていうの!」ガシャンッ

マヤ「きゃあ⁉︎」 ドサ

リツコ「いつまでも過去の出来事にとらわれて。そんなに恋しいのかしらね……」

マヤ「せ、先輩、もうそれぐらいに」

リツコ「加持くんは言ったわ。先入観を捨てろって、もし彼女が生きているとしたら……これまでの私はどうなるの?」

マヤ「あの?」

リツコ「許せるわけない……私を捨てるなんて……許せるわけがないのよっ!」ブンッ

マヤ「ひっ⁉︎」

リツコ「でも、可能性のひとつにすぎない。仕事、しなくちゃ。あの人のために。MAGIのメンテナンス、母さん、待ってて」スッ

マヤ「先輩⁉︎ そんなフラフラの状態でいったいどこに⁉︎」

リツコ「かまわないで!」ドンッ

マヤ「あぅっ!」ドサ

リツコ「一人にして……一人になりたいのよ」

【ネルフ本部 モニター室】

加持「まさか、リっちゃんがこうも疑心暗鬼になってくれるとはね」

ユイ「不倫なんて報われない恋よ。頭でわかっていても、希望を抱かずにはいられない。ましてや、死んだと思っていた人間が相手だもの」

加持「勉強になりますな。これもあなたの計画通りですか? ユイ博士」

ユイ「今だ過程、どう選ぶかは個人が決める」

加持「リッちゃんは、これからどうなります」

ユイ「聡明な頭脳を持っていても所詮はオンナなのよ。彼女が何に縋っているのか考えればわかる」

加持「碇司令は権力こそあれど、実態は孤独です。副司令とリッちゃんという腹心を失えば、丸裸も同然だ」

ユイ「そうね」

加持「ネルフを乗っ取るには都合が良すぎますね」

ユイ「あの人が気がついた時には外堀は埋まっているのが理想。それまで、私は疑われてはいけないし、あの人のイメージの中にある私を壊してはいけない」

加持「肝心の碇司令はご子息への教育にご執心のようですしね、それもあなたに会いたいという願いの為に」

ユイ「シンジに父親のかわりはいないからそうしたの。向き合うようになったのは私がきっかけ」

加持「子育て放棄を理由に、シンジくんには父親を……そして、碇司令には目くらましを。まさに一石二鳥ってわけですか。正直、全てがあなたの手の内でおそろしくさえあります」

ユイ「買い被りすぎよ」

加持「碇司令が折れれば、後ろ盾にはキール議長がいる。争いはなく、ほぼ無傷でネルフが手に入る。のぼりつめたらどうするんです?」

ユイ「表舞台に立ったら、シンジにふさわしい相手を用意させる」

加持「セカンドチルドレンですか?」

ユイ「そうと決まったわけではない。私を罵る?」

加持「やめときますよ、出来過ぎているとは思いますがね」

ユイ「そう」

加持「硬化ベークライトで固められた、アダムの処置については?」

ユイ「ゆっくりやりましょう。特等席で見届けたいのならそうしなさい」

【同刻 芦ノ湖】

ゲンドウ「始まりの地、ここが出発地点か」

カヲル「夜分遅くに一人で出歩くとは感心できませんね。あなたは、自分のお立場をもう少し考えた方がいい」

ゲンドウ「……」 チラ

カヲル「はじめまして。お父さん」

ゲンドウ「その制服は、第壱中学校のものだな」

カヲル「はい。と、言っても通ってすらいませんが」

ゲンドウ「機関の所属名はどこだ」

カヲル「重要なのは、ボクがヒトかそうではないかではありませんか?」

ゲンドウ「……」

カヲル「大昔、ここにリリスの黒き月が落ちてファーストインパクトが起こった。そして、アダムから生まれた僕たち使徒は、眠りについた」

ゲンドウ「俺に接触してきた目的はなんだ」

カヲル「言ったでしょ? どこでもないって。目的は生き残る、わかりやすい話です」

ゲンドウ「(使徒か)」

カヲル「その呼び名はおかしい。リリンも気がついているんだろ? ヒトも十八番目の使徒であるということを」

ゲンドウ「思考を読めるようだな」

カヲル「そんなのはどうでもいい。リリンはリリスから生まれ、僕たちはアダムから生まれた。種を残す為に僕たちはどちらか一方が滅ぶ運命にある」

ゲンドウ「あなた達使徒が悠久の時を生きられても、我々人類と同様、永劫ではない」

カヲル「ヒトは死にゆく運命(さだめ)だと言いたいのかい? 次の世代へのバトンを紡いで」

ゲンドウ「人は完璧にはなれない。状況への変化に適応するために選んだ進化のプロセスだ」

カヲル「なぜ?」

ゲンドウ「群れに答えはある。個として見れば脆弱な生物だ」

カヲル「完璧な生命体は救済だと考えているのかい?」

ゲンドウ「むなしいだけだ。群れを捨てれば、完璧であるにこしたことはないだろう。だが、それでは生きる意義を失う」

カヲル「死の価値とはなんだ?」

ゲンドウ「死とは個の終着点に過ぎない。魂の解放とも言えるが、それまでになにを成すかという散りざま次第だ」

カヲル「……」

ゲンドウ「あなたは何番目の使徒なのだ」

カヲル「ボクは渚カヲル。第壱使徒です」

ゲンドウ「なに?」ピク

カヲル「話を続けましょう。ボクたちはお互いに不完全な生命体だ。アダムより生まれしヒト以外の使徒はリリンを滅ぼし、完全な個体になろうとしている。わからないのは、リリン。キミ達だよ」

ゲンドウ「それが、今の質問か」

カヲル「リリンは自ら進化の可能性を閉ざそうとしている。科学の力を使い、エヴァというデッドコピーを作り、使徒を撃退する一方で、滅びの道を歩んでいる」

ゲンドウ「ふっ」

カヲル「なぜだ? なぜ、リリンは生き残りたいと願うのに、群れを放棄しようとする? 今の話と辻褄が合わないじゃないか」

ゲンドウ「人の心が気になるか」

カヲル「……」

ゲンドウ「知恵の実を与えられた人類はいまや、一部の意向により方向づけられ、操作されている。個としての意思は尊重されない」

カヲル「ヒトをまとめるためにかい?」

ゲンドウ「領土をまとめるには統治者が必要だ。しかし、いずれ腐敗していく……進化は頭打ちなのだよ。紛争は終わらず、破壊を、資源を食いつぶしている。人は増えすぎ、傲慢になってしまったのだ」

カヲル「ヒトの歴史は悲しみに綴られている。だからなのかい? 個を選び、群れを捨てるのは」

ゲンドウ「その通りだ。人は感情を捨てて生きていけない。理性だけでは生きられないからな」

カヲル「幻滅したよ」

ゲンドウ「どう受けとってもらってもかまわん。どの道、どちらかは滅ぶ。あなた達使徒と戦うのは人にとって決定事項だ」

カヲル「……」

ゲンドウ「用件はそれだけか?」

カヲル「そうですよ……あぁ、それと」

ゲンドウ「なんだ」

カヲル「キミたちリリンがネルフと呼んでいる地下施設にあるのは、本当にアダムの本体?」

ゲンドウ「その問いには、俺も同じ疑問がある。お前はコピーか?」

カヲル「お互い、答えるつもりがないのはわかりました」

ゲンドウ「用が済んだのなら消えろ」

カヲル「悲しいね。歌という文化の極みを残せる美しさを持っているのに、それでもダメなのか」テクテク

無駄の省略と整合性をはかっています
誤字はあいかわらずありますが少なくなってるのでまぁ良しとします

【翌日 ネルフ本部 ラボ】

ミサト「おじゃま~……って、ちょっとリツコ」

リツコ「あぁ、ミサト」

ミサト「ひどいクマじゃない、それにここ、どうしたの?」

リツコ「年増の癇癪よ」

ミサト「と、年増……達同い年なんだからね? それにまだ三十路にもなってないのに、なに言ってんのよ」

リツコ「四捨五入すれば変わらないでしょ? 二十五を過ぎれば下り坂とも言うし、男は若い女の方がいいじゃない」

ミサト「気持ちの問題よ。見た目だって、まだまだ……」

リツコ「ホント、あっという間よね。ハタチを過ぎてからは」

ミサト「まぁ、それはそうだけど。めずらしいじゃなぁい、センチメンタルになるなんて」

リツコ「少し、感傷に浸りたいだけ」

ミサト「ふぅん……リツコがそうなるのって男絡み?」

リツコ「どうかしらね」

ミサト「どうせ私みたいにペラペラ喋るようなのと違ってあんたは喋らないですよーだ」

リツコ「そのセリフ、キャンパスで最初に会った時を思い出すわ」

ミサト「え? いつだったっけ?」

リツコ「学食であなたが私に話しかけてきたの、もう忘れたの?」

ミサト「言われてみれば、そうだったわね……」

リツコ「妙に馴れ馴れしく話しかけてきたから、最初は仲良くなれないと思ったりもしたけど」

ミサト「でへへー。その節はどーも」

リツコ「あの頃はまだ、色んな体験が楽しくて、私もスレてなかった。いつからかしら、楽しかったはずの遊びや研究に居場所を見つけられなくなったのは」

ミサト「誰だって、飽きるわよ」

リツコ「いいえ。むなしいの」

ミサト「そっか、リツコもか」

リツコ「新しい発見があると、価値観が一変し、私は、その為に生きていると、幸せを実感できた。でも、それだけでは、今は物足りない」

ミサト「虚構と現実のはざま、いつまでも選り好みはしていられないものね」

リツコ「それでも、人は希望に恋い焦がれる。叶わない望みを抱くのは、辛いのね」

【ネルフ本部 執務室】

リツコ「お呼びでしょうか」

ゲンドウ「ダミープラグ計画を急ぎたい。レイのパーソナルデータ収集の報告をしろ」

リツコ「必要な情報は既にMAGI上で計算を終えております」

ゲンドウ「委員会に報告を行うには、試験運用まで移行しているのが必須条件だ。形になるまでにどれぐらいの期間を要する」

リツコ「不確定な要素が多過ぎます。計算を終えているといっても、実際にシステムに最適化をして組み入れるにはまだまだ調整が必要ですわ」

ゲンドウ「では、質問を変えよう。全体の何パーセントまで完了している」

リツコ「60といったところでしょうか、完璧を望まれるのであれば残り30にさしかかった辺りがもっとも時間を要します」

ゲンドウ「……」

リツコ「レイのデータはダミーと照らし合わせ、細かい誤差が発生します。詰めを急ぎすぎると制御不能になる可能性が高まります」

ゲンドウ「かまわん、動けばそれでいい」

リツコ「なぜ、ご報告を?」

ゲンドウ「老人達は予定を早めるつもりのようだ。秘密裏に十三号機までの建造を世界各地で進めている」

リツコ「では、量産機にやはりダミーシステムの採用を」

ゲンドウ「ああ。やつらはパイロットという不安定な要素を排除する決定を下した。我々も切り捨てられぬよう保険はかけなければならん、技術のノウハウはこちらにあると見せつけたいのだ」

リツコ「承知いたしました。次に、ご子息誘拐の件ですが」

ゲンドウ「その件は、もういい」

リツコ「徹底解明すべきでは?」

ゲンドウ「サードチルドレンは生きて戻ってきた、パイロットとしての価値があれば充分だ。余計な人手をまわす余裕はない」

リツコ「犯人の目的は依然として不明なままです。なぜ生きて返してたのでしょうか」

ゲンドウ「……」

リツコ「誘拐犯にとって傷つけたくはなかった、あるいは、傷つけるのが目的ではなかっとしたら」

ゲンドウ「もういい、下がれ」

リツコ「……っ! なぜ、母さんも、私も……あなたにとってなんなの……! さぞや気分がいいでしょう! 母娘揃って一人の男に!」

ゲンドウ「赤木博士、君には期待している」

リツコ「この後に及んでまやかしをして、隠し事をするつもり⁉︎ シンジくんをさらったのが誰かわかってるんじゃなくて⁉︎」

ゲンドウ「以上だ、さがりたまえ」

リツコ「ねぇ……私を……愛してる……?」

ゲンドウ「……ああ」

リツコ「うそつき……」クル

【ネルフ本部 発令所】

マヤ「初号機、冷却値をクリア、作業はセカンドステージに移行してください」

リツコ「零号機の胸部生体部品はどう?」

マヤ「大破していますからね。塗装も含めて新調しますが追加予算の枠、ギリギリです……あの、先輩、昨日は……」

リツコ「忘れてちょうだい」

マヤ「はい……」

マコト「作業完了しました。地上でやってる使徒の処理も、タダじゃ無いですし、たまりませんね」

リツコ「人はエヴァのみで生きるにあらず。生き残った人たちが生きていくにはお金がかかるのよ。復旧率は?」

マヤ「先の戦闘によって第三新東京市の迎撃システムは、大きなダメージを受け、現在までの復旧率は26%です」

シゲル「そういえば、米国を除く全ての理事国が量産計画の予算を承認したと聞きました」

リツコ「そう」

マヤ「え、アメリカは既に三号機を着工開始してるんじゃなかった?」

マコト「それが、今になって難色を示してゴタゴタしてるらしいよ。あの国、失業者アレルギーだから」

マヤ「EU加盟国よりも生産力は高いはずなのに」

シゲル「大国は大国なりの意地とプライドってもんがあるんじゃないの~? 整備計画が頓挫しないといいけどね」

マコト「そういえば、赤木博士も大変ですね」

リツコ「なんの話?」

マコト「定例会議でパイロット問題で追及されたって噂、聞きました」

シゲル「俺も俺も。人道的ではないとかなんとか言われたんじゃないんスか?」

リツコ「その他に、五分で動かなくなる決戦兵器だとか、制御不能に陥る危険極まりない兵器だとかね。そこ、計算間違ってるわよ」

マコト「ほんとだ」カタカタ

リツコ「先の戦闘で国連は大規模な追加予算をネルフに補填させたわ。某国では二万人の餓死者がでているというし、ある程度は仕方ないのかもしれない」

マヤ「に、二万人、ですか」シュン

リツコ「ウチの利権にあぶれた連中のやっかみでもあるのよ」

冬月「左様。政府による突き上げだ。ただ文句を言うだけが仕事の、くだらない連中のたわごとだよ」

リツコ「おはようございます」

マヤ&マコト&シゲル「おはようございます」

冬月「作業の進捗状況はどうかね」

マヤ「現在、L.C.L.の温度は36を維持、酸素密度に問題なし」

シゲル「各計測装置は正常に作動中」

リツコ「今の所は順調ですわ。初号機と弐号機の修復作業は明後日までには完了いたします」

冬月「ふむ、ごくろう」

【ネルフ本部 加持 デスク】

アスカ「かぁ~じさんっ!」ヒョイ

加持「アスカ、お前、学校はどうした、学校は」

アスカ「なんだか、加持さんに会いたくなっちゃってサボっちゃった!」ギュウ

加持「こら、おいっ、抱きつくな」

アスカ「また香水の匂い。今度は誰の?」

加持「大人の付き合いさ。少し、酒を飲んできただけだ」

アスカ「そうなんだ。なに見てたの? パソコン?」

加持「いや、これは」

アスカ「なに? なによこれぇ⁉︎ なんで私とシンジのDNA配列を調べてるの⁉︎」

加持「実験に関係するからだ」

アスカ「だって、これ、重なりあってるじゃない!」

加持「近い内に弐号機と初号機で互換性のチェックを予定しているらしくてな」

アスカ「互換性ぃ?」

加持「ぶっちゃけちまうと、相性が悪いかどうかだな」

アスカ「DNAで?」

加持「自分の精神は遺伝子の制約をあまり受けないと思っているだろうが、そうでもないのさ。食べ物の好み、顔の好み、そういったものはDNAによって操作されているという分析がある。親に似た人を好きになる原理だ」

アスカ「そうだとしても、それってあくまで一説なんじゃないの」

加持「情報収集として必要だと判断されたんだ。結果を聞きたいか?」

アスカ「バカシンジとの相性なんか聞きたくなんかない!」

加持「そうか? ここ見てみろ。なかなか良い数値で」

アスカ「どうして……? どうして加持さんは振り向いてくれないの? 私が子供だから?」

加持「ふぅ、本当に子供扱いしなくていいのか?」

アスカ「えっ」

加持「男を甘く見てるだろう」スッ

アスカ「え、あの、そのっ! か、加持さん?」

加持「どうした、ビビっちまったか?」

アスカ「意外といじわるなのね」

加持「そうか? アスカが俺に何を求めているのかわかってしまうからな。少し、からかってみただけさ」

アスカ「誰かにしがみついちゃだめなの?」

加持「だめとは言ってない。ただ、アスカが相手にしてるのは人間だ。思い通りにいくとも限らないものさ。大人の階段を駆け上がるのもいいが、本当に望んでいるのか?」

アスカ「探究心は必要よ」

加持「シンジくんと足して二で割ったらちょうどいいのかもな。アスカは焦りすぎている」

アスカ「そうやって、わかるようになりたいの。みんな誰だって、色んな一面を持ってるものだもの。シンジにガキだって言ってたけど子供なのは私も同じ」

加持「そうだな」

アスカ「抑えきれないの。感情の波を。あたし、どうしたらいいの?」

加持「自分で考えるんだ」

アスカ「いつもそうやって、あたしには優しくしてくれない。突き放すだけじゃない……見せかけだけの優しさなんてほしくないのに」

加持「これは結果をプリントアウトしたものだ。持って帰れ」ペラ

アスカ「いらないって――」

加持「黙って、受け取って帰るんだ」

アスカ「……っ!」

加持「授業にはまだ間に合うだろ? 昼からでもいいから、学校にはちゃんと行ってこい」ポン

シンジ「うっ」どぴゅるるるる
アスカ「うっ」ずぴゅーーー
ゲンドウ「おめでとう」

ちゃんと終わらせますよ
ぼちぼち投下してきましょかね

【ネルフ本部 発令所】

冬月「ダミー計画か、昔を思い出すよ」パサ

ゲンドウ「……」

冬月「ゼーレのやり方は相変わらずか。組織内の人間だけで編成すればいろいろと面倒になる、その為の間に合わせに使うつもりだな」

ゲンドウ「ああ。やつらは特務機関ネルフを駒として見ている」

冬月「感心できんな。非人道的だと唱える理事会を抑えつけるのは。力と力で衝突すれば互いに犠牲は少なくなかろうに」

ゲンドウ「変わらずの潔癖主義だな。老人たちのやり方は理解できるものだよ。……この時代に綺麗な組織など生き残れん」

冬月「無人機……神を造りだすつもりなのか」

ゲンドウ「具現化された神への道標は未だ遠い」

冬月「この実験が成功すれば実現へ大きく近づく、それもまた事実ではないのか」

ゲンドウ「杞憂だ。S2機関を取り入れる手段がまだない」

冬月「ふむ、動力源か」

ゲンドウ「使徒から接触があった」

冬月「なんだと? いつだ?」

ゲンドウ「昨夜だ。やつは自らを第壱使徒だと名乗った」

冬月「まさか⁉︎ では、そいつは……」

ゲンドウ「そう。最初の人間、アダムだよ」

冬月「(ユイくんが根回しをしているのだろうか)」

ゲンドウ「おそらく、月のタブハベースにいたはずだ」

冬月「ううむ、第七支部の存在を我々に隠していたのはそれが理由だとすれば……」

ゲンドウ「知らされていない項目があるはずだ。こちらを無視して裏死海文書が掟の書へと行を移している」

冬月「軽率な行動は命とりになるやもしれんぞ」

ゲンドウ「わかっている。どの道オリジナルのアダムはこちらにある、地下にあるリリスと共に」

冬月「アダム、リリス、ロンギヌスの槍、そしてエヴァ三体。老人たちが焦るわけだな」

ゲンドウ「その通りだ。トリガーに必要なカードは揃っている」

冬月「碇、ひとつ聞きたい」

ゲンドウ「なんだ」

冬月「昔、お前がまだ学内にいた頃、ユイくんに近づいたのは、才能とそのバックボーンの組織を目的に近づいたというのが仲間内での通説だった」

ゲンドウ「……」

冬月「これまでの行動を思い返せば、それらがただのバカバカしい噂だったと理解している。人類補完計画を提唱したのもユイくんの為だからな」

ゲンドウ「ああ」

冬月「今はなんの為に動いている」

ゲンドウ「ふっ」

冬月「なにが可笑しい」

ゲンドウ「……先生。移りゆく流れ中で不変のものなど存在しません。目的など今となっては、理由のひとつなのです」

冬月「……」

ゲンドウ「動きだした歯車は壊れるまで回り続けるのだよ」

【ネルフ本部 コンテナ】

シンジ「うっ……いてて……」

加持「変な格好で寝てたからどこか痛めたかね」

シンジ「ここは……?」

加持「寝ぼけてんのか? ぼーっとしてるが」

シンジ「昨日はたしか、母さんと話をしてて、頭が痛い。今、何時ですか?」

加持「正午すぎかな。今日が引っ越しの予定日だろう?」

シンジ「はぁ、あの、加持さんが来た時に誰かいませんでした?」

加持「いや? 誰も見てないよ」

シンジ「いやっ、そんな。……いないなら、いいんですけど」

加持「甘い一夜でも過ごしたのかい?」

シンジ「ち、違いますよっ!」

加持「そうか。シンジくんは奥手そうだしな、若い内は、色んな子にアタックするのもいいと思うぞぉ」

シンジ「ミサトさんと同じようなこと言うんですね。僕は、加持さんみたいにはなれません」

加持「なにも俺になれという話じゃない。経験がものを言うのさ。本当に好きな子ができた時に、距離の測り方を知ってるのと知らないとでは違う。そうだろ?」

シンジ「それは、そうですけど……僕は、自信がないし」

加持「勇気と別物だ。自信はあとからついてくる。ないんだったらまずは作ろうとしなきゃな」

シンジ「はい」

加持「そう難しく考えるなよ。俺はシンジくんが自分のために一人暮らしを選んだのは最初だと思ってるさ」ポン

シンジ「そう、ですか」

加持「流されず、キミの意思で決めた」

シンジ「……」

加持「シンジくんは自信をもつ、そのハードルが高いんだろうな」

シンジ「僕は……」

ユイ「あら、起きてたの?」ヒョイ

シンジ「あっ! ど、どうしてここに⁉︎」

加持「おはやいご到着で」

ユイ「警護ご苦労様」

加持「いいっすよ。どうせなにかしてくれるわけじゃないんでしょ」

シンジ「か、加持さん? ユイ、さん、と知り合いなんですか?」

加持「シンジくん。俺はこの人に頼まれてここにいたんだ、ずっとってわけじゃないがね」

ユイ「シンジ。あなたを取り巻く環境は、今日から少しずつ変わっていくわ」

シンジ「な、なに言ってるんだよ。昨日はいったい……」

ユイ「疑問がつきないわね。だけど、あなたが納得してもしなくても時間は残酷に、それでいて平等に流れている。あなたが知るべきは、限られているの」

シンジ「いい加減にしてよっ!」バンッ

ユイ「待てないのよ。強引かもしれないけど、全てを理解できる頃になれば、きっと私に感謝をするでしょう」

加持「もう俺は帰っても?」

ユイ「かまわないわ。あの人にはうまく言っておいてね」

加持「シンジくん、すまない」 スッ

シンジ「加持さん、な、なんで……?」

ユイ「さぁ、これを受けとって」カシャ

シンジ「なんなんだよそれ……」

ユイ「使徒の目指すモノ。アダムよ」

シンジ「うっ……気味がわるい」

ユイ「怯えなくていいわ。シンジが初号機に乗ったのがはじまりだとすれば、アダムは通過点に過ぎない」

シンジ「アダムっていったい……」

ユイ「これは肉体だけ。いいえ、半身だけと言った方が正しいのかも」

シンジ「もういいよ、出てってよ! 今すぐに!」

ユイ「シンジ……。あなたの為なのよ」

シンジ「うそだっ! 今さら現れて、母親だって言われて、挙句にアダムだの神話だの!」

ユイ「強制はしたくない。お願いだから、アダムを受け入れて。そうすれば、リリスとの融合を済ますのみ。ゆくゆくはどんな願いも思いのままのよ?」

シンジ「僕は普通に暮らせればそれでいい! エヴァも使徒もいない、みんなが笑って過ごせるような……そんな生活がおくれればそれで……」

ユイ「できないの」

シンジ「どうしてだよ! 父さんだって、今ならきっと!」

ユイ「大きな流れが許してはくれない」

シンジ「僕にお願いするんだろ! だったら、僕のお願いだってきいてくれたっていいじゃないかっ!」

ユイ「全てが終われば、自ずと答えが、シンジの望んだ世界が待ってるわ。あなたがそう望むのなら……きっと」

シンジ「……なんなんだよっ……そればっかりじゃないか」

ユイ「聞きなさい」

シンジ「いやだっ!」

ユイ「黙って聞くの!」

シンジ「……っ!」

ユイ「いい? アダムとリリスは融合した次のステージで本来あるべき姿へと還る。でも、その状態では、魂の力に耐えられず、長い時間肉体を保持できないの」

シンジ「……」

ユイ「あなたの願いを叶える、そのために全てのエネルギーを使い魂は再び還元される。形が変わるだけなのよ」

シンジ「願いを叶えてくれるっていうなら、今叶えてよ!」バンッ

ユイ「無理なのよ、段階を踏まなければ」

シンジ「頭がどうにかなりそうだ!」

ユイ「やはり、理解を求めるのは難しいのね」

シンジ「そうだよ、僕たちには時間がたりない」

ユイ「でも、時は待ってはくれない」ピッ

シンジ「どこに電話……? ボタン?」

ユイ「シンジ、これだけは忘れないで。私は、あなたを愛している」

シンジ「だったら、もっと親らしくしてよ……!」

ユイ「ごめんなさい。あなたが世界を創造すればそうなるでしょう」

保安部「およびですか」ガチャ

ユイ「例の場所へ」

シンジ「この人は?」

ユイ「暴れるようなら気絶させなさい。遅くなると気がつかれる恐れがある」

保安部「了解」スタスタ

シンジ「こ、こないでよ! なにをするつもりなんだ!」

保安部「仕事だ。恨むなよ」スッ

ユイ「……」

シンジ「だ、誰かっ!」

【第三新東京都市第壱中学校 昼休み】

アスカ「ふん」ペラ

ヒカリ「アスカ……? なに見てるの?」

アスカ「あ、これは、その、なんでもっ!」パラ

トウジ「……? なんか落ちたで」ヒョイ

アスカ「あ! ちょっと、返しなさいよ!」バッ

トウジ「なになに? サードチルドレンとセカンドチルドレンは規定値を上回りお互いに良い影響を……」

アスカ「読み上げんな! 機密なんだからねぇ、それぇ!」ドン

トウジ「お、おう、って、なんやねんこれは! シンジとゴリラ女のグラフぅ⁉︎」

ケンスケ「なんだ?」ヒョイ

ヒカリ「え? 碇くんと……」

アスカ「ちがっ! はぁ……。機体の互換性テストがあるらしいのよ。だから、それが理由」

トウジ「ほっほぉ。そんなのがあるんか、大変やのぉ」

ケンスケ「へぇ、これ良いことづくめじゃないか」

ヒカリ「わ、私にも見せて」

アスカ「ヒカリまで……」

ヒカリ「あっ、ごめん。でも、気になっちゃうんだもん」

アスカ「いいけど。あくまでデータよ単なる」

ヒカリ「わぁっ、見てこれ! 二人の相性って凄く良いんだぁ!」

アスカ「聞いちゃいないわね」

トウジ「言われてみれば、シンジはぐいぐい引っ張ってくれるタイプと相性ええんかもしれんのぉ」

ケンスケ「うんうん、違いないねぇ」

ヒカリ「アスカ、一歩引いてワガママを許してくれる相手じゃないと疲れちゃうと思う!」

アスカ「……」ヒク

ケンスケ「エヴァのパイロットっていう繋がりだってあるし、本人達もまんざらじゃないんじゃないか?」

トウジ「ペアルックか⁉︎」

ケンスケ「そうそう、一つ屋根の下で生活してたし。ユニゾンの時はなぁ?」ニヤニヤ

トウジ&ケンスケ「いやぁ~んな感じ!」

アスカ「……」プルプル

ヒカリ「ちょ、ちょっと二人とも」

トウジ「アスカ! 僕はアスカがすきだ!」

ケンスケ「シンジ! 実は私も……」

トウジ「ああ、アスカ。夫婦漫才しよう!」

ケンスケ「もちろんよ! シンジいっ!」

アスカ「……ころす」

トウジ&ケンスケ「へ?」

アスカ「遺言を残す時間を与えるわ。五秒だけね」ポキポキ

ヒカリ「あ、アスカ」

アスカ「止めないで、こいつらは死ぬ必要があるわ。なぜならバカにつける薬はないから」

トウジ「なははははははっ、ムキになるんは図星な証拠ぶへらぁっ⁉︎」ドサ

アスカ「次……!」スッ

ケンスケ「と、トウジ⁉︎ うわああぁっ⁉︎」ドタバタ


とりあえずここまで
次からはあまり変なレスあると投下しません

まさか二行でこんなにレスがつくとは
とりあえず自分のレスが一人歩きして拡大解釈された感じすかね
今日は書かないっすべつのことやってるんで

【ネルフ本部 ラボ】

加持「今日も地上は暑いよ」

リツコ「ここは休憩所ではないんだけど」

加持「もちろん、リッちゃんに会いにきてるのさ」

リツコ「他人におべっかばかり使うのって疲れないの?」

加持「本音だよ」

リツコ「もういいわ、ミサトが探してたわよ」

加持「あいつになにかした覚えはないが」

リツコ「気のない返事ね。約束でもすっぽかした?」

加持「いや」

リツコ「そう。私も聞きたい件があったからちょうどいい。加持くんはなにを知っている、いえ、どこまで状況を把握しているの。碇司令の奥様は本当に生きているの?」

加持「これはまた唐突だな。質問に質問で返すが、リッちゃんは自分をどこまで把握してる」

リツコ「……」コト

加持「分かった気がするだけで、完全には理解できない。自分自身が一番怪しいもんさ。100%理解し合うのは、不可能なんだよ」

リツコ「だからこそ人は、自分を、ひいては他人を理解しようと努力するのよ」

加持「裏切られたと、現実を受け止める覚悟はあるのかと聞いているんだ。その冷静な仮面が剥がれないかとね」

リツコ「とっくに見せかけだけよ。取り繕っていつも通りにいるだけ。本当の私は、壊れてるわ」

加持「ユイ博士は……生きているよ」

リツコ「ーーやはりね」

加持「ユイ博士が初号機に取り込まれた際に試みたサルベージは失敗した。だが、彼女は自力で戻ってきた。方法までは俺もわからない」

リツコ「まさか、ありえないわ。コアに取り込まれてしまったのよ……肉体は生命のスープに溶けてしまっているはず」

加持「だが、生きている、それは揺るぎない事実だ」

リツコ「……」

加持「このことを碇司令が知っているとしたら?」

リツコ「……っ!」キッ

加持「睨んでも碇司令とリッちゃんのこじれた関係は、俺が悪いわけじゃないぞ」

リツコ「今は、時間がほしい」

加持「恋愛というものは、どちらか一方に責任の全てが偏るわけじゃない。行動をするのは男だが、受け入れるのは女だ。双方合意の上で成り立っているからな。強制された関係でもないんだろう?」

リツコ「わかってるわ! ロジックじゃないのよ!」

加持「よく考えるんだ。碇司令がどちらを選ぶか、リッちゃんを選ぶはずが」

リツコ「やめて」

加持「自分一人で抱える前に、俺か葛城に相談してくれれば」

リツコ「……っ! 今さら友人面するつもり⁉︎ どこまで人をバカにすれば気が済むの⁉︎ 加持くんは最初から生きているって知っていたんでしょう⁉︎」

加持「騙したのはお互い様だ。リッちゃんが碇司令の企みに加担しているのを俺は知っている」

リツコ「そう……。奥様が生きているのなら、きっと不倫相手を殺したいのでしょうね」

加持「ユイ博士はなんとも思ってないさ。いずれ滅んでしまう世界だからな」

リツコ「加持くんは、ユイ博士側にいるのね」

加持「彼女の手足となって色々調査している最中でね、地下にある大量のクローンも見せてもらった」

リツコ「どうやってセキュリティカードを……」

加持「あれがダミー計画の正体か?」

リツコ「黙秘をさせてもらうわ」

加持「それならそれでかまわないが、リッちゃんは誰のために黙ろうとしているんだ?」

リツコ「それは」

加持「いつもの冷静沈着、頭脳明晰な姿からは想像もつかないな。その自信のない、揺れた瞳は」

リツコ「……」

加持「リッちゃんは利用されていたんだ。碇司令がユイ博士に会うために。補完計画の真の目的がそうだと知っていたか?」

リツコ「いや、もうやめて、うそ、うそだわ、そんなのうそよ」

加持「ここに、副司令の肉声を録音したテープがある」カチ

『碇ゲンドウは、碇ユイと会うために補完計画のシナリオを修正し、別の結末を用意した』

加持「……」カチ

リツコ「副司令が、なぜ……そんな……」

加持「合成はしていない。あとでいくらでも検証してもらっても、なんなら副司令に直接聞いてもいい……どちらの側にいるのかもね。それでも、碇司令に忠誠を誓うのか?」

リツコ「……」

加持「悪いようにはしない、正直に話してくれ」

【ネルフ本部 MAGI内部】

リツコ『母さん、先日葛城ミサトと言う子と知り合いました』

ナオコ『ようやくお友達ができたのね』

リツコ『他の人たちは私を遠巻きに見るだけで、その都度母さんの名前の重さを思い知らされるのですが、なぜか彼女だけは私に対しても屈託がありません』

ナオコ『そうなの、よかったわね』

リツコ『彼女は例の調査隊ただ一人の生き残りと聞きました。一時失語症になったそうですが、今はブランクを取り戻すかのようにベラベラと良く喋ります』

ナオコ『本当にめずらしい。そんなに楽しそうに話するなんて』

リツコ『まだあるんです。ミサトが大学に来ないので、理由を白状させたら、バカみたいでした。ずっと彼氏とアパートで寝ていたそうです』

ナオコ『あらあら、それは困ったわね』

リツコ『飽きもせず、一週間もだらだらと! 彼女の意外な一面を知った感じです、今日、紹介されました。顔はいいのですが、どうも私はあの軽い感じが馴染めません』

ナオコ『昔から男の子が苦手でしたね、リッちゃんは。自分の幸せを逃しちゃわないか心配よ。やはり女手一つで……ごめんなさい、ずっと放任してたものね、嫌ね、都合の良い時だけ母親面するのは』

リツコ「母さん、私、どうしたらいいの」ギュウ

MAGI「……」ブゥーン

リツコ「嫌なことがあると、こうやって、母さんのところで体育座りをして引きこもる。なにも成長していない。私の場所、私の空間、どこにあるの?」

ナオコ『ーー本当にいいの?』

ゲンドウ『ああ、自分の仕事に後悔はない』

ナオコ『嘘。ユイさんの事忘れられないんでしょ。でもいいの。私』スッ

ゲンドウ『……』

リツコ「ねぇ、母さんは碇司令と私の関係を知ったらどう思う? 嫉妬するかもしれない、実の娘に対してさえ」ナデナデ

MAGI「……」ブゥーン

リツコ「女である自分を捨てきれなかった母さんだから。最後まで女でいるのを選択したのね」

MAGI「……」ブゥーン

リツコ「後悔はない? ……私は、幸せの定義なんてわからない。わからなくなってしまった。なにを望んでいるのかでさえ。あの人に抱かれても、嬉しくなくなった」ドンッ

ナオコ『リッちゃん……幸せになるのよ』

リツコ「私だって! ……幸せになりたい、母さん、助けて……誰か、助けて」ギュウ

オペレーター放送「バルタザール並びにメルキオールの試験運行は次のフェーズへ移行します。技術一課の職員は速やかに作業を開始してください」

リツコ「仕事、やらなくちゃ。仕事」ブツブツ

マヤ「せんぱーいっ?」タタタ

リツコ「……」スッ

マヤ「あれ、ここにもいない、どこいったんだろう」キョロキョロ

リツコ「どうしたの」カシャン

マヤ「あ、中で作業をされてたんですね。躯体の中のテストプラグにデストルドー反応が検出されました」

リツコ「どれぐらい?」

マヤ「0.2と微量ですが無視するというわけにも」

リツコ「わかった。行きましょう」

マヤ「あの……? 結膜炎ですか? 目が真っ赤ですけど」

リツコ「そうね。そうかもしれない。あとで診てもらうわ」

マヤ「それなら私、いい眼科知ってます。そこの先生のところで家族みんなお世話になってるんですよ」

リツコ「そう……。マヤ、問題の箇所は私が当たるから副司令のところにいってこれを渡して」スッ

マヤ「これは?」

リツコ「渡せばわかる。中身を見てはだめよ」

マヤ「い、いえっ! そんな、見るなんてめっそうも!」ブンブン

【付属病院 手術モニター室】

ユイ「もしもし、どうしたの?」

加持「赤木リツコがおちました、これで碇司令は孤立無援の状態です、いつでも裏をかけます」

ユイ「随分はやかったのね」

加持「お察しがついてるはずですがね。少しばかり、俺が動いたからですよ。旧知の間柄でもあるんです、ま、それぐらいはかまわないでしょ?」

ユイ「それで?」

加持「例の元は、やはり本部奥深くの第七層あります。綾波レイのパーツが大量に生産されているのをこの目で確認しました」

ユイ「あれはただの器。リリスの魂はひとつしかない、欲しいのは製造方法という技術的な話よ。データはもらえる?」

加持「驚きましたよ、ダミーの正体、そして、エヴァの正体にね……近日中にディスクに全てを記録し渡すそうです」

ユイ「まるで遺書ね」

加持「碇司令への最後通告はいつ頃をご予定で」

ユイ「そうね、死人を出さないようはやめましょう。赤木リツコは有能な人材だし、失うのは惜しい」

加持「わかりました、では、帰国後すぐにでも」

ユイ「かまわないわ、それじゃ」ピッ

シンジ『んぐんむーっ! んむむー!』

医師『ユイ博士、麻酔薬の投与を開始してもかまいませんか?』

ユイ「マイクを」

保安部「了解」ピッ

ユイ「シンジの猿轡をはずしてあげて」

医師『はっ』スッ

シンジ『ぷはっ! なんだよ、これ、はずしてよっ!』ガタガタ

ユイ「マイク越しでごめんなさいね。シンジにアダムの移植手術を行うのよ」

シンジ『……っ⁉︎』ギョ

ユイ「暴れられると危ないから全身麻酔になるけど、我慢しなさい」

シンジ『アダムってさっきの……⁉︎ なんでそんなっ⁉︎」

ユイ「理由は先ほど説明したわ。理解できていなくても仕方ないとも言った」

シンジ『そ、それはないんじゃないの……。僕は、そんなの望んでないって……!』

ユイ「たしかに、あなたはそう言ったわね。それでも、私はやめるつもりはない。はじめて」

医師『はっ。おい、猿轡を噛ませろ』

看護師A『あなたはそっちにまわって抑えてつけて』スッ

看護師B『了解』

シンジ『ふむぐぐーっ! むぐぐーっ! んー!』

医師『心配するな、すぐ終わるよ。ライトを』

看護師『はい』ガチャン

【数時間後 ネルフ本部 ターミナルドグマ 培養液】

リツコ「関節部の動きに異常は?」

レイ「問題ありません」

リツコ「そう、あと一時間浸かったら出ていいわよ」

レイ「はい、あの……赤木博士」

リツコ「なに?」カタカタ

レイ「ヒトと使徒の違いってなんですか?」

リツコ「どういう意味かしら」ピタ

レイ「弐号機の人から、私は人形みたいだって言われました。どう捉えていいのかわからなくて」

リツコ「アスカがあなたを?」

レイ「はい」

リツコ「ぷっ……くっくっくっ」

レイ「おかしいですか?」

リツコ「的を得ているわね。あの子、分析力がある」

レイ「……」

リツコ「レイは存在価値を探ろうとしているの? それは、人として? それともリリスという使徒として?」

レイ「よく、わかりません」

リツコ「あなたはわかっているはずよ、器でしかないくせに……!」

レイ「……」

リツコ「自己を確立させてどうするつもり? まさか、碇司令に目をかけてもらおうって魂胆かしら。今以上に」

レイ「……」ゴポゴポ

リツコ「人にも、使徒にもなれないのよ! ただの魂の入れ物でしかないわ! 中間の存在があなた!」

レイ「はい」

リツコ「培養液がなければ、長期間生きられない身体が物語っているでしょう? まわりを見てごらんなさい。機能に不備があれば、いくらでも変わりがいる」

レイ「私は、人形?」

リツコ「私達は神ではないのよ……! コピー体を作れても魂の創造はできない! くだらない質問はやめて!」バンッ

レイ「……はい」

リツコ「私、あなたが嫌いになったのよ。その顔を見る度に、誰をモデルにしてるか確認させられてしまうから」

レイ「……」

リツコ「すすんで壊すようなマネはしないわ、いくら変わりがいると言ってもね」

レイ「私は、死んだらどうなりますか」

リツコ「そのままよ」

レイ「今の、記憶は……」

リツコ「引き継ぐのは不可能。不満でもあると言うの?」

レイ「どうしてなのか、知りたいだけです」

リツコ「人のフリがうまくなったのね……いいわ、感情が芽生えたという前提で答えてあげる」

レイ「感情が芽生えた?」

リツコ「知的探究心から物事は動きだすの。知恵の実を食べたのもそそのかされたとはいえ、好奇心のせいだしね」

レイ「……」

リツコ「質問は、死ぬとどうして引き継ぎができないのか? でいいのかしら」ギシ

レイ「はい」

リツコ「魂が借りものだからよ。あなたの存在は、誰しもが見ている夢みたいなもの」

レイ「夢……」

リツコ「人は寝ている時、夢を見ている間は鮮明だけれど、次の場面に切り替わったら前に見てた映像は覚えていられない。もちろん、覚えている、という例外がないわけでもない」

レイ「はい」

リツコ「しかし、100%に限りなく近い数字で覚えていられないでしょうね。新しい器に移し変えるというのはそういう話。あなたという個人を確立させる根拠は生まれない」

レイ「いないのと同じ……リリス、それが私」

リツコ「魂はね」

原作で本当に言ってるセリフにそれっぽいの付け足してるだけなんで誰でもできますよ
とことん見た人の方が必然的に再現度はもっと高くなってくと思います

【ネルフ本部 発令所】

シゲル「戦自より入電。ヒトロクサンマルに滑走路の使用許可を求めています」

ミサト「そんなスケジュールあったっけ。物資の搬入かしら?」

シゲル「いえ、違うようです。なにやらVIPを乗せているみたいスね」

ミサト「ぶいあいぴー? お偉いさん?」

マコト「誰でしょうか……政府関係者かな」

ミサト「こっちも暇じゃないってのに。識別信号はわかる?」

マヤ「シグナルは……エアフォースワン? 大統領専用機です」

ミサト「大統領ぉ⁉︎ アメリカの⁉︎」

マヤ「は、はい。間違いありません」

ミサト「大国のトップがお客様じゃなぁい。日本政府ではなくネルフに何の用かしら……」

マコト「さぁ……」

ミサト「なんだかきな臭い感じがするわね……とにかく、許可は出しておいて。あと日本政府にも確認を」

オペレーター「了解、内閣総理大臣へのホットライン開きます」

冬月「碇はまだ来ていないのか?」

マヤ「はい、まだお見えになっては」

冬月「やれやれ、良い上司とはいえんな」

マヤ「そんな。ネルフは碇司令がいてこそです」

冬月「下手な世辞はよせ。不満がないわけでもなかろう」

シゲル「そりゃ、まぁ……なにもないわけじゃないっスけど一般企業に比べたら天国みたいなもんですよ。なぁ?」

マコト「お前は給料面だけじゃないか」

シゲル「なにが悪いってんだぁ? 福利厚生も手厚いし、充分な対価が支払われていれば俺はどうだっていいね。贅沢だってできるし」

マコト「まったく」

マヤ「あ、そうだ。副司令、赤木博士からこちらの封筒を渡すように頼まれました」スッ

冬月「なに? 中身は、なにかしらの申請に不備があったか?」

マヤ「見ないように仰られていたので」スッ

冬月「……」カサ

マヤ「渡せばわかると伺っております」

ミサト「……?」

冬月「なるほど。この後は赤木博士に会う用事はあるかね?」

マヤ「はい。報告したい案件がありますので、もうしばらくすればラボに向かいます」

冬月「君に判断はまかせると伝えてくれ」

マヤ「了解しました」

ミサト「VIPの出迎えはいかがいたしますか?」

冬月「本来であれば碇が行うべきだがな。あいにくと碇は不在で、私も優先したい急用ができた。葛城一尉、代行を頼めるか」

ミサト「はっ! では、大統領との会談には私が出向いたします」ビシッ

冬月「ネルフは国連の管理下にある治外法権だ。誰が相手であろうと毅然とした態度でな」

ミサト「代表を任命いただき恐縮です。善処いたします」

【人類補完計画委員会 特別収集会議】

ゼーレ02「生きていたとはな」

ユイ「ご挨拶が遅れまして、申し訳ございません」

ゼーレ04「これまでなにをしていた。なぜ今になって我々の前に姿を現してきたのだ」

キール「その問いには、私から答えよう。ユイ博士は、我々に最も有力な協力者として戻ってきた」

ゼーレ02「真意は?」

キール「補完計画の完遂に他ならない。証明として、碇が別のシナリオを目論んでいた証拠を得たらしめた」

ゼーレ03「中間報告書には目を通してある。本当なのかね? 抜粋すると、碇ゲンドウがキミに会う為に我々とは違う、別の結末を用意していたとは」

ゼーレ05「信じがたい話だよ。人類と個人を天秤にかけるだけでも正気とは思えない」

ユイ「事実ですわ。側近である冬月副司令からのインサイダー(内部告発)です」

ゼーレ06「ふん、愚かな男だ」

ゼーレ02「奴には然るべき罰を与えねばならない」

キール「異議はなし……だが、後任者を決めてからだ。タイムスケジュールの記述に余波が及んではならない」

ゼーレ05「それでは、私の国から」

ゼーレ02「君の国は責任が嫌いだろう? なにかあった時にゴタゴタするのではないかね」

キール「ネルフの後任者は碇ユイ博士に一任する」

ユイ「懸念は心中お察しします。もし、私がもっとはやく姿を現していたら、夫はこのような算段をしなかったでしょう」

ゼーレ06「ならば問おう。キミが我々に死海文書とは違う、裏死海文書を渡した時にこうなると予想できていたのでは?」

ユイ「私は、自分の願いを叶えようとするだけ精一杯で。他に気をまわす余裕はありませんでした」

ゼーレ02「薄っぺらい戯言を信じろと? くっくっ、笑わせる。発言には気をつけたまえよ。なぜ夫を蹴落としてまで後釜に座ろうとする」

ユイ「取るに足らない言葉よりも結果を。私に皆様方の意向に背く意思はありません、必要であると判断なされば監視をつけてくださっても結構です」

キール「よい。ユイ博士、確認をすべきはひとつだ」

ユイ「はい」

キール「その願いは我々の悲願と一致するものか?」

ユイ「相違ありません」

キール「以上だ。異議のあるものは?」

ゼーレ一同「……」

キール「約束の時はそう遠くはない。エヴァンゲリオン初号機による遂行を望むぞ」

ユイ「既にいくつか手をうっております。それと、もう一つ、報告させていただきたいことが……タブリスを潜入させております」

ゼーレ02「ああ、キール議長から伺っているよ」

ユイ「彼を三号機パイロットのフォースチルドレンに選定いたしました」

ゼーレ05「勝手なマネをしおって! さっそく司令気取りか!」

ユイ「なにが不満なのでしょうか。計画に遅延は許されません。マルドゥック機関に登録済である第壱中学校にいる生徒達のコアでは不十分です」

ゼーレ04「S2機関の搭載を試みている四号機ではだめなのか?」

ユイ「三号機と共に四号機は建造に遅れが発生しているそうですが」

ゼーレ05「それは……」

ゼーレ03「キミの国の話だったな。三号機と四号機の建造権を強引に主張しておいて情けない」

キール「承認する。ダミー計画はどうか」

ユイ「技術的な問題はクリアいたしました。夫は綾波レイのパーソナルデータを移植していますが、こちらは渚カヲルのパーソナルデータを移植いたします」

ゼーレ03「コントロールは有効なのかね?」

ユイ「アダムは凶暴性がありますが魂のデジタル化はできません。あくまでフェイク、擬似的なものです。想定上は可能です」

ゼーレ05「赤っ恥をかかせておいてできませんで済ませられるか! 必ず運用可能にするのだ!」

ユイ「はい。皆様方の意向通りに――」

【ネルフ本部 女子ロッカールーム】

レイ「私にあるものは命、心の容れ物。作り物の人形。この鏡にうつっているのは……」 キュッキュッ

レイ(少女)「あなたはあなた」

レイ「あなた誰? これは誰? これは私。私は誰?」

レイ(少女)「私は一人目のあなた、同じものがいっぱいいるのも私。いらないのも私」

レイ「なぜ、あなたがわたしの中にいるの? 赤木博士は、夢の出来事は長期間記憶の保持ができないと言っていた。どうして、ずっと鮮明なの」

レイ(少女)「赤い土から作られた人間。男と女から作られた人間。私はこの世の理(ことわり)とは相反する存在だから」

レイ「あなた誰、あなた誰、あなた誰」

レイ(少女)「いらないものがいっぱい。赤い色。赤い色は嫌い。流れる水。血。赤いヒトは嫌い。弐号機パイロットも嫌い、でもいい。簡単に壊れる、あの女は壊す」

レイ「なぜ弐号機の人を壊すの? 私が私でない感じ。とても変。体が融けていく感じ。私が分からなくなる」

レイ(少女)「心の入れ物。魂の座」

レイ「私の形が消えていく。私でないヒトを感じる。リリス? 本来あるべき姿に還り、ひとつになりたいの?」

レイ(少女)「それはとても気持ちの良いこと」

レイ「ひとつになりたいのは私?」

レイ(少女)「私じゃない、変化している、私もあなたも同じ」

レイ「変化?」ポタ

レイ(少女)「顔を鏡でよく見て」

レイ「これは、水? 涙……泣いてる、ないてるのは、わたし……?」

レイ(少女)「鼓動を感じる」

レイ「……」 ゴシゴシ

レイ(少女)「祝福の鐘を鳴らし、歓喜の歌を。アダムが目覚める」

レイ「誰の中に?」

レイ(少女)「碇シンジ。もうひとつの紛い物は裏に」

レイ「私と同じ?」

レイ(少女)「違う。でも、いずれひとつになる。それはとてもとても気持ちの良いこと」

レイ「そう」

レイ(少女)「そろそろ行きましょう」

レイ「どこに」

レイ(少女)「碇くんの元に。アダムの元に」

アスカとレイの構図にしてもそうですが基礎になる分が残っているので投下分までは足りない部分の再構築がやりやすいです
いろいろ加筆修正していますが前スレが下書きなら今スレは清書って感じですかね

【第三新東京市 ビジネスホテル】

加持「ご無沙汰してます」

国防大臣「まずは、政府へおかえりとでも言うべきか。随分とつれなかったな」

加持「突然の連絡になってしまい申し訳ありません。調査部もパニクってましたよ。亡霊が今さら現れるとはね」

国防大臣「碇、ユイか」 パサ

加持「ご存知の通り、戸籍上は司令である碇ゲンドウ氏の妻です」

国防大臣「党の幹事長や総理も極めて驚かれていたよ。司令交代というゼーレからの一方的な通知、いや、脅迫では」

加持「心労がかさんでいるようで」

国防大臣「胃が痛いよ……裏があるのもわかりきっているからな。まったく、碇という一族はなんなのだ。両夫妻、そしてパイロットに至るまで、身内固めではないか」

加持「調べますか?」

国防大臣「答えるまでもなかろう。だが、キミだけでは心許ないと判断した」

加持「組む相棒のデータを貰えますか」 ポリポリ

国防大臣「……」スッ

加持「この子は……中学生、ですか」ペラ

国防大臣「彼女には、パイロットの監視を行ってもらう。戦略自衛隊からの派遣だ」

加持「こりゃあ、まいったな。腕は信用できそうにもありませんね」

国防大臣「ひよっこと聞いているが、なに、相手も素人同然だ。問題はなかろう」

加持「霧島、マナね」

国防大臣「彼女には裏切らないよう保険をかけてある。キミは、断面図を入手しろ」

加持「準備に時間がかかりますよ。本部構造の全体把握をされる理由は、やはり直接掌握を視野にいれているんすか?」

国防大臣「余計な詮索は身を滅ぼしかねないよ」

加持「俺が内偵だとバレていないとも限りません。情報はあっても困らない」

国防大臣「やけに臆病じゃないか。心配事でもあるのか?」

加持「上が助けてくれそうにないのが心配ですよ」

国防大臣「はは、たしかに。違いない。キミが死んでも代わりの人間を送りこむだけだからな。トカゲの尻尾は本体さえ生きていれば再生できる」

加持「哀れと思って教えちゃくれませんか? 政府は、ネルフをどうしたいんです」

国防大臣「布石だよ。今はまだ対使徒という組織だが、いなくなったらどうなる? ん?」コンコン

加持「……」

国防大臣「五分しか動かない決戦兵器でもおおいに脅威だ。では、操縦する人間は? 整備を行なっている連中はどうだ?」

加持「戦闘に関しては、素人同然ですな」

国防大臣「そうだろう」ニッコリ

加持「つまり、武力行使もやむをえないと判断しているわけですか」

国防大臣「もうひとつ、教えておいてやろう。日本政府の間では、工作に疑問符が出ている。もしや……キミがネルフ寄りの人間なんじゃないかと、ね」

加持「おだやかじゃありませんね」

国防大臣「身の潔白を証明し、キミの信頼を確固たるものにする為にもネルフ本部にあるセキュリティホール(欠陥)を探し出せ」

【厚木基地 戦自】

司令官「今回の任務は特務機関ネルフ、そのパイロットであるサードチルドレンの調査だ」

マナ「……」カサ

司令官「ネルフはこれまで治外法権を理由に、都合の良い振る舞いを行なってきた。我々は犠牲を払い、いつも足止めをしているに過ぎない」

マナ「はい」

司令官「本作戦は、ネルフ内部における組織図の明確な調査をするとともに、碇一族と委員会についての癒着を暴く足がかりとなる重要な任務だ」

マナ「……」

司令官「忌々しいが、使徒に有効な兵器は、あのエヴァとかいう玩具なのは事実である。だが、我々には我々の得意とする分野がある。政府にアピールする良い機会でもあるのだ。わかるな?」

マナ「はい」

司令官「友人達については、貴様の働き次第で、優遇を約束しよう。状況は全て整っている。あとは君次第だ」

マナ「もし、情報を引き出せなければ……」

司令官「使えない者を贔屓するわけにもいくまい。そうなったら、どうなるか。想像にまかせよう」

マナ「(私が失敗したら、ムサシとケイタは戦場に戻ることになる。そういう意味なのね……)」

司令官「今回の任務は極秘だ。政府の一部高官筋、及び戦自内部においても知る者は少ない。万一、君の正体が明るみにでても一切関与はしない」

マナ「……」

司令官「貴様は今、この時点で社会的に存在を抹消される。むろん、戦自のデータベースからも全ての記録を消去する。霧島マナであるには変わりないが、透明になるのだ」

マナ「はい」

司令官「影となって生きろ。スパイの鉄則だ」

マナ「(碇、シンジ……シンジ、くん……)」

司令官「二十四時間、ターゲットのみを考えろ。そうすれば結果を伴わせることができるだろう」

マナ「了解」

司令官「一字一句全てを暗記するつもりで」

マナ「(ターゲット……情報を集めるべき相手……大丈夫よ、マナ。私はかわいい、武器にできる)」

司令官「以上だ。霧島マナ隊員の健闘を祈る」

【夕方 ネルフ本部 来賓室】

ミサト「さ、三号機をうちに、ですか?」

大統領「引き受けてもらうのは三号機のみで、四号機は引き続き我が国が担当する。同意に必要な詰めは全て済ませてあるから、あとはこの書類に責任者のサインを書くだけだ」

ミサト「しかし、ネルフは既に三体のエヴァを保有しています。日本領土内において過剰な戦力になりうるのでは……」

大統領「政治的な話だよ。現在、我が国では経済的に不安定な状態が続いている。それに伴い、市民の暴動や生活水準の低下が懸念されていてね」

ミサト「つまり、割り当てる予算がないと?」

大統領「情けない話だが、その通りだ。貧困層は医薬品でさえ入手するのが困難な状況になりつつある。そのような状態で、軍備にまわす余裕はない」

ミサト「WHOに支援を求めては……」

大統領「スイスのジュネーブ本部には、発展途上国から問い合わせが殺到しているそうだよ。その中に混じって、アメリカが恥部を晒すわけにはいかんのだ」

ミサト「受け入れるにしても隣国の反発が予想されます。相応の理由が必要になると思われますが」

大統領「その点については、先ほど君がいっただろう。日本は既にエヴァを三体も保有している」

ミサト「はい」

大統領「過剰な戦力ではなく、実績があると捉え、アメリカと日本、友好国という建前を使えばどうとでもなる」

ミサト「お話は承知いたしました。ですが、話が大きすぎて……私の一存では決めかねます。碇司令の判断を仰いでからになりますが、よろしいでしょうか」

大統領「キミの言う碇とは、碇ゲンドウかね?」

ミサト「はぁ、そうですが」

大統領「彼は本日付けで更迭になったと報告を受けている」

ミサト「え、えぇっ⁉︎」

大統領「後任を務めるのは、彼の妻である、碇ユイ博士だ。なにも聞いていないのか?」

ミサト「ぞ、存じません。事実なのでしょうか?」

大統領「嘘をついてなんになる。碇ゲンドウ氏はアラスカにて調査を行うはずだ」

ミサト「どなたの意向でしょうか?」

大統領「私が知るのは結果のみだ」

ミサト「(左遷? いいえ、違うわね。日本政府でさえネルフに人事の口だしできないはず……ゼーレ?)」

大統領「……」コト

ミサト「ですが、ユイ博士は、たしか、資料によると亡くなっているのでは……納得のいく説明を求めます」

大統領「上層組織によるゼーレの決定だ。キミも噂ぐらいは聞いたことがあるはずだな?」

ミサト「やはり……ですが、ゼーレの実態はほとんど存じません」

大統領「私も同じだ。世界は、一部の組織が牛耳っているに等しい。まったく、なにが大統領だ、傀儡だよ。これではな」

ミサト「……」

大統領「日本には藪をつついて蛇をだすというコトワザがあると聞く。これは善意からくる忠告だ」

ミサト「肝に命じます」

大統領「私は残り十六時間ほど滞在する。それまでに良い返事を期待しているよ」

【ネルフ本部 発令所】

マコト「まさか、そんな」

シゲル「ひゅ~」

マヤ「い、生きてたんですね」

冬月「お前達、新司令に対してその態度はなんだ。失礼だろう」

ミサト「二点、質問を許可していただいてもよろしいでしょうか?」

ユイ「どうぞ」

ミサト「まず、今回の異動はあらかじめ決められていたのでょうか?」

冬月「葛城一尉。上層部の決定は作戦司令たる君の与り知るところではない。立場をわきまえたまえ」

ミサト「失礼いたしました。次の質問ですが、資料によると司令は初号機に取り込まれたとあります。実験中に発生した不慮の事故は、末端の職員ですら知っています」

ユイ「……」

ミサト「しかし、記載に反して碇司令はこうしてここにいらっしゃいます。この相違点についてご説明を求めます」

ユイ「今後の円滑な業務工程に関わる?」

ミサト「いえ、個人的な質問です」

ユイ「仕事に関わる話でないのならば、差し控えてもらえると助かる。プライベートを詮索されるのは好きじゃないの」

ミサト「ですが、職員全体が困惑しているのも事実です」

ユイ「そう、全く関係ないとは言えないのね。であるならば、データを開示します。気になる職員は後で見なさい」

ミサト「承知しました」

冬月「全館放送に切り替えろ」

オペレーター「了解」カチ

冬月「これから新司令の就任挨拶を行う、作業中の職員は手を止めて聞くように。では、ユイくん」スッ

ユイ「――この度、本日付けで特務機関ネルフ総司令に就任いたしました、碇ユイです。皆、急な人事異動で戸惑いがあるだろうけど、私達の目的は使徒殲滅。忘れないで。誰であろうと、不変だということを」

マヤ「……」

ユイ「命をかける、その決意と覚悟を持ってここに立っています。あなた達が自分の仕事に誇りを持っているように、この私も人類の為に働く一員なのです」

マコト「……」

冬月「彼女の能力については、私が保証しよう。碇に負けず劣らずのキレものだよ、敬うように……以上で挨拶を終える、放送を切れ」

オペレーター「はっ」

ユイ「では、バタバタして申し訳ないけど、葛城一尉」

ミサト「はっ」 ビシ

ユイ「最初の命令になります。零号機を現時刻をもって凍結」

ミサト「と、凍結っ⁉︎ 待ってください! 零号機はようやく予備のパーツを換装し終えたところで!」

ユイ「あくまで暫定的な処置です。三号機配備を受け入れる体勢は必要ですから」

ミサト「……」

ユイ「アメリカ側がどう主張しようと、こちらに丸投げの状態なのよ。反発を抑える予防策だと考えてくれる?」

ミサト「それは、たしかに。使徒が襲来した有事の際には解除されるのでしょうか?」

ユイ「投入やむなしと判断した場合にはね。その采配は、作戦司令に一任します」

ミサト「なぜ零号機を? レイは安定していますし、三号機でもよろしいのでは」

ユイ「零号機はプロトタイプ。試作品なのよ、弐号機で完成したエヴァシリーズの後継機が三号機。データを集めるのに都合が良い」

ミサト「では、大統領に受け入れ了承の旨、お伝えするということで、よろしいですね」

冬月「問題なかろう。これでキミはエヴァ四体の指揮権を管理する立場になるな」

ミサト「はっ」ビシ

冬月「今後とも精進するように」

ミサト「(その気になれば、世界を滅ぼせるわね)」

【ネルフ本部 営倉】

冬月「先ほどの放送は聞いたな」

ゲンドウ「冬月、裏切ったのか」

冬月「どう答えたら満足する」

ゲンドウ「ふざけるのはよせ。俺を見限ったな」

冬月「卓上の将棋盤を持ってきた。久しぶりに一局打たんか」

ゲンドウ「……」

冬月「上の連中の愚痴に付き合って疲れていてね、息抜きがしたい。勝手に広げさせてもらうよ」

ゲンドウ「ユイはどういうつもりだ」

冬月「本将棋というのは戦略の駆け引きだ。時には数百手先を読み合い、駒を奪い合い玉を目指す。玉とは王だ」 パチ パチ

ゲンドウ「……」

冬月「気がつかぬままに囲まれている場合もある。このようにな」パチ パチ

ゲンドウ「……」

冬月「そうなると退路はない。逃げ道を塞ぐまでをも計算に入れているからだ。待っているのは詰みという終局」

ゲンドウ「いまだ詰んではいない」

冬月「いや、既に投了しているのだよ。老人たちは我々の企みに気がついてしまった。後は、答え合わせを残すのみ」

ゲンドウ「……」

冬月「内部から伏兵に崩壊させられたのだ。相手が悪かったな。我々の手の内を知り尽くしていた」

ゲンドウ「……」

冬月「改まって言うに及ばないが、責任追及は免れんだろう。もうすぐゼーレから使いの者が来る」

ゲンドウ「これで終わりか」

冬月「呆気ないものだがな。仕事が残っているので失礼させてもらうよ。盤面はそのままにしておいてくれればいい」スッ

ゲンドウ「……」

冬月「付き合いは楽しいものではなかったが、礼を言わせてくれ。これまで、ありがとう」コツコツ

【数時間後 同営倉】

保安部「立て」

ゲンドウ「……」スッ

リツコ「待って。少し話があるから、あなたは外で待機」

保安部「はっ。終わりましたらお声をおかけください」カシュ

ゲンドウ「なにをしにきた」

リツコ「今の気持ちを聞きにきたのよ」

ゲンドウ「ふっ、そんなものを聞いてなんになる」

リツコ「補完計画の目的を聞いたわ。決断した奥様の行動はまさに電光石火だった。なにを意味するかわかる? ずっと機会を伺っていたのよ。これでシナリオはご破算」カチャ

ゲンドウ「そうか」

リツコ「……っ! それだけ⁉︎ なんとか言ったらどうなの! 私が憎いでしょう⁉︎ それとも、私には憎しみを抱く感情すらないっていうの⁉︎」

ゲンドウ「……」

リツコ「これまで、どんな辛い命令だって耐えてきた! 振り向いてほしかったから! ……でも、それも終わり」

ゲンドウ「……」

リツコ「最初に犯された時は嫌悪感しかなった。私でさえわからなかったのよ! 回数を重ねるにつれて安らぎを感じ愛されたいと願うようになるなんて!」

ゲンドウ「目はかけていた」

リツコ「なにもかもウソよ! あなたが幸せになるのなんて許せない。許してはならない。だから、壊すの。今さら息子と奥様を取り戻して仲良くするだなんて、虫が良すぎると思わない?」

ゲンドウ「……」

ユイ「失礼するわよ」カシュ

リツコ「はい」スッ

ゲンドウ「ユイ……」

ユイ「あなた、もうおしまいよ。ネルフの権限と担当している業務は私が引き継ぐ。安心して退陣してもらっていいわ」

ゲンドウ「なぜだ、なぜこのような真似をする」

ユイ「計画には修正が必要なの。黙って見ていてもよかったのだけど、あなたでは完遂できそうにないから」

ゲンドウ「……」

ユイ「引き際も肝心だとわかってちょうだい。大丈夫、きっと良い方向に持っていってくれる」

ゲンドウ「シンジに託せというのか」

ユイ「未来を担うのはいつだって若人よ。バトンを紡いでいくだけ、シンジもいつかは歳をとり次の世代を希望を託すことになる」

ゲンドウ「赤木博士」

リツコ「……」

ゲンドウ「その拳銃で俺を撃て」

リツコ「……」ピク

ゲンドウ「せめてもの償いだ。キミには辛い思いをさせた」

ユイ「はぁ、相変わらず不器用でバカね。撃たせたら一生枷になって残り続けるわよ。拳銃をさげなさい」

リツコ「私は、私は」プルプル

ユイ「赤木博士。腕をおろしなさい」

ゲンドウ「ユイ」

ユイ「なに?」

ゲンドウ「俺たちの息子を、シンジを頼んだ」

ユイ「言われなくてもそうするわ」

リツコ「……っ! 私の目の前で夫婦の会話をしないでちょうだい!」パァン

ゲンドウ「うっ」ドサ

リツコ「あ……っ!」ヘタリ

ユイ「あらあら、撃っちゃったわね」

リツコ「違う、そんなつもりは、勢いで、私、なんてこと……」

ユイ「……」コツコツ

ゲンドウ「ごほ、くだらん結末だな」

ユイ「肺を貫通した?」スッ

ゲンドウ「ああ」

ユイ「そう。このまま死ぬ?」

ゲンドウ「そうしよう、ぐふっ、げほっ」

ユイ「赤木博士」

リツコ「……う……あ……」ガタガタ

ユイ「この人はここで死にたいそうよ。拳銃を貸してもらうわね」スッ

ゲンドウ「すまない」

ユイ「最後まで、人に迷惑をかけるんだから」パァン

【ネルフ本部 テラス】

シゲル「しっかし、あの見た目で碇司令の妻とは信じられないねぇ」

マヤ「若作りしてるっていうメイクでもないみたいだけど、年相応には見えないわね」

シゲル「あれは着痩せするタイプだぜぇ? 服の下はけっこうなボインと……」

マヤ「う、不潔」

マコト「だけど、やっぱり変じゃないか」

マヤ「……?」

マコト「公開されたデータに目を通してみたけど、サルベージに成功していたとあるだろ?」

マヤ「ええ」

マコト「これまでどうして伏せていたんだろう。エヴァに取り込まれて生還した事例も初だが、研究としても歴史に残るサンプルじゃないか」

マヤ「だからこそ非公開にしておいたんじゃないかしら」

マコト「どういう意味だ?」

マヤ「MAGIもそうだけど、ブラックボックスはほとんど解明されてないじゃない。多くに知らす必要はなく、水面下で研究すると判断されたのよ」

マコト「そうかなぁ……」

ミサト「好意的な受け取り方ね」

マコト「葛城さん」

ミサト「夕食中にごめんなさい。私も相席させてもらっていい?」

シゲル「まぁ、俺たちは」

マヤ「どうぞ。あっ、味噌ラーメン頼まれたんですか?」

ミサト「え? ええ、そうね」コト

マヤ「ここ、職員の間でもラーメンが評判で」

マコト「マヤちゃん」

マヤ「すみません。なにかご用件があるんですか?」

ミサト「かまわないわ。さっきの話に加わりたかっただけだから」

マコト「と、いうと、新司令の話ですか?」

ミサト「ちょっち、気になるのよ。急な決定にしては、あまりにも用意周到すぎない?」

マヤ「人事ですか?」

ミサト「それもあるけど、業務の引き継ぎに関しても、堂々としすぎてるというか、迷いが見えない」

マヤ「私はそうは思いません。ネルフ代表ですから、有能であるのは必須だと考えます」

ミサト「そうね」

マコト「サルベージについて疑問が残るのを除けば、文句のつけようがありませんよ。経歴についてはネルフ創設者の一人ですし、エヴァ研究の功労者でもあります」

シゲル「加えて、副司令の口添えもあるんすから」

ミサト「だぁっ! 私の考えすぎかしらねえ」ガシガシ

マヤ「他になにか気になる所でも?」

ミサト「うまく説明できないけど、女のカンよ」

マコト「またですか……」

ミサト「そーよ。なんかヤバそうな気がする」

シゲル「使徒が来るのが一番やばいっすよ」

ミサト「そう……なんだけどねぇ」

前の流れも悪くはなかったかなと思うんですが、察しの通り丸々変えちゃいます

箇条書きでよければかまわないすよ
今日から旅行なんでレスは数日しません

帰ってきたんで再開してきます

【ネルフ本部 執務室】

冬月「死体の始末は済んだのかね」

ユイ「はい、万事滞りなく。ひとつの終わりを迎えました」

冬月「人の生は儚いものだと改めて実感する」

ユイ「忍び寄る影に気がついていなかっただけ……先生ほど長生きされても、死という概念が恐ろしいですか?」

冬月「年寄りには、悪い冗談だ」

ユイ「私はこわくはありません。ですが、志し半ばで死ぬのが辛い」

冬月「碇とて例外ではなかろう。まさかキミの手で葬りさられるとは」

ユイ「来世、というのは変ですが、またきっかけはあります。あの人の願いは、私とシンジに託されました」

冬月「そうか、では少なからず救われたのかもしれんな……これからどうする」

ユイ「補完計画をよりはやく遂行します。使徒の襲来を待つ必要はありません。彼ら個体が目指すべきはアダムであり、種の生存本能がなくなればどうなるか……」

冬月「お手並み拝見させてもらうよ」

ユイ「先生は、これまでと同じく副司令として補佐をして頂きます」

冬月「承知しているよ。地盤固め、その為に俺を生かしておいたんだろう」

ユイ「先ほど、鈴から連絡がありました」パサ

冬月「これは……」

ユイ「戦自のバックについているのは、いうまでもなく日本政府です」

冬月「退屈せんな。ネルフ職員は組織という建前上納得させられても、外部はどうしようなかろう」

ユイ「政治にはとかくお金がかかるものですからね」

冬月「つつける場所を探しているのだろう。ネルフの弱みを握れればこれ以上ない優位性がある」

ユイ「将棋でもさされます?」

冬月「結構だ。キミと指しても面白くない」

ユイ「ふふ、たしかに私では相手になりませんね」

冬月「おごりはいつか、足元をすくわれるやもしれんぞ」

ユイ「そんなつもりは。私は“待ち”が得意だと先生もご存知でしょう」

冬月「……」

ユイ「とはいえ、ただ黙って見ていては好きなように立ち回らせてしまいます」

冬月「ならばどうする」

ユイ「餌をちらつかせます、食いつきやすいものを」

【ミサト宅 マンション】

アスカ「えぇ~~~~⁉︎ 三号機ぃ~~⁉︎」

ミサト「そーよ」カシュ

アスカ「エヴァが三体も配備されてるのに⁉︎」

ミサト「四体目ね」トクトクトク

アスカ「やれやれね。使徒が来ないのにエヴァばかり増やしてどうすんのよ。それでパイロットは?」

ミサト「これから選定するはずよ、それともうひとつ」

アスカ「……?」

ミサト「司令が交代になったわ。明日、パイロット達にも挨拶をしてもらうから」

アスカ「はぁっ⁉︎」ガタッ

ミサト「前司令はアラスカに。後任になったのは碇ユイ司令だそうだよ」

アスカ「碇? ファミリーネーム?」

ミサト「碇司令の奥さん。シンジくんのお母さん」

アスカ「あいつのママって生きてるんだ……。なによ、恵まれた環境じゃない」

ミサト「……」

アスカ「前司令は、クビにでもなったの?」

ミサト「詳しい理由についてはわからない」

アスカ「どうして?」

ミサト「普通の企業だって異動については辞令がでるだけ。理由についてまで説明されるなんて通常はなかったりすんのよ」

アスカ「ここが普通ぅ?」

ミサト「そうね、少し、違うかもしれない。軍属でも民間企業でもないわ。でも規則や階級は重んじているの、発令には絶対遵守。さしたる例としてはこれがある」

アスカ「そりゃそうでしょ。ミサトの襟にも階級章のピンバッチつけてるじゃない」

ミサト「前身は研究所だったと聞いてるわ。軍隊色が濃くなったのはセカンドインパクトと使徒のせい。各国政府による後ろ盾によって強固な地盤になっていったの」

アスカ「……」

ミサト「人事については、とてもデリケートな部分よ。組織内の決定力、パワーバランスを塗り替えてしまうから。一国よりもさらに上の各国代表団、ゼーレという委員会に一任されている」

アスカ「いざとなったら戦争でもなんでもできるでしょうに」

ミサト「私たちは国家間の争いを生むために編成されたわけじゃない。あくまで対使徒用の集団なのよ」グビ

アスカ「……」

ミサト「職員の多くは、拳銃の射撃訓練を受けていても、実際に人を撃った経験はないし、だから、銃器の扱いについては戦自に協力をしてもらってる」

アスカ「ふーん? よくわかんないけど、ようするに機密ってわけ?」

ミサト「まぁ、そうね」

アスカ「秘密主義ってやだな」

ミサト「幻滅した?」

アスカ「少しね」

ミサト「民間と軍隊の融合体みたいなものね。使徒に関係する場合には、外部に対しての影響力や発言力はかなりのものよん?」

アスカ「わかってる。弐号機運搬で連合軍の艦隊を護衛にしてたじゃない。新司令ってどんな人?」

ミサト「初対面の印象は……そうね、柔らかい人ってところかしら」

アスカ「もっと具体的にないのぉ?」

ミサト「前の碇司令よりはとっつきやすそうって感じ?」

アスカ「あれ以上だったら驚くっちゅーの……。経歴は?」

ミサト「データによると、エヴァの開発責任者はリツコだけど、システムを作りあげたのが彼女みたい。自分自身が率先して実験台になったり、貢献は計り知れないわ」

アスカ「あぁ、そういえば取り込まれたっていうの?」

ミサト「この界隈じゃ有名な話だもんね。まるで悲劇のヒロインって感じ」

アスカ「戻ってこれるんだ」

ミサト「サルベージ計画が成功していたらしいの。なんで伏せてあったのか機密扱い」 ペコ

アスカ「……」

ミサト「もし、アスカやレイが取り込まれたとしても帰れる方法が見つかってよかったわね」

アスカ「うげっ、そんなの想像したくないんですけどぉ」

ミサト「もちろんないにこしたことはないわ。だけど、初号機みたく暴走されたら制御は難しいのよねぇ」 カラン

アスカ「ごちそうさま。……赤木博士よりエヴァに詳しい人か」スタスタ

ミサト「ああ~、立ったついでにエビちゅ、もう一本とって」

アスカ「たく、よく飲むわね」ガチャ

ミサト「一日の疲れを癒してくれる魔法の薬♪」

アスカ「風呂は命の洗濯とか言ってなかった?」スッ

ミサト「それはまた別のお話」

アスカ「あっそ……シンジが学校に来なかったのはママが理由? 今頃家族の団欒でもしてるの?」スッ

ミサト「へ? シンジくんが、学校に来てない?」

アスカ「……?」

ミサト「どして、来てないの?」カシュ

アスカ「あたしが聞いたのに知るわけないでしょ」

ミサト「(保安部から報告があがっていないのは妙だわ。なにかあったのかしら)」

アスカ「ミサト? 知らなかったの?」

ミサト「……なぁ~に? アスカってば、シンちゃんが気になるんだぁ~?」ニヤニヤ

アスカ「なぁっ⁉︎ ぬぁ、なななな、なんでそうなるの⁉︎」ボッ

ミサト「あらあら、顔が真っ赤になるってことは案外遠からず……」

アスカ「ば、バカにしないでよね! あんなやつがどこでなにしてようと知ったこっちゃ!」

ミサト「だったら、どうして赤くなんのよ」

アスカ「うっ」チラ

ミサト「どこ見てんのよ? 鞄……?」

アスカ「あっ、いや、べつに!」プイ

ミサト「学校からのプリント? だぁ~めよ! ちゃんと見せなさい!」ガタ

アスカ「違うったらぁ! 本当になにもないの!」

ミサト「あのねぇ! 今のあんたの保護者は私なんだからね! ……なにこれ」スッ

アスカ「はぁ……」

ミサト「ネルフの報告書じゃない。シンジくんとの相性……ってぇ! なんなのよこれはぁっ⁉︎」バンッ

【付属病院 205号室】

保安部「うっ、お、お前は……!」ドサッ

レイ「……」ガラガラ

シンジ「……」すぅーすぅー

レイ(少女)「夢の中に入るわ。隣で寝て」

レイ「夢に?」

レイ(少女)「今なら通じ合える」

レイ「……」

レイ(少女)「碇くんもあのばあさんにはうんざりしてる。わかるもの」

レイ「ばあさんって誰?」

レイ(少女)「二人。一人目のばあさんは、発狂して私の首を絞めた赤木ナオコ。二人目のばあさんは碇ユイ」

レイ「碇くんは、私達を受け入れてくれる?」

レイ(少女)「すぐにわかるわ」

レイ「……」ギュウ

レイ(少女)「恐怖、こわいのね。拒絶されるのが」

レイ「こわい? 私、碇くんに嫌われたくない」

レイ(少女)「アダムがいる。赤子同然だけど、彼とは古くからの友人よ」

レイ「なぜ、夢の中にはいるの?」

レイ(少女)「私の中の私に勘づかれる前に、知ってもらわなくちゃ」

レイ「私を? 心が欠けているのに」

レイ(少女)「ヒトは、脆く、弱い。だから、心を重ねて、身体を重ねる」

レイ「接触と承認。なぜ、生きたいの」

レイ(少女)「答えを知りたい?」

レイ「ええ、他にはなにもないもの」

レイ(少女)「知りたい。答えは、アダムとの融合、そして、碇くんの中にある」

レイ「知らないまま消えていくのは嫌。好きじゃない」

レイ(少女)「眠りましょう」

レイ「眠りましょう」

レイ(少女)「ヒトは誰しもが夢を見る、でも、いつまでも夢を見続けてはいられないわ」

レイ「碇くん」

レイ(少女)「深く、深く、深層心理の中へ――」

【シンジ 夢 電車内】

ゲンドウ『エヴァに乗れ。でなければ、帰れ』

シンジ「なんでそんな勝手なこと言うんだよ……いきなり呼びだしておいて……!」

ゲンドウ『お前の価値はそれだけだ』

シンジ「やっぱり僕は、いらない子供なんだ! 僕なんか、どうでもいいんだろ⁉︎ 」

ミサト『どうでもいいと思うことで、逃げてるでしょ? 失敗するのがこわいんでしょ?』

シンジ「うるさい。僕にだって救えた人がいるんだ」

トウジ『シンジ、妹を転院させてくれてありがとさん」

アスカ『結局は見返りを求めてるんじゃない』

シンジ「違う」

アスカ『あんたのはただの逃げ。弱い自分を見るのがこわい。男だったら受け入れてみなさいよ!』

シンジ「うるさい、うるさいっ!」

加持『寂しいのは、一人になるのは嫌いかい?』

シンジ「好きじゃない」

ゲンドウ『逃げたいのか』

シンジ「逃げたらもっと辛いんだ! だから、逃げない」

ユイ『辛かったら、逃げてもいいのよ』

シンジ「でも嫌だ! 逃げるのはもう嫌なんだ!」

レイ(少女)「それは、自己犠牲?」

シンジ「誰? ……逃げたら、相手にしてくれなくなる。父さんだって。だから、そう、逃げちゃダメだ」

レイ「だから、逃げるのが嫌なのね。逃げ出した辛さを知っているから」

シンジ「綾波、綾波レイ。どうしてここに――」

レイ(少女)「捨てられたくない」

シンジ「父さん、僕を捨てないで。お願いだから、僕を捨てないで!」

リツコ『他人の言う意見に素直に従う、それがシンジくんの処世術』

シンジ「それのなにが悪いんだよ。そうしなきゃ、また捨てられちゃうんだ」

レイ「なにを求めるの?」

シンジ「不安からの解消」

レイ(少女)「なにを願うの?」

シンジ「寂しさの解消」

レイ「幸せを望んでいるわけじゃないの」

シンジ「その前にほしいんだ。僕に価値がほしいんだ。誰も僕を捨てないだけの価値が」

レイ(少女)「補完計画はその為にある」

シンジ「綾波、二人?」

レイ「私は私」

レイ(少女)「モデルは碇くんのお母さん」ドロ

シンジ「ひっ、溶けて」

レイ「形は必然じゃない、私をあらわすもの」

レイ(少女)「真実に目を向ける勇気はある?」ガシ

シンジ「綾波レイがたくさん……」

レイ(少女)「脳に焼きつけて」

レイ「……」

シンジ「うわぁあああああああああっ!!」

【付属病院 同病室】

レイ「……」パチ

レイ(少女)「手を離していい」

シンジ「……うぅ……ううぅ……」

レイ「このままでいいの?」

レイ(少女)「脳に直接情報を刻んだ。手にあるアダムを媒体にしてダイブしたから問題ないわ」

シンジ「ううぅぅっ!」プルプル

レイ「いつ、目を覚ます――」

カヲル「共鳴を感じて来てみれば、やっぱり、キミだったんだね」

レイ「……」チラ

カヲル「僕と同じだね。君も。そこで眠る碇シンジくんも」

レイ「あなた、誰?」

レイ(少女)「半身にすぎない。オリジナルはこっち」

カヲル「運命を仕組まれている。僕たちでさえ終わらぬ輪廻から逃れられない。そうだろ、リリス」

レイ「不快」キィーン

カヲル「おっと、まだ力を使わない方がいい。来たるべき時まではね」

レイ「……」

カヲル「表で死んでるやつはボクの仕業ということにしておいてあげるよ。その方が都合がいいと思うから」

レイ(少女)「そう、私たちは帰るわ」

レイ「……」

カヲル「僕たちはなんのために生まれてきたのかな」

レイ(少女)&レイ「答えは、碇くんとともにある」

カヲル「僕と対をなす存在。アダムを移植されたかわいそうな少年。この子に僕たちが望むセカイがあると?」

レイ「もう行く」スタスタ

カヲル「……」チラ

シンジ「はぁ、うっ、はぁ、はぁ」ビクッビクッ

カヲル「夢でさえ逃げられない。平穏はどこにあるんだろうね」スッ

【深夜 ネルフ本部 テラス】

加持「タバコ、吸わないのか」シュボ

リツコ「禁煙するわ」 カラン

加持「めずらしいな。真夏に雪が降らないといいね」

リツコ「加持くんもやめたら? 百害あって一利なしよ」

加持「たとえプラセボ効果だとしても息抜きは必要なんでね。やめた理由を聞いても? 長生きしたいからってわけじゃないだろう?」

リツコ「髪を切ろうかと迷った、と言えば察しがつく?」

加持「やはり、碇司令との決別が原因か」

リツコ「わかってて聞くなんて酷い男ね」

加持「男と女の関係はロジックじゃない。リッちゃんの言葉だぞ」

リツコ「ええ」

加持「立ち直るにしてもはやすぎる。もっとも、碇司令がその程度の男だった、というのならわからないでもないが、そうじゃなかった」

リツコ「愛していたわ。あの人の為ならどんな辛い仕打ちだとしても我慢できた」

加持「……」

リツコ「だけどね、加持くん。愛と憎しみは紙一重なのよ。好きの反対は無関心で嫌いにはならない。裏切られた、と感じた瞬間、胸に受けた傷の深さがわかる?」

加持「いや」

リツコ「わかる、なんて言えないわよね。時間、私自身、なにもかもあの人に捧げてきた。気持ちがわかるなんて軽はずみに言ったら殺してたわよ」ギュウ

加持「まだ、碇司令を恨んでるのか?」

リツコ「当たり前よ。恨んでも恨んでも足りないぐらい。でも、心のどこかであの人が恋しいと感じる」

加持「やりきれないな」

リツコ「今は、妻だった人に良い顔をしようとしてる。なにがしたいのかしらね、私は」

加持「リッちゃんは、芯を持っていると信じてるよ」

リツコ「ふふ、それが復讐のためだとしても?」

加持「俺も他人をとやかく言える立場じゃない。真実を、補完計画を見届ける為に利用しているからな」

リツコ「なぜ、そこまで? 本当に好奇心?」

加持「それが、俺の、弟たちへの贖罪だからだ」

リツコ「加持くんにとっても復讐なのね」

加持「みんな根っこに抱えるモノは同じだよ」

リツコ「まだ[ピーーー]ない。新しい目的を見つけたから」

加持「あぁ、それについては俺も同意見さ」

ミサト「いたぁ~!」ズンズン

加持「おっと」

ミサト「アスカから聞いて車かっとばして来たわよ! 加持! あんたなに考えてんの!」ガバッ

リツコ「ミサト、危うくこぼすところだったじゃない」

ミサト「あらま、いいじゃない、また注文すれば」

リツコ「軽いノリはあいかわらずね、ちっとも変わらない」

ミサト「今はこいつに話があんのよ! シンジくんとアスカの相性って……」

加持「学生の頃を思い出すな。こうして俺と葛城とリッちゃんとでよくつるんだもんだ」

ミサト「勝手に混ざってただけだったでしょ!」

リツコ「ミサトだってまんざらではなかったと記憶してるけど? キャンパスで加持くんの……」

ミサト「だぁ~っ! ちょっとちょっとタンマぁ! リツコ! なに言うつもりなの⁉︎」

加持「気になるな。続きは?」

ミサト「悪ノリしてんじゃないわよ!」

リツコ「人はいつまでも子供じゃいられない。でも、たまにはこうして童心にかえってみるのもいい」

加持「許されるのが当たり前じゃなくなってしまったが、時があるならば、甘えも重要だ。楽しくないからな」

ミサト「なに? 私だけ除け者?」

リツコ「いいえ。この空間は、三人誰が欠けても成立しないわよ」

加持「ほら、まずは飲め。マスター、ウィスキーを」 スッ

ミサト「そ、そう? ……じゃなぁ~い! 誤魔化されないんだからね!」

リツコ「司令の指示で予備案を模索している」

ミサト「ユイ司令の? ほんとなの?」

加持「あ、あぁ」チラ

リツコ「私に発令が降りて加地くんに協力してもらっていたの」

ミサト「どうしてあの子に渡したのよ」

加地「からかい半分かな。アスカには、きっかけが必要だ」

ミサト「怪しいわね。資料は来る途中に目を通してあるわ。なぜ、弐号機と初号機が?」

リツコ「零号機が凍結になれば、パイロットが一人浮くのよ? 有用な活用法を考えれば、機体の互換性、すなわち、パーソナルデータ収集は合理的判断ではなくて?」

ミサト「たしかに、それもそうか……。乗るのは生身の人間だし、病気や怪我の可能性だってある」

リツコ「その為の予備としての実験」

ミサト「にゃるほど。んで、その結果が……ふぅ~ん、二人の相性、ねぇ」

リツコ「結果はまだ聞いてなかったわね」 チラ

加地「悪くなかったよ」

ミサト「まだ試してないのに高望みはできないわ。あくまで可能性の話として」

リツコ「そうね、模擬体を使い近々にテストを行う」

加地「パイロットを遊ばせておくのはもったいないしな」

リツコ「私にとってはそれほど悪い話でもないわよ?」

ミサト「そりゃまたどうして」

リツコ「空き時間が増えるならば、それだけ実験に参加できる機会が増えるということだもの。むしろ願ったりかなったりね」

ミサト「作戦部にもちったぁ協力しなさいよ!」

リツコ「日頃からお釣りがくるぐらい協力してるつもりだけど?」

ミサト「あぁ……ソウデスネ」ガックシ

加持「さすがリッちゃんだな。うまく合わせてくれて助かったよ」ボソ

リツコ「お礼を言う余裕があるなら助けなくてもよかったんじゃない?」

ミサト「ちょぉっと、なに囁きあってんのよ!」グイ

リツコ「焼きもち?」

ミサト「じょ~だん! 誰がこんなやつに!」

リツコ「あなた、アスカに似てきたわね。いえ、元々だったかしら」

ミサト「な、な、なっ!」ワナワナ

リツコ「加持くんとやり直したいのなら、素直になりなさい」

加持「だそうだ。話があるなら聞く気はあるが?」

ミサト「話なんかないですよーだ! えぇいっ、ウィスキーロックでください!」

【翌日 早朝 第三新東京市 改札口】

アナウンス「第三新東京市へようこそ。第七環状線をご利用いただき、まことにありがとうございます。当駅は桃源台中央駅です」

マナ「うわぁ、すごい人」

アナウンス「ケーブルカーへのお乗り換えは三番線になります。Please change here for――」

男性「おっと」ドンッ

マナ「きゃ⁉︎」ドサ

男性「ちょっと、駅のホームで突っ立ってちゃ危ないじゃないか」

マナ「あ、すみません。来たばかりなもので」

男性「田舎者か? 旧市街から来たんじゃないだろうな?」

マナ「ちがいます! あの、親戚の叔父さんを訪ねて」

男性「そうだったのか」

マナ「は、はい。一応……」

男性「悪かった、ついつい疑ってしまって。第三新東京都市はネルフ職員の関係者しか住所登録ができないから」

マナ「いいんです、こちらこそ。立ち止まっててごめんなさい」 ペコ

男性「人の流れがある。急に立ち止まっては危ないよ? それじゃ」 スタスタ

マナ「ええと……」キョロキョロ

加持「よっ、迷子にならずに来れたじゃないか。上出来だ」ポン

マナ「あっ、もう、見てたんですか?」

加持「ぼーっとしてるところからしっかりな」

マナ「それなら声をかけてくれればいいのに……加持特別監査官ですね、私は戦自所属、霧島マナ隊員です。初対面ですよ? からかわないでください」

加持「わざわざ人の往来が多い玄関口を選ぶとはな」

マナ「す、すみません。地理に疎くて」

加持「トラベルマップはあらかじめ貰っているはずだろ? 何を見て来たんだ?」

マナ「それは……あ、あはは。碇、シンジくんのデータばかり読んでたので……」

加持「熱心になるのはかまわないが、その他もそれなりにな」

マナ「はい、頭に叩きこんでおきます」

加持「そうしてくれ。車を近くのパーキングに停めてある、行こうか」

マナ「はい」

【車内 運転中】

マナ「わぁ」キョロキョロ

加持「田舎者丸出しって感じだな」

マナ「高層ビルがこんなに立ち並んでいるの、はじめて見たので」

加持「中には武器そのものがはいっている兵装ビルが多い。ほら、あそこ見てみろ」

マナ「なにか書いてある……。ええと、LARGE CALIBER AUTOMATIC CANNON PLATFORM STRUCTURE」

加持「直訳すると自動砲塔。ああいった防衛設備が各所に点々としているのさ。対使徒用兵器としてね」

マナ「へぇ」

加持「少し観光でもしてくか。ジオフロントはまだ見てないんだろう?」

マナ「あの、とりあえず、私の住居にお願いします」

加持「それを聞いて安心したよ。遊びにきてるわけじゃない」

マナ「試したんですか。さっきから失礼じゃありません? 感じわるい」

加持「試す理由ならある。これから俺たちは情報を共有するパートナーになるからだ。もし身分がバレた場合はどうなる」

マナ「そ、そうですね。命、かかってますもんね」

加持「そうだ。最悪、失う危険性もありうる。それだけは忘れないでくれ」

マナ「わかりました」

加持「ここの治安について把握してるか?」

マナ「はい」

加持「聞こう」

マナ「……第三新東京都市は治外法権です。日本領地ですが管轄は政府ではなく国連軍。治安維持は国連軍とネルフ保安諜報部、そして政府の旧警察機構が担当しています」

加持「戦自の役割は?」

マナ「表向きは自衛の為の軍隊です。対使徒、並びに国外勢力への抑止力に当たります」

加持「そうだな。では、裏の顔は?」

マナ「使徒があらわれてからは、もっぱらネルフに対する牽制組織に成り下がっています。国内でこれほどの規模と資金を投入しているのを政府は怖れているからです」

加持「なにせ50兆円という投資で作られたからな、ここは」

マナ「ですので、その反面、委員会の国を動かせる資金力は魅力でもあります」

加持「いいだろう。合格点だ」

マナ「子供だと思ってバカにされてる気がします。基本ですよ」 プクー

加持「何事も基本が大事だって言うだろ? ま、これぐらい知らないようじゃここで車から降ろしてた。それだけの話さ」

マナ「……」

加持「付け加える形になるが、旧市街には入るなよ。今もなお急ピッチで進められてる建造途中、スラム街と言ったらわかりやすいか。治安が良くない。建物の崩壊の危険性もまだある」

マナ「はい、わかりました」

加持「マンションは、セカンドチルドレンと同じ棟にある一室だ。コンビニはローソンが近いから不自由はないだろう」

マナ「セカンドチルドレン? あの、任務は、サードチルドレン対象なのでは? なのに、住居はセカンドチルドレンの傍なんですか?」

加持「主目的はそうだが、接触を試みてほしい。セカンドとファーストは同年代の女の子だ」ゴソゴソ

マナ「了解」

加持「これが、同二名に関する追加資料だ」パサ

マナ「……」ペラ

加持「登校日はいつからか聞いてるか?」

マナ「ええと、明日から、ですよね」

加持「チルドレン達と顔合わせになる。第一印象は大事だぞ」

マナ「制服は?」

加持「用意してある。着いたらサイズを合わせとみるといい」

【ネルフ本部 執務室】

リツコ「お呼びでしょうか」

ユイ「第二発令所へのバックアップは順調?」

リツコ「作業工程は今の所問題ありません。元々あったOSを移すだけですわ。量が量ですので、転送速度の都合上、時間を要しますが……」

ユイ「結構です」

リツコ「お呼びしたのはこの件でしょうか?」

ユイ「いいえ。ひとつ確認をしたくて」

リツコ「なんでしょう?」

ユイ「――あなた、葛城一尉を殺せる?」

リツコ「み、ミサトを⁉︎」

ユイ「覚悟を聞きたいの」

リツコ「ミサトは、何の関係も……」

ユイ「関係ができてしまったら? あなたは非情な決断ができる? むしろ、進んで行える?」

リツコ「どういう意味でしょうか」

ユイ「あなたと、そして副司令は私についてくる選択をした。でもね、状況が変われば、簡単に覆してしまう。一時の判断が常に正しいとは限らないから」

リツコ「……」

ユイ「常に迷い、選んでいる。そうしてよかったのか、私という人間の行動を、考え方を部下の視点から観察している」

リツコ「……」

ユイ「夫は優秀な手駒を残してくれた。でも、あなた達自身が、私を見限らないとは限らない」

リツコ「楔を打つおつもりなのですか」

ユイ「赤木博士に、私がどういう存在でもいい。ただ、使えない駒はいらないの。あなたにとって利があるのならば、それだけで逆らえないはず」

リツコ「……」

ユイ「後戻りはできない。わかってるはずよ、超えてはいけない一線は、夫を死に追いやった時点で超えてしまっている」

リツコ「私に手を汚せと」

ユイ「彼女のマンションにプラスチック製爆弾を設置する手配をしなさい」

リツコ「……」ギリ

ユイ「保険としてよ。邪魔な存在になった時の。――起爆装置は、赤木博士。あなたに渡しましょう」

リツコ「心配には及びません。司令のご命令さえあれば、私の手で、ミサトを、葛城一尉を殺します」

ユイ「無二の親友を相手に、本当にスイッチを押せる? あなたが信用するに足る人物かどうか。言葉は必要ない」

リツコ「必ず実行いたします。ダミーのフェーズは次に移行しています。そちらに件については、どう処置いたしますか」

ユイ「残された資産は最大限活用しない手はない。フォースの少年を研究に参加させるから、綾波レイのデータを書き換えて」

リツコ「フォース? マルドゥックから選出されたのでしょうか」

ユイ「そうね……協力してくれているのだから教えます。フォースの正体は、第壱使徒」

リツコ「使徒⁉︎ 使徒をパイロットに⁉︎」

ユイ「マルドゥックは存在しない機関なのよ。これは夫から聞いて既に知っているはず。シンジのクラスメイトが候補者の集まりだと」

リツコ「はい」

ユイ「コアは既に用意されている。でも所詮は十四歳の子供。人間性は未成熟で、パイロットとしては見過ごさない浮き沈みがある。その点、ヒトではない彼ならば、シンクロ率を安定して、いえ、自在に操れる」

リツコ「シンクロ率を……そんな、ありえないわ」

ユイ「アダムより生まれしエヴァシリーズは可能。私たちが箸を使い食事をするより簡単にね」

リツコ「……」ゴクリ

ユイ「夫亡き今、見えない盤面の前にようやく座った。まだまだこれからよ」

【第三新東京都市立第壱中学校 体育授業中】

アスカ「ちょっと、ヒカリ、つめたっ!」

ヒカリ「あははっ、気持ちいい~」パシャパシャ

トウジ「女子はプールか。ええのぉ~涼しそうで」

男子生徒「なぁ、相田。惣流さんの写真まだかよ?」

ケンスケ「最近ガードが固くてさぁ」

男子生徒「そんなんじゃ困るよ。もうすぐファンクラブミーティングがあるんだから。景品がなくなっちまうだろ」

トウジ「ほんま、よーやるわ」

男子生徒「なんだぁ、鈴原。お主もしや綾波派閥の人間か」

トウジ「誰がお主やねん、アホ言うな。ワシはもっと人間味があっておしとやかな子がいいに決まっとるやろ」

男子生徒「腐れ外道が。惣流さん以上の女の子なんてこの世にいない。見てくれよ、これ。ファンクラブ会員一桁! どうだ? 本音はうらやましいだろ?」

トウジ「頭おかしいんちゃうかお前」

男子生徒「いい、いい、強がりだろ。単刀直入に言おう。陰ながら支える我々の同士に入らんかね?」

男子生徒B「おい、なにをくっちゃべってやがる。綾波さんこそ至高だろ、そうだよな。鈴原」

トウジ「な、なんや」

男子生徒「でたな」

男子生徒B「綾波さんは特別なんだよ。たしかに惣流さんは可愛い。顔面偏差値は70といっても過言ではないだろう。だが! 綾波さんが特別たるゆえんは美貌にあらず!」ガッツポーズ

ケンスケ「セミがうるさいなぁ」

トウジ「生態系が戻ってきとるらしいで」

男子生徒B「そんじょそこらのモブにはない、あの儚さにこそあるとなぜわからんのだ! ザ○とは違うのだよ! ザ○とは!」

男子生徒「この野郎! 赤は惣流さんのトレードマークだろうが! 何勝手に赤いモビルスーツを引き合いにだしてやがる!」

男子生徒B「自意識過剰なんだよ! 惣流派はよぉ!」

男子生徒「そうかい、ひさしぶりにキレちまったよ……屋上いこうか」

トウジ「センセは今日も学校にきとらんのか」

ケンスケ「見てないね」

男子生徒B「綾波さんに謝れ!」ググッ

男子生徒「貴様こそ惣流さんに土下座しろ!」ググッ

トウジ「それにしても、使徒はこんし、平和やのぉ」

ケンスケ「そうだなぁ」

男子生徒B「相田!」

ケンスケ「なんだ……ああっ⁉︎ ぼ、僕のビデオカメラが!」

男子生徒B「心配すんなってすぐ返すから」

ケンスケ「商売道具なんだから大切に扱えよ!」

男子生徒B「わかってるって。ごほん、いいか、惣流バカはよく聞け」

男子生徒「なんだと! 俺をバカにしてもいい! 惣流さんがバカと聞こえるような発言をするな! 綾波バカと言われたらお前だって嫌だろう!」

男子生徒B「む、それはたしかに。すまなかった」ペコ

トウジ「なんやこいつら」

男子生徒B「話を戻そう。相田のビデオカメラに昼休みを過ごす綾波さんの生態記録が収まっている」

男子生徒「それがどうした。躍動する惣流さんには敵わんぞ」

男子生徒B「まぁ話をちゃんと最後まで聞け。彼女はな、ずっと一人なんだよ。昼休みに誰かと一緒ににいるところなんて見たことがない」

男子生徒「……」

男子生徒B「かわいいのに。ずっとだぞ。男子、女子、いや、人間になんて興味がない、そう言わんばかりに窓の外を見つめている」

男子生徒「それが?」

男子生徒B「彼女は、きっと理解者を求めているんだよ。ああ、俺がそうなれたらどんなにいいか……!」

トウジ「うちのクラスって変わりモンばっかりやなぁ」

ケンスケ「そう言うなよ。大事なお客様なんだからさ」

男子生徒B「この真実がわかった時、俺は彼女に恋をした……。儚げな姿に惚れてしまったんだ。俺は思った、このことは自分だけの秘密にしようと、そう思っていたんだが……」

男子生徒C「俺が相談に乗ったってわけ。綾波さん、いいよなぁ」

トウジ「口軽すぎるやろ」

男子生徒「どこから湧いて出てきやがった!」

男子生徒D「なんだなんだ? 惣流さんの話か?」

ケンスケ「そういや、さっき職員室の前を通ったら転校生が来るらしいよ」

トウジ「転校生? この時期にか」

ケンスケ「ああ、なんでも叔父の所に来るとかなんとか」

トウジ「わざわざここに来んでも。酔狂なやつやのぉ」

ケンスケ「じ・つ・は。ここに写真があるんだよなぁ」ペラ

トウジ「おまっ! 体操服の中からださへんかったか⁉︎ 」

ケンスケ「細かい細かい。そっちの男子達は気にならないの?」

男子生徒「惣流さんじゃなきゃいやだ!」

男子生徒B「綾波さんだ!」

ケンスケ「あっそう。じゃあ、見なくていいわけだねぇ……おっと」パサ

トウジ「わざと落としよったなこいつ」

男子生徒「ん、こ、これは……!」

男子生徒B「か、かわいい……」

ケンスケ「乗るしかない。このビッグウェーブにってね」キラン

>>186
マヤでしょ
男を知らない体に無理やり乱暴して
奴隷にしなきゃね

【付属病院 205号室】

冬月「どうなっている」

医師「い、移植手術は問題ありませんでした」

冬月「なぜ目を覚まさん」

医師「今朝の診察で確認いたしましたところ、クランケ(患者)の瞳孔が拡大していました。今も変わらずです。キミ、ペンライトを」

看護師「はい」スッ

医師「注目していただきたいのは、動きです。通常、目の中心にある瞳孔は明るくなれば縮小して、暗くなれば拡大します」

冬月「ああ」

診察「睡眠時には、中程度縮小状態にあります。これは私も、あなたも、人間であれば誰しも同じです」スッ

冬月「ふむ、瞳孔が開ききったままに見えるが……」

医師「仰るとおりです。脈拍や心拍数も高く、クランケは覚醒状態にあります。“脳が起きてる”んです。様々な患者を見てきましたが、はじめてですよ。こんなこと」

冬月「これまでに似た症例がないというわけか?」

医師「そういうわけじゃありませんが。昨日までなんら異常が見受けられなかった少年という前提があります」

冬月「それで、いつ目が覚める?」

医師「先ほども申し上げましたが、本来であれば起きているはずなんです」

冬月「……」

医師「ひとつだけ、似た症状があります」

冬月「言ってみたまえ」

医師「薬物、つまり麻薬中毒患者です」

冬月「なんだと?」

医師「中でも強い覚醒剤を服用すると交感神経や自律神経に異常をきたします。ひどく興奮するので。このように瞳孔が開きっぱなしになったり、小さくなりにくかったりします」

冬月「それはないだろう。だが、異常な状態であるというのはわかった」

医師「その、碇ユイ司令には」

冬月「報告せねばな」

医師「重ねて申しあげますが、手術はうまくいっています! 我々に落ち度はありませんでした、どうか! 命だけは!」ガシ

冬月「心配しなくていい。タブリスの仕業というのは見当がついている。まったく、厄介なことをしてくれる」

医師「……よかった、死ななくて済んだ……」ホッ

冬月「安心するにはいささかはやいぞ。もし、容体が悪化したら命はないものと思え」

医師「そ、そんな」

冬月「絶対に死なせてはならない子供だ。二十四時間体制で治療を続けろ……なにか変化があればすぐに連絡をするように」

医師「はっ!」ビシッ

冬月「(問題は、サードチルドレンになにをしたか、だな……)」

>>189は名前が診察になってるところがあるのでレスしなおします

【付属病院 205号室】

冬月「どうなっているのだ」チラ

シンジ「……」シュコー ピッ ピッ ピッ

医師「い、移植手術は問題ありませんでした」

冬月「この呼吸器は?」

医師「大事をとって取りつけています。今朝の診察で確認いたしましたところ、クランケ(患者)の瞳孔が拡大していました。今も変わらずです。キミ、ペンライトを」

看護師「はい」スッ

医師「注目していただきたいのは、動きです。通常、目の中心にある瞳孔は明るくなれば縮小して、暗くなれば拡大します」カチ カチ

冬月「ああ」

医師「睡眠時には、中程度縮小状態にあります。これは私も、あなたも、人間であれば誰しも同じです」スッ

冬月「ふむ、瞳孔が開ききったままに見えるが……」

医師「仰るとおりです。脈拍や心拍数が高く、クランケは覚醒状態にあります。“脳が起きてる”んです。様々な患者を見てきましたが、はじめてですよ。こんなこと」

冬月「これまでに似た症例がないというわけか?」

医師「そういうわけじゃありませんが。昨日までなんら異常が見受けられなかった少年という前提があります」

冬月「それで、いつ目が覚める?」

医師「先ほども申し上げました通り、本来であれば起きているはずなんです」

冬月「わからないと言うのは許されんよ」

医師「……ひとつだけ、似た症状があります」

冬月「言ってみたまえ」

医師「薬物、つまり麻薬中毒患者です」

冬月「なんだと?」

医師「中でも強い覚醒剤を服用すると交感神経や自律神経に異常をきたします。ひどく興奮するので。このように瞳孔が開きっぱなしになったり、小さくなりにくかったりします」

冬月「それはないだろう。だが、異常な状態であるというのはわかった」

医師「その、碇ユイ司令には」

冬月「報告せねばな」

医師「重ねて申しあげますが、手術はうまくいっています! 我々に落ち度はありませんでした、どうか! 命だけは!」ガシ

冬月「心配しなくていい。タブリスの仕業だと調べがついている。まったく、厄介なことをしでかしてくれる」

医師「……よかった、死ななくて済んだ……」ホッ

冬月「安心するにはいささかはやいぞ。原因究明と意識回復に全力をもってあたれ。もし、容体が悪化したら命はないものと考えるんだな」

医師「そ、そんな」

冬月「貴様の命よりはるかに重い、絶対に死なせてはならない子供だ。二十四時間体制で観察を続けろ……なにか変化があればすぐに連絡をするように」

医師「はっ!」ビシッ

冬月「(問題は、サードチルドレンになにをしたか、だな……)」

【ネルフ本部 営倉】

ユイ「シンジに何をしたの?」

カヲル「……」

ユイ「素直に言わなければ苦痛を味わってもらうわよ。あなたにだって、痛覚はあるでしょう」

カヲル「なぜ、ボクだと?」

ユイ「昨日の深夜、微弱ではあるけどMAGIが信号をキャッチしていたわ。パターンは青。使徒によるものよ」

カヲル「騒ぎにならないなんて、防犯意識に欠けますね」

ユイ「勝手な振る舞いに関して目を瞑るつもりでいたから。エマージェンシーコールを解除してログを消去するよう事前に連絡してある」

カヲル「なるほど。裏工作がお好きなようだ」

ユイ「ただし、あの子は駄目よ。担当医による報告書を読んだわ。まさか、失明させた?」

カヲル「だとしても、起きない理由にならない。少し、挨拶しただけですよ」

ユイ「……」キッ

カヲル「司令でも冷静になれない時があるんですね。人は完璧である必要はありませんが、まず、最初にあなたの中における彼の重要性を理解されてますか」

ユイ「……」

カヲル「もしも、互いの目を利用してセカイを垣間見えるのなら、争いはなくなるのかな……」

ユイ「変化は自然の摂理」

カヲル「生じるにはゆっくりと時間をかける必要がある。変化とは経験を蓄積させてはっきりとあらわれるものだから。強制的な干渉によって引きおこそうとしているね?」

ユイ「人類に残されている時間は長くない。待っていられないのよ」

カヲル「そうしているのは、リリン、キミたちの方だよ。観測者から独立した視点では見ていられない」

ユイ「……」

カヲル「人類は自らを複雑な方法で楽しませることが可能な知能を持つ唯一の種だというのに」

ユイ「質問に答えなさい」

カヲル「人や場所、物というのは五感で知覚してはじめて、そこに在(あ)ると認識できる。当たり前にあるから気がつかないだけで」

ユイ「つまり」

カヲル「意識の繋がりがあるというのを碇シンジくんに教えただけさ」

ユイ「目がさめるのは――」

カヲル「彼が現実を辿ったら醒める。匂いを嗅いで、なにかを見るように、当たり前として意識の一部が認められた時に」

ユイ「はっきりしたわ。弄ったのは、脳ね」

カヲル「我慢が必要です。解放はそう遠くありませんよ」

ユイ「二度と手を出さないでちょうだい」

カヲル「これは驚いた。ボクが干渉してもあなたが干渉しても同じでは?」

ユイ「交わした盟約があるはずよ。裏切りは許されない」

カヲル「……」

ユイ「望みどおり、あなたに死を与えます」

【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「シンジくんなら浅間山で行われるポジトロンライフル小型化試験に協力してもらってるわ」

ミサト「ちょっとちょっと、聞いてないわよぉ」

リツコ「報告する義務ある? 管轄から外れてるでしょ」

ミサト「同居を解消した今でもパイロットは私の作戦に必要不可欠です。終了予定は? 赤木博士」

リツコ「長くて一週間ぐらいかしら」

ミサト「い、一週間⁉︎ そんなに⁉︎」

リツコ「新兵器開発に重要性がないとでも? 技術部の人間を敵にまわすわよ」

ミサト「う、う~ん、それは、そうだけどぉ。使徒が来たら」

リツコ「すぐに呼び戻す。そういえば、シンジくんに家政婦のアルバイトをさせる案件は聞いた?」

ミサト「アルバイトぉ?」

リツコ「母親は父親と違って多少母性があるようね。無関心を貫き通してきた人と違って」

ミサト「なんか、言い方にトゲがない?」

リツコ「気のせいよ。前司令からシンジくんを部外者として扱えと発令があった。意図するところは厳しい環境に置きたいからだと推測できるわ」

ミサト「だから、引き継いでやるって? ……掃除代行とか料理代行をやる職種よね。顔見知りだと、甘やかしてしまうだろうし、真逆の環境に招き入れてしまわない?」

リツコ「働きぶりに対して採点を緩くしたら処罰対象」

ミサト「おや、まぁ」

リツコ「彼には、合っていると思うわよ」

ミサト「たしかに、学業があるし、肉体労働に向いてるようにも見えないし……なにより日頃から似たようなことやってるもんね。金銭面の補助としていいアイデアかもしれない」

リツコ「ミサトが引き受け先に名乗りでてあげたら?」

ミサト「許可、でると思う?」

リツコ「でないでしょうね。あなた、隠れて甘やかすもの」

ミサト「アスカの栄養管理をしなくちゃいけないから、うちの台所事情考えるとほしいんだけどなぁ~」

リツコ「今の時点で有力なのは、マヤかしらね」

ミサト「伊吹二尉のとこ?」

リツコ「マヤは嫌がるでしょうね、しかし、命令であれば従うわ」

ミサト「嫌がるって、どして?」

リツコ「相手が、男だから」

ミサト「まだまだガキんちょよ。そんなに意識しなくてもいいんじゃない?」

リツコ「ミサトみたいにみんなズボラなわけじゃない」

ミサト「さりげなぁく人をディスるの、やめてくれない?」ヒクヒク

リツコ「あら、本音を言ってもいいの?」

ミサト「……?」

リツコ「さみしかったからでしょ、最初にあなたがシンジくんを受け入れようとしたのは」

ミサト「なにが言いたいわけ」

リツコ「不機嫌になると思ったからボカしたのよ。誰にだってつつかれたくない部分はあるものね」

ミサト「……」

リツコ「仕事が残ってる。お帰りのドアはあちら」チラ

ミサト「はいはい、お邪魔しました」

勘違いないようにレスしておきます
ヒロインに関するレスはネタバレになるので解答しません、内容に関しても>>187は自分ではありません

二次SSなんで原作の雰囲気というてもあくまでガワだけすよ
オリジナルでやってるわけじゃなくキャラクターとか設定とかは借り物なわけですから
再現を目標にすると仮定してどんなに頑張ってやっても二次のカテゴリからは抜け出せませんし限界があります
なんでそこは割り切って書いてます

思いきって性格をもっと動かしたりしてもいいんでしょうけどエヴァの良い部分と面白いと感じる部分を自分なりに書きたいて感じすかね

【夕方 ネルフ本部 執務室】

アスカ「ズルくない? 新司令が就任したらはやくも個人プレイを許可しちゃってさぁ」

レイ「……」

ミサト「リツコに協力をするのは、個人と違う。あの子だって頑張ってるわ」

アスカ「なんでそこまで気にかけるの?」

ミサト「ん?」

アスカ「嫉新司令が特別扱いするのはナナヒカリだからわかる。だけど、なにもミサトまで。肩入れしすぎじゃない?」

ミサト「見透かされてるのはこっちだったか」

アスカ「なにか理由あったりすんの」

ミサト「シンジくんは、似てるの。性格がじゃない」

アスカ「そんなの、見ればわかるわよ」

ミサト「父も、放任主義でいつもひとりぼっちだったから。私は、家庭を考えない父さんが大嫌いだった」

アスカ「シンジに自分を重ねて……?」

ミサト「不満がないわけじゃないし、人の顔色を伺う態度は、私は好きになれない。だけど、肩入れしてるのも事実ね」

アスカ「作戦司令なんだから、成績で扱ってよね……あたしだって命かけてるんだから」

ミサト「公私混同は厳禁、ね。わかってる。さ、入るわよ」コンコン

冬月「はいりたまえ」

ミサト「失礼いたします」カシュ

アスカ&レイ「……」スッ

ミサト「ファーストチルドレンとセカンドチルドレン両二名を連れてまいりました」

冬月「ごくろう、下がっていいぞ」

ミサト「はっ!」ビシッ

アスカ「ちょっと、帰っちゃうの?」こそ

ミサト「とって食われたりはしないわよ。いつも通りやんなさい」ポン

アスカ「はぁ……」

冬月「葛城一尉、どうした?」

ミサト「いえ! では、失礼いたします」コツコツ

冬月「パイロット、近くに来たまえ」

アスカ&レイ「はい」

冬月「知っているだろうが、司令が交代となった。前司令であるゲンドウ氏はアラスカで使徒に関する調査を開始している。新司令は彼の妻であり、ネルフに多大な貢献をしているユイ氏が就任した」

ユイ「どうも」ギシ

アスカ「(シンジのママねぇ)」

冬月「挨拶をせんか」

レイ「ファーストチルドレン、綾波レイです」

アスカ「セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレーです。よろしくお願いします」

ユイ「もっと、くだけた態度でかまわない」

冬月「それでは、他に示しが」

ユイ「この子達はパイロットですわ。それにまだ中学生でもあります。上下関係については多少、容赦してあげましょう」

アスカ「馴れ合いは必要ありません。私は私のやるべきことをやる、それだけです」

ユイ「本分は、エヴァに乗るだけかしら」

アスカ「……?」

ユイ「あなたは中学生でもあります。エヴァに乗るばかりで他を疎かにしないように」

アスカ「あたしはこれでも大卒です! 資料読んでないの⁉︎」

冬月「口のききかたに――」

ユイ「いいんです、先生」スッ

アスカ「……」

ユイ「たくさん遊び、友達を作り、恋をしなさい。必要な経験よ」

アスカ「それも命令なら」

ユイ「斜に構えないで、おばさんのお節介よ。あなたの母親の古い友人として言っているだけ」

アスカ「ママのっ⁉︎ どういうこと? あたしのママを知ってるの⁉︎」

ユイ「よく知ってる、一緒に研究していたんだもの」

アスカ「それじゃあ、ママを軽蔑してるのね」

ユイ「どうして?」

アスカ「大人達は私を哀れんだわ! ママは頭がおかしくなったって! みんなが同情の視線を向けてきた!」

ユイ「そう思っていない。キョウコは頭の回転がはやく、聡明な女性よ」

アスカ「嘘よ! 甘い言葉を囁いて信じさせようして結局、パパもママを見捨てたわ!」

ユイ「あなたは見捨てなかったの?」

アスカ「見捨てるわけない! ママを辞めないでほしかっただけ!」

ユイ「そう、危ういバランスで成り立っているのね……そっちの子は、綾波レイね」

レイ「はい」

ユイ「身体の調子はどう?」

レイ「赤木博士に診てもらっています。問題ありません」

ユイ「二人ともよく聞きなさい。私は前司令の妻であると同時に、サードチルドレンの母親でもあります」

アスカ「……」

ユイ「しかし、血縁である、これは職務に一切関係ありません。やっかみをせず、エヴァパイロットとしての責務を果たしなさい」

アスカ「そうは言ってもシンジを特別扱いするんでしょ」

ユイ「立場は理解しています。えこひいき扱いしないと約束しましょう」

アスカ「……」

ユイ「口約束だけでは信用できない? 副司令、セカンドチルドレンのシンクロ率は?」

冬月「50前半だ」

ユイ「70にまで高めることができれば、私の権限で希望をひとつ叶えてあげます」

アスカ「もので釣ろうって魂胆?」

ユイ「良い成績を残せば褒美を与える、単純で悪い話ではないはずよ。なにもないよりは」

アスカ「いらない。私はプライドを持ってエヴァに乗ってるのよ、エースパイロットでいられればいい。それがなによりの褒美だわ」

ユイ「頑張って、誰に褒められたいの?」

アスカ「……」ピクッ

ユイ「母親はもういないのよ」

アスカ「やめて、聞きたくない」

ユイ「希望を思いついた時に言ってちょうだいね。ただし、台風と同じで最大瞬間風速だけ高めても意味はないから。レイも同じ条件でいいわよ」

冬月「そろそろ時間だ」

ユイ「ええ。挨拶は以上です、下がってよろしい」

アスカ&レイ「了解」

冬月「――じゃじゃ馬め、可愛げのないやつだ」

ユイ「あの年頃の子は思春期が重なっています。色々、繊細なんですよ」

冬月「レイはともかくとして、セカンドチルドレンの資料は事前に把握してあるのだろう」

ユイ「ここに」パサ

冬月「トラウマをつつくようなマネをしたな」

ユイ「赤木博士がまとめた書類は簡潔明瞭、幼少期にあった母親の自殺。その目撃が、その後の人格形成に強い影響を及ぼしたと記載されています」

冬月「ああ」

ユイ「精神の脆さと危うい均衡のバランス、どれほどの拒絶を見せるのか、控え目にでも確認をしたかったんです」

冬月「それで、ユイ君はどう見る」

ユイ「想像以上の反応ですね……」

冬月「ふむ」

ユイ「あの子の大人への強い憧れは、幼い自分に対する嫌悪感の裏返しでもあるのでしょう。最初はそれだけだった、しかし、いつしか嫌悪感は強迫観念へと変わり自身を追いつめはじめます」

冬月「それがプライドにひっかかっているのか」

ユイ「エヴァの場合は必ずしも良い数値に偏るとは限らない。A10神経で接続している以上、生身の人間では波があるからです。でも、あの子は不調な自分を許せない。なぜならば……」

冬月「亡き母親の影を追い求めているのだろう」

ユイ「恐ろしいのでしょう、必要とされなくなるのが。母親亡き後、残ったのは努力と虚栄心という拠り所。パイロット候補に選出された時、キョウコは笑顔を見せたそうです」

冬月「だが、パイロットに選ばれたからこそ、委員会に母親を死なせる決定をさせた。コアに必要だからな」

ユイ「キョウコがおかしくなってしまったのにも理由があります。どちらにせよ、あの子の運命です」

冬月「いっそ、母親がコアにいると打ち明けてしまったらどうだ?」

ユイ「面白い考えです。弐号機の覚醒、そして精神の安定化につながるでしょう。ですが、懸念がないわけでもありません」

冬月「なぜかね」

ユイ「先ほども申しあげましたが、エヴァはA10神経、つまり多幸感がシンクロの鍵です。数値を高めるには深く深く、一体感を求めコアに近づかなければなりません」

冬月「潜りすぎるというわけか」

ユイ「歯止めがきかなくなれば、取り込まれるのみ。つまり、数値が高くなるにつれてその危険深度に近づいていくのです」

冬月「諸刃の剣だな」

ユイ「L.C.Lには麻薬に似た成分が入っています。あくまでも補助的にですが、いずれ身体に害をなすことも」

冬月「判断はユイ君次第だ。候補はあやつにするのか?」

ユイ「私がほしいのはエースパイロットではない、承認欲求を満たすため、英雄になりたがっている子ではないのです」

【ネルフ本部 エスカレーター】

アスカ「嫌なやつ、嫌なやつ、嫌なやつ、嫌なやつ!」ズンズン

レイ「……」

アスカ「いちいち癪にさわる言い方しちゃってさ! ねぇ、そう思わな――」

レイ「なに?」

アスカ「あんたに言っても無駄よね」

レイ「……」

アスカ「はぁ、司令が変わるのはいいんだけど、なんでこうめんどくさいんだろ。シンジみたいに恵まれた環境だったらなぁ」

レイ「碇くんが?」

アスカ「だってそうでしょ。前の司令は性格に難ありだったけど、父親だし。次の司令も嫌なやつだけど、母親だし」

レイ「家庭事情は、一見だけじゃわからないわ」

アスカ「両親が健在だってだけで贅沢よ。嫌な思いをするとしても、親がいるからできる……私のママは、もういないのに」

レイ「私は、かわいそうだと思う」

アスカ「はっ、人形のあんたがどういう理由があってそう感じんの」

レイ「生き方を強いられているから。私と同じ」

アスカ「シンジが?」

レイ「選択肢をあたえられているようで、実際は誘導され、ひとつしか選ばせてもらえていない」

アスカ「なんの話?」

レイ「流れの話」

アスカ「わっけわかんない。それって神の選択肢みたいね」

レイ「神?」

アスカ「あー、選択肢をあたえられてるようで、ひとつしか選ばせてもらえてないってやつ。神様はね、そうなのよ」

レイ「……?」

アスカ「汝、主を愛せ。これが根底にあるの。だからどの選択肢を選んだとしても、詰まるところ神様は尊いって答えに誘導されてしまうってわけ」

レイ「そう」

アスカ「ま、シンジが迫られてる選択肢なんて夕飯の献立ぐらいの話ね」

暇つぶしにチルドレン組のみサンプル作ってみましたがこんな感じでいいすかね

画像
http://i.imgur.com/qiUkVV5.jpg

※解像度の都合上、画像は新劇場版を使用しています

IOS向けのアプリでこのサンプルは作っていて、同アプリですと簡易的にしか作れません。登場人物全員をサポートするのは難しいです。
パワーポイントでなら詳細に作れますがけっこう時間もらっちゃうようになると思いますよ

まぁ、ユイ達だけでよければこのアプリで作れるんでよければ以上ですかね

・チルドレン組(サンプルを改定)
http://i.imgur.com/llTGZDz.jpg

・上層部組
http://i.imgur.com/gybFRwU.jpg

足りない人物はオペレーター三人組(マコト、シゲル、マヤ)、中学校組(トウジ、ケンスケ、ヒカリ)、政府や戦時のモブ、マナやサクラといった連中になります
これらを一枚で収めようとすると様々な機関を含みますから、枠線を作らないと厳しいです

・詳細のサンプル例
http://i.imgur.com/E8z9uaf.jpg
記入のないテンプレートなので見なくて問題ありません

ざっくりですがこのように分けようかと思ってました
なんで作業量的に多くなってしまいます

※尚、これらの関係性は現時点です、後々変化します

【マンション 霧島マナ宅】

加持「荷物の確認はあらかた済んだ――」

マナ「……」キュッキュッ

加持「鏡に映る自分を見つめてどうした」

マナ「わたし、かわいいですか」

加持「ん……? ナルシズムの気でもあるのか」

マナ「あは、違います。技術、経験がない。武器にできるものが思いつかないからです」

加持「……」

マナ「さっき渡されたチルドレン二名のファイルの一ページに戦自からメッセージがありました」

加持「勝手に座らせてもらうよ。それで、なんて書いてあったんだ」ドサ

マナ「――“守るべきは秘密だ”って。作戦の目的を考えれば理解できます。正体がバレてしまえば終わりだから。特別監査官も秘密を隠して潜入しているんですよね」

加持「そうだ。しかし、キミとは違う、己の敵を知ることは、勝てない思う相手にさえ自分を守る術に繋がる。それが俺の仕事だ」

マナ「だから、私は、自分の武器になるものってなんだろう。そう考えた時に、この顔と身体だって思ったんです」

加持「なかなか、型破りな子みたいだな」

マナ「教えてください。この任務で、人を……殺した経験がありますか」

加持「ないとは言えないな」

マナ「どんな、気分ですか」

加持「別に、なにも」

マナ「……」

加持「未経験だが、思い切りの良さがあるのはわかった。余計な力を肩に入れすぎるとうまくいかなくなるぞ」

マナ「こわいんです……」ギュウ

加持「……」

マナ「うまくいかなかったらどうしようって! 私だけじゃない! ムサシとケイタの運命もかかってるのに!」

加持「欠点の先に才能を見いだせる時もある。……キミは、キミの戦場に足を踏み入れたんだ」

マナ「私の、戦場……」

加持「自分をすり減らす、孤独な戦いだ。神経も、心までもね。偽りの仮面を被り続けるといつか、目的を見失いそうになる時だってくるだろう」

マナ「そうでしょうか」

加持「殺しなんて誰にでもできるのさ」スッ カチャ

マナ「拳銃、携帯してるんですね」

加持「能力じゃない。慣れなんだよ、重要なのは」

マナ「……」

加持「まだキミは運がいい。どのチルドレンも癖はあるが、悪い子たちじゃないからな」

マナ「碇シンジくんと、よく話すんですか」

加持「たまに。人とのコミュニケーションに消極的なタイプの子でね、付かず離れずの距離感がちょうどいい」

マナ「付き合っている子はいないんですよね」

加持「そうだな、加えて異性に対する免疫も薄い。武器にしようとしているモノは、良い線いってるんじゃないか」

マナ「……」

加持「色仕掛けをするつもりなら、決して勘づかれるなよ。騙すつもりなら、最後まで騙しきれ。ウソを本当にする唯一の方法だ」

マナ「いいえ、方法はそれだけじゃありませんよ」

加持「……?」

マナ「バレても、離れられない。……私に、骨抜きにさせてしまえばいいんです」

加持「なるほど、将来末恐ろしい発送だな。有望だよ」

見落としてしまっている誤字があるんでレスしなおします

【マンション 霧島マナ宅】

加持「荷物の確認はあらかた済んだ――」

マナ「……」キュッキュッ

加持「鏡に映る自分を見つめてどうした」

マナ「わたし、かわいいですか」

加持「ん……? ナルシズムの気でもあるのか」

マナ「あは、違います。技術、経験がない。武器にできるものが思いつかないからです」

加持「……」

マナ「さっき渡されたチルドレン二名のファイルの一ページに戦自からメッセージがありました」

加持「勝手に座らせてもらうよ。それで、なんて書いてあったんだ」ドサ

マナ「――“守るべきは秘密だ”って。作戦の目的を考えれば理解できます。正体がバレてしまえば終わりだから。特別監査官も秘密を隠して潜入しているんですよね」

加持「しかし、キミとは違う、己の敵を知ることは、勝てないと思う相手にさえ自分を守る術に繋がる。それが俺の仕事だ」

マナ「だから、私は、自分の武器になるものってなんだろう。そう考えた時に、この顔と身体だって思ったんです」

加持「なかなか、型破りな子みたいだな」

マナ「教えてください。この任務で、人を……殺した経験がありますか」

加持「ないとは言えないな」

マナ「どんな、気分ですか」

加持「別に、なにも」

マナ「……」

加持「未経験だが、思い切りの良さを備えているのはわかった。余計な力を肩に入れすぎるとうまくいかなくなるぞ」

マナ「こわいんです……」ギュウ

加持「……」

マナ「うまくいかなかったらどうしようって! 私だけじゃない! ムサシとケイタの運命がかかってるのに!」

加持「欠点の先に才能を見いだせる時がある。……キミは、キミの戦場に足を踏み入れたんだ」

マナ「私の、戦場……」

加持「自分をすり減らす、孤独な戦いだ。神経、心までもね。偽りの仮面を被り続けるといつか、目的を見失いそうになる時だってくるだろう」

マナ「そうでしょうか」

加持「殺しなんて特別な要素は必要ない」スッ カチャ

マナ「拳銃、携帯してるんですね」

加持「能力じゃない。慣れなんだよ、重要なのは」

マナ「……」

加持「まだキミは運がいい。どのチルドレンも癖はあるが、悪い子たちじゃないからな」

マナ「碇シンジくんと、よく話すんですか」

加持「たまに。人とのコミュニケーションに消極的なタイプの子でね、付かず離れずの距離感がちょうどいいらしい」

マナ「付き合っている子、いないんですよね」

加持「加えて異性に対する免疫が薄い。武器にしようとしているモノは、良い線いってるんじゃないか」

マナ「……」

加持「色仕掛けをするつもりなら、決して勘づかれるなよ。騙すつもりなら、最後まで騙しきれ。ウソを本当にする唯一の方法だ」

マナ「いいえ、方法はそれだけじゃありませんよ」

加持「……?」

マナ「バレたとしても、離れられない。……私に、骨抜きにさせてしまえばいいんです」

加持「なるほど、末恐ろしい発想だな。有望だよ」

【付属病院 105号室】

看護師「サクラちゃん、点滴の時間だよ~」

サクラ「あ、はいはい」

看護師「はいは一回」

サクラ「はい、えへへ」

看護師「んもう、入院生活が長いからってすっかり慣れちゃって。針、嫌いじゃないの?」

サクラ「好きやないですけど。嫌わない方がええんちゃうん?」

看護師「めんどくさくなくていいけどねぇ。たまには嫌がってほしいっていうかぁ」

サクラ「微妙な乙女心てゆうやつやろか」

看護師「マセちゃって。はい、じゃあ手のひらに親指いれてグーにして」

サクラ「ん」ギュー

看護師「みんなサクラちゃんみたいに素直な子だったら助かるなぁ。そういえば、昨日の夜中に叫び声をあげてた中学生がいてね、男の子なんだけど」

サクラ「へぇ、外科の患者さんですか?」

看護師「超優遇。院長が巡回に行ってピリピリしてるもの。それで、その子が突然、気でも触れてしまったかのように叫びだしたんですって。私が当直じゃなくてよかったー」

サクラ「お姉さんは、小児科担当ちゃうんですか」

看護師「掛け持ちっていうの。というか、院内ですごい噂になってるのよ。人の口に戸は立てられないって言うでしょ?」

サクラ「戸に? 閉められるん?」

看護師「ぷっ、やだ。そうじゃなくて、噂話は止められないって意味。ちょっとチクっとするわね」プス

サクラ「はぁ、そうなんですか」

看護師「耳かしてごらん」スッ

サクラ「……?」

看護師「なんでも、ロボットのパイロットらしいのよ」コソ

サクラ「えぇっ⁉︎ 」

看護師「ねぇー! びっくりよねー!」

サクラ「あのっ! あのあのっ、患者さんの名前は⁉︎」

看護師「名前は、なんだったかなぁ」

サクラ「もしかして、碇シンジっていう名前じゃ……?」

看護師「碇? あー、そうそう、たしかそんな名前だったような」

サクラ「やっぱり! なんで⁉︎ なんで入院してるん⁉︎ 怪獣きてないんちゃうの⁉︎」

看護師「えっ、ちょ、ちょっと、サクラちゃ」

サクラ「叫び声てなに、怪我したん⁉︎ どこの病室⁉︎」

看護師「それはっと、いけないいけない。面会謝絶になってるから、知ったとしても、会えないわよ」

サクラ「そんな」

看護師「あっ、そっか。ロボットっていえばみんなのヒーローだもんね。パイロットだから会いたくなっちゃったのか」

サクラ「ちがっ……!」

看護師「サクラちゃんだって明後日に手術控えてるんだから。無理はできないの。回復したら、会いにいけるかもしれないから。いい? わかった?」

サクラ「……う、うん……」

看護師「点滴は三十分ね。終わったらいつも通りナースコールおして」

トウジ「入るで。……点滴しとったんか、ども、こんばんは」ペコ

看護師「こんばんは。今、点滴をはじめたところですから、サクラちゃんに問題はありませんよ」カチャカチャ

サクラ「兄ちゃん!」

トウジ「サクラ……? どないしたんや」

サクラ「シンジさんが、シンジさんがここの病院にいてるっ!!」

看護師「あっちゃぁ~」

サクラ「看護師のお姉さんがパイロットが入院してるって」

看護師「サクラちゃん、言いふらしちゃだめよ~」

トウジ「ほんまなんですか?」

看護師「ええ、パイロットが入院してくる頻度自体は少なくないですけど。今回は特別なケースらしくて」

トウジ「特別て?」

看護師「いっけない。私ったらまた。このクチが悪いのね、このクチが」ブツブツ

トウジ「あの、シンジは、ワシのクラスメートなんです。なにがあったのか、教えてもらえませんか」

看護師「クラスメイト? たしかに、同い年、なのかしら」

トウジ「間違いありまへん。そんなに、ひどい怪我なんですか?」

看護師「うーん、仲良いの?」

トウジ「ワシはそう思っとります」

看護師「そっかぁ、だったら、心配よねぇ。サクラちゃんが言って知られちゃったし、いや、でも……」

サクラ「お姉さん、兄ちゃんに言って口止めしたら? このままやと、シンジさんが心配で他の人に話ちゃうかも」

看護師「え、ええっ? そ、それは困るなぁ」

トウジ「教えてくれたら誰にも言いまへん。ワシは男や、約束を絶対にやぶらへんことを誓います」

看護師「だったら……。あのね、ちょっと、声潜めて話て」

トウジ「はい、なんでしょ」こそ

サクラ「なになに」

看護師「なんかのね、移植手術だったみたい」

トウジ「なんの?」

看護師「わかんない」

サクラ「だぁ」ガックシ

看護師「でもでも、昨日の深夜に叫び声をあげたあとに容体が急変しちゃって」

トウジ「叫び声ですか」

看護師「そぉなのよ! それはもう、うわああって大声で。数分間とまらなかったらしいの」

サクラ「数分間も……息、続くん?」

看護師「野暮なツッコミしないの。止まっては、叫んでの繰り返し。ホラーよね」

トウジ「なんで、叫んだりしてたんですか」

看護師「噂なんだけどね、手術が原因なんじゃないかって」

トウジ「失敗してたわけやないんでしょ?」

看護師「わかんない、テヘペロ」

サクラ「お姉さん! ふざけてるんちゃいます⁉︎」

看護師「だぁって、わかんないんだもん!」

トウジ「はぁ、それでシンジは」

看護師「今は昏睡状態で面会謝絶中」

サクラ「兄ちゃん、大丈夫やろか」

トウジ「サクラ、シンジなら大丈夫や。心配あらへん」

サクラ「でも……!」

トウジ「すこし会えませんか?」

看護師「むり! 無理無理無理無理! そんなの見つかったらクビが飛んじゃう!」

トウジ「そうでっか……」

看護師「心配なの、わかるけど。今は病院にまかせておいて。私たちは人を治すのが仕事なのよ」

リツコ「クビが物理的に飛ばないで済むように祈ったら?」

看護師「……? どちらさまですか、鈴原くん、サクラちゃん、知り合い?」

サクラ「いや、うち、知らない」

リツコ「この子が例の女の子ね」

トウジ「いつからそこに」

看護師「部外者なの? ちょっと、困りますよ。ここは小児科病棟です。ご家族でないのなら室内に」

リツコ「特務機関ネルフの者です。先ほどの噂話の一部始終は聞かせてもらいました」

看護師「ああ、ネルフの……ね、ネルフっ⁉︎」

リツコ「これが身分証」パサ

看護師「はわ、はわわっ、わた、わたし、いえ、違います、違うんです」

トウジ「いつから」

リツコ「ネルフ権限における保安条例の第十四項、パイロットに関する機密保護法を著しく侵害しています。この顛末は上司に報告させてもらうわよ」

看護師「ひっ、そ、そんな」

リツコ「久しぶりね、鈴原くん。ユニゾンの時の打ち上げ以来かしら」

トウジ「……ども」ペコ

サクラ「兄ちゃん、この人、誰?」

トウジ「ネルフの人や」

リツコ「シンジくんが父親に泣きついてまで救おうとした子は思ったより元気みたいね」

トウジ「ここの病院は、スタッフがすごいし、それに……」

リツコ「前の病院ではまともな設備がなかった。満足な受けられず、徐々に悪化していくのは仕方なかったと言える」

トウジ「はい」

リツコ「ついてきて」

トウジ「は、はい?」

リツコ「シンジくんに、会わせてあげる」

サクラ「ほ、ほんまですか⁉︎」

リツコ「そっちの子は……車椅子を使えば移動できる?」チラ

看護師「可能ではありますが、まだ点滴してるので、その、なるべく運動は。針がズレたら刺し直しに」

サクラ「行きたい! じゃなきゃ言いふらしたる!」

トウジ「おい、サクラ!」

サクラ「別にええやん! 心配やないの⁉︎」

トウジ「わ、ワシはお前を」

サクラ「そんな兄ちゃんなんか嫌いや!」

リツコ「人の身体は簡単に壊れるわけではないわ。ここは病院よ。すぐに医師が駆けつけられるでしょうしね」

サクラ「話わっかるぅ~!」

リツコ「車椅子の準備を」

看護師「持ってきたらわたしの件は、なくなったり……?」

リツコ「それとこれとは話が別。あなたの仕事でしょ」

看護師「ひ、ひぃ~ん」

ちと>>225はもう一度レスしなおします

リツコ「クビが物理的に飛ばないで済むように祈ったら?」

看護師「……? どちらさまですか、鈴原くん、サクラちゃん、知り合い?」

サクラ「いや、うち、知らない」

リツコ「この子が例の女の子ね」

トウジ「いつからそこに」

看護師「部外者なの? ちょっと、困りますよ。ここは小児科病棟です。関係者でないのなら室内に――」

リツコ「特務機関ネルフの者です。噂話の一部始終は聞かせてもらいました」

看護師「ああ、ネルフ……ね、ネルフっ⁉︎」

リツコ「こちらが身分証」パサ

看護師「はわ、はわわっ、わた、わたし、いえ、違います、違うんです」

リツコ「ネルフ権限における保安条例の第十四項、パイロットに関する機密保護法を著しく侵害しています。顛末は管轄にあたる上司に報告させてもらうわよ」

看護師「そ、そんな……ふひ、ふひひ、おわた……家で待ってるヒモ彼氏がいるのに」ヘナヘナ

サクラ「堪忍したってください。お姉ちゃん、悪くないよ。うちが無理言って……」

リツコ「団体、ひいては組織の規律問題なのよ。子供だって悪いことをすれば親に叱られる。違うとすれば、社会は親ほど我慢強くなく、簡単に切り捨てることね」

サクラ「それじゃ、冷たいやん」

リツコ「ふぅ、私はあくまで報告をするだけ。処分について裁定をくだすのは組織の管理者よ」

トウジ「ワシも謝りますから、今回だけは、お願いします」ペコ

リツコ「パイロットを守るための取り決めでもある。感情に左右され恩赦を与えてしまっていては改善できないわ……久しぶりね、鈴原くん。ユニゾンの時のホームパーティー以来かしら」

トウジ「え? あぁ、ども」ペコ

サクラ「兄ちゃん、この分からず屋の頭かっちかっちな人、誰なん?」

トウジ「こら、そないな言い方するもんやない。ネルフの人や」

リツコ「シンジくんが父親に泣きついてまで救おうとした子は思ったより元気みたいね」

トウジ「ここの病院は、スタッフがすごいし、それに……」

リツコ「前の病院ではまともな設備がなかった。満足な治療を受けられず、医師の判断も曖昧では徐々に悪化していくのは仕方なかったと言える」

トウジ「その通りです。せやから、転院できて感謝してます」

リツコ「ついてきて」

トウジ「は、はい?」

リツコ「シンジくんに、会わせてあげる」

サクラ「ほ、ほんまですか⁉︎」

リツコ「そっちの子は……車椅子を使えば移動できる?」チラ

看護師「可能ではありますが、まだ点滴してるので、その、なるべく運動は。針がズレたら刺し直しに」

サクラ「行きたい! じゃなきゃ言いふらしたる!」

トウジ「おい、サクラ!」

サクラ「別にええやん! 心配やないの⁉︎」

トウジ「ワシはお前が……」

サクラ「そんな兄ちゃんなんか嫌いや!」

リツコ「人の身体は簡単に壊れないわ。それに、ここは病院でもある。なにかあれば、すぐに医師が駆けつけられるでしょうしね」

サクラ「なんや、話わかるやん!」

リツコ「車椅子の準備を」

看護師「持ってきたらわたしの件は、なくなったり……?」

リツコ「それとこれとは話が別。クビになってない内は、患者の面倒を見るのが仕事でしょ」

看護師「ひぃ~ん」

【付属病院 205号室】

トウジ「シンジ、おい、しっかりせぇ!」

サクラ「なんで、なんでこんなになってるん⁉︎」

シンジ「……」シュー シュー ピッピッ

リツコ「カルテを」

看護師「ドイツ語ですけど、そもそも見方わかるんですか?」

リツコ「あら、こう見えて医師のはしくれよ。もっとも、専攻はは心理学ですけど。昨夜、急な叫び声をあげたという噂話は院内でかなり広まっているの?」

看護師「う、その」

リツコ「今さら隠したってしょうがないでしょう。正直に話した方が身のためよ」

看護師「はい……入居してる患者は治療方針は医師が決定をしますが、看護師は身の回りの介助、いわゆる補佐を担当しています。その際に……あの、日常会話の感覚でポロっと」

リツコ「必要でない部分まで喋ってしまってしまっていると。口は災いの元とも言うわよ」

看護師「うう、ごもっともです」

リツコ「幸か不幸か、問題は管理体制そのものにある。コンプライアンスを徹底させなければだめね」

看護師「あの、どういう……」

リツコ「個人ではなく全体の問題だということ。意識の低下が引き起こした結果なのよ。報告したとしても、あなたのクビで責任逃れできないように言い含めておくから」

看護師「職を失わなくて済むんですか⁉︎」

リツコ「ただし、あなたがバレたというきっかけで締めつけが厳しくなる。職場の同僚から良い目では見られなくなるわよ」

看護師「それは、自業自得な部分ありますから」

リツコ「これに懲りて反省しなさいね」

看護師「はい……お姉さま……素敵……」ウットリ

リツコ「ち、ちょっと、なんなの」タジ

トウジ「そないな話より、シンジはどうなってるんでっか⁉︎」

リツコ「ごほん、見ての通り。目を覚まさないのよ」

サクラ「ぐす、怪獣と戦って怪我したん? 来てなかったやん」

リツコ「別の要因。サクラちゃん、だったわね。シンジくんが好き?」

サクラ「へ?」

リツコ「幼く純粋な思いでなら、助けになるかもしれない」

トウジ「サクラ! ワシは許さへんぞ! もがっ⁉︎」

看護師「鈴原くん、お姉様が話してるのに邪魔しないで」ギュッ

トウジ「ふむーっ! ふもふもー!」ジタバタ

リツコ「どう? 彼を助けてあげたい?」

サクラ「うち、こんな身体やし、なにができるかわからへんけど、シンジさんはみんなを守ってくれてるヒーローなんやもん! なんだってするで!」

リツコ「なんでも? なんでもと言ったわね」

サクラ「うん! なんでも!」

トウジ「ぶはっ!」

看護師「あ、もう!」

トウジ「サクラは手術を控えとるやろが!」

リツコ「黙らせて」

看護師「がってん承知!」グイ

トウジ「ふむ⁉︎ ぬうーーっ!」

サクラ「女に二言はない! 自分を守ってくれた男のためなら命でもなんでもかけたるわぁ!」

リツコ「よく言ってくれました。実は、実験に協力してほしいの――」

集中力がないと誤字がやばい、たびたびすんませんがレスしなおします

【付属病院 205号室】

トウジ「シンジ、おい、しっかりせぇ!」

サクラ「なんで、なんでこんなになってるん⁉︎」

シンジ「……」シュー シュー ピッピッ

リツコ「カルテを」

看護師「ドイツ語ですけど、そもそも見方わかるんですか?」スッ

リツコ「あら、こう見えて医師のはしくれよ。もっとも、専攻は心理学。昨夜、急な叫び声をあげたという噂話は院内でかなり広まっているの?」

看護師「う、その」

リツコ「今さら隠したってしょうがないでしょう。正直に話した方が身のためよ」

看護師「はい……入居してる患者様の治療方針は医師が判断をして決定をされる一方で、看護師は、医師、患者、双方にとっての負担軽減。身の回りの介助、いわゆる補佐を担当しています」チラ

リツコ「怯えなくていいから、続けて」

看護師「その際に……先生方が話てる内容を聞き及ぶケースも多く、あの、日常会話の感覚でポロっと」

リツコ「必要でない部分まで喋ってしまっていると。口は災いの元とも言うけど、知らなかったの?」

看護師「うう、お恥ずかしい限りです」

リツコ「幸か不幸か、問題は管理体制そのものにある。コンプライアンスを徹底させなければだめね」

看護師「あの、どういう……」

リツコ「個人ではなく全体の懸念事項だということ。意識の低さが引き起こした結果なのよ。報告はするけど、クビで責任逃れできないように言い含めておくから」

看護師「職を失わなくて済むんですか⁉︎」

リツコ「あなたの為じゃないわ。それに、バレたというきっかけで締めつけが厳しくなる。職場の同僚たちから良い目で見られなくなるわよ」

看護師「それは、自業自得な部分ありますから」

リツコ「これに懲りて反省しなさいね」

看護師「はい……お姉さま……素敵……」ウットリ

リツコ「ち、ちょっと、なんなの」タジ

トウジ「そないな話より、シンジはどうなってるんでっか⁉︎」

リツコ「見ての通り。目を覚まさないのよ」

サクラ「グス、怪獣と戦って怪我したん? 来てなかったやん」

リツコ「別の要因。サクラちゃん、だったわね。シンジくんが好き?」

サクラ「へ?」

リツコ「幼く純粋な想いなら、助けになるかもしれない」

トウジ「サクラ! ワシは許さへんぞ! もがっ⁉︎」

看護師「鈴原くん、お姉様が話してるのに邪魔しないで」ギュッ

トウジ「ふむーっ! ふもふもー!」ジタバタ

リツコ「どう? 彼を助けてあげたい?」

サクラ「うち、こんな身体やし。なにができるかわからへんけど、シンジさんはみんなを守ってくれてるヒーローなんやもん! なんだってするで!」

リツコ「なんでも? なんでもと言ったわね」

サクラ「うん! なんでも!」

トウジ「ぶはっ!」ガバ

看護師「あ、もう!」

トウジ「サクラは手術を控えとるやろが!」

リツコ「黙らせて」

看護師「がってん承知!」グイ

サクラ「女に二言はない! 自分を守ってくれた男のためなら命でもなんでもかけたるわぁ!」

リツコ「よく言ってくれました。実験に協力してほしいの――」

【同時刻 ネルフ本部 営倉】

カヲル「思ったよりお早い来訪で。さっそくボクを殺しにきましたか」

ユイ「時期ではないわ。釈放よ」

カヲル「へぇ、やけにあっさりと引き下がるんですね。ボクはかまわないけど」スッ

ユイ「その前に何点か聞きせてもらえない? シンジと会ってみてどうだった。なにか話をしたの」

カヲル「いいえ。彼は寝ていましたから」

ユイ「寝ている最中に脳を弄った方法は?」

カヲル「本来、夢というのは記憶を整理する処理作業だけど、彼の手にはアダムがあったから」

ユイ「明快な返答ね。まるであらかじめ聞かれるとわかっていたかのよう」

カヲル「遅すぎるくらいだよ。確認するには。ようやく冷静になれたのかい?」

ユイ「最後の質問」

カヲル「(本題がきた)」

ユイ「元に戻す方法、つまり、目を覚ました後、以前のシンジに戻すにはどうしたらいい?」

カヲル「彼は彼だよ。ボクは真実を知識の泉として脳に刻んだに過ぎない。受け入れれば眼が覚める、そう伝えていたはず」

ユイ「今すぐに目を覚ます方法はないというわけね」

カヲル「残念ながら」

ユイ「――本当にそうかしら」

カヲル「……」

ユイ「例えば、一度潜れたあなたなら可能なんじゃない?」

カヲル「逆効果だよ。そんなことをすれば二度と目が覚めなくなってしまう。彼の魂は今、殻に閉じこもってしまっているからね」

ユイ「補助をつければどう?」

カヲル「補助、だって?」

ユイ「シンジを純粋に心配して、想いやる気持ちを持った子を潜らせれば」

カヲル「碇シンジくんが望むとも思えないけど」

ユイ「聞きたいのはそこではないのよ。できるのかできないのか」

カヲル「……」

ユイ「十三年前にリリスを使い作られた初号機からサルベージされた経験がある」

カヲル「なにを言いたいんだい?」

ユイ「再生、シンジの意識をサルベージします」

カヲル「そうか、そういうことか。リリン」

ユイ「ピースは用意した。協力、するわよね?」

カヲル「ボクになにをしろって?」

ユイ「パイプになってもらいます。用意した子をシンジの深層意識に送り届けるための」

カヲル「勝手だね。ヒトは生きながら罪を犯し続けてしまう。汚れながらしか生きていけないから」

ユイ「この世に光、あれ。泥に汚れても、這いながらでも太陽があれば進む道を照らしてくれる。シンジは私の、いいえ、人類にとってのさんさんと輝く太陽なの」

カヲル「個人の意思を棚上げにして、神輿を作る気なのか」

ユイ「神は、全知全能であるかもしれない。だけど、苦悩がないとは限らない」

カヲル「……」

ユイ「太古から伝わる神々と同じように、アダム、リリスが抱えていた頭痛の種」

カヲル「それは?」

ユイ「孤独感よ。とても、とっても、寂しがり屋さんだったの」

カヲル「……」

ユイ「無駄話をしていた間にそろそろ到着する頃合いだわ。ついてきて」

【シンジ 夢の中】

シンジ「ここは……?」

レイ(少女)「ここは、L.C.Lの海。生命の源の海の中。
A.Tフィールドを失った、自分の形を失った世界
どこまでが自分で、どこからが他人なのか分からない曖昧な世界」

シンジ「心の壁を……」

レイ「あなたの真実を辿る旅路。どこまでも自分で、どこにも自分がいなくなっている静寂な世界。全てがひとつになっているだけ。世界。そのものよ」

シンジ「こんな、なにもない殺風景な場所が真実だっていうの?」

レイ(少女)「私もあなたも。最初はひとつだったのよ。虚無からすべては始まった」

ミーンミンミミンミーン――……

シンジ「夏、暑い日」

ゲンドウ『今日は暑くなったな』

シンジ「父さん……?」

ユイ『あら、もう。あなたったら。アイスなんか口につけて。いくつになっても子供みたい』

シンジ「かあ、さん?」

シンジ(少年)『えへへ』

シンジ「これは僕だ。幼い頃の僕。覚えていない記憶」

ゲンドウ『このような地獄をこの子は生きていかねばならないのか』

ユイ『生きていればなんとかなるわ。私たちの息子なんだもの。未来を希望で溢れさせてくれる。おいで、シンジ』

シンジ(少年)『はーい』

ゲンドウ『俺は、不安だよ』

ユイ『大丈夫。子供はいつのまにか成長していく。あっという間よ』

シンジ「僕の記憶。優しかった父さんと母さんとの思い出。幻なんかじゃない、たしかにそこにあったセカイ」

レイ「他人の存在。親でさえ理解できない、心の壁が全ての人々の心を引き離すわ。他人への恐怖が始まるのよ。このように」

ゲンドウ『シンジ! エヴァに乗れ! でなければ帰れ!』

シンジ『嫌だ! こんなわけのわからないモノに乗れって言うの⁉︎』

レイ「楽しい思い出ばかりじゃない」

シンジ「……」

レイ(少女)「夢は壊れる」

ぬお、改行がおかしなことになってるんでレスしなおします

【シンジ 夢の中】

シンジ「ここは……?」

レイ(少女)「ここは、L.C.Lの海。生命の源の海の中。A.Tフィールドを失った、自分の形を失った世界。どこまでが自分で、どこからが他人なのか分からない曖昧な世界」

シンジ「心の壁を……」

レイ「あなたの真実を辿る旅路。どこまでも自分で、どこにも自分がいなくなっている静寂な世界。全てがひとつになっているだけ。世界、そのもの」

シンジ「こんな、なにもない殺風景な場所が真実だっていうの?」

レイ(少女)「私もあなたも。最初はひとつだったのよ。虚無からすべては始まった」

ミーンミンミミンミーン――……

シンジ「夏、暑い日」

ゲンドウ『今日は暑くなったな』

シンジ「父さん……?」

ユイ『あら、もう。あなたったら。アイスなんか口につけて。いくつになっても子供みたい』

シンジ「かあ、さん?」

シンジ(少年)『えへへ』

シンジ「これは僕だ。幼い頃の僕。覚えていない記憶」

ゲンドウ『このような地獄をこの子は生きていかねばならないのか』

ユイ『生きていればなんとかなるわ。私たちの息子なんだもの。未来を希望で溢れさせてくれる。おいで、シンジ』

シンジ(少年)『はーい』

ゲンドウ『俺は、不安だよ』

ユイ『大丈夫。子供はいつのまにか成長していく。あっという間よ』

シンジ「僕の記憶。優しかった父さんと母さんとの思い出。幻なんかじゃない、たしかにそこにあったセカイ」

レイ「他人の存在。親でさえ理解できない、心の壁が全ての人々の心を引き離すわ。他人への恐怖が始まるのよ。このように」

ゲンドウ『シンジ! エヴァに乗れ! でなければ帰れ!』

シンジ『嫌だ! こんなわけのわからないモノに乗れって言うの⁉︎』

レイ「楽しい思い出ばかりじゃない」

シンジ「……」

レイ(少女)「夢は壊れる」

シンジ「でも、父さんとはまたやり直せる」

レイ(少女)「あの人なら壊れたわ」

シンジ「なに言ってるんだよ」

レイ「死。生命の終わり」

シンジ「死……? 父さんが死んだって言うの?」

リツコ『私の前で夫婦の会話をしないでちょうだい!』パァン

ゲンドウ『うっ』ドサ

ユイ『まったく、最後まで人に迷惑をかけるんだから』パァン

ゲンドウ『』ベチャ

シンジ「これは……?」

レイ「碇くんが知らない。私たちが覗いていた視点の出来事」

シンジ「うそだ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!!」

加持『シンジくん』

リツコ『シンジくん』

冬月『サードチルドレン』

シンジ「敵、テキ、てき、敵……! みんな嘘つきだ! 良い顔をして、何食わぬ顔をしてるだけだ!」

ユイ『シンジ……』

シンジ「畜生、チクショウ、ちくしょう……よくも、よくも僕を捨てたな。いきなりあらわれて母さんだなんて名乗って。殺してやる! 僕のカタキ、父さんの仇!」

レイ「……」

シンジ「お前もだ! 綾波さえいなければ父さんは僕を捨てなかったんだ! そうだ、綾波がいたから僕がいらなくなっちゃったんだ! お前さえ、お前さえいなければ!」ギュウ ググッ

レイ「ごほ、私の、首を、しめ……[ピーーー]……の?」

シンジ「初号機に乗る時だって、本当は父さんに嫌いだって言うつもりだったんだ! それなのに、綾波のせいで!」

レイ(少女)「向き合う勇気がなくて、自分から逃げ出したくせに」

シンジ「違う、ちがうンだ。ボクはそウジャなイ」

レイ(少女)「あなたは、本当になにも覚えていないの」

シンジ「ボクは……ッテタ。ぼクがニゲダシタ」

レイ「……」ドロドロ

シンジ「僕はニゲダシたんだ! 父さンとかあサんから!」

レイ(少女)「現実を受け止めて」

シンジ「うわああああああああああアアアッ!!!」

ここまでで以降は前スレと共通する箇所はあるものの、前スレでカヲルくんが死んだ展開とかもろもろが新しくなります
なので、リクのあった箇条書きまとめをします
今日は眠いんでまた後日~

まずは流れのおさらいです
1.シンジのPCにアンケートが届く
2.シンジが誘拐、1日間拉致される
3.犯人はユイだった(原作では初号機に取り込まれていたままだったのが当SSでは生きています)
4.シンジ、ゲンドウの前にユイが姿を現わす
5.ゲンドウは粛々と補完計画を進める(元になった補完計画と変わりはありません)

6.ユイは独自の考えを持っており、またゼーレを利用した計画があります、それはゲンドウとは相入れないものでした。よってユイはゲンドウのネルフを乗っ取ろうと機会を伺います
7.ゲンドウを孤立させるには冬月、リツコがキーだとユイは目星をつけていました。
※またこっそりとシンジを拉致しアダムをシンジの掌に移植します(原作ではゲンドウの手のひらにありました)
8.加持を使い冬月とリツコを反目(裏切り)させることに成功します
※同時進行的に綾波の中でもう一人の自分が目覚めます
9.ゲンドウ死亡(前スレだとシンジの目の前で死んでいますが、シンジがいない状況で今スレではリツコによって致命傷を与えられユイにトドメをさされています)

ここからユイが新司令です
ゼーレの後ろ盾を元に組織内部図の掌握にかかります

10.ゲンドウが殺された場面を直に見せつけられ大人達を信用できず、またいつも通りになれない自分に苛立つシンジ(前スレのみの流れです)
10.渚カヲルがゼーレ、ユイの思惑の元、フォースチルドレンに選出(原作ではトウジです)
11.晴天の霹靂とも言える司令交代に日本政府、および戦自がかなり訝しみ、スパイとして見繕ったマナを送りこみます(日本政府は金の無心をしたいというのが本音ですが、単純にネルフの戦力にびびってる保守派の集まりです。戦自は実行組織)
12.ユイは戦自を釣り上げるためにネルフを停電状態にして加持に偽のデータを渡します(前スレのみの流れです)
12.カヲルはシンジ(あわよくばカヲルにも)にとってなにが一番いいかを考えます。望みである魂の解放と同時に自らの死によってアダムの魂をシンジに還元します(前スレのみの流れです)

ざっくりとですがこれまでの流れになります
前スレとの違いは
・シンジは現在昏睡中
・シンジの目の前でゲンドウが殺されていない
・ゲンドウの死を綾波によって強制的に知らせれてしまっている最中で、受け入れられないループが続き目が覚めません

レスしてる人もいますが今後の展開としては「前スレに追いついたから続き」というわけではありません
前スレとは違う流れになるのでここまででリクのあった箇条書きをしようと判断しました
わかりづらいかもしれませんが以上です

小説系サイトではなくここは掲示板なので感想返しやリクするにも項目別に別れてませんからね
必要ない、淡々と投稿してほしいと思ってる方は「続きが読みたいだけなのに」と強制的にやりとりを見せられている状況だと思います

一方で、○○が理解できない、この流れはおかしいというのもどうしても出てくると思います
なんでそういう質問やリクに対しては応えてこうかなと思ってる感じです

個人が持っている定規はそれぞれ長さが違うので、目に余るようでしたら読むのをやめる要因になるとも思いますが、この掲示板の仕様だと思ってある程度は理解していただきますようお願いします

【ネルフ本部 第六層】

サクラ「これ、くすぐったいわぁ。なんのテープ?」もぞもぞ

リツコ「脳波を受信する機械」ペタペタ

サクラ「じゅしん? なんかすごいね」

リツコ「これを貼れば終わり。司令、仰られていた準備が整いました」

ユイ「ご苦労様」

カヲル「……」

ユイ「なにか他に入り用?」

カヲル「ボクから確認したいことがある」

ユイ「なに?」

カヲル「ヒトは、夢を見ていると自覚していたとしても嫌な現実に立ち向かう術を見つけるには時間がかかる。リリンたちはそういう夢を悪夢、そう呼んでるね」

ユイ「ええ」

カヲル「あなたがとろうとしている行動は、碇シンジくんのためだと一定の理解はできる。でも、どうしてそこまで生き急がなければいけない」

ユイ「起きてしまった結果を嘆いていても前に進めないのよ。どんなに頑張ったって過去は変えられないでしょ」

カヲル「なにもかも決められたレールの上で生きるのが、本当に彼の為になると?」

ユイ「そうよ」

カヲル「意思は誰しもに尊重されるべきだ。叶えた願いに対して自覚していないのは、責任を放棄しているのと同義だからね」

ユイ「既に一線を超えてしまっている。シンジの手にあるアダム、夫の死。私はあの人から繋いだバトンを持ち走らなければならない。どんな方法を使っても。ゴールテープを切るまで止まらない」

カヲル「愚かだね。愚かで、悲しい生き物だ」

リツコ「……」

ユイ「そうね、私もそう思う。人は、寂しさと怒りを処理する方法を間違えるだけで簡単に崩れてしまう」

カヲル「自分の夫、息子、家族。幾千、幾万にのぼる無関係のニンゲンを巻き込んでいる気分は?」

ユイ「……」

カヲル「孤独。そうじゃないのかな」

ユイ「いつシンジの脳内に?」

カヲル「ボクが彼女とシンジくんをリンクさせる」スタスタ

サクラ「……? こんにちは」

カヲル「ボクと手をつないでもらっていいかい?」

サクラ「手?」

カヲル「そう、キミとボクとシンジくんで手を繋ぐ。シンジくんの目が覚めますようにって真剣に願ってほしいんだ」

サクラ「願う? お願いしたらええの?」

カヲル「心の底からだよ? 他は一切考えない。純粋に、それだけを願うんだ」スッ

サクラ「うーん、よくわからへんけど、やってみる!」

シンジ「……」すぅーすぅー

サクラ「(シンジさん、お願い起きて……!)」

カヲル「……」

サクラ「(シンジさん、シンジさん、シンジさん、シンジさん)」

カヲル「もっと。口にだしていいよ」

サクラ「わかった! シンジさん! もういい加減起きて!」

【シンジ 夢の中】

サクラ「シンジ、さ……ん」

シンジ「いやだ、いやだ」ギュウ

サクラ「シンジさんってばぁっ! もぉ! 碇さん!」

シンジ「……?」

サクラ「こんな所で体育座りなんかして、ほんま堪忍してほしいわ!」

シンジ「誰……」

サクラ「立ってください! そろそろ起きる時間ですよ!」

シンジ「……」

サクラ「しっかりしないと! 自分の足ついてはるんでしょ⁉︎」グィ

シンジ「いやだ、父さんはもういないんだ。戻って僕になにをしろっていうの」

サクラ「私を救ってくれました!」

シンジ「キミを……? どこかで会ったことがある?」

サクラ「気づいてへんのですか⁉︎ 私ですよ! 私!」

シンジ「えっと」

サクラ「鈴原サクラです! ほら、兄ちゃんのジャージ!」

シンジ「サクラちゃん⁉︎ そんな、どう見たって僕と同じ歳ぐらいじゃないか! サクラちゃんはまだ小学生のはず」

サクラ「あれ、ほんまや。おっきくなってる」キョロキョロ

シンジ「なんで」

サクラ「うーん、あっ! もしかしたら碇さんの夢の中やからとか⁉︎」

シンジ「そ、そういうもの?」

サクラ「わからへんことは気にしたってきっとわかりません。なんかそれはわかる気がします」

シンジ「どうしてここに」

サクラ「碇さんの目を覚ますために決まっとるやないかぁ」

シンジ「帰ってよ、僕は、目を覚ましたくないんだ」

サクラ「どうしてですか」

シンジ「みんな、みんなウソつきなんだ。みんな」

サクラ「……」

シンジ「父さんを殺したのに。なんでそんな人たちのために戦わなくちゃいけないのか。僕にはわからない」

サクラ「みんな、それぞれ都合があるんですよ」

シンジ「人を[ピーーー]理由になんかならない! 正当化してるだけだ!」

サクラ「そうかもしれまへん。せやけど、シンジさんは、お父さんになにかしてあげました?」

シンジ「これからだったんだ! 父さんと仲直りして、認められたかったのに!」

サクラ「シンジさんだって、自分の欲求のために父親を利用しようとしてるやないですか」

シンジ「違う!」

サクラ「本当に、お父さんが好きやったんですか?」

シンジ「好き……」

サクラ「認められたいのは、自分のためやないんですか?」

シンジ「僕は違うんだ! 僕は」

サクラ「なにが違うんですか。父親もそうやってまわりを利用してきたんです。ゲンドウは綺麗な人間でしたか?」

シンジ「父さんは、僕の」

サクラ「父親ですね。ですけど、まわりの人にとっては赤の他人なんです」

シンジ「母さんは違う。母さんにとって父さんは夫だから」

サクラ「夫婦の問題です。すり替えないでください。シンジさんは、お父さんが好きやったですか?」

シンジ「好きじゃなかった」

サクラ「なんでですか」

シンジ「僕を見てくれなかったから。歩みよろうとしても許してくれなかった」

サクラ「受け入れて認めてほしかった」

シンジ「父親らしいことをしてほしかった」

サクラ「自分のイメージを押しつけはりたいんや」

シンジ「なんなんだよ……。どうしてサクラちゃんまでそんなに僕を責めるの⁉︎ 僕は優しくしてほしいんだ!」

サクラ「みんな、矛盾を抱えて生きてます。人は不完全なもんやから。補い合って生きてるんです」

シンジ「……」

サクラ「優しくされたい。碇さんはそれだけの世界を望むんですか。認められたいという願いは叶えられませんよ」

シンジ「どうして」

サクラ「無条件の優しさは認めているとはならないからです」

シンジ「……」

サクラ「気持ち悪ないですか? そんなセカイ。悪いことをしても、頑張ってなくても、受け入られるなんて。私やったら嫌やわ。そんなの自分が必要とされとる気がせぇへんもん」

シンジ「……」

サクラ「碇さんが変えられなかったのは、お父さんを救えなかったのは、なんの力も持たない子供やからです。ホントは気づいてるんでしょう?」

シンジ「僕には、エヴァパイロットしての価値しかない」

サクラ「そうですね、それしか力がない。すぐに力がほしい」

シンジ「階段はいきなり十段にはいけない」

アスカ『やっとわかったの⁉︎ バカシンジ!」

シンジ「わかってたんだ。地道にやるしかないって。でも、その間にも状況は変わっていく」

アスカ『だったらがむしゃらにやってみなさいよ! やる前から諦めるつもり⁉︎』

シンジ「こわいんだ。自分の無力さと向き合うのが。なにもできない歯がゆい思いをしたくない」

サクラ「はい、これ」スッ

シンジ「これは……?」

サクラ「兄ちゃんの野球道具です。グローブよく使いこまれてるでしょ」

シンジ「うん」

サクラ「球児は、ううん、本気でスポーツをする人はみんな頑張ってます。自分の限界を、乗り越えたら結果が待っていると知っているからです。碇さんはやりまへん? スポーツ」

シンジ「僕は、そういうのは……」

サクラ「苦手そうですもんね」

シンジ「まぁ、その」

サクラ「根性! って言葉があります。逃げてるだけじゃなにも変わりまへんよ」

アスカ『あんたは、約束を破らない男になるんじゃなかったの』

シンジ「……」

サクラ「うじうじ悩んで、塞ぎこんでる間にも状況は変わっています」

シンジ「……」

サクラ「碇さんは、大切な人を、みんな見捨てるんですか。エヴァパイロットっていう力があるのに」

シンジ「……」

サクラ「使徒がくれば、みんな死にますよ。お父さんだけじゃなくなるんです。やれるのなら試さへんのですか」

シンジ「……」

サクラ「私は死にたくありまへん。ちゃんと最後まで面倒を見てください。それが、碇さんの責任です」

シンジ「僕に、戦えって」

サクラ「そうです! 使徒がいなくなっても、来ていなくても誰かと戦わなくちゃあかんのです!」

シンジ「……」

レイ「許せないのならそれでもいい。選ぶのはあなた」

シンジ「僕が、選ぶ」

サクラ「意思は誰でも選ぶことのできる。自由なものなんです。雨にも風にも負けず、貫き通す信念を、保てる強さを持ってください」

シンジ「僕に、できるかな」

アスカ『やるの! できるかできないかじゃない!』

シンジ「諦めなくちゃいけなくなったら……」

ゲンドウ『そうなったら、その時にでも考えろ』

シンジ「父さん……」

ゲンドウ『シンジ。前を向け』

シンジ「僕には」

ゲンドウ『限界は己で決めるものではない。お前がどうありたいかだ』

シンジ「……」

ゲンドウ『これまですまなかった。お前がほしいのは謝罪か?」

シンジ「違うよ」

ゲンドウ『俺に認めてほしいのならば、こうしていては得られないぞ』

シンジ「もう一度、頑張る……」

ゲンドウ『現実は時に残酷だ。折れそうになっても歯を食いしばって耐えろ。いくつかは報われる時がくると信じられれば無駄な瞬間などない』

シンジ「そう、なのかな」

ゲンドウ『無駄になってしまうのは、諦めた瞬間に訪れる。お前はお前の人生を歩め』

サクラ「みんな待ってますよ。まわりにちゃんと目を向けてみてください」

トウジ『シンジ!」

ケンスケ『碇!』

アスカ『お昼ご飯まだぁ⁉︎』

ミサト『シンジくん、あなたは人に褒められる立派なことをしたのよ……』

シンジ「トウジ、ケンスケ、アスカ、ミサトさん」

レイ「……」

シンジ「綾波、レイ」

カヲル「希望。これが碇シンジくんの宿す光か」

シンジ「キミは……?」

サクラ「ほぉら、目を覚ます時間です!」

トウジ&ケンスケ&アスカ&ミサト『起きて!』

【ネルフ本部 第六層】

シンジ「……」パチ

ユイ「シンジ!」ガタッ

サクラ「あ、おはようさんです」

ユイ「シンジ、よかった……」ギュウ

シンジ「……ただ、会いたかっただけなんだ、もう一度……」

リツコ「……」

カヲル「複雑な表情を浮かべているね」

リツコ「終わったのなら帰ったら?」

カヲル「生憎と還る場所がないんだ」

リツコ「そう」

カヲル「あなたはどうするつもりなんだい」

リツコ「これから検査よ」

カヲル「聞かれている意味がわかっててはぐらかしてるね」

リツコ「答える義理はないわ」

カヲル「人を分析するのは得意だとしても、自分を客観視できるとは限らない」

リツコ「不愉快だわ」

カヲル「誰にだって踏み入れられたくない領域がある。どうやらボクは土足で踏み込もうとしているのかな」

リツコ「……」

カヲル「それじゃ、僕はこれで」スタスタ

ユイ「赤木博士。至急、シンジのメディカルチェックを」

リツコ「承知しました。サクラちゃん、手を離していいわよ」

サクラ「へ? 結局なんやったんですか? ずっと握ってるだけやったですけど」

リツコ「なにを行ったか、方法を知っている人はどこかへ行ってしまったわ」

ユイ「今はタブリスよりシンジです」

リツコ「はい。サクラちゃんも検査は一通り受けてもらうわね」

サクラ「はぁ」

リツコ「心配ないわ。終わったら病院で待ってるお兄さんに連絡してあげるから」

シンジ「サクラ……ちゃん」

サクラ「……? どないしたん?」

シンジ「手術はどう、だった」

サクラ「それなら、明後日ですよ。先生は心配あらへんて。すこし後遺症は残るかもしへんけど」

ユイ「シンジ、無理して喋らなくていいのよ」

シンジ「父さんは……」

ユイ「あの人なら、アラスカに調査に行った。長期滞在になる予定よ」

リツコ「……」

シンジ「ちょ、うさ?」

ユイ「ええ。今は休みなさい」

【付属病院 ロビー】

トウジ「サクラ! 大丈夫やったか? 変なことされてないか? 心配ない言うとったけどワシは心配で心配で」

サクラ「えへへ、なんもないて。シンジさん、目が覚めたよ!」

トウジ「……! そうか! それで、どこに」

サクラ「検査があるからって、MRIにかかってる。うちもシンジさん終わったらはいる」

トウジ「シンジは、なんで目が覚めへんかったんや」

サクラ「わかんない。手を握ってただけやったし」

トウジ「……さよか」

リツコ「妹さん大手柄だったわよ。今後の医療費、及び経過はネルフが全負担します」

トウジ「おお! ほんまでっか⁉︎」

リツコ「もともとそういう約束だったけど。強固なモノとして確約する。誓約書は必要?」

トウジ「いえっ! そんな」

リツコ「小児科病棟から特別室への移動を命じられています。一泊数十万の部屋にね」

サクラ「えぇ?」

トウジ「おま、なにしてきたんや」

リツコ「司令の指示。あなた達は甘えておきなさい。遠慮をするものではないわ」

トウジ「遠慮なんてするかいな! ワシは、ありがたいですし!」

サクラ「もう。どんな部屋なんやろか」

トウジ「色々設備が凄いんちゃうか?」

サクラ「うちは普通でもかまへんのに」

トウジ「せっかくなんやからご好意はいただいとけ! 遠慮なんかしたらあかんぞ!」

サクラ「いやしいなぁ」

トウジ「なんやと⁉︎ たくましいと言わんかい! こんなチャンスめったにあらへんのやからな!」

リツコ「シンジくんに会ってく?」

サクラ「兄ちゃん、そうしなよ。一緒にシンジさんとこ行こう?」

トウジ「せやけど、まだ体調悪いやないんでっか?」

リツコ「問題ないわよ。ただ、寝ていただけなんだから」

トウジ「はぁ」

レイ「赤木博士」スッ

リツコ「レイ……? あなた、どうしてここに」

レイ「碇くんのお見舞いに来ました」

リツコ「お見舞い? あなたが?」

トウジ「なんや、綾波もシンジが入院しとるて知っとたんかいな。教えてくれればよかったのに、冷たいのぉ」

リツコ「(レイが? なぜ知っているの……?)」

レイ「具合、どうでしょうか」

リツコ「先ほど目を覚ましたところ。あなたもついていらっしゃい」

サクラ「兄ちゃん、この人はだれ?」

トウジ「これや、これ」ピッ

サクラ「小指?」

トウジ「センセのハーレムの中の一人……いだ! いだだだ! 小指を噛むな!」

サクラ「むー!」

トウジ「たく、おー痛っ、腹減ったんか」

サクラ「ふんっ!」プイッ

【付属病院 205号室】

リツコ「シンジくん。入るわよ」コンコン

シンジ「どうぞ」ムクッ

トウジ「よっ!」

シンジ「トウジ?」

サクラ「ちょっと、はやく入って。後ろつかとんねん」

トウジ「せかすな! 今入るわ」

シンジ「サクラちゃんも」

レイ「……」スッ

シンジ「綾波……」

リツコ「私は先にカルテを確認してくるから。好きに喋ってなさい。サクラちゃんは検査がある、もう少ししたら呼ばれると思うけど」クル

トウジ「大丈夫か? 寝て目が覚めへんかったらしいやないか」

シンジ「平気だよ。心配かけちゃったみたいだね」

トウジ「なにがあったか話すことはできんのか?」

シンジ「うん……」

トウジ「水臭いやっちゃのー。そんなん言わなわからんやろが」

シンジ「機密に触れてたら迷惑がかかるし、言っても理解できないと思うから」

トウジ「ふぅー」

シンジ「綾波」

レイ「なに?」

シンジ「聞きたいことがあるんだ。夢の中の出来事を知ってるの?」

レイ「ええ」

シンジ「……! やっぱり、あれは全部夢じゃなかったの⁉︎ 綾波は夢にいたの⁉︎」

トウジ「な、なんや」

シンジ「少し、二人で話せないかな」

レイ「かまわないわ」

トウジ「いったい……」

サクラ「むー」プクー

シンジ「ごめん。トウジは少しここで待ってて」

レイ「監視カメラがついてないところへ。屋上に行きましょう」

シンジ「わかったよ」

サクラ「兄ちゃん! なにぼーっとしてんの⁉︎」

トウジ「は?」

サクラ「シンジさんまだ起きたばっかりやないの! それでも友達なん⁉︎」

トウジ「いや、でも、案外平気そうやし」

サクラ「このグズ!」

トウジ「な、なんやとぉ⁉︎ シンジが二人で行くのになんで……はっ! ま、まさか、お前」

シンジ「……?」

トウジ「あかんぞ! まだはやいやろ!」

サクラ「な、なにを勘違いしてんの⁉︎」ボッ

トウジ「なにをて! なにを顔赤くしとんねん! マセガキが、小学生から色気づくなや!」

サクラ「なんやて⁉︎ 女は男より精神年齢上なんやもん!」

トウジ「アホか!」

サクラ「アホとはなんやねん! 女は度量がある生き物なんや! 母ちゃんもそう言うとったやろ!」

トウジ「変な影響ばっかり受けよって……!」

サクラ「兄ちゃんだって男はっていうこだわりは父ちゃんからやないか!」

トウジ「やかましい! いかがわしい知識をつける前に怪我を治さんかい! ワシは許さへんぞ!」

レイ「碇くん、行きましょう」

シンジ「……? ああ、うん」

【付属病院 屋上】

レイ「なにか、頭に浮かんだ?」

シンジ「いや」

レイ「どうして、私に聞いてきたの」

シンジ「夢なのに、はっきりと覚えてるんだ。まるで現実みたいに。それに、今なら、エヴァがなんなのか。使徒がどうしてくるのかわかる気がする」

レイ「そう」

シンジ「綾波は、なんで僕の夢にいたって言ったの? 使徒、天使の名を持つシ者。綾波はなにか知ってるの?」

レイ「碇くんが知っているのと同じ」

シンジ「僕がなにを知っているっていうのさ⁉︎」

レイ「この世界の理(ことわり)。ヒトがどこに進むのか」

シンジ「……」

レイ「向き合えたわけではないのね」

シンジ「父さんは、本当にアラスカにいるの?」

レイ「……」

シンジ「答え、られないんだね。そうさせるのは、僕なのか。教えてほしいんだ。母さんはなにをしようとしてるの?」

レイ「人類の補完。生命をひとつにしようとしている」

シンジ「生命を、ひとつに?」

レイ「……」

シンジ「違う。僕は本当はわかってる。わからないのはまだ逃げてるからだ。そうだよね、綾波」

レイ「どうすべきか選ぶのはあなた」

シンジ「僕は……僕は……」ギュウ

レイ「……」

シンジ「まだ、エヴァに乗るよ。綾波に協力してほしい」

レイ「私に……?」

シンジ「僕を助けてほしいんだ。僕は弱いから。力だってない。綾波が必要なんだ」ギュウ

レイ「な、なにを言うのよ」ボッ

シンジ「頼りないままじゃいけないのはわかってる。僕ひとりじゃどうしようもないんだ、だから……!」

レイ「て、手を離して」

シンジ「あっ、ご、ごめん! その、勢いでつい!」

レイ「いい」

シンジ「あの、だめ、かな」

レイ「なにをしたいの?」

シンジ「母さんがなにを考えているのか知りたい。リツコさん、加持さん、副司令たちが関係しているよね」

レイ「詮索は命令違反になる」

シンジ「そうかもしれない。だけど、知りたいんだ」

レイ「……」コクリ

シンジ「助かるよ、綾波がいてくれてよかった」ニコ

レイ「べ、別に」

シンジ「どうしたの? 顔が赤いけど」

レイ「赤い?」

シンジ「うん。少しだけ。だけど、そっちの方がいいよ」

レイ「あ、ありがとう」

【付属病院 205号室】

トウジ「おう、おかえりさん。なんや? 綾波は帰ったんか?」

シンジ「うん、この後ネルフに用事があるって。サクラちゃんは?」

トウジ「検査や……パイロットは大変やのー。拘束時間ばっかりで」

シンジ「これが普通だから」

トウジ「……」

シンジ「綾波が持ってきてくれたりんごがあるけど、食べる?」

トウジ「いや」

シンジ「……? どうかしたの?」

トウジ「シンジ。お前がなにを抱えとるか知らん。言われたとしても半分でさえ理解できるかわからん、ワシはバカやからの」

シンジ「……」

トウジ「せやけど、話を聞く相手ぐらいなれるはずや。なんかあったなら話せや」

シンジ「ありがとう。でも、大丈夫だよ」

トウジ「しみったれた話はワシは好かん。なんもない言うならまわりに心配かけたらあかんで」

シンジ「うん」

トウジ「男は肩に荷を背負うもんや」

シンジ「そうだね。僕には、重すぎるかもしれないけど」

トウジ「道を見据えたならまっすぐ進まなあかんぞ! ワシらに何にもないって決めたなら押し通せ! ワシも黙って待ってやる! それが男の友情ってもんや!」

シンジ「ぷっ、トウジらしいや」

トウジ「大事なことなんやぞ!」

シンジ「わかってるって」

トウジ「ふん、サクラの検査が終わったらワシも家に帰る。学校はまだしばらくこんのか?」

シンジ「いや、明日から行くよ。リツコさんにもそう伝えるつもり」

トウジ「体調は平気なんか? 手に包帯しとるが」

シンジ「これは、気にしなくていいよ。いつも通りだから」

トウジ「……?」

シンジ「そうだ。これ、あげるよ」

トウジ「ウォークマンやないか。お前、これ」

シンジ「僕には、もう必要ない」

トウジ「さよか……あっ! 妹はやらんぞ!」

シンジ「い、いもうと?」

トウジ「サクラがほしかったらあと十年! いや! あと十五年は待ってからやな!」

シンジ「なに言ってるんだよ」

トウジ「くぅーっ! まさかセンセがここまでスケコマシ野郎やったとは! なにもサクラまで!」

シンジ「はぁ」

【同時刻 ネルフ本部 執務室】

ゼーレ02「我らの悲願たる補完計画」

ゼーレ05「計画された“終末の時”まで、残された時間は少ない。その理由を教えよう」

加持「いやはや、驚きましたな」

ゼーレ03「こそこそと嗅ぎ回っているようだからな。キミの目の前にある極秘ファイルを手に取りたまえ」

ゼーレ04「発端は十三年前よりはるか以前に遡る。具体的には、我々がゼーレを発足するきっかけとなったその録画データだ」

加持「これが……? 黙示録とも呼ぶべきものを――」

ゼーレ02「なにを躊躇う。よもや今さら命が惜しくなったわけではあるまい。キミに渡そう、好きにしたまえ」

加持「タダより高いものはないと知らない子供じゃありませんよ。見返りを要求されるとわかっているので、ビビっているだけです」

ゼーレ05「ふっ。臆病だな」

加持「――しかし、臆病だからこそ今日(こんにち)まで生き延びてこれたんです。たとえそれが地獄のような場所だとしても」

ゼーレ05「我々が望むべきは二つ」

ゼーレ04「碇ユイに関する情報を提供と抹殺」

ゼーレ02「データを提供するかわりに我々の“鈴”になってもらいたい」

加持「これはまた、物騒なお話ですね。キール議長はこの件をご存知で?」

ゼーレ04「この問題は、我々だけで決めた。不安材料の解消に対して保険をかけるべきを是としたからだ」

ゼーレ02「左様。キール議長とて完璧ではない。いや、人類そのものか。我々にも補佐という役目がある」

加持「なぜ、わざわざ俺に情報の開示をするんです? その気になれば圧力をかけられるでしょう」

ゼーレ03「手の内にあるデータの一部を渡したにすぎない。試供品だよ、それは」

ゼーレ05「喉から手をでそうなほど欲している資料はまだ一部というわけだ。働きに応じてさらなる開示をしよう」

ゼーレ05「キミの資料は確認済みだ。孤児達の無念を晴らしたければ彼女ではなく我々につけ」

加持「……」

ゼーレ03「断れば、待つのは死。裏切っても、死あるのみだ」

加持「日本政府にも内通していると知ってて言ってるんでしょ?」

ゼーレ02「無論」

加持「ふぅ……。俺にトリプルスパイになれというわけですか。あなた方の益になるように。どうやら、碇ユイ博士は信頼を勝ち得るまで成功していないようですな」

ゼーレ05「目的が達成されるのならば、人選についてとかく言う意義はなし」

ゼーレ06「だが、我々の実行機関たるネルフ。その私物化は許されない」

ゼーレ02「彼女と我々。キミにとってどちらが魅力的な餌か。選択の時だ。加持リョウジ」

【加持 デスク】

加持「……――ふぅ」ピッ

ゲンドウ『お集まりいただき恐縮です。今日は皆様方に終末について話したい』

キール『続けたまえ』

ゲンドウ『我々人類は破滅の瀬戸際にいる。妻がもたらした裏死海文書の目録にある使徒の襲来。治療法のない病気。破滅を叫ぶ原理主義者ども」

ゼーレ『……』

ゲンドウ『やつらは制御できない集団とかしています。知恵をもたざる者にいきすぎた玩具(兵器)を与えてしまったため、本来の理念を失っている』

キール『それで?』

加持「……」カチャ シュボッ

ゲンドウ『これらを克服したとしてもさらなる脅威が待っている。先のセカンドインパクトは計画性をもっておこしたことでニアで済みましたが、気候の変動で50年後における可住地は9割が海に沈む』

加持「……事前に起こしただって……」ポロ

ゼーレ『必要な粛清がよもやあのような中途半端な結果になるとはな。いずれ貧困と飢餓がくる。そして、新たな争いの火種になる』

ゲンドウ『これは予測ではなく事実だ。必然に起こる事態』

キール『使徒が来ずとも世界の終わりは近い。わかりきったことをつらねる為にここに立っているわけではあるまい』

ゲンドウ『――ふっ。では、滅びますか?』

ゼーレ『……』

ゲンドウ『我々の手で、世界を終わらせ……いえ、救済するのです。我々の望む形でだ』

キール『……』

ゲンドウ『人類終末のシナリオを我々が作るのです。かつて行われ、大成功を収めた、“ノアの方舟”ですよ』

ゼーレ『方舟……? どこにそんなものがある? 宇宙船でも作って新天地を目指すというのかね。馬鹿馬鹿しい』

ゲンドウ『これまでの発想と変わりません。我々には死海文書の外典があるのですから。理想の地球、そして完璧な個体へと人類は昇華できます』

キール『方法を聞こう』

ゲンドウ『救済の手段は既に我らの手に。ご覧ください、こちらが悲願を達成するその道具、人型決戦兵器エヴァンゲリオンのプロトタイプです』

ゼーレ『おお……! これは、セカンドインパクトにあったコピーか』

加持「――ここでおしまいか。どうしたもんかねぇ」

【ネルフ本部 執務室】

冬月「息子の様子はどうだね。後遺症の心配はないか?」

ユイ「経過は良好です。思った以上に前向きな姿勢を見せているので違和感がありますが」

冬月「タブリスに脳を弄られていたんだろう? なにかこちらが知り得えない情報があるのではないか?」

ユイ「時間が必要です。今のところそれらしき変化は見受けられません」

冬月「しかし、どうも気になる。あのタブリスを模した少年。本当に味方と考えていいのか」

ユイ「騙し合いをしている内はまだお互いの腹の中を探っていると同義です。多少、行動に問題があると認めますが、駒を使いこなせない打ち手は無能です」

冬月「使えない駒だとしてもかね」

ユイ「盤上に不要な駒なぞありません。手の内に何枚、どのような個性を携えている駒をかかえているか……。相手の数十手先を予測し対策を行えばよいだけです」

冬月「サードチルドレンの保護観察はどうする? 碇の時と同様に一人暮らしを行う方針ではないだろう」

ユイ「職員と同居させます」

冬月「葛城宅に戻すか。それもいたしかたある――」

ユイ「いえ、そうはしません」

冬月「なに? では、赤木博士のところか?」

ユイ「違いますよ」

冬月「おい、わかっているのか。もはや俺たちの計画の要は息子が握っていると言っても過言ではないのだぞ」

ユイ「だからこそ、です。怪しまれず、なにも疑うことを知らない者にまかせましょう」

冬月「ううむ、末端の職員か」

ユイ「伊吹二尉の元にアルバイトという口実で押しこみます。赤木博士も協力的ですし、彼女から言ってもらえれば滞りないでしょう」

冬月「……」

ユイ「明日からシンジは学校に通うと言っていましたので、今日中にアパートの契約を解除しておいてください」

冬月「一度押しこんでしまえば、あとはなし崩し、か」

ユイ「帰る家がなければネルフで保護するしかありません。次の入居先のアパートが決まるまでの間、伊吹二尉の元に住まわせる。こういうテイでいきます」

冬月「わかった。すぐ手配しておこう」

ユイ「……? 先生。私が地下にいる間、だれかここに来ました?」

冬月「いや、そんな報告はあがっていない。なにか不審な点でも?」

ユイ「そう、ですか。それなら、いいんですけど……」

【ネルフ本部 ラボ】

マヤ「シ、シンジくんをうちでですか?」

リツコ「急で悪いんだけど」

マヤ「あの、葛城一尉のお宅だと都合が悪いんでしょうか」

リツコ「だめよ。司令には私から推薦をしておいた」

マヤ「えっ! そ、そんな。急に言われても困ります……」

リツコ「マヤ、これはあなたにとっての更生プログラムでもあるのよ」

マヤ「……」

リツコ「潔癖症の自覚、あるわよね。ひとえに潔癖症と言っても細菌に対し嫌悪感を覚えているわけじゃない。あなたのは対異性、つまり男を強く感じる性への不快感」

マヤ「あの、これまで、なんとかやってこれましたし」

リツコ「ふぅ……そうやってとりつくろって生きているとこの先辛いわよ。純情な反応……いいえ、過剰防衛とさえ思える拒絶の所以はそこにある」

マヤ「どうしても、受け入れ、しなくちゃダメですか……?」

リツコ「相手は中学生で、無害な小動物とでも考えなさい。あなたが最も優先すべきことは“異性への慣れ”。綺麗なだけの世界なんて存在しないと頭でわかっている。でも心で受け入れられないのね」

マヤ「仕事に支障はないぐらいに我慢できていますし、これからも尊敬する先輩の下で働けるのなら私……!」

リツコ「あなたの才能は見込みがあると評価しています」

マヤ「ほ、ほんとですかっ⁉︎」

リツコ「でもね、機械相手だけじゃない。人ともうまくやれる術を身につけなさい。技術者はただでさえ内に籠もりがちな環境にいるんだから。孤独は、虚しいだけだと気がつく前に……」

マヤ「先輩?」

リツコ「とにかく、これは司令からの発令なのよ。私を失望させないで」

マヤ「断ったら、先輩は、失望するんですね」

リツコ「好きだけを仕事にしたいのなら転職を提案します。ましてや、その理由が中学生の面倒を見るのが嫌だからだなんて。あの子がマヤに対して危害をくわえると思う?」

マヤ「そうは、言ってませんけど……あの、いつからですか」

リツコ「本日付けでサードチルドレンの荷物を搬送するそうよ」

マヤ「ええぇぇっ⁉︎ そ、そんなっ⁉︎ それって、業者が⁉︎」

リツコ「鍵なら副司令に頼まれてスペアキーを渡しておいたから」

マヤ「来てますよね⁉︎ もう私の家にシンジくんの荷物届いてますよね⁉︎」

リツコ「でしょうね」コト

マヤ「ど、どうしようっ! 下着、隠さないと! し、失礼しますっ!」

【マヤ宅 玄関前】

シンジ「……? えっと、僕はマンション暮らしじゃありませんよ」

諜報部員「……」

シンジ「聞こえてないのか。すぅー、僕はアパート暮らしで――」

諜報部員「サードチルドレン、以下一名を伊吹二尉宅まで護送するよう連絡がありました」カチ ピンポーン

シンジ「え? てことは、ここはマヤさんの? どうして……」

諜報部員「詳細について存じあげません」

シンジ「母さんがなにか手配したのかな」ボソ

諜報部員「私に降りてきた指示は赤木博士によるものです」カチ ピンポーン

シンジ「リツコさんが?」

諜報部員「はい。それ以上のことはわかりかねます。これが仕事ですので」カチ ピンポーン

シンジ「は、はぁ」

マヤ「す、すいませーんっ! ちょっと待ってもらえませんか!」ガチャ

諜報部員「ドアチェーンを外してください。伊吹二尉。サードチルドレンがお待ちです」

マヤ「シンジくん! 少し待てるわよね⁉︎」

シンジ「あ、あのっ!」

マヤ「ご、ごめんね! 10分で済ませるから!」バタン!

シンジ「な、なにを済ませるんだろう」

諜報部員「――……さぁ」

【マヤ宅 リビング】

シンジ「……」

マヤ「……」チラ

シンジ&マヤ「……あ、あのっ!」

シンジ「あ、どうぞ」

マヤ「いえいえ、そちらこそ……」

シンジ「……」

マヤ「……」

シンジ「……ぷっ、くっくっく」

マヤ「ど、どうしたの?」

シンジ「なんだか、おかしくなっちゃって」

マヤ「あ……。ごめんね」

シンジ「いえ、謝る必要ないです。あの、僕はどうしてここにいるんですか?」

マヤ「……? シンジくん。なにも聞いてないの?」

シンジ「はい」

マヤ「そう、なんだ。てっきり先輩から話が通ってるのかと思ってた」

シンジ「話?」

マヤ「最初は、アルバイトって話だったみたいなんだけど。シンジくんが私のところで」

シンジ「僕がですか?」

マヤ「うん、そう。料理とか掃除とか。ほら、家政婦ってあるじゃない? それ」

シンジ「僕はなにも聞いてない……」

マヤ「あっ! きっと、すぐに知らせるつもりだったのよ。司令の交代とかあってドタバタしてたから遅れたのかもしれないし」

シンジ「はぁ」

マヤ「あのね、シンジくん。あなたはパイロットでしょ?」

シンジ「はい、まぁ」

マヤ「見つけてきた物件は防犯上の問題であまり良い条件とは言い難いらしいの。保安部を警護につけたとしてもパイロットの身になにかあれば大問題ですもの」

シンジ「……」

マヤ「だから、もう少し、探してみてくれない? 見つかるまではここに住んでかまわないから」

シンジ「えっ、ここに?」

マヤ「うん……」

シンジ「いや、いいですよ。マヤさんにご迷惑かけますし、ネルフのコンテナで寝泊まりすれば」

マヤ「……」

シンジ「……あの?」

マヤ「私の、更生プログラムでもあるらしいの。先輩が推薦したって」

シンジ「……?」

マヤ「突然、こんなこと言われたら戸惑うわよね。あの、私、男の人とか少し、苦手で……」

シンジ「……」

マヤ「先輩は、たぶん、シンジくんと同居させることで私に少しでも慣れさせようとしてくれてるみたい」

シンジ「あ……」

マヤ「私事で、ご、ごめんね。だから、シンジくんだけのせいじゃないの。都合が良かったんでしょうね、私たち」

シンジ「あの、僕の荷物とかは?」

マヤ「それなら、奥の部屋に。あんまり荷物ないのね。ダンボールひとつだなんて」

シンジ「はい。必要なものはバックに収まるぐらいしか」

マヤ「そっか。……お腹すいてない? なにか食べる?」

シンジ「えっと、そうですね。……あの、本当にいいんですか? 僕がここにいて」

マヤ「ごめんなさい。本当は私、今もいっぱいいっぱいで、中学生って子供、なのよね。でも、家にあげたことないから」

シンジ「べ、べつにおかしくないと、思いますけど」

マヤ「おかしいわよ。もうハタチ超えてるのに。で、でも! 恋愛経験がその、まったくないってわけじゃ! いいかなー、って人は、これまでいたし……」

シンジ「は、はぁ」

マヤ「でも、やっぱりだめ。向こうからアプローチされても、こっちからアプローチしようにも、距離感の測り方をうまくとれないの」

シンジ「……」

マヤ「仕事だったら、必要な業務連絡を事務的に済ませればいい。日常会話で困らない程度に、ごまかす術を身につけた。自分に」

シンジ「……」

マヤ「や、やだ。なに話てるんだろう。よっぽど余裕ないのかな、私。ごめん、あの、なにか作ろうか?」

シンジ「よければ、僕が……」

マヤ「だめ!」ガタンッ

シンジ「あ……」

マヤ「ご、ごめんなさい。あの、私物にあまり触ってほしくなくて。……ごめんね」

シンジ「いや、えっと、自分の家、ですもんね。僕もなにがどこにあるかわからないし」

マヤ「その、荷物見てきたら? 奥の部屋はそのままシンジくんの部屋にしていいから」

シンジ「そう、ですね。そうします」

【ネルフ本部 執務室】

リツコ「サードチルドレンは予定通り、伊吹二尉の宅に送り届けました」

ユイ「ご苦労様。辻褄合わせは完璧ね。伊吹二尉とシンジはもちろん、周囲も疑わないでしょう」

リツコ「マヤの場合は、症状が複雑化しているので容易でした」

ユイ「女性は世の中の習慣から、なにかにつけて守られている者という概念が強い。だからこそ自立性のある女性に特異性が生まれ、強く輝く。……皮肉ね、あなたは夫に依存して体面を保っていただけなのに」

リツコ「……!」ギリッ

ユイ「しかし、伊吹二尉はあなたの弱さを知らない。赤木博士に抱いているイメージは“どこまでもフラットで科学者な自立した女性”」

リツコ「仕事には、どんなものにも妥協しないという性質がいい面であらわれています。しかし、汚れ仕事を嫌う癖があります」

ユイ「完璧すぎる貴女はまさに彼女のなりたい自分そのもの。理想像なのでしょう。男がいなくても毅然としているカッコイイ人、かしらね。ふふっ」

リツコ「それはご自分だとおっしゃりたいのですか?」

ユイ「あら? 私?」

リツコ「不倫をしていると知っていても冷静に対処なさっていたではありませんか。しかも、私を部下に引き入れるだなんて」

ユイ「うーん、そうね? でも、あなたは優秀だから。それだよ」

リツコ「一度も、あの人を恨まなかったんですか?」

ユイ「恨む?」

リツコ「一度もなかったんでしょうか? 夫婦の契りを結び、裏切られていると知っていながら」

ユイ「一人が一人と結婚して永遠の愛を誓い合う。この永遠というのは、意識があるまでと仮定すれば死ぬまでと該当するけど。それじゃ、論理的に愛とはなにかを説明できる?」

リツコ「……」

ユイ「私ね、こう見えても、学生の頃はけっこーぶいぶい言わせてたのよ? ぶいぶいって死語か。そうねぇ……なにが言いたかっていうと」

リツコ「……?」

ユイ「――男は人類の半分よ」

【マヤ宅 リビング】

シンジ「ごちそうさまでした」

マヤ「洗い物はそのままにしてくれていいから」

シンジ「すみません。自分の食器用意できてなくて」

マヤ「仕方ないわよ。でも、その、明日にでも買ってきておいてもらえる?」

シンジ「わかりました」

マヤ「あ、忘れちゃうところだった。私のクレジットカード渡しておくわね」

シンジ「いいんですか?」

マヤ「うん、高額な使い方されても、後で請求できると思うし、ネルフに」

シンジ「いや、そんな使い方はしませんけど。……わかりました。では、明日お返しします」

マヤ「……」チラ

シンジ「……」

マヤ「もう、寝る?」

シンジ「そうですね」

マヤ「えっ、と、あの、まだはやくない? 21時になってないけど」

シンジ「かまいませんよ。眠れなければ部屋にいますから」ガタ

マヤ「あの! シンジくん!」

シンジ「はい?」

マヤ「私、ひどい態度してない?」

シンジ「……いや、そんなことは」

マヤ「平気、なの?」

シンジ「慣れないのならしょうがないです。それに、先生の所にいた時とあまり変わりありませんから」

マヤ「それって、ネルフに来る前ってこと?」

シンジ「はい。身の回りのことは自分でやれって教わってきました。礼儀作法についても一通り。食卓も毎日がこんな感じで」

マヤ「そう、なんだ」

シンジ「僕も自分のことを話すのが苦手だから、なんとなくわかる気がします」

マヤ「あ……」

シンジ「なにかルールを決めたければ、言ってください。守れることがあれば協力します」

マヤ「あ、ありがとう」

シンジ「それじゃ、僕はこれで」

マヤ「……うん……ってちょっと待って! お風呂入ってないよね⁉︎」

シンジ「あぁ、そうですね。でも明日の朝でも」

マヤ「衣食住はキチンと不自由がないようにしなきゃ。これが私の仕事だもの。だから、入って」

シンジ「はぁ。あの、風呂はためていいんですか?」

マヤ「え……? 後で私には入れってこと? うっ、ふ、不潔」

シンジ「あぁ、えぇと、それなら、シャワーだけとか」

マヤ「だめよ。あの、後で入れ替えるから気にしないで入って?」

シンジ「は、はぁ」

【翌日 第三新東京市立第壱中学校 HR前】

男子生徒A「おい、まだかよ」そわそわ

男子生徒B「うっせーな。もうちょいだろ」そわそわ

女子生徒A「なにあれ。そわそわしちゃってダッサ」

女子生徒B「ねーっ、ほんと男子って露骨」

シンジ「……? なんだか、今日はみんな落ち着きないね」

トウジ「あぁ、てんこーせーがくるっちゅう話やからな」

ケンスケ「そーそー。オスとしてはかわいい子がきたら嬉しくなるサガってもんだよ」

シンジ「転校生……? この時期に?」

ケンスケ「はぁ……。碇ぃ、そこはかわいいってところに反応するべきじゃないかぁ?」

シンジ「あぁ、うん……」

ケンスケ「たしかに、ウチのクラス偏差値は低くはないからねぇ。ま、主に引き上げてるのはパイロット二名の存在だけど」

トウジ「センセは不自由しとらんやろしなぁ。サクラもまったく……」

ケンスケ「……? ま、でも碇がモテてるわけじゃないんじゃないか? 彼女ってわけじゃないもんな?」

シンジ「そんな。僕は、モテてないよ。アスカと綾波はパイロットって繋がりがあるだけだから」

トウジ「これやからなぁ」

ケンスケ「あのなぁ、他にはないもんがあるっていうのはアドバンテージなんだぜ? 悪いけりゃ意味ないけど。単純に、一緒にいる時間が多いって話だろ。ネルフの仕事っていう公認でさ」

シンジ「それが?」

ケンスケ「だぁもぅっ! 碇がその気になれば、口説けるって話だよ! そういうのがしやすい環境っていえるだろ」

シンジ「あ、あはは。でも、アスカや綾波は、興味ないと思うよ」

ケンスケ「どうしてわかるんだよ?」

シンジ「なんとなく、かな。それに、選べるなら僕なんか、嫌だと思うし」

トウジ「選ぶ権利は男にだってあるやろがい! あんなゴリラ女とかこっちから願い下げや!」

ケンスケ「トウジは関係ないだろ」

トウジ「お、そうか」

ヒカリ「ちょっとあんたたち! またくだらないこと話てるんでしょ!」バン

ケンスケ「いや、その、聞こえてた?」

ヒカリ「鈴原の声であんなに大きく言えば聞こえるわよ!」

トウジ「なんや! ワシはなんも間違った発言はしとらんぞ! 女のそれはな、自意識過剰っちゅーんじゃ!」

ヒカリ「突然なに言ってるのよ!」

トウジ「男にだって選ぶ権利がある! 性格ブスは嫌に決まっとる!」

ヒカリ「せ、性格、ブスぅ……っ⁉︎ ちょっと、それ、誰のこと?」

トウジ「ふん、ゴリラ女に決まって――」

アスカ「成敗っ!」ゴン

トウジ「かはぁっ!」ガターン

アスカ「朝っぱらからやっかましいわねぇ、北京原人はバナナでも食ってなさい」

シンジ「アスカ、おはよう」

アスカ「ふん」

【数十分後 HR】

マナ「はじめまして、霧島マナと言います。親族の都合で越してきました。これからよろしくお願いします」ペコ

男子生徒一同「おお~~、か、かわいい」

アスカ「はん、ばっかみたい」

教師「席はぁ、そうですね。碇さんの隣があいているようだから、そこにしなさい」

マナ「はいっ!」

男子生徒A「なぁなぁ、写真よりも実物のが全然いいなっ!」

男子生徒B「シッ! 黙ってろ! 歩いていらっしゃるだろうが!」

マナ「……」スタスタ

男子生徒C「な、なんでかわいい子はいい匂いがするんだろなぁ」

男子生徒D「オーラだよ! オーラが違うんだ!」

ヒカリ「そんなわけないじゃない」

マナ「よいしょっと」ガタ

シンジ「……?」

マナ「よろしくね、碇くん」ニコ

シンジ「あ、あぁ、どうも、よろしく」

教師「霧島さんはまだ端末がきてないんだったね。碇さん、見せてあげなさい」

シンジ「はい」

マナ「あの、先生。机くっつけてもかまいませんか?」

教師「もちろんだ。ノートパソコンであるからそうしないとみれないだろう?」

マナ「ですよね、えへへ」ガタ

シンジ「あ、僕が移動させるよ」

マナ「ありがとう」スッ

シンジ「え……」

マナ「優しいんだね」

シンジ「いや、あの、手……を重ねられると、移動が」

男子生徒A「……!」

男子生徒B「ま、また! またあいつなのか……!」

マナ「ご、ごめんなさいっ! あの、私が机を移動させようとしてたから」

シンジ「ああ、そういうこと。ごめんね、気がつかなくて」

マナ「ううん、いいの」

アスカ「……」ジー

シンジ「よっと、先生、もう大丈夫です」

教師「ふむ、よろしい。おっと、もうこんな時刻か。今日は私が担当の教科なのでこのまま一限目をはじめる。洞木さん、号令を」

ヒカリ「はい。きりーつ!」

生徒一同「……」ガタガタッ

ヒカリ「礼。ちゃくせーき」

教師「では、端末を立ち上げて」

マナ「……ね、もうちょっと近くにいっていい? 私、近眼で」ズイ

シンジ「う、うん」

マナ「……? どうしたの?」

シンジ「いや、ちょっと近かったから、びっくりして」

マナ「もしかして、照れてる?」

シンジ「いや……」

マナ「ふぅ~ん。碇くんって、かわいいんだ?」

アスカ「……!」パキッ

ヒカリ「……? アスカ、どうしたの?」

アスカ「あぁ、シャーペンの芯折れたみたい」

ヒカリ「シャーペン使わないよ?」

アスカ「あれ? そうだっけ」

ケンスケ「こりゃあ、一波乱ありそうな。いやぁ~な予感」

トウジ「ほんま、センセは。どうなっとるんや」

【ネルフ本部 司令室】

マヤ「ふぅ……」

シゲル「おっ。めずらしいねぇ~、マヤちゃんがため息つくなんざ」

マヤ「私だって、ため息ぐらいつくわよ」

シゲル「なんか悩み事?」

マヤ「別に」

シゲル「あいかわらずガードのかたいこって。女は少しぐらい隙を見せたぐらいがちょうどいいぜ?」

マヤ「余計なお世話です。またギター雑誌見てるの?」

シゲル「いんや。今日はコレ」バサ

マヤ「なに……? そ、それって……!」

シゲル「かぁ~わいいっしょ? 今話題のアイドルグループのグラビア。漫画の付録についてんだけどさぁ」

マヤ「不潔っ!」バンッ

シゲル「……ん?」

マヤ「職場でそんなの見るなんて不謹慎よ! 家に帰ってから見たらっ⁉︎」

シゲル「今は空き時間だし」

マヤ「そういう問題じゃない! これは立派なパワハラよ!」

シゲル「お、おいおい」

ミサト「どったの~? なんの騒ぎ?」

マヤ「葛城さん! 聞いてくださいよ! 青葉くんが!」

ミサト「あっ! これ今話題の子たちじゃなぁ~い!」

シゲル「葛城さんも知ってるスか?」

ミサト「もちのろんよ~。くー、若い肌って羨ましいわねぇ」

マヤ「え……」

シゲル「俺はこのセンターの子が押しなんすよ」

ミサト「どれどれ……? だっはっはっ! やぁだぁっ! まだ子供じゃないのー!」

マヤ「……」ギュウ

シゲル「それがいいんじゃないすか。あどけない感じがして」

ミサト「そお~? あら? 伊吹二尉?」

マヤ「あの、葛城一尉はなんとも思わないんですか?」

ミサト「……?」

マヤ「私たちの職場でこんなの見てるんですよっ!」

ミサト「あぁ~、なる」

シゲル「マヤちゃんさぁ。ちょっと堅苦しすぎないか?」

マヤ「どうして⁉︎ 私が間違っているって言うの⁉︎」

シゲル「そうは言ってないが。そんなんじゃ、一生独身だぜ?」

マヤ「どうしてあなたなんかにプライベートの心配されなくちゃいけないのよ⁉︎」

シゲル「俺はそんなつもりじゃ……!」

ミサト「はいはい、そこまで」

シゲル&マヤ「……」

ミサト「たしかに、こういうページを嫌がるというのも理解できるわ。同じ女として、ね?」

シゲル「そういうもんすかねぇ」

ミサト「空き時間の使い方までとやかく言うつもりないけど。青葉くん、コンプライアンス違反にならない程度にね」

シゲル「うす」

ミサト「それで、マヤちゃんはぁ……ちょっち、肩の力入りすぎかな?」

マヤ「私は間違ったこと言ってません!」

ミサト「人間はね、機械じゃないの。常に正しいことで抑えつけようとしてはだめ。息抜きは必要だって理解してあげなきゃ」

マヤ「別の手段があるはずです! なにもソレを選ばなくたっていいじゃないですか!」ビシ

ミサト「そうね、言ってることはもっともだわ。だけど、改めて言うけど、“辻褄が合う行動だけ”をするのが人じゃないのよ」

マヤ「……」

ミサト「セクハラになると感じた?」

マヤ「はい、だって、そんなの……」

ミサト「そんなに嫌だったのね。……いいわ。女性に見せびらかす行為は今後控えるように」

シゲル「ちぇ」

ミサト「相手を選びなさい」

シゲル「了解」

マヤ「私が融通きかないみたいじゃない。なんで……私がこんな思いしなくちゃいけないの。間違ってないのに……!」

ミサト「すこし、落ち着きなさい」

マヤ「いいです! 失礼します!」

【ネルフ本部 第四通路 女子トイレ】

マヤ「……うぷ……おぇぇっ……」ベチャベチャ

リツコ「……」スッ

マヤ「……! せ、せんぱい……」

リツコ「また、吐いてたの?」

マヤ「……」ジャー

リツコ「よくうがいなさい」

マヤ「大丈夫です」キュキュ

リツコ「やはり、その癖を治す必要があるわね。男という生物は無神経でズボラ。感性が違うのだもの」

マヤ「そうでしょうか」

リツコ「少女漫画の主人公のような、幻想から卒業できないんでしょ、あなた」

マヤ「わ、わたしは……そんなつもり……」

リツコ「汚れていないから。一線を踏みこえていれば案外割り切れるものなのに」

マヤ「仕事があれば、私」

リツコ「マヤの卒業論文を読み私はあなたを部下にするとを決めた。着眼点が優れていたからよ」

マヤ「……」

リツコ「もっと視野を広げるには、今のままじゃ頭打ち。なぜだと思う?」

マヤ「わかり、ません」

リツコ「わからないというのは思考停止しているの? それとも、わかっていて言いたくないという拒絶反応かしら?」

マヤ「人生経験は他で代用できます! 恋愛経験が全てじゃ……!」

リツコ「あなた、なにか勘違いしてない?」

マヤ「え……」

リツコ「私は結果だけを求めているの。あなたができると言うのならかまわないわ。できているのならね。……で、今は?」

マヤ「そ、それは」

リツコ「提案をしているだけなのよ。いわゆる、きっかけを。男の為に頑張る、旅行にいく、なにかを覚える、経験する、そうした動機が行動を生み可能性と言う選択肢を広げる」

マヤ「……」

リツコ「現状を打開するにあたり、なにをすべきか考えてごらんなさい。失敗をこわがっているようじゃ科学者に一生なれないわよ」

マヤ「失敗は成功の母、ですか。納得できません」

リツコ「自分自身に、なにがプラスになるか。やり方は自由よ」

【第三新東京市立第壱中学校 昼休み】

トウジ「さぁて、購買パン買いに行くかぁ」

シンジ「トウジ、僕も行くよ」

トウジ「今日は弁当やないんか?」

シンジ「あ、うん。しばらくそうなりそう、かな」

トウジ「行くならはよ行くで。カツサンドが売り切れてしまうからな」

マナ「あの……」

トウジ「お」

シンジ「……? なにか用? 霧島さん」

マナ「お昼まだなんだけど、購買パンてどこで買えばいいのかな?」

シンジ「それなら、一階の――」

トウジ「センセはだあっとれ!」グイ

シンジ「むぐっ⁉︎」

マナ「口と鼻塞いだら息が」

トウジ「霧島、やったか。俺らも今からとこやから一緒に行くか?」

マナ「いいの?」

トウジ「かまへんで。お前やったら、男子どいつに聞いても喜んで案内するやろうが」

マナ「そ、そんなこと」

トウジ「まぁ、転校初日からいきなり女王様状態になると女子達からやっかみがあるやろからなぁ。ゴリラ女ほど強靭な精神しとるなら話は別やが」

マナ「ご、ゴリラ女?」

トウジ「ほんま、女っちゅーのは猫かぶるから信用できひん。あいつはまさに唯我独尊みたいやつや」

マナ「は、はぁ。その、碇くん、顔が……」

トウジ「なんや、やっぱりシンジが目当てやったんか?」

マナ「そうじゃなくて」

トウジ「こいつはなかなかにモテよるからのお。ライバルは多いで?」

シンジ「……」グタァ

マナ「い、碇くんっ⁉︎」

トウジ「なんや? ……っておわぁっ⁉︎ おい、シンジ、しっかりせぇ!」

【十分後 再び教室】

トウジ「めしやめしー」

ケンスケ「驚いたよ。まさか噂の転校生と一緒に食べるとはねぇ」

マナ「迷惑だった?」

ケンスケ「い~や。ただ、普通は男子は男子、女子は女子でグループを作るモンだろ? 転校初日だし、友達を作るにしたって僕たちのところにきたのが意外でさ」

シンジ「……」ガサガサ

マナ「うん、私もできれば、女の子と仲良くなりたいけど。なんか、視線がきつくて」

トウジ「あん? そんなん気にしとったらあかんで。最初は物珍しさも相まってるだけやろ」

ケンスケ「ま、素材がかわいいからねぇ。嫉妬に巻き込まれやすいのは納得。そういや、碇と惣流が転校してきた時もけっこう騒ぎになったもんなぁ」

マナ「そうなんだ?」

ケンスケ「ああ。碇はロボットのパイロットだとみんなに発覚した時。同じパイロットの惣流は持ち前の美貌から」

マナ「碇くんが⁉︎ すごいっ!」

シンジ「そんな。たいしたことないよ」

マナ「みんなを守ってるんでしょう⁉︎ かっこいいなぁ」

ケンスケ「はぁ。やっぱり、エヴァの操縦士はステータスだよなぁ」

マナ「でも、不思議。パイロット同士で食べないんだ?」

シンジ「そうだね。僕たちは、あくまでネルフという繋がりがあるだけだから。プライベートまで仲良くなる必要はないんだ」

マナ「一緒にいる時間が長ければ仲良くなったりしないの?」

ケンスケ「ほらほら、みんなそう思うよなぁ?」

シンジ「はは。……そうなってもおかしくないのかもしれないけど、そうはなってない」

トウジ「仲良くなるにしても相手次第っちゅーことや。合う合わんはある。だいたいあんなゴリラ女――」

ケンスケ「わかったわかった。パン食いながら喋るなよ」

マナ「惣流さん? って、どの人?」

ケンスケ「あいつなら、あそこ。髪にブローチつけてるから目立つだろ。そうじゃなくったってクォーターだし」

マナ「あぁ、あのキレイな子……教室に入ってきた時から、目についてた」

ケンスケ「素材はいいんだけどねぇ」

マナ「もう一人、キレイな子いるよね?」

ケンスケ「綾波かぁ? そっちもエヴァのパイロットさ」

マナ「へぇ……。このクラスにパイロットが三人も……?」

ケンスケ「うん、まぁ、言われてみれば凄い偶然だよな」

マナ「惣流さん、綾波さんと話してみたいなぁ」

トウジ「やめといたほうがえーで。噛みつかれるわ」

シンジ「アスカと綾波はそんなことしないよ」

ケンスケ「とっつきやすいとは言いがたいんじゃないか。特に綾波はシンジじゃないと会話になるのかさえ怪しいし」

トウジ「せや。それやったら、委員長を間に挟めばええんとちゃうか」

ケンスケ「惣流相手だと、いい考えだね。綾波は――」

シンジ「……?」

トウジ&ケンスケ「シンジ。出番」

シンジ「へ?」

トウジ「紹介しようにもセンセの他に誰が会話になるっちゅーねん」

マナ「あ、あの。迷惑だったら……」

トウジ「かまへんかまへん。友達は作っとくべきや。な、シンジ」

シンジ「……うん、そうだね。アスカと綾波、どっちからにする?」

アスカ「――でさぁ、加持さんったらこんなこと言うのよ?」

ヒカリ「……? 碇くん?」

シンジ「食事中にごめん。ちょっといいかな?」

マナ「あの、どうも」

アスカ「転校生じゃない。なに?」

シンジ「まだ、友達がいないんだ。だから、仲間にいれてあげてくれないかな」

ヒカリ「私はいいけど。アスカは?」

アスカ「ふぅ~ん。どうして私達のところなの?」

マナ「碇くんたちから話を少し聞いて。話てみたいなって。深い意味はないんだけど」

ヒカリ「あ、そっか。碇くんとは席が隣同士だもんね」

シンジ「うん、アスカは悪い子じゃないし。話してみたらいいんじゃないかなって」

アスカ「ぶっ」

ヒカリ「……うん、一緒に食べよ? あ、もう食べちゃった?」

マナ「あ、うん。今日は」

アスカ「はぁ……。席、そこらへんの使っていいんじゃない? 昼休みだし、文句言ってこないでしょ」

シンジ「よかった。ありがとう、アスカ、洞木さん」

マナ「碇くん、ありがとう。わざわざ紹介してもらって」

シンジ「また後で、綾波にも紹介するから。声かけてくれたら」

アスカ「ファーストに?」

シンジ「綾波、友達少ないだろ。だから、いいんじゃないかと思って」

マナ「ち、違うの。惣流さんにも綾波さんにも私が」

シンジ「僕からってことにした方がいいよ」こそ

マナ「あ、ありがとう。……優しいんだね」

アスカ「……? そ。まぁどうでもいいけど。どうせろくに話続かないと思うし」

ヒカリ「とりあえず座ったら?」

シンジ「僕はこれで」

マナ「わかった。また後で。……あの、シンジくんって呼んでもいい?」

アスカ「はぁ?」

シンジ「いいけど……」

マナ「よかった! その、シンジくんともお友達、だよね?」

シンジ「ああ、うん」ポリポリ

ヒカリ「……」チラ

アスカ「ちょっと! 座るの⁉︎ 座らないの⁉︎」

ヒカリ「あ、アスカ」

マナ「ご、ごめんなさい。えへへ」

シンジ「それじゃ」スタスタ

アスカ「……」

マナ「よろしく。霧島マナっていいます」

アスカ「朝聞いたからそれは知ってる。あんなのと友達になったってろくなことないわよ?」

マナ「……?」

ヒカリ「……」もぐもぐ

アスカ「三馬鹿グループにはいるよりかはこっちに入った方が断然いいわ。判断は間違ってなかったわよねぇ」

マナ「惣流さんは、シンジくんと仲良くないの?」

アスカ「あ~ら、もう親しく名前呼びなんだぁ? さっきの今で随分躊躇なく呼ぶじゃなぁ~い?」

マナ「え? その……」

ヒカリ「仲、いいよ! アスカは素直じゃないだけから」

アスカ「ヒカリっ!」

ヒカリ「もう、霧島さんはなにもわからないんだから」

マナ「えっと、洞木さん、だよね?」

ヒカリ「ヒカリって呼んで? 私もマナって呼んでいい?」

マナ「もちろん。惣流さんは……」

アスカ「ちっ、アスカでいーわよ」

ヒカリ「ご、ごめんね。アスカ、碇くんの話題になると厳しめっていうか、ちょっと扱いが難しくなるんだ。女の子同士だと凄く良い子なんだけど」

アスカ「ちょっと! どーゆう意味!」

マナ「(くすっ、意識してないわけじゃないんだ)」

ヒカリ「マナ、驚いちゃってるじゃない。名前呼びだって気にしないの」

アスカ「その言い方っ! 私がつっかかってるみたいじゃない!」

ヒカリ「違うの?」

アスカ「違うわよ!」

マナ「本当に、席が隣で親切にしてもらったからってだけだよ」

アスカ「……あいつムッツリだから。気をつけた方がいいわよ」

マナ「そうは見えないけど」

アスカ「それがまた曲者なのよぉ~。そうよ、私はただ転校生に助言をしてるだけ。わかった? ヒカリ」

ヒカリ「はいはい」

マナ「わかった、気をつける」

ヒカリ「親族の転勤だったっけ? めずらしいね、この時期に」

マナ「急でドタバタしちゃったんだけど」

アスカ「使徒がくるこの街に越してくるなんてなかなかいないわよね、おまけに都心はネルフ関係者しか住めないし」

ヒカリ「疎開、する人も少なくないもんね」

マナ「危ないってわかってるけど、守られてるし。そうだ、シンジくん達に聞いたけど惣流さん、パイロットなんでしょう?」

アスカ「あいつ……! なにベラベラ喋ってんのよ」

ヒカリ「隠してたわけじゃないでしょ」

アスカ「まぁ、そうだけど」

マナ「わぁ、かっこいいなぁ!」

アスカ「そ、そう?」

マナ「うんっ! 憧れちゃう」

アスカ「……そっか。まぁ、トーゼンよね! なんてったって私はエリートなんだから!」

【放課後 教室】

ヒカリ「アスカ、今日、ネルフの用事は?」

アスカ「なにもなーい」

ヒカリ「それじゃ、途中まで一緒に帰らない?」

マナ「あの、私もいいかな?」

ヒカリ「いいけど……。住まいはどこらへん?」

マナ「地名はまだ。コンフォート17マンションってところなんだけど」

アスカ「え……? そこって、私が住んでるマンション?」

マナ「そうなの?」

ヒカリ「へぇ、偶然だね。なら大丈夫。一緒に帰ろ?」

マナ「う、うん!」

アスカ「親族ってなにしてる人なの?」

マナ「興味ないから詳しくは。なんだったかな……エンジニアしてるって言ってたけど」

アスカ「ふぅ~ん」

マナ「アスカっていつもはネルフに寄るの?」

アスカ「テストとかがある時はね」

マナ「そうなんだぁ。大変だね?」

アスカ「ま、これもエリートの義務ってやつね。あたしはエースなんだし」

マナ「エース? 凄いなぁ。一番成績がいいんだ?」

アスカ「あったりまえよ。成績だけじゃないわ。迫り来る使徒に対してもあたしとあたしの弐号機は唯一無二なんだから」

マナ「他の二人は?」

アスカ「あいつらは単なるおまけ。チョコボールのおまけより粗末なモンね」

マナ「じゃあ、アスカがこれまでの怪獣を全部やっつけちゃったんだ?」

アスカ「う……。そ、そういうわけじゃ」

マナ「……?」

アスカ「あたしはまだ日本に来て間もないし! 初陣が終わったぐらいなの!」

マナ「へ? えっと、これまでにいくつかきてるよね……」

ヒカリ「碇くんと綾波さんが倒したのよ」

マナ「そうだったんだ」チラ

アスカ「……」ぶっすぅ

マナ「こ、これからだもんね! アスカは!」

アスカ「ふん」プイ

【ネルフ本部 模擬体室】

リツコ「シンジくん。変わりはない?」

シンジ『はい』

リツコ「次、射撃訓練に移行して」

マヤ「……」

リツコ「マヤ? なにぼーっとしてるの」

マヤ「あっ、す、すみません。えっと、なんですか?」

リツコ「インダクションモードへの移行」

マヤ「了解、バーチャルリアリティスタンバイ。仮想敵の投影、開始します」

リツコ「シンクログラフに変化は?」

マコト「チェック2550までオールクリア」

シゲル「臨界点まで、後0.5。全回路、異常なし。パルスによる侵食ありません」

リツコ「やはり、脳に影響は見受けられないみたいね……」

マコト「……? なんのテストですか? これ」

リツコ「独り言よ。気にしないで。本案件は、新兵器のデータ採取」

シゲル「ポジトロンスナイパーライフルの小型化ですか。あれ、燃費悪いっすからねぇ」

マコト「なにせ電力がなぁ」

リツコ「実用化が進めば、威力は多少落ちるでしょうけど中距離戦において大きな戦力アップが見込めるわ」

ミサト「そりゃ助かるぅ~」クルクル

リツコ「椅子をまわして遊んでるの、楽しい?」

ミサト「それほどでも。しかし、シンジくんとマヤちゃんが同居するなんてビックリだわ」

マヤ「……」ピク

シゲル「俺も俺も。意外な組み合わせっすよね」

リツコ「またその話? 無駄話をしないで。これは遊びじゃないのよ」

ミサト「だってさっきよ? 聞いたの。あたしゃ心配してたんだからさぁ」

リツコ「ミサトが?」

ミサト「そ。シンジくんが一人暮らしするって聞いてあのアパートじゃ。リツコにだって話てたじゃない」

リツコ「そういえばそうだったかもしれないわね」

ミサト「あらま。あいかわらず淡白ね~」

リツコ「興味ないもの」

【夜 マヤ宅 リビング】

マヤ「ふぅ……よし。シンジくーん。ご飯できたよー」

シンジ「はーい」

マヤ「シンジくんのお皿は、これよね?」

シンジ「そうです」

マヤ「今日もテストお疲れ様。新兵器開発、うまくいくといいね」

シンジ「そうですね、それがみんなの為になるなら」

マヤ「みんなもそうだけど、シンジくんだって痛い思いしなくて済むかもしれないのよ?」

シンジ「期待すると、ガッカリしますから」

マヤ「あ……そ、そうよね。前線で戦ってる側からしたら気休めにならないか」

シンジ「かまいませんよ。それが僕のやるべきことですから」

マヤ「疲れない? そういう生き方」

シンジ「すこし。だけど、できることがわかる内はやろうって決めたんです」

マヤ「へぇ……」

シンジ「いただきます」パク

マヤ「今日は、魚のムニエルにしてみたんだけど」

シンジ「……」もぐもぐ

マヤ「どう? 私、料理を振る舞うのすらあんまり」

シンジ「おいしいですよ。すごく」

マヤ「よかった。健康管理は私の仕事ですから、たくさん食べてね」カチャ

シンジ「あっ! ま、マヤさん!」

マヤ「……?」

シンジ「食べるんですか? それ」

マヤ「食べるわよ? 私もお腹すいてるし」

シンジ「僕、今日はすごくお腹すいてるんです。よかったらもらえませんか?」

マヤ「えぇ? そんなに?」

シンジ「はい」

マヤ「シンジくんって結構食べるのね?」

シンジ「今日は授業で体育があったんです。男子はバスケットボールで」

マヤ「そうなんだ。……わかった。私は後で作りなおすから、食べていいよ」

シンジ「わぁ、嬉しいなぁ」

マヤ「ふふっ、そうしてると本当に中学生みたいね」

シンジ「はは」もぐもぐ

【数十分後 同リビング】

マヤ「シンジくん、メンズ用シャンプー買ってきたの置いておくから」

シンジ「ありがとうございます。先に風呂はいりますね」

マヤ「えぇ。上がる時に風呂の栓を抜いておいてね」

シンジ「はい」ガラガラ

マヤ「ふぅ……。うまくできたかな、相手は子供なんだし、少しずつ慣れていけば、少しずつ」

TVCM「本当の自分をあなたに! コンタクトで世界が変わりますよー」

マヤ「本当の自分、か。さて、私もご飯食べよっと。……あ、フライパンに少し残ってるんだった」ぱく もぐもぐ

TVCM「うまーい! エバラの焼き肉のタレ!」

マヤ「うっ! ま、まずっ! ……なにこれ⁉︎ うそっ⁉︎ お砂糖とお塩間違えてる⁉︎」

シンジ『おいしいですよ、すごく』

マヤ「え? だってさっき、たしかそう言って……――」

シンジ『僕、今日はすごくお腹すいてるんです』

マヤ「も、もしかして、わざと……? 私に食べさせないために?」

シンジ『わぁ、嬉しいなぁ』

マヤ「バカ。私、なにやってるのよ……。中学生に気を使わせて」

【コンフォートマンション マナ宅】

マナ「定時連絡です。サードチルドレン、セカンドチルドレンへの接触に成功しました」

戦自高官「ご苦労。反応はどうだ」

マナ「初日ですので積極的な行動は控えています。ファーストインプレッションは滞りなく取り入れられたと思います」

戦自高官「もう一人のチルドレンについては?」

マナ「明日未明に接触を試みます」

戦自高官「とりあえず、出だしは順調といったところか。目的を忘れるなよ。仲良しクラブを作るために派遣したのではない」

マナ「了解しています。あの、ムサシとケイタは……」

戦自高官「心配に及ばんよ。今は訓練生として従事している」

マナ「少しだけでも! 話できませんか⁉︎ 私、頑張りますからっ!」

戦自高官「頑張りなど必要ない。良い知らせだけを期待している。キミの貢献に対して、我々は必ずや応えるだろう」

マナ「だめ、ですか」

戦自高官「まずはデータだ。サードチルドレンから碇一族について情報を聞き出せ」

マナ「でも、あの子、普通の子みたいでしたよ!」ギュゥ

戦自高官「ふん、さっそく情に流されだしたか。親が特殊なのだよ。親が親なら子も子だ。なにか引き出しがあるはず」

マナ「もし、なかった場合は?」

戦自高官「内閣府の可決で、中東に人材を派遣する法案が近々通るそうだ。数千人ほどな」

マナ「そんな⁉︎ 治安の安定していない激戦区じゃないですか! そこにムサシとケイタを⁉︎」

戦自高官「霧島隊員。絶対になにかある。貴様の任務を忘れるな」

マナ「……了解……しました」

戦自高官「時間の猶予はある。励めよ」プツ

【コンフォートマンション ミサト宅】

ミサト「よっほっ! ふんっほっ!」

アスカ「なにしてんの……?」

ミサト「ふんっ、ほっ、エクササイズのっ、ダンスっ! アスカも、やるっ?」

アスカ「いい」

ミサト「ふぅ……」カチ

アスカ「なんでまた急に」

ミサト「青葉くんがアイドルのグラビア見てたんだけどさぁ、あたしもまだまだ負けてらんないかなって闘志がね」

アスカ「その発言がますますババくさい」

ミサト「アスカもねぇ、油断してるとほんとあっという間よ? 今は若いから肌も代謝もいいけど」

アスカ「あーそー」

ミサト「さて、エビちゅ、エビちゅっと」

アスカ「エクササイズした意味あんの? それ……」

ミサト「これはクスリなの! 明日への活力! 今日を頑張った自分へのご褒美!」

アスカ「めんどくさ。好きにしたら? 風呂はいるわよ」

ミサト「ちょっちまった。忘れるとこだった。アスカにも一応教えておくけど、シンジくんの一人暮らしなくなったわよん」

アスカ「えぇっ⁉︎」

ミサト「これで一安心かなぁ。さすがにあの歳でアパート暮らしのたった十万支給はねぇ……」

アスカ「いつ⁉︎ いつここに帰ってくんの⁉︎」

ミサト「っと、おんやぁ~? シンちゃんが恋しいのぉ~ん?」

アスカ「あれ見ても同じセリフ吐ける?」チラ

ミサト「な、なぁ~る。けっこーたまってるわね。キッチンの洗い物」

アスカ「それだけじゃないわよ! 洗濯物も! あぁんもう、ミサトがコインランドリー行かないからじゃなぁい!」

ミサト「そ、そりは……。忙しくて」

アスカ「無駄な努力をやってたやつが言う⁉︎」

ミサト「む、むだってぇ。あたしだってイケるって」

アスカ「衣・食・住! これ生活のキホン! 三大要素!」

ミサト「めんぼくない」シュン

アスカ「で? シンジはいつ帰ってくるの?」

ミサト「それがぁ、その……」

アスカ「嫌な予感がする。なんで言いづらそうにしてんのよ」

ミサト「さぁ~すがアスカ! もう、勘がいいんだからぁ~ん」カシュ

アスカ「……ここには、帰ってこない?」

ミサト「んくんくんくっ、ぷはぁ~~っ! はい! 帰りません!」

アスカ「なんとかしなさいよっ!!」

【翌日 早朝 マナ宅】

マナ「はぁ~い?」ガチャ

加持「ちょうど近くを通りかかったもんでね、これから学校だろ?」

マナ「誰かと思ったら、加持監査官でしたか」

加持「不用心にドアを開けてよかったのか? 相手が誰か見当がついていなかったんだろ」

マナ「いいんです、そこまで息を潜めなくて。私は、私らしさを忘れたくない。上がっていきますか?」

加持「そのつもりで寄らせてもらったんだ。……ああ、用意しながらでかまわない。昨日一日の様子を聞いておこうと思ってな、失礼するよ」

マナ「はい、どうぞ。適当に座ってください」

加持「――それで、シンジくんたちの印象をどう見る?」

マナ「まだ初日を終えたばかりですよ? そう早々と結論はだせません」

加持「現時点でキミが受けている見解を聞いているのさ。これからやりとりを重ねるにつれて情報は増えるだろうが、とりあえずのね」

マナ「普通の子じゃないですか?」シュル パサ

加持「それだけかい?」

マナ「はい。戦自にも昨夜、定時連絡の折にそう報告しています」

加持「ふっ、それだけじゃ頭のお堅い連中は納得しなかったろう?」

マナ「頑張りますって言っても……相手にされませんでした。意思表明は必要ないって」

加持「だろうね。マナちゃんの経歴書に目を通させてもらったよ。この、度々でてくるムサシとケイタというのは友達かい?」

マナ「幼馴染です。私たち、物心ついた時から、辛い時も楽しい時も同じ環境で過ごしてきました」

加持「戦自に入隊しようとした動機を聞いても?」

マナ「最初は……志願した理由ってほんとにささいなきっかけで。なんだと思います?」

加持「さてね」

マナ「お腹いっぱいご飯を食べられる。それだけだったんです」

加持「……」

マナ「私は、ムサシとケイタと笑って毎日が過ごせるなら満足でした。でも、入隊してから数ヶ月がたったある日、二人の様子がだんだんと変わっていったんです」ギュゥ

加持「国のためという大義名分。団体生活の中で洗脳されていったのか」

マナ「二人ともなにも見えてないんです! 私たちは兵士で、使い捨てのただの駒扱いだって!」

加持「間違っちゃいない。国はそういう目的で人材をかき集めているからな」

マナ「こわくなりました。二人が、もしかしたら……ううん、このままだと間違いなく、死んじゃうって」

加持「なるほど。それで、この任務で白羽の矢が当たった時、キミは飛びついたわけか」

マナ「これしかないんだもん。救うためには」

加持「……」

マナ「戦自の上官は私に約束してくれました。必要な情報を引き出し、結果を示せば、三人とも前線から遠い情報作戦室に配置してくれるって」

加持「(ウソだろうな)」

マナ「だから、それを信じて私は、やります」

加持「事情は把握した。俺からこの道の先輩としてひとつアドバイスをしよう」

マナ「……?」

加持「自分を守れるのは、自分だけだ。退路は常に用意しておけ」

マナ「簡単に言わないでくださいよ」

加持「頭の片隅に入れておくだけでも違うもんさ。良心の呵責でまわりを利用するのに躊躇しちゃいけない、一瞬の判断の遅れが生死を分ける」

マナ「……」

加持「例えば、シンジくんに辛い思いをさせてまで利用することになってもね」

マナ「私は、そのつもりです。ターゲットなんですから」

加持「そうは言っても一線をなかなか踏み越えられないものさ。ま、どう行動するかはマナちゃん次第だけどな」

【第三新東京市立第壱中学校 HR前】

シンジ「おはよう」ガララ

アスカ「あ、シン――」

マナ「シンジくん! おはよう!」タタタッ

アスカ「っと」

シンジ「マナ、おはよう」

マナ「あの、端末がまだ来てないんだ。明日には届くらしいんだけど。だから、今日も……」

シンジ「ああ、うん。大丈夫だよ」

ヒカリ「これで日直の仕事終わりっと。……? アスカ、手あげたまま固まってなにしてるの?」

アスカ「えっ⁉︎ あ……え~と、それはその~、あ、あ~コンタクトズレちゃったぁ~」

ヒカリ「へ? アスカ、コンタクトしてたの?」

アスカ「してないけど」

ヒカリ「は、はぁ……」

マナ「あのね、今日は、あとで綾波さんに紹介してほしいな。シンジくんが暇な時でかまわないから」

シンジ「わかった。昼休みでいい?」

マナ「うん、ごめんね? なんだか、いろいろ迷惑、だよね……?」

シンジ「そんな。気にしなくていいよ、マナはまだ二日目だし」

マナ「ありがとうっ! 嬉しいっ!」ハグ

シンジ「わわっ⁉︎」

男子生徒A「だ、抱きついたっ⁉︎」

男子生徒B「なんてうらやま、けしからんやつぅ!」

女子生徒A「なぁ~にあれ。見せつけちゃってさぁ」

ヒカリ「わぁ……大胆だね、マナって」

アスカ「ヒカリ、席につくわよ」

ヒカリ「いいの? アスカ」

アスカ「なにが?」

ヒカリ「う、うーん? いいなら、いいけど」

シンジ「その、みんなこっち見てるから、離れて」

マナ「あっ! ご、ごめんなさい! つい嬉しくってはしゃいじゃった、えへへ」

シンジ「素直なんだね、マナは」

マナ「そう? 前の学校ではそう言われることあったかも」

シンジ「そうなんだ? 前はどこに住んでたの?」

マナ「ここよりずっと田舎の方。のどかで、私は嫌いじゃなかった」

シンジ「……さみしいの?」

マナ「昨日も、思い出して泣いちゃった。まだきたばっかりだからかな。ちょっと、ホームシック」

シンジ「あ……」

マナ「でも、アスカやヒカリみたいな新しいクラスメートができて嬉しい。それに、その……シンジくん、優しいし……隣でよかった」ポッ

シンジ「いや、まぁ、その」

アスカ「ちっ」

ヒカリ「……」

アスカ「あたし思うんだけどさぁ、パイロットて常日ごろから危機意識もたないといけないんじゃないかしら?」

ヒカリ「はじめて聞いた」

アスカ「だらしなく! デレデレと! するのはどうかと思わない? 私たち使命があるんだから」

ヒカリ「そうだね?」

アスカ「マナもマナよねぇ。昨日せっかく注意してあげたのに、上っ面に騙されちゃだめだって」

ヒカリ「う、うん」

アスカ「委員長、注意しなくていいの?」

ヒカリ「へ? なんで?」

アスカ「風紀の乱れは校則の乱れでしょ!」

ヒカリ「でも、あれぐらいいいんじゃない?」

アスカ「ぐぬぬ……」

ヒカリ「アスカ、もう少し、素直になりなよ。アスカだって、とってもかわいいのに」

アスカ「はぁ、なにについて? まるで私がシンジに素直じゃないみたいじゃない。私は、あくまでも――」

マナ「あの、今度、お礼がしたいな。一緒にどこか遊びにいかない?」

アスカ「ちょ、ちょっと」

ヒカリ「わあ、大胆プラス積極的」

シンジ「そこまでしてもらっちゃ悪いよ。僕はできることしかしてないから」

ヒカリ「断るのかな」

アスカ「とーぜん!」

マナ「全然! 気にしないで? むしろ、私が申し訳なくて……」

シンジ「うぅん」

アスカ「なに悩んでんのよバカシンジ! 男らしくきっぱり断りなさいよ!」

ヒカリ「ちょっと待ってて」ガタ

アスカ「……?」

マナ「や、やっぱり、迷惑だよ、ね?」

シンジ「そういうわけじゃ」

ヒカリ「碇くん、マナ、おはよう」

マナ「ヒカリ。おはよう」

シンジ「おはよう」

ヒカリ「どこかに遊びにいくの?」

マナ「え? 聞いてた?」

ヒカリ「ごめんね。ちょっと聞こえちゃって」

シンジ「いや、僕は」

ヒカリ「アスカと鈴原たちも誘ってみんなでプールに行かない?」

マナ「わぁ、いいね! そうしようよ!」

ヒカリ「うん、よかった。アスカぁー! ちょっとこっちきて!」

アスカ「……」ぶっすぅ

ヒカリ「みんなで遊びにいかないかって! もちろん行くよね?」

シンジ「女の子同士で行ってきな――」

ケンスケ「そりゃないんじゃないか碇ぃ~! なんだぁ? 友達におすそ分けしないってのかぁ?」

シンジ「ケンスケ、おはよう。おすそ分けってなにを?」

ケンスケ「プライベートの水着姿なんて高く売れるに決まってるだろ!」こそ

シンジ「ああ……」

【同学校 昼休み】

シンジ「綾波」

レイ「……? 碇くん?」

マナ「こんにちは。話するのはじめてだね、えへへ」

シンジ「転校生の霧島マナさん。こっちが綾波。エヴァのパイロットだよ」

レイ「……」ジー

マナ「よろしく。よければ、友達になってもらえないかな?」スッ

シンジ「……」

レイ「私が? あなたと?」

マナ「え? ……うん」

レイ「なぜ?」

マナ「え、えっと」

レイ「命令があれば、そうするわ」

マナ「命令って……あの、碇くん」

シンジ「綾波は誰に対してもこうだから。こういう子なんだよ」

マナ「碇くんにも?」

シンジ「僕だって例外じゃない。最近は、少し喋るようになったけど。それに、いきなり仲良くできなくても仕方ないじゃないか」

マナ「(碇くん、綾波さんとアスカで接し方が違うのね。この違いは……? 個性の違い? なにか、ひっかかるような……)」

シンジ「どうしたの? 考えごと?」

マナ「う、うぅん。私、反省してたの。そうよね、いきなり仲良くなってなんて無理よね」

シンジ「よかった、綾波のこと嫌いにならないでくれて。少し、時間がかかるかもしれないけど、僕がいない時も話かけたらいいんじゃないかな」

レイ「碇くん」

シンジ「うん?」

レイ「報告したい件がある。この前の話」

マナ「(……なんだろう、もしかして、情報……?)」

シンジ「わかった。ここじゃなんだから、屋上に行こうか」

レイ「ええ」

シンジ「マナ。僕たちは少し席をはずすね」

マナ「うん……」

名称が碇くんになってしまってるミスあるんで訂正レスします

【同学校 昼休み】

シンジ「綾波」

レイ「……? 碇くん?」

マナ「こんにちは。話するのはじめてだね、えへへ」

シンジ「転校生の霧島マナさん。こっちが綾波。エヴァのパイロットだよ」

レイ「……」ジー

マナ「よろしく。よければ、友達になってもらえないかな?」スッ

シンジ「……」

レイ「私が? あなたと?」

マナ「え? ……うん」

レイ「なぜ?」

マナ「え、えっと」

レイ「命令があれば、そうするわ」

マナ「命令って……あの、シンジくん」

シンジ「綾波は誰に対してもこうだから。こういう子なんだよ」

マナ「シンジくんにも?」

シンジ「僕だって例外じゃない。最近は、少し喋るようになったけど。それに、いきなり仲良くできなくても仕方ないじゃないか」

マナ「(シンジくん、綾波さんとアスカで接し方が違うのね。この違いは……? 個性の違い? なにか、ひっかかるような……)」

シンジ「どうしたの? 考えごと?」

マナ「う、うぅん。私、反省してたの。そうよね、いきなり仲良くなってなんて無理よね」

シンジ「よかった、綾波のこと嫌いにならないでくれて。少し、時間がかかるかもしれないけど、僕がいない時も話かけたらいいんじゃないかな」

レイ「碇くん」

シンジ「うん?」

レイ「報告したい件がある。この前の話」

マナ「(……なんだろう、もしかして、情報……?)」

シンジ「わかった。ここじゃなんだから、屋上に行こうか」

レイ「ええ」

シンジ「マナ。僕たちは少し席をはずすね」

マナ「うん……」

【同学校 屋上】

レイ「手の具合、どう?」

マナ「……」ソォー

シンジ「問題ないよ。アダムがいる違和感はあるけど」

レイ「同化は……――」

マナ「(ここからじゃよく聞こえない……)」ススッ

シンジ「昨日、部屋で包帯をとってみたんだ。確認したら体内にとりこめるんだね」

レイ「碇くんの一部になればなるほど、外見上は普通になっていく」

シンジ「神経を集中していないと思うように目立たせなくできないから、まだ包帯は必要だけど」

レイ「そう」

シンジ「母さんはここまで知っていて僕に移植したのかな」

レイ「ええ」

シンジ「そう、だよね。怪我はいつか治るし、このままの状態じゃ隠せるわけないんだ」

レイ「赤木博士のデータベースにアクセスした」

シンジ「どうだった?」

レイ「権限はレベルEEE。リリスがいるフロアのヘブンズドアと同じ」

マナ「(シンジくんの手になにが……? リリスって……?)」

シンジ「やっぱり、調べるのは難しそう?」

レイ「……」コクリ

シンジ「どうしようかな……。リツコさんに頼むわけにも……」

レイ「電子制御は、アダムの力を使えばできなくもない」

シンジ「え?」

レイ「衝動は平気?」

シンジ「昨日の夜中に少し。アダムからの干渉なの?」

レイ「たぶん」

シンジ「壊したいって思った。なにか、なんでもいいから。積み木や砂場の山をこわすように」

レイ「凶暴性を抑えきれなくなったら言って。協力する」

シンジ「わかった。……ありがとう。さっき、僕の同化が進めば、電子制御できるって言ったよね? それってアクセス権限に関係なく、できる?」

レイ「可能になる。アダムの持つ力は、強い電磁波を発生させるから」

シンジ「……」

マナ「(なに……? なんの話……?)」

シンジ「試してみるよ」

レイ「……」

シンジ「アダム、最初の人間にして、始祖たる存在の一人。使徒、天使の名を持つ使者。……そして、綾波。今なら、母さんが言っていた真実を信じられる」スタスタ

レイ「……」

シンジ「ここから見える景色。街に来た最初の頃は、嫌で嫌でしかたなかったのに。不思議だね、今はそれすら遠い過去に思えるんだ」

レイ「不変なものは存在しないわ」

シンジ「そうかな。僕はそう思わない。取り巻く環境、父さん……はいなくなってしまったけど、かわらないものがあるんじゃないかな」

レイ「……?」

シンジ「綾波は変わった?」

レイ「私?」

シンジ「うん。ネルフで父さんや色んな人と接して、時間を過ごして変わったと思う?」

レイ「わからない」

シンジ「不変なものは存在しないってリツコさんが言ってたの?」

レイ「……」フルフル

シンジ「じゃあ、父さんかな」

レイ「……」コクリ

シンジ「やっぱり、そうなんだね。綾波がちょっとだけ、羨ましい」

レイ「なぜ?」

シンジ「父さんのそばにいられたから」

レイ「……」

シンジ「もっと色々教えてほしかったんだ。ただ、それだけ。でも、こうなってしまった。空、見てみてよ」

レイ「……」スッ

シンジ「雲が流れてる。なにが起こっても、僕たちはちっぽけな人間なんだね」

【同学校 教室】

マナ「……」スタスタ

ヒカリ「あ、マナ。どこ行ってたの?」

マナ「学校の中を見て回っててたの」

シンジ『父さんのそばにいれたから』

マナ「(あの時見せた、悲しそうな表情はなんなんだろう……やっぱり、上官の言う通り普通の子じゃないのかな……)」

アスカ「見学なんてして楽しい?」

マナ「うん……どこになにかあるか知りたかったって理由もあるよ。アスカは、転校してきたときしなかったの?」

アスカ「はっ、こんなこじんまりした学校のどこに見所があるってのよ。キャンパスと比べて見劣りするじゃない」

ヒカリ「大卒だもんね。飛び級って言ってたっけ? 凄いなぁ、優秀だって認められるなんて」

アスカ「ちょおっとひっかかるんだけど。あたしが才能だけで選ばれたと思ってない?」

ヒカリ「漫画みたいにずば抜けた才能があったんじゃないの?」

アスカ「これだから凡人は。発想が貧弱なのよ。まぁ、日本人はトランスファー制度だって浸透してないし大目に見てあげる」

ヒカリ「むっ。私だって知ってますよーだ。大学で転校するみたいな話でしょ?」

アスカ「大雑把にいうとね。ヒカリ、よく知ってたわね。この国だと大学に在籍したら四年間は同じ場所で過ごすのが普通でしょ?」

ヒカリ「えへへ、たまたまなんだ。海外の学習事情のこと、前ニュースでやってたから」

アスカ「変な国よね、ここ。しなきゃいけないってわけじゃないけど、発想に柔軟性がないような環境っていうか」

マナ「みんな、頑張って生きてる。それだけじゃだめなのかな……」

アスカ「……?」

マナ「エリートとか、凡人とか。そんなので優劣つけたって楽しくないよ。笑って過ごせればいいじゃない」

ヒカリ「マナ……?」

マナ「私は嫌だな。差別意識を助長してる気がして」

アスカ「ひけらかすつもりないけどさぁ、世界経済は一握りの天才がまわしてるもんなのよ」

マナ「アスカも、エリートって“枠”を作りたいの?」

アスカ「そうじゃなくて。頭がいい人、悪い人。抜けてる人。良く言えばそれも個性よね。でも頭がいい人の足を引っ張るのは“行動するバカ”の仕業が大半なのよ」

マナ「そうかな……」

アスカ「バカは自分で考えないでしょ。なぜそうなるのか、どうして辿り着くのか。視野が狭いし考える必要ないもの」

ヒカリ「……」

アスカ「思考停止してるようで自分の楽しいことだけを繰り返す。それこそ、本能だけでね。だけど、それはひとつの正解」

マナ「……」

アスカ「インテリは短絡的思考のバカを嫌うもんよ。世の中が民主主義でよかったわよねぇ、エリート思考なんて考えだとロクなことにならないし」

【ネルフ本部 ラボ】

ミサト「フォースの選定ぃ? 三号機の搬入に合わせて? 都合よくホイホイ決まるもんねぇー」

リツコ「マルドゥックから通達があったそうよ。これが、候補者の子の氏名とデータ」ピラ

ミサト「また子供。……しかも、レイと同じ出自不明の少年、か」

リツコ「……」

ミサト「ねぇ、なんでマルドゥックはエヴァのパイロットに関する公開レベルに差をつけるの?」

リツコ「知らないわ。存在自体が謎のヴェールに包まれているもの。選定方法もね」

ミサト「あんた、なにかウソついてない?」

リツコ「あら。どうしてそう思うの?」

ミサト「女の第六感ってや~つ」

リツコ「男に対する浮気に使うものじゃなくって?」

ミサト「あたしの勘は侮れないわよん?」

リツコ「根拠のない自信ね。ウソはついてないわよ」

ミサト「ほんとにぃ?」

リツコ「私がなにに対して興味をもつのか。友人歴の長いミサトだったらわかるでしょ」

ミサト「人の心なんてわかるもんじゃないわよ」ボソッ

リツコ「え……? 何か言った?」

ミサト「ま、リツコが隠し事をするときはある癖があるしねぇ~」

リツコ「はじめてね。ミサトがそんなこと言うの。お生憎様、ひっかけにのってあげるのはまた今度ね」

ミサト「ぶーぶー」

リツコ「おちゃらけるのも結構だけど、そろそろ身を落ち着けたら? 加地くん戻ってきてるんだし」

ミサト「やぁだぁ。あいつの話はやめてよー」

リツコ「いつまで逃げ切れるかしらね、過去から」

ミサト「はいはい。お説教がはじまりそーなんで退散しまーす」

リツコ「(やはり、ミサトは勘づいてくるわね……)」

【ネルフ本部 執務室】

リツコ「――葛城一尉に関する報告は以上です。人事内部の大幅な改変。これに加えフォースの選定があまにも露骨すぎです。代替え案を提唱します」

ユイ「これがバイタルデータのすべて?」

リツコ「え? え、えぇ。シンジくんの心理状況は極めて安定しています。タブリスの干渉による二次副産物はないもの考えられます」

ユイ「おかしいわ」

リツコ「え……?」

ユイ「赤木博士。人が夢を見る特徴をご存知よね?」

リツコ「レム睡眠とノンレム睡眠時で違いがあります。内容についての分類は諸説ありますので断定はできませんが、なんらかの脳の処理だという点において相違ありません」

ユイ「研究にて睡眠をとる度に毎回、必ず夢を見ることが判明してる。中には“見なかった”という例もあるけど、それは“忘れている”だけ」

リツコ「はい。ですので、シンジくんは記憶の保持ができていないかと」

ユイ「夢を覚えていない確証はない……」

リツコ「……? なぜでしょうか?」

ユイ「前提が不自然なのよ。まず、シンジは本当に睡眠状態と同じだったのかしら」

リツコ「は?」

ユイ「医師の診断報告書によると、光を当ててみても眼球の瞳孔が拡大したままだったとあるわね。普通はそうなる?」

リツコ「たしかに……。しかし、そう裏付けるデータを今回のシンクロテストで――」

ユイ「なぜ、なぜ変化がないの……?」

リツコ「……」

ユイ「タブリスをここに」

リツコ「シンジくんは経過観察でよろしいのでは。今はネルフ内部掌握の件を優先すべきです」

ユイ「いいから呼びなさいっ!」バンッ

【数十分後 同執務室】

カヲル「まだなにか僕に用が? 約束の時まで早すぎるようだけど」

ユイ「この書類を見てちょうだい」

カヲル「……」ペラ

ユイ「あまりにも安定しすぎている。脳を弄ったさいに、なにを見せたの? なんの目的であの子を――」

カヲル「ふっ」

ユイ「やはり、なにか仕込んだのね?」

カヲル「貴女は見当違いをしている」

ユイ「……」

カヲル「いいよ。教えるかわりに、僕に何をしてくれるんです?」

ユイ「現在の独居房暮らしから第6区画への移住を認めます。生活が人間らしくなるわよ」

カヲル「ボクがそれを望んでいるわけじゃない。なぜ、ヒトと同じ定義で捉えるのかな」

ユイ「そうだったわね。……あなたの望みをひとつ叶えましょう。できうる限りで」

カヲル「黙秘を希望するよ」

ユイ「バカバカしいやりとりをさせないで! はやく教えなさい!」

カヲル「息子のことになると必死になるのを直した方がいい。冷静さを失っては、愚者の姿になるからね」

ユイ「……!」ギリッ

カヲル「ボクが彼にしたのはほんの“火遊び”さ。最終目的は共通している。碇ユイ博士の障害になるようなマネはしていないよ」

ユイ「シンジは本当にあなたに脳を弄られたという自覚がないのね?」

カヲル「おそらくは」

ユイ「……そう」ギシ

カヲル「わざわざ確認するためにボクをここに? ネルフ総司令は割とお暇なようだ」

ユイ「……」

カヲル「自分の息子に直接聞くのがこわいんだ。違うかい?」

ユイ「……」

カヲル「どんなに優秀であれ、所詮はただのヒトなんだね」

【数時間後 ネルフ本部 第四通路】

シンジ「試そうと思ったけど力って、どうやって使えばいいんだろう。聞くの忘れちゃったな」

放送「メンテナンスを実行中。作業員は、現在の区画の予備パイプを――」

シンジ「エヴァと同じで念じればいいのかな」スッ

カヲル「そうじゃないよ」

シンジ「キミは……?」

カヲル「こんにちは、碇シンジくん。起きている時に会うのはこれがはじめてだね」

シンジ「(なんだ、この感じ。綾波に似ている)」

カヲル「音声は拾えないけど、ボクとキミの姿は監視映像で残ることになるから。これでますます疑念を持つだろうけど」

シンジ「……?」

カヲル「アダムの力を使いたいのかい?」

シンジ「あ、うん。知ってるならやっぱり、キミも綾波と似た存在なんだね」

カヲル「彼女もボクと同じだけど、原理的な話をすればキミの方が近しい存在だけどね。アダムの力の使い方をレクチャーしてあげるよ」

シンジ「え……? 知ってるの?」

カヲル「簡単だよ。まずは能力の正体について話をしようか」

シンジ「うん」

カヲル「アダム、その他の使徒と呼ばれる個体が持っている様々な特性は人類が手にしていない未知の構成で成り立っている」

シンジ「……」

カヲル「彼らは自ら望んであの形に進化した。学習してね。さて、そのうえでだ。アダムに特性があるとしたら、どんな能力だろうね」

シンジ「綾波は、電磁波を発生させると言ってたけど」

カヲル「あくまでもそれは、一端だとは思わないのかい? 格好いいとは思わないけど、例えば、“電磁波の味がわかる”……とか」

シンジ「そんな、食べるわけじゃないし味なんてしないよ」

カヲル「ヒトの常識で物事を判断してはないけない。キミはヒトとは別の使徒の力を行使しようとしているのだから」

シンジ「なんだか、超能力者みたいだね」

カヲル「……そうだね、こう考えたらいい。今ある身体能力に余分な要素が増えただけと」

シンジ「使い方は?」

カヲル「最初に言ったはずだよ。簡単だって。キミは呼吸にする時、念じて息をするのかい? 試しに、僕が目の前にある扉の施錠を解除してあげるよ」チラ

シンジ「……⁉︎ す、すごい。目配せだけで?」

カヲル「キミの手に感じる違和感が証拠になる。受け入れていないんだ。身体の一部として」

シンジ「つまり、綾波が言ってた、僕と同化が進めば可能になるって……」

カヲル「そのままの意味ってことさ」

【ネルフ本部 執務室】

ユイ「いらっしゃい。ラクにしていいわよ」

アスカ「……」

ユイ「嫌われたものね。苦手? 私が」

アスカ「なんの為にここに呼んだんですか?」

ユイ「キョウコに関することを質問されたのがそんなにイヤだったのね。信じてほしいんだけど、私は、キョウコの友人だった」

アスカ「白々しい。そうやって涼しい顔して平気で嘘を並べ立てる大人ばっかりじゃない」

ユイ「あなたは、はやく大人になりたいんじゃないの?」

アスカ「私は、自分でなんでもできるようになりたいってだけ。それが大人だっていうのならそう。その為に貪欲に色んな経験をしたいの」

ユイ「向上心を持っていて素晴らしいわ。野心もあるのかしら。だとすれば、それはなに?」

アスカ「質問が命令じゃないなら拒否する」

ユイ「駆け引きができるのね、頭がいい。さすが、幼少時代から英才教育を受けてきたエリート。キョウコが存命ならさぞ喜んだでしょう」

アスカ「そんなの当たり前――」

ユイ「だけど、叱られるわよ。今のあなた」

アスカ「……!」

ユイ「もっと自分の為に生きなさい! 私に褒められるだけが人生じゃないのよ! ってね」

アスカ「あんたなんかに……っ! ママのなにがわかるっていうのよ!」

ユイ「これ、見てくれない?」ペラ

アスカ「……? こ、これって……!」

ユイ「そう。キョウコと撮った写真なのよ。私たち、いい笑顔してるでしょ?」

アスカ「ほんとに仲よかったの⁉︎」

ユイ「もちろんよ。研究してる分野は違ったけど、よく昼食を一緒に食べたり、遊びに行ったりしてた。訃報を聞いて、残念に思ったわ……」

アスカ「ママ……」クシャ

ユイ「あなたは、早くに母親を亡くして、孤独で辛い想いをしてきたことでしょう。父親の再婚相手に馴染めずに、不信感を抱いたまま成長してきた」

アスカ「……」

ユイ「これからは私が面倒を見るわ。ネルフにいる間はね、それが亡き親友にできる、精一杯のことだから」

アスカ「ママを、頭がおかしくなったって思ってないの……?」

ユイ「以前に言ったけど、今なら信じてもらえる? 私はキョウコの頭がおかしいなんて思ったことはない。彼女は、聡明で、賢い女性よ」ニコ

アスカ「あ……」

冬月「ユイ君、誰も通すなと言っていたようだが――……なんだ。セカンドチルドレンがいたのか」

ユイ「副司令。どうなされました?」

冬月「戦自について調べが進んだのでね、後でよかろう」

ユイ「かまいません。このまま報告を」

冬月「しかし」

ユイ「いいんです。大切な子なんですから」

アスカ「た、大切な……?」

ユイ「ええ。息子よりとっても優秀な、エヴァのパイロットなんですもの。違う?」

アスカ「いや、その、違わない、けど……」

冬月「……戦自から潜りこんでいるネズミの件だ。霧島マヤだよ」

アスカ「え……?」

霧島マナのミス

ユイ「やはりこちらの予想通り内部工作が目的で?」

冬月「そう考えて問題なかろう。わざわざ潜伏させるにあたり、具体的な指示は不明だがネルフに対する調査か、あるいは破壊工作だと見て間違いあるまいな」

アスカ「そんな……うそでしょ……?」

ユイ「どうしたの? 驚いてるみたいだけど、知り合い?」

アスカ「クラスメート……」

ユイ「あら、初耳ね。副司令、たしかですか?」

冬月「ああ。資料によると彼女の在籍している学年は2-A。奇しくもチルドレン達と同じ教室だ」

ユイ「困ったわね。警告をだした方がいいかしら……」

冬月「目的がわからない以上、こちらが下手に動くわけにもいくまいよ」

ユイ「そうですね。アスカって、呼んでもいい?」

アスカ「え? ……はい」

ユイ「このことはサードチルドレンにもファーストチルドレンにも秘密にしておいてほしいの。時がくれば、通達できると思うから」

アスカ「シンジにも? だって、自分の息子でしょ?」

ユイ「あの子、すこしだらしないから。アスカの方が信頼できるわ」

アスカ「私を、信じてくれるの?」

冬月「……」

ユイ「だからこその“お願い”よ。強制はしない。だって、あなたはそんなことする子じゃないって思ってるから」

冬月「もしの場合の責任はどうするつもりだね」

ユイ「私が全て負います」

冬月「まだキミたちは知り合って間もないだろう。セカンドチルドレンを買いかぶりすぎではないか。こんなじゃじゃ馬ムスメを」

アスカ「なっ……!」

ユイ「副司令。発言が過ぎています。他言はありませんよ。それと、また同じような暴言をすれば、罰を与えます」

アスカ「……あ、あの……」

ユイ「アスカ、この後の予定はある?」

アスカ「いえ、帰るだけですけど」

ユイ「それじゃぁ、一緒にご飯を食べない? おいしい店があるのよ」

アスカ「えぇと」チラ

冬月「ふん、好きにしろ」

ユイ「すこし、表で待っててくれる? 小言を聞かなきゃいけないから」

アスカ「はい、わかりました」

冬月「――見えすいた三文芝居をさせおって」

ユイ「なかなかいい演技でしたよ」

冬月「さしづめ私がムチでキミがアメといった役割か。事前に渡されたメモがなければ意図するところが理解できなかったよ」

ユイ「すこしずつ警戒心を和らげていけばよいのです。利用できるのですから」

冬月「それで? セカンドチルドレンに霧島マナを監視するよう言うのか?」

ユイ「そんな要求をすれば、“対価のためにとりいっている”という印象をいだくでしょう。ですので、そのままです」

冬月「なにも言わないのかね?」

ユイ「ネズミの情報をチラつかせ、彼女を実力で正当評価していると思わせる。たったこれだけで、報告をしてほしいなんて言わずとも、セカンドチルドレンから進んでするようになります」

冬月「親代わりになり信頼を得るか。よかろう」

ユイ「ご一緒にいかがです?」

冬月「遠慮しておく。私は子守りは苦手だよ」

ユイ「葛城一尉宅に仕掛けておくようお願いした爆弾の件は?」

冬月「既に完了してある。マンションを倒壊させるほどの爆薬だ。在宅していれば確実に息の根を止められるだろう。ネズミもろともな」

ユイ「では、そちらも手筈通り、赤木博士に起爆スイッチを渡しておいてください」

冬月「承知した」

【ネルフ本部 独居房】

シンジ「ここに、住んでるの?」

カヲル「借り暮らしさ、ボクの還るべき場所はここじゃない」

シンジ「でも、住むような場所じゃ……」

カヲル「キミだって似た環境で過ごしていたんじゃないのかい? 父親の、他人のぬくもりを知らずに」

シンジ「人並みに住める家だったよ。それに、不自由はしなかったから」

カヲル「……」スッ

シンジ「な、なに? いきなり肩に手をおいて。なにかついてた?」

カヲル「実験だよ。やはり、人との接触を極端に警戒する傾向にあるね」

シンジ「誰だって、初対面相手だとこうじゃないかな」

カヲル「ヒトは、なにか行動する際に理由を求める。ただ手をおきたかったことだって立派な理由のひとつじゃないのかい?」

シンジ「それは、時と場合によるよ。いきなりそんな……」

カヲル「常識……それとも、不安? それぞれが独立した個であるヒトゆえに次の行動を予測できない」

シンジ「良い気持ちはしない、それだって立派な理由じゃないか」

カヲル「そうだね。だけど、そこに起因するのは心の壁に階層があるからだろう?」

シンジ「……」

カヲル「忘れていた。自己紹介がまだだったね。ボクは渚カヲル。もっとも、名前なんてものは何者か知覚てできるボクたちにとって無価値に等しいけど」

シンジ「僕は、シンジ。碇シンジ」

カヲル「改めまして、よろしく。ボクはフォースチルドレンだよ」

シンジ「え? エヴァは?」

カヲル「近々、三号機が新たに配備される。そのパイロット」

シンジ「キミが……。渚、くん」

カヲル「カヲルでいいよ。シンジくん」

シンジ「やっぱり、その、カヲルくんも母さんの味方なの?」

カヲル「どうして?」

シンジ「ネルフの総司令官は母さんだから。父さんの時は綾波。母さんの時はカヲルくんなんじゃないのかなって」

カヲル「なるほど。でも、前例とまったく同じってわけじゃない」

シンジ「違うの?」

カヲル「純粋だね、キミは。他人の言う意見を間に受けすぎだよ」

シンジ「……」

カヲル「しかし、だからこそキミの無垢な魂は崇高な存在になりえるのかもしれない」

シンジ「教えてほしいんだ。母さんがなにを考えているのか」

カヲル「ボクはただの駒。裏で操作している本人か、委員会の連中に聞くといい。キミがこのまま同化していけば、むしろあちらからすり寄ってくるだろうからね」

シンジ「委員会……。また僕の知らない名前だ」

カヲル「ひとつ教えておいてあげるよ」

シンジ「……?」

カヲル「碇博士はキミにふさわしい相手を見つけるつもりのようだ」

シンジ「ふさわしい、相手?」

カヲル「ボクが言えるのはそれだけ。……そろそろ行かなきゃいけない場所があるから。また会えるといいね、シンジくん」

【第三新東京都市 レストラン】

ウェイター「ご予約名は?」

ユイ「碇です」

ウェイター「お待ちしておりました、碇様。ご案内します」

ユイ「いきましょうか」コツコツ

アスカ「……」スタスタ

ウェイター「こちらのお席になります」スッ

ユイ「ありがとう」

アスカ「シンジは?」

ユイ「あら。どうしてシンジが一緒だと思うの?」

アスカ「だって、息子だし」

ユイ「自分の子供だからという理由で特別扱いしないわよ。あなたがここにいる理由だってキョウコの娘だからというわけじゃない。どうしてかわかる?」

アスカ「……」

ユイ「私は、あなたに期待しているの。副司令は過大評価だと言うけれど……きっと、今よりもっともっと成長できると信じてる。その点においては、彼女の子供だからという甘めの基準になってるかもね?」

アスカ「シンジだって、親が優秀という話なら一緒だわ」

ユイ「私を褒めてくれるの?」

アスカ「そうじゃない……です。経歴だけを見たら、そう思うから」

ユイ「たしかにね。私と夫は、積み重ねてきたモノがある。でも、息子はこれまでなんの努力もしてこなかった。ただ、まわりに合わせるように流されて生きてきただけ」

アスカ「……」

ユイ「あなたは違うわ。才能だけで辿り着けない域にまで己を高めてきた」

アスカ「……」

ユイ「ふふっ、さ、なにを食べたい? ここね、ドイツ料理が美味しいと評判のお店なの。日本人に合った味付けをしているから、郷土料理までいかないと思うけど」

アスカ「あの、ママの話を、聞かせて」

ユイ「ゆっくりね? まずは注文を済ませましょ。時間はあるんだから――」

【マヤ宅 リビング】

シンジ「(アダムを僕の一部だと受け入れる……)」もぐもぐ

マヤ「あの、今日は味付け上手にできてると思うんだけど……」

シンジ「え? えぇと」

マヤ「おいしくなかった⁉︎」ぱくっ もぐもぐ

シンジ「あ、いや。そんなつもりは。すいません、少し考えごとしてて味を――」

マヤ「ああ! やっぱり少ししょっぱい……! ちゃんと味見して確認したのに。どうして……」

シンジ「あの?」

マヤ「こんなんじゃダメ! やっぱり、先輩が私の問題点を改善する必要があると言ったのはその通りだったんだわ!」

シンジ「マヤさん?」

マヤ「ごめんね! シンジくん!」ガタッ

シンジ「は、はぁ?」

マヤ「私、変わらなきゃ! シンジくんは中学生、シンジくんは子供、シンジくんは良い子、シンジくんは不潔じゃない……」ぶつぶつ

シンジ「おいしいですよ。これ。そんなに気にするほどじゃ……」

マヤ「馬鹿にしないでっ!」バンッ

シンジ「……!」

マヤ「あ……ち、違うの。その、子供に気を使ってもらうと、私のちっぽけなプライドが……」

シンジ「……僕は、マヤさんにお世話になってる身ですし、馬鹿になんてしてません。それだけわかってもらえれば」

マヤ「うぅ……ごめんね?」

シンジ「謝らないでいいですよ。僕もいつも他人謝ってばかりだから、なんだか自分を見てるような気がします」

マヤ「私って中学生と一緒なの……」

シンジ「他意はないんです。僕は、こう思ってるって普段あんまり主張しないから。自分でもわかってるんです。だけど、自分じゃどうしようもできない」

マヤ「……」

シンジ「抜けだすのって難しいんですよね。同じ経験をしてると勝手に僕が思ってるから言っただけで」

マヤ「どうしたら、いいのかな」

シンジ「マヤさんは仕事ができるし、そんなに悩むことないと思います」

マヤ「でも、私には仕事しか……」

シンジ「(やっぱり、エヴァしかないって思ってる僕と同じだ)」

マヤ「仕事をしてれば、自分を誤魔化すことで見ないふりができる。だけど、それだけじゃ先輩に見捨てられちゃう……」

シンジ「それぞれペースってあるんだと思います。ゆっくりでいいんじゃないですか?」

マヤ「そうかな」

シンジ「僕も、変わろうと決めたところなんです。なかなかうまくいってません」

マヤ「シンジくんも……?」

シンジ「はい。決意表明みたいに宣言する必要はないんじゃないかって。毎日少しずつ変われたらそれで」

マヤ「そっか……。なんだか、少し似てるのかもしれないわね、私たち」

シンジ「そうですね。僕もマヤさんも縋るものの違いだけで、コンプレックスを抱えてるんじゃないでしょうか」

マヤ「私は、異性への対人関係だけど、シンジくんは?」

シンジ「僕は、エヴァしかないってずっと思ってました。パイロットでいれば、みんなが褒めて、一員だと認めてくれる。なぜ乗れるかすらわからないままなのに」

マヤ「あ……そう思ってたんだ」

シンジ「でも、言葉って大事ですよね。行動も。言わなきゃ伝わらないし、動かなきゃ結果はついてこない」

マヤ「……」

シンジ「こわかったんです。悪い結果になるのが」

マヤ「うん、うん、わかる」

シンジ「だから、マヤさんだって――」

マヤ「シンジくんっ!!」ギュウ

シンジ「は、はい……?」

マヤ「一緒に頑張りましょう! 私、シンジくんが子供だと誤解してた!」

シンジ「あ、はぁ」

マヤ「こうなったら年齢は関係ないわ! ううん、そうよ。ただ歳を重ねてたってなにも経験しなければ子供と同じ……」

シンジ「あの、手が痛い……」

マヤ「シンジくんも私も! 絶対に変わりましょう! ねっ!」

シンジ「はぁ……」

マヤ「よーしっ! そうと決まればカリキュラムを作らなくちゃ!」

シンジ「あの、もう食べないんですか?」

マヤ「ラップしといてくれる?」ドタドタ

シンジ「かまいませんけど、どこに?」

マヤ「効率的に変わる計画を立てるの。お互いにね。私だって、先輩に見初められてネルフに入れたんですもの。……私にできる武器……お姉さんが見せてあげる!」

シンジ「……?」

マヤ「お、お姉さんだなんて自分で言っちゃった」

シンジ「(照れるなら言わなきゃいいのになぁ)」

【数時間後 風呂】

シンジ「(見た目が気持ち悪い……体内に戻るよう念じれば普通の手と変わらないけど)」ごしごし

アダム「……」ドクンドクン

シンジ「(脈打って生きてるのがわかる。キミはなんの為に生まれてきたの?)」

マヤ「できた!」ガチャッ

シンジ「わ、わぁっ⁉︎」

マヤ「これね、今後の改善点をいくつか考えてみたんだけど――」

シンジ「……あ……あ……」

マヤ「――……へ? あ、ちょ」

シンジ「お風呂ですよ!ここ!」

マヤ「きゃ、きゃあああっ! なんか、なんかついてる!」

シンジ「ど、どこ見てるんですかっ!」

マヤ「見たくて見てるわけじゃ!」

シンジ「泡流して、湯船に……!」キュッキュッ

マヤ「ちょっと! 扉あけたたまま!」

シンジ「へ?」ザーッ

マヤ「わっ、きゃ」

シンジ「し、閉めてくださいよっ!」

マヤ「やだ、こっち向かないでよ!」ポイ ポイ

シンジ「いた、いつっ、なんなんですかもうっ!」

マヤ「汚いもの見せないで!」ブンッ

シンジ「そうだ、僕が閉めれば……! いたっ」カポーン ゴチン

マヤ「え……?」

シンジ「」

マヤ「すごい音……ってやだ。丸見え……そんな場合じゃないのに。うう、不潔」

シンジ「」

マヤ「あの? 大丈夫?」ツン ツン

シンジ「……」ムクッ

マヤ「あ、よかった。大丈夫なのね、すぐ閉めるから」

シンジ「……」スッ

マヤ「え、手、なにそれ――」

【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「夢は、性欲に対する願望の表れであると提唱したフロイト……これは、ナンセンスね」カタカタ

加持「遅くまで忙しそうだな。調べものかい?」

リツコ「ノックが聞こえなかったわよ?」

加持「この研究室に必要なのはコレ。……カードキーさ。分厚い金属で隔てられてちゃ、音が届くとは思えない」

リツコ「あいかわらず、へらず口ばっかり」

加持「いつかに言ったかもしれないが、俺の持ち味なんでね。……脳? 調べてたのは、シンジくんの件かい?」

リツコ「正確には、“タブリスがなにをしたのか”よ」

加持「……」

リツコ「加持くんはどう思う?」

加持「さてね、思惑になんて興味ないさ。第壱使徒の名を冠していても所詮、やつはただの駒だろうからな」

リツコ「黒幕にだけ?」

加持「もっと厳密に言えば“真実により近しいやつ”かな」

リツコ「急がば回れ……。全てを知りえた時にあなたの命はあるのかしらね」

加持「そうなったらその時考えりゃいい」

リツコ「ミサト、泣くわよ」

加持「晴れない雨なんてありはしないさ。俺は俺の思うままに……。葛城は女の幸せを自分で掴みとるだろうよ」

リツコ「薄情ね」

加持「――……どれ、タブリスが昏睡状態にあるシンジくんを覚醒させた方法を聞かせてもらえないか?」

リツコ「知らなかったの?」

加持「その場にいなかったからな、俺は。資料は読んでいるが、リッちゃんの口から説明願いたいね」

リツコ「おそらく、なんらかの方法でシンジくんの深層心理にダイブしたんだと思うわ」

加持「鈴原トウジの妹、サクラ……だったか。彼女を使ったのは?」

リツコ「家族、友人の純粋な気持ちが患者本人の情熱を呼び起こす。シンジくんを引っ張りあげるために利用したと推察できる」

加持「過去に同じ例が?」

リツコ「脳に関わる臨床ではたびたび、医学的根拠や客観的な診断くつがえす。つまり、驚異的な回復をうながすケースがなくはないのよ」

加持「……それで、シンジくんのなにを?」

リツコ「“夢を覚えているのか、いないのか”」

加持「覚えていたとしてなにか問題でも?」

リツコ「覚えているとすれば、なにを見たの?」

加持「そこで、タブリスがなにをしたかに集約するわけか」

リツコ「正攻法での追求は不可能ね。自白剤の投与を検討してみようかしら」

加持「使徒相手に人間の薬品が効くと思えないがね」

リツコ「理論だけで試さず結論付けていたら、科学者なんて置物と一緒だわ」

【ミサト宅 リビング】

アスカ「ただいま」カチャ

ミサト「今日は遅かったのね~。夕ご飯先に食べちゃった……元気ないみたいだけど、どしたの?」

アスカ「別に」

ミサト「アスカは夕ご飯は? クラスメイトの……誰だったか、えぇと、ヒカリちゃんっだっけ? あの子の家に言ってたの?」

アスカ「誰だっていいでしょ、ミサトは保護者じゃないんだから」

ミサト「あらぁ~、今は私が保護者代理よ?」

アスカ「だとしても、プライベートはほしい。全部報告する義務あんの?」

ミサト「うーん、ないかな」カシュ

アスカ「あっそ、だったら部屋に……」

ミサト「アスカ、私ね、一緒に暮らすのがいつまでかわからないけど……。住んでる間は、本当の家族のように接してるつもり」

アスカ「……」

ミサト「代理は仕事だけど、私情もはいってる。それは認める」

アスカ「それを聞いて、私にどうしてほしいの?」

ミサト「なにかしてほしい、なんてないわ。ただ、私の気持ちを伝えただけ」

アスカ「……」

ミサト「なにかあったら、言いなさい。相談ぐらいなら乗れるから。……以上! 後でちゃあ~んとお風呂はいりなさいよん?」

アスカ「……ミサト……」

ミサト「ん?」グビ

アスカ「今日、碇司令とご飯、食べてきた」

ミサト「え、司令と?」

アスカ「ママの、友達だったみたい。ミサトも、知ってるでしょ。私の資料読んで……ママのこと」

ミサト「……」コト

アスカ「同じ研究員同士だったみたいで、色々、話聞いてきた」

ミサト「そう……。どうだった?」

アスカ「ふぅ……私が知らないママの顔、たくさん知ってるのね、あの人。本当のこと言っているかわからないけど」

ミサト「司令がアスカにウソをつく意味があるとは思えないけど」

アスカ「わかってる。証拠があるわけじゃ……でも、なんか嘘くさい」

ミサト「……?」

アスカ「表情が、言葉が、全部が。作り笑いしてるけど、目の奥は笑ってない感じ」

ミサト「……」

アスカ「ミサトは、司令をどう思ってるの?」

ミサト「そうねぇ、考えてみればまだあまり話たことすらないかな?」

アスカ「作戦司令なのに?」

ミサト「肝心の使徒が来てないんですもの。ブリーフィングが行われるでもないし、相手はネルフの最高責任者よ? 私なんかがやすやすとお目にかかれる相手じゃないわ。前司令の頃からね」

アスカ「……」

ミサト「これだけは言っておくわ。大人はね、簡単に本心をさらけ出さないものよ」

アスカ「……」

ミサト「ずる賢くなっちゃうのよね、生きてく上で。効率的ってわけじゃなく、他人を、時には自分を欺く術を身につけるの」

アスカ「知ってるわよ、そんな大人、たくさん見てきた」

ミサト「アスカは、シンジくんやレイとはまた違う環境で育ってきているから、見えている景色が違うのよね。お母さんのこと、知りたかったの?」

アスカ「うん」

ミサト「警戒するのは、無理ないのかもしれない」

アスカ「……」

ミサト「アスカのこれまでの経験から、私たち大人に対して、なにを信じていいかわからないのよね?」

アスカ「違う。あたしは、チャンスだと思った」

ミサト「……」

アスカ「今日、食事についていったのは、ママのことを知るのに現実的な手段だったから」

ミサト「……」

アスカ「ママの死後、エヴァパイロットとして英才教育を受けて……。死にものぐるいで頑張ってきた。ママの子供はこんなにも優秀だって、狂った親なんかじゃないって、証明するため」

ミサト「……」

アスカ「褒めてほしかった人はもういないのに。だから、あたしはママに認められるように、周囲を黙らせるように。……結果を求めて、代わりのいない、エースだっていう絶対的地位がほしい」

ミサト「大切なものは、今のあなたなのよ」

アスカ「でも! それは私のなりたい自分とイコールじゃないっ!」バンッ

ミサト「……」

アスカ「あたしだって……! 普通に、そこらにいるバカなやつらのようにのほほんと生活してみたくないわけじゃないわよ……っ!」

ミサト「キリがなくなってしまう。壊れてしまうわよ」

アスカ「加持さんに聞いても教えてくれない! どうしたらいいか、わからないのよっ! 自分自身が嫌! なにもかも嫌っ!!」

ミサト「私の父はね、研究に生きる人だった。アスカとは追い求めるモノが違う。嫌いだったの、私」

アスカ「……」

ミサト「家庭をかえりみず研究する父に、母さんは、いつも冷めた夕飯を前にして泣いてた……」

アスカ「……」

ミサト「死んじまえ、クソ親父って、そう思ってた。……だけど、ある日、父がめずらしく私に言ってきたの。社会勉強だ、研究に同行しなさいって」

アスカ「……」

ミサト「勝手よね、今までほったらかしだったのに。嬉しさより戸惑いの方が強かったのは……印象に強く残ってる」

アスカ「……」

ミサト「場所は南極だった。そう、セカンドインパクトの爆心地」

アスカ「……」

ミサト「あんなに嫌いだったはずなのに、最後にあたしを庇って死んだの。この、ペンダントを残して――」チャラ

アスカ「形見なの?」

ミサト「ええ。今でも、その時の傷痕が身体に残ってる。……でも、もっと根深い見えないモノが私の中で、毎日疼くのよ」

アスカ「……」

ミサト「私たち、生きてかなきゃいけない。アスカのママ、そして、私の父。残された者は、大切な人たちの証を色褪せさせちゃいけないわ」

アスカ「……」

ミサト「悩んだっていいじゃない。ギリギリかもしれないけど、女は強いんだから」

【ネルフ本部 初号機ケイジ】

レイ「……」チラ

カヲル「アダムより生まれしエヴァシリーズ。おっと、この初号機とキミの乗る零号機は違ったかな」

レイ「あなた、なにしに来たの?」

カヲル「シンジくんにご執心なようだけど、キミの目的はサードインパクトを起こすことなんだろう? 碇博士や委員会と違う形で」

レイ「……」

カヲル「彼を崇高な存在にまで高める。それには、試練が必要だ。魂の浄化がされないからね」

レイ「碇くんは、もうただのヒトではないわ」

カヲル「揺れている、と言ったらわかるかな。僕たちの側に立つか、ヒトの側に立つか」

レイ(少女)「その為に“私達”がいる」

カヲル「全ての使徒、第十七使徒である人類も含めて、シンジくんを頂点にするつもりなのか」

レイ「あなたは、わかってない」

カヲル「……」

レイ(少女)「損得じゃないの。彼の純粋な想いは、種の壁を顧みない」

カヲル「どういう……?」

レイ「あなたに、碇くんは特別な対応をした?」

カヲル「いや」

レイ「私達が違うと知っていても尚、利用しようとしない。思惑がない。あるのは、他のヒトに対する恐怖。他人への畏怖」

カヲル「臆病なだけでは?」

レイ(少女)「そう、あの子はあなたの言う通り、臆病でどちらにも傾く。可能性の塊」

レイ「だから、ひとつになる」

レイ(少女)「純粋にだってなれる」

カヲル「……! この共鳴は――」

レイ「また、アダムの侵食が進んだのね」

【再びマヤ宅 脱衣所】

マヤ「か、かは……っ!」

シンジ「……」グググッ

マヤ「し、シンジ……く、ん……はなし……てっ……息が……」

シンジ「くっ、クックックッ」ニヤァ

マヤ「うっ……ぐっ……」

シンジ「……!」ググッ

マヤ「(すごい力、ふりほどけない……! シンジくんの、目が赤く……この瞳、どこかで、レイと同じ……? 意識が……とお、く……)」

シンジ「壊す、壊すんだ。最優先で僕のしたい願望。マヤさん、マヤさんは壊れる時、どんな悲鳴をあげるの?」スッ

マヤ「えほっ! けほっ!」

シンジ「手は離してあげたよ。ゆっくり息をするんだ。吸って、吐いて……」

マヤ「すぅー、げほっ、ごほっ」

シンジ「ああ、器官が伸縮しているんだね。首に僕の手形がついちゃってる」

マヤ「な、なに……? どうしちゃったのよ、シンジくん」

シンジ「わからないんだ。目が覚めたら頭が妙にスッキリしてて。遠くの水滴でさえ、聞こえてる」

マヤ「……?」

シンジ「僕が僕じゃないみたいな感覚なんだ。そうか、これが、抑えられなくなった時なんだね、綾波」

マヤ「シ、シンジくん……? あなた、変よ……」

シンジ「マヤさんに物を投げられた拍子に頭を打って朦朧としたのが原因か、それとも単なる偶然なのか、僕にはわからない。だけど――」

マヤ「ひっ! こ、こないで」

シンジ「衝動を沈めたいんだ、違う、誰かにぶつけたい。なにかに向けることで発散したい」

マヤ「手にあるのは、なんなの……? なんなのよ、それぇっ!」

シンジ「――ごめんなさい、マヤさん」ガシッ

マヤ「いたっ!」

シンジ「ぐっ! 逃げて……」スッ

マヤ「え? ……へ?」

シンジ「はやくっ!! ここから出てってください!」

マヤ「どうなってるの?」

シンジ「くっ、僕が出ていけば……!」ヨロヨロ

マヤ「ねぇっ! どうしちゃったのよ! そ、そうだ! 本部に連絡――」

シンジ「余計なことをして僕を刺激しないでくださいよっ!」バンッ

マヤ「あうっ!」ドンッ ドサ

シンジ「……はぁ……はぁっ……」

マヤ「」

シンジ「だめだ、だめだ、だめだ、手を出しちゃだめだ……! 今すぐに、出ていかないと……!」

【ネルフ本部 執務室】

諜報部「ご報告です。伊吹一尉宅より、サードチルドレンが――」ザザッ ザザー

冬月「電波障害か。アダムが本格的に活動を開始するまで時間はかからなかったな」

ユイ「想定の範囲内です。それにしてもシンジったら。破壊衝動を抑える為に女を犯すなり、壊してしまえばいいのに」

冬月「こうなると予見して末端の職員の所に住まわせたのかね」

ユイ「保険ですよ、いつも通り」

冬月「……だが、万一そうなった場合、サードチルドレンの性格からして面倒にならないか」

ユイ「罪の意識――。人は生まれながらにして原罪に抗えません。綺麗になるには、汚れていると自覚させるのが始まりです」

冬月「……」

ユイ「シンジが誰かを壊すまで、もう少しですよ。先生」

冬月「碇がマシに見えてくる。歪んでいるよ」

ユイ「心外ですね。夫は私の為、私はシンジの為を想いやっているのです。誰か一人が不幸になっても、それは必要な犠牲ですわ」

冬月「今はまだ、ことの成り行きを見守るしかできんか」

ユイ「(もうすぐ、もうすぐアダムとあなたは完全にひとつになる。汚れる覚悟を決めなさい、シンジ)」

冬月「伊吹一尉の今後はどうする?」

ユイ「一週間の休暇を与えましょう、その間、今日の記憶を消すように手はずを整えます」

冬月「記憶を操作するのは容易ではないぞ」

ユイ「結果、消えていれば問題ないのです。脅迫、拷問。物理的になろうと手段は問いません」

冬月「サードチルドレンがこのことを知ったら憎まれるのではないか?」

ユイ「そんな役ぐらい。なんだっていうんです?」

冬月「承知した。この電波障害がおさまり次第、諜報部を彼女の家に派遣させる」

【第三新東京都市 公園】

シンジ「ふぅ……」

レイ「……」

シンジ「綾波? どうしてここが――」

レイ「シグナルと同じ。私達使徒は、特殊な電波を発信してる。ヒトはそれを解析しパターン青などと呼んでるわ」

シンジ「そっか……。僕も、普通のヒトじゃなくなったんだね」

レイ「波に襲われた時、そばにいた人を壊したくなったはず」

シンジ「前に綾波がそうなった時に言ってって言ってたのは――」

レイ「私なら、代わりがいるもの」

シンジ「そんな……」

レイ「……」

シンジ「綾波は、死んだらどうなるの?」

レイ「次の私にかわるだけ。私は容れ物。碇くんのように魂の融合はできない。元となるモノが空っぽだから」

シンジ「できるわけないよ……」

レイ「……? どうして?」

シンジ「だって、綾波だって生きてるじゃないかっ! 僕にとって綾波は、変わらない人間で」

レイ「あなたは私が他と違うと知ったのよ」

シンジ「だからなんだっていうんだ……。今喋ってるじゃないか! それなのに、人形みたいに扱えるわけないよっ!!」

レイ「衝動は、いずれ抑えが効かなくなるわ。それは碇くんの意識ではどうしようもない」

シンジ「……!」

レイ「アダムに飲み込まれないように私がいる。安心して、あなたは壊れないわ。私が守るもの」

シンジ「次の綾波に変わったら、記憶はどうなるの? 引き継げるの?」

レイ(少女)「わからない」

シンジ「君は、もう一人の綾波だね、夢にいた」

レイ(少女)「私は、前の私。本来ならば、存在しない私。その私でも、どうなるか未知の部分はある」

シンジ「綾波達が僕に見せたって、今までの記憶?」

レイ「ひとつは、私達が持ちうる全ての知識。碇くんの父親、碇司令のすぐそばで見てきた事柄。それを伝えた」

レイ(少女)「もうひとつは、私達の魂であるリリスの真実。ゼーレが発動せんとする補完計画の狙い」

シンジ「ゼーレって」

レイ「人類補完計画委員会の主要組織。ネルフを実行機関とし、各国政府を統率する権力者たち」

シンジ「委員会は、その人たちのことだったのか」

レイ(少女)「いずれ、委員会は碇博士の狙いに気がつく。その時、あなたの中にあるアダムを奪還しようとする」

レイ「しかし、アダムは碇くんの魂レベルにまで癒着し融合され、手は出せないはず。それが碇ユイ博士の狙い。あなたをトリガーの中心に見据えて固定すること」

レイ(少女)「碇くんがいなければ補完計画は発動できなくなる」

シンジ「もともとは、補完計画はどうやって発動するつもりだったの?」

レイ「初号機を依り代にして、量産機を利用する予定。つまり、あなたは直接的には必要じゃない。“初号機パイロット”が必要なだけ」

レイ(少女)「どの道、初号機を動かせるには碇くんだけだったけど。碇くんがダメになった場合を想定してのダミー計画だった」

レイ「でも、ダミーそのものに意味はなくなる。あなたがスペアのない唯一無二の“鍵”になる」

シンジ「それじゃあ、補完計画を発動するとき、初号機と量産機は無人機の予定だったってこと?」

レイ「量産機はそうだけど、初号機に関してはどらちでもよかったが正解。オリジナルのコピーである初号機さえ在ればよかった」

レイ(少女)「碇ユイ博士は他にもなにかやろうとしている。それは私達にはわからない」

シンジ「……」

レイ「衝動はおさまった?」

シンジ「うん、今は、なんとか」

レイ「そう。これから融合が進むにつれ、もっと頻度は多くなり、間隔は短くなる。あなたは、選ばなければならない」

シンジ「また、またなのか。僕が選ぶことのできない選択肢ばかりに振り回されて……」

レイ「最後の防波堤に私達がいる。忘れないで」

レイ(少女)「なにも気にしなくていい」

シンジ「だから、そうじゃないって――」

レイ「伊吹一尉を助ける?」

シンジ「え?」

レイ(少女)「諜報部員を乗せた車が今、気を失ってる彼女の元に向かってる」

シンジ「そんな、どうして」

レイ「おそらく、碇ユイ博士の指示によるもの。碇くんの手にあるアダムを見られたから」

シンジ「どうやって、それを……母さんは僕を監視してたの?」

レイ「……」コクリ

シンジ「綾波は?」

レイ(少女)「助けるのなら急がなければならない。私はまだ手をだせない。碇くんの力で」

シンジ「そんなっ! 僕ひとりでどうやるのさ!」

レイ「また、逃げるの?」

シンジ「違うっ! だけど、方法が……!」

レイ(少女)「あなたは殺されることはないわ。今説明した通り、誰より必要だから」

シンジ「……!」

レイ「どうする?」

シンジ「行くよ! 行くに決まってるだろ!」クルッ

レイ「あの、気をつけて」

シンジ「わかった! ありがとう、綾波!」タタタッ

レイ(少女)「まだ、アダムは赤子同然の状態」

レイ「それは碇くんも同じだわ」

レイ(少女)「全ては、碇くんの意思の強さに」

【マヤ宅 リビング】

諜報部A「運べ、急げよ」

マヤ「……」グタァ

シンジ「はぁっ、はあっ」ガチャ

諜報部A「……!」

シンジ「まって、待ってください!」

諜報部A「ちっ、面倒な」

シンジ「マヤさんをどこに連れて行くんですかっ!」

諜報部A「おい、そのまま連行しろ」

シンジ「待てって言ってるでしょ!!」ダンッ

諜報部B「……」スッ

シンジ「質問に答えてくださいよ!」

諜報部A「存じません。本部からの発令です」

シンジ「やっぱり、母さんから……! 母さんに繋いでください! すぐに命令を撤回――」

諜報部A「仕方ない。手加減してやれ」

諜報部B「了解」ガシ ドカッ

シンジ「うっ!」ドサッ

諜報部B「恨むなよ。俺たちも仕事なんだ」ボソ

シンジ「おぇ……おぇぇっ!」

諜報部A「みぞおちにキレイに決まったな」

諜報部B「このまま伊吹一尉の身柄は本部に」

シンジ「まっ、て」ガシ

諜報部B「……」ピタ

諜報部A「おい、小僧。あんまり俺たちを怒らせるなよ。こっちはプロだぞ。ダメージのみを与え苦しめる方法ならいくらでも知ってる」

シンジ「おねが、いします。母さんに、連絡を」

諜報部B「……」

シンジ「マヤさん、起き、て」

マヤ「……」

諜報部A「ほどほどに痛めつけてやれ」

諜報部B「しかし、外傷が残ってしまっては、司令に」

諜報部A「止むをえん。後から報告するしかあるまい」

シンジ「……!」

諜報部B「相手は、子供ですよ」

諜報部A「そうか、お前はガキが産まれたばかりだったな。どけ、俺がやる」

諜報部B「……」

シンジ「マヤさん!!」

マヤ「……」ピクッ

諜報部A「躾のなってないやつには接し方ってもんがある、お前はそこで見てろ」グイッ

シンジ「くっ……!」

諜報部A「歯を食いしばらなくていい。顔に傷をつけちゃ今後の生活に支障をきたすだろうからな」ドカッ

シンジ「うがぁ! う、うぷっ……おぇ……」

諜報部B「隊長、もう充分でしょう」

シンジ「だめ、だ」

諜報部A「……」

シンジ「連れて、行かせない!」

諜報部A「みぞおちに二発。呼吸が困難な中で根性は認めてやる。中学生にしちゃあな!」ドカッ

シンジ「うっ!」ドサッ

諜報部B「隊長!」

マヤ「う……うん……」

シンジ「おぇぇっ……!」

マヤ「あれ……? 私……? シンジくん?」

諜報部A「これで、どうだ!」ドカッ

マヤ「……! あなたたち! なにやってるんですか!」

シンジ「ぐう、マヤさん、目がさめ」

諜報部A「目が覚められましたか。本部より貴殿を連行するよう仰せつかっています」

マヤ「私を? どうして、本部にはまだなにも連絡を――」

諜報部A「ご同行願います。手段は問わないとの通達です」

シンジ「逃げて! 逃げてください! 母さんは、マヤさんの口封じをするつもりで……!」

マヤ「な、なに言ってるの?」

シンジ「僕の秘密を見たでしょ! あれは見ちゃいけないものだったんです!」

諜報部A&B「……」

マヤ「どういうことですか? あの、私を連行する理由は? シンジくんの言ってるのは本当に……?」

諜報部B「我々がそれを知る必要はありません。上の命令に従うのみ。あなたもネルフの一員ならご理解いただけるかと」

シンジ「だめだ! ついていっちゃだめです!」

諜報部A「少し黙れ」ドカッ

シンジ「うっ!」

マヤ「ちょっと! 暴力はやめてください!」

シンジ「けほっ、こんなの、エヴァで戦う痛みに比べたら……母さんから、連行した後なにか言われてるんじゃないんですか」

諜報部A「……」

マヤ「先輩に、赤木博士に連絡させてください」

諜報部A「まったく、本当に面倒になった。おい」

諜報部B「はい。これは仕方ありませんね」ガシッ

マヤ「きゃっ!」

諜報部B「ご静粛に願います。こちらとしても手荒なマネはしたくありませんので」

シンジ「くっ……! このっ! うあああっ」ドカッ

諜報部B「むっ!」

マヤ「し、シンジくん」

シンジ「はやくっ!! 走って逃げて!」

マヤ「……!」タタタッ

諜報部B「この、離せ」

諜報部A「ここまで肝が座ってるなんて思わなかったぜ、なかなか見所があるな。お前」グイッ

シンジ「うっ」

諜報部B「ターゲットが。すみません、自分の失態です」

諜報部A「まだそんなに遠くには行ってないだろう。こんな簡単な任務を失敗したとなっちゃ厳罰ものだ」

諜報部B「応援を呼ばれますか?」

諜報部A「馬鹿野郎。今言ったろ。なに、すぐに解決できる。行き先はわかってるからな」

諜報部B「赤木博士ですか。すぐに連絡をいたします」

シンジ「母さんに……」クタ

諜報部A「ふん、逃がした安堵で気を失いやがった。大方、火事場の馬鹿力ってとこか」

諜報部B「子供だと思っていましたが、やるもんですね」

諜報部A「それに関しちゃ同感だ。お坊ちゃんなりに男を見せやがったな」

諜報部B「サードチルドレンはどうされます?」

諜報部A「このまま布団まで運んでやるか。起きた頃には終わってるよ」

【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「――ええ、了解したわ」カチャリ

マヤ「はぁっ、はあ、せ、せんぱい、よかった、はぁ……はぁ、まだ、残ってて」

リツコ「……」スッ

マヤ「ふぅ、ふぅ、あのっ! シンジくんが――」

リツコ「まずは水を飲みなさい。脳に酸素を送らないと順序立てて説明できないわよ」

マヤ「あ……で、でもそれどころじゃ」

リツコ「シンジくんの手の平にあるものを見たのね?」

マヤ「……!」

リツコ「まさか司令がこういう算段であなたの家にシンジくんを送りこんでいただなんて」

マヤ「せ、先輩? あの、どうして知ってるんですか?」

リツコ「私も知っていたから。知っていて協力していると言えば意味は伝わるでしょう」

マヤ「そ、そんな……」

リツコ「ただし、今回の処置については知らなかったわよ。あなたを生贄にするつもりはなかった」

マヤ「生贄って」

リツコ「皮肉なものね。誰かの為にと思ってやった結果が、苦しめてしまう」

マヤ「どうしてなんですかっ! 私の問題を解決する為だって……」

リツコ「私はもとよりそのつもりだった。でも、司令はそうじゃなかった。それだけよ」

マヤ「シンジくんの手になにがあるかなんて知りません!」

リツコ「……」

マヤ「それでいいでしょう⁉︎」

リツコ「そうね、そうであれば問題ない。でも、あなたに楔を打つ必要がある」

マヤ「……」

リツコ「もし喋れば、あなただけじゃない。血縁関係者全員が死ぬことになるわよ」

マヤ「……! せ、先輩は……」

リツコ「今さら驚いたの? 仕事を一緒にしていても本質がなにも見えていない証拠ね。あなたが抱いていたのは幻想。これが本当の私。残酷?」

マヤ「……」ギリッ

リツコ「これでも恩赦を与えているのよ。諜報部員にあのまま連行されていたら、拷問を受けていたでしょうね。外的ショックで喋ることへの恐怖心を植え付ける」

マヤ「シンジくんは、私を……」

リツコ「彼、頑張ったみたいね。相手が子供だと思って油断していたんでしょうけど」

マヤ「……」

リツコ「マヤの保証人には私がなってあげる。これまでのよしみでね。ただし、これ以上の追求はなし。第三者に喋った場合は言った通りよ」

マヤ「それで、これまで通りってことですか」

リツコ「あなたが望むならね。二十四時間体制で監視がつくけど、荷物をまとめて実家に帰ってもいいわよ。後のことは私がなんとかするわ」

マヤ「……」

リツコ「水、飲んだら?」

あら?ホントだ
途中からずっと一尉になってますね、手直し不可能なのでこのまま続けます

不可能ではないか
レスしなおすしか方法ないのでこのまま続けます

【マヤ宅 シンジ部屋】

シンジ「……う……ここは? 僕、どうして、あ、いっ!」

マヤ「おはよう、お腹、痛む?」

シンジ「いてて……。マヤさん?」

マヤ「まだ、夜中だよ。それと、ごめんなさい」

シンジ「あの後どうなったんですか? それに僕なら平気ですから、謝らなくても――」

マヤ「そうじゃないの。謝りたくないから謝った。謝れなくて、ごめんなさい」

シンジ「……?」

マヤ「どうして……? どうして私が巻き込まれなくちゃいけないの? ねぇ、どうして?」

シンジ「あ……」

マヤ「なぜあなたに助けてもらわなくちゃいけなかったのよ! なにもかもあなたのせいじゃないっ!!」

シンジ「……」

マヤ「優しかった先輩を返して! 私の……日常を……返してよ……」ポロ

シンジ「この手にあるのは」

マヤ「聞きたくないっ!」

シンジ「……」

マヤ「知ってどうしろっていうの⁉︎ これ以上私を巻き込まないで!」

シンジ「すみません、そう、ですよね」

マヤ「今の自分が最低だってわかってる。だから、先に謝ったの」

シンジ「……」

マヤ「ネルフの一員で、私は大人だもの。こんな時、優しい言葉のひとつでもかけてあげなきゃいけないんだろうけど……」

シンジ「……」

マヤ「“なんで私が”って気持ちが強くて。それしか考えられない」

シンジ「わかりました」

マヤ「それで、いいの?」

シンジ「いいんです。慣れてますから」

マヤ「どうして⁉︎ どうして我慢しようとするの⁉︎ おかしいわよ、先輩も、あなたも、ネルフもっ!! 人の命をなんだと思ってるの⁉︎」

シンジ「僕は、少しほっとしてます」

マヤ「え……?」

シンジ「僕のせいで嫌な思いをさせてますけど、こうしてここにいるんですから」

マヤ「そんなの自己満足じゃない。私は望んでなかったのに」

シンジ「すごく、よくわかります。僕もそうなんです。いつも、自分の望む形でいられてない。だけど、今回は違う。僕がマヤさんをそうしてしまった」

マヤ「……そうよ、私は巻き込まれただけで……」

シンジ「すみません、謝ることしかできなくて。僕はなにか力になれますか?」

マヤ「私の知らない先輩に、いつもと種類の違う平坦な表情で言われたわ。シンジくんに関して詮索をやめるように。他に喋ったら血縁者を殺すって」

シンジ「(母さん。……父さんと同じか。目的のためなら手段を選ばないんだね)」

マヤ「私の家は……ううん、これから、ずっと監視の目がつきまとう」

シンジ「……」

マヤ「でも、残ると先輩に伝えた。このまま帰ったら、きっと私は後悔するから」

シンジ「え……」

マヤ「あなたの為じゃない。ネルフの為でも、先輩の為でもない。そう、これは自分のため」

シンジ「やり残したことがあるとか?」

マヤ「悔しい。ただ、そう思うだけ」

シンジ「たぶん、母さんやリツコさんはまたマヤさんを利用しようとすると思いますよ。弱者に変わりないから」

マヤ「……」

シンジ「僕のこの手バレてしまっているので、今まで以上に露骨に要求してくるかもしれません。同居やアルバイトなんて遠回しをせずに」

マヤ「シンジくんは知ってて私の家に?」

シンジ「いえ、知りませんでした。もしかしたら、そうなんじゃないかって思ったんです」

マヤ「……」

シンジ「僕がここから出ていけばいいんです。それすれば、以前と変わらず、は……無理かもしれないけど、新しいことに巻き込まれないで済みます。僕と、接点がなくなるので」

マヤ「だめ、それはだめよ。シンジくんがここにいるのことが私の生命線になる」

シンジ「でも」

マヤ「よく考えて。あなたが出て行けば、たしかに、これから先は巻き込まれないかもしれない。でも、私は用済みにならない? 秘密を知ってしまってるのよ」

シンジ「……」

マヤ「先輩は、保証してくれるって言ってたけど、それもあなたの受け入れ先という前提があってなのかもしれない。そうじゃないと断定できるまでここにいて」

シンジ「わかり、ました」

マヤ「音声が筒抜けかもしれないから、こわくて下手なこと言えないけど、あなたのせいじゃないって。一人だけじゃどうしようもないってわかってる」

シンジ「……」

マヤ「ほんとに、どうして……」グスッ

シンジ「……」

マヤ「私は一人で考えたいから。おやすみ、シンジくん」

シンジ「おやすみなさい」

【ネルフ本部 執務室】

リツコ「諜報部への手引きの件。寛大な計らいに感謝いたします」

ユイ「……」

リツコ「マヤが例の件を漏らした場合は、私を如何様にでもなさってくださって結構です」

ユイ「やはり、情をとるの?」

リツコ「……」

ユイ「とるにたらない職員でしょう。よく面倒を見ていた子で思い入れが強いのね。その有様だと、やはり葛城一尉に――」

リツコ「いいえ、今後、あの子は役に立つからです」

ユイ「と、いうと?」

リツコ「決して軽率に動く子なわけありませんもの。実務能力は私に及ばず、まだひよこですが、だからこそ操作しやすい」

ユイ「……」

リツコ「事情を知っていても尚、抑えこむことが可能であれば……これ以上ない都合の良い駒になります」

ユイ「伊吹二尉の言動を制御できると判断しているのね?」

リツコ「はい」

ユイ「よろしい。では、通達通り伊吹二尉は現状維持のまま技術局一課への配属を認可します」

リツコ「……」

ユイ「ふふっ、これであなたは私にひとつ借りができたわね」

リツコ「この処置は利益になる決定で――」

ユイ「いかに面倒を省くかが重要。あなたは直属の上司であるから、本人が持つ癖をよく把握しているでしょうね」

リツコ「……」

ユイ「しかし、仮にここで私が首を横にふっていたら、あなたはどう思うのかしら」

リツコ「……」

ユイ「血も涙もない外道かしら。それとも、逆張りをして尊敬する? ま、どちらでもかまわないけど。一度、私は彼女を排除すると決めたのよ。結論を覆したのは、伊吹二尉ではない。あなたへの譲歩」

リツコ「はい。感謝しております」

ユイ「これであなたにも楔がついてしまったわね。もし、私を裏切るようなマネをすれば、伊吹二尉もただでは済まない」

リツコ「……」ギリッ

ユイ「いい取り引きだった。用件は済んだわ、下がっていいわよ」

【数十分後 同執務室】

冬月「いささか締めつけすぎではないか」

ユイ「充分に譲歩していますよ。交渉の余地を与え目的を達成させてあげたのですから」

冬月「赤木博士は碇の時同様、キミの側近という立場だろう。部下を大切に扱えば今後の為になる」

ユイ「甘くしすぎてしまえば増長を招く結果になりかねません。赤木博士が必要ならばこそ、時には厳しくですわ。飼い主は手綱をしっかりと握る義務がありますので」

冬月「……」

ユイ「中でも、弱みを掴むのはもっとも有効な手段であると言えるでしょう。伊吹二尉をかばったのは、赤木博士を操作する上でおつりがくるほどです」

冬月「あやつも女だからな。男を失って、なにをしでかすかわからないという危険はあった」

ユイ「人は、立場によって、守るものがあると弱くなります。本当にこわいのは、なにもない人間なんです。予測が難しい」

冬月「今後は、サードチルドレンと赤木博士に伊吹二尉を、いうなれば“人質”として実質的な機能させるわけか」

ユイ「シンジは、甘いですから。セカンドチルドレンを同じダシにして同様に楔を打ち込めるでしょう。……しかし、赤木博士に該当するのは、葛城一尉か伊吹二尉しかいません。それがよくわかりました」

冬月「起爆放置を彼女に持たせたのはそういう理由だったのかね」

ユイ「そうですよ。爆弾を仕掛け、彼女に起爆スイッチを持たせる。そうすることで、葛城一尉を“いつでも殺してやるぞ”、と脅しをかけていたんです」

冬月「……」

ユイ「観察している限りだと、あまり効果的ではないのかと思いはじめていましたが……やはり、私の読みは正しかった」

冬月「……」

ユイ「――土壇場になれば、赤木博士は情に流されます。ふふっ、うふふっ、愚かな」

【ネルフ本部 MAGI配線室】

リツコ「記録を残し続けるのは、もうすぐ終わりになるかもしれないわね」カチ

リツコ(ボイスレコーダー)『――碇ユイ博士の挑発に乗ってしまった。やりとりをしていて気がついた。ミサトの自宅に仕掛けられた起爆装置は、ミサトを危険視しているのではなく、私に無言の圧をかけていたのだろう』

リツコ「……」カチ

リツコ「母さん、どうしたらいいのかしら」スッ

ミサト『そ、ミサト。葛城ミサト。よろしくね」

リツコ「母さんに友達ができたって言ったら、喜んでくれたわね……」

ナオコ(幻聴)『リッちゃん。あなたは自分の幸せを逃してしまわないか心配です』

リツコ「バカ。母さんだって、不幸なまま死んでしまったじゃない」

ナオコ(幻聴)『私はいいのよ。女としての幸せだったんだから』

リツコ「科学者としての自分、女としての自分。男の為にすべてを投げ出して。それが、女の幸せ?」

ナオコ(幻聴)『研究だけの人生はつまらないわ。飽きてしまう。燻るジレンマが、あなたもわかるでしょう?』

リツコ「ふぅ……気持ちはわからなくもないけど。結局、私も母さんと同じ道を歩んでいたんだもの」

ナオコ(幻聴)『でも、リッちゃんは生きてる』

リツコ「ただ時間を無為に浪費してるだけよ。なんの為に生きてるか――」

ナオコ(幻聴)『苦しいのね、生きづらいでしょう』

リツコ「ふふ、とっても。でも、まだ死ぬわけにはいかない」

【翌日 第三新東京都市第壱中学校 昼休み】

シンジ「ふぅ」

アスカ「はぁ」

トウジ「なんや、あの二人。揃って一日中ため息ばっかついとるで」

ケンスケ「こないだのユニゾンの続きなんじゃないか?」

トウジ「今さらか?」

ケンスケ「さぁね、僕が知るわけないよ」

マナ「おはよう」

トウジ「おう、おはよーさん」

ケンスケ「どうしたんだ、荷物かかえて」

マナ「これ? 端末が届いたから、事務室に取りにいってたの」

トウジ「ああ、そういや今日か」

ケンスケ「トウジの妹さんの手術も今日じゃなかったか?」

トウジ「アホ。学校の備品のついでみたいに言うな」

ケンスケ「あれ? 行かなくていいのか?」

トウジ「そのつもりやったんやけどなぁ。連絡がきた頃には終わっとった」

ケンスケ「へ?」

トウジ「なんでも、今日の朝イチでやってくれたらしい。サクラの前に手術を予定しとった患者さんが昨日の夜遅く、急遽取りやめになったそうや」

ケンスケ「そんなことあるんだな。何時からやってたんだ?」

トウジ「昨日の深夜に点滴を開始して、朝の七時にはもう手術台の上に乗っ取ったって聞いとるで」

ケンスケ「だったら、シンジに教えてやれよ」

マナ「ねぇ、鈴原くんの妹さん怪我かなにかしてたの?」

トウジ「ん? ああ、そうや、霧島は知らんかったな。ちと、ひどい怪我でな」

ケンスケ「碇が怪我させたんだよ」

トウジ「ちっ、おい、ケンスケ」

マナ「シンジくんが?」

ケンスケ「隠したってなんになるんだよ。ああ、そうさ。初陣の時にね」

マナ「そうなんだ……」

トウジ「ワシはもうなんとも思っとらん。最初は、殴ったりもしたが、それでもう帳消しや!」

ケンスケ「よく言うよ。その後にシンジに転院を頼んでたじゃないか。あいつだからよかったものの」

マナ「……?」

トウジ「そ、それで帳消しや!」

マナ「ねぇ、経緯を詳しく聞かせてくれない?」

>>348間違ったんでレスしなおし

【翌日 第三新東京都市第壱中学校 昼休み】

シンジ「ふぅ」

アスカ「はぁ」

トウジ「なんや、あの二人。揃って一日中ため息ばっかついとるで」

ケンスケ「こないだのユニゾンの続きなんじゃないか?」

トウジ「今さらか?」

ケンスケ「さぁね、僕が知るわけないよ」

マナ「よいしょっと」ゴト

ケンスケ「どうしたんだ、重そうに荷物かかえて」

マナ「これ? 端末が届いたから、事務室に取りにいってたの」

トウジ「ああ、そういや今日か」

ケンスケ「トウジの妹さんの手術も今日じゃなかったか?」

トウジ「アホ。学校の備品のついでみたいに言うな」

ケンスケ「あれ? 行かなくていいのか?」

トウジ「そのつもりやったんやけどなぁ。連絡がきた頃には終わっとった」

ケンスケ「へ?」

トウジ「なんでも、今日の朝イチでやってくれたらしい。サクラの前に手術を予定しとった患者さんが昨日の夜遅く、急遽取りやめになったそうや」

ケンスケ「そんなことあるんだな。何時からやってたんだ?」

トウジ「昨日の深夜に点滴を開始して、朝の七時にはもう手術台の上に乗っ取ったって聞いとるで」

ケンスケ「だったら、シンジに教えてやれよ」

マナ「ねぇ、鈴原くんの妹さん怪我かなにかしてたの?」

トウジ「ん? ああ、そうや、霧島は知らんかったな。ちと、ひどい怪我でな」

ケンスケ「碇が怪我させたんだよ」

トウジ「ちっ、おい、ケンスケ」

マナ「シンジくんが?」

ケンスケ「隠したってなんになるんだよ。ああ、そうさ。初陣の時にね」

マナ「そうなんだ……」

トウジ「ワシはもうなんとも思っとらん。最初は、殴ったりもしたが、それでもう帳消しや!」

ケンスケ「よく言うよ。その後シンジに転院を頼んでたじゃないか。あいつだからよかったものの」

マナ「……?」

トウジ「そ、それで帳消しや!」

マナ「ねぇ、経緯を詳しく聞かせてくれない?」

マナ「――ふぅん。男の子の友情って感じ?」

ケンスケ「そんなにキレイなもんじゃないさ。トウジが頑固なだけだよ」

トウジ「ぬぐっ!」

ケンスケ「そりゃぁ、怪我させちゃったのは碇にも責任がある。乗ってる理由が望んでも望んでなくてもね。だけど、トウジはその後のやり方がまずい。それはそれ、これはこれって感じ」

マナ「お互いに許してるんだね。いい関係」

トウジ「ふんっ!」

ケンスケ「まぁ、こいつは元々こんなやつだからねぇ」

マナ「なんだか、友達のこと思い出しちゃった」

ケンスケ「前の学校かぁ?」

マナ「うん、子供で、いつも張り合って喧嘩して。いざと言う時助け合って……」

ケンスケ「碇は消極的だからなぁ。わざとぶつからないようにしてる」

トウジ「せやな。たまにこっちから行動おこさへんと。あんな生き方して辛くないんかのぉ」

ケンスケ「本人に自覚ないんじゃない? 自然だから。我慢するのが」

マナ「どうして、シンジくんは我慢するようになったのかな?」

ケンスケ「僕らも碇が転校してくる前の話はほとんど知らないよ。聞きもしないし」

トウジ「興味ないしな」

マナ「……」

ケンスケ「碇のことをどうしてそんなに知りたがるんだ? やっぱり、エヴァの操縦してるから?」

マナ「あ、う、うん……かっこいいなぁって思う」

トウジ「女に人気でるもんかのぅ」

ケンスケ「碇をもっと知りたいんだったら、エヴァパイロットだからって言わない方がいいよ」

マナ「……? どうして?」

ケンスケ「あいつ、嫌がって乗ってるんだよねぇ」

マナ「……」

トウジ「しかたなしやろ。誰でも乗れるわけちゃうからな」

ケンスケ「くぅ~っ! 運命は不平等だよ! 僕なら喜んで乗るってのに!」

シンジ「(やっぱり、こっそり調べるよりも一度母さんと話しなくちゃだめだな)」

マナ「ねっ!」ドン

シンジ「いつっ⁉︎」

マナ「あれ? そんなに強くしたつもりないんだけど」

シンジ「い、いや。昨日ちょっと打っちゃってて」

マナ「そうなんだ? ごめんね、痛かった?」

シンジ「どうしたの? さっきまでトウジたちと話してなかった?」

マナ「……見てたんだ?」

シンジ「まあ、なんとなく」

マナ「本当に?」

シンジ「やだな。それ以外になにがあるっていうのさ」

マナ「ぶっぶー。そういう言い方をしちゃいけませ~ん」

シンジ「……?」

マナ「黙ってジッと見られてるのイヤだけど、見てた?って聞かれた時は少しって答えるのが正解」

シンジ「なんで?」

マナ「全く興味ないって言われてるようでイヤだもの。女の子として見てほしいの」

シンジ「はぁ」

マナ「私って、そんなに魅力ない?」

シンジ「いや、どうかな。そんなことないと思うよ」

マナ「シンジくんってさ、もしかして……ホモの人?」

シンジ「なっ⁉︎ ち、違うよ⁉︎」

マナ「あはは、ムキになってる。かわいい」

シンジ「か、からかわないでよ! もう!」

マナ「だって、シンジくんの浮いた噂聞かないんだもん」

シンジ「そんな……」

マナ「エヴァパイロットってモテるでしょう? 彼女、作らないの?」

シンジ「偏見だよ、そんなの……」

マナ「そうかなぁ。シンジくんがその気になればすぐにできると思うけど。クラスメイトってさ、例えばギターができる、ダンスが上手とか。そんな些細なモノで一気に目立ったりするよね?」

シンジ「うん、まぁ……」

マナ「シンジくんはパイロットなんでしょ? それもみんなを守ってる!」

シンジ「僕は、別に」

マナ「(この反応は。相田くんの言ってたことは本当なのね)」

シンジ「それに、恋愛なんてよくわからないし」

マナ「異性として見れない?」

シンジ「そうじゃないけど……好きってなんだろうって」

マナ「ライクじゃないラヴ。他人を好きになったこと、ないんだ?」

シンジ「そうかも、しれない」

マナ「じゃあ、真っ白だね!」

シンジ「なにが?」

マナ「なにも色がついてない紙と一緒。知ってる? 男の子って、初恋の子は生涯忘れないっていうよ?」

シンジ「あぁ、まぁ、テレビで見たことあるような」

アスカ「ちょっと、マナ」ピタ

マナ「っと、どうしたの?」

アスカ「……」

マナ「アスカ?」

アスカ「(こいつがスパイねぇ)」

シンジ「……?」

アスカ「シンジ、少し話があるんだけど」

シンジ「あぁ、うん。わかった」

マナ「(ヤキモチ? まさかね……)」

【第壱中学校 体育館裏】

シンジ「……? ねぇ、アスカ。どうしてこんなところへ」

マナ「(ふぅ……やけに警戒してるな。重要な情報あるのかも)」

アスカ「バカねえ。日本じゃ壁に耳あり障子に目ありって言うでしょ。いつどこで誰が聞いてるかわからないんだから、用心するにこしたことはないわ」キョロキョロ

マナ「(ふふっ、あるのは木の上なんだけどね)」

シンジ「なにかあったの?」

アスカ「あんたホントに聞いてないのぉ?」

シンジ「なにを?」キョトン

アスカ「くっ、なぜだか拍子抜けしてムカつく。平和ボケもたいがいにしなさいっつってんのよ!」バシ

シンジ「いたっ!」

アスカ「……? なんか大袈裟ね」

シンジ「いっつつ。なんなんだよ、もう。言ってくれなくちゃわかるわけないじゃないか」

アスカ「あの霧島マナって子に気をつけなさい」

マナ「(……!)」

アスカ「これは忠告。あんた抜けてるから、色仕掛けされたらデレデレ鼻の下伸ばしちゃいそうだし」

シンジ「はぁ、どうして?」

アスカ「スパイらしいわ。人は見かけによらないっていうけど」

マナ「(うそっ⁉︎ もう身元が割れてるの⁉︎)」

シンジ「マナが? どこの?」

アスカ「戦自」

マナ「(まずい……どうしよう……アスカはどこから? ううん、もしかしたら校内に既に……まだ死ぬわけにはいかないのに……!)」

シンジ「そうなんだ」

アスカ「はぁ? 感想はそれだけ?」

シンジ「うん。アスカは誰から聞いたの?」

マナ「(……!)」ゴクリ

アスカ「あんたのママ。なに考えてんのかしらね、あの人」

シンジ「……」

アスカ「スパイがいるのがわかってるなら捕まえればいいじゃない? でも、そうはしてないみたいだし」

マナ「(母親。……データによると碇ユイ! ネルフの新指令……! しまった! なにか落ち度があったの⁉︎)」

シンジ「母さんは、きっとマナを利用できないか考えてるんじゃないかと思うよ」

アスカ「あいつを?」

マナ「(私を?)」

シンジ「マナを守らなくちゃ」

アスカ「ばっ、バカァ⁉︎ あんたなに考えてんの⁉︎」

マナ「(へ?)」

シンジ「マナはどういう目的でスパイをやってるんだろう。母さんに利用されないようにしないと……」

アスカ「あ、あんたねぇ! 協力体制だとしても、今回の懸案はそういうモノじゃないのよ⁉︎ 戦自はネルフを調べてるんだから!」

シンジ「うん、だから、マナはどういう理由でここに転校してきたのかな」

アスカ「はぁ?」

マナ「(……そう、シンジくんも私を利用するつもり……?)」

シンジ「なにか事情があると思うんだ。僕たちと同い年でスパイだなんて、普通じゃないよ」

アスカ「そんなのどうでもいいでしょ! あいつは敵……かはまだわからないけど、限りなく敵に近いやつなんだから!」

シンジ「うん、そうかもしれないね」ポリポリ

アスカ「ようやくその足りない頭で事態が――」

シンジ「だけど、決めつけるにはまだはやいよ」

アスカ「……!」

マナ「(も、もしかして、シンジくんってすごくお人好し……?)」

シンジ「アスカ。アスカは、僕がどうしてマナを守らなきゃって言ったかわかる?」

アスカ「知るわけないじゃない! あんたのそのトチ狂った発想なんて知りたくも――」

シンジ「母さんが、こわいんだ」

アスカ「……?」

シンジ「母さん。ほとんど知らない人。顔さえ覚えてなかった。でも、そんな人がある日突然母親だと名乗りでてきたんだ」

アスカ「……」

シンジ「親しげな声で僕の名前を呼ぶ。僕は誰かわからなかったのに。懐かしさはどこかで感じていたよ」

アスカ「それとは話が別でしょ」ボソ

シンジ「同じなんだ。僕の中では。父さんと違う種類のこわさを感じてる。やってきたことを見ても、僕は、こわくてたまらない」

アスカ「はぁ、はいはい。百歩譲って関係あるってことにしといてあげる。で? だから、マナを守るの? あたしたち、ネルフ全体に害をなす存在かもしれないのに?」ビシ

マナ「(……)」

シンジ「うん。まずは話を聞いてみないと。どうやって聞こうかな……」

アスカ「ちっ、司令の判断に納得したわ。あんたに話したってろくなことにならないってことがね」

シンジ「マナってスパイだよね? はおかしいだろうし」ブツブツ

アスカ「あんたの今の言葉、報告しとくから」

シンジ「誰に?」キョトン

アスカ「決まってるでしょ!!」

シンジ「あぁ、母さんか。うん、いいよ」

アスカ「な、なぁっ⁉︎」

シンジ「話はそれだけ?」

アスカ「それだけって……」

マナ「(あは、あははっ。変な子、だめ、声我慢しないと)」

アスカ「だぁ、怒る気も失せてきた。あんたってたまに大物なのか本気のバカなのか判断が難しくなんのね」

アスカ「なんか変に警戒するのがアホらしくなっちゃった。教室に戻るわよ」

シンジ「待って」ガシ

アスカ「なによ。気安く触らないでくれない?」

シンジ「僕が気になってるのはアスカなんだ」

アスカ「うげ、気持ち悪う」

シンジ「(母さんは、どうしてアスカに話したんだろう)」

マナ「……」

アスカ「はぁ、まぁでも溢れ出る魅力にようやく気がついたってところかしらねぇ」

シンジ「(母さんに確認しなくちゃいけないことがまた増えちゃったな……)」

アスカ「お金はとるけど、デートしてあげないことはないわよ?」

シンジ「うーん」

アスカ「煮え切らないわねぇ、冗談にしても男ならそこは女の子を立てるべきでしょ」

シンジ「……? あ、あぁ、うん、そうだね」

アスカ「っとに、あんたは抜けてるのよねぇ」

シンジ「はは」

アスカ「本気でなおそうとしない。すぐに限界を決めて諦める」

シンジ「うん。それはそうだね」

アスカ「身分ってもんをわきまえなさい? デートなんかあと十年は早いんだから。べーっだ」

シンジ「デート……?」

アスカ「はっはーん、とんだ笑いもんだわ。断られたからってなかったことにするとか。ダサっ」

シンジ「(なに言ってるんだろう……?)」

アスカ「なによ? そんなにしたかったの?」

シンジ「したい?」

アスカ「またすぐ誤魔化そうとする。ストーカーになられたらイヤだし。……一回だけなら、いいわよ」

シンジ「えっ。あの……」

マナ「(ぷっ、くっくっ、声でちゃいそう)」

【再び教室 放課後】

マナ「(私の正体がバレてるなら、ろくな情報引き出せそうにないな……それに戦自が事態を把握すれば……ここで終わりだなんて)」

ケンスケ「おい、霧島」

マナ「(それにしても、どうして……? どこから突き止めたのかしら。ううん、今はそれよりも今後の身の振り方が最優先。いっそ、ムサシとケイタに全てを打ち明けて……)」

ケンスケ「おいってば」

マナ「(だめ……! 無駄だわ。あの二人は戦自にマインドコントロールされていて私の意見なんか聞いてくれない。救うには、どうしたら。……ちがう。私は、自分の身でさえ守れないのに……)」

ケンスケ「なぁ」ポン

マナ「なによっ⁉︎」バンッ

ケンスケ「お、おう」

マナ「……あ……ど、どうしたの?」

ケンスケ「機嫌でも悪いのか?」

マナ「ご、ごめんね。ちょっと、嫌なこと思い出してて。なにか用?」

ケンスケ「ファンからの手紙を預かってるよ」

マナ「……?」

ケンスケ「ラブレターってやつ。転校してきてまだ数日しかたってないのになぁ」

マナ「あ……」

ケンスケ「渡しておいてくれって頼まれたからさ。とにかく、渡したぞ」カサ

マナ「(こんなの、受け取れるわけないじゃない)」グシャ

ケンスケ「お、おい。いきなり握りつぶすのは」

マナ「ありがとう。言っておいてくれない?」

ケンスケ「……?」

マナ「手紙で想いを伝える男の子なんて嫌いですって」

ケンスケ「辛辣だねぇ。日時と場所が書いてあるだけじゃないか?」

マナ「それも含めて、ね?」

ケンスケ「……はぁ、りょーかい」

マナ「あっ、ちょっと待って!」

ケンスケ「あん? 気が変わったのか?」

マナ「シンジくんは?」

ケンスケ「碇なら下駄箱じゃないか?」

マナ「ありがとっ!」ポイッ タタタッ

ケンスケ「あーあ。こんなゴミみたいに捨てられちゃって。差し出し人は、碇からなんだけどなぁ」カサ

【下駄箱】

シンジ「(マナ、来てくれるかな。待ち合わせ場所まで急がなくちゃ――)」トントン

マナ「シンジくんっ!」

シンジ「マナ……?」

マナ「今帰り?」

シンジ「うん、そう、だけど……」

マナ「(今すべきことは、保身……! ネルフがいつどういう風に動くのかわからない、接触を待っていてはだめ。昼休みの話を聞く限り、シンジくんは私に敵対心を持ってない、はず……)」

シンジ「あの、手紙、見てくれたの?」

マナ「手紙……?」

シンジ「ええと、ケンスケに渡してもらうように頼んだんだけど」

マナ「――えぇっ⁉︎ さっきの手紙ってシンジくんからっ⁉︎」

シンジ「呼んでないの?」

マナ「あっ、えっと! も、もちろん読んだよ! 嬉しくてすぐに飛び出してきちゃった」

シンジ「嬉しい? ……手紙には、場所と時間しか」

ケンスケ「お、いたいた」

マナ「あ、相田くんっ⁉︎」

ケンスケ「やっぱりまだ下駄箱にいたんだな」

シンジ「うん」

マナ「どうして相手を言わないのよっ⁉︎」

ケンスケ「ファンからだって言ったろ?」

マナ「そんな、シンジくんなんて思うはず――」

シンジ「二人とも、どうしたの?」

ケンスケ「ん? いやぁ、なんにも」

シンジ「僕は先に待ち合わせ場所で待ってるから」

マナ「それなら、一緒に……!」

シンジ「別々に学校を出た方がいいよ」

マナ「(やっぱり、シンジくんはあのことで……!)」

ケンスケ「……いいのか?」

シンジ「うん、手紙見たって言ってくれてるから」

ケンスケ「ふぅ~ん?」チラ

マナ「……!」

ケンスケ「それなら、なにも心配ないな」

シンジ「それじゃ、ケンスケまた明日学校で。頼みごと聞いてくれてありがとう」

ケンスケ「今度! ネルフに連れてってくれるって約束! 忘れんなよ!」

シンジ「わかってる」スタスタ

マナ「手紙」スッ

ケンスケ「なんのことだ?」

マナ「……」ヒクヒク

ケンスケ「あ、しまった! おーい、碇! 霧島からのメッセージが」

マナ「ちょっと!」ガバッ

ケンスケ「ぬぐっ! ふむむっ!」

マナ「……さっきのは、訂正する。だから、お願い。手紙を」

ケンスケ「もご?」

マナ「どこ? 手紙」スッ

ケンスケ「ほしいのか? これが」

マナ「相田くん?」

ケンスケ「霧島、うまい話があるんだけど」

マナ「……?」

ケンスケ「実はさ。霧島の写真をほしいって連中がけっこーいてね」

マナ「……」

ケンスケ「いつもは隠し撮りすんだけど、霧島はなんかガードが堅いっていうか。うまく撮れないんだよな。もしかして、気づいてた?」

マナ「……最低」

ケンスケ「いやいや! そんな! 違うよ! これは霧島に正式に依頼して取り分の半分を!」

マナ「写真のことならとっくに気がついてる。相田くん、転校してきた初日から私を撮ろうとしてたでしょ?」

ケンスケ「ああ、やっぱり――」

マナ「でも、それって盗撮だよ? 良くないことをしてるって自覚ないの?」

ケンスケ「うっ、そ、それは……」

マナ「見て見ぬふりをして黙ってたのは、悪い人じゃないんだって信じてたから。それなのに、手紙をネタに脅迫みたいなマネするなんて」

ケンスケ「そんなつもりは……!」

マナ「同じことだよ! 私が断りにくい状況で話を持ち出してきたじゃない!」

ケンスケ「あ……いや、僕は、霧島に、損はない話だって……」

マナ「手紙、返して。じゃないと大声で叫ぶわよ」

ケンスケ「え?」

マナ「下校中だし、まだ生徒はたくさんここを通る。ほら」

男子生徒A「お、霧島だ。かわいいなぁ、いつ見ても。相田となにしてんだ?」チラ

ケンスケ「うっ……」

マナ「立場が逆転しちゃったね」

ケンスケ「す、すまない、霧島。僕、どうかしてて」スッ

マナ「いいの。でも、これからはこんなマネしないでくれるかな?」

ケンスケ「あ、あぁ。気をつけるよ」

マナ「(余計な手間……それよりも、内容は……)」カサカサ

ケンスケ「あのさ、霧島。写真なんだけど――」

マナ「それじゃ! また明日!」トントン タタタッ

【第三新東京都市 工業団地マンション】

シンジ「……」

マナ「はぁっ、はぁ、シンジくん、待った?」

シンジ「あ、よかった。越してきたばかりだから道がわからないのかと心配してた」

マナ「ごめんね、バスを一本乗り遅れちゃって」

シンジ「気にしなくていいよ。それより、話があるんだけど」

マナ「ふぅ、ふぅ……うん、実は、私も」

シンジ「先に、いいよ」

マナ「シンジくん、私の正体に気がついたんでしょ?」

シンジ「どうして、それを?」

マナ「……アスカと話してるの聞いてたんだ。ごめんね、盗み聞きするような真似して」

シンジ「昼休みの? あの場にいたんだ?」

マナ「うん、会話が聞こえるように。そばに木があったでしょ? 登って聞いてたの」

シンジ「わぁ、すごいや。よく登れたね」

マナ「太い木だったから。掴みやすかったし、ってそうじゃなくて、私が、戦自から出向してるってこと。知ったんだよね?」

シンジ「うん」

マナ「ごめんなさい!」ペコッ

シンジ「……?」

マナ「任務で仕方なくて! こうするしかなかったの!」

シンジ「謝らなくていいよ。なにかされたわけじゃないし」

マナ「どうして……? バレなかったからって罪は軽くならない。もし、バレてなかったら、そのままシンジくんや、アスカたちにひどいことしてたかもしれないんだよ?」

シンジ「でも、行動を起こす前にこうなったじゃないか」

マナ「……」

シンジ「“未遂”だった。あるいは、“事前に防ぐことができた”ってことじゃないかな。僕はなにもしてなくて知らされただけ。マナのやろうとしていた目的に関与すらしてないよ。だって、これからやろうとする所だったはずだから。……違う?」

マナ「そう、だけど」

シンジ「うん。その上で聞きたいんだ。マナはどういう目的で、僕やアスカや綾波、ネルフに近づこうと思ったの?」

マナ「なぜ、知りたいの?」

シンジ「もしかしたら、協力できるかもしれない。話を聞くまではわからないけど」

マナ「……どうして、シンジくんは?」

シンジ「母さんがこわいから」

マナ「……?」

シンジ「このまま流れに身を任せていると、母さんに全て壊されてしまいそうな気がするんだ。知り合い、大切な友達、僕の日常。不思議、なんだ。エヴァに乗って戦う日々がたまらなくこわくて嫌だったのに、それ以上にこわいと思う存在ができたら、なんともないと思う」

マナ「勘違いだったらごめんなさい。もしかして、シンジくんは、ネルフに……うぅん、お母様と敵対しようとしてるの?」

シンジ「それは違うよ、僕は守りたいだけ。僕の大切なものを壊そうとするから」

マナ「……」

シンジ「マナの不安は、僕に話たところで庇護されるか。……母さんに殺されないかって思ってるはず。情報の出所は、僕じゃなくネルフだからね」

マナ「(この子、普通じゃない……。頭が良い)」

シンジ「口約束で申し訳ないけど、ここでの話は誰にも言わないと密約するよ」

マナ「(違う、そんなはずない。資料によると普通の中学生だって……。シンジくんも考えなきゃいけないほど追い詰められてるんだわ。そして、自分の感覚を研ぎ澄ましてる)」ゴクリ

シンジ「どう?」

マナ「取り引きってこと?」

シンジ「うん。お互い、有益になるのであれば協力できると思う」

マナ「(どの道、ここは――シンジくんに賭けてみるしか……!)」

シンジ「――それじゃぁマナは友達の為に?」

マナ「うん。二人ともちょっと血の気が多くて、どうしようもないんだけど、憎めないの」

シンジ「……」

マナ「シンジくんたちに近づいたのは、私に命令が下ったから。“碇一族に関する情報を引き出せ”、“セカンドチルドレンとファーストチルドレンに近づいてほしい”って……」

シンジ「……」

マナ「戦自は、ネルフにつけいる隙がほしいみたい。ないなら、作るつもりなんだと思う。急な人事異動に目星をつけて」

シンジ「マナの任務が終わったら、友達は?」

マナ「前線から遠い情報部に異動してくれるって約束してくれた」

シンジ「(マヤさんみたいなポジションてことか)」

マナ「全部、自分の為。これが、私がここに転校してきた理由……」

シンジ「ありがとう」

マナ「へ?」

シンジ「話してくれて」

マナ「シンジくん、本当に優しいんだね。でも、これは私の為に話してるの。今言ったことだって、作り話かもしれないよ?」

シンジ「信じるよ」

マナ「あ……」

シンジ「ウソだとしても、僕はマナを信じる」

マナ「……」グスッ

シンジ「情報を集めるまでに期限はあるの?」

マナ「……う、うぅん、明確な期限は。進展がなければプレッシャーをかけてくると思うけど。まだ始まって間もないし」ゴシゴシ

シンジ「……」

マナ「シンジくんは、なにかプランは?」

シンジ「まず、マナの安全を確保しなくちゃいけない。マナは戦自に属していて、任務を引き受けた時点で正規の手段を使い抜けることは難しい」

マナ「うん」

シンジ「友達を救いたいんだよね? だったら、逃げられない。戦自を欺く必要がある。まだマナの正体はバレてないって、引き続き任務を続けてる体裁を守らなきゃならない」

マナ「うん」

シンジ「問題は、母さんがいつ仕掛けてくるのか。マナの情報を戦自に漏らさない保証と、マナの身の安全の確保」

マナ「(す、すごい。一般人が、よく、ここまで……)」

シンジ「両親や僕の情報については、定期的に教えてあげるよ」

マナ「ほ、本当っ⁉︎」

シンジ「ただし、戦自に怪しまれない程度に。一度に話してほしいんだろうけど、必要な経緯がないと話に無理がでてしまうだろうから」

マナ「それは、そうかも。間違ってないか情報を精査するには時間がかかる。過程で私の正体がバレてるって疑いを持たれたら……」

シンジ「うぅ~ん」

マナ「……」

シンジ「そうなると、やっぱり、ネルフ側の対応次第だね」

マナ「うん……」

シンジ「これから、母さんと話てみようと思う。……マナのことだけじゃないよ。色々、確認しなくちゃいけないから」

マナ「……」

シンジ「僕に任せる?」

マナ「……!」

シンジ「マナの身の安全、友達のこと。マナがこのままだと、友達も道連れ、だよね」

マナ「いいわ、シンジくんに賭けてみる」

シンジ「……」

マナ「どうせここで終わりだったのかもしれない。どうなろうと恨んだりしない」

シンジ「よく考えなくていいの?」

マナ「時間なんてないもの。こうして話してる瞬間にもネルフか戦自が突入してくるかもしれない」

シンジ「……」

マナ「――私と、ムサシとケイタの運命を、あなたに託します」

【ネルフ本部 司令室】

冬月「なに? ユイくんに会いたい?」

シンジ「はい。今日はシンクロテストがないので、少し話がしたくて」

冬月「キミが自分からとはめずらしいな」

シンジ「母ですし、なにも不思議なことは」

冬月「そうではない。表立って要求をしてくることがだ。父親の時は言った試しがなかったろう」

シンジ「何度か試しましたよ。電話をかけてみたり。忙しいってすぐ切られましたけど」

冬月「ふっ、そうだったのか。碇がやりそうな応対だな」

シンジ「母は忙しいでしょうか?」

冬月「そうだな、いまなら多少の時間はあろう。確認をとるから少しそこでまて」カチャ

シンジ「ありがとうございます」

冬月「――……もしもし、私だ。今、司令はなにをしている?」

シンジ「……」

冬月「ああ、そうだったか。……うん、十分後にサードチルドレンを連れて執務室に向かうと言伝を頼む」

シンジ「(母さん、まともに話するのは僕が麻袋を被せられていた時以来になるのかな……)」

冬月「ではな」カチャ

シンジ「……」

冬月「この後、明日の県議会に出席する為、移動する予定がある。それまでの間、時間を作るそうだ」

シンジ「はい」

冬月「では、降りるとするか」

【ネルフ本部 執務室】

冬月「進みたまえ」

シンジ「失礼します」

ユイ「……」スッ

冬月「(まともに話をしようとしている姿を見るのは、これが初めてか。感動の対面、というわけにもいくまいな)」

シンジ「忙しいのにわざわざ時間を作ってくれてありがとう」

ユイ「気にすることないわ。手の具合はどう? 心配してたのよ」

シンジ「うん、悪くないよ。母さんがコレを僕の手にいれるように指示したの?」

ユイ「ど真ん中どストレートできたわね。駆け引きを楽しむ余裕も必要よ?」

シンジ「どっちみち、僕は母さんに敵うと思ってないし。負けのわかってる勝負なんてつまらないだけだよ」

ユイ「よろしい。実に理にかなった行動です。学習したわね。答えない場合まで想定してる?」

シンジ「選ぶのは母さんだ。答えないという選択だってできる」

ユイ「成長したわ。では、“答える必要はない”と言ったら?」

シンジ「僕は、この手を切り落とす」

冬月「……!」ギョ

ユイ「本気?」

シンジ「試してみる? ほんの二秒あれば手首から先を切り落としてみせるよ……!」

ユイ「交渉テーブルに自らを乗せてきたのね。ふぅん……悪くない。けど、その前にシンジを私たちが取り押さえたら?」

シンジ「もちろん、考えたよ。だから、こうしてすぐ起こせるようにナイフを用意してきた」スッ

冬月「こやつ、正気か?」

ユイ「そんなバタフライナイフで素人が切れるとでも? でも、シンジが怒るのは無理ないわね、あなたの望まない形になっているでしょうから。……それを指示したのは私」

シンジ「……」

ユイ「私からも質問が一点」

シンジ「なに?」

ユイ「覚えてる? 昏睡状態の出来事を」

シンジ「覚えてないって先に報告してあるはず。どうして、これを? 母さんはなにをしようとしてるんだよ」

ユイ「知ってどうするつもり?」

シンジ「僕に関係あるんだろっ!! なにも知らされてないなんておかしいじゃないかっ!!」

ユイ「……」

シンジ「僕には知る権利がある! そうじゃないの⁉︎」

ユイ「あなたは、理解しようとするの? それが、望まない結果になっても、他人を不幸にさせてしまっても受け入れられるほど強くなった?」

シンジ「やらなくて後悔するよりはいいっ!」

冬月「……」

シンジ「なにもかも勝手じゃないか!! マヤさんにしたのも母さんの仕業なんじゃないの⁉︎ どうしてそんなことするんだよっ⁉︎」

ユイ「……あなたの為なのよ……」

シンジ「僕は望んでないよっ!!」

ユイ「シンジ。この世界はね、近い将来、いずれ滅んでしまうの。使徒が来る来ないに関わらず、私たち人類は人口、民族、紛争、食糧危機、未知の病原菌。様々な現実に直面している」

シンジ「……」

ユイ「個人の幸せにかまけている問題ではなくなってしまっているのよ。人類が生き延びる術、全体なの。私たちはセカイを、新しくゼロから仕切りなおさなければならない。それしか方法がないのよ……!」

シンジ「違う、そんな理由じゃないだろ。母さんが望んでるのは」

ユイ「……!」

シンジ「もっともらしいこと言って。そういえば僕が納得するとでも思ったの?」

ユイ「ふふ、男子三日会わずんば刮目して見よ。……本当に強くなったわね。なにがあなたをそこまでステップアップさせたの? アダム?」

シンジ「正直に言うよ。僕は母さんがこわい」

ユイ「……」

シンジ「顔色を変えずに、僕にこんなことを。マヤさんを危険な目に合わせたのがこわいんだ」

ユイ「……」

シンジ「今日の昼休みにアスカから聞いたよ。戦自からスパイが潜り込んでるって」

冬月「ちっ」

シンジ「あの子をネルフで守ってほしい」

ユイ「それに対する見返りは?」

シンジ「僕の協力。母さんの望む働きになれるように――」

ユイ「あなたは優しいもの。あの子ではなくても、鈴原ヒカリ、セカンドチルドレン、伊吹二尉、葛城一尉、排除したとして代わりはいくらでもきく」

シンジ「……」ギリッ

ユイ「代替え案は?」

シンジ「たしかに、母さんにとっては僕がイヤイヤ協力しようが、進んで協力しようが結果は同じこと」

ユイ「そうね」

シンジ「だったら僕は、また自分をかけるしかない」

ユイ「……」

シンジ「この手にあるのは、必要なモノだから。僕も必要なんじゃないの?」

ユイ「……」

シンジ「僕を失うか、目的を達成するまで他に手をかけないか、選ぶのは二つに一つだよ」

ユイ「あなたは私を敵と思ってるのね?」

シンジ「……」

ユイ「及第点を与えましょう。今回は子供の駄々に付き合ってあげます。副司令、霧島マナのファイルを」

冬月「どうするつもりだ?」

ユイ「こちらが証拠を握っているのです。まずは、信頼の証として、それをシンジに渡しましょう」

シンジ「それだけじゃだめだ。データは残ってるはずだ」

ユイ「もちろんね。デジタル化してる現代において、コピーがないなんてありえない。重要であれば尚更」

シンジ「戦自に解放の働きかけはできない?」

ユイ「それは無理よ。大人には大人の都合がある。ネルフから戦自にそんなことをすれば、なにを要求されるかわかったものではないわ」

シンジ「つまり、現状維持」

ユイ「そうね、あなたにネズミの扱いは一任しましょう。それも、シンジが非協力的な態度を見せたらご破算になるけど」

シンジ「……」

ユイ「シンジ。これはあなたに、とっても不利な条件なのよ? わかるわね?」

シンジ「(僕が、協力しなくても、母さんの気が変わっても……だけど、時間稼ぎにはなる)」

ユイ「それを踏まえて発言してるのね?」

シンジ「うん。それならいい」

ユイ「まだまだね。もっと成長しなさい。話は以上どす。副司令、シンジと共にさがってください。原本を渡すのをくれぐれも」

冬月「ああ。こっちだ」

【ネルフ本部 副司令室】

冬月「このUSBメモリーに件の情報がはいっている」

シンジ「本体に保存してありますよね」

冬月「無論だ。科学とは便利な道具だからな。活用しない手はなかろう」

シンジ「(仮に端末の情報を消去してもらって……無理だ。情報は一度公開されれば、一生残ってしまう」

冬月「しかし、短期間でよくぞここまで変貌をとげたものだ」

シンジ「え?」

冬月「キミの話だよ。これまで、ことなかれ主義で生きてきたのではないか? それがたった数日で機会主義へとガラリと変わっている」

シンジ「そうさせたのは、僕じゃありません」

冬月「人は、立場によって求められる分野が違うからな。望む望まないにしろ、盤面の駒のように成るべくして裏返ったか。どうした? 受けとらんのかね?」

シンジ「……」スッ

冬月「サードチルドレン。情報は武器になる。我々がこうして優位性を保っていられるのも、戦自が喉から手をだす勢いで欲しているのも、“生きた情報”に他ならない」

シンジ「……」

冬月「それはなぜか。手札は多い方がいいからだ。勝てるカード、ジョーカーの有り難みをよく知っている」

シンジ「……」

冬月「しかし、切れ味抜群のジョーカーといえど扱い方を間違ってしまえば諸刃の剣。弱みがないわけではない」

シンジ「そう、ですね」

冬月「言っている意味がわかるかね? “一撃で、人生は簡単にひっくり返る”。要は機会次第という話だな」

シンジ「……」

冬月「今日の出来事はキミという人間を若干ではあるが見直した。引き続き精進するんだな」

【マナ宅】

マナ「――シンジくんっ!」

シンジ「不安になってるだろうと思ったから、報告にきたよ。ごめんね、突然」

マナ「上がって? 私のマンションさっき教えておいてよかった」

シンジ「監視は平気?」

マナ「盗聴器、カメラがないか入念に調べてるよ。尾行は?」

シンジ「大丈夫。そんなことをする意味もないだろうから」

マナ「……?」

シンジ「玄関先でいいよ。これ、渡しとく」スッ

マナ「なに、これ?」

シンジ「マナの個人情報が入ってるUSBメモリー。端末に接続して確認する前にウィルスがないかチェックした方がいいと思う」

マナ「えっ⁉︎ もう⁉︎」

シンジ「結果だけを言うと、現状維持。ネルフはマナに関して静観する姿勢になったよ」

マナ「ほ、ほんと?」ヘナヘナ ペタン

シンジ「うん」

マナ「それで、このデータを?」

シンジ「コピーは抑えられてる。原本だって言ってたけど、そんなことになんの意味もないんだ」

マナ「……」

シンジ「信憑性は疑いのないものだから」

マナ「静観するっていつまで?」

シンジ「僕が協力する限りは。でも、それすらも曖昧で。母さんの気が変わってしまえばその限りではないんだと思う」

マナ「……」

シンジ「ごめん。せっかく僕に。もっと良い条件を引き出すべきだったんだけど」

マナ「そんな。シンジくんがいなかったら今頃……。私は、今後どうしたらいい?」

シンジ「戦自のスパイとして、これまで通りだよ。アスカにはバレてるけど、マナはバレてるって知らないって感じで」

マナ「黙認するのね」

シンジ「うん。ただ、アスカはあまり刺激しない方がいいと思う。ネルフに報告されるだろうから」

マナ「私、敵、だもんね。アスカにとって」

シンジ「自分の居場所は守らなくちゃいけない。アスカのこともわかってやってくれないかな?」

マナ「大丈夫」

シンジ「僕に聞きたいことがあれば、教えるから。これで時間稼ぎをして、次の手を考えよう。アダムと同化すれば――」

マナ「え……?」

シンジ「いや、なんでも」

マナ「怯えて暮らさなくてもいいんだよね?」

シンジ「そうだね、近い内にどうこうならなくて済んだよ」

マナ「ありがとう。どうして私にこんなことしてくれるの? 切り離した方がラクなのに」

シンジ「うーん」ポリポリ

マナ「理由なんていい。シンジくんは私を助けてくれた。私になにかできることがあったら言って? なんでも力になる」

シンジ「それだけだから。また明日、学校で」

マナ「あ、うん! もういいの?」

シンジ「マヤさんとも話しなくちゃ」

マナ「あのっ! ……あれ? あれ? ちょ、ちょっと立てない。こ、腰が抜けちゃったみたい。あはは……」

【ミサト宅 リビング】

アスカ「うーん、これとこれの組み合わせは……無難っちゃ無難。ていうか、普通ね」ポイ

ミサト「ただい~……?」

アスカ「これかな?」ポフ クルッ

ミサト「……」

アスカ「いい感じ。やっぱり夏は紫外線が強いし日焼け対策はかかせないわよね。うん、我ならがら見事なもんだわ。だいたいシンジも気づくのが――」

ミサト「シンジくんが、なにを?」

アスカ「うわぁっ⁉︎」ギョ

ミサト「おめかししてるのね?」

アスカ「み、みみみみミサトッ! 帰ってきたら挨拶しなさいよ!」

ミサト「姿見の鏡でファッションショーを開催してるから邪魔しちゃ悪いと思って。テーマは……海?」

アスカ「べ、べつに!」

ミサト「……デート?」

アスカ「ち、ちがっ!」

ミサト「そっか……アスカも色を知る年齢なのね。まぁ、背伸びしてるからそうなっても不思議じゃないけど」

アスカ「……っ」プイ

ミサト「隠さなくたっていいじゃなぁ~い。誰しもが通る道よ。この世の半々は男と女なんだからね」

アスカ「経験してみたかっただけ。普通のデート。いつできなくなるかわからないし。パイロットなんだから。でしょ?」

ミサト「そうね。あなた達エヴァの操縦士は常に最前線。裸一貫で突撃する兵士よりは科学の力で守られているけど、相手は正体不明の使徒。命の危機に晒される機会は多いわね」ゴト

アスカ「そう、だから。一度はね」

ミサト「さぁ~て」ガサガサ

アスカ「またビールぅ? 夜ご飯は?」

ミサト「アスカはほら、これ。じゃじゃーん! ほっ○もっとのお弁当」カサ

アスカ「またぁ?」

ミサト「どうしようかしらねぇ、うちの台所事情」

アスカ「ミサトの安月給じゃ家政婦を雇うお金ないでしょ。節約だってしてるわけじゃないし」

ミサト「うっ」カシュ

アスカ「はぁ……」

ミサト「し、シンジくんに頼もうか?」

アスカ「なんて?」

ミサト「作り置きができる料理ってあるじゃない? 例えば三日もつカレーとか。冷凍保存して後は焼くだけのハンバーグとか」

アスカ「ハンバーグ?」ピクッ

ミサト「シンちゃんの作る料理おいしいわよね」

アスカ「ミサト、味オンチじゃなかったっけ」

ミサト「あたしだってそれぐらいわかるわよぉ~! ツマミなんかサイコーなんだから! あぁ、声をかければ自動でお料理、お酒がでてくる日々……!」

アスカ「まんま扱いが使用人のそれと同じね」

ミサト「よし! そうしましょう! シンジくんには、私から頼んでおく――」

アスカ「いや、待って。あたしから言ってあげるわ」

ミサト「アスカから?」

アスカ「二つ返事でオーケーすると思うし」

ミサト「やけに自信たっぷりじゃない。マヤちゃんの所とここに通うのは、結構手間よ?」

アスカ「ま、このあたくし様の魅力が成せる技ってところかしらね。罪よねぇ、あたしって」

【再びマナ宅】

マナ「(シンジくん、か。一時的にとはいえ、こんなに早く安全を確保してくれるだなんて……。私が想定していたより、ずっと、大人びているのかもしれない)」コト

加持「……」

マナ「(あの落ち着きようは普通じゃない。肝がすわってる? ……私が託した瞬間からこうなるってシンジくんは予想できてたのね、きっと)」ジャー

加持「皿はこっちでいいのか?」

マナ「(どうしたんだろう、私。帰った後も、シンジくんのことばかり考えてる……)」

加持「勝手に置かせてもらうぞ」

マナ「はぁ……」

加持「恋のはじまりのため息かい?」

マナ「いえ、そんなんじゃ……っ! って、てててててぇっ⁉︎」

加持「お邪魔してるぞ」

マナ「ど、どこから入ったんですかっ!」

加持「窓」

マナ「どうやって……? ここ、8階ですよ⁉︎」

加持「隣の部屋からちょいとな。なに、ベランダづたいに渡ればそう無理な話じゃない」

マナ「隣って……まさかっ⁉︎」ダダダッ

加持「そう慌てて走ってかなくても。気がついた通り、このフロアは全て、戦自が貸し切っている」

マナ「(しまった! それじゃぁ、部屋の中で盗聴器をいくら探してもでてこないはず……!)」ピタッ

加持「音波振動って知ってるか? 例えば、壁にコップを当てて音を拾う。あの要領でね、隣の部屋でシンジくんとの会話を聞かせてもらったよ」

マナ「くっ!」ガタゴト

加持「……」

マナ「動かないでっ!」カチャ

加持「USPか。拳銃は携行してたんだな」

マナ「隣の部屋にいるのは何人⁉︎ 本部に連絡したの⁉︎」

加持「まさか、ミイラ取りがミイラになっちまうとはな。キミの魅力で骨抜きにするんじゃなかったのか?」

マナ「質問に答えて!」

加持「誰もいやしないよ。連絡しちゃいない。これで満足か?」

マナ「信じられない」

加持「おいおい、連絡していたら、今まさに、キミはここにいられないだろう?」

マナ「……」

加持「銃をおろしてくれないか? 落ち着いて話がしたいんでね。それとも俺を殺すかい?」

マナ「考えてる」

加持「最善の手段を選べよ。俺の口封じをしたところで、上官にどう説明する?」

マナ「任務中の事故で済ませるわ」

加持「それがうまくいっても、代わりの者が派遣されるだけだ。仕事とはそういうシステムだからな。組む相手が融通の効くほうがやりやすいんじゃないか?」

マナ「どういう……?」

加持「俺がその相手だといってるんだよ。キミの正体がバレたことを、誰かに報告しようと思っちゃいない」

マナ「なに? なに言ってるの? あなたも戦自のスパイでしょ⁉︎」

加持「そうだよ。だが、ネルフのスパイでもある。こう言えば、おわかりいただけるかな?」

マナ「まさか……! 二重スパイ……っ⁉︎」

加持「(三重になろうとしてるところだがね)」

マナ「……」スッ

加持「ようやく話が通じたようだ。助かるよ、理解がはやくて」

加持「まず、ひとつ訂正をしておく。キミがどう聞いてるのかは知らないが、俺の上司は戦自じゃない。政府筋の関係者だ」

マナ「日本政府、直属の……」

加持「ま、頭が違うだけでやってる中身は同じなんだがね。ただ、指揮系統が違う。キミが戦自の意向に従うのと同様に、俺は政府の意向に従うのさ」

マナ「政府からは、どういう命令で?」

加持「ネルフの断面図の入手。構造の把握を図りたいようで、それが俺に下された最優先事項ってとこだな」

マナ「私は、碇一族に関する、組織図……。加持監察官は、ネルフ本部の断面図……」

加持「これの意味するところは、政府と戦自は連携して、ネルフの直接掌握に乗り出そうとしている。――水面下で」

マナ「……!」

加持「俺たちは意外と重要な任務を任されているんだよ。そこで、だ」

マナ「なんですか?」

加持「戦自にキミの失態をバラして代わりの者を補填してもらってもいいが、めんどくさい。関係構築にね」

マナ「……」

加持「俺は俺で、キミとうまくやっていけたらいいと思っている。目的のためにね」

マナ「あなた、なに考えてるんですか? それじゃまるで、任務の他に目的が――」

加持「そういう意味で言っているよ。俺は」

マナ「私になにを?」

加持「追って連絡する。必要になった時にね。それまでは、口裏を合わせよう」

マナ「……」

加持「かわいい顔してたろ? シンジくん」

マナ「……は……は?」

加持「あの手の顔立ちは好きなやつだと思うんだが、マナちゃんはどうだい?」

マナ「な、なに言いだすんですか、突然。……シンジくんは、顔だけの薄っぺらい男性じゃありません」

加持「惚れたか?」

マナ「か、からかわないでください! そんなにすぐに好きになるわけじゃないですかっ! そんな場合でもないし……」もごもご

加持「やれやれ。こうなっちゃおしまいだな。自分の顔を鏡で見てみろ。ほれ」スッ

マナ「え……」

加持「これが、女の顔だ。魅力的だと思う異性があらわれた時の」

マナ「そんな……! 違いますっ!」

【ネルフ本部 執務室】

マヤ「……ご用でしょうか?」

ユイ「シンジにこれを」スッ

マヤ「……」カサ

ユイ「手紙よ。中は見ないように」

冬月「ユイくん、そう圧をかけるな。怯えているではないか」

ユイ「心外です。私はいつも通りですよ。意識して過剰反応しているだけで……そうよね?」

マヤ「は、はい。すみません」

ユイ「あなたの管轄は赤木博士です」

マヤ「あの、先輩は……」

ユイ「居場所? ラボにいるんじゃない?」

マヤ「いえ。そうじゃなくて、先輩は本当に全部知ってて協力を?」

ユイ「その通り。伊吹二尉も彼女の性格はよく知っているでしょう、頭の良さも。黙って利用される女性ではない」

マヤ「……」

ユイ「(例外は男。この様子じゃ、夫との関係は知らないままなのね)」

マヤ「大変、失礼なんですが……脅されてとか?」

冬月「それはないと断言できる。彼女は自分の意識で我々に協力しているよ」

マヤ「どうして――」

ユイ「身の安全を保障する条件に、詮索をするなと伝えられているはず。なぜ、どうして、知りたい、そういった疑問や好奇心は捨てなさい。生きのびたいのなら」

マヤ「……」

ユイ「命はひとつしかない」

マヤ「は、はい」

ユイ「これからは、技術部の仕事の他にこうして用事をお願いするかもしれないから」

マヤ「……」

ユイ「シンジをよろしくね」ニコ

【数時間後 マヤ宅】

マヤ「……」パタン

シンジ「おかえりなさい」

マヤ「た、ただいま」

シンジ「今日は遅かったですね」

マヤ「一人で、仕事してたから。仕事の能率が悪くて」

シンジ「……」

マヤ「手紙、預かってる。司令から」カサ

シンジ「母さん?」スッ

マヤ「そ、それじゃ、私は部屋にいるね」タタタッ

シンジ「あ、あのっ……」

マヤ「ごめんなさい、まだ頭の中で整理できてないの。一人にしてほしい」ピタ

シンジ「……わかりました」

マヤ「ごめんね」スー パタン

シンジ「ふぅ……やっぱり、ショックだよな。手紙、なんだろう」

『伊吹二尉を犯しなさい』

シンジ「……っ⁉︎」ガタッ

『あなたは協力すると言ったわね。まさか、自分の手が汚れる覚悟もなしに? 断れば、どうなるかわかってるでしょう』

シンジ「そんな……」

『アダムの破壊衝動は、いずれ抑えがきかなくなる。それはあなたのせいじゃない。アダムのせいなのよ。したがって、これは必要な通過点』

シンジ「……」カサ

『先ほど、あなたは私にこう言った。選ぶのは二つに一つだと。私は選んだ。次は、シンジの番ね』

シンジ「ウソ、でしょ……続きは? これで終わり?」

マヤ「――シンジくん」

シンジ「……っ!」ビクッ

マヤ「……? なんか、物音がしたけど、平気?」

シンジ「だ、大丈夫です」ガサガサ

マヤ「手紙になにか……やっぱり、いい」

シンジ「……」

マヤ「お風呂はいっちゃうね」

シンジ「ま、まだ洗ってなくて」

マヤ「いいわよ、それぐらい自分でできるし。そういえば、ご飯は食べた?」

シンジ「あ、はい。自分で買ってきて済ませました」

マヤ「そう……。わかった」スッ

シンジ「(母さん……)」カサ グシャ

【数十分後 マヤ宅 リビング】

マヤ「まだリビングにいたの? お風呂、栓を抜いて洗っといたよ」

シンジ「マヤさん」

マヤ「……なに?」

シンジ「お話が――」

マヤ「嫌っ! 聞きたくないっ!」

シンジ「でも」

マヤ「私に何を話そうって言うの⁉︎ 面倒ごとはもうたくさん!」

シンジ「話さなくちゃ」

マヤ「聞きたくないって言ってるでしょう⁉︎」バンッ

シンジ「……」

マヤ「私、明日も朝はやいから。シンジくんもお風呂に入ったら寝て」

シンジ「はい」

マヤ「こんなの、おかしい。納得できない!」

シンジ「……」

マヤ「私が八つ当たりしてると思ってるんでしょう⁉︎ だけど、私だってこんなこと言いたくないのよ!」

シンジ「よく、わかってます」

マヤ「息苦しい……。いつまでこんな生活を続けなきゃならないの……」ギュウ

シンジ「マヤさん」

マヤ「……」

シンジ「勝手な言い草だと自分で思います。だけど、僕はマヤさんのこと嫌いじゃありません」

マヤ「私だって……。!シンジくん個人に対して嫌悪感はないわよ。ただ、状況が」

シンジ「はい、そう感じてます。もっと別の形だったらうまくできてるんじゃないかって。ストレスにならずに」

マヤ「……」

シンジ「多くの人が関わってます。僕だけじゃどうしようもないぐらい」

マヤ「それは、わかってる」

シンジ「これからも、まだしばらくはこの暮らしが続きそうです。だから、お互いにいないモノと考えるか、歩み寄るのか。マヤさんの判断を待とうと思います」

マヤ「……」

シンジ「答えが出ないうちに僕が出て行くことになるかもしれません。でも、それもひとつの結論だと思いますから」

マヤ「このままじゃいけないって、わかってる」

シンジ「マヤさんの望みは、これまでの毎日を取り戻したい。でも、知ってしまって、巻き込まれたからには戻れないとわかってる。そのジレンマですよね」

マヤ「……よく、わかるわね」

シンジ「僕も同じなんです。できれば、使徒との戦いに怯えているだけの日々に。でも、それはできない」

マヤ「……」

シンジ「エヴァに乗ったのだって」

マヤ「あ……」

シンジ「だから、気持ちがよくわかるんです」

マヤ「ごめんなさい、私」

シンジ「いいんです。ひとつだけ、話をさせてくれませんか? マヤさんにつらい現実になります」

マヤ「……」

シンジ「どうしても話さなくちゃいけないんです」

マヤ「わかった……。聞くわ。でも、髪乾かしてからでいい?」

シンジ「はい」

【数十分後 リビング】

マヤ「――そんな、コレって!」ワナワナ

シンジ「……」

マヤ「うぷっ!」ドタドタ

シンジ「……」

マヤ「おぇっ! おぇぇっ!」ジャー

シンジ「ふぅ」

マヤ「はぁっ、はぁ……」

シンジ「手紙に書いてある意味はそのままだと思います。なぜ必要なのかわからないけど、母さんはそう望んで……いえ、僕にやれと命令しています」

マヤ「……」

シンジ「僕は逆らえません。守らなくちゃいけない人がいるから。選ぶのは二つに一つ、最後の文面にある言葉は、僕にマヤさんかもう一人かを選べと言ってきてる」

マヤ「もう一人って、誰」

シンジ「それは言えません」

マヤ「……! あなた、なんなの⁉︎ どうして⁉︎」

シンジ「すみません。できれば、両方守りたい。それが僕の望みです」

マヤ「はっ! この部屋に盗聴器は……っ⁉︎」

シンジ「今は、遮断する妨害電波を流しています。神経をかなりすり減らすので長くは持ちませんが」

マヤ「妨害電波? すごい汗。それに瞳の色が赤く……。シンジくん、あなた、人、なの?」

シンジ「僕の定義も曖昧になりつつあります。でも、そこまで知ってしまうとマヤさんの為にならない。だから、要点だけを話しましょう」

マヤ「私は、イヤよ」

シンジ「はい、それはわかっています。イヤイヤするのなんて許せません」

マヤ「そうよ、こういうのってお互いの意思が重要で」

シンジ「母さんにとってはそんなの関係ないんです。結果だけがあればいい」

マヤ「……」

シンジ「しなければいずれバレます。そうなると他の子が危険にさらされます」

マヤ「だから、私に我慢しろっていうの⁉︎」

シンジ「早とちりしないでください。幸い、今すぐにとは書かれていません」

マヤ「……時間稼ぎをしたところで、司令が納得する成果を見せなくちゃいけないんじゃないの?」

シンジ「正直、それぐらいしか。僕もどうしたらいいかわからないんです」

マヤ「……」

シンジ「どちらも守りたい。いや、そっとしておいてあげたい、僕が関与することで不幸な目に合わせたくない……! だけど、ほっておいたら、道具としてみんな殺されてしまう」

マヤ「……」

シンジ「どうしたら、いいのか」ツゥー

マヤ「シンジくん……泣いて――」

シンジ「打開策を見つけて見せます。マヤさんにどうしても教えておかなくちゃいけないと判断したのは、関係することだからです」

マヤ「う、うん」

シンジ「それじゃ、僕は」フラ

マヤ「……?」

シンジ「ぐっ」ガタ パタリ

マヤ「し、シンジくん! ねぇ、大丈夫っ⁉︎」

【再びネルフ本部 執務室】

冬月「息子との溝は深まるばかりだな。これでよいのか?」

ユイ「できれば、あの子に配慮してあげたかったのですけど。敵は、状況によって逐一変わります」

冬月「……」

ユイ「例えば、戦自がネルフに雪崩れこんでくればシンジは条件を出さずとも協力するでしょう。私もシンジたちを使い対抗せざるを得ません」

冬月「共通の敵になるだろうからな」

ユイ「敵とは、その程度。……符号なんですよ」

冬月「……」

ユイ「時々で共通認識さえ有れば、優先順位によって変化する。……勧善懲悪というはっきりとした図式が成り立つ条件は、一貫してなければならない。不変ではないのです」

冬月「あえて憎まれ役になるということかね」

ユイ「これは証明ではありません。私たちは親子ですから。血の繋がりはそう簡単に断ち切れないという事実です。見直すきっかけさえあればいい」

冬月「感情を軽視しすぎている。取り返しのつかない事態になるやもしれんぞ」

ユイ「あの子は一度、汚れさせる必要があります」

冬月「なせだ? なぜそこまで」

ユイ「痛みを知らない子供は綺麗事を並べたがります。我を通す、その一点のみ。うまくいったと思わせて叩き潰すのです」

冬月「その先の、再起に新たな成長があると?」

ユイ「ふふ、それだけじゃありません。目的がありますもの」

冬月「起きあがれなかった場合は――」

ユイ「必ず起こします。たとえ、電気ショックのような荒療治を使っても」

冬月「あまりに酷すぎやしないか」

ユイ「良心の呵責ですか? まだそのようなくだらない感情が」

冬月「ヒトはロボットではない。生物学で博士号を修得したキミなら重々承知しているだろう。本能、欲求、様々なものが感情となって」

ユイ「それすらも、我々は縛られています。人の限界です」

冬月「き、キミは……」

ユイ「科学と知恵を使い進んでいくだけよ……!」

【マヤ宅 部屋】

シンジ「うっ、はぁ……はぁっ」

マヤ「……」チャポン ギュー

シンジ「うぅっ!」

マヤ「すごい熱。どうしよう、本部に連絡するべきかしら」スッ

シンジ「はぁ……ま、やさん」

マヤ「え? な、なに?」

シンジ「すみません、こんな」

マヤ「……」

シンジ「僕は」

マヤ「今はしっかりと休んで。喋ると体力を使うわ」

シンジ「はい……」

マヤ「(元の瞳の色に戻ってる。なにが、シンジくんをここまで突き動かしてるの)」

シンジ「……」

マヤ「(頑張ってるのはわかる。身の丈を超えてよくやってる。私だと、たぶん……無理。こんな子じゃないと思ってた。でも、本当にそうかしら)」

シンジ「うぅ」

マヤ「(これまでだって、普通の中学生が使徒と戦える? そんな選択をできる? シンジくんを、私は、いえ、私たちは過小評価していたのかもしれない。消極的な少年だって)」スッ

シンジ「……?」

マヤ「(人は、変われるんだわ)」ギュ

シンジ「ふぅ……手を握られてると安心します」

マヤ「――へ? あ、私」

シンジ「自分で自分の手を握ってもなにも感じないのに。誰かに握ってもらうとあたたかい気持ちになれる」

マヤ「そうね」

シンジ「少し、そのまま握っててくれませんか」

マヤ「……」

シンジ「ありがとう、ございます」

マヤ「(このままじゃいけない。私も変わらなくちゃ。だって、ネルフに残ると決めたのは私なんだから。なにか、シンジくんの力に――)」

【翌朝 マヤ宅 部屋】

シンジ「ん……あれ? ここは。そうか、僕は眠って」ムク

マヤ「おはよう、シンジくん」ニコ

シンジ「おはよう、ございます」

マヤ「熱がさがってよかった。もう大丈夫だと思うけど、計ってみて」スッ

シンジ「あ、はい」

マヤ「食欲は? ある?」

シンジ「はぁ、まぁ」

マヤ「お粥がいいかな」

シンジ「あの! ここマヤさんの部屋ですよね。僕がベッドを使ってたら」

マヤ「いいのよ。気にしないで」

シンジ「は、はぁ……えっと、どこで寝たんですか?」

マヤ「それは私の心配? それとも、機嫌が気になって聞いてる?」

シンジ「マヤさんの、心配ですけど」

マヤ「やっぱり、顔色を伺ってるってわけじゃないのね。私たち、まだお互いのことなんにも知らないみたい」

シンジ「え?」

マヤ「私はネルフの職員。シンジくんはエヴァのパイロット。それだけの関係だったのよ。誰のせいとか、どちらが悪いかとかじゃない」

シンジ「……?」

マヤ「うまく、やろうと思う。お互いに歩み寄れるか試してみないとわからないもの。その為に、前向きな気持ちは大事だわ。そう思わない?」

シンジ「まぁ」ポリポリ

マヤ「まずは、こういった価値観の違いから埋めていきましょ。私はこう思ってる、シンジくんはこう思ってる。違いをおそれずに、できる?」

シンジ「大丈夫、ですけど」

マヤ「よし! 火にかけてくるから待ってて!」タタタ

シンジ「な、なんなんだ、一体」ポカーン



【ネルフ本部 発令所】

シゲル「いぇ~い! じゃかじゃかじゃん!」

マコト「おい、うるさいぞ。静かにしろ」

シゲル「ちっ、エアギターぐらい気分よくセッションさせろよ」

マコト「精神年齢が低すぎるんだよ、お前は。いつまでも学生気分が抜けてないんじゃないか?」

シゲル「その言い草は心外だねぇ。やるべきことはきちんとやってるぜ?」

マコト「エアギターのなにがいいんだか」

シゲル「そりゃあ俺だって、本物がいいに決まってるさ。かと言って職場で演奏するわけにはいかないだろ?」

マコト「口でやってちゃ同じことだろう!」

シゲル「はぁ、ああ言えばこう言うってか。いちいち嫌味だなぁ、理屈っぽいやつって」

マコト「俺たちは仕事をしにきてる。遊びにきてるわけじゃない」

シゲル「息抜きって知ってるか? 能率を上がる為に必要なルーチンワーク」

マコト「はぁ……。マヤちゃんを見習えよ、まったく」

マヤ「……」カタカタ

シゲル「ふん、精がでるこって」

マコト「マヤちゃん、浅間山で行われる予定の陽電子砲(ポジトロンスナイパーライフル)の日程は聞いた?」

マヤ「だめ、これは違う」カタカタ

マコト「うん?」

シゲル「……?」

マコト「(なにしてるんだ……?)」ソォー

マヤ「……」カタカタ

マコト「ヒトゲノム計画? DNA配列の解析……? 過去のデータを取り出してなにやってるんだ?」

マヤ「日向くん⁉︎ ちょっと、なに勝手に見てるのよ!」

マコト「いや、さっき呼びかけたんだけど返事がないから」

マヤ「あっ、そうだったの?」

マコト「それで、なに調べてたの?」

マヤ「これ? ……エヴァってA10神経で接続してるでしょ? だから、少し、仮説を立ててみたんだけど」

マコト「どんな?」

マヤ「エヴァに乗れる理由について。……詳しくはまだ言えない。立証できるかわからないから」

シゲル「取り憑かれたような目つきしてたぜ?」

マヤ「もう、茶化さないでよ」

マコト「仕事してたわけじゃないのか」

シゲル「ざぁ~んねん。真面目な堅物は一人だけだったな」

マコト「しかし、どうして突然?」

マヤ「うん、私達ってサポートに回るしかないじゃない? テクノロジーという英知を使って」

シゲル「なにを今更。食い扶持だろ」

マヤ「当たり前って、実感してはじめてわかることがある気がするのよ」

マコト「哲学……?」

シゲル「怪しい宗教にでもハマっちまったかぁ?」

マヤ「だから茶化さないでってばぁ」

シゲル「ま、どっちみち俺には関係ねぇ話だ」

マコト「赤木博士から頼まれたとか?」

マヤ「先輩は――」

リツコ「私の陰口?」

マコト&シゲル「おはようございます」

マヤ「……」

リツコ「おはよう。まだ就業時刻前だから。堅苦しい挨拶は抜きにしてラクにしていいわよ」

シゲル「ひゅ~! さっすが、話がわかる~。葛城一尉といい、部下の扱い方をわかってる上司がいて幸せっすよ」

マコト「はぁ」

シゲル「つーわけで、聞いてくださいよ。日向のやつ、朝っぱらから仕事仕事ってうるさくて」

リツコ「それが彼の性分なんじゃない?」

シゲル「フォローすることねぇスよ」

リツコ「よく飽きないものだと呆れただけよ。マヤ?」

マヤ「は、はい」ビクッ

リツコ「ラボに来なさい。用事があるから」

マヤ「あ、あの。調べ物が終わってからじゃだめですか?」

リツコ「……?」

シゲル「なんでも、パイロットについて論文を書くつもりらしいすよ」

マヤ「青葉くんっ!」

シゲル「あんだよ? サポートに徹するマヤちゃんが立証するって言ってたし間違っちゃいないだろ」

マヤ「どうしてそう軽いの⁉︎ 立証するじゃなく、できるかわからないって……! 裏付けがほしいだけよ!」

リツコ「……」

マコト「だから、精神年齢がガキなんだよ。こいつは」

リツコ「調べ物はいつでもできるでしょう?」

マヤ「……はい」

【第壱中学校 昼休み】

シンジ「これ、なに?」

マナ「お弁当! お昼、惣菜パン食べてたでしょう? だから、作ってみたんだけど」

トウジ「なんや? って、おわぁっ! なんで学校にお重箱が⁉︎」

マナ「えへへ、ちょっと張り切りすぎちゃって」

トウジ「ひゃ~! 朝になんや四角いもん運んどると思ったら弁当やったんかいな! 」

マナ「やっぱり、ちょっと、大きいよね」

トウジ「ちょっとどころやあらへんやろ。何人分入っとるんや……ひい、ふぅ、みー、と。三段重ねか」

マナ「あ、あはは……。いきなり、引いた、かな」

シンジ「あっ、いや。嬉しいよ。ありがとう」

トウジ「おい、シンジ! ワシも手伝ったろか⁉︎」スリスリ

シンジ「トウジは食べたいだけじゃないの」

トウジ「なんや! ワシを卑しいもん扱いするっちゅーんかいな!」

シンジ「うーん」チラ

マナ「……」ニコ コクリ

シンジ「……わかった。一緒に食べよう」

マナ「それじゃ、机ひっつけようか? それとも、屋上で――」

アスカ「はい、そこまで!」バンッ

マナ「え?」

アスカ「シンジ。あんた、今日は私と昼食とる約束でしょ?」

トウジ「……? そうやったんか?」

アスカ「そうよ。ほら、惣菜パン買うんじゃないの? 付き合ってあげるからさっさと立ちなさいよ」

トウジ「買わんでもここに……」

アスカ「それ、どういう目的で作ってきたのかわからないもの」

マナ「(あっ、そっか。アスカは私を警戒してるんだった。いけない、忘れてた……でもっ、そんなつもりじゃ)」

トウジ「なに言うとるんやお前。いちいちそんなもん……いや、待てよ。そーか! さてはやきもち……もが!」ガターン

アスカ「どお~ぉ? ハイキックで味わう上履きのお味は? 堪能した?」

トウジ「いつつ……。暴力ゴリラめ、そんな一瞬で味がわかって」ムク

アスカ「じゃあおかわり⁉︎」ダンッ

トウジ「――もう、お腹いっぱいですぅ」

アスカ「行くわよ、バカシンジ」

シンジ「アスカも、一緒に食べようよ」

アスカ「まだ理解してなかったのぉ」ジトー

マナ「し、シンジくん」

シンジ「せっかく作ってきてくれたのに。無下にしちゃ失礼だよ」

アスカ「ソレ。どういう目的で作ってきてるかあたしにはわかる。昨日話したわよね」スッ コソ

シンジ「構わないよ。それでも。ネルフの情報を漏らさなければいいんだろ」コソ

アスカ「……? あんた、わかってるのに食べるの?」

マナ「あ、あのっ! 私っ!」ガタッ

シンジ「いいんだ、マナ」スッ

アスカ「なに……? その雰囲気。あたしが意地悪ばあさんみたいじゃない?」

シンジ「そんな、アスカの思い違いだよ。僕たちは悪く思ったりなんかしてない」

アスカ「あんたがどう思っていようと! 余計な横槍を入れてるように見えんじゃないのってこと!」

ヒカリ「どうしたの? なんの騒ぎ?」

マナ「ヒカリ……」

ヒカリ「なにそれ……お重箱、よね? 誰が――」

トウジ「そら言わずもがな! 決まっとるやないか! なっ! シンジ!」ポンッ

シンジ「トウジ、そういうのいいから」

ヒカリ「えぇ? 碇くんにマナが?」チラ

アスカ「……」

ヒカリ「(アスカが仁王立ちしてるのはそういう……。こんな大きな箱、どこに置いてたのかしら)」

マナ「あの、いいよ。シンジくん、アスカと食べてきて」

アスカ「バッカみたい。なんであたしが邪魔者みたいな扱いなのよ」

マナ「そうじゃないの。先約だったんだよね? それなら当たり前だし」

シンジ「アスカ」

アスカ「なによ」キッ

ヒカリ「……」ゴクリ

トウジ「しっかし、腹減ったのぉ」

ヒカリ「鈴原っ! 呑気なこと言ってんじゃないわよ!」

シンジ「そんな約束、ないだろ」

アスカ「……っ!」

シンジ「僕たちは友達なんだから。一緒に勉強してる。それだけだよ」

アスカ「へぇ~ぇ。このあたしに歯向かう気? 心配してやってんのよ⁉︎」

シンジ「(どちらか、か。大なり小なり選択肢は日常にありふれてる……これは母さんの言う通り。どちらもと思う僕は、傲慢なんだろうか)」

アスカ「なんとか言ったらどうなの⁉︎」

シンジ「できれば仲良くしたいんだ。マナに対してもアスカに対しても、それだけ」

アスカ「……」

トウジ「まぁまぁ、シンジが優柔不断なのは今にはじまった話やあらへん」

ヒカリ「黙って!」ガバッ

トウジ「ふごっ⁉︎」

アスカ「どうなったって知らないわよ」

シンジ「アスカの期待にこたえる言葉を選べなくて――」

アスカ「それ以上言わなくていい」クルッ スタスタ

ヒカリ「あ、アスカ」

アスカ「……」ガララッ ビシャンッ!

男子生徒B「うぅ、すっげー音。教室の引き戸壊れたんじゃないか?」

女子生徒A「修羅場ね。碇くん、どっちを選ぶのかしら」

男子生徒A「ちっくしょおおおっ! なんであいつばっかり!」

シンジ「……食べようか」

ヒカリ「追いかけなくていいのっ⁉︎」

マナ「ご、ごめんなさい」ギュウ

シンジ「いいんだ。誤解は後で――」

ヒカリ「それじゃアスカがあんまりよ!」

シンジ「……」

トウジ「もがっ、ふぅ……おい、イインチョ」

ヒカリ「さっきから空気の読めない発言ばかりしてる鈴原は黙ってて!」キッ

トウジ「たしかにワシはそうかもしれん。せやけど、お前、霧島の気持ち考えとるんか?」

ヒカリ「え? ……あっ」

トウジ「お前がアスカを大事に思うのはわかる。霧島はまだ転校してきて数日間もないからな」

マナ「鈴原くん! いいの!」

トウジ「お前は、友達をそんな扱いするんか」

ヒカリ「違う、そんな……。ただ、今は追いかけるべきだって。だって傷ついてるから」

トウジ「お前が心配しとるんは、霧島やない。惣流や」

シンジ「トウジ、やめなよ」

トウジ「シンジもシンジや。どっちつかずの言い方は、どちらも傷つける場合だってある」

シンジ「……」

マナ「違うの! シンジくんは悪くない! 私がっ」

トウジ「見てみい、シンジ。霧島はお前のせいで尻拭いをしようとしとる」

シンジ「……」

トウジ「おい! シンジ!」グィッ

シンジ「うっ」

トウジ「霧島になんも声かけたらんのか⁉︎ 優しさっちゅーのはなぁ! どっちつかずのもんとちゃうんや! 腹くくらんかいっ!」

マナ「鈴原くん! シンジくんを離して!」ガシ

ケンスケ「さーて、今日のパンはぁ~っと……」ガララッ

ヒカリ「わ、私……。先生を」

ケンスケ「な、なんだぁ?」ポロ ポトポト

シンジ「トウジ!」グィッ

トウジ「おっ」

シンジ「たしかに、トウジの言い分はよくわかる。どうして怒ってるのかも」

トウジ「お前のためやと思っとんのか? 自惚れんなや」

シンジ「違うんだ。信じてほしい」

トウジ「はぁ?」

シンジ「関係にだって波がある。うまく行くとき、行かない時。全てが予測できていたらそんなことなくなるけど」

トウジ「一時的なもんやと?」

シンジ「そうならないかもしれない。僕は僕にできることを精一杯やろうって決めたんだ。今、この状況だけで判断しないでもらえないかな」

トウジ「……」

ケンスケ「どうしたんだよ、これ」

ヒカリ「相田くん……アスカと、その後に鈴原が」

ケンスケ「……惣流? いないじゃないか?」

ヒカリ「もう! 説明がややこしいの!」

シンジ「ごめんよ。きっと、煮え切らないんだよね。僕も同じだから」

トウジ「ちっ」スッ

マナ「シンジくん……」

トウジ「しゃーないわ。黙って待つんも友のあり方やろからなぁ」

シンジ「色々、迷惑をかけてるのは僕だから。マナも、ごめんね?」

マナ「私が……浅はかだったのに。嬉しくて、浮わついちゃって」

シンジ「いいんだ。自分を責めないで」

マナ「……」

ヒカリ「(ちょ、ちょっと。これって……ひょっとして……碇くん、マナのこと……)」

シンジ「昼ごはんは美味しくないと。どうせ食べるならさ。そうだろ? トウジ」

トウジ「それについては同意やな!」

シンジ「うん、僕は少しアスカと話てくるよ。今はどうにもならないだろうけど、追いかけることに意味がある。洞木さん」

ヒカリ「え……? え? なに?」

シンジ「マナのことよろしく。トウジの言う通り、どちらも嫌な思いをしてるだろうから」

ヒカリ「あっ……うん」

ケンスケ「さっぱり意味が。話においてきぼりなのは、また僕なのか……」

【第壱中学校 屋上】

シンジ「アスカ、やっぱりここにいたんだね」キィー バタン

アスカ「……」

シンジ「(やっぱり取りつく暇がない。関係悪化させないようにしないと)」

アスカ「はぁ……田舎よね、ここ」

シンジ「え?」

アスカ「セカンドインパクトが終わってから、陸地が津波と水位上昇で海の下に沈んで、難民で溢れて。土地の低い主要都市は壊滅状態」

シンジ「……」

アスカ「この国は、マシな方みたいだけど。それにしたって、武装都市? だっけ? 一部だけ。開発途中で遠景は森に山」

シンジ「ドイツは、そんなことなかったの?」

アスカ「あんまり変わんない。なんていうか、建物に味わいがあったような気がする……。皮肉ね、住んでる頃はなんとも思わなかったのに」

シンジ「……」

アスカ「それで? なにしにきたの?」クルッ

シンジ「あ、いや」

アスカ「まさか、あたしが傷ついてるなんて思ってないでしょうねぇ?」

シンジ「そうじゃ、ないの?」

アスカ「Natürlich(もちろん)! それこそバカな話! なんであんたが原因であたしが傷つかなきゃいけないのよ。一人でえーんえーんって泣いてるとでも思ったの?」

シンジ「……」

アスカ「戻ってあげたら? 私はもう少し風にあたりたい」

シンジ「本当に、そうかな?」

アスカ「……?」

シンジ「僕は、アスカがさみしいって言ってるように見える」

アスカ「はぁ?」

シンジ「なんとなく、だけど」

アスカ「下々に心配されちゃエリートもおしまいね」

シンジ「違うんだ、僕はアスカのことが」

アスカ「黙って」

シンジ「……」

アスカ「あんたにドイツのことを少し、ほんの少しだけど話たのは、たまたまそういう気分だっただけ。故郷に帰りたいわけでもない。アメリカにだっていたし、一人は慣れっこなの」

シンジ「どうして、そう自分に言い聞かせるように言うのさ」

アスカ「私はっ! あんたに説明してやってんの!」

シンジ「ねぇ、アスカ。人間関係って難しいよね」

アスカ「……」

シンジ「僕の言いたいこと、アスカの言いたいこと。お互いになんでわからないんだろう、どうして伝わらないんだろう。そう思う時がある」

アスカ「当たり前ね。そういう状況を総称して“合わない”って言うのよ。つまり、あんたと私」

シンジ「でも、それだけじゃないと思うんだ。本当はわかってるけど、認めたくないとか、ない?」

アスカ「……」

シンジ「プライドとか意地とか。誰にだってあるものじゃないか」

アスカ「汲み取った対応できないようじゃガキよ」

シンジ「そうだね、僕は子供だ。でも、認められないアスカだって僕と同じ。エリートとか能力があるとか、まったく関係ない話なんじゃないの」

アスカ「なにが言いたいのよ」

シンジ「今はアスカの望んでる、理想像に程遠いかもしれない。でも、僕は……」

アスカ「……」

シンジ「どっちかを選ぶんじゃない、別の道を模索したいんだ。うまくいけるようになったらいいなと思う」

アスカ「マナは戦自に属してるのよ? いくら頑張ってもどうにもならないってこと、あるわ」

シンジ「……」

アスカ「まさか、マナをちょっといいかなとか思ってんの?」

シンジ「――へ?」

アスカ「そういうことね……昨日はあたしにあんなこと言ったくせに。ほんと、男ってのは……まぁ、言い方きつすぎたか」

シンジ「……?」

アスカ「べ、別に。あ、そうだ。あんた、今日の帰り時間あるでしょ? シンクロテストないはずよね」

シンジ「うん……どうして?」

アスカ「あたしんとこのマンションに寄って。用事があるから」

シンジ「は、はぁ……」

【一方その頃 同中学校 教室】

トウジ「こらうまい! こらうまい!」ガツガツ

ヒカリ「きゃ……あー! 米粒が制服に! 口に頬張ったまま喋らないでよね!」

トウジ「むぐっ⁉︎」

マナ「あ、お茶ならあるよ」

トウジ「むごっ⁉︎ んくんくっ! ぷはぁ~! 死ぬとこやったで!」

ケンスケ「よく噛まないからそうなるんだよ」

トウジ「それもそやな。あっというまになくなってしまうし」

ケンスケ「シンジの分残しておかなくていいのか?」

トウジ「センセはちょっとお灸を据えた方がええ」

ヒカリ「そうかな。碇くん、わかってたんだと思うけど」

トウジ「かぁーっ! 委員長がそんなこと言い出しよる! さっきは惣流を追いかけずに憤慨しとったやないか」

ヒカリ「そうだけど……。あの時は動転してて。落ち着いてみると、碇くんにだって考えがあったのかなって」

トウジ「女はずるっこいのぉ。言うことをコロコロ変えよって」

マナ「シンジくんはそんな人じゃないって、私はずっと言ってたよ」

ヒカリ「マナ、さっきは、ごめんね?」

マナ「うぅん、いいの」

ケンスケ「お、この唐翌揚げうまい」

トウジ「おっ! どれどれぇ~?」

ヒカリ「ちょっと、二人とも。碇くんの分が本当に――」

トウジ「かまへんかまへん」

マナ「ねぇ」

トウジ「あん?」

マナ「それ、誰が作ったかわかってる?」

トウジ「そらぁもう! 霧島さま!」

マナ「そうなんだぁ? わかってて食べてるんだぁ?」

ケンスケ「……」ピタ

マナ「えいっ」ギュム

トウジ「なんや? 手の甲になんか……あいだだだだっ⁉︎」

マナ「つねられると痛い?」ギリリリッ

トウジ「チカラこめすぎ、ちょ、ねじるな! ち、ちぎれる!」

マナ「残しとこうね? お箸、もういらないでしょ?」ニコ

トウジ「は、はいぃぃ」ポロっ

ケンスケ「(霧島マナ。こいつは、おそろしいやつ!)」

取りつく島もない、ですね
あと二次創作のキャラなんだから皆落ち着こうぜ

>>402
ご指摘どうもです。暇で覚えてました
そしていつも唐翌揚げが唐翌翌翌揚げになる俺の謎変換&見落としはなんなんだ

あれ?ちょっとテスト
唐翌揚げ

え?からあげをそのまんま変換すると勝手に唐翌揚げになる?

メール欄のsagaテスト

唐揚げ

ググって原因判明したので続けます
唐翌揚げに関してはこの板のコマンド仕様だったんすね

【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「なに考えてるのよ」

マヤ「え? あの……」

リツコ「無用な駆け引きなんてやりたくないし、面倒ごとは御免被りたい。なぜ調べていたのか、簡潔に説明なさい」

マヤ「それは」

リツコ「待って。やはり文句を言わない気がすみそうにない。保証人には私がなってるのよ? 言わなきゃわからないほど不用心?」

マヤ「すみません、でも」

リツコ「反抗する動機は愚痴る相手がいないから? それともストレスが溜まってる自覚があるの?」

マヤ「そんな、違います! 私は、なにか自分で力になれるんじゃないかって」

リツコ「言い訳なんて聞きたくないわ。他人の中で自立した女性になりたいのなら、ぐっと我慢して胸の奥にしまっておきなさい!」バンッ

マヤ「……」ギュウ

リツコ「ふぅ……マヤ。冷静になって。あなたがこれからすべきことは、知らぬ存ぜぬで過ごすこと。パイロットがエヴァになぜ乗れるのか、その真相解明をすることなの?」

マヤ「どうして、縛られなくちゃいけないんですか」

リツコ「……」

マヤ「私、なんにも悪いことしてないのにっ!」

リツコ「答えは簡単よ。これが“現実”だから」

マヤ「……っ!」

リツコ「理不尽だと思う? 巻き込まれた、自分のしたいようにできるはずのことができないって歯痒いわよね。……しかし、選べるモノの中から取捨選択をするしかないわ! 子供じゃないんだからわかるでしょう⁉︎」

マヤ「で、でも。私は」

リツコ「できない状況、どうしてもやるというのなら止めはしないけど。それ相応の覚悟を持ってやるのね。二度、助けはしない」

マヤ「……」

リツコ「前言撤回します。問いただしたのは忘れて。どういう理由があったのか喋らなくていい」

マヤ「……」

リツコ「成人している大人ですものね。自分自身の行動に責任を持ってやりなさい」

マヤ「先輩は……! 先輩はどうして協力なんかしてるんですかっ⁉︎」

リツコ「……」

マヤ「こんなの、おかしいです! 司令が企んでるのってネルフの、組織の私物化に該当しませんか⁉︎ 数式で証明できないことばっかり! 私たち、技術者なんですよ⁉︎」

リツコ「……」

マヤ「理不尽なんてもの通り越してます! 異議を申し立てるなですって⁉︎ 己を押し殺して⁉︎ 奴隷がほしいんですか⁉︎」

リツコ「いい加減になさいっ!」ブンッ パァン

マヤ「きゃっ!」

リツコ「あっ」

マヤ「……!」キッ

リツコ「少し、休みを――」

マヤ「必要ありません! 私は、そんなの! ……先輩には、失望しました」

リツコ「……」

マヤ「そんな人じゃないと思ってたのに」

リツコ「ふ、ふふっ。あなたが勝手に勘違いしてただけじゃなくって?」

マヤ「そうかもしれません。ですけど、期待していたのも事実です。その幻想は崩れてきています」

リツコ「だからなに? 幻想と現実が乖離したから失望したって言うの?」

マヤ「現実を受け入れます。尊敬するに値しないって」

リツコ「底が浅い。それだけじゃない、あなたが学ぶべき点は他にもなにかあったでしょう。私こそ、あなたの将来性を買いかぶっていたよう」

マヤ「業務に関しては話が別です」

リツコ「それならば問題ないわ」

【ネルフ本部 発令所】

シゲル「透析データは終了っと」

マヤ「……」

シゲル「あれれぇ~? どったの? なんか暗いんじゃん」

マヤ「ほっといてよ」

シゲル「もしかして、アノ日か?」

マヤ「……っ!」キッ

シゲル「おやま、ビンゴ?」

マヤ「デリカシーのかけらもない人ね。シンジくんに爪の垢でも煎じて飲ませてもらったら」

シゲル「はぁ、なんでシンジくんが? ……そういやぁ、今は共同生活してるんだっけ?」

マヤ「関係ないことでしょう? プライベートの詮索はやめてもらえる?」

シゲル「まぁそう硬くなんなって。どうなんだ? 彼との生活は。頻繁に顔を合わせてるんだろ」

マヤ「普通よ」

シゲル「へぇ、こりゃ驚いた。俺なら気が気じゃないけどね。マヤちゃんこんなだしさ」

マヤ「どういう意味? バカにしてるの?」

シゲル「いや、別に。見たまんまの感想。でも、中学生だろ? マヤちゃんの下着とか――」

マヤ「いい加減にしなさいよっ!!」バンッ

シゲル「な、なんだよ」

マヤ「私たちになにができるか考えたら⁉︎ 負担を減らす方法とか! あの子達が戦うことしかできないように、私たちには活かせる技術、技能があるでしょう⁉︎」

シゲル「俺だってずっと遊んでるわけじゃねえさ」

マヤ「だったら……!」

シゲル「なんかおかしいな。内面に変化するようなことあったのか?」

マヤ「え?」

シゲル「だってそうだろ? これまでだって俺たちがやってる業務内容に違いはないぜ? 突然そういうこと言いだすのって変じゃないか?」

マヤ「そ、それは……その、人は誰でも問題を抱えてると思うし」

シゲル「はぁん? なんだよこいつ」

マコト「おい、もうそのくらいで――」ブーッ ブーッ

マヤ「エマージェンシーコール?」

マコト「……⁉︎」ガタッ

シゲル「こりゃあ……!」

マコト「各オペレーターに通達! 葛城一尉に連絡を! 大至急だ!」

ミサト「――状況は⁉︎」

マヤ「パターンオレンジ。不規則に点滅を繰り返しています」

ミサト「正体不明? ……使徒じゃないの? 日向くん、どうなってる?」

マコト「微弱ながらも電波を発しています」

ミサト「特定、できる?」

マコト「無理ですね、信号が弱すぎて」

ミサト「使徒じゃ、ない?」

シゲル「断定はできません。MAGIによる可否は賛成が2、反対が1」

マヤ「……! キャッチしました! 受信データを照合! パターン、オレンジから青! 使徒と確認!」

ミサト「あっさり確定したわね。ようやくおでましか」

シゲル「イチイチサンゴウへ入電! 管制塔応答せよ、速やかに警戒態勢へ移行されたし!」

マヤ「ま、待ってください! 信号ロスト! 全てのセンサーから反応がなくなりました!」

ミサト「なにが起こってるの?」

リツコ「……使徒?」コツコツ

ミサト「そのようね。戦自からの連絡は?」

シゲル「巡航中のイージス艦から報告。目標は、完全に消失」

ミサト「どうなってんのよ。赤木博士、見解は?」

リツコ「これだけじゃなんとも言えないわね。使徒が戦術的判断をしている可能性はなくはないけど」

ミサト「使徒にそんな能力が?」

リツコ「使徒も生き延びたいから。私達人類と同じように学習して知恵を身につけていてもおかしくないわ。問題は、この仮説を証明する方法が使徒の出方次第ってこと」

ミサト「見えない、敵、か……」

マコト「どうします? パイロットを待機させますか?」

ミサト「うぅーん。どう思う?」

リツコ「判断を求められるたびに縋らないでくれる? 作戦の指揮権はミサトでしょう」

ミサト「それもそーね。……各員に通達! 警戒態勢を第二種に移行! パイロットは呼ばなくていいわ。そのかわり、いつ使徒が来ても対処できるよう、準備しておいて」

マコト「了解。これよりネルフ本部は第二種警戒態勢に移行! 繰り返す――」

ミサト「もうすぐ、三号機の搬入予定日ね」

リツコ「零号機は凍結命令がでているけど、ことと次第によっては、解除されると思うわよ」

ミサト「間に合わない場合ってことね」

リツコ「そのパイロットもね」

ミサト「……了解。司令に連絡を。今頃は遠方の県議会に出席しているはずだから」

リツコ「ええ、わかったわ」

【第壱中学校 放課後】

アスカ「警戒態勢? 使徒がきたの?」

ミサト「みたいなんだけど。動きがないのよねぇ」

アスカ「なにその煮え切らない感じ」

ミサト「だぁって、そうなんだもの~。ま、どーんとかまえてりゃいいのよ」

アスカ「私はどうすればいいの?」

ミサト「普通に帰ってもらってかまわないわよぉ~ん」

アスカ「わかった。ミサトは? 今夜は遅くなるの?」

ミサト「電話を切ってもう少ししたら帰ろうかなと」

アスカ「防犯意識、低すぎない?」

ミサト「来たるべき時に疲れて動けなかったら本末転倒でしょーが。本部は第二種警戒態勢に移行してるから心配しなさんなって」

アスカ「はぁ、なにそれ?」

ミサト「第一種の前の段階ってことね。外出禁止、帰宅禁止、外部への連絡禁止とか。様々な制限をかけられるけど、第二種は同一種のさらに事前段階」

アスカ「はぁーん。どうでもいい情報」

ミサト「あんたが聞いたわよね! 今!」

アスカ「今日は、シンジに夕ご飯作ってもらうから」

ミサト「おっ、シンちゃんが了承してくれたんだ? やるわねー、アスカ」

アスカ「だから言ったでしょ? 二つ返事でオッケーだって」

ミサト「さよーですか。シンジくんとレイにも伝えといてくれる?」

アスカ「了解。それじゃ、切るわよ」ピッ

トウジ「それにしても、霧島の弁当はホンマうまかったなぁ!」

シンジ「そうだね、僕も驚いた」

マナ「おだてても、なにもでないよ?」

シンジ「本心だよ」

マナ「えへへ! もう、口がうまいんだから」

マナ「あの、碇くん。一緒に――」

アスカ「シンジー!」

シンジ「ん? どしたのアスカ」

アスカ「あいつは?」

シンジ「……?」

アスカ「察しが悪いわねぇ、あたしがあいつって言ったらあんたかもう一人しかこの教室にいないでしょ」

シンジ「綾波?」

アスカ「そ。伝えなきゃいけないことがあるから」

シンジ「えぇと、さっき帰ったと思うけど。なにかあったの?」

アスカ「使徒」

シンジ「え?」

アスカ「だぁーかぁーらぁっ! 使徒が来たのよ! バカシンジ!」

ちと間違ったんでレスしなおし

【第壱中学校 放課後】

アスカ「警戒態勢? 使徒がきたの?」

ミサト「みたいなんだけど。動きがないのよねぇ」

アスカ「なにその煮え切らない感じ」

ミサト「だぁって、そうなんだもの~。ま、どーんとかまえてりゃいいのよ」

アスカ「私はどうすればいいの?」

ミサト「普通に帰ってもらってかまわないわよぉ~ん」

アスカ「わかった。ミサトは? 今夜は遅くなるの?」

ミサト「電話を切ってもう少ししたら帰ろうかなと」

アスカ「国防意識、低すぎない? ちゅーか、人類の未来がかかってんでしょ?」

ミサト「来たるべき時に疲れて動けなかったら本末転倒でしょーが。本部は第二種警戒態勢に移行してるから心配しなさんなって」

アスカ「はぁ、なにそれ?」

ミサト「第一種だと外出禁止、帰宅禁止、外部への連絡禁止とか。様々な制限をかけられ、待機命令を含むけど、第二種はさらにその前の事前段階」

アスカ「はぁーん。どうでもいい情報」

ミサト「あんたが聞いたわよね! 今!」

アスカ「今日は、シンジに夕ご飯作ってもらうから」

ミサト「おっ、シンちゃんが了承してくれたんだ? やるわねー、アスカ」

アスカ「だから言ったでしょ? 二つ返事でオッケーだって」

ミサト「さよーですか。シンジくんとレイにも伝えといてくれる?」

アスカ「了解。それじゃ、切るわよ」ピッ

トウジ「それにしても、霧島の弁当はホンマうまかったなぁ!」

シンジ「そうだね、僕も驚いた」

マナ「おだてても、なにもでないよ?」

シンジ「本心だよ」

マナ「えへへ! もう、口がうまいんだから。あの、碇くん。一緒に――」

アスカ「シンジー!」

シンジ「ん? どしたのアスカ」

アスカ「あいつは?」

シンジ「……?」

アスカ「察しが悪いわねぇ、あたしがあいつって言ったらあんたかもう一人しかこの教室にいないでしょ」

シンジ「綾波?」

アスカ「そ。伝えなきゃいけないことがあるから」

シンジ「えぇと、さっき帰ったと思うけど。なにかあったの?」

アスカ「使徒」

シンジ「え?」

アスカ「だぁーかぁーらぁっ! 使徒が来たのよ! バカシンジ!」

【下駄箱】

シンジ「綾波っ! はぁっ、はぁ。よかった。間に合って。あの、使徒がきたんだって」

レイ「了解、非常召集?」

シンジ「いや、家に帰っていいみたいだよ。僕たちができるのは心構えぐらい。聞きたいんだけど、僕は今後、使徒が来たりしたらわかるようになる?」

レイ「時と場合による」

シンジ「……?」

レイ「アダムの持つ力は万能ではない、ただの個性。使う用途によって応用のきく場面があるか、それはケース次第。ただ――」

シンジ「ただ?」

レイ「会えばすぐわかるようになる。ヒトが人間とその他の生物を区別できるように。使徒が人型をしていて、自らをヒトだと詐称していても騙されない」

シンジ「目視しないといけないってこと?」

レイ「あとは、波長が似ているか」

シンジ「よく、わからないな」

レイ「碇くん、手」スッ

シンジ「……? 差し出せばいいの?」スッ

レイ「なにか感じる?」ギュッ

シンジ「え? いや、あの、暖かいな、としか」

レイ「もっと。胸の奥でなにか鼓動を感じるはず。……ここ」スッ

シンジ「ちょ、ちょっ⁉︎ あ、あやなみっ! 僕の手が!」

レイ「心臓の鼓動をイメージして。魂の揺らぎ」

シンジ「で、できないよ! だって僕の手が綾波の胸に!」

レイ「自分の胸でもいい」

シンジ「そ、それならそう言ってくれれば……」

女子生徒A「なにあれ。今の見た? 碇くん、今度は綾波さん?」ひそひそ

女子生徒B「ひぃやぁ~。三角関係? おもしろー!」ひそひそ

女子生徒A「あんた、相当なゲスね」ひそひそ

シンジ「あっ……!」キョロキョロ

レイ「……」ジー

シンジ「ご、ごめん! 僕っ!」バッ

レイ「……?」

アスカ「――あんた達、こんなところで見つめ合ってなにやってんの?」

シンジ「あ、アスカっ⁉︎」ギョッ

マナ「どうしたの? どういう状況?」ニコ

ケンスケ「おいおい、碇。死にたいのかぁ?」

トウジ「昼休みのさっきの今で次は綾波かいな」

ヒカリ「碇くん、それはちょっとどうかと思う」

シンジ「ち、ちちちちっ、違うよっ! 僕はただ!」

ケンスケ「慌てるのがますます怪しい。放課後、下駄箱とくりゃー、ラブレ――あいっ⁉︎」

マナ「あ、ごめん。なんかイラっときてついつねっちゃった」

ケンスケ「ついでつねるのかよ!」

マナ「写真のこと、言いふらそうか?」コソ

ケンスケ「ひっ! ……いやぁ! やっぱり僕の気のせいだったミタイダー!」

シンジ「違うって。ネルフからの言伝を」

アスカ「はぁ、もういいから。さっさと帰るわよ」

【下校中】

マナ「あの~」

アスカ「だめ、存在を無視できない。どうして並んで歩いてんのよ!」

マナ「だって、私の家も同じマンションじゃない」

アスカ「それは知ってるけど! ちっ、昨日はわざと時間ずらして帰ったのに」ブツブツ

シンジ「(さっきの、聞こえてきた、三角関係って誰のこと言ってるんだろう。えぇと、アスカと、マナのことかな。綾波もいれたら三角にならないし。僕がモテてると勘違いしてるのかなぁ。まさかねぇ)」

マナ「シンジくん、さっきから指折り曲げてなに考えてるの?」

シンジ「え? えぇと、いや、なんでも」

アスカ「算数もまともにできないの? 暗算できないアホの子みたいだからやめてよね」

シンジ「いや、そうじゃなくて。あは、あはは」

マナ「さっきのシンジくんかわいかったな。あんなに慌てるんだね」

アスカ「こいつはいつもこんなもんよ。ビクビクしてるし」

マナ「そう? 私はそう思わないけど」

アスカ「会って数日でしょ? そんな期間でなにがわかるっつーのよ」

マナ「そっか。アスカったらなんにも知らないんだ」

アスカ「はぁ?」

マナ「シンジくんのかっこいいところ」

アスカ「はっ! こいつがかっこいい? マナ、男の趣味悪いんじゃないの? 本心じゃないんでしょうけどねぇ」

シンジ「(そうだよ、マナは自分の立場でそう言ってるだけ。うん、まわりに流されて僕が勘違いしちゃいけない)」

マナ「ちゃんと思ってるよ。どうして私がウソつかなくちゃいけないの?」

アスカ「……っ! マナ、いや、あんた、とんだ狸ね。現在進行系で騙そうとしてるくせに」

マナ「アスカはなにも知らないもの。知らなくていい」

アスカ「なに言ってるの?」

マナ「ねっ! シンジくん」

シンジ「うんと、その……」

アスカ「なんでそこでバカシンジに……はぁ~ん、なるほど。そういう演出ってわけ?」

マナ「へ?」

アスカ「あたしより自分の方がいいってわざとしてるんでしょ? 計算で」

マナ「……そんなんじゃないもん」

シンジ「ちょ、ちょっと、二人とも」

アスカ「残念ねぇ~。これからシンジはあたしの家で……ゴホン……このあ・た・しの為だけにご飯を作ってくれるみたいよー?」

シンジ「……え? ご、ご飯? 用事って」

マナ「なに、それ。どういう意味?」

アスカ「スタートラインが違うって言ってんのよ。50メートル地点がゴールだとしたら、あたしは既に30メートルぐらいかしら。いや、もっとかも?」

マナ「ふぅん、アスカってば、普段はツンケンな態度してるくせに、シンジくんを男だって意識してるんだ?」

アスカ「な、ななななんでそんな解釈になんのよ!」

マナ「だって、ゴールしたいんじゃないの?」

アスカ「立ち位置の話よ!」

マナ「じゃあ、シンジくんと私が仲良くなってもいいの?」

アスカ「だ、だって、あんたは……」もごもご

マナ「(言えないものね。アスカは私が戦自のスパイだって知ってるって。あんまりいじめちゃかわいそうか……)」

シンジ「あの、アスカ。ご飯って、なに?」

アスカ「しっ! あんたは黙っときなさい!」

マナ「……? シンジくん、なにも聞いてなかったの?」

アスカ「……(喋ったら、[ピーーー])……」キッ

シンジ「……」ゴクリ

マナ「シンジくん?」

シンジ「いや、僕が忘れてたみたいだ。たしかに、そんなこと、言ってたような」

マナ「もしかして、言わされてない?」

アスカ「そんなわけないじゃなぁ~い! 昨日デートに誘われたんだから!」

シンジ「デート⁉︎」

マナ「……」

アスカ「しかたなぁくオーケーしてあげたんだけどさぁ」

マナ「アスカ。変だよ」

アスカ「……?」

マナ「甘えてるんだね、シンジくんに」

アスカ「な、なにが? あたしがシンジに?」

マナ「素直になれない自分を。ぶつけることで求めてるんでしょ?」

アスカ「聞き捨てならないわ! 喧嘩売る気⁉︎」

マナ「エリート? それがなに……? 私には、ハリボテの前で威張ってる裸の王様に見える」

アスカ「この! よくも言ったわね!」ブンッ

シンジ「もうやめよう。二人とも」パシッ

アスカ「……っ⁉︎ ちょ、離して!」グィッ

シンジ「マナ、アスカ。喧嘩することに僕は否定的じゃない」

アスカ「(うそっ⁉︎ 振りほどけない⁉︎ なんで、ビクともしない、のっ!)」グィッ

マナ「……ごめん、また、私」

シンジ「暴力って傷つける悪いイメージだけど、わかり合ったり、すっきりしたり、そういう必要な時もあると思うから。ただ、今はそうじゃない」パッ

アスカ「いっつ、もう、痕になったらどうして……あれ? なにも残ってない? 強く掴まれてた気がしたのに」

シンジ「帰ろう。向き合わなくちゃいけない時は、きっと来るから」

青葉シゲルは喋ってる機会の多いPSPとPS2で発売されたゲーム版を参考に性格形成してます
使えそうだなと思ったセリフを織り交ぜていたり(ゲーム中で使用されている)しますが
書いている二次SSに合わせているので見せ方の問題もあると思います

【ミサト宅 リビング】

シンジ「……な、なんだこれ……」

アスカ「よっ、ほっ、と」

シンジ「ど、どうしてこんなことに」ソォー

アスカ「あぁ、そっちじゃないっ! その服まだ着るんだから踏まないでよね!」

シンジ「え?」ピタ

アスカ「そっち通って」

シンジ「脱ぎ散らかさないで畳めばいいじゃないか。それに、食べた後の弁当箱も。こっちはビール缶」

アスカ「やーよ。めんどくさい」

シンジ「アスカ。生活っていうのは、掃除をしないと。洗濯物も。臭くなっちゃうよ」

アスカ「ミサトに言ってよ。なんであたしに言うの?」

シンジ「だって、アスカだってここで生活――」

アスカ「してるけど。そう思うならあんたやって」

シンジ「な、なんで? 自分でもできるだろ」

アスカ「あんた程度でもできるって言ってんの! あたしがわざわざしなくちゃいけないなんてイヤ!」

シンジ「はぁ……」

アスカ「その、デートしてあげるんだし、それでチャラでしょ」

シンジ「あの、それっていつ?」

アスカ「そんなにはやくしたいの? せっかちな男ねぇ」

シンジ「(いつ約束したのって意味なんだけど……)」

アスカ「日時と場所はあんたが決めていいわよ。女の子をエスコートするなんて土台無理な話でしょうけど、まぁ、我慢してあげる」

シンジ「……はぁ、それにしても、どこから手をつけようか。明日の天気予報なんて言ってた?」

アスカ「晴れだって言ってたわよ」

シンジ「それなら、夜干しになっちゃうけど洗濯物からにしようか。炊飯器は……」カチ パカッ

アスカ「あたし、ソファーで雑誌見てるから」ポイッ

シンジ「うっ! あ、アスカぁっ!」

アスカ「なにー?」

シンジ「ご飯いつのだよこれ! 保温切っておいてたの⁉︎ カサカサじゃないか!」

アスカ「あー。えっと、三日ぐらい前?」

シンジ「食べないなら冷凍して釜は洗えよ!」

アスカ「えぇ~」

シンジ「このまま放置するつもりだったの⁉︎」

アスカ「気がつかなかったらそうなるんじゃない?」

シンジ「気に! しろよ!」

アスカ「うっさいなぁ。あんた、小姑みたい」

シンジ「(だめだ。今まで当たり前のように僕がやってたから気がつかなかったけど家事に対する感覚が圧倒的に違う、ミサトさんはズボラだってわかってたけど、アスカもまるで興味がないなんて)」

アスカ「お菓子、お菓子、と」ポフッ

シンジ「ねぇ、なんで自分でやらないの? こんな空間で住みたくないよね?」

アスカ「まぁ、そりゃーね。衛生的なのは良い。だからってなんであたしがやらなくちゃいけないの? 物の置き場所はわかってるし不自由はないし」

シンジ「改善できるから、とか」

アスカ「ただの雑用でしょ? わかる? あたしパイロット。本来はサポートされてるべきよ。監督者の管轄義務であってこっちの問題じゃない。折れてやらなくたって……日本人はこれだから」

シンジ「(海外って、こうなのか。いや、アスカ個人の問題のような……)」

アスカ「はいはい、小言はいいから、さっさとやって」ゴロン

【数十分後 同リビング】

シンジ「食べたらせめてゴミ箱に……」ガサゴソ ポイッ

アスカ「シンジー! お風呂も洗っといてねー!」

シンジ「コップも洗ってないし、このまま二人で生活していたらどうなるんだろう」

アスカ「ちょっと、シンジ! 聞こえてないのー?」

シンジ「やっとくよっ! ……アスカは雑誌読むの飽きたのか部屋に行っちゃったし」

アスカ「……」ガララ トタトタ

シンジ「ご飯ならまだ」

アスカ「じゃじゃーん!」

シンジ「……?」

アスカ「はぁ、あいかわらずポンコツな反応ね。あんたとのデートに着ていってあげようと思った服よ」

シンジ「あ……に、似合ってるよ」

アスカ「もうちっと嬉しそうにしなさいよ! 気に入らなかった?」クルッ

シンジ「(状況が飲み込めてないからなんだけど)」

アスカ「あんた、どんな格好の女の子が好きなの?」

シンジ「……いや、本当に似合ってるよ。ごめん、こんなにかわいいとは思わなかったから」

アスカ「へ? ま、まぁ、そうよね! 当たり前の反応!」

シンジ「その、ハットにアスカがいつもつけてるヘアバンドの形が浮いて猫耳みたいになってるのが気になるけど」

アスカ「あぁ、ヘッドセットつけたままなの忘れてた」

シンジ「それって気に入ってるの?」

アスカ「髪をまとめるのに便利だからつけてるってだけ」

シンジ「え、でも、それだったらヘアゴムとか」

アスカ「いちいち目ざといわねぇ。……昔ね、ママがこの形で二つ、よくリボン結んでくれたの」

シンジ「あ……」

アスカ「エヴァのパイロットっていう証。それをママに見せたいのよ」

シンジ「お母さんって、どんな人だったの?」

アスカ「……」ギュウ

シンジ「アスカ……?」

アスカ「優しい人だった。私はママが大好きで、笑ってくれるのが嬉しくて、とにかく私を見てほしくて。今でも思い出は大切に胸にしまってる」

シンジ「そうなんだ」

アスカ「でも、ある日全てが変わっちゃった。音なんか聞こえるはずないのに、音を立てて崩れるってこういう時に使うんだなって理解がストンと落ちてくる感じ」

シンジ「なにか、あったの?」

アスカ「わかんない。それでも、ママが喜んでくれるように私は必死で頑張ったわ。笑顔になれるなら、なんでもやろうって思って」

シンジ「……」

アスカ「今日はなんだかおかしい。あんたにこんなこと話すなんて。絶対にないと思ってた」

シンジ「アスカ……」

アスカ「間違っても同情なんかやめてよね、ウソくさいから。みんな、みんな、ウソばっかり。上部だけ取り繕っちゃってさ」

シンジ「……」

アスカ「誰でも自分が一番かわいいのよ。パパだって自分を許せないからとか、相手の為とか。変な理屈をつけて正当化しても、結局はそれ。ウソがない人なんかいない。

シンジ「……」

アスカ「もし、“自分はウソつきじゃない”ってやつがいたとしたら、それがウソ。もしくは、気がついてないだけ。だから、私はなんでも自分で出来るようにならなきゃいけないの」

シンジ「わかった、もういいよ」

アスカ「エースでいなくちゃいけないの」

シンジ「アスカ。もういいんだ」

アスカ「感情の波が押し寄せてくんのよ! 自分でもどうしようもないの!」バンッ

シンジ「(触れちゃいけないことだったのか。でも)」

アスカ「ふぅー……。わかってる、あたしが勝手に話ただけ。あんたは、家事に戻って忘れて。私も忘れ――」

シンジ「忘れないよ」

アスカ「……」

シンジ「そうした方がいいなら、そうする。だけど、大事な話だと思うから」

アスカ「好きにしたら」

シンジ「うん。わかった」

【数時間後 同リビング】

ミサト「見違えるようになったわね~! やっぱり家庭はこうでなくっちゃ!」

シンジ「普段からちゃんとしておけば、普通ですよ」

ミサト「普通ってのはねぇ、積み重ねるもんがあってはじめて成立すんの。あたしとアスカにとっては普通じゃない、労力を使うお仕事」

アスカ「まぁまぁね、あんた、もぐもぐ、味落ちてんじゃないの」パクパク

ミサト「リスみたいな顔して頬張ってるのはかわいいけど。説得力ないわよ」グビ

アスカ「んぐっ、ごくり、ミサトは肝硬変になるわよ」

シンジ「……」コネコネ

ミサト「シンちゃんは食べないの?」

シンジ「ハンバーグのタネを作っちゃいます。冷凍しておけばあとは焼くだけなので」

ミサト「あらあら。アスカの好物ぅ? よかったわねぇ~?」

アスカ「ふ、ふんっ」

シンジ「それより、今後どうするんですか」

ミサト「と、申されますと?」

シンジ「生活ですよ。こんなにひどくなってるなんて思わなかったから。野生に帰るつもりですか?」

ミサト「ぶっ、だっはっはっ! ここジャングルじゃないんだけどぉ~」

シンジ「……」ジトー

ミサト「あ、あら? けっこうマジ?」

シンジ「ミサトさんと……アスカはちょっと理由が違うかもしれないけど。誰でもできることです。やってないだけでしょ」

ミサト「あ、あたしは仕事がちょっち忙しくてさぁ~」

シンジ「だったら、協力するとかあるじゃないですか。僕がいた頃ゴミ出しをしてくれたみたいに」

ミサト「うっ、そ、そりはぁ、あくまでついでだったからといいますかぁ……アスカ! あんたもだかんねっ!」

アスカ「あたしに責任転換しないでよ。監督者はミサト」

ミサト「いくらあたしに監督義務があると言っても、自分で作るぐらいできるでしょーが!」

アスカ「イヤっ!」

ミサト「そ、そんなキッパリ」

シンジ「そこまでで。改善するには、どちらかがやるしかありませんよ。話合ってルールを決めれば――」

アスカ「あんたが定期的にここへくればいいじゃない」

シンジ「な、なんで僕がっ⁉︎」

ミサト「おっ、ナイスアイディア~!」

シンジ「ミサトさんっ⁉︎ 冗談ですよね⁉︎」

ミサト「ごめんねぇ~シンちゃん、私も家政婦雇いたいんだけど、生活が苦しくて」

アスカ「イヤなの? 女二人の花園に入り放題になんのよ? ひとりはおばさんだけど」

ミサト「ほっほぉ~う? アスカは後でゆっっくり話をするとして。どう? お小遣いになる程度の時給にするから」

シンジ「はぁ……」

【マヤ宅 リビング】

マヤ「遅いなぁ、シンジくん」

シンジ「……」ガチャ バタン

マヤ「あっ、お、おかえり!」

シンジ「あれ? リビングでなにを……」

マヤ「あのね、シンジくん」

シンジ「はい?」

マヤ「遅くなる時は連絡しなくちゃだめでしょう? どこでなにやってたの?」

シンジ「あ、すみません。ミサトさんの家に呼ばれてて」

マヤ「葛城一位のお宅に?」

シンジ「はい、夕ご飯を作りに」

マヤ「えぇ? なんで?」

シンジ「なんでって、その、ミサトさんもアスカも家事をやらないから」

マヤ「それだけの理由で? 自分たちでやらせたらいいじゃない」

シンジ「たしかにそうなんですけど。ほっとけないっていうか」

マヤ「はぁ……そう。ご飯は?」

シンジ「(ラップして置いてある。作って待っててくれたのか……食べてきたけど)」

マヤ「もしかして、済ませてきた?」

シンジ「いえ。ちょうどお腹が空いてたんです、美味しそうだなぁ。食べていいんですか?」

マヤ「よかった。まだだったのね」

シンジ「鞄を置いてきます」

マヤ「手もちゃんと洗ってね?」

シンジ「わかりました」

マヤ「……」ジー

シンジ「……」もぐもぐ

マヤ「おいしい?」

シンジ「はい、おいしいです」

マヤ「これも食べてみて。得意料理なんだけど」

シンジ「そうなんですか? あむ……うん、大根によく味が染みてておいしいや。いつ仕込んだんですか?」

マヤ「今日。普通は煮込めば煮込むほど味わいがますものだけど」

シンジ「そうですね。短時間でここまで」

マヤ「うん、母さんからやり方教わったの。あなたも将来食べさせる相手ができるだろうからって。そんな相手、まだできる気配すらないけど」

シンジ「お袋の味ってやつですか。いいな、そういうの」

マヤ「あ……シンジくんは司令にそういうの教わった経験は?」

シンジ「なにもありませんよ。父さんとはご存知の通りですし、母さんは生きてることすら知りませんでしたから」

マヤ「そ、そうよね。ごめんね、なんだか重い雰囲気にしちゃって」

シンジ「そんなつもりないですよ。ありのままを言ってる、僕にとっては、それが普通なんです」

マヤ「シンジくんがもうちょっと歳近かったらなぁ」

シンジ「……?」もぐもぐ

マヤ「ねぇ、あのこと、話してもいい?」

シンジ「待ってください……」カチャ

マヤ「(あ、また瞳の色がうっすら赤く)」

シンジ「いいですよ、どうぞ」

マヤ「手紙の内容。期限はいつまでとたしかに書いてなかったけど、いつまでも誤魔化せないと思うの」

シンジ「そうですね」

マヤ「なにか、考え浮かんだ?」

シンジ「ふぅ……正直なところ、なにも」

マヤ「演技じゃだめかな?」

シンジ「それは済ませたということですか? 母さんは確認するかもしれませんよ」

マヤ「どうやって?」

シンジ「わからないけど。どんな手を使ってきてもおかしくないと思います」

マヤ「うーん。ここって監視されてるのよね? 盗聴器だけなのかしら?」

シンジ「どうかな。カメラがあるとしたら、以前のやりとりの時に踏みこんできてもおかしくないと思いますけど」

マヤ「小型化してるし、ありがちな所だと、熊のぬいぐるみの目の中とか。そういうところに隠してるんじゃ?」

シンジ「探しますか? 人力になっちゃいますけど」

マヤ「見つけられればいいけど。天井とか、全部の壁紙をひっぺがすわけにもいかないし……」

シンジ「……どうして、確認を? 見られてるのが嫌だから?」

マヤ「目で見たものは信じる。演技って言ったじゃない?」

シンジ「はい」

マヤ「だから、その、あのね」

シンジ「……」

マヤ「寸前まで、やったらいいんじゃないかって」

シンジ「寸前? それって、どこまで?」

マヤ「や、やだ。シンジくんは、本当にわからなくて聞いてるんだものね……。言わせようとしてるわけじゃない、うん」

シンジ「あの、まさか」

マヤ「そ、そう。その、そ、そそそそそそ挿入する直前まで」

シンジ「……」ポカーン

マヤ「そのっ! あくまで演技よ! 実際にするわけじゃないし! 挿れるのはなし! 太ももに挟んで」

シンジ「ほ、本気ですか?」

マヤ「私だって! 考えたけど! どうしようもないじゃない!」

シンジ「いや、たしかに、方法が浮かばないのはそうですけど」

マヤ「シンジくんは、よく見たら女の子みたいな顔してるし、身体つきだって」

シンジ「マヤさんはそれでいいんですか?」

マヤ「だから、実際にするわけじゃないって……」

シンジ「それでも、身体は密着するわけですし。前に話た時に男が苦手って言ってましたよね」

マヤ「う、うん」

シンジ「いきなりハードル高すぎませんか。僕も慣れてるわけじゃないですよ」

マヤ「勇気をだして言ってるの。このままじゃ。シンジくん、もう一人の誰かを守りたいんでしょう?」

シンジ「そ、それは……」

マヤ「だったら、これしか方法がない。私、イヤだけど、我慢できる、と思うの」

シンジ「やっぱり嫌なんじゃないですか、我慢するってことは」

マヤ「わ、わたしもっ! 踏ん切りをつけなきゃいけないから! もういい歳だし!」

シンジ「は、はぁ」

マヤ「本当に、直前までよ?」

シンジ「それはもちろん、わかってます」

マヤ「いつ、する?」

シンジ「……」

マヤ「台本を用意した方がいいかな? お、犯せって書いてあったし、シンジくんが襲う段取りで」

シンジ「やめましょう、他に方法が――」

マヤ「考えてる時間あるのっ⁉︎」バンッ

シンジ「……」

マヤ「思いつかなかったら⁉︎ そしたら申し訳ない顔して、仕方ないって言ってやるんでしょう⁉︎」

シンジ「……」

マヤ「だったら、せめて勇気が出た時にやらせてほしい。私のペースで。どうにかなるかもしれないって、希望だけをもたせるなんてひどいわ」

シンジ「僕は……」

マヤ「これが、私たちに選択できる“落とし所”なんだよ。失うものはないもの」

シンジ「……」

マヤ「納得、できないよね。苦しいよね。私も一緒。痛いほどわかる。だから、だから、私はシンジくんと肌を重ねる。私のために、自分のためにやって」

シンジ「……わかり、ました」

マヤ「具体的にどうする?」

シンジ「……」ギリッ

マナ「シンジくん、話して。ね?」

シンジ「母さんがどういう意図でこの手紙を渡してきたのか。ある程度、予測がついてるんです」

マナ「そうなの?」

シンジ「はい、といっても文面そのままですけど」

マナ「もしかして、破壊衝動ってところ?」

シンジ「その通りです。あの日、マヤさんを突き飛ばして僕がこの家から出て行きましたよね」

マナ「うん」

シンジ「詳しくは話せませんが、衝動を抑えきれなくて、マヤさんに危害を与える状況だったからです」

マナ「(首を締めてきたのは、そのせい……)」

シンジ「自分の力じゃどうしようもなくて。不定期に波がくる感じなんです。いつくるのか、それはわからない」

マナ「つまり、その解消に私を使えって話ね?」

シンジ「おそらくは」

マナ「ひどい。そんな、私をなんだと思って……!」

シンジ「巻き込んでしまって、すみません」

マナ「待って」

シンジ「はい?」

マナ「その衝動はいつから? 生まれつき?」

シンジ「いえ、最近です。一週間ぐらい前から」

マナ「そ、そんな、うそよね? だったら、シンジくんがここにきたのも、もしかして、全て仕組まれて……」

シンジ「ありえなくは、ありません」

マナ「せ、先輩も協力してるって。わ、わたし、なにも聞いてないのに」

シンジ「……」

マナ「どうして、シンジくんが?」

シンジ「僕もわかることは少ないけど、知っていたとしても話せません。マヤさんは演技を済ませて、母さんを信じさせてさえしまえばいい」

マナ「……」

シンジ「話を続けます。なので、僕が衝動を抑えきれず襲う演技をすれば説得力はでると思います」

マナ「……わかった。私は、思いきり嫌がればいいのね」

シンジ「はい、合意の上ではないという演出が必要です」

マナ「部屋、散らかっちゃうね」

シンジ「そ、そうですね」

マナ「嫌がるのは、たぶん、演技じゃなくて本気でできると思う。シンジくんは平気?」

シンジ「え?」

マナ「私は土壇場になって拒絶感が勝っちゃうだろうから。そのままの私。シンジくんはそうじゃないでしょう?」

シンジ「……」

マナ「一度、はじまったら、途中で躊躇なんかしちゃだめよ。バレたらなんの意味もなくなる」

シンジ「はい」

マナ「今日、やろっか」

シンジ「えっ⁉︎ そ、それは! だって、監視カメラの確認もできてないのに」

マナ「カメラがなくても盗聴器がある。どちらかひとつがあるのは確定してるの。じゃないと、あんなタイミングよくここに諜報部員が来れない」

シンジ「……」

マナ「シャワーだけ浴びさせて。あとは、シンジくんのタイミングにまかせる」

あらら、予測変換でマナと打ってるんでレスしなおし

シンジ「……」ギリッ

マヤ「シンジくん、話して。ね?」

シンジ「母さんがどういう意図でこの手紙を渡してきたのか。ある程度、予測がついてるんです」

マヤ「そうなの?」

シンジ「はい、といっても文面そのままですけど」

マヤ「もしかして、破壊衝動ってところ?」

シンジ「その通りです。あの日、マヤさんを突き飛ばして僕がこの家から出て行きましたよね」

マヤ「うん」

シンジ「詳しくは話せませんが、衝動を抑えきれなくて、マヤさんに危害を与える状況だったからです」

マヤ「(首を締めてきたのは、そのせい……)」

シンジ「自分の力じゃどうしようもなくて。不定期に波がくる感じなんです。いつくるのか、それはわからない」

マヤ「つまり、その解消に私を使えって話ね?」

シンジ「おそらくは」

マヤ「ひどい。そんな、私をなんだと思って……!」

シンジ「巻き込んでしまって、すみません」

マヤ「待って」

シンジ「はい?」

マヤ「その衝動はいつから? 生まれつき?」

シンジ「いえ、最近です。一週間ぐらい前から」

マヤ「そ、そんな、うそよね? だったら、シンジくんがここにきたのも、もしかして、全て仕組まれて……」

シンジ「ありえなくは、ありません」

マヤ「せ、先輩も協力してるって。わ、わたし、なにも聞いてないのに」

シンジ「……」

マヤ「どうして、シンジくんが?」

シンジ「僕もわかることは少ないけど、知っていたとしても話せません。マヤさんは演技を済ませて、母さんを信じさせてさえしまえばいい」

マヤ「……」

シンジ「話を続けます。なので、僕が衝動を抑えきれず襲う演技をすれば説得力はでると思います」

マヤ「……わかった。私は、思いきり嫌がればいいのね」

シンジ「はい、合意の上ではないという演出が必要です」

マヤ「部屋、散らかっちゃうね」

シンジ「そ、そうですね」

マヤ「嫌がるのは、たぶん、演技じゃなくて本気でできると思う。シンジくんは平気?」

シンジ「え?」

マヤ「私は土壇場になって拒絶感が勝っちゃうだろうから。そのままの私。シンジくんはそうじゃないでしょう?」

シンジ「……」

マヤ「一度、はじまったら、途中で躊躇なんかしちゃだめよ。バレたらなんの意味もなくなる」

シンジ「はい」

マヤ「今日、やろっか」

シンジ「えっ⁉︎ そ、それは! だって、監視カメラの確認もできてないのに」

マヤ「カメラがなくても盗聴器がある。どちらかひとつがあるのは確定してるの。じゃないと、あんなタイミングよくここに諜報部員が来れない」

シンジ「……」

マヤ「シャワーだけ浴びさせて。あとは、シンジくんのタイミングにまかせる」

【数十分後 リビング】

シンジ「(昨日、お互いの違いを埋めるって言ってたらかりなのに。マヤさん、焦ってるのかな。不安、なのかもしれない)」

マヤ「シンジくん、あがったよ」

シンジ「あ、はい。僕も」

マヤ「お風呂ためなくて平気?」

シンジ「大丈夫です。食器、洗ってから入りますね」

マヤ「置いておいてくれていいわよ」

シンジ「いえ、悪いですから」

マヤ「わかった。私、今日は警戒警報で疲れてるの。先に部屋にいるね」

シンジ「はい」

マヤ「……」スッ

シンジ「(僕に、できるだろうか。いや、やるしかないんだ。そうしないと、マナが。でも、それすら自分に言い訳してるだけなんじゃ……)」スッ ガタッ

マヤ『躊躇なんかしちゃだめよ。バレたらなんの意味もなくなる』

シンジ「(迷っちゃだめだ。はぁ、こういう時、都合よく衝動がくればな。たった今、アダムの力を使ったはずなのに。……そのせいにしてしまったら、逃げてるだけ、か)」

マヤ『シンジくんのタイミングに合わせる』

シンジ「(最悪なのは、勇気を、覚悟を無駄にしてしまうこと。マヤさんはすごい決断をしてるんだ。それに応えなくちゃ――)」

【数時間後 マヤ部屋】

シンジ「(なりきりるんだ。僕はアカデミー俳優。僕は演技賞受賞俳優、よし、マヤさんを……)」スーッ パタン

マヤ「すぅー……すぅー……」

シンジ「(あ、あれ? ね、寝てる⁉︎)」

マヤ「う、うん」ゴロン

シンジ「(いや、きっとこれも演技なんだ。やるしかないんだ……)」

マヤ「うぅーん」

シンジ「寝てるんですか? それなら都合がいいや」

マヤ「ん……あ、シンジくん……もう朝?」

シンジ「起きたんですね。眠りが浅かったのかな」スッ

マヤ「え、時間……まだ、夜?」

シンジ「だめなんです。どうしても抑えきれなくて」ガシッ

マヤ「きゃっ、いたっ、な、なにっ⁉︎ し、シンジく――」

シンジ「騒がないでください!」ガバッ グッ

マヤ「むーっ!」

シンジ「無理なんですよ、もう……だから!」ブチ ブチ

マヤ「むっ⁉︎ むぅぅーっ⁉︎ ぷはっ、きゃああっ! 誰かっ!」

シンジ「ブラ、見えちゃいましたね」

マヤ「いやっ! くっ、このっ!」ガンッ

シンジ「いつっ」

マヤ「(あ、つい膝蹴りしちゃった。でも、予想してた以上に、こ、こわい……!)」

シンジ「……抵抗しても無駄ですよ」ムク

マヤ「ひっ!」ガタンッ ダダダッ

シンジ「逃げても無駄だって言ってるでしょう!」ダンッ ガシッ

マヤ「いや! 手首を離して! だ、誰か助けて!」ガシャンッ

シンジ「前、はだけてますよ。そんな姿を見せていいんですか」むにゅ

マヤ「あっ、嫌、嫌、気持ち悪い! 触らないでっ!! シンジくん⁉︎ 正気⁉︎ なにやってるかわかってるのっ⁉︎」

シンジ「わかってますよ。それでも、無理なんだ……!」

マヤ「なにが無理なのよっ⁉︎ こ、こんなことになるなんて」

シンジ「……」スッ グイッ

マヤ「いやあああっ!!」

シンジ「マヤさん、ピンク色なんですね」

マヤ「(こ、これ、本当に演技⁉︎ シンジくん、まさか本当に……⁉︎)」

シンジ「こわいんですか? そんなにガタガタ震えて」

マヤ「ひっ、や、やめて。もう。今ならなにもなかったことにしてあげるから……!」

シンジ「そんなこと言って。マヤさんもこういうこと好きなんじゃないんですか?」スッ

マヤ「あっ、乳首、やめてっ。つまんじゃ」

シンジ「敏感なんですね。それとも、弱いのかな。もっともっと反応で楽しませてよ」

マヤ「やめっ、てっ! しつこく、しないで」ビク

シンジ「どうしたんですか? 嫌だって言ってたのに」

マヤ「だめ、本当に、あんっ、ちょっと待って! やめてったらぁっ!」

シンジ「(こ、これは、思った以上に、その、やっちゃいけない感が……)」

マヤ「お願い、もうやめてよぉ」ポロポロ

シンジ「……っ! 乳首、たってきてますよ」パク

マヤ「えっ⁉︎ きゃ! あ、ああっ、そんな、うそ、あぁんっ!」

シンジ「(途中でやめちゃここまでが無駄になってしまう。母さんにも、バレる! マヤさん、もう少しですから!)」

マヤ「あっ、舐めないで。やだ、やだやだやだやだ、気持ち、悪い」

シンジ「……」スッ

マヤ「……っ⁉︎ そ、そっちはだめ!」

シンジ「んっ、壊したいんです。だから、もっと悲鳴を聞かせてください」

マヤ「(そ、そんなっ⁉︎ ただ太ももに挟むだけじゃ⁉︎ や、やっぱり、ちゃんと打ち合わせしておけば!)」

シンジ「……」

マナ「あっ、んっ! 舌でころころ転がさないで、んっ!」キュッ

シンジ「はぁ、急に内股になって……そっか。気持ちいいんだ」

マナ「ち、違うわっ! 今のはただ、条件反射的に反応して……! こんなのひどすぎる! 無理やり!」

シンジ「こっちは?」グィッ

マナ「や、やめてっ! パジャマ脱がさないで!」

シンジ「はぁ、はぁっ」

マナ「ちょっ、ちょっと待ってったら! シンジくん!」

シンジ「あつい。熱がこもってる、もしかして、これが濡れてるっていう」

マヤ「そ、そんなはずないっ! 勘違いしないで! 童貞のくせに!」キッ

シンジ「…‥くっ、くっくっくっ」

マヤ「な、なに? なにがおかしいの。あなた、狂ってる……!」

シンジ「誤魔化してるのがおかしいんですよ。ここをこんなにしておいて」

マヤ「(まずっ……もしかして、本当に濡れてきてるかも……なんで? こんなの、理想じゃない。はじめてはもっと、なのに、なんで体が熱く)」

シンジ「ここから、いやらしい匂いしてますよ」くんくん

マヤ「ひっ、なに、やって⁉︎ 嗅がないでよ! このっ! 変態!」

シンジ「自覚させてあげてるんですよ」

マヤ「(やだ、恥ずかしい。やめて、そんなに顔近づけないでぇ……!)」

シンジ「マヤさん、もしかして、マゾの気質あるんじゃないですか?」

マヤ「ば、バカ言わないでよ! 女性は防衛するためにしかたなく愛液を!」

シンジ「そんな話聞いたことありませんよ。僕が知ってるのは発情してるってだけ」サワ

マヤ「ひゃっ⁉︎」ビクゥ

シンジ「こうやって、指でなぞれば、身体は反応する」

マヤ「き、汚い指で……っ! んぁっ! やだったら、そこは、だめよっ」

シンジ「キレイですよ、マヤさんのここ」ボソ

マヤ「はぁっ、んっ、え? あっ!」

シンジ「ここの、先端のところは?」

マヤ「そ、そこはっ⁉︎ クリッ⁉︎ 」ビクゥッ

シンジ「僕に教えてください」

マヤ「んっ、いや、動かさないで、押しつけないでっ! ぁあっ」

シンジ「……」

マヤ「(か、感じる……気持ちっいい。しん、じられ、ないっ! 私、本気で、感じて……っ! ゾクゾクする……!)」

シンジ「もう、抑えなくて大丈夫みたいですね」

マヤ「んっ、んっ」ビク ビク

シンジ「顔、よく見せてください」

マヤ「(なに、なんなの、この感覚。なんでこんな。屈辱しかないはずなのに。男なんて……粗暴で、不衛生で……)」

シンジ「目がうるんでますよ。泣いているせいだけじゃないですよね」

マヤ「(なのに……! なんでこんなに興奮してるのよぉぉ……)」キッ

シンジ「まだ睨む元気が……もっとですか? 」

マヤ「あっ、ご、ごめんなさっ、やめっ、あっ。小刻みに動かしちゃ」

シンジ「どうなるの?」

マヤ「い、イキたくないっ! イキたくないの! 止めて!」

シンジ「へぇ」

マヤ「ど、どうしてっ⁉︎ やめてって……っ! 言ったぁっ!」

シンジ「さっきから何度も聞いてますよ。でも、僕は?」

マヤ「ご、ごめんなさいっごめんなさいっ、謝ります! やめてください! 指をとめて!」

シンジ「ほら」

マヤ「(な、なんでこんなにうまく……あっ! 波きてるっ! なにも考えられなくなる!)」

シンジ「イきそうですね」

マヤ「だめぇえぇえ~~~~っ!!」ビクゥ ビクゥ

シンジ「……」

マヤ「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

シンジ「変態は、どっちですか?」

マヤ「はぁ、へ? な、なに?」

シンジ「僕、中学生ですよ。わかってますよね」

マヤ「そ、そんなの――」

シンジ「じゃあ、イッたマヤさんはなんなんですか? もしかして、普段から[田島「チ○コ破裂するっ!」]してました?」

マヤ「そんな⁉︎」

シンジ「クリトリスだけでイクなんて」

マヤ「そ、それは……その……」

シンジ「隠れてしてたんだ? なにをオカズに?」

マヤ「(ああ、言わないで。そんなに責めないで。言わされちゃうんだ……言うしかないんだ)」

シンジ「マヤさん?」

マヤ「せ、先輩の、こと」

シンジ「リツコさん? お、女ですよ?」

マヤ「だ、だって、男なんて……」

シンジ「(こ、これは知らなくてよかったな)」



マヤ「あの……もう、やめてくれるの?」

シンジ「そんなわけないじゃないですか」ヌギ

マヤ「(やっぱり、シンジくん、本当に抑えがきなくなっちゃってるんだ。このまま犯されるの? 悔しい……でも、体の奥が熱い)」

シンジ「ここ、こんなになってるんですよ」

マヤ「……っ! それ、男の人の」

シンジ「見たことないんですか?」

マヤ「その、父さんのはチラッと。でも、反り返ってなかったし! そ、それに、みんなそんなにおっきいの⁉︎」

シンジ「(恥ずかしい)」

マヤ「(あ、あんなのはいるの? でも、無理やりされちゃうんだろうな……想像しただけで、ゾクゾクしちゃう)」

シンジ「足、ひろげてください」

マヤ「い、いやよっ!」

シンジ「今さらですか?」

マヤ「(やっぱり……今日、わたし……)」

シンジ「ベッドに戻りますよ」スッ ヒョイ

マヤ「え? わっ⁉︎ わ、私重いよ! ど、どこにそんな力が!」

シンジ「……今は、なんでもできそうな気がします」

マヤ「(これも、瞳の色のせい? 力まで強くなるの? さ、逆らえない。シンジくんに、私が支配されてしまう)」

シンジ「……」ドサ

マヤ「(今から、無理やり犯される……。反り返ったお、おちんぽで私を貫いて、征服するつもり。泣いても、頭をおさえつけて。声をだしたら、ふさがれて……)」トロン

シンジ「こっちに」ギュ

マヤ「(あっ、男の人の、腕。もっと、もっと汚して。なにもかも考えられないくらい)」

シンジ「マヤさん、大丈夫ですか?」コソ

マヤ「……」ポーッ

シンジ「あの、布団かぶせますから。足を閉じて」コソ

マヤ「はい……」スッ

シンジ「ちがっ⁉︎ 開いてどうするんですか! 閉じるんですよ!」コショコショ

マヤ「はい、足を絡め……たらいいの」ガシッ

シンジ「(うっ! ちょ、ちょっと⁉︎)」

マヤ「し、シンジくぅん」

シンジ「んっ⁉︎」

マヤ「もっと、もっと罵ってぇ。私を叱ってぇ」

シンジ「(な、なんなんだよ、これ⁉︎ こんなはずっ⁉︎)」

マヤ「はぇ……どうしたの? うふふ、そんなに戸惑った顔して……あ、そっか。私が変態だから軽蔑してるんだ……そんな目で」

シンジ「マヤさんっ! しっかり!」コソ

マヤ「……? 今から私を犯すんでしょう? んっ」

シンジ「(き、キスっ⁉︎ こ、こんなつもりじゃ)」

マヤ「(ああ、汚い。唾液交換してる。汚い、キタナい。でも、それがいい……!)」

シンジ「んっ、ちゅ、マヤっ」

マヤ「ちゅ、ちょう、らいっんっ、唾液、シンジ、んっ」

シンジ「(アダムのせいなのか⁉︎ なにか他にも⁉︎)」

マヤ「ぷはぁっ、ここ、ほら」シュシュ

シンジ「くっ、マヤさん、握ってこすらないで」

マヤ「軽蔑する? こんな変態なことして気持ち悪いよねぇ」シコシコ

シンジ「ちょ、落ち着いて」グィッ

マヤ「きゃっ! あぁ、やっぱり、犯されるんだ。いいよ、その汚いおちんぽで、さっさとやれば⁉︎」

シンジ「や、やるわけ……」

マヤ「おまんこがわからないの? ぷっ、やだ。さっきは凄いテクだったくせに。やっぱり童貞なんだ」

シンジ「(ど、どうしたら。離れたらバレるし。とりあえず、腕を)」グィッ

マヤ「どうせ抵抗しても無駄なんでしょ⁉︎ どうする気⁉︎ ……私に誘導させる気なの? そんな屈辱。どこまで私を……」スッ

シンジ「……っ? あ、あれ、急に身体の力が」

マヤ「(もっと、もっと、はやく。焦らさないで」

シンジ「(し、しまった。アダムの力を使いすぎた。身体に負担が)」クテ

マヤ「シンジくん……? なに? まさか、私に上に乗れって?」

シンジ「いっ、言ってなっ!」

マヤ「どこまでもひどい……。私、はじめてなのよ? 本当に中学生? この、どS」

シンジ「(口がうまく、まわらない)」

マヤ「し、仕方なくよ。いいわ、私、自分を守るために、やる」

シンジ「(……? 守るため? 正気に戻ったのか?)」ゴロン

マヤ「そうやって、見上げて、私の反応を楽しむんでしょう?」

シンジ「(も、戻ってない! 絶対、戻ってない!)」

マヤ「んっ」ヌチ

シンジ「(本当にはいっちゃ……! さ、さきっぽが)」

マヤ「こ、こわい、こわいよぉ」ポロポロ

シンジ「や、やら……!」

マヤ「あっ、い、いたっ」ヌチュ

シンジ「(くそっ、やっぱり呂律がうまくまわらない!)」

マヤ「んっ……あっ、いつっ、あ、あぁ」ググッ

シンジ「(動け、動け、腕を動かしてマヤさんをどけないと……!)」ググッ

マヤ「あっ! し、シンジ、くん? なにして、足」

シンジ「(よ、よし、もうちょっと)」

マヤ「だめ! 足が踏ん張れなくなる! やめて! ま、まさか、はやくしろって⁉︎」

シンジ「(違うよ!)」

マヤ「きゃっ⁉︎」ツルッ ブチュン

シンジ「……っ!」

マヤ「か、かはっ!」プルプル

シンジ「(え、う、うそだろ)」

マヤ「(は、はいっちゃった)」

シンジ「(女の人の中って、こんな……!)」ピクッ

マヤ「う、動かないでっ!」グィッ

マヤ「きゃんっ! う、うごっいちゃ、くっ、いたっ」

シンジ「(は、はやく抜かないと)」

マヤ「言っても無駄なのね。動けばいいの……? さっさとっ、だして、終わりにっしてっ」ヌチュヌチュ

シンジ「うっ、はぁっはあっ」

マヤ「(やっぱり、凄く痛い! お腹の中にはいってるのがわかる。私、あんなに嫌だった男をくわえこんで)」

シンジ「ま、マヤっ」

マヤ「はぁっはぁっ、んっ、気持ちよく、なんかっ、ないっ」

シンジ「腰、ふり、すぎ」

マヤ「(こんなに、つらい……あれ? でも、なんかフワフワしてきたような。シンジくんのおちんちんの形がよくわかって……)」

シンジ「ぐぅ」

マヤ「はぁっはぁっ、満足? 私の膣にいれて。これが見たかったんじゃないの」

シンジ「(中がウネウネしてて……締まる)」

マヤ「(き、気持ちいっ。……気持ちいい? 指で触ってるのとはまた、全然違う、なにこれ。こんなの、知らない)」

シンジ「(動けぇぇっ!)」

マヤ「あっ、やめっ、下からっ突き上げないでっ! あっんっ、んっんっんっ」

シンジ「(そ、そうじゃないって!)」

マヤ「(入り口、感じて。こ、この子。私を、女にしようとしてる? シンジくんのおちんちんの形を覚えさせようとしてるの?)」

シンジ「ぐっ!」

マヤ「だめ、だめ。今、イかされたら。だめよ、戻れなくなっちゃう!」

シンジ「(そんな、押しつけちゃ)」

マヤ「は、激しくしちゃ……!」

シンジ「(してるのはマヤさんですよ!)」

マヤ「いく、いく、いっちゃうぅぅぅ~~」