恭介「闇たこ焼きパーティーするか」理樹「な、なに?」 (31)



食堂

理樹(早朝、いつものようにみんなで食事を楽しんでいると隣の恭介がぽつりと呟いた)

理樹「……今なんか言わなかった?」

恭介「ああ」

理樹(そう返事すると恭介はわざわざ箸を置いて立ち上がり、皆にはっきり聞こえるように宣言した)

恭介「聞いてくれ!今日の夜は闇鍋ならぬ闇たこ焼きパーティーを開催する!!」

理樹(その声に全員箸を止めざるをえなかった)

謙吾「おっ、なんだその心が踊るフレーズは!?」

恭介「ふっ、闇鍋ってあるだろ?電気を消してみんなで鍋に持参した食材を打ち込むアレだ」

クド「わふー!私、ちょうどテブアのお爺さんから聞かされててずっと一度やってみたかったのです!」

恭介「おおっと焦るな能美。今回は鍋ではなくたこ焼きだ」

美魚「たこ焼き……なるほど。たこの代わりになる食材を全員で持ち込む訳ですね?」

恭介「その通りだ」

鈴「また変なことを思いついたな」

来ヶ谷「どうでもいいが闇たこ焼きパーティーって物凄く語呂悪くないか?」

葉留佳「うぉー!なんだかよく分からないけど楽しそー!!はるちんは賛成ですヨ!」

真人「ふっ、俺は食うイベントならなんでも参加するぜ」

小毬「えへへ~この間のホットケーキパーティーみたいだね~私も参加しまーすっ!」

理樹(結局、運がいいのか恭介が狙ったのか全員予定がなかったのでやることになった。食材は各々他のメンバーに中身がバレないように放課後調達することになった)

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食堂

理樹(真人と食堂に向かうと既にみんなが集結していた。その中心ではテーブルにたこ焼き器と既に粉を混ぜた生地が置かれていた)

恭介「よっしゃあ!全員食材はもってきたかぁ!?」

「「「イェーーイ!!」」」

理樹(みんな白ビニール袋や中身を隠したタッパーなどを手に一堂に会した。なんだかんだで僕も夜までワクワクしていた。つくづく恭介は企画するのが上手い)

謙吾「そういえば恭介ひとつ疑問に思うことがあるんだが」

恭介「どうした?」

謙吾「たこ焼きを作る過程で普通に中身がバレたりはしないのか?」

恭介「まあそこは食材を入れて中身がわからなくなるほど生地が固まるまで全員が見なかったらいい」

真人「随分アバウトだな…まあいいけど」

恭介「あっ、ちなみに分かってるとは思うが食えない物を投入するのはナシな。もしやったら今回の後片付けは全部そいつ一人にやってもらう」

葉留佳「あ、あははー!やだなー!そんなの当たり前田のクラッカーっすよ!」

理樹(後ろへスナップを効かせて持っていた袋のうちの一つをゴミ箱に捨てる葉留佳さんを僕は見た)

鈴「さっさとやろう。お腹減った」

恭介「よーし!じゃあまずはたこ焼き器に油を塗るぜ!」

理樹(恐らく恭介はたこ焼きを作るのは初めてのはずだが、かなりテキパキと準備を始めていった。たこ焼き器に油を塗り、生地を黒い鉄の部分が見えなくなるまで一気に流し込むその姿はまるで屋台の兄さんだ)

鈴「手際がいいな……」

恭介「ちなみに今回は闇鍋風なのでやめておくが天かすを入れるともっと風味がよくなるらしい」

理樹「へえ~…」

恭介「じゃあ小毬、悪いが電気を消してくれるか?」

小毬「了解しました~!」

謙吾「いよいよか……)

理樹(小毬さんが電気を消しにいっている間に恭介はたこ焼き器の周りにろうそくを立てて、マッチで火を灯した)

パチッ

「わふー!」

「うぉ!」

理樹(電気が消えた後はそのろうそくだけが光源だった。灯りは僕らの周りをうっすらと照らし、なんだか凄くそれっぽい雰囲気を作り上げた)

恭介「準備はいいかお前ら?闇たこ焼きパーティースタートだ!」

続く

グツグツ……

恭介「よーしじゃあまず理樹、謙吾、西園、能美、俺から入れていこう。それぞれ入れる数はバラバラでいいが1人最低でも一個は食えるようにな」

クド「はーいなのです!」

理樹「よーし……」

理樹(うっすらと手前のたこ焼きプレートが見える程度の明るさに調節してからそれぞれ具を投入していった)

ポトッ…ポトッ…

恭介「入れたな?あとは渡した竹串で生地が固まれば具の中身が分からない程度にたこ焼きを回していってくれ」

理樹(すると僕の右隣から西園さんの声がした)

美魚「恭介さん…あまりこういうのはやった事がなくて上手く作る自信がないのですが……」

恭介「いや、最初は多少不細工でもいいんだ。どんどん回していくにつれて形が良くなっていく。強いていうなら生地を穴から半周させて周りの生地を穴の方に寄せていくように作っていくのがコツだ」

謙吾「ふむ…そうやって半円から円球にしていくのか」

真人「やべえ…生地が焼ける匂いで余計に腹が減ってきた!」

恭介「ふっ、慌てるな真人君。たこ焼きは一個一個が小さいから出来上がるのは案外早い。こうやって話していっている間にも固まってきてるんじゃないか?」

クド「わふー!確かに生地が回せるようになってきました!」

理樹(生地を突いてみると既に手応えが感じられた。試しに串で端を押してみるとくるんと生地が回った)

理樹「うん。僕の方もそろそろ大丈夫みたい」

恭介「ようし、では灯りをつけてくれ鈴」

鈴「ん」

パチッ

「「「おおー」」」

理樹(たこ焼き器には円球の生地が仲良く並んでいた。多少形が崩れているものもあるが、どれも綺麗なクリーム色でもう少し焼けば美味しそうな姿へ変わるに違いない)

恭介「よし、あとは俺が仕上げをやろう。みんな皿を用意してくれ」

葉留佳「よっしゃー!!」

真人「イェーイ!」



……………………………………………………



恭介「よーしそれではまず俺、理樹、謙吾、西園、能美の5人が作ったたこ焼きを食っていくぜー!!」

鈴「もー耐えられん!」

パクッ

恭介「あっ、待て鈴!」

鈴「あっ、あつっ!あひゅっ…ああー!んんー!」

理樹「!?」

小毬「り、鈴ちゃん!大丈夫!?」

恭介「お前そういえばたこ焼き食った事なかったか…出来立てのはいくら外がサクサクして冷めてても油断してたら中のトロッとした熱い生地にヤラれるぞ」

理樹「鈴は猫舌だから余計に地獄だね……」

真人「ふーっ、ふーっ、パクッ……ん……んめえぇぇえ!!」

理樹(と、鈴が口の中のたこ焼きと格闘しているところで真人は美味の雄叫びをあげていた)

謙吾「ふむ……明太子か。入れたのは誰だ?」

美魚「あっ、それは私です。実家から送られてきたものなのですが、食べ切れなかったのでせっかくと思い、入れてみました」

真人「うーん生地の甘さと明太子の辛さのハーモニーっていうのか~~~?味の調和っていうのか~~?例えるなら筋トレの後のプロテイン!バディスタとクレートのヒーローインタビュー!デニーロ主演のスコセッシ作品!………って感じだな!」

理樹「どういう意味!?」

来ヶ谷「うむ。噛みしめた後のプチプチとした食感が楽しめる賑やかなたこ焼きだ。生地の薄味で辛さが程よく中和されている」

葉留佳「おひょー!こりゃ何個でも食べられますヨ!」

美魚「ふふ……楽しんでいただければなによりです」

恭介「さて次は……モグ……ん?なんだこれタコじゃ……いや、違うな…」

小毬「パクッ……ん……あ~これはイカさんだねぇ」

謙吾「ああ!一度やってみたかったんだ。タコの代わりにイカを入れるっていうのをな!どうだ!?」

真人「ん、ん~~……まぁ、美味いよな?」

理樹「あ、あはは……そうだね。普通に美味しいよ」

葉留佳「あ……うん。そうですね」

謙吾「な、なんだその微妙なリアクションは!?」

恭介「あのなぁ謙吾……」

来ヶ谷「あまりに食感が似過ぎて普通のタコ焼きと変わらん」

謙吾「そ、そんなぁ………」

理樹(来ヶ谷さんの無慈悲なツッコミに膝をつく謙吾。哀れだ……)

クド「み、宮沢さん!私はとても美味しいと思いましたよ!」

鈴「次行くか」

パクッ

ビヨーン

鈴「な、なんだこれは!かじったらビヨーンってなる!」

理樹「あははっ。それは僕が入れたチーズだね」

来ヶ谷「ふふっ、口の中で生暖かいドロッとしたものが流れて糸を引いていくな」

理樹「だからチーズだよ!?来ヶ谷さんが言うとなんか色っぽくなるからやめて!」

ツプッ……

美魚「これは……とうもろこしですか?」

クド「はい!その通りなのです!」

小毬「なんだか優しい味ですねぇ~」

葉留佳「もしゃり。………おやおや!こりゃ豚肉ですナ!?」

恭介「その通りだ。案外合うだろ?」

真人「なんかここまで来るとお好み焼きみたいだな!美味いからいいけどさ!」




理樹(このように前半は楽しく過ぎていった。しかし
その数十分後、僕らは思い出した……リトルバスターズというメンバーの半分以上はアホばっかりだったこと………さらに言えば残りのメンバーがそのほとんどを占めることを………)

恭介「じゃあ次は真人、来ヶ谷、三枝、鈴、小毬だ。さあ電気を消そう!」

理樹(あれ、なんだろう…何もおかしい所がないはずなのにそこに小毬さんの名前が入っていることが凄く不自然に感じる)

パチッ

真人「よーし…」

トロォ……

葉留佳「そーれ!」

ポトポト……

小毬「これくらいかなぁ?」

ポチョッ

鈴「ふふふ……」

ボトッ

来ヶ谷「…………」

グチョォ……

…………………………………………


恭介「さーて実食に移るぜ!」

理樹(なんだか色々と聞き捨てならない効果音が聞こえたりしたけどどのタコ焼きも見た目には異常は見当たらない)

美魚「ではいただきます」

パクッ

美魚「……これは、キムチですか?」

小毬「うんっ!タコ焼きにしたらどうなるか分からなかったけど美味しいねぇ~」

謙吾「ほう。焼くことで水分が飛ぶかと思ったが噛みしめたら繊維からジュワッと汁が出て良い食べ応えだな。なかなかだぞ神北!」

真人「イカで失敗した奴がなんか言ってるぜ」

謙吾「なんだと!?じゃあお前のタコ焼きはどうなんだ!」

真人「へっ、じゃあ食ってみな!その右のが俺のだぜ!」

謙吾「よーし!」

パクッ

謙吾「ん、んんーーー!?」

理樹「どれ………」

パクッ

ネチョォ

理樹「ぼほっ!?」

鈴「ど、どーした!?」

理樹「な、なんだこの……」

理樹(噛めば噛むほど伸びていく。さっき食べたチーズとはまた別種類の粘り気。あと臭い。こ、これは……)

恭介「な、納豆だコレ!」

葉留佳「はぁぁー!?」

クド「な、なにを考えてるんですか真人さん!?」

真人「えっ、そんなにダメか?健康にいいし味も食えないことはないだろ」

鈴「妥協で喰わせるようなもんを入れるなー!」

ゲシッ

理樹(鈴が思わぬ伏兵に怒りの飛び蹴りを炸裂させた)

真人「うっ!すいません……」

理樹(結局残りの納豆タコ焼きは議論の結果真人に全部食べてもらうことになった)

謙吾「く、くそ…気を取り直して次を食べよう……」

パクッ

謙吾「ん、んぉおおお!?」

理樹「どれ……」

パクッ

パチパチパチッ!

理樹「ボホォッ……!?」

鈴「ど、どーした!?」

理樹(その『具』が舌に付いた瞬間、文字通りの衝撃が走った。パチパチッと頭の中に音が響く。あと痛い。こ、これは……)

恭介「ぽ、ポップロックキャンディだコレ!」

美魚「なにを考えてるんですか葉留佳さん……」

葉留佳「あははー!だって面白いじゃん!食べた瞬間予想外の爆発!イヤーインパクトありますヨこれは……」

鈴「むしろインパクトしかないわー!」

小毬「う、うーん……たこ焼きでは甘いのにしないほうがいいかもね……」

理樹(結局残りのポップロックキャンディタコ焼きは葉留佳さんに全部食べてもらうこととなった。というかさっき西園さんナチュラルに葉留佳さんの入れたものだと見抜いていたような……)

謙吾「ぐふっ……き、き、気を取り直して次を食べよう……」

パクッ

謙吾「バ、バハァッ!!」

理樹「どれ……」

パクッ

モグ……

理樹「ん、んんん!?」

理樹(なんだこれ!?『具』……確かに『具』はある!でもなんだこれは……なんというかその……あ、味が無いッ!まるでゴムを食ってる感触だ!)

恭介「グッ……懐かしきこの感覚……モンプチだコレ!」

鈴「あーやっぱりダメか?」

謙吾「バカ!なにを食わせてるんだ!!」

理樹「とうとう普通の食べ物じゃなかったよ!!」

鈴「いやーいつもアインシュタインたちが美味しそうに食べてたからな。実験的に入れた」

理樹「僕たちを実験台にしないでよ!」

クド「こ、これ私達も食べるんですかぁ?」

理樹(と、涙目で僕を見るクド。無理もない)

真人「モグ……なんか薄味だが食えねえことはないな」

「「「……………」」」

真人「えっ。な、なんだよ……」

理樹(結局残りのモンプチタコ焼きは全員のアイコンタクトの結果真人に食べてもらうこととなった)

謙吾「き、き、き、気を取り直して次……というかラストを食うか……これは来ヶ谷のものだな?」

来ヶ谷「ああその通りだ。そして全員が食べる前に言っておくことがある」

「「「?」」」

来ヶ谷「少し趣向を変えて実は私が投入した10個の具のうちの9個は普通のタコだ。魚屋で新鮮な物を仕入れたから味は良いはずだ」

恭介「9個……ということは残る1つが当たりという訳だな?」

謙吾「なるほど。当たりくじタコ焼きという訳か」

真人「で、残る一つはなんだ?」

来ヶ谷「秘密だ。………だが、まあ、死にはしないよ……うん」

「「「!?」」」

理樹(この瞬間、僕らは当たりくじではなくロシアンルーレットであることを悟った)

モンペチ…

恭介「お、おい待て!お、俺は全然怖くはないがそれって能美や小毬にも当たる可能性があるんだろ?そんな危険なタコ焼きで大丈夫なのか!?やめといたほうが良くね!?」

来ヶ谷「女の子は安心したまえ。なんせ私が直々に君らの皿に盛ったからな」

理樹(男子が対象か!!)

真人「お、俺さっきからみんなの分貰っちゃったからもうお腹一杯だな~っと……」

来ヶ谷「おいおい男の子だろ?タコ焼き一つ食えないのか?」

真人「うっ……」

謙吾「く、来ヶ谷め!俺たちだからってなんでもいいと思ってるだろ!?鈴!西園!言ってやれ!!」

鈴「このタコ美味しいな!」

美魚「本当ですね。どこから仕入れたんでしょうか?」

恭介「か、懐柔されてやがる!!」

理樹(ニヤリと笑う来ヶ谷さん。なんだかとても爪楊枝が重く感じる)

来ヶ谷「ふふふ、私も鬼ではないさ。もし倒れることがあっても治るまでこの私がつきっきりでリンゴを剥いてやる。美少女から看病を受ける。こんな良いことはないだろ?」

理樹「そんな酷いマッチポンプ聞いたことないよ!!」

来ヶ谷「さあどうした?早く食べてみせろ」

葉留佳「そーだそーだ!」

クド「御愁傷様です……」

美魚「小毬さん。さっきのキムチのもう一つ貰っていいですか?」

小毬「どぞ~」

理樹・真人・謙吾・恭介「「「ゴ、ゴクリ………」」」

パクッ



………………………………………………


…………………………


>>21
本当だ…モンプチじゃモノホンじゃねーか!

パクッ


恭介「お、美味しい……!」

真人「よ、よっしゃあ!生き残ったぜ!!」

謙吾「………美味い……ここまでタコが美味いと思ったのは生まれて初めてだ……!」

葉留佳「……ということは……」

恭介「まさか理樹が!?」

理樹「……………」

理樹(この歯ごたえ、この風味、この味は……)

理樹「いや、普通に美味しいタコだけど……」

「「「えっ!?」」」

来ヶ谷「はっはっはっ!そうだ。全部ちゃんと美味しいタコだよ」

真人「な、なにぃ!?」

謙吾「お、俺たちを騙したのか!?」

来ヶ谷「ふふっ、悪かったね。だけどスリル満点のタコ焼きは普通より美味しく感じただろう?」

理樹「ある意味ね……でも生きた心地がしなかったよ!」

恭介「フッ、こりゃ一本取られたな」




理樹(こうして闇タコ焼き大会は終わりを迎えた。いろんなハプニングは起きつつも結果的にはみんな満足しただろう。ただ今回のことで創作料理をさせてはいけない人が浮き彫りになった。僕も今のうちに料理の練習をしておこうと思う)





終わり(∵)

ううむ多忙過ぎてどうしても投稿が遅れるな
これからもスレ立ては普通に続けるけど申し訳ないが最低でも7月が終わるまでは毎日ように更新ってのは難しそうだ(∵)

久しぶりにあなたのリトバスSS読んだ気がする
面白かった乙


地味にモンプチがどんな味なのか気になってきた
あと、更新されていたからと言ってこの時間に読むのは控えるべきだったかも

>>26
待たせたな
これからも楽しんでいってくれ

>>27
あれは冗談で食うものじゃない。いや本当に

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