菜々「それじゃPさん、行ってきますね」【モバマス】 (36)




P(それが、俺の前から姿を消す前に菜々が残した……最後の言葉だった……)




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「とうさん、いきなり重いモノローグから始めるのはどうかと思うよ」

P「あ、ああ……すまんな息子よ」

P「いや、なんだ……その、もうすぐ一年になるかと思って……つい、な」

息子「一年……おかあさんが、居なくなってから?」

P「ああ……」


P「まったく、どこで何をしているのやら」

娘「おかあさん……もう、このまま帰ってこないの?」

P「そんな事ないよ、きっと帰ってくるさ」


P(もう、一年前になるのか……)

P(あの時菜々は、役所に行くと言って出かけていった)

P(子供が産まれたから、出生届を提出するためだったはずだが……)


P(しかし、菜々は戻らなかった)

P(すぐに警察に届け出て調査してもらったが、どういうわけか役所どころか、自宅近隣の防犯カメラにさえ姿が映っていなかった)

P(まるで……我が家を出たと同時に、この世から消えてしまったかのように……)


P(子供のことを見ておく必要があったとはいえ、何故菜々に着いて行かなかったのかと──)

P(あれ以来、後悔しなかった日は無い……)


P「それじゃ、父さんは仕事に行ってくるから、良い子にしているんだぞ?」

娘「……」ギュッ

P「?」


P「p菜、どうした? 離してくれないと父さん遅刻してしまうよ」

娘「……わたしもおとうさんについてく」

P「え……? 付いてくるって……事務所に?」

娘「……うん」

P「えぇ……?」

息子「あれだよ、とうさんがおかあさんの話するから、さみしくなっちゃったんだよ」

P「……」


P(そうか……この子たちも、寂しいか……)

P(普段から聞き分けがいいから忘れていたが──)

P(そうだよな……本当なら、母親を一番必要とする時期だもんな)


P「それじゃ二人とも、お利口にしていられるか?」

娘「うん!」

息子「連れて行ってくれるの?」

P「ああ、ちょっと待っててな」

P(保育所と、ちひろさんに連絡しておかないと……)


──事務所──

P「ちひろさんすみません、無理を聞いてもらって……」

ちひろ「いえいえ、いいんですよ」

ちひろ「私も久しぶりにp君とp菜ちゃんに会いたかったですから」

ちひろ「それに、他のアイドルの子達もそう思っているはずですよ」


息子「ちひろさん、お久しぶりです」

息子「いつも父がお世話になってます」

娘「おせわになってます」

ちひろ「!?」


ちひろ「え……Pさんのお子さんたちって、いくつでしたっけ……?」

P「もうすぐ一歳ですね」

ちひろ「……喋ってますよ?」

P「ええ」


P「俺に似ずに、賢く育ってくれて、喜ばしい限りです」

ちひろ「いや、おかしいですよね!?」

ちひろ「一歳っていったら、単語一語を話せるかどうかってところですよ!?」

P「まあ、たまに舌っ足らずになることはありますね」

P「それに、歩くのはまだ少し苦手みたいで」

ちひろ「……私がおかしいのかしら」


まゆ「pくん、お久しぶりですね」

まゆ「まゆのこと、覚えていますか?」

息子「……ほんの少しですが、覚えています」

まゆ「あら、嬉しい」



亜里沙「pくん……可愛い……面倒を見てあげたい……」

星花「ええ、本当に……愛らしいですわ……」

響子「私も……赤ちゃん欲しいな……Pさんの、赤ちゃん……」

息子(とうさん……周りの人たちの、ぼくを見る目が怖いです……)



まゆ「pくんさえよければ、まゆがpくんのお母さんになってあげたいんですけどねぇ」

息子「まゆさん……」


息子「すみません、お気持ちはとても嬉しいのですが」

息子「ぼくの母は、安部菜々ただひとりなんです」

まゆ「……あなたのそばから居なくなってしまっても、ですか?」

息子「はい」


息子「それに、まゆさんが母親になってくれるなんて、ぼくの身には過ぎることです」

まゆ「……」



まゆ「……やっぱり、pくんは、Pさんお子さんなんですね」

まゆ「その、意思が強いところ……そっくりです」


息子(とうさん……我が父ながら罪作りな……一体何人のアイドルを落としてきたのやら……)



ミミミン ミミミン ウーサミーン


娘「……」

「おや、p菜じゃないか」

娘「あ、晶葉ちゃん」

晶葉「ん……私を覚えているのか」

娘「うん、少しだけ」

娘「あと、家で晶葉ちゃんがテレビに出てるのを見てるから」

晶葉「そうか」


晶葉「……ウサミンのライブを見ていたのか?」

娘「うん」


娘「ライブ中のおかあさん、かっこいい」

娘「あと、ウサちゃんロボもかっこよくてかわいい」

晶葉「ふむ、ロボの格好良さに気づくとは、なかなか見る目があるな!」

晶葉「そうだ、少し待っていてくれ」

娘「うん……?」


晶葉「待たせたな、p菜にこれをやろう」ゴトッ

娘「これ……ウサちゃんロボ?」

晶葉「うむ」

晶葉「かつて君の母と一緒のステージに立った由緒あるロボだ」


晶葉「これは菜々に譲った物なんだが、メンテナンスのために私が預かっていたのだ」

晶葉「整備はとっくに済ませてあるんだが……現状菜々本人には渡すことができないからな」

晶葉「代わりに、君が受け取ってくれ」

娘「ウサちゃんロボ、くれるの?」

晶葉「ああ……あげるというより、菜々のものだったからな、返すといった方が適切か」

娘「晶葉ちゃん、ありがとう!」


娘「けど……これわたしじゃ持てないよ……」

晶葉「フフフ、心配無用だ! p菜ほどの体格であればウサちゃんロボの方がp菜を抱き抱えて運べる!」

娘「わっ! ちょっとこわい……けど楽しい!」キャッキャッ

晶葉「改良を重ねたウサちゃんロボには造作も無いことだ」フフン


──なんやかんやで帰宅後──

P「ただいまー」ガチャ

P「まあ……返事は無いんだけどな」

P「子供たちは……はは、疲れて寝ちゃったか……二人ともぐっすりだな」


P(子供を連れて行っても、事務所の皆は嫌な顔一つせずに受け入れてくれた……)

P(理解ある職場で働くことが出来て、同僚や担当アイドルにも恵まれて、とてもありがたいと思う)


P(それに──)チラッ

息子「……」スヤァ

P(子供達は何事もなく育ってくれているし)


P「俺は、幸せ者だよ……本当に……」



P「……」

P(だけど……やっぱり……)

P(菜々……君が居ないと、ダメだ……)


P(ダメなんだ……)


娘「おかあさん……」ムニャ

P「……」ナデ...


P(……子供達も、待っているからな)

P(できるだけ早く、帰ってきてくれよ?)


P「……なんてな」




「あぁ、もうこんな時間」

「昼過ぎには帰るって言っちゃったし、Pさん心配してるかなぁ」

「まさか乗り過ごしちゃうなんて……」



ガチャ



「ただいま帰りましたー」

P「っ!?」


「Pさん、遅くなってしまってごめんなさい」

P「え…………?」


P「な……な…………?」

菜々「はいっ! あなたのナナが、今戻りましたよ!」キャハ

P「なな……ななあぁっ!!」ダキッ

菜々「わわっ!?」

菜々「Pさん!? どうしたんですか?」


P「ななぁ……今まで……どこに行ってたんだよぉ……」

菜々「え……? 言ってませんでしたっけ?」

P「ずっと……ずっと待ってたんだからな!」

菜々(えぇ~? Pさん、どうしちゃったの?)



菜々「そ、そんなにナナに会いたかったんですか? なーんて」

P「会いたかったに……決まってるだろ……っ!」

菜々「っ!?」

菜々(Pさん……泣いて? ええぇ!?)

菜々(だって、半日くらいしか経ってないのに、こんなに取り乱すなんておかしいよ!?)


菜々「も、もう! Pさんてば大げさですよぅ、少し会わなかったくらいで」

P「おおげさ? す、少し……って、菜々おまえっ」


P「ずっと行方をくらましておいて……どれだけ心配したか!」

菜々「え……?」


菜々(ずっと行方をくらましていたって……どういうこと?)

P「おまけに、何事も無かったかのように平然と帰ってくるし!」

菜々(……よくよく見てみると、部屋の様子も、なんとなく出かけた時と違っているような……あれぇ……?)



菜々(その時頬から、一筋の冷や汗が垂れてきたのです……)


菜々(なんて! すっとぼけてる場合じゃない!)


菜々「あ……あの、Pさん……」

菜々「ナナが、出かけてから……どれくらい時間が経っているんです……?」ダラダラ

P「え?」

P(菜々、何を言ってるんだ? あと、汗すごい)


P「だいたい一年だ……ほら」

菜々(Pさんのスマホ……今日の日付……)

菜々「っ!?」


菜々(ほ、本当に、一年経って───ハッ!?)

菜々(し、ししし、しまったああぁ!! やらかしちゃったあぁ!)



菜々「Pさん……あ、あの……その……」



菜々「すみませんでしたああぁぁっ!」ガバッ

P「えぇ!?」


P「それで結局、何がどうなっているんだ?」

菜々「えーとですね……今朝は──あ、えーっと、ナナにとっての今朝の話なんですけど」

菜々「家を出てからウサミン本星の役所に向かったんです」

P「う、ウサミン本星……?」

菜々「はい」


菜々「pくんとp菜ちゃんのウサミンIDの取得をするために、ですね」

菜々「あと、一応Pさんのウサミン星永住権の申請も一緒にしてきました」

菜々「審査が通れば、Pさんも晴れて名誉ウサミン星人ですよ!」

P「えぇ……?」



菜々「それで、話を戻しますけど……」

菜々「今になって思い出したんですが、太陽系周辺の物理法則って少し変わっているらしくて……ウサミン力学が適用されないんですよね」

P「た、太陽系周辺って……」


菜々「地球の物理学だと、確か相対性理論って言うんでしたっけ……物体の移動速度によって時間の流れが違っちゃうとかなんとか」

菜々「なので、ウサミンエクスプレスの量子ウサミン航法による超光速移動の影響で──」

菜々「ナナがウサミン星に帰っている間に、地球にいるPさんとの時間がズレちゃったみたい……です」

P「ズレちゃった……?」

菜々「太陽系以外の他の宇宙ならそんなこと起こらないので、忘れちゃってて」



菜々「ただ、それでも、ウサミン星と地球を往復するだけなら、そこまで時間のズレは生じないハズなんですけど──」

菜々「その……今回は太陽系で乗り過ごして、ライラット系まで行っちゃいまして、そのせいで一年も……」

菜々「Pさん、ごめんなさいぃ」

P「あー、うん……」


P「菜々の言ったこと全てを理解出来たわけじゃないが……」

P「話を聞く限りだとつまりあれか、菜々が帰ってこなかった原因は、いわゆるウラシマ効果ってヤツか?」

菜々「あ! そうです、それです!」




P「……」

菜々「……」



P「いや、いやいやいや」

P「待って、ちょっと待って……?」

菜々「はい?」


P「え? いや……えっ?」

菜々「?」


P「……あの、菜々の話を聞いていると……だな」

菜々「はい」

P「いや、その……俺の理解力が──」

P「あー、俺の頭がおかしいって事だったら……笑い飛ばして欲しいんだけど」



P「えっと……菜々は……つまり、本物の異星人ってことか?」

菜々「ええっ!? そこからですか!?」ガビーン


菜々「Pさんにプロポーズされた時に、聞いたじゃないですか」

菜々「『ナナがウサミン星人でも、好きでいてくれますか?』って」

P「……あれって、そういう意味だったの?」

菜々「どういう意味だと思ってたんですか!?」

P「結婚して、アイドルを引退した後も、キャラを維持する宣言かと思っていた」

菜々「えぇ……」


P「じゃあ、アイドル時代に住んでいた落花生で有名な某県某市は? あそこウサミン星じゃないのか?」

菜々「あれは、地球における活動拠点というだけです」


P「じゃあ、電車で1時間てのは……」

菜々「ウサミン星までは、地球からウサミンエクスプレスで1時間ほどです……」


P「じゃあ、pが年齢の割に賢いのは?」

菜々「あ、そうです! 子供たちは?」

P「ああ、今は寝ているよ」

菜々「そうでしたか……」


菜々「えっと、ウサミン星人の脳機能の発達は、地球人に比べると早いんです」

P「マジか……」


P(つまり、地球人である俺と──)

P(改めて自分を地球人て呼ぶのも変な感じがするが、ウサミン星人である菜々との混血でも、そうなるってことか……)


P「待てよ? ということは、年齢だけじゃなく『安部菜々』も、もしかして詐称なのか?」

菜々「それは詐称じゃないですっ!」

菜々「ナナはちゃんと地球への渡航申請をしたので、ウサミン外務局経由で日本国政府から異星人用の国籍と戸籍を貰っているんです」

P「なんかよくわからんけど、宇宙すごい……」


菜々「ということは……あの……」

菜々「Pさんはナナのこと、結婚してからもずっと地球人だと思っていたんですか?」

P「……そうなるな」

菜々「そんな……」


菜々(てっきり、ウサミン星人であるナナのことを……受け入れてくれたものとばかり考えていたけど)

菜々(でも、今初めて知られたとなると……もしかしたらPさんに、拒絶されちゃうかもしれない……)

菜々(多分、今までは電波系人間で済ませられていたけど、『本物の異星人』だもん……いくら懐の広いPさんでも──)


菜々(ハッ!? だ、ダメよナナ! Pさんの気持ちを疑うような事があってはダメ!)

菜々(だってPさんとは、それはもうじっくりと、ねっとりと、ラブを育んできた仲なんだから!)


菜々(でも……)

菜々(ナナがPさんにしてしまった事を考えると、見限られてもしょうがない……よね)

菜々(だって、Pさんからすれば、突然失踪して音信不通のまま一年も戻らなかったんだもん)

菜々(そんな相手と夫婦でいたくないって思われて、縁を切られたって、何も言えない……)


菜々(だけど……)


菜々(別れたくない……別れたくないよぉ……)


P(まさか本当に、ウサミン星が実在していたとは……)

P(しかも、菜々はウサミン星に行っていたから帰ってこなかったって?)

P(にわかには信じがたいことだけど……)


P(いや……しかし)

P(確かに驚きはしたが、それを知ったからといって、特にどうということはない……よな)

P(菜々がウサミン星人だからって、俺達の関係が何か変わるわけじゃない)

P(今は、菜々が無事に帰って来てくれたことを喜ぶべき──)

菜々「うぅ……Pさん……ごめんなさい……」

P「って、菜々? なんでベソかいてるんだ!?」

菜々「ナナのこと……見捨てないで下さいぃ」

P「え!?」


P「ちょっと待った……どちらかというとそれは俺のセリフじゃないか?」

菜々「へ?」

P「菜々が突然居なくなって、見捨てられたかもって」

P「もちろん他の可能性も考えたが、俺だって不安だったんだからな」

菜々「うっ」

P「まぁ、宇宙に行っていた……なんてのは考えつかなかったけど」


P「いずれにせよ、俺はずっと菜々が帰ってくるのを待っていたんだ」

P「それなのに、菜々のこと見捨てるはずがないだろ?」

菜々「で、でも……ナナはウサミン星人で、Pさんは地球人だから……っ!」

P「……」


P(そうか……菜々が異星人だって、そもそも知らなかったから、考えが及ばなかったけど)

P(菜々も、今まで不安だったんだろうな)

P(例えるなら、外国で一人暮らしするような感じか?)


P(ウサミン星人の精神構造がどうなっているのかは分からないけど、菜々の様子からすると、地球人とそう変わらないみたいだし)

P(そう考えると、見知らぬ土地で、慣れない文化の中で暮らすのに、不安が無いわけないよな)

P(それに今だって、俺に拒絶されることを恐れているんだろう)

P(そうだとすると、俺のすべきは──)


P「菜々、大丈夫だから……落ち着いて」

菜々「Pさん……」


P「菜々がウサミン星人だって知って、確かに面食らったけど」

P「それでも、俺は変わらず、菜々を愛しているよ」

P「俺と菜々が出会ってからさ、今まで時間をかけて積み重ねてきた関係は、この程度で揺らいだりしないさ」

菜々「……」


菜々「だけどナナは、Pさんに何も告げずに突然失踪しちゃうような、ダメダメなウサミン星人です……」

P「そこはほら……なんというか、お互い認識の相違があったし、仕方ないさ……」

P「それに、こうして帰ってきてくれたじゃないか……それだけで十分だ」

菜々「うぅ……」


P「……まだ不安?」

菜々「……」コクッ

P「そうか……」


P (……こんな風に菜々がしおらしくするのは、甘えたがっている時……だよな)

P「まいったなーどうすれば菜々を安心させてあげられるかなー?(棒)」

P(我ながら、わざとらしすぎるが……)

菜々「……」


菜々「抱き締めて、欲しいです……ギュッて……」

P「……わかったよ」ギュッ

菜々「あっ……Pさん……」

P「……菜々」

菜々「Pさん……っ! 好きです、Pさん」

P「俺もだよ……菜々」


──数分後──

P「落ち着いた?」

菜々「はいっ」

菜々「Pさんに抱き締められると、不安な気持ちもどこかへ行っちゃって……ウサミンパワーが即座に満タンになります」


菜々(そう……アイドルだった時から、Pさんはいつもナナのことを励ましてくれてた……)

菜々(やっぱり……ナナはPさんと一緒じゃないと……)


P(うーむ、しかし)

P(菜々が帰ってきて、当初の想定では『Pさん、長い間待たせてごめんなさい、寂しかったですねーよしよし』)

P(みたいな感じで、俺の方が菜々に甘えられると思っていたんだが……)

P(何故か俺が菜々をあやす側に回ってしまっているという)


P「まあなんにせよ、こうしてまた菜々と会えて良かったよ……本当に」

菜々「ナナも……Pさんと一緒にいられて、嬉しいです」

菜々「もし、Pさんが離れていってしまったらと考えると……怖くて……」


P「でも……」

P「考えてみると少し不公平だよなぁ」

菜々「え……?」

菜々(あ……ピピッと来た……Pさん、きっとよからぬこと考えてる……)


P「お互い会えていなかった時間を考えるとさ、菜々の方は、家を出てから半日くらいしか経っていないんだろ?」

菜々「……ナナの体感で、大体10時間くらい……です」

P「10時間か……」


P「俺の方は……役一年と考えると、8000時間以上だからな」

菜々「はっせ……っ!?」


P「例えばさ、俺が出掛けたっきり戻らなくなって、8000時間会えなくなったとすると……ナナはどうする?」

菜々(はっせん……八千時間……)


P「……」

菜々「……」

P(長考……あれ、これやらかしたか……?)


菜々「……考えられないです」ボソッ

P「え?」

菜々「そんなに長い間、Pさんに会えないなんて……ナナ、耐えられないです……っ!」


菜々「Pさんっ! いなくならないでくださいっ!」ガバッ

P「うわっ!」


P「わ、悪かった、今のは意地悪が過ぎた! ごめん!」

菜々「ああぁ! で、でも……ナナは……Pさんに、それをしてしまった……」


菜々「あうぅ、Pさんごめんなさいぃ!!」

P「それはもう過ぎたことだから! 俺も気にしてないから!」

菜々「うぅ……Pさぁん……」

P「ごめんよ、俺はどこにも行かないから」ナデナデ


──またまた数分後──

菜々「……Pさん、意地悪です」

P「悪かったって」

菜々「全面的に悪いのは……ナナの方ですけど……」

菜々「でも……あんなこと言うなんて、意地悪です」

P「ごめん……」

菜々「……」



菜々「……キス」

P「え?」

菜々「お詫びに……キス、してください」

P「……菜々」

菜々「あ……んっ……んん…………ふぁ」


P「……これで、許してくれるか?」

菜々「……うふ、えへへ」

P「?」


菜々「そういえばPさん、昔からナナによく意地悪してきましたよね?」

P「そ、そうか?」

菜々「そうですよ」


菜々「アイドルだったころは、事あるごとにナナのこと、弄ってきたじゃないですか」

P「言われてみれば……心当たりがあり過ぎる」


菜々「でも……」

菜々「ナナのことを大切に思ってくれてるというのは、伝わってましたから」

菜々「今も、Pさんの気持ちは、ナナにしっかりと伝わりました」

P「……ウサミンは心と心で通じる……か」

菜々「あ……覚えていてくれたんですね」



P「……でも、俺は地球人だからさ、口にしないとうまく伝わらないこともあるって、考えてしまうんだ」

P「こういうのは、口にするんじゃなくて、行動で示すべきなんだろうけど」

菜々「?」


P「俺は、いつだって、菜々のことを想っているよ」

P「これまでも、これからもずっと、それは変わらないから」

菜々「Pさん……」


P「な、なんてな! ……あー、気恥ずかしい」


P「まあ、いずれにせよ、菜々も無事に帰ってきてくれたことだし」

P「これからはさ、ようやく家族四人で一緒に暮らせるってことで、子供たちも喜ぶな、うん」

菜々「そうですね……子供たちにも、寂しい思いをさせちゃっただろうなぁ……」


菜々「つくづくとんでもないことをしでかしちゃったと反省しきりです……本当に」

P「今まで一緒にいられなかった分は、これから取り戻していけばいいさ」

菜々「それじゃ、嫌がられるまで構うことにします!」

P「二人ともすっかり大きくなったからな、たぶん見たら驚くぞ」

菜々「うぅ……ナナも、成長を見届けたかったです……自業自得ですけど」




菜々「……時にPさん」

P「ん?」


菜々「ナナとしては、ですね」

菜々「今は……家族四人……ですけど」

P「うん」


菜々「その……出来ればもう少し、日本とウサミン星の人口増加に、貢献したいなーなんて」

菜々「考えていたり……いなかったり……するんですけど……」


菜々「Pさんは……どうですか?」

P「……」


P(上目使いで、『どうですか?』って、そんなん聞いてくるの……反則だろ!)

P「菜々っ!」ガバッ

菜々「あっ」

P「ウサミン星の人口、増やそう! 一緒に!」

菜々「あぁっ……Pさん……っ!」


───────────────

────────

───


──Pと菜々がいちゃついている隣の部屋──

息子「行方知れずだった母が帰ってきたのに出て行きにくい雰囲気な件について」

娘「……しょうがないよ、おとうさんはずっとおかあさんのこと待ってたんだし」

息子「妹が空気を読みすぎな件について」


娘「それは、わたしだって、おかあさんに会いたいよ?」

息子「ですよねー」

娘「でも、おかあさん帰ってきたから、これからは一緒にいられるし」

息子「明日、起きてからでもいっか」


娘「それに、うまくすれば──」

息子「兄弟がふえるよ!!」

娘「やったねおにいちゃん!」

おわり

深刻そうな出だしから菜々さんモノホンの宇宙人オチにしたコメディぽい感じにするつもりが、色々継ぎ足してたらオチが行方不明になりました
お付き合いいただきありがとうございました

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