渋谷凛「二人だけの舞踏会」 (14)

アイドルマスターシンデレラガールズ 渋谷凛のSSです

アイドルそれぞれに担当Pがいます


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1497802023

凛「……ふぅ」


深呼吸を一度。

目を開けると見えるのは地方都市の夜景。

都会のギラギラした景色とは違い、小さな小さな宝石箱の中のような綺麗な明かり。

私は一人、それをバルコニーから眺める。


凛「……こんな素敵な場所があるなんて」


今日は事務所主催の記念パーティーがあり、私達アイドルを始め社員全員がこの会場に来ていた。

設立何周年だとか……忘れたけど。

……パーティーはもう中盤過ぎ。大人たちはだいぶ出来上がってるみたい。

普段接する機会の無い社員さん達との会話に疲れた私は、ここで一息ついていた。


凛「……そろそろ、戻ろうかな」

奈緒「おーい、凛」

凛「奈緒。……奈緒も休憩?」

奈緒「んー、まぁそんなところ。プロデューサーさんに連れまわされて大変だったよ」

凛「相変わらず仲良しだね」

奈緒「……仲良いかぁ? あたしは馬鹿にされてる気しかしないけど」

凛「嘘言っちゃって。いつも楽しそうにしてるのに」

奈緒「……う……ま、まぁプロデューサーさんと一緒にいるのは……嫌いじゃないし。……むしろ良い、かも」


そう言った奈緒の頬はみるみる赤くなっていった。

奈緒はすぐに顔に出ちゃうんだから。

凛「今みたいに素直になってあげたら? 奈緒のプロデューサー、喜ぶよ」

奈緒「うぅ……は、恥ずかしいから無理かな……」

凛「ふふっ。そんなところが奈緒らしいね。かわいいよ」

奈緒「なんだよー、凛までからかうのかー? ……あ、ごめん。来て早々だけど戻るよ」


奈緒は小さな腕時計を見て話を切り上げた。

確か、奈緒のプロデューサーが誕生日にプレゼントしてた物だったかな。


凛「何かあった?」

奈緒「アレだよ、社交ダンスがあるからな。プロデューサーさんを探さなくちゃ」

凛「もうそんな時間?」

奈緒「あと少しあるけど、早めに捕まえておかないとベロベロに酔っ払っちゃうからさ、アイツ」

凛「なんだ、ちゃんとプロデューサーにアピールしてるんだね。一緒に踊るなんてさ」

奈緒「違う違う! 誘われたんだって! なのにアイツ、お酒飲もうとするしさ。あれじゃダンスできなくなったらどうするんだよ」

凛「はいはい、お幸せに」

奈緒「し、幸せってなんだよ…………そんなのまだ……!」

凛「まだ……? それじゃいつかは、って事か」

奈緒「い、いやいや!! 今のはそういう意味じゃないからな!? ……あぁもう、先に行ってるからなー!」

凛「私もすぐ戻るよ」

奈緒「ここ寒いから早く中に入れよなー」

奈緒は嬉しそうな顔をしながらバルコニーを後にする。

私はまた一人。

手すりを触るとヒンヤリ冷たい。ブルっと身体が震えて疲れた脳が起き上がった感じがした。

…………そういえば、私のプロデューサーはどこに行ったんだろ。

会場の中では一緒にいたのに。


凛「……」

加蓮「あれ? 凛じゃん。どうしたのこんな所で」

凛「あ、加蓮……ちょっと休んでたんだ。さっきまで奈緒もいたんだよ」

加蓮「ははーん。だからか、さっき奈緒が顔赤くしてたのは。またからかったんでしょ?」

凛「ふふっ。ちょっとね」

加蓮「奈緒のプロデューサー絡みだってのはすぐ分かったけどね。 ……私もそんな感じだけど」

凛「え?」

加蓮「これからダンスあるでしょ? プロデューサーさんの事を意識したら顔が熱くなっちゃってさ」

凛「あぁ……」

加蓮「だから外に行って落ち着こうと思ったの」

凛「ふーん、いつもはグイグイ攻めてるクセに。今日だってあんなに張り切って準備してたじゃん」

加蓮「だって! その時になったら緊張してきちゃって……プロデューサーさんと手を取り合って、顔合わせて……密着して……はぁぁぁ……」

凛「加蓮、顔真っ赤」

加蓮「も、もう! 茶化さないでよ! ……そんな凛こそどうなの」

凛「私?」

加蓮「凛も自分のプロデューサーと踊るんでしょ? その……緊張とか、しない?」

凛「……そうだね。あまり緊張しないかな」

加蓮「……」

凛「こんな綺麗なドレスで着飾っていても、私はこのままの……いつもの渋谷凛をプロデューサーに見せてあげたいんだ」

加蓮「…………そっか。凛らしいね」

凛「そうかな?」

加蓮「凛の良いところだと思うよ。……うん、なんかスッキリした! 私もう行くね」

凛「あんまり落ち着かなかったかな。ごめん」

加蓮「気にしないで。……私もそのままの自分をプロデューサーさんに見せてくる。ありがと」


加蓮が去った後、会場の中から音楽が流れてきた。

この音楽は……社交ダンスが始まったのかな。

中に入ろうと振り返った瞬間、私は何かにぶつかってしまった。

凛「わぷっ!?」

P「おっと……」

凛「ぷ、プロデューサー!?」

P「ぶつけたところ、大丈夫か?」

凛「なんともないけど…………よく分かったね。私がここにいること」

P「奈緒ちゃんが教えてくれたんだ。お姫様が待ってるってね」

凛「な、奈緒……」


これは……今度奈緒に会ったらいじられそう……。

逆にいじるネタを考えておかないと。


凛「まぁそれはいいとして……プロデューサー、私のこと真後ろから見てたんだね」

P「いやぁ、声かけようとしたんだけど、凛とこの場所の雰囲気が凄く合ってて……見入ってた」

凛「……なにそれ」

P「天使みたいでとても綺麗だったよ」

凛「ふーん、そう」

P「あ、アレ? それだけか? 照れるかと思ったのに」

凛「それだけだよ。盗み見するプロデューサーなんかにときめかないから」

P「くっ……残念。……冗談はさておき、中に入ろうか。もうダンス始まってるし」

凛「……んー……ねぇプロデューサー」

P「どうした?」


私の中でちょっとした悪戯心と企みが浮かんだ。

凛「ここで踊らない?」

P「こ、こんな場所でか!? 狭いし、何より寒いだろ」

凛「大丈夫。私はこれくらいの広さで十分だし、寒くないよ。……ほら、こうすればね」

P「……凛」

凛「うん。温かいね、プロデューサーの手」


プロデューサーの手をギュッと握る。

男の人の固い手。私の大事な人の手。


P「…………俺の方が照れちゃった」

凛「あはは! さっきの仕返しだよ、プロデューサー」

P「参ったよ。……中の音楽も聞こえるし、このまま踊ろうか」

凛「うん」


私たちは改めてお互いの手を握り締める。

その場でクルッと一回転。

見よう見まねだけど……それとなく出来ている、かな? 普段のレッスンのおかげかも。

P「今の動き、良かったな」

凛「ふふっ、ありがと。じゃあもう一回」

P「おぉっとと」

凛「プロデューサー、ちゃんと合わせてね」

P「…………こういうダンスってさ」

凛「何?」

P「やっぱり慣れてないと上手く出来ないもんだな。結構ハードだし」

凛「それ、運動不足じゃないの?」

P「ちゃんと営業で歩いてるから違うはず……」

凛「最近いつも事務所にいる気がするけど?」

P「……ごめんなさい。今度から真面目に営業します……」

凛「ふふっ、頑張ってねプロデューサー」

___


凛「プロデューサー」

P「ん?」

凛「気になってたんだけどさ、このドレスってプロデューサーが用意してくれたんだよね?」

P「おう。凛によく似合ってるだろ」

凛「う、うん。似合うの選んでくれたのは嬉しいんだけど……じゃあ、この花も?」


私は足を止めてドレスの胸元に付いている小さな花を見る。

P「もちろん。これは紫のカトレアだ。えぇと花言葉は……」

凛「大人の魅力。魅惑的。優美な女性、だったかな」

P「……さすが花屋の娘さん……」

凛「私が詳しいの知ってるくせに」

P「あぁ、知ってる。……カトレアにした俺のセンスは凛から見たらどうだ?」

凛「なんていうか……私、プロデューサーからは大人に見えるのかなって」

P「スカウトした時と比べたらずっとな。最初はただ無愛想な女の子だったから」

凛「あ、あれは……まだ知り合って間もなかったんだし仕方ないじゃん。私、意外と人見知りなんだから」

P「はははっ! ま、それだけ凛も成長したって事だ。さっきだって初対面の社員さん達とちゃんと話せていたしな」

凛「そう、かな」

P「あぁ。花言葉通り、凛はこれからもっと大人になって、綺麗になっていく。……それでもたまに見せる可愛らしさが俺は好きだけどね」

凛「…………そう……」

P「おやぁ? 凛、今照れただろ」

凛「……なんも照れてないよ。プロデューサー、次変な事言ったらもう一緒に踊ってあげないから」

P「マ、マジですか。……はい、もう言いません……」

凛「ふふっ! ほらプロデューサー、ちゃんと手をつかんで。離さないでね」


私たち二人はまた踊り始める。

さっきよりも動きは少し激しく。

だって、今の心臓の音を聞かれたくないから。

終わりです

凛かわいい

依頼出してきます

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom