【ガルパン】みほ「ちょっと真面目な短編集です!」 (40)

【オープニングです!】


・・・第65回戦車道大会:決勝戦観客席


ザワザワ…


沙織「…あ、みぽりーん!こっちこっち!」

優花里「西住殿!こっちです!」

みほ「あ、沙織さん。久しぶり」

沙織「うん、みぽりんも元気そうだね」

優花里「私は西住殿とはよく大学で会いますけど…武部殿は別の大学ですもんね」

沙織「あーあ、私も二人と同じ大学行けばよかったかなー」

みほ「沙織さん、女子大だもんね…」

沙織「もー!なんで私はこう出会いが何にもないのよー!」

みほ「…あれ、そういえば二人だけ?」

沙織「華はお花のイベントか何かでどうしても行けないって…」

みほ「麻子さんは?」

沙織「さっき起きて、今急いで向かってるって」

みほ「あはは、麻子さんらしいね」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1497772202


優花里「…いよいよ決勝ですねぇ」

みほ「うん。澤さん、緊張してないかなぁ」

沙織「でも凄いよ。こうしてまた決勝まで来れたんだから」

優花里「はい、澤殿は、隊長として十分な働きをしています」

みほ「…うん、そうだね」

沙織「隊長の引継ぎやったときはわんわん泣いちゃってたけどね」

みほ「あの時は、ちょっと悪いことをしちゃったかな、って思ったけど…」

みほ「…でも、隊長は澤さんしかいないと思ってたから」

優花里「あ、隊長挨拶ですね。出てきましたよ」


ザッ

梓「…」


沙織「…! みぽりん…?」

みほ「えっ?」

沙織「…あ、ごめん。梓ちゃんだよね」

優花里「準決勝の時も思いましたが、西住殿に似てきましたね…」

みほ「澤さんが?」

沙織「うんうん、何かたたずまいというか雰囲気っていうか…みぽりんにそっくり」


みほ「…ふふっ」

優花里「西住殿?」

みほ「何か嬉しいな。澤さんがこうして、私の後を引き継いで大洗を引っ張って…」

みほ「それで、こうして決勝まで来てくれたことが、自分の事みたいに嬉しいの」

沙織「…うん、私も嬉しいかな」

優花里「今日は目いっぱい応援しましょうね、西住殿」

みほ「うんっ」


・・・


梓「…それでは、作戦は伝えたとおりです」

梓「皆さん、ケガに気を付けて。楽しんで闘いましょう」

梓「…」

梓「(西住先輩、見てくれてますか?)」

梓「(私、先輩みたいに、少しは頼れる隊長になれたんでしょうか)」

梓「(私と、みんなと…それから、先輩と優勝旗を掴むんです)」

梓「(絶対、良い試合にしますから。見ててください、先輩)」

梓「…皆さん、用意は良いですか?」

梓「それでは、作戦開始します!パンツァー・フォー!」


【隊長、がんばります!】


・・・西住みほ、大洗転校直後


ザァァァ…

まほ「…」


エリカ「…隊長、ここでしたか」

まほ「…エリカか」

エリカ「雨、冷たいでしょう。お体に障りますよ」

まほ「…」

エリカ「これ、あの時副隊長が乗ってた戦車ですよね」

まほ「ああ」

エリカ「ここで見ていたんですか?」

まほ「…あぁ」

エリカ「…」


まほ「…エリカは、どう思う?」

エリカ「はい?」

まほ「…みほは、大洗に転校した。戦車道から逃げるように」

まほ「それが正しかったのか、間違っていたのか…私には、わからなくなってしまったよ」

エリカ「…正しいかは応えられませんが、これで良かったんだと思います」

エリカ「あの子は、戦車に乗っているときもどこか辛そうな顔をしていることもありました」

エリカ「…ずっと悩んでいて…今回のことは、ただの切っ掛けでしかなかったのかもしれません」

まほ「…そうか」

エリカ「……」

まほ「…私は、私の責任だと思っている」

エリカ「え?」

まほ「…みほは、私が転校させた。私が追い込んだようなものだ」

エリカ「そんな…」

まほ「私は、守れなかったんだ。いや、守ろうとすらしていなかった」

まほ「気づかなかったのか、気づかないふりをしていたのかすら、それすらもうわからない」

まほ「あの子は、ずっと悩んでいたはずなのに」

まほ「黒森峰の栄光に泥を塗って、挙句自分の妹すら守れないとは。本当に情けない」

エリカ「隊長…」


まほ「…エリカ。すまなかった」

エリカ「え?」

まほ「…私は…私は、戦車道を辞めようと思う」

エリカ「…っ!!」

まほ「西住流とは勝つこと、か。勝利とは、何なんだろう」

まほ「ただ、フラッグ車を走行不能にして、勝利判定を得ることが勝利なのか?」

まほ「もう、わからないんだ。私には何も…」

エリカ「…」

まほ「分かっているのは、みほを追い詰めてしまったということだけだ」

まほ「私だけの責任じゃないかもしれない。ただ、私にはみほを守る責任があったはずなのに」

エリカ「…」

まほ「エリカ。来年の隊長は、エリカに任せるよ」

まほ「…ごめんね、エリカ。私はもう…」


バシャッ


エリカ「…」

まほ「エリカ…?」

エリカ「…っざけんじゃないわよ…」

まほ「えっ…」


パァン!


まほ「…っつ…」ヒリヒリ

エリカ「…」

まほ「…エリ…」

エリカ「この程度だったって言うの…?」

エリカ「こんなくだらない女のために!みほは!あんたの妹は居なくなったって言うの!?」

まほ「あ…」


エリカ「…みほは、ただ逃げたわけじゃないわ」

エリカ「10連覇を逃した責任、あの時に何もできなかったチームメイトや、戦車道連盟の安全管理の問題…」

エリカ「…その責任を引き受けて、あの子は、一人で引き受けて黒森峰を去っていったの」

エリカ「自分と、黒森峰と…隊長を守るために」

まほ「みほ…」

エリカ「何よ…!今度はみほを言い訳にして、隊長まで戦車道から逃げるって言うの!?」

エリカ「あの子が自分を犠牲にしてまで守りたかった西住まほは、こんなつまらない隊長だったの!?」

エリカ「逃げてるのはあんたの方じゃない!」

まほ「…」

エリカ「…」

まほ「あ、エリカ…」

エリカ「隊長。隊長がみほのためにできることって何ですか?」

エリカ「黒森峰に残って、来年…来年の大会で、今度こそ黒森峰に優勝旗を飾ることです」

エリカ「みほがいなくても、黒森峰は強いことを示すんです」

エリカ「そして、みほの代わりに西住流の看板を背負っていけることを、あの子に教えるんです」

エリカ「違いますか?隊長…?」

まほ「…」

エリカ「…」


まほ「…エリカ」

エリカ「はい」

まほ「…やられっぱなしって言うのは、嫌いなんだ」

エリカ「えっ?」


パァン


エリカ「…っ…」ヒリヒリ

まほ「すまない」

エリカ「あ、謝るくらいなら叩かないで下さいよ!」

まほ「…ありがとう。エリカ」

まほ「思い出したよ。私の戦車道」

エリカ「…」

まほ「少しだけ、元気が出てきた。手間をかけるな…」

エリカ「いえ…隊長が立ち直ってくださるのなら…」

まほ「…さ、こんなところにいると風邪を引いてしまうな。戻ろう」

エリカ「た、隊長がこんなところにいたんじゃないですか」

まほ「…ふふっ、そうだったな」

まほ「(そうだ、みほ。私は大丈夫だ)」

まほ「(だから、お前はもう何も気にしなくていいんだ)」

まほ「(…あとは、私が引き受けたよ。みほ)」


【戦場の蛍です!】


・・・ケイ、ナオミ1年生時代


-サンダース大付属 体育館-

「それじゃ、今日の練習はここまで」

「お疲れ様でしたー」

「じゃ、一年は片付けて解散ね」

ガヤガヤ…


ナオミ「…ふぅ」

「ナオミ、お疲れ」

ナオミ「ああ」

「今日も凄かったじゃない。3ポイント何回入ったの?」

ナオミ「たまたまよ」

「…ねぇ、でもなんで急にバスケなんて始めたの?」

「そうそう。先月までずっと帰宅部だったじゃない」

「戦車道が忙しかったんでしょ?」

ナオミ「ん、まぁね」

「…あれ、じゃあ戦車道は?やめたの?」

ナオミ「…それは…」


スタスタ


「…ナオミ、ちょっと」

ナオミ「はい?」

「あんたにお客さんよ」

ナオミ「ん?」

タッタゥ

ケイ「ハーイ、えーっと…ナオミ、だったかしら?」

ナオミ「…あんたは?」

ケイ「私はケイ。この前の紅白戦で、白組シャーマン3号車の装填手やってたわ」

ナオミ「…ああ、あん時の」

ケイ「にしても、やっぱ身長おっきいわねー。バスケ向いてるんじゃない?

ナオミ「それで、本題は?」

ケイ「…ちょっと、場所変えましょうか」

ナオミ「…わかった」


~~~~~~


ナオミ「…で、何の用?」

ケイ「じゃあ、ハッキリ言うわね」

ナオミ「悪いけど、戦車道ならもうやらないよ」

ケイ「あら、人が言おうとしてることを…」

ナオミ「むしろ、戻れるとでも思うの?あんなことをしておいて…」

ケイ「あんなことって、試合中に隊長殴って辞めた事かしら?」

ナオミ「何だ、知ってるんじゃない」

ケイ「見てたわよ。良いパンチだったわね」

ナオミ「どうも」

ケイ「ま、私が見たのはそこだけよ。何であんなことを?」

ナオミ「…あの時の紅白戦、紅組ファイアフライの砲手だったわ」

ナオミ「試合途中の時点で、白組の勝ちがほぼほぼ決まってた…のは、知ってるな」

ケイ「ええ。私も参加してたしね」

ナオミ「…確かに厳しい試合だったけど、最後まで全力で戦うモンでしょ」

ナオミ「あの時の隊長、指揮は放棄するし、さっさと終わらせようと利敵行為紛いの動きはするしで」

ナオミ「スコープ覗いてる時に、空気を読めだなんていわれるとは思わなかったわ」

ケイ「…なるほど、ね」


ナオミ「それでカッとなって、ついね」

ケイ「グーで顔殴るのはやりすぎじゃない?」

ナオミ「私だって反省してる」

ケイ「…ま、私もあの先輩にはちょーっとムカついてたところはあったけどね」

ナオミ「でしょうね」

ケイ「それで、クビにされたの?」

ナオミ「まさか。私から辞めてやったわ」

ケイ「みんな引き留めてたのに」

ナオミ「あの上官とはやる気になれないわね」

ケイ「…ね、ナオミ、やっぱり戻ってくるべきよ」

ナオミ「今更どのツラ下げて戻れって?」

ケイ「大丈夫よ。私がなんとかするから」

ナオミ「アバウトすぎない?」

ケイ「…ホントは戻りたいんでしょ?」

ナオミ「え?」

ケイ「バスケやってる時も、どこか不満気だし。戦車道、まだやりたいんでしょ?」

ナオミ「なんでそんなことがわかるの?」

ケイ「女の勘…かしらね?」

ナオミ「は、そりゃ頼もしいわね」


ケイ「それに今、信頼できる仲間が欲しいのよ」

ナオミ「ん?」

ケイ「全国戦車道大会が終わった後に、1,2年合同で3年生率いる1軍と試合するのは知ってる?」

ナオミ「ああ、毎年恒例の壮行試合でしょ?」

ケイ「ね、私と一緒にやらない?」

ナオミ「…一緒に、か」

ケイ「変えるのよ。私たちで。この学校の戦車道を」

ナオミ「…」

ケイ「…はい、これ」ポンッ

ナオミ「何これ?」

ケイ「タダで戻って来いなんて言わないわ。それが契約金ってことで」

ナオミ「ただのチューインガムじゃない。こんなんで買収しようってわけ?」

ケイ「いいでしょ?噛んでれば余計なことを考えずに済むかもしれないわよ?」

ナオミ「…ったく…」

ケイ「それで、返事は?」

ナオミ「…」ビッ

クッチャクッチャ

ナオミ「…いいわよ。変えてやろうじゃない。私たちで」

ケイ「…オッケー、楽しみにしてるわね。ナオミ」


【私の親友です!】


・・・大洗vs大学選抜戦後


コッ、コッ…

ノンナ「…」


ガチャッ

カチューシャ「…あら、ノンナ。遅かったわね」

ノンナ「ええ、すみません」

カチューシャ「いいのよ。進路面談だったかしら」

ノンナ「はい」

カチューシャ「それで、どうするの?」

ノンナ「…」

ノンナ「…戦車道で推薦をもらっている、プラウダ大学に進学する予定です」

カチューシャ「…そう。確か、プロからもオファーが来てたわよね」

ノンナ「ええ。ですが、私はまだまだ未熟です」

ノンナ「大学選抜戦でも、大洗との試合でも、納得する結果は出せなかった」

カチューシャ「大学選抜の時は仕方ないわよ」

ノンナ「まずは、自分に納得できるだけの実力が欲しい。そのために、大学を足掛けにするつもりでいます」

カチューシャ「そう」


ノンナ「カチューシャは…プロに行くんですよね」

カチューシャ「ええ。そのつもりよ。まさか3チームからオファーが来るなんて、人気者は辛いわよね」

ノンナ「カチューシャであれば、全チーム競合でも良いくらいかと」

カチューシャ「…」

ノンナ「…カチューシャ?」

カチューシャ「…これで、お別れなのよね」

ノンナ「…」

カチューシャ「みんな言ってたわよ?ノンナは私と同じ道にしか進む気がないだとかなんとか」

ノンナ「…私は…私も、本当はいつまでもカチューシャと一緒にいたい」

ノンナ「でも、それはできないんです。私はいつかカチューシャから離れなければなりません」

ノンナ「カチューシャも、いつか自分の脚で歩かなければならなくなります」

ノンナ「それが、今というだけの話です」

カチューシャ「…」

ノンナ「カチューシャ。私はこの3年間、本当に幸せだった。感謝してもしきれません」

ノンナ「短い間でしたが、本当に…」

カチューシャ「…」

ノンナ「…カチューシャ?」

カチューシャ「…やっぱり、やめたわ」

ノンナ「…?」

カチューシャ「…私…私も、ノンナと同じ大学に行く」

ノンナ「…!」


カチューシャ「戦車道の推薦でしょう?私にも来てるのよね。まだ進路確定してないし、ちょうどいいわ」

ノンナ「い…いけません、カチューシャ。貴女はプロで輝けるだけの実力を持っています」

ノンナ「私なんかに付き合って、自分の価値を落とすようなことは…」

カチューシャ「何よ。いけないっていうの?」

ノンナ「それは…」

カチューシャ「友達と同じ大学に行きたいって言うのが、そんなにおかしなことかしら?」

ノンナ「友達…?」

カチューシャ「ええ。違ったのかしら?」

ノンナ「…」

カチューシャ「…ノンナ?」

ノンナ「…っ」グイッ

カチューシャ「わ、別に今は良いわよ、肩車は。降ろして頂戴」

ノンナ「…」

カチューシャ「ノンナ? どうしたの?」

ノンナ「あの…」

カチューシャ「…泣いてるの?」

ノンナ「っ…!」

カチューシャ「友達って言われて、嬉しくなっちゃったかしら? 可愛いトコロあるじゃない」

ノンナ「…」


カチューシャ「いつからだったかしらね。私と貴方が、上官と下僚の関係になっちゃったのは」

カチューシャ「周りがそういう目でしか見てくれなかったし、私もつまらないプライドに縛られちゃったわね」

ノンナ「…」

カチューシャ「…いいわ、ノンナ。これまで言えなかった分、何回でも言ってあげるから」

カチューシャ「貴女は、私の一番の友達よ。ずっと私と一緒にいてくれた、一番の親友だから」

カチューシャ「大好きよ、ノンナ」

ノンナ「…っ…!うっ、ふぅっ…!」ボロボロ

ノンナ「カチューシャ……っ……!」ボロボロ

カチューシャ「そろそろ降ろして頂戴」

ノンナ「…んっ…」スッ

カチューシャ「ね、ノンナ。これから、私は私の脚で、貴女の隣を歩くわ」

カチューシャ「代わりに…そうね、手でもつなごうかしら」


ノンナ「……」

カチューシャ「ノンナ?」

ノンナ「はい、カチューシャ」

カチューシャ「…ん、手、あったかいわね」

カチューシャ「…ねぇ、ノンナ」

ノンナ「はい」

カチューシャ「感謝してもしきれない、なんて言ってたわよね」

ノンナ「そうですね」

カチューシャ「そうね…それなら代わりに、ロシア語でも教えてもらいましょうか」

ノンナ「…ええ、それなら、戦車道の執務室で…」

カチューシャ「…ううん、私の部屋でやりましょ。いいわよね?」

ノンナ「…! はい、もちろんです」

カチューシャ「ん、じゃあ行きましょ。ついでに、そこのコンビニでお菓子でも買っていきましょ」

ノンナ「お菓子ばかり食べていると虫歯になりますよ」

カチューシャ「よ、余計なお世話よ」

ノンナ「…ふふっ」


【あとには退けない戦いです!】


・・・大洗vs大学選抜戦後


キュラキュラキュラ…

キッ

アンチョビ「…ふぅ」

カルパッチョ「統帥。偵察の結果ですが、D地点には誰もいません」

アンチョビ「ああ、ご苦労」

カルパッチョ「…ペパロニ、ずいぶんと慎重ですね」

アンチョビ「そうだなぁ。何を企んでるのか」

カルパッチョ「…統帥」

アンチョビ「ん?」

カルパッチョ「今日の紅白戦は、ペパロニが提案したんですよね?」

アンチョビ「…ああ」

カルパッチョ「あの子が、そんなことを言うなんて…」

アンチョビ「確かに、珍しいよな。私とカルパッチョを自分から敵チームに回すなんて、何を考えてるんだか」

カルパッチョ「でも、まだ試合は始まったばかりですから」

アンチョビ「ああ」


カルパッチョ「…統帥、なんだか嬉しそうですね」

アンチョビ「そうか?やっぱりわかっちゃうかなぁ」

アンチョビ「…なぁ、カルパッチョ。ペパロニって、どんなヤツだと思う?」

カルパッチョ「はい?どういう意味でしょうか?」

アンチョビ「ノリと勢いをそのまんま体現したようなヤツで、猪突猛進、私の言うことを聞いてくれない…ってイメージがあるかもしれないけど」

カルパッチョ「…まぁ、おおむねそんな感じですけど…」

アンチョビ「…あいつは今まで、私の言う事を素直に聞いてたんだよ」

アンチョビ「マカロニ作戦や分度器作戦は失敗しちゃったし、試合中に作戦が失敗した時の報告がなかったりもしたけど…」

アンチョビ「それでも、あいつはずっと私の言うことだけを素直に聞いて、自分の意見ってほとんど言わなかったんだ」

カルパッチョ「…あ…そういえば、そうかも…」

アンチョビ「私も気づいたのは最近だったよ。あいつ、ずっと私に対して…あぁ、言い方悪いかもしれないけど、従順っていうか…」

アンチョビ「…そんなあいつが、自分からこうして試合を申し込んできたんだ」

カルパッチョ「…」

アンチョビ「私は、それが嬉しくてたまらないんだよ」

アンチョビ「あいつはずっと、私の…」


ドォン!!


カルパッチョ「きゃあ!」

アンチョビ「どうした!」

「左側面から砲撃っす!正確な位置は不明!」

アンチョビ「…分かった、いったん離れるぞ!全速前進!撃たれた側から左側に向かえ!」

カルパッチョ「前進ですか?逆方向に逃げた方が…」

アンチョビ「そっちはペパロニが張ってるよ!逃げるぞ!」



キュラキュラ…


ペパロニ「…」

「ペパロニ姐さん!統帥達、C地点に向かって逃げてます!」

ペパロニ「…へへっ、やっぱ見破られてたかぁ」

「ペパロニ姐さん、どうします?」

ペパロニ「…」

「?」

ペパロニ「(…何だろなぁ、戦車に乗って、カッ飛ばして、それだけでもすんげぇ楽しいのに)」

ペパロニ「(こんなにも楽しいもんだったんだなぁ、戦車道って…)」

ペパロニ「(あの姐さんと、カルパッチョと、こうして真剣勝負ができる)」

ペパロニ「(こんなに楽しくて、それで…)」

ペパロニ「…あぁ、難しいことはもうナシだ!追いかけるぞ!」

「了解!」

ペパロニ「(…アンチョビ姐さんは、もうすぐ卒業しちまう)」

ペパロニ「(この試合で、全部ぶつけるんだ。この2年間で姐さんから、アンツィオで学んだことを全部)」

ペパロニ「(来年、姐さんがいなくてもアンツィオは強いってことを、この試合で示すんだ)」



・・・


アンチョビ「(…とかなんとか考えてるんだろうなぁ、あいつ…)」

カルパッチョ「統帥?次の手は?」

アンチョビ「……カルパッチョ」

カルパッチョ「はい?」

アンチョビ「今、楽しいか?」

カルパッチョ「…」

アンチョビ「私は今、最高に楽しいよ。あいつと、こうして真剣勝負ができるんだ」

カルパッチョ「…」

アンチョビ「あいつはおそらく、真っすぐこっちに向かってくるだろう」

カルパッチョ「どうします?脇道に待ち伏せますか?」

アンチョビ「…いや、こっちも正面から受けよう」

カルパッチョ「…ふふ、そう言うと思ってました」

アンチョビ「(そうだ、ペパロニ。この試合が、私の集大成だ)」

アンチョビ「(お前に教えてやる。私の育てたアンツィオがどれだけ強かったかを)」

アンチョビ「(アンツィオは弱くない、強いんだ。その結果を、お前に見せてやる)」

アンチョビ「(…それで、私も心置きなく卒業できるよ)」


キュラキュラ…


カルパッチョ「…!来ました!正面!」

アンチョビ「…待ってたぞ、ペパロニ」

ペパロニ「姐さん…!」

アンチョビ「…来るぞ!砲撃準備!」

ペパロニ「突っ込むぞ!ビビってんじゃねーぞ!おめーら!」


ゴォォッ


ペパロニ「これで決めてやる!姐さん!」

アンチョビ「来い!ペパロニ!」

ペパロニ「(あたしは勝つ!私に戦車道を教えてくれた、姐さんのために!)」

アンチョビ「(私は勝つ!来年、アンツィオを引っ張っていくペパロニのために!)」

アンチョビ・ペパロニ「行くぞ! Avanti!!」


【ノーブルシスターズです!】

・・・ダージリン隊長就任後



ダージリン「…ふぅ」

アッサム「お疲れ様です、隊長」

ダージリン「あら、アッサム」

アッサム「隊長は今からお帰りですか?」

ダージリン「ええ、そうなんだけど…やっぱり気持ちが悪いわね」

アッサム「はい?」

ダージリン「その呼び方よ。いつも通りでいいわ」

アッサム「…そうですね。では、帰りましょうか。ダージリン」

ダージリン「ええ」


コッ、コッ…


ダージリン「あら?」

アッサム「どうしました?」

ダージリン「…資料室から光が漏れているわね」

アッサム「…本当ですね。誰か使っているんでしょうか」

ダージリン「ここは戦車道履修者しか使わないハズだけど…ちょっと覗いてみましょうか」



スッ


「…すぅー……すぅー…」

ダージリン「あら、可愛い寝顔だこと」

アッサム「…見ない顔ですね」

ダージリン「…ああ、この子。戦車道を履修している1年生の子だったはずよ」

アッサム「良く知っていますね?今年の新入生は、例年より多かったはずですが」

ダージリン「この紅茶は…」

アッサム「良い香り…この子が淹れたんでしょうか」

ダージリン「…広がってるのは、全て戦車道の戦術本ね」

アッサム「こんな遅くまで、一人で自習していたんですね」

「んぅ…」

ダージリン「ん?」

「ぉかーさん…グスッ…うぅ…」

ダージリン「…ホームシックかしら?」

アッサム「この時期、かかる生徒も多いようですから」

ダージリン「ふふっ、昔のアッサムを見ているみたいね」

アッサム「その話はもう忘れてください…」


「ん…んんーっ…!」

ダージリン「…あら、お目覚めね」

「…あ、あれ…!? た、隊長!?」

「あっ、涎垂れちゃっ…あ、す、すみません!」

ダージリン「落ち着いて」

アッサム「寝起きに隊長がいたら、それは驚くでしょうね」

ダージリン「…ふふ、私をお母さんだと思って、甘えていいのよ」

「えっ、えっ…あ、あのっ…」

ダージリン「もう遅いし、資料室も閉める時間よ。その本を返してきなさい」

「は、はい」スッ

アッサム「手伝うわ」

「だ、大丈夫です!」

ダージリン「(…あら…?あの量の資料を、片手で簡単に…)」

アッサム「ダージリン?」

ダージリン「…」

アッサム「何を考えてるんですか?」

ダージリン「さぁ、何かしらね?」


「…すみません、返してきました」

ダージリン「…うん、貴女でもいいかもしれないわね」

「はい?」

アッサム「ずっと一人で勉強していたの?」

「あの…私、ダージリン隊長に憧れて…あんな優雅で、カッコイイ隊長になりたいって思って…」

「それで、このままじゃだめだと思ってて…ちょっとでもお役に立ちたくて…」

「あ、すみません!私なんかが…」

ダージリン「うふふ、いいのよ。嬉しいわ」

ダージリン「…ね、こんな言葉を知っているかしら?」

ダージリン「名ばかりの成功者になるよりも、真に価値ある人になれるよう努力せよ」

「えっと…アインシュタイン、ですか?」

ダージリン「…!」

アッサム「あら、答えられる子は初めて見たわね」

「…あの…?」

ダージリン「…アッサム。決めましたわ」

アッサム「はい?」

ダージリン「…貴方、私のチャーチルに乗りなさい」

「…へぁ?」

アッサム「え?ダージリン?」


ダージリン「貴女、練習でも人一倍努力していたのは見ていたもの」

ダージリン「それに、こんな時間まで一人で自習なんて、なかなかできることじゃないわ」

ダージリン「私のチャーチルに同乗するには十分な資格よ」

「…(私のこと、ちゃんと見ててくれたんだ…)」

「…そ、そんな!できません!そんな恐れ多い!私みたいな1年生なんかが、隊長の…!」

ダージリン「…うん、やっぱりその隊長って呼び方も気になるわね。名前で呼んでくれていいわよ」

「え…」

ダージリン「貴女、私みたいになりたいと言ってたわね」

ダージリン「…そうね、まずは私の戦車で、装填手から始めてみなさい」

ダージリン「私のそばで、私と同じ景色を見て、私の戦車道を学びなさい」

「あの…」

ダージリン「いいわね?」

「…は、はい。ダージリン…様…?」

ダージリン「うん、よろしい」

ダージリン「…期待しているわよ、オレンジペコ」

「…オレンジペコ?」

ダージリン「自分で淹れて飲むくらいですもの。好きなんでしょう?」

ダージリン「今日からここでは、それがあなたの名前よ」

「…えっと…」

アッサム「…返事はどうかしら?」

オレンジペコ「…あ、あの…私、頑張ります!」

オレンジペコ「ダージリン様の隣にいても恥ずかしくないように、頑張りますから!」

ダージリン「…ふふ、期待しているわね」


【エンディングです!】



・・・戦車道大会1回戦:大洗vsサンダース戦 後日



ザァァァァ…


みほ「はぁ、はぁ…」タタタ…


バシャバシャ…


みほ「(急に雨が降ってくるなんて、聞いてないよぉ…)」

みほ「(あ、あそこの屋根で雨宿りできそう…)」タタタ…


バシャバシャ…

みほ「ふぅ…」


エリカ「…んっ?」

みほ「あっ…!」


ザァァァ…


エリカ「…なんでアンタがここにいるのよ?」

みほ「あ、あの…みんなで遊んでたんだけど、ちょっとはぐれちゃって…それで…」

エリカ「ふぅん」

みほ「エリ…逸見さんは、どうして…?」

エリカ「…何だっていいでしょ」

エリカ「(本当は隊長と大会の視察に来てたんだけど、ちょっと寄り道してたら雨が降ってきた…何て言わなくていいわよね)」


ザァァァ…


みほ「…」

エリカ「…」

みほ「…」

エリカ「…」

みほ「…あ、あの…」

エリカ「何よ」

みほ「…ごめんね、逸見さん」

エリカ「…何よそれ、何で謝るわけ?」

みほ「私があの時、勝手にフラッグ車を離れて…そのせいで…」

エリカ「…」

みほ「…あの時も、こんな雨だったよね…」

エリカ「…」


みほ「それで、急にいろいろ思い出しちゃって…それで…」

エリカ「…あーもう!いつまでもウジウジうるっさいわね!」

みほ「えっ」

エリカ「なんであんたは、いつもそう…」

エリカ「…私も、もっと素直になれれば、楽になれるのかしらね…」

みほ「逸見さん…?」

エリカ「…ふぅーっ…」

エリカ「いい?1回しか言わないわよ?」

エリカ「あの試合、あんたは間違ったことなんてしてない」

エリカ「…間違ってたのは、あの場面で動こうとしなかった私たちかもしれないわ」

みほ「そんな、私、そんなつもりじゃ…」

エリカ「私も、雨を見るとあの日のことを思い出すのよ」

みほ「…」


ザァァァ…


エリカ「…気持ちの整理がつかなかった。今でも、わからなくなる時がある」

みほ「…」

エリカ「あんな事故があって、あんたは黒森峰をやめた」

エリカ「…でも、それでよかったのかもしれない。あのままあそこにいたら、あんたも、隊長も、私もどうなっていたかわからないわ」

みほ「…」

エリカ「黒森峰の10連覇なんて、私にはどうでも良かった」

エリカ「…ただ、あんたが……」

みほ「…ありがとう、逸見さん」

エリカ「…」

エリカ「1回戦突破、おめでとう」

みほ「うん」

エリカ「…勝ちなさいよ」

エリカ「私たちは必ず勝ちあがる。あんたたちも付いてきなさい」

エリカ「次は敵同士で…決勝で会いましょう」

みほ「…」


ザァァァ…




エリカ「…雨、止んだわね。私、もう行くわ」

みほ「うん」

みほ「…さよなら、エリカさん」

エリカ「…」

エリカ「またね、みほ」ザッ



~~


エリカ「…隊長、お待たせしてすみません」

まほ「ああ…エリカ? どうした?」

エリカ「え?」

まほ「嬉しそうだな。何かあったか?」

エリカ「…いえ、何も」

まほ「そうか。それじゃあ帰ろう。バスに乗ってくれ」

エリカ「はい」

バタン

エリカ「…隊長」

まほ「ん?」

エリカ「大洗は、必ず決勝まで来ます。私たちも、必ず勝ち上がりましょう」

まほ「ああ。もちろん、そのつもりだ」

エリカ「(…見てなさいよ、みほ)」

エリカ「(あんたが抜けても、黒森峰は強い。それをわからせてあげる)」

エリカ「(また戦車道を始めたことを…黒森峰を抜けたことを、後悔させてあげるんだから…!)」

ブロロロ…





-おしまい-

以上です。ありがとうございました。

書きたいシーンがあるけど、それ以外が思いつかなくて1スレ分ほど引っ張れないネタを放出してみました。
本当はもっと長くしたいんですが、僕はもう限界なので誰か書いてください。なんでもしますから。

最後になりますが、今回と同じようなノリと勢いでいろいろ書いたので、よろしければ以下もお願いします。
ほとんどDAT落ちしてるのでタイトルだけ。

・【ガルパン】魔弾の砲手 -五十鈴 華-
・【ガルパン】身魂の操縦手 -冷泉 麻子-
・【ガルパン】不惜身命の装填手 -秋山 優花里-
・【ガルパン】ペパロニ「戦いはノリと勢いじゃない、頭の使い方だ」
・【ガルパン】オレンジペコ「ダージリン様の、気品よりも大事なもの」


ちょっとノリが違うやつもいろいろ書いてます。
こちらもよろしくお願いします。

・優花里「腹痛・ウォー!」
・【ガルパン】みほ「誰かのお尻がシバかれるボタン」
・【ガルパン】役人「結婚したい大洗女子生徒といえば」
・【ガルパン】役人「結婚したい大洗以外の戦車道履修者といえば」
・【ガルパン】アンチョビ「総帥お悩み相談ダイヤル」
・【ガルパン】みほ「学園十色の短編集です!」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom