秋雲「もう一度だけ子供に戻らせて」 (65)

固い絆は消えないないモノだと思ってた。血のつながりは色あせないモノだと信じてた。

そうじゃなかった。何年も隣にいたんだとしても、実の姉妹だろうとしても、あの日のようには交われない。

いや、あの時の関係は何も変わってない。人が変わったんだ。

お互い離れていた時間。その間に、あの人は大切なものをたくさん見つけて、わたしはスカすようになった。

たったそれだけ。でも、たったそれだけで、わたしはあの人と昔のように話すことが出来なくなったんだ。





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風雲「で、また陽炎さん避けてきたの」

秋雲「ははは」

風雲「誤魔化さないでよ。いい加減、ぶつかっちゃいなさいってば」

秋雲「いやー、いざ目の前にすると頭真っ白になっちゃうし、どうすれば良いかも思いつかなくてねー」

風雲「相変わらず尻込みしちゃって。先延ばしするほど悪くなるわよ」

秋雲「参考にするよ、ありがとねっ」

風雲「あっ! 話はまだ――」

秋雲「はぁー、またやっちゃった」

  「言われなくたって分かってるって。こんなのダサいくらい。でもさ――」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

陽炎「お疲れ。動き良くなってきたわね、勘が育ってきてる」

僚艦「あ、ありがとうございます! 陽炎さんのおかげです!」

陽炎「アンタの頑張りよ、胸張りなさい。ってまだまだ粗が多いんだから。反省を見つけなさい」

僚艦「すいません……」

陽炎「そんな落ち込まないで。じゃあ先にご飯食べに行こっか。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

秋雲「こう、コソコソ隠れて見るのが限界なんだよねー。……なっさけない」

  「ホントにいいなあ、あの子。陽炎さんと絡んでて、羨ましいよ。それに、これからもいっぱい話せるなんて」

  「もし、秋雲さんも一緒にいられたらさ……」

  「ははは、なーんも想像できないや。部屋で絵でも描いてよ」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

陽炎「……」

僚艦「陽炎さんどうしました?」

陽炎「なんでもないわ。早く行こっか」

陽炎さんとは艦娘になる以前からの付き合いがあるというか、実の姉妹であった。

四年ほど前に親が離婚するまで、わたしは毎日のようにあの人の後を着いて遊んでいた。

人が少ない町ってこともあって、年が近い子も遊ぶ場所もないもんだから、そうするしかなかったってこともあると思う。

日が落ちるまではしゃぐあの人に引っ張られて、家に帰っても寝るまで騒ぎ続けた。

一年中わたしたちは隣にいた。手をつないで、並んで歩いて、お菓子を食べて、テレビを見て笑って。

楽しくない日なんてなかった。悲しくなったり落ち込んだときも、あの人に元気をもらえただけで立ち直れた。

あの人といるだけで。あの人と話すだけで。あの人に想われてるんだなって、分かるだけで、幸せだったんだ。

今となっちゃ、薄氷の上に出来た天国ってやつだったよ。

ばあちゃんが死んだあとに親が離婚しちゃって、あの人とは離ればなれになったんだよ。

二人とも田舎なあの町が嫌だったみたい。でもお父さんがばあちゃんのお世話しなきゃいけなかったみたいで住んでたんだって。

葬式終わったらお父さんはあの人連れて、わたしはお母さんの方に着いてったよ。

それからあの人とは音信不通。携帯も持って無かったし、お母さんはお父さんのことはだんまり。

でも別れる前に散々あの人に励まして貰ってたから、切り替えて頑張ろうとはしたんだよね。

――正直やばかった。あの頃によく生きていられたかよくわかんない。

ああ、ごめんね、話が飛んじゃって。いや、ようは相性が悪かったってやつかなー。

近くの学校通わされたんだけど、ノリと話題が全然分からなかったの。

わたしはさー、流行の服なんて知らないし、話題のドラマも見たことなくって、どう返して良いかも分からなかったんだよ。

見ても興味も沸かなくて、受け答えはギクシャクして、ほんとにつまんなかった。あっちもつまんなかったんじゃない。

気づいたらぼっちちゃん。いいもんじゃなかったけど、無理に付き合うよりは気が楽だったんだよー。

授業は着いていけたんだ。お母さんがずっと前からその気で勉強教え込まれてたし。

でも放課後はすぐに家に帰ってた。することも寝るか写真見返すくらい。

都会生活mお落ち着いたら漫画とか嵌まって、絵とか書いてて、気づいたら卒業。

行く当てもなかったから艦娘でもやろうかって投げやりに訓練所来て、そっからは風雲の知ってる感じだよ。

すいません。せっかく読んで貰った方には申し訳ないのですが、書き直させてください。

ではやり直しをさせていただきます。
やり直し前のものと食い違いによる、混乱をさせてしまったら申し訳ありません。

今更ながらに注意なのですが、本話は艦娘は元人間の志願兵設定の世界で、ねつ造設定を盛り込んでおります。
特筆として陽炎と秋雲は艦娘以前から実の姉妹関係があり、妹秋雲は活発な姉陽炎に対して敬愛しています。
やり直しの話し中にも説明は入れますが、趣味に合わないかもしれない方への注意書きとして見てください。

固い絆は消えないないモノだと思ってた。血のつながりは色あせないモノだと信じてた。

そうじゃなかった。何年も隣にいたんだとしても、実の姉妹だろうとしても、あの日のようには交われない。

いや、あの時の関係は何も変わってない。人が変わったんだ。

お互い離れていた時間。その間に、あの人は大切なものをたくさん見つけて、わたしはスカすようになった。

たったそれだけ。でも、たったそれだけで、わたしはあの人と昔のように話すことが出来なくなったんだ。



風雲「なに気取ってんの。どうせまた陽炎さんのこと避けてきただけでしょ?」

秋雲「さ、避けてなんかないって。間が悪くて、同じ班の人と話してたし」

風雲「……艦娘なる前からの姉妹なんでしょ? どーんと行っちゃいなさいよ」

秋雲「いや、だって、向こうも都合あるし、タイミング見なきゃ」

風雲「艦娘やってればダラダラしてるときなんて無いわよ。いいから当たってきなさいって」

秋雲「上手くいく目処が立たないの。それなんなのに突っ込むのはちょっと」

風雲「馬鹿馬鹿しい? 間抜け?」

秋雲「うん。そうじゃない?」

風雲「……今のは聞かなかったことにするから。どうにかしなさいよ」

秋雲「あ、風雲待って……って、行っちゃったかー」

  「何か不味いこと言っちゃってたのかな? だめだわ、心当たりも浮かばない」

  「んー、んー、んー。」

(衝突)

??「ちょっと、突っ立ってないでよー」

秋雲「す、すいません。ってねえ――じゃなくて、陽炎さん」

陽炎「あ、秋雲じゃない。奇遇ね、一人でどうしたの?」

秋雲「いや、ちょっと友達といたんだけど、よくわかんないうちに置いてかれちゃって」

陽炎「なにそれ? ひどいわねー。なんならわたしのとこ来る? まだ食べてる途中でしょ」

秋雲「いいって、よくわかんないのが混じるのも気まずい――」

風雲『艦娘やってればダラダラしてるときなんて無いわよ。いいから当たってきなさいって』

秋雲「……あー、このあと暇あるからお邪魔してもいいかな?」

陽炎「そう。じゃあこっち来て!」

僚艦「陽炎さーん。席こっちです」

陽炎「ごめん、ちょっと一人乱入させて」

僚艦「あれ? いや、いいですけど、長椅子で、人数的にちょっと足りない気味ですよ?」

陽炎「なら、悪いけどちょーっとだけ詰めて、ちょーっとだけでいいから」

僚艦「だいじょうぶです」

陽炎「ありがとね。ほら、秋雲も座りなさいよ」

秋雲「お、お邪魔します。えっと、今期から入った秋雲です。どうも」

僚艦「新入りちゃん? てことは後輩じゃん、よろしくねー。そう言えばどこの子?」

秋雲「第二六班です」

僚艦「んー、あそこの班長って長良型の人だっけ。たしか割りとベテランの人だ」

秋雲「はい。すっごく指導して貰ってます」

陽炎「理詰めと根気押しのいい人じゃない。ラッキーね」

秋雲「ははは」

陽炎「……」

秋雲「?」

陽炎「なーにかしこまってんの。それに余所余所しい! お尻椅子から落ちてるじゃない。もっとくっつきなさいって」

秋雲「ひゃっ!? 近い! 近いから!」

陽炎「アンタが離れるからじゃない」

秋雲「はな、離してって!」

僚艦「楽しいのわ分かりますけど、後輩ちゃん弄るのも程々にしましょうよ陽炎さーん」

陽炎「いいの、いいの。姉は妹を可愛がるものだから、これはいくらでもしていいの」

僚艦「そう言えば秋雲って陽炎型で登録されてましたっけ」

秋雲「そ、そうなんです。いやー、逆らえなくて辛いです」

陽炎「なに紛らわしいこと言ってんのよ。ガチの姉妹じゃない」

秋雲「ちょっと、陽炎さん!」

僚艦「えっ、そうなんですか」

陽炎「そうよ。親が離婚するまで一緒にいた、血の繋がった妹。

   可愛かったわよー。一日中一緒にいて手も繋いでお姉ちゃん、お姉ちゃん。

   それが今じゃ陽炎さんだって、さびしいわー」

秋雲「思ってもないでしょ? それに、もうそんな歳でもないんだって。何年も前じゃん」

陽炎「寂しいのは本当よ。たった一人の妹がこんな捻くれちゃってるんだから」

秋雲「初心なねんねじゃいられないっての、成長したと言って欲しいよ」

陽炎「口も悪くなってるし。離れてる間に道を踏み外しちゃったのかなー」

僚艦「か、陽炎さんそこらへんで――」

秋雲「姉ちゃんだって変わったじゃん!」

陽炎「なにが変わったって? 言ってみなさいよ」

秋雲「いくつもあるから! えーっと……」

陽炎「なに、言えないの? 勢いだけの所、秋雲ったら昔から変わってないわねー」

秋雲「――ッ!」

僚艦「あ、秋雲ちゃん。……行っちゃいましたね」

陽炎「ほっといていいわよ。そう振る舞いたいなら、そういうのを返せばいいんだから」

僚艦「手厳しですねー」

秋雲「なんだよ、なんだよ、なんだよ! もう4年くらいあってなかった妹にそれかよ!

   つめたくない? つめたいでしょ! あああぁぁぁ!!」

風雲「久々に荒れてるわね。部屋の外まで聞こえそうよ」

秋雲「……風雲」

風雲「聞こえそうってのは嘘だから、続けててもいいわよ」

秋雲「白けたからいい」

風雲「そう」

秋雲「……」

風雲「……

   陽炎さんと上手くいかなかったんでしょ」

秋雲「そうだけど? 捻くれブスの妹なんて、陽炎オネーサマはいらないみたいでねー」

風雲「はぁ。可愛がって欲しいなら素直になりなさいってば」

秋雲「別に可愛がられたくなんてないですよー」

風雲「そんな悲しそうにして、説得力無いって」

秋雲「は? いまの秋雲さん、仲良くなれると思ったら向こうが失礼で、怒ってるだけなんだけど。

   なんかの本に書いてあったの? 言う前に相手の顔見てよ」

風雲「見て言ったんだけど。もう可哀相って感じ」

秋雲「そうーですか。話が通じないみたいで。もうほっといて」

風雲「……」

秋雲「……」

風雲「……ちょっとなんだけど、盗み聞きしてた」

秋雲「悪趣味」

風雲「(イラッ)……秋雲が行った後にさ、

   陽炎さん、秋雲がそういう風にしてるから、そういう対応返したって言ってた」

秋雲「……」

風雲「強がって勘違いさせちゃう所治してみない? 時々落ち込んでたよね。良くない所って分かってるでしょ」

秋雲「今更どうしろってのさ」

風雲「治してみないって言ったの」

秋雲「そういうことじゃないんだけど。今更キャラ変えられないんだよ」

風雲「やったことあるの?」

秋雲「やったことぐらいなら、あるよ。……わたしなりに頑張ったけど、できなかった」

風雲「なら今度はわたしも付き合ってあげる」

秋雲「どうにかできるの?」

風雲「わからないわよ。けどね」

秋雲「けどね?」

風雲「秋雲ががんばるっていうなら、最後まで助けるわ」

秋雲「――」

風雲「で、どうするの?」

秋雲「……お願いするわ。背中支えてちょうだい」

風雲「任せなさい!」

バシッ!!

秋雲「痛っ! ちょっと、急にお尻叩かないでよ!」

風雲「秋雲がしょげてたからね。早速気合いを入れてあげようと」

秋雲「だからって。もっと優しい方法無かったの?」

風雲「はいはい、ウジウジしないの。次行くわよ」

秋雲「タンマ、タンマ。もういいから!」

風雲「もう一発入れるって意味じゃないから」

秋雲「あ、そう?」

風雲「秋雲はなにがしたいの? 陽炎さんとこのままでいいの?」

秋雲「そんなわけないじゃん」

風雲「じゃあどうしたいの?」

秋雲「そりゃ、仲良くしていきたいよ」

風雲「それだけ?」

秋雲「それだけって」

風雲「じゃあ、すれ違った時に挨拶するぐらいでもいいんじゃない?」

秋雲「いや、そんなんじゃなくて、もっとおしゃべりするとか」

風雲「ならそれも言って」

秋雲「おしゃべりするとかしたい」

風雲「他には?」

秋雲「一緒にご飯食べたいな。休みの日にお出かけするとかも」

風雲「あるじゃない。もっと言って」

秋雲「姉ちゃんと、あー、えっと、いや」

風雲「お願い、聞かせて」

秋雲「……また一緒に遊びたい。手を繋いで、歩いて、夜になったら同じベッドで寝たい」

風雲「言えたじゃない。じゃあ頑張りましょ」

秋雲「もうそんなガラでもないのにどうするってのさ」

風雲「失敗してもいいくらいで構えなさいって。何度だって励ましてあげるわよ」

秋雲「ふふっ、なにそれ。――でもいいね。やる気沸いてきた」

風雲「調子出てきたわね。いつもの秋雲さんって感じじゃない」

秋雲「ありがと。じゃ、ちょっと頑張ってくるから」

風雲「行ってらっしゃい」

今夜は以上となります。失礼します。

秋雲「なんて、啖呵切って来たのはよかったけど……」

陽炎「――、――! ――」

秋雲「聞こえないけどマジな会議中じゃん。無理だってこれ。

   でも、もうウジウジしないって言ったんだから、行かなきゃ駄目じゃん。

   いやいや、焦らない焦らない。勇気と蛮勇は違うぞ、わたし

   けど、話し終わったらすぐどっか行っちゃったりしないよねー、うー」

陽炎「――、――、――」

秋雲「どうしよ、どうしよ。行くべき? いや、待つ? わっかんないって……」

風雲『失敗してもいいくらいで構えなさいって。何度だって励ましてあげるわよ』

秋雲「……おけ、おけ。落ち着いてきた。いつも通りで行けばいいんだよ、わたし。

   多少の冷たい眼なんて気にしないのが秋雲さんだぜ? それにいざとなれば風雲ちゃんから慰めても貰えるんだ」

風雲『調子出てきたわね。いつもの秋雲さんって感じじゃない』  

秋雲「わりとある絵心。親から貰った可愛い顔。要領のいい頭。そうだ、私は天才美少女な秋雲さんだ。

   それに、愛しの風雲ちゃんから気合いを入れて貰っちゃった私はもはや現代駆逐艦だね。ひひっ」

陽炎「――、――、――」

秋雲「……」

陽炎「――、――、――」

秋雲「……よし!」

(スタスタ)

僚艦「あ、秋雲ちゃん」

陽炎「なに? 今ブリーフィングしてるんだけど」

僚艦「ちょ、陽炎さん!」

秋雲「……お邪魔したことは、すいません。陽炎さんと話がしたくて、お願いできませんか?」

陽炎「この後演習入ってるし、明日は朝から哨戒で出るから時間無いわ」

僚艦「あー、これは意地悪で言ってるんじゃなくてホントだよ。ごめんね」

秋雲「……そう、ですか。失礼しました」

陽炎「あー、もう! フタヒトサンマルに私の部屋来なさい。505号室だから!」

秋雲「え?」

陽炎「聞こえなかった? なら繰り返すわよ!」

秋雲「い、いえ、大丈夫です! あ、ありがとうございます! 失礼します!」

(スタスタ)

僚艦「秋雲ちゃん嬉しそう。身内の色眼鏡で厳しいだけかと思ってましたけど、優しくもしてあげるんですね」

陽炎「そうじゃないわよ」

僚艦「またまたー、照れちゃって」

陽炎「……この後の演習楽しみにしてなさい」

僚艦「ちょっ! それは勘弁してくださいってー」

風雲「やったじゃない。この後が本番だけど、おめでと」

秋雲「へへっ、ありがと」

風雲「ようやくお姉さんに甘えられるわね」

秋雲「正直まだ恥ずかしくて逃げちゃいそうなんだけどね」

風雲「……」

秋雲「これも風雲のおかげだよ。ほんとにありがと!」

風雲「……そう」

秋雲「……ふふっ。笑いが止まらないなー。すっごく楽しみだわー」

風雲「……」

秋雲「どうしたの風雲? ちょっと怖い顔してるけど」

風雲「……秋雲さ。予行演習しない?」

秋雲「え、どうしたの急に?」

風雲「ほら、いざとなって恥ずかしがったら台無しじゃない。

   そうならないように、私にやってみてよ」

秋雲「いやいや、え? え?」

風雲「なに? 私に出来ないの? そんなんじゃお姉さん相手にも失敗するんじゃない?」

秋雲「ちょっと落ち着いてって。なんでそんなにグイグイくるの」

風雲「いいから! やってみなさい!」

秋雲「わかった。わかったからー」

風雲「じゃあ、最初は手を握ってよ」

秋雲「う、うん――こう」

風雲「……こうやって陽炎さんと手を繋いでたの?」

秋雲「だったかなー。はっきり憶えてるわけじゃないだよ」

風雲「じゃあ、どう?」

秋雲「どうって?」

風雲「私と手を繋いだ感想を聞いてるの」

秋雲「か、感想かー……綺麗な手だねー」

風雲「触った、方の感想が聞きたいんだけど」

秋雲「それは、すごく暖かくt――はい、終わり終わり!」

風雲「ちょっと! 待ちなさい! 最後まで言ってよ!」

秋雲「ごめんねー、早めに行って起きたいからさ」

(ばたんっ)

風雲「行っちゃった……秋雲のばか」

今夜はここまで。失礼します。

すいません、昨日と続いて今夜の更新も休ませてください。
せっかく読んで頂けた方々には申し訳ありません。

秋雲「急にどうしたんだろ、風雲ったら。

   昔に手を繋ぎ合う子とかいたのかな? それで懐かしくなっちゃったり……

   うーん、いまいちピンと来ない。なんでかなぁ」

風雲『じゃあ、どう?』

秋雲「わざわざ聞いてきたのが分からないんだよ。ただの予行演習って様子じゃなかったし

   うーん、うーん、うーん」

陽炎「なに廊下で唸っちゃってるの」

秋雲「わっ!? びっくりした。姉ちゃんか」

陽炎「“か”ってなによ。“か”って」

秋雲「あー、ごめん」

陽炎「……いいわよ。あと、これから私の部屋行くんでしょ? 一緒に行きましょ」

秋雲「う、うん」

(姉妹移動中)

陽炎「……」

秋雲「……」

陽炎「……わたしと離れてから、友達とか親友とかちゃんとできた?」

秋雲「へ? あー、できたよ。親友っていうと風雲かな。

   訓練学校で一緒になったんだけど、すごく良い奴なんだ」

陽炎「そう、今度紹介してね。アンタが良いっていうくらいなんだから会ってみたいわ」

秋雲「ほんとに良い子だから、仲良くなれると思うよ。それに、結構かわいい子なんだよね。

   キリッとしてるからキツそうだけど、柔らかい感じに整ってる顔だから笑うと可愛いよ。

   いや、キリッとしてるときも、それはそれで美人ちゃんで良くてさー」

陽炎「ふふっ」

秋雲「? どうしたの?」

陽炎「いやね、楽しそうに言うもんだから、秋雲も好きな子ができたんだなって。

   お姉ちゃん的に妹の成長が微笑ましいのよ」

秋雲「な、何言ってんの。別に風雲とはそういう仲じゃないし……」

陽炎「拗ねないでよ。もー、ごめんね。謝るから、もっとその子のこと教えてって」

秋雲「知らない、知らない。もう言うことないから」

陽炎「ほんとにゴメンてば。ね?」

秋雲「……」

陽炎「お姉ちゃんのこと嫌いになった?」

秋雲「そういうの、ずるいくない」

陽炎「さーて、なんのことかしら?」

秋雲「……姉ちゃんを嫌いになったことなんて無いよ。でも、人を喰ったみたいな態度は嫌」

陽炎「言うようになったわね。わたしに手を引かれてばっかりだったアンタが」

秋雲「姉ちゃんはいつから……そういう風になったの?」

陽炎「いつでもいいじゃない。何年も経てば人間変わるわよ」

秋雲「……」

陽炎「――なんてね。妹が大好きなお姉ちゃんは変わってないから安心しなさい」

秋雲「……そう」

陽炎「……」

秋雲「……わ。急に止まってどうしたの?」

陽炎「目的地にとうちゃーく、なんてね。ここわたしの部屋」

秋雲「……」

陽炎「……」

秋雲「入らないの?」

陽炎「ここまで来といてなんだけど、今のわたしはもうアンタの知ってるわたしじゃないのよ。

   いざ話そうとしたら“人食ったよう”なわたしが意地悪するかもしれないのに、

   それでもアンタは昔みたいに話してみたいとか考えてるの? 秋雲」

秋雲「お喋りがしたいって、分かってたんだ」

陽炎「見え見えだったわよ。で、どうするの?」

秋雲「……話がしたい。それでもわたしは姉ちゃんと話したいよ。

   そりゃ、すっごく後悔するかもしれないけどさ。

   怖いけど、それ以上に話したくて仕方ないんだ」

陽炎「そう。なら入りなさい」

秋雲「し、失礼しまーす」

今夜はここまで。失礼します。

執筆のことだけ語るべきかと反応しないでいましたが、
そう言って貰えると嬉しいです。

陽炎「そこの椅子でも座って。同室の子には席外して貰ってるから」

秋雲「姉ちゃんの部屋ってこんな感じなんだ」

陽炎「アンタのとこもあんまり変わんないんじゃない?」

秋雲「まあ、付加価値ってやつ? 姉ちゃんが過ごしてるって着いてるとね、違く見える」

陽炎「まあ物珍しいの楽しむのは良いんだけど、話がしたいってのはどうなったの?」

秋雲「――そう、だったね。ちょっと忘れてた」

陽炎「……」

秋雲「姉ちゃん。わたし、姉ちゃんとやりたいことがあるんだ」

陽炎「ふーん、何がしたいの?」

秋雲「あー、すっごく恥ずかしいんだけど。また昔みたく!

   ……姉ちゃんと遊びたいんだ」

陽炎「それのなにが恥ずかしいのよ」

秋雲「いやいや恥ずかしいでしょ。今更だよ。子どもっぽくない?」

陽炎「そうかしら。わたしは、そう思わないけど」

秋雲「嬉しいけど、調子狂うなぁ」

陽炎「モゴモゴしないの。で、昔みたいなことって、どんなことしたいのよ」

秋雲「それはおしゃべりとか、手を繋いだりとか、色々……」

陽炎「手を繋ぐって、こんな感じにだっけ」

秋雲「ひゃ!? 姉ちゃんってば! まだ心の準備ができてないよ!」

陽炎「次におしゃべりでしょ。なに話そっか」

秋雲「お願い、少しだけで良いから落ち着かせて」

陽炎「だーめ。夜は短いんだから。明日のために早く寝なきゃいけないんだし、待ってられないわよ」

秋雲「そうだけどさぁ」

陽炎「じゃあ別れてからのこと教えてちょうだい。アンタはどんなとこに行ってたの?」

秋雲「……あー、えっと、姉ちゃんと別れてからはね」

(姉妹談話中)

秋雲「――それでさ、なんとか試験も合格して、風雲とここに来れたんだよ」

陽炎「良くやったじゃない。ほんと可愛いわね」

秋雲「ちょっと、くすぐったいって」

陽炎「それにしたって、良い子なのね。風雲ちゃんて」

秋雲「さっきも行ったけど、別に風雲とはそういう仲じゃないからね」

陽炎「そうだったわね。でも、その子といると、すっごく楽しいんじゃない?」

秋雲「確かに楽しいけどさぁ」

陽炎「もしかして、わたしといるより楽しい?」

秋雲「それは無い……無い? 姉ちゃんといる以上のことなんてあるわけ……」

陽炎「ふーん」

秋雲「って、そもそも比べるようなもんじゃなくいしさ」

陽炎「ならさー、これからどっちかしか遊べないとしたら、どうする?」

秋雲「どっちかって? いや、比べるようなもんじゃないし選べるわけないじゃ……」

陽炎「ただの冗談よ。別に風雲ちゃんの方選んだって、口利かないとかしないから」

秋雲「そ、そうだよね。もー、冗談にしちゃキツすぎるって。ははっ」

陽炎「だから答えてよ。わたしと風雲ちゃん、もう片方を捨てなきゃいけなくなったら、

   ――どっちを選ぶの? 秋雲」

秋雲「っ!?」

陽炎「早くしなさいって。愚図な子は嫌いよ」

秋雲「ちょっ、引っ張んないで、顔が近い! 息が当たるって、この距離!」

陽炎「アンタが逃げないようによ」

秋雲「眼がマジじゃ」

陽炎「冗談って言ってるじゃない」

秋雲「……」

陽炎「緊張してる? そんな肩張らなくてもいいのに」

秋雲「別に緊張なんてしてないから……」

陽炎「じゃあさっさと答えなさい」

秋雲「……」

陽炎「簡単でしょ? 選びたい人ってのは、こうやって触れ合ってお喋りしたい人がそうなの」

秋雲「触れ合って……お喋りしたい人……」

陽炎「こうやって手を握って、楽しいこと話したくなる子が、秋雲は私以外にいる? 」

秋雲「……いや、今までいたかなぁ……心当たりがない。てことはわたしって姉ちゃんのことが好き?」

陽炎「ふふふっ、そうに決まってるじゃない。わたしは綺麗でかっこいい頼れるお姉ちゃんで、

   アンタはそんなわたしといるのが大好きな妹なんだから。当たり前よ」

秋雲「なら姉ちゃんかな? だって、そんな人姉ちゃん以外に」

風雲『じゃあ、最初は手を握ってよ』

秋雲「あっ」

風雲『私と手を繋いだ感想を聞いてるの』

秋雲「……」

陽炎「おーい、秋雲ってば。手ばかり見てないでよ。これから好きなだけ握れるんだから、

   私のことも見なさいって。ほらほらー」

秋雲「……すごくドキドキしたよ。つい離しちゃう程堪らなかった」

陽炎「秋雲?」

秋雲「細くて、柔らかい、綺麗な手だったなぁ。というか、そんなことより、アイツの手ってだけで

   ――また握ってみたいわ」

陽炎「ちょっと、秋雲ってば」

秋雲「ごめんね姉ちゃん。わたしは、アイツと一緒にいたい」

陽炎「……そう」

秋雲「いや別に姉ちゃんが嫌いになったわけじゃないよ。ほんとだからね。風雲と比べたらってだけで、

   そもそも、冗談だって姉ちゃんが」

陽炎「――もう遅いから帰りなさい」

秋雲「あ、あの、姉ちゃん!」

陽炎「帰りなさい」

秋雲「……失礼します」

陽炎「……」

秋雲「……」

陽炎「……」

秋雲「ごめん。それでも、わたしは、風雲と一緒にいられないとか想像できなかった」

(バタン)

陽炎「……

   ……

   ……はー」

僚艦「フラれちゃいましたね。完堕ちしたかと思ってたら、まさかな結果とは」

陽炎「何度も言うけど、そこまでして人の逢い引き覗きたいってどうなの?」

僚艦「生まれつきの性なんでどうしようもないんですよ。ほんと生の観察するのは堪んない」

陽炎「だからってクローゼットに何時間もいないわよ。だいぶ狂ってるわ」

僚艦「ころころ相手替えて弄んでる陽炎さんに言われたくは」

陽炎「あ?」

僚艦「ごめんなさい、ごめんなさい! 言われっぱなしが悔しくて、言い返しただけで本気じゃないですから!

   後生ですから、黙っててください! あと覗かせるのもまた許してください~」

陽炎「ったく、いいわよ」

僚艦「ありがとうございます、陽炎さん。もう感謝の極みですよー」

   話戻しますけど、今回の子って、そんなに可愛い子でしたか?」

陽炎「思い出は綺麗なもんよ。可愛く見えなくたって、愛おしいの。少しぐらいお馬鹿でも気にならないくらい」

僚艦「辛辣~。どうせ次の子に気が移れば名前も忘れるくせに、お熱ですね」

陽炎「なーにいってんのよ。まだ次の子は探さないわよ」

僚艦「へ? あんだけ、手応えなしだったのに続けるんですか?」

陽炎「当たり前じゃない。やられたから他の相手に替えるとか、情けないじゃない。舐められるわ。

   それに、惚れさせるのが楽しいのよ。初心な子もいいけど、嫌々な子ほど良いんだから」

僚艦「最低のクズ過ぎます。……でも分かっちゃいます、そういうの」

陽炎「餌と散歩頂戴の犬になったら知らないけど、面白い内は逃すなんてしないわよ」

僚艦「火が付きましたねー」

陽炎「それに、あの子はわたしの妹なのよ」

今日はここまで。乙など反応、大変励みとなっています。ありがとうございます。
次は完結したときまで、話を書くだけのスレ主に戻ります。では失礼します。

秋雲「(何言ったんだわたし。一緒に居たいだなんて。

   嘘でも姉ちゃんの方って言ってりゃ良かったじゃん。

   あー、どうしちゃったのさ秋雲さんってば! 話し合わせようよ。もー。

   あのままなら一緒に寝るくらいまで仲良くできたはずなのにぃ。

   はぁ。わたしってそんなに風雲のこと好きなのかな?)」

風雲『秋雲』

秋雲「(姉ちゃんは、わたしが風雲のこと好きなのとか、からかってきたけど。

   ほんとにわたし、風雲にLoveな気持ちがあるの?

   恋人関係になって、キスしたり、……エッチとかもやりたいのかなぁ?)」

風雲『ねえ、秋雲。今夜一緒に寝てよ』

秋雲『きっと我慢できないけど、いいの?』

風雲『察してよ。ばか』

秋雲「……

   ……

   ……」

風雲『秋雲、キスして』

秋雲「(ないないないないない! ないから! 一ミリもそんなこと思ってない!

   別に風雲とはそんな仲になりたいわけじゃないし! あー、違う違う違う!

   わたしは……! わたしは……!)」

風雲「部屋の前でなにやってるの。戻ってきてるなら入りなさいよ」

秋雲「っ!?」

風雲「そこまで驚く? そんな考え込んで、陽炎さんとの時間は楽しかったかしら?」

秋雲「風雲ちゃん? もしかして不機嫌?」

風雲「……寝ようとしてたら誰かさんに起こされたからね」

秋雲「あー、ごめん」

風雲「からかっただけ。早くしてよ」

秋雲「待って待って」

(ばたんっ)

風雲「で、うまくいったの? 手もちゃんと繋げた?」

秋雲「うん、風雲のおかげだよ」

風雲「べつに、あんた一人でもどうにかなったと思うけど」

秋雲「あんた? いや、そんなわけないって、風雲に助けて貰えなかったらまだウジウジしてたよ」

風雲「そう。ならそういうことでいいわよ。お休み」

秋雲「……風雲? 眠いだけじゃないよね。どうしたの?」

風雲「なにもないから。寝させて」

秋雲「わたし何かした? お願いだから教えて」

風雲「――黙って。褒めて欲しいとかなら陽炎さんに頼みなさいよ」

秋雲「褒めて欲しいだなんて、別にそんなこと言ってないよ」

風雲「黙ってって言ってるの。もう話しかけたりもしないで」

秋雲「風雲? ちょっと待ってよ。そんなの寂しいよ。何かしたなら何度でも謝るから」

風雲「いい加減にして! 寂しい? 陽炎さんと仲良くなれたんだから、もうわたしなんて要らないでしょ」

秋雲「風雲が要らないなんてない。わたしは、風雲と一緒に居られ無いだなんて嫌だよ」

風雲「秋雲は陽炎さんと仲良くするために、わたしが必要なんでしょ」

秋雲「何言ってるの! そんなわけ」

風雲「そうでしょ! 『ありがとう。おかげでお姉ちゃんと上手くいった。あー、楽しみ』。そう言ったじゃない!

   わたしは! 踏み台になるために、秋雲を助けたんじゃないんだから……」

秋雲「……風雲」

風雲「わたしは……わたしは……うぅ……」

秋雲「そんなに風雲のこと傷つけてたんだ、わたし。ごめん」

風雲「謝らないでよ! 同情なんて欲しくない! ただ、一緒に居いたくて……それだけで、わたしは」

秋雲「ごめんね。ほんとうにごめん……うぅ」

風雲「なんで秋雲まで泣いてるのよ……」

秋雲「だって、風雲が悲しんでるのが悲しくて、うぅ」

風雲「陽炎さんが居れば、秋雲は幸せなんでしょ……。わたしなんて放っておきなさいよ」

秋雲「そんなことないよ。風雲が居ないなんて嫌だよ。わたしは、風雲と一緒に居たい」

風雲「何言ってんのよ……」

秋雲「一緒に居たいっていってるじゃん……。ちゃんと聞いててよ」

風雲「なんで、なんで今更言うのよ。もっと早く言ってよ、ばか」

秋雲「勝手に勘違いしてる風雲の方こそ、ばかじゃないか」

風雲「ふふふっ」

秋雲「へへっ」

風雲「はぁ……はぁ……」

秋雲「落ち着いた?」

風雲「うん、大丈夫」

秋雲「良かった」

風雲「……じゃあ、また陽炎さんと仲良くするためにどうするか、考えましょ」

秋雲「え? ちょっと待って。どうしたの風雲?」

風雲「どうしたのって。秋雲がしたいから協力するんじゃない」

秋雲「いや、急に元気になったのとか。風雲は、わたしが姉ちゃんと仲良くして欲しく無いんじゃないの?」

風雲「一緒に居てくれるんでしょ? ぽいって捨てられないなら、いくらでも力になるから」

秋雲「――」

風雲「でも上手くいったんだっけ。じゃあ、なにか問題起きたら相談してね」

秋雲「ええっと、いいよ。姉ちゃんとの件はもう大丈夫だから、気にしないで」

風雲「何言ってるの。絶対なにか起こしちゃうに決まってるんだから。遠慮もしない」

秋雲「そうじゃなくて。姉ちゃんのことは解決したから、いいんだ」

風雲「何があったの?」

秋雲「話したいことは話したし、もう満足だよ。それに、怒らせちゃって口も利いてくれなそう」

風雲「え!? 一体何したの」

秋雲「まー、まー。いいじゃない。それより、明日からも仲良くやろうじゃない風雲ちゃん」

風雲「なに誤魔化そうとしてるのよ! ちゃんと教えなさいよ」

秋雲「よ、夜も遅いし、今日のところは寝ちゃおうよ……」

風雲「ちゃんと言うまで寝かせないからね」

秋雲「……目が本気じゃないですか。やだー」

風雲「……」

秋雲「うーん、うーん」

風雲「……」

秋雲「でもなー、どうしよっかなー」

風雲「……」

秋雲「むむむー」

風雲「……」

秋雲「……風雲ちゃん、ちょーっと気合い入れてくれない?」

風雲「? なにするのよ」

秋雲「あれだよ。あれ、お願い」

風雲「あれって何よ?」

秋雲「い、言わせないでよ」

風雲「はっきり言ってよ!」

秋雲「パーンってお尻叩くやつだよ! 昼にパーンってぶっ叩いてきたじゃん!

   あー、何言ってんだ、わたし……」

風雲「あ、あれね。いいけど……。そういう趣味あったの?」

秋雲「別にないから! そんな変な趣味無いから!」

風雲「いや、でも……」

秋雲「いいからやってよ。もー、恥ずかしい」

風雲「わ、わかったわよ」

(バシッ!!)

秋雲「あっ――」

風雲「これで、いい? 大丈夫? 痛くなかった?」

秋雲「はははっ、やっばいなー。ジンジンしてくる。すっごくキくなー。ふふっ」

風雲「あ、秋雲? もしかして頭打っちゃったりりした? いや叩いたのはお尻なんだけど」

秋雲「――よし! 気合い入ったわ! 言うね」

風雲「コロコロ調子変わって、ほんとに大丈夫?」

秋雲「いいから聞いて」

風雲「わ、わかったから」

秋雲「……」

風雲「……」

秋雲「あのね、姉ちゃんと話してたときなんだけどさ。姉ちゃんが……

   あー、えっと、いや、あのね……」

風雲「なにか不安? 指が遊んでる」

秋雲「大丈夫、大丈夫だから。だから、それで……」

(手を握る)

風雲「落ち着いて。ゆっくりで良いから。ちゃんと聞いてあげる」

秋雲「風雲……」

風雲「教えて?」

秋雲「……姉ちゃんが冗談で『姉ちゃんと風雲で、片方としか居られないなら、どっちを選ぶ?』って聞いてきて。

   ……風雲? 顔が青くなってるけど」

風雲「続けて、お願い」

秋雲「う、うん。正直、姉ちゃんを選ぶしかなかったと思った。せめて一緒に居るなら一番好きな人が良いし、

   姉ちゃんより好きって言える人も思い浮かばなかったんだ。――って風雲、ほんとにやばくない?」

風雲「大丈夫だから、続けて」

秋雲「どう見ても無理だって。息も荒れてるじゃん。落ち着いてからでも話すから、今日は」

風雲「いいから! お願い。最後まで教えて」

秋雲「わかった。続けるね……その後に姉ちゃんが『好きな人ってのは、触れ合いたいって思う人なの』って言ったんだ」

風雲「あぁ……そうなの」

秋雲「急にさ、風雲のことが思い浮かんだ。予行演習って言ったときのあれを思い出したんだ。

   そしたら風雲一緒に居られないことが、嫌で嫌で堪らなくなってきたんだ。

   だから、『わたしは風雲と居たい』って言っちゃったんだ。

   それで姉ちゃん怒っちゃったみたいで、部屋追い出されたの」

風雲「私よりって……なに言ってるのよ。すごく会いたかったお姉さんなんでしょ? それなのに」

秋雲「うん。姉ちゃんとはまだまだ話していたいよ。でも、それ以上に風雲と居られないのが嫌だったんだ」

風雲「ばか、ばか、ばか。別に陽炎さんだって言っときなさいよ。そもそも冗談なんでしょ? なら」

秋雲「それでも。冗談でも、風雲と会えなくなるなんて言いたくなかった」

風雲「……」

秋雲「ははっ、わたしってほんと馬鹿だね」

風雲「……」

秋雲「風雲?」

風雲「ごめん、何が何だか分からなくなっちゃって。嬉しいはずなんだけど、頭ゴチャゴチャで。あー、でも」

秋雲「でも?」

風雲「わたしも、秋雲と一緒に居たい。離れるとか嫌よ」

秋雲「そ、そう! よかったー、ほんとよかった。じゃあもう寝ちゃおっか、明日だって早く起きなきゃいけないし」

風雲「ああ、待って!」

秋雲「流石にもう寝ないとね」

風雲「最後! これで最後だから! それにすぐ終わるから!」

秋雲「はいはい、分かったって。聞きますよー」

風雲「……寝て」

秋雲「そりゃよかった。風雲も寝たかったんだね。じゃあ風雲ちゃんのベッドにどーん、しちゃおっか」

風雲「一緒に、寝てよ。」

秋雲「あー、何も聞こえなかった、聞こえなかった。はい、ちゃんと掛け布団も掛けて――おっ!?」

風雲「逃げないでよ。一緒に居たいって言ったじゃない」

秋雲「それは、こういうことを指したわけじゃなくて」

風雲「わたしと一緒は、嫌?」

秋雲「……今夜だけだからね。明日からは無し」

風雲「明日からは一緒じゃないなんて嫌」

秋雲「……」

風雲「お願い、秋雲」

秋雲「とりあえず今日だけだから」

風雲「……わかった」

秋雲「じゃあ、邪魔するね」

風雲「邪魔されちゃいます。なんてね。ふふっ」

秋雲「んー、いつもの風雲ちゃんはどこ行ったんだよー」

風雲「……」

秋雲「……」

風雲「鼻息荒い」

秋雲「ごめん。押さえるから」

風雲「違うの。秋雲とこんなに近づいてるんだなって感じて」

秋雲「――っ」

風雲「背中向けないで。こっちを見て。……ありがとう」

秋雲「……」

風雲「秋雲……。わたし、秋雲と一緒にいるよね?」

秋雲「一緒に居るよ。こんなに近くに居る」

風雲「でも明日になったら離れちゃうんだよね。一緒に寝るのは今日だけだって」

秋雲「……」

風雲「何か言ってよ」

秋雲「……明日の夜も一緒に寝ようよ。だから、また一緒になれるから、安心して」

風雲「ありがとう、秋雲」

秋雲「じゃあ、ほんとに寝ちゃおっか」

風雲「うん、おやすみ」

秋雲「わりと寝たはずなんだけど、風雲ちゃんはどうしておねむなんですかー?」

風雲「あれから何度も目が覚めちゃって、よく眠れなかったのよ。

   というか秋雲こそ何で気づかないのよ。起き上がってたのよ!」

秋雲「秋雲さんだって結構ギリギリなの! これでも寝たり無いぐらい疲れてたんだから」

風雲「むー」

秋雲「はいはい、とりあえず朝ご飯食べようね――っ」

風雲「秋雲? どうしたの?」

陽炎「おはよう、秋雲」

秋雲「ね、姉ちゃん。おはよう」

陽炎「……ふーん」

秋雲「……」

風雲「……」

陽炎「なに、固くなってんのよ。肩の力抜きなさい」

秋雲「え? 姉ちゃん、どうしたの?」

陽炎「どうしたのって、こっちの台詞よ。そんな緊張しちゃって。まさか昨日のやつ?

   なーに本気にしちゃってるのよ。冗談て言ったじゃない。冗談だって」

秋雲「そ、そうだったね。いや、姉ちゃんの迫力すごくて勘違いしちゃったよ」

陽炎「冗談が通じないなんてまだまだね。それで、隣の子が風雲ちゃん?」

風雲「あ、はじめまして、風雲です」

陽炎「うんうん。しっかりしてるし、それに可愛いわね。秋雲ったら、いい娘捕まえたじゃない」

秋雲「何言ってるの、姉ちゃん! 別に風雲とはそんな仲じゃ」

陽炎「照れちゃって。可愛いわねー。あ、風雲ちゃん無視しちゃってゴメンね」

風雲「いえ、大丈夫です……」

陽炎「こんなに気が利くなんて。秋雲にはもったいないぐらいじゃない?」

秋雲「うん。そんぐらい良い子だよ」

陽炎「ちょーっと目を離しちゃったら、すぐ相手が見つかりそうじゃない。怖いわねー」

秋雲「そ、それは……」

風雲「ちょっと待ってください。陽炎さん」

陽炎「なに? 今話してる途中なんだけど」

風雲「あの、別にわたしは、秋雲に付き合ってあげてるわけじゃないんです。

   わたしが、秋雲と付き合いたいから一緒に居るんです。だからあれこれ出任せ言うのやめてください」

陽炎「……ふーん」

秋雲「風雲!? 何言ってんのさ。いや姉ちゃん落ち着いて、この子調子悪いだけで、まじで刃向かってるとかじゃなくて……」

風雲「黙ってて」

陽炎「黙ってなさい」

秋雲「あっ、はい」

風雲「……」

陽炎「……」

秋雲「……」

陽炎「……ふんふん、へー」

風雲「……」

(陽炎が風雲の両手を持つ)

陽炎「気に入ったわ! これから仲良くやりましょう」

風雲「え!? は、はい。よろしくお願いします」

陽炎「そんな怖がらなくても。もっと軽くて良いわよー。なんなら義姉ちゃんって呼んでも」

風雲「別に秋雲とは、そういう関係じゃなくて……」

陽炎「うーん。肝も据わってて、お淑やかとは。良い娘過ぎ。是非とも秋雲の嫁に来て欲しいわ」

風雲「嫁だなんて、いえ、あの」

秋雲「姉ちゃんてば、あんまり風雲のことからかわないでよ」

陽炎「あー、そうね。ごめんごめん。お詫びに義姉ちゃんからのハグをプレゼントしちゃうから」

風雲「き、気にしてないので大丈夫ですから。そんなことしなくても」

陽炎「――今だけは貸してあげる」

風雲「え?」

秋雲「姉ちゃん! いい加減に風雲離してよ!」

陽炎「ごめん、ごめんって。もー、お姉ちゃんより恋人が大事だなんて。姉離れとは悲しいわ……よよよ」

秋雲「あー、姉ちゃんのそういうとこ嫌い! もう行こ、風雲!」

風雲「う、うん」

陽炎「じゃーねー」

(少女達移動)

秋雲「大丈夫? 変なところ触られてない?」

風雲「う、うん。何もなかったから」

秋雲「そういえば姉ちゃんなんか言ってたみたいだけど、何言ってたの?」

風雲「何も言ってなかったわよ……」

秋雲「そう。ならいいけど。しばらくは姉ちゃんに近づかない方がいいかなー」

風雲「……そうかもね。気を付けるわ」

陽炎『今だけは貸してあげる』

言葉が反響し、心を騒がせる。

わたしだけに聞こえるように言った宣戦布告。

あの人は秋雲をまだ諦めてないと、わたしに牙を向けた。

小さな声で囁かれただけのもの。しかしそこに込める意思は、恐怖を抱くほど確かなものであった。

この子はわたしと一緒に居たいと言ってくれたから安心。だけれども落ち着かない。

あの人のことを好きかと尋ねれば、すぐに好きと返してしまうような彼女の笑顔が、私を不安にさせる。

もしかしたら今度は、わたしがあの人のように、彼女の興味から外れてしまうんじゃないか。

晴れ晴れとした空に、雲りがかかるような幻影が立ちこめていた。

おしまい

まずはここまで読んで頂けた方に感謝を。
乙、はよ、良いぞ等のレスは書いていく中で励みになりました。
いくら言葉を挙げても、頭を下げても、この感謝は伝えきれません。
最後にですが、本作『秋雲「もう一度だけ子供に戻らせて」』を読んで頂き、楽しんで貰えたならば何よりです。

以降の続きはなく、作品を書いてての愚痴を、書いてるだけとなります。お疲れ様でした!

こういうのって後書きというのかわからないです。
ほとんど人に読ませる文ではないので面倒なら最後の所だけで大丈夫です。

終わってみるとあっけなさに悲しくなりそうですが、なぜか不思議な充実感。
すごい!無敵になったような自尊心がジワジワ沸いてきます。すげー!
やばいですね。これはやばい。自分がレベルアップしたの確かに感じる。
出任せに意味不明の踊りしてしまいますわ。フゥーwww
ちょっと巫山戯すぎましたが、それぐらい気持ちが良いです。

できに関しては、口調が可笑しいところがたくさんあったり、三点リーダやダッシュやら「○、○○?」とかを
多用したり、冒頭の黄昏ている内容や、陽炎と僚艦の密談を入れるべきだったかとか心に引っかかるものがありました。
内容に関係ないところですと、執筆中は思いもしませんでしたが、コピペしてみると数分で終わってしまう投稿に、
量の少なさを覚え、もしや台詞の展開が飛び飛びになってないか不安を覚えたりもしました。

まあ、それらは腕の問題なので仕方なかったりしますけど、決定的に不味いのは書き直しをやったことでした。
これは謝りようのないほど駄目でしたが、正直どうしようもないものでした。
タイトルからは繋がりにくいのですが、この話は『マセガキみたいに背伸びした少女秋雲が、捻くれた自分を乗り越えて、
素直だった子ども時代のように正直になろう』と自分と戦う物語を書こうとしていました。
そして始めたはいいのですが、オリジナルの設定がもりもりだったので、説明に回想シーンを入れたのが失敗でした。
書いたら書いたで、胸の内がすっきりしてしまい、気持ちを溜め込む秋雲が分からなくなってしまいました。辛い。

それで1ヶ月ほど放置していました。申し訳ありません。それから、しばらくして書きたい秋雲を思い出して、
今度は地の文も内心の台詞も使わないように再び書き始めたものが書き直しになります。
びっくりするくらい掛けました。書き溜めはありましたけど、風雲に喝を入れられて秋雲が立ち直る辺りからは
書き直してから書いてました。それなのに1週間ちょいで終わってしまったものですから。ホントにびっくりです。
台本形式というものが、すごく自分に合ったというやつだったかもしれないです。逆に地の文が自分に、
合わなかったのかもしれないですけど。

と、なんやかんやで終わった『秋雲「もう一度だけ子供に戻らせて』。
自分で書いててですが、数あわせに出した僚艦さん以外みんな可愛い!陽炎良いな!風雲可愛すぎ!秋雲堪らない!
もともと陽炎×秋雲書こうとしてたんですけど、書き直しからは秋雲×風雲になってました。むしろ前よりよくて興奮。
印象深いのは風雲に気合い入れられて立ち直るやりとりを三番目に、陽炎に正直になる秋雲のところが二番目、
1番目に風雲が胸の内を明かす場面なんですえど、1番目はバーッと進みました。飽きとかダレるとか忘れて、
バーッと行きました。なんだかそこが全体の3,4割を締めてるとかも可笑しいですね。気持ちのぶつけ合いは楽しすぎます。

書いてる途中でしたが、なんだかキャラの行動にデジャブを感じてました。頭捻ったら、昔嵌まったライトノベルの
文学少女シリーズやけんぷファーシリーズを思い出してしまいました。秋雲はそれらの主人公、陽炎は沙倉楓か朝倉美羽、
風雲は美嶋紅音(ちゃんじゃない方)か琴吹ななせでしょうか。うーん、影響を受けまくりでした。
大胆な喝入れや闇堕ち的勧誘も、二作品を読んでて心引かれた場面でしたし、感動がトラウマレベルで残っていることを自覚しました。
これを見て「お、趣味が合うな」って思う方が居たなら、同士の存在に嬉しくなります。

ここらで好き勝手言うのはおしまい。言いたいことは多分言い切りました。最後に閲覧者さん達に聞きたいんですけど、
秋雲や風雲、陽炎たちは可愛く、懸命で、魅力的だったでしょうか。思えて貰えたら嬉しいです。
そうでなかったら残念ですが、仕方ないことです。お時間を頂き、ありがとうございました。

ひゃあ、乙乙感謝です!
そして読んで頂けたとは大変嬉しいです。

ありがたい、ありがたいorz
陽炎が好きと言ってもらえてホントに嬉しいです!
この話ではワル~いお姉ちゃんなこともあって、邪魔な子と
嫌われないか不安だったりだったので、涙がホロリホロリ(☍﹏⁰)。

よかったって一言も凄く嬉しいです

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